(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(54)【発明の名称】重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2感染を予防するためのワクチン組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/215 20060101AFI20231024BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20231024BHJP
A61P 11/16 20060101ALI20231024BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231024BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20231024BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20231024BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20231024BHJP
C12N 15/50 20060101ALN20231024BHJP
【FI】
A61K39/215
A61P31/14 ZNA
A61P11/16
A61K48/00
A61P37/04
A61K9/127
C12N15/85 Z
C12N15/50
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527955
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(85)【翻訳文提出日】2023-01-17
(86)【国際出願番号】 KR2021009290
(87)【国際公開番号】W WO2022015124
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】10-2020-0088992
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523020372
【氏名又は名称】ジェネワン、ライフ、サイエンス、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】GENEONE LIFE SCIENCE, INC.
(71)【出願人】
【識別番号】523020383
【氏名又は名称】コリア、ディジーズ、コントロール、アンド、プリベンション、エージェンシー
【氏名又は名称原語表記】KOREA DISEASE CONTROL AND PREVENTION AGENCY
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヨンクン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ビョンムン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ムンソプ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヒョジン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ソンイョン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ヨンラン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ボヨン
(72)【発明者】
【氏名】ギル、アルム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ボヒョン
(72)【発明者】
【氏名】オ、イェウン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ギホ
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル、マズロー
(72)【発明者】
【氏名】クレア、ロバーツ、クリスティーン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミヨン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジュンア
(72)【発明者】
【氏名】リム、ヒジ
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ユンホ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA95
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC07
4C076CC15
4C076CC35
4C084AA13
4C084MA02
4C084MA17
4C084MA24
4C084MA59
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA59
4C084ZB09
4C084ZB33
4C085AA03
4C085BA71
4C085CC08
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
(57)【要約】
本発明は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2感染を予防するためのワクチン組成物に関するものである。本発明による重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2感染を予防するためのワクチン組成物は、SARS-CoV-2に対する抗原としてスパイクと、ORF3aまたはヌクレオカプシドとを含む。前記ワクチン組成物は、1種類の抗原を含むものに比べて、多数の共発現される抗原による顕著な抗体免疫応答およびT細胞免疫応答誘導効果があるところ、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2感染予防の分野において多様に活用されてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)SARS-CoV-2スパイクタンパク質またはそれをコードする遺伝子、および
(b)SARS-CoV-2 ORF3aタンパク質またはそれをコードする遺伝子;またはSARS-CoV-2ヌクレオカプシドまたはそれをコードする遺伝子;
を含む、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2感染を予防するためのワクチン組成物。
【請求項2】
(a)SARS-CoV-2スパイクタンパク質またはそれをコードする遺伝子、および
(b)SARS-CoV-2 ORF3aタンパク質またはそれをコードする遺伝子;またはSARS-CoV-2ヌクレオカプシドまたはそれをコードする遺伝子;
を含む、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2免疫原性組成物。
【請求項3】
前記スパイク、ORF3a、またはヌクレオカプシドタンパク質をコードする遺伝子は、ヒトコドンが最適化されたものである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記スパイクタンパク質をコードする遺伝子は、配列番号1または3の塩基配列で表されるものである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ORF3aタンパク質をコードする遺伝子は、配列番号2の塩基配列で表されるものである、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記ヌクレオカプシドタンパク質をコードする遺伝子は、配列番号4の塩基配列で表されるものである、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記(a)スパイクタンパク質をコードする遺伝子;および
(b)ORF3aまたはヌクレオカプシドタンパク質をコードする遺伝子;は、バイシストロニック発現ベクターに含まれるものである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、2回投与用である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、(a)スパイクタンパク質;および(b)ORF3aまたはヌクレオカプシドタンパク質;に対する免疫原性が同時に誘導されるものである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物は、抗体応答とT細胞免疫応答を同時に誘導するものである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項11】
(a)SARS-CoV-2スパイクタンパク質をコードする遺伝子、および
(b)SARS-CoV-2 ORF3aタンパク質をコードする遺伝子;またはSARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質をコードする遺伝子;を含む、バイシストロニック発現カセット。
【請求項12】
前記スパイク、ORF3a、またはヌクレオカプシドタンパク質をコードする遺伝子は、ヒトコドンが最適化されたものである、請求項11に記載のバイシストロニック発現カセット。
【請求項13】
前記スパイクタンパク質をコードする遺伝子は、配列番号1または3の塩基配列で表されるものである、請求項12に記載のバイシストロニック発現カセット。
【請求項14】
前記ORF3aタンパク質をコードする遺伝子は、配列番号2の塩基配列で表されるものである、請求項12に記載のバイシストロニック発現カセット。
【請求項15】
前記ヌクレオカプシドタンパク質をコードする遺伝子は、配列番号4の塩基配列で表されるものである、請求項12に記載のバイシストロニック発現カセット。
【請求項16】
前記バイシストロニック発現カセットは、CMVプロモーター、コザック配列(Kozak sequence)、IgEリーダー配列(IgE leader sequence)、フーリン認識部位(furin recognition site)、GSG-T2A切断部位、BGHポリアデニル化シグナル(BGH poly adenylation signal)、カナマイシン耐性遺伝子およびpUC複製起点からなる群から選択される1以上の構成要素をさらに含むものである、請求項11に記載のバイシストロニック発現カセット。
【請求項17】
前記バイシストロニック発現カセットは、以下の切断地図で表されるものである、請求項16に記載のバイシストロニック発現カセット。
【化1】
【請求項18】
請求項11に記載のバイシストロニック発現カセットを含む、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2感染を予防するためのワクチン組成物。
【請求項19】
請求項11に記載のバイシストロニック発現カセットを含む、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2免疫原性組成物。
【請求項20】
前記組成物は、筋肉内(intramuscular)、静脈内(Intravenous)、皮下(subcutaneous)、皮内(Intradermal) および鼻腔内(intranasal)からなる群から選択される1以上の経路で投与されるものである、請求項18または19に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物は、電気穿孔法(electroporation)、遺伝子銃法(gene gun)およびジェット噴射(Jet injection)からなる群から選択される1以上の方法で投与されるものである、請求項18または19に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物は、電気穿孔法によって筋肉内投与されるものである、請求項18または19に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物は、リポソーム媒介送達法(Liposome-mediated delivery)によって投与されるものである、請求項18または19に記載の組成物。
【請求項24】
請求項11に記載のバイシストロニック発現カセットを個体に処理する工程;を含む、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2感染予防方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2感染を予防するためのワクチン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コロナウイルス感染症-19(corona virus disease-19、COVID-19)は、SARS-CoV-2(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)による呼吸器感染症である。SARS-CoV-2は、2019年12月23日に中国の武漢で新たに発見された一本鎖RNAの新型ベータコロナウイルスであって、2020年1月に国際ウイルス分類委員会によって「SARS-CoV-2」と命名された。このSARS-CoV-2の感染経路は、未だ明らかに解明されていないが、一部の研究によれば、コウモリからヒトに感染することが報告されている。
SARS-CoV-2のゲノムは、非分節型であり、大きさは約30kbであり、10個のタンパク質をコードしている。10個のタンパク質は、1個の複製ポリタンパク質(open reading frames 1ab)、4個の構造タンパク質(スパイク、エンベロープ、メンブレン、ヌクレオカプシド)、5個の非構造タンパク質(open reading frames 3a、6、7a、8 and 10)からなる。
【0003】
SARS-CoV-2は、ヒトからヒトへ感染する可能性があり、非常に高い死亡率を占めしているので、国内外で大きな問題となっている。2020年3月16日、167,511人の患者が発生しており、そのうち13,908人の患者が死亡していることがWHOに報告されており、現在もその死亡者が急増している趨勢である。
韓国では、2019年1月に中国から入国した36歳の女性において最初のSARS-CoV-2感染が確認され、2020年3月17日までにSARS-CoV-2感染の感染者が発生しており、8,320人のSARS-CoV-2感染者が確認され、286,716人の隔離者が発生した。
【0004】
2019年に中国で最初に発見されて以来、中国地域で集中的に発症しており、2020年度には韓国、日本、イタリアなどの160カ国以上で感染者が発生している。また、高い伝播性を示すSARS-CoV-2は、感染すると呼吸器だけでなく、肺炎や急性腎不全などの合併症を起こし、高い致死率および感染性から大きな問題を引き起こしている。
現在、国内外で新規感染者が持続的に発生しており、伝播率の高いウイルスであることを鑑みたとき、これを予防するためのワクチンの開発が緊急な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明者らは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2感染を予防するためのワクチンを開発するために努力した結果、スパイクとORF3aまたはヌクレオカプシドを発現するDNAワクチンを開発することによって本発明を完成するに至った。
【0006】
したがって、本発明の目的は、(a)SARS-CoV-2スパイクタンパク質またはそれをコードする遺伝子、および(b)SARS-CoV-2 ORF3aタンパク質またはそれをコードする遺伝子;またはSARS-CoV-2ヌクレオカプシドまたはそれをコードする遺伝子;を含む、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2感染を予防するためのワクチン組成物を提供するものである。
【0007】
本発明の別の目的は、(a)SARS-CoV-2スパイクタンパク質またはそれをコードする遺伝子、および(b)SARS-CoV-2 ORF3aタンパク質またはそれをコードする遺伝子;またはSARS-CoV-2ヌクレオカプシドまたはそれをコードする遺伝子を含む、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2免疫原性組成物を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、(a)SARS-CoV-2スパイクタンパク質をコードする遺伝子、および(b)SARS-CoV-2 ORF3aタンパク質をコードする遺伝子;またはSARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質をコードする遺伝子;を含む、バイシストロニック発現カセットを提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、前記バイシストロニック発現カセットを含む重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2感染を予防するためのワクチン組成物を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、前記バイシストロニック発現カセットを含む重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2感染を予防するための免疫原性組成物を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、前記バイシストロニック発現カセットを個体に処理する工程;を含む、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2感染予防方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、(a)SARS-CoV-2スパイクタンパク質またはそれをコードする遺伝子、および(b)SARS-CoV-2 ORF3aタンパク質またはそれをコードする遺伝子;またはSARS-CoV-2ヌクレオカプシドまたはそれをコードする遺伝子;を含む、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2感染を予防するためのワクチン組成物を提供する
【0013】
また、本発明は、(a)SARS-CoV-2スパイクタンパク質またはそれをコードする遺伝子、および(b)SARS-CoV-2 ORF3aタンパク質またはそれをコードする遺伝子;またはSARS-CoV-2ヌクレオカプシドまたはそれをコードする遺伝子;を含む、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2感染免疫原性組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、(a)SARS-CoV-2スパイクタンパク質をコードする遺伝子、および(b)SARS-CoV-2 ORF3aタンパク質をコードする遺伝子;またはSARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質をコードする遺伝子;を含む、バイシストロニック発現カセットを提供する。
【0015】
また、本発明は、前記バイシストロニック発現カセットを含む重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2感染を予防するためのワクチン組成物を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記バイシストロニック発現カセットを含む重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2感染を予防するための免疫原性組成物を提供する。
【0017】
また、本発明は、前記バイシストロニック発現カセットを個体に処理する工程;を含む、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2感染予防方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明による重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2感染を予防するためのワクチン組成物は、SARS-CoV-2に対する抗原として、スパイクと、ORF3aまたはヌクレオカプシドを含む。前記ワクチン組成物は、1種類の抗原を含むものに比べて、複数の共発現抗原による顕著な抗体免疫応答およびT細胞免疫応答の誘導効果を有するところ、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2感染を予防する分野において多様に活用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1a】本発明によるスパイク抗原およびORF3aをコードする遺伝子を含むプラスミドpGO-1002の切断地図を示す図である。
【
図1b】前記プラスミドpGO-1002によって発現されたペプチドの翻訳後修飾(Post-translational modification)メカニズムを示す図である。
【
図2a】ウェスタンブロッティングによりプラスミドpGO-1002がトランスフェクションされた細胞におけるスパイク抗原およびOPF3aタンパク質の産生を確認した結果を示す図である。
【
図2b】免疫蛍光染色によりプラスミドpGO-1002がトランスフェクションされた細胞におけるスパイク抗原およびOPF3aタンパク質の産生を確認した結果を示す図である。
【
図3】本発明によるプラスミドpGO-1002の生体内における毒性を評価した結果を示す図である。
【
図4】抗体免疫応答によるスパイク抗原特異的結合抗体価を測定した結果を示す図である。
【
図5】抗体免疫応答によるORF3a抗原特異的結合抗体価を測定した結果を示す図である。
【
図6】ELISpot分析によりスパイクOLPで刺激された脾細胞のT細胞免疫応答を評価した結果を示す図である。
【
図7】ELISpot分析によりORF3a OLPで刺激された脾細胞のT細胞免疫応答を評価した結果を示す図である。
【
図8】ELISpot分析によりスパイクOLPおよびORF3a OLPで刺激された脾細胞のT細胞免疫応答を評価した結果を示す図である。
【
図9】プラーク減少中和試験(plaque reduction neutralization assay)により中和抗体価を評価した結果を示す図である。
【
図10】プラーク減少中和試験(plaque reduction neutralization assay)により中和抗体価を評価した結果を示す図である。
【
図11】ACE受容体競合評価によりACEタンパク質との競合的結合能を確認した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明の態様によれば、本発明は、(a)SARS-CoV-2スパイクタンパク質またはそれをコードする遺伝子、および(b)SARS-CoV-2 ORF3aタンパク質またはそれをコードする遺伝子;またはSARS-CoV-2ヌクレオカプシドまたはそれをコードする遺伝子;を含む、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2感染を予防するためのワクチン組成物および重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2感染免疫原性組成物を提供する。
【0022】
本発明の実施形態において、前記スパイク、ORF3a、またはヌクレオカプシドタンパク質をコードする遺伝子は、ヒトコドンが最適化されたものが好ましい。
【0023】
本発明において、スパイクは、宿主細胞へのコロナウイルスの侵入を仲介する多機能タンパク質を意味し、SARS-CoV-2のスパイクは、1273個のアミノ酸からなる(Genebank Accession No.YP_009724390.1)。また、スパイクは、既存のワクチンの抗原として用いられているが、ラクダおよびサルなどの大型動物では、臨床症状が改善されたにもかかわらず、ウイルス除去効果(すなわち、殺菌効果)が低レベルであることが確認された。同じコロナウイルスであるMERS-CoVの事例から、スパイクのみを抗原として用いた動物実験の場合、マウスのような小型動物に比べて、大型動物において免疫応答誘導効果に限界があることが確認された。これにより、大型動物において有効な応答を誘導するためには、スパイク以外の抗原を追加してこれを補う必要性が台頭している。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、前記スパイクタンパク質をコードする遺伝子は、ヒトコドンに最適化されたものであり、配列番号1または3の塩基配列で表されることが好ましい。
【0025】
本発明において、ORF3a(open reading frame 3a)は、SARS-CoV-2で最も大きい補助タンパク質(accessory protein)であって、275個のアミノ酸からなる(Genebank Accession No.YP_009724391.1)。前記ORF3aは、SARS-CoV-2のエンドサイトーシス(endocytosis)中、インターナリゼーション(internalization)に関与するタンパク質である。
【0026】
本発明において、ORF(open reading frame)は、アミノ酸配列であって、翻訳されるDNA塩基配列を意味する。
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、前記ORF3aタンパク質をコードする遺伝子は、ヒトコドンに最適化されたものであって、配列番号2の塩基配列で表されることが好ましい。
【0028】
本発明において、ヌクレオカプシドは、ウイルスの遺伝情報であるRNAやDNAを内部に含むタンパク質構造体を意味する。前記ヌクレオカプシドは、419個のアミノ酸配列からなる(Genebank Accession No.YP_009724397.2)。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、前記ヌクレオカプシドタンパク質をコードする遺伝子は、ヒトコドンに最適化されたものであって、配列番号4の塩基配列で表されることが好ましい。
【0030】
本発明の実施形態では、前記(a)スパイクタンパク質をコードする遺伝子;および(b)ORF3aまたはヌクレオカプシドタンパク質をコードする遺伝子;は、バイシストロン性発現ベクターに含まれることが好ましいが、これに限定されない。
【0031】
本発明において、ワクチン(vaccine)は、抗原に対する後天性免疫を付与する医薬品であって、SARS-CoV-2に対して特異的で、能動的な免疫性を誘導する目的で投与される。
【0032】
本発明の組成物は、抗原であるスパイク、ORF3a、およびヌクレオカプシドに加えて、組成物を構成するのに適した1つ以上のアジュバントまたは賦形剤または担体を含むことができる。
【0033】
本発明の組成物に含まれ得るアジュバントは、注射された動物の免疫応答を増強させる物質を意味するものであって、多くの異なるアジュバントが当業者に知られている。前記アジュバントには、完全フロイントおよび不完全アジュバント、ビタミンE、非イオン性ブロックポリマー、ムラミルジペプチド、Quil A、鉱物油および無鉱物油およびカーボポール(Carbopol)、油中水型乳剤のアジュバントなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
本発明の組成物に含まれ得る賦形剤の例としては、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウムなどがある。
【0035】
本発明の組成物に含まれ得る担体は、薬学的に許容される担体であってもよく、前記薬学的に許容される担体の例としては、生理食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝生理食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノールなどがある。
【0036】
本発明の組成物は、防腐剤およびその他の添加剤、例えば、抗微生物薬、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスのようなものをさらに含むことができる。前記防腐剤としては、ホルマリン、チメロサール、ネオマイシン、ポリミキシンB、アムホテリシンBなどが含まれる。本発明の組成物は、1つ以上の適切な乳化剤、例えば、スパン型(Span)またはツイン型(Tween)を含むことができる。また、本発明の組成物は、保護剤を含むことができ、当業界に公知された保護剤を制限なく使用することができ、これは、ラクトース(Lactose;LPGG)またはトレハロース(Trehalose;TPGG)を含むことができるが、これらに制限されるものではない。
【0037】
本発明の実施形態では、前記組成物は、2回投与用であることが好ましく、2週間間隔で2回投与用であることがより好ましい。
【0038】
本発明の実施形態では、前記組成物は、(a)スパイクタンパク質;および(b)ORF3aまたはヌクレオカプシドタンパク質;に対する免疫原性を同時に誘導することが好ましい。
【0039】
本発明の実施形態では、前記組成物は、抗体応答およびT細胞免疫応答を同時に誘導することが好ましい。
【0040】
本発明の別の態様によれば、本発明は、(a)SARS-CoV-2スパイクタンパク質をコードする遺伝子、および(b)SARS-CoV-2 ORF3aタンパク質をコードする遺伝子;またはSARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質をコードする遺伝子;を含む、バイシストロニック発現カセットを提供する。
【0041】
本発明の別の態様によれば、本発明は、バイシストロニック発現カセットを含む重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2感染を予防するためのワクチン組成物および重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2感染を予防するための免疫原性組成物を提供する。
【0042】
本発明の実施形態では、前記スパイクタンパク質をコードする遺伝子は、ヒトコドンに最適化(optimization)されていることが好ましく、より好ましくはSARS-CoV-2固有のシグナルペプチド(signal peptide)をIgEリーダー配列に置き換えられたものが好ましい。
【0043】
本発明の好ましい実施形態では、前記スパイクタンパク質をコードする遺伝子は、配列番号1または3の塩基配列で表されるものであってもよい。
【0044】
本発明の実施形態では、前記ORF3aタンパク質をコードする遺伝子は、ヒトコドンが最適化されていることが好ましく、より好ましくはIgEリーダー配列が追加されていることが好ましい。
【0045】
本発明の好ましい実施形態では、前記ORF3aタンパク質をコードする遺伝子は、配列番号2の塩基配列で表されるものであってもよい。
【0046】
本発明の実施形態では、前記ヌクレオカプシドタンパク質をコードする遺伝子は、ヒトコドンが最適化されていることが好ましく、より好ましくはIgEリーダー配列が追加されていることが好ましい。
【0047】
本発明の好ましい実施形態では、前記ヌクレオカプシドタンパク質をコードする遺伝子は、配列番号4の塩基配列で表されるものであってもよい。
【0048】
本発明において、バイシストロニック(bicistronic)とは、真核細胞内でmRNAの内部でもリボソームがポリペプチドを合成できるようになって、一つのmRNAから複数のタンパク質が合成可能になったシステムを意味し、本発明では、(i)スパイクタンパク質およびORF3aタンパク質;または(ii)スパイクタンパク質およびヌクレオカプシドタンパク質;が共発現されるように発現カセットを設計した。
【0049】
本発明の好ましい実施形態では、前記(i)スパイクタンパク質およびORF3aタンパク質が共発現されるように設計された発現カセットは、配列番号1の塩基配列で表されるスパイクタンパク質をコードする遺伝子;および配列番号2の塩基配列で表されるORF3aタンパク質をコードする遺伝子;を含むことができる。
【0050】
本発明の好ましい実施形態では、(ii)スパイクタンパク質およびヌクレオカプシドタンパク質が共発現されるように設計された発現カセットは、配列番号3の塩基配列で表されるスパイクタンパク質をコードする遺伝子;および配列番号4のヌクレオカプシドタンパク質をコードする遺伝子;を含むことができる。
【0051】
本発明において、発現カセットは、プロモーターと目的タンパク質をコードする遺伝子を含んでいるので、プロモーター下流に作動可能に組み込んだ目的タンパク質を産生するために発現させることができる単位カセットを意味する。このような発現カセットの内部または外部には、前記目的タンパク質の効率的な生産を助けることができる多様な因子が含まれてもよい。前記目的タンパク質発現カセットは、具体的には、プロモーター配列の下流に目的タンパク質をコードする遺伝子が作動可能に組み込まれたものであってもよい。前記の作動可能に組み込むとは、本発明のプロモーター活性を有する核酸配列が目的タンパク質をコードする遺伝子の転写を開始および媒介するように、前記遺伝子配列とプロモーター配列が機能的に連結されていることを意味する。作動可能な組み込みは、当業界の公知の遺伝子組換え技術を用いて作製することができ、部位-特異的DNA切断および連結酵素は、当業界の切断および連結酵素などを用いて作製することができるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
本発明の実施形態では、前記バイシストロニック発現カセットは、追加の構成要素、すなわちCMVプロモーター、コザック配列(Kozak sequence)、IgEリーダー配列(IgE leader sequence)、フーリン認識部位(furin recognition site)、GSG-T2A切断部位、BGHポリアデニル化シグナル(BGH poly adenylation signal)、カナマイシン耐性遺伝子およびpUC複製起点からなる群から選択される1以上の構成をさらに含むことが好ましい。前記CMVプロモーター、コザック配列およびIgEリーダー配列は、動物細胞内の高レベルの遺伝子発現および分泌を誘導するためのものであり;フーリン認識部位およびGSG-T2A切断部位は、タンパク質切断のためのものであり;BGHポリアデニル化シグナルは、効率的な転写終結と転写物の安定化のためのものであり;カナマイシン耐性遺伝子は、大腸菌選択マーカーであり;pUC複製起点は、大腸菌内の高いコピー数を維持するためのもの;である。
【0053】
本発明の実施形態では、前記バイシストロニック発現カセットは、ベクター(vector)であることが好ましく、より好ましくは以下の切断地図で示されるものであってもよい。
【化1】
【0054】
本発明において、ベクターとは、宿主細胞において目的遺伝子を発現させるための手段を意味する。例えば、プラスミドベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、およびアデノ随伴ウイルスベクターなどのウイルスベクターを含む。前記組換えベクターとして使用することができるベクターは、当業界でしばしば使用されるプラスミド(例えば、pGLS、pSC101、pGV1106、pACYC177、ColE1、pKT230、ME290、pBR322、pUC8/9、pUC6、pBD9、pHC79、pIJ61、pLAFR1、pHV14、pGEXシリーズ、pETシリーズおよびpUC19など)、ファージ(例えば、λgt4λB、λCharon、λΔz1およびM13など)またはウイルス(例えば、AAV、MVAなど)を操作して作製することができる。
【0055】
前記組換えベクターは、典型的にはクローニングのためのベクターまたは発現のためのベクターとして構築することができる。前記発現用ベクターは、当業界において植物、動物または微生物において外来タンパク質を発現するのに使用される通常のものを使用することができる。前記組換えベクターは、当業界に公知された多様な方法により構築することができる。
【0056】
前記組換えベクターは、原核細胞または真核細胞を宿主として構築することができる。例えば、真核細胞を宿主とする場合には、ベクターに含まれる真核細胞で作動する複製起点は、f1複製起点、SV40複製起点、pMB1複製起点、アデノ複製起点、AAV複製起点、CMV複製起点およびBBV複製起点等を含むが、これらに限定されるものではない。また、哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターおよびHSVのtkプロモーター)を使用することができ、転写終結配列として一般的にポリアデニル化配列を有する。
【0057】
本発明の実施形態では、前記組成物は1~3週間間隔で1~3回投与することが好ましく、2週間間隔で2回接種することがより好ましい。
【0058】
本発明の実施形態では、前記組成物は、哺乳動物への投与時、活性成分の迅速な放出、または持続放出もしくは遅延放出が可能なように当業界で公知の方法を使用して剤形化することができる。剤形は、粉末、顆粒、錠剤、エマルジョン、シロップ、エアロゾル、軟質または硬質ゼラチンカプセル、滅菌注射用溶液、滅菌粉末形態を含む。
【0059】
本発明の実施形態では、前記組成物は、筋肉内注射(intramuscular)、静脈注射(Intravenous)、皮下注射(subcutaneous)、皮内(Intradermal)および鼻腔内(intranasal)からなる群から選択される1以上の経路で投与することができる。
【0060】
本発明の実施形態では、前記組成物は、投与時の送達効率を高めるために物理的な刺激を加える方法によって投与することができ、その例としては、電気穿孔法(electroporation)、遺伝子銃法(gene gun)およびジェット噴射(Jet injection)などがある。
【0061】
本発明において、電気穿孔法(electroporation)は、細胞に電場を加えて、原形質膜の透過性を増加させることによって化学物質、薬物またはDNAを細胞内に導入されるようにする技術である。特に、電気穿孔法は、新しいDNAを導入し、細菌、動物細胞、または植物細胞を形質転換するのに活用される。
【0062】
本発明において、遺伝子銃(gene gun)は、直径1~5μmの適当な金、タングステン、またはプラスチックの粒子に組換えプラスミドを付着し、適正速度で加速して細胞壁や細胞膜を通過できるようにした機構を意味する。前記遺伝子銃を用いた送達方法は、生きている細胞内へ生物学的物質を導入することに使用される。
【0063】
本発明において、ジェット噴射は、注射針を刺入れせず、噴射式注射器を用いて液体薬剤を高圧で微細に噴射させて、皮下に注入する方法を意味する。
【0064】
本発明の好ましい実施形態では、前記組成物は、電気穿孔法によって筋肉内投与されることが好ましい。
【0065】
本発明の実施形態では、前記組成物は、送達効率を高めるために生化学的方法によって投与されてもよく、好ましくは、リポソーム媒介送達法(Liposome-mediated delivery)によって組成物を投与することができる。
【0066】
本発明において、リポソーム媒介送達法は、目的物質を含有するリポソームを用いて目的物質を細胞内に送達する方法を意味する。
【0067】
本発明による組成物は、一般的に使用される薬学的に許容される担体と共に適切な形態に剤形化することができる。薬学的に許容される担体としては、例えば、水、適切な油、生理食塩水、水性グルコースおよびグリコールなどのような非経口投与用担体などがあり、安定化剤および保存剤をさらに含むことができる。適切な安定化剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、またはアスコルビン酸などの酸化防止剤がある。適切な保存剤としては、塩化ベンズアルコニウム、メチル-またはプロピル-パラベンおよびクロロブタノールがある。また、本発明に係る組成物は、その投与方法や剤形に応じて必要な場合、懸濁剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、保存剤、吸着防止剤、界面活性化剤、希釈剤、賦形剤、pH調整剤、無痛化剤、緩衝剤、酸化防止剤等を適宜含むことができる。
【0068】
前記組成物の患者への投与量は、患者の腎臓、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与時間および経路、一般的な健康、および同時に投与される他の薬物を含む多くの要因によって異なる。
【0069】
さらに、本発明の組成物は、治療的に有効な量で投与される。
【0070】
本発明において、治療的に有効な量は、医学的治療に適用可能な合理的な受益/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、個体の種類および重症度、年齢、性別、薬物の活性、薬物に対する感度、投与時間、投与経路および排出率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素および他の医学分野で周知の要素に応じて決定することができる。本発明の組成物は、60kgの成人に基づいて0.01mg/60kg~1g/60kgで投与することができる。一方、前記投与量は、患者の年齢、性別、および状態に応じて適切に調整することができる。
【0071】
本発明による、抗原タンパク質であるスパイクおよびORF3aをコードする遺伝子を含むバイシストロニック発現カセット;またはスパイクおよびヌクレオカプシドをコードする遺伝子を含むバイシストロニック発現カセット;を含む組成物は、抗原抗体免疫応答およびT細胞免疫応答を効果的に誘導し、中和抗体がおよびhACE2タンパク質との競争的結合能力が高いことを確認した。したがって、本発明による組成物は、SARS-CoV-2ウイルス感染症の予防分野において多様に活用されてもよい。
【0072】
本発明の別の態様では、本発明は、前記バイシストロニック発現カセットを個体に処理する工程;を含む、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2感染予防方法を提供する。
【0073】
本発明の実施形態では、前記バイシストロニック発現カセットは、それを含むベクターの形態で個体に処理することが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0074】
本発明において、前記個体は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2に感染するリスクのある個体または感染したと予想される個体であってもよい。
【実施例】
【0075】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、単に本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるものと解釈されないことは、当業界で通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0076】
実施例1.候補抗原選定およびバイシストロニックベクターの設計
Wuhan-Hu-1の全配列(Genebank Accession No.MN908947)から候補スパイク抗原(Genebank Accession No.YP_009724390.1)、ORF3a(Genebank Accession No.YP_009724391.1)およびヌクレオカプシド(Genebank Accession No.YP_009724397.2)を選定した。
【0077】
前記抗原の内、ORF3aは、275個のアミノ酸からなる最大の補助タンパク質(accessory protein)であって、SARS-CoV-2のエンドサイトーシス (endocytosis)に関与する。
【0078】
前記の候補抗原の内、(i)スパイクおよびORF3a;または(ii)スパイクおよびヌクレオカプシド;をコードする遺伝子を含むバイシストロニックベクター(すなわち、DNAワクチン形態の混合ワクチン)を調製した。前記バイシストロニックベクターの製造に用いたスパイク、ORF3a、またはヌクレオカプシドをコードする遺伝子は、当該Accession No.のアミノ酸配列をヒトコドンが最適化された塩基配列である。スパイクの場合は、SARS-CoV-2固有のシグナルペプチド(signal peptide)をIgEリーダー配列に置き換え、ORF3aおよびヌクレオカプシドの場合、IgEリーダー配列を追加したものである。前記バイシストロニックベクターの製造に用いたスパイクタンパク質をコードする遺伝子は、配列番号1または3の塩基配列で表され、ORF3aタンパク質をコードする遺伝子は、配列番号2の塩基配列で表され、ヌクレオカプシドタンパク質をコードする遺伝子は、配列番号4の塩基配列で表される。
【0079】
(i)スパイクタンパク質をコードする遺伝子(配列番号1)およびORF3aをコードする遺伝子(配列番号2)を含むバイシストロニックベクター(pGLS-BC-nCoV-S-Orf3a_hCO)を設計し、これをプラスミドpGO-1002と命名した。前記プラスミドpGO-1002の切断地図を
図1aに示した。前記
図1aのプラスミドpGO-1002を用いて、細胞内で発現されたペプチドは、シグナルペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼなどの様々な切断部位を含んでいる。前記プラスミドpGO-1002によって発現されたペプチドは、
図1bに示すように翻訳後修飾(Post-translational modification)によって切断され、それにより細胞外分泌時にスパイクおよびORF3aタンパク質のみが分泌される。
【0080】
(ii)スパイクタンパク質をコードする遺伝子(配列番号3)およびヌクレオカプシドをコードする遺伝子(配列番号4)を含むバイシストロニックベクター(pGLS-BC-nCoV-S-N_hCO)を設計し、これをプラスミドpGO-1003と命名した。前記プラスミドpGO-1003は、細胞内で発現されたペプチドは、シグナルペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼなどの様々な切断部位を含んでいる。前記プラスミドpGO-1003によって発現されたペプチドは、翻訳後修飾(Post-translational modification)によって切断され、それにより細胞外分泌時にスパイクおよびヌクレオカプシドタンパク質のみが分泌される。
【0081】
また、後述する実験では、プラスミドpGLS101を陰性対照群として使用し、陽性対照群としては、スパイクとORF3aがそれぞれ一つずつ挿入されたプラスミドpGLS-スパイク(pGO-1001)およびpGLS-ORF3aを用いた。前記プラスミドpGLS101は、Invitrogen社のpVAX1プラスミド(カタログ番号V26020)に由来するものである。
【0082】
実施例2.in vitro抗原産生の確認
前記実施例1で調製したプラスミドpGO-1002がトランスフェクトした細胞において抗原であるスパイクおよびORF3aタンパク質を産生するかどうかを確認した。具体的には、前記HEK293T細胞株にプラスミドpGO-1002(pGLS-BC-nCoV-S-ORF3a_hCO)をトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後に細胞を溶解した。SDS-PAGEおよびウェスタンブロッティングにより、スパイクおよびORF3aタンパク質の産生が確認された。前記ウェスタンブロッティングに用いた抗体は、以下の通りである。
【0083】
<一次抗体>
-抗SARS-CoV-2スパイク抗体(カタログ番号3525,ProSci)、1:5,000
-抗ORF3a serum(Lab-made polyclonal Ab)、1:100
-抗β-アクチン(ab8226、Abcam)、1:1,000
【0084】
<二次抗体>
-抗ウサギIgG-HRP(カタログ番号G-21234、Thermo)、1:10,000
-抗マウスIgG-HRP(62-6520、Thermo)、1:5,000
【0085】
【0086】
図2aに示すように、プラスミドpGO-1002をトランスフェクトした細胞は、細胞内でスパイクおよびORF3aがそれぞれ正常に発現されることが確認された。
【0087】
免疫蛍光染色により、スパイクおよびORF3aタンパク質発現の有無が確認された。具体的には、HEK293T細胞株にプラスミドpGO-1002をトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後にトランスフェクトした細胞を免疫蛍光標識した。細胞核のDNAをDAPIで染色標識し、対照群として活用した(青色パネル)。染色結果を
図2bに示した。
【0088】
図2bに示すように、プラスミドpGO-1002をトランスフェクトした細胞は、細胞内でスパイク(TRITC)およびORF3a(FITC)がそれぞれ正常に発現されることが確認された。
【0089】
また、前記実施例1で作製されたスパイクおよびヌクレオカプシドをコードする遺伝子を含むバイシストロニックベクターpGO-1003を用いて前記と同様の方法で実験した。
【0090】
その結果、前記実施例1で作製されたスパイクおよびヌクレオカプシドをコードする遺伝子を含むバイシストロニックベクターでトランスフェクションされた細胞は、細胞内でスパイクおよびヌクレオカプシドがそれぞれ正常に発現されることが確認された。
【0091】
実施例3.抗原の毒性評価
前記実施例1にて調製したプラスミドpGO-1002の毒性を評価した。前記細胞評価は、プラスミドpGO-1002で免疫化したマウスにおける抗原発現によって誘導された体重変化を測定することによって毒性を評価した。前記免疫化したマウスは、電気穿孔法を用いてプラスミドpGO-1002を筋肉内接種し、2週間間隔で2回接種した。本実施例で使用したマウスは、プラスミドpGO-1002を一次接種し、15日後に二次接種したものである。陰性対照群は、プラスミドpGLS-101を接種し、陽性対照群は、プラスミドpGLS-ORF3aを接種した。抗原の毒性を評価した結果を
図3に示した。
【0092】
図3に示すように、プラスミドpGO-1002を接種した実験群(pGLS-スパイク-ORF3a)は、陰性および陽性対照群と同様の体重増加率を示した。前記の結果は、スパイク抗原およびORF3aが体内で毒性が低いことを意味する。
【0093】
また、前記実施例1で作製されたスパイクおよびヌクレオカプシドをコードする遺伝子を含むバイシストロニックベクターpGO-1003を用いて前記と同様の方法で実験した。
【0094】
その結果、実験群は、陰性および陽性対照群と同様の体重増加率を示した。これは、スパイク抗原およびヌクレオカプシドが体内で毒性が低いことを意味する。
【0095】
実施例4.抗体免疫応答による免疫原性の評価
抗体免疫応答による免疫原性評価は、ELISA(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay)試験法により行った。
【0096】
実験方法
ELISAプレートを組換え抗原が含まれた1×リン酸緩衝食塩水(phosphate buffered saline、PBS)1μg/mlでコーティングした後、4℃で一晩インキュベートした。コーティングされたプレートにブロッキングバッファー(seracare、カタログ番号5140-0011)を添加した後、37℃で2時間インキュベートした。インキュベーションした後、プレートを5%Tween 20を含む1×PBSで洗浄し、マウス血清を連続希釈(serial dilution)し、37℃で2時間インキュベートした。前記マウス血清は、マウスに電気穿孔接種法により前記実施例1で調製されたプラスミドpGO-1002を、筋肉内接種(2週間間隔で2回)した後に、電気穿孔法により送達したマウスから得たものである。インキュベーション後、プレートを1×PBSで洗浄し、スパイクまたはORF3aと結合する一次抗体を添加してインキュベートした後、1×PBSで洗浄した。プレートにHRP(forse eadish peroxidase)を結合したヤギ抗マウスIgG(H+L)二次抗体(invitrogen、カタログ番号31430)(1:2,500)を処理した後、室温で1時間インキュベートした。その後、1×PBSでプレートを洗浄し、プレートはABTSペルオキシダーゼ基質システム(KPL、カタログ番号5120-0032)を用いて、現像(deveoping)し、ABTS Peroxidase Stop Solution(KPL、カタログ番号5150-0017)を処理して反応を中断させた。プレートを405nmで30分以内に読み取った。前記プレートの読み取りには、Synergy HTX(BioTek Instruments、Highland Park、VT)を使用した。カットオフ値は、次のように計算した。
-カットオフ:各群の0日目;(each value-blank)Avg+(2.5×SD)
【0097】
正規化(normalization)は、プラスミドpGLS-スパイクおよびpGLS-ORF3aを接種したマウス血清で行った。
【0098】
対照群は、プラスミドpGLS-101(陰性対照群)、pGLS-スパイク(陽性対照群)を接種したマウスから採取した血清を用いた。
【0099】
スパイク抗原特異的結合抗体力価の測定
スパイク抗原特異的結合抗体価を測定するために、プラスミドを接種する前(D0)、2週間(Wk2)および4週間(Wk4)後にマウスの血清を採取した。前記採取した血清およびマウスのスパイクに結合する一次抗体を用いたELISAにより、スパイク抗原特異的結合抗体価を測定した。スパイク抗原特異的結合抗体価を測定した結果を
図4に示す。
【0100】
図4に示すように、プラスミドpGO-1002を接種した試験群(pGLS-スパイク-ORF3a)は、スパイク抗原特異的結合抗体価が陽性対照群(pGLS-スパイク)と同様のレベルであることが確認された。
【0101】
ORF3a抗原特異的結合抗体価の測定
ORF3a抗原特異的結合抗体価を測定するために、プラスミドを接種する前(D0)、2週間(Wk2)および4週間(Wk4)後にマウスの血清を採取した。この採取した血清およびマウスのORF3aに結合する一次抗体を用いたELISAによってORF3a抗原特異的結合抗体価を測定した。ORF3a抗原特異的結合抗体価を測定した結果を
図5に示した。
【0102】
図5に示すように、プラスミドpGO-1002を接種した試験群(pGLS-スパイク-ORF3a)は、ORF3a抗原特異的結合抗体価が陰性対照群(pGLS-101)より著しく高いことが確認された。
【0103】
前記の結果は、プラスミドpGO-1002によって発現されたスパイクおよびORF3aタンパク質がそれぞれ十分な免疫応答を誘導することを意味する。
【0104】
また、前記実施例1で作製されたスパイクおよびヌクレオカプシドをコードする遺伝子を含むバイシストロニックベクターを用いて前記と同様の方法で実験した。
【0105】
その結果、前記実施例1で作製されたスパイクおよびヌクレオカプシドをコードする遺伝子を含むバイシストロニックベクターによって発現されたタンパク質(すなわち、スパイクおよびヌクレオカプシド)はそれぞれ十分な免疫応答を誘導することを意味する。
【0106】
実施例5.T細胞免疫応答による免疫原性の評価
ウイルスを体内から除去するためには、強力な抗体応答と同時にT細胞免疫応答が必要である。本発明のスパイクおよびORF3aが抗体形成による免疫だけでなく、T細胞免疫応答を誘導するかどうかを確認するための実験を行った。T細胞免疫応答による免疫原性評価は、ELISpotアッセイ(enzymelinked immuno-spot assay)により行った。
【0107】
実験方法
電気穿孔接種法によりプラスミドpGO-1002をマウスに筋肉内接種し、接種は2週間間隔で2回行った。前記マウスを犠牲にし、脾臓を採取した。R10培地中のマウス由来の脾臓から単一脾臓細胞を個別に収集し、単細胞懸濁液(single cell suspension)を調製した。前記R10培地は、10%FBSおよびペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI1640培地を意味する。前記細胞懸濁液を遠心分離して細胞ペレットを得て、細胞ペレットをACK溶解緩衝液(Life Technologies、カタログ番号A1049201)5mlに再懸濁した後、8分間インキュベートした。培養後の反応を停止させるために、細胞が含まれたチューブにR10培地を加えた後、1400rpmで5分間遠心分離し、細胞ペレットを得た。前記細胞ペレットをR10培地に再懸濁し、細胞懸濁液を調製した。
【0108】
ELISpotアッセイは、マウスIFN-γELISpotPLUSプレート(MABTECH、カタログ番号33212H)を用いて行った。ブロッキング(blocking)のために、捕捉抗体(capture antibody)でコーティングされた96ウェルELISpotプレートにR10培地を加えた後、室温で1時間インキュベートした。マウス脾臓細胞(splenocyte)200,000個を、前記ブロックされたELISpotプレートの各ウェルにプレーティングした。プレーティングされた細胞は、オーバーラッピングペプチド(OLP;overlapping long peptide)プールを用いて、14時間脾臓細胞を刺激した。R10培地で1ウェル当たり1μg/mlの各ペプチドで細胞を刺激した。細胞刺激後に発現されたスポットは、メーカーのマニュアルに従って現像した。R10培地および1%DMSO混合物とConA(concanavaline A)をそれぞれ陰性および陽性対照群として用いた。スポットをImmunoSpot CTLリーダーでスキャンおよび定量した。細胞1,000,000個当たりのSFU(spot-forming unit)は、R10培地および1%のDMSO混合物を処理したウェルの値を除して計算した。カットオフ値(cutoff value)は、以下のように計算した:カットオフ=MEAN of Spot numbers in OLPs+(Standard deviation of spot numbers in OLPs×3)。カットオフ値のための試料は、ワクチンを接種しなかった脾臓細胞を使用した。
【0109】
前記OLPプールは、SARS CoV-2スパイクまたはORF3aタンパク質に由来するOLPプール;またはこれらの組み合わせ;である。
【0110】
対照群は、プラスミドpGLS-101(陰性対照群)、pGLS-スパイク(陽性対照群)を接種したマウスから採取した脾細胞を使用した。
【0111】
スパイクOLPに対するT細胞免疫応答の評価
ELISpot分析により、スパイクOLPで刺激した脾臓細胞のT細胞免疫応答を評価した。前記T細胞免疫応答の評価には、スパイクV16-V350に該当する65個のOLPプールであるS1_OLP1;スパイクY351-Q675に該当する65個のOLPプールであるS1_OLP2;スパイクI666-S975に該当する60個のOLPプールであるS2_OLP1;スパイクL966-T1273に該当する60個のOLPプールであるS2_OLP2;ORF3a M1-L275に該当する53個のOLPプールであるORF3_OLP1を使用した。前記OLPプールは、10個のアミノ酸が重複する15mer長のペプチドからなる。スパイクOLPに対するT細胞免疫応答を評価した結果を
図6に示す。
【0112】
図6に示すように、プラスミドpGO-1002を接種した試験群(pGLS-スパイク-ORF3a)は、陽性対照群(pGLS-スパイク)よりスパイクOLPに対するT細胞免疫応答を効果的に誘導することが確認された。
【0113】
ORF3aOLPに対するT細胞免疫応答の評価
ELISpot分析により、ORF3a OLPで刺激された脾細胞のT細胞免疫応答を評価し、その結果を
図7に示す。
【0114】
図7に示すように、プラスミドpGO-1002を接種した試験群(pGLS-スパイク-ORF3a)は、ORF3a OLPに対するT細胞免疫応答を効果的に誘導した。
【0115】
スパイクOLPおよびORF3aOLPの複合T細胞免疫応答の評価
ELISpot分析により、スパイクOLPおよびORF3aOLPで刺激された脾細胞のT細胞免疫応答を評価した。実験群は、マウスにプラスミドpGO-1002を筋肉内注射および電気穿孔法により投与した。対照群は、プラスミドpGLS101を筋肉内注射および電気穿孔法により投与した群である。スパイクOLPおよびORF3aOLPに対する複合T細胞免疫応答を評価した結果を
図8に示す。
【0116】
図8に示すように、プラスミドpGO-1002を接種した試験群(pGLS-スパイク-ORF3a)は、発現されたそれぞれのタンパク質スパイクおよびORF3aによってT細胞免疫応答が効果的に誘導されたことが確認された。
【0117】
また、前記実施例1で作製されたスパイクおよびヌクレオカプシドをコードする遺伝子を含むバイシストロニックベクターを用いて前記と同様の方法で実験した。
【0118】
その結果、前記実施例1で作製されたスパイクおよびヌクレオカプシドをコードする遺伝子を含むバイシストロニックベクターを接種した試験群は、陽性対照群に比べて顕著なT細胞免疫応答効果があることが確認された。
【0119】
実施例6.プラーク減少中和試験による中和抗体の評価
Live SARS-CoV-2を阻害する中和抗体を用いたPRNT
50試験により中和抗体価を評価した。具体的には、SARS-CoV-2/South Korea/2020分離中和アッセイは、疾患管理本部で行った。中和ウイルス力価は、56℃で30分間熱不活性化(heat-inactivated)した血清試料中で測定した。試験群血清は、マウスに筋肉内接種後、電気穿孔法により前記実施例1で調製したプラスミドpGO-1002を接種(2週間間隔で2回)したマウスから得たものであり、対照群血清は、プラスミドpGLS-101またはpGLS-スパイクを接種したマウスから得たものである。SARS-CoV-2(BetaCoV/Korea/KCDC03/2020)(60 pfu ml
-1)を10%のFBS、100 IU ml
-1ペニシリンおよび100μgml
-1ストレプトマイシンを含むDMEM培地(Invitrogen、Carlsbad、USA)と50:50:で混合し、96well U bottomed plateで1:4~1:2040まで連続血清希釈した。前記プレートを37℃のhumidified boxで1時間インキュベートした後、ウイルスをDMEM(Invitrogen、Carlsbad、USA)(10%のFBS、100 IU ml
-1ペニシリン、100μgml
-1ストレプトマイシンを含む)中の12ウェルプレート(ウェル当たり2.5×10
5 Vero細胞(ATCC、CCL-81)が播種されたもの)に接種した。ウイルスを37℃で1時間吸着し、プラークアッセイオーバーレイ培地(2×MEM/1.5%Agar/4%FBS最終)でオーバーレイした。その後、humidified boxで37℃で3日間インキュベートした。培養プレートを固定し、染色して、プラークを計数した。各ウェルの細胞変性効果(CPE)を顕微鏡で記録し、50%保護条件の希釈水で中和力価を計算した。実験結果を
図9および
図10に示した。
【0120】
図9および10に示すように、前記実施例1で調製したプラスミドpGO-1002を接種した試験群(pGLS-スパイク-ORF3a)は、pGLS-スパイク接種群と同様のレベルの優れた中和抗体免疫応答が確認された。
【0121】
また、前記実施例1で作製されたスパイクおよびヌクレオカプシドをコードする遺伝子を含むバイシストロニックベクターを用いて前記と同様の方法で実験した。
【0122】
その結果、前記実施例1で作製されたスパイクおよびヌクレオカプシドをコードする遺伝子を含むバイシストロニックベクターを接種した試験群は、中和抗体が高いことが確認された。
【0123】
実施例7.ACE受容体競合(ACE receptor competition)の評価
ウイルススパイク糖タンパク質(RBD)の受容体結合ドメインとACE2細胞表面受容体(GenScript cat#L00847)との間の相互作用を遮断するSARS-CoV-2に対する循環中和抗体を検出した。別々のチューブに希釈した対照群および試験群の血清を、1:1の体積比で希釈したHRP-RBD溶液と混合した。前記試験群血清は、マウスに電気穿孔接種法により前記実施例1で調製されたプラスミドpGO-1002を筋肉内接種(2週間間隔で2回)したマウスから得たものであり、対照群血清は、プラスミドpGLS-101またはpGLS-スパイクを接種したマウスから得たものである。混合物を37℃で30分間インキュベートした。対照群をそれぞれ100μlずつプレートの各ウェルに入れた後、プレートシーラーでプレートを覆い、37℃で15分間インキュベートした。プレートシーラーを除去した後、1×洗浄溶液260μlでプレートを4回洗浄した。洗浄後にウェルに残った液体を除去するために、紙タオルにプレートを叩いた。各ウェルにTMB溶液100μlを加え、20~25℃の条件である暗室で15分間インキュベートし、各ウェルに停止溶液50μlを加えて反応を終了させた。マイクロタイタープレートリーダーを用いて450nmで吸光度を測定した。カットオフ値は、確認されたCOVID-19患者の血清および健常対照群の血清に対するGenScriptパネルの検証に基づいて以下の式で計算した。
【0124】
Inhibition=(1-OD Value of sample/OD value of Negative Control)*100%
【0125】
カットオフ値の解釈を表1に示した。
【0126】
【0127】
ACE受容体の競合評価の結果を
図11に示した。
図11に示すように、前記実施例1で調製したプラスミドpGO-1002を接種した試験群(pGLS-スパイク-ORF3a)は、hACE2タンパク質との競合的結合能が著しく高いことが確認された。
【0128】
また、前記実施例1で作製されたスパイクおよびヌクレオカプシドをコードする遺伝子を含むバイシストロニックベクターを用いて前記と同様の方法で実験した。
【0129】
その結果、前記実施例1で作製されたスパイクおよびヌクレオカプシドをコードする遺伝子を含むバイシストロニックベクターを接種した試験群は、hACE2タンパク質との競争的結合能力が高いことが確認された。
【0130】
総合的に、本発明者らは、SARS-CoV-2に対するDNAワクチン、すなわち抗原タンパク質をコードする遺伝子であるスパイクおよびORF3a遺伝子を含むバイシストロニックベクター;およびスパイクおよびヌクレオカプシド遺伝子を含むバイシストロニックベクター;を調製した。前記バイシストロニックベクターは、生体内で発現および翻訳後修飾によって2つの抗原タンパク質を産生し、得られた抗原タンパク質は、顕著な免疫原性を示すことが確認された。より具体的には2つの抗原のそれぞれに対して明確な抗体免疫応答を誘導することができるだけでなく、強いT細胞免疫応答を誘導できることが確認された。したがって、本発明によるバイシストロニックベクターは、SARS-CoV-2ウイルス感染症の予防分野において多様に活用されてもよい。
【0131】
以下、製剤例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。製剤例は本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲が製剤例によって限定されるものと解釈されない。
【0132】
製剤例1.ワクチン組成物
プラスミドpGO-1002
クエン酸ナトリウム水和物(Sodium Citrate)
塩化ナトリウム(Sodium Chloride)
滅菌注射用水(sterile water for injection)
【0133】
以上、本開示内容の特定の部分を詳細に記載したので、当業界の通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は単なる好ましい実施形態に過ぎないものであり、これにより本発明の範囲が制限されるものではない点は明らかである。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の特許請求の範囲とそれらの等価物によって定義されると言える。
【配列表】
【国際調査報告】