(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(54)【発明の名称】液体リングポンプへの作動液の流量の制御
(51)【国際特許分類】
F04C 19/00 20060101AFI20231024BHJP
F04C 28/00 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
F04C19/00 A
F04C28/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023537446
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(85)【翻訳文提出日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 CN2020112045
(87)【国際公開番号】W WO2022041106
(87)【国際公開日】2022-03-03
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521176824
【氏名又は名称】エドワーズ テクノロジーズ バキューム エンジニアリング (チンタオ) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】デ ボック アンドリース ダニエル ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】リウ シーボ
(72)【発明者】
【氏名】ジアン クァンシ
(72)【発明者】
【氏名】ダイ シン
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA07
3H129AB01
3H129AB06
3H129BB42
3H129CC22
3H129CC24
3H129CC25
3H129CC53
3H129CC56
3H129CC61
(57)【要約】
吸引ライン(28)と、排出ライン(30)と、作動液ライン(32)と、吸引ライン、排出ライン、及び作動液ラインに接続された液体リングポンプ(10)と、液体リングポンプ(10)への作動液の流れを制御するように構成された調節装置と、吸引ライン(28)を介して液体リングポンプ(10)への入力流体の圧力を測定するように構成された圧力センサ(22)と、排出ライン(30)を介して液体リングポンプ(10)によって出力される排出流体の温度を測定するように構成された第1の温度センサ(24)と、作動液ライン(32)を介して液体リングポンプ(10)が受け取る作動液の温度を測定するように構成された第2の温度センサ(26)と、センサの測定値を用いて、1又は2以上の調節装置を制御するように構成されたコントローラ(20)、とを備える制御システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引ラインと、
排出ラインと、
作動液ラインと、
前記吸引ラインに接続された吸引入力と、前記排出ラインに接続された排出出力と、前記作動液ラインに接続された液体入力とを有する液体リングポンプと、
前記液体リングポンプへの作動液の流れを制御するように構成された1又は2以上の調節装置と、
前記吸引ラインを介して前記液体リングポンプが受け取る入力流体の圧力を測定するように構成された圧力センサと、
前記排出ラインを介して前記液体リングポンプが出力する排出流体出力の温度を測定するように構成された第1の温度センサと、
前記作動液ラインを介して前記液体リングポンプが受け取る作動液の温度を測定するように構成された第2の温度センサと、
コントローラと、
を備える制御システムであって、
前記コントローラは、
前記排出流体の温度測定値を使用して、前記液体リングポンプ内の前記作動液の蒸気圧を決定又は推定し、
第1の比較を実行し、前記第1の比較は、前記入力流体の前記測定された圧力の関数と、前記決定又は推定された蒸気圧の関数との間の比較であり、
前記第1の比較が1又は2以上の基準を満たすことに応答して、前記1又は2以上の調節装置を制御して、前記液体リングポンプへの前記作動液の流量を増加させ、
前記第1の比較が前記1又は2以上の基準を満たさないことに応答して、第2の比較を実行し、前記第2の比較は、前記排出流体の温度測定値の関数と、前記作動液の温度測定値の関数との間の比較であり、
前記第2の比較に基づいて、前記1又は2以上の調節装置を制御する、
ように構成されている、制御システム。
【請求項2】
前記作動液の前記蒸気圧は、
【数1】
で決定され、ここで
Aは、定数であり、
mは、定数であり、
T
nは、定数であり、
T
1は、前記排出流体の前記温度測定値である、請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記第1の比較は、前記入力流体の前記測定された圧力と、前記決定又は推定された前記蒸気圧の何らかの関数との間の差を決定することを含む、請求項1又は2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記1又は2以上の基準は、前記入力流体の前記測定された圧力と、前記決定又は推定された前記蒸気圧の何らかの関数との間の差が、第1の閾値以下であるという基準を含む、請求項3に記載の制御システム。
【請求項5】
前記第1の閾値はゼロである、請求項4に記載の制御システム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記1又は2以上の基準を満たす前記第1の比較に応答して、前記1又は2以上の調節装置を制御して、前記液体リングポンプへの前記作動液の前記流量を最大流量まで増加させるように構成されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項7】
前記第2の比較は、前記排出流体の前記温度測定値と前記作動液の前記温度測定値との間の差を決定することを含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記排出流体の前記温度測定値と前記作動液の前記温度測定値との間の差が第2の閾値より大きいことに応答して、前記1又は2以上の調節装置を制御して、前記液体リングポンプへの前記作動液の前記流量を増加させるように構成されている、請求項7に記載の制御システム。
【請求項9】
前記コントローラは、前記排出流体の前記温度測定値と前記作動液の前記温度測定値との間の差が第2の閾値以下であることに応答して、前記1又は2以上の調節装置を制御して、前記液体リングポンプへの前記作動液の前記流量を減少させるように構成されている、請求項7又は8に記載の制御システム。
【請求項10】
前記コントローラは、前記排出流体の前記温度測定値と前記作動液の前記温度測定値との間の差が第2の閾値に等しいことに応答して、前記1又は2以上の調節装置を制御して、前記液体リングポンプへの前記作動液の現在の流量を維持するように構成されている、請求項7から9のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項11】
前記第2の閾値は可変である、請求項8から10のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項12】
前記第2の閾値は、湿式プロセスでは第1の値と等しくなるように設定され、前記第2の閾値は、乾式プロセスでは第2の値と等しくなるように設定され、前記第1の値は前記第2の値とは異なる、請求項8から10のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項13】
前記コントローラは、比例コントローラ、積分コントローラ、微分コントローラ、比例-積分コントローラ、比例-積分-微分コントローラ、比例-微分コントローラ、及びファジー論理コントローラからなるコントローラの群から選択されるコントローラである、請求項1から12のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項14】
前記1又は2以上の調節装置は、ポンプ、遠心ポンプ、弁、比例弁からなる装置の群から選択される1又は2以上の装置を備える、請求項1から13のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項15】
システムを制御する方法であって、前記システムは、吸引ラインと、排出ラインと、作動液ラインと、前記吸引ラインに接続された吸引入力と、前記排出ラインに接続された排出出力と、前記作動液ラインに接続された液体入力とを有する液体リングポンプと、前記液体リングポンプへの作動液の流れを制御するように構成された1又は2以上の調節装置と、圧力センサと、第1の温度センサと、第2の温度センサとを備え、前記方法は、
前記圧力センサによって、前記吸引ラインを介して前記液体リングポンプが受け取る入力流体の圧力を測定するステップと、
前記排出流体の温度測定値を使用して、前記液体リングポンプ内の作動液の蒸気圧を決定又は推定するステップと、
第1の比較を実行するステップであって、前記第1の比較は、前記入力流体の前記測定された圧力の関数と、前記決定又は推定された蒸気圧の関数との間の比較である、ステップと、
前記第1の比較が1又は2以上の基準を満たすことに応答して、前記1又は2以上の調節装置を制御して、前記液体リングポンプへの前記作動液の流量を増加させるステップと、
前記第1の温度センサにより、前記排出ラインを介して前記液体リングポンプから出力される排出流体の温度を測定するステップと、
前記第2の温度センサにより、前記作動液ラインを介して前記液体リングポンプが受け取る前記作動液の温度を測定するステップと、
前記第1の比較が前記1又は2以上の基準を満たさないことに応答して、第2の比較を実行するステップであって、前記第2の比較は、前記排出流体の温度測定値の関数と、前記作動液の温度測定値の関数との間の比較である、ステップと、
前記第2の比較に基づいて前記1又は2以上の調節装置を制御するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体リングポンプへの水などの作動液の流量の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
液体リングポンプは、真空ポンプとして及びガス圧縮機として一般的に商業的に使用されている公知のタイプのポンプである。液体リングポンプは、通常、その中にチャンバを有するハウジング、チャンバの中に延びるシャフト、シャフトに取り付けられたインペラ、及びシャフトを駆動するためにシャフトに動作可能に結合されたモータなどの駆動システムを含む。インペラ及びシャフトは、液体リングポンプのチャンバ内に偏心的に配置される。
【0003】
作動時、チャンバは作動液(サービス液としても知られている)で部分的に満たされる。駆動システムがシャフト及びインペラを駆動する場合、チャンバの内壁上に液体リングが形成され、これは、隣接するインペラのベーンの間で個々の容積を分離するシールを提供する。インペラ及びシャフトは液体リングに対して偏心的に配置され、その結果、隣接するインペラのベーンの間及び液体リングに密封された容積が周期的に変化する。
【0004】
液体リングがシャフトからさらに離れたチャンバの部分では、隣接するインペラのベーンの間の容積が大きくなり、その結果、チャンバ内の圧力が小さくなる。これにより、液体リングがシャフトからさらに離れた部分は、ガス吸入ゾーンとして機能することができる。液体リングがシャフトに近い部分では、隣接するインペラのベーンの間の容積が小さくなり、その結果、その圧力は大きくなる。これにより、液体リングがシャフトに近い部分は、ガス排出ゾーンとして機能することができる。
【0005】
液体リングポンプの例は、単段液体リングポンプ及び多段液体リングポンプを含む。単段液体リングポンプは、単一のチャンバ及びインペラの使用を伴う。多段液体リングポンプ(例えば2段)は、直列に結合された複数のチャンバ及びインペラの使用を伴う。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
液体リング真空ポンプの吸引能力は、その液体リングポンプに使用される作動液の温度の調節に影響される場合がある。例えば、高真空では、作動液の温度を下げることにより、液体リングポンプの高い効率が達成される傾向にある。従来、作動液として水を使用する場合、一般的に、作動液の温度を下げることは、作動液回路を開放することによって達成され、ここでは、液体リングポンプからの加熱された作動液が排出され、低温で新鮮な作動液と交換される。従って、液体リングポンプは、かなりの量の真水を消費する可能性がある。
【0007】
本発明者らは、電力消費を最小限に抑える方法で液体リングポンプの作動液温度及び/又は圧力を制御することを可能にすることが望ましいことを認識している。このような制御は、有利には、液体リングポンプの運転コストを削減する傾向がある。
【0008】
本発明者らは、さらに、液体リング真空ポンプにおけるキャビテーションを防止又は抑制する方法で液体リングポンプを制御することを可能にすることが望ましいことを認識している。キャビテーションは、特定の液体リングポンプ、特に低圧/高真空条件で動作する液体リングポンプにおいて、摩耗及び故障の重大な原因となる傾向がある。このような制御は、有利には、キャビテーションによって引き起こされる摩耗を低減又は除去する傾向がある。
【0009】
第1の態様は、制御システムを提供し、制御システムは、吸引ラインと;排出ラインと;作動液ラインと;吸引ラインに接続された吸引入力と;排出ラインに接続された排出出力と;作動液ラインに接続された液体入力とを有する液体リングポンプと;液体リングポンプへの作動液の流れを制御するように構成された1又は2以上の調節装置と;吸引ラインを介して液体リングポンプが受け取る入力流体の圧力を測定するように構成された圧力センサと;排出ラインを介して液体リングポンプが出力する排出流体の温度を測定するように構成された第1の温度センサと;作動液ラインを介して液体リングポンプが受け取る作動液の温度を測定するように構成された第2の温度センサと;コントローラと;を備え、コントローラは、排出流体の温度測定値を使用して、液体リングポンプ内の作動液の蒸気圧を決定又は推定し;第1の比較を実行し、第1の比較は、入力流体の測定された圧力の関数と、決定又は推定された蒸気圧の関数との間の比較であり;第1の比較が1又は2以上の基準を満たすことに応答して、1又は2以上の調節装置を制御して、液体リングポンプへの作動液の流量を増加させ;第1の比較が1又は2以上の基準を満たさないことに応答して、第2の比較を実行し、第2の比較は、排出流体の温度測定値の関数と、作動液の温度測定値の関数との間の比較であり;第2の比較に基づいて、1又は2以上の調節装置を制御する;ように構成されている。この制御システムは、有利には、そうでなければポンプシステムの運転停止を引き起こす可能性のある可変かつ不確実な負荷条件を知的に処理することを可能にする傾向があり、同時に、改善された水及びエネルギーの節約を達成する。
【0010】
作動液の蒸気圧は、
【数1】
で決定され、ここで、Aは、定数であり、mは、定数であり、T
nは、定数であり、T
1は、排出流体の温度測定値である。
【0011】
第1の比較は、入力流体の測定された圧力と、決定又は推定された蒸気圧の何らかの関数との間の差を決定することを含むことができる。1又は2以上の基準は、入力流体の測定された圧力と、決定又は推定された蒸気圧の何らかの関数との間の差が、第1の閾値以下であるという基準を含むことができる。第1の閾値はゼロとすることができる。
【0012】
コントローラは、1又は2以上の基準を満たす第1の比較に応答して、1又は2以上の調節装置を制御して、液体リングポンプへの作動液の流量を最大流量まで増加させるように構成することができる。
【0013】
第2の比較は、排出流体の温度測定値と作動液の温度測定値との間の差を決定することを含むことができる。コントローラは、排出流体の温度測定値と作動液の温度測定値との間の差が第2の閾値より大きいことに応答して、1又は2以上の調節装置を制御して、液体リングポンプへの作動液の流量を増加させるように構成することができる。コントローラは、排出流体の温度測定値と作動液の温度測定値との間の差が第2の閾値以下であることに応答して、1又は2以上の調節装置を制御して、液体リングポンプへの作動液の流量を減少させるように構成することができる。コントローラは、排出流体の温度測定値と作動液の温度測定値との間の差が第2の閾値に等しいことに応答して、1又は2以上の調節装置を制御して、液体リングポンプへの作動液の現在の流量を維持するように構成することができる。第2の閾値は可変とすることができ、例えばユーザが選択できる。第2の閾値は、湿式プロセス(すなわち、湿式ポンピングプロセス)では第1の値と等しくなるように設定することができる。第2の閾値は、乾式プロセス(すなわち、乾式ポンピングプロセス)では第2の値と等しくなるように設定することができる。第1の値は第2の値とは異なる場合がある。
【0014】
コントローラは、比例コントローラ、積分コントローラ、微分コントローラ、比例-積分コントローラ、比例-積分-微分コントローラ、比例-微分コントローラ、及びファジー論理コントローラからなるコントローラの群から選択されるコントローラとすることができる。
【0015】
1又は2以上の調節装置は、ポンプ、遠心ポンプ、弁、比例弁からなる装置の群から選択される1又は2以上の装置を備えることができる。
【0016】
別の態様では、システムを制御する方法が提供され、システムは、吸引ラインと、排出ラインと、作動液ラインと、吸引ラインに接続された吸引入力と、排出ラインに接続された排出出力と、作動液ラインに接続された液体入力とを有する液体リングポンプと、液体リングポンプへの作動液の流れを制御するように構成された1又は2以上の調節装置と、圧力センサと、第1の温度センサと、第2の温度センサとを備える。本方法は、圧力センサによって、吸引ラインを介して液体リングポンプが受け取る入力流体の圧力を測定するステップと、排出流体の温度測定値を使用して、液体リングポンプ内の作動液の蒸気圧を決定又は推定するステップと、第1の比較を実行するステップであって、第1の比較は、入力流体の測定された圧力の関数と、決定又は推定された蒸気圧の関数との間の比較である、ステップと、第1の比較が1又は2以上の基準を満たすことに応答して、1又は2以上の調節装置を制御して、液体リングポンプへの作動液の流量を増加させるステップと、第1の温度センサにより、排出ラインを介して液体リングポンプから出力される排出流体の温度を測定するステップと、第2の温度センサにより、作動液ラインを介して液体リングポンプが受け取る作動液の温度を測定するステップと、第1の比較が1又は2以上の基準を満たさないことに応答して、第2の比較を実行するステップであって、第2の比較は、排出流体の温度測定値の関数と、作動液の温度測定値の関数との間の比較である、ステップと、第2の比較に基づいて1又は2以上の調節装置を制御するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】真空システムを示す概略図である(縮尺通りではない)。
【
図2】液体リングポンプを示す概略図である(縮尺通りではない)。
【
図3】真空システムによって実施される制御プロセスの特定のステップを示すプロセスフローチャートである。
【
図4】
図3の制御プロセス中に実行される特定のステップを示すプロセスフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、真空システム2を示す概略図である(縮尺通りではない)。真空システム2は、設備4に結合され、真空システム2は、動作時、設備4からガス(例えば、空気)を引き出すことによって設備4において真空又は低圧環境を達成するようになっている。
【0019】
本実施形態では、真空システム2は、逆止弁6、液体リングポンプ10、モータ12、分離器14、ポンプシステム16、コントローラ20、圧力センサ22、第1の温度センサ24、及び第2の温度センサ26を備える。
【0020】
設備4は、吸引ライン又は真空ライン又はパイプ28を介して液体リングポンプ10の入口に接続される。
【0021】
逆止弁6は、吸引ライン28上に配置される。逆止弁6は、設備4と液体リングポンプ10との間に配置される。
【0022】
逆止弁6は、設備4から液体リングポンプ10への流体(例えば空気等のガス)の流れを許容し、逆方向、すなわち液体リングポンプ10から設備4への流体の流れを阻止又は妨害するように構成されている。
【0023】
本実施形態では、液体リングポンプ10は、単段液体リングポンプである。
【0024】
液体リングポンプ10のガス入口は、吸引ライン28に接続される。液体リングポンプ10のガス出口は、排出ライン又はパイプ30に接続される。液体リングポンプ10は、第1の作動液パイプ32を介してポンプシステム16に接続される。液体リングポンプ10は、第1の作動液パイプ32を介してポンプシステム16から作動液を受け取るように構成されている。液体リングポンプ10は、モータ12によって駆動される。
【0025】
図2は、例示的な液体リングポンプ10の断面を示す概略図である(縮尺通りではない)。真空システム2の残りの部分については、
図2に示される液体リングポンプ10の説明の後に、以下でより詳細に説明される。
【0026】
図2に示される液体リングポンプ10は、実質的に円筒形のチャンバ102を画定するハウジング100と、チャンバ102内に延びるシャフト104と、シャフト104に固定的に取り付けられたインペラ106とを備える。液体リングポンプ10のガス入口108(吸引ライン28に接続されている)は、チャンバ102のガス吸入口に流体的に接続されている。液体リングポンプ10のガス出口(
図2には示されていない)は、チャンバ102のガス出力に流体的に接続されている。
【0027】
液体リングポンプ10の動作時、作動液は、第1の作動液パイプ32を介してチャンバ102内に入る。また、シャフト104はモータ12によって回転され、それによってチャンバ102内でインペラ106が回転する。インペラ106が回転すると、チャンバ102内の作動液(図示せず)は、チャンバ102の壁に押し付けられ、それによって隣接するインペラベーン間の個々の容積を密封して隔離する液体リングを形成する。また、ガス(空気など)は、ガス入口108及びチャンバ102のガス吸入口を介して吸引ライン28からチャンバ102内に引き込まれる。このガスは、インペラ106の隣接するベーン間に形成された容積に流入する。インペラ106の回転により容積が小さくなる。インペラ106の回転は、チャンバ102のガス吸入口からチャンバ102のガス出力に移動する際に容積内に含まれるガスを圧縮し、圧縮されたガスはチャンバ102から出る。チャンバ102から出る圧縮ガスは、その後、ガス出口及び排出ライン30を介して液体リングポンプから出る。
【0028】
ここで
図1の説明に戻ると、排出ライン30は、液体リングポンプ10のガス出口と分離器14の入口との間に接続される。分離器14は、排出ライン30を介して液体リングポンプ10に接続され、排出流体(すなわち、水滴及び/又は蒸気を含むことができる圧縮ガス)は、分離器14に入るようになっている。
【0029】
分離器14は、液体リングポンプ10から受け取った排出流体をガス(例えば、空気)と作動液とに分離するように構成されている。
【0030】
受け取った排出流体から分離されたガスは、システム出口パイプ34を介して分離器14及び真空システム2から排出される。
【0031】
分離器14は、受け取った排出流体から分離された作動液が、ドレン又は排出パイプ36を介して分離器14及び真空システム2から出る作動液出口を備える。
【0032】
本実施形態では、ポンプシステム16は、ポンプ(例えば遠心ポンプ)と、そのポンプを駆動するように構成されたモータとを備える。ポンプシステム16は、作動液供給源38から第2の作動液パイプ40を介して作動液をポンプ送給し、その作動液を第1の作動液パイプ32を介して液体リングポンプにポンプ送給するように構成されている。
【0033】
作動液供給源38は、作動液の何らかの適切な供給源とすることができる。例えば、作動液が水である実施形態では、作動液供給源38は、主給水設備、川、湖、貯水タンク等とすることができる。
【0034】
コントローラ20は、1又は2以上のプロセッサを含むことができる。本実施形態では、コントローラ20は、可変周波数ドライブ(VFD)42を備える。VFD42は、ポンプシステム16のモータの回転数を制御するように構成されている。
図3及び4を参照して以下により詳細に説明するように、コントローラ20は、センサ22-26からセンサ測定値を受け取るように構成されている。コントローラ20は、さらに、これらのセンサ測定値の一部又は全部を処理し、このセンサデータ処理に基づいて、VFD42を用いて、ポンプシステム16の動作を制御するように構成されている。
【0035】
コントローラ20は、そのVFD42及び第1の接続44を介してポンプシステム16に接続され、ポンプシステム16を制御するための制御信号は、コントローラ20からポンプシステム16のモータに送ることができるようになっている。第1の接続44は、限定されるものではないが、電線又は光ファイバー、又は無線接続を含む、何らかの適切なタイプの接続とすることができる。ポンプシステム16は、コントローラ20から受け取った制御信号に従って動作するように構成されている。コントローラ20によるポンプシステム16の制御は、
図3及び4を参照して、以下でより詳細に説明される。
【0036】
圧力センサ22は、設備4と逆止弁6との間の吸引ライン28に接続される。圧力センサ22は、吸引ライン28内を流れるガスの圧力、すなわち液体リングポンプ10の作用によって設備4から送り出されるガスの圧力を測定するように構成されている。圧力センサ22は、何らかの適切なタイプの圧力センサとすることができる。圧力センサ22は、第2の接続46を介してコントローラ20に接続され、圧力センサ22が取得した測定値は、圧力センサ22からコントローラ20に送られるようになっている。第2の接続46は、限定されるものではないが、電線又は光ファイバー、又は無線接続を含む、何らかの適切なタイプの接続とすることができる。
【0037】
第1の温度センサ24は、液体リングポンプ10と分離器14との間の排出ライン30に接続される。第1の温度センサ24は、排出ライン30を流れる液体リングポンプ10の排出流体の温度、すなわち液体リングポンプ10によって分離器14にポンプ送給される空気と水の混合物の温度を測定するように構成されている。第1の温度センサ24は、何らかの適切なタイプの温度センサとすることができる。第1の温度センサ24は、第3の接続48を介してコントローラ20に接続されており、第1の温度センサ24が取得した測定値は、第1の温度センサ24からコントローラ20に送られるようになっている。第3の接続48は、限定されるものではないが、電線又は光ファイバー、又は無線接続を含む、何らかの適切なタイプの接続とすることができる。
【0038】
第2の温度センサ26は、熱交換器18と液体リングポンプ10との間の第1の作動液パイプ32に接続される。第2の温度センサ26は、第1の作動液パイプ32を介して液体リングポンプ10に流入する(すなわち、ポンプシステム16によってポンプ送給される)作動液の温度を測定するように構成されている。第2の温度センサ26は、何らかの適切なタイプの温度センサとすることができる。第2の温度センサ26は、第4の接続50を介してコントローラ20に接続されており、第2の温度センサ26が取得した測定値は、第2の温度センサ26からコントローラ20に送られるようになっている。第4の接続50は、限定されるものではないが、電線又は光ファイバー、又は無線接続を含む、何らかの適切なタイプの接続とすることができる。
【0039】
このようにして、真空システム2の一実施形態が提供される。
【0040】
上記の装置を実装して以下の方法ステップを実行するためのコントローラ20を含む装置は、何らかの適切な装置、例えば1又は2以上のコンピュータ又は他の処理装置又はプロセッサを構成する又は適合させることによって、及び/又は追加のモジュールを提供することによってもたらすことができる。装置は、コンピュータメモリ、コンピュータディスク、ROM、PROMなど、又はこれらの何らかの組み合わせ又は他の記憶媒体などの機械可読記憶媒体の中に又はその上に格納された1又は複数のコンピュータプログラムの形態の命令及びデータを含む、命令を実装してデータを使用するための、コンピュータ、コンピュータのネットワーク、又は1又は2以上のプロセッサを備えることができる。
【0041】
真空システム2によって実行可能な制御プロセスの実施形態は、
図3及び4を参照して説明されることになる。
図3及び4のフローチャートに示され、以下に説明される処理ステップの一部は、省略することができ、又はそのような処理ステップは、以下に提示され、
図3及び4に示されるものとは異なる順序で実行することができることに留意されたい。さらに、全ての処理ステップは、便宜上理解を容易にするために、離散的な時間的に連続するステップとして示されるが、処理ステップの一部は、実際には同時に又は時間的にある程度重複して実行することができる。
【0042】
図3及び4を参照して説明されるプロセスは、有利には、水及びエネルギーの節約を達成しながら、可変及び不確実な負荷状態の知的処理を可能にする傾向があり、これは、そうでなければシステムの運転停止を引き起こす可能性がある。
【0043】
図3は、動作時に真空システム2によって実施される制御プロセスの一実施形態の特定のステップを示すプロセスフローチャートである。
図3のプロセスは、「アンチキャビテーション制御」プロセスと見なすことができる。
【0044】
ステップs2において、第1の温度センサ24は、第1の温度T1を測定する。第1の温度T1は、排出ライン30を流れる液体リングポンプ10の排出流体の温度、すなわち液体リングポンプ10によって分離器14にポンプ送給される空気と水の混合物の温度である。第1の温度T1の測定値は、第3の接続48を介して第1の温度センサ24によってコントローラ20に送られる。
【0045】
ステップs4において、コントローラ20は、測定された第1の温度T
1を用いて、液体リングポンプ10内の作動液の蒸気圧を決定又は推定する。本実施形態では、作動液は水であり、結果として、コントローラは、第1の温度T
1に対する水の蒸気圧を決定する。これは以下「水蒸気圧P
wv」と呼ぶ。本実施形態では、水蒸気圧P
wvは、近似式、詳細にはアントワン式を用いて決定される。水蒸気圧P
wvは、以下のように決定される。
【数2】
ここで、Aは定数であり、例えば、Aは約6.1と6.2との間とすることができ、例えば、A=6.116441である。mは定数であり、例えば、mは約7.5と7.6との間、例えば、m=7.591306とすることができる。T
nは、一定の温度値(ケルビン単位)であり、例えば、T
nは約240と241ケルビンとの間とすることができ、例えば、T
n=240.7263Kである。T
1は、測定された第1の温度である。
【0046】
いくつかの実施形態では、パラメータA、m、及びTnの1又は2以上は、液体リングポンプで使用される液体に関して定義される、及び/又は上記で与えられたものと異なる値を有することができる。
【0047】
ステップs6において、コントローラ20は、決定された水蒸気圧Pwvにいわゆるオフセット値を加算し、それによって、更新された圧力値を決定する。従って、本実施形態では、更新された圧力値Pは、以下のように決定される。
P=Pwv+Poffset
ここで、Poffsetはオフセット値である。
【0048】
オフセット値Poffsetは、安全マージンと考えることができる。オフセット値Poffsetは、限定されるものではないが、1mbarと10mbarとの間の値、例えば、1mbar、2mbar、3mbar、4mbar、5mbar、6mbar、7mbar、8mbar、9mbar、又は10mbarの何らかの適切な圧力値とすることができる。いくつかの実施形態では、オフセット値の使用は省略される。
【0049】
ステップs8において、圧力センサ22は、第1の圧力P1を測定し、第1の圧力P1は、吸引ライン28を流れるガスの圧力、すなわち液体リングポンプ10の作用によって設備4から送り出されるガスの圧力P1である。第1の圧力P1の測定値は、圧力センサ22によって、第2の接続46を介してコントローラ20に送られる。
【0050】
ステップs10において、コントローラ20は、測定された第1の圧力P1と決定された更新圧力値Pとを比較する。詳細には、本実施形態において、コントローラ20は、測定された第1の圧力P1と決定された更新圧力値Pとの間の差としてエラー値を決定する。従って、エラー値ΔPは、以下のように計算することができる。
ΔP=P1-P
【0051】
ステップs12において、コントローラ20は、決定されたエラー値ΔPを第1の閾値と比較する。第1の閾値は、例えば、ゼロ(0)とすることができる。
【0052】
ステップs12において、コントローラが、エラー値ΔPが第1の閾値以下であると決定した場合、すなわち、ΔP≦0の場合、方法はs14に進む。
【0053】
しかしながら、ステップs12において、コントローラが、エラー値ΔPが第1の閾値より大きいと判断した場合、方法はs18に進む。ステップs18は、以下でより詳細に説明される。
【0054】
ステップs14において、エラー値ΔPが第1の閾値以下であるとの決定に応答して、コントローラ20は、エラー値ΔPが増加するように制御変数v(t)を調節する。
【0055】
本実施形態において、制御変数v(t)は、ポンプシステム16のモータの動作速度である。制御装置20は、ポンプシステム16のモータの動作速度の増加を引き起こすような方法で制御変数v(t)を調節又は変化させることにより、エラー値ΔPの増加を引き起こすことができる。
【0056】
ポンプシステム16のモータの動作速度の増加は、ポンプシステム16がより多くの作動液を液体リングポンプ10に送り込むようにする傾向がある。これは、液体リングポンプ10内の圧力を増加させ、従って、第1の圧力P1を増加させることができる。
【0057】
ポンプシステム16のモータの動作速度のこの増加は、ポンプシステム16がより多くの比較的低温の作動液を液体リングポンプ10内に(所与の時間内に)ポンプ送給させる傾向があり、これは液体リングポンプ10内の作動液の温度の減少(及びT1の減少も)をもたらす傾向がある。これは、液体リングポンプ10内の作動液の蒸発圧を低下させる傾向がある。
【0058】
従って、コントローラ20は、エラー値ΔPの増加を引き起こすように、ポンプシステム16のモータの動作速度を調節することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、ステップs14において、エラー値ΔPが第1の閾値以下であるとの決定に応答して、コントローラ20は、ポンプシステム16のモータの動作速度をその最大速度まで増加させるように、制御変数v(t)を調節する。
【0060】
本実施形態では、コントローラ20は、比例積分(PI)コントローラである。従って、コントローラ20は、比例項及び積分項、例えばエラー値ΔPに基づいて、制御変数v(t)に補正/調節を適用することができる。制御変数v(t)の調節された値は、制御項(すなわち、コントローラ20によって決定される比例パラメータ及び積分パラメータの)の加重和として決定することができる。
【0061】
ステップs16において、コントローラ20は、調節された制御変数v(t)を用いてポンプシステム16のモータを制御する。
【0062】
詳細には、コントローラ20は、ステップs14で決定された調節された制御変数v(t)に基づいて、ポンプシステム16のモータのための制御信号を生成する。この制御信号は、その後、コントローラ20から第1の接続44を介してポンプシステム16のモータに送られる。ポンプシステム16のモータは、受け取った制御信号に従って動作する。詳細には、本実施形態では、ポンプシステム16のモータの速度は、液体リングポンプ10への作動液の流量の増加をもたらすように増加される。これは、エラー値ΔPの増加を引き起こす傾向がある。
【0063】
エラー値ΔPの増加は、第1の圧力P1と水蒸気圧Pwvとの差が増大することを意味する。液体リングポンプ10内の圧送ガスの圧力は、水蒸気圧Pwvから離れる。これは、有利には、入口ガスが液体リングポンプ10内でキャビテーションを引き起こす可能性を低減する傾向がある。
【0064】
ステップs16の後、
図3のプロセスは、例えば、真空システム2が運転停止するまで繰り返される。
図3のプロセスは、連続的に実行することができ、より好ましくは、真空システム2の動作中に連続的に実行される。
【0065】
ここで、ステップs12において、コントローラ20が、エラー値ΔPが第1の閾値よりも大きいと判定した場合に戻ると、方法はs18に進む。
【0066】
ステップs18では、
図4の制御プロセスが実行される。
【0067】
図4は、
図3のプロセスのステップs18において真空システム2によって実施される制御プロセスの特定のステップを示すプロセスフローチャートである。
【0068】
ステップs20において、第1の温度センサ24は、第1の温度T1を測定する。第1の温度T1は、排出ライン30を流れる液体リングポンプ10の排出流体の温度、すなわち液体リングポンプ10によって分離器14にポンプ送給される空気と水の混合物の温度である。第1の温度T1の測定値は、第3の接続48を介して第1の温度センサ24によってコントローラ20に送られる。
【0069】
ステップs22において、第2の温度センサ26は、第2の温度T2を測定する。第2の温度T2は、第1の作動液パイプ32を介して液体リングポンプ10が受け取る作動液の温度である。第2の温度T2の測定値は、第4の接続50を介して第2の温度センサ26によってコントローラ20に送られる。
【0070】
ステップs24において、コントローラ20は、測定された第1の温度T1と測定された第2の温度T2との間の差として温度差を決定する。従って、本実施形態では、温度差ΔTは、以下のように計算される。
ΔT=T1-T2
【0071】
ステップs26において、コントローラ20は、制御変数v2(t)の調節によって温度差ΔTを低減又は最小化するように動作する。
【0072】
いくつかの実施形態では、コントローラ20は、温度差ΔTを第2の閾値と等しくなるようにしようとする、又は温度差ΔTが第1の閾値範囲内(例えば、第1の閾値 +/- 一定値)となるようにしようとする。第2の閾値は、例えば1℃、1.5℃、2℃、2.5℃、又は3℃のような何らかの適切な値とすることができる。第2の閾値は、例えば、高い又は最適な液体リングポンプ効率に関連する閾値を決定するために、試験によって決定することができる。第2の閾値は、液体リングポンプ10のサイズ又は出力に依存する場合がある。
【0073】
いくつかの実施形態では、第2の閾値は、例えば、システム2のユーザが変えることができる変数である。例えば、第2の閾値は、ポンプ送給される流体、システムの所望の動作などに応じて、ユーザが設定することができる。第2の閾値は、湿式プロセスのための第1の値と等しくなるように設定することができる。第2の閾値は、乾式プロセスのための第2の値(第1の値とは異なる)に等しくなるように設定される。
【0074】
用語「湿式プロセス」は、液体リングポンプシステムによってポンプ送給されるプロセスガスがかなりの量の蒸気を含む(例えば、プロセスガス中の蒸気の百分率が蒸気の閾値百分率組成を超える)プロセス、例えば、ポンピングプロセスを指すために使用することができる。湿式プロセスでは、プロセスガスは若干の液体を含む場合がある。湿式プロセスでは、通常、プロセスガスの温度は高く、例えば閾値温度を超える。湿式プロセスの例としては、限定されるものではないが、発電所のポンピングプロセス、タービンからの蒸気のポンピング、及びタイヤの加硫プロセスを挙げることができる。
【0075】
用語「乾式プロセス」は、液体リングポンプシステムによってポンプ送給されるプロセスガスが有意な量の蒸気を含まない(例えば、プロセスガス中の蒸気の百分率が蒸気の閾値百分率組成を下回る)プロセス、例えばポンピングプロセスを指すために使用することができる。乾式プロセスでは、プロセスガスは液体を含まない。乾式プロセスでは、プロセスガスの温度は、乾式プロセスよりも低くなる傾向があり、例えば、閾値温度を下回る。乾式プロセスの例としては、限定されるものではないが、洗浄又は保持のための設備への真空の供給(例えば、空気をポンピングすることによる)を挙げることができる。
【0076】
本実施形態では、コントローラ20は、比例積分(PI)コントローラである。従って、コントローラ20は、温度差ΔTの比例項及び積分項に基づいて、制御変数v(t)に補正/調節を適用する。制御変数v(t)の調節された値は、制御項(すなわち、コントローラ20が決定した比例パラメータ及び積分パラメータの)の加重和として決定することができる。
【0077】
本実施形態では、温度差ΔTが高すぎる場合、例えばΔTが上述の第2の閾値などの閾値を超える場合、コントローラ20は制御変数v(t)を増加させる。上述のように、制御変数v(t)を増加させることは、ポンプシステム16を増速することに相当する。
【0078】
同様に、温度差ΔTが低すぎる場合、例えばΔTが上述の第2の閾値のような閾値を下回る場合、コントローラ20は、制御変数v(t)を減少させる。制御変数v(t)を減少させることは、ポンプシステム16を減速することに相当する。
【0079】
本実施形態では、温度差ΔTが第2の閾値と等しい場合、コントローラ20は、制御変数v(t)を維持する。これは、ポンプシステム16のモータの現在の回転数を維持することに相当する。
【0080】
ステップs28において、コントローラ20は、調節された制御変数v(t)を使用してポンプシステム16を制御する(VFDを使用して)。
【0081】
詳細には、コントローラ20は、ステップs8で決定された調節された制御変数v(t)に基づいて、モータポンプシステム16のための制御信号を生成する。この制御信号は、その後、コントローラ20から第2の接続44を介してポンプシステム16に送られる。ポンプシステム16は、受け取った制御信号に従って動作する。
【0082】
従って、温度差ΔTが大きすぎる場合、ポンプシステム16は、増加した制御変数v(t)に従って増速される。従って、液体リングポンプ10に流入する比較的低温の作動液の流量が増加する。これにより、第1の温度センサ24によって測定される第1の温度T1は低下する傾向にあり、それによって温度差ΔTが減少する。
【0083】
同様に、温度差ΔTが小さすぎる場合、ポンプシステム16は、減少した制御変数v(t)に従って減速される。従って、液体リングポンプ10に流入する比較的低温の作動液の流量が減少する。これにより、第1の温度センサ24によって測定される第1の温度T1の増加が引き起こされる傾向があり、それによって温度差ΔTが増加する。
【0084】
ステップs28の後、
図4のプロセスは、例えば、真空システム2が運転停止するまで繰り返される。
図4のプロセスは、連続的に実行することができ、より好ましくは、真空システム2の動作中に連続的に実行される。
【0085】
このようにして、真空システム2によって実行される制御プロセスの一実施形態が提供される。制御プロセスは、ポンプシステム16の連続的に調節される制御が実行される制御ループフィードバック機構を含む。
【0086】
有利には、上述したシステム及び第1の制御プロセスは、液体リングポンプにおける作動液温度の制御を可能にする。
【0087】
上述したシステム及び制御プロセスは、有利には、液体リングポンプの性能及び効率の向上を可能にする傾向がある。
【0088】
上述したシステム及び制御プロセスは、有利には、液体リングポンプに作動液がオーバーローディング(overloading)される可能性を低減する傾向がある。さらに、液圧衝撃(「ウォーターハンマー」とも呼ばれる)の可能性及び/又は深刻さが低減される傾向がある。これは、液体リングポンプの損傷を低減する傾向がある。有利には、上述したシステム及び第1の制御プロセスは、作動液の消費量を低減又は最小化する傾向がある。上述のシステム及び第1の制御プロセスにおいて、作動液はリサイクルされる傾向がある。これは、液体リングポンプの運転コストを低減する傾向がある。
【0089】
上述したシステム及び制御プロセスは、有利には、液体リングポンプで発生するキャビテーションの可能性及び/又は深刻さを低減する傾向がある。
【0090】
有利には、上述のシステムの熱負荷が低い場合、ポンプシステムは減速する傾向がある。従って、エネルギー消費が低減される傾向がある。
【0091】
有利には、上述のシステム及び制御プロセスは、液体リングポンプ内の流体温度及び圧力の制御を可能にする傾向がある。
【0092】
上述したシステム及び制御プロセスは、有利には、液体リングポンプの信頼性の向上をもたらす傾向がある。
【0093】
上述したシステム及び制御プロセスは、有利には、液体リングポンプ内で発生するキャビテーションの可能性及び/又は深刻さを低減する傾向がある。例えば、キャビテーションは、入口圧力(すなわち、吸引ラインからのガスの圧力)が液体リングポンプ内の作動液の蒸気圧以下であることによって液体リングポンプ内で生じる可能性がある。上述した制御プロセスは、有利には、液体リングポンプ内の圧力を調節して作動液の蒸気圧から離す傾向があり、それによってキャビテーションの可能性が減少する。従って、キャビテーションに起因する液体リングポンプの損傷は、低減又は排除される傾向にある。
【0094】
上記の実施形態では、真空システムは、
図1を参照して上述した要素を備える。詳細には、真空システムは、逆止弁、液体リングポンプ、モータ、分離器、ポンプシステム、コントローラ、圧力センサ、第1及び第2の温度センサ、及びそれらの間の接続手段を備える。しかしながら、他の実施形態では、真空システムは、上述した要素の代わりに、又はそれに加えて、他の要素を備える。また、他の実施形態では、真空システムの要素の一部又は全部は、上述したものとは異なる適切な方法で一緒に接続することができる。いくつかの実施形態では、複数の液体リングポンプを実装することができる。
【0095】
いくつかの実施形態では、液体リングポンプに入る作動液を加熱及び/又は冷却するために、加熱手段及び/又は冷却手段を配置することができる。例えば、加熱手段及び/又は冷却手段は、第1の動作液パイプ32に結合され、その中の作動液を加熱/冷却するように構成することができる。
【0096】
上記の実施形態では、分離器は、分離された作動液と分離されたガスとをそれぞれの出口パイプを介してシステムから排出する。しかしながら、他の実施形態では、分離された作動液及び/又は分離されたガスは、システムから排出されない。例えば、いくつかの実施形態では、作動液は、分離器から液体リングポンプにリサイクルされて戻される。作動液のリサイクルは、有利には、運転コスト及び水の使用量を低減する傾向がある。いくつかの実施形態では、分離器は省略することができる。
【0097】
上記の実施形態では、液体リングポンプは、単段液体リングポンプである。しかしながら、他の実施形態では、液体リングポンプは、異なるタイプの液体リングポンプ、例えば、多段液体リングポンプである。
【0098】
上記の実施形態では、作動液は水である。しかしながら、他の実施形態では、作動液は、異なるタイプの作動液である。
【0099】
上記の実施形態では、コントローラは、PIコントローラである。しかしながら、他の実施形態では、コントローラは、比例(P)コントローラ、積分(I)コントローラ、微分(D)コントローラ、比例-微分(PD)コントローラ、比例-積分-微分(PID)コントローラ、又はファジー論理コントローラなどの別のタイプのコントローラである。
【0100】
上記の実施形態では、単一のコントローラが、複数のシステム要素(例えば、モータ)の動作を制御する。しかしながら、他の実施形態では、複数のコントローラを使用することができ、各々は、要素グループのそれぞれのサブセットを制御する。例えば、いくつかの実施形態では、各モータは、それぞれの専用コントローラを有することができる。
【0101】
上記の実施形態では、温度差は、ΔT=T1-T2で決定される。しかしながら、他の実施形態では、温度差は、異なる方法で、例えば異なる適切な式を用いて決定される。例えば、温度差は、第1の温度T1及び/又は第2の温度T2の異なる関数とすることができる。例えば、測定された温度T1及びT2に加重値を適用することができる。
【0102】
上記の実施形態では、アントワン式を使用して、水蒸気圧P
wvを以下のように推定する。
【数3】
しかしながら、他の実施形態では、水蒸気圧は、例えば、August-Roche-Magnus(又はMagnus-Tetens又はMagnus)の式、Tetensの式、Buckの式又はGoff-Gratchの式などの異なる近似式を使用して、異なる適切な方法で推定される。いくつかの実施形態では、水蒸気圧P
wvは、
P
wv=20.386-5132/T
1
で決定される。
【0103】
上記の実施形態では、エラー値ΔPは、ΔP=P1-P2で決定される。しかしながら、他の実施形態では、エラー値は、異なる方法で、例えば異なる適切な式を用いて決定される。例えば、エラー値は、第1の圧力P1及び/又は第1の温度T1の異なる関数とすることができる。いくつかの実施形態では、測定された圧力P1及び/又は更新された圧力値Pに加重値を適用することができる。
【0104】
上記の実施形態では、ポンプシステムのモータは、液体リングポンプへの作動液の流れを調節又は調整するように制御される。しかしながら、他の実施形態では、ポンプシステムの代わりに、又はポンプシステムに加えて、1又は2以上の異なるタイプの調節装置が実装される。コントローラは、1又は2以上の調節装置の動作を制御するように構成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ポンプシステムは省略することができ、作動流体ライン(複数可)32、40に沿ってそれを通る作動流体の流れを制御するための1又は2以上の弁が存在することができる。いくつかの実施形態では、ポンプシステムは、コントローラによって制御される比例弁に置き換えられる。比例弁は、
図3及び4を参照して上記で詳細に説明したように、ポンプシステムと同じ方法で制御することができ、この弁は、液体リングポンプへの作動液の流れを増加させるために開放され、この弁は、液体リングポンプへの作動液の流れを減少させるために閉鎖される。いくつかの実施形態では、ステップs14において、コントローラは、エラー値ΔPが第1の閾値以下であると決定することに応答して、1又は2以上の弁(例えば、1又は2以上の比例弁)をその最大範囲まで開放するように制御する。1又は2以上の弁(例えば1又は2以上の比例弁)の使用は、作動液供給源からの作動液の供給が、液体リングポンプによって受け取られる作動液が所望の圧力になるようにする十分な圧力を有する実施形態において有用である傾向がある。いくつかの実施形態では、ポンプシステム及び弁システムの両方は、液体リングポンプへの作動液の流れを調節するために実装される。
【0105】
有利には、システムは、最大遠心ポンプ速度及び最大比例弁開度のいずれも液体リングポンプのオーバーロードを引き起こさないように構成されている。
【符号の説明】
【0106】
2 真空システム
4 設備
6 逆止弁
10 液体リングポンプ
12 モータ
14 分離器
16 ポンプシステム
20 コントローラ
22 圧力センサ
24 第1の温度センサ
26 第2の温度センサ
28 吸引ライン
30 排出ライン
32 第1の作動液パイプ
34 システム出口パイプ
36 排出パイプ
38 作動液供給源
40 第2の作動液パイプ
42 可変周波数ドライブ
44 第1の接続
46 第2の接続
48 第3の接続
50 第4の接続
100 ハウジング
102 チャンバ
104 シャフト
106 インペラ
108 ガス入口
S2-S28 方法ステップ
【手続補正書】
【提出日】2023-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引ラインと、
排出ラインと、
作動液ラインと、
前記吸引ラインに接続された吸引入力と、前記排出ラインに接続された排出出力と、前記作動液ラインに接続された液体入力とを有する液体リングポンプと、
前記液体リングポンプへの作動液の流れを制御するように構成された1又は2以上の調節装置と、
前記吸引ラインを介して前記液体リングポンプが受け取る入力流体の圧力を測定するように構成された圧力センサと、
前記排出ラインを介して前記液体リングポンプが出力する
排出流体の温度を測定するように構成された第1の温度センサと、
前記作動液ラインを介して前記液体リングポンプが受け取る作動液の温度を測定するように構成された第2の温度センサと、
コントローラと、
を備える制御システムであって、
前記コントローラは、
前記排出流体の温度測定値を使用して、前記液体リングポンプ内の前記作動液の蒸気圧を決定又は推定し、
第1の比較を実行し、前記第1の比較は、前記入力流体の前記測定された圧力の関数と、前記決定又は推定された蒸気圧の関数との間の比較であり、
前記第1の比較が1又は2以上の基準を満たすことに応答して、前記1又は2以上の調節装置を制御して、前記液体リングポンプへの前記作動液の流量を増加させ、
前記第1の比較が前記1又は2以上の基準を満たさないことに応答して、第2の比較を実行し、前記第2の比較は、前記排出流体の温度測定値の関数と、前記作動液の温度測定値の関数との間の比較であり、
前記第2の比較に基づいて、前記1又は2以上の調節装置を制御する、
ように構成されている、制御システム。
【請求項2】
前記作動液の前記蒸気圧は、
【数1】
で決定され、ここで
Aは、定数であり、
mは、定数であり、
T
nは、定数であり、
T
1は、前記排出流体の前記温度測定値である、請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記第1の比較は、前記入力流体の前記測定された圧力と、前記決定又は推定された前記蒸気圧の何らかの関数との間の差を決定することを含む、請求項1又は2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記1又は2以上の基準は、前記入力流体の前記測定された圧力と、前記決定又は推定された前記蒸気圧の何らかの関数との間の差が、第1の閾値以下であるという基準を含む、請求項3に記載の制御システム。
【請求項5】
前記第1の閾値はゼロである、請求項4に記載の制御システム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記1又は2以上の基準を満たす前記第1の比較に応答して、前記1又は2以上の調節装置を制御して、前記液体リングポンプへの前記作動液の前記流量を最大流量まで増加させるように構成されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項7】
前記第2の比較は、前記排出流体の前記温度測定値と前記作動液の前記温度測定値との間の差を決定することを含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記排出流体の前記温度測定値と前記作動液の前記温度測定値との間の差が第2の閾値より大きいことに応答して、前記1又は2以上の調節装置を制御して、前記液体リングポンプへの前記作動液の前記流量を増加させるように構成されている、請求項7に記載の制御システム。
【請求項9】
前記コントローラは、前記排出流体の前記温度測定値と前記作動液の前記温度測定値との間の差が第2の閾値以下であることに応答して、前記1又は2以上の調節装置を制御して、前記液体リングポンプへの前記作動液の前記流量を減少させるように構成されている、請求項7又は8に記載の制御システム。
【請求項10】
前記コントローラは、前記排出流体の前記温度測定値と前記作動液の前記温度測定値との間の差が第2の閾値に等しいことに応答して、前記1又は2以上の調節装置を制御して、前記液体リングポンプへの前記作動液の現在の流量を維持するように構成されている、請求項7から9のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項11】
前記第2の閾値は可変である、請求項8から10のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項12】
前記第2の閾値は、湿式プロセスでは第1の値と等しくなるように設定され、前記第2の閾値は、乾式プロセスでは第2の値と等しくなるように設定され、前記第1の値は前記第2の値とは異なる、請求項8から10のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項13】
前記コントローラは、比例コントローラ、積分コントローラ、微分コントローラ、比例-積分コントローラ、比例-積分-微分コントローラ、比例-微分コントローラ、及びファジー論理コントローラからなるコントローラの群から選択されるコントローラである、請求項1から12のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項14】
前記1又は2以上の調節装置は、ポンプ、遠心ポンプ、弁、比例弁からなる装置の群から選択される1又は2以上の装置を備える、請求項1から13のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項15】
システムを制御する方法であって、前記システムは、吸引ラインと、排出ラインと、作動液ラインと、前記吸引ラインに接続された吸引入力と、前記排出ラインに接続された排出出力と、前記作動液ラインに接続された液体入力とを有する液体リングポンプと、前記液体リングポンプへの作動液の流れを制御するように構成された1又は2以上の調節装置と、圧力センサと、第1の温度センサと、第2の温度センサとを備え、前記方法は、
前記圧力センサによって、前記吸引ラインを介して前記液体リングポンプが受け取る入力流体の圧力を測定するステップと、
前記排出流体の温度測定値を使用して、前記液体リングポンプ内の作動液の蒸気圧を決定又は推定するステップと、
第1の比較を実行するステップであって、前記第1の比較は、前記入力流体の前記測定された圧力の関数と、前記決定又は推定された蒸気圧の関数との間の比較である、ステップと、
前記第1の比較が1又は2以上の基準を満たすことに応答して、前記1又は2以上の調節装置を制御して、前記液体リングポンプへの前記作動液の流量を増加させるステップと、
前記第1の温度センサにより、前記排出ラインを介して前記液体リングポンプから出力される排出流体の温度を測定するステップと、
前記第2の温度センサにより、前記作動液ラインを介して前記液体リングポンプが受け取る前記作動液の温度を測定するステップと、
前記第1の比較が前記1又は2以上の基準を満たさないことに応答して、第2の比較を実行するステップであって、前記第2の比較は、前記排出流体の温度測定値の関数と、前記作動液の温度測定値の関数との間の比較である、ステップと、
前記第2の比較に基づいて前記1又は2以上の調節装置を制御するステップと、
を含む方法。
【国際調査報告】