IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キル-フレッヒ,コルネリアの特許一覧

特表2023-545889保守が簡単なコンベアベルトのスクレーパシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】保守が簡単なコンベアベルトのスクレーパシステム
(51)【国際特許分類】
   B65G 45/16 20060101AFI20231025BHJP
【FI】
B65G45/16 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023500054
(86)(22)【出願日】2021-11-11
(85)【翻訳文提出日】2023-01-16
(86)【国際出願番号】 EP2021081411
(87)【国際公開番号】W WO2022112016
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】102020131557.0
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102020131558.9
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522391855
【氏名又は名称】キル-フレッヒ,コルネリア
(74)【代理人】
【識別番号】100106312
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敬敏
(72)【発明者】
【氏名】キール,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァインマン,クラウス
(57)【要約】
本発明は、コンベヤベルト(12)用のスクレーパシステム、それを備えるベルトコンベア(10)、及び取り付け、検査又は保守作業を実行する方法に関する。スクレーパシステムは、システムキャリア(24)と、システムキャリア(24)に設置されてコンベアベルト(12)と接触するスクレーパ要素(42)を備える少なくとも一つのスクレーパモジュール(26,126)を備える。スクレーパシステムの部品に、取付け、検査、又は保守の目的で簡単にアクセスできるようにするために、システムキャリア(24)のために、コンベアベルトのベルトフレーム(16)に対する不動取付けの少なくとも一つの取付部(28)、システムキャリア(24)を取付部(28)に取り付けるための保持要素(30)、及び取付部(28)上の支持要素(80)を含む。保持要素(30)はクランプアセンブリ(50)を介してシステムキャリア(24)に結合され、システムキャリア(24)にはその長手軸線回りにトルクを加えることができ、保持要素(30)は取付部(28)に離脱可能に連結される。作動配置において、保持要素(30)は、システムキャリア(24)が保持要素(30)を介して取付部(28)上に保持されるように取付部(28)に取り付けられ、組立配置では、保持要素(30)は、取付部(28)から解放される。システムキャリア(24)は、スクレーパモジュール(26,126)及び保持要素(30)と一緒に、システムキャリア(24)の長手方向において引き出し位置に引き出され、スクレーパモジュール(26,126)は、システムキャリア(24)を引き出す際に取付部(28)を通過する。引き出し位置では、支持要素(80)はシステムキャリア(24)を支持する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベアベルト(12)用のスクレーパシステムであって、
システムキャリア(24)と、
前記システムキャリアに取り付けられ、前記コンベアベルト(12)に当接するスクレーパ要素(42)を有する、少なくとも一つのスクレーパモジュール(26,126)と、
前記コンベアベルト(12)のベルト脚部(16)に対して不動の取り付けのための少なくとも一つの取付部(28)を有する前記システムキャリア(24)の保持装置(20)と、前記取付部(28)に前記システムキャリア(24)を取り付ける保持要素(30)と、前記取付部(28)上の支持要素(80)と、を備え、
前記保持要素(30)は、前記システムキャリア(24)にその長手軸線の回りにトルクを作用させ得るテンション装置(50)を介して、前記システムキャリア(24)に結合され、
前記保持要素(30)は、前記取付部(28)に取り外し可能に連結され、
前記保持要素(30)が前記取付部(28)に連結される作動位置において、前記システムキャリア(24)は、前記保持要素(30)を介して前記取付部(28)に保持され、
前記保持要素(30)が前記取付部(28)から取り外される組立配置において、前記スクレーパモジュール(26,126)及び前記保持要素(30)を有する前記システムキャリア(24))は、前記システムキャリア(24)が引き出されるときに前記スクレーパモジュール(26,126)が前記取付部(28)を通過するような引き出し位置に、前記システムキャリア(24)の長手方向に引き出されることができ、
前記引き出し位置において、前記支持要素(80)は、前記システムキャリア(24)を支持する、
ことを特徴とするスクレーパシステム。
【請求項2】
前記保持要素(30)は、ネジ連結(72)及び少なくとも一つのプラグ連結(70)によって、前記取付部(28)に連結され、
前記プラグ連結(70)は、前記保持要素(30)を前記ネジ連結の解放に続けて前記長手方向に前記取付部(28)から引き離すことができるように、前記システムキャリア(24)の前記長手軸線の方向に方向付けされている、
ことを特徴とする請求項1に記載のスクレーパシステム。
【請求項3】
前記支持要素(80)は、前記システムキャリア(24)をその外周の第1部分を介して把持し、
前記支持要素(80)は、前記システムキャリア(24)が移動させられるとき前記スクレーパモジュール(26,126)が前記支持要素(80)を通過できるように、前記システムキャリア(24)の外周の第2部分を解放している、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のスクレーパシステム。
【請求項4】
前記取付部(28)は、前記システムキャリア(24)の上方に配置され、
前記支持要素(80)は、少なくとも前記システムキャリア(24)が前記取付部(28)と前記支持要素(80)の部分との間に配置されている限り、前記システムキャリア(24)を取り囲む、
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一つに記載のスクレーパシステム。
【請求項5】
前記保持要素(30)と前記システムキャリア(24)との間には、回転軸受が設けられている、
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一つに記載のスクレーパシステム。
【請求項6】
前記保持要素(30)は、少なくとも部分的に、板状の形態を有し、
前記システムキャリア(24)は、前記保持要素を貫通している、
ことを特徴とする請求項1ないし5いずれか一つに記載のスクレーパシステム。
【請求項7】
前記取付部(28)は、第1取付部であり、
対向支持体(22)には、前記システムキャリア(24)の長手方向において前記第1取付部(28)から距離を置いて配置された第2取付部(28)が設けられ、
前記システムキャリア(24)は、前記第2取付部(28)に対して、その長手方向に移動可能に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1ないし6いずれか一つに記載のスクレーパシステム。
【請求項8】
引き出し補助具(78)が、前記システムキャリア(24)の長手方向にその延長部で延びるように、前記システムキャリア(24)に取り付けられ得る、
ことを特徴とする請求項1ないし7いずれか一つに記載のスクレーパシステム。
【請求項9】
前記スクレーパモジュール(26,126)は、前記スクレーパ要素(42)が取り付けられたスクレーパアーム(36)を有し、
前記スクレーパアーム(36)は、前記システムキャリア(24)の長手方向に少なくとも実質的に平行に整列された枢動軸線(38)回りにモジュールジョイント(44)内で枢動可能である、
ことを特徴とする請求項1ないし8いずれか一つに記載のスクレーパシステム。
【請求項10】
前記スクレーパモジュール(26,126)は、前記スクレーパアーム(36)にトルクを作用させるためのバネ要素を有する、
ことを特徴とする請求項9に記載のスクレーパシステム。
【請求項11】
前記スクレーパモジュール(26,126)は、クランプ保持装置(34)において前記システムキャリア(24)に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1ないし10いずれか一つに記載のスクレーパシステム。
【請求項12】
ベルトコンベア(10)であって、
ベルト脚部(16)及びそれに一周に亘って取り付けられたコンベアベルト(12)と、
請求項1ないし11いずれか一つに記載のスクレーパシステム(18)と、を備え、
前記システムキャリア(24)は、前記コンベアベルト(12)に対して横切る方向に配置され、
前記スクレーパ要素(42)は、前記コンベアベルト(12)に当接し、
前記取付部(28)は、前記ベルト脚部(16)に固定され、又は、前記ベルト脚部(16)の一部である、
ことを特徴とするベルトコンベア。
【請求項13】
請求項1ないし11いずれか一つに記載のスクレーパシステム又は請求項12に記載のベルトコンベアにおいて、取付け、検査、又は保守作業を行う方法であって、
前記作動位置から始めて、前記保持要素(30)が前記取付部(28)から取り外され、
前記スクレーパモジュール(26,126)及び前記保持要素(30)を有する前記システムキャリア(24)が、前記システムキャリア(24)の長手方向に引き出され、
前記システムキャリアの引き出し中に、前記支持要素(80)が前記システムキャリアを支持する、
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記作動位置において、前記保持要素(30)は、ネジ連結(72)及び少なくとも一つのプラグ連結(70)によって前記取付部(28)に連結され、前記プラグ連結(70)は、前記システムキャリア(24)の長手軸線の方向に方向付けられ、
前記保持要素(30)は、前記ネジ連結(72)を解放することによって、前記取付部(28)から取り外され、
前記プラグ連結は、前記長手方向に前記取付部を移動させることによって取り外される、
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベアベルトのスクレーパシステム、それを備えたベルトコンベア、及びスクレーパシステムに関して取付け、検査又は保守作業を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スクレーパシステムの使用は、最も多様な搬送物を搬送するために配備されるベルトコンベアのコンベアベルトのために知られている。既知のスクレーパシステムは、殆どの場合、コンベアベルトの走行方向を横切る横方向に整列されたシステムキャリアを有し、そのシステムキャリア上に、スクレーパ要素を有する複数のスクレーパモジュールが配置されている。走行中のコンベアベルトにスクレーパ要素を配置することにより、コンベアベルトに付着した搬送物を掻き落とすことができる。
【0003】
スクレーパシステム及びスクレーパモジュールの様々なタイプ及びデザインが知られている。例えば、DE102017114931A1には、高速で走行するベルトコンベアのトリッパープーリの曲がり領域に配置するためのスクレーパシステムが示されている。ベルトコンベアの走行方向を横切る方向に配置されたバネ付きのシステムキャリアに、弾性材料で形成されたスクレーパブロックが交換可能な方法で互いに隣り合って固定されている。
【0004】
DE202020104666U1には、コンベアベルトスクレーパ、特に、クロスメンバー上に互いに隣接して配置された複数のスクレーパ要素を有するドラムスクレーパが開示されている。各々のスクレーパ要素は、弾性ベース本体と、スクレーパ要素をクロスメンバーに固定するための保持装置を有する。保持装置は、クランプ方式で連結する二つのクランプ部分を有し、一方はクロスメンバーに固定され得る保持要素に固定され、他方はベース本体に固定される。
【0005】
DE102013006821A1には、コンベアのリターン領域用のモジュールからなるベルトスクレーパシステムが記載されている。システムキャリアは、コンベアベルトの走行方向を横切る方向に配置されている。複数のスクレーパモジュールがシステムキャリアに隣り合って取り付けられている。スクレーパモジュールは、それぞれ、剥離(剥皮)方式でベルトと接触するスクレーパ薄板(擦り片)を保持する。
【0006】
スクレーパシステムの作動中において、スクレーパ要素、例えばスクレーパ薄板又はスクレーパブロックは、かなり摩耗するため、定期的に交換する必要がある。
【0007】
US4,098,394には、コンベアベルトスクレーパのための取付け及びサポートの配置が記載されている。複数のクリーニングブレードがクロスシャフトのアームに固定されている。クロスシャフトを回転させるための半径方向のラチェットと爪の配置が、ブレードをコンベアベルトに対して付勢するためにハウジングの外部に設けられている。ブレードを修理又は交換する必要がある場合は、一端部で連結を取り外し、反対側端部でスリーブを取り外すことによって、クロスシャフトが取り外される。取付フランジが側壁から取り外され、スクレーパアセンブリを備えたクロスシャフトがアクセスドアを通してハウジングから取り外される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】DE102017114931A1
【特許文献2】DE202020104666U1
【特許文献3】DE102013006821A1
【特許文献4】US4,098,394
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
既知のスクレーパシステムの場合、特にコンベアベルトの下の危険な領域に入らなければならない場合、メンテナンスに必要なスクレーパモジュールへのアクセスが困難になる可能性がある。したがって、本発明の目的は、メンテナンス(保守)の担当者が簡単な方法でスクレーパモジュールにアクセスでき、リスクを回避できる、スクレーパシステム、ベルトコンベア、及びスクレーパシステムの取付け、検査、又は保守作業を実行する方法を提案することと見なすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1に係るコンベアベルト用のスクレーパシステム、請求項12に係るベルトコンベア、及び請求項13に係る方法によって達成される。従属請求項は、本発明の有利な実施形態に言及するものである。
【0011】
本発明者等は、プラントの危険な領域に入らなければならず、それ故に、例えば、足場などの設置や、より長い操業停止といった安全対策が必要な場合に、スクレーパシステムでの作業、特にスクレーパモジュールに関連する取付け、検査、又は保守作業を実行することは特に複雑であるという考えからスタートした。したがって、ベルト領域の外側からスクレーパモジュールの保守作業を実行できる可能性は、特に重要である。これを達成するために、本発明者等は、複数のスクレーパモジュールを有する(又は少なくとも一つのスクレーパモジュールを有する)システムキャリアを可能な限り簡単な方法で横方向に引き出すことができるスクレーパシステムを提案する。
【0012】
本発明に係るスクレーパシステムは、システムキャリアと、それに取り付けられた少なくとも一つのスクレーパモジュール、好ましくはシステムキャリアに取り付けられた複数のスクレーパモジュールを含み、それぞれがコンベアベルトに当接するスクレーパ要素を有する。システムキャリアは、コンベアベルトに対して横方向に(横切る方向に)配置するために提供される。それは、好ましくは、長手軸線を中心に回転することができ又は回転方向に付勢力をかけることができるシャフトとして構成される。原理上は、システムキャリアは、任意の断面形状を有することができるが、好ましくは、少なくとも特定の部分において、特に好ましくは少なくとも二つの対向する端部領域において円形の断面である。特に単純に設計された好ましい実施形態では、システムキャリアは、好ましくは全体を通して変化のない円形断面を有する連続管として構成される。
【0013】
スクレーパモジュール又は複数のスクレーパモジュールは、好ましくはシステムキャリアに取り外し可能に取り付けられ、特に好ましくはクランプ保持装置でシステムキャリアに取り外し可能に固定される。それぞれのスクレーパ要素は、例えば、特にスクレーパがプレスクレーパとして、すなわちコンベアベルトの曲がり領域に配置される場合、柔軟な材料で作られたスクレーパブロックであり得る。スクレーパ要素は、好ましくはスクレーパエッジを有し、特に好ましくは金属、例えば硬質金属(タングステンカーバイド)で作られる。これは、より好ましくは、特に戻り領域において、コンベアベルトと剥離方法で(皮を剥がすように)接触することができる。
【0014】
システムキャリアには、ベルトコンベアに取り付けるための保持装置が設けられている。本発明によれば、保持装置は、コンベアベルトのベルト脚部(ベルトスカフォード)に対して不動に取り付けるための少なくとも一つの取付部と、システムキャリアを取付部に取り付けるための保持要素と、取付部上の支持要素とを含む。作動配置、すなわちコンベアベルトの作動中にスクレーパシステムがその機能を果たす配置では、取付部、保持要素、及び支持要素を有する保持装置は、好ましくはシステムキャリアの端部の領域に設けられ、より好ましくは、コンベアベルトの幅の横方向外側である。以下により詳細に説明するように、好ましくはより単純な構造を有することができる対向支持体(カウンターサポート)を、反対側に設けることができる。
【0015】
取付部は、ベルト脚部の一部とすることができ、又は、好ましくはベルト脚部に固定して連結することができる。好ましい実施形態では、取付部は、板状であるか又は保持要素を取り付けるための少なくとも一つの板状部分を有することができる。
【0016】
本発明によれば、保持要素は、テンション装置(緊張力付加装置)を介してシステムキャリアに結合され、それによって、システムキャリアには、その長手軸線回りにトルクを作用させることができる。そのトルクにより、スクレーパ要素は、好ましくはコンベアベルトに押し付けられることができる。テンション装置は、好ましくは、保持要素とシステムキャリアとの間で、例えばシステムキャリアに回転固定式に取り付けられた要素、例えばテンションアームを介して作用する。テンション装置は、例えば、爪及びラチェットなどのテンション要素、テンションネジ及び/又は保持要素とシステムキャリアとの間にトルクを加える効果を有するバネ要素を有することができる。
【0017】
本発明によれば、保持要素は、取付部に取り外し可能に連結することができる。作動位置において、保持要素は取付部に連結され、システムキャリアは保持要素を介して取付部に保持される。保持要素を取付部から取り外すことによって、スクレーパシステムを作動位置から組立配置に移すことができ、そこでは、スクレーパモジュールと保持要素を有するシステムキャリアがその長手方向において引き出し位置に引き出されることができる。システムキャリアがその長手方向に引き出されるとき、スクレーパモジュールは、取付部(及び好ましくは支持要素)を通過することができる。この目的のために、十分なサイズ及び適切な形状の自由領域が好ましくは提供され、システムキャリアが、単に長手方向にすなわち好ましくは横方向への移動無しに移動するとき、スクレーパモジュール又は複数のスクレーパモジュールと保持要素とが、取付部、及び好ましくは支持要素を通過することができる。自由領域は、支持要素上の切り欠き(カットアウト)によって少なくとも部分的に形成することができる。引き出し中又は引き出しの前に、スクレーパ要素がコンベアベルトに当接する作動位置から開始して、システムキャリアは、スクレーパモジュールが取り付けられた状態においてある程度回転する可能性があるため、突出部分が自由領域を通過することができる。
【0018】
本発明によれば、引き出し位置において(好ましくは、システムキャリアを引き出すプロセス中に継続的に)、支持要素がシステムキャリアを支持することが提供される。支持要素は、好ましくは、取付部に固定又は取り外し可能に設けることができ、又、支持要素は取付部と一体的に構成されることも可能である。支持要素は、特に好ましくはフック形状であり、システムキャリアを少なくとも部分的に包囲することができる。支持要素は、好ましくは作動位置でシステムキャリアと接触しないが、保持要素と取付部との間の連結を切り離した直後にシステムキャリアの支持を引き継ぐことができる。したがって、システムキャリア及びスクレーパモジュールの重量は、手で保持する又は特別に取り付けられる脚部又は類似の別の方法で支持する必要がない。
【0019】
システムキャリアをその長手方向に引き出すことは、好ましくは直線的な並進運動であると理解されるべきである。引き出し位置への移動中、スクレーパモジュールは取付部を通過する、すなわち、スクレーパモジュールは、取付部の最初の内側において作動位置に位置し、その反対側の外側において引き出し位置に位置する。
【0020】
したがって、本発明によるスクレーパシステムは、システムキャリアを横方向において引き出し位置に引き出すことができ、その引き出し位置において、スクレーパモジュールは取付部の外側に位置し、取付け、検査、又は保守のために容易にアクセスすることができる。支持要素は、オペレータがシステムキャリアを保持する必要がないようにシステムキャリアを支持し、システムキャリアが落下する危険性を低減又は排除する。支持要素の支持作用は、鉛直上向き向けられた力の効果であると理解される。すなわち、システムキャリアは、好ましくは支持要素上に載せることができる。
【0021】
支持要素は、保持要素が取付部から取り外されるまでシステムキャリアを支持しないことが好ましい。すなわち、作動位置では、支持要素とシステムキャリアとの間に直接的な接触は無く、僅かな距離が残る。例えば、少なくとも0.5mm又は1mm、好ましくは5cm未満、特に好ましくは1cm未満である。保持要素を取付部から取り外した後、保持要素に連結されたシステムキャリアの側部は、好ましくは、支持要素と接触するまで、少量だけ下げることができる。この配置構成は、好ましくは、システムキャリアが反対側の対向支持装置内に留まる限り、例えば5°未満、特に好ましくは1°未満のシステムキャリアの僅かな傾斜(傾動)のみが生じるようになっている。
【0022】
したがって、必ずしもコンベアベルトの下の領域に入る必要なく、本発明によるスクレーパシステムでは、簡単な保守、特にスクレーパモジュール又はスクレーパ要素の簡単な交換を行うことが可能である。引き出し中又は引き出し位置においてシステムキャリアを支持することにより、取り扱いが特に単純化され、好ましくは一人で作業を行うことができる。
【0023】
保持要素を取付部に取り付けるために、種々のタイプの連結を使用することができ、着脱性は可能な限り簡単であることが好ましいが、操作には十分な安定性が必要である。例えば、一つ又は複数のネジによるネジ連結を提供することができる。
【0024】
本発明のさらなる進展によれば、保持要素は、少なくとも一つのプラグ連結、好ましくは互いに距離を置いて配置された二つのプラグ連結と組み合わせたネジ連結によって、取付部に連結される。一つ又は複数のプラグ連結は、好ましくは、システムキャリアの長手方向に整列する(方向付けされる)ように設計され、保持要素は、ネジ連結の解放に続けて、取付部から長手方向に取り外すことができる。プラグ連結として、好ましくはボルトが使用され、このボルトは受入れ開口部に受け入れられる。ボルトは、特に好ましくは取付部に配置され、受入れ開口部は保持要素に配置されるが、逆の配置も可能である。ネジ連結及びプラグ連結は、互いに平行に配置されることが好ましい。特に好ましくは、一つだけのネジが設けられて、二つのプラグ連結の間に配置される。したがって、十分に固定された連結をその作動のために利用することができ、非常に迅速かつ簡単に取り外すことができる。
【0025】
さらなる進展によれば、支持要素がシステムキャリアを部分的に包囲することが提供される。この目的のために、システムキャリアに対面する支持要素の内側形状は、少なくともある部分においてシステムキャリアの輪郭に対応することができる。例えば、システムキャリアの輪郭が丸い場合、支持要素の内側形状は部分的に円形であり得る。支持要素は、好ましくはリセス(凹部)を有することができ、その中にシステムキャリアが部分的に受け入れられ、したがって、横方向の動きに対して特に脱落に対して、支持されて安全性が保証される。支持要素は、より好ましくは、システムキャリアをその外周の第1部分に亘って取り囲み、システムキャリアの外周の第2部分は自由のままにして、システムキャリアが引き出されるときにスクレーパモジュールが支持要素を通過できるようにする。システムキャリアが支持要素によって取り囲まれる外周の第1部分は、例えば、少なくとも90°で又180°までとすることができ、>115°及び<155°の外周領域を取り囲むことが好ましい。これにより、システムキャリアが脱落するリスクが最小限に抑えられるように、適切な支持が保証される。他方、スクレーパモジュールを有するシステムキャリアが依然として引き出され得るように、広過ぎること、特に完全に包囲することは好ましくない。支持要素の形状は、好ましくは、少なくともシステムキャリアの外輪郭の第1の外周部に亘って適合され、システムキャリアは、特に好ましくは、少なくとも特定の部分において円形断面を有し、支持要素は部分的に環状(湾曲形状)である。
【0026】
好ましい実施形態では、取付部は、システムキャリアの上方に鉛直に(直立して)配置され、支持要素は、システムキャリアの方向に鉛直に下向きに延在し、システムキャリアを少なくとも部分的に包囲する。支持要素の少なくとも一つのセクションは、好ましくは、システムキャリアが取付部と支持要素の包囲セクションとの間に配置される程度に、システムキャリアを包囲する、すなわち、支持要素の包囲セクションは、好ましくは、システムキャリアの下方まで延在する。
【0027】
好ましくは、保持要素とシステムキャリアとの間に回転軸受が設けられ、これにより、スクレーパ要素とコンベアベルトとの間の配置、特に付勢力(バイアス)を好ましく変更するために、互いに対して少なくとも僅かな回転が可能になる。回転軸受は、様々な方法で、好ましくは軸受ブッシュとして、特に好ましくはプラスチックブッシュとして形成することができる。
【0028】
好ましい実施形態では、保持要素は、少なくとも部分的に板状に設計され、システムキャリアは、保持要素を好ましくは垂直に貫通する。このような配置は、特に取付部及び/又は支持要素も板状であって互いに配置される場合、構造が特に単純であり、安定した固定を可能にする。
【0029】
既に述べたように、システムキャリアが保持装置及び対向支持体(カウンターサポート)に取り付けられるように、保持装置への対向支持体が設けられることが好ましい。保持装置の(第1の)取付部と同様に、第2の取付部は、対向支持体のために設けられることが好ましく、システムキャリアの長手方向において第1の取付部から距離を置いて配置される。システムキャリアは、好ましくは、第2の取付部に回転可能に取り付けられ、その長手方向に移動可能に取り付けられる。この目的のために、システムキャリア用の軸受スリーブを、好ましくは第2の取付部又はそれに連結された要素に、特に好ましくは例えばプラスチック製の軸受ブッシュとして設けることができる。対向軸受(カウンターベアリング)は、好ましくはシステムキャリアの長手方向にロックされておらず、これにより、システムキャリアは、支持装置を取り外した後さらなる措置なしに、対向支持体から引き出すことができる。したがって、対向支持体へのアクセスを必要とせずに、保持装置の側面からのアクセスのみで分解することが可能である。
【0030】
好ましい実施形態によれば、システムキャリア用の引き出し補助具を設けることができ、これは、システムキャリアの長手方向にその延長部で延びるように、システムキャリアに取り付けることができる。このような引き出し補助具は、引き出し中に、システムキャリアを掴み、ガイドし又は保持するのに役立つ。引き出し補助具及び/又はシステムキャリアは、好ましくは、端部に挿入開口部を有し、引き出し補助具及びシステムキャリアが互いに挿入され得るようにする。引き出し補助具とシステムキャリアを結合するための介在部品、すなわちアダプタも使用することができる。このようなアダプタは、例えば、システムキャリアにクランプするためのクランプ装置と、引き出し補助具に結合するための係合セクションとを有することができる。より好ましくは、引き出し補助具をシステムキャリア及び/又はアダプタに固定するためのロック装置を設けて、意図しない取り外しを回避できるようにすることができる。
【0031】
既に説明したように、種々のタイプのスクレーパモジュールをシステムキャリアに取り付けることができる。好ましい実施形態によれば、スクレーパモジュール(又は好ましくはスクレーパモジュールの全て)は、スクレーパ要素が取り付けられるモジュールアームを有する。モジュールアームは、好ましくは、システムキャリアの長手方向に少なくとも実質的に平行に整列された軸線を中心として、モジュールジョイント内で枢動することができる。これは、位置合わせが、好ましくは<30°の、より好ましくは<20°の、特に好ましくは<10°の角度で、僅かに斜めの位置又は僅かな回転を含むこともできることを意味すると理解されるべきである。
【0032】
スクレーパモジュールは、モジュールアームにトルクを作用させるためにバネ要素を有することが好ましい。様々な種類のバネ要素が可能であり、ゴム製の捩じりバネが好ましい。バネ要素により、スクレーパ要素をコンベアベルトに押し付けることができる。より好ましくは、スクレーパモジュールは、コンベアベルトの方向へのスクレーパ要素の旋回移動を制限するために、モジュールジョイント内にモジュールアームの回転のためのストッパを有することができる。バネ要素が使用される場合、ストッパは、バネがストッパの方向に向けてモジュールアームに作用するように配置され、ストッパの位置において依然としてバイアス(付勢力)が生じるように、配置されるのが好ましい。
【0033】
ベルトコンベアには、スクレーパ要素がコンベアベルトに当接し、取付部がベルト脚部に固定されるように、本発明によるスクレーパシステムを装備することができる。
【0034】
作業、例えば、取付け、検査又は保守作業は、作動位置から始めて、保持要素が取付部から取り外され、スクレーパモジュール及び保持要素を有するシステムキャリアが長手方向に引き出され、システムキャリアの引き出し中に、支持要素がシステムキャリアを支持する、という特に簡単な方法で、本発明によるスクレーパシステムにより実行することができる。
【0035】
本発明の実施形態は、図面を参照して以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】第1実施形態に係る、コンベアベルト及びスクレーパを有するベルトコンベアの一部の斜視図を示す。
図1a図1における保持装置の拡大斜視図を示す。
図2】第1の実施形態に係る、コンベアベルト及びスクレーパを有するベルトコンベアの一部の斜視図を示す。
図3図1及び2におけるスクレーパの側面図である。
図4図1ないし図3におけるスクレーパのスクレーパモジュールの上面図を示す。
図5図1ないし図3におけるスクレーパのスクレーパモジュールの部分的に切り取られた側面図を示す。
図6図5中のA-A線でのスクレーパモジュールの断面図を示す。
図7図4及び5のスクレーパモジュールのスクレーパ要素が取り外された斜視図を示す。
図8a】システムキャリアの引き出し中における第1実施形態に係るスクレーパの部分の様々な位置の斜視図を示す。
図8b】システムキャリアの引き出し中における第1実施形態に係るスクレーパの部分の様々な位置の斜視図を示す。
図8c】システムキャリアの引き出し中における第1実施形態に係るスクレーパの部分の様々な位置の斜視図を示す。
図8d】システムキャリアの引き出し中における第1実施形態に係るスクレーパの部分の様々な位置の斜視図を示す。
図8e】システムキャリアの引き出し中における第1実施形態に係るスクレーパの部分の様々な位置の斜視図を示す。
図9a】引き出し補助具を使用するときの第1実施形態に係るスクレーパの斜視図を示す。
図9b】引き出し補助具を使用するときの第1実施形態に係るスクレーパの斜視図を示す。
図9c】引き出し補助具を使用するときの第1実施形態に係るスクレーパの斜視図を示す。
図10図8b中のB-B線での断面図を示す。
図11】第2実施形態に係る、コンベアベルト及びスクレーパを有するベルトコンベアの一部の斜視図を示す。
図12図11におけるスクレーパのシステムキャリアの上面図を示す。
図13図11及び図12におけるスクレーパの側面図を示す。
図14】第2実施形態に係る図11図13のスクレーパのための図10と同様の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1及び図2は、第1実施形態において、屈曲ドラム14の周りで屈曲されるコンベアベルト12を有するベルトコンベア10の一部の斜視図を示す。屈曲ドラムのシャフトは、ベルト脚部(ベルトスカフォード)16に取り付けられており、ここではその一部のみが概略的に示されている。
【0038】
ベルトコンベア10においては、複数のスクレーパモジュール26を有するスクレーパ18は、システムキャリア24と、ベルト脚部16に取り付けるための保持装置20及び対向支持体(カウンターサポート)22と一緒に設けられている。
【0039】
保持装置20及び対向支持体22は、それぞれ、ベルト脚部16に固定されるか又はベルト脚部16の一部である取付部を有し、ここでは、それぞれ取付プレート28の形態をなす。保持プレート30の形態をなす保持要素は、いずれの場合も取付プレート28に取り付けられる。
【0040】
図示の実施形態において、システムキャリア24は、一定の円形断面をなすチューブ(管)である。保持プレート30は、それぞれ、システムキャリア24が回転可能に取り付けられるプラスチック製のスライドブッシュ33が挿入される円形リセスを有する。
【0041】
図3において、二つのスクレーパモジュール26が側面図で示されている。スクレーパモジュール26は、それぞれ、クランプ保持装置34においてシステムキャリア24に着脱自在に取り付けられたベース要素32を含む。スクレーパアーム36は、枢動軸線38を中心としてベース要素32に旋回可能に取り付けられている。スクレーパアーム36の端部には、それぞれ、スクレーパ要素42を有するスクレーパ要素ホルダ40が配置されている。
【0042】
例えば、図2から分かるように、複数のスクレーパモジュール26が、システムキャリア24上に互いに隣り合って配置されている。システムキャリア24は、コンベアベルト12の幅方向、すなわちその進行方向に対して横方向(横切る方向)に延びている。第1実施形態において、互いに隣接して配置されたスクレーパモジュール26は、スクレーパ要素42が二つの千鳥状の列に配置されるように、短いスクレーパアーム36と長いスクレーパアーム36とを交互に有し、そこでは、コンベアベルトの走行方向で視て、二つの列のスクレーパ要素42の間の僅かな重なりが常に提供される。複数のスクレーパモジュール26は、その列がコンベアベルト12の幅全体に亘って少なくとも実質的に延在するように、互いに隣り合って配置される。
【0043】
ベルトコンベア10及びスクレーパ18の作動中において、スクレーパ要素42のスクレーパエッジは、図3に示すように、例えばコンベアベルト12の戻り領域において、コンベアベルト12の表面に剥離させる(皮を剥がす)ように接触する。スクレーパ要素42は、コンベアベルト12の表面に対して弾性的に押し付けられる。これにより、異物及び付着した搬送物は、スクレーパ要素42によって走行中のコンベアベルト12から掻き取られる。
【0044】
図4及び図5において、スクレーパモジュール26の一つがより詳細に示されている。そこに示されるように、ベース要素32とスクレーパアーム36との間にジョイント44が設けられ、スクレーパアーム36が枢動軸線38を中心に枢動できるようになっている。図示されるように、ジョイント44は、ベース要素32を取り囲むスターラップ(鐙金)46を含む。
【0045】
スクレーパアーム36にトルクを及ぼすゴム捩じりバネ(不図示)は、ジョイント44の内部で作用する。
【0046】
ベース要素32上には、ストッパ48として突出タブが設けられている。停止位置では、スターラップ46の一部がストッパ48に当接して、スクレーパアーム36が枢動軸線38を中心としてそれ以上旋回できないようになっている。ゴム捩じりバネは、ストッパの方向においてスクレーパアーム36に作用するように形成され、バネのバイアス(付勢力)48は、図5に示される停止位置で優勢である。
【0047】
スクレーパモジュール26のそれぞれのバネの効果により、スクレーパ要素42は、コンベアベルト12の表面に押し付けられるが、作動中の対応する力の影響中にジョイント44内で枢動することによって、例えば、コンベアベルト12の表面上の動かない(変化のない)ベルトの損傷、隆起又は同様のもののために、バネの効果に逆らって枢動軸線38回りのスクレーパアーム36の対応する枢動移動によって、回避作動をとることができる。
【0048】
スクレーパ要素42の全体がコンベアベルト12に押し付けられるスクレーパ18全体のバイアス(付勢力)は、システムキャリア24の回転位置を特定することによって予め定められる。テンション(緊張力付加)装置50は、保持プレート30とシステムキャリア24との間の保持装置20上に設けられる。
【0049】
図1aは、保持装置20を拡大図で示している。システムキャリア24に取り付けられたクランプリングは、システムキャリア24から半径方向に突出するテンションアーム54を有し、テンションアーム54は、保持プレート30に固定して取り付けられたアタッチメントに対してテンションネジ56によりテンション(緊張力)をかけることができる。テンションネジ56を調整することにより、システムキャリア24を回転させることができ、スクレーパモジュール26のバネのバイアス(付勢力)を設定することができる。
【0050】
さらに、図1及び図1aに示されるように、プレート形状の支持要素80は、図示の実施形態では取付プレート28と保持プレート30との間に配置され、保持装置20の取付プレート28にさらに取り付けられている。支持要素80の形状及び機能は、図8a-図8d及び図10に関して、以下でより詳細に説明される。
【0051】
スクレーパ18の作動中において、スクレーパ要素42は常に摩耗するので、定期的な点検と保守(メンテナンス)が必要となる。スクレーパ18は、ベルト脚部16への取り付けに関して、及びスクレーパ要素42のスクレーパモジュール26への取り付けに関して、特に簡単な方法でメンテナンスされるように設計されている。
【0052】
特に、図4図5及び図7から明らかなように、スクレーパアーム36は、互いに取り外し可能に固定される二つの要素、すなわち、スクレーパ要素ホルダ40に取り付けられたシャフト58と、ベース要素32に連結された、すなわち、ジョイント44のスターラップ46に固定されたスリーブ60とを含む。シャフト58はスリーブ60に挿入され(図5)、ツイストロック62によってスクレーパアーム36の長手軸線64の方向に固定される。
【0053】
長手軸線64は、示された実施形態においては図2及び図3から明らかなように、コンベアベルト12の走行方向に平行な鉛直視で、システムキャリア24の長手軸線に対して、垂直、すなわち、角度βが90°(図8eを参照)をなす方向に延びている。図2及び図3は、横から視た水平視(図3)において、長手軸線64は、コンベアベルト12の走行方向に対して約9°の角度γをなす方向に延びている。示された実施形態における長手軸線64は、さらに、スクレーパ要素42の接触エッジに対して、垂直にすなわち角度δが90°で位置合わせされる(図4を参照)。
【0054】
シャフト58は、長手軸線64を中心にスリーブ60内で自由に回転することができ、そのため、長手軸線64は回転軸線とも呼ばれる。しかしながら、シールリング66が設けられており、これは、一方ではシャフト58に対してスリーブ60の内部空間をシールし、他方ではスリーブ60の内側との接触による摩擦によって、スリーブ60に対するシャフト58の動きに一定の緩慢さ(鈍さ)を生じさせる。
【0055】
ツイストロック62は、スリーブ60の側において、スリーブ60の内部に突出するリム(枠部)を有すると共にその内部に配置された細長い窓62aを含み、又、シャフト58の側において、シャフト58の端部においてより小さい直径の延長部63に固定して取り付けられた細長い板状の係合要素62bを含む。
【0056】
図6の断面図から特に明らかなように、係合要素62b及び窓62aは、係合要素62bが窓62aと平行に位置合わせされたとき(点線で示されている)、窓62bを通して長手軸線64の方向に挿入することができ、一方、図示(実線)のように、窓62aのリム(縁)との平行整列に対して捩じれた位置でロックされる、ように形成されている。
【0057】
したがって、長手縦線64の軸線方向において、スリーブ60へのシャフト58の固定に関して、回転位置への依存が生じる。
【0058】
窓62aに平行な係合要素62bの位置(点線で表示)では、スクレーパ要素ホルダ40が取り付けられたシャフト58及びスクレーパ要素42は、解放角度範囲68a内の位置に位置する。解放角度範囲の回転位置では、ツイストロック62が解放され、シャフト58はスリーブ60に対して長手方向に自由に移動することができる。
【0059】
シャフト58がスリーブ60に対してさらに捩じられると、係合要素62bの端部が窓62aのリム(枠部)の背後に係合し、シャフト58がスリーブ60に対して長手方向に固定される。シャフト58の対応する位置は、ツイストロック62がロックされる固定角度範囲68b内にある。
【0060】
図示のように、解放角度範囲68aは、図6中において点線で示された回転位置を中心としており、そこでは、コンベアベルト12に当接するために設けられたスクレーパ要素42のフロントエッジ(前縁)は、システムキャリア24の長手方向及びスクレーパモジュール26の枢動軸線38に対して90°に位置付けられる。対照的に、固定角度範囲68bは、これに対して90°回転されかつ図6に実線で示される回転位置を中心とする。この回転位置では、スクレーパ要素42のスクレーパエッジは、システムキャリア24の長手方向及びジョイント44の枢動軸線38に対して平行に整列される。
【0061】
スリーブ60の内側でシャフト58が自由に回転できるため、それぞれのスクレーパ要素42は、コンベアベルト12と接触している間中、その輪郭に従って整列することができる。実際には、これは、ベルトの幅全体に亘って常に平坦ではなく、例えば端に向かって湾曲する。接触圧力により、スクレーパ要素ホルダ40は、スクレーパ要素42がコンベアベルト12の形状に追従するように、常に自身を調整する。
【0062】
しかしながら、解放角度範囲68a内にある回転位置は、どの作動位置においても達成されない。したがって、ツイストロック62は、スクレーパ要素42がコンベアベルト12と接触している間は固定角度範囲に常に留まり、それ故に、それぞれのスクレーパモジュール26のベース要素32への固定を確実にする。
【0063】
スクレーパ18及びスクレーパモジュール26での作業を可能にするために、特に、スクレーパ要素42、スクレーパ要素ホルダ40及びシャフト26を含むユニットを交換できるようにするために、スクレーパモジュール26が取り付けられたシステムキャリア42は、図8a-図8eに関して以下に説明するように、特に簡単な方法で取り外して横方向に引き出すことができる。
【0064】
したがって、保持装置20の側では、取付プレート28への保持プレート30の特定の取付け(アタッチメント)が設けられ、対向支持体(カウンターサポート)22の側では、保持プレート30の軸受ブッシュ33内のシステムキャリア24の軸受は、システムキャリア24がその長手方向に自由に移動できるように設けられている。
【0065】
図1aに示されるように、保持プレート30は、二つのプラグ連結70及びネジ連結72によって、保持装置20の取付プレート28に固定されている。プラグ連結70は、取付プレート28上に互いに距離を置いて平行に配置され、保持プレート30の孔に正確に嵌合して受け入れられる二つのボルトによって形成されている。プラグ連結70は、システムキャリア24の長手方向において、取付プレート28から保持プレート30を離脱させることによって取り外すことができる。
【0066】
二つのプラグ連結70の間に形成されたネジ連結72は、ボルトと平行に整列されたネジを含み、このネジで保持プレート30が取付プレート28に締結される。
【0067】
ベルトコンベア10及びスクレーパ18の作動のための作動位置では、保持プレート30は、ネジ連結72によって取付プレート28に固定される。
【0068】
作動(運転)が中断された場合、スクレーパ18を組立配置(アセンブリアレンジメント)に移すことによって、保守されるべきスクレーパ18の部品を引き出すことができる。ネジ連結72を緩め、システムキャリア24を長手方向に引っ張ることでプラグ連結70a,70bを引き続き取り外すことによって、保持プレート30を取付プレート28から取り外すことができる。このためにハンドル74が設けられている。
【0069】
図8aは、作動位置から始めて、先ずネジ連結72を解放することを示している。そして、保持プレート30が、システムキャリア24と共にその長手方向に取付プレート28から引き離されて、プラグ連結70a,70bが取り外される。
【0070】
既に述べたように、取付プレート28と保持プレート30との間の保持装置20は、支持要素80を含む。支持要素80は、図8bから明らかなように、システムキャリア24の方向に延びると共にシステムキャリア24を部分的に囲むフック形状の保持部82を有し、それはリセス(凹部)86を画定する。保持部82及びリセス86は、図示のように、システムキャリア24の(この場合は丸い)外輪郭に対応する特定の部分において(この場合は丸い)内側輪郭を有する。保持部82は、作動位置においてすなわち保持プレート30が取付プレート28に固定されている場合に、システムキャリア24に接触せずに、そこから数ミリメートルの一定の距離を残すように、配置されている。保持部82の上方において、支持要素80は、システムキャリア24が通過する切り欠き84を有する。
【0071】
組立配置において、すなわち、ネジ連結72及びプラグ連結70a,70bの解放(図8b)に続いて、システムキャリア24は、僅かに沈み、その後、リセス86内において、支持要素80の保持部82上に静止する。保持プレート30と取付プレート28との間の連結を取り外した後に、支持要素80はシステムキャリア24の保持を引き継ぐ。図示のように、支持要素80は、保持プレート28にそれ故にベルト脚部16に固定されている。図10に示されるように、保持部82は、システムキャリア24を、リセス86において約135°の外周領域αに亘って包囲し、システムキャリア24が落下しないようにシステムキャリア24を下から支持する。
【0072】
さらなる過程で、システムキャリア24は、保持プレート30及びテンション装置50と一緒に、その長手軸線の方向に引き出される(図8b)。その際、支持要素82は、システムキャリア24が落下しないようにシステムキャリア24を支持する。対向支持体(カウンターサポート)22の軸受ブッシュ33内でのシステムキャリア24の移動可能性により、それを特に容易に引き出すことが可能である。
【0073】
スクレーパモジュール26は、取付プレート28及び支持要素80を通過することができる。これは、切り欠き84を備えてシステムキャリア24を部分的にのみ包囲する保持部82のフック形状が、システムキャリア24が引き出されるときに、スクレーパモジュール26がベルト領域の外側の引き出し位置に移され得るように、十分な自由空間を残すためである。(図8d)。したがって、スクレーパモジュール26は、衝突することなく、支持要素80及び取付プレート28の面の自由領域を通って案内され得る。支持要素80の切り欠き84は、自由領域の一部を形成する。
【0074】
引き出し位置において、スクレーパモジュール26は、容易にアクセス可能であり、又、点検及び保守が可能である。特に、磨耗したスクレーパ要素42は、上述のようにそれぞれのスクレーパモジュールのスクレーパ要素42,スクレーパ要素ホルダ40,及びシャフト58から構成されるそれぞれのユニットを取り外し、回転軸線64回りにそれらを捩じり、長手方向にそれらを分離し、その後同じ方法で新しい要素を取り付けることによって交換することができる。
【0075】
したがって、スクレーパ18の点検及び保守のプロセスが特に容易になる。図示の実施形態では、一つのネジ(ネジ連結72)を単純に緩めるだけで、システムキャリア24をスクレーパモジュール26と一緒に横方向に引き出すことが可能である。支持要素80によって提供される支持(サポート)により、これは一人で行うことができる。
【0076】
コンベアベルト12の側面に利用可能な十分なスペースがある場合は、引き出し補助具を使用してシステムキャリア24を引き出すことで、システムキャリア24の取り扱いをさらに容易にすることができる。この目的のために、図9aに示すように、先ず、アダプタ76を横方向においてシステムキャリア24に取り付けてクランプするか又は他の方法で固定することができる。続いて、アダプタ76にチューブを取り付けることができ、このチューブは、引き出し補助具78として機能し、システムキャリア24の延長部に取り付けられる。引き出し補助具78によって、システムキャリア24は、特に支持要素80の保持部82上の支持に関して、特に良好に取り扱われることができる。
【0077】
第2実施形態に係るスクレーパ118が、図11図14に示されている。第2実施形態に係るスクレーパ118は、多くの詳細において、第1実施形態に係るスクレーパ18に対応するため、相違点のみを以下により詳細に説明し、他の点については前述の説明を参照する。同じ参照符号は、実施形態同士の間で対応する要素を示す。
【0078】
説明し図示した第1実施形態に係るスクレーパ18の場合、スクレーパ要素42は二列に配置されているが、第2実施形態に係るスクレーパ118は、スクレーパモジュール126上にスクレーパ要素42の単一列の配置を含み、これらはそれぞれ同じ長さであり、システムキャリア24上で互いに隣り合って配置されている。
【0079】
図12から特に明らかなように、スクレーパ要素42のスクレーパエッジは、第1実施形態の場合のようにコンベアベルト12の横方向に一直線に整列されず、示された実施例において、約15°の角度で斜めに整列されている。しかしながら、スクレーパアーム36は、第1実施形態の場合のように、その長手軸線64と共にコンベアベルト12の長手方向に対して、すなわち、第1実施形態の場合のように90°の角度βで延在する。
【0080】
スクレーパ要素42は、スクレーパアーム36に対して約75°の角度δで斜めに取り付けられる。システムキャリア24上の隣接するスクレーパモジュール126は、コンベアベルト12の長手方向に視て、スクレーパ要素42の僅かな重なりが生じるように非常に接近して配置され、これにより、ベルト幅全体に亘ってスクレーパ効果を生じる。
【0081】
他の点では、第2実施形態に係るスクレーパ118は、構造及び機能に関して第1実施形態にかかるスクレーパ18と同一であり、すなわち、スクレーパ18と共通して、各々のスクレーパ118は、クランプ保持装置34内においてシステムキャリア24に取り外し可能に取り付けられたベース要素32と、枢動軸線38を中心に旋回可能に取り付けられると共にその端部にスクレーパ要素42を有するスクレーパ要素ホルダ40が配置されたスクレーパアーム36を含む。付勢された捩じりバネは、スクレーパ118の作動中に、スクレーパ要素42のスクレーパエッジがコンベアベルト12の表面12に剥離させるように接触し、異物(付着物)を掻き落とすために表面12に対して弾性的に押し付けられるようなトルクを与える。コンベアベルト12の表面に静止した障害物がある場合、スクレーパ要素42は、バネの作用に抗して枢動軸線38を中心とするスクレーパアーム36の枢動運動により、回避作動を行うことができる。
【0082】
図13は、第2実施形態について、横から見た水平図を示しており、そこから、コンベアベルト12の走行方向と長手軸線64との間の角度γを視ることができる。配置と設定に応じて、角度γは、例えば、0°から20°の間とすることができ、図示の実施形態では、角度γは約15°である。
【0083】
第2実施形態の場合も同様に、スクレーパアーム36は、スクレーパ要素ホルダ40に取り付けられたシャフト58を含み、このシャフトはスリーブ60に挿入され、その中において長手軸線64を中心に回転することができる。ツイストロック62によって、対応する位置合わせにおいて、すなわち、ベルト接点によって定義される通常位置からの回転で、シャフト58をスリーブ60から引き出すか又はスリーブに挿入できる、ことが保証される。
図1
図1a
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図8d
図8e
図9a
図9b
図9c
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】