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特表2023-545904局所適用して炎症性疾患及びサイトカイン放出症候群を治療する浸透圧性被膜における二重作用性ポリマー
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  • 特表-局所適用して炎症性疾患及びサイトカイン放出症候群を治療する浸透圧性被膜における二重作用性ポリマー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】局所適用して炎症性疾患及びサイトカイン放出症候群を治療する浸透圧性被膜における二重作用性ポリマー
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7024 20060101AFI20231025BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 36/18 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 47/56 20170101ALI20231025BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20231025BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
A61K31/7024
A61K45/00
A61P29/00
A61K36/18
A61K47/56
A61K47/46
A61K47/36
A61P39/02
B01J20/26 G
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023515859
(86)(22)【出願日】2020-09-08
(85)【翻訳文提出日】2023-05-01
(86)【国際出願番号】 EP2020075117
(87)【国際公開番号】W WO2022053128
(87)【国際公開日】2022-03-17
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PLURONIC
2.KLUCEL
(71)【出願人】
【識別番号】523085522
【氏名又は名称】ヴィトロバイオ・ソシエテ・パ・アクシオンス・シンプリフィエ
【氏名又は名称原語表記】VITROBIO SAS
(71)【出願人】
【識別番号】515337707
【氏名又は名称】シュリヴァスタヴァ,レア
(71)【出願人】
【識別番号】515337693
【氏名又は名称】シュリヴァスタヴァ,レミ
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【弁理士】
【氏名又は名称】池本 理絵
(72)【発明者】
【氏名】シュリヴァスタヴァ,レア
(72)【発明者】
【氏名】シュリヴァスタヴァ,レミ
(72)【発明者】
【氏名】シュリヴァスタヴァ,ラヴィ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C088
4G066
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA24
4C076AA29
4C076AA31
4C076AA56
4C076AA71
4C076AA93
4C076BB22
4C076BB24
4C076BB25
4C076BB31
4C076CC05
4C076EE01
4C076EE30Q
4C076EE53Q
4C076EE57Q
4C076EE58Q
4C076EE59
4C076FF31
4C076FF36
4C076FF63
4C076FF68
4C084AA17
4C084AA19
4C084MA13
4C084MA17
4C084MA27
4C084MA28
4C084MA32
4C084MA37
4C084MA41
4C084MA43
4C084MA57
4C084MA58
4C084MA59
4C084MA63
4C084NA05
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4C084NA12
4C084ZA392
4C084ZA612
4C084ZA832
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZC371
4C084ZC412
4C084ZC442
4C084ZC452
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA03
4C086GA17
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA06
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA27
4C086MA28
4C086MA32
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA57
4C086MA58
4C086MA59
4C086MA63
4C086NA10
4C086NA12
4C086ZC37
4C088AB11
4C088MA13
4C088MA17
4C088MA27
4C088MA28
4C088MA32
4C088MA37
4C088MA41
4C088MA43
4C088MA57
4C088MA58
4C088MA59
4C088MA63
4C088NA10
4C088NA12
4G066AC02B
4G066AC07A
4G066AC07B
4G066AC12B
4G066AC17B
4G066AC21B
4G066BA03
4G066BA09
4G066BA12
4G066BA28
4G066BA36
4G066CA01
4G066CA46
4G066CA47
4G066CA51
4G066CA54
4G066DA11
(57)【要約】
本発明は、局所炎症性疾患及びその帰結、特にCRSを予防及び治療する方法及び組成物に関する。本発明に係る局所的に使用される組成物は、グリセロールに結合されており、かつ少なくとも1つの炎症誘発性化合物に更に結合することができる二重作用性ポリマーを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予防又は治療を必要とする対象において、局所炎症性疾患及びその帰結の予防又は治療のために局所的に使用される組成物であって、グリセロールに結合されており、かつ少なくとも1つの炎症誘発性化合物に結合することができる少なくとも1つの二重作用性ポリマーを含む、組成物。
【請求項2】
サイトカイン放出症候群の前記予防又は治療のために使用される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの炎症誘発性化合物が、マトリックスメタロプロテアーゼ、ヒスタミン、サイトカイン、細胞受容体、金属イオン、免疫グロブリン、又はウイルス性糖タンパク質からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記局所炎症性疾患が、ウイルス感染症、鼻副鼻腔炎、創傷及び潰瘍、乾癬、湿疹、皮膚炎、アレルギー、喘息、汚染誘発性呼吸器疾患、汚染誘発性局所性傷害、消化管潰瘍、痔核、生殖器感染症、眼アレルギー、結膜炎、並びに眼炎症からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの二重作用性ポリマーの総量が、前記組成物の総重量の0.01重量%から5重量%まで、好ましくは前記組成物の総重量の0.01重量%から3.5重量%までの範囲である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
ハチミツ、プロポリス抽出物、キサンタンガム及び/又はアカシアガム等の植物性ガム、及び精油からなる群から選択される少なくとも1つの成分を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
鎮痛薬、抗生物質、抗炎症薬、抗ヒスタミン薬、血管拡張薬、気管支拡張薬、抗浮腫薬、特異的な局所受容体結合性化合物、又は精油等の少なくとも1つの医薬を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、皮膚表面、眼粘膜表面、結膜表面、角膜表面、口腔表面、鼻表面、消化管表面、呼吸器表面、又は生殖器表面等の傷害生体表面及び/又は炎症性生体表面上に局所適用される、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、スプレー、チューブ、アンプル、液体が埋め込まれた綿絆創膏若しくはポリマー絆創膏、顆粒、粉末、又はソフトジェルカプセル中で提供される液体、吸入剤、液体絆創膏、溶液、ジェル、クリーム、ペースト、又は軟膏として投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つの二重作用性ポリマーが、天然、半合成、及び/又は合成のものである、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つの二重作用性ポリマーが、植物又は植物部分から得られるタンニンである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記成分及び/又は前記医薬を前記組成物のポリマー連結物中に捕捉させ、前記成分及び/又は前記医薬を持続放出させて、前記組成物の治療特性が更に高められている、請求項6又は7に記載の組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の組成物を得る方法であって、
グリセロールを成分及び/又は医薬と混合する工程と、次に、
少なくとも1つの二重作用性ポリマーを加えて、前記成分及び/又は前記医薬の周辺にグリセロール-二重作用性ポリマーの網目を形成する工程と
を含む、方法。
【請求項14】
前記成分及び/又は前記医薬が、1つ以上の精油である、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、薬理学及び医学の分野に関する。より詳細には、本発明は、免疫、感染性、外傷性、又は中毒性の局所障害を有する対象において、局所的炎症及びその帰結を最小限に抑えることができる新規の組成物及びマルチターゲット治療アプローチに関する。本発明はまた、サイトカイン放出症候群を治療する又はその発生を予防する新しい組成物及び方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
皮膚損傷及び粘膜損傷は、ほぼ全て、外傷性、アレルギー性、中毒性、ウイルス性、又は細菌性の起源のいずれのものであろうとも細胞傷害を伴い、これが、免疫系による局部的(local)な炎症応答を引き起こしている。この免疫応答は最初の防御的かつ修復的な応答であり、これは多数の疾患関連の要因、サイトカイン、及びその他のタンパク質の放出を伴う全身反応をもたらし、それによって一般的な症状として局部的な炎症、疼痛、及び浮腫が引き起こされている。病原体(pathogen)と戦うために、免疫細胞、特にB細胞、T細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、樹状細胞、及び単球を含む白血球が活性化されて、感染又は炎症の部位で多数の疾患特有のサイトカインを産生し、急性期に病原体を抑制する。感染が継続すると、一層多くの炎症誘発性サイトカインが放出されて、防御機構として炎症が維持される。疾患(disease)が治癒せずに進行し続けると、一層多くの免疫細胞が活性化し続け、それによって免疫機構全体がストレスを受けて調節不全となり、防御機構として多数の疾患特有のタンパク質及び炎症誘発性サイトカインが突如過度に多量に放出される場合がある。この現象は、サイトカイン放出症候群(CRS)又はサイトカインストーム(CS)として知られており、これは、例えば広範囲にわたる重度の炎症(発赤)を引き起こして、組織傷害、細胞液の滲出、腫れ、痛み、熱、血管外圧、組織灌流の低下、細胞膜完全性の破綻、及び細胞間ギャップの形成につながる。症状発症のタイミング、CRSを誘発するサイトカイン、CRSの重症度及びその帰結は、誘発因子、疾患の位置、及び免疫細胞活性化の大きさに依存するものである。CRSは、冒される器官に応じて、重度の局所的(topical)な炎症及び全身的な炎症、並びに様々な症状を伴う全身性の炎症を引き起こす。局所的な呼吸器感染症の場合、全身性炎症により特に肺が冒されて、肺血管の漏出、肺への液体の貯留、広範囲にわたる浮腫、及び呼吸窮迫が引き起こされることがあり、これらは治療せずに放置すると死を招く可能性がある。CRSに起因する総死亡率は、約40%と推定されている。IL-6は、肺CRSにおいて炎症誘発性サイトカインを誘発する主要なCRSと見なされているが、他のサイトカインが正常値を超えて存在するため、CRSの正確な生理病理は未だ確立されていない。CRSが重要臓器を冒さない場合、病理(pathology)が突然悪化することはあるが、致命的なものではない。
【0003】
本発明は、初期の生理病理的反応として局部炎症を誘発する局所疾患のみに関する。初期の局所病変は、通常、病原因子(pathogenic agent)、アレルゲン、汚染物質、又は細胞機能を妨害する様々な物質によって引き起こされている。鼻及び呼吸器の粘膜、口腔、咽喉表面、皮膚、膣及び肛門の開口部、消化管粘膜、並びに眼表面は、外部からの侵襲によって局所的な細胞傷害が引き起こされる主要な器官であるが、局所的な細胞傷害は、ヘルペスウイルスのような内部の有害な刺激によって生ずることもある。
【0004】
身体のいずれの部分でも、炎症、細胞破壊、及び細胞完全性の破綻を伴う局所疾患が、全てCRSにつながる可能性がある。このような局所疾患としては、例えば、ウイルス性呼吸器感染症、鼻アレルギー及び眼アレルギー、喘息、炎症性呼吸器疾患、眼炎症性障害、乾癬、湿疹、皮膚炎、痔核、慢性創傷、糖尿病性潰瘍及び胃潰瘍がある。
【0005】
CRSは、インフルエンザ及びコロナウイルス関連疾患等の皮膚又は粘膜に関係するウイルス性疾患においてよく見られ、これにより細胞破壊及び慢性炎症が引き起こされている。
【0006】
多くのウイルスは、その表面上に特定の糖タンパク質(Gp)を含む外部カプシドを有する。ウイルス性糖タンパク質としては、例えば、インフルエンザウイルスにおけるH(ヘマグルチニン)及びN(ノイラミニダーゼ)の糖タンパク質、ヘルペスウイルスにおける糖タンパク質C(gC)及びB(gB)、コロナウイルスのCOVID-19、SARS、及びMERSにおけるスパイクS(S1及びS2)の糖タンパク質が挙げられる。ウイルス性糖タンパク質がその相補的な宿主細胞受容体に取り付いた際に感染が始まり、細胞に感染し、侵入して増殖する。多くのウイルスは、宿主の細胞壁を破壊することはできず、局所的に利用可能なタンパク質分解酵素(タンパク質)の助けを借りて細胞に侵入する必要がある。ウイルスは細胞を殺傷し、何百万個もの遊離ウイルス粒子が感染した表面上に放出され、それらは周囲組織で増殖を開始し、新たな細胞に感染する。細胞死は、天然の細胞障壁にギャップの形成をもたらし、他の病原体の全身侵入を可能にする。
【0007】
鼻又は喉のウイルス感染症の場合、ウイルスは、上気道及び下気道の粘膜に進行的に感染し、肺にまで達する。ウイルスの拡散を速やかに阻止しなければ、広範囲の細胞傷害並びに咽喉粘膜及び呼吸器粘膜の炎症につながる。
【0008】
鼻アレルギー及び眼アレルギー、喘息、並びに炎症性呼吸器疾患は、主に、ウイルス感染、アレルゲン、又は汚染物質によって引き起こされている。原因因子は、環境曝露から鼻粘膜、口腔粘膜、又は眼粘膜に入り、局部刺激、炎症、及び細胞傷害を引き起こすことから、粘膜にギャップが生じ、それを通じて炎症性タンパク質が全身循環に入ることがある。これらの器官の粘膜には感覚性TRP受容体(一過性受容体電位型チャネル(Transit Receptor Potential channels))が含まれており、その刺激がTSLP(胸腺間質性リンパタンパク質(Thymic Stromal Lymphoprotein))の産生によって神経性炎症カスケードを引き起こす。炎症カスケード及びアレルゲンカスケードは、樹状細胞及びTH2リンパ球を活性化し、これにより炎症性サイトカイン(例えば、IL-4、IL-6、IL-23、IL-33、TNF-α)の放出に続いて、Bリンパ球の活性化及びIgE抗体の放出がもたらされる。マスト細胞の表面にIgEが結合すると、ヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジン、及びその他のタンパク質の放出が引き起こされ、これらは傷害表面上に局所的に蓄積し始める。炎症の基本的な生理病理は変わらないが、これらのタンパク質の位置、種類、及び濃度は、疾患毎に異なる可能性があり(疾患特有のタンパク質)、それぞれの疾患を治療するのに異なるアプローチが必要とされている。
【0009】
局所炎症を治療せずに放置すると、炎症が粘膜細胞を破壊し、細胞間結合組織の喪失によって細胞間ギャップが生じる。これらの細胞ギャップにより、局所的なタンパク質、サイトカイン、アレルゲン、及び汚染物質の直接的な全身侵入が可能となり、炎症カスケード及び免疫カスケードが維持されることから、慢性炎症、広範囲の細胞破壊、慢性アレルギー、呼吸窮迫、喘息につながり、その後、CRSを引き起こすリスクが高まる。病原体への曝露が遮断されないと、TRPチャネル及びその他の炎症誘発性受容体の感作が止まらず、ヒスタミン、IgE、及びTSLP等の表面サイトカイン及び不所望なタンパク質の濃度は低下せず、細胞ギャップが治癒しないと、疾患は慢性化し、CRSが発生する可能性がより高くなる。
【0010】
また、リツキシマブ、CD19 CAR-T細胞のチサゲンレクルユーセル、TGN1412、すなわちセラリズマブ、並びにムロモナブ-CD3及びアレムツズマブ等の他の免疫系を調節する生物療法薬等の幾つかの薬物が、CRSを誘発し得ることも分かってきている。これらの薬物が免疫系を調節する及び調節不全にする可能性を除き、機構は変わらない。
【0011】
乾癬、湿疹、及び皮膚炎は、成長因子の調節解除により、過剰で制御不能な細胞成長、皮膚の乾燥、及び剥脱が引き起こされる免疫疾患である。皮膚細胞の接着が不十分であると、病変への汚染細菌の侵入が引き起こされ、これらが細胞を破壊し始める。細胞破壊により、表面上に多数の炎症誘発性サイトカインの放出が引き起こされ、疾患が慢性化する。
【0012】
褥瘡及び糖尿病性潰瘍等の慢性創傷は、死細胞、細胞破片、並びに細胞の成長及び創傷修復を妨げる多数のタンパク質分解酵素を含むことに加え、これらの病変が外部環境に曝されたままになり、汚染されることが多いため、治癒するのが極めて困難である。これが、褥瘡、糖尿病性潰瘍、又は静脈性下肢潰瘍等の殆どの慢性創傷が治癒することなく、40%近くの患者が創傷の消退を経る前に死亡する理由である。創傷治癒には細胞成長が必要であり、これには更に、清浄で、化学物質を含まず、炎症がなく、水を含む環境が必要とされる。損傷を清浄化するために、人体は27種類を超える様々なマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)を天然に産生している。これらのタンパク質分解酵素は、タンパク質破片を溶解して、創傷滲出液によって除去され得るより小さな粒子にすることに向けられている。しかし、これらのMMPの一部(MMP2、MMP3、MMP8、MMP9、及びMMP13)は、タンパク質破片だけでなく、コラーゲン、エラスチン、ラミニン、及びヒアルロン酸等の細胞マトリックスを構成するタンパク質も破壊することが目下十分に確立されている。この細胞マトリックスが存在しないと、細胞は付着することができず、成長することもできず、傷を治癒することはできない。
【0013】
痔核には、表面上における特定の痔核性の炎症誘発性サイトカインにより拡張及び炎症を起こした血管が見られる。
【0014】
皮膚粘膜、鼻粘膜、口腔粘膜、胃粘膜、及び呼吸器粘膜、又は眼表面における局所疾患の上述した例は全て、これらが常に細胞破壊及び細胞完全性の破綻を伴うことを示している。集中的及び局所的な細胞破壊は、細菌成長をもたらし、傷害表面上の疾患関連の特定の炎症誘発性サイトカイン(例えば、インターロイキン)及び他のタンパク質(例えば、ヒスタミン、MMP類、IgE)の放出により炎症反応が引き起こされる。さらに、疾患の起源によれば、病変は、ウイルス粒子等の病原体、アレルゲン、汚染物質、ヒ素、水銀、カドミウム、及び鉛等の重金属粒子を含むこともある。
【0015】
残念なことに、CRSが多要因の起源を有するため、現在、CRSの予防又は治療に有効な治療法は存在していない。理想的な治療は、CRSの発生を防ぐためにマルチターゲットでなければならない。それというのも、その治療は、i)有害化合物(汚染細菌、病原体、及び他の全ての汚染物質)を捕捉及び/又は除去することにより、感染表面を清浄化するべきであり、ii)新たな感染に対して感染表面を保護すべきであり、iii)細胞を成長させ、細胞間ギャップを埋めるのに好ましい清浄な環境を提供すべきであるからである。また、その治療は、iv)有害なサイトカイン放出を引き起こすサイクルを止めるか、又は減らし、v)炎症を抑制して、刺激、疼痛、痒み、及び更なる細胞傷害を減らさなければならない。これらの要因のいずれかが適切に対処されなければ、回復は遅れることになり、最悪の場合、サイトカインストームが起こり、死に至る可能性がある。
【0016】
例えば、コロナウイルス感染による肺サイトカイン症候群は、大量のサイトカイン、主にIL-6の突如の放出によって引き起こされ、それにより重度の肺炎症及び浮腫が引き起こされることがある。また、呼吸不全のために死亡に至る可能性がある。肺を冒さない他のCRSは、これらが心臓傷害又は肺傷害を引き起こすことなく炎症を悪化させ、疾患を悪化させるため、明確に検出されることはない。コロナウイルス誘発性肺炎症を治療するには、特定の抗IL-6抗体(トシリズマブ)は有効性が不十分であることが分かっており、未だCRSの予防用に承認されていない。また、高用量コルチコステロイド、体外式血液濾過透析を伴うサイトカインの吸収、抗体が豊富な血漿の輸血、又はクロロキン治療等の他の治療法は、有効性が不十分であることが分かっている。
【0017】
他のCRS抵抗性の対症療法は、炎症(抗炎症薬)、又は汚染微生物(殺菌剤及び抗生物質)、細胞内ウイルス(細胞内で局所的な抗ウイルス薬として作用するタミフルはまだ発見されていない)、疼痛緩和(麻酔薬及び鎮痛薬)、又は或る特定のサイトカインの遮断に対してのみ向けられているため、モノターゲットであり、有効性が不十分である。
【0018】
何世紀にもわたって、タンニンが豊富な植物抽出物は、創傷治癒補助剤として、汚染物質の減少、又は炎症及び疼痛の減少に局所的に使用されてきたが、おそらく植物のタンニンは、ごく僅かな非選択的なタンパク質又はサイトカインにしか結合せず、おそらく治癒に不可欠な良好なタンパク質も阻害するため、その結果は満足いくものではない。
【0019】
損傷表面の清浄化に特化した治療の中で、海水又は塩水うがいは、依然として咽喉の感染症又は炎症に対する最良の対応策の1つと考えられている。これらの浸透圧活性溶液は、咽喉粘膜上に高張被膜を形成し、結果として生じる低張液の外向きの滲出は、咽喉表面又は創傷表面における汚染物質の負荷を減らすのに役立つ。残念なことに、この高張溶液の被膜は、流出する低張液によって数分以内に希釈されることから、その治療の有効性は限定的である。さらに、NaCl濃度(最大3.4%)は、強力な浸透圧性効果を発揮するには浸透能が低い。強い刺激、細胞傷害、粘膜の灼熱感、及び化学物質に誘発される細胞毒性作用が結果として生じるため、この濃度を高めることはできない。
【0020】
特許文献1は、局所適用して浸透圧性液体の流れにより表面的な損傷を清浄化するための高張浸透圧活性組成物の使用を開示している。これらの組成物は、グリセロールと、グリセロールに結合して、生物の生体表面上での保持時間が高められる「被膜生成性グリセロール(filmogen glycerol)」とも呼称される組成物を得ることができる植物タンニンとを含む。このような被膜生成性グリセロール組成物は、損傷表面を清浄化するのに有効な局所剤として使用できる。グリセロール被膜によって及ぼされる浸透圧は、組織の内側部分から低張液を引き寄せ、それによって表面汚染物質を引き離して排出する。傷害表面と入り込む病原体との接触を最小限に抑え、汚染物質の濃度を減らすことにより、細胞成長及び無傷の細胞障壁の形成が刺激される。しかしながら、被膜生成性グリセロール中のタンニンは、グリセロールとの結合のみに向けられており、他の疾患関連の特定のタンパク質又は巨大分子との結合には向けられていない。これは、サイトカイン、他の疾患関連タンパク質等の非常に小さな分子、又は炎症を維持し、治癒プロセスの遅延に重要な役割を担う細胞毒性の巨大分子の減少に対しては全く又は殆ど効果を有しない。これらを浸透圧性液体の流れにより完全に排除することはできないため、ウイルス粒子、炎症性サイトカイン、ヒスタミン、IgE、成長因子、及びその他の小さなタンパク質等の有害分子は、それらの有害効果を及ぼし続ける。本発明者らにより、傷害表面上に放出された数百万個のウイルス粒子又はサイトカインの中で、99%の粒子が浸透圧流によって除去されたとしても、新たな細胞に感染したり、又は炎症性カスケードを維持したりするには、残りの1%で十分であることが観察された。浸透圧活性グリセロール被膜は大量の自由浮遊表面分子を除去するが、これは時間とともに弱まり、及ぼされる浸透圧は長期間にわたって清浄化効率とともに減少する。残りの小さな有害分子は、CRSを引き起こす可能性がある炎症性カスケード、アレルギー性カスケード、及び免疫カスケードを維持し続ける。
【0021】
このように、損傷表面の保護及び清浄化に加えて、疾患特有の炎症誘発性サイトカイン、炎症を引き起こすTRP受容体、タンパク質、病原体、及び/又はその他の有害分子を同時に中和して、炎症を抑制し、CRS及びその帰結のリスクを最小限に制限できるマルチターゲット機構を見つけるという重要な要望が存在している。
【0022】
このような組成物は、完全に安全で、非細胞毒性であり、即効性であり、全身吸収を避けるために局所適用可能であるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】国際公開第2014/194966号
【発明の概要】
【0024】
本発明は、局所炎症、炎症性疾患、及びサイトカイン症候群(CS)又はサイトカイン放出症候群(CRS)と呼ばれるサイトカインの制御不能な放出等のそれらの帰結を予防又は治療する新しいマルチターゲット治療アプローチを提供する。本発明は、CRSの惹起に関与する多数の標的に対して作用し、人間又は動物の対象において使用され得る組成物及び方法に関する。
【0025】
本発明は、予防又は治療を必要とする対象において、局所炎症性疾患及びその帰結の予防又は治療に局所的に使用される、グリセロールに結合されており、かつ少なくとも1つの炎症誘発性化合物に結合することができる少なくとも1つの二重作用性ポリマー(dual acting polymer)を含む組成物に関する。
【0026】
一実施形態にて、組成物は、サイトカイン放出症候群の予防又は治療に局所的に使用される。
【0027】
一実施形態にて、少なくとも1つの炎症誘発性化合物は、マトリックスメタロプロテアーゼ、ヒスタミン、サイトカイン、細胞受容体、金属イオン、免疫グロブリン、又はウイルス性糖タンパク質からなる群から選択される。
【0028】
一実施形態にて、局所炎症性疾患は、ウイルス感染症、鼻副鼻腔炎、創傷及び潰瘍、乾癬、湿疹、皮膚炎、アレルギー、喘息、汚染誘発性呼吸器疾患、汚染誘発性局所性傷害、消化管潰瘍、痔核、生殖器感染症、眼アレルギー、結膜炎、並びに眼炎症からなる群から選択される。
【0029】
好ましい一実施形態にて、少なくとも1つの二重作用性ポリマーの総量は、上記組成物の総重量の0.01重量%から約5重量%まで、好ましくは上記組成物の総重量の0.01重量%から3.5重量%までの範囲である。
【0030】
別の好ましい一実施形態にて、組成物は、ハチミツ、プロポリス抽出物、キサンタンガム及び/又はアカシアガム等の植物性ガム、及び精油からなる群から選択される少なくとも1つの成分を更に含む。
【0031】
別の一実施形態にて、組成物は、鎮痛薬、抗生物質、抗炎症薬、抗ヒスタミン薬、血管拡張薬、気管支拡張薬、抗浮腫薬、特異的な局所受容体結合性化合物、又は精油等の少なくとも1つの医薬を更に含む。
【0032】
一実施形態にて、組成物は、皮膚表面、眼粘膜表面、結膜表面、角膜表面、口腔表面、鼻表面、消化管表面、呼吸器表面、又は生殖器表面等の傷害生体表面及び/又は炎症性生体表面上に局所適用される。
【0033】
一実施形態にて、組成物は、スプレー、チューブ、アンプル、液体が埋め込まれた綿絆創膏若しくはポリマー絆創膏、顆粒、粉末、又はソフトジェルカプセル中で提供される液体、吸入剤、液体絆創膏、溶液、ジェル、クリーム、ペースト、又は軟膏として投与される。
【0034】
一実施形態にて、少なくとも1つの二重作用性ポリマーは、天然、半合成、及び/又は合成のものである。
【0035】
別の一実施形態にて、少なくとも1つの二重作用性ポリマーは、植物又は植物部分から得られるタンニンである。
【0036】
別の一実施形態にて、成分及び/又は医薬を上記組成物のポリマー連結物中に捕捉させ、成分及び/又は医薬を持続放出させて、組成物の治療特性が更に高められている。
【0037】
本発明はまた、グリセロールに結合された少なくとも1つの二重作用性ポリマーを含む組成物であって、そのポリマーに成分及び/又は医薬を持続放出するように捕捉させて、組成物の治療特性が更に強化されている、組成物を得る方法に関する。本発明に係る方法は、
グリセロールを成分及び/又は医薬と混合する工程と、次に、
少なくとも1つの二重作用性ポリマーを加えて、成分及び/又は医薬の周辺にグリセロール-二重作用性ポリマーの網目を形成する工程と、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】(A)グリセロールを含む4種の二重作用性ポリマー:P.ジンセン(P. ginseng)+C.シネンシス(C. sinensis)+C.ロンガ(C. longa)+U.ディオイカ(U. dioica);(B)グリセロールのGCMSプロファイル。グリセロールは、340のpAで31分から32分の間で単一ピークとして検出される;(C)P.ジンセン単独;(D)C.シネンシス単独;(E)C.ロンガ単独;(F)U.ディオイカ単独。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明において、「炎症性局所疾患」又は「局所炎症性疾患」は、病理的症状が皮膚、口腔、上気道及び下気道を含む鼻腔、咽喉表面及び/又は眼表面、生殖器腔、肛門開口部、並びに消化管(GI)粘膜等の器官表面又は体表面上に現れるあらゆる炎症性疾患を示す。
【0040】
本発明において、「多要因性疾患」は、共に作用し合って疾患の発生を引き起こす要因が多数存在することを意味する。全ての局所疾患において、炎症が慢性化すると、免疫反応の過剰な活性化により、病変が多数の炎症誘発性サイトカイン及び抗炎症性サイトカイン並びにその他のタンパク質であふれ、それにより広範囲にわたる組織破壊が引き起こされる可能性がある。例えば、局所的なアレルギー反応においては、細胞傷害、多数の炎症性サイトカイン、TSLP、ヒスタミン、IgE抗体、及びアレルゲンのアレルギー表面上での存在が見られ、これらがアレルギー反応の継続を助長する。サイトカインに関与する局所的な多要因性疾患は、例えば、ウイルス性及び細菌性の咽喉感染症、副鼻腔炎、咳、アレルギー性鼻炎及び汚染誘発性鼻炎、喘息、生殖器感染症、慢性の皮膚潰瘍及び皮膚創傷及び粘膜潰瘍及び粘膜創傷、痔核等の局所的な血管病理、並びに眼炎症性疾患である。疾患関連のサイトカイン及びそれらの濃度は、感染症の種類、損傷の場所、関与する細胞の種類、及び組織傷害の程度によって異なる場合がある。したがって、本発明による局所炎症性疾患を、(1)慢性の皮膚創傷及び粘膜創傷、(2)鼻、口腔、生殖器、及び皮膚の炎症性疾患、(3)呼吸器疾患、(4)ウイルス性疾患、(5)眼疾患の5つのカテゴリに大別できる。
【0041】
一実施形態にて、局所炎症性疾患は、ウイルス感染症、鼻副鼻腔炎、創傷及び潰瘍、乾癬、湿疹、皮膚炎、アレルギー、喘息、汚染誘発性呼吸器疾患、汚染誘発性局所性傷害、消化管潰瘍、痔核、生殖器感染症、眼アレルギー、結膜炎、並びに眼炎症からなる群から選択される。
【0042】
本発明において、CRSの予防又は治療は、局所炎症性疾患に関与する多数の要因の予防又は治療を意味する。CRSを引き起こす炎症性閾値を最小限に抑えるには、これら全てのCRSを引き起こす要因を同時に減らすか、又は遮断するかのいずれかを行わなければならない。したがって、主要な要因は、原因との接触を止めること、炎症表面を清浄化して細胞成長を刺激し、同時に炎症誘発性のトリガ、つまり特定のサイトカイン、他のタンパク質、細胞表面受容体、又は巨大分子(CPRM)の濃度を最小限に抑えることによって、天然の粘膜バリア機能を再確立することにある。本発明において、「炎症誘発性化合物」及び「CPRM」は両方とも、タンパク質、細胞表面受容体、巨大分子、アレルゲン、及び金属イオン等の汚染物質、並びに局所炎症反応に関連する他の化合物を示すのに使用される。
【0043】
本発明において、「中和」及び「遮断」は、標的分子がその機能を発揮することができないように、その部位から排出するか、又は他の分子に結合させるかのいずれかによる標的分子の活性の喪失を示す。
【0044】
本発明の目的は、最小限に抑えることを必要とする対象において、局所炎症及びCRSの惹起の見込みを最小限に抑えるのに局所的に使用される、一方でグリセロールに結合されており、かつ1つ以上のCPRMと結合することができる少なくとも1つの二重作用性ポリマーを含む組成物に関する。二重作用性ポリマーは、グリセロールと結合するだけでなく、1つ以上の炎症誘発性の化合物、受容体、又は有害分子にも結合できる。
【0045】
グリセロール又はグリセリンは、高沸点、粘性、無色、無臭の吸湿性で甘みのある溶液である。これは浸透圧性が高く、半透膜を通して低張液を引き寄せる能力を有する。これは、それぞれがヒドロキシル基に共有結合した3つの炭素原子の3つの基本骨格を有するトリヒドロキシ糖アルコール分子である。
【0046】
多数の遊離ヒドロキシル基及び炭素原子が存在すると、1,2,3-プロパントリオールのIUPAC名を有する有機ポリオール化合物となる。グリセロールの3つのヒドロキシル基は、多くの有機酸と反応してエステルを形成でき、高分子物質と反応して、巨大分子を形成できる。
【0047】
グリセロールはそれほど刺激性ではないが、高濃度では敏感な組織が刺激される可能性がある。したがって、組成物中のグリセロールの濃度は、特定の局所的病理を治療するのに必要とされる水和特性及び清浄化特性の必要性、並びに組成物が適用される生体組織の感受性に基づいて選択され得る。例えば、咽頭炎は、微生物が咽喉表面に強く付着した重度の細菌感染症を伴うことが多いことから、汚染物質を引き離し排出するのに強力な浸透圧力が必要となる。咽喉表面は刺激に対して感受性が低いため、被膜生成性グリセロール中のグリセロール濃度は高かった(50%を上回る)。鼻副鼻腔炎を治療するのに、鼻粘膜は体内で最も敏感な器官であるため、グリセロールの濃度を低く保った(30%を下回る)。より高濃度のグリセロール及びグリセロール結合タンニン又はポリマーとともに少ない添加剤(水)を含む組成物は、低濃度のグリセロールと比較して、機械的応力に対して耐久力のある薄膜を形成する。強力な清浄化活動を必要とする局所損傷の場合に、グリセロール濃度は高かったが(99%まで)、敏感な傷害表面及びより低い浸透圧性清浄化を必要とする表面には低濃度を使用した。
【0048】
本発明によれば、局所的に使用される組成物はまた、二重作用性ポリマーを含む。全てのポリマーは、天然又は合成のいずれであっても、特定のタンパク質(サイトカイン、ヒスタミン、IgE等)と結合するだけでなく、巨大分子、アレルゲン、重金属粒子、金属イオン、アミノ酸、及びアルカロイドを含む他の様々な有機化合物とも結合する強力な能力を有する。ポリマータンパク質又はポリマー巨大分子の結合は、あらゆるポリマーがあらゆる分子と結合することはできないため特異的であるが、これらは、そのサイズが大きいため、一度に2つ以上の分子と結合できる。本発明に係る「二重作用性ポリマー」は、グリセロール分子と結合すると同時に、更に、1つ以上の特定のCPRM、すなわちIL-6等の特定のサイトカイン、IgE等の他のタンパク質、TRP受容体等の細胞表面受容体、又はAs、Pb、Hg等の巨大分子と結合する能力を有するポリマーである。特定のCPRM又は金属イオンを遮断できるポリマー又はポリマーの会合物(association)が損傷に直接適用されると、それはグリセロール分子に付着せず、被膜生成性グリセロールの一部ではないため浸透圧性液体の流れによって素早く排出されることから、この特定の特徴は不可欠である。したがって、グリセロール分子と結合するだけでなく、1つ以上の疾患関連の炎症誘発性CPRMとも結合する能力を有する天然、半合成、又は合成のポリマーのみが二重活性を発揮できる。傷害表面にCPRMのみを結合するポリマーを適用すると、これは、幾らかのタンパク質を遮断できるが、グリセロールの保護効果及び病変清浄化効果は見られない。このような場合、細胞は成長せず、病原体が体内に侵入し続け、炎症が持続することになる。
【0049】
下記表1に、好ましい炎症誘発性化合物(CPRM)の例をいくつか記載する。
【0050】
【表1】
【0051】
好ましい一実施形態にて、本発明に係る二重作用性ポリマーは、マトリックスメタロプロテアーゼ、ヒスタミン、サイトカイン、TRP受容体、金属イオン、免疫グロブリン、及びウイルス性糖タンパク質からなる群から選択される少なくとも1つの化合物に結合できる。
【0052】
一実施形態にて、二重作用性ポリマー(複数の場合も含む)は、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、腫瘍壊死因子、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、及び成長因子からなる群から選択される少なくとも1つのサイトカインに結合できる。
【0053】
汚染物質は、不所望な効果を有する又は資源の有用性に悪影響を及ぼす環境に導入される、重金属粒子(As、Cd、Hg、及びPb)等の細胞毒性分子又は巨大分子を含む車両の排気ガス等の物質である。したがって、一実施形態にて、二重作用性ポリマー(複数の場合も含む)は、ヒ素、カドミウム、鉛、及び/又は水銀から選択される少なくとも1つの金属イオンに結合できる。
【0054】
マトリックスメタロプロテイナーゼ又はマトリキシンとしても知られるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は、タンパク質分解による損傷の清浄化に関与し、細胞成長の調節だけでなく、あらゆる種類の細胞外マトリックスタンパク質の分解にも関与するタンパク質分解酵素である。これらはまた、幾つかの生体活性分子のプロセシング、細胞表面受容体との相互作用、アポトーシス性リガンドの放出、ケモカイン/サイトカインの不活性化、細胞遊走(接着/分散)、分化、血管新生、アポトーシス、及び宿主防御にも関与している。
【0055】
一実施形態にて、二重作用性ポリマー(複数の場合も含む)は、MMP-1、MMP-2、MMP-3、MMP-8、MMP-9、MMP-13から選択される少なくとも1つのマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)に結合できる。
【0056】
別の一実施形態にて、二重作用性ポリマー(複数の場合も含む)は、少なくとも1つの細胞表面受容体、好ましくはTSLP放出TRP受容体等の一過性受容体電位(TRP)チャネルの受容体に結合できる。
【0057】
組成物中の二重作用性ポリマーの濃度は、天然、合成、又は半合成のいずれであろうと、可能な限り低くすべきであり、被膜の形成及びそれらのCPRM結合能力を妨げるレベルを超過すべきではない。したがって、一実施形態にて、二重作用性ポリマー(複数の場合も含む)の総含有量は、組成物の総重量の約0.01重量%から約5重量%まで、好ましくは組成物の総重量の約0.01重量%から約3.5重量%まで様々である。特定の一実施形態にて、二重作用性ポリマー(複数の場合も含む)の総含量は、組成物の総重量の2.0重量%未満である。そのような濃度では、被膜生成性グリセロールの浸透圧活性を維持することが可能である。さらに、組成物に使用されるポリマーの濃度は、使用される濃度で細胞毒性であるべきではない。
【0058】
国際公開第の質、量、及び会合は、局所適用部位及び損傷表面の状態に応じて変更することができる。
【0059】
合成ポリマーは、例えば、ポリエチレン、合成ゴム、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ[イミノ(1,6-ジオキソヘキサメチレン)イミノヘキサメチレン](Nylon-66(商標))、ポリテトラフルオロエチレン(Teflon(商標))、アクリル繊維(例えば、Orlon(商標))、ナトリウム塩でのカルボキシメチルセルロース(CMCNa、カルメロースとも呼称される)、ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)、ポリアクリルアミド(PCM)、ポリアクリル酸ナトリウム(SPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、Pluronic F-127(PL127)、Klucel-ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、及び/又はSolagum(アカシアガム及びキサンタンガムの会合物)である。ポリマーは非常に大きな分子であり、体内に吸収され得ないため、合成ポリマーであっても局所適用に使用できる。
【0060】
タンニン等の天然ポリマーは、300Daから3000Daまでの、更には最大30000Daの範囲のモル質量を有する植物材料中に見られる高分子フェノール化合物である。一実施形態にて、天然の二重作用性ポリマーは、タンニンが豊富なあらゆる植物又は植物部分から得られる。植物又は植物部分からの天然ポリマーの抽出方法は、例えば、参考文献Dang Xuan Cuong et al.(2019)に示されるマセレーション技術、ソックスレー技術、又はパーコレーション技術による抽出のように、当該技術分野においてよく知られている。
【0061】
合成又は半合成の二重作用性ポリマーは、化学的に調製されるか、又は天然ポリマーから化学的に改変される。
【0062】
本発明に係る合成、半合成、又は天然の二重作用性ポリマーは、遮断せねばならない特定の疾患関連の炎症誘発性CPRMに応じて組み合わせて使用され得る。
【0063】
本発明に係る二重作用性ポリマーを得るには、最初に非細胞毒性ポリマーを選択し、次に、グリセロール及び1つ以上の炎症誘発性化合物(CPRM)に結合するその能力を検証する。ポリマーがグリセロールに結合できるかどうかを最初に確認し、ポリマーがグリセロールと結合するのであれば、更に、1つ以上の疾患特有のCPRMに結合するかどうかを確認するか、又はその逆を確認する。当技術分野においては、ポリマーがグリセロール及び1つ以上のCPRMに結合できることを検証する幾つかの方法がある。
【0064】
ポリマーがグリセロールに結合する能力を確認する方法の一例は、ポリマー単独の1回目のGC/HPLCプロファイルを実行し、それをポリマーとグリセロールとの組合せの2回目のGC/HPLCプロファイルと比較することである。GCプロファイル又はHPLCプロファイルを、当該技術分野においてよく知られる方法を用いて得ることができる。1回目のプロファイルが2回目のプロファイルと異なる場合に、ポリマーがグリセロール分子に結合したことを意味する。100%のグリセロール分子と結合することができるポリマーの最小濃度を選択して、CPRM結合を評価する。
【0065】
疾患特有のCPRM結合を評価する技術はCPRMの種類に応じて選択される。例えば、ELISAイムノアッセイは、サイトカイン又はタンパク質受容体とのポリマーの結合を評価するのに適合性が良い。金属イオン結合は、50%細胞毒性濃度のヒ素又はカドミウム等の1つ以上の金属イオンとともにポリマー(複数の場合も含む)をインキュベートし、続いて特定の細胞培養物においてインキュベーション前後の細胞毒性の差を比較することによって評価され得る。毒性が低下した場合に、CPRMがポリマーに結合していると推定できる。ポリマー(複数の場合も含む)によるウイルスの中和を評価するには、ポリマー(複数の場合も含む)を、既知の細胞毒性濃度の特定のウイルス(例えば、インフルエンザ、ヘルペス、コロナウイルス)とともにインキュベートし、続いてポリマーウイルスの会合物をin vitroでウイルス感受性細胞に曝露できる。ポリマーとインキュベートしていないウイルスコントロールと比較したポリマーとインキュベートした混合物の細胞毒性の減少はウイルスの中和を示している。100%のウイルスを中和するのに必要とされるポリマー(複数の場合も含む)の濃度を定量化できる。in vitro実験又は免疫学的実験が不可能である場合に(例えば、Hgのような揮発性金属の場合)、CPRMを、感受性の動物モデル(例えば、ラット、マウス、モルモット)に経口的又は局所的に投与することができ、ポリマー供給のパラメータとポリマー非供給のパラメータとの毒性の差を定量化できる。CPRM単独と比較したCPRM-ポリマー(複数の場合も含む)関連の毒性の低下は、ポリマー結合によるCPRMの中和を示すはずである。CPRM中和製剤の有効性を、動物モデル又はヒト臨床試験において検証できる。
【0066】
したがって、治療する炎症性局所疾患に応じて、したがって関与するCPRM(複数の場合も含む)に応じて、何千種もの既存の天然、半合成、又は合成ポリマーから、二重作用性があり、かつ本発明により適しているものを選択することが可能である。
【0067】
増粘剤及びゲル化剤を本発明に係る組成物に更に組み込んで、特に環境汚染物質(例えば、アレルゲン-花粉、金属イオン、汚染)が生体表面(例えば、鼻粘膜)を攻撃し続ける局所的病理において、被膜の厚さ及び吸収能力を高めることができる。組成物はまた保存剤も含み得る。一実施形態にて、本発明に係る組成物は、ハチミツ、プロポリス抽出物、キサンタンガム及び/又はアカシアガム等の植物ガム、並びに精油又はソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、及びクエン酸等の保存剤の群において選択される安定剤からなる群から選択される少なくとも1つの増粘成分/ゲル化成分を更に含む。
【0068】
細胞成長用の環境を作るには、細胞毒性ではない物質を細胞に優しい濃度でのみ使用することも重要である。
【0069】
一実施形態にて、本発明に係る組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容可能な添加剤を更に含む。
【0070】
一実施形態にて、本発明に係る組成物は、鎮痛薬、抗生物質、抗炎症薬、抗ヒスタミン薬、抗ウイルス薬、血管拡張薬、気管支拡張薬、抗浮腫薬、特異的な局所受容体結合性ポリマー、及び精油等の少なくとも1つの医薬を更に含む。
【0071】
適切な鎮痛薬は、例えば、サリチル酸、パラセタモール、モルヒネ、CGRP阻害剤若しくはcox-2阻害剤、アセトアミノフェン、NSAID、又はトリプタンである。
【0072】
適切な抗生物質は、例えば、ベータラクタム類、アミノグリコシド類、テトラサイクリン類、グリシルサイクリン類、マクロライド類、アザライド類、ケトライド類、シナジスチン類(synergistins)、リンコサニド類(lincosanides)、フルオロキノロン類、フェニコール類、リファマイシン類、スルファミド類、トリメトプリム類、グリコペプチド類、オキサゾリジノン類、ニトロミダゾール類、及びリポペプチド類である。
【0073】
適切な抗炎症薬は、例えば、サリチレート及びその塩、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナメート、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、ロフェコキシブサルサレート、スリンダク、トルメチン、バルデコキシブ、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、アルドステロン、コルチゾール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、コルチコステロン、チキソコルトール、シクレソニド、プレドニカルベート、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアルコール、モメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン-17-バレレート、ハロメタゾン、アルクロメタゾン、ベタメタゾン、プレドニカルベート、クロベタゾン-17-ブチレート、クロベタゾール-17-プロピオネート、フルオコルトロン、フルオコルトロン、フルプレドニデンアセテート、デキサメタゾンである。
【0074】
適切な抗ヒスタミン薬は、例えば、セチリジン、ブロムフェニラミン、クロルフェニラミン、クレマスチン、フェキソフェナジン、ロラタジンである。
【0075】
適切な血管拡張薬は、例えば、ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、モエキシプリル、キナプリル、ペリンドプリルである。
【0076】
適切な気管支拡張薬は、例えば、β-2アゴニスト、抗コリン作動薬、及びテオフィリンである。
【0077】
適切な抗浮腫薬は、例えば、フロセミド等の利尿薬及び局所抗炎症薬である。
【0078】
適切な特定の局所的受容体結合性化合物の薬物は、例えば、ロシグリタゾン、カプサイシン、塩化ジフェニレンヨードニウム、リノピルジン、並びに類似のアゴニスト及びアンタゴニストである。
【0079】
適切な精油は、例えば、メンサ・ピペリタ(Mentha piperita)精油、ユーカリプタス・グロブルス(Eucalyptus globulus)精油、ロスマリヌス・オフィシナリス(Rosmarinus officinalis)精油、タイム・サツレオイデス(Thymus satureioides)精油、リナム・ウシタチシマム(Linum usitatissimum)油、シトラス・リモナム(Citrus limonum)精油、及びこれらの組合せである。
【0080】
グリセロールを少なくとも1つの二重作用性ポリマーと混合することによって、本発明に係る組成物を得ることができる。一実施形態にて、本発明に係る組成物の治療能力を更に高めるには、二重作用性ポリマーを、成分若しくは医薬を更に結合させるか、又は捕捉したままにして徐放(slow release)させるか、又は有効性を高めるように製剤化することもできる。
【0081】
別の一実施形態にて、少なくとも1つの成分及び/又は医薬を、二重作用性ポリマーに結合させずに、それを組成物のポリマー連結物の間に捕捉されたままにして持続放出させ、組成物の治療特性を更に高める。好ましくは、上記少なくとも1つの成分及び/又は医薬は、少なくとも1つの精油である。
【0082】
本発明はまた、そのような組成物を得る方法であって、1)グリセロールを成分及び/又は医薬と混合する工程と、次に、2)少なくとも1つの二重作用性ポリマーを加える工程とを含む、方法に関する。
【0083】
好ましい一実施形態にて、上記方法は、1)グリセロールを少なくとも1つの精油と混合することと、次に、2)少なくとも1つの二重作用性ポリマーを加えることとを含む。
【0084】
本発明に係る局所的に使用される組成物は、液体又は半液体の組成物である。これらの液体又は半液体の製品を、スプレー、チューブ、アンプル、液体が埋め込まれた綿絆創膏若しくはポリマー絆創膏、又はソフトジェルカプセル中で提供される液体、吸入剤、絆創膏、溶液、ジェル、クリーム、ペースト、又は軟膏として局所的に適用して、製品の被膜での標的表面の被覆をもたらすことができる。この被膜は、浸透圧性効果を発揮し、表面の保護、水和、及び清浄化を継続するだけでなく、二重作用性ポリマーを通じて選択されたCPRMの中和を継続するのに、損傷の表面上に接触したままにしなければならない。
【0085】
経口製剤は、液体を収容するソフトジェルカプセルとして、又は許容可能な基剤中にグリセロール及びポリマー会合物を含む半固体粉末若しくは顆粒として投与され得る。その際、特定の一実施形態にて、本発明に係る組成物は、対象への単回投与又は反復投与のために、粉末又は顆粒を含む液体剤形又は半液体剤形において製剤化される。別の一実施形態にて、本発明に係る組成物は、スプレー、チューブ、アンプル、液体が埋め込まれた綿絆創膏若しくはポリマー絆創膏、顆粒、粉末、又はソフトジェルカプセル中で提供される液体、吸入剤、絆創膏、溶液、ジェル、クリーム、ペースト、又は軟膏として投与される。損傷表面を含酸素状態に保つために、損傷を保護する絆創膏は気密性であるべきではない。
【0086】
より一般的には、これらの医薬製剤は、通常、粘性溶液を収容するスプレー又はチューブのような単一の包装において別個の治療期間中に使用される、幾つかの投与単位を含む「患者用パック(patient packs)」において、又はスプレー、エアロゾルボトル、サシェ、若しくはカプセル等の計量単位用量を投与する他の手段において患者に処方される。本発明は更に、上記製剤に適した包装材料と組み合わせた本明細書で上記した医薬製剤を含む。
【0087】
本発明に係る組成物を、皮膚、眼表面、口腔表面、鼻表面、消化管表面、呼吸器表面、又は生殖器表面の粘膜等の傷害生体表面及び/又は炎症性生体表面に局所適用して、局所炎症性疾患及びその帰結を予防又は治療することができる。
【0088】
したがって、本発明は、局所炎症性疾患及びその帰結を予防又は治療する方法に関する。好ましい帰結はCRSである。したがって、本発明は、CRSを予防又は治療する方法に関する。
【0089】
本発明による局所炎症性疾患を予防又は治療する方法は、グリセロールに結合されており、かつ少なくとも1つの炎症誘発性化合物に結合することができる少なくとも1つの二重作用性ポリマーを含む組成物を、予防又は治療を必要とする対象に局所投与することを含む。
【0090】
本発明による療法は、あらゆる他の療法と組み合わせて行われ得る。医師が療法の効果を注意深く観察し、必要とされるあらゆる調整を行うことができるように、自宅、医院、診療所、病院の外来部門、又は病院で療法が提供され得る。
【0091】
療法の期間は、治療される疾患の病期、患者の年齢及び状態に依存する。
【0092】
投与量、投与頻度、及び投与方式は、治療される疾患の病期及び局在、患者の年齢及び状態、並びに病変が位置する表面の感受性に依存する。
【実施例
【0093】
[実施例1]:二重作用性天然ポリマーの選択
グリセロールと結合できるポリマーのみを選択して、炎症誘発性化合物及び疾患特有のサイトカイン及び/又は他のタンパク質及び/又は細胞表面受容体及び/又は巨大分子(CPRM)とのそれらの結合特性を評価した。さらに、それらの細胞毒性能力を評価して、CPRM結合濃度が非細胞毒性であり、かつ許容可能な医薬形態で使用できるかどうかを確認した。中和されるサイトカイン、他の疾患関連の特定のタンパク質、巨大分子、又は金属イオンの疾患特有の局所的濃度に従って、天然ポリマーを各標的分子に対して試験した(各タンパク質についてのELISA試験、ウイルスカプシドタンパク質中和についての細胞培養物ウイルス中和試験、ポリマー金属イオンのin vitroでのインキュベーションに続くin vitroでの細胞毒性又は金属イオンのin vivo血中濃度、及び各MMPへの細胞マトリックスの曝露に続くin vitroでの細胞成長からの創傷治癒試験)。次いで、最大の疾患関連のCPRMを等しく結合及び中和できる、最小濃度の各グリセロール結合性ポリマー又はそれらのポリマーの最良の会合物をグリセロールと会合(associated with)させて、被膜生成性グリセロールに局所適用の際の長期安定性を付与した。
【0094】
(A-天然ポリマー(タンニン)の調製)
植物全体(WP)、葉(L)、花(Fl)、果実(F)、種子(S)、樹皮(B)、又は根(R)の形のタンニンが豊富な81個の植物部分を使用して、マセレーション(M)、ソックスレー(S)、又はパーコレーション(P)の技術によってタンニンが豊富な抽出物を調製し、タンニンが豊富な画分を収集し、これを液体抽出物として使用するか、又は更に乾燥させて粉末として使用した。抽出法は当業者に知られている。手短に言えば、ソックスレーによってタンニンが豊富な画分を抽出するには、乾燥試料(2.5g)を、ソックスレー装置(MS-EAM M-TOP、インドネシア)を備えたセルロース円筒濾紙(33mm×80mm)(Whatman、GE Healthcare、英国)に詰めて、250mLのエタノールで80℃にて10時間(1時間当たり1サイクル)抽出した。0.2gの乾燥葉粉末を20mLのエタノールが入った密閉された50mLのガラス管に充填した後に、150rpmで室温(30℃±5℃)にて24時間振盪することによってマセレーションを行った。同様に、使い捨てシリンジ(0.5cmの直径及び10cmの高さ)(ニプロ株式会社、日本)内にパーコレーションカラムを形成した。1セットは、0.2mLの床容量を得るのにシリンジに詰められた0.1gの葉の粉末であった。10mLをロードした流出液を、真空マニホールド(12ポート Teknokrama、スペイン)によって0.1mL/分~0.2mL/分で制御された流速にて画分として収集した。全ての液体抽出物をWhatmanの4番濾紙を通して濾過し、容量を埋め合わせて蒸発分を補った。次いで、抽出物を蒸発させ、60℃で乾燥させて乾燥粉末を得た。全ての試料を、きつい栓を備えた個別の琥珀色のガラス瓶において分析まで4℃で保管した。
【0095】
可溶性又は部分的に可溶性の全抽出物を分析し、植物特有の有効成分を定量化して、植物を特定した。次いで、これらの抽出物を、組成物の調製、並びに完成した組成物の更なる薬理学的評価、分析的評価、安全性評価、及び臨床的評価に使用した。
【0096】
(B-合成又は半合成のポリマーの選択)
合成ポリマーは、Maria-Fraga et al.(2020)に記載のように天然のタンニン基部から合成できるか、又は所望の結合プロファイルに従って化学的に合成できる。合成タンニンは、Sigma Aldrich等の販売元から購入できる。グリセロールを有し、かつCPR又はMの1つに対する結合親和性を有する8つの主要な二重作用性ポリマー構造物を以下に示す(表2)。これらを結合特異性に従って0.01%(重量/重量)から5.0%(重量/重量)の間の非細胞毒性濃度で様々な組成において使用した。下記表2に8つの合成ポリマーを列挙する。
【0097】
【表2】
【0098】
二重作用性であり、体内に吸収されず、局所的にのみ作用する合成ポリマーだけを、単独で又は他の天然ポリマー若しくは半合成ポリマーと組み合わせて、組成物に使用した。
【0099】
(C-細胞毒性試験)
それぞれの合成ポリマー又は天然ポリマーの最大非細胞毒性濃度を、ATCC細胞培養コレクションから購入した3つの異なる細胞培養物(MDBK細胞系統、MDCK細胞系統、Chang Liver細胞系統)においてin vitroで評価した。すなわち、細胞を96ウェル培養プレート(90μLのMEM+10%のウシ胎児血清)において成長させて、100%の細胞単層を得た。培養培地を廃棄し、0.1%(重量/重量)、0.3%(重量/重量)、1.0%(重量/重量)、2.0%(重量/重量)、及び5.0%(重量/重量)の濃度の各試験ポリマーを含む無血清MEMによって置き換えた。細胞死亡率を、72時間の曝露後に生細胞の数を数えることにより評価した。細胞に効果を示さない最大試験品濃度を、非細胞毒性と見なした。2.0%以上の濃度で細胞毒性を示さない試料だけを保持して、グリセロール及び特定のCPRMの結合活性を評価した。
【0100】
(D-最終組成物におけるポリマー/タンニン濃度の選択)
粉末化ポリマー/タンニンの殆どを最終組成物に5.0%(重量/重量)未満の濃度で組み込むことができることが観察された。より高い濃度では、組成物は半固体、固体、又は不透明になり、これは浸透圧性被膜として局所適用することができなかった。したがって、全ての試験品を、0.01%、0.03%、0.10%、0.20%、0.30%、1.0%、2.0%、及び3.0%の濃度で試験した。
【0101】
抗タンパク質活性を、以下の炎症性疾患及び局所疾患に特有のCPRMについて評価した:ヒスタミン、IgE、TRP、TSLP、TNF-α、IFN-γ、TGF-β、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-23、IL-25、IL-33、MMP-1、MMP-2、MMP-3、MMP-8、MMP-9、及びMMP-13。
【0102】
1つ以上の疾患特有の炎症誘発性化合物(CPRM)と結合する能力を有するあらゆる二重作用性の天然ポリマー又は合成ポリマーを、組成物に使用できた。試験されたポリマーの約15%が1つ以上のCPRMとの結合を示した。例えば、一般的に使用される食品グレードの植物抽出物の中で、81種の天然ポリマーのうちの以下の14種のみが選択的な抗CPRM活性を示した:マセレーション(M)の技術により抽出されたヴァシニアム・マクロカーポン(Vaccinium macrocarpon)(Vma)果実抽出物(F)(Vma-F-Mと略記される);カメリア・シネンシス(Camellia sinensis)の葉(Cs-L-M);ヴィティス・ヴィニフェラ(Vitis vinifera)の種子(Vv-S-P);サンブカス・ニグラ(Sambucus nigra)の果実(Sn-F-M);ヘデラ・ヘリックス(Hedera helix)の葉(Hh-L-M);リベス・ニグルム(Ribes nigrum)の果実(Rn-F-M);クルクマ・ロンガ(Curcuma longa)の根茎(Cl-R-P);パナックス・ジンセン(Panax ginseng)の根(Pg-R-M);グリシン・マックス(Glycine max)の種子(Gm-S-M);ウルティカ・ディオイカ(Urtica dioica)の植物全体(Ud-WP-M);アルテミシア・アヌア(Artemisia annua)(Aa)、カレンデュラ・オフィシナリス(Calendula officinalis)(Cao-Fl-M);サリックス・アルバ(Salix alba)の植物全体(Sa-WP-M);及びタナセタム・パルテニウム(Tanacetum parthenium)の花(Tp-Fl-M)。これらを、精製して、精製せずに液体として、又は粉末化抽出物として、薬学的に許容可能な非細胞毒性濃度で使用した。
【0103】
[実施例2]:グリセロール結合性タンニンの選択
HPLCによってグリセロールを検出することはできなかった。このため、GC-MS(ガスクロマトグラフィ質量分析法)を用いてグリセロールを特定した。グリセロールは、340のpAで31分から32分の間で単一のピークとして検出され得た(図1-B)。
【0104】
グリセロール-ポリマーの結合を確認するために、個々のポリマーのHPLCプロファイル及び/又はGC-MSプロファイルをグリセロール+ポリマーのプロファイルと比較した(図1)。得られた2つのクロマトグラフィプロファイルは、ポリマー及び/又はグリセロールのピークを示さずに、組成物に組み込まれた全てのポリマーがグリセロールと完全に結合していることを示す、全く異なるクロマトグラムを示していた。
【0105】
次いで、グリセロール結合性ポリマー/タンニンを評価して、これらの特定のCPRPM結合特性を特定した。
【0106】
(A-ポリマー/タンニンのサイトカイン及び他のタンパク質の結合特性の評価)
81種の非細胞毒性のポリマー/タンニンが豊富な抽出物の抗タンパク質活性を、各タンパク質についてのELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)イムノアッセイを使用して評価した。簡潔には、ELISAアッセイは、ペプチド、タンパク質、抗体、成長因子、及びホルモンを検出及び定量化するように設計されたプレートベースのアッセイ技術である。サンドイッチELISAは、2層の抗体(つまり、捕捉抗体及び検出抗体)間で抗原を定量化する。少なくとも2つの抗体がサンドイッチにて作用するため、測定される抗原は、抗体に結合できる少なくとも2つの抗原性エピトープを含まなければならない。酵素には検出抗体が連結されており、基質とともにインキュベートして測定可能な生成物を生成することを介してコンジュゲートされた酵素の活性を評価することにより、検出を達成した。
【0107】
下記表3に、結果を示す。この表は、薬理学的に許容可能な濃度でのグリセロールに結合されたポリマーの疾患関連のタンパク質、巨大分子、及び/又は金属イオンの結合特性(コントロールに対する%阻害)を示している。Conc.は、試験されたポリマー濃度であり、Sは、合成タンニンであり、EGFは、上皮成長因子であり、FGFは、線維芽細胞成長因子であり、MMPは、マトリックスメタロプロテアーゼであり、-は、非実施である。
【0108】
グリセロール結合性ポリマーの平均の疾患関連のタンパク質の結合特性。結果は、2つの最も活性の高い非細胞毒性濃度での3つの試験の平均を表す。
【0109】
ELISA試験を使用するグリセロール結合性タンニンの平均の疾患関連のタンパク質の結合特性。グリセロール結合濃度の各試験品を30%のグリセロール溶液に導入して試験した。結果は、各試験品の二重結合特性の有無を示す。結果は、81種の天然ポリマー又は合成ポリマーの2つの最も活性の高い非細胞毒性濃度での3つの試験の平均を表す。以下に、二重作用性ポリマー(グリセロール+疾患関連の炎症誘発性化合物(CPRM)の1つ)の結果を示す。
【0110】
【表3-1】
【0111】
【表3-2】
【0112】
【表3-3】
【0113】
【表3-4】
【0114】
結論:81種の選択された天然又は合成のグリセロール結合性ポリマーのタンパク質、巨大分子、又は金属イオンの結合特性をELISAによって様々な濃度で評価した。結果を、組成物を調製するのに使用される0.5%未満の濃度について表す。81種の試験品の中で、15種の天然試料及び5種の合成試料が1つ以上のタンパク質、巨大分子、又は金属イオンの20%超の阻害を示した。結果は以下のことを示している。(1)二重作用性ポリマーのタンパク質、巨大分子、又は金属イオンの結合は、全てのポリマーが全ての分子と結合しないため、非常に特異的である。(2)1つの二重作用性ポリマーは2つ以上のタンパク質と結合する場合がある。(3)中和される疾患特有のタンパク質、巨大分子、又は金属イオンに応じて、二重作用性ポリマーは薬理学的に許容可能な濃度で会合されて、アンタゴニスト効果が最大化した。
【0115】
(B-タンニンのウイルス糖タンパク質の結合特性の評価)
主要な天然ポリマー又は合成ポリマーの抗ウイルス活性を、ウイルス誘導細胞死を定量化することによりin vitroの細胞培養物で決定した。ヘルペスウイルスについてはベロ細胞を、インフルエンザウイルスについてはMDCK宿主細胞培養物を96ウェル組織培養プレートにおいて成長させた(37℃-5%のCO)。72時間で100%の細胞死(組織培養感染量:TCID100)を誘導できる最小ウイルス濃度を、560nmでの光学密度を測定するMTT生活細胞染色を使用して決定した。0.10%から0.30%の間の濃度の27種の非細胞毒性のグリセロール結合性ポリマーを、0.9%のNaCl溶液又は30%の被膜生成性グリセロールとともに別個に1時間インキュベートし、宿主細胞培養物に72時間曝露し、ウイルス誘導細胞死を測定した。細胞死の減少は、ポリマーウイルスカプシドタンパク質の結合と、その結果としてのウイルスの中和によるものであった。次いで、抗ウイルス活性を示すポリマーを互いに会合させ(それぞれ0.10%)、実験を繰り返した(n=3;1実験当たり16個のウェル)。結果を、未処理のウイルスコントロール(TCID100)と比較したウイルス成長の増加(+)又は減少(-)の%として表す。
【0116】
下記表4に、結果を示す(Vma=ヴァシニアム・マクロカーポン、Vmy:ヴァシニアム・ミルティラス(Vaccinium myrtillus)、Vv=ヴィティス・ヴィニフェラの種子、Sn=サンブカス・ニグラ、Hh=ヘデラ・ヘリックス、Rn=リベス・ニグルム、Cl=クルクマ・ロンガ、Co=カレンデュラ・オフィシナリス、Ud=ウルティカ・ディオイカ、Cs=カメリア・シネンシス、CMCNa=カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、PL127=Ploronic F-127、HPC=ヒドロキシプロピルセルロース)。成長の減少(-)は、ウイルス阻害%に比例する。
【0117】
【表4】
【0118】
最初の実験の後に、32種のポリマー及びそれらの会合物のうち12種が、インフルエンザ(H1N1)ウイルス又はヘルペスウイルスに対して中程度から強力な抗ウイルス活性を示した。二重作用性ポリマーは、Vma、Vmy、Vv、Sn、Hh、Rn、Cl、Co、Ud、Cs、CMCNa、PL127、及びHPCであった。
【0119】
結果は、以下のことを示した:(1)32種のポリマーのうち12種だけが5%を上回るウイルスを中和した。(2)ヘルペスウイルスを中和する幾つかのポリマーはインフルエンザウイルスに対して有効ではなかったため、抗ウイルス活性は特異的である。(3)幾つかの特定のポリマーの会合物は、個々のポリマーに対してより有効である。(4)抗ウイルスポリマーを被膜生成性グリセロールとともにプレインキュベートした場合に、抗ウイルス活性ははるかに強力である。(5)被膜生成性グリセロールは、おそらくポリマーウイルスの結合部位をより良い配置で提示することにより、抗ウイルス活性を高める。
【0120】
(C-金属イオンの結合特性の評価)
これらの研究の目的は、in vitroで3つの異なる細胞系統に対して、2つの異なる濃度の天然タンニン又は合成タンニンとの事前のインキュベーションをする場合又はしない場合の、ヒ素(As)及びカドミウム(Cd)の金属イオンの結合及び中和を評価することであった。細胞系統は、ウシ腎臓のMDBK(マディン-ダービーウシ腎臓)上皮細胞系統、CHANG LIVER:肝臓ヒト細胞系統、及びHeLa(ヒト子宮頸癌不死細胞系統)であった。
【0121】
カドミウム(CdCl)及びヒ素(NaAsO)をSigma(英国)から購入した。金属を、10-4から10-7の間のストック溶液濃度の様々な濃度で培養培地(MEM)に混合した。次いで、10μLのこの溶液を90μlの培養培地に加えて、試験用の最終濃度を得た。観察された細胞毒性の結果に従って、濃度を更に精査して、50%に近い細胞死(±4.0%)を誘発する濃度を特定した。As及びCdの50%細胞死濃度(CT50濃度)を決定したら、これらの濃度を更なる実験に(ポリマーと混合するために、又はポジティブコントロールとして)使用した。
【0122】
(D-金属イオン-ポリマーの結合)
グリセロールを含む組成物中の様々な濃度の各ポリマーを、CT50濃度の金属イオンとともに37℃にて1時間インキュベートし、細胞系統に曝露した。金属がポリマーによって結合されると、これらは細胞毒性を及ぼすことができない。細胞毒性の減少(n=3、1つの濃度当たり最低8個のウェル)を決定した。減少%は、金属イオンの%中和に比例する。
【0123】
7つのポリマー組成物(Cl、Vmy、CMCNa、HPC、Hh、Ud、及びCs)は、最大60%の金属イオンを中和することが判明した。様々なポリマー会合物を調製したところ、最大90%の金属を遮断した。これらのポリマー(複数の場合も含む)を、重金属の中和を必要とする局所用組成物に使用した。
【0124】
水銀(Hg)は揮発性金属であり、ラットにおいてHg-ポリマーの結合を決定した。全ての主要なポリマー及びそれらの会合物を試験した。1つのラットの群(1群当たり6+6)には1mg/kgのHgを与え、第2の群には4mg/kgのHgを与え、第3の群には4mg/Hg及び300mg/kgの二重作用性ポリマー(複数の場合も含む)を与え、第4の群には、二重作用性ポリマー(複数の場合も含む)-Hgの会合物(複数の場合も含む)を室温で1時間プレインキュベートしたことを除いて、第3の群と同様に与えた。14日間の反復投与後に動物を屠殺し、血液中のHg蒸気の量を測定した。ポリマー会合物の1つ(Cl+Hh)を用いると、群2のHgコントロールと比較して、第3の群の動物は血液中に31.26%少ないHgを示し、第4の群の動物は血液中に94.30%少ないHgを示した。これらの結果は、Hgも特定のポリマー及びポリマー会合物を用いて中和できることを示している。
【0125】
(特定の局所疾患の治療用の二重作用性組成物の概念)
全ての組成物は、グリセロールとともに、1つ以上の二重作用性ポリマー/タンニン、すなわち、グリセロール(被膜生成性グリセロール)及び1つ以上の疾患特有のCPRMと結合できるポリマー/タンニンを含む。
【0126】
喉用スプレー剤を、成人用では30mLのアルミニウム容器に充填し、小児用では20mLのアルミニウム容器に充填し、そこには局所適用のためのスプレーが取り付けられていた。用法・用量:咽喉表面に3回~4回の噴霧を1日2回~3回、最大14日間行う。
【0127】
鼻炎、汚染アレルギー、及び副鼻腔炎の治療用の点鼻スプレー剤を、大人用及び小児用では15mLのプラスチック容器に充填し、そこには局所適用のためのスプレーが取り付けられていた。用法・用量:鼻腔面に3回~4回の噴霧を1日2回~3回、最大14日間行う。アレルギー治療を、アレルゲンへの曝露中に(対症療法)又はアレルゲンへの曝露の15分前に(予防治療)必要に応じて適用した。
【0128】
皮膚、創傷、痔核、ヘルペス、及び生殖器感染症に対して局所適用される製品を、10mL又は50mLのプラスチックチューブに充填した。病変の表面に応じて、傷害表面上に製品の薄膜を形成するのに十分な量を1日5回~6回、損傷表面上に直接適用した。
【0129】
胃潰瘍を治療するのに、5mLの製品溶液を1日4回、最大14日間経口投与した。
【0130】
消化管炎症を治療するのに、2つの高分子抽出物を含む10%の被膜生成性グリセロールを添加剤としてのイスパキュラ種子外被と混合し、粉末を5gのサシェに充填した。同じ組成物を顆粒剤としても製剤化した。5gの製品を1日1回、1ヶ月間経口投与し、これを必要に応じて繰り返した。
【0131】
内痔核を治療するのに、1gの粘性の製品をゼラチン坐剤に充填し、朝に1つの坐剤及び夜に1つの坐剤として連続6週間投与した。
【0132】
被膜生成性グリセロールとともに精油を含む皮膚感染症の治療用の局所用ゲル剤も、ロールオンアプリケータが取り付けられた30mLのガラスバイアルに充填した。この製品を1日2回、最大1ヶ月間適用した。
【0133】
全ての組成物は、グリセロールを被膜生成性にすると同時に1つ以上の疾患特有のCPRMと結合する二重作用性の天然又は合成の特定のCPRM結合性ポリマーを含んでいた。
【0134】
幾つかの組成物には、匂いを改善する添加剤として非常に少量の精油を加えた。
【0135】
局所炎症性疾患の治療において有益な効果を示す、本発明による組成物の幾つかの例を以下に示す:
【0136】
咽喉感染症の治療に特に適した、グリセロール(74.94%)、ハチミツ(13.57%)、水(10.76%)、ヴィティス・ヴィニフェラ抽出物(0.44%)、サンブカス・ニグラの抽出物(0.29%)。
【0137】
咽喉感染症の治療に特に適した、グリセロール(74.94%)、水(16.76%)、ハチミツ(7.57%)、CMCNa(0.30%)、サンブカス・ニグラ抽出物(0.43%)。
【0138】
咽喉痛の治療に特に適した、グリセロール(62%)、水(31.19%)、ハチミツ(6%)、HPC(0.15%)、PL127(0.35%)、PEG(0.23%)、メンサ・ピペリタ精油(0.02%)、ユーカリプタス・グロブルス精油(0.02%)、ロスマリヌス・オフィシナリス精油(0.02%)、タイム・サツレオイデス精油(0.02%)。
【0139】
咽喉痛及び咽喉炎症の治療に特に適した、グリセロール(62%)、水(36.62%)、ヘデラ・ヘリックス抽出物(0.96%)、リベス・ニグルム抽出物(0.36%)、メンサ・ピペリタ精油(0.02%)、ロスマリヌス・オフィシナリス精油(0.02%)、タイム・サツレオイデス精油(0.02%)。
【0140】
湿性咳の治療に特に適した、グリセロール(49.20%)、水(50.68%)、PCM(0.02%)、クルクマ・ロンガ抽出物(0.08%)、ユーカリプタス・グロブルス精油(0.02%)。
【0141】
乾性咳の治療に特に適した、グリセロール(40%)、水(50.43%)、ハチミツ(8%)、カレンデュラ・オフィシナリス抽出物(0.5%)、ユーカリプタス・グロブルス精油(0.02%)、リナム・ウシタチシマム油(0.05%)、プロポリス抽出物(1%)。
【0142】
鼻感染症(鼻副鼻腔炎)の治療に特に適した、グリセロール(37.37%)、水(62.04%)、ヴァシニアム・マクロカーポン抽出物(0.13%)、カメリア・シネンシス抽出物(0.23%)、ヴァシニアム・ミルティラス抽出物(0.13%)、サンブカス・ニグラ抽出物(0.1%)。
【0143】
鼻感染症(鼻副鼻腔炎)の治療に特に適した、グリセロール(26.14%)、水(73.2%)、HPC(0.5%)、メンサ・ピペリタ精油(0.04%)、ユーカリプタス・グロブルス精油(0.04%)、ロスマリヌス・オフィシナリス精油(0.04%)、タイム・サツレオイデス精油(0.04%)。
【0144】
鼻感染症(鼻副鼻腔炎)の治療に特に適した、グリセロール(26%)、水(73.02%)、HPC(0.5%)、ヴァシニアム・マクロカーポン抽出物(0.07%)、カメリア・シネンシス抽出物(0.13%)、ヴァシニアム・ミルティラス抽出物(0.07%)、SPA(0.21%)。
【0145】
鼻感染症(鼻副鼻腔炎)の治療に特に適した、グリセロール(9.8%)、水(89.317%)、Solagum(0.5%)、リベス・ニグルム抽出物(0.05%)、クルクマ・ロンガ抽出物(0.08%)、メンサ・ピペリタ精油(0.05%)、ユーカリプタス・グロブルス精油(0.05%)、ロスマリヌス・オフィシナリス精油(0.05%)、タイム・サツレオイデス精油(0.05%)、保存剤(0.053%)(ソルビン酸カリウム(0.025%)、安息香酸ナトリウム(0.025%)、クエン酸(0.003%))。
【0146】
アレルギー性鼻炎の治療に特に適した、グリセロール(2%)、水(96.9%)、Solagum(0.5%)、カメリア・シネンシス抽出物(0.09%)、クルクマ・ロンガ抽出物(0.08%)、パナックス・ジンセン抽出物(0.06%)、ウルティカ・ディオイカ抽出物(0.1%)、シトラス・リモナム精油(0.05%)、保存剤(0.22%)(ソルビン酸カリウム(0.1%)、安息香酸ナトリウム(0.1%)、クエン酸(0.02%))。
【0147】
汚染誘発性アレルギーの治療に特に適した、グリセロール(3%)、水(95.84%)、HPC(0.55%)、ヴァシニアム・ミルティラス抽出物(0.1%)、ヘデラ・ヘリックス抽出物(0.13%)、クルクマ・ロンガ抽出物(0.07%)、メンサ・ピペリタ精油(0.08%)、保存剤(0.23%)(ソルビン酸カリウム(0.1%)、安息香酸ナトリウム(0.1%)、クエン酸(0.03%))。
【0148】
汚染及びアレルゲンによって誘発される呼吸器症状の治療に特に適した、グリセロール(9.8%)、水(89.15%)、PL127(0.25%)、HPC(0.25%)、カメリア・シネンシス抽出物(0.08%)、クルクマ・ロンガ抽出物(0.07%)、ウルティカ・ディオイカ抽出物(0.08%)、タナセタム・パルテニウム抽出物(0.1%)、保存剤(0.22%)(ソルビン酸カリウム(0.1%)、安息香酸ナトリウム(0.1%)、クエン酸(0.02%))。
【0149】
小児における咽喉感染症の治療に特に適した、グリセロール(74.63%)、水(11%)、ハチミツ(13.58%)、ヴィティス・ヴィニフェラ抽出物(0.44%)、サンブカス・ニグラ抽出物(0.29%)、グリシン・マックス抽出物(0.06%)。
【0150】
小児における咽喉感染症及び咽喉痛の治療に特に適した、グリセロール(74.63%)、ハチミツ(6%)、水(18.54%)、ヴィティス・ヴィニフェラ抽出物(0.44%)、サンブカス・ニグラ抽出物(0.29%)、リベス・ニグルム抽出物(0.1%)。
【0151】
小児における咳の治療に特に適した、グリセロール(53%)、水(41.81%)、ハチミツ(4.5%)、リベス・ニグルム抽出物(0.36%)、クルクマ・ロンガ抽出物(0.08%)、シトラス・リモナム精油(0.02%)、保存剤(0.23%)(ソルビン酸カリウム(0.1%)、安息香酸ナトリウム(0.1%)、クエン酸(0.03%))。
【0152】
小児における鼻感染症の治療に特に適した、グリセロール(13%)、水(85.96%)、HPC(0.5%)、ヴァシニアム・マクロカーポン抽出物(0.07%)、ヴァシニアム・ミルティラス抽出物(0.07%)、サンブカス・ニグラ抽出物(0.05%)、リベス・ニグルム抽出物(0.13%)、保存剤(0.22%)(ソルビン酸カリウム(0.1%)、安息香酸ナトリウム(0.1%)、クエン酸(0.02%))。
【0153】
小児におけるアレルギー性鼻炎の治療に特に適した、グリセロール(4%)、水(94.87%)、Solagum(0.6%)、ヴァシニアム・マクロカーポン抽出物(0.1%)、PVOH(0.1%)、パナックス・ジンセン抽出物(0.06%)、タイム・サツレオイデス精油(0.03%)、シトラス・リモナム精油(0.02%)、保存剤(0.22%)(ソルビン酸カリウム(0.1%)、安息香酸ナトリウム(0.1%)、クエン酸(0.02%))。
【0154】
口腔潰瘍の治療に特に適した、グリセロール(67.04%)、水(1.15%)、ハチミツ(31.41%)、キサンタンガム(0.08%)、ヴァシニアム・マクロカーポン抽出物(0.16%)、ヴァシニアム・ミルティラス抽出物(0.16%)。
【0155】
胃潰瘍の治療に特に適した、グリセロール(67.04%)、水(1.15%)、ハチミツ(31.41%)、キサンタンガム(0.08%)、ヴァシニアム・マクロカーポン抽出物(0.16%)、ヴァシニアム・ミルティラス抽出物(0.16%)。
【0156】
化学療法誘発性口腔粘膜炎の治療に特に適した、グリセロール(73.85%)、水(11.94%)、ハチミツ(13.6%)、ヴァシニアム・マクロカーポン抽出物(0.28%)、ヴァシニアム・ミルティラス抽出物(0.33%)。
【0157】
外傷による感染性口腔粘膜炎の治療に特に適した、グリセロール(66.15%)、水(25.50%)、ハチミツ(5.85%)、ヴァシニアム・マクロカーポン抽出物(1.5%)、ヴァシニアム・ミルティラス抽出物(1.30%)、アルテミシア・アヌア(0.70%)。
【0158】
慢性創傷の治療に特に適した、グリセロール(66.52%)、水(1.54%)、ハチミツ(31.44%)、キサンタンガム(0.08%)、カメリア・シネンシス抽出物(0.26%)、ヴァシニアム・ミルティラス抽出物(0.16%)。
【0159】
眼アレルギーの治療に特に適した、グリセロール(7.70%)、水(91.56%)、HPC(0.60%)、ヘデラ・ヘリックス抽出物(0.04%)、クルクマ・ロンガ抽出物(0.20%)、タナセタム・パルテニウム(0.08%)。
【0160】
眼の乾きの治療に特に適した、グリセロール(21.0%)、水(78.20%)、Solagum(0.50%)、ヴァシニアム・マクロカーポン抽出物(0.14%)、ヴァシニアム・ミルティラス抽出物(0.16%)。
【0161】
糖尿病性網膜症の治療に特に適した、グリセロール(13.6%)、水(86.0%)、PL127(0.25%)、タナセタム・パルテニウム抽出物(0.14%)、パパイヤ-フォリウム・エリオボトリャエ(Folium Eriobotryae)ガム抽出物(0.01%)。
【0162】
眼結膜炎の治療に特に適した、グリセロール(7.70%)、水(91.97%)、HPC(0.20%)、ウルティカ・ディオイカ抽出物(0.05%)、ヴィティス・ヴィニフェラ種子抽出物(0.08%)。
【0163】
汚染誘発性の赤目及びブドウ膜炎の治療に特に適した、グリセロール(16.5%)、水(83.28%)、CMCNa(0.12%)、タナセタム・パルテニウム抽出物(0.08%)、クルクマ・ロンガ根抽出物(0.01%)、メンサ・ピペリタ精油(0.01%)。
【0164】
性器ヘルペスの治療に特に適した、グリセロール(97.72%)、水(1.79%)、ヴァシニアム・マクロカーポン抽出物(0.16%)、サンブカス・ニグラ抽出物(0.33%)、クエン酸(適量)(pH4~5)。
【0165】
口唇ヘルペスの治療に特に適した、グリセロール(74.56%)、水(2.6%)、ハチミツ(21.97%)、キサンタンガム(0.16%)、カメリア・シネンシス抽出物(0.21%)、ヴィティス・ヴィニフェラ抽出物(0.32%)、サンブカス・ニグラ抽出物(0.18%)。
【0166】
乾癬、湿疹、及び皮膚炎の治療に特に適した、グリセロール(75.02%)、水(3.12%)、ハチミツ(20.92%)、キサンタンガム(0.08%)、ヴァシニアム・マクロカーポン抽出物(0.11%)、カメリア・シネンシス抽出物(0.43%)、ヴィティス・ヴィニフェラ抽出物(0.32%)。
【0167】
外痔核の治療に特に適した、グリセロール(64.70%)、水(34.61%)、CMCNa(0.10%)、ヴァシニアム・マクロカーポン抽出物(0.18%)、ヴィティス・ヴィニフェラ抽出物(0.36%)、メンサ・ピペリタ精油(0.05%)。
【0168】
内痔核の治療に特に適した、グリセロール(97.33%)、水(1.56%)、ヴァシニアム・マクロカーポン抽出物(0.23%)、ヴィティス・ヴィニフェラ抽出物(0.36%)、メンサ・ピペリタ精油(0.02%)、リナム・ウシタチシマム油(0.5%)。
【0169】
感染性眼損傷の治療に特に適した、グリセロール(5.5%)、水(83.28%)、CMCNa(0.12%)、タナセタム・パルテニウム抽出物(0.04%)、アルテミシア・アヌア抽出物(1.46%)。
【0170】
全ての完成した組成物を、使用まで暗所で10℃から40℃の間で貯蔵した。全ての製品を、医薬品又は医療デバイスに適用可能なGMP又はISO13485の規格に従ってフランスで製造した。全ての組成物を、欧州薬局方において提案され、局所適用可能な医療製品に適用可能な方法及び規格に従って試験した。組成物は、容器の材料と生体適合性があり、3年間安定であり、3ヶ月間の使用時安定性を有し、適用後最初の1分間~2分間は眼に僅かに刺激性があり、皮膚には刺激性がなく、突然変異原性又は発癌性がなく、体内に吸収されないため、細胞性相互作用、代謝性相互作用、受容体相互作用、又は免疫学的相互作用が一切なく、5mL/kgの経口用量まで経口で非毒性であり、血液学的パラメータ、血液生化学的パラメータ、尿内パラメータ、器官重量パラメータ、又は細胞内組織学的パラメータに悪影響を及ぼさないことが判明した。
【0171】
細胞破壊、慢性炎症、及び全身性免疫刺激を伴う多要因性の局所疾患はいずれも、CRSを生ずる可能性がある。現在、CRSは治療不能であるため、CRSを引き起こすことにより臨床試験を実施することは困難である。したがって、臨床試験を、治療せずに放置するとCRSを発生しやすい細胞破壊、慢性炎症、及び全身性免疫刺激を伴う疾患に対して実施した。
【0172】
グリセロールとグリセロールのみに結合できるポリマー(複数の場合も含む)とを含む組成物の臨床的有効性を、グリセロールと本発明による二重作用性ポリマー(複数の場合も含む)とを含む組成物の臨床的有効性と比較した。
【0173】
臨床的有効性の比較及び安全性研究を、様々な多要因性の局所的病理を有する患者において実施した。概して、患者を2つの群に分けた。第1の群を、グリセロールのみを結合するポリマーを含むプラセボの「被膜生成性グリセロール」(FG)で治療したのに対して、第2の群を、選択された疾患特有のサイトカイン、タンパク質、又は金属イオン(CPRM)及びグリセロールと結合できる同一濃度の二重作用性の天然ポリマー及び/又は合成ポリマーを含む組成物(DFG)で治療した。二重作用性ポリマー(複数の場合も含む)を含む組成物の有効性が対応するFG組成物と比較してより良好であることは、疾患関連のCPRMの更なる抑制によるCRSの発生の回避を反映している。
【0174】
二重作用性ポリマー(複数の場合も含む)を含む組成物を、上記で提示された35種の組成物の中から選択した。対応するFGの組成は、ポリマーを、疾患に関与するCPRMのいずれとも結合特性を有しない同じ濃度の1つ、2つ、又は3つの植物ポリマーに置き換えたことを除いて、同一であった。1つ目のポリマーを、加水分解型タンニン及び縮合型タンニンが豊富なルブス・フルティコスス(Rubus fruticosus)の果実抽出物によって置き換え、2つ目(存在する場合)を、ピヌス・シルベストリス(Pinus sylvestris)の針葉抽出物によって置き換え、3つ目を、マンギフェラ・インディカ(Mangifera indica)の葉及び樹皮の抽出物によって置き換え、合成ポリマー(存在する場合)を、粉末HPCによって置き換えた。
【0175】
全ての臨床試験を、倫理委員会の承認後にGCP規格に従って実施した。実験の概要及び各組成物について得られた結果を以下に示す。は同じ時点での対応するプラセボと比較した統計的差異を示し(p<0.05)、T0は治療開始直前に行われた観察を示し(M=男性、F=女性)、コントロール:グリセロールと、「被膜生成性グリセロールのコントロール」と呼ばれる「二重作用性」ではない少なくとも1つのポリマーとを含む組成物(=FG)、グリセロールと、「被膜生成性グリセロールを含む二重作用性ポリマー」と呼ばれる本発明による少なくとも1つの二重作用性ポリマーとを含む組成物(=DFG)。
【0176】
[A-試験組成物番号1:(重度の咽喉炎に対する抗ウイルス性及び抗細菌性)]
組成物番号1:グリセロール(74.94%)、ハチミツ(13.57%)、水(10.76%)、ヴィティス・ヴィニフェラ抽出物(0.44%)、サンブカス・ニグラの抽出物(0.29%)。この組成物を、咽喉感染症の治療に特に適したスプレーを備えた30mLのアルミニウム容器に充填した。
【0177】
標的病理:重度の咽喉炎;研究の種類:二重盲検、プラセボ対照、多施設;治療期間:14日間;適用方式:咽喉表面に4回~5回、1日3回~4回噴霧;患者数:群1(FG)=20人;群2(DFG)=30人。
【0178】
パラメータ:咽喉炎症、疼痛、嚥下困難、喉の腫れ、喉の刺激、咽喉表面上の細菌沈着物、及びある場合には副作用に対する効果。
【0179】
結果:咽喉炎症-最初の24時間はFG群において咽喉炎症の平均スコアは変化しなかったが、14日目までは非常に僅かで累進的な減少が観察された。平均スコアは、FG群において4日目及び7日目に4.58及び2.47(開始時は5.36/10)であったのに対し、DFG群においては1.83及び0.22であった。
【0180】
FG群の平均スコアと比較すると、その減少は、DFG群において2日目-3日目-4日目-7日目、及び14日目にそれぞれ20%-40%-60%-80%、及び90%上回っていた。これらの結果は、咽喉炎症に対するDFGの顕著な有益な効果を明確に示しており、これは、より良好なサイトカイン及びウイルスの阻害を示している。
【0181】
咽喉痛:初回適用の1時間後に、平均の咽喉痛スコアは、DFGにおいてFGに対して4.52%減少した。減少は2日目からより速くなり、3日目から4日目の間で大幅に減少した。7日目に、平均疼痛スコアはDFG群において75%減少したのに対して、FG群においては28%減少した。14日目には、疼痛強度はFG群において55%減少したのに対して、DFG群においては93%減少した。
【0182】
他の全てのパラメータについても同様の減少が観察され、ここで、DFGにおいては、回復が2倍速くなり、完了した。どの患者においても副作用は記録されなかった。これらの結果は、DFG組成物がFG単独と比較してより活性であることを立証している。
【0183】
[B-試験組成物番号2(重度の炎症、鼻粘膜の破壊、及び細菌汚染を伴うインフルエンザ感染症の治療用の抗ウイルス性組成物)]
組成物番号2:グリセロール(74.94%)、水(16.76%)、ハチミツ(7.57%)、CMCNa(0.30%)、サンブカス・ニグラ抽出物(0.43%)。この組成物を、咽喉感染症の治療に特に適したスプレーを備えた30mLのアルミニウム容器に充填した。
【0184】
咽喉スワブ中の炎症性サイトカイン、ウイルス粒子の濃度、及び細菌負荷量を定量化することにより重度の咽喉炎症及び細菌成長の治療用の組成物番号2のFGに対する有効性及び安全性を評価する、二重盲検、プラセボ対照、多施設、パイロット研究。
【0185】
治療期間:14日間;適用方式:咽喉表面に4回~5回、1日3回~4回噴霧;患者数:群1(FG)=21人;群2(DFG)=40人。
【0186】
パラメータ:0日目(治療前)、0日目、1日目、3日目、及び7日目に咽喉スワブを収集した。それぞれの時点で、1つのスワブを使用して、5mLの細胞培養培地にスワブを導入し、続いて0.22μmフィルタを通して液体を濾過し、MDCKインフルエンザウイルス感受性細胞培養物に感染させてスワブ中のウイルス量を決定することにより、ウイルスを定量化した。2つ目のスワブを使用して細菌濃度を定量化し、3つ目を使用してウイルス感染症特有のサイトカイン(TNF-α、IL-4、及びIL-6)を定量化した。
【0187】
結果:1日目、3日目、及び7日目(感染後24時間)に以下の結果が観察された:
【0188】
0日目、すなわち24時間後のコントロール培養物における平均細胞死=92.2%(FG群及びDFG群)。
【0189】
FGにおける1日目、3日目、及び7日目のウイルス成長誘発性細胞死は78.6%、71.2%、及び68.4%であったのに対して、DFGにおいては52.3%、26.1%、及び11.3%であった。
【0190】
0日目(24時間)にスワブ中に10/mLの細菌数を有する患者の%:平均コントロール=66.5%
1日目(48時間)、3日目、及び7日目:FG群においては29.7%、21.5%、及び19.6%であったのに対して、DFG群においては16.1%、6.4%、及び0.0%であった。
【0191】
ELISAによるサイトカインの定量化(pg/mL)、治療前の平均濃度:811pg/mL。1日目、3日目、及び7日目:TNF-αについてFG群では:656(±78)pg/mL、542(±44)pg/mL、及び523(±46)pg/mLであったのに対して、DFG群では366(±48)pg/mL、123(±36)pg/mL、及び28(±9)pg/mLであった。
【0192】
開始時(感染0日目、24時間の読み取り)のIL-4濃度は89.5pg/mLであった。1日目(48時間)、3日目、及び7日目には、IL-4濃度は、FG群において94(±13)pg/mL、79(±14)pg/mL、及び71(±15)pg/mLであったのに対して、DFG群においては40(±9)pg/mL、11(±6)pg/mL、及び2.5(±0.5)pg/mLであった。
【0193】
開始時(感染0日目、24時間の読み取り)のIL-6濃度は66.3pg/mLであった。1日目(48時間)、3日目、及び7日目には、FG群において55.2(±7.2)pg/mL、44.2(±6.3)pg/mL、及び48.9(±5.5)pg/mLであったのに対して、DFG群においては12.3(±3.1)pg/mL、2.6(±0.7)pg/mL、及び0.0(±0)pg/mLであった。
【0194】
発熱、咽喉痛、喉の刺痛、及び痒みを含むインフルエンザの他の全ての症状は、治療3日以内にDFG群において平均72%減少したのに対して、FG群において24%減少した。どの患者においても有害効果は見られなかった。
【0195】
これらの結果は、疾患特有のタンパク質を中和する二重特異性のDFG組成物は、多数の要因に同時に作用し、より迅速な回復を助けることを明確に立証している。DFG群における非常に速い回復は、ウイルス濃度の低下、鼻粘膜の治癒、並びに鼻、類洞(sinusoidal)、上気道及び下気道に関与するTNF-α、IL-4、及びIL-6のサイトカイン、すなわちCRSを惹起する要因の大幅な減少によるものと見なされる。
【0196】
[C-試験組成物番号3(乾癬、湿疹、及び皮膚炎の治療用の組成物)]
組成物番号3:グリセロール(75.02%)、水(3.12%)、ハチミツ(20.92%)、キサンタンガム(0.08%)、ヴァシニアム・マクロカーポン抽出物(0.11%)、カメリア・シネンシス抽出物(0.43%)、ヴィティス・ヴィニフェラ抽出物(0.32%)。この組成物を、研究の治療型に特に適した50mLのプラスチックチューブに充填した:乾癬、湿疹、又は皮膚炎(PED)を42日間治療する、FG対DFGに関する組成物番号3による6週間の単盲検比較臨床試験。
【0197】
試験品の組成物番号3、粘性の液体(FG又はDFG)を含む50mLのチューブ。
【0198】
患者数:群1(FG)=51人(29人のM+22人のF);群2:(DFG)=56人(33人のM+23人のF)。
【0199】
適用方式:病変に直接、局所、1日3回で6週間。
【0200】
結果:治療開始時(T0)と比較して、FG群では、2週目から6週目の間に、紅斑、心因性掻痒症、浮腫、毛細血管性出血、病変の乾燥、及び病変の鱗屑の約15%の平均減少が示されたのに対して、DFG群においては同じパラメータの72%の平均減少が示された。FGに対するDFGの統計的有意性=。どの群においても有害効果はなかった。
【0201】
結論:DFGは、紅斑及び心因掻痒症、病変の浮腫、病変の毛細血管性出血、病変の乾燥、痒み、鱗屑、痂皮形成の徴候を大幅に軽減し、治療開始後のちょうど2週目から、治験責任医師及び患者によって評価される生活の質のパラメータを改善する。これらの結果は、単純に病変を保護し、清浄化し、かつ水和するFGが、サイトカイン誘発性細胞成長に対して効果を有しないのに対して、多数の疾患要因に作用する(EGF及びFGFに誘発される制御不能な細胞成長を遮断する)DFGが、疾患症状の治療において4倍~5倍近くの有効性を有することを示している。
【0202】
[D-試験組成物番号4(成人におけるウイルス性鼻副鼻腔炎及び呼吸窮迫の治療用の組成物)]
組成物番号4:グリセロール(26%)、水(73.02%)、HPC(0.5%)、ヴァシニアム・マクロカーポン抽出物(0.07%)、カメリア・シネンシス抽出物(0.13%)、ヴァシニアム・ミルティラス抽出物(0.07%)、SPA(0.21%)。この組成物を、鼻感染症(鼻副鼻腔炎)の治療に特に適したスプレーを備えた15mLのプラスチック容器に充填した。
【0203】
研究の種類:FG対DFGでの21日間、一重盲検、無作為化。
【0204】
試験品組成物番号4。
【0205】
患者数:群1(FG)=45人;群2(DFG):=58人。試験に含まれる患者についての副鼻腔炎重症度スコア(SSS)>10。
【0206】
適用方式:1適用当たり3回~4回、1日2回を最大21日間噴霧。
【0207】
研究されたパラメータ:SSS、抗生物質療法の必要性、CRSの指標となる重度の呼吸器症状の発症。
【0208】
結果:FGスプレーは1週間の治療後に有益であることが立証されたが(平均症状軽減-38%)、DFG治療は症状軽減の速度及び程度に関してFGよりもはるかに大きく、統計的に有意な改善をもたらしたことから、抗生物質療法の必要性はより少なくなる。
【0209】
1日目、3日目、7日目、14日目、及び21日目におけるFG有効性に対する追加のDFG有効性は、(1)鼻づまりについては、-30.55%、-49.54%、-64.13%、-75.14%、及び-87.09%であり、(2)鼻水については、+58.25%、+25.76%、-65.39%、-48.78%、及び-52.25%であり、(3)副鼻腔痛については、-62.81%、-76.02%、-66.72%、-48.97%、及び-55.63%であり、(4)全体的な症状の減少については、-62.1%、-73.09%、-77.46%、-70.05%、及び-83.21%であった。
【0210】
FG群における45人の患者のうち6人が9日目から21日目の間に重度の呼吸器症状を発症し、入院が必要になったのに対して、DFG群において患者はいなかった。FG群における45人の患者のうち22人が抗生物質療法を必要としたのに対して、DFG群においては58人の患者のうち2人がそれを必要とした。3日目からのFGに対するDFGの統計的有意性=。どの群においても有害な薬物関連の効果はなかった。
【0211】
結論:ウイルス性副鼻腔炎は、鼻粘膜上のウイルス粒子及び炎症誘発性サイトカイン、鼻粘膜傷害、並びに重度の呼吸窮迫及びCRSの惹起につながる可能性のある全身性炎症カスケードの存在を伴う。本発明による組成物は、不所望な効果を一切伴わずに、FG単独と比較して鼻副鼻腔炎の症状を軽減するのに有効であるため、CRSを引き起こし得る要因を抑制することが分かった。
【0212】
[E-試験組成物番号5(感染による鼻炎症及び呼吸窮迫の治療用の組成物)]
組成物番号5:グリセロール(9.8%)、水(89.317%)、Solagum(0.5%)、リベス・ニグルム抽出物(0.05%)、クルクマ・ロンガ抽出物(0.08%)、メンサ・ピペリタ精油(0.05%)、ユーカリプタス・グロブルス精油(0.05%)、ロスマリヌス・オフィシナリス精油(0.05%)、タイム・サツレオイデス精油(0.05%)、保存剤(0.053%)(ソルビン酸カリウム(0.025%)、安息香酸ナトリウム(0.025%)、クエン酸(0.003%))。この組成物を、鼻感染症(鼻副鼻腔炎)の治療に特に適したスプレーを備えた15mLのプラスチック容器に充填した。
【0213】
研究の種類:14日間、比較、無作為化、二重盲検、並行群。
【0214】
試験品:組成物番号5。
【0215】
患者:群1(FG)=16人;群2(DFG)=38人。副鼻腔炎重症度スコア(SSS)>10。登録された患者は、重度の呼吸窮迫、強い副鼻腔炎症及び鼻炎症を患っており、呼吸ケアのために入院して、CRSの発生を避けた。
【0216】
パラメータ:鼻副鼻腔炎の重症度及び全体的な症状スコアの変化、すなわち、1日目、2日目、3日目、6日目、14日目、又は回復の日における、ベースラインから初回投与の開始後30分までの鼻漏(前鼻汁)、後鼻漏、鼻づまり、頭痛、顔面痛/圧迫感スコアの合計。抗生物質療法の必要性、呼吸補助、及び1~10のスケールでの総副鼻腔転帰(total sino-nasal outcome)(SNOT)スコア。
【0217】
適用方式:1適用当たり2回~3回、1日3回を最大14日間噴霧。
【0218】
主要なパラメータ:治療開始時(T0)と比較した呼吸器症状の50%の改善、抗生物質療法の必要性、CRS様症状の発症、7日目と比較した0日目の鼻粘液中のIL-6濃度。
【0219】
結果:DFGは、重度の上気道炎症、副鼻腔炎で入院したCRSを起こしやすい患者における鼻副鼻腔炎及び呼吸器症状の症状緩和及び完全に近い緩和について、FGよりもはるかに有効であった。DFGはほぼ確実に、副鼻腔全体にはるかに強い圧力をかけ、それにより、遮られていた副鼻腔の内容物が治療の最初の3日間で開放され、排出された。それというのも、最初の24時間の強い鼻漏により、殆どの臨床的徴候(特に頭痛及び顔面痛)が大幅に減少したからである。治療の1日目から進行性の呼吸窮迫の改善が見られ、DFG群の患者においては、FG群の9日と比較して、4日以内にSNOT症状が50%減少した。FG群において16人の患者のうち9人(56.25%)が抗生物質療法及び/又は抗炎症療法を必要したのに対して、DFG群においては僅か38人中7人(18.42%)しか必要としなかった。14日目に、FG群においては16人中7人(43.75%)の患者で呼吸補助を維持したのに対して、DFG群においては僅か58人中2人(3.44%)しか維持しなかった。0日目(初回治療の前)及び7日目の鼻スワブのIL-6濃度は、FG群において78pg/mL及び42pg/mL(-41.66%)であったのに対して、DFG群においては79pg/mL及び12pg/mL(-82.61%)であった。有害効果を訴える患者はおらず、研究を中止した患者も一切いなかったため、どちらの製品も全く安全なものであり、患者による忍容性は高かった。
【0220】
結論:二重作用性ポリマーを含む組成物は、グリセロールのみを結合するポリマーを含む組成物(FG)と比較してほぼ2倍有効である。本発明に係る組成物を使用して、重度の鼻炎症を抑制し、CRSの発生を回避できる。
【0221】
[F-試験組成物番号6(成人における重度の花粉症誘発性アレルギー性鼻炎の治療用の組成物)]
組成物番号6:グリセロール(2%)、水(96.9%)、Solagum(0.5%)、カメリア・シネンシス抽出物(0.09%)、クルクマ・ロンガ抽出物(0.08%)、パナックス・ジンセン抽出物(0.06%)、ウルティカ・ディオイカ抽出物(0.1%)、シトラス・リモナム精油(0.05%)、保存剤(0.22%)(ソルビン酸カリウム(0.1%)、安息香酸ナトリウム(0.1%)、クエン酸(0.02%))。この組成物を、アレルギー性鼻炎の治療に特に適したスプレーを備えた15mLのプラスチック容器に充填した。
【0222】
二重盲検、無作為化、プラセボ対照、多施設臨床試験を実施して、アレルギー性鼻炎の治療についてのDFGに対するFGの有効性及び安全性を評価した。
【0223】
この試験を、重度のアレルギー性鼻炎(AR)に苦しむ患者において行った。31人の患者を、抗ヒスタミン、抗IgE、抗IL-2、抗IL-4、抗IL-6、及び抗IL-23の二重作用性ポリマーを含むDFGで治療し、15人の患者を、比較製品(CP)としてFGで治療した。両方の製品(15mLのスプレー剤)を1日3回~4回、3週間にわたって鼻粘膜に局所適用した。鼻漏、鼻汁、くしゃみ、及び痒みについての総合的な、反射的及び即時的な鼻症状スコア、並びに眼のスコア(痒み、流涙、発赤)及び救急薬使用スコアを、0(症状なし)から3(重篤な症状)までの採点スケールを使用して-1週目~+3週目の間に毎日評価した。鼻結膜炎の生活の質(RQLQ)アンケートを研究の開始時及び終了時に完了した。FGをDFGと同じように使用した。両群における週平均の結果を、治療開始時(ベースライン)のスコアと2群間で比較した。
【0224】
結果:FGは、アレルギー性鼻炎の症状発現を僅かしか軽減しないことが判明した。1週目、2週目、及び3週目の終わりのベースライン(T0)と比較した平均減少は、総鼻症状スコア(rTNSS)については、それぞれ11.7%、13.6%、及び15.1%であり、総眼症状スコア(rTOSS)については、9.9%、14.5%、及び15.8%であり、投与前の即時的な総眼症状スコア(am-iTOSS、p:非有意:NS)については、4.97%、8.45%、及び10.94%であった。
【0225】
同じ期間中に、FGスコアと比較して、DFG群における減少は、rTNSSについては、37.7%、58.4%、及び73.5%高く、rTOSSについては、38.3%、54.6%、及び64.1%高く、am-iTOSSについては、29.84%、48.91%、及び59.77%高かった(同じ時点でFGに対して全てのパラメータについてp<0.05)。確立された標準的なアンケートを使用して測定された鼻結膜炎の生活の質アンケート(RQLQ)は、DFG群において50.28%改善されたのに対して、FG群においては22.85%改善された。研究期間中に、FG群においては80%の患者が少なくとも1つの救急薬を使用したのに対して、DFG群においては29%しか使用しなかった。どちらの製品も忍容性が高く、不所望な効果を誘発しなかった。
【0226】
結論:アレルギー性鼻炎についての細胞に優しく安全なマルチターゲット治療が一切ない場合に、被膜生成性グリセロール中に特定のCPRM阻害性ポリマーを含む機械的に作用する被膜生成性浸透圧障壁溶液(DFG)を使用することは、新しいアレルゲンの接触を遮断し、鼻粘膜から汚染物質を清浄化し、ヒスタミン及びIgEを中和し、そして炎症性カスケードを止めてCRSの発生を減らすのに非常に有効で安全なアプローチである。
【0227】
[G-試験組成物番号7:(化学療法及び放射線療法によって誘発される口腔粘膜炎(広範囲の組織傷害を伴う重度の口腔及び/又は胃の炎症)の治療用の組成物)]
組成物番号7:グリセロール(73.85%)、水(11.94%)、ハチミツ(13.6%)、ヴァシニアム・マクロカーポン抽出物(0.28%)、ヴァシニアム・ミルティラス抽出物(0.33%)。この組成物を、化学療法誘発性口腔粘膜炎の治療に特に適したスプレーを備えた20mLのアルミニウム容器に充填した。
【0228】
重度の口腔及び胃の炎症を伴い、CRSのため死に至る可能性がある放射線療法及び化学療法によって誘発される口腔粘膜炎の治療に一般的に使用される抗炎症薬及び/又は抗生薬に対するDFGの有効性及び安全性を評価する単一盲検、無作為化、プラセボ対照臨床試験。研究には69人の患者が含まれていた。48人の患者をDFGで治療し、21人にはコントロール群として一般的に使用される経口局所薬で治療した。
【0229】
口腔粘膜炎潰瘍を1日4回~5回、28日間治療した。全体的な粘膜炎の程度、疼痛及び灼熱感の強さ、新しい潰瘍の形成、並びに摂食障害に対する効果を、治療前、初回の製品適用の30分後、並びに1日目、2日目、3日目、4日目、7日目、14日目、21日目、及び28日目に評価した。症状を、或る特定のパラメータについて0(症状なし)~4(重度の症状)又は0~10のスケールで採点した。
【0230】
結果:一般的に使用される薬物治療群と比較して、DFG群は、28日目に口腔粘膜炎(コントロールの場合の2.10/4に対して、DFGにおける0.83/4)、疼痛(コントロールの5.71/10に対して、2.05/10)、口内及び胃の灼熱感(コントロールの場合の5.76に対して、1.92/10)、摂食能力、病変の感染(コントロールの場合の1.95に対して、0.52/4)、及び固形食物の摂取の改善(コントロール群の場合の1.50/4に対して、2.38/4)について大幅により高い改善を示した。新しい潰瘍の形成率は影響を受けなかった。粘膜炎の治療には、潰瘍から汚染物質及び有毒化学物質を同時に排除するだけでなく、健康な細胞成長に有利な環境も作る多数の治療アプローチが必要とされるため、DFGは、標準的な抗炎症薬又は抗細菌薬と比較して、これらの目的の達成に少なくとも3倍~4倍有効であった。
【0231】
[H-試験組成物番号8(成人における重度の慢性咳嗽の治療用の組成物)]
組成物番号8:グリセロール(40%)、水(50.43%)、ハチミツ(8%)、カレンデュラ・オフィシナリス抽出物(0.5%)、ユーカリプタス・グロブルス精油(0.02%)、リナム・ウシタチシマム油(0.05%)、プロポリス抽出物(1%)。この組成物を、乾性咳の治療に特に適したスプレーを備えた30mLのアルミニウム容器に充填した。
【0232】
研究の種類:14日間、無作為化、プラセボ対照、二重盲検、有効性及び安全性研究を、咳止めスプレー剤(30mLのスプレー剤)を4回~5回の噴霧で、1日3回~4回、14日間連続して適用することによって実施した。
【0233】
患者数:FG群における17人に対して、DFG群における37人。
【0234】
パラメータ:主要な転帰を、乾性咳の重症度及び咳の頻度に対する効果、並びに咳関連の生活の質についてのレスター咳アンケート(LCQ)にまとめられている喉の刺激、咽喉痛、咽喉炎症(腫れ、喉の赤み)に対する効果及び関連パラメータの変化として定義した。変化は、治験責任医師(0日目、1日目、及び14日目)又は患者によって、初回治療の直前、5分後、及び2時間後、並びに1日目、2日目、3日目、6日目、9日目、及び14日目に0~10の評定スケール(0は症状がないことを示す)で評価された。
【0235】
結果:FG治療と比較して、DFG治療は、乾性咳の重症度(例えば、9日目:平均スコアはFGにおいて5.8/10であったのに対して、DFGの場合に3.6/10であった)、咳の頻度(9日目:FGにおいて5.3/10に対して、DFGにおいて2.2/10)、喉の刺激(FGにおいて4.8/10に対して、DFGにおいて1.6/10)、咽喉炎症(FGにおいて4.7/10に対して、DFGにおいて0.8/10)の平均スコアにおける即座の大幅な減少を引き起こすとともに、レスター咳アンケートのパラメータを著しく改善した。DFGは、咳の症状の緩和において、FG治療単独と比較して少なくとも2倍~3倍速く、かつ有効であった。DFGは持続的な粘液流動化特性により、炎症及び微生物汚染を大幅に軽減する。治療終了後に、どの患者においてもCRSの症例は見られなかった。
【0236】
[I-組成物番号9(小児における咽喉炎症及び咽喉炎の治療用の組成物)]
組成物番号9:グリセロール(74.63%)、ハチミツ(6%)、水(18.54%)、ヴィティス・ヴィニフェラ抽出物(0.44%)、サンブカス・ニグラ抽出物(0.29%)、リベス・ニグルム抽出物(0.1%)。この組成物を、小児における咽喉感染症及び咽喉痛の治療に特に適したスプレーを備えた20mLのアルミニウム容器に充填した。
【0237】
研究の種類:3歳から15歳の間の小児における炎症性咽喉炎の治療を目的とした組成物番号9の臨床的有効性及び安全性。
【0238】
製品の表示:両方の製品はスプレーを備えた20mLのアルミニウム容器中にある。患者数:群1(FG)=9人;群2(DFG)=20人。適用方式:1適用当たり咽喉表面上に3回~4回、1日4回~5回を最大14日間噴霧。パラメータ:1日目、3日目、6日目、14日目~15日目、又は回復日(いずれか早い方)における咽喉炎症パラメータに対する効果。
【0239】
結果:1日目、2日目、6日目、及び14日目のFG群に対するDFG群における臨床症状の改善(+)又は悪化(-)の%:(1)嚥下困難+11.48%;+42.59%、+74.42%、及び+93.33%;(2)喉の腫れ+5.38%、+30.99%、+52.94%、及び+91.43%;(3)喉の刺激+2.08%、+22.37%、+60.34%、及び+97.18%;(4)咽喉炎症+5.0%、+40.1%、+72.58%、及び+97.37%;並びに(5)咽喉表面上の細菌沈着物:+2.27%(+2時間)、3日目に+41.43%、6日目に+59.09%、そして14日目に+88.89%。
【0240】
咽喉スワブ中の微生物の存在:研究の開始時に、FG群における9人中8人の小児及びDFG群における20人中15人の小児は、細菌の存在について陽性の咽喉スワブを有していた。6日目には、FG群における9人中2人の小児及びDFG群における20人中3人の小児だけが陽性であった。これらの結果は、小児において咽喉炎症を抑制するが追加の有害効果を一切伴わない、FG単独に対するDFGのはるかに強力で迅速な効果を立証している。DFG組成物による2日間の治療直後に優れた抗炎症効果が認められた。
【0241】
[J-試験組成物番号10(小児における乾性咳の治療用の組成物)]
組成物番号10:グリセロール(53%)、水(41.81%)、ハチミツ(4.5%)、リベス・ニグルム抽出物(0.36%)、クルクマ・ロンガ抽出物(0.08%)、シトラス・リモナム精油(0.02%)、保存剤(0.23%)(ソルビン酸カリウム(0.1%)、安息香酸ナトリウム(0.1%)、クエン酸(0.03%))。この組成物を、小児における咳の治療に特に適したスプレーを備えた20mLのアルミニウム容器に充填した。
【0242】
研究の種類:2つの乾性咳の治療組成物の臨床的有効性及び安全性:小児における乾性咳の治療についてのDFG対FG。患者数:群1(FG)=9人;群2(DFG)=20人(3歳から15歳の間の年齢)。適用方式:どちらの製品も15mLのスプレー剤で与え、1適用当たり咽喉表面上に3回~4回の噴霧として、1日4回~5回、最大15日間適用した。パラメータ:1日目の初回適用の2時間後、3日目、6日目、及び15日目の、又は完全に回復するまでの咳の重症度及び頻度、胸の不快感、並びに喉の刺激。
【0243】
結果:2時間後、並びに3日目、6日目、及び15日目のFG組成物に対するDFG組成物の変化の%:(1)咳:0.0%、-45.79%、-89.71%、及び-99.0%。(2)胸の不快感:-3.19%;-47.72%、-75.48%、及び-91.66%;(3)喉の刺激:0.0%、-66.6%、-88.2%、及び-98.0%;(4)生活の質(QOL):研究開始時に、生活の質パラメータの平均スコアは、両方の群において同じに近かった。14日間の治療後に、FG群(23.30)と比較して、DFG群においてQOLが大幅に改善し(平均スコア41.60)、(5)抗生物質療法の必要性:FG群において70%に対して、DFG群において25%。
【0244】
結論:DFG組成物は、FG単独治療と比較して、小児における乾性咳の症状を軽減するのに2倍近く有効である。
【0245】
[K-組成物番号11(小児における慢性炎症性鼻副鼻腔炎の治療用の組成物)]
組成物番号11:グリセロール(13%)、水(85.96%)、HPC(0.5%)、ヴァシニアム・マクロカーポン抽出物(0.07%)、ヴァシニアム・ミルティラス抽出物(0.07%)、サンブカス・ニグラ抽出物(0.05%)、リベス・ニグルム抽出物(0.13%)、保存剤(0.22%)(ソルビン酸カリウム(0.1%)、安息香酸ナトリウム(0.1%)、クエン酸(0.02%))。この組成物を、小児における鼻感染症の治療に特に適したスプレーを備えた15mLのプラスチック容器に充填した。
【0246】
研究の種類:慢性鼻副鼻腔炎に苦しむ小児におけるDFGに対するFGの慢性炎症抑制効果を評価する14日間の比較、無作為化、二重盲検、並行群、観察臨床試験。
【0247】
試験品の表示及び使用:15mLの鼻スプレー剤、1適用当たり2回~3回の噴霧、1日2回を最大14日間。患者数:群1(FG)=10人;群2(DFG)=20人。
【0248】
パラメータ:1日目の初回投与開始の30分後、3日目、6日目、14日目~15日目、又は回復日(いずれか早い方)の鼻副鼻腔炎重症度スコア(RSSS)、鼻漏又は鼻づまり、発熱、咳、快眠不足、顔面圧迫時の痛みに対する効果。
【0249】
結果:1日目、2日目、6日目、及び14日目のFGの有効性に対する二重作用性FGの有効性に関する臨床症状の改善(+)又は悪化(-)の%:(1)鼻漏については:+11.69%、+44.12%、+61.70%、及び+95.0%;(2)咳については:-2.13%、+35.65%、+52.81%、及び+93.62%;(3)睡眠に対する効果については:0.0%、+50.40%、+62.89%、及び+97.18%;(4)圧迫時の顔面痛に対する効果については:+2.27%、+41.51%、+57.89%、及び+93.31%;(5)発熱に対する効果については:FG群に対するDFG群における発熱スコアの57%の低下;並びに(6)製品の有効性については:DFG群における90%の患者が製品の有効性を優れていると評定したのに対して、FG群では15%であった(FG群における65%の患者は製品を可又は良いと評定した)。
【0250】
結論:DFG組成物は、FG組成物と比較して、小児における慢性炎症性鼻副鼻腔炎の症状を抑制するのに非常に有効であると見なされた。どちらの組成物も小児による忍容性が高かった。臨床徴候の減少は、DFGの強力な抗炎症効果を示しており、これは炎症誘発性サイトカインの抑制に関連している可能性がある。
【0251】
[L-組成物番号12(小児における眼及び鼻の炎症性アレルギー性鼻炎の治療用の組成物)]
組成物番号12:グリセロール(4%)、水(94.87%)、Solagum(0.6%)、ヴァシニアム・マクロカーポン抽出物(0.1%)、PVOH(0.1%)、パナックス・ジンセン抽出物(0.06%)、タイム・サツレオイデス精油(0.03%)、シトラス・リモナム精油(0.02%)、保存剤(0.22%)(ソルビン酸カリウム(0.1%)、安息香酸ナトリウム(0.1%)、クエン酸(0.02%))。この組成物を、小児におけるアレルギー性鼻炎の治療に特に適したスプレーを備えた15mLのプラスチック容器に充填した。
【0252】
研究の種類:DFG組成物に対するFG組成物に関しての14日間、一重盲検、無作為化。患者数:FG群=10人;群2:DFG群=20人。アレルゲン誘発性副鼻腔炎重症度スコア(SSS)>10。使用方式:15mLのスプレー剤を供給し、両方の群において1適用当たり3回~4回の噴霧として、1日2回最大14日間適用した。
【0253】
パラメータ:鼻水、TNSS(総鼻症状スコア)、目の赤み、TOSS(総眼症状スコア)。ヒスタミン濃度を、0日目(治療前)及び1日目(24時間)に収集された鼻スワブ中で、各群の8人の無作為な患者において決定した。スワブを1mLの生理食塩水で洗浄し、ヒスタミン濃度を、ヒスタミンELISAキット(ABCAM-ab213975)を使用して450nmで測定した。
【0254】
結果:FGスプレーは有益であることが立証されたが、DFGは症状軽減の速度及び程度に関してはるかに大きく、統計的に有意な改善をもたらしたことから、抗炎症性療法の必要性はより少なくなった。
【0255】
1日目、2日目、7日目、及び14日目のFG有効性に対するDFG有効性の改善:(1)鼻水については:+12.68%、-28.17%、-73.24%、及び-91.55%;(2)TNSSについては:-2.59%、-18.75%、-56.66%、及び-87.50%;(3)涙目については:0.0%、-18.57%、-55.71%、及び-100.0%;(4)目の痒みについては:-5.75%、-41.38%、-89.66%、及び-98.85%;(5)目の腫れについては:-9.09%、-34.64%、-77.27%、及び-100.0%;(6)TOSSについては:-5.30%、-13.73%、-75.60%、及び-100.0%;(7)T0及びT24hでのヒスタミンについては:FG群において検出された平均濃度は8.35nmol及び3.60nmolであったのに対して、DFG群においては7.80nmol及び0.20nmolであり、これは、FG製剤と比較してDGF組成物の強力な局所的ヒスタミン遮断活性を示している;並びに(8)7日目のQOLについては:FGにおいて52.7%であるのに対して、DFG群において72.61%。
【0256】
これらの結果は、DFG試験品が、その特定のヒスタミン及び炎症誘発性サイトカインの遮断特性により、FG単独と比較して、小児におけるアレルギー性鼻炎の症状発現を軽減するのにはるかに有効であったことを示している。有益な効果は、治療の3日~7日後に観察される。DFG製剤は、はるかに良好であり、迅速であった。この効果の作用様式は、FGと比較してより高いDFG製剤のCPRM結合特性に関連している可能性がある。
【0257】
[薬理学的データ及び臨床データに関する結論]
これらの結果は、全ての局所炎症性疾患の治療に関して、二重作用性ポリマー(複数の場合も含む)及びグリセロールを含む組成物(DFG)の臨床的有効性が、被膜生成性グリセロール(FG)と比較してはるかに優れていることを立証している。CRSがいつどうして生じ得るのかはまだ理解されていないが、CRSは、あらゆる種類の慢性炎症性疾患において観察されている。CRSの強度、重症度、及び帰結は、疾患の部位及び種類によって異なる。肺又は心臓等の重要臓器を冒すCRSは、呼吸不全又は心不全を引き起こす可能性があるため、簡単に検出される。慢性局所疾患の生理病理は、通常、病原性傷害の継続、広範囲の細胞傷害、過度に高い濃度の多数の疾患関連の炎症誘発性サイトカイン及びタンパク質の局所的及び全身的な存在を伴い、それにより、慢性炎症カスケードが維持される。CRSは、各要因が相互に依存する一連の反応の帰結であり、これらの要因は全て、疾患の臨床的徴候が現れたときに既に活性化されている。したがって、有効な治療はいずれも、CRSの惹起に関与する全ての原因を部分的又は完全に遮断するマルチターゲットでなければならない。
【0258】
二重作用性ポリマーとともに浸透圧性グリセロールを含むこれらの局所組成物の結果は、これらの組成物を安全に使用して、CRSの惹起に関与する多数の要因を抑制できることを立証している。
【0259】
[参考文献]
Dang Xuan Cuong et al. Tannin extraction from plants.Chapter in book-Structural properties,Biological properties and current knowledge: Chapter on Tannin extraction.IntechOpen publisher,May 13th 2019.doi: 10.5772/intechopen.86040.
Maria Fraga-Corral et al.Technological application of tannin-based extracts.Molecules 2020,25(3)614.doi: 10.3390/molecules25030614.
図1
【手続補正書】
【提出日】2022-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予防又は治療を必要とする対象において、局所炎症性疾患及びサイトカイン放出症候群の予防又は治療のために局所的に使用される組成物であって、グリセロールに結合されており、かつ少なくとも1つの炎症誘発性化合物に結合することができる少なくとも1つの二重作用性ポリマーを含む、組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの炎症誘発性化合物が、マトリックスメタロプロテアーゼ、ヒスタミン、サイトカイン、細胞受容体、金属イオン、免疫グロブリン、又はウイルス性糖タンパク質からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記局所炎症性疾患が、ウイルス感染症、鼻副鼻腔炎、創傷及び潰瘍、乾癬、湿疹、皮膚炎、アレルギー、喘息、汚染誘発性呼吸器疾患、汚染誘発性局所性傷害、消化管潰瘍、痔核、生殖器感染症、眼アレルギー、結膜炎、並びに眼炎症からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの二重作用性ポリマーの総量が、前記組成物の総重量の0.01重量%から5重量%まで、好ましくは前記組成物の総重量の0.01重量%から3.5重量%までの範囲である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
ハチミツ、プロポリス抽出物、キサンタンガム及び/又はアカシアガム等の植物性ガム、及び精油からなる群から選択される少なくとも1つの成分を更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
鎮痛薬、抗生物質、抗炎症薬、抗ヒスタミン薬、血管拡張薬、気管支拡張薬、抗浮腫薬、特異的な局所受容体結合性化合物、又は精油等の少なくとも1つの医薬を更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は、皮膚表面、眼粘膜表面、結膜表面、角膜表面、口腔表面、鼻表面、消化管表面、呼吸器表面、又は生殖器表面等の傷害生体表面及び/又は炎症性生体表面上に局所適用される、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、スプレー、チューブ、アンプル、液体が埋め込まれた綿絆創膏若しくはポリマー絆創膏、顆粒、粉末、又はソフトジェルカプセル中で提供される液体、吸入剤、液体絆創膏、溶液、ジェル、クリーム、ペースト、又は軟膏として投与される、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの二重作用性ポリマーが、天然、半合成、及び/又は合成のものである、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つの二重作用性ポリマーが、植物又は植物部分から得られるタンニンである、請求項10に記載の組成物。
【請求項11】
前記成分及び/又は前記医薬を前記組成物のポリマー連結物中に捕捉させ、前記成分及び/又は前記医薬を持続放出させて、前記組成物の治療特性が更に高められている、請求項6又は7に記載の組成物。
【国際調査報告】