(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】老化を改良し、かつシュリンクバックを低減したポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/04 20060101AFI20231025BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20231025BHJP
H01B 7/02 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
C08L23/04
C08L71/02
H01B7/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518024
(86)(22)【出願日】2021-10-04
(85)【翻訳文提出日】2023-03-17
(86)【国際出願番号】 US2021053349
(87)【国際公開番号】W WO2022076296
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】サバ、ステイシー エイ.
(72)【発明者】
【氏名】エセギエ、モハメド
(72)【発明者】
【氏名】ゲセンズ、テオ
(72)【発明者】
【氏名】フー、ユーシャン
(72)【発明者】
【氏名】グラッド、ブレイデン イー.
(72)【発明者】
【氏名】ハイチュ、アンドリュー ティ.
(72)【発明者】
【氏名】グエン、ブー-ダン
【テーマコード(参考)】
4J002
5G309
【Fターム(参考)】
4J002BB05W
4J002BB05X
4J002CH03Y
4J002GQ01
5G309RA07
5G309RA12
(57)【要約】
ポリマー組成物は、(i)エチレンとαオレフィンコモノマーとのコポリマーであって、0.945g/cc~0.960g/ccの密度を有するコポリマーと、(ii)エチレン系ポリマーと、(iii)ポリエチレングリコールと、を含む。(i)及び(ii)の組み合わせは、GPCによって測定するとき、105g/mol~105.5g/molの重量平均分子量範囲にわたって、組み合わせた(i)及び(ii)の総重量に基づいて3.2重量%以上の高Mwコモノマー含有量を有し、ポリマー組成物の総重量の15重量%以上が、GPCによって測定するとき、105g/mol~105.5g/molの範囲の分子量を有する、組み合わせた(i)及び(ii)であり、ポリマー組成物は0.6重量%以上の関連コモノマー含有量を有し、ポリマー組成物はASTM D792に従って測定するとき、0.945g/cc以上の密度を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、
(i)エチレンとαオレフィンコモノマーとのコポリマーであって、0.945g/cc~0.960g/ccの密度を有する、コポリマーと、
(ii)エチレン系ポリマーと、
(iii)ポリエチレングリコールと、を含み、
(i)及び(ii)の組み合わせが、GPCによって測定するとき、10
5g/mol~10
5.5g/molの重量平均分子量範囲にわたって、前記組み合わせた(i)及び(ii)の総重量に基づいて3.2重量%以上の高Mwコモノマー含有量を有し、
前記ポリマー組成物の総重量の15重量%以上は、GPCによって測定するとき、10
5g/mol~10
5.5g/molの範囲の分子量を有する、前記組み合わせた(i)及び(ii)であり、
前記ポリマー組成物が、0.6重量%以上の関連コモノマー含有量を有し、
前記ポリマー組成物が、ASTM D792に従って測定するとき、0.945g/cc以上の密度を有する、ポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリマー組成物が、前記ポリマー組成物の総重量に基づいて、35重量%~85重量%の前記コポリマーを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記ポリマー組成物が、前記ポリマー組成物及び前記ポリエチレングリコールの総重量に基づいて、0.5重量%~1重量%の前記ポリエチレングリコールを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記ポリマー組成物が、前記ポリマー組成物の総重量に基づいて、15重量%~30重量%の前記エチレン系ポリマーを含み、前記エチレン系ポリマーが、ASTM D792に従って測定するとき、0.91g/cc~0.93g/ccの密度を有する直鎖状低密度ポリエチレンである、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記ポリマー組成物が、前記ポリマー組成物の総重量に基づいて、15重量%~19重量%の前記エチレン系ポリマーを含み、前記エチレン系ポリマーが、ASTM D792に従って測定するとき、0.90g/cc~0.91g/ccの密度を有するプラストマーである、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記ポリマー組成物が、前記ポリマー組成物の総重量に基づいて、45重量%~55重量%の前記エチレン系ポリマーを含み、前記エチレン系ポリマーが、ASTM D792に従って測定するとき、0.93g/cc~0.95g/ccの密度を有する高密度ポリエチレンである、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記ポリマー組成物が、前記ポリマー組成物の総重量に基づいて、10重量%~15重量%の前記エチレン系ポリマーを含み、前記エチレン系ポリマーが、ASTM D792に従って測定するとき、0.80g/cc~0.90g/ccの密度を有するエラストマーである、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
(i)及び(ii)の前記組み合わせが、GPCによって測定するとき、10
5g/mol~10
5.5g/molの分子量範囲にわたって12.0重量%以下の高Mwコモノマー含有量を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記ポリマー組成物の総重量の30重量%以下が、GPCによって測定するとき、10
5g/mol~10
5.5g/molの範囲の分子量を有する、前記組み合わせた(i)及び(ii)である、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
被覆導体であって、
導体と、
前記導体の周りに少なくとも部分的に配設された、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリマー組成物と、を含む、被覆導体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、ポリマー組成物、より具体的には、改良した老化特性及び低減したシュリンクバックを示すポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
序論
光ファイバケーブルは、長距離にわたって高速でデータを伝送するのに有用であり、したがって、使用が増加している。光ファイバケーブルは、ファイバ密度の高い構造物のために新しいミニ及びマイクロケーブル技術を必要とする小型化及び軽量化に向かう傾向にある。これらの光ファイバケーブルの製造に使用される薄壁及び高い押出速度のために、ケーブル上のポリマージャケットの性能特性は特に重要である。ポリマージャケットが示さなければならない第1の特性は、ポリマージャケットが十分に堅く、酷使に耐えることができる硬度を示すように、0.945グラム/立方センチメートル(「g/cc」)以上の密度である。ポリマージャケット材料が示さなければならない第2の特性は、信号減衰を最小限に抑えるための2.5%以下の周期的温度シュリンクバックである。ポリマージャケットが示さなければならない第3の特性は、ケーブルの寿命を確保するための、熱老化後の75%以上の残留破断点引っ張り伸びである。ポリマージャケットが示さなければならない第4の特性は、再度ケーブルの寿命を確保するための、400時間以上の環境応力亀裂抵抗(「environmental stress crack resistance、ESCR」)である。
【0003】
第1の特性に対処する従来のアプローチは、ジャケット材料中に高密度ポリエチレン(「high-density polyethylene、HDPE」)を含めることであった。HDPEは、高い結晶化度及び0.945g/cc以上の密度に起因して増加した強度を一般に示す、費用効率の高いジャケット材料である。HDPEの形態は、複数の微結晶、及び微結晶相を結合させる非晶質タイ分子相である。HDPEは、第1の特性に対処するのに必要な結晶化度をポリマー組成物に提供するが、いくつかのHDPEのアーキテクチャは、ポリマー組成物を周期的温度シュリンクバック、熱老化後の機械的特性の損失、並びに第2、第3、及び第4の特性の劣化につながる低ESCRにする傾向がある。
【0004】
ケーブルジャケット用のHDPEの欠点に対処する試みが報告されている。例えば、国際公開第2014/099360(A1)号(「‘360公開」)は、ポリマージャケットに関する性能問題に対処するための二峰性HDPE及び改質成分の使用を開示している。‘360公開は、HDPE及びポリマー構造が既にほぼ最適であり、更なる投資によってターンアラウンドタイム及びコストを増加させ、代わりに、周期的温度収縮を改善するための改質成分を組み込むことを説明している。
【0005】
したがって、0.945g/cc以上の密度、2.5%以下の周期的温度シュリンクバック、熱老化後の75%の残留破断点引っ張り伸び、及び400時間以上のESCRを示すケーブルジャケットとして有用なポリマー組成物を、ポリマー構造を改質した結果として発見することは驚くべきことである。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ポリマー構造を改質した結果として、0.945g/cc以上の密度、2.5%以下の周期的温度収縮、熱老化後の75%の残留破断点引っ張り伸び、及び400以上の無条件のESCRを示すケーブルジャケットとして有用なポリマー組成物を提供する。
【0007】
本発明は、0.945g/ccの全体密度を有し、105g/モル~105.5g/モルの分子量範囲にわたって3.2重量%以上の高Mwコモノマー含有量を示し、0.6重量%以上の関連コモノマー含有量を有するポリマーのブレンドを利用することによって、ポリマー組成物が上述の特性を示すことができることを発見した結果である。引張荷重下で、結合鎖は、最終変形段階中に引張軸に沿って配向する。強力な結合鎖は、歪み硬化が起こり、熱老化後の75%の残留破断点引っ張り伸びの要件を満たすために必要とされる。理論に束縛されるものではないが、105g/mol~105.5g/molの分子量範囲にわたって3.2重量%以上の高Mwコモノマー含有量と、0.6重量%以上の関連コモノマー含有量とは、ポリマー組成物の密度が0.945g/cc以上であるが、ポリマー組成物の破断点伸び及びESCRが強化されるように、微結晶間のタイ分子を強化すると考えられる。更に、周期的温度シュリンクバックは2.5%未満に維持される。
【0008】
本発明は、ケーブルジャケットに特に有用である。
【0009】
本開示の第1の特徴によれば、ポリマー組成物は、(i)エチレンとαオレフィンコモノマーとのコポリマーであって、0.945g/cc~0.960g/ccの密度を有する、コポリマーと、(ii)エチレン系ポリマーと、(iii)ポリエチレングリコールと、を含む。(i)及び(ii)の組み合わせは、GPCによって測定するとき、105g/mol~105.5g/molの重量平均分子量範囲にわたって、組み合わせた(i)及び(ii)の総重量に基づいて3.2重量%以上の高Mwコモノマー含有量を有し、ポリマー組成物の総重量の15重量%以上が、GPCによって測定するとき、105g/mol~105.5g/molの範囲の分子量を有する、組み合わせた(i)及び(ii)であり、ポリマー組成物は0.6重量%以上の関連コモノマー含有量を有し、ポリマー組成物はASTM D792に従って測定するとき、0.945g/cc以上の密度を有する。
【0010】
本開示の第2の特徴によれば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、35重量%~85重量%のコポリマーを含む。
【0011】
本開示の第3の特徴によれば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物及びポリエチレングリコールの総重量に基づいて、0.5重量%~1重量%のポリエチレングリコールを含む。
【0012】
本開示の第4の特徴によれば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、15重量%~30重量%のエチレン系ポリマーを含み、エチレン系ポリマーは、ASTM D792に従って測定するとき、0.91g/cc~0.93g/ccの密度を有する直鎖状低密度ポリエチレンである。
【0013】
本開示の第5の特徴によれば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、15重量%~19重量%のエチレン系ポリマーを含み、エチレン系ポリマーは、ASTM D792に従って測定するとき、0.90g/cc~0.91g/ccの密度を有するプラストマーである。
【0014】
本開示の第6の特徴によれば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、45重量%~55重量%のエチレン系ポリマーを含み、エチレン系ポリマーは、ASTM D792に従って測定するとき、0.93g/cc~0.95g/ccの密度を有する高密度ポリエチレンである。
【0015】
本開示の第7の特徴によれば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、10重量%~15重量%のエチレン系ポリマーを含み、エチレン系ポリマーは、ASTM D792に従って測定するとき、0.80g/cc~0.90g/ccの密度を有するエラストマーである。
【0016】
本開示の第8の特徴によれば、(i)及び(ii)の組み合わせは、GPCにより測定するとき、105g/mol~105.5g/molの分子量範囲にわたって12.0重量%以下の高Mwコモノマー含有量を有する。
【0017】
本開示の第9の特徴によれば、ポリマー組成物の総重量の30重量%以下は、GPCにより測定するとき、105g/mol~105.5g/molの範囲の分子量を有する、組み合わせた(i)及び(ii)である。
【0018】
本開示の第10の特徴によれば、被覆導体は、導体と、導体の周りに少なくとも部分的に配置されたポリマー組成物と、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、2つ以上の項目の列挙で使用される場合、列挙された項目のうちのいずれか1つをそれ自体で用いることができるか、又は列挙された項目のうちの2つ以上の任意の組み合わせを用いることができることを意味する。例えば、組成物が成分A、B、及び/又はCを含有するものとして説明されている場合、組成物はAを単独で、Bを単独で、Cを単独で、A及びBを組み合わせて、A及びCを組み合わせて、B及びCを組み合わせて、又はA、B、及びCを組み合わせて、含有することができる。
【0020】
別途記載のない限り、全ての範囲は、終点を含む。
【0021】
試験方法は、試験方法番号でハイフン付きの2桁の数字で日付が示されていない限り、この文書の優先日における最新の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。試験方法組織は、以下の略語のうちの1つによって参照され、ASTMは、ASTMインターナショナル(ASTM International)(旧称、米国材料試験協会、American Society for Testing and Materials)を指し、IECは、国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)を指し、ENは、欧州規格(European Norm)を指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fur Normung)を指し、ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standards)を指す。
【0022】
本明細書で使用される場合、重量パーセント(「重量%」)という用語は、別途明記しない限り、成分がポリマー組成物の総重量に占める重量のパーセンテージを示す。
【0023】
本明細書において、メルトインデックス(I2)値は、2.16キログラム(Kg)の質量を用いて摂氏190度(℃)でASTM法D1238に従って決定された値を指し、10分当たりに溶出されるグラム数(「g/10分」)の単位で提供される。本明細書において、メルトインデックス(I21)値は、21.6Kgの質量を用いて摂氏190度(℃)でASTM法D1238に従って決定された値を指し、10分当たりに溶出されるグラム数(g/10分)の単位で提供される。
【0024】
本明細書における密度値は、23℃でASTM D792に従って決定された値を指し、1立方センチメートル当たりのグラム数(「g/cc」)の単位で提供される。
【0025】
本明細書で使用される場合、Chemical Abstract Services登録番号(「CAS#」)は、本文書の優先日の時点でChemical Abstract Serviceによって化学化合物に最後に割り当てられた固有の数字識別子を指す。
【0026】
ポリマー組成物
ポリマー組成物は、エチレンとαオレフィンコモノマーとのコポリマー、エチレン系ポリマー、及びポリエチレングリコールを含む。ポリマー組成物は、未充填状態で、0.945g/cc~0.970g/ccの密度を有する。例えば、ポリマー組成物の未充填密度は、0.945g/cc以上、又は0.946g/cc以上、又は0.948g/cc以上、又は0.950g/cc以上、又は0.952g/cc以上、又は0.954g/cc以上、又は0.955g/cc以上、又は0.956g/cc以上、又は0.958g/cc以上、又は0.960g/cc以上、又は0.962g/cc以上、又は0.964g/cc以上、又は0.966g/cc以上、又は0.968g/cc以上、一方で同時に、0.970g/cc以下、又は0.968g/cc以下、又は0.966g/cc以下、又は0.964g/cc以下、又は0.962g/cc以下、又は0.960g/cc以下、又は0.958g/cc以下、又は0.956g/cc以下、又は0.954g/cc以下、又は0.952g/cc以下、又は0.950g/cc以下、又は0.948g/cc以下、又は0.946g/cc以下であり得る。本明細書で定義される場合、ポリマー組成物の「未充填状態」は、エチレンとαオレフィンコモノマーとのコポリマー、エチレン系ポリマー、及びポリエチレングリコールから本質的になるポリマー組成物として定義される。
【0027】
コポリマー
ポリマー組成物の1つの成分は、エチレンとαオレフィンコモノマーとのコポリマーである。「ポリマー」は、一緒に結合された同じ又は異なるタイプの複数のモノマーを含む高分子化合物を意味する。「コポリマー」は、2つの異なるモノマータイプから調製されたポリマーを意味する。コポリマーは、エチレンと、プロピレン、1-ブテン、1ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンなどの1つ以上のC3~C20α-オレフィンコモノマーとを含むことができる。コポリマーは、単峰性又は多峰性の分子量分布を有することができる。本明細書で使用される場合、「単峰性」とは、そのゲル浸透クロマトグラフィ(「GPC」)曲線が、単一のピークのみを示し、そのような単一のピークに対して識別可能な第2のピーク、又は肩もしくはこぶさえ含まない、分子量分布(「MWD」)を有するポリマー材料を意味する。対照的に、本明細書で使用される場合、「二峰性」とは、GPC曲線のMWDが、2つのピークを有することによって、又は一方の成分が他方の成分ポリマーのピークに対して、こぶ、肩、若しくは尾によって示され得る場合に、2成分ポリマーの存在を示すことを意味する。
【0028】
コポリマーは、核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance、NMR)又はフーリエ変換赤外(Fourier-Transform Infrared、FTIR)分光法を使用して測定されたときに、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、又は91重量%以上、又は92重量%以上、又は93重量%以上、又は94重量%以上、又は95量%以上、又は96重量%以上、又は97重量%以上、又は97.5重量%以上、又は98重量%以上、又は99重量%以上、一方で同時に、99.5重量%以下、又は99重量%以下、又は98重量%以下、又は97重量%以下、又は96重量%以下、又は95重量%以下、又は94重量%以下、又は93重量%以下、又は92重量%以下、又は91重量%以下、又は90重量%以下、又は85重量%以下、又は80重量%以下、又は70重量%以下、又は60重量%以下のエチレンを含み得る。
【0029】
コポリマーは、高密度ポリエチレン(「HDPE」)であってもよい。コポリマーは、スラリー反応器、気相反応器又は溶液反応器においてチーグラーナッタ、クロムベースの拘束幾何形状又はメタロセン触媒を用いて製造することができる。コポリマーは、核磁気共鳴分光法によって測定される場合、エチレン系ポリマーの重量に基づいて、その中で重合された少なくとも50重量%のエチレン、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%のエチレンを、重合形態で含む。
【0030】
コポリマーは、0.945g/cc~0.960g/ccの密度を有する。例えば、コポリマーの密度は、ASTM D792により測定される場合に、0.945g/cc以上、又は0.946g/cc以上、又は0.948g/cc以上、又は0.950g/cc以上、又は0.952g/cc以上、又は0.954g/cc以上、又は0.955g/cc以上、又は0.956g/cc以上、又は0.958g/cc以上、一方で同時に、0.960g/cc以下、又は9.58g/cc以下、又は9.56g/cc以下、又は0.955g/cc以下、又は9.54g/cc以下、又は9.52g/cc以下、又は9.50g/cc以下、又は9.48g/cc以下、又は9.46g/cc以下であり得る。
【0031】
コポリマーは、0.1g/10分以上、又は0.3g/10分以上、又は0.5g/10分以上、又は1.0g/10分以上、又は1.5g/10分以上、又は2.0g/10分以上、又は2.5g/10分以上、又は3.0g/10分以上、又は3.5g/10分以上、又は4.0g/10分以上、又は4.5g/10分以上、又は5.0g/10分以上、又は5.5g/10分以上、又は6.0g/10分以上、又は6.5g/10分以上、又は7.0g/10分以上、又は7.5g/10分以上、又は8.0g/10分以上、又は8.5g/10分以上、又は9.0g/10分以上、又は9.5g/10分以上、一方で同時に、10.0g/10分以下、又は9.5g/10分以下、又は9.0g/10分以下、又は8.5g/10分以下、又は8.0g/10分以下、又は7.5g/10分以下、又は7.0g/10分以下、又は6.5g/10分以下、又は6.0g/10分以下、又は5.5g/10分以下、又は5.0g/10分以下、又は4.5g/10分以下、又は4.0g/10分以下、又は3.5g/10分以下、又は3.0g/10分以下、又は2.5g/10分以下、又は2.0g/10分以下、又は1.5g/10分以下、又は1.0g/10分以下、又は0.5g/10分以下、又は0.3g/10分以下のメルトインデックス(I2)を有し得る。
【0032】
コポリマーは、90g/10分以上、又は92g/10分以上、又は94g/10分以上、又は96g/10分以上、又は98g/10分以上、又は100g/10分以上、又は102g/10分以上、又は104g/10分以上、又は106g/10分以上、又は108g/10分以上、又は110g/10分以上、又は112g/10分以上、又は114g/10分以上、又は116g/10分以上、又は118g/10分、一方で同時に、120g/10分以下、又は118g/10分以下、又は116g/10分以下、又は114g/10分以下、又は112g/10分以下、又は110g/10分以下、又は108g/10分以下、又は106g/10分以下、又は104g/10分以下、又は102g/10分以下、又は100g/10分以下、又は98g/10分以下、又は96g/10分以下、又は94g/10分以下、又は92g/10分以下のメルトインデックス(21)を有し得る。
【0033】
ポリマー組成物は、35重量%~80重量%のコポリマーを含み得る。例えば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、35重量%以上、又は40重量%以上、又は45重量%以上、又は50重量%以上、又は55重量%以上、又は60重量%以上、又は65重量%以上、又は70重量%以上、又は75重量%以上、又は80重量%以上、一方で同時に、85重量%以下、又は80重量%以下、又は75重量%以下、又は70重量%以下、又は65重量%以下、又は60重量%以下、又は55重量%以下、又は50重量%以下、又は45重量%以下、又は40重量%以下のコポリマーを含み得る。
【0034】
エチレン系ポリマー
上述のように、ポリマー組成物は、エチレン系ポリマーを含む。本明細書で使用される場合、「エチレン系」ポリマーは、モノマーの50重量%超がエチレンであるポリマーであるが、他のコモノマーを用いることもできる。エチレン系ポリマーは、エチレンと、プロピレン、1-ブテン、1ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンなどの1つ以上のC3~C20α-オレフィンコモノマーとを含むことができる。エチレン系ポリマーは、単峰性又は多峰性の分子量分布を有することができ、単独で、又は1つ以上の他の型のエチレン系ポリマーとの組み合わせ(例えば、モノマー組成及び含有量、触媒調製法、分子量、分子量分布、密度などが互いに異なる2つ以上のエチレン系ポリマーのブレンド)で使用され得る。エチレン系ポリマーのブレンドが使用される場合、ポリマーは、任意の反応器内プロセス又は反応器後プロセスによってブレンドされ得る。
【0035】
エチレン系ポリマーは、核磁気共鳴(NMR)又はフーリエ変換赤外(FTIR)分光法を使用して測定されたときに、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、又は91重量%以上、又は92重量%以上、又は93重量%以上、又は94重量%以上、又は95量%以上、又は96重量%以上、又は97重量%以上、又は97.5重量%以上、又は98重量%以上、又は99重量%以上、一方で同時に、99.5重量%以下、又は99重量%以下、又は98重量%以下、又は97重量%以下、又は96重量%以下、又は95重量%以下、又は94重量%以下、又は93重量%以下、又は92重量%以下、又は91重量%以下、又は90重量%以下、又は85重量%以下、又は80重量%以下、又は70重量%以下、又は60重量%以下のエチレンを含み得る。エチレン系ポリマーの他の単位としては、C3、又はC4、又はC6、又はC8、又はC10、又はC12、又はC16、又はC18、又はC20α-オレフィン、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、及び1-オクテンを挙げることができる。
【0036】
ポリマー組成物は、15重量%~55重量%のエチレン系ポリマーを含んでもよい。例えば、ポリマー組成物は、15重量%以上、又は20重量%以上、又は25重量%以上、又は30重量%以上、又は35重量%以上、又は40重量%以上、又は45重量%以上、又は50重量%以上、一方で同時に、55重量%以下、又は50重量%以下、又は45重量%以下、又は40重量%以下、又は35重量%以下、又は30重量%以下、又は25重量%以下、又は20重量%以下のエチレン系ポリマーを含む。
【0037】
エチレン系ポリマーは、直鎖状低密度ポリエチレン(「LLDPE」)であってもよい。LLDPEの例では、ポリマー組成物は、15重量%以上、又は16重量%以上、又は17重量%以上、又は18重量%以上、又は19重量%以上、又は20重量%以上、又は21重量%以上、又は22重量%以上、又は23重量%以上、又は24重量%以上、又は25重量%以上、又は26重量%以上、又は27重量%以上、又は28重量%以上、又は29重量%以上、一方で同時に、30重量%以下、又は29重量%以下、又は28重量%以下、又は27重量%以下、又は26重量%以下、又は25重量%以下、又は24重量%以下、又は23重量%以下、又は22重量%以下、又は21重量%以下、又は20重量%以下、又は19重量%以下、又は18重量%以下、又は17重量%以下、又は16重量%以下のエチレン系ポリマーを含み得る。エチレン系ポリマーのLLDPEの例は、ASTM D792により測定される場合に、0.910g/cc以上、又は0.912g/cc以上、又は0.914g/cc以上、又は0.916g/cc以上、又は0.918g/cc以上、又は0.920g/cc以上、又は0.922g/cc以上、又は0.924g/cc以上、又は0.926g/cc以上、又は0.928g/cc以上、一方で同時に、0.930g/cc以下、又は0.928g/cc以下、又は0.926g/cc以下、又は0.924g/cc以下、又は0.922g/cc以下、又は0.920g/cc以下、又は0.918g/cc以下、又は0.916g/cc以下、又は0.914g/cc以下、又は0.912g/cc以下の密度を有し得る。エチレン系ポリマーのLLPDEの例は、0.1g/10分以上、又は0.2g/10分以上、又は0.4g/10分以上、又は0.56g/10分以上、又は0.6g/10分以上、又は0.8g/10分以上、又は1.0g/10分以上、又は1.2g/10分以上、又は1.4g/10分以上、一方で同時に、1.5g/10分以下、又は1.4g/10分以下、又は1.2g/10分以下、又は1.0g/10分以下、又は0.8g/10分以下、又は0.6g/10分以下、又は0.56g/10分以下、又は0.4g/10分以下、又は0.2g/10分以下のメルトインデックス(I2)を有し得る。エチレン系ポリマーのLLPDEの例は、10g/10分以上、又は20g/10分以上、又は40g/10分以上、又は56g/10分以上、又は60g/10分以上、又は80g/10分以上、又は100g/10分以上、又は120g/10分以上、又は140g/10分以上、一方で同時に、150g/10分以下、又は140g/10分以下、又は120g/10分以下、又は100g/10分以下、又は80g/10分以下、又は60g/10分以下、又は56g/10分以下、又は40g/10分以下、又は20g/10分以下のメルトインデックス(I21)を有し得る。
【0038】
エチレン系ポリマーは、プラストマーであり得る。プラストマーの例では、ポリマー組成物は、15重量%以上、又は16重量%以上、又は17重量%以上、又は18重量%以上、又は19重量%以上、一方で同時に、20重量%以下、又は19重量%以下、又は18重量%以下、又は17重量%以下、又は16重量%以下のエチレン系ポリマーを含み得る。エチレン系ポリマーのプラストマーの例は、ASTM D792により測定される場合に、0.900g/cc以上、又は0.901g/cc以上、又は0.902g/cc以上、又は0.903g/cc以上、又は0.904g/cc以上、又は0.905g/cc以上、又は0.906g/cc以上、又は0.907g/cc以上、又は0.908g/cc以上、又は0.909g/cc以上、一方で同時に、0.910g/cc以下、又は0.909g/cc以下、又は0.908g/cc以下、又は0.907g/cc以下、又は0.906g/cc以下、又は0.905g/cc以下、又は0.904g/cc以下、又は0.903g/cc以下、又は0.902g/cc以下、又は0.901g/cc以下の密度を有し得る。エチレン系ポリマーのプラストマーの例は、0.1g/10分以上、又は0.2g/10分以上、又は0.4g/10分以上、又は0.6g/10分以上、又は0.8g/10分以上、又は0.86g/10分以上、又は1.0g/10分以上、又は1.2g/10分以上、又は1.4g/10分以上、一方で同時に、1.5g/10分以下、又は1.4g/10分以下、又は1.2g/10分以下、又は1.0g/10分以下、又は0.8g/10分以下、又は0.6g/10分以下、又は0.56g/10分以下、又は0.4g/10分以下、又は0.2g/10分以下のメルトインデックス(I2)を有し得る。エチレン系ポリマーのプラストマーの例は、10g/10分以上、又は12g/10分以上、又は14g/10分以上、又は16g/10分以上、又は18g/10分以上、又は20g/10分以上、又は22g/10分以上、又は24g/10分以上、又は26g/10分以上、又は28g/10分以上、又は30g/10分以上、又は32g/10分以上、又は34g/10分以上、又は36g/10分以上、又は38g/10分以上、一方で同時に、40g/10分以下、又は38g/10分以下、又は36g/10分以下、又は34g/10分以下、又は32g/10分以下、又は30g/10分以下、又は28g/10分以下、又は26g/10分以下、又は24g/10分以下、又は22g/10分以下のメルトインデックス(I21)を有し得る。
【0039】
エチレン系ポリマーは、HDPEであり得る。HDPEの例では、ポリマー組成物は、45重量%以上、又は46重量%以上、又は47重量%以上、又は48重量%以上、又は49重量%以上、又は50重量%以上、又は51重量%以上、又は52重量%以上、又は53重量%以上、又は54重量%以上、一方で同時に、55重量%以下、又は54重量%以下、又は53重量%以下、又は52重量%以下、又は51重量%以下、又は50重量%以下、又は49重量%以下、又は48重量%以下、又は47重量%以下、又は46重量%以下のエチレン系ポリマーを含み得る。エチレン系ポリマーのHDPEの例は、ASTM D792により測定される場合に、0.930g/cc以上、又は0.932g/cc以上、又は0.934g/cc以上、又は0.936g/cc以上、又は0.938g/cc以上、又は0.940g/cc以上、又は0.942g/cc以上、又は0.944g/cc以上、又は0.946g/cc以上、又は0.948g/cc以上、一方で同時に、0.950g/cc以下、又は0.948g/cc以下、又は0.946g/cc以下、又は0.944g/cc以下、又は0.942g/cc以下、又は0.940g/cc以下、又は0.938g/cc以下、又は0.936g/cc以下、又は0.934g/cc以下、又は0.932g/cc以下の密度を有し得る。エチレン系ポリマーのHDPEの例は、0.1g/10分以上、又は0.2g/10分以上、又は0.4g/10分以上、又は0.6g/10分以上、又は0.8g/10分以上、又は0.86g/10分以上、又は1.0g/10分以上、又は1.2g/10分以上、又は1.4g/10分以上、一方で同時に、1.5g/10分以下、又は1.4g/10分以下、又は1.2g/10分以下、又は1.0g/10分以下、又は0.8g/10分以下、又は0.6g/10分以下、又は0.56g/10分以下、又は0.4g/10分以下、又は0.2g/10分以下のメルトインデックス(I2)を有し得る。
【0040】
エチレン系ポリマーはエラストマーであり得る。エラストマーの例では、ポリマー組成物は、10重量%以上、又は11重量%以上、又は12重量%以上、又は13重量%以上、又は14重量%以上、一方で同時に、15重量%以下、又は14重量%以下、又は13重量%以下、又は12重量%以下、又は11重量%以下のエチレン系ポリマーを含み得る。エチレン系ポリマーのエラストマーの例は、ASTM D792により測定される場合に、0.80g/cc以上、又は0.81g/cc以上、又は0.82g/cc以上、又は0.83g/cc以上、又は0.84g/cc以上、又は0.85g/cc以上、又は0.86g/cc以上、又は0.87g/cc以上、又は0.874g/cc以上、又は0.88g/cc以上、又は0.89g/cc以上、一方で同時に、0.90g/cc以下、又は0.89g/cc以下、又は0.88g/cc以下、又は0.874g/cc以下、又は0.87g/cc以下、又は0.86g/cc以下、又は0.85g/cc以下、又は0.84g/cc以下、又は0.83g/cc以下、又は0.82g/cc以下、又は0.81g/cc以下の密度を有し得る。エチレン系ポリマーのエラストマーの例は、0.1g/10分以上、又は0.2g/10分以上、又は0.4g/10分以上、又は0.6g/10分以上、又は0.8g/10分以上、又は0.86g/10分以上、又は1.0g/10分以上、又は1.2g/10分以上、又は1.4g/10分以上、一方で同時に、1.5g/10分以下、又は1.4g/10分以下、又は1.2g/10分以下、又は1.0g/10分以下、又は0.8g/10分以下、又は0.6g/10分以下、又は0.56g/10分以下、又は0.4g/10分以下、又は0.2g/10分以下のメルトインデックス(I2)を有し得る。
【0041】
エチレン系ポリマーのLLDPE、プラストマー、HDPE、及びエラストマーの例のうちの2つ以上が、本明細書に提供される教示から逸脱することなく、ポリマー組成物において利用され得ることが理解されるであろう。
【0042】
ポリエチレングリコール
ポリマー組成物は、ポリエチレングリコールを含む。ポリエチレングリコールは、構造式(I)によって表されるエチレンオキシドのオリゴマー又はポリマーを指す。
【0043】
H-(O-CH2-CH2)q-OH 構造式(I)
式中、qはポリエチレングリコールポリマー中の繰り返し単位の数を指す。ポリエチレングリコールのq値は、200~10,000の範囲であり得る。
【0044】
ポリエチレングリコールの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィにより測定した場合に、10,000g/mol以上、又は20,000g/mol以上、又は30,000g/mol以上、又は35,000g/mol以上、又は40,000g/mol以上、又は45,000g/mol以上、又は50,000g/mol以上、又は55,000g/mol以上、又は60,000g/mol以上、又は65,000g/mol以上、又は70,000g/mol以上、又は75,000g/mol以上、又は80,000g/mol以上、又は85,000g/mol以上、又は90,000g/mol以上、又は95,000g/mol以上、一方で同時に、100,000g/mol以下、又は90,000g/mol以下、又は85,000g/mol以下、又は80,000g/mol以下、又は75,000g/mol以下、又は70,000g/mol以下、又は65,000g/mol以下、又は60,000g/mol以下、又は55,000g/mol以下、又は50,000g/mol以下、又は45,000g/mol以下、又は40,000g/mol以下、又は35,000g/mol以下、又は30,000g/mol以下、又は25,000g/mol以下、又は20,000g/mol以下、又は15,000g/mol以下であり得る。同じ又は異なる重量パーセントの異なる平均分子量ポリエチレングリコールのブレンドは、ポリマー組成物において利用され得る。
【0045】
ポリエチレングリコールは、ポリマー組成物の0.1重量%~2重量%であり得る。ポリマー組成物は、ポリエチレングリコールを0.1重量%以上、又は0.2重量%以上、又は0.3重量%以上、又は0.4重量%以上、又は0.5重量%以上、又は0.6重量%以上、又は0.7重量%以上、又は0.8重量%以上、又は0.9重量%以上、又は1.0重量%以上、又は1.1重量%以上、又は1.2重量%以上、又は1.3重量%以上、又は1.4重量%以上、又は1.5重量%以上、又は1.6重量%以上、又は1.7重量%以上、又は1.8重量%以上、又は1.9重量%以上、一方で同時に、2.0重量%以下、又は1.9重量%以下、又は1.8重量%以下、又は1.7重量%以下、又は1.6重量%以下、又は1.5重量%以下、又は1.4重量%以下、又は1.3重量%以下、又は1.2重量%以下、又は1.1重量%以下、又は1.0重量%以下、又は0.9重量%以下、又は0.8重量%以下、又は0.7重量%以下、又は0.6重量%以下、又は0.5重量%以下、又は0.4重量%以下、又は0.3重量%以下、又は0.2重量%以下で含み得る。
【0046】
コポリマー及びエチレン系ポリマー
上述のように、コポリマー及びエチレン系ポリマーの両方は、それぞれコモノマーを含む。コモノマーの重量%、並びに組み合わせたコポリマー及びエチレン系ポリマーのどの分子量画分にコモノマーが存在するかを調整することによって、ポリマー組成物は、上記の標的の機械的特性を満たす又は超えることができる。コモノマー含有量が調整されるべきポリマーの部分は、約105g/mol~105.5g/molの重量平均分子量を有するポリマーの割合である。約105g/mol~105.5g/molの重量平均分子量を有するポリマーの割合は、GPC試験方法において以下により詳細に説明される「高Mw重量分率」として本明細書で定義される。
【0047】
ポリマー組成物は、0.02以上、又は0.04以上、又は0.06以上、又は0.08以上、又は0.10以上、又は0.12以上、又は0.14以上、又は0.16以上、又は0.18以上、又は0.20以上、又は0.22以上、又は0.24以上、又は0.26以上、又は0.28以上、一方で同時に、0.30以下、又は0.28以下、又は0.26以下、又は0.24以下、又は0.22以下、又は0.20以下、又は0.18以下、又は0.16以下、又は0.14以下、又は0.12以下、又は0.10以下、又は0.08以下、又は0.06以下、又は0.04以下、又は0.02以下の高Mw重量分率を含み得る。組み合わせたコポリマー及びエチレン系ポリマーの高Mw重量分率の重量パーセントは、重量分率値に100を掛けることによって計算される。
【0048】
高Mw重量分率の平均コモノマー含有量(「高Mwコモノマー含有量」)は、GPC試験方法において以下に記載されるように、GPCを介して得られた短鎖分岐データから決定される。ポリマー組成物は、3.2重量%以上、又は3.4重量%以上、又は3.6重量%以上、又は3.8重量%以上、又は4.0重量%以上、又は4.2重量%以上、又は4.4重量%以上、又は4.6重量%以上、又は4.8重量%以上、又は5.0重量%以上、又は5.2重量%以上、又は5.4重量%以上、又は5.6重量%以上、又は5.8重量%以上、一方で同時に、6.0重量%以下、又は5.8重量%以下、又は5.6重量%以下、又は5.4重量%以下、又は5.2重量%以下、又は5.0重量%以下、又は4.8重量%以下、又は4.6重量%以下、又は4.4重量%以下、又は4.2重量%以下、又は4.0重量%以下、又は3.8重量%以下、又は3.6重量%以下、又は3.4重量%以下の高Mwコモノマー含有量を含み得る。
【0049】
高Mw重量分率と高Mwコモノマー含有量との積は、「関連コモノマー含有量」として定義され、したがって、ポリマー組成物の総質量と比較した、5.00~5.50のMwの合計サイズLog10の全ての鎖中に存在するコモノマーの総質量の重量パーセントを表す。ポリマー組成物は、0.6重量%以上、又は0.8重量%以上、又は1.0重量%以上、又は1.2重量%以上、又は1.4重量%以上、又は1.6重量%以上、又は1.8重量%以上、又は2.0重量%以上、又は2.2重量%以上、又は2.4重量%以上、又は2.6重量%以上、又は2.8重量%以上、又は3.0重量%以上、又は3.2重量%以上の関連コモノマー含有量を含み得る。言い換えると、GPCによって測定されたときに、105g/mol~105.5g/molの範囲の分子量を有する部分内に含有される総コモノマーは、ポリマー組成物の総重量の少なくとも0.6重量%である。
【0050】
機械的特性
ポリマー組成物は、以下により詳細に記載されるように、75%を超える老化後の残留破断点引っ張り伸びを示し得る。例えば、ポリマー組成物の残留破断伸びは、76%以上、又は80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は95%以上、又は100以上、一方で同時に、105%以下、又は100%以下、又は95%以下、又は90%以下、又は85%以下、又は80%以下であり得る。
【0051】
ポリマー組成物は、以下により詳細に説明されるように、400時間を超えるESCRを示し得る。例えば、ポリマー組成物は、400時間以上、又は450時間以上、又は500時間以上、又は600時間以上、又は700時間以上、又は800時間以上、又は900時間以上、又は1000時間以上、又は1100時間以上、又は1200時間以上、又は1300時間以上、又は1400時間以上、又は1500時間以上、又は1600時間以上、又は1700時間以上、又は1800時間以上、又は1900時間以上、一方で同時に、2000時間以下、又は1900時間以下、又は1800時間以下、又は1700時間以下、又は1600時間以下、又は1500時間以下、又は1400時間以下、又は1300時間以下、又は1200時間以下、又は1100時間以下、又は1000時間以下、又は900時間以下、又は800時間以下、又は700時間以下、又は600時間以下、又は500時間以下、又は450時間以下のESCRを示し得る。
【0052】
ポリマー組成物は、以下により詳細に説明されるように、2.50%未満の周期的温度シュリンクバックを示し得る。例えば、ポリマー組成物の周期的温度シュリンクバックは、2.45%以下、又は2.40%以下、又は2.35%以下、又は2.30%以下、又は2.25%以下、又は2.20%以下、又は2.15%以下、又は2.10%以下、又は2.05%以下、又は2.00%以下、又は1.95%以下、又は1.90%以下、又は1.85%以下、又は1.80%以下、又は1.75%以下、又は1.70%以下、又は1.65%以下、又は1.60%以下、又は1.55%以下、一方で同時に、1.50%以上、又は1.55%以上、又は1.60%以上、又は1.65%以上、又は1.70%以上、又は1.75%以上、又は1.80%以上、又は1.85%以上、又は1.90%以上、又は1.95%以上、又は2.00%以上、又は2.05%以上、又は2.10%以上、又は2.15%以上、又は2.20%以上、又は2.25%以上、又は2.30%以上、又は2.35%以上、又は2.40%以上であり得る。
【0053】
添加剤
ポリマー組成物は、酸化防止剤、加工助剤、カップリング剤、紫外線安定剤(UV吸収剤を含む)、帯電防止剤、カーボンブラック、追加の成核剤、スリップ剤、潤滑剤、粘度調整剤、粘着付与剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、エクステンダオイル、酸捕捉剤、難燃剤、及び金属不活性化剤の形態で追加の添加剤を含み得る。ポリマー組成物は、0.01重量%~5重量%の追加の添加剤のうちの1つ以上を含み得る。添加剤は、ニート成分として個々に添加されてもよく、組み合わされてもよく、かつ/又は1つ以上のマスターバッチに添加されてもよい。
【0054】
ポリマー組成物は、1つ以上のヒンダードアミン光安定剤を含む。HALSは、プラスチック及びポリマーにおいて安定剤として使用されるアミン官能基を含有する化学化合物である。これらの化合物は、テトラメチルピペリジンの誘導体であってもよく、UV光への曝露によるフリーラジカル酸化の影響からポリマーを保護するために主に使用される。HALSは、ポリ(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノール-alt-1,4-ブタン二酸)(CAS#65447-77-0);ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(CAS#52829-07-9);ジ-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-ブチル-2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート(CAS#63843-89-0);ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(CAS#129757-67-1);ポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-s-トリアジン-2,4-ジイル]-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]-ヘキサメチレン-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ](CAS#71878-19-8);1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N’’’-1,2-エタンジイルビス[N-[3-[[4,6-ビス[ブチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ]プロピル]-N’,N’’-ジブチル-N’,N’’-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)-(CAS#106990-43-6);1,6-ヘキサンジアミン、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンを有するN,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ポリマー、N-ブチル-1-ブタンアミン及びN-ブチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミンとの反応生成物(CAS#192268-64-7)のうちの1つ以上を含み得る。HALSの例は、BASF(Ludwigshafen,Germany)から商品名TINUVIN(商標)622及びCHIMASSORB(商標)944で市販されている。ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、0.1重量%~1.0重量%のHALSを含み得る。例えば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、0.1重量%以上、又は0.2重量%以上、又は0.3重量%以上、又は0.4重量%以上、又は0.5重量%以上、又は0.6重量%以上、又は0.7重量%以上、又は0.8重量%以上、又は0.9重量%以上、一方で同時に、1.0重量%以下、又は0.9重量%以下、又は0.8重量%以下、又は0.7重量%以下、又は0.6重量%以下、又は0.5重量%以下、又は0.4重量%以下、又は0.3重量%以下、又は0.2重量%以下のHALSを含み得る。
【0055】
ポリマー組成物は、ガラスファイバ又はナノ複合材を含む様々な鉱物系充填剤などの1つ以上の粒子状充填剤を含み得る。充填剤、特により高いアスペクト比(長さ/厚さ)を提供する細長い粒子又は小板状の粒子を含む充填剤は、弾性率及び押出後の収縮特性を改善し得る。充填剤は、20μm未満、10μm未満、又は5μm未満のメジアンサイズ又はd50を有し得る。充填剤は、ポリマー組成物中の湿潤又は分散を促進するために表面処理されてもよい。好適な充填剤の具体例としては、炭酸カルシウム、シリカ、石英、溶融石英、タルク、雲母、粘土、カオリン、ウォラストナイト、長石、水酸化アルミニウム、及びグラファイトが挙げられるが、これらに限定されない。充填剤は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、2~30重量%、又は5~30重量%の範囲の量でポリマー組成物に含まれてもよい。
【0056】
加工助剤は、ポリテトラフルオロエチレン又はフッ素化エチレンプロピレンなどのフッ素樹脂の金属塩;ステアリン酸亜鉛、又はステアリン酸カルシウムなどのカルボン酸類;ステアリン酸、オレイン酸、又はエルカ酸などの脂肪酸;ステアラミド、オレアミド、エルカミド、又はN,N’-エチレンビス-ステアラミドなどの脂肪アミド;ポリエチレンワックス;酸化ポリエチレンワックス;エチレンオキシドのポリマー;エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマー;植物ワックス;石油ワックス;非イオン性界面活性剤;シリコーン流体及びポリシロキサンを含み得る。
【0057】
酸化防止剤は、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロ-シンナメート)]メタンなどのヒンダードフェノール;ビス[(ベータ-(3,5-ジtert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)メチルカルボキシエチル)]-スルフィド、4,4’-チオビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(2-tert-ブチル-5-メチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、及びチオジエチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)-ヒドロシンナメート;トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト及びジ-tert-ブチルフェニル-ホスホナイトなどのホスファイト及びホスホナイト;ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、及びジステアリルチオジプロピオネートなどのチオ化合物;様々なシロキサン;重合2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、n,n’-ビス(1,4-ジメチルペンチル-p-フェニレンジアミン)、アルキル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(アルファ、アルファ-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、ジフェニル-p-フェニレンジアミン、混合ジ-アリール-p-フェニレンジアミン、及び他のヒンダードアミン劣化防止剤又は安定剤を含み得る。
【0058】
配合及び被覆導体の形成
ポリマー組成物の成分は、溶融ブレンドのためにバッチ又は連続ミキサーに添加されて、溶融ブレンドされた組成物を形成し得る。成分は、他の成分とブレンドするために、任意の順序で、又は最初に1つ以上のマスターバッチを調製して添加することができる。溶融ブレンドは、最高溶融ポリマーの融点を超える温度で行われ得る。次に、溶融ブレンドされた組成物を、押出機若しくは射出成形機に送達するか、又はダイを通過させて所望の物品に成形するか、あるいは材料の保管又は調製のためにペレット、テープ、ストリップ、若しくはフィルム、又は他の形態に変換して次の成形又は加工工程に供給する。任意選択的に、ペレット又は何らかの類似の構成に成形される場合、ペレットなどを粘着防止剤でコーティングして、保管中の取り扱いを容易にすることができる。
【0059】
調合設備の例としては、BANBURY(商標)又はBOLLING(商標)内部ミキサーなどの内部バッチミキサーが挙げられる。代替的に、FARRELL(商標)連続ミキサー、WERNER(商標)及びPFLEIDERER(商標)二軸スクリューミキサー、又はBUSS(商標)混錬連続押出機などの、連続単軸又は二軸スクリューミキサーを使用してもよい。利用するミキサーの種類、及びミキサーの動作条件は、粘度、体積抵抗率、及び押出表面平滑性などの組成物の特性に影響を及ぼす。
【0060】
被覆導体は、このポリマー組成物から形成され得る。被覆導体は、導体及び被覆を含む。コーティングはポリマー組成物を含む。本ポリマー組成物は、導体の周囲に少なくとも部分的に配置されて、被覆導体を製造する。導体は、導電性金属又は光透過性構造体を含むことができる。
【0061】
被覆導体を製造するためのプロセスは、ポリマー組成物を混合し、押出機中で少なくともポリマー成分の溶融温度まで加熱してポリマー溶融ブレンドを形成し、次いで、ポリマー溶融ブレンドを導体上に被覆することを含む。「上に」という用語は、ポリマー溶融ブレンドと導体との間の直接接触又は間接接触を含む。ポリマー溶融ブレンドは、押出可能な状態にある。
【0062】
ポリマー組成物は、導体の上及び/又は周りに配設されて、被覆を形成する。被覆は、絶縁層などの1つ以上の内層であり得る。被覆は、導体を全体的に若しくは部分的に覆うか、又はそうでなければ取り囲むか、若しくは包み得る。被覆は、導体を取り囲む唯一の構成要素であり得る。代替的に、被覆は、導体を包む多層ジャケット又はシースのうちの1層であってもよい。被覆は、導体と直接接触し得る。被覆は、導体を取り囲む絶縁層に直接接触し得る。
【実施例】
【0063】
材料
以下の材料を、以下の実施例で用いる。
【0064】
コポリマーは、0.955g/ccの密度、1.5g/10分のメルトインデックス(I2)、及び106g/10分のメルトインデックス(I21)を有するエチレン-ヘキセンコポリマーであり、The Dow Chemical Company(Midland,MI)から入手可能である。
【0065】
EP1は、0.920g/ccの密度、0.56g/10分のメルトインデックス(I2)、及び56g/10分のメルトインデックス(I21)を有するUNIPOL(商標)気相単峰性エチレン-ブテンポリマーである。
【0066】
EP2は、0.904g/ccの密度、0.85g/10分のメルトインデックス(I2)、及び24g/10分のメルトインデックス(I21)を有するUNIPOL(商標)気相単峰性エチレン-ブテンポリマー(プラストマー)である。
【0067】
EP3は、0.874g/ccの密度、0.8g/10分のメルトインデックス(I2)を有するエチレン-ブテンポリマー(エラストマー)であり、The Dow Chemical Company(Midland,MI)から入手可能である。
【0068】
EP4は、0.94g/ccの密度、0.85g/10分のメルトインデックス(I2)を有するエチレン-オクテンポリマーであり、The Dow Chemical Company(Midland,MI)から入手可能である。
【0069】
CBMBは、45重量%のカーボンブラックを含むカーボンブラックマスターバッチであり、The Dow Chemical Company(Midland,MI)から入手可能である。
【0070】
PEGは、20,000g/molの重量平均分子量を有するポリエチレングリコールであり、Clariant(Germany)から入手可能である。
【0071】
AO1は、商品名LOWINOX(商標)TBM-6で市販されている4,4’-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)であり、Addivant(Danbury,CT)から入手可能である。
【0072】
AO2は、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)という化学名を有する立体ヒンダードフェノール系酸化防止剤であり、BASF(Ludwigshafen,Germany)からIRGANOX 1010(商標)として市販されている。
【0073】
AO3は、トリス(2,4-ジtert-ブチルフェニル)ホスファイトという化学名を有する加水分解的に安定なホスファイト処理安定剤であり、BASF(Ludwigshafen,Germany)からIRGAFOS(登録商標)168として市販されている。
【0074】
PAは、3M(Saint Paul,Minnesota,USA)から入手可能な商品名DYNAMAR(商標)FX 5912で市販されているフッ素樹脂加工助剤である。
【0075】
試料調製
本発明の実施例(「IE」)1~6及び比較例(「CE」)1~5を、HF Mixing GroupからのミニBANBURY(1.2kg)又はBANBURY(12kg)バッチミキサーで配合した。落下温度は150℃であった。配合後、試料を押出し、ペレット化した。CE4は予備配合されペレット化された試料であった。
【0076】
異なる機械的試験のために、ペレット化された試料をプラーク及びジャケットに形成した。180℃で予熱したアーバープレス上でペレットを圧縮成形することによってプラークを調製した。試験要件ごとに異なる厚さの型にペレットを入れた。試料を180℃に4分間加熱し、次いで3.45メガパスカル(MPa)で3分間、続いて17.24MPaで3分間プレスした。試料をプレス内で15℃/分で23℃まで冷却し、次いで取り出した。ジャケット試料は、180℃~240℃で、Davis-Standardからの6.35cmワイヤ押出ラインを使用して、毎分91メートルで、0.05cmの壁厚で、導体上にポリマー組成物を押出すことによって調製した。導体を取り出し、ジャケット試料を引張試験前に室温で24時間調整した。
【0077】
I型オーブンを(ASTM D5423に従って)100℃に予熱することによって、破断点引っ張り伸び用の試料の熱老化を行った。次いで、試料を予熱したオーブンに入れ、10日間老化させた。老化後、次いで、試料を23℃、相対湿度50%で24時間調整した。
【0078】
試験方法
トリプル検出器ゲル浸透クロマトグラフィ(Gel Permeation Chromatography、GPC)は、クロマトグラフィシステムを用いて行った。クロマトグラフィシステムは、内部IR5赤外検出器(IR5)を装備したPolymerChar GPC-IR(Valencia,Spain)高温GPCクロマトグラフ、及びAgilent Technologies 2角レーザ光散乱(LS)検出器モデル2040に結合された4-キャピラリー粘度計(DV)からなっていた。全ての光散乱測定について、15度角を測定目的で使用する。オートサンプラオーブンコンパートメントを摂氏160°に設定し、カラムコンパートメントを摂氏150°に設定した。使用したカラムは、4本のAgilent「Mixed A」30cm、20マイクロメートルの線形混床式カラムであった。使用したクロマトグラフィ溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼンであり、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene、BHT)を含有していた。溶媒源を、窒素スパージした。使用した注入体積は、200マイクロリットルであり、流量は、1.0ミリリットル/分であった。
【0079】
コンベンショナルGPC手順に類似する方法に従って、コンベンショナルの分子量モーメント及び分布に関して較正及び計算を実施した(20umの「Mixed A」カラムを使用)。
【0080】
多重検出器オフセットを決定するための系統的アプローチは、Balke,Mourey,et.al.(Mourey and Balke,Chromatography Polym.Chpt12,(1992))(Balke,Thitiratsakul,Lew,Cheung,Mourey,Chromatography Polym.Chpt13,(1992))によって公開されたものと合致した様式で行われ、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアを使用して、広いホモポリマーポリエチレン標準物質(Mw/Mn>3)からのトリプル検出器ログ(MW及びIV)の結果を、狭い標準較正曲線からの狭い標準カラム較正の結果に対して最適化する。本明細書で使用される場合、「MW」は、分子量を指す。
【0081】
絶対分子量データは、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアを使用して、Zimm(Zimm,B.H.,J.Chem.Phys.,16,1099(1948))及びKratochvil(Kratochvil,P.,Classical Light Scattering from Polymer Solutions,Elsevier,Oxford,NY(1987))によって公開されたものと合致する様式で得た。分子量の決定において使用される総注入濃度を、好適な直鎖状ポリエチレンホモポリマー、又は既知の重量平均分子量のポリエチレン標準物質のうちの1つから導き出した、質量検出器面積及び質量検出器定数から得た。(GPCOne(商標)を使用して)計算される分子量を、以下に述べるポリエチレン標準物質のうちの1つ以上から導き出される、光散乱定数、及び0.104の屈折率濃度係数、dn/dcを使用して得た。一般に、(GPCOne(商標)を使用して決定された)質量検出器応答(IR5)及び光散乱定数は、約50,000g/モルを超える分子量を有する直鎖状標準物質から決定されるべきである。粘度計の較正(GPCOne(商標)を使用して決定された)は、製造業者によって記載された方法を使用して、又は代替として、標準参照材料(Standard Reference Material、SRM)1475a(国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology、NIST)から入手可能)などの好適な直鎖状標準物質の公開された値を使用することによって、達成することができる。較正標準物質に関する特定の粘度面積(DV)及び注入された質量を、その固有粘度(intrinsic viscosity、IV)に関連づけることにより、粘度計定数(GPCOne(商標)を使用して得られる)を計算する。クロマトグラフィ濃度は、第2のウイルス係数効果(分子量に対する濃度効果)への対処を排除するのに十分に低いと推測される。
【0082】
絶対重量平均分子量(Mw(Abs))は、(GPCOne(商標)を使用して)光散乱(LS)の面積積分クロマトグラム(光散乱定数によって因数分解)を、質量定数及び質量検出器(IR5)面積から回収された質量で除算することにより得られる。分子量及び固有粘度応答は、信号対ノイズが低くなるクロマトグラフィの端部で外挿される(GPCOne(商標)を使用)。他のそれぞれのモーメントであるMn
(Abs)及びMz
(Abs)は、以下の式1~2に従って計算される。
【数1】
【数2】
【0083】
コンベンショナルGPC:クロマトグラフィシステムは、Precision Detectors(現在はAgilent Technologies)2角レーザ光散乱(LS)検出器モデル2040に結合された内部IR5赤外検出器(IR5)を備えた、PolymerChar GPC-IR(Valencia,Spain)高温GPCクロマトグラフからなっていた。全ての光散乱測定について、15度角を測定目的で使用する。オートサンプラオーブンコンパートメントを摂氏160°に設定し、カラムコンパートメントを摂氏150°に設定した。使用したカラムは、4本のAgilent「Mixed A」30cm、20マイクロメートルの線形混床式カラムであった。使用したクロマトグラフィ溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼンであり、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene、BHT)を含有していた。溶媒源を、窒素スパージした。使用した注入体積は、200マイクロリットルであり、流量は、1.0ミリリットル/分であった。
【0084】
GPCカラムセットの較正は、580g/mol~8,400,000g/molの範囲の分子量を有する21個の狭い分子量分布のポリスチレン標準物質を用いて行い、その標準物質は、個々の分子量の間が少なくとも10倍離れた6つの「カクテル」混合物中に準備した。標準物質を、Agilent Technologiesから購入した。ポリスチレン標準物質は、1,000,000g/mol以上の分子量の場合は溶媒50ミリリットル中に0.025グラムで、1,000,000g/mol未満の分子量の場合は溶媒50ミリリットル中に0.05グラムで調製した。ポリスチレン標準物質を、穏やかに撹拌しながら摂氏80度で30分間溶解させた。ポリスチレン標準物質のピーク分子量を、式1を使用してポリエチレン分子量に変換した(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に記載のとおり)。
【数3】
式中、MWは分子量であり、Aは0.4315の値を有し、Bは1.0に等しい。
【0085】
五次多項式を使用して、それぞれのポリエチレン等価較正点に当てはめた。Aに対してわずかな調整(約0.395~0.440)を行い、カラム分解能及びバンド拡張効果を、線状ホモポリマーポリエチレン標準が120,000g/mol(Mw)で得られるように補正した。
【0086】
GPCカラムセットの合計プレート計数は、デカン(50ミリリットルのTCB中0.04gで調製した)を用いて行った。プレートカウント(式4)及び対称性(式5)を、200マイクロリットル注入で以下の式に従って測定した。
【数4】
式中、RVは、ミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅は、ミリリットルであり、ピーク最大値は、ピークの最大高さであり、1/2高さは、ピーク最大値の1/2の高さである。
【数5】
式中、RVは保持体積(ミリリットル)であり、ピーク幅はミリリットルであり、ピーク最大値はピークの最大位置であり、1/10高さはピーク最大値の1/10の高さであり、後方ピークはピーク最大値よりも後の保持体積でのピークテールを指し、前方ピークはピーク最大値よりも早い保持体積でのピークフロントを指す。クロマトグラフィシステムのプレートカウントは、24,000超になるべきであり、対称性は、0.98~1.22となるべきである。
【0087】
試料をPolymerChar「Instrument Control」ソフトウェアを用いて半自動で調製し、2mg/mlを試料の標的重量とし、PolymerChar高温オートサンプラを介して、予め窒素をスパージしたセプタキャップ付きバイアルに溶媒(200ppmのBHTを含有していた)を添加した。試料を、「低速」振盪下で、摂氏160度で2時間溶解した。
【0088】
Mn(conv)、Mw(conv)、及びMz(conv)の計算は、PolymerChar GPC-IRクロマトグラフの内部IR5検出器(測定チャネル)を使用し、式6~8に従い、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアを使用し、等間隔のデータ回収点(i)でベースラインを差し引いたIRクロマトグラム、及び式1からの点(i)の狭い標準較正曲線から得られるポリエチレン相当分子量を使用する、GPCの結果に基づき行った。
【数6】
【数7】
【数8】
【0089】
経時的な偏差を監視するために、PolymerChar GPC-IRシステムで制御されたマイクロポンプを介して、各試料に流量マーカー(デカン)を導入した。この流量マーカー(flowrate marker、FM)を用いて、試料中のそれぞれのデカンピーク(RV(FM試料))と、狭い標準物質較正(RV(FM較正済み))内のデカンピークのそれとを、RV整合させることによって、各試料のポンプ流量(流量(見かけ))を直線的に補正した。次いで、デカンマーカーピークの時間のいかなる変化も、実行の全体にわたって流量(流量(有効))における線形シフトに関連すると推測される。流量マーカーピークのRV測定の最高精度を促進するために、流量マーカー濃度クロマトグラムのピークを二次方程式に当てはめる最小二乗適合ルーチンが使用される。次いで、二次方程式の一次導関数を使用して、真のピーク位置を解く。流量マーカーのピークに基づいてシステムを較正した後、(狭い標準較正に対する)有効流量を、式9の通り計算する。流量マーカーピークの処理を、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアを介して行った。許容可能な流量補正は、有効流量が見かけの流量の+/-2%以内になるはずであるようなものである。
【数9】
IR5検出器比の較正は、ホモポリマー(0SCB/1000個の合計C)からおよそ40SCB/1000個の合計C(式中、合計C=主鎖中の炭素+分岐中の炭素)までの範囲の既知の短鎖分岐(SCB)頻度(
13C NMRで測定した)の少なくとも10個のエチレン系ポリマー標準(ポリエチレンホモポリマー及びエチレン/オクテンコポリマー)を使用して実施された。各標準は、上記のGPC-LALS処理法によって決定された36,000g/モル~126,000g/モルの重量平均分子量を有していた。各標準は、上記のGPC-LALS処理法によって決定された2.0~2.5の分子量分布(Mw/Mn)を有していた。
【0090】
「IR5メチルチャネルセンサのベースライン減算領域応答」の「IR5測定チャネルセンサのベースライン減算領域応答」に対する「IR5領域比(又は「IR5
メチルチャネル領域/IR5
測定チャネル領域」)」(PolymerCharによって供給された標準フィルタ及びフィルタホイール:Part Number IR5_FWM01は、GPC-IR機器の一部として含まれていた)を、「SCB」標準の各々について計算した。SCB頻度対「IR5領域比」の直線近似を、式10の形態で構築した。
【数10】
【0091】
式10において、A0はゼロの「IR5領域比」における「SCB/総炭素数1000個」の切片であり、A1は「SCB/総炭素数1000個」対「IR5領域比」の傾きであり、「IR5領域比」の関数としてのSCB/総炭素数1000個における増加を表す。
【0092】
「IR5メチルチャネルセンサ」によって生成されたクロマトグラムについての一連の「直線的なベースライン減算クロマトグラフィ高さ」を、カラム溶出体積の関数として確立して、ベースライン補正クロマトグラム(メチルチャネル)を生成した。「IR5測定チャネル」によって生成されたクロマトグラムについての一連の「線形ベースライン減算クロマトグラフィ高さ」をカラム溶出体積の関数として確立して、ベースライン補正クロマトグラム(測定チャネル)を生成した。
【0093】
「ベースライン補正クロマトグラム(メチルチャネル)」の「ベースライン補正クロマトグラム(測定チャネル)」に対する「IR5高さ比」を、サンプル統合境界にわたって各カラム溶出体積指数(1mL/分の溶出で秒当たり1データポイントを表す各等間隔の指数)で計算した。「IR5高さ比」に係数A
1を乗算し、係数A
0をこの結果に加算して、試料の予測されたSCB頻度を生成した。結果を、以下の式11のとおり、モルパーセントコモノマーに変換した。
【数11】
【0094】
式11において、「SCBf」は、「SCB/総炭素数1000個」であり、「コモノマー長」=8である。
【0095】
次いで、モル%コモノマーは、オクテン及びエチレンの分子量を使用することによって重量%コモノマーに変換される。
【0096】
上記の方法によって、重量%コモノマーは、試料又は試料の任意の部分について計算することができる。コンベンショナルGPC分析と組み合わせたこの技術の使用は、重量%コモノマーが分子量の関数として決定されることを可能にする(C8i)。
【0097】
高Mw重量分率は、上記のコンベンショナルGPC法から決定される。高Mw重量分率は、式12に示されるように、コンベンショナルGPCに基づいて、少なくとも5.00かつ5.50未満のMwのLog10を有すると測定された総質量分率である。
【数12】
【0098】
高Mwコモノマー含有量は、式13に示すように、これらの分子量の範囲にわたって報告された加重平均コモノマー重量%を使用することによって計算した。
【数13】
【0099】
高Mw重量分率と高Mwコモノマー含有量との積は、特定の分子量のポリマー鎖内に含まれるコモノマーからなる樹脂の重量分率である。この積は関連コモノマーである。
【0100】
破断伸びは、IEC 60811-501に従って、伸び計を用いて25mm/分で、プラーク試料で測定した。
【0101】
密度を、23℃で、ASTM D792に従って測定した。
【0102】
メルトインデックスは、ASTM D1238に従って、190℃で、指定されたように2.16kgの荷重(I2)又は21.6kgの荷重(I21)のいずれかで測定した。
【0103】
ESCRは、IEC 60811-406(2012)、方法Bに従って、試験サンプルのオーブン調整なしで測定した。52gの試料を、寸法150mm×180mm×1.9mmのフレームに導入した。<1キロニュートン(「kN」)の初期力を170℃で加えた。次に、試料を170℃に保持しながら、200kNの力を2分間加えた。2分が経過した後、冷却カセットをプレスに移し、温度を40℃に下げた。
【0104】
周期的温度シュリンクバック試験をジャケット試料に対して行った。周期的温度シュリンクバックは、40℃~100℃まで0.5℃/分のランプ速度でオーブン中でジャケット試料を調整することによって行った。試料を100℃で60分間保持し、次いで、温度を0.5℃/分の速度で40℃に戻した。ジャケットを40℃で20分間保持し、次いで、温度サイクルを更に4回繰り返して合計5サイクルとした。収縮は、試験前から試験後までのジャケットの長さのパーセント変化として報告され、長さ61cmの試験片に対して1.6mmまで正確な定規を使用して測定された。
【0105】
結果
表1は、IE1~IE6及びCE1~CE4の組成データを提供する。表2は、IE1~IE6及びCE1~CE4の機械的試験結果並びに機械的特性の目標値を提供する。破断点引っ張り伸びは、未老化(「TE」)及び熱老化試料(「老化TE」)の両方について提供される。老化後の残留破断伸び(「残留TE」)は、老化TE値を試料のTE値で割ることによって計算される。項目「nm」は、特定の特性が測定されなかったことを表す。
【表1】
*IE1とCE4から補間により計算
【表2】
【0106】
ここで表1及び表2を参照すると、IE1~IE6は、各機械的特性の目標値を超えることができるが、CE1~CE4はそれぞれ、少なくとも1つの目標機械的特性値を満たさない。IE1~IE6は、組み合わせたコポリマー及びエチレン系ポリマーの総重量に基づいて、高Mwコモノマー含有量が3.2重量%以上であり、関連コモノマー含有量が0.6重量%以上である限り、様々な濃度の様々なエチレン系ポリマーが機械的特性目標を満たすことができることを実証する。CE1は、IE1、IE4及びIE5と同じ成分を同様の濃度で有するにもかかわらず、関連コモノマー含有量が0.6重量%未満であり、したがってESCR目標値を満たすことができないことを実証する。CE2は、ポリエチレングリコールの組み込みがESCR目標の達成を助けることを実証する。CE3及びCE4はそれぞれ、3.2重量%未満の高Mwコモノマー含有量では、機械的特性についての全ての目標値を満たす試料を生成できないことを実証している。更に、CE3及びCE4はそれぞれ、0.6重量%未満の関連コモノマー含有量では、機械的特性の全ての目標値を満たす試料を生成できないことを実証している。
【国際調査報告】