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特表2023-545926プログラム死受容体1(PD-1)抗体とヒアルロニダーゼ変異体とそれらのフラグメントとの安定製剤およびその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】プログラム死受容体1(PD-1)抗体とヒアルロニダーゼ変異体とそれらのフラグメントとの安定製剤およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20231025BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20231025BHJP
   C07K 16/30 20060101ALN20231025BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20231025BHJP
【FI】
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P35/04
A61P11/00
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K9/10
A61K47/22
A61K47/26
A61K47/20
A61K9/19
A61P15/00
A61P7/00
A61P13/02
A61P1/00
A61K31/519
A61K31/282
C07K16/30 ZNA
C12N15/13
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518480
(86)(22)【出願日】2021-09-23
(85)【翻訳文提出日】2023-05-16
(86)【国際出願番号】 US2021051641
(87)【国際公開番号】W WO2022066832
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】63/082,888
(32)【優先日】2020-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522242018
【氏名又は名称】メルク・シャープ・アンド・ドーム・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナマチャリ,ヨギタ
(72)【発明者】
【氏名】ミッタル,サチン
(72)【発明者】
【氏名】サンガニ,サヒル・エス
(72)【発明者】
【氏名】フォレスト,ウィリアム・ピー・ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】スー,ヨンチャオ
(72)【発明者】
【氏名】チャオ,シィ
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ケイトリン・ジーン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076BB16
4C076CC27
4C076DD09F
4C076DD55S
4C076DD60Z
4C076DD67
4C076FF16
4C076FF51
4C076FF61
4C076GG06
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG04
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA21
4C086MA66
4C086NA03
4C086ZA51
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA81
4C086ZB26
4C206AA01
4C206AA02
4C206JB16
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA41
4C206MA86
4C206NA03
4C206ZA51
4C206ZA59
4C206ZA66
4C206ZA81
4C206ZB26
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明はヒトプログラム死受容体PD-1に対する抗体またはその抗原結合性フラグメントとPH20変異体またはその断片との安定製剤に関する。本発明は更に、本発明の製剤を使用する種々の癌の治療方法を提供する。本発明の方法の幾つかの実施形態においては、製剤を皮下投与により対象に投与する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)約20mg/mL~約200mg/mLの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、
b)約0.0009~0.050mg/mlのPH20変異体またはその断片、
c)約5mM~約20mMのバッファー、
d)スクロースおよびトレハロースからなる群から選択される約3%~約10%[重量/体積(w/v)]の非還元二糖、
e)約0.005%~約0.10%(w/v)の非イオン性界面活性剤、ならびに、
所望により含まれていてもよい、
f)約1mM~約30mMの抗酸化剤
を含む製剤。
【請求項2】
製剤が約5.2~約5.8のpHを有する、請求項1記載の製剤。
【請求項3】
製剤が約5.0~約6.0のpHを有する、請求項1記載の製剤。
【請求項4】
バッファーがヒスチジンバッファーである、請求項1~3のいずれか1項記載の製剤。
【請求項5】
バッファーが、約8mM~約12mMの濃度で存在するヒスチジンバッファーである、請求項1~3のいずれか1項記載の製剤。
【請求項6】
スクロースまたはトレハロースが、約6%~約8%[重量/体積(w/v)]である、請求項1~5のいずれか1項記載の製剤。
【請求項7】
非還元二糖が、約7% w/vで存在するスクロースである、請求項1~5のいずれか1項記載の製剤。
【請求項8】
非イオン性界面活性剤が、ポリソルベート80、60、40または20である、請求項1~7のいずれか1項記載の製剤。
【請求項9】
非イオン性界面活性剤が約0.005~0.02% w/vで存在する、請求項8記載の製剤。
【請求項10】
非イオン性界面活性剤が約0.02% w/vで存在する、請求項9記載の製剤。
【請求項11】
抗酸化剤が、L-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項1~10のいずれか1項記載の製剤。
【請求項12】
抗酸化剤が、約5mM~約20mMの濃度で存在するL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項1~10のいずれか1項記載の製剤。
【請求項13】
抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントの濃度が、約100mg/mL~約185mg/mLである、請求項1~12のいずれか1項記載の製剤。
【請求項14】
抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントの濃度が、約50mg/mL~約175mg/mLである、請求項1~12のいずれか1項記載の製剤。
【請求項15】
抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントの濃度が、約75mg/mL~約175mg/mLである、請求項1~12のいずれか1項記載の製剤。
【請求項16】
抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントの濃度が、約50、75、150、165または185mg/mLである、請求項1~12のいずれか1項記載の製剤。
【請求項17】
抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントの濃度が、約130mg/mLである、請求項1~12のいずれか1項記載の製剤。
【請求項18】
抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントの濃度が、約165mg/mLである、請求項1~12のいずれか1項記載の製剤。
【請求項19】
PH20変異体またはその断片の濃度が、約0.006mg/mLまたは1000U/mlである、請求項1~18のいずれか1項記載の製剤。
【請求項20】
PH20変異体またはその断片の濃度が、約0.009mg/mLまたは1500U/mlである、請求項1~18のいずれか1項記載の製剤。
【請求項21】
PH20変異体またはその断片の濃度が、約0.012mg/mLまたは2000U/mlである、請求項1~18のいずれか1項記載の製剤。
【請求項22】
PH20変異体またはその断片の濃度が、約750、1000、1500、3000、5000または6000U/mLである、請求項1~18のいずれか1項記載の製剤。
【請求項23】
a)約100mg/mL~約185mg/mLの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、
b)約0.006~0.04mg/mlのPH20変異体またはその断片、
c)約5mM~約20mMのヒスチジンバッファー、
d)約6%~約8% w/vのスクロース、
e)約0.01%~約0.04% w/vのポリソルベート80、ならびに、
所望により含まれていてもよい、
f)約5mM~約20mMのL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩
を含む、請求項1記載の製剤。
【請求項24】
a)約100mg/mL~約165mg/mLの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、
b)約0.006~0.030mg/mlのPH20変異体またはその断片、
c)約5mM~約20mMのヒスチジンバッファー、
d)約6%~約8% w/vのスクロース、
e)約0.01%~約0.04% w/vのポリソルベート80、ならびに、
所望により含まれていてもよい、
f)約5mM~約20mMのL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩
を含む、請求項1記載の製剤。
【請求項25】
a)約100mg/mL~約165mg/mLの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、
b)約0.006~0.030mg/mlのPH20変異体またはその断片、
c)約10mMのヒスチジンバッファー、
d)所望により含まれていてもよい、約10mMのL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩、
e)約7% w/vのスクロース、および
f)約0.02% w/vのポリソルベート80
を含む、請求項1記載の製剤。
【請求項26】
a)約130mg/mLの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、
b)約0.006mg/mlまたは1000U/mlのPH20変異体またはその断片、
c)約10mMのヒスチジンバッファー、
d)所望により含まれていてもよい、約10mMのL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩、
e)約7% w/vのスクロース、および
f)約0.02% w/vのポリソルベート80
を含む、請求項1記載の製剤。
【請求項27】
a)約130mg/mLの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、
b)約0.009mg/mlまたは1500U/mlのPH20変異体またはその断片、
c)約10mMのヒスチジンバッファー、
d)所望により含まれていてもよい、約10mMのL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩、
e)約7% w/vのスクロース、および
f)約0.02% w/vのポリソルベート80
を含む、請求項1記載の製剤。
【請求項28】
a)約130mg/mLの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、
b)約2000U/mlまたは0.012mg/mlのPH20変異体またはその断片、
c)約10mMのヒスチジンバッファー、
d)所望により含まれていてもよい、約10mMのL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩、
e)約7% w/vのスクロース、および
f)約0.02% w/vのポリソルベート80
を含む、請求項1記載の製剤。
【請求項29】
a)約165mg/mLの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、
b)約0.006mg/mlまたは1000U/mlのPH20変異体またはその断片、
c)約10mMのヒスチジンバッファー、
d)所望により含まれていてもよい、約10mMのL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩、
e)約7% w/vのスクロース、および
f)約0.02% w/vのポリソルベート80
を含む、請求項1記載の製剤。
【請求項30】
a)約165mg/mLの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、
b)約0.009mg/mlまたは1500U/mlのPH20変異体またはその断片、
c)約10mMのヒスチジンバッファー、
d)所望により含まれていてもよい、約10mMのL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩、
e)約7% w/vのスクロース、および
f)約0.02% w/vのポリソルベート80
を含む、請求項1記載の製剤。
【請求項31】
a)約165mg/mLの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、
b)約2000U/mlまたは約0.012mg/mlのPH20変異体またはその断片、
c)約10mMのヒスチジンバッファー、
d)所望により含まれていてもよい、約10mMのL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩、
e)約7% w/vのスクロース、および
f)約0.02% w/vのポリソルベート80
を含む、請求項1記載の製剤。
【請求項32】
抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントの濃度が、約50mg/mL~約175mg/mLである、請求項23~31のいずれか1項記載の製剤。
【請求項33】
抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントの濃度が、約75mg/mL~約175mg/mLである、請求項23~31のいずれか1項記載の製剤。
【請求項34】
抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントの濃度が、約50、75、150、165または185mg/mLである、請求項23~31のいずれか1項記載の製剤。
【請求項35】
液体である、請求項1~34のいずれか1項記載の製剤。
【請求項36】
凍結乾燥製剤から再構成された溶液である、請求項1~34のいずれか1項記載の製剤。
【請求項37】
製剤がガラスバイアルまたは注射装置内に含有されている、請求項1~36のいずれか1項記載の製剤。
【請求項38】
製剤が皮下投与用である、請求項1~37のいずれか1項記載の製剤。
【請求項39】
製剤の粘度が5℃で7~90cPの範囲である、請求項38記載の製剤。
【請求項40】
製剤の粘度が5℃で7~30cPの範囲である、請求項38記載の製剤。
【請求項41】
製剤の粘度が20℃で7~50cPの範囲である、請求項38記載の製剤。
【請求項42】
製剤の粘度が20℃で7~20cPの範囲である、請求項38記載の製剤。
【請求項43】
製剤を5℃で3ヶ月間貯蔵した後、HP-SECによって測定されたHMW(%)が2%未満である、請求項1~42のいずれか1項記載の製剤。
【請求項44】
抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号1のCDRL1、配列番号2のCDRL2および配列番号3のCDRL3を含む3つの軽鎖CDRを含む軽鎖可変領域と、配列番号6のCDRH1、配列番号7のCDRH2および配列番号8のCDRH3の3つの重鎖CDRを含む重鎖可変領域とを含む、請求項1~43のいずれか1項記載の製剤。
【請求項45】
抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号4に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号9に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む、請求項1~43のいずれか1項記載の製剤。
【請求項46】
抗ヒトPD-1抗体が、配列番号5に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号10に示されているアミノ酸配列を含む重鎖とを含む、請求項1~43のいずれか1項記載の製剤。
【請求項47】
抗ヒトPD-1抗体がペンブロリズマブである、請求項1~43のいずれか1項記載の製剤。
【請求項48】
抗ヒトPD-1抗体がペンブロリズマブ変異体である、請求項1~43のいずれか1項記載の製剤。
【請求項49】
PH20変異体またはその断片が、T341A、T341C、T341D、T341G、T341S、L342W、S343E、I344NおよびN363Gからなる群から選択される1以上のアミノ酸残基置換を更に含む、請求項1~48のいずれか1項記載の製剤。
【請求項50】
PH20変異体またはその断片が、以下のアミノ酸残基置換の群、すなわち、
(a)T341S、L342W、S343E、I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359DおよびI361T;
(b)L342W、S343E、I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359DおよびI361T;
(c)M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359D、I361TおよびN363G;
(d)T341G、L342W、S343E、I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359DおよびI361T;
(e)T341A、L342W、S343E、I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359DおよびI361T;
(f)T341C、L342W、S343E、I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359DおよびI361T;
(g)T341D、L342W、S343E、I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359DおよびI361T;
(h)I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359DおよびI361T;ならびに
(i)S343E、I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359DおよびI361T
から選択されるアミノ酸残基置換を有する、請求項1~48のいずれか1項記載の製剤。
【請求項51】
PH20変異体またはその断片が、T341S、L342W、S343E、I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359DおよびI361Tからなるアミノ酸残基置換を有する、請求項1~48のいずれか1項記載の製剤。
【請求項52】
配列番号21のアミノ酸残基1~36、1~37、1~38、1~39または1~40のN末端欠失を有するPH20変異体断片を含む、請求項1~51のいずれか1項記載の製剤。
【請求項53】
アミノ酸残基455~509、458~509、461~509、464~509、465~509、466~509、467~509、468~509、470~509、471~509、472~509、473~509、474~509、475~509、476~509、478~509、480~509、482~509、484~509、486~509、488~509または490~509(ここで、番号付けは配列番号21に基づく)のC末端欠失を有するPH20変異体断片を含む、請求項1~51のいずれか1項記載の製剤。
【請求項54】
アミノ酸残基468~509(ここで、番号付けは配列番号21に基づく)のC末端欠失を有するPH20変異体断片を含む、請求項1~53のいずれか1項記載の製剤。
【請求項55】
配列番号23に示されているアミノ酸配列からなるPH20変異体断片を含む、請求項1~48のいずれか1項記載の製剤。
【請求項56】
請求項1~55のいずれか1項記載の製剤の有効量を患者に投与することを含む、慢性感染の治療を要するヒト患者における慢性感染の治療方法。
【請求項57】
請求項1~55のいずれか1項記載の製剤の有効量を患者に投与することを含む、癌の治療を要するヒト患者における癌の治療方法。
【請求項58】
癌が、メラノーマ、非小細胞肺癌、頭頸部癌、尿路上皮癌、乳癌、胃癌、胃食道接合部腺癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、メルケル細胞癌、腎細胞癌、子宮内膜癌、有棘細胞癌、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、中皮腫、卵巣癌、小細胞肺癌、食道癌、肛門癌、胆道癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、甲状腺癌、唾液腺癌、前立腺癌、神経膠芽腫、腫瘍遺伝子変異量-高またはMSI-H癌である、請求項57記載の方法。
【請求項59】
癌が、トリプルネガティブ乳癌またはER+/HER2- 乳癌である乳癌である、請求項58記載の方法。
【請求項60】
癌が、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫またはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である非ホジキンリンパ腫である、請求項58記載の方法。
【請求項61】
癌が、マイクロサテライト不安定性-高(MSI-H)またはミスマッチ修復欠損固形腫瘍である、請求項58または59記載の方法。
【請求項62】
癌が、尿路上皮癌、頭頸部癌、胃癌、子宮頸癌または食道癌である、請求項58記載の方法。
【請求項63】
患者が、1%以上のPD-L1発現CPSを有する腫瘍を有する、請求項58~62のいずれか1項記載の方法。
【請求項64】
癌が転移性非小細胞肺癌(NSCLC)である、請求項58記載の方法。
【請求項65】
患者が、高いPD-L1発現[腫瘍比率スコア(Tumor Proportion Score)(TPS)≧50%)]を有する腫瘍を有し、白金含有化学療法で過去に治療されなかった、請求項64記載の方法。
【請求項66】
患者が、1%以上のPD-L1発現TPSを有する腫瘍を有し、白金含有化学療法で過去に治療された、請求項64記載の方法。
【請求項67】
患者の腫瘍がEGFRまたはALKゲノム異常を有さない、請求項64~66のいずれか1項記載の方法。
【請求項68】
該方法が、ペメトレキセドおよびカルボプラチンを患者に投与することを更に含む、請求項64記載の方法。
【請求項69】
有効量が、約1.0、3.0および10mg/kg患者体重からなる群から選択される抗ヒトPD-1抗体の用量を含む、請求項56~68のいずれか1項記載の方法。
【請求項70】
製剤の有効量が、200~400mgの抗ヒトPD-1抗体の用量を含む、請求項56~68のいずれか1項記載の方法。
【請求項71】
製剤を皮下投与によって投与する、請求項56~68のいずれか1項記載の方法。
【請求項72】
ヒト患者における癌の治療のための、請求項1~55のいずれか1項記載の製剤の使用。
【請求項73】
癌が、メラノーマ、非小細胞肺癌、頭頸部癌、尿路上皮癌、乳癌、胃癌、胃食道接合部腺癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、メルケル細胞癌、腎細胞癌、子宮内膜癌、有棘細胞癌、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、中皮腫、卵巣癌、小細胞肺癌、食道癌、肛門癌、胆道癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、甲状腺癌、唾液腺癌、前立腺癌、神経膠芽腫、腫瘍遺伝子変異量-高またはMSI-H癌である、請求項72記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出されている配列表を含み、その全体を参照により本明細書に組み入れることとする。2021年9月17日付で作成された該ASCIIコピーは、25106WOPCT-SEQLIST-21SEP2021.txtと称され、32,171バイトのサイズを有する。
【0002】
発明の分野
本発明は、ヒトプログラム死受容体1(PD-1)に結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントとヒアルロン酸加水分解酵素およびその変異体とを含む安定製剤に関する。また、本発明の製剤を使用する種々のがん(以下、癌と表記される)および慢性感染症の治療方法も提供する。
【背景技術】
【0003】
プログラム死受容体-1(PD-1)系を標的とする免疫チェックポイント療法は、複数のヒト癌における臨床応答の画期的な改善をもたらしている(Brahmerら,N Engl J Med 2012,366:2455-65;Garonら,N Engl J Med 2015,372:2018-28;Hamidら,N Engl J Med 2013,369:134-44;Robertら,Lancet 2014,384:1109-17;Robertら,N Engl J Med 2015,372:2521-32;Robertら,N Engl J Med 2015,372:320-30;Topalianら,N Engl J Med 2012,366:2443-54;Topalianら,J Clin Oncol 2014,32:1020-30;Wolchokら,N Engl J Med 2013,369:122-33)。T細胞上のPD-1受容体と腫瘍および免疫浸潤細胞上のそのリガンド(すなわち、PD-L1およびPD-L2)との相互作用はT細胞媒介性免疫応答を調節し、ヒト腫瘍による免疫逃避における役割を果たしうる(Pardoll DM.Nat Rev Cancer 2012,12:252-64)。PD-1の、そのリガンドのいずれかへの結合は、T細胞への抑制性刺激の運搬をもたらす。PD-1系を標的とする免疫療法には、PD-1受容体に対するモノクローナル抗体[KEYTRUDA(商標)(ペンブロリズマブ(pembrolizumab)),Merck and Co.,Inc.Kenilworth,NJおよびOPDIVO(商標)(ニボルマブ(nivolumab)),Bristol-Myers Squibb,Princeton,NJ]、そしてまた、PD-L1リガンドに結合するもの[MPDL3280A;TECENTRIQ(商標)(アテゾリズマブ(atezolizumab)),Genentech,San Francisco,CA]が含まれる。どちらの治療アプローチも多数の癌型において抗腫瘍効果を示している。
【0004】
ヒアルロニダーゼは、細胞外マトリックスに存在するヒアルロン酸を分解する酵素である。ヒトにおいては、6種類のヒアルロニダーゼ、すなわち、Hyall、Hyal2、Hyal3、Hyal4、HyalPS1、PH20/SPAM1が存在することが公知である。PH20/SPAM1(以下、PH20と称される)は精子形質膜および先体膜において発現される。
【0005】
ヒアルロニダーゼはヒアルロン酸を加水分解し、それにより、細胞外マトリックスにおけるヒアルロン酸の粘度を低下させ、組織(皮膚)内へのその透過性を増加させる。皮膚の皮下領域は、約7.0~7.5の中性pHを有する。したがって、種々の種類のヒアルロニダーゼのなかで、PH20が広範に使用されている(Bookbinderら,2006)。PH20が使用される例においては、PH20は、しばしば、皮下注射される抗体治療用物質と共投与される(Bookbinderら,2006)。
【0006】
抗体と酵素との製剤の安定性は複雑であり、共製剤マトリックス中の個々の酵素または抗体の安定性の関数、追加的な賦形剤の存在の影響、および抗体と酵素との特異的な相互作用のような複数の要因によって複雑化されうる。しばしば、酵素と共に製剤化される抗体の高濃度は、望ましくない他の製品特性(例えば、凝集の増加および生理的浸透圧より高くなることおよび粘度増加による注射可能性の低下)の原因となりうる。結果として、皮下投与のための抗PD-1抗体とPH20またはPH20変異体との安定製剤が必要とされている。そのような安定製剤は、好ましくは、自己投与用の薬物の貯蔵に典型的な条件下、すなわち、シリンジ、容器または他の装置における冷蔵温度で、数ヶ月から数年にわたって安定性を示して、対応医薬品の長い貯蔵寿命をもたらす。
【発明の概要】
【0007】
発明の概括
本発明は、a)約20mg/mL~約200mg/mLの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、b)約0.0009~0.050mg/mlのPH20変異体またはその断片、c)バッファー、d)非還元二糖、e)非イオン性界面活性剤、および所望により含まれていてもよいf)抗酸化剤を含む製剤を提供する。
【0008】
1つの実施形態においては、製剤は、
a)約20mg/mL~約200mg/mLの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、
b)約0.0009~0.050mg/mlのPH20変異体またはその断片、
c)約5mM~約20mMのバッファー、
d)スクロースおよびトレハロースからなる群から選択される約3%~約10%[重量/体積(w/v)]の非還元二糖、
e)約0.005%~約0.10%の非イオン性界面活性剤、ならびに、
所望により含まれていてもよい、
f)約1mM~約30mMの抗酸化剤
を含む。
【0009】
驚くべきことに、本発明の製剤の特定の実施形態は、光ストレス下およびステンレス鋼ストレス下、25℃で1または3ヶ月間の貯蔵の後、5℃で6ヶ月間の貯蔵の後および25℃で3ヶ月間の貯蔵の後、同じ製剤における対応するPH20変異体またはその断片のみの場合と比較して、PH20変異体またはその断片のヒアルロニダーゼ活性を増強した。本発明は、液体製剤、または凍結乾燥製剤から再構成(還元)された液体製剤でありうる。
【0010】
本発明の特定の実施形態においては、抗PD-1抗体はペンブロリズマブまたはペンブロリズマブの抗原結合性フラグメントである。本発明の特定の実施形態においては、PH20の変異体または断片は、配列番号23のアミノ酸配列に示されているPH20変異体断片2である。
【0011】
また、本明細書は、本発明の製剤の有効量を患者に投与することを含む、それを要するヒト患者における癌の治療方法および慢性感染(慢性感染症)の治療方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】AK03(100mg/mlのペンブロリズマブのみ)およびAK10~AK15(種々の濃度のペンブロリズマブおよびPH20変異体断片2)を含有する製剤に関する5℃および25℃における温度依存性粘度プロファイル。
図2】それぞれ初期、1ヶ月、3ヶ月および6ヶ月における5、25および40℃における製剤AK03(100mg/mlのペンブロリズマブのみ)およびAK10~AK15(種々の濃度のペンブロリズマブおよびPH20変異体断片2)のUP-SECによって測定された高分子量種(HMWS)の割合(%)。
図3】それぞれ初期、1ヶ月、3ヶ月および6ヶ月における5、25および40℃における製剤AK03(100mg/mlのペンブロリズマブのみ)およびAK10~AK15(種々の濃度のペンブロリズマブおよびPH20変異体断片2)のHP-IEXによって測定された酸性変異体。
図4】それぞれ初期、1ヶ月、3ヶ月および6ヶ月における5、25および40℃における製剤AK03(100mg/mlのペンブロリズマブのみ)およびAK10~AK15(種々の濃度のペンブロリズマブおよびPH20変異体断片2)のHP-IEXによって測定された主要変異体。
図5】それぞれ初期、1ヶ月、3ヶ月および6ヶ月における5、25および40℃における製剤AK03(100mg/mlのペンブロリズマブのみ)およびAK10~AK15(種々の濃度のペンブロリズマブおよびPH20変異体断片2)のHP-IEXによって測定された塩基性変異体。
図6】それぞれ初期、1ヶ月、3ヶ月および6ヶ月における5、25および40℃における製剤AK03(100mg/mlのペンブロリズマブのみ)およびAK10~AK15(種々の濃度のペンブロリズマブおよびPH20変異体断片2)のペンブロリズマブにおけるMet[105]酸化種(プレピーク1+2)。
図7】活性アッセイ検量線の例。プロットを二次多項式としてフィットさせ、得られたフィットの式を用いて、活性標準および試験サンプルのヒアルロニダーゼ活性を決定した。
図8】製剤およびPH20変異体断片2対照の活性。5℃で3ヶ月間(灰色バー)および6ヶ月間(白色バー)貯蔵した後の活性はT0サンプル(黒色バー)と同等である。
図9】5℃(灰色バー)および25℃(格子縞のバー)で3ヶ月間貯蔵した後の製剤およびPH20変異体断片2対照の活性。PH20変異体断片2対照サンプル(AK05およびAK06)のみが25℃での貯蔵の際の活性の低下を示している。
図10】ペンブロリズマブおよびPH20変異体断片2のDSCサーモグラム。
図11】SSストレスの存在下の酵素活性は5℃で6ヶ月間で上昇した。
図12】SSストレスおよびそれに続く25℃で3ヶ月間のインキュベーションの後のペンブロリズマブ+PH20変異体断片2サンプルの酵素活性。
図13】光ストレス下のペンブロリズマブ(白色バー)または粘性代用物(黒色バー)の存在下のPH20変異体断片2の活性。LSは光ストレスを表す。LS DCは光ストレスの暗制御を表し、この場合、バイアルをアルミホイルで包み、光によるストレスを受けたものと一緒に明室内に配置した。
図14】PH20変異体断片2のみ(AK05)と比較した場合の、ある範囲の賦形剤濃度にわたるペンブロリズマブの存在下のPH20変異体断片2酵素活性の保持。初期時点、1ヶ月および3ヶ月(25℃)におけるデータ。
図15】PH20変異体断片2のみ(AK05)と比較した場合の、ある範囲の賦形剤濃度にわたるペンブロリズマブの存在下のPH20変異体断片2の酵素活性の保持。初期時点、1ヶ月および3ヶ月(25℃)におけるデータ。
図16】熱ストレスの際のPH20変異体断片2の酵素活性に対するペンブロリズマブ濃度の影響。
図17】PH20変異体断片2の活性に対するpHの影響。初期時点、1ヶ月および3ヶ月(25℃)におけるデータ。
図18】活性アッセイ検量線の例。線形フィットをデータに適用し、得られたフィットの式を用いて、活性標準および試験サンプルの酵素活性を決定した。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は、抗PD-1抗体、またはヒトPD-1に結合するその抗原結合性フラグメントと、PH20変異体またはその断片とを含む安定な製剤または組成物を提供し、これらは、それを要する患者への投与による、癌または免疫障害もしくは免疫病態の治療方法に有用である。本発明の特定の実施形態においては、抗PD-1抗体はペンブロリズマブまたはペンブロリズマブの抗原結合性フラグメントである。本発明の特定の実施形態においては、本発明の製剤は皮下投与用である。驚くべきことに、前記の製剤および組成物は、25℃で1または3ヶ月間の貯蔵の後、同じ製剤中の対応するPH20変異体またはその断片のみの場合と比較して、PH20変異体またはその断片のヒアルロニダーゼ活性を増強した。本発明の製剤は、それを要する患者への皮下送達に有用である。
【0014】
本発明の製剤の特定の実施形態は、5℃または25℃で6ヶ月間の時点で、PH20変異体またはその断片を含有しない同じ製剤と比較して低いペンブロリズマブ・メチオニン-105酸化レベル(これは重鎖のCDR3に位置する)を維持する。ペンブロリズマブの主要分解経路は過酸化物ストレスの際の重鎖CDRにおけるメチオニン105(Met105)の酸化ならびに光にさらされた際のMet105およびFcメチオニン残基の酸化を含む。表面プラズモン共鳴(SPR)により、過酸化物ストレスサンプルに関して、PD-1へのアフィニティの低下が観察された。露出メチオニン残基または抗体のCDR内のメチオニン残基は酸化によって抗体の生物活性に影響を及ぼす可能性がある。
【0015】
本発明の製剤の特定の実施形態は、5~40℃で6ヶ月間の時点で、PH20変異体またはその断片を含有しない同じ製剤と比較して低いペンブロリズマブ凝集レベルを維持する。
【0016】
I.定義および略語
本明細書および添付の特許請求の範囲の全体において、以下の略語を用いる。
API: 活性医薬成分
CDR: 免疫グロブリン可変領域内の相補性決定領域
CE-SDS: キャピラリー電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウム
CHO: チャイニーズハムスター卵巣
CI: 信頼区間
DS: 原薬
EC50: 50%の有効性または結合をもたらす濃度
ELISA: 酵素結合免疫吸着アッセイ
FFPE: ホルマリン固定パラフィン包埋
FR: フレームワーク領域
HC: 重鎖
HNSCC: 頭頸部扁平上皮癌
HP-HIC: 高速疎水性相互作用クロマトグラフィー
HP-IEX: 高速イオン交換クロマトグラフィー
HP-SEC: 高速サイズ排除クロマトグラフィー
IC50: 50%の阻害をもたらす濃度
IgG: 免疫グロブリンG
IHC: 免疫組織化学または免疫組織化学的
mAb: モノクローナル抗体
NCBI: National Center for Biotechnology Information
NSCLC: 非小細胞肺癌
PCR: ポリメラーゼ連鎖反応
PD-1: プログラム死1(別名:プログラム細胞死-1およびプログラム死受容体1)
PD-L1: プログラム細胞死1リガンド1
PD-L2: プログラム細胞死1リガンド2
PS80またはPS-80: ポリソルベート80
SWFI: 注射用滅菌水
TNBC: トリプルネガティブ乳癌
: 免疫グロブリン重鎖可変領域
VK: 免疫グロブリンカッパ軽鎖可変領域
: 免疫グロブリン軽鎖可変領域
VP-DSC: バレリアン-プロトニコフ(Valerian-Plotnikov)示差走査熱量測定
v/v: 体積/体積
WFI: 注射用水
w/v: 重量/体積
【0017】
本発明がより容易に理解されうるように、幾つかの科学技術用語を以下に具体的に定義する。本明細書中の他の箇所で特に定義されていない限り、本明細書中で用いる全ての他の科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解される意味を有する。
【0018】
本明細書の全体および添付の特許請求の範囲において用いる単数形は、文脈に明らかに矛盾しない限り、その対応複数対象物を含む。
【0019】
「または」なる語は、示されている可能性の一方を文脈が明らかに定める場合を除き、示されている可能性の一方または両方を示す。幾つかの場合においては、一方または両方の可能性を強調するために「および/または」を用いた。
【0020】
本明細書中で用いる、癌の「治療」または癌を「治療する」は、免疫病態もしくは癌状態を有する対象、または癌もしくは病原性感染(例えば、ウイルス、細菌、真菌)を有すると診断された対象に本発明の製剤を投与して、例えば癌細胞数の減少、腫瘍サイズの減少、末梢器官への癌細胞浸潤速度の低下または腫瘍転移もしくは腫瘍成長の速度の低下のような少なくとも1つの正の治療効果を得ることを意味する。「治療」は以下のものの1以上を含みうる:抗腫瘍免疫応答の誘導/増強、病原体、毒素および/または自己抗原に対する免疫応答の刺激、ウイルス感染に対する免疫応答の刺激、1以上の腫瘍マーカーの数値の減少、腫瘍または血液癌の成長の停止または遅延あるいはPD-1のそのリガンドPD-L1および/またはPD-L2への結合に関連した疾患(「PD-1関連疾患」)、例えば癌の進行の停止または遅延、PD-1関連疾患の安定化、腫瘍細胞の成長または生存の抑制、1以上の癌性病変または腫瘍の排除またはそのサイズの縮小、1以上の腫瘍マーカーのレベルの低下、PD-1関連疾患の臨床症状の改善、抑制、PD-1関連疾患、例えば癌の臨床症状の重症度または持続期間の低減、類似した未治療患者の予想生存期間と比較した場合の患者の生存期間の延長、癌性状態または他のPD-1関連疾患の完全または部分的な寛解の誘導。
【0021】
「免疫病態」または「免疫障害」は、例えば、病的炎症、炎症性障害および自己免疫障害または疾患を含む。「免疫病態」はまた、感染(感染症)、持続感染、ならびに増殖状態、例えば癌、腫瘍および血管新生をも含み、例えば、免疫系による根絶に抵抗する感染、腫瘍および癌をも含む。「癌性症状」は、例えば、癌、癌細胞、腫瘍、血管新生、および前癌性状態、例えば異形成を含む。
【0022】
癌における正の治療効果は幾つかの方法で測定されうる(W.A.Weber,J.Nucl.Med.50:1S-10S(2009)を参照されたい)。例えば、腫瘍成長抑制に関しては、NCI標準に従い、T/C≦42%が抗腫瘍活性の最小レベルである。
T/C<10%は高い抗腫瘍活性レベルとみなされ、ここで、T/C(%)=治療された腫瘍体積中央値/対照の腫瘍体積中央値×100である。幾つかの実施形態においては、本発明の製剤の投与により達成される治療は無進行生存(PFS)、無疾患生存(DFS)または全生存(OS)のいずれかである。PFSは「腫瘍進行までの時間」とも称され、癌が成長(増殖)しない、治療中または治療後の時間の長さを示し、完全な応答または部分的な応答を患者が経験した時間の長さ、および安定な疾患を患者が経験した時間の長さを含む。DFSは、患者が無疾患状態のままである、治療中または治療後の時間の長さを意味する。OSは、無処置または未治療の個体または患者と比較した場合の寿命の延長を意味する。本発明の製剤、治療方法および使用の実施形態は、全ての患者において正の治療効果を達成するのに有効でありうるとは限らないが、当技術分野で公知のいずれかの統計的検定、例えばスチューデントt検定、カイ2乗検定、マンおよびホイットニーによるU検定、クラスカル・ウォリス検定(H検定)、ヨンケーレ-テルプストラ検定およびウィルコクソン検定により判定された場合に、統計的に有意な数の対象においては有効であるべきである。
【0023】
「患者」(あるいは、本明細書においては「対象」または「個体」とも称される)は、本発明の製剤または組成物で治療されうる哺乳動物(例えば、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウサギ)、最も好ましくはヒトを意味する。幾つかの実施形態においては、患者は成体患者である。他の実施形態においては、患者は小児患者である。「治療を要する」者には、本発明の製剤または組成物での治療から利益を受けうる患者、例えば、癌または免疫病態に罹患している患者が含まれる。
【0024】
「抗体」なる語は、所望の生物活性を示す、抗体の任意の形態を意味する。したがって、それは最も広い意味で用いられ、特に、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体およびキメラ抗体(これらに限定されるものではない)を含む。
【0025】
一般に、基本的な抗体構造単位は四量体を含む。各四量体は、ポリペプチド鎖の、2つの同一ペアを含み、各ペアは1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識をもたらす約100~110個またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。各軽/重鎖ペアの可変領域は抗体結合部位を形成する。したがって、一般に、無傷抗体は2つの結合部位を有する。重鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能を主にもたらす定常領域を定めうる。典型的には、ヒト軽鎖はカッパおよびラムダ軽鎖として分類される。更に、ヒト重鎖は、典型的には、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファまたはイプシロンとして分類され、それぞれIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEとして、抗体のイソタイプを定める。軽鎖および重鎖においては、可変領域および定常領域は約12個以上のアミノ酸の「J」領域により連結されており、重鎖は約10個以上のアミノ酸の「D」領域をも含む。全般的には、Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.編,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989))を参照されたい。
【0026】
典型的には、重鎖および軽鎖の両方の可変ドメインは、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)内に位置する、相補性決定領域(CDR)とも称される3つの超可変領域を含む。CDRは、通常、特定のエピトープへの結合が可能になるように、フレームワーク領域により整列されている。一般に、N末端からC末端方向に、軽鎖および重鎖の両方の可変ドメインはFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の帰属は、一般に、Sequences of Proteins of Immunological Interest,Kabatら;National Institutes of Health,Bethesda,Md.;5th ed.;NIH Publ.No.91-3242(1991);Kabat(1978)Adv.Prot.Chem.32:1-75;Kabatら(1977)J.Biol.Chem.252:6609-6616;Chothiaら(1987),J Mol.Biol.196:901-917またはChothiaら,(1989)Nature 342:878-883の定義に基づいている。
【0027】
特定の標的タンパク質に「特異的に結合する」抗体または抗原結合性フラグメントは、他のタンパク質と比較してその標的への優先的結合を示す抗体であるが、この特異性は絶対的な結合特異性を要しない。抗体がその意図される標的に「特異的」だとみなされるのは、その結合が、例えば偽陽性のような望ましくない結果をもたらすことなく、サンプル中の標的タンパク質の存在を決定するものである場合である。本発明において有用な抗体またはその結合性フラグメントは、非標的タンパク質に対するアフィニティより少なくとも2倍大きな、好ましくは少なくとも10倍大きな、より好ましくは少なくとも20倍大きな、最も好ましくは少なくとも100倍大きなアフィニティで標的タンパク質に結合するであろう。本明細書中で用いる抗体が、与えられたアミノ酸配列、例えば成熟ヒトPD-1またはヒトPD-L1分子のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合すると言えるのは、それが、その配列を含むポリペプチドには結合するが、その配列を欠くタンパク質には結合しない場合である。
【0028】
「キメラ抗体」は、所望の生物活性を示す限り、重鎖および/または軽鎖の一部分が、特定の種(例えば、ヒト)に由来する又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応配列と同一または相同である一方で、該鎖の残部が、別の種(例えば、マウス)に由来する又は別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応配列と同一または相同である抗体、ならびにそのような抗体のフラグメントを意味する。
【0029】
「薬学的有効量」または「有効量」なる語は、十分な治療用組成物または製剤が患者に導入されて疾患または病態を治療する量を意味する。このレベルは患者の特徴、例えば年齢、体重などに応じて変動しうる、と当業者に認識されている。
【0030】
「約」なる語は、物質または組成物の量(例えば、mMまたはM)、製剤成分の百分率(v/vまたはw/v)、溶液/製剤のpH、あるいは方法における工程を特徴づけるパラメータの値などを修飾している場合には、例えば、該物質または組成物の製造、特徴づけおよび/または使用に伴う典型的な測定、取り扱いおよびサンプリング操作により生じるうる数量における変動;これらの操作における偶発的エラーにより生じうる数量における変動;該組成物を製造または使用するために或いは該操作を行うために使用される成分の製造、起源または純度における差異により生じうる数量における変動などを意味する。
特定の実施形態においては、「約」は、±0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%または10%の変動を意味しうる。
【0031】
本明細書中で用いる「x%(w/v)」はxg/100mlと同等である(例えば、5% w/vは50mg/mlに等しい)。
【0032】
「癌」、「癌性」または「悪性」なる語は、無制御な細胞増殖により典型的に特徴づけられる、哺乳動物における生理学的状態を意味し又は示す。癌の例には、癌腫、リンパ腫、白血病、芽腫および肉腫が含まれるが、これらに限定されるものではない。そのような癌の更に詳細な例には、扁平上皮癌、骨髄腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、胃腸(管)癌、腎癌、卵巣癌、肝臓癌、リンパ芽球性白血病、リンパ性白血病、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、メラノーマ(黒色腫)、軟骨肉腫、神経芽細胞腫、膵臓癌、多形性膠芽腫、子宮頸癌、脳癌、胃癌、膀胱癌、肝細胞癌、乳癌、結腸癌および頭頸部癌が含まれる。
【0033】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化合物である。抗PD-1抗体は任意の1以上の適切な化学療法剤と共に使用されうる。そのような化学療法剤の例には以下のものが含まれる:アルキル化剤、例えばチオテパ(thiotepa)およびシクロスホスファミド(cyclosphosphamide);アルキルスルホナート、例えばブスルファン(busulfan)、イムプロスルファン(improsulfan)およびピポスルファン(piposulfan);アジリジン、例えばベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン(carboquone)、メツレドーパ(meturedopa)およびウレドーパ(uredopa);エチレンイミンおよびメチルアメルアミン(methylamelamine)、例えばアルトレタミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド(triethiylenethiophosphoramide)およびトリメチロロメラミン(trimethylolomelamime);アセトゲニン(acetogenin)[特にブルラタシン(bullatacin)およびブルラタシノン(bullatacinone)];カンプトテシン(camptothecin)[合成類似体トポテカン(topotecan)を含む];ブリオスタチン(bryostatin);カリスタチン(callystatin);CC-1065[そのアドゼレシン(adozelesin)、カルゼレシン(carzelesin)およびビゼレシン(bizelesin)合成類似体を含む];クリプトフィシン(cryptophycin)(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン(dolastatin);ドュオカルマイシン(duocarmycin)(合成類似体KW-2189およびCBI-TMIを含む);エリューテロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコジクチイン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin);窒素マスタード、例えばクロラムブシル(chlorambucil)、クロルナファジン(chlornaphazine)、クロロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン(estramustine)、イフォスファミド(ifosfamide)、メクロルエタミン(mechlorethamine)、メクロルエタミンオキシド塩酸塩、メルファラン(melphalan)、ノベムビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード(uracil mustard);ニトロソウレア、例えばカルムスチン(carmustine)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン(lomustine)、ニムスチン(nimustine)、ラニムスチン(ranimustine);抗生物質、例えばエンジイン抗生物質[例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシン・ガンマ1Iおよびカリケアマイシン・ファイI1(例えば、Agnew,Chem.Intl.Ed.Engl.,33:183-186(1994)を参照されたい);ダイネマイシン(dynemicin)、例えばダイネマイシンA;ビスホスホナート、例えばクロドロナート(clodronate);エスペラマイシン(esperamicin);ならびにネオカルジノスタチン(neocarzinostatin)発色団および関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団]、アクラシノマイシン(aclacinomysin)、アクチノマイシン(actinomycin)、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン(azaserine)、ブレオマイシン(bleomycin)、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カミノマイシン(caminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン(chromomycin)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(doxorubicin)(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン(epirubicin)、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン(idarubicin)、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン(mitomycin)、例えばマイトマイシンC、ミコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycin)、ペプロマイシン(peplomycin)、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン(puromycin)、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン(streptonigrin)、ストレプトゾシン(streptozocin)、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメックス(ubenimex)、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);代謝拮抗物質、例えばメトトレキセート(methotrexate)および5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えばデノプテリン(denopterin)、メトトレキセート(methotrexate)、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate);プリン類似体、例えばフルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン(thioguanine);ピリミジン類似体、例えばアンシタビン(ancitabine)、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン、カルモフール(carmofur)、シタラビン(cytarabine)、ジデオキシウリジン(dideoxyuridine)、ドキシフルリジン(doxifluridine)、エノシタビン(enocitabine)、フロクスリジン(floxuridine);アンドロゲン、例えばカルステロン(calusterone)、ドロモスタノロン(dromostanolone)プロピオナート、エピチオスタノール(epitiostanol)、メピチオスタン(mepitiostane)、テストラクトン(testolactone);抗アドレナール、例えばアミノグルテチミド(aminoglutethimide)、ミトタン(mitotane)、トリロスタン(trilostane);葉酸補充物、例えばフロリン酸(frolinic acid);アセグラトン(aceglatone);アルドホスファミド(aldophosphamide)グリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル(eniluracil);アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジクオン(diaziquone);エルフォルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium);エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン(lentinan);ロニダミン(lonidamine);メイタンシノイド(maytansinoid)、例えばメイタンシン(maytansine)およびアンサミトシン(ansamitocin);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトザントロン(mitoxantrone);モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン(pentostatin);フェナメット(phenamet);ピラルビシン(pirarubicin);ロソキサントロン(losoxantrone);ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン(procarbazine);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン(rhizoxin);シゾフラン(sizofuran);スピロゲルマニウム(spirogermanium);テヌアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジクオン(triaziquone);2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(trichothecene)[特にT-2毒素、ベルラクリン(verracurin)A、ロリジン(roridin)Aおよびアングイジン(anguidine)];ウレタン;ビンデシン(vindesine);ダカルバジン(dacarbazine);マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール(mitobronitol);ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(arabinoside)(「Ara-C」);シクロホスファミド(cyclophosphamide);チオテパ(thiotepa);タキソイド、例えばパクリタキセル(paclitaxel)およびドキセタキセル(doxetaxel);クロラムブシル(chlorambucil);ゲムシタビン(gemcitabine);6-チオグアニン;メルカプトプリン(mercaptopurine);メトトレキセート(methotrexate);白金類似体、例えばシスプラチン(cisplatin)およびカルボプラチン(carboplatin);ビンブラスチン(vinblastine);白金;エトポシド(etoposide)(VP-16);イフォスファミド(ifosfamide);ミトザントロン(mitoxantrone);ビンクリスチン(vincristine);ビノレルビン(vinorelbine);ノバントロン(novantrone);テニポシド(teniposide);エダトレキセート(edatrexate);ダウノマイシン(daunomycin);アミノプテリン(aminopterin);キセローダ(xeloda);イバンドロネート(ibandronate);CPT-11;トポイソメラーゼインヒビターRFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(difluoromethylornithine)(DMFO);レチノイド、例えばレチノイン酸;カペシタビン(capecitabine);ならびに前記のいずれかのものの薬学的に許容される塩、酸または誘導体。また、例えば以下のような、腫瘍に対するホルモン作用を調節または抑制するように作用する抗ホルモン剤も含まれる:抗エストロゲンおよび選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、例えばタモキシフェン(tamoxifen)、ラロキシフェン(raloxifene)、ドロロキシフェン(droloxifene)、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン(onapristone)およびトレミフェン(toremifene)(Fareston);副腎におけるエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼインヒビター、例えば4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド(aminoglutethimide)、酢酸メゲストロール
(megestrol)、エキセメスタン(exemestane)、フォルメスタン(formestan)、ファドロゾール(fadrozole)、ボロゾール(vorozole)、レトロゾール(letrozole)およびアナストロゾール(anastrozole);ならびに抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、ロイプロリド(leuprolide)およびゴセレリン(goserelin);ならびに前記のいずれかのものの薬学的に許容される塩、酸または誘導体。
【0034】
「Chothia」は、Al-Lazikaniら,JMB 273:927-948(1997)に記載されている抗体番号付けシステムを意味する。
【0035】
本明細書中で用いる「Kabat」は、Elvin A.Kabat((1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.)により創始された免疫グロブリンアライメントおよび番号付けシステムを意味する。
【0036】
本明細書中で用いる「増殖抑制物質」は、インビトロまたはインビボにおいて、本明細書において特定されている遺伝子のいずれかを過剰発現する細胞、特に癌細胞の増殖を抑制する化合物または組成物を意味する。したがって、増殖抑制物質は、S期においてそのような遺伝子を過剰発現する細胞の比率を有意に減少させるものである。増殖抑制物質の例には、(S期以外の位置で)細胞周期の進行を阻止する物質、例えば、G1停止およびM期停止を誘導する物質が含まれる。古典的なM期ブロッカーには、ビンカ[ビンクリスチン(vincristine)およびビンブラスチン(vinblastine)]、タキサン(taxane)およびトポイソメラーゼIIインヒビター、例えばドキソルビシン(doxorubicin)、エピルビシン(epirubicin)、ダウノルビシン(daunorubicin)およびエトポシド(etoposide)が含まれる。G1を停止させる物質、例えばDNAアルキル化剤、例えばデカルバジン(dacarbazine)、メクロレタミン(mechlorethamine)およびシスプラチン(cisplatin)は、S期停止にまでも影響を及ぼす。更なる情報はThe Molecular Basis of Cancer,MendelsohnおよびIsrael編,Chapter 1,タイトル“Cell cycle regulation,oncogenes,and antineoplastic drugs”,Murakamiら(WB Saunders:Philadelphia,1995)に見出されうる。
【0037】
「PD-1結合性フラグメント」、「その抗原結合性フラグメント」、「その結合性フラグメント」または「そのフラグメント」なる語は、抗体のフラグメントまたは誘導体であって、抗原(ヒトPD-1)に結合する及びその活性を抑制する(例えば、PDL1およびPDL2へのPD-1の結合を遮断する)その生物活性を尚も実質的に保有するものを含む。したがって、「抗体フラグメント」またはPD-1結合性フラグメントなる語は、完全長抗体の一部分、一般に、その抗原結合性または可変領域を意味する。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab’、F(ab’)およびFvフラグメントが含まれる。典型的には、結合性フラグメントまたは誘導体はそのPD-1抑制活性の少なくとも10%を保有する。幾つかの実施形態においては、所望の生物学的効果を発揮するのに十分なアフィニティを有するいずれの結合性フラグメントも有用であるが、結合性フラグメントまたは誘導体はそのPD-1抑制活性の少なくとも25%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%(またはそれ以上)を保有する。幾つかの実施形態においては、抗原結合性フラグメントは、無関係な抗原に対するアフィニティより少なくとも2倍大きな、好ましくは少なくとも10倍大きな、より好ましくは少なくとも20倍大きな、最も好ましくは少なくとも100倍大きなアフィニティで、その抗原に結合する。1つの実施形態においては、該抗体は、例えばスキャッチャード分析により測定された場合、約10 リットル/モルより大きなアフィニティを有する。Munsenら(1980)Analyt.Biochem.107:220-239。PD-1結合性フラグメントは、その生物活性を実質的に変化させない保存的アミノ酸置換を有する変異体を含みうると意図される。
【0038】
「ヒト化抗体」は、非ヒト(例えば、マウス)抗体およびヒト抗体からの配列を含有する抗体の形態を意味する。そのような抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、ここで、超可変ループの全て又は実質的に全ては非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全て又は実質的に全てはヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体はまた、所望により免疫グロブリン定常領域(Fc)(典型的にはヒト免疫グロブリンのもの)の少なくとも一部分を含んでいてもよい。アフィニティーを増加させるために、またはヒト化抗体の安定性を増強するために、または他の理由により、あるアミノ酸置換が含まれうるが、げっ歯類抗体のヒト化形態は、一般に、該親げっ歯類抗体の同一CDR配列を含む。
【0039】
本発明の抗体は、改変されたエフェクター機能をもたらすための修飾(または遮断)されたFc領域を有する抗体をも含む。例えば、米国特許第5,624,821号;WO2003/086310;WO2005/120571;WO2006/0057702;Presta(2006)Adv.Drug Delivery Rev.58:640-656を参照されたい。そのような修飾は、診断および療法における可能な有益な効果を伴って、免疫系の種々の反応を増強または抑制するために用いられうる。Fc領域の改変には、アミノ酸変化(置換、欠失および挿入)、グリコシル化または脱グリコシル化および複数のFcの付加が含まれる。Fcに対する変化はまた、治療用抗体における抗体の半減期を改変することが可能であり、より長い半減期は、それほど頻繁でない投与ならびにそれによる簡便さの向上および物資の使用の減少を可能にする。Presta(2005)J.Allergy Clin.Immunol.116:731,p.734-35を参照されたい。
【0040】
「完全ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む抗体を意味する。
完全ヒト抗体は、マウスにおいて、マウス細胞においてあるいはマウス細胞に由来するハイブリドーマにおいて産生された場合には、マウス炭水化物鎖を含有しうる。同様に、「マウス抗体」は、マウス免疫グロブリン配列のみを含む抗体を意味する。完全ヒト抗体は、ヒトにおいて、ヒト免疫グロブリン生殖系列配列を有するトランスジェニック動物において、ファージディスプレイまたは他の分子生物学的方法により作製されうる。
【0041】
「超可変領域」なる語は、抗原結合をもたらす抗体のアミノ酸残基を意味する。超可変領域は「相補性決定領域」もしくは「CDR」[例えば、Kabat番号付けシステム(Kabatら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.)により決定された場合の、軽鎖可変ドメインにおける残基24~34(CDRL1)、50~56(CDRL2)および89~97(CDRL3)ならびに重鎖可変ドメインにおける残基31~35(CDRH1)、50~65(CDRH2)および95~102(CDRH3)]からのアミノ酸残基、および/または「超可変ループ」[すなわち、軽鎖可変ドメインにおける残基26~32(L1)、50~52(L2)および91~96(L3)ならびに重鎖可変ドメインにおける26~32(H1)、53~55(H2)および96~101(H3)(ChothiaおよびLesk(1987)J.Mol.Biol.196:901-917)]からのアミノ酸残基を含む。
本明細書中で用いる「フレームワーク」または「FR」残基なる語は、CDR残基として本明細書中で定義されている超可変領域残基以外の可変ドメイン残基を意味する。CDRおよびFR残基は、Kabatの標準的な配列定義(Kabatら(1987)Sequences of Proteins of Immunological Interest,National Institutes of Health, Bethesda Md.)に従い決定される。
【0042】
「保存的に修飾された変異体」または「保存的置換」は、ポリペプチドの必須領域においてさえも生じる分子の生物活性を一般に変化させることなく行われうる、当業者に公知のアミノ酸の置換を意味する。そのような典型的な置換は、好ましくは、以下の表1に記載されているものに従い行われうる。
【0043】
【表1】
【0044】
また、一般に、ポリペプチドの非必須領域における単一アミノ酸置換は生物活性を実質的に変化させない、と当業者は認識している。例えば、Watsonら(1987)Molecular Biology of the Gene,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,p.224(4th Ed.)を参照されたい。
【0045】
本明細書および特許請求の範囲の全体において用いられている「から実質的になる」およびその変形表現、例えば「から実質的になり」または「から実質的になっており」は、挙げられている要素または要素群の包含、および特定されている投与レジメン、方法または組成物の基本的または新規特性を実質的に変化させない、挙げられている要素と類似した又は異なる性質の他の要素の随意的包含(すなわち、包含されても包含されなくてもよいこと)を示す。非限定的な一例として、挙げられているアミノ酸配列から実質的になる結合性化合物は、該結合性化合物の特性に実質的に影響を及ぼさない、1以上のアミノ酸残基の置換を含む1以上のアミノ酸をも含みうる。
【0046】
「含む」、またはその変形表現、例えば、「含み」、「含んでいて」もしくは「含まれる」は、明示的表現または必然的暗示ゆえに文脈が他の解釈を要しない限り、本明細書および特許請求の範囲の全体において包括的な意味で用いられ、すなわち、本発明の実施形態のいずれかの実施または有用性を実質的に促進しうる更なる特徴の存在または付加を排除することなく、示されている特徴の存在を特定するために用いられる。
【0047】
「単離された抗体」および「単離された抗体フラグメント」は精製状態を意味し、そのような文脈においては、示されている分子が、他の生物学的分子、例えば核酸、タンパク質、脂質、炭水化物、または細胞残渣および増殖培地のような他の物質を実質的に含有しないことを意味する。一般に、「単離(された)」なる語はそのような物質の完全な非存在を意味するとは意図されず、また、水、バッファーまたは塩の非存在を意味するとも意図されない。ただし、それらは、本明細書に記載されている結合性化合物の実験的または治療的使用を実質的に妨げる量で存在してはならない。
【0048】
本明細書中で用いる「モノクローナル抗体」または「mAb」または「Mab」は、実質的に均一な抗体の集団を意味し、すなわち、該集団を構成する抗体分子は、僅かな量で存在しうる可能な自然突然変異以外はアミノ酸配列において同一である。対照的に、通常の(ポリクローナル)抗体調製物は、典型的には、異なるエピトープにしばしば特異的である可変ドメイン(特にCDR)内に異なるアミノ酸配列を有する多数の異なる抗体を含む。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られるという該抗体の特性を示しており、いずれかの特定の方法による該抗体の製造を要すると解釈されるべきではない。例えば、本発明に従い使用されるモノクローナル抗体は、Kohlerら(1975)Nature 256,495により最初に記載されたハイブリドーマ法により製造可能であり、あるいは、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)により製造可能である。また、「モノクローナル抗体」は、例えば、Clacksonら(1991)Nature 352:624-628およびMarksら(1991)J.Mol.Biol 222:581-597に記載されている技術を用いて、ファージ抗体ライブラリーから単離されうる。Presta(2005)J.Allergy Clin.Immunol.116:731も参照されたい。
【0049】
「腫瘍」は、癌を有すると診断された又は癌を有する疑いのある対象に適用される場合には、任意のサイズの悪性または潜在的に悪性の新生物または組織塊を意味し、原発腫瘍および続発性新生物を含む。固形(充実性)腫瘍は、嚢胞または液体領域を通常は含有しない組織の異常成長または塊を意味する。種々のタイプの固形腫瘍が、それらを形成する細胞のタイプにちなんで命名されている。固形腫瘍の例としては、肉腫、癌腫およびリンパ腫が挙げられる。白血病(血液の癌)は、一般に、固形腫瘍を形成しない(National Cancer Institute,Dictionary of Cancer Terms)。
【0050】
「腫瘍サイズ」なる語は、腫瘍の長さおよび幅として測定されうる腫瘍の全サイズを意味する。腫瘍サイズは、当技術分野で公知の種々の方法により決定可能であり、例えば、被験者からの摘除に際して例えばカリパスを使用して、あるいはイメージング技術、例えば骨スキャン、超音波、CTまたはMRIスキャンを用いて、体内において腫瘍の寸法を測定することにより決定されうる。
【0051】
「腫瘍比率スコア(Tumor Proportion Score)(TPS)」は、任意の強度(弱、中等度または強)で細胞膜上でPD-L1を発現する腫瘍細胞の比率を意味する。線形の部分的または完全な細胞膜染色はPD-L1に関して陽性と解釈される。
【0052】
「単核炎症密度スコア(Mononuclear inflammatory density score)(MIDS)」は、腫瘍に浸潤または隣接するPD-L1発現単核炎症細胞(MIC)(腫瘍巣および隣接細胞支持間質内の小型および大型のリンパ球、単球およびマクロファージ)の数の、腫瘍細胞総数に対する比率を意味する。MIDSは0~4のスケールで示され、ここで、0は、無しを意味し、1は、存在するが腫瘍細胞100個当たり1 MIC未満(<1%)を意味し、2は、腫瘍細胞100個当たり少なくとも1 MICであるが、腫瘍細胞10個当たり1 MIC未満(1~9%)を意味し、3は、腫瘍細胞10個当たり少なくとも1 MICであるが、腫瘍細胞より少ないMIC(10~99%)を意味し、4は、腫瘍細胞と少なくとも同数のMIC(≧100%)を意味する。
【0053】
「複合陽性スコア(Combined positive score)(CPS)」は、腫瘍細胞の合計数(分数における分母;すなわち、PD-L1陽性腫瘍細胞およびPD-L1陰性腫瘍細胞の数)に対する、腫瘍巣および隣接支持間質内のPD-L1陽性腫瘍細胞およびPD-L1陽性単核炎症細胞(MIC)の数(分数における分子)の比率を意味する。任意の強度のPD-L1発現が、陽性、すなわち、弱(1+)、中等度(2+)または強(3+)と見なされる。
【0054】
「PD-L1発現陽性」は、少なくとも1%の腫瘍比率スコア、単核炎症密度スコアまたは複合陽性スコアを意味する。AISは5以上であり、あるいは、適切な対照と比較した場合の、悪性細胞によるおよび/または腫瘍内の浸潤免疫細胞による、PD-L1発現(タンパク質および/またはmRNA)のレベルの上昇である。
【0055】
「マイクロサテライト不安定性(Microsatellite instability)(MSI)」は、腫瘍における欠損DNAミスマッチ修復に関連するゲノム不安定性の形態を意味する。Bolandら,Cancer Research 58,5258-5257,1998を参照されたい。1つの実施形態においては、MSI分析は、米国国立癌研究所(National Cancer Institute)(NCI)が推奨している5つのマイクロサテライトマーカーであるBAT25(GenBankアクセッション番号9834508)、BAT26(GenBankアクセッション番号9834505)、D5S346(GenBankアクセッション番号181171)、D2S123(GenBankアクセッション番号187953)、D17S250(GenBankアクセッション番号177030)を使用して行われうる。追加的なマーカー、例えば、BAT40、BAT34C4、TGF-β-RIIおよびACTCが使用されうる。MSI分析用の商業的に入手可能なキットには、例えば、Promega MSIマルチプレックスPCRアッセイ、FoundationOne(登録商標)CDx(F1CDx)次世代シーケンシングベースインビトロ診断装置(ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織標本から単離されたDNAを使用する)が含まれる。
【0056】
「高頻度マイクロサテライト不安定性」または「マイクロサテライト不安定性高(MSI-H)」は、前記の5つのNCIマーカーのうち2以上が不安定性を示す場合または全マーカーの30~40%以上が不安定性(すなわち、挿入/欠失突然変異を有する)を示す場合を意味する。
【0057】
本明細書中で用いる「非MSI-H癌」は、マイクロサテライト安定(MSS)および低頻度MSI(MSI-L)癌を意味する。
【0058】
「マイクロサテライト安定(MSS)」は、前記の5つのNCIマーカーのいずれもが不安定性(すなわち、挿入/欠失突然変異を有する)を示さない場合を意味する。
【0059】
「ミスマッチ修復無欠損(Proficient mismatch repair)(pMMR)癌」は、IHCによる腫瘍標本におけるMMRタンパク質(MLH1、PMS2、MSH2およびMSH6)の正常発現を意味する。MMR分析用の商業的に入手可能なキットには、Ventana MMR IHCアッセイが含まれる。
【0060】
「ミスマッチ修復欠損(Mismatch repair deficient)(dMMR)癌」は、IHCによる腫瘍標本における1以上のMMRタンパク質(MLH1、PMS2、MSH2およびMSH6)の低発現を意味する。
【0061】
本明細書中で用いる「可変領域」または「V領域」は、異なる抗体間で配列において可変性のIgG鎖のセグメントを意味する。それは軽鎖においてはKabat残基109まで、そして重鎖においては113まで伸長している。
【0062】
「バッファー」なる語は、本発明の製剤の溶液pHを許容範囲に維持する物質、あるいは、本発明の凍結乾燥製剤に関しては凍結乾燥前に許容されうる溶液pHをもたらす物質を包含する。
【0063】
「凍結乾燥」、「凍結乾燥された」および「凍結乾燥した」なる語は、乾燥される物質が、まず凍結され、ついで真空環境中で昇華により氷または凍結溶媒が除去されるプロセスを意味する。貯蔵時の凍結乾燥製品の安定性を増強するために、凍結乾燥前の製剤中に賦形剤を含有させることが可能である。
【0064】
「医薬製剤」なる語は、有効成分が有効となることを可能にするような形態の製剤であって、該製剤が、投与される対象に対して毒性である追加的成分を含有しない製剤を意味する。「製剤」および「医薬製剤」なる語は、本明細書の全体にわたって互換的に用いられる。
【0065】
「薬学的に許容される」は、使用される有効成分の有効量を与えるために対象に合理的に投与されうる、そしてヒトに投与された場合に、「安全であると一般にみなされている」、例えば、生理的に許容され、典型的にはアレルギーまたは類似の望ましくない反応(例えば、胃の異常など)を引き起こさない賦形剤(ビヒクル、添加剤)および組成物に関するものである。もう1つの実施形態においては、この用語は、動物における使用、より詳しくはヒトにおける使用に関して、連邦もしくは州政府の規制機関により承認された又は米国薬局方もしくは他の一般に認められている薬局方に収載されている分子および組成物に関するものである。
【0066】
「再構成(された)」製剤は、凍結乾燥タンパク質製剤を希釈剤中に溶解させて該タンパク質を再構成製剤中に分散させることにより調製された製剤である。再構成製剤は、投与、例えば非経口投与または静脈内投与に適しており、皮下投与に適している場合もありうる。
【0067】
「再構成時間」は、凍結乾燥製剤を溶液で再水和させて粒子非含有清澄化溶液にするのに必要な時間である。
【0068】
「安定」製剤は、それに含まれるタンパク質が、貯蔵に際して、その物理的安定性および/または化学的安定性および/または生物学的活性を本質的に保持する製剤である。タンパク質の安定性を測定するための種々の分析技術が当技術分野で利用可能であり、Peptide and Protein Drug Delivery,247-301,Vincent Lee編,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)およびJones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29-90(1993)に概説されている。安定性は、選択された温度で、選択された期間にわたって測定されうる。例えば、1つの実施形態においては、安定製剤は、冷蔵温度(2~8℃)で少なくとも12ヶ月間、有意な変化が観察されない製剤である。もう1つの実施形態においては、安定製剤は、冷蔵温度(2~8℃)で少なくとも18ヶ月間、有意な変化が観察されない製剤である。もう1つの実施形態においては、安定製剤は、室温(23~27℃)で少なくとも3ヶ月間、有意な変化が観察されない製剤である。もう1つの実施形態においては、安定製剤は、室温(23~27℃)で少なくとも6ヶ月間、有意な変化が観察されない製剤である。もう1つの実施形態においては、安定製剤は、室温(23~27℃)で少なくとも12ヶ月間、有意な変化が観察されない製剤である。もう1つの実施形態においては、安定製剤は、室温(23~27℃)で少なくとも18ヶ月間、有意な変化が観察されない製剤である。抗体製剤の安定性に関する基準は以下のとおりである。典型的には、SEC-HPLCにより測定した場合、抗体単量体の10%以下、好ましくは5%以下しか分解されない。典型的には、製剤は、視覚分析によれば、無色、または透明ないし僅かに乳白色である。典型的には、製剤の濃度、pHおよび浸透圧は、+/-10%以下の変化を示すに過ぎない。効力は、典型的には、対照または参照体の60~140%、好ましくは80~120%の範囲内である。
典型的には、抗体のクリッピング(clipping)、すなわち、低分子量種(%)は、例えばHP-SECによる測定で、10%以下、好ましくは5%以下しか観察されない。典型的には、抗体の凝集、すなわち、高分子量種(%)は、例えばHP-SECによる測定で、10%以下、好ましくは5%以下しか観察されない。
【0069】
医薬製剤において抗体が「その物理的安定性を保持する」と言えるのは、それが、色および/または透明度の目視検査で、あるいはUV光散乱、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)および動的光散乱により測定された場合に、凝集、沈殿および/または変性の有意な増加を示さない場合である。タンパク質のコンホメーションの変化は、タンパク質の三次構造を決定する蛍光分光法、およびタンパク質の二次構造を決定するFTIR分光法によって評価されうる。
【0070】
医薬製剤において抗体が「その化学的安定性を保持する」と言えるのは、それが有意な化学的変化を示さない場合である。化学的安定性は、化学的に変化したタンパク質形態を検出および定量することにより評価されうる。タンパク質の化学構造をしばしば変化させる分解プロセスには、加水分解またはクリッピング(サイズ排除クロマトグラフィーおよびSDS-PAGEのような方法により評価される)、酸化(質量分析またはMALDI/TOF/MSと組合されたペプチドマッピングのような方法により評価される)、脱アミド化(イオン交換クロマトグラフィー、キャピラリー等電点電気泳動、ペプチドマッピング、イソアスパラギン酸測定のような方法により評価される)および異性化(イソアスパラギン酸含量、ペプチドマッピングなどを測定することにより評価される)が含まれる。
【0071】
医薬製剤において抗体が「その生物活性を保持する」と言えるのは、所定の時点における抗体の生物活性が、医薬製剤の調製時に示された生物活性の所定範囲内にある場合である。抗体の生物活性は、例えば、抗原結合アッセイにより決定されうる。本発明の製剤は、再構成された際または液体形態において、生物学的に活性な抗体およびそのフラグメントを含む。
【0072】
「等張」なる語は、関心のある製剤がヒトの血液と本質的に同じ浸透圧を有することを意味する。等張製剤は、一般に、約270~328mOsmの浸透圧を有する。僅かに低張の圧力は250~269であり、僅かに高張の圧力は328~350mOsmである。
浸透圧は、例えば、蒸気圧または氷結型浸透圧計を使用して測定されうる。
【0073】
「非還元二糖」は、遊離アルデヒド基もしくは遊離ケトン基を含有せず又は含有するように変換され得ないため、還元剤として作用し得ない二糖である。非還元二糖の例には、スクロースおよびトレハロースのような二糖が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
「ペンブロリズマブ(pembrolizumab)」(以前はMK-3475、SCH 900475およびランブロリズマブとして公知であった)は、本明細書においては「ペンブロ」とも称され、WHO Drug Information,Vol.27,No.2,p.161-162(2013)に記載されている構造を有し、表2に記載されている重鎖および軽鎖アミノ酸配列ならびにCDRを含むヒト化IgG4 mAbである。KEYTRUDA(商標)に関する処方情報(Merck & Co.,Inc.,Whitehouse Station,NJ USA;初回米国承認2014)に記載されているとおり、ペンブロリズマブは、米国FDAにより承認されている。
【0075】
本明細書中で用いる「ペンブロリズマブ変異体」は、軽鎖CDRの外部に位置する位置の3、2または1個の保存的アミノ酸置換および重鎖CDRの外部に位置する6、5、4、3、2または1個の保存的アミノ酸置換(例えば、変異位置はFR領域または定常領域内に位置する)を有すること以外はペンブロリズマブにおけるものと実質的に同じ重鎖および軽鎖配列を含むモノクローナル抗体であって、所望により、重鎖のC末端リジン残基の欠失を有していてもよいモノクローナル抗体を意味する。換言すれば、ペンブロリズマブおよびペンブロリズマブ変異体は、同一CDR配列を含むが、それぞれ、それらの完全長軽鎖および重鎖配列における3または6個以下の他の位置における保存的アミノ酸置換を有する点でそれぞれとは異なる。ペンブロリズマブ変異体は、以下の特性、すなわち、PD-1に対する結合アフィニティ、ならびにPD-1へのPD-L1およびPD-L2のそれぞれの結合を遮断する能力の点で、ペンブロリズマブと実質的に同じである。
【0076】
「PH20」は、配列番号21の野生型PH20ヒアルロニダーゼを意味する。
【0077】
本明細書中で用いる「PH20変異体」は、配列番号21におけるM345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359DおよびI361Tを含むアミノ酸残基置換を有するPH20の変異体である。
【0078】
「PH20変異体断片」または「そのPH20変異体断片」または「PH20変異体の断片」は、配列番号21のアミノ酸残基1~36、1~37、1~38、1~39、1~40、1~41もしくは1~42のN末端欠失、および/またはアミノ酸残基455~509、456~509、457~509、458~509、459~509、460~509、461~509、462~509、463~509、464~509、465~509、466~509、467~509、468~509、469~509、470~509、471~509、472~509、473~509、474~509、475~509、476~509、477~509、478~509、479~509、480~509、481~509、482~509、483~509、484~509、485~509、486~509、487~509、488~509、489~509、490~509、491~509、492~509、493~509、494~509、495~509、496~509、497~509、498~509、499~509、500~509、501~509、502~509、503~509、504~509、505~509、506~509、507~509、508~509もしくは509(ここで、番号付けは配列番号21に基づく)のC末端欠失のいずれかを有するPH20変異体である。
【0079】
「ユニット」または「U」は、ヒアルロニダーゼ活性の1単位を意味し、これは、ヒアルロン酸と該酵素との反応に適した条件で600nmでの光学密度の変化を引き起こすPH20変異体またはその断片の量であり、活性標準を使用して検量曲線に従い算出される。アッセイの一例は実施例4に記載されている。ヒアルロン酸(HA)はアルブミンに結合し、アルブミン-HA複合体は濁りを生じさせる。HAがヒアルロニダーゼによって加水分解されると、アルブミン-HA複合体の濁度が低下する。したがって、このアッセイは濁度を測定して、PH20変異体またはその断片のヒアルロニダーゼ酵素活性を決定する。ヒアルロニダーゼ活性は以下の反応に基づいている。
【0080】
ヒアルロン酸――――>二糖および単糖+より小さいヒアルロン酸断片。
ヒアルロニダーゼ1mg当たりのユニットで表されたヒアルロニダーゼ活性はヒアルロニダーゼの純度、製造プロセスなどによって変動しうる、と当業者は理解している。1つの実施形態においては、2000U/mlのPH20変異体断片2は約0.012mg/mlであり、4000U/mlのPH20変異体断片2は約0.024mg/mlであり、5000U/mlのPH20変異体断片2は約0.030mg/mlである。
【0081】
本発明の製剤
本発明は、後記に更に詳細に記載されているとおり、PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントと、PH20変異体またはその断片との種々の製剤を含む。例えば、本発明は、(i)抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、およびPH20変異体またはその断片、(ii)バッファー(例えば、ヒスチジンまたはアセタート)、(iii)非還元二糖(例えば、スクロースまたはトレハロースのような非還元二糖)、(iv)非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80)、ならびに(v)抗酸化剤(例えば、メチオニン)を含む製剤を含む。
【0082】
1つの態様においては、本発明は、
a)約20mg/mL~約200mg/mLの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、
b)約0.0009~0.035mg/mlのPH20変異体またはその断片、
c)約5mM~約20mMのバッファー、
d)スクロースおよびトレハロースからなる群から選択される約1%~約10%[重量/体積(w/v)]の非還元二糖、
e)約0.001%~約0.10%の非イオン性界面活性剤、ならびに、所望により含まれていてもよい、
f)約1mM~約30mMの抗酸化剤
を含む製剤を提供する。
【0083】
もう1つの態様においては、本発明は、
a)約100mg/mL~約185mg/mLの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、
b)約0.01~0.04mg/mlのPH20変異体またはその断片、
c)約5mM~約20mMのヒスチジンバッファー、
d)約6%~約8% w/vのスクロース、
e)約0.01%~約0.04% w/vのポリソルベート80、ならびに、
所望により含まれていてもよい、
f)約5mM~約20mMのL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩
を含む製剤を提供する。
【0084】
もう1つの態様においては、本発明は、
a)約100mg/mL~約165mg/mLの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、
b)約0.012~0.030mg/mlのPH20変異体またはその断片、
c)約5mM~約20mMのヒスチジンバッファー、
d)約6%~約8% w/vのスクロース、
e)約0.01%~約0.04% w/vのポリソルベート80、ならびに、
所望により含まれていてもよい、
f)約5mM~約20mMのL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩
を含む製剤を提供する。
【0085】
もう1つの態様においては、本発明は、
a)約130mg/mLの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、 b)約0.012mg/mlのPH20もしくはPH20変異体またはその断片、
c)約8mM~約12mMのヒスチジンバッファー、
d)所望により含まれていてもよい約5mM~約10mMのL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩、
e)約6%~約8% w/vのスクロース、ならびに
f)約0.01%~約0.04% w/vのポリソルベート80
を含む製剤を提供する。
【0086】
もう1つの態様においては、本発明は、
a)約130mg/mLの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、 b)約0.024mg/mlのPH20もしくはPH20変異体またはその断片、
c)約8mM~約12mMのヒスチジンバッファー、
d)所望により含まれていてもよい約5mM~約10mMのL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩、
e)約6%~約8% w/vのスクロース、ならびに
f)約0.01%~約0.04% w/vのポリソルベート80
を含む製剤を提供する。
【0087】
もう1つの態様においては、本発明は、
a)約130mg/mLの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、 b)約0.030mg/mlのPH20もしくはPH20変異体またはその断片、
c)8mM~約12mMのヒスチジンバッファー、
d)所望により含まれていてもよい約5mM~約10mMのL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩、
e)約6%~約8% w/vのスクロース、ならびに
f)0.01%~約0.04% w/vのポリソルベート80
を含む製剤を提供する。
【0088】
もう1つの態様においては、本発明は、
a)約160mg/mLの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、 b)約0.012mg/mlのPH20もしくはPH20変異体またはその断片、
c)約8mM~約12mMのヒスチジンバッファー、
d)所望により含まれていてもよい約5mM~約10mMのL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩、
e)約6%~約8% w/vのスクロース、ならびに
f)約0.01%~約0.04% w/vのポリソルベート80
を含む製剤を提供する。
【0089】
もう1つの態様においては、本発明は、
a)約165mg/mLの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、 b)約0.024mg/mlのPH20もしくはPH20変異体またはその断片、
c)約8mM~約12mMのヒスチジンバッファー、
d)所望により含まれていてもよい約5mM~約10mMのL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩、
e)約6%~約8% w/vのスクロース、ならびに
f)約0.01%~約0.04% w/vのポリソルベート80
を含む製剤を提供する。
【0090】
もう1つの態様においては、本発明は、
a)約165mg/mLの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、 b)約0.030mg/mlのPH20もしくはPH20変異体またはその断片、
c)約8mM~約12mMのヒスチジンバッファー、
d)所望により含まれていてもよい約5mM~約10mMのL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩、
e)約6%~約8% w/vのスクロース、ならびに
f)約0.01%~約0.04% w/vのポリソルベート80
を含む製剤を提供する。
【0091】
本発明の前記態様の1つの実施形態においては、製剤は約5.0~約6.0のpHを有する。1つの実施形態においては、製剤は5.3~5.8のpHを有する。1つの実施形態においては、製剤は約5.5のpHを有する。
【0092】
本発明の前記態様の1つの実施形態においては、バッファーはヒスチジンバッファーである。もう1つの実施形態においては、ヒスチジンバッファーは約5mM~約20mMの濃度で存在する。本発明の前記態様の1つの実施形態においては、ヒスチジンバッファーは約8mM~約12mMの濃度で存在する。本発明の前記態様の1つの実施形態においては、ヒスチジンバッファーはL-ヒスチジンである。本発明の前記態様の1つの実施形態においては、バッファーは約10mMのヒスチジンである。本発明の前記態様の1つの実施形態においては、バッファーは約10mMのL-ヒスチジンである。
【0093】
本発明の前記態様の1つの実施形態においては、抗酸化剤はL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩である。本発明の前記態様の1つの実施形態においては、抗酸化剤は約1mM~約30mMのL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩である。本発明の前記態様の1つの実施形態においては、抗酸化剤は約1mM~約20mMのL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩である。もう1つの実施形態において、抗酸化剤は、約5mM~約15mMの濃度で存在するL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩である。もう1つの実施形態においては、L-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩は約10mMの濃度で存在する。本発明の前記態様の1つの実施形態においては、L-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩はL-メチオニン-HClである。
【0094】
本発明の前記態様の1つの実施形態においては、非還元二糖はスクロースまたはトレハロースである。1つの実施形態においては、スクロースまたはトレハロースは約3%~約10%[重量/体積(w/v)]である。もう1つの実施形態においては、スクロースまたはトレハロースは約6%~約8%[重量/体積(w/v)]である。1つの実施形態においては、スクロースは約7%w/vで存在する。
【0095】
本発明の前記態様のもう1つの実施形態においては、非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート80、60、40または20である。もう1つの実施形態においては、非イオン性界面活性剤は約0.005~0.10% w/vで存在する。もう1つの実施形態においては、非イオン性界面活性剤は約0.005~0.02% w/vで存在する。もう1つの実施形態においては、非イオン性界面活性剤は、約0.02% w/vで存在するポリソルベート80である。本発明の前記態様の1つの実施形態においては、非イオン界面活性剤は約0.01%~約0.04% w/vのポリソルベート80である。本発明の前記態様の1つの実施形態においては、非イオン界面活性剤は約0.02% w/vのポリソルベート80である。
【0096】
抗PD-1抗体およびその抗原結合性フラグメント
本発明は、ヒトPD-1(例えば、ヒトまたはヒト化抗PD-1抗体)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントと、PH20変異体またはその断片とを含む安定な生物学的製剤、ならびに本発明の製剤の使用方法を提供する。特定の実施形態においては、抗PD-1抗体はペンブロリズマブおよびニボルマブから選択される。特定の実施形態においては、抗PD-1抗体はペンブロリズマブである。別の実施形態においては、抗PD-1抗体はニボルマブである。表2は、典型的な抗ヒトPD-1抗体であるペンブロリズマブおよびニボルマブのアミノ酸配列を示す。
【0097】
幾つかの実施形態においては、本発明の製剤において使用される抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CDRL1、CDRL2およびCDRL3の3つの軽鎖CDRを含む軽鎖可変領域と、CDRH1、CDRH2およびCDRH3の3つの重鎖CDRを含む重鎖可変領域とを含む。
【0098】
本発明の1つの実施形態においては、CDRL1は、配列番号1または配列番号1の変異体であり、CDRL2は、配列番号2または配列番号2の変異体であり、CDRL3は、配列番号3または配列番号3の変異体である。
【0099】
1つの実施形態においては、CDRH1は、配列番号6または配列番号6の変異体であり、CDRH2は、配列番号7または配列番号7の変異体であり、CDRH3は、配列番号8または配列番号8の変異体である。
【0100】
1つの実施形態においては、3つの軽鎖CDRは、配列番号1、配列番号2および配列番号3であり、3つの重鎖CDRは、配列番号6、配列番号7および配列番号8である。
【0101】
本発明のもう1つの実施形態においては、CDRL1は、配列番号11または配列番号11の変異体であり、CDRL2は、配列番号12または配列番号12の変異体であり、CDRL3は、配列番号13または配列番号13の変異体である。
【0102】
1つの実施形態においては、CDRH1は、配列番号16または配列番号16の変異体であり、CDRH2は、配列番号17または配列番号17の変異体であり、CDRH3は、配列番号18または配列番号18の変異体である。
【0103】
もう1つの実施形態においては、3つの軽鎖CDRは、配列番号11、配列番号12および配列番号13であり、3つの重鎖CDRは、配列番号16、配列番号17および配列番号18である。
【0104】
本発明の製剤の抗PD-1結合性フラグメントは軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態においては、軽鎖可変領域は、配列番号4または配列番号4の変異体を含み、重鎖可変領域は、配列番号9または配列番号9の変異体を含む。他の実施形態においては、軽鎖可変領域は、配列番号14または配列番号14の変異体を含み、重鎖可変領域は、配列番号19または配列番号19の変異体を含む。そのような実施形態においては、変異体軽鎖または重鎖可変領域配列は、1、2、3、4または5個のアミノ酸置換を有すること以外は参照配列と同一である。幾つかの実施形態においては、該置換はフレームワーク領域内(すなわち、CDRの外部)に存在する。幾つかの実施形態においては、アミノ酸置換の1、2、3、4または5個は保存的置換である。
【0105】
本発明の製剤の1つの実施形態においては、抗体または抗原結合性フラグメントは、配列番号4を含む又はそれからなる軽鎖可変領域と、配列番号9を含む又はそれからなる重鎖可変領域とを含む。もう1つの実施形態においては、抗体または抗原結合性フラグメントは、配列番号14を含む又はそれからなる軽鎖可変領域と、配列番号19を含む又はそれからなる重鎖可変領域とを含む。
【0106】
もう1つの実施形態においては、本発明の製剤は、前記のVドメインまたはVドメインの1つに対して少なくとも95%、90%、85%、80%、75%の配列相同性を有するVドメインおよび/またはVドメインを有する、PD-1への特異的結合を示す抗体または抗原結合性フラグメントを含む。もう1つの実施形態においては、本発明の製剤の抗体または抗原結合性フラグメントは、最大1、2、3、4または5個以上のアミノ酸置換を有するVおよびVドメインを含み、PD-1への特異的結合を示す。
【0107】
前記実施形態のいずれかにおいては、抗PD-1抗体は、ヒトPD-1に特異的に結合する全長抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントでありうる。特定の実施形態においては、全長抗PD-1抗体は、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含む免疫グロブリンの任意のクラスから選択される。好ましくは、抗体はIgG抗体である。IgG、IgG、IgGおよびIgGを含む、IgGの任意のアイソタイプが使用されうる。本明細書に記載されているVおよびV領域に異なる定常ドメインが付加されうる。例えば、本発明の抗体(またはフラグメント)の特定の意図される使用がエフェクター機能の改変を要する場合、IgG1以外の重鎖定常ドメインが使用されうる。
IgG1抗体は、長い半減期、およびエフェクター機能、例えば補体活性化および抗体依存性細胞傷害性をもたらすが、そのような活性は抗体の全ての用途に望ましいわけではない。そのような場合、例えばIgG4定常ドメインが使用されうる。
【0108】
本発明の実施形態においては、抗PD-1抗体は、配列番号5に記載されているアミノ酸残基の配列を含む又はそれからなる軽鎖と、配列番号10に記載されているアミノ酸残基の配列を含む又はそれからなる重鎖とを含む。他の実施形態においては、抗PD-1抗体は、配列番号15に記載されているアミノ酸残基の配列を含む又はそれからなる軽鎖と、配列番号20に記載されているアミノ酸残基の配列を含む又はそれからなる重鎖とを含む。本発明の幾つかの製剤においては、抗PD-1抗体は、ペンブロリズマブ、ペンブロリズマブのバイオシミラー、またはペンブロリズマブ変異体である。本発明の幾つかの製剤においては、抗PD-1抗体は、ニボルマブまたはニボルマブのバイオシミラーである。
【0109】
通常、本発明の抗PD-1抗体および抗原結合性フラグメントのアミノ酸配列変異体は、参照抗体または抗原結合性フラグメント(例えば、重鎖、軽鎖、V、Vまたはヒト化配列)のアミノ酸配列に対して少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95、98または99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
配列に関する同一性または相同性は、本明細書においては、配列を整列(アライメント)させ、配列同一性の一部としていずれの保存的置換をも考慮せずに、必要に応じてギャップを導入して、最大の配列同一性の割合を得た後で抗PD-1残基と同一である候補配列におけるアミノ酸残基の百分率として定義される。抗体配列へのN末端、C末端または内部の伸長、欠失もしくは挿入はいずれも、配列の同一性または相同性に影響を及ぼさないと解釈されるものとする。
【0110】
配列同一性は、2つの配列が最適にアライメントされた場合に2つのポリペプチドのアミノ酸が同等位置において同一である度合を意味する。配列同一性は、BLASTアルゴリズムを使用して決定可能であり、この場合、該アルゴリズムのパラメーターは、それぞれの参照配列の長さ全体にわたってそれぞれの配列間で最大マッチを与えるように選択される。以下の参考文献は、配列分析にしばしば使用されるBLASTアルゴリズムに関するものである:BLAST ALGORITHMS:Altschul,S.F.ら,(1990)J.Mol.Biol.215:403-410;Gish,W.ら,(1993)Nature Genet.3:266-272;Madden,T.L.ら,(1996)Meth.Enzymol.266:131-141;Altschul,S.F.ら,(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402;Zhang,J.ら,(1997)Genome Res.7:649-656;Wootton,J.C.ら,(1993)Comput.Chem.17:149-163;Hancock,J.M.ら,(1994)Comput.Appl.Biosci.10:67-70;ALIGNMENT SCORING SYSTEMS:Dayhoff,M.O.ら,“A model of evolutionary change in proteins”.Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)vol.5,suppl.3.M.O.Dayhoff(編),pp.345-352,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC;Schwartz,R.M.ら,“Matrices for detecting distant relationships”.Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)vol.5,suppl.3.“M.O.Dayhoff(編),pp.353-358,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC;Altschul,S.F.,(1991)J.Mol.Biol.219:555-565;States,D.J.ら,(1991)Methods 3:66-70;Henikoff,S.ら,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915-10919;Altschul,S.F.ら,(1993)J.Mol.Evol.36:290-300;ALIGNMENT STATISTICS:Karlin,S.ら,(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268;Karlin,S.ら,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877;Dembo,A.ら,(1994)Ann.Prob.22:2022-2039;およびAltschul,S.F.“Evaluating the statistical significance of multiple distinct local alignments”.Theoretical and Computational Methods in Genome Research(S.Suhai編),(1997)pp.1-14,Plenum,New York。
【0111】
同様に、本明細書における組成物および方法においては、いずれかのクラスの軽鎖が使用されうる。特に、カッパ、ラムダまたはそれらの変異体が本組成物および方法において有用である。
【0112】
本発明における使用が想定される追加的な抗PD-1抗体には以下のものが含まれる:MEDI0680(米国特許第8609089号)、BGB-A317(米国特許公開第2015/0079109号)、INCSHR1210(SHR-1210)(PCT国際出願公開番号WO2015/085847)、REGN-2810(PCT国際出願公開番号WO2015/112800)、PDR001(PCT国際出願公開番号WO2015/112900)、TSR-042(ANB011)(PCT国際出願公開番号WO2014/179664)およびSTI-1110(PCT国際出願公開番号WO2014/179664)、ヒト化抗体h409A11、h409A16およびh409A17(これらはWO2014/194302に記載されている)、ならびにAMP-514(これはMedImmuneによって現在開発中である)(ここにおける刊行物の全体を参照により本明細書に組み入れることとする)、セミプリマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、ならびにトリパリマブ。
【0113】
【表2】
【0114】
本発明の製剤の幾つかの実施形態においては、抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント(例えば、ペンブロリズマブ)は、約20mg/mL~約200mg/mLの濃度で存在する。本発明の製剤の幾つかの実施形態においては、抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント(例えば、ペンブロリズマブ)は、約90mg/mL~約200mg/mLの濃度で存在する。もう1つの実施形態においては、抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント(例えば、ペンブロリズマブ)は、約100mg/ml~約185mg/mlの濃度で存在する。他の実施形態においては、抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント(例えば、ペンブロリズマブ)は、約25mg/mL、約50mg/mL、約75mg/mL、約90mg/mL、約100mg/mL、約120mg/mL、約125mg/mL、約130mg/mL、約150mg/mL、約165mg/mL、約167mg/mL、約185mg/mLおよび約200mg/mLの濃度で存在する。
【0115】
1つの実施形態においては、抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント(例えば、ペンブロリズマブ)は、約165~約170mg/mLの濃度で存在する。
【0116】
1つの実施形態においては、抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント(例えば、ペンブロリズマブ)は、約165mg/mLの濃度で存在する。
【0117】
1つの実施形態においては、抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント(例えば、ペンブロリズマブ)は、約130mg/mLの濃度で存在する。
【0118】
1つの実施形態においては、抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント(例えば、ペンブロリズマブ)は、約120mg/mLの濃度で存在する。
【0119】
1つの実施形態においては、抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント(例えば、ペンブロリズマブ)は、約100mg/mLの濃度で存在する。
【0120】
もう1つの実施形態においては、抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント(例えば、ペンブロリズマブ)は、約75mg/mL~約200mg/mL、約100mg/mL~約200mg/mL、約25mg/mL~約175mg/mL、約50mg/mL~約175mg/mL、約75mg/mL~約175mg/mL、約100mg/mL~約175mg/mL、約25mg/mL~約150mg/mL、約50mg/mL~約150mg/mL、約75mg/mL~約150mg/mL、約100mg/mL~約150mg/mL、約25mg/mL~約125mg/mL、約50mg/mL~約125mg/mL、約75mg/mL~約125mg/mL、約25mg/mL~約100mg/mL、約125mg/mL~約175mg/mL、約125mg/mL~約200mg/mL、または約25mg/mLから200mg/mLの濃度で存在する。
【0121】
PH20変異体およびその断片
1つの実施形態においては、PH20変異体またはその断片は、T341、L342、S343、I344およびN363からなる群から選択される1以上の位置にアミノ酸残基置換を更に含む。1つの実施形態においては、PH20変異体またはその断片は、T341A、T341C、T341D、T341G、T341S、L342W、S343E、I344NおよびN363Gからなる群から選択される1以上のアミノ酸残基置換を更に含む。
【0122】
PH20変異体またはその断片の1つの実施形態においては、アミノ酸残基置換は以下のアミノ酸残基置換群から選択される:
(a)T341S、L342W、S343E、I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359DおよびI361T;
(b)L342W、S343E、I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359DおよびI361T;
(c)M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359D、I361TおよびN363G;
(d)T341G、L342W、S343E、I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359DおよびI361T;
(e)T341A、L342W、S343E、I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359DおよびI361T;
(f)T341C、L342W、S343E、I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359DおよびI361T;
(g)T341D、L342W、S343E、I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359DおよびI361T;
(h)I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359DおよびI361T;ならびに
(i)S343E、I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359DおよびI361T。
【0123】
PH20変異体またはその断片の1つの実施形態においては、アミノ酸残基置換は、T341S、L342W、S343E、I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359DおよびI361Tからなる。
【0124】
PH20変異体断片の前記実施形態の1つの態様においては、PH20変異体断片は、配列番号21のアミノ酸残基1~36、1~37、1~38、1~39、1~40、1~41または1~42のN末端欠失を有する。もう1つの実施形態においては、PH20変異体断片は、配列番号21のアミノ酸残基1~36のN末端欠失を有する。もう1つの実施形態においては、PH20変異体断片は、配列番号21のアミノ酸残基1~37のN末端欠失を有する。もう1つの実施形態においては、PH20変異体断片は、配列番号21のアミノ酸残基1~38のN末端欠失を有する。
【0125】
PH20変異体断片の前記実施形態のもう1つの態様においては、PH20変異体断片は、アミノ酸残基455~509、456~509、457~509、458~509、459~509、460~509、461~509、462~509、463~509、464~509、465~509、466~509、467~509、468~509、469~509、470~509、471~509、472~509、473~509、474~509、475~509、476~509、477~509、478~509、479~509、480~509、481~509、482~509、483~509、484~509、485~509、486~509、487~509、488~509、489~509、490~509、491~509、492~509、493~509、494~509、495~509、496~509、497~509、498~509、499~509、500~509、501~509、502~509、503~509、504~509、505~509、506~509、507~509、508~509、または509(ここで、番号付けは配列番号21に基づく)のC末端欠失を有する。1つの実施形態においては、そのPH20変異体断片は、アミノ酸残基455~509、458~509、461~509、464~509、465~509、466~509、467~509、468~509、470~509、471~509、472~509、473~509、474~509、475~509、476~509、478~509、480~509、482~509、484~509、486~509、488~509、または490~509(ここで、番号付けは配列番号21に基づく)のC末端欠失を有する。
1つの実施形態においては、PH20変異体断片は、アミノ酸残基468~509(ここで、番号付けは配列番号21に基づく)のC末端欠失を有する。
【0126】
1つの実施形態においては、PH20変異体断片は、配列番号22または23に示されているアミノ酸配列からなる。他の実施形態においては、PH20変異体またはその断片は、EP3636752の表11に開示されている配列のいずれかである。
【0127】
【表3】
【0128】
本発明の製剤の幾つかの実施形態においては、PH20変異体またはその断片は、約0.006mg/mLの濃度で存在する。もう1つの実施形態においては、PH20変異体またはその断片の濃度は、約0.009mg/mLである。もう1つの実施形態においては、PH20変異体またはその断片の濃度は、約0.012mg/mLである。もう1つの実施形態においては、PH20変異体またはその断片の濃度は、約0.018mg/mLである。もう1つの実施形態においては、PH20変異体またはその断片の濃度は、約0.024mg/mLである。もう1つの実施形態においては、PH20変異体またはその断片の濃度は、約0.030mg/mLである。もう1つの実施形態においては、PH20変異体またはその断片の濃度は、約0.036mg/mLである。もう1つの実施形態においては、PH20変異体またはその断片の濃度は、約0.006~0.036mg/mLである。もう1つの実施形態においては、PH20変異体またはその断片の濃度は、約0.012~0.030mg/mLである。もう1つの実施形態においては、PH20変異体またはその断片の濃度は、約0.006~0.030mg/mLである。もう1つの実施形態においては、PH20変異体またはその断片の濃度は、約0.006~0.012mg/mLである。
【0129】
本発明の製剤の幾つかの実施形態においては、PH20変異体またはその断片は、約1000U/mlの濃度で存在する。もう1つの実施形態においては、PH20変異体またはその断片の濃度は、約1500U/mlである。もう1つの実施形態においては、PH20変異体またはその断片の濃度は、約2000U/mlである。もう1つの実施形態においては、PH20変異体またはその断片の濃度は、約3000U/mlである。もう1つの実施形態においては、PH20変異体またはその断片の濃度は、約4000U/mlである。もう1つの実施形態においては、PH20変異体またはその断片の濃度は、約5000U/mlである。もう1つの実施形態においては、PH20変異体またはその断片の濃度は、約6000U/mlである。もう1つの実施形態においては、PH20変異体またはその断片の濃度は、約1000~6000U/mlである。もう1つの実施形態においては、PH20変異体またはその断片の濃度は、約2000~5000U/mlである。
【0130】
本発明の製剤の幾つかの実施形態においては、PH20変異体またはその断片は、約0.0009mg/mLの濃度で存在する。もう1つの実施形態においては、PH20変異体またはその断片の濃度は、約0.0018mg/mLである。もう1つの実施形態においては、PH20変異体またはその断片の濃度は、約0.0036mg/mLである。もう1つの実施形態においては、PH20変異体またはその断片の濃度は、約0.0045mg/mLである。もう1つの実施形態においては、PH20変異体またはその断片の濃度は、約0.0009~0.030mg/mLである。
【0131】
本発明の製剤の幾つかの実施形態においては、PH20変異体またはその断片は、約150U/mlの濃度で存在する。もう1つの実施形態においては、PH20変異体またはその断片の濃度は、約300U/mlである。もう1つの実施形態においては、PH20変異体またはその断片の濃度は、約600U/mlである。もう1つの実施形態においては、PH20変異体またはその断片の濃度は、約750U/mlである。もう1つの実施形態においては、PH20変異体またはその断片の濃度は、約150~5000U/mlである。
【0132】
製剤賦形剤
本発明の実施形態においては、非還元二糖はスクロースである。追加的な実施形態においては、非還元二糖はトレハロースである。
【0133】
幾つかの実施形態においては、非還元二糖は、約6%~約8%w/vのスクロースである。幾つかの実施形態においては、非還元二糖は、約6%~約8%w/vのトレハロースである。
【0134】
更にもう1つの実施形態においては、スクロース、トレハロースは、約6%w/v、約6.25%w/v、約6.5%w/v、約6.75%w/v、約7%w/v、約7.25%w/v、約7.5%w/v、約7.75%w/vまたは約8%w/vの量で存在する。
【0135】
前記の量/濃度の抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、およびPH20変異体またはその断片、および非還元二糖に加えて、本発明の製剤は、バッファーも含みうる。幾つかの実施形態においては、バッファーは、約5mM~約20mMの量で存在する。もう1つの実施形態においては、バッファーは、約5.0~約6.0の範囲のpHを有する。更にもう1つの実施形態においては、pHは、約5.3~約5.8である。他の実施形態においては、pHは、約6.0~約6.4である。
【0136】
特定の実施形態においては、バッファーは、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0、約6.2または約6.4のpHを有する。本発明の特定の実施形態においては、バッファーは、約5.0~約6.0のpHのヒスチジンまたはアセタートである。幾つかの実施形態においては、バッファーは、L-ヒスチジンバッファーである。製剤が凍結乾燥される実施形態においては、アセタートバッファー系は凍結乾燥プロセスに適合しないため、バッファーはアセタートではないことが好ましい。
【0137】
「pH5.5~6.0のpH」のようにpH値の範囲が記載されている場合、該範囲は、記載されている値を含むと意図される。特に示されていない限り、凍結乾燥製剤に関しては、pHは、本発明の凍結乾燥製剤の再構成後のpHを意味する。pHは、典型的には、標準的なガラスバルブpHメーターを使用して25℃で測定される。本明細書中で用いる「pH Xのヒスチジンバッファー」を含む溶液は、ヒスチジンバッファーを含むpH Xの溶液を意味し、すなわち、pHは溶液のpHを意味すると意図される。
【0138】
前記の量/濃度の抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントおよびPH20変異体またはその断片、非還元二糖およびバッファーに加えて、本発明の製剤は、抗酸化剤をも含みうる。本発明の実施形態においては、抗酸化剤はメチオニンである。本発明の実施形態においては、抗酸化剤はL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩である。
もう1つの実施形態においては、メチオニンはL-メチオニンである。他の実施形態においては、抗酸化剤はL-メチオニンHClである。
【0139】
幾つかの実施形態においては、抗酸化剤(例えば、L-メチオニン)は、本発明の製剤中に1mM~約20mMの量で存在する。もう1つの実施形態においては、抗酸化剤は、約5mM~約20mMの量で存在する。もう1つの実施形態においては、抗酸化剤は、約5mM~約15mMで存在する。もう1つの実施形態においては、抗酸化剤は、約5mM~約10mMで存在する。追加的な実施形態においては、抗酸化剤は、約1mM、約2mM、約3mM、約4mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mMまたは約20mMの量で存在する。
【0140】
前記の量/濃度の抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、PH20変異体またはその断片、非還元二糖、バッファーおよび抗酸化剤に加えて、本発明の製剤は、界面活性剤をも含みうる。本発明の製剤において有用でありうる界面活性剤には、非イオン性界面活性剤、例えばポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル[商品名Tween(登録商標)(Uniquema Americas LLC,Wilmington,DE)として販売されているポリソルベート(Polysorbate)]、例えばポリソルベート20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート)、ポリソルベート40(ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート)およびポリソルベート80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0141】
本発明の製剤中に含まれる界面活性剤の量は、所望の機能をもたらすのに十分な量、すなわち、製剤中で活性医薬成分(すなわち、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合性フラグメント、またはPH20変異体もしくはその断片)を安定化するのに必要な最小量である。典型的には、界面活性剤は、約0.005%~約0.1%w/vの濃度で存在する。
本発明のこの態様の幾つかの実施形態においては、界面活性剤は、製剤中に約0.01%~約0.04%、約0.01%~約0.03%、約0.01%~約0.02%、約0.015%~約0.04%、約0.015%~約0.03%、約0.015%~約0.02%、約0.02%~約0.04%、約0.02%~約0.035%、または約0.02%~約0.03%の量で存在する。特定の実施形態においては、界面活性剤は、約0.02%の量で存在する。もう1つの実施形態においては、界面活性剤は、約0.01%、約0.015%、約0.025%、約0.03%、約0.035%または約0.04%の量で存在する。
【0142】
本発明の典型的な実施形態においては、界面活性剤は、ポリソルベート20およびポリソルベート80からなる群から選択される非イオン性界面活性剤である。好ましい実施形態においては、界面活性剤はポリソルベート80である。
【0143】
特定の実施形態においては、本発明の製剤は、約0.01%~約0.04%のPS80を含む。他の実施形態においては、本発明の製剤は、約0.008%、約0.01%、約0.015%、約0.02%、約0.025%、約0.03%、約0.035%、約0.04%または約0.045%の量のPS80を含む。特定の実施形態においては、本発明の製剤は、約0.02%のPS80を含む。
【0144】
本発明はまた、製剤がガラスバイアルまたは注射器(例えば、注射器)内に含有されている、本明細書に記載されている製剤を提供する。1つの態様においては、製剤は皮下投与用である。1つの実施形態においては、製剤の粘度は、5℃で7~90cPの範囲である。もう1つの実施形態においては、製剤の粘度は、5℃で7~30cPの範囲である。
もう1つの実施形態においては、製剤の粘度は、20℃で7~50cPの範囲である。もう1つの実施形態においては、製剤の粘度は、20℃で7~20cPの範囲である。1つの実施形態においては、粘度は、Grabner InstrumentsによるMiniVisII粘度計を使用するUSP<913>技術を用いて測定される。
【0145】
追加的な実施形態においては、本発明は、製剤を2~8℃で3または6ヶ月間貯蔵した後、HP-SECによる測定で、高分子量種の割合(%)が1%以下または0.5%以下である、本明細書に記載されている製剤を提供する。
【0146】
追加的な実施形態においては、本発明は、製剤を25℃で6、3または1ヶ月間貯蔵した後、HP-SECによる測定で、高分子量種の割合(%)が2%以下である、本明細書に記載されている製剤を提供する。
【0147】
追加的な実施形態においては、本発明は、製剤を40℃で3ヶ月間貯蔵した後、HP-SECによる測定で、高分子量種の割合(%)が4%以下または5.0%以下である、本明細書に記載されている製剤を提供する。
【0148】
追加的な実施形態においては、本発明は、製剤を40℃で6ヶ月間貯蔵した後、HP-SECによる測定で、高分子量種の割合(%)が11%以下または12.0%以下である、本明細書に記載されている製剤を提供する。
【0149】
他の実施形態においては、本発明は、製剤を5℃で1、3または6ヶ月間貯蔵した後、HP-SECによる測定で、単量体の割合(%)が99.5%以上である、本明細書に記載されている製剤を提供する。
【0150】
他の実施形態においては、本発明は、製剤を25℃で1、3または6ヶ月間貯蔵した後、HP-SECによる測定で、単量体の割合(%)が98%以上である、本明細書に記載されている製剤を提供する。
【0151】
他の実施形態においては、本発明は、製剤を40℃で3ヶ月間貯蔵した後、HP-SECによる測定で、単量体の割合(%)が95%以上である、本明細書に記載されている製剤を提供する。
【0152】
他の実施形態においては、本発明は、製剤を5℃で1、3または6ヶ月間貯蔵した後、IEXによる測定で、酸変異体の割合(%)が20%以下である、本明細書に記載されている製剤を提供する。
【0153】
他の実施形態においては、本発明は、製剤を25℃で3ヶ月間貯蔵した後、IEXによる測定で、酸変異体の割合(%)が24%以下または25%以下である、本明細書に記載されている製剤を提供する。
【0154】
他の実施形態においては、本発明は、製剤を40℃で3ヶ月間貯蔵した後、IEXによる測定で、酸変異体の割合(%)が55%以下である、本明細書に記載されている製剤を提供する。
【0155】
本発明の特定の態様および実施形態
1つの実施形態においては、本発明は、
a)約100~約165mg/mLの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、
b)約0.012~0.030mg/mlのPH20変異体またはその断片、
c)約10mMのヒスチジンバッファー、
d)所望により含まれていてもよい約10mMのL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩、
e)約7% w/vのスクロース、ならびに
f)約0.02% w/vのポリソルベート80
を含む製剤を提供する。
【0156】
1つの実施形態においては、本発明は、
a)約130mg/mLの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、 b)約0.012mg/mlのPH20変異体またはその断片、
c)約10mMのヒスチジンバッファー、
d)所望により含まれていてもよい約10mMのL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩、
e)約7% w/vのスクロース、ならびに
f)約0.02% w/vのポリソルベート80
を含む製剤を提供する。
【0157】
1つの実施形態においては、本発明は、
a)約130mg/mLの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、 b)約0.024mg/mlのPH20変異体またはその断片、
c)約10mMのヒスチジンバッファー、
d)所望により含まれていてもよい約10mMのL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩、
e)約7% w/vのスクロース、ならびに
f)約0.02% w/vのポリソルベート80
を含む製剤を提供する。
【0158】
もう1つの実施形態においては、本発明は、
a)約130mg/mLの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、 b)約0.030mg/mlのPH20変異体またはその断片、
c)約10mMのヒスチジンバッファー、
d)所望により含まれていてもよい約10mMのL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩、
e)約7% w/vのスクロース、ならびに
f)約0.02% w/vのポリソルベート80
を含む製剤を提供する。
【0159】
もう1つの実施形態においては、本発明は、
a)約165mg/mLの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、 b)約0.012mg/mlのPH20変異体またはその断片、
c)約10mMのヒスチジンバッファー、
d)所望により含まれていてもよい約10mMのL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩、
e)約7% w/vのスクロース、ならびに
f)約0.02% w/vのポリソルベート80
を含む製剤を提供する。
【0160】
もう1つの実施形態においては、本発明は、
a)約165mg/mLの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、 b)約0.024mg/mlのPH20変異体またはその断片、
c)約10mMのヒスチジンバッファー、
d)所望により含まれていてもよい約10mMのL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩、
e)約7% w/vのスクロース、ならびに
f)約0.02% w/vのポリソルベート80
を含む製剤を提供する。
【0161】
もう1つの実施形態においては、本発明は、
a)約165mg/mLの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、 b)約0.030mg/mlのPH20変異体またはその断片、
c)約10mMのヒスチジンバッファー、
d)所望により含まれていてもよい約10mMのL-メチオニンまたはその薬学的に許容される塩、
e)約7% w/vのスクロース、ならびに
f)約0.02% w/vのポリソルベート80
を含む製剤を提供する。
【0162】
本明細書に記載されている特定の態様および実施形態のいずれかにおいては、任意の抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント(すなわち、ヒトPD-1に特異的に結合する抗体または抗原結合性フラグメント、例えばペンブロリズマブまたはその抗原結合性フラグメント)が使用されうる。特定の実施形態においては、本明細書に記載されている抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントの1つ、例えば、題名「抗PD-1抗体およびその抗原結合性フラグメント」の節に記載されているものが使用される。
【0163】
本明細書に記載されている特定の態様および実施形態のいずれかにおいては、任意のPH20変異体またはその断片が使用されうる。特定の実施形態においては、例えば、題名「PH20変異体またはその断片」の節に記載されているPH20変異体またはその断片の1つが使用される。
【0164】
本発明の幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されている製剤のいずれかは水溶液である。別の実施形態においては、本発明は、後記で更に詳細に記載されているとおり、水性製剤を凍結乾燥して本発明の再構成製剤を得ることにより製造される凍結乾燥製剤を提供する。
【0165】
凍結乾燥医薬組成物
治療用タンパク質の凍結乾燥製剤は幾つかの利点をもたらす。凍結乾燥製剤は、一般に、溶液製剤より良好な化学的安定性をもたらし、したがって、半減期の増加をもたらす。
また、凍結乾燥製剤は、投与経路または投与量のような臨床的要因に応じて種々の濃度で再構成されうる。例えば、凍結乾燥製剤は、皮下投与に必要な場合には高濃度(すなわち、小容量)で、あるいは静脈内投与の場合にはより低い濃度で再構成されうる。また、個々の対象に高用量が必要な場合、特に、注射体積を最小にしなければならない皮下投与の場合には、高濃度が必要となりうる。1つのそのような凍結乾燥抗体製剤は米国特許第6,267,958号に開示されており、その全体を参照により本明細書に組み入れることとする。別の治療用タンパク質の凍結乾燥製剤は米国特許第7,247,707号に開示されており、その全体を参照により本明細書に組み入れることとする。
【0166】
典型的には、医薬品(DP)の高濃度での再構成を想定して、すなわち、小さな体積の水における再構成を意図して、凍結乾燥製剤は製造される。ついで、より低い濃度へとDPを希釈するために、水または等張バッファーでの後続希釈が容易に行われうる。典型的には、例えば皮下投与用に高いDP濃度で再構成された場合にほぼ等張性の製剤を与えるレベルの賦形剤が本発明の凍結乾燥製剤に製剤される。より低いDP濃度を得るための、より大きな体積の水での再構成は、再構成溶液の張度を必然的に低下させるが、そのような低下は、非皮下投与、例えば静脈内投与においてはほとんど意味がないかもしれない。
より低いDP濃度において等張性が望ましい場合には、凍結乾燥粉末を標準的な低容量の水で再構成し、ついで、等張性希釈剤、例えば0.9% 塩化ナトリウムで更に希釈することが可能である。
【0167】
本発明の1つの実施形態においては、ヒト化抗PD-1抗体(またはその抗原結合性フラグメント)とPH20変異体またはその断片とを含む製剤は、皮下投与用の再構成および使用のための凍結乾燥粉末として製剤化される。特定の実施形態においては、凍結乾燥製剤は使用前に注射用滅菌水で再構成される。所望により、再構成溶液は、滅菌IV容器内の0.9% 塩化ナトリウム注射液USPで無菌的に希釈されうる。幾つかの実施形態においては、再構成製剤の目標pHは5.5±0.5である。種々の実施形態においては、本発明の凍結乾燥製剤は、抗PD-1抗体を例えば約20、25、30、40、50、60、75、100、125、130、150、165、175、185または200mg/mLのような高濃度に再構成することを可能にする。
【0168】
凍結乾燥製剤は、定義上、本質的に乾燥しており、したがって、それを記述するのに濃度の概念は有用ではない。凍結乾燥製剤を単位用量バイアル内の成分の重量に関して記述することはより有用であるが、それは用量またはバイアルサイズによって変動するため、問題である。本発明の凍結乾燥製剤を記述する際には、同じサンプル(例えば、バイアル)内の原薬(DS)の重量に対する成分の重量の比として成分の量を表すことが有用である。この比は百分率として表されうる。そのような比は、バイアルサイズ、投与量および再構成法には無関係に、本発明の凍結乾燥製剤の固有の特性を反映する。
【0169】
他の態様においては、抗ヒトPD-1抗体または抗原結合性フラグメントとPH20変異体またはその断片との凍結乾燥製剤は、凍結乾燥製剤を調製するために使用される凍結乾燥前溶液、例えば凍結乾燥前溶液に関して定義される。1つの実施形態においては、凍結乾燥前溶液は、約25~200mg/mLの濃度の抗体またはその抗原結合性フラグメントと、0.0009~0.050mg/mlのPH20変異体またはその断片とを含む。そのような凍結乾燥前溶液は、pH4.4~6.0、例えば、好ましくはpH約5.0~6.0またはpH約5.5でありうる。
【0170】
更に他の実施形態においては、抗ヒトPD-1抗体または抗原結合性フラグメントとPH20変異体またはその断片との凍結乾燥製剤は、凍結乾燥製剤から得られる再構成溶液に関して定義される。本発明は、凍結乾燥製剤から再構成される液体製剤を提供する。再構成溶液は、約25、30、40、50、60、75、80、90、100、120、130、150、165、167、185または200mg/mLの抗体またはその抗原結合性フラグメントと、0.0009~0.050mg/ml(150、300、600、900、1000、1500、2000、3000、4000または5000U/ml)のPH20変異体またはその断片とを含みうる。そのような再構成溶液は、約pH5.5、またはpH約5.0~約6.0の範囲でありうる。
【0171】
本発明の凍結乾燥製剤は、凍結乾燥前溶液の凍結乾燥(冷凍乾燥)により形成される。
凍結乾燥は、製剤を凍結し、ついで一次乾燥(初乾)に適した温度で水を昇華させることにより達成される。この条件下、製品温度は、製剤の共晶点または崩壊温度より低い。典型的には、一次乾燥の棚温度は、典型的には約50~250mTorrの範囲の適切な圧力で約-30~25℃(ただし、一次乾燥中に製品は凍結したままである)の範囲である。サンプルを収容する容器(例えば、ガラスバイアル)の製剤、サイズおよびタイプならびに液体の体積が乾燥に要する時間を決定し、これは数時間~数日間(例えば、40~60時間)の範囲でありうる。主に容器のタイプおよびサイズならびに使用されるタンパク質のタイプに応じて、約0~40℃で二次乾燥段階が行われうる。二次乾燥時間は、製品中の望ましい残留水分レベルによって決まり、典型的には、少なくとも約5時間を要する。典型的には、凍結乾燥製剤の水分含有量は約5%未満であり、好ましくは約3%未満である。圧力は、一次乾燥工程中に用いられる圧力と同じでありうる。凍結乾燥条件は製剤およびバイアルサイズによって異なりうる。
【0172】
幾つかの場合には、移し替えの工程を回避するために、タンパク質の再構成が行われる容器内でタンパク質製剤を凍結乾燥することが望ましいかもしれない。この場合の容器は、例えば、3、5、10、20、50または100ccのバイアルでありうる。
【0173】
再構成は、一般に、完全な水和を確保するために約25℃の温度で行われるが、所望により他の温度も用いられうる。再構成に要する時間は、例えば、希釈剤のタイプ、賦形剤の量およびタンパク質に左右される。典型的な希釈剤には、滅菌水、静菌性注射水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝食塩水)、滅菌食塩水、リンゲル液またはデキストロース溶液が含まれる。
【0174】
液体医薬組成物
液体抗体製剤は、原薬(例えば、抗ヒト化PD-1および/またはPH20変異体もしくはその断片)の液体形態(例えば、水性医薬製剤中のペンブロリズマブまたはPH20変異体断片1もしくは2)を得、それを所望のバッファー中にバッファー交換することにより製造されうる。この実施形態においては凍結乾燥工程は存在しない。最終バッファー中の原薬は所望の濃度に濃縮される。スクロース、メチオニンおよびポリソルベート80のような賦形剤が原薬に添加され、それは、適切なバッファーを使用して最終タンパク質濃度に希釈される。最終的に製剤化された原薬は、例えば0.22μmフィルターを使用して濾過され、最終容器(例えば、ガラスバイアルまたはシリンジ)内に充填される。そのような液体製剤は、10mM ヒスチジン(pH5.5)、7% スクロース、0.02% ポリソルベート80、25~200mg/mL ペンブロリズマブおよび0.0009~0.050mg/mlのPH20変異体断片1または2を含む最終液体製剤によって例示される。
【0175】
使用方法
本発明はまた、本発明の製剤のいずれか、すなわち、本明細書(本明細書中の「本発明の特定の態様および実施形態」の節を含む)に記載されているいずれかの製剤の有効量を対象に投与することを含む、対象における癌の治療方法に関する。この方法の幾つかの実施形態においては、製剤は、皮下投与により対象に投与される。
【0176】
本発明の方法のいずれかにおいては、癌は、メラノーマ、肺癌、頭頸部癌、膀胱癌、乳癌、胃腸癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、メルケル細胞癌、有棘細胞癌、リンパ腫、腎癌、中皮腫、卵巣癌、食道癌、肛門癌、胆道癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、甲状腺癌、唾液腺癌、前立腺癌(例えば、ホルモン不応性前立腺腺癌)、膵臓癌、結腸癌、肝臓癌、甲状腺癌、膠芽腫、神経膠腫および他の腫瘍性悪性疾患からなる群から選択されうる。
【0177】
幾つかの実施形態においては、肺癌は非小細胞肺癌である。
【0178】
別の実施形態においては、肺癌は小細胞肺癌である。
【0179】
幾つかの実施形態においては、リンパ腫はホジキンリンパ腫である。
【0180】
他の実施形態においては、リンパ腫は非ホジキンリンパ腫である。特定の実施形態においては、リンパ腫は縦隔大細胞型B細胞リンパ腫である。幾つかの実施形態においては、リンパ腫はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。
【0181】
幾つかの実施形態においては、乳癌はトリプルネガティブ乳癌である。
【0182】
他の実施形態においては、乳癌はER+/HER2- 乳癌である。
【0183】
幾つかの実施形態においては、膀胱癌は尿路上皮癌である。
【0184】
幾つかの実施形態においては、頭頸部癌は鼻咽頭癌である。幾つかの実施形態においては、癌は甲状腺癌である。他の実施形態においては、癌は唾液腺癌である。他の実施形態においては、癌は頭頸部の扁平上皮癌である。
【0185】
幾つかの実施形態においては、癌は、高レベルのマイクロサテライト不安定性(MSI-H)を伴う転移性結腸直腸癌である。
【0186】
幾つかの実施形態においては、癌は、高レベルのマイクロサテライト不安定性(MSI-H)を伴う固形腫瘍である。
【0187】
幾つかの実施形態においては、癌は、高い突然変異負荷(腫瘍遺伝子変異量)を伴う固形腫瘍である。
【0188】
幾つかの実施形態においては、癌は、メラノーマ、非小細胞肺癌、再発性または難治性古典的ホジキンリンパ腫、頭頸部扁平上皮癌、尿路上皮癌、食道癌、胃癌、DLBCLおよび肝細胞癌からなる群から選択される。
【0189】
前記治療方法の他の実施形態においては、癌はヘム悪性疾患である。特定の実施形態においては、ヘム悪性疾患は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、DLBCL、EBV陽性DLBCL、原発性縦隔大細胞Bリンパ腫、T細胞/組織球リッチ大B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫(HL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、多発性骨髄腫(MM)、骨髄細胞白血病-1タンパク質(Mcl-1)、骨髄異形成症候群(MDS)、非ホジキンリンパ腫(NHL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)である。
【0190】
生検または外科的物質における腫瘍浸潤リンパ球の存在に関連した無病生存率および全生存率の改善を示す悪性疾患、例えばメラノーマ、結腸直腸癌、肝臓癌、腎臓癌、胃/食道癌、乳癌、膵臓癌および卵巣癌が、本明細書に記載されている方法および治療に含まれる。そのような癌亜型は、Tリンパ球による免疫制御を受けやすいことが公知である。また、本明細書に記載されている抗体を使用して成長が抑制されうる難治性または再発性悪性疾患も含まれる。
【0191】
幾つかの実施形態においては、本発明の製剤は、卵巣癌、腎臓癌、結腸直腸癌、膵臓癌、乳癌、肝臓癌、胃癌、食道癌およびメラノーマを含む、試験組織サンプルにおけるPD-L1および/またはPD-L2の発現の上昇により特徴づけられる癌を有する対象に投与される。抗PD-1抗体、例えばヒト化抗PD-1抗体ペンブロリズマブでの治療から利益が得られうる追加的な癌には、例えばカポジ肉腫、肝臓癌、鼻咽頭癌、リンパ腫、子宮頸癌、外陰癌、肛門癌、陰茎癌および口腔癌に因果関係があることが公知であるウイルス、例えばヒト免疫不全ウイルス、肝炎ウイルスクラスA、BおよびC、エプスタインバーウイルス、ヒトパピローマウイルスの持続感染に関連した癌が含まれる。
【0192】
1つの実施形態においては、本発明は、本発明のいずれかの製剤を患者に投与することを含む、ヒト患者における癌の治療方法を含む。
【0193】
1つの実施形態においては、本発明は、本発明のいずれかの製剤を患者に投与することを含む、ヒト患者における切除不能または転移性メラノーマの治療方法を含む。
【0194】
1つの実施形態においては、本発明は、本発明の製剤を患者に投与することを含む、ヒト患者における転移性非小細胞肺癌(NSCLC)の治療方法を含む。特定の実施形態においては、患者は、高いPD-L1発現[腫瘍比率スコア(Tumor Proportion Score)(TPS)≧50%)]を有する腫瘍を有し、白金含有化学療法で過去に治療されなかった。他の実施形態においては、患者は、PD-L1発現(TPS≧1%)を有する腫瘍を有し、白金含有化学療法で過去に治療された。更に他の実施形態においては、患者は、PD-L1発現(TPS≧1%)を有する腫瘍を有し、白金含有化学療法で過去に治療されなかった。特定の実施形態においては、患者は、白金含有化学療法を受けた際または後に疾患進行を示した。
【0195】
特定の実施形態においては、PD-L1 TPSは、FDA承認試験により決定される。
【0196】
特定の実施形態においては、患者の腫瘍は、EGFRまたはALKゲノム異常を有さない。
【0197】
特定の実施形態においては、患者の腫瘍は、EGFRまたはALKゲノム異常を有し、抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与の前にEGFRまたはALK異常に対する治療を受けた際または後に疾患進行を示した。
【0198】
1つの実施形態においては、本発明は、(1)本発明の製剤を患者に投与すること、ならびに(2)ペメトレキセド(pemetrexed)およびカルボプラチン(carboplatin)を患者に投与することを含む、ヒト患者における転移性非小細胞肺癌(NSCLC)の治療方法を含む。特定の実施形態においては、患者は、本発明の製剤、ペメトレキセドおよびカルボプラチンでの併用治療レジメンを開始する前に抗癌治療薬で過去に治療されなかった。
【0199】
特定の実施形態においては、患者は非扁平上皮非小細胞肺癌を有する。
【0200】
特定の実施形態においては、ペメトレキセドを500mg/mの量で患者に投与する。従属実施形態においては、ペメトレキセドを21日ごとに静脈内注入により患者に投与する。特定の実施形態においては、注入時間は約10分間である。
【0201】
ペメトレキセドと組合された本発明の製剤で患者を治療する本発明の実施形態においては、本発明は、患者へのペメトレキセドの投与の約7日前から、1日1回、約400μg~約1000μgの葉酸を患者に投与し、患者へのペメトレキセドの最終用量の投与の約21日後までそれを継続することを更に含む。特定の実施形態においては、葉酸を経口投与する。幾つかの実施形態においては、本発明は、ペメトレキセドの初回投与の約1週間前およびペメトレキセド投与の約3サイクルごと(すなわち、約9週間ごと)に、約1mgのビタミンB12を患者に投与することを更に含む。特定の実施形態においては、ビタミンB12を筋肉内投与する。特定の実施形態においては、本発明は、ペメトレキセド投与の前日、当日および翌日に、約4mgのデキサメタゾンを患者に1日2回投与することを更に含む。特定の実施形態においては、デキサメタゾンを経口投与する。
【0202】
1つの実施形態においては、本発明は、本発明のいずれかの製剤を患者に投与することを含む、ヒト患者における再発性または転移性頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)の治療方法を含む。特定の実施形態においては、患者は、白金含有化学療法で過去に治療された。
特定の実施形態においては、患者は、白金含有化学療法の際または後に疾患進行を示した。特定の実施形態においては、患者の腫瘍はPD-L1を発現する[複合陽性スコア(Combined Positive Score)(CPS)≧1]。
【0203】
1つの実施形態においては、本発明は、本発明の製剤を患者に投与することを含む、ヒト患者における難治性古典的ホジキンリンパ腫(cHL)の治療方法を含む。特定の実施形態においては、患者は、cHLに対する一連の3以上の治療の後で再発を示した。特定の実施形態においては、患者は成人患者である。別の実施形態においては、患者は小児患者である。
【0204】
1つの実施形態においては、本発明は、本発明の製剤を患者に投与することを含む、ヒト患者における局所進行性または転移性尿路上皮癌の治療方法を含む。特定の実施形態においては、患者はシスプラチン含有化学療法に適さない。特定の実施形態においては、患者は、白金含有化学療法の途中もしくは後で、または白金含有化学療法とのネオアジュバントもしくはアジュバント治療の12ヶ月以内に疾患進行を示す。特定の実施形態においては、患者の腫瘍はPD-L1を発現する[複合陽性スコア(Combined Positive Score)(CPS)≧1]。
【0205】
1つの実施形態においては、本発明は、本発明の製剤を患者に投与することを含む、ヒト患者における切除不能または転移性マイクロサテライト不安定性-高(MSI-H)またはミスマッチ修復欠損固形腫瘍の治療方法を含む。特定の実施形態においては、患者は事前の抗癌治療の後で疾患進行を示した。
【0206】
1つの実施形態においては、本発明は、本発明の製剤を患者に投与することを含む、ヒト患者における切除不能または転移性マイクロサテライト不安定性-高(MSI-H)またはミスマッチ修復欠損結腸直腸癌の治療方法を含む。特定の実施形態においては、患者は、フルオロピリミジン、オキサリプラチンおよびイリノテカンでの事前の治療の後で疾患進行を示した。
【0207】
1つの実施形態においては、本発明は、本発明の製剤を患者に投与することを含む、ヒト患者における再発性局所進行性または転移性胃癌の治療方法を含む。
【0208】
1つの実施形態においては、本発明は、本発明の製剤を患者に投与することを含む、ヒト患者における再発性局所進行性または転移性胃食道接合部腺癌の治療方法を含む。特定の実施形態においては、患者の腫瘍は、PD-L1を発現する[複合陽性スコア(Combined Positive Score)(CPS)≧1]。特定の実施形態においては、患者は、フルオロピリミジンおよび白金含有化学療法を含む一連の2以上の事前の治療の際または後に疾患進行を示す。特定の実施形態においては、患者は、HER2/neu標的化療法を含む一連の2以上の事前の治療の際または後に疾患進行を示す。
【0209】
1つの実施形態においては、本発明は、本発明の製剤を患者に投与することを含む、ヒト患者における再発性局所進行性または転移性子宮頸癌の治療方法を含む。特定の実施形態においては、患者の腫瘍は、PD-L1を発現する[複合陽性スコア(Combined Positive Score)(CPS)≧1]。
【0210】
1つの実施形態においては、本発明は、本発明の製剤を患者に投与することを含む、ヒト患者における肝細胞癌の治療方法を含む。1つの実施形態においては、本発明は、本発明の製剤を患者に投与することを含む、ヒト患者における再発性局所進行性または転移性メルケル細胞癌の治療方法を含む。1つの実施形態においては、本発明は、本発明の製剤を患者に投与することを含む、ヒト患者における再発性または転移性有棘細胞癌の治療方法を含む。
【0211】
1つの実施形態においては、本発明は、本発明の製剤およびアキシチニブ(axitinib)を患者に投与することを含む、ヒト患者における進行性腎細胞癌の治療方法を含む。1つの実施形態においては、本発明は、本発明の製剤およびレンバチニブ(lenvatinib)を患者に投与することを含む、ヒト患者における進行性子宮内膜癌の治療方法を含む。1つの実施形態においては、子宮内膜癌はMSI-HまたはdMMRではない。
【0212】
1つの実施形態においては、本発明は、本発明の製剤を患者に投与することを含む、ヒト患者における癌の治療方法を含み、患者は、メラノーマ、肺癌、頭頸部癌、膀胱癌、乳癌、胃腸癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、リンパ腫、腎臓癌、中皮腫、卵巣癌、食道癌、肛門癌、胆道癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、甲状腺癌および唾液腺癌からなる群から選択される癌を有する。
【0213】
1つの実施形態においては、本発明は、本発明の製剤を患者に投与することを含む、ヒト患者における小細胞肺癌の治療方法を含む。
【0214】
1つの実施形態においては、本発明は、本発明の製剤を患者に投与することを含む、ヒト患者における非ホジキンリンパ腫の治療方法を含む。特定の実施形態においては、非ホジキンリンパ腫は縦隔大細胞型B細胞リンパ腫である。特定の実施形態においては、非ホジキンリンパ腫はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。
【0215】
1つの実施形態においては、本発明は、本発明の製剤を患者に投与することを含む、ヒト患者における乳癌の治療方法を含む。特定の実施形態においては、乳癌はトリプルネガティブ乳癌である。特定の実施形態においては、乳癌は、ER+/HER2- 乳癌である。
【0216】
1つの実施形態においては、本発明は、本発明の製剤を患者に投与することを含む、ヒト患者における鼻咽頭癌の治療方法を含む。
【0217】
1つの実施形態においては、本発明は、本発明の製剤を患者に投与することを含む、ヒト患者における甲状腺癌の治療方法を含む。
【0218】
1つの実施形態においては、本発明は、本発明の製剤を患者に投与することを含む、ヒト患者における唾液腺癌の治療方法を含む。
【0219】
アンタゴニスト抗PD-1抗体または抗体フラグメントは、感染および感染症を予防または治療するためにも使用されうる。したがって、本発明は、本発明の製剤の有効量を対象に投与することを含む、哺乳動物対象における慢性感染の治療方法を提供する。この方法の幾つかの特定の実施形態においては、製剤を皮下投与により対象に投与する。
【0220】
これらの物質は、病原体、毒素および自己抗原に対する免疫応答を刺激するために、単独で、またはワクチンと組合せて使用されうる。抗体またはその抗原結合性フラグメントは、ヒト免疫不全ウイルス、肝炎ウイルスクラスA、BおよびC、エプスタインバーウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、ヒトパピローマウイルスおよびヘルペスウイルス(これらに限定されるものではない)を含む、ヒトに対して感染性であるウイルスに対する免疫応答を刺激するために使用されうる。アンタゴニスト抗PD-1抗体または抗体フラグメントは、細菌または真菌寄生生物および他の病原体による感染に対する免疫応答を刺激するために使用されうる。B型およびC型肝炎ならびにHIVによるウイルス感染は、慢性ウイルス感染と見なされるものの1つである。
【0221】
本発明の製剤は、1以上の「追加的な治療用物質」と組合せて患者に投与されうる。追加的な治療用物質は、生物療法剤(VEGF、EGFR、Her2/neu、VEGF受容体、他の増殖因子受容体、CD20、CD40、CD-40L、OX-40、4-IBBおよびICOSに対する抗体を含むが、これらに限定されるものではない)、増殖抑制物質、免疫原性物質[例えば、弱毒化癌細胞、腫瘍抗原、抗原提示細胞(例えば、腫瘍由来抗原または核酸でパルスされた樹状細胞)、免疫刺激性サイトカイン(例えば、IL-2、IFNα2、GM-CSF)、および免疫刺激性サイトカイン、例えばGM-CSF(これに限定されるものではない)をコードする遺伝子でトランスフェクトされた細胞]でありうる。
【0222】
前記のとおり、本発明の方法の幾つかの実施形態においては、該方法は、追加的な治療用物質を投与することを更に含む。特定の実施形態においては、追加的な治療用物質は、抗LAG3抗体またはその抗原結合性フラグメント、抗GITR抗体またはその抗原結合性フラグメント、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメント、抗CD27抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、追加的な治療用物質は、IL-12を発現するニューカッスル病ウイルスベクターである。もう1つの実施形態においては、追加的な治療用物質はジナシクリブ(dinaciclib)である。更に他の実施形態においては、追加的な治療用物質はSTINGアゴニストである。1つの実施形態においては、追加的な治療用物質はコクサッキーウイルスCVA2である。
【0223】
追加的な治療用物質のための適切な投与経路には、例えば非経口送達、例えば筋肉内、皮下、および髄腔内、直接脳室内、静脈内、腹腔内が含まれうる。薬物は、種々の通常の方法で、例えば腹腔内、非経口、動脈内または静脈内注射により投与されうる。
【0224】
追加的な治療用物質の投与量の選択は、該物質の血清または組織代謝回転速度、症状の程度、該物質の免疫原性、および治療される個体における標的細胞、組織または器官の接近可能性を含む幾つかの要因に左右される。追加的な治療用物質の投与量は、許容レベルの副作用をもたらす量であるべきである。したがって、各追加的治療用物質(例えば、生物療法または化学療法剤)の用量および投与頻度は、部分的には、個々の治療用物質、治療される癌の重症度、および患者の特性に左右される。抗体、サイトカインおよび小分子の適切な用量を選択する際の指針が利用可能である。例えば、以下のものを参照されたい:Wawrzynczak(1996)Antibody Therapy,Bios Scientific Pub.Ltd,Oxfordshire,UK;Kresina(編)(1991)Monoclonal Antibodies,Cytokines and Arthritis,Marcel Dekker,New York,NY;Bach(編)(1993)Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases,Marcel Dekker,New York,NY;Baertら(2003)New Engl.J.Med.348:601-608;Milgromら(1999)New Engl.J.Med.341:1966-1973;Slamonら(2001)New Engl.J.Med.344:783-792;Beniaminovitzら(2000)New Engl.J.Med.342:613-619;Ghoshら(2003)New Engl.J.Med.348:24-32;Lipskyら(2000)New Engl.J.Med.343:1594-1602;Physicians’Desk Reference 2003(Physicians’Desk Reference,57th Ed);Medical Economics Company;ISBN:1563634457;第57版(2002年11月)。適切な投与レジメンの決定は、例えば、治療に影響を及ぼすことが当技術分野で公知である若しくは疑われている又は治療に影響を及ぼすと予想されるパラメータまたは因子を用いて、臨床家によりなされることが可能であり、例えば、患者の臨床履歴(例えば、過去の治療)、治療される癌のタイプおよび病期、ならびに該併用療法における治療用物質の1以上に対する応答のバイオマーカーに左右される。
【0225】
追加的な治療用物質のための薬学的に許容される担体または賦形剤の選択を容易にするための種々の参考文献が利用可能である。例えば、以下のものを参照されたい:Remington’s Pharmaceutical SciencesおよびU.S.Pharmacopeia:National Formulary,Mack Publishing Company,Easton,PA(1984);Hardmanら(2001)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,McGraw-Hill,New York,NY;Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott,WilliamsおよびWilkins,New York,NY;Avisら(編)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications,Marcel Dekker,NY;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Marcel Dekker,NY;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems,Marcel Dekker,NY;WeinerおよびKotkoskie(2000)Excipient Toxicity and Safety,Marcel Dekker,Inc.,New York,NY.。
【0226】
医薬抗体製剤は、連続注入により、または例えば1日間隔、週1~7回、1週間隔、2週間隔、3週間隔、毎月、隔月などの間隔の投与により投与されうる。好ましい投与プロトコルは、有意な望ましくない副作用を回避する最大用量または投与頻度を含むものである。合計週用量は、一般に、少なくとも0.05μg/kg、0.2μg/kg、0.5μg/kg、1μg/kg、10μg/kg、100μg/kg、0.2mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、10mg/kg、25mg/kg、50mg/kg体重以上である。例えば、Yangら(2003)New Engl.J.Med.349:427-434;Heroldら(2002)New Engl.J.Med.346:1692-1698;Liuら(1999)J.Neurol.Neurosurg.Psych.67:451-456;Portieljiら(20003)Cancer Immunol.Immunother.52:133-144を参照されたい。小分子治療用物質、例えばペプチド模倣物、天然物または有機化合物の望ましい用量は、モル/kgベースの抗体またはポリペプチドの場合とほぼ同じである。
【0227】
特定の実施形態においては、投与は、治療経過にわたって、医薬製剤、すなわちペンブロリズマブを含む製剤の1.0、3.0および10mg/kgの漸増用量を対象に投与することを含む。ペンブロリズマブを含む製剤は再構成液体製剤でありうる。あるいは、それは、未だ凍結乾燥されていない液体製剤でありうる。時間経過は変動可能であり、所望の効果が得られるまで継続されうる。特定の実施形態においては、用量の漸増は約10mg/kgの用量まで継続される。特定の実施形態においては、対象は、メラノーマまたは他の形態の固形腫瘍の組織学的または細胞学的診断を有し、ある場合においては、対象は測定不可能な疾患を有しうる。特定の実施形態においては、対象は他の化学療法剤で治療されており、一方、他の実施形態においては、対象は治療を受けていない。
【0228】
更に追加的な実施形態においては、投与レジメンは、治療経過全体にわたって、本明細書に記載されている医薬製剤(すなわち、ペンブロリズマブを含む製剤)のいずれかの1、3または10mg/kgの用量を投与することを含む。そのような投与レジメンでは、投与間隔は約14日(±2日)である。特定の実施形態においては、投与間隔は約21日(±2日)である。
【0229】
特定の実施形態においては、投与レジメンは、患者内の用量増加を伴って、約0.005mg/kg~約10mg/kgの用量を投与することを含む。特定の実施形態においては、5mg/kgまたは10mg/kgの用量を3週間ごと又は2週間ごとの間隔で投与する。更なる追加的な実施形態においては、メラノーマ患者または他の固形腫瘍を有する患者に3週間隔で3mg/kgの用量を投与する。これらの実施形態においては、患者は切除不能な疾患を有するべきであるが、患者は過去に手術を受けていてもよい。
【0230】
特定の実施形態においては、本明細書に記載されている医薬製剤のいずれかの30分間のIV注入を対象に投与する。漸増用量の特定の実施形態においては、投与間隔は第1投与と第2投与との間で約28日(±1日)である。特定の実施形態においては、第2投与と第3回投与との間の間隔は約14日(±2日)である。特定の実施形態においては、投与間隔は第2投与の後の投与に関しては約14日(±2日)である。特定の実施形態においては、投与間隔は第2投与の後の投与に関しては約3週間である。特定の実施形態においては、投与間隔は第2投与の後の投与に関しては約6週間である。
【0231】
特定の実施形態においては、WO2012/018538またはWO2008/156712に記載されている細胞表面マーカーおよび/またはサイトカインマーカーの使用が、モニタリングのためのバイオアッセイ、診断、患者の選択および/または治療レジメン(PD-1経路の遮断を含むもの)において利用される。皮下投与は、シリンジを使用してあるいは他の注射装置(例えば、Inject-ease(登録商標)装置)、インジェクターペン;または無針装置(例えば、MediJectorおよびBioJector(登録商標))を使用して、注射によって行われうる。
【0232】
本発明の実施形態はまた、(i)以下の(a)~(o)における使用のための、(ii)以下の(a)~(o)のための医薬または組成物としての使用のための、あるいは(iii)以下の(a)~(o)のための医薬の製造における使用のための、本明細書に記載されている生物学的製剤の1以上を含む:(a)治療(例えば、人体の治療)、(b)医薬、(c)抗腫瘍免疫応答の誘導または増強、(d)患者における1以上の腫瘍マーカーの数値の減少、(e)腫瘍または血液癌の成長の阻止または遅延、(f)PD-1関連疾患の進行の阻止または遅延、(g)癌の進行の阻止または遅延、(h)PD-1関連疾患の安定化、(i)腫瘍細胞の成長または生存の抑制、(j)1以上の癌性病変または腫瘍のサイズの排除または縮小、(k)PD-1関連疾患の進行、開始または重症度の低減、(l)癌のようなPD-1関連疾患の臨床症状の重症度または持続期間の低減、(m)類似未治療患者の予想生存期間と比較した場合の患者の生存期間の延長、(n)癌性状態または他のPD-1関連疾患の完全または部分的な寛解の誘導、あるいは(o)癌の治療。
【0233】
一般的方法
分子生物学における標準的な方法は、Sambrook,FritschおよびManiatis(1982 & 1989 2nd Edition,2001 3rd Edition)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;SambrookおよびRussell(2001)Molecular Cloning,3rded,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Wu(1993)Recombinant DNA,Vol.217,Academic Press,San Diego,CA.に記載されている。標準的な方法は、Ausbelら(2001)Current Protocols in Molecular Biology,VoIs.1-4,John Wiley and Sons,Inc.New York,NYにも記載されており、これは、細菌細胞におけるクローニングおよびDNA突然変異誘発(Vol.1)、哺乳類細胞および酵母におけるクローニング(Vol.2)、複合糖質およびタンパク質発現(Vol.3)、ならびにバイオインフォマティクス(Vol.4)を記載している。
【0234】
免疫沈降、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離および結晶化を含むタンパク質精製のための方法が記載されている(Coliganら(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New York)。化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の製造、タンパク質のグリコシル化が記載されている(例えば、Coliganら(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.2,John Wiley and Sons,Inc.,New York;Ausubelら(2001)Current Protocols in Molecular Biology,Vol.3,John Wiley and Sons,Inc.,NY,NY,pp.16.0.5-16.22.17;Sigma-Aldrich,Co.(2001)Products for Life Science Research,St.Louis,MO;pp.45-89;Amersham Pharmacia Biotech(2001)BioDirectory,Piscataway,N.J.,pp.384-391を参照されたい)。ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の製造、精製およびフラグメント化が記載されている(Coliganら(2001)Current Protcols in Immunology,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New York;HarlowおよびLane(1999)Using Antibodies,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;HarlowおよびLane,前掲)。
リガンド/受容体相互作用を特徴づけるための標準的な技術が利用可能である(例えば、Coliganら(2001)Current Protcols in Immunology,Vol.4,John Wiley,Inc.,New Yorkを参照されたい)。
【0235】
モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体およびヒト化抗体は製造可能である(例えば、SheperdおよびDean(編)(2000)Monoclonal Antibodies,Oxford Univ.Press,New York,NY;KontermannおよびDubel(編)(2001)Antibody Engineering,Springer-Verlag,New York;HarlowおよびLane(1988)Antibodies A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,pp.139-243;Carpenterら(2000)J.Immunol.165:6205;Heら(1998)J.Immunol.160:1029;Tangら(1999)J.Biol.Chem.274:27371-27378;Bacaら(1997)J.Biol.Chem.272:10678-10684;Chothiaら(1989)Nature 342:877-883;FooteおよびWinter(1992)J.Mol.Biol.224:487-499;米国特許第6,329,511号を参照されたい)。
【0236】
ヒト化に代わる手段は、ファージ上で提示されるヒト抗体ライブラリー、またはトランスジェニックマウスにおけるヒト抗体ライブラリーを使用することである(Vaughanら(1996)Nature Biotechnol.14:309-314;Barbas(1995)Nature Medicine 1:837-839;Mendezら(1997)Nature Genetics 15:146-156;HoogenboomおよびChames(2000)Immunol.Today 21:371-377;Barbasら(2001)Phage Display:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York;Kayら(1996)Phage Display of Peptides and Proteins:A Laboratory Manual,Academic Press,San Diego,CA;de Bruinら(1999)Nature Biotechnol.17:397-399)。
【0237】
抗原の精製は抗体の製造に必要ではない。関心のある抗原を含有する細胞で動物を免疫化することが可能である。ついで該免疫化動物から脾細胞を単離し、該脾細胞を骨髄腫細胞系と融合させてハイブリドーマを得ることが可能である(例えば、Meyaardら(1997)Immunity 7:283-290;Wrightら(2000)Immunity 13:233-242;Prestonら,前掲;Kaithamanaら(1999)J.Immunol.163:5157-5164を参照されたい)。
【0238】
抗体は、例えば小薬物分子、酵素、リポソーム、ポリエチレングリコール(PEG)にコンジュゲート化されうる。抗体は治療、診断、キットまたは他の目的に有用であり、例えば、色素、放射性同位体、酵素または金属、例えばコロイド金に結合した抗体を包含する(例えば、Le Doussalら(1991)J.Immunol.146:169-175;Gibelliniら(1998)J.Immunol.160:3891-3898;HsingおよびBishop(1999)J.Immunol.162:2804-2811;Evertsら(2002)J.Immunol.168:883-889を参照されたい)。
【0239】
蛍光標識細胞分取検出系(FACS)を含むフローサイトメトリーのための方法が利用可能である(例えば、Owensら(1994)Flow Cytometry Principles for Clinical Laboratory Practice,John Wiley and Sons,Hoboken,NJ;Givan(2001)Flow Cytometry,2nd ed.;Wiley-Liss,Hoboken,NJ;Shapiro(2003)Practical Flow Cytometry,John Wiley and Sons,Hoboken,NJを参照されたい)。例えば診断試薬としての使用のための、核酸プライマーおよびプローブを含む核酸、ポリペプチドおよび抗体を修飾するのに適した蛍光試薬が利用可能である(Molecular Probesy(2003)Catalogue,Molecular Probes,Inc.,Eugene,OR;Sigma-Aldrich(2003)Catalogue,St.Louis,MO)。
【0240】
免疫系の標準的な組織学的方法が記載されている(例えば、Muller-Harmelink(編)(1986)Human Thymus:Histopathology and Pathology,Springer Verlag,New York,NY;Hiattら(2000)Color Atlas of Histology,Lippincott,Williams,and Wilkins,Phila,PA;Louisら(2002)Basic Histology:Text and Atlas,McGraw-Hill,New York,NYを参照されたい)。
【0241】
例えば抗原フラグメント、リーダー配列、タンパク質フォールディング、機能的ドメイン、グリコシル化部位および配列アライメントを決定するためのソフトウェアパッケージおよびデータベースが利用可能である(例えば、GenBank,Vector NTI(登録商標)Suite(Informax,Inc,Bethesda,MD);GCG Wisconsin Package(Accelrys,Inc.,San Diego,CA);DeCypher(登録商標)(TimeLogic Corp.,Crystal Bay,Nevada);Menneら(2000)Bioinformatics 16:741-742;Menneら(2000)Bioinformatics Applications Note 16:741-742;Wrenら(2002)Comput.Methods Programs Biomed.68:177-181;von Heijne(1983)Eur.J.Biochem.133:17-21;von Heijne(1986)Nucleic Acids Res.14:4683-4690を参照されたい)。
【0242】
分析方法
製品安定性の評価に適した分析方法には、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、動的光散乱試験(DLS)、示差走査熱量測定(DSC)、イソ(iso)-asp定量、効力、340nmのUV、UV分光法およびFTIRが含まれる。SEC(J.Pharm.Scien.,83:1645-1650,(1994);Pharm.Res.,11:485(1994);J.Pharm.Bio.Anal.,15:1928(1997);J.Pharm.Bio.Anal.,14:1133-1140(1986))は、製品中の単量体の割合を測定し、可溶性凝集物の量の情報を提供する。DSC(Pharm.Res.,15:200(1998);Pharm.Res.,9:109(1982))は、タンパク質変性温度およびガラス転移温度の情報を提供する。DLS(American Lab,November(1991))は、平均拡散係数を測定し、可溶性凝集物および不溶性凝集物の量に関する情報を提供する。340nmのUVは、340nmの散乱光強度を測定し、可溶性凝集物および不溶性凝集物の量に関する情報を提供する。UV分光法は、278nmの吸光度を測定し、タンパク質濃度の情報を提供する。FTIR(Eur.J.Pharm.Biopharm.,45:231(1998);Pharm.Res.,12:1250(1995);J.Pharm.Scien.,85:1290(1996);J.Pharm.Scien.,87:1069(1998))はアミド1領域のIRスペクトルを測定し、タンパク質の二次構造の情報を提供する。
【0243】
サンプルにおけるイソ-asp含有量は、イソクワント・イソアスパルタート検出系(Isoquant Isoaspartate Detection System)(Promega)を使用して測定される。このキットは、酵素タンパク質イソアスパルチルメチルトランスフェラーゼ(PIMT)を使用して、標的タンパク質中のイソアスパラギン酸残基の存在を特異的に検出する。PIMTは、アルファ-カルボキシル位におけるイソアスパラギン酸へのS-アデノシル-L-メチオニンからのメチル基の転移を触媒して、その過程でS-アデノシル-L-ホモシステイン(SAH)を生成する。これは比較的小さな分子であり、通常は、キットで提供されるSAH HPLC標準を使用する逆相HPLCにより単離および定量されうる。
【0244】
抗体の効力または生体同一性は、その抗原に結合するその能力により測定されうる。抗体のその抗原への特異的結合は、当業者に公知の任意の方法、例えばELISA(酵素結合免疫吸着検定法)のようなイムノアッセイにより定量されうる。
【0245】
添付図面を参照して本発明の種々の実施形態が本明細書に記載されているが、本発明はそれらの厳密な実施形態に限定されるものではなく、それにおいては、添付の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲または精神から逸脱することなく、種々の変更および修飾が当業者によって施されうると理解されるべきである。
【0246】
実施例1:ペンブロリズマブと組換えヒトヒアルロニダーゼとの相互作用の評価
ペンブロリズマブと組換えヒトヒアルロニダーゼ酵素PH20変異体断片2との間の初期の相互作用評価を、バレリアン-プロトニコフ(Valerian-Plotnikov)示差走査熱量測定を用いて行った。プロセス希釈液[10mM ヒスチジンバッファー(pH5.5)中の7% w/v(70mg/mL)スクロース、0.02% w/v(0.2mg/mL)ポリソルベート-80(PS80)、10mM(1.49mg/mL)L-メチオニン]でペンブロリズマブ原薬(165mg/mL)および酵素原薬[ヒスチジンバッファー(20mM)中にPH20変異体断片2(10mg/mL、約145kIU/mg)および塩化ナトリウム(145mM)を含む溶液]を希釈して、溶液中の目標濃度としての1mg/mLのペンブロリズマブおよび1mg/mLの組換えヒトヒアルロニダーゼ酵素PH20変異体断片2とすることにより、共製剤を調製した。図10に示されているとおり、同じ製剤中のペンブロリズマブおよび酵素の熱安定性プロファイルを、同じバッファーマトリックス中の単一物と比較した。表4に示されているとおり、共製剤中のペンブロリズマブおよびPH20変異体断片2の融解温度は、同じバッファーマトリックス中の単一物と同じである。
【0247】
【表4】
【0248】
実施例2:材料および分析方法
HP-IEX:高性能イオン交換クロマトグラフィー(HP-IEX)を用いて、電荷プロファイルを評価した。Dionex ProPac WCX-10カラムおよび280nmのUV検出器を使用して、イオン交換HPLC法を行った。サンプルを精製水で希釈し、分析のために80μgを注入した。IEX分析に使用した移動相は以下の移動相の勾配であった(移動相A:24mM MES、pH6、4% アセトニトリル(v/v);移動相B:20mM リン酸、95mM NaCl、pH8、4% アセトニトリル(v/v))。主要ピークはクロマトグラムの主要成分であり、それは酸性および塩基性変異体の特徴づけのための対照として用いられる。酸性変異体は主要ピークより早く溶出し、酸性変異体の形成の主な原因は、主要メインピークにおけるAsnの脱アミド化、および主要ピークと比較した場合のシアル酸の存在によるものである。塩基性変異体は主要ピークより遅く溶出し、塩基性変異体の形成の主な原因は、主要ピークからのC末端Lysの不完全な除去によるものである。他の原因は、軽鎖または重鎖または両方のピロGluへのN末端グルタミン(Gln)の不完全な環化、そしてまた、主要ピークにおけるAspの、イソAspへの異性化によるものである。
【0249】
UP-SEC:サンプルの純度をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により評価した。この場合、単量体の割合ならびに高分子量種(HMW)および後期溶出ピーク(LMW種)の割合を決定した。HMW種の存在はタンパク質凝集物を示し、LMW種の存在はタンパク質断片を示す。超高性能-サイズ排除クロマトグラフィー(UP-SEC)は、サンプル希釈剤(移動相、50mM ホスファート、450mM アルギニンモノHCl、pH7±0.2)でサンプルを5.0mg/mLに希釈することにより行った。Waters BEH200 SECカラムとUV検出器とを備えたUPLC内に希釈サンプル(6μL)を注入した。サンプル中のタンパク質をサイズ別に分離し、280nmのUV吸収により検出した。
【0250】
A350:濁度の指標として、96ウェルプレートSpectramaxリーダーを使用して、350nmでのUV吸収を測定した。吸収測定値を空プレート測定値に対してブランク化し、サンプル経路長に関して正規化した。
【0251】
HP-HIC
高速疎水性相互作用クロマトグラフィー(HP-HIC)を用いて、非酸化分子からの酸化生成物を評価した。事前の分析特徴づけにより1つの重鎖上に重鎖Met105酸化を含む酸化種であると判定されたプレピークの割合、ならびに主要ピークの割合およびポストピークの割合を決定した。サンプルを精製水中で5.0mg/mLに希釈することにより、HP-HIC法を行った。ついでサンプルを、Tosoh Phenyl-5PWカラムと280nmのUV検出器とを備えたHPLC内に注入した(10μL)。HIC分析には、以下の成分の勾配を含む移動相(移動相A:2% アセトニトリル中の5mM リン酸ナトリウム、pH7.0;移動相B:2% アセトニトリル中の400mM 硫酸アンモニウム、5mM リン酸ナトリウム、pH6.9)を用いた。
【0252】
サンプルを水で希釈し、96ウェルプレートSpectramaxリーダーを使用して280nmにおけるUV吸収を測定する重量法を用いて、抗体濃度を決定した。96ウェルプレートにおいて迅速pH(Rapid_pH)自動pHメーターを使用して、pHを測定した。pHメーターは、pH4.0、pH7.0およびpH10.0の校正標準を使用して校正した。
【0253】
Anton Paar DMA密度計を使用して、密度を測定した。Grabner InstrumentsによるMiniVisII粘度計を使用して、USP<913>技術に従い、粘度を測定した。5℃および20℃におけるそれぞれの密度を用いて、5℃および20℃における粘度を測定した。
【0254】
実施例3:組換えヒトヒアルロニダーゼPH20変異体断片2を含有するペンブロリズマブ製剤の安定性の評価
ペンブロリズマブ(25~200mg/mL)と組換えヒトヒアルロニダーゼ酵素PH20変異体断片2(約125~5000U/mL)とを含む製剤の安定性を評価するために、初期製剤研究を行った。ペンブロリズマブ原薬(165mg/mL)と酵素原薬[ヒスチジンバッファー(20mM)中にPH20変異体断片2(10mg/mL、約145kIU/mg)および塩化ナトリウム(145mM)を含む溶液]とを一緒にし、ついで、必要に応じて、プロセス希釈液[10mM ヒスチジンバッファー(pH5.5)中の7% w/v(70mg/mL)スクロース、0.02% w/v(0.2mg/mL)ポリソルベート-80(PS80)、10mM(1.49mg/mL)L-メチオニン]で希釈することにより、製剤を調製した。
【0255】
ペンブロリズマブとPH20変異体断片2との試験製剤(AK01~AK15)を、表5に示されている体積で、PETGボトル(30または125mL)内で調製した。配合順序はPH20変異体断片2、ペンブロリズマブ、ついでプラセボ(必要な場合)であった。全ての製剤を、0.22μm PESフィルター(Corning REF431096)を使用して濾過し、5mLの充填量で6Rバイアル内に充填した。2~8℃[本明細書および実施例の全体にわたって用いる「5℃」なる語は「2~8℃」と互換的に用いられ、これは5℃±3℃(標準偏差)を示す]、25℃および40℃における安定性(光から防護されている)に関して、最大6ヶ月間にわたって、サンプルを段階付けして、製剤の熱安定性を評価した。濁度(A350)、pH、タンパク質濃度(A280)、可溶性凝集体(UP-SEC)、電荷変異体(HP-IEX)、メチオニン[105]酸化(HP-HIC)および酵素活性(比濁アッセイ)に関して、製剤を評価した。
【0256】
表5における試験製剤のそれぞれを、着色または沈殿形成の変化に関して視覚的に検査した(データ非表示)。製剤AK04~AK06は酵素のみの製剤であり、安定性に関しては段階づけされなかった。これらの製剤は酵素活性のみに関して試験された。製剤AK03およびAK10~AK15の物理化学的特性(密度および粘度)を測定し、結果を表6に示す。試験した各製剤の密度は、類似したペンブロリズマブのみの製剤(PH20変異体断片2を含有しないもの)に匹敵し、このことはPH20変異体断片2とペンブロリズマブタンパク質との適合性を裏付けるものである。更に、表6および図1に示されているとおり、ペンブロリズマブ製剤(100、130または165mg/ml)におけるPH20変異体断片2(約2000または5000U/mL)の存在は、生じる温度依存的粘度(5℃および20℃)に影響を及ぼさなかった。
【0257】
【表5】
【0258】
【表6】
【0259】
pH、タンパク質(ペンブロリズマブ)濃度、UP-SEC、HP-IEX、HIC、濁度および酵素活性の結果(表7~12)によって支持されるとおり、全ての製剤が、6ヶ月間の安定性期間にわたって、5℃の貯蔵条件において安定であると見なされた。25℃においては、安定性期間にわたって、pH、ペンブロリズマブ濃度、濁度、電荷変異体(IEX)、Met[105]酸化または酵素活性において、変化は観察されなかった。
図2に示されているとおり、対照(AK03;PH20変異体断片2非含有製剤)と比較して、可溶性凝集体[高分子種(%)、HMWS(%)]の僅かな増加および単量体(%)の対応する減少が、試験期間にわたってUP-SECによって観察された。可溶性凝集体[HMWS(%)]におけるより顕著な変化が、試験した全ての製剤に関して40℃で観察され(図2)、ペンブロリズマブの濃度が(100mg/mLから165mg/mLへと)増加した場合に最大の変化が観察された。全製剤に関する濁度(A350)の結果(表7)もUP-SECの結果を実証しており、40℃で1ヶ月以上貯蔵された全製剤の物理安定性の低下を示している。また、40℃においては、試験した全て製剤に関して、電荷変異体(図3~5)およびメチオニン[105]酸化(図6)において、より顕著な変化が観察されたが(表10および12)、製剤における約5000U/mLまでのPH20変異体断片2の存在は、対照(AK03;PH20変異体断片2非含有製剤)と比較して、試験した製剤特性のいずれにも影響を及ぼさない。5、25または40℃における6ヶ月間の安定性期間にわたって、ペンブロリズマブ濃度または製剤pHにおける変化は観察されず、このことは、PH20変異体断片2(約2000~5000U/mL)を含有する製剤を包含する全製剤におけるペンブロリズマブの化学的安定性を実証している。
【0260】
【表7】
【0261】
【表8】
【0262】
【表9】
【0263】
【表10】
【0264】
【表11】
【0265】
【表12】
1M、3Mおよび6Mは、それぞれ、1ヶ月、3ヶ月および6ヶ月を意味する。
【0266】
5C、25Cおよび40Cは、それぞれ、5℃、25℃および40℃を意味する。
【0267】
実施例4:ペンブロリズマブおよびヒアルロニダーゼ変異体断片を含有する製剤におけるヒアルロニダーゼ活性の測定
ヒアルロニダーゼ活性アッセイ
一連の製剤(表13)における酵素活性を、Molecular Devices SpectraMax M5eマイクロプレートリーダーでの比濁アッセイによって決定した。
【0268】
【表13】
【0269】
冷却した酵素希釈剤(20mM リン酸ナトリウム、77mM 塩化ナトリウム、0.01% ウシ血清アルブミン(BSA)、pH7.0、25℃)での希釈により、以下の表に示されている実施濃度にすることにより、検量線標準、活性標準および試験サンプルを調製した。
【0270】
【表14】
【0271】
調製中、サンプルを氷上で維持した。各サンプルの50μLを透明底96ウェルプレート(プレート1)(Corning 3835)に3通りで移した。50μLの酵素希釈溶液をブランク対照としてプレートの専用ウェルに加えた。プレートを密封し、37℃で10分間インキュベートした。インキュベーション後、50μLの37℃のヒアルロン酸溶液(0.06% ヒアルロン酸、300mM ホスファート、pH5.35、37℃)を、溶液を含有する各ウェルに、マルチ・チャネル・ピペットで加えた。プレートを密封し、ついで、600rpmで振盪しながら37℃で厳密に45分間インキュベートした。
インキュベーションからプレート1を取り出す前に、プレート1と同じウェルレイアウトとなるように、各ウェルにおいて、200μLの酸性アルブミン溶液(24mM 酢酸ナトリウム、79mM 酢酸、0.1% BSA、pH3.75、25℃)で第2のプレート(プレート2)を調製した。プレート1を厳密に45分間インキュベートした後、40μLの溶液を各ウェルからマルチ・チャネル・ピペットで取り出し、(酸性アルブミン溶液を含有する)プレート2の対応ウェルに加えた。プレート2をマイクロプレート・リーダーのプレート・チャンバー内で25℃で20分間インキュベートした。5秒間の振盪の後で600nmにおける吸光度を読み取るようにマイクロプレート・リーダーを設定した。20分間のインキュベーションの後、各ウェルに関して600nmにおける吸光度を読み取った。
【0272】
検量線の作成
検量線標準からの3通りの吸光度値を平均し、ブランクの平均吸光度から差し引いた。
得られた補正吸光度の絶対値を検量線の標準体積活性(standard volumetric activity)値(例えば、20、15、12、10、8および6ユニット/mL)に対してプロットした。プロットを二次多項式としてフィットさせ(図7)、得られたフィットの式を用いて、活性標準および試験サンプルの酵素活性を決定した。また、線形フィットでプロットを行うことも可能であり、これを実施例5~10における酵素活性計算に適用した(図18)。
【0273】
標準および試験サンプルの酵素活性の計算
3通りの吸光度値を平均し、ブランクの平均吸光度から差し引いた。得られた補正吸光度の絶対値を検量線からのフィット式に代入して、標準および試験サンプルのアッセイ体積活性を決定した。検量線の外側の補正吸光度値を破棄した。溶液を調製するために用いた希釈係数をアッセイ体積活性に掛け算することによって値を希釈度に関して補正した。
(例えば、製剤または標準ストック溶液の推定酵素活性が1500ユニット/mLであり、分析のために15、12および10ユニット/mLに希釈された場合、希釈係数はそれぞれ100、125および150となる)。最終的な体積酵素活性値を平均し、図8および図9に示されているとおり、ユニット/mLで表した。
【0274】
酵素活性は、5℃および25℃での貯蔵の後、表13に挙げられている共製剤化サンプル(ペンブロリズマブおよびPH20変異体断片2)およびPH20変異体断片2対照サンプルにおいて評価されている。全ての製剤における酵素活性が6ヶ月間/5℃の貯蔵にわたって保持され、初期サンプルと同等であった(図8)。3ヶ月間/25℃の貯蔵の後、酵素のみの対照は、5℃で貯蔵されたサンプルと比較して低下した活性を示した(図9)。驚くべきことに、共製剤化サンプルにおける酵素活性は3ヶ月間/25℃で影響を受けず、このことは、ペンブロリズマブの存在下の酵素の安定性および活性の増強を示している。
【0275】
実施例5:ステンレス鋼(SS)ストレス下の製剤におけるペンブロリズマブの存在下の組換えヒトヒアルロニダーゼPH20変異体断片2の安定性の評価
ペンブロリズマブとPH20変異体断片2との試験製剤(SS01~SS06)を、表15に示されている組成で、PETGボトル(125mL)において調製した。製剤SS02、SS04およびSS06をSS固体シリンダーに室温で24時間さらした。製剤SS01、SS03およびSS05を対照として室温で24時間配置した。0.22μm PESフィルターを使用して、全ての製剤を濾過した。PH20変異体断片2の活性を評価するために、5℃で最大6ヶ月間および25℃で最大3ヶ月間における安定性(光から防護されている)に関してサンプルを段階分けした。
【0276】
【表15】
【0277】
共製剤化サンプル(SS01~SS04)における酵素活性は、6ヶ月間/5℃およびで3ヶ月間/25℃の貯蔵にわたって保持され、初期サンプルの場合と同等であった(図11および図12)。6ヶ月/5℃および3ヶ月/25℃での貯蔵の後、SSストレスの存在下の酵素のみのサンプル(SS06)は、SSストレスの非存在下のサンプル(SS05)と比較して低下した活性を示した(図11および図12)。共製剤化サンプルにおける酵素活性は全ての温度および時点にわたって影響を受けず、このことはペンブロリズマブの存在下の酵素の安定性および活性の増強を示している。
【0278】
実施例6:光ストレス下のペンブロリズマブおよびペンブロリズマブ粘性代用物の存在下の組換えヒトヒアルロニダーゼPH20変異体断片2の安定性の評価
10mM ヒスチジンバッファー(pH5.5)中の165mg/mL ペンブロリズマブ、2000ユニット/mL 組換えヒトヒアルロニダーゼPH20変異体断片2(7% スクロース、0.2mg/mL PS-80中)、10mM メチオニンとして、共製剤化サンプルを調製した。ペンブロリズマブによって引き起こされる溶液中の高粘度を模倣するために、2000ユニット/mLの組換えヒトヒアルロニダーゼPH20変異体断片2を、52%(w/w)スクロース、0.02%(w/w)PS-80中で製剤化した。サンプルを5mLの充填量で6Rバイアル内に充填した。1バイアルの各サンプルを、0.25×ICH CWL(1ICH=1200klux時間)に相当する300Klux-hr CWLの累積光曝露にさらした。また、各サンプルに関する第2セットのバイアルを、暗対照として、明室内での曝露中にアルミホイルで覆った。光ストレス下の該粘性代用物における酵素安定性を評価するために、酵素活性試験を行った。どちらのサンプルも、対照サンプルと比較して、光ストレス下で酵素活性の低下を示している。粘性代用物溶液における酵素活性は、同じ光ストレス条件下のペンブロリズマブの存在下の酵素活性と比較して、更に減少した(図13)。
【0279】
実施例7:
ペンブロリズマブの存在下の組換えヒトヒアルロニダーゼPH20変異体断片2の安定性に対する賦形剤濃度の影響の評価
ペンブロリズマブ(165mg/mL)およびPH20変異体断片2(2000ユニット/mL)、10mM ヒスチジン(pH5.5)の試験製剤(ER01~ER13)を、賦形剤であるポリソルベート80、L-メチオニンおよびスクロースの濃度が異なるように設計された表16に示されている組成で調製した。酵素活性に対する賦形剤濃度の影響をモニターするために、サンプルを25℃で3ヶ月間インキュベートした。
【0280】
【表16】
【0281】
図14に示されているとおり、賦形剤濃度またはインキュベーション時間の関数としての酵素活性における観察可能な差異はない。25℃で最大3ヶ月間貯蔵したペンブロリズマブとPH20変異体断片2との試験共製剤は、PH20変異体断片2のみのサンプル(AK05)と比較して、活性の保持を示しており、このことはペンブロリズマブの存在下の該酵素の安定化を実証している。
【0282】
実施例8:ペンブロリズマブと共に種々の比率でインキュベートした場合の組換えヒトヒアルロニダーゼPH20変異体断片2の安定性の評価
ペンブロリズマブとPH20変異体断片2との試験製剤を、抗体:酵素比が異なる表17に示されている組成で調製した。全ての試験製剤は、10mM ヒスチジンバッファー(pH5.5)中の0.02% ポリソルベート80、7% スクロース、10mM メチオニン中で調製した。酵素活性に対するペンブロリズマブ:PH20変異体断片2の比の影響をモニターするために、サンプルを25℃で最大3ヶ月間インキュベートした。
【0283】
【表17】
【0284】
PH20変異体断片2の濃度範囲に基づいて、図15は各サンプルの目標活性レベルに対する酵素活性を示している。データにより示されているとおり、0.0009~0.05mg/mlのPH20変異体断片2を含有するサンプルの酵素活性は、PH20変異体断片2のみを使用して調製されたサンプル(AK05)とは対照的に、25~175mg/mlのペンブロリズマブの存在下の25℃で3ヶ月間のインキュベーションの後、目標値の近くに保持される。
【0285】
実施例9:熱ストレス下のペンブロリズマブの存在下の組換えヒトヒアルロニダーゼPH20変異体断片2の安定性の評価
10mM ヒスチジンバッファー(pH5.5)中の或る濃度範囲のペンブロリズマブ(5mg/mL~165mg/mL)、2000ユニット/mL 組換えヒトヒアルロニダーゼPH20変異体断片2(7% スクロース中)、10mM メチオニンにおいて、共製剤化サンプルを調製した。各サンプルを35℃で1週間インキュベートした後、活性を測定した(図16)。データは、5~165mg/mLのペンブロリズマブ濃度において、PH20変異体断片2のみのサンプルと比較して、ペンブロリズマブの存在下、熱ストレス後に、PH20変異体断片2の酵素活性および安定性が増強したことを示している。また、熱ストレスの際のPH20変異体断片2活性の保持は、ペンブロリズマブ濃度に対する依存性を示している。データは、75mg/mL以上のペンブロリズマブ濃度においては、PH20変異体断片2の酵素活性の増強が、より低い濃度のペンブロリズマブと比較して予想外に高かったことを示している。
【0286】
実施例10:ペンブロリズマブの存在下の組換えヒトヒアルロニダーゼPH20変異体断片2の安定性に対するpHの影響
10mM ヒスチジン、10mM メチオニン、7% w/v スクロース、0.02% w/v PS-80中のペンブロリズマブ(165mg/mL)とPH20変異体断片2(2000ユニット/mL)との試験製剤を、pH5.0、pH5.5およびpH6.0において調製した。サンプルを25℃で最大3ヶ月間インキュベートして、PH20変異体断片2の安定性に対する製剤pHの影響をモニターした。図17は、PH20変異体断片2の酵素活性が、調べたpH範囲にわたって同等であり、25℃で3ヶ月間のインキュベーションの後に活性を維持することを示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【配列表】
2023545926000001.app
【国際調査報告】