(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】硫黄含有末端基を有するポリマー
(51)【国際特許分類】
C08F 8/34 20060101AFI20231025BHJP
C08F 236/06 20060101ALI20231025BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20231025BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20231025BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20231025BHJP
C08K 3/011 20180101ALI20231025BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
C08F8/34
C08F236/06
C08L15/00
C08L21/00
C08K3/013
C08K3/011
B60C1/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518838
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(85)【翻訳文提出日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 EP2021078739
(87)【国際公開番号】W WO2022084213
(87)【国際公開日】2022-04-28
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516112462
【氏名又は名称】アランセオ・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト・シュタインハウザー
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA03
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4J100HA61
4J100HC77
4J100HE05
4J100HE14
4J100JA29
(57)【要約】
チオール含有末端基、チオレート含有末端基、及びそれらの組み合わせから選択される官能性末端基を末端に有する官能化ジエンポリマーの製造方法であって、(i)アニオン重合反応を含む重合反応によってジエンポリマーを調製するステップと;(ii)式(III)
[化1]
による少なくとも1つの第1の官能化試薬を、上記重合反応に加え、上記少なくとも1つの第1の官能化試薬を上記ジエンポリマーのアニオン鎖末端と反応させて、第1の反応生成物を得るステップと、(iii)少なくとも1つの第2の官能化用試薬(IV)
[化2]
を上記第1の反応生成物に加えて、チオール末端又はチオレート末端のジエンポリマーを生成するステップと、を含み;上記方法が、場合により、(iv)上記反応混合物から上記チオール末端又はチオレート末端のジエンポリマーを単離するステップをさらに含み、場合により、(v)上記ジエンポリマーを、シート、ベール、顆粒、ベールの形態、又は粉末の形態にするステップをさらに含み、上記チオール末端又はチオレート末端のジエンポリマーが、上記ポリマーの全重量を基準として少なくとも51重量%の1,3-ブタジエンから誘導される単位を含み、式(III)及び(IV)中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、互いに独立して、水素、又は単位n当たり1~24個の炭素原子を含む炭化水素残基を表し、上記炭化水素残基は、飽和していてよいし、又は少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含んでもよく、上記炭化水素残基は、O原子、Si原子、又はS原子で1回又は2回以上中断されてよく、アルキルアミノ、アルキルホスフィノ、アルキルシリル置換基、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上の置換基を含むことができ;R
5は、アルキレン基-[CXY]
p-を表し、pは、2、3、4、又は5から選択される整数であり、X及びYは、互いに独立して、H、又はC
1-C
6アルキルから選択され、それぞれのX及びYは、各単位p中で同じ場合も異なる場合もあり、又は上記アルキレン基は不飽和であり、その場合、2つの隣接するXを合わせたもの、又は2つの隣接するYを合わせたもの、又は1つの隣接するXと1つの隣接するYとを合わせたものが、炭素-炭素二重結合を表し;nは、3、4、5、6、7、又は8を表し;x及びyは、互いに独立して選択され、0又は1のいずれかを表し、但し、x+yの合計は1又は2のいずれかである、方法。上記方法によって得られるポリマー、上記ポリマーを含む組成物及びコンパウンド、並びに上記コンパウンドから製造された物品も提供される。コンパウンド及び物品の製造方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオール含有末端基、チオレート含有末端基、及びそれらの組み合わせから選択される官能性末端基を末端に有する官能化ジエンポリマーの製造方法であって、
(i)アニオン鎖末端を生成する重合反応によってジエンポリマーを調製するステップと;
(ii)式(III)
【化1】
による少なくとも1つの第1の官能化試薬を、前記重合反応に加え、前記少なくとも1つの第1の官能化試薬を前記ジエンポリマーの前記アニオン鎖末端と反応させて、第1の反応生成物を得るステップと、
(iii)少なくとも1つの第2の官能化用試薬(IV)
【化2】
を前記第1の反応生成物に加えて、チオール末端又はチオレート末端のジエンポリマーを生成するステップと、を含み;前記方法が、場合により、
(iv)前記反応混合物から前記チオール末端又はチオレート末端のジエンポリマーを単離するステップをさらに含み、場合により、
(v)前記ジエンポリマーを、シート、ベール、顆粒、ベールの形態、又は粉末の形態にするステップをさらに含み、
前記チオール末端又はチオレート末端のジエンポリマーが、前記ポリマーの全重量を基準として少なくとも51重量%の1,3-ブタジエンから誘導される単位を含み、式(III)及び(IV)中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、互いに独立し各単位nで独立して、水素、又は1~24個の炭素原子を含む炭化水素残基を表し、前記炭化水素残基は、飽和していてよいし、又は少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含んでもよく、前記炭化水素残基は、O原子、Si原子、又はS原子で1回又は2回以上中断されてよく、アルキルアミノ、アルキルホスフィノ、アルキルシリル置換基、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上の置換基を含むことができ;
R
5は、アルキレン基-[CXY]
p-を表し、pは、2、3、4、又は5から選択される整数であり、X及びYは、互いに独立して、H、又はC
1-C
6アルキルから選択され、それぞれのX及びYは、各単位p中で同じ場合も異なる場合もあり、又は前記アルキレン基は不飽和であり、その場合、2つの隣接するXを合わせたもの、又は2つの隣接するYを合わせたもの、又は1つの隣接するXと1つの隣接するYとを合わせたものが、炭素-炭素二重結合を表し;
nは、3、4、5、6、7、又は8を表し;
x及びyは、互いに独立して選択され、0又は1のいずれかを表し、但し、x+yの合計は1又は2のいずれかである、方法。
【請求項2】
R
5が-(CH
2)
p-から選択され、pが3又は4である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(III)及び(IV)中、R
1及びR
2が、互いに独立して、H、C
1-C
3アルキル、ビニル、アリル、フェニルから選択され、nが、3、4又は5であり;R
3及びR
4が、独立して、H、C
1-C
4アルキル、ビニル、アリル、フェニル、又は20個以下の炭素原子を有するアルキルフェニルから選択され、R
5が-(CH
2)
p-から選択され、pが3又は4である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
式(III)及び(IV)中、R
1、R
2、R
3、及びR
4が、互いに独立して、水素、メチル、エチル、又はプロピルから選択され、x及びyがどちらも1であり、nが3又は4であり、R
5が-(CH
2)
p-から選択され、pが3又は4である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の官能化試薬が、2,2,4,4,6,6-ヘキサメチルシクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8-オクタメチルシクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8,10,10-デカメチルシクロペンタシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8,10,10,12,12-ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリビニルシクロトリシロキサン、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリフェニルシクロトリシロキサン、2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、シクロトリシロキサン、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラフェニルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6-ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8-オクタフェニルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタメチル-2,4,6,8,10-ペンタビニルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8-テトラエチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラキス(2-ジフェニルホスフィノエチル)シクロテトラシロキサンから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の官能化試薬が、2,2-ジメトキシ-1-チア-2-シラシクロブタン、2,2-ジエトキシ-1-チア-2-シラシクロブタン、2,2-ジ-n-プロポキシ-1-チア-2-シラシクロブタン、2,2-ジイソプロポキシ-1-チア-2-シラシクロブタン、2,2-ジブチル-1-チア-2-シラシクロブタン、2,2-ジフェノキシ-1-チア-2-シラシクロブタン、2,2-ジビニル-1-チア-2-シラシクロブタン、2,2-ジヒドロキシ-1-チア-2-シラシクロブタン、2-メトキシ-2-メチル-1-チア-2-シラシクロブタン、2,2-ジメトキシ-1-チア-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-チア-2-シラシクロペンタン、2,2-ジ-n-プロポキシ-1-チア-2-シラシクロペンタン、2,2-ジイソプロポキシ-1-チア-2-シラシクロペンタン、2,2-ジブチル-1-チア-2-シラシクロペンタン、2,2-ジフェノキシ-1-チア-2-シラシクロペンタン、2,2-ジビニル-1-チア-2-シラシクロペンタン、2,2-ジヒドロキシ-1-チア-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ-2-メチル-1-チア-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1-チア-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジエトキシ-1-チア-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジ-n-プロポキシ-1-チア-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジイソプロポキシ-1-チア-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジブチル-1-チア-2-シラシヘキサン(2,2-dibutyl-1-thia-2-silacyhexane)、2,2-ジフェノキシ-1-チア-2-シラシヘキサン(2,2-diphenoxy-1-thia-2-silacyhexane)、2,2-ジビニル-1-チア-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジヒドロキシ-1-チア-2-シラシクロヘキサン、2-メトキシ-2-メチル-1-チア-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジメトキシ-1-チア-2-シラシクロヘプタン、2,2-ジエトキシ-1-チア-2-シラシクロヘプタン、2,2-ジ-n-プロポキシ-1-チア-2-シラシクロヘプタン、2,2-ジイソプロポキシ-1-チア-2-シラシクロヘプタン、2,2-ジブチル-1-チア-2-シラシクロヘプタン、2,2-ジフェノキシ-1-チア-2-シラシクロヘプタン、2,2-ジビニル-1-チア-2-シラシクロヘプタン、2,2-ジヒドロキシ-1-チア-2-シラシクロヘプタン、2-メトキシ-2-メチル-1-チア-2-シラシクロヘプタンから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記官能化ジエンポリマーが、1,3-ブタジエン以外の5~20個の炭素原子を有する1つ以上の共役ジエン、及び8~30個の炭素原子を有する1つ以上のビニル芳香族コモノマー、及びそれらの組み合わせ、好ましくはスチレンから選択される1つ以上のコモノマーから誘導される単位を、前記ポリマーの全重量を基準として最大49重量%で含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記官能化ジエンポリマーが、以下の性質:ポリスチレンで較正したゲル浸透クロマトグラフィーによって求められる100,000~1,000,000の数平均分子量と、DIN 52523/52524に準拠して測定される30~150単位の100℃におけるムーニー粘度ML1+4と、示差走査カロメトリー(differential scanning calometry)(DSC)によって20K/分の加熱速度における第2の加熱曲線から求められる-110℃~0℃のガラス転移温度との少なくとも1つ又はすべてを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記チオール含有末端基が一般式(I)
【化3】
に対応し、前記チオレート含有末端基が一般式(II)
【化4】
及びそれらの組み合わせに対応し、
ここで、
nが、1、2、3、4、5、6、7、又は8を表し;
R
1、R
2、R
3、R
4、及びR
5が、請求項1~4のいずれか一項に記載のものと同じ意味を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる官能化ジエンポリマー。
【請求項11】
組成物であって、前記組成物の全重量を基準として少なくとも90重量%の請求項1~10のいずれか一項に記載の官能化ジエンポリマーを含む、組成物。
【請求項12】
硬化性コンパウンドであって、前記コンパウンドの全重量を基準として少なくとも5重量%の請求項1~10のいずれか一項に記載の官能化ジエンポリマーを含み、前記コンパウンドの全重量を基準として少なくとも10重量%の、前記官能化ポリマー以外の少なくとも1つのゴム、少なくとも1つの充填剤、又はそれらの組み合わせをさらに含み、前記硬化性コンパウンドが、場合により、官能化ブタジエンポリマーを硬化させるための少なくとも1つの硬化剤をさらに含む、硬化性コンパウンド。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項に記載の少なくとも1つの官能化ジエンポリマーと、少なくとも1つの充填剤、又は前記官能化ジエンポリマー以外の少なくとも1つのゴム、又はそれらの組み合わせ、及び場合により前記官能化ジエンポリマーを硬化させるための少なくとも1つの硬化剤とを組み合わせることを含む、請求項12に記載のコンパウンドの製造方法。
【請求項14】
硬化形態の請求項12に記載のコンパウンドを含む物品であって、好ましくはタイヤ又はタイヤのゴム成分である、物品。
【請求項15】
請求項12に記載の硬化性コンパウンドの硬化及び成形を行うステップを含む物品の製造方法であって、前記成形は、前記硬化の前、後、又は最中に行うことができる、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
タイヤの重要な性質は、乾いた及び濡れた表面に対する良好な密着性、低い転がり抵抗、並びに高い耐摩耗性が挙げられる。すべての必要な性質を有する1つの材料を得ることは非常に困難であるので、タイヤ組成物中に異なるゴムの混合物が充填剤又は異なる充填剤の混合物とともに用いられる。
【0002】
ブタジエンホモポリマー及びコポリマーなどのジエン系ポリマーは、それらの良好な動的機械的性質のために、典型的には、転がり抵抗を低下させるためのタイヤ組成物のゴム成分として用いられる。例えばポリマー鎖末端に官能基を導入することにより、ジエンポリマーと、タイヤ組成物の別の成分との間の相互作用を改善することによって、タイヤの転がり抵抗のさらなる低下が可能なことが知られている。種々の化学的に異なる末端基によるジエンゴムの多数の末端基修飾方法が知られている。
【0003】
チオール末端基を有するブタジエン及びブタジエン-スチレンポリマーは、ほとんどのタイヤ組成物がチオール末端基と有利に相互作用することができる硫黄系硬化剤を含むので、改善された動的機械的性質を有する化合物が得られると報告されている。
【0004】
国際特許出願の(特許文献1)には、一般式:
(RO)x(R)ySi-R’-S-SiR3
(式中、Siはケイ素を表し、Sは硫黄を表し、Oは酸素を表し、xは、1、2、及び3から選択される整数であり、yは、0、1、及び2から選択される整数であり、x+yの合計は3である)
によるシラン-スルフィド基で末端基が官能化された1,3-ブタジエンのコポリマー及びブタジエン-スチレンコポリマーが記載されている。それぞれのRは、C1-C16アルキル基を表し、R’は、アリール、アルキルアリール、又はC1-C16アルキルを表す。このような末端基改質されたポリマーを有する化合物は、改善された動的機械的性質を有すると報告されている。保護-SiR3基が開裂した後に自由なチオール末端基が生成された。しかし、保護-SiR3基の開裂によって生成されるトリアルキルシラノールの存在は望ましくない場合があり、これらのトリアルキルシラノールは、さらなるプロセスステップにおいて除去する必要が生じることがあり、これは非経済的である。
【0005】
(特許文献2)では、自由なチオール末端基を有するポリマーは、ポリマーの活性末端鎖末端と1-チア-2-シロシクロペンタン(1-thia-2-silocyclopentane)と反応させることによって形成された。リビングアニオン鎖末端とこの官能化試薬との反応中、鎖のカップリング度が高くなる場合がある。これは、チオール官能化ポリマー鎖末端の数が減少するので、不都合となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2007/047943A2号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2011/059917A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
チオール末端基を有するジエンポリマーを生成するための別の官能化試薬を提供する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様では、チオール含有末端基、チオレート含有末端基、及びそれらの組み合わせから選択される官能性末端基を末端に有する官能化ジエンポリマーの製造方法であって、
(i)アニオン鎖末端を生成する重合反応によってジエンポリマーを調製するステップと;
(ii)式(III)
【化1】
による少なくとも1つの第1の官能化試薬を、上記重合反応に加え、上記少なくとも1つの第1の官能化試薬を上記ジエンポリマーのアニオン鎖末端と反応させて、第1の反応生成物を得るステップと、
(iii)少なくとも1つの第2の官能化用試薬(IV)
【化2】
を上記第1の反応生成物に加えて、チオール末端又はチオレート末端のジエンポリマーを生成するステップと、を含み;上記方法は、場合により、
(iv)上記反応混合物からチオール末端又はチオレート末端のジエンポリマーを単離するステップをさらに含み、場合により、
(v)上記ジエンポリマーを、シート、ベール、顆粒、ベールの形態、又は粉末の形態にするステップをさらに含み、
上記ジエンポリマーが、ポリマーの全重量を基準として少なくとも51重量%の1,3-ブタジエンから誘導される単位を含み、式(III)及び(IV)中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、互いに独立し各単位nで独立して、水素、又は1~24個の炭素原子を含む炭化水素残基を表し、上記炭化水素残基は、飽和していてよいし、又は少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含んでもよく、上記炭化水素残基は、O原子、Si原子、又はS原子で1回又は2回以上中断されてよく、アルキルアミノ、アルキルホスフィノ、アルキルシリル置換基、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上の置換基を含むことができ;
R
5は、アルキレン基-[CXY]
p-を表し、pは、2、3、4、又は5から選択される整数であり、X及びYは、互いに独立して、H、又はC
1-C
6アルキルから選択され、それぞれのX及びYは、各単位p中で同じ場合も異なる場合もあり、又は上記アルキレン基は不飽和であり、その場合、2つの隣接するXを合わせたもの、又は2つの隣接するYを合わせたもの、又は1つの隣接するXと1つの隣接するYとを合わせたものが、炭素-炭素二重結合を表し;
nは、3、4、5、6、7又は8を表し;
x及びyは、互いに独立して選択され、0又は1のいずれかを表し、但し、x+yの合計は1又は2のいずれかである、製造方法が提供される。
【0009】
本開示の別の一態様では、上記方法によって得ることができる官能化ジエンポリマーが提供される。
【0010】
本開示のさらなる一態様では、組成物であって、組成物の全重量を基準として少なくとも90重量%の上記官能化ジエンポリマーを含む組成物が提供される。
【0011】
本開示のさらに別の一態様では、硬化性コンパウンドであって、コンパウンドの全重量を基準として少なくとも5重量%の請求項1~10のいずれか一項に記載の官能化ジエンポリマーを含み、コンパウンドの全重量を基準として少なくとも10重量%の、上記官能化ポリマー以外の少なくとも1つのゴム、少なくとも1つの充填剤、又はそれらの組み合わせをさらに含み、上記硬化性コンパウンドが、場合により、上記官能化ブタジエンポリマーを硬化させるための少なくとも1つの硬化剤をさらに含む、硬化性コンパウンドがus提供される。
【0012】
本開示のさらなる一態様では、少なくとも1つの官能化ジエンポリマーを、少なくとも1つの充填剤、又は上記官能化ジエンポリマー以外の少なくとも1つのゴム、又はそれらの組み合わせ、及び場合により上記官能化ジエンポリマーを硬化させるための少なくとも1つの硬化剤と混合するステップを含む、上記コンパウンドの製造方法が提供される。
【0013】
本開示のさらに別の一態様では、硬化形態の上記コンパウンドを含む物品であって、好ましくはタイヤ又はタイヤのゴム成分である、物品が提供される。
【0014】
本開示のさらなる一態様では、上記硬化性コンパウンドの硬化及び成形を行うステップを含む物品の製造方法であって、成形は、硬化の前、後、又は最中に行うことができる、製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の詳細な説明において本開示がさらに説明される。以下の説明において、ある規格(ASTM、DIN、ISOなど)に言及する場合がある。特に指定されなければ、それらの規格は、2020年10月1日において有効であった版で用いられる。例えば、規格が期限切れとなっているという理由で、その日付で有効な版がない場合は、2020年10月1日に最も近い日付で有効であった版に言及される。
【0016】
以下の説明において、組成物又はポリマーの成分の量は、同義で「重量パーセント」、「wt.%」、又は「重量%」によって示すことができる。「重量パーセント」、「wt.%」、又は「重量%」という用語は、特に示されなければ、100%に相当するそれぞれの組成物又はポリマーの全重量を基準としている。
【0017】
「phr」という用語は、「ゴム100重量部当たりの重量部」を意味する。この用語は、ゴム組成物の成分の量がゴムコンパウンド中のゴムの総量を基準とするためにゴムの配合において用いられる。組成物の1つ以上の成分の量(1つ以上の成分の重量部)は、100重量部のゴムを基準としている。
【0018】
本開示において示される範囲は、特に記載がなければ、その範囲の端点の間及びその端点のすべての値が含まれ開示されることを意味する。
【0019】
「含む」という用語は、排他的ではなく非限定的な意味で用いられる。「成分A及びBを含む組成物」という表現は、成分A及びBを含むことを意味するが、その組成物は追加の成分を有することもできる。「含む」の使用とは逆に、「からなる」という語は、狭い限定的な意味で用いられる。「成分A及びBからなる組成物」という表現は、成分A及びBのみを含み追加の成分は含まない組成物を表すことを意味する。
【0020】
官能化ジエンポリマー
典型的には、本開示によるジエンはゴムである。ゴムは典型的には20℃未満のガラス転移温度を有する。
【0021】
本開示によるジエンポリマーは硬化性であり、物品又は物品の部品を製造するために硬化させることができる。ジエンゴムを用いて製造される物品は、典型的にはゴムをそれらの硬化形態で含む。
【0022】
上記ジエンポリマーは、好ましくはブタジエンポリマーであり、1,3-ブタジエンのホモポリマー及びコポリマーを含む。好ましくは、本開示によるによるポリマーは、ポリマーの重量を基準として少なくとも51重量%、好ましくは少なくとも60重量%の1,3-ブタジエンから誘導される単位を含む。本開示の一実施形態では、ジエンポリマーは、少なくとも60重量%、又は少なくとも75重量%の1,3-ブタジエンから誘導される単位を含む。
【0023】
本開示の一実施形態では、ジエンポリマーは、ポリマーの全重量を基準として0~49重量%、又は0重量%~40重量%の1つ以上のコモノマーから誘導される単位を含む。
【0024】
本開示の一実施形態では、ジエンポリマーは、少なくとも60重量%、又は少なくとも70重量%の1,3-ブタジエンから誘導される単位と、0~40重量%、又は0~30重量%の1つ以上のコモノマーから誘導される単位とを含む。
【0025】
適切なコモノマーとしては、好ましくは5~24個、より好ましくは5~20個の炭素原子を有する共役ジエンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
共役ジエンの具体例としては、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエン、ミルセン、オシメン、ファルネセン、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
一実施形態では、本開示のジエンポリマーは、0~20重量%の、1,3ブタジエン以外の1つ以上の共役ジエンから誘導される単位を含む。
【0028】
適切なコモノマーとしては、ビニル芳香族コモノマー、好ましくは8~30個の炭素原子を有するビニル芳香族コモノマーも挙げられる。ビニル芳香族コモノマーの具体例としては、スチレン、オルト-メチルスチレン、メタ-メチルスチレン、パラ-メチルスチレン、パラ-ブチルスチレン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
一実施形態では、本開示によるジエンポリマーは、最大49重量%の1つ以上のビニル芳香族コモノマーから誘導される単位、好ましくは5重量%~40重量%の1つ以上のビニル芳香族コモノマーから誘導される単位を含む。好ましくは、本開示のジエンポリマーは、ポリマーの重量を基準として最大49重量%、又は0~40重量%のスチレンから誘導される単位を含む。
【0030】
適切なコモノマーとしては、1つ以上のα-オレフィン、例えば、エテン、プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン,1-オクテン、及びそれらの組み合わせがさらに挙げられる。
【0031】
一実施形態では、本開示によるジエンポリマーは、0~20重量%の、エテン、プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン,1-オクテン、及びそれらの組み合わせから誘導される単位を含む。
【0032】
適切なコモノマーとしては、架橋部位、分岐部位、分岐、又は官能化した基などの官能基を導入する1つ以上の別の共重合可能なコモノマーも挙げられるが、これらに限定されるものではない。本開示の一実施形態では、ジエンポリマーは、0重量%~10重量%又は0重量%~5重量%の1つ以上のこのような別のコモノマーから誘導される単位を含む。
【0033】
上記の同じ化学的種類の1つ以上のコモノマーの組み合わせ、及び異なる化学的種類の1つ以上のコモノマーの組み合わせを用いることもできる。
【0034】
本開示によるジエンポリマーは、100℃におけるムーニー粘度ML1+4が10~200ムーニー単位、例えば30~150又は35~85ムーニー単位であってよい。
【0035】
本開示によるジエンポリマーは、10,000g/モル~2,000,000g/モル、又は100,000~1,000,000g/モル、例えば100,000~400,000g/モル又は200,000~300,000g/モルの数平均分子量(Mn)を有することができる。本開示の一実施形態では、ポリマーは、150kg/モル~320kg/モルのMnを有する。
【0036】
本開示によるジエンポリマーは、1.0~15、例えば1.0~5の分子量分布(MWD)を有することができる。本開示の一実施形態では、ポリマーは、1.0~3.5又は1.0~2.0のMWDを有する。MWDは、重量平均分子量(Mw)の数平均分子量Mnに対する比であり、すなわち、MWDはMw/Mnに等しい。
【0037】
本開示によるジエンポリマーは、-120℃から20℃未満までのガラス転移温度(Tg)を有することができる。本開示の好ましい一実施形態では、ポリマーは、0℃~-110℃又は-10℃~-80℃のTgを有する。本開示の一実施形態では、ブタジエンポリマーは約-10~-70℃のガラス転移温度を有する。
【0038】
本開示の一実施形態では、ジエンポリマーは、100,000~1,000,000の数平均分子量、及び30~150単位の100℃におけるムーニー粘度ML1+4、及び-110℃~0℃のガラス転移温度を有する。
【0039】
一実施形態では、本開示によるジエンポリマーは、30~150単位の100℃におけるムーニー粘度ML1+4、100,000~400,000g/モルの分子量、-110℃~0℃のガラス転移温度、及び1.0~20の分子量分布(MWD)を有する。
【0040】
本開示によるジエンポリマーは、末端基が官能化される。これらは、ポリマーの反応性鎖末端が第1の官能化試薬と反応して第1の末端基が官能化されたポリマーを反応生成物として生成する重合反応によって得ることができる。続いて、この反応生成物を第2の官能化試薬と反応させる。
【0041】
結果として得られる官能化ジエンポリマーは、チオール末端基又はチオレート末端基を有することができる。特にこれらのポリマーは、式(I)
【化3】
による少なくとも1つのチオール末端基、又は一般式(II)
【化4】
による少なくとも1つのチオレート末端基、又はそれらの組み合わせを有することができる。
【0042】
好ましくは、官能性末端基は、ポリマー主鎖に直接結合する。
【0043】
この第1及び第2の官能化試薬との逐次反応によって得られた官能化ジエンポリマーは、式(IA)又は式(IIA)又はそれらの組み合わせによって表すこともできる:
【化5】
【0044】
式中、「ポリマー」は、記載のジエンポリマーを表し、(I)、(IA)、(II)及び(IIA)R1、R2、R3、及びR4は、場合により、互いに独立し、各単位n及びmで独立して、水素、又は単位1つ当たり1~24個の炭素原子を含む炭化水素残基を表し、上記炭化水素残基は、飽和していてよいし、又は少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含んでもよく、上記炭化水素残基は、O原子、Si原子、又はS原子で1回又は2回以上中断されてよく、アルキルアミノ、アルキルホスフィノ、アルキルシリル置換基、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上の置換基を含むことができ;
R5は、アルキレン基-[CXY]p-を表し、pは、2、3、4、又は5から選択される整数であり、X及びYは、互いに独立して、H、C1-C6アルキルから選択され、それぞれのX及びYは、各単位p中で同じ場合も異なる場合もあり、又は上記アルキレン基は不飽和であってよく、その場合、2つの隣接するXを合わせたもの、又は2つの隣接するYを合わせたもの、又は1つの隣接するXと1つの隣接するYとを合わせたものが、炭素-炭素二重結合を表し;
nは、1、2、3、4、5、6、7、又は8から選択され;
x及びyは、互いに独立して選択され、0又は1のいずれかを表し、但し、x+yの合計は1又は2のいずれかであり、好ましくはx及びyは両方が1であり;
式(II)及び(IIA)中、mは、1、2、3、又は4を表し、Mは、mで示される価数を有する金属又は半金属を表し、mは1~4の整数、すなわち1、2、3、又は4である。適切な金属又は半金属の例としては、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Fe、Co、Ni、Al、Nd、Gd、Ti、Sn、Si、Zr、V、Mo、又はWが挙げられ、好ましくはLi、Na、K、Mg、及びCaが挙げられる。
【0045】
残基R1、R2、R3、及びR4は、飽和又は不飽和、脂肪族又は芳香族、直鎖又は分岐、又は脂肪族及び環状であってよい。本開示の一実施形態では、R1、R2、R3、及びR4は、互いに独立して、H、又は1~20個の炭素原子を有し、脂肪族若しくは芳香族、直鎖若しくは分岐であってよい脂肪族炭化水素残基を表す。芳香族残基の場合、炭素原子の最小数は6である。本開示の別の一実施形態では、R1、R2、R3、及びR4は、互いに独立して、H、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、及びイソブチルから選択される。本開示の一実施形態では、少なくとも2つのR1、R2、R3、及びR4はメチルであり、好ましくはR1、R2、R3、及びR4はすべてメチルである。
【0046】
本開示の一実施形態では、nは、3、4、及び5から選択され、好ましくは4である。本開示の実施形態では、nは、3、4、及び5から選択され、好ましくは4であり、R1、R2、R3、及びR4は、互いに独立して、H、又は1~6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素残基を表し、好ましくはR1、R2、R3、及びR4は、互いに独立して、H、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、及びイソブチルから選択される。好ましくは、R1、R2、R3、及びR4はすべてメチル、エチル、又はプロピルであり、より好ましくは少なくとも2つのR1、R2、R3、及びR4はメチルであり、最も好ましくはR1、R2、R3、及びR4はすべてメチルである。
【0047】
本開示の一実施形態では、R5は、2~12個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の炭化水素残基を表し、好ましくは3又は4個の炭素原子を有する炭化水素残基を表す。好ましくはR5は-(CH2)p-から選択され、ここでpは、2、3、4であり、又はより好ましくはpは3又は4である。
【0048】
本開示の一実施形態では、R1及びR2は、互いに独立してH、C1-C3アルキル、ビニル、アリル、フェニルから選択され;nは、3、4、又は5であり;R3及びR4は、互いに独立してH、C1-C4アルキル、ビニル、アリル、フェニル、又は20個以下の炭素原子を有するアルキルフェニル残基から選択され、R5は-(CH2)p-から選択され、ここでpは3又は4である。
【0049】
本開示の別の一実施形態では、R1、R2、R3、及びR4は、互いに独立して、水素、メチル、エチル、又はプロピルから選択され、x及びyはどちらも1であり、nは3又は4であり、R5は-(CH2)p-から選択され、ここでpは3又は4である。
【0050】
本発明による末端基官能化ジエンゴムは、以下に説明されるように、コモノマーを使用する又は使用しないブタジエンの重合、並びに第1及び第2の官能化試薬を用いた逐次反応によって得ることができる。
【0051】
官能化ジエンポリマーの製造方法
本開示によるジエンポリマーは、アニオン重合によって、又は配位触媒を用いた重合によって得ることができる。この状況での配位触媒としては、チーグラー・ナッタ触媒及び単一金属触媒系が挙げられる。好ましい配位触媒としては、Ni、Co、Ti、Zr、Nd、Gd、V、Cr、Mo、W、又はFeをベースとする配位触媒が挙げられる。好ましくは、ポリマーは、アニオン重合を含む重合によって得ることができる。
【0052】
ジエンポリマーのアニオン重合は、当技術分野において周知である。アニオン溶液重合の適切な開始剤としては、有機アルカリ金属化合物及び有機アルカリ土類金属化合物が挙げられる。開始剤の具体例としては、メチルリチウム、エチルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、ペンチルリチウム、n-ヘキシルリチウム、シクロヘキシルリチウム、オクチルリチウム、デシル-リチウム、2-(6-リチオ-n-ヘキソキシ)テトラヒドロピラン、3-(tert-ブチルジメチルシロキシ)-1-プロピルリチウム、フェニルリチウム、4-ブチルフェニルリチウム、1-ナフチルリチウム、p-トルイルリチウム、及びアリルリチウム化合物、第3級N-アリルアミンから誘導される開始剤、例えば[1-(ジメチルアミノ)-2-プロペニル]リチウム、[1-[ビス(フェニルメチル)アミノ]-2-プロペニル]リチウム、[1-(ジフェニルアミノ)-2-プロペニル]リチウム、[1-(1-ピロリジニル)-2-プロペニル]リチウム、第2級アミンのリチウムアミド、例えばリチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウム1-メチルイミダゾリジド、リチウム1-メチルピペラジド、リチウムモルホリド、リチウムジシクロヘキシルアミド、リチウムジベンジルアミド、リチウムジフェニルアミドが挙げられる。二官能性及び多官能性の有機リチウム化合物、例えば1,4-ジリチオブタン、ジリチウムピペラジドを用いることもできる。好ましい開始剤としては、n-ブチルリチウム及びsec-ブチルリチウムが挙げられる。
【0053】
ポリマーの微細構造、例えばそのビニル単位含有量を制御するための当技術分野において周知の制御剤を重合中に用いることができる。このような物質としては、例えば、ジエチルエーテル、ジ-n-プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールジ-tert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-tert-ブチルエーテル、2-(2-エトキシエトキシ)-2-メチル-プロパン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチルテトラヒドロフルフリルエーテル、ヘキシルテトラヒドロフルフリルエーテル、2,2-ビス(2-テトラヒドロフリル)プロパン、ジオキサン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-エチレンジアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、1,2-ジピペリジノエタン、1,2-ジピロリジノエタン、1,2-ジモルホリノエタン、並びにアルコール類、フェノール類、カルボン酸、スルホン酸類のカリウム塩及びナトリウム塩が挙げられる。
【0054】
好ましくは、重合は、溶液中、好ましくは不活性非プロトン性溶媒を用いて行われる。適切な不活性非プロトン性溶媒としては、脂肪族飽和炭化水素、アルケン、及び芳香族炭化水素が挙げられる。脂肪族飽和炭化水素の具体例としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、及びシクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、及び1,4-ジメチルシクロヘキサンが挙げられる。適切なアルケンの具体例としては1-ブテンが挙げられる。適切な芳香族炭化水素の具体例としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ジエチルベンゼン、又はプロピルベンゼンが挙げられる。これらの溶媒は、互いの組み合わせ、又は1つ以上の極性溶媒との組み合わせで用いることもできる。好ましい溶媒としては、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、及びn-ヘキサンが挙げられる。
【0055】
一般に、上記溶媒は、100gのモノマー当たり約100~約1000g、好ましくは200~700gの量で用いることができる。
【0056】
好ましくは、重合は、モノマー及び溶媒を導入し、次に重合開始剤を加え、必要であればそれを活性化させることで重合を開始することによって行われる。重合を行うための別の周知の方法を用いることもでき、例えば溶媒、モノマー、及び開始剤を含む少なくとも1つの供給流を反応容器中に連続的に供給すること、及び反応器容器から少なくとも1つの生成物流を連続的に供給することを用いることもできる。重合は、バッチ重合として又は連続重合として行うことができる。
【0057】
典型的には、反応は1~10barの間の圧力で行われる。典型的な反応圧力としては3~8barが挙げられる。
【0058】
ポリマーの分子量、分子量分布、及びムーニー粘度は、当技術分野において周知のように制御することができ、例えば、熟練のポリマー化学者に周知のように連鎖移動剤の使用、又はモノマー供給、開始剤量、反応速度などの制御によって、制御することができる。ポリマーのガラス転移温度は、例えば、モノマー及びコモノマーの組成及び量によって制御することができる。
【0059】
アニオン重合反応によって、活性アニオン鎖末端が形成される。少なくとも1つの第1の官能化試薬を反応混合物に加えると、ポリマーのアニオン鎖末端と反応して、第1の末端基官能化ポリマーが反応生成物として得られる。続いて、少なくとも1つの第2の官能化試薬を反応生成物に加えると、これと反応して、本開示によるチオール末端又はチオレート末端のポリマーが生成する。
【0060】
第1の官能化試薬は好ましくはシクロシロキサンである。適切なシクロシロキサンは、一般式(III):
【化6】
(ここで、
nは、3、4、5、6、7、又は8を表し、
R
1、R
2は、互いに同一又は異なり、前述の特定の及び好ましい実施形態を含めて前出の式(I)、(IA)、(II)、及び(IIA)に関して前述したものと同じ意味を有する)
に対応する。
【0061】
本開示の特定の一実施形態では、式(II)中、R1はメチル又はエチルであり、R2は、水素、メチル、エチル、フェニル、及びビニル(-CH=CH2)から選択され、nは3、4、又は5である。本開示の別の特定の一実施形態では、R1及びR2はどちらも水素であり、nは3、4、又は5である。
【0062】
式(III)による適切なシクロシロキサンの具体例としては、2,2,4,4,6,6-ヘキサメチルシクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8-オクタメチルシクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8,10,10-デカメチルシクロペンタシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8,10,10,12,12-ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリビニルシクロトリシロキサン、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリフェニルシクロトリシロキサン、2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、シクロトリシロキサン、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラフェニルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6-ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8-オクタフェニルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタメチル-2,4,6,8,10-ペンタビニルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8-テトラエチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラキス(2-ジフェニルホスフィノエチル)シクロテトラシロキサンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
好ましい例としては、2,2,4,4,6,6-ヘキサメチルシクロトリシロキサン及び2,2,4,4,6,6,8,8-オクタメチルシクロテトラシロキサンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
第1の官能化試薬は、それ自体で、又は溶液若しくは懸濁液中で加えることができる。一般式(III)による2つ以上の異なる官能化試薬を、例えば同時に又は逐次的に加えることができる。第1の官能化試薬は、好ましくは、ポリマー鎖末端が依然として反応性である重合が終了する頃に加えられ、例えば少なくとも90%のモノマーが消費されたとき、好ましくは99%のモノマーが消費された後に加えられる。式(III)の少なくとも1つの第1の官能化試薬と反応性ポリマー鎖末端との反応は、重合反応に用いた温度と同じ温度で行うことができ、すなわち、添加の前、最中、又は後に、反応混合物の温度を上昇させたり低下させたりする必要がない場合がある。例えば第1の官能化試薬との反応速度の増加又は低下又は制御のために、希望するのであれば、反応混合物の温度を上昇させたり低下させたりすることができる。
【0065】
好ましくは、第1の官能化試薬は、これとすべての反応性ポリマー鎖末端が反応できるような量で加えられるが、幾つかの場合では、例えば異なる鎖末端のばらつきが大きくなるよう維持すべき場合に、より少ない量でこの試薬を加えることが望ましい場合がある。典型的な量は、重合に用いられる開始剤の全モル量を基準として0.2~2モル当量の官能化試薬に相当する。好ましくは、式(III)によるシクロシロキサンの総量は、重合に用いられる開始剤の全モル量の0.1~1.5モル当量に相当する。
【0066】
引き続くステップにおいて、反応生成物、すなわち第1の末端基官能化ポリマーを含む反応混合物に、少なくとも1つの第2の官能化試薬が加えられる。第2の官能化試薬は第1の末端基官能化ポリマーと反応して、本開示のチオール末端又はチオレート末端のジエンポリマーを生成する。好ましくは、第2の官能化試薬は、ポリマー鎖末端と第1の反応試薬との反応の終了後に反応混合物に加えられるが、添加をより早く開始することもできる。
【0067】
典型的には、第2の官能化試薬は一般式(IV)
【化7】
に対応する。
【0068】
式(IV)中、残基R3及びR4は、互いに同一又は異なり、前述の特定の又は好ましい実施形態に関して示される意味を含めて式(I)、(II)、(IA)、及び(IIA)に関して前述した意味と同じ意味を有する。R5、x、及びyも、前述の特定又は好ましい実施形態に関して示される意味を含めて前述と同じ意味を有する。
【0069】
本開示の特定の一実施形態では、R3及びR4は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、ビニルから選択される。好ましい一実施形態では、x及びyはどちらも1である。
【0070】
式(IV)による試薬の具体例としては、2,2-ジメトキシ-1-チア-2-シラシクロブタン、2,2-ジエトキシ-1-チア-2-シラシクロブタン、2,2-ジ-n-プロポキシ-1-チア-2-シラシクロブタン、2,2-ジイソプロポキシ-1-チア-2-シラシクロブタン、2,2-ジブチル-1-チア-2-シラシクロブタン、2,2-ジフェノキシ-1-チア-2-シラシクロブタン、2,2-ジビニル-1-チア-2-シラシクロブタン、2,2-ジヒドロキシ-1-チア-2-シラシクロブタン、2-メトキシ-2-メチル-1-チア-2-シラシクロブタン、2,2-ジメトキシ-1-チア-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-チア-2-シラシクロペンタン、2,2-ジ-n-プロポキシ-1-チア-2-シラシクロペンタン、2,2-ジイソプロポキシ-1-チア-2-シラシクロペンタン、2,2-ジブチル-1-チア-2-シラシクロペンタン、2,2-ジフェノキシ-1-チア-2-シラシクロペンタン、2,2-ジビニル-1-チア-2-シラシクロペンタン、2,2-ジヒドロキシ-1-チア-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ-2-メチル-1-チア-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1-チア-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジエトキシ-1-チア-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジ-n-プロポキシ-1-チア-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジイソプロポキシ-1-チア-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジブチル-1-チア-2-シラシヘキサン(2,2-dibutyl-1-thia-2-silacyhexane)、2,2-ジフェノキシ-1-チア-2-シラシヘキサン(2,2-diphenoxy-1-thia-2-silacyhexane)、2,2-ジビニル-1-チア-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジヒドロキシ-1-チア-2-シラシクロヘキサン、2-メトキシ-2-メチル-1-チア-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジメトキシ-1-チア-2-シラシクロヘプタン、2,2-ジエトキシ-1-チア-2-シラシクロヘプタン、2,2-ジ-n-プロポキシ-1-チア-2-シラシクロヘプタン、2,2-ジイソプロポキシ-1-チア-2-シラシクロヘプタン、2,2-ジブチル-1-チア-2-シラシクロヘプタン、2,2-ジフェノキシ-1-チア-2-シラシクロヘプタン、2,2-ジビニル-1-チア-2-シラシクロヘプタン、2,2-ジヒドロキシ-1-チア-2-シラシクロヘプタン、2-メトキシ-2-メチル-1-チア-2-シラシクロヘプタンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましい例としては、2,2-ジメトキシ-1-チア-2-シラシクロペンタン及び2,2-ジエトキシ-1-チア-2-シラシクロペンタンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
第2の官能化試薬は、それ自体で、又は溶液若しくは懸濁液中で加えることができる。2つ以上の異なる第2の官能化試薬を同時に又は逐次的に加えることができる。第2の官能化試薬と第1の末端基官能化ポリマーとの反応は、重合反応に用いられる温度と同じ温度でca行うことができ、すなわち、第2の官能化試薬の添加の前、最中、又は後に、反応混合物の温度を上昇させたり低下させたりする必要がない場合がある。しかし、例えば第1の官能化試薬との反応速度の増加又は低下又は制御のために、希望するのであれば、温度を上昇させたり低下させたりすることができる。
【0072】
第2の官能化試薬は、第1の末端基官能化ポリマーのすべての末端基を、式(IA)又は(IIA)によるチオール末端基又はチオレート末端基に変換するのに有効な量、すなわち等モル量又はモル過剰で加えることができる。しかし、すべての末端基は変換せず、等モル量未満の第2の官能化試薬を加えることが望ましい場合もある。典型的には、加えられる第2の官能化試薬の総量は、用いられる第1の官能化試薬のモル量を基準として、0.2~2モル当量の範囲内、好ましくは0.6~1.5当量の範囲内であってよい。式(IIA)によるチオレート基は、チオール基(IA)を生成するために、例えばポリマーを水又は酸、例えばカルボン酸又はHClで処理することによって、プロトン化する必要が生じる場合がある。
【0073】
官能化試薬の式(III)及び(IV)に加えて、アニオンジエン重合のための当技術分野において周知の1つ以上のカップリング試薬を反応混合物に加えることができる。このようなカップリング試薬の例としては、四塩化ケイ素、四塩化スズ、テトラアルコキシシラン、2,2-ジメトキシ-1-チア-2-シラシクロペンタン、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが挙げられる。カップリング試薬は、式(III)の化合物の添加の前、後、又は同時に加えることができる。
【0074】
第2の官能化試薬の添加後、得られたチオール末端又はチオレート末端のポリマーは、例えば溶媒を除去することによって、溶媒から単離することができる。当技術分野において周知のように、例えば蒸留、蒸気を用いたストリッピング、又は真空の使用によって、溶媒を反応混合物から除去することができる。当技術分野において周知の酸化防止剤を、例えば、後処理プロセスの前又は最中、好ましくは溶媒除去の前に加えることができる。適切な酸化防止剤の例としては、立体障害のあるフェノール類、芳香族アミン類、ホスフィット類、及びチオエーテル類が挙げられる。例えば油展される官能化ジエンポリマーを得るために、ゴムの加工及び配合の分野において周知のエクステンダーオイルを反応混合物に加えることができ、好ましくは溶媒除去の前に加えることができる。適切なエクステンダーオイルとしては、TDAE(処理留出物芳香族抽出物)油、MES(中度抽出溶媒和物)油、RAE(残留芳香族抽出物)油、TRAE(処理残留芳香族抽出物)油、及びナフテン油が挙げられる。
【0075】
本開示によるチオール末端又はチオレート末端のポリマーは、保管若しくは取扱のため、又はコンパウンド若しくは物品にさらに加工するために成形することができる。ポリマーは、ベール、ペレット、粉末、シート、又は顆粒などの形態に成形することができる。
【0076】
用途
本開示によるジエンポリマーは硬化性であり、すなわちこれらのポリマーは、例えば「加硫物」、すなわち架橋ゴム製品を製造するために、1つ以上の硬化剤の反応又は活性化によって架橋させることができる。しかし、本開示によるポリマーは、部分的に架橋した形態で提供することもでき、これはある程度架橋しているが、依然としてさらなる架橋が可能であることを意味する。
【0077】
本開示の一態様では、本開示の少なくとも1つの官能化ジエンポリマーを含む組成物が提供される。これらの組成物は、後述のようなゴム助剤、又は1つ以上の硬化剤、又は別の成分、及びそれらの組み合わせをさらに含むことができる。このような組成物は、組成物の全重量を基準として少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも96重量%の本開示による1つ以上のブタジエンポリマーを含むことができる。このような組成物は、粉末の形態、顆粒、押出ペレット、若しくはストランドの形態、又はシート若しくはベールの形態であってよい。一実施形態では、組成物は、少なくとも90重量%、又は少なくとも96重量%を含み、及び組成物硬化剤を含まない、又は10%未満、好ましくは5%未満、若しくはさらには1重量%未満の量で硬化剤を含む。
【0078】
コンパウンド
本開示による少なくとも1つの官能化ジエンポリマーを含む組成物を用いて、ゴムコンパウンドを製造することができる。ゴムコンパウンドは、コンパウンドの全重量を基準として10重量%を超える、好ましくは15重量%を超える1つ以上の充填剤、本開示のゴム以外の1つ以上のゴム(「別のゴム」)、又は1つ以上の別のゴムと1つ以上の充填剤との組み合わせを含む。したがって、本開示の別の一態様では、好ましくは、コンパウンドの重量を基準として少なくとも5重量%の量の本開示による少なくとも1つのジエンポリマーを含むゴムコンパウンドが提供される。
【0079】
上記ゴムコンパウンドは、例えば、粉末の形態、顆粒、押出ペレット、若しくはストランドの形態、又はシート若しくはベールの形態であってよい。上記ゴムコンパウンドは、1つ以上のゴム助剤及び/又は1つ以上の硬化剤をさらに含むことができる。
【0080】
充填剤
好ましくは、上記コンパウンドは、少なくとも1つの充填剤を含み、好ましくはタイヤ、タイヤの構成要素、及びタイヤを製造するための材料の用途に適切な充填剤を含む。好ましくは、充填剤は、1つ以上の酸化ケイ素、1つ以上のカーボンブラック、又は1つ以上の酸化ケイ素と1つ以上のカーボンブラックとの組み合わせを含む。好ましくは、充填剤としては、好ましくは5~1,000、好ましくは20~400m2/gのBET表面積(窒素吸収)を有するシリカ含有粒子が挙げられる。このような充填剤は、例えば、シリケートの溶液からの沈殿によって、又はハロゲン化ケイ素の火炎加水分解によって得ることができる。シリカ充填剤粒子は、10~400nmの粒度を有することができる。シリカ含有充填剤は、Al、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、又はTiの酸化物を含むこともできる。ケイ素酸化物をベースとする充填剤の別の例としては、ケイ酸アルミニウム、好ましくは20~400m2/gのBET表面積及び10~400nmの一次粒径を有するアルカリ土類金属ケイ酸塩、例えばケイ酸マグネシウム又はケイ酸カルシウム、天然シリケート、例えばカオリン、及び別の天然シリケート、例えばクレイ(層状シリカ)が挙げられる。充填剤のさらなる例としては、ガラス粒子をベースとする充填剤、例えばガラスビーズ、微小球、ガラス繊維、及びガラス繊維製品(マット、ストランド)が挙げられる。
【0081】
シリカ含有充填剤などの極性充填剤は、疎水性を高めるために改質することができる。適切な改質剤としては、シラン又はシランをベースとする化合物が挙げられる。このような改質剤の典型的な例としては、一般式(V):
(R1R2R3O)3Si-R4-X (V)
(ここで、それぞれのR1、R2、R3は、互いに独立して、アルキル基であり、好ましくはR1、R2、R3は、すべてメチル又はすべてエチルであり、R4は、1~20の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族の結合基であり、Xは、硫黄含有官能基であり、-SH、-SCN、-C(=O)S、又はポリスルフィド基から選択される)
に対応する化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
記載のように改質されたシリカの代わりに、又はこれに加えて、このような改質は、例えば配合中、又はタイヤ又はその構成要素の製造プロセス中に、例えば改質剤、好ましくはシラン又はシランをベースとする充填剤、例えば式(V)によるものなどを、ゴムコンパウンドの製造時に、加えることによって、その場で行うこともできる。
【0083】
酸化ケイ素以外の金属酸化物をベースとする充填剤としては、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。別の充填剤としては、金属炭酸塩、例えば炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、及びそれらの組み合わせ、金属水酸化物、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及びそれらの組み合わせ、3~8個の炭素原子を有するアルファ-ベータ-不飽和脂肪酸及びアクリル酸若しくはメタクリル酸の塩、例えばアクリル酸亜鉛、亜鉛ジアクリレート、メタクリル酸亜鉛、亜鉛ジメタクリレート、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0084】
本開示の別の一実施形態では、ゴムコンパウンドは、炭素をベースとする1つ以上の充填剤、例えば1つ以上のカーボンブラックを含む。カーボンブラックは、例えば、ランプブラック法、ファーネスブラック法、又はガスブラック法によって製造することができる。好ましくは、カーボンバック(carbon back)は、20~200m2/gのBET表面積(窒素吸収)を有する。適切な例としては、SAF、ISAF、HAF、FEF、及びGPFブラックが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
適切な充填剤の別の例としては、炭素-シリカ二重相充填剤、リグニン若しくはリグニンをベースとする材料、デンプン若しくはデンプンをベースとする材料、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0086】
好ましい一実施形態では、充填剤は、1つ以上の酸化ケイ素、カーボンブラック、又はそれらの組み合わせを含む。
【0087】
充填剤の典型的な量としては、ゴム100部当たり5~200部、例えば、ゴム100重量部に対して10~150重量部、又は10~95重量部が挙げられる。
【0088】
硬化剤:
好ましくは、ゴムコンパウンドは、ジエンポリマーを硬化させるための少なくとも1つの硬化剤も含む。硬化剤は、ジエンポリマーを架橋(硬化)させることができ、本明細書においては「架橋剤」又は「加硫剤」とも呼ばれる。適切な硬化剤としては、硫黄、硫黄をベースとする化合物、及び有機若しくは無機過酸化物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0089】
本開示の好ましい一実施形態では、硬化剤は硫黄を含む。1つの硬化剤の代わりに、1つ以上の硬化剤の組み合わせを用いることができ、又は1つ以上の硬化剤と1つ以上の硬化促進剤若しくは硬化触媒との組み合わせを用いることができる。硫黄供与体として作用する硫黄含有化合物の例としては、硫黄、ハロゲン化硫黄、ジチオジモルホリン(DTDM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、及びジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。硬化促進剤の例としては、アミン誘導体、グアニジン誘導体、アルデヒドアミン縮合生成物、チアゾール、チウラムスルフィド、ジチオカルバメート、及びチオホスパート(thiophospahte)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0090】
本開示の別の一実施形態では、硬化剤は過酸化物を含む。加硫剤として用いられる過酸化物の例としては、ジ-tert-ブチル-ペルオキシド、ジ-(tert-ブチル-ペルオキシ-トリメチル-シクロヘキサン)、ジ-(tert-ブチル-ペルオキシ-イソプロピル-)ベンゼン、ジクロロ-ベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、tert-ブチル-クミル-ペルオキシド、ジメチル-ジ(tert-ブチル-ペルオキシ)ヘキサン、及びジメチル-ジ(tert-ブチル-ペルオキシ)ヘキシン、及びブチル-ジ(tert-ブチル-ペルオキシ)バレレートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。必要に応じて、スルフェンアミド型、グアニジン型、又はチウラム型の加硫促進剤を加硫剤とともに用いることができる。
【0091】
加えられる場合、加硫剤は、典型的にはゴム100重量部当たり0.5~10重量部、好ましくは1~6重量部の量で存在する。
【0092】
別のゴム
本開示によるゴムコンパウンド及び組成物は、本開示による官能化ジエンポリマー以外の1つ以上の追加のゴムを含むことができる(本明細書では「別のゴム」とも呼ばれる)。例としては、官能化されていない、又は別の官能化が行われている、本開示の官能化ジエンゴムと同じ又は別の組成のブタジエンゴムが挙げられる。
【0093】
さらなる例としては、アクリロニトリル含有量が10重量%~40重量%である1つ以上のブタジエンとアクリル酸C1-C4-アルキルとのコポリマー、部分又は完全水素化アクリロニトリルゴム、エチレン-プロピレン-ジエンコポリマー、天然ゴム、及びそれらの組み合わせが挙げられる。コンパウンド中の1つ以上の別のゴムの典型的な量としては、例えば、本開示による官能化ブタジエンゴム100部当たり5~500部を挙げることができる。
【0094】
本開示の好ましい一実施形態では、コンパウンドは、少なくとも90重量%のシス単位の含有量を有する少なくとも1つのブタジエンポリマーを含む。このようなポリマーは、当技術分野において「高シスブタジエン」とも呼ばれる。このようなブタジエンポリマーは、一般にガドリニウム、ネオジム、チタン、ニッケル、又はコバルトをベースとする重合触媒を用いて得られる。本開示によるジエンポリマーのようにアニオン重合によって得られるブタジエンポリマーは、典型的には高ビニル含有量を有し、例えばポリマーの重量を基準として少なくとも10重量%のビニル基の含有量を有する。高シスブタジエンポリマーは、部分的に水素化することができる。
【0095】
本開示の一実施形態では、ゴムコンパウンドは、少なくとも1つの天然ゴム、90重量%を超えるシス含有量を有する少なくとも1つのポリブタジエンゴム、又はそれらの組み合わせの1つ以上のゴムを含む。
【0096】
ゴム助剤
本開示による1つ以上のジエンポリマーを含む組成物及びゴムコンパウンドは、ゴムの配合及び加工の分野において周知の1つ以上のゴム助剤を含むことができる。このようなさらなるゴム助剤としては、硬化反応促進剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、加工助剤、可塑剤、粘着付与剤、発泡剤、及び着色剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。加工助剤としては、有機酸、ワックス、及びプロセス油が挙げられる。油の例としては、MES(中度抽出溶媒和物)、TDAE(処理留出物芳香族抽出物)、RAE(残留芳香族抽出物)、並びにナフテン油及び植物油が挙げられるが、これらに限定されるものではない。市販の油の具体例としては、商品名Nytex 4700、Nytex 8450、Nytex 5450、Nytex 832、Tufflo 2000、及びTufflo 1200を有するものが挙げられる。油の例としては、官能化油、特にエポキシ化又はヒドロキシル化された油が挙げられる。
【0097】
活性化剤としては、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコール、ヘキサントリオールが挙げられる。着色剤は、染料及び顔料を含み、有機又は無機であってよく、例えば、亜鉛白及び酸化チタンが挙げられる。
【0098】
当技術分野において周知のように意図する使用に応じて、さらなるゴム助剤を適切な量で用いることができる。助剤の個別の量又は総量の典型的な量の例としては、コンパウンド中のゴムの全重量を基準として0.1重量%~50重量%が挙げられる。
【0099】
ゴムコンパウンドを製造する場合、例えばゴムの加工の分野において周知のブレンドディングによって、本開示によるジエンポリマー又はジエンポリマー組成物と、コンパウンドを製造するための1つ以上の成分とを組み合わせることができる。ブレンディングは、例えばローラー、ニーダー、密閉式ミキサー、及び混合押出機を用いることによって行うことができる。充填剤は、好ましくは、固体ジエンポリマー、又はそれと当技術分野において周知の別のゴムとの混合物と、例えばニーダーの使用によって混合される。充填剤は、固体として、又はスラリーとして、若しくは当技術分野において周知の別の方法で加えることができる。硬化剤及び促進剤は、好ましくは最終混合段階において別に加えられる。
【0100】
加硫物
ゴム加硫物は、本開示のゴムコンパウンドに対して1つ以上の硬化ステップを行うことによって得ることができる。硬化は、当技術分野において周知のように行うことができる。硬化は、一般に100~200℃の間、例えば130~180℃の間の温度で行われる。硬化は、加圧下の金型中で行うことができる。典型的な圧力としては、10~200barの圧力が挙げられる。硬化時間及び条件は、ゴムコンパウンドの実際の組成、並びに硬化剤及び硬化性成分の量及び種類によって決定される。
【0101】
物品
本開示のジエンポリマー、ジエンポリマー組成物、及びジエンポリマーコンパウンドは、物品の製造に用いることができ、タイヤ又はタイヤの構成要素の製造に特に適切である。タイヤとしては、空気入りタイヤが挙げられる。タイヤとしては、原動機付き車両、航空機、並びに電気自動車、及びハイブリッド車、すなわち燃焼機関又は電気推進エンジン若しくは電池によって駆動できる車両のタイヤが挙げられる。タイヤの典型的な構成要素としては、インナーライナー、トレッド、アンダートレッド、カーカス、及びサイドウォールが挙げられる。
【0102】
一実施形態では、本開示によるジエンポリマー、組成物、又はコンパウンドは、例えばOリング、ガスケット、又はあらゆる別のシール若しくはシールの構成要素を製造するためのシール材料として用いられる。
【0103】
一実施形態では、本開示によるジエンポリマー、組成物、又はコンパウンドは、ポリスチレン及びスチレン-アクリロニトリルなどの熱可塑性プラスチックの衝撃改質剤として用いられる。
【0104】
別の一実施形態では、本開示によるジエンポリマー、組成物、又はコンパウンドは、ゴルフボール又はその構成要素の製造に用いられる。
【0105】
別の一実施形態では、本開示によるジエンポリマー、組成物、又はコンパウンドは、形材、膜、減衰要素、及びホースから選択される成形物品の製造に用いられる。
【0106】
別の一実施形態では、本開示によるジエンポリマー、組成物、又はコンパウンドは、靴底、ケーブルシース、ホース、ライニング、例えばロールライニング、又はコンベヤベルト、エスカレーターベルト、及び駆動ベルトなどのベルトの製造に用いられる。
【0107】
物品は、本開示の硬化性ゴムコンパウンドの硬化及び成形を行うことによって得ることができる。成形ステップは、硬化ステップの最中又は後に行うことができ、硬化ステップの前に行うこともできる。1つの硬化及び/又は成形ステップを用いることができ、又は複数の硬化及び/又は成形ステップを用いることができる。物品を形成するための硬化又は成形又はその両方の間、本開示の組成物及びコンパウンドは、物品の製造に必要な1つ以上の追加の成分と組み合わせることができる。
【0108】
以下に、特定の実施形態及び実施例によって本開示がさらに説明されるが、これらの特定の実施形態及び実施例に本開示が限定されることを意図するものではない。
【実施例】
【0109】
GPC(PS(ポリスチレン)で較正)を用いて、ポリマーの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量Mn、多分散性Mw/Mn、及びカップリング度を求めた。Agilent 1260 Refractive Index Detector、Agilent 1260 Variable Wavelength Detector、1260 ALSオートサンプラー、カラムオーブン(Agilent 1260 TCC)、Agilent 1200 Degasser、Agilent 1100 Iso Pump、及びAgilentの3つのPLgel 10 μm Mixed B300×7.5mmカラムのカラムの組み合わせを含むAgilent,Santa Clara,CA,USAのモジュラーシステムを用いた。テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いた。PSS Polymer Standards Service GmbH(Mainz,Germany)のポリスチレン標準物質を用いた。THF中に溶解させたポリマー試料をシリンジフィルター(0.45μmPTFE膜、直径25mm)に通して濾過した。測定は、40℃において1mL/分の流量を用いて行った。
【0110】
DIN 52523/52524に準拠して、ムーニー粘度ML(1+4)100℃を測定した。
【0111】
ゴムフィルムに対するFTIR分光法によってコモノマー含有量を求めた。ポリマー中のビニル単位、シス単位、及びトランス単位は、規格のISO 12965:2000(E)に記載されるように吸光度及び吸光度比を用いてFT-IR分光法によって求めることができる。
【0112】
DSC(示差走査カロメトリー(differential scanning calometry))を用いて、20K/分の加熱速度における第2の加熱曲線から、ガラス転移温度(Tg)を求めた。
【0113】
コンパウンドの性質
温度依存性の動的機械的性質を求めるために0℃及び60℃における損失係数tanδを求めた。この目的のためにGABOのEPLEXOR装置(Eplexor 500 N)を用いた。測定は、DIN 53513に準拠して10HzにおいてAresストリップに対して-100℃~100℃の温度範囲で行った。ひずみ依存性の動的機械的性質を求めるために、0.5%のひずみにおける剪断弾性率と15%のひずみにおける剪断弾性率との差としてのΔG’、及び最大損失係数tanδmaxを求めた。これらの測定は、DIN 53513-1990に準拠して、MTSエラストマー試験システム上で、円筒形試験片(20mm×6mm)に対して、60℃の温度において2mmの圧縮、及び0.1%~40%のひずみ範囲内で10Hzの測定周波数で行った。
【0114】
実施例1(比較):スチレン-ブタジエンコポリマーの合成
不活性の20Lの鋼製反応器に、8.5kgのヘキサン、6.6mmolの2,2-ビス(2-テトラヒドロフリル)-プロパン、及び11.6mmolのn-ブチルリチウム(ヘキサン中の23重量%の溶液として)を加え、38℃に加熱した。加熱回路を遮断し、1185gの1,3-ブタジエン及び315gのスチレンを同時に加えた。撹拌下で合計40分間重合を行うと、62℃のピーク温度に到達した。ピーク温度に到達してから10分後に、モノマーの消費が完了したと思われた。アニオン性ポリマー鎖末端をクエンチするために11.6mmolのn-オクタノールを加えた。このゴム溶液を別の容器中に排出し、3gのIRGANOX 1520(2,4-ビス(オクタチオメチル)-6-メチルフェノール)を加えることによって安定化させた。蒸気を用いたストリッピングによって溶媒を除去した。これらのゴムクラムを真空乾燥オーブン中65℃で16時間乾燥させた。
【0115】
実施例2(比較):シクロテトラシロキサンとの反応によるスチレン-ブタジエンコポリマーの官能化
n-オクタノールの代わりに、官能化試薬の2,2,4,4,6,6,8,8-オクタメチルシクロテトラシロキサンを加えたことを除けば、実施例1に記載の手順に従った。官能化試薬は、n-ブチルリチウムの量に対して当モルの量で加えた。反応器の内容物を5分間撹拌した後、ゴム溶液を排出した。3gの安定剤(IRGANOX 1520(2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール))を加えた後、蒸気を用いたストリッピングによって溶媒を除去した。これらのゴムクラムを真空乾燥オーブン中65℃で16時間乾燥させた。
【0116】
実施例3(比較):チアシラシクロペンタンとの反応によるスチレン-ブタジエンコポリマーの官能化
不活性の20Lの鋼製反応器に、8.5kgのヘキサン、8.8mmolの2,2-ビス(2-テトラヒドロフリル)-プロパン、及び15.1mmolのn-ブチルリチウム(ヘキサン中の23重量%の溶液として)を加え、38℃に加熱した。加熱回路を閉鎖し、1185gの1,3-ブタジエン及び315gのスチレンを同時に加えた。撹拌下で40分間重合を行うと、その間に反応器の内容物は62℃のピーク温度に到達した。15.1mmolの官能化試薬2,2-ジメトキシ-1-チア-2-シラシクロペンタンを加え、反応器の内容物を5分間撹拌した。次に、ゴム溶液を排出し、3gのIrganox(登録商標)1520(2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール)を加えることによって安定化させ、蒸気を用いたストリッピングによって溶媒を除去した。これらのゴムクラムを真空乾燥オーブン中65℃で16時間乾燥させた。
【0117】
実施例4:2,2,4,4,6,6,8,8-オクタメチルシクロテトラシロキサン及び2,2-ジメトキシ-1-チア-2-シラシクロペンタンとの逐次反応によるスチレン-ブタジエンコポリマーの官能化
不活性の20Lの鋼製反応器に、8.5kgのヘキサン、6.8mmolの2,2-ビス(2-テトラヒドロフリル)-プロパン、及び11.8mmolのn-ブチルリチウム(ヘキサン中の23重量%の溶液として)を加え、38℃に加熱した。加熱回路を閉鎖し、1185gの1,3-ブタジエン及び315gのスチレンを同時に加えた。撹拌下で40分間コモノマーを重合させると、その間に反応器の内容物は62℃のピーク温度に到達した。11.8mmolの2,2,4,4,6,6,8,8-オクタメチルシクロテトラシロキサンを加え、反応器の内容物を5分間撹拌した。11.8mmolの2,2-ジメトキシ-1-チア-2-シラシクロペンタンを反応混合物に加え、反応器の内容物を5分間撹拌した。次に、ゴム溶液を排出し、3gのIRGANOX 1520(2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール)を加えることによって安定化させ、蒸気を用いたストリッピングによって溶媒を除去した。これらのゴムクラムを真空乾燥オーブン中65℃で16時間乾燥させた。
【0118】
実施例1~4によるゴムの性質を表1中にまとめている。表1は、実施例3によるポリマー(チアシラシクロアルカンの添加により得た)のカップリング度が40%を超えたことを示している。これは、チオール末端ポリマー鎖の量が60%未満であったことを意味する。実施例4によって示されるように、シクロシロキサンで処理した後にポリマーにチアシラシクロアルカンを加えることによって、カップリング度を10%未満に低下させることができ、それに応じてチオール末端ポリマー鎖の量を増加させることができた。
【0119】
【0120】
ゴムコンパウンド
表2中に示される成分を用いて、実施例1、3、及び4のブタジエンポリマーを含むタイヤトレッドゴムコンパウンドを製造した。これらの構成要素(硫黄及び促進剤を除く)を1.5リットルのニーダー中で混合した。続いて、硫黄及び促進剤をローラー上40℃で混合した。コンパウンドを調製するための個別のステップを表3中に示す。
【0121】
【0122】
【0123】
上記ゴムコンパウンドを160℃で20分間加硫させた。対応する加硫物5~7の物理的性質を表4中に列挙する。比較例5の加硫ゴムコンパウンド(官能化していないスチレン-ブタジエンコポリマーを用いて製造)の性質を指数100とする。表4中の100を超えるすべての値は、比較例5のそれぞれの性質に対する試験したそれぞれの性質のパーセントの単位での対応する改善を示している。
【0124】
【0125】
温度依存性の動的機械的測定で得られる60℃における損失係数tanδ、ひずみ依存性の動的機械的測定で得られる最大tanδ及び低ひずみ及び高ひずみの間の弾性率差G’は、タイヤの転がり抵抗の指標となる。
【0126】
0℃における損失係数tanδは、タイヤのウェットスリップ抵抗の指標となる。
【0127】
表4から分かるように、比較例5及び6の比較によって明らかであるが、チオール末端の末端基を用いたブタジエンポリマーの官能化によって、ウェットグリップ指標及び転がり抵抗指標に関して改善された値を有する加硫物が得られる。ポリマー鎖末端とチオール末端基との間にシリコーンスペーサー単位を含む本開示によるチオール末端ブタジエンポリマーを用いることによって、加硫物のウェットグリップ指標及び転がり抵抗指標をさらに改善することができる(実施例7で示される)。
【国際調査報告】