(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】直接選択的レーザ線維柱帯形成術中の血管の回避
(51)【国際特許分類】
A61F 9/008 20060101AFI20231025BHJP
A61B 3/13 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
A61F9/008 120E
A61F9/008 120D
A61B3/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519588
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(85)【翻訳文提出日】2023-03-28
(86)【国際出願番号】 IB2021059821
(87)【国際公開番号】W WO2022090894
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515212529
【氏名又は名称】ベルキン ヴィジョン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086461
【氏名又は名称】齋藤 和則
(72)【発明者】
【氏名】サックス、ザッチャリ
(72)【発明者】
【氏名】レマン-ブルメンタール、ダリア
(72)【発明者】
【氏名】エルカイアム、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ダブキン-ベクマン、マーシャ
(72)【発明者】
【氏名】ゾルベルク、ヨーアム
(72)【発明者】
【氏名】マクダシ、エリィ
(72)【発明者】
【氏名】フォルフソン、サージェイ
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA01
4C316AB16
4C316FA04
4C316FB26
4C316FC12
4C316FZ01
4C316FZ03
(57)【要約】
システムは放射線源(48)とコントローラ(44)とを有する。コントローラは:それぞれの量のエネルギーを照射するために、患者(22)の眼(25)の複数の標的領域(84)を指定し、放射線源に対し、複数の標的領域の少なくとも第1の標的領域を照射するようにさせ、放射線源に対し、複数の標的領域の少なくとも第1の標的領域を照射するようにさせた後、眼の画像を処理することによって、眼の変化を識別し、眼の変化の識別に応答して、放射線源に対し、まだ照射されていない複数の標的領域の第2の標的領域を、第2の標的領域に指定されたエネルギー量で照射することを控えさせる、ように構成される。他の実施形態も記載される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって:
放射線源と;コントローラと;を有し、
前記コントローラは:
それぞれの量のエネルギーを照射するために、患者の眼の複数の標的領域を指定し、
前記放射線源に対し、前記複数の標的領域の少なくとも第1の標的領域を照射するようにさせ、
前記放射線源に対し、前記複数の標的領域の少なくとも第1の標的領域を照射するようにさせた後、前記眼の画像を処理することによって、前記眼の変化を識別し、
前記眼の変化の識別に応答して、前記放射線源に対し、前記複数の標的領域の内のまだ照射されていない第2の標的領域を、前記第2の標的領域に指定されたエネルギー量で照射することを控えさせる、
ように構成される、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記コントローラは、新しい標的領域を指定し、そして前記放射線源に対し前記第2の標的領域の代わりに前記新しい標的領域を照射するようにさせる、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記放射線源に対し、前記複数の標的領域のうちの前記第2の標的領域に対して指定されたエネルギー量よりも少ない別のエネルギー量で前記第2の標的領域を照射するようにさせることにより、前記第2の標的領域に対して指定されたエネルギー量で前記第2の標的領域を照射することを控えさせる、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記変化が出血を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記変化が膨張を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記変化が色の変化を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記変化は、1つ以上の泡の形成を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記第2の標的領域と前記眼の別の1つの領域との間の距離に応答して、前記放射線源に対して前記第2の標的領域を照射することを控えさせるように構成される、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラは、前記第2の標的領域において解剖学的特徴を識別するようにさらに構成され、前記コントローラは、前記解剖学的特徴の識別に応答して、前記放射線源に対し前記第2の標的領域を照射させることを控えるように構成される、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントローラは、前記第2の標的領域を照射する放射線ビームと前記解剖学的特徴との間のオーバーラップの予測尺度を計算するようにさらに構成され、
前記コントローラは、前記オーバーラップの予測尺度に応答して、前記放射線源に対し前記第2の標的領域を照射することを控えさせるように構成される、ことを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記解剖学的特徴は、前記第2の標的領域の解剖学的特徴であり、
前記コントローラは、前記第1の標的領域において第1の標的領域の解剖学的特徴を識別するようにさらに構成され、
前記コントローラは、前記第1の標的領域の解剖学的特徴の識別に応答して、放射線源に対し前記第2の標的領域を照射することを控えさせるように構成される、ことを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記コントローラは、前記第1の標的領域の解剖学的特徴と前記第2の標的領域の解剖学的特徴が同じタイプであることに応答して、前記放射線源に対し前記第2の標的領域を照射することを控えさせるように構成される、ことを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記コントローラはさらに、
(a)前記第1の標的領域を照射した第1の放射線ビームと(b)前記第1の標的領域の解剖学的特徴との間のオーバーラップの推定尺度を計算し、
(a)前記第2の標的領域を照射した第2の放射線ビームと(b)第1の標的領域の解剖学的特徴との間のオーバーラップの予測尺度を計算する、
ように構成され、
前記コントローラは、前記オーバーラップの予測尺度および前記オーバーラップの推定尺度に応答して、前記放射線源に対し前記第2の標的領域を照射することを控えさせるように構成される、ことを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記コントローラはさらに、
前記第1の放射線ビームによって前記第1の標的領域の解剖学的特徴に送達される推定エネルギー量を計算し、そして
前記第2の放射線ビームによって前記第2の標的領域の解剖学的特徴に送達される予測エネルギー量を計算する、
ように構成され、
前記コントローラは、前記推定エネルギー量および前記予測エネルギー量に応答して、放射線源に対し前記第2の標的領域を照射することを控えさせるように構成される、ことを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記コントローラは、前記第2の標的領域を照射することに関連するリスク尺度を計算するようにさらに構成され、
前記コントローラは、前記リスク尺度に応答して、前記放射線源に対し前記第2の標的領域を照射することを控えさせるように構成される、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記コントローラは、前記患者の医療プロファイルに基づいて前記リスク尺度を計算するように構成される、ことを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記コントローラは、前記第2の標的領域で解剖学的特徴を識別するようにさらに構成され、
前記コントローラは、前記第2の標的領域の解剖学的特徴のタイプに基づいてリスク尺度を計算するように構成される、ことを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
方法であって:
それぞれの量のエネルギーを照射するために、患者の眼の複数の標的領域を指定するステップと;
放射線源に対し前記標的領域のうち、少なくとも第1の領域を照射させるステップと;
放射線源に対し前記標的領域のうち、少なくとも第1の領域を照射させるステップに続いて、前記眼の画像を処理することにより、前記眼の変化を識別するステップと;および
前記眼の変化の識別に応答して、前記放射線源に対し、まだ照射されていない第2の標的領域を前記第2の標的領域に指定されたエネルギー量で照射することを控えさせるステップと;
を有することを特徴とする方法。
【請求項19】
前記放射線源に対し前記第2の標的領域を照射することを控えさせるステップは、
新しい1つの標的領域を指定するステップと;および
前記放射線源に対し前記第2の標的領域の代わりに前記新しい1つの標的領域を照射するようにさせるステップと;
を有する、ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記放射線源に対し前記第2の標的領域に対して指定されたエネルギー量で前記第2の標的領域を照射することを控えさせるステップは、前記放射線源に対し、前記第2の標的領域に対して指定された量よりも少ない別のエネルギー量で前記第2の標的領域を照射させるステップを有する、ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記変化が出血を含む、ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記変化が膨張を含む、ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記変化が色の変化を含む、ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記変化が、1つまたは複数の気泡の形成を含む、ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記放射線源に対し前記第2の標的領域を照射することを控えさせるステップは、前記第2の標的領域と前記眼の別の1つの領域との間の距離に応答して、前記放射線源に対して前記第2の標的領域を照射することを控えさせる、ステップを有する、ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記第2の標的領域で解剖学的特徴を識別するステップをさらに有し、
前記放射線源に対し前記第2の標的領域を照射することを控えさせるステップは、前記第2の標的領域での解剖学的特徴の識別に応答して、前記放射線源に対し前記第2の標的領域を照射することを控えさせるステップを有する、ことを特徴とする請求項18~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記第2の標的領域を照射する放射線ビームと前記解剖学的特徴との間のオーバーラップの予測尺度を計算するステップをさらに含み、前記放射線源に前記第2の標的領域を照射することを控えさせるステップは、前記オーバーラップの予測尺度に応答して、前記放射線源に対し前記第2の標的領域を照射することを控えさせるステップを有する、ことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記解剖学的特徴は、前記第2の標的領域の解剖学的特徴であり、
方法は、前記第1の標的領域の解剖学的特徴を識別するステップをさらに含み、
前記放射線源に対し前記第2の標的領域を照射することを控えさせるステップは、前記第1の標的領域の解剖学的特徴を識別するステップに応答して、前記放射線源に対し前記第2の標的領域を照射することを控えさせるステップを有する、ことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記放射線源に対し前記第2の標的領域を照射することを控えさせるステップは、前記第1の標的領域の解剖学的特徴と前記第2の標的領域の解剖学的特徴が同じタイプであることに応答して、前記放射線源に対し前記第2の標的領域を照射することを控えさせるステップを有する、ことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
(a)前記第1の標的領域を照射した第1の放射線ビームと(b)前記第1の標的領域の解剖学的特徴との間のオーバーラップの推定尺度を計算するステップと; および
(a)前記第2の標的領域を照射する第2の放射線ビームと(b)前記第1の標的領域の解剖学的特徴との間のオーバーラップの予測尺度を計算するステップと;
を有し、
前記放射線源に対し前記第2の標的領域を照射することを控えさせるステップは、前記オーバーラップの予測尺度および前記オーバーラップの推定尺度に応答して、放射線源に対し前記第2の標的領域を照射することを控えさせるステップを有する、ことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の放射線ビームによって前記第1の標的領域の解剖学的特徴に送達されるエネルギーの推定量を計算するステップと; および
前記第2の放射線ビームによって第2の標的領域の解剖学的特徴に送達されるエネルギーの予測量を計算し、
前記放射線源に対し前記第2の標的領域を照射することを控えさせるステップは、前記エネルギーの予測量および前記エネルギーの推定量に応答して、放射線源に対し前記第2の標的領域を照射することを控えさせるステップを有する、ことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第2の標的領域を照射することに関連するリスク尺度を計算するステップをさらに有し、前記放射線源に対し前記第2の標的領域を照射することを控えさせるステップは、前記リスク尺度に応答して、前記放射線源に対し前記第2の標的領域を照射することを控えさせるステップを有する、ことを特徴とする請求項18-25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記リスク尺度を計算するステップは、前記患者の医療プロファイルに基づいて前記リスク尺度を計算するステップを有する、ことを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記第2の標的領域において解剖学的特徴を識別するステップをさらに有し、
前記リスク尺度を計算するステップは、前記第2の標的領域における解剖学的特徴のタイプに基づいてリスク尺度を計算するステップを有する、ことを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項35】
システムであって:
放射線源と;および コントローラと;を有し、
前記コントローラは:
眼の画像を取得し、
前記画像において、基準点に対する異なるそれぞれの角度で複数の端点を識別し、ここで前記基準点は前記端点から半径方向内側の前記眼の上に位置し、前記端点のそれぞれは、それぞれの血管の端部にあり、
前記基準点と前記端点の間に前記眼の上の複数の標的領域を画定し、
前記放射線源に対し前記標的領域を照射させる、
ように構成される、ことを特徴とするシステム。
【請求項36】
前記基準点が前記眼の虹彩の中心に位置する、ことを特徴とする請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記基準点が眼の角膜輪部の中心に位置する、ことを特徴とする請求項35に記載のシステム。
【請求項38】
前記基準点が眼の瞳孔の中心に位置する、ことを特徴とする請求項35に記載のシステム。
【請求項39】
各前記角度について、それぞれの血管の端部は、その角度における血管の他の端部よりも前記基準点に近い、ことを特徴とする請求項35に記載のシステム。
【請求項40】
前記コントローラは:
前記端点と前記基準点との間に少なくとも1つの治療経路を画定するステップと;および
前記標的領域のそれぞれが前記治療経路上にあるように前記標的領域を画定するステップと;
により前記標的領域を画定するように構成される、ことを特徴とする請求項35-39のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項41】
前記コントローラは、前記端点のうちの任意の1つと前記治療経路との間の最短距離が少なくとも0.001mmであるように前記治療経路を画定するように構成される、ことを特徴とする請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記コントローラは、
前記端点を通過する少なくとも1つの曲線を画定し、
前記曲線を前記基準点に向かってオフセットし、
前記オフセットされた曲線に応答して前記治療経路を画定する、ことを特徴とする請求項40に記載のシステム。
【請求項43】
前記コントローラは、前記治療経路を前記オフセットされた曲線に内接する所定の形状の周囲として画定することにより、前記オフセットされた曲線に応答して前記治療経路を画定するように構成される、ことを特徴とする請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
前記所定の形状は楕円である、ことを特徴とする請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
前記コントローラは、前記治療経路を前記オフセットされた曲線に内接する最大面積の所定の形状の周囲として画定することによって、前記オフセットされた曲線に応答して前記治療経路を画定するように構成される、ことを特徴とする請求項42に記載のシステム。
【請求項46】
前記コントローラは、前記治療経路を、前記基準点を中心とし、前記オフセットされた曲線に内接する最大面積の所定の形状の周囲として画定することによって、前記オフセット曲線に応答して前記治療経路を画定するように構成される、ことを特徴とする請求項42に記載のシステム。
【請求項47】
前記コントローラは、前記オフセットされた曲線に内接し、前記眼の角膜輪部の形状を有する閉曲線として前記治療経路を画定することによって、前記オフセット曲線に応答して前記治療経路を画定するように構成される、ことを特徴とする請求項42に記載のシステム。
【請求項48】
方法であって:
眼の画像を取得するステップと;
前記画像において、基準点に対する異なるそれぞれの角度で複数の端点を識別するステップであって、前記基準点は前記端点から半径方向内側の前記眼の上に位置し、前記端点のそれぞれは、それぞれの血管の端部上にある、ステップと;
前記基準点と前記端点との間に前記眼の上に複数の標的領域を画定するステップと; および
放射線源に対し前記標的領域を照射するようにさせるステップと;
を有することを特徴とする方法。
【請求項49】
前記基準点は、前記眼の虹彩の中心に位置する、ことを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記基準点は、前記眼の角膜輪部の中心に位置する、ことを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記基準点は、前記眼の瞳孔の中心に位置する、ことを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項52】
各前記角度について、それぞれの前記血管の端部は、その角度における任意の血管の他の端部よりも前記基準点に近い、ことを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項53】
前記標的領域を画定するステップは、
前記端点と前記基準点との間の少なくとも1つの治療経路を画定するステップと; および
前記標的領域のそれぞれが前記治療経路上にあるように前記標的領域を画定するステップと;
を有する、ことを特徴とする請求項48-52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記治療経路を画定するステップは、前記端点のいずれか1つと前記治療経路との間の最短距離が少なくとも0.001mmであるように前記治療経路を画定するステップを有する、ことを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記治療経路を画定するステップは、
前記端点を通過する少なくとも1つの曲線を画定するステップと;
前記曲線を前記基準点に向かってオフセットするステップと; および
前記オフセットされた曲線に応答して前記治療経路を画定するステップと;
を有する、ことを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記オフセットされた曲線に応答して前記治療経路を画定するステップは、前記オフセットされた曲線に内接する所定の形状の周囲として前記治療経路を画定するステップを有する、ことを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記所定の形状が楕円である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記オフセットされた曲線に応答して前記治療経路を画定するステップは、前記オフセットされた曲線に内接する最大面積の所定の形状の周囲として前記治療経路を画定するステップを有する、ことを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記オフセットされた曲線に応答して前記治療経路を画定するステップは、前記基準点を中心とし、前記オフセットされた曲線に内接する最大面積の所定の形状の周囲として前記治療経路を画定するステップを有する、ことを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項60】
前記オフセットされた曲線に応答して前記治療経路を画定するステップは、前記オフセットされた曲線に内接し、前記眼の角膜輪部の形状を有する閉曲線として前記治療経路を画定するステップを有する、ことを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項61】
システムであって:
放射線源と;コントローラと;を有し、
前記コントローラは:
眼の画像を取得し、
前記画像において、基準点に対して異なるそれぞれの角度で複数の端点を識別し、ここで前記基準点は前記端点から半径方向内側の眼の上に位置し、そして前記端点のそれぞれは、それぞれの血管の端部にあり、
前記端点を通過する少なくとも1つの曲線を画定し、
前記基準点に向かって前記曲線をオフセットし、
前記オフセットされた曲線をユーザに表示しながら、前記ユーザから前記眼の複数の標的領域の画定を受け取り、そして
前記放射線源に対し前記標的領域を照射するようにさせる、
ように構成される、
ことを特徴とするシステム。
【請求項62】
方法であって:
眼の画像を取得するステップと;
前記画像において、基準点に対して異なるそれぞれの角度で複数の端点を識別するステップであって、前記基準点は前記端点から半径方向内側の眼の上に位置し、そして前記端点のそれぞれは、それぞれの血管の端部にある、ステップと;
前記端点を通過する少なくとも1つの曲線を画定するステップと;
前記基準点に向かって前記曲線をオフセットするステップと;
前記オフセットされた曲線をユーザに表示しながら、前記ユーザから前記眼の複数の標的領域の画定を受け取るステップと;そして
前記放射線源に対し前記標的領域を照射するようにさせるステップと;
を有することを特徴とする方法。
【請求項63】
方法であって:
α2アゴニストを患者の眼に投与するステップと; そして
前記α2アゴニストの投与後40分以内に前記患者の眼をレーザ照射で治療するステップと;
を有することを特徴とする方法。
【請求項64】
前記患者の眼を治療するステップは、前記眼の小柱網にレーザ放射を照射することによって前記患者の眼を治療するステップを有する、ことを特徴とする請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記患者の眼を治療するステップは、前記α2アゴニストの投与後30分以内に前記患者の眼を治療するステップを有する、ことを特徴とする請求項63または64に記載の方法。
【請求項66】
前記患者の眼を治療するステップは、前記眼の血管がα2アゴニストによって十分に収縮されたというコントローラからの指示に応答して、前記患者の眼を治療するステップを有する、ことを特徴とする請求項63または64に記載の方法。
【請求項67】
患者の眼を血管収縮させる方法において使用するためのα2アゴニストであって、前記α2アゴニストは前記眼をレーザ照射で治療する40分以内に患者に投与される、ことを特徴とするα2アゴニスト。
【請求項68】
前記眼を治療するステップは、前記眼の線維柱帯をレーザ放射線で照射することによって眼を治療するステップを有する、ことを特徴とする請求項67に記載のα2アゴニスト。
【請求項69】
前記α2アゴニストは、レーザ放射で眼を治療する30分未満前に前記患者に投与される、ことを特徴とする請求項67または68のいずれかに記載のα 2アゴニスト。
【請求項70】
システムであって:
レーザ放射による眼の治療の前に患者の前記眼の画像を取得するように構成されたカメラと;そしてコントローラと;を有し、
前記コントローラは:
前記画像を処理することにより、前記眼の血管がα2アゴニストによって収縮された程度を示す収縮尺度を計算し、そして
事前設定された閾値を超える収縮尺度に応答して、前記血管が前記α2アゴニストによって十分に収縮されたという指標を出力する、
ように構成される、
ことを特徴とするシステム。
【請求項71】
システムであって:
ポンプ源とレーザ媒質を含むレーザと;コントローラと;を有し、
前記コントローラは:
前記レーザによる照射のために、患者の眼の複数の標的領域を順番に指定し、
前記ポンプ源を駆動して、それぞれが前記レーザ媒質をレーザ発振させるように構成されたレーザ発振発生パルスの列で前記レーザ媒質のポンピングを開始することにより、前記標的領域の照射を開始し、
前記標的領域の照射の開始に続いて、前記ポンプ源に対し、レーザ発振発生パルスの1つを1つまたは複数の加熱パルスで置き換えさせる、
ように構成され、
前記加熱パルスは、前記レーザ媒質をレーザ発振させることなく、前記レーザ媒質を加熱するように構成されている、
ことを特徴とするシステム。
【請求項72】
前記コントローラは、前記標的領域の照射を開始する前に、前記レーザ媒質をレーザ発振させることなく、前記レーザ媒質を加熱させるようにさらに構成される、ことを特徴とする請求項71に記載のシステム。
【請求項73】
前記加熱パルスの総エネルギーは、前記レーザ発振発生パルスのそれぞれのレーザ発振発生パルスエネルギーの70-100%の間である、ことを特徴とする請求項71に記載のシステム。
【請求項74】
前記1つまたは複数の加熱パルスが N>1 の加熱パルスからなる、ことを特徴とする請求項71~73のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項75】
前記加熱パルスのそれぞれは、D0/N の加熱パルス持続時間を有し、ここで D0 は、前記レーザ発振発生パルスのそれぞれのレーザ発振発生パルス持続時間である、ことを特徴とする請求項74に記載のシステム。
【請求項76】
前記加熱パルスの各々は、前記レーザ発振発生パルスの各々のピーク電力に等しいピーク電力を有する、ことを特徴とする請求項75に記載のシステム。
【請求項77】
前記レーザ発振発生パルスの列は周期 T で周期的であり、前記コントローラは、前記ポンプ源対し、前記レーザ発振発生パルスの1つがポンピングされた時点からの時間 {k*T/N}、k=0…N-1 において加熱パルスで置換させるように構成される、ことを特徴とする請求項74に記載のシステム。
【請求項78】
前記コントローラは、エラーを示す信号に応答して、前記ポンプ源に対し加熱パルスで置換させるように構成される、ことを特徴とする請求項71-73のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項79】
前記コントローラは、カメラによって取得された前記眼の1つまたは複数の画像を処理するようにさらに構成され、前記コントローラは、画像の処理に応答して、前記ポンプ源に対し加熱パルスで置換させるように構成される、ことを特徴とする請求項71-73のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項80】
前記コントローラは、前記画像を処理することによって前記眼の障害を識別するように構成され、前記コントローラは、前記眼の障害の識別に応答して前記ポンプ源に対し前記加熱パルスで置換させるように構成される、ことを特徴とする請求項79に記載のシステム。
【請求項81】
前記コントローラは、前記画像を処理することによって前記眼の変化を識別するように構成され、前記コントローラは、前記眼の変化の識別に応答して前記ポンプ源に対し前記加熱パルスで置換させるように構成される、ことを特徴とする請求項79に記載のシステム。
【請求項82】
前記眼の変化は、1つまたは複数の泡の形成を含む、ことを特徴とする請求項81に記載のシステム。
【請求項83】
前記コントローラは、前記画像を処理することによって前記眼の上の基準点の基準点位置を特定するように構成され、
前記コントローラは、さらに
前記基準点位置に基づいて、1つの標的領域位置を計算し、そして
前記レーザが前記標的領域位置に向けられていないことを確認する、
ように構成され、
前記コントローラは、前記確認に応答して前記ポンプ源に対し前記加熱パルスで置換させるように構成される、ことを特徴とする請求項79に記載のシステム。
【請求項84】
1つまたは複数のモータをさらに備え、前記コントローラは、前記モータを使用して前記レーザの照準を合わせるようにさらに構成され、前記コントローラは、前記モータのそれぞれのエンコーダからのそれぞれの信号に応答して前記レーザが前記標的領域位置に向けられていないことを確認するように構成される、ことを特徴とする請求項83に記載のシステム。
【請求項85】
前記レーザは治療用レーザであり、
前記システムは、照準レーザをさらに備え、
前記コントローラは、さらに:
前記照準レーザに対し、前記治療用レーザが照準を合わせた位置に照準ビームを発射するようにさせ、
前記画像を処理することによって前記照準ビームの照準ビーム位置を識別する、
ように構成され、
前記コントローラは、前記照準ビーム位置と前記標的領域位置との間の偏移に基づいて、前記治療用レーザが前記標的領域位置に向けられていないことを確認するように構成される、ことを特徴とする請求項83に記載のシステム。
【請求項86】
前記照準ビームの波長は700nmより大きい、ことを特徴とする請求項85に記載のシステム。
【請求項87】
前記画像は:前記照準ビームが放射されている間に取得され、前記照準ビームが当該第1の画像に現れる第1の画像と;前記照準ビームが放射される前または後に取得され、前記照準ビームが当該第2の画像には表示されない、第2の画像と;を有し、
前記コントローラは、前記第1の画像内で前記照準ビーム位置を識別するように構成され、
前記コントローラは、前記第2の画像内で前記基準点位置を識別するように構成される、ことを特徴とする請求項85に記載のシステム。
【請求項88】
前記画像は、前記照準ビームが現れる第1のフレームと、前記照準ビームが現れない第2のフレームとを含む単一の画像からなり、
前記コントローラは、前記第1のフレーム内の前記照準ビーム位置を識別するように構成され、
前記コントローラは、前記第2のフレーム内の前記基準点位置を識別するように構成される、ことを特徴とする請求項85に記載のシステム。
【請求項89】
方法であって:
レーザによる連続する照射のために、患者の眼の複数の標的領域を指定するステップと;
ポンプ源を駆動して、それぞれが前記レーザのレーザ媒質をレーザ発振させるように構成されたレーザ発振発生パルスの列で前記レーザ媒質のポンピングを開始することにより、前記標的領域の照射を開始するステップと; および
前記標的領域の照射を開始するステップに続いて、前記ポンプ源に対し、前記レーザ発振発生パルスの1つを1つまたは複数の加熱パルスで置き換えさせるステップであって、前記加熱パルスは、前記レーザ媒質をレーザ発振させることなく、前記レーザ媒質を加熱するように構成されている、ステップと;
を有することを特徴とする方法。
【請求項90】
前記標的領域の照射を開始する前に、前記レーザ媒質をレーザ発振させることなく、前記ポンプ源に対し前記レーザ媒質を加熱させるステップをさらに有する、ことを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記加熱パルスの総エネルギーは、前記レーザ発振発生パルスの各々のレーザ発振発生パルスエネルギーの70-100%の間であることを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項92】
前記1つまたは複数の加熱パルスが N>1 の加熱パルスからなる、ことを特徴とする、請求項89-91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
前記加熱パルスのそれぞれは、 D0/N の加熱パルス持続時間を有し、D0 は、前記レーザ発振発生パルスのそれぞれのレーザ発振発生パルス持続時間である、ことを特徴とする請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記加熱パルスの各々は、前記レーザ発振発生パルスの各々のピーク電力に等しいピーク電力を有する、ことを特徴とする請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記レーザ発振発生パルスの列は周期 T で周期的であり、前記ポンプ源に対し前記加熱パルスで置換させるステップは、前記ポンプ源に対し、前記レーザ発振発生パルスの1つが励起された時点からの時間 {k*T/N} k = 0…N-1 において、前記加熱パルスで代替させるステップを有する、ことを特徴とする請求項92に記載の方法。
【請求項96】
前記ポンプ源に加熱パルスで置換させるステップは、エラーを示す信号に応答して前記ポンプ源に対し加熱パルスで置換させるステップを有する、ことを特徴とする請求項89-91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
カメラによって取得された前記眼の1つまたは複数の画像を処理するステップをさらに有し、前記ポンプ源に対し加熱パルスで置換させるステップは、前記画像の処理に応答して前記ポンプ源に対し加熱パルスで置換させるステップを有する、ことを特徴とする請求項89-91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
前記画像を処理するステップは、前記眼の障害物を識別するステップを有し、前記ポンプ源に対し前記加熱パルスで置換させるステップは、前記眼の障害物の識別に応答して前記ポンプ源に対し前記加熱パルスで置換させるステップを有する、ことを特徴とする請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記画像を処理するステップは、前記眼の変化を識別するステップを含み、前記ポンプ源に対し前記加熱パルスで置換させるステップは、前記変化の識別に応答して前記ポンプ源に対し前記加熱パルスで置換させるステップを有する、ことを特徴とする請求項97に記載の方法。
【請求項100】
前記眼の変化が、1つまたは複数の気泡の形成を含む、ことを特徴とする請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記画像を処理するステップは、前記眼の基準点の基準点位置を識別するステップを有し、
前記方法はさらに:
前記基準点位置に基づいて、1つの前記標的領域の標的領域位置を計算するステップと; そして
前記レーザが前記標的領域位置に向けられていないことを確認するステップと;
を有し、
前記ポンプ源に対し加熱パルスで置換させるステップは、前記確認に応答して前記ポンプ源に対し加熱パルスで置換させるステップを有する、ことを特徴とする請求項97に記載の方法。
【請求項102】
前記レーザは、1つまたは複数のモータを使用して照準を合わせられ、前記レーザが前記標的領域位置に向けられていないことを確認するステップは、前記モータのそれぞれのエンコーダからのそれぞれの信号に応答して、前記レーザが前記標的領域位置に向けられていないことを確認するステップを有する、ことを特徴とする請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記レーザは治療用レーザであり、
前記方法は、照準レーザに対し、前記治療用レーザが照準を合わせた場所に照準ビームを発射させるステップをさらに含み、
前記画像を処理するステップは、前記照準ビームの照準ビーム位置を識別するステップをさらに含み、
前記治療用レーザが前記標的領域位置に向けられていないことを確認するステップは、前記照準ビーム位置と前記標的領域位置との間の偏移に基づいて、前記治療用レーザが前記標的領域位置に向けられていないことを確認するステップを有する、ことを特徴とする請求項101に記載の方法。
【請求項104】
前記照準ビームの波長は、700nmより大きい、ことを特徴とする請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記画像は、前記照準ビームが放射されている間に取得され、前記照準ビームが当該第1の画像に現れる第1の画像と、前記照準ビームが放射される前または後に取得され、前記照準ビームが当該第2の画像に現れない第2の画像と、を有し、
前記照準ビーム位置を特定するステップは、前記第1の画像内の前記照準ビーム位置を特定するステップを有し、
前記基準点位置を識別するステップは、前記第2の画像内の前記基準点位置を識別するステップを有する、ことを特徴とする請求項103に記載の方法。
【請求項106】
前記画像は、前記照準ビームが現れる第1のフレームと、前記照準ビームが現れない第2のフレームとを含む単一の画像からなり、
前記照準ビーム位置を識別するステップは、前記第1のフレーム内の前記照準ビーム位置を識別するステップを有し、
前記基準点位置を識別するステップは、前記第2のフレーム内の前記基準点位置を識別するステップを有する、ことを特徴とする請求項103に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑内障、高眼圧症(OHT)、および他の疾患を治療するための眼科用装置および方法に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年12月29日に出願された「直接選択的レーザ線維柱帯形成術中の血管の回避」という表題の米国特許出願17/136,052(特許文献1)の一部の継続であり、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。さらに2020年10月26日に出願された「レーザ眼科手術で使用するための血管収縮剤」と題する米国暫定特許出願63/105,388(特許文献2)の利益を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
米国特許第5,422,899号(特許文献3)は、レーザ手術で使用するための高いパルス反復率を備えた光学的に励起された中赤外固体レーザについて説明している。レーザは1.7 ~ 4.0マイクロメータの波長を生成し、光学的に励起される。
【0004】
米国特許第6,761,713号(特許文献4)には、レーザ材料でできた少なくとも1つのレーザ本体を含む医療用レーザユニットが記載されている。 第1のタイプのポンプ源は、レーザ材料を連続的に励起し、連続レーザ放射を生成するように設計および配置される。第2のタイプのポンプ源は、パルスによってレーザ材料を励起し、パルスレーザ放射を生成するように設計および配置される。送信ユニットは、連続レーザ放射およびパルスレーザ放射を外科適用部位に送信するように設計および配置される。より具体的には、医療用レーザユニットは、連続レーザ放射による切断のための第1のモードと、短時間で高出力のレーザパルスのパルスレーザ放射による断片化のための第2のモードの2つの動作モードを有する。
【0005】
米国特許第8,160,113号(特許文献5)は、シードソースと、シードソースからのシード信号のパワーを制御することによって制御できる、シードソースに結合された光増幅器を有する光学システムからの出力パルスについて説明している。シード信号は、シード信号が1つまたは複数のパルスバーストを示すように、最小値と最大値との間で変化することができる。各パルスバーストには、1つまたは複数のパルスが含まれる場合がある。パルスバースト内の連続するパルス間または連続するパルスバースト間のパルス間期間中、シード信号の電力は、最小値よりも大きく最大値よりも小さい中間値に調整され得る。中間値は、周期に続くパルスまたはパルスバーストが所望の挙動を示すように、光増幅器の利得を制御するために選択される。
【0006】
米国特許第5,982,789号(特許文献6)は、ポンプダイオード、結晶、およびダイオードを備えたレーザキャビティ内のダブラーを使用し、パルスまたは低デューティサイクルポンピング方式で動作するダイオードポンプダブリングシステムについて説明している。パルスダイオード動作に応答し、非CWポンピングレジメンで安定した既知または制御されたエネルギー出力を生成する。 好ましい実施形態では、装置は、その非臨界軸を横切って固定されたダブラーを使用し、アクティブモードボリュームで等温線を生成する制御システムで操作される。コントローラは、1つまたは複数の別個の熱源および/またはシンクを操作して、ダイオードソースまたはダブリングクリスタルを予熱し、方向付けられた温度勾配を維持する。等温線がモードボリュームを横切って移動する速度または方向は、レーザ操作中に効果的に安定した状態を維持するための次のパルスシーケンスに従って制御される。熱制御システムは、作動前および休止期間中にレーザダイオードを予熱するためのシンク、ヒータ、および制御要素を含むことができる。
【0007】
米国特許第5,151,909号(特許文献7)は、複数のポンプ電力モードが利用できるように、データプロセッサの制御下で動作する、第2高調波発生用の非線形結晶と固体ゲイン媒体を使用するレーザシステムについて説明している。データプロセッサは、低電力モードでポンプ電力を変調し、高電力モードで Qスイッチングと組み合わせて連続ポンプ電力を供給する。別の方法として、低電力モードと高電力モードの両方で変調を使用し、変調のパラメータをプログラム制御で調整することもできる。高電力モードでのQスイッチなしの第2高調波発生も同様に実現できる。
【0008】
米国特許第6,414,980号(特許文献8)には、レーザ加工操作を実行するためのキャビティ外周波数変換固体レーザの操作方法が記載されている。 レーザは、光ポンピングされたゲイン媒体を含むレーザ共振器を備えている。 共振器は、利得媒体における熱レンズ効果の所定の範囲を補償するように構成される。共振器の外側に配置された光学的非線形結晶は、共振器によって供給される基本レーザ放射を周波数変換放射に変換する。レーザ加工操作は、加工操作を実行するのに十分なパワーを有する周波数変換された放射の一連のパルスによって実行される。周波数変換された放射の出力は、レーザ共振器からのレーザ放射の配信パラメータに依存する。レーザは、レーザ加工操作の前と最中に、共振器が基本波レーザ放射の同じ平均パワーを有効に送達するように操作される。 これにより、レーザ加工操作の前および操作中に、利得媒体内の熱レンズ効果が所定の範囲内にあることが保証される。加工操作前および加工操作中のレーザ放射の送達パラメータは、加工操作前に生成された周波数変換放射の出力がレーザ加工操作を実行するには不十分であるように変更される。
【0009】
レーザ線維柱帯形成術では、レーザが患者の眼の線維柱帯に1つまたは複数の治療ビームを照射し、眼の眼圧を低下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願17/136,052
【特許文献2】米国暫定特許出願63/105,388
【特許文献3】米国特許第5,422,899号
【特許文献4】米国特許第6,761,713号
【特許文献5】米国特許第8,160,113号
【特許文献6】米国特許第5,982,789号
【特許文献7】米国特許第5,151,909号
【特許文献8】米国特許第6,414,980号
【発明の概要】
【0011】
本発明の幾つかの実施形態によれば、放射線源とコントローラとを有するシステムが提供される。コントローラは:それぞれの量のエネルギーを照射するために、患者の眼の複数の標的領域を指定し、放射線源に対し、複数の標的領域の少なくとも第1の標的領域を照射するようにさせ、放射線源に対し、複数の標的領域の少なくとも第1の標的領域を照射するようにさせた後、眼の画像を処理することによって、眼の変化を識別し、眼の変化の識別に応答して、放射線源に対し、まだ照射されていない複数の標的領域の第2の標的領域を、第2の標的領域に指定されたエネルギー量で照射することを控えさせる、ように構成される。
【0012】
幾つかの実施形態では、コントローラは、新しい標的領域を指定し、放射線源に対し第2 の標的領域の代わりに新しい標的領域を照射するようにさせる。
【0013】
幾つかの実施形態では、コントローラは、放射線源に対し、複数の標的領域のうちの第2の標的領域に対して指定されたエネルギー量よりも少ない別のエネルギー量で第2の標的領域を照射するようにさせることにより、第2の標的領域に対して指定されたエネルギー量で第2の標的領域を照射することを控えさせる。
【0014】
幾つかの実施形態では、変化が出血を含む。
幾つかの実施形態では、変化が膨張を含む。
幾つかの実施形態では、変化が色の変化を含む。
幾つかの実施形態では、変化は、1つ以上の泡の形成を含む。
幾つかの実施形態では、コントローラは、第2の標的領域と眼の別の1つの領域との間の距離に応じて、放射線源に対して第2の標的領域を照射することを控えさせるように構成される。
【0015】
幾つかの実施形態では、コントローラは、第2の標的領域において解剖学的特徴を識別するようにさらに構成され、コントローラは、解剖学的特徴の識別に応答して、放射線源に対し第2の標的領域を照射させることを控えるように構成される。
幾つかの実施形態では、コントローラは、第2の標的領域を照射する放射線ビームと解剖学的特徴との間のオーバーラップの予測尺度を計算するようにさらに構成され、コントローラは、オーバーラップの予測尺度に応答して、放射線源に対し第2の標的領域を照射することを控えさせるように構成される。
【0016】
幾つかの実施形態では、解剖学的特徴は、第2の標的領域の解剖学的特徴であり、コントローラは、第1の標的領域において第1の標的領域の解剖学的特徴を識別するようにさらに構成され、コントローラは、第1の標的領域の解剖学的特徴の識別に応答して、放射線源に対し第2の標的領域を照射することを控えさせるように構成される。
幾つかの実施形態では、コントローラは、第1の標的領域の解剖学的特徴および第2の標的領域の解剖学的特徴が同じタイプであることに応答して、放射線源に対し第2の標的領域を照射することを控えさせるように構成される。
【0017】
幾つかの実施形態では、コントローラはさらに、(a)第1の標的領域を照射した第1の放射線ビームと(b)第1の標的領域の解剖学的特徴との間のオーバーラップの推定尺度を計算し、(a)第2の標的領域を照射した第2の放射線ビームと(b)第1の標的領域の解剖学的特徴との間のオーバーラップの予測尺度を計算する、ように構成され、コントローラは、オーバーラップの予測尺度およびオーバーラップの推定尺度に応答して、放射線源に対し第2の標的領域を照射することを控えさせるように構成される。
【0018】
幾つかの実施形態では、コントローラはさらに、第1の放射線ビームによって第1の標的領域の解剖学的特徴に送達される推定エネルギー量を計算し、そして第2の放射線ビームによって第2の標的領域の解剖学的特徴に送達される予測エネルギー量を計算する、ように構成され、コントローラは、推定エネルギー量および予測エネルギー量に応答して、放射線源に対し第2の標的領域を照射することを控えさせるように構成される。
【0019】
幾つかの実施形態では、コントローラは、第2の標的領域を照射することに関連するリスク尺度を計算するようにさらに構成され、コントローラは、リスク尺度に応答して、放射線源に対し第2の標的領域を照射することを控えさせるように構成される。
幾つかの実施形態では、コントローラは、患者の医療プロファイルに基づいてリスク尺度を計算するように構成される。
幾つかの実施形態では、コントローラは、第2の標的領域で解剖学的特徴を識別するようにさらに構成され、コントローラは、第2の標的領域の解剖学的特徴のタイプに基づいてリスク尺度を計算するように構成される。
【0020】
本発明の幾つかの実施形態によればさらに、方法であって:それぞれの量のエネルギーを照射するために、患者の眼の複数の標的領域を指定するステップと;放射線源に対し標的領域の少なくとも第1の領域を照射させるステップと;続いて、眼の画像を処理して眼の変化を識別することにより、放射線源に対し複数の標的領域のうち、少なくとも第1の領域を照射させるステップと;および、変化の識別に応答して、放射線源に対しまだ照射されていない第2の標的領域を第2の標的領域に指定されたエネルギー量で照射することを控えさせるステップと;を有することを特徴とする方法が提供される。
【0021】
本発明の幾つかの実施形態によればさらに、放射線源とコントローラとを有するシステムが提供される。コントローラは:眼の画像を取得し、画像において、基準点に対して異なるそれぞれの角度で複数の端点を識別し、ここで基準点は端点から半径方向内側の眼の上に位置し、端点のそれぞれは、それぞれの血管の端部にあり、基準点と端点の間の眼の複数の標的領域を画定し、放射線源に対し標的領域を照射させる、ように構成される。
【0022】
幾つかの実施形態では、基準点が眼の虹彩の中心に位置する。
幾つかの実施形態では、基準点が眼の角膜輪部の中心に位置する。
幾つかの実施形態では、基準点が眼の瞳孔の中心に位置する。
幾つかの実施形態では、各角度について、それぞれの血管の端部は、その角度における血管の他の端部よりも基準点に近い。
幾つかの実施形態では、コントローラは:端点と基準点との間の少なくとも1つの治療経路を画定するステップと;および標的領域のそれぞれが治療経路上にあるように標的領域を画定するステップと;により標的領域を画定するように構成される。
【0023】
幾つかの実施形態では、コントローラは、端点のうちの任意の1つと治療経路との間の最短距離が少なくとも0.001mmであるように治療経路を画定するように構成される。
幾つかの実施形態では、コントローラは、端点を通過する少なくとも1つの曲線を画定し、曲線を基準点に向かってオフセットし、オフセットされた曲線に応答して治療経路を画定する。
幾つかの実施形態では、コントローラは、治療経路をオフセットされた曲線に内接する所定の形状の周囲として画定することにより、オフセットされた曲線に応答して治療経路を画定するように構成される。
【0024】
幾つかの実施形態では、所定の形状は楕円である。
幾つかの実施形態では、コントローラは、治療経路をオフセットされた曲線に内接する最大面積の所定の形状の周囲として画定することによって、オフセットされた曲線に応答して治療経路を画定するように構成されている。
幾つかの実施形態では、コントローラは、治療経路を、基準点を中心とし、オフセットされた曲線に内接する最大面積の所定の形状の周囲として画定することによって、オフセット曲線に応答して治療経路を画定するように構成される。
幾つかの実施形態では、コントローラは、オフセットされた曲線に内接し、眼の角膜輪部の形状を有する閉曲線として治療経路を画定することによって、オフセット曲線に応答して治療経路を画定するように構成される。
【0025】
本発明の幾つかの実施形態によればさらに、方法であって:眼の画像を取得するステップと;画像において、異なるそれぞれの角度で複数の端点を識別するステップであって、基準点は端点から半径方向内側の眼に位置し、端点のそれぞれは、それぞれの血管の端部上にある、ステップと;基準点と端点との間で眼の上に複数の標的領域を画定するステップと;および放射線源に対し標的領域を照射するようにさせるステップと;を有することを特徴とする方法が提供される。
【0026】
本発明の幾つかの実施形態によればさらに、放射線源とコントローラとを有システムが提供される。コントローラは:の画像を取得し、画像において、基準点に対して異なるそれぞれの角度で複数の端点を識別し、ここで基準点は端点から半径方向内側の眼に位置し、そして端点のそれぞれは、それぞれの血管の端部にあり、端点を通過する少なくとも1つの曲線を画定し、基準点に向かって曲線をオフセットし、オフセットされた曲線をユーザに表示しながら、ユーザから眼の複数の標的領域の画定を受け取り、そして放射線源に対し標的領域を照射するようにさせる、ように構成される。
【0027】
本発明の幾つかの実施形態によればさらに、方法であって:眼の画像を取得するステップと;像において、基準点に対して異なるそれぞれの角度で複数の端点を識別するステップであって、基準点は端点から半径方向内側の眼に位置し、そして端点のそれぞれは、それぞれの血管の端部にある、ステップと;端点を通過する少なくとも1つの曲線を画定するステップと;基準点に向かって曲線をオフセットするステップと;オフセットされた曲線をユーザに表示しながら、ユーザから眼の複数の標的領域の画定を受け取るステップと;そして放射線源に対し標的領域を照射するようにさせるステップと;を有することを特徴とする方法が提供される。
【0028】
本発明の幾つかの実施形態によればさらに、方法であって:α2アゴニストを患者の眼に投与するステップと;そしてα2アゴニストの投与後40分以内に患者の眼をレーザ照射で治療するステップと;を有することを特徴とする方法が提供される。
幾つかの実施形態では、患者の眼を治療するステップは、眼の小柱網にレーザ放射を照射することによって患者の眼を治療するステップを有する。
幾つかの実施形態では、患者の眼を治療するステップは、α2アゴニストの投与後30分以内に患者の眼を治療するステップを有する。
幾つかの実施形態では、患者の眼を治療するステップは、眼の血管がα2アゴニストによって十分に収縮されたというコントローラからの指示に応答して、患者の眼を治療するステップを有する。
【0029】
本発明の幾つかの実施形態によればさらに、患者の眼を血管収縮させる方法において使用するためのα2アゴニストが提供される。α2アゴニストは眼をレーザ照射で治療する40分以内に患者に投与される。
本発明の幾つかの実施形態によればさらに、(CL70)が提供される。
【0030】
本発明の幾つかの実施形態によればさらに、ポンプ源とレーザ媒質を含むレーザと;コントローラと;を有するシステムが提供される。コントローラは:レーザによる照射のために、患者の眼の複数の標的領域を順番に指定し、ポンプ源を駆動して、それぞれがレーザ媒質をレーザ発振させるように構成されたレーザ発振発生パルスの列でレーザ媒質のポンピングを開始することにより、標的領域の照射を開始し、標的領域の照射の開始に続いて、ポンプ源に対し、レーザ発振発生パルスの1つを1つまたは複数の加熱パルスで置き換えさせる、ように構成され、加熱パルスは、レーザ媒質をレーザ発振させることなく、レーザ媒質を加熱するように構成されている。
【0031】
幾つかの実施形態では、コントローラは、標的領域の照射を開始する前に、レーザ媒質をレーザ発振させることなく、レーザ媒質を加熱させるようにさらに構成される。
幾つかの実施形態では、加熱パルスの総エネルギーは、レーザ発振発生パルスのそれぞれのレーザ発振発生パルスエネルギーの70-100%の間である。
幾つかの実施形態では、1つまたは複数の加熱パルスが N>1 の加熱パルスからなる。
幾つかの実施形態では、加熱パルスのそれぞれは、D0/N の加熱パルス持続時間を有し、ここで D0 は、レーザ発振発生パルスのそれぞれのレーザ発振発生パルス持続時間である。
幾つかの実施形態では、加熱パルスの各々は、レーザ発振発生パルスの各々のピーク電力に等しいピーク電力を有する。
【0032】
幾つかの実施形態では、レーザ発振発生パルスの列は周期 T で周期的であり、コントローラは、ポンプ源対し、レーザ発振発生パルスの1つがポンピングされた時点からの時間 {k*T/N}、k=0…N-1 において加熱パルスで置換させるように構成される。
幾つかの実施形態では、コントローラは、エラーを示す信号に応答して、ポンプ源に対し加熱パルスで置換させるように構成される。
幾つかの実施形態では、コントローラは、カメラによって取得された眼の1つまたは複数の画像を処理するようにさらに構成され、コントローラは、画像の処理に応答して、ポンプ源に対し加熱パルスで置換させるように構成される。
幾つかの実施形態では、コントローラは、画像を処理することによって眼の障害を識別するように構成され、コントローラは、眼の障害の識別に応答してポンプ源に対し加熱パルスで置換させるように構成される。
【0033】
幾つかの実施形態では、コントローラは、画像を処理することによって眼の変化を識別するように構成され、コントローラは、眼の変化の識別に応答してポンプ源に対し加熱パルスで置換させるように構成される。
幾つかの実施形態では、眼の変化は、1つまたは複数の泡の形成を含む。
幾つかの実施形態では、コントローラは、画像を処理することによって眼の上の基準点の基準点位置を特定するように構成され、コントローラは、さらに記基準点位置に基づいて、1つの標的領域位置を計算し、そしてレーザが標的領域位置に向けられていないことを確認する、ように構成され、コントローラは、確認に応答してポンプ源に対し加熱パルスで置換させるように構成される。
【0034】
幾つかの実施形態では、1つまたは複数のモータをさらに備え、コントローラは、モータを使用してレーザの照準を合わせるようにさらに構成され、コントローラは、モータのそれぞれのエンコーダからのそれぞれの信号に応答してレーザが標的領域位置に向けられていないことを確認するように構成される。
幾つかの実施形態では、レーザは治療用レーザであり、システムは、照準レーザをさらに備え、コントローラは、さらに:照準レーザに対し、治療用レーザが照準を合わせた位置に照準ビームを発射するようにさせ、画像を処理することによって照準ビームの照準ビーム位置を識別する、ように構成され、コントローラは、照準ビーム位置と標的領域位置との間の偏移に基づいて、治療用レーザが標的領域位置に向けられていないことを確認するように構成される。
【0035】
幾つかの実施形態では、照準ビームの波長は700nmより大きい。
幾つかの実施形態では、画像は、照準ビームが放射されている間に取得され、照準ビームが当該第1の画像に現れる第1の画像と、照準ビームが放射される前または後に取得され、照準ビームが当該第2の画像には表示されない、第2の画像とを有し、コントローラは、第1の画像内で照準ビーム位置を識別するように構成され、コントローラは、第2の画像内で基準点位置を識別するように構成される。
【0036】
幾つかの実施形態では、画像は、照準ビームが現れる第1のフレームと、照準ビームが現れない第2のフレームとを含む単一の画像からなり、コントローラは、第1のフレーム内の照準ビーム位置を識別するように構成され、コントローラは、第2のフレーム内の基準点位置を識別するように構成される。
本発明の幾つかの実施形態によればさらに、方法であって:レーザによる連続する照射のために、患者の眼の複数の標的領域を指定するステップと;ポンプ源を駆動して、それぞれがレーザのレーザ媒質をレーザ発振させるように構成されたレーザ発振発生パルスの列でレーザ媒質のポンピングを開始することにより、標的領域の照射を開始するステップと; および標的領域の照射を開始するステップに続いて、ポンプ源に対し、レーザ発振発生パルスの1つを1つまたは複数の加熱パルスで置き換えさせるステップであって、加熱パルスは、レーザ媒質をレーザ発振させることなく、レーザ媒質を加熱するように構成されている、ステップと;を有することを特徴とする方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本発明は、以下の実施形態の詳細な説明を図面と併せて読むことにより、より完全に理解されるであろう:
【
図1】本発明のいくつかの実施形態による、線維柱帯形成治療を実行するためのシステムの概略図である。
【
図2】本発明のいくつかの実施形態による、線維柱帯形成装置の概略図である。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態による、眼の上の標的領域を画定する技術の概略図である。
【
図4】本発明のいくつかの実施形態による、標的領域を画定するためのアルゴリズムの流れ図である。
【
図5】本発明のいくつかの実施形態による、自動線維柱帯形成術を実行するためのアルゴリズムの流れ図である。
【
図6A】本発明の異なるそれぞれの実施形態による画像処理ステップの流れ図である。
【
図6B】本発明の異なるそれぞれの実施形態による画像処理ステップの流れ図である。
【
図7】本発明のいくつかの実施形態によるチェックステップの流れ図である。
【
図8】本発明のいくつかの実施形態による、チェックステップおよび標的領域シフトステップの実施例を示す図である。
【
図9】本発明のいくつかの実施形態による、レーザ発振を引き起こすパルスおよび加熱パルスのタイムラインの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(概要)
眼にレーザ線維柱帯形成術を行う場合、出血やその他の悪影響のリスクがあるため、血管やその他の敏感な解剖学的構造への照射を避けることが望ましい。
【0039】
この課題に対処するために、本発明の実施形態は、眼の血管を回避する治療経路を画定するための技術を提供する。治療経路の画定に続いて、治療経路上の複数の標的領域が画定され、次に標的領域が照射される。
【0040】
治療経路を画定するために、コントローラはまず眼の角膜輪部を取り囲む血管の内縁にある複数の点を特定する。続いて、コントローラは点を通る曲線を画定する。次に、コントローラは曲線を眼の中心に向かって内側にオフセットする。 最後に、コントローラはオフセットされた曲線内に治療経路を書き込む。
【0041】
上記にもかかわらず、場合によっては、例えば眼の血管の異常な分布のために、上記のように治療経路を画定することができない場合がある。また、腫瘍などの血管以外の敏感な部分への照射も悪影響を与える可能性がある。
【0042】
仮説としては、この課題を考慮して、血管やその他の敏感な領域を通過する治療経路の一部を切り取ることが可能かもしれないが、しかし、本発明者らが観察したように、放射線に対する眼の感受性の程度をアプリオリに知ることは一般に不可能である。たとえば、一部の患者では、血管にレーザ光線を直接当てても出血しない。したがって、眼のすべての敏感な領域を避けることは、一部の患者にとっては治療の有効性を不必要に低下させる可能性がある。
【0043】
この課題に対処するために、本発明の実施形態は、治療経路が敏感な領域を通過することを可能にするが、治療が進行するにつれて、適切な画像処理技術を使用して眼を継続的に監視する。眼に問題のある変化(出血など)が観察された場合、コントローラは、次の標的領域ごとに、次の標的領域の照射が同様の変化を引き起こす可能性を評価する。高い可能性に応答して、コントローラは次の標的領域をシフトまたはスキップする場合がある。したがって、有利なことに、治療経路は、治療の有効性を不必要に損なうことなく、選択的に修正される。
【0044】
例えば、照射された標的領域での変化の観察に応答して、コントローラは、照射された標的領域の敏感な解剖学的特徴のタイプに依存するリスク尺度(そのような特徴が存在する場合)、この敏感な解剖学的特徴に送達される放射線エネルギーの推定量 、次の標的領域での敏感な解剖学的特徴のタイプ(そのような特徴が存在する場合)、および次の敏感な解剖学的特徴に送達される放射線エネルギーの推定量、を計算することができる。所定のしきい値を超えるリスク尺度に応答して、コントローラは次の標的領域をシフトまたはスキップする場合がある。
【0045】
代替的または追加的に、発生する出血の量を減らすために(例えば、出血を引き起こさないようにするため)、眼は、照射の前(例えば、40分以内前)にアプラクロニジンおよび/またはブリモニジンなどの血管収縮α2アゴニストで治療することができる。α2アゴニストの投与後、コントローラは、眼の画像を処理することにより、眼の血管が収縮した程度を監視することができる。血管が十分に収縮したことの確認に応答して、コントローラは、眼への照射を開始できるという指示を出力することができる。
【0046】
問題のある変化について眼を監視することに加えて、コントローラは、適切な画像処理技術を使用して、治療経路に沿って横たわる障害物を継続的にチェックする。障害物の検出に応答して、1つまたは複数の標的領域がシフトまたはスキップされる場合がある。
【0047】
通常、各標的領域の照射の直前に、コントローラは、標的領域の画定に続く眼の動きを考慮して、レーザが標的領域の位置に向けられているかどうかを確認する。(このチェックは、通常、上記の眼の変化または障害のチェックに加えて実行される。) レーザがその位置に向けられていない場合、または位置を計算できなかった場合、コントローラは差し迫った照射を中止する。次いで、眼の別の画像を取得して処理した後、標的領域の照射を再試行することができる。あるいは、対象領域をスキップすることもできる。
【0048】
レーザが適切に照準を合わせられているかどうかを確認するために、コントローラは、レーザの照準を合わせるために使用されるビーム誘導要素の方向を決めるモータのエンコーダから受信した信号を処理する場合がある。代替的または追加的に、コントローラは、カメラによって取得された眼の画像を処理して、レーザが照準を合わせた位置で眼に当たる照準ビームの位置を特定することができる。そのような実施形態では、照準ビームが患者の邪魔にならないように、照準ビームは(カメラには見えるが)患者には見えなくてもよい。代替的または追加的に、照準ビームは、眼の動きの追跡を妨げないように構成および/または制御されてもよい。例えば、カメラは、照準ビームが現れる第1のフレームと照準ビームが現れない第2のフレームとを画像が含むように、照準ビームの波長をフィルタリングするフィルタマトリクスを備えてもよい。あるいは、コントローラは、照準ビームが放射されている間に第1の画像を取得し、照準ビームが放射されていない間に第2の画像を取得してもよい。次いで、コントローラは、第1の画像またはフレーム内で照準ビームの位置を特定することができるが、第2の画像またはフレームに基づいて眼の動きを追跡する。
【0049】
いくつかの実施形態では、(例えば、障害物、出血などの変化、またはレーザの不適切な照準による)標的領域の差し迫った照射を中止する判定に応答して、コントローラは、レーザのポンプ源を駆動して、1つまたは複数の加熱パルスでレーザのレーザ媒質をポンピングする。典型的には、加熱パルスの総エネルギーは、差し迫った照射を続行することをコントローラが判定した場合にレーザ媒質に送達されたであろうエネルギーにほぼ等しい。しかしながら、この総エネルギーは、レーザ媒質がレーザを発振しないように、十分に長い時間にわたって拡散される。したがって、有利なことに、レーザの熱平衡は、標的領域(または、標的領域がスキップされる場合は、次の標的領域)が照射されるまで維持され得る。代替的または追加的に、治療を開始する前に、第1の治療ビームの発射前に熱平衡に達するように、レーザ媒質を加熱パルスでポンピングすることができる。一方、レーザ媒質が一定期間加熱されないまま放置された場合、その期間に続いてレーザによって発射される少なくとも第1治療ビームの照射エネルギーは、所望のエネルギーよりも低くなる可能性があり、および/またはビーム プロファイルまたは ビーム照準が不安定になる場合がある。
【0050】
(システムの説明)
最初に、線維柱帯形成術を実施するための線維柱帯形成装置21を含むシステム20の概略図である
図1を参照する。本発明のいくつかの実施形態による線維柱帯形成装置21の概略図である
図2をさらに参照する。
【0051】
線維柱帯形成装置21は、光学ユニット30およびコントローラ44を備える。光学ユニット30は、患者22の眼25(例えば、眼25の小柱網)に1つまたは複数の治療ビームを照射するように構成された放射線源48を備える。
【0052】
通常、放射線源48は、Ekspla(商標)NL204-0.5K-SHレーザなどの治療用レーザ43を含む。治療用レーザ43は、例えば、半導体、ガラス、またはネオジムドープイットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)結晶などの結晶を含むことができるレーザ媒質45を含む。レーザ媒質45は、レーザダイオードなどの任意の適切なポンプ源47によってポンピングされ得る。ポンピングは、光学的、電気的、または他の適切なタイプのものであってもよい。治療用レーザ43は、安定または不安定な共振空洞を画定するように配置された複数のミラー49をさらに備える。(各ミラー49は独立した要素であってもよいし、別の要素をコーティングする反射コーティングを備えていてもよい。)治療用レーザ43は、レーザ媒質45から熱を除去する熱貯蔵器57をさらに備える。
【0053】
いくつかの実施形態では、レーザは、Qスイッチ(QS)63をさらに備える。代替的または追加的に、レーザは、レーザ媒質45によって発射される波長を治療のために適切な別の波長に変換する第2高調波発生(SHG)結晶51を備えることができる。(SHG結晶51は、共振キャビティの内部または外部にあってもよい。)レーザは、典型的には共振キャビティの外部にある減衰器、エネルギーメータ、および/または機械的シャッターを含むように変更されてもよい。
【0054】
通常、放射線源はドライバ53さらに備え、コントローラ44は、ドライバ 53を介してポンプ源47を駆動し、レーザ媒質45をポンピングする。特に、ドライバ53は、通常はケーブル59を介して、コントローラ44から制御信号 55を受信する。制御信号55に応答して、ドライバは電気駆動信号をポンプ源47に出力し、ポンプ源はそれに応答してレーザ媒質をポンピングする。他の実施形態では、コントローラは、ポンプ源に駆動信号を出力することによって、ポンプ源47を直接駆動する。
【0055】
光学ユニット30は、1つまたは複数のビーム誘導要素をさらに含み、たとえば、「ガルボスキャナー」と総称される1つまたは複数(たとえば2つ)のガルボミラー50を含む。各治療ビーム52を放射する前に、コントローラ44は、ビーム誘導要素を標的領域に向けるように方向付けることによって、眼25の所望の標的領域に治療用レーザ43を向ける。(各治療ビームは非無限小のスポットサイズで眼に当たるので、本出願は一般に、眼の「点」に当たるのではなく、眼の「領域」に当たるものとして各ビームを説明する。)したがって、例えば、ビームはガルボミラー50によってビームコンバイナ56に向かって偏向され、次にビームコンバイナによってビームが標的領域に衝突するように偏向され得る。したがって、ビームは、ビームコンバイナ56などの光学ユニット30内の光学要素の最下流から眼25まで延びる経路92をたどる。
【0056】
通常、コントローラは、ビーム誘導要素のそれぞれの照準モータ61に制御信号39を(例えば、ケーブル23を介して)通信することによって、ビーム誘導要素を配向する(したがって、レーザを照準する)。通常、コントローラは、照準モータ61のそれぞれのエンコーダ67から、ビーム誘導要素のそれぞれの向きを示すフィードバック信号37を(例えば、ケーブル23または異なるケーブルを介して)受信する。
【0057】
いくつかの実施形態では、治療ビームは可視光を含む。代替的または追加的に、治療ビームは、マイクロ波放射、赤外線放射、X線放射、ガンマ放射、または紫外線放射などの非可視電磁放射を含んでもよい。通常、治療ビームの波長は、200~11000nmの間、例えば500~850nm、例えば520~540nm、例えば532nmである。眼上の各治療ビーム52の空間プロファイルは、楕円形(例えば、円形)、正方形、または任意の他の適切な形状であってもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、放射線源48は、可視または不可視(例えば赤外線)照準ビームを発射するように構成された照準レーザをさらに備える。照準レーザは治療用レーザ43と十分にオーバーラップし、ビーム方向付け要素の任意の向きに対して、ビーム方向付け要素が照準ビームと治療ビームを同じ位置に向ける。したがって、照準レーザは、
図6Bを参照して以下でさらに説明するように、治療用レーザの照準を容易にすることができる。
【0059】
レーザの代わりに、またはレーザに加えて、放射線源は、治療ビームまたは照準ビームを発射するように構成された任意の他の適切なエミッターを備えてもよい。
【0060】
光学ユニット30は、眼の画像を取得するためにコントローラ44によって使用されるカメラ54をさらに備える。
図2に示されるように、カメラ54は通常、経路92と少なくともほぼ位置合わせされている。例えば、経路92と眼25からカメラまで延びる仮想線との間の角度は、15度未満であり得る。いくつかの実施形態では、カメラはビームコンバイナ56の背後に配置され、カメラはビームコンバイナを介して光を受信する。他の実施形態では、カメラはビームコンバイナからずれている。
【0061】
手順の前に、カメラ54は、眼25の少なくとも1つの画像を取得する。画像に基づいて、コントローラ44は、
図3-4を参照して以下でさらに説明されるように、照射されるべき眼の標的領域を画定することができる。代替的または追加的に、コントローラ44は、
図4-5を参照して以下でさらに説明されるように、画像に基づいて、1つまたは複数の血管または眼の他の解剖学的特徴を識別し得る。
【0062】
その後、治療中に、カメラ54は、比較的高い頻度で患者の眼の複数の画像を取得することができる。コントローラ44は、これらの画像を処理し、それに応答して、6A-Bおよび
図7を参照して以下でさらに説明されるように、障害物および潜在的に敏感な解剖学的特徴を回避しながら眼の標的領域を照射するように、放射線源48およびビーム誘導要素を制御することができる。
【0063】
一般に、カメラ54は、電荷結合素子(CCD)センサ、相補型金属酸化物半導体(CMOS)センサ、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)センサ、および/またはハイパースペクトル イメージ センサなどの任意の適切なタイプの画像センサを複数備える。センサを使用して、カメラは、モノクロ画像、カラー画像(たとえば、3つのカラーフレームに基づく)、マルチスペクトル画像、ハイパースペクトル画像、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)画像、またはそれぞれ異なる種類の複数の画像を融合して生成された画像などの任意の適切なタイプの2次元、または3次元画像を取得できる。
【0064】
いくつかの実施形態では、光学ユニット30は、光源66をさらに含み、光源66は、少なくともほぼ経路92と位置合わせされる。例えば、経路92と、眼25上の経路92の端部から光源66まで伸びる仮想線との間の角度は、10度未満など、20度未満でありうる。光源66は、可視固視光68を送信することによって固視標的64として機能するように構成され、したがって眼の位置を安定させるのに役立つ。
【0065】
特に、治療の前に、患者22は眼25を光源66に固視するように指示される。続いて、治療の間、固視光68を伝達する光源66のおかげで、眼25は光源を凝視する。眼の視線は経路92とほぼ一致し(光源が経路とほぼ整列しているため)、眼は比較的安定している。眼が光源を凝視している間、放射線源は眼に治療ビーム52を照射する。
【0066】
いくつかの実施形態では、光源66は、発光ダイオード(LED)などの発光体を含む。他の実施形態では、光源は、発光体から発射された光を反射するように構成された反射体を備える。
【0067】
通常、固視光68の波長は、治療ビームの波長よりも高くても低くてもよいが、350~850nmの間である。例えば、固視光68は、600~750nmの波長を有する橙色または赤色であり得、一方、治療ビームは、527~537nmの波長を有する緑色であり得る。
【0068】
通常、光学ユニットは光学ベンチを備え、放射線源、ガルボミラー、ビームコンバイナなど、光学ユニットに属する前述の光学要素の少なくとも一部は、光学ベンチに結合される。典型的には、光学ユニットはさらに、治療ビームおよび固視光が通過する前面33を備える。例えば、光学ユニット30は、光学ベンチを少なくとも部分的に包み込み、前面33を備える筐体31を備えることができる(筐体31は、プラスチック、金属、および/または任意の他の適切な材料で作製することができる)。前面33は、光学台に取り付けられるか、または光学台の一体部分であり得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、前面33は、治療ビームおよび固視光が通過する開口部58を画定するように成形される。他の実施形態では、前面は、開口部58の代わりに出口窓を備え、固視光68および治療ビーム52が出口窓を通過するようにする。出口窓は、プラスチック、ガラス、または他の適切な材料で作ることができる。
【0070】
通常、光学ユニット30は、例えば白色光または赤外線LEDなどの1つまたは複数のLEDを含む1つまたは複数の照明源60をさらに備える。例えば、光学ユニットは、開口部58を取り囲むLEDのリングを備えてもよい。そのような実施形態では、コントローラ44は、参照によりその開示が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2021/0267800号に記載されているように、照明源60が眼に対し断続的に光を点滅させてもよい。この点滅は、カメラによる撮像を容易にし、点滅光の明るさにより、眼に損傷を与えたり、患者に不快感を与えたりすることなく、瞳孔を収縮させるのにさらに役立つ。(説明を容易にするために、コントローラ44と照明源60との間の電気的接続は、
図2には明示的に示されていない。)いくつかの実施形態では、照明源60は、
図2に示されるように前面33に結合される。
【0071】
光学ユニットの位置決めを容易にするために、光学ユニットは、複数のビームエミッタ62(例えば、それぞれのレーザダイオードを含む)を備えることができ、これらは、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2021/0267800号に記載されるように、眼に複数の三角測距ビームを照射するように構成される。いくつかの実施形態では、ビームエミッタ62は、
図2に示されるように、前面33に結合される。他の実施形態では、ビームエミッタ62は、光学ベンチに直接結合される。
【0072】
光学ユニット30は、ジョイスティックなどの制御機構36によって制御されるXYZステージユニット32に取り付けられている。制御機構36を使用して、眼科医などのシステム20のユーザは、眼を治療する前に光学ユニットを位置決めすることができる(例えば、眼から光学ユニットまでの距離を調節することによって)。いくつかの実施形態では、XYZステージユニット32は、ステージユニットの位置決めに続くステージユニットの動きを禁止するように構成されたロック要素を備える。
【0073】
いくつかの実施形態では、XYZステージユニット32は1つまたは複数のモータ34を備え、制御機構36はインターフェース回路46に接続される。ユーザが制御機構を操作すると、インターフェース回路46はこの活動を適切な電子信号に変換し、これらの信号を出力する。信号に応答して、コントローラはXYZステージユニットのモータを制御する。
【0074】
他の実施形態では、XYZステージユニット32は、制御機構を操作することによって手動で制御される。そのような実施形態では、XYZステージユニットは、モータ34の代わりに一組のギアを備えてもよい。
【0075】
システム20は、額当て26および顎当て28を備えるヘッドレスト24をさらに備える。線維柱帯形成術の治療中、患者22は、あごを顎当て28に載せながら額を額当て26に押し付ける。いくつかの実施形態では、ヘッドレスト24は、患者の頭を後ろから固定し、患者の頭をヘッドレストに押し付けたままにするように構成された固定ストラップ27をさらに備える。
【0076】
いくつかの実施形態では、
図1に示されるように、ヘッドレスト24およびXYZステージユニット32は両方とも、トレイまたはテーブルトップなどの表面38上に取り付けられる。(このようないくつかの実施形態では、ヘッドレストはL字形であり、表面38の上面ではなく側面に取り付けられる。)他の実施形態では、XYZステージユニットは表面38に搭載され、ヘッドレストはXYZステージユニットに取り付けられる。
【0077】
通常、
図1に示すように、患者の眼を照射している間、光学ユニットは、経路 92が斜めになるように、眼が光学ユニットに向かって斜め下を注視している間、眼に向かって斜め上向きに向けられる。例えば、経路は、水平に対して5度から20度の間の角度θに向けることができる。有利なことに、この向きは、患者の頭がヘッドレストに寄りかかっているときに、患者の上眼瞼および関連する解剖学的構造による患者の眼の閉塞を低減する。
【0078】
いくつかの実施形態では、
図1に示すように、XYZステージユニットに取り付けられた楔40に取り付けられた光学ユニットによって、経路92の斜めの向きが達成される。つまり、光学ユニットは楔40を介してXYZステージユニットに取り付けられている(楔40は
図2では省略されている)。
【0079】
光学ユニットを傾ける代わりに、またはそれに加えて、患者の眼の閉塞を減らすために、患者の頭を後方に傾けることができる。
【0080】
システム20は、カメラによって取得された眼の画像を表示するように構成されたモニタ42をさらに備える。モニタ42は、光学ユニット30に取り付けられてもよいし、装置21に隣接する表面38上などの任意の他の適切な場所に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、モニタ42はタッチスクリーンを含み、ユーザはタッチスクリーンを介してシステムにコマンドを入力する。 代替的または追加的に、システム20は、キーボードまたはマウスなど、ユーザが使用することができる任意の他の適切な入力装置を備えることができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、モニタ42は、有線または無線通信を介してコントローラ44に直接接続される。他の実施形態では、モニタ42は、標準的なデスクトップコンピュータに属するプロセッサなどの外部プロセッサを介してコントローラ44に接続される。
【0082】
いくつかの実施形態では、
図2に示すように、コントローラ44はXYZステージユニット32内に配置される。他の実施形態では、コントローラ44はXYZステージユニットの外部に配置される。代替的または追加的に、コントローラは、本明細書に記載の機能の少なくとも一部を別の外部プロセッサと協働して実行することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、眼25の照射の前に、α2アゴニスト29(
図1)が眼に投与される。α2アゴニスト29は、例えば、アプラクロニジンおよび/またはブリモニジンを含み得る。典型的には、α2アゴニストは、α2アゴニストを含む点眼剤35を眼に滴下することによって眼に投与される。
【0084】
α2アゴニスト29の投与後、α2アゴニストは眼の血管を収縮させる。血管が十分に収縮された後、眼は治療ビーム52で照射される。典型的には、血管は十分に収縮されるので、照射はα2アゴニストの投与後40分未満(例えば、30、20、10、または分未満、または5分)に行われる。
【0085】
いくつかの実施形態では、α2アゴニストは少なくとも2回投与される。最初に(例えば、放射線治療の予想される開始時刻の約45~60分前に)、α2アゴニストを眼に投与して、眼圧の上昇の可能性を軽減する。次に、同じα2アゴニストまたは異なるα2アゴニストが、典型的には予想開始時間の40分未満(例えば、30、20、10、または5分未満)に投与される。所定の時間が経過しても十分な収縮が達成されない場合、同じα2アゴニストまたは異なるα2アゴニストが投与される。所定の時間(典型的には、30、20、10、または5分未満など、40分未満である)の後、治療が実施される。
【0086】
いくつかの実施形態では、システム20のユーザは、コントローラ44からの助けなしに、眼の血管が十分に収縮しているかどうかを評価する。
【0087】
他の実施形態では、コントローラ44は、カメラ54によって取得された画像に基づいてユーザを支援する。特に、コントローラは、画像を処理することによって、血管が収縮した程度を示す収縮尺度を計算する。(いくつかの実施形態では、画像の緑および/または青のフレームのみがこの眼的のために処理される。)収縮尺度が所定の閾値を超えることに応答して、コントローラは、血管がα2アゴニストによって十分に収縮されたという指示を出力する。例えば、コントローラは、放射線治療を続行できることを示すメッセージをモニタ42に表示することができる。(メッセージは収縮について明示的に言及する必要はない。) 指示に応答して、ユーザは治療を開始できる。 あるいは、収縮尺度が閾値を超えない場合、コントローラは、同じα2アゴニストまたは異なるα2アゴニストを投与すべきであるという指示を出力する。
【0088】
いくつかの実施形態では、収縮尺度は、眼の角膜輪部86(
図3)から所定の距離内にあり、グレーレベルが所定の閾値(例えば、230)より大きいピクセルのパーセンテージに基づく。代替的または追加的に、収縮尺度は、検出された血管の数および/または密度、検出された血管の平均または最大幅、および/または任意の他の適切な統計に基づくことができる。画像内の血管を検出するために、コントローラは、
図4を参照して以下に説明する技術のいずれかを使用することができる。
【0089】
一部の実施形態では、コントローラ44の機能の少なくとも一部は、本明細書で説明されるように、例えば、1つまたは複数の固定機能または汎用集積回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、および/またはフィールド プログラマブル ゲート アレイ(FPGA)などのハードウェアで実行されうる。代替的または追加的に、コントローラ44は、ソフトウェアおよび/またはファームウェアコードを実行することによって、本明細書に記載の機能の少なくとも一部を実行することができる。例えば、コントローラ44は、例えば、中央処理装置(CPU)および/またはグラフィック処理装置(GPU)を含むプログラムされたプロセッサとして具現化され得る。ソフトウェアプログラムを含むプログラムコードおよび/またはデータは、CPUおよび/またはGPUによる実行および処理のためにロードされ得る。プログラムコードおよび/またはデータは、例えばネットワークを介して電子形式でコントローラにダウンロードすることができる。代替的または追加的に、プログラムコードおよび/またはデータは、磁気、光学、または電子メモリなどの非一過性有形媒体に提供および/または格納されてもよい。そのようなプログラムコードおよび/またはデータは、コントローラに提供されると、本明細書に記載のタスクを実行するように構成されたマシンまたは専用コンピュータを生成する。
【0090】
いくつかの実施形態では、コントローラは、Varisite(商標)DART-MX8Mなどのシステムオンモジュール(SOM)を備える。
【0091】
(標的領域の画定)
ここで、本発明のいくつかの実施形態による、眼25上に標的領域84を画定するための技術の概略図である
図3を参照する。
【0092】
通常、カメラ54(
図2)は、眼の治療前に眼25の少なくとも1つの画像70を取得する。いくつかの実施形態では、画像70に基づいて、コントローラ44は、標的領域が画像内に見える血管72の上に位置しないように、標的領域84を画定する。(それでも標的領域は、小さすぎたり深すぎたりして画像に表示されない血管の上にある可能性がある。)
【0093】
標的領域を画定するために、コントローラはまず、画像70内で複数の端点76を識別する。端点76はそれぞれ、それぞれの血管72 の端部上にある。端点76は、端点から径方向内側の眼の上にある、基準点74に対してそれぞれ異なる角度φ にある。典型的には、各角度について、端点が存在する端部は、その角度における血管の他の端部よりも基準点74に近い。(通常、少なくとも50の端点76が識別されるが、簡単にするために、
図3は3つの端点76のみを示す。)
【0094】
端点の識別に続いて、コントローラは、基準点と端点の間に標的領域84を画定する。(典型的には、少なくとも50の標的領域が識別されるが、簡単にするために、
図3は1つの標的領域のみを示す。)例えば、コントローラは最初に端点と基準点との間に少なくとも1つの治療経路82を画定することができ、次に、標的領域のそれぞれが治療経路82上にあるように(例えば、標的領域のそれぞれの中心が治療経路上にあるように)、標的領域を画定する。連続する標的領域は、2~4度などの任意の適切な角度だけ互いに離間され得る。例えば、360度の治療経路の場合、コントローラは、90から180の間の数の標的領域を画定することができる。(各標的領域のサイズと間隔角度によっては、連続する標的領域が互いに重なる場合があることに注意する必要である。)
【0095】
いくつかの実施形態では、コントローラは、角度の所定のセットに属する各角度について、それぞれの端点および標的領域を画定する。血管エッジを識別できない角度について、コントローラは、基準点から所定の距離で、実際にはどの血管エッジにも存在しない合成端点を画定する。
【0096】
典型的には、治療経路は、標的領域と血管との間に十分な距離を提供するために、端点のいずれか1つと治療経路との間の最短距離が少なくとも0.1mm、例えば0.1mm~1mmの間となるように画定される。
【0097】
いくつかの実施形態では、治療経路を画定するために、コントローラはまず、例えば当技術分野で知られている任意の適切なスプライン補間法を使用して、端点76を通過する少なくとも1つの曲線78を画定する。続いて、コントローラは、オフセット曲線80を画定するように、例えば0.001mmと1mmとの間の距離だけ、基準点に向かって曲線78をオフセットさせる。その後、コントローラは、オフセット曲線80に応答して治療経路を画定する。
【0098】
例えば、治療経路の少なくとも一部は、オフセット曲線の少なくとも一部と同一であってもよい。あるいは、治療経路は、オフセット曲線内に内接し、任意の適切な中心を有する、楕円(例えば、円)などの所定の形状の周囲として画定することができる。例えば、治療経路は、オフセット曲線内に内接する、所定の形状の最大面積、または基準点74を中心とする所定の形状の最大面積の周囲として画定することができる。さらに別の代替として、治療経路は、オフセット曲線内に内接し、眼の角膜輪部86の形状を有する閉曲線として画定されてもよい。 さらに別の代替として、治療経路は、オフセット曲線80を平滑化すること、および/またはオフセット曲線を基準点に向かってオフセットすることによって画定することができる。
【0099】
場合によっては、
図3に示すように、患者のまぶたが1つまたは複数の角度範囲内で血管を覆い隠す。そのような場合、コントローラは通常、複数の曲線78(したがって、複数のオフセット曲線80)を画定し、それぞれが異なる露出角度範囲を通過する。続いて、オフセット曲線に基づいて、コントローラは、上述のように閉じた治療経路を画定することができる。それにもかかわらず、コントローラは、隠れた角度範囲内の標的領域を画定することを控えることができる(選択肢として、安全マージンを提供するために、隠れた範囲に隣接する小さな角度範囲とともに)。 例えば、
図3に示されるシナリオでは、患者の上まぶた83がこの角度範囲内の血管を覆い隠していると仮定すると、コントローラは、φ1とφ2との間の任意の標的領域を画定することを控えることができる。
【0100】
他の場合では、角度の特定の範囲内の端点の密度は、この範囲の角度が露出されているにもかかわらず、曲線78を画定するために使用される曲線フィッティングアルゴリズムによって必要とされる所定の閾値密度未満であり得る。(低密度は、例えば、患者が血管収縮状態にあるために、十分な数の血管を識別できないことに起因する可能性がある。)このような場合、コントローラは、閾値密度を達成するように、その角度範囲内で角膜輪部86上にある補助点を画定することができる。続いて、コントローラは、曲線が端点および補助点を通過するように曲線78を画定することができる。
【0101】
典型的には、標的領域の画定に続いて、コントローラは、標的領域を示すそれぞれのマーカーを画像70上に重ねる。(選択肢として、治療経路を示すマーカーを画像に重ねることもできる。)次に、コントローラは、ユーザが必要に応じて標的領域のいずれかを調整できるようにし、標的領域が承認されたことをコントローラに示すことができる。
【0102】
代替的または追加的に、コントローラは、標的領域のシミュレートされた照射を実行することができる。例えば、コントローラは、制御信号39を照準モータ61(
図2)に伝達して、治療用レーザを標的領域のそれぞれに順番に向けることができる。次いで、コントローラは、エンコーダ67(
図2)からの信号を処理して、レーザが実際に各標的領域に向けられていることを確認することができる。代替的または追加的に、コントローラは、ユーザが照準を確認できるように(任意の眼の動きが考慮されていることを確認することを含む)、レーザが向けられている位置を示すそれぞれのマーカーを眼の画像のライブシーケンス上に重ねることができる。代替的または追加的に、放射源が照準レーザを備える実施形態では、コントローラは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2021/0267800号に記載されているように、標的領域のそれぞれに順番に照準ビームを発射させることができる。次いで、コントローラは、画像処理によって、照準ビームが各標的領域に衝突することを確認することができる。代替的または追加的に、コントローラは、ユーザが照準を確認できるように、照準ビームが見える眼の画像のライブシーケンスを表示することができる。
【0103】
ユーザによる標的領域の承認、および/またはコントローラおよび/またはユーザによる照準の検証に続いて、コントローラは治療用レーザに標的領域を照射させる。
【0104】
標的領域84の画定に関するさらなる詳細について、本発明のいくつかの実施形態による、標的領域84を画定するためのアルゴリズム88の流れ図である
図4をさらに参照する。
【0105】
アルゴリズム88に従って、コントローラは、血管識別ステップ90で、画像70内の血管を最初に識別する。血管を識別するために、コントローラは、セグメンテーション、エッジ検出、特徴強調、パターン認識、および/または任意の他の適切な画像処理技術を使用することができる。このような技術は、例えば、Das,Abhijit,他著「強膜認識-研究」,2013 第2回IAPR パターン認識に関するアジア会議、IEEE,2013に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0106】
続いて、基準点画定ステップ91で、コントローラは基準点74を画定する。例えば、コントローラは眼の虹彩85または瞳孔87を識別し(例えば、色分割を使用して)、次いで基準点74を配置することができる。あるいは、コントローラは角膜輪部86を識別し(例えば、端部検出または最大勾配検出を使用して)、次に基準点を虹彩85または瞳孔87の中心に配置することができる。あるいは、画像70がディスプレイ41(
図1)に表示されている間、システム20のユーザは、任意の適切なユーザインターフェース(例えば、マウス)を使用して、基準点の所望の位置を示し得る。これに応答して、コントローラは基準点を所望の位置に配置することができる。コントローラはさらに、虹彩の中心、瞳孔の中心、角膜輪部の中心、または画像処理によって識別可能な他の解剖学的点からのこの位置のオフセットを計算して格納することができる。
【0107】
続いて、コントローラは、基準点に対する複数の角度にわたって反復する。 各角度は、角度選択ステップ94で選択される。角度の選択に続いて、コントローラは、チェックステップ96で、選択された角度に端点があるかどうかをチェックする。(このチェックは、血管識別ステップ90でコントローラが血管を識別したことに基づく。)イエスの場合、コントローラは、端点マーキングステップ98で端点をマーキングする。選択された角度で端点を検出すると、コントローラは、別のチェックステップ100で、まだ選択されていない端点があるかどうかをチェックする。
【0108】
一般に、コントローラは任意の適切な角度を選択することができる。たとえば、コントローラは任意の軸(
図3に示すような水平軸など)に対して0°を画定できる。続いて、i = 1…M の各 i 回目の反復中に、コントローラは (i-1)*Δθ を選択できる。ここで、Δθ は 0.5°、1°またはその他の適切な値である。M(反復回数)は、360°が (M-1)*Δθ と M*Δθ の間にあるように選択できる。
【0109】
端点のマーキングに続いて、コントローラは、曲線画定ステップ102で、曲線78を画定する。次に、コントローラは、曲線オフセットステップ104で、基準点に向かって曲線78をオフセットする。治療経路画定ステップ106では、コントローラは、オフセット曲線80に基づいて治療経路を画定する。最後に、コントローラは、標的領域画定ステップ108で、標的領域を画定する。通常、各標的領域は、基準点74またはその他の適切な基準点からのオフセットとして指定される。(オフセットは、ラジアルまたはデカルト座標系で指定できる。)
【0110】
代替実施形態では、コントローラは、オフセット曲線80をユーザに表示するが(オフセット曲線を画像70上に、眼の別の静止画像上に、またはそのような画像のライブストリーム上に重ねることによって)、標的領域を画定しない。 むしろ、コントローラがオフセット曲線を表示している間、コントローラはユーザから標的領域の画定を受け取る。例えば、ユーザは、各標的領域の所望の位置でマウスボタンをクリックすることによって、標的領域を画定することができる。 これに応答して、コントローラは、治療用レーザ43(
図2)による照射のための標的領域を順次指定する。
【0111】
(治療の実施)
ここで本発明のいくつかの実施形態による、自動線維柱帯形成治療を実行するためのアルゴリズム110の流れ図である
図5を参照する。
【0112】
アルゴリズム110は、標的領域指定ステップ112で開始し、ここでコントローラは、それぞれの量のエネルギーを照射するために、患者の眼の複数の標的領域を指定する。それぞれのエネルギー量は同じであってもよい。あるいは、1つまたは複数のエネルギー量が他と異なる場合がある。
【0113】
例えば、コントローラは、
図3-4を参照して上述したように標的領域を画定することができる。続いて、(
図3を参照して上述したように)ユーザによる標的領域の承認に応答して、コントローラは、照射のための標的領域を指定することができる。
【0114】
代替的に、標的領域は、任意の他の技術を使用して指定され得る。たとえば、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2021/0267800号の
図3を参照して説明されているように、ユーザは、標的領域の位置を眼の適切な基準部位例えば角膜輪部に対して特定することができる。特定の例として、ユーザは、標的領域の数と、各標的領域の中心または端が位置する角膜輪部からの距離とを指定することによって、角膜輪部に隣接する標的領域の楕円経路を指定することができる。この入力に応答して、コントローラは、各標的領域の位置を計算し、ユーザによる承認に続いて、これらの領域を照射用に指定することができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、標的領域の指定に続いて、コントローラは、解剖学的特徴識別ステップ114で、放射線に対して敏感な解剖学的特徴を求めて眼の少なくとも一部を探索する。このような解剖学的特徴は、例えば、血管が、例えばアルゴリズム88の血管識別ステップ90(
図4)の間にまだ識別されていない場合に、血管を含み得る。代替的または追加的に、そのような解剖学的特徴には、高度に色素沈着した角膜輪部領域、トラコーマ、局所類天疱瘡、局所強膜炎、局所火傷または別の損傷、または成長(例えば、翼状片、角膜パンヌス、老人弓、皮様腫またはその他の種類の角膜輪部腫瘍、または輪部麻痺)によって影響を受けた領域が含まれる場合がある。血管識別ステップ90を参照して上述したような任意の適切な画像処理技術を使用して、敏感な解剖学的特徴を識別することができる。
【0116】
いくつかの実施形態では、敏感な解剖学的特徴の探索は、治療経路82(
図3)または角膜輪部から所定の距離(例えば、1.5、3、または5mm)以内に限定される。他の実施形態では、眼全体が検索される。
【0117】
次に、コントローラは、標的領域選択ステップ116で第1の標的領域を選択する。次に、コントローラは反復処理プロセスを開始する。各反復は、画像処理ステップ117で始まり、そこでコントローラは眼の1つまたは複数の画像を処理する。(その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2021/0267800号に記載されているように、コントローラは、画像のうちの1つまたは複数が取得されている間、眼に光を点滅させることができる。) この点に関して、本発明のいくつかの実施形態による画像処理ステップ117の流れ図である
図6Aを参照する。
【0118】
いくつかの実施形態では、画像処理ステップ117は、カメラ54(
図2)を使用して眼の画像が取得される画像取得ステップ118で始まる。
【0119】
続いて、基準点識別ステップ119で、コントローラは、画像内の基準点74(
図3)の位置を特定するように試みる。基準点が特定されると、コントローラは、位置計算ステップ120で、基準点の位置に基づいて選択された標的領域の位置を計算する。たとえば、標的領域が基準点から (dx, dy) の偏移にあると定義され、画像ごとに、基準点が (x0, y0) にある場合、コントローラは標的領域の位置を(x0+dx, y0+dy) として計算することができる。(したがって、コントローラは、標的領域指定ステップ112に続く眼球のあらゆる動きを補償する。)一方、基準点を見つけることができない場合、コントローラは、以下に説明する判定ステップ128に直ちに進む。
【0120】
位置計算ステップ120に続いて、コントローラは、照準開始ステップ125で、選択された標的領域、すなわち、位置計算ステップ120で計算された位置で、適切な制御信号39を照準モータ61(
図2)に通信することによって、治療用レーザ43(
図2)の照準を開始する。続いて、レーザが照準を合わせられている間、コントローラは、別のチェックステップ122で、標的領域の位置に静的または動的障害物があるかどうかをチェックする。眼に対する位置が一定である静的な障害には、例えば、上に挙げた成長の例のいずれかなどの成長、または強膜、角膜輪部、または角膜上の血管(例えば、角膜による血管新生)が含まれる場合がある。治療中に眼に対する位置が変化する可能性がある動的障害物には、例えば、まぶた、睫毛、指、またはスペキュラムが含まれる場合がある。
【0121】
より一般的には、特許請求の範囲を含む本出願の文脈において、「障害物」は、システムのユーザによって照射可能であるとみなされる組織以外のものであり得る。したがって、「障害」という用語の範囲は、手順によって異なる場合がある。例えば、血管が障害物を構成する治療もあるが、他の治療では、血管が障害物にならないように、血管への照射が許容され、または望まれることさえある。
【0122】
一般に、選択肢としてユーザからの入力と組み合わせて、任意の適切な画像処理技術を使用して、障害物を識別することができる。例えば、治療手順の前に、ユーザは、例えば画像70(
図3)においてこれらの部分を識別することによって、潜在的な障害を構成する眼の1つ以上の部分を示すことができる。続いて、チェックステップ122で、コントローラは、テンプレートマッチング、端部検出、または例えば、連続する画像間の変化の識別を含む任意の他の適切な技術を使用して、眼の選択された部分を識別することができる。このような技術は、ユーザが事前に特定する必要のなかった他の静的または動的な障害物を特定するために使用することもできる。
【0123】
いくつかの実施形態では、コントローラは、検査ステップ122で、障害物が選択された標的領域を妨げない場合でも、1つまたは複数の所定の基準を満たす障害物がないかさらに検査する。例えば、コントローラは、サイズが所定の閾値を超える障害物、または選択された標的領域に向かって移動している障害物をチェックすることができる。
【0124】
障害物が識別された場合、コントローラは直ちに判定ステップ128に進み、そこでコントローラは、放射線源に標的領域を照射させることを控えると判定することができる。そうでない場合、コントローラは、別のチェックステップ124で、
図7を参照して以下に説明するように、選択された標的領域が標的領域に指定されたエネルギー量を照射するには敏感すぎるかどうかをチェックする。そうでない場合、コントローラは、別のチェックステップ127で、レーザが適切に向けられているかどうか、すなわち、レーザが標的領域の位置に向けられているかどうかをチェックする。例えば、コントローラは、エンコーダ67(
図2)からのフィードバック信号37を処理することができる。
【0125】
レーザの照準が不適切である場合、コントローラは直ちに判定ステップ128に進む。そうでない場合、コントローラは、いくつかの実施形態では、検証ステップ135で1つまたは複数の最終検証を実行する。例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2021/0267800号に記載されているように、コントローラは、標的領域が(部分的であっても)「禁止領域」内にないことを確認することができる。「禁止領域」は、安全のために照射が禁止されているカメラの視野(FOV)内の静的領域である。代替または追加として、米国特許出願公開第 2021/0267800 号にさらに記載されているように、コントローラは、標的領域が前の標的領域から所定の距離内にあることを検証し、これは眼が比較的静止していることを示す。検証ステップ135の実行に続いて、コントローラは判定ステップ128を実行する。
【0126】
判定ステップ128で、コントローラは、画像処理ステップ117での眼の画像の処理に応答して選択された、標的領域を照射するかどうかを判定する。コントローラは、例えば、基準点が特定可能であり、障害物が識別されず、選択された標的領域が敏感すぎず、レーザが適切に向けられ、検証ステップ135が首尾よく実行された場合に、選択された標的領域を照射することを決定することができる。
【0127】
照射の決定に続いて、照射ステップ130で、標的領域に治療ビームが照射される。続いて、コントローラは、別のチェックステップ132で、まだ選択されていない標的領域があるかどうかをチェックする。そうである場合、コントローラは、別の標的領域選択ステップ133で次の標的領域を選択し、画像処理ステップ117に戻ることによって治療の次の反復を開始する。そうでない場合、治療プロセスは終了する。
【0128】
一方、コントローラが、選択された領域を照射しないと決定した場合、コントローラは、加熱開始ステップ129で、例えば、適切な制御信号55をドライバ53に通信することによって、レーザ媒質45の加熱を開始する(
図2)。(
図9を参照して以下でさらに説明するように、レーザ媒質は加熱に応答してレーザを発振しない。)続いて、レーザ媒質が加熱されている間、コントローラは、別の判定ステップ131で、選択された標的領域をスキップするかどうかを判定する。つまり、後続の反復においても、選択された標的領域を照射することを控える。コントローラは、例えば、標的領域の位置で障害物が識別された場合、または標的領域が敏感すぎる場合、選択された標的領域をスキップすることを判定する場合がある。
【0129】
コントローラが標的領域をスキップすると判定した場合、コントローラはチェックステップ132に進む。そうでない場合、コントローラは別の判定ステップ137で、選択された標的領域をシフトするかどうかを判定する。コントローラは、例えば、標的領域の位置で障害物が識別された場合、または標的領域の現在の位置が照射に対して敏感すぎる場合、選択された標的領域をシフトすることを判定することができる。
【0130】
コントローラが、例えば、識別された障害物を回避するために、標的領域をシフトすることを判定した場合、コントローラは、標的領域シフトステップ126で標的領域をシフトする(通常、標的領域は瞳孔から離れる方向にシフトされる)。その後、コントローラは画像処理ステップ117に戻る。したがって、コントローラは、後続の反復中に、放射線源に、標的領域の元の位置ではなく、別の位置を照射させることができる。
【0131】
一方、コントローラが標的領域をシフトしないと判定した場合、コントローラは直ちに画像処理ステップ117に戻る。したがって、標的領域の元の位置は、後続の反復中に照射され得る。
【0132】
他の実施形態では、障害物が特定された場合、または指定された量のエネルギーを照射するには標的領域が敏感すぎる場合、コントローラは、照準開始ステップ125、チェックステップ127および検証ステップ135を実行した後、指定されたエネルギー量よりも少ないエネルギー量で標的領域を照射することを判定することができる。治療ビーム52のエネルギーを制御するために、コントローラは、レーザ媒質45(
図2)に送り込まれるエネルギーの量を制御することができる。
【0133】
あるいは、障害物が識別された場合、または標的領域が敏感すぎる場合、コントローラは治療手順を完全に終了させることができる。
【0134】
いくつかの実施形態では、より高い効率のために、計算ステップ120および照準開始ステップ125は、前の反復中の基準点の位置に基づいて、基準点識別ステップ119の前に実行される。そのような実施形態では、コントローラは、基準点の位置を識別した後、基準点が所定の閾値量を超えて移動していないことをチェックする。基準点が閾値量を超えて移動していないという条件で、コントローラは、画像処理ステップ117の後続のステップを実行する。
【0135】
ここで、本発明の他の実施形態による画像処理ステップ117のフロー図である
図6Bを参照する。
【0136】
図2を参照して上述したように、いくつかの実施形態では、光学ユニット30は照準レーザを備える。そのような実施形態では、標的領域の計算された位置への両方のレーザの照準に続いて、コントローラは、照準レーザに照準ビームを発射させる。次いで、コントローラは、眼の画像を処理して、眼の上の照準ビームの位置を識別し、この位置と標的領域の計算された位置との間の偏移を計算する。次いで、コントローラは、偏移に基づいて、治療用レーザが不適切に向けられていることを確認することができる。例えば、コントローラは、所定の閾値を超える偏移に応答して、治療用レーザが不適切に向けられていることを確認することができる。
【0137】
例えば、
図6Bに示すように、いくつかの実施形態では、計算ステップ120で選択された標的領域の位置を計算した後、コントローラは、別の照準開始ステップ162で、照準レーザのおよび治療レーザの照準を開始する。(
図6Bで想定されているように、計算は、前の反復中の基準点の位置に基づいてもよい。) レーザの照準に続いて、コントローラは、発射ステップ164で、照準レーザに照準ビームを発射させる。(代替として、照準ビームは治療中に連続的に発射されてもよい。)いくつかの実施形態では、照準ビームの波長は700nmより大きい(すなわち、照準ビームは赤外線である)ため、照準ビームは眼に見えず、従って患者の邪魔をしない。
【0138】
次に、コントローラは、眼の少なくとも1つの画像を取得する。例えば、
図6Bで想定されるように、コントローラは、照準ビームが放射されている間に、照準ビームが現れる第1のフレームと、照準ビームが現れない第2のフレームとを含む単一の画像を取得することができる。例えば、カメラ54(
図2)は、第2のフレームからの照準ビームをフィルタリングするように構成されたフィルタマトリックス(または「フィルタアレイ」)を含み得る。例えば、照準ビームの波長が700nmを超える実施形態では、フィルタマトリックスは、700nmを超える波長を除外することができる。あるいは、照準ビームの波長は、標準ベイヤーフィルタが第2のフレームから照準ビームを除外するように選択されてもよい。例えば、画像の第1(赤)フレームでは照準ビームが見えるが、画像の第2(緑)フレームでは見えないように、照準ビームは赤色であってもよい。
【0139】
続いて、照準ビーム位置判定ステップ166で、コントローラは、画像の第1のフレーム内の照準ビームの位置を特定しようと試みる。照準ビームの位置を特定できない場合、コントローラはただちに判定ステ128に進む。そうでない場合、コントローラは、基準点位置特定ステップ168で、画像の第2フレーム内の基準点の位置を特定しようとする。基準点の位置を特定することができない場合、コントローラはただちに判定ステップ128に進む。そうでない場合、コントローラはチェックステップ127に進み、そこでコントローラは、(i)照準ビームが標的領域の計算された位置に衝突するかどうか、および (ii)基準点の現在の位置と前の反復中の基準点の位置との間の偏移が、所定の閾値未満であるか否かをチェックする。そうでない場合、コントローラは直ちに判定ステップ128に進む。そうである場合、コントローラはチェックステップ122、チェックステップ124、および検証ステップ135を実行する。
【0140】
他の実施形態では、コントローラは、眼の2つの画像を取得する:第1の画像は、照準ビームが放射されている間に取得され、照準ビームが第1の画像に現れる(上述のように)。第2の画像は、照準ビームが放射される前または後に取得され、照準ビームが第2の眼の画像に表示されない。例えば、第1の画像を取得した後、コントローラは照準ビームをオフにし、次に第2の画像を取得することができる。次いで、コントローラは、照準ビーム位置特定ステップ166で、第1の画像で照準ビームの位置を特定しようと試み、基準点位置特定ステップ168で、第2の画像で基準点の位置を特定しようと試みてもよい。
【0141】
さらに他の実施形態では、コントローラは、単一の画像を取得し、画像の同じフレーム内で照準ビームおよび基準点の位置を特定する。
【0142】
ここで、本発明のいくつかの実施形態による、チェックステップ124のための流れ図である
図7を参照する。
【0143】
チェックステップ124は、最初の評価ステップ134で始まる。このステップでは、コントローラは、最新の取得画像を通常は以前に取得した画像とともに処理し、問題のある変化-出血、腫れ、識別可能な血管の密度の変化、1つまたは複数の気泡の形成、および/または色の変化など-が眼に発生したかどうかを確認する。そのような変化が識別されない場合、コントローラは、選択された標的領域が照射に対して敏感すぎないと判断する。そうでない場合、コントローラは、選択された標的領域が照射に対して敏感すぎると判断する可能性があり、これについては以下でさらに説明する。
【0144】
第1の評価ステップ134を実行する際、コントローラは、例えば、オプティカルフロー、パターン認識、エッジ検出、セグメンテーション、差分チェック、および/またはカラーモニタリングを含む任意の適切な画像処理技術を使用することができる。例えば、コントローラは、位置合わせを容易にするためにパターン認識を使用して、最新の画像を以前に取得した画像(治療手順の前に取得した画像など)と位置合わせすることができる。続いて、コントローラは、現在の画像から以前に取得した画像を減算し、エッジ検出またはセグメンテーションを使用して、色の変化や出血や腫れを示すその他の特徴など、対象となる特徴の位置を差分画像で特定することができる。
【0145】
問題のある変化の識別に応答して、コントローラは、第2の評価ステップ136で、敏感な解剖学的特徴(
図5の解剖学的特徴識別ステップ114で識別される)が選択された標的領域に位置するかどうかを確認する。請求項を含む本出願の文脈において、解剖学的特徴のいずれかの部分が標的領域の所定の閾値距離内にある場合、解剖学的特徴は標的領域に位置すると言われる。閾値距離は、典型的には、(i)画像取得ステップ118(
図6A~B)と照射ステップ130(
図5)との間の眼の可能な最大の動き、および(ii)レーザのキャリブレーション精度に基づいて、自動的または半自動的に定義される。いくつかの実施形態では、所定の閾値距離は3mm未満である。
【0146】
敏感な解剖学的特徴が選択された標的領域に位置することに応答して、コントローラは、オーバーラップ予測ステップ138で、選択された標的領域を照射する治療ビームと解剖学的特徴との間のオーバーラップの予測尺度を計算する。オーバーラップの予測尺度は、例えば、ビームがオーバーラップすると予測される解剖学的特徴の領域の量として表すことができる。
【0147】
オーバーラップの予測尺度を計算する際に、コントローラは、治療ビームが標的領域から逸脱しないと仮定することができる。あるいは、手順の前に、コントローラは、標的領域からの治療ビームの偏差の確率分布、および/または最大偏差、平均偏差、中央偏差などのこの分布の1つまたは複数の統計値を計算することができる。続いて、コントローラは、統計値に基づいて、例えば、治療ビームが最大、平均、または中央偏差だけ解剖学的特徴に向かって逸脱すると仮定することによって、オーバーラップの予測尺度を計算することができる。
【0148】
続いて、または敏感な解剖学的特徴が選択された標的領域に存在しない場合、コントローラは、第3の評価ステップ140で、第1の評価ステップ134で識別された変化が照射された標的領域の任意の1つにおける敏感な解剖学的特徴の照射による可能性が高いかどうかを確認する。例えば、コントローラは、変化を示す画像の任意の部分が、そのような敏感な解剖学的特徴の所定の閾値距離内にあるかどうかをチェックすることができる。
【0149】
変化が敏感な解剖学的特徴の照射によるものである可能性が高い場合、コントローラは、オーバーラップ推定ステップ142で、標的領域を照射した治療ビームと解剖学的特徴との間のオーバーラップの推定尺度を計算する。オーバーラップの推定尺度は、例えば、ビームがオーバーラップしたと推定される解剖学的特徴の領域の量として表すことができる。オーバーラップの推定尺度の計算に続いて、または変化が敏感な解剖学的特徴の照射によるものではない可能性が高い場合、コントローラは、以下に説明するリスク尺度計算ステップ144を実行する。
【0150】
いくつかの実施形態では、コントローラは、照準ビーム位置特定ステップ166(
図6B)で識別された照準ビームの位置に基づいて、オーバーラップの尺度の推定を行う。例えば、コントローラは、(i)治療ビームの発射の直前に取得された画像内の照準ビームの位置、または(ii)治療ビームの発射直後に取得された画像内の照準ビームの位置に、治療ビームが衝突したと想定することができる。あるいは、コントローラは、(i)および(ii)の平均を計算し、治療ビームがこの平均位置で眼に当たると仮定することができる。
【0151】
あるいは、照準ビームが発射されない実施形態の場合、コントローラは、眼の治療ビームの推定スポットサイズとともに、(エンコーダからのフィードバック信号によって示されるように)治療用レーザが向けられた位置に基づいてオーバーラップの尺度を推定することができる。
【0152】
オーバーラップの尺度を推定および予測することに加えて、コントローラは、照射された標的領域の敏感な解剖学的特徴に(治療ビームによって)送達されるエネルギーの推定量を、選択された標的領域で敏感な解剖学的特徴に(治療ビームによって)送達されるエネルギーの予測量とともに計算することができる。 典型的には、供給されるエネルギーの推定量または予測量は、システム20(
図1)のセットアップによって変化するパラメータ(治療ビームのエネルギーおよびスポットサイズなど)とともに、オーバーラップの推定尺度または予測尺度(それぞれ)の関数である。
【0153】
リスク尺度計算ステップ144で、コントローラは、選択された標的領域の照射に関連するリスク尺度を計算する。典型的には、敏感な解剖学的特徴が選択された標的領域にない場合に比べて、敏感な解剖学的特徴が選択された標的領域にある場合、リスク尺度はより大きくなる。さらに、オーバーラップまたは送達されるエネルギー量の尺度が高いほど、眼に別の変化を引き起こす可能性が高くなると仮定すると、リスク尺度は、選択された標的領域の予測量の増加関数である。逆に、通常、識別された変化が敏感な解剖学的特徴の照射によるものではない可能性が高いと、リスク尺度は、大きくなり、推定量の減少関数である。したがって、例えば、リスク尺度は、推定量に対する予測量の比率、の増加関数であり得る。
【0154】
代替的または追加的に、リスク尺度は、患者の医療プロファイル、特に患者の眼の感度に関連する医療プロファイルの側面に基づくことができる。例えば、リスク尺度は、患者の年齢、性別、薬歴(特に局所用眼科薬の使用に関して)、コンタクトレンズの使用頻度、および/または眼圧などのパラメータに基づく場合がある。したがって、例えば、局所眼科薬の使用歴のある患者については、そのような歴のない別の患者と比較して、より高いリスク尺度が計算される場合がある。
【0155】
代替的または追加的に、リスク尺度は、選択された標的領域における解剖学的特徴のタイプに基づくことができる。例えば、より大きな血管は、より小さな血管よりも出血する可能性が高いことが経験的に知られている。したがって、後者よりも前者の方が、リスク尺度が高くなる。
【0156】
代替的または追加的に、リスク尺度は、選択された標的領域における解剖学的特徴と、第3の評価ステップ140で識別された照射された解剖学的特徴との間の類似性の増加関数であり得る。類似性は、例えば、タイプ、色、および/またはサイズにおける類似性を含み得る。
【0157】
代替的または追加的に、リスク尺度は、識別された変化のタイプに基づいていてもよい。例えば、単なる色の変化の検出に比べて、出血または腫れの検出に応答して、リスク尺度が高くなる可能性がある。
【0158】
リスク尺度の計算に続いて、コントローラは、第4の評価ステップ146で、リスク尺度を所定の閾値と比較する。リスク尺度が閾値を超える場合、コントローラは、選択された標的領域が照射に対して敏感すぎると判断する。それに応じて、コントローラは、
図5を参照して上記で説明したように、標的領域を照射することを控えるか、または少なくとも標的領域が照射されるエネルギーを下げることができる。
【0159】
1つまたは複数の識別された変化が、複数の敏感な解剖学的特徴の照射によって引き起こされた可能性が高い場合、コントローラは、選択された標的領域のリスクを評価する際に、これらの解剖学的特徴のそれぞれを考慮する。例えば、リスク尺度は、敏感な解剖学的特徴のそれぞれのタイプ、および/または敏感な解剖学的特徴のオーバーラップのそれぞれの推定尺度に基づくことができる。
【0160】
図7の流れ図は例としてのみ提示されており、チェックステップ124の他の多くの実施形態が本発明の範囲内に含まれることに留意されたい。
【0161】
例えば:
(i)選択された標的領域に敏感な解剖学的特徴があるかどうかを確認する代わりに、またはそれに加えて、コントローラは、選択された標的領域が、眼の敏感な領域、例えば瞳孔または血管の塊から所定の閾値の距離内にあるかどうかを確認する。そうである場合、選択肢として、標的領域と敏感な領域との間の距離の関数として、リスク尺度を増加させることができる。
【0162】
(ii)問題のある変化の識別に応答して、コントローラは、残りの確認ステップ124に進む前に、追加の画像を取得して処理することができる。追加の画像の処理により、コントローラは変化を検証し、タイプを識別し、および/または安全目的での変化の監視をすることができるようになる。したがって、例えば、所定の持続時間内に出血が止まらない場合、または血液で覆われた領域が所定の閾値を超えた場合、治療手順を終了することができる。
【0163】
(iii)制御装置は、リスク尺度を計算しなくても、選択された標的領域が照射に対して敏感すぎると判断することがある。例えば、そのような判定は、第2の評価ステップ136で敏感な解剖学的特徴の存在を確認した直後に行うことができる。あるいは、そのような判定は、オーバーラップの予測尺度、または予測される送達量に応答して行うことができる。これは、絶対数、または第3 の評価ステップ140で識別された照射標的領域の対応する推定値から導き出された数である場合がある。あるいは、選択された標的領域と照射された解剖学的特徴が同じタイプであることに応答してこのような判定がなされる場合がある。
【0164】
ここで本発明のいくつかの実施形態による、チェックステップ124(
図6A~B)および標的領域シフトステップ126(
図5)の実施例が示す、
図8を参照する。
【0165】
図8は、画像取得ステップ118(
図6A~B)で取得される眼25の画像148を示す。チェックステップ124の第1の評価ステップ134(
図7)に関して上述したように画像148を処理することによって、コントローラは、照射された標的領域84aの近くの血液プール150を識別し得る。血液プール150は、標的領域84aの照射が、標的領域84aに位置する第1の血管72aを出血させた可能性が高いことを示している。したがって、別の標的領域84bを照射する前に、コントローラは、標的領域84bを第2の血管72bから離すことができ、したがって、別の出血事案の可能性を低減する。
【0166】
(加熱パルス)
再び
図2を参照し、本発明のいくつかの実施形態によるレーザ発振発生パルス152および加熱パルス154のタイムラインの概略図である
図9も参照する。
【0167】
典型的には、(例えば、
図5のアルゴリズム110に従って)標的領域の照射を開始する前に、コントローラ44は(例えば、ドライバ53を制御することによって)、ポンプ源47に、レーザ媒質をレーザ発振させることなく、レーザ媒質45を加熱させる。例えば、コントローラは、ポンプ源に、以下でさらに説明する1つまたは複数の加熱パルス154の列156でレーザ媒質をポンピングさせることができる。この加熱の結果として、レーザ媒質は、治療ビームを発射する前に熱平衡に達することができる。
【0168】
標的領域の照射を開始するために、コントローラは(例えば、ドライバ53を制御することによって)ポンプ源を駆動して、レーザ発振発生パルス152の列158でレーザ媒質45のポンピングを開始する。一般的に列158は期間 Tで周期的であり、すなわち、各レーザ発振発生パルス152(加熱パルス154に続くレーザ発振発生パルスを除く)は、先行するレーザ発振発生パルスからTの間隔で発生する。各レーザ発振発生パルス152は、レーザ媒質をレーザ発振させ、したがって、レーザ発振マーカー160によって
図9に示されるように、パルスの終わり近くで治療ビーム52を発射する。(
図5の照射ステップ130は、レーザ発振を引き起こすパルスによるレーザ媒質のポンピングと、治療用ビームの発射を含む。)
【0169】
標的領域の照射の開始に続いて、コントローラは、ポンプ源に、レーザ発振発生パルスの1つを1つまたは複数の加熱パルス154で代用させてもよい。各加熱パルス154は、レーザ媒質をレーザ発振させることなく、レーザ媒質を加熱するように構成される。
【0170】
例えば、
図5および
図6~9を参照して上述したように、
図6A~Bを参照すると、コントローラは、カメラ54によって取得された眼の1つまたは複数の画像を処理し(例えば、画像取得ステップ118で)、画像の処理に応答してポンプ源に対し加熱パルスで置換させることができる。例えば、コントローラは、ポンプ源に、眼の閉塞の識別(ステップ122で)、眼の変化の識別(チェックステップ124で)、または治療用レーザが照射される標的領域の位置に向けられていないことの確認(チェックステップ127で)に応じて、加熱パルスで置換させることができる。あるいは、コントローラは、エラーを示す信号に応答して、ポンプ源に加熱パルスで置換させてもよい。例えば、フィードバック信号37(
図2)は、ビーム誘導要素が予想通りに配向されていないことを示してもよいし、別の信号が治療用レーザまたは光学ユニットの他の構成要素の故障を示してもよい。
【0171】
通常、レーザ発振発生パルスの代わりとなる加熱パルスの全エネルギーE2は、レーザ発振発生パルスのエネルギーE0から、レーザ発振中にレーザ媒質によって失われるエネルギーE1を差し引いたものにほぼ等しい。したがって、レーザ媒質の熱平衡が維持される。通常、E1はE0の0~30%であり、E2 はE0の70%~100%である。
【0172】
例えば、ポンプ源は、レーザ媒質のレーザ閾値に達しないように、エネルギーE2を十分に長い持続時間にわたって広げる単一の加熱パルスで置換することができる。
【0173】
あるいは、ポンプ源は、N>1 の加熱パルスで置換することができる。例えば、各レーザ発振発生パルスの持続時間が D0(D0は、例えば、120~150マイクロ秒の間である)であると仮定すると、各加熱パルスは、持続時間 D0を有するが、各レーザ発振発生パルスよりも低い平均出力を有し得、加熱パルスのエネルギーは E2/N となる。あるいは、加熱パルスのそれぞれは、D0/N の持続時間を有してもよい。例えば、各加熱パルスは、 D0/N の持続時間と、各レーザ発信パルスのピーク電力に等しいピーク電力とを有することができる。具体的な例として、各レーザ発振発生パルスの瞬時電力が P0 = E0/D0 でほぼ一定であると仮定すると、各加熱パルスの持続時間は D0/N で、瞬時電力は N=2 の場合の
図9に示されるように、 P0 でほぼ一定である。
【0174】
典型的には、加熱パルスは、レーザ発振を引き起こすパルスがポンピングされるべきであった時刻 t0 から時刻 {k*T/N}、k=0…N-1 で置換される。例えば、N=2について
図9に示されるように、第1の加熱パルスはt0で開始することができ、第2の加熱パルスはt0+T/2で開始することができる。
【0175】
上記の説明は主に線維柱帯形成術に関するものであるが、本発明の実施形態は、経強膜毛様体光凝固術(TSCPC)または組織収縮術など、眼の標的領域が照射される任意の種類の術式に適用できることに留意されたい。
【0176】
当業者は、本発明が上記で特に示され説明されたものに限定されないことを理解するであろう。むしろ、本発明の実施形態の範囲は、上述の様々な特徴の組み合せおよびサブ組み合わせの両方、ならびに前述の説明を読んだ当業者に想起される先行技術にないそれらの変形および修正の両方を含む。参照により本特許出願に組み込まれている文書は、出願の不可欠な部分と見なされる。本明細書で明示的または暗示的に行われている定義と当該文書の定義が矛盾する場合は、本明細書の画定を優先して考慮する必要がある。
【国際調査報告】