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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】アークフラッシュ軽減デバイス
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/08 20060101AFI20231025BHJP
   H02H 3/00 20060101ALI20231025BHJP
   H01H 83/02 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
H02H3/08 S
H02H3/00 S
H01H83/02 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519997
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(85)【翻訳文提出日】2023-04-13
(86)【国際出願番号】 EP2021025398
(87)【国際公開番号】W WO2022078627
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】17/070,475
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518042280
【氏名又は名称】イートン インテリジェント パワー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Eaton Intelligent Power Limited
【住所又は居所原語表記】30 Pembroke Road, Dublin 4 D04 Y0C2, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、シン
(72)【発明者】
【氏名】カールソン、ブライアン、イー.
(72)【発明者】
【氏名】ラング、ブルック、イー.
(72)【発明者】
【氏名】グリフィン、ロバート、ピー.
【テーマコード(参考)】
5G004
5G030
5G142
【Fターム(参考)】
5G004AA01
5G004BA03
5G004DA04
5G004DC14
5G030YY13
5G142AC02
5G142AC06
5G142BC01
5G142BC02
5G142CC08
5G142GG02
5G142HH02
5G142HH27
(57)【要約】

デバイスは、開回路状態及び閉回路状態を有する電気機械スイッチングデバイスと、経路入力及び経路出力を有する最小抵抗の経路とを含み、スイッチングデバイスは入力と出力との間にある。このデバイスは、固体回路遮断器を備え、スイッチデバイスの開回路状態に応答して入力と出力との間に電流を伝導するように構成されたバイパス電力スイッチデバイスを含む。このデバイスは、出力に接続され、故障電流事象を検出するように構成された電流センサを含む。デバイスは、スイッチングデバイスに結合されたアクチュエータと、検出された故障電流事象に基づいて、アクチュエータを作動させて、スイッチングデバイスを開回路状態にし、電力スイッチデバイスによって故障電流事象を遮断するためのトリガ信号を生成するように構成されたコントローラと、を含む。
【選択図】図2A

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開回路状態及び閉回路状態を有する電気機械スイッチングデバイスと
経路入力と、経路出力と、前記経路入力と前記経路出力の間に前記電気機械スイッチングデバイスを有する、最小抵抗の経路と、
固体回路遮断器を備え、前記電気機械スイッチングデバイスの開回路状態に応答して前記経路入力と前記経路出力との間に電流を伝導するように構成されたバイパス電力スイッチデバイスと、
前記経路出力に接続された電流センサであって、故障電流事象を検出するように構成された、電流センサと、
前記電気機械スイッチングデバイスに結合されたアクチュエータと、
検出された前記故障電流事象に基づいて、前記アクチュエータを作動させて前記電気機械スイッチングデバイスを前記開回路状態にし、前記バイパス電力スイッチデバイスによって前記故障電流事象を遮断するためのトリガ信号を生成するように構成されたコントローラと、を備える、デバイス。
【請求項2】
前記電流センサが、前記コントローラのセンサ入力に接続された出力を有し、
前記電流センサが、前記故障電流事象の検出を表す信号を前記コントローラの前記センサ入力に通信するように構成されている、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記コントローラの制御パネル入力に接続された外部制御パネルを更に備え、
前記外部制御パネルは、前記コントローラの動作を制御するためのユーザインターフェースを提供するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記コントローラがまた、
前記制御パネル入力において作動状態無効化制御信号を受信することに応答して、前記最小抵抗の経路において前記電気機械スイッチングデバイスを前記閉回路状態にし、
前記制御パネル入力において作動状態有効化制御信号を受信することに応答して、前記最小抵抗の経路において前記電気機械スイッチングデバイスを前記開回路状態にするようにも構成されている、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記固体回路遮断器が、
前記経路入力に接続された第1の端部と、前記電気機械スイッチングデバイスと前記経路出力との間の前記最小抵抗の経路に接続された第2の端部とを有する少なくとも1つの過渡電圧抑制(TVS)ダイオードと、
前記第1の端部及び前記経路入力に接続された第1の接続と、前記第2の端部及び前記経路出力に接続された第2の接続とを有する双方向トランジスタスイッチと、を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記少なくとも1つのTVSダイオードは、並列TVSダイオードを含む、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記電気機械スイッチングデバイス、前記最小抵抗の経路、前記バイパス電力スイッチデバイス、及び前記コントローラを収容するための筐体を更に備え、
前記筐体が、モールドケース回路ブレーカ又は気中回路ブレーカを備える、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記電気機械スイッチングデバイスが、真空遮断器を備え、
前記アクチュエータが、前記真空遮断器に接続されたトンプソンコイル又は圧電アクチュエータを含む、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記バイパス電力スイッチデバイスがまた、冷却デバイスも備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
検出された前記故障電流事象は、アークフラッシュ事象に関連する電流を含む、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
経路入力及び経路出力を含む最小抵抗の経路において、前記経路入力と前記経路出力との間の電気機械スイッチングデバイスを制御することと、
電流センサによって、前記経路出力における故障電流事象を検出することと、
コントローラによって、前記電気機械スイッチングデバイスに結合されたアクチュエータを作動させるためのトリガ信号を生成することと、
前記アクチュエータの前記作動に応答して、前記最小抵抗の経路において前記電気機械スイッチングデバイスを開回路状態にすることと、
前記開回路状態に応答して、前記経路入力及び前記経路出力に接続された固体回路遮断器を備えるバイパス電力スイッチデバイスによって、検出された前記故障電流事象を遮断することと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記故障電流事象が、前記経路出力の下流で発生したアークフラッシュ事象を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記コントローラの制御パネル入力に接続された外部制御パネルによって、前記コントローラの動作を制御することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記制御することが、
前記コントローラの前記制御パネル入力において受信された作動状態無効化制御信号に応答して、前記経路入力から前記経路出力への前記電気機械スイッチングデバイスを閉回路状態にすることと、
前記コントローラの前記制御パネル入力において受信された作動状態有効化制御信号に応答して、前記電気機械スイッチングデバイスを前記開回路状態にすることと、を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記バイパス電力スイッチデバイスによって、前記遮断することが、
過渡電圧を抑制するために、前記電気機械スイッチングデバイスと前記経路出力との間の前記最小抵抗の経路に接続された前記固体回路遮断器の少なくとも1つの過渡電圧抑制(TVS)ダイオードに前記故障電流事象を渡すことを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つのTVSダイオードは、並列TVSダイオードを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記電気機械スイッチングデバイスは、真空チャンバを有する真空遮断器と、前記真空チャンバ内の電気機械スイッチングデバイスとを備え、
前記アクチュエータが、前記真空遮断器に接続されたトンプソンコイル又は圧電アクチュエータを含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記バイパス電力スイッチデバイスが冷却デバイスを備え、
前記方法が、前記冷却デバイスによって前記バイパス電力スイッチデバイスを冷却することを更に含む、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
検出された故障電流事象がアークフラッシュ事象である、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記バイパス電力スイッチデバイスが、検出された前記故障電流事象を遮断するまでに100マイクロ秒~0.5ミリ秒の応答時間を有する、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本文書は、電力保護デバイス、システム、及び方法を対象とする、より具体的には、保守要員及び電力機器を保護するためのアークフラッシュ軽減デバイスを対象とするデバイス、システム、及び方法を説明する。
【0002】
アークフラッシュ事象は、開閉装置及び配電盤などの配電システムに重大な損傷を引き起こす場合があるだけでなく、作業員の怪我の原因となる可能性がある。回路ブレーカ及びヒューズは、短絡故障があるときに保護を提供するために開閉装置において使用することができる。しかしながら、電流保護システムは、特に低レベル過電流によって引き起こされる故障である場合、短絡故障に関連する危険な電流の伝搬を遮断し、アークフラッシュ事象を排除するために比較的長い応答時間を有する。
【0003】
アークフラッシュ事象の場合に追加の保護を提供するために、更に応答時間が短いアークフラッシュ軽減デバイスを有することが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
いくつかの実施形態では、デバイスは、開回路状態及び閉回路状態を有する電気機械スイッチングデバイスと、経路入力及び経路出力を有する最小抵抗の経路とを含み、電気機械スイッチングデバイスは、経路入力と経路出力との間にある。このデバイスは、また、電気機械スイッチングデバイスの開回路状態に応答して経路入力と経路出力との間に電流を伝導するように構成された固体回路遮断器を含むバイパス電力スイッチデバイスも含んでもよい。このデバイスにおいて、電流センサは、経路出力に接続され、故障電流事象を検出するように構成される。このデバイスは、電気機械スイッチングデバイス及びコントローラに結合されたアクチュエータを含んでもよい。検出された故障電流事象に基づいて、コントローラは、アクチュエータを作動させて電気機械スイッチングデバイスを開回路状態にし、バイパス電力スイッチデバイスによって故障電流事象を遮断するためのトリガ信号を生成する。
【0005】
様々な実施形態において、電流センサは、コントローラのセンサ入力に接続される出力を有してもよい。電流センサは、故障電流事象の検出を表す信号をコントローラのセンサ入力に通信するように構成されていてもよい。
【0006】
様々な実施形態において、デバイスは、コントローラの制御パネル入力に接続される外部制御パネルを更に含んでもよい。外部制御パネルは、コントローラの動作を制御するためのユーザインターフェースを提供するように構成されていてもよい。
【0007】
様々な実施形態において、コントローラはまた、制御パネル入力において作動状態無効化制御信号を受信することに応答して、最小抵抗の経路において、電気機械スイッチングデバイスを閉回路状態にするように構成されていてもよい。コントローラはまた、制御パネル入力において作動状態有効化制御信号を受信することに応答して、最小抵抗の経路において電気機械スイッチングデバイスを開回路状態にするように構成されていてもよい。
【0008】
様々な実施形態において、固体回路遮断器は、経路入力に接続された第1の端部と、電気機械スイッチングデバイスと経路出力との間の最小抵抗の経路に接続された第2の端部とを有する少なくとも1つの過渡電圧抑制(transient-voltage suppression:TVS)ダイオードを含んでもよい。固体回路遮断器はまた、第1の端部及び経路入力に接続された第1の接続と、第2の端部及び経路出力に接続された第2の接続とを有する双方向トランジスタスイッチも含んでもよい。
【0009】
様々な実施形態において、少なくとも1つのTVSダイオードは、並列TVSダイオードを含む。
【0010】
様々な実施形態において、デバイスは、電気機械スイッチングデバイス、最小抵抗の経路、バイパス電力スイッチデバイス、及びコントローラを収容するための筐体を更に含んでもよい。筐体は、モールドケース回路ブレーカ又は気中回路ブレーカを含んでもよい。
【0011】
様々な実施形態において、電気機械スイッチングデバイスは、真空遮断器を含んでもよい。追加的に、アクチュエータは、真空遮断器に接続されたトンプソンコイル又は圧電アクチュエータを含んでもよい。
【0012】
様々な実施形態において、バイパス電力スイッチデバイスは、冷却デバイスを含んでもよい。
【0013】
様々な実施形態において、検出された故障電流事象は、アークフラッシュ事象に関連付けられた電流を含んでもよい。
【0014】
様々な実施形態において、方法は、経路入力及び経路出力、並びに経路入力と経路出力との間の電気機械スイッチングデバイスを含む最小抵抗の経路において、制御することを含んでもよい。本方法は、電流センサによって、経路出力における故障電流事象を検出することと、コントローラによって、電気機械スイッチングデバイスに結合されたアクチュエータを作動させるためのトリガ信号を生成することと、を含んでもよい。アクチュエータの作動に応答して、本方法は、最小抵抗の経路内の電気機械スイッチングデバイスを開回路状態にすることを含んでもよい。開回路状態に応答して、本方法は、経路入力及び経路出力に接続された固体回路遮断器を備えるバイパス電力スイッチデバイスによって、検出された故障電流事象を遮断することを含む。
【0015】
様々な実施形態において、方法は、コントローラの制御パネル入力に接続された外部制御パネルによって、コントローラの動作を制御することを含んでもよい。
【0016】
様々な実施形態において、コントローラによる制御は、コントローラの制御パネル入力で受信された作動状態無効化制御信号に応答して、経路入力から経路出力への電気機械スイッチングデバイスを閉回路状態にすることを含んでもよい。また、コントローラによる制御は、コントローラの制御パネル入力で受信された作動状態有効化制御信号に応答して、電気機械スイッチングデバイスを開回路状態にすることを含んでもよい。
【0017】
様々な実施形態において、バイパス電力スイッチデバイスによって遮断することは、過渡電圧を抑制するために、電気機械スイッチングデバイスと経路出力との間の最小抵抗の経路に接続された固体回路遮断器の少なくとも1つの過渡電圧抑制(TVS)ダイオードに故障電流事象を渡すことを含んでもよい。
【0018】
様々な実施形態において、バイパス電力スイッチデバイスは、冷却デバイスを含んでもよい。方法は、冷却デバイスによってバイパス電力スイッチデバイスを冷却することを更に含んでもよい。
【0019】
様々な実施形態において、バイパス電力スイッチデバイスは、検出された故障電流事象を遮断するまでに、100マイクロ秒~0.5ミリ秒の応答時間を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ハイブリッドアークフラッシュ軽減デバイスを使用するシステムのブロック図を示す。
図2A】いくつかの実施形態による、第1の動作モードにあるアークフラッシュ軽減デバイスの概略図を示す。
図2B】いくつかの実施形態による、第2の動作モードにあるアークフラッシュ軽減デバイスの概略図を示す。
図3】デバイスの構成要素とインターフェースされた図2A図2Bのアークフラッシュ軽減デバイスのコントローラのブロック図を示す。
図4A】モールドケース回路ブレーカ(molded case circuit breaker、MCCB)フォームファクターを有する筐体を有する、アークフラッシュ軽減デバイスの正面斜視図を図示する。
図4B】筐体の一部が除去された図4Aのアークフラッシュ軽減デバイスの端面斜視図及び側面斜視図を示す。
図4C】筐体の一部が除去された図4Aのアークフラッシュ軽減デバイスの側面図を示す。
図5】電気分電盤を示す。
図6A】気中回路ブレーカ(air circuit breaker、ACB)フォームファクターを有する筐体を有する、アークフラッシュ軽減デバイスの正面斜視図を示す。
図6B】筐体の一部が除去された図6Aのアークフラッシュ軽減デバイスの正面斜視図を示す。
図7】カセットフォームファクターを有する筐体を伴う、アークフラッシュ軽減デバイスの正面斜視図を図示する。
図8】コンピューティングデバイス、コントローラ、及びセンサの内部処理システムなど、システムの電子構成要素のいずれかに含まれ得る内部ハードウェアの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の主題の特定の例示的な実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。しかしながら、本発明の主題は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、本明細書に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であり、本発明の主題の範囲を当業者に十分に伝えるように提供されるものである。図面において、同様の番号は同様の項目を指す。ある物が別の物に「接続されている」又は「結合されている」と言及されるとき、それは他の物に直接接続又は結合され得るか、又は介在する物が存在し得ることが理解されるであろう。例えば、デバイス間に導電経路が存在する場合、その経路が1つ以上の中間構成要素を含む場合であっても、デバイスは「電気的に接続」されている。本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、関連する列挙された物のうちの1つ以上の任意の及びすべての組合せを含む。
【0022】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明の主題を限定することを意図していない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、明示的に別段の定めがない限り、複数形も含むことが意図される。用語「含む(includes)」、「備える(comprises)」、「含んでいる(including)」、及び/又は「備えている(comprising)」は、本明細書で使用されるとき、述べられた特徴、整数、ステップ、動作、物、及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、物、構成要素、及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除しないことが更に理解されよう。
【0023】
特に記載がない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明の主題が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。更に、一般的に使用される辞書に定義されているような用語は、本明細書及び関連技術の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書において明示的にそのように定義されていない限り、理想化された意味又は過度に形式的な意味に解釈されないことが理解されよう。
【0024】
図1は、ハイブリッドアークフラッシュ軽減デバイス(arc flash mitigation device、AFMD)100を使用するシステム10のブロック図を示す。アークフラッシュ軽減デバイス100は、制御パネル120を有する筐体110を含んでもよい。制御パネル120は、ディスプレイパネル125及びインジケータ130を含んでもよい。インジケータ130は、発光ダイオード(light emitting diode、LED)、別のタイプのライト、又は何らかの他のタイプのインジケータデバイスを含む光インジケータを含んでもよい。非限定的な例として、アークフラッシュ軽減デバイス100を作動させることにより、光インジケータ130を点灯させることができる。光インジケータ130は、アークフラッシュ軽減デバイス100が作動状態有効又は「ON」であることを作業員20が判定できるようにすることができる。
【0025】
ディスプレイパネル125は、液晶ディスプレイ(liquid crystal display、LCD)又はLEDディスプレイを含んでもよい。ディスプレイパネル125は、ユーザ入力を受信するためのタッチセンサ式ユーザインターフェースを含んでもよい。制御パネル120は、アークフラッシュ軽減デバイス100をそれぞれ作動状態有効化、作動状態無効化及び/又はリセットするためなどの制御ボタン132及び134を含んでもよい。アークフラッシュ軽減デバイス100の1つ以上の構成要素は、固体設計を含んでもよい。アークフラッシュ軽減デバイス100の詳細は、図2A図2B及び図3に関連付けてより詳細に説明する。
【0026】
筐体110は、図1において破線のボックスとして示されるアークフラッシュ軽減デバイス100の保護電子回路105を収容する。保護電子回路105は、最小抵抗の経路107を含んでもよい。図1において、最小抵抗の経路107は、電気機械スイッチSW1を含んでおり、これについては、図2A図2Bに関連付けてより詳細に説明する。図1において、スイッチSW1は、アークフラッシュ軽減デバイス100が作動又は作動状態有効であるときの、最小抵抗の経路107に沿って保護電子回路105内に開回路状態を形成する「開」である。
【0027】
システム10は、時々作業員20による保守を必要とする電気回路35を含んでもよい。電気回路35は、電力機械のサブコンポーネント又は配電機器の要素であってもよい。例えば、機械又は機器は、開閉装置、配電盤又は分電盤を含んでもよい。電気回路35は、電力回路を含んでもよい。作業員20は、電気テスター又は他のデバイスなどの電気回路25を電気回路35に電気的に接続して、試験又は他の保守作業を行うことが必要となる場合もある。電気回路25は、試験信号を表す電流を生成することができる。電気回路25は、電気回路35からの応答又は戻り信号を予期してもよい。以下でより詳細に説明するように、アークフラッシュ軽減デバイス100は、作動されると、作業員20を保護するように構成されている。
【0028】
様々な実施形態において、システム10は、アークフラッシュ軽減デバイス100の下流の、閃光15又はアークフラッシュを表す電流などのアークフラッシュ事象を感知するように構成されたアークフラッシュセンサシステム(arc flash sensor system、AFSS)30を含んでもよい。アークフラッシュセンサシステム30は、閃光15を検出することができるカメラ又は他の画像捕捉デバイス等の1つ以上の光学センサを有する視覚システムを含んでもよい。しかしながら、説明のために、アークフラッシュセンサシステム30は、アークフラッシュ軽減デバイス100とは別個であり、電気回路35を含む他の機器を保護するために使用されてもよい。アークフラッシュセンサシステム30は、Eaton(登録商標)CorporationによるArcflash Reduction Maintenance System(商標)(ARMS)の電流センサ、又は他の好適な電流センサを含んでもよい。
【0029】
筐体110は、図4A~4Cに関連して後述するように、回路ブレーカのフォームファクターと実質的に同様のフォームファクターを含んでもよい。筐体110は、成形ケースを有してもよい。そのような筐体内のアークフラッシュ軽減デバイス100のためのパッケージングは、標準フォームファクターブレーカの設置に適した場所での電気分電盤又は他の機器におけるアーク故障軽減の提供において、特に有利な用途を見出すことができる。しかしながら、実施形態は、そのようなフォームファクターに限定されないことが理解されるべきである。
【0030】
図2Aは、いくつかの実施形態による、第1の動作モードにおけるアークフラッシュ軽減デバイス100の概略図を示す。第1のモードは、電気機械スイッチSW1が「閉」又は閉回路状態にある保護電子回路105の動作の作動状態無効モード又は通常モードに対応する。スイッチSW1は、最小抵抗の経路107に沿ってより低いオン抵抗を有するように構成される。図2Bは、いくつかの実施形態による、第2の動作モードにおけるアークフラッシュ軽減デバイス100の概略図を示す。第2のモードは、電気機械スイッチSW1が「開」又は開回路状態にある保護電子回路105の作動状態有効モード又はアークフラッシュ低減維持モードに対応しているので、最小抵抗の経路107に沿って開回路が形成され、電子双方向バイパス電力スイッチデバイス201を通って電気機械スイッチングデバイス210の真空遮断器310への代替双方向バイパス経路が形成される。電気機械スイッチングデバイス210は、図3に関連付けてより詳細に説明する。スイッチSW1が「閉」であるときの最小抵抗の経路107は、双方向であってもよい。
【0031】
図2A及び図2Bは、異なる動作モードにおける同じアークフラッシュ軽減デバイス100を示しており、したがって、これらの図では同じ参照番号が使用されている。
【0032】
双方向バイパス電力スイッチデバイス201は、故障事象の故障電流を遮断するための固体回路遮断器を含んでもよい。故障事象は、高電流事象又はアークフラッシュ事象を表す電流のうちの1つであり得る。特に、バイパス電力スイッチデバイス201は、コントローラ250に電気的に接続されている。コントローラ250は、トリガ導体255上でトリガ信号を送信して、アークフラッシュ事象又は高電流に応答して電気機械スイッチングデバイス210,に接続された超高速アクチュエータ240を作動させて、スイッチSW1を「開」にすることができる。超高速アクチュエータ240は、システムの分岐ブレーカ及び/又は主ブレーカよりも速く動作することができるという点で超高速である。例えば、スイッチSW1は、図3に関連付けてより詳細に説明するように、超高速アクチュエータ240によって駆動される数百マイクロ秒(μs)以内に少なくとも1ミリメートル(mm)の距離まで強制的に分離される(開く)電気機械スイッチングデバイス210の接点313及び323(図3)を含んでもよい。
【0033】
コントローラ250は、スイッチSW1と出力ノードN30との間の最小抵抗の経路107のインラインの電流センサ270からの故障信号(すなわち、高電流)に応答することができる。電流センサ270は、例えば、ノードN30に流れるラインL25上の電流を感知する。本明細書で使用される「ノード」という用語は、接続又は接続場所を指すことがある。
【0034】
高電流事象又はアークフラッシュ事象に関連する電流などの故障事象の発生を表す電流レベルの検出に応答して、コントローラ250は、超高速アクチュエータ240をトリガするためにトリガ導体255上にトリガ信号を生成する。アークフラッシュ事象は、アークフラッシュ光15の存在に対応する。電流センサ270は、最小抵抗の経路107に沿った、又はアークフラッシュ軽減システム100の上流の電流を検出し、保守要員又は機器に対する高リスクに対応する閾値を超える電流レベルによってトリガされ得る。電流センサ270及び光センサからの信号を使用して、アークフラッシュセンサシステム30及びコントローラ250を介して、電気機械スイッチングデバイス210にトリガ信号を送信するアークフラッシュ事象を検出及び確認するのに約2msかかる場合がある。故障事象の故障電流を、約2.5ms以内にアークフラッシュ軽減デバイス100によって遮断することができる。
【0035】
回路ブレーカと呼ばれることもある回路ブレーカは、電源から負荷に電流を流すために互いに接続する電気接点を含む。接点は、コマンドに応答して電流の供給を遮断するために、又は電流過負荷、短絡、及び高電圧状態又は低電圧状態などの電気故障状態から電気システムを保護するために、力によって分離してもよい。いくつかの実施形態では、電気機械スイッチングデバイス210は、図3に関連して説明されるように、接点313及び323を分離する力を生成する超高速アクチュエータ240に結合されてもよい。超高速アクチュエータ240(図3)は、スイッチSW1を開いて、約0.5msの応答時間内に接点313と323との間において少なくとも1ミリメートル(mm)の接点ギャップを達成するように構成される。電気機械スイッチングデバイス210については、図3に関連付けてより詳細に説明する。
【0036】
基準点として、最小抵抗の経路107上のノードN01が、例えば、外部電気回路25から電流を受け取るように構成された入力ノードであると仮定する。最小抵抗の経路107は、ノードN01から始まり得る。したがって、ノードN01は、「入力」又は「経路入力」とも呼ばれることがある。ノードN01における電流は、ラインL02に沿って、スイッチSW1を有する電気機械スイッチングデバイス210に伝搬することができる。電流がスイッチSW1を通って伝搬すると、電流は、例えば、ラインL04に沿ってノードN20に伝搬する。スイッチSW1は、出力端子T01を含む。閉回路状態では、スイッチSW1の代表的なスイッチングアームA1は、ラインL02上を流れる電流がスイッチSW1を通って同様に最小抵抗の経路107の一部であるラインL04に流れるように配向される。スイッチアームA1は、例示を目的としたものであり、スイッチSW1の構成又は動作を何ら限定するものではない。最小抵抗の経路107は、ノードN20からノードN30における出力まで続く。ノードN20は、スイッチSW1の入力側のノードN01から、出力端子T01の経路におけるノードN20に対応するスイッチSW1の出力側へのバイパス経路を提供することができる。スイッチSW1の出力側は、最小抵抗の経路107にインラインで配置された出力端子T01に対応する。
【0037】
電子双方向バイパス電力スイッチデバイス201は、最小抵抗の経路107の下に配置された破線ボックス内に示されており、アークフラッシュ事象などからの故障事象の故障電流を遮断するように構成されている。スイッチSW1が「開」であるときなどには、電流は、ノードN01から、矢印109Aの方向に双方向バイパス電力スイッチデバイス201へ、ラインL12に沿ってノードN03へ伝搬し得る。代替的に、ラインL12上の電流は、双方向バイパス電力スイッチデバイス201のスイッチ203に矢印109Bの方向に伝搬することができる。スイッチ203は、金属酸化物電界効果トランジスタ(Metal Oxide Field Effect Transistor、MOSFET)などのトランジスタを含んでもよい。スイッチ203のドレイン側は、ノードN03に接続されてもよい。スイッチ203のソース側は、ノードN13に接続されてもよく、ダイオード207の第1の側は、ノードN13又はスイッチ203のソース側に接続される。スイッチ203のドレイン側は、ノードN05を介してダイオード207の第2の側に接続されてもよい。図では、スイッチ203のドレイン側はダイオード207のカソードに接続され、スイッチ203のソース側はダイオード207のアノードに接続されている。本明細書の説明はMOSFETデバイスを使用するが、他の半導体トランジスタスイッチ構成が使用されてもよい。
【0038】
スイッチ203のソース側は、ノードN13と直列のノードN16を介してスイッチ205のソース側に電気的に接続されてもよい。スイッチ205は、金属酸化物電界効果トランジスタ(MOSFET)などのトランジスタを含んでもよい。スイッチ205のドレイン側は、最小抵抗の経路107上のノードN20に矢印109Cの方向に信号を伝搬するノードN26に電気的に接続されてもよい。MOSFET(トランジスタ)スイッチ203及び205は、双方向スイッチを形成することができる。スイッチ205のソース側は、ノードN16に電気的に接続されてもよく、ダイオード209の第1の側は、ノードN16又はスイッチ205のソース側に電気的に接続される。スイッチ205のドレイン側は、ノードN18を介してダイオード209の第2の側に電気的に接続されてもよい。図では、スイッチ205のドレイン側はダイオード209のカソードに電気的に接続され、スイッチ205のソース側はダイオード209のアノードに電気的に接続されている。バイパス電力スイッチデバイス201は双方向性であるので、電流は、スイッチSW1が「開」であるときなどに、ノードN20から矢印109C、109B及び109Aを通ってノードN01へなど、逆方向に流れることができる。
【0039】
双方向バイパス電力スイッチデバイス201は、一方の側がノードN07に接続され、第2の側がノードN17に接続された第1の過渡電圧抑制(TVS)ダイオード213を含んでもよい。ノードN17はノードN18に電気的に接続されている。双方向バイパス電力スイッチデバイス201は、同様に一方の側がノードN07に接続され、第2の側がノードN17に接続された第2の過渡電圧抑制(TVS)ダイオード215を含んでもよい。ダイオード213及び215は並列であってもよい。
【0040】
電流センサ270は、「出力」又は「経路出力」と呼ばれることもあるノードN30に近接してスイッチSW1の下流にある。電流センサ270は、ラインL25上の電流の量を感知するように構成される。電流センサ270は、コントローラ250と電子通信するか、又は電気的に接続されており、ラインL25上の電流の測定値を表す感知電流信号をライン275上に送出することができる。他の変形例では、感知電流信号は、感知信号が、作業員20の怪我を引き起こし得る所定の電流閾値にあるとき、コントローラ250に通信される故障検出信号を生成してもよい。
【0041】
図3は、デバイスの構成要素とインターフェースされた図2A図2Bのアークフラッシュ軽減デバイス100のコントローラ250のブロック図を示す。コントローラ250は、ライン303上の第1の制御信号を受信するために、制御パネル120と電気通信するか又は接続されている。例えば、作業員20は、制御パネル120によって生成された第1の制御信号に応答して、アークフラッシュ軽減デバイス100を通常動作モードにしてもよい。通常動作モードは、「OFF」であるアークフラッシュ低減維持モードに対応し、したがって、コントローラ250は、スイッチSW1を閉回路状態に設定する。コントローラ250は、アークフラッシュ軽減デバイス100をそれぞれ作動状態有効化及び作動状態無効化にするためなどの制御ボタン132及び134に応答することができる。アークフラッシュ軽減デバイス100を作動状態有効化すると、スイッチSW1が開回路状態に設定されるように、アークフラッシュ低減維持モードが「ON」になる。
【0042】
制御パネル120は、ライン303上に第1の制御信号を生成して、コントローラ250にデバイス100の動作モードを制御させてもよい。ライン303は、コントローラ250の制御パネル入力又はポートに接続されてもよい。制御パネル入力又はコントローラ250のポートで受信された信号は、コントローラの動作(アームプロセス又はディスアームプロセス)を制御する。したがって、制御パネルは、デバイス100を作動状態無効化するための作動状態無効化制御信号と、アークフラッシュ軽減デバイス100を作動可能にするための作動状態有効化制御信号とを生成することができる。コントローラ250は、デバイス100が作動状態無効化されているが、作動状態無効モードは一般にスイッチSW1の状態を変化させるので、電力供給されてもよい。
【0043】
具体的には、通常動作モードの場合、コントローラ250は、スイッチSW1を、出力端子T01に接続されたスイッチアームA1として表される、図2Aに示すような閉回路状態に遷移させることができる。したがって、最小抵抗の経路107は、開回路条件なしでノードN01からノードN30まで延びる。コントローラ250は、いくつかの実施形態では、制御線309上で制御信号を制御バイパス電力スイッチデバイス201に送信して、「OFF」に切り替えることができる。更に、コントローラ250は、バイパス電力スイッチデバイス201の能動冷却デバイス345が存在する場合、能動冷却デバイスを制御することができる。制御パネル120は、ライン303上に第2の制御信号を生成して、コントローラ250にデバイス100の動作モードを制御させて、図2Bに最もよく見られるように、スイッチSW1を「開」にさせて、デバイス100が作動状態有効化してもよい。言い換えれば、スイッチSW1は、スイッチアームA1が端子T01から離れる方向に持ち上げられているとして表される開回路状態を有する。
【0044】
コントローラ250は、少なくとも1つのプロセッサ355を含んでもよい。コントローラ250のハードウェアの詳細は、図8に関連付けてより詳細に説明する。コントローラ250はまた、作動状態有効化プロセス360及び作動状態無効化プロセス365を行うためのハードウェア、ソフトウェア及び/又はファームウェアも含んでもよい。作動状態無効化プロセス365は、図2Aに示され上述されたように、通常動作モードに従って動作するようにアークフラッシュ軽減デバイス100を構成する。例えば、作動状態無効化プロセス365は、コントローラ250に、ライン303上の制御信号に応答して、スイッチSW1を「閉」に制御させることができる、又は閉回路状態に遷移させることができる。
【0045】
作動状態無効化プロセスは、アークフラッシュ低減維持モードを「OFF」に切り替えることができる。加えて、スイッチSW1は、「閉」位置にあるように設定されてもよく、バイパス電力スイッチデバイス201は、「OFF」状態又は「ON」状態のいずれかでよい。様々な実施形態において、バイパス電力スイッチデバイス201は、アークフラッシュ低減維持モードが「OFF」であるとき、「ON」状態のままであってもよい。
【0046】
作動状態有効化プロセス360は、コントローラ250に、ライン303上の第2の制御信号に応答して、スイッチSW1を「開」に制御させることができる、又は最小抵抗の経路107に関して開回路状態に遷移させることができる。スイッチSW1は、最小抵抗の経路107に関して「開」であるとき、出力端子T01から離れる方向に持ち上げられたスイッチアームA1として表される。スイッチSW1は低いオン抵抗を有する。作動状態有効化プロセス360はまた、コントローラ250に超高速アクチュエータ240を設定又はリセットしてもよく、アークフラッシュ低減維持モードを「ON」にしてもよい。いくつかの実施形態では、作動状態有効化プロセス360は、真空遮断器310の一部であってもよいスイッチSW1を係合してもよく、いくつかの実施形態では、接点313及び323を互いから分離させるか、又はスイッチSW1を開にする。真空遮断器310は、セラミックボトル内などの真空チャンバ315を含むことができ、電流を伝搬している間、接点313及び323を分離することによってアークが描かれる。アクチュエータ240がリセットされると、リンク機構330及びアクチュエータ240は、接点313及び323を電気的に開の状態に維持するように構成される。デバイス100はまた、アークフラッシュ事象が検出されてクリアされた後、コントローラ250の制御下で再使用することができる。
【0047】
電気機械スイッチングデバイス210は、「開」のとき、故障事象の故障電流が、下流の電気回路35の電流経路内のバイパス電力スイッチデバイス201に転流させることができる。電流の転流は、高周波電子発振回路(図示せず)を使用することによって、又は電流を流している間に接点313及び323が分離するときに接点313と323との間の接点ギャップにわたるアーク電圧によって行うことができる。故障事象又は故障電流は、数十マイクロ秒以内にバイパス電力スイッチデバイス201を通して電力電子回路電流経路に完全に転流される。接点313及び323は、過渡回復電圧(transient recovery voltage、TRV)に耐えるために最小の接点ギャップに強制的に到達させられる。したがって、故障電流は、バイパス電力スイッチデバイス201によって遮断され、アークフラッシュ事象又は故障電流事象を停止又は排除する。これらすべて(例えば、バイパス電力スイッチデバイス201によって、スイッチSW1を開くこと、及び故障事象の故障電流を遮断すること)は、約0.5ms以内に起こるように構成される。すなわち、応答時間は約0.5ms以下である。
【0048】
コントローラ250はまた、トリガ発生器370と、ハードウェア、ソフトウェア、及び/又はファームウェアを含み得る比較器375とも含んでもよい。アークフラッシュ軽減デバイス100が作動状態有効である間、比較器375は、センサ270から受信した信号を比較することができる。ライン275上の信号は、コントローラ250のセンサ入力又はポートに接続されてもよい。比較の結果に応じて、トリガ発生器370は、トリガ導体255に沿って電気機械スイッチングデバイス210に伝搬されるトリガ信号を生成してもよい。具体的には、トリガ信号は、超高速アクチュエータ240に通信され、アクチュエータを作動させ、真空遮断器310を「開」にすることにより電気接点313及び323をリンク機構330によって強制的に開にすることができる。図3では、接点313及び323は「開」として示されている。
【0049】
様々な実施形態において、例えば、スイッチSW1が「閉」であり、バイパス電力スイッチデバイス201が「ON」状態にあるとき、コントローラ250は、アークフラッシュ低減維持モードが作動状態無効化されているが、故障検出器(比較器)375によって検出された故障事象に応答して、アクチュエータ240をトリガしてスイッチSW1を「開」にするように依然として動作可能である。したがって、スイッチSW1が「開」になると、故障事象の電流はバイパス電力スイッチデバイス201に転流されるので、故障事象はバイパス電力スイッチデバイス201によって遮断することができる。
【0050】
いくつかのシナリオでは、センサ270からコントローラ250によって受信される信号は、アークフラッシュ事象を表す故障信号であってもよい。センサ270は、アークフラッシュ事象、あるいは、高電流事象を表す測定信号を送信してもよい。高電流事象は、アークフラッシュ事象に関連付けられる電流よりも小さい可能性がある高電流に関連付けられる。故障信号及び測定信号は、アークフラッシュ事象及び/又は高電流事象のうちのセンサ270によって検出された1つに起因する過電流又は過電圧状態を表すように構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、コントローラ250の比較器375は、測定信号を閾値と比較して、アークフラッシュ事象の発生を検出することができる。いずれのシナリオにおいても、比較器375は、制御信号をトリガ発生器370に提供してトリガ信号を生成させてもよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、超高速アクチュエータ240は、リンク機構330に接続されたトンプソンコイルアクチュエータを含んでもよい。アクチュエータ240は、圧電アクチュエータ又は他の超高速アクチュエータでもよい。動作中、超高速アクチュエータ240は、コントローラ250から制御(トリガ)信号を受信して、アクチュエータ240を作動させてもよい。アクチュエータ240は、作動されると、リンク機構330に加えられる高速作用力を生成し、次に、真空遮断器310内の接点313及び323(すなわち、スイッチSW1)を分離させる。
【0052】
バイパス電力スイッチデバイス201は、受動冷却又は能動冷却を行うように構成された冷却デバイス345を有してもよい。冷却デバイス345が能動冷却を行う実施形態では、冷却のためにファンを使用してもよい。受動的冷却のために、冷却デバイス345はヒートシンクを含んでもよい。ファンが使用され、アークフラッシュ軽減デバイス100が作動状態有効であるとき、又はバイパス電力スイッチデバイス201が「ON」に設定されるとき、能動冷却デバイスも同様に「ON」にされる。コントローラ250は、電気機械スイッチングデバイス210及びバイパス電力スイッチデバイス201に追加の制御信号を提供してもよい。
【0053】
ソフトウェアで実装される場合、コントローラ250の機能は、コンピュータ可読媒体上に1つ以上の命令又はコードとして記憶され、ハードウェアベースの処理ユニットによって実行されてもよい。コンピュータ可読媒体は、データ記憶媒体(たとえば、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ、又は命令もしくはデータ構造の形態で所望のプログラムコードを記憶するために使用でき、コンピュータがアクセスできる任意の他の媒体)などの有形媒体に対応する。
【0054】
命令は、例えば、1台以上のデジタル信号プロセッサ(digital signal processors、DSP)、汎用マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuits、ASIC)、フィールドプログラマブルロジックアレイ(field programmable logic arrays、FPGA)、又は他の同等の集積又は個別論理回路などのような、1台以上のプロセッサ355によって実行されてもよい。したがって、本明細書で使用される「プロセッサ」という用語は、前述の構造のいずれか、又は説明される技法の実装に適した任意の他の物理構造を指す場合がある。更に、本技法は、1つ以上の回路又は論理要素において完全に実装することができる。
【0055】
具体的には、最小抵抗の経路107は、第1の抵抗を有する。スイッチSW1は、低オン抵抗を有し、スイッチSW1は、出力端子T01に対して閉位置を有する。最小抵抗の経路107は、入力(すなわち、ノードN01)と出力(すなわち、ノードN30)とを有し、スイッチSW1が入力(すなわち、ノードN01)と出力(すなわち、ノードN30)との間にある。電気機械スイッチングデバイス210は、スイッチSW1が開位置にあるときに開回路状態を有する。双方向バイパス電力スイッチデバイス201は、入力に関連付けられた第1の位置(すなわち、ノードN01)において、及びスイッチSW1と出力との間の第2の位置(すなわち、ノードN30)において、最小抵抗の経路107に電気的に接続される。
【0056】
双方向バイパス電力スイッチデバイス201が「ON」であり、スイッチSW1が「開」であるとき、電力スイッチデバイス201は、ノードN01又は入力で発生する電流をノードN30又は出力に伝搬するように構成される。双方向バイパス電力スイッチデバイス201はまた、ノードN30又は出力から発生する電流をノードN01又は入力に伝導するように構成される。アークフラッシュ低減維持モードが「ON」であるときに故障事象が発生するシナリオでは、双方向バイパス電力スイッチデバイス201は、故障事象の故障電流を遮断することによって保守要員を保護する。特に、並列の過渡電圧抑制(TVS)ダイオード213及び215は、過渡過電圧レベルを制限するように構成されていてもよい。代替として、ラインL25からノードN20への任意の電流は、双方向バイパス電力スイッチデバイス201を通して伝搬されてもよい。
【0057】
双方向バイパス電力スイッチデバイス201が「ON」であり、スイッチSW1が「閉」であるとき、コントローラ250は、故障事象を表す信号の受信に応答して、アクチュエータ240へのトリガ信号を生成して、スイッチSW1を開くことによってアークフラッシュ事象又は高電流故障事象の故障電流を遮断するように構成される。したがって、故障事象の故障電流は、最小抵抗の経路の一部をバイパスし、ノードN20における故障電流を双方向バイパス電力スイッチデバイス201に流すことによって遮断される。ここでも、ラインL25からノードN20への任意の電流は、双方向バイパス電力スイッチデバイス201を通して伝搬され、故障事象を停止するように遮断され得る。
【0058】
例えば、スイッチSW1が既に「開」であるアークフラッシュ低減維持モードがオンにされる場合、故障電流が定格電流の2X又は2.5Xに達すると、双方向電力電子スイッチ201は、100μs以内に故障電流を遮断する。アークフラッシュエネルギーは、アークフラッシュ事象に関連付けられ、故障電流にアーク電圧を乗じたものとして説明することができる。
【0059】
固体設計は、例えば、図4A図4C図6A図6B、及び図7に関連して説明するように、既存の開閉装置、配電盤、又は分電盤に組み込むように、モールドケース回路ブレーカ(MCCB)又は気中回路ブレーカ(ACB)と同じフォームファクターにパッケージ化することができる。
【0060】
図4Aは、MCCBフォームファクターを有する筐体を伴う、アークフラッシュ軽減デバイス400の正面斜視図を図示する。アークフラッシュ軽減デバイス400は、筐体410のフォームファクターの詳細が説明されることを除いて、アークフラッシュ軽減デバイス100と同じである。筐体410は、電流をライン側から負荷側電気機器、例えば、又は他の電気機械に伝導するためのケーブル又はバスバーを取り付けるための上部コネクタ405及び下部コネクタ407を含んでもよい。筐体410のフロントパネル又はカバー402は、ディスプレイパネル125、インジケータ130、ならびに作業員20による容易なアクセスのための制御ボタン132及び134を有していてもよい(図1)。しかしながら、制御パネル120は、説明のない他の制御ボタンを含んでもよいことを理解されたい。図4Bは、筐体の一部が除去された図4Aのアークフラッシュ軽減デバイス400の端面斜視図及び側面斜視図を示す。図4Cは、筐体の一部が除去された図4Aのアークフラッシュ軽減デバイス400の側面図を示す。バックパネル412は、開閉装置500の内側のパネルに嵌合及び取り付けられてもよい(図5)。筐体410は、筐体410のバックパネル412に隣接して、保護電子回路105の双方向バイパス電力スイッチデバイス201を配置してもよい。電気機械スイッチングデバイス210は、真空遮断器310を含んでもよい。超高速アクチュエータ240は、リンク機構330を介して真空遮断器310に機械的に結合される。電気機械スイッチングデバイス210は、筐体410の上端に結合された一端を有してもよい。アークフラッシュ軽減デバイス400は、異なる極に対して並列に配置された複数の電気機械スイッチングデバイス210を含んでもよい。各電気機械スイッチングデバイス210は、リンク機構330を介してそれ自体のアクチュエータ240に接続される。
【0061】
図5は、いくつかの実施形態による、アーク軽減デバイスが設置され得る例示的な電気開閉装置500を示す。開閉装置500は、標準型回路ブレーカを受け入れるように構成することができる。開閉装置500は、筐体510に取り付けられたバスバックプレーンアセンブリ520を収容するための筐体510を含む。バスバックプレーンアセンブリ520は、回路ブレーカを受け入れるように構成することができ、回路ブレーカは、バスバックプレーンアセンブリ520のバスと、互換性のあるフォームファクターを有する筐体内に収容されたアークフラッシュ軽減デバイス100とに電気的に接続することができ、制御パネル120を含む。
【0062】
筐体510は、バスバックプレーンアセンブリ520内に設置された回路ブレーカ550の前面を露出させるようなサイズの切欠きを含んでもよい。図示されるように、いくつかの実施形態によれば、回路ブレーカ550と実質的に同じフォームファクターを有するアーク軽減デバイス100が、回路ブレーカの代わりに開閉装置500に設置されてもよい。開閉装置500は、他の電子装置を収容するための様々なサイズのカットアウトとともに示されている。
【0063】
図6Aは、気中回路ブレーカ(ACB)フォームファクターを有する筐体を備えたアークフラッシュ軽減デバイス600の正面斜視図を示す。アークフラッシュ軽減デバイス600は、筐体610のフォームファクターの詳細が説明されることを除いて、アークフラッシュ軽減デバイス100と同じである。筐体610のフロントパネル又はカバー602は、作業員20(図1)が容易にアクセスできるように、ディスプレイパネル125、インジケータ130、ならびに制御パネル120の制御ボタン132及び134を搭載していてもよい。筐体610は、フロントパネル又はカバー602に嵌合して取り付けられるように構成された後部筐体セクション612を含んでもよい。後部筐体セクション612は、例えば、下流の電気機器(図5)、又は他の電気機械などにそのライン側から負荷側に電流を流すためのバスバーコネクタに筐体610を取り付けるための後部上側コネクタ605及び後部下側コネクタ607を後部表面に搭載していてもよい。図6Bは、筐体の一部が除去された図6Aのアークフラッシュ軽減デバイス600の正面斜視図を示す。筐体610は、保護電子回路105の双方向バイパス電力スイッチデバイス201を筐体610のフロントパネル602に隣接して配置することができる。電気機械スイッチングデバイス210は、リンク機構330を介して下部搭載超高速アクチュエータ240に機械的に接続された真空遮断器310を含んでもよい。
【0064】
図7は、カセットフォームファクターを有する筐体を伴う、アークフラッシュ軽減デバイス700の正面斜視図を図示する。アークフラッシュ軽減デバイス700は、筐体710のフォームファクターの詳細が説明されることを除いて、アークフラッシュ軽減デバイス100と同じである。筐体710のフロントパネル又はカバー702は、作業員20(図1)による容易なアクセスのために、搭載されたディスプレイパネル125、インジケータ130、ならびに制御パネル120の制御ボタン132及び134を有していてもよい。筐体710は、フロントパネル又はカバー702に嵌合して取り付けられるように構成された後部筐体セクション712を含んでもよい。
【0065】
図8は、コントローラ、センサ、及びコンピューティングデバイスなど、システムの電子構成要素のいずれかに含まれ得る内部ハードウェアの一例を示す。電気バス800は、ハードウェアの他の図示された構成要素を相互接続する情報ハイウェイとして機能する。プロセッサ805は、プログラミング命令を実行するために必要な計算及び論理演算を行うように構成された、システムの中央処理デバイスである。本文書及び特許請求の範囲で使用される場合、「プロセッサ」及び「処理デバイス」という用語は、中央処理装置(central processing unit、CPU)、リモートサーバ、又はこれらの組合せなど、単一のプロセッサ、又は動作のセットを集合的に行うプロセッサのセット内の任意の数のプロセッサを指すことがある。読み出し専用メモリ(Read only memory、ROM)、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)、フラッシュメモリ、ハードドライブ、及び電子データを記憶することができる他のデバイスは、メモリデバイス825の例を構成する。メモリデバイス825は、データ及び/又は命令が格納される単一のデバイス又はデバイスの集合を含んでもよい。本発明の様々な実施形態は、1つ以上のプロセッサ、印刷デバイス、及び/又はスキャンデバイスに、前の図の文脈で説明した機能を行うように構成されたプログラミング命令を含むコンピュータ可読媒体を含んでもよい。
【0066】
任意のディスプレイインターフェース830は、バス800からの情報が、視覚、グラフィック、又は英数字形式で、ディスプレイデバイス835(すなわち、制御パネル)上に表示できるようにすることができる。オーディオインターフェース及びオーディオ出力(スピーカなど)も提供できる。外部デバイスとの通信は、ワイヤレスアンテナ、無線周波数識別(radio frequency identification、RFID)タグ、及び/又は短距離もしくは近距離通信トランシーバなどの様々な通信デバイス840を使用して行うことができ、これらの各々は、任意選択で、1つ以上の通信システムを介してデバイスの他の構成要素と通信可能に接続することができる。通信デバイス(複数可)840は、インターネット、ローカルエリアネットワーク、又は携帯電話データネットワーク等の通信ネットワークに通信可能に接続されるように構成されてもよい。
【0067】
ハードウェアは、キーボード又はキーパッド、ジョイスティック、タッチスクリーン、タッチパッド、リモートコントロール、制御ボタン、ポインティングデバイス及び/又はマイクロフォンなどの入力デバイス850からのデータの受信を可能にするユーザインターフェースセンサ845も含んでもよい。上記の特徴及び機能、並びに代替物は、多くの他の異なるシステム又は用途に組み合わされてもよい。様々な構成要素が、ハードウェア又はソフトウェア又は埋め込みソフトウェアで実装できる。様々な現在予期されない又は予期されない代替物、修正、変形、又は改善は、当業者によって行われてもよく、これらの各々はまた、開示される実施形態によって包含されることを意図している。
【0068】
上記の開示に関連する用語は、以下のものを含む。
【0069】
「メモリ」及び「コンピュータ可読媒体」という用語はそれぞれ、コンピュータ可読データ、プログラミング命令、又はその両方が記憶される非一時的デバイスを指す。特に明記しない限り、「メモリ」及び「コンピュータ可読媒体」という用語は、単一デバイスの実施形態、複数のメモリデバイスがデータ又は命令のセットを一緒に又は集合的に記憶する実施形態、ならびにそのようなデバイス内の個々のセクタを含むことが意図される。
【0070】
「プロセッサ」及び「処理デバイス」という用語は、プログラミング命令を実行するように構成された電子デバイスのハードウェア構成要素を指す。特に明記しない限り、用語「メモリ」又は「コンピュータ可読媒体」は、単一処理デバイスの実施形態と、複数の処理デバイスが一緒に又は集合的にプロセスを行う実施形態の両方を含むことが意図される。
【0071】
本文書では、「通信線」という用語は、第1のデバイスが1つ以上の他のデバイスに通信信号を送信し、かつ/又は1つ以上の他のデバイスから通信信号を受信する有線又は無線の経路を意味する。デバイスが通信リンクを介してデータを送信及び/又は受信することができる場合、デバイスは「通信可能に接続されている」。「電子通信」は、有線ネットワークを通じてであれ無線ネットワークを通じてであれ、1つ以上の中間デバイスを介して直接的であれ間接的であれ、2つ以上の電子デバイス間の1つ以上の信号を介したデータの伝送を指す。
【0072】
この文書では、そのような「第1の」及び「第2の」という用語が名詞を修正するために使用される場合、そのような使用は、単に1つの項目を別の項目と区別することを意図するものであり、具体的に記載されない限り、連続的な順序を必要とするものではない。
【0073】
加えて、「垂直」及び「水平」、又は「前」及び「後」などの相対位置の用語は、使用される場合、互いに相対的であることが意図され、絶対的である必要はなく、デバイスの配向に応じて、それらの用語に関連付けられたデバイスの1つの可能な位置のみを指す。更に、「前方」及び「後方」という用語は、前方に面する領域又は後方に面する領域に必ずしも限定されず、それぞれ、後方よりも前方に近い側部領域、又はその逆も含む。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
図8
【国際調査報告】