(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】ガス排出手段を備えるバッテリパック
(51)【国際特許分類】
H01M 50/367 20210101AFI20231025BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20231025BHJP
H01M 50/207 20210101ALI20231025BHJP
H01M 50/224 20210101ALI20231025BHJP
H01M 50/505 20210101ALI20231025BHJP
H01M 50/35 20210101ALI20231025BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20231025BHJP
H01M 50/289 20210101ALI20231025BHJP
H01M 50/317 20210101ALI20231025BHJP
H01M 50/333 20210101ALI20231025BHJP
H01M 50/383 20210101ALI20231025BHJP
H01M 50/308 20210101ALI20231025BHJP
【FI】
H01M50/367
H01M50/342 201
H01M50/207
H01M50/224
H01M50/505
H01M50/35 201
H01M50/249
H01M50/289
H01M50/317 201
H01M50/333
H01M50/383
H01M50/308
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520038
(86)(22)【出願日】2021-10-11
(85)【翻訳文提出日】2023-05-29
(86)【国際出願番号】 EP2021078057
(87)【国際公開番号】W WO2022078962
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】折口 正人
(72)【発明者】
【氏名】ラット, ナタリー
【テーマコード(参考)】
5H012
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H012BB01
5H040AA37
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY05
5H040DD05
5H040LL01
5H040NN00
5H040NN01
5H043AA04
5H043FA04
5H043LA02
5H043LA11
(57)【要約】
一組の電気化学的モジュール(3)と、そのモジュールを収容するハウジングとを備え、ハウジングが、2重壁式構造体(4)を備え、各モジュール(3)が、電気化学的電池と、電気化学的電池を囲繞する外被(31)とを備え、外被に、モジュール内部に閉じ込められたガスを排出することを可能にする少なくとも1つの弱体化領域(34)が設けられ、構造体(4)が、内壁(41)と、外壁(42)と、内壁と外壁との間に画定された少なくとも1つのチャンバ(43A、43B、43C)とを備え、内壁に、各モジュールの少なくとも1つの弱体化領域に対向して配置された一組の開口(45)が設けられ、外壁に、少なくとも1つの排出開口(46)が設けられる、ことを特徴とする、エネルギー貯蔵装置(2)を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一組の電気化学的モジュール(3)と、前記モジュールを収容するケーシングとを備え、前記ケーシングが、2重壁式構造体(4)を備え、各モジュール(3)が、電気化学的電池と、前記電気化学的電池を収容する外被(31)とを備え、前記外被に、前記モジュール内部に閉じ込められたガスを逃がすことができるようにする少なくとも1つの弱体化領域(34)が設けられ、前記構造体(4)が、内壁(41)と、外壁(42)と、前記内壁と前記外壁との間に形成された少なくとも1つのチャンバ(43A、43B、43C)とを備え、前記内壁に、各モジュールの前記少なくとも1つの弱体化領域に対向して配置された一組の開口(45)が設けられ、前記外壁に、少なくとも1つの排出開口(46)が設けられる
ことを特徴とする、エネルギー貯蔵装置(2)。
【請求項2】
前記構造体(4)が、押出成形された構造体、特に、押出成形アルミニウム構造体であることを特徴とする、請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置(2)。
【請求項3】
各モジュール(3)の前記外被(31)に形成された前記少なくとも1つの弱体化領域(34)が、開口、特に円形開口であることを特徴とする、請求項1または2に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項4】
前記構造体(4)の前記内壁(41)の各開口(45)の表面積が、前記外被(31)の前記対向する開口の表面積より厳密に大きいことを特徴とする、請求項3に記載のエネルギー貯蔵装置(2)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの弱体化領域(34)が、各モジュールの第1の側面(32)に沿って配置されること、および、前記エネルギー貯蔵装置が、前記モジュール同士を一体に接続する電気導体(7)を備え、前記電気導体が、実質的に前記第1の側面とは反対側の、各モジュールの第2の側面(35)に沿って配置され、前記電気導体が、特に、前記エネルギー貯蔵装置の実質的に中心に向かって配置されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置(2)。
【請求項6】
前記一組の電気化学的モジュール(3)が、電気化学的モジュールの2つの平行な列を備え、前記エネルギー貯蔵装置が、実質的に前記2つの平行な列間の境界領域(Zx)に配置された電気導体(7)を備える、ことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置(2)。
【請求項7】
各弱体化領域(34)と、対向する前記内壁(41)の前記開口(45)との間の距離が、50mm以下であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置(2)。
【請求項8】
前記少なくとも1つのチャンバ(43A、43B、43C)が、少なくとも局所的に、前記少なくとも1つの排出開口へのガス排出チャンバ(47)を形成することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置(2)。
【請求項9】
前記構造体(4)の前記内壁(41)と前記外壁(42)との間に画定された少なくとも2つの個別のチャンバ(43A、43B、43C)を備え、前記少なくとも2つのチャンバが、少なくとも局所的に、少なくとも2つの個別の排出開口(46)への2つの個別のガス排出チャンバ(47)を形成する、ことを特徴とする、請求項8に記載のエネルギー貯蔵装置(2)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのチャンバ(43A、43B、43C)内の圧力が過剰になった場合に徐々に開くように設計された少なくとも1つのバルブ(9)を備え、前記少なくとも1つのバルブが、前記少なくとも1つの排出開口(46)に配置される、ことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置(2)。
【請求項11】
隣り合う電気化学的モジュール(3)を分離する横断部材(6)を備え、前記横断部材が前記構造体(4)に固定されている、ことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置(2)。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置(2)を備えることを特徴とする、自動車両(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的電池と、少なくとも1つの電気化学的電池の誤作動の結果として形成されるガスを排出する手段とを備えるエネルギー貯蔵装置またはバッテリパックに関する。本発明は、また、そのようなエネルギー貯蔵装置を備える自動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電気車両およびハイブリッド車両は、電動モータに電気エネルギーを供給する電気化学的電池を備えるエネルギー貯蔵装置を具備する。複数の電気化学的電池が、通常、電気化学的モジュール内に直列または並列に組み込まれている。電気化学的モジュールは、構造体によって支持され、一般に「バスバー」と呼称される電気導体によって互いに接続されている。作動中、可成りの電位差が、異なる電気導体間に生じることがある。したがって、電気導体同士は、電気アークの形成を防止するために十分に離隔して配置される。
【0003】
さらに、電気化学的電池は、熱暴走などの不具合を生じがちである。その場合、金属粒を負ったガスが、欠陥電気化学的電池を含むモジュールから放出されることがある。大きい電位差を有する2つの電気導体間にこれらガスが存在すると、電気アークを生じることがある。その場合、そのような電気アークは、たとえばエネルギー貯蔵装置のカバーなど、エネルギー貯蔵装置の構造体に穴を生じさせる可能性がある。その場合、これら穴は、外部から酸素が侵入し易くすることがある。そして、エネルギー貯蔵装置内部の高温が、これらの電気アークおよび酸素供給と組み合わさって、火災に至る可能性がある。
【0004】
外部へガスを移動させるように設計された特有な内部導路を備えるエネルギー貯蔵装置が、文書EP2654100によって知られている。そのような貯蔵装置は、一体に組み立てられた多数の要素を備える。上記貯蔵装置は、製造するのに複雑で、重く、嵩張る。
【発明の概要】
【0005】
発明の提示
本発明の目的は、上述の欠点を克服し、従来技術で知られているエネルギー貯蔵装置を改善するエネルギー貯蔵装置を提供することである。
【0006】
より具体的には、本発明の1つの目的は、製造するのに簡単であると共に、電気化学的電池の不具合に伴い電気アークを形成するあらゆる危険性を低減するエネルギー貯蔵装置である。
【0007】
本発明は、一組の電気化学的モジュールと、当該モジュールを収容するケーシングとを備え、そのケーシングが、2重壁式構造体を備え、各モジュールが、電気化学的電池と、当該電気化学的電池を収容する外被とを備え、その外被に、モジュール内部に閉じ込められたガスを逃がすことができるようにする少なくとも1つの弱体化領域が設けられ、上記構造体が、内壁と、外壁と、内壁と外壁との間に形成された少なくとも1つのチャンバとを備え、内壁に、各モジュールの少なくとも1つの弱体化領域に対向して配置された一組の開口が設けられ、外壁に、少なくとも1つの排出開口が設けられる、エネルギー貯蔵装置に関する。
【0008】
上記構造体は、押出成形された構造体、特に、押出成形アルミニウム構造体であり得る。
【0009】
各モジュールの外被に形成された少なくとも1つの弱体化領域は、開口、特に円形開口であり得る。
【0010】
上記構造体の内壁の各開口の表面積は、外被の対向する開口の表面積より確実に大きくし得る。
【0011】
少なくとも1つの弱体化領域は、各モジュールの第1の側面に沿って配置され得、エネルギー貯蔵装置が、モジュール同士を一体に接続する電気導体を備え得、電気導体は、実質的に第1の側面とは反対側の、各モジュールの第2の側面に沿って配置され、電気導体は、特に、エネルギー貯蔵装置の実質的に中心近くに配置される。
【0012】
上記一組の電気化学的モジュールは、電気化学的モジュールの2つの平行な列から成り、エネルギー貯蔵装置が、実質的に2つの平行な列間の境界領域に配置された電気導体を備え得る。
【0013】
各弱体化領域と、対向する内壁の開口との距離は、50mm以下であり得る。
【0014】
上記少なくとも1つのチャンバは、少なくとも局所的に、少なくとも1つの排出開口へのガス排出チャンバを形成することができる。
【0015】
エネルギー貯蔵装置は、構造体の内壁と外壁との間に形成された少なくとも2つの個別のチャンバを備え得、その少なくとも2つのチャンバは、少なくとも局所的に、少なくとも2つの個別の排出開口への2つの個別のガス排出チャンバを形成する。
【0016】
エネルギー貯蔵装置は、上記少なくとも1つのチャンバ内の圧力が過剰になった場合に徐々に開くように設計された少なくとも1つのバルブを備え得、その少なくとも1つのバルブは、少なくとも1つの排出開口に配置される。
【0017】
エネルギー貯蔵装置は、隣り合う電気化学的モジュールを分離する横断部材を備え得、その横断部材は、上記構造体に固定される。
【0018】
本発明は、さらに、上記で定義されたエネルギー貯蔵装置を備える自動車両に関する。
【0019】
本発明のこれら目的、特徴、および利点は、以下の添付図面を参照して、非限定的例として示される特定の実施形態に関する以下の説明で詳細に言及される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態によるエネルギー貯蔵装置が取り付けられた自動車両の概略図である。
【
図2】エネルギー貯蔵装置の2重壁式構造体の斜視図である。
【
図3】エネルギー貯蔵装置の電気化学的モジュールの透視図である。
【
図5】エネルギー貯蔵装置のバルブの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の一実施形態による自動車両1の概略図である。車両1は、たとえば、電気車両またはハイブリッド車両でもよい。車両1は、車両の電動モータに電気を供給するために電気化学的形態でエネルギーを貯蔵することが可能なエネルギー貯蔵装置2を備える。
【0022】
「バッテリパック」または便宜的に「装置2」と呼ぶこともできるエネルギー貯蔵装置2は、一組の電気化学的モジュール3と、モジュール3を入れるケーシングとを備える。ケーシングは、全てのモジュール3を取り囲む閉鎖外被を形成する。各モジュール3は、電気化学的電池または蓄電池と、これら電池を取り囲む外被とを備える。電気化学的電池は、たとえば、リチウムイオン電池、または電気化学的形態でエネルギーを貯蔵することができるあらゆる他のタイプの電池であり得る。
【0023】
図1に示された実施形態によれば、装置2は、12個のモジュール3を備える。あるいは、いかなる数のモジュールでもよい。モジュール3は、等しい数のモジュールを備える2つの列、すなわち、図示の実施形態によれば6個のモジュールの2つの列に配置することができる。モジュール同士は、車両1が水平地盤上にあるとき、水平面内に並んで配置され得る。
【0024】
モジュール3を入れるケーシングは、2重壁式構造体4を備える。構造体4は、モジュール3一式の周りの側面に延在する。構造体は、全体的に矩形または台形を有する多角形であり得る。構造体4の主要機能は、全てのモジュールを支持することであり得る。したがって、構造体は、モジュールの重量を担持するのに十分に頑強かつ堅固である。さらに、構造体4は、それぞれのモジュールの側方保護を形成する。
【0025】
図2を参照すると、ケーシングは、さらに、構造体4に固定された底面カバー5と、上面カバー(図示せず)とを備える。底面カバー5は、車両の下に実質的に水平に延在し、モジュール3を外部損傷から保護することができる。装置2は、ケーシングを介し、詳細にはケーシングの構造体4を介して、車体の下方部分に固定することができる。
【0026】
装置2は、さらに、隣り合う電気化学的モジュールを分離する横断部材6を備える。横断部材6は、構造体4に固定され、それぞれのモジュールを保持するのに役立つ。言い換えれば、横断部材6は、モジュール3がその中に配置される隔室を形成する。横断部材6は、構造体4の両側面の間に互いに平行に延在することができる。上記横断部材は、車両の横軸に平行に延在することができる。
【0027】
モジュール3は、電気導体7、特にバスバーによって互いに電気的に接続される。電気導体7は、たとえば、金属板または棒の形態でよく、大量の電流を流すことができる。金属導体は、2つの隣り合うモジュールを電気的に接続する。上記金属導体は、貯蔵装置の実質的に中心近く、すなわち装置2を2つの等しい半割に分ける中心線Xに実質的に沿って配置される。言い換えれば、金属導体は、実質的に、モジュールの2つの平行な列の間に形成される境界領域Zx内に配置される。中心線Xは、車両の長手方向軸に実質的に平行であり得る。
【0028】
図3は、本発明の一実施形態による電気化学的モジュール3を示す。当該電気化学的モジュールは、電気化学的電池を覆う全体的に平行6面体の形状を有する外被31を備える。モジュール3は、たとえば、200mm×200mm×400mm程度の大きさを有し得る。外被31は、モジュール3の電気化学的電池のための保護封止を形成することができる。外被31は、たとえばケーシングであり得る。当該外被は、構造体4に面する第1の側面32を備える。モジュール3は、スクリューと協働するようになされた垂直開口の形態の固定手段33を備え得る。それによって、モジュール3は、底面カバー5に強固に連結することができ、底面カバー5は、構造体4、または構造体4に固定された他の任意の構造要素によって支持される。
【0029】
外被31は、第1の側面32に配置された2つの弱体化領域34をさらに備える。あるいは、モジュールは、たとえば、1つ、3つ、4つ、もしくは5つ、またはさらに多くの弱体化領域など、異なる数の弱体化領域を有してもよい。これら弱体化領域は、モジュール3の異なる側面に配置することができる。弱体化領域34は、電気化学的モジュールの内部に閉じ込められたガスを逃がすことを可能にする。言い換えれば、モジュール3に収容されている電気化学的電池の1つまたは複数が、作動不良の結果としてガスを放出したとき、ガスは、外被の弱体化領域34を通って外被31から抜け出すことができる。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、これら弱体化領域34は、外被の単純な開口、たとえば円形開口であり得る。この場合、外被31は封止されず、開口は、外被の単なる開口である。別の変形実施形態では、弱体化領域は、より脆弱であり、外被内部の圧力上昇の結果、破断し易い外被の領域であり得る。たとえば、弱体化領域は、外被31を局所的に薄くすることにより、または外被の厚さの一部のみに予め開口を切り込むことによって、作ることができる。この場合、外被は、弱体化領域34が破断されるまで、封止することができる。
【0031】
さらに、モジュール3と接続される電気導体7は、好ましくは、第1の側面32とは反対側の、外被31の第2の側面35に沿って配置することができる。それによって、電気導体7は、モジュール3の最大長さに沿って、弱体化領域から離すことができる。
【0032】
構造体4の例示的実施形態が、
図4に明瞭に見られる。構造体4は、2重壁式構造体である。当該構造体は、それぞれのモジュール3に面する内壁41と、装置2の外側に向いている外壁42と、内壁41と外壁42との間に形成された少なくとも1つのチャンバとを備える。さらに詳細には、図示の実施形態によれば、構造体4は、上下に重なって配置された3つのチャンバ43A、43B、および43Cを備える。内壁41は、4つの連結壁44によって、外壁に連結されている。あるいは、たとえば1つまたは2つのチャンバなど、任意の数のチャンバでもよい。それぞれのチャンバは、閉鎖空間であり、互いに独立し得る。
【0033】
構造体4は、様々な形状の分割部分を組み立てることによって形成することができる。これら分割部分は、有利には、特にアルミニウムを用いて、素材押出製法によって得ることができる。内壁41および外壁42は、互いに実質的に平行で垂直に延在し得る。連結壁44は、実質的に水平に延在し得る。したがって、
図4に示されるように、構造体4の断面は、全体的に矩形の形状を有し得る。あるいは、この断面の形状は、たとえば正方形、3角形、または台形など、異なってもよい。ブラケット8が、底面5を固定するために外壁42に取り付けられ得る。
【0034】
構造体4の内壁41は、各モジュールの弱体化領域34に対向して配置された一組の開口45(
図1および2に概略的に示される)を備える。「対向する」は、開口が、各モジュールの弱体化領域34に向き合って、近距離に、いかなる介在要素もなしに配置されることを意味する。有利には、弱体化領域34は、開口45から50mm未満、特に40mm未満、好ましくは30mm未満、さらには約20mmしか離れない。しかしながら、開口45とそれに対応する弱体化領域34との間隔は、たとえば構造体内のモジュールの容易な組立を可能にするために、また製造許容誤差および/または熱膨張に関する寸法変化に予め対応するために必要になり得る。
【0035】
このようにして、開口45は、モジュール3を収容する空間がチャンバ43A、43B、43Cの少なくとも1つと連通することを可能にする。外壁42には、少なくとも1つの排出開口46が設けられている。この場合、2つの排出開口46は、中心線Xの両側に配置される。排出開口46は、内壁に形成された開口45に対向して配置されることはない。有利には、少なくとも1つのチャンバ43A、43B、43Cが、少なくとも局所的に、開口45から排出開口46に向かうガス排出チャンバ47を形成する。この排出チャンバは、装置2に取り付けられた要素ではなく、それとは反対に、モジュール3を支持する構造体4に直接作り込まれている。
【0036】
第1の変形実施形態によれば、全ての開口45が、同じチャンバ43A、43B、または43Cと連通することができる。別の変形実施形態では、個々の開口45が、構造体の別々のチャンバと連通することができる。いずれの場合も、排出開口46は、ガスが入りそうな各チャンバに、当然、設けられる。これは、異なるガス流を別々に取り扱うことを可能にし、特に、第1の開口45を通ってあるチャンバに入ったガスが、引き続き、第2の開口45を通って、モジュールを収容する空間に入る危険性を抑えることを可能にする。
【0037】
有利には、排出開口46は、弱体化領域34を開口45から離す距離よりも確実に大きい距離によって、内壁に形成された開口45から離隔することができる。たとえば、この距離は、少なくとも60mm、好ましくは少なくとも70mm、さらに少なくとも80mmであり得る。
【0038】
装置2は、排出開口46のそれぞれに配置されたバルブ9をさらに備え、そのバルブは、連通するチャンバ内の圧力が過剰な場合に徐々に開くように設計されている。これらバルブは、例示的実施形態が
図5に示されるが、ばねなどの弾性要素を備え得る。上記バルブは、対応するチャンバ内のガス圧が所与の閾値に達しまたは超えたとき、徐々に開くように設定することができる。これらバルブが閉じているとき、ケーシングを密封することができ、すなわち、ガスは、ケーシング内の圧力がバルブの開口圧力に達するまで、ケーシングから抜け出すことができない。
【0039】
有利には、弱体化領域34を構成する開口の表面積は、開口45の表面積より確実に小さく、バルブ9の流路面積より確実に小さい。バルブ9の流路面積は、弱体化領域34の表面積と開口45の表面積との中間であり得る。たとえば、弱体化領域34を形成する開口は、300mm2~400mm2(両端の数値を含む)の表面積を有し得る。開口45は、500mm2~700mm2(両端の数値を含む)の表面積を有し得る。バルブ9の流路開口は、400mm2~500mm2(両端の数値を含む)であり得る。
【0040】
上記で言及した装置2を製造するために、構造体4は、開口45および46を作り込んだ押出成形のアルミニウム分割部分を組み立てることによって製造することができる。これら開口は、単純に穿孔することによって作ることができる。有利には、開口45、46向けに提示された寸法は、構造体4の剛性に殆ど影響しないように十分に小さいと共に、ガスを効率的に排出するのに十分な大きさである。バルブ9は、対応する開口46に簡単にはめ込むことができる。モジュール3は、構造体4の内部で横断部材6間に配置することができる。そのとき、モジュール3は、弱体化領域34が開口45に対向して配置されるように、構造体4に直接または間接的に固定される。
【0041】
車両が走行しているとき、電流が、電気導体7を通って流れることができる。大きい電位差が、隣り合う電気導体間に生じ得る。たとえば、この電位差(
図1に矢印F1によって示される)は、400Vほどの高さになり得る。しかしながら、電気導体7は、正常な作動状態下では電気アークの形成を防止するのに十分に離隔して配置されている。
【0042】
電気化学的モジュール3またはモジュール内に収容された電気化学的電池が不具合を起こした場合、ガス(
図1に参照符号10によって示される)が、モジュール内に生じることがある。ガスは、モジュールの外被31内部の圧力を上昇させ、最終的に、弱体化領域34の1つを通ってモジュール3から漏れ出す。この弱体化領域が開口35から近距離に配置されているので、ガスは、チャンバ43A、43B、43Cの1つに自然に流れ込む。有利には、開口45の表面積が弱体化領域の表面積より確実に大きいので、全部または殆ど全部のガス流が、電池3から構造体4に形成されたチャンバへ流れることができる。チャンバ内部のガス圧は、バルブ9を開くのに十分な高さまで上昇する。次いで、ガスは、バルブ9を通って構造体4から抜け出す。そのとき、ガス流(
図1に矢印F2によって示される)は、装置の内側から外側へ確実に流れる。このガス流は、ガスを開口45に引き込む吸引効果を生じる。したがって、ガスは、ケーシング内部のモジュールの周りに分散されず、特に、電気導体7に近付かない。これは、モジュールの1つにガス排出が起った場合、電気アークが発生する危険性を低減する。弱体化領域34とは反対側のモジュール側面への電気導体7の配置は、この危険性をさらに低減する。さらに、1つのモジュールから漏れ出た高温ガスが、熱暴走を生じることになる、隣り合う電気化学的モジュールを加熱することも防止する。
【0043】
有利には、バルブが存在することにより、新たな空気が、ガスとは反対方向に装置2に入ることが防止される。これは、火災を生じる恐れのある酸素が装置に入ることを防止する。
【0044】
有利には、構造体4の壁は、高い熱慣性を有し、ガスが排出されるときにそのガスを冷却することを可能にする。これは、バルブの出口でのガスの自然発火の危険性を低減する。
【国際調査報告】