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特表2023-545968低減された凝集能及び低減された疎水性を有する改善された抗oxMIF抗体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】低減された凝集能及び低減された疎水性を有する改善された抗oxMIF抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20231025BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20231025BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231025BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231025BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231025BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231025BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231025BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/30 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K45/00
A61P29/00
A61P35/00
A61P11/06
A61P9/00
A61P19/02
A61P31/04
A61P11/00
A61P13/12
A61P1/04
A61P17/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023520044
(86)(22)【出願日】2021-10-01
(85)【翻訳文提出日】2023-05-31
(86)【国際出願番号】 EP2021077106
(87)【国際公開番号】W WO2022069712
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】20199829.1
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520476488
【氏名又は名称】オンコワン・リサーチ・アンド・ディベロップメント・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】シナグル,アレクサンデル
(72)【発明者】
【氏名】ミルキナ,イリナ
(72)【発明者】
【氏名】ケルスバウメル,ランドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ティーレ,ロベルト・ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA05
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA92Y
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA36
4C084ZA59
4C084ZA68
4C084ZA81
4C084ZA89
4C084ZA96
4C084ZB11
4C084ZB26
4C084ZB35
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB31
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、改善された特性、例えば、軽鎖及び重鎖可変ドメインにおける選択されたアミノ酸置換により低減された凝集能及び低減された疎水性、並びに、場合により、重鎖定常領域における更なる置換により増加されたエフェクター機能を有する抗oxMIF抗体、並びにoxMIF関連疾患の治療におけるそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低減された凝集能及び低減された疎水性を有する組換え抗oxMIF抗体又はその抗原結合断片であって、
以下の可変ドメイン:
(a1)配列番号9及びアミノ酸置換M30L、F49Y、A51G、P80S、W93Fの少なくとも1つを含む軽鎖可変ドメイン、又は
(a2)1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのアミノ酸置換を有する配列番号9を含み、36位に保存されたチロシン、及びアミノ酸置換M30L、F49Y、A51G、P80S、W93Fの少なくとも1つを更に含む軽鎖可変ドメイン;並びに
(b1)配列番号6を含む重鎖可変ドメイン;又は
(b2)配列番号6及びアミノ酸置換L5Q及び/若しくはW97Yを含む重鎖可変ドメイン、又は
(b3)1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのアミノ酸置換を有する配列番号6及びアミノ酸置換L5Q及び/若しくはW97Yを含む重鎖可変ドメイン
のうちの1つの重鎖可変ドメインを含み、
アミノ酸位置が、Kabatに従って付番され、凝集能及び疎水性が、アミノ酸置換を欠く配列番号6及び配列番号9を含む抗体又はその抗原結合断片と比較して低減される、組換え抗oxMIF抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
アミノ酸置換W93F及び/又はW97Yを含む、請求項1に記載の組換え抗oxMIF抗体。
【請求項3】
(a)配列番号2若しくは配列番号2に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、アミノ酸239D及び332Eを含む重鎖定常領域;又は
(b)配列番号3若しくは配列番号3に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、アミノ酸239D、268F、324T及び332Eを含む重鎖定常領域;又は
(c)配列番号4若しくは配列番号4に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、アミノ酸239D、及び332Eを含む重鎖定常領域;又は
(d)配列番号5若しくは配列番号5に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、アミノ酸235V、243L、292P、300L、及び396Lを含む重鎖定常領域
を含む、重鎖定常領域を含み、
アミノ酸位置がEU付番指標に従って付番される、
増強されたエフェクター機能を有する、請求項1又は2に記載の組換え抗oxMIF抗体。
【請求項4】
配列番号8、10、11、12、及び13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗oxMIF抗体。
【請求項5】
配列番号6、11及び配列番号1、2、3、4又は5のいずれか1つを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗oxMIF抗体。
【請求項6】
配列番号7、10及び配列番号1、2、3、4又は5のいずれか1つを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗oxMIF抗体。
【請求項7】
配列番号7、11及び配列番号1、2、3、4又は5のいずれか1つを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗oxMIF抗体。
【請求項8】
配列番号8、11及び配列番号1、2、3、4若しくは5のいずれか1つ、又は配列番号39、又は配列番号40を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗oxMIF抗体。
【請求項9】
配列番号8、13及び配列番号1、2、3、4若しくは5のいずれか1つ、又は配列番号41、又は配列番号42を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗oxMIF抗体。
【請求項10】
配列番号8、10及び配列番号1、2、3、4又は5のいずれか1つを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗oxMIF抗体。
【請求項11】
配列番号39、40、41又は42を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗oxMIF抗体。
【請求項12】
配列番号39、44、41又は45を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗oxMIF抗体。
【請求項13】
二重特異性抗体、scFv、(scFv)2、scFvFc、Fab、Fab’、及びF(ab’)2、Fab’-SH、Fab-scFv融合体、Fab-(scFv)2-融合体、Fab-scFv-Fc、Fab-(scFv)2-Fc、異なる種の2つの単鎖抗体の融合タンパク質(BiTE)、及びミニボディからなる群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗oxMIF抗体。
【請求項14】
医薬の調製における使用のためである、請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体を、場合により医薬担体又はアジュバントと共に含む医薬組成物。
【請求項16】
10~250mg/mlの請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体、具体的には>50mg/mlを含む、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
皮下投与のために製剤化されている、請求項15又は16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
単独物質として、又は、好ましくは、抗ウイルス物質、抗炎症物質、抗癌物質、抗血管新生物質及び抗生物質からなる群から選択される、1つ若しくは複数の活性物質を含む更なる医薬組成物との投与のためである、請求項15~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
炎症性疾患、過剰増殖性障害、感染性疾患又は癌を患う患者の治療、具体的には、喘息、脈管炎、関節炎、敗血症、敗血症性ショック、エンドトキシンショック、毒素ショック症候群、後天性呼吸促迫症候群、糸球体腎炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、腹膜炎、腎炎及び乾癬、大腸癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、および肺癌の治療における使用のための、請求項15~18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体をコードする単離核酸。
【請求項21】
請求項20に記載の核酸分子(複数可)を含む発現ベクター。
【請求項22】
請求項20に記載の核酸又は請求項21に記載の発現ベクターを含有する宿主細胞。
【請求項23】
請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体を産生する方法であって、請求項22に記載の宿主細胞を培養する工程及び細胞培養から前記抗体を回収する工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された特性、例えば、軽鎖及び重鎖可変ドメインにおける選択されたアミノ酸置換により低減された凝集能及び低減された疎水性、並びに、場合により、重鎖定常領域における更なる置換により増加されたエフェクター機能を有する抗oxMIF抗体、並びにoxMIF関連疾患の治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
サイトカインマクロファージ遊走阻止因子(MIF)は、早くも1966年には記載されている(David,J.R.,1966;Bloom B.R.and Bennet,B.,1966)。しかしながら、MIFは、構成的に発現され、細胞質に貯蔵され、健常な対象の循環中に存在するため、他のサイトカイン及びケモカインとは著しく異なる。このタンパク質の遍在性に起因して、MIFは、治療的介入には不適切な標的と考えられうる。しかしながら、MIFは、還元型MIF(redMIF)及び酸化型MIF(oxMIF)と称される2つの免疫学的に別個の立体構造的なアイソフォームで存在する(Thiele M.et al.,2015)。RedMIFは、細胞質において、及び任意の対象の循環中に見出されうるMIFの大量に発現されるアイソフォームであることがわかった。redMIFは、潜在型の非活性貯蔵形態を表すようである(Schinagl.A.et al.,2018)。
【0003】
対比して、oxMIFは、腫瘍組織、具体的にはoxMIFの高い腫瘍特異性を示す結腸直腸癌、膵臓癌、卵巣癌及び肺癌を有する患者由来の腫瘍組織(Schinagl.A.et al.,2016)において検出されうるが、炎症性疾患を有する患者の循環(Thiele et al.,2015)においても検出されうる生理学的に関係のある疾患関連のアイソフォームであるようである。
【0004】
上述のoxMIFの陽性表示のような癌を治療するための首尾よい薬物標的の数は限られている。例えば、300個を超える潜在的な免疫腫瘍学の標的が記載されているが、多くの臨床研究は、抗PD1抗体及び抗PDL1抗体を重視している(Tang J.,et al.2018)。したがって、科学界及び医学界は、予後が乏しい癌患者にとって治療選択肢を増やすための腫瘍特異的抗原を標的とする創薬を切望している。
【0005】
国際公開第2009/086920 A1号において、モノクローナル抗MIF抗体が記載されている。
oxMIFを標的とする抗体は、炎症及び癌のin vitro及びin vivoモデルにおいて有効性を示した(Hussain F.et al.,2013;Schinagl.A.et al.,2016;Thiele et al.,2015)。oxMIF特異的抗体(イマルマブ)は、許容可能な安全性プロフィール、申し分のない組織浸透及び第1相臨床試験における抗腫瘍活性の適応を示した(Mahalingam D.et al.,2015;Mahalingam D.et al.2020)。
【0006】
国際公開第2019/234241 A1号において、二重特異性抗oxMIF/抗CD3抗体が開示されている。
タンパク質凝集、具体的には、抗体凝集は、タンパク質発現、精製及び保存を含むバイオプロセスのいくつかの段階で頻繁に観察される。抗体凝集は、治療用タンパク質製造工程の全収率に影響し、治療用抗体の安定性及び免疫原性に寄与しうる。
【0007】
したがって、抗体のタンパク質凝集は、それらの発生性に重大な問題であり続け、抗体産生における重要な関心事のままである。抗体凝集は、単量体-単量体会合後、核生成及び凝集体増殖をもたらす、そのドメインの部分的なアンフォールディングによって誘発されうる。抗体及び抗体ベースのタンパク質の凝集傾向は、外部実験条件によって影響されうるが、それらは、それらの配列及び構造によって決定される潜在的な抗体特性に強く依存する。
【0008】
例えば、凝集に対する耐性は、天然状態(即ち、アンフォールディングに抵抗する)を安定化することによるか、又は凝集体へのタンパク質のアンフォールド若しくは部分的にフォールドした状態の特性を低減させることにより達成されうる。天然状態を安定化することの不都合な点は、それらがアンフォールドする環境にタンパク質が曝露される可能性があることである。一般に、タンパク質が変性又はアンフォールドされる場合、通常タンパク質の内側における分子内接触を媒介するアミノ酸残基が曝露される。そのような曝露は、タンパク質が分子間接触及び凝集体を形成しやすくさせることが多い。アンフォールディングに耐性なタンパク質と対照的に、アンフォールドされた場合に、凝集する特性が低減したタンパク質は、そのような環境への曝露後に、生理活性の非凝集状態へと単に再フォールドされる。
【0009】
抗体及びその抗原結合ドメインを含むタンパク質の凝集耐性又は凝集傾向は、通常、そこに含有される多くの凝集傾向ドメイン(複数可)によって、及び(存在する場合)周辺ドメインとのその相互作用の強度によって制限される。
【0010】
これは、一度そのドメインがアンフォールドするためであり、再フォールディングできない場合、それは同じタンパク質又は他のタンパク質内の他のドメインと相互作用し、凝集体を形成しうる。抗体の定常ドメインは、一般に、凝集せず、大きく変化しない。したがって、凝集能及び安定性に関して抗体の最も弱いドメインは、一般に、可変ドメインであると考えられる(例えば、重鎖可変ドメイン(V)及び/又は軽鎖可変ドメイン(V)、Ewert S.et al.,2003)。これに関して、凝集傾向のV又はVドメインの、他の安定な組換え抗体産物への組み込みは、これらの一般に望ましくない特性を新しい組換え設計に付与することが多い。したがって、可変ドメインを凝集耐性であるように操作することは、その可変ドメインを含みうるタンパク質全体を凝集耐性にする可能性が最も高い。可変ドメインの凝集を低減させるための様々な戦略、例えば、凝集耐性タンパク質の合理的設計、相補性決定領域(CDR)移植、又は可変ドメインへのジスルフィド結合の導入が提案されている。凝集耐性タンパク質の合理的設計は、一般に、インシリコ解析を使用して、タンパク質の凝集傾向への点突然変異の効果を予測することを含む。しかしながら、このアプローチにはいくつかの困難がある。例えば、アンフォールドタンパク質の凝集を低減させるようである突然変異を単に同定することは十分ではない。むしろ、突然変異はまた、フォールドタンパク質の凝集を増加させない、又はフォールドタンパク質の機能、特に結合特性、例えば抗体の場合、親和性若しくは特異性に影響してはならない。更に、合理的設計は、改善される特定のタンパク質の詳細な構造解析を必要とし、したがって、完全には特徴付けられていないタンパク質による使用は困難であり、様々な異なるタンパク質に容易に適用できない。CDR移植は、1つの可変ドメインからのCDRを別の可変ドメインのフレームワーク領域(FR)へと移植することを含む。この戦略は、抗EGP-2scFvの安定化に有用であることが示された(Willuda J.et al.,1999)。このアプローチの不都合な点は、CDR移植後に生じうる親和性の減少を含む。この親和性の低下は、FRに突然変異を導入することによって克服されうるが、そのような突然変異は、タンパク質に免疫原性エピトープを産生し、それにより、タンパク質を治療の観点から望ましくなくさせうる。更に、CDR移植は、一般に、移植の適合性を評価する、ドナー及びアクセプター可変ドメインの結晶構造若しくは相同性モデリングの解析を必要とする。そのようなアプローチは手がかかり、専門的な知識を必要とする。更に、各可変ドメインは異なる構造を有するため、方法は、様々な分子にわたり容易には適用されない。ジスルフィド結合を可変ドメインへと導入する工程を含む方法に関し、結合はタンパク質が正しく再フォールドされることを補助しうるが、可変ドメインに硬性も導入する。そのような硬性は、抗原ヘの抗体の親和性を低減しうる。更に、全ての可変ドメインが、親和性を損なうことなく、又は免疫原性エピトープを導入することなくジスルフィド結合形成に必須のシステイン残基の導入を支持しうるわけではない。更に、高タンパク質濃度下でのジスルフィド結合の形成はタンパク質凝集をもたらし、したがって、結合の任意のプラスの効果の可能性を打ち消しうる。
【0011】
しかしながら、凝集傾向の低減は、発現力価の増加を伴うことが示されており、タンパク質凝集の低減が発生プロセスを通して有益であり、臨床試験へのより効率的な道をもたらしうることを示している。治療用タンパク質のため、凝集体は、患者における有害な免疫応答の重大な危険因子であり、様々なメカニズムを介して形成しうる。凝集の制御は、タンパク質の安定性、製造能、減少率、安全性、製剤化、力価、免疫原性、及び可溶性を改善しうる(Wei Li et al.,2016;Van der Kant R.et al.,2017)。
【0012】
タンパク質の更に固有の特性、例えば疎水性も、抗体安定性に重要な役割を果たす。表面疎水性によるこれらの治療用タンパク質の低い可溶性は、製剤開発をより困難にすることが示されており、in vivoでの不十分な生体内分布、望ましくない薬物動態挙動及び免疫原性をもたらしうる。したがって、候補モノクローナル抗体の全体的な表面疎水性を減少させることは、精製及び投与レジメンに関して利益及びコスト削減を提供しうる。
【0013】
複数のメカニズムが、抗癌作用に関与すると考えられている。特に、Fcガンマ受容体(FcγR)IIIA依存的及びFcγRIIA依存的エフェクター機能は、治療用Abの臨床的有効性を担う重要で主要なメカニズムの2つでありうる。FcγIIIAは、ナチュラルキラー(NK)細胞における抗体依存性細胞傷害(ADCC)の主な誘発性受容体であることが公知であり、FcγRIIAは、マクロファージにおける抗体依存性細胞貪食(ADCP)の主な誘発性受容体であることが公知である。補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体の別のエフェクター機能も、可能な抗腫瘍メカニズムであると考えられる。薬剤として認可及び開発されたほとんどの治療用抗体は、ヒトIgG1アイソタイプのものであり、ADCC及びCDCを誘導しうる。これらのエフェクター機能は、FcγR又は補体とのFcの相互作用によって活性化され、相互作用は、抗体Fc領域に接着したN結合型二分岐複合型オリゴ糖によって影響される(Natsume et al.,2009)。いくつかのin vitro及びin vivo試験は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)が、癌細胞に対する作用の主要モードであることを実証した。Abと抗体のFc領域の受容体(FcR)の間の直接相互作用の必要性は、これらの抗体の抗腫瘍効果を実証した。結果として、FcR担持免疫エフェクター細胞は、これらの効果の媒介に重要な役割を果たす(Ianello A.and Ahmad A.,2005)。しかしながら、当技術分野で公知のMIF抗体は、MIF応答細胞の補体依存性細胞溶解又は抗体依存性細胞傷害のいずれも誘導しない(Hussain et al.,2013)。
【0014】
米国特許出願公開第2011/236375A1号は、エフェクター機能が増強されたFc変異体を記載する。
低減された凝集能と低減された疎水性の組合せは、抗体特性を非常に有益にするであろう。当技術分野において、疎水性が低減されたoxMIFに対する凝集耐性抗体、またエフェクター機能が増強された抗oxMIF抗体の必要性があるが、現在の抗体改変によってはまだ達成されていない。
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、oxMIFを標的化し、低減された凝集傾向及び疎水性を有する改善された抗体又はその抗原結合断片を提供することである。
この目的は、本発明の主題によって解決される。
【0016】
本発明は、低減された凝集能及び低減された疎水性を有する組換え抗oxMIF抗体又はその抗原結合断片であって、以下の可変ドメイン:
(a1)配列番号9及びアミノ酸置換M30L、F49Y、A51G、P80S、W93Fの少なくとも1つを含む軽鎖可変ドメイン、又は
(a2)1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのアミノ酸置換を有する配列番号9を含み、36位に保存されたチロシン、及びアミノ酸置換M30L、F49Y、A51G、P80S、W93Fの少なくとも1つを更に含む軽鎖可変ドメイン;並びに
(b1)配列番号6を含む重鎖可変ドメイン;又は
(b2)配列番号6及びアミノ酸置換L5Q及び/又はW97Yを含む重鎖可変ドメイン、又は
(b3)1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのアミノ酸置換を有する配列番号6及びアミノ酸置換L5Q及び/又はW97Yを含む重鎖可変ドメイン
のうちの1つの重鎖可変ドメインを含み、
ここで、アミノ酸位置が、Kabatに従って付番され、凝集能及び疎水性が、アミノ酸置換を欠く配列番号6及び配列番号9を含む抗体又はその抗原結合断片と比較して低減される、組換え抗oxMIF抗体又はその抗原結合断片を開示する。
【0017】
低減された凝集能及び低減された疎水性を有する組換え抗oxMIF抗体又はその抗原結合断片であって、以下の可変ドメイン:
(a)配列番号9を含む軽鎖可変ドメイン又は36位にチロシンを含む配列番号9に対して少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン、並びに
(b)配列番号6及びアミノ酸置換W97Y及び/又はL5Qを含む重鎖可変ドメイン、又は1つ、2つ、3つ、4つ、若しくは5つのアミノ酸置換を有する配列番号6を含み、アミノ酸置換W97Y及び/又はL5Qを更に含む重鎖可変ドメイン
を含み、ここで、アミノ酸位置が、Kabatに従って付番され、凝集能及び疎水性が、アミノ酸置換を欠く配列番号6及び配列番号9を含む抗体又はその抗原結合断片と比較して低減される、組換え抗oxMIF抗体又はその抗原結合断片が本明細書中で開示される。
【0018】
具体的には、組換え抗oxMIF抗体は、配列番号9を参照してアミノ酸置換W93Fを含む。
具体的には、組換え抗oxMIF抗体は、配列番号6を参照してアミノ酸置換W97Yを含む。
【0019】
更なる特定の実施形態によれば、組換え抗oxMIF抗体は、アミノ酸置換W93F及びW97Yを含む。
驚くべきことに、選択された位置は、CDRドメイン内でさえも、oxMIF結合親和性への負の効果を持たずに置換して凝集能及び/又は疎水性を低減させうることが示された。
【0020】
具体的には、軽鎖可変ドメインは、1つ、2つ、3つ、4つ、又は全てのアミノ酸置換M30L、F49Y、A51G、P80S、W93Fを含む。
具体的には、組換え抗oxMIF抗体は、配列番号38の定常軽(CL)ドメインを含む。
【0021】
特定の実施形態によれば、本明細書中に記載する組換え抗oxMIF抗体は、増強されたエフェクター機能も有し、
(a)配列番号2若しくは配列番号2に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、アミノ酸239D及び332Eを含む重鎖定常領域;又は
(b)配列番号3若しくは配列番号3に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、アミノ酸239D、268F、324T及び332Eを含む重鎖定常領域;又は
(c)配列番号4若しくは配列番号4に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、アミノ酸239D、及び332Eを含む重鎖定常領域;又は
(d)配列番号5若しくは配列番号5に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、アミノ酸235V、243L、292P、300L、及び396Lを含む重鎖定常領域
を含む重鎖定常領域を含み、
ここで、アミノ酸位置はEU付番指標に従って付番される。
【0022】
具体的には、本明細書中に記載する抗oxMIF抗体は、配列番号7、8、10、11、12、及び13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含有するVH又はVLドメインを含有する。
【0023】
代替的な実施形態によれば、抗oxMIF抗体は、配列番号6、11及び配列番号1、2、3、4又は5のいずれか1つを含有する。
更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号7、10及び配列番号1、2、3、4又は5のいずれか1つを含有する。
【0024】
更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号7、11及び配列番号1、2、3、4又は5のいずれか1つを含有する。
更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号8、10及び配列番号1、2、3、4又は5のいずれか1つを含有する。
【0025】
更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号8、11及び配列番号1、2、3、4若しくは5のいずれか1つ、又は配列番号39、又は配列番号40を含有する。
更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号8、13及び配列番号1、2、3、4若しくは5のいずれか1つ、又は配列番号41、又は配列番号42を含有する。
【0026】
本明細書中で、配列番号39、40、41若しくは42を含む、請求項1~3のいずれか一項記載の抗oxMIF抗体、又は配列番号39、44、41若しくは45を含む抗oxMIF抗体が更に提供される。
【0027】
より具体的には、組換え抗oxMIF抗体又はその抗原結合断片は、二特異性抗体である。
特定の実施形態において、本明細書中に記載する抗oxMIF抗体は、単一特異性及び二特異性抗体、scFv、(scFv)2、scFv-Fc、Fab、Fab’、及びF(ab’)2、Fab’-SH、Fab-scFv融合体、Fab-(scFv)2-融合体、Fab-scFv-Fc、Fab-(scFv)2-Fc、異なる抗体の2つの単鎖可変断片(scFv)の融合タンパク質(例えば、BiTE)、ミニボディ、TandAb(登録商標)、DutaMab(商標)、DART、及びCrossMab(登録商標)からなる群から選択される。
【0028】
具体的には、本明細書中に記載する抗体は、医薬の調製における使用のためである。
具体的には、本発明の抗体を、場合により医薬担体又はアジュバントと共に含む医薬組成物が本明細書中で提供される。
【0029】
具体的には、組成物は、約10~250mg/ml、具体的には≧50mg/mlの本明細書中に記載する抗体を含む。
具体的には、前記医薬組成物は、皮下投与のために製剤化されている。
【0030】
より具体的には、医薬組成物は、oxMIF関連状態の治療のために使用されうる。
具体的には、組成物は、単独物質として、又は好ましくは、抗ウイルス物質、抗炎症物質、抗癌物質、抗血管新生物質及び抗生物質からなる群から選択される、1つ若しくは複数の活性物質を含む更なる医薬組成物と組み合わせた投与のためである。
【0031】
更なる実施形態において、医薬組成物は、炎症性疾患、過剰増殖性障害、感染性疾患又は癌を患う患者の治療における、具体的には、喘息、脈管炎、関節炎、敗血症、敗血症性ショック、エンドトキシンショック、毒素ショック症候群、後天性呼吸促迫症候群、糸球体腎炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、腹膜炎、腎炎及び乾癬、大腸癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、及び肺癌の治療における使用のためである。
【0032】
本明細書中で、本発明の抗体をコードする単離核酸が更に提供される。
本明細書中に記載する核酸分子(複数可)を含む発現ベクターも、本明細書中で提供される。
【0033】
更なる実施形態において、本明細書中に記載する核酸又は発現ベクターを含有する、宿主細胞が提供される。
本発明の抗体を産生する方法であって、宿主細胞を培養する工程及び細胞培養物から抗体を回収する工程を含む方法が更に提供される。
【0034】
本明細書中で、本発明の抗体を産生するための方法であって、宿主細胞において抗体をコードする核酸を発現する工程を含む方法が更に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1-1】アミノ酸配列を示す図である。
図1-2】アミノ酸配列を示す図である。
図1-3】アミノ酸配列を示す図である。
図1-4】アミノ酸配列を示す図である。
図1-5】アミノ酸配列を示す図である。
図2A】新しく設計した抗oxMIF抗体の改善されたSEC(A、B)及びHIC(C)プロフィールを示す図である。
図2B】新しく設計した抗oxMIF抗体の改善されたSEC(A、B)及びHIC(C)プロフィールを示す図である。
図2C】新しく設計した抗oxMIF抗体の改善されたSEC(A、B)及びHIC(C)プロフィールを示す図である。
図3】固定化されたMIFへの、新しく設計した抗oxMIF抗体の結合(KD決定)を示す図である。
図4】redMIFと比較したoxMIFへの、新しく設計した抗oxMIF抗体の差次的結合を示す図である。
図5】改変されたADCCレポーターバイオアッセイにおける新しく設計した抗oxMIF抗体の増強されたエフェクター機能を示す図である。
図6-1】新しく設計した抗oxMIF抗体C0083の腫瘍浸潤を示す図である。A:C0008(5mg/kg/d)の生体内分布;B:C0083(5mg/kg/d)の生体内分布;C:未処置の対照マウス。
図6-2】新しく設計した抗oxMIF抗体C0083の腫瘍浸潤を示す図である。A:C0008(5mg/kg/d)の生体内分布;B:C0083(5mg/kg/d)の生体内分布;C:未処置の対照マウス。
図6-3】新しく設計した抗oxMIF抗体C0083の腫瘍浸潤を示す図である。A:C0008(5mg/kg/d)の生体内分布;B:C0083(5mg/kg/d)の生体内分布;C:未処置の対照マウス。
図6-4】新しく設計した抗oxMIF抗体C0083の腫瘍浸潤を示す図である。A:C0008(5mg/kg/d)の生体内分布;B:C0083(5mg/kg/d)の生体内分布;C:未処置の対照マウス。
図6-5】新しく設計した抗oxMIF抗体C0083の腫瘍浸潤を示す図である。A:C0008(5mg/kg/d)の生体内分布;B:C0083(5mg/kg/d)の生体内分布;C:未処置の対照マウス。
図7】新しく設計した抗oxMIF抗体C0083の改善された産生を示す図である。
図8】増強されたエフェクター機能を有するが、C0008のVH及びVLドメインを含むそれらのそれぞれの対応物と比較した、増強されたエフェクター機能並びに低減された疎水性及び凝集傾向を有する、新しく設計した抗oxMIF抗体の改善された産生を示す図である(C0097対C0064、C0098対C0065、及びC0100対C0067の比較)。
図9】新しく設計した抗oxMIF抗体の低減された凝集及び疎水性を実証するクロマトグラフィープロフィールを示す図である。(A)移動相として1×PBSを使用する、Enrich650ゲル濾過カラムにおけるC0008(対照抗体、グレー領域)と、増強されたエフェクター機能を有する新しく設計したC0108及びC0109の溶出プロフィールの比較;(B)HiTrap Butyl HP HICカラムにおけるC0008(対照抗体、グレー領域)及び新しく設計した抗体C0083、C0090、C0108及びC0109の溶出プロフィールの比較。
図10】FACSによって決定したA2780MIF-/-細胞における新しく設計した抗oxMIF抗体の低減された非特異的結合を示す図である。A2780MIF-/-は、新しく設計した抗oxMIF抗体C0090、C0109(A);C0083、C0108(B)又は対照抗対C0008並びに陰性対照としてアイソタイプIgGによって染色した。生存細胞のGeoMean(AF488の平均蛍光強度)を抗体濃度に対してプロットした。
図11】固定化されたoxMIFに対する、増強されたエフェクター機能を有する新しく設計した抗oxMIF抗体の結合曲線(K推定)を示す図である;抗oxMIF抗体C0008は参照抗体として使用した。
図12】redMIFと比較したoxMIFへの、新しく設計した抗体の差次的結合を示す図である。C0008は参照抗体として、アイソタイプIgGは陰性対照として使用した。
図13】BALB/cヌードマウスにおいて、対照抗oxMIF抗体C0008と比較した、新しく設計した抗oxMIF抗体C0083及びC0090の薬物動態を示す図である。抗体の血漿濃度は、10mg/kgの抗oxMIF抗体の単回静脈内注射の4、10、24、48及び96時間後に、定量的抗oxMIF ELISAによって決定し、半減期は、GraphPad Prismの単相減衰モデルによって算出した。
図14-1】レポーターアッセイによって決定した新しく設計した抗体C0108及びC0109の増強されたエフェクター機能を示す図である。(A~B)wt Fcを有する抗oxMIF対照抗体C0008と比較した、FcyRIIIa(Vは高応答アロタイプ、Fは低応答アロタイプ)を安定に発現する操作したジャーカットエフェクター細胞及びHCT116-pMIF(A)又はA2780-pMIF(B)標的細胞を使用する、増強されたエフェクター機能を有する新しく設計した抗体C0108及びC0109によるADCCレポーターバイオアッセイ;(C)wt Fcを有する抗oxMIF対照抗体C0008と比較した、FcyRIIaを安定に発現する操作したジャーカットエフェクター細胞及びHCT116-pMIF標的細胞を使用する、増強されたエフェクター機能を有する新しく設計した抗体C0108及びC0109によるADCPレポーターバイオアッセイ。平均及びSEMが示される(n=2~4)。
図14-2】レポーターアッセイによって決定した新しく設計した抗体C0108及びC0109の増強されたエフェクター機能を示す図である。(A~B)wt Fcを有する抗oxMIF対照抗体C0008と比較した、FcyRIIIa(Vは高応答アロタイプ、Fは低応答アロタイプ)を安定に発現する操作したジャーカットエフェクター細胞及びHCT116-pMIF(A)又はA2780-pMIF(B)標的細胞を使用する、増強されたエフェクター機能を有する新しく設計した抗体C0108及びC0109によるADCCレポーターバイオアッセイ;(C)wt Fcを有する抗oxMIF対照抗体C0008と比較した、FcyRIIaを安定に発現する操作したジャーカットエフェクター細胞及びHCT116-pMIF標的細胞を使用する、増強されたエフェクター機能を有する新しく設計した抗体C0108及びC0109によるADCPレポーターバイオアッセイ。平均及びSEMが示される(n=2~4)。
図15】PBMC媒介細胞傷害性アッセイによって決定されたFc部分においてADCC/ADCP増強突然変異を持つ新しく設計した抗oxMIF抗体C0108及びC0109の増強されたADCC活性を示す図である。wt Fcを有する抗oxMIF対照抗体C0008と比較した、新しく設計した抗oxMIF抗体C0108及びC0109並びにエフェクター細胞としてPBMC(A:22% NK細胞、B:7% NK細胞)及び標的細胞としてHCT116-pMIFによるADCCバイオアッセイ。2人の健常ドナーからのPBMCを使用する2つ又は3つの複製の平均及びSEMが示される。
図16】新しく設計した抗oxMIF抗体は、ヒトPBMCからの強く低減された非特異的サイトカイン放出を示す図である。Fc部分にADCC/ADCP増強突然変異を持つ新しく設計した抗oxMIF抗体C0108及びC0109(70nM)並びに対照抗oxMIF抗体C0008(70nM)を、ヒトPBMCと終夜インキュベートし、上澄み液を、ヒトIL-6(A)及びヒトMCP-1(B)についてLegendPlexサイトメトリービーズアッセイ(Biolegend社)で解析した。サイトカイン濃度についての平均+/-SEMは、3人の異なるPMBCドナーから示される。
【発明を実施するための形態】
【0036】
他に指定又は定義しない限り、本明細書中で使用する全ての用語は、当技術分野において通常の意味を有し、当業者には明らかであろう。例えば、標準的なハンドブック、例えば、Sambrook et al,“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”(4th Ed.),Vols.1-3,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2012);Krebs et al.,“Lewin’s Genes Xi”,Jones & Bartlett Learning,(2017)、及びMurphy & Weaver,“Janeway’s Immunobiology”(9th Ed.,又はより最新版),Taylor&Francis Inc,2017を参照する。
【0037】
請求項の主題は、具体的には、人工産物又はそのような人工産物を用いるか若しくは産生する方法に関し、それは天然(野生型)産物の変異体でありうる。天然の構造に対してある程度の配列同一性がありうるが、本発明の材料、方法及び使用、例えば具体的には、単離核酸配列、アミノ酸配列、融合構築物、発現構築物、形質転換された宿主細胞及び改変タンパク質を指すものは、「人工」又は合成であり、したがって「自然の法則」の結果として考えられないことが十分に理解される。
【0038】
「を含む(comprise)」、「を含有する(contain)」、「を有する(have)」及び「を包含する(include)」という用語は、本明細書中で使用する場合、同義的に使用することができ、広い定義として理解されるべきであり、更なる成員又は部品又は要素を可能にする。「からなる」は、構成している定義特性の更なる要素を伴わない最も閉じた定義と解釈される。したがって、「を含んでいる」はより広義であり、「からなる」の定義を含有する。
【0039】
「約」という用語は、本明細書中で使用する場合、同じ値又は所与の値の+/-5%異なる値を指す。
本明細書中及び請求項中で使用される場合、単数形、例えば「1つ(a)」、「1つ(an)」及び「その(the)」は、文脈が他に明確に指定しない限り、複数を包含する。
【0040】
本明細書中で使用する場合、アミノ酸は、61個のトリプレットコドンによってコードされる20個の自然発生のアミノ酸を指す。これらの20個のアミノ酸は、中性電荷、正電荷、及び負電荷を有するアミノ酸に分割することができる:
「中性」アミノ酸を、各々の3文字コード及び1文字コード並びに極性と併せて、以下に示す:アラニン(Ala、A;無極性、中性)、アスパラギン(Asn、N;極性、中性)、システイン(Cys、C;無極性、中性)、グルタミン(Gln、Q;極性、中性)、グリシン(Gly、G;無極性、中性)、イソロイシン(Ile、I;無極性、中性)、ロイシン(Leu、L;無極性、中性)、メチオニン(Met、M;無極性、中性)、フェニルアラニン(Phe、F;無極性、中性)、プロリン(Pro、P;無極性、中性)、セリン(Ser、S;極性、中性)、スレオニン(Thr、T;極性、中性)、トリプトファン(Trp、W;無極性、中性)、チロシン(Tyr、Y;極性、中性)、バリン(Val、V;無極性、中性)、及びヒスチジン(His、H;極性、正(10%)中性(90%))。
【0041】
「正に」帯電したアミノ酸は:アルギニン(Arg、R;極性、正)、及びリジン(Lys、K;極性、正)である。
「負に」帯電したアミノ酸は:アスパラギン酸(Asp、D;極性、負)、及びグルタミン酸(Glu、E;極性、負)である。
【0042】
本発明の抗体又は抗原結合断片は、oxMIFを特異的に認識する少なくとも1つの結合部位を含み、可変重鎖及び軽鎖ドメインにおける標的化アミノ酸置換により、前記アミノ酸置換を欠く非改変抗体と比較して、低減された凝集傾向及び低減された疎水性を示す。
【0043】
凝集能の低減は、本明細書中に記載する抗体の可変ドメイン内の選択された位置におけるアミノ酸置換による。
抗体凝集のレベルは、マススペクトロメトリー、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、動的光散乱(DLS)、光遮蔽(LO)、動的画像粒子解析(DIP A)技術、例えばマイクロフローイメージング(MFI)、及びコールターカウンター(CC)、示差走査蛍光定量法(DSF)を包含する様々な公知の技術を使用して測定されうる。
【0044】
本明細書中で使用する場合、低減された疎水性及び低減された凝集能は、本明細書中に開示される配列番号1、6、38及び9を含む、抗体C0008のような参照抗体と比較して、新しく設計した抗体の表面疎水性の低減及び低減された凝集能を指す。C0008の配列は、Proposed INN List 111(WHO Drug Information,Vol.28,No.2,2014)で公表されたイマルマブの配列を含有するが、C末端リジンを欠く。測定は、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)又はアフィニティーキャプチャー自己相互作用ナノ粒子分光法(AC-SINS,Estep P.et al.,2015)を包含するが、これらに限定されない様々な公知の技術を使用して実施されうる。
【0045】
一実施形態において、低減された凝集能及び低減された疎水性を有する本発明のoxMIF抗体は、具体的には、配列番号6を含む重鎖可変ドメインと組み合わせて、又はKabat付番に従うアミノ酸置換L5Q及び/又はW97Yを有する配列番号6を含む重鎖可変ドメイン、又は1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸置換を有する配列番号6を含み、少なくとも1つのアミノ酸置換L5Q、W97Yを更に含む重鎖可変ドメインと組み合わせてのいずれかで、Kabat付番に従うアミノ酸置換M30L、F49L、A51G、P80S、W93Fの少なくとも1つを有する軽鎖可変ドメイン、又は36位に天然チロシン並びに更に少なくとも1つのアミノ酸置換M30L、F49Y、A51G、P80S、W93Fを含む配列番号9に対して少なくとも95%、具体的には少なくとも96、97、98又は99%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメインを含む。
【0046】
代替的な実施形態において、配列番号9を含む軽鎖可変ドメインは、36位の天然チロシンが保存され、更に少なくとも1つのアミノ酸がM30、F49、A51、P80、W93位において置換されるという条件で、1つ、2つ、3つ、4つ、5つのアミノ酸置換を有する。
【0047】
具体的には、W93及びW97位におけるアミノ酸置換が好まれる。
更に、F49位におけるアミノ酸置換が好まれる。
更に、本明細書中に、低減された凝集能及び低減された疎水性を有する、具体的には、配列番号9を含む軽鎖可変ドメイン、又は36位にチロシンを含む配列番号9に対して少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン、並びに配列番号6及びアミノ酸置換W97Y又はアミノ酸置換L5Q及びW97Yを含む重鎖可変ドメイン、又は1つ、2つ、3つ、4つ若しくは5つのアミノ酸置換を有する配列番号6を含み、場合によりL5Qと組み合わせてアミノ酸置換W97Yを更に含む重鎖可変ドメインを含む、抗oxMIF抗体が記載される。
【0048】
軽鎖の36位の天然チロシンは、未改変のままであり、本明細書中に記載される抗体の結合特性を保存される。前記アミノ酸位置における任意の改変は、望まない結合特性障害をもたらしうる。
【0049】
具体的には、可変軽鎖ドメインは配列番号10を含有し、可変重鎖ドメインは配列番号7を含有する。
具体的には、可変軽鎖ドメインは配列番号10を含有し、可変重鎖ドメインは配列番号8を含有する。
【0050】
具体的には、可変軽鎖ドメインは配列番号11を含有し、可変重鎖ドメインは配列番号6である。
具体的には、可変軽鎖ドメインは配列番号11を含有し、可変重鎖ドメインは配列番号7を含有する。
【0051】
具体的には、可変軽鎖ドメインは配列番号11を含有し、可変重鎖ドメインは配列番号8を含有する。
具体的には、可変軽鎖ドメインは配列番号12を含有し、可変重鎖ドメインは配列番号6である。
【0052】
具体的には、可変軽鎖ドメインは配列番号12を含有し、可変重鎖ドメインは配列番号8を含有する。
具体的には、可変軽鎖ドメインは配列番号13を含有し、可変重鎖ドメインは配列番号6である。
【0053】
具体的には、可変軽鎖ドメインは配列番号13を含有し、可変重鎖ドメインは配列番号8を含有する。
本明細書中で使用する場合、「エフェクター機能」は、Fc受容体又はリガンドとの抗体Fc領域の相互作用から生じる生化学イベントを意味する。エフェクター機能は、限定はされないが、ADCC、ADCP、及びCDCを包含する。
【0054】
本明細書中で使用する場合、「エフェクター細胞」は、1つ又は複数のFc受容体を発現し、1つ又は複数のエフェクター機能を媒介する免疫系の細胞を意味する。エフェクター細胞としては、限定はされないが、単球、マイクロファージ、好中球、樹状細胞、好酸球、マスト細胞、血小板、B細胞、大型顆粒リンパ球、ランゲルハンス細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、及びT細胞が挙げられ、限定はされないが、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、及びサルを包含する任意の生物由来でありうる。特定の実施形態において、本明細書中に記載される抗oxMIF抗体は、重鎖定常領域において選択された位置でのアミノ酸置換により、増強されたエフェクター機能も有する。増強された補体及びFcγR媒介活性による、これらの抗体の増加されたエフェクター機能は、増強された補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び/又は抗体依存性細胞貪食(ADCP)を包含しうる。Fc受容体媒介ADCCは、それにより抗体が除去するための疾患細胞を標的化する作用の重要なメカニズムである。標的結合抗体のFcエフェクター部分が、エフェクター細胞の細胞表面上のFcγRIIIA受容体にも結合する場合、2つの細胞型の複数の架橋が起こり、ADCCの経路活性化をもたらす。
【0055】
増強された補体活性を有する抗体は、細胞ベースのCDCアッセイによって決定され、C1qへの改善された結合は、例えばSPR又はELISAによって決定されうる。
改善された又は増加されたCDC活性は、参照、即ち非改変、野生型抗体、例えばC0008と比較して、少なくとも1.5倍、具体的には、少なくとも1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、3倍、4倍、より具体的には、少なくとも5倍、より具体的には、少なくとも6倍増加されると決定される。
【0056】
増加されたADCC活性は、参照抗体、即ち非改変、野生型抗体、例えばC0008と比較して、少なくとも1.5倍、具体的には、少なくとも1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、3倍、4倍、より具体的には、少なくとも5倍、より具体的には、少なくとも6倍増加した能力であると決定される。
【0057】
上記の軽鎖及び重鎖可変ドメインに加えて、oxMIF抗体は、EU付番指標に従い、少なくともアミノ酸置換S239D及びI332Eを有する配列番号1を含む重鎖定常領域、又は配列番号1に対して少なくとも95%、具体的には少なくとも96、97、98又は99%の配列同一性を有し、少なくともアミノ酸置換S239D、I332E及び場合により更なるアミノ酸置換H268F及び/又はS324Tを含む機能性バリアントを更に含みうる。
【0058】
具体的には、oxMIF抗体は、配列番号2を含む重鎖定常領域又は配列番号2に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、アミノ酸239D及び332Eを含む重鎖定常領域を含有する。
【0059】
代替として、oxMIF抗体は、配列番号3を含む重鎖定常領域又は配列番号3に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、アミノ酸239D、268F、324T及び332Eを含む重鎖定常領域を含有する。
【0060】
或いは、oxMIF抗体は、配列番号4を含む重鎖定常領域又は配列番号4に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、アミノ酸239D、及び332Eを含む重鎖定常領域を更に含みうる。
【0061】
更なる代替的な実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号5の重鎖定常領域又は配列番号5に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、アミノ酸235V、243L、292P、300L、及び396Lを含む重鎖定常領域を更に含みうる。
【0062】
更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号1、7、10、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号2、7、10、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号3、7、10、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号4、7、10、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号5、7、10、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号1、8、10、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号2、8、10、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号3、8、10、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号4、8、10、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号5、8、10、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号1、6、11、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号2、6、11、及び38を含む。
【0063】
更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号3、6、11、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号4、6、11、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号5、6、11、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号1、7、11、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号2、7、11、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号3、7、11、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号4、7、11、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号5、7、11、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号1、8、11、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号2、8、11、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号3、8、11、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号4、8、11、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号5、8、11、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号1、6、12、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号2、6、12、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号3、6、12、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号4、6、12、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号5、6、12、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号1、7、12、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号2、7、12、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号3、7、12、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号4、7、12、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号5、7、12、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号1、8、12、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号2、8、12、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号3、8、12、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号4、8、12、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号5、8、12、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号1、6、13、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号2、6、13、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号3、6、13、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号4、6、13、及び150を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号5、6、13、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号1、7、13、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号2、7、13、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号3、7、13、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号4、7、13、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号5、7、13、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号1、8、13、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号2、8、13、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号3、8、13、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号4、8、13、及び38を含む。更なる実施形態において、抗oxMIF抗体は、配列番号5、8、13、及び38を含む。
【0064】
本明細書中に記載される抗体のoxMIF結合部位は、MIFの酸化形態に、即ち動物、具体的には哺乳動物oxMIF、例えば、限定はされないがマウス、ラット、サル及びヒト、具体的にはヒトoxMIFに特異的であるが、還元型MIFの実質的な交差反応性を示さない。oxMIFは、炎症性疾患を有する対象の循環において、また癌患者の腫瘍組織において、特異的に且つ優勢に検出されうるMIFの疾患関連の構造アイソフォームである。一実施形態において、ヒト化又はヒト抗oxMIF結合部位は、本明細書中に記載するヒト化若しくはヒト抗oxMIF結合ドメインの1つ又は複数の(例えば、3つ全ての)軽鎖相補性決定領域、例えば、配列番号9、10、11、12又は13に含まれるCDR及び/又は本明細書中に記載するヒト化若しくはヒト抗oxMIF結合ドメインの1つ又は複数の(例えば、3つ全ての)重鎖相補性決定領域、例えば配列番号6、7、又は8を含む。
【0065】
oxMIF結合特異性は、oxMIFに対する選択的結合を決定するために適切な任意のアッセイ、例えばoxMIFに対する結合に関して、対照抗体、例えばイムルマブに対する任意の競合アッセイ又は当技術分野で公知の及び本明細書中で開示される様々なアッセイによって決定されうる。
【0066】
本明細書中の「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、リンカー配列を有するか、又は有さない免疫グロブリンの重鎖及び/又は軽鎖の定常ドメイン及び/又は可変ドメインとして理解される抗体ドメインからなるか、若しくはそれらを含むポリペプチド又はタンパク質を包含する。上記用語は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体等の多特異性抗体、及びそれらが、所望の抗原結合活性を示す限り、即ちoxMIFに結合する抗体断片を含むがこれらに限定されない各種抗体構造を包含する。用語は、融合タンパク質、例えば免疫毒素との融合体又は抗体コンジュゲート、例えばoxMIFに結合する抗体薬コンジュゲートも包含する。
【0067】
抗体ドメインは、自然構造を有しうるか、又は例えば、抗原結合特性、或いはFcRn及び/又はFc-ガンマ受容体等のFc受容体への結合のような安定性又は機能特性等の任意の他の特性を修飾するために、突然変異誘発又は誘導体化によって修飾されうる。ポリペプチド配列は、ループ配列によって結合された抗体ドメイン構造の少なくとも2つのベータ鎖からなるベータ-バレル構造を含む場合に、抗体ドメインであるとみなされる。
【0068】
「抗体」という用語は、それらの抗原結合誘導体及び断片を包含することが理解されよう。誘導体は、本発明の1つ又は複数の抗体ドメイン又は抗体及び/又は本発明の抗体の任意のドメインが、他の抗体又は抗体型式等の1つ又は複数の他の結合タンパク質の任意の位置で融合されうる融合タンパク質の任意の組合せ、例えば、CDRループ、受容体ポリペプチド、更にはリガンド、スキャフォールドタンパク質、酵素、標識、毒素等を含む結合構造である。
【0069】
「抗体」という用語は、標的抗原oxMIFに対して結合特性を示すポリペプチド又はタンパク質について特に言及する。
「抗体断片」は、無傷の抗体が結合する抗原を結合する無傷の抗体の抗原結合部分を含む無傷の抗体以外の分子を指す。抗体断片の例として、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、単鎖抗体分子(例えば、scFv)、Fab-scFv融合体、Fab-(scFv)、Fab-scFv-Fc、Fab-(scFv)-Fc、F(ab’)、ScFv-Fc、二特異性抗体、cross-Fab断片;線状抗体;及び抗体断片から形成される多特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。更に、抗体断片は、VHドメインの特徴を有する、即ち、VLドメインと一緒に集合することが可能であるか、又はVLドメインの特徴を有する、即ち、機能性抗原結合部位に対してVHドメインと一緒に集合することが可能であり、それにより、完全長抗体の抗原結合特性を提供する単鎖ポリペプチドを含む。本明細書中で言及される抗体断片はまた、Fcab(商標)等の抗原結合領域を含有する1つ又は複数の構造ループ領域を含むFcドメイン、又はFc領域が、第2の別個の抗原結合部位を含有するFcab(商標)によって置き換えられたIgG構造を有する完全長抗体型式を包含する。
【0070】
「機能性変異体」又は「機能的に活性な変異体」という用語は、自然発生の対立遺伝子変異体、並びに突然変異体又は任意の他の非自然発生の変異体も包含する。当技術分野で公知のように、対立遺伝子変異体(又は相同体とも呼ばれる)は、核酸又はポリペプチドの生物機能を基本的に変更しない1つ若しくは複数のヌクレオチド又はアミノ酸の置換、欠失、又は付加を有するとして特徴付けられる核酸又はペプチドの代替形態である。具体的には、機能性変異体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個のアミノ酸残基の置換、欠失及び/又は付加、又はこれらの組合せを含んでもよく、その置換、欠失及び/又は付加は保存的改変であり、抗原結合特性を変更しない。具体的には、本明細書中に記載される機能性変異体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個以下、又はまでのアミノ酸置換、欠失及び/又は付加を含み、それは保存改変であり、抗体の機能を変更しない。具体的には、本明細書中に記載される機能的に活性な変異体は、15個まで、好ましくは10個又は5個までのアミノ酸置換、欠失及び/又は付加を含み、それは保存的改変であり、抗体の機能を変更しない。
【0071】
機能性変異体は、ポリペプチド又はヌクレオチド配列における配列変更、例えば1つ又は複数の点突然変異によって得られ、ここで、配列変更は、本発明の組合せ中で使用される場合、未変更のポリペプチド又はヌクレオチド配列の機能を保持又は改善する。そのような配列変更は、(保存)置換、付加、欠失、突然変異及び挿入を包含しうるが、これらに限定されない。保存置換は、それらの側鎖及び化学特性と関連するアミノ酸ファミリー内で起こるものである。そのようなファミリーの例は、塩基性側鎖、酸性側鎖、非極性脂肪族側鎖、非極性芳香族側鎖、無電荷極性側鎖、小側鎖、大側鎖等を有するアミノ酸である。
【0072】
点突然変異は、種々のアミノ酸に関して1つ又は複数の単一(不連続)アミノ酸或いは二重アミノ酸の置換又は交換、欠失又は挿入における、操作されていないアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列の発現をもたらすポリヌクレオチドの操作として特に認識される。
【0073】
本明細書中で使用する場合、「Fab断片又はFab」は、軽鎖(CL)のVLドメイン及び定常ドメインを含む軽鎖断片、並びに重鎖のVHドメイン及び第1の定常ドメイン(CH1)を含む抗体断片を指す。本発明の抗体は、少なくとも1つのFab断片を含むことができ、ここで、重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のいずれかが交換される。可変領域又は定常領域のいずれかの交換に起因して、上記Fab断片はまた、「cross-Fab断片」又は「クロスオーバーFab断片」とも称される。クロスオーバーFab分子の2つの異なる鎖組成物が可能であり、本発明の抗体に含まれる。Fab重鎖及び軽鎖の可変領域は交換することができ、即ち、クロスオーバーFab分子は、軽鎖可変領域(VL)及び重鎖定常領域(CH1)で構成されるペプチド鎖、並びに重鎖可変領域(VH)及び軽鎖定常領域(CL)で構成されるペプチド鎖を含む。このクロスオーバーFab分子はまた、CrossFab(VLVH)とも称される。Fab重鎖及び軽鎖の定常領域が交換される場合、クロスオーバーFab分子は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖定常領域(CL)で構成されるペプチド鎖、並びに軽鎖可変領域(VL)及び重鎖定常領域(CH1)で構成されるペプチド鎖を含みうる。このクロスオーバーFab分子はまた、CrossFab(CLCH1)とも称される。
【0074】
「(scFv)2」は、約50キロダルトンの単一ペプチド鎖上の、異なる抗体又は同じ抗体のいずれかの2つの単鎖可変断片(scFv)からなるか、又は4つ若しくは2つの異なる遺伝子由来の融合タンパク質である人工モノクローナル抗体を指す。
【0075】
「bs(scFv)2」は、約50キロダルトンの単一ペプチド鎖上の、異なる標的抗原を有する抗体の2つの単鎖可変断片(scFv)、又は4つの異なる遺伝子由来のアミノ酸配列からなる融合タンパク質である人工モノクローナル抗体を指す。
【0076】
「単鎖Fab断片」又は「scFab」は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、抗体定常ドメイン1(CH1)、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、抗体軽鎖定常ドメイン(CL)及びリンカーからなるポリペプチドであり、ここで、上記抗体ドメイン及び上記リンカーは、N末端からC末端の方向で下記の順序:VH-CH1-リンカー-VL-CL、VL-CL-リンカー-VH-CH1、VH-CL-リンカー-VL-CH1又はVL-CH1-リンカー-VH-CLを有してもよく、上記リンカーは、少なくとも20個のアミノ酸、少なくとも30個のアミノ酸、具体的には、32個~50個のアミノ酸のポリペプチドである。上記単鎖Fab断片VH-CH1-リンカー-VL-CL、VL-CL-リンカー-VH-CH1、VH-CL-リンカー-VL-CH1及びVL-CH1-リンカー-VH-CLは、CLドメインとCH1ドメインとの間の天然ジスルフィド結合を介して安定化されうる。更に、これらの単鎖Fab分子は、システイン残基の挿入による鎖間ジスルフィド結合の生成によって更に安定化されうる。
【0077】
「N末端」という用語は、N-末端の最終アミノ酸を意味する。
「C末端」という用語は、C末端の最終アミノ酸を意味する。
「二重特異性T細胞エンゲージャー」の「BiTE」は、約50キロダルトンの単一ペプチド鎖上の、異なる抗体の2つの単鎖可変断片(scFV)、又は4つの異なる遺伝子由来のアミノ酸配列からなる融合タンパク質である人工モノクローナル抗体を指す。scFvの一方は、例えば、CD3を介してT細胞に結合するがそれに限定されず、他方は、oxMIFを介して腫瘍細胞に結合する。具体的には、BiTEは、約50kDを有する。
【0078】
「ミニボディ」という用語は、CH3ドメインを介して連結される単鎖Fv断片(単鎖Fv-CH3)、及びヘテロ二量体化プロセスにより前者の部分に対形成される、別個の特異性を有するFvの対で構成される抗体を指す(Hu S.Z.et al.,1996,Cancer Research,56,3055-3061)。ヘテロ二量体化効率を促進するために、単一残基突然変異を、各CH3ドメインに導入して、「ノブイントゥホール」アプローチを達成することができる。それよりもはるかに多く、更なるシステイン残基もまた、CH3ドメインに導入して、二重特異性ミニボディ構造を安定化することができる。ミニボディの1つのバージョンであるTriBiミニボディは、2つのそのFv断片を介して抗原を認識するように設計されている鎖を含むのに対して、Fv断片を保有する他の鎖は、T細胞障害性細胞又はNK細胞等のエフェクター細胞の動員の管理を引き受ける。この外部の結合ドメインの付加に伴って、TriBiミニボディのアビディティは、二重特異性ミニボディのアビディティよりも高い。具体的には、ミニボディは、約75kDaを有する。
【0079】
「DART(登録商標)」という用語は、二重特異性抗体(BsAb)の最も簡素な形態である二重親和性リターゲティング抗体を指す。DART分子は、それら自身のVHが他方の分子と交換された2つの操作されたFv断片からなる。Fv1は、抗体A由来のVH及び抗体B由来のVLからなるのに対して、Fv2は、Ab-B由来のVH及びAb-A由来のVLからなる。Fvドメインの相互交換は、短い連結ペプチドによる立体構造的制約から変異体断片を放出する。
【0080】
「DutaMab(商標)」という用語は、単一免疫グロブリン鎖における2つの非依存性パラトープを連結させることによって形成されるBsAbの1つの型式を指す。
「TandAb(登録商標)」又は「タンデム抗体」という用語は、2つの別個のFv由来の2つのVL/VH対をタンデムで有する抗体を指し、この用語はまた、Fcドメインを保有しないタンデム抗体を意味する。TandAbは、全IgG又はIgG由来の二重特異性Abよりも小さいが、単一ドメイン二重特異性Abよりも大きい。中規模サイズはまた、TandAbに、組織浸透能力の増加及びより長い血清片元気を付与する。更に、各抗原に関しては二価を意味する四価特性は、その結合効率、及び結果としての治療成績を改善させることができる。具体的には、TandAbは、約100kDaを有する。
【0081】
「二特異性抗体」という用語は、小さなペプチドリンカーによって結合される重鎖可変(V)及び軽鎖可変(V)領域からなる単鎖Fv(scFv)断片の非共有結合的二量体を指す。二特異性抗体の別の形態は、2つのscFV断片が互いに共有結合的に連結される単鎖(FV)である。更に、内部リンカーを用いて、各鎖における遺伝子をタンデムに連結させることによって、4つのVH及びVLドメインは、タンデムに発現されて、単鎖二特異異性効果(scDb)としてフォールディングさせることができ、これはまた、二重特異性抗体産生にとって有効な戦略である。更に、組換え可変ドメインをFc領域又はCH3ドメインに融合させること(scDb-Fc及びscDB-CH3、二特異性抗体-CH3)により、最終産物の結合価は二倍となりうる。サイズの増加はまた、血清中の二特異性抗体の半減期を延長させることができる。具体的には、二特異性抗体-CH3は、約125kDaを有する。
【0082】
「crossMab(登録商標)」という用語(ここで、mabは、モノクローナル抗体を指す)は、非依存性親抗体に由来する二重特異性Abの1つの型式である。重鎖不対合形成は、ノブ-イントゥ-ホール(KIH)法を適用させることによって回避される。軽鎖不対合形成は、二重特異性抗体が抗体ドメイン交換で産生される場合に回避される一方で、一方のFabアームの可変ドメイン又は定常ドメイン(CL及びCH1)のいずれかは、軽鎖と重鎖との間で取り替えられる。この「クロスオーバー」は、抗原結合親和性を保持して、また軽鎖不対合形成を回避するために2つの異なるアームを保存する。CrossMabの例は、種々の領域で交換されるFab、VH-VL及びCH1-CLでありうるが、これらに限定されない。CrossMAb Fabでは、完全VH-CH1領域及びVL-CL領域が交換され、CrossMAb VH-VL型式では、VH領域及びVL領域のみが交換され、CrossMAb CH1-CL1型式では、二重特異性抗体のCH1及びCL領域が交換される。具体的には、CrossMabは、約150kDaを有する。
【0083】
「IgG-scFv」という用語は、2つのscFvを、それぞれ単一特異性IgGに融合させることによって二重特異性に関して操作された二重特異性抗体の一種を指す。各scFvの特異性は、同じでありうるか、又は異なりうる。更に、軽鎖若しくは重鎖それぞれのアミノ又はC末端のいずれかに、対形成される抗体可変ドメインを付加させることができ、これが、IgG-scFv BsAbの多様なタイプ:IgG(H)-scFv又はscFv-(H)IgG:IgG(H)-scFv、完全長IgG HCのC末端に連結された同じ特異性を有する2つのscFv;IgG(H)-scFvと同じようであるが、但し、scFvがHN N末端に連結されることを除くscFV-(H)IgGの産生を引き起こす。IgG(L)-scFv又はscFv-(L)IgG:IgG軽鎖のC末端若しくはN末端に結合された2つの同じscFvは、それぞれ、IgG(L)-scFv又はscFv-(L)IgGを形成する。2scFv-IgG又はIgG-2scFvは、N末端(2scFv-IgG)又はC末端(IgG-2scFv)のいずれかに対して異なる特異性を有する2つの対形成されたscFvを融合することによって生成される。具体的には、IgG(H)-scFvは、約200kDaである。
【0084】
特定の実施形態によれば、本明細書中に記載する抗体は、例えば、親和性タグ、溶解度増強タグ及びモニタリングタグであるが、これらに限定されない、精製及び/又は検出用の1つ又は複数のタグを含みうる。
【0085】
具体的には、親和性タグは、ポリヒスチジンタグ、ポリアルギニンタグ、抗体用のペプチド基質、キチン結合ドメイン、RNA分解酵素Sペプチド、プロテインA、β-ガラクトシダーゼ、FLAGタグ、Strep IIタグ、ストレプトアビジン結合ペプチド(SBP)タグ、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、S-タグ、HAタグ、及びc-Mycタグからなる群から選択され、具体的には、タグは、1つ又は複数のHを含むHisタグ、例えば、ヘキサヒスチジンタグである。
【0086】
「融合される」又は「結合される」とは、構成成分(例えば、Fab分子及びFcドメインサブユニット)が、ペプチド結合によって、直接的に又は1つ若しくは複数のペプチドリンカーを介して連結されることを意味する。
【0087】
「リンカー」という用語は、本明細書中で使用する場合、ペプチドリンカーを指し、2、3、4、5、6、7又はそれ以上のアミノ酸長、好ましくは2アミノ酸長~10アミノ酸長、より好ましくは3アミノ酸長~5アミノ酸長を有するアミノ酸配列を有するペプチドであることが好ましい。
【0088】
「免疫グロブリン」という用語は、天然に存在する抗体の構造を有するタンパク質を指す。例えば、IgGクラスの免疫グロブリンは、ジスルフィドで結合されている2つの軽鎖及び2つの重鎖で構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。重鎖はそれぞれ、N末端からC末端に向かって、可変重鎖ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)、続いて、重鎖定常領域とも呼ばれる3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)を有する。同様に、軽鎖はそれぞれ、N末端からC末端に向かって、可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)、続いて、軽鎖定常領域とも呼ばれる定常軽鎖(CL)ドメインを有する。IgGクラスの免疫グロブリンは、免疫グロブリンヒンジ領域を介して連結される本質的に2つのFab分子及びFcドメインからなる。免疫グロブリンの重鎖は、α(IgA)、δ(IgD)、ε(IgE)、γ(IgG)、又はμ(IgM)と呼ばれる5つのタイプの1つに帰属させてもよく、それらのいくつかは、サブタイプ、例えば、γ(IgG)、γ(IgG)、γ(IgG)、γ(IgG)、α(IgA)及びα(IgA)に更に分類されうる。免疫グロブリンの軽鎖は、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプの1つに帰属されうる。
【0089】
「キメラ抗体」という用語は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の供給源又は種に由来するのに対して、重鎖及び/又は軽鎖の残部が、異なる供給源又は種に由来する、通常は組換えDNA技法によって調製される抗体を指す。キメラ抗体は、ウサギ又はマウスの可変領域と、ヒト定常領域とを含みうる。キメラ抗体は、免疫グロブリン可変領域をコードするDNAセグメントと、免疫グロブリン定常領域をコードするDNAセグメントとを含む発現免疫グロブリン遺伝子の産物である。キメラ抗体を産生する方法は、従来の組換えDNAに関与し、遺伝子トランスフェクション技法が当該技術分野で周知である(Morrison,S.L.,et al.,1984)。
【0090】
「ヒト抗体」は、ヒト若しくはヒト細胞によって産生される抗体、又はヒト抗体レパートリーを利用する非ヒト供給源に由来する抗体、又は他のヒト抗体コード配列のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を保有する。ヒト抗体のこの定義は、具体的に、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を排除する。また、キメラ抗体及びヒト化抗体に関して言及されるように、「ヒト抗体」という用語はまた、本明細書中で使用する場合、例えば、「クラススイッチング」、即ちFc部分の変化又は突然変異(例えば、IgG1からIgG4への変化、及び/又はIG1/IgG4突然変異)によって、定常領域において修飾されるかかる抗体を含む。
【0091】
「組換えヒト抗体」という用語は、本明細書中で使用する場合、HEK細胞、NS0若しくはCHO細胞等の宿主細胞から、又はヒト免疫グロブリン遺伝子にとってトランスジェニックな動物(例えば、マウス)から単離される抗体、或いは宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現される抗体等の、組換え手段によって調製、発現、創出又は単離されるヒト抗体全てを包含すると意図される。組換え抗体のVH領域及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列配列に由来し、且つそれらに関連する一方で、天然ではin vivoでヒト抗体レパートリー内に存在しない可能性がある配列である。
【0092】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択において最も一般に存在するアミノ酸残基を表すフレームワークである。概して、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループ由来である。一般に、配列のサブグループは、Kabat et al.,1991に記載されるようなサブグループである。
【0093】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基と、ヒトフレームワーク領域(FR)由来のアミノ酸残基とを含む、ヒト化を受けたキメラ抗体を指す。或る特定の実施形態において、ヒト化抗体は、実質的に全ての、少なくとも1つの、通常は2つの可変ドメインを含み、ここで、全て又は実質的に全てのHVR(例えば、CDR)は、非ヒト抗体のHVRに相当し、全て又は実質的に全てのFRは、ヒト抗体のFRに相当する。ヒト化抗体は、任意選択により、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含みうる。本発明によって包含されるヒト化抗体の他の形態は、例えばC1q結合及び/又はFc受容体(FcR)結合に関して、新たな特性を発するように、定常領域が元の抗体の定常領域から更に修飾又は変更されている抗体である。
【0094】
「二重特異性」という用語は、本明細書中で使用される場合、少なくともoxMIF抗原と更なる抗原、例えば限定はされないが、CD3抗原との結合反応を指す。二重特異性抗体は、具体的には、特異的結合特性を有する少なくとも2つの部位を含むことができ、2つの異なる標的抗原、oxMIFと更なる抗原が抗体によって認識される。例示的な二重特異性抗体フォーマットは2つの結合部位を含み、各結合部位は、異なる抗原、例えばCD3とoxMIFに特異的に結合することができる。更なる例示的な二重特異性フォーマットは、2つ以上の結合部位を含み、1つ又は複数の結合部位はoxMIFに結合し、1つ又は複数の結合部位は、1つ又は複数の異なる抗原、例えばCD3に特異的に結合することができる。
【0095】
本発明による「二重特異性抗体」は、2つの異なる結合特異性を有する抗体である。二重特異性抗体は、本明細書中に記載する完全長抗体又は抗体断片として調製されうる。免疫グロブリンFcヘテロ二量体は、各ドメイン上の異なる突然変異によるCH3ドメイン界面への改変によって操作されることがあり、CH3変異体対を持つ、操作したFc断片は、ホモ二量体よりもヘテロ二量体を優先的に形成する(Ha J-H.et al.,2016)。二重特性抗体の型式の例は、Spiess C.et al.,2015及びBrinkmann U.and Kontermann R.E.,2017に記載されるような二重特異性IgG(BsIgG)、更なる結合部位部分が付加されたIgG、BsAb断片、二重特異性融合タンパク質、BsAbコンジュゲート、ハイブリッドbsIgG、可変ドメインのみの二重特性抗体分子、CH1/CL融合タンパク質、Fab融合タンパク質、修飾Fc及びCH3融合タンパク質、付加されたIgG-HC融合体、付加されたIgG-LC融合体、付加されたIgG-HC及びLC融合体、Fc融合体、CH3融合体、IgE/IgM CH2融合体、F(ab’)融合体、CH1/CL、修飾IgG、非免疫グロブリン融合タンパク質、Fc修飾されたIgG、二特異性抗体等でありうるが、これらに限定されない。
【0096】
本発明のoxMIF抗体は、例えばCD3の更なるエピトープ、具体的には、細胞表面上に存在するCD3γ(ガンマ)鎖、CD3δ(デルタ)鎖、及び2つのCDε(イプシロン)鎖を包含するヒトCD3のエピトープを特異的に認識する少なくとも1つの結合部位を更に含みうる。例えば固定化された抗CD3抗体による、T細胞上でのCD3のクラスター形成は、T細胞受容体の会合(engagement)に類似しているが、そのクローン定型の特異性に依存しないT細胞活性化をもたらす。或る特定の実施形態において、本明細書中に記載する抗体のCD3結合ドメインは、ヒトCD3と強力なCD3結合親和性を示すだけでなく、各々のカニクイザルCD3タンパク質と優れた交差反応性も示す。場合によっては、抗体のCD3結合ドメインは、カニクイザル由来のCD3と交差反応性である。一実施形態において、抗CD3結合部位は、本明細書中に記載する抗CD3結合ドメインの1つ又は複数の(例えば、3つ全ての)軽鎖相補性決定領域、及び/又は本明細書中に記載する抗CD3結合ドメインの1つ又は複数の(例えば、3つ全ての)重鎖相補性決定領域を含み、例えば、抗CD3結合ドメインは、1つ又は複数の、例えば3つ全てのLC CDRと、1つ又は複数の、例えば、3つ全てのHC CDRとを含む。
【0097】
具体的には、抗oxMIF抗体は、国際公開第2019234241 A1号に記載されるようにCD3に対する第2の又は更なる結合特異性を有する。そのような二重特異性抗oxMIF抗体は、
(a)RYTMH(配列番号14)、GYGMH(配列番号15)及びSFPMA(配列番号16)からなる群から選択される配列のいずれかに対して少なくとも70%、具体的には80%、90%、95%又は99%の配列同一性を含む、又は有するCDR1-H2配列、並びに、
YINPSRGYTNYNQKFKD(配列番号17)、VIWYDGSKKYYVDSVKG(配列番号18)、及びTISTSGGRTYYRDSVKG(配列番号19)からなる群から選択される配列のいずれかに対して少なくとも70%、具体的には、80%、90%、95%又は99%の配列同一性を含む、又は有するCDR2-H2、並びに
YYDDHYCLDY(配列番号20)、QMGYWHFDL(配列番号21)、FRQYSGGFDY(配列番号22)、及びYYDDHYSLDY(配列番号23)からなる群から選択される配列のいずれかに対して少なくとも70%、具体的には、80%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するCDR3-H2
を含む重鎖可変領域、並びに
(b)RASSSVSYMN(配列番号24)、SASSSVSYMN(配列番号25)、RASQSVSSYLA(配列番号26)及びTLSSGNIENNYVH(配列番号27)からなる群から選択される配列のいずれかに対して少なくとも70%、具体的には80%、90%、95%又は99%の配列同一性を含む、又は有するCDR1-L2、並びに、
DTSKVAS(配列番号28)、DTSKLAS(配列番号29)、DASNRAT(配列番号30)及びDDDKRPD(配列番号31)からなる群から選択される配列のいずれかに対して少なくとも70%、具体的には、80%、90%、95%又は99%の配列同一性を含む、又は有するCDR2-L2、並びに
QQWSSNPLT(配列番号32)、QQWSSNPFT(配列番号33)、QQRSNWPPLT(配列番号34)、SQWLYGMDV(配列番号35)、及びQQWSSNP(配列番号36)からなる群から選択される配列のいずれかに対して少なくとも70%、具体的には、80%、90%、95%又は99%の配列同一性を含む、又は有するCDR3-L2
を含む軽鎖可変領域
を含む、CD3を特異的に認識する結合部位を含みうる。
【0098】
より具体的には、二重特異性抗oxMIF/抗CD3抗体は、上記に列挙したCDR配列それぞれにおいて、0個、1個、又は2個の点突然変異を含む。
更なる特定の実施形態は、相当する可変重鎖領域(VH)及び相当する可変軽鎖領域(VL)が、VH(oxMIF)-V(oxMIF)-VH(CD3)-VL(CD3)、VH(CD3)-VL(CD3)-VH(oxMIF)-VL(oxMIF)又はVH(CD3)-VL(CD3)-VL(oxMIF)-VH(oxMIF)の順で、N末端からC末端へ配置される、抗oxMIF/抗CD3bs(scFv)2について言及する。
【0099】
更なる実施形態において、抗体は、具体的には二重特異性IgG、CD3結合部位が付加されたIgG、BsAb断片、二重特異性融合タンパク質、BsAbコンジュゲートからなる群から選択される二重特異性抗体である。
【0100】
「抗原」という用語は、本明細書中で用語「標的」又は「標的抗原」と交換可能に使用される場合、抗体結合部位によって認識される全標的分子又はかかる分子の断片を指す。具体的には、抗原の下部構造、一般的に、免疫学的に関連性のある「エピトープ」、例えばB-細胞エピトープ又はT細胞エピトープと称される抗原、例えば、ポリペプチド又は炭水化物構造は、かかる結合部位によって認識されうる。
【0101】
「エピトープ」という用語は、本明細書中で使用する場合、特に、特異的な結合パートナーを完全に構成しうるか、又は本発明の抗体型式の結合部位に対する特異的な結合パートナーの一部でありうる分子構造を指す。エピトープは、炭水化物、ペプチド構造、脂肪酸、有機物質、生化学物質若しくは無機物質又はそれらの誘導体及びそれらの任意の組合せで構成されうる。エピトープが、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質等のペプチド構造に含まれる場合、エピトープは通常、少なくとも3アミノ酸、具体的には5アミノ酸~40アミノ酸、及び具体的には10アミノ酸以下、具体的には4アミノ酸~10アミノ酸を含む。エピトープは、線状エピトープ又は立体構造的エピトープのいずれかでありうる。線状エピトープは、ポリペプチド又は炭水化物鎖の一次配列の単一セグメントで構成される。線状エピトープは、近接しうるか、又は重複しうる。立体構造的エピトープは、ポリペプチドをフォールディングして、三次構造を形成することによって一緒にまとめられたアミノ酸又は炭水化物で構成され、アミノ酸は、線状配列において、必ずしも互いに隣接するとは限らない。かかるoxMIFエピトープは、oxMIFの中心領域内に位置する配列EPCALCS(配列番号43)でありうる。
【0102】
「抗原結合ドメイン」又は「結合ドメイン」又は「結合部位」という用語は、抗原の一部又は全てに特異的に結合し、また抗原の一部又は全てに相補的な区域を含む抗原結合部分の一部を指す。抗原が大きい場合、抗原結合分子は、抗原の特定の部分にのみ結合する場合があり、その特定の部分は、エピトープと称される。抗原結合ドメインは、例えば、1つ又は複数の抗体可変ドメイン(抗体可変領域とも呼ばれる)によって提供されうる。好ましくは、抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)と、抗体重鎖可変領域(VH)とを含む。
【0103】
「結合部位」という用語は、本発明の抗体に関して本明細書中で使用する場合、抗原と結合相互作用が可能な分子構造を指す。通常、結合部位は、各種抗原に結合機能を付与する様々な構造を有する特異的な領域である、本明細書中で「CDR結合部位」とも称される抗体の相補性決定領域(CDR)内に位置する。様々な構造は、抗体の天然レパートリー、例えば、マウス又はヒトレパートリーに由来しうるか、或いは例えば突然変異誘発によって、具体的には無作為化技法によって、組換え的に又は合成的に産生されうる。これらには、突然変異誘発されたCDR領域、可変抗体ドメインのループ領域、特に、抗体のCDRループ、例えばVL及び/又はVH抗体ドメインのいずれかのCDR1、CDR2及びCDR3ループが包含される。本明細書により使用される場合の抗体型式は通常、それぞれが抗原に特異的な1つ又は複数のCDR結合部位を含む。
【0104】
「特異的な」という用語は、本明細書中で使用する場合、分子の異種集団において目的の同族リガンドを決定する結合反応を指す。本明細書中では、結合反応は、少なくともoxMIF抗原との反応である。したがって、指定条件、例えば、イムノアッセイ条件下で、特定の標的に特異的に結合する抗体は、試料中に存在する他の分子に、著しい量では結合せず、具体的には、その抗体は、還元型MIFへの実質的な交差反応性を示さない。
【0105】
特異的な結合部位は通常、他の標的と交差反応しない。依然として、特異的な結合部位は、標的の1つ又は複数のエピトープ、アイソフォーム又は変異体に特異的に結合しうるか、又は他の関連標的抗原、例えば、相同体若しくは類似体に対して交差反応でありうる。
【0106】
特異的な結合は、結合が、選択に応じて、標的同一性、高、中若しくは低の親和性又はアビディティに関して選択されることでを意味する。選択的な結合は通常、oxMIF等の標的抗原に対する結合定数又は結合動態が、標的抗原ではない抗原に対する結合定数又は結合動態と比較して、少なくとも10倍異なり、好ましくは、その差が少なくとも100倍、より好ましくは少なくとも1000倍である場合に達成される。
【0107】
「価」という用語は、本出願内で使用する場合、抗体分子における指定数の結合部位の存在を意味する。したがって、「二価」、「四価」、及び「六価」という用語は、抗体分子における、それぞれ、2つの結合部位、4つの結合部位、及び6つの結合部位の存在を表す。
【0108】
「一価」という用語は、抗体の結合部位に関して本明細書中で使用する場合、標的抗原に対して向けられた唯一の結合部位を含む分子を指す。したがって、「結合価」という用語は、抗原の同じエピトープ又は異なるエピトープを特異的に結合する同じ標的抗原に対して向けられた結合部位の数と理解される。
【0109】
本発明の抗体は、oxMIFを特異的に結合する一価、二価、四価又は多価の結合部位を含むと理解される。
更なる実施形態によれば、抗体は、エフェクターT細胞、NK細胞又はマクロファージ上で発現される1つ又は複数の抗原、具体的には、CD3、ADAM17、CD2、CD4、CD5、CD6、CD8、CD11a、CD11b、CD14、CD16、CD16b、CD25、CD28、CD30、CD32a、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD56、CD57、CD64、CD69、CD74、CD89、CD90、CD137、CD177、CEAECAM6、CEACAM8、HLA-Dra cahin、KIR、LSECtin又はSLC44A2の1つ又は複数を特異的に認識する1つ又は複数の更なる結合部位を含みうる。
【0110】
代替の実施形態によれば、本発明の抗体は、モスネツズマブ、パソツキシズマブ、シビサタマブ、オテリキシズマブ、テプリズマブ、ビジリズマブ又はフォラルマブ(foralumab)のCD3可変結合ドメインの1つ又は複数を更に含む二重特異性抗体である。
【0111】
特定の実施形態によれば、抗CD3結合部位は、ムロモナブ-CD3(OKT3)、オテリキシズマブ(TRX4)、テプリズマブ(MGA031)、ビジリズマブ(Nuvion)、ソリトマブ(solitomab)、ブリナツモマブ、パソツキシズマブ、シビサタマブ、モスネツズマブ、SP34、X35、VIT3、BMA030(BW264/56)、CLB-T3/3、CRIS7、YTH12.5、F111-409、CLB-T3.4.2、TR-66、WT32、SPv-T3b、11D8、XIII-141、XIII-46、XIII-87、12F6、T3/RW2-8C8、T3/RW2-4B6、OKT3D、M-T301、SMC2、F101.01、UCHT-1及びWT-31並びに適用可能であれば、それらの任意のヒト化誘導体からなる群から選択される相補性決定領域(CDR)を含む。
【0112】
具体的には、抗CD3可変領域の1つ若しくは複数のCDR、又はムロモナブ、オテリキシズマブ、テプリズマブ、ビジリズマブ、ソリトマブ、ブリナツモマブ、パソツキシズマブ、シビサタマブ、モスネツズマブのCDR配列のいずれかに対して少なくとも70%、具体的には80%、90%、95%又は99%の配列同一性を含む、又は有するCDRは、本発明に従ってCD3結合ドメインとして使用されうる。
【0113】
「超可変領域」又は「HVR」という用語は、本明細書中で使用する場合、配列において超可変性であり、及び/又は構造的に規定されるループ(「超可変ループ」)を形成する抗体可変ドメインの領域それぞれを指す。概して、自然四鎖抗体は、VHにおける3つ(H1、H2、H3)、及びVLにおける3つ(L1、L2、L3)の6つのHVRを含む。HVRは概して、超可変ループ由来及び/又は「相補性決定領域」(CDR)由来のアミノ酸残基を含み、後者は、最も高い配列可変性を有し、及び/又は抗原認識に関与する(Kabat et al.,1991)。超可変領域(HVR)はまた、相補性決定領域(CDR)とも称され、これらの用語は、抗原結合領域を形成する可変領域部分に関連して、本明細書中で交換可能に使用される。特定のCDRを包含する正確な残基数は、CDRの配列及びサイズに応じて様々である。抗体の可変領域アミノ酸配列を考慮して、どの残基が特定のCDRを含むかどうかを、当業者は日常的に決定することができる。
【0114】
Kabatは、任意の抗体に適用可能な可変領域配列に対する付番システムを規定した。当業者は、「Kabat付番」のこのシステムを、配列自体を超えるいかなる実験データに頼らずに、任意の可変領域配列に一義的に帰属させることができる。残基のKabat付番は、「標準」Kabat付番配列との、抗体の配列の相同性の領域におけるアライメントにより、所与の抗体について決定されうる。本明細書中で使用する場合、「Kabat付番」は、Kabat et al.,1983,U.S.Dept.of Health and Human Services,「Sequence of Proteins of Immunological Interest」によって記載される付番システムを指す。別記しない限り、抗体可変領域における特定のアミノ酸残基位置の付番への言及は、Kabat付番システムに従う。定常領域の付番は、EU付番指標に従う。
【0115】
CDRはまた、「特異性決定残基」又は「SDR」を含み、これらは、抗原と接触する残基である。SDRは、簡易CDR、又はa-CDRと呼ばれるCDRの領域内に含有される。別記されない限り、可変ドメイン中のHVR残基及び他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書中では上述のKabatらに従って付番される。
【0116】
「点突然変異」は、種々のアミノ酸に関して1つ又は複数の単一(不連続)アミノ酸或いは二重アミノ酸の置換又は交換、欠失又は挿入における、操作されていないアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列の発現をもたらすポリヌクレオチドの操作として特に認識される。好ましい点突然変異は、同じ極性及び/又は電荷のアミノ酸の交換を指す。これに関して、アミノ酸は、61個のトリプレットコドンによってコードされる20個の天然に存在するアミノ酸を指す。これら20個のアミノ酸は、中性電荷、正電荷、及び負電荷を有するアミノ酸に分割することができる。
【0117】
本明細書中で同定されるポリペプチド配列に関する「パーセント(%)の配列同一性」は、最大のパーセントの配列同一性を達成するように、必要に応じて、配列を整列させて、ギャップを導入した後の、特定のポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である候補配列におけるアミノ酸残基のパーセントとして定義され、配列同一性の一部として、いかなる保存的置換も考慮しない。当業者は、比較される配列の完全長にわたる最大の整列を達成するのに必要とされる任意のアルゴリズムを含む、整列を測定するための適切なパラメーターを決定することができる。
【0118】
本発明によれば、可変又は定常領域配列の配列同一性は、本明細書中に記載する各々の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は100%である。
【0119】
「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物として、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及び非ヒト霊長類、例えばサル)、ウサギ及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)が挙げられるが、これらに限定されない。或る特定の実施形態において、個体又は対象は、ヒトである。
【0120】
「単離核酸」は、その天然環境の構成成分と分離された核酸分子を指す。単離核酸は、核酸分子を通常含有する細胞中に含有される核酸分子を包含するが、核酸分子は、染色体外で、又はその天然染色体位置とは異なる染色体位置で存在する。
【0121】
「抗oxMIFをコードする単離核酸」は、単一ベクター又は別々のベクター中にかかる核酸分子を包含する、抗体重鎖及び軽鎖(又はそれらの断片)をコードする1つ又は複数の核酸分子、及び宿主細胞における1つ又は複数の位置で存在するかかる核酸分子を指す。
【0122】
「実質的な交差反応なし」は、分子(例えば、抗体)が、特に当該標的抗原と比較した場合に、分子(例えば、標的抗原に密接に関連した抗原)の実際の標的抗原とは異なる抗原、具体的には還元型MIFを認識しないか、又は特異的に結合しないことを意味する。例えば、抗体は、実際の標的抗原とは異なる抗原に、約10%未満~約5%未満結合しうるか、又は約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.2%、又は0.1%未満、好ましくは約2%、1%、又は0.5%未満、最も好ましくは約0.2%又は0.1%未満の実際の標的抗原とは異なる抗原からなる量で、実際の標的抗原とは異なる抗原を結合しうる。結合は、例えばELISA又は表面プラズモン共鳴であるが、これらに限定されない当該技術分野で既知の方法によって決定されうる。
【0123】
本発明の抗体の組換え産生は、好ましくは、例えば、抗体型式をコードするヌクレオチド配列を含む発現構築物又はベクターを包含する発現系を含む。
「発現系」という用語は、動作可能な連結で所望のコード配列及び制御配列を含有する核酸分子を指し、その結果、これらの配列で形質転換又はトランスフェクトされた宿主は、コードされるタンパク質を産生することが可能である。形質転換を達成するためには、発現系は、ベクター上に含まれうるが、続いて、関連DNAは、宿主染色体に組み込まれうる。或いは、発現系は、in vitroでの転写/翻訳に使用することができる。
【0124】
本明細書中で使用する「発現ベクター」は、適切な宿主生物におけるクローニングされる組換えヌクレオチド配列の、即ち組換え遺伝子の転写、及びそれらのmRNAの翻訳に必要とされるDNA配列と定義される。発現ベクターは、発現カセットを含み、更に、宿主細胞における自己複製のための起源又はゲノム組み込み部位、1つ又は複数の選択可能マーカー(例えば、アミノ酸合成遺伝子又はゼオシン、カナマイシン、G418又はハイグロマイシン等の抗生物質に対する耐性を付与する遺伝子)、多数の制限酵素切断部位、適切なプロモーター配列及び転写終結因子を通常含み、これらの構成成分は、動作可能に一緒に連結される。「プラスミド」及び「ベクター」という用語は、本明細書中で使用する場合、自己複製ヌクレオチド配列及びゲノム組み込みヌクレオチド配列を包含する。
【0125】
具体的には、上記用語は、DNA又はRNA配列(例えば、外来遺伝子)、例えば本発明の抗体型式をコードするヌクレオチド配列が、宿主を形質転換するように宿主細胞に導入され、導入された配列の発現(例えば、転写及び翻訳)を促進しうるビヒクルを指す。プラスミドは、本発明の好ましいベクターである。
【0126】
ベクターは通常、外来遺伝子が挿入される伝播性物質のDNAを含む。DNAの一方のセグメントを、DNAの別のセグメントに挿入する一般的な方法は、制限部位と呼ばれる特定の部位(ヌクレオチドの特定の基)でDNAを切断する制限酵素と呼ばれる酵素の使用を包含する。
【0127】
「カセット」は、規定の制限部位でベクターに挿入されうる発現産物をコードするDNAのDNAコード配列又はセグメントを指す。カセット制限部位は、適正なリーディングフレームにおけるカセットの挿入を保証するよう設計されている。概して、外来DNAは、ベクターDNAの1つ又は複数の制限部位で挿入され、続いて、ベクターによって伝播性ベクターDNAと一緒に宿主細胞へ運搬される。発現ベクター等のDNAが挿入又は付加されたDNAのセグメント又は配列はまた、「DNA構築物」とも呼ばれうる。ベクターの一般的なタイプはプラスミドであり、これは概して、更なる(外来)DNAを容易に受け入れることができる二重鎖DNAの自己完結式分子であり、適切な宿主細胞に容易に導入されうる。本発明のベクターは多くの場合、コードDNA及び発現制御配列、例えば、プロモーターDNAを含有し、外来DNAを挿入するのに適した1つ又は複数の制限部位を有する。コードDNAは、本発明の抗体型式等の特定のポリペプチド又はタンパク質に関する特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列である。プロモーターDNAは、コードDNAの発現を開始するか、調節するか、又は他の場合には媒介するか、若しくは制御するDNA配列である。プロモーターDNA及びコードDNAは、同じ遺伝子由来であってもよく、又は異なる遺伝子由来であってもよく、同じか、又は異なる生物由来であってもよい。本発明の組換えクローニングベクターは多くの場合、クローニング若しくは発現用の1つ又は複数の複製系、宿主における選択用の1つ又は複数のマーカー、例えば抗生物質耐性、及び1つ又は複数の発現カセットを包含する。
【0128】
例えば、本発明の要素を提供又コードするDNA配列、及び/又は目的のタンパク質、プロモーター、終結因子及び更なる配列をそれぞれライゲーションして、組み込み又は宿主複製に必要な情報を含有する適切なベクターにそれらを挿入するのに使用される手順は、当業者に周知であり、例えば、Sambrook et al.,2012に記載される。
【0129】
宿主細胞は、具体的には、本発明によるベクター等の発現構築物でトランスフェクトされた細胞、組換え細胞又は細胞株と理解される。
「宿主細胞株」という用語は、本明細書中で使用する場合、長期間にわたって増殖する能力を獲得した特定の細胞型の樹立されたクローンを指す。宿主細胞株という用語は、本発明の組換え抗体型式等のポリペプチドを産生するように内因性又は組換え遺伝子を発現するのに使用される場合の細胞株を指す。
【0130】
「産生宿主細胞」又は「産生細胞」は、産生プロセスの産物である本発明の組換え抗体型式を得るように、バイオリアクターにおける培養のための使用準備済の細胞の細胞株又は培養物であると一般的に理解される。本発明による宿主細胞型は、任意の原核細胞又は真核細胞でありうる。
【0131】
「組換え」という用語は、本明細書中で使用する場合、例えば、具体的には組換えベクター又は組換え宿主細胞において取り込まれた異種配列を用いた「遺伝子操作によって調製されること」又は「遺伝子操作の結果」を意味する。
【0132】
本発明の抗体は、任意の既知の十分に樹立された発現系及び組換え細胞培養偽術を使用して、例えば、細菌宿主(原核生物系)又は酵母、真菌、昆虫細胞若しくは哺乳動物細胞等の真核生物系における発現によって産生されうる。本発明の抗体分子は、ヤギ、植物又はヒト免疫グロブリン遺伝子座の大きな断片を有し、且つマウス抗体産生を欠損している操作されたマウス株であるトランスジェニックマウス等のトランスジェニック生物において産生されうる。抗体はまた、化学合成によって産生されてもよい。
【0133】
特定の実施形態によれば、宿主細胞は、CHO、PerC6、CAP、HEK、HeLa、NS0、SP2/0、ハイブリドーマ及びジャーカットからなる群から選択される細胞の産生細胞株である。より具体的には、宿主細胞はCHO細胞から得られる。
【0134】
本発明の宿主細胞は、具体的には、例えば、血清に代わるものとして、血漿タンパク質、ホルモン及び成長因子等の他の構成成分を含む無血清培養物中で培養又は維持される。
宿主細胞は、樹立されて、適応されて、無血清下で、任意選択により、動物起源のいかなるタンパク質/ペプチドも含まない培地中で完全に培養される場合に最も好ましい。
【0135】
本発明の抗oxMIF抗体は、標準的なタンパク質精製方法を使用して、培養培地から回収することができる。
「医薬製剤」という用語は、調製物中に含有される有効成分の生物活性が有効であるのを可能にするような形態で存在し、製剤が投与される対象にとって受け入れられないほど毒性である更なる構成成分を含有しない調製物を指す。
【0136】
「薬学的に許容可能な担体」は、対象にとって無毒性である有効成分以外の医薬製剤中の成分を指す。薬学的に許容可能な担体のいくつかの例は、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、グリシン若しくはヒスチジンなどのアミノ酸、デキストロース、グリセロール、エタノール等、並びにそれらの組合せである。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトール等のポリアルコール、又は塩化ナトリウムを包含することが好適である。薬学的に許容可能な物質の更なる例は、湿潤剤、又は少量の、湿潤剤若しくは乳化剤、防腐剤又は緩衝液等の補助物質であり、これらは、抗体の寿命又は有効性を高める。
【0137】
本明細書中で使用する場合、「治療」、「治療する」又は「治療すること」は、治療される個体の自然経過を変更しようとする臨床的介入を指し、予防のため、又は臨床病理の経過中に実施されうる。治療の所望の効果として、疾患の発症又は再発の防止、症状の軽減、疾患の任意の直接的若しくは間接的な病理学的帰結の減少、転移の予防、疾患進行の速度の減少、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解又は予後の向上が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、疾患の発症を遅らせるのに、又は疾患の進行を減速させるのに使用される。
【0138】
本発明の抗oxMIF抗体及びそれを含む医薬組成物は、1つ又は複数の他の治療剤、診断剤又は予防剤と組み合わせて投与されうる。更なる治療剤として、治療されるべき疾患に応じて、他の抗癌剤、抗腫瘍剤、抗血管新生剤、化学療法剤、ステロイド、又はチェックポイント阻害剤が挙げられる。
【0139】
本発明の医薬組成物は、様々な形態、例えば、液体溶液(例えば、注射可能な溶液及び注入可能な溶液)、分散液又は懸濁液、錠剤、丸剤、粉剤、リポソーム及び坐剤等の液体、半固形及び固形の投薬形態で存在しうる。好ましい形態は、対象とする投与様式及び治療用途に応じる。典型的な好ましい組成物は、ヒトの受動免疫に使用されるものに類似した組成物等の注射可能な溶液又は注入可能な溶液の形態で存在する。好ましい投与様式は、非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋内)である。好ましい実施形態において、抗体は、静脈内注入又は注射によって投与される。別の好ましい実施形態において、抗体は、筋内注射又は皮下注射によって投与される。当業者によって理解されるように、投与経路及び/又は様式は、所望の結果に応じて様々なである。
【0140】
本発明の抗体の最適化され、有利な特性により、高用量の抗体組成物が投与されうる。具体的には、組成物は、約10~250mg/ml、具体的には、25~100mg/ml、具体的には、≧50mg/mlの抗体を含む。
【0141】
抗oxMIF抗体は、1回投与されてもよいが、より好ましくは、複数回投与される。例えば、抗体は、1日3回~6カ月又はそれより長い期間毎に1回、投与されてもよい。投与は、1日3回、1日2回、1日1回、2日毎に1回、3日毎に1回、1週に1回、2週毎に1回、1カ月毎に1回、2カ月毎に1回、3カ月毎に1回及び6カ月毎に1回等のスケジュールで行われうる。
【0142】
本発明は、MIF関連症状、具体的には、炎症性疾患及び過剰増殖性疾患などの免疫疾患のための治療を必要とする対象の治療のための、抗oxMIF抗体又はその抗原結合部分を含む組成物にも関する。一部の実施形態において、治療を必要とする対象はヒトである。
【0143】
「癌」という用語は、本明細書中で使用する場合、増殖性疾患、具体的には、結腸直腸癌、卵巣癌、膵臓癌、肺癌、黒色腫、扁平上皮癌(SCC)(例えば、頭頸部癌、食道癌、及び口腔癌)、肝細胞癌、結腸直腸腺癌、腎臓癌、甲状腺髄様癌、星細胞腫、神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、子宮頸癌、子宮内膜癌、乳癌、前立腺癌、及び悪性セミノーマ(上記癌の任意の難治性バーションを含む)、或いは上記癌の1つ又は複数の組合せを指す。
【0144】
本明細書の抗oxMIF抗体によって治療されうる癌疾患又は癌などの過剰増殖性障害は、任意の組織又は臓器に関与し、脳癌、肺癌、扁平上皮癌、膀胱癌、胃癌、膵臓癌、乳癌、頭部癌、頸部癌、肝臓癌、腎臓癌、卵巣癌、前立腺癌、直腸結腸癌、食道癌、婦人科癌、鼻咽頭癌、又は甲状腺癌、黒色腫、リンパ腫、白血病又は多発性骨髄腫を含むが、これらに限定されない。特に、本発明の抗oxMIF抗体は、卵巣、膵臓、大腸及び肺の癌の治療に有用である。
【0145】
特定の実施形態において、癌疾患の治療、具体的には、固形腫瘍の治療に非常に好適な抗体は、低減された凝集能及び低減された疎水性を有する組換え抗oxMIF抗体又はその抗原結合断片であって、以下の可変ドメイン:
(a1)配列番号9及びアミノ酸置換M30L、F49Y、A51G、P80S、W93Fの少なくとも1つを含む軽鎖可変ドメイン、又は
(a2)1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのアミノ酸置換を有する配列番号9を含み、36位に保存されたチロシン、及びアミノ酸置換M30L、F49Y、A51G、P80S、W93Fの少なくとも1つを更に含む軽鎖可変ドメイン;並びに
(b1)配列番号6を含む重鎖可変ドメイン;又は
(b2)配列番号6及びアミノ酸置換L5Q及び/又はW97Yを含む重鎖可変ドメイン、又は
(b3)1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのアミノ酸置換を有する配列番号6及びアミノ酸置換L5Q及び/又はW97Yを含む重鎖可変ドメイン
のうちの1つの重鎖可変ドメインを含み、
アミノ酸位置が、Kabatに従って付番され、凝集能及び疎水性が、アミノ酸置換を欠く配列番号6及び配列番号9を含む抗体と比較して低減される、組換え抗oxMIF抗体又はその抗原結合断片である。
【0146】
或いは、固形腫瘍の治療は、配列番号9を含む軽鎖可変ドメイン、又は36位にチロシンを含む配列番号9に対して少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン、並びに配列番号6及びアミノ酸置換W97Y及び/又はL5Qを含む重鎖可変ドメイン、又は1つ、2つ、3つ、4つ若しくは5つのアミノ酸置換を有する配列番号6を含み、アミノ酸置換W97Y及び/又はL5Qを更に含む重鎖可変ドメインを含む、組換え抗oxMIF抗体によって実施されうる。
【0147】
更に特定の実施形態において、癌疾患の治療、具体的には、固形腫瘍の治療に非常に好適な抗体は、
(a)配列番号2若しくは配列番号2に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、アミノ酸239D及び332Eを含む機能性変異体;又は
(b)配列番号3若しくは配列番号3に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、アミノ酸239D、268F、324T及び332Eを含む機能性変異体;又は
(c)配列番号4若しくは配列番号4に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、アミノ酸239D、及び332Eを含む機能性変異体;又は
(d)配列番号5若しくは配列番号5に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、アミノ酸235V、243L、292P、300L、及び396Lを含む機能性変異体
を含む重鎖定常領域を有する、増強されたエフェクター機能も有する記載された組換え抗oxMIF抗体である。
【0148】
本発明は、治療上有効な量の抗oxMIF抗体又はその抗原結合部分を、治療を必要とする対象に投与する工程を含む、ヒトを含む対象における炎症性疾患、例えば、脈管炎、関節炎、敗血症、敗血症性ショック、エンドトキシンショック、毒素ショック症候群、後天性呼吸促迫症候群、糸球体腎炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、腹膜炎、腎炎、アトピー性皮膚炎、喘息、結膜炎、発熱、マラリア、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)、多発性骨髄腫、急性及び慢性膵炎、1型糖尿病、IgA腎症、間質性膀胱炎、COVID後遺症、乾癬、糸球体腎炎、炎症性腸疾患、腎炎及び腹膜炎、全身性エリテマトーデス(SLE-ループス腎炎を含む)、喘息、関節リウマチ(RA)及び炎症性腸疾患(IBD)の治療のための方法も包含する。
【0149】
特定の実施形態において、炎症性疾患又は感染性疾患の治療に非常に好適な抗体は、低減された凝集能及び低減された疎水性を有する組換え抗oxMIF抗体又はその抗原結合断片であって、以下の可変ドメイン:
(a1)配列番号9及びアミノ酸置換M30L、F49Y、A51G、P80S、W93Fの少なくとも1つを含む軽鎖可変ドメイン、又は
(a2)1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのアミノ酸置換を有する配列番号9を含み、36位に保存されたチロシン、及びアミノ酸置換M30L、F49Y、A51G、P80S、W93Fの少なくとも1つを更に含む軽鎖可変ドメイン;並びに
(b1)配列番号6を含む重鎖可変ドメイン;又は
(b2)配列番号6及びアミノ酸置換L5Q及び/又はW97Yを含む重鎖可変ドメイン、又は
(b3)1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのアミノ酸置換を有する配列番号6及びアミノ酸置換L5Q及び/又はW97Yを含む重鎖可変ドメイン
のうちの1つの重鎖可変ドメインを有し、
アミノ酸位置が、Kabatに従って付番され、凝集能及び疎水性が、アミノ酸置換を欠く配列番号6及び配列番号9を含む抗体と比較して低減される、組換え抗oxMIF抗体又はその抗原結合断片である。
【0150】
或いは、炎症性疾患又は感染性疾患の治療は、配列番号9を含む軽鎖可変ドメイン、又は36位にチロシンを含む配列番号9に対して少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン、並びに配列番号6及びアミノ酸置換W97Y及び/又はL5Qを含む重鎖可変ドメイン、又は1つ、2つ、3つ、4つ若しくは5つのアミノ酸置換を有する配列番号6を含み、アミノ酸置換W97Y及び/又はL5Qを更に含む重鎖可変ドメインを含む、組換え抗oxMIF抗体によって実施されうる。
【0151】
更に特定の実施形態において、炎症性疾患又は感染性疾患の治療に非常に好適な抗体は、阻害受容体FcγRIIBに対して増加された優先結合も有する、又は高α2,6-N結合シアリル化を有する、記載する組換え抗oxMIF抗体である。
【0152】
本発明は、下記の項目を更に包含する:
1.低減された凝集能及び低減された疎水性を有する組換え抗oxMIF抗体又はその抗原結合断片であって、
i)以下の可変ドメイン:
(a)配列番号9及びアミノ酸置換M30L、F49Y、A51G、P80S、W93Fの少なくとも1つを含む軽鎖可変ドメイン、又は1つ、2つ、3つ、4つ、若しくは5つのアミノ酸置換を有する配列番号9を含み、36位に保存されたチロシンを更に含み、アミノ酸置換M30L、F49Y、A51G、P80S、W93Fの少なくとも1つを更に含む軽鎖可変ドメイン;並びに
(b)配列番号6を含む重鎖可変ドメイン;又は
(c)配列番号6及びアミノ酸置換L5Q又はW97Yの少なくとも1つを含む重鎖可変ドメイン又は1つ、2つ、3つ、4つ、若しくは5つのアミノ酸置換を有する配列番号6を含み、アミノ酸置換L5Q又はQ97Yの少なくとも1つを更に含む重鎖可変ドメイン
の1つ、又は、
ii)以下の可変ドメイン
(a)配列番号9を含む軽鎖可変ドメイン又は36位にチロシンを含む配列番号9に対して少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン、及び
(b)配列番号6及びアミノ酸置換W97Yを含む重鎖可変ドメイン、又は1つ、2つ、3つ、4つ、若しくは5つのアミノ酸置換を有する配列番号6を含み、アミノ酸置換W97Yを更に含む重鎖可変ドメイン
を含む、組換え抗oxMIF抗体又はその抗原結合断片。
【0153】
2.(a)配列番号2若しくは配列番号2に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、アミノ酸239D及び332Eを含む重鎖定常領域;又は
(b)配列番号3若しくは配列番号3に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、アミノ酸239D、268F、324T及び332Eを含む重鎖定常領域;又は
(c)配列番号4若しくは配列番号4に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、アミノ酸239D、及び332Eを含む重鎖定常領域;又は
(d)配列番号5若しくは配列番号5に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、アミノ酸235V、243L、292P、300L、及び396Lを含む重鎖定常領域
を含む、重鎖定常領域を含む、増強されたエフェクター機能を有する、項目1の組換え抗oxMIF抗体。
【0154】
3.配列番号8、10、11、12、及び13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、項目1又は2の抗oxMIF抗体。
4.配列番号6、11及び配列番号1、2、3、4又は5のいずれか1つを含む、項目1又は2の抗oxMIF抗体。
【0155】
5.配列番号7、10及び配列番号1、2、3、4又は5のいずれか1つを含む、項目1又は2の抗oxMIF抗体。
6.配列番号7、11及び配列番号1、2、3、4又は5のいずれか1つを含む、項目1又は2の抗oxMIF抗体。
【0156】
7.配列番号8、11及び配列番号1、2、3、4若しくは5のいずれか1つ、又は配列番号39、又は配列番号40を含む、項目1又は2の抗oxMIF抗体。
8.配列番号8、13及び配列番号1、2、3、4若しくは5のいずれか1つ、又は配列番号41、又は配列番号42を含む、項目1又は2の抗oxMIF抗体。
【0157】
9.配列番号8、9及び配列番号1、2、3、4又は5のいずれか1つを含む、項目1又は2の抗oxMIF抗体。
10.配列番号8、10及び配列番号1、2、3、4又は5のいずれか1つを含む、項目1又は2の抗oxMIF抗体。
【0158】
11.二重特異性抗体、scFv、(scFv)2、scFvFc、Fab、Fab’、及びF(ab’)2、Fab’-SH、Fab-scFv融合体、Fab-(scFv)2-融合体、Fab-scFv-Fc、Fab-(scFv)2-Fc、異なる抗体の2つの単鎖可変断片(scFvs)の融合タンパク質(例えば、BiTE)、ミニボディ、TandAb(登録商標)、DutaMab(商標)、DART、及びCrossMab(登録商標)からなる群から選択される、項目1~10のいずれか一項記載の抗oxMIF抗体。
【0159】
12.医薬の調製における使用のためである、項目1~11のいずれか一項記載の抗体。
13.項目1~11のいずれか一項記載の抗体を、場合により医薬担体又はアジュバントと共に含む医薬組成物。
【0160】
14.約10~250mg/mlの項目1~11のいずれか一項の抗体、具体的には≧50mg/mlを含む、項目13記載の医薬組成物。
15.皮下投与のために製剤化されている、項目13又は14記載の医薬組成物。
【0161】
16.単独物質として投与されるか、又は治療が、好ましくは、抗ウイルス物質、抗炎症物質、抗癌物質、抗血管新生物質及び抗生物質からなる群から選択される、1つ若しくは複数の活性物質を含む更なる医薬組成物と組み合わされる、項目13~15のいずれか一項記載の医薬組成物。
【0162】
17.炎症性疾患、過剰増殖性障害、感染性疾患又は癌を患う患者の治療、具体的には、喘息、脈管炎、関節炎、敗血症、敗血症性ショック、エンドトキシンショック、毒素ショック症候群、後天性呼吸促迫症候群、糸球体腎炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、腹膜炎、腎炎及び乾癬、大腸癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、及び肺癌の治療における使用のための、項目13~16のいずれか一項記載の医薬組成物。
【0163】
18.項目1~11のいずれか一項の抗体をコードする単離核酸。
19.項目18の核酸分子(複数可)を含む発現ベクター。
20.項目18の核酸又は項目19の発現ベクターを含有する宿主細胞。
【0164】
21.項目1~11のいずれか一項の抗体を産生する方法であって、項目20の宿主細胞を培養する工程及び細胞培養物から前記抗体を回収する工程を含む方法。
22.項目1~11のいずれか一項の抗体を産生するための方法であって、宿主細胞において前記抗体をコードする核酸を発現させる工程を含む方法。
【実施例
【0165】
本明細書中に記載される実施例は、本発明の例示であり、それを限定することを意図しない。本発明の範囲を逸脱することなく、多くの改変及びバリエーションが本明細書中に記載及び例示される技術に行われうる。したがって、実施例が例示のみであり、本発明の範囲を限定しないことが理解されるはずである。
【0166】
実施例1:新しく設計した抗体の低減された凝集能及び低減された疎水性
【0167】
【表1】
【0168】
疎水性及び凝集を評価するため、新しく設計した抗体は、2つの異なるSECカラム及びランニング緩衝液条件を使用するゲル濾過(SEC)によって、並びに疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって解析し、抗oxMIF抗体C0008と比較した。
【0169】
SECのため、試料を、0.02%Tweenを含む5×リン酸緩衝生理食塩水(5×PBST)中で0.1mg/mlに希釈し、50μlの試料を0.75ml/minの流速でSuperdex200 Increase 10/300GL(GE Healthcare社)ゲル濾過カラムに適用した。分離及び平衡は、22℃で、5×PBST中で実施した。タンパク質ピークは、214nmの吸光度を使用してモニターし、スペクトルは、Unicornエマルションソフトウェアパッケージ(GE Healthcare社)を使用して解析した。更に、試料を、1×リン酸緩衝生理食塩水(1×PBS)中で0.2mg/mlに希釈し、100μlの試料を1ml/minの流速でEnrich650(Bio-Rad社)ゲル濾過カラムに適用した。分離及び平衡は、22℃で、1×PBS中で実施した。タンパク質ピークは、280nmの吸光度を使用してモニターし、スペクトルは、ChromLabソフトウェアパッケージ(Bio-Rad社)を使用して解析した。結果は、メインピークの保持容量(Vr、ml)で報告し、凝集体の存在は手動で順位付けした。
【0170】
HIC解析のため、全ての試料を、50mMリン酸及び0.75M 硫酸アンモニウム、pH6.9を使用して、0.2mg/mlの最終濃度に希釈した。抗体の高度に精製された試料を、1mlのHiTrap Butyl HPカラム上に独立してロードした。50μlの試料を注入し、カラム流速を22℃で1ml/minに維持した。ピークの分離は、0~100%B(緩衝液B:50mMリン酸、20%イソプロパノール;pH7.0)の勾配の20カラム容量(CV)で実行した。タンパク質ピークは、280nmの吸光度を使用してモニターし、スペクトルは、Unicornエマルションソフトウェアパッケージ(GE Healthcare社)を使用して解析した。結果は、各ピークについて、最大ピークでのVr(ml)で報告する。
【0171】
結果:対照抗体(C0008)は、サイズ排除カラムの総容量(約24ml Superdex200、約18ml Enrich650)に近い保持容量を示し、それはヒトIgGで予測されるよりもはるかに小さい分子量に相当する(図2A及びB)。異常に長い保持は、主に、固定相表面との疎水性相互作用による。更に、高保持容量には、C0008では、顕著な量のIgG二量体及び凝集体が存在した。全ての新しく設計した抗体は、低減された保持容量(Vr)を示し、カラムとの相互作用の低減、したがって分子の疎水性の低減を実証した(表2、図2A及びB)。C0083及びC0090は、最低の保持容量(表2、図2B)を示し、分子量標準と比較した場合、Vrは単量体ヒトIgGの分子量に相当した。更に、抗体二量体及び凝集体は、新しく設計した抗体C0073、C0078、C0083及びC0090の試料中で著しく低減された(図2A及びB)。特にC0083及びC0090は、単一の単量体ピークを示した。
【0172】
HICカラム保持容量を使用して、抗体は、最少から最大(最低から最高の保持容量)の疎水性IgGまで順位付けし(図2C、表3)、結果はSEC解析からのデータを確証した。新しく設計した抗体C0083(保持容量12.37)は疎水性が最少であったが、C0008(保持容量14.92ml)は疎水性が最大であった。
【0173】
【表2】
【0174】
【表3】
【0175】
図2は、新しく設計した抗oxMIF抗体の低減された凝集及び疎水性を実証するクロマトグラフィープロフィールを示す。(A)移動相として5×PBSTを使用するSuperdex200Increase10/300GLゲル濾過カラム上での、C0008(対照抗体、グレー領域)と新しく設計した抗体の溶出プロフィールの比較。(B)移動相として1×PBSを使用する、Enrich650ゲル濾過カラムにおけるC0008(対照抗体、グレー領域)と新しく設計した抗体の溶出プロフィールの比較。(C)HiTrap Butyl HP HICカラムにおけるC0008(対照抗体、グレー領域)及び新しく設計した抗体の溶出プロフィールの比較。
【0176】
実施例2:固定化されたMIFへの新しく設計した抗oxMIF抗体の結合(K測定)
PBS中に希釈した1μg/mlの組換えヒトMIFを、4℃で終夜ELISAプレートに固定化した(Thiele et al.,2015に従って、MIFをoxMIFに変換)。ブロッキングした後、抗oxMIF抗体の段階希釈を、プレートに添加した。最後に、結合された抗体を、プロテインL-HRPコンジュゲート、及び基質としてテトラメチルベンジジン(TMB)を使用して検出した。発色反応を3M HSOで停止させ、ODを450nMで測定した。異なる実験からのデータを、それぞれの実験の抗oxMIF抗体C0008の最大OD(=100%)に対して正規化し、EC50値を、GraphPad Prismを使用する4パラメーターフィットによって決定した(2つの実験の平均が示される)。
【0177】
結果:固定化されたMIF(oxMIF)に対する新しく設計した抗体の結合を広範な濃度にわたり測定し、生じる結合曲線を図3に示す。抗oxMIF抗体(C0008)を、oxMIF結合の参照として使用した。結合曲線及びKを表す算出したEC50値は、新しく設計した抗体C0073、C0076、C0078、C0083及びC0090が、C0008(EC50 0.7nM)と比較して、oxMIFへのそれらの親和性を保持したことを明確に示した(EC50範囲0.5~1.6nM、アッセイの変動性内である)(図3A)。驚くべきことに、C0077は、C0076と比較してVLに1つの更なる点突然変異(Y36F)だけでoxMIFへの親和性が5分の1に減少したが(図3A)、C0077の疎水性は著しく減少した(図2A)。
【0178】
別のセットの実験では、エフェクター機能を増加するようにFc部分に突然変異を持つ新しく設計した抗体は、0.4~0.8nMの範囲のEC50値を示し、対照抗体C0008の明らかな親和性とも正確に一致する(図3B)。
【0179】
図3は、固定化されたMIFに対する新しく設計した抗oxMIF抗体の結合を示す(K測定)。(A)野生型Fc部分を有する新しく設計した抗体の結合曲線。(B)エフェクター機能を増加するようにFc部分に突然変異を持つ新しく設計した抗体の結合曲線。C0008を参照抗体として使用した。
【0180】
【表4】
【0181】
実施例3:redMIFと比較したoxMIFへの、新しく設計した抗oxMIF抗体の差次的結合
抗oxMIF抗体を、15nMの濃度で、4℃で終夜マイクロプレートに固定化した。ブロッキングした後、ウェルを、50ng/mlのredMIF又はoxMIF代理NTB-MIF(Schinagl et al.,2018)とインキュベートした。捕捉したoxMIFは、ビオチン化ポリクローナルウサギ抗MIF抗体及びストレプトアビジン-HRPコンジュゲートによって検出した。プレートを、テトラメチルベンジジン(TMB)によって染色し、発色反応を30%HSOの添加により停止させた。ODを450nMで測定した。異なる実験からのデータを、それぞれの実験の抗oxMIF抗体C0008の最大OD(=100%)に対して正規化し、2つ又は3つの実験の平均が示される。
【0182】
結果:可溶性oxMIF及びredMIFに対する新しく設計した抗体の結合は、図4に示される。結果は、新しく設計した抗体C0073、C0076、C0078、C0083及びC0090がoxMIFに強く結合するが、redMIFには結合しないことを明確に示し、したがって、低減された疎水性及び凝集を有する抗体は、oxMIFとredMIFを区別するそれらの能力を保持する。新しく設計した抗体は、対照抗体C0008と比較して類似のODを示し、oxMIFとredMIFを区別することが記載された(Thiele et al.,2015)(図4A)。驚くべきことに、C0077は、C0076と比較してVLに1つの更なる点突然変異(Y36F)だけでoxMIFへの結合が著しく減少したことを示した(図4A)。C0077は明らかに低減した疎水性を示す(図2A)が、結合特性は維持できなかった。
【0183】
別のセットの実験では、エフェクター機能を増加するようにFc部分(C0097~C0100)に突然変異を含有する新しく設計した抗体は、oxMIFとredMIFを区別する能力も維持し、抗体C0008と比較して類似のODを示した(図4B)。
【0184】
図4は、redMIFと比較したoxMIFへの、新しく設計した抗体の差次的結合を示す。(A)野生型Fc部分を有する新しく設計した抗体の差次的結合。(B)エフェクター機能を増加するようにFc部分に突然変異を持つ新しく設計した抗体の差次的結合。C0008を参照抗体として使用した。
【0185】
実施例4:Fc変異した新しく設計した抗oxMIF抗体により増強されたエフェクター機能
上記のように、Fc部分における突然変異による抗体のADCC能を増加させる努力がなされた。Fc受容体媒介抗体依存性細胞媒介傷害(ADCC)は、それにより、抗体が排除のための疾患細胞を標的化する作用の重要なメカニズムである。標的結合抗体のFcエフェクター部分が、エフェクター細胞の細胞表面上のFcγRIIIA受容体にも結合する場合、2つの細胞型の複数の架橋結合が生じ、ADCCの経路活性化をもたらす。エフェクター細胞として、FcγRIIIA受容体、V158(高親和性)変異体、及びホタルルシフェラーゼの発現を駆動するNFAT応答エレメントを安定に発現する操作したジャーカット細胞を使用して、抗体のADCC活性を決定し、NFAT経路活性化の結果として、産生されたルシフェラーゼにより定量した。
【0186】
ADCC受容体アッセイは、基本的に、一部を改変し、製造業者(Promega社#G7010)によって推奨されるように実施された。簡潔に述べれば、PBS中に希釈した1μg/mlの組換えヒトMIFを、4℃で終夜ELISAプレートに固定化した(Thiele et al.,2015に従って、MIFをoxMIFに変換)。ブロッキングした後、本明細書に記載の新しく設計した抗体(C0097~C0100)の段階希釈を、ジャーカットエフェクター細胞と共に添加し、プレートを加湿したインキュベーター内で37℃/5%COで6時間インキュベートした。最後に、Bio-Gloルシフェラーゼ試薬を添加し、発光(RLU)をTecanマルチプレートリーダーで測定した(0.5s積算時間)。C0008を参照抗体として使用した。
【0187】
結果:Fc突然変異を持つ全ての新しく設計した変異体(C0097~C0100)は、漸増濃度の新しく設計した抗体による著しい用量応答を示したが、抗体C0008はジャーカットレポーター細胞のFcγRIIIA媒介活性化を誘導しなかった(図5)。
【0188】
図5は、改変ADCCレポーターバイオアッセイ(Promega社#G7010)における新しく設計した抗oxMIF抗体の増強されたエフェクター機能を示す。C0008と対照的に、全ての新しく設計した抗oxMIF抗体は、ジャーカットレポーター細胞のFcγRIIIA媒介活性化を誘導する(n=2)。
【0189】
実施例5:新しく設計した抗oxMIF抗体の生体内分布
C0008と比較した、新しく設計した抗oxMIF抗体C0083の生体内分布は、同系大腸癌モデルCT26の皮下腫瘍を持つ雌のBalb/cマウスにおいて調べた。雌のBalb/cマウスは、PBS中3×10個のCT26細胞の皮下注射を片側に受けた(100μl/動物)。個々の腫瘍容積が150~300mmに達すると、マウスは治療群に割り当てられ、5mg/kg/d IRDye800CW標識C0008又はIRDye 800CW標識C0083の単回皮下投与を受けた。2匹のマウスを、未処置の「無シグナル」対照として使用した。
【0190】
C0008及びC0083は、製造業者の説明書に従ってLI-COR Biosciences社のIRDye800CW Protein標識キット-高MWを使用して、IRDye800CWによって標識した。標識プロセス後及び標識抗体のマウスへの注入前に、タンパク質濃度及びIRDye800CW標識抗体の標識効率を、Nanodrop技術を使用して決定し、マウスは、標識後のタンパク質濃度に基づいて投与された。In vivo画像化は、以下の時点:投与後1、6~8、24、48、72、96、168時間での標識抗体の投与時に、LI-COR Pearl(登録商標)Trilogy画像化装置で実施した。画像解析を実施し、腫瘍における抗体の相対蛍光単位(RFU)を定量した(RFU=RFU腫瘍面積-RFUバックグラウンド)。
【0191】
結果:静脈内投与した800CW標識C0008(図6A)及びC0083(図6B)の、24hがピークの顕著な腫瘍内分布及び7日までの腫瘍保持を決定した。これは、C0083の腫瘍浸透特性が保持されるか又は対照抗oxMIF抗体C0008と比較して改善さえされることを明確に実証した。2つの抗体を個々の実験で試験し、画像のスケーリングをそれぞれの実験について最適化した。しかしながら、両方の実験に同じスケーリングを使用すると、C0008と比較したC0083の改善された腫瘍浸透及び保持がより明確になった(図6D)。腫瘍領域のピクセル強度がデジタル的に評価される場合、C0083の改善された腫瘍浸透及び保持が更により明らかになった(図6E)。未処置の対照マウスではシグナルは検出されなかった(図6C)。
【0192】
図6は、皮下CT26腫瘍を持つマウスのinfra-red in vivo画像化による、新しく設計した抗oxMIF抗体C0083の腫瘍浸透を示す。写真は、IRDye800CW標識抗体の注射の1h、6h、24h、48h、72h、96h及び168h後に撮った。A:IRDye800CW標識C0008(5mg/kg)を受けたマウス;B:IRDye800CW標識C0083(5mg/kg/d)を受けたマウス;C:未処置の対照マウス、D:IRDye800CW標識C0083(5mg/kg/d)を受けたマウスであり、画像はAと同じスケーリングを使用して示した;E:デジタル画像解析によって定量したC0083及びC0008の腫瘍浸透及び保持。
【0193】
実施例6:新しく設計した抗体C0083の産生の改善
新しく設計した抗oxMIF抗体C0083は、C0008と比較して、ExpiCHO細胞(Thermo Fisher社)における一過的発現によって産生した。簡潔に述べると、50~200mlの指数関数的に増加するExpiCHO細胞を、ExpiFectamine CHO Kit(Thermo Scientific社)を使用して一過的にトランスフェクトし、製造業者の説明書「標準プロトコール」(Thermo Scientific社)に従って、加湿したインキュベーター内で、37℃で8日間培養した。細胞を遠心分離によって除去し、上澄み液を、40mMリン酸ナトリウム、300mM塩化ナトリウム、pH7.2で1:1に希釈した。希釈した上澄み液を、0.2μmで濾過し、室温でNGC QUEST 10クロマトグラフィーシステム(Bio-Rad社)を使用して、Mab Select Prism Aカラム(Cytiva社)に適用した。カラムは、10カラム容量の20mMリン酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、pH7.2によって洗浄し、抗体は、10カラム容量の100mMグリシン、pH3.5中に溶出した。抗体は、すぐにpH5に中和し、Bio-Scale P-6脱塩カートリッジによって1×PBS pH7.2中で調製し、Amicon Ultra-15遠心分離装置(Merck Millipore社)を使用して約1mg/mlに濃縮した。タンパク質濃度は、NanoDrop技術及びそれらのそれぞれの吸光係数を使用して決定した。Mab Select Prism A及び中和後の精製抗体の量(それぞれの抗体の最終収率)を細胞培養容積によって割り、結果の値は、本明細書中では抗体力価(mg/L)と呼ばれる。
【0194】
結果:C0008と比較して、C0083の3つの個々の産生は、新しく設計した抗体C0083が著しくよく産生されたことを明確に示した(独立t検定、p=0.03)。C0008(93mg/L)と比較して高い抗体力価(117mg/L)が得られた(図7)。
【0195】
図7は、新しく設計した抗oxMIF抗体C0083の改善された産生を示す。
実施例7:増強されたADCC活性を有する新しく設計した抗oxMIF抗体の改善された産生
疎水性及び凝集傾向を低減する突然変異を持つが、ADCC活性を改善するFc突然変異も持つ抗oxMIF抗体(C0097、C0098及びC0100)は、ExpiCHO細胞(Thermo Fisher社)における一過的発現によって産生した。簡潔に述べると、50mlの指数関数的に増殖するExpiCHO細胞を、ExpiFectamine CHO Kit(Thermo Scientific社)を使用して一過的にトランスフェクトし、製造業者の説明書(「標準プロトコール」、Thermo Scientific社)に従って、加湿したインキュベーター内で、37℃で8日間培養した。細胞を遠心分離によって除去し、1/10容量の200mMリン酸ナトリウム、1500mM塩化ナトリウム、pH7.2を上澄み液に添加した。希釈した上澄み液を、0.2μmで濾過し、室温でNGC QUEST 10クロマトグラフィーシステム(Bio-Rad社)を使用して、HiTrap Fibro PrismAカラム(Cytiva社)に適用した。カラムは、10カラム容量の20mMリン酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、pH7.2によって洗浄し、抗体は、10カラム容量の100mMグリシン、pH3.5中に溶出した。抗体は、グリシンによってすぐにpH5に中和し、最終濃度250mMのグリシンにした。タンパク質濃度は、NanoDrop技術及びそれらのそれぞれの吸光係数を使用して決定した。HiTrap Fibro Prism A及び中和後の精製抗体の量(それぞれの抗体の最終収率)を細胞培養容積によって割り、結果の値を、本明細書中では抗体力価(mg/L)と呼ぶ。比較のため、疎水性/凝集に関するVH/VL最適化はしないが、ADCC活性を改善する同一のFc突然変異を持つ抗oxMIF抗体(C0064、C0065及びC0067)を、同じ手順によって産生した。
【0196】
結果:改善された疎水性/凝集傾向を有する抗oxMIF抗体(C0097、C0098及びC0100)の産生は、C0008のVH及びVLドメインを含むそれらのそれぞれの対応物(C0064、C0065及びC0067)と比較して著しく高い力価をもたらした(図8)。
【0197】
図8は、増強されたエフェクター機能を有するが、C0008のVH及びVLドメインを含むそれらのそれぞれの相対物と比較した、増強されたエフェクター機能並びに低減された疎水性及び凝集能を有する新しく設計した抗oxMIF抗体の改善された産生を示す(C0097対C0064、C0098対C0056、及びC0100対C0067の比較)。
【0198】
実施例8:増強されたエフェクター機能を有する新しく設計した抗oxMIF抗体の低減された凝集傾向及び低減された疎水性
疎水性及び凝集を評価するため、抗oxMIF抗体C0008と比較して、新しく設計した抗体をゲル濾過(SEC)により及び疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)により解析した。
【0199】
SECのため、試料を、1×リン酸緩衝生理食塩水(1×PBS)中で1mg/mlに希釈し、100μlの試料を1.25ml/minの流速でEnrich650(Bio-Rad社)ゲル濾過カラムに適用した。分離及び平衡は、室温で、1×PBS中で実施した。タンパク質ピークは、280nmの吸光度を使用してモニターし、スペクトルは、ChromLabソフトウェアパッケージ(Bio-Rad社)を使用して解析した。結果は、メインピークの保持容積(Vr、ml)で報告し、凝集体の存在は手動で順位付けした。
【0200】
HIC解析のため、全ての試料を、50mMリン酸及び0.75M硫酸アンモニウム、pH6.8を使用して、1mg/mlの最終濃度に希釈した。抗体の高度に精製された試料(約100μg)を、1mlのHiTrap Butyl HPカラム上に独立してロードした。100μlの試料を注入し、カラム流速を室温で1ml/minに維持した。ピークの分離は、0~100%B(緩衝液B:50mMリン酸、20%イソプロパノール;pH7.0)の勾配の20カラム容積(CV)で実行した。タンパク質ピークは、280nmの吸光度を使用してモニターし、スペクトルは、Unicornエマルションソフトウェアパッケージ(GE Healthcare社)を使用して解析した。結果は、各ピークについて、最大ピークでのVr(ml)で報告した。
【0201】
結果:対照抗体C0008は、サイズ排除カラムの総容量(約16ml)に近い保持容量を示し、それはヒトIgGで予測されるよりもはるかに小さい分子量に相当する(図9A)。異常に長い保持は、主に、固定相表面との疎水性相互作用による。更に、高保持容量には、C0008では、顕著な量のIgG二量体及び凝集体が存在した。新しく設計した抗体C0108及びC0109は、著しく低減された保持容量(Vr)を示し、カラムとの相互作用の低減、したがって分子の疎水性の低減を実証した(図9A、表5)。分子量標準と比較した場合、Vrは単量体ヒトIgGの分子量に相当する。更に、抗体二量体及び凝集は、新しく設計した抗体C0108及びC0109の試料中には存在しなかった(図9A)。
【0202】
HICを使用して、Vrは、解析した抗体の疎水性に正比例し、即ち、より高いVrは分子がより疎水性である。新しく設計した抗体(C0083、C0090、C0108及びC0109)のHIC解析は、対照抗体C0008(図9B、保持容量20.8ml、表6)と比較して、それらの疎水性が著しく低い(図9B、保持容量15.2~16.2ml、表6)ことを確認した。
【0203】
結論:新しく設計した抗体が、改善された生化学特性、特に低減された疎水性及び凝集傾向を有することは、SEC及びHIC解析から明らかである。
【0204】
【表5】
【0205】
【表6】
【0206】
図9は、新しく設計した抗oxMIF抗体の低減された凝集及び疎水性を実証するクロマトグラフィープロフィールを示す。(A)移動相として1×PBSを使用する、Enrich650ゲル濾過カラムにおけるC0008(対照抗体、グレー領域)と、増強されたエフェクター機能を有する新しく設計した抗体C0108及びC0109の溶出プロフィールの比較;(B)HiTrap Butyl HP HICカラムにおけるC0008(対照抗体、グレー領域)及び新しく設計した抗体C0083、C0090、C0108及びC0109の溶出プロフィールの比較。
【0207】
実施例9:A2780MIF-/-細胞への、新しく設計した抗oxMIF抗体C0083及びC0090の低減された非特異的結合
A2780MIF-/-細胞株は、A2780卵巣癌細胞株におけるヒトMIF遺伝子のCRISPR/Cas9遺伝子編集によって生成した。A2780MIF-/-細胞株における内因性ヒトMIFタンパク質の不在は、ポリクローナル抗ヒトMIF抗体を使用するサンガーシークエンシング及びウェスタンブロッティングによって確認した。
【0208】
A2780MIF-/-細胞を、Cell Stripper(Corning社、Cat#25-056-C1)によって剥がし、染色緩衝液(PBS+5%BSA)によって洗浄し、96ウェルのU底プレートにウェル当たり2×10個の細胞をプレートした。細胞を、fixable viability dye eFluo780(PBS中で1:2000希釈)によって4℃で20分間染色し、染色緩衝液によって洗浄した。細胞を、50μlの染色緩衝液中に再懸濁し、50μlの段階希釈の新しく設計した抗oxMIF抗体C0083、C0090、C0108、C0109、対照抗oxMIF抗体C0008又はアイソタイプIgG(最終濃度37nM~9.4nM)を添加した。4℃で40分間インキュベーション後、細胞を染色緩衝液によって洗浄し、100μlの二次抗体(ヤギ抗ヒトIgG(H+L)-AlexaFluor488、1:100希釈)中に再懸濁した。4℃で30分間インキュベーション後、細胞を染色緩衝液によって洗浄し、PBS+2%BSA中に再懸濁し、Cytoflex-Sフローサイトメーターで獲得した。データは、FlowJoによって解析し、生存細胞のGeoMean(AF488の平均蛍光強度)をGraphPad Prismで抗体濃度に対してプロットした。
【0209】
結果及び結論:新しく設計した抗oxMIF抗体C0083、C0090、C0108及びC0109は、それらのGeoMeanがアイソタイプIgG陰性対照のものに非常に近いため、A2780MIF-/-細胞に結合しないことが図10から明らかである。反対に、参照抗oxMIF抗体C0008は、A2780MIF-/-細胞に顕著な結合を示したが、それらはMIFを発現しない。したがって、疎水性の低減は、A2780MIF-/-への、新しく設計した抗oxMIF抗体C0083、C0090、C0108及びC0109の非特異的結合の強い低減又は除去をもたらしたが、抗oxMIF対照抗体C0008は、その疎水性により細胞表面に非特異的に結合する。
【0210】
図10は、FACSによって決定したA2780MIF-/-細胞における新しく設計した抗oxMIF抗体の低減された非特異的結合を示す。A2780MIF-/-細胞は、新しく設計した抗oxMIF抗体C0090、C0109(A);C0083、C0108(B)又は対照抗体C0008並びに陰性対照としてアイソタイプIgGによって染色した。生存細胞のGeoMean(AF488の平均蛍光強度)を抗体濃度に対してプロットした。
【0211】
実施例10:固定化されたMIFへの、増強したエフェクター機能を有する新しく設計した抗oxMIF抗体の結合(K予測)
PBS中に希釈した1μg/mlの組換えヒトMIFを、4℃で終夜ELISAプレートに固定化した(Thiele et al.,2015に従って、MIFをoxMIFに変換)。ブロッキングした後、抗oxMIF抗体の段階希釈を、プレートに添加した。最後に、結合された抗体を、ヤギ抗ヒトIgG(Fc)-HRPコンジュゲート、及び基質としてテトラメチルベンジジン(TMB)によって検出した。発色反応を3M HSOで停止させ、ODを450nmで測定した。異なる実験からのデータを、それぞれの実験の抗oxMIF抗体C0008の最大OD(=100%)に対して正規化し、EC50値を、GraphPad Prismを使用する4パラメーターフィットによって決定した(2つの実験の平均+/-SEMが示される)。
【0212】
結果及び結論:固定化されたMIF(oxMIF)に対する、増強したエフェクター機能を有する新しく設計した抗体の結合を広範な濃度にわたり測定し、生じる結合曲線を図11に示す。抗oxMIF抗体C0008を、oxMIF結合の参照として使用した。結合曲線及びKを表す算出したEC50値は、新しく設計した抗体C0108及びC0109が、C0008と比較して、oxMIFへのそれらの低ナノモルの親和性を保持したことを明確に示した(図11、表7)。
【0213】
図11は、固定化されたoxMIFに対する、増強されたエフェクター機能を有する新しく設計した抗oxMIF抗体の結合曲線(K予測)を示す;抗oxMIF抗体C0008を参照抗体として使用した。
【0214】
【表7】
【0215】
実施例11:redMIFと比較したoxMIFへの、増強されたエフェクター機能を有する新しく設計した抗oxMIF抗体の差次的結合
抗oxMIF抗体及び無関係のヒトIgG対照を、15nMの濃度で、4℃で終夜マイクロプレートに固定化した。ブロッキングした後、ウェルを、50ng/mlのredMIF又はoxMIF代理NTB-MIF(Schinagl et al.,2018)とインキュベートした。捕捉したoxMIFは、ポリクローナルウサギ抗MIF抗体及びヤギ抗ウサギIgG-HRPによって検出した。プレートを、テトラメチルベンジジン(TMB)によって染色し、発色反応を30%HSOの添加により停止させた。ODを450nmで測定した。2つの実験からのデータを、それぞれの実験の抗oxMIF抗体C0008の最大OD(=100%)に対して正規化し、2つ又は3つの実験の平均+/-SEMが示される。
【0216】
結果及び結論:可溶性oxMIF及びredMIFに対する、増強されたエフェクター機能を有する新しく設計した抗体の結合は、図12に示される。結果は、新しく設計した抗体C0108及びC0109がoxMIFに強く結合するが、redMIFには検出可能に結合しないことを明確に示した。新しく設計した抗体は、参照抗体C0008と非常に類似したODを示し、oxMIFとredMIFを区別することが記載された(Thiele et al.,2015)。無関係のIgG1対照では、特異的結合は観察されなかった。したがって、増強されたエフェクター機能並びに低減された疎水性及び凝集を有する新しく設計した抗体は、oxMIFとredMIFを区別するそれらの能力を保持した。
【0217】
図12は、redMIFと比較したoxMIFへの、新しく設計したF抗体の差次的結合を示す。C0008は参照抗体として、アイソタイプIgGは陰性対照として使用した。
【0218】
実施例12:SPRを使用するヒト及びマウスoxMIFに対する新しく設計した抗体の親和性決定
新しく設計した抗体C0108及びC0109、並びに対照抗oxMIF抗体C0008を、標準的なアミンカップリング条件を使用して、Biacore CM5光学センサーチップ(GE Healthcare社)に、それぞれフローセルFC2、FC3及びFC4に約2500、1500又は100RUの密度に固定化した。FC1を参照セルとして使用し、緩衝液とのみ反応させた。マウス又はヒト組換えMIFを、HBS-EP緩衝液(GE Healthcare社)中で、0.2%プロクリン300(活性構成成分5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン;Sigma社)の存在下で、50、75、100又は150nMの濃度に希釈して、室温で3時間、MIFをoxMIF代替物に変換した(Thiele M et al.,2015)。プロクリン300で処置したMIFを、固定化された抗oxMIF抗体に、Biacore(商標)3000装置(GE Healthcare社)を使用して、3分間30μl/minの流速で適用した。解離時間は300秒であり、チップは、3分間10mM HClを使用して再生した。一連の濃度の動態を、BiaEvaluation4.1ソフトウェア(GE Healthcare社)によって提供される質量輸送の埋め合わせを有する反復性ラングミュア1:1相互作用モデルを使用して、参照セル(FC1)からバックグラウンドを差し引いた後、各結合曲線への局所的な同時結合/解離フィッティングによって解析した。データは、フローセル2~4の算出したK値の平均+/-SD(標準偏差)として表す。
【0219】
結果及び結論:SPRによって決定された、増強されたエフェクター機能を有する新しく設計した抗体の、可溶性ヒト及びマウスoxMIFに対する結合を表8に示す。結果は、新しく設計した抗体が、約3nMのナノモル親和性を有し、それは対照抗oxMIF抗体C0008と同じ範囲内であることを明確に示した。マウスoxMIFに対する親和性は、全ての抗oxMIF抗体で、ヒトoxMIFと比較して約5~8分の1であった。したがって、増強したエフェクター機能並びに低減された疎水性及び凝集を有する新しく設計した抗体は、ヒト及びマウスoxMIFに対してそれらの親和性を保持した。
【0220】
【表8】
【0221】
実施例13:BALB/cヌードマウスにおいて対照抗oxMIF抗体C0008と比較した、新しく設計した抗oxMIF抗体C0083及びC0090の薬物動態
新しく設計した抗oxMIF抗体C0083及びC0090並びに対照抗oxMIF抗体C0008を、10mg/kgの用量で雌のBALB/cヌードマウスに静脈内注射した。K-EDTAコートキャピラリーを使用する尾静脈穿刺による注射の4、10、24、48及び96時間後に20μlの血液を回収し、60μlのPBSを含有するK-EDTAコートバイアルに移した。遠心分離後、上澄み液(=1:4希釈血漿)を、定量的抗oxMIF ELISAによって解析した。
【0222】
簡潔に述べると、PBS中に希釈した1μg/mlの組換えヒトMIF(OncoOne社)を、4℃で終夜ELISAプレート(MaxiSorp、Nunc)に固定化した。希釈緩衝液(DB、2% Fish Gelatine/TBST)によりブロッキングした後、希釈した血漿試料(最終希釈1:100~1:100,000)を、プレートに添加した。結合された抗体を、ヤギ抗ヒトIgG(Fc)-HRPコンジュゲート(TBST中1:40,000、Thermo Scientific社#32420)を使用して検出した。テトラメチルベンジジン(TMB、Thermo Scientific社#34029)を基質として添加し、発色反応を50μlの30%HSOで停止させ、ODを450nMで測定した。C0008、C0083及びC0090の段階希釈を使用し、GraphPad Prismにおいて双曲線回帰解析を使用して標準曲線を作成し、抗体の血漿濃度を算出した。時点当たりの抗体の平均濃度を回収時間に対してプロットし、半減期をGraphPad Prismにおいて単相減衰モデルによって算出した。
【0223】
結果:図13は、単一指数関数的減衰関数に従って、抗oxMIF抗体の薬物動態を示す。算出した半減期は、それぞれ、対照抗oxMIF抗体C0008では11時間であり、新しく設計した抗oxMIF抗体C0083及びC0090では15時間であった。更に、単一指数関数的減衰関数下の曲線下面積(AUC)を算出し、全抗体曝露及び生物学的利用能を推定した。AUCは、C0008、C0083及びC0090では、それぞれ1600、3784及び3266であると算出された。
【0224】
新しく設計した抗oxMIF抗体C0083及びC0090の薬物動態は、BALB/cヌードマウスにおいて、対照抗oxMIF抗体C0008と比較して示される。抗体の血漿濃度は、10mg/kgの抗oxMIF抗体の単回静脈内注射の4、10、24、48及び96時間後に、定量的抗oxMIF ELISAによって測定し、半減期は、GraphPad Prismの単相減衰モデルによって算出した。
【0225】
結論:新しく設計した抗oxMIF抗体C0083及びC0090の可変領域における置換は、対照抗oxMIF抗体C0008と比較して、1.4倍長い半減期及び>2倍高い生物学的利用能(AUC)をもたらした。
【0226】
実施例14:レポーターアッセイによって決定された新しく設計した抗oxMIF抗体C0108及びC0109の増加されたエフェクター機能
エフェクター細胞として、ADCCを明らかにするヒトFcγRIIIa受容体、V158(高親和性アロタイプ)又はF158(低親和性アロタイプ)、又はADCPを明らかにするヒトFcγRIIa H131アロタイプ受容体のいずれかを安定に発現する操作したジャーカット細胞、及びホタルルシフェラーゼのNFAT応答エレメント駆動発現を使用して、抗体の生物学的活性を、NFAT経路活性化の結果として産生されたルシフェラーゼにより定量した。
【0227】
高応答性の標的細胞を生成するため、HCT116及びA2780細胞を、huMIF-pDisplayプラスミド(Invitrogen社)によってトランスフェクトし、ジェネテシンによって選択し、FACSによってソートして膜係留単量体ヒトMIFを安定に発現する細胞株(HCT116-pMIF又はA2780-pMIF)を生成し、即ちMIFは、oxMIFエピトープが抗oxMIF抗体に接近可能である単量体タンパク質として提示される(Schinagl et al.,Biochemistry 2018)。これらの細胞株は、細胞表面でのoxMIFの提示の増加を示し、したがってin vitro解析のための感度の良いツールである。
【0228】
ADCC又はADCPレポーターアッセイは、基本的に、製造業者によって推奨されるように実施した(Promega社#G7010及び#G9991)。手短に言えば、100μlの培養培地(Pen/Strept/L-Glutamin及び5%低IgG FBSを補足したRPMI1640培地)中の1×10個の細胞/ウェルのHCT116-pMIF(図14A及びC)又はA2780-pMIF(図14B)細胞を96ウェルプレートに播種し、加湿したインキュベーター内で、37℃/5%COで終夜インキュベートし、接着させた。その後、段階希釈の増強したエフェクター機能を有する新しく設計した抗oxMIF抗体C0108及びC0109又はwt Fcを有する対照抗体C0008(最終濃度0.01~100nM)及びジャーカットエフェクター細胞(図14A、B、FcγRIIIaエフェクター細胞;図14C、FcγRIIa-エフェクター細胞)を、約6:1のエフェクター対標的細胞比で、加湿したインキュベーター内で、37℃/5%COで6時間インキュベートした。最後に、アッセイプレートを室温に平衡化し、Bio-Gloルシフェラーゼ試薬を添加した。Tecanマルチプレートリーダーを使用して、10~20分のインキュベーション後に発光(RLU)を測定した(0.5s積算時間)。
【0229】
結果:Fc部分にADCC/ADCP増強突然変異を持つ新しく設計した抗体C0108及びC0109は、ADCC(図14A、B)又はADCP(図14C)レポーター細胞の強い活性化を示すが、対照抗体C0008は、それらがHCT116-pMIF(図14A、C)又はA2780-pMIF(図14B)細胞と共培養された場合、ジャーカットレポーター細胞のFcyRIIIa(ADCC、図14A、B)又はFcyRIIa(ADCP、図14C)媒介活性化を誘導しない、又はわずかにのみ誘導したことが、図14A~Cから明らかである。
【0230】
結論:Fc部分にADCC/ADCP増強突然変異を持つ新しく設計した抗oxMIF抗体C0108及びC0109は、wt Fcを担持する対照抗体C0008と比較して、レポーターバイオアッセイにおいて非常に増加したADCC及びADCP活性を示した。
【0231】
図14は、レポーターアッセイによって決定した新しく設計した抗体C0108及びC0109の増強されたエフェクター機能を示す。(A、B)wt Fcを有する抗oxMIF対照抗体C0008と比較した、FcyRIIIa(Vは高応答アロタイプ、Fは低応答アロタイプ)を安定に発現する操作したジャーカットエフェクター細胞及びHCT116-pMIF(A)又はA2780-pMIF(B)標的細胞を使用する、増強されたエフェクター機能を有する新しく設計した抗体C0108及びC0109によるADCCレポーターバイオアッセイ;(C)wt Fcを有する抗oxMIF対照抗体C0008と比較した、FcyRIIaを安定に発現する操作したジャーカットエフェクター細胞及びHCT116-pMIF標的細胞を使用する、増強されたエフェクター機能を有する新しく設計した抗体C0108及びC0109によるADCPレポーターバイオアッセイ。平均及びSEMが示される(n=2~4)。
【0232】
実施例15:PBMC細胞溶解バイオアッセイによって決定された新しく設計した抗oxMIF抗体C0108及びC0109の増強されたADCC機能
このアッセイは、新しく設計した抗oxMIF抗体によって誘導される抗体依存性細胞傷害(ADCC)から生じる細胞溶解を決定するために実施した。細胞傷害性は、LgBit(LargeBiT)及びフリマジン(基質)を含有する非溶解性検出試薬を使用する標的細胞からのHiBiTタグタンパク質の放出を定量するHiBiT検出アッセイ(Promega社)によって測定した。HiBiT及びLgBiTは、機能性NanoBiT(登録商標)酵素に自然にアセンブルし、基質の存在下で定量可能な発光シグナルを放出する。
【0233】
高度に感受性のレポーター標的細胞を生成するため、HCT116細胞をHaloTag-HiBiTプラスミド(Promega社#CS1956B17)によってトランスフェクトし、ブラストサイジンによって選択し、細胞プールとしてFACSによってソートした。安定なHiBiT発現細胞プールを、次いで、huMIF-pDisplayプラスミド(Invitrogen社)によってトランスフェクトし、ジェネテシンによって選択し、FACSによってソートして、細胞内HiBiT及び膜係留単量体ヒトoxMIFを安定に発現する細胞プール(HCT116-HiBiT-pMIF)を生成し、即ちMIFは、oxMIFエピトープが抗oxMIF抗体に接近可能である単量体タンパク質として提示される(Schinagl et al.,Biochemistry 2018)。これらの細胞株は、細胞表面でのoxMIFの提示の増加を示し、したがってin vitro解析のための感度の良いツールである。
【0234】
手短に言えば、50μlの培養培地(Pen/Strept/L-Glutamin及び5%超低IgG FBSを補足したRPMI1640培地)中の1×10個の細胞/ウェルのHCT116-HiBiT-pMIF標的細胞を96ウェルプレートに播種し、加湿したインキュベーター内で、37℃/5%COで終夜インキュベートし、接着させた。その後、50μlの培養培地中の段階希釈の新しく設計した抗oxMIF抗体C0108及びC0109又はwt Fcを有する対照抗oxMIF抗体C0008(最終濃度0.01~100nM)及び2人の個々の健常ドナーからの50μlのヒトPBMCエフェクター細胞(4×10個の細胞/ウェル;エフェクター対標的細胞比;40:1)をプレートに添加した。2人の異なるドナーのPBMCをFACS解析によって特徴付け、このアッセイの関連細胞型であるNK細胞のそれらの含量を評価した。抗体及びPBMCの添加後、プレートは、加湿したインキュベーター内で、37℃及び5%COで、終夜インキュベートした。翌日、10μlのNano-Glo HiBiT Extracellular Detection Reagent(Promega社#N2421)を添加し、発光シグナル(RLU、積算時間0.1s)をTecanプレートリーダーで測定した。アッセイを実施して、二重又は三重の解析した試料及びドナーを含めた。
【0235】
結果:Fc部分にADCC/ADCP増強突然変異を持つ新しく設計した抗体C0108及びC0109は、対照抗oxMIF抗体C0008と比較して、両ドナー(図15A、22%NK細胞;図15B、7%NK細胞)からのPBMCにより大きく増加したADCC活性を示した。
【0236】
結論:Fc部分にADCC/ADCP増強突然変異を持つ新しく設計した抗oxMIF抗体C0108及びC0109は、wt Fcを担持する対照抗oxMIF抗体と比較して、PBMC媒介性細胞死滅アッセイにおいて非常に増加したADCC活性を示した。
【0237】
図15は、PBMC媒介細胞傷害性バイオアッセイによって決定されたFc部分においてADCC/ADCP増強突然変異を持つ新しく設計した抗oxMIF抗体C0108及びC0109の増強されたADCC活性を示す。wt Fcを有する抗oxMIF対照抗体C0008と比較した、新しく設計した抗oxMIF抗体C0108及びC0109並びにエフェクター細胞としてPBMC(A:22% NK細胞、B:7% NK細胞)及び標的細胞としてHCT116-pMIFによるADCCバイオアッセイ。2人の健常ドナーからのPBMCを使用する2つ又は3つの反復の平均及びSEMが示される。
【0238】
実施例16:新しく設計した抗oxMIF抗体は、強く低減されたヒトPBMCからの非特異的サイトカイン放出を示す。
サイトカイン放出症候群(CRS)は、様々な要因、例えば感染によって駆動されうる全身性炎症反応症候群(SIRS)の形態である。CSRは、一部のモノクローナル抗体薬の有害作用としても公知である。CRSは、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、樹状細胞、及び単球を含む多くの白血球が活性化される場合に生じ、中でもIL-6、IFN-ガンマ、IL-8、MCP-1のような炎症性サイトカインを放出し、病原性の炎症の正のフィードバックループにおいて、より白血球を活性化する。このプロセスは、調節不全な場合、全身性過炎症、低血圧性ショック、及び多臓器不全により生命に危機を及ぼしうる。したがって、新しく設計した抗oxMIF抗体は、in vitroアッセイにおいてPMBCから炎症性サイトカインを放出するそれらの能力について評価した。
【0239】
手短に言えば、96ウェルプレートにおいて、5%超低IgG血清を補足した150μlのRPMI1640培地中で新しく設計した抗oxMIF抗体C0108及びC0109(両方とも70nM)並びに抗oxMIF対照抗体C0008(70nM)を、3人の健常ドナーからの新しく解凍したPBMC(ウェル当たり4~5×10個の細胞)とインキュベートした。加湿したインキュベーター内で、37℃/5%COで、終夜インキュベートした後、プレートを300×gで5分間遠心分離し、細胞をペレットにし、上澄み液を96ウェルのV底プレートに移した。透明な上澄み液を、製造業者のプロトコールに従って、ヒトIL-6及びヒトMCP-1について、BioLegend LegendPlex cytometric beadアッセイによって解析した。測定は、96ウェルプレートローダーを有するCytoFlex-Sサイトメーターで行った(Beckman Coulter社)。ビーズ分類チャネルはAPC(レーザー638nmからの励起、帯域通過フィルター660/10nm)であったが、レポーターチャネルはPE(イエローレーザー561nmからの励起、帯域通過フィルター585/42nm)であった。データは、LegendPlex解析ソフトウェア(BioLegend社)を使用して解析し、グラフはGraphPad Prismで産生した。平均+/-SEMは、3人の異なるPMBCドナーから示した。
【0240】
結果及び結論:Fc部分にADCC/ADCP増強突然変異を持つ新しく設計した抗体C0108及びC0109が、驚くべきことに、C0008と比較して、70nMまでの濃度でPBMCからIL-6及びMCP-1の放出を示さない、又は無視できることは図16から明らかである。C0108及びC0109は、wt Fc部分を持つ参照抗oxMIF抗体C0008よりも、Fcy受容体に対する高親和性による高レベルのサイトカイン放出を誘導することが予測された。C0008は同じ濃度(70nM)でIL-6及びMCP-1の顕著な放出を誘導したが、明らかに高い凝集能及びその疎水性による非特異的結合による。抗体治療の凝集は、たとえわずかであっても、免疫細胞からのサイトカイン放出を大きく強めることが公知である。
【0241】
図16は、新しく設計した抗oxMIF抗体が、ヒトPBMCからの強く低減された非特異的サイトカイン放出を示すことを示す。Fc部分にADCC/ADCP増強突然変異を持つ新しく設計した抗oxMIF抗体C0108及びC0109(70nM)並びに対照抗oxMIF抗体C0008(70nM)を、ヒトPBMCと終夜インキュベートし、上澄み液を、ヒトIL-6(A)及びヒトMCP-1(B)についてLegendPlexサイトメトリービーズアッセイ(BioLegend社)で解析した。サイトカイン濃度についての平均+/-SEMは、3人の異なるPMBCドナーから示される。
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【配列表】
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【国際調査報告】