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特表2023-545979高圧ガス消費機器および低圧ガス消費機器用のガス供給システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】高圧ガス消費機器および低圧ガス消費機器用のガス供給システム
(51)【国際特許分類】
   F17C 9/02 20060101AFI20231025BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20231025BHJP
   F02M 21/06 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
F17C9/02
F02M21/02 U
F02M21/06 Z
F02M21/02 X
F02M21/02 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520243
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(85)【翻訳文提出日】2023-05-30
(86)【国際出願番号】 FR2021051677
(87)【国際公開番号】W WO2022069833
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】2010112
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】2107081
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515220317
【氏名又は名称】ギャズトランスポルト エ テクニギャズ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】ベルナール、アウン
(72)【発明者】
【氏名】ロマン、ナルメ
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB04
3E172AB05
3E172AB20
3E172BA06
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD01
3E172EB03
3E172EB08
3E172EB10
3E172EB18
3E172HA08
(57)【要約】
本発明は、ガスを収容するタンク(8)を備える浮遊構造体の高圧ガス消費機器(4)および低圧ガス消費機器(5)用のガス供給システム(1)に関し、前記供給システム(1)は、第1供給回路(2)と第2供給回路(3)とを備え、前記供給システム(1)は、ガス戻りライン(14)を備え、前記供給システムは、前記第1供給回路(2)の前記ガスと前記戻りライン(14)を流れる前記ガスとの熱交換を実施するように構成された第1熱交換器(6)と第2熱交換器(7)とを備え、前記第1供給回路(2)は、追加ポンプ(10)を備えることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを、前記ガスを収容するように構成された少なくとも1つのタンク(8)を備える浮遊構造体(20)の少なくとも1つの高圧ガス消費装置(4)および少なくとも1つの低圧ガス消費装置(5)に供給するためのシステム(1)であって、前記供給システム(1)は、
-前記高圧ガス消費装置(4)の少なくとも第1ガス供給回路(2)であって、前記タンク(8)に液体状態で収集された前記ガスを圧送するように構成された少なくとも1つのポンプ(9)を備える第1ガス供給回路(2)と、
-前記第1ガス供給回路(2)を流れる前記ガスを蒸発させるように構成された少なくとも1つの高圧エバポレータ(11)と、
-ガスを前記低圧ガス消費装置(5)に供給する少なくとも1つの第2回路(3)であって、蒸気状態で前記タンク(8)に入ったガスを、前記低圧ガス消費装置(5)の要件に適合する圧力まで圧縮するように構成された少なくとも1つのコンプレッサ(13)を備える第2回路(3)と、
を備え、
前記供給システム(1)は、前記第2供給回路(3)に前記コンプレッサ(13)の下流において接続するとともに前記タンク(8)まで延びるガス戻りライン(14)を備え、
前記供給システム(1)は、蒸気状態で前記戻りライン(14)を流れる前記ガスと前記第1供給回路(2)を流れる液体状態の前記ガスとの間で熱交換をするように各々構成された少なくとも第1熱交換器(6)と少なくとも第2熱交換器(7)とを備え、
前記第1供給回路(2)は、前記第1熱交換器(6)と前記第2熱交換器(7)との間に配置された追加ポンプ(10)を備える、
ことを特徴とする供給システム(1)。
【請求項2】
前記戻りライン(14)は、前記戻りライン(14)を第1セクション(51)と第2セクション(52)とに分割する分岐点(53)を備え、前記第1セクション(51)および前記第2セクション(52)は、前記分岐点(53)から前記タンク(8)までともに延び、
前記第1熱交換器(6)は、前記戻りライン(14)の前記第1セクション(51)を蒸気状態で流れる前記ガスと前記第1供給回路(2)を流れる前記液体状態ガスとの間で熱交換をするように構成され、
前記第2セクション(52)は、前記第1熱交換器(6)を迂回する、
請求項1に記載の供給システム(1)。
【請求項3】
前記分岐点(53)は、前記戻りライン(14)において、前記第1熱交換器(6)と前記第2熱交換器(7)との間に配置される、
請求項2に記載の供給システム(1)。
【請求項4】
前記分岐点(53)は、前記戻りライン(14)において、前記第2供給回路(3)への接続点と前記第2熱交換器(7)との間に配置され、
前記第1セクション(51)および前記第2セクション(52)は、前記第2熱交換器(7)を通過する、
請求項2に記載の供給システム(1)。
【請求項5】
前記戻りライン(14)の前記第2セクション(52)は、前記タンク(8)に収容された前記液体に沈められた一端部を備え、
前記第2セクション(52)は、前記沈められた端部に配置された放出部材(55)を備える、
請求項2~4のいずれか一項に記載の供給システム(1)。
【請求項6】
前記戻りライン(14)の前記第2セクション(52)は、流量制御部材(54)を備える、
請求項2~5のいずれか一項に記載の供給システム(1)。
【請求項7】
前記第1熱交換器(6)は、前記戻りライン(14)を流れる前記ガスを凝縮するように構成される、
請求項1~6のいずれか一項に記載の供給システム(1)。
【請求項8】
前記第2熱交換器(7)は、前記戻りライン(14)を流れる前記ガスを予め冷やすように構成される、
請求項1~7のいずれか一項に記載の供給システム(1)。
【請求項9】
前記戻りライン(14)は、前記第1熱交換器(6)の下流に配置された膨張部材(15)を備える、
請求項1~8のいずれか一項に記載の供給システム(1)。
【請求項10】
前記供給システム(1)は、前記第1熱交換器(6)の上流において前記第1供給回路(2)に接続され、前記コンプレッサ(13)の下流において前記第2供給回路(3)まで延びる補助供給ライン(16)を備え、
前記供給システム(1)は、前記補助供給ライン(16)を流れる前記ガスを蒸発させるように構成された低圧エバポレータ(17)を備える、
請求項1~9のいずれか一項に記載の供給システム(1)。
【請求項11】
前記ポンプ(9)は、液体状態の前記ガスの圧力を、6~7バールの値まで上昇させるように構成され、
前記追加ポンプ(10)は、液体状態の前記ガスの前記圧力を、30~400バールの値まで上昇させるように構成される、
請求項1~10のいずれか一項に記載の供給システム(1)。
【請求項12】
前記コンプレッサ(13)は、前記ガスの絶対圧力を、6~20バールまで上昇させるように構成される、
請求項1~11のいずれか一項に記載の供給システム(1)。
【請求項13】
前記高圧エバポレータ(11)は、前記高圧ガス消費装置(4)の前記第1ガス供給回路(2)において、前記第2熱交換器(7)の下流に配置される、
請求項1~12のいずれか一項に記載の供給システム(1)。
【請求項14】
前記第2熱交換器(7)と前記高圧エバポレータ(11)とは、単一の熱交換器(21)を形成する、
請求項1~13のいずれか一項に記載の供給システム(1)。
【請求項15】
液体状態のガス用の少なくとも1つのタンク(8)と、少なくとも1つの高圧ガス消費装置(4)と、少なくとも1つの低圧ガス消費装置(5)と、ガスをこれらの装置に供給するための請求項1~14のいずれか一項に記載の少なくとも1つのシステム(1)と、を備える、液体状態のガスを貯蔵および/または輸送するための浮遊構造体(20)。
【請求項16】
少なくとも1つの陸上および/または港湾施設(27)と、液体ガスを貯蔵および/または輸送するための請求項15に記載の少なくとも1つの浮遊構造体(20)と、を組み合わせた、液体ガスを搬入または搬出するためのシステム。
【請求項17】
請求項15に記載のガスを貯蔵および/または輸送するための浮遊構造体(20)から液体ガスを搬入または搬出するための方法であって、前記浮遊構造体(20)の上部デッキに配置された、液体状態のガスを搬入および/または搬出するためのパイプ(23)が、前記タンク(8)に、または前記タンク(8)から液体状態の前記ガスを移送するように、適当なコネクタにより、海洋または港湾ターミナルに接続可能である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体状態のガスの貯蔵船および/または輸送船の分野に関し、より具体的には、このような船に含まれる消費装置用のガス供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
消費される、および/または目的地に配達されることが意図された液体状態のガスのタンクを備える船による旅程中に、前記船は、そのエンジンの少なくとも1つへの供給のために、ガス供給システムを介して前記液体状態のガスの少なくとも一部を使用可能であり得る。これは、ME-GIタイプの推進エンジンを有する船の事例である。このタイプのエンジンへの供給のためには、ガスを300バールまで圧縮できる特別なコンプレッサにより、ガスを非常に高圧に圧縮する必要がある。しかしながら、このようなコンプレッサは高価であり、相当なメンテナンスコストがかかるとともに、船に振動を誘発する。
【0003】
このような高圧コンプレッサの設置に対する代替手段は、ガスを推進エンジンに送る前に、液体状のガスを300バールで気化させることである。このような解決策では、少なくとも部分的に積み荷を収容するタンク内で自然的に形成される蒸気状のガス(またはBOG(Boil-Off Gasの略))を除去することができない。低圧コンプレッサを、低圧の蒸気状のガスを消費できる補助エンジンへの供給のために設置することができる。一方で、このような構成では、蒸気状のガスがあまりにも大量に存在する場合、すなわちより一般的には補助エンジンでの消費必要量よりも多く存在する場合、補助エンジンで消費されない蒸気状のガスは、ある限度までタンクに圧力の形態で蓄積され、次いで燃焼により、または最後の手段として大気中に放出されることにより除去される。このように除去することは、燃料を無駄にするだけでなく、環境にも有害な結果をもたらす。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、ガスを収容するように構成された少なくとも1つのタンクを備える浮遊構造体の少なくとも1つの高圧ガス消費装置および少なくとも1つの低圧ガス消費装置用のガス供給システムであって、前記供給システムは、
-前記高圧ガス消費装置の少なくとも第1ガス供給回路であって、前記タンクに液体状態で収集された前記ガスを圧送するように構成された少なくとも1つのポンプを備える第1ガス供給回路と、
-前記第1ガス供給回路を流れる前記ガスを蒸発させるように構成された少なくとも1つの高圧エバポレータと、
-ガスを前記低圧ガス消費装置に供給する少なくとも1つの第2回路であって、蒸気状態で前記タンクに入ったガスを、前記低圧ガス消費装置の要件に適合する圧力まで圧縮するように構成された少なくとも1つのコンプレッサを備える第2回路と、
を備え、
前記供給システムは、前記第2供給回路に前記コンプレッサの下流において接続するとともに前記タンクまで延びるガス戻りラインを備え、
前記供給システムは、蒸気状態で前記戻りラインを流れる前記ガスと前記第1供給回路を流れる液体状態の前記ガスとの間で熱交換を実施するように各々構成された少なくとも第1熱交換器と少なくとも第2熱交換器とを備え、
前記第1供給回路は、前記第1熱交換器と前記第2熱交換器との間に配置された追加ポンプを備える、ことを特徴とするガス供給システムを提案することにより、このようなロスをなくすことを可能にする。
【0005】
このような供給システムにより、蒸気状態でタンクに存在するガスであって、低圧ガス消費装置の消費に使用されないガスを凝縮することができるため、ガスはタンクに液体状態で戻され、除去されることはない。こうして、蒸気状態でタンクに存在する余剰ガスのロスが、少なくとも低減される。
【0006】
第1ガス供給回路により、高圧ガス消費装置の燃料ニーズを満たすことができる。前記装置は、例えば、浮遊構造体を推進するための手段、例えば、ME-GIエンジンであり得る。第1供給回路は、タンクから高圧ガス消費装置まで延びる。ポンプは、タンクの底部に設置されて液体状態のガスを確実に圧送するため、ガスは第1供給回路を流れ得る。
【0007】
高圧ガス消費装置に供給され得るためには、ガスは蒸気状態でなくてはならない。そこで、高圧エバポレータは、ガスが高圧ガス消費装置に供給される前にこれを確実に蒸発させる。高圧エバポレータは、第1供給回路を流れる液体状態ガスと、グリコール水、海水、水蒸気等の伝熱流体とが熱交換をする場所である。この伝熱流体は、ガスの状態を変化させてガスが蒸気状態または超臨界状態になって高圧ガス消費装置に供給可能となるように、十分な高温を有する必要がある。
【0008】
第1供給回路を流れる液体状態の液体が高圧エバポレータにより気化する前に、液体状態のガスは、第1熱交換器を、次いで第2熱交換器を通過する。このために、第1熱交換器および第2熱交換器は、第1供給回路の一部により互いに接続している。これにより、液体状態のガスは、2つの熱交換器を順次通過することができる。液体状態の前記ガスの温度は、高圧エバポレータを通過する前に上昇する傾向がある。したがって、第1供給回路を流れるガスは、第2熱交換器の出口において、二相状態であり得る。
【0009】
一般に、タンクに収容されたガスは、自然に、または浮遊構造体により強制的に、蒸気状態になり得る。タンク内で蒸気状態に変化したガスは、タンク内での過圧の発生を回避すべく排出しなければならない。
【0010】
このような機能は、低圧ガス消費装置の第2ガス供給回路により提供される。このような第2供給回路は、タンクから低圧ガス消費装置まで延びる。前記装置は、例えば、発電機等の補助モータであり得る。第2供給回路に設置されたコンプレッサは、タンクスペースに存在するガスを引き込む責を負う。これは、低圧ガス消費装置へ供給できるようにするだけでなく、タンク内の圧力を調整できるようにすることの両方を目的としている。
【0011】
コンプレッサの出口において、蒸気状態のガスは、低圧ガス消費装置に供給され得る、または、低圧ガス消費装置が燃料の摂取を必要としていない場合には、戻りラインを流れ得る。戻りラインはコンプレッサの下流に接続しているため、コンプレッサにより引き込まれた蒸気状態のガスは、これを流れることができる。
【0012】
戻りラインを流れる蒸気状態のガスは、タンクに戻る前に、最初に第2熱交換器を、次いで第1熱交換器を通過する。第1供給回路を流れる液体状態のガスと戻りラインを流れる蒸気状態のガスとの間で生じる熱量交換により、蒸気状態のガスの温度は、2つの熱交換器を通過することにより、第1熱交換器を出る際に、前記ガスが凝縮して実質的に液体状態に戻るまで低下する。こうして、再び凝縮したガスは、タンクへ流れる。
【0013】
一例によれば、第1熱交換器および第2熱交換器は、第1供給回路に沿って高圧エバポレータの上流にある。これにより、第1熱交換器内および第2熱交換器内に位置する第1供給回路の部分において、ガスが液体状態であることが保証される。
【0014】
本発明の1つの特徴によれば、第1熱交換器、第2熱交換器、および高圧エバポレータは、物理的に別個の熱交換器である。
【0015】
追加ポンプにより、第1供給回路を流れる液体状態のガスの圧力を上昇させることができる。これにより、ガスは、高圧ガス消費装置への供給に適合した圧力を有する。
【0016】
2つの熱交換器の間に追加ポンプを位置決めすることは、特に有利である。実際に、追加ポンプを第1熱交換器の上流に配置すると、液体状態のガスの圧力および温度が、第1熱交換器を通過する際に既に上昇することになる。これは、戻りラインを流れて第1熱交換器を通過する蒸気状態のガスの凝縮には不利である。さらに、第1供給回路を流れるガスは、第2熱交換器の出口において二相状態であり得る。このため、追加ポンプが液体状態の流体の圧送しかできない場合に、追加ポンプを第2熱交換器の下流に配置すれば、第2熱交換器の正しい動作に悪影響が及ぼされ得る。したがって、最適な構成は、ポンプを2つの熱交換器の間に配置することからなる。
【0017】
本発明の1つの特徴によれば、前記戻りラインは、前記戻りラインを第1セクションと第2セクションとに分割する分岐点を備え、前記第1セクションおよび前記第2セクションは、前記分岐の点から前記タンクまでともに延び、前記第1熱交換器は、前記戻りラインの前記第1セクションを蒸気状態で流れる前記ガスと前記第1供給回路を流れる前記液体状態ガスとの間で熱交換をするように構成される一方で、前記第2セクションは、前記第1熱交換器を迂回する。戻りラインを2つの別個のセクションに分離することは、本発明による供給システムの第2実施形態に対応する。第1実施形態は、上述の供給システム、すなわち、戻りラインが分岐点を有さない、つまり2つのセクションに分離しない供給システムに対応する。
【0018】
第2実施形態によれば、蒸気状態でタンクに存在するガスであって、低圧ガス消費装置の消費に使用されないガスを、戻りラインの第1セクションを経由して流すことにより凝縮することができるため、ガスはタンクに液体状態で戻され、除去されることはない。
【0019】
また、第1供給回路を流れる液体状態のガスの流量が、戻りラインを流れる蒸気状態のガスのすべてを凝縮させるには不十分である場合、ガスの余剰な割合部分を、これがタンクに直接戻るように、戻りラインの第2セクションに向けることができる。このような状況は、本発明による供給システムを装備した浮遊構造体が、推進に大量の液体状態のガスを必要としない場合、例えば、浮遊構造体が低速で移動する場合に起こり得る。上述の戻りラインの特異性を除き、第1実施形態および第2実施形態は、同一の特徴を有する。
【0020】
本発明者らは、戻りラインを流れる蒸気状態のガスを完全に凝縮させることは、第1供給回路を流れる液体状態のガスの量が、戻りラインを流れる蒸気状態のガスの量の6倍以上である場合にのみ可能であると判断している。このような例は、コンプレッサが蒸気状態のガスを約10バールまで圧縮する場合に適用可能であるが、比率はコンプレッサにより供給される圧力に応じて変化し得る。この条件が満たされる場合、蒸気状態のガスは、凝縮されるように戻りラインの第1セクションを流れる。第1供給回路を流れる液体状態のガスの量が、戻りラインを流れる蒸気状態のガスの量の6倍未満である場合、蒸気状態のガスを少なくとも部分的に、戻りラインの第2セクションに流すことが有利である。こうして、蒸気状態のガスの一部は、完全に凝縮されるような量において第1セクションを流れる。
【0021】
戻りラインを流れる蒸気状態のガスは、分岐点から第1セクションまたは第2セクションを流れ得る。戻りラインを流れる蒸気状態のガスは、タンクに戻る前に、最初に第2熱交換器を、次いで第1熱交換器を通過する。この構成によれば、第1供給回路を流れる液体状態のガスと戻りラインを流れる蒸気状態のガスとの間で生じる熱量交換により、蒸気状態のガスの温度は、2つの熱交換器を通過することにより、前記ガスが凝縮して第1熱交換器を出る際に実質的に液体状態に戻るまで低下する。こうして、凝縮したガスは、タンクへ流れる。蒸気状態のガスが第2セクションを流れる場合、ガスは第2熱交換器を通過してタンクに直接的に戻る。この構成によれば、蒸気状態のガスの温度は、第2熱交換器で実施される熱量交換により低下するが、ガスは凝縮しない。したがって、ガスは、蒸気状態でタンクに戻るが、冷却はされている。
【0022】
本発明の1つの特徴によれば、前記分岐点は、前記戻りラインにおいて、前記第1熱交換器と前記第2熱交換器との間に配置され得る。換言すれば、蒸気状態のガスは、第2熱交換器を通過した後に、第1セクションまたは第2セクションを流れる。より具体的には、第2熱交換器を通過するのは、戻りラインの主セクションである。前記主セクションは、蒸気状態のガスが流れる方向に対して分岐点の上流における戻りラインのセクションに相当する。このような特徴は、上述の供給システムの第2実施形態に関する。
【0023】
本発明の1つの特徴によれば、前記分岐点は、前記戻りラインにおいて、前記第2供給回路への接続点と前記第2熱交換器との間に配置され得る。前記第1セクションおよび前記第2セクションは、前記第2熱交換器を通過する。これは、本発明による供給システムの第3実施形態である。この第3実施形態によれば、分岐点は、第2熱交換器の上流に配置される。第2熱交換器は、特に戻りラインの蒸気状態のガスと熱交換を実施するように構成され、第1セクションおよび第2セクションの各セクションは、第2熱交換器を通過する。したがって、第2熱交換器は、少なくとも3つのパス(通路)、すなわち、液体状態のガスが第1供給回路から流れるパスの他に、戻りラインのセクションの各々のための2つのパスを備える。
【0024】
本発明の1つの特徴によれば、前記戻りラインの前記第2セクションは、前記タンクに収容された前記液体に沈められた一端部を備え、前記第2セクションは、前記沈められた端部に配置された放出部材を備える。放出部材により、特に戻りラインの第2セクションを流れる蒸気状態のガスがタンク内に分散する前に、これを膨張させることができる。好適には沈んだ端部がタンクの底部に配置されるという事実と関連した蒸気状態のガスの膨張により、蒸気状態のガスの少なくとも一部を、タンクに戻る際に液体化させることができる。これにより、タンクに存在する液体状のガスの温度も上昇することになる。放出部材は、例えば、エジェクタまたはバブリング装置であり得る。
【0025】
本発明の1つの特徴によれば、前記戻りラインの前記第2セクションは、流量調整部材を備える。流量調整部材は、例えば、第2熱交換器の下流に配置されたバルブであり得る。これは、第2熱交換器それ自体が、分岐点の下流に配置されている場合である。また、流量調整部材は、膨張バルブとしても機能し得る。上述のように戻りラインの第2セクションが放出部材を有している場合、流量調整部材は、蒸気状態のガスの膨張を制限するように選択される。
【0026】
本発明の1つの特徴によれば、前記第1熱交換器は、前記戻りラインを流れる前記ガスを凝縮するように構成される。第1熱交換器は、第1供給回路の液体状態のガスが、その最低温度であるときに通過する交換器である。したがって、戻りラインを流れるガスの状態を変化させることでこれを蒸気状態から液体状態に変化させるのは、第1熱交換器において実施される熱交換である。戻りラインが2つのセクションに分割されている場合、例えば、第2実施形態または第3実施形態によれば、戻りラインの第2セクションを流れるガスは第1熱交換器を迂回するため、戻りラインの第1セクションを流れるガスのみが凝縮される。
【0027】
本発明の1つの特徴によれば、前記第2熱交換器は、前記戻りラインを流れる前記ガスを予め冷やすように構成される。第1熱交換器の出口において、第1供給回路を流れる液体ガスは、第1熱交換器の入口におけるよりも温度が低くない。熱交換が、戻りラインの蒸気状態のガスを凝縮するように利用されているからである。その後、液体状態のガスは、追加ポンプにより圧縮され、そして第2熱交換器を通過する。このことは、第2熱交換器における熱交換を同様に伴うため、戻りラインにおいて蒸気状態のガスが予め冷やされ得る。第1供給回路を流れる液体状態のガスの流量が、戻りラインを流れる蒸気状態ガスをすべて凝縮するには不十分な場合であっても、それでも第2熱交換器において冷却が実施される。
【0028】
本発明の1つの特徴によれば、前記戻りラインは、前記第1熱交換器の下流に配置された膨張部材を備える。膨張部材により、戻りラインを流れるガスであって、第1熱交換器を通過する際に凝縮した後のガスの圧力を低下させことができる。膨張部材により、液体状態のガスは、LNGの液体-蒸気平衡の温度に近い温度でタンクに戻される。また、膨張部材の役割は、戻りラインを流れる凝縮すべきガスの流量を調整することである。戻りラインが2つのセクションに分割されている場合、膨張部材は、戻りラインの第1セクションにおいて、常に第1熱交換器の下流に配置される。
【0029】
本発明の1つの特徴によれば、前記供給システムは、前記第1熱交換器の上流において前記第1供給回路に接続され、前記コンプレッサの下流において前記第2供給回路まで延びる補助供給ラインを備え、前記供給システムは、前記補助供給ラインを流れる前記ガスを蒸発させるように構成された低圧エバポレータを備える。このような補助供給ラインは、低圧ガス消費装置が蒸気状態のガスの供給を必要としているが、タンクスペースに十分な量がない場合に使用される。したがって、補助供給ラインにより、第1供給回路を流れる液体状態のガスの一部を導くことができる。そして、この一部は、低圧エバポレータにより、高圧エバポレータのものと同様の作用にしたがって、すなわち、例えばグリコール水、海水、または水蒸気等の伝熱流体との熱交換により蒸発する。したがって、低圧エバポレータは、補助供給ラインを流れる液体状態のガスとこの伝熱流体との間の熱交換を誘発する。
【0030】
蒸気状態に変化した後、ガスは補助供給ラインを流れ、次いで、低圧ガス消費装置への供給のために第2供給回路に合流する。
【0031】
蒸気状態のガスがタンクスペースに十分な量で存在する場合は、補助供給ラインは使用されず、例えばバルブにより閉鎖され得る。
【0032】
本発明の1つの特徴によれば、前記ポンプは、液体状態の前記ガスの圧力を、6~7バールの値まで上昇させるように構成され、前記追加ポンプは、液体状態の前記ガスの前記圧力を、30~400バールの値まで上昇させるように構成される。このような圧力範囲により、液体状態の液体を、ガス消費装置の各々に適合した圧力まで上昇させることができる。
【0033】
追加ポンプにより、液体状態のガスの圧力を、特にアンモニアまたは水素を使用する場合には30~400バールの値に、液化石油ガスを使用する場合には30~70バールに、そして、エタン、エチレン、または主にメタンからなる液化天然ガスを使用する場合には、好適には150~400バールに上昇させることができる。
【0034】
したがって、タンクに配置されたポンプは、液体状態のガスの圧力を、補助供給ラインが開放している場合に、低圧ガス消費装置への供給を可能とする圧力に上昇させる。
【0035】
第1高圧供給回路を流れる液体状態のガスの圧力を上昇させて、高圧ガス消費装置への供給に適合する圧力とし得るのは、ポンプである。
【0036】
本発明の1つの特徴によれば、前記コンプレッサは、前記ガスの絶対圧力を、6~20バールの値まで上昇させるように構成される。この圧力値によれば、タンクスペースに存在する蒸気状態のガスであって、第2供給回路に吸引されるガスの低圧ガス消費装置に対する適合性が保証される。
【0037】
本発明の1つの特徴によれば、前記高圧エバポレータは、前記高圧ガス消費装置の前記第1ガス供給回路において、前記第2熱交換器の下流に配置される。
【0038】
本発明の1つの特徴によれば、前記第2熱交換器と前記高圧エバポレータとは、単一の熱交換器を形成する。第1熱交換器は、第2熱交換器と高圧エバポレータとを組み合わせた単一の熱交換器とは別個であり、その上流に配置される。このような構成は、例えば、供給システムの機械的嵩を低減するために有利であり得る。このように形成された単一の交換器は、液体状態のガスが第1供給回路から流れる第1パスと、蒸気状態のガスが戻りラインから流れる第2パスと、伝熱流体が高圧エバポレータから流れる第3パスと、を備える。このような単一の熱交換器の設置は、上述のすべての実施形態に適合可能である。
【0039】
本発明の1つの特徴によれば、第1ガス供給回路を流れる液体状態のガスの量に対する、熱交換器により凝縮される戻りラインを流れるガスの割合は、16%±5%である。第1供給回路は、前記回路を流れるガス流量が、毎時約6トンであるように構成される。熱交換器を流れる毎時約6トンの液体状態のガスに対して、毎時約1トンの凝縮される蒸気状態のガスが戻りラインを流れる。
【0040】
また、本発明は、液体状態のガスの少なくとも1つのタンクと、少なくとも1つの高圧ガス消費装置と、少なくとも1つの低圧ガス消費装置と、ガスをこれらの装置に供給するための少なくとも1つのシステムと、を備える、液体状態のガスを貯蔵および/または輸送するための浮遊構造体を対象とする。
【0041】
また、本発明は、少なくとも1つの陸上および/または港湾施設と、液体ガスを貯蔵および/または輸送するための少なくとも1つの浮遊構造体と、を組み合わせた、液体ガスを搬入または搬出するためのシステムを対象とする。
【0042】
最後に、本発明は、ガスを貯蔵および/または輸送するための浮遊構造体から液体ガスを搬入または搬出するための方法であって、前記浮遊構造体の上部デッキに配置された、液体状態のガスを搬入および/または搬出するためのパイプが、前記タンクに、または前記タンクから液体状態の前記ガスを移送するように、適当なコネクタにより、海洋または港湾ターミナルに接続可能である方法を対象とする。
【0043】
技術的問題を解決すべく、ガスを収容するように構成された少なくとも1つのタンクを備える浮遊構造体の少なくとも1つの高圧ガス消費装置及び少なくとも1つの低圧ガス消費装置のための、ガス供給システムであって、前記供給システムは、
-前記高圧ガス消費装置の少なくとも第1ガス供給回路であって、前記タンクに液体状態で収集された前記ガスを圧送するように構成された少なくとも1つのポンプを備える第1ガス供給回路と、
-前記第1ガス供給回路を流れる前記ガスを蒸発させるように構成された少なくとも1つの高圧エバポレータと、
-ガスを前記低圧ガス消費装置に供給する少なくとも1つの第2回路であって、蒸気状態で前記タンクに入ったガスを、前記低圧ガス消費装置の要件に適合する圧力まで圧縮するように構成された少なくとも1つのコンプレッサを備える第2回路と、
を備え、
前記供給システムは、前記第2供給回路に前記コンプレッサの下流において接続するとともに前記タンクまで延びるガス戻りラインを備え、
前記供給システムは、前記高圧エバポレータと第1熱交換器および第2熱交換器とを組み合わせた少なくとも1つの単一の熱交換器を備え、
前記第1熱交換器および前記第2熱交換器は、前記戻りラインを蒸気状態で流れる前記ガスと前記第1供給回路を流れる液体状態の前記ガスとの間で熱交換をするように各々構成される、
ことを特徴とする供給システムが提供され得る。したがって、単一の熱交換器は、同一の構成部品であるとともに、コンパクトな設備を可能とする。
【0044】
本解決策の一態様によれば、単一の熱交換器は、少なくとも3つのパス、すなわち、タンクに液体状態において含まれたガスであって第1供給回路を流れるガスが横切る第1パスと、戻りラインを流れるガスの第2パスと、タンクにおいて液体状態で取り出されたガスを加熱する責を負う伝熱流体の第3パスと、を備える。
【0045】
本解決策の一態様によれば、第1パスは、3つの別個の部分に仕切られる。具体的には、第2パスと熱交換することが意図された第1部分と、第2パスと熱交換することが意図された第2部分と、第3パスと熱交換することが意図された第3部分と、に仕切られる。
【0046】
本発明の一態様によれば、第1パスの第1部分は、コンプレッサにより、この第1パスの第2部分から仕切られている。
【0047】
本発明の他の特徴および利点は、以下の説明およびいくつかの例示的な実施形態の両方から明らかになるであろう。例示的な実施形態は、添付の概略的な図面を参照しつつ、限定のない例示を目的として提供される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1は、本発明の第1実施形態による供給システムの概略図である。
図2図2は、本発明の第2実施形態による供給システムの概略図である。
図3図3は、本発明の第2実施形態の代替例による供給システムの概略図である。
図4図4は、本発明の第3実施形態による供給システムの概略図である。
図5図5は、本発明の根底にある技術的問題を解決する供給システムの概略図である。
図6図6は、浮遊構造体のタンク、およびこのタンクを搬入および/または搬出するためのターミナルの切欠概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下の説明で用いられる「上流」および「下流」という用語は、液体状態または蒸気状態におけるガスの回路内での要素の位置を示すために使用され、前記回路内のおいて前記ガスが流れる方向を指す。
【0050】
図1図5は、浮遊構造体に配置されたガス供給システム1を示す。供給システム1により、液体状態、蒸気状態、二相状態、または超臨界状態であり得るガスを、貯蔵および/または輸送タンク8から、高圧ガス消費装置4および/または低圧ガス消費装置5に、前記機器への燃料供給を目的として流すことができる。
【0051】
前記浮遊構造体は、例えば、液体状態のガスを貯蔵および/または輸送可能な船であり得る。この場合、供給システム1は、浮遊構造体が貯蔵および/または輸送する液体状態のガスを使用して、例えば推進エンジンであり得る高圧ガス消費装置4、および、例えば浮遊構造体に電気を供給する発電機であり得る低圧ガス消費装置5に供給することができる。
【0052】
タンク8に収容されたガスを高圧ガス消費装置4まで確実に流すように、供給システム1は、第1ガス供給回路2を有している。第1供給回路2は、タンク8に配置された圧送部材9を備えている。ポンプ9により、液体状態のガスを圧送すること、そして特にこれを第1供給回路に流すことができる。液体状態のガスを引き込むことにより、ポンプ9はその圧力を6~17バールの値まで上昇させる。
【0053】
液体状態のガスは、タンク8から高圧ガス消費装置4へ流れる方向において、第1熱交換器6を通過し、追加ポンプ10により圧送され、そして第2熱交換器7を通過する。2つの熱交換器6、7に関する詳細を、以下に説明する。
【0054】
ガスは、第2熱交換器7を通過した後、高圧エバポレータ11に流れる。高圧エバポレータ11により、第1供給回路2を流れるガスの状態を変更することができる。この目的は、ガスを蒸気状態または超臨界状態に変化させることである。このような状態により、ガスは高圧ガス消費装置4への供給に適合することができる。液体状態のガスの蒸発は、例えば、液体状態のガスを蒸発させるのに十分に高い温度を有する伝熱流体、本例においてグリコール水、海水、または水蒸気との熱交換により実施され得る。
【0055】
図1に示す第1実施形態によれば、第1熱交換器6、第2熱交換器7、および高圧エバポレータ11は、互いに別個の熱交換器である。このような構成により、熱交換器の各々を、それらを通過する流体の圧力に適した技術で設計および製造することができる。この場合、第1熱交換器6は、第2熱交換器7を製造するのに利用される技術よりも安価な技術により作製され得る。これは、第1熱交換器における圧力が、第2熱交換器7におけるものより著しく低いためである。これは、高圧エバポレータ11に対しても同様である。
【0056】
ガス圧力の上昇は、追加ポンプ10により、これが液体状態のガスを圧送する際に保証される。追加ポンプ10によれば、液体状態のガスの圧力を、液化石油ガスを使用する場合には、30~70バールの値まで、エタン、エチレン、あるいは主としてメタンからなる液化天然ガスを使用する場合には、好適には150~400バールまで上昇させることができる。
【0057】
追加ポンプ10と高圧エバポレータ11との組み合わせにより、ガスは、圧力を有するとともに、高圧消費装置4への供給に適合した状態になる。このような構成により、コスト制約条件を有するとともに強い振動を発生させる高圧コンプレッサを第1供給回路2に設置することが、回避され得る。
【0058】
タンク8内において、積み荷であるガスの一部が自然的に蒸気状態に変化し、タンクのスペース12に拡散する場合がある。タンク8内の過圧を回避するために、タンクスペース12に含まれる蒸気状態のガスを排出しなければならない。しかしながら、第1供給回路2は、液体状態のガスを使用して高圧ガス消費装置4に供給するように構成されている。
【0059】
したがって、供給システム1は、蒸気状態のガスを使用して低圧ガス消費装置5に供給する第2ガス供給回路3を備えている。第2供給回路3は、タンクスペース12と低圧ガス消費装置5との間で延びている。タンクスペース12に含まれる蒸気状態のガスを吸引するように、第2供給回路3は、コンプレッサ13を備えている。コンプレッサ13は、蒸気状態のガスを引き込むだけでなく、第2供給回路3を流れる蒸気状態のガスの絶対圧力を、6~20バールの値まで上昇させることができる。これにより、蒸気状態のガスは、低圧ガス消費装置5への供給に適合した圧力になる。したがって、第2供給回路3は、タンクスペース12に存在する蒸気状態のガスを吸引することによりタンク8内の圧力を調整しつつ、低圧ガス消費装置5への供給を可能とする。
【0060】
タンクスペース12内で過剰量の蒸気状態のガスが存在すると、タンク8内で過圧が生じる。したがって、タンク8内の圧力を低下させるように、蒸気状態のガスを排出する必要がある。過剰な蒸気状態は、例えばバーナー(燃焼器)18により排除され得る。しかしながら、本発明による供給システム1は、第2供給回路3からタンク8まで延びる戻りライン14を備えている。
【0061】
戻りライン14は、第2供給回路3を流れる蒸気状態のガスが流れる方向に対して、第2供給回路3にコンプレッサ13の下流で接続している。戻りライン14を流れる蒸気状態のガスが流れる方向にしたがって、前記ガスは、第1ステップにおいて第2熱交換器7を通過し、次いで第1熱交換器6を通過する。熱量の交換は、第1熱交換器6及び第2熱交換器7の内部で実施されるため、第1供給回路2を流れる液体状態のガスと、戻りライン14を流れる蒸気状態のガスと、の間で行われる。この熱量交換の目的は、戻りライン14の蒸気状態のガスを凝縮させることで、このガスをバーナー18により排除することに代えて、このガスが液体状態で通過してこの状態でタンク8に戻すことである。
【0062】
第1熱交換器6の入口は、第1供給回路2の液体状態のガスが最低温度を有する箇所である。この結果、戻りライン14を流れるガスが凝縮されるのは、第1熱交換器6を通過した後である。したがって、戻りライン14からのガスは、第1熱交換器6の入口では蒸気状態であるが、第1熱交換器6内で実施される熱量交換の後に、液体状態において流出する。
【0063】
戻りライン14を流れるガスの圧力をタンク8内で広がる圧力に合致させるために、戻りライン14は、ガスの絶対圧力を1~3バールまで低下させる膨張部材15を備え得る。ガスは凝縮された後、タンク8に流れる。したがって、第1熱交換器6は、コンデンサ(凝縮器)として機能する。
【0064】
第1供給回路2を流れる液体状態のガスに対する、凝縮した蒸気状態のガスの量の割合は、約16%±5%である。換言すれば、第1供給回路2を流れる毎時約6トンの液体状態のガスに対して、戻りラインを流れる毎時約1トンの蒸気状態のガスが凝縮される。
【0065】
第2熱交換器7は、第1供給回路2をガスが流れる方向において第1熱交換器6の下流に、そして戻りライン14をガスが流れる方向において第1熱交換器6の上流に位置する。したがって、第2熱交換器7は、戻りライン14を流れる蒸気状態のガスを、第1熱交換器6で凝縮される前に予め冷やすことを保証する。第1供給回路2において、第2熱交換器7の入口での液体状態のガスは、既に第1熱交換器6を通過しているとともに、追加ポンプ10の圧送により、その温度および圧力は上昇している。したがって、第2熱交換器7で生じる熱量交換の後に、第1供給回路2を流れるガスは、第2熱交換器7を二相状態において出ることが可能となる。したがって、戻りライン14を流れるガスの温度は、第2熱交換器7を通過した後に低下し、これにより、上述した予め冷やすことが実現される。
【0066】
追加ポンプ10は、有利には、2つの熱交換器6、7間に配置される。第1熱交換器6と第2熱交換器7との間に追加ポンプ10が存在することにより、液体状態のガスのみが追加ポンプ10を流れ、前記ポンプを損傷する可能性が高い二相状態のガスは流れないことが保証される。
【0067】
さらに、追加ポンプ10が第1熱交換器6の下流に存在することにより、第1熱交換器6内で生じる熱量交換を妨げることなく、液体状態のガスの圧力が上昇することが保証される。これにより、戻りライン14を流れる蒸気状態のガスの凝縮が、最適に実施される。
【0068】
供給システム1は、第1供給回路2から、ポンプ9と第1熱交換器6との間のコックを経由して第2供給回路3まで延びる補助供給ライン16であって、コンプレッサ13と低圧ガス消費装置5との間において第2供給回路3に接続する補助供給ライン16をさらに備えている。補助供給ライン16により、タンクスペース12内で形成された蒸気状態のガスの流量が足りない場合に、低圧ガス消費装置5に電力供給することができる。
【0069】
蒸気状態のガスがタンクスペース12において十分な量で存在していない場合、ポンプ9により圧送された液体ガスは、低圧ガス消費装置5への供給のためにこの補助供給ライン16を流れ得る。このために、補助供給ライン16は、低圧エバポレータ17を通過する。これにより、補助供給ライン16を流れる液体状態のガスは、蒸気状態になる。低圧エバポレータ17の動作は、例えば高圧エバポレータ11のものと同一であり得る。すなわち、ガスを、伝熱流体との熱交換により、液体状態のガスがボイルオフするのに十分に高い温度において蒸発させる。低圧エバポレータ17の出口において、蒸気状態のガスは、補助供給ライン16内を流れ、次いで、低圧ガス消費装置5への供給のために第2供給回路3に合流する。
【0070】
上記から、補助供給ライン16は、タンクスペース12における蒸気状態のガスが足りない場合のみ使用されることが理解される。したがって、補助供給ライン16は、その使用が必要ない場合に補助供給ライン16をガスが流れることを抑制するバルブ19を備えている。
【0071】
図2は、本発明による供給システム1の第2実施形態を概略的に示す。この第2実施形態は、戻りライン14が、第2供給回路3との接続点を起点として分岐点53まで延びる主セクション56を備える点において、第1実施形態と異なる。分岐点53において、戻りライン14は、分岐点53からタンク8までともに延びる第1セクション51と第2セクション52とに分離する。
【0072】
この第2実施形態によれば、分岐点53は、第2熱交換器7の下流に配置されている。したがって、第2熱交換器7を通過するのは、戻りライン14の主セクション56である。
【0073】
第2熱交換器7の出口において、蒸気状態のガスは、分岐点53まで流れ、その後、第1セクション51または第2セクション52に流れることができる。第1セクション51は、第1熱交換器6を通過するのに対し、第2セクション52は、第1熱交換器6を迂回することによりタンク8まで延びている。換言すれば、蒸気状態のガスは、第1セクション51を流れて第1熱交換器6で生じる熱量交換により凝縮され得る。あるいは、蒸気状態のガスは、第2セクション52を流れて気体状態においてタンク8に戻り得る。
【0074】
蒸気状態のガスが流れるセクションの選択は、特に、第1供給回路2を流れる液体状態のガスの流量に依存する。前記流量は、戻りライン14を流れる蒸気状態のガスを完全に凝縮させるように十分でなくてはならない。したがって、第1供給回路を流れる液体状態のガスの量が、戻りラインを流れる蒸気状態のガスの量の6倍以上である場合、蒸気状態のガスを第1セクション51に向け得ることでその凝縮が実現され得る。
【0075】
第1供給回路を流れる液体状態のガスの量が戻りラインを流れる蒸気状態のガスの量の6倍未満である場合、蒸気状態のガスのうちの第1割合部分が、第1割合部分が第1熱交換器6で完全に凝縮される量において、第1セクション51を流れる。一方、蒸気状態のガスの第2割合部分であって、第1セクション51を流れない蒸気状態のガスの量に対応する第2割合部分は、タンク8に直接的に戻るように第2セクション52を流れる。第1供給回路2を流れる液体状態のガスがほとんどまたは全く流れない場合には、第1熱交換器6を通過することによる圧力低下を回避するため、蒸気状態のガスの全部が、第2セクション52を流れてタンク8に直接的に戻る。この状態において、ガスのタンク8への戻りは、蒸気状態で行われる。このような状況は、液体状態のガスが、高圧ガス消費装置4への供給にほとんど使用されていない場合に起こる。
【0076】
戻りライン14における流れを調整するように、膨張部材15は、第1セクション51において、第1熱交換器6の下流に配置される。一方、第2セクション52は、流量調整部材54を備えている。膨張部材15および流量調整部材54は、いずれかのセクションを流れるガスを膨張させる機能も提供し得る。
【0077】
有利には、第1セクション51または第2セクション52のいずれについても、流れるガスは、タンク8の底部、または少なくともガスが液状である領域に戻る。より具体的には、第2セクション52を蒸気状態で流れるガスは、蒸気状態においてタンクの底部に戻る。タンク8に存在する液体状態のガスの温度および密度により、第2セクション52を出る蒸気状態のガスは凝縮され得る。蒸気状態のガスのこの凝縮を促進するように、第2セクション52は、タンク8の液体内容物に沈められた第2セクション52の一端部に配置された放出部材55を備え得る。放出部材55により、第2セクション52を流れる蒸気状態のガスを、タンク8におけるその凝縮を促進すべく膨張させることができる。放出部材55は、例えば、エジェクタまたはバブリング装置であり得る。第2セクション52を経由してタンク8においてガスが蒸気状態に戻ることにより、タンク8に存在する液体状態のガスの温度が上昇する。
【0078】
第2実施形態について説明しない特徴は、第1実施形態のものと同一であるため、両実施形態に共通する要素の説明については、図1の説明を参照されたい。
【0079】
図3は、供給システム1の第2実施形態の代替例を示す。代替例は、以下の要素を除き、図2で説明したものとすべての点において同一である。
【0080】
このような代替例によれば、第2熱交換器7と高圧エバポレータ11とが、単一の熱交換器21を形成している。図3に示す解決策により、第2熱交換器7と高圧エバポレータ11とを組み合わせた単一の熱交換器21を設計および製造することができる。これら2つの構成要素は、この共通の熱交換器の製造に利用される技術を決定する同一の高圧を受ける。また、このような解決策は、スペース不足により第2熱交換器7と高圧エバポレータ11とが別個であることが許容されない場合に正当化され得る。
【0081】
第2実施形態のこの代替例によれば、分岐点53は、単一の熱交換器21の下流に配置されている。したがって、単一の熱交換器21を通過するのは、戻りライン14の主セクション56である。このため、単一の熱交換器21は、液体状態のガスが第1供給回路2から流れる第1パス24と、蒸気状態のガスが戻りライン14から流れる第2パス28と、第1パス24を流れる液体状態のガスを蒸発させる伝熱流体が流れる第3パス29と、を備えている。
【0082】
第1供給回路2において、液体状態のガスは、単一の熱交換器21の入口では既に第1熱交換器6を通過するとともに、追加ポンプ10の圧送により、その温度および圧力は上昇している。したがって、単一の熱交換器21で生じる熱量交換の後に、第1パス24を流れるガスは、単一の熱交換器21を液体状態、蒸気状態、二相状態、または超臨界状態において出ることが可能となる。
【0083】
第2実施形態の代替例について説明しない特徴は、第1実施形態および第2実施形態のものと同一であるため、両実施形態に共通する要素の説明については、図1および図2の説明を参照されたい。
【0084】
図4は、供給システム1の第3実施形態を概略的に示す。第2実施形態の代替例では、第2熱交換器7と高圧エバポレータ11とが組み合わされて単一の熱交換器21が形成されたが、図2に示すように、第2熱交換器7と高圧エバポレータ11とが区別される場合にも、この第3実施形態は適用可能である。第3実施形態は、分岐点53が単一の熱交換器21の上流に配置されているという点において、第2実施形態の代替例と異なる。したがって、単一の熱交換器21を通過するのは主セクション56ではなく、第1セクション51および第2セクション52の両方が単一の熱交換器21を通過している。
【0085】
したがって、単一の熱交換器21は、ここでは、液体状態のガスが第1供給回路2から流れる第1パス24と、蒸気状態のガスが戻りライン14の第1セクション51から選択的に流れる第2パス28と、伝熱流体が流れて第1パス24を流れる液体状態のガスを蒸発させる第3パス29と、戻りライン14の第2セクション52の蒸気状態のガスが選択的に流れる第4パス32と、を備えている。したがって、供給システム1の第3実施形態は、単一の熱交換器21が3つではなく4つのパスを備えているという点において、第2実施形態の代替例と異なっている。
【0086】
単一の熱交換器21の出口において、第1セクション51は、第1熱交換器6を通過することによりタンク8まで延びるのに対し、第2セクション52は、第1熱交換器6を迂回することによりタンク8まで延びている。
【0087】
図5は、以下の要素を除き、図1を参照してなされた説明とすべての点において同一の供給システム1を示す。
【0088】
第1熱交換器6と第2熱交換器7と高圧エバポレータ11とが、単一の熱交換器32を形成している。したがって、このような構成要素は、少なくとも3つのパス、すなわち、タンク8において液体状態で収集されて第1供給回路2を流れるガスによる第1パス24と、戻りライン14を流れるガスによる第2パス28と、伝熱流体による第3パス29と、を備えている。伝熱流体は、タンク8において液体状態で収集されたガスを蒸発させるとともにこれを高圧ガス消費装置4まで配達すべく、ガスを加熱する責を負う。
【0089】
第1熱交換器6、第2熱交換器7、および高圧エバポレータ11と同様であるこの単一の熱交換器36が、3つの別個の部分に仕切られた第1パス24を備えていることに留意されたい。3つの別個の部分とは、第2パス28と熱交換することが意図された第1部分33と、第2パス28と熱交換することが意図された第2部分34と、第3パス29と熱交換することが意図された第3部分35である。第1部分33は、第2部分34から、単一の熱交換器36の外部に配置された追加ポンプ10の存在により仕切られている。追加ポンプ10は、第1部分33の出口に接続した吸入ポート、ならびに第2部分34の入口に接続した吐出ポートを備えている。
【0090】
図5に示す解決策により、第1熱交換器6と第2熱交換器7と高圧エバポレータ11とが組み合わされた単一の熱交換器36を設計および製造することができる。この単一の熱交換器36の技術は、高圧を受ける第1パス24で課せられる。
【0091】
図6は、液体状態および蒸気状態のガスを収容したタンク8を示す浮遊構造体20の切欠図である。このタンク8は、浮遊構造体20の二重船体22に装着された全体として角柱状の形状を有している。タンク8の壁は、タンク8に収容された液体状態のガスに接触することが意図された一次シール膜と、一次シール膜と浮遊構造体20の二重船体22との間に配置された二次シール膜と、一次シール膜と二次シール膜との間および二次シール膜と二重船体22との間にそれぞれ配置された2つの熱絶縁バリアと、を備えている。
【0092】
液体状態のガス用の搬入および/または搬出パイプ23が、浮遊構造体20の上部デッキに配置されている。搬入および/または搬出パイプ23は、タンク8から、またはタンク8に、積み荷としての液体状態のガスを移送するように、適切なコネクタにより、海洋または港湾ターミナルに接続可能である。
【0093】
また、図6は、搬入および/または搬出設備25と、水中パイプライン26と、陸上および/または港湾施設27と、を備える海洋または港湾ターミナルの例を示す。陸上および/または港湾施設27は、例えば、港湾のドック上に配置され得る、または、別の例によれば、コンクリート製の重力プラットフォーム上に配置され得る。陸上および/または港湾施設27は、液体状態のガス用の貯蔵タンク30と、水中パイプ26により搬入および/または搬出設備25に接続した接続パイプ31と、を備えている。
【0094】
液体状態のガスの移送に必要な圧力を生成するために、陸上および/または港湾施設27に装置されたポンプ、および/または浮遊構造体20に装備されたポンプが実装されている。
【0095】
当然ながら、本発明は上述の実施例に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく、これらの実施例に多くの変更を加えることができる。
【0096】
上述のように、本発明は、設定された目的を明確に達成し、高圧または低圧でガスを消費する装置用のガス供給システムであって、装置の高圧は、ポンプおよびエバポレータを使用して行われ、蒸気状態のガスをタンクに戻る前に凝縮するための手段を備えるガス供給システムを提案することができる。本明細書に記載されない変形例は、本発明の文脈から逸脱することなく実施され得る。なぜならば、本発明によれば、変形例は、本発明によるガス供給システムを備えるからである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】