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特表2023-545993水中の有機汚染物質の除去のための複合電気化学的高度酸化プロセス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】水中の有機汚染物質の除去のための複合電気化学的高度酸化プロセス
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/72 20230101AFI20231025BHJP
   C02F 1/461 20230101ALI20231025BHJP
【FI】
C02F1/72 Z
C02F1/461 101C
C02F1/72 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520550
(86)(22)【出願日】2021-10-19
(85)【翻訳文提出日】2023-05-31
(86)【国際出願番号】 US2021055665
(87)【国際公開番号】W WO2022087005
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】63/093,338
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513180152
【氏名又は名称】エヴォクア ウォーター テクノロジーズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Evoqua Water Technologies LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【弁理士】
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】サイモン ピー デュークス
(72)【発明者】
【氏名】ヤン チェン
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア グリフィス
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ ワイ グ
【テーマコード(参考)】
4D050
4D061
【Fターム(参考)】
4D050AA01
4D050AA04
4D050AA05
4D050AA13
4D050AA15
4D050AB14
4D050AB16
4D050AB17
4D050AB19
4D050AB23
4D050BB01
4D050BB02
4D050BB09
4D050BB13
4D050BC07
4D050BC09
4D050BC10
4D050BD02
4D050BD03
4D050BD06
4D050BD08
4D050CA10
4D061DA01
4D061DA03
4D061DA08
4D061DB19
4D061DC10
4D061DC11
4D061EA03
4D061EB29
4D061EB30
4D061EB31
4D061EB37
4D061EB39
4D061EC01
4D061EC02
4D061ED02
4D061ED03
4D061FA07
4D061FA16
4D061FA20
4D061GA05
4D061GC02
4D061GC14
4D061GC15
4D061GC20
(57)【要約】
有機汚染物質を有する水の処理方法が開示される。本方法は、所定量の有機汚染物質を酸化するのに有効な水に対して第1の処理を行う工程、及び水を電気化学的に処理する工程を含む。本方法は、過酸化水素(H)含有試薬を水中に導入する工程、H含有試薬を有機汚染物質と所定量の有機汚染物質を酸化させるのに効果的な反応時間の間反応させる工程、及び水を電気化学的に処理する工程を含む。水を処理するシステムも開示される。本システムは、電気化学セル、電気化学セルの上流のH含有試薬の供給源、及び水中のH含有試薬の反応時間及び電気化学セルに印加される電位を調節するように作動可能なコントロール装置を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、水の処理方法:
第1の濃度の少なくとも1つの有機汚染物質を含む水を提供する工程;
所定量の前記少なくとも1つの有機汚染物質を酸化し、かつ第2の濃度の前記少なくとも1つの有機汚染物質を有する第1の処理水を生成するのに有効な、前記水に対する第1の処理を行う工程;及び
前記第1の処理水を、カソードと、アノード型酸化材料を含むアノードとを含む電気化学セルで電気化学的に処理して、第3の濃度の前記少なくとも1つの有機汚染物質を有する第2の処理水を生成する工程。
【請求項2】
前記第1の処理が、過酸化水素(H)含有試薬での高度酸化プロセス(AOP)、紫外線高度酸化プロセス(UV-AOP)、超音波キャビテーション高度酸化プロセス、及び電気化学的高度酸化プロセスから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記H含有試薬が、ペルオキソン及びFenton試薬から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
酸化される前記少なくとも1つの有機汚染物質の前記所定量が、前記水中の前記少なくとも1つの有機汚染物質の少なくとも約25%である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アノード型酸化材料が、白金、酸化チタン、混合金属酸化物(MMO)コーティング化寸法安定型アノード(DSA)材料、グラファイト、グラフェン、ホウ素ドープ化ダイヤモンド(BDD)、鉛/酸化鉛、及びこれらの組合せから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記水、前記第1の処理水、及び前記第2の処理水のうちの少なくとも1つにおける前記少なくとも1つの有機汚染物質の濃度を測定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの有機汚染物質の測定濃度に応答して、前記第1の処理のパラメータをコントロールする工程をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
以下を含む、水の処理方法:
過酸化水素(H)含有試薬を少なくとも1つの有機汚染物質を含む水の中へ導入する工程;
前記H含有試薬を、前記少なくとも1種の有機汚染物質と、所定量の前記少なくとも1つの有機汚染物質を酸化するのに有効な反応時間の間反応するようにさせて、第1の処理水を生成する工程;及び
前記第1の処理水を、カソードと、アノード型酸化材料を含むアノードとを含む電気化学セルで電気化学的に処理して、第2の処理水を生成する工程。
【請求項9】
前記第1の処理水を、前記電気化学セルの入口の中へ導入する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記水中の前記少なくとも1つの有機汚染物質の濃度を測定する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの有機汚染物質の測定された濃度に応答して、所定の速度で前記H含有試薬を導入する工程を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記水、前記第1の処理水、及び前記第2の処理水のうちの少なくとも1つにおける前記少なくとも1つの有機汚染物質の濃度を測定する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの有機汚染物質の測定濃度に応答して前記反応時間をコントロールする工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記H含有試薬が、ペルオキソン及びFenton試薬から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項15】
酸化される前記少なくとも1つの有機汚染物質の前記所定量が、前記水中の前記少なくとも1つの有機汚染物質の少なくとも約25%である、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記アノード型酸化材料が、白金、酸化チタン、混合金属酸化物(MMO)コーティング化寸法安定型アノード(DSA)材料、グラファイト、グラフェン、ホウ素ドープ化ダイヤモンド(BDD)、鉛/酸化鉛、及びこれらの組合せから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の処理水に第2の量の前記H含有試薬を投与する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
以下を含む、水を処理するシステム:
入口及び出口を有する電気化学セルであって、前記電気化学セルの入口が、少なくとも1つの有機汚染物質を含む水源に流体的に接続可能であり、前記電気化学セルが、以下:
カソード、及び
アノード型酸化材料を含むアノード
を含む、電気化学セル;
前記電気化学セルの上流側に位置した過酸化水素(H)含有試薬の供給源;及び
前記電気化学セル及び前記H含有試薬の前記供給源に作動可能に接続されたコントローラであって、前記水源中の前記H含有試薬の反応時期及び前記電気化学セルに印加される電位を調節するコントロールシグナルを生成するように作動可能なコントローラ。
【請求項19】
前記コントローラが、前記電位を前記電気化学セルに印加する前に、前記少なくとも1つの有機汚染物質の所定量を酸化するのに有効であるように前記反応時間を調節する前記コントロールシグナルを生成するように作動可能である、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
第1の処理水及び第2の処理水のうちの少なくとも1つにおける前記少なくとも1つの有機汚染物質の濃度を測定するように構成された、前記電気化学セルに流体接続された組成センサをさらに含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記コントローラは、前記少なくとも1つの有機汚染物質の濃度の測定に応答して、前記反応時間を調節する前記コントロールシグナルを生成するように作動可能である、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記水源に流体的に接続可能な第1の入口と、前記H収容試薬の前記源に流体的に接続可能な第2の入口と、前記電気化学セルの前記入口に流体的に接続可能な出口とを有する反応器を含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項23】
前記電気化学セルの再循環出口から前記反応器の再循環入口まで延在する再循環線をさらに含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記電気化学セルのリサイクル出口から前記電気化学セルのリサイクル入口まで延びるリサイクルループをさらに含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項25】
前記H含有試薬が、ペルオキソン及びFenton試薬から選択される、請求項18に記載のシステム。
【請求項26】
前記アノード型酸化材料が、白金、酸化チタン、混合金属酸化物(MMO)コーティング化寸法安定型アノード(DSA)材料、グラファイト、グラフェン、ホウ素ドープ化ダイヤモンド(BDD)、鉛/酸化鉛、及びこれらの組合せから選択される、請求項18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願は35U.S.C§119(e)の下で、2020年10月19日に出願された「Combined Electrochemical Advanced Oxidation Process for Removal of Organic Contamination in Water」と題する米国仮出願第63/093,338号に対する優先権を主張し、これは、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本明細書に開示される態様及び実施形態は、少なくとも1つの有機汚染物質を含む水を処理する方法に関する。特に、本明細書に開示される態様及び実施形態は、酸化及び電気化学プロセスで水を処理する方法に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
(要旨)
一態様によれば、水を処理する方法が提供される。本方法は、第1の濃度の少なくとも1種の有機汚染物質を含む水を提供することを含んでもよい。本方法は所定量の少なくとも1つの有機汚染物質を酸化し、第2の濃度の少なくとも1つの有機汚染物質を有する第1の処理水を生成するのに有効な第1の処理を水に対して行うことを含んでもよい。この方法は、第1の処理水を、カソードと、アノード型酸化材料を含むアノードとを含む電気化学セルで電気化学的に処理して、第3の濃度の少なくとも1つの有機汚染物質を有する第2の処理水を生成することを含むことができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
いくつかの実施形態では、第1の処理が過酸化水素(H)含有試薬による高度酸化プロセス(AOP)、紫外線高度酸化プロセス(UV-AOP)、超音波キャビテーション高度酸化プロセス、及び電気化学的高度酸化プロセスから選択される。
【0005】
いくつかの実施形態では、H含有試薬がペルオキソン及びFenton試薬から選択される。
【0006】
いくつかの実施形態では、酸化される少なくとも1つの有機汚染物質の所定量が水中の少なくとも1つの有機汚染物質の少なくとも約25%である。
【0007】
いくつかの実施形態では、アノード型酸化材料が白金、酸化チタン、混合金属酸化物(MMO)コーティング化寸法安定型アノード(DSA)材料、グラファイト、グラフェン、ホウ素ドープ化ダイヤモンド(BDD)、鉛/酸化鉛、及びこれらの組合せから選択される。
【0008】
本方法は、水、第1の処理水、及び第2の処理水のうちの少なくとも1つにおける少なくとも1つの有機汚染物質の濃度を測定することをさらに含み得る。
【0009】
本方法は、測定された少なくとも1つの有機汚染物質の濃度に応答して、第1の処理のパラメータをコントロールすることをさらに含んでもよい。
【0010】
別の態様によれば、水を処理する方法が提供される。該方法は、少なくとも1種の有機汚染物質を含む水中に過酸化水素(H)含有試薬を導入することを含むことができる。該方法は、H含有試薬を、所定量の少なくとも1種の有機汚染物質を酸化して第1の処理水を生成するのに効果的な反応時間、少なくとも1種の有機汚染物質と反応させることを含むことができる。この方法は、第1の処理水を、カソードと、アノード型酸化材料を含むアノードとを含む電気化学セルで電気化学的に処理して、第2の処理水を生成することを含むことができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、本方法が第1の処理水を電気化学セルの入口に導入することをさらに含んでもよい。
【0012】
本方法は、水中の少なくとも1種の有機汚染物質の濃度を測定することを含んでもよい。
【0013】
は、少なくとも1つの有機汚染物質の測定された濃度に応答して、所定の速度で導入され得る。
【0014】
本方法は、水、第1の処理水、及び第2の処理水のうちの少なくとも1つにおける少なくとも1つの有機汚染物質の濃度を測定することをさらに含み得る。
【0015】
本方法は、測定された少なくとも1つの有機汚染物質の濃度に応じて反応時間をコントロールすることをさらに含むことができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、H含有試薬がペルオキソン及びFenton試薬から選択される。
【0017】
いくつかの実施形態では、酸化される少なくとも1つの有機汚染物質の所定量が水中の少なくとも1つの有機汚染物質の少なくとも約25%である。
【0018】
いくつかの実施形態では、アノード型酸化材料が白金、酸化チタン、混合金属酸化物(MMO)コーティング化寸法安定型アノード(DSA)材料、グラファイト、グラフェン、ホウ素ドープ化ダイヤモンド(BDD)、鉛/酸化鉛、及びこれらの組合せから選択される。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1の処理水中に、第2のH含有剤を投与することを含んでもよい。
【0020】
別の態様によれば、水を処理するためのシステムが提供される。システムは入口及び出口を有する電気化学セルを備えてもよく、電気化学セルの入口は少なくとも1つの有機汚染物質を含む水源に流体的に接続可能である。電気化学セルは、カソードと、アノード型酸化材料を含むアノードとを含むことができる。このシステムは、電気化学セルの上流側に位置した過酸化水素(H)含有試薬の供給源を含むことができる。この装置は電気化学セル及びH含有試薬の供給源に作動可能に接続されたコントローラを備えてもよく、コントローラは水源中のH含有試薬の反応時間及び電気化学セルに印加される電位を調節するコントロールシグナルを生成するように作動可能である。
【0021】
いくつかの実施形態では、コントローラが電気化学セルに電位を印加する前に、少なくとも1つの有機汚染物質の所定量を酸化するのに有効であるように反応時間を調節するコントロールシグナルを生成するように作動可能である。
【0022】
システムは、第1の処理水及び第2の処理水のうちの少なくとも1つにおける少なくとも1つの有機汚染物質の濃度を測定するように構成された、電気化学セルに流体接続された組成センサをさらに備えてもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、コントローラが少なくとも1つの有機汚染物質の濃度の測定に応答して、反応時間を調節するコントロールシグナルを生成するように作動可能である。
【0024】
この装置は、水源に流体的に接続可能な第1の入口と、H含有試薬の源に流体的に接続可能な第2の入口と、電気化学セルの入口に流体的に接続可能な出口とを有する反応器を含むことができる。
【0025】
システムは、電気化学セルのリサイクル出口から反応器のリサイクル入口まで延在するリサイクル線をさらに備えてもよい。
【0026】
システムは、電気化学セルの再循環出口から電気化学セルの再循環入口まで延在する再循環ループをさらに備えてもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、H含有試薬がペルオキソン及びFenton試薬から選択される。
【0028】
いくつかの実施形態では、アノード型酸化材料が白金、酸化チタン、混合金属酸化物(MMO)コーティング化寸法安定型アノード(DSA)材料、グラファイト、グラフェン、ホウ素ドープ化ダイヤモンド(BDD)、鉛/酸化鉛、及びこれらの組合せから選択される。
【0029】
本開示は、前記の態様及び/又は実施形態のうちの任意の1つ又は複数のすべての組合せ、並びに詳細な説明及び任意の実施例に記載される実施形態のうちの任意の1つ又は複数との組合せを企図する。
【0030】
添付の図面は、縮尺通りに描かれることを意図していない。図面では、様々な図に示されている各同一又はほぼ同一の構成要素が同様の符号によって表されている。明確にするために、すべての構成要素がすべての図面においてラベル付けされているわけではない。図面は以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、一実施形態による、水を処理するための例示的なシステムのボックス図である。
図2図2は、一実施形態による、水を処理するための例示的なシステムのボックス図である。
図3A図3Aは、一実施形態による、水を処理するための例示的なシステムのボックス図である。
図3B図3Bは、一実施形態による、水を処理するための例示的なシステムのボックス図である。
図4図4は、一実施形態による、処理中のフミン酸溶液の全有機炭素(TOC)を示すグラフである。
図5図5は、一実施形態による、処理中のエチレングリコール溶液のTOCを示すグラフである。
図6図6は、一実施形態による、処理中の有機混合物のTOCを示すグラフである。
図7図7は、一実施形態による、処理中の模擬廃水のTOCを示すグラフである。
図8図8Aは、Fenton反応で処理された廃水のTOCを示すグラフである。図8Bは、ペルオキソンで処理された廃水のTOCを示すグラフである。図8Cは、電気化学的酸化で処理された廃水のTOCを示すグラフである。図8Dは、一実施形態による、ペルオキソンで処理され、その後電気化学反応が続く廃水のTOCを示すグラフである。図8Eは、一実施形態による、ペルオキソンで処理され、その後、追加のペルオキソン投与を伴う電気化学反応が続く廃水のTOCを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(詳細な説明)
高度酸化プロセス(AOP)は、望ましくない有機化合物の破壊又は不活性化のために使用され得る。一般に、AOPは、フリーラジカルとの反応による酸化によって水中の有機物質を除去するように設計された化学処理手順である。これらの有機化合物は、半導体製造又は飲料水に使用される水等の高純度水中に見出すことができる。これらの有機化合物は、内分泌かく乱化学物質を含んでいてもよく、また、廃水中に見出されてもよい。
【0033】
AOP処理は一般に、有機種の破壊又は除去のために酸化性塩の活性化を利用する。酸化性フリーラジカルを生成するための前駆体として開始することができる任意の塩を利用することができる。酸化剤の活性化のための例示的な方法としては、紫外線(UV)照射(UV-AOP)、超音波キャビテーション、電気化学ポテンシャルの適用、及び他の方法が挙げられる。活性化され得る例示的な酸化剤としては、酸素ガス(O)、オゾン(O)、過酸化水素(H)、及び過硫酸塩が挙げられる。
【0034】
あるいは、有効量の酸化がある種の過酸化水素含有試薬等の強力な酸化剤を水に投入することによって行うことができることが見出された。強酸化は、有機汚染物質の効果的な破壊のためのエネルギー源による活性化を必要としない場合がある。Fenton試薬、例示的な鉄系過酸化水素含有試薬が、本明細書に記載の系及び方法のための酸化剤として利用される場合、そのラジカル形態への活性化は一般に、次反応経路に従って起こる:
Fe2++H→Fe3++HO・+OH (1)
Fe3++H→Fe2++HOO・+H (2)
正味の反応の結果:
2H→HO・+HOO・+HO (3)
【0035】
鉄(II)は、過酸化水素によって鉄(III)に酸化され、プロセスにおいてヒドロキシルラジカル及び水酸化物イオンを形成する。次いで、鉄(III)は別の過酸化水素分子によって還元されて鉄(II)に戻り、ヒドロペルオキシルラジカル及びプロトンを形成する。正味効果は、水分(H+OH)を副生成物として、2つの異なった酸素ラジカル種を生成するための過酸化水素の不均化である。次いで、このプロセスによって生成されたフリーラジカルは、二次反応に関与する。水酸基は強力な非選択的酸化剤として、有機化合物を急速かつ発熱反応で酸化し、その結果、有機汚染物質が主に二酸化炭素及び水に分解される。他の過酸化水素含有試薬は、有機汚染物質の破壊をもたらす同様の反応経路に従う。
【0036】
さらなるヒドロキシルラジカルは活性化、例えば、紫外線照射、超音波キャビテーション、又は電気化学的処理によって生成され得る。紫外線照射は例えば、紫外線ランプによって行うことができる。例えば、本明細書に開示されるシステム及び方法は、各々が電磁スペクトルのUV範囲内の所望の波長で光を発する、1つ又は複数のUVランプの使用を含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態によれば、UVランプは約180~約280nmの範囲の波長を有することができ、いくつかの実施形態では、約185nm~約254nmの範囲の波長を有することができる。
【0037】
超音波キャビテーションは例えば、音響エネルギー源によって提供され得る。例えば、本明細書に開示されるシステム及び方法は、超音波範囲内の所望の周波数で音響エネルギーを放出する1つ又は複数の超音波トランスデューサの使用を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態によれば、超音波トランスデューサは、20kHz以上の周波数で音響エネルギーを放出することができる。
【0038】
電気化学的活性化は例えば、カソード及びアノードを有する電気化学セルによって提供され得る。カソード及び/又はアノードは種々の形状、例えば、平面又は円形に形成され得る。少なくともいくつかの実施形態では、カソード及び/又はアノードがより高い活性表面積、細孔構造、及び/又は表面反応が起こるのに十分な活性部位を提供することができる細孔分布に関連し得る、箔、メッシュ、又はフォーム構造によって特徴付けられ得る。例えば、カソード及び/又はアノードは、1cm~1000cmの活性領域を有し得る。
【0039】
そのような電気化学的活性化反応は一般に、処理される水の大部分において起こり得る。しかしながら、特定の実施形態では、活性化反応がカソードの表面上で起こり得る。したがって、特定の実施形態では、カソード材料がヒドロキシルフリーラジカルへの硫化水素の活性化を促進する触媒材料であるように選択することができる。いくつかの実施形態では、カソードのための触媒材料が鉄、銅、ニッケル、コバルト、及び金属合金からなる群から選択される金属を含み得る。合金は、鉄、銅、ニッケル、コバルトのいずれかと、別の金属又は別の適切な材料との間であってもよい。例えば、電極は、鋼板、少なくとも鉄及び炭素を含む合金であってもよい。例示的なカソード材料は銅である。
【0040】
有機汚染物質を破壊する別の方法は、電気化学的酸化である。電気化学的酸化反応は一般に、アノードの表面上で起こる。アノード材料は、有機汚染物質の酸化を促進するアノード型酸化材料であるように選択することができる。例示的なアノード材料としては、白金、酸化チタン、混合金属酸化物(MMO)コーティング化寸法安定型アノード(DSA)材料、グラファイト、グラフェン、ホウ素ドープ化ダイヤモンド(BDD)、又は鉛/酸化鉛が挙げられる。DSA物質は、コーティングされていなくてもよく、又はとりわけ、IrO等の貴金属又は金属酸化物でコーティングされていてもよい。酸化チタンは式Ti2n-1(n=3~10)に従う組成物、例えば、Ti、Ti、Ti、Ti11等を有していてもよい。1つの例示的な酸化チタン電極物質はTiであり、マグネリ相酸化チタンと呼ばれることもある。前記電極を含むマグネリ相酸化チタン電極及び電気化学セルは国際出願公開第WO2020041712号(2019年8月23日出願、「水中のポリフルオロアルキル物質の電気化学的酸化のためのシステム及び方法」)に記載されており、その開示は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。別の例示的なアノード材料は、その電流誘導酸化が低電流密度で無視され得るので、白金である。白金は、固体導体として使用されてもよく、又はチタン等の別の電極基材上のコーティングとして使用されてもよい。白金、グラファイト、又はグラフェンは被覆されていなくてもよいし、アノード型酸化材料で被覆されていてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、電気化学セルが例えば、カソードに近接した基準電極を含んでもよい。参照電極はそれを通る電流を通さずに、作用電極、すなわちカソードの電位の連続測定を可能にすることができる。したがって、参照電極の使用は水中のセル電圧の精密なコントロールを可能にし、したがって、競合反応を制限するために、本明細書に記載されるような反応速度論を決定する電流をコントロールする。
【0042】
したがって、1つ又は複数の実施形態によれば、本明細書に開示されるシステム及び方法は、汚染水源からの有機化合物の除去に関する。特定の実施形態では、水源が半導体製造システム又はプロセスに関連し得る。例えば、汚染された水は、半導体チップ又はウエハ製造に使用される溶液であってもよい。
【0043】
特定の例では、本開示が半導体製造システムを指し得る。しかしながら、本明細書に開示されるシステム及び方法は、有機汚染物質を含む任意の水源と関連して同様に使用され得ることに留意されたい。例えば、水溶液の供給源は、浄水、原子力発電、マイクロエレクトロニクス製造、半導体製造、食品加工(農業用途及び潅漑を含む)、繊維製造、製紙及びリサイクル、医薬品製造、化学加工、並びに金属抽出システム又はプロセスに関連し得る。水源は工業用途、例えば、産業廃水からの有機汚染物質の除去に関連し得る。水源は、廃水及び/又は都市水処理に関連し得る。
【0044】
本明細書に開示されるシステム及び方法によって生成される流出物は、規制放出要件を満たすことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるシステム又は方法によって生成される流出物が収集され、半導体製造、工業用途、実験室用途、医療グレード用途、医薬品製造、飲料及び食品調製、潅漑用水、並びに農業用途を含む、様々な用途のために使用され得る。
【0045】
1つ以上の実施形態によれば、処理される水は、1つ以上の標的化合物を含有する可能性がある。標的有機汚染物質は、アルカン、アルコール、ケトン、アルデヒド、酸、又は他の形態であり得る。水源からの水は様々な標的有機化合物、例えば、t-ブタノール及び天然に存在する高分子量有機化合物、例えば、フミン酸又はフルボ酸を含有し得る。水は、1,2,4-トリアゾール又はパーフルオロアルキル物質(PFAS)、例えばペルフルオロオクタン酸(PFOA)等の人工有機分子を含んでもよく、又は代替的に含んでもよい。本開示は、処理される有機化合物のタイプに限定されない。
【0046】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるシステム及び方法がパーフルオロアルキル物質(PFAS)の除去及び濃縮に有用である。本明細書に開示されるように、パーフルオロアルキル物質は、ポリフルオロアルキル物質も含む。パーフルオロアルキル物質は、炭素-フッ素結合を有する炭素鎖分子である。ポリフルオロアルキル物質は、炭素-フッ素結合及び炭素-水素結合を有する炭素鎖分子である。一般的なPFAS分子としては、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、及びヘキサフルオロプロピレンオキシド二量体酸(HFPO-DA)フッ化物のアンモニウム塩(GenXとしても知られる)等の短鎖有機フッ素化合物が挙げられる。PFAS分子は、典型的には疎水性末端及びイオン化末端を有する尾部を有する。
【0047】
PFASは、多くの産業で使用されている人工化学物質である。PFAS分子は、典型的には自然に分解しない。その結果、PFAS分子は、環境中及び人体内に蓄積する。PFAS分子は、食品、市販の家庭用及び職場用製品、都市用水、農業用土壌及び潅漑用水、さらには飲料水を汚染する。PFAS分子は、ヒト及び動物において有害な健康影響を引き起こすことが示されている。
【0048】
したがって、一態様によれば、少なくとも1種の有機汚染物質を含有する廃棄物流を処理する方法が提供される。廃棄物流は少なくとも10pptのPFAS、例えば、少なくとも1ppbのPFASを含むことができる。例えば、廃棄物流は、少なくとも10ppt~1ppbのPFAS、少なくとも1ppb~10ppmのPFAS、少なくとも1ppb~10ppbのPFAS、少なくとも1ppb~1ppmのPFAS、又は少なくとも1ppm~10ppmのPFASを含有し得る。
【0049】
特定の実施形態では、処理される水が他の有機汚染物質を含むPFASを含んでもよい。水中でPFAS化合物を処理することに関する1つの問題は、他の有機汚染物質がPFASを除去するための様々なプロセスと競合することである。例えば、PFASのレベルが80ppbであり、背景技術TOCが50ppmである場合、活性炭カラム等の従来のPFAS除去処理は、非常に迅速に排気することができる。したがって、PFASを除去するための処理の前にTOCを除去することが重要であり得る。
【0050】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるシステム及び方法がPFASの除去のために水を処理する前に、背景技術TOCを除去するために使用され得る。本方法は、水中の標的有機アルカン、アルコール、ケトン、アルデヒド、酸、又は他のものを酸化するのに有用であり得る。いくつかの実施形態では、廃棄物流が少なくとも1ppmのTOCを含有する可能性がある。例えば、廃棄物流は、少なくとも1ppm~10ppmのTOC、少なくとも10ppm~50ppmのTOC、少なくとも50ppm~100ppmのTOC、又は少なくとも100ppm~500ppmのTOCを含有し得る。
【0051】
本明細書に開示される少なくとも1つの有機汚染物質を有する水を処理する方法は、所定量の有機汚染物質を酸化するのに有効な水に対して第1の処理を行うことを含んでもよい。第1の処理水は、未処理水よりも低いTOC濃度を有することができる。本方法は第1の処理水を電気化学的に処理して、ある量の残りの有機汚染物質を酸化し、さらにより低いTOC濃度を有する第2の処理水を生成することをさらに含み得る。特定の実施形態では、電気化学処理が処理水のTOC濃度が所定の閾値を上回ることに応答して実行されてもよい。
【0052】
第1の処理は、高度酸化プロセス(AOP)を含むことができる。この方法は、過酸化水素(H)含有試薬等の強酸化剤を、処理される水中に導入することを含むことができる。本明細書に開示される方法において使用され得る試薬を含む例示的なHは、ペルオキソン及びFenton試薬を含む。ペルオキソンは、オゾンとHを含む反応剤である。Fenton試液は、Hと第一鉄、典型的には硫酸鉄(FeSO)との水溶液である。反応は、水中の有機汚染物質の少なくとも一部を破壊する、ヒドロキシルフリーラジカル等の酸化性フリーラジカルを生成し得る。
【0053】
他の実施形態では、第1の処理が酸化剤を処理される水に導入することと、活性化処理を適用して酸化性フリーラジカルを生成することとを含んでもよい。酸化剤は例えば、酸素ガス、オゾン、過酸化水素、及び/又は過硫酸塩を含むことができる。活性化処理は例えば、UV照射(UV-AOP)、超音波キャビテーション、及び電気化学ポテンシャルの印加を含むことができる。
【0054】
第1の処理は、所定量の有機汚染物質を酸化するようにコントロールされてもよい。特定の実施形態では、第1の処理が有機汚染物質の少なくとも約20%、例えば、少なくとも約25%、少なくとも約33%、少なくとも約50%、又は少なくとも約75%を酸化するようにコントロールされ得る。第1の処理は、水中の有機汚染物質の約20%~約50%、約40%~約60%、又は約50%~約75%を酸化するようにコントロールすることができる。
【0055】
第1の処理は反応時間、酸化剤の濃度(例えば、H含有試薬)、酸化剤の導入速度(例えば、H含有試薬)、流量、圧力、pH、温度、紫外線強度、超音波キャビテーション強度、及び印加される電気化学的電位等の1つ又は複数のパラメータを変化させることによってコントロールされ得る。特定の実施形態では、第1の処理の反応時間が所定量の有機汚染物質を酸化するようにコントロールすることができる。例えば、特定の実施形態では、反応時間、酸化剤の濃度、及び酸化剤を導入する速度のうちの少なくとも1つを増加させて、より多量の有機汚染物質を酸化することができる。特定の実施形態では例えば、UV-AOP、超音波キャビテーション、又は電気化学的高度酸化プロセスの実施形態では紫外光強度、超音波キャビテーション、強度、又は印加電気化学ポテンシャルを増加させて、より多量の有機汚染物質を酸化することができる。いくつかの実施形態では、システムを通る汚染物質を含有する水の流量を減少させて、より多量の有機汚染物質を酸化することができる。1つ以上のパラメータは、第1の処理における汚染物質の所定の酸化速度をコントロールするように選択されてもよい。
【0056】
第1の処理において所定量の汚染物質が酸化された後、第2の処理が行われてもよい。第2の処理は、電気化学処理を含んでもよい。電気化学的処理は例えば、大量の水中及び/又はカソードの表面でのフリーラジカルの活性化、及び、例えば、アノードの表面での実質的に同時に行われる電気化学的酸化を含むことができる。理論に拘束されることを望むものではないが、所定量の有機汚染物質を酸化するための第1の処理と、それに続く、フリーラジカルの活性化及び電気化学的酸化の両方を行うのに有効な電気化学的処理の両方を含む第2の処理との組合せは有機汚染物質の破壊に対して相乗効果を有すると考えられる。相乗効果は全体的な処理効率及び/又は有機汚染物質の破壊のための反応時間を改善することが示される(例えば、実施例6を参照されたい)。
【0057】
いくつかの実施形態では、第1の処理水が電気化学的処理の直前又はその間に酸化剤を投与されてもよい。酸化剤は例えば、前述のように、酸素ガス、オゾン、過酸化水素、及び/又は過硫酸塩を含むことができる。特定の実施形態において、第1の処理水は電気化学的処理の直前又はその間に、H含有試薬を投与されてもよい。
【0058】
全体的な処理効率は、各プロセス単独の合計と比較して、本明細書に開示されるプロセスの組合せによって改善され得る。特定の実施形態によれば、本明細書に開示されるシステム及び方法は約50%~約100%、例えば、約50%~約75%、又は約75%~約90%の有機汚染物質を除去し得る。より長い反応を行って、約100%の有機汚染物質を除去することができる。そのような処理効率ははるかに長い反応時間の後に、従来のシステムにおいてのみ観察され得る。したがって、反応時間は、各処理単独の合計と比較して、プロセスの組合せによって改善され得る。特定の実施形態によれば、各プロセス単独の合計と比較して、同様の処理効率を達成するために、反応時間を約50%~約90%、例えば、約75%~約87.5%短縮することができる。
【0059】
本方法は、少なくとも1つの有機汚染物質の濃度を測定することをさらに含むことができる。有機汚染物質は、水、第1の処理水、及び第2の処理水のうちの少なくとも1つにおいて測定され得る。いくつかの実施形態では、TOCが一般に測定され得る。いくつかの実施形態では、特定の化学物質又は種、例えば、PFAS又はPFASの種を測定することができる。第1の処理又は第2の処理のパラメータは、測定された有機汚染物質の濃度に応じてコントロールされてもよい。
【0060】
本方法は、測定された有機汚染物質の濃度に応答して、第1の処理のパラメータをコントロールすることを含んでもよい。例えば、該方法は反応時間、酸化剤の濃度(例えば、H含有試薬)、酸化剤の導入速度(例えば、H含有試薬)、流量、圧力、pH、温度、紫外線強度、超音波キャビテーション強度、及び有機汚染物質の測定濃度に応答して第1の処理に印加される電気化学的電位のうちの少なくとも1つをコントロールすることを含んでもよい。
【0061】
本方法は、測定された有機汚染物質の濃度に応答して、第2の処理のパラメータをコントロールすることを含んでもよい。例えば、本方法は、測定された有機汚染物質の濃度に応答して、第2の処理において、反応時間、流量、圧力、pH、温度、及び印加される電気化学的電位のうちの少なくとも1つをコントロールすることを含んでもよい。いくつかの実施形態では、第2の処理の前に、第1の処理水に追加の酸化剤を投入することができる。したがって、特定の実施形態では酸化剤(例えば、H含有試薬)の濃度及び/又は酸化剤(例えば、H含有試薬)の導入速度は水、第1の処理水、又は第2の処理水中の測定された有機汚染物質の濃度に応答してコントロールされ得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、方法が流量、圧力、pH、温度、紫外光強度、超音波キャビテーション強度、及び印加電気化学ポテンシャルから選択される1つ又は複数のパラメータを測定することを含み得る。方法は、測定値に応答して、そのようなパラメータのうちの1つ又は複数を調整することを含むことができる。例えば、本方法は、流量、圧力、pH、温度、紫外光強度、超音波キャビテーション強度、及び測定値に応答する印加電気化学電位のうちの1つ以上を調整することを含んでもよい。そのような調整は例えば、ポンプの操作、バルブの作動、pH調整器の導入、加熱もしくは冷却、及び/又はUVランプ、超音波トランスデューサ、もしくは電気化学セルの作動を含むことができる。
【0063】
本方法は第2の処理水をさらに処理することを含んでもよく、場合によっては第2の処理水中の有機汚染物質の測定値が排出のために許容される濃度よりも大きいことに応答して、第2の処理水を処理してもよい。さらなる処理は、AOP、UV、UV-AOP、超音波キャビテーション、電気化学的高度酸化プロセス、電気化学的酸化、炭素吸収、及びこれらの組合せ等の有機汚染物質を除去又は破壊する任意の方法を含んでもよい。特定の実施形態では、本方法がさらなる処理のために、第2の処理水を、第1の処理又は第2の処理等の上流の処理反応に導くことを含んでもよい。いくつかの実施形態では、有機汚染物質の測定値が放電のために許容される濃度内になるまで、水を連続的に循環させることができる。
【0064】
特定の態様によれば、本明細書に開示される方法は、過酸化水素(H)含有試薬を、少なくとも1つの有機汚染物質を含む水に導入することと、H含有試薬を、少なくとも1つの有機汚染物質と、所定量の少なくとも1つの有機汚染物質を酸化して第1の処理水を生成するのに効果的な反応時間反応させることと、第1の処理水を電気化学的に処理して第2の処理水を生成することとを含み得る。いくつかの実施形態では、電気化学処理が第1の処理水中の有機汚染物質の測定濃度に応答して実行されてもよい。いくつかの実施形態では、H含有試薬を導入する速度及び水とH含有試薬との反応時間の一方又は両方が水、第1の処理水、又は第2の処理水中の有機汚染物質の測定された濃度に応答してコントロールされ得る。
【0065】
電気化学的処理はカソードと、アノード型酸化材料を含むアノードとを含む電気化学セルにおいて実行されてもよく、任意選択的に、カソードは触媒材料を含んでもよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、本方法がバッチ式反応として実施することができる。水分及びH含有試薬はカソード及びアノードの活性化の前に、電気化学セル中で混合されてもよい。したがって、本方法は水分及びH含有試薬を、場合により所定の速度で、電気化学セル内に導入すること、及びH含有試薬を、カソード及びアノードの活性化前に、選択された反応時間、電気化学セル内の有機汚染物質と反応させることを含んでもよい。
【0067】
他の実施形態では、本方法が一連の反応として実施することができる。水分及びH含有試薬は、電気化学セルの上流の反応器中で混合することができる。したがって、本方法は、水及びH含有試薬を、場合により所定の速度で、反応器に導入すること、H含有試薬を、選択された反応時間の間、反応器内の有機汚染物質と反応するようにさせて、第1の処理水を生成すること、及び第1の処理水を電気化学セルの入口に導入することを含むことができる。
【0068】
特定の態様によれば、水を処理するためのシステムが提供される。例示的なシステム1000を図1に示す。システム1000は入口及び出口を有し、カソード110及びアノード120を含む電気化学セル100を備え、電気化学セル100の入口は、少なくとも1つの有機汚染物質を含む水源200に流体的に接続可能である。ポンプ210は、水源200から電気化学セル100に水を導くように構成される。系1000は、電気化学セル100の上流に配置され、水源200に流体的に接続可能なH収容試薬300の供給源を含む。ポンプ310は、H含有試薬を電気化学セル100に導くように構成される。システム1000は、電気化学セル100の再循環出口から電気化学セル100の再循環入口まで延びる任意の再循環ループ800を含む。したがって、いくつかの実施形態では、第2の処理水がさらなる処理のために、電気化学セル100の入口に戻されてもよい。
【0069】
系1000は、電気化学セル100及びH収容試薬300の供給源(より具体的にはポンプ310)に作動可能に接続されたコントローラ400を含む。コントローラ400は水源内のH含有試薬の反応時間、及び電気化学セル100に印加される電位(より具体的にはカソード110及びアノード120を横切る電位)を調節するコントロールシグナルを生成するように作動可能である。コントローラ400は電気化学セル100に電位を印加する前に、前述のように少なくとも1つの有機汚染物質の所定量を酸化するのに有効であるように反応時間を調節するコントロールシグナルを生成するように作動可能であってもよい。
【0070】
コントローラ400は例えば、ディスクドライブメモリ、フラッシュ記憶装置、RAMメモリデバイス、又はデータを記憶するための他のデバイスのうちの任意の1つ又は複数を含むことができる、1つ又は複数のメモリデバイスに通常接続される1つ又は複数のプロセッサに関連付けられ得る。メモリデバイスは、システムの動作中にプログラム及びデータを記憶するために使用され得る。例えば、メモリデバイスは、ある期間にわたるパラメータに関する履歴データ、並びに動作データを記憶するために使用され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるコントローラが外部データストレージに作動可能に接続され得る。例えば、コントローラは、外部サーバ及び/又はクラウドデータ記憶に作動可能に接続され得る。
【0071】
本明細書に開示される任意のコントローラは、コンピュータもしくはモバイル装置であってもよく、又はコンピュータもしくはモバイル装置に作動可能に接続されてもよい。コントローラは、タッチパッド又は他の操作インターフェースを備えてもよい。例えば、コントローラは、キーボード、タッチスクリーン、トラックパッド、及び/又はマウスを介して操作されてもよい。コントローラは、当業者に知られているオペレーティングシステム上でソフトウェアを実行するように構成され得る。コントローラは、電源に電気的に接続されてもよい。
【0072】
本明細書で開示されるコントローラは、1つ又は複数の構成要素にデジタル的に接続され得る。コントローラは、ワイヤレス接続を介して1つ又は複数の構成要素に接続され得る。例えば、コントローラは、無線ローカルエリアネットワーキング(WLAN)又は短波長超高周波(UHF)電波を介して接続され得る。コントローラはさらに、例えば、コントローラが必要に応じて流体又は添加剤を方向付けることを可能にするために、システム内の任意の追加のポンプ又は弁に作動可能に接続されてもよい。コントローラは、メモリ記憶デバイス又はクラウドベースのメモリ記憶装置に結合され得る。
【0073】
本明細書で開示されるコントローラは、データをメモリ記憶装置又はクラウドベースのメモリストレージに送信するように構成され得る。そのようなデータは例えば、システム構成要素の動作パラメータ、測定値、及び/又は状態インジケータを含むことができる。外部に記憶されたデータは、コンピュータ又はモバイルデバイスを介してアクセスされ得る。いくつかの実施形態では、外部メモリストレージに関連付けられたコントローラ又はプロセッサがシステム構成要素の動作パラメータ、測定値、及び/又は状況をユーザに通知するように構成され得る。例えば、通知は、ユーザに通知するコンピュータ又はモバイルデバイスにプッシュされてもよい。動作パラメータ及び測定値は例えば、処理されるべき水又は処理された水の特性を含む。システム構成要素の状態は例えば、カソード110及びアノード120にわたって印加される電位、並びに任意のシステム構成要素が定期的又は計画外の保守を必要とするかどうかを含むことができる。しかしながら、通知は、本明細書に開示されるシステム構成要素の任意の動作パラメータ、測定、又は状態に関連し得る。コントローラは、メモリ記憶デバイス又はクラウドベースのメモリ記憶装置からのデータにアクセスするようにさらに構成され得る。特定の実施形態では、システム更新等の情報が外部ソースからコントローラに送信され得る。
【0074】
複数のコントローラが、システムを動作させるために共に動作するようにプログラムされてもよい。例えば、1つ以上のコントローラは、外部コンピューティングデバイスと共に動作するようにプログラムされてもよい。いくつかの実施形態では、コントローラ及びコンピューティング装置が統合され得る。他の実施形態では、本明細書に開示されるプロセスのうちの1つ又は複数が手動又は半自動で実行され得る。
【0075】
例示的なシステム2000を図2に示す。システム2000は、電気化学セル100の上流に配置された反応器500を含むことを除いて、システム1000と同様である。反応器500は、水源100に流体的に接続可能な第1の入口と、試薬300を含むH源に流体的に接続可能な第2の入口と、電気化学セル100の入口に流体的に接続可能な出口とを有する。ポンプ510は、第1の処理水を反応器500から電気化学セル100に導くように構成される。コントローラ400は、反応器500(より具体的にはポンプ510)に作動可能に接続される。システム2000は、電気化学セル100の再循環出口から反応器500の再循環入口まで延在する任意の再循環線850をさらに含む。したがって、いくつかの実施形態では、第2の処理水がさらなる処理のために反応器500に戻されてもよい。特定の実施形態では、反応器500が活性化源、例えば、UVランプ又は超音波トランスデューサを含むことができる。反応器500を含む系2000の特定の実施形態では、H収容試薬300の供給源がさらに、(図1に示すように)電気化学セル100の入口と直接的に流体接続されてもよい。
【0076】
例示的なシステム3000を図3Aに示す。システム3000は、水源200及び電気化学セル100にそれぞれ流体接続されたセンサ600、610を含むことを除いて、システム1000と同様である。したがって、センサ600、610は、水(センサ600)及び第1の処理水又は第2の処理水(センサ610)のパラメータを測定するように構成され得る。例示的なシステム3100を図3Bに示す。システム3100は、センサ600、610、620を含むことを除いて、システム2000と同様である。センサ620は、反応器500に流体接続され、第1の処理水のパラメータを測定するように構成される。システム3100において、センサ610は、第2の処理水のパラメータを測定するように構成される。
【0077】
センサ600、610、620は、内部で発生するシステム及びプロセスの1つ又は複数のパラメータを測定することができる。センサは一般に、特性を測定し、その特性を表すシグナルを、コントローラ400又はシステムの動作を調整又は監視するように構成された他のデバイスに送達するように構成される。例えば、センサは、全有機炭素(TOC)センサ等、任意の特定の種に非特異的であり得る。代替的に、又は追加的に、センサは例えば、PFASの濃度又はPFASの種を測定するように構成された、化学的に比センサであってもよい。当業者は、システムのためのセンサの数及び特異性が既知の汚染物質又は水源の他の特性に基づいて選択され得ることを理解することができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、センサが流量計であってもよく、又は流量計を備えてもよい。流量計は、電気化学セル100又は反応器500に入る水源からの水の流量、反応器500から出る第1の処理水の流量、又は電気化学セル100から出る第2の処理水の流量を測定するように構成され得る。いくつかの実施形態では、センサが電気化学セル100に結合された、すなわち、電気化学セル100のカソード110及びアノード120のうちの少なくとも1つに結合された電流センサであり得るか、又はそれを含み得る。電流センサは、少なくとも、電気化学セル100のカソード110又はアノード120等の電極に印加される電流を測定するように構成され得る。センサは、圧力センサ、pHメータ、温度センサ、UV光センサ、及び/又は音響エネルギーセンサであってもよく、又はそれらを備えてもよい。特定の実施形態ではシステム3000、3100は任意選択で、電気化学セル100及び/又は反応器500に流体接続されたpH調整器及び/又は温度調整器の供給源を含んでもよい。
【0079】
したがって、コントローラ400は、センサ600、610、620に作動可能に接続され得る。いくつかの実施形態では、コントローラ400がセンサ600、610、620のうちの少なくとも1つから取得された測定値に応答してコントロールシグナルを生成するように作動可能である。例えば、コントローラ400は、1つ又は複数のセンサ600、610、620から受け取った少なくとも1つの有機汚染物質の濃度の測定に応答して、第1の処理又は第2の処理のパラメータを調整するコントロールシグナルを生成することができる。コントローラ400は1つ又は複数のセンサ600、610、620から受け取った少なくとも1つの有機汚染物質の濃度の計測に応答して、反応時間、酸化剤の濃度(例えば、H含有試薬)、酸化剤の導入速度(例えば、試薬を含むH)、流量、圧、pH、温度、紫外線強度、超音波キャビテーション強度、及び印加される電気化学的電位のうちの1つ又は複数を調整するコントロールシグナルを生成するように作動可能であってもよい。したがって、コントローラ400は、本明細書に記載の方法に従って、第1の処理及び/又は第2の処理における酸化の速度又は量をコントロールするように作動可能であり得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、コントローラ400が第2の処理水を再循環ループ800又は再循環線850に導く弁に作動可能に接続され、センサ610(第2の処理水の)から受け取った有機汚染物質の濃度の測定値が放電可能な範囲内になるまで、第2の処理水を連続的に再循環させるコントロールシグナルを生成するように作動可能であってもよい。次いで、コントローラは、第2の処理水をシステムの流出物出口に向けるコントロールシグナルを生成することができる。他の実施形態では、コントローラ400がさらなる処理のために、第2の処理水を1つ又は複数の下流の反応器又は電気化学セルに導くコントロールシグナルを生成するように作動可能であり得る。
【0081】
本明細書に開示されるシステムは、任意の実用的な配置で接続された2つ以上の電気化学セルを含むことができる。例えば、システムは、各電気化学セルにおいて異なる処理段階を提供するために直列に接続された複数の電気化学セルを含むことができる。したがって、電気化学セル100は、直列に配列された複数の電気化学セルを表し得る。代替的に、又は追加的に、システムは、水処理システムの全体的な処理スループットを増加させるために並列に接続された複数の電気化学セルを含んでもよい。したがって、電気化学セル100は、並列に配置された複数の電気化学セルを表すことができる。
【0082】
別の態様によれば、水処理を容易にする方法が提供される。本方法は、本明細書に記載の電気化学セルを含む水処理システムを、本明細書に記載の水処理システムに提供することを含んでもよい。該方法は本明細書に記載されるように、酸化剤、例えば、H含有試薬の供給源を提供することを含んでもよい。特定の実施形態では、本方法が酸化剤を受容するように構成された入口と、処理される水を受容するように構成された入口とを有する反応器を提供することを含んでもよい。反応器は場合により、本明細書に記載されるように、UVランプ又は超音波トランスデューサを含んでもよい。本方法は、本明細書に記載の1つ又は複数のコントロールシグナルを生成するようにプログラムされたコントローラを提供することを含むことができる。本方法は、本明細書に記載の水処理方法を実施するために必要に応じてポンプ及び/又は弁を提供することを含んでもよい。
【0083】
水処理を容易にする方法は少なくともセンサ、例えば、有機汚染物質の濃度を測定するように構成された組成センサ、又は本明細書に記載の任意のセンサを提供することをさらに含み得る。水処理を容易にする方法は本明細書に記載されるように、水処理システムをコントローラに接続するように、及び/又は水源を水処理システムに流体接続するようにユーザに指示することをさらに含み得る。
【0084】
別の態様によれば、少なくとも1つの有機汚染物質を含む水源と流体連通する電気化学セルを含む水処理システムを改造する方法が提供される。該方法は酸化剤の供給源、例えば、H含有試薬を提供すること、及び酸化剤の供給源を電気化学セルに流体接続することを含んでもよい。任意選択で、本方法は、酸化剤を受け入れるように構成された入口と、処理される水を受け入れるように構成された入口とを有する反応器を提供することを含んでもよい。本方法は、反応器の出口を電気化学セルに流体接続することを含むことができる。
【0085】
別の態様によれば、酸化剤、例えばHを含む反応剤の供給源と流体連通する反応器を含む水処理装置が提供される。本方法は、本明細書に開示される電気化学セルを提供することと、反応器の下流側で電気化学セルを流体接続することとを含み得る。電気化学セルは前述のように、カソード及びアノードを備えてもよい。特定の実施形態では、電気化学セルを提供することはカソード及びアノードのうちの1つ又は複数を提供することを含み得る。特定の実施形態では、電気化学セルをAOP反応器に流体接続することはAOP反応器内にカソード及びアノードを展開することと、カソード及びアノードを電源に電気的に接続することとを含み得る。
【0086】
改造の方法はコントローラを提供することと、本明細書に記載の水処理の方法を実行するために、コントローラをシステムのポンプ及び/又は弁に作動可能に接続することとをさらに含み得る。改造する方法は、本明細書に記載されるような1つ以上のセンサを提供すること、及びセンサをコントローラに作動可能に接続することをさらに含み得る。
【実施例
【0087】
これら及び他の実施形態の機能及び利点は、以下の実施例からより良く理解することができる。これらの実施例は、性質例示的であることが意図され、本発明の範囲を限定すると見なされない。
【0088】
〔実施例1:H(Fenton試薬)によるフミン酸の処理及びTi酸化チタンアノードによる電気化学的酸化〕
250mlビーカー中で、100mLの750ppmフミン酸を8000ppmのNaClと混合した。約250ppmのTOC値を測定するTOCセンサを用いて試料を分析した。まず、1500ppmのH及び500ppmのFeSOで1時間処理した。酸化を起こさせた。Fe2+/3+沈殿物の形成を避けるために、HSOを用いて調製した。
【0089】
次いで、得られた溶液を、0.26Aの直流電流で100mLの溶液に対して8cmの面積を有するマグネリ相酸化チタンアノードを有する電気化学セル中で電解した。データを図4のグラフに示す。
【0090】
図4に示すように、TOCは、連続処理の結果として、2000秒(33.33分)以内に250ppmから50ppm未満に急激に減少した。したがって、処理の組合せは、TOCの効率的かつ迅速な減少をもたらす。
【0091】
〔実施例2:H(ペルオキソン)によるフミン酸の処理及びTi酸化チタンアノードによる電気化学的酸化〕
1000ppmのHをフミン酸の100mLの試料に加えたことを除いて、実施例1に記載されているように同じ設定を行った。電気化学セルは0.26直流電流を用いて開始され、同時に、オゾン発生器によって生成されるOのバブリングを行った。HとO気体の組合せはペルオキソンである。データを図4のグラフに示す。
【0092】
図4のグラフに示されるように、ペルオキソンと電気化学的酸化との組合せは、10000秒(166.66分)後にTOCを約100ppmに低下させた。したがって、処理の組合せは、TOCの効率的かつ迅速な減少をもたらす。
【0093】
〔実施例3:Hによるエチレングリコールの処理及びホウ素ドープ化ダイアモンド(BDD)アノードによる電気化学的酸化〕
100mLの560ppmのエチレングリコールを、実施例1に記載されるようにFenton試薬及び実施例2に記載されるようにペルオキソンで処理したことを除いて、実施例1~2に記載されるように同じセットアップを行った。電気化学セルは、ホウ素ドープ化ダイヤモンド(BDD)アノードを用いてセットアップされた。データを図5のグラフに示す。
【0094】
図5に示すように、ペルオキソン処理は、約11000秒(183.33分)でTOCを約75ppmに減少させた。Fenton試薬処理は、TOCを約18000秒(300分)で100ppmをわずかに下回るまで低下させた。
【0095】
〔実施例4:Hによる有機混合物の処理及びホウ素ドープ化ダイヤモンド(BDD)アノードによる電気化学的酸化〕
表1に記載の構成を含む様々な有機分子を含有する混合物を調製した。混合物を、実施例1及び2に記載のように処理した。電気化学セルは、ホウ素ドープ化ダイヤモンド(BDD)アノードを用いてセットアップされた。データを図6のグラフに示す。
【0096】
【表1】
【0097】
図6に示すように、ペルオキソン処理は、約11000秒(183.33分)でTOCを約75ppmに減少させた。これらの結果は、実施例4に記載のエチレングリコールの処理と同様である。Fenton試薬処理は、TOCを、約9000秒(150分)で約200ppmをわずかに上回るまでに減少させた。より長い反応時間で、より大きなTOC還元が観察され得ると考えられる。
【0098】
〔実施例5:Hによる模擬廃水の処理及びホウ素ドープ化ダイアモンド(BDD)アノードによる電気化学的酸化〕
マイクロエレクトロニクス(例えば、半導体)製造操作からの廃水をシミュレートするために調製した混合物を、実施例1及び2に記載したように処理した。電気化学セルは、ホウ素ドープ化ダイヤモンド(BDD)アノードを用いてセットアップされた。データを図7のグラフに示す。
【0099】
図7に示すように、ペルオキソン処理は、TOCを約11000秒(183.33分)で約10ppm未満に減少させた。Fenton試薬処理は、TOCを約11000秒(183.33分)で40ppmをわずかに下回るまで低下させた。
【0100】
〔実施例6:排水をFenton試薬、ペルオキソン、電気化学的酸化、又は電気化学的反応によるペルオキソンで処理した比較例〕
Fenton試薬、ペルオキソン、及び電気化学的酸化単独で処理された廃水について経時的なTOC低下を測定し、ペルオキソンで処理された廃水についてTOC低下と比較し、その後、電気化学的反応、場合により追加のペルオキソン投与を行った。
【0101】
(Fenton反応)
有機性廃水2L試料を調製し、Fe2+1g、30%H5×10mLを加えた。反応を滞留時間の約5日間進行させた。TOCは約25%に減少した(図8A)。
【0102】
(ペルオキソン酸化)
有機廃水2L試料を調製し、O1g、H6gを加えた。反応を約11時間の滞留時間にわたって進行させた。TOCは約50%に減少した(図8B)。
【0103】
(電気化学的酸化)
有機性廃水の2L試料を調製した。電流密度800A/mのをTi酸化チタンアノードで印加した。反応を滞留時間の約10時間進行させた。TOCは約25%減少した(図8C)。
【0104】
(ペルオキソン酸化とそれに続く電気化学反応)
試料を、上記のようにペルオキソン酸化により、滞留時間約11時間処理した。ペルオキソン酸化の後、試料を、1000A/mの電流密度で、さらに約3.4時間の滞留時間、上記の電気化学的酸化によって処理した。TOCは約25%に減少した(図8D)。
【0105】
(ペルオキソン投与による電気化学反応に続くペルオキソン酸化)
試料を、上記のようにペルオキソン酸化により、滞留時間約11時間処理した。ペルオキソン酸化の後、上記のように、電流密度1000A/mでの電気化学的酸化によって試料を処理し、さらにペルオキソンを約3時間滞留させた。TOCは約10%に減少した(図8E)。
【0106】
(比較結果)
比較結果を図8A~8Eのグラフに示す。図8Aのグラフに示すように、TOCは、Fenton試薬で144時間処理した後、362.5ppmから96.75ppmに減少した。図8Bのグラフに示すように、TOCは、ペルオキソンで11.25時間処理した後、369.75ppmから160.8ppmに減少した。図8Cのグラフに示されるように、TOCは、10.5時間の電気化学的酸化による処理の後、420ppmから317.5ppmに減少した。図8Dのグラフに示されるように、TOCは、ペルオキソンでの14.53時間の処理、続いて電気化学反応の後、369.75ppmから87.9ppmに減少した。図8Eのグラフに示されるように、TOCは、ペルオキソンでの13.82時間の処理後、追加のペルオキソン投与による電気化学反応の後、369.75ppmから30.45ppmに減少した。
【0107】
具体的には、ペルオキソンで約11時間、続いて約3.5時間の電気化学反応を行った。ペルオキソン処理は予想通り、図8Bのグラフに見られるように(ペルオキソン酸化単独)、TOCを160.8ppmに減少させた。しかしながら、ペルオキソン処理後の電気化学反応の初期化時に、TOCの急激な低下が観察された。TOCは、約3.5時間の追加処理で160.8ppmから87.9ppm(ほぼ50%の低下)に低下した。TOC破壊の速度は図8Cのグラフに示されるように、電気化学的酸化単独で観察されたTOC低下よりもはるかに大きく、14.53時間での総TOC低下は、Fenton試薬単独での処理のほぼ10倍の反応時間(144時間)に匹敵する(図8A)。したがって、ペルオキソン酸化とそれに続く電気化学反応を含む処理で相乗効果が観察される。
【0108】
このHは、ペルオキソンと電気化学的な組合せによって示される改善された処理に関与すると考えられているので、Fenton試薬等の他のH含有試薬と同様の相乗作用が観察されることが期待される。
【0109】
さらに、アノード酸化物質は、本発明のTi及びBDDによって示される改善された処理に関与すると考えられる。したがって、同様の相乗効果が、本明細書に開示されるような他のアノード型酸化材料で観察されることが予想される。
【0110】
追加の併用処理を、約11時間のペルオキソン酸化、続いて、追加のペルオキソン投与を伴う約3時間の電気化学反応で行った。ペルオキソン処理は予想通り、図8Bのグラフに見られるように(ペルオキソン酸化単独)、TOCを160.8ppmに減少させた。しかしながら、ペルオキソン処理後のペルオキソン投与による電気化学反応の初期化の際に、TOCの一層の急激な低下が観察された。TOCは、処理の約3時間で160.8ppmから30.45ppm(約80%の低下)に低下した。TOC破壊の速度は図8A~8Cのグラフに示されるように、試験された処理のいずれか単独で観察されたTOC低下よりもはるかに大きく、13.82時間での合計TOC低下は、ペルオキソン酸化に続く電気化学反応によって示される合計TOC低下よりも大きい(図8D)。
【0111】
本明細書で使用される表現及び用語は説明を目的とするものであり、限定するものとみなされるべきではない。本明細書で使用するとき、用語「複数(plurality)」は、2つ以上のアイテム又は構成要素を指す。「comprising」、「including」、「carrying」、「having」、「containing」、及び「involving」という用語は明細書又は請求項等のいずれにおいても、開放された用語、すなわち「含むが、これに限定されない(including but not limited to)」を意味するものであり、従って、そのような用語の使用はその後に列挙される項目、及びその等価物、並びに追加の項目を包含することを意味する。「consisting of」及び「consisting essentially of」という移行句のみが、特許請求の範囲に関して、それぞれ、閉じた又は半閉じた移行句である。請求項要素を修正するためのクレームにおける「第1の」、「第2の」、「第3の」等の序数用語の使用はそれ自体ではある請求項要素の優先順位、優先順位、又は順序が別の請求項要素、又は方法の動作が実行される時間的順序よりも重要であることを意味するものではなく、単に、請求項要素を区別するために、特定の名称を有する1つの請求項要素を、同じ名称を有する別の要素から区別するための(ただし、序数用語の使用のための)標識として使用される。
【0112】
このように少なくとも1つの実施形態のいくつかの態様を説明してきたが、当業者には様々な変更、修正、及び改良が容易に思い浮かぼうことを理解されたい。任意の実施形態に記載された任意の特徴は、任意の他の実施形態の任意の特徴に含まれてもよく、又はそれらに代えてもよい。そのような変更、修正、及び改良は、本開示の一部であることが意図され、本発明の範囲内であることが意図される。従って、前述の記載及び図面は例示の目的のみである。
【0113】
当業者は本明細書に記載されるパラメータ及び構成が例示的であり、実際のパラメータ及び/又は構成が、開示される方法及び材料が使用される特定用途に依存することを理解すべきである。当業者はまた、日常的な実験のみを用いて、開示された特定の実施形態に対する等価物を認識するか、又は確認することができるはずである。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図8-3】
【国際調査報告】