(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】液体有機過酸化物をポリマー溶融処理装置に供給する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
B29B 7/32 20060101AFI20231025BHJP
B29B 7/60 20060101ALI20231025BHJP
B29B 7/74 20060101ALI20231025BHJP
B29B 7/84 20060101ALI20231025BHJP
B29C 48/395 20190101ALI20231025BHJP
B29C 48/76 20190101ALI20231025BHJP
B29C 48/29 20190101ALI20231025BHJP
C08F 8/00 20060101ALI20231025BHJP
B29K 23/00 20060101ALN20231025BHJP
【FI】
B29B7/32
B29B7/60
B29B7/74
B29B7/84
B29C48/395
B29C48/76
B29C48/29
C08F8/00
B29K23:00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521135
(86)(22)【出願日】2021-10-06
(85)【翻訳文提出日】2023-06-02
(86)【国際出願番号】 EP2021077609
(87)【国際公開番号】W WO2022074070
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509162540
【氏名又は名称】ルムス・ノボレン・テクノロジー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】LUMMUS NOVOLEN TECHNOLOGY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァルツァー, ゼバスティアン
【テーマコード(参考)】
4F201
4F207
4J100
【Fターム(参考)】
4F201AA03
4F201AB19
4F201AJ08
4F201AL16
4F201AL18
4F201BA01
4F201BC01
4F201BC02
4F201BC13
4F201BC31
4F201BD05
4F201BK02
4F201BK06
4F201BK70
4F201BK74
4F207AA03
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4J100HA53
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4J100HG27
4J100JA11
4J100JA15
4J100JA28
4J100JA51
4J100JA58
(57)【要約】
本開示は、液体有機過酸化物をポリマー溶融処理装置へ供給する方法及びシステムに関する。上記供給方法は、不活性液状冷却媒体(4)に溶解せず混合された状態である少なくとも1種の液体有機過酸化物(13)を、管理温度セクション(3)からポリマー溶融処理装置へ輸送する工程を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体有機過酸化物をポリマー溶融処理装置に供給する方法であって、
前記方法は、管理温度セクション(3)内に配置された混合セクションにおいて、少なくとも1種の液体有機過酸化物(13)と不活性冷却媒体(4)とを混合する工程であって、前記少なくとも1種の液体有機過酸化物(13)を前記不活性冷却媒体(4)に溶解させることなく実施する混合工程、及び
前記不活性冷却媒体(4)に溶解せず混合された状態である前記少なくとも1種の液体有機過酸化物(13)を、前記管理温度セクション(3)から、当該管理温度セクションの外側に配置されたポリマー溶融処理装置へ輸送する工程、
を有し、
前記不活性冷却媒体(4)は、溶融処理条件下で揮発する水性液体を含む、
方法。
【請求項2】
前記不活性冷却媒体(4)は脱塩水で構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマー溶融処理装置は押出機(9)を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記混合は機械的混合である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記管理温度セクション(3)内に配置された貯蔵部(1)に前記少なくとも1種の液体有機過酸化物(13)を貯蔵する工程を更に有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記不活性冷却媒体(4)を所定の流量で前記混合セクションへ供給する工程を更に有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種の液体有機過酸化物(13)を、前記貯蔵部(1)から前記混合セクションへ所定の流量でポンプ輸送する工程を更に有する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマーはポリオレフィンである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項で定義した、少なくとも1種の液体有機過酸化物(13)をポリマー溶融処理装置に供給する方法を有する、溶融ポリマーを溶融処理する方法であって、
前記溶融ポリマーを溶融処理する方法は、前記ポリマー溶融処理装置内に前記少なくとも1種の有機過酸化物(13)及び前記不活性冷却媒体(4)が存在している状態で、前記溶融ポリマーを溶融処理する工程、及び
前記溶融ポリマーから前記不活性冷却媒体(4)を除去する工程、
を更に有する方法。
【請求項10】
溶融処理工程は押出し工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
除去工程は前記ポリマー溶融処理装置をベントして実施する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
液体有機過酸化物をポリマー溶融処理装置に供給するシステムであって、
前記システムは温度管理セクション(3)を有し、該温度管理セクション(3)は、
少なくとも1種の液体有機過酸化物(13)の貯蔵部(1)、
前記少なくとも1種の液体有機過酸化物(13)を溶解させることなく、前記少なくとも1種の液体有機過酸化物(13)を不活性液状冷却媒体(4)と混合する混合部(5)、及び
前記混合部(5)と、前記温度管理セクション(3)の外側に配置されたポリマー処理装置とを流体連通させるよう構成されたパイプ(6)であって、冷却手段を備えていないパイプ(6)、
を有するシステム。
【請求項13】
前記混合部はスタティックミキサーである、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記温度管理セクション(3)は、前記不活性液状冷却媒体(4)を前記混合部(5)へ所定の流量で注入するための注入部を更に有する、請求項12又は13に記載のシステム。
【請求項15】
前記温度管理セクション(3)は、前記少なくとも1種の液体有機過酸化物(13)を前記混合部(5)へ所定の流量でポンプ輸送するためのポンプ(2)を更に有する、請求項12~14のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、少なくとも1種の液体有機過酸化物をポリマー溶融処理に供給する方法に関する。また、本開示はそれに対応するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
有機過酸化物(一般的には液体有機過酸化物)をポリオレフィンのレオロジー的変性(「ビスブレーキング」及び架橋等)に用いることが知られている。従来、架橋はポリエチレン等に適用されてきた。
【0003】
ポリオレフィンをビスブレーキングする方法としては、有機過酸化物化合物の存在下、約190℃~260℃で押出しするものが知られている。このような方法としては、例えば、豪州特許出願公開第5141785号明細書に記載されている。
【0004】
しかしながら、その有機的性質から、純粋な有機過酸化物は極めて不安定であり、揮発しやすく、温度の上昇を制御できなくなった際に燃焼又は爆発するリスクが高い危険な物質であるため、取り扱いに厳密な注意を必要とする。このような挙動から、輸送及び貯蔵上の規制とは両立しにくく、且つ/又は安全な取り扱い及び貯蔵には特別な努力を要するため、純粋な有機過酸化物を使用するのは非常にコストが大きく技術的にも複雑なものである。また、高温で実施される押出し処理等のポリマー溶融処理で純粋な有機過酸化物を使用するのは更に危険である。
【0005】
従って、液体有機過酸化物の安全な取り扱い及び輸送は重大な関心事であり、純粋な液体有機過酸化物を使用したり、希釈済みの液体有機過酸化物を少なくともいくらかはポリマー溶融処理で使用したりすると問題が生じることがある。
【0006】
貯蔵及び輸送に関する課題を解決するため、液体有機過酸化物を鉱油で希釈することが行われてきた。有機過酸化物を希釈することで、過酸化物製品の安全等級にかかる制限を抑えることができる。また、有機過酸化物を鉱油で希釈すると、有機過酸化物をポリオレフィン等のポリマーに分散させやすくなる。しかしながら、鉱油はポリマーの性質に影響を与えるような望ましくない副作用も引き起こす。例えば、鉱油で希釈した有機過酸化物のうち現在利用可能なものは、安全性の問題を起こすことはなく、純粋な有機過酸化物よりも貯蔵容量が大きくなる一方、溶剤がポリマー中に入り込んで、ポリマーから最終ポリマー製品への変換を阻害し、押出機内での過酸化反応中に副産物が更に分解してしまうことがある。このような分解及び副産物により高揮発性有機化合物(VOC)が発生しやすくなり、ポリマー及び最終ポリマー生成物に臭気が付いてしまうことがある。
【0007】
米国特許出願公開第2018/0030163号明細書には、ポリマーのレオロジーを変化させる方法が記載されている。この方法は、溶融ポリマーと少なくとも1種の有機過酸化物及び水を含むエマルジョン状の組成物とを押し出す工程、及び溶融ポリマーから揮発性化合物を除去する工程を有する。揮発性化合物は揮発性有機化合物及び水を含む。しかしながら、米国特許出願公開第2018/0030163号明細書には、押出機の上流で有機過酸化物を取り扱う方法、具体的には有機過酸化物の貯蔵部から押出機へ有機過酸化物を輸送する方法が記載されていない。
【0008】
液体有機過酸化物を第1の場所(有機過酸化物の貯蔵部等)から第2の場所(有機過酸化物を使用する場所等)へ輸送することに関してより一般的に言えば、温度管理手段を備えたパイプでこれらの液体を輸送することが一般に知られている。例えば、パイプの全長を温度管理エンクロージャー内に配置してもよい。このようなエンクロージャーは、第1の場所から第2の場所まで所望の管理温度でパイプを保持するよう設計しなければならず、追加の設備やそれに関連するコストが必要となる。パイプ全体を温度管理エンクロージャーに配置することに加えて、有機過酸化物を輸送する分野で知られている他の例としては、ジャケットパイプを使用する例が挙げられる。更に他の例としては、外部の熱トレース手段を有するパイプを備える例が挙げられる。温度管理手段として知られているものの種類に関わらず、いずれの場合も、製造プロセスの出発材料又は添加剤として液体有機過酸化物を用いる産業現場で典型的な長距離を被覆する手段としては適切でない。
【0009】
当該分野における上記例示のいずれにおいても、特定の設備を配置し、液体有機過酸化物を輸送するのに用いられるパイプを、当該液体を安全に輸送するために求められる制限温度内に保持しなければならない。
【0010】
従って、ポリマーを溶融する処理又は装置において、溶融処理されるポリマーの最終的な性質に影響を与えたり変化を加えたりすることなく有機過酸化物を使用することが意図されているような場合も含め、産業現場で液体有機過酸化物を安全に輸送する方法及びシステムの開発が依然として求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
出願人は、驚くべきことに、周囲温度では水性液体であり溶融処理条件下では揮発する不活性冷却媒体に溶解せず混合された状態(すなわち懸濁液)である液体有機過酸化物を輸送すれば、液体有機過酸化物の温度を管理するため特別に設計した設備又は装置を用いることなく、液体を輸送するのに好適な一般のパイプ、チューブ、又は中空体を用いるだけで、一時的又は長期的な貯蔵部など任意の場所からポリマー溶融処理装置へ有機過酸化物を安全に配送できることを見出した。
【0012】
また、これにより、温度管理手段(エンクロージャーや容器など、この目的に適合するもの等)を使用するのを(専用の温度管理容器等である)有機過酸化物の貯蔵部のみに限定できるため、エネルギー消費を低減できる。
【0013】
加えて、上で定義した不活性冷却媒体に溶解せず混合された状態である液体有機過酸化物を輸送すれば、ポリマー溶融処理装置へ到達するまでに被覆される距離(例えば、ポリマーを溶融処理する工業プラントにおける距離)に関わらず、液体有機過酸化物を安全に輸送できる。その結果、容易に、プラントのサイズに合わせ、投資を抑えて輸送できる。
【0014】
出願人は、複数の液体有機過酸化物をポリマー溶融処理装置に輸送する場合も同じ技術的効果が得られることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の態様によれば、本開示は、液体有機過酸化物をポリマー溶融処理装置に供給する方法であって、管理温度セクション内に配置された混合セクションにおいて、少なくとも1種の液体有機過酸化物と不活性冷却媒体とを混合する工程であって、上記少なくとも1種の液体有機過酸化物を上記不活性冷却媒体内に溶解させることなく実施する混合工程を有する方法に関する。上記方法は、上記不活性冷却媒体に溶解せず混合された状態である上記少なくとも1種の液体有機過酸化物を、上記管理温度セクションから、当該管理温度セクションの外側に配置されたポリマー溶融処理装置へ輸送する工程を更に有する。上記不活性冷却媒体は、周囲温度で水性液体を含み、溶融処理条件下で揮発する。例えば、上記管理温度セクションは、一時的又は長期的な液体有機過酸化物の貯蔵部など、液体有機過酸化物の各種容器を有していてもよい。
【0016】
上記不活性冷却媒体は、上記少なくとも1種の有機過酸化物に対して不活であり、周囲温度及び圧力において液体であり、上記少なくとも1種の有機過酸化物の温度を、過酸化物を安全に輸送するのに必要な制限温度内(液体有機過酸化物によるが、例えば5℃~40℃)に保持できる水性媒体であれば特に限定されない。例えば、上記不活性冷却媒体は、上記液体有機過酸化物と相溶しない水性液体であってもよく、液体有機過酸化物を組み合わせて使用する場合は全ての液体有機過酸化物と相溶しない水性液体であってもよい。本開示によれば、上記不活性冷却媒体は溶媒として作用しない。すなわち、上記不活性冷却媒体は上記少なくとも1種の液体有機過酸化物を溶解させないが、懸濁液として上記少なくとも1種の液体有機過酸化物を保持する。1つ以上の実施形態によれば、上記少なくとも1種の有機過酸化物及び上記不活性冷却媒体は、不安定な混合物の状態でポリマー溶融処理装置に輸送してもよい。
【0017】
本開示の第1の態様で定義したような方法は、液体有機過酸化物を安全に輸送するのに効果的であり、液体有機過酸化物をポリマー溶融処理装置へ安全に輸送するため特別に設計したエンクロージャー、装置、又は配管を必要とすることなく、温度が管理された容器又は貯蔵部とポリマー溶融処理装置とを1つの単純化したプラントとして統合するのに好適である。このような統合は、従来技術の方法と比べてエネルギー消費を低減させつつ効果的に実施でき、ハイスル―プット押出しプラント等の処理能力が高いポリマー溶融処理装置又はプラントの場合でも効果的に実施できる。
【0018】
1つ以上の実施形態によれば、上記方法は、上記不活性冷却媒体に溶解せず混合された状態である1種以上の液体有機過酸化物を輸送する工程を有する。
【0019】
上記液体有機過酸化物は、液状の有機過酸化物であれば特に限定されない。
【0020】
1つ以上の実施形態によれば、上記少なくとも1種の液体有機過酸化物は、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン-3、ジ(tert-ブチルペルオキシ-イソプロピル)-ベンゼン、ジクミルペルオキシド、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-l,4,7-トリペルオキソナン、3,3,5,7,7-ペンタメチル-1,2,4-トリオキセパン、及びこれらの組み合わせ等のジアルキルペルオキシドを少なくとも1種含んでいてもよい。
【0021】
1つ以上の実施形態によれば、上記不活性冷却媒体は、大気圧より低い圧力、例えば1000mbar(a)~800mbar(a)や800mbar(a)~600mbar(a)の圧力及び5℃~80℃の温度で揮発する。
【0022】
本開示によれば、上記不活性冷却媒体は水性冷却媒体を含む。例えば、上記冷却媒体は水であってもよい。この水は、塩等の溶解化合物を2%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満含んでいるか全く含んでいない蒸留水又は脱イオン水(脱塩水等)であってもよい。水が蒸留水である場合、水は上記した量以下の塩を含むだけでなく、2%未満、1%未満、0.5%未満、又は0.1%未満の有機化合物を含んでいてもよいし、全く含んでいなくてもよい。
【0023】
水を媒体として用いれば、液体有機過酸化物と水性媒体との非溶解混合物が輸送されてきた際に溶融処理条件下でポリマーと接触させた後、水性媒体を容易に除去できる。
【0024】
加えて、揮発性化合物を溶融ポリマーから除去してもよい。望ましい場合はいつでも、溶融処理装置内でポリマーのレオロジーを変性させてもよい。揮発性化合物を除去するとポリマー中にある分解物及び副産物の濃度が低減し、それによってVOCが少なくなり、ポリマー中の臭気濃度が下がり、着色が少なくなる。また、水性冷却媒体又は媒体としての水が、ポリマー内に残留している活性触媒部位を不活化できる。そのため、特別な不活化装置を必要とすることなく、溶融処理装置内でポリマーを不活化できる。また、溶融処理装置内で十分に混合することで、均一且つ効率的に不活化できる。
【0025】
1つ以上の実施形態によれば、上記方法は、上記少なくとも1種の液体有機過酸化物と混合させる上記水性冷却媒体又は水を所定の温度で供給する工程を有する。例えば、水を5℃~40℃の温度で供給してもよい。
【0026】
1つ以上の実施形態によれば、上記溶融処理装置は、押出機又は混錬機を有する。上記溶融処理装置は、例えば、一軸又は二軸押出機を別に又は組み合わせて有していてもよい。押出機の種類に関わらず、1つ以上の実施形態によれば、上記方法は、液体有機過酸化物及び水の混合物を上記押出機の供給ホッパに供給する工程を有していてもよい。あるいは、処理装置の供給ホッパのすぐ下流側、すなわち、供給ホッパで供給したポリマーがまだ固体状であると推定できる場所で、プラスチック処理装置の処理ユニットに過酸化物と冷却媒体との混合物を注入してもよい。
【0027】
1つ以上の実施形態によれば、上記方法は、上記少なくとも1種の液体有機過酸化物を上記管理温度セクションに貯蔵する工程を更に有していてもよい。このようにして、上記方法では、少なくとも1種の液体有機過酸化物を貯蔵している場所から直接少なくとも1種の液体有機過酸化物を供給できる。
【0028】
本開示によれば、上記方法は、上記管理温度セクション内に配置された混合セクションにおいて、上記少なくとも1種の液体有機過酸化物と上記不活性冷却媒体とを混合する、例えば機械的に混合する工程を更に有する。1つ以上の実施形態によれば、単一の管理温度セクションだけで貯蔵及び混合の温度を管理できる。例えば、一般的な管理温度セクションは、上記少なくとも1種の液体有機過酸化物を貯蔵するための容器又は貯蔵部と、上記少なくとも1種の液体有機過酸化物を上記不活性冷却媒体と混合するための混合部とを安全に収容できる。
【0029】
1つ以上の実施形態によれば、上記方法は、上記不活性冷却媒体を上記混合セクションへ例えば連続的に供給する工程を更に有する。1つ以上の実施形態によれば、上記方法は、一定であっても変動してもよい所定の流量で不活性冷却媒体を混合セクションに供給する工程を更に有する。このような所定の流量は、例えば、プラスチック処理装置の処理量に対して1000ppm~5000ppm、1200ppm~4000ppm、1500ppm~3000ppm、2000ppm~3000ppmであってもよい(本開示及び後述する特許請求の範囲を通じて、ppmはmg/kgを示し、従ってppm wtである)。例えば、上記不活性冷却媒体の流量は、上記液体有機過酸化物の流量の少なくとも2倍であってもよい。例えば、上記不活性冷却媒体の流量は、上記液体有機過酸化物の流量より3倍大きくてもよい。上記方法は、必要に応じて、上記液体有機過酸化物の流量に応じて上記不活性冷却媒体の流量を一定に又は可変的に調整する工程を更に有していてもよい。上記方法は、必要に応じて、例えばポリマーを溶融処理する方法及びポリマーを供給する流量に応じて、上記液体有機過酸化物の流量及び上記不活性冷却媒体の一定流量を調整する工程を更に有していてもよい。
【0030】
1つ以上の実施形態によれば、上記方法は、上記少なくとも1種の液体有機過酸化物を貯蔵部から上記混合セクションへ、一定であっても変動してもよい所定の流量でポンプ輸送する工程を更に有する。例えば、このような所定の流量は、プラスチック処理装置の処理量に対して10ppm~6000ppm、30ppm~6000ppm、50ppm~6000ppm、50ppm~5000ppm、100ppm~4000ppm、200ppm~2000ppm、300ppm~800ppmであってもよい。必要に応じて、例えばポリマーを溶融処理する方法及びポリマーを供給する流量に応じて、上記方法は、上記少なくとも1種の液体有機過酸化物の所定流量を調整する工程を更に有していてもよい。
【0031】
1つ以上の実施形態によれば、上記ポリマーはポリオレフィンを含む又はポリオレフィンのみで構成されている。
【0032】
1つ以上の実施形態によれば、上記ポリオレフィンは、例えばオレフィンのホモポリマー及びコポリマーから選択され、オレフィンモノマーは例えば2~8個の炭素原子を有していてもよい。
【0033】
1つ以上の実施形態によれば、上記ポリオレフィンは、ポリプロピレンホモポリマー、ポリエチレンホモポリマー、プロピレンを含むコポリマー、エチレンを含むコポリマー、及びこれらの組み合わせを含む群から選択してもよい。例えば、ポリオレフィンは、ポリプロピレンホモポリマー、プロピレンコポリマー、ポリエチレンホモポリマー、及びエチレンコポリマーからなる群より選択してもよい。
【0034】
1つ以上の実施形態によれば、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレンや、エチルビニルアセテートコポリマー(EVA)及びポリオレフィン系エラストマー(POE)を使用してもよい。1つ以上の実施形態によれば、例えば密度が0.88g/cm3~0.96g/cm3の範囲であるポリエチレンホモポリマー及びコポリマーを使用してもよい。ポリエチレンホモポリマー及びコポリマーは公知のプロセスで製造してもよい。
【0035】
1つ以上の実施形態によれば、プロピレンのホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、及びターポリマーを含むポリプロピレンを使用してもよい。プロピレンのコポリマーは、プロピレンと、エチレン、1-ブテン、2-ブテン、及びペンテンアイソマー等の他のオレフィンとのコポリマー、例えばプロピレンとエチレンとのコポリマーを含んでいてもよい。プロピレンのターポリマーは、プロピレンと、エチレン及び他の1種のオレフィンとのコポリマーを含んでいてもよい。ランダムコポリマー(統計コポリマーとしても知られている)は、プロピレンとコモノマーとの供給比に応じた比でプロピレンとコモノマーとがポリマー鎖全体でランダムに分布しているポリマーである。ブロックコポリマーは、プロピレンホモポリマーで構成された鎖セグメントと、例えばプロピレン及びエチレンのランダムコポリマーで構成された鎖セグメントとで構成されている。ホモポリマー、ランダムコポリマー、及びブロックコポリマーは、公知のプロセスで製造してもよい。
【0036】
本開示の第2の態様によれば、本開示は、溶融ポリマーを溶融処理する方法であって、本明細書で開示した実施形態のいずれか1つで定義した、少なくとも1種の液体有機過酸化物をポリマー溶融処理装置に供給する方法を有する。上記溶融ポリマーを溶融処理する方法は、上記ポリマー溶融処理装置内に上記少なくとも1種の有機過酸化物及び上記不活性冷却媒体が存在している状態で、上記溶融ポリマーを溶融処理する工程と、上記溶融ポリマーから上記不活性冷却媒体を除去する工程とを更に有する。溶融処理工程は押出し工程を含んでいてもよく、必要に応じてポリマーをレオロジー的に変性してもよく、例えば、ポリマーの分解及び/又は架橋を含んでいてもよい。上記溶融処理する方法は、上記不活性冷却媒体を除去する工程に加えて、他の揮発性化合物を上記溶融ポリマーから除去する工程を含んでいてもよい。
【0037】
1つ以上の実施形態によれば、上記ポリマー溶融処理装置は押出機を有していてもよい。
【0038】
例えば、除去した上記揮発性化合物は、上記水性冷却媒体又は水に加えて、揮発性有機化合物を含んでいてもよい。
【0039】
1つ以上の実施形態によれば、上記ポリマー溶融処理装置内に上記少なくとも1種の有機過酸化物及び上記不活性冷却媒体が存在している状態で溶融ポリマーを溶融処理する上述の工程は、溶融ポリマーと、少なくとも1種の有機過酸化物及び不活性冷却媒体の非溶解混合物とを押し出す工程を有していてもよい。1つ以上の実施形態によれば、溶融ポリマーと非溶解混合物とを押し出す工程は、例えば一次粉末又はペレット状であってもよい上記ポリマーを押し出す工程、上述した混合物を上記ポリマーに加える工程、及び上記混合物の存在下で上記ポリマーを溶融押出しする工程によって実施してもよい。上記混合物を上記ポリマーに加える工程は、例えば、上記ポリマーの押出し前又は押出し中に実施してもよい。1つ以上の実施形態によれば、上記混合物は、上記ポリマーの量に対する上記少なくとも1種の有機過酸化物の量が所定の値となるようにして上記ポリマーに加えてもよい。例えば、上記ポリマーに加える上記少なくとも1種の過酸化物の量が上記ポリマーの量に対して100ppm~6000ppm、200ppm~5000ppm、300ppm~4000ppmの範囲となるように、上記混合物を上記ポリマーに加えてもよい。1つ以上の実施形態によれば、上記ポリマーに加える上記少なくとも1種の過酸化物の量が上記ポリマーの量に対して100ppm~3000ppmの範囲となるように、上記混合物を上記ポリマーに加えてもよい。
【0040】
押出し工程は、押出機や他の任意の溶融処理装置で実施してもよい。いずれの場合も、押出し工程は押出し条件下で実施する。不活性冷却媒体は押出し条件下で蒸気状であってもよく、例えば押出機をベント(vent)して除去したら、望ましくない不活性種及び分解生成物を溶融ポリマーから容易に抽出するものであってもよい。押出し条件下で蒸気を除去することで、望ましくない分解生成物及び副産物の脱気を促進すると、VOC濃度及び臭気濃度の両方が更に低減される。その結果、ポリマーの溶融処理中にポリマーが更に脱気される。従って、本開示の1つ以上の実施形態に係る方法によれば、少なくとも1種の液体有機過酸化物を安全かつ容易に輸送し、且つ押出し条件下で少なくとも1種の有機過酸化物を溶融ポリマーと接触させてポリマーを溶融処理できるだけでなく、不活性冷却媒体や、不活性種及び分解生成物を溶融ポリマーから効果的に抽出できる。
【0041】
1つ以上の実施形態によれば、押出し工程は1種以上のポリマー添加剤の存在下で実施してもよい。添加剤としては、例えば、充填剤、酸化防止剤、防カビ剤、殺菌剤、補強剤、帯電防止剤、熱安定剤、UV安定剤、流動促進剤、着色剤等の添加剤や、当業者に知られている加工助剤等が挙げられる。
【0042】
1つ以上の実施形態によれば、押出し工程は、押出機内において、ポリマーを押し出すのに好適な所定の押出し条件、例えば所定の押出し温度及び所定の押出し処理量で実施してもよい。押出機に関して、他に提示されない限り、本明細書及び後述する特許請求の範囲において例示した押出し温度及び押出し圧力は、バレル温度及びバレル圧力を示すものとする。
【0043】
例えば、押出し工程は180℃~260℃、例えば190℃~250℃、例えば190℃~240℃の押出し温度で実施してもよい。
【0044】
1つ以上の実施形態によれば、押出し条件は押出機の長さ方向で変化してもよい。例えば、押出し経路の少なくとも一部に沿って押出し温度を上昇又は低下させてもよく、この部分は押出機の異なるゾーンにわたって存在していてもよい。
【0045】
押出機の長さ方向で変化し得る温度とは独立して又は当該温度と組み合わせて、押出し圧力もまた押出機の長さ方向で変化してもよい。例えば、押出し条件において、供給ゾーンの圧力が10mbar~50mbarであり、溶融圧縮ゾーンの圧力が30bar~120barであってもよい。他のゾーンについては、供給ゾーン及び溶融圧縮ゾーンで例示した圧力の間の圧力であってもよい。
【0046】
押出し条件は、押出機内での強力混合を更に含んでいてもよい。1つ以上の実施形態によれば、押出機のスクリュー速度を周速基準で2m/s~6m/sの範囲で変化させることで十分に混合してもよい。
【0047】
1つ以上の実施形態によれば、ポリマーの粉末又はペレットと上記混合物とを、単軸であっても二軸であってもよい押出機へ別々に又は一緒に供給してもよい。
【0048】
一緒に供給する場合、必要に応じてポリマーの粉末又はペレットと混合物とを例えば30℃~40℃で予備混合してもよい。
【0049】
ポリマーの粉末又はペレットと混合物とは、所定の供給速度で押出機へ別々に供給してもよい。例えば、ポリマーの供給速度を、ラボ用押出機で2~500kg/hの範囲、産業用押出機で5トン/h~100トン/hの範囲に設定してもよく、混合物の供給速度を調整することで所望のMFRを有する最終ペレットを得てもよい。
【0050】
1つ以上の実施形態によれば、非溶解混合物は、ポリマーと別々に供給した場合、押出機へ連続的に加えてもよく、一段階ずつ又は少しずつ非連続的に加えてもよい。
【0051】
1つ以上の実施形態によれば、押出機の各ゾーンの温度は、定常状態において、当該分野で知られている所定の温度範囲の例に設定してもよいが、それより低い値に設定してから混合物を投入してもよい。例えば、押出機の各ゾーンの温度は、対応する定常状態での押出し温度より少なくとも10℃~20℃低い温度範囲に設定してもよい。一方、押出機の各ゾーンの温度が定常状態での温度範囲に到達してから混合物を投入してもよい。
【0052】
1つ以上の実施形態によれば、混合物を押出機に供給する速度は所定の値まで少しずつ上昇させてもよく、当該所定の値は、ペレットの最終MFRとして望ましい値に応じて変化するものであってもよい。最終MFRは、例えば押出機のダイゾーンに設置したオンラインレオメータを用いて測定してもよい。
【0053】
混合物を押出機に供給する速度を定常状態の値まで上昇させる前に、バレル及びダイゾーンの温度を、混合物投入前に設定したのと同じ温度で保持するか、例えば更に5℃~10℃低減させてもよい。
【0054】
1つ以上の実施形態によれば、除去工程はポリマー溶融処理装置をベントして実施する。この目的で、ポリマー溶融処理装置は、例えば、ベントゾーンを含む減圧ゾーンを有していてもよい。
【0055】
1つ以上の実施形態によれば、ポリマー溶融処理装置は、例えば少なくとも1つのベントポート又は複数のベントポートを有するベントゾーンを含む減圧ゾーンを少なくとも1つ備えた押出機を有する。少なくとも1つの減圧ゾーンは、例えば、押出機スクリューを2/3ほど進んだ位置に設置されていてもよい。減圧ゾーンは、ベントゾーンを通じて、例えばベントゾーンが備える1つ以上のベントポートを通じて、不活性冷却媒体を含む水蒸気及び揮発分等の気体を溶融ポリマーから逃がすことができる。
【0056】
少なくとも1つのベントポートを有するベント済み押出機を用いることで、少なくとも1つの減圧ゾーンで圧力を開放し、捕捉した気体を吸引除去してもよい。このような押出機であれば、本開示の1つ以上の実施形態に係る方法によって、ポリオレフィン等のポリマーが有する性質に良い影響を与えるという別の効果が得られる。このような効果としては、活性触媒部位が不活化されることや、水と有機過酸化物とから個別に予測されるよりも良好にポリマーが脱気されることが挙げられる。活性触媒部位が不活化しポリマーが良好に脱気されることで、含有する反応副生成物及び揮発分の量がより少なくて純粋であり、味及び香り等の官能特性が向上し、着色が低減したポリマーが得られる。更に、少なくとも1つのベントポートから除去した場合、組成物の水は、望ましくない不活性種及び分解生成物を溶融ポリマーから抽出する。
【0057】
1つ以上の実施形態によれば、除去工程は、例えば押出し工程中に押出機をベントして実施する。ベントは、例えば、押出機のベントゾーンにある少なくとも1つのベントポート又は吸引ポートを通じて実施してもよい。1つ以上の実施形態によれば、バレル周囲の円周方向及び/又はバレルの一部の長手方向に複数のベントポートを画定してもよい。
【0058】
ベントポートは、所定の真空度(すなわち、大気圧より低い圧力)で反応水及び望ましくない不活性種を取り除くことで、ポリマー中に水が残留しないようにするものであってもよい。
【0059】
1つ以上の実施形態によれば、除去工程は、押出機のベントゾーン内又は複数のベントゾーン内を所定の真空度とすることで実施する。ベントゾーンが複数の場合、各ベントゾーンを、複数の減圧ゾーンを有する押出機の対応する1つの減圧ゾーンに設置してもよい。しかしながら、1つ以上の実施形態によれば、複数のベントゾーンを押出機の各減圧ゾーンに設置してもよい。
【0060】
1つ以上の実施形態によれば、所定の真空度は、0mbar~800mbar、例えば200mbar~800mbar、例えば300mbar~600mbar、例えば350mbar~550mbarに設定される。1つ以上の実施形態によれば、除去工程は、ベントゾーンを有する押出機の減圧ゾーン内を所定の真空圧に設定して実施してもよい。例えば、減圧ゾーンの真空圧は0mbar~800mbarであってもよい。
【0061】
例えば、真空ポンプ等の真空を生成する公知の装置へつながる配管に少なくとも1つのベントポートを取り付けることで、ベントゾーンの圧力を大気圧より低く保持できる。
【0062】
1つ以上の実施形態によれば、上記方法で溶融処理したポリマーは、上で定義したポリマーとして例示したもののいずれかを含んでいてもよい。
【0063】
例えば、溶融処理されるポリマーは、プロピレンのホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。1つ以上の実施形態によれば、プロピレンのホモポリマー又はコポリマーは、ISO1133に従って荷重2.16kg及び230℃で測定した溶融処理前の初期MFRが約0.2g/10分~約100g/10分、例えば0.2g/10分~50g/10分、例えば0.2g/10分~20g/10分であってもよい。
【0064】
本明細書及び特許請求の範囲におけるMFRは、特に提示されない限り、ISO1133に従って荷重2.16kg及び230℃で測定したMFRである。
【0065】
1つ以上の実施形態によれば、プロピレンのホモポリマー又はコポリマーは、混合物の1つ以上の実施形態と溶融処理した後の最終MFRが初期MFRより最大で5000%高くてもよい。1つ以上の実施形態によれば、最終MFRは、50g/10分~2000g/10分、例えば20g/10分~100g/10分、例えば5g/10分~20g/10分であってもよい。
【0066】
更に別の態様によれば、本開示は、上で定義した方法の1つ以上の実施形態で得られたポリマー組成物に関する。
【0067】
ポリマー組成物を用いれば、例えば成形用途、膜用途、及び繊維用途等、各種用途の製品を作製できる。製品用途としては、例えばパッケージ用途や自動車用途で使用される、射出成型品及びブロー成型品が挙げられる。衛生用途、医療用途、自動車用途、及びジオテキスタイル用途等のスパンボンド不織布及びメルトブローン繊維用途も、ポリマー組成物の用途として例示できる。
【0068】
更に別の態様によれば、本開示は、ポリマー溶融処理装置に対する少なくとも1種の有機過酸化物の不活性冷却媒体としての蒸留水又は脱イオン水の使用に関する。
【0069】
1つ以上の実施形態によれば、水は、上記方法のいずれかに関連して上述した実施形態のいずれか1つで提示した特性を1つ以上有していてもよい。
【0070】
更に別の態様によれば、本開示は、液体有機過酸化物をポリマー溶融処理装置に供給するシステムに関する。このシステムは温度管理セクションを有し、該温度管理セクションは、少なくとも1種の有機過酸化物の貯蔵部と、少なくとも1種の液体有機過酸化物を溶解させることなく不活性液状冷却媒体と混合する混合部とを有する。上記システムはまた、上記混合部と、上記温度管理セクションの外側に配置されたポリマー処理装置とを流体連通させるよう構成されたパイプを有する。上記パイプは、冷却ジャケットや、冷却媒体を循環させる二重壁、又は他の外部冷却装置といった冷却手段を備えていない。更に、1つ以上の実施形態によれば、上記不活性液状冷却媒体によって、満足のいく、効果的且つ簡便な方法で冷却機能を実現できる。従って、上記システムは、従来のパイプであって、不活性液状冷却媒体と混合された状態である少なくとも1種の液体有機過酸化物を管理温度セクションからポリマー溶融処理装置へ簡便且つ安全に輸送できるパイプを有していてもよい。
【0071】
1つ以上の実施形態によれば、上記パイプは長さが5m~200m、例えば10m~100mであってもよい。
【0072】
1つ以上の実施形態によれば、上記パイプは単壁パイプで構成されている。
【0073】
1つ以上の実施形態によれば、上記パイプは、長さが異なり且つ/又は異なる方向に配置された複数の区画を有していてもよい。例えば、これら複数の区画は、直線状又は曲線状のコネクタ、ジョイント、ひじ管、及び類似の接続手段で互いに接続されていてもよい。
【0074】
1つ以上の実施形態によれば、混合部は、例えば流体を連続混合するためのスタティックミキサーを有している又はそのようなスタティックミキサーである。
【0075】
1つ以上の実施形態によれば、上記温度管理セクションは、所定の温度、例えば5℃~25℃で不活性液状冷却媒体を混合部に注入するための注入部を更に有している。例えば、注入部は、少なくとも1種の液体有機過酸化物が凍結及び加熱されないような温度の下限及び上限内で不活性液状冷却媒体である流体を注入するよう構成されていてもよい。この目的で、注入部は温度調節装置を備えていてもよい。
【0076】
1つ以上の実施形態によれば、上記注入部は、処理装置のポリマー処理量に対して所定の流量、例えば1000ppm~5000ppmに調節可能な方法で、不活性液状冷却媒体を混合部に注入するよう構成されていてもよい。
【0077】
1つ以上の実施形態によれば、上記温度管理セクションは、ポリマー処理装置の処理量に対して所定の流量、例えば10ppm~6000ppm、10ppm~5000ppmで、少なくとも1種の有機過酸化物を混合部へポンプ輸送するためのポンプを更に有する。上記ポンプは、例えば、計量した液体を他の液体へ注入するのに好適な液体計量ポンプであってもよい。
【0078】
ポリマー溶融処理装置は押出機を有していてもよく、上述した方法の実施形態で使用できるポリマー溶融処理装置に関連して上で例示した特徴のいずれかを有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1】本開示の一実施形態に係るシステムであって、ポリマーのレオロジーを変化させるためのシステムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
以下で例示する、少なくとも1種の液体有機過酸化物をポリマー溶融処理装置に供給し且つポリマーを溶融処理する方法及びシステムは、説明を目的としたものであり限定を目的としたものではない。
【0081】
本開示の一実施形態に係るポリマーを溶融処理するシステムを
図1で模式的に示し、概して参照符号12で表す。ポリマーの溶融処理工程は、例えば、ポリプロピレンであってもよいポリマーを分解及び/又は架橋する工程を有する。
【0082】
システム12は、液体有機過酸化物をポリマー溶融処理装置に供給するシステム(このシステムは以下で詳述する)と、ベントゾーン10を備える溶融処理装置とを有する。
【0083】
図1に示す実施形態において、溶融処理装置は温度管理セクションの外側に配置された押出機9であり、概して参照符号3で表す。しかしながら、上記システムは、温度管理セクション3の外側に配置された任意の種類の溶融処理装置を有していてもよい。
【0084】
押出機9は、供給ホッパ8と、溶融圧縮ゾーン(図示せず)と、ベントゾーン10を備え且つ供給ホッパ8の下流に配置された減圧ゾーンとを有する。ベントゾーン10は、少なくとも1つのベントポート(図示せず)を備えていてもよい。押出機9は、共回転近接インターメッシュ型二軸押出機等の二軸押出機であってもよい。
【0085】
温度管理セクション3は、例えば、HVACによって所定の温度、例えば10℃~20℃に保持されたエンクロージャー状であってもよい。
【0086】
図1に示す実施形態において、温度管理セクション3は、液体有機過酸化物13(例えば2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサンであってもよい)の貯蔵部1(例えば貯蔵タンク)と、液体有機過酸化物13及び不活性水性冷却媒体4(例えば脱塩水であってもよい)を混合する混合部5とを有している。脱塩水は、例えば、塩等の化合物の溶解量が2%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満であってもよく、全く溶解していなくてもよい。貯蔵タンクは、液体有機過酸化物を安全に貯蔵する分野で知られており、このような種類の材料に関して確立された安全規則に準拠した貯蔵タンクであればよい。混合部5は、液体を連続混合するスタティックミキサーであってもよい。
【0087】
温度管理セクション3は、不活性水性冷却媒体4を混合部5に注入するための注入部(詳細には図示せず)を更に有する。注入部は、ポリマー処理装置の処理量に対して所定の流量、例えば1000ppm~5000ppmで不活性水性冷却媒体4を注入してもよい。例えば、不活性水性冷却媒体4の流量は、液体有機過酸化物1の流量の少なくとも2倍であってもよく、例えば液体有機過酸化物1の流量より3倍大きくてもよい。注入部は、液体有機過酸化物13に応じて、不活性水性冷却媒体4を所定の温度、例えば5~25℃で注入してもよい。この目的で、注入部は温度調節装置を有していてもよい。不活性水性冷却媒体4の温度は、液体有機過酸化物13が凍結及び加熱されないような温度の下限及び上限内で選択及び/又は調節してもよい。例えば、液体有機過酸化物13が2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサンである場合、当該温度は10℃~40℃の範囲であってもよい。
【0088】
温度管理セクション3は、ポリマー処理装置の処理量に対して所定の流量、例えば50ppm~6000ppmで液体有機過酸化物13を混合部5へポンプ輸送するためのポンプ2を更に有する。ポンプ2は、例えば、計量した液体を他の液体へ注入するのに好適な液体計量ポンプであれば特に限定されない。
【0089】
液体有機過酸化物を押出機9に供給するシステムは、温度管理セクション3及びパイプ6を有し、該パイプ6は、混合部5と、温度管理セクション3の外側に配置された押出機9とを流体連通させるよう構成されている。パイプ6は、冷却ジャケットや、冷却媒体を循環させる二重壁といった外部の温度管理手段を備えていない。実際のところ、液体有機過酸化物13を冷却する機能は不活性水性冷却媒体4によって実施される。従って、パイプ6は、特定の冷却手段を備える必要がない従来の単壁パイプであってもよい。パイプ6は長さが5m~200mであってもよいが、ポリマーを溶融処理するシステム12の大きさ及びその装置のレイアウトに応じて長さが異なっていてもよい。
【0090】
本開示の実施形態によれば、ポリマーを溶融処理する方法であって、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン等の少なくとも1種の有機過酸化物を用いてポリプロピレンを分解及び/又は架橋する工程を有する方法の一例は、以下の通りであってもよい。ポリマーを溶融処理する方法の一例は、不活性水性冷却媒体4(脱塩水等)に溶解せず混合された状態である液体有機過酸化物13を、管理温度セクション3から押出機9のホッパへ輸送する工程、押出機9内に液体有機過酸化物13及び不活性水性冷却媒体4が存在する状態で溶融ポリマーを押し出す工程、及び溶融ポリマーから不活性水性冷却媒体4及び他の揮発性化合物を除去する工程を有する。液体有機過酸化物13と不活性水性冷却媒体4との混合物を生成するため、上記方法は、管理温度セクション3内に配置された貯蔵部1に液体有機過酸化物13を貯蔵する工程、ポリマー処理装置の処理量に対して所定の流量、例えば500ppmで貯蔵部1から混合部5へ液体有機過酸化物13をポンプ輸送する工程、ポリマー処理装置の処理量に対して所定の流量、例えば2500ppmで不活性水性冷却媒体4を混合部5に供給する工程、及び混合部5内で液体有機過酸化物13と不活性水性冷却媒体4とを混合する工程を有していてもよい。
【0091】
例えば窒素ブランケット下、パイプ6を用いて、不活性水性冷却媒体4に溶解せず混合された状態である液体有機過酸化物13をポリプロピレンの粉末又はペレット7と共に押出機の供給ホッパー8へ供給する。液体有機過酸化物13と共に、不活性水性冷却媒体4、ポリマーの粉末又はペレット7、安定化剤、及び/又は他の添加剤も供給ホッパ8から押出機9へ供給してもよい。押出機9は、例えば190℃~260℃の範囲の押出し温度にて、回転スクリューを用いて構成材料を取り込んでもよい。押出機9のスクリューで、ポリマー、液体有機過酸化物13、及び不活性水性冷却媒体4を混合する。
【0092】
押出し工程の圧力及び温度は、押出機9の長さ方向で変化させてもよい。例えば、溶融圧縮ゾーンの溶融圧力は、約230℃の温度で約100barであってもよい。反応押出しプロセスの間、液体有機過酸化物13は溶融ポリマーをレオロジー的に変化させる。
【0093】
押出機9は押出機が有する供給ホッパ8の下流にベントゾーン10を有するため、パイプ6に沿って液体有機過酸化物13用の不活性水性冷却媒体4として作用し終わった脱塩水を蒸気11としてポリマー溶融物から抽出できる。更に、他の揮発性化合物及び過酸化物分解反応の反応生成物を水と共に除去してもよい。脱塩水及び他の揮発性化合物で構成された不活性冷却媒体を完全に抽出するのに必要な真空圧は、ベントゾーンにおける大気圧より低い圧力、例えば1000mbar(a)~800mbar(a)、例えば800mbar(a)~600mbar(a)から選択してもよい。ベントゾーンにおける大気圧より低い圧力は、例えば、真空ポンプ等の真空を生成する公知の装置へつながる配管に少なくとも1つのベントポートを取り付けることで、所望の水準で保持できる。ベントされたポリマーは、ペレタイザー(図示せず)を通ってペレットとして押出機9から排出される。
【0094】
最終的に、VOCを更に低減させ、臭気を容易に低減させ、最終ポリマーペレットの色を向上させることができる。
【0095】
上記した実施形態では、押出し条件下でポリプロピレン等のポリマーのレオロジーを変化させるための液体有機過酸化物として2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサンを挙げた。しかしながら、本開示に係る方法の実施形態によれば、他の有機過酸化物によって他のポリマーをレオロジー的に変化させてもよい。また、上記した実施形態は単一の有機過酸化物を用いることに基づいている。しかしながら、本開示に係る方法の1つ以上の実施形態によれば、複数の有機過酸化物を用いてもよい。更にまた、本開示に係る方法の1つ以上の実施形態によれば、安定化剤及び/又は他の添加剤を用いてもよい。
【0096】
限られた数の実施形態についてのみ本発明を記載したが、本明細書中で開示した発明の範囲を逸脱しない他の実施形態も考えられることが、本開示の利益を享受する当業者には理解できるであろう。従って、本範囲の範囲は添付の特許請求の範囲のみにより限定されるべきである。
【国際調査報告】