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特表2023-546011反射層を備えたエミッタ素子及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】反射層を備えたエミッタ素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/36 20060101AFI20231025BHJP
   H01J 61/35 20060101ALI20231025BHJP
   H01J 9/20 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
C03C17/36
H01J61/35
H01J9/20 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521350
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(85)【翻訳文提出日】2023-04-06
(86)【国際出願番号】 EP2021079502
(87)【国際公開番号】W WO2022090134
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】102020128337.7
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593129320
【氏名又は名称】ヘレーウス ノーブルライト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Noblelight GmbH
【住所又は居所原語表記】Heraeusstrasse 12-14, Hanau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイス、オリバー
【テーマコード(参考)】
4G059
5C043
【Fターム(参考)】
4G059AA07
4G059AC05
4G059CA01
4G059CB04
4G059DA02
4G059DB09
4G059GA02
4G059GA04
4G059GA05
4G059GA14
5C043AA02
5C043CD01
5C043DD31
5C043DD32
5C043EA13
5C043EA14
5C043EB11
5C043EB14
5C043EC02
5C043EC20
(57)【要約】
リフレクタを備えたエミッタ素子を製造するための既知の方法では、スリップ法を用いて流動性の水性SiO2スリップが製造され、このスリップは、スリップ層の形態で石英ガラス主要部品に塗布される。次いでスリップ層を乾燥させてグレージングし、それによっておよそ不透明で拡散反射性の石英ガラス層を形成する。反射光学パワーを増大させた不透明石英ガラス製の反射層を備えた光学素子を製造するために、不透明ガラス製の反射層で少なくとも部分的に被覆された表面を有する主要部品を提供するステップと、不透明ガラス製の反射層の表面領域を圧縮するステップと、圧縮された表面領域の少なくとも一部に鏡面反射性層を塗布するステップとを有する方法が提案される。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リフレクタ(3;4;5;6)を備えたエミッタ素子の製造方法であって、方法ステップ:
(a)不透明ガラス製のリフレクタ層(4)で少なくとも部分的に被覆された表面(2)を有する主要部品(1;21)を提供するステップと、
(b)不透明ガラス製の前記リフレクタ層(4)の表面領域(5)を圧縮するステップと、
(c)前記圧縮された表面領域(5)の少なくとも一部の上に鏡面反射性リフレクタ層(6)を塗布するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記表面領域(5)の前記圧縮が、少なくとも5秒の加熱時間で少なくとも1,100℃の加熱温度に加熱することによって行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記鏡面反射性リフレクタ層(6)が、金属から製造されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記鏡面反射性リフレクタ層(6)が、金含有金属又は金から製造され、50nm~300nmの範囲の層厚を有することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記リフレクタ層(4)が、0.5mm~2mmの範囲の厚さを有する不透明ガラスから作製されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
方法ステップ(b)により圧縮されると、不透明ガラス製の前記リフレクタ層(4)の前記厚さの50%未満を有する表面領域(5)が形成されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
方法ステップ(a)による前記主要部品の前記提供が、不透明ガラス製のリフレクタ層を備えた使用中のエミッタ素子(21)を取り外し、方法ステップ(b)及び(c)を使用して再加工する措置を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
表面(2)が少なくとも部分的にリフレクタ(3)で被覆された主要部品(1;21)を有するエミッタ素子であって、前記リフレクタ(3)が、少なくとも部分的に不透明なガラスから作製された内側リフレクタ層(4)と、外側の鏡面反射性リフレクタ層(5)とを備え、シールされたガラス薄膜(6)が前記内側リフレクタ層(4)と前記外側のリフレクタ層(5)との間に配置される、エミッタ素子。
【請求項9】
前記ガラス薄膜(6)が、300μm未満、好ましくは150μm未満の厚さを有することを特徴とする、請求項8に記載のエミッタ素子。
【請求項10】
前記鏡面反射性リフレクタ層(5)が、金属、好ましくは金含有金属又は金からなること、及び50nm~300nmの範囲の層厚を有することを特徴とする、請求項8又は9に記載のエミッタ素子。
【請求項11】
不透明ガラス製の前記リフレクタ層(4)が、0.5mm~2mmの範囲の厚さを有することを特徴とする、請求項8~10のいずれか一項に記載のエミッタ素子。
【請求項12】
前記主要部品(1;21)が、放射エミッタを受け入れるための包絡体として設計され、前記リフレクタ(3)が、前記包絡体の、前記放射エミッタとは反対の外側に配置されること、又は前記主要部品が、タイル状の放射エミッタとして設計され、前記リフレクタが、前記タイルの平面側に配置されることを特徴とする、請求項8~11のいずれか一項に記載のエミッタ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフレクタを備えたエミッタ素子の製造方法に関する。
【0002】
更に、本発明は、表面が少なくとも部分的にリフレクタで被覆された主要部品を備えたエミッタ素子を含む。
【0003】
ランプ及びリフレクタの製造においては、発光損失を最小限に抑えるために、光エミッタにはリフレクタが設けられることが多い。ここで重要な役割を果たすのは、発せられる光学パワーの時間的な一定性及び効率である。
【背景技術】
【0004】
リフレクタ材料が損傷を受けず、反射率が急速に低下することなく、化学的に侵食性な環境で使用され得る高品質リフレクタの表面は、金からなることが多い。金リフレクタが備わった赤外線面エミッタの形のこのようなエミッタ素子は、独国特許第4022100(C1)号より既知である。面エミッタは並置された石英ガラス製の複数のランプ管から構成され、このランプ管は石英ガラス製の共通の支持プレート上に取り付けられる。このランプ管の配列の上側は、赤外線面エミッタの放射面を形成する。その反対側に配置された石英ガラス支持プレートの自由な下側には、金から作製されたリフレクタ層が設けられている。
【0005】
独国特許出願公開第19822829(A1)号には、ランプ管がいわゆるツイン管として形成される短波長赤外線エミッタが記載されている。この場合、石英ガラス被覆管は、長手方向ウェブによって、互いに平行に延びる2つの部分空間に分割されており、一方又は両方の部分空間内に加熱スパイラルが延びている。赤外放射線の主放射方向とは反対側のツイン管の側面は、リフレクタとして作用する金層で被覆されている。
【0006】
金から作製されたリフレクタ層は、高い反射能を特徴とする。しかしながら、このようなリフレクタ層は、温度及び熱衝撃に対して限られた程度でしか耐性がない。更に、UV領域では反射が著しく減少する。
【0007】
独国特許出願公開第102004051846(A1)号に記載され、「QRC」(Quartz Reflective Coating)の名称でも知られるようになった、少なくとも部分的に不透明石英ガラスから作製された拡散反射リフレクタ層は、限られた温度安定性及びUV範囲における低い反射能の欠点を回避する。QRCリフレクタ層の製造は、スリップ法によって行われ、このスリップ法では、非晶質SiO粒子を含有する、高充填された注入可能な水性SiOスリップが製造される。これをスリップ層として石英ガラス主要部品に塗布し、次いでスリップ層を乾燥させてグレージングし、およそ不透明な石英ガラス層を形成する。スリップ層を主要部品に塗布するためには、噴霧、静電支援噴霧、フラッディング、スピニング、浸漬、及び塗装が提案される。溶射による不透明石英ガラスから作製されたリフレクタ層の製造もまた、独国特許出願公開第102006062166(A1)号に記載されている。
【0008】
独国特許第4440104(C2)号は、表面が熱圧縮され、平滑で、非多孔性の不透明石英ガラスから作製されたミラーブランクを開示している。圧縮された透明表面層は、例えば3mmの厚さを有する。ミラー用の反射性被覆は、機械的処理後に圧縮された表面層上に塗布されてもよい。
【0009】
米国特許第3445662(A)号は、金のリフレクタを有する赤外線エミッタを記載している。金リフレクタは、金属基板、拡散バリア層、及び金層からなる。拡散バリア層は、厚さ20nm~200nmの緻密なSiO層からなってもよい。
【0010】
独国特許出願公開第102007030698(A1)号は、主要部品と、亀裂のない緻密なシール層とから構成された、熱放射リフレクタとして使用することができる複合体を記載している。主要部品は、多孔質不透明石英ガラスからなり、シール層は、SiOmmスリップの塗布及びグレージングによって製造され、0.8mmの厚さを有する。
【0011】
独国特許出願公開第102013104466(A1)号は、不透明石英ガラスから作製されたリフレクタ層で被覆され得るランプ管を有するUVランプを記載している。この層の厚さは0.2mm~2mmである。
【0012】
技術的な課題
不透明石英ガラス層は、広い波長範囲にわたる放射線に対する拡散リフレクタとして使用することができる。この層は、約1000℃までの高温耐性、及び2.2μm未満の波長範囲における高い反射能によって特徴付けられる。しかしながら、より長い波長範囲では、放射線源によって発せられる一次放射に対するこの層の反射能は、金リフレクタの反射能よりも著しく低い。
【0013】
したがって、本発明の目的は、不透明石英ガラスから作製されたリフレクタ層を有する光学素子において、反射される光学パワーを増加させることである。
【0014】
更に、本発明は、このようなエミッタ素子を確実かつ再現可能に製造することができる方法を特定することを目的とする。
【発明の概要】
【0015】
エミッタ素子の製造に関して、この目的は、以下の方法ステップを含む方法によって達成される:
(a)不透明ガラス製のリフレクタ層で少なくとも部分的に被覆された表面を有する主要部品を提供するステップ、
(b)不透明ガラス製のリフレクタ層の表面領域を圧縮するステップ、
(c)圧縮された表面領域の少なくとも一部の上に鏡面反射性リフレクタ層を塗布するステップ。
【0016】
リフレクタ層で被覆された主要部品は、例えば、光エミッタ若しくは光エミッタの構成要素である、又は光エミッタに接続されている。あるいは、主要部品は、別個のリフレクタを形成して光エミッタと併せて使用される、又はそのようなリフレクタの構成要素である。
【0017】
光エミッタは、主伝搬方向に一次放射線を発する。一次放射線の主伝搬方向とは反対側に位置する主要部品の表面の少なくとも一部は、リフレクタとして設計され、この目的のために、不透明ガラス製のリフレクタ層で被覆される。このリフレクタ層は、以下では略して「不透明層」とも呼ばれる。不透明石英ガラスで作られた拡散反射リフレクタ層は、例えば「QRC」という名称で知られており、市販されている。不透明層は、優れた耐薬性及び耐熱性並びに機械的強度を特徴とする。特に注目すべきことは、特に不透明層が石英ガラス又はホウケイ酸ガラスからなる場合、不透明層の高い耐熱衝撃性である。
【0018】
本発明による方法では、不透明層の表面の少なくとも一部が、鏡面反射性である更なるリフレクタ層で被覆される。このリフレクタ層は、以下では略して「ミラー層」とも呼ばれる。鏡面反射は、例えば、金属層によって達成することができ、この金属層は、要求の厳しい用途では、貴金属含有層として、特に金層又は金含有層として実施することができる。したがって、本発明による方法に従って製造されたエミッタ素子は、不透明ガラス製の内側リフレクタ層と、金属製の外側の鏡面反射性リフレクタ層とを備えた多層リフレクタを有しており、この場合、2つのリフレクタ層は、不透明層の一部である圧縮されたガラス領域において互いに隣接している。
【0019】
典型的には、方法ステップ(a)で提供される不透明層は、最初に開孔表面を有する。不透明層の表面領域は、ミラー層がその上に塗布される前に予め圧縮される。圧縮は、機械的圧力又はシーラントの浸潤によって行われてもよいが、好ましくは、主要部品又は好ましくは圧縮される不透明層の表面領域のみを加熱することによって熱的に行われる。
【0020】
圧縮された表面領域は、好ましくは少数の開孔のみを有し、理想的には開孔を有しない。開孔表面は、それが吸収性であるという点で明らかであり、このことは、染料浸透試験を使用して、又は水銀ポロシメトリーによって検出することができる。開孔が存在しないことは、閉孔表面が吸収性でないことで示される。
【0021】
ミラー層の製造は、通常、金属含有エマルジョン(多くの場合、これは金属含有レジネートである)を塗布し、続いてこれを加熱によって焼成することによって行われる。圧縮された表面領域の目的は、ミラー層の製造において、層成分又はその製造のための出発物質の浸透を回避することである。この目的のためには、数マイクロメートルの範囲の小さい層厚で十分である。製造の結果として、500μmまでの圧縮された表面領域の層厚が可能である。しかしながら、300μm未満、特に好ましくは150μm未満の、より薄い層が好ましい。
【0022】
したがって、熱圧縮された表面領域は、シールされた「ガラス薄膜」を形成し、以下ではそのようにも称する。これを金属含有エマルジョンで被覆し、次いでエマルジョンを加熱により焼成すると、シールされた光沢のあるリフレクタ層、例えば金属光沢のある金層が得られる。
【0023】
このようにして製造された素子は、第1の多孔性の不透明ガラス製の内側リフレクタ層と、第2の、より低い多孔性を有するガラスで作られた遷移領域の形態のガラス薄膜と、外側の鏡面反射性リフレクタ層とから構成された多層リフレクタを有する。不透明ガラスから作製された内側リフレクタ層は、例えば不透明性が決定的に孔に基づく場合、拡散反射する。
【0024】
外側ミラー層は、一次放射線が内側不透明層を透過するのを妨げ、したがって、不透明層のみの場合よりも一次放射線に対して全体的により大きな反射率を生み出す。したがって、拡散反射するリフレクタ層のみを備えたエミッタ素子と比較して、多層リフレクタを備えたエミッタ素子は、主伝搬方向に放射される、より高い光学パワー密度をすでに示す。
【0025】
更に、不透明層が一次放射線の一部を吸収し、それによって不透明層を加熱することが示されている。一次放射線の吸収の結果として温度が上昇するにつれて、不透明層からの二次放射線の無指向性放射が増加し、そのピーク波長は、例えば、600℃を超える温度で2.5μmを超える波長範囲にある。この波長範囲では、ミラー層は高い反射能及び低い放射性を有し、したがって、それ自体が発する二次放射線は、より少ない。したがって、ミラー層は、二次放射線の放射を全体として一次放射線の主伝搬方向に向け、それによって放射損失及びエネルギー損失が更に低減される。
【0026】
全体として、不透明層の残留透過性がなくなり、その二次放射線が低減される。したがって、後方(一次放射線の主伝搬方向とは反対)に放射されるパワーは低減されるが、前方(一次放射線の主伝搬方向)に放射されるパワーは増大し、その結果、放射損失及びエネルギー損失が更に低減される。
【0027】
他方、ミラー層は不透明層の圧縮された表面領域に良好に付着することが示されている。説明に束縛されることを望むものではないが、この効果は、不透明層が、断熱材としてのその効果によりミラー層を熱から遮蔽するという事実、又は(焼結を介して)圧縮された表面領域の表面へのその接着が、溶融によって生成されたガラス表面上よりも良好であるという事実に基づくものであり得る。
【0028】
いずれにしても、多層リフレクタでは、不透明層及びミラー層の両方が、それぞれ他方のリフレクタ層の効果及び存在から利益を得ていると考えられ、このことは、放射効率及び耐用年数に関してエミッタ素子の改善された性能において示される。
【0029】
表面領域の圧縮が、少なくとも5秒の加熱時間で少なくとも1,100℃の加熱温度に加熱することによって行われる方法の変形例が、特に良好であることが示された。
【0030】
加熱は炉中で行うことができるが、好ましくは「火炎研磨」によって行われる。火炎研磨では、表面領域は、レーザー、プラズマ又はバーナー炎によって局所的に非常に高い温度に短時間加熱される。不透明な多孔質基材は、焼結又はグレージングを介して表面に近い領域においてより高密度のガラスに変換される。
【0031】
更に加熱すると、すでに圧縮された表面領域は、下にある、やはり不透明な体積領域が上昇した温度にさらされるのを防止する有効な断熱材として作用する。一方では、これは、圧縮されていないか、又はあまり圧縮されていない不透明なリフレクタ層の体積領域が、圧縮された表面領域の下に残るという結果を伴い、他方では、薄い圧縮された表面層のみが、特に激しい加熱なしに生成されるが、本発明にとっては十分である結果を伴う。
【0032】
「加熱温度」及び「加熱時間」の2つのパラメータは、互いに依存する。一方のパラメータが小さい場合でも、他方のパラメータが大きければ所望の加熱結果を達成することができる。所望の加熱結果は、圧縮された表面領域である。圧縮された表面領域は、理想的には、もはや開孔を有しておらず、圧縮された表面領域は完全にシールされていて吸収性ではなく、これは染料浸透試験又は水銀ポロシメトリーによって実証することができる。
【0033】
ミラー層は、通常、金属から製造される。腐食性環境及び高温における素子の要求の厳しい用途のために、鏡面反射性リフレクタ層は、好ましくは金含有金属又は金から製造される。
【0034】
反射率に対する要求に応じて、ミラー層の厚さは、好ましくは50nm~300nmの範囲である。層が厚いほど、反射率は大きくなる。
【0035】
不透明ガラス製のリフレクタ層の厚さは、必要に応じて0.5mm~2mmの範囲であることが好ましい。
【0036】
エミッタ素子の長い耐用年数、リフレクタ層内の最適に平坦な温度勾配の形成、及びミラー層に対する断熱材としての不透明層の効果的な作用に焦点を当てた場合、比較的大きな厚さが設定される。ミラー層の最適に効果的な寄与による高い反射能に焦点が合わせられる場合、厚さは低い範囲に設定される。
【0037】
それによって、最初は不透明で拡散反射するリフレクタ層が、圧縮後であっても一定の体積を維持することが通常望ましい。したがって、好ましくは、方法ステップ(b)により圧縮されると、不透明ガラス製のリフレクタ層の初期厚さの(圧縮の開始前の)50%未満、好ましくは20%未満である表面領域が形成される。
【0038】
本発明による方法は、エミッタ素子の反射能の工場調整に適しているだけではない。むしろ、すでに使用されているエミッタ素子をレトロフィットすることによって単純なやり方で実施することもできる。対応するレトロフィットのために、方法ステップ(a)による主要部品の提供には、不透明ガラス製のリフレクタ層を備えた使用中のエミッタ素子を取り外し、方法ステップ(b)及び(c)を使用して再加工する措置が含まれる。
【0039】
エミッタ素子に関して、上記で特定された技術的な目的は、本発明に従って、エミッタ素子が、表面が少なくとも部分的にリフレクタで被覆された主要部品を有し、このリフレクタが、少なくとも部分的に不透明なガラスから作製された内側リフレクタ層と、外側の鏡面反射性リフレクタ層とを備え、シールされたガラス薄膜が内側リフレクタ層と外側のリフレクタ層との間に配置されることによって達成される。
【0040】
リフレクタ層で被覆された主要部品は、例えば、光エミッタ若しくは光エミッタの構成要素である、又は光エミッタに接続されている。あるいは、主要部品は、別個のリフレクタを形成して光エミッタと併せて使用される、又はそのようなリフレクタの構成要素である。
【0041】
光エミッタは、主伝搬方向に一次放射線を発する。一次放射線の主伝搬方向とは反対側に位置する主要部品の表面の少なくとも一部は、リフレクタとして設計され、不透明ガラス製のリフレクタ層で被覆される(「不透明層」)。
【0042】
不透明層は、優れた耐薬性及び耐熱性並びに機械的強度を特徴とする。特に注目すべきことは、特に不透明層が石英ガラス又はホウケイ酸ガラスからなる場合、不透明層の高い耐熱衝撃性である。その上、不透明層の表面の少なくとも一部が、鏡面反射性である更なるリフレクタ層で被覆される(「ミラー層」)。
【0043】
したがって、本発明によるエミッタ素子は、不透明ガラス製の内側リフレクタ層と、好ましくは金属製の外側の鏡面反射性リフレクタ層とを備えた多層リフレクタを有しており、この場合、2つのリフレクタ層は、不透明層の一部である圧縮されたガラス領域(「ガラス薄膜」)において互いに隣接している。
【0044】
ガラス薄膜は、好ましくは緻密であり、少数の孔のみを有し、理想的には孔を有さない。ガラス薄膜の目的は、ミラー層の製造において、層成分又はその製造のための出発物質の浸透を回避することである。この目的のためには、数マイクロメートルの範囲の小さな層厚、例えば約10μmで十分である。
【0045】
本発明によるエミッタ素子は、第1の多孔性の不透明ガラス製の内側リフレクタ層と、第2の、より低い多孔性を有するガラス、特に好ましくは孔のないガラスで作られた遷移領域の形態のガラス薄膜と、外側の鏡面反射性リフレクタ層とから構成された多層リフレクタを有する。
【0046】
外側ミラー層は、一次放射線が内側不透明層を透過するのを妨げ、したがって、不透明層のみの場合よりも一次放射線に対して全体的により大きな反射率を生み出す。したがって、拡散反射するリフレクタ層のみを有するエミッタ素子と比較して、多層リフレクタを有するエミッタ素子は、主伝搬方向に放射される、より高い光学パワー密度を示す。
【0047】
不透明層は一次放射線の一部を吸収し、それによって加熱される。一次放射線の吸収の結果として温度が上昇するにつれて、不透明層からの二次放射線の無指向性放射が増加し、そのピーク波長は、例えば、600℃を超える温度で2.5μmを超える波長範囲にある。この波長範囲では、ミラー層は高い反射能及び低い放射性を有し、したがって、それ自体が発する二次放射線は、より少ない。したがって、ミラー層は、二次放射線の放射を全体として一次放射線の主伝搬方向に向け、それによって放射損失及びエネルギー損失が更に低減される。
【0048】
全体として、不透明層の残留透過性がなくなり、その二次放射線が低減される。後方(一次放射線の主伝搬方向とは反対)に放射されるパワーは低減されるが、前方(一次放射線の主伝搬方向)に放射されるパワーは増大し、その結果、放射損失及びエネルギー損失が更に低減される。
【0049】
ミラー層は、ガラス薄膜上で良好な接着能力を示す。この効果は、不透明層が、断熱材としてのその効果によりミラー層を熱から遮蔽するという事実、又は(焼結を介して)圧縮されたガラス薄膜の表面へのその接着が、溶融によって生成されたガラス表面上よりも良好であるという事実に基づくものであり得る。
【0050】
いずれにしても、多層リフレクタでは、不透明層及びミラー層の両方が、それぞれ他方のリフレクタ層の効果及び存在から利益を得ていると考えられ、このことは、放射効率及び耐用年数に関してエミッタ素子の改善された性能において示される。
【0051】
ミラー層は、通常、金属からなる。腐食性環境及び高温におけるエミッタ素子の要求の厳しい用途のために、鏡面反射性リフレクタ層は、好ましくは金含有金属又は金からなる。
【0052】
反射率に対する要求に応じて、ミラー層の厚さは、好ましくは50nm~300nmの範囲である。層が厚いほど、反射率は大きくなる。
【0053】
不透明ガラス製のリフレクタ層の厚さは、必要に応じて0.5mm~2mmの範囲であることが好ましい。
【0054】
エミッタ素子の長い耐用年数、リフレクタ層内の最適に平坦な温度勾配の形成、及びミラー層に対する断熱材としての不透明層の有効な効果に焦点を当てた場合、比較的大きな厚さが好ましい。低い範囲の厚さを考える場合、ミラー層の最適に効果的な寄与による高い反射能に更に焦点が合わせられる。
【0055】
エミッタ素子の特に好ましい実施形態では、主要部品は、放射エミッタを受け入れるための包絡体として設計され、リフレクタは、包絡体の、放射エミッタとは反対の外側に配置される、又は主要部品は、タイル状の放射エミッタとして設計され、リフレクタは、タイルの平面側に配置される。
【0056】
最初に引用される実施形態では、放射エミッタを受け入れるための包絡体は、ピストンの形状を有するか、又は管状であり、任意の断面、特に円形又は楕円形の断面を有する。複数の管状の包絡体は、それらの長手方向軸が互いに平行になるように整列されて、例えば、フラットエミッタを形成してもよい。この場合、リフレクタは、包絡体の、放射エミッタとは反対の外側に配置されている。
【0057】
これにより、包絡体は、加熱スパイラル、カーボンバンド、又は放射発光ガスチャージなどの放射エミッタを取り囲み、同時に、包絡体の一部に、リフレクタとして作用する不透明ガラス製の層が設けられる。
【0058】
第2の引用される実施形態では、主要部品は、タイル状の放射エミッタとして設計され、不透明ガラス製のリフレクタは、一次放射線の主伝搬方向の反対側に位置するタイル平面側の一方に配置される。
【0059】
エミッタ素子は、好ましくは、ランプ及びリフレクタの製造において使用され、管、ピストン、チャンバ、ハーフシェル、球形又は楕円形のセグメント、プレート、熱シールドなどの形態で存在する。
【0060】
定義
エミッタ素子
エミッタ素子は、表面が、不透明ガラス製のリフレクタ層で少なくとも部分的に被覆された主要部品を備える。主要部品は、例えば、光エミッタ又はリフレクタ構成要素である。
【0061】
不透明ガラス製のリフレクタ層
リフレクタ層は、主要部品を完全に又は部分的に覆う。リフレクタ層は、少なくとも部分的に、不透明石英ガラスからなることが好ましい。リフレクタ層は、位相境界において、拡散性の、無指向反射を生じることがある。主要部品の湾曲した又は凸状の幾何学形状によって、方向付けられた部分が拡散反射に加えられ得る。
【0062】
例示的な実施形態
本発明は、例示的な実施形態及び図面を使用して以下により詳細に説明される。詳細に示される図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】上側がリフレクタ層で部分的に覆われた被覆管を備えた赤外線エミッタの形態を取る本発明によるエミッタ素子の、一実施形態の概略断面図である。
図2】QRCリフレクタ層を備え、続いて本発明による方法を使用して(赤外線エミッタが作動状態とされた後に)金リフレクタで被覆された、短波長ツイン管赤外線エミッタの写真である。
図3】鏡面反射性リフレクタ層を有する場合と有しない場合とを比較した、赤外線エミッタの放射の半径方向測定の結果の図である。
【0064】
図1は、石英ガラス製の水平ランプ管1の断面を概略的に示しており、その外側横表面2は、側面のほぼ半分がリフレクタ3で被覆されている。リフレクタ3は、内側の拡散反射するリフレクタ層(不透明層4)と、不透明層4の熱圧縮された表面領域の形態の中間層(ガラス薄膜5)と、外側の鏡面反射性リフレクタ層(鏡面層6)とから構成される。図は縮尺通りではなく、特に、ガラス薄膜5及びミラー層6の厚さは、認識性を向上させるために非常に厚く示されている。
【0065】
リフレクタ3を製造するための好ましい手順を、以下により詳細に説明する。
【0066】
被覆管1の外側シェル表面2での不透明層4の製造は、独国特許出願公開第102004051846(A1)号に記載の既知のスリップ法に従って行われる。流動性の水性SiOスリップを、スリップ層として被覆管1の上側に塗布し、スリップ層を、その後、乾燥させてグレージングし、不透明層4を形成する。このようにして得られた不透明層4は、多孔質の不透明石英ガラスからなる。このガラスは、2mmの平均層厚さ及び約2.15g/cmの密度を有する。このガラスの表面は、染料浸透試験によって示されるように、開孔性である。
【0067】
比較例
第1の実験では、開孔表面に金含有エマルジョン(金レジネート)を含浸させた。これにより、エマルジョンが表面の開孔に浸透し、続いて加熱により焼成した。焼成すると、金レジネートは金属金及び樹脂酸に分解し、これらは、ペーストの他の成分と共に、高い焼成温度によって揮発する。しかしながら、予想に反して、シールされた反射性金属層、例えば貴金属層は得られず、むしろ、塊は焼成時に黒く変色した。
【実施例
【0068】
更なる実験において、不透明層4の表面を、ミラー層6を塗布する前に、予め熱圧縮した。熱圧縮は、不透明層4を酸水素バーナーで加熱することによって行う。それにより、約1800℃の非常に高い温度が局所的に生み出され、数秒以内で最適に薄い圧縮領域(ガラス薄膜5)の生成を可能にする。ガラス薄膜5は、不透明層4の表面をシールする機能のみを有し、可能な限り薄く保たれ、この機能を果たすのに必要なだけ厚く保たれる。厚さは約200μmであるが、最大で500μmである。次いで、その表面は、染料浸透試験が示すように、緻密であり、開孔を有していない。続いて、機械的応力を低減するために、被覆管1を炉内で焼き戻す。焼き戻しプログラムは、少なくとも3時間にわたる約1050℃の温度への加熱を含む。
【0069】
続いて、ミラー層6を、印刷、噴霧、浸漬又は被覆技術による通常のやり方でガラス薄膜5上に塗布する。例示的な実施形態では、約5μmの厚さのペーストの層を、ブラシを用いてガラス薄膜5上に塗布し、この層は、接着促進のためのガラス形成剤のレジネートの低添加物(約1%)を有する濃い油中の金レジネートの溶液からなる。堆積されたレジネート層を有する被覆管1を、炉内で約800℃の温度とする。この熱処理では、金レジネートは金属金及び樹脂酸に分解し、これらは、ペーストの他の成分と共に、高い焼成温度によって揮発する。約0.1μmの薄い金属ミラー層6がガラス薄膜上に残る。このようにして製造されたミラー層6(金層)は、欠陥を示さず、熱圧縮されたガラス層5への良好な接着性を示す。
【0070】
ミラー層26を備えたすでに使用されているエミッタの後続の金めっきを、図2を用いて説明する。この写真は、「ツイン管エミッタ」21として知られている形態の、作動状態とされている短波長赤外線エミッタを示しており、その上側には、開孔表面を有する不透明層の形態であるリフレクタが設けられている。ミラー層26を作製するために、ツイン管エミッタを取り外し、続いて不透明層の表面を上述のように熱圧縮し、最後に金層を設けた。金層は欠陥を示さず、熱圧縮された不透明層に対して良好な接着性を示す。
【0071】
追加のミラー層の効果を決定するために、放出された光学パワー密度(放射照度)を、ミラー層あり及びなしの場合での赤外線エミッタで測定した。半径方向の測定は、5度の増分で360度回転する回転可能なマウントに取り付けられた赤外線エミッタを使用して通常の方法で行う。それにより、20cmの距離に取り付けられたサーモパイルセンサが、赤外線エミッタによって発せられた放射線を検出する。図3の図では、円半径上の正規化された放射照度(相対単位)が、測定点の円周方向角度位置(度単位)に対してプロットされている。菱形の印で示される測定曲線Aは、拡散反射するリフレクタ層を備えた市販の短波長赤外線エミッタ(「QRCエミッタ」)の場合の半径方向測定の結果を示しており、矩形の印で示される測定曲線Bは、本発明による方法を使用した金層によるQRCエミッタのレトロフィット被覆の場合の半径方向測定の結果を示している。
【0072】
後方のエミッタチャンバ30では、測定曲線Aは、ある割合の照射強度を示す。これは、透過された一次放射線と二次放射線とから構成され、二次放射線は、不透明層の加熱及びQRCエミッタの二次放射線に起因するものであり、したがって、二次放射線は拡散放射される。測定曲線Bでは、この部分は存在しないか、又は少なくとも、測定曲線Aよりも著しく小さい。
【0073】
対照的に、実際の照射野31では、測定曲線Bは、測定曲線Aよりも高い放射照度を示す。これは、後方に放射された二次放射線が金リフレクタによって低減され、代わりに前方に向けられ、それに応じて前方に放射されるパワーが増加するという事実に起因する。
【0074】
追加の金リフレクタを介して、赤外線エミッタの有効反射能は82%(測定曲線A)から91%(測定曲線B)に増加し、加熱プロセスに使用することができるパワーは約11%増加する。これらの値は、後方空間30又は照射野31内の測定曲線A又はBによって囲まれた面積の積分によって得られる。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-04-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リフレクタ(3;4;5;6)を備えたエミッタ素子の製造方法であって、方法ステップ:
(a)不透明ガラス製のリフレクタ層(4)で少なくとも部分的に被覆された表面(2)を有する主要部品(1;21)を提供するステップと、
(b)不透明ガラス製の前記リフレクタ層(4)の表面領域(5)を圧縮するステップと、
(c)前記圧縮された表面領域(5)の少なくとも一部の上に鏡面反射性リフレクタ層(6)を塗布するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記表面領域(5)の前記圧縮が、少なくとも5秒の加熱時間で少なくとも1,100℃の加熱温度に加熱することによって行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記鏡面反射性リフレクタ層(6)が、金属から製造されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記鏡面反射性リフレクタ層(6)が、金含有金属又は金から製造され、50nm~300nmの範囲の層厚を有することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記リフレクタ層(4)が、0.5mm~2mmの範囲の厚さを有する不透明ガラスから作製されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
方法ステップ(b)により圧縮されると、不透明ガラス製の前記リフレクタ層(4)の前記厚さの50%未満を有する表面領域(5)が形成されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
方法ステップ(a)による前記主要部品の前記提供が、不透明ガラス製のリフレクタ層を備えた使用中のエミッタ素子(21)を取り外し、方法ステップ(b)及び(c)を使用して再加工する措置を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
表面(2)が少なくとも部分的にリフレクタ(3)で被覆された主要部品(1;21)を有するエミッタ素子であって、前記リフレクタ(3)が、少なくとも部分的に不透明なガラスから作製された内側リフレクタ層(4)と、外側の鏡面反射性リフレクタ層(5)とを備え、シールされたガラス薄膜(6)が前記内側リフレクタ層(4)と前記外側のリフレクタ層(5)との間に配置される、エミッタ素子。
【請求項9】
前記ガラス薄膜(6)が、300μm未満、好ましくは150μm未満の厚さを有することを特徴とする、請求項8に記載のエミッタ素子。
【請求項10】
前記鏡面反射性リフレクタ層(5)が、金属、好ましくは金含有金属又は金からなること、及び50nm~300nmの範囲の層厚を有することを特徴とする、請求項8又は9に記載のエミッタ素子。
【請求項11】
不透明ガラス製の前記リフレクタ層(4)が、0.5mm~2mmの範囲の厚さを有することを特徴とする、請求項8又は9に記載のエミッタ素子。
【請求項12】
前記主要部品(1;21)が、放射エミッタを受け入れるための包絡体として設計され、前記リフレクタ(3)が、前記包絡体の、前記放射エミッタとは反対の外側に配置されること、又は前記主要部品が、タイル状の放射エミッタとして設計され、前記リフレクタが、前記タイルの平面側に配置されることを特徴とする、請求項8又は9に記載のエミッタ素子。

【国際調査報告】