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特表2023-546017メチル又はエチルトリアルコキシシランを含むハードコート組成物、物品及び方法
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  • 特表-メチル又はエチルトリアルコキシシランを含むハードコート組成物、物品及び方法 図1
  • 特表-メチル又はエチルトリアルコキシシランを含むハードコート組成物、物品及び方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】メチル又はエチルトリアルコキシシランを含むハードコート組成物、物品及び方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/04 20060101AFI20231025BHJP
   C03C 17/34 20060101ALI20231025BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20231025BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20231025BHJP
   B43L 1/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 8/893 20060101ALI20231025BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
C09D183/04
C03C17/34 A
C09D7/61
C09D7/62
B43L1/00 A
A61K8/02
A61K8/893
A61Q19/00
A61K8/19
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521447
(86)(22)【出願日】2021-09-23
(85)【翻訳文提出日】2023-04-07
(86)【国際出願番号】 IB2021058699
(87)【国際公開番号】W WO2022074495
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】63/089,038
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ナイヨン
(72)【発明者】
【氏名】ティアン,シュエ
(72)【発明者】
【氏名】マ,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】デュシャルム,ジョーダン シー.
(72)【発明者】
【氏名】ダムテ,ゲザーエン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シー
【テーマコード(参考)】
4C083
4G059
4J038
【Fターム(参考)】
4C083AB371
4C083AB372
4C083AD161
4C083AD162
4C083BB51
4C083CC07
4C083DD12
4C083EE12
4C083FF01
4G059AA01
4G059AA08
4G059AC30
4G059FA05
4G059FA28
4G059FB05
4G059FB06
4G059GA01
4G059GA04
4G059GA11
4J038DL021
4J038DL031
4J038HA446
4J038KA08
4J038KA15
4J038KA20
4J038MA14
4J038NA06
4J038NA11
4J038PB01
4J038PB02
(57)【要約】
基材と、基材上に配置されたハードコート層と、を含む、物品が記載される。ハードコート層は、i)式RSi(OR)(式中、R及びRは、メチル又はエチルである)を有する第一の疎水性シランモノマー、ii)式(R4-mSi(OR)又はSi(OR)(式中、R、R及びRは有機基であり、但し、Rはメチルでもエチルでもなく、mは1~3の範囲である)を有する任意の第2のシランモノマー、を含む組成物の加水分解及び縮合反応生成物を含む。ハードコート層は、10重量%~30重量%のシリカナノ粒子を更に含んでもよい。親水性シランを含む表面層を、ハードコート層上に配置してもよい。書き換え可能な表面を有する物品を使用する方法、ハードコートコーティング組成物、並びにハードコート組成物及び物品を製造する方法も記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品であって、
A)基材と、
B)前記基材上に配置されたハードコート層であって、
i)式RSi(OR)(式中、R及びRは、メチル又はエチルである)を有する第1の疎水性シランモノマー;
ii)式(R4-mSi(OR)又はSi(OR)(式中、R、R及びRは有機基であり、但し、Rはメチルでもエチルでもなく、mは1~3の範囲である)を有する任意の第2のシランモノマーであって、
存在する場合、第1及び第2のシランモノマーの合計に基づいて20重量%未満の量で存在する、第2のシランモノマー;
iii)任意に、10重量%~30重量%のシリカナノ粒子;
を含む組成物の加水分解及び縮合反応生成物を含む、ハードコート層と、
C)前記ハードコート層上に配置された、親水性シランを含む表面層と、
を含む、物品。
【請求項2】
前記親水性シランが双性イオン性シランを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記表面層が、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、又はこれらの組み合わせを更に含む、請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記ハードコート層が、25、15、又は10nm未満の平均一次粒子径を有するシリカナノ粒子を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の物品。
【請求項5】
前記第1のシランモノマーが、第1及び第2のシランモノマーの合計に基づいて少なくとも85重量%、90重量%、又は95重量%の量で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
前記ハードコート層が親水性シラン表面処理を有するシリカナノ粒子を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の物品。
【請求項7】
前記親水性シラン表面処理がエポキシアルコキシシランである、請求項6に記載の物品。
【請求項8】
前記基材が有機ポリマー材料を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の物品。
【請求項9】
前記表面層が書き換え可能な表面である、請求項1~8のいずれか一項に記載の物品。
【請求項10】
前記物品が、乾式消去ボード若しくはフィルム、ラベル、ファイルフォルダ、ファイルタブ、又は、ノートカバー若しくはディバイダーである、請求項9に記載の物品。
【請求項11】
前記表面層が防曇表面層である、請求項1に記載の物品。
【請求項12】
前記物品がフェイスマスクである、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
物品であって、
A)基材と、
B)前記基材上に配置されたハードコート層であって、
i)式RSi(OR)(式中、R及びRは、メチル又はエチルである)を有する第1の疎水性シランモノマー;
ii)式(R4-mSi(OR)又はSi(OR)(式中、R、R及びRは有機基であり、但し、Rはメチルでもエチルでもなく、mは1~3の範囲である)を有する任意の第2のシランモノマーであって、
存在する場合、第1及び第2のシランモノマーの合計に基づいて20重量%未満の量で存在する、第2のシランモノマー;
iii)10重量%~30重量%の、100nm未満の平均一次粒子径を有するシリカ粒子;
を含む組成物の加水分解及び縮合反応生成物を含む、ハードコート層と、
を含む、物品。
【請求項14】
前記物品が請求項4~12のいずれか一項によって更に特徴付けられる、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
書き換え可能な表面を有する物品を使用する方法であって、
請求項1~11、13及び14のいずれか一項に記載の物品を提供することと、
前記書き換え可能な表面層上にマーカーで書き込むことと、
前記書き込みを除去することと、
を含む、方法。
【請求項16】
前記マーカーが油性マーカーである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記書き込みを除去することが、前記書き換え可能な表面をドライイレーサー、乾燥布、又は乾燥ペーパータオルで拭くことを含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
ハードコートコーティング組成物であって、
i)式RSi(OR)(式中、R及びRは、メチル又はエチルである)を有する第1の疎水性シランモノマー;
ii)式(R4-mSi(OR)又はSi(OR)(式中、R、R及びRは有機基であり、但し、Rはメチルでもエチルでもなく、mは1~3の範囲である)を有する任意の第2のシランモノマーであって、
存在する場合、第1及び第2のシランモノマーの合計に基づいて20重量%未満の量で存在する、第2のシランモノマー;
iii)10重量%~30重量%のシリカナノ粒子;
を含む組成物を含む、ハードコートコーティング組成物。
【請求項19】
請求項4~7のいずれか一項によって更に特徴付けられる、請求項18に記載のハードコートコーティング組成物。
【請求項20】
ハードコートコーティング組成物を製造する方法であって、
i)水溶液中で第1の疎水性シランモノマーと任意の第2のシランモノマーとを組み合わせることであって;
第1の疎水性シランモノマーが、式RSi(OR)(式中、R及びRは、メチル又はエチルである)を有し;
第2のシランモノマーが、式(R4-mSi(OR)又はSi(OR)(式中、R、R及びRは有機基であり、但し、Rはメチルでもエチルでもなく、mは1~3の範囲である)を有し;
存在する場合、前記第2のシランモノマーが、第1及び第2のシランモノマーの合計に基づいて20重量%未満の量で存在する;
組み合わせることと、
ii)10重量%~30重量%のシリカナノ粒子を前記水溶液に添加することと、
iii)酸を前記水溶液に添加することと、
iv)第1の疎水性シランモノマー及び任意の第2のシランモノマーを加水分解及び縮合し、それによってポリシロキサン連続ネットワークを形成することと、
を含む、方法。
【請求項21】
ステップiii)及びiv)がステップii)の前に行われる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記シランモノマー及び前記シリカナノ粒子が請求項1~19のいずれか一項によって更に特徴付けられる、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記表面層が艶消し表面層である、請求項1~14のいずれか一項に記載の物品。
【請求項24】
前記ハードコート層が艶消し粒子を更に含む、請求項13に記載の物品。
【請求項25】
前記ハードコート組成物が艶消し粒子を更に含む、請求項18~22のいずれか一項に記載のハードコート組成物又は方法。
【請求項26】
乾燥及び硬化した前記ハードコート層が60未満の光沢度を有する、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法、物品、又はハードコート組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
例えば乾式消去物品などの書き換え可能な表面を有する物品が記載されている。(例えば、国際公開第2011163175号を参照されたい)。しかし、耐久性能及び良好な消去性、特に油性マーカー(permanent marker)の水による消去性を示す、書き換え可能な書き込み表面が引き続き必要とされている。良好な安定性を有するハードコートコーティング組成物も引き続き必要とされている。
【0002】
いくつかの実施形態において、基材と、基材上に配置されたハードコート層と、を含む、(例えば、乾式消去ボード及び防曇フェイスシールド)物品が記載される。ハードコート層は、i)式RSi(OR)(式中、R及びRは、メチル又はエチルである)を有する第1の疎水性シランモノマー、ii)式(R4-mSi(OR)又はSi(OR)(式中、R、R及びRは有機基であり、但し、Rはメチルでもエチルでもなく、mは1~3の範囲である)を有する任意の第2のシランモノマー、を含む組成物の加水分解及び縮合反応生成物を含む。存在する場合、第2のシランモノマーは、第1及び第2のシランモノマーの合計に基づいて20重量%未満の量で存在する。ハードコート層は、好ましくは10重量%~30重量%のシリカナノ粒子を更に含む。いくつかの好ましい実施形態において、双性イオン性シランなどの親水性シランを含む表面層が、ハードコート層上に配置される。
【0003】
書き換え可能な表面を有する物品を使用する方法、ハードコートコーティング組成物、並びにハードコート組成物及び物品を製造する方法も記載される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】基材上に配置された加水分解及び縮合ハードコート層と、ハードコート層上に配置された親水性シランを含む表面層と、他の任意の層と、を含む、例示的な物品の概略断面図である。
図2】基材上に配置された加水分解及び縮合ハードコート層を含む、例示的な物品の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
一実施形態において、ハードコートコーティング組成物が記載される。ハードコートコーティング組成物は、式RSi(OR)(式中、R及びRは、メチル又はエチルである)を有する第1のシランモノマーを含む。したがって、第1の疎水性シランモノマーは、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、及びこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、第1の疎水性シランは、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、又はこれらの組み合わせである。疎水性又は親水性としてのアルコキシシランモノマーの分類は、典型的には、R基に基づいて行われる。Rがアルキルであるアルコキシシランモノマーは、疎水性と考えられる。
【0006】
いくつかの実施形態において、ハードコート組成物は、直前に記載したような第1のシランモノマーと、式(R4-mSi(OR)又はSi(OR)(式中、R及びRは有機基であり、但し、Rはメチルでもエチルでもなく、mは、1、2又は3であり、より典型的には、2又は3である)を有する第2のシランモノマーと、を含む。
【0007】
したがって、第2のシランモノマーは、第1のシランモノマーとは異なるシランモノマーである。いくつかの実施形態において、Rが少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12個の炭素原子を有する炭化水素基である場合などは、第2のシランモノマーも疎水性である。いくつかの実施形態において、Rは、炭素原子が30、28、26、24、22、又は20個以下である。Rは、直鎖であっても、分枝鎖であっても、環状であってもよい。典型的には、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニルの場合など、脂肪族である。脂肪族基は、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、又は硫黄)を任意に含んでもよい。あるいは、Rは芳香族基を含んでもよい。
【0008】
代表的な第2のモノマーとしては、例えば、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン及びジメチルジエトキシシランが挙げられる。
【0009】
いくつかの実施形態において、第2のモノマーは、(R4-mSi(OR)(式中、R及びmは前述のとおりであり、Rはエポキシシランなどのヒドロキシルと反応する基を含む)である。本明細書で使用するのに好適なエポキシシランとしては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン;(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン;(3-グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン;及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0010】
いくつかの実施形態において、第2のモノマーは、Si(OR)、テトラアルコキシシラン、例えばテトラエチルオルトシリケート(「TEOS」)、及びテトラアルコキシシランのオリゴマー形態である。
【0011】
第2のモノマーが存在する場合、第1のシランモノマーと第2のシランモノマーとの重量比は、少なくとも4:1である。典型的な実施形態において、第1のシランモノマーと第2のシランモノマーとの重量比は、少なくとも5:1、6:1、7:1、8:1、又は9:1である。換言すれば、第1のシランモノマーは、第1のシランモノマーと第2のシランモノマーとの合計の少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100重量%である。したがって、第2のシランモノマーは、第1のシランモノマーと第2のシランモノマーとの合計の20重量%以下である。いくつかの実施形態において、第2のシランモノマーの総量は、第1のシランモノマーと第2のシランモノマーとの合計の19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1重量%以下である。
【0012】
ハードコート組成物は、任意に、しかし好ましくは、シリカナノ粒子を更に含む。シリカナノ粒子の含有により、シリカナノ粒子を含まない同じハードコートと比較して、耐久性を改善し、鉛筆硬度を高めることができる。ナノ粒子は、1ミクロン未満の平均一次粒子径を有する。典型的な実施形態において、シリカナノ粒子は、750、500、250、200、150、又は100nm以下の平均一次粒径を有する。好ましい実施形態において、シリカナノ粒子は、75、50、25、20、15、又は10nm以下の平均一次粒径を有する。「一次粒子径」という用語は、シリカの未凝集単一粒子の平均サイズを指す。平均粒子径は、透過型電子顕微鏡を使用して測定されてもよい。シリカ粒子は、球状であっても非球状であってもよく、典型的には凝集体ではなく離散粒子である。
【0013】
シリカ粒子は、典型的には、狭い粒子径分布、すなわち、2.0以下、好ましくは1.5以下の多分散性(すなわち、粒子径分布)を有する。所望であれば、より大きな粒子の存在がハードコート組成物のコーティング性を低下させることも、ハードコートコーティング組成物の安定性を低下させることもないという条件で、より大きなシリカ粒子が添加されてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態において、シリカナノ粒子は表面変性されていない。20、15、又は10ナノメートル未満の平均粒子径を有するより小さなナノ粒子は、表面変性されることなく、良好な安定性及び耐久性を有するハードコート組成物を調製するために利用することができる。より大きな、すなわち20nm以上のシリカナノ粒子は、好ましくは表面処理を有する。
【0015】
いくつかの実施形態において、シリカナノ粒子は、前述のような第1又は第2のシランモノマーで表面変性される。いくつかの実施形態において、表面処理は、Rがエポキシ基である第2のモノマーを含む。他の実施形態において、表面処理は、国際公開第2015/088808号に記載されているように、Rがアミン基である第2のモノマーを含み、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0016】
ハードコートコーティング組成物を製造する方法は、概して、
i)水溶液中で前述の第1の疎水性シランモノマーと任意の第2のシランモノマーとを組み合わせることと、ii)10重量%~30重量%のシリカナノ粒子を水溶液に添加することと、iii)好ましくは10重量%~30重量%のシリカナノ粒子を水溶液に添加することと、第1の疎水性シランモノマー及び任意の第2のシランモノマーを加水分解及び縮合し、それによってポリシロキサン連続ネットワークを形成することと、を含む。いくつかの実施形態において、ステップiii)及びiv)はステップii)の前に行われる。
【0017】
水溶液は、水、及び好ましくは高沸点有機溶媒、例えば1-メトキシ-2-プロパノールを含む。溶媒の沸点は、典型的には少なくとも80、90、100、110、又は120℃である。このような溶媒が存在しない場合、硬化したコーティング表面は、不均一であり、典型的には厚さが不均等であり、他のコーティング欠陥を示す。
【0018】
いくつかの実施形態において、液相が主に有機溶媒である非水性シリカゾル(シリカオルガノゾルとも呼ばれる)を、ハードコート組成物を製造する方法において使用してもよい。しかし、典型的な実施形態において、本方法で利用されるシリカナノ粒子は、任意に有機溶媒混合物を含む水性液相中のサブミクロンサイズのシリカナノ粒子の分散液である。水性媒体中の無機シリカゾルは、当該技術分野において公知であり、市販されている。水又は水-アルコール溶液中のシリカゾルは、Nalco Water,Naperville,ILからNALCOという商品名で市販されている。有用なシリカゾルの1つは、8ナノメートルの平均粒子径、pH10.5、固形分含有量30重量%のシリカゾルである、NALCO(商標)1130である。本発明における使用に好適な他の市販のシリカナノ粒子としては、NALCO(商標)1115、NALCO(商標)2326、NALCO(商標)2327、及びNALCO(商標)2329が挙げられる。
【0019】
ハードコートコーティング組成物は、概して、6又は5未満のpHをもたらすのに十分な酸を含有する。いくつかの実施形態において、コーティング組成物のpHは、pHを5未満に低下させた後に、5~6のpHに調整することができることが見出された。これにより、pH感受性基材をコーティングすることが可能になる。ナトリウム安定化シリカナノ粒子は、典型的には、エタノールなどの有機溶媒で希釈する前に最初に酸性化される。酸性化の前に希釈すると、不十分な又は不均一なコーティングが得られることがある。アンモニウム安定化シリカナノ粒子は、概して、任意の順序で希釈及び酸性化することができる。
【0020】
ハードコートコーティング組成物は、典型的には、酢酸などの>4のpKaを有する(例えば、より弱い)酸を含有する。いくつかの実施形態において、ハードコートコーティング組成物は、典型的には、≦3.5、<2.5、又は1未満のpKa(HO)を有するより強い酸と組み合わせて、>4のpKaを有する(例えば、より弱い)酸を含有する。有用な酸としては、有機酸及び無機酸の両方が挙げられ、シュウ酸、クエン酸、HSO、HPO、CFCOH、HCl、HBr、HI、HBrO、HNO、HClO、HSO、CHSOH、CFSOH、CFCOH、及びCHSOOHによって例示することができる。有機酸と無機酸との混合物を利用することができる。いくつかの実施形態において、より強い酸(例えば、硝酸)とより弱い酸(例えば、酢酸)との重量比は、5:1、4:1、3:1、2:1、又は1:1未満である。
【0021】
酸性化シリカナノ粒子ハードコートコーティング組成物は、有機溶媒又は界面活性剤のいずれも用いずに、疎水性有機及び無機基材上に直接コーティングすることができる。ポリエチレンテレフタレート(「PET」)又はポリカーボネート(「PC」)などの疎水性表面上のこれらの無機ナノ粒子水性分散液の湿潤特性は、分散液のpH及び酸のpKaの関数である。ハードコートコーティング組成物は、典型的には、中性又は塩基性pHで、有機基材上で玉になる(すなわち、はじける)。
【0022】
加水分解及び縮合ハードコート組成物は、典型的には、連続ゲル化ポリシロキサンネットワーク中に分散されたシリカナノ粒子を含む。本明細書で使用するとき、「連続/連続的」という用語は、加水分解及び縮合ハードコート組成物が適用された領域において、不連続性も間隙も実質的になしに、基材の表面を覆うことを指す。
【0023】
水系から疎水性基材上にハードコート組成物を均一にコーティングするために、基材の表面エネルギーを高めること、及び/又はコーティング組成物の表面張力を減少させることが望ましい場合がある。表面エネルギーは、コロナ放電、化学線、又は火炎処理法を用いて、基材表面を酸化した後コーティングすることによって高めることができる。これらの方法によりまた、基材へのコーティングの接着も改善することができる。物品の表面エネルギーを高めることが可能な他の方法としては、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)の薄いコーティングなどの有機ポリマープライマーの使用が挙げられる。あるいは、コーティング組成物の表面張力は、低級アルコール(C~C)の添加によって減少させることができる。いくつかの実施形態において、界面活性剤などの湿潤剤をハードコート組成物に添加することが有益なことがある。
【0024】
本明細書で使用するとき、「界面活性剤」という用語は、コーティング溶液の表面張力を減少させることが可能な、同じ分子上に親水性(極性)及び疎水性(非極性)領域を含む分子を説明する。有用な界面活性剤としては、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,040,053号(Scholzら)及び同第10,316,212号(Jingら)に記載されているものなどのアニオン性界面活性剤、カチオンイオン性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤、並びにBYKから商品名BYK-333として市販されているものなどのシリコーン界面活性剤、及びDowから入手可能なシリコーンポリエーテルコポリマーであるDOWSIL(商標)Q2-5211が挙げられる。
【0025】
いくつかの実施形態において、界面活性剤は、水性ハードコートコーティング組成物の少なくとも0.5、1、1.5、又は2重量%の濃度でハードコートコーティング組成物中に含まれる。典型的な実施形態において、界面活性剤の量は、水性ハードコートコーティング組成物の5重量%以下である。
【0026】
他の有用な湿潤剤としては、ポリエトキシル化アルキルアルコール(例えば、ICI Americas,Inc.製のBRIJ(商標)30及びBRIJ(商標)35、並びにUnion Carbide Chemical and Plastics Co.製のTERGITOL(商標)TMN-6(商標)Specialty Surfactant、ポリエトキシル化アルキルフェノール(例えば、Union Carbide Chemical and Plastics Co.製のTRITON(商標)X-100、BASF Corp.製のICONOL(商標)NP-70)、及びポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー(例えば、全てBASF Corp.製のTETRONIC(商標)1502ブロックコポリマー界面活性剤、TETRONIC(商標)908ブロックコポリマー界面活性剤、及びPLURONIC(商標)F38ブロックコポリマー界面活性剤)が挙げられる。存在する場合、このような湿潤剤は、シリカナノ粒子の量に応じて、コーティング組成物の0.1重量%未満、好ましくはコーティング組成物の0.003重量%~0.05重量%の量で使用される。コーティングされた物品を水ですすぐか又は水に浸けて、過剰な界面活性剤又は湿潤剤を除去することが望ましい場合がある。
【0027】
単独の、又は親水性シランを含む表面層と組み合わせたハードコート層は、光沢又は艶消し表面を有してもよい。艶消し表面は、典型的には、光沢表面よりも低い透過率及び高いヘイズ値を有する。例えば、ヘイズは概して、ASTM D1003に従って測定すると、少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、又は10%である。光沢表面は、典型的には、ASTM D 2457-03に従って60°で測定すると、少なくとも90又は95の光沢度を有し、他方、艶消し表面は、85、80、70、65、60、55、50、45、又は40未満の光沢度を有する。いくつかの実施形態において、艶消し表面の光沢度は、少なくとも20又は30である。
【0028】
艶消し表面により、引っ掻き傷などの欠陥、及び汚れ、染み、指紋などの夾雑を隠すことができる。艶消し表面を有することの別の利益は、それらが視覚的により訴求力を有するようになることである。更に、艶消し表面の繊細な感触及び摩擦は、従来の紙に書き込む感覚を作り出す。
【0029】
単独の、又は表面層と組み合わせたハードコート層は、様々な既知の技術を用いて艶消しにすることができる。いくつかの実施形態において、表面は、ビーズブラストされたか又は他の方法で粗面化された好適なツールで表面をエンボス加工することによって、及び好適な粗面化マスター又は取り外し可能なライナーに対して組成物を硬化させることによって、粗面化又はテクスチャ加工されて、艶消し表面を提供することができる。
【0030】
他の実施形態において、ハードコート組成物は、シリカ、ガラスビーズ、又は有機ポリマービーズ、例えばポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、若しくはポリメチルメタクリレート(PMMA)などの好適なサイズの艶消し粒子を含んでもよい。いくつかの実施形態において、有機ポリマービーズは、約1g/cmの密度を有する。(例えば、=±0.1g/cm)。このような艶消し粒子は、典型的には、約1~10ミクロンの範囲の平均粒子径を有する。いくつかの実施形態において、艶消し粒子のサイズは、少なくとも2又は3ミクロン、かつ4又は5ミクロン以下である。更に、このような艶消し粒子の濃度は、少なくとも2重量%~約5重量%以上の範囲であってもよい。
【0031】
以下の実施例の表22を参照すると、有機ポリマービーズは、消去性に関して艶消し表面に好ましい粒子であり得る。乾燥及び硬化したハードコートの厚さよりも大きいポリマービーズを含有する艶消しサンプルでは、水で除去することが不可能な異なるレベルのゴースト発生が明らかになった。対照的に、3μmのビーズを有するサンプルは、完全かつ容易な除去をもたらした。ゴースト発生の量は、平均粒子径が小さくなるとともに減少し、ゴースト発生は、艶消し剤粒子径が乾燥及び硬化したハードコートの厚さと同様であるときに減った。走査型電子顕微鏡は、ハードコートの厚さよりも大きい粒子が空気中に露出され、ポリシロキサンハードコートによって完全には覆われていないことを示した。これにより、露出された部分と上部シラン層との間の結合が弱くなるか、又は全く結合せず、インクがポリマービーズと直接接触し、したがって除去が極めて困難になる。艶消し粒子が6ミクロンの平均粒子径を有し、乾燥及び硬化したハードコートが3ミクロンの平均厚さを有する場合、平均粒子径は、乾燥及び硬化したハードコートの平均厚さの2倍(すなわち2X)である。好ましい実施形態において、艶消し粒子の平均粒子径は、艶消し粒子の平均粒子径に対して2X、1.9X、1.8X、1.7X、1.6X、1.5X、1.4X、1.3X、1.2X、1.1X、又は1X未満(言い換えれば、ほぼ等しい)である。
【0032】
本明細書に記載され、実施例によって例示される水性ハードコートコーティング組成物は、室温(25C)で3ヶ月間、又は50℃で1ヶ月間、貯蔵安定性である。水性ハードコートコーティング組成物は、ゲル化することも、不透明化することも、他の方法で著しく劣化することもない。
【0033】
ハードコートコーティング組成物は、好ましくは、バー、ロール、カーテン、輪転グラビア、スプレー、又はディップコーティング技術などの従来の技術を使用して物品上にコーティングされる。均一なコーティング及びフィルムの湿潤を確保するために、前述のように、コーティング前に基材表面を酸化するか、又はプライマーを適用することによって表面エネルギーを高めることが望ましい場合がある。水性ハードコートコーティング組成物は、コーティングにおける目に見える干渉色の変動を回避するために、20nm未満、より好ましくは10nm未満変動する均一な平均厚さで適用される。
【0034】
加水分解及び縮合ハードコート組成物は、典型的には、少なくとも1、2、又は3ミクロンから最大10ミクロンまでの範囲の平均厚さを有する。より典型的には、加水分解及び縮合ハードコート組成物の厚さは、9、8、7、6、又は5マイクロメートル以下である。ハードコートの機械特性は、厚さが増すにつれて、改善することができる。しかし、ハードコートの可撓性は、厚さが増すにつれて減少することもある。ハードコートの厚さは、Gaertner Scientific Corp.のモデル番号L115C楕円偏光計などの楕円偏光計を使用して測定することができる。
【0035】
所望であれば、ハードコートコーティングを基材の両面にコーティングすることができる。あるいは(図示せず)、ハードコートコーティングは、図1に示されるように、基材の片側にコーティングすることができる。
【0036】
コーティングしてから、基材を、典型的には、再循環オーブン内で、90℃~150℃の温度で乾燥し、熱硬化する。不活性ガスを循環させてもよい。基材に応じて、温度を更に上昇させて、乾燥プロセスを加速してもよい。
【0037】
ハードコートコーティング組成物自体は、引っ掻き、摩耗及び溶媒などの原因による損傷から基材を保護する強靭な耐摩耗性層を提供する。加水分解及び縮合ハードコート組成物は単独で、書き換え可能な表面又は防曇表面を提供することができるが、好ましい実施形態において、親水性シランを含む表面層が、加水分解及び縮合ハードコート組成物上に配置される。有利なことに、油性マーカー書き込み及び乾式消去マーカーからのゴースト発生は、親水性シランを含む表面層から水でより容易に除去可能である。
【0038】
親水性シラン表面層は、単層の厚さで適用することができ、10ミクロン程度の厚さであることができる。親水性シラン表面層は、典型的には、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1ミクロン以下の厚さを有する。
【0039】
加水分解中に形成される-OH基の大部分は、ハードコートコーティング組成物の酸により架橋する。しかし、硬化したハードコート層は、表面層の親水性シランと共有結合してシロキサン(Si-O-Si)結合を形成することができるいくつかの-OH基を表面に含むことができる。
【0040】
いくつかの実施形態において、表面層の親水性シランは、非双性イオン性スルホネート-オルガノシラノール化合物を含む。例としては、米国特許第4,152,165号(Langagerら)及び同第4,338,377号(Beckら)に開示されているものなどの非双性イオン性スルホネート-オルガノシラノール化合物が挙げられる。
【0041】
いくつかの実施形態において、本発明の溶液及び組成物に使用される非双性イオン性スルホネート-オルガノシラノール化合物は、以下の式(I):
【化1】
[式中、
各Qは、独立して、ヒドロキシル、1~4個の炭素原子を含有するアルキル基、及び1~4個の炭素原子を含有するアルコキシ基から選択され、
Mは、水素、アルカリ金属、並びに150未満の平均分子量及び11を超えるpKaを有する強有機塩基の有機カチオンから選択され、
Xは、有機連結基であり、
Yは、水素、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウムなど)、200未満の平均分子量及び11未満のpKaを有するプロトン化弱塩基の有機カチオン(例えば、4-アミノピリジン、2-メトキシエチルアミン、ベンジルアミン、2,4-ジメチルイミダゾール、3-[2-エトキシ(2-エトキシエトキシ)]プロピルアミン)、アルカリ金属、並びに150未満の平均分子量及び11を超えるpKaを有する強有機塩基の有機カチオン(例えば、N(CHN(CHCH)から選択され、但し、Yが水素、アルカリ土類金属及び当該プロトン化弱塩基の有機カチオンから選択される場合、Mは水素であり、
rは、Yの価数に等しく、
nは、1又は2である]
を有する。
【0042】
好ましくは、式(I)の非双性イオン性化合物は、アルコキシシラン化合物(例えば、式中、Qは、1~4個の炭素原子を含有するアルコキシ基である)である。
【0043】
式(I)のこれらの化合物中の酸素の重量百分率は、少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%である。最も好ましくは、それは、45%~55%の範囲である。これらの化合物中のケイ素の重量百分率は、15%以下である。これらの百分率の各々は、水を含まない酸形態の化合物の重量に基づく。
【0044】
式(I)の有機連結基Xは、好ましくは、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルキル置換シクロアルキレン基、ヒドロキシ置換アルキレン基、ヒドロキシ置換モノオキサアルキレン基、モノオキサ骨格置換を有する二価炭化水素基、モノ-チア骨格置換を有する二価炭化水素基、モノオキサ-チア骨格置換を有する二価炭化水素基、ジオキソ-チア骨格置換を有する二価炭化水素基、アリーレン基、アリールアルキレン基、アルキルアリーレン基及び置換アルキルアリーレン基から選択される。最も好ましくは、Xは、アルキレン基、ヒドロキシ置換アルキレン基及びヒドロキシ置換モノオキサアルキレン基から選択される。
【0045】
式(I)の非双性イオン性化合物の好適な例は、米国特許第4,152,165号(Langagerら)及び同第4,338,377号(Beckら)に記載されており、例えば、以下のものが挙げられる:
(HO)Si-CHCHCH-O-CH-CH(OH)-CHSO
(HO)Si-CHCH(OH)-CHSO
(HO)Si-CHCHCHSO
(HO)Si-C-CHCHSO
(HO)Si-[CHCHSO
(HO)-Si(CH-CHCHSO
【化2】
、及び
(HO)Si-CHCHSO
【0046】
いくつかの実施形態において、表面層は双性イオン性シランを含む。双性イオン性スルホネート官能性化合物の例としては、米国特許第5,936,703号(Miyazakiら)並びに国際公開第2007/146680号及び同第2009/119690号に開示されているものが挙げられる。
【0047】
いくつかの実施形態において、双性イオン性スルホネート-オルガノシラノール化合物は、以下の式(II):
【化3】
[式中、
各Rは、独立して、水素、メチル基又はエチル基であり、
各Rは、独立して、メチル基又はエチル基であり、
各R及びRは、独立して、飽和又は不飽和の、直鎖、分枝鎖又は環状の有機基であり、これらは、任意にW基の原子と一緒に結合されて環を形成してもよく、
Wは、有機連結基であり、
p及びmは、1~3の整数であり、
qは、0又は1であり、
p+q=3である]
を有する。
【0048】
式(II)の有機連結基Wは、好ましくは、飽和又は不飽和の、直鎖、分枝鎖又は環状の有機基から選択される。連結基Wは、好ましくは、カルボニル基、ウレタン基、尿素基、酸素、窒素、及び硫黄などのヘテロ原子、並びにこれらの組み合わせを含み得るアルキレン基である。好適な連結基Wの例としては、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルキル置換シクロアルキレン基、ヒドロキシ置換アルキレン基、ヒドロキシ置換モノオキサアルキレン基、モノ-オキサ骨格置換を有する二価炭化水素基、モノ-チア骨格置換を有する二価炭化水素基、モノオキソ-チア骨格置換を有する二価炭化水素基、ジオキソ-チア骨格置換を有する二価炭化水素基、アリーレン基、アリールアルキレン基、アルキルアリーレン基及び置換アルキルアリーレン基が挙げられる。
【0049】
式(II)の双性イオン性化合物の好適な例は、米国特許第5,936,703号(Miyazakiら)並びに国際公開第2007/146680号及び同第2009/119690号に記載されており、以下の双性イオン性官能基(-W-N(R)(R)-(CH-SO )が挙げられる。
【化4】
【0050】
いくつかの実施形態において、双性イオン性シランは、以下の式(III):
【化5】
[式中、
各Rは、独立して、水素、メチル基又はエチル基であり、
各Rは、独立して、メチル基又はエチル基であり、
p及びmは、1~3の整数であり、
qは、0又は1であり、
p+q=3である]
を有するスルホネート-オルガノシラノールである。
【0051】
式(III)の双性イオン性化合物の好適な例は、米国特許第5,936,703号(Miyazakiら)に記載されており、例えば、
(CHO)Si-CHCHCH-N(CH-CHCHCH-SO 、及び
【化6】
が挙げられる。
【0052】
好適な双性イオン性化合物の他の例としては、以下:
【化7】
が挙げられる。
【0053】
シランに好適な他の親水性官能基としては、ホスホネート、カルボキシレート、グルコンアミド、糖、ポリビニルアルコール、及び第四級アンモニウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
水性親水性シランコーティング組成物は、典型的には、コーティング溶液の総重量に基づいて少なくとも0.1、0.5、又は1重量%の量で1種以上の親水性シラン化合物を含む。親水性シランコーティング組成物は、典型的には、コーティング組成物の総重量に基づいて、10、9、8、7、6、又は5重量%以下の量で親水性シラン化合物を含む。概して、単層コーティング厚さの場合、比較的希薄なコーティング組成物が使用される。いくつかの実施形態において、より高濃度のコーティング組成物を使用することができる。いくつかの実施形態において、続いて表面をすすいで、過剰な親水性シランを除去することができる。
【0055】
親水性シランコーティング組成物は、好ましくは、アルコール、水、又は含水アルコール溶液(すなわち、アルコール及び/又は水)を含む。典型的には、このようなアルコールは、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノールなどの低級アルコール(例えば、C~Cアルコール、より典型的にはC~Cアルコール)である。好ましくは、親水性官能性コーティング組成物は水溶液である。本明細書で使用するとき、「水溶液」という用語は、50重量%以上の水を含有する溶液を指す。このような溶液は、水を唯一の溶媒として使用してもよく、水と、アルコール及びアセトンなどの有機溶媒との組み合わせを使用してもよい。また、有機溶媒を親水性処理組成物中に含めて、親水性処理組成物の凍結解凍安定性を改善することもできる。典型的には、親水性シランコーティング組成物は、少なくとも90重量%の水溶液を含む希釈物である。
【0056】
親水性シランコーティング組成物は、酸性であっても、塩基性であっても、中性であってもよい。親水性シランコーティング組成物は、前述のような界面活性剤及び湿潤剤を任意に含んでもよい。
【0057】
いくつかの実施形態において、親水性シランコーティング組成物は、任意に、向上した耐久性を提供することができる、テトラアルコキシシラン(例えば、テトラエチルオルトシリケート(「TEOS」))、そのオリゴマー;及び/又はシリケート、例えば、アルキルポリシリケート(例えば、ポリ(ジエトキシシロキサン))、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、若しくはこれらの組み合わせを更に含む。
【0058】
存在する場合、このような成分は、典型的には、前述の親水性双性イオン性シラン又は非双性イオン性シランよりも少ない量で存在する。いくつかの実施形態において、親水性(例えば、双性イオン性シラン又は非双性イオン性シラン)とシリケートとの重量比は、少なくとも1:1、2:1、又は3:1である。
【0059】
親水性シランコーティングは、任意に、ヒドロキシル基を有する水溶性ポリマーを含んでもよい。酸の存在下で、これらのポリマー上のヒドロキシル基は縮合して水不溶性コーティングを形成することができる。ヒドロキシル基はまた、シリカナノ粒子ハードコート上のシラノール基と反応することができる。ヒドロキシ基を有する好適な親水性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、グアーガム、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。存在する場合、ヒドロキシル基を有するこのような水溶性ポリマーは、典型的には、前述のように、親水性双性イオン性シラン又は非双性イオン性シランよりも少ない量で存在する。
【0060】
親水性シランコーティング組成物は、典型的には、前述のように、少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100重量%固形分の親水性双性イオン性シラン又は非双性イオン性シランを含有する。
【0061】
親水性シランコーティング組成物は、バー、ロール、カーテン、輪転グラビア、スプレー、ワイプ又はディップコーティング技術などの従来の技術を使用して、硬化したハードコート層上にコーティングすることができる。好ましい方法としては、スプレー、バー及びロールコーティングが挙げられる。
【0062】
コーティングしてから、親水性官能性物品を、典型的には、再循環オーブン内で、30℃~200℃の温度で乾燥する。不活性ガスを循環させてもよい。基材の耐熱性に応じて、温度を更に上昇させて、乾燥プロセスを加速してもよい。乾燥により、親水性コーティングと、ハードコート層の表面上の-OH基との間の縮合反応を駆動する。
【0063】
図2を参照すると、本明細書に記載の物品は、基材15の表面上に配置された、前述のようなハードコート層13を含む。乾式消去表面のための基材としては、例えば、ガラス、磁器鋼、塗装鋼、塗装金属、塗装ハードボード、メラミン、コーティングフィルム、コート紙、及びコーティングファイバーボードシートを挙げることができる。典型的な実施形態において、基材は、有機ポリマー材料を含む。有機ポリマー基材は、ポリマーシート、フィルム、又は成形材料を含んでもよい。
【0064】
いくつかの好ましい実施形態において、図1を参照すると、本明細書に記載の物品は、基材15の表面上に配置された、前述のようなハードコート層13と、加水分解及び硬化したハードコート層の主表面16上に配置された表面層14と、を含む。
【0065】
親水性表面層と一緒になったハードコートは、基材の親水性を高める。本明細書で使用するとき、「親水性」という用語は、水溶液によって湿潤する表面を指し、層が水溶液を吸収するか否かは表現していない。水又は水溶液の液滴が50°未満の静水接触角を示す表面を、「親水性」と呼ぶ。疎水性基材は、水接触角が50°以上である。
【0066】
いくつかの実施形態において、書き換え可能な物品又は防曇物品の基材は、可視光に対して透明であっても半透明であってもよい。透明という用語は、可視スペクトル(約400~約700nmの波長)内の入射光の少なくとも約85%を透過することを意味する。
【0067】
本明細書で使用される基材は、所望のとおり、可撓性であっても非可撓性であってもよい。好適な基材の例示的な例としては、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、アリルジグリコールカーボネート、ポリメチルメタクリレートなどのポリアクリレート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ホモエポキシポリマー、ポリジアミンとのエポキシ付加ポリマー、ポリジチオール、ポリエチレンコポリマー、フッ素化表面、アセテート及びブチレートなどのセルロースエステル、ガラス、セラミック、磁器、コート紙、金属、有機及び無機複合表面などが挙げられ、これらのブレンド及びラミネートが挙げられる。
【0068】
他の実施形態において、基材は着色されていても不透明であってもよい。組成物は、ラベル用途に使用される可撓性フィルムなどの基材に容易に洗浄可能な表面を提供することが見出された。可撓性フィルムは、PETなどのポリエステル、又はPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)などのポリオレフィン、及びPVC(ポリ塩化ビニル)から製造することができる。基材は、基材樹脂のフィルムへの押出し、及び押出しフィルムの任意の一軸又は二軸配向などの従来のフィルム製造技術を使用して、フィルムに形成することができる。例えば化学処理、空気若しくは窒素コロナなどのコロナ処理、プラズマ、火炎、又は化学放射線を使用して、基材を処理し、基材とハードコートコーティングとの間の接着を改善することができる。また、所望であれば、任意の結合層(図示せず)を基材とハードコートコーティング組成物との間に適用して、中間層接着を高めることもできる。また、上述の処理を使用して、基材22の他方の主表面を処理して、基材と、剥離ライナー20によって一時的に覆われた(例えば、感圧)接着剤層18との間の接着を改善することもできる。図2の基材15の主表面22もまた、このような接着剤層及び剥離ライナー層を含んでもよい。基材に、当該技術分野において既知の単語又は記号などの図形を設けることができる。
【0069】
更に他の実施形態において、基材は、金属であってもよく、アルミニウム又はステンレス鋼などの金属表面(例えば、蒸着金属)を有してもよい。
【0070】
いくつかの実施形態において、防曇表面を有する物品が記載される。例示的な物品としては、眼鏡、ゴーグル、フェイスマスク、フェイスシールド、及びレスピレーターを含む、医療用及び非医療用保護アイウェア、並びにミラー、モータービークル(vehicle)の窓、及びフロントガラスが挙げられる。
【0071】
いくつかの実施形態において、書き換え可能な表面を有する物品が記載される。例示的な物品としては、乾式消去ボード及びフィルム、ファイルフォルダ、ラベル、名札、ノートカバー及びディバイダー、ファイルを取り付けるためのタブなどが挙げられる。
【0072】
乾式消去物品は、フレームなどの他の任意の要素、筆記具、イレーサー(eraser)、布、メモ用紙などの材料及びツールを格納するための手段、携帯用のハンドル、保護カバー、垂直な表面に吊り下げるための手段、イーゼルなどを更に含んでもよい。
【0073】
いくつかの実施形態において、(例えば、ラベル乾式消去フィルム)物品は、基材の裏面上の(例えば、感圧)接着剤コーティング及び剥離ライナーを更に含んでもよい。
【0074】
別の実施形態において、書き換え可能な表面を有する物品を使用する方法であって、基材と、本明細書に記載の加水分解及び縮合ハードコートと、好ましくは親水性シランを含む表面層と、を含む物品を提供することと、書き換え可能な表面層上に(例えば、油性又は乾式消去)マーカーで書き込むことと、書き込みを除去することと、を含む、方法が記載される。いくつかの実施形態において、書き込みを除去することは、書き換え可能な表面をイレーサー、布、又はペーパータオルで拭くことを含む。本明細書において、「拭く」とは、典型的には手で、例えば、ティッシュ、ペーパータオル、又は布を用いて、大きな圧力なしで(例えば、概ね、800グラム以下)、1回以上のストローク又は摩擦(典型的には、数回のみが必要とされる)により、穏やかに拭くことを指す。いくつかの実施形態において、除去することは、有機溶媒を任意に含む水性洗浄溶液を書き換え可能な表面層に適用することを更に含む。水性洗浄溶液は、当該技術分野において既知のカチオン性、アニオン性又は/及び非イオン性界面活性剤を含んでもよい。
【0075】
乾式消去物品の書き換え可能な表面は、従来の乾式消去マーカー及び油性マーカーによる優れた書き込み性を示す。重要なことに、油性マーカー書き込み及びゴースト発生は、水で拭くことによって親水性シラン表面層から容易に除去することができる。
【0076】
本明細書に記載のハードコート層はまた、(例えば、LCD、LED、及びOLED)ディスプレイ表面並びにカメラ及びセンサのレンズなどの様々な電子部品用の、絶縁層(例えば、誘電体コーティング)並びに保護コーティング及びフィルムを含む、(例えば、フレキシブル)電子機器用のコーティングなどの他の物品にも好適である。
【実施例
【0077】
別段の記載がない限り、又は文脈から容易に明らかでない限り、実施例及び本明細書のその他の箇所における全ての部、百分率、比などは、重量によるものである。
【0078】
【表1】
【0079】
試験方法
耐水性、機械的耐久性、及び油性マーカー除去試験方法
耐水性試験は、サンプルを水中に3時間~48時間浸すことによって行った。試験中、水を連続的に除去及び補充して、耐水性を評価した。
【0080】
水中での水浸漬後、コーティング耐久性を、TABER INDUSTRIES 5900 Reciprocating Abrader(North Tonawanda,New York,USA)による15.0ニュートンでの5000サイクルの湿式往復摩耗試験によって評価した。摩耗サイクルの速度は75サイクル/分である。試験ストロークは5.1センチメートルの長さである。2.5センチメートルのボタンを、KIMBERLY-CLARK L30又はL40 WYPALL(Irving,Texas,USA)タオル及びTESTFABRICS Inc.(AATCC Crockmeter Standard Rubbing Cloth,West Pittson,Pennsylvania,USA)製の摩耗正方形布で覆い、摩耗試験中、正方形布(コーティング表面に接触)を脱イオン水で湿潤させた。耐久性スコアは以下のように報告される:0は最良であり、引っ掻き傷は全くなく;5は最悪であり、ひどく引っ掻き傷があり、コーティングが剥がれた。
【0081】
湿式摩耗試験(引っ掻きなし)後、摩耗した領域に、油性マーカー(Sharpie黒色,Oak Brook,Illinois,USA)でマークし、油性黒色Sharpieを表面上で60時間エージングした。油性マーク除去試験は、湿潤Kimwipeティッシュで穏やかに拭くことによって評価した。サンプルの試験領域が引っ掻き傷及び油性マークが完全に除去され、ゴースト発生がないことを示した場合に、試験サンプルを、良好であるとみなした。
【0082】
防曇試験方法
防曇試験は、フィルムサンプルを水中に1時間浸すことによって行った。新鮮な水を連続的に補充することによって、水を循環させた。水浸漬後、フィルムサンプルを周囲条件で一晩乾燥した。500mLビーカーの水を60℃で1分間加熱し、ビーカーの上に置いたガラスカバーの1インチの丸い穴に対してフィルムサンプルの親水性側を下に向けることによって発生させた水蒸気に、フィルムサンプルを別々に曝露した。良好な防曇サンプルは、1分後に透明なままであった。
【0083】
調製例
ナノシリカ-1130を含有するポリシロキサンハードコート溶液の全般的な調製手順
スクリューキャップ付きジャーに、1130の分散溶液(固形分30重量%、25g)を入れた。溶液を撹拌しながら、分散溶液に酢酸を添加した。MTESを撹拌溶液に添加し、室温で24~72時間激しく撹拌し続けた。次いで、1-メトキシ-2-プロパノールを溶液に添加した。表1に示すように、1130とMTESとの様々な比を利用した。溶液は、特定の基材上へのシリコーンハードコート溶液コーティング性を改善するために、2重量%のBYK-UV 3500界面活性剤を含有した。(0.02グラムのBYK-UV 3500を各10グラムの溶液に添加した)。
【0084】
【表2】
【0085】
ポリシロキサンハードコートの全般的な調製手順、2ステップ
1)メチルトリエトキシシランの予備加水分解[MTES/HO(1/6)]
キャップをねじ止めしたジャーに、表2に示すように、所望の量のMTES、5重量%酢酸溶液、及び1重量%硝酸を入れた。MTESと水とのモル比は1:6(MTES 50g当たり、30.288gの希酸)であり、溶液はMTES/HO(1/6)で示した。得られたMTES溶液を撹拌し、シランを周囲条件で表2に示した時間加水分解して、シラノール及びオリゴマーを形成した。
【0086】
【表3】
【0087】
2)20nmサイズの(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン変性2327の調製
(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン(GPTMS)(5グラム)を水性2327溶液分散液(250グラム、40%)に添加し、溶液をスクリューキャップ付きジャー内で、60℃で一晩撹拌した。反応後、GPTMS変性2327溶液を室温に冷却し、溶液を撹拌しながら、変性粒子溶液に1-メトキシ-2-プロパノール(1M2P)(150グラム)を添加した。GPTMS:2327:1M2Pの最終重量比は、5:250:150に等しかった。最終的なGPTMS変性2327(2327-エポキシで示される)は、水/1-メトキシ-2-プロパノール混合溶液中25重量%であった。
【0088】
20nmサイズのナノシリカ-2327(2327-A、2327-B、2327-C)を含有するポリシロキサンハードコート溶液の全般的な調製手順
2327分散溶液(固形分40重量%、24グラム)を含有するポリシロキサンハードコート溶液を調製するために、スクリューキャップ付きジャーに、予備加水分解したメチルトリエトキシシラン溶液及び(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン変性2327溶液を、以下の表3に示す重量比で入れた。溶液は、特定の基材上へのシリコーンハードコート溶液コーティング性を改善するために、2重量%のBYK-UV 3500界面活性剤を含有した。(0.02グラムのBYK-UV 3500を各10グラムの溶液に添加した)。
【0089】
【表4】
【0090】
双性イオン性シラン/LSS-35親水性トップコート水溶液の調製
スクリューキャップ付きジャーに、18.46グラムの双性イオン性シラン(45.5重量%)、16.36グラムのLSS-75(22重量%)及び365.18グラムの脱イオン水を入れた。双性イオン性シランとLSS-75との重量比は70:30の比であり、総重量百分率は3重量%であった。親水性トップコーティング溶液は、3%ZS/LSS(70/30)で示した。
【0091】
双性イオン性シラントップコート水溶液の調製
26.37グラムの双性イオン性シラン(45.5重量%)の水溶液に、373.63グラムの脱イオン水を添加して、シラン溶液を3%ZSで示される3重量%水溶液に希釈した。
【0092】
親水性シリコーンハードコートフィルムの調製、方法I
それぞれのポリシロキサンハードコート溶液を、Mitsubishiフィルム上に12番Mayer Rodによってコーティングし、得られたコーティングを140℃で5分間熱硬化した。乾燥したハードコートは、厚さが3~4ミクロンであった。硬化したシリコーンハードコートを、ETP BD-20AC LABORATORY CORONA TREATER(Electro-Technic Products,Chicago,IL,USA)によってコロナ処理した。続いて、上記で調製した3%ZS/LSS(70/30)を、コロナ処理したポリシロキサンハードコート上に3番Mayer Rodによってコーティングし、140℃で5分間乾燥した。乾燥した表面層の厚さは0.5~1ミクロンであった。
【0093】
親水性シリコーンハードコートフィルムの調製、方法II
それぞれのポリシロキサンハードコート溶液を、Mitsubishiフィルム上に12番Mayer Rodによってコーティングし、得られたコーティングを140℃で5分間熱硬化した。乾燥したハードコートは、厚さが3~4ミクロンであった。硬化したシリコーンハードコートを、ETP BD-20AC LABORATORY CORONA TREATERによってコロナ処理した。続いて、上記で調製した3%ZSを、コロナ処理したポリシロキサンハードコート上に3番Mayer Rodによってコーティングし、140℃で5分間乾燥した。乾燥した表面層の厚さは0.5~1ミクロンであった。
【0094】
親水性シリコーンハードコートフィルムの調製、方法III
フィルムコーティングロールは、康井精機の従来のローラーコータ(YSコータ)(Bloomington,IN,USA)によって、6インチ幅ダイを用いて調製した。コロナ処理機は、Pillar Technologies,Hartland,Wisconsin,USAから入手し、7インチ幅を有し、窒素パージした。コーティングパラメータを、表4に示す。
【0095】
ポリシロキサンハードコートを、YSコータを通してコーティング及び硬化し、親水性トップ層を、YSコータを通して、窒素コロナ処理したポリシロキサンハードコート上にコーティング及び硬化した。
【0096】
【表5】
【0097】
実施例/比較例
EX-1~3
表1に記載されているように、ポリシロキサン溶液1130-A、1130-B及び1130-Cを、Mitsubishi PETフィルム上に別々に12番Meyerバーでコーティングし、5分間熱硬化した。サンプルをコロナ処理し、続いて表5に示す双性イオン性シラン/LSS-35親水性溶液でトップコートし、140℃で5分間乾燥した。実施例のフィルムを、それらの機械的耐久性及びSharpie除去性能に基づいて、全て同じ試験スポット上で別々に評価した。
【0098】
【表6】
【0099】
実施例EX-4~6
実施例は、親水性トップコートが3重量%ZS水溶液であったことを除いて、実施例EX-1~3に記載されたものと同じであった。
【0100】
【表7】
【0101】
実施例EX-1~3のフィルムは、実施例EX-4~6と比較した場合、湿潤Kimwipeティッシュで穏やかに拭くことによるSharpieマークの容易な除去を示した。
【0102】
実施例EX-7~9
表3に記載されているように、ポリシロキサン溶液2327-A、2327-B及び2327-Cを、Mitsubishi PETフィルム上に別々に12番Meyerバーでコーティングし、5分間熱硬化した。サンプルをコロナ処理し、続いて表7に示す双性イオン性シラン/LSS-35親水性溶液でトップコート(方法I)し、140℃で5分間乾燥した。実施例のフィルムを、機械的耐久性及びSharpie除去性能について、上記の試験方法に基づいて別々に評価した。
【0103】
【表8】
【0104】
実施例EX-10~12
実施例は、親水性トップコートが3重量%ZS水溶液であったことを除いて、実施例EX-7~9に記載されたものと同じであった。
【0105】
【表9】
【0106】
実施例EX-1(D)~EX-3(D)及びEX-7(D)~EX-9(D)の防曇実験
EX-1~3及びEX-7~9のポリシロキサンハードコートを、BYK-UV 3500の代わりにDISPERBYK-185界面活性剤(溶液10グラム当たり0.01グラムの界面活性剤)を添加することによって調製し、EX-1(D)~EX-3(D)及びEX-7(D)~EX-9(D)と名付けた。実施例EX-1(D)~EX-3(D)及びEX-7(D)~EX-9(D)のフィルムを、防曇試験方法に記載の方法によって評価した。
【0107】
対照フィルムは、Mitsubishi PETフィルム(コーティング全くなし)であった。対照フィルムは、60℃の温水蒸気に対して置かれたときに直ちに曇り、実施例EX-1(D)~EX-3(D)及びEX-7(D)~EX-9(D)のフィルムは、光学的に透明に保たれ、曇りは形成されなかった。
【0108】
【表10】
【0109】
実施例EX-13~16
ポリシロキサンハードコート溶液1130-B及び2327-Bを、3フィート/分のライン速度でYSコータによって4ミルのMitsubishi PET上にコーティングし、上記の方法IIIによって140℃で硬化した。コーティングしたハードコートを、1.0キロワット(25.83J/cm)又は1.5キロワット(38.75J/cm)で窒素コロナ処理し、続いて、処理した側を3重量%ZW/LSS親水性溶液で、5フィート/分の速度でコーティングし、120℃で乾燥した。
【0110】
【表11】
【0111】
実施例EX-17~24
1130を含有するコーティング溶液を、1ステップ手順によって調製した。1130及びMTESを、酸性環境(酢酸)下で24~72時間撹拌した。粒子とシランとの重量比は、1:3、1:5、及び1:7とし、任意に5%GPTMS又は10%C16シランを含めた。ポリシロキサンハードコート溶液を、3フィート/分のライン速度でYSコータによって4ミルのMitsubishi PET上にコーティングし、上記の方法IIIによって140℃で硬化した。コーティングしたハードコートを、1.0キロワット(25.83J/cm)又は1.5キロワット(38.75J/cm)で窒素コロナ処理し、続いて、処理した側を3重量%ZW/LSS親水性溶液で、5フィート/分の速度でコーティングし、120℃で乾燥した。実施例のフィルムを、それらの機械的耐久性(5000サイクルではなく2000サイクル)及びSharpie除去性能に基づいて別々に評価した。
【0112】
5%GPTMSを含む1130:MTES(1:7)は、より粘性であり、2ヶ月後にゲル化し始め;1130:MTES(1:7)及び10%C16シランを含む1130:MTES(1:7)も同様に、2ヶ月後に粘性がより顕著になった。
【0113】
【表12】
【0114】
実施例EX-25~28
2327を含有するコーティング溶液を、2ステップ手順によって調製した。MTESを5時間(硝酸「NA」の添加ありで)又は3日間(NAなしで)加水分解し、次いで、1-メトキシ-2-プロパノール中でGPTMS変性2327と混合した。粒子とシランとの重量比は、1:3、1:5及び1:7とした。ポリシロキサンハードコート溶液を、3フィート/分のライン速度でYSコータによって4ミルのMitsubishi PET上にコーティングし、上記の方法IIIによって140℃で硬化した。コーティングしたハードコートを、1.0キロワット(25.83J/cm)又は1.5キロワット(38.75J/cm)で窒素コロナ処理し、続いて、処理した側を3重量%ZW/LSS親水性溶液で、5フィート/分の速度でコーティングし、120℃で乾燥した。実施例のフィルムを、それらの機械的耐久性(5000サイクルではなく2000サイクル)及びSharpie除去性能に基づいて別々に評価した。
【0115】
【表13】
【0116】
より小さい粒子は表面変性なしで機能するが、変性は、特により高い濃度での安定性に更に好ましい。
【0117】
実施例EX-29~38
実施例のこの組を上記と同様の方法によって調製したところ、先の実施例と同様の耐久性及びインク除去を示した。しかし、親水性シランが存在する場合、油性マーカーは水でより容易に除去することができる。実施例29~38のいくつかは、はじき(dewetting)を示した。粒子を表面処理することにより、はじきの問題を是正する。
【0118】
【表14】
【0119】
実施例EX-39~EX-42
NALCO 1130分散溶液(30重量%、100g)をガラスジャー内で秤量した。マグネチックスターラーを用いて溶液を激しく撹拌しながら、分散液に酢酸を添加して、pHを5~6に調整した。続いて、メチルトリメトキシシランを撹拌溶液に添加し、混合物を24~72時間加水分解した。反応が完了した後、1-メトキシ-2-プロパノールを反応した溶液に添加し、溶液を3剤に分割した。溶液の1剤をそのまま残し、他の2剤に1重量%及び2重量%の界面活性剤(BYK-UV-3500)を添加した。得られたシロキサンハードコート溶液をPET基材上にコーティングし、140℃で10~15分間乾燥した。硬化したハードコート表面に様々な乾式消去マーカー及び油性マーカーで円を描き、続いてペンマークを50℃で24時間エージングした後、マーク除去試験を行った。
【0120】
【表15】
【0121】
【表16】
【0122】
【表17】
【0123】
【表18】
【0124】
【表19】
【0125】
【表20】
【0126】
比較例サンプル調製
CE-1:磁気撹拌棒を備えた小さなガラス瓶にメチルトリメトキシシラン(4g)及びエタノール(16g)を入れ、溶液を撹拌した。溶液にDI水(0.4g)及び酢酸を添加して、溶液のpHを5~6にした。溶液を24時間撹拌して、加水分解を完了させた。得られた加水分解溶液をPET基材上にコーティングし、140℃で10分間乾燥した。硬化したコーティング表面は、不均等にコーティングされ、多くの欠陥があった。
【0127】
硬化したコーティング表面に、異なる乾式消去ペン及び油性マーカーペンでマークした。インクを室温で乾燥した後、マークをペーパータオルで除去した。
【0128】
CE-2:磁気撹拌棒を備えた小さなガラス瓶にメチルトリメトキシシラン(2.8g)、テトラエトキシシラン(TEOS)(1.2)及びエタノール(16g)を入れ、溶液を撹拌した。溶液にDI水(0.4g)及び酢酸を添加して、溶液のpHを5~6にした。溶液を24時間撹拌して、加水分解を完了させた。得られた加水分解溶液をPET基材上にコーティングし、140℃で10分間乾燥した。硬化したコーティング表面は、不均等にコーティングされ、多くの欠陥があった。硬化したコーティング表面に、異なる乾式消去ペン及び油性マーカーペンでマークした。インクを室温で乾燥した後、マークをペーパータオルで除去した。
【0129】
【表21】
【0130】
EX-51~EX-56
溶液調製:
1130-B溶液(1重量%のBYK-UV 3500を含む)に、ミクロンサイズのポリマー艶消し粒子を、2重量%~5重量%の総ハードコート固形分濃度で添加した。次いで、剪断ミキサーを用いて溶液を激しく撹拌して、ハードコート溶液中の艶消し剤の分散を助けた。
【0131】
表22に記載されるサンプルを、リバースグラビアコータを使用して4ミルのMitsubishi PETフィルム上にコーティングし、3.5~4μmの乾燥及び硬化したハードコート厚さを得て、コロナ処理し、続いて双性イオン性シラン/LSS-75(4/6、重量%/重量%)親水性溶液でトップコートした。全てのポリマー艶消し剤を5重量%のハードコート固形分で添加した。サンプルフィルムを、水によるShapieマーカー消去性について評価した。
【0132】
【表22】
【0133】
EX-57~EX-58:
1130-B溶液(1重量%のBYK-UV 3500を含む)に、異なる濃度の3μmのPMMAビーズを、ハードコート溶液の3重量%~5重量%の総固形分で添加した。次いで、剪断ミキサーを用いて溶液を激しく撹拌して、ハードコート溶液中の艶消し剤の分散を助けた。得られた溶液を、リバースグラビアコータを用いてコーティングし、コロナ処理し、最後に双性イオン性シラン/LSS-75親水性溶液でコーティングした。艶消しサンプルについて乾式消去性能を分析し、ここで、最も一般的に使用される、異なる銘柄及び色の乾式消去マーカーのうちの12個を選択して、サンプルを評価した。サンプルを30cm×50cmのサイズのシートに切り出し、各マーカーを使用して、約20cmの線を引き、12の異なるマーカー線を各サンプル上に垂直に並べた。次いで、周囲温度で少なくとも6ヶ月間のマーカーのエージングを再現するために、サンプルを120Fのオーブンに48時間入れた。最後に、Expoマーカーイレーサーを使用して、異なるマーカーの乾式消去性を試験した。各線を、2.4kgの重量下でExpoマーカーイレーサーを10回通過させて消去した。各マーカーが完全に除去されたときの通過回数を記録した。より高い合計スコア(最大は120である)は、より劣った性能と相関する。
【0134】
表23は、サンプルの乾式消去性能が光沢値の減少とともに減少することを示している。より高い濃度の艶消し剤は、サンプルの粗さを増大させ、それによって、より多くのインクが表面の谷に捕捉されるので、マーカーの乾式除去性を損なった。3重量%のMB30X-3艶消し剤を含有するサンプルは、53の光沢度を有する低グレア機能性を維持しながら、光沢製品(43/120のスコアを有する)に匹敵する乾式消去性能を実証した。光沢度を10減少させると、ドライイレーサーの除去性が大幅に減少し、合計スコアが90/120に増加した。典型的には、乾式消去性能は、少なくとも40であり、かつ、90、80又は70未満である。
【0135】
【表23】
【0136】
EX-59~EX-61
3重量%の3μmのポリスチレンビーズ(SSX-3)を、1重量%のBYK-UV3500を含有する1130-Bハードコート溶液に入れた。得られた溶液を、剪断ミキサーを用いて激しく撹拌し、リバースグラビアコータラインを用いて、3.5~4μmの厚さでコーティングした。次いで、4~12J/cmのエネルギー線量でUniversal Treaterラインを使用して、異なるレベルのコロナ処理を使用して、ハードコートを活性化した。最後に、シラントップコートを、コロナ処理したハードコート上に同じリバースグラビアコータを用いて直ちにコーティングした。サンプルの油性消去性を、マイクロファイバー布付属品を備えたTaber Abraser装置を用いて分析した。サンプルを脱イオン水に一晩浸漬した後、分析前に120Fで1時間エージングした。各サンプルについて、1.5kgの重量を有する湿潤マイクロファイバー布を使用して、6つの異なる油性マーカーインクを除去するために、最大6ラウンド(各ラウンドについて10サイクル、各サイクルは、Taber Abraserヘッドの1回の前後移動に対応する)の試験を行った。更に、2kgの重りを備えるTaber Abraserを使用して、黒色Expo乾式消去マーカーインクで覆われたサンプルを最大6ラウンド(各ラウンドについて400サイクル、各サイクルは、Taber Abraserヘッドの1回の前後移動に対応する)にわたって摩耗することによって、サンプルの耐久性を評価した。Kleenexティッシュペーパーを摩耗ヘッドに適用して、乾式摩耗媒体として機能させた。各ラウンド後、油性マーカー及び水を使用して、コーティングの機能性を評価した。より高いスコアは、消去性及び耐久性試験の両方についてより良好な性能を意味する。
【0137】
表24に示すように、全ての艶消しサンプルは、最大6×10サイクルの試験後に、ほぼ100%の油性マーカー除去で高い消去性スコアを実証した。更に、全ての艶消しサンプルは、2400サイクルの摩耗後であってもそれらの優れた機能性を維持し、このことは、艶消しハードコートがシラントップコートに対して強い支持を提供し、それが剥離するのを効果的に防止したことを実証している。
【0138】
【表24】
図1
図2
【国際調査報告】