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▶ アイジーエム レシンス イタリア ソチエタ レスポンサビリタ リミタータの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】光重合開始剤としてのケトキノロン
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/50 20060101AFI20231025BHJP
   C07D 215/20 20060101ALI20231025BHJP
   C07D 215/36 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
C08F2/50
C07D215/20
C07D215/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521455
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(85)【翻訳文提出日】2023-06-02
(86)【国際出願番号】 EP2021077697
(87)【国際公開番号】W WO2022074120
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】102020000023815
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516358093
【氏名又は名称】アイジーエム レシンス イタリア ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】110003292
【氏名又は名称】弁理士法人三栄国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マリカ モローネ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンチェンツォ ラッツァーノ
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエーレ ピエトロ ノルチーニ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ポストル
【テーマコード(参考)】
4J011
【Fターム(参考)】
4J011QA03
4J011QA12
4J011QA22
4J011QB19
4J011QB24
4J011SA62
4J011UA01
4J011WA05
(57)【要約】
本発明は、新規な種類の光重合開始剤、およびその光重合組成物における使用に関する。本発明はまた、その光重合開始剤を含む組成物の光重合方法に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のa)およびb)を含むことを特徴とする光硬化性組成物:
a) 前記組成物の全質量を基準として、50~99.9質量%、好ましくは70~98.9質量%の少なくとも一種のエチレン性不飽和化合物;
b) 前記組成物の全質量を基準として、0.1~35質量%、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは0.2~15質量%の少なくとも一種の下記式(I)で表される化合物:
【化1】
(I)
ここでR1は、置換もしくは非置換のC1~C20のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、
Quiは、下記式(A)で表されるキノロン基:
【化2】
(A)
[ここでR2、R3、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは非置換のC1~C20のアルキル、-N(C1~C6アルキル)2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-O-R8、-S-R8、-O-[CH2]n-COOR8、または-S-[CH2]n-COOR8(ここでnは1~8であり、R8は水素、置換もしくは非置換のC1~C20のアルキル、1個以上の酸素原子が介在しており、かつ末端に水酸基を有してもよいC1~C50のアルキル、C1~C20のアルキル、C2~C12のアルケニル、置換もしくは非置換のアリール、ヘテロアリール、またはC5~C6のシクロアルキルである)であり;R6は水素、水酸基、またはC1~C4のアルキル基であり;R7は水素またはC1~C10のアルキル基である];
あるいは下記式(B)~(D)のいずれかで表される置換もしくは非置換のベンゾキノロン基:
【化3】
(B)
【化4】
(C)
【化5】
(D)
(ここでR7は水素またはC1~C10のアルキル基であり、星印は前記式(I)で表されるケト基に結合した炭素原子を示す)である。
【請求項2】
請求項1に記載の光硬化性組成物において、前記式(I)中のR1は、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のフェニル基であることを特徴とする光硬化性組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光硬化性組成物において、前記式(I)中のQuiは、前記式(A)で表されるキノロン基であり、R2、R3、R4およびR5のうちの少なくとも1つは水素ではないことを特徴とする光硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の光硬化性組成物において、前記式(I)中のR6は、好ましくは水素であることを特徴とする光硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の光硬化性組成物において、前記式(I)中のR7は、好ましくはC1~C8のアルキルであることを特徴とする光硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の光硬化性組成物において、さらに以下のc)~f)の成分のうちの一種以上を含むことを特徴とする光硬化性組成物:
c) 前記組成物の全質量を基準として、0.01~15質量%の一種以上の光増感剤;および/または
d) 前記組成物の全質量を基準として、0.2~15質量%の促進剤/共開始剤;および/または
e) 前記組成物の全質量を基準として、0.5~15質量%の一種以上のさらに別の光重合開始剤;および/または
f) 従来型の添加剤。
【請求項7】
下記式(Ia)で表されることを特徴とする光重合開始剤:
【化6】
(Ia)
ここで、R’1は、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり;
Qui’は、下記式(A’)で表されるキノロン基:
【化7】
(A’)
[ここでR’2、R’3、R’4およびR’5は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは非置換のC2~C20のアルキル、-N(C1~C6アルキル)2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-O-R8、-S-R8、-O-[CH2]n-COOR8、および-S-[CH2]n-COOR8(ここでnは1~8であり、R8は水素、置換もしくは非置換のC1~C20のアルキル、1個以上の酸素原子が介在しており、かつ末端に水酸基を有してもよいC1~C50のアルキル、置換もしくは非置換のC2~C12のアルケニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、およびC5~C6のシクロアルキルから選択される)から選択され;R’6は水素またはC1~C4のアルキル基であり;R’7はC1~C10のアルキル基である];
あるいは下記式(B’)~(D’)のいずれかで表される置換もしくは非置換のベンゾキノロン基:
【化8】
(B’)
【化9】
(C’)
【化10】
(D’)
(ここでR’7はC1~C10のアルキル基であり、星印は前記式(Ia)で表されるケト基に結合した炭素原子を示す)である。
【請求項8】
請求項7に記載の化合物において、前記式(Ia)中のR’1は、置換もしくは非置換のアリール基であることを特徴とする化合物。
【請求項9】
請求項7または8に記載の化合物において、前記式(Ia)中のQui’は、式(A’)で表されるキノロン基であり、R’2、R’3、R’4およびR’5のうちの少なくとも1つは-O-R8または-S-R8であり、R8はC1~C20のアルキルであることを特徴とする化合物。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか一項に記載の化合物において、前記式(Ia)中のR’6は水素であることを特徴とする化合物。
【請求項11】
請求項7~10のいずれか一項に記載の化合物において、前記式(Ia)中のR’7はC1~C8のアルキルであることを特徴とする化合物。
【請求項12】
請求項7に記載の化合物において、前記式(Ia)中のQui’は、式(A’)で表されるキノロン基であり、R’6は水素であり、R’2、R’3、R’4およびR’5のうちの少なくとも2つは、-O-R8基であり、R8はC1~C20のアルキル基であることを特徴とする化合物。
【請求項13】
光重合性組成物およびインクを光硬化させる方法であって、以下の工程(i)および(ii)を含むことを特徴とする方法:
(i) 以下を含む光重合性組成物を調製または提供する工程:
- 請求項1に記載の化合物(a)および(b);または
- 請求項6に記載の化合物(a)、(b)、および請求項6に記載の成分(c)、(d)、(e)および(f)から選択された一種以上、好ましくは成分(d);
(ii) 光源を用いて、工程(i)の前記組成物を光重合する工程。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、前記光源は、UVA領域、UVB領域およびUVC領域のうちの少なくとも一種を含む紫外線を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法において、前記光源は、350~420nmの範囲で放射するLED光源であることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項13~15のいずれか一項に記載の方法において、光重合前に、基材に前記光重合性組成物を塗布する工程をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項13~16のいずれか一項に記載の方法、または請求項1~6のいずれか一項に記載の前記組成物を含む混合物の3次元印刷により得られた製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な種類の光重合開始剤、およびその光重合組成物における使用に関する。本発明はまた、その光重合開始剤を含む組成物の光重合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
UV硬化における動的な成長は、常に新しい課題を克服するためにこの技術をサポートする継続的なイノベーションに依存しており、これは製剤に必要な新しい材料の急速な開発に反映されている。特に、重要な構成要素の1つは光重合開始剤(PI)であり、その役割は、光を化学エネルギーに変換した反応中間体の形となることである。この反応中間体は、硬化する製剤中に存在する二重結合のラジカル重合を開始することができるラジカルである。
【0003】
光重合開始剤の分野の発展は様々な要因によって促進される。第一に、例えば線速度、表面硬化、硬化後の変色や溶解性のような各用途のすべての要求を満たすことができる単一の光重合開始剤が存在しないため、コーティング、インク、接着剤、電子機器等の既存の用途のための光重合開始剤の継続的な改善がある。第二に、LEDランプのような新しいランプの導入は、その波長で調整された光重合開始剤の開発を刺激した。第三に、毒性または生殖毒性のために禁止される光重合開始剤が増加している。
【0004】
そのため、標準的な光重合開始剤を模倣したり、黄変等の改善、線速度の向上、LEDランプ下での硬化、硬化度の向上等の問題を克服したりするためには、常に新しい光重合開始剤の研究が必要である。
【0005】
近年、いくつかの新しい種類が探索され、そのいくつかの例として、アシルゲルマニウム光重合開始剤(欧州特許出願公開第3150641号明細書(特許文献1)、欧州特許出願公開第2649981号明細書(特許文献2))、ベンゾイルフェニルテルリド光重合開始剤(Macromolecules,2014,47(16),pp.5526-5531(非特許文献1))、シリコンベースの光重合開始剤(特開2010-229169号公報(特許文献3),Macromolecules,2009,5 42(16),pp.6031-6037(非特許文献2)、Macromolecules,2007,40(24),pp.8527-8530(非特許文献3),Macromol.Rapid Commun.,2017,38,1600470(非特許文献4)、Macromolecules,2017,50(17),pp.6911-6923(非特許文献5))等が挙げられる。
【0006】
ケトキノロン類は、その薬理学的特性から文献で知られている化合物群である。近年、合成の改善に多くの努力がなされたが、これらの化合物の光重合開始剤としての能力を試験した者はいなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3150641号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2649981号明細書
【特許文献3】特開2010-229169号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Macromolecules,2014,47(16),pp.5526-5531
【非特許文献2】Macromolecules,2009,5 42(16),pp.6031-6037
【非特許文献3】Macromolecules,2007,40(24),pp.8527-8530
【非特許文献4】Macromol.Rapid Commun.,2017,38,1600470
【非特許文献5】Macromolecules,2017,50(17),pp.6911-6923
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の第1の目的は、ケトキノロンを含む新規な光硬化性組成物を提供することである。
【0010】
本発明のもう一つの目的は、新規なケトキノロン、光重合開始剤としてのそれらの使用、およびそれらを含む光硬化性組成物を提供することである。
【0011】
本発明のさらにもう一つの目的は、ケトキノロンを用いたエチレン性不飽和化合物の光硬化方法、およびその方法によって製造された製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、本発明者らは、ケトキノロンの一種が光照射によりラジカルを発生することを発見した。本発明者らはさらに、適切な置換基を用いて、LED下での光重合も達成した。このことは、反応性に影響を与えることなく、この種類の化合物の吸収特性を調整することができたことを意味する。この新しい化合物を様々な処方でテストし、公知の市販の光重合開始剤と比較し、その優れた性能を実証した。
【0013】
予期せず、本発明者らは、特定のケトキノロンが、200~800nmの範囲、好ましくは200~500nmの範囲の光源によく反応し、より好ましくは350~420nmの範囲で発光するLED光源によく反応することを見出し、先行技術と比較して新規性を示すことができた。
【0014】
したがって、本発明は、光重合開始剤として有用な特定のケトキノロン、その光重合開始剤を含む組成物、およびそのケトキノロンを含む組成物の光重合方法に関する。
【0015】
本発明の一態様によれば、本発明は、以下のa)およびb)を含む光硬化性組成物に関する:
a) 上記組成物の全質量を基準として、50~99.9質量%、好ましくは70~98.9質量%の少なくとも一種のエチレン性不飽和化合物;
b) 上記組成物の全質量を基準として、0.1~35質量%、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは0.2~15質量%の少なくとも一種の下記式(I)で表される化合物:
【化1】
(I)
ここでR1は、置換もしくは非置換のC1~C20のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、
Quiは、下記式(A)で表されるキノロン基:
【化2】
(A)
[ここでR2、R3、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは非置換のC1~C20のアルキル、-N(C1~C6アルキル)2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-O-R8、-S-R8、-O-[CH2]n-COOR8、および-S-[CH2]n-COOR8(ここでnは1~8であり、R8は水素、置換もしくは非置換のC1~C20のアルキル、1個以上の酸素原子が介在しており、かつ末端に水酸基を有してもよいC1~C50のアルキル、置換もしくは非置換のC2~C12のアルケニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、およびC5~C6のシクロアルキルから選択される)から選択され;R6は水素、水酸基、またはC1~C4のアルキル基であり;R7は水素またはC1~C10のアルキル基である];
あるいは下記式(B)~(D)のいずれかで表される置換もしくは非置換のベンゾキノロン基:
【化3】
(B)
【化4】
(C)
【化5】
(D)
(ここでR7は水素またはC1~C10のアルキル基であり、星印は上記式(I)で表されるケト基に結合した炭素原子を示す)である。
【0016】
本発明によれば、用語「光硬化」、「光重合」およびこれらに関連する用語は、同義語である。
【0017】
本明細書において、「組成物の全質量を基準として」という表現は、組成物中に水および/または溶媒が存在し得るという事実に関係なく、組成物中の化合物および追加成分の質量%が、上記化合物および上記追加成分の質量の合計を基準として算出されることを意味する。
【0018】
本発明のもう一つの態様によれば、本発明は、下記式(Ia)で表される化合物に関する:
【化6】
(Ia)
ここで、R’1は、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり;
Qui’は、下記式(A’)で表されるキノロン基:
【化7】
(A’)
[ここでR’2、R’3、R’4およびR’5は、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のC2~C20のアルキル、-N(C1~C6アルキル)2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-O-R8、-S-R8、-O-[CH2]n-COOR8、および-S-[CH2]n-COOR8(ここでnは1~8であり、R8は水素、置換もしくは非置換のC1~C20のアルキル、1個以上の酸素原子が介在しており、かつ末端に水酸基を有してもよいC1~C50のアルキル、置換もしくは非置換のC2~C12のアルケニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、およびC5~C6のシクロアルキルから選択される)から選択され;R’6は水素またはC1~C4のアルキル基であり;R’7はC1~C10のアルキル基である];
あるいは下記式(B’),(C’)または(D’)で表される置換もしくは非置換のベンゾキノロン基:
【化8】
(B’)
【化9】
(C’)
【化10】
(D’)
(ここでR’7はC1~C10のアルキル基であり、星印は式(Ia)で表されるケト基に結合した炭素原子を示す)である。
【0019】
本発明のさらにもう一つの態様によれば、本発明は、以下の工程(i)および(ii)を含む光重合方法に関する:
(i) 上記定義した(a)および(b)を含む光重合性組成物を調製または提供する工程;
(ii) 200~800nmの波長範囲で発光する光源を用いて、工程(i)の組成物を光重合する工程。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本説明中、表記「アルキル」または「アルキル基」は、特に断らない限り、直鎖状または分岐状で、所定数の炭素原子を含む飽和アルキル鎖を意味し、アルキル基の各炭素原子数において全ての可能性を含み、すなわち、炭素原子数3のアルキル基としてn-プロピルおよびイソプロピルが挙げられ、炭素原子数が4のアルキル基としてn-ブチル、イソブチルおよびターシャリーブチルが挙げられ、炭素原子数5のアルキル基としてn-ペンチル、1,1-ジメチル-プロピル、2,2-ジメチルプロピルおよび2-メチル-ブチルが挙げられる。
【0021】
表記「アルケニル」または「アルケニル基」は、2~12個の炭素原子、好ましくはC3~C12の炭素原子を含む不飽和基を意味し、例えば、アリル、メタアリルまたはウンデセニルが挙げられる。
【0022】
表記「シクロアルキル」または「シクロアルキル基」は、特に断らない限り、5または6の炭素原子を含む脂肪族環を意味し、シクロペンチルまたはシクロヘキシルが挙げられる。
【0023】
表記「アリール」または「アリール基」は、限定されないが、例えば、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のナフチル基、アントラセニル基、インデニル基、フルオレニル基等を含む。
【0024】
表記「ヘテロアリール」または「ヘテロアリール基」は、限定されないが、例えば、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラン、ピリジン、ピロリジン、ピペリジン、インドール、キノリン、イソキノリン、キサンテン、カルバゾール、アクリジン、インデリン、ジュロリジン、その他等を含む。
【0025】
表記「1個以上の酸素原子が介在しているC1~C50のアルキル」は、1個超の酸素原子が存在しており、それら複数の酸素原子が、少なくとも一つのメチレン基により互いに離隔されていること、すなわち、複数の酸素原子が非連続的に存在していることを意味する。好ましくは、複数の酸素原子は、エチレン鎖またはn-プロピレン鎖により離隔されている。好ましくは1~20個、より好ましくは2~18個の酸素原子が存在している。例として、以下が挙げられる:-O-CH2-OCH3、-O-CH2CH2-OCH2CH3、-O-[CH2CH2O]vCH3、-O-[CH2CH2O]vOH、-O-[CH2CH2O]vCH2CH3、-CH2-O-[CH2CH2O]vCH3(ここでvは1~24である)、-O-[CH2CH2CH2O]pOH、-O-[CH2CH2CH2O]pCH3、-O-[CH2CH2CH2O]pCH2CH3、-CH2-O-[CH2CH2CH2O]pCH3(ここでpは1~16である)。
【0026】
或る基が置換されている場合、用語「置換された」は、その基が1つ以上の置換基を含有することを意味する。その置換基は、好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルキルチオ基もしくはアリールチオ基、および複素環基から選択される。好ましくは、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、フェニル、トリフルオロメチル、シアノ、アセチル、エトキシカルボニル、カルボキシル、カルボキシレート、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、イソプロピルアミノ、ジイソプロピルアミノ、シクロヘキシルアミノ、ジシクロヘキシルアミノ、アセチルアミノ、ピペリジノ、ピロリジル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、フェノキシ、ヒドロキシル、アセトキシ、-PO3H、メチルチオ、エチルチオ、i-プロピルチオ、n-プロピルチオ、フェニルチオ、メルカプト、アセチルチオ、チオシアノ、メチルサルフィニル、メチルスルホニル、ジメチルスルホニル、スルホン酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリメチルスタニル、フリル、チエニル、ピリジルおよびモルフォリノから選択される。これら置換基の中でも、電子供与基が好ましく、例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert-ブトキシ基またはフェノキシ基等のアルコキシ基;メチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシル基、アセトキシ基、ベンゾイロキシ基等;またメチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、i-プロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ等のチオアルキル基;またはフェニルチオ等のアリールチオ基等が好ましい。
【0027】
特に断らない限り、本明細書において、全ての%は質量%である。
【0028】
一実施態様によれば、本説明の式(I)中、R2、R3、R4およびR5は、置換もしくは非置換のC2~C20のアルキルから選択される。好ましい実施態様によれば、本説明の式(I)中、以下の条件のうちの少なくとも一つを満たすのが好ましい:
- R1は、置換もしくは非置換のアリール基、好ましくはフェニル基であり、より好ましくはC1~C20のアルキル基で置換されたアリール基であり、好ましくはC1~C20のアルキル基で置換されたフェニル基である;
- Quiは、式(A)で表されるキノロン基であって、R2、R3、R4およびR5のうちの少なくとも一つは水素ではないもの、より好ましくは、式(A)で表されるキノロン基であって、R2、R3、R4およびR5のうちの少なくとも一つは-O-R8または-S-R8で、R8はC1~C20のアルキルであるもの、最も好ましくは、式(A)で表されるキノロン基であって、R3は-O-R8または-S-R8であり、R8はC1~C20のアルキルであるものである;
- R6は水素である;
- R7はC1~C8のアルキルである。
【0029】
好ましい実施態様によれば、上記の条件のうち2つ、3つまたは全てが同時に満たされる。
【0030】
別の好ましい実施態様によれば、式(I)で表される化合物において、Quiは、式(A)で表されるキノロン基であって、R6は水素であり、R2、R3、R4およびR5のうちの少なくとも2つは-O-R8基であり、R8はC1~C20のアルキル基である。
【0031】
好ましい実施態様によれば、本説明の式(Ia)中、以下の条件のうちの少なくとも一つを満たすのが好ましい:
- R’1は、置換もしくは非置換のアリール基、好ましくはフェニル基であり、より好ましくはC1~C20のアルキル基で置換されたアリール基であり、好ましくはC1~C20のアルキル基で置換されたフェニル基である;
- Qui’は、式(A’)で表されるキノロン基であって、R’2、R’3、R’4およびR’5のうちの少なくとも1つは-O-R8または-S-R8であり、R8はC1~C20のアルキルである;
- R’6は水素である;
- R’7はC1~C8のアルキルである。
【0032】
好ましい実施態様によれば、上記の条件のうち2つ、3つまたは全てが同時に満たされる。
【0033】
別の好ましい実施態様によれば、式(Ia)で表される化合物において、Qui’は、式(A’)で表されるキノロン基であり、R’6は水素であり、R’2、R’3、R’4およびR’5のうちの少なくとも2つは-O-R8基であり、R8はC1~C20のアルキル基であり、好ましくはC1~C10のアルキル基である。
【0034】
式(I)または(Ia)で表される化合物は、例えばEur. J. Org. Chem,(2018),pp.896-900に報告されているように、当業者に知られている従来の方法に従って調製することができる。
【0035】
本発明によれば、式(I)または(Ia)で表される光重合開始剤は、エチレン性不飽和化合物(a)を含む光硬化性組成物の調製に使用することができる。
【0036】
上記不飽和化合物(a)は、1つ以上のオレフィン性二重結合を有することができる。それらは、低分子量化合物(単量体化合物)または高分子量化合物(オリゴマー化合物)のいずれでもよい。
【0037】
1つの二重結合を有する好適な低分子量単量体(単量体化合物)の例として、アルキルもしくはヒドロキシアルキルを有するアクリレートまたはメタクリレート、例えばメチル-、エチル-、ブチル-、2-エチルヘキシル-、2-ヒドロキシエチル-またはイソボルニル-を有するアクリレート、およびメチルまたはエチルメタクリレートが挙げられる。
【0038】
さらなる例として、シリコンアクリレート等の、シリコンまたはフッ素で改質した樹脂が挙げられる。単量体のさらなる例として、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド、スチレン、アルキルスチレンおよびハロゲノスチレン、酢酸ビニル等のビニルエステル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル、N-ビニルピロリドン、塩化ビニルまたは塩化ビニリデンが挙げられる。
【0039】
1個超の二重結合を有する単量体の例として、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサメチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、4,4’-ビス-(2-アクリロイルオキシエトキシ)-ジフェニルプロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートまたはテトラアクリレート、アクリル酸ビニル、ジビニルベンゼン、コハク酸ジビニル、フタル酸ジアリル、リン酸トリアリル、トリアリルイソシアヌレートまたはトリス-(2-アクリロイルエチル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0040】
高分子量の(オリゴマー性の)不飽和化合物重合体の例として、アクリル化エポキシ樹脂、アクリル化ポリエステル、ビニルエーテル基もしくはエポキシ基含有ポリエステル、アクリル化ポリウレタンまたはアクリル化ポリエーテルが挙げられる。不飽和オリゴマーのさらなる例として、通常マレイン酸、フタル酸および一つ以上のジオールから調製され、分子量が約500Da~3,000Daの不飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。そのような不飽和オリゴマーは、プレポリマーと呼ぶこともできる。
【0041】
本発明の実施のために特に好適な化合物(a)の例として、エチレン性不飽和カルボン酸とポリオールまたはポリエポキシドとのエステル、および鎖または側基にエチレン性不飽和基を含む重合体:例えば各々不飽和のポリエステル、ポリアミド、ポリウレタンおよびそれらの共重合体、アルキル樹脂;ポリブタジエンおよびブタジエン共重合体;ポリイソプレンおよびイソプレン共重合体;側鎖に(メタ)アクリル基を有する重合体および共重合体;ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0042】
上記のエステルの調製に有用な不飽和カルボン酸または無水物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、桂皮酸、およびリノレン酸やオレイン酸等の不飽和脂肪酸が挙げられる。アクリル酸とメタクリル酸が好ましい。
【0043】
エステル化することもできるポリオールの例として、芳香族、脂肪族および環状脂肪族のポリオールが挙げられ、好ましくは脂肪族および環状脂肪族のポリオールである。
【0044】
芳香族ポリオールとして、例えばヒドロキノン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、2,2-ジ(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、並びにノボラックおよびレゾールが挙げられる。エステル化できるポリエポキシドとしては、上記ポリオールに基づくものが含まれ、特に芳香族ポリオールとエピクロロヒドリンとの反応生成物がある。また好適なポリオールとしては、高分子鎖または側基に水酸基を含む重合体および共重合体が挙げられ、例えばポリビニルアルコールおよびその共重合体、またはポリメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステルもしくはその共重合体等が挙げられる。さらに適切なポリオールは、ヒドロキシル末端基を持つオリゴエステルである。
【0045】
脂肪族および環状脂肪族のポリオールの例としては、好ましくは炭素原子を2~12個含むアルキレンジオールが挙げられ、例えば、エチレングリコール、1,2-または1,3-プロパンジオール、1,2-,1,3-または1,4-ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、分子量が200Da~1,500Daであることが望ましいポリエチレングリコール、1,3-シクロペンタンジオール、1,2-,1,3-または1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、グリセロール、トリス(β-ヒドロキシ-エチル)アミン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールおよびソルビトール等が挙げられる。
【0046】
さらに好適なエチレン性不飽和化合物(a)は、不飽和カルボン酸と、好ましくは2から6、好ましくは2から4のアミノ基を有する芳香族、脂肪族および環状脂肪族のポリアミンとから得られる不飽和ポリアミドである。このようなポリアミンの例としては、エチレンジアミン、1,2-または1,3-プロピレンジアミン、1,2-,1,3-または1,4-ブチレンジアミン、1,5-ペンチレンジアミン、1,6-ヘキシレンジアミン、オクチレンジアミン、ドデシレンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、フェニレンジアミン、ビスフェニレンジアミン、ジ-(β-アミノエチル)エーテル、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジ(β-アミノエトキシ)-およびジ(β-アミノプロポキシ)エタン等がある。他の適切なポリアミンは、側鎖に追加のアミノ基を含むことができる重合体および共重合体、およびアミノ末端基を含むオリゴアミドである。
【0047】
このような不飽和ポリアミドの具体例としては、メチレンビスアクリルアミド、1,6-ヘキサメチレンビスアクリルアミド、ジエチレントリアミントリスメタクリルアミド、ビス(メタクリルアミドプロポキシ)エタン、およびN-[(β-ヒドロキシエトキシ)エチル]-アクリルアミドがある。
【0048】
不飽和ポリウレタンはまた、例えば、飽和または不飽和ジイソシアネートおよび不飽和または飽和ジオールに由来する成分(a)として、本発明の実施に適している。ポリブタジエン、ポリイソプレンおよびその共重合体も使用できる。
【0049】
好適なモノマーとして、例えば、エチレン、プロペン、ブテンおよびヘキセンのようなオレフィン、(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、スチレンおよび塩化ビニルが含まれる。
【0050】
側鎖に不飽和(メタ)アクリレート基を有する重合体も成分(a)として用いることができる。これらは、典型的には、ノボラックをベースとするエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物;ビニルアルコールまたはそのヒドロキシアルキル誘導体を(メタ)アクリル酸でエステル化したホモまたはコポリマー;並びに(メタ)アクリレートをヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートでエステル化したホモおよびコポリマーでよい。
【0051】
本発明の光硬化性組成物はまた、化合物(a)および(b)に加えて、以下の成分のうちの1つ以上を含むことができる:(c)光増感剤、および/または(d)促進剤/共開始剤、および/またはさらに別の(e)光重合開始剤、および/または(f)添加剤。
【0052】
本発明の光硬化性組成物は、水および/または有機溶媒等の溶媒をさらに含む組成物にも配合することができる。
【0053】
光増感剤(c)は、組成物の全質量を基準として、0.01~15質量%の範囲、好ましくは0.01~10質量%の範囲の量で含有することができる。
【0054】
光増感剤の例としては、当該分野で一般的に使用されるもの、芳香族カルボニル化合物、例えばベンゾフェノン、チオキサントン、アントラキノンおよび3-アシルクマリン誘導体、テルフェニル、スチリルケトン、および3-(アロイルメチレン)-チアゾリン、カンファーキノン、並びにエオシン染料、ローダミン染料およびエリスロシン染料がある。
【0055】
チオキサントンの例としては、チオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-ドデシルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、1-メトキシカルボニルチオキサントン、2-エトキシカルボニルチオキサントン、3-(2-メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4-ブトキシカルボニルチオキサントン、3-ブトキシカルボニル-7-メチルチオキサントン、1-シアノ-3-クロロチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-クロロチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-エトキシチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-アミノチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-フェニルスルフリルチオキサントン、3,4-ジ[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシカルボニル]チオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-(1-メチル-1-モルホリノエチル)チオキサントン、2-メチル-6-ジメトキシメチルチオキサントン、2-メチル-6-(1,1-ジメトキシベンジル)チオキサントン、2-モルホリノメチルチオキサントン、2-メチル-6-モルホリノメチルチオキサントン、N-アリルチオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、N-オクチルチオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、N-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-チオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、1-フェノキシチオキサントン、6-エトキシカルボニル-1-2-メトキシチオキサントン、6-エトキシカルボニル-2-メチルチオキサントン、チオキサントン-2-ポリエチレングリコールエステル、2-ヒドロキシ-3-(3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサントン-2-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパナミニウムクロリド等とともに、n-ドデシル-7-メチル-チオキサントン-3-カルボン酸塩やN,N-ジソブチル-7-メチル-チオキサントン-3-カルバミド等、特許出願PCT/EP2011/069514に記載されているものが挙げられる。またポリマーチオキサントン誘導体も適している(例えば、IGM Resins B.V.社製のOmnipol(登録商標)TX、Rahn A.G.社製のGenopol(登録商標)TX-1、Lambson Limited社製のSpeedcure(登録商標)7010等)。
【0056】
ベンゾフェノンの例としては、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4-メトキシベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4,4’-ジメチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-(4-メチルチオフェニル)ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸メチル、4-(2-ヒドロキシエチルチオ)ベンゾフェノン、4-(4-トリルチオ)ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N,N-トリメチルベンゼンメタナミニウムクロリド、2-ヒドロキシ-3-(4-ベンゾイルフェノキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパナミニウムクロリド一水和物、4-(13アクリロイル-1,4,7,10,13-ペンタオキサトリデシル)ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニル)オキシエチル-ベンゼンメタナミニウムクロリド等が挙げられる。また高分子ベンゾフェノン誘導体も適している(例えば、IGM Resins B.V.社製のOmnipol(登録商標)BP、Omnipol(登録商標)2702およびOmnipol(登録商標)682、Rahn A.G.社製のGenopol(登録商標)BP-2、Lambson Limited社製の Speedcure(登録商標)7005等)。
【0057】
3-アシルクマリン誘導体の例としては、3-ベンゾイルクマリン、3-ベンゾイル-7-メトキシクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジ(プロポキシ)クマリン、3-ベンゾイル-6,8-ジクロロクマリン、3-ベンゾイル-6-クロロクマリン、3,3’-カルボニル-ビス[5,7-ジ(プロポキシ)クマリン]、3,3’-カルボニル-ビス(7-メトキシクマリン)、3,3’-カルボニル-ビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3-イソブチルクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジメトキシクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジエトキシクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジブトキシクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジ(メトキシエトキシ)クマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジ(アリルオキシ)クマリン、3-ベンゾイル-7-ジメチルアミノクマリン、3-ベンゾイル-7-ジエチルアミノクマリン、3-イソブチロイル-1,7-ジメチルアミノクマリン、5,7-ジメトキシ-3-(1-ナフトイル)クマリン、5,7-ジメトキシ-3(1-ナフトイル)-クマリン、3-ベンゾイルベンゾ[f]クマリン、7-ジエチルアミノ-3-チエノイルクマリン、3-(4-シアノベンゾイル)-5,7-ジメトキシクマリン等とともに、欧州特許出願公開第2909243号および国際公開第2017/216699号に記載されているものが挙げられる。
【0058】
3-(アロイルメチレン)チアゾリンの例としては、3-メチル-1,2-ベンゾイルメチレン-β-ナフトチアゾリン、3-メチル-2-ベンゾイルメチレン-ベンゾチアゾリン、3-エチル-2-プロピオニルメチレン-β-ナフトチアゾリンがある。
【0059】
他の芳香族カルボニル化合物の例としては、国際公開第2013/164394号に記載のような、アセトフェノン、3-メトキシアセトフェノン、4-フェニルアセトフェノン、ベンジル等;2-アセチルナフタレン、2-ナフタルアルデヒド、9,10-アントラキノン、9-フロレノン、ジベンゾスベロン、キサンソン、2,5-ビス(4-ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン、例えば2-(4-ジメチルアミノ-ベンジリデン)-インダン-1-オンまたは3-(4-ジメチルアミノフェニル)-1-インダン-5-イル-プロペノン等のα-(パラ-ジメチルアミノベンジリデン)ケトン類、3-フェニルチオフタルイミド、N-メチル-3,5-ジ(エチルチオ)フタルイミド等が挙げられる。特に好ましいのは、チオキサントン類、3-アシルクマリン類である。
【0060】
上記の成分(c)は組成物の保存期間を短縮することなく、光重合開始剤(b)の活性を増加させることが観察された。さらに、このような組成物は、光増感剤(c)を適切に選択することで、光重合開始剤(b)の分光感度を任意の所望の波長領域にシフトさせることができるという特別な利点がある。当業者は、適切な光増感剤(c)を選択して、光重合開始剤(b)を任意の所望の波長領域で動作させることができる。
【0061】
促進剤/共開始剤(d)は、組成物の全質量を基準として、0.2~15質量%の範囲、好ましくは0.2~8質量%の範囲の量で含有することができる。
【0062】
好適な促進剤/共開始剤の例として、例えば、欧州特許出願公開第438123号および英国特許出願公開2180358号に記載されているような、ヘテロ原子、ジスルフィドおよびホスフィンに隣接する炭素に結合した、利用可能な水素を有するアルコール、チオール、チオエーテル、アミンまたはエーテルが挙げられる。
【0063】
好適なアミン促進剤/共開始剤は、限定されないが、脂肪族、環状脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、複素環式、オリゴマーまたはポリマーの各アミンを含む。例えば、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルジメチルアミン、ジ-シクロヘキシルアミン、N-フェニルグリシン、トリエチルアミン、フェニル-ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピリジン、キノリン、ジメチルアミノ安息香酸のエステル、ミヒラーケトン(4,4’-ビス-ジメチルアミノベンゾフェノン)およびその誘導体等の第一級、第二級または第三級アミンが挙げられる。
【0064】
アミン促進剤/共開始剤として、アミン修飾アクリレート化合物を使用することができる。アミン修飾アクリレート化合物の例として、米国特許第3844916号、欧州特許出願公開第280222号、米国特許第5482649号または米国特許第5734002号に記載されている、一級または二級アミンとの反応によって修飾されたアクリレートが挙げられる。
【0065】
多機能性アミンおよび高分子アミン誘導体もまた、好適な共開始剤である。そのいくつかの例として、IGM Resins B.V.社製のOmnipol(登録商標)ASA、Rahn A.G.社製のGenopol(登録商標)AB-2、Lambson Limited社製のSpeedcure(登録商標)7040、または米国特許出願公開第2013/0012611号に記載されているものが挙げられる。
【0066】
さらに別の光重合開始剤(e)は、組成物の全質量を基準として、0.5~15質量%の範囲、好ましくは1~10質量%の範囲の量で含有することができる。
【0067】
他の好適な光重合開始剤(e)の例としては、カンファーキノン、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン、アセトフェノン誘導体、ジアルコキシアセトフェノン、α-ヒドロキシケトン、α-アミノケトン、4-アロイル-1,3-ジオキソラン、ベンゾインアルキルエーテルおよびベンジルケタル、例えばベンジルジメチルケタル、ケトスルホン、例えば1-[4-[(4-ベンゾイル-フェニル)-チオ]-フェニル]-2-メチル-2-[(4-メチル-フェニル)-スルホニル]-プロパン-1-オン(IGM Resins B.V.社製のEsacure(登録商標)1001)、例えば欧州特許出願公開第2909243号および国際公開第2017/216699号に記載の3-ケトクマリン、フェニルグリオキシレートおよびその誘導体、ダイマーフェニルグリオキシレート、ペルエステル、例えばベンゾフェノンテトラカルボン酸ペルエステル(例えば欧州特許出願公開第126541号に記載されている)、アシルホスフィン光重合開始剤(モノアシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、トリスアシルホスフィンオキシドおよび多機能モノまたはビスアシルホスフィンオキシドから選択できる)、ハロメチルトリアジン、ヘキサアリルビスイミダゾール/共開始剤系、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾールと組み合わせたオルトクロロヘキサフェニルビスイミダゾール、フェロセニウム化合物またはチタノセン、例えばジシクロペンタジエニル-ビス(2,6-ジフルオロ-3-ピロロフェニル)チタン、O-アシルオキシムエステル光重合開始剤等が挙げられる。
【0068】
α-ヒドロキシケトンやα-アミノケトンの例としては、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-フェノキシ]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、および(2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン)が挙げられる。
【0069】
O-アシルオキシムエステル光重合開始剤の例として、1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム)、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)または英国特許出願公開第2339571号に記載されているものが挙げられる。
【0070】
アシルホスフィン光重合開始剤の例としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-(2,4-ジペンチルオキシフェニル)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシドおよび(2,4,6-トリメチルベンゾイル)(フェニル)ホスフィン酸エチル、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸、グリセロールエトキシル化トリエステル(IGM Resins B.V社製のOmnipol(登録商標)TP)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
ハロメチルトリアジン系光重合開始剤の例として、2-[2-(4-メトキシ-フェニル)-ビニル]-4,6-ビス-トリクロロメチル[1,3,5]トリアジン、2-(4-メトキシ-フェニル)-4,6-ビス-トリクロロメチル[1,3,5]トリアジン、2-(3,4-ジメトキシフェニル)-4,6-ビス-トリクロロメチル[1,3,5]トリアジン、2-メチル-4,6-ビス-トリクロロメチル[1,3,5]トリアジン等が挙げられる。
【0072】
本発明による光硬化性組成物が、ハイブリッド系(これに関連して、ハイブリッド系とは、フリーラジカル硬化性系およびカチオン硬化性系の混合を意味する)で使用される場合には、さらに別の光重合開始剤(e)として、カチオン性光重合開始剤も使用される。好適なカチオン性光重合開始剤の例として、例えば、米国特許第4950581号に記載された、芳香族のスルホニウム塩、ホスホニウム塩、またはヨードニム塩、または例えば、英国特許出願公開第2348644号、米国特許第4,450598号、米国特許第4136055号、国際公開第2000/10972号、および国際公開第2000/26219号に記載された、シクロペンタジエニルアレン-鉄(II)錯塩、例えば、(η-イソプロピルベンゼン)(η-シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェートまたはオキシム系光潜在性酸がある。
【0073】
添加剤(f)として、例えば、熱開始剤、結合剤、安定剤、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0074】
本発明による光硬化方法は、特に、顔料配合組成物の場合、追加の添加剤(f)として、熱開始剤(加熱される際、フリーラジカルを生成する化合物である)、例えば、アゾ化合物、例えば、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、トリアゼン、ジアソズルフィド、ペンタアザジエン、またはペルオキシ化合物、例えば、ヒドロペルオキシドまたはペルオキシカーボネート、例えば、三級-ブチルヒドロペルオキシド(例えば、欧州特許出願公開第245639号に記載)を添加することによって促進される。
【0075】
本発明の光硬化性組成物には、結合剤も添加される。結合剤の添加は、特に、光硬化性化合物が液体または粘稠な物質である場合に有利である。結合剤の量は、例えば、組成物の総質量の5~60質量%、好ましくは、10~50質量%である。結合剤は、使用分野および要求される特性、例えば、水性および有機溶媒システムにおける現像性、基材への接着性、および酸素に対する感受性に応じて選択される。
【0076】
好適な結合剤は、例えば、約5,000~2,000,000Da、好ましくは10,000~1,000,000Daの重量平均分子量(Mw)を有するポリマーである。例としては、アクリレートおよびメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、例えば、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマー、ポリ(メタクリル酸アルキルエステル)、ポリ(アクリル酸アルキルエステル);セルロースエステルおよびエーテル、例えば、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース;ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、環化ゴム、ポリエーテル、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、塩化ポリオレフィン、例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/塩化ビニリデンコポリマー、塩化ビニリデンとアクリロニトリル、メチルメタクリレートおよび酢酸ビニルとのコポリマー、ポリ酢酸ビニル、(エチレン/酢酸ビニル)コポリマー、例えば、ポリカプロラクタムおよびポリ(ヘキサメチレンアジパミド)等のポリマー、例えばポリ(エチレングリコールテレフタレート)およびポリ(ヘキサメチレングリコールスクシネート)等のポリエステルである。
【0077】
好適な安定剤は、例えば、熱阻害剤、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノン誘導体、p-メトキシフェノール、β-ナフトール、または立体障害フェノール、例えば、2,6-ジ(tert-ブチル)-p-クレゾールであり、早期重合を阻止する。暗所貯蔵安定性を増大させるために、例えば、銅化合物、例えば、ナフテン酸銅、ステアリン酸銅、またはオクテン酸銅、リン化合物、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、または亜リン酸トリベンジル、四級アンモニウム化合物、例えば、塩化テトラメチルアンモニウムまたは塩化トリメチルベンジルアンモニウム、またはヒドロキシルアミン誘導体、例えば、N,N-ジエチルヒドロキシルアミンを使用できる。重合の間に、雰囲気中の酸素を除去する目的で、パラフィンまたは同様のワックス様物質(ポリマーに不溶)を使用でき、当該物質は、重合の開始時に表面に移動し、空気の侵入を阻止する透明な表面層を形成する。
【0078】
光安定剤、例えば、UV吸収剤、例えば、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニルベンゾフェノン、シュウ酸アミド、またはヒドロキシフェニル-s-トリアジンタイプを使用できる。このような化合物は、立体障害アミン(HALS)を使用してまたは使用することなく、単独でまたは混合物の形で使用される。
【0079】
本発明による光硬化性組成物は、更なる添加剤(f)として、光還元性染料、例えば、キサンテン、ベンゾキサンテン、ベンゾチオキサンテン、チアジン、ピロニン、ポルフィリン、またはアクリジン染料、および/または放射線開裂可能なトリハロメチル化合物も含むことができる。これらの化合物は、例えば、欧州特許出願公開第445624号に記載されている。
【0080】
さらに通例の添加剤(f)として、目的の用途に応じて、光学的増白剤、フィラー、顔料(白色および有色顔料の両方)、着色料、帯電防止剤、湿潤剤、または流動性向上剤が挙げられる。当分野において通例の添加剤、例えば、帯電防止剤、流動性向上剤、および接着促進剤も使用できる。
【0081】
本発明による組成物には、当分野において通例の連鎖移動剤も添加される。例として、メルカプタン、アミンおよびベンゾチアゾールがある。
【0082】
本発明の組成物は、着色料および/または着色顔料を含んでいてもよい。目的の用途に応じて、無機顔料および有機顔料の両方を使用できる。このような添加剤は、当業者には公知である。いくつかの例として、カーボンブラック、酸化鉄、例えば、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、クロムイエロー、クロムグリーン、ニッケルチタンイエロー、ウルトラマリンブルー、コバルトブルー、バナジウム酸ビスマス、カドミウムイエロー、およびカドミウムレッドがある。有機顔料の例として、モノ-またはビス-アゾ顔料、およびその金属錯体、フタロシアニン顔料、多環式顔料、例えば、ペリレン、アントラキノン、チオインジゴ、キナクリドン、またはトリフェニルメタン顔料、およびジケト-ピロロ-ピロール、イソインドリノン、例えば、テトラクロロイソインドリノン、イソインドリノン、ジオキサジン、ベンズイミダゾロン、およびキノフタロン顔料がある。処方において、顔料は、単独でまたは混合物として使用される。
【0083】
目的の用途に応じて、顔料は、当分野における通例の量で、例えば、組成物の総質量基準で0.1~30質量%、または10~25質量%の量で処方に添加される。
【0084】
組成物は、例えば、広範囲の種類の有機着色料を含んでいてもよい。例として、アゾ染料、メチン染料、アントラキノン染料、および金属錯体染料がある。通常の濃度は、組成物の総質量基準で、例えば、0.1~20質量%、特に、1~5質量%である。
【0085】
添加剤の選択は、使用分野およびその分野について望まれる特性によって決定される。上記の添加剤(f)は当分野において公知であり、従って、当分野における通例の量で使用される。
【0086】
本発明の光硬化性組成物は水を含んでもよい。
【0087】
本発明の光硬化性組成物は、各種の目的、例えば、印刷用インク、例えば、スクリーン印刷インク、フレキソ印刷インク、オフセット印刷インク、およびインクジェット印刷インクとして、クリアコートとして、例えば、木材または金属用の着色コートとして、粉末コーティングとして、特に、紙、木材、金属、またはプラスチック用のコーティング材料として、構造体および道路マーキング用、複写写真法用、ホログラム記録材料用、画像記録法または有機溶媒を使用する、または水性アルカリ媒体を使用する版面の再生において、スクリーン印刷用マスクの製造用の日光-硬化性塗料として、歯科用充填材料として、接着剤として、感圧性接着剤として、ラミネート樹脂として、フォトレジスト、例えば、ガルバノレジストとして、エッチレジストまたは永久レジスト(液体および乾燥フィルムの両方)として、光構造化性絶縁体として、および電子回路用ソルダーマスクとして、各種のタイプのディスプレイスクリーン用のカラーフィルターの製造おける、またはプラズマディスプレイおよびエレクトロルミネセントディスプレイの製造中の構造物の形成における、または光学スイッチ、光学格子(干渉格子)の製造における、バルク硬化(透明鋳型でのUV硬化)による、またはステレオリソグラフィー法(例えば、米国特許第4575330号に記載されている)による三次元物品の製造における、複合材料(例えば、ガラス繊維および/または他の繊維および他の補助剤を含むことができるスチレンポリエステル)の製造または当業者には周知の三次元印刷法における、電子部品のコーティングまたは封止におけるレジストとして、または光ファイバー用のコーティング剤として使用することができる。
【0088】
本発明の光硬化性組成物は、光学レンズ、例えば、コンタクトレンズまたはフレネルレンズの製造に、医療用装置、補助具またはインプラント、乾式フィルム塗料の製造においても適している。
【0089】
本発明の光硬化性組成物は、サーモトロピック特性を有するゲルの調製にも適している。このようなゲルは、例えば、独国特許出願公開第19700064号および欧州特許出願公開第678534号に記載されている。
【0090】
本発明の式(I)もしくは(Ia)の化合物、または光硬化性組成物を含む各種の製品は、本発明の他の主題である。
【0091】
本発明による化合物および組成物は、放射線硬化性粉末コーティング用のフリーラジカル光重合開始剤または光重合開始系としても使用される。
【0092】
本発明による光硬化性組成物は、例えば、全ての種類の基材(例えば、木材、布地、紙、セラミックス、ガラス、プラスチック(例えば、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、およびセルロースアセテート)、特に、フィルム状の基材のため、および金属(例えば、Al、Cu、Ni、Fe、Zn、Mg、またはCo)、およびGaAs、Si、またはSiO(保護層が塗布される、または例えば、像様露光によって、像が適用される)の基材のためのコーティング材料として好適である。
【0093】
その態様の別のものによれば、本発明のさらなる主題は、光重合可能な組成物およびインクを光硬化させる方法であり、この方法は、以下を含む:
(i) 以下を含む光重合性組成物を調製または提供する工程:
- 上記定義した化合物(a)および(b);または
- 上記定義した化合物(a)および(b)、並びに上記定義した成分(c)、(d)、(e)および(f)から選択された一種以上;
(ii) 光源を用いて、工程Iの組成物を光重合する工程。
【0094】
好ましい実施態様によれば、上記工程(i)で使用される光重合性組成物は、少なくとも(a)、(b)および(d)を含む。
【0095】
光源には、約200nmから約800nmの波長で発光する、最も多様な種類の光源を多数使用することができる。点光源と平面状ラジエーター(ランプカーペット)の両方が適している。例としては、炭素アーク灯、キセノンアーク灯、中圧、高圧もしくは低圧の水銀アークラジエーター(必要に応じてメタルハライドをドープしたもの(メタルハライドランプ))、マイクロ波励起金属蒸気ランプ、エキシマランプ、超化学線蛍光管、蛍光ランプ、アルゴン白熱灯、フラッシュランプ、写真投光器、発光ダイオード(LED)、電子ビーム、X線およびレーザーが挙げられる。
【0096】
一実施態様によれば、光源は、UVA、UVBおよびUVCの少なくとも1つの範囲のUV光を含む。
【0097】
好ましい実施態様によれば、上記光源はLED光源であり、特に好ましいのは365nm~420nmの間に含まれる波長、より好ましくは365nm、385nmおよび395nmにおける波長で発光するLED光源である。
【0098】
本発明によれば、ランプと露光される基板との間の距離は、使用目的およびランプの種類と強度によって異なっていてよく、例えば0.1cmから150cm、好ましくは1cmから50cmである。
【0099】
上記光重合性組成物は、すでに被覆層または印刷層を含む基板上に塗布することもできる。当該光重合性組成物は、当該光源による光重合の後、印刷またはコーティングに適した1つ以上の組成物でオーバープリントまたはオーバーコートすることができる。
【0100】
上記光重合性組成物を、上記のコーティングまたは印刷によって上記の基板に塗布し、上記の光源によって光重合することによって得られる製品は、さらなるコーティングまたは印刷による製品の更なる仕上げの有無にかかわらず、本発明の更なる主題である。
【0101】
このように、驚くべきことに、本発明者らは、式(I)および(Ia)で表される化合物が光重合開始剤として有効であることを発見し、その活性を初めて測定した。さらに、式(I)および(Ia)で表される化合物は、透明系と色素系の両方でLEDランプに対して非常に反応性が高いとの知見を得た。
【0102】
本発明は、以下に例示的で限定的ではない以下の例によって詳細に説明される。
【0103】
化学名と化学構造が一致しない場合は、化学構造が優先される。
【0104】
下記の波状の結合はシス異性とトランス異性の両方が可能であることを意味する。
【化11】
【0105】
実施例
1H NMRスペクトルを、Bruker Avance 400 MHzまたはBruker DMX 500 MHzまたはBruker DMX 600 MHzにて記録した。
赤外スペクトルを、FT-IR 430 - Jascoにて記録した。
【実施例1】
【0106】
【化12】
の合成
N,N-ジメチルホルムアミド75mLにm-アニシジン19.22g(156.06ミリモル)とベンゾイル酢酸エチル25.00g(130.07ミリモル)を溶解した。反応混合物を150℃で4時間撹拌し、蒸留によりエタノールを除去した。反応の進行はTLCにより追跡した。反応終了後、混合物を冷却し、6M塩酸625mLに注ぎ、ジエチルエーテル375mLで抽出した。有機層を375mLの水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、溶媒を減圧蒸留により除去して27.92gの黄色の油を得た(収率80%)。
1H-NMR(CDCl3,δ ppm):3.80(s,3H),4.10(s,2H),6.68(d,1H),7.08(d,1H),7.22(t,1H),7.31(s,1H),7.51(t,2H),7.64(t,1H),8.02(d,2H),9.30(br s,1H)
【実施例2】
【0107】
【化13】
の合成
トルエン220mL中に、実施例1の生成物22.06g(81.92ミリモル)およびtrans-シンナムアルデヒド10.83g(81.95ミリモル)を含有する温かい溶液に、ピペリジン0.698g(8.197ミリモル)、酢酸0.492g(8.193ミリモル)、および無水硫酸ナトリウム11.03gを順に加えた。反応混合物を窒素雰囲気下で1時間還流した。反応の進行はTLCにより追跡した。反応完了後、混合物を冷却し、300mLの塩水に注ぎ、220mLの酢酸エチルで抽出した。有機層を300mLの水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、溶媒を真空蒸留により除去して、二種の位置異性体の混合物として31.40gの粗生成物を得た。
【0108】
得られた粗生成物を無水テトラヒドロフラン310mLに溶解し、0℃に冷却した後、9.66g(86.09ミリモル)のカリウムtert-ブトキシドをかき混ぜながら徐々に分割添加した。10分間かき混ぜた後、12.81g(90.25ミリモル)のヨードメタンを慎重に反応物に加えた。次に、得られた混合物を、窒素雰囲気下、室温で1.5時間撹拌した。反応の進行はTLCにより追跡した。反応終了後、混合物を塩化アンモニウム飽和溶液150mLに注ぎ、水150mLで希釈し、酢酸エチル300mLで抽出した。有機層を300mLの水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、真空蒸留により溶媒を除去して32.12gの粗生成物を得た。次の段階では、それ以上の精製を行わずに、この粗生成物を使用した。
【実施例3】
【0109】
【化14】
の合成
クロロベンゼン135mL中に、実施例2の粗生成物4.55g(粗生成物として11.45ミリモル)を含有する溶液に、塩化アルミニウム9.16g(68.70ミリモル)を、かき混ぜながら徐々に分割添加した。得られた混合物を120℃まで徐々に加熱し、その後この温度で1.5時間撹拌した。反応の進行はTLCにより追跡した。反応終了後、混合物を冷却し、450mLの氷水に注ぎ、100mLのジクロロメタン/メタノール(80:20)で4回抽出した。有機層を集め、真空下で蒸留することによって溶媒を除去した。粗生成物をトルエン/シクロヘキサン(30:70)55mLで処理して固化させ、固体を100℃で15分間かき混ぜながら洗浄した。その後、混合物を冷却し、濾過し、オフホワイトの固体2.56gを得て、その固体を回収した(収率80%)。
1H-NMR(DMSO-d6,δ ppm):3.55(s,3H),6.82(dd,1H),6.88(d,1H),7.50(t,2H),7.62(t,1H),7.70(d,1H),7.79(d,2H),8.10(s,1H)
【実施例4】
【0110】
【化15】
の合成
N,N-ジメチルホルムアミド35mL中に、実施例3で調製した生成物3.20g(11.46ミリモル)を含有する溶液に、炭酸カリウム4.75g(34.37ミリモル)、ヨウ化ナトリウム0.34g(2.27ミリモル)、および臭化2-エチルヘキシル4.43g(22.94ミリモル)を順に加えた。反応混合物を80℃で8時間撹拌した。反応の進行はTLCにより追跡した。反応完了後、混合物を冷却し、200mLの水に流し込み、100mLのトルエンで抽出した。有機層を100mLの水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、溶媒を真空蒸留により除去した。シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル(80:20))で粗生成物を精製した後、シクロヘキサンを用いて結晶化し、2.50gの白色固体を得た(収率56%)。
1H-NMR(CDCl3,δ ppm):0.90-0.98(m,6H),1.35(m,4H),1.40-1.58(m,4H),1.80(m,1H),3.70(s,3H),3.98(m,2H),6.80(d,1H),6.88(dd,1H),7.43(t,2H),7.55(m,2H),7.85(d,2H),7.95(s,1H)
【実施例5】
【0111】
【化16】
の合成
ジクロロメタン200mL中に、イソブチルベンゼン44.00g(327.82ミリモル)と塩化アセチル27.02g(344.20ミリモル)を含有する氷冷溶液に、塩化アルミニウム45.90g(344.23ミリモル)をかき混ぜながら徐々に分割添加した。得られた混合物を、窒素雰囲気下、室温で1時間撹拌した。反応完了後、混合物を氷水800mLに注いだ。有機層を分離し、水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、溶媒を減圧蒸留により除去して、淡黄色の油57.45gを得た(収率99%)。
1H-NMR(CDCl3,δ ppm):0.90(d,6H),1.90(m,1H),2.52(d,2H),2.57(s,3H),7.21(d,2H),7.86(d,2H)
【実施例6】
【0112】
【化17】
の合成
トルエン240mL中に、実施例5の生成物50.00g(283.67ミリモル)と炭酸ジメチル255.50g(2836.37ミリモル)を含有する混合物に、ナトリウムメトキシド16.90g(312.85ミリモル)を、90℃で撹拌しながら20分かけて徐々に分割添加した。混合物を90℃で1時間撹拌し、蒸留によりメタノールを除去した。1時間かき混ぜた後、トルエン50mL中に炭酸ジメチル53.50g(593.92ミリモル)を含有する溶液を、さらに混合物に加えた。その後、温度を再び90℃まで上昇させ、追加のナトリウムメトキシド16.90g(312.85ミリモル)を20分かけて徐々に分割添加した。混合物を90℃でさらに1時間撹拌し、蒸留によりメタノールを除去した。反応終了後、混合物を冷却し、12%塩酸600mLに注ぎ、酢酸エチル200mLで抽出した。有機層を300mLの水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、溶媒を減圧蒸留により除去して66.52gの黄色の油を得た(収率100%)。
1H-NMR(CDCl3,δ ppm):0.89(d,6H),1.90(m,1H),2.52(d,2H),3.73(s,3H),3.98(s,2H),7.23(d,2H),7.85(d,2H)
【実施例7】
【0113】
【化18】
の合成
3,4-ジメトキシアニリン8.20g(53.53ミリモル)と実施例6の生成物11.40g(48.66ミリモル)を、N,N-ジメチルホルムアミド120mLに溶解した。反応混合物を150℃で3時間撹拌し、蒸留によりメタノールを除去した。反応の進行はTLCにより追跡した。反応完了後、混合物を冷却し、トルエン/酢酸エチル(60:40)300mLで希釈し、6M塩酸500mLに注いだ。有機層を分離して500mLの水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、溶媒を減圧蒸留により除去して17.00gの灰色の固体を得た(収率98%)。
1H-NMR(CDCl3,δ ppm):0.90(d,6H),1.90(m,1H),2.52(d,2H),3.84(s,3H),3.87(s,3H),4.07(s,2H),6.80(d,1H),7.01(dd,1H),7.27(d,2H),7.30(d,1H),7.93(d,2H),9.25(br s,1H)
【実施例8】
【0114】
【化19】
の合成
トルエン200mL中に、実施例7の生成物17.00g(47.83ミリモル)とtrans-シンナムアルデヒド6.32g(47.82ミリモル)を含有する温かい溶液に、ピペリジン0.407g(4.78ミリモル)、酢酸0.287g(4.78ミリモル)、および無水硫酸ナトリウム8.50gを順に加えた。反応混合物を窒素雰囲気下で1時間還流した。反応の進行はTLCにより追跡した。反応完了後、混合物を冷却し、400mLの塩水に注ぎ、200mLのジクロロメタンで2回抽出した。有機層を200mLの水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、溶媒を真空蒸留により除去して、二種の位置異性体の混合物として22.40gの粗生成物を得た。次の段階では、それ以上の精製を行わずに、この粗生成物を使用した。
【実施例9】
【0115】
【化20】
の合成
無水テトラヒドロフラン300mL中に、実施例8の粗生成物22.40g(粗生成物として47.70ミリモル)を含有する氷冷した溶液に、5.77g(51.42ミリモル)のカリウムtert-ブトキシドをかき混ぜながら徐々に分割添加した。10分間かき混ぜた後、7.65g(53.90ミリモル)のヨードメタンを慎重に反応物に加えた。次に、得られた混合物を、窒素雰囲気下、室温で1.5時間撹拌した。反応の進行はTLCにより追跡した。反応終了後、混合物を塩化アンモニウム飽和溶液200mLに注ぎ、水200mLで希釈し、酢酸エチル300mLで抽出した。有機層を400mLの水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、真空蒸留により溶媒を除去して23.00gの粗生成物を得て、次の工程で直接使用した。
【実施例10】
【0116】
【化21】
の合成
実施例9の粗生成物23.00g(粗生成物として47.56ミリモル)をジクロロメタン460mLに溶かした溶液に、メタンスルホン酸34.06g(354.39ミリモル)をかき混ぜながら徐々に加えた。室温で10~15分間かき混ぜた後、反応混合物を800mLの水に注いだ。有機層を分離し、800mLの水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、溶媒を減圧蒸留により除去した。シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル(90:10))で粗生成物を精製した後、シクロヘキサンを用いて結晶化し、10.11gのオフホワイト固体を得た(収率44%)。
1H-NMR(CDCl3,δ ppm):0.90(d,6H),1.90(m,1H),2.52(d,2H),3.46(s,3H),3.83(s,3H),3.95(s,3H),4.15(t,1H),4.68(d,1H),6.22(dd,1H),6.48(d,1H),6.67(s,1H),6.71(s,1H),7.22-7.35(m,7H),7.91(d,2H).
【実施例11】
【0117】
【化22】
の合成
実施例10の生成物8.00g(16.54ミリモル)を激しくかき混ぜながら59.20g(615.96ミリモル)のメタンスルホン酸に溶かした。反応混合物を室温で4時間撹拌した。反応の進行はTLCにより追跡した。反応終了後、混合物を水800mLに流し込み、ジクロロメタン300mLで抽出した。有機層を、炭酸水素ナトリウム飽和溶液300mLおよび水300mLで順次洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、溶媒を減圧蒸留により除去した。シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル(65:35))で粗生成物を精製した後、シクロヘキサン/酢酸エチル(75:25)を用いて結晶化し、1.85gの白黄色の固体を得た(収率29%)。
1H-NMR(CDCl3,δ ppm):0.90(d,6H),1.90(m,1H),2.52(d,2H),3.74(s,3H),3.93(s,3H),4.04(s,3H),6.80(s,1H),7.00(s,1H),7.20(d,2H),7.79(d,2H),7.88(s,1H)
【実施例12】
【0118】
【化23】
の合成
3-(メチルチオ)アニリン4.95g(35.55ミリモル)と実施例6の生成物7.57g(32.31ミリモル)を、N,N-ジメチルホルムアミド80mLに溶解した。反応混合物を150℃で4時間撹拌し、蒸留によりメタノールを除去した。反応の進行はTLCにより追跡した。反応終了後、混合物を冷却し、6M塩酸400mLに注ぎ、ジエチルエーテル300mLで抽出した。有機層を300mLの水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、溶媒を減圧蒸留により除去して10.37gの黄色の油を得た(収率94%)。
1H-NMR(CDCl3,δ ppm):0.90(d,6H),1.90(m,1H),2.47(s,3H),2.54(d,2H),4.07(s,2H),7.00(d,1H),7.21(t,1H),7.27(d,2H),7.32(d,1H),7.55(s,1H),7.93(d,2H),9.40(br s,1H)
【実施例13】
【0119】
【化24】
の合成
トルエン120mL中に、実施例12の生成物10.00g(29.29ミリモル)とtrans-シンナムアルデヒド3.87g(29.28ミリモル)を含有する温かい溶液に、ピペリジン0.249g(2.92ミリモル)、酢酸0.175g(2.91ミリモル)、および無水硫酸ナトリウム5.00gを順に加えた。反応混合物を、窒素雰囲気下で1時間還流した。反応の進行はTLCにより追跡した。反応完了後、混合物を冷却し、250mLの塩水に注ぎ、150mLのジクロロメタンで2回抽出した。有機層を150mLの水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、溶媒を真空蒸留により除去して、二種の位置異性体の混合物として13.00gの粗生成物を得た。次の段階では、それ以上の精製を行わずに、この粗生成物を使用した。
【実施例14】
【0120】
【化25】
の合成
無水テトラヒドロフラン180mL中に、実施例13の粗生成物13.00g(粗生成物として28.53ミリモル)を含有する氷冷した溶液に、3.36g(29.94ミリモル)のカリウムtert-ブトキシドをかき混ぜながら徐々に分割添加した。10分間かき混ぜた後、4.45g(31.35ミリモル)のヨードメタンを慎重に反応物に加えた。次に、得られた混合物を、窒素雰囲気下、室温で1.5時間撹拌した。反応の進行はTLCにより追跡した。反応終了後、混合物を塩化アンモニウム飽和溶液100mLに注ぎ、水100mLで希釈し、酢酸エチル200mLで抽出した。有機層を200mLの水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、真空蒸留により溶媒を除去して13.40gの粗生成物を得た。次の段階では、それ以上の精製を行わずに、この粗生成物を使用した。
【実施例15】
【0121】
【化26】
の合成
クロロベンゼン300mL中に、実施例14の粗生成物10.60g(粗生成物として22.57ミリモル)を含有する溶液に、塩化アルミニウム18.06g(135.44ミリモル)を、かき混ぜながら徐々に分割添加した。得られた混合物を120℃まで徐々に加熱し、その後この温度で1時間撹拌した。反応の進行はTLCにより追跡した。反応完了後、混合物を冷却し、氷水1000mLに流し込み、ジクロロメタン300mLで抽出した。有機層を800mLの水/塩水(75:25)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、溶媒を減圧蒸留により除去した。シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル(90:10))で粗生成物を精製した後、シクロヘキサン/酢酸エチル(75:25)を用いて結晶化し、1.07gの白色固体を得た(収率13%)。
1H-NMR(CDCl3,δ ppm):0.94(d,6H),1.91(m,1H),2.55(d,2H),2.63(s,3H),3.75(s,3H),7.15(dd,1H),7.19(d,1H),7.24(d,2H),7.54(d,1H),7.82(d,2H),7.91(s,1H)
【実施例16】
【0122】
【化27】
の合成
アニリン2.38g(25.56ミリモル)と実施例6の生成物5.00g(21.34ミリモル)を、N,N-ジメチルホルムアミド60mLに溶解した。反応混合物を150℃で3.5時間撹拌し、蒸留によりメタノールを除去した。反応の進行はTLCにより追跡した。反応終了後、混合物を冷却し、6M塩酸300mLに注ぎ、ジエチルエーテル250mLで抽出した。有機層を250mLの水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、溶媒を減圧蒸留により除去して5.97gのオフホワイト固体を得た(収率95%)。
1H-NMR(CDCl3,δ ppm):0.90(d,6H),1.90(m,1H),2.54(d,2H),4.07(s,2H),7.10(t,1H),7.25(d,2H),7.35(t,2H),7.60(d,2H),7.95(d,2H),9.35(br s,1H)
【実施例17】
【0123】
【化28】
の合成
トルエン70mL中に、実施例16の生成物5.90g(19.97ミリモル)とtrans-シンナムアルデヒド2.64g(19.98ミリモル)を含有する温かい溶液に、ピペリジン0.170g(2.00ミリモル)、酢酸0.120g(2.00ミリモル)、および無水硫酸ナトリウム2.95gを順に加えた。反応混合物を、窒素雰囲気下、1時間還流した。反応の進行はTLCにより追跡した。反応完了後、混合物を冷却し、175mLの塩水に注ぎ、70mLのジクロロメタンで2回抽出した。有機層を175mLの水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、溶媒を真空蒸留により除去して、二種の位置異性体の混合物として8.17gの粗生成物を得た。次の段階では、それ以上の精製を行わずに、この粗生成物を使用した。
【実施例18】
【0124】
【化29】
の合成
無水テトラヒドロフラン125mL中に、実施例17の粗生成物8.17g(粗生成物として19.95ミリモル)を含有する氷冷した溶液に、2.35g(20.94ミリモル)のカリウムtert-ブトキシドをかき混ぜながら徐々に分割添加した。10分間かき混ぜた後、3.11g(21.91ミリモル)のヨードメタンを慎重に反応物に加えた。次に、得られた混合物を、窒素雰囲気下、室温で1.5時間撹拌した。反応の進行はTLCにより追跡した。反応終了後、混合物を塩化アンモニウム飽和溶液50mLに注ぎ、水100mLで希釈し、酢酸エチル150mLで抽出した。有機層を150mLの水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、真空蒸留により溶媒を除去して8.45gの粗生成物を得た。次の段階では、それ以上の精製を行わずに、この粗生成物を使用した。
【実施例19】
【0125】
【化30】
の合成
実施例18の粗生成物8.40g(19.83ミリモル)を激しくかき混ぜながら51.80g(538.97ミリモル)のメタンスルホン酸に溶かした。反応混合物を55℃で1.5時間撹拌した。反応の進行はTLCにより追跡した。反応終了後、混合物を水600mLに流し込み、ジクロロメタン300mLで抽出した。有機層を300mLの水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、溶媒を真空蒸留により除去した。シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル(85:15))で粗生成物を精製した後、シクロヘキサン/酢酸エチル(90:10)を用いて結晶化し、2.58gの白色固体を得た(収率41%)。
1H-NMR(DMSO-d6,δ ppm):0.88(d,6H),1.90(m,1H),2.54(d,2H),3.67(s,3H),7.29-7.38(m,3H),7.63(d,1H),7.71-7.78(m,3H),7.85(dd,1H),8.17(s,1H)
【実施例20】
【0126】
【化31】
の合成
N,N-ジメチルホルムアミド70mL中に、実施例3の生成物3.50g(12.53ミリモル)を含有する混合物に、炭酸カリウム1.82g(13.16ミリモル)を加えた。室温で10分間撹拌した後、1.50g(13.82ミリモル)のクロロ酢酸メチルを混合物に加えた。反応混合物を室温で1.5時間、次いで65℃で1.5時間撹拌した。反応の進行はTLCにより追跡した。反応完了後、混合物を冷却し、1M塩酸250mLに注いだ。得られた沈殿物をろ過で除去し、35mLのトルエンに懸濁させ、100℃で15分間かき混ぜながら洗浄した。その後、混合物を冷却し、ろ過により固体を回収し、白色固体3.94gを得た(収率89%)。
1H-NMR(DMSO-d6,δ ppm):3.62(s,3H),3.75(s,3H),5.05(s,2H),7.01(dd,1H),7.06(d,1H),7.51(t,2H),7.63(t,1H),7.82(m,3H),8.15(s,1H)
【実施例21】
【0127】
【化32】
の合成
トルエン6.9mL中に、実施例20の生成物0.690g(1.964ミリモル)とポリエチレングリコール600の2.946g(4.910ミリモル)を含有する温かい混合物に、ジルコニウム(IV)アセチルアセトナート0.096g(0.197ミリモル)を攪拌しながら加えた。反応混合物を105℃で2.5時間撹拌し、蒸留によりメタノールを除去した。次に、さらに0.048g(0.098ミリモル)のジルコニウム(IV)アセチルアセトナートを加え、反応混合物を105℃で1時間撹拌し、蒸留によりメタノールをさらに除去した。反応の進行はTLCにより追跡した。反応完了後、混合物を冷却し、ジクロロメタン/EtOAc(50:50)30mLに溶解し、1M塩酸30mLで洗浄した。操作の間に得られた褐色-暗色の沈殿物を、セライトのパッドを通してろ過により除去し、相を分離した。有機層を30mLの水で4回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、溶媒を減圧蒸留により除去して淡褐色-黄色の油1.33gを得た(収率74%)。
1H-NMR(DMSO-d6,δ ppm):3.30-3.58(m,48H),3.62-3.67(m,5H),4.29(m,2H),5.06(s,2H),7.01(dd,1H),7.06(d,1H),7.51(t,2H),7.65(t,1H),7.80(m,3H),8.15(s,1H)
【実施例22】
【0128】
【化33】
の合成
3,5-ジメトキシアニリン8.05g(52.55ミリモル)と実施例6の生成物11.20g(47.80ミリモル)をN,N-ジメチルホルムアミド100mLに溶解した。反応混合物を150℃で4時間撹拌し、蒸留によりメタノールを除去した。反応の進行はTLCにより追跡した。反応終了後、混合物を冷却し、6M塩酸500mLに注ぎ、250mLの酢酸エチル/トルエン(1:1)で抽出した。有機層を分離して300mLの水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、溶媒を減圧蒸留により除去して16.88gのオフホワイト固体を得た(収率99%)。
1H-NMR(DMSO-d6,δ ppm):0.87(d,6H),1.89(m,1H),2.53(d,2H),3.71(s,6H),4.10(s,2H),6.23(t,1H),6.84(d,2H),7.33(d,2H),7.93(d,2H)
【実施例23】
【0129】
【化34】
の合成
トルエン170mL中に、実施例22の生成物16.88g(47.49ミリモル)とtrans-シンナムアルデヒド6.28g(47.52ミリモル)を含有する温かい溶液に、ピペリジン0.405g(4.76ミリモル)、酢酸0.285g(4.75ミリモル)、および無水硫酸ナトリウム8.44gを順に加えた。反応混合物を、窒素雰囲気下で1時間還流した。反応の進行はTLCにより追跡した。反応完了後、混合物を冷却し、200mLの塩水に注ぎ、200mLの酢酸エチルで抽出した。有機層を200mLの水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、溶媒を真空蒸留により除去して、二種の位置異性体の混合物として22.30gの粗生成物を得た。次の段階では、それ以上の精製を行わずに、この粗生成物を使用した。
【実施例24】
【0130】
【化35】
の合成
無水テトラヒドロフラン223mL中に、実施例23の粗生成物22.30g(粗生成物として47.49ミリモル)を含有する氷冷した溶液に、5.60g(49.91ミリモル)のカリウムtert-ブトキシドをかき混ぜながら徐々に分割添加した。10分間かき混ぜた後、7.41g(52.21ミリモル)のヨードメタンを慎重に反応物に加えた。次に、得られた混合物を、窒素雰囲気下、室温で1.5時間撹拌した。反応の進行はTLCにより追跡した。反応終了後、混合物を塩化アンモニウム飽和溶液100mLに注ぎ、水100mLで希釈し、酢酸エチル150mLで抽出した。有機層を100mLの水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、真空蒸留により溶媒を除去して22.26gの粗生成物を得た。次の段階では、それ以上の精製を行わずに、この粗生成物を使用した。
【実施例25】
【0131】
【化36】
の合成
実施例24の粗生成物22.26g(46.03ミリモル)を激しくかき混ぜながら164.39g(1710.44ミリモル)のメタンスルホン酸に溶かした。反応混合物を室温で24時間撹拌した。反応の進行はTLCにより追跡した。反応終了後、混合物を500mLの冷水に流し込み、250mLのジクロロメタンで抽出した。有機層を300mLの水と塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過し、溶媒を減圧蒸留により除去した。シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル(75:25))で粗生成物を精製した後、シクロヘキサン/酢酸エチル(71:29)を用いて結晶化し、1.71gの白色固体を得た(収率10%)。
1H-NMR(DMSO-d6,δ ppm):0.88(d,6H),1.88(m,1H),2.53(d,2H),3.62(s,3H),3.93(s,3H),3.97(s,3H),6.54(d,1H),6.62(d,1H),7.28(d,2H),7.70(d,2H),8.14(s,1H)
【0132】
比較試験
本発明のケトキノロン類を4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(比較例-1)と対比した。
【0133】
試験例12.1
比較試験
試験例12.1.1.
透明な処方物
光重合開始剤および共開始剤、並びにEsacure(登録商標)EDB(IGM Resins B.V.社製)を、Ebecryl(登録商標)605およびEbecryl(登録商標)350(Allnex社製)の混合物(99.5:0.5(質量比))に、各々3質量%の濃度で溶解することによって、試験用の光重合性組成物を調製した。
【0134】
FT-IR(FT-IR 430-Jasco)のサンプル拠点に置いた光重合性組成物を、サンプルから距離25mm、角度30°で配置したLEDランプ(400nm)に露光した。光重合の間に、一定の時間間隔でIRスペクトルを取得し、IRソフトウエアを使用して、アクリル二重結合に帰属する1408cm-1および810cm-1におけるピーク面積の経時的減少を測定した。これは、重合度の定量、すなわち、光重合開始剤の効力の定量を可能にする。
【0135】
結果(経時的重合度%として示す)を表1に示す。
【0136】
【表1】
* 比較例
【0137】
これらの試験により、式(I)および(Ia)で表される化合物は、光重合開始剤として非常に高い反応性を有することが確認された。
【0138】
試験例12.1.2.
シアンインクジェットインク-LEDランプ(400nm)
光開始剤および共開始剤、並びにEsacure(登録商標)EDB(IGM Resins B.V.社製)を、シアンインクジェットインクに、各々5質量%の濃度で溶解することによって、試験用の光重合性組成物を調製した。
【0139】
FT-IR(FT-IR 430-Jasco)のサンプル拠点に置いた光重合性組成物を、サンプルから距離25mm、角度30°で配置したLEDランプ(400nm)に露光した。光重合の間に、一定の時間間隔でIRスペクトルを取得し、IRソフトウエアを使用して、アクリル二重結合に帰属する1408cm-1および810cm-1におけるピーク面積の経時的減少を測定した。これは、重合度の定量、すなわち、光重合開始剤の効力の定量を可能にする。
【0140】
結果(経時的重合度%として示す)を表2に示す。
【0141】
【表2】
*比較例
【0142】
これらの試験により、式(I)および(Ia)で表される化合物は、顔料系においても高い反応性を示すことが確認された。
【国際調査報告】