(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】加圧定量吸入器のための医薬製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20231025BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20231025BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20231025BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20231025BHJP
A61K 31/4704 20060101ALI20231025BHJP
A61K 31/27 20060101ALI20231025BHJP
A61K 31/40 20060101ALI20231025BHJP
A61K 31/439 20060101ALI20231025BHJP
A61K 31/58 20060101ALI20231025BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20231025BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231025BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20231025BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20231025BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231025BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20231025BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K47/02
A61K31/137
A61K31/167
A61K31/4704
A61K31/27
A61K31/40
A61K31/439
A61K31/58
A61K31/573
A61K9/08
A61K47/10
A61K47/06
A61P11/00
A61P11/06
A61K9/127
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521488
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(85)【翻訳文提出日】2023-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2021077827
(87)【国際公開番号】W WO2022074183
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591095465
【氏名又は名称】キエシ・フアルマチエウテイチ・ソチエタ・ペル・アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100221534
【氏名又は名称】藤本 志穂
(72)【発明者】
【氏名】ザンベッリ,エンリコ
(72)【発明者】
【氏名】ボネッリ,サウロ
(72)【発明者】
【氏名】コペッリ,ディエゴ
(72)【発明者】
【氏名】ダリ アルベリ,マッシミリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】ウズベルティ,フランチェスカ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA24
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4C076CC15
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4C086NA05
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4C086ZA59
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4C206AA02
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4C206MA37
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA59
(57)【要約】
本発明は一般的に、LABA薬を、所望により他の活性成分、少なくとも2つの無機酸の混合物、噴射剤および共溶媒と組み合わせて含む医薬組成物に関する。本発明はまた、呼吸器疾患、例えば喘息およびCOPDの処置のための医薬組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LABA薬、共溶媒、噴射剤、および少なくとも2つの無機酸の混合物
を含む、医薬組成物。
【請求項2】
LABA薬が、フェノテロール、フォルモテロールフマル酸塩、フォルモテロールフマル酸塩二水和物、アルフォルモテロール、カルモテロール(TA-2005)、インダカテロール、ミルベテロール、バンブテロール、クレンブテロール、ビランテロール、オロダテロール、アベジテロール、テルブタリン、サルメテロール、ジアステレオマー混合物、およびその医薬的に許容される塩またはその水和物からなる群より選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
LABA薬が、フォルモテロールフマル酸塩二水和物である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
少なくとも2つの無機酸の混合物が、少なくともHClを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
少なくとも2つの無機酸の混合物が、少なくともH
3PO
4を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
少なくとも2つの無機酸の混合物が、HClとH
3PO
4の混合物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
HCl/H
3PO
4のモル比が、0.0018~0.0030、好ましくは0.0020~0.0030に含まれる、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
HCl/H
3PO
4のモル比が、0.0022~0.0028に含まれる、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
HCl/H
3PO
4のモル比が、0.0023~0.0027に含まれる、請求項7または8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
1M HClの量が、約0.019~0.021%w/w(製剤の総重量に基づく)の範囲であり、85%w/w H
3PO
4の量が、約0.001~0.002%w/w(製剤の総重量に基づく)の範囲である、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
HClの量が、約0.019~0.021%w/w(製剤の総重量に基づく)の範囲であり、85%w/w H
3PO
4の量が、0.001%w/w(製剤の総重量に基づく)である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
グリコピロニウム、イプラトロピウム、オキシトロピウム、トロスピウム、チオトロピウム、アクリジニウムおよびウメクリジニウムとその何れかの医薬的な対イオンからなる群より選択されるLAMA薬をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
LAMA薬が、グリコピロニウム臭化物である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
ブデソニド、ベクロメタゾン(BDP)、例えばモノまたはジプロピオン酸エステル、フルニソリド、フルチカゾン、例えばプロピオン酸またはフロ酸エステル、シクレソニド、モメタゾン、例えばフロ酸エステル、モメタゾンデソニド、ロフレポニド、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ナフロコート、デフラザコート、ハロプレドン酢酸エステル、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、クロコルトロン、チプレダン、プレドニカルベート、アルクロメタゾンプロピオン酸エステル、ハロメタゾン、リメキソロン、デプロドンプロピオン酸エステル、トリアムシノロン、ベタメタゾン、フルドロコルチゾン、デスオキシコルチコステロン、ロフレポニド、エチプレドノールジクロアセテートからなる群より選択されるコルチコステロイドをさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
コルチコステロイドが、ブデソニドまたはベクロメタゾンプロピオン酸エステル(BDP)である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
コルチコステロイドが、ベクロメタゾンプロピオン酸エステル(BDP)である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
組成物が、溶液である、請求項1~16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
共溶媒が、1~4個の炭素原子を有する脂肪族アルコールである、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
共溶媒が、エタノールである、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
噴射剤が、ヒドロフルオロアルカン(HFA)およびヒドロフルオロオレフィン(HFO)およびそれらの混合物より選択される、請求項1~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
噴射剤が、HFA134a、HFA152aおよびそれらの混合物より選択される、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
組成物が、アルミニウム、ステンレス鋼、陽極酸化アルミニウムおよびフッ素パッシベーションアルミニウムで作られたキャニスター中に含まれる、請求項1~21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
請求項1~21のいずれか一項に記載の医薬組成物を含む、pMDIデバイスのためのキャニスター。
【請求項24】
アルミニウムで作られた、請求項23に記載のキャニスター。
【請求項25】
医薬としての使用のための、請求項1~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
呼吸器障害の処置および/または予防のための、請求項1~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
喘息またはCOPDの処置および/または予防のための、請求項25または26に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、LABA薬、少なくとも2つの無機酸の混合物、噴射剤および共溶媒を含む医薬組成物に関するものであり;本発明はまた、呼吸器疾患の処置および予防における該医薬組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧定量吸入器(pMDI)は、医薬品を吸入により気道に投与するための周知のデバイスである。pMDIデバイスは、典型的に、医療用を含むキャニスター(または本明細書で「缶」と称する)と、マウスピースを有するアクチュエーターハウジングを備えている。缶は通常、計量バルブアセンブリに圧着されている。活性成分、および添加剤、酸などの追加成分に応じて、最終的なpMDI製剤は溶液または懸濁液の形態であり得る。当該技術分野で知られているように、溶液は、一般的に沈殿物または粒子を実質的に含まないものを指し、懸濁液は、典型的に未溶解物または沈殿物を含む製剤を指す。pMDIデバイスは、医薬品を含む液滴をエアゾールとして気道に排出するために、噴射剤を用い得る。
【0003】
長時間作用型ムスカリン拮抗薬(LAMA)に分類されるグリコピロニウム臭化物(グリコピロレートとしても知られている)は、LABA薬およびコルチコステロイドと併用すると、呼吸器疾患の処置において特に有効な気管支拡張薬である。
【0004】
グリコピロニウム臭化物と組み合わせてフォルモテロールを含むpMDIデバイスに適したエアロゾル吸入組成物が文献に記載されている。
【0005】
WO2011/076842は、HFA噴射剤に溶解したグリコピロニウム臭化物と、1M塩酸(HCl)の量を含有する共溶媒とを含む医薬組成物を記載しており、製剤は良好な安定性プロファイルを示す。
【0006】
WO2011/076843は、フォルモテロールと、HFA噴射剤に溶解したグリコピロニウム臭化物と、共溶媒とを含む安定化医薬組成物を記載しており、製剤は0.1~0.3μg/μlの範囲に含まれる量の1M HClを含有する。
【0007】
WO2015/101576は、FEPコーティング缶に含まれる、フォルモテロール、ベクロメタゾンプロピオン酸エステルおよびグリコピロニウム臭化物溶液と共に使用するのに特に適するpMDIデバイスを記載している。そこに開示されているように、FEPコーティング缶に含まれる製剤は、主にN-(3-ブロモ)-[2-ヒドロキシ-5-[1-ヒドロキシ-2-[1-(4-メトキシフェニル)プロパン-2-イルアミノ]エチル]フェニル]ホルムアミドに関して、安定性が向上し、分解生成物の量が減少する。
【0008】
医薬組成物に含まれる医薬活性成分(API)の化学的安定性は、販売に適した製剤を得るため、および作動ごとに一定用量の活性成分を確実に送達するために特に望ましい。
【0009】
上記の先行技術は、効果的な製剤およびデバイスの技術的配置を提供するが、LABA薬を特にLAMA薬およびコルチコステロイドと組み合わせて含み、長期間の製品寿命にわたって安定であり、アルミまたはステンレス鋼など市販の缶が使用可能である、別のエアロゾル製剤を見つける必要がある。
【0010】
我々は、驚くべきことに、LABA薬を、所望によりLAMA薬および/またはコルチコステロイドと組み合わせて含む製剤中に無機酸の混合物を含ませることにより、当該活性成分の分解を実質的に回避し、それ故に、長期間にわたって製剤の安定性を維持し、また、製剤がアルミニウム製キャニスターに含まれる場合でも、適切な条件が達成されるとき、製剤の安定性プロファイルの改善に利用することができることを見出した。
【0011】
有利には、本明細書に記載の無機酸の混合物を含む当該エアロゾル製剤は、共溶媒の存在下で噴射剤中で製剤化されるとき、優れたエアロゾル化性能を有する、特に呼吸器疾患、例えば喘息および/またはCOPDの処置のためのpMDIデバイスで使用可能である。
【発明の概要】
【0012】
一態様において、本発明は、LABA薬、共溶媒、噴射剤、および少なくとも2つの無機酸の混合物、好ましくはHClおよびH3PO4を含む医薬組成物に関する。
【0013】
特に、本発明は、LAMA薬およびコルチコステロイド薬を含むこのような製剤に関する。
【0014】
更なる態様において、本発明は、医薬としての使用のための、LABA薬、共溶媒、噴射剤、および少なくとも2つの無機酸の混合物を含む該医薬組成物の使用に関する。
【0015】
更なる態様において、本発明はまた、呼吸器障害、特に喘息およびCOPDの処置および/または予防のための、LABA薬、共溶媒、噴射剤、および少なくとも2つの無機酸の混合物を含む医薬組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
他に定義しない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0017】
フォルモテロールまたはその塩またはその塩の溶媒和物と酸との間の「モル比」は、製剤中のフォルモテロールまたはその塩またはその塩の溶媒和物のモル数および製剤中の選択された酸のモル数を考慮して計算される。
【0018】
他に断らない限り、用語「LABA」または「LABA薬」は、当該技術分野で知られている長時間作用型β2アゴニスト、例えばフォルモテロールフマル酸塩、アルフォルモテロールまたはフェノテロールをその意味に含む。
【0019】
他に断らない限り、用語「フォルモテロールフマル酸塩」または「FF」は、(R,R)-(±)フォルモテロールフマル酸塩またはその二水和物を指す。
【0020】
他に断らない限り、用語「LAMA」または「LAMA薬」は、当該技術分野で知られている長時間作用型ムスカリン受容体アンタゴニスト、例えばグリコピロニウム、メトスコポラミン、イプラトロピウムをその意味に含む。
【0021】
グリコピロニウム臭化物は、3-[(シクロペンチルヒドロキシフェニルアセチル)オキシ]-1,1-ジメチルピロリジニウム臭化物として化学的に定義され、(3R,2'R)-、(3S,2'R)-、(3R,2'S)-および(3S,2'S)-の配置を有する4つの潜在的な異なる立体異性体に対応する2つの不斉中心を有する。これらの純粋なエナンチオマーもしくはジアステレオマーまたはこれらのあらゆる組合せのいずれかの形態のグリコピロニウム臭化物を、本発明の実施に用い得る。
【0022】
他に断らない限り、用語「グリコピロニウム臭化物」は、(3S,2'R),(3R,2'S)-3-[(シクロペンチルヒドロキシフェニルアセチル)オキシ]-1,1-ジメチルピロリジニウム臭化物のラセミ混合物を指し、グリコピロレート(USAN名)としても知られている。
【0023】
用語「%w/w」は、製剤の総重量に対する成分の重量パーセントを意味する。
【0024】
用語「%w/v」は、製剤の総容量に対する成分の重量パーセントを意味する。
【0025】
本明細書で意図する用語「見かけのpH」に関して、pHの計算は、一般に、例えば水が主成分である場合の水性液体の特徴であることに留意されたい。比較的非プロトン性の溶媒(例えば本発明で用いる噴射剤、例えばHFA系またはHFO系)では、プロトンは水和されておらず、それらの活性係数は水溶液中のものとは異なり得る。電磁場(EMF)に関するネルンストの式(反応に関与するイオンの濃度の関数として電気化学セルの電位を記述する)が適用され、pHメーターのガラス電極システムは、プロトン濃度およびビヒクルの極性に従って可変ミリボルト出力を生成し、pHメーターの読み取り値は、本発明による「見かけのpH」を表す。これに関して、本発明による見かけのpHは、例えば"Correlation between Apparent pH and Acid or Base Concentration in ASTM Medium" Orest Popovych, Analytical Chemistry 1964, 36,4,878-882; Analytical Standard Test Method (ASTM) D6423 - 19 "Standard Test Method for Determination of pH of Denatured Fuel Ethanol and Ethanol Fuel Blends"に示されているように、当該技術分野で公知の技術によって測定することができる。
【0026】
上記のように、本発明は、驚くべきことに、LABA薬を、所望によりLAMA薬および/またはコルチコステロイドと組み合わせて含む製剤中に無機酸の混合物を含ませることは、アルミニウム缶に含まれる場合でも、これにより得られた製剤を安定化させ、また、本明細書に詳細を記載する選択した酸間で相乗効果を利用する可能性がある。
【0027】
一実施態様によれば、本発明の製剤は、2つ以上の一塩基酸または多塩基酸、好ましくは無機酸の混合物を含み、該混合物が、少なくとも塩酸(HCl)および/またはリン酸(H3PO4)を含むことを特徴とする。
【0028】
特に好ましい一実施態様において、本発明の製剤は、HClとH3PO4の混合物を含む。この点において、驚くべきことに、pMDI投与に適し、少なくともLABA薬、および所望によりLAMA薬および/またはコルチコステロイドを含む製剤は、選択したモル比のHClとH3PO4の組合せを用いるとき、特に安定であることを見出した。本明細書の下記実験パートで収集したデータから、2つの酸の使用が、H3PO4単独に対して、相乗的に安定性を改善することが明らかである。この効果は、安定性の向上をもたらすだけでなく、このように得られた製剤に、FEP技術でHClを単独で使用することによって得られるものに匹敵する、アルミニウム缶中でのある程度の安定性を与える。
【0029】
したがって、一態様において、本発明の製剤は、2つの無機酸の混合物、好ましくは、HCl/H3PO4のモルとして意図されるモル比が、約0.0018~0.0030、好ましくは約0.0020~0.0030に含まれるHClとH3PO4を含む。より好ましくは、HCl/H3PO4のモル比は、約0.0022~0.0028に含まれ、さらにより好ましくは、HCl/H3PO4のモル比は、約0.0023~0.0027に含まれる。
【0030】
有利には、好ましいモル比は、例えばモル濃度または%w/wとして表される、様々な濃度で用いるとき、酸を適切に投与することによって設定できる。
【0031】
好ましい一実施態様において、HClは1Mであり、すなわち1M HClを含む水溶液の所定量が医薬製剤に加えられる。好ましい別の実施態様において、H3PO4は85%w/wの濃度で加えられ、すなわち、H3PO4の所定量(3PO4と水の総重量に基づいて水中85重量%)が医薬製剤に加えられる。
【0032】
本発明によれば、医薬製剤中に含まれる1M HClの量は、約0.019~0.021%w/w(製剤の総重量に基づく)の範囲であり、85%w/w H3PO4の量は、約0.001~0.002%w/w(製剤の総重量に基づく)の範囲である。
【0033】
好ましくは、HClの量は、約0.019~0.021%w/w(製剤の総重量に基づく)の範囲であり、85%w/w H3PO4の量は、0.001%w/w(製剤の総重量に基づく)である。より好ましくは、HClの量は、0.019%w/w(製剤の総重量に基づく)であり、85%w/w H3PO4の量は、0.001%w/w(製剤の総重量に基づく)である。
【0034】
実験パートの表2に示すとおり、アルミニウム缶に含まれる、フォルモテロールフマル酸塩、グリコピロニウム臭化物およびBDPを含む製剤に、HClとH3PO4の混合物を加えると、単一の酸を単独で含む対応する製剤に対して、活性成分、特にフォルモテロールフマル酸塩の残存率の点で製剤の安定性が増加する。認識され得るとおり、当該無機酸の組合せは、実際、フォルモテロールフマル酸塩だけでなく、製剤に含まれる他の有効成分、例えばグリコピロニウム臭化物およびベクロメタゾンプロピオン酸エステルも、FEP技術を使用することによって得られる安定性に匹敵する程度に安定化させることができる。
【0035】
本発明は、経時的な製剤の安定性の向上、良好な保存可能期間、最終製剤の良好な再現性、市販で容易に入手可能な缶内の最適な化学状態の維持、および特にpMDIデバイスのために溶液として製剤化されるとき、薬物の一貫した送達および有効性などの先行技術に対する利点をもたらす。
【0036】
さらに、選択した酸の好ましい組合せはまた、FEPコーティング缶の使用を回避し得て、それ故に、より単純な製造プロセスおよび最終デバイスシステムを提供する。従来技術から知られているように、また上記のように、FEPコーティング缶に含まれるフォルモテロールおよびグリコピロニウム臭化物を含む製剤は、実際、同じ製剤が例えばアルミニウム缶に含まれる場合には達成できない改善された安定性を有する。
【0037】
我々は今回、無機酸の組合せ、特にHClとH3PO4の組合せが、予想外にも、表2および3で観察できるように先行技術のFEP技術を用いて観察される安定化度に匹敵する、アルミニウム缶に含まれるとき本発明による製剤の安定化度を提供できることを見出した。
【0038】
本発明によれば、本製剤は、溶液、懸濁液、または溶液および懸濁液を含むシステムであり得る。
【0039】
好ましい実施態様において、本発明の製剤は、溶液である。好ましくは、製剤の1つまたは複数(より好ましくはすべて)の医薬的活性成分、例えばLABA、LAMAおよび/またはコルチコステロイドは、噴射剤および共溶媒中で完全にかつ均一に溶解している。
【0040】
さらにより好ましくは、本発明の製剤は、LABA薬、少なくとも2つの無機酸の混合物、好ましくはHClおよびH3PO4、および/またはコルチコステロイドを含む。
【0041】
一実施態様において、本発明による製剤のLABA薬は、フェノテロール、フォルモテロールフマル酸塩、フォルモテロールフマル酸塩二水和物、アルフォルモテロール、カルモテロール(TA-2005)、インダカテロール、ミルベテロール、バンブテロール、クレンブテロール、ビランテロール、オロダテロール、アベジテロール、テルブタリン、サルメテロール、ジアステレオマー混合物、およびその医薬的に許容される塩またはその水和物からなる群より選択される。
【0042】
一実施態様において、LABAは、フォルモテロールフマル酸塩、好ましくはフォルモテロールフマル酸塩二水和物である。
【0043】
別の実施態様において、本発明の製剤は、サルブタモール、または(R)-サルブタモール(レバルブテロール)またはその医薬的に許容される塩またはその水和物を含む。
【0044】
好ましくは、本発明によるLABAの量は、0.0005~0.04%w/w、より好ましくは0.001~0.03%w/w、さらにより好ましくは0.005~0.02%w/wに含まれる。
【0045】
一実施態様において、本発明による製剤のLAMA薬は、グリコピロニウム、イプラトロピウム、オキシトロピウム、トロスピウム、チオトロピウム、アクリジニウムおよびウメクリジニウムとその何らかの医薬的な対イオンからなる群より選択される。
【0046】
好ましいLAMA薬は、グリコピロニウム臭化物である。
【0047】
一実施態様において、LAMA薬、好ましくはグリコピロニウム臭化物は、0.005~0.14%(w/w)、好ましくは0.010~0.13%(w/w)、より好ましくは0.010~0.045%(w/w)の範囲の量で本発明の製剤中に存在し、ここで、%(w/w)は、組成物の総重量に対するパーセントとして表される成分の重量による量を意味する。
【0048】
一実施態様において、本発明による製剤のコルチコステロイド成分は、ブデソニド、ベクロメタゾン、例えばモノまたはジプロピオン酸エステル、フルニソリド、フルチカゾン、例えばプロピオン酸またはフロ酸エステル、シクレソニド、モメタゾン、例えばフロ酸エステル、モメタゾンデソニド、ロフレポニド、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ナフロコート、デフラザコート、ハロプレドン酢酸エステル、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、クロコルトロン、チプレダン、プレドニカルベート、アルクロメタゾンプロピオン酸エステル、ハロメタゾン、リメキソロン、デプロドンプロピオン酸エステル、トリアムシノロン、ベタメタゾン、フルドロコルチゾン(fludrocoritisone)、デスオキシコルチコステロン、ロフレポニド、エチプレドノールジクロアセテートからなる群より選択される。
【0049】
ベクロメタゾンプロピオン酸エステル(BDP)およびブデソニドが、特に好ましい。
【0050】
さらに好ましい実施態様において、コルチコステロイド成分は、ベクロメタゾンプロピオン酸エステル(BDP)である。
【0051】
本発明の別の実施態様によれば、コルチコステロイド成分、好ましくはBDPの量は、0.01~0.7%w/w、より好ましくは0.05~0.5%w/w、さらにより好ましくは0.08~0.35%w/wに含まれる。
【0052】
一実施態様において、本発明は、LABA薬、LAMA薬、コルチコステロイド、および少なくとも2つの無機酸の混合物を含む、製剤、好ましくはpMDI投与に適する溶液に関する。
【0053】
更なる好ましい実施態様において、本発明は、LABA薬、LAMA薬、コルチコステロイドおよびHClとH3PO4の混合物を含む、製剤、好ましくはpMDI投与に適する溶液に関する。
【0054】
さらに好ましい実施態様において、本発明は、LABA薬、LAMA薬、コルチコステロイドおよびHClとH3PO4の混合物(HCl/H3PO4のモル比が、約0.0018~0.0030、好ましくは約0.0020~0.0030、より好ましくは約0.0022~0.0028、さらにより好ましくは約0.0023~0.0027に含まれる)を含む、製剤、好ましくはpMDI投与に適する溶液に関する。
【0055】
特に好ましい実施態様において、本発明は、フォルモテロールフマル酸塩、グリコピロニウム臭化物、BDP、および少なくとも2つの無機酸の混合物を含む、製剤、好ましくはpMDI投与に適する溶液に関する。
【0056】
さらに好ましい実施態様において、本発明は、グリコピロニウム、フォルモテロール、BDP、およびHClとH3PO4の混合物を含む、製剤、好ましくは溶液に関する。
【0057】
さらに好ましい実施態様において、本発明は、フォルモテロールフマル酸塩、グリコピロニウム臭化物、BDP、およびHClとH3PO4の混合物(HCl/H3PO4のモル比が、約0.0018~0.0030、好ましくは約0.0020~0.0030、より好ましくは約0.0022~0.0028、さらにより好ましくは約0.0023~0.0027に含まれる)を含む、製剤、好ましくは溶液に関する。
【0058】
上記のように、本発明の製剤は、pMDI溶液としての投与に特に適する。この点において、本製剤はまた、本明細書の以下に記載する、噴射剤、および好ましくは共溶媒を含む。
【0059】
本発明による製剤の噴射剤は、ヒドロフルオロアルカン(HFA)およびヒドロフルオロオレフィン(HFO)およびそれらの混合物より選択される。
【0060】
一実施態様において、ヒドロフルオロアルカン噴射剤は、HFA134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)、HFA227(1,1,1,2,3,3,3-heptaフルオロプロパン、HFA152a(1,1-ジフルオロエタン)およびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0061】
一実施態様において、本発明による製剤のHFO噴射剤は、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)および2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)からなる群より選択される。
【0062】
好ましくは、噴射剤は、HF噴射剤、より好ましくはHFA134aである。
【0063】
等しく好ましい実施態様において、噴射剤は、HFA152aである。
【0064】
HFAまたはHFOは、製剤の総重量に基づいて、75~95%(w/w)、好ましくは85~90%(w/w)の範囲の量で製剤中に存在し得る。
【0065】
上記のように、一実施態様において、本発明による無機酸の混合物を含む製剤は、所望により、更なる成分、例えば添加剤、添加物または低揮発性成分をさらに含み得る。当該成分の添加は、例えば製剤の化学物理的特性を調節するために、適切に調整され得る。この点において、また上記の好ましい実施態様によれば、本発明は、HFAまたはHFO噴射剤、共溶媒、および所望により低揮発性成分を含む、上記で詳細に説明した製剤に関する。
【0066】
好ましくは、当該共溶媒は、製剤中の成分の溶解性を増加させることができる極性化合物である。好ましい共溶媒は、1~4個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなど、好ましくはエタノール、より好ましくは無水エタノールである。
【0067】
存在する場合、当該共溶媒は、製剤の総重量に基づいて、5%w/w~20%w/w、より好ましくは10%~15%w/wに含まれる量で用いられる。
【0068】
存在する場合、低揮発性成分は、25℃にて0.1kPa未満、好ましくは0.05kPa未満の蒸気圧を有することを特徴とする化合物である。好ましい低揮発性成分は、グリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールまたはそれらのエステル、パルミチン酸アスコルビルおよびミリスチン酸イソプロピルからなる群より選択され、ミリスチン酸イソプロピルおよびグリセロールが特に好ましい。
【0069】
好ましい実施態様において、本発明は、LABA薬、LAMA薬および/またはコルチコステロイド、少なくとも2つの無機酸の混合物、噴射剤および1~4個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、好ましくはエタノール、より好ましくは無水エタノールを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる、製剤、好ましくはpMDI投与に適する溶液に関する。
【0070】
さらに好ましい実施態様において、本発明は、LABA薬、LAMA薬および/またはコルチコステロイド、HClとH3PO4の混合物、HF噴射剤および1~4個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、好ましくはエタノール、より好ましくは無水エタノールを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる、製剤、好ましくはpMDI投与に適する溶液に関する。
【0071】
更なる好ましい実施態様において、本発明は、グリコピロニウム臭化物、フォルモテロールフマル酸塩、BDP、少なくとも2つの無機酸の混合物、HF噴射剤およびエタノール、より好ましくは無水エタノールを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる、製剤、好ましくはpMDI投与に適する溶液に関する。
【0072】
さらに好ましい実施態様において、本発明は、グリコピロニウム臭化物、フォルモテロールフマル酸塩、BDP、HClとH3PO4の混合物、HF噴射剤、好ましくはHFA134aまたはHFA152aおよびエタノール、より好ましくは無水エタノールを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる、製剤、好ましくはpMDI投与に適する溶液に関する。
【0073】
更なる好ましい実施態様において、本発明は、グリコピロニウム臭化物、フォルモテロールフマル酸塩、BDP、HClとH3PO4の混合物(HCl/H3PO4のモル比が約0.0018~0.0030、より好ましくは約0.0020~0.0030、より好ましくは約0.0022~0.0028、さらにより好ましくは約0.0023~0.0027に含まれる)、HFA134aおよびHFA152aより選択されるHF噴射剤、およびエタノールを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる、製剤、好ましくはpMDI投与に適する溶液に関する。
【0074】
更なる好ましい実施態様において、本発明は、グリコピロニウム臭化物、フォルモテロールフマル酸塩、BDP、HClとH3PO4の混合物(HClとH3PO4間のモル比が、約0.0022~0.0028、好ましくは約0.023~0.027に含まれる)、HFA134aおよびHFA152aより選択されるHF噴射剤、およびエタノールを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる、製剤、好ましくはpMDI投与に適する溶液に関する。
【0075】
更なる好ましい実施態様において、本発明は、グリコピロニウム臭化物、フォルモテロールフマル酸塩、BDP、量が約0.019~0.021%w/w(製剤の総重量に基づく)の範囲の1M HCl、量が約0.001~0.002%w/w(製剤の総重量に基づく)の範囲、好ましくは0.001%w/w(製剤の総重量に基づく)の85%w/w H3PO4、HFA134aおよびHFA152aより選択されるHF噴射剤、およびエタノールを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる、製剤、好ましくはpMDI投与に適する溶液に関する。
【0076】
いくつかの実施態様において、製剤は、上記で明示的に定義したもの以外の更なる添加剤を含まない。例えば、製剤は、共溶媒、噴射剤および2つの無機酸(例えばHClおよびH3PO4)以外の添加剤を含まなくてもよい。好ましくは、製剤は、更なる酸を実質的に含まず、より好ましくは、上記で定義したもの(例えばHClおよびH3PO4)以外の更なる酸または塩基を実質的に含まない。
【0077】
缶およびキャニスターについては、本発明の製剤を含むのに適したpMDIデバイスのキャニスターの一部または全部は、金属、例えばアルミニウム、または金属合金、ステンレス鋼または陽極酸化アルミニウム、フッ素パッシベーションアルミニウムなどで作られ得る。あるいは、キャニスターは、プラスチック缶またはプラスチックでコーティングされたガラスボトルであり得る。
【0078】
金属製キャニスターは、不活性有機コーティングでその内部表面の一部またはすべてが覆われ得る。
【0079】
コーティングは、典型的に、缶の内部表面に適用され、それ故に、缶の内部表面と缶に含まれる製剤との間の界面として機能する内層を提供する。
【0080】
これに関して、本発明の適切なコーティング缶は、不活性有機または無機コーティング、例えばフッ素化エチレンプロピレンポリマー(FEP)、ポリエーテルスルホンポリマー(PES)、フッ素化エチレンプロピレンポリエーテルスルホンポリマー(FEP-PES)などで、先行技術に従って、その内部表面の一部またはすべてがコーティングされ得る。しかしながら、本発明の利点は、適切な安定性を達成するためにこのようなコーティングが必要ないこと、すなわち非FEPコーティング缶(例えば標準的なアルミニウム缶)においてさえ極めて高い安定性を達成できることである。
【0081】
好ましい実施態様において、本発明は、アルミニウムまたはステンレス鋼で作られたpMDIキャニスターに含まれる、上記の製剤に関する。したがって、一態様において、本発明は、上記で詳細に説明した製剤で満たされた、アルミニウムまたはステンレス鋼で作られたpMDIキャニスターに関する。アルミニウム缶が好ましい。
【0082】
pMDIデバイスのキャニスターは、典型的に、活性成分の治療有効用量を送達するための計量バルブに圧着されている。計量バルブアセンブリは、EPDM(エチレンプロピレンジエンモノマーのポリマー)、ブチルまたはハロブチルゴム、例えばクロロブチルまたはブロモブチルゴム(所望により、イソブチレンとイソプレンのハロゲン化されたコポリマー)、TPE(熱可塑性エラストマー)、シクロオレフィンコポリマー(COC)またはそれらの組合せより選択される適切なエラストマー材料で作られた、少なくとも1つのガスケットシールを含む。
【0083】
本発明に適したバルブは、例えばBespak、Aptar-ValoisおよびV.A.R.I.などの当該分野で周知の製造業者から市販されている。
【0084】
本発明による計量バルブは、典型的には、作動当たり25~150μlの範囲、好ましくは50~100μl、より好ましくは50μl~70μlの範囲の量を送達でき;最も好ましくは、作動当たり50、63および100μlである。
【0085】
pMDIデバイスの有効性は、肺の適切な部位に沈着する用量の関数である。沈着は、いくつかのパラメーターによりインビトロで特徴付け得る製剤の空気力学的粒度分布の影響を受ける。
【0086】
加圧pMDIによって放出される粒子の次のパラメーターを決定し得る:
i)質量中央空気力学的直径(MMAD)は、放出された粒子の質量空気力学的直径が均等に分布する直径である;
ii)送達用量は、ACI内の累積沈着を実験ごとの作動回数で除して計算される;
iii)呼吸可能用量(微粒子用量=FPD)は、直径4.7μ未満の粒子に相当するACIのステージ3(S3)からフィルター(AF)までの堆積を、実験ごとの作動回数で除して得られる;
iv)呼吸可能画分(微粒子画分=FPF)は、吸入可能用量と送達用量の間のパーセント比である;
v)「超微粒子」用量は、直径1.1μm以下の粒子に相当するステージ6(S6)からフィルターへの堆積を、実験ごとの作動回数で除して得られる。
【0087】
本発明のさらなる態様によれば、エアロゾル吸入器に本発明の医薬組成物を充填する方法が提供する。医薬エアロゾル製造の当業者によく知られている従来のバルク製造方法および機械を、充填キャニスターの商業生産のための大規模バッチの製造に使用し得る。
【0088】
一般的な例として、当該方法は、下記工程を含み得る:
a)フォルモテロールフマル酸塩、BDP、グリコピロニウム臭化物およびエタノールを含む溶液を調製する工程;
b)キャニスターに該溶液を充填する工程;
c)HClとH3PO4の量を加え、HCl/H3PO4のモル比が約0.0018~0.0030となるようにする工程;
d)バルブを圧着させ、HFA噴射剤でガス処理する工程。
【0089】
本発明の包装された製剤は、通常の温度および湿度の条件下で保存したとき、長期間安定である。
【0090】
安定性を、残存活性成分の含有量を測定することにより評価する。
【0091】
更なる態様において、本発明は、医薬としての使用のための上記の製剤に関する。したがって、本発明は、医薬の製造のための、本明細書に記載の製剤としての使用に関する。
【0092】
好ましくは、本発明の製剤は、あらゆる種類の喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの広範囲の呼吸器障害の予防目的または症状緩和のためのものである。
【0093】
好ましい一実施態様において、本発明は、呼吸器障害の処置および/または予防、好ましくは喘息またはCOPDの処置および/または予防のための、本明細書に記載の製剤に関する。
【0094】
本発明の医薬組成物の使用が有益であり得る他の呼吸器障害は、炎症および粘液の存在の結果としての末梢気道の閉塞を特徴とする呼吸器疾患、例えば慢性閉塞性細気管支炎、慢性気管支炎、肺気腫、急性肺傷害(ALI)、嚢胞性線維症、鼻炎、および成人または急性呼吸窮迫症候群(ARDS)により特徴付けられる。
【0095】
理解されるように、本明細書に記載されるすべての実施態様は、本明細書において上記および下記に記載される他のすべての好ましい実施態様とのあらゆる可能な組合せにおいても、本発明の範囲に含まれるものとして意図されるものである。
【0096】
次に、本発明を以下の限定的ではない実施例によって説明する。
【実施例】
【0097】
(実験パート)
実施例1
フォルモテロールフマル酸塩二水和物(FF)、グリコピロニウム臭化物(GB)およびベクロメタゾンプロピオン酸エステル(BDP)を含むpMDI投与を目的とした製剤の化学的安定性を調べるための試験を実施した。当該製剤は、63μlの計量容積を有するBespakバルブで圧着されたアルミニウム缶に含まれる溶液である。
【0098】
異なる種類および量の酸を単独またはその混合物として製剤に加え、表1および2に示すとおり製剤1~4を調製した。
【表1】
【0099】
製剤1~4を、40℃、75%RHの安定性チャンバーに、逆さまにして1か月間(1M)入れ、その後、APIの定量および類縁分解生成物を確認した。APIの残存率を表2に示す。
【表2】
【0100】
表2から分かるように、HClとH3PO4の混合物を製剤1~2に従って加えると、フォルモテロール(FF)、グリコピロニウム臭化物(GB)およびベクロメタゾンプロピオン酸エステル(BDP)の化学的安定性の著しい改善が達成される。注目すべきことに、%FFは、95%よりさらに高い値に達することができる。実際、製剤1および2は、例えば、H3PO4が単独で存在し、%FFが実際に90%より低い製剤3および4の安定性比較して、FF%、GB%およびBDP%の残存に関して、安定性の有意な改善を示す。
【0101】
実施例2
実施例1と同じ分析を、HClのみの存在下で、63μlの計量容積を有するBespakバルブで圧着されたFEPコーティングアルミニウム缶中の対応する製剤を用いて、実施した。
【0102】
これにより得られた製剤(FEP型)を、40℃、75%RHの安定性チャンバーに、逆さまにして1か月間(1M)入れ、その後、APIの定量および類縁分解生成物を確認した。APIの残存率および総分解生成物を表3に示す。
【表3】
【0103】
上記の表2および3の比較から明らかなように、本発明による無機酸の混合物は、特にフォルモテロールに関して、APIの残存%の点で、FEP技術を用いて得られる高い安定化度に匹敵する安定化を提供する。実際、どちらの場合でも、%FFは95%よりさらに高くなり得て、したがって、有意な安定性の程度を示している。
【国際調査報告】