(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】トリフルオロアミンオキシドの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 21/084 20060101AFI20231025BHJP
【FI】
C01B21/084
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521694
(86)(22)【出願日】2021-09-23
(85)【翻訳文提出日】2023-04-10
(86)【国際出願番号】 KR2021012937
(87)【国際公開番号】W WO2022080693
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0132911
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523062062
【氏名又は名称】エスケイ スペシャルティ コンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】514266091
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティチュート オブ ケミカル テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】KOREA RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】クァク ジョンフン
(72)【発明者】
【氏名】クォン ビョンヒャン
(72)【発明者】
【氏名】チョ ヨンジュン
(72)【発明者】
【氏名】パク インジュン
(72)【発明者】
【氏名】ユク シンホン
(72)【発明者】
【氏名】チャン ボンジュン
(72)【発明者】
【氏名】カン ホンソク
(72)【発明者】
【氏名】ソン ウンホ
(72)【発明者】
【氏名】イ サング
(72)【発明者】
【氏名】ベク ジフン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ ミョンスク
(72)【発明者】
【氏名】ソ ウォンウク
(57)【要約】
トリフルオロアミンオキシドの製造方法が開示される。一実施例によるトリフルオロアミンオキシドの製造方法は、SbF
5反応触媒の下で三フッ化窒素および亜酸化窒素を同時に投入して反応させて中間生成物を製造するステップと、前記中間生成物をフッ化カリウムと反応させてトリフルオロアミンオキシドを製造するステップとを備える。中間生成物をフッ化カリウムと反応させるステップは、大気圧および常温下で行われる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SbF
5の反応触媒の下で三フッ化窒素(nitrogen trifluoride)と亜酸化窒素(nitrous oxide)とを同時に投入して反応させて、中間生成物を製造するステップと、前記中間生成物をフッ化カリウム(potassium fluoride)と反応させてトリフルオロアミンオキシド(trifluoroamine oxide)を製造するステップとを備える、トリフルオロアミンオキシドの製造方法。
【請求項2】
前記中間生成物と前記フッ化カリウムとの反応は、大気圧および常温の条件下で行われる、請求項1に記載のトリフルオロアミンオキシドの製造方法。
【請求項3】
前記トリフルオロアミンオキシドを製造するステップにおいて副産物として得られるKSbF
6を熱分解してSbF
5を回収するステップをさらに備え、
回収されたSbF
5を次の中間生成物を製造するステップで、反応触媒として用いる、請求項1に記載のトリフルオロアミンオキシドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリフルオロアミンオキシド(F3NO)の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子製造のための薄膜製造工程としてCVD(Chemical Vapor Deposition)工程技術が広く知られている。CVDチャンバ内で半導体素子の薄膜を形成する場合、薄膜がCVDチャンバ内の目標物にのみ形成されることが好ましいが、薄膜形成物質は不要にもCVDチャンバ内の他の露出された表面にも堆積することになる。例えば、チャンバ内の壁面、生成物固定ジグ、パイプなどにも薄膜形成物質が堆積される。また、CVD工程の途中に目標物以外に堆積された物質が剥がれ落ちて目標物上に蒸着された薄膜の表面または薄膜が形成される目標物の表面を汚染させることがある。このような汚染は、半導体素子の不良を引き起こし、歩留まりを下落させる要因となる。したがって、適切な周期でチャンバ内に堆積された不要な堆積物を除去する洗浄(cleaning)工程を行うことになる。このようなCVDチャンバ内の洗浄工程は手作業で行われるか、またはクリーニングガスを用いて行われる。
【0003】
CVDチャンバの洗浄ガスにはいくつかの基本的な物性が求められる。まず、洗浄ガスは、短時間内にCVDチャンバ内を洗浄できなければならず、有害物質を生成してはならない。そして、環境にやさしいガスでなければならない。従来のCF4、C2F6、SF6、NF3のような過フッ化物が半導体あるいは電子素子の製造工程においてチャンバの洗浄ガス、あるいは蒸着された薄膜のエッチングガスとして使われてきた。特に、三フッ化窒素(NF3)ガスの場合、全世界的に洗浄ガスとして広く使われている。
【0004】
しかし、このような過フッ化物質は安定した物質であり、大気中に非常に長期間滞在する。また、使用後の廃ガスは、分解されていない過フッ化物質を非常に高い濃度で含んでいるため、このような廃ガスを許容基準値以下に処理して大気中に放出するのに多くの費用がかかる。さらに、このような通常の過フッ化物質は、非常に高い地球温暖化指数(Global Warming Potential、GWP)値を有することが知られている(ITH 100年、CO2 基準、CF4 9,200、SF6 23,900、NF3 17,200)。したがって、このようなガスは、環境に相当な負荷を与える。そこで、エッチングまたは洗浄工程に用いられ、GWP値が低い代替ガスに関する要求が非常に高い。また、洗浄あるいはエッチングガス自体が環境にやさしいとしても、洗浄あるいはエッチング過程で分解されて、有害ガスであるCF4、NF3などとなり、排出時に大気中に長く滞留してしまう恐れがある。
【0005】
特に、三フッ化窒素(NF3)ガスは、全世界的に使用量が多いだけでなく、地球温暖化指数も非常に高い。したがって、環境への負荷を減らし、半導体産業の持続的発展の側面でNF3ガスの使用量の縮小および代替できる物質の開発が要求される。
【0006】
このような代替ガス候補群の中、水溶液内で簡単に分解され、予想GWPが極めて低く、性能面で現在クリーニングガスとして用いられているNF3を代替可能な物質としてトリフルオロアミンオキシド(F3NO)が挙げられる。F3NOは、エッチングおよび洗浄性能を左右する「F」の含量が非常に高く、難分解性であるPFC、HFC、NF3、SF6とは異なって、酸、アルカリ水溶液で簡単に分解されるので、地球温暖化指数が0に近いと推定され、未反応残存F3NOの分解処理時に必要なエネルギーおよび環境負荷が少ないと予想され、漏洩した場合にも非刺激性であり、常温でNF3と類似した物性を表すなど、一次的な考慮事項では代替ガスとして潜在力が非常に高い。
【0007】
しかし、代替ガス候補物質であるトリフルオロアミンオキシド(F3NO)の製造方法に関する情報は、極めて限られている。
【0008】
特許文献1(米国公開特許2003/0143846A1)は、反応器の内部の洗浄およびケイ素含有化合物の膜をエッチングするためのガス組成物として、F3NOを含むガス組成物を開示しており、F3NOを合成する方法については、SbF5触媒の下、150℃の温度でNF3とN2Oを反応させて、NF2OSb2F11塩を合成した後、高温(>200℃)で熱分解してF3NOを得る方法を開示している。しかし、原料であるNF3およびN2Oに対する収率が20%程度で、極めて低く、純度は言及さえされていない。また、投入されるもう一つの原料であるSbF5を基準に考えてみると、収率が約33%で非常に低い。SbF5/NF3/N2O反応システムを用いてF3NOを合成することは、前述のように合成方法および危険性、収率、ガスの純度などが十分に究明されておらず、商業的に活用可能な方法であるか否かが明確ではない。
【0009】
本発明の出願人は、特許文献2(韓国登録特許10-2010460B1)と特許文献3(韓国登録特許10-2010466B1)でそれぞれ、前記特許文献1と同じSbF5/NF3/N2O反応システムを用いながらも高い収率および純度でトリフルオロアミンオキシドが製造できる新しい方法を提示した。例えば、特許文献2に開示された方法によれば、NF3とN2OとをSbF5の下で反応させて、中間生成物であるNF2OSbF6を得、この中間生成物をNaFと接触させて真空雰囲気で熱分解反応させる2ステップ反応を通じてトリフルオロアミンオキシド(F3NO)を合成する。そして、特許文献3に開示された方法によれば、NF3とN2OとをSbF5の下で反応させて中間生成物であるNF2OSbF6を得るが、この反応で生成される窒素(N2)を含む反応ガスを除去し、三フッ化窒素および亜酸化窒素を追加投入して中間生成物を製造し、この中間生成物をNaFと反応させる2ステップ反応を通じてトリフルオロアミンオキシド(F3NO)を合成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国公開特許2003/0143846 A1
【特許文献2】韓国登録特許10-2010460 B1
【特許文献3】韓国登録特許10-2010466 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、前述した特許文献2と特許文献3に開示されたトリフルオロアミンオキシドの合成方法によれば、中間生成物をNaFと反応させる2番目のステップの反応のためには、真空雰囲気下で約150℃~200℃の温度に加熱しなければならない。その結果、真空工程が可能な高価な反応器を用いなければならないだけでなく、熱分解のために加熱工程が必須になるため、トリフルオロアミンオキシドの製造費用を上昇させる要因となる。 また、熱分解反応の進行速度が遅く、熱分解反応に相当な時間がかかるので、生産性が高くない。
【0012】
したがって、本発明が解決しようとする一つの課題は、SbF5/NF3/N2O反応システムを用いるトリフルオロアミンオキシドの製造工程において、製造費用を低減することができ、また生産性の高いトリフルオロアミンオキシドの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような課題を解決するための本発明の一実施例によるトリフルオロアミンオキシドの製造方法は、SbF5の反応触媒の下で三フッ化窒素(nitrogentrifluoride)と亜酸化窒素(nitrous oxide)とを同時に投入して反応させて中間生成物を製造するステップと、前記中間生成物をフッ化カリウム(potassium fluoride)と反応させてトリフルオロアミンオキシド(trifluoroamine oxide)を製造するステップとを備える。
【0014】
前記一実施例の一側面によれば、前記中間生成物をフッ化カリウムと反応させるステップは、大気圧および常温条件下で遂行できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施例によれば、SbF5/NF3/N2O反応システムを用いるトリフルオロアミンオキシドの製造工程で、中間生成物であるNF2OSbF6を分解してトリフルオロアミンオキシドを合成するにあたって、既存のフッ化ナトリウムの代わりにフッ化カリウムをNF2OSbF6と反応させるため、真空装置や追加的な加熱工程が必要でなく、大気圧および常温下での自発的に反応が行われるので、製造コストを下げることができるだけでなく、生産性も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るトリフルオロアミンオキシドの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態および実施例を説明する。ただし、以下の実施形態および実施例は、本発明の好ましい構成を例示的に説明するものに過ぎず、本発明の範囲はこれらの構成に限定されない。そして、以下の説明において、装置のハードウェア構成およびソフトウェア構成、処理の流れ、製造条件、大きさ、材質、形状等は、特に特定の記載がない限り、本発明の範囲をこれに限定しようとする趣旨ではない。
【0018】
後述の本発明の実施例によるトリフルオロアミンオキシドを製造する方法によれば、前述の特許文献2や特許文献3に開示されたSbF5/NF3/N2Oの反応システムを用いたトリフルオロアミンオキシドの合成過程において、中間生成物であるNF2OSbF6を分解してトリフルオロアミンオキシドを合成するにあたり、NF2OSbF6と反応させる反応物として、真空下で約150℃から200℃の加熱が必要なフッ化ナトリウム(NaF)ではなく、大気圧および常温でも自発的反応するフッ化カリウム(KF)を用いる。これによると、反応器として真空設備が必要ではなく、また反応のために追加加熱が必要でないため、製造費用を下げることができる。また、反応速度が速く、生産性も向上させることが可能である。
【0019】
図1は、本発明の一実施例によるトリフルオロアミンオキシドの製造方法を示すフローチャートである。
【0020】
図1を参照すると、本発明の一実施例によるトリフルオロアミンオキシドの製造方法は、SbF
5の反応触媒の下で、三フッ化窒素および亜酸化窒素を同時に投入して反応させて、中間生成物を製造するステップS10と、前記中間生成物をフッ化カリウムと反応させてトリフルオロアミンオキシドを製造するステップとS20を含む。この際、中間生成物をフッ化カリウムと反応させるステップは、大気圧および常温の条件下で遂行することができる。
【0021】
以下、本実施例によるトリフルオロアミンオキシドの製造方法について各ステップ別に詳しく説明する。
【0022】
まず、本発明の一実施例によるトリフルオロアミンオキシドの製造方法は、反応触媒の下で、三フッ化窒素(nitrogen trifluoride)および亜酸化窒素(nitrous oxide)を反応させて中間生成物を製造するステップS10を含む。
【0023】
前記中間生成物を製造するステップでは、下記反応式1または反応式2の反応が行われるか、または反応式1および2の反応が同時に行われる。反応式1及び2において、反応触媒はSbF5である。前記反応触媒を用いた反応式の一例が下記反応式1、2で表される。
【0024】
<反応式1>
【0025】
NF3 + N2O + SbF5 → NF2OSbF6 + N2
【0026】
<反応式2>
【0027】
NF3 + N2O + 2SbF5 → NF2OSb2F11 + N2
【0028】
中間生成物を製造するステップS10においては、生成された窒素(N2)と、これと混ぜ合っている反応ガスとを除去し、純粋な三フッ化窒素および亜酸化窒素を追加的に投入することで、反応時間を低減することができる。
【0029】
中間生成物を製造するステップS10では、反応式1および反応式2の反応が進むにつれ反応速度が遅くなり、最終的に反応時間が80時間以上と非常に長くなる。このような問題点を解決するために、中間生成物を製造するステップS10の反応の途中で、窒素(N2)およびこれと混ぜ合っている反応ガスを除去し、純粋な三フッ化窒素および亜酸化窒素を追加的に投入することで、反応時間を従来技術に比べて、80%以上、好ましくは、85%以上減らして、8時間~10時間とすることができる。
【0030】
また、中間生成物を製造するステップS10においては、窒素と反応ガスの混合物から三フッ化窒素および亜酸化窒素を分離して再利用することもできる。例えば、除去された窒素と反応ガスの混合物より蒸留工程によって窒素を除去し、三フッ化窒素および亜酸化窒素を分離して再循環させて中間生成物を製造するステップS10の反応に再利用することができる。再循環周期は、初期および残存SbF5の基準で、転換率40%~95%が好適であり、より好ましくは、50%~90%であり、さらに好ましくは、60%~85%である。前記反応において前記転換率にまで到達する時間は、2時間~3時間に過ぎず、全体の転換率100%を達成する反応時間を10時間以内にまで短縮することができる。
【0031】
このように、中間生成物を製造するステップS10の反応の途中に、窒素および反応ガスを除去し、純粋な三フッ化窒素および亜酸化窒素、又は、窒素および反応ガスの混合物から回収した三フッ化窒素および亜酸化窒素を追加的に投入することにより、反応時間を画期的に短縮することができる。また、同量のトリフルオロアミンオキシドを製造するための反応器の大きさを約1/8~1/20まで小さくすることができ、生産性において優秀な効果がある。
【0032】
この際、中間生成物を製造するステップS10における反応触媒、三フッ化窒素および亜酸化窒素の反応比は、モル比で、2:1~10:1~10であることが好ましく、2:1~5:1~5のモル比であることがより好ましく、2:2~5:2~5のモル比であることがさらに好ましく、2:3~5:3~5のモル比であることが最も好ましい。反応触媒、三フッ化窒素および亜酸化窒素の反応比は、モル数で、2:1:1が基本であり、三フッ化窒素および亜酸化窒素の比はそれぞれ1モル比~10モル比にすることができる。もし、反応触媒、三フッ化窒素および亜酸化窒素の反応比が、2:1:1のモル比の未満の場合(三フッ化窒素および亜酸化窒素の比がそれぞれ1モル比の未満の場合)には、水分吸湿性が強く発煙性のある未反応SbF5等の反応触媒が残存し、以後のトリフルオロアミンオキシド製造反応において不純物として働き、かつ、粉砕工程時に発熱及び煙(fume)の発生により作業が非常に困難になる問題がある。2:10:10を超える場合(三フッ化窒素および亜酸化窒素の比がそれぞれ10モル比を超える)には、反応の圧力が高すぎて反応器の製作コストが上昇し、反応中の爆発危険性が増える。モル比として、2:2:2(反応触媒:三フッ化窒素:亜酸化窒素)が好ましく、2:1.2:2がさらに好ましい。その理由としては、中間生成物であるNF2O-塩の生成の際に、まず反応触媒と三フッ化窒素(NF3)とが塩化反応によって1次塩を生成し、その後、亜酸化窒素(N2O)が反応するからである。したがって、相対的に反応性が劣る亜酸化窒素(N2O)を若干過量に投入することが好ましい。
【0033】
また、中間生成物を製造するステップS10の反応は、110℃~150℃の温度範囲で遂行することが好ましく、120℃~150℃の温度範囲で遂行することがより好ましく、130℃~150℃の温度範囲で遂行することが最も好ましい。もし、反応温度が110℃未満の場合には、生成された中間生成物であるNF2O-塩の融解点と近くて、固相のNF2O-塩が析出され、攪拌が難しくなり、ガス相のNF3およびN2Oの吸収が遅くなって、反応が円滑に進まない問題が生じる。反応温度が150℃を超える場合には、部分的に分解反応が生じ、原料であるNF3およびN2Oが再生成されるか、あるいは副生成物であるNO、NO2などが生成されることがあり、収率下落の原因となる。また、反応温度が高い場合、反応器に高圧がかかるようになり、原料であるNF3およびN2Oの蒸気圧も増加し、液状の反応触媒に対する吸収度も落ちて、反応器の製作費用の増加および反応速度の低下などが発生してしまう。
【0034】
中間生成物を製造するステップS10である前記反応式1および反応式2の反応は、気相-液相の反応である。すなわち、気相-気相反応ではなく、液相の中間触媒のSbF5に気相原料であるNF3およびN2Oが吸収され中和反応が起きる。したがって、反応温度は、SbF5の沸点である149.5℃より低い温度を維持することが好ましく、円滑な攪拌が可能な最小限の温度を維持することが重要である。
【0035】
さらに、中間生成物を製造するステップS10の反応は、適切な高圧反応器で進めることができ、好ましくは、反応器の内径の1/2の大きさのアンカータイプ(anchor type)の攪拌手段を含む反応器を用いることができ、前記反応器によってNF3およびN2Oの吸収を増進させて反応が円滑に進むようにするために、50rpm~800rpmの回転速度で攪拌を行うことが好ましく、100rpm~500rpmの回転速度がより好ましく、200rpm~400rpmの回転速度が最も好ましい。攪拌速度が50rpm未満の場合には、気相-液相反応において気相原料であるNF3およびN2Oの吸収速度が遅くて、反応進行が遅くなり、それによって反応器の大きさの上昇および生産性の低下を招く問題がある。攪拌速度が800rpmを超える場合には、高速攪拌による機械的摩耗の問題などが生じて、メンテナンス費用が増加する問題がある。
【0036】
攪拌機としては、Grand seal、mechanical seal、magnetic driveのタイプのものなどを用いることができるが、高温、高圧反応であることを勘案すると、magnetic driveを用いることが好ましい。前記反応に用いられる反応器の材質としては、ステンレス製、Hastelloyおよび合金などを挙げることができる。ステンレス製などのものを用いる場合、使用前にフッ素(F2)ガスを利用してパッシベーション(passivation)することが好ましい。
【0037】
また、中間生成物を製造するステップS10は、反応触媒の下で三フッ化窒素および亜酸化窒素を同時に投入して反応させたり、または三フッ化窒素を先に投入して反応させ、その後、順に亜酸化窒素を投入して反応させることが好ましい。反応触媒下で亜酸化窒素を先に投入して反応させ、その後順に三フッ化窒素を投入して反応させる場合、反応速度が極めて遅くなり、長期間の反応が必要になり、その収率も非常に低い問題がある。
【0038】
さらに、中間生成物を製造するステップS10における反応の進行程度は、消耗される原料ガスである三フッ化窒素(NF3)および亜酸化窒素(N2O)、そして生成されるガスである窒素(N2)をガスクロマトグラフィーで追跡して計算することができる。通常、標準ガスで校正(calibration)した後に分析を行う。
【0039】
具体的には、中間生成物を製造するステップにおいて、反応中にガスクロマトグラフィーTCD、5% fluorocol/carbopack Bカラム、およびmolecular sieve capillaryカラムのうち1種以上を利用して消耗される三フッ化窒素および亜酸化窒素の比率と生成される窒素の比率を追跡分析する工程をさらに含むことができる。
【0040】
次に、本発明の一実施例によるトリフルオロアミンオキシドの製造方法は、前記中間生成物をフッ化カリウム(potassium fluoride)と反応させて、トリフルオロアミンオキシド(trifluoroamine oxide)を製造するステップS20を含む。このような中間生成物とフッ化カリウムとの反応は、大気圧および常温の条件下でも自発的に進行される。
【0041】
前記トリフルオロアミンオキシド(F3NO)を製造するステップS20においては、下記反応式3または反応式4の反応が遂行されるか、または反応式3および4の反応が同時に遂行されてもよい。
【0042】
<反応式3>
【0043】
NF2OSbF6 + KF → F3NO + KSbF6
【0044】
<反応式4>
【0045】
NF2OSb2F11 + KF → F3NO + 2KSbF6
【0046】
この際、前記トリフルオロアミンオキシドを製造するステップS20における前記中間生成物およびフッ化カリウムの反応比は、1:1~4のモル比であることが好ましい。トリフルオロアミンオキシドを製造するステップの反応は、固体-固体反応である。したがって、固体-固体表面の接触が非常に重要である。本発明による反応において反応物であるNF2O-塩とフッ化カリウム(KF)との反応モル比は、フッ化カリウムの基準で1.0~4.0のモル比であることが好ましい。フッ化カリウムの投入量が1.0モルより小さい場合、反応完結が難しく、4.0モルを超える場合、投入された固体量が増加して攪拌に問題が生じかねない。固体-固体反応において反応を活性化するために、NF2O-塩とKFとの均一な混合が重要である。攪拌などの問題で十分な接触ができない場合、トリフルオロアミンオキシド(F3NO)の収率が極めて低くなる。反応物間の接触を増やすために、NF2O-塩とKFとを十分に粉砕、混合して反応を開始させることが好ましく、さらに好ましくは、原料の混合後にペレット(pellet)を成形することによって反応の円滑な進行が期待できる。
【0047】
また、前記トリフルオロアミンオキシドを製造するステップS20において、前記反応は、大気圧および常温でも自発的に進む。したがって、前記反応のために反応器を真空や減圧条件にしたり、または追加で加熱する必要がない。
【0048】
さらに、トリフルオロアミンオキシドを製造するステップS20において反応が進行する程度は、消耗されるガス材料をガスクロマトグラフィーで追跡して計算することができる。通常、標準ガスで校正(calibration)した後に分析を行う。
【0049】
具体的には、トリフルオロアミンオキシドを製造するステップS20において、反応中にガスクロマトグラフィーTCD、5% fluorocol/carbopack Bカラム、およびmolecular sieve capillaryカラムのうち1種以上を用いて、生成されるF3NOおよび副生成物(NF3、N2O及びNO)の割合を追跡分析する工程をさらに含むことができる。
【0050】
図1に示していないが、トリフルオロアミンオキシドを製造するステップS20において副産物として得られるKSbF
6を熱分解して、SbF
5を回収し、これを次の中間生成物を製造するステップS10で反応触媒として用いることもできる。これにより、SbF
5の使用量を減らすことができ、製造コストをさらに下げることができる。
【0051】
前述のように、以上の説明は実施例に過ぎず、これにより限定されるものと解釈されてはならない。本発明の技術思想は、特許請求範囲に記載された発明によってのみ特定されなければならず、それと同等の範囲内にあるすべての技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されなければならない。本発明は、前述した実施例が多様な形態に変更されて具現できるということは通常の技術者に自明である。
【国際調査報告】