(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】MDNA55及び血管内皮成長因子A(VEGF-A)の組合せ療法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/20 20060101AFI20231025BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231025BHJP
A61K 45/08 20060101ALI20231025BHJP
A61K 49/06 20060101ALI20231025BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231025BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231025BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231025BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231025BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231025BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20231025BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20231025BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20231025BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20231025BHJP
C07K 14/21 20060101ALN20231025BHJP
C07K 14/54 20060101ALN20231025BHJP
C07K 16/22 20060101ALN20231025BHJP
【FI】
A61K38/20
A61K45/00 ZNA
A61K45/08
A61K49/06
A61K39/395 N
A61P25/00
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K9/08
A61K47/42
A61K47/46
C07K19/00
G01N33/68
C07K14/21
C07K14/54
C07K16/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522391
(86)(22)【出願日】2021-10-12
(85)【翻訳文提出日】2023-05-16
(86)【国際出願番号】 CA2021051433
(87)【国際公開番号】W WO2022077102
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】316012337
【氏名又は名称】メディシナ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーチャント ファハル
【テーマコード(参考)】
2G045
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CB01
2G045DA36
4C076AA12
4C076AA99
4C076BB11
4C076CC01
4C076CC27
4C076EE41
4C076EE57
4C076FF68
4C076FF70
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
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4C084MA02
4C084MA55
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4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C084ZC752
4C084ZC781
4C084ZC782
4C085AA14
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE03
4C085EE05
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG10
4C085HH01
4C085JJ02
4C085KA09
4C085KA11
4C085KB12
4C085LL13
4C085LL18
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA02
4H045DA76
4H045DA83
4H045EA20
(57)【要約】
対象における中枢神経系(CNS)腫瘍を治療するための方法であって、対象に、MDNA55を、治療レベル以下で投与される血管内皮成長因子A(VEGF-A)阻害剤と組み合わせて投与することを含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における中枢神経系(CNS)腫瘍を治療する方法であって、前記対象に、MDNA55(配列番号1)を、治療レベル以下で投与される血管内皮成長因子A(VEGF-A)阻害剤と組み合わせて投与することを含み、前記VEGF-A阻害剤が、前記MDNA55から少なくとも2週間空けて投与される、前記方法。
【請求項2】
高レベルのIL-4受容体(IL-4R)発現を特徴とする対象における中枢神経系(CNS)腫瘍を阻害する方法であって、
a.前記CNS腫瘍をMDNA55に接触させることと、
b.前記CNS腫瘍を、治療レベル以下の血管内皮成長因子A(VEGF-A)阻害剤に、前記MDNA55との前記接触から少なくとも2週間空けて接触させることとを含む、前記方法。
【請求項3】
血管内皮成長因子A(VEGF-A)阻害剤と組み合わせたMDNA55を用いた治療の有効性を予測または判定するための方法であって、前記方法が、
a)対象におけるCNS腫瘍から得られた生物学的試料におけるIL-4受容体(IL-4R)発現のレベルを測定することと、
b)前記生物学的試料における前記IL-4R発現のレベルの測定値を定量化することと、
c)前記IL-4Rのレベルを治療の有効性と相関させることとを含み、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現が、治療レベル以下の前記血管内皮成長因子A(VEGF-A)阻害剤と組み合わせた前記MDNA55を用いた治療における治療有効性を示し、前記VEGF-A阻害剤が、前記MDNA55から少なくとも2週間空けて投与される、前記方法。
【請求項4】
前記対象が再発性CNS腫瘍または新たに診断されたCNS腫瘍を有する、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記対象がIL-4R陽性CNS腫瘍を有する、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記CNS腫瘍が、神経膠腫、膠芽腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、オリゴデンドログリア、髄膜腫、髄膜腫、神経芽腫、及び網膜芽腫からなる群より選択される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記CNS腫瘍が膠芽腫である、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記CNS腫瘍が再発性または難治性膠芽腫である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記血管内皮成長因子A(VEGF-A)阻害剤が、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))またはベバシズマブのバイオシミラーである、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記MDNA55が、前記血管内皮成長因子A(VEGF-A)阻害剤から少なくとも2週間後に投与される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記高レベルのIL-4R発現が、2+以上のパーセントスコアによって示される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記高レベルのIL-4R発現が、3+以上のパーセントスコアによって示される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記中レベルのIL-4R発現が、1+以上2+未満のパーセントスコアによって示される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記中レベルのIL-4R発現が、76~150のHスコアによって示される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記高レベルのIL-4R発現が、151~225のHスコアによって示される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記高レベルのIL-4R発現が、226~300のHスコアによって示される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記IL-4R発現のレベルが、IL-4Rα発現のレベルを測定することによって測定される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記IL-4R発現のレベルが、2型IL-4R(II型IL-4R、IL4Rα及びIL13Rα1を含む)発現のレベルである、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記IL-4R発現のレベルが、IL-4Rα発現を含むIL-4Rの免疫組織化学(IHC)染色を用いて測定される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記MDNA55が、約90μg(60mL中1.5μg/mL)、約180μg(40mL中4.5μg/mLまたは60mL中3μg/mL)、約240μg(40mL中6μg/mLまたは60mL中4μg/mL)の単回用量として投与される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記MDNA55が、60mL中約1.5μg/mLの投与量で投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記MDNA55が、40mL中約6μg/mLの投与量で投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記MDNA55が、60mL中約4μg/mLの投与量で投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記MDNA55が、約1.5μg/mL~約6μg/mLの単回用量として投与される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記MDNA55が腫瘍内に投与される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記腫瘍内投与が頭蓋内投与を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記MDNA55が人工脳脊髄液(CSF)溶液及びアルブミン中に製剤化され、前記製剤がサロゲートトレーサーとともに、それを必要とする対象に同時投与される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記サロゲートトレーサーが磁気共鳴画像(MRI)造影剤である、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記サロゲートトレーサーがガドリニウム結合トレーサーである、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記サロゲートトレーサーが、ガドリニウム-ジエチレントリアミン五酢酸(Gd-DTPA)及びガドリニウム結合アルブミン(Gd-アルブミン)からなる群より選択される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記MDNA55が頭蓋内カテーテルを介して投与される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記MDNA55が対流強化送達(CED)によって投与される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記MDNA55が、対流強化送達(CED)を介し単回用量として投与される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記MDNA55が、1本以上の頭蓋内カテーテル(1~3本のカテーテルを含む)を介して投与される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記MDNA55が、前記カテーテルを通じて、約5μL/分/カテーテル~約20μL/分/カテーテルの流量または約15μL/分/カテーテルの流量で投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記MDNA55が、前記カテーテルを通じて、約1.5μg/mLの濃度及び約15μL/分/カテーテルの流量で投与される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記VEGF-A阻害剤の治療量以下の用量が約10mg/kg未満である、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記VEGF-A阻害剤ベバシズマブまたはベバシズマブのバイオシミラーの治療量以下の用量が約7.5mg/kg以下である、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
ベバシズマブまたはベバシズマブのバイオシミラーの治療量以下の用量が約5mg/kg~約7.5mg/kgである、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記VEGF-A阻害剤ベバシズマブまたはベバシズマブのバイオシミラーの治療量以下の用量が約5mg/kg以下である、請求項1~38のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
前記MDNA55が、約240μg(40mL中6μg/mLまたは60mL中4μg/mL)の用量で投与され、ベバシズマブまたはベバシズマブのバイオシミラーの治療量以下の用量が、前記MDNA55から少なくとも2週間空けて投与される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
前記VEGF-A阻害剤が、前記MDNA55から少なくとも3週間空けて投与される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記VEGF-A阻害剤が、前記MDNA55から少なくとも4週間空けて投与される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
前記VEGF-A阻害剤が、前記MDNA55の前に投与される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
前記VEGF-A阻害剤が、前記MDNA55の後に投与される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
前記VEGF-A阻害剤が、前記MDNA55から少なくとも2週間空けて投与され、前記VEGF-A阻害剤が約5mg/kgで投与される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
前記VEGF-A阻害剤が、前記MDNA55から少なくとも3週間空けて投与され、前記VEGF-A阻害剤が約7.5mg/kgで投与される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
前記VEGF-A阻害剤が、前記MDNA55から少なくとも4週間空けて投与され、前記VEGF-Aが約7.5mg/kgで投与される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
前記MDNA55が約240μgの用量で投与される、請求項46~48のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
前記MDNA55が240μgを下回る用量で投与される、請求項46~48のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
前記VEGF-A阻害剤が、前記MDNA55から少なくとも2週間空けて、少なくとも12週間、16週間、20週間、24週間、30週間、36週間、40週間、44週間、48週間、もしくは52週間、またはそれ以上の期間の間投与される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
前記VEGF-A阻害剤が、前記MDNA55から少なくとも3週間空けて、少なくとも12週間、16週間、20週間、24週間、30週間、36週間、40週間、44週間、48週間、もしくは52週間、またはそれ以上の期間の間投与される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
前記MDNA55が、前記カテーテルを通じて、約3μL/分/カテーテル~約10μL/分/カテーテルの流量で投与される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
対象における中枢神経系(CNS)腫瘍を治療するための単位投与量製剤であって、前記製剤が、15ml~200ml中に約1.5μg/mL~6μg/mLで製剤化されたMDNA55を含み、前記MDNA55が、治療レベル以下で投与される血管内皮成長因子A(VEGF-A)阻害剤から少なくとも2週間空けて投与される、前記単位投与量製剤。
【請求項55】
前記MDNA55が、40ml中に約6μg/mLまたは60ml中に約4μg/mLで製剤化され、前記VEGF-A阻害剤が、ベバシズマブまたはベバシズマブのバイオシミラーであり、約5mg/kg~7.5mg/kgで投与される、請求項51に記載の単位投与量製剤。
【請求項56】
前記MDNA55及び/または前記VEGF-A阻害剤が、1本以上の頭蓋内カテーテル(1~3本のカテーテルを含む)を介して投与される、請求項54~55のいずれかに記載の単位投与量製剤。
【請求項57】
前記MDNA55が、前記カテーテルを通じて、約3μL/分/カテーテル~約10μL/分/カテーテルの流量で投与される、請求項54~56のいずれかに記載の単位投与量製剤。
【請求項58】
前記MDNA55が腫瘍内に投与される、請求項54~57のいずれかに記載の単位投与量製剤。
【請求項59】
前記腫瘍内投与が頭蓋内投与を含む、請求項58に記載の単位投与量製剤。
【請求項60】
前記MDNA55が人工脳脊髄液(CSF)溶液及びアルブミン中に製剤化され、前記製剤が任意選択のサロゲートトレーサーとともに、それを必要とする対象に同時投与される、請求項54~59のいずれかに記載の単位投与量製剤。
【請求項61】
前記任意選択のサロゲートトレーサーが磁気共鳴画像(MRI)造影剤である、請求項60に記載の単位投与量製剤。
【請求項62】
前記任意選択のサロゲートトレーサーがガドリニウム結合トレーサーである、請求項60に記載の単位投与量製剤。
【請求項63】
前記任意選択のサロゲートトレーサーが、ガドリニウム-ジエチレントリアミン五酢酸(Gd-DTPA)及びガドリニウム結合アルブミン(Gd-アルブミン)からなる群より選択される、請求項60に記載の単位投与量製剤。
【請求項64】
前記MDNA55及び/または前記VEGF-A阻害剤が、頭蓋内カテーテルを介して投与される、請求項54~63のいずれかに記載の単位投与量製剤。
【請求項65】
前記MDNA55及び/または前記VEGF-A阻害剤が、対流強化送達(CED)によって投与される、請求項54~64のいずれかに記載の単位投与量製剤。
【請求項66】
前記MDNA55及び/または前記VEGF-A阻害剤が、対流強化送達(CED)を介して1回以上の投与量として投与される、請求項54~65のいずれかに記載の単位投与量製剤。
【請求項67】
前記MDNA55及び/または前記VEGF-A阻害剤が、対流強化送達(CED)を介して単回用量として投与される、請求項66に記載の単位投与量製剤。
【請求項68】
前記製剤が表3の製剤を含む、請求項54~67のいずれかに記載の単位投与量製剤。
【請求項69】
前記VEGF-A阻害剤が、前記MDNA55から少なくとも3週間空けて投与される、請求項54~68のいずれかに記載の単位投与量製剤。
【請求項70】
前記VEGF-A阻害剤が、前記MDNA55から少なくとも4週間空けて投与される、請求項54~68のいずれかに記載の単位投与量製剤。
【請求項71】
前記VEGF-A阻害剤が前記MDNA55の前に投与される、請求項54~70のいずれかに記載の単位投与量製剤。
【請求項72】
前記VEGF-A阻害剤が前記MDNA55の後に投与される、請求項54~70のいずれかに記載の単位投与量製剤。
【請求項73】
前記MDNA55が、表3に示される製剤に従って製剤化される、請求項1~50のいずれかに記載の方法。
【請求項74】
前記ベバシズマブのバイオシミラーが、ベバシズマブ-awwb(Mvasi)、ベバシズマブ-bvzr(Zirabev)、Aybintio(SB8)、MYL-1402O(Abevmy)、FKB238(AstraZeneca/Fujifilm Kyowa Kirin Biologics)、BCD-021、BCD500、Krabeva、BAT1706、BI 695502、CT-P16、CHS-5217、DRZ_BZ、Lumiere、Cizumab、IBI-305、MIL60、Bevax(BEVZ92)、ONS-1045、HD204、Bevacirel、HLX04、及びTX16からなる群より選択される、請求項9~50のいずれかに記載の方法。
【請求項75】
前記ベバシズマブのバイオシミラーが、ベバシズマブ-awwb(Mvasi)、ベバシズマブ-bvzr(Zirabev)、Aybintio(SB8)、MYL-1402O(Abevmy)、FKB238(AstraZeneca/Fujifilm Kyowa Kirin Biologics)、BCD-021、BCD500、Krabeva、BAT1706、BI 695502、CT-P16、CHS-5217、DRZ_BZ、Lumiere、Cizumab、IBI-305、MIL60、Bevax(BEVZ92)、ONS-1045、HD204、Bevacirel、HLX04、及びTX16からなる群より選択される、請求項55~72のいずれかに記載の単位投与量製剤。
【請求項76】
前記MDNA55が、40ml中に約6μg/mLまたは60ml中に約4μg/mLで製剤化され、前記VEGF-A阻害剤が、ベバシズマブまたはベバシズマブのバイオシミラーであり、前記MDNA55から2週間空けて約5mg/kgで投与される、請求項51に記載の単位投与量製剤。
【請求項77】
前記MDNA55が、40ml中に約6μg/mLまたは60ml中に約4μg/mLで製剤化され、前記VEGF-A阻害剤が、ベバシズマブまたはベバシズマブのバイオシミラーであり、前記MDNA55から3週間空けて約7.5mg/kgで投与される、請求項51に記載の単位投与量製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願第63/090,663号(2020年10月12日出願、表題「COMBINATION THERAPY OF CENTRAL NERVOUS SYSTEM TUMORS」)の優先権を主張し、参照により、その全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
原発性膠芽腫(GB、多形膠芽腫(GBM)と呼ばれることがある)の第一選択治療は、神経学的保存に整合する可能な限り最大の範囲でのバルク腫瘍の外科的切除と、続いて新たに診断されたGBに対する標準治療として確立しているStuppプロトコル(Stupp et al.,2005)とを含む。
【0003】
現状の治療パラダイムを用いると、ほとんどのGB患者が、標準的な第一選択治療後に腫瘍の再発/進行を経験する。再発したGBを有する患者に対する治療選択肢は非常に限られており、転帰は概して満足のいくものではない。具体的には、再発性または進行性のGBに対する化学療法レジメンは、利益を伴わない毒性を生じ、成功していない(Weller et al.,2013)。これは主に、組織特異性が欠如し、正常な組織に対する毒性が生じ、結果的に治療指数が狭いことが原因である。全生存期間がわずかな期間にとどまるため、腫瘍特異性が高く、よりロバストな細胞毒性機構及び新規の送達技法を備えた新規の抗がんモダリティが再発性GBの治療には必要である。
【0004】
再発性または進行性のGBを有する患者に対する治療選択肢は非常に限られており、ポジティブな長期的転帰は稀である。再発性GBの治療用に現在米国で承認されているのは、Gliadel(登録商標)及びベバシズマブ(Avastin(登録商標))である。ベバシズマブ(Avastinとも称される)は、VEGF-Aに結合し中和することにより血管新生を阻害するヒト化モノクローナルIgG抗体である。
【0005】
Avastin(登録商標)は、血管内皮成長因子(VEGF)受容体を標的とする抗血管新生抗体である。これは、単剤として再発性GBを有する成人患者用に示されている(新薬申請第125085号、承認日:2004/02/26)が、疾患関連症状または生存期間の改善は示されていない。Avastin(登録商標)は、客観的奏効率(ORR26%)のエンドポイントに基づいて承認された(Genentech 2016;Cohen et al.,2009;Freidman et al.,2009)。2013年に、Avastin(登録商標)は新たに診断されたGB患者における確認的試験を完了し、全生存期間の主要エンドポイントを満たさなかった。この試験結果に基づき、Genentechは、欧州連合(EU)では新たに診断されたGBに対する承認を受けなかったが、Avastin(登録商標)は、米国及び日本では依然として再発性GB用に示されている。その後、いくつかの研究が、Avastin(登録商標)または評価された組合せアプローチによる有効性を比較している。
【0006】
MDNA55は標的化免疫毒素であり、生物工学によって作られたインターロイキン-4の円順列置換バージョン(cpIL-4)が強力な細菌毒素(Pseudomonas aeruginosa外毒素(PE)触媒ドメインを含むPE A)の切断バージョンと融合したものからなる(Kreitman et al.,1994)。MDNA55は、細胞表面に発現するインターロイキン-4受容体(IL-4R)に結合し、そこで複合体全体がエンドサイトーシスされる。がん細胞のエンドソーム中に高濃度で見出されるfurin様プロテアーゼによる切断及び活性化の後、切断されたPEの触媒ドメインは細胞質中に放出され、伸長因子-2のADPリボシル化及びカスパーゼ活性化によるアポトーシス誘導を介して細胞死を誘導する(Wedekind et al.,2001)。IL-4R標的を発現しない細胞はMDNA55に結合しないため、PE媒介性細胞死の対象とならない。PE部分は、触媒ドメインを保持するが細胞結合ドメインは保持しないように操作されてある。
【0007】
膠芽腫は、患者にとって破壊的な、急速に進行するほぼ普遍的に致命的ながんである。この高悪性度タイプの脳腫瘍はかなりの罹患率を伴い、しばしば認知機能及び精神運動機能の急速な悪化という形態をとり、最先端治療が失敗した後の1年生存率はおよそ25%となっている(Lamborn et al.,2008)。現在、有効な治療法は存在しない。MDNA55は、治療的前進の潜在可能性を示している。MDNA55は、GBを有する患者の生存期間を延長する可能性を備えた合理的に設計された標的療法である。Avastin、特に治療量以下の投与量のAvastinを用いた組合せ療法が本明細書に記載されており、これはGBの治療の改善をもたらす。
【0008】
IL-4R陽性患者がMDNA55により良好に応答するかを確認し、本発明で示すように、最も応答する可能性が高い具体的な患者サブタイプを特定することにより、これらの未解決の問題を解決する一助となり、また患者の臨床転帰のさらなる改善につながり得る。全体としては、当該技術分野では、これらのIL-4R発現腫瘍の治療のためのさらなる有効な方法に対するニーズが依然として存在し、本明細書に記載のMDNA55とAvastinとの組合せ療法、特に治療量以下のAvastin投与量は、このニーズを満たすものである。
【発明の概要】
【0009】
1つの態様では、本発明の開示内容は、対象における中枢神経系(CNS)腫瘍を治療する方法を提供する。当該方法は、対象に、MDNA55(配列番号1)を、治療レベル以下で投与される血管内皮成長因子A(VEGF-A)阻害剤と組み合わせて投与することを含み、VEGF-A阻害剤は、MDNA55から少なくとも2週間空けて投与される。別の態様では、本発明の開示内容は、高レベルのIL-4受容体(IL-4R)発現を特徴とする対象における中枢神経系(CNS)腫瘍を阻害する方法を提供する。当該方法は、CNS腫瘍をMDNA55に接触させることと、CNS腫瘍を、MDNA55との接触から少なくとも2週間空けて、治療レベル以下の血管内皮成長因子A(VEGF-A)阻害剤に接触させることとを含む。別の態様では、本発明の開示内容は、血管内皮成長因子A(VEGF-A)阻害剤と組み合わせたMDNA55を用いた治療の有効性を予測または判定するための方法を提供する。当該方法は、(a)対象におけるCNS腫瘍から得られた生物学的試料におけるIL-4受容体(IL-4R)発現のレベルを測定することと、(b)生物学的試料におけるIL-4R発現のレベルの測定値を定量化することと、(c)IL-4Rのレベルを治療の有効性と相関させることとを含み、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、治療レベル以下の血管内皮成長因子A(VEGF-A)阻害剤と組み合わせたMDNA55を用いた治療における治療有効性を示し、VEGF-A阻害剤は、MDNA55から少なくとも2週間空けて投与される。
【0010】
いくつかの実施形態では、対象は、再発性CNS腫瘍または新たに診断されたCNS腫瘍を有する。いくつかの実施形態では、対象はIL-4R陽性CNS腫瘍を有する。いくつかの実施形態では、CNS腫瘍は、神経膠腫、膠芽腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、オリゴデンドログリア、髄膜腫、髄膜腫、神経芽腫、及び網膜芽腫からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、CNS腫瘍は膠芽腫である。いくつかの実施形態では、CNS腫瘍は再発性または難治性の膠芽腫である。
【0011】
いくつかの実施形態では、血管内皮成長因子A(VEGF-A)阻害剤は、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))またはベバシズマブのバイオシミラーである。
【0012】
いくつかの実施形態では、MDNA55は、血管内皮成長因子A(VEGF-A)阻害剤から少なくとも2週間後に投与される。
【0013】
いくつかの実施形態では、高レベルのIL-4R発現は、2+以上のパーセントスコアによって示される。いくつかの実施形態では、高レベルのIL-4R発現は、3+以上のパーセントスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルのIL-4R発現は、1+以上2+未満のパーセントスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルのIL-4R発現は、76~150のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、高レベルのIL-4R発現は、151~225のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、高レベルのIL-4R発現は、226~300のHスコアによって示される。
【0014】
いくつかの実施形態では、IL-4R発現のレベルは、IL-4Rα発現のレベルを測定することによって測定される。いくつかの実施形態では、IL-4R発現のレベルは、2型IL-4R(II型IL-4R、IL4Rα及びIL13Rα1を含む)発現のレベルである。いくつかの実施形態では、IL-4R発現のレベルは、IL-4Rα発現を含むIL-4Rの免疫組織化学(IHC)染色を用いて測定される。
【0015】
いくつかの実施形態では、MDNA55は、約90μg(60mL中1.5μg/mL)、約180μg(40mL中4.5μg/mLまたは60mL中3μg/mL)、約240μg(40mL中6μg/mLまたは60mL中4μg/mL)の単回用量として投与される。いくつかの実施形態では、MDNA55は、60mL中約1.5μg/mLの投与量で投与される。いくつかの実施形態では、MDNA55は、40mL中約6μg/mLの投与量で投与される。いくつかの実施形態では、MDNA55は、60mL中約4μg/mLの投与量で投与される。いくつかの実施形態では、MDNA55は、約1.5μg/mL~約6μg/mLの単回用量として投与される。
【0016】
いくつかの実施形態では、MDNA55は腫瘍内に投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍内投与は頭蓋内投与を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、MDNA55は、人工脳脊髄液(CSF)溶液及びアルブミン中に製剤化され、製剤は、サロゲートトレーサーとともに、それを必要とする対象に同時投与される。いくつかの実施形態では、サロゲートトレーサーは磁気共鳴画像(MRI)造影剤である。いくつかの実施形態では、サロゲートトレーサーはガドリニウム結合トレーサーである。いくつかの実施形態では、サロゲートトレーサーは、ガドリニウム-ジエチレントリアミン五酢酸(Gd-DTPA)及びガドリニウム結合アルブミン(Gd-アルブミン)からなる群より選択される。
【0018】
いくつかの実施形態では、MDNA55は頭蓋内カテーテルを介して投与される。いくつかの実施形態では、MDNA55は対流強化送達(CED)によって投与される。いくつかの実施形態では、MDNA55は、対流強化送達(CED)を介して単回用量として投与される。いくつかの実施形態では、MDNA55は、1本以上の頭蓋内カテーテル(1~3本のカテーテルを含む)を介して投与される。いくつかの実施形態では、MDNA55は、カテーテルを通じて、約5μL/分/カテーテル~約20μL/分/カテーテルの流量または約15μL/分/カテーテルの流量で投与される。いくつかの実施形態では、MDNA55は、約1.5μg/mLの濃度及び約15μL/分/カテーテルの流量でカテーテルを通して投与される。
【0019】
いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤の治療量以下の用量は約10mg/kgを下回る。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤はベバシズマブまたはベバシズマブのバイオシミラーであり、VEGF-A阻害剤の治療量以下の用量は約7.5mg/kg以下である。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤はベバシズマブまたはベバシズマブのバイオシミラーであり、VEGF-A阻害剤の治療量以下の用量は約5mg/kg~7.5mg/kgである。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤はベバシズマブまたはベバシズマブのバイオシミラーであり、VEGF-A阻害剤の治療量以下の用量は5mg/kg以下である。
【0020】
いくつかの実施形態では、MDNA55は、約240μg(40mL中6μg/mLまたは60mL中4μg/mL)の用量で投与され、ベバシズマブまたはベバシズマブのバイオシミラーの治療量以下の用量は、MDNA55から少なくとも2週間空けて投与される。いくつかの実施形態では、MDNA55は、約240μg(40mL中6μg/mLまたは60mL中4μg/mL)の用量で投与され、ベバシズマブまたはベバシズマブのバイオシミラーの治療量以下の用量は、MDNA55から少なくとも3週間空けて投与される。いくつかの実施形態では、MDNA55は、約240μg(40mL中6μg/mLまたは60mL中4μg/mL)の用量で投与され、ベバシズマブまたはベバシズマブのバイオシミラーの治療量以下の用量は、MDNA55から少なくとも4週間空けて投与される。
【0021】
いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤は、MDNA55の前に投与される。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤は、MDNA55の後に投与される。
【0022】
いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤は、約5mg/kgで投与され、かつMDNA55から少なくとも2週間空けて投与される。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤は、約7.5mg/kgで投与され、かつMDNA55から少なくとも3週間空けて投与される。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤は、約7.5mg/kgで投与され、かつMDNA55から少なくとも4週間空けて投与される。
【0023】
いくつかの実施形態では、MDNA55は、約240μgの用量で投与され、VEGF-A阻害剤は、MDNA55から少なくとも2週間空けて約5mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、MDNA55は、約240μgの用量で投与され、VEGF-A阻害剤は、MDNA55から少なくとも3週間空けて約7.5mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、MDNA55は、約240μgの用量で投与され、VEGF-A阻害剤は、MDNA55から少なくとも4週間空けて約7.5mg/kgの用量で投与される。
【0024】
いくつかの実施形態では、MDNA55は、240μgを下回る用量で投与され、VEGF-A阻害剤は、MDNA55から少なくとも2週間空けて約5mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、MDNA55は、240μgを下回る用量で投与され、VEGF-A阻害剤は、MDNA55から少なくとも3週間空けて約7.5mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、MDNA55は、240μgを下回る用量で投与され、VEGF-A阻害剤は、MDNA55から少なくとも4週間空けて約7.5mg/kgの用量で投与される。
【0025】
いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤は、MDNA55から少なくとも2週間空けて、少なくとも12週間、16週間、20週間、24週間、30週間、36週間、40週間、44週間、48週間、または52週間、またはそれ以上の期間の間投与される。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤は、MDNA55から少なくとも3週間空けて、少なくとも12週間、16週間、20週間、24週間、30週間、36週間、40週間、44週間、48週間、または52週間、またはそれ以上の期間の間投与される。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤は、MDNA55から少なくとも4週間空けて、少なくとも12週間、16週間、20週間、24週間、30週間、36週間、40週間、44週間、48週間、または52週間、またはそれ以上の期間の間投与される。
【0026】
いくつかの実施形態では、MDNA55は、カテーテルを通じて、約3μL/分/カテーテル~約10μL/分/カテーテルの流量で投与される。
【0027】
いくつかの実施形態では、MDNA55は、表3に示される製剤に従って製剤化される。
【0028】
いくつかの実施形態では、ベバシズマブのバイオシミラーは、ベバシズマブ-awwb(Mvasi)、ベバシズマブ-bvzr(Zirabev)、Aybintio(SB8)、MYL-1402O(Abevmy)、FKB238(AstraZeneca/Fujifilm Kyowa Kirin Biologics)、BCD-021、BCD500、Krabeva、BAT1706、BI 695502、CT-P16、CHS-5217、DRZ_BZ、Lumiere、Cizumab、IBI-305、MIL60、Bevax(BEVZ92)、ONS-1045、HD204、Bevacirel、HLX04、及びTX16からなる群より選択される。
【0029】
本開示の別の態様は、対象における中枢神経系(CNS)腫瘍を治療するための単位投与量製剤を対象とする。製剤は、15ml~200ml中に約1.5μg/mL~約6μg/mLで製剤化されたMDNA55を含み、MDNA55は、治療レベル以下で投与される血管内皮成長因子A(VEGF-A)阻害剤から少なくとも2週間空けて投与される。
【0030】
いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤は、MDNA55から少なくとも3週間空けて投与される。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤は、MDNA55から少なくとも4週間空けて投与される。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤は、MDNA55の前に投与される。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤は、MDNA55の後に投与される。
【0031】
いくつかの実施形態では、MDNA55は、40ml中約6μg/mLまたは60ml中約4μg/mLで製剤化され、VEGF-A阻害剤は、ベバシズマブまたはベバシズマブのバイオシミラーであり、約5mg/kg~約7.5mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、MDNA55は、40ml中約6μg/mLまたは60ml中約4μg/mLで製剤化され、VEGF-A阻害剤は、ベバシズマブまたはベバシズマブのバイオシミラーであり、MDNA55から2週間空けて約5mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、MDNA55は、40ml中約6μg/mLまたは60ml中約4μg/mLで製剤化され、VEGF-A阻害剤は、ベバシズマブまたはベバシズマブのバイオシミラーであり、MDNA55から3週間空けて約7.5mg/kgで投与される。
【0032】
いくつかの実施形態では、MDNA55及び/またはVEGF-A阻害剤は、1本以上の頭蓋内カテーテル(1~3本のカテーテルを含む)を介して投与される。いくつかの実施形態では、MDNA55は、カテーテルを通じて、約3μL/分/カテーテル~約10μL/分/カテーテルの流量で投与される。
【0033】
いくつかの実施形態では、MDNA55は腫瘍内に投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍内投与は頭蓋内投与を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、MDNA55製剤は、人工脳脊髄液(CSF)溶液及びアルブミン中にあり、製剤は、任意選択のサロゲートトレーサーとともに、それを必要とする対象に同時投与される。いくつかの実施形態では、任意選択のサロゲートトレーサーは磁気共鳴画像(MRI)造影剤である。いくつかの実施形態では、任意選択のサロゲートトレーサーはガドリニウム結合トレーサーである。いくつかの実施形態では、任意選択のサロゲートトレーサーは、ガドリニウム-ジエチレントリアミン五酢酸(Gd-DTPA)及びガドリニウム結合アルブミン(Gd-アルブミン)からなる群より選択される。
【0035】
いくつかの実施形態では、MDNA55及び/またはVEGF-A阻害剤は、頭蓋内カテーテルを通じて投与される。いくつかの実施形態では、MDNA55及び/またはVEGF-A阻害剤は、対流強化送達(CED)によって投与される。いくつかの実施形態では、MDNA55及び/またはVEGF-A阻害剤は、対流強化送達(CED)を介して1つ以上の投与量として投与される。いくつかの実施形態では、MDNA55及び/またはVEGF-A阻害剤は、対流強化送達(CED)を介して単回用量として投与される。
【0036】
いくつかの実施形態では、単位投与量製剤は表3の製剤を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、ベバシズマブのバイオシミラーは、ベバシズマブ-awwb(Mvasi)、ベバシズマブ-bvzr(Zirabev)、Aybintio(SB8)、MYL-1402O(Abevmy)、FKB238(AstraZeneca/Fujifilm Kyowa Kirin Biologics)、BCD-021、BCD500、Krabeva、BAT1706、BI 695502、CT-P16、CHS-5217、DRZ_BZ、Lumiere、Cizumab、IBI-305、MIL60、Bevax(BEVZ92)、ONS-1045、HD204、Bevacirel、HLX04、及びTX16からなる群より選択される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】MDNA55治療後にAvastinを投与した対象
*が生存期間の延長を示したことに関するデータを示している(
*MDNA55試験を行った後に治療用量のAvastinを投与した対象を指す)。MDNA55は、6.0μg/mLまたは9.0μg/mLで患者に投与し、患者に投与したAvastinの治療量以下の用量は、2週間ごとに5mg/kg~3週間ごとに7.5mg/kgとした。
【
図2】MDNA55治療後に治療量以下の用量のAvastinを投与した対象が生存期間の延長を示したことに関するデータを示している。実施例1で示しているように、MDNA55は、6.0μg/mLまたは9.0μg/mLで患者に投与し、投与したAvastinの治療量以下の用量は、2週間ごとに5mg/kg~3週間ごとに7.5mg/kgとした。
【
図3】MDNA55治療後に治療量以下の用量のAvastinを投与した対象が生存期間の延長を示したことに関するデータを示している。実施例1で示しているように、MDNA55は、6.0μg/mLまたは9.0μg/mLで患者に投与し、投与したAvastinの治療量以下の用量は、2週間ごとに5mg/kg~3週間ごとに7.5mg/kgとした。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本開示がより容易に理解されるように、ある特定の用語及び表現を下記及び本明細書全体で定義する。
【0040】
MDNA55は、任意選択で、対流強化送達(CED)を用いてトレーサー(MRI造影剤)とともに同時投与することができ、これにより、腫瘍内及び腫瘍周辺の薬物分布をリアルタイムでモニタリングすることができる。MDNA55は標的化免疫毒素であり、生物工学によって作られたインターロイキン-4の円順列置換バージョン(cpIL-4)が強力な細菌毒素(Pseudomonas aeruginosa外毒素(PE)触媒ドメインを含むPE A)の切断バージョンと融合したものからなる(Kreitman et al.,1994)。MDNA55は、細胞の表面に発現するインターロイキン4受容体(IL-4R)に結合し、そこで複合体全体がエンドサイトーシスされる。がん細胞のエンドソーム中に高濃度で見出されるfurin様プロテアーゼによる切断及び活性化の後、切断されたPEの触媒ドメインは細胞質中に放出され、伸長因子-2のADPリボシル化及びカスパーゼ活性化によるアポトーシス誘導を介して細胞死を誘導する(Wedekind et al.,2001)。IL-4R標的を発現しない細胞はMDNA55に結合しないため、PE媒介性細胞死の対象とならない。
【0041】
A.定義
本明細書に引用されているすべての参照文献は、完全に示されているかのように、参照により、その全体が本明細書に援用される。別段の定義がない限り、本明細書で用いられている技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。Singleton et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 3rd ed.,J.Wiley & Sons(New York,NY 2001)、March,Advanced Organic Chemistry Reactions,Mechanisms and Structure 5th ed.,J.Wiley & Sons(New York,NY 2001)及びSambrook and Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 3rd ed.,Cold Spring harbor Laboratory Press(Cold Spring Harbor,NY 2001)により、当業者は、本開示で用いられている多くの用語の一般的な指針を得られる。必要に応じて、市販のキット及び試薬の使用を伴う手順は概して、別段の記載がない限り、製造業者が定義するプロトコル及び/またはパラメーターに従って行われる。
【0042】
本明細書で使用する場合、本開示の方法で使用される遺伝子コード化されたL-エナンチオマーアミノ酸の略号は従来のものであり、以下の表1にある通りである。
【表1】
【0043】
「親水性アミノ酸」は、Eisenberg et al.,1984,J.Mol.Biol.179:125-142の正規化コンセンサス疎水性スケールによる疎水性が0未満であるアミノ酸を指す。遺伝子コード化された親水性アミノ酸としては、Thr(T)、Ser(S)、His(H)、Glu(E)、Asn(N)、Gln(Q)、Asp(D)、Lys(K)、及びArg(R)が挙げられる。
【0044】
以下の用語及び方法の説明は、本開示をより十分に説明し、当業者が本開示を実施する際の指針とするために示すものである。単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈による明確な別段の定めがない限り、1つまたは複数を指す。「または」という用語は、文脈による別段の明確な指示がない限り、記載された代替要素のうちの1つの要素、または2つ以上の要素の組合せを指す。本明細書で使用する場合、「~を含む(comprise)」は「~を含む(include)」を意味する。したがって、「AまたはBを含む」とは、付加的な要素を排除せずに「A、B、またはA及びBを含む」ことを意味する。
【0045】
別段の説明がない限り、本明細書で使用するすべての技術的用語及び科学的用語は、本開示が属する技術分野の当業者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。
【0046】
アクセッション番号:米国国立衛生研究所が管理するNCBI(National Center for Biotechnology Information)データベースにおける様々な核酸及びアミノ酸の配列に割り当てられた参照番号。本明細書に収載されたアクセッション番号は、本出願の出願日時点でデータベースに示されているように、参照により本明細書に援用される。
【0047】
天然抗体(例えば、IgG、IgM、IgD)は、ジスルフィド結合によって相互に連結されている4本のポリペプチド鎖、2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖を含む。ただし、抗体の抗原結合機能は、天然抗体のフラグメントによって実施され得ることが示されている。したがって、これらの抗原結合フラグメントが「抗体」という用語によって指示されることも意図されている。抗体という用語内に包含される結合フラグメントの具体的で非限定的な例としては、(i)VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなるFabフラグメント、(ii)VH及びCH1ドメインからなるFdフラグメント、(iii)抗体のシングルアームのVL及びVHドメインからなるFvフラグメント(scFv)、ならびに互いに結合して二価のダイマー(ダイアボディ)または三価のトライマー(トリアボディ)を形成するscFv分子、(iv)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al.,Nature 341:544-546,1989)、(v)単離された相補性決定領域(CDR)、ならびに(vi)F(ab’)2フラグメント(ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって結合している2つのFabフラグメントを含む二価のフラグメント)が挙げられる。
【0048】
ポリクローナル及びモノクローナル抗体を産生する方法は当業者に知られており、多くの抗体が利用可能である。例えば、Coligan,Current Protocols in Immunology Wiley/Greene,N.Y.,1991;及びHarlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Press,NY,1989;Stites et al.,(eds.)Basic and Clinical Immunology(4th ed.)Lange Medical Publications,Los Altos,Calif.及びそこで引用されている文献;Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice(2nd ed.)Academic Press,New York,N.Y.,1986;ならびにKohler and Milstein,Nature 256: 495-497,1975を参照。抗体調製のための他の好適な技法としては、ファージまたは同様のベクターにおける組換え抗体のライブラリーの選択が上げられる。Huse et al.,Science 246:1275-1281,1989;及びWard et al.,Nature 341:544-546,1989を参照。
【0049】
免疫グロブリン及びそのある特定のバリアントが知られており、多くは組換え細胞培養で調製されている(例えば、米国特許第4,745,055号;米国特許第4,444,487号;WO88/03565;EP256,654;EP120,694;EP125,023;Faoulkner et al.,Nature 298:286,1982;Morrison,J.Immunol.123:793,1979;Morrison et al.,Ann Rev.Immunol 2:239,1984を参照)。キメラ(ヒト化)抗体の調製に関する詳細な方法は、米国特許第5,482,856号に見出すことができる。ヒト化及び他の抗体産生及び操作技法に関するさらなる詳細は、Borrebaeck(ed),Antibody Engineering,2nd Edition Freeman and Company,NY,1995;McCafferty et al.,Antibody Engineering,A Practical Approach,IRL at Oxford Press,Oxford,England,1996;及びPaul Antibody Engineering Protocols Humana Press,Towata,N.J.,1995に見出すことができる。
【0050】
いくつかの例では、抗体は、試料中の他の分子に対する結合定数よりも少なくとも103M-1大きい、104M-1大きい、または105M-1大きい結合定数で標的タンパク質(例えば、IL4受容体などの細胞表面受容体)に特異的に結合する。いくつかの例では、特異的結合試薬(例えば、抗体(例えば、モノクローナル抗体)またはそのフラグメント)は、1nM以下の平衡定数(Kd)を有する。例えば、特異的結合剤は、標的タンパク質に少なくとも約0.1×10-8M、少なくとも約0.3×10-8M、少なくとも約0.5×10-8M、少なくとも約0.75×10-8M、少なくとも約1.0×10-8M、少なくとも約1.3×10-8M、少なくとも約1.5×10-8M、または少なくとも約2.0×10-8Mの結合親和性で結合することができる。Kd値は、例えば、競合ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)により、または表面プラズモン共鳴デバイス(例えば、Biacore T100(Biacore,Inc.,Piscataway,N.J.から入手可能))を用いて定量することができる。
【0051】
結合するまたは結合:2つ以上の分子が互いに物理的に近接している2つ以上の分子間の会合、例えば、複合体の形成。例示的な複合体は、受容体-リガンド対または抗体-抗原対である。概して、複合体中の分子の結合力が強いほど、その解離速度は遅くなる。特異的結合とは、薬剤と特異的標的との間の優先的結合を指す。このような結合は、リガンドと受容体との間の特異的な非共有結合的分子相互作用であり得る。
【0052】
このような相互作用は、結合パートナー間(または、しばしば各結合パートナーの特異的な領域もしくは部分の間)の1つの、または典型的には複数の非共有結合によって媒介される。非特異的結合部位とは対照的に、特異的結合部位は可飽和である。したがって、特異的結合を特徴付ける1つの例示的な方法は、特異的結合曲線によって行う。特異的結合曲線は、例えば、一方の結合パートナー(第1の結合パートナー)が固定量の他方の結合パートナーに結合する量を、第1の結合パートナーの濃度の関数として示す。第1の結合パートナーの濃度がこの条件下で高くなるに伴い、第1の結合パートナーの結合量は飽和する。非特異的結合部位とはさらに対照的に、互いに直接的な会合(例えば、タンパク質間相互作用)に関与する特異的結合パートナーは、過剰量のいずれかの特異的結合パートナーにより、このような会合(例えば、タンパク質複合体)から競合的に除去(または置換)することができる。このような競合アッセイ(または置換アッセイ)は、当該技術分野で非常によく知られている。
【0053】
がん:分化の喪失、成長速度の増加、周辺組織の浸潤を伴った特徴的な脱分化を経て、転移が可能な悪性新生物。残存がんとは、がんの縮小または根絶のために対象に任意の形態の治療を行った後に残存するがんのことであり、再発性がんとは、このような治療の後に再発するがんのことである。転移性がんとは、転移性がんが由来する元の(原発)がんの発生部位以外で体内の1つ以上の部位に生じたがんのことである。固形腫瘍から生じる転移性がんの場合、1つ以上の(例えば、多数の)追加の腫瘍塊は、元の腫瘍の部位の近くの部位に存在することもあれば、そこから離れた部位に存在することもある。「播種性転移性結節」または「播種性転移性腫瘍」という表現は、1つ以上の解剖学的部位に分散した複数の(典型的には多数の)転移性腫瘍を指す。例えば、腹膜内の播種性転移性結節(すなわち、播種性腹腔内癌)は、腹膜の内外に存在する器官の腫瘍から生じ得、腹膜内の多数の部位に局在し得る。このような転移性腫瘍は、それ自体が器官の表面に離散的に局在することもあれば、下部の組織に浸潤することもある。
【0054】
減少する:何かの質、量、または強さを低減すること。一例では、療法(例えば、MDNA55を用いた治療)により、例えば、療法を行わない場合の応答に比べて、(例えば、腫瘍のサイズ、腫瘍の体積、腫瘍の転移、がん細胞及び/またはがん幹細胞の数、あるいはこれらの組合せを減少させることにより)がん幹細胞集団、またはがんに関連する1つ以上の症状が減少する。特定の例では、療法は、腫瘍のサイズ、腫瘍の体積、がん細胞及び/またはがん幹細胞の数、あるいはがんの転移、あるいはこれらの組合せを、療法の後に減少させる(例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約50%、または少なくとも約90%の減少)。このような減少は、本明細書で開示する方法を用いて測定することができる。
【0055】
診断する:例えば1つ以上の診断手順の結果から、医学的状態または疾患を特定するプロセス。特定の例では、対象の予後(例えば、一定期間にわたる生存の可能性(例えば、6か月、1年、または5年の生存の可能性))を決定することを含む。具体的な例では、がんは、がん幹細胞表面の標的のうちの1つ以上を用いて、試料中のがん幹細胞の存在を検出することによって診断される。例えば、診断は、がんの特定のステージまたは転移部位の有無を判定することを含む。
【0056】
リンカー:1つ以上の薬剤を1つ以上の他の薬剤に接続するために使用される分子。例えば、リンカーを使用して、1つ以上のカーゴ部分を1つ以上の標的化部分に接続することができる。特に非限定的なリンカーの例としては、デンドリマー(例えば、合成ポリマー、ペプチド、タンパク質、及び炭水化物)が挙げられる。リンカーはさらに、1つ以上のプロテアーゼ切断部位を含むこともあれば、酸化及び/または還元による切断に対し感受性を有することもある。
【0057】
薬学的に許容される担体:「薬学的に許容される担体」という用語は、本開示で有用な、従来の薬学的に許容される担体(ビヒクル)を指す。Remington’s Pharmaceutical Sciences(E.W.Martin,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,15th Edition(1975))は、1つ以上の治療薬剤または診断薬剤(例えば、本明細書で提供するMDNA55)の薬学的送達に適した組成物及び製剤について説明している。
【0058】
概して、担体の性質は、用いられる特定の投与様式に依存する。例えば、非経口製剤としては、薬学的及び生理学的に許容される液体(例えば、水、生理食塩水、平衡塩溶液、水性デキストロース、グリセロールなど)をビヒクルとして含む注射用液を挙げることができる。生物学的に中性の担体に加えて、投与される薬学的組成物は、少量の無毒性補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、保存剤、及びpH緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレート、乳酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、及びトリエタノールアミンオレエートを含むことができる。
【0059】
薬学的薬剤または薬物:単独で、または他の治療薬剤(複数可)もしくは薬学的に許容される担体と組み合わせて対象に投与したときに、所望の治療効果を誘導可能な化学的化合物または組成物。特定の例では、薬学的薬剤(例えば、MDNA55)は、例えば、腫瘍のサイズ(例えば、体積)を低減するか、あるいはがん細胞及び/またはがん幹細胞の数を低減するか、あるいはがんの転移を低減するか、あるいはこれらの組合せにより、がんを治療する。
【0060】
組換え:組換え分子(例えば、組換え核酸分子またはタンパク質)は、天然に存在しない配列を有するか、または2つの別個の配列セグメントの人工的な組合せにより作製された配列を有する。この人工的な組合せは、化学合成により、またはより一般的には、例えば遺伝子操作技法によって、核酸の単離したセグメントを人工的に操作することにより、達成されることが多い。組換えタンパク質は、タンパク質をコードする組換え核酸を発現させることから生じるタンパク質である。
【0061】
試料:生物学的標本、例えば、生体分子(例えば、核酸分子、タンパク質、または両方)を含む試料。例示的な試料は、対象からの細胞または細胞溶解物を含む試料(例えば、末梢血(またはその一部(例えば、血清))、尿、唾液、組織生検、頬スワブ、外科的標本、穿刺吸引物、頸部試料、及び剖検材料に存在する試料)である。具体的な例では、試料は、腫瘍(例えば生検からの組織の切片)から得られ、これは、非がん細胞及び/またはがん幹細胞及びがん細胞及び/またはがん幹細胞のいずれでもある腫瘍細胞を含むことができる。いくつかの実施形態では、腫瘍試料は、中枢神経系(CNS)腫瘍からの試料である。
【0062】
配列同一性:2つ以上の核酸配列、または2つ以上のアミノ酸配列の間の同一性/類似性が、配列間の同一性または類似性の観点で表現される。配列同一性は、パーセンテージ同一性の観点で測定することができ、パーセンテージが高いほど配列の同一性が高い。配列類似性は、パーセンテージ類似性(保存的アミノ酸置換を考慮したもの)の観点で測定することができ、パーセンテージが高いほど配列の類似性が高い。核酸配列またはアミノ酸配列のホモログやオルソログは、標準的な方法を用いてアラインメントした場合、比較的高い程度の配列同一性/類似性を有する。
【0063】
比較のための配列のアラインメントの方法は、当該技術分野でよく知られている。様々なプログラム及びアラインメントアルゴリズムが以下に記載されている:Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482,1981;Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443,1970;Pearson & Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444,1988;Higgins & Sharp,Gene,73:237-44,1988;Higgins & Sharp,CABIOS 5:151-3,1989;Corpet et al.,Nuc.Acids Res.16:10881-90,1988;Huang et al.Computer Appls.in the Biosciences 8,155-65,1992;及びPearson et al.,Meth.Mol.Bio.24:307-31,1994。Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-10,1990は、配列アラインメントの方法及び相同性計算の詳細な検討を提示している。
【0064】
NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-10,1990)は、配列解析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastn、及びtblastxとともに使用するために、National Center for Biological Information(NCBI,National Library of Medicine,Building 38A,Room 8N805,Bethesda,Md.20894)を含むいくつかの出典及びインターネット上で入手可能である。さらなる情報は、NCBIウェブサイトに見出すことができる。
【0065】
BLASTNは核酸配列の比較に使用することができ、BLASTPはアミノ酸配列の比較に使用することができる。2つの核酸配列を比較するには、オプションを以下のように設定することができる: --iは、比較する第1の核酸配列を含むファイル(例えば、C:\seq1.txt)に設定;--jは、比較する第2の核酸配列を含むファイル(例えば、C:\seq2.txt)に設定;--pはblastnに設定;--oは任意の所望のファイル名(例えば、C:\output.txt)に設定;-qは1に設定;--rは2に設定;他のすべてのオプションはデフォルト設定のままにする。例えば、以下のコマンドを使用して、2つの配列の比較を含む出力ファイルを生成することができる:C:\B12seq --i c:\seq1.txt --j c:\seq2.txt --p blastn --o c:\output.txt --q --1 --r 2。
【0066】
2つのアミノ酸配列を比較するには、B12seqのオプションを以下のように設定することができる: -iは、比較される第1のアミノ酸配列を含むファイル(例えば、C:\seq1.txt)に設定;--jは、比較される第2のアミノ酸配列を含むファイル(例えば、C:\seq2.txt)に設定;、--pはblastpに設定、--oは任意の所望のファイル名(例えば、C:\output.txt)に設定;他のすべてのオプションはデフォルト設定のままとにする。例えば、以下のコマンドを使用して、2つのアミノ酸配列の比較を含む出力ファイルを生成することができる:C:\B12seq --i c:\seq1.txt --j c:\seq2.txt --p blastp --o c:\output.txt。2つの比較配列が相同性を共有する場合、指定された出力ファイルは、それらの相同領域をアラインメントされた配列として提示する。2つの比較配列が相同性を共有しない場合、指定された出力ファイルは、アラインメントされた配列を提示しない。
【0067】
ひとたびアラインメントされると、両方の配列における同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基が提示される位置の数をカウントすることにより、マッチ数が決定される。配列同一性パーセントは、マッチ数を、同定された配列に記載された配列の長さ、または関連付けられた長さ(例えば、同定された配列に記載された配列からの100個の連続するヌクレオチドまたはアミノ酸残基)で割り、次に得られた値に100を掛けることによって決定される。例えば、1154ヌクレオチドを有する試験配列とアラインメントしたときに1166のマッチを有する核酸配列は、試験配列に対し75.0パーセントの同一性を有する(1166/1554*100=75.0)。配列同一性パーセント値は、小数第2位で四捨五入する。例えば、75.11、75.12、75.13、及び75.14は75.1に切り捨て、75.15、75.16、75.17、75.18、及び75.19は75.2に切り上げる。長さの値は、常に整数となる。
【0068】
約30アミノ酸超のアミノ酸配列の比較には、デフォルトBLOSUM62マトリックスをデフォルトパラメーター(ギャップ存在コスト11、残基当たりのギャップコスト1)に設定したものを使用して、Blast 2配列機能が用いられる。ホモログは、典型的には、NCBI Basic Blast 2.0を用いてデータベース(例えば、nrまたはswissprotデータベース)とともにギャップありblastpでアミノ酸配列との完全長アラインメントに対しカウントされた少なくとも70%の配列同一性を有することを特徴とする。blastnプログラムを用いて検索されたクエリーは、DUST(Hancock and Armstrong,1994,Comput.Appl.Biosci,10:67-70)でフィルタリングされる。他のプログラムはSEGを使用する。加えて、手動のアラインメントを実施してもよい。さらに大きな類似性を有するタンパク質は、この方法によって評価すると、本明細書で提供される配列に対し、パーセンテージ同一性の増加(例えば、少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性)を示す。
【0069】
短いペプチド(約30アミノ酸未満)をアラインメントする場合、アラインメントは、Blast 2配列機能を使用して、PAM30マトリックスをデフォルトパラメーター(オープンギャップ9、拡張ギャップ1ペナルティー)に設定したものを用いて実施される。参照配列に対しさらに高い類似性を有するタンパク質は、この方法で評価すると、本明細書で提供されるカーゴ部分または標的化部分に対し、パーセンテージ同一性の増加(例えば、少なくとも約60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%の配列同一性)を示す。すべてではない塩基配列の配列同一性について比較する場合、ホモログは、典型的には10~20アミノ酸の短いウインドウにおいて少なくとも75%の配列同一性を有し、参照配列との同一性に応じて少なくとも85%、90%、95%、または98%の配列同一性を有することができる。このような短いウインドウにおいて配列同一性を決定するための方法は、NCBIウェブサイトに記載されている。
【0070】
対象:生きている多細胞脊椎生物(ヒト及び非ヒト哺乳類(例えば、実験及び獣医学的対象)を含むカテゴリー)。
【0071】
MDNA55は配列番号1として示される。
MDTTEKETFCRAATVLRQFYSHHEKDTRCLGATAQQFHRHKQLIRFLKLRDRNLWGLAGLNSCPVKEANQSTLENFLERLKTIMREKYSKCSSGGNGGHKCDITLQEIIKTLNSLTEQKTLCTELTVTDIFAASKASGGPEGGSLAALTAHQACHLPLETFTRHRQPRGWEQLEQCGYPVQRLVALYLAARLSWNQVDQVIRNALASPGSGGDLGEAIREQPEQARLALTLAAAESERFVRQGTGNDEAGAANGPADSGDALLERNYPTGAEFLGDGGDVSFSTRGTQNWTVERLLQAHRQLEERGYVFVGYHGTFLEAAQSIVFGGVRARSQDLDAIWRGFYIAGDPALAYGYAQDQEPDARGRIRNGALLRVYVPRSSLPGFYRTSLTLAAPEAAGEVERLIGHPLPLRLDAITGPEEEGGRLETILGWPLAERTVVIPSAIPTDPRNVGGDLDPSSIPDKEQAISALPDYASQPGKPPKDEL(配列番号1)
【0072】
がん細胞及び/またはがん幹細胞上の標的としては、がん細胞及び/またはがん幹細胞の表面に表示される小分子が挙げられる。このような標的を対象とする抗体は、標的化部位として使用することに加えて、標的の天然リガンド及びその誘導体として使用することもできる。
【0073】
治療薬剤は、治療過程中に、単回用量で、または複数回用量で、例えば週ごと、月ごと、または隔月ごとに投与することができる。ただし、有効量は、適用される供給源、治療される対象、治療される状態の重症度及びタイプ、ならびに投与の方式に依存し得る。
【0074】
一例では、それは、対象におけるがんの症状を部分的または完全に軽減するのに十分な量である。治療は、がんの進行を一時的に遅らせることを伴うだけでなく、がんの進行を恒久的に停止または逆行させることも含むことができる。例えば、薬学的調製物は、がんの1つ以上の症状(例えば、腫瘍のサイズ、あるいは腫瘍の数、あるいはがん細胞及び/またはがん幹細胞の数)を減少させることができ、例えば、治療調製物がない場合の量と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約90%、少なくとも約98%、またはさらには少なくとも約100%症状を減少させることができる。
【0075】
腫瘍:既存の組織の細胞から生じる、新生物または炎症性でない組織の異常な塊のことである。腫瘍は、良性(非がん性)または悪性(がん性)のいずれかとすることができる。血液学的腫瘍の例としては、限定されるものではないが、中枢神経系(CNS)癌または腫瘍が挙げられる。肉腫や癌腫などの固形腫瘍(例えば、肉腫及び癌腫)の例としては、限定されるものではないが、脳腫瘍、CNS腫瘍(例えば、神経膠腫、膠芽腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、髄膜腫、神経芽腫、及び網膜芽腫)が挙げられる。腫瘍には再発性及び/または難治性CNS腫瘍が含まれる。
【0076】
難治性:試みられた治療形態に応答しない疾患または状態(例えば、標準的な治療法に応答しない腫瘍)。
【0077】
本明細書で使用する場合、「がん」(またはがん性)、「過剰増殖性」、及び「新生物性」という用語は、自律成長能力(すなわち、急速に増殖する細胞成長を特徴とする異常な状態または状態)を有する細胞を指す。過剰増殖性及び新生物性の疾患状態は、病的(すなわち、疾患状態を特徴付けるか、または構成する)として分類されることもあれば、非病的(すなわち、正常からの逸脱であるが疾患状態とは関連しない)として分類されることもある。これらの用語は、侵襲性の組織病理学的な種類または段階にかかわらず、あらゆる種類のがん性の成長、発がんプロセス、転移性の組織、または悪性形質転換した細胞、組織もしくは器官を含むように意図されている。「病的な過剰増殖性」細胞は、悪性腫瘍の成長を特徴とする疾患状態で見られる。非病的な過剰増殖性細胞の例としては、創傷の修復と関連する細胞増殖が挙げられる。「がん」または「新生物」という用語は、肺、乳房、甲状腺、リンパ腺及びリンパ組織、生殖系、胃腸器官ならびに尿生殖器官に影響を及ぼす悪性腫瘍を含む、様々な器官系の悪性腫瘍と、概して、大半の結腸癌、腎細胞癌、前立腺癌及び/または精巣腫瘍、肺の非小細胞癌、小腸の癌、ならびに食道の癌のような悪性腫瘍を含むとみなされる腺癌を指す目的で使用する。がんとしては概して、前立腺癌、卵巣癌、乳癌、子宮体癌、多発性骨髄腫、メラノーマ、リンパ腫、小細胞肺癌を含む肺癌、腎臓癌、結腸直腸癌、膵臓癌、胃癌及び脳腫瘍を挙げることができる。
【0078】
「癌腫」という用語は、当該技術分野で認識されており、呼吸器系癌腫、胃腸系癌腫、尿生殖器系癌腫、精巣癌腫、乳房癌腫、前立腺癌腫、内分泌系癌腫及びメラノーマを含め、上皮または内分泌組織の悪性腫瘍を指す。「腺癌」は、腺組織に由来する癌腫、または腫瘍細胞が、認識可能な腺構造を形成する癌腫を指す。
【0079】
本明細書で使用する場合、「造血器新生物性障害」という用語は、造血器起源の過形成/新生物細胞を伴う(例えば、骨髄系統、リンパ系統、赤血球系統、またはこれらの前駆体細胞から生じる)疾患を指す。好ましくは、疾患は、低分化急性白血病(例えば、赤芽球性白血病及び急性巨核芽球性白血病)から生じる。さらなる例示的な骨髄性障害としては、限定されるものではないが、急性前骨髄性白血病(APML)、急性骨髄性白血病(AML)及び慢性骨髄性白血病(CML)(Vaickus,L.(1991)Crit Rev.in Oncol./Hemotol.11:267-97で概説)が挙げられ、リンパ系悪性腫瘍としては、限定されるものではないが、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(B系統ALL及びT系ALLを含む)、慢性リンパ性白血病(CLL)、前リンパ性白血病(PLL)、ヘアリー細胞白血病(HLL)、及びワルデンシュトレームマログロブリン血症(WM)が挙げられる。悪性リンパ腫のさらなる形態としては、限定されるものではないが、非ホジキンリンパ腫及びそのバリアント、末梢性T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、大顆粒リンパ性白血病(LGL)、ホジキン病、ならびにReed-Stemberg病が挙げられる。
【0080】
本明細書で使用する場合、「治療」「治療すること」などの用語は、所望の薬理学的及び/または生理学的効果を得ることを指す。その作用は、疾患またはその症状を完全もしくは部分的に予防するという観点では、予防的であってよく、及び/または疾患及び/またはその疾患に起因する有害作用の部分的もしくは完全な治癒という観点では、治療的であってよい。「治療」は、本明細書で使用する場合、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の治療のいずれも網羅し、(a)その疾患に対する素因を有するか、またはその疾患を罹患するリスクがあるが、まだその疾患と診断されていない対象において、その疾患が生じるのを予防すること、(b)その疾患を阻害すること、すなわち、その発現を阻止すること、及び(c)その疾患を軽減すること、すなわち、その疾患を好転させることを含む。治療有効量は、腫瘍の数、腫瘍のサイズを低減し、及び/または生存率を上昇させる量であることができる。
【0081】
「個体」、「対象」及び「患者」という用語は、本明細書では同義的に使用し、ヒト及び非ヒト霊長類(類人猿及びヒトを含む)、競技用哺乳動物(例えばウマ)、哺乳動物の家畜(例えば、ヒツジ、ヤギなど)、哺乳動物のペット(イヌ、ネコなど)、ならびに齧歯類(例えば、マウス、ラットなど)(ただし、これらに限らない)を含む哺乳動物を指す。
【0082】
「薬学的に許容される」及び「生理学的に許容される」という用語は、1つ以上の投与経路、in vivo送達経路または接触経路に適する生物学的に許容される製剤、気体、液体もしくは固体、またはその混合物を意味する。「薬学的に許容される」または「生理学的に許容される」組成物は、生物学的または他の点で望ましくないものではない材料であり、例えば、この材料は、実質的な望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく対象に投与することができる。「薬学的に許容される担体」としては、限定されるものではないが、薬学的投与に適合する食塩水、溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗細菌及び抗真菌剤、等張及び吸収遅延剤などを挙げることができる。補足的な活性化合物(例えば、抗生物質)も組成物に組み込むことができる。
【0083】
本明細書で使用する単位用量とは、所望の効果(例えば、治療効果)を個々にまたは集合的にもたらすように計算された所定の分量の活性材料(例えば、MDNA55)を含む物理的に別々の単位を指す。単一の単位用量または複数の単位用量を使用して、所望の効果(例えば、治療効果)をもたらすことができる。本明細書で使用する場合、「単位剤形」という表現は、治療される対象のための単位投与量として適した物理的に別々の単位を指し、各単位は、任意選択で薬学的担体(賦形剤、希釈剤、ビヒクル、または充填剤)とともに所定の分量を含み、1回以上の用量で投与されると、所望の効果(例えば、予防または治療効果)をもたらす。いくつかの実施形態では、治療的作用は、腫瘍の数を減少させることである。いくつかの実施形態では、治療的作用は、腫瘍のサイズを縮小させることである。いくつかの実施形態では、治療的作用は、生存率を上昇させることである。
【0084】
いくつかの実施形態では、単位剤形は、液体組成物または凍結乾燥(freeze-dried)状態または凍結乾燥(lyophilized)状態の組成物を含め、例えば、アンプル及びバイアル内に入っていてよく、例えば、滅菌液体担体を、in vivoでの投与または送達の前に加えることができる。個々の単位剤形は、多回用量キットまたは容器に含めることができる。抗PD-1抗体と組み合わせたIL-4ムテイン及びその薬学的組成物は、投与を容易にし投与量を均一にするために、単一または複数の単位剤形でパッケージングすることができる。
【0085】
本明細書で使用する「治療有効量」とは、単独で、または薬学的に許容される担体もしくは1つ以上の追加の治療薬剤とともに、所望の応答を誘導する薬剤の量を指す。「治療有効量」は、実験及び/または臨床試験を通じて決定可能な比較的広い範囲内に入る。例えば、in vivo注射の場合、例えば、注射は、対象の組織または血管(例えば、肝臓組織または静脈)内に直接行われる。他の有効な投与量は、用量応答曲線を定める常法の試験を通じて、当業者が容易に定めることができる。
【0086】
「有効量」または「十分な量」とは、1回用量または複数回用量で、単独で、または1つ以上の他の組成物(薬物などの治療剤)、治療、プロトコルもしくは治療レジメン剤(例えばワクチンレジメンを含む)と組み合わせて、いずれかの期間(長期または短期)の検出可能な応答、対象における予想または所望の転帰または利益であって、いずれかの測定可能もしくは検出可能な程度、またはいずれかの継続期間(例えば、数分、数時間、数日、数カ月もしくは数年、または治癒)の転帰または利益をもたらす量を指す。
【0087】
治療(例えば、改善させるか、または治療効果もしくは改善をもたらすための治療)のための「有効量」または「十分な量」の用量は典型的には、その疾患の有害な症状、転帰または合併症の1つ、複数もしくはすべて、例えば、その疾患を原因とするか、もしくはその疾患と関連する1つ以上の有害な症状、障害、疾病、病理または合併症に対する応答を、測定可能な程度までもたらすのに有効である。ただし、その疾患の進行または悪化を減少、低減、阻害、抑制、限定または制御することも、十分な結果である。いくつかの実施形態では、有効量は、腫瘍の数を減少させるのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、腫瘍のサイズを縮小させるのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、生存率を上昇させるのに十分な量である。
【0088】
「予防」及びその文法的な変形表現は、対象への接触、投与またはin vivo送達が、疾患の発症前である方法を意味する。その疾患を原因とするか、またはその疾患と関連する有害な症状、状態、合併症などの発現前に、対象への投与またはin vivo送達を行うことができる。例えば、スクリーン(例えば、遺伝子的なもの)を用いて、記載された方法及び仕様の候補としてこのような対象を特定することができるが、その対象が疾患を発現しないこともある。そのため、このような対象としては、機能的な遺伝子産物(タンパク質)の量不足や欠乏、あるいは異常な遺伝子産物(タンパク質)、部分的に機能的な遺伝子産物(タンパク質)、非機能的な遺伝子産物を産生することで疾患につながる陽性反応が出た対象、疾患の症状が現れていなくても、疾患につながる異常な、あるいは欠陥(突然変異)遺伝子産物(タンパク質)で陽性反応が出た対象が挙げられる。
【0089】
B.例示的なカーゴ部分/標的化部分の組合せ
1.MDNA55
MDNA55は、再発性/進行性膠芽腫(GB)の治療用に開発された。現在の治療パラダイムを用いると、ほとんどのGB患者が標準的な第一選択治療の後に腫瘍の再発/進行を経験する。再発したGBを有する患者に対する治療選択肢は非常に限られており、転帰は概して満足のいくものではない。具体的には、再発性または進行性GBに対する化学療法レジメンは、利益を伴わない毒性を生じ、成功していない(Weller et al.)。これは主に、組織特異性が欠如し、正常な組織に対する毒性が生じ、結果的に治療指数が狭いことが原因である。全生存期間がわずかな期間にとどまるため、腫瘍特異性が高く、よりロバストな細胞毒性機構及び新規の送達技法を備えた新規の抗がんモダリティが再発性GBの治療には必要である。
【0090】
MDNA55は、腫瘍細胞が正常細胞よりも薬物の毒性作用に感受性である標的治療アプローチを提供する、新規の治療薬である。標的のIL-4Rは、多種多様なヒトの癌腫に頻繁に強く発現することから、がん治療薬の開発に理想的でありながら十分に活用されていない標的である。IL-4Rの発現レベルは、健康な細胞及び正常な細胞の表面上では低いが、がん細胞上では数倍に増加する。成人及び小児の中枢神経系(CNS)腫瘍のがん生検及び剖検試料(再発性GB生検を含む)の多くは、IL-4Rを過剰発現することが示されている。正常な成人及び小児の脳組織では、IL-4Rの発現はほとんどまたは全く見られない(Joshi,et al.,2001,CANCER RESEARCH 61,8058-8061)。このIL-4Rの差次的発現により、MDNA55に広い治療ウインドウがもたらされる。この特徴だけでも、MDNA55は、再発性GB及びIL-4Rを過剰発現する他のCNS腫瘍の治療において理想的な候補となる。IL-4R標的を発現しない細胞はMDNA55に結合しないため、PE媒介性作用の対象とならない。
【0091】
いくつかの実施形態では、MDNA55は配列番号1である。
MDTTEKETFCRAATVLRQFYSHHEKDTRCLGATAQQFHRHKQLIRFLKLRDRNLWGLAGLNSCPVKEANQSTLENFLERLKTIMREKYSKCSSGGNGGHKCDITLQEIIKTLNSLTEQKTLCTELTVTDIFAASKASGGPEGGSLAALTAHQACHLPLETFTRHRQPRGWEQLEQCGYPVQRLVALYLAARLSWNQVDQVIRNALASPGSGGDLGEAIREQPEQARLALTLAAAESERFVRQGTGNDEAGAANGPADSGDALLERNYPTGAEFLGDGGDVSFSTRGTQNWTVERLLQAHRQLEERGYVFVGYHGTFLEAAQSIVFGGVRARSQDLDAIWRGFYIAGDPALAYGYAQDQEPDARGRIRNGALLRVYVPRSSLPGFYRTSLTLAAPEAAGEVERLIGHPLPLRLDAITGPEEEGGRLETILGWPLAERTVVIPSAIPTDPRNVGGDLDPSSIPDKEQAISALPDYASQPGKPPKDEL
【0092】
II.製剤/組成物
薬学的組成物は、MDNA55と、1つ以上の無毒性の薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、及び/またはアジュバントとを含むことができる。所望に応じて、他の活性成分を組成物に含めることができる。上記に示したように、このような組成物は、がんの治療での使用に適している。「薬学的に許容される担体」という用語は、活性成分の生物学的活性の有効性を妨げず、宿主または患者に対して毒性でない担体媒体を指す。代表的な例を下記に示す。
【0093】
薬学的組成物は、例えば、約1%~約95%のMDNA55を含むことができる。単回用量形態での投与用に製剤化された組成物は、例えば約20%~約90%のMDNA55を含むことができ、一方、単回用量形態をとらない組成物は、例えば約5%~約20%のMDNA55を含むことができる。最終製剤中のMDNA55の濃度は、少なくとも1ng/mL(例えば、少なくとも1pg/mLまたは少なくとも1mg/mL)とすることができる。例えば、最終製剤中の濃度は、約0.01μg/mL~約1,000μg/mLとすることができる。一例では、最終製剤中の濃度は約0.01mg/mL~約100mg/mLである。
【0094】
組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、持続放出製剤、または粉剤とすることができる。組成物は、従来の結合剤及び担体(例えば、トリグリセリド)を用いて、坐剤として製剤化することができる。
【0095】
MDNA55は、薬学的に許容されるビヒクルとともに送達することができる。一例として、ビヒクルは、安定性及び/または送達の性質を強化することができる。したがって、本開示は、好適なビヒクル(例えば、人工膜小胞(リポソーム、ニオソーム(noisome)、ナノソームなどを含む)、微粒子、もしくはマイクロカプセル)を含むMDNA55の製剤、または薬学的に許容されるポリマーを含むコロイド状製剤としての製剤も提供する。このようなビヒクル/ポリマーの使用は、MDNA55の持続放出を達成する上で有益であり得る。代替的に、または追加として、MDNA55製剤は、in vivoでタンパク質を安定化するための添加剤(例えば、ヒト血清アルブミン)、または当該技術分野で知られているタンパク質治療薬用の他の安定化剤を含むことができる。またMDNA55製剤は、製剤が、例えば注射またはカテーテルによって投与されるときに、製剤の逆流を防止するように作用する、1つ以上の粘度強化剤を含むことができる。このような粘度強化剤としては、限定されるものではないが、生体適合性のグリコール及びスクロースが挙げられる。
【0096】
水性懸濁液として製剤化された薬学的組成物は、1つ以上の好適な賦形剤、例えば、懸濁化剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン、トラガントガム、アカシアガム)、分散または湿潤剤(例えば、天然リン脂質(例えば、レシチン)、またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合産物(例えば、ポリオキシエチレンステアレート)、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合産物(例えば、ヘプタ-デカエチレンオキシセタノール)、またはエチレンオキシドと脂肪酸由来の部分エステル及びヘキシトールとの縮合産物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート)、またはエチレンオキシドと脂肪酸由来の部分エステル及びヘキシトール無水物との縮合産物(例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレエート))と混和した、活性化合物(複数可)を含む。また、水性懸濁液は、1つ以上の防腐剤、例えばエチル、もしくはn-プロピルp-ヒドロキシ-ベンゾエート、または1つ以上の着色剤も含むことができる。
【0097】
薬学的組成物は、活性化合物(複数可)を植物油(例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、もしくはココナッツ油)または鉱物油(例えば、液体パラフィン)に懸濁することにより、油性懸濁液として製剤化することができる。油性懸濁液は、増粘剤(例えば、ミツロウ、固形パラフィン、またはセチルアルコール)を含むことができる。このような組成物は、アスコルビン酸などの酸化防止剤を添加することによって保存することができる。
【0098】
薬学的組成物は、分散性の粉剤または粒剤として製剤化することができ、これは、後に水を加えることにより、水性懸濁液の調製に使用することができる。このような分散性の粉剤または粒剤は、1つ以上の分散もしくは湿潤剤、懸濁剤、及び/または防腐剤と混和して活性成分をもたらす。好適な分散または湿潤剤及び懸濁化剤は、上記で既に言及されたものにより例示される。
【0099】
また薬学的組成物は、水中油型エマルジョンとして製剤化することもできる。油相は、植物油(例えば、オリーブ油またはラッカセイ油)であっても鉱油(例えば、流動パラフィン)であってもよく、または油相はこれらの油の混合物であってもよい。これらの組成物に含めるのに適した乳化剤としては、天然のゴム(例えば、アラビアゴムもしくはトラガカントゴム)、天然のホスファチド(例えば、ダイズ、レシチン)、または脂肪酸及びヘキシトールから誘導されるエステルもしくは部分エステル、無水物(例えば、ソルビタンモノオレエート)、及び当該部分エステルとエチレンオキシドとの縮合産物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げられる。
【0100】
MDNA55を含む薬学的組成物は、当該技術分野で知られている方法に従い、適切な1つ以上の分散剤または湿潤剤及び/または懸濁剤(例えば、上記で言及したもの)を用いて、滅菌注射用水性または油性懸濁剤として製剤化することができる。無菌注射用調製物は、無毒の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の(例えば、1,3-ブタンジオール中溶液としての)無菌注射用の溶液または懸濁液であってもよい。用いることができるビヒクル及び溶媒としては、限定されるものではないが、水、リンゲル液、乳酸リンゲル液、及び等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。他の例としては、溶媒または懸濁媒体として従来から用いられている無菌固定油、及び様々なブランドの固定油(例えば、合成モノまたはジグリセリドを含む)が挙げられる。また、オレイン酸などの脂肪酸も注射液の調製に使用することができる。
【0101】
一例では、MDNA55を水溶性ポリマーと結合体化して、例えば、安定性もしくは循環半減期を増加させるか、または免疫原性を低減することができる。臨床的に許容される水溶性ポリマーとしては、限定されるものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリプロピレングリコールホモポリマー(PPG)、ポリオキシエチル化ポリオール(POG)(例えば、グリセロール)、及び他のポリオキシエチル化ポリオール、ポリオキシエチル化ソルビトール、またはポリオキシエチル化グルコース、及び他の炭水化物ポリマーが挙げられる。ポリペプチドをPEGなどの水溶性ポリマーと結合体化するための方法は、例えば、米国特許公開第20050106148号及びそこで引用されている文献に記載されている。一例では、ポリマーは、酸性エンドソームコンパートメントから細胞質への薬物の放出を促進するように設計されたpH感受性ポリマーである(例えば、Henry et al.,Biomacromolecules 7(8):2407-14,2006を参照)。
【0102】
上記の薬学的組成物は、意図された目的の達成に有効な量のMDNA55を含む。したがって、「治療有効量」という用語は、がんの症状を緩和するMDNA55の量を指す。化合物の治療有効用量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内にある。例えば、治療有効用量は、最初に細胞培養アッセイまたは動物モデル(例えば、本明細書に記載のもの)のいずれかで推定することができる。動物モデルを用いて、適切な濃度範囲及び投与経路も求めることができる。次にこのような情報を使用して、当業者に知られている標準的な方法を用いて他の動物(ヒトを含む)に投与するための有用な用量及び経路を決定することができる。
【0103】
また、治療効果及び毒性は、標準の薬学的手順、例えば、有効用量中央値(またはED.sub.50)(すなわち、集団の50%で治療的に有効な用量)及び致死用量中央値(またはLD.sub.50)(すなわち、集団の50%で致死する用量)の決定によっても決定することができる。治療効果及び毒性効果の用量比は「治療指数」として知られており、これはLD.sub.50/ED.sub.50という比として表すことができる。細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータは、ヒトまたは動物に使用するための様々な投与量を製剤化するために使用することができる。このような組成物に含まれる投与量は、通常は、ED.sub.50を含み、毒性をほとんどまたは全く示さない濃度範囲内にある。投与量は、用いる剤形、対象の感受性、及び投与経路などに応じて、この範囲内で変化する。使用され得る例示的な投与量範囲としては、少なくとも1ng/g腫瘍、少なくとも1μg/g腫瘍、または少なくとも1mg/g腫瘍が挙げられ、例えば、投与量は、約0.01μg/g腫瘍~約50μg/g腫瘍、約0.02μ/g腫瘍~約40μg/g腫瘍、約0.02μg/g腫瘍~約35μg/g腫瘍、0.03μg/g腫瘍~約25μg/g腫瘍、約0.04μg/g腫瘍~約20μg/g腫瘍、約0.04μg/g腫瘍~約10μg/g腫瘍、及び約0.5μg/g腫瘍~約2μg/g腫瘍の範囲である。
【0104】
本明細書に記載のMDNA55は配列番号1を含む。
MDTTEKETFCRAATVLRQFYSHHEKDTRCLGATAQQFHRHKQLIRFLKLRDRNLWGLAGLNSCPVKEANQSTLENFLERLKTIMREKYSKCSSGGNGGHKCDITLQEIIKTLNSLTEQKTLCTELTVTDIFAASKASGGPEGGSLAALTAHQACHLPLETFTRHRQPRGWEQLEQCGYPVQRLVALYLAARLSWNQVDQVIRNALASPGSGGDLGEAIREQPEQARLALTLAAAESERFVRQGTGNDEAGAANGPADSGDALLERNYPTGAEFLGDGGDVSFSTRGTQNWTVERLLQAHRQLEERGYVFVGYHGTFLEAAQSIVFGGVRARSQDLDAIWRGFYIAGDPALAYGYAQDQEPDARGRIRNGALLRVYVPRSSLPGFYRTSLTLAAPEAAGEVERLIGHPLPLRLDAITGPEEEGGRLETILGWPLAERTVVIPSAIPTDPRNVGGDLDPSSIPDKEQAISALPDYASQPGKPPKDEL
またMDNA55は、米国特許公開第2016/0271231号にも記載されており、参照により、その全体があらゆる目的において本明細書に援用される。
【0105】
いくつかの実施形態では、MDNA55は人工CSFで希釈される。いくつかの実施形態では、MDNA55は人工脳脊髄液(人工CSF)で希釈される。いくつかの実施形態では、人工CSFは、塩化カルシウム、デキストロース、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム二塩基性を含み、水で希釈される。いくつかの実施形態では、人工CSFはElliotts B(登録商標)溶液である。いくつかの実施形態では、人工CSFは、3μg/mLのMDNA55の最終組成を有する注入液を産生するために用いられる。いくつかの実施形態では、人工CSFは、3μg/mLのMDNA55の最終組成を有する注入液を産生するために用いられる。いくつかの実施形態では、人工CSFは、3μg/mLのMDNA55、0.02%のヒト血清アルブミン、及び任意選択で7mMのガドリニウム-ジエチレントリアミン五酢酸(Gd-DTPA、Magnevist(登録商標))の最終組成を有する注入液を産生するために用いられる。
【0106】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の製剤及び投与経路により、腫瘍及びその周囲の1cmマージン(腫瘍が広がるリスクがある)の約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%を首尾よく網羅することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の製剤及び投与経路により、腫瘍及びその周囲の1cmマージン(腫瘍が広がるリスクがある)の約80%~約100%を首尾よく網羅することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の製剤及び投与経路により、腫瘍及びその周囲の1cmマージン(腫瘍が広がるリスクがある)の約85%~約100%を首尾よく網羅することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の製剤及び投与経路により、腫瘍及びその周囲の1cmマージン(腫瘍が広がるリスクがある)の約90%~約100%を首尾よく網羅することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の製剤及び投与経路により、腫瘍及びその周囲の1cmマージン(腫瘍が広がるリスクがある)の約95%~約100%を首尾よく網羅することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の製剤及び投与経路により、腫瘍及びその周囲の1cmマージン(腫瘍が広がるリスクがある)の約100%を首尾よく網羅することができる。
【表2】
【0107】
本発明に従えば、MDNA55は、治療有効量以下の量のVEGF-A阻害剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤はAvastinである。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤はAbasinのバイオシミラーであり、限定されるものではないが、これにはベバシズマブ-awwb(Mvasi)、ベバシズマブ-bvzr(Zirabev)、Aybintio(別名SB8)、MYL-1402O(Abevmy)、FKB238(AstraZeneca/Fujifilm Kyowa Kirin Biologics)、BCD-021(Biocad(Russia))、BCD500(BIOCND(South Korea))、Krabeva(Biocon(India))、BAT1706(Bio-Thera Solutions(China))、BI 695502(Boehringer Ingelheim)、CT-P16(Celltrion(South Korea))、CHS-5217(Coherus(USA))、DRZ_BZ(Dr Reddy’s Laboratories(India))、Lumiere(Laboratorio Elea(Argentina))、Cizumab(Hetero(India))、IBI-305(Innovent Biologics(China))、MIL60(Mabworks(China))、Bevax(BEVZ92)(mAbxience(Spain))、ONS-1045(Oncobiologics/Viropro(USA))、HD204(Prestige Biopharma(Singapore))、Bevacirel(Reliance Life Sciences/Lupin(India))、HLX04(Shanghai Henlius Biotech(Fosun Pharma(China))、TX16(Tanvex BioPharma(Taiwan))が含まれる。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤はベバシズマブ-awwb(Mvasi)である。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤はベバシズマブ-bvzr(Zirabev)である。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤はAybintio(別名SB8)である。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤はMYL-1402O(Abevmy)である。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤はFKB238である。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤はBCD-021(Biocad(Russia))である。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤はBCD500である。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤はKrabevaである。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤はBAT1706()である。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤はBI 695502(Boehringer Ingelheim)である。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤はCT-P16である。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤はCHS-5217である。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤はDRZ_BZである。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤はLumiereである。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤はCizumab(Hetero(India))、IBI-305である。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤はMIL60である。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤はBevax(BEVZ92)である。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤はONS-1045である。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤はHD204である。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤はBevacirelである。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤はHLX04(Shanghai Henlius Biotech)である。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤はTX16である。
【0108】
VEGF-A阻害剤は、抗がん剤を用いた治療の前、治療中、または治療の後に投与することができる。
【0109】
「治療有効量以下の量(subtherapeutic effective amount)」または「治療有効量以下の量(sub therapeutically effective amount)」または「治療量以下の用量」または「治療量以下の投与量」という用語は、所与のVEGF-A阻害剤において、疾患を有効に治療するまたは最適な治療効果をもたらすために通常使用される量を下回るVEGF-A阻害剤の用量または投与量または量を指す。例えば、再発性膠芽腫の治療用に承認されているAvastin(ベバシズマブ)の用量は、2週間ごとに10mg/kgである。さらなる例として、ZIRABEV(ベバシズマブ-bvzr;Avastinのバイオシミラー)の承認された投与量は、2週間ごとに10mg/kgである。再発性膠芽腫の治療のためにMDNA55と組み合わせて使用されるベバシズマブまたはベバシズマブバイオシミラーの治療量以下の有効量は、10mg/kgを下回る任意の用量または投与量とすることができる。いくつかの実施形態では、再発性膠芽腫の治療のためにMDNA55と組み合わせて使用されるベバシズマブまたはベバシズマブバイオシミラーの治療有効量以下の量は、2または3週間ごとに7.5mg/kgを下回る任意の用量または投与量または量とすることができ、例えば、2週間ごとに1mg/kg~7.5mg/kg(1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、及び7.5mg/kgを含む)、または例えば3週間ごとに1mg/kg~7.5mg/kg(1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、及び7.5mg/kgを含む)7とすることができる。いくつかの実施形態では、5mg/kgのベバシズマブまたはベバシズマブバイオシミラーが、2週間ごとの有効な治療量以下の量として使用される。いくつかの実施形態では、7.5mg/kgのベバシズマブまたはベバシズマブバイオシミラーが、3週間ごとの有効な治療量以下の量として使用される。
【0110】
いくつかの実施形態では、MDNA55は、VEGF-A阻害剤(例えば、ベバシズマブまたはベバシズマブのバイオシミラー)の治療量以下の用量から少なくとも2週間(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15週間など)空けて投与される。いくつかの実施形態では、MDNA55は、VEGF-A阻害剤(例えば、ベバシズマブまたはベバシズマブのバイオシミラー)の治療量以下の用量から少なくとも3週間(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15週間など)空けて投与される。いくつかの実施形態では、MDNA55は、VEGF-A阻害剤(例えば、ベバシズマブまたはベバシズマブのバイオシミラー)の治療量以下の用量から少なくとも4週間(例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15週間など)空けて投与される。
【0111】
いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤(例えば、ベバシズマブまたはベバシズマブのバイオシミラー)は、MDNA55から少なくとも2週間空けて投与され、VEGF-A阻害剤は5mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤(例えば、ベバシズマブまたはベバシズマブのバイオシミラー)は、MDNA55から少なくとも3週間空けて投与され、VEGF-A阻害剤は7.5mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、投与されるMDNA55は約240μgの用量である。いくつかの実施形態では、MDNA55は240μgを下回る用量で投与される。
【0112】
いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤は、MDNA55から少なくとも2週間(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15週間など)空けて、少なくとも12週間、16週間、20週間、24週間、30週間、36週間、40週間、44週間、48週間、または52週間、またはそれ以上の期間の間投与される。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤は、MDNA55から少なくとも3週間(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15週間など)空けて、少なくとも12週間、16週間、20週間、24週間、30週間、36週間、40週間、44週間、48週間、または52週間、またはそれ以上の期間の間投与される。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤は、MDNA55から少なくとも4週間(例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15週間など)空けて、少なくとも12週間、16週間、20週間、24週間、30週間、36週間、40週間、44週間、48週間、または52週間、またはそれ以上の期間の間投与される。
【0113】
いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤は、MDNA55の前に投与される。いくつかの実施形態では、VEGF-A阻害剤は、MDNA55の後に投与される。
【0114】
B.MDNA55製剤の実施形態
MDNA55は配列番号1を含む。
MDTTEKETFCRAATVLRQFYSHHEKDTRCLGATAQQFHRHKQLIRFLKLRDRNLWGLAGLNSCPVKEANQSTLENFLERLKTIMREKYSKCSSGGNGGHKCDITLQEIIKTLNSLTEQKTLCTELTVTDIFAASKASGGPEGGSLAALTAHQACHLPLETFTRHRQPRGWEQLEQCGYPVQRLVALYLAARLSWNQVDQVIRNALASPGSGGDLGEAIREQPEQARLALTLAAAESERFVRQGTGNDEAGAANGPADSGDALLERNYPTGAEFLGDGGDVSFSTRGTQNWTVERLLQAHRQLEERGYVFVGYHGTFLEAAQSIVFGGVRARSQDLDAIWRGFYIAGDPALAYGYAQDQEPDARGRIRNGALLRVYVPRSSLPGFYRTSLTLAAPEAAGEVERLIGHPLPLRLDAITGPEEEGGRLETILGWPLAERTVVIPSAIPTDPRNVGGDLDPSSIPDKEQAISALPDYASQPGKPPKDEL
【0115】
MDNA55の組成:薬品は、0.5mLリン酸緩衝食塩水(10mMリン酸ナトリウム、500mM塩化ナトリウム、pH7.4±0.1)中500μg/mLの濃度のMDNA55の無菌凍結溶液として供給され、13mmテフロン面ストッパーで封止されたラベル付きの無菌単回使用2mL1型USP脱水素化透明ガラスバイアルに入っている。
【0116】
MDNA55バイアル:MDNA55は0.5mLのMDNA55(500μg/m)を含み、-70℃未満で保存することとする。バイアルには「定位的に設置されたカテーテルによる腫瘍内投与用の滅菌済み単回用量バイアル」というラベルを貼る。
【0117】
保存:薬品は、注入液の調製に必要とされるまで、その二次パッケージングにおいて-70℃+/-10℃で保存する。薬品バイアル(複数可)を保管するすべての期間において、病院内薬局の温度モニタリング記録を、試験モニターが確認できるように提供しなければならない。
【0118】
取扱い:注入液は、予め消毒された生物学的安全(垂直流)キャビネットを用いて、無菌的技法を用いて調製する。注入液の調製後、使用済み薬品バイアルは、病院内薬局の標準作業手順書に従って廃棄することとする。
【0119】
賦形剤
荷物を受け取ったら、病院の薬剤師が輸送容器を開封する。薬剤師は、内容物の状態を検査し、賦形剤キットに損傷がないことを確認しなければならない。薬剤師は、TempTaleモニターのデータをダウンロードするために、荷物に同梱された説明書に従い、さらに、荷物とともに到着する受領証明書を記入/返送して、受領時の状態を文書化及び記録しなければならない。
【0120】
いくつかの実施形態では、MDNA55はキットの一部として提供される。いくつかの実施形態では、MDNA55はキットとして提供される。いくつかの実施形態では、キットは、以下の4つの構成要素を含む。
●ヒト血清アルブミン(HSA)
●人工CSF、例えば、Elliotts B溶液
●任意選択:イメージングトレーサー、例えば、Magnevist(Gd-DTPA)
●空の静注バッグ
【0121】
容器は、閉鎖性を確保するために開口端にタンパーシールを有する。1つの注入液調製物に対し1つの賦形剤キットを使用することとする。
【0122】
賦形剤キットの構成要素:
●1×250mLボトル、HSA5%(水性)溶液
●1×単位、Elliotts B溶液(10×10mLアンプル)
●1×5mLバイアル、Gd-DTPA
●1×空(150mLサイズ)の静注バッグ
【0123】
賦形剤キットの構成要素は、本実施例に記載のMDNA55注入液調製に使用する。キットは、1回分の(1×)MDNA55注入液調製物のための材料を提供する。
【0124】
保存:賦形剤キットは、注入液の調製に必要になるまで制御された室温で保存する。
【0125】
取扱い:賦形剤キットは慎重に取り扱い、右側を上にして(キットのラベルを上にして)保存することとする。
ヒト血清アルブミン
【0126】
いくつかの実施形態では、ヒト血清アルブミン(HSA)は、最終濃度0.02%で注入液に加えて、注入液アセンブリに使用されるシリンジ、チューブ、及びカテーテルの内面にMDNA55が吸着するのを防止する。
【0127】
供給:1×250mLボトル(Octapharma HSA 5%(水性)溶液、NCT#68982-0623-02)。
【0128】
保存:製造業者が推奨する制御された室温で保存。
取扱い:HSAは、予め消毒された生物学的安全キャビネット内で無菌技法を用いて取り扱うこととする。ひとたび開封及びまたは使用したら、残りのHSAは、病院薬局の標準作業手順に従って廃棄することとする。
いくつかの実施形態では、MDNA55は人工CSFで緩衝される。いくつかの実施形態では、人工CSFは、緩衝髄腔内電解質/デキストロース注射液(Elliotts B(登録商標)溶液)である。いくつかの実施形態では、MDNA55薬品はElliott B(登録商標)溶液で希釈されている。
【0129】
いくつかの実施形態では、MDNA55は、表3に収載された成分を用いて製剤化される。
【表3】
【0130】
Elliott’s B溶液のさらなる情報。Elliotts B(登録商標)溶液は、静菌性防腐剤を含まない無菌非パイロジェン等張液である。
Elliotts B溶液は、メトトレキサートナトリウム及びシタラビンの髄腔内投与のための希釈剤である。各10mLのElliotts B溶液は以下を含む。
【表4】
【表5】
【表6】
【0131】
Elliotts B溶液のpHは6.0~7.5、オスモル濃度はリットル当たり288mOsmol(計算値)である。
【0132】
Elliotts B溶液は、メトトレキサートナトリウム及びシタラビンの髄腔内投与のための希釈剤として使用するための緩衝塩溶液を提供する。Elliotts B溶液は、pH、電解質組成、グルコース含量、及びオスモル濃度において脳脊髄液と同等であることが証明されている:
【表7】
【0133】
Elliotts B溶液のおおよその緩衝能は、チャレンジ液が0.01NのHClの場合1.1×10-2当量、チャレンジ液が0.01NのNaOHの場合7.8×10-3当量である。メトトレキサートナトリウム及びシタラビンとの適合性試験から、これらの薬物がElliotts B溶液と物理的に適合性であることが示されている。
【0134】
Elliott’s B溶液は、注入液の調製に使用される希釈剤であり、pH、電解質組成、グルコース含量、オスモル濃度、及び緩衝能において脳脊髄液と同等である。
【0135】
いくつかの実施形態では、製剤は、任意選択でガドリニウム-ジエチレントリアミン五酢酸(Gd-DTPA)Magnevist(登録商標)を含む。いくつかの実施形態では、Gd-DTPA(約1:70に希釈)は、存在する場合、造影剤として注入液に加えられる。これは、注入中にこのサロゲートトレーサーを同時注入することで、MDNA55注入液の分布をリアルタイムでモニタリングすることができるためである。任意選択で(opntioally)使用する場合、1×5mL単回使用バイアル、Gd-DTPA(Bayer HealthCare Pharmaceuticals Inc.Magnevist(登録商標);469.1mg/mL、NDC#50419-188-05)を供給し、製造者の指示に従って保存する。Gd-DTPA(Magnevist(登録商標))は、予め消毒された生物学的安全キャビネット内で無菌技法を用いて取り扱うこととする。ひとたび開封または使用したら、残りは、このような材料の廃棄を扱う規制に従って、病院薬局の標準作業手順に従って廃棄することとする。
【0136】
C.投与及び投薬
MDNA55は、CNS癌の治療、安定化、または予防に使用することができる。また、MDNA55は、低悪性度がん、再発性がん(局所再発性、遠位再発性、及び/または難治性がん(すなわち、他の抗がん治療に応答しなかったがん)を含む)、転移がん、局所進行性がん、ならびに高悪性度がんの治療に使用することができる。これらの文脈において、MDNA55は、細胞毒性作用または細胞抑制作用のいずれかを発揮することができ、その結果、例えば、がん細胞及び/またはがん幹細胞の数または成長の低減、腫瘍のサイズの低減、腫瘍のサイズの増加の低速化または防止、腫瘍の消失または除去からその再出現までの無病生存時間の増加、腫瘍の初期または後続の発生(例えば、転移)の防止、進行までの時間の増加、腫瘍に関連する1つ以上の有害な症状の低減、あるいはがんを有する対象の全体的な生存時間の増加がもたらされる。
【0137】
「一次療法」とは、対象におけるがんの最初の診断時に行う第一選択治療を指す。例示的な一次療法としては、手術、広範囲の化学療法及び放射線療法が挙げられる。「補助療法」とは、一次療法の次に行われ、再発のリスクがある対象に投与される療法を指す。全身性補助療法は、再発を遅らせたり、生存期間を延長したり、対象者を治癒させたりするために、一次療法後すぐ、例えば最後の一次療法処置から2、3、4、5、または6週間後に開始する。上述のように、MDNA55は、単独で、または1つ以上の他の化学療法剤と組み合わせて、アジュバント療法の一部として使用され得ることが企図されている。MDNA55と標準的な化学療法剤との組合せは、化学療法剤の有効性を改善するように作用し得、そのため標準的ながん療法を改善するために使用することができる。この用途は、標準的な治療に応答しない薬物抵抗性がんの治療においては特に重要であり得る。投与されるべき投与量は、規定された制限を受けないが、通常は有効量となる。組成物は、単位剤形に製剤化することができる。「単位剤形」という用語は、ヒト対象及び他の哺乳類のための単位投与量として適した物理的に別々の単位を指し、各単位は、好適な薬学的賦形剤とともに所望される治療効果をもたらすように計算された、所定の分量の活性材料を含む。単位剤形を1回投与しても、複数の単位剤形を、例えば器官または固形腫瘍の全体に投与してもよい。各投与量単位におけるMDNA55の範囲の例は約0.0005~約100mgであり、より通例的には約1.0~約1000mgである。MDNA55の1日投与量は、典型的には、少なくとも1ng/kg体重、少なくとも1μg/kg体重、少なくとも1mg/kg体重であり、例えば、単回または分割用量で約0.01~約100mg/kg体重の範囲内に収まる。ただし、投与される化合物(複数可)の実際の量は、関連する状況(治療される状態、選択された投与経路、実際の投与された化合物、個々の患者の年齢、体重、及び応答、ならびに患者の症状の重症度)に照らして医師により決定されることが理解されよう。上記の投与量範囲は単に例として示しており、いかなる形でも範囲を限定するように意図するものではない。いくつかの場合には、上述の範囲の下限値を下回る投与量レベルでも十二分であることもあれば、一方で他の場合には、例えば、1日全体で投与するために最初に大きな用量をいくつかの小さな用量に分割することにより、有害な副作用を引き起こすことなく、さらに大きな用量を用いることもある。
【0138】
MDNA55は、がんを治療及び/または管理するために使用することができ、当該方法は、それを必要とする対象に予防的または治療的に有効なレジメンを投与することを含み、レジメンは、1つ以上の療法を対象に投与することを含み、レジメンは、がん幹細胞集団における安定化または低減をもたらし、循環内皮細胞集団及び/または循環内皮前駆細胞集団の低減はもたらさないか、またはわずかな低減をもたらすにとどまる。一例では、レジメンは、がん幹細胞集団の5%~40%、10%~60%、もしくは20~99%の低減、及び/または循環内皮細胞集団の25%未満、15%未満、もしくは10%未満の低減を達成する。別の例では、レジメンは、がん星細胞集団の5%~40%、10%~60%、もしくは20~99%の低減、及び/または循環内皮前駆細胞集団の25%未満、15%未満、もしくは10%未満の低減を達成する。別の例では、レジメンは、がん幹細胞集団の5%~40%、10%~60%、もしくは20~99%の低減、及び/または循環内皮細胞集団及び循環内皮前駆細胞集団の25%未満、15%未満、もしくは10%未満の低減を達成する。具体的な例では、がん幹細胞集団の安定化または低減は、1つ以上の療法の2週間、1か月、2か月、3か月、4か月、6か月、9か月、1年、2年、3年、4年、またはそれ以上の投与の後に達成される。特定の例では、がん幹細胞集団の安定化または低減は、当該技術分野で知られている任意の方法を用いて決定することができる。ある特定の例では、レジメンに従い、循環がん幹細胞集団、循環内皮細胞集団、及び/または循環内皮前駆細胞集団は、定期的に(例えば、1つ以上の療法の2、5、10、20、30、もしくはそれ以上の用量の後、または1つ以上の療法の2週間、1か月、2か月、6か月、1年、もしくはそれ以上の投与の後)モニタリングされる。
【0139】
いくつかの実施形態では、MDNA55の単回注入は、1.5μg/mL(及び最大8μg/mL)の濃度で投与される。いくつかの実施形態では、MDNA55の単回注入は、約6μg/mLの濃度で投与される。いくつかの実施形態では、注入体積及びパラメーターは、可能な限り最大の程度で標的カバレッジを達成するために、各対象/患者ごと個別化することができる。いくつかの実施形態では、注入体積は、約7mL(最小の腫瘍)~60mL(最大の腫瘍)の範囲となる。いくつかの実施形態では、注入の持続時間は、腫瘍体積、流量、及びカテーテルの数に応じておよそ6時間~32時間となる。いくつかの実施形態では、最大送達用量は240μgとなり、これには240μg、230μg、220μg、210μg、200μg、190μg、180μg、170μg、160μg、150μg、140μg、130μg、120μg、110μg、100μg、90μg、80μg、70μg、60μg、50μg、40μg、30μg、20μg、及び10μgが含まれる。いくつかの実施形態では、投与量は頭蓋内に投与される。いくつかの実施形態では、MDNA55は、約90μg(例えば、60mL中1.5μg/mL)、約180(例えば、60mL中3μg/mLもしくは40mL中4.5μg/mL)、または約240μg(例えば、40mL中6μg/mLもしくは60mL中4μg/mL)の単回用量として投与される。いくつかの実施形態では、MDNA55は、約1.5μg/mL~約8μg/mLの単回用量として投与される。いくつかの実施形態では、MDNA55は、約4μg/mLまたは約6μg/mLの単回用量として投与される。
【0140】
いくつかの実施形態では、投薬は、対象当たり240μg、または6μg/mL×40mLのMDNA55である。いくつかの実施形態では、投薬は約1.5μg/mL~約8.0μg/mLである。いくつかの実施形態では、投薬は、約1.5μg/m、2μg/mL、2.5μg/mL、3.0μg/mL、3.5μg/mL、4μg/mL、4.5μg/mL、5μg/mL、5.5μg/mL、6μg/mL、6.5μg/mL、7μg/mL、7.5μg/mL、または8μg/mLである。いくつかの実施形態では、投与量はMDNA55に対するものである。
【0141】
いくつかの実施形態では、投薬流量は約1μL/分/カテーテル~約20μL/分/カテーテルである。いくつかの実施形態では、投薬流量は約3μL/分/カテーテル~約10μL/分/カテーテルである。いくつかの実施形態では、投薬流量は約15μL/分/カテーテルである。いくつかの実施形態では、投薬流量は約1μL/分/カテーテル~約20μL/分/カテーテルである。いくつかの実施形態では、投薬流量は約3μL/分/カテーテル~約10μL/分/カテーテルである。いくつかの実施形態では、1~4本のカテーテルが用いられる。いくつかの実施形態では、1~3本のカテーテルが用いられる。いくつかの実施形態では、1~3本のカテーテルが用いられ、流量は最大15μL/分/カテーテルである。いくつかの実施形態では、1.5μg/mLが、1~3本のカテーテル及び最大15μL/分/カテーテルの流量を介して投与される。いくつかの実施形態では、1.5μg/mLが、1~3本のカテーテル及び最大15μL/分/カテーテルの流量を介して、MDNA55の総投与量90μgで投与される。いくつかの実施形態では、3μg/mLが、1~3本のカテーテル及び最大10μL/分/カテーテルの流量を介して投与される。いくつかの実施形態では、1.5μg/mLが、1~3本のカテーテル及び最大15μL/分/カテーテルの流量を介して、MDNA55の総投与量240μgで投与される。
【0142】
D.膠芽腫の治療
いくつかの実施形態では、MDNA55は、脳腫瘍の治療のために用いられる。いくつかの実施形態では、脳腫瘍は膠芽腫(GB)である。膠芽腫(GB)は、未分化細胞の急速な増殖、広範な浸潤、及び高い再発傾向を特徴とする高悪性度の脳腫瘍である(Hamstra et al.,2005)。これは、急速に進行する普遍的に致命的ながんである。テモゾロミド(Temozolomide(登録商標))及び放射線療法を同時に用いて治療した成人の場合、生存期間中央値は14.6か月、2年生存率はおよそ30%、5年生存率はおよそ10%である。臨床的影響は、日常生活機能(例えば、食事、歩行、及び会話)を実施する能力に影響を及ぼす急速な神経学的悪化によって定義される。また、人格及びアイデンティティ(例えば、気分、記憶、感情、及び知能)に歪みが見られることもある。GBは、典型的にはCNS以外に転移することはなく、通常は、骨に囲まれた脳腔内での腫瘍の制御不能な成長によって引き起こされる頭蓋内圧の上昇及びヘルニアの結果として死に至る。資金が十分な国における原発性GBの世界的年間発生率は、およそ27,500例である(Decision Recourses,2013)。
【0143】
いくつかの実施形態では、MDNA55は、IL-4Rを過剰発現する脳腫瘍、例えば、混合型成人神経膠腫、混合型小児神経膠腫、びまん性内在性橋膠腫(DIPG)、髄芽腫、成人下垂体腺腫、髄膜腫の治療に用いられる。
【0144】
E.バイオマーカー及び患者集団
MDNA55は、特定の患者集団におけるGB(再発性GB、脳転移、新たに診断されたGB、及びびまん性内在性橋膠腫を含む)の治療に使用される。
【0145】
いくつかの実施形態では、がん生検及び剖検試料は、成人及び小児CNS腫瘍(例えば、脳腫瘍)からの試料である。いくつかの実施形態では、患者は膠芽腫(多形膠芽腫(GBM)とも呼ばれる)を有する。いくつかの実施形態では、患者は再発性GBを有する。いくつかの実施形態では、患者はGBからの脳転移を有する。いくつかの実施形態では、患者は新たに診断されたGBを有する。いくつかの実施形態では、患者はびまん性内在性橋膠腫を有する。いくつかの実施形態では、患者腫瘍試料はIL-4Rを過剰発現することが示されており、これに対し、正常な成人及び小児の脳組織ではIL-4Rの発現がほとんどまたは全くない(Puri et al.,1994a;Kawakami et al.,2002a;Joshi,et al.,2001;Konanbash et al.,2013)。理論的に束縛されるものではないが、IL-4R標的を発現しない細胞はMDNA55に結合せず、そのためPE媒介性作用を受けない(Kawakami et al.,2002)。
【0146】
いくつかの実施形態では、MDNA55は、成長率に依存しない腫瘍成長殺滅を誘導する(Li and Hall,2010)。いくつかの実施形態では、休止がん細胞及び/またはがん幹細胞、ならびに成長が遅い腫瘍微小環境(TME)の非悪性細胞は、急速に分裂する腫瘍細胞と同様のMDNA55に対する感受性を有し得る。
【0147】
いくつかの実施形態では、がん細胞はO6-メチルグアニン-メチルトランスフェラーゼ(MGMT)陽性である。いくつかの実施形態では、がん細胞はO6-メチルグアニン-メチルトランスフェラーゼ(MGMT)陰性である。いくつかの実施形態では、がん細胞はメチル化MGMT遺伝子プロモーターを有する。いくつかの実施形態では、がん細胞は非メチル化MGMT遺伝子プロモーターを有する。いくつかの実施形態では、O6-メチルグアニン-メチルトランスフェラーゼ(MGMT)陽性がん細胞(非メチル化MGMTプロモーターを保有するため、テモゾロミドに対し抵抗性を有する)は、MDNA55に対し感受性を有する。例示的な感受性CNS癌細胞株としてはT98G(膠芽腫)が挙げられ、MGMTを過剰発現することが示されている。このような細胞株は、テモゾロミドなどのアルキル化剤に対し抵抗性を有する(Huang et al.,2012;Kuo et al.,2007;Kokkinakis et al.,2003)が、MDNA55に対しては感受性を有することがある。いくつかの実施形態では、メチル化MGMT遺伝子プロモーターを保有するがん細胞は、MDNA55に対し感受性を有する。
【0148】
いくつかの実施形態では、IL-4R発現細胞株は、MDNA55に対しピコモル単位の感受性を示す。例えば、Puri et al.,1996b;Kreitman et al.,1995;Shimamura et al.,2007を参照。いくつかの実施形態では、MGMT発現腫瘍は、本発明のMDNA55に対し感受性を示す。いくつかの実施形態では、IL-4R発現腫瘍は、本発明のMDNA55に対しピコモル単位の感受性を示す。いくつかの実施形態では、IL-4R発現膠芽腫は、MDNA55に対し感受性を示す。いくつかの実施形態では、MGMT発現腫瘍は、MDNA55に対し感受性を示す。いくつかの実施形態では、MGMT発現膠芽腫は、MDNA55に対し感受性を示す。
【0149】
MDNA55のfurin様プロテアーゼ切断は、PE毒素の活性化をもたらし(Chironi et al.,1997;Shapira and Benhar,2010)、膠芽腫はしばしばfurinを発現する(Mercapide et al.,2002;Wick et al.,2004)。正常細胞に対し神経膠腫細胞ではfurinの発現レベルが高いことから、さらなる腫瘍特異性がもたらされ、またMDNA55に対するがん細胞の例外的なピコモル単位の感受性の要因にも寄与する。いくつかの実施形態では、腫瘍はfurinを発現する。いくつかの実施形態では、furinを発現する腫瘍は、正常な非腫瘍細胞よりもMDNA55に対する感受性が高い。
【0150】
IL-4Rは、CNS腫瘍によってだけでなく、免疫抑制性TMEの非悪性細胞(MDSC及びTAM)によっても過剰発現する。いくつかの実施形態では、MDNA55は、高悪性度形態の原発性及び転移性脳腫瘍を有する成人及び小児患者の治療に使用される。
【0151】
GBはロバストな免疫抑制性TMEを有し、腫瘍塊の40%を占めることがある(Kennedy et al.,2013)。近年、悪性神経膠腫が、Tヘルパー細胞2型(Th2)バイアスを有し、骨髄由来抑制細胞(MDSC)及び腫瘍関連マクロファージ(TAM)によって重度に浸潤されていることと、IL4/IL-4Rバイアスがそれらの免疫抑制機能を媒介することとが示されている(Harsyne,et al.,2016)。さらに、IL-4Rは、神経膠腫浸潤骨髄細胞上では上方調節されるが、周囲及び正常脳においては上方調節されない(Kohanbash et al.,2013)。いくつかの実施形態では、MDNA55を用いたTh2細胞、MDSC、及びTAMのパージは、がんに関連する免疫ブロックを軽減することができる。いくつかの実施形態では、免疫ブロックの軽減は、抗腫瘍免疫を促進し、長期的な疾患制御及び/または疾患治療の助けとなる。
【0152】
F.バイオマーカーまたはコンパニオン診断薬としてのIL-4R
いくつかの実施形態では、IL-4R(「IL4R」とも称される)発現のレベルは、治療レジメンの決定、及び治療有効性の予測または判定で使用するためのバイオマーカーまたはコンパニオン診断薬として用いることができる。いくつかの実施形態では、2型IL-4R(II型IL-R4、IL-4Rα及びIL-13Rα1を含む)発現のレベルは、治療レジメンの決定、及び治療効果の予測または判定で使用するためのバイオマーカーまたはコンパニオン診断薬として用いることができる。いくつかの実施形態では、IL-4Rαは、腫瘍細胞の細胞質中で反応性である。ただし、IL-4Rαは血清中でも、時として正常細胞及び正常組織構成要素の細胞質中でも観察されることがある。
【0153】
いくつかの実施形態では、IL-4R発現のレベルは、IL-4Rα発現を測定することによって決定される。いくつかの実施形態では、IL-4R発現のレベル(IL-4Rα発現のレベルを含む)は、委員会認定の病理学者によってスコア化される。いくつかの実施形態では、2型IL-4R(II型IL-4R、IL-4Rα及びIL-13Rα1を含む)の発現のレベルは、IL-4Rα発現を測定することによって決定される。いくつかの実施形態では、2型IL-4R(II型IL-R4、IL-4Rα及びIL-13Rα1を含む)の発現のレベルは、委員会認定の病理学者によってスコア化される。
【0154】
悪性腫瘍細胞のスコア化には2つの主な構成要素が存在し、以下に示すように、これにはパーセンテージスコア及びHスコア(異なる強度で記録されるパーセンテージに由来)が含まれる。いくつかの実施形態では、明らかに非新生物性の細胞で観察される任意のIL-4Rα染色は、除外することができる。いくつかの実施形態では、細胞質腫瘍細胞染色が認識される場合、悪性細胞がIL-4Rαを発現すると考えられる。
【0155】
パーセントスコア法
パーセントスコアは、1+以上、2+以上、3+以上のいずれかの腫瘍細胞における強度のパーセンテージを合計することによって計算される。したがって、スコアの範囲は0~100である。
●1+以上のパーセントスコア=(1+の%)+(2+の%)+(3+の%)
●2+以上のパーセントスコア=(2+の%)+(3+の%)
●3+以上のパーセントスコア=(3+の%)
【0156】
いくつかの実施形態では、高レベルのIL-4R発現は、2+以上のパーセントスコアによって示される。いくつかの実施形態では、高レベルのIL-4R発現は、3+以上のパーセントスコアによって示される。
【0157】
いくつかの実施形態では、中レベルのIL-4R発現は、1+以上2未満のパーセントスコアによって示される。
【0158】
いくつかの実施形態では、検出不可能レベルのIL-4R発現は、0のパーセントスコアによって示される。いくつかの実施形態では、低レベルのIL-4R発現は、1+以上のパーセントスコアによって示される。
【0159】
Hスコア法
Hスコアは、発現の強さ(褐色染色)を有する腫瘍細胞のパーセンテージにそれらの対応する強度の4ポイント半定量的スケール(0、1+、2+、3+)を掛けたものを合計することによって計算される。したがって、スコアの範囲は0~300である。
●Hスコア=[(1未満の%)×0]+[(1+の%)×1]+[(2+の%)×2]+[(3+の%)×3]
【0160】
パーセントスコア法及びH-スコア法のいずれについても、4ポイント半定量的強度スケールは以下のように説明される:0:ゼロ、陰性、または非特異的な染色、1+:低いまたは弱い染色、2+:中間または中程度の染色、3+:高いまたは強い染色。各強度におけるパーセンテージは、直接的に推定され、典型的には以下のうちの1つとして報告されるが、他の増分を使用してもよい:0、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、または100%。
【0161】
いくつかの実施形態では、レベルなし~低レベルのIL-4R発現は、0~75のHスコア(例えば、発現なし~低発現)によって示される。
【0162】
いくつかの実施形態では、中レベルのIL-4R発現は、76~150のHスコア(例えば、中発現)によって示される。
【0163】
いくつかの実施形態では、高レベルのIL-4R発現は、151~225のHスコア(例えば、高発現)によって示される。
【0164】
いくつかの実施形態では、高レベルのIL-4R発現は、226~300のHスコア(例えば、極めて高発現)によって示される。
【0165】
いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、75超のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、76~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、80~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、90~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、95~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、100~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、105~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、110~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、115~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、120~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、125~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、130~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、135~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、140~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、145~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、150~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、155~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、160~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、165~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、170~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、175~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、180~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、185~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、190~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、195~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、200~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、205~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、210~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、215~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、220~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、225~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、230~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、235~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、240~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、245~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、250~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、255~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、265~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、270~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、275~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、280~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、285~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、290~300のHスコアによって示される。いくつかの実施形態では、中レベルまたは高レベルのIL-4R発現は、295~300のHスコアによって示される。
【0166】
時として、がん試料(GB検体を含む)は、良性組織全体におけるバックグラウンドIL-4Rα染色を含んだ。このような間質性染色は、存在する場合、1+、2+、または3+の平均強度スコアで取り込んで、腫瘍細胞の周囲に存在するバックグラウンド細胞質染色のレベルを記録した。この値は、存在しない場合、NA(該当なし)として記録した。いくつかの実施形態では、高いバックグラウンド反応性は、腫瘍細胞におけるより高いIL-4Rα発現に寄与し得る。そのため、いくつかの実施形態では、悪性腫瘍細胞に対する反応性スコアを評価する際には間質性染色スコアを考慮すべきである。
【0167】
G.キット
IL-4R発現は、IHCまたはRT-PCR解析のいずれかを用いて検出することができる。いくつかの実施形態では、RT-PCRに基づく方法及び関連キットを用いることができる。いくつかの実施形態では、IL-4R抗体に基づく検出の方法及び関連キットを用いることができる。このようなキットで使用されるIL-4Rに対する抗体としては、市販品に加えて、他の知られているまたは開発されたIL-4R抗体を挙げることができる。いくつかの実施形態では、IL-4R抗体は、IL-4R発現を検出するための免疫組織化学(IHC)に基づくアッセイに用いることができる。いくつかの実施形態では、IL-4Rは、Joshiらが脳腫瘍組織の外科的/生検試料における発現をIHCにより評価した、IL-4Rα鎖に対するモノクローナル抗体である(Joshi BH,et al.,In situ expression of interleukin-4(IL-4)receptors in human brain tumors and cytotoxicity of a recombinant IL-4 cytotoxin in primary glioblastoma cell cultures.Cancer Res.2001;61:8058-8061)。GBの83%(Ichinose, M.,et al.,Cancer Res.2002;及びJohnson H,et al.,Mol.Cell Proteomics.2012 Dec;11(12):1724-40)がIL-4Rαにおいて中程度~強力に陽性であった(Joshi BH,et al.In situ expression of interleukin-4(IL-4) receptors in human brain tumors and cytotoxicity of a recombinant IL-4 cytotoxin in primary glioblastoma cell cultures. Cancer Res.2001;61:8058-8061)一方で、11個の正常脳試料中11個がIL-4Rにおける検出可能な染色を示さず、これにより腫瘍特異性が実証された。
【0168】
いくつかの実施形態では、IL-4Rのレベルは、本発明のMDNA55を用いた療法的治療のためにIL-4R陽性患者を選択するためのコンパニオン診断薬及び/または予測マーカーとして用いることができる。いくつかの実施形態では、2型IL-4R(II型IL-4R、IL-4Rα及びIL-13Rα1を含む)のレベルは、本発明のMDNA55を用いた療法的治療のためにIL-4R陽性患者を選択するためのコンパニオン診断薬及び/または予測マーカーとして用いることができる。
【0169】
いくつかの実施形態では、本発明は、IL-4Rの発現を検出するためのキットを提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、2型IL-4R(II型IL-4R、IL-4Rα及びIL-13Rα1を含む)の発現を検出するためのキットを提供する。いくつかの実施形態では、キットは、IL-4R mRNA発現レベルをRT-PCRに基づき検出するための構成要素を提供する。いくつかの実施形態では、キットは、IL-4R発現を検出または測定するための免疫組織化学(IHC)に基づくアッセイのための構成要素を提供する。いくつかの実施形態では、キットは、IL-4R抗体と、免疫組織化学(IHC)に基づくアッセイでIL-4R抗体を使用するための説明書とを含む。いくつかの実施形態では、キットはさらに、パーセントスコアを決定するための説明書を含む。いくつかの実施形態では、キットはさらに、Hスコアを決定するための説明書を含む。いくつかの実施形態では、キットは、IL-4R抗体と、免疫組織化学(IHC)に基づくアッセイでIL-4R抗体を使用するための説明書と、パーセントスコアを決定するための説明書とを含む。いくつかの実施形態では、キットは、IL-4R抗体と、免疫組織化学(IHC)に基づくアッセイでIL-4R抗体を使用するための説明書と、Hスコアを決定するための説明書とを含む。いくつかの実施形態では、キットは、IL-4Rα抗体と、免疫組織化学(IHC)に基づくアッセイでIL-4Rα抗体を使用するための説明書と、パーセントスコアを決定するための説明書とを含む。いくつかの実施形態では、キットは、IL-4Rα抗体と、免疫組織化学(IHC)に基づくアッセイでIL-4Rα抗体を使用するための説明書と、Hスコアを決定するための説明書とを含む。
【0170】
H.対流強化送達(CED)
本発明は、治療薬を直接腫瘍内に送達するためのCEDの使用を企図している。CEDについては、Patel et al.,Neurosurgery 56:1243-52,2005で説明されている(参照により、その全体が本明細書に援用される)。これにより、全身性毒性を制限しながら高い局所薬物濃度を達成することができる。当該手順は、初期の臨床開発から第3相臨床試験までの再発性GB及び他のCNS障害の治療に使用され、安全性プロファイルが良好である。いくつかの実施形態では、MDNA55は、対流強化送達(CED)によって腫瘍内に送達される。いくつかの実施形態では、CEDは、直接注入により、頭蓋内カテーテル(腫瘍のサイズに応じて1本以上)を通じて一定の圧力下で実施される。いくつかの実施形態では、これは1~7日の期間にわたって行われる。MDNA55の総用量は約90~100μgである。いくつかの実施形態では、投与量は、5μg~1mgの範囲内で調整することができる。いくつかの実施形態では、注入前、注入中、及び注入後のMRI画像は、薬物分布及び腫瘍応答をモニタリングするために使用される。いくつかの実施形態では、対象/患者は、治療後、引き続き臨床評価及びMRIによってモニタリングされる。
【0171】
いくつかの実施形態では、CEDは、MDNA55をCNS腫瘍に投与するために用いられる。いくつかの実施形態では、CEDは、CNS腫瘍の治療のためにMDNA55を投与するために用いられる。いくつかの実施形態では、CEDは、GBの治療のためにMDNA55を投与するために用いられる。いくつかの実施形態では、CEDは、進行性及び/または再発性GBの治療のためにMDNA55を投与するために用いられる。
【0172】
いくつかの実施形態では、CEDプロセスは、カテーテル配置を決定するためのプランニング高精度プランニングソフトウェア(例えば、iPlan(登録商標)Flow Infusion Version 3.0.6,Brainlab AG)の使用を用いる。いくつかの実施形態では、CEDプロセスは、脳の使用のために特に設計されたカテーテルを用いる。いくつかの実施形態では、CEDプロセスは、意図された送達部位から薬物が漏出しやすい可能性のある大口径脳室カテーテルを用いない。
【0173】
いくつかの実施形態では、CEDプロセスは、任意選択のサロゲートトレーサー(例えば、磁気共鳴画像(MRI)造影剤)の同時注入を含み、腫瘍及び浸潤縁の十分な網羅を確実にするMDNA55分布のリアルタイムモニタリングを可能にする。
【0174】
いくつかの実施形態では、任意選択のサロゲートトレーサー分子は、限定されるものではないが、任意の磁気共鳴イメージングトレーサーを含むことができる。いくつかの実施形態では、サロゲートトレーサーはガドリニウム結合トレーサーである。いくつかの実施形態では、任意選択のサロゲートトレーサーは、ガドリニウム-ジエチレントリアミン五酢酸([Magnevist(登録商標)][Gd-DTPA];Bayer Healthcare Pharmaceuticals,Incから市販)及びガドリニウム結合アルブミン(Gd-Albumin)からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、CED中に使用される任意選択のサロゲートトレーサーは、薬物分布の有効なリアルタイムモニタリングを可能にする。いくつかの実施形態では、リアルタイムモニタリングにより、MDNA55による腫瘍及び腫瘍周囲の浸潤マージンの十分な網羅を確実にすることができる。いくつかの実施形態では、サロゲートトレーサーをMDNA55と組み合わせて投与して、その分布をリアルタイムでモニタリングしながら、MDNA55が脳腫瘍などの腫瘍に治療用量で安全に送達されるかどうかを判定することができる。
【0175】
CED及び任意選択のサロゲートトレーサーに関するさらなる情報については、例えば、Chittiboina et al.,2014;Jahangiri et al.,2016;及びMurad et al.,Clin.Cancer Res.12(10):3145-51,2006を参照(これらの文献はすべて、参照により、それらの全体が本明細書に援用される)。
【0176】
I.治療のモニタリング
がん細胞及び/またはがん幹細胞を検出及び/または定量化することができる、当業者に知られている任意のin vitroまたはin vivo(ex vivo)アッセイを使用して、MDNA55を利用した治療の影響を評価するためにがん細胞及び/またはがん幹細胞をモニタリングすることができる。これらの方法は、研究環境に加えて臨床環境における影響の評価に使用することができる。これらのアッセイの結果は、次に対象の治療の変更に使用することができる。がん細胞及び/またはがん幹細胞を同定するためのアッセイは、Stassiらに対する米国特許出願第2007/0292389号(参照により本明細書に援用される)に示されている。
【0177】
がん細胞及び/またはがん幹細胞は、通常は腫瘍細胞の部分集団である。がん細胞及び/またはがん幹細胞は、細胞培養由来または対象由来の生物学的試料(例えば、腫瘍試料)に見出すことができる。様々な化合物(例えば、水、塩、グリセリン、グルコース、抗微生物剤、パラフィン、化学安定剤、ヘパリン、抗凝固剤、または緩衝剤)を試料に加えることができる。試料としては、血液、血清、尿、骨髄、または間質液を挙げることができる。別の例では、試料は組織試料である。特定の例では、組織試料は、乳房、脳、皮膚、結腸、肺、肝臓、卵巣、膵臓、前立腺、腎臓、骨、または皮膚の組織である。具体的な例では、組織試料は、正常組織または腫瘍組織の生検である。対象から採取される生物学的試料の量は、生物学的試料のタイプ及び用いられる検出の方法に応じて異なる。特定の例では、生物学的試料は血液、血清、尿、または骨髄であり、対象から採取される血液、血清、尿、または骨髄の量は、0.1mL、0.5mL、1mL、5mL、8mL、10mL、またはそれ以上である。別の例では、生物学的試料は組織であり、対象から採取される組織の量は、10ミリグラム未満、25ミリグラム未満、50ミリグラム未満、1グラム未満、5グラム未満、10グラム未満、50グラム未満、または100グラム未満である。
【0178】
試験試料は、MDNA55を用いて治療された対象に由来する試料とすることができる。試験試料は、対照試料も含むことがある。いくつかの例では、対照試料は、MDNA55を用いて治療する前の対象からの試料であり、他の例では、試験試料は、MDNA55を用いて治療された対象内の異なる部位から採取することがある。対照試料は、人工的に培養された細胞に由来することもある。試料は、試料中のがん幹細胞集団の検出及び/または測定の前に、1つ以上の前処理工程に付されることができる。特定の例では、生物学的流体は、遠心分離、濾過、沈殿、透析、クロマトグラフィー、またはそのような前処理ステップの組み合わせによって前処理される。他の例では、組織試料は、凍結、化学固定、パラフィン包埋、脱水、透過処理、またはホモジナイズに続いて遠心分離、濾過、沈殿、透析、またはクロマトグラフィー、あるいはそのような前処理ステップの組み合わせによって前処理される。特定の例では、試料中のがん細胞及び/またはがん幹細胞の量を決定する前に、幹細胞以外の細胞、またはがん細胞及び/またはがん幹細胞を試料から除去する、または試料から破片を除去することによって、試料が前処理される。
【0179】
特定の例では、対象または対象からの試料中のがん細胞及び/またはがん幹細胞の量は、ベースラインを確立するために、治療またはレジメンの前に評価される/される。他の例では、試料は、MDNA55を用いて治療された対象に由来するものである。いくつかの例では、試料は、対象が治療を開始または終了してから少なくとも約1、2、4、6、7、8、10、12、14、15、16、18、20、30、60、90日、6か月、9か月、12か月、または>12か月後に、対象から採取される。特定の例では、がん細胞及び/またはがん幹細胞の量は、ある回数の投与後(例えば、療法の2、5、10、20、30またはそれ以上の投与後)評価される。他の例では、がん細胞及び/またはがん幹細胞の量は、1つ以上の療法を受けた後、1週間、2週間、1か月、2か月、1年、2年、3年、4年またはそれ以上の後に評価される。
【0180】
がん細胞やがん幹細胞上の標的は、正常な非がん細胞上にも発現する。したがって、いくつかの例では、がん細胞及び/またはがん幹細胞の同定は、対照試料における標的結合から生成されるシグナルの相対量を、がん細胞及び/またはがん幹細胞の有無を判定する試験試料と比較することによって行うことができる。このような例では、試料中のがん細胞及び/またはがん幹細胞の数、量、量または相対量は、例えば、試料中の細胞全体、がん細胞全体または幹細胞全体の割合として表すことができる。
【0181】
がん細胞及び/またはがん幹細胞の存在、及び/またはがん細胞及び/またはがん幹細胞の存在量について試料を検査した結果は、MDNA55治療レジメンの変更を含む治療レジメンの変更に利用することができる。例えば、治療前後の検査で、がん細胞やがん幹細胞の集団が増加したり減少しなかったりすることが判明した場合、治療を変更することができる。
【0182】
がん細胞及び/またはがん幹細胞の量は、当業者に知られた標準的な技術を用いてモニター/評価することができる。がん細胞及び/またはがん幹細胞は、試料を採取し、試料中のがん細胞及び/またはがん幹細胞を検出することによってモニターすることができる。試料中のがん細胞及び/またはがん幹細胞の量(これは、例えば、細胞全体またはがん細胞全体に対するパーセンテージとして表され得る)は、がん細胞及び/またはがん幹細胞上の抗原の発現を検出することによって評価することができる。がん細胞及び/またはがん幹細胞の集団の評価には、当業者に知られた任意の技術を用いることができる。抗原発現は、例えば、ウェスタンブロット、免疫組織化学、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素連結免疫吸着法)、「サンドイッチ」免疫アッセイ、免疫沈降アッセイを含むがこれらに限定されない免疫アッセイによってアッセイされ得る、沈殿反応、ゲル拡散沈殿反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体固定アッセイ、免疫ラジオメトリックアッセイ、蛍光免疫アッセイ、免疫蛍光、プロテインA免疫アッセイ、フローサイトメトリ、FACS解析。このような状況において、対象からの試験試料中のがん細胞及び/またはがん幹細胞の量は、その結果を、参照試料(例えば、検出可能ながんを持たない対象からの試料)中の幹細胞の量、または所定の参照範囲、またはより早い時点(例えば、治療前、または治療中)における患者本人との比較により決定することができる。イムノアッセイの目的には、がん幹細胞が示す標的の1つ以上をイムノアッセイの標的として使用することができる。
【0183】
例えば、脳腫瘍細胞及び/または脳腫瘍幹細胞は、CD133+標的、ならびに脳腫瘍細胞及び/または脳腫瘍幹細胞上に発現することが知られている他の標的を用いて、同定することができる。さらなる例示的なマーカーは、Sakariassen et al.,Neoplasia 9(11):882-92,2007及びVermeulen et al.,Cell.Death Differ.15(6):947-58,2008及び米国特許出願第2008/0118518号(参照により本明細書に援用される)に見出すことができる。
【0184】
いくつかの実施形態では、治療は、下記の次のセクションで説明するように、IL-4Rバイオマーカー発現レベルを用いてモニタリングすることができる。
【0185】
いくつかの実施形態では、有効性エンドポイント(例えば、無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)、全生存期間(OS)、奏効期間(DOR)、及び臨床効果期間(DOCB))が治療後に評価される。これらの有効性エンドポイントは、治療前後の対象のIL-4Rバイオマーカー発現レベルと相関し得る。いくつかの実施形態では、無増悪生存期間(PFS)の増加が見られる。いくつかの実施形態では、客観的奏効率(ORR)の増加が見られる。いくつかの実施形態では、全生存期間(OS)の増加が見られる。いくつかの実施形態では、奏効期間(DOR)の増加が見られる。いくつかの実施形態では、臨床効果期間(DOCB)の増加が治療後に評価される。いくつかの実施形態では、有効性エンドポイントは、ベースラインに対するパーセンテージ増加として判定される。いくつかの実施形態では、増加は、ベースラインに対する約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%、またはそれ以上の増加である。いくつかの実施形態では、増加は、約1倍、2倍、3倍、4倍、及び/または5倍の増加である。
【実施例】
【0186】
実施例I.MDNA55とVEGF-A阻害剤との組合せを用いた治療
MDNA55と例示的な血管内皮成長因子A(VEGF-A)阻害剤(例えば、ベバシズマブ)との組合せの効果を、中枢神経系(CNS)腫瘍の一種である再発性または進行性膠芽腫を有する成人患者において試験した。
【0187】
MDNA55(配列番号1)は、遺伝子操作された円順列置換インターロイキン-4(cpIL-4)がPseudomonas aeruginosa外毒素A(PE)の改変バージョンと融合したものを含む融合毒素である。MDNA55は、がん細胞及び腫瘍微小環境(TME)の非悪性免疫抑制細胞によって過剰発現されるIL-4受容体(IL4R)に結合し、強力な細胞殺滅剤であるPEを送達する。高いパーセンテージの膠芽腫(GB)及びそのTMEが比較的大量のIL4Rを発現しており、それによりMDNA55の重要な標的となる。
【0188】
対流強化送達(CED)法を使用して、MDNA55及びベバシズマブ、またはMDNA55単体を、患者の腫瘍部位(複数可)内に、腫瘍内及び腫瘍周囲注入により投与した。CED法は、融合毒素に対する全身性曝露を最小限に抑え、画像誘導CED技法は、活性薬物の標的領域全体にわたる曝露を強化する。
【0189】
患者選択基準は、再発性または進行性の原発性(de novo)GB(標準RANO基準による)で、余命12週間超、Karnofsky performance status(KPS)≧70の18歳以上の男女を対象とする。対象は、介入前の磁気共鳴画像(MRI:治療予定日から14日以内)により、腫瘍径が1cm×1cm以上(最小)~4cmのいずれかの方向にあり、腫瘍がCEDの標的になりにくい特徴(例:著しい液状化、CEDを助長しない幾何学的特徴)を持つことができないこと。
【0190】
エリオット液またはアルブミンを含む人工脳脊髄液に溶解したMDNA55と治療量以下のベバシズマブをCEDを用いて別々に点滴投与し、精密計画及びリアルタイムMRIによる注入液分布のモニタリングを実施した。この注入は、MRIで観察される共融ガドリニウムトレーサーの分布によって、腫瘍と腫瘍周囲のマージンを最大限にカバーすることを目的とする。治療前のカテーテル軌道計画は、腫瘍の大きさに応じて、最大4本、最小2本のカテーテルを設置することを目標に行われた。カテーテル設置の計画は、MRIで腫瘍の増強領域だけを標的にすることになる。各対象には、MDNA55とベバシズマブの個別容量(腫瘍の大きさに応じて)が投与された。MDNA55の投与量は240μg(例えば、4.0μg/mLを60ml、6.0μg/mLを40ml)、ベバシズマブの投与量は5mg/kg~7.5mg/kgである。いくつかの実施形態では、MDNA55の投与量は240μg(例えば、60ml中4.0μg/mLまたは40ml中6.0μg/mL)、ベバシズマブの投与量は5mg/kgで、MDNA55とベバシズマブの投与の間には2週間が設けられた。いくつかの実施形態では、MDNA55の投与量は240μg(例えば、60ml中4.0μg/mLまたは40ml中6.0μg/mL)、ベバシズマブの投与量は7.5mg/kgで、MDNA55とベバシズマブの投与の間には3週間が含まれる。注入の体積は、各対象における腫瘍サイズに基づき調整した。MDNA55とAvastinは別々に、少なくとも2週間間隔(例えば、2、3、4、5または6週間)で投与された。
【0191】
各カテーテルからの注入は、3μL/分/カテーテルの速度で開始し、徐々にステップ状に増加させた。注入流量は、カテーテル1本あたりの流量が10μL/分を超えない範囲で、リアルタイムMRI(対象は麻酔下で維持)中に治験責任医師の裁量で調整された。注入流量は、注入期間が少なくとも24時間から最大約48時間となるように設定された。リアルタイムMRI注入モニタリング期間終了後、対象が覚醒した状態で残りの注入を継続した。注入液完了時に注入液分布の最終評価としてMRIを実施した。
【0192】
上記のMDNA55及びベバシズマブまたはMDNA55単独を用いた治療後、各対象の生存期間を死亡(または治験依頼者によるデータ収集の終了もしくは対象による同意の撤回)まで追跡した。
図1~3に示すように、MDNA55と治療レベル以下のベバシズマブとの組合せを用いて治療した対象は、MDNA55を単独で投与した対象と比較して、治療から死亡までの生存期間(mOS)の増加を示した。達成された生存時間は、膠芽腫の先行技術の治療法よりも有利である。
【0193】
実施例II.IL4R発現のバイオマーカー解析
上記対象からの保存腫瘍組織標本を、IL4R発現のレトロスペクティブ解析のためにCLIA認定検査機関(QualTek Molecular Laboratories,Goleta,CA)でIHC処理して、MDNA55及びベバシズマブの組合せ治療後のIL4R発現と腫瘍応答との間の相関の有無を判定した。
0、1+、2+、及び3+の半定量的スケール(及びHスコア)を用いて、各標本について盲検的様式で染色強度を調べることにより、組織切片のIL4R発現を分類した。IL4Rの染色のさらなる定量的評価には、標準化された画像解析が含まれる場合がある。有効性エンドポイント(例えば、無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)、全生存期間(OS)、奏効期間(DOR)、臨床効果期間(DOCB))をIL4R発現強度に対し評価した。
【0194】
上記に示した例は、当業者に本発明の組成物、システム及び方法の実施形態の製造方法及び使用方法の完全な開示及び説明を与えるために提供され、本発明者らが発明とみなすものの範囲を限定することを意図するものではない。本発明を実施するための上記形態の改変形態であって、当業者に明らかである改変形態は、添付の特許項の範囲内であるように意図されている。本明細書で言及されている特許及び刊行物はいずれも、本発明が属する分野の当業者の知識レベルを示している。本開示で引用されている参照文献はいずれも、参照により、それぞれの参照文献の全体が、参照により、個々に援用された場合と同程度に援用される。
【0195】
いずれの見出し及びセクションの表記も、明瞭化及び参照目的のために使用されているに過ぎず、いかなる場合も、限定するものとみなすべきではない。例えば、当業者は、本明細書に記載されている本発明の趣旨及び範囲に従って、それぞれ異なる見出し及びセクションから、様々な態様を適宜組み合わせることの有用性を理解するであろう。
【0196】
本明細書に引用されているいずれの参照文献も、それぞれの個々の刊行物、特許または特許出願の全体が、参照により、あらゆる目的で援用されることが、具体的かつ個別に示されている場合と同程度に、参照により、あらゆる目的で、その全体が本明細書に援用される。
【0197】
当業者には明らかなように、本願の趣旨及び範囲から逸脱せずに、本願の改変及び変形を数多く行うことができる。本明細書に記載されている具体的な実施形態及び実施例は、例として示されているに過ぎず、本願は、添付の請求項が権利を与えられている均等物の全範囲とともに、請求項の条項によってのみ限定されるものとする。
【配列表】
【国際調査報告】