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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】触媒被覆膜と水電解セル
(51)【国際特許分類】
   C25B 11/081 20210101AFI20231025BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20231025BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20231025BHJP
   C25B 13/02 20060101ALI20231025BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20231025BHJP
   C25B 11/054 20210101ALI20231025BHJP
   C25B 11/067 20210101ALI20231025BHJP
   C25B 11/065 20210101ALI20231025BHJP
   C25B 13/08 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
C25B11/081
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B13/02 301
C25B9/23
C25B11/054
C25B11/067
C25B11/065
C25B13/08 301
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522538
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(85)【翻訳文提出日】2023-06-08
(86)【国際出願番号】 EP2021077749
(87)【国際公開番号】W WO2022078872
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】102020126797.5
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516186234
【氏名又は名称】グリナリティ・ゲーエムベーハー
【住所又は居所原語表記】Industriegebiet Sud E11, 63755 Alzenau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギエルミ,アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ゲーリック,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ビルクネス,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ズッフスランド,イェンス-ペーター
(72)【発明者】
【氏名】アイケス,クリスティアン
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011AA23
4K011AA24
4K011AA30
4K011AA32
4K011BA07
4K011DA01
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB31
4K021DB43
4K021DB53
4K021DC01
4K021DC03
(57)【要約】
本発明は、陽子交換膜と、該膜の第1の面に適用された陽極と、該膜の第2の面に適用された陰極とを有する触媒被覆膜に関し、陽極は、少なくとも1つの貴金属含有触媒を含み、貴金属含有触媒の貴金属含有量に基づく単位面積あたりの重量が0.6mg/cm以下であり、1013hPaの気圧で100℃に加熱された水中で2時間保持された後の触媒被覆膜の面積拡張が20%未満であることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒被覆膜であって、
陽子交換膜と、
前記膜の第1の側に適用された陽極であって、少なくとも1つの貴金属含有触媒を含み、前記貴金属含有触媒の前記貴金属含有量に基づく面重量が0.6mg/cm以下である、陽極と、
前記膜の第2の側に適用された陰極と
を備え、
明細書に記載されるように、100℃に加熱された水中で2時間保持された後の前記触媒被覆膜の面積拡張が20%未満である、触媒被覆膜。
【請求項2】
明細書に記載されているように、100℃に加熱された水中で2時間保持された後の前記触媒被覆膜の面積拡張率が15%未満、特に10%未満である、請求項1に記載の触媒被覆膜。
【請求項3】
前記貴金属含有触媒の前記貴金属含有量に基づく面重量が、0.4mg/cm以下、特に0.35mg/cm以下である、請求項1または2に記載の触媒被覆膜。
【請求項4】
前記貴金属含有触媒の前記貴金属含有量に基づく面重量が、0.02mg/cm以上、特に0.05mg/cm以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の触媒被覆膜。
【請求項5】
前記貴金属は、イリジウムおよびルテニウムから選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の触媒被覆膜。
【請求項6】
前記貴金属含有触媒は、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、それらの混合物、およびそれらの合金から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の触媒被覆膜。
【請求項7】
前記貴金属含有触媒が、無機及び/又はセラミック担体、特に酸化チタン及び/又は酸化ニオブ及び/又はアンチモンドープ酸化ニオブ及び/又は酸化スズ及び/又はアンチモンドープ酸化スズに担持されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の触媒含有膜。
【請求項8】
前記陰極が、白金含有及び/又はパラジウム含有陰極触媒を含み、前記白金含有及び/又はパラジウム含有陰極触媒が特に炭素含有担持材料上に存在する、請求項1から7のいずれか一項に記載の触媒被覆膜。
【請求項9】
前記陽子交換膜が、5から120μm、特に15から90μm、より特に35から75μmの層厚を有し、および/または
前記陽子交換膜が、少なくとも1つの再結合触媒、特に白金粒子を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の触媒被覆膜。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の触媒被覆膜を備える水電解セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低い触媒装填で高い出力密度を有する触媒被覆膜、及び当該触媒被覆膜を備える水電解セルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
片面が陽極で、反対面が陰極で被覆されている陽子交換膜を有する触媒被覆膜は、先行技術からCCM(catalyst coated membrane)という用語で知られている。CCMが水の電気分解に使用される場合、PEM-WE(陽子交換膜水電解)という用語が慣用的である。
【0003】
PEM-WEに使用する陽子交換膜は、通常、パーフルオロスルホン酸(PFSA)をベースとする押し出しポリマー膜である。PEMの最も確立された例は、Chemours社のNafion(商標)N115およびNafion(商標)N117である。比較的薄いキャスト膜、すなわちNafion(商標)NR212のような溶媒によって印刷された膜は、現在の文献で引き続き使用されている。
【0004】
陽極電極層(略して陽極)には、水を酸化する(水分解)ための触媒が使用される。この触媒は、しばしばOER(酸素発生反応)触媒と呼ばれる。OER触媒は、通常、貴金属をベースとし、水分解に高い触媒活性を示す貴金属酸化物を含んでいる。また、陽極には、通常、陽子伝導性ポリマー、いわゆるPFSAタイプのイオノマーが、OER触媒と混合物として存在するバインダーとして使用されている。
【0005】
陰極電極層(略して陰極)では、陽子を水素に還元するために触媒が使用される。(水素発生反応=HER触媒)。これらの触媒は、通常、白金をベースとしており、白金は、好ましくは、炭素粉末上に微細に分散された形態で存在する。さらに、陰極には、通常、バインダーとしてPFSAベースのイオノマーも含まれる。
【0006】
PEM-WE用途のCCMは現在、貴金属イリジウムおよび/またはルテニウムの高い含有量で製造されており、(貴金属)装填とも呼ばれる典型的な面重量は1から2mg/cmであり、これにより十分なOER率が確保される。面重量(mg)は、ここでは触媒金属の質量を指し、面積(cm)は、触媒が存在するCCMの幾何学的面積を指す。この面積は、活性面積とも呼ばれる。これまで、効率の低下を防ぐためには、上記のような大きい面重量が必要であった。研究(例えばM.Berntらによる、The Electrochemical Society,165(5)F305-F314(2018)を参照)は、これらの損失が0.4mg/cm未満のイリジウム装填で特に顕著になることを示している。上記刊行物は、より厚い電極を製造することによってこの問題に対処することを示唆しているが、イリジウム装填を同時に増加させることなく、より厚い電極を製造する方法については教示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、低い陽極貴金属装填で、所与の電流密度における低電圧の特徴によって良好な効率を有する触媒被覆膜を提供することである。同様に、本発明の目的は、良好な効率、ひいては電力消費の低減の結果として低い運用コストという特徴も有する水電解セルを特定することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、独立請求項によって達成される。従属請求項には、本発明の有利な展開および構成が記載されている。
【0009】
したがって、本発明によれば、陽子交換膜(略してメンブレン)と、メンブレンの第1の側に適用される陽極と、メンブレンの第2の側に適用される陰極とからなる触媒被覆膜が記載される。陽極は、触媒の低装填という特徴を有し、この目的のために少なくとも1つの貴金属含有触媒からなり、貴金属含有触媒の面重量は、貴金属含有触媒中の貴金属含有量を基準として、0.6mg/cm以下となる。以下に説明するように、本発明による触媒被覆膜における貴金属含有触媒のこの低い装填は、所定の電流密度で低電圧、したがって高効率を達成するのに十分である。
【0010】
このような低装填は、気圧1013hPa、100℃に加熱した水中で2時間保持した後の触媒被覆膜の面積拡張率が20%未満であることによって可能となる。つまり、本発明による触媒被覆膜は、高い寸法安定性を有することを意味する。本発明によって記載された触媒被覆膜の高い寸法安定性は、提供される触媒層が、本発明に従って意図されたように使用される場合、一般に、寸法が高く変化することがないため(1013hPaの気圧で100℃に加熱された水中で2時間保持されても)、使用する陽子交換膜の高い寸法安定性に大きく起因する。言い換えれば、これは、本発明に従って使用される膜が、1013hPaの気圧で100℃に加熱された水中で2時間保持された後に20%未満の面積拡張を有する場合、この膜を用いて製造される触媒被覆膜も同様に、(周囲条件での触媒被覆膜の寸法に関する基準値に対応する21℃および50%の相対湿度で調整した後)20%未満の対応する面積拡張を有することを意味する。触媒被覆膜の全体としての寸法安定性が本発明の鍵であることを考えると、面積拡張は、本発明によれば、触媒被覆膜の面積拡張を指す。本発明の触媒被覆膜の寸法安定性、したがって面積拡張は、後述の実験セクションで明示的に説明され、ここで触媒被覆膜は、面積拡張を測定する文脈では、(製造プロセスに応じて)片面または両面に触媒でコーティングされた膜を意味すると理解される。
【0011】
上記で定義したような寸法的に安定な膜の使用により、0.6mg/cm以下、例えば0.2mg/cm、さらには0.1mg/cmの低い陽極装填で良好な効率を達成することができる。
【0012】
理論に束縛されることなく、寸法的に安定な(触媒コーティングされた)膜と低い貴金属装填を有する陽極を組み合わせた場合の高効率は、寸法的に安定な膜が、触媒コーティングされた膜をセルに取り付ける際および湿潤条件下での動作中に陽極の完全性を保証するという事実に基づくと仮定される。対照的に、寸法安定性が低い、すなわち20%を超える面積拡張を有する膜を本明細書に記載のプロセスに従って使用する場合、膜は湿潤動作条件下で過度に拡張し、陽極はその完全性を失って電極抵抗が増加し、これは特に高電流密度での効率の低下につながる。この電極の完全性の損失は、高貴金属装填では適切な陽極接続性が維持されるためほとんど存在しないが、0.6mg/cm以下の装填では損失が大きくなり、許容できなくなる。
【0013】
一方、本発明による寸法的に安定な触媒被覆膜では、非常に低い貴金属装填でも陽極の完全性が維持される。このことは、さらに、効率が(抵抗ではなく)触媒活性によって決定される低電流密度において、全装填範囲にわたって両方の膜タイプ(寸法的に安定および非寸法的に安定)に対して非常に類似したセル電圧値が得られるという事実によって実証できる。さらに、セル電圧の傾向は、理論的に予想されるセル電圧の傾向と一致する。逆に、高い寸法安定性を有する膜、したがって本発明の文脈では高い寸法安定性を有する触媒被覆膜は、抵抗が重要になる高い電流密度、例えば>1A/cmで、陽極の貴金属装填が低くなると明確な利点を有する。
【0014】
本発明によれば、「装填」、「貴金属装填」または「面積重量」という用語は、専ら、使用される触媒に存在する貴金属を指す。貴金属の場合、金属が触媒のコストの特に高い割合を占めるので、貴金属に基づく装填の使用は有利である。
【0015】
さらに、本発明に従って使用される膜、したがって本発明による触媒被覆膜の寸法安定性は、乾燥状態から湿潤状態への移行の間の寸法安定性を意味すると理解される。ここで、膜、ひいては触媒被覆膜に生じる拡張は、互いに垂直な2方向への拡張から生じる面積拡張を説明するものである。互いに垂直な方向とは、ここでは、同一平面における拡張の方向を意味し、層の厚さまたは配列の方向における触媒被覆膜の拡張ではない、と理解される。より詳細には、互いに垂直な方向は、縦方向(MD)および幅方向とも呼ばれる横方向(TD)の拡張方向を意味すると理解され、面積の変化は、パーセント面積拡張として表すことができる。本発明の文脈では、高い寸法安定性は、常に20%未満の低い面積拡張を意味する。
【0016】
ところで、乾燥時の長さが100mm(MD)、乾燥時の幅が100mm(TD)であり、気圧1013hPaで100℃に加熱した水中に2時間浸漬した後に長さが115mm(MD)、幅が125mm(TD)に増加する膜では、以下でより詳細に説明するが、面積拡張率は43.75%である。
【0017】
高い寸法安定性を有する膜、ひいては触媒被覆膜は、本発明の文脈において、1013hPaの気圧で100℃に加熱した水中で2時間保持した後の面積拡張率が20%未満である。当該触媒被覆膜は、種々の方法で得ることができ、その製造方法には特に制限はない。
【0018】
第1の例示的なプロセスによれば、1つまたは複数の補強構造が陽子交換膜に組み込まれ、その結果、補強構造(複数可)が膜の拡張を制限する。補強構造は、例えば、イオノマー分散液またはイオノマー溶液から膜を製造する工程中に導入することができる。この場合、(二軸延伸)PTFE(ePTFE、エキスパンドPTFE)のような予め形成された補強構造をイオノマー分散液に含浸させ、補強構造の孔がイオノマーで満たされるように乾燥する。その後、膜の安定性を向上させるために、高温工程、例えば約150℃から200℃で加熱することができる。
【0019】
使用されるイオノマーは、好ましくはPFSAイオノマーである。
【0020】
補強膜は、補強構造を有する1つまたは複数の非補強膜を、例えばプレス加工またはカレンダー加工でラミネートすることによっても得ることができる。複数の補強構造を有する膜は、例えば、少なくとも2つの膜が補強構造を有する2つ以上の膜の積層(例えば、プレス加工またはカレンダー加工)により得ることができる。これにより、2つ以上の補強構造を有し、非常に高い寸法安定性、すなわち、膜を1013hPaの気圧で100℃に加熱した水中に2時間保持したときの面積拡張が10%未満である膜を得ることが可能になる。
【0021】
好適な補強構造は、例えば、織布または不織布ポリマー構造、多孔性セラミック薄膜、穿孔ポリマー膜または穿孔無機膜、または二軸延伸した多孔性ポリマー膜である。好ましい補強構造はまた、エキスパンドポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)またはポリオレフィンの多孔質薄膜であり、これは、優れた電気化学的性能を有する、薄い、しかし強い、膜の製造を可能にする。
【0022】
第2の例示的なプロセスによれば、イオノマーの等価重量(EW)を増加させ、それによって膜による水の吸収を制限することによって、寸法的に安定な膜を得ることができる。ここでいうEWとは、イオノマーに存在するイオン性官能基1モルあたりのポリマーの質量を示す。使用するイオノマーの種類に応じて、当業者は、所望の面積拡張、例えば20%未満を超えない適切な最小等価重量を決定することができる。このような等価重量を有するイオノマーからなる非強化膜は、例えば、押出成形や溶剤ベースのコーティング工程によって製造することができる。
【0023】
上記の工程、すなわち、1つまたは複数の補強構造の導入と等価重量の増加とは、さらに、組み合わせることができる。
【0024】
薄い膜、例えば50μmの領域の層厚を有するものを得ることが可能であり、非常に良好な寸法安定性、良好な機械的特性、および低いイオン抵抗を有し、これは水の電気分解セルにおける本発明の使用に特に有利であるので、1以上の補強構造を膜に導入する工程を原則として優先させてよい。
【0025】
本発明に従って使用されるポリマー電解質膜および触媒層に使用されるイオノマーは、特に制限されず、パーフルオロ化イオノマー(PFSA)、部分フッ素化または炭化水素系(非フッ素化)イオノマーであってよく、触媒被覆膜の異なる層に異なるイオノマーを使用することが可能である。
【0026】
膜はまた、異なるイオノマーを含むことができるサブレイヤーで構成されてよい。PFSAタイプのイオノマーの例としては、Chemours社のNafion(商標)、Solvay Specialty Polymers社のAquivion(商標)、3M社のイオノマー、旭化成社のAciplex(商標)または旭硝子社のFlemion(商標)が挙げられる。炭化水素系イオノマーの例としては、スルホン化ポリエーテルケトン(sPEK)、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(sPEEK)、スルホン化ポリケトンケトン(sPKK)、スルホン化ポリスルホン(sPSU)、スルホン化ポリエーテルサルフォン(sPES)などがある。
【0027】
有利な展開によれば、本明細書で説明するように、1013hPaの気圧で100℃に加熱された水中で2時間保持した後の触媒被覆膜の面積拡張は15%未満であり、特に10%未満である。これにより、触媒被覆膜の効率を向上させ、所定の電流密度に対して特に低い電圧を達成することができる。
【0028】
高効率を維持しながら触媒被覆膜のコストをさらに低減するために、貴金属含有触媒の貴金属含有量に基づく面重量は、好ましくは0.4mg/cm以下、特に0.35mg/cm以下とする。
【0029】
貴金属含有量に基づく貴金属含有触媒の面重量が、好ましくは0.02mg/cm以上、特に0.05mg/cm以上であると、触媒被覆膜の触媒性能を最適化すると同時に、財政支出を最小限に抑えることができるという文脈で有利になる。
【0030】
非常に良好なOER活性のために、少なくとも1つの貴金属含有触媒の貴金属は、特にイリジウムおよびルテニウムから選択される。これは、イリジウムとルテニウムの両方が、貴金属含有触媒として個々に使用されてもよく、あるいは組み合わせてもよいことを意味する。
【0031】
貴金属含有触媒が、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、それらの混合物、およびそれらの合金から選択される場合、優れたOER活性と並んで高い触媒安定性の文脈で特に有利である。OER触媒の活性および/または安定性を向上させるために、他の元素を添加することもできる。任意の合金金属は、特にスズ(Sn)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、白金(Pt)、鉄(Fe)、ケイ素(Si)、およびセリウム(Ce)から選択されてよく、合金金属は合金中に50重量%未満の含有量で存在している。
【0032】
イリジウムおよびルテニウム酸化物は、例えば、ナノ粒子の形態で、または基材上にコーティングされた薄膜として存在し得る。ナノ粒子の場合、触媒酸化物は、基材上に自立、凝集、または微細に分散していてもよく、典型的には酸化チタンのような高い比表面積を有する粉体である。触媒が薄膜の形で存在する場合、基材として無機物、例えばセラミック、または有機化合物、例えばペリレンなどの多環式分子のいずれかを使用することが可能である。
【0033】
OER触媒酸化物は、湿式化学的方法、例えば可溶性塩から出発する水酸化物の沈殿とその後の空気中での熱処理、または熱、乾燥プロセス(例えば「アダムの融合法」)、または気相プロセスによって得ることができる。酸化イリジウムの合成のための様々な方法は、J.HansaemおよびL.Jaeyoung(エネルギー化学誌、46巻、2020年7月、152-172頁)に例として要約されている。
【0034】
高い陽極導電性とともに低装填での貴金属含有触媒の効率をさらに向上させるために、貴金属含有触媒は、好ましくは無機および/またはセラミック担体、特に酸化チタンおよび/または酸化ニオブおよび/またはアンチモンドープ酸化ニオブおよび/または酸化スズおよび/またはアンチモンドープ酸化スズに担持される。
【0035】
さらなる有利な展開によれば、陰極は、白金含有および/またはパラジウム含有陰極触媒を含み、白金含有および/またはパラジウム含有陰極触媒は、特に炭素含有担持材上に存在する。これは、白金含有及び/又はパラジウム含有陰極触媒が特に高いHER活性を有し、本発明による触媒被覆膜の出力密度に寄与するため有利である。また、触媒被覆膜の寸法安定性は、陰極の提供によって本質的に影響されないので、陽極と陰極を有する触媒被覆膜の場合、1013hPaの気圧で100℃に加熱した水中で2時間保持した後の触媒被覆膜の面積拡張が20%未満であるということもここで留意されたい。
【0036】
陽子交換膜が、5から120μm、より特に15から90μm、より特に35から75μmの層厚を有すると、さらに有利である。これにより、効率と寸法安定性との間の最適なバランスが達成される。
【0037】
より厚い膜、例えば200μmまでの膜を使用することも可能であるが、膜の陽子抵抗が高いため、特に高電流密度において効率が著しく低下することになる。より低い厚さの範囲、すなわち約50μm以下の膜を使用する場合、触媒被覆膜の一方の側から触媒被覆膜の他方の側へのガス透過性を低減するために、炭化水素系イオノマーを膜の少なくとも下層に含むことが好ましい。炭化水素系イオノマーは、PFSAイオノマーよりも本質的に低いガス透過性を有する。特に水素のクロスオーバーは、陽極側での爆発性混合物の形成や電流効率の低下を防ぐために、最小限に抑える必要がある。さらに、低厚み領域では、機械的特性と長期安定性(何千時間もの動作)を向上させるために、強化膜の使用が望ましいとされている。
【0038】
陽子交換膜が、特に白金粒子を含む少なくとも1つの再結合触媒を含んでいると、さらに有利である。白金粒子は、好ましくは、膜内に微細に分散される。再結合触媒は、セルの陽極側での爆発性混合物の形成を防止するように、陰極から陽極へクロスオーバーする水素の陽極側からの酸素との反応を触媒化する。
【0039】
本発明の触媒被覆膜の陽極および陰極は、従来の方法によって製造することができる。これは、例えば、粉砕した貴金属含有触媒をイオノマーバインダーと共に有機溶媒中または水と1つ以上の有機溶媒との混合物中に分散させることによって行うことができる。この分散液は、良好な分散を可能にし、触媒の凝集体のサイズを小さくするために、任意で高エネルギーミキサーで攪拌される。コーティングまたは印刷装置を用いて、このようにして得られたインクまたはペーストを、膜表面(陽子交換膜の第1面または第2面)に直接またはデカールと呼ばれる不活性基板に最初に塗布または印刷する。採用されるコーティングまたは印刷装置は、例えば、ドクターブレード、スリットノズル、コーティングローラー、またはスクリーン印刷またはグラビア印刷プロセスであってよい。その後、液体媒体を蒸発させ、薄い電極層を形成する。一方または両方の電極を不活性基板に塗布した後、乾燥した電極を熱と圧力で膜表面に転写する。
【0040】
代替の実施形態では、陰極を製造するためのインクまたはペーストを、多孔質輸送層、特にガス拡散層上に直接コーティングまたは印刷することも可能である。この場合、ガス拡散電極(GDE)という用語が使用される。陽極は、デカールプロセスまたは直接膜コーティングによって膜上に塗布され、片面触媒被覆膜またはハーフCCMとして知られているものが得られる。触媒コーティングされた膜(両面)は、その後、電解槽に装着され、槽の運転条件下で陰極触媒層と膜の間の接続が得られる。
【0041】
また、本発明に従って、上記に開示されたような触媒被覆膜を含む水電解セルが記載される。本発明の触媒被覆膜の使用は、本発明による水電解セルに、比較的低い製造コストで高出力密度および高効率という特徴的な特徴を付与する。
【0042】
実施例
方法
吸水時の膜/触媒被覆膜(略称:CCM)の寸法安定性(面積拡張)の決定
膜または片面もしくは両面に触媒をコーティングした膜(セミCCMまたはCCM)を、21℃および相対湿度50%でサイズ/寸法がそれ以上変化しなくなるまでコンディショニングした。次に、80mm×80mmの辺の長さ(L)を有する正方形を、例えば切断型(Ldry=80mm)を用いて精密に切り取った。2つのエッジは、それぞれマシン方向とクロスマシン方向に沿って整列させた。方向は、永久マーカーでマークした。次に、正方形片(膜、ハーフCCMまたはCCM)を、1013hPaの気圧で100℃に加熱した水中に2時間保持し、水から取り出して余分な水滴を素早く拭き取り、正方形の縁長をノギスで0.01mmの分解能で測定し、縁長L1,wetおよびL2,wetとした。
【0043】
面積の変化率(%)は、以下の式に従って算出した。
100×[(L1,wet×L2,wet)-Ldry ]/Ldry
【0044】
100℃(これは、1013hPaの空気圧で100℃に加熱された水の温度に対応する)での膨潤挙動、したがって膜、ハーフCCMまたはCCMの面積拡張の測定は、先行技術において確立した条件であり、また他の条件下、例えば、室温、特に温水中で(膜、ハーフCCMまたはCCMの通常の動作条件である)、水中の膜の膨潤挙動、したがってハーフCCMまたはCCMの膨潤挙動と相関がある。言い換えれば、100℃でより大きな膨潤挙動を示し、したがって高い面積拡張を有する膜/セミCCM/CCMは、より低い温度でより大きな膨潤挙動も示す。しかしながら、100℃での膨潤挙動を測定することは、この温度が水の沸点によって密接に制御されるという利点を提供し、したがって、本発明に従って適用される。
【0045】
水の電気分解セルにおける電力/効率
CCMの効率は、25cmの活性面積を有する単一セルで測定された。このセルは、陽極側と陰極側にカラムバー流れ場設計を有するプラチナ化チタンプレートから構成されていた。陰極側の流れ場プレートは、さらに金メッキが施されている。陽極側と陰極側の多孔質輸送層とガス拡散層には、チタン焼結体(1mm厚)とカーボンペーパー(東レ社製TGP-H-120)を使用した。セルは、6本のM8ネジで10Nmのトルクで閉じた。陽極側には、1μS/cm以下の導電率を有する脱イオン水を循環させた。エンドプレート上に設置したヒーティングパッドを通して、20分間かけてセルを室温から60℃まで加熱した。その後、20分かけて80℃まで昇温した。0から1A/cmの間で10回のサイクルを行い、各ステップで5分間の保持時間を設けてセルをコンディショニングした。コンディショニングの最後に、セルを1A/cmで10分間保持した。
【0046】
電流-電圧特性(分極曲線)は、80℃と65℃において、電流密度を低値から高値(A/cm)まで、毎回10分の保持時間で増加させて記録した。ステップは、具体的には以下のとおりであった。
0.01 0.02 0.03 0.05 0.08 0.1 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 2.25 2.5 2.75 3.0(いずれもA/cm単位)
【0047】
陽極インクの製造
市販のイリジウム系触媒(ドイツ国 Umicore社製Elyst Ir75 0480、TiOに担持されたIrO;75重量%のイリジウム)20.00gを、20.2重量%のイオノマー含有量を有するNafion(商標)D2020イオノマー分散液(米国Chemours社)10.20gに混合した。その後、0.5gの水と69.30gの2-プロパノールを添加した。この混合物を、直径1mmの球状ジルコニアビーズを用いたビーズミルによって30分間分散させた。攪拌ディスクの直径は45mmで、回転数は2130回転/分とした。分散液の品質は、触媒の凝集物がないことを目視で確認することによって確保した。分散液の品質は、良好なコーティング品質、すなわち、湿潤層または乾燥層に目に見える凝集物またはストリーキングがないことによってさらに確認された。
【0048】
デカール上のイリジウム装填が変化する陽極の製造
ガラス繊維強化PTFE基板、すなわちデカールに、スパイラルアプリケーター(ワイヤーバー)を用いて陽極インクを塗布した。ウェットフィルムの厚さは、漸増するワイヤ厚を有する異なるスパイラルアプリケーターを選択することによって漸増し、イリジウム金属装填(面重量)が0.15mg/cm、0.25mg/cm、0.5mg/cm、1.0mg/cm、および2.25mg/cmになるようした。湿潤層の厚さは、適切なワイヤ径を有するスパイラルアプリケーターを選択することにより、ここでは10μmから285μmの間で変化させた。コーティング後、湿潤層は110℃のオーブンで5分間乾燥させた。実際のイリジウム金属装填は、実施例1に記載したように、CCMラミネーション前後の正確なデカール重量を記録することにより、重量測定で決定した。
【0049】
実施例1:高い寸法安定性(低面積拡張)を有し、陽極触媒の装填量を変化させる触媒被覆膜(CCM)の製造
厚さ25μmの非強化PFSA膜を、厚さ8μmの2つの強化PFSA膜の間に積層することによって、2つの拡張PTFE(ePTFE)補強構造を含む、高い寸法安定性と41μmの厚さを有する膜を得た。この膜を、温度160℃、圧力1.5MPaのプレス機で1分間ラミネートした。3枚の膜の機械方向は、それぞれの場合、互いに平行に配置されていた。吸水による膜の線拡張率(100℃)を測定したところ、2.0%と3.3%の値が得られた。その結果、面積拡張は5.4%であった。
【0050】
このタイプの膜を使用して、デカールプロセスによるプレスで5つのCCMを製造した。これは、膜を陽極と陰極のデカール(5cm×5cm)の間に配置し、温度180℃、圧力1.5MPaで1分間プレスすることにより、電極層をデカール基板から膜に転写させた。
【0051】
陰極はすべてのCCMで同じであり、炭素担体上の白金からなる触媒とNafion(商標)イオノマーバインダーから構成されていた。陰極中の触媒とイオノマーの重量比は3:1であり、白金の担持量は0.3mg/cmであった。この陰極は、同様にガラス繊維強化PTFEにも適用された。
【0052】
CCMの製造において、異なるCCMの陽極装填は、しかし、「デカール上の変化するイリジウム装填を有する陽極の製造」のセクションで説明したように、変化する装填を有する陽極デカールを用いることによって変化させた。実際の陽極装填は、転写前の陽極デカール(PTFE基板上の陽極電極)と転写後の陽極デカール(純PTFE基板)の重量を測定することによって重量測定で決定された。イリジウムの面重量(装填)は、差(陽極デカールから純粋なPTFE基板を引いたもの)を決定し、乾燥電極層の既知の組成を含むことによって計算されたものである。5つのCCMについて、以下の陽極イリジウム装填量が得られた:0.162mg/cm、0.261mg/cm、0.474mg/cm、1.029mg/cm、および2.072mg/cmである。
【0053】
さらに、0.261mg/cmの陽極イリジウム装填量を有するCCMを、吸水時の寸法安定性を測定するために調査した(100℃、方法の説明を参照)。その結果、CCMは長さ1.6%、幅3.0%の寸法変化を示した。これは、4.6%の面積の拡大に相当する。
【0054】
高い寸法安定性を有する膜を用いることにより、対応するCCMも高い寸法安定性を示した。
【0055】
0.261mg/cmの陽極イリジウム装填量を有する同じCCMの膨潤挙動も、より低い温度で水中において調査された。室温では、面積拡張は3.9%であったが、80℃の温度では、面積拡張は4.1%であった。
【0056】
比較例1:先行技術によるCCMの製造と、陽極イリジウムの装填量を変化させた場合
先行技術によるCCMは、実施例1の手順と同様の方法で製造したが、使用した膜がNafion(商標)NR212(米国Chemours社)である点が異なる。この膜は、約50μmの厚さを有し、PEM-WEの出版物において確立された膜である。
【0057】
NR212膜の吸水時(100℃)の直線寸法変化率は20.0%、19.7%であった。その結果、面積拡張率は43.6%であった。
【0058】
使用した陽極および陰極は、実施例1のものに対応するものである。
【0059】
同様に5つのCCMについて、以下の陽極イリジウム装填量を得た。0.155mg/cm、0.303mg/cm、0.504mg/cm、1.068mg/cm、および2.102mg/cm
【0060】
実施例1と同じ電極を用いたにもかかわらず、デカール基材への塗布時にわずかな荷重の不均一が生じたため、実施例1のCCMと比較して、わずかに異なる荷重が得られた。しかし、その差は情報価値の高いCCMシリーズを比較するのに十分なほど小さいものであった。
【0061】
0.303mg/cmの陽極イリジウム装填量を有するNR212を有するCCMは、水(100℃、方法の説明を参照)の吸収時の寸法安定性を測定するために追加的に調査した。CCMは、長さ15.7%、幅15.9%の寸法変化を示した。これは、34.1%の面積の拡大に相当する。
【0062】
寸法安定性の低い膜を使用することにより、対応するCCMも同様に寸法安定性が低くなった。
【0063】
0.303mg/cmの陽極イリジウム装填量を有する同じCCMの膨潤挙動も、より低い温度において水中で調査された。室温では、面積拡張は14.4%であったが、80℃の温度では、面積拡張は26.6%であった。
【0064】
方法の項で既に述べたように、1013hPaの気圧で100℃に加熱された水中の膨潤挙動は、より低い温度での膨潤挙動とも相関している。
【0065】
水電解セルにおける出力/効率の比較-実施例1のCCMと比較例1のCCM
実施例1および比較例1からのCCMを、上述の方法に従って水電解セルにおいて電気化学的に特徴付けた(「水電解セルにおけるパワー/効率」のセクションを参照)。その結果、すなわち、陽極触媒装填(陽極貴金属装填)の関数としての所定の電流密度におけるセル電圧を、図1から図4に示す。このデータから、調査した2つの温度で、陽極触媒担持量が0.6mg/cmと同等以下、電流密度が1A/cmを超える場合、寸法安定性の高いCCMは、寸法安定性の低い膜を有するCCMより優れた効率を示すことが分かる。電解槽の単位面積および単位時間あたりで大量の水素を生成するために、使用に関連する電流密度はより高い電流密度(>1A/cm)であることを言及する必要がある。
【0066】
本発明の更なる詳細、利点、及び特徴は、図面を参照した例示的な実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1図1は、実施例1および比較例1について、セル温度80℃における陽極触媒の担持量の関数として、電流密度3.0A/cmにおけるセル電圧を示す。
図2図2は、実施例1および比較例1について、セル温度80℃における陽極触媒の担持量の関数として、電流密度1.2A/cmのときのセル電圧を示す。
図3図3は、実施例1および比較例1について、セル温度80℃における陽極触媒の担持量の関数として、電流密度0.05A/cmにおけるセル電圧を示す。
図4図4は、実施例1および比較例1について、セル温度65℃における陽極触媒の担持量の関数として、電流密度3.0A/cmにおけるセル電圧を示す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図1は、実施例1および比較例1の水電解セルのセル電圧を、電流密度3.0A/cm、セル温度80℃において、種々の陽極イリジウム装填量について示す。本発明による寸法安定性が高く、したがって面積拡張が小さい膜を有するCCM(三角形;実施例1)と、寸法安定性が低く、したがって面積拡張が大きい膜を有するCCM(円;比較例1)との比較により、0.6mg/cm以下の陽極装填で寸法安定性膜を用いることの優位性が明確に示され、セル電圧の改善は40mV以上である。
【0069】
図2は、実施例1および比較例1の水電解セルの、電流密度1.2A/cm、セル温度80℃における、種々の陽極イリジウム装填量に対するセル電圧を示す。本発明による寸法安定性が高く、したがって面積拡張が小さい膜を有するCCM(三角形;実施例1)と、寸法安定性が低く、したがって面積拡張が大きい膜を有するCCM(円;比較例1)との比較により、0.6mg/cm以下の陽極装填で寸法安定膜を用いることの利点が明確に示される。
【0070】
図3は、様々な陽極イリジウム装填量について、電流密度0.05A/cm、セル温度80℃における実施例1および比較例1の水電解セルのセル電圧を示す。この低い電流密度の領域における電力/効率は、2つの膜タイプについて、陽極装填の全範囲にわたって類似している。2mg/cmの装填と0.2mg/cmの装填の電圧差は45から50mVの範囲にあり、これは45から50mV/decadeの傾きに相当するため、酸化イリジウムOER触媒の理論予想に対応する。この傾きは、厳密には抵抗補正されたセル電圧に基づいて計算されるべきだが、わずか数mVの補正は、このように低い電流密度では無視できるもので、両方の装填で補正を無視するため、傾きとそこから得られる結論は変わらない。
【0071】
本発明の上記の書面による説明に加えて、その補足的な開示のために、図1から図4の本発明の図式表現を明示的に参照する。図4は、実施例1および比較例1の水電解セルのセル電圧を、電流密度3.0A/cm、セル温度65℃で、種々の陽極イリジウム装填量について示す。本発明による寸法安定性が高く、したがって面積拡張が小さい膜を有するCCM(三角形;実施例1)と寸法安定性が低く、したがって面積拡張が大きい膜を有するCCM(円;比較例1)との比較は、0.6mg/cm以下の陽極装填で寸法安定性膜を用いることの優位性を明確に示し、セル電圧の改善は40mV以上である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0072】
【非特許文献1】M.Berntらによる、The Electrochemical Society,165(5)F305-F314(2018)
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】