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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】高ニッケル正極活物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20231025BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20231025BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
C01G53/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522889
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(85)【翻訳文提出日】2023-04-13
(86)【国際出願番号】 KR2021014168
(87)【国際公開番号】W WO2022080874
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0132451
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0136143
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジユン・クウォン
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ファン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ドン・フン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】スンウ・パク
(72)【発明者】
【氏名】スン・グワン・ナム
(72)【発明者】
【氏名】ス・ビン・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ミョン・キム
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AA04
4G048AA05
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA08
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB29
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
本発明は、ニッケル及びコバルトを含有する原料を準備する段階;酸を用いて前記粉砕した原料内の金属成分を浸出させ、不純物を除去して液相中間体を分離する段階;及び前記液相中間体にキレート剤及び水酸化沈殿剤を投入して正極活物質前駆体を共沈させる段階;を含む高ニッケル正極活物質の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル及びコバルトを含有する原料を準備する段階;
酸を用いて前記原料内の金属成分を浸出させ、不純物を除去して液相中間体を分離する段階;及び
前記分離された液相中間体にキレート剤及び水酸化沈殿剤を投入して正極活物質前駆体を共沈させる段階;を含むことを特徴とする、高ニッケル正極活物質の製造方法。
【請求項2】
前記ニッケル及びコバルトを含有する原料がニッケル酸化鉱またはニッケル硫化鉱であることを特徴とする、請求項1に記載の高ニッケル正極活物質の製造方法。
【請求項3】
前記液相中間体が硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の高ニッケル正極活物質の製造方法。
【請求項4】
前記液相中間体は、ニッケルの含有量を35重量%~65重量%で、コバルトの含有量を1.5重量%~7重量%で含む液相中間体であるものを用いることを特徴とする、請求項1に記載の高ニッケル正極活物質の製造方法。
【請求項5】
前記液相中間体中のコバルト/ニッケルの含有量比が0.03~0.13であることを特徴とする、請求項1に記載の高ニッケル正極活物質の製造方法。
【請求項6】
前記液相中間体を分離する段階の後、硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンからなる群より選択される1種以上をさらに投入することを特徴とする、請求項1に記載の高ニッケル正極活物質の製造方法。
【請求項7】
前記正極活物質前駆体をリチウム原料物質と混合し焼成してリチウム複合金属酸化物を製造する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の高ニッケル正極活物質の製造方法。
【請求項8】
前記リチウム複合金属酸化物は下記化学式1で表されることを特徴とする、請求項7に記載の高ニッケル正極活物質の製造方法。
[化学式1]
LiNiCoMn
前記化学式1において、Mは、W、Cu、Fe、Ba、V、Cr、Ti、Zr、Zn、In、Ta、Y、In、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B及びMoからなる群より選択される1種以上であり、0.9≦a≦1.5、0.7≦b<1.0、0<c<0.2、0<d<0.2、0≦e≦0.02である。
【請求項9】
前記酸を用いて前記原料内の金属成分を浸出させる段階は、HPAL(High Pressure Acid Leaching)法を用いることを特徴とする、請求項1に記載の高ニッケル正極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記酸を用いて前記原料内の金属成分を浸出させる段階は、オートクレーブを用いて高温高圧下で硫酸に浸出することを特徴とする、請求項1に記載の高ニッケル正極活物質の製造方法。
【請求項11】
前記正極活物質は、リチウムを除いた金属の総量に対するニッケルの含有量が60at%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の高ニッケル正極活物質の製造方法。
【請求項12】
前記液相中間体を還元する工程を含まないことを特徴とする、請求項1に記載の高ニッケル正極活物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年10月14日付け韓国特許出願第10-2020-0132451号及び2021年10月13日付け韓国特許出願第10-2021-0136143号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、ニッケル含有量が60at%以上である高ニッケル正極活物質の製造方法に関する。より詳しくは、ニッケル及びコバルトを含有する原料から金属成分を浸出した後、前記浸出した金属成分を直接正極活物質前駆体の製造工程に投入し、製錬及び液化工程を簡素化することにより、時間及び費用を短縮することができる高ニッケル正極活物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、モバイル機器と電動工具の大衆化及び環境にやさしい電気自動車に対する要求が増えるにつれて、これを駆動するエネルギー源が備えるべき条件が徐々に高まっている。特に、高エネルギー密度、高電圧下での安定した駆動及び長寿命特性を有する正極活物質の開発が要求されている。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物が用いられており、その中でも作用電圧が高く容量特性に優れるLiCoOのリチウムコバルト複合金属酸化物が主に用いられている。しかし、LiCoOは脱リチウムによる結晶構造の不安定化で熱的特性が非常に劣悪であり、かつ高価であるため、電気自動車などのような分野の動力源として大量使用するには限界がある。
【0005】
LiCoOに代わるための材料として、リチウムマンガン複合金属酸化物(LiMnOまたはLiMnなど)、リチウムリン酸鉄化合物(LiFePOなど)またはリチウムニッケル複合金属酸化物(LiNiOなど)などが開発されたが、LiNiOはLiCoOと比較して熱安定性が悪く、充電状態で外部からの圧力などにより内部短絡が生じると正極活物質そのものが分解して電池の破裂及び発火をもたらす問題がある。
【0006】
これにより、LiNiOの優れる可逆容量は維持しながらも低い熱安定性を改善するための方法として、Niの一部をMnとCoに置換したニッケルコバルトマンガン系リチウム複合遷移金属酸化物(以下、単に「NCM系リチウム酸化物」という)が開発された。しかし、従来の現在まで開発されたNCM系リチウム酸化物は容量特性が不十分であり、適用に限界があった。
【0007】
このような問題点を改善するために、近年ではNCM系リチウム酸化物においてNiの含有量を高めて正極活物質の容量特性を向上させる研究が行われている。近年、全体遷移金属のうちNiを60atm%以上で含む高ニッケル正極活物質が開発されている。
【0008】
前記NCM系正極活物質に用いられるニッケル金属は、鉄を製錬する過程で中間産物である硫酸ニッケルに追加の製錬工程を行い、これを還元してニッケル金属を得ることができる。一方、正極活物質前駆体を製造するためには、ニッケル金属を再び硫酸ニッケルで製造するか、または移送及び保管などの便宜のために粉末で作った中間体(NiSiO・6HO)を溶解して使用しなければならない。
【0009】
すなわち、現在、正極活物質前駆体を製造するためには、ニッケル酸化鉱または硫化鉱からニッケル金属を得た後に再び硫酸ニッケルに変換する工程を経なければならないため、時間及び費用が過度に要求されている。特に、高ニッケル正極活物質の場合、高含有量のニッケルが要求されるので、時間及び費用が顕著に増加する。
【0010】
したがって、高ニッケル正極活物質の製造工程をより簡素化することができる新しい技術の開発が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2016-0063982号(2016年6月7日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、高ニッケル正極活物質の製造工程を改善するためのもので、ニッケル及びコバルトを含有する原料から金属成分を浸出した後、前記浸出した金属成分を還元して分離せず、直接正極活物質前駆体の製造工程に投入し、製錬及び液化工程を簡素化することにより、時間及び費用を短縮することができる高ニッケル正極活物質の製造方法を提供しようとする。
【0013】
また、本発明は、ニッケル及びコバルトを含有する原料から得られた硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを含む液相中間体を直接正極活物質前駆体の製造工程に投入し、一定の量の硫酸ニッケル、硫酸コバルトまたは硫酸マンガンをさらに投入することにより、60atm%以上の高含有量のニッケルを含む正極活物質をより容易に得ることができる高ニッケル正極活物質の製造方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明は、ニッケル及びコバルトを含有する原料を準備する段階;酸を用いて前記原料内の金属成分を浸出させ、不純物を除去して液相中間体を分離する段階;及び前記液相中間体にキレート剤及び水酸化沈殿剤を投入して正極活物質前駆体を共沈させる段階;を含む高ニッケル正極活物質の製造方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記ニッケル及びコバルトを含有する原料がニッケル酸化鉱またはニッケル硫化鉱である高ニッケル正極活物質の製造方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記液相中間体が硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを含む高ニッケル正極活物質の製造方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、ニッケルの含有量を35重量%~65重量%で、コバルトの含有量を1.5重量%~7重量%で含む液相中間体を用いた高ニッケル正極活物質の製造方法を提供する。
【0018】
また、本発明は、前記液相中間体中のコバルト/ニッケルの含有量比が0.03~0.13である高ニッケル正極活物質の製造方法を提供する。
【0019】
また、本発明は、前記液相中間体を分離する段階の後、硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンからなる群より選択される1種以上をさらに投入する、高ニッケル正極活物質の製造方法を提供する。
【0020】
また、本発明は、前記正極活物質前駆体をリチウム原料物質と混合し焼成してリチウム複合金属酸化物を製造する段階をさらに含む高ニッケル正極活物質の製造方法を提供する。
【0021】
また、本発明は、前記リチウム複合金属酸化物が下記化学式1で表されることである高ニッケル正極活物質の製造方法を提供する。
【0022】
LiNiCoMnMeO
【0023】
前記化学式1において、Mは、W、Cu、Fe、Ba、V、Cr、Ti、Zr、Zn、In、Ta、Y、In、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、 Nb、Mg、B及びMoからなる群より選択される1種以上であり、0.9≦a≦1.5、0.8≦b<1.0、0<c<0.2、0<d<0.2、0≦e≦0.02である。
【0024】
また、本発明は、前記酸を用いて前記原料内の金属成分を浸出させる段階が、HPAL(High Pressure Acid Leaching)法を用いることである高ニッケル正極活物質の製造方法を提供する。
【0025】
また、本発明は、前記酸を用いて前記原料内の金属成分を浸出させる段階が、オートクレーブを用いて高温高圧下で硫酸に浸出することである高ニッケル正極活物質の製造方法を提供する。
【0026】
また、本発明は、前記正極活物質のうち、リチウムを除いた金属の総量に対するニッケルの含有量が60atm%以上である高ニッケル正極活物質の製造方法を提供する。
【0027】
また、本発明は、前記液相中間体を還元する工程を含まない高ニッケル正極活物質の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る高ニッケル正極活物質の製造方法によれば、ニッケル及びコバルトを含有する原料から金属成分を浸出した後、前記浸出した金属成分を還元して分離せず、直接正極活物質前駆体の製造工程に投入することにより、製錬及び液化工程を簡素化することができ、これにより、正極活物質の製造に要する時間及び費用を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係る高ニッケル正極活物質を製造する工程を示す模式図である。
図2】硫酸ニッケル、硫酸コバルトまたは硫酸マンガンをさらに投入する段階をさらに含む、本発明に係る高ニッケル正極活物質を製造する工程を示す図である。
図3】本発明に係る高ニッケル正極活物質の製造工程と従来技術とを比較して示す模式図である。
図4】ニッケル酸化鉱を用いて従来の工程と本発明に係る正極活物質を製造する工程とを比較して示す模式図である。
図5】ニッケル硫化鉱を用いて従来の工程と本発明に係る正極活物質を製造する工程とを比較して示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明により提供される具体例は、以下の説明によりすべて達成されることができる。以下の説明は本発明の好ましい具体例を記述すると理解されなければならず、本発明が必ずしもこれに限定されるものではないことを理解しなければならない。
【0031】
本発明は、高ニッケル正極活物質を製造する方法として、ニッケル及びコバルトを含有する原料を準備する段階;酸を用いて前記原料内の金属成分を浸出させ、不純物を除去して液相中間体を分離する段階;及び前記液相中間体にキレート剤及び水酸化沈殿剤を投入して正極活物質前駆体を共沈させる段階;を含む高ニッケル正極活物質の製造方法を提供する。
【0032】
本発明の一実施形態において、前記ニッケル及びコバルトを含有する原料は、ニッケル酸化鉱またはニッケル硫化鉱であってもよい。本発明の高ニッケル正極活物質の製造方法において、ニッケル酸化鉱を用いて高ニッケル正極活物質を製造する方法は図4に、ニッケル硫化鉱を用いて高ニッケル正極活物質を製造する方法は図5に具体的に記載したが、これに限定されるものではない。
【0033】
前記ニッケル及びコバルトを含有する原料としてのニッケル鉱は、大きくニッケル硫化鉱(nickel sulfide ore)とニッケル酸化鉱であるラテライト鉱(nickeliferous laterite ore)とに区分される。ニッケル硫化鉱は多段階粉砕(stage-grinding)、比重選別(gravity separation)及び浮遊選別(flotation)などの物理的選鉱工程を通じて容易にニッケル品位を向上させることができ、2011年全世界のニッケル生産量の60%を生産する原料として使用された。しかし、長い資源開発により経済的に採掘可能なニッケル硫化鉱は枯渇しており、ニッケル全体埋蔵量の70%以上を占めるラテライト鉱に対する関心が増加している。ニッケル酸化鉱であるラテライト鉱は、赤道地方の高温と豊富な降雨量により岩石が風化して生成された酸化鉱である。熱帯地方に存在する湿潤型ラテライト(wet laterite)とオーストラリアなどに分布する乾燥型ラテライト(dry laterite)とに区分され、地域によって地層構造及び鉱石の含有量に差がある。このようなラテライト鉱は、地表から約10~20m程度の深さを有し、深度が増加するにつれて成分(鉱物相)と物理特性が変化する。リモナイト(limonite)はFeO(OH)・HOの成分であり、塊状、土状、粉末状または繊維状からなっている。
【0034】
サプロライト(saprolite)は化学的に風化した岩石を指すもので、ほとんどは柔らかく、壊れやすい構造を持っている。サプロライト層は上部サプロライトと下部サプロライトとに区分され、上部は一般的に黄色、黄土色、オレンジ色または黄褐色を示し、構造及び組織はほとんど完全な状態に維持されている。下部は一般的に緑色を帯びているが、上部サプロライトよりも硬い鉱物特性を持っている。サプロライト鉱の主要鉱物であるガーニエライト(garnierite)は、蛇紋石や超高鉄質岩が風化して生成される。ガーニエライトはニッケルの含有量が高く、単一鉱物ではなくタルク、リザルダイト(lizardite)、セピオライト(sepiolite)などを含有している。ニッケル酸化鉱の中で現在産業的に活用されている鉱石は比較的高いニッケル含有量を有するサプロライトであり、サプロライトは一般的にニッケルを1.5~2.5%、鉄を10~20%含んでいる。通常、ラテライト鉱石は、ニッケルとコバルトが酸化物の形態として相対的にマグネシウム含有量が小さく鉄含有量が大きいリモナイト部分、及び相対的にマグネシウム含有量が大きく鉄含有量が小さいサプロライト部分が積層形態に配列された部分に存在することができる。具体的に、リモナイトは、50~70%のFe-2及び最大5%のMgOを含有する鉱物成分であってもよく、サプロライトは、7~27%のFe及び最大10%のMgOを含有する鉱物成分であってもよい。
【0035】
本発明の一実施形態において、前記ニッケル及びコバルトを含有する原料から金属成分を浸出させる段階は、高温高圧下のオートクレーブ(outoclave)で酸溶解してニッケル、コバルトなどを回収する方法で行うことができる(HPAL法(High Pressure Acid Leaching))。ここで、前述したリモナイト(limonite)、サプロライト(saprolite)のようなニッケル酸化鉱は酸化物状態として不動態的特性を有するので、酸に対する抵抗性が大きく酸溶解の反応が遅い。したがって、前記原料に含まれるニッケル、コバルトなどはHPAL法により浸出することができる。
【0036】
具体的に、前記HPAL法によるニッケル、コバルトなどの浸出は、オートクレーブ内で230℃~270℃の温度及び40~50バール(bar)の圧力で行われることが好ましい。用いられる酸は濃縮硫酸が好ましい。前記反応時間は30分~120分程度が好ましく、前記HPAL法による浸出率は90%を上回る。また、前記HPAL法において前記硫酸で浸出を行った後、残渣を沈降分離させ、浸出液中の残留酸を中和した後、様々な工程を経てニッケルとコバルトを分離回収することができる。
【0037】
本発明の一実施形態において、前記浸出液からの不純物の除去は、本発明の技術分野における通常の方法により繰り返し行うことができ、一例として部分結晶化法、分別蒸留法、溶媒抽出法などが知られているが、好ましくは溶媒抽出法を使用することができる。このような溶媒抽出法を考察すると、溶媒抽出時にpHの調節のために、中和剤としてアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物やNaOH、NH、NHOHなどとアルカリ化合物などを用いることができる。
【0038】
また、前記溶媒抽出法は、DEPA(ジ-2-エチルヘキシルホスホリック酸(di-2-ethylhexyl phosphoric acid))またはBTMPA(ビス(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスホニック酸(bis(2,4,4-trimethylpentyl)phosphonic acid))を用いることができる。具体的に、ニッケルの場合、pH6の条件でDEPA(ジ-2-エチルヘキシルホスホリック酸(di-2-ethylhexyl phosphoric acid))を用いて抽出することができ、コバルトの場合、pH5の条件でBTMPA(ビス(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスホニック酸(bis(2,4,4-trimethylpentyl)phosphonic acid))を用いて抽出することができ、マンガンの場合、pH2の条件でDEPA(ジ-2-エチルヘキシルホスホリック酸(di-2-ethylhexyl phosphoric acid)を用いて抽出することができる。本発明は原鉱を用いて製造するため、原鉱内に含まれる金属の含有量を考慮して、前記のようにpHを異ならせることによって、最終製造される製品の収率を向上させることができる。
【0039】
本発明の一実施形態において、前記液相中間体は硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを含むことができる。前記液相中間体中のニッケルの含有量は、全体金属に対して35重量%~65重量%であってもよく、コバルトの含有量は1.5重量%~7重量%であってもよい。また、前記液相中間体中のコバルト/ニッケルの含有量比は0.03~0.13であってもよい。前記ニッケル及びコバルトの含有量が前記範囲を満たす場合、本発明に係る高ニッケル正極活物質の製造により有利である。
【0040】
本発明の一実施形態において、前記液相中間体を分離する段階は、硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンからなる群より選択される1種以上をさらに投入する工程を含むことができる。前記工程を含むことにより、本発明に係る高ニッケル正極活物質前駆体を製造するのに適するように組成に合わせて濃度を調整することができる。
【0041】
本発明の一実施形態において、前記液相中間体にキレート剤及び水酸化沈殿剤を投入して共沈反応させて正極活物質前駆体を製造することができる。
【0042】
前記キレート剤は、アンモニウムカチオンを含有する錯物形成剤であってもよく、例えば、NHOH、(NHSO、NHNO、NHCl、CHCOONH、NHCOまたはこれらの組み合わせであってもよいが、これらに限定されるものではない。一方、前記キレート剤は水溶液の形態で用いることもでき、このとき、溶媒としては水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的に、アルコールなど)と水の混合物を用いることができる。
【0043】
前記水酸化沈殿剤は、NaOH、KOHまたはCa(OH)などのようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、これらの水和物またはこれらの組み合わせであってもよい。前記水酸化沈殿剤も水溶液の形態で用いることもでき、このとき、溶媒としては水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的に、アルコールなど)と水の混合物を用いることができる。
【0044】
前記水酸化沈殿剤は、反応溶液のpHを調節するために添加されるもので、金属溶液のpHが11~13となる量で添加することができる。
【0045】
一方、前記共沈反応は、窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気下で、40℃~70℃の温度で行われることができる。
【0046】
前記のような工程により、ニッケル-コバルト-マンガン水酸化物の粒子が生成され、反応溶液内に沈殿する。硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンからなる群より選択される1種以上をさらに投入する工程を含み、硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンの濃度を調節し、リチウムを除いた金属の総量に対するニッケル(Ni)が60at%以上の前駆体を製造することができる。沈殿したニッケル-コバルト-マンガン水酸化物粒子を常法により分離させ、乾燥させて正極活物質前駆体を得ることができる。
【0047】
本発明の一実施形態において、前記高ニッケル正極活物質の製造方法は、前記正極活物質前駆体をリチウム原料物質と混合し焼成してリチウム複合金属酸化物を製造する段階をさらに含むことができる。具体的に、前記正極活物質前駆体とリチウム原料物質とを混合し、酸化雰囲気下で1次可塑性して可塑性物を形成することができる。前記リチウム原料物質としては、リチウム含有硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、ハライド、水酸化物またはオキシ水酸化物などを用いることができ、水に溶解できるものであれば特に限定されない。具体的に、前記リチウム原料物質は、LiCO、LiNO、LiNO、LiOH、LiOH・HO、LiH、LiF、LiCl、LiBr、LiI、CHCOOLi、LiO、LiSO、CHCOOLi、またはLiなどであってよく、これらのいずれか1つまたは2つ以上混合物を用いることができる。
【0048】
前記1次可塑性は酸化雰囲気下で行い、このとき、酸化雰囲気は酸素を供給しながら焼成を行うことを意味することがある。前記1次可塑性は、10m/min~600m/minで酸素を供給しながら行うことができ、より好ましくは200m/min~400m/minで酸素を供給することができる。
【0049】
前記1次可塑性の焼成温度は400℃~700℃であってもよく、より好ましくは450℃~650℃、さらに好ましくは500℃~600℃であってもよい。前記焼成温度の範囲内で1次可塑性することにより、リチウムと前駆体が反応して層状構造及びスピネル類似構造を有する可塑性物をより速く生成し、酸素の消費量を減らす効果があり得る。
【0050】
前記1次可塑性は、目標とする焼成温度到達後3時間~7時間行うことができ、より好ましくは4時間~6時間行うことができる。前記焼成時間の範囲内で1次可塑性することにより、最終製造される正極活物質の構造安定性を効果的に改善し、水分含量を減少させ、均一な反応を誘導して散布の少ない均一な性能を有する正極活物質の生成が可能であり、性能改善に必要なだけの酸素のみ消費し、生産効率性を向上させることができる。
【0051】
このように、1次可塑性を通じて形成された可塑性物は、層状(layered)構造及びスピネル類似(spinel-like)構造を含む構造を有することができる。前記可塑性物が層状(layered)構造及びスピネル類似(spinel-like)構造を含む構造が形成されたため、構造内に十分な酸素が入っているので、その後には酸化雰囲気を維持しなくてもよい。したがって、以後2次本焼成では酸素供給を中断することで酸素消費量を減らすことができるだけでなく、酸素投入による焼成炉の内部温度下降などを防ぐことができるため、同じ焼成温度で焼成しても結晶性に優れ、かつ均一な正極活物質を製造することができる。
【0052】
次に、前記可塑性物を大気(Air)雰囲気下で2次本焼成してリチウム遷移金属酸化物を形成する。
【0053】
前述のように、前記2次本焼成は1次可塑性での酸化雰囲気を維持せず、すなわち1次可塑性での酸素供給を中断した後、大気(Air)雰囲気下で行うことができる。前記1次可塑性で形成された可塑性物は、層状(layered)構造及びスピネル類似(spinel-like)構造を含む構造が形成されたため、2次本焼成で酸素を継続的に供給しなくてもよく、むしろ酸素投入による温度降下を防ぎ、正極活物質前駆体とリチウム原料ソースとの均一な反応を助け、結晶性に優れ、構造的に安定性が改善されたリチウム遷移金属酸化物の正極活物質を製造できるようになる。また、1次可塑性でのみ酸素供給を行うため、全体焼成工程を酸化雰囲気で行っていた以前の製造工程に比べて酸素消費量を顕著に減少させて製造費用を削減することができる。
【0054】
前記2次本焼成の焼成温度は700℃~1,000℃であってもよく、より好ましくは725℃~900℃、さらに好ましくは750℃~800℃であってもよい。前記焼成温度の範囲内で2次本焼成することにより、構造的にカチオン混合(Cation disorder)も少なく電気化学的に優れる正極活物質を合成することができる効果があり得る。
【0055】
前記2次本焼成は、目標とする焼成温度到達後4~15時間行うことができ、より好ましくは5~10時間の間行うことができる。
【0056】
このように形成されたリチウム遷移金属酸化物は、例えば、下記化学式1で表されるものであってもよい。
【0057】
[化学式1]
LiNiCoMnMeO
【0058】
前記化学式1において、Mは、W、Cu、Fe、Ba、V、Cr、Ti、Zr、Zn、In、Ta、Y、In、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B及びMoからなる群より選択される1種以上であり、0.9≦a≦1.5、0.7≦b<1.0、0<c<0.2、0<d<0.2、0≦e≦0.02である。
【0059】
前記化学式1のリチウム遷移金属酸化物において、Liはaに該当する含有量、すなわち、0.9≦p≦1.5で含まれてもよい。aが0.9未満であると容量が低下するおそれがあり、1.5を超えると焼成した正極活物質の強度が高くなって粉砕が難しく、Li副産物の増加でガス発生量の増加があり得る。Li含有量の制御による正極活物質の容量特性の改善効果及び活物質製造時の焼結性バランスを考慮するとき、前記Liは、より好ましくは1.0≦a≦1.1の含有量で含まれることができる。
【0060】
また、前記化学式1のリチウム遷移金属酸化物において、Niは、bに該当する含有量、例えば、0.7≦b<1.0で含まれてもよい。前記化学式1のリチウム遷移金属酸化物内のNiの含有量が0.7以上の組成になると、充放電に寄与するのに十分なNi量が確保され、さらに高容量化を図ることができる。
【0061】
前記化学式1のリチウム遷移金属酸化物において、Coはcに該当する含有量、すなわち、0<c<0.2で含まれてもよい。前記化学式1のリチウム遷移金属酸化物内のCoの含有量が0.2以上の場合、費用増加のおそれがある。
【0062】
前記化学式1のリチウム遷移金属酸化物において、Mnはdに該当する含有量、すなわち、0<d<0.2で含まれてもよい。Mnは正極活物質の安定性を向上させ、結果として電池の安定性を改善させることができる。
【0063】
前記化学式1のリチウム遷移金属酸化物において、Mはリチウム遷移金属酸化物の結晶構造内に含まれたドーピング元素であってもよく、Mはeに該当する含有量、すなわち、0≦e≦0.02で含まれることができる。
【0064】
本発明の一実施形態において、前記正極活物質は、リチウムを除いた金属の総量に対するニッケルの含有量が60at%以上であってもよく、好ましくは75at%以上であってもよく、より好ましくは80at%であってもよい。前記正極活物質は、前記ニッケルの含有量を満たすことによって、構造的に安定するだけでなく、繰り返し充電時にも容量特性に優れ、抵抗増加率が小さい二次電池を具現することができる。
【0065】
本発明の一実施形態では、高ニッケル正極活物質の製造方法は、前記液相中間体を還元及び沈殿する工程を含まないことがある。すなわち、前記液相中間体を還元及び沈殿してニッケル、コバルトまたはマンガンを純粋な金属に別途分離しない状態で正極活物質を製造することができる。これにより、最終段階で分離が困難なニッケルとコバルトを精製する過程を必要とせず、製錬及び液化工程を簡素化することができ、これにより、高ニッケル正極活物質の製造に要する時間及び費用を短縮することができる。
【0066】
また、本発明の製造方法により製造された高ニッケルリチウム遷移金属酸化物の正極活物質を使用時、リチウム二次電池の初期抵抗を減少させ、高温寿命特性を改善し、抵抗増加を抑制することができる。
【0067】
正極及び二次電池
本発明の製造方法により製造された高ニッケル正極活物質は、二次電池用正極製造に有用に用いることができる。
【0068】
具体的に、本発明に係る二次電池用正極は、正極集電体及び前記正極集電体上に形成された正極活物質層を含み、このとき、前記正極活物質層は本発明に係る正極活物質を含む。
【0069】
前記正極は、本発明に係る正極活物質を用いることを除いては、通常の正極製造方法により製造することができる。例えば、前記正極は、正極活物質層を構成する成分、すなわち、正極活物質と、導電材及び/又はバインダーなどを溶媒に溶解または分散させて正極合材を製造し、前記正極合材を正極集電体の少なくとも一面に塗布した後、乾燥、圧延させる方法で製造するか、または前記正極合材を別途の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムを正極集電体上にラミネーションすることによって製造することができる。
【0070】
このとき、前記正極集電体は電池に化学的変化を誘発することなく、かつ導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを用いることができる。また、前記正極集電体は、通常3μm~500μmの厚さを有してもよく、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布など様々な形態で使用することができる。
【0071】
前記集電体の少なくとも一面に本発明に係る正極活物質を含み、必要に応じて導電材及びバインダーの少なくとも1種を選択的にさらに含む正極活物質層が位置する。
【0072】
前記正極活物質は、前記本発明に係る正極活物質、すなわち、前記化学式1で表されるリチウム複合金属酸化物を含む。本発明に係る正極活物質の具体的な内容は前述したことと同様であるので、具体的な説明は省略する。
【0073】
前記正極活物質は、正極活物質層の総重量に対して80~99重量%、より具体的には85~98重量%の含有量で含まれることができる。前記の含有量の範囲に含まれるとき、優れた容量特性を示すことができる。
【0074】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために用いられるもので、構成される電池において、化学変化を起こすことなく電子伝導性を有するものであれば特に制限なく使用可能である。具体例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうちの1種単独または2種以上の混合物を用いることができる。前記導電材は、正極活物質層の総重量に対して1重量%~30重量%で含まれることができる。
【0075】
また、前記バインダーは、正極活物質の粒子間の付着及び正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割を果たす。具体例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの様々な共重合体などが挙げられ、これらのうちの1種単独または2種以上の混合物を用いることができる。前記バインダーは、正極活物質層の総重量に対して1重量%~30重量%で含まれることができる。
【0076】
一方、正極合材の製造に用いられる溶媒は、当該技術分野において一般的に用いられる溶媒であってもよく、例えば、ジメチルスルポキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)または水などを単独でまたはこれらを混合して用いることができる。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚、製造収率、粘度などを考慮して適宜調節することができる。
【0077】
次に、本発明に係る二次電池について説明する。
【0078】
本発明に係る二次電池は正極、前記正極と対向して位置する負極、前記正極と負極との間に介在するセパレータ及び電解質を含み、このとき、前記正極は、前述した本発明に係る正極である。
【0079】
一方、前記二次電池は、前記正極、負極、セパレータの電極組立体を収納する電池容器、及び前記電池容器を封止する封止部材を選択的にさらに含むことができる。
【0080】
前記二次電池において、前記負極は、負極集電体及び前記負極集電体の少なくとも一面に位置する負極活物質層を含む。
【0081】
前記負極は、当該技術分野において一般的に知られている通常の負極の製造方法により製造することができる。例えば、前記負極は負極活物質層を構成する成分、すなわち、負極活物質と、導電材及び/又はバインダーなどを溶媒に溶解または分散させて負極合材を製造し、前記負極合材を負極集電体の少なくとも一面に塗布した後、乾燥、圧延させる方法で製造するか、または前記負極合材を別途の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムを負極集電体上にラミネーションすることによって製造することができる。
【0082】
前記負極集電体は電池に化学的変化を誘発することなく、かつ高い導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などを用いることができる。また、前記負極集電体は、通常3μm~500μmの厚さを有することができ、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布など様々な形態で用いることができる。
【0083】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーション及びデインターカレーションが可能な化合物を用いることができる。具体例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金、Al合金などのリチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOv(0<v<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープ及び脱ドープすることができる金属酸化物;あるいはSi-C複合体またはSn-C複合体のように前記金属質化合物と炭素質材料とを含む複合体などが挙げられ、これらのいずれか1つまたは2つ以上の混合物を用いることができる。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜を用いてもよい。また、炭素材料は、低結晶炭素及び高結晶性炭素などの両方を用いることができる。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)及び硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、鱗片状、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、炭素微小球体(meso-carbon microbeads)、液晶ピッチ(Mesophase pitches)及び石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0084】
また、前記バインダー及び導電材は、前記正極において説明したことと同一のものであってもよい。
【0085】
一方、前記二次電池において、セパレータは、負極と正極を分離しリチウムイオンの移動通路を提供するもので、通常、二次電池においてセパレータとして用いられるものであれば特に制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながら電解液含湿能力に優れることが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子から製造した多孔性高分子フィルム又はこれらの2層以上の積層構造体を用いることができる。また、通常の多孔質不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を用いることもできる。また、耐熱性または機械的強度を確保するために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータを用いることもでき、選択的に単層または多層構造で用いることができる。
【0086】
一方、前記電解質としては、二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
具体的に、前記電解質は有機溶媒及びリチウム塩を含むことができる。
【0088】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動することができる媒質の役割を果たすことができるものであれば、特に制限なく用いることができる。具体的に、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(demethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボン(propylene carbonate、PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;Ra-CN(Raは、炭素数2~20の直鎖状、分岐状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などを用いることができる。この中でもカーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度及び高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の線状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは約1:1~1:9の体積比で混合して用いることが電解液の性能が優れていることがある。
【0089】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池において用いられるリチウムイオンを提供することができる化合物であれば、特に制限なく用いることができる。具体的に、前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiI、またはLiB(Cなどを用いることができる。前記リチウム塩の濃度は、0.1M~2.0Mの範囲内で使用することがよい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するので、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0090】
前記電解質には、前記電解質の構成成分の他にも、電池の寿命特性向上、電池容量の減少抑制、電池の放電容量向上などを目的で、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのようなハロアルキレンカーボネート系化合物;またはピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれてもよい。このとき、前記添加剤は電解質の総重量に対して0.1重量%~5重量%で含まれることができる。
【0091】
前記のように本発明に係る正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れる容量特性及び高温安定性を有し、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどの携帯用機器、及びハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などに有用に適用されることができる。
【0092】
また、本発明に係る二次電池は、電池モジュールの単位セルとして用いることができ、前記電池モジュールは電池パックに適用されることができる。前記電池モジュールまたは電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、及びプラグ-インハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle 、PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システムのいずれか1つ以上の中大型デバイス電源として利用されることができる。
【0093】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は本発明を例示するに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で種々の変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0094】
実施例
正極活物質の製造
[実施例1]
(1)液相中間体の製造
- 酸を用いて原料内の金属成分を浸出させ、不純物を除去して液相中間体を分離する段階
オートクレーブでラテライト鉱石を硫酸で加圧浸出させた(HPAL(High Pressure Acid Leaching)法)。この時の温度は250℃であり、圧力は4.46MPaであった。硫酸は乾燥鉱石基準350kg/tonを投入した。その後、残渣を沈降分離させ、浸出液中の残留酸を中和した。前記過程を5回繰り返し行った。このときの反応は下記の反応式で示される通りである。
【0095】
Ni(Co)O(s)+HSO(aq)=Ni(Co)SO(aq)+HO(1)
2FeOOH+3HSO=Fe(SO+4H
Fe(SO+3HO=Fe+3HSO
MgO+HSO=MgSO+H
3Al(OH)+2HSO=HOAl(SO(OH)+2H
【0096】
前記のように、酸を用いて金属成分を浸出させた後、不純物を除去した後に得られた液相中間体は、10.3モル%の硫酸ニッケル、0.9モル%の硫酸コバルト及び1.7モル%の硫酸マンガンを含み(コバルト/ニッケルの含有量比=0.087)、具体的な液相中間体の組成は下記表1の通りであった。
【0097】
全体重量100%を基準として表現し、残部はその他の不可避な不純物で構成される。
【0098】
【表1】
【0099】
(2)正極活物質前駆体を共沈させる段階
前記で得られた液相中間体1tonに硫酸ニッケル316kg及び硫酸コバルト77kgをさらに投入した。
【0100】
その後、前記のように、硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンをさらに投入した液相中間体を、水酸化ナトリウム(NaOH)溶液を添加してpHを11.0に調節した後、窒素ガスを1L/分、反応器温度を40℃、撹拌速度を1000RPMで初期化した5L反応器に0.32L/hrで投入した。その後、6M濃度のアンモニア溶液(NHOH、キレート剤)を反応器に0.032L/hrで連続的に投入し、3M濃度の水酸化ナトリウム(NaOH、水酸化沈殿剤)をさらに投入してpHを11となるように調節し、溶液の平均滞留時間は6時間とし、ニッケル-コバルト-マンガン複合水酸化物を連続的に得た。このようにして得たニッケル-コバルト-マンガン複合水酸化物を濾過した後、130℃で24時間乾燥して熱処理前の前駆体として用いた。
【0101】
前記前駆体及び水酸化リチウム(LiOH.HO)のモル比を1:1.4の比率で高密度ポリエチレン(HDPE)瓶容器に入れ、ジルコニアボールと投入原料の比が5:1となるようにジルコニアボールを入れた後、ボールミラーを通じて100rpmで10時間固相混合した。このように固相混合された原料物質をジルコニアボールと分離した後には加熱炉に入れて昇温速度1.25℃/minで750℃まで上昇させた後、750℃で10時間酸素雰囲気下で焼成してリチウム複合金属酸化物を製造した。前記リチウム複合金属酸化物は、LiNi0.8Co0.1Mn0.1と現れる。このように製造されたリチウム複合金属酸化物とエタノールの重量比率を1:10として1L反応器に入れ、モータによるインペラ回転数を1000rpmで1時間回転させて残留リチウムを除去し、真空濾過した後、130℃で10時間の間真空乾燥して正極活物質を製造した。
【0102】
前記正極活物質内のリチウムを除いた金属の総量に対するニッケル元素の含有量は80at%であった。
【0103】
[比較例1]
通常の方法によりニッケル、コバルト及びマンガンを製錬した後、これを用いて硫酸ニッケル(NiSO)、硫酸コバルト(CoSO)、硫酸マンガン(MnSO)を製造し、前記硫酸ニッケル(NiSO)、硫酸コバルト(CoSO)、硫酸マンガン(MnSO)のモル比を前記実施例1の液相中間体と同様に金属溶液を製造した。
【0104】
具体的に、前記(1)段階で得られた浸出液に過量の硫化水素(HS)を処理して硫化ニッケル(NiS)、硫化コバルト(CoS)及び硫化マンガン(MnS)を得た後、前記硫化ニッケル(NiS)、硫化コバルト(CoS)及び硫化マンガン(MnS)からニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)を抽出(還元)した後、再び硫酸化して硫酸ニッケル(NiSO)、硫酸コバルト(CoSO)、硫酸マンガン(MnSO)を製造した後、これらのモル比を前記実施例1の液相中間体と同様にして金属溶液を製造した。
【0105】
その後、前記金属溶液を用いて前記(2)正極活物質前駆体を共沈させる段階と同様の方法で正極活物質を製造した。
【0106】
前記正極活物質内のリチウムを除いた金属の総量に対するニッケル元素の含有量は80at%で、実施例1と同様であった。
【0107】
以上の結果から、本発明の製造方法は製錬及び液化工程を簡素化したにもかかわらず、従来の製造方法に比べて同等以上の効果を示し、正極活物質の製造に要する時間及び費用を短縮できることが分かった。
【0108】
本発明の単なる変形ないし変更はすべて本発明の範囲に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求の範囲によって明らかになるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】