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特表2023-546085グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤またはその持続型結合体を含む血管炎の予防用または治療用の薬学的組成物
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  • 特表-グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤またはその持続型結合体を含む血管炎の予防用または治療用の薬学的組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤またはその持続型結合体を含む血管炎の予防用または治療用の薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20231025BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20231025BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231025BHJP
   C07K 14/605 20060101ALN20231025BHJP
【FI】
A61K38/16
A61P9/00
A61K47/68
A61K39/395 Y
C07K14/605 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522936
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(85)【翻訳文提出日】2023-04-13
(86)【国際出願番号】 KR2021014466
(87)【国際公開番号】W WO2022080987
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0134481
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516132149
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウン チョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、チェ ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョン クク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウォン キ
(72)【発明者】
【氏名】オ、ウ イム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA94
4C076CC11
4C076EE41M
4C076EE59M
4C076FF31
4C084BA01
4C084BA19
4C084BA23
4C084BA24
4C084CA59
4C084NA12
4C084NA14
4C084ZA361
4C084ZA362
4C085AA33
4C085BB31
4C085BB36
4C085BB42
4C085CC22
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA30
4H045EA20
(57)【要約】
グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、またはその持続型結合体を含む血管炎の予防用または治療用の薬学的組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管炎予防または治療のための薬学的組成物であり、
薬学的に許容される賦形剤と、
配列番号1ないし102のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドと、を薬学的有効量で含む、薬学的組成物。
【請求項2】
前記ペプチドは、持続型結合体の形態であり、前記持続型結合体は、下記化学式1で表される、請求項1に記載の薬学的組成物:
<化学式1> X-L-F
ただし、このとき、Xは、配列番号1ないし102のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドであり、
Lは、エチレングリコール繰り返し単位を含むリンカであり、
Fは、免疫グロブリンFc領域であり、
-は、XとLとの共有結合連結、LとFとの共有結合連結を示す。
【請求項3】
前記ペプチドは、そのC末端がアミド化された、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記ペプチドは、配列番号21,22,42,43,50,64,66,67,70,71,76,77,96,97及び100によって構成された群のうちから選択されたアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記ペプチドは、配列番号21,22,42,43,50,66,67,77,96,97及び100によって構成された群のうちから選択されたアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記ペプチドは、配列番号21,22,42,43,50,77及び96によって構成された群のうちから選択されたアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記ペプチド配列において、N末端から、16番アミノ酸と20番アミノ酸は、互いに環を形成する、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記L内のエチレングリコール繰り返し単位部分の化学式量は、1ないし100kDa範囲にある、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記Fは、IgGFc領域である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記血管炎は、大血管血管炎、中血管血管炎または小血管血管炎である、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記血管炎は、巨大細胞動脈炎、高安動脈炎、コーガン症候群における大動脈炎、脊椎関節症における大動脈炎、孤立性大動脈炎、川崎病、結節性多発動脈炎、ANCA関連血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、中枢神経系原発性脈管炎、IgA血管炎、リウマチ関節炎関連血管炎、全身紅斑ループス関連血管炎、シェーグレン症候群関連血管炎、クリオグロブリン血管炎、及び薬物誘発血管炎によって構成された群のうちから選択されたいずれか一つである、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤またはその持続型結合体を含む血管炎の予防用または治療用の薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血管炎(vasculitis)とは、免疫細胞が血管または血管壁を攻撃し、血管壁内に炎症を誘発して生じる疾患である。血管炎は、多様な分類方法によっても分類されるが、現在最も多用されている分類法は、ジェネット(Jennette)らが提示した侵犯された血管の大きさによる分類である(Jennette JC, Falk RJ, Andrassy K et al. Nomenclature of systemic vasculitides. Proposal of an international consensus conference. Arthritis Rheum 37:187-92, 1994)。
【0003】
高安動脈炎(TA:Takayasu arteritis)と巨大細胞動脈炎(GCA:giant cell arteritis)は、大動脈のような大血管を侵犯する代表的な大血管血管炎(LVV:large vessel vasculitis)である。血管炎の症状は、血管の直接の損傷、または血液供給が妨害または減少された組織の間接的な損傷にも起因しうる。その症状は、炎症が引き起こされた血管の大きさ、位置、損傷程度によって多様である。血管炎は、症状が多様であり、非特異的であるために、早期診断が困難であり、血管変形がかなり進んだ後になってこそ、診断される場合が多く、治療に困難さが伴う。また、TA及びGCAのいずれも原因が知られておらず、人種、地域、性別によって違いはあるが、発生が多くない珍しい疾患であるために、それに係わり、活発な研究が進められていなかった状況である。
【0004】
血管炎の治療は、炎症緩和のために、糖質コルチコイド(glucocorticoid)を利用するのがほとんどであるが、ステロイドの特性上、高用量または長期間の使用時、副作用が大きいという短所がある。そして、糖質コルチコイドの投薬を中断するか、あるいは用量を減らして使用することになれば、緩和された症状が再発するというような問題点がある。
【0005】
LVVは、まだ根本的な治療剤の開発が十分でなく、充足を求める需要が高い分野のうち一つである。副作用が少なく、血管炎が非可逆的な血管病変に進むことを防ぎ、今後の発生可能な合併症を予防するために、適切な治療剤の開発が要求されている。
【0006】
血管炎及び動脈硬化症の場合、病症が生ずる組織が血管であるという点と、慢性炎症疾患という点とにおいて共通点があるが、疾患発生に脂質が関与するか否かということによっても区分される。動脈硬化症は、血液内脂質が血管壁にたまり、血管が細くなるのが疾患の発生経路であり、血管炎は、血管壁に侵犯した炎症反応が、疾患の発生経路である。従って、血管炎と動脈硬化症は、疾病の発生メカニズムが異なっており、治療法も異なっている。
【0007】
GLP-1(glucagon-like peptide-1)及びGIP(glucose-dependent insuliontropicpoly peptide)は、代表的な偽装ホルモンであると共に、神経ホルモンであり、飲食物摂取による血中糖濃度調節に関与する物質である。グルカゴン(glucagon)は、膵臓で分泌されるペプチドホルモンに、前述の2つの物質と共に、血中糖濃度調節作用に関与する。
【0008】
GLP-1は、飲食物摂取に刺激を受け、小腸で分泌されるホルモンであり、血糖濃度依存的に、膵臓におけるインシュリン分泌を促進させ、グルカゴンの分泌を抑制し、血糖濃度を低くする作用の一助となる。 また、飽満因子と作用し、胃腸の消化作用を遅らせ、飲食消化物の胃腸通過時間を遅延させ、飲食物摂取を減らす役割を有する。さらには、鼠に投与するとき、飲食物摂取抑制と体重低減との効果があることが報告され、そのような効果は、正常と肥満との状態のいずれにおいても、同一に示されることが確認され、肥満治療剤としての可能性を示している。
【0009】
GIP(glucose-dependent insulinotropic polypeptide)は、胃腸管で分泌される代表的なホルモン(インクレチンホルモン)であると共に、神経ホルモンであり、飲食物摂取に刺激を受けて分泌される。GIPは、小腸のK細胞から分泌される42個アミノ酸によって構成されたホルモンであり、血糖濃度に依存的に、膵臓からのインシュリン分泌あるいはグルカゴン分泌を促進させ、血糖の恒常性を維持するのに一助となると周知されており、最近の研究においては、食餌抑制及び抗炎症の効果が報告されている。
【0010】
グルカゴンは、薬物治療または疾病、ホルモンや酵素の欠乏などの原因によって血糖が落ち始めれば、膵臓で生産される。グルカゴンは、肝臓に合図を送ってグリコーゲンを分解し、グルコースを放出するように誘導し、血糖レベルを正常レベルまで高める役割を行う。それだけではなく、グルカゴンは、血糖上昇効果以外に、動物とヒトにおける食欲を抑制させ、脂肪細胞のホルモン敏感性リパーゼ(hormone sensitive lipase)を活性化させ、脂肪分解を促進させ、エネルギー代謝(energy expenditudre)を促進させ、抗肥満効果を示すということが報告された。
【0011】
それにより、本発明者らは、グルカゴン,GLP-1及びGIP受容体に同時に活性を有する三重作用剤を開発し、その血管炎に対する治療剤としての可能性を確認し、本発明完成に至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物またはその結合体を含む血管炎の予防用または治療用の薬学的組成物を提供する。
【0013】
有効量の前記グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物またはその結合体、あるいは前記薬学的組成物を、それを必要とする個体に投与する段階を含む、血管炎を予防または治療する方法を提供する。
【0014】
血管炎の予防用または治療用の薬剤を製造するのに使用するための、前記グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物またはその結合体の用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本明細書全般において、天然に存在するアミノ酸に係わる通常の1文字コード及び3文字コードが使用されるだけではなく、Aib(α-アミノイソ酪酸)、Sar(N-メチルグリシン)、α-メチル-グルタミン酸(α-methyl-glutamicacid)のような他のアミノ酸について、一般的に許容される3文字コードが使用される。また、本明細書において、略語で言及されたアミノ酸は、IUPAC-IUB命名法によって記載されている。
【0016】
アラニンAla,A アルギニンArg,R
アスパラギンAsn,N アスパラギン酸Asp,D
システインCys,C グルタミン酸Glu,E
グルタミンGln,Q グリシンGly,G
ヒスチジンHis,H イソロイシンIle,I
ロイシンLeu,L リシンLys,K
メチオニンMet,M フェニルアラニンPhe,F
プロリンPro,P セリンSer,S
スレオニンThr,T トリプトファンTrp,W
チロシンTyr,Y バリンVal,V
【0017】
一態様は、グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤、その薬学的に許容可能な塩またはその溶媒化物を含む、血管炎の予防用または治療用の薬学的組成物を提供する。
【0018】
「グルカゴン(GCG:glucagon)」は、膵臓のランゲルハンス島にあるα細胞から分泌されるホルモンであり、インシュリンとは反対作用を行い、フィードバック関係にある。
【0019】
「GLP-1(Glucagon-like peptide-1)」は、飲食物摂取に刺激を受け、小腸のL細胞から分泌されるホルモンであり、血糖濃度依存的に、膵臓におけるインシュリン分泌を促進させ、グルカゴンの分泌を抑制し、血糖濃度を低くする作用の一助となる。
【0020】
「GIP(glucose-dependent insulinotropicpoly peptideまたはgastricin hibitory polypeptide)」は、飲食物摂取に刺激を受け、小腸のK細胞から分泌されるホルモンであり、血中糖濃度調節に関与する物質として最初に報告されている。
【0021】
前記「グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤(glucagon/glp-1/gip triple agonist)」は、「GCG/GLP-1/GIP三重作用剤」、「GCG/GLP-1/GIP受容体三重作用剤」、「GCG受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体三重作用剤」、「GCGR/GLP-1R/GIPR三重作用剤」、「三重作用剤」または「グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチド」と相互交換的に使用されうる。
【0022】
前記グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤は、グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドでもある。前記「グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチド」は、前記グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して有意レベルの活性を有し、具体的には、グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して、インビトロ(in vitro)活性が、それぞれ天然型リガンド(天然型グルカゴン、天然型GLP-1または天然型GIP)対比で、およそで、0.1%以上、1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上、100%ないし500%、または100%ないし200%を示すものを意味しうる。そのようなグルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドのインビトロ(in vitro)活性を測定する方法は、本願明細書の実験例1を参照することができるが、特別にそれに制限されるものではなく、当業界に知られている方法であるならば、適切に使用し、インビトロ(in vitro)活性を測定することができる。
【0023】
「約」とは、±0.5、±0.4、±0.3、±0.2、±0.1などをいずれも含む範囲であり、「約」という用語後に出てくる数値と同等であるか、あるいは類似した範囲の数値をいずれも含むが、それに制限されるものではない。
【0024】
前記ペプチドは、天然型GLP-1、天然型グルカゴン及び天然型GIPのうちいずれか1対比で、体内半減期が増大されたものでもあるが、特別にそれに制限されるものではない。
【0025】
前記ペプチドは、天然型グルカゴンのアナログでもあるが、それに制限されるものではない。
前記天然型グルカゴンのアナログは、天然型グルカゴンと比較し、アミノ酸配列に1以上の違いがあるペプチド、天然型グルカゴン配列の改質を介して変形させたペプチド、または天然型グルカゴンの模倣体を含む。
【0026】
一方、天然型グルカゴンは、以下のアミノ酸配列を有しうる:
His-Ser-Gln-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Tyr-Ser-Lys-Tyr-Leu-Asp-Ser-Arg-Arg-Ala-Gln-Asp-Phe-Val-Gln-Trp-Leu-Met-Asn-Thr(配列番号:118)
【0027】
具体的には、前記ペプチドは、天然型グルカゴン配列において、少なくとも1以上のアミノ酸に変形が起こった天然型グルカゴンのアナログでもある。前記変形は、置換(substitution)、追加(addition)、除去(deletion)、改質(modification)、及びそれらの2以上の組み合わせによってなる群のうちからも選択される。
【0028】
前記置換は、アミノ酸による置換であるが、非天然型化合物による置換をいずれも含むものでもある。
【0029】
前記追加は、ペプチドのN末端及び/またはC末端になされうる。一方、追加されるアミノ酸の長さは、特別に制限されるものではないが、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上のアミノ酸が追加され、広くは、ポリペプチドの追加を含むが、特別にそれに制限されるものではない。
【0030】
さらに具体的には、前記グルカゴンアナログは、天然型グルカゴンアミノ酸配列において、1番、2番、3番、7番、10番、12番、13番、14番、15番、16番、17番、18番、19番、20番、21番、23番、24番、27番、28番及び29番によってなる群のうちから選択された、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、16個以上、17個以上、18個以上、19個以上または20個のアミノ酸が、他のアミノ酸で置換されたものでもあり、あるいは独立して、または追加して、そのC末端に、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上のアミノ酸が追加されたものでもあるが、特別にそれに制限されるものではない。
【0031】
さらに一層具体的には、前記グルカゴンアナログは、天然型グルカゴンアミノ酸配列で1番、2番、3番、10番、12番、13番、14番、15番、16番、17番、18番、19番、20番、21番、23番、24番、27番、28番及び29番によってなる群のうちから選択された、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19個のアミノ酸の他のアミノ酸が置換されたことでもあるし、また独立的にまたは追加的にそのC末端に1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、または11個以上のアミノ酸が追加されたことでもあるが、特別にそれに制限されるものではない。
【0032】
さらに一層具体的には、前記グルカゴンアナログは、天然型グルカゴンアミノ酸配列において、1番、2番、3番、10番、13番、14番、15番、16番、17番、18番、19番、20番、21番、23番、24番、28番及び29番によってなる群のうちから選択された、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、16個以上、17個のアミノ酸が、他のアミノ酸で置換されたものでもあり、あるいは独立的して、または追加的して、そのC末端に、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上または11個以上のアミノ酸が追加されたものでもあるが、特別にそれに制限されるものではない。
【0033】
さらに一層具体的には、前記グルカゴンアナログは、天然型グルカゴンアミノ酸配列において、1番、2番、13番、16番、17番、18番、19番、20番、21番、23番、24番、27番、28番及び29番によってなる群のうちから選択された、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上または14個のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたものでもあり、あるいは独立して、あるいは追加して、そのC末端に、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上のアミノ酸が追加されたものでもあるが、特別にそれに制限されるものではない。
【0034】
前記天然型グルカゴンにおいて導入されるアミノ酸は、チロシン、α-メチル-グルタミン酸、Aib、メチオニン、グルタミン酸、ヒスチジン、リシン、ロイシン、イソロイシン、グルタミン、バリン、グリシン、アラニン、システイン、セリン、アラニン、アスパラギン酸及びアルギニンによってなる群のうちからも選択されるが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0035】
例えば、前記追加されるアミノ酸配列は、天然型GLP-1、天然型GIPまたは天然型エクセンジン-4のアミノ酸配列に由来するものでもある。
【0036】
前記グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤は、非自然発生(non-naturally occurring)のものでもある。
【0037】
前記グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤は、分離されたペプチドでもある。
【0038】
一具体例において、前記グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤は、下記一般式1で表されるアミノ酸配列を含むペプチドである:
【0039】
<一般式1>
Xaa1-Xaa2-Xaa3-Gly-Thr-Phe-Xaa7-Ser-Asp-Xaa10-Ser-Xaa12-Xaa13-Xaa14-Xaa15-Xaa16-Xaa17-Xaa18-Xaa19-Xaa20-Xaa21-Phe-Xaa23-Xaa24-Trp-Leu-Xaa27-Xaa28-Xaa29-Xaa30-R1(一般式1(配列番号103))
前記一般式1で、
Xaa1は、ヒスチジン(His,H)、4-イミダゾアセチル(CA)またはチロシン(Tyr、Y)であり、
Xaa2は、グリシン(Gly,G)、α-メチル-グルタミン酸またはAib(アミノイソ酪酸)であり、
Xaa3は、グルタミン酸(Glu,E)またはグルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa7は、スレオニン(Thr,T)またはイソロイシン(Ile,I)であり、
Xaa10は、ロイシン(Leu,L)、チロシン(Tyr,Y)、リシン(Lys,K)、システイン(Cys,C)またはバリン(Val,V)であり、
Xaa12は、リシン(Lys,K)、セリン(Ser,S)またはイソロイシン(Ile,I)であり、
Xaa13は、グルタミン(Gln,Q)、チロシン(Tyr,Y)、アラニン(Ala,A)またはシステイン(Cys,C)であり、
Xaa14は、ロイシン(Leu,L)、メチオニン(Met、M)またはチロシン(Tyr,Y)であり、
Xaa15は、システイン(Cys,C)、アスパラギン酸(Asp,D)、グルタミン酸(Glu,E)またはロイシン(Leu,L)であり、
Xaa16は、グリシン(Gly,G)、グルタミン酸(Glu,E)またはセリン(Ser,S)であり、
Xaa17は、グルタミン(Gln,Q)、アルギニン(Arg,R)、イソロイシン(Ile,I)、グルタミン酸(Glu,E)、システイン(Cys,C)またはリシン(Lys,K)であり、
Xaa18は、アラニン(Ala,A)、グルタミン(Gln,Q)、アルギニン(Arg,R)またはヒスチジン(His,H)であり、
Xaa19は、アラニン(Ala,A)、グルタミン(Gln,Q)、システイン(Cys,C)またはバリン(Val,V)であり、
Xaa20は、リシン(Lys,K)、グルタミン(Gln,Q)またはアルギニン(Arg,R)であり、
Xaa21は、グルタミン酸(Glu,E)、グルタミン(Gln,Q)、ロイシン(Leu,L)、システイン(Cys,C)またはアスパラギン酸(Asp,D)であり、
Xaa23は、イソロイシン(Ile,I)またはバリン(Val,V)であり、
Xaa24は、アラニン(Ala,A)、グルタミン(Gln,Q)、システイン(Cys,C)、アスパラギン(Asn,N)、アスパラギン酸(Asp,D)またはグルタミン酸(Glu,E)であり、
Xaa27は、バリン(Val,V)、ロイシン(Leu,L)、リシン(Lys,K)またはメチオニン(Met,M)であり、
Xaa28は、システイン(Cys,C)、リシン(Lys,K)、アラニン(Ala,A)、アスパラギン(Asn,N)またはアスパラギン酸(Asp,D)であり、
Xaa29は、システイン(Cys,C)、グリシン(Gly,G)、グルタミン(Gln,Q)、スレオニン(Thr,T)、グルタミン酸(Glu,E)またはヒスチジン(His,H)であり、
Xaa30は、システイン(Cys,C)、グリシン(Gly,G)、リシン(Lys,K)またはヒスチジン(His,H)であるか、あるいは存在せず、
R1は、システイン(Cys,C)、GKKNDWKHNIT(配列番号106)、m-SSGAPPPS-n(配列番号107)またはm-SSGQPPPS-n(配列番号108)であるか、あるいは存在せず、
ここで、
mは、-Cys-、-Pro-または-Gly-Pro-であり、
nは、-Cys-、-Gly-、-Ser-または-His-Gly-であるか、あるいは存在しない。
【0040】
そのような三重作用剤の例として、前記ペプチドは、配列番号1ないし102によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むもの、配列番号1ないし102によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって必須に構成されるもの、配列番号1ないし102によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって構成されるものでもあるが、それらに制限されるものではない。
【0041】
他の具体例において、前記一般式1で、
Xaa14は、ロイシンまたはメチオニンであり、
Xaa15は、システイン、アスパラギン酸またはロイシンでもある。
【0042】
そのような三重作用剤の例として、前記ペプチドは、配列番号1ないし12,14ないし17、及び配列番号21ないし102によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むもの、配列番号1ないし12,14ないし17、及び配列番号21ないし102によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって必須に構成されるもの、配列番号1ないし12,14ないし17、及び配列番号21ないし102によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって構成されるものでもあるが、それらに制限されるものではない。
【0043】
そのようなペプチドは、グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体のうち1以上を有意に活性化させることができるが、特別にそれらに制限されるものではない。具体的には、GLP-1を有意に活性化させるか、あるいはさらには、グルカゴン受容体及び/またはGIP受容体を有意に活性化させるものでもあるが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0044】
他の具体例において、前記一般式1で、
Xaa2は、グリシン、α-メチル-グルタミン酸またはAibであり、
Xaa7は、スレオニンであり、
Xaa10は、チロシン、システインまたはバリンであり、
Xaa12は、リシンまたはイソロイシンであり、
Xaa13は、チロシン、アラニン、グルタミンまたはシステインであり、
Xaa14は、ロイシン、システインまたはメチオニンであり、
Xaa15は、システイン、ロイシン、グルタミン酸またはアスパラギン酸であり、
Xaa17は、グルタミン、アルギニン、イソロイシン、システイン、グルタミン酸またはリシンであり、
Xaa18は、アラニン、グルタミン、アルギニンまたはヒスチジンであり、
Xaa19は、アラニン、グルタミン、バリンまたはシステインであり、
Xaa20は、リシン、アルギニンまたはグルタミンであり、
Xaa21は、グルタミン酸、グルタミン、ロイシン、システインまたはアスパラギン酸であり、
Xaa23は、イソロイシンまたはバリンであり、
Xaa24は、システイン、アラニン、グルタミン、アスパラギン、グルタミン酸またはアスパラギン酸であり、
Xaa27は、ロイシンまたはリシンでもあるが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0045】
さらに一層具体的には、前記一般式1で、
Xaa2は、グリシン、α-メチル-グルタミン酸またはAibであり、
Xaa7は、スレオニンであり、
Xaa10は、チロシン、システインまたはバリンであり、
Xaa12は、リシンまたはイソロイシンであり、
Xaa13は、チロシン、アラニンまたはシステインであり、
Xaa14は、ロイシンまたはメチオニンであり、
Xaa15は、システインまたはアスパラギン酸であり、
Xaa17は、グルタミン、アルギニン、イソロイシン、システインまたはリシンであり、
Xaa18は、アラニン、アルギニンまたはヒスチジンであり、
Xaa19は、アラニン、グルタミンまたはシステインであり、
Xaa20は、リシンまたはグルタミンであり、
Xaa21は、グルタミン酸、システインまたはアスパラギン酸であり、
Xaa23は、バリンであり、
Xaa24は、アラニン、グルタミン、システイン、アスパラギンまたはアスパラギン酸であり、
Xaa27は、ロイシンまたはリシンでもあるが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0046】
さらに一層具体的には、前記一般式1で、
Xaa2は、α-メチル-グルタミン酸またはAibであり、
Xaa7は、スレオニンであり、
Xaa10は、チロシンまたはシステインであり、
Xaa12は、リシンまたはイソロイシンであり、
Xaa13は、チロシン、アラニンまたはシステインであり、
Xaa14は、ロイシンまたはメチオニンであり、
Xaa15は、システインまたはアスパラギン酸であり、
Xaa16は、グルタミン酸であり、
Xaa17は、アルギニン、イソロイシン、システインまたはリシンであり、
Xaa18は、アラニン、アルギニンまたはヒスチジンであり、
Xaa19は、アラニン、グルタミンまたはシステインであり、
Xaa20は、リシンまたはグルタミンであり、
Xaa21は、グルタミン酸またはアスパラギン酸であり、
Xaa23は、バリンであり、
Xaa24は、グルタミン、アスパラギンまたはアスパラギン酸であり、
Xaa27は、ロイシンであり、
Xaa28は、システイン、アラニン、アスパラギンまたはアスパラギン酸でもある。
【0047】
具体的には、前記一般式1で、
Xaa1は、ヒスチジンまたは4-イミダゾアセチルであり、
Xaa2は、α-メチル-グルタミン酸またはAibであり、
Xaa3は、グルタミンであり、
Xaa7は、スレオニンであり、
Xaa10は、チロシンであり、
Xaa12は、イソロイシンであり、
Xaa13は、アラニンまたはシステインであり、
Xaa14は、メチオニンであり、
Xaa15は、アスパラギン酸であり、
Xaa16は、グルタミン酸であり、
Xaa17は、イソロイシンまたはリシンであり、
Xaa18は、アラニンまたはヒスチジンであり、
Xaa19は、グルタミンまたはシステインであり、
Xaa20は、リシンであり、
Xaa21は、アスパラギン酸であり、
Xaa23は、バリンであり、
Xaa24は、アスパラギンであり、
Xaa27は、ロイシンであり、
Xaa28は、アラニンまたはアスパラギンであり、
Xaa29は、グルタミンまたはスレオニンであり、
Xaa30は、システインまたはリシンであるか、あるいは不存在でもある。
【0048】
さらに具体的には、前記一般式1で、
Xaa2は、グリシン、α-メチル-グルタミン酸またはAibであり、
Xaa3は、グルタミンであり、
Xaa7は、スレオニンであり、
Xaa10は、チロシン、システインまたはバリンであり、
Xaa12は、リシンであり、
Xaa13は、チロシンであり、
Xaa14は、ロイシンであり、
Xaa15は、アスパラギン酸であり、
Xaa16は、グリシン、グルタミン酸またはセリンであり、
Xaa17は、グルタミン、アルギニン、システインまたはリシンであり、
Xaa18は、アラニン、アルギニンまたはヒスチジンであり、
Xaa19は、アラニンまたはグルタミンであり、
Xaa20は、リシンまたはグルタミンであり、
Xaa21は、グルタミン酸、システインまたはアスパラギン酸であり、
Xaa23は、バリンであり、
Xaa24は、アラニン、グルタミンまたはシステインであり、
Xaa27は、ロイシンまたはリシンであり、
Xaa29は、グリシン、グルタミン、スレオニンまたはヒスチジンでもあるが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0049】
そのようなペプチドは、GLP-1受容体及びグルカゴン受容体の活性化程度が有意なものであり、GIP受容体の活性化程度に比べて高いか、GLP-1受容体、グルカゴン受容体及びGIP受容体の活性化程度がいずれも有意なものであるか、あるいはGLP-1受容体及びGIP受容体の活性化程度が有意なものであり、グルカゴン受容体の活性化に比べて高い場合に該当しうるが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0050】
そのようなペプチドの例として、配列番号8,9,21ないし37,39,42,43,49ないし61,64ないし83,85,86,88,89,91ないし93,95ないし102によってなる群のうちから選択されたアミノ酸配列を含むか、あるいはそれらによって(必須に)構成されたペプチドを有しうるが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0051】
他の具体例において、前記ペプチドは、下記一般式2で表されるアミノ酸配列を含むものでもある。
【0052】
<一般式2>
Xaa1-Xaa2-Gln-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Xaa10-Ser-Lys-Xaa13-Xaa14-Xaa15-Xaa16-Xaa17-Xaa18-Xaa19-Xaa20-Xaa21-Phe-Xaa23-Xaa24-Trp-Leu-Leu-Xaa28-Xaa29-Xaa30-Xaa31-Ser-Ser-Gly-Gln-Pro-Pro-Pro-Ser-Xaa40(一般式2(配列番号104))
【0053】
前記一般式2で、
Xaa1は、4-イミダゾアセチル、ヒスチジンまたはチロシンであり、
Xaa2は、グリシン、α-メチル-グルタミン酸またはAibであり、
Xaa10は、チロシンまたはシステインであり、
Xaa13は、アラニン、グルタミン、チロシンまたはシステインであり、
Xaa14は、ロイシン、メチオニンまたはチロシンであり、
Xaa15は、アスパラギン酸、グルタミン酸またはロイシンであり、
Xaa16は、グリシン、グルタミン酸またはセリンであり、
Xaa17は、グルタミン、アルギニン、イソロイシン、グルタミン酸、システインまたはリシンであり、
Xaa18は、アラニン、グルタミン、アルギニンまたはヒスチジンであり、
Xaa19は、アラニン、グルタミン、システインまたはバリンであり、
Xaa20は、リシン、グルタミン、またはアルギニンであり、
Xaa21は、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ロイシンまたはアスパラギン酸であり、
Xaa23は、イソロイシンまたはバリンであり、
Xaa24は、システイン、アラニン、グルタミン、アスパラギンまたはグルタミン酸であり、
Xaa28は、リシン、システイン、アスパラギンまたはアスパラギン酸であり、
Xaa29は、グリシン、グルタミン、システインまたはヒスチジンであり、
Xaa30は、システイン、グリシン、リシンまたはヒスチジンであり、
Xaa31は、プロリンまたはシステインであり、
Xaa40は、システインであるか、あるいは不存在である。
【0054】
さらに具体的には、前記一般式2で、
Xaa13は、アラニン、チロシンまたはシステインであり、
Xaa15は、アスパラギン酸またはグルタミン酸であり、
Xaa17は、グルタミン、アルギニン、システインまたはリシンであり、
Xaa18は、アラニン、アルギニンまたはヒスチジンであり、
Xaa21は、システイン、グルタミン酸、グルタミンまたはアスパラギン酸であり、
Xaa23は、イソロイシンまたはバリンであり、
Xaa24は、システイン、グルタミンまたはアスパラギンであり、
Xaa28は、システイン、アスパラギンまたはアスパラギン酸であり、
Xaa29は、グルタミン、システインまたはヒスチジンであり、
Xaa30は、システイン、リシンまたはヒスチジンでもある。
【0055】
そのようなペプチドの例として、配列番号21,22,42,43,50,64ないし77、及び配列番号95ないし102によってなる群のうちから選択されたアミノ酸配列、さらに具体的には、配列番号21,22,42,43,50,64ないし77、及び配列番号96ないし102によってなる群のうちから選択されたアミノ酸配列を含むか、あるいはそれらによって(必須に)構成されたペプチドを有しうるが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0056】
他の具体例において、前記ペプチドは、下記一般式3のアミノ酸配列を含むものでもある:
【0057】
<一般式3>
Xaa1-Xaa2-Gln-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Tyr-Ser-Lys-Xaa13-Leu-Asp-Glu-Xaa17-Xaa18-Xaa19-Lys-Xaa21-Phe-Val-Xaa24-Trp-Leu-Leu-Xaa28-Xaa29-Xaa30-Xaa31-Ser-Ser-Gly-Gln-Pro-Pro-Pro-Ser-Xaa40(一般式3(配列番号105))
【0058】
前記一般式3で、
Xaa1は、ヒスチジンまたはチロシンであり、
Xaa2は、α-メチル-グルタミン酸またはAibであり、
Xaa13は、アラニン、チロシンまたはシステインであり、
Xaa17は、アルギニン、システインまたはリシンであり、
Xaa18は、アラニンまたはアルギニンであり、
Xaa19は、アラニンまたはシステインであり、
Xaa21は、グルタミン酸またはアスパラギン酸であり、
Xaa24は、グルタミンまたはアスパラギンであり、
Xaa28は、システインまたはアスパラギン酸であり、
Xaa29は、システイン、ヒスチジンまたはグルタミンであり、
Xaa30は、システインまたはヒスチジンであり、
Xaa31は、プロリンまたはシステインであり、
Xaa40は、システインであるか、あるいは不存在でもある。
【0059】
そのようなペプチドの例として、配列番号21,22,42,43,50,64ないし71,75ないし77、及び配列番号96ないし102によってなる群のうちから選択されたアミノ酸配列を含むか、あるいはそれらによって(必須に)構成されたペプチドを有しうるが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0060】
また、前記一般式1でR1は、システイン、GKKNDWKHNIT(配列番号106)、CSSGQPPPS(配列番号109)、GPSSGAPPPS(配列番号110)、GPSSGAPPPSC(配列番号111)、PSSGAPPPS(配列番号112)、PSSGAPPPSG(配列番号113)、PSSGAPPPSHG(配列番号114)、PSSGAPPPSS(配列番号115)、PSSGQPPPS(配列番号116)またはPSSGQPPPSC(配列番号117)であるか、あるいは不存在でもあるが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0061】
前記三重作用剤は、分子内架橋(intramolecular bridge)を含むものでもあり(例えば、共有結合的架橋または非共有結合的架橋)、具体的には、環を含む形態でもあり、例えば、グルカゴンアナログまたは三重作用剤の16番及び20番アミノ酸間に環が形成された形態でもあるが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0062】
一具体例において、前記一般式で、N末端から、16番アミノ酸と20番アミノ酸は、互いに環を形成するものでもある。
前記環の非制限的な例として、ラクタム架橋(または、ラクタム環)を含むものでもある。
【0063】
また、前記三重作用剤は、環を含むように、目的とする位置に環を形成しうるアミノ酸を含むように変形されたものをいずれも含む。
例えば、グルカゴンアナログまたは三重作用剤の16番と20番アミノ酸との対がそれぞれ環を形成しうるグルタミン酸またはリシンで置換されたものでもあるが、それらに制限されるものではない。
【0064】
そのような環は、前記グルカゴンアナログまたは三重作用剤内のアミノ酸側鎖間に形成されうるが、その例として、リシンの側鎖とグルタミン酸の側鎖との間に、ラクタム環が形成される形態でもあるが、特別にそれに制限されるものではない。
【0065】
他の具体例において、前記ペプチドは、配列番号1ないし102によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むものでもある。
【0066】
他の具体例において、前記ペプチドは、配列番号1ないし102によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって必須に構成されたモノであるか、あるいは前記ペプチドは、配列番号1ないし102によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって構成されたものでもある。
【0067】
本願において、「特定配列番号によって構成されるペプチド」と記載されているとしても、当該配列番号のアミノ酸配列によってなるペプチドと同一であるか、あるいは相応する活性を有する場合であるならば、当該配列番号のアミノ酸配列先後の無意味な配列追加、または自然に生じうる突然変異、あるいはその沈黙突然変異(silent mutation)を除くものではなく、そのような配列追加あるいは突然変異を有する場合にも、本発明の範囲内に属するということが自明である。すなわち、一部配列の差があっても、ある程度レベル以上の配列同一性を示し、GIP受容体に対する活性を示すものであるならば、本発明の範囲に属しうる。具体的には、前記ペプチドは、配列番号1ないし26のアミノ酸配列と、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むものでもあるが、それらに制限されるものではない。
【0068】
「相同性(homology)」または「同一性(identity)」とは、2つの与えられたアミノ酸配列または塩基配列と、互いに関連する程度を意味し、百分率でもっても表される。任意の2つのペプチド配列が、相同性、類似性または同一性を有するか否かということは、例えば、Pearson et al (1988) [Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85]: 2444におけるようなデフォルトパラメータを利用し、「FASTA」プログラムのような公知のコンピュータアルゴリズムを利用しても決定される。または、EMBOSSパッケージのニードルマンプログラム(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277)(バージョン5.0.0またはその後バージョン)において行われるような、ニードルマン・ウンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453)が使用されても決定される(GCGプログラムパッケージ(Devereux, J., et al, Nucleic Acids Research 12: 387 (1984), BLASTP, BLASTN, FASTA(Atschul, [S.] [F.,] [ET AL, J MOLEC BIOL 215]: 403 (1990); Guide to Huge Computers, Martin J. Bishop, [ED.,] Academic Press, San Diego,1994, 及び[CARILLO ETA/.](1988) SIAM J Applied Math 48: 1073を含む)。例えば、国立生物工学情報データベースセンターのBLASTまたはClustalWを利用し、相同性、類似性または同一性を決定することができる。
【0069】
ペプチドの相同性、類似性または同一性は、例えば、Smith and Waterman, Adv. Appl. Math (1981) 2: 482に公知されているように、例えば、Needleman et al.(1970), J Mol Biol.48: 443のようなGAPコンピュータプログラムを利用し、配列情報を比較することによっても決定される。要約すれば、GAPプログラムは、2つの配列のうちさらに短いものにおける記号の全体数でもって、類似した配列された記号(すなわち、アミノ酸)の数を除した値と定義する。GAPプログラムのためのデフォルトパラメータは、(1)二進法比較マトリックス(同一性のために1、そして非同一性のために0の値を含む)、及びSchwartz and Dayhoff, eds., Atlas Of Protein Sequence And Structure, National Biomedical Research Foundation, pp. 353-358 (1979)によって開示されているように、Gribskov et al(1986) Nucl. Acids Res. 14: 6745の加重された比較マトリックス(または、EDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックス)、2)各ギャップのための3.0のペナルティ、及び各ギャップにおける各記号のための追加0.10ペナルティ(または、ギャップ開放ペナルティ10、ギャップ延長ペナルティ0.5)、並びに(3)末端ギャップのための無ペナルティを含むものでもある。従って、本発明で使用されているものとして、用語である「相同性」または「同一性」は、配列間の関連性(relevance)を示す。
【0070】
一具体例において、多様なペプチド製造のためのさまざまな方法の組み合わせにより、前記グルカゴンアナログまたは前記三重作用剤を製造することができる。
【0071】
そのような方法の組み合わせによって製造されるグルカゴンのアナログの例として、天然型グルカゴンとアミノ酸配列が1以上異なり、N末端のアミノ酸残基のα-炭素が除去された、グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を保有したペプチドがあるが、それに制限されるものではない。
【0072】
また、前記三重作用剤は、体内半減期の増大のために、活性体分解酵素の認識作用を回避するために、一部アミノ酸に、他のアミノ酸あるいは非天然型化合物によっても置換さえれる。
【0073】
具体的には、前記三重作用剤は、アミノ酸配列において、2番目アミノ酸配列の置換を介し、分解酵素の認識作用を回避し、体内半減期を増大させたペプチドでもあるが、体内分解酵素の認識作用を回避するためのアミノ酸の置換または変更は、制限なしに含まれる。
【0074】
前記三重作用剤は、その長さにより、本分野において周知の方法、例えば、自動ペプチド合成基によって合成することができ、遺伝子操作技術によって生産することもできる。具体的には、前記ペプチドは、標準合成方法、組み換え発現システム、または任意の他の当該分野の方法によっても製造される。従って、一態様によるペプチドは、例えば、下記のところを含む方法を含む多数の方法によっても合成されるが、それらに制限されるものではない:
【0075】
(a)ペプチドを固体相方法または液体相方法の手段でもって、段階的または断片組み立てによって合成し、最終ペプチド生成物を分離及び精製する方法、
【0076】
(b)ペプチドをコーディングする核酸作製物を宿主細胞内で発現させ、発現生成物を宿主細胞培養物から回収する方法、
【0077】
(c)ペプチドをコーディングする核酸作製物の無細胞試験管内発現を行い、発現生成物を回収する方法、または
【0078】
(a)、(b)及び(c)の任意の組み合わせによってペプチド断片を得て、次に、該断片を連結させてペプチドを得て、当該ペプチドを回収する方法。
【0079】
また、前記ペプチドの製造は、L型アミノ酸あるいはD型アミノ酸、及び/または非天然型アミノ酸を利用した変形、及び/または天然型配列の改質、例えば、側鎖作用基の変形、分子内共有結合、例えば、側鎖間の環形成、メチル化、アシル化、ユビキチン化、リン酸化、アミノヘキサン化、ビオチン化のように改質することによって変形することをいずれも含む。また、前記変形は、非天然型化合物への置換をいずれも含む。
【0080】
前記変形に利用される置換されたり、追加されたりするアミノ酸は、ヒトタンパク質において一般的に観察される20個のアミノ酸だけではなく、非定形アミノ酸または非自然発生アミノ酸を使用することができる。非定形アミノ酸の商業的出処には、Sigma-Aldrich、ChemPep及びGenzyme Pharmaceuticalsが含まれるものでもあるが、それらに制限されるものではない。例えば、Aib(aminoisobutyric acid)は、アセトンから、ストレッカーのアミノ酸合成によっても製造されるが、それに制限されるものではない。そのような非定形ミノ酸または非自然発生アミノ酸が含まれるペプチドと定形的なペプチド配列は、商業化されたペプチド合成社、例えば、米国のAmerican Peptide CompanyやBachem、または韓国のAnygenを介して、合成及び購入することができるが、それに制限されるものではない。
【0081】
また、前記ペプチドは、N末端及び/またはC末端が変形されていないものでもあるが、生体内のタンパク質切断酵素から保護され、安定性を上昇させるために、そのN末端及び/またはC末端などが化学的に変形されるか、有機端に保護されるか、あるいはペプチド末端などにアミノ酸が追加されて変形されたりする形態も、前記態様によるペプチドの範疇に含まれる。C末端が変形されていない場合、ペプチド末端は、自由カルボン酸を有するが、特別にそれに制限されるものではない。
【0082】
特に、化学的に合成されたペプチドの場合、N末端及びC末端が電荷を帯びているために、そのような電荷を除去するため、にN末端及び/またはC末端を変形することができる。例えば、N末端のアセチル化(acetylation)及び/またはC末端のアミド化(amidation)が可能であるが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0083】
一具体例において、前記ペプチドは、そのC末端が変形されていないか、あるいはアミド化されたものでもあるが、それらに制限されるものではない。
【0084】
一具体例において、前記ペプチドは、そのC末端がアミド化されたものでもある。
【0085】
前記ペプチドは、ペプチドそれ自体、その塩(例えば、前記ペプチドの薬学的に許容可能な塩)、またはその溶媒化物の形態をいずれも含む。
【0086】
前記塩の種類は、特別に制限されるものではない。ただし、個体、例えば、哺乳類に安全であって効果的な形態であることが望ましいが、特別にそれに制限されるものではない。
【0087】
また、前記ペプチドは、薬学的に許容される任意の形態でもある。
【0088】
用語「薬学的に許容可能な」とは、治療効果を示すことができるほどの十分な量であり、副作用を起こさないものを意味し、疾患の種類、患者の年齢・体重・健康・性別、患者の薬物に対する敏感度、投与経路、投与方法、投与回数、治療期間、配合、または同時使用される薬物のように、医学分野に周知の要素により、当業者により、容易に決定されうる。
【0089】
一具体例において、前記ペプチドは、その薬学的に許容可能な塩の形態でもある。前記塩は、薬学分野、例えば、血管炎治療剤の分野において使用される通常の酸付加塩、例えば、塩酸、臭素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸または硝酸のような無機酸から誘導された塩;及び酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、酒石酸、リンゴ酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、シュウ酸またはトリフルオロ酢酸のような有機酸から誘導された塩を含む。また、前記塩は、アンモニウム、ジメチルアミン、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミンのような塩基付加塩でもある。また、前記塩は、通常の金属塩形態、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムまたはカルシウムのような金属から誘導された塩を含む。前記酸付加塩、塩基付加塩または金属塩は、通常の方法によっても製造される。薬学的に許容可能な塩、及びそれを製造する一般方法論は、関連技術分野に広く公知されている。例えば、文献[P. Stahl, et al. Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection and Use, 2nd Revised Edition (Wiley-VCH, 2011)],[S.M. Berge, et al., 「Pharmaceutical Salts」, Journal of Pharmaceutical Sciences, Vol. 66, No. 1, January 1977]を参照することができる。
【0090】
保護されたアミノ酸またはペプチドの縮合のために、ペプチド合成に有用な各種活性化試薬、特に望ましくは、トリスホスホニウム塩、テトラメチルウロニウム塩、カルボジイミドなどが使用されうる。トリスホスホニウム塩の例は、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、ブロモトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBroP)、7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyAOP)を含み、テトラメチルウロニウム塩の例は、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、2-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、2-(5-ノボラン-2,3-ジカルボキシイミド)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TNTU)、O-(N-スクシンイミジル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TSTU)を含み、カルボジイミドの例は、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCDI)、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI・HCl)などを含む。それらを利用する縮合のために、ラセミ化阻害剤[例えば、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸イミド(HONB)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン(HOOBt)、エチル2-シアノ-2-(ヒドロキシイミノ)アセテート(Oxyma)など]の添加が望ましい。縮合に使用される溶媒は、ペプチド縮合反応に有用なものであると公知されたもののうちからも適切に選択される。例えば、無水N,N-ジメチルホルムアミドまたは水含有N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンのような酸アミド;塩化メチレン、クロロホルムのようなハロゲン化された炭化水素;トリフルオロエタノール、フェノールのようなアルコール;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド;ピリジンのような3級アミン;ジオキサン、テトラヒドロフランのようなエーテル;アセトニトリル、プロピオニトリルのようなニトリル;酢酸メチル、酢酸エチルのようなエステル;それらの適切な混合物などが使用されうる。反応温度は、ペプチド結合反応に使用可能であると公知された範囲から適切に選択され、通常、約で-20℃ないし90℃の範囲から選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は、通常、1.5倍ないし6倍過剰に使用される。固相合成において、ニンヒドリン反応を利用する試験が、縮合が不十分であることを示す場合、十分な縮合は、保護基の除去なしに、縮合反応を反復することによっても行われる。反応を反復した後にも、縮合が依然として不十分である場合、未反応アミノ酸は、酸無水物、アセチルイミダゾールなどによってもアセチル化されるので、後続反応に対する影響が回避されうることになる。
【0091】
出発アミノ酸のアミノ基に係わる保護基の例は、ベンジルオキシカルボニル(Z)、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、tert-ペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4-メトキシベンジルオキシカルボニル、2-クロロベンジルオキシカルボニル(Cl-Z)、2-ブロモベンジルオキシカルボニル(Br-Z)、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2-ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、トリチルなどを含む。
【0092】
出発アミノ酸に対するカルボキシル保護基の例は、前述のC-Cアルキル基、C-C10シクロアルキル基、C-C14アルアルキル基以外に、アリール、2-アダマンチル、4-ニトロベンジル、4-メトキシベンジル、4-クロロベンジル、フェナシル及びベンジルオキシカルボニルハイドラザイド、tert-ブトキシカルボニルヒドラジド、トリチルヒドラジドなどを含む。
【0093】
セリンまたはスレオニンのヒドロキシル基は、例えば、エステル化またはエーテル化によっても保護される。エステル化に適する基の例は、アセチル基のような低級(C-C)アルカノイル基、ベンゾイル基のようなアロイル基、及び有機酸などに由来する基を含む。また、エーテル化に適する基の例は、ベンジル、テトラヒドロピラニル、tert-ブチル(But)、トリチル(Trt)などを含む。
【0094】
チロシンのフェノール性ヒドロキシル基に係わる保護基の例は、Bzl、2,6-ジクロロベンジル、2-ニトロベンジル、Br-Z、tert-ブチルなどを含む。
【0095】
ヒスチジンのイミダゾールに係わる保護基の例は、p-トルエンスルホニル(Tos)、4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル(Mtr)、ジニトロフェニル(DNP)、ベンジルオキシメチル(Bom)、tert-ブトキシメチル(Bum)、Boc、Trt、Fmocなどを含む。
【0096】
アルギニンのグアニジノ基に係わる保護基の例は、Tos、Z、4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル(Mtr)、p-メトキシベンゼンスルホニル(MBS)、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル(Pmc)、メシチレン-2-スルホニル(Mts)、2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル(Pbf)、Boc、Z、NOなどを含む。
【0097】
リシンの側鎖アミノ基に係わる保護基の例は、Z、Cl-Z、トリフルオロアセチル、Boc、Fmoc、Trt、Mtr、4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシリデニル(Dde)などを含む。
【0098】
トリプトファンのインドリルに係わる保護基の例は、ホルミル(For)、Z、Boc、Mts、Mtrなどを含む。
【0099】
アスパラギン及びグルタミンに係わる保護基の例は、Trt、キサンチル(Xan)、4,4’-ジメトキシベンズヒドリル(Mbh)、2,4,6-トリメトキシベンジル(Tmob)などを含む。
【0100】
出発物質中の活性化されたカルボキシル基の例は、対応する酸無水物、アザイド、活性エステル[アルコールとのエステル(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5-トリクロロフェノール、2,4-ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N-ヒドロキシスクシンイミド、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt))]などを含む。出発材料内の活性化されたアミノ基の例は、対応するインアミドを含む。
【0101】
保護基を除去する方法の例は、Pd-ブラックまたはPd-炭素のような触媒の存在下における水素ストリーム中の触媒還元;無水フルオロ水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンソルホン酸、トリフルオロ酢酸(TFA)、トリメチルシリルブロミド(TMSBr)、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、テトラフルオロホウ酸、トリス(トリフルオロ)ホウ酸、三臭化ホウ素、またはその混合物溶液を利用した酸処理;ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどを利用した塩基処理;及び液体アンモニア内におけるナトリウムによる還元などを含む。前述の酸処理による除去反応は、一般的に、-20℃ないし40℃の温度で行われ、該酸処理は、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール及びパラクレゾール;ジメチルスルフィド、1,4-ブタンジチオール、1,2-エタンジチオール、トリイソプロピルシランのような陽イオンスカベンジャー(cation scavenger)を添加することにより、効率的に行われる。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として使用される2,4-ジニトロフェニル基は、チオフェノール処理によって除去され、トリプトファンのインドール保護基として使用されるポルミル基は、1,2-エタンジチオール、1,4-ブタンジチオールなどの存在中において、酸処理によるだけではなく、希釈水酸化ナトリウム、希釈アンモニアなどによるアルカリ処理による脱保護によって除去される。
【0102】
出発物質と保護基との反応に関与することがあってはならない作用基の保護、保護基の除去、反応に関与する作用基の活性化などは、公知された保護基、及び公知された手段から適切に選択されうる。
【0103】
本明細書で言及されたペプチドにつき、左側端部が通常のペプチドマーキングに沿ってN末端(アミノ末端)であり、右側端部がC末端(カルボキシル末端)である。ペプチドのC末端は、アミド(-CONH)、カルボキシル基(-COOH)、カルボキシレート(-COO-)、アルキルアミド(-CONHR’、ここで、R’は、アルキルである)及びエステル(-COOR’、ここで、R’は、アルキルまたはアリールである)のうちいずれか一つでもある。
【0104】
ペプチドのアミドを製造する方法において、それは、アミド合成のために樹脂を利用する固相合成によって形成されるか、あるいはカボキシ末端アミノ酸のα-カルボキシル基がアミド化され、ペプチド鎖がアミノ基側に向けて目的とする鎖長に延長され、その後、ペプチド鎖だけのN末端α-アミノ基に係わる保護基が除去されたペプチド、及びC末端カルボキシル基に係わる保護基だけがペプチド鎖から除去されたペプチドが製造され、それら2つのペプチドは、前述の混合された溶媒中で縮合される。縮合反応に係わる詳細につき、前述のようなところが適用される。縮合によって得られた保護されたペプチドが精製された後、全ての保護基が、前述の方法によって除去され、目的とするペプチドを得ることができる。このペプチドを、主な分画を精製し、かつ凍結乾燥の各種公開的に公知された手段を利用して精製することにより、ペプチドが目的とするアミドが製造されうる。
【0105】
一具体例において、前記ペプチドは、その溶媒化物の形態でもある。「溶媒化物」は、前記ペプチドまたはその塩が、溶媒分子と複合体を形成したものを意味する。
【0106】
一具体例において、前記組成物は、血管炎の予防または治療のための薬学的組成物であり、薬学的に許容される賦形剤と、配列番号1ないし102のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドを薬学的有効量で含む薬学的組成物でもある。
【0107】
一具体例において、前記ペプチドは、持続型結合体の形態でもある。前記結合体は、天然型リガンド(すなわち、天然型グルカゴン、天然型GLP-1及び天然型GIP)と同等、またはそれ以上の活性を示すと共に、キャリア(または、生体適合性物質)が結合されていない天然型リガンドまたはその誘導体に比べ、増大された効力の持続性を示しうる。用語「持続型結合体」とは、生体適合性物質が結合されていない天然型リガンド、またはその誘導体に比べ、効力持続性が増大された結合体を意味する。従って、前記結合体は、「持続型グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤結合体」、「持続型グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤」、「持続型グルカゴン/GLP-1/GIP結合体」、「持続型GCG/GLP-1/GIP結合体」、「三重作用剤結合体」、「三重作用剤の持続型結合体」、「持続型結合体」、「持続型三重結合体」または「結合体」と相互交換的に使用されうる。そのような結合体は、前述の形態だけではなく、生分解性ナノパーティクルに封入された形態などをいずれも含む。
【0108】
前記結合体は、分離された結合体でもある。
【0109】
前記結合体は、非自然発生(non-naturally occurring)のものでもある。
【0110】
一具体例において、前記ペプチドは、生体内半減期を増大させる生体適合性物質が結合された結合体の形態でもある。従って、前記薬学的組成物は、前記グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤と、生体内半減期を増大させる生体適合性物質とが結合された結合体を含むものでもある。前記生体適合性物質は、キャリア(carrier)とも混用されえる。
【0111】
一具体例において、前記持続型結合体は、下記化学式1によっても表される:
<化学式1> X-L-F
ただし、このとき、Xは、グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤であり、
Lは、リンカであり、
Fは、Xの生体内半減期を増大させる生体適合性物質であり、
-は、XとLとの結合連結、LとFとの結合連結を示す。
【0112】
前記化学式1で、グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤については、前述の通りである。
【0113】
前記化学式1で、Lは、Laでもあり、ここで、aは、0または自然数であり、ただし、aが2以上であるとき、それぞれのLは、互いに独立しているのであり得る。
【0114】
前記生体適合性物質は、前記グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤と、共有化学結合または非共有化学結合によって互いに結合されるものでもあり、該共有化学結合、該非共有化学結合、またはそれらの組み合わせにより、リンカ(linker,L)を介し、互いに結合されるものでもある。一具体例において、前記-は、XとLとの共有結合、LとFとの共有結合連結を示しうる。
【0115】
グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤内の1以上のアミノ酸側鎖は、生体内において、可溶性及び/または半減期を増加させ、かつ/あるいは生体利用率を上昇させるために、そのような生体適合性物質にも接合される。そのような変形は、また治療学的タンパク質及びペプチドの消去(clearance)を低減させることができる。前述の生体適合性物質は、水溶性(両親媒性または親水性)、及び/または無毒性、及び/または薬学的に許容可能なものでもある。
【0116】
前記生体適合性物質は、高分子重合体、脂肪酸、コレステロール、アルブミン及びその断片、アルブミン結合物質、特定アミノ酸配列の繰り返し単位の重合体、抗体、抗体断片、FcRn結合物質、生体内結合組織、ヌクレオチド、フィブロネクチン、トランスフェリン(transferrin)、糖類(saccharide)、ヘパリン、並びにエラスチンによって構成された群のうちから選択されるものでもあるが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0117】
前記高分子重合体の例として、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール・プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖類、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン、ヒアルロン酸、オリゴヌクレオチド、及びそれらの組み合わせによって構成された群のうちから選択される高分子重合体を有することができ、前記多糖類としては、デキストランが含まれるものでもあるが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0118】
前記ポリエチレングリコールは、エチレングリコール同種重合体、PEG共重合体、またはモノメチル置換されたPEG重合体(mPEG)の形態をいずれも包括する用語であるが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0119】
前記脂肪酸は、生体内アルブミンと結合力を有するものでもあるが、特別にそれに制限されるものではない。
【0120】
前記生体適合性物質は、ポリリシン、ポリアスパラギン酸及びポリグルタミン酸のようなポリアミノ酸を含むが、それらに制限されるものではない。
【0121】
前記エラスチンの場合、水溶性前駆体であるヒトトロポエラスチン(tropoelastin)でもあり、それらのうち、一部配列あるいは一部繰り返し単位の重合体でもあり、例えば、エラスチン類似ポリペプチドの場合をいずれも含むが、特別にそれに制限されるものではない。
【0122】
一具体例において、前記生体適合性物質は、FcRn結合物質でもある。具体的には、前記FcRn結合物質は、免疫グロブリンFc領域でもあり、さらに具体的には、IgGFc領域、さらに具体的には、糖鎖化されていないIgG4 Fc領域でもあるが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0123】
「免疫グロブリンFc領域」とは、免疫グロブリンの重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを除いた、重鎖不変領域2(CH2)部分及び/または重鎖不変領域3(CH3)部分を含む部位を意味する。前記免疫グロブリンFc領域は、一態様による結合体のモイエティをなす一構成でもある。
【0124】
そのような免疫グロブリンFc領域は、重鎖不変領域にヒンジ(hinge)部分を含むものでもあるが、それに制限されるものではない。
【0125】
一具体例において、免疫グロブリンFc領域は、N末端に、特定ヒンジ配列を含むものでもある。
【0126】
用語「ヒンジ配列」とは、重鎖に位置し、内部二硫化結合(inter disulfide bond)を介し、免疫グロブリンFc断片の二量体を形成する部位を意味する。
【0127】
一具体例において、前記ヒンジ配列は、下記のアミノ酸配列を有するヒンジ配列のうち一部が欠失され、1つのシステイン残基のみを有するように変異されたものでもあるが、それに制限されるものではない:
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号119)。
【0128】
前記ヒンジ配列は、配列番号119のヒンジ配列において、8番目または11番目のシステイン残基が欠失され、1つのシステイン残基のみを含むものでもある。一具体例によるヒンジ配列は、1つのシステイン残基のみを含む、3個ないし12個のアミノ酸によって構成されたものでもあるが、それに制限されるものではない。さらに具体的には、一具体例によるヒンジ配列は、以下のような配列を有しうる:Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号120)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Pro(配列番号121)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser(配列番号122)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Pro(配列番号123)、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser(配列番号124)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号125)、Glu-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号126)、Glu-Ser-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号127)、Glu-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号128)、Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号129)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号130)、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号131)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号132)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号133)、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro(配列番号134)、Glu-Ser-Lys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号135)、Glu-Ser-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号136)、Glu-Pro-Ser-Cys(配列番号137)、Ser-Cys-Pro(配列番号138)。
【0129】
さらに具体的には、前記ヒンジ配列は、配列番号129(Pro-Ser-Cys-Pro)または配列番号138(Ser-Cys-Pro)のアミノ酸配列を含むものでもあるが、それらに制限されるものではない。
【0130】
一具体例による免疫グロブリンFc領域は、ヒンジ配列の存在として、免疫グロブリンFc鎖の2分子が二量体を形成した形態でもある。また、一具体例による化学式1の結合体は、リンカの一末端が、二量体の免疫グロブリンFc領域の1つの鎖に連結された形態でもあるが、それに制限されるものではない。
【0131】
用語「N末端」とは、タンパク質またはポリペプチドのアミノ末端を意味するものであり、該アミノ末端の最末端、または最末端から、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個以上のアミノ酸まで含むものでもある。本発明の免疫グロブリンFc断片は、ヒンジ配列をN末端に含むものでもあるが、それに制限されるものではない。
【0132】
また、前記免疫グロブリンFc領域は、天然型と、実質的に同等であるか、あるいは向上された効果を有する限り、免疫グロブリンの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のみを除き、一部または全体の重鎖不変領域1(CH1)及び/または軽鎖不変領域1(CL1)を含む拡張されたFc領域でもある。また、CH2及び/またはCH3に該当する相当に長い一部アミノ酸配列が除去された領域でもある。
【0133】
例えば、前記免疫グロブリンFc領域は、(a)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン、(b)CH1ドメイン及びCH2ドメイン、(c)CH1ドメイン及びCH3ドメイン、(d)CH2ドメイン及びCH3ドメイン、(e)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメインのうち1個または2個以上のドメインと、免疫グロブリンヒンジ領域またはヒンジ領域の一部との組み合わせ、並びに(f)重鎖不変領域各ドメインと軽鎖不変領域との二量体によって構成された群のうちからも選択されるが、それらに制限されるものではない。
【0134】
前記免疫グロブリンFc領域は、二合体形態(dimeric form)でもあり、二合体形態の1つのFc領域に、グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤1分子が共有結合的に連結され、このとき、前記免疫グロブリンFcとグルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤は、非ペプチド性重合体によって互いに連結されうる。一方、二合体形態の1つのFc領域に、グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤2分子が対称的に結合することも可能である。このとき、前記免疫グロブリンFcとグルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤は、非ペプチド性リンカによっても互いに連結される。しかしながら、前述の例に制限されるものではない。
【0135】
また、前記免疫グロブリンFc領域は、天然型アミノ酸配列だけではなく、その配列誘導体を含む。アミノ酸配列誘導体とは、天然アミノ酸配列のうち1以上のアミノ酸残基が、欠失、挿入、非保存的置換または保存的置換、またはそれらの組み合わせによって異なる配列を有するものを意味する。
【0136】
例えば、IgGFcの場合、結合に重要であると知られた214番ないし238番、297番ないし299番、318番ないし322番、または327番ないし331番のアミノ酸残基が、変形のために適切な部位としても利用される。また、二硫化結合を形成することができる部位が除去されるか、天然型Fcから、N末端のいくつかのアミノ酸が除去されるか、あるいは天然型FcのN末端に、メチオニン残基が付加されうるというように、多様な種類の誘導体が可能である。また、エフェクタ機能をなくすために、補体結合部位、例えば、C1q結合部位が除去されもし、ADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)部位が除去されもする。そのような免疫グロブリンFc領域の配列誘導体を製造する技術は、国際特許公開第WO97/34631号、国際特許公開第96/32478号などに開示されている。
【0137】
分子の活性を全体的に変更させないタンパク質及びペプチドにおけるアミノ酸交換は、当該分野に公知されている(H. Neurath、R. L. Hill、The Proteins、Academic Press、New York、1979)。最も一般的に起こる交換は、アミノ酸残基Ala/Ser,Val/Ile,Asp/Glu,Thr/Ser,Ala/Gly,Ala/Thr,Ser/Asn,Ala/Val,Ser/Gly,Thy/Phe,Ala/Pro,Lys/Arg,Asp/Asn,Leu/Ile,Leu/Val,Ala/Glu,Asp/Gly間の交換である。場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、糖化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)及びアミド化(amidation)などによっても変形(modification)される。
【0138】
前述のFc誘導体は、前記Fc領域と同等な生物学的活性を示し、Fc領域の列、pHなどに係わる構造的安定性を増大させたものでもある。
【0139】
また、そのようなFc領域は、ヒト、牛、山羊、豚、マウス、ウサギ、ハムスター、ラットまたはギニアピッグのような動物の生体内から分離された天然型からも得られ、形質転換された動物細胞または微生物から得られた組み換え型またはその誘導体でもある。ここで、天然型から獲得する方法は、全体免疫グロブリンを、ヒトまたは動物の生体から分離した後、タンパク質分解酵素を処理して獲得する方法でもある。パパインを処理する場合には、Fab及びFcから切断し、ペプシンを処理する場合には、pF’c及びF(ab)2から切断する。それをサイズ排除クロマトグラフィ(size-exclusion chromatography)などを利用し、FcまたはpF’cを分離することができる。さらに具体的な実施例においては、ヒト由来のFc領域を微生物から得た組み換え型免疫グロブリンFc領域である。
【0140】
また、免疫グロブリンFc領域は、天然型糖鎖、天然型に比べて増大された糖鎖、天然型に比べて低減された糖鎖、または糖鎖が除去された形態でもある。そのような免疫グロブリンFc糖鎖の増減または除去には、化学的方法、酵素学的方法、及び微生物を利用した遺伝工学的方法のような一般的な方法が利用されうる。ここで、Fcから糖鎖が除去された免疫グロブリンFc領域は、補体(c1q)との結合力が顕著に低下され、抗体依存性細胞毒性または補体依存性細胞毒性が低減または除去されるので、生体内において、不要な免疫反応を誘発しない。そのような点において、薬物のキャリアとしての本来の目的にさらに符合する形態は、糖鎖が除去されるか、あるいは糖鎖化されていない免疫グロブリンFc領域であると言うことができる。
【0141】
「糖鎖の除去(deglycosylation)」とは、酵素から党を除去したFc領域を言い、非糖鎖化(aglycosylation)は、原核動物、さらに具体的な実施例においては、大腸菌で生産され、糖鎖化されていないFc領域を意味する。
【0142】
また、免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgMに由来するか、あるいはそれらの組み合わせ(combination)、またはそれらの混成(hybrid)によるFc領域でもある。さらに具体的な実施例においては、ヒト血液に最も豊富なIgGまたはIgMに由来するものであり、一層具体的な実施例においては、リガンド結合タンパク質の半減期を向上させると公知されたIgG由来である。さらに一層具体的な実施例において、前記免疫グロブリンFc領域は、IgG4 Fc領域であり、最も具体的な実施例において、前記免疫グロブリンFc領域は、ヒトIgG4由来の糖鎖化されていないFc領域であるが、それらに制限されるものではない。
【0143】
「組み合わせ(combination)」とは、二量体または多量体を形成するとき、同一起源の一本鎖免疫グロブリンFc領域を暗号化するポリペプチドが、異なる起源の一本鎖ポリペプチドとの結合を形成することを意味する。すなわち、IgGFc、IgAFc、IgMFc、IgDFc及びIgEのFc断片によってなるグループから選択された2個以上の断片から、二量体または多量体の製造が可能である。
【0144】
前記グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤は、リンカを介し、生体適合性物質と連結されうる。
【0145】
前記リンカは、ペプチド性リンカまたは非ペプチド性リンカでもある。
【0146】
前記リンカがペプチド性リンカであるとき、1個以上のアミノ酸を含むものでもあり、例えば、1個から1,000個のアミノ酸を含むものでもあるが、特別にそれに制限されるものではない。前記ペプチド性リンカは、Gly,Asn及びSer残基を含むものでもあり、Thr及びAlaのような中性アミノ酸も含まれるものでもある。前記生体適合性物質とグルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤とを連結するために、公知の多様なペプチドリンカが使用されうる。また、機能的一部分間の適切な分離を達成するか、あるいは必須な内部モイエティ(inter-moiety)の相互作用を維持するためのリンカの最適化を考慮し、コピー数「n」を調節することができる。当該技術分野において、他の可撓性リンカが知られているが、例えば、水溶性を向上させるために、極性アミノ酸残基を追加するだけではなく、柔軟性を維持するために、T及びAのようなアミノ酸残基を追加させたGリンカ及びSリンカがあり得る。従って、一具体例において、前記リンカは、G,S及び/またはT残基を含む柔軟性リンカでもある。前記リンカは、(GpSs)n及び(SpGs)nから選択される一般式を有することができ、その場合、独立的して、pは、1ないし10の整数であり、s=0ないし10の0または整数であり、p+sは、20以下の整数であり、かつnは、1ないし20の整数である。さらに具体的には、該リンカの例は、(GGGGS)n、(SGGGG)n、(SRSSG)n、(SGSSC)n、(GKSSGSGSESKS)n、(RPPPPC)n、(SSPPPPC)n、(GSTSGSGKSSEGKG)n、(GSTSGSGKSSEGSGSTKG)n、(GSTSGSGKPGSGEGSTKG)nまたは(EGKSSGSGSESKEF)nであり、前記nは、1ないし20、または1ないし10の整数である。
【0147】
前記「非ペプチド性リンカ」は、繰り返し単位が2個以上結合された生体適合性重合体を含む。前記繰り返し単位は、ペプチド結合ではない任意の共有結合を介して互いに連結される。前記非ペプチド性リンカは、前記結合体のモイエティをなす1つの構成でもある。
前記「非ペプチド性リンカ」は、「非ペプチド性重合体」と混用されて使用されうる。
【0148】
一具体例において、前記結合体は、両末端に、生体適合性物質、具体的には、免疫グロブリンFc領域及びグルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤と結合されうる反応基を含む非ペプチド性リンカを介し、該生体適合性物質と該グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤とが互いに共有結合的に連結されたものでもある。
【0149】
具体的には、前記非ペプチド性リンカは、脂肪酸、糖類(saccharide)、高分子重合体、低分子化合物、ヌクレオチド、及びそれらの組み合わせによって構成された群のうちから選択されるものでもある。
【0150】
特に、以下のところに制限されるものではないが、 前記非ペプチド性リンカは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール・プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖類、ポリビニルエチルエーテル、PLA(polylactic acid)及びPLGA(polylactic-glycolic acid)のような生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸、オリゴヌクレオチド、及びそれらの組み合わせによって構成された群のうちから選択されるものでもある。前記多糖類は、デキストランでもあるが、それに制限されるものではない。
【0151】
さらに具体的な実施例において、前記非ペプチド性重合体は、ポリエチレングリコールでもあるが、それに制限されるものではない。従って、前記化学式1で、Lは、エチレングリコール繰り返し単位を含むリンカでもある。
【0152】
具体的には、前記リンカは、下記化学式2で表されるポリエチレングリコール(PEG)でもあるが、それに制限されるものではない:
【0153】
【化1】
【0154】
ここで、n=10ないし2,400、n=10ないし480、またはn=50ないし250であるが、それらに制限されるものではない。
【0155】
前記持続型結合体において、PEGモイオティは、-(CHCHO)-構造だけではなく、連結要素とその-(CHCHO)-との間に介在する酸素原子も含むものでもあるが、それに制限されるものではない。
【0156】
前記ポリエチレングリコールは、エチレングリコール同種重合体、PEG共重合体、またはモノメチル置換されたPEG重合体(mPEG)の形態をいずれも包括する用語であるが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0157】
また、当該分野にすでに知られたそれら誘導体、及び当該分野の技術レベルで容易に製造することができる誘導体も、本発明の範囲に含まれる。
【0158】
前記非ペプチド性リンカは、生体内タンパク質分解酵素に抵抗性ある重合体であるならば、制限なしに使用されうる。非ペプチド性重合体の化学式量は、1ないし1,000kDa範囲、具体的には、1ないし100kDa範囲、さらに具体的には、1ないし20kDa範囲であるが、それらに制限されるものではない。また、前記非ペプチド性リンカは、一種類の重合体だけではなく、異なる種類の重合体の組み合わせも使用される。一具体例において、前記L内のエチレングリコール反復単位部分の化学式量は、1ないし100kDa範囲、さらに具体的には、1ないし20kDa範囲にあるものでもある。
【0159】
一具体例において、前記非ペプチド性リンカの両末端は、それぞれ生体適合性物質、例えば、免疫グロブリンFc領域のアミン基またはチオール基、及びグルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤のアミン基またはチオール基に結合することができる。
【0160】
具体的には、前記非ペプチド性重合体は、両末端に、それぞれ生体適合性物質(例えば、免疫グロブリンFc領域)及びグルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤と結合されうる反応基、具体的には、グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤、あるいは生体適合性物質(例えば、免疫グロブリンFc領域)のN末端またはリシンに位置したアミン基、またはシステインのチオール基と結合されうる反応基を含むものでもあるが、それらに制限されるものではない。
【0161】
また、生体適合性物質、例えば、免疫グロブリンFc領域及びグルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤と結合されうる、前記非ペプチド性重合体の反応基は、アルデヒド基、マレイミド基及びスクシンイミド誘導体によって構成された群のうちからも選択されるが、それらに制限されるものではない。前述のところにおいて、アルデヒド基として、プロピオンアルデヒド基またはブチルアルデヒド基を例として挙げることができるが、それらに制限されるものではない。前述のところにおいて、スクシンイミド誘導体としては、スクシンイミジルバレレート、スクシンイミジルメチルブタノエート、スクシンイミジルメチルプロピオネート、スクシンイミジルブタノエート、スクシンイミジルプロピオネート、N-ヒドロキシスクシンイミド、ヒドロキシスクシンイミジル、スクシンイミジルカルボキシメチルまたはスクシンイミジルカーボネートが利用されうるが、それらに制限されるものではない。
【0162】
また、アルデヒド結合による還元性アルキル化によって生成された最終産物は、アミド結合によって連結されたものよりもはるかに安定している。アルデヒド反応基は、低いpHにおいて、N末端に選択的に反応し、高いpH、例えば、pH9.0条件においては、リシン残基と共有結合を形成することができる。
【0163】
また、前記非ペプチド性リンカの両末端の反応基は、互いに同一であるか、あるいは互いに異なりうる、例えば、一末端には、マレイミド基を、他末端には、アルデヒド基、プロピオンアルデヒド基またはブチルアルデヒド基を有しうる。しかしながら、非ペプチド性リンカの各末端に、生体適合性物質、具体的には、免疫グロブリンFc領域とグルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤とが結合されうるならば、特にそれに制限されるものではない。例えば、前記非ペプチド性リンカの一末端には、反応基としてマレイミド基を含み、他末端には、アルデヒド基、プロピオンアルデヒド基またはブチルアルデヒド基などを含むものでもある。
【0164】
両末端に、ヒドロキシ反応基を有するポリエチレングリコールを、非ペプチド性重合体として利用する場合には、公知の化学反応により、前記ヒドロキシ基を、前記多様な反応基で活性化するか、あるいは商業的に入手可能な変形された反応基を有するポリエチレングリコールを利用し、前記持続型結合体を製造することができる。
【0165】
一具体例において、前記非ペプチド性重合体は、グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤のシステイン残基、さらに具体的には、システインの-SH基に連結されるものでもあるが、それに制限されるものではない。
【0166】
もしマレイミド-PEG-アルデヒドを使用する場合、マレイミド基は、グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤の-SHと、チオエーテル(thioether)結合でもって連結され、アルデヒド基は、生体適合性物質、具体的には、免疫グロブリンFcの-NHと、還元的アルキル化反応を介しても連結されるが、それらに制限されるものではなく、それは1つの一例に該当する。
【0167】
また、前記結合体において、非ペプチド性重合体の反応基が、免疫グロブリンFc領域のN末端に位置した-NHと連結されたものでもあるが、それは、一例に該当する。
【0168】
一具体例において、前記持続型結合体は、下記化学式1によっても表される:
<化学式1> X-L-F
ただし、このとき、Xは、配列番号1ないし102のうちいずれか1つのアミノ酸配列を含むペプチドであり、
Lは、エチレングリコール繰り返し単位を含むリンカであり、
Fは、免疫グロブリンFc領域であり、
-は、XとLとの共有結合連結、LとFとの共有結合連結を示す。
【0169】
他の具体例において、前記ペプチドは、配列番号21,22,42,43,50,64,66,67,70,71,76,77,96,97及び100によって構成された群のうちから選択されたアミノ酸配列を含むものでもある。
【0170】
他の具体例において、前記ペプチドは、配列番号21,22,42,43,50,66,67,77,96,97及び100によって構成された群のうちから選択されたアミノ酸配列を含むものでもある。
【0171】
他の具体例において、前記ペプチドは、配列番号21,22,42,43,50,77及び96によって構成された群のうちから選択されたアミノ酸配列を含むものでもある。
【0172】
前記グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤またはその結合体は、血管炎疾患モデルにおいて、炎症関連遺伝子の発現程度を低減させるだけではなく、血管炎の進行に重要な役割を行う血管再形成因子MMP-2と血管再形成因子MMP-9との発現程度を低減させることを確認した。また、前記グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤またはその結合体は、アンジオテンシンII注入マウスにおいて、炎症反応によって血管壁が厚くなることを防ぎ、炎症関連遺伝子(例:IL-6及びTNF-α)の発現を低減させることを確認した。また、前記グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤またはその結合体は、ワイヤ損傷(wire injury)マウスにおいて、ワイヤによって物理的に誘発された炎症反応による血管内膜の増殖を防ぐことを確認した。従って、前記グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤またはその結合体は、血管炎の予防または治療の用途に使用されうる。
【0173】
前記グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤またはその結合体は、下記のうちいずれか一つにより、血管炎の予防効果または治療効果を示しうる:
(i)血管において、炎症関連遺伝子の発現を低減または抑制させる(前記炎症関連遺伝子は、MCP-1、IL-1β、IL-6及びTNF-αのうちから選択された1種以上である);
(ii)血管において、血管再形成因子の発現を低減または抑制させる(前記血管再形成因子は、MMP-2及びMMP-9のうちから選択された1種以上である);
(iii)炎症反応によって血管壁が厚くなることを低減、緩和または抑制させる;かつ
(iv)炎症反応によって血管内膜が増殖されることを低減、緩和または抑制させる。
【0174】
前記グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤またはその結合体は、グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対していずれも活性を有しており、グルカゴン受容体に対する活性が、GLP-1受容体またはGIP受容体に対する活性よりも高い。例えば、配列番号21,22,42,43,66,70,96及び97で表されるペプチドは、グルカゴン受容体に対する活性が非常に高い。グルカゴンは、肝臓を標的にするので、グルカゴン受容体に対する活性が高ければ、肝臓における分配が増加し、肝臓 に対する効果が増大しうる。ただし、三重作用剤の持続型結合体は、投与時、血液内にも多数が存在するので、その効果は、それに制限されるものではなく、血管における抗炎症作用に関与する蓋然性が非常に高い。
【0175】
用語「予防」とは、前記組成物の投与により、血管炎の発病を抑制または遅延させる全ての行為を意味する。
用語「治療」とは、前記組成物の投与により、血管炎の症状が好転するか、あるいは望ましくなる全ての行為を意味する。
【0176】
前記血管炎は、侵犯された血管の大きさによっても分類される。前記血管炎は、大血管血管炎、中血管血管炎または小血管血管炎でもある。前記血管炎は、大動脈(aorta)、及び主要分枝(major branches)を含む大型動脈(large starteries)と係わる血管炎;中型動脈(medium-sized arteries)と係わる血管炎;中小型動脈(small and medium-sized arteries)と係わる血管炎;小型動脈(small arteries)と係わる血管炎;または多様な大きさの動脈及び静脈(arteries andv eins of various sizes)と係わる血管炎などにも分類される。
【0177】
一具体例において、前記血管炎は、下記のところによって構成された群のうちから選択されるものでもあるが、それらに制限されるものではない:
【0178】
(1)巨大細胞動脈炎(GCA:giant cell arteritis)、高安動脈炎(TA:Takayasu’s arteritis)、コーガン症候群における大動脈炎(aortitis in Cogan’s syndrome)、脊椎関節症における大動脈炎(aortitis in spondylarthropathies)、孤立性大動脈炎(isolated aortitis)などを含む大型動脈と係わる血管炎;
【0179】
(2)川崎病(Kawasaki disease)、結節性多発動脈炎(PAN:polyarteritis nodosa)などを含む中型動脈と係わる血管炎;
【0180】
(3)ANCA関連血管炎(antineutrophil cytoplasmic antibodies-associated vasculitis)、多発血管炎性肉芽腫症(GPA:granulomatosis with polyangiitis)(旧名称:ウェゲナー肉芽腫症(WG:Wegener’s granulomatosis))、顕微鏡的多発血管炎(MPA:microscopic polyangiitis)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA:eosinophilic granulomatosis with polyangiitis)(または、チャーグ・ストラウス症侯群(Churg-Strauss syndrome))、中枢神経系原発性脈管炎(primary angiitis of the central nervous system)などを含む中小型動脈と係わる血管炎;及び
【0181】
(4)IgA血管炎(または、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(Henoch-Schonlein))、リウマチ関節炎関連血管炎,全身紅斑ループス関連血管炎,シェーグレン症候群関連血管炎(vasculitis related to rheumatoid arthritis,systemic lupus erythematosus and Sjogren's syndrome)、クリオグロブリン血管炎(cryoglobulinemic vasculitis)、薬物誘発血管炎(drug-induced vasculitis)などを含む小型動脈と係わる血管炎。
【0182】
前記薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含むものでもある。薬学的に許容される担体は、経口投与時には、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素及び香料などを使用することができ、注射剤の場合には、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤及び安定化剤などを混合して使用することができ、局所投与用の場合には、基剤、賦形剤、潤滑剤及び保存剤などを使用することができる。
【0183】
前記薬学的組成物の剤形は、前述のような薬学的に許容可能な担体と混合しても多様に製造される。例えば、経口投与時には、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ及びウェーハなどの形態に製造することができ、注射剤の場合には、単位投薬アンプルまたは多数回投薬形態に製造することができる。それ以外にも、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル及び徐放型製剤などに剤形化することができる。
【0184】
一方、製剤化に適する担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、澱粉、アカシア、アルジネート、ゼラチン、酢酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウムまたは鉱物油などが使用されうる。また、充填剤、抗凝個剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び防腐剤などをさらに含むものでもある。
【0185】
前記薬学的組成物は、血管炎を治療するための1以上の他の製剤をさらに含むものでもある。具体的には、前記他の製剤は、抗炎症剤または免疫抑制剤でもあるが、それらに制限されるものではない。さらに具体的には、前記他の製剤は、血管炎治療剤でもあるが、それに制限されるものではない。
【0186】
「抗炎症剤」とは、炎症性疾患、またはそれと係わる症状の治療のための化合物を称する。該抗炎症剤は、非制限的な例として、非ステロイド性抗炎症性薬物(NSAID)(例:アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、サリチル酸メチル、ジフルニサル、インドメタシン、スリンダク、ジクロフェナク、ケトプロフェン、ケトロラク、カプロフェン、フェノプロフェン、メフェナム酸、ピロキシカム、メロキシカム、メトトレキサート、セレコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ及びニメスリド)、コルチコステロイド(例:プレドニゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン及びフルチカゾン)、ラパマイシン(例:文献[Migita et al., Clin. Exp. Immunol. (1997) 108: 199-203]; [Migita et al., Clin. Exp. Immunol. (1996) 104: 86-91]; [Foroncewicz et al., Transpl. Int. (2005) 18: 366-368]参照)、高密度脂質タンパク質(HDL)及びHDLコレステロール上昇化合物(例:文献[Birjmohun et al. (2007) Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol., 27: 1153-1158]; [Nieland et al. (2007) J. Lipid Res., 48: 1832-1845];抗炎症剤として、ロジグリタゾンの用途を開示した[Bloedon et al. (2008) J. Lipid Res., Samaha et al. (2006)Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol., 26: 1413-1414], [Duffy et al. (2005) Curr. Opin. Cardiol., 20: 301-306]参照)、rhoキナーゼ抑制剤(例:文献[Hu, E. (2006) Rec. Patents Cardiovasc. Drug Discov., 1:2 49-263] 参照)、抗マラリア剤(例:ヒドロキシクロロキン及びクロロキン)、アセトアミノフェン、グルココルチコイド、ステロイド、β-作用剤、抗コリン剤、メチルキサンチン、金注入(例:金チオリンゴ酸ナトリウム)、スルファサラジン、ペニシラミン、抗血管形成剤、ダプソン、ソラレン、抗ウイルス剤、スタチン(例:文献[Paraskevas et al. (2007) Curr. Pharm. Des., 13: 3622-36]; [Paraskevas, K. I. (2008) Clin. Rheumatol. 27: 281-287]参照)、及び抗生物質(例:テトラサイクリン)を含む。特定具体例において、該抗炎症剤は、スタチンまたは高密度脂質タンパク質(HDL)及びHDLコレステロール上昇化合物である。
【0187】
「免疫抑制剤」及び「免疫抑制性製剤」は、免疫反応、またはそれと係わる症状を抑制する化合物または組成物を含む。該免疫抑制剤は、非制限的な例として、プリン類似体(例:アザチオプリン)、メトトレキサート、シクロスポリン(例:シクロスポリンA)、シクロホスファミド、レフルノミド、ミコフェノレート(ミコフェノレートモフェチル)、ステロイド(例:グルココルチコイド、コルチコステロイド)、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、非ステロイド性抗炎症性薬物(NSAID)、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、クロラムブシル、CD20拮抗剤(例:リツキシマブ、オクレリズマブ、ベルツズマブまたはオファツムマブ)、アバタセプト、TNF拮抗剤(例:インフリキシマブ、アダリムマブ、エタネルセプト)、マクロライド(例:ピメクロリムス、タクロリムス(FK506)及びシロリムス)、デヒドロエピアンドロステロン、レナリドミド、CD40拮抗剤(例:抗CD40L抗体)、アベチムスナトリウム、BLys拮抗剤(例:抗BLyS(例:ベリムマブ))、ダクチノマイシン、ブシラミン、ペニシラミン、レフルノミド、メルカプトプリン、ピリミジン類似体(例:シトシンアラビノシド)、ミゾリビン、アルキル化剤(例:窒素マスタード、フェニルアラニンマスタード、ブスルファン及びシクロホスファミド)、葉酸拮抗剤(例:アミノプテリン及びメトトレキサート)、抗生物質(例:ラパマイシン、アクチノマイシンD、ミトマイシンC、フラマイシン及びクロラムフェニコール)、ヒトIgG、抗リンパ球グロブリン(ALG)、抗体(例:抗CD3(OKT3)、抗CD4(OKT4)、抗CD5、抗CD7、抗IL-2受容体(例:ダクリズマブ及びバシリキシマブ)、抗α/β TCR、抗ICAM-1、ムロモナブ-CD3、抗IL-12、アレムツズマブ及び免疫毒素に対する抗体)、1-メチルトリプトファン、並びにその誘導体及び類似体を含む。特定具体例において、該免疫抑制メトトレキサート、ヒドロキシクロロキン、CD20拮抗剤(例:リツキシマブ、オクレリズマブ、ベルツズマブまたはオファツムマブ)、アバタセプト、TNF拮抗剤(例:インフリキシマブ、アダリムマブ、エタネルセプト)、シロリムス、及びBLyS拮抗剤(例:抗BLyS(例:ベリムマブ))によって構成された群のうちから選択される。
【0188】
「血管炎治療剤」は、血管炎と係わる症状を抑制するか、あるいはそれを治療する化合物または組成物を含む。前記血管炎治療剤は、公知の物質を使用することができる。
【0189】
前記薬学的組成物の投与量と回数は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢・性別及び体重、疾患の重症度のようなさまざまな関連因子と共に、活性成分である薬物の種類によって決定される。
【0190】
前記薬学的組成物は、生体内持続性及び力価にすぐれるので、投与回数及び頻度を顕著に低減させることができる。
【0191】
他の態様は、有効量の前記グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、あるいは前記結合体または前記薬学的組成物をそれを必要とする個体に投与する段階を含む、血管炎を予防または治療する方法を提供する。
【0192】
前記グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、前記結合体、前記薬学的組成物、及び血管炎については、前述の通りである。
【0193】
「有効量」または「薬学的有効量」とは、患者に、単一または多回の用量で投与されたとき、診断下または治療下で、患者に所望する効果を提供する、前記グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、またはその結合体の量または用量を称する。該有効量は、公知技術を使用したり、類似環境下で得られた結果を観察したりすることにより、関連技術分野の当業者としての主治医の診断により、容易に決定されうる。患者に対する有効量を決定するとき、哺乳動物種;その大きさ、年齢及び一般的な健康状態;関連する具体的な疾患または障害;疾患または障害の関連程度または重症度;個別患者の反応;投与される特定化合物;投与モード;投与される製剤の生体利用性特徴;選択された投薬療法;同時薬物処置使用;及び他の関連環境を含むが、それらに制限されない多数の因子が主治医の診断によって考慮される。
【0194】
「個体」とは、疾患の治療を必要とする対象を意味し、さらに具体的には、ヒト、または非ヒトである霊長類、マウス(mouse)、鼠(rat)、犬、猫、馬及び牛のような哺乳類を意味する。
【0195】
「投与」とは、ある適切な方法により、患者に所定物質を導入することを意味する。投与経路は、患者の生体内標的に逹することができるいかなる一般的な経路でもある。前記投与は、例えば、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、直腸内投与でもあるが、それらに制限されるものではない。
【0196】
前記投与は、一具体例による組成物を、個体1個当たり、0.0001mgないし1、000mg、例えば、0.1mgないし1,000mg、0.1mgないし500mg、0.1mgないし100mg、0.1mgないし50mg、0.1mgないし25mg、1mgないし1,000mg、1mgないし500mg、1mgないし100mg、1mgないし50mg、または1mgないし25mgを投与するものでもある。ただし、投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢・体重・性別・病的状態、飲食物、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因によって多様に処方され、当業者であるならば、そのような要因を考慮し、該投与量を適切に調節することができるのである。投与回数は、1日1回、または臨床的に容認可能な副作用の範囲内において、2回以上が可能であり、投与部位についても、1ヵ所、または2ヵ所以上に投与することができ、毎日、または2日間隔ないし5日間隔で、総投与日数は、1回の治療時、1日から30日まで投与されうる。必要な場合、適正時期後、同一治療を反復することができる。ヒト以外の動物についても、kg当たりヒトと同一投与量にするか、あるいは、例えば、目的とする動物と、ヒトとの器官(心臓など)容積比(例えば、平均値)などにより、前述の投与量を換算した量を投与することができる。
【0197】
前記方法において、有効量の前記グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、またはその結合体は、有効量の1以上の他の活性成分と同時に、個別、または順次に投与することができる。前記1以上の他の活性成分は、血管炎を治療するための1以上の他の製剤でもあるが、それに制限されるものではない。
【0198】
他の態様は、血管炎の予防用または治療用の薬剤を製造するのに使用するための、前記グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、または前記結合体の用途を提供する。
【0199】
前記グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、前記結合体、及び血管炎については、前述の通りである。
【0200】
本願で開示されるそれぞれの説明及び実施例は、それぞれの他の説明及び実施例にも適用される。すなわち、本願で開示された多様な要素の全ての組み合わせが、本発明の範疇に属する。また、下記の具体的な敍述により、本発明の範疇が制限されるとはいえない。
【発明の効果】
【0201】
一態様によるグルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤、またはその持続型結合体は、炎症関連因子の発現程度を低減させ、血管炎疾患モデルにおいて、血管再形成因子の発現程度を低減させる効果があるので、炎症性反応または自家免疫反応による血管炎の予防または治療の用途に使用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0202】
図1】(A)は、正常マウス対照群、疾患モデル(MRL/lpr)マウス対照群、アバタセブト投与群、及び三重作用剤の持続型結合体投与群の腎臓動脈における、炎症関連遺伝子MCP-1,IL-1β,IL-6またはTNF-αの相対的な発現程度を示したグラフであり、(B)は、正常マウス対照群、疾患モデル(MRL/lpr)マウス対照群、アバタセブト投与群、及び三重作用剤の持続型結合体投与群の腎臓動脈における、血管再形成因子と知られたMMP-2とMMP-9との相対的な発現程度を示したグラフである。
図2A】正常マウス対照群(control)、疾患モデル対照群(AngII)及び試験群(AngII+三重作用剤の持続型結合体)における大動脈中間膜厚を顕微鏡を介して確認した結果である。
図2B】正常マウス対照群、疾患モデル対照群(AngII投与対照群)及び試験群(三重作用剤の持続型結合体0.077mg/kg)における大動脈中間膜厚(μm)を示したグラフである。
図3】(A)は、正常マウス対照群、疾患モデル対照群(AngII投与対照群)及び試験群(三重作用剤の持続型結合体0.351mg/kg)の大動脈弓における、IL-6遺伝子及びTNF-α遺伝子の相対的発現程度を示したグラフであり、(B)は、正常マウス対照群、疾患モデル対照群(AngII投与対照群)及び試験群(三重作用剤の持続型結合体0.351mg/kg)の腹大動脈における、IL-6遺伝子及びTNF-α遺伝子の相対的発現程度を示したグラフである。
図4A】正常マウス対照群(control)、ワイヤ損傷(wire injury)マウス対照群及び試験群(ワイヤ損傷(wire injury)+三重作用剤の持続型結合体)の大腿動脈断面を顕微鏡を介して確認した結果である。
図4B】正常マウス対照群(control)、ワイヤ損傷(wire injury)マウス対照群及び試験群(三重作用剤の持続型結合体0.351mg/kg)の血管内膜/中間膜比(ratio)グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0203】
以下、本発明について、実施例を介してさらに詳細に説明する。しかしながら、それら実施例は、本発明について例示的に説明するためのモノであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【0204】
●実施例1:グルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤の製造
グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体にいずれも活性を示すグルカゴン/GLP-1/GIP三重作用剤を製造し、下記表1にその配列を示した。
【0205】
【表1-1】


【表1-2】

【表1-3】

【表1-4】

【表1-5】
【0206】
前記表1に記載された配列において、Xで表されたアミノ酸は、非天然型アミノ酸であるAib(アミノイソ酪酸)であり、下線で表されたアミノ酸は、下線に表示されたアミノ酸が互いに環を形成することを意味する。また、前記表1において、CAは、4-イミダゾアセチル(4-imidazoacetyl)を意味し、Yは、チロシンを意味する。
【0207】
前記三重作用剤ペプチドは、必要により、C末端をアミド化させた三重作用剤として利用される。
【0208】
●実施例2:三重作用剤の持続型結合体の製造
両末端に、それぞれマレイミド基及びアルデヒド基を有する、10kDaのPEG、すなわち、マレイミド-PEG-アルデヒド(10kDa(NOF、日本))を、実施例1の三重作用剤(配列番号21,22,42,43,50,77及び96)のシステイン残基にペギル化させるために、三重作用剤とマレイミド-PEG-アルデヒドとのモル比を1:1ないし3、タンパク質の濃度を1ないし5mg/mlにし、低温で0.5ないし3時間反応させた。このとき、該反応は、50mM Tris緩衝液(pH7.5)に、20ないし60%イソプロパノールが添加された環境下で行われた。該反応が終了した後、前記反応液を、SPセファロースHP(GE Healthcare、米国)に適用させ、システインにモノペギル化された三重作用剤を精製した。
【0209】
次に、前記精製されたモノペギル化された三重作用剤と、免疫グロブリンFcとに対し、モル比を1:1ないし5、タンパク質の濃度を10ないし50mg/mlにし、4ないし8℃において、12ないし18時間反応させた。該反応は、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)に、還元剤である10ないし50mMシアノ水素化ホウ素ナトリウムと、10ないし30%イソプロパノールとが添加された環境下で行われた。該反応が終了した後、前記反応液を、ブチルセファロースFF精製カラム(GE Healthcare、米国)とSource ISO精製カラム(GE Healthcare、米国)とに適用し、三重作用剤と免疫グロブリンFcとを含む結合体を精製した。
【0210】
製造後、逆相クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ及びイオン交換クロマトグラフィで分析した純度は、95%以上であった。
【0211】
ここで、配列番号21の三重作用剤及び免疫グロブリンFcが、PEGを介して連結された結合体を、「配列番号21と免疫グロブリンFcとを含む結合体」、あるいは「配列番号21の持続型結合体」と命名し、それらは、本願で混用されて使用されうる。
【0212】
ここで、配列番号22の三重作用剤及び免疫グロブリンFcが、PEGを介して連結された結合体を、「配列番号22と免疫グロブリンFcとを含む結合体」、あるいは「配列番号22の持続型結合体」と命名し、それらは、本願で混用されて使用されうる。
【0213】
ここで、配列番号42の三重作用剤及び免疫グロブリンFcが、PEGを介して連結された結合体を、「配列番号42と免疫グロブリンFcとを含む結合体」、あるいは「配列番号42の持続型結合体」と命名し、それらは、本願で混用されて使用されうる。
【0214】
ここで、配列番号43の三重作用剤及び免疫グロブリンFcが、PEGを介して連結された結合体を、「配列番号43と免疫グロブリンFcとを含む結合体」、あるいは「配列番号43の持続型結合体」と命名し、それらは、本願で混用されて使用されうる
【0215】
ここで、配列番号50の三重作用剤及び免疫グロブリンFcが、PEGを介して連結された結合体を、「配列番号50と免疫グロブリンFcとを含む結合体」、あるいは「配列番号50の持続型結合体」と命名し、それらは、本願で混用されて使用されうる。
【0216】
ここで、配列番号77の三重作用剤及び免疫グロブリンFcが、PEGを介して連結された結合体を、「配列番号77と免疫グロブリンFcとを含む結合体」、あるいは「配列番号77の持続型結合体」と命名し、それらは、本願で混用されて使用されうる
【0217】
ここで、配列番号96の三重作用剤及び免疫グロブリンFcが、PEGを介して連結された結合体を、「配列番号96と免疫グロブリンFcとを含む結合体」、あるいは「配列番号96の持続型結合体」と命名し、それらは、本願で混用されて使用されうる。
【0218】
●実験例1:三重作用剤及びその持続型結合体のインビトロ(in vitro)活性の測定
前記実施例1及び2で製造された三重作用剤とその持続型結合体の活性を測定するために、GLP-1受容体、グルカゴン(GCG)受容体、及びGIP受容体がそれぞれ形質転換された細胞株を利用し、インビトロ(in vitro)で細胞活性を測定する方法を利用した。
【0219】
前記各細胞株は、CHO(Chinese hamster ovary)に、ヒトGLP-1受容体遺伝子、ヒトGCG受容体遺伝子及びヒトGIP受容体遺伝子をそれぞれ発現するように形質転換されたものであり、GLP-1、GCG及びGIPの活性を測定するのに適する。従って、各部分に対する活性を、それぞれの形質転換細胞株を利用して測定した。
【0220】
前記実施例1と2で製造された三重作用剤とその持続型結合体とのGLP-1活性測定のために、ヒトGLP-1を、50nMから4倍ずつ、0.000048nMまで連続して希釈し、前記実施例1と2とで製造された三重作用剤と、その持続型結合体とを、400nMから4倍ずつ、0.00038nMまで連続して希釈した。前記培養されたヒトGLP-1受容体が発現されたCHO細胞から培養液を除去し、連続して希釈された各物質を、5μlずつ前記細胞に添加した後、cAMP抗体が含まれた緩衝液を、5μlずつ追加した後、15分間常温で培養した。その後、細胞溶解緩衝液(cell lysis buffer)が含まれたDetection Mixを、10μlずつ加えて細胞を溶解させ、90分間常温で反応させた。前記反応が完了した細胞溶解物を、LANCE cAMPキット(PerkinElmer、米国)に適用させ、蓄積されたcAMPを介し、EC50値を算出した後、相互比較した ヒトGLP-1対比の相対力価は、下記の表2と表3とに示されている。
【0221】
前記実施例1と2とで製造された三重作用剤と、その持続型結合体とのGCG活性測定のために、ヒトGCGを、50nMから4倍ずつ、0.000048nMまで連続して希釈し、前記実施例1と2とで製造された三重作用剤と、その持続型結合体とを、400nMから4倍ずつ0.00038nMまで連続して希釈した。前記培養されたヒトGCG受容体が発現されたCHO細胞から培養液を除去し、連続して希釈された各物質を、5μlずつ前記細胞に添加した後、cAMP抗体が含まれた緩衝液を、5μlずつ追加した後、15分間常温で培養した。その後、細胞溶解緩衝液(cell lysis buffer)が含まれたDetection Mixを、10μlずつ加えて細胞を溶解させ、90分間常温で反応させた。前記反応が完了した細胞溶解物を、LANCE cAMPキット(PerkinElmer、米国)に適用させ、蓄積されたcAMPを介し、EC50値を算出した後、相互比較した。ヒトGCG対比の相対力価は、下記の表2と表3とに示されている。
【0222】
前記実施例1と2とで製造された三重作用剤と、その持続型結合体とのGIP活性測定のために、ヒトGIPを、50nMから4倍ずつ、0.000048nMまで連続して希釈し、前記実施例1と2とで製造された三重作用剤と、その持続型結合体とを、400nMから4倍ずつ、0.00038nMまで連続して希釈した。前記培養されたヒトGIP受容体が発現されたCHO細胞から培養液を除去し、連続して希釈された各物質を、5μlずつ前記細胞に添加した後、cAMP抗体が含まれた緩衝液を、5μlずつ追加した後、15分間常温で培養した。その後、細胞溶解緩衝液(cell lysis buffer)が含まれたDetection Mixを、10μlずつ加えて細胞を溶解させ、90分間常温で反応させた。前記反応が完了した細胞溶解物を、LANCE cAMPキット(PerkinElmer、米国)に適用させ、蓄積されたcAMPを介してEC50値を算出した後、相互比較した。ヒトGIP対比の相対力価は、下記の表2と表3とに示されている。
【0223】

【表2-1】

【表2-2】

【表2-3】
【0224】
【表3】
【0225】
前述のところで製造された三重作用剤の持続型結合体は、GLP-1受容体、GIP受容体及びグルカゴン受容体をいずれも活性化させうる三重作用剤としての機能を有する。
【0226】
●実験例2:三重作用剤の持続型結合体の血管炎疾患モデルにおける効力の確認
血管炎に対する持続型三重作用剤の効力を、疾患モデルで確認するために、MRL/lprマウスを使用した。当該マウスの場合、全身性炎症によって引き起こされた大動脈、及び主要分枝を含む大血管に血管炎が観察されると知られている(Arthritis Rheum. 2003 May; 48 (5): 1445-51)。それにより、血管炎疾患モデルとして選択した。
【0227】
賦形剤を投与した、正常マウス対照群と、疾患モデル対照群とがあり、商用対照品として使用したアバタセブト(abatacept)(オレンシア注)を5.7mg/kgで投与した対照群、及び三重作用剤の持続型結合体を、0.12mg/kgで投与した試験群がある。賦形剤及び薬物の投与は、2日間隔にし、実験は、10週目に終了した。三重作用剤の持続型結合体は、実施例2で製造された三重作用剤の持続型結合体(配列番号42)を使用した。
【0228】
図1(A)は、正常マウス対照群、疾患モデル(MRL/lpr)マウス対照群、アバタセブト投与群、及び三重作用剤の持続型結合体投与群の腎臓動脈における、炎症関連遺伝子MCP-1,IL-1β,IL-6またはTNF-αの相対的な発現程度を示したグラフである。
【0229】
図1(A)に示されているように、アバタセブト投与群、または三重作用剤の持続型結合体投与群が、疾患モデル対照群に比べ、全ての炎症関連遺伝子の発現が有意的に低減されていることを確認した。
【0230】
図1(B)は、正常マウス対照群、疾患モデル(MRL/lpr)マウス対照群、アバタセブト投与群、及び三重作用剤の持続型結合体投与群の腎臓動脈における、血管再形成因子として知られたMMP-2とMMP-9との相対的な発現程度を示したグラフである。
【0231】
図1(B)に示されているように、アバタセブトと異なり、三重作用剤の持続型結合体投与群が対照群に比べ、血管再形成遺伝子の発現が有意的に低減されていることを確認した。
【0232】
従って、三重作用剤の持続型結合体が、直接疾患モデルにおいて血管に作用し、炎症反応を防ぐ抗炎症効力を示すだけではなく、血管炎の進行に重要な役割を行う血管再形成因子の発現も少なくするということを確認することができた。
【0233】
●実験例3:三重作用剤の持続型結合体のアンジオテンシンII注入マウスにおける効力の確認-1
血管炎に対する三重作用剤の持続型結合体の効力を、疾患モデルで確認するために、アンジオテンシンII注入マウス(Angiotensin II infusedマウス(AngIIマウス))を使用した。前記AngIIマウスは、正常マウス(雄C57BL/6Nマウス(DBL Co., Ltd.))に、4週間、AngII(Sigma-Aldrich)を毎日1.4mgずつ投与したマウスである。当該マウスの場合、高血圧の疾患モデルでさらに周知されているが、AngIIにより、マウスの動脈壁に炎症が起コリ、厚みが厚くなると知られている(Hypertension. 2004; 44: 264-270)。そのために、血管炎疾患モデルとして選択した。研究期間の間、マウスは、群別に収容され、水に自由に接近することができるようにした。光は、6AMから6PMまで消灯した。
【0234】
正常マウス(雄C57BL/6Nマウス(DBL Co., Ltd.))対照群(control)及び疾患モデル対照群(AngII)は、賦形剤を投与した。試験群(AngII+三重作用剤の持続型結合体)は、三重作用剤の持続型結合体を、0.077mg/kgで投与した。賦形剤、及び三重作用剤の持続型結合体の投与は、2日間隔にし、実験は、4週目に終了した。三重作用剤の持続型結合体は、実施例2で製造された三重作用剤の持続型結合体(配列番号42)を使用した。
【0235】
実験が終了した後、剖検を介し、大動脈弓(aortic arch)近辺の大動脈を取り、動脈壁厚を観察した。中間膜(tunica media)の厚みを測定したが、各組織において、ランダムに10ヵ所の中間膜厚を測定した後、平均を取り、値を導出した。
【0236】
図2Aは、正常マウス対照群(control)、疾患モデル対照群(AngII)及び試験群(AngII+三重作用剤の持続型結合体)における大動脈中間膜厚を顕微鏡を介して確認した結果である。
【0237】
図2Bは、正常マウス対照群、疾患モデル対照群(AngII投与対照群)及び試験群(三重作用剤の持続型結合体0.077mg/kg)における大動脈中間膜厚(μm)を示したグラフである。
【0238】
その結果、図2A及び図2Bに示されているように、疾患モデル対照群は、AngIIの投与により、正常マウス対照群に比べ、動脈壁が厚くなったことを確認することができた。しかしながら、三重作用剤の持続型結合体を投与した試験群は、疾患モデル対照群に比べ、動脈壁厚が薄くなったことを確認した。
【0239】
従って、三重作用剤の持続型結合体が、直接疾患モデルにおいて大動脈に作用し、炎症反応によって血管壁が厚くなることを防ぐ抗炎症効力を示すことを確認することができた。
【0240】
●実験例4:三重作用剤の持続型結合体のアンジオテンシンII注入マウスにおける効力の確認-2
前記実験例3で使用したところと同一疾患モデルにおいて、さらには、大動脈における三重作用剤の持続型結合体による炎症因子の発現低減効力を確認するために、追加試験を進めた。研究期間の間、マウスは、群別に収容され、水に自由に接近できるようにした。 光は、6AMから6PMまで消灯した。
【0241】
正常マウス(雄C57BL/6Nマウス(DBL Co., Ltd.))対照群(control)及び疾患モデル対照群(AngII)は、賦形剤を投与した。試験群(AngII+三重作用剤の持続型結合体)は、三重作用剤の持続型結合体を、0.351mg/kgで投与した。賦形剤、及び三重作用剤の持続型結合体の投与は、2日間隔にし、実験は、4週目に終了した。三重作用剤の持続型結合体は、実施例2で製造された三重作用剤の持続型結合体(配列番号42)を使用した。
【0242】
実験が終了した後、剖検を介しm大動脈弓と腹大動脈(abdominal aorta)の2ヵ所大動脈を取り、RNAを抽出した。RNeasy Mini Kit(Qiagen、米国)を利用してRNAを取り、iScript(登録商標) cDNA Synthesis Kit(Bio-rad、米国)を利用し、cDNAを合成した。合成されたcDNAに対し、QuantStudio 6 Flex Real-Time PCR System(Applied Biosystems、米国)を利用し、炎症関連遺伝子の発現程度を確認して比較した。
【0243】
図3(A)は、正常マウス対照群、疾患モデル対照群(AngII投与対照群)及び試験群(三重作用剤の持続型結合体0.351mg/kg)の大動脈弓における、IL-6遺伝子及びTNF-α遺伝子の相対的発現程度を示したグラフである。
【0244】
図3(B)は、正常マウス対照群、疾患モデル対照群(AngII投与対照群)及び試験群(三重作用剤の持続型結合体0.351mg/kg)の腹大動脈における、IL-6遺伝子及びTNF-α遺伝子の相対的発現程度を示したグラフである。
【0245】
その結果、図3(A)及び図3(B)に示されているように、大動脈2ヵ所のいずれにおいても、持続型三層活性体を投与した試験群が、疾患モデル対照群に比べ、IL-6遺伝子及びTNF-α遺伝子の発現が低減されていることを確認した。
【0246】
従って、三重作用剤の持続型結合体が、直接疾患モデルにおいて大動脈に作用し、炎症関連遺伝子の発現を低減させることにより、炎症反応を防ぐ抗炎症効力を示すことを確認することができた。
【0247】
●実験例5:三重作用剤の持続型結合体のワイヤ損傷(wire injury)マウスにおける効力の確認
血管炎に対する三重作用剤の持続型結合体の効力を、疾患モデルにおいて確認するために、ワイヤ損傷(wire injury)マウスを使用した。前記ワイヤ損傷(wire injury)マウスは、正常マウス(雄ICRマウス(Dae Han Bio Link Co.))の左側大腿動脈(femoral artery)に、0.38mmワイヤを挿入し、損傷(injury)を物理的に誘発させた。前記ワイヤ損傷(wire injury)マウスは、特に炎症反応により、血管内膜の増殖を介し、動脈狭窄を特徴とすることが見られるが(J Vis Exp. 2015 Mar 10; (97): 52561)、それは、血管炎の主要症状のうち一つであるために、血管炎疾患モデルとして選択した。研究期間の間、マウスは群別に収容され、水に自由に接近できるようにした。光は、6AMから6PMまで消灯した。
【0248】
正常マウス(雄ICRマウス(Dae Han Bio Link Co., Ltd.))対照群及びワイヤ損傷(wire injury)マウス対照群は、賦形剤を投与した。試験群は、三重作用剤の持続型結合体を、0.351mg/kgで投与した。賦形剤、及び三重作用剤の持続型結合体の投与は、2日間隔にし、実験は、4週目に終了した。三重作用剤の持続型結合体は、実施例2で製造された三重作用剤の持続型結合体(配列番号42)を使用した。
【0249】
実験が終了した後、剖検を介し、大腿動脈を取り、断面を顕微鏡を介して確認した。内弾性板(internal elastic lamina)と外弾性板(external elastic lamina)を基準に、血管内膜と中間膜とを区分し、その広さを特定し、血管内膜/中間膜比(ratio)を求めた。
【0250】
図4Aは、正常マウス対照群(control)、ワイヤ損傷(wire injury)マウス対照群及び試験群(ワイヤ損傷(wire injury)+三重作用剤の持続型結合体)の大腿動脈断面を顕微鏡を介して確認した結果である。
【0251】
図4Bは、正常マウス対照群(control)、ワイヤ損傷(wire injury)マウス対照群及び試験群(三重作用剤の持続型結合体0.351mg/kg)の血管内膜/中間膜比(ratio)グラフである。
【0252】
その結果、図4A及び図4Bに示されているように、正常マウス対照群に比べ、ワイヤ損傷(wire injury)対照群は、血管内膜が炎症反応によって厚くなったことを確認することができた。しかしながら、三重作用剤の持続型結合体を投与した試験群は、ワイヤ損傷(wire injury)対照群に比べ、有意的に血管内膜厚が薄くなったことを確認した。
【0253】
従って、三重作用剤の持続型結合体が、ワイヤ損傷(wire injury)モデルにおいて、血管内膜の増殖を防ぐ抗炎症効力を示すことを確認することができた。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
【配列表】
2023546085000001.app
【国際調査報告】