IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハンミ ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッドの特許一覧

特表2023-546090GLP-1/GIP二重作用剤、その持続型結合体、及びそれを含む薬学的組成物
<>
  • 特表-GLP-1/GIP二重作用剤、その持続型結合体、及びそれを含む薬学的組成物 図1
  • 特表-GLP-1/GIP二重作用剤、その持続型結合体、及びそれを含む薬学的組成物 図2
  • 特表-GLP-1/GIP二重作用剤、その持続型結合体、及びそれを含む薬学的組成物 図3
  • 特表-GLP-1/GIP二重作用剤、その持続型結合体、及びそれを含む薬学的組成物 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】GLP-1/GIP二重作用剤、その持続型結合体、及びそれを含む薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20231025BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231025BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20231025BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20231025BHJP
   A61K 47/61 20170101ALI20231025BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20231025BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20231025BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/62 Z
A61K38/16
A61K47/54
A61K47/64
A61K47/61
A61K47/60
A61K47/65
A61K39/395 Y
A61P3/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522948
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(85)【翻訳文提出日】2023-04-13
(86)【国際出願番号】 KR2021014462
(87)【国際公開番号】W WO2022080986
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0134478
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516132149
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウン チョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、チェ ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ニョン サン
(72)【発明者】
【氏名】イム、ヒョン チュ
(72)【発明者】
【氏名】イ、サン ヒョン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA94
4C076CC21
4C076CC41
4C076EE06
4C076EE23
4C076EE30
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF31
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA19
4C084BA41
4C084DB34
4C084NA12
4C084ZC35
4C085AA25
4C085BB11
4C085BB42
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA19
4H045BA41
4H045BA53
4H045BA55
4H045BA56
4H045BA57
4H045BA61
4H045BA62
4H045DA30
4H045DA37
4H045DA45
4H045EA30
(57)【要約】
GLP-1/GIP二重作用剤、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、またはその持続型結合体、またはそれを含む糖尿病の予防用または治療用の薬学的組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1ないし44によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含む、ペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドは、配列番号14,15,16,20,36,37,38及び40によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むものである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドは、配列番号20,36及び40によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むものである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
GLP-1(glucagon-like peptide-1)受容体及びGIP(glucose-dependent insulinotropic peptide)受容体に対して活性を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
前記ペプチド配列において、N末端から12番アミノ酸及び16番アミノ酸、または16番アミノ酸及び20番アミノ酸は、互いに環を形成する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項6】
前記ペプチドは、そのC末端が変形されていないか、あるいはアミド化されたものである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載のペプチドをコーディングするポリヌクレオチド。
【請求項8】
請求項7に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項9】
請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載のペプチドと、生体内半減期を増大させる生体適合性物質とが結合された、結合体。
【請求項10】
前記生体適合性物質は、高分子重合体、脂肪酸、コレステロール、アルブミン及びその断片、アルブミン結合物質、特定アミノ酸配列の繰り返し単位の重合体、抗体、抗体断片、FcRn結合物質、生体内結合織、ヌクレオチド、フィブロネクチン、トランスフェリン、糖類(saccharide)、ヘパリン及びエラスチンによって構成された群のうちから選択される、請求項9に記載の結合体。
【請求項11】
前記高分子重合体は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール・プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖類、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン、ヒアルロン酸、オリゴヌクレオチド、及びそれらの組み合わせによって構成された群のうちから選択される、請求項10に記載の結合体。
【請求項12】
前記生体適合性物質は、FcRn結合物質である、請求項9に記載の結合体。
【請求項13】
前記FcRn結合物質は、免疫グロブリンFc領域である、請求項12に記載の結合体。
【請求項14】
前記免疫グロブリンFc領域は、(a)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン、(b)CH1ドメイン及びCH2ドメイン、(c)CH1ドメイン及びCH3ドメイン、(d)CH2ドメイン及びCH3ドメイン、(e)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメインのうち、1個または2個以上のドメインと、免疫グロブリンヒンジ領域またはヒンジ領域の一部との組み合わせ、並びに(f)重鎖不変領域各ドメインと、軽鎖不変領域との二量体によって構成された群のうちから選択される、請求項13に記載の結合体。
【請求項15】
前記免疫グロブリンFc領域は、非糖鎖化されたものである、請求項13に記載の結合体。
【請求項16】
前記免疫グロブリンFc領域は、IgG4 Fc領域である、請求項13に記載の結合体。
【請求項17】
前記免疫グロブリンFc領域は、ヒトIgG4由来の非糖鎖化されたFc領域である、請求項13に記載の結合体。
【請求項18】
前記ペプチドは、リンカーを介し、生体適合性物質と連結される、請求項9に記載の結合体。
【請求項19】
前記リンカーは、ペプチド、脂肪酸、糖類(saccharide)、高分子重合体、低分子化合物、ヌクレオチド、及びそれらの組み合わせによって構成された群のうちから選択される、請求項18に記載の結合体。
【請求項20】
前記高分子重合体は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール・プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖類、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン、ヒアルロン酸、オリゴヌクレオチド、及びそれらの組み合わせによって構成された群のうちから選択される、請求項19に記載の結合体。
【請求項21】
前記リンカーは、エチレングリコール繰り返し単位を含むものである、請求項18に記載の結合体。
【請求項22】
前記エチレングリコール繰り返し単位部分の化学式量は、1ないし100kDa範囲にある、請求項21に記載の結合体。
【請求項23】
請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載のペプチド、その薬学的に許容可能な塩またはその溶媒化物、あるいは請求項8ないし22のうちいずれか1項に記載の結合体を含む、糖尿病の予防用または治療用の薬学的組成物。
【請求項24】
さらに薬学的に許容される賦形剤を含むものである、請求項23に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GLP-1/GIP二重作用剤、その持続型結合体、及びそれを含む糖尿病の予防用または治療用の薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
GLP-1(glucagon-like peptide-1)は、飲食物摂取に刺激を受け、小腸で分泌するインクレチンホルモン(incretinhormone)であり、血糖濃度依存的に、膵臓におけるインシュリン分泌を促進し、グルカゴンの分泌を抑制し、血糖濃度を低くする作用の一助となる。また、飽満因子と作用し、胃腸の消化作用を遅らせ、飲食消化物の胃腸通過時間を遅延させ、飲食物摂取を減らす役割を有する。さらには、鼠に投与するとき、飲食物摂取抑制と体重低減との効果があることが報告され、そのような効果は、正常と肥満との状態いずれにおいても、同一に示されることが確認され、肥満治療剤としての可能性を示している。
【0003】
GIP(glucose-dependent insulinotropic polypeptide)は、胃腸管で分泌される代表的なインクレチンホルモンのうち一つであり、神経ホルモンであり、GLP-1と同様に、飲食物摂取に刺激を受けて分泌される。GIPは、小腸のK細胞から分泌される42個アミノ酸によって構成されたホルモンであり、血糖濃度に依存的に膵臓におけるインシュリンあるいはグルカゴンの分泌を調節することにより、血糖の恒常性を維持するのにその機能があるだけではなく、GLP-1と同様に、中樞神経及び迷走神経を介する食餌抑制機能も報告されている。
【0004】
GLP-1の場合、血糖依存的インシュリン分泌を介する血糖降下及び食餌抑制を介する体重低減効果を介し、糖尿病だけではなく、肥満治療剤として、10年以上、糖尿及び肥満の患者らに処方され、効力にさらにすぐれ、持続性が増大されたさまざまな改良新薬の開発も活発に進められている。しかしながら、GLP-1系統の薬物だけでは、糖化血色素(HbA1c)の期待低減効力が2%を超えることができないために、糖化血色素が9%を超える糖尿患者には、インシュリン系統薬物の併用が必要にもなる。実際、GLP-1とインシュリンとの複合剤が承認されて使用されているが、インシュリンを使用するほど、低血糖に対する危険から自由ではない。そのような理由により、血糖を調節することができ、相対的に低血糖危険のないGIPが、GLP-1系統薬物の新たなパートナーとして頭角を現している。
【0005】
GLP-1及びGIP受容体を同時に活性化させることができる二重作用剤を開発するならば、低血糖に対する憂慮なしに、それぞれ単独に対する効力よりすぐれた血糖及び体重の調節効果を期待することができる。そのために、GLP-1及びGIP受容体を高く活性化させることができる新規の物質がGLP-1系統薬物を代替することができる次世代の糖尿及び肥満の治療剤になりうると期待される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
新規のGLP-1/GIP二重作用剤を提供する。
【0007】
前記GLP-1/GIP二重作用剤をコーディングするポリヌクレオチドを提供する。
【0008】
前記ポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0009】
前記ポリヌクレオチドまたはベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0010】
前記GLP-1/GIP二重作用剤と、生体内半減期を増大させる生体適合性物質とが結合された結合体を提供する。
【0011】
前記GLP-1/GIP二重作用剤、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、あるいは前記結合体を含む糖尿病の予防用または治療用の薬学的組成物を提供する。
【0012】
有効量の前記GLP-1/GIP二重作用剤、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、あるいは前記結合体または前記薬学的組成物を、それを必要とする個体に投与する段階を含む、糖尿病を予防または治療する方法を提供する。
【0013】
糖尿病の予防用または治療用の薬剤を製造するのに使用するための、前記GLP-1/GIP二重作用剤、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、または前記結合体の用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本明細書全般において、天然に存在するアミノ酸に係わる通常の1文字コード及び3文字コードが使用されるだけではなく、Aib(α-アミノ-イソ酪酸),Nle(ノルロイシン(2-aminohexanoic acid)のような他のアミノ酸について一般的に許容される3文字コードが使用される。また、本明細書において、略語で言及されたアミノ酸は、IUPAC-IUB命名法によって記載されている。
【0015】
アラニンAla,A アルギニンArg,R
アスパラギンAsn,N アスパラギン酸Asp,D
システインCys,C グルタミン酸Glu,E
グルタミンGln,Q グリシンGly,G
ヒスチジンHis,H イソロイシンIle,I
ロイシンLeu,L リシンLys,K
メチオニンMet,M フェニルアラニンPhe,F
プロリンPro,P セリンSer,S
スレオニンThr,T トリプトファンTrp,W
チロシンTyr,Y バリンVal,V
一態様は、GLP-1/GIP二重作用剤を提供する。
【0016】
「GLP-1(glucagon-like peptide-1)」は、飲食物摂取に刺激を受け、小腸のL細胞から分泌されるホルモンであり、血糖濃度依存的に、膵臓におけるインシュリン分泌を促進し、グルカゴンの分泌を抑制し、血糖濃度を低くする作用の一助となる。
【0017】
「GIP(glucose-dependent insulinotropic polypeptideまたはgastric inhibitory polypeptide)」は、飲食物摂取に刺激を受け、小腸のK細胞から分泌されるホルモンであり、血中糖濃度調節に関与する物質として最初に報告された。
【0018】
前述の「GLP-1/GIP二重作用剤(GLP-1/GIP dualagonist)」は、「GLP-1/GIP受容体二重作用剤」、「GLP-1受容体及びGIP受容体二重作用剤」、「GLP-1R/GIPR二重作用剤」、「二重作用剤」または「GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチド」と相互交換的に使用されうる。
【0019】
前記GLP-1/GIP二重作用剤は、GLP-1受容体及びGIP受容体のうち1以上に対して活性を有するペプチドでもあり、具体的には、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドでもある。前記「GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチド」は、前記GLP-1受容体及びGIP受容体に対して有意レベルの活性を有し、具体的には、GLP-1受容体及びGIP受容体に対し、インビトロ(in vitro)活性が、それぞれ天然型リガンド(天然型GLP-1または天然型GIP)対比で、約で0.1%以上、1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上、100%ないし500%、または100%ないし200%を示すことを意味しうる。そのようなGLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドのインビトロ(in vitro)活性を測定する方法は、本願明細書の実施例2を参照することができるが、特別にそれに制限されるものではなく、当業界に知られた方法であるならば、適切に使用し、インビトロ(in vitro)活性を測定することができる。
【0020】
前記GLP-1/GIP二重作用剤は、均衡の取れたGLP-1活性及びGIP活性を示すものでもある。GLP-1及びGIPに対して均衡の取れた活性とは、試験管内結合検定法において、GLP-1受容体及びGIP受容体に対するペプチドの親和度が1:1に近いモル比、具体的には、1:100ないし100:1のモル比、さらに具体的には、1:10ないし10:1のモル比、さらに一層具体的には、1:2ないし2:1のモル比であることを称する。
【0021】
「約」とは、±0.5、±0.4、±0.3、±0.2、±0.1などをいずれも含む範囲であり、「約」という用語の後に出る数値と同等であるか、あるいは類似した範囲の数値をいずれも含むが、それに制限されるものではない。
【0022】
一具体例において、前記GLP-1/GIP二重作用剤は、天然型、または変異されていないタンパク質(例えば、GLP-1またはGIP)において、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10個、またはそれ以上のアミノ酸において、保存的置換が起きたものでもあるが、それに制限されるものではない。
【0023】
「保存的置換(conservative substitution)」とは、1つのアミノ酸を、類似した構造的及び/または化学的な性質を有する他のアミノ酸で置換させることを意味する。前記二重作用剤は、天然型、または変異されていないGLP-1タンパク質またはGIPタンパク質の生物学的活性を依然として保有しながら、例えば、1以上の保存的置換を有しうる。そのようなアミノ酸置換は、一般的には、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性及び/または両親媒性(amphipathic nature)における類似性に基づいても生じる。例えば、正に荷電された(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リシン及びヒスチジンを含み、負に荷電された(酸性)アミノ酸は、グルタミン酸及びアスパラギン酸を含み、芳香族アミノ酸は、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンを含み、疎水性アミノ酸は、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンを含む。また、アミノ酸は、電荷を帯びる(electrically charged)側鎖を有するアミノ酸と、電荷を帯びていない(uncharged)側鎖を有するアミノ酸とに分類される。電荷を帯びる側鎖を有するアミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジンを含み、電荷を帯びていない側鎖を有するアミノ酸は、さらに非極性(nonpolar)アミノ酸または極性(polar)アミノ酸に分類されうる。非極性アミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリンを含み、極性アミノ酸は、セリン、スレオニン、システイン、アスパラギン、グルタミンを含むものでもある。前述のような類似した性質を有するアミノ酸における保存的置換は、同一であるか、あるいは類似した活性を示すと期待される。
【0024】
前記GLP-1/GIP二重作用剤は、非自然発生(non-naturally occurring)のものでもある。
【0025】
前記GLP-1/GIP二重作用剤は、分離されたペプチドでもある。
【0026】
一具体例において、前記GLP-1/GIP二重作用剤は、下記一般式1で表されるアミノ酸配列を含むペプチドである:
【0027】
(一般式1)
R1-Xaa1-Aib(aminoisobutyric acid)-Glu-Gly-Thr-Phe-Xaa7-Ser-Asp-Tyr-Ser-Xaa12-Xaa13-Xaa14-Xaa15-Xaa16-Xaa17-Xaa18-Xaa19-Xaa20-Xaa21-Phe-Xaa23-Xaa24-Trp-Leu-Xaa27-Xaa28-Xaa29-Xaa30-Xaa31-Xaa32-Xaa33-Xaa34-Xaa35-Xaa36-Xaa37-Xaa38-Xaa39-Xaa40-Xaa41-Xaa42-Xaa43
【0028】
前記一般式1で、
R1は、4-イミダゾール酢酸(CA:4-imidazole acetic acid)であるか、あるいは存在せず、
Xaa1は、チロシン(Tyr,Y)、ヒスチジン(His,H)、3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸(HP:3-(4-hydroxyphenyl)propanoic acid)または2-(4-ヒドロキシフェニル)酢酸(HA:2-(4-hydroxyphenyl)acetic acid)であり、
Xaa7は、スレオニン(Thr,T)またはイソロイシン(Ile,I)であり、
Xaa12は、グルタミン酸(Glu,E)、イソロイシン(Ile,I)、リシン(Lys,K)またはアルギニン(Arg,R)であり、
Xaa13は、アラニン(Ala,A)、Aib、チロシン(Tyr,Y)またはグルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa14は、メチオニン(Met,M)またはロイシン(Leu,L)であり、
Xaa15は、アスパラギン酸(Asp,D)またはグルタミン酸(Glu,E)であり、
Xaa16は、リシン(Lys,K)、グルタミン酸(Glu,E)、アラニン(Ala,A)またはノルロイシン(Nle(norleucine))であり、
Xaa17は、グルタミン酸(Glu,E)、イソロイシン(Ile,I)、リシン(Lys,K)、アルギニン(Arg,R)またはグルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa18は、アラニン(Ala,A)、アルギニン(Arg,R)またはヒスチジン(His,H)であり、
Xaa19は、バリン(Val,V)、アラニン(Ala,A)、グルタミン(Gln,Q)、セリン(Ser,S)またはシステイン(Cys,C)であり、
Xaa20は、アルギニン(Arg,R)、リシン(Lys,K)、Aibまたはグルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa21は、グルタミン酸(Glu,E)、アスパラギン酸(Asp,D)、アラニン(Ala,A)、ロイシン(Leu,L)またはAibであり、
Xaa23は、イソロイシン(Ile,I)またはバリン(Val,V)であり、
Xaa24は、アラニン(Ala,A)、グルタミン(Gln,Q)、セリン(Ser,S)またはアスパラギン(Asn,N)であり、
Xaa27は、バリン(Val,V)、ロイシン(Leu,L)またはイソロイシン(Ile,I)であり、
Xaa28は、リシン(Lys,K)、アスパラギン酸(Asp,D)、アルギニン(Arg,R)、アスパラギン(Asn,N)、アラニン(Ala,A)またはAibであり、
Xaa29は、グリシン(Gly,G)、ヒスチジン(His,H)またはグルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa30は、グリシン(Gly,G)、ヒスチジン(His,H)、リシン(Lys,K)またはアルギニン(Arg,R)であり、
Xaa31は、プロリン(Pro,P)またはグリシン(Gly,G)であり、
Xaa32は、セリン(Ser,S)またはリシン(Lys,K)であり、
Xaa33は、セリン(Ser,S)またはリシン(Lys,K)であり、
Xaa34は、グリシン(Gly,G)、アスパラギン(Asn,N)またはセリン(Ser,S)であり、
Xaa35は、アラニン(Ala,A)、グルタミン(Gln,Q)またはアスパラギン酸(Asp,D)であり、
Xaa36は、プロリン(Pro,P)またはトリプトファン(Trp,W)であり、
Xaa37は、プロリン(Pro,P)またはリシン(Lys,K)であり、
Xaa38は、プロリン(Pro,P)またはヒスチジン(His,H)であり、
Xaa39は、セリン(Ser,S)、システイン(Cys,C)またはアスパラギン(Asn,N)であり、
Xaa40は、システイン(Cys,C)、リシン(Lys,K)、チロシン(Tyr,Y)またはイソロイシン(Ile,I)であるか、あるいは存在せず
Xaa41は、リシン(Lys,K)またはスレオニン(Thr,T)であるか、あるいは存在せず
Xaa42は、グルタミン(Gln,Q)であるか、あるいは存在せず
Xaa43は、システイン(Cys,C)であるか、あるいは存在しない。
【0029】
そのようなペプチドの例示的な種類は、配列番号1ないし44によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むものでもある。
【0030】
ただし、前記一般式1で、Xaa40ないしXaa43のうちいずれか1つのアミノ酸が存在しない場合、その後のアミノ酸配列は、存在しないのでもある。一例として、Xaa40が存在しない場合、Xaa41ないしXaa43は、存在しないのでもある。他の例として、Xaa41が存在しない場合、Xaa42ないしXaa43は、存在しないのでもある。
【0031】
他の具体例において、前記ペプチドは、下記一般式2で表されるアミノ酸配列を含むものでもある:
【0032】
(一般式2)
Xaa1-Aib(aminoisobutyric acid)-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Tyr-Ser-Xaa12-Xaa13-Leu-Xaa15-Xaa16-Xaa17-Xaa18-Xaa19-Xaa20-Xaa21-Phe-Val-Xaa24-Trp-Leu-Xaa27-Xaa28-Xaa29-Xaa30-Pro-Ser-Ser-Gly-Xaa35-Pro-Pro-Pro-Ser-Xaa40-Xaa41
【0033】
前記一般式2で、
Xaa1は、チロシン(Tyr,Y)またはヒスチジン(His,H)であり、
Xaa12は、イソロイシン(Ile,I)またはリシン(Lys,K)であり、
Xaa13は、アラニン(Ala,A)、Aibまたはチロシン(Tyr,Y)であり、
Xaa15は、アスパラギン酸(Asp,D)またはグルタミン酸(Glu,E)であり、
Xaa16は、リシン(Lys,K)またはグルタミン酸(Glu,E)であり、
Xaa17は、イソロイシン(Ile,I)、リシン(Lys,K)、アルギニン(Arg,R)またはグルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa18は、アラニン(Ala,A)、アルギニン(Arg,R)であり、
Xaa19は、アラニン(Ala,A)、グルタミン(Gln,Q)またはシステイン(Cys,C)であり、
Xaa20は、アルギニン(Arg,R)、リシン(Lys,K)、Aibまたはグルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa21は、グルタミン酸(Glu,E)、アスパラギン酸(Asp,D)、アラニン(Ala,A)またはAibであり、
Xaa24は、グルタミン(Gln,Q)またはアスパラギン(Asn,N)であり、
Xaa27は、ロイシン(Leu,L)またはイソロイシン(Ile,I)であり、
Xaa28は、アスパラギン酸(Asp,D)、アスパラギン(Asn,N)またはアラニン(Ala,A)であり、
Xaa29は、グリシン(Gly,G)またはヒスチジン(His,H)であり、
Xaa30は、グリシン(Gly,G)またはヒスチジン(His,H)であり、
Xaa35は、アラニン(Ala,A)またはグルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa40は、システイン(Cys,C)、リシン(Lys,K)またはチロシン(Tyr,Y)であり、
Xaa41は、リシン(Lys,K)であるか、あるいは存在しない。
【0034】
そのようなペプチドの例示的な種類は、配列番号14,15,16,20,36,37,38及び40によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むものでもある。
【0035】
他の具体例において、前記一般式2で、
Xaa1は、チロシン(Tyr,Y)であり、
Xaa12は、イソロイシン(Ile,I)であり、
Xaa13は、アラニン(Ala,A)またはAibであり、
Xaa15は、アスパラギン酸(Asp,D)またはグルタミン酸(Glu,E)であり、
Xaa16は、リシン(Lys,K)であり、
Xaa17は、グルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa18は、アラニン(Ala,A)であり、
Xaa19は、アラニン(Ala,A)またはグルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa20は、アルギニン(Arg,R)、Aibまたはグルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa21は、アスパラギン酸(Asp,D)またはアラニン(Ala,A)であり、
Xaa24は、グルタミン(Gln,Q)またはアスパラギン(Asn,N)であり、
Xaa27は、ロイシン(Leu,L)またはイソロイシン(Ile,I)であり、
Xaa28は、アラニン(Ala,A)であり、
Xaa29は、グリシン(Gly,G)であり、
Xaa30は、グリシン(Gly,G)であり、
Xaa35は、アラニン(Ala,A)であり、
Xaa40は、システイン(Cys,C)であり、
Xaa41は、存在しないのでもある。
【0036】
そのようなペプチドの例示的な種類は、配列番号20,36及び40によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むものでもある。
【0037】
他の具体例において、前記一般式1で、
R1は、存在せず、
Xaa1は、チロシン(Tyr,Y)であり、
Xaa7は、スレオニン(Thr,T)であり、
Xaa12は、イソロイシン(Ile,I)であり、
Xaa13は、アラニン(Ala,A)またはAibであり、
Xaa14は、ロイシン(Leu,L)であり、
Xaa15は、アスパラギン酸(Asp,D)またはグルタミン酸(Glu,E)であり、
Xaa16は、リシン(Lys,K)であり、
Xaa17は、グルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa18は、アラニン(Ala,A)であり、
Xaa19は、グルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa20は、アルギニン(Arg,R)またはグルタミン(Gln,Q)であり、
Xaa21は、アスパラギン酸(Asp,D)またはアラニン(Ala,A)であり、
Xaa23は、バリン(Val,V)であり、
Xaa24は、グルタミン(Gln,Q)またはアスパラギン(Asn,N)であり、
Xaa27は、ロイシン(Leu,L)またはイソロイシン(Ile,I)であり、
Xaa28は、アラニン(Ala,A)であり、
Xaa29は、グリシン(Gly,G)であり、
Xaa30は、グリシン(Gly,G)であり、
Xaa31は、プロリン(Pro,P)であり、
Xaa32は、セリン(Ser,S)であり、
Xaa33は、セリン(Ser,S)であり、
Xaa34は、グリシン(Gly,G)であり、
Xaa35は、アラニン(Ala,A)であり、
Xaa36は、プロリン(Pro,P)であり、
Xaa37は、プロリン(Pro,P)であり、
Xaa38は、プロリン(Pro,P)であり、
Xaa39は、セリン(Ser,S)であり、
Xaa40は、システイン(Cys,C)であり、
Xaa41ないしXaa43は、存在しないのでもある。
【0038】
他の具体例において、前記ペプチドは、配列番号1ないし44によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むものでもある。また、前記ペプチドは、配列番号1ないし44によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって必須に構成されたものであるか、あるいは前記ペプチドは、配列番号1ないし44によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって構成されたものでもある。
【0039】
他の具体例において、前記ペプチドは、配列番号14,15,16,20,36,37,38及び40によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むものでもある。また、前記ペプチドは、配列番号14,15,16,20,36,37,38及び40によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって必須に構成されたものであるか、あるいは前記ペプチドは、配列番号14,15,16,20,36,37,38及び40によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって構成されたものでもある。
【0040】
他の具体例において、前記ペプチドは、配列番号20,36及び40によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含むものでもある。また、前記ペプチドは、配列番号20,36及び40によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって必須に構成されたものであるか、あるいは配列番号20,36及び40によって構成された群のうちから選択されたいずれか1つのアミノ酸配列によって構成されたものでもある。
【0041】
本願において、「特定配列番号によってで構成されるペプチド」と記載されているとしても、当該配列番号のアミノ酸配列によってなるペプチドと同一であるか、あるいは相応する活性を有する場合であるならば、当該配列番号のアミノ酸配列先後の無意味な配列追加、または自然に生じうる突然変異、あるいはその沈黙突然変異(silent mutation)を除くものではなく、そのような配列追加あるいは突然変異を有する場合にも、本発明の範囲内に属するということが自明である。すなわち、一部配列の差があっても、ある程度レベル以上の配列同一性を示し、GLP-1受容体及びGIP受容体に対する活性を示すものであるならば、本発明の範囲に属しうる。具体的には、前記ペプチドは、配列番号1ないし44のアミノ酸配列と、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むものでもあるが、それに制限されるものではない。
【0042】
「相同性(homology)」または「同一性(identity)」とは、2つの与えられたアミノ酸配列または塩基配列と、互いに関連する程度を意味し、百分率でもっても表される。任意の2つのペプチド配列が、相同性、類似性または同一性を有するか否かということは、例えば、Pearson et al (1988) [Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85]: 2444におけるようなデフォルトパラメータを利用し、「FASTA」プログラムのような公知のコンピュータアルゴリズムを利用しても決定される。または、EMBOSSパッケージのニードルマンプログラム(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277)(バージョン5.0.0またはその後バージョン)において行われるような、ニードルマン・ウンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453)が使用されても決定される(GCGプログラムパッケージ(Devereux, J., et al, Nucleic Acids Research 12: 387 (1984), BLASTP, BLASTN, FASTA(Atschul, [S.] [F.,] [ET AL, J MOLEC BIOL 215]: 403 (1990); Guide to Huge Computers, Martin J. Bishop, [ED.,] Academic Press, San Diego,1994, 及び[CARILLO ETA/.](1988) SIAM J Applied Math 48: 1073を含む)。例えば、国立生物工学情報データベースセンターのBLASTまたはClustalWを利用し、相同性、類似性または同一性を決定することができる。
【0043】
ペプチドの相同性、類似性または同一性は、例えば、Smith and Waterman, Adv. Appl. Math (1981) 2: 482に公知されているように、例えば、Needleman et al.(1970), J Mol Biol.48: 443のようなGAPコンピュータプログラムを利用し、配列情報を比較することによっても決定される。要約すれば、GAPプログラムは、2つの配列のうちさらに短いものにおける記号の全体数でもって、類似した配列された記号(すなわち、アミノ酸)の数を除した値と定義する。GAPプログラムのためのデフォルトパラメータは、(1)二進法比較マトリックス(同一性のために1、そして非同一性のために0の値を含む)、及びSchwartz and Dayhoff, eds., Atlas Of Protein Sequence And Structure, National Biomedical Research Foundation, pp. 353-358 (1979)によって開示されているように、Gribskov et al(1986) Nucl. Acids Res. 14: 6745の加重された比較マトリックス(または、EDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックス)、2)各ギャップのための3.0のペナルティ、及び各ギャップにおける各記号のための追加0.10ペナルティ(または、ギャップ開放ペナルティ10、ギャップ延長ペナルティ0.5)、並びに(3)末端ギャップのための無ペナルティを含むものでもある。従って、本発明で使用されているものとして、用語である「相同性」または「同一性」は、配列間の関連性(relevance)を示す。
【0044】
先の具体例のうちいずれか一つによるペプチドは、分子内架橋(intramolecular bridge)を含むものでもあり、具体的には、環を含む形態でもある。前記分子内架橋は、例えば、共有結合的架橋または非共有結合的架橋でもある。
【0045】
先の具体例のうちいずれか一つによるペプチドは、ペプチド配列において、N末端から、12番アミノ酸及び16番アミノ酸、または16番アミノ酸及び20番アミノ酸は、互いに環を形成するものでもあるが、特別にそれに制限されるものではない。
【0046】
先の具体例のうちいずれか一つによるペプチドは、Xaa12及びXaa16、またはXaa16及びXaa20が、互いに環を形成するものでもあるが、特別にそれに制限されるものではない。例えば、配列番号1,12及び13で表されるペプチドは、Xaa12及びXaa16が互いに環を形成する形態でもある。他の例において、配列番号2ないし11,15、及び配列番号22ないし25で表されるペプチドは、Xaa16及びXaa20が互いに環を形成する形態でもある。
【0047】
前記環の非制限的な例として、ラクタム架橋(または、ラクタム環)を含むものでもある。そのような環は、前記ペプチド内のアミノ酸の側鎖間に形成されうるが、その例として、リシンの側鎖と、グルタミン酸の側鎖との間に、ラクタム環が形成される形態でもあるが、特別にそれに制限されるものではない。
【0048】
一具体例において、多様なペプチド製造のためのさまざまな方法の組み合わせにより、一態様による一般式1のアミノ酸配列を含むペプチドを製造することができる。
【0049】
一態様によるペプチドは、その長さにより、本分野において周知の方法、例えば、自動ペプチド合成基によって合成することができ、遺伝子操作技術によって生産することもできる。具体的には、前記ペプチドは、標準合成方法、組み換え発現システム、または任意の他の当該分野の方法によっても製造される。
【0050】
従って、一態様によるペプチドは、例えば、下記のところを含む方法を含む多数の方法によっても合成されえるが、それらに制限されるものではない:
(a)ペプチドを固体相方法または液体相方法の手段でもって、段階的または断片組み立てによって合成し、最終ペプチド生成物を分離及び精製する方法、
(b)ペプチドをコーディングする核酸作製物を宿主細胞内で発現させ、発現生成物を宿主細胞培養物から回収する方法、
(c)ペプチドをコーディングする核酸作製物の無細胞試験管内発現を行い、発現生成物を回収する方法、または
(a)、(b)及び(c)の任意の組み合わせによってペプチド断片を得て、次に、該断片を連結させてペプチドを得て、当該ペプチドを回収する方法。
【0051】
また、前記ペプチドの製造は、L型アミノ酸あるいはD型アミノ酸、及び/または非天然型アミノ酸を利用した変形、及び/または天然型配列の改質、例えば、側鎖作用基の変形、分子内共有結合、例えば、側鎖間の環形成、メチル化、アシル化、ユビキチン化、リン酸化、アミノヘキサン化、ビオチン化のように改質することによって変形することをいずれも含む。また、前記変形は、非天然型化合物への置換をいずれも含む。
【0052】
前記変形に利用される置換されたり、追加されたりするアミノ酸は、ヒトタンパク質において一般的に観察される20個のアミノ酸だけではなく、非定形アミノ酸または非自然発生アミノ酸を使用することができる。非定形アミノ酸の商業的出処には、Sigma-Aldrich、ChemPep及びGenzyme Pharmaceuticalsが含まれるものでもあるが、それらに制限されるものではない。例えば、Aib(aminoisobutyric acid)は、アセトンから、ストレッカーのアミノ酸合成によっても製造されるが、それに制限されるものではない。そのような非定形ミノ酸または非自然発生アミノ酸が含まれるペプチドと定形的なペプチド配列は、商業化されたペプチド合成社、例えば、米国のAmerican Peptide CompanyやBachem、または韓国のAnygenを介して、合成及び購入することができるが、それに制限されるものではない。
【0053】
また、前記ペプチドは、N末端及び/またはC末端が変形されていないものでもあるが、生体内のタンパク質切断酵素から保護され、安定性を上昇させるために、そのN末端及び/またはC末端などが化学的に変形されるか、有機端に保護されるか、あるいはペプチド末端などにアミノ酸が追加されて変形されたりする形態も、前記態様によるペプチドの範疇に含まれる。C末端が変形されていない場合、ペプチド末端は、自由カルボン酸を有するが、特別にそれに制限されるものではない。
【0054】
特に、化学的に合成されたペプチドの場合、N末端及びC末端が電荷を帯びているために、そのような電荷を除去するため、にN末端及び/またはC末端を変形することができる。例えば、N末端のアセチル化(acetylation)及び/またはC末端のアミド化(amidation)が可能であるが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0055】
一具体例において、前記ペプチドは、そのC末端が変形されていないか、あるいはアミド化されたものでもあるが、それらに制限されるものではない。
【0056】
前記ペプチドは、ペプチドそれ自体、その塩(例えば、前記ペプチドの薬学的に許容可能な塩)、またはその溶媒化物の形態をいずれも含む。
【0057】
前記塩の種類は、特別に制限されるものではない。ただし、個体、例えば、哺乳類に安全であって効果的な形態であることが望ましいが、特別にそれに制限されるものではない。
【0058】
また、前記ペプチドは、薬学的に許容される任意の形態でもある。
【0059】
用語「薬学的に許容可能な」とは、治療効果を示すことができるほどの十分な量であり、副作用を起こさないものを意味し、疾患の種類、患者の年齢・体重・健康・性別、患者の薬物に対する敏感度、投与経路、投与方法、投与回数、治療期間、配合、または同時使用される薬物のように、医学分野に周知の要素により、当業者により、容易に決定されうる。
【0060】
一具体例において、前記ペプチドは、その薬学的に許容可能な塩の形態でもある。前記塩は、薬学分野、例えば、糖尿病治療剤の分野において使用される通常の酸付加塩、例えば、塩酸、臭素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸または硝酸のような無機酸から誘導された塩;及び酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、酒石酸、リンゴ酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、シュウ酸またはトリフルオロ酢酸のような有機酸から誘導された塩を含む。また、前記塩は、アンモニウム、ジメチルアミン、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミンのような塩基付加塩でもある。また、前記塩は、通常の金属塩形態、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムまたはカルシウムのような金属から誘導された塩を含む。前記酸付加塩、塩基付加塩または金属塩は、通常の方法によっても製造される。薬学的に許容可能な塩、及びそれを製造する一般方法論は、関連技術分野に広く公知されている。例えば、文献[P. Stahl, et al. Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection and Use, 2nd Revised Edition (Wiley-VCH, 2011)],[S.M. Berge, et al., 「Pharmaceutical Salts」, Journal of Pharmaceutical Sciences, Vol. 66, No. 1, January 1977]を参照することができる。
【0061】
保護されたアミノ酸またはペプチドの縮合のために、ペプチド合成に有用な各種活性化試薬、特に望ましくは、トリスホスホニウム塩、テトラメチルウロニウム塩、カルボジイミドなどが使用されうる。トリスホスホニウム塩の例は、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、ブロモトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBroP)、7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyAOP)を含み、テトラメチルウロニウム塩の例は、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、2-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、2-(5-ノボラン-2,3-ジカルボキシイミド)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TNTU)、O-(N-スクシンイミジル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TSTU)を含み、カルボジイミドの例は、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCDI)、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI・HCl)などを含む。それらを利用する縮合のために、ラセミ化阻害剤[例えば、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸イミド(HONB)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン(HOOBt)、エチル2-シアノ-2-(ヒドロキシイミノ)アセテート(Oxyma)など]の添加が望ましい。縮合に使用される溶媒は、ペプチド縮合反応に有用なものであると公知されたもののうちからも適切に選択される。例えば、無水N,N-ジメチルホルムアミドまたは水含有N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンのような酸アミド;塩化メチレン、クロロホルムのようなハロゲン化された炭化水素;トリフルオロエタノール、フェノールのようなアルコール;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド;ピリジンのような3級アミン;ジオキサン、テトラヒドロフランのようなエーテル;アセトニトリル、プロピオニトリルのようなニトリル;酢酸メチル、酢酸エチルのようなエステル;それらの適切な混合物などが使用されうる。反応温度は、ペプチド結合反応に使用可能であると公知された範囲から適切に選択され、通常、約で-20℃ないし90℃の範囲から選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は、通常、1.5倍ないし6倍過剰に使用される。固相合成において、ニンヒドリン反応を利用する試験が、縮合が不十分であることを示す場合、十分な縮合は、保護基の除去なしに、縮合反応を反復することによっても行われる。反応を反復した後にも、縮合が依然として不十分である場合、未反応アミノ酸は、酸無水物、アセチルイミダゾールなどによってもアセチル化されるので、後続反応に対する影響が回避されうることになる。
【0062】
出発アミノ酸のアミノ基に係わる保護基の例は、ベンジルオキシカルボニル(Z)、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、tert-ペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4-メトキシベンジルオキシカルボニル、2-クロロベンジルオキシカルボニル(Cl-Z)、2-ブロモベンジルオキシカルボニル(Br-Z)、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2-ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、トリチルなどを含む。
【0063】
出発アミノ酸に対するカルボキシル保護基の例は、前述のC-Cアルキル基、C-C10シクロアルキル基、C-C14アルアルキル基以外に、アリール、2-アダマンチル、4-ニトロベンジル、4-メトキシベンジル、4-クロロベンジル、フェナシル及びベンジルオキシカルボニルハイドラザイド、tert-ブトキシカルボニルヒドラジド、トリチルヒドラジドなどを含む。
【0064】
セリンまたはスレオニンのヒドロキシル基は、例えば、エステル化またはエーテル化によっても保護される。エステル化に適する基の例は、アセチル基のような低級(C-C)アルカノイル基、ベンゾイル基のようなアロイル基、及び有機酸などに由来する基を含む。また、エーテル化に適する基の例は、ベンジル、テトラヒドロピラニル、tert-ブチル(But)、トリチル(Trt)などを含む。
【0065】
チロシンのフェノール性ヒドロキシル基に係わる保護基の例は、Bzl、2,6-ジクロロベンジル、2-ニトロベンジル、Br-Z、tert-ブチルなどを含む。
【0066】
ヒスチジンのイミダゾールに係わる保護基の例は、p-トルエンスルホニル(Tos)、4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル(Mtr)、ジニトロフェニル(DNP)、ベンジルオキシメチル(Bom)、tert-ブトキシメチル(Bum)、Boc、Trt、Fmocなどを含む。
【0067】
アルギニンのグアニジノ基に係わる保護基の例は、Tos、Z、4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル(Mtr)、p-メトキシベンゼンスルホニル(MBS)、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル(Pmc)、メシチレン-2-スルホニル(Mts)、2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル(Pbf)、Boc、Z、NOなどを含む。
【0068】
リシンの側鎖アミノ基に係わる保護基の例は、Z、Cl-Z、トリフルオロアセチル、Boc、Fmoc、Trt、Mtr、4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシリデニル(Dde)などを含む。
【0069】
トリプトファンのインドリルに係わる保護基の例は、ホルミル(For)、Z、Boc、Mts、Mtrなどを含む。
【0070】
アスパラギン及びグルタミンに係わる保護基の例は、Trt、キサンチル(Xan)、4,4’-ジメトキシベンズヒドリル(Mbh)、2,4,6-トリメトキシベンジル(Tmob)などを含む。
【0071】
出発物質中の活性化されたカルボキシル基の例は、対応する酸無水物、アザイド、活性エステル[アルコールとのエステル(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5-トリクロロフェノール、2,4-ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N-ヒドロキシスクシンイミド、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt))]などを含む。出発材料内の活性化されたアミノ基の例は、対応するインアミドを含む。
【0072】
保護基を除去する方法の例は、Pd-ブラックまたはPd-炭素のような触媒の存在下における水素ストリーム中の触媒還元;無水フルオロ水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンソルホン酸、トリフルオロ酢酸(TFA)、トリメチルシリルブロミド(TMSBr)、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、テトラフルオロホウ酸、トリス(トリフルオロ)ホウ酸、三臭化ホウ素、またはその混合物溶液を利用した酸処理;ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどを利用した塩基処理;及び液体アンモニア内におけるナトリウムによる還元などを含む。前述の酸処理による除去反応は、一般的に、-20℃ないし40℃の温度で行われ、該酸処理は、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール及びパラクレゾール;ジメチルスルフィド、1,4-ブタンジチオール、1,2-エタンジチオール、トリイソプロピルシランのような陽イオンスカベンジャー(cation scavenger)を添加することにより、効率的に行われる。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として使用される2,4-ジニトロフェニル基は、チオフェノール処理によって除去され、トリプトファンのインドール保護基として使用されるポルミル基は、1,2-エタンジチオール、1,4-ブタンジチオールなどの存在中において、酸処理によるだけではなく、希釈水酸化ナトリウム、希釈アンモニアなどによるアルカリ処理による脱保護によって除去される。
【0073】
出発物質と保護基との反応に関与することがあってはならない作用基の保護、保護基の除去、反応に関与する作用基の活性化などは、公知された保護基、及び公知された手段から適切に選択されうる。
【0074】
本明細書で言及されたペプチドにつき、左側端部が通常のペプチドマーキングに沿ってN末端(アミノ末端)であり、右側端部がC末端(カルボキシル末端)である。ペプチドのC末端は、アミド(-CONH)、カルボキシル基(-COOH)、カルボキシレート(-COO-)、アルキルアミド(-CONHR’、ここで、R’は、アルキルである)及びエステル(-COOR’、ここで、R’は、アルキルまたはアリールである)のうちいずれか一つでもある。
【0075】
ペプチドのアミドを製造する方法において、それは、アミド合成のために樹脂を利用する固相合成によって形成されるか、あるいはカボキシ末端アミノ酸のα-カルボキシル基がアミド化され、ペプチド鎖がアミノ基側に向けて目的とする鎖長に延長され、その後、ペプチド鎖だけのN末端α-アミノ基に係わる保護基が除去されたペプチド、及びC末端カルボキシル基に係わる保護基だけがペプチド鎖から除去されたペプチドが製造され、それら2つのペプチドは、前述の混合された溶媒中で縮合される。縮合反応に係わる詳細につき、前述のようなところが適用される。縮合によって得られた保護されたペプチドが精製された後、全ての保護基が、前述の方法によって除去され、目的とするペプチドを得ることができる。このペプチドを、主な分画を精製し、かつ凍結乾燥の各種公開的に公知された手段を利用して精製することにより、ペプチドが目的とするアミドが製造されうる。
【0076】
一具体例において、前記ペプチドは、その溶媒化物の形態でもある。「溶媒化物」とは、前記ペプチドまたはその塩が、溶媒分子と複合体を形成したものを意味する。
【0077】
他の態様は、前記GLP-1/GIP二重作用剤をコーディングするポリヌクレオチドを提供する。
【0078】
前記GLP-1/GIP二重作用剤については、前述の通りである。
【0079】
前記ポリヌクレオチドは、分離されたポリヌクレオチドでもある。
【0080】
前記ポリヌクレオチドは、標的タンパク質をコーディングするDNA及びRNAを含む。
【0081】
前記ポリヌクレオチドは、変形されうる。前記変形は、ヌクレオチドの追加、欠失、または非保存的置換または保存的置換を含む。
【0082】
前記ポリヌクレオチドは、当該配列と、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列によって構成されるものでもある。
【0083】
他の態様は、前記ポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0084】
用語「ベクター(vector)」とは、宿主細胞において、目的遺伝子を発現させるための手段を意味する。例えば、プラスミドベクター、コスミド(cosmid)ベクター、バクテリオファージ(bacteriophage)ベクター、アデノウイルス(adenovirus)ベクター、レトロウイルス(retrovirus)ベクター及びアデノ関連ウイルスベクターのようなウイルスベクターを含む。それら組み換えベクターとしても使用されるベクターは、当業界で往々に使用されるプラスミド(plasmid)(例えば、pSC101、pGV1106、pACYC177、ColE1、pKT230、pME290、pBR322、pUC8/9、pUC6、pBD9、pHC79、pIJ61、pLAFR1、pHV14、pGEXシリーズ、pETシリーズ、pUC19及びp426GPDなど)、ファージ(例えば、λgt4λB、λ-Charon、λΔz1及びM13など)またはウイルス(例えば、CMV、SV40など)を操作しても作製されるが、それらに制限されるものではない。プラスミドが現在ベクターの最も一般的に使用される形態であるので、本明細書において、「プラスミド」及び「ベクター」は、折々相互交換的に使用される。
【0085】
前述の組み換えベクターにおいて、GLP-1/GIP二重作用剤をコーディングするポリヌクレオチドは、プローモーター(promoter)に作動可能にも連結される。用語「作動可能に連結」されているというのは、目的タンパク質を暗号化するポリヌクレオチドの転写を開始及び媒介させるプローモーターの配列と、前記ポリヌクレオチド配列とが機能的に連結されていることを意味する。
【0086】
前記組み換えベクターは、典型的に、クローニングのためのベクターまたは発現のためのベクターとしても構築される。前記発現用ベクターは、当業界において、植物、動物または微生物において、外来のタンパク質を発現するのに使用される通常のものを使用することができる。前記組み換えベクターは、当業界に公知された多様な方法を介しても構築される。
【0087】
前記組み換えベクターは、原核細胞または真核細胞を宿主にしても構築される。例えば、使用されるベクターが発現ベクターであり、原核細胞を宿主にする場合、転写を進行させうる強力なプローモーター(例えば、pLλプローモーター、trpプローモーター、lacプローモーター、tacプローモーター、T7プローモーターなど)、解読開始のためのリボソーム結合サイト、及び転写/解読終結配列を含むことが一般的である。真核細胞を宿主にする場合、ベクターに含まれる真核細胞で作動する複製原点は、f1複製原点、SV40複製原点、pMB1複製原点、アデノ複製原点、AAV複製原点、CMV複製原点及びBBV複製原点などを含むが、それらに制限されるものではない。また、哺乳動物細胞のゲノムに由来するプローモーター(例えば、メタロチオニンプローモーター)、または哺乳動物ウイルスに由来するプローモーター(例えば、アデノウイルス後期プローモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプローモーター、SV40プローモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プローモーター、及びHSVのtkプローモーター)が利用されうるが、一般的に、転写終結配列として、ポリアデニル化配列を有する。
【0088】
他の態様は、前記ポリヌクレオチドまたはそのベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0089】
前記宿主細胞は、分離された細胞でもある。
【0090】
組み換えベクターに形質転換されうる宿主細胞としては、通常、DNAの導入効率と、導入されたDNAの発現効率とが高い宿主が使用される。例えば、大腸菌、シュードモナス、バシラス、ストレプトマイセス、真菌、酵母のような周知の真核宿主及び原核宿主、スポドプテラ・フルギペルダ(SF9)のような昆虫細胞、CHO、COS1、COS7、BSC1、BSC40、BMT10のような動物細胞などが使用されうるが、それらに制限されるものではない。
【0091】
ポリヌクレオチド、またはそれを含む組み換えベクターの宿主細胞内への挿入は、当業界に広く知られた方法を使用することができる。その運搬方法は、例えば、宿主細胞が原核細胞である場合、塩化カルシウム(CaCl)方法または電気穿孔法などを使用することができ、宿主細胞が真核細胞である場合、微細注入法、酢酸カルシウム沈澱法、電気穿孔法、リポソーム媒介形質感染法及び遺伝子ボムバードメントなどを使用することができるが、それらに制限されるものではない。
【0092】
前記ポリヌクレオチドは、自主的に発現されるのに必要な全ての要素を含む遺伝子構造体である発現カセット(expression cassette)の形態で宿主細胞に導入されうる。前記発現カセットは、通常、前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されているプローモーター、転写終結信号、リボソーム結合部位、及び翻訳終結信号を含むものでもある。前記発現カセットは、自体複製が可能な発現ベクター形態でもある。また、前記ポリヌクレオチドは、それ自体の形態で宿主細胞に導入され、該宿主細胞において、発現に必要な配列と作動可能に連結されているものでもあるが、それに限定されるものではない。
【0093】
他の態様は、前記GLP-1/GIP二重作用剤と、生体内半減期を増加させる生体適合性物質とが結合された結合体を提供する。
【0094】
前記GLP-1/GIP二重作用剤については、前述の通りである。
【0095】
前記生体適合性物質は、キャリア(carrier)とも混用される。
【0096】
前記結合体は、分離された結合体でもある。
【0097】
前記結合体は、天然型リガンド(すなわち、天然型GLP-1及び天然型GIP)と同等であるか、あるいはそれ以上の活性を示すと共に、キャリアが結合されていない天然型リガンドまたはその誘導体に比べ、増大された効力の持続性を示しうる。従って、前記結合体は、持続型結合体でもある。用語「持続型結合体」とは、生体適合性物質が結合されていない天然型GIPまたはGIP誘導体に比べ、効力の持続性が増大された結合体を意味する。従って、前記結合体は「持続型GLP-1/GIP二重作用剤結合体」、「持続型GLP-1/GIP二重作用剤」、「持続型GLP-1/GIP結合体」、「二重作用剤の持続型結合体」、「二重作用剤結合体」、「持続型結合体」、「結合体」と相互交換的に使用されうる。そのような結合体は、前述の形態だけではなく、生分解性ナノパーティクルに封入された形態などをいずれも含む。
【0098】
前記結合体は、非自然発生(non-naturally occurring)のものでもある。
【0099】
前記生体適合性物質は、前記GLP-1/GIP二重作用剤と、共有化学結合または非共有化学結合によって互いに結合されるものでもあり、共有化学結合、非共有化学結合、またはそれらの組み合わせにより、リンカ(L:linker)を介して互いに結合されるものでもある。GLP-1/GIP二重作用剤内の1以上のアミノ酸側鎖は、生体内において、可溶性及び/または半減期を増加させ、かつ/あるいは生体利用率を上昇させるために、そのような生体適合性物質にも接合される。そのような変形は、また治療学的タンパク質及びペプチドの消去(clearance)を低減させることができる。前述の生体適合性物質は、水溶性(両親媒性または親水性)、及び/または無毒性、及び/または薬学的に許容可能なものでもある。
【0100】
前記生体適合性物質は、高分子重合体、脂肪酸、コレステロール、アルブミン及びその断片、アルブミン結合物質、特定アミノ酸配列の繰り返し単位の重合体、抗体、抗体断片、FcRn結合物質、生体内結合組織、ヌクレオチド、フィブロネクチン、トランスフェリン(transferrin)、糖類(saccharide)、ヘパリン、並びにエラスチンによって構成された群のうちから選択されるものでもあるが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0101】
前記高分子重合体の例として、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール・プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖類、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン、ヒアルロン酸、オリゴヌクレオチド、及びそれらの組み合わせによって構成された群のうちから選択される高分子重合体を有することができ、前記多糖類としては、デキストランが含まれるものでもあるが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0102】
前記ポリエチレングリコールは、エチレングリコール同種重合体、PEG共重合体、またはモノメチル置換されたPEG重合体(mPEG)の形態をいずれも包括する用語であるが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0103】
前記脂肪酸は、生体内アルブミンと結合力を有するものでもあるが、特別にそれに制限されるものではない。
【0104】
前記生体適合性物質は、ポリリシン、ポリアスパラギン酸及びポリグルタミン酸のようなポリアミノ酸を含むが、それらに制限されるものではない。
【0105】
前記エラスチンの場合、水溶性前駆体であるヒトトロポエラスチン(tropoelastin)でもあり、それらのうち、一部配列あるいは一部繰り返し単位の重合体でもあり、例えば、エラスチン類似ポリペプチドの場合をいずれも含むが、特別にそれに制限されるものではない。
【0106】
一具体例において、前記生体適合性物質は、FcRn結合物質でもある。具体的には、前記FcRn結合物質は、免疫グロブリンFc領域でもあり、さらに具体的には、IgGFc領域、さらに具体的には、糖鎖化されていないIgG4 Fc領域でもあるが、特別にそれらに制限されるものではない。
【0107】
「免疫グロブリンFc領域」とは、免疫グロブリンの重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを除いた、重鎖不変領域2(CH2)部分及び/または重鎖不変領域3(CH3)部分を含む部位を意味する。前記免疫グロブリンFc領域は、一態様による結合体のモイエティをなす一構成でもある。
【0108】
そのような免疫グロブリンFc領域は、重鎖不変領域にヒンジ(hinge)部分を含むものでもあるが、それに制限されるものではない。
【0109】
一具体例において、免疫グロブリンFc領域は、N末端に、特定ヒンジ配列を含むものでもある。
【0110】
用語「ヒンジ配列」とは、重鎖に位置し、内部二硫化結合(inter disulfide bond)を介し、免疫グロブリンFc断片の二量体を形成する部位を意味する。
【0111】
一具体例において、前記ヒンジ配列は、下記のアミノ酸配列を有するヒンジ配列のうち一部が欠失され、1つのシステイン残基のみを有するように変異されたものでもあるが、それに制限されるものではない:
【0112】
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号45)。
【0113】
前記ヒンジ配列は、配列番号45のヒンジ配列において、8番目または11番目のシステイン残基が欠失され、1つのシステイン残基のみを含むものでもある。一具体例によるヒンジ配列は、1つのシステイン残基のみを含む、3個ないし12個のアミノ酸によって構成されたものでもあるが、それに制限されるものではない。さらに具体的には、一具体例によるヒンジ配列は、次のような配列を有しうる:Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号46)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Pro(配列番号47)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser(配列番号48)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Pro(配列番号49)、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser(配列番号50)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号51)、Glu-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号52)、Glu-Ser-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号53)、Glu-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号54)、Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号55)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号56)、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号57)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号58)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号59)、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro(配列番号60)、Glu-Ser-Lys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号61)、Glu-Ser-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号62)、Glu-Pro-Ser-Cys(配列番号63)、Ser-Cys-Pro(配列番号64)。
さらに具体的には、前記ヒンジ配列は、配列番号55(Pro-Ser-Cys-Pro)または配列番号64(Ser-Cys-Pro)のアミノ酸配列を含むものでもあるが、それらに制限されるものではない。
【0114】
一具体例による免疫グロブリンFc領域は、ヒンジ配列の存在として、免疫グロブリンFc鎖の2分子が二量体を形成した形態でもある。また、一具体例による化学式1の結合体は、リンカの一末端が、二量体の免疫グロブリンFc領域の1つの鎖に連結された形態でもあるが、それに制限されるものではない。
【0115】
用語「N末端」とは、タンパク質またはポリペプチドのアミノ末端を意味するものであり、該アミノ末端の最末端、または最末端から、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個以上のアミノ酸まで含むものでもある。本発明の免疫グロブリンFc断片は、ヒンジ配列をN末端に含むものでもあるが、それに制限されるものではない。
【0116】
また、前記免疫グロブリンFc領域は、天然型と、実質的に同等であるか、あるいは向上された効果を有する限り、免疫グロブリンの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のみを除き、一部または全体の重鎖不変領域1(CH1)及び/または軽鎖不変領域1(CL1)を含む拡張されたFc領域でもある。また、CH2及び/またはCH3に該当する相当に長い一部アミノ酸配列が除去された領域でもある。
【0117】
例えば、前記免疫グロブリンFc領域は、(a)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン、(b)CH1ドメイン及びCH2ドメイン、(c)CH1ドメイン及びCH3ドメイン、(d)CH2ドメイン及びCH3ドメイン、(e)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメインのうち1個または2個以上のドメインと、免疫グロブリンヒンジ領域またはヒンジ領域の一部との組み合わせ、並びに(f)重鎖不変領域各ドメインと軽鎖不変領域との二量体によって構成された群のうちからも選択されるが、それらに制限されるものではない。
【0118】
前記免疫グロブリンFc領域は、二合体形態(dimeric form)でもあり、二合体形態の1つのFc領域に、GLP-1/GIP二重作用剤1分子が共有結合的に連結され、このとき、前記免疫グロブリンFcとGLP-1/GIP二重作用剤は、非ペプチド性重合体によって互いに連結されうる。一方、二合体形態の1つのFc領域に、GLP-1/GIP二重作用剤2分子が対称的に結合することも可能である。このとき、前記免疫グロブリンFcとGLP-1/GIP二重作用剤は、非ペプチド性リンカによっても互いに連結される。しかしながら、前述の例に制限されるものではない。
【0119】
また、前記免疫グロブリンFc領域は、天然型アミノ酸配列だけではなく、その配列誘導体を含む。アミノ酸配列誘導体とは、天然アミノ酸配列のうち1以上のアミノ酸残基が、欠失、挿入、非保存的置換または保存的置換、またはそれらの組み合わせによって異なる配列を有するものを意味する。
【0120】
例えば、IgGFcの場合、結合に重要であると知られた214番ないし238番、297番ないし299番、318番ないし322番、または327番ないし331番のアミノ酸残基が、変形のために適切な部位としても利用される。また、二硫化結合を形成することができる部位が除去されるか、天然型Fcから、N末端のいくつかのアミノ酸が除去されるか、あるいは天然型FcのN末端に、メチオニン残基が付加されうるというように、多様な種類の誘導体が可能である。また、エフェクタ機能をなくすために、補体結合部位、例えば、C1q結合部位が除去されもし、ADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)部位が除去されもする。そのような免疫グロブリンFc領域の配列誘導体を製造する技術は、国際特許公開第WO97/34631号、国際特許公開第96/32478号などに開示されている。
【0121】
分子の活性を全体的に変更させないタンパク質及びペプチドにおけるアミノ酸交換は、当該分野に公知されている(H. Neurath、R. L. Hill、The Proteins、Academic Press、New York、1979)。最も一般的に起こる交換は、アミノ酸残基Ala/Ser,Val/Ile,Asp/Glu,Thr/Ser,Ala/Gly,Ala/Thr,Ser/Asn,Ala/Val,Ser/Gly,Thy/Phe,Ala/Pro,Lys/Arg,Asp/Asn,Leu/Ile,Leu/Val,Ala/Glu,Asp/Gly間の交換である。場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、糖化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)及びアミド化(amidation)などによっても改変(modification)されえる。
【0122】
前述のFc誘導体は、前記Fc領域と同等な生物学的活性を示し、Fc領域の列、pHなどに係わる構造的安定性を増大させたものでもある。
【0123】
また、そのようなFc領域は、ヒト、牛、山羊、豚、マウス、ウサギ、ハムスター、ラットまたはギニアピッグのような動物の生体内から分離された天然型からも得られ、形質転換された動物細胞または微生物から得られた組み換え型またはその誘導体でもある。ここで、天然型から獲得する方法は、全体免疫グロブリンを、ヒトまたは動物の生体から分離した後、タンパク質分解酵素を処理して獲得する方法でもある。パパインを処理する場合には、Fab及びFcから切断し、ペプシンを処理する場合には、pF’c及びF(ab)2から切断する。それをサイズ排除クロマトグラフィ(size-exclusion chromatography)などを利用し、FcまたはpF’cを分離することができる。さらに具体的な実施例においては、ヒト由来のFc領域を微生物から得た組み換え型免疫グロブリンFc領域である。
【0124】
また、免疫グロブリンFc領域は、天然型糖鎖、天然型に比べて増大された糖鎖、天然型に比べて低減された糖鎖、または糖鎖が除去された形態でもある。そのような免疫グロブリンFc糖鎖の増減または除去には、化学的方法、酵素学的方法、及び微生物を利用した遺伝工学的方法のような一般的な方法が利用されうる。ここで、Fcから糖鎖が除去された免疫グロブリンFc領域は、補体(c1q)との結合力が顕著に低下され、抗体依存性細胞毒性または補体依存性細胞毒性が低減または除去されるので、生体内において、不要な免疫反応を誘発しない。そのような点において、薬物のキャリアとしての本来の目的にさらに符合する形態は、糖鎖が除去されるか、あるいは糖鎖化されていない免疫グロブリンFc領域であると言うことができる。
【0125】
「糖鎖の除去(deglycosylation)」とは、酵素から党を除去したFc領域を言い、非糖鎖化(aglycosylation)は、原核動物、さらに具体的な実施例においては、大腸菌で生産され、糖鎖化されていないFc領域を意味する。
【0126】
また、免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgMに由来するか、あるいはそれらの組み合わせ(combination)、またはそれらの混成(hybrid)によるFc領域でもある。さらに具体的な実施例においては、ヒト血液に最も豊富なIgGまたはIgMに由来するものであり、一層具体的な実施例においては、リガンド結合タンパク質の半減期を向上させると公知されたIgG由来である。さらに一層具体的な実施例において、前記免疫グロブリンFc領域は、IgG4 Fc領域であり、最も具体的な実施例において、前記免疫グロブリンFc領域は、ヒトIgG4由来の糖鎖化されていないFc領域であるが、それらに制限されるものではない。
【0127】
「組み合わせ(combination)」とは、二量体または多量体を形成するとき、同一起源の一本鎖免疫グロブリンFc領域を暗号化するポリペプチドが、異なる起源の一本鎖ポリペプチドとの結合を形成することを意味する。すなわち、IgGFc、IgAFc、IgMFc、IgDFc及びIgEのFc断片によってなるグループから選択された2個以上の断片から、二量体または多量体の製造が可能である。
【0128】
前記GLP-1/GIP二重作用剤は、リンカを介し、生体適合性物質と連結されうる。
【0129】
前記リンカは、ペプチド性リンカまたは非ペプチド性リンカでもある。
【0130】
前記リンカがペプチド性リンカであるとき、1個以上のアミノ酸を含むものでもあり、例えば、1個から1,000個のアミノ酸を含むものでもあるが、特別にそれに制限されるものではない。前記ペプチド性リンカは、Gly,Asn及びSer残基を含むものでもあり、Thr及びAlaのような中性アミノ酸も含まれるものでもある。前記生体適合性物質とGLP-1/GIP二重作用剤とを連結するために、公知の多様なペプチドリンカが使用されうる。また、機能的一部分間の適切な分離を達成するか、あるいは必須な内部モイエティ(inter-moiety)の相互作用を維持するためのリンカの最適化を考慮し、コピー数「n」を調節することができる。当該技術分野において、他の可撓性リンカが知られているが、例えば、水溶性を向上させるために、極性アミノ酸残基を追加するだけではなく、柔軟性を維持するために、T及びAのようなアミノ酸残基を追加させたGリンカ及びSリンカがあり得る。従って、一具体例において、前記リンカは、G,S及び/またはT残基を含む柔軟性リンカでもある。前記リンカは、(GpSs)n及び(SpGs)nから選択される一般式を有することができ、その場合、独立的して、pは、1ないし10の整数であり、s=0ないし10の0または整数であり、p+sは、20以下の整数であり、かつnは、1ないし20の整数である。さらに具体的には、該リンカの例は、(GGGGS)n、(SGGGG)n、(SRSSG)n、(SGSSC)n、(GKSSGSGSESKS)n、(RPPPPC)n、(SSPPPPC)n、(GSTSGSGKSSEGKG)n、(GSTSGSGKSSEGSGSTKG)n、(GSTSGSGKPGSGEGSTKG)nまたは(EGKSSGSGSESKEF)nであり、前記nは、1ないし20、または1ないし10の整数である。
【0131】
前記「非ペプチド性リンカ」は、繰り返し単位が2個以上結合された生体適合性重合体を含む。前記繰り返し単位は、ペプチド結合ではない任意の共有結合を介して互いに連結される。前記非ペプチド性リンカは、前記結合体のモイエティをなす1つの構成でもある。
【0132】
前記「非ペプチド性リンカ」は、「非ペプチド性重合体」と混用されて使用されうる。
【0133】
一具体例において、前記結合体は、両末端に、生体適合性物質、具体的には、免疫グロブリンFc領域及びGLP-1/GIP二重作用剤と結合されうる反応基を含む非ペプチド性リンカを介し、該生体適合性物質と該GLP-1/GIP二重作用剤とが互いに共有結合的に連結されたものでもある。
【0134】
具体的には、前記非ペプチド性リンカは、脂肪酸、糖類(saccharide)、高分子重合体、低分子化合物、ヌクレオチド、及びそれらの組み合わせによって構成された群のうちから選択されるものでもある。
【0135】
特に、以下のところに制限されるものではないが、 前記非ペプチド性リンカは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール・プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖類、ポリビニルエチルエーテル、PLA(polylactic acid)及びPLGA(polylactic-glycolic acid)のような生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸、オリゴヌクレオチド、及びそれらの組み合わせによって構成された群のうちから選択されるものでもある。前記多糖類は、デキストランでもあるが、それに制限されるものではない。
【0136】
さらに具体的な実施例において、前記非ペプチド性重合体は、ポリエチレングリコールでもあるが、それに制限されるものではない。従って、前記リンカは、エチレングリコール繰り返し単位を含むものでもある。また、当該分野にすでに知られたそれら誘導体、及び当該分野の技術レベルで容易に製造することができる誘導体も、本発明の範囲に含まれる。
【0137】
前記非ペプチド性リンカは、生体内タンパク質分解酵素に抵抗性ある重合体であるならば、制限なしに使用されうる。非ペプチド性重合体の化学式量は、1ないし1,000kDa範囲、具体的には、1ないし100kDa範囲、さらに具体的には、1ないし20kDa範囲であるが、それらに制限されるものではない。また、前記非ペプチド性リンカは、一種類の重合体だけではなく、異なる種類の重合体の組み合わせも使用される。一具体例において、前記エチレングリコール繰り返し単位部分の化学式量は、1ないし100kDa範囲、さらに具体的には、1ないし20kDa範囲にあるものでもある。
【0138】
一具体例において、前記非ペプチド性リンカの両末端は、それぞれ生体適合性物質、例えば、免疫グロブリンFc領域のアミン基またはチオール基、及びGLP-1/GIP二重作用剤のアミン基またはチオール基に結合することができる。
【0139】
具体的には、前記非ペプチド性重合体は、両末端に、それぞれ生体適合性物質(例えば、免疫グロブリンFc領域)及びGLP-1/GIP二重作用剤と結合されうる反応基、具体的には、GLP-1/GIP二重作用剤、あるいは生体適合性物質(例えば、免疫グロブリンFc領域)のN末端またはリシンに位置したアミン基、またはシステインのチオール基と結合されうる反応基を含むものでもあるが、それらに制限されるものではない。
【0140】
また、生体適合性物質、例えば、免疫グロブリンFc領域及びGLP-1/GIP二重作用剤と結合されうる、前記非ペプチド性重合体の反応基は、アルデヒド基、マレイミド基及びスクシンイミド誘導体によって構成された群のうちからも選択されるが、それらに制限されるものではない。前述のところにおいて、アルデヒド基として、プロピオンアルデヒド基またはブチルアルデヒド基を例として挙げることができるが、それらに制限されるものではない。前述のところにおいて、スクシンイミド誘導体としては、スクシンイミジルバレレート、スクシンイミジルメチルブタノエート、スクシンイミジルメチルプロピオネート、スクシンイミジルブタノエート、スクシンイミジルプロピオネート、N-ヒドロキシスクシンイミド、ヒドロキシスクシンイミジル、スクシンイミジルカルボキシメチルまたはスクシンイミジルカーボネートが利用されうるが、それらに制限されるものではない。
【0141】
また、アルデヒド結合による還元性アルキル化によって生成された最終産物は、アミド結合によって連結されたものよりもはるかに安定している。アルデヒド反応基は、低いpHにおいて、N末端に選択的に反応し、高いpH、例えば、pH9.0条件においては、リシン残基と共有結合を形成することができる。
【0142】
また、前記非ペプチド性リンカの両末端の反応基は、互いに同一であるか、あるいは互いに異なりうる、例えば、一末端には、マレイミド基を、他末端には、アルデヒド基、プロピオンアルデヒド基またはブチルアルデヒド基を有しうる。しかし、非ペプチド性リンカの各末端に、生体適合性物質、具体的には、免疫グロブリンFc領域とGLP-1/GIP二重作用剤とが結合されうるならば、特にそれに制限されるものではない。例えば、前記非ペプチド性リンカの一末端には、反応基としてマレイミド基を含み、他末端には、アルデヒド基、プロピオンアルデヒド基またはブチルアルデヒド基などを含むものでもある。
【0143】
両末端に、ヒドロキシ反応基を有するポリエチレングリコールを、非ペプチド性重合体として利用する場合には、公知の化学反応により、前記ヒドロキシ基を、前記多様な反応基で活性化するか、あるいは商業的に入手可能な変形された反応基を有するポリエチレングリコールを利用し、前記持続型結合体を製造することができる。
【0144】
一具体例において、前記非ペプチド性重合体は、GLP-1/GIP二重作用剤のシステイン残基、さらに具体的には、システインの-SH基に連結されるものでもあるが、それに制限されるものではない。
【0145】
もしマレイミド-PEG-アルデヒドを使用する場合、マレイミド基は、GLP-1/GIP二重作用剤の-SHと、チオエーテル(thioether)結合でもって連結され、アルデヒド基は、生体適合性物質、具体的には、免疫グロブリンFcの-NHと、還元的アルキル化反応を介しても連結されるが、それらに制限されるものではなく、それは1つの一例に該当する。
【0146】
また、前記結合体において、非ペプチド性重合体の反応基が、免疫グロブリンFc領域のN末端に位置した-NH2連結されたものでもあるが、それは、一例に該当する。
【0147】
従って、前記一態様による結合体は、下記化学式1で表されうる:
【0148】
【化1】
【0149】
ただし、このとき、Xは、GLP-1/GIP二重作用剤であり、
Lは、リンカであり、
Fは、Xの生体内半減期を増大させる生体適合性物質であり、
-は、XとLとの結合連結、LとFとの結合連結を示す。
【0150】
前記化学式1で、GLP-1/GIP二重作用剤、リンカ及び生体適合性物質については、前述の通りである。
【0151】
前記化学式1で、Lは、Laでもあり、ここで、aは、0または自然数であり、ただし、aが2以上であるとき、それぞれのLは、互いに独立してもいる。
【0152】
具体的には、前記リンカは、下記化学式2で表されるポリエチレングリコール(PEG)でもあるが、それに制限されるものではない:
【0153】
【化2】
【0154】
ここで、n=10ないし2,400、n=10ないし480、またはn=50ないし250であるが、それらに制限されるものではない。
【0155】
前記持続型結合体において、PEGモイエティは、-(CHCHO)-構造だけではなく、連結要素とその-(CHCHO)-との間に介在する酸素原子も含むものでもあるが、それに制限されるものではない。
【0156】
前記ポリエチレングリコールは、エチレングリコール同種重合体、PEG共重合体、またはモノメチル置換されたPEG重合体(mPEG)の形態をいずれも包括する用語であるが、特にそれらに制限されるものではない。
【0157】
一具体例において、前記-は、XとLとの共有結合連結、LとFとの共有結合連結を示すことができる。
【0158】
前記GLP-1/GIP二重作用剤またはその持続型結合体は、正常マウスにおいて血糖調節能を有し、糖尿モデルラットにおいて、血糖低減効力及びインシュリン抵抗性改善効果を示すので、糖尿病(diabetes mellitus)の予防または治療の用途に使用されうる。
【0159】
他の態様は、前記GLP-1/GIP二重作用剤、その薬学的に許容可能な塩またはその溶媒化物、あるいは前記結合体を含む、糖尿病の予防用または治療用の薬学的組成物を提供する。
【0160】
前記GLP-1/GIP二重作用剤、その薬学的に許容可能な塩またはその溶媒化物、あるいは前記結合体については、前述の通りである。
【0161】
用語「予防」とは、前記組成物の投与により、疾病の発病を抑制または遅延させる全ての行為を意味する。
【0162】
用語「治療」とは、前記組成物の投与により、疾病の症状が好転するか、あるいは望ましくなる全ての行為を意味する。
【0163】
前記「糖尿病(diabetes mellitus)」とは、インシュリンの分泌量が不足するか、あるいは正常な機能がなされないというような代謝疾患の一種であり、血中ブドウ糖濃度が高くなる高血糖を特徴にし、該高血糖により、さまざまな症状及び徴候を起こし、尿からブドウ糖を排出することになる。糖尿病は、第1型と第2型とに区分されるが、第1型糖尿病は、以前、「小児糖尿病」と呼ばれ、インシュリンを全く生産することができないことが原因になって生じる疾患である。インシュリンが相対的に不足する第2型糖尿病は、インシュリン抵抗性(insulin resistance)(血糖を低くするインシュリン機能が下がり、細胞がブドウ糖を効果的に燃焼することができないもの)を特徴とする。第2型糖尿病は、食生活の西欧化による高熱量、高脂肪、高タンパクのメニュー、運動不足、ストレスのような環境的な要因が大きく作用するように見られるが、それ以外に、特定遺伝子の欠陥によっても、糖尿病が生じし、膵臓手術、感染、薬剤によっても生じうる。
【0164】
一具体例において、前記糖尿病は、第2型糖尿病でもある。
【0165】
前記GLP-1/GIP二重作用剤またはその持続型結合体は、正常マウスにおいて血糖調節能を示し、糖尿モデルラットにおいて、血糖低減、糖化血色素数値低減、及びインシュリン抵抗性改善効力を示しているので、糖尿病だけではなく、糖尿合併症、またはインシュリン抵抗性、及び糖尿病と関連する他の疾病の予防または治療の用途としても使用することができる。
【0166】
従って、代案として、前記薬学的組成物は、糖尿合併症の予防用または治療用の薬学的組成物でもある。前記「糖尿合併症」は、長期間、高血糖状態が維持されながら、身体において伴われるさまざまな病的症状を意味するものであり、例えば、網膜病症、腎機能障害、神経病症、脳卒中、動脈硬化症、脳梗塞、脳血栓、心筋梗塞症、高血圧、腎臓・心臓疾患や糖尿性足部潰瘍、そして心血関係疾患であるが、それらに限定されるものではない。高血糖状態が長期間維持されれば、前述の網膜病症、腎機能障害、神経病症、脳卒中、動脈硬化症、脳梗塞、脳血栓、心筋梗塞症、高血圧、腎臓・心臓疾患や糖尿性足部潰瘍、そして心血関係疾患の危険度が高くなるので、そのような合併症を予防するためには、効果的な血糖管理が必須である。
【0167】
代案として、前記薬学的組成物は、代謝症侯群の予防用または治療用の薬学的組成物でもある。前記代謝症侯群は、インシュリン抵抗性、及び糖尿病と関連する代謝症侯群でもある。前記代謝症侯群は、インシュリン抵抗性、及び糖尿病と関連する異常脂質血症、肥満、及び/または肝脂肪症などを含むものでもある。
【0168】
前記薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含むものでもある。薬学的に許容される担体は、経口投与時には、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素及び香料などを使用することができ、注射剤の場合には、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤及び安定化剤などを混合して使用することができ、局所投与用の場合には、基剤、賦形剤、潤滑剤及び保存剤などを使用することができる。
【0169】
一具体例において、前記薬学的組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含むものでもある。
【0170】
前記薬学的組成物の剤形は、前述のような薬学的に許容可能な担体と混合しても多様に製造される。例えば、経口投与時には、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ及びウェーハなどの形態に製造することができ、注射剤の場合には、単位投薬アンプルまたは多数回投薬形態に製造することができる。それ以外にも、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル及び徐放型製剤などに剤形化することができる。
【0171】
一方、製剤化に適する担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、澱粉、アカシア、アルジネート、ゼラチン、酢酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウムまたは鉱物油などが使用されうる。また、充填剤、抗凝個剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び防腐剤などをさらに含むものでもある。
【0172】
前記薬学的組成物は、糖尿病、糖尿合併症または代謝症侯群を治療するための1以上の他の製剤をさらに含むものでもある。前記製剤は、公知の物質を使用することができる。
【0173】
前記薬学的組成物の投与量と回数は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢・性別及び体重、疾患の重症度のようなさまざまな関連因子と共に、活性成分である薬物の種類によって決定される。
【0174】
前記薬学的組成物は、生体内持続性及び力価にすぐれるので、投与の回数及び頻度を顕著に低減させることができる。
【0175】
他の態様は、有効量の前記GLP-1/GIP二重作用剤、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、あるいは前記結合体または前記薬学的組成物を、それを必要とする個体に投与する段階を含む、糖尿病を予防または治療する方法を提供する。
【0176】
代案として、前記方法は、糖尿合併症を予防または治療する方法でもある。
代案として、前記方法は、代謝症侯群を予防または治療する方法でもある。
前記GLP-1/GIP二重作用剤、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、前記結合体、前記薬学的組成物、前記糖尿病、前記糖尿合併症及び前記代謝症侯群については、前述の通りである。
【0177】
「有効量」または「薬学的有効量」とは、患者に、単一または多回の用量で投与されたとき、診断下または治療下で、患者に所望する効果を提供する、前記GLP-1/GIP二重作用剤、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、またはその結合体の量または用量を称する。該有効量は、公知技術を使用したり、類似環境下で得られた結果を観察したりすることにより、関連技術分野の当業者としての主治医の診断により、容易に決定されうる。患者に対する有効量を決定するとき、哺乳動物種;その大きさ、年齢及び一般的な健康状態;関連する具体的な疾患または障害;疾患または障害の関連程度または重症度;個別患者の反応;投与される特定化合物;投与モード;投与される製剤の生体利用性特徴;選択された投薬療法;同時薬物処置使用;及び他の関連環境を含むが、それらに制限されない多数の因子が主治医の診断によって考慮される。
【0178】
「個体」とは、疾患の治療を必要とする対象を意味し、さらに具体的には、ヒト、または非ヒトである霊長類、マウス(mouse)、鼠(rat)、犬、猫、馬及び牛のような哺乳類を意味する。
【0179】
「投与」とは、ある適切な方法により、患者に所定物質を導入することを意味する。投与経路は、患者の生体内標的に逹することができるいかなる一般的な経路でもある。前記投与は、例えば、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、直腸内投与でもあるが、それらに制限されるものではない。
【0180】
前記投与は、一具体例による組成物を、個体1個当たり、0.0001mgないし1、000mg、例えば、0.1mgないし1,000mg、0.1mgないし500mg、0.1mgないし100mg、0.1mgないし50mg、0.1mgないし25mg、1mgないし1,000mg、1mgないし500mg、1mgないし100mg、1mgないし50mg、または1mgないし25mgを投与するものでもある。ただし、投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢・体重・性別・病的状態、飲食物、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因によって多様に処方され、当業者であるならば、そのような要因を考慮し、該投与量を適切に調節することができるのである。投与回数は、1日1回、または臨床的に容認可能な副作用の範囲内において、2回以上が可能であり、投与部位についても、1ヵ所、または2ヵ所以上に投与することができ、毎日、または2日間隔ないし5日間隔で、総投与日数は、1回の治療時、1日から30日まで投与されうる。必要な場合、適正時期後、同一治療を反復することができる。ヒト以外の動物についても、kg当たりヒトと同一投与量にするか、あるいは、例えば、目的とする動物と、ヒトとの器官(心臓など)容積比(例えば、平均値)などにより、前述の投与量を換算した量を投与することができる。
【0181】
前記方法において、有効量の前記GLP-1/GIP二重作用剤、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、またはその結合体は、有効量の1以上の他の活性成分と同時に、個別、または順次に投与することができる。前記1以上の他の活性成分は、炎症性疾患または自家免疫疾患を治療するための1以上の他の製剤でもあるが、それに制限されるものではない。
【0182】
他の態様は、糖尿病の予防用または治療用の薬剤を製造するのに使用するための、前記GLP-1/GIP二重作用剤、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、または前記結合体の用途を提供する。
【0183】
代案として、前記用途は、糖尿合併症の予防用または治療用の薬剤を製造するのに使用するためのものでもある。
【0184】
代案として、前記用途は、代謝症侯群の予防用または治療用の薬剤を製造するのに使用するためのものでもある。
【0185】
前記GLP-1/GIP二重作用剤、その薬学的に許容可能な塩、その溶媒化物、前記結合体、前記薬学的組成物、前記糖尿病、前記糖尿合併症及び前記代謝症侯群については、前述の通りである。
【0186】
本願で開示されるそれぞれの説明及び実施例は、それぞれの他の説明及び実施例にも適用されうる。すなわち、本願で開示された多様な要素の全ての組み合わせが、本発明の範疇に属する。また、下記の具体的な敍述により、本発明の範疇が制限されるものではない。
【発明の効果】
【0187】
一態様によるGLP-1/GIP二重作用剤、またはその持続型結合体は、増大された半減期を有し、かつ血糖調節、血糖低減、インシュリン抵抗性改善のような効果を示すので、糖尿病などの予防または治療の用途に使用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0188】
図1】配列番号20,36及び40の二重作用剤-PEG-免疫グロブリンFc領域結合体のSDS-PAGE分析結果を示した図である。
図2】(A)及び(B)は、配列番号20,36及び40の持続型結合体の正常マウスにおける血糖調節効力を確認した結果を示した図である。
図3】(A)は、配列番号20の持続型結合体の第2型糖尿モデルにおける血糖低減効果を確認した結果を示した図であり、(B)は、配列番号20の持続型結合体の第2型糖尿モデルにおける糖化血色素数値低減効果を確認した結果を示した図である。
図4】配列番号20の持続型結合体の第2型糖尿モデルにおけるインシュリン抵抗性改善効力を確認した結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0189】
以下、本発明を実施例を介し、さらに詳細に説明する。しかしながら、それら実施例は、本発明について例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【0190】
実施例1:GLP-1受容体及びGIP受容体のいずれに対しても活性を有するGLP-1/GIP二重作用剤の製造
【0191】
GLP-1受容体及びGIP受容体のいずれに対しても活性を有するGLP-1/GIP二重作用剤を製造し、下記表1にその配列を示した。
【0192】
【表1-1】
【0193】
【表1-2】
【0194】
前記表1に記載された配列において、下線で表されたアミノ酸は、下線で表されたアミノ酸が互いに環を形成することを意味する。また、Aibと表記されたアミノ酸は、非天然型アミノ酸であるAib(aminoisobutyric acid)である。Nleと表記されたアミノ酸は、ノルロイシン(norleucine)(2-アミノヘキサン酸)であり、ロイシン(leucine)の異性体である。また、HPYは、3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸(3-(4-hydroxyphenyl)propanoic acid(HP(phloretic acid)))を意味し、ペプチドのN末端のチロシン(Y)が、3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸で代替され、末端アミノが除去されたものである。
【0195】
また、CAHは、4-イミダゾール酢酸(4-imidazoleacetic acid)を意味し、ペプチドのN末端のヒスチジン(H)が、4-イミダゾール酢酸で代替され、末端アミノが除去されたものである。
【0196】
また、HAYは、2-(4-ヒドロキシフェニル)酢酸(2-(4-hydroxyphenyl)acetic acidまたはHA(4-hydroxyphenylacetic acid))を意味し、ペプチドのN末端のチロシン(Y)が、2-(4-ヒドロキシフェニル)酢酸で代替され、末端アミノが除去されたものである。
【0197】
前記二重作用剤ペプチドは、必要により、C末端をアミド化した二重作用剤として利用する。
【0198】
実施例2:GLP-1/GIP二重作用剤のインビトロ(in vitro)活性の測定
【0199】
前記実施例1で製造されたGLP-1/GIP二重作用剤の活性を測定するために、GLP-1受容体及びGIP受容体がそれぞれ形質転換された細胞株を利用し、インビトロ(in vitro)で細胞活性を測定する方法を利用した。前記細胞株は、CHO(Chinese hamster ovary)に、ヒトGIP-1受容体遺伝子及びヒトGIP受容体遺伝子をそれぞれ発現するように形質転換されたものであり、GLP-1及びGIPの活性を測定するのに適する。従って、各部分に対する活性を、それぞれの形質転換細胞株を利用して測定した。
【0200】
前記実施例1で製造された二重作用剤のGLP-1活性測定のために、ヒトGLP-1を、50nMから4倍ずつ0.000048nMまで連続して希釈し、前記実施例1で製造された二重作用剤を、50nMから4倍ずつ0.000048nMまで連続して希釈した。前記培養されたヒトGLP-1受容体が発現されたCHO細胞から培養液を除去し、連続して希釈された各物質を、5μlずつ前記細胞に添加した後、cAMP抗体が含まれた緩衝液を5μlずつ追加した後、15分間常温で培養した。その後、細胞溶解緩衝液(cell lysis buffer)が含まれたDetection Mixを10μlずつ加えて細胞を溶解させ、90分間常温で反応させた。前記反応が完了した細胞溶解物を、LANCE cAMPキット(PerkinElmer、米国)に適用させ、蓄積されたcAMPを介し、EC50値を算出した後、相互比べた。
【0201】
前記実施例1で製造された二重作用剤のGIP活性測定のために、ヒトGIPを1nMから4倍ずつ0.00000095nMまで連続して希釈して、前記実施例1で製造された二重作用剤を50nMから4倍ずつ0.000048nMまで連続して希釈した。前記培養されたヒトGIP受容体が発現されたCHO細胞で培養液を除去し、連続して希釈された各物質を5μlずつ前記細胞に添加した後、cAMP抗体が含まれた緩衝液を5μlずつ追加した後15分間常温で培養した。その後、細胞溶解緩衝液(celllysisbuffer)が含まれたDetection Mixを10μlずつ加えて細胞を溶解させ、90分間常温で反応させた。前記反応が完了した細胞溶解物をLANCE cAMPキット(PerkinElmer、米国)に適用させ、蓄積されたcAMPを介し、EC50値を算出した後、相互比較した。
【0202】
ヒトGLP-1対比の相対力価、及びヒトGIP対比の相対力価は、下記表2に示されている。
【0203】
【表2-1】
【0204】
【表2-2】
【0205】
n/aは、試験したが、活性が出ていないことを示す。そのように、実施例1で製造された新規の二重作用剤は、GLP-1受容体及びGIP受容体に活性を有する。
【0206】
実施例3:二重作用剤の持続型結合体の製造
【0207】
前記実施例1で製造された二重作用剤を含む持続型結合体を製造した。具体的には、配列番号20,36及び40の二重作用剤を、それぞれ非ペプチド性重合体であるPEGを介し、免疫グロブリンFc領域と連結させた。
【0208】
具体的には、MAL-10K PEG-ALD(マレイミド(maleimide)基とプロピオンアルデヒド(propion aldehyde)基とをそれぞれ有している10kD aPEG(NOF、日本)を二重作用剤にペギル化させるために、前記実施例1で製造された二重作用剤(配列番号20,36及び40)とPEGとのモル比1:1~2、タンパク質濃度2~5mg/ml、pH6.5~7.5、4~10℃において、イソプロパノールを添加し、約1~2時間反応させた。反応液は、SP Sepharose High Performance(GE Healthcare Life Science、米国)カラムに適用させ、モノペギル化された(mono-pegylated)二重作用剤を精製した。
【0209】
精製されたモノペギル化された二重作用剤を、免疫グロブリンFcと、モル比1:2~10、全体タンパク質濃度20~50mg/ml、pH6.0~7.0、4~10℃において、14~18時間反応させた。このとき、反応液は、イソプロパノールと、還元剤であるシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH)とを添加した。
【0210】
反応液は、Source 15Q(GE Healthcare Life Science、米国)カラムを使用し、免疫グロブリンFcに、GLP-1R/GIPR二重作用剤がそれぞれPEGによって共有結合で連結された結合体を精製した。
【0211】
その結果、製造された配列番号20の二重作用剤-PEG-免疫グロブリンFc領域結合体(以下、「配列番号20の持続型結合体」)、配列番号36の二重作用剤-PEG-免疫グロブリンFc領域結合体(以下、「配列番号36の持続型結合体」)、及び配列番号40の二重作用剤-PEG-免疫グロブリンFc領域結合体(以下、「配列番号40の持続型結合体」)は、SE-HPLC分析、RP-HPLC分析を介し、95%以上の高純度に製造されたことを確認し、SDS-PAGE分析結果は、図1の通りである。
【0212】
実施例4:持続型二重作用剤結合体のインビトロ(in vitro)活性の測定
【0213】
前記実施例3で製造された配列番号20,36及び40の持続型結合体の活性を測定するために、前記実施例2と同一に、GLP-1受容体及びGIP受容体がそれぞれ形質転換された細胞株を利用し、インビトロ(in vitro)で細胞活性を測定する方法を利用した。
【0214】
前記各細胞株は、CHO(Chinese hamster ovary)に、ヒトGLP-1受容体遺伝子及びヒトGIP受容体遺伝子をそれぞれ発現するように形質転換されたものであり、実施例2で使用したものと同一細胞株である。各部分に対する活性を、それぞれの形質転換細胞株を利用して測定した。
【0215】
前記実施例3で製造された配列番号20,36及び40の持続型結合体のGLP-1活性測定のために、ヒトGLP-1を50nMから4倍ずつ0.000048nMまで連続して希釈し、配列番号20,36及び40の持続型結合体を、12.5nMから4倍ずつ0.000012nMまで連続して希釈した。前記培養されたヒトGLP-1受容体が発現されたCHO細胞から培養液を除去し、連続して希釈された各物質を、5μlずつ前記細胞に添加した後、cAMP抗体が含まれた緩衝液を、5μlずつ追加した後、15分間常温で培養した。その後、細胞溶解緩衝液(cell lysis buffer)が含まれたDetection Mixを10μlずつ加えて細胞を溶解させ、90分間常温で反応させた。前記反応が完了した細胞溶解物を、LANCE cAMPキット(PerkinElmer、米国)に適用させ、蓄積されたcAMPを介し、EC50値を算出した後、相互比較した。
【0216】
前記実施例3で製造された配列番号20,36及び40の持続型結合体のGIP活性測定のために、ヒトGIPを1nMから、4倍ずつ0.00000095nMまで連続して希釈し、配列番号20,36及び40の持続型結合体を、12.5nMから4倍ずつ0.000012nMまで連続して希釈した。前記培養されたヒトGIP受容体が発現されたCHO細胞から培養液を除去し、連続して希釈された各物質を、5μlずつ前記細胞に添加した後、cAMP抗体が含まれた緩衝液を、5μlずつ追加した後、15分間常温で培養した。その後、細胞溶解緩衝液(cell lysis buffer)が含まれたDetection Mixを、10μlずつ加えて細胞を溶解させ、90分間常温で反応させた。前記反応が完了した細胞溶解物を、LANCE cAMPキット(PerkinElmer、米国)に適用させ、蓄積されたcAMPを介し、EC50値を算出した後、相互比較した。
【0217】
ヒトGLP-1対比の相対力価、及びヒトGIP対比の相対力価は、下記表3に示した。
【0218】
【表3】
【0219】
実施例5:持続型二重作用剤結合体の正常マウスにおける血糖調節効力の確認(ipGTT)
【0220】
前記実施例3で製造された配列番号20,36及び40の持続型結合体を含む組成物の投与によるインビボ(in vivo)効力を測定するために、正常雄C57BL/6マウス(オリエントバイオ、韓国)を利用した。
【0221】
7週齢のマウスを、およそ4日間から6日間順化させた後、試験に使用し、群当たり6匹ずつ、G1、G2、G3及びG4の4個群に分離させた。前記群を、それぞれ何も投与していない対照群(vehicle)、配列番号20の持続型結合体を投与した群(1nmol/kg)、配列番号36の持続型結合体を投与した群(1nmol/kg)、配列番号40の持続型結合体を投与した群(1nmol/kg)に分けた。前記試験物質を、皮下を介して投与し、20時間後、4時間絶食させた。腹腔内糖負荷検査(ipGTT:intraperitoneal glucose tolerance test)試験のために、ブドウ糖1g/kgを腹腔内投与した後、尾静脈部分に、26G注射器で突き刺して得た1~2滴の血液を使用し、血糖分析器(OneTouch Ultra, LifeScan, Inc.、米国)を利用し、マウス血糖を測定した。血糖は、ブドウ糖投与前、投与後の15分、30分、1時間、2時間にわたって測定した。
【0222】
図2Aは、配列番号20,36及び40の持続型結合体の正常マウスにおける血糖調節効力を確認した結果を示したものである。
【0223】
図2Bは、配列番号20,36及び40の持続型結合体の正常マウスにおける血糖調節効力を確認した結果を示したものである。
【0224】
図2A及び図2Bに示されているように、配列番号20,36及び40の持続型結合体のいずれにおいても、糖負荷検査において、対照群対比で、顕著に改善された血糖調節能を示すということ確認した。
【0225】
実施例6:持続型二重作用剤結合体のDIO/STZラットにおける血糖低減効力及びインシュリン抵抗性改善の確認
【0226】
前記実施例3で製造された配列番号20の持続型結合体を含む組成物の投与によるインビボ(in vivo)効力を測定するために、第2型糖尿モデルであるDIO/STZラットを利用した。
【0227】
7週齢の正常雄SDラット(オリエントバイオ、韓国)に、高脂肪食飼料であるD12492(Rodent Diet With 60 kcal% Fat, Research Diet Inc.、米国)を2週間給与した後、膵臓ベータ細胞を破壊しうるSTZを、30mg/kgの用量で、1週間隔で総2回投与し、DIO/STZラットを作製した。作製されたモデルは、持続的糖尿病維持のために、高脂肪食飼料摂取を続けて進めた。糖尿が誘発されたラットは、血糖により、G1、G2及びG3の3個群に分離した。前記群を、それぞれ何も投与していない対照群(vehicle)、配列番号20の持続型結合体を低用量投与した群(3.0nmol/kg/Q3D)、配列番号20の持続型結合体を高用量投与した群(14.8nmol/kg/Q3D)に分けた。
【0228】
そして、前記試験物質を5週間反復投与しながら、血糖と糖化血色素とを測定した。尾静脈部分に26G注射器で突き刺して得た1~2滴の血液を使用し、血糖分析器(OneTouch Ultra, LifeScan, Inc.、米国)を利用し、血糖を測定し、糖化血色素は、糖尿病診断器(DCA Vantage, Siemens AG、ドイツ)を利用して測定した。
【0229】
5週の反復投与後、血中ラットインシュリン濃度を、EKLISAキット(Rat Ultrasensitive Insulin ELISA, Alpco、米国)を利用して特定し、HOMA-IR(homeostatic model assessment-Insulin resistance)を算出した。HOMA-IRは、インシュリン抵抗性を確認することができる最も代表的な試験及び指標である。
【0230】
図3Aは、配列番号20の持続型結合体の第2型糖尿モデルにおける血糖低減効果を確認した結果を示したものである。
【0231】
図3Bは、配列番号20の持続型結合体の第2型糖尿モデルにおける糖化血色素数値低減効果を確認した結果を示したものである。
【0232】
図3A及び図3Bに示されているように、一実施例による持続型結合体を、DIO/STDラットに5週間投与した時、血糖低減を確認した。糖化血色素数値も低減された。血糖低減効力が投与用量に比例して高くなり、糖化血色素は、投与期間及び投与用量に比例して低減されるということを確認することにより、一実施例による二重作用剤が、血糖降下に直接関与することを確認した。
【0233】
図4は、配列番号20の持続型結合体の第2型糖尿モデルにおけるインシュリン抵抗性改善効力を確認した結果を示したものである。
【0234】
図4に示されているように、持続型結合体をDIO/STZラットに、5週間投与したとき、インシュリン抵抗性改善効力が顕著に改善されたことを確認した。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2023546090000001.app
【国際調査報告】