(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】インプラント用付属品と可撓性インプラント型刺激リードの組立体
(51)【国際特許分類】
A61N 1/05 20060101AFI20231025BHJP
【FI】
A61N1/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522952
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(85)【翻訳文提出日】2023-05-15
(86)【国際出願番号】 EP2021078641
(87)【国際公開番号】W WO2022079257
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510166157
【氏名又は名称】ソーリン シーアールエム エス ア エス
【氏名又は名称原語表記】SORIN CRM S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】アマロ ディエゴ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ ジャン―フランソワ
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053CC01
4C053CC02
(57)【要約】
本発明は、針(13)を備えるインプラント用付属品と可撓性インプラント型刺激リードの組立体に関する。リード(14)の第1の部分(24)が針(13)の内腔(17)に挿入された状態において、リード(14)の第1の部分(24)は、リード本体(16)から針(13)の尖った自由端(15)に向いた方向(D)に延びる少なくとも第1の分岐部(26)を備える。第1の分岐部(26)は、前記遠位端(22)から所定の距離(L
1)においてリード本体(16)から延び、この距離(L
1)に相当する部分は、第1の分岐部(26)とリード(14)の遠位端(22)との間にリード本体(16)の第2の部分(28)を形成している。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプラント用付属品と可撓性インプラント型刺激リードの組立体であって、
前記リード(14)は、リード本体(16)を備え、
前記リード(14)は、その近位端(20)を介して能動的なインプラント型医療装置と接続することができ、その遠位端(22)から心臓壁を通して、特に右心室自由壁を通して埋め込まれるように構成され、
前記インプラント用付属品は、尖った穿刺自由端(15)を有する針(13)を備え、
前記針(13)の少なくとも遠位部は、前記尖った穿刺自由端(15)に開口する内腔(17)を備える中空針であり、
前記リード(14)の少なくとも第1の部分(24)は、その遠位端(22)から前記針(13)の前記内腔(17)に挿入することが可能であり、
前記リード(14)の前記第1の部分(24)が前記針(13)の内腔(17)に挿入された状態において、前記リード(14)の前記第1の部分(24)は、前記リード本体(16)から前記針(13)の前記尖った自由端(15)に向いた方向に延びる少なくとも第1の分岐部(26)を備えることを特徴とし、
前記第1の分岐部(26)は、前記遠位端(22)から所定の距離(L
1)において配置された接合点(32)を起点に前記リード本体(16)から延び、前記距離(L
1)に相当する部分は、前記第1の分岐部(26)の接合点(32)と前記リード(14)の遠位端(22)との間に前記リード本体(16)の第2の部分(28)を形成することをさらに特徴とする、
組立体。
【請求項2】
前記リード本体(16)は、前記第1の分岐部(26)及び前記第2の部分(28)よりも剛性の低い第3の部分(30)をさらに備え、
前記第3の部分(30)は、前記第1の分岐部(26)の接合点(32)から前記リード(14)の近位端(20)に向かって延び、
前記第1の分岐部(26)及び前記第2の部分(28)が前記接合点(32)を中心に互いに確実に回動するように構成される、請求項1に記載の組立体。
【請求項3】
前記リード(14)の前記第1の部分(24)が前記針(13)の内腔(17)に挿入された状態において、前記第1の分岐部(26)と前記第2の部分(28)とは鈍角(O)を形成し、前記第1の分岐部(26)と前記第3の部分(30)とは鋭角を形成する、請求項2に記載の組立体。
【請求項4】
前記第1の分岐部(26)及び/又は前記第2の部分(28)は、少なくとも1つの電極(E
1、E
2)を備える、請求項1から3のいずれかに記載の組立体。
【請求項5】
前記リード本体(16)は、前記リード(14)の接合点(32)から2~50mm、特に2~30mmの長さ(L
3)だけ離れた少なくとも1つの電極(E
3)を備える、請求項1から4のいずれかに記載の組立体。
【請求項6】
前記第1の分岐部(26)及び前記第2の部分(28)は、それぞれ、2~20mmの長さ(l
1、L
1)を有する、請求項1から5のいずれかに記載の組立体。
【請求項7】
前記リード本体(16)は、補強されて前記リード本体(16)の残りの部分に対して弾性を有する弾性部(3)を備え、前記弾性部(3)は、前記第1の部分(28)とは異なり、前記リード(14)の屈曲部(3)に相当する、請求項1から6のいずれかに記載の組立体。
【請求項8】
前記リード(14)の前記第1の部分(24)は、前記リード本体(16)から前記リード(14)の前記遠位端(22)に向いた方向(d)に延びる第2の分岐部(34)によって形成される突き当て手段をさらに備え、
前記第2の分岐部(34)は、前記リード本体(16)の接合点(36)を起点に前記リード本体(16)から延び、前記接合点(36)は、前記第2の部分(28)とも前記第1の分岐部(26)とも異なる、請求項1から7のいずれかに記載の組立体。
【請求項9】
前記第2の分岐部(34)の前記リード本体(16)との前記接合点(36)は、前記第1の分岐部(26)の前記接合点(32)から1~30mmの長さ(L
2)だけ離れている、請求項8に記載の組立体。
【請求項10】
前記リード本体(16)は、前記第1の分岐部(26)の前記接合点(32)と前記第2の分岐部(34)の前記接合点(36)との間に配置された少なくとも1つの電極(E
4)を備える、請求項8又は9に記載の組立体。
【請求項11】
前記リード(14)は、電気絶縁層で被覆された導電性コアを備える可撓性マイクロワイヤであり、前記少なくとも1つの電極(E
1、E
2、E
3、E
4)は、前記マイクロワイヤの剥離部によって形成され、前記マイクロワイヤの直径は1フレンチ(0.33mm)以下である、請求項1から10のいずれかに記載の組立体。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の組立体のための可撓性インプラント型刺激リードであって、前記リード(14)は、リード本体(16)を備え、
前記リード(14)は、その近位端(20)を介して能動的なインプラント型医療装置と接続することができ、その遠位端(22)から心臓壁を通して、特に右心室自由壁を通して埋め込まれるように構成され、
前記リード(14)は、前記組立体の針に挿入されるように構成された第1の部分(24)を備え、前記第1の部分(24)は、前記第1の部分(24)が針に挿入されたときに、前記リード(14)の近位端(20)に向けられ、かつ前記針の尖った自由端(15)に向いた方向(D)に前記リード本体(16)から延びる少なくとも第1の分岐部(26)を備え、
前記第1の分岐部(26)は、前記遠位端(22)から所定の距離(L
1)において前記リード本体(16)から延び、前記距離(L
1)に相当する部分は、前記第1の分岐部(26)と前記リード(14)の前記遠位端(22)との間に前記リード本体(16)の第2の部分(28)を形成している、
可撓性インプラント型刺激リード。
【請求項13】
前記リード(14)の前記第1の部分(24)は、前記リード本体(16)から前記リード(14)の前記遠位端(22)に向いた方向(d)に延びる第2の分岐部(34)によって形成される突き当て手段をさらに備え、
前記第2の分岐部(34)は、前記リード本体(16)の接合点(36)を起点に前記リード本体(16)から延び、前記接合点(36)は、前記第2の部分(28)とも前記第1の分岐部(26)とも異なる、請求項12に記載の可撓性インプラント型刺激リード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、能動的なインプラント型医療装置のためのインプラント用付属品と可撓性インプラント型刺激リードの組立体に関する。
【0002】
また、本発明は、このようなリードを心臓壁、特に右心室自由壁を通して埋め込む方法に関する。
【背景技術】
【0003】
心臓の右心室に、いわゆる心内膜リードを静脈網を介して挿入して収容することにより、又は、静脈アクセスによって腔内に埋め込まれたいわゆる腔内リードを用いることによって、右心室を刺激することが知られている。
【0004】
また、心筋の外壁に直接取り付けられたいわゆる心外膜リードを使用することも知られている。しかし、心外膜リードは、心内膜リードに比べ、特に電気的性能の面で劣ることが多い。
【0005】
さらに、リードのらせん固定ねじを縫合又はねじ込むことによって心外膜リードを心外膜の壁に維持することが知られているが、これらの機械的な固定具には、組織に対して侵襲的であり比較的外傷性であるという欠点がある。
【0006】
このように、公知の心外膜リードの最大の欠点は、腔内リードと比較して処置が侵襲的であることである。
【0007】
さらに、これら公知の心外膜リードに共通するもう一つの欠点は、埋め込み時の侵襲性の他に、電気的性能の低さにあり、これが刺激の有効性を損なっている。
【発明の説明】
【0008】
本発明は、リードの埋め込み時の侵襲性を低減させながら、刺激の有効性を改善させることができる刺激リードを提案することにより、上記の様々な制限を克服することを目的とする。
【0009】
本発明の目的は、インプラント用付属品と可撓性インプラント型刺激リードの組立体を使用して達成される。前記リードは、リード本体を備え、その近位端を介して能動的なインプラント型医療装置と接続することができ、その遠位端から心臓壁を通して、特に右心室自由壁を通して埋め込まれるように構成される。前記インプラント用付属品は、尖った穿刺自由端を有する針を備える。前記針の少なくとも遠位部は、前記尖った穿刺自由端に開口する内腔を備える中空針である。前記リードの少なくとも第1の部分は、その遠位端から前記針の内腔に挿入することが可能である。前記リードの前記第1の部分が前記針の内腔に挿入された状態において、前記リードの前記第1の部分は、前記リード本体から前記針の前記尖った自由端に向いた方向に延びる少なくとも第1の分岐部を備える。前記第1の分岐部は、前記遠位端から所定の距離において配置された接合点を起点に前記リード本体から延び、前記距離に相当する部分は、前記第1の分岐部の接合点と前記リードの遠位端との間に前記リード本体の第2の部分を形成している。
【0010】
そのため、この針で心臓の右心室壁を穿刺し、そこにリードを導入することが可能である。リードは、その遠位端において、リード本体の第1の分岐部と第2の部分とを備えるため、リードが右心室の自由壁を通して埋め込まれるとき、前記リードには保持手段が設けられる。このリードの保持手段を針に挿入することができ、これによって心臓の組織に埋め込むことができる。
【0011】
リードは右心室自由壁を通して埋め込み(インプラント)可能であるため、リード本体の第1の分岐部及び第2の部分は、右心室内、特に内壁に対して配置することができる。
【0012】
インプラント用付属品と可撓性インプラント型刺激リードの組立体に関する本発明は、以下の実施形態によってさらに改善することができる。
【0013】
一実施形態によれば、前記リード本体は、前記第1の分岐部及び前記第2の部分よりも剛性の低い第3の部分をさらに備えてもよく、前記第3の部分は、前記第1の分岐部の接合点から前記リードの近位端に向かって延び、前記第1の分岐部及び前記第2の部分が前記接合点を中心に互いに確実に回動するように構成される。
【0014】
したがって、接合点を中心とした回動運動時に、第1の分岐部と第2の部分とが互いに固定される。この回動により、リードの埋め込み状態において、リードの保持手段を右心室内壁に対して配置することが可能となる。
【0015】
一実施形態によれば、前記リードの前記第1の部分が前記針の内腔に挿入された状態において、前記第1の分岐部と前記第2の部分とは鈍角を形成し、前記第1の分岐部と前記第3の部分とは鋭角を形成し得る。
【0016】
このように、第1の分岐部は、第1の分岐部と第2の分岐部とが接合点を中心に互いに確実に回動した後、リードの埋め込み状態において保持手段を提供することができるように配置されている。
【0017】
一実施形態によれば、前記第1の分岐部及び/又は前記第2の部分は、少なくとも1つの電極を備えてもよい。
【0018】
したがって、リードの埋め込み状態において、少なくとも1つの電極、特に陽極を、右心室の内壁に配置し得る。その結果、陽極が心臓壁に直接接触することで、刺激を改善させ得る。
【0019】
一実施形態によれば、前記リード本体は、前記リードの接合点から2~50mm、特に2~30mmの長さだけ離れた少なくとも1つの電極を備えてもよい。
【0020】
したがって、この寸法により、リードの埋め込み状態において、少なくとも1つの電極、特に陰極を心臓壁、特に右心室自由壁の厚さの内に配置することが可能である。そのため、刺激も検出もそれだけ改善される。また、電極が心臓壁に直接接触していない場合よりも低いエネルギーで刺激を与えることが可能である。
【0021】
一実施形態によれば、前記第1の分岐部及び前記第2の部分は、それぞれ、2~20mmの長さを有してもよい。
【0022】
この寸法により、保持手段の右心室内壁に対する接触面を広げ、持続的な牽引による簡単で損傷のない装置の取り外しを可能としながら、右心室内壁を通したリードの保持力を高めることができる。
【0023】
一実施形態によれば、前記リード本体は、補強されて前記リード本体の残りの部分に対して弾性を有する弾性部を備えてもよく、当該弾性部は、前記第1の部分とは異なり、前記リードの屈曲部に相当する。
【0024】
このため、この場所でリードが曲がっても、リードの堅牢性を向上させ、ひいては寿命を延ばすことができる。
【0025】
さらに、この屈曲部の弾性により、リードの第1の部分が針の内腔から移動し、針の内腔の内壁に対してもはや保持されなくなると、実施が簡単な自動の弾性による展開が可能になる。
【0026】
一実施形態によれば、前記リードの前記第1の部分は、前記リード本体から前記リードの遠位端に向いた方向に延びる第2の分岐部によって形成される突き当て手段をさらに備えてもよく、前記第2の分岐部は、前記第2の部分及び前記第1の分岐部とは異なる、前記リード本体との接合点を起点に前記リード本体から延びている。
【0027】
突き当て手段により、リードの埋め込み後、このリードの心室内への不要な移動を防止することで、リードの心臓壁への維持状態を向上させることが可能となる。突き当て手段は、実際には、前記リードの埋め込み状態において、右心室外側自由壁に突き当たっている。
【0028】
一実施形態によれば、前記第2の分岐部の前記リード本体との接合点は、前記第1の分岐部の接合点から1~30mmの距離だけ離れていてもよい。
【0029】
この寸法は、右心室の心臓壁の厚さに実質的に相当する。このように、リードは、リードの埋め込み状態において、第1の分岐部と第2の分岐部が右心室自由壁の両側でリード本体から突出するように構造的に構成され、各分岐部によってリードを心筋に保持することが可能である。
【0030】
一実施形態によれば、前記リード本体は、前記第1の分岐部の接合点と前記第2の分岐部の接合点との間に配置された少なくとも1つの電極を備えてもよい。
【0031】
したがって、少なくとも1つの電極は、右心室自由壁の厚さの内に有利に配置され得、これにより、右心室への刺激が改善される。
【0032】
一実施形態によれば、前記リードは、電気絶縁層で被覆された導電性コアを備える可撓性マイクロワイヤであってもよく、前記少なくとも1つの電極は、前記マイクロワイヤの剥離部によって形成され、前記マイクロワイヤの直径は1フレンチ(0.33mm)以下である。
【0033】
このように、マイクロワイヤの寸法によって、リードの埋め込みを低侵襲化することが可能である。実際、マイクロワイヤを導入するための心臓組織への穿刺は、約1フレンチの直径に縮小することができる。その結果、リードの埋め込みや取り外しの際に、組織への損傷を少なくすることが可能になる。
【0034】
本発明の目的は、上記のような組立体のための可撓性インプラント型刺激リードによっても達成される。このリードは、リード本体を備える。前記リードは、その近位端を介して能動的なインプラント型医療装置と接続することができ、その遠位端から心臓壁を通して、特に右心室自由壁を通して埋め込まれるように構成される。前記リードは、針に挿入されるように構成された第1の部分を備える。前記第1の部分は、前記第1の部分が針に挿入されたときに、前記リードの近位端に向けられ、かつ前記針の尖った自由端に向いた方向に前記リード本体から延びる少なくとも第1の分岐部を備える。前記第1の分岐部は、前記遠位端から所定の距離において前記リード本体から延び、前記距離に相当する部分は、前記第1の分岐部と前記リードの遠位端との間に前記リード本体の第2の部分を形成している。
【0035】
リードは、その遠位端において、リード本体の第1の分岐部と第2の部分とを備えるため、リードが右心室自由壁を通して埋め込まれるとき、前記リードには保持手段が設けられる。このリードの保持手段を針に挿入することができ、これによって心臓の組織に埋め込むことができる。
【0036】
リード本体の第1の分岐部及び第2の部分が内壁に対して右心室内に配置されるように、リードを右心室自由壁を通して埋め込むことができるため、リードと心筋の壁との接触部が広がり、リードの電気性能を向上させることができる。
【0037】
一実施形態によれば、前記リードの前記第1の部分は、前記リード本体から前記リードの遠位端に向いた方向に延びる第2の分岐部によって形成される突き当て手段をさらに備えてもよく、前記第2の分岐部は、前記第2の部分とも前記第1の分岐部とも異なる、前記リード本体との接合点を起点に前記リード本体から延びている。
【0038】
突き当て手段により、リードの埋め込み後、このリードの心室内への不要な移動を防止することで、リードの心臓壁への維持状態を向上させることが可能となる。突き当て手段は、実際には、前記リードの埋め込み状態において、右心室外側自由壁に突き当たっている。
【0039】
以下、好ましい実施形態を用いて特に図面に基づいて本発明及びその利点をより詳細に説明する。
【0040】
図1aは、リードの非埋め込み状態における、本発明によるインプラント用付属品11と可撓性インプラント型刺激リード14の組立体10の部分模式図である。以下、分かりやすく説明するため、インプラント用付属品11に関連する構成要素は奇数の参照数字を用いて説明し、リード14に関連する構成要素は偶数の参照数字を用いて説明する。
【0041】
図1bは、リードの非埋め込み状態における、
図1aに示した可撓性インプラント型刺激リード14の部分模式図である。以下、
図1aと
図1bを並行して説明する。
【0042】
リード14は、リード本体16を備える。
【0043】
リード14は、リード14の近位端20を介して能動的なインプラント型医療装置18と接続することが可能である。
【0044】
リード14は、その遠位端22から心臓壁を通して、特に右心室自由壁を通して埋め込まれるように構成される。遠位端22は、リード14の近位端20と反対側にある。
【0045】
図1cはリードの埋め込み状態における、可撓性インプラント型刺激リード14の模式図である。
【0046】
図1a、
図1b、及び
図1cを説明するために使用される同じ参照符号を有する構成要素は、同じ構成要素に関し、
図1a、
図1b、及び
図1cのそれぞれについての重複する詳細な説明は省略する。
【0047】
図1aは、本発明によるインプラント用付属品11に含まれる針13の部分図である。
【0048】
針13には、尖った穿刺自由端15が設けられている。尖った穿刺自由端15は、針13の遠位端に相当する。
【0049】
針13は、少なくともその遠位部において、すなわち、少なくとも
図1aに示した針13の一部において、尖った穿刺自由端15に開口する内腔17を備える中空針である。
【0050】
本発明によるインプラント用付属品11は、針13の内腔17に収容され、その内部で摺動可能なプランジャ手段を備えている(このプランジャ手段は、
図1aから
図1cには示されていない)。このプランジャ手段は、
図2cと
図2dに示され、以下でより詳細に説明する。
【0051】
本発明によれば、リード14の第1の部分24は、その遠位端22から針13の内腔17に挿入することが可能である。
【0052】
図1aは、リード14の第1の部分24が針13の内腔17に挿入された状態のリード14を示す。
【0053】
針13と、針13の内腔17に挿入されていないリード本体16との間の
図1aに示した高さhは、明瞭に図示するためにのみゼロでないものとして示されていることに留意されたい。当業者は、本発明を実施するために、リード14の第1の部分24が針13の内腔17に挿入された状態において、リード本体16の残りの部分が針13の外壁19に沿って延び、リード本体16と針13の外壁19との間で接触が可能であるが必要ではないことを理解する必要がある。
【0054】
リード14の第1の部分24は、リード本体16から針の尖った自由端15に向いた方向Dに延びる少なくとも第1の分岐部26を備える。
【0055】
第1の分岐部26は、リード14の遠位端22から所定距離L1においてリード本体16から延びる。リード本体16の遠位端22からの長さL1の部分は、リード14の第1の分岐部26と遠位端22との間に配置されたリード本体16の第2の部分28を形成する。
【0056】
図1cに示すように、リード14の第1の分岐部26及び第2の部分28は、右心室VDの自由壁VD'を通してリード14を維持するための保持手段として機能する。
図1cに示すリード14の埋め込み状態において、リード14の第1の分岐部26及び第2の部分28は、右心室VDの内壁VD''に沿って長手方向に延びるように配置される。
【0057】
図1bに示すように、第1の分岐部26は、第1の分岐部26のリード本体16との接合点32と第1の分岐部の自由端26aとの間に長さl
1を有する。長さl
1は2~20mmである。
【0058】
第2の部分28の長さL1と第1の分岐部26の長さl1とは、互いに実質的に等しくてもよい。
【0059】
これらの寸法により、右心室VDの内壁VD''に対する保持手段の接触面を広げることが可能となり、右心室VDの内壁VD''を通したリード14の保持力をさらに向上させることができる。さらに、接合点32の直近にある保持手段の剛性により、保持力を生じさせることができる。
【0060】
図1aから
図1cに示すような本発明の一実施形態では、リード本体16は、第1の分岐部26及び第2の部分28よりも剛性が低い第3の部分30をさらに備えてもよい。第3の部分30は、リード14の近位端20に向かって、すなわち、
図1aに示された針の尖った自由端15に向かって延びている。第3の部分30は、第1の分岐部26と第2の部分28との間のリード本体16の接合点32から延び、第1の分岐部26と第2の部分28とは、リード本体16の接合点32を中心に互いに対して確実に回動(
図1a及び
図1bにおいて参照符号Rで示す)するように構成される。第3の部分30の長さは、対象部位の心筋の厚さに基づいて調整され得る。
【0061】
したがって、接合点32を中心とした回動運動R時に、第1の分岐部26と第2の部分28とが互いに固定される。この回動Rにより、
図1cに示すように、リード14の埋め込み状態において、リード14の保持手段を右心室VDの内壁VD''に対して配置することが可能となる。
【0062】
リード14の第1の部分24が針13の内腔17に挿入された状態を示す
図1aに示すように、第1の分岐部26と第2の部分28は鈍角Oを形成し、第1の分岐部26と第3の部分30は鋭角Aを形成する。鈍角とは、その角度が90°から180°である角度をいう。特に、第1の分岐部26と第2の部分28との間に形成される鈍角Oは、約135°の度数を有する。
【0063】
上述のように、リード14の第1の分岐部26と第2の部分28とは、リード本体16の接合点32を中心に互いに対して確実に回動するように構成されているため、
図1cに示すように、リード14の埋め込み状態において、リード14の第1の分岐部26と第2の部分28との間の鈍角Oが維持される。
【0064】
リード14の第1の分岐部26と第2の部分28との間の鈍角Oにより、第1の分岐部26と第2の部分28とを右心室VDの内壁VD''に沿って配置することができ、リード14の保持手段を提供することができる。
【0065】
図1aから
図1cに示すような本発明の一実施形態では、リード14の第1の部分24は、リード本体16からリード14の遠位端22に向いた方向dに延びる第2の分岐部34によって形成される突き当て手段をさらに備えてもよい。第2の分岐部34は、接合点36を起点にリード本体16から延びている。接合点36は、リード本体16のうち、第2の部分28とも第1の分岐部26とも異なる部分に含まれている。
【0066】
図1aに示された一実施形態では、接合点36は、リード14の第3の部分30に含まれている。変形例では、接合点36は、リード本体16上の第3の部分30を超えた箇所に配置される。
【0067】
リード14の第2の分岐部34は、リード14の埋め込み後の右心室VDへの不要な移動を防止しつつ、右心室VDの壁VD'へのリード14の維持状態を向上させることを可能とする突き当て手段を提供する(
図1c参照)。突き当て手段34は、実際には、
図1cに示すように、リード14の埋め込み状態において、右心室VDの外側自由壁VD*に突き当たっている。
【0068】
図1bに示すように、第2の分岐部34は、第2の分岐部34のリード本体16との接合点36と第2の分岐部34の自由端34aとの間に長さl
2を有する。長さl
2は2~20mmである。
【0069】
第1の分岐部26の長さl1と第2の分岐部34の長さl2とは、互いに実質的に等しくてもよい。
【0070】
第2の分岐部34のリード本体16との接合点36は、第1の分岐部26の接合点32から1~30mmの長さL2だけ離れている。
【0071】
この寸法は、右心室VDにおける心臓壁VD'の厚さに実質的に相当する。このように、リード14は、リード14の埋め込み状態において、第1の分岐部26と第2の分岐部34が右心室VDの壁VD'の両側でリード本体16から突出するように構造的に構成され、各分岐部26、34によってリード14を心筋に保持することが可能である。
【0072】
リード14は刺激リードであることから、少なくとも1つの刺激電極を備える。
【0073】
変形例では、リード14は、少なくとも1つの検出電極を備えてもよい。
【0074】
図1dから
図1fは、少なくとも1つの電極を備えるリード14の第1の部分24の変形実施形態を示す。これらの変形例は、互いに組み合わせてもよい。ただし、本発明は、
図1dから
図1fに示された変形例に限定されない。
【0075】
図1aから
図1cを説明するために既に使用された同じ参照符号を有する構成要素については、重複する詳細な説明は省略する。上記のそれらの説明を参照すること。
【0076】
図1dは、1つの分岐部26のみを備える第1の部分24を示す。この変形例では、第1の分岐部26は電極E
1を、第2の部分28の遠位端22は電極E
2を備える。
【0077】
図1dと同様に、
図1eは、1つの分岐部26のみを備える第1の部分24を示す。この変形例では、第2の部分28の遠位端22は電極E
2を備え、リード本体16はリード14の接合点32から長さL
3だけ離れた電極E
3をさらに備える。長さL
3は、2~50mmであり、特に2~30mmである。
【0078】
電極E3は、陰極E3を心筋の厚さの内に配置するように、好ましくはリード14における接合点32の近位側に配置される陰極E3であってもよい。したがって、陰極E3は、内壁VD''の表面ではなく、壁VD'の厚さの内に右心室壁と接触している。
【0079】
したがって、長さL3は、陰極E3を心筋内、すなわち壁VD'の厚さの内に維持するような、接合点32と電極E3との間の距離と定義される。実際、面接触は心拍による微動の影響を受けやすいため、右心室の壁VD'の厚さの内に陰極E3を配置することが好ましい。
【0080】
したがって、この寸法により、リードの埋め込み状態において、電極E3を心臓壁、特に右心室自由壁の厚さの内に配置することが可能である。その結果、刺激がさらに改善される。
【0081】
図1fは、第1の分岐部26と第2の分岐部34とを備える第1の部分24を示す。本変形例では、リード本体16は、第1の分岐部26の接合点32と第2の分岐部34の接合点36との間に配置された電極E
4を備える。
【0082】
したがって、電極E4は、右心室自由壁の厚さの内に有利に配置され得、これにより、右心室への刺激が改善される。
【0083】
変形例では、第2の分岐部34の保持機能は、電極E4を起点にしたリード本体16の曲線半径(半径3~30mm)に沿った弾性構造によって得てもよい。この変形例の利点は、心嚢への衝撃が少ないことと、リード本体16が心筋の外壁に対して接線方向に向いていることで、リード本体16にかかるストレスが少ない構成であること(耐機械疲労性)である。この曲線構造は、第2の分岐部34の保持機能を代替又は補完してもよい。
【0084】
別の変形例では、リード14には、所定の埋め込み部に対して刺激/検出システムを最適化するように、4つの電気的に独立した電極が設けられてもよい。
【0085】
また、刺激電極が心臓壁に直接接触するため、より低いエネルギーでの刺激も可能である。
【0086】
また、本発明によれば、右心室を刺激するために、右心室腔にリードを導入する必要がなくなる。これにより、リードの埋め込みを低侵襲化する。したがって、埋め込みを受ける患者の血管系を変えずに済む。
【0087】
さらに、一実施形態によれば、リードは、電気絶縁層で被覆された導電性コアを備える可撓性マイクロワイヤであってもよく、少なくとも1つの電極は、マイクロワイヤの剥離部によって形成されてもよい。本実施形態では、マイクロワイヤの直径は、最大1フレンチ(0.33mm)である。
【0088】
このマイクロワイヤの寸法によって、リードの埋め込みをさらに低侵襲化することが可能である。
【0089】
この技術の圧倒的な優位性は、実際、低侵襲(micro-invasive)という面にある。リードの直径が非常に小さいことから、18~24ゲージの穿刺針を使用することが可能であり、剣状突起下穿刺による装着が可能である(1箇所以上の縫合などの閉鎖手段を要する外科的開口部を設ける必要がない)。この手法は、患者の回復が早いだけでなく、感染症のリスクが少ないというメリットもある。
【0090】
さらに、本発明によるリード本体16は、補強されてリード本体16の残りの部分に対して弾性を有する弾性部3を備えてもよい。この弾性部3は、第1の部分24とは異なり、
図1aに示すように、リード14の屈曲部に相当する。このため、この弾性部3でリードが曲がっても、リード14の堅牢性を向上させ、ひいては寿命を延ばし得る。
【0091】
リード14の埋め込みは、
図2aから
図2kによって、心臓壁を通して、特に右心室自由壁を通して、このようなリードを埋め込むための方法の説明を参照して、さらに説明される。
【0092】
図1aから
図1cを説明するために既に使用された同じ参照符号を有する構成要素については、重複する詳細な説明は省略する。上記の説明を参照すること。
【0093】
図2aに示すように、本発明による埋め込み方法の第1のステップでは、リード14の第1の部分24が針13の内腔17に挿入される。リード14は、先に説明した
図1aのように屈曲部3で曲げられる。
【0094】
針13によって胸部表面から穿刺が行われ、その後、針13をA方向に右心室の壁VD'に接近させる。
【0095】
針13は、
図2bに示すように、針13の穿刺自由端15が右心室の壁VD'を穿刺するまで移動される。
【0096】
表面又は経食道超音波、刺激、解剖学的表面の識別、画像増強下での造影剤の注入など、多くのガイド/識別システムを使用することができるが、これらに限定されない。
【0097】
針13の穿刺自由端15が右心室VDの内部に位置している間に、本発明によるインプラント用付属品のプランジャ手段21は、
図2cに示すように、リード14の第1の部分24を針13の内腔17の外側の方向Aに押し出す。
【0098】
図2dは、リード14の第1の部分24が実質的に完全に針13の内腔17の外にある次のステップを示す。
【0099】
その後、プランジャ手段21は方向Aとは反対の方向Bに後退し、針13は方向Bに壁VD'から取り外される。
【0100】
したがって、
図2eのステップでは、リード14の第1の部分24は針13の外側にあり、右心室VD内にある。屈曲部3の柔軟性と弾性により、
図2fに示した構成に達するまでリード14を展開させるが、この構成は先に説明した
図1bの構成に対応する。
【0101】
次に、
図2g、さらに
図2hに示すように、リード14は方向Bにわずかに引っ張られる。この方向Bは、右心室の内側から心臓の外側に向かって延びる。
【0102】
図2iのステップでは、第2の分岐部34が右心室の壁VD'を通って、心臓の外側に向かって方向Bに摺動する。自由端34aがリード14の遠位端22を指す第2の分岐部34の向きによって、第2の分岐部34の方向Bへの取り外し動作を容易にすることが可能となる。
【0103】
第1の分岐部26の自由端26aは、右心室VDの内壁VD''に突き当たる。この突き当たりにより、
図2iに示すように、リード14の第1の分岐部26と第2の部分28の接合点32を中心とした回動Rが駆動される。
【0104】
図2jに示されるように、回動Rは、リード14の第1の分岐部26及び第2の部分28を針13の初期位置(
図2a)に対して約90°回動させるように継続する。
【0105】
第1の分岐部26及び第2の部分28の回動と同時に、リード14は、
図2kに示すように、リード14の第1の分岐部26及び第2の部分28が右心室VDの内壁VD''に対して突き当たるまで方向Bに引っ張られ続けられ、これによって、回動は実質的に90°に制限される。
【0106】
第1の分岐部26と第2の部分28との間に形成される鈍角Oにより、リード14の第1の分岐部26及び第2の部分28を右心室VDの内壁VD''に突き当てて配置することにより、リード14の方向Bへの不要な取り外しを防止することができる。実際、リード14が方向Bに引っ張られると、リード14の第1の分岐部26と第2の部分28は、右心室VDの内壁VD''に突き当たる。この突き当たりにより、リード14の右心室からの不要な取り外しを防止する。
【0107】
リード14の適切な位置決めは、電極の適切な位置決めを証明する電気的性能によって、又は超音波検査や画像増強下で確認することができる。
【0108】
第2の分岐部34は突き当て手段として機能し、第2の分岐部34の自由端34aは心臓の外壁VD*に突き当たる。
【0109】
この突き当て手段34により、リード14の埋め込み後にこのリードが心室VD内へとA方向に不要に移動することを防止して、リード14の心臓壁VD'への維持状態を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【
図1a】リードの非埋め込み状態における、本発明によるインプラント用付属品と可撓性インプラント型刺激リードの組立体の部分模式図である。
【
図1b】リードの非埋め込み状態における、
図1aに示した可撓性インプラント型刺激リードの部分模式図である。
【
図1c】リードの埋め込み状態における、
図1a及び
図1bに示した可撓性インプラント型刺激リードの模式図である。
【
図1d】第1の変形例による、
図1aから
図1cに示した可撓性インプラント型刺激リードの部分模式図である。
【
図1e】第2の変形例による、
図1aから
図1cに示した可撓性インプラント型刺激リードの部分模式図である。
【
図1f】第3の変形例による、
図1aから
図1cに示した可撓性インプラント型刺激リードの部分模式図である。
【
図2a-2e】本発明によるリードを埋め込むステップを示す模式図である。
【
図2f-2k】本発明によるリードを埋め込むステップを示す模式図である。
【国際調査報告】