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特表2023-546101正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20231025BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20231025BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522980
(86)(22)【出願日】2021-11-08
(85)【翻訳文提出日】2023-04-14
(86)【国際出願番号】 KR2021016127
(87)【国際公開番号】W WO2022145693
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0187479
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0140793
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517113750
【氏名又は名称】エコプロ ビーエム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ECOPRO BM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100189474
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 修
(72)【発明者】
【氏名】パク ジュン ベ
(72)【発明者】
【氏名】チェ ムン ホ
(72)【発明者】
【氏名】パク ヨン ナム
(72)【発明者】
【氏名】リ チェン ウ
(72)【発明者】
【氏名】ムーン チェ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】パク テ ホ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ジュン ユブ
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050EA12
5H050FA18
5H050HA02
5H050HA03
5H050HA04
(57)【要約】
本発明は、正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池に関し、より具体的には、少なくともニッケルおよびコバルトを含有するリチウム複合酸化物を含み、前記リチウム複合酸化物の平均半径に対して前記リチウム複合酸化物の表面部から中心部に向かってコバルトの濃度が減少する濃度勾配が所定の厚さで形成されることにより、前記リチウム複合酸化物の表面部だけでなく、中心部において粒子の安定性を向上させることが可能な正極活物質、前記正極活物質を含む正極、および前記正極を使用するリチウム二次電池に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともニッケルおよびコバルトを含有するリチウム複合酸化物を含む正極活物質であって、
前記リチウム複合酸化物の断面を基準として前記リチウム複合酸化物の表面部から中心部に向かってコバルトの濃度が減少する濃度勾配が形成された第1区間および前記第1区間の内側にコバルトの濃度が所定の範囲内に維持される第2区間に区切られ、
前記リチウム複合酸化物の断面から測定された平均半径をdというとき、前記平均半径dと前記第1区間の厚さd1の比d1/dが、0.08~0.27である、正極活物質。
【請求項2】
前記第1区間中Co/Niの平均モル比が、0.25~0.39である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記第1区間中平均Co濃度c1と前記リチウム複合酸化物に対してICP分析に基づいて測定された平均Co濃度cの比が、1.70~2.60である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記平均半径dと前記第2区間の厚さd2の比d2/dが、0.73~0.92である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記第2区間中前記コバルトの濃度変化率が、10mol%以下である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記リチウム複合酸化物は、下記の化学式1で表される、請求項1に記載の正極活物質。
[化学式1]
LiNi1-(x+y+z)oxM1M2
(ここで、
M1は、MnおよびAlから選択される少なくとも1つであり、
M2は、P、Sr、Ba、Ti、Zr、Mn、Al、W、Ce、Hf、Ta、Cr、F、Mg、V、Fe、Zn、Si、Y、Ga、Sn、Mo、Ge、Nd、B、Nb、GdおよびCuから選択される少なくとも1つであり、
M1とM2は、互いに異なっており、
0.5≦w≦1.5、0≦x≦0.50、0≦y≦0.20、0≦z≦0.20である)
【請求項7】
前記リチウム複合酸化物を断面加工処理した後、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して前記リチウム複合酸化物の断面を撮影して得られた断面SEM像において前記リチウム複合酸化物の中心を短軸方向に横切る仮想の直線上に配置された結晶子に対して下記の式1で計算される結晶粒界の密度が0.50以下である、請求項1に記載の正極活物質。
[式1]
結晶粒界の密度=(前記仮想の直線上に配置された結晶子間の境界面の数/前記仮想の直線上に配置された結晶子の数)
【請求項8】
前記正極活物質は、複数のリチウム複合酸化物の集合体であって、
前記正極活物質のうち前記リチウム複合酸化物を断面加工処理した後、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して前記リチウム複合酸化物の断面を撮影して得られた断面SEM像において前記リチウム複合酸化物の中心を短軸方向に横切る仮想の直線上に配置された結晶子に対して下記の式1で計算される結晶粒界の密度が0.50以下のリチウム複合酸化物の割合が30%以上である、請求項1に記載の正極活物質。
[式1]
結晶粒界の密度=(前記仮想の直線上に配置された結晶子間の境界面の数/前記仮想の直線上に配置された結晶子の数)
【請求項9】
前記リチウム複合酸化物は、単一の結晶子からなる非凝集の単一粒子であり、
前記単一粒子の断面を基準として前記単一粒子の表面部から中心部に向かってコバルトの濃度が減少する濃度勾配が形成された第1区間および前記第1区間の内側にコバルトの濃度が所定の範囲内に維持される第2区間に区切られる、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項10】
前記リチウム複合酸化物の表面のうち少なくとも一部をカバーするコーティング層をさらに含み、
前記コーティング層には、下記の化学式2で表される少なくとも1種の金属酸化物が存在する、請求項1に記載の正極活物質。
[化学式2]
LiM3
(ここで、
M3は、Ni、Mn、Co、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、Eu、Sm、W、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選択される少なくとも1つであり、
0≦a≦10、0≦b≦8、2≦c≦13である)
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の正極活物質を含む正極。
【請求項12】
請求項11に記載の正極を使用するリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池に関し、より具体的には、少なくともニッケルおよびコバルトを含有するリチウム複合酸化物を含み、前記リチウム複合酸化物の平均半径に対して前記リチウム複合酸化物の表面部から中心部に向かってコバルトの濃度が減少する濃度勾配が所定の厚さで形成されることにより、前記リチウム複合酸化物の表面部だけでなく、中心部において粒子の安定性を向上させることが可能な正極活物質、前記正極活物質を含む正極、および前記正極を使用するリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、正極と負極に電気化学反応が可能な物質を使用することによって電力を貯蔵するものである。このような電池のうち代表的な例としては、正極および負極においてリチウムイオンがインターカレーション/デインターカレーションされる際の化学電位(chemical potential)の差によって電気エネルギーを貯蔵するリチウム二次電池がある。
【0003】
前記リチウム二次電池は、リチウムイオンの可逆的なインターカレーション/デインターカレーションが可能な物質を正極と負極活物質として使用し、前記正極と負極の間に有機電解液またはポリマー電解液を充填させて製造する。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム複合酸化物が使用されており、その例として、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiMnOなどの複合酸化物が研究されている。
【0005】
前記正極活物質のうちLiCoOは、寿命特性および充放電効率に優れていて、最も多く使用されているが、原料として使用されるコバルトの資源的限界に起因して高価であるから、価格競争力に限界があるという短所を有している。
【0006】
LiMnO、LiMnなどのリチウムマンガン酸化物は、熱的安全性に優れ、価格が安いという長所があるが、容量が小さく、高温特性が悪いという問題点がある。また、LiNiO系正極活物質は、高い放電容量の電池特性を示しているが、Liと遷移金属間のカチオンミキシング(cation mixing)問題に起因して合成が難しく、それによって、レート(rate)特性に大きな問題点がある。
【0007】
また、このようなカチオンミキシングの深化程度に応じて多量のLi副産物が発生し、これらのLi副産物の大部分は、LiOHおよびLiCOの化合物からなるので、正極ペーストの製造時にゲル(gel)化する問題点と、電極の製造後に充放電の進行によるガス発生の原因となる。残留のLiCOは、セルのスウェリング現象を増加させてサイクルを減少させるだけでなく、バッテリーが膨らむ原因となる。
【0008】
なお、正極活物質に含まれたリチウム複合酸化物は、充放電時にリチウム複合酸化物に対するリチウムイオンのインターカレーション/デインターカレーションによって体積変化を伴う。通常、リチウム複合酸化物は、複数の一次粒子が凝集した二次粒子の形態であるが、充放電時に一次粒子の急激な体積変化が発生したり、繰り返された充放電によるストレスが累積する場合、二次粒子内クラック(crack)が発生したり、結晶構造の崩壊または結晶構造の変化(相転移)が発生する問題がある。
【0009】
このような問題は、結局、正極活物質の安定性および信頼性を低下させる原因として作用するので、充放電時にリチウム複合酸化物の体積変化を緩和させたり、体積変化による応力発生を最小化して粒子の損傷を防止するための様々な研究が続いている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
リチウム二次電池の市場では、電気自動車用リチウム二次電池の成長が市場の牽引役としての役割をしている中で、リチウム二次電池に使用される正極活物質の需要も持続的に変化している。
【0011】
例えば、従来、安全性の確保などの観点から、LFPを使用したリチウム二次電池が主に使用されてきたが、最近になってLFPに比べて重量当たりのエネルギー容量が大きいニッケル系リチウム複合酸化物の使用が拡大する傾向にある。
【0012】
これによって、より高仕様のリチウム二次電池に使用される正極活物質は、さらに苛酷な作動条件下でも適切に期待される安定性および信頼性を全部満たす必要がある。
【0013】
従来、充放電時にリチウム複合酸化物の体積変化を緩和させたり、体積変化による応力発生を最小化して粒子の損傷を防止するために、一次粒子間に所定の空隙が存在するようにすることによって、一次粒子の体積変化による応力を分散させたことがある。しかしながら、このようなリチウム複合酸化物は、単位体積当たりのエネルギー密度が低いという限界が存在する。
【0014】
また、リチウム複合酸化物の劣化は、主に粒子の表面または粒子間界面で発生するので、粒子の表面および/または界面をコーティングすることによって、充放電時にリチウム複合酸化物の体積変化を緩和させたり、体積変化による応力発生を減らすことができる。一般的に、リチウム複合酸化物は、多数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子の形態であるが、この際、一次粒子の表面および/または界面を十分にコーティングするためには、コーティングのために必要な原料物質の含有量も増加することとなる。この場合、最終品内コーティング元素の含有量が多くなり、これによって、ニッケルの含有量が減少するに従って正極活物質の充放電容量が低くなる恐れがある。
【0015】
これによって、本発明は、相対的に少ない量のコーティング原料物質を使用しても、リチウム複合酸化物の表面部だけでなく、中心部において十分な粒子保護効果を発揮できるように、粒子の凝集程度が低い正極活物質を提供することを目的とする。
【0016】
また、本発明は、リチウム複合酸化物の平均半径に対して前記リチウム複合酸化物の表面部から中心部に向かってコバルトの濃度が減少する濃度勾配が所定の厚さで形成されることにより、前記リチウム複合酸化物の表面部だけでなく、中心部において粒子の安定性を向上させることが可能な正極活物質を提供することを目的とする。
【0017】
また、本発明の他の目的は、本願において定義された正極活物質を含む正極を提供することにある。
【0018】
また、本発明のさらに他の目的は、本願において定義された正極を使用するリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一態様によれば、少なくともニッケルおよびコバルトを含有するリチウム複合酸化物を含む正極活物質であって、前記リチウム複合酸化物の断面を基準として前記リチウム複合酸化物の平均半径に対して前記リチウム複合酸化物の表面部から中心部に向かってコバルトの濃度が減少する濃度勾配が所定の厚さで形成されることにより、前記リチウム複合酸化物の表面部だけでなく、中心部において粒子の安定性を向上した正極活物質が提供される。
【0020】
具体的には、前記正極活物質のうち前記リチウム複合酸化物には、前記リチウム複合酸化物の断面を基準として前記リチウム複合酸化物の表面部から中心部に向かってコバルトの濃度が減少する濃度勾配が形成された第1区間および前記第1区間の内側にコバルトの濃度が所定の範囲内に維持される第2区間に区切られ得る。
【0021】
この際、前記リチウム複合酸化物の断面から測定された平均半径をdというとき、前記平均半径dと前記第1区間の厚さd1の比d1/dが0.08~0.27内に存在することによって、前記リチウム複合酸化物の表面および/または界面コーティングのために使用したコーティング原料物質の含有量を最小化しつつ、前記リチウム複合酸化物の表面部および中心部内粒子の十分な保護効果を発揮することができる。
【0022】
一実施例において、前記リチウム複合酸化物を断面加工処理した後、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して前記リチウム複合酸化物の断面を撮影して得られた断面SEM像において前記リチウム複合酸化物の中心を短軸方向に横切る仮想の直線上に配置された結晶子に対して下記の式1で計算される結晶粒界の密度が0.50以下であってもよい。
【0023】
[式1]
結晶粒界の密度=(前記仮想の直線上に配置された結晶子間の境界面の数/前記仮想の直線上に配置された結晶子の数)
【0024】
この際、前記リチウム複合酸化物は、単一の結晶子からなる非凝集の単一粒子であってもよく、この場合、前記式1によって前記リチウム複合酸化物から計算された結晶粒界の密度は0である。
【0025】
前記リチウム複合酸化物は、単一の結晶子からなる非凝集の単一粒子である場合、前記単一粒子の断面を基準として前記単一粒子の表面部から中心部に向かってコバルトの濃度が減少する濃度勾配が形成された第1区間および前記第1区間の内側にコバルトの濃度が所定の範囲内に維持される第2区間に区切られ得る。
【0026】
また、前記正極活物質は、複数のリチウム複合酸化物の集合体であってもよい。すなわち、前記正極活物質は、前記式1で計算される結晶粒界の密度が同一または異なる複数のリチウム複合酸化物の集合体として提供されることができる。
【0027】
この場合、前記正極活物質のうち前記リチウム複合酸化物を断面加工処理した後、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して前記リチウム複合酸化物の断面を撮影して得られた断面SEM像において前記リチウム複合酸化物の中心を短軸方向に横切る仮想の直線上に配置された結晶子に対して前記式1で計算される結晶粒界の密度が0.50以下のリチウム複合酸化物の割合が30%以上であることが好ましい。
【0028】
他の実施例において、前記リチウム複合酸化物の表面における粒子安定性を高めるために、前記リチウム複合酸化物の表面のうち少なくとも一部をカバーするコーティング層が設けられてもよい。
【0029】
また、本発明の他の態様によれば、本願に定義された正極活物質を含む正極が提供される。
【0030】
また、本発明のさらに他の態様によれば、本願に定義された正極を使用するリチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0031】
前述したように、正極活物質に含まれたリチウム複合酸化物は、充放電時にリチウム複合酸化物に対するリチウムイオンのインターカレーション/デインターカレーションによって体積変化を必然的に伴う。この際、充放電時にリチウム複合酸化物の体積変化を緩和させたり、体積変化による応力発生を最小化して粒子の損傷を防止できる方案は、様々なものがありうるが、まだ正極活物質に含まれたリチウム複合酸化物の損傷に起因したリチウム二次電池の劣化問題が十分に解消されたと見難い。
【0032】
しかしながら、本発明によれば、少なくともニッケルおよびコバルトを含有するリチウム複合酸化物を含み、前記リチウム複合酸化物の平均半径に対して前記リチウム複合酸化物の表面部から中心部に向かってコバルトの濃度が減少する濃度勾配が所定の厚さで形成されることにより、前記リチウム複合酸化物の表面部だけでなく、中心部において粒子の安定性を向上させることが可能である。
【0033】
これによって、本発明による正極活物質を使用する場合、正極活物質に起因するリチウム二次電池の性能劣化を遅延させることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明をより容易に理解するため、便宜上、特定用語を本願に定義する。本願において特に定義しない限り、本発明で用いられた科学用語及び技術用語は、当技術分野における通常の知識を有する者にとって一般的に理解される意味を有する。また、文脈上、特に指定しない限り、単数形態の用語は、それの複数形態も含むものであり、複数形態の用語は、それの単数形態も含むものと理解すべきである。
【0035】
以下、本発明による正極活物質および前記正極活物質を含むリチウム二次電池についてより詳細に説明する。
【0036】
正極活物質
本発明の一態様によれば、少なくともニッケルおよびコバルトを含有するリチウム複合酸化物を含む正極活物質が提供される。また、前記リチウム複合酸化物は、ニッケルおよびコバルト以外にリチウムを含み、リチウムイオンのインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な層状結晶構造を有する複合金属酸化物である。
【0037】
前記リチウム複合酸化物のうちコバルトは、前記リチウム複合酸化物の表面部から中心部に向かって減少する濃度勾配を有することができる。前記リチウム複合酸化物中の遷移金属の濃度は、公知の様々な方法で測定することができる。例えば、前記リチウム複合酸化物を断面処理した後、EDSマッピングを通じてターゲット遷移金属の濃度変化をline scanning方式で測定することができる。すなわち、前記リチウム複合酸化物の表面部から中心部に向かう方向にターゲット遷移金属の濃度の変化を確認することができる。
【0038】
また、前記リチウム複合酸化物の表面に照射する電子ビーム(electron beam)の加速電圧Vaccを変化させて各加速電圧の電子ビームが浸透した特定の深さにおけるターゲット遷移金属の濃度を測定するEnergy Profiling-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy(EP-EDS)方式がある。
【0039】
この際、前記コバルトの濃度勾配は、前記リチウム複合酸化物の表面部から中心部に向かってコバルトの濃度が連続的に減少したり不連続的に減少する濃度勾配であってもよい。
【0040】
すなわち、前記コバルトの濃度を測定する任意の区間内始点から終点まで前記コバルトの濃度が減少する場合、前記コバルトは、前記任意の区間内始点から終点に向かって減少する濃度勾配を有するものを指すことができる。
【0041】
前記リチウム複合酸化物の断面を基準として前記リチウム複合酸化物の表面部から中心部に向かってコバルトの濃度が減少する濃度勾配が形成された領域を第1区間と定義することができる。この際、前記第1区間の始点となる前記リチウム複合酸化物の表面部は、前記リチウム複合酸化物の最外郭に該当する。また、前記第1区間の終点は、後述する前記第2区間の始点と同一である。
【0042】
前記第1区間の内側には、前記リチウム複合酸化物のうちコバルトの濃度が所定の範囲内に維持される領域が存在し、前記領域を第2区間と定義することができる。
【0043】
前記第1区間の始点と終点間のコバルトの濃度変化の傾きと比較するとき、前記第2区間内コバルトの濃度の変化が有意味でなく、前記第1区間の始点と終点間のコバルトの濃度変化の傾きより小さい傾きを示す領域を前記第2区間と定義することができる。
【0044】
また、前記リチウム複合酸化物のうち前記コバルトの濃度変化率が10mol%以下の領域を第2区間と定義することもでき、この際、前記コバルトの濃度変化率は、任意の領域の始点と終点におけるコバルトの濃度を比較して算出された変化率であるか、前記第2区間中コバルトの平均濃度と前記第2区間中任意の地点におけるコバルトの濃度の差異を指すことができる。
【0045】
要するに、本発明による正極活物質に含まれたリチウム複合酸化物には、前記リチウム複合酸化物の断面を基準として前記リチウム複合酸化物の表面部から中心部に向かってコバルトの濃度が減少する濃度勾配が形成された第1区間および前記第1区間の内側にコバルトの濃度が所定の範囲内に維持される第2区間に区切られる。
【0046】
この際、前記リチウム複合酸化物の断面から測定された平均半径をdというとき、前記平均半径dと前記第1区間の厚さd1の比d1/dは0.08~0.27であり、前記平均半径dと前記第2区間の厚さd2の比d2/dは0.73~0.92であることが好ましい。
【0047】
前記平均半径dと前記第1区間の厚さd1の比d1/dが0.08より小さい場合、前記リチウム複合酸化物のうちコバルトが前記リチウム複合酸化物の最外郭に過度に近く存在することにより、前記リチウム複合酸化物の内側にクラック(crack)発生、結晶構造の崩壊または結晶構造の変化(相転移)のような粒子損傷を十分に防止しにくい。
【0048】
なお、前記平均半径dと前記第1区間の厚さd1の比d1/dが0.27より大きい場合、前記リチウム複合酸化物の中心部内コバルトの含有量が過度に多くなり、これによって、ニッケルの含有量が減少するに従って、前記リチウム複合酸化物を使用したリチウム二次電池の充放電容量が低くなる。
【0049】
前記第1区間中Co/Niの平均モル比は0.25~0.39であり、前記第1区間中平均Co濃度c1と前記リチウム複合酸化物に対してICP分析に基づいて測定された平均Co濃度cの比は1.70~2.60であることが好ましい。
【0050】
前記第1区間中Co/Niのモル比が0.25より小さいか、前記第1区間中平均Co濃度c1と前記リチウム複合酸化物に対してICP分析に基づいて測定された平均Co濃度cの比が1.70より小さいことは、前記第1区間内コバルトが十分に存在しないだけでなく、前記第1区間よりコバルトの含有量が少ない前記第2区間内コバルトの含有量も過度に低いことを意味する。
【0051】
この場合、前記リチウム複合酸化物の表面部および中心部に存在する粒子の損傷(例えば、結晶構造の崩壊、結晶構造の変化(相転移))を十分に防止しにくい。
【0052】
別に言えば、前記リチウム複合酸化物が複数の一次粒子が凝集した二次粒子である場合、前記二次粒子の表面部(または、前記二次粒子の表面部に位置し、外気に露出した一次粒子の表面)および前記二次粒子の中心部に位置する前記一次粒子の表面に対する保護効果が不十分で、前記二次粒子の表面部および中心部に位置する一次粒子の損傷(例えば、結晶構造の崩壊、結晶構造の変化(相転移))を招くことができる。
【0053】
一方、前記第1区間中Co/Niの平均モル比が0.39より大きいか、前記第1区間中平均Co濃度c1と前記リチウム複合酸化物に対してICP分析に基づいて測定された平均Co濃度cの比が2.60より大きいことは、前記第1区間中コバルトが過度に集中することにより、前記第2区間内コバルトの含有量が不足したり、前記第1区間中コバルトが過剰の状態で存在することを意味する。
【0054】
この場合、前記第1区間中コバルトが過度に集中することにより、かえって前記リチウム複合酸化物を使用したリチウム二次電池の充放電容量が低くなる逆効果が発生したり、前記第2区間内コバルトの含有量が不足することにより、前記リチウム複合酸化物の中心部(前記第2区間に対応する領域)において結晶構造の崩壊または結晶構造の変化(相転移)のような粒子損傷を十分に防止しにくい。
【0055】
また、前記第2区間中Co/Niの平均モル比は、ターゲットとするリチウム複合酸化物の組成によって変わり得るが、前記リチウム複合酸化物を使用したリチウム二次電池の充放電容量を向上させるために、0.090より小さいことが好ましい。もし前記第2区間中Co/Niの平均モル比が0.089の場合、少なくとも前記第1区間の終点におけるCo/Niの平均モル比は0.089以上である。
【0056】
前記第2区間中Co/Niのモル比が大きくなるほど前記リチウム複合酸化物を使用したリチウム二次電池の充放電容量が低下することがある。
【0057】
また、前記第2区間中Co/Niのモル比が大きくなるほど前記リチウム複合酸化物を製造するために同量のコバルト含有原料物質を使用したという前提下に、相対的に前記第1区間内コバルトの含有量が不足することを意味することもできる。この場合、前記リチウム複合酸化物の表面部における粒子保護効果が不十分である。
【0058】
一実施例において、前記リチウム複合酸化物は、下記の化学式1で表され得る。
【0059】
[化学式1]
LiNi1-(x+y+z)CoM1M2
【0060】
(ここで、
M1は、MnおよびAlから選択される少なくとも1つであり、
M2は、P、Sr、Ba、Ti、Zr、Mn、Al、W、Ce、Hf、Ta、Cr、F、Mg、V、Fe、Zn、Si、Y、Ga、Sn、Mo、Ge、Nd、B、Nb、GdおよびCuから選択される少なくとも1つであり、
M1とM2は、互いに異なっており、
0.5≦w≦1.5、0≦x≦0.50、0≦y≦0.20、0≦z≦0.20である)
【0061】
前記化学式1で表される前記リチウム複合酸化物は、前記第1区間内コバルトの濃度に対応するxと前記第2区間内コバルトの濃度に対応するxとは、互いに異なる値を有する。また、前記第1区間と前記第2区間でコバルトの濃度が異なることにより、ニッケル、M1およびM2から選択される少なくとも1つの金属元素の濃度も異なっていてもよい。
【0062】
前記リチウム複合酸化物は、前記第1区間と前記第2区間中コバルトを含む少なくとも1つの金属元素の濃度が異なるとしても、ICP分析により測定される平均組成として表示することができる。
【0063】
前記リチウム複合酸化物は、前記化学式1においてNi、Co、M1およびM2の濃度(mol%)が下記の関係式1を満たすhigh-Niタイプのリチウム複合酸化物であってもよい。
【0064】
[関係式1]
Ni/(Ni+Co+M1+M2)≧80.0
【0065】
また、前記リチウム複合酸化物は、前記化学式1においてNi、Co、M1およびM2の濃度(mol%)が前記関係式1を満たすと同時に、Coの含有量が10mol%以下、好ましくは、5mol%以下であるhigh-Ni/low-Coタイプのリチウム複合酸化物であってもよい。
【0066】
すなわち、前記リチウム複合酸化物は、前記化学式1においてNi、Co、M1およびM2の濃度(mol%)が下記の関係式2を満たすことができる。
【0067】
[関係式2]
Co/(Ni+Co+M1+M2)≦5.0
【0068】
一般的に、少なくともニッケルおよびコバルトを含むリチウム複合酸化物において、Niの含有量が増加するほどLi/Ni cation mixingによるリチウム複合酸化物の構造的不安定性をもたらすことができることが知られている。また、少なくともニッケルおよびコバルトを含むリチウム複合酸化物において、コバルトの含有量が減少するほど初期過電圧(抵抗)が増加し、これによって、レート特性の低下が避けられないことが知られている。
【0069】
しかしながら、本発明の一実施例による正極活物質に含まれたリチウム複合酸化物は、前記リチウム複合酸化物の平均半径に対して前記リチウム複合酸化物の表面部から中心部に向かってコバルトの濃度が減少する濃度勾配が所定の厚さで形成されることにより、high-Niタイプまたはhigh-Ni/low-Coタイプのリチウム複合酸化物の構造的不安定性およびレート特性の低下を緩和および/または防止することができる。
【0070】
なお、本願に定義された正極活物質に含まれた前記リチウム複合酸化物は、少なくとも1つの一次粒子(primary particle)を含む二次粒子(secondary particle)であってもよい。この際、前記一次粒子は、結晶子(crystallite)として表現され得る。
【0071】
ここで、「少なくとも1つの一次粒子を含む二次粒子」は、「複数の一次粒子が凝集して形成された粒子」または「単一の結晶子からなる非凝集の単一粒子」を全部含むものと解釈しなければならない。
【0072】
前記一次粒子および前記二次粒子は、それぞれ独立して、棒状、楕円状および/または不定形の形状を有することができる。
【0073】
前記一次粒子および前記二次粒子のサイズを示す指標として平均長軸長さを使用する場合、前記リチウム複合酸化物を構成する前記一次粒子の平均長軸長さは0.1μm~5μmであってもよく、前記二次粒子の平均長軸長さは1μm~30μmであってもよい。前記二次粒子の平均長軸長さは、前記二次粒子を構成する前記一次粒子の数によって変わり得、前記正極活物質内には、様々な平均長軸長さを有する粒子が含まれてもよい。
【0074】
前記リチウム複合酸化物が「単一の結晶子からなる非凝集の単一粒子」であるか、「比較的に少ない数の一次粒子が凝集して形成された粒子」である場合、「単一の結晶子からなる非凝集の単一粒子」または「比較的に少ない数の一次粒子が凝集して形成された粒子」内含まれた一次粒子のサイズ(平均粒径)は、「数十~数百個またはそれ以上の一次粒子が凝集して形成された二次粒子」内に含まれた一次粒子(平均粒径)より大きくてもよい。
【0075】
このように、「単一の結晶子からなる非凝集の単一粒子」であるか、「比較的に少ない数の一次粒子が凝集して形成された粒子」であるリチウム複合酸化物は、一般的に、「数十~数百個またはそれ以上の一次粒子が凝集して形成された二次粒子」を製造する場合に比べて、強い熱処理条件(高い熱処理温度/長時間熱処理)を要求する。相対的に高温(例えば、800℃以上)で長時間熱処理する場合、粒子成長(結晶成長)が促進されて、単一の粒子のサイズが大きくなると同時に、粒子の凝集度が低くなった正極活物質が収得されることが知られている。
【0076】
例えば、前記リチウム複合酸化物が「単一の結晶子からなる非凝集の単一粒子」であるか、「比較的に少ない数の一次粒子が凝集して形成された粒子」である場合、前記一次粒子の平均長軸長さは、0.5μm~20μmの範囲内に存在してもよい。一方、前記リチウム複合酸化物が「複数(数十~数百個またはそれ以上)の一次粒子が凝集して形成された粒子」である場合、前記一次粒子の平均長軸長さは0.1μm~5μmの範囲内に存在してもよい。
【0077】
前述したように、本発明の一実施例による正極活物質は、相対的に少ない量のコーティング原料物質を使用しても、リチウム複合酸化物の表面部だけでなく、中心部においても十分な粒子保護効果を発揮できるように粒子(結晶子)の凝集程度が低い。
【0078】
前記リチウム複合酸化物の凝集程度は、本願において定義された結晶粒界の密度により測定することができる。
【0079】
具体的には、前記結晶粒界の密度は、前記リチウム複合酸化物を断面加工処理した後、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して前記リチウム複合酸化物の断面を撮影して得られた断面SEM像において前記リチウム複合酸化物の中心を短軸方向に横切る仮想の直線上に配置された結晶子の数と結晶子間の境界面の数を下記の式1に代入して計算することができる。
【0080】
[式1]
結晶粒界の密度=(前記仮想の直線上に配置された結晶子間の境界面の数/前記仮想の直線上に配置された結晶子の数)
【0081】
この際、前記リチウム複合酸化物は、前記式1で計算される結晶粒界の密度が0.50以下であってもよい。
【0082】
例えば、前記リチウム複合酸化物が単一の結晶子からなる非凝集の単一粒子である場合、前記リチウム複合酸化物の断面SEM像において前記リチウム複合酸化物の中心を横切る仮想の直線上に配置された結晶子の数は1個であり、これによって、結晶子間の境界面は、存在しないので、前記式1によって計算される結晶粒界の密度は0となる。
【0083】
また、前記リチウム複合酸化物が比較的に少ない数の一次粒子が凝集して形成された粒子である場合、前記リチウム複合酸化物の断面SEM像において前記リチウム複合酸化物の中心を横切る仮想の直線上に配置された結晶子(一次粒子)の数は2個であり、これによって、結晶子間の境界面は1個が存在するので、前記式1によって計算される結晶粒界の密度は0.5となる。
【0084】
一般的に、リチウム複合酸化物は、多数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子の形態であるが、この際、一次粒子の表面および/または界面を十分にコーティングするためには、コーティングのために必要な原料物質の含有量も増加することとなり、これによって、最終品内コーティング元素の含有量が多くなって、正極活物質の充放電容量または可逆効率が低くなる恐れがある。また、同一含有量のコーティング原料物質を使用するという前提下に、前記二次粒子内一次粒子の数が多くなるほど前記二次粒子内に浸透するコーティング原料物質の相対的な含有量が増加するので、前記二次粒子の表面に存在するコーティング元素の含有量が減少することができる。
【0085】
これによって、前述した結晶粒界の密度の定義を満足する本発明によるリチウム複合酸化物は、相対的に少ない量のコーティング原料物質を使用しても、リチウム複合酸化物の表面部だけでなく、中心部においても十分な粒子保護効果を発揮することができるという利点がある。
【0086】
なお、前記正極活物質は、複数のリチウム複合酸化物の集合体であってもよい。すなわち、前記正極活物質は、前記式1で計算される結晶粒界の密度が同じまたは異なる複数のリチウム複合酸化物の集合体として提供されることができる。
【0087】
この際、前記正極活物質のうち前記リチウム複合酸化物を断面加工処理した後、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して前記リチウム複合酸化物の断面を撮影して得られた断面SEM像において前記リチウム複合酸化物の中心を短軸方向に横切る仮想の直線上に配置された結晶子に対して前記式1で計算される結晶粒界の密度が0.50以下のリチウム複合酸化物の割合が30%以上であることが好ましい。
【0088】
前記正極活物質中、前記式1で計算される結晶粒界の密度が0.50以下のリチウム複合酸化物の割合は、前記断面SEM像から確認される複数のリチウム複合酸化物の結晶粒界の密度をそれぞれ計算した後、前記断面SEM像から確認されるリチウム複合酸化物の全体数に対して結晶粒界の密度が0.50以下のリチウム複合酸化物の数の割合として計算することができる。
【0089】
前記正極活物質中、前記式1で計算される結晶粒界の密度が0.50以下のリチウム複合酸化物の割合が30%より小さいことは、前記正極活物質中に多結晶形態のリチウム複合酸化物が過量で存在することを意味する。
【0090】
これは、結局、本願において定義されたリチウム複合酸化物の平均半径に対して第1区間の厚さおよび前記第1区間中所定のコバルトの濃度を達成するために使用すべきコバルト含有原料物質が過度に多く投入される必要があることを意味する。この場合、複数のリチウム複合酸化物の集合体として提供される正極活物質内コバルトの平均含有量が多くなり、それによって、Niの割合が低くなって、正極活物質の充放電容量が低くなる恐れがある。また、正極活物質を製造するために使用されるコバルト含有原料物質の量が増加することにより、正極活物質の製造コストが増加するという問題がある。
【0091】
さらに、前記リチウム複合酸化物の表面のうち少なくとも一部をカバーするコーティング層が形成されてもよい。前記コーティング層には、下記の化学式2で表される少なくとも1種の金属酸化物が存在する。すなわち、前記コーティング層は、前記リチウム複合酸化物の表面のうち下記の化学式2で表される酸化物が存在する領域と定義することができる。
【0092】
[化学式2]
LiM3
【0093】
(ここで、
M3は、Ni、Mn、Co、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、Eu、Sm、W、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選択される少なくとも1つであり、
0≦a≦10、0≦b≦8、2≦c≦13である)
【0094】
また、前記コーティング層は、1つの層内異種の金属酸化物が同時に存在したり、異種の金属酸化物がそれぞれ別個の層に存在する形態であってもよい。
【0095】
前記化学式2で表される金属酸化物は、前記の化学式1で表されるリチウム複合酸化物と物理的および/または化学的に結合した状態であってもよい。また、前記金属酸化物は、前記の化学式1で表される一次粒子と固溶体を形成した状態で存在することもできる。
【0096】
前記リチウム複合酸化物が単一の結晶子からなる非凝集の単一粒子である場合、前記金属酸化物は、前記単一粒子の表面に部分的にまたは全体的に存在してもよい。
【0097】
一方、前記リチウム複合酸化物が複数の一次粒子が凝集した二次粒子である場合、前記金属酸化物は、前記複数の一次粒子間の界面および前記二次粒子の表面に部分的にまたは全体的に存在してもよい。
【0098】
前記金属酸化物が粒子の表面に部分的に存在する場合、前記コーティング層は、アイランド(island)形態として存在してもよい
【0099】
リチウム二次電池
本発明のさらに他の態様によれば、正極集電体および前記正極集電体上に形成された正極活物質層を含む正極を提供することができる。ここで、前記正極活物質層は、本発明の様々な実施例による正極活物質を含んでもよい。したがって、正極活物質層は、前述したものと同様なので、便宜上、具体的な説明を省略し、以下では、残りの前述しない構成のみについて説明する。
【0100】
前記正極活物質層は、前記正極活物質とともに導電材及び必要に応じて選択的にバインダーを含む正極スラリー組成物を前記正極集電体に塗布して製造されてもよい。
【0101】
このとき、前記正極活物質は、正極活物質層の総重量に対して80~99wt%、より具体的には、85~98.5wt%の含量で含まれてもよい。前記含量範囲に含まれるとき、優れた容量特性を示すことができるが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0102】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こすことなく電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が用いられてもよい。前記導電材は、正極活物質層の総重量に対して0.1~15重量%で含まれてもよい。
【0103】
前記バインダーは、正極活物質粒子間の付着及び正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割を果たす。具体例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体などが挙げられ、これらのうち、1種単独または2種以上の混合物が用いられてもよい。前記バインダーは、正極活物質層の総重量に対して0.1~15重量%で含まれてもよい。
【0104】
前記正極は、前記正極活物質を用いることを除いては、通常の正極製造方法によって製造されてもよい。具体的には、前記正極活物質及び選択的に、バインダー及び導電材を溶媒中に溶解又は分散させて製造した正極スラリー組成物を正極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延することにより製造してもよい。
【0105】
前記溶媒としては、当該技術分野で一般的に使用される溶媒であってよく、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)または水などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が用いられてもよい。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造収率を考慮して、前記正極活物質、導電材及びバインダーを溶解又は分散させ、その後、正極製造のための塗布時に優れた厚さ均一度を示すことができる粘度を持たせる程度であれば十分である。
【0106】
また、他の実施例において、前記正極は、前記正極スラリー組成物を別途の支持体上にキャストした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを正極集電体上にラミネーションすることによって製造されてもよい。
【0107】
また、本発明のさらに他の態様によれば、前述の正極を含む電気化学素子が提供されてもよい。前記電気化学素子は、具体的には、電池、キャパシタなどであってもよく、より具体的には、リチウム二次電池であってもよい。
【0108】
前記リチウム二次電池は、具体的には、正極、前記正極と対向して位置する負極、及び前記正極と前記負極との間に介在する分離膜及び電解質を含んでもよい。ここで、前記正極は、前述の通りであるので、便宜上、具体的な説明を省略し、以下では、前述しない残りの構成についてのみ具体的に説明する。
【0109】
前記リチウム二次電池は、前記正極、前記負極及び前記分離膜の電極組立体を収納する電池容器及び前記電池容器を封止する封止部材を選択的にさらに含んでもよい。
【0110】
前記負極は、負極集電体及び前記負極集電体上に位置する負極活物質層とを含んでもよい。
【0111】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが用いられてもよい。また、前記負極集電体は、通常、3μm~500μmの厚さを有してもよく、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布などの様々な形態で使用されてもよい。
【0112】
前記負極活物質層は、前記負極活物質とともに導電材及び必要に応じて選択的にバインダーとを含む負極スラリー組成物を前記負極集電体に塗布して製造されてもよい。
【0113】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーション及びデインターカレーションが可能な化合物が使用されてもよい。具体例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料、Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金などのリチウムと合金化が可能な金属質化合物、SiOβ(0<β<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープ及び脱ドープ可能な金属酸化物、またはSi-C複合体またはSn-C複合体のように前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などが挙げられ、これらのいずれか1つまたは2つ以上の混合物が使用されてもよい。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜が用いられてもよい。また、炭素材料としては、低結晶炭素及び高結晶性炭素などがすべて用いられてもよい。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)及び硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては無定形、板状、鱗片状、球状又は繊維状の天然黒鉛又は人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、炭素微小球体(meso-carbon microbeads)、液晶ピッチ(Mesophase pitches)及び石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0114】
前記負極活物質は、負極活物質層の全重量を基準に80~99wt%で含まれてもよい。
【0115】
前記バインダーは、導電材、活物質及び集電体間の結合に助力する成分として、通常、負極活物質層の全重量を基準に0.1~10wt%で添加されてもよい。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの多様な共重合体などが挙げられる。
【0116】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分として、負極活物質層の全重量を基準に10重量%以下、好ましくは、5重量%以下で添加されてもよい。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック、炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維、フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、ポリフェニレン誘導体などの導電性材料などが用いられてもよい。
【0117】
一実施例において、前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質、及び選択的にバインダー及び導電材を溶媒中に溶解又は分散させて製造した負極スラリー組成物を塗布して乾燥することにより製造されるか、または前記負極スラリー組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネーションすることにより製造されてもよい。
【0118】
また、他の実施例において、前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質、及び選択的にバインダー及び導電材を溶媒中に溶解又は分散させて製造した負極スラリー組成物を塗布して乾燥するか、または前記負極スラリー組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネーションすることにより製造されてもよい。
【0119】
一方、前記リチウム二次電池において、分離膜は、負極と正極を分離してリチウムイオンの移動通路を提供するもので、通常、リチウム二次電池において分離膜として使用されるものであれば、特に制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗であるとともに電解液含湿能力に優れていることが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が用いられてもよい。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が用いられてもよい。また、耐熱性または機械的強度を確保するため、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされた分離膜が使用されてもよく、選択的に単層または多層構造として使用されてもよい。
【0120】
また、本発明で用いられる電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル状高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0121】
具体的には、前記電解質は、有機溶媒及びリチウム塩を含んでもよい。
【0122】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動可能な媒質の役割を果たすものであれば、特に制限なく使用されてもよい。具体的には、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)などのエステル系溶媒、ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒、シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒、ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒、ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)などのカーボネート系溶媒、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒、R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分岐状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含んでもよい。)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類、またはスルホラン(sulfolane)類などが使用されてもよい。これらの中でもカーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度及び高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の線状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート又はジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、約1:1~約1:9の体積比で混合して使用すると電解液の性能が優秀になりうる。
【0123】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池において使用されるリチウムイオンを提供できる化合物であれば、特に制限なく使用されてもよい。具体的には、前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO)、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiI、またはLiB(Cなどが使用されてもよい。前記リチウム塩の濃度は、0.1~2.0M範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するため、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動しうる。
【0124】
前記電解質には、前記電解質構成成分の他に、電池の寿命特性向上、電池容量の減少抑制、電池の放電容量の向上などを目的として、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤がさらに1種以上含まれてもよい。このとき、前記添加剤は、電解質の総重量に対して0.1~5重量%で含まれてもよい。
【0125】
前記のように本発明による正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性及び寿命特性を安定的に示すため、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどの携帯用機器、及びハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などに有用である。
【0126】
本発明によるリチウム二次電池の外形は、特に制限がないが、缶を用いた円筒状、角状、ポーチ(pouch)状またはコイン(coin)状などであってもよい。また、リチウム二次電池は、小型デバイスの電源として使用される電池セルに使用できるだけでなく、複数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく使用されてもよい。
【0127】
本発明のさらに他の態様によれば、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュール及び/又はこれを含む電池パックを提供しうる。
【0128】
前記電池モジュールまたは前記電池パックは、パワーツール(Power Tool)と、電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、及びプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気自動車と、または電力貯蔵用システムのいずれか1つ以上の中大型デバイスの電源として利用できる。
【0129】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、これらの実施例は、本発明を例示するためのものであり、本発明の範疇がこれらの実施例によって制限されるとは解釈されない。
【0130】
製造例1.正極活物質の製造
実施例1
(a)硫酸ニッケル、硫酸コバルトおよび硫酸アルミニウムを使用する公知の共沈法(co-precipitation method)を用いてNiCoAl(OH)水酸化物前駆体(Ni:Co:Al=91:8:1(at%))を合成した。合成した水酸化物前駆体は、450℃まで1分当たり10℃で昇温し、450℃で6時間低温焼成して酸化させた。
【0131】
(b)前記酸化物前駆体とLiOH(Li/(Ni+Co+Al)mol ratio=1.03)およびNaOH(Na/(Ni+Co+Al)mol ratio=0.01)を混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、820℃まで1分当たり2℃で昇温し、820℃で12時間第1熱処理して、リチウム複合酸化物を収得した。
【0132】
(c)前記リチウム複合酸化物を基準として3.0mol%の硫酸コバルトを含む水溶液を準備し、前記硫酸コバルト水溶液に前記リチウム複合酸化物、錯化剤およびpH調節剤を投入して混合物を製造した後、1時間撹拌した。次に、前記混合物を脱水した後、120℃で12時間乾燥した。
【0133】
(d)前記リチウム複合酸化物を焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、700℃まで1分当たり2℃で昇温し、700℃で8時間第2熱処理して、Li1.0Ni0.876Co0.109Al0.011Na0.004組成を有するリチウム複合酸化物を収得した。前記リチウム複合酸化物の組成は、ICP分析を通じて確認した。
【0134】
実施例2
段階(b)で第1熱処理温度が850℃であることを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0135】
実施例3
段階(b)で前記酸化物前駆体とLiOH(Li/(Ni+Co+Al)mol ratio=1.03)、NaOH(Na/(Ni+Co+Al)mol ratio=0.01)およびKCl(K/(Ni+Co+Al)mol ratio=0.01)を混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、900℃まで1分当たり2℃で昇温し、900℃で12時間第1熱処理して収得したリチウム複合酸化物を使用したことを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0136】
実施例3で収得したリチウム複合酸化物に対してICP分析を通じて確認した組成は、Li1.0Ni0.871Co0.108Al0.011Na0.0030.007であった。
【0137】
実施例4
段階(d)で第2熱処理を6時間実施したことを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0138】
実施例5
段階(d)で第2熱処理を10時間実施したことを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。
【0139】
実施例6
(a)硫酸ニッケル、硫酸コバルトおよび硫酸アルミニウムを使用する公知の共沈法(co-precipitation method)を用いてNiCoAl(OH)水酸化物前駆体(Ni:Co:Al=91:8:1(at%))を合成した。合成した水酸化物前駆体は、450℃まで1分当たり10℃で昇温し、450℃で6時間低温焼成して酸化させた。
【0140】
(b)前記酸化物前駆体とLiOH(Li/(Ni+Co+Al)mol ratio=1.03)およびNaOH(Na/(Ni+Co+Al)mol ratio=0.01)を混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、820℃まで1分当たり2℃で昇温し、820℃で12時間第1熱処理して、リチウム複合酸化物を収得した。
【0141】
(c)前記リチウム複合酸化物を基準として3.0mol%の硫酸コバルトおよび1.0mol%の硫酸アルミニウムを含む水溶液を準備し、前記硫酸コバルト水溶液に前記リチウム複合酸化物、錯化剤およびpH調節剤を投入して混合物を製造した後、1時間撹拌した。次に、前記混合物を脱水した後、120℃で12時間乾燥した。
【0142】
(d)前記リチウム複合酸化物を焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、700℃まで1分当たり2℃で昇温し、700℃で8時間第2熱処理して、Li1.0Ni0.865Co0.108Al0.023Na0.004組成を有するリチウム複合酸化物を収得した。前記リチウム複合酸化物の組成は、ICP分析を通じて確認した。
【0143】
比較例1
(a)硫酸ニッケル、硫酸コバルトおよび硫酸アルミニウムを使用する公知の共沈法(co-precipitation method)を用いてNiCoAl(OH)水酸化物前駆体(Ni:Co:Al=91:8:1(at%))を合成した。合成した水酸化物前駆体は、450℃まで1分当たり10℃で昇温し、450℃で6時間低温焼成して酸化させた。
【0144】
(b)前記酸化物前駆体とLiOH(Li/(Ni+Co+Al)mol ratio=1.03)を混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、720℃まで1分当たり2℃で昇温し、720℃で12時間第1熱処理して、リチウム複合酸化物を収得した。
【0145】
(c)前記リチウム複合酸化物を基準として3.0mol%の硫酸コバルトを含む水溶液を準備し、前記硫酸コバルト水溶液に前記リチウム複合酸化物、錯化剤およびpH調節剤を投入して混合物を製造した後、1時間撹拌した。次に、前記混合物を脱水した後、120℃で12時間乾燥した。
【0146】
(d)前記リチウム複合酸化物を焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、700℃まで1分当たり2℃で昇温し、700℃で8時間第2熱処理して、Li1.0Ni0.879Co0.109Al0.012組成を有するリチウム複合酸化物を収得した。前記リチウム複合酸化物の組成は、ICP分析を通じて確認した。
【0147】
比較例2
(a)硫酸ニッケル、硫酸コバルトおよび硫酸アルミニウムを使用する公知の共沈法(co-precipitation method)を用いてNiCoAl(OH)水酸化物前駆体(Ni:Co:Al=91:8:1(at%))を合成した。合成した水酸化物前駆体は、450℃まで1分当たり10℃で昇温し、450℃で6時間低温焼成して酸化させた。
【0148】
(b)前記酸化物前駆体とLiOH(Li/(Ni+Co+Al)mol ratio=1.03)およびNaOH(Na/(Ni+Co+Al)mol ratio=0.01)を混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、820℃まで1分当たり2℃で昇温し、820℃で12時間第1熱処理して、リチウム複合酸化物を収得した。
【0149】
(c)前記リチウム複合酸化物を蒸留水に投入して混合物を製造した後、1時間撹拌した。次に、前記混合物を脱水した後、120℃で12時間乾燥した。
【0150】
(d)前記リチウム複合酸化物を焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、700℃まで1分当たり2℃で昇温し、700℃で8時間第2熱処理して、Li1.0Ni0.905Co0.081Al0.011Na0.003組成を有するリチウム複合酸化物を収得した。前記リチウム複合酸化物の組成は、ICP分析を通じて確認した。
【0151】
比較例3
(a)硫酸ニッケル、硫酸コバルトおよび硫酸アルミニウムを使用する公知の共沈法(co-precipitation method)を用いてNiCoAl(OH)水酸化物前駆体(Ni:Co:Al=91:8:1(at%))を合成した。合成した水酸化物前駆体は、450℃まで1分当たり10℃で昇温し、450℃で6時間低温焼成して酸化させた。
【0152】
(b)前記酸化物前駆体とLiOH(Li/(Ni+Co+Al)mol ratio=1.03)を混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、820℃まで1分当たり2℃で昇温し、820℃で12時間第1熱処理して、リチウム複合酸化物を収得した。
【0153】
(c)前記リチウム複合酸化物を基準として3.0mol%の硫酸コバルトを含む水溶液を準備し、前記硫酸コバルト水溶液に前記リチウム複合酸化物、錯化剤およびpH調節剤を投入して混合物を製造した後、1時間撹拌した。次に、前記混合物を脱水した後、120℃で12時間乾燥した。
【0154】
(d)前記リチウム複合酸化物を焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、700℃まで1分当たり2℃で昇温し、700℃で8時間第2熱処理して、Li1.0Ni0.880Co0.109Al0.011)組成を有するリチウム複合酸化物を収得した。前記リチウム複合酸化物の組成は、ICP分析を通じて確認した。
【0155】
比較例4
(a)硫酸ニッケル、硫酸コバルトおよび硫酸アルミニウムを使用する公知の共沈法(co-precipitation method)を用いてNiCoAl(OH)水酸化物前駆体(Ni:Co:Al=91:8:1(at%))を合成した。合成した水酸化物前駆体は、450℃まで1分当たり10℃で昇温し、450℃で6時間低温焼成して酸化させた。
【0156】
(b)前記酸化物前駆体とLiOH(Li/(Ni+Co+Al)mol ratio=1.03)およびNaOH(Na/(Ni+Co+Al)mol ratio=0.01)を混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、820℃まで1分当たり2℃で昇温し、820℃で12時間第1熱処理して、リチウム複合酸化物を収得した。
【0157】
(c)前記リチウム複合酸化物を基準として3.0mol%の硫酸コバルトを含む水溶液を準備し、前記硫酸コバルト水溶液に前記リチウム複合酸化物、錯化剤およびpH調節剤を投入して混合物を製造した後、1時間撹拌した。次に、前記混合物を脱水した後、120℃で12時間乾燥した。
【0158】
(d)前記リチウム複合酸化物を焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、700℃まで1分当たり2℃で昇温し、700℃で18時間第2熱処理して、Li1.0Ni0.874Co0.111Al0.011Na0.004組成を有するリチウム複合酸化物を収得した。前記リチウム複合酸化物の組成は、ICP分析を通じて確認した。
【0159】
製造例2.リチウム二次電池の製造
製造例1によって製造された正極活物質それぞれ92wt%、人造黒鉛4wt%、PVDFバインダー4wt%をN-メチル-2ピロリドン(NMP)30gに分散させて、正極スラリーを製造した。前記正極スラリーを厚さ15μmのアルミニウム薄膜に均一に塗布し、135℃で真空乾燥して、リチウム二次電池用正極を製造した。
【0160】
前記正極に対してリチウムホイルを対電極(counter electrode)とし、多孔性ポリエチレン膜(Celgard 2300、厚さ:25μm)を分離膜とし、エチレンカーボネートおよびエチルメチルカーボネートが3:7の体積比で混合された溶媒にLiPFが1.15Mの濃度で存在する電解液を使用してコイン電池を製造した。
【0161】
実験例1.正極活物質の構造分析
製造例1によって製造された正極活物質に含まれたリチウム複合酸化物の結晶粒界の密度を測定するために、断面SEM像から確認される二次粒子内一次粒子の凝集程度を確認した。
【0162】
まず、製造例1によって製造された正極活物質に含まれたリチウム複合酸化物をそれぞれ選別した後、前記リチウム複合酸化物をFIB(Ga-ion source)を利用して断面処理した後、走査型電子顕微鏡を使用して断面SEM像を撮影した。
【0163】
次に、前記断面SEM像から確認される複数の粒子に対してそれぞれ前記粒子の中心を短軸方向に横切る仮想の直線上に配置された結晶子の数と結晶子間の境界面の数を下記の式1に代入して、結晶粒界の密度を計算した。
【0164】
[式1]
結晶粒界の密度=(前記仮想の直線上に配置された結晶子間の境界面の数/前記仮想の直線上に配置された結晶子の数)
【0165】
また、前記断面SEM像から確認される複数の粒子中、前記式1によって計算された結晶粒界の密度が0.5以下である粒子の割合を算出し、前記算出結果は、下記の表1に示した。
【0166】
【表1】
【0167】
実験例2.正極活物質の組成分析
製造例1によって製造された正極活物質に含まれたリチウム複合酸化物中コバルトの濃度変化を確認するために、SEM/EDX分析を実施した。
【0168】
まず、製造例1によって製造された正極活物質に含まれたリチウム複合酸化物をそれぞれ選別した後、前記リチウム複合酸化物をFIB(Ga-ion source)を利用して断面処理した後、走査型電子顕微鏡を使用して断面SEM像を撮影した。
【0169】
次に、前記断面SEM像から確認される複数の粒子のうち10個を選別した後、選別した粒子に対するEDS分析を通じてターゲット遷移金属であるコバルトをmappingし、line scanningを通じて前記リチウム複合酸化物の表面部から中心部に向かう方向にコバルトの濃度変化を確認した。
【0170】
この際、前記リチウム複合酸化物の断面SEM像を基準として前記リチウム複合酸化物の表面部から中心部に向かってコバルトの濃度が減少する濃度勾配が形成された領域を第1区間と定義し、前記第1区間の内側にコバルトの濃度が所定の範囲(コバルトの濃度変化率が10mol%以下)に維持される領域を第2区間と定義した。
【0171】
前記分析結果は、下記の表2および表3に記載され、表2に記載された結果値は、それぞれの実施例および比較例による正極活物質のうち複数のリチウム複合酸化物から測定された平均値を示した。
【0172】
【表2】
【0173】
【表3】
d:リチウム複合酸化物の平均半径
d1:line sum spectrumグラフから確認された第1区間の厚さ
c1:第1区間中Coの平均濃度(mol%)
n1:第1区間中Niの平均濃度(mol%)
c:リチウム複合酸化物に対してICP分析に基づいて測定された平均Co濃度
c2:第2区間中Coの平均濃度(mol%)
n2:第2区間中Niの平均濃度(mol%)
【0174】
実験例3.リチウム二次電池の電気化学的特性の評価
製造例2で製造されたリチウム二次電池(コインセル)に対して電気化学分析装置(Toyo、Toscat-3100)を利用して25℃、電圧範囲3.0V~4.25V、0.2Cの放電率を適用して充放電実験を実施して、充電および放電容量を測定した
【0175】
また、同じリチウム二次電池に対して25℃、3.0V~4.25Vの駆動電圧の範囲内で1C/1Cの条件で50回充放電を実施した後、初期容量に対して50サイクル目の放電容量の割合(サイクル容量維持率;capacity retention)を測定した。
【0176】
前記測定結果は、下記の表4に示した。
【0177】
【表4】
【0178】
実験例4.リチウム二次電池の安定性の評価
製造例2と同じ方法で50mm×65mmポーチ形態のリチウム二次電池を製造し、前記リチウム二次電池を定電流0.2Cで4.3Vまで充電した後、高温(70℃)で14日間保管して、リチウム二次電池内ガスの発生に起因するリチウム二次電池の体積変化を測定した。体積変化率は、高温保管前後の体積をそれぞれ測定して、高温保管前後の体積変化率を%で換算した。
【0179】
上述した方法によって測定されたリチウム二次電池の体積変化率は、下記の表5に示した。
【0180】
【表5】
【0181】
以上、本発明の実施例について説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば特許請求の範囲に記載された本発明の思想から逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除又は追加などにより本発明を多様に修正及び変更させることができ、これも本発明の権利範囲内に含まれるといえる。
【国際調査報告】