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特表2023-546117骨生体組織工学に用いる骨単位テンプレート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】骨生体組織工学に用いる骨単位テンプレート
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/40 20060101AFI20231025BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20231025BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20231025BHJP
   A61L 27/20 20060101ALI20231025BHJP
   A61L 27/22 20060101ALI20231025BHJP
   A61L 27/12 20060101ALI20231025BHJP
   A61L 27/52 20060101ALI20231025BHJP
   C12N 5/077 20100101ALN20231025BHJP
【FI】
A61L27/40
C12M3/00
A61L27/38 200
A61L27/18
A61L27/20
A61L27/22
A61L27/12
A61L27/52
C12N5/077
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523032
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(85)【翻訳文提出日】2023-06-05
(86)【国際出願番号】 EP2021078856
(87)【国際公開番号】W WO2022079323
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】2016465.3
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519326448
【氏名又は名称】ベストランデツ イノバシオンセルスカップ アーエス
【氏名又は名称原語表記】Vestlandets Innovasjonsselskap AS
【住所又は居所原語表記】Thormohlens gate 51, 5006 Bergen, Norway
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】エルシバハイ、アーマド ラシャド サード モハメッド
(72)【発明者】
【氏名】ムスタファ、カマル バビケール エルン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4C081
【Fターム(参考)】
4B029AA21
4B029BB11
4B029CC02
4B065AA90X
4B065BC41
4B065BC46
4B065CA44
4C081AB03
4C081BA12
4C081BA13
4C081CA171
4C081CD021
4C081CD041
4C081CD111
4C081CD34
4C081CF031
4C081DA01
4C081DB08
4C081DC01
4C081EA02
4C081EA03
(57)【要約】
生体組織工学用の骨単位テンプレートが提供され、この骨単位テンプレートは、第一ヒドロゲルと血管形成細胞とから成る第一群の複数の血管形成フィラメント11と、第二ヒドロゲルと骨形成細胞とから成る第二群の複数の骨形成フィラメント12と、を備え、第一群の複数の血管形成フィラメントは、第二群の複数の第二骨形成フィラメントと交互に同心配置10として配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織工学用の骨単位テンプレートであって、
第一ヒドロゲルと血管形成細胞とから成る第一群の複数の血管形成フィラメントと、第二ヒドロゲルと骨形成細胞とから成る第二群の複数の骨形成フィラメントと、を備え、
前記第一群の複数の血管形成フィラメントは、前記第二群の複数の骨形成フィラメントと交互に同心配置として配置される
ことを特徴とする骨単位テンプレート。
【請求項2】
前記同心配置の中心から発して前記第一群の複数の血管形成フィラメントおよび前記第二群の複数の骨形成フィラメントを分断する、少なくとも一つの放射状チャネルをさらに備える
ことを特徴とする、請求項1に記載の骨単位テンプレート。
【請求項3】
前記血管形成フィラメントおよび前記骨形成フィラメントの各々をn個の円弧状断片に分割するように、前記第一群の複数の血管形成フィラメントおよび前記第二群の複数の骨形成フィラメントを分断するn個の放射状チャネルを備える
ことを特徴とする、請求項2に記載の骨単位テンプレート。
【請求項4】
前記同心配置のほぼ中央に中央空隙をさらに備える
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の骨単位テンプレート。
【請求項5】
前記第一群の複数の血管形成フィラメントのうち一つ以上は、前記第一ヒドロゲルおよび前記血管形成細胞から成るシェルによって取り囲まれた中空な中心部を備える
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の骨単位テンプレート。
【請求項6】
一つ以上のバイオリアクター管が、少なくともいくつかの前記血管形成フィラメントの中空な前記中心部を通って延びるように配置される
ことを特徴とする、請求項5に記載の骨単位テンプレート。
【請求項7】
前記同心配置にある一つ以上の前記骨形成フィラメントは、径方向内側に配置された血管形成フィラメントおよび径方向外側に配置された別の血管形成フィラメントによって囲まれる
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の骨単位テンプレート。
【請求項8】
前記血管形成フィラメントは第一直径を有し、前記骨形成フィラメントは前記第一直径より大きい第二直径を有する
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の骨単位テンプレート。
【請求項9】
前記第一直径は50~200ミクロンの範囲であり、前記第二直径は200~400ミクロンの範囲である
ことを特徴とする、請求項8に記載の骨単位テンプレート。
【請求項10】
前記血管形成フィラメントは、第一変形しにくさを有する前記第一ヒドロゲルから成り、前記骨形成フィラメントは、前記第一変形しにくさより大きい第二変形しにくさを有する前記第二ヒドロゲルから成る
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の骨単位テンプレート。
【請求項11】
基層をさらに備え、前記同心配置は前記基層の上に配置される
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の骨単位テンプレート。
【請求項12】
前記同心配置は最初のフィラメント層を形成し、前記骨単位テンプレートは、前記同心配置から形成されて前記最初のフィラメント層上に積み重ねられた一つ以上の別のフィラメント層を含んで、複数のフィラメント層から成る三次元骨単位テンプレートを形成する
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の骨単位テンプレート。
【請求項13】
前記三次元骨単位テンプレートはほぼ円筒形である
ことを特徴とする、請求項12に記載の骨単位テンプレート。
【請求項14】
一つ以上の放射状チャネルが各々のフィラメント層に形成され、前記一つ以上の放射状チャネルが複数のフィラメント層の各々に整列されて、前記三次元骨単位テンプレートに軸方向および放射状に延びるチャネルを画定する
ことを特徴とする、請求項12または13に記載の骨単位テンプレート。
【請求項15】
各々のフィラメント層は中央空隙を備え、複数の前記フィラメント層は、複数の前記中央空隙が前記三次元骨単位テンプレートの中心で軸方向チャネルを画定するように積み重ねられる
ことを特徴とする、請求項12乃至請求項14のいずれかに記載の骨単位テンプレート。
【請求項16】
追加の支持層が複数の前記フィラメント層の間に配置される
ことを特徴とする、請求項12乃至請求項15のいずれかに記載の骨単位テンプレート。
【請求項17】
三次元スキャフォールドと、前記三次元スキャフォールドに支持されほぼ同心配列に配置される、複数の、請求項12乃至請求項16のいずれかに記載の骨単位テンプレートと、を備える
ことを特徴とする骨形成モデル。
【請求項18】
前記三次元スキャフォールドは、第一組の一つ以上の壁と、前記第一組の一つ以上の壁を実質的に囲むように配置され、前記第一組の一つ以上の壁との間に空洞を画定する間隔を有する第二組の一つ以上の壁と、を備え、前記同心配列が、前記壁同士の間の前記空洞内に配置される
ことを特徴とする、請求項17に記載の骨形成モデル。
【請求項19】
積層造形法を使用して少なくとも前記第一群の複数の血管形成フィラメントおよび前記第二群の複数の骨形成フィラメントを積層させる、請求項1乃至請求項16のいずれかに記載の骨単位テンプレートを作成する方法。
【請求項20】
骨単位テンプレートを製造する方法であって、
第一群の複数の血管形成フィラメントおよび第二群の複数の骨形成フィラメントから成る同心配置を積層させる積層造形加工を使用することを含み、
前記第一群の複数の血管形成フィラメントは、前記第二群の複数の骨形成フィラメントと同心配置として交互に配置され、
前記第一群の複数の血管形成フィラメントは第一ヒドロゲルおよび血管形成細胞から成り、前記第二群の複数の骨形成フィラメントは、第二ヒドロゲルおよび骨形成細胞から成る
ことを特徴とする方法。
【請求項21】
前記同心配置の中心から発する少なくとも一つの放射状チャネルを形成して、前記第一群の複数の血管形成フィラメントおよび前記第二群の複数の骨形成フィラメントを分断するように積層造形加工を制御することをさらに含む
ことを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第一群の複数の血管形成フィラメントのうちの一つ以上を、前記第一ヒドロゲルおよび血管形成細胞から成るシェルによって取り囲まれた中空な中心部で構成される中心部・シェル構造として形成するように前記積層造形加工を制御することをさらに含む
ことを特徴とする、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
n個の放射状チャネルを形成するように前記積層造形加工を制御することをさらに含み、
nは、前記中心部・シェル構造で形成される前記血管形成フィラメントの数に基づいて決定される
ことを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記骨単位テンプレートを使用して成長させる目標骨に基づいて前記骨単位テンプレートとしての直径を決定することと、
前記同心配置が前記直径で形成されるように前記積層造形加工を制御することと、をさらに含む
ことを特徴とする、請求項20乃至請求項23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
n個の放射状チャネルを形成するように前記積層造形加工を制御することをさらに含み、nは前記同心配置の直径に基づいて決定される
ことを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨単位テンプレートを用いる生体組織工学用の装置および方法に関する。
【0002】
生体組織工学とは、一般に、細胞成長時に支持体としてテンプレートやスキャフォールドなどの工学的構造を使用し、生体細胞から新しい結合組織や器官を成長させることに関するものである。生体組織工学技術を使用することによって、ドナー・ホストに移植して戻すための臓器や組織移植片を作製できる。生体組織工学では幹細胞が関与する場合が頻繁にあり、適切な部位に幹細胞を移植することによって、骨、腱、および軟骨を形成させることができる。用途としては、体内での皮膚創傷治癒および軟骨、靭帯、または骨の修復、ならびに体外でのそのような過程の研究が含まれる。
【背景技術】
【0003】
骨の再生や修復を助けるために、幹細胞を播種した生体適合性材料を含むテンプレートを体内に埋め込むことが可能である。ただし、骨移植片の不成功率は高くなりがちである。骨生体組織工学では、3D構造システムにおける幹細胞の骨形成および血管形成の潜在力が、体外および体内で実証されている。典型的な生体組織工学による治療では、合成されたテンプレートによって媒介された骨細胞を使用して、治癒手順を加速する。骨再生の環境には、様々な細胞の種類、成長因子、栄養供給、機械的刺激などが含まれ、非常に複雑である。
【0004】
栄養素が生体組織工学テンプレートを通して灌流する機能、およびテンプレートから廃棄物を除去する機能が、テンプレート領域で発達する骨機能の助けになることが分かっている。これは、骨細胞がオステオンと呼ばれる単位で骨細胞材料内に詰まっているため、緻密な皮質骨の発達を助けるテンプレートを提供する場合に特に重要である。骨細胞は、骨折の治癒に役立つが、骨が治癒する過程を実行するための栄養素の受け取りと老廃物の排出に左右される。
【0005】
骨生体組織工学テンプレートは、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)などの内皮細胞と、ヒト間葉系幹細胞(hMSC)などの幹細胞と、から成るヒドロゲルから形成されることが知られている。最近は、押し出し成形式3Dバイオプリンティングを利用して、天然のオステオンに見られるHUVECおよびhMSCの分布様式を模倣することが提案されている。この分野の研究者は、HUVECおよびhMSCを含むフィブリン・ヒドロゲルを「バイオインク」として印刷して骨様構造体にしようとしている。しかし、そのような構造体が骨生体組織の作製を成功させるのに十分な新血管形成を提供できるかどうかはまだ証明されていない。
【0006】
血管形成と信頼性の高い骨成長を可能にする骨生体組織工学テンプレートの必要性は依然として残っている。
【発明の概要】
【0007】
本発明の第一の態様によれば、第一ヒドロゲルと血管形成細胞とから成る第一群の複数の血管形成フィラメントと、第二ヒドロゲルと骨形成細胞とから成る第二群の複数の骨形成フィラメントと、を備える、生体組織工学用の骨単位テンプレートが提供され、前記第一群の複数の血管形成フィラメントは、前記第二群の複数の骨形成フィラメントと交互に同心配置として配置される。
【0008】
生体組織工学では、骨の成長を刺激するために骨形成材料の量を最大化することが一般的である。しかし、本発明者らは、天然の骨組織においては、ほとんどの細胞が毛細血管から限られた距離内に存在して、酸素の十分な拡散、栄養素の灌流、および老廃物の除去を確実にすることを認識するに至った。血管形成フィラメントと骨形成フィラメントとを交互に配置することによって、効率的な骨の成長を支えるのに十分な骨形成成分を提供しながら、灌流過程が促進されることが保証される。したがって、開示された同心配置によれば、骨形成能と血管形成との間のバランスを取ることができる。
【0009】
上記の議論から、第一群の複数の血管形成フィラメントの各々一つ(またはいくつか)が第二群の複数の骨形成フィラメントの別の一つ(またはいくつか)と交互に配置されることは、ある種類のフィラメントから別の種類のフィラメントへと交互配置され、また最初の種類に戻ることを意味すると理解されよう。もちろん、この交互配置は、規則的または不規則な様式で繰り返してもよい。この交互配置によって、前記同心配置の骨形成フィラメントは、血管形成フィラメントによって提供される灌流過程から利益を得ることが保証されると同時に、効率的な骨の成長を支えるのに十分な骨形成細胞の密度および分布が提供される。したがって、前記同心配置は、第一群の複数の血管形成フィラメントのうち一つ以上に続いて第二群の複数の骨形成フィラメントのうち一つ以上が存在し次に第一群の複数の血管形成フィラメントのうち別の一つ以上を含むか、または、第二群の複数の骨形成フィラメントのうち一つ以上に続いて第一群の複数の血管形成フィラメントのうち一つ以上が存在し次に第二群の複数の骨形成フィラメントのうち別の一つ以上を含むことを理解されたい。
【0010】
前記テンプレート全体の血液灌流および血管形成を増加させることによって、前記テンプレート内の骨の成長が改善することが期待できる。本発明者らは、そのような骨単位テンプレートの灌流性を高めるいくつかの手法をさらに認識した。
【0011】
少なくともいくつかの実施形態では、前記テンプレートは、前記同心配置の中心から発する少なくとも一つの放射状チャネルをさらに備え、第一群の複数の血管形成フィラメントおよび第二群の複数の骨形成フィラメントを分断する。前記少なくとも一つの放射状チャネルによって、材料が前記同心配置を通って輸送される面内経路が提供され、体外でのより良好な拡散と体内での生体組織統合および血管形成とが可能になる。前記少なくとも一つの放射状チャネルによって、隣接する血管形成フィラメント同士の間および隣接する骨形成フィラメント同士の間(すなわち周方向)の間隙が画定される。この間隙は、各フィラメントの直径や幅よりもサイズがはるかに大きく、例えば一桁大きいこともあり得る。例えば、血管形成フィラメントおよび骨形成フィラメントは、200μmのオーダーの直径を有し得るし、間隙は幅約2mmであり得る。
【0012】
少なくともいくつかの実施形態では、前記テンプレートは、前記第一群の複数の血管形成フィラメントおよび前記第二群の複数の骨形成フィラメントを分断するn個(n>1)の放射状チャネルを備えることによって、各々の血管形成フィラメントおよび骨形成フィラメントがn個の円弧セグメントに分割される。したがって、前記放射状チャネルによって、隣接する円弧セグメント同士の間に間隙が画定され、灌流が可能になる。前述のように、前記間隙は約 1~2mmの幅であり得る。
【0013】
少なくともいくつかの実施形態では、前記同心配置は、例えば各々が同一の曲率中心を有する多数の円弧セグメントが形成されるように、前記放射状チャネルによって分断された多数の不完全な円弧として同心状に配置された複数の第一および第二フィラメントを備え得る。複数の前記円弧セグメントの曲率中心は、前記同心配置の中心と一致し得る。前記放射状チャネルは、前記同心配置の中心から外周まで延在し得る。
【0014】
放射状チャンネルの数が多いほど、灌流に利用できる経路が多くなるが、数が多すぎると、前記テンプレートで利用できる骨形成材料の量が減少し始めて有害になり得る。いくつかの実施形態では、数nは2~10の範囲に収まるように選択され、例えば、テンプレートは2、4、6、または8個の放射状チャネルを備える。いくつかの実施形態では、数nは、前記テンプレートの直径に応じて選択される。これは、より大きなテンプレートには、より多くの放射状チャネルが含まれ得ることを意味する。
【0015】
少なくともいくつかの実施形態では、追加または代替として、前記テンプレートは、前記同心配置のほぼ中央に中央空隙をさらに備える。中央空隙の存在によって、材料を前記同心配置の中心へ/中心から面外輸送することが可能になり、上述の場合と同様に、体外でのより良好な拡散と体内での生体組織統合および血管形成とが可能になる。前記中央空隙が前記同心配置に対して正確に中心にない場合もあり得るし、前記テンプレートが回転対称でない場合もあり得ることを理解されたい。前記テンプレートが一つ以上の放射状チャネルを備える任意の実施形態と組み合わせれば、前記放射状チャネルによって前記中央空隙から発散し得るし、前記中央空隙によって放射状経路が合流しそれらの間で材料が交換されることが都合よく可能になる。前記中央空隙は、前記フィラメントの直径や幅よりもサイズが大きく、例えば一桁大きいこともあり得る。例えば、前記血管形成フィラメントおよび骨形成フィラメントは、200μmのオーダーの直径を有し得るし、前記中心空隙は、3~4mmの直径を有し得る。
【0016】
前記血管形成フィラメントおよび/または骨形成フィラメントは、均一なフィラメントとして形成され得る。少なくともいくつかの実施形態では、前記骨形成フィラメントは、骨形成細胞の分布を最大化するように、前記第二ヒドロゲルによって形成される固体構造を有する。前記血管形成フィラメントも、前記第一ヒドロゲルによって形成される固体構造を有し得る。しかし、本発明者らは、前記血管形成フィラメントが異質なフィラメントとして形成されることが有益であり得ることを認識した。
【0017】
少なくともいくつかの実施形態では、追加または代替として、前記第一群の複数の血管形成フィラメントのうち一つ以上は、前記第一ヒドロゲルおよび前記血管形成細胞から成るシェルによって取り囲まれた中空な中心部を備える。このような中心部・シェル構造は、各材料が前記血管形成フィラメントの中空な前記中心部を介し前記同心配置を通って周方向に輸送され得るため、灌流を支援すると期待される。前記テンプレートが一つ以上の放射状チャネルを備える任意の実施形態と組み合わせれば、放射状チャネルの数は、中空な前記中心部によって提供される灌流を考慮して、減らし得る。こうすれば、前記テンプレート内において、その灌流性を維持しながら、骨形成フィラメントの量を最大化する助けとなり得る。前記血管形成フィラメントに中心部・シェル構造を使用すると、前記テンプレートにとってより動的な環境が提供されるので、例えば薬物検査中に、循環しやすくなり得る。
【0018】
本発明者らはさらに、前記血管形成フィラメントの中空な前記中心部が他の目的に利用され得ることを認識した。例えば、中空な前記中心部によって、薬物送達が可能になり、薬物検査の助けとなり得る。これらの実施形態の少なくともいくつかでは、一つ以上のバイオリアクター管が、少なくともいくつかの前記血管形成フィラメントの中空な前記中心部を通って延びるように配置される。したがって、前記バイオリアクター管は、前記骨単位テンプレートの周りの血液の循環を模倣できて、例えば、薬物検査に役立ち得る。
【0019】
交互に配置される前記血管形成フィラメントおよび骨形成フィラメントは、骨形成フィラメントが前記同心配置の径方向内側に、および/または前記骨形成フィラメントが前記同心配置の径方向外側に配置され得る。こうすれば、骨の成長のために前記テンプレートに存在する骨形成細胞の数を最大化できると期待され得る。しかし、本発明者らは、前記骨形成フィラメントにとっては、血管形成を促進するように血管形成フィラメントの間に挟まれるのが有益であることを認識した。したがって、少なくともいくつかの実施形態では、追加または代替として、前記同心配置にある一つ以上の(そして好ましくは各々の)前記骨形成フィラメントは、径方向内側に配置された血管形成フィラメントおよび径方向外側に配置された別の血管形成フィラメントによって囲まれる。
【0020】
血管形成を促進することが本明細書に開示される実施形態の目的であるが、生体組織工学が成功するためには、骨形成細胞が十分な数だけ存在することにも依存する。前記血管形成フィラメントおよび骨形成フィラメントは、同じサイズおよび直径を有するように形成され得る。しかし、骨の成長の可能性を最大化するには、前記骨形成フィラメントは前記血管形成フィラメントよりも大きいことが好ましい。したがって、少なくともいくつかの実施形態では、前記血管形成フィラメントは第一直径を有し、前記骨形成フィラメントは前記第一直径より大きい第二直径を有する。前記骨形成フィラメントが前記血管形成フィラメントよりも大きい程度は、骨成長の播種と血管形成の促進との間のバランスであり得る。本発明者らは、天然の骨組織において、ほとんどの細胞が毛細血管から最大距離100~200μm以内にあることを知るに至った。したがって、前記第二直径は、200~400ミクロンの範囲にあるように選択され得る。少なくともいくつかの実施形態では、前記第一直径は50~200ミクロンの範囲であり、前記第二直径は200~400ミクロンの範囲である。
【0021】
様々な実施形態において、前記第一ヒドロゲルは、前記第二ヒドロゲルと実質的に同じであり得る。任意の適切な生体適合性ヒドロゲル材料を使用し得る。生体組織工学に適したヒドロゲルを形成できる合成材料の例には、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(プロピレンフマレート-co-エチレングリコール)、およびポリペプチドが含まれる。天然ヒドロゲルの例には、アガロース、アルギン酸塩、キトサン、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、およびヒアルロン酸が含まれる。 分子量、材料濃度、架橋剤の選択、およびゲル化条件をすべて考慮すれば、前記第一ヒドロゲルおよび第二ヒドロゲルの所望の変形しにくさおよび/または安定性を達成し得る。さらに、少なくとも、前記血管形成フィラメントおよび骨形成フィラメントが3Dプリンティング技術によって積層される実施形態では、前記ヒドロゲルの粘度を考慮に入れることがあり得る。
【0022】
前記第一ヒドロゲルおよび/または第二ヒドロゲルは、一つ以上の添加剤から成り得る。例えば、前記第一ヒドロゲルは、血管形成細胞の整列および血管形成のための管形成を誘導するナノセルロースを含み得る。例えば、前記第二ヒドロゲルは、骨形成細胞の骨形成分化を誘導する針状ヒドロキシアパタイトナノ粒子を含み得る。さらに、または代替として、添加剤を選択して、前記第一ヒドロゲルおよび/または第二ヒドロゲルの変形しにくさを変更し得る。
【0023】
より一般的には、前記第一ヒドロゲルは「ソフト」ヒドロゲルとして選択または設計され、前記第二ヒドロゲルは「変形しにくい」(stiff)または「堅い」(rigid)ヒドロゲルとして選択または設計され得る。したがって、少なくともいくつかの実施形態では、前記血管形成フィラメントは、第一変形しにくさを有する前記第一ヒドロゲルから成り、前記骨形成フィラメントは、前記第一変形しにくさより大きい第二変形しにく易さを有する前記第二ヒドロゲルから成る。例えば、前記第二ヒドロゲルは、高アスペクト比(例えば、針状)のヒドロキシアパタイトナノ粒子を含み得るが、オプションとしてマグネシウムを注入し得る。
【0024】
前記血管形成フィラメントおよび骨形成フィラメントは、前記同心配置が自立するのに十分なほど変形しにくいことがあり得る。しかし、様々な実施形態において、前述した各フィラメントは、一つ以上の放射状チャネルによって分断されて、前記同心配置がその形状を保持するのがより困難になり得る。特に、多数の放射状チャネルによって前述した各フィラメントが別個の円弧セグメントに分割される実施形態では、複数の前記円弧セグメントを互いに対して所定の位置に支持して、例えば前記放射状チャネルが開いたままになるようにするために、基層が必要になり得る。少なくともいくつかの実施形態では、前記テンプレートは基層をさらに備え、前記同心配置は前記基層の上に設置される。前記基層はヒドロゲルから形成され得て、このヒドロゲルはオプションとして前記第一ヒドロゲルおよび/または第二ヒドロゲルと同一であり得る。前述のように、前記ヒドロゲルは、その材料特性を調整するために一つ以上の添加剤を含み得る。
【0025】
本明細書に開示される前記骨単位テンプレートは、例えば、薬物検査および基礎細胞研究において、実質的に平面のテンプレートとして使用され得る。さらに、前記骨単位テンプレートは、前述した各フィラメントを高アスペクト比のシートとして積層させることによって、三次元テンプレートとして形成され得る。しかし、3Dプリンティングなどの積層造形加工においては、前述した各フィラメントが実質的に単一のアスペクト比で積層され、例えば積層位置で射出される結果としてほぼ円形の断面を有するのが典型的である。積層造形加工の利点は、多数の層をすばやく連続して積層させて、三次元構造を構築できることである。少なくともいくつかの実施形態では、前記骨単位テンプレートは、多数の層から成る三次元構造体である。一つ以上の実施形態では、前記同心配置は最初のフィラメント層を形成し、前記骨単位テンプレートは、そのような複数の同心配置から形成されて前記最初のフィラメント層上に積み重ねられた一つ以上の別のフィラメント層を含んで、複数のフィラメント層から成る三次元骨単位テンプレートを形成する。同心配置は多角形の形状を有してもよいが、天然の骨の形状を模倣するために円形の形状が好ましい。少なくともいくつかの実施形態では、前記三次元骨単位テンプレートはほぼ円筒形である。
【0026】
これらの実施形態の少なくともいくつかでは、一つ以上の放射状チャネルが、各々のフィラメント層に形成され、前記一つ以上の放射状チャネルが複数のフィラメント層の各々に整列されて、前記三次元骨単位テンプレートにおいて軸方向および放射状に延びるチャネルを画定する。
【0027】
これらの実施形態の少なくともいくつかでは、追加または代替として、各々のフィラメント層は中央空隙を備え、複数の前記フィラメント層は、複数の前記中央空隙が前記三次元骨単位テンプレートの中心で軸方向チャネルを画定するように積み重ねられる。
【0028】
これらの実施形態の少なくともいくつかでは、追加または代替として、追加の支持層(例えばヒドロゲルの支持層)が複数の前記フィラメント層の間に配置される。例えば、追加の支持層が最初の前記フィラメント層の上、または一つ以上の別の前記フィラメント層の上に配置され、少なくとも一つの別のフィラメント層が前記追加の支持層の上に配置される。前記追加の支持層は、ヒドロゲルから形成され得るし、前記ヒドロゲルは、オプションとして、前記第一ヒドロゲルおよび/または第二ヒドロゲルと一致し得る。前述のように、前記ヒドロゲルは、その材料特性を調整するために 一つ以上の添加剤を含み得る。
【0029】
上に開示された前記三次元骨単位テンプレートは、天然の骨単位(オステオン)に実質的に一致するように設計され得ることが理解されるであろう。例えば、前記骨単位テンプレートは、それを使用して成長させる目標骨における直径が、天然の骨単位の直径と実質的に一致する直径で作製され得る。本発明のいくつかのさらなる実施形態では、いくつかの骨単位テンプレートは、皮質骨の天然の構造を模倣する配列で並べられ得る。例えば、本明細書に開示される多数の骨単位テンプレートは、ほぼ円形および/または同心配列に配置されて骨形成モデルを形成し得る。したがって、このような骨形成モデルは、骨構造の天然の複雑さを模倣し得る。前記骨形成モデルは、少なくともいくつかの例では自立し得る。
【0030】
幹細胞および/または血管形成細胞の体内成長のための物理的支持体として三次元スキャフォールドを使用することが発明者らによって以前に提案された。前記スキャフォールドの形状は、国際特許出願公開広報WO2018/162764号に記載されているように、天然の骨環境に一致するように設計され得る。本発明者らは、本明細書に開示された前記骨単位テンプレートがそのような三次元スキャフォールド、または任意の他の適切な生体組織工学用スキャフォールドの利点を利用して、複数の前記骨単位テンプレートを所望の配置で支持することで、骨形成モデルを形成し得ることを認識するに至った。前記骨形成モデルにおける前記骨単位テンプレートの配置は、その応用例に依存し得て、例えば、体外の薬物検査に使用される三次元モデルの場合には、単純な線形または円形の配列で十分であり得る。少なくとも、例えば体内での骨成長のために前記三次元モデルを使用して天然の骨の解剖学的構造を模倣する例では、前記骨単位テンプレートは、同心配列、すなわち、緻密骨における天然の骨単位と同様の配置として配置され得る。これについては、以下に図1を参照してさらに説明する。
【0031】
本発明のさらに別の態様によれば、三次元スキャフォールドと、本明細書に開示されたように、前記三次元スキャフォールドに支持されほぼ同心配列に配置される複数の前記骨単位テンプレートと、を備える骨形成モデルが提供される。同心配列とは、共通の中心点を取り囲む骨単位テンプレートという多数の「環状体」を意味して、この「環状体」が円形でないこともあり得ることが理解されるであろう。したがって、前記三次元スキャフォールドは、皮質骨を模倣して配列された複数の前記骨単位テンプレートを支持するのに役立つ。適切な三次元スキャフォールドは、国際特許出願公開広報WO2018/162764号に記載されており、その内容は参照により本明細書に援用される。
【0032】
少なくともいくつかの実施形態では、前記三次元スキャフォールドは、第一組の一つ以上の壁と、前記第一組の一つ以上の壁を実質的に囲むように配置され、前記第一組の一つ以上の壁との間に空洞を画定する間隔を有する第二組の一つ以上の壁と、を備え、前記同心配列が、前記壁同士の間の前記空洞内に配置される。これは、前記空洞が適切に寸法設定されれば、例えば、目標の天然の骨に一致するように設計された寸法で、骨単位テンプレートの前記同心配列を制御することができ得ることを意味する。
【0033】
少なくともいくつかの実施形態では、前記三次元スキャフォールドは、第一組の一つ以上の壁に囲まれたチャネルから成る内側部と、第二組の一つ以上の壁から成る外側部であって、前記第二組の一つ以上の壁が、前記内側部と前記外側部との間に空洞を画定する間隔を前記第一組の一つ以上の壁と前記第二組の一つ以上の壁との間に空けた状態で、前記第一組の一つ以上の壁を実質的に取り囲むように配置された外側部と、を備える。オプションとして、前記三次元スキャフォールドは、前記内側部と外側部を接続する基体部を備える。これらの実施形態では、骨単位テンプレートの前記同心配列は、前記内側部と外側部との間の前記空洞に配置され得る。これは、前記同心配列を制御して、天然の骨の骨中心まで伸びていない緻密骨に一致させることができることを意味する。国際特許出願公開広報WO2018/162764号に記載されているように、内側チャネルは、天然の骨の緻密骨によって取り囲まれる海綿質(海綿状の骨)内の髄腔に一致するように寸法設定することができる。血管が骨中心を通って酸素の流れを運び、老廃物を取り除くことを可能にするのは髄腔である。この種類の三次元スキャフォールドは、前記骨単位テンプレートの血管形成の助けとなり得る。
【0034】
三次元スキャフォールドから成る骨形成モデルに関する実施形態のいずれにおいても、前記三次元スキャフォールドは、前記骨単位テンプレートを支持するのに十分な強度を有する任意の適切な(例えば生体適合性のある)材料から作製され得る。
【0035】
適切な材料には、セラミック、ポリマー、金属、さらにはヒドロゲルが含まれ得る。 しかし、前記三次元スキャフォールドは、前記骨単位テンプレートよりも頑丈で、および/または、変形しにくいのが好ましい。前記三次元スキャフォールドは、天然であれ合成であれ、ポリマー材料(ポリマー系複合材料を含む)から形成されることが好ましい。前記三次元スキャフォールドは、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ酸無水物、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、シュウ酸ポリアルキレン、コハク酸ポリアルキレン、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、キチン、キトサン、ポリ(L-乳酸)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチレート-co-吉草酸)、および上記のポリマー材料の二元共重合体、三元共重合体、または組み合わせや混合物を含む一つ以上のポリマー材料から形成されるが、これに限定されない。
【0036】
いくつかの実施形態では、前記三次元スキャフォールドの壁は実質的に中実であり得る。他の実施形態では、前記三次元スキャフォールドの壁は、開口部を備え得るか、またはマイクロ繊維メッシュとして作製され得る。
【0037】
国際特許出願公開広報WO2018/162764号にも記載のように、前記三次元スキャフォールドは積層造形技術を使用して好都合に作製され得る。少なくともいくつかの実施形態では、前記三次元スキャフォールドは、3D繊維積層(3DF)法を使用して作製される。少なくともいくつかの実施形態では、前記三次元スキャフォールドは、ラピッドプロトタイピング(RP)法などのコンピュータ制御の製造技術を使用して作製される。 適切なRP法には、3Dプリンティング (例えば、溶融積層モデリング)、選択的レーザー焼結、およびその他の交互積層(layer-by-layer)技術が含まれる。このような技術を使用すると、前記三次元スキャフォールドの設計規模を任意の所望寸法まで拡大したり縮小したりできる (RP機械の解像度の制限内ではあるが)。少なくともいくつかの実施形態では、前記三次元スキャフォールドは、コンピュータ支援設計(CAD)モデルに記録された、個別仕様化され再現可能な設計から作製されたり、そのような設計として記録したりすることができる。これは、オーダーメイドのスキャフォールドを迅速かつ費用対効果の高い方法で製造できるので、目標の骨環境を模倣する骨形成モデルの作成が可能であることを意味する。
【0038】
骨形成モデルの骨単位テンプレートを支持するために三次元スキャフォールドを使用するかどうかに関係なく、前記骨単位テンプレート自体は、3Dプリンティングなどの積層造形技術によって迅速かつ正確に作成され得る。
【0039】
本発明のさらに別の態様によれば、積層造形法を使用して少なくとも前記第一群の複数の血管形成フィラメントおよび前記第二群の複数の骨形成フィラメントを積層させる、本明細書に開示された実施形態のいずれかの骨単位テンプレートを作製する方法が提供される。
【0040】
本発明のさらに別の態様によれば、骨単位テンプレートを製造する方法が提供され、この方法は、第一群の複数の血管形成フィラメントおよび第二群の複数の骨形成フィラメントから成る同心配置を積層させる積層造形加工を使用することを含み、前記第一群の複数の血管形成フィラメントは、前記第二群の複数の骨形成フィラメントと同心配置として交互に配置され、前記第一群の複数の血管形成フィラメントは第一ヒドロゲルおよび血管形成細胞から成り、前記第二群の複数の骨形成フィラメントは、第二ヒドロゲルおよび骨形成細胞から成る。
【0041】
上述のように、前記第一群の複数の血管形成フィラメントの各々一つ(またはいくつか)が前記第二群の複数の骨形成フィラメントの別の一つ(またはいくつか)と交互に配置されることは、ある種類のフィラメントから別の種類のフィラメントへと交互に配置され、また最初の種類に戻ることを意味すると理解されよう。もちろん、規則的または不規則な様式で交互配置を繰り返してもよい。したがって、前記方法は、前記同心配置が、前記第一群の複数の血管形成フィラメントのうち一つ以上に続いて前記第二群の複数の骨形成フィラメントのうち一つ以上が存在し次に前記第一群の複数の血管形成フィラメントのうち別の一つ以上を含むか、または、前記第二群の複数の骨形成フィラメントのうち一つ以上に続いて前記第一群の複数の血管形成フィラメントのうち一つ以上が存在し次に前記第二群の複数の骨形成フィラメントのうち別の一つ以上を含むように、前記同心配置を積層させる積層造形加工を使用することを含むのが理解されよう。
【0042】
積層造形技術によって、骨単位テンプレートを迅速かつ個別仕様化可能に作成できるようになることが理解されるであろう。適切な積層造形加工には、3Dプリンティング、好ましくはマイクロ流体3Dバイオプリンティングが含まれ得る。
【0043】
積層造形加工には、数個の供給ヘッドを備える押し出し式3Dプリンタの使用が必要になり得る。こうすれば、前記骨単位テンプレートの作成に要する種々の材料を単一の3Dプリンタで出力可能になる。例えば、第一供給ヘッドに関連付けられた、前記3Dプリンタの第一カートリッジに骨形成ヒドロゲルを充填し、第二供給ヘッドに関連付けられた、前記3Dプリンタの第二カートリッジに血管形成ヒドロゲルを充填し、第三供給ヘッドに関連付けられた、前記3Dプリンタの 第三カートリッジに(例えば、ポリカプロラクトン (PCL) などの生体適合性熱可塑性樹脂、または無細胞ヒドロゲルのような)構造材料のバイオインクを充填することによって、当該プリンタは、CAD設計に従って三つのヒドロゲル/バイオインクの層を供給できる。
【0044】
いくつかの実施形態では、積層造形加工を使用して前記同心配置を積層させることは、前記第一群の複数の血管形成フィラメントが第一供給ヘッドによって積層され、前記第二群の複数の骨形成フィラメントが第二供給ヘッドによって積層される3Dプリンティング加工を使用することを含む。例えば、この方法は、前記第一供給ヘッドおよび第二供給ヘッドを制御して前記血管形成フィラメントおよび前記骨形成フィラメントを交互に供給し、前記同心配置を実現することを含み得る。少なくともいくつかの例では、前記3Dプリンティング加工は、無細胞構造材料の基層などの基層を積層させる別の供給ヘッドを使用することを含む。適切な構造材料の例としては、例えばポリカプロラクトン(PCL) などの生体適合性熱可塑性樹脂、またはヒドロゲルが挙げられる。前記方法は、基層の上に同心配置を積層することを含み得る。
【0045】
例えば3Dプリンティングなどの積層造形加工を制御して(例えば、上述のように種々の供給ヘッドを制御することによって)、すでに上述したように灌流機能が強化された同心配置を作成し得る。いくつかの実施形態では、前記方法は、前記同心配置の中心から発する少なくとも一つの放射状チャネルを形成して、前記第一群の複数の血管形成フィラメントおよび前記第二群の複数の骨形成フィラメントを分断するように積層造形加工を制御することをさらに含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、追加または代替として、前記方法は、前記第一群の複数の血管形成フィラメントのうちの一つ以上を、前記第一ヒドロゲルおよび管形成細胞から成るシェルによって取り囲まれた中空な中心部で構成される中心部・シェル構造として形成するように前記積層造形加工を制御することをさらに含む。少なくともいくつかの実施形態では、前記方法は、前記第一群の複数の血管形成フィラメントのうちの一つ以上を中心部・シェル構造として供給するように同軸供給ヘッドを制御することを含む。そのような実施形態では、前記方法は、n個の放射状チャネルを形成するように前記積層造形加工を制御することをさらに含み得て、nは、前記中心部・シェル構造で形成される前記血管形成フィラメントの数に基づいて決定される。これは、前記骨単位テンプレートを灌流に合わせて調整できることを意味する。
【0047】
いくつかの実施形態では、追加または代替として、前記方法は、前記骨単位テンプレートを使用して成長させる目標骨に基づいて前記骨単位テンプレートとしての直径を決定することと、前記同心配置が前記直径で形成されるように前記積層造形加工を制御することと、をさらに含む。これは、前記骨単位テンプレートが、意図する用途に応じて合わせられることを意味する。このような実施形態では、前記方法は、n個の放射状チャネルを形成するように前記積層造形加工を制御することをさらに含み得て、nは前記同心配置の直径に基づいて決定される。これは、前記骨単位テンプレートの灌流性がその大きさに基づいて合せられることを意味する。
【0048】
上記の実施形態のいずれにおいても、前記血管形成フィラメント中の血管形成細胞は、ヒト細胞または動物細胞として選択され得る。適切な血管形成細胞には、内皮細胞に分化することができる幹細胞、内皮細胞(例えば、単独で、または線維芽細胞を伴って)、そして神経前駆細胞が含まれ得る。いくつかの好ましい実施形態では、前記血管形成細胞は、成長因子(例えば、VEGFなど)の有無にかかわらず、内皮細胞から成る。例えば、前記血管形成細胞は、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)などの内皮細胞で構成され得る。
【0049】
上記の実施形態のいずれにおいても、前記骨形成フィラメント内の骨形成細胞は、ヒト細胞または動物細胞として選択され得る。適切な骨形成細胞には、多能性幹細胞、間葉系幹細胞(間葉系間質細胞としても知られる)、骨幹細胞、骨芽細胞、および骨細胞が含まれ得る。いくつかの好ましい実施形態では、前記骨形成細胞は間葉系幹細胞から成る。例えば、前記骨形成細胞は、ヒト骨髄間葉幹細胞(hBMSC)などの間葉幹細胞から構成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0050】
ここで、ほんの一例として、本発明のいくつかの実施形態を添付図面を参照して説明する。
図1】緻密質の天然の骨単位構造の概略図である。
図2】同心配置から成る、生体組織工学用の骨単位テンプレートの実施形態の概略図である。
図3】別の実施形態に係る骨単位テンプレートの構成要素の概略図である。
図4】骨単位テンプレートの血管形成ヒドロゲルフィラメントの概略図である。
図5】多数の同心配置から成る生体組織工学用の骨単位テンプレートの概略図である。
図6】骨単位テンプレートが配置され得るポリマー骨移植片テンプレートを示す図である。
図7】内部に複数の骨単位テンプレートが配置されたポリマー骨移植片を示す図である。
図8】バイオリアクターと共に使用される骨単位テンプレートの例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図 1は、緻密骨の階層構造を示す図である。この骨は、血管5を収容する中央チャネルを有する海綿状の海綿骨2を取り囲む緻密な皮質骨1から成る。皮質骨 1 は、骨単位3と呼ばれる繰り返しの機能単位で構成されている。骨単位3は、コラーゲン7および骨ミネラルの緻密なマトリックスの薄層6によって取り囲まれた血管5で構成される骨単位中心管(ハバース管)4から成る円筒構造体である。図1(a)に示したように、皮質骨1の構造内の骨単位3は、典型的には、当該骨の長軸に平行に並べられることによって、応力が加わる方向に並べられる。したがって、骨単位3は、骨に強度を与えて骨が曲げおよび骨折に抵抗するのを助ける。図1(b)は、骨単位3の薄層構造の分解図である。各々の薄層6は、一つの薄層6内に並べられたコラーゲン繊維で構成されるが、強度を増すために隣接する薄層6のコラーゲン繊維に対して直交するように並べられる。図1(c)に示したように、各々の骨単位3の薄層6内には、多くの骨細胞8がある。骨細胞は骨芽細胞に由来する細胞であって、その機能は、骨の再吸収と沈着を通じて骨再生を制御および実行することであり、体内の位置に基づいて求められる要求に見合う健康な骨を維持する。図1(c)に示したように、単一の骨単位3内の骨細胞8は、血液を輸送するための毛細血管である小管9を介して互いに接続されている。栄養素と老廃物は小管9を介して交換され、骨細胞8の生存能力と機能を維持する。
【0052】
図2は、第一群の複数のフィラメント11と、第二群の複数のフィラメント12と、の同心配置10から成る骨単位テンプレートの図である。第一群の複数のフィラメント11は、血管形成ヒドロゲルから成る血管形成フィラメントであり、第二群の複数のフィラメント12は、骨形成ヒドロゲルから成る骨形成フィラメントである。第一群の複数のフィラメント11は、第二群の複数のフィラメント12と交互に配置される。交互に配置されるフィラメント11、12は、同心配置10を形成する。同心配置10は、各々のフィラメントの曲率中心13が、径方向に隣接するフィラメントの曲率中心13と一致するように円弧を形成する各々のフィラメント11、12で構成され得る。したがって、同心状のフィラメント11、12は、各々の円弧の曲率中心13の周りに扇形を形成する。その結果、一つの扇形内の各々の同心状のフィラメント11、12の長さは、円弧の径が扇形の曲率中心13から離れるにつれて増加する。
【0053】
この実施形態では、骨単位テンプレートは、同心配置の中心15から発して、第一群の複数の血管形成フィラメント11および第二群の複数骨形成フィラメント12を分断する四つの放射状チャネル14を備えるものとして示してある。これは、第一群の複数のフィラメント11および第二群の複数のフィラメント12が不完全な円弧として同心円状に配置される、すなわち、フィラメントが欠けて各々のフィラメント11、12の弧が交わらない放射状チャネル14が形成されるような四つの円弧10a~10dに分割されることを意味する。この実施形態では、チャネル14は、同心配置10の中心15でもある、円弧10a~10dの曲率中心13から放射状に発する。チャネル14は、同心配置10の外縁まで延在する。
【0054】
放射状チャネル14は拡散チャネルとして機能し得るので、同心配置10を備える骨単位テンプレートは灌流性がある。拡散チャネル14によって流体が通過する開放空間が提供されるので、栄養素が同心配置10の内部に灌流することができる。したがって、灌流は、テンプレートの各端部とテンプレートの中心との間で促進され、内部のフィラメント11、12と、各々のチャネル14に沿った灌流によって提供される栄養素と、の近接度が高まる。さらに、チャネル14によって、骨の形成、吸収、および維持という生物学的処理の老廃物を同心配置10の内部から除去することができる。一般に同心配置10の中心15には中心空隙16がある。中心空隙16は、骨単位テンプレート全体の灌流をさらに助ける。この中心空隙16は、図1(c)で分かるように、骨単位3の構造の骨単位管(ハバース管)4を模倣したものである。
【0055】
フィラメント11、12の同心配置10は、各々の骨形成フィラメント12が二つの血管形成フィラメント11で囲まれるように構成される。別の言い方をすれば、各フィラメントは、径方向に血管形成フィラメント11と骨形成フィラメント12とが交互に存在する。この実施形態では、最も内側のフィラメントは血管形成フィラメント11であり、最も外側のフィラメントも血管形成フィラメント11である。このような配置にすれば、血管形成フィラメントの領域に形成されるように誘導された血管構造が骨形成領域に栄養素を供給するように作用するため、同心配置10の灌流性が高まる。
【0056】
図3は、骨単位テンプレートとしての同心配置10の構成部分をより詳細に示している。この実施形態では、同心配置10は、その中心から発する八つの放射状チャネル14を備える。血管形成フィラメント11は、管形成細胞21、例えばヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)などの内皮細胞を含む血管形成ヒドロゲル20から成る。血管形成ヒドロゲル20は、天然の血管の変形しにくさを模倣する「柔らかい」ヒドロゲルであり得る。したがって、血管形成ヒドロゲル20は、フィブリンからなり得る。血管形成ヒドロゲル20は、ナノセルロース22をさらに含み得る。ナノセルロースは、HUVECが並ぶのをガイドするように作用し、血管形成のための管形成を助ける。
【0057】
骨形成フィラメント12は、骨形成細胞24、例えばヒト骨髄間葉幹細胞(hBMSC)などの間葉幹細胞を含む骨形成ヒドロゲル23から成る。骨形成ヒドロゲル23は、核形成部位を提供することによってヒドロゲルの変形しにくさを増加させ骨沈着速度を増加させるために、ナノヒドロキシアパタイト(nHA)25をさらに含み得る。nHAは、hBMSCの骨形成分化をガイドするにも役立つ。骨形成ヒドロゲル23は、天然の骨の変形しにくさを模倣する「変形しにくい」ヒドロゲルであり得る。したがって、骨形成ヒドロゲル23は、フィブリンおよびアルギン酸ヒドロゲルから成り得る。
【0058】
図3に、同心配置10が基層26上に設置されることを示してある。基層26は、フィブリンなどのヒドロゲル(すなわち、無細胞ヒドロゲル)から成り得る。基層26は、PCLなどの熱可塑性材料から成り得る。基層26は、その上に設置されたフィラメント11、12に対する支持体として作用する。具体的に、フィラメント11、12が、多数の放射状チャネル14に起因して多数の円弧10a~10h状に配置される場合、基層26によって、各円弧を互いに対して正しい位置に固定するための構造が提供される。放射状チャネル14が一つしかない場合、フィラメント11、12は、基層26を必要とせずに形状を維持するのに十分な堅さを有し得る。基層26によって、同心配置10には構造的安定性が提供されると同時にその可搬性を高めることができる。
【0059】
第一群の複数のフィラメント11(血管形成ヒドロゲル20から成るフィラメント11)は、中心部・シェル構成27として形成され得る。図3の左下の挿入図は、線A-Aに沿って、すなわちフィラメント11の軸に直交する方向に切った、血管形成フィラメント11の断面図である。中心部・シェル構造27は、フィラメント11の軸に沿って延び、右上の挿入図に見られる血管形成ヒドロゲル20の環状シェル27Bによって取り囲まれる中空な中心部27Aが存在するように構成される。フィラメント11の中心部・シェル構造27は灌流を助ける。この灌流は図4に概略的に示してあり、矢印28は中空な中心部27Aを通る物質の流れを示す。第二群の複数のフィラメント12(骨形成ヒドロゲル23から成るフィラメント)は、中実なフィラメント構造として形成される。
【0060】
同心配置10の直径は、天然の骨単位の構成を模倣するため約20mmであり得る。血管形成フィラメント11の直径は約200μmであり、骨形成フィラメント12の直径は約400μmであり得る。骨形成フィラメント12の直径は、酸素や栄養素の十分な拡散と老廃物の除去とを確実にするために、骨形成領域と血管形成領域との間の好ましい距離である100~200μmを維持しながら、骨形成領域の面積を増加させたテンプレートを提供できるように、血管形成フィラメント11の直径の2倍であり得る。放射状チャネル14は、約2~3mmの幅を有し得る。図2~8は縮尺通りに示していないことを理解されたい。
【0061】
同心配置10は、所望の大きさにして所望の灌流性を実現するように調整することができる。例えば、同心配置の直径が大きいほど、径方向に交互に存在するのに必要なフィラメントの数は多くなる。すると、同心配置10は、外周側のフィラメントの増加したフィラメント長を補償して、放射状チャネル14によって提供される栄養供給物に骨形成フィラメント12が確実に近接するようにするために、増加した数の放射状チャネル14を備え得る。テンプレートの構成も、血管形成フィラメント11が上述の中心部・シェル構造27を使用して構築されるかどうかに依存し得る。所望の灌流性を実現するためには、中心部・シェル構造27が使用されない場合、中心部・シェル構造27が使用される同心配置10の構成と比べて、より多くの放射状チャネル14を同心配置10に組み込むことになり得る。
【0062】
図5は、同心配置10であるフィラメント層が多数集まって形成されて三次元骨単位モデルを形成する骨単位テンプレート110の図である。一つ以上のフィラメント層10が、第一のフィラメント層10の上に積み重ねられる。各フィラメント層10は、形状がほぼ円筒形である骨単位テンプレート110を形成するように積み重ねられる。この実施形態では、骨単位テンプレート110を形成する各フィラメント層10は、当該テンプレート内の他のフィラメント層10と同じ構造を有する。他の実施形態では、各フィラメント層10は、互いに異なる構造を有し得る。例えば、放射状チャネルの数は、各フィラメント層10全体で異なることも同じこともあり得るし、血管形成フィラメント11は、すべてまたは一部のみのフィラメント層10に中心部・シェル構造27を有するように構成され得るし、血管形成フィラメント11および骨形成フィラメント12の径方向の位置は、図示のように骨単位テンプレート110内で同じであり得るし、フィラメント層10ごとに異なることもあり得る。
【0063】
図5に示した例では、各フィラメント層10は、放射状チャネル14が位置合わせされて、テンプレート110の中心115から発して径方向および軸方向に延びるチャネル114を形成するように積み重ねられる。他の実施形態では、各フィラメント層10は、各々のフィラメント層10の各放射状チャネル14が互いにずれるように積み重ねられ得る。テンプレート110の中央を通って軸方向に延びる中央空隙116がある。
【0064】
第一群の複数のフィラメント11および第二群の複数のフィラメント12は、同心配置10および3D骨単位テンプレート110を形成するために積層造形技術を使用して積層され得る。具体的には、ヒドロゲル構造をプリントできることが知られていて中心部・シェル構造27を有するフィラメントを形成できる3Dプリンタが利用可能である。このような3Dプリンタとして、マイクロ流体を使用する、Aspect Biosystems社のバイオプリンティング技術(RX1)が該当する。当技術分野で利用可能な他の3Dプリンタは、ヒドロゲルを積層する針を適合させることによって、中心部・シェル構造27を形成できるように適合され得る。
【0065】
数個の供給ヘッドを有する押し出し成形式3Dプリンタを使用すれば、種々の材料のプリンティングが可能になる。第一供給ヘッドに関連付けられた、3Dプリンタの第一カートリッジに骨形成ヒドロゲルを充填し、第二供給ヘッドに関連付けられた、3Dプリンタの第二カートリッジに血管形成ヒドロゲルを充填し、第三供給ヘッドに関連付けられた、3Dプリンタの第三カートリッジに構造用バイオインク(熱可塑性樹脂(例えばPCL)、または無細胞ヒドロゲル)を充填することによって、当該プリンタはCAD設計に従って三つのヒドロゲルやバイオインクから成る複数の層を供給できる。
【0066】
基層を備える骨単位テンプレートのCAD設計は、三つの別々の部品で構成される。これらの部品はCADソフトウェア(SolidworksやSketchUPなど) で作成され、STL(Standard Tessellation Language) ファイルに変換される。第一部品は、熱可塑性樹脂(例えばPCL)または無細胞ヒドロゲルなどの構造用バイオインクでプリントできる基層である。第二部品は、骨形成ヒドロゲルでプリントされる骨形成フィラメントである。第三部品は、血管形成ヒドロゲルでプリントされる灌流可能な血管形成フィラメントである。第一部品、第二部品、および第三部品のプリンティングは、この順序で行う必要はなく、所望の構造を有する骨単位テンプレートを構築するのに必要な任意の適切な順序で、一緒に、または代わる代わる行うことがあり得る。これら三つの部品を3Dプリンタの計画立案ソフトウェア (STLファイルを取り込み各層をスライスして作成するために使用されるソフトウェア) において一つの構造として組み合わせることによって、異なる部品を異なるプリンティング供給ヘッドに割り当て、組み合わせた最終デザインの順序に従ってプリントすることができる。
【0067】
同軸供給ヘッドを使用すれば、血管形成ヒドロゲルの管状の (中空な) フィラメントをプリントできる。したがって、管状の血管形成フィラメントは、血管形成と、栄養素および老廃物の優れた交換と、を支援すると同時に、明確に画定されてその中にバイオリアクター管を挿入できるマイクロチャネルとしての実装も支援できる。
【0068】
血管形成ヒドロゲルおよび骨形成ヒドロゲルをプリントするのに使用される針の大きさは、必要性と用途に応じて決定されるので、針の大きさと、結果として得られる血管形成フィラメントおよび骨形成フィラメントの大きさは、体内移植での使用、または薬物スクリーニングのための体外モデルでの使用、またはバイオリアクターの動的培養での使用を意図した場合で異なり得る。例えば、体内移植での使用を意図した骨単位テンプレートの場合、内径400マイクロメートルのノズルを使用して骨形成フィラメントをプリントし、内径200マイクロメートルのノズルを使用して血管形成フィラメントをプリントできるが、バイオリアクター装置での使用を意図した骨単位テンプレートの場合、より大きな内径を有するノズルを使用できる。
【0069】
図6は、骨単位テンプレート10、110が設置され得る典型的な骨移植片スキャフォールド612を示す図である。骨移植片スキャフォールド612は、骨単位テンプレート用の堅い支持構造を提供する。骨移植片スキャフォールド612は、中心管614の形態の内側部と、外形管616の形態の外側部と、を備える。図示の例では、中心管614は三角形の管として示されているが、前記内側部は、例えば円筒形などの任意の適切な形状を有するように製造され得る。また、この例では、外形管616は円筒管として示されているが、それは任意の適切な断面形状を有し得る。具体的には、スキャフォールド612は、目標の骨に実質的に一致するように個別仕様化され得て、それに応じてスキャフォールドの形状および/または寸法が合わせられ得る。さらに、スキャフォールド612は、複数の外径管616、例えば互いの内側に配置された多数の同心円柱を備え得る。中心管614の壁は、スキャフォールド612を通って延びる中心チャネル618を取り囲む。内側部614と外側部616との間には、環状の空洞620が画定される。外形管616の主な機能は、空洞620内に収容され得る、および/または空洞620内で本発明の骨単位テンプレート10、110を使用して成長され得る材料を支持することである。
【0070】
同心管部614、616は、底板622によって接続され、底板622は、中央チャネル618と一致するように成形された中央窓部を備えるほぼ円形のディスクである。当該窓部は、底板622の材料に開いた開口部から成る。したがって、流体は、スキャフォールド612を通って、すなわち前記窓部を通って中央チャネル618に沿って縦方向に流れることが可能である。底板622は、例えば、スキャフォールド612を特定の装置に組み込むのを助けるために、または細胞培養プレートまたはバイオリアクター・チャンバーなどの意図された容器に適合させるために、異なる複数の直径を持つように作製することもできる。
【0071】
スキャフォールド612は、内側管614および外側管616の両方に周開口部626を備え得る。周開口部626は、外側管616内の固体層が、開口部626を備える内側管614内の層と同じ周角度にあるように、交互の層に配置され得る。開口部626のこの交互配置によって、当該スキャフォールドの必要な機械的強度を維持しながら、任意の高さでスキャフォールド612を通して利用可能な十分な径方向の拡散があることが保証される。開口部626があることで、ドナー環境と当該テンプレートとの間で当該スキャフォールドを通って流体が流れるのが可能になり、当該スキャフォールド内に設置された任意の骨単位テンプレート10、110の灌流性を支援する助けとなることができる。外管616は、内管614と比較して二倍の壁厚で製造され得る。こうすれば、外管616の機械的強度を高めるのに役立つ。
【0072】
上述の骨単位テンプレート10、110は、空洞620の充填材料として使用されて緻密骨の骨単位構造を模倣し得る。したがって、スキャフォールド612内の空洞620の周囲にテンプレート10、110の反復単位を設置し得るし、一方、中央チャネル618内には多孔性充填材料を設置し得るが、設置しないこともあり得る。図7は、内部に同心配置10つまり3Dテンプレート110が設置されるスキャフォールド612の概略平面図である。テンプレート10、110は、内側部614と外側部616との間の環状空洞620内に設置され、底板622上に着座する。いくつかの実施形態では、テンプレート10、110は、各テンプレートを密集させて詰めるために、環状空洞620内に多数の層を成して収納されるが、いくつかの実施形態では、より少ないテンプレートがスキャフォールドに収納される。
【0073】
国際特許出願公開広報WO2018/162764号に記載のように、スキャフォールド612は、ヒトまたは動物の目標物内の特定の骨環境の寸法に一致するように個別仕様化することができる。そのような個別仕様化されたスキャフォールド612を備える装置は、次いで、例えば骨移植のために生体内で、あるいは、例えば生体組織工学加工を模倣および分析するための、または制御された状況下で薬物放出を分析するための生物学的モデルとして生体外で使用され得る。スキャフォールド612の個別仕様化寸法は、CTやMRIなどの非侵襲的撮像技術を特定の目標物に使用して決定し得る。骨移植の場合、スキャフォールド寸法のこのような個別仕様化は、骨の形成(再生)のための環境が非常に複雑であるため (例えば、異なる細胞種類、成長因子、栄養供給、および機械的刺激を含む)、当該スキャフォールドが骨をより忠実に模倣すればするほど、当該骨移植が骨の形成(再生)に成功する可能性が高まることから、特に重要になる。さらに、骨単位テンプレート10、110の直径は、スキャフォールド612によって支持される骨単位テンプレート10、110を使用して成長させる目標骨に基づいて選択され得る。
【0074】
上述のように、本明細書で開示される骨単位テンプレートおよび方法は、以下を含むがこれらに限定されない様々な用途で使用され得る。
・ 生体組織工学としての骨移植、具体的には骨の治癒を支援すること
・ 生体組織工学の各過程を模倣および分析するための生物学的モデル
・ 制御された状況下で薬物放出を分析するための生物学的モデル
・ バイオリアクターでテンプレートを使用する研究
これらの潜在的な用途の各々が、独自のテンプレート構成を利用できる。
【0075】
図8は、バイオリアクター装置で使用される骨単位テンプレート10の図である。この実施形態では、骨単位テンプレートの血管形成フィラメント11は、図3および図4に関して説明した中心部・シェル構造を有する。バイオリアクターは、動物の体の天然構造の周りに流体を強制的に灌流させるのと同様の手法で、フィラメント11全体に強制的に灌流させることによって、天然の細胞環境を模倣するのを支援する。このようにすれば、骨単位テンプレート10の周りの物質移動および流体の流れが改善される。骨単位テンプレート10内には、管状ネットワーク700を設置することができる。テンプレート10の放射状チャネル14内には、入口管710と出口管720とを設置することができ、血管形成フィラメント11の中心部内には、周方向に延びる管730を設置することができる。周方向に延びる管730は、入口管710から発し、骨単位テンプレート10の反対側で出口管720に再接続する。流体の入力流740は、入口管710に沿って流れるように管状ネットワーク700に導入され、管状ネットワーク700を通って導かれて、当該の流れは、流体の出力流745として出口管720を介して管状ネットワーク700を出る。管状ネットワーク700は、バイオリアクター(図示せず)に接続して、流体の入力流740および出力流745と連通させることができる
図1a-1c】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-10-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】