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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】脂肪族炭化水素の回収
(51)【国際特許分類】
   C10G 53/06 20060101AFI20231025BHJP
   C10G 1/10 20060101ALI20231025BHJP
   C10G 9/36 20060101ALI20231025BHJP
   C10G 21/00 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
C10G53/06
C10G1/10
C10G9/36
C10G21/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523038
(86)(22)【出願日】2021-10-12
(85)【翻訳文提出日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2021078153
(87)【国際公開番号】W WO2022079012
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】20202226.5
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002105
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,カイ・ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ランジュ,ジャン-ポール・アンドレ・マリー・ジョゼフ・ジスラン
(72)【発明者】
【氏名】シプマ,シーベ
(72)【発明者】
【氏名】グラウ・リニエ,ルイス・アルベルト
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA03
4H129BA04
4H129BB03
4H129BC12
4H129CA22
4H129DA03
4H129FA02
4H129HB03
4H129MA01
4H129MA04
4H129MA13
4H129MB05A
4H129MB05B
4H129MB05C
4H129NA01
4H129NA15
4H129NA24
4H129NA43
(57)【要約】
本発明は、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む液体流から脂肪族炭化水素を回収するためのプロセスであって、a)抽出溶媒により当該液体流を液-液抽出し、それによって脂肪族炭化水素の一部を回収することと、b1)抽出溶媒、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む抽出物流を、脱混合溶媒と混合して、追加の脂肪族炭化水素を回収することと、b2)残りの流れを追加の脱混合溶媒と混合して、ヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択の芳香族炭化水素を除去することと、c)残りの流れを、脱混合溶媒流と抽出溶媒流とに分離することとを伴う、プロセスに関する。更に、本発明は、上記のプロセスを含む、プラスチックから脂肪族炭化水素を回収するためのプロセス、及び上記のプロセスのうちの1つで回収されるような脂肪族炭化水素を含む炭化水素供給物を蒸気分解するためのプロセスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む液体炭化水素供給原料流から脂肪族炭化水素を回収するためのプロセスであって、
a)前記液体炭化水素供給原料流の少なくとも一部を、1個以上のヘテロ原子を含有する抽出溶媒a)と接触させ、前記液体炭化水素供給原料流を、前記抽出溶媒a)による液-液抽出に供して、脂肪族炭化水素を含む第1の流れと、抽出溶媒a)、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第2の流れとを得るステップと、
b1)ステップa)から得られた前記第2の流れの少なくとも一部を、1個以上のヘテロ原子を含有し、かつヘプタン中での抽出溶媒a)の混和性よりも低いヘプタン中での混和性を有する脱混合溶媒b)と混合し、得られた混合物を、脂肪族炭化水素及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第1の流れと、抽出溶媒a)、脱混合溶媒b)、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第2の流れとに分離するステップと、
b2)ステップb1)から得られた第2の流れの少なくとも一部を、脱混合溶媒b)と混合し、前記得られた混合物を、ヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第1の流れと、抽出溶媒a)及び脱混合溶媒b)を含む第2の流れとに分離するステップと、
(ステップb1)及びb2)は、2つ以上のサブステップを含むステップb)のサブステップであり、
c)ステップb2)から得られた前記第2の流れの少なくとも一部を、脱混合溶媒b)を含む第1の流れと、抽出溶媒a)を含む第2の流れとに分離するステップと、
d)ステップc)から得られた前記第2の流れからの前記抽出溶媒a)の少なくとも一部を、ステップa)に再循環させるステップと、
e)任意選択で、ステップc)から得られた前記第1の流れからの前記脱混合溶媒b)の少なくとも一部を、ステップb)の前記サブステップのうちの1つ以上に再循環させるステップと、を含む、プロセス。
【請求項2】
ステップb)が、2~10個、好適には2~5個のサブステップを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ステップb)が、
bi)ステップa)から得られた前記第2の流れの少なくとも一部を、脱混合溶媒b)と混合し、前記得られた混合物を、脂肪族炭化水素及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第1の流れと、抽出溶媒a)、脱混合溶媒b)、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第2の流れとに分離することと、
bii)ステップbi)から得られた前記第2の流れの少なくとも一部を、脱混合溶媒b)と混合し、前記得られた混合物を、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第1の流れと、抽出溶媒a)、脱混合溶媒b)、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第2の流れとに分離することと、
biii)ステップbii)から得られた前記第2の流れの少なくとも一部を、脱混合溶媒b)と混合し、前記得られた混合物を、ヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第1の流れと、抽出溶媒a)及び脱混合溶媒b)を含む第2の流れとに分離することと、を含み、
ステップc)が、ステップbiii)から得られた前記第2の流れの少なくとも一部を、脱混合溶媒b)を含む第1の流れと、抽出溶媒a)を含む第2の流れとに分離することを含む、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記抽出溶媒a)が、少なくとも5MPa1/2、好ましくは少なくとも10MPa1/2のRa、ヘプタンを有し、前記脱混合溶媒b)が、少なくとも20MPa1/2、好ましくは少なくとも30MPa1/2のRa、ヘプタンを有し、Ra、ヘプタンが、25℃で決定されるヘプタンに関するハンセン溶解度パラメータ距離を指し、
前記脱混合溶媒b)についてのRa、ヘプタンは、抽出溶媒a)についての前記Ra、ヘプタンより大きく、溶媒a)及びb)についてのRa、ヘプタンの前記差が、少なくとも1MPa1/2、好ましくは少なくとも5MPa1/2、より好ましくは少なくとも10MPa1/2、より好ましくは少なくとも15MPa1/2である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記抽出溶媒a)が、アンモニア、又は好ましくは、ジオール及びトリオール(モノエチレングリコール(MEG)、モノプロピレングリコール(MPG)、ブタンジオール及びグリセロールの任意の異性体を含む);グリコールエーテル(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールを含む、オリゴエチレングリコールを含む)、並びにそれらのモノアルキルエーテル(ジエチレングリコールエチルエーテルを含む);アミド(N-アルキルピロリドンを含み、アルキル基は、1~8個又は1~3個の炭素原子を含有してもよく、N-メチルピロリドン(NMP)を含む)、ホルムアミド、並びにジ及びモノアルキルホルムアミド、及びアセトアミド(前記アルキル基は、1~8個又は1~3個の炭素原子を含有してもよく、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルホルムアミド及びジメチルアセトアミドを含む);ジアルキルスルホキシド(前記アルキル基は、1~8個又は1~3個の炭素原子を含有してもよく、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む);スルホン(スルホランを含む);N-ホルミルモルホリン(NFM);フラン環含有成分及びそれらの誘導体(フルフラール、2-メチルフラン、フルフリルアルコール及びテトラヒドロフルフリルアルコールを含む);ヒドロキシエステル(乳酸メチル及び乳酸エチルを含む、乳酸塩を含む);リン酸トリアルキル(リン酸トリエチルを含む);フェノール化合物(フェノール及びグアイアコールを含む);ベンジルアルコール化合物(ベンジルアルコールを含む);アミン系化合物(エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンを含む);ニトリル化合物(アセトニトリル及びプロピオニトリルを含む);トリオキサン化合物(1,3,5-トリオキサンを含む);炭酸化合物(炭酸プロピレン及び炭酸グリセロールを含む);並びにシクロアルカノン化合物(ジヒドロールエボグルコセノンを含む)からなる群から選択される1つ以上の有機溶媒を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記脱混合溶媒b)が、水及び請求項5において抽出溶媒a)について定義された溶媒の群からの前記溶媒からなる群から選択される1つ以上の溶媒を含み、前記脱混合溶媒b)が、好ましくは水を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
洗浄溶媒c)をステップa)に添加して、脂肪族炭化水素を含む第1の流れと、洗浄溶媒c)、抽出溶媒a)、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第2の流れとを生じさせるか、又は
ステップa)から得られた前記第1の流れが、脂肪族炭化水素及び抽出溶媒a)を含み、その第1の流れの少なくとも一部を、洗浄溶媒c)と接触させ、前記洗浄溶媒c)による液-液抽出に供して、脂肪族炭化水素を含む第1の流れと、洗浄溶媒c)及び抽出溶媒a)を含む第2の流れとを得る、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記洗浄溶媒c)が、脱混合溶媒b)と同一であるか又は異なり、好ましくは同一であり、好ましくは水を含む、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
プラスチックから脂肪族炭化水素を回収するためのプロセスであって、前記プラスチックの少なくとも一部が、ヘテロ原子含有有機化合物を含み、
(I)前記プラスチックを分解し、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む炭化水素生成物を回収するステップと、
(II)ステップ(I)で得られた前記炭化水素生成物の少なくとも一部を含む、液体炭化水素供給原料流を、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセスに供するステップと、を含む、プロセス。
【請求項10】
炭化水素供給物を蒸気分解するためのプロセスであって、前記炭化水素供給物が、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセスで回収されるような脂肪族炭化水素を含む、プロセス。
【請求項11】
炭化水素供給物を蒸気分解するためのプロセスであって、
請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセスにおいて、液体炭化水素供給原料流から脂肪族炭化水素を回収するステップと、
先行するステップで回収された脂肪族炭化水素を含む炭化水素供給原料を蒸気分解するステップと、を含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む液体炭化水素供給原料流から脂肪族炭化水素を回収するためのプロセス、上記のプロセスを含む、プラスチックから脂肪族炭化水素を回収するためのプロセス、並びに上記のプロセスのうちの1つで回収されるような脂肪族炭化水素を含む炭化水素供給物を蒸気分解するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
廃プラスチックは、例えば、熱分解によるプラスチックの分解を介して、オレフィン及び芳香族炭化水素を含む高付加価値の化学物質に変換され得る。プラスチックの熱分解は、広い沸点範囲の炭化水素を含有する生成物流をもたらすことができる。そのような熱分解生成物流からの炭化水素を、蒸気分解装置内で更に分解して、新しいプラスチックの作製に使用することができるモノマーであるエチレン及びプロピレンを含む、高不可価値の化学物質を生成することができる。
【0003】
国際公開第2018/069794号は、液体熱分解生成物流が、沸点<300℃を有する第1の画分と、沸点≧300℃を有する第2の画分とに分離される、プラスチックからオレフィン及び芳香族炭化水素を生成するためのプロセスを開示している。当該第1の画分のみが液体蒸気分解装置に供給されるのに対して、当該第2の画分は、熱分解装置に再循環される。国際公開第2018/069794号の図1に示されるプロセスでは、当該分離は、炭化水素液体蒸留装置で実行される。液体熱分解生成物流を2つの画分に分離しなければならないのは面倒である(例えば、エネルギー集約的)。更なる不利な点は、液体熱分解生成物流のより重い部分を、より深い熱分解のために熱分解装置に送り返さなければならないことである。これにより、ガスの形成及び固体副生成物(コークス)の量の増加による収率損失が生じ、最終的には蒸気分解装置に送られない。上記の国際公開第2018/069794号のプロセスの一実施形態(図2を参照)では、沸点<300℃を有する第1の画分は、最初に水素と一緒にハイドロプロセス装置に運ばれ、処理された炭化水素液体流を生成し、次いで液体蒸気分解装置に供給される。そのようなハイドロプロセスは、資本集約的であり、高価な水素(H)の使用を必要とするため、面倒でもある。
【0004】
更に、米国特許公開第2018/0355256号は、プラスチックから燃料を導出するための方法を開示しており、この方法は、ある量のプラスチックを熱分解プロセスに供し、それによってプラスチックの少なくとも一部を粗燃料に変換することと、1)粗燃料から1つ以上の不純物を抽出するために1つ以上の抽出溶媒を使用する向流液-液抽出を含む第1の抽出ステップ、及び2)第1の抽出ステップから得られた汚染された抽出溶媒の向流抽出を含む第2の抽出ステップによって直接使用可能な形態で燃料を抽出することとを含む。米国特許公開第2018/0355256号の図2に示されているプロセスでは、プラスチックの熱分解によって作製される粗燃料(すなわち、粗ディーゼル)を、最初にN-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)による抽出に供して、硫黄化合物及び芳香族を含む1つ以上の不純物を粗燃料から抽出する。次いで、第1の抽出ステップからの汚染されたNMPを、水を使用する第2の抽出ステップに供して、汚染された抽出溶媒の極性を増加させ、それによって当該不純物を分離する。最終ステップにおいて、第2の抽出ステップからの水で汚染されたNMPは、標準蒸留カラムを使用して蒸留され、再循環水及び再循環NMPを生じる。
【0005】
上記の米国特許公開第2018/0355256号(図2)に開示されているような第1の抽出ステップで使用される抽出カラムからの流出物は、ヘテロ原子含有有機汚染物質及び芳香族汚染物質に加えて、一定量の貴重な脂肪族炭化水素を依然として含み得る。可能な限り多くの脂肪族炭化水素を回収し、したがってこれらをヘテロ原子含有有機汚染物質及び芳香族汚染物質から分離することが望ましい。そのような回収の際に、これらの追加の脂肪族炭化水素は、次いで、脂肪族炭化水素の全回収を最適化するように、第1の抽出ステップに再循環されるか、又は第1の抽出ステップからのラフィネート流(精製ディーゼル)と直接組み合わされるかのいずれかであり得る。回収されるそのような追加の脂肪族炭化水素はまた、米国特許公開第2018/0355256号に開示されているように燃料として使用される代わりに、蒸気分解装置に供給されてもよい。しかしながら、追加の脂肪族炭化水素のそのような回収は、第1の抽出ステップに続くステップによって複雑になる可能性があり、その結果、脂肪族炭化水素を含む1つ以上の流出流が得られ、この流出流は、依然として多すぎる量のヘテロ原子含有有機汚染物質及び芳香族汚染物質を追加として含むため、これらの流出流を上記のように再循環又は組み合わせることができない。
【0006】
加えて、上記の米国特許公開第2018/0355256号(図2)に開示されているような蒸留カラムへの供給物は、依然として、一定量のヘテロ原子含有有機汚染物質及び芳香族汚染物質を含み得る。当該蒸留は、当該汚染物質の一部が再循環水と一緒に分離されるという結果をもたらす可能性があり、それは、水及びそのような汚染物質が共沸混合物を形成し、それによって水再循環流の品質を低下させる可能性があるからである。再循環水が第2の抽出ステップで使用されるカラムに再循環される場合、再循環水中のこれらの汚染物質の濃度は、第1の抽出ステップで使用される再循環NMP中のこれらの汚染物質の蓄積に加えて、「蓄積」と呼ばれるものにおいて増加する。これは、第1及び第2の抽出ステップのより低い効率をもたらし得る。米国特許公開第2018/0355256号は、プラスチックから燃料を導出するための方法に関する。(当該再循環NMP中の)これらの汚染物質のそのような蓄積は、浄化された油が依然として比較的多量のこれらの汚染物質を含むという結果になる可能性があり、これは、蒸気分解装置の収率、選択性及び信頼性に対するこれらの汚染物質の悪影響のために、そのような浄化された油が燃料として使用される代わりに蒸気分解装置に供給される場合に特に懸念される。
【0007】
脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む液体流から脂肪族炭化水素を回収するための改善されたプロセスを開発することが継続して必要とされており、液体流は、特にそのような回収された脂肪族炭化水素を蒸気分解装置に供給する前に、特定の混合廃プラスチック中の廃プラスチックを分解することから生じ得る。本発明の目的は、そのような液体流から脂肪族炭化水素を回収するためのそのようなプロセスを提供することであり、このプロセスは、技術的に有利で、効率的かつ手頃であり、特に、国際公開第2018/069794号及び米国特許公開第2018/0355256号に関連して上で考察されたように、上記の欠点のうちの1つ以上を有しないプロセスである。そのような技術的に有利なプロセスは、好ましくは、比較的低いエネルギー需要及び/又は比較的低い資本支出をもたらすであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2018/069794号
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/0355256号明細書
【発明の概要】
【0009】
驚くべきことに、そのようなプロセスは、a)脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む液体流を、1個以上のヘテロ原子を含有する抽出溶媒a)により液-液抽出し、それによって脂肪族炭化水素の一部を回収すること、b1)抽出溶媒a)、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む、ステップa)から得られた流れを、脱混合溶媒b)と混合して、当該流れから追加の脂肪族炭化水素を回収すること(脱混合溶媒b)は、1個以上のヘテロ原子を含有し、ヘプタン中での抽出溶媒a)の混和性よりも低いヘプタン中での混和性を有する)、b2)抽出溶媒a)、脱混合溶媒b)、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む、ステップb1)から得られた流れを、追加の脱混合溶媒b)と混合して、ヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択の芳香族炭化水素を除去すること、並びにc)抽出溶媒a)及び脱混合溶媒b)を含む、ステップb2)から得られた流れの少なくとも一部を、脱混合溶媒b)含有流と、抽出溶媒a)含有流とに分離することによって提供することができることが本発明者らによって見出された。
【0010】
したがって、本発明は、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む液体炭化水素供給原料流から脂肪族炭化水素を回収するためのプロセスに関し、当該プロセスは、
a)液体炭化水素供給原料流の少なくとも一部を、1個以上のヘテロ原子を含有する抽出溶媒a)と接触させ、液体炭化水素供給原料流を、抽出溶媒a)による液-液抽出に供して、脂肪族炭化水素を含む第1の流れと、抽出溶媒a)、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択的に芳香族炭化水素を含む第2の流れとを得るステップと、
b1)ステップa)から得られた第2の流れの少なくとも一部を、1個以上のヘテロ原子を含有し、かつヘプタン中での抽出溶媒a)の混和性よりも低いヘプタン中での混和性を有する脱混合溶媒b)と混合し、得られた混合物を、脂肪族炭化水素及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第1の流れと、抽出溶媒a)、脱混合溶媒b)、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第2の流れとに分離するステップと、
b2)ステップb1)から得られた第2の流れの少なくとも一部を、脱混合溶媒b)と混合し、得られた混合物を、ヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第1の流れと、抽出溶媒a)及び脱混合溶媒b)を含む第2の流れとに分離するステップと、
(ステップb1)及びb2)は、2つ以上のサブステップを含むステップb)のサブステップである)、
c)ステップb2)から得られた第2の流れの少なくとも一部を、脱混合溶媒b)を含む第1の流れと、抽出溶媒a)を含む第2の流れとに分離するステップと、
d)ステップc)から得られた第2の流れからの抽出溶媒a)の少なくとも一部を、ステップa)に再循環させるステップと、e)任意選択で、ステップc)から得られた第1の流れからの脱混合溶媒b)の少なくとも一部を、ステップb)のサブステップのうちの1つ以上に再循環させるステップとを含む。
【0011】
有利には、本発明では、ステップa)における当該液-液抽出のために水素化処理(Hによる処理)の必要はない。更に、有利には、プラスチック熱分解油などの広い沸点範囲を有する液体炭化水素流を、本プロセスにおいて、比較的低い収率損失及び供給物劣化で処理することができる。これは、本発明を適用することにより、蒸気分解装置への炭化水素供給のコストを大幅に削減し得ることを示唆する。
【0012】
更に、本発明のプロセスのステップb)において、脱混合溶媒b)は、そのような脱混合溶媒b)の全量を1ステップのみで添加するのではなく、ある特定の量の貴重な脂肪族炭化水素を依然として含む、ステップa)から得られた抽出流と段階的様式で(段階的又は漸増的に)混合されるため、第1のサブステップb1)において、脂肪族炭化水素及び任意選択で芳香族炭化水素を含む流れ(第1の流れ)が有利に回収され、一方、抽出溶媒a)、脱混合溶媒b)、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む残りの流れ(第2の流れ)は、その後、更なるサブステップb2)において脱混合溶媒b)の別の部分と混合され、それによって有利に、ヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択で芳香族炭化水素(第1の流れ中)のより効率的な除去がもたらされ、抽出溶媒a)及び脱混合溶媒b)を含む流れ(第2の流れ)が残り、次いでステップc)において互いに分離される。したがって、各サブステップb1)、b2)、及びステップb)における任意の更なるサブステップにおいて、抽出溶媒a)及び脱混合溶媒b)を含む流れ(第2の流れ)から分離され、回収又は除去される(すなわち、分離される)化合物を含有する流れ(第1の流れ)の組成は、以下で更に説明するように異なる。これは、有利には、ステップa)において抽出された成分の、多数の異なる画分への分画分離を可能にし、その数は、ステップb)におけるサブステップの数に依存し、画分の各々は、異なる価値及び最終用途を有し得る。
【0013】
更に、本発明では、サブステップb1)及びb2)を含む分離ステップb)全体の効率が増加するため、有利には、ヘテロ原子含有有機化合物及び任意の芳香族炭化水素が、本プロセスのステップb)全体から得られた抽出溶媒a)及び脱混合溶媒b)を含む流れに最終的に実質的に分配されないか、又はその量が低減する場合がある。当該ヘテロ原子含有有機化合物及び芳香族化合物は、本プロセスのステップa)において抽出される全てのヘテロ原子含有有機化合物及び芳香族化合物のうち最も高い極性を有する成分を含んでもよい。したがって、有利には、本発明のプロセスにおけるステップb)全体によって、液体炭化水素供給原料流に由来するヘテロ原子含有有機化合物及び芳香族炭化水素を実質的に含まないか、又はこれらの汚染物質を低減された量で含有する、比較的純粋な脱混合溶媒b)再循環流及び比較的純粋な抽出溶媒a)再循環流を、本プロセスのステップc)において送達することができる。次に、そのような純粋な脱混合溶媒b)流は、有利に再循環され、ステップa)自体又は別の追加ステップのいずれかにおいて抽出溶媒a)を抽出するために使用することができ、それによって、そのようなラフィネート流をヘテロ原子含有有機化合物及び芳香族炭化水素で汚染することなく、抽出溶媒a)が最終炭化水素ラフィネート流に入るのを防止する。再循環時の脱混合溶媒b)の後者の使用に関して、その溶媒は、以下、洗浄溶媒c)とも称される。同様に、ステップc)からのそのような純粋な抽出溶媒a)流は、次いで、有利には、ステップa)に再循環され、新しい供給物から更なるヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択の芳香族炭化水素を抽出するために使用され得る。
【0014】
したがって、有利には、本プロセスにおける再循環流中のヘテロ原子含有有機化合物及び任意の芳香族炭化水素の蓄積は、脱混合溶媒b)の段階的添加を伴う、サブステップb1)及びb2)を含む分離ステップb)全体の結果として防止又は低減され得る。そのため、これらの汚染物質の蓄積を軽減するための他の面倒な方法を適用する必要がないか、又はその必要性が実質的に低減される。例えば、再循環前に再循環流の一部をブリードする必要がないか、又はその必要性が実質的に低減され、(i)そのようなブリード流は、廃棄されて抽出溶媒a)の損失をもたらすか、又は(ii)抽出溶媒a)は、そのようなブリード流から、例えば、その蒸留によって回収されてもよいが、それは面倒である。
【0015】
更に、本発明は、プラスチックから脂肪族炭化水素を回収するためのプロセスに関し、プラスチックの少なくとも一部が、ヘテロ原子含有有機化合物を含み、当該プロセスは、
(I)プラスチックを分解し、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む炭化水素生成物を回収するステップと、
(II)ステップ(I)で得られた炭化水素生成物の少なくとも一部を含む、液体炭化水素供給原料流を、液体炭化水素供給原料流から脂肪族炭化水素を回収するための上記のプロセスに供するステップとを含む。
【0016】
なお更に、本発明は、炭化水素供給物を蒸気分解するためのプロセスに関し、炭化水素供給物が、脂肪族炭化水素の回収のための上記のプロセスのうちの1つにおいて回収された脂肪族炭化水素を含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による脂肪族炭化水素の回収のためのプロセスの一実施形態を示す。
図2】上記のプロセスの別の実施形態を示す。
図3】以下の実施例2に記載される実験からの結果を含む。
図4】以下の実施例2に記載される実験からの結果を含む。
図5】以下の実施例2に記載される実験からの結果を含む。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のプロセスの各々は、複数のステップを含む。加えて、当該プロセスは、連続するステップの間に1つ以上の中間ステップを含んでもよい。更に、当該プロセスは、最初のステップの前及び/又は最後のステップの後に、1つ以上の追加のステップを含んでもよい。例えば、当該プロセスがステップa)、b)及びc)を含む場合、当該プロセスは、ステップa)とb)との間及びステップb)とc)との間に1つ以上の中間ステップを含んでもよい。更に、当該プロセスは、ステップa)の前及び/又はステップc)の後に1つ以上の追加のステップを含んでもよい。
【0019】
本明細書内で、「ステップy)は、ステップx)から得られた流れの少なくとも一部を、に供することを含む」のような句は、「ステップy)は、ステップx)から得られた流れの一部又は全部を、に供することを含む」を意味するか、又は同様に、「ステップy)は、ステップx)から得られた流れを、部分的又は完全に、に供することを含む」を意味する。例えば、ステップx)から得られた流れを、1つ以上の部分に分割してもよく、これらの部分のうちの少なくとも1つを、ステップy)に供してもよい。更に、例えば、ステップx)から得られた流れを、ステップx)とステップy)との間の中間ステップに供して、更なる流れを得てもよく、その少なくとも一部を、ステップy)に供してもよい。
【0020】
本発明のプロセス並びに当該プロセスで使用される流れ及び組成物は、1つ以上の様々な記載されたステップ及び成分それぞれを、「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、又は「含む(including)」という用語で説明されるが、それらはまた、当該1つ以上の様々な記載されたステップ及び成分それぞれ「から本質的になる」又は「からなる」こともできる。
【0021】
本発明の文脈において、流れが、2つ以上の成分を含む場合では、これらの成分は、100%を超えない全体量で選択されるべきである。
【0022】
更に、プロパティの上限及び下限が引用されている場合、上限のうちのいずれかと下限のうちのいずれかとの組み合わせによって定義される値の範囲も含まれる。
【0023】
本明細書内では、流れ中の特定の成分の量に関して「実質的にない」とは、当該流れの量(すなわち、重量)に基づいて、問題の成分の最大で1,000、好ましくは最大で500、より好ましくは最大で100、より好ましくは最大で50、より好ましくは最大で30、より好ましくは最大で20、及び最も好ましくは最大で10ppmw(重量百万分率)である量を意味する。
【0024】
本明細書内では、カラムからの「頂部流」又は「底部流」とは、それぞれ、カラムの頂部又はカラムの底部から、カラムの全長に基づいて、0%~30%、より好適には0%~20%、更により好適には0%~10%の位置でカラムを出る流れが参照される。
【0025】
特に指示がない限り、本明細書において、沸点が参照される場合、これは、760mmHgの圧力(101.3kPa)での沸点を意味する。
【0026】
液体炭化水素供給原料流
本発明において、液体炭化水素供給原料流は、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む。
【0027】
好ましくは、液体炭化水素供給原料流は、99:1~1:99の重量比で、30~300℃の沸点を有する脂肪族炭化水素及び300~600℃を超える沸点を有する脂肪族炭化水素の両方を含む。30~300℃の沸点を有する脂肪族炭化水素の量は、30~600℃の沸点を有する脂肪族炭化水素の総量に基づいて、最大で99重量%又は最大で80重量%又は最大で60重量%又は最大で40重量%又は最大で30重量%又は最大で20重量%又は最大で10重量%であり得る。更に、30~300℃の沸点を有する脂肪族炭化水素の量は、30~600℃の沸点を有する脂肪族炭化水素の総量に基づいて、少なくとも1重量%又は少なくとも5重量%又は少なくとも10重量%又は少なくとも20重量%又は少なくとも30重量%であり得る。
【0028】
したがって、有利には、液体炭化水素供給原料流は、30~600℃の広い沸点範囲内で様々な量の脂肪族炭化水素を含み得る。したがって、沸点と同様に、液体炭化水素供給原料流中の脂肪族炭化水素の炭素数はまた、広い範囲、例えば5~50個の炭素原子内で変動し得る。液体炭化水素供給原料流中の脂肪族炭化水素の炭素数は、少なくとも4又は少なくとも5又は少なくとも6であり得、かつ最大で50又は最大で40又は最大で30又は最大で20であり得る。
【0029】
液体炭化水素供給原料流中の脂肪族炭化水素の量は、液体炭化水素供給原料流の総重量に基づいて、少なくとも30重量%又は少なくとも50重量%又は少なくとも80重量%又は少なくとも90重量%又は少なくとも95重量%又は少なくとも99重量%であり得、かつ100重量%未満又は最大で99重量%又は最大で90重量%又は最大で80重量%又は最大で70重量%であり得る。脂肪族炭化水素は、環状、線状、及び分岐状であり得る。
【0030】
液体炭化水素供給原料流中の脂肪族炭化水素は、非オレフィン系(パラフィン系)及びオレフィン系脂肪族化合物を含み得る。液体炭化水素供給原料流中のパラフィン系脂肪族化合物の量は、液体炭化水素供給原料流の総重量に基づいて、少なくとも20重量%又は少なくとも40重量%又は少なくとも60重量%又は少なくとも80重量%であり得、かつ100重量%未満又は最大で99重量%又は最大で80重量%又は最大で60重量%であり得る。更に、液体炭化水素供給原料流中のオレフィン系脂肪族化合物の量は、液体炭化水素供給原料流の総重量に基づいて、100重量%未満又は少なくとも20重量%又は少なくとも40重量%又は少なくとも60重量%又は少なくとも80重量%であり得、かつ最大で99重量%又は最大で80重量%又は最大で60重量%であり得る。
【0031】
更に、オレフィン系化合物は、1つの炭素-炭素二重結合を有する脂肪族化合物(モノオレフィン)及び/又は2つ以上の炭素-炭素二重結合を有する脂肪族化合物を含み得、後者の化合物は、共役又は非共役であり得る。すなわち、2つ以上の炭素-炭素二重結合は、共役していてもよく、共役していなくてもよい。2つ以上の炭素-炭素二重結合を有する脂肪族化合物は、アルファ及びオメガ位置に二重結合を有する化合物を含み得る。液体炭化水素供給原料流中のモノオレフィンの量は、液体炭化水素供給原料流の総重量に基づいて、少なくとも20重量%又は少なくとも40重量%又は少なくとも60重量%又は少なくとも80重量%であり得、かつ100重量%未満又は最大で99重量%又は最大で80重量%又は最大で60重量%であり得る。更に、液体炭化水素供給原料流中に2つ以上の炭素-炭素二重結合を有する共役脂肪族化合物の量は、液体炭化水素供給原料流の総重量に基づいて、0重量%を超えて、又は少なくとも10重量%又は少なくとも20重量%又は少なくとも40重量%又は少なくとも60重量%であり得、かつ最大で80重量%又は最大で60重量%又は最大で40重量%であり得る。
【0032】
本明細書内では、1個以上のヘテロ原子を含有する脂肪族炭化水素は、以下に更に記載されるように、「ヘテロ原子含有有機化合物」である。明示的に又は文脈によって別段の指示がない限り、本明細書内では、「脂肪族炭化水素」という用語は、ヘテロ原子含有脂肪族炭化水素を含まない。更に、明示的に又は文脈によって別段の指示がない限り、本明細書内では、「脂肪族炭化水素」という用語は、2つ以上の炭素-炭素二重結合を有する共役脂肪族化合物を含まない。
【0033】
上記の脂肪族炭化水素に加えて、液体炭化水素供給原料流は、ヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択で芳香族炭化水素を含む。
【0034】
液体炭化水素供給原料流中の芳香族炭化水素の量は、液体炭化水素供給原料流の総重量に基づいて、0重量%、又は0重量%を超えて、又は少なくとも5重量%又は少なくとも10重量%又は少なくとも15重量%又は少なくとも20重量%又は少なくとも25重量%又は少なくとも30重量%であり得、かつ最大で50重量%又は最大で40重量%又は最大で30重量%又は最大で20重量%であり得る。芳香族炭化水素は、単環式及び/又は多環式芳香族炭化水素を含み得る。単環式芳香族炭化水素の例は、スチレンである。多環式芳香族炭化水素は、非縮合及び/又は縮合多環式芳香族炭化水素を含み得る。非縮合多環式芳香族炭化水素の例は、オリゴスチレンである。スチレン及びオリゴスチレンは、ポリスチレンに由来し得る。縮合多環式芳香族炭化水素の例は、ナフタレン及びアントラセン、並びにアルキルナフタレン及びアルキルアントラセンである。芳香族炭化水素中の1つ又は複数の芳香族環は、アルキル基(飽和)及びアルキレン基(不飽和)を含む1つ以上のヒドロカルビル基によって置換され得る。
【0035】
本明細書内では、1個以上のヘテロ原子を含有する芳香族炭化水素は、以下で更に説明するように「ヘテロ原子含有有機化合物」である。明示的に又は文脈によって別段の指示がない限り、本明細書内では、「芳香族炭化水素」という用語は、ヘテロ原子含有芳香族炭化水素を含まない。
【0036】
更に、液体炭化水素供給原料流中のヘテロ原子含有有機化合物の量は、液体炭化水素供給原料流の総重量に基づいて、0重量%超であり、少なくとも0.5重量%又は少なくとも1重量%又は少なくとも3重量%又は少なくとも5重量%又は少なくとも10重量%又は少なくとも15重量%又は少なくとも20重量%であり得、かつ最大で30重量%又は最大で20重量%又は最大で10重量%又は最大で5重量%であり得る。
【0037】
液体炭化水素供給原料流中のヘテロ原子含有有機化合物は、酸素、窒素、硫黄及び/又はハロゲン(例えば、塩素)、好適には酸素、窒素及び/又はハロゲンであり得る、1個以上のヘテロ原子を含有する。ヘテロ原子含有有機化合物は、以下の部分:アミン、イミン、ニトリル、アルコール、エーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、酸、アミド、カルバメート(ウレタンと呼ばれることもある)及び尿素のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0038】
更に、上記のヘテロ原子含有有機化合物は、脂肪族又は芳香族であり得る。脂肪族ヘテロ原子含有有機化合物の例は、オリゴマーポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)である。オリゴマーPVCは、ポリ塩化ビニルに由来し得る。芳香族ヘテロ原子含有有機化合物は、単環式及び/又は多環式芳香族ヘテロ原子含有有機化合物を含み得る。単環式芳香族ヘテロ原子含有有機化合物の例は、テレフタル酸及び安息香酸である。多環式芳香族ヘテロ原子含有有機化合物の例は、オリゴマーのポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)である。テレフタル酸、安息香酸及びオリゴマーPETは、ポリエチレンテレフタレートに由来し得る。窒素含有有機化合物の例は、ポリウレタン及びナイロンを含むポリアミドに由来する化合物である。
【0039】
明示的に又は文脈によって別段の指示がない限り、本明細書内では、「ヘテロ原子含有有機化合物」という用語は、液体炭化水素供給原料流中の又は液体炭化水素供給原料流に由来するヘテロ原子含有有機化合物を意味する。更に、明示的に又は文脈によって別段の指示がない限り、本明細書内では、「ヘテロ原子含有有機化合物」という用語は、本明細書で定義される抽出溶媒、脱混合溶媒及び/又は洗浄溶媒を含まない。
【0040】
追加として、液体炭化水素供給原料流は、塩を含むことができる。当該塩は、有機塩及び/又は無機塩を含み得る。塩は、陽イオンとしてアンモニウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は遷移金属、及び陰イオンとしてカルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、又はハロゲン化物を含み得る。
【0041】
好ましくは、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む、液体炭化水素供給原料流中の成分の少なくとも一部は、合成化合物であり、例えば、化石油中に存在するような天然化合物ではない。例えば、そのような合成化合物には、バイオマスから合成されたプラスチックの熱分解に由来する化合物、例えば、バイオエタノールからエタノールの脱水及びそれに続くそのようにして形成されたエチレンの重合によって合成されたポリエチレンが含まれる。
【0042】
更に、本プロセスではヘテロ原子含有有機化合物は容易に除去されるため、本プロセスへの供給原料は、有利には、比較的多量のそのようなヘテロ原子含有有機化合物を許容することができる。したがって、本プロセスへの供給原料を生成するために熱分解され得る廃プラスチックは、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)及びポリウレタン(polyurethane、PU)などのヘテロ原子含有プラスチックを含み得る。具体的には、ポリエチレン(polyethylene、PE)及びポリプロピレン(polypropylene、PP)などのヘテロ原子を含まないプラスチックに加えて、比較的多量のそのようなヘテロ原子含有プラスチックを含有する、混合廃プラスチックを熱分解することができる。
【0043】
ステップa)-抽出溶媒a)による抽出
本プロセスのステップa)において、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む液体炭化水素供給原料流の少なくとも一部を、1個以上のヘテロ原子を含む抽出溶媒a)と接触させ、液体炭化水素供給原料流の少なくとも一部を、1個以上のヘテロ原子を含有する抽出溶媒a)と接触させ、液体炭化水素供給原料流を、抽出溶媒a)による液-液抽出に供して、脂肪族炭化水素を含む第1の流れと、抽出溶媒a)、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第2の流れとを得る。
【0044】
本プロセスのステップa)において、液体炭化水素供給原料流は、第1のカラム(第1の抽出カラム)に供給されてもよい。更に、抽出溶媒a)を含む第1の溶媒流は、液体炭化水素供給原料流が供給される位置よりも高い位置で第1のカラムに供給されてもよく、それによって向流液-液抽出を可能にし、脂肪族炭化水素を含む第1のカラムからの頂部流(上記「第1の流れ」)と、抽出溶媒a)、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第1のカラムからの底部流(上記「第2の流れ」)とをもたらす。
【0045】
ステップa)において、抽出溶媒a)と液体炭化水素供給原料流との重量比は、少なくとも0.05:1又は少なくとも0.2:1又は少なくとも0.5:1又は少なくとも1:1又は少なくとも2:1又は少なくとも3:1であり得、かつ最大で5:1又は最大で3:1又は最大で2:1又は最大で1:1であり得る。更に、ステップa)における温度は、少なくとも0℃又は少なくとも20℃又は少なくとも30℃又は少なくとも40℃又は少なくとも50℃であり得、かつ最大で200℃又は最大で150℃又は最大で100℃又は最大で70℃又は最大で60℃又は最大で50℃又は最大で40℃であり得る。ステップa)における圧力は、少なくとも100mbara又は少なくとも500mbara又は少なくとも1bara又は少なくとも1.5bara又は少なくとも2baraであり得、かつ最大で50bara又は最大で30bara又は最大で20bara又は最大で15bara又は最大で10bara又は最大で5bara又は最大で3bara又は最大で2bara又は最大で1.5baraであり得る。ステップa)における温度及び圧力は、好ましくは、供給原料流からの炭化水素及び抽出溶媒a)の両方が液体状態であるようなものである。
【0046】
ステップa)において、脂肪族炭化水素の一部は、ヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択で芳香族炭化水素を、抽出溶媒a)で液-液抽出することによって回収される。更に、好ましくは、回収された脂肪族炭化水素は、99:1~1:99の重量比で、30~300℃の沸点を有する脂肪族炭化水素及び300~600℃を超える沸点を有する脂肪族炭化水素を含む。液体炭化水素供給原料流中の脂肪族炭化水素に関して、30~300℃の沸点を有する脂肪族炭化水素と300~600℃を超える沸点を有する脂肪族炭化水素との重量比の上記の説明はまた、回収された脂肪族炭化水素に当てはまる。
【0047】
ステップa)において、当該液-液抽出は、脂肪族炭化水素を含む第1の流れと、抽出溶媒a)、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第2の流れとをもたらす。本明細書内では、回収された脂肪族炭化水素を含む前者の流れ(第1の流れ)を「ラフィネート流」と称することもでき、後者の流れ(第2の流れ)を「抽出物流」と称することもできる。そのようなラフィネート流は、芳香族炭化水素、2つ以上の炭素-炭素二重結合を有する共役脂肪族化合物、及びヘテロ原子含有有機化合物の含有量が低減している。そのようなラフィネート流は、芳香族炭化水素を含まないか、又は最大で10重量%若しくは最大で5重量%若しくは最大で1重量%で含むか、又は実質的に含まない。更に、そのようなラフィネート流は、2つ以上の炭素-炭素二重結合を有する共役脂肪族化合物を含まないか、又は最大で15重量%若しくは最大で10重量%若しくは最大で5重量%若しくは最大で1重量%で含むか、又は実質的に含まない。更に、そのようなラフィネート流は、ヘテロ原子含有有機化合物を含まないか、又は最大で1重量%で含むか、又は実質的に含まない。
【0048】
本プロセスのステップa)において使用される抽出溶媒a)は、ステップa)において第1のカラムに第1の溶媒流として供給されてもよいが、好ましくは、液体炭化水素供給原料流の密度よりも少なくとも3%又は少なくとも5%又は少なくとも8%又は少なくとも10%又は少なくとも15%又は少なくとも20%高い密度を有する。更に、当該密度は、液体炭化水素供給原料流の密度よりも最大で50%又は最大で40%又は最大で35%又は最大で30%高くてもよい。
【0049】
更に、ステップa)で使用される抽出溶媒a)は、酸素、窒素及び/又は硫黄であり得る、1個以上のヘテロ原子を含有する。なお更に、当該抽出溶媒a)は、200℃の温度で熱的に安定であることが好ましい。なお更に、当該抽出溶媒a)は、少なくとも50℃又は少なくとも80℃又は少なくとも100℃又は少なくとも120℃、かつ最大で300℃又は最大で200℃又は最大で150℃の沸点を有し得る。なお更に、当該抽出溶媒a)は、ヘプタン中での混和性を有しないか、又は比較的低い混和性を有することが好ましい。好ましくは、抽出溶媒a)は、ヘプタンの重量に基づいて、最大で30重量%又は最大で20重量%又は最大で10重量%又は最大で3重量%又は最大で1重量%の抽出溶媒a)が、ヘプタン中で混和性であるようなヘプタン中での混和性を有する。ヘプタンなどの別の化合物中のある特定の化合物の混和性は、ASTM法D1476を含む、当業者に既知の任意の一般的な方法によって決定することができる。本明細書において、ある化合物の別の化合物への混和性に言及する場合、これは25℃での混和性を意味する。
【0050】
更に、ステップa)における抽出溶媒a)は、25℃で決定される場合にヘプタンに関して、少なくとも3MPa1/2、好ましくは少なくとも5MPa1/2、より好ましくは少なくとも10MPa1/2、好ましくは少なくとも15MPa1/2のハンセン溶解度パラメータ距離Ra、ヘプタンを有し得る。更に、抽出溶媒a)についての当該Ra、ヘプタンは、45MPa1/2未満又は最大で40MPa1/2、好ましくは最大で35MPa1/2、より好ましくは最大で30MPa1/2、より好ましくは最大で25MPa1/2であり得る。例えば、N-メチルピロリドン(NMP)についての当該Ra、ヘプタンは、15MPa1/2である。
【0051】
なお更に、当該抽出溶媒a)は、25℃で決定される場合にトルエンに関するハンセン溶解度パラメータ距離Ra、トルエンと比較して、少なくとも1.5MPa1/2、好ましくは少なくとも2MPa1/2のヘプタンに関するハンセン溶解度パラメータ距離Ra、ヘプタンの差(すなわち、Ra、ヘプタン-Ra、トルエン)を有し得る。更に、抽出溶媒a)についてのRa、トルエンと比較したRa、ヘプタンの当該差は、最大で4.5MPa1/2、好ましくは最大で4MPa1/2であってもよい。
【0052】
ハンセン溶解度パラメータ(Hansen solubility parameters、HSP)は、ある成分の別の成分と比較した可能性を予測するための手段として使用することができる。より具体的には、各成分は、3つのハンセンパラメータによって特徴付けられ、各々一般に、MPa0.5で表され、δは、分子間の分散力からのエネルギーを示し、δは、分子間の二極性分子間力からのエネルギーを示し、δは、分子間の水素結合からのエネルギーを示す。化合物間の親和性は、式(1)で定義されるハンセン溶解度パラメータ(HSP)距離Rとして、これらの溶媒の原子及び分子間相互作用を定量化する多次元ベクトルを使用して記述することができる:
(R=4(δd2-δd1+(δp2-δp1+(δh2-δh1(1)
式中、
=化合物1と化合物2との間のHSP空間での距離(MPa0.5
δd1、δp1、δh1=化合物1のハンセン(又は同等の)パラメータ(MPa0.5
δd2、δp2、δh2=化合物2のハンセン(又は同等の)パラメータ(MPa0.5
【0053】
したがって、回収される化合物(すなわち、回収される化合物が化合物1であり、溶媒が化合物2である、又はその逆)に関して計算された所与の溶媒についてのRの値が小さいほど、回収される化合物に対するこの溶媒の親和性が高くなる。
【0054】
多数の溶媒についてのハンセン溶解度パラメータは、とりわけ、CRC Handbook of Solubility Parameters and Other Cohesion Parameters,Second Edition by Allan F.M.Barton,CRC press 1991;Hansen Solubility Parameters:A User’s Handbook by Charles M.Hansen,CRC press 2007に見出すことができる。
【0055】
具体的には、本プロセスのステップa)で使用される抽出溶媒a)は、アンモニア、又は好ましくは、ジオール及びトリオール(モノエチレングリコール(monoethylene glycol、MEG)、モノプロピレングリコール(monopropylene glycol、MPG)、ブタンジオール及びグリセロールの任意の異性体を含む);グリコールエーテル(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールを含む、オリゴエチレングリコールを含む)、並びにそれらのモノアルキルエーテル(ジエチレングリコールエチルエーテルを含む);アミド(N-アルキルピロリドンを含み、アルキル基は、1~8個又は1~3個の炭素原子を含有してもよく、N-メチルピロリドン(NMP)を含む)、ホルムアミド、並びにジ及びモノアルキルホルムアミド、及びアセトアミド(アルキル基は、1~8個又は1~3個の炭素原子を含有してもよく、ジメチルホルムアミド(dimethyl formamide、DMF)、メチルホルムアミド及びジメチルアセトアミドを含む);ジアルキルスルホキシド(アルキル基は、1~8個又は1~3個の炭素原子を含有してもよく、ジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide、DMSO)を含む);スルホン(スルホランを含む);N-ホルミルモルホリン(N-formyl morpholine、NFM);フラン環含有成分及びそれらの誘導体(フルフラール、2-メチルフラン、フルフリルアルコール及びテトラヒドロフルフリルアルコールを含む);ヒドロキシエステル(乳酸メチル及び乳酸エチルを含む、乳酸塩を含む);リン酸トリアルキル(リン酸トリエチルを含む);フェノール化合物(フェノール及びグアイアコールを含む);ベンジルアルコール化合物(ベンジルアルコールを含む);アミン系化合物(エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンを含む);ニトリル化合物(アセトニトリル及びプロピオニトリルを含む);トリオキサン化合物(1,3,5-トリオキサンを含む);炭酸化合物(炭酸プロピレン及び炭酸グリセロールを含む);並びにシクロアルカノン化合物(ジヒドロールエボグルコセノンを含む)からなる群から選択される1つ以上の有機溶媒を含み得る。
【0056】
より好ましくは、当該抽出溶媒a)は、上記のジアルキルスルホキシド、具体的にはDMSO;スルホン、具体的にはスルホラン;上記N-アルキルピロリドン、具体的にはNMP;及びフラン環含有成分、具体的にはフルフラールのうちの1つ以上を含む。更により好ましくは、当該抽出溶媒a)は、上記のN-アルキルピロリドン、具体的にはNMP、及びフラン環含有成分、具体的にはフルフラールのうちの1つ以上を含む。最も好ましくは、抽出溶媒a)は、NMPを含む。
【0057】
特定の塩化トリオクチルメチルアンモニウム又は塩化メチルトリブチルアンモニウム中の四級アンモニウム塩の水溶液もまた、ステップa)における抽出溶媒a)として使用され得る。
【0058】
抽出溶媒a)に加えて、水などの洗浄溶媒をステップa)に添加してもよい。この洗浄溶媒は、本明細書において洗浄溶媒c)と称され、以下で更に説明される。そのような場合、ステップa)は、好ましくは脂肪族炭化水素を含む第1の流れと、洗浄溶媒c)、抽出溶媒a)、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第2の流れとをもたらす。したがって、有利には、ステップa)において添加される当該洗浄溶媒c)は、抽出溶媒a)を抽出する抽出溶媒として機能し、それによって、ステップa)から得られ、回収された脂肪族炭化水素を含む第1の流れに抽出溶媒a)がなくなるか、又は実質的になくなることを可能にする。洗浄溶媒c)もステップa)に添加される場合、ステップa)における抽出溶媒a)と洗浄溶媒c)との重量比は、少なくとも0.5:1又は少なくとも1:1又は少なくとも2:1又は少なくとも3:1であってもよく、最大で30:1又は最大で25:1又は最大で20:1又は最大で15:1又は最大で10:1又は最大で5:1又は最大で3:1又は最大で2:1であってもよい。
【0059】
洗浄溶媒c)もステップa)に添加される場合、洗浄溶媒c)を含む第2の溶媒流は、抽出溶媒a)を含む上記の第1の溶媒流が供給される位置よりも高い位置で上記の第1のカラム(第1の抽出カラム)に供給されてもよく、それによって向流液-液抽出を可能にし、脂肪族炭化水素を含む第1のカラムからの頂部流(上記「第1の流れ」)と、洗浄溶媒c)、抽出溶媒a)、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第1のカラムからの底部流(上記「第2の流れ」)とをもたらす。上記の場合、抽出ステップa)における第1の溶媒流は、抽出溶媒a)に加えて、水などの脱混合溶媒b)、及び/又は上記の任意選択の洗浄溶媒c)を含んでもよい。脱混合溶媒b)についても以下で更に説明する。当該脱混合溶媒b)及び洗浄溶媒c)は、本プロセスのステップc)後の1つ以上の再循環流に由来してもよい。
【0060】
洗浄溶媒c)もステップa)に添加される場合、添加される洗浄溶媒c)を含む流れは、液体炭化水素供給原料流に由来するヘテロ原子含有有機化合物を含まないか、又は実質的に含まないことが好ましい。この選好は、上記のように、当該流れが比較的高い位置で第1の抽出カラムに供給され、これらのヘテロ原子含有有機化合物がステップa)から得られたラフィネート(頂部)流を再汚染する可能性がある場合に特に当てはまる。有利には、本発明では、特に脱混合溶媒b)が洗浄溶媒c)、特に水と同一である場合、ステップc)から得られた脱混合溶媒b)含有流の少なくとも一部(ヘテロ原子含有有機化合物を含有しないか、又は実質的に含有しない場合がある)を、ステップa)に供給(再循環)するためのそのような洗浄溶媒c)流として使用することができる。
【0061】
上記のように、ステップa)から得られた第2の流れ(上記の第1の(抽出)カラムのための流れは、そのようなカラムからの底部流に相当する)は、抽出溶媒a)、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む。当該流れは、塩及び/又は2つ以上の炭素-炭素二重結合を有する共役脂肪族化合物を、そのような塩及び/又は化合物が液体炭化水素供給原料流中に存在する場合に、追加として含むことができる。
【0062】
本発明において、抽出溶媒a)は、ステップa)から得られた第2の流れから回収され、次いで、有利には、本プロセスのステップb)、c)及びd)を通してステップa)に再循環される。
【0063】
ステップb)-脱混合溶媒b)による脱混合
本プロセスのステップb)全体において、抽出溶媒a)、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む、ステップa)から得られた第2の流れの少なくとも一部を、1個以上のヘテロ原子を含み、ヘプタン中での抽出溶媒a)の混和性よりも低いヘプタン中での混和性を有する脱混合溶媒b)と混合し、得られた混合物を、少なくとも2つのサブステップ、例えば2~5つのサブステップ、好ましくは2つ又は3つのサブステップにおいて、抽出溶媒a)及び脱混合溶媒b)を含む1つの流れと、先の流れから分離される化合物を含む別の流れとに分離する。すなわち、これらのサブステップの各々において、脱混合溶媒b)との混合、続いて得られた流れの分離があり、抽出溶媒a)及び脱混合溶媒b)を含む分離された流れは、それが脱混合溶媒b)の追加部分と混合される次のサブステップに供給される。脱混合溶媒b)の全量を1ステップのみで添加するのではなく、脱混合溶媒b)を数回に分けてこのように段階的に(段階的又は漸増的に)添加することによって、サブステップを出る抽出溶媒a)及び脱混合溶媒b)を含む各分離した流れ(第2の流れ)中の脱混合溶媒b)の相対量は徐々に増加し、各サブステップ後、当該第2の流れは疎水性が低くなる。これにより、有利には、各サブステップにおいて、抽出溶媒a)及び脱混合溶媒b)を含む当該流れ(第2の流れ)から分離され、回収又は除去される(すなわち、分離される)化合物を含有する流れ(第1の流れ)の組成が異なる。有利には、ステップb)における第1のサブステップから得られた第1の流れ中の脂肪族炭化水素の量は比較的高く、これにより、そのような追加の脂肪族炭化水素からの回収が可能になり、これはステップa)に再循環されてもよく、及び/又はステップa)から得られたラフィネート流と、好ましくはそのようなラフィネート流が、その流れが洗浄溶媒c)と接触する下記の任意選択の追加ステップに供給される前に組み合わされてもよい。一方、ステップb)における後の(下流の)サブステップから得られた第1の流れ中のヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択で芳香族炭化水素の相対量は比較的高く、これにより、ステップb)における前のサブステップで既に回収された追加の脂肪族炭化水素のかなりの量を失うことなく、これらの汚染物質をプロセスから除去することが可能になる。
【0064】
したがって、本明細書においてサブステップb1)とも称される本プロセスのステップb1)において、ステップa)から得られた第2の流れの少なくとも一部は、脱混合溶媒b)と混合され、得られた混合物は、脂肪族炭化水素及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第1の流れと、抽出溶媒a)、脱混合溶媒b)、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第2の流れとに分離される。
【0065】
更に、したがって、本明細書においてサブステップb2)とも称される本プロセスのステップb2)において、ステップb1)から得られた第2の流れの少なくとも一部は、脱混合溶媒b)と混合され、得られた混合物は、ヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第1の流れと、抽出溶媒a)及び脱混合溶媒b)を含む第2の流れとに分離される。
【0066】
更に、ステップb)で使用される脱混合溶媒b)は、酸素、窒素及び/又は硫黄であり得る、1個以上のヘテロ原子を含有する。なお更に、まさに抽出溶媒a)のように、当該脱混合溶媒b)は、ヘプタン中での混和性を有しないか、又は比較的低い混和性を有することが好ましい。好ましくは、脱混合溶媒b)は、ヘプタンの重量に基づいて、最大で10重量%又は最大で3重量%又は最大で1重量%又は最大で0.5重量%又は最大で0.1重量%の脱混合溶媒b)が、ヘプタン中で混和性であるようなヘプタン中での混和性を有する。本発明において、ヘプタン中の脱混合溶媒b)の混和性は、ヘプタン中の抽出溶媒a)の混和性よりも低い。ヘプタン中の当該溶媒a)及びb)の混和性は、上記のASTM法D1476を含む、当業者に既知の任意の一般的な方法によって決定することができる。更に、好適には、脱混合溶媒b)は、抽出溶媒a)に混和性である。これは、脱混合溶媒b)及び抽出溶媒a)の総量に基づいて50重量%までの脱混合溶媒b)が、抽出溶媒a)中で混合され得ることを意味する。
【0067】
更に、ステップb)における脱混合溶媒b)は、25℃で決定されるヘプタンに関して、少なくとも10MPa1/2、好ましくは少なくとも20MPa1/2、より好ましくは少なくとも30MPa1/2、好ましくは少なくとも40MPa1/2のハンセン溶解度パラメータ距離Ra、ヘプタンを有し得る。更に、脱混合溶媒b)についての当該Ra、ヘプタンは、最大で55MPa1/2、より好ましくは最大で50MPa1/2、より好ましくは最大で45MPa1/2であってもよい。例えば、水についての当該Ra、ヘプタンは、45MPa1/2である。
【0068】
上記のように、抽出溶媒a)及び脱混合溶媒b)のヘプタン中での混和性は異なる。したがって、当該溶媒a)及びb)は同一ではない。具体的には、脱混合溶媒b)は、25℃で決定されるヘプタンに関するハンセン溶解度パラメータ距離Ra、ヘプタンを有してもよく、これは、抽出溶媒a)についてのそのようなRa、ヘプタンよりも大きい。好ましくは、溶媒a)及びb)についてのRa、ヘプタンの当該差は、少なくとも1MPa1/2、より好ましくは少なくとも5MPa1/2、より好ましくは少なくとも10MPa1/2、より好ましくは少なくとも15MPa1/2、より好ましくは少なくとも20MPa1/2、より好ましくは少なくとも25MPa1/2である。更に、好ましくは、溶媒a)及びb)についてのRa、ヘプタンの当該差は、最大で55MPa1/2、より好ましくは最大で50MPa1/2、より好ましくは最大で45MPa1/2、より好ましくは最大で40MPa1/2、より好ましくは最大で35MPa1/2、より好ましくは最大で30MPa1/2である。
【0069】
具体的には、本プロセスのステップb)において使用される脱混合溶媒b)は、水及び抽出溶媒a)について上で定義された溶媒の群からの溶媒からなる群から選択される1つ以上の溶媒を含んでもよい。好ましくは、当該脱混合溶媒b)は、水並びに上記のジオール及びトリオール、具体的にはモノエチレングリコール(monoethylene glycol、MEG)及びグリセロールのうちの1つ以上を含む。より好ましくは、脱混合溶媒b)は水を含み、最も好ましくは水からなる。ステップa)で使用される抽出溶媒a)に関して上記した他の選好及び実施形態は、脱混合溶媒b)がヘプタン中でより低い混和性を有するため抽出溶媒a)と同一でないこと、及び脱混合溶媒b)が水を含んでもよく、好ましくは水を含むことを除いて、脱混合溶媒b)にも適用される。
【0070】
本発明のプロセスにおいて、ステップb)は、ステップb)のサブステップであるステップb1)及びb2)を含む、2つ以上のサブステップを含む。好適には、本プロセスは、ステップb)において2~10個、より好適には2~5個のサブステップを含む。ステップb)におけるサブステップの当該数は、少なくとも2であり、少なくとも3又は少なくとも4であってもよく、最大で10又は最大で8又は最大で6であってもよい。
【0071】
例えば、ステップb)が2つのサブステップを含む場合、第1のサブステップにおいて、脂肪族炭化水素及び任意の芳香族炭化水素は、ステップb1)から得られた第1の流れを介して排除されてもよく、第2のサブステップにおいて、ヘテロ原子含有有機化合物は、ステップb2)から得られた第1の流れを介して排除されてもよい。
【0072】
したがって、本プロセスのステップb)は、2つより多いサブステップを含んでもよい。例えば、ステップb)が3つのサブステップを含む場合、第1のサブステップでは、脂肪族炭化水素を排除することができ、第2のサブステップでは、任意の芳香族炭化水素を排除することができ、第3のサブステップでは、ヘテロ原子含有有機化合物を排除することができる。
【0073】
更に、具体的には、本プロセスがステップb)において2つより多くのサブステップを含むような場合、ステップb)は、
bi)ステップa)から得られた第2の流れの少なくとも一部を、脱混合溶媒b)と混合し、得られた混合物を、脂肪族炭化水素及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第1の流れと、抽出溶媒a)、脱混合溶媒b)、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第2の流れとに分離することと、
bii)ステップbi)から得られた第2の流れの少なくとも一部を、脱混合溶媒b)と混合し、得られた混合物を、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第1の流れと、抽出溶媒a)、脱混合溶媒b)、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第2の流れとに分離することと、
biii)ステップbii)から得られた第2の流れの少なくとも一部を、脱混合溶媒b)と混合し、得られた混合物を、ヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第1の流れと、抽出溶媒a)及び脱混合溶媒b)を含む第2の流れとに分離することと、を含んでもよく、また
ステップc)は、ステップbiii)から得られた第2の流れの少なくとも一部を、脱混合溶媒b)を含む第1の流れと、抽出溶媒a)を含む第2の流れとに分離することを含み得る。
【0074】
サブステップbi)、bii)及びbiii)を含む上記のプロセスの追加の利点は、ステップbii)から得られ、(i)脂肪族炭化水素及び(ii)ヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択で芳香族炭化水素の両方を含む第1の流れを廃棄する必要はないが、たとえヘテロ原子含有有機汚染物質及び任意の芳香族汚染物質の相対量が蒸気分解装置に供給するには高すぎる場合であっても、依然として燃料として使用することができることである。当該サブステップbi)は、サブステップb1)に対応し、一方、当該サブステップbiii)は、サブステップb2)に対応する。
【0075】
したがって、本発明において、ステップb)における少なくとも2つのサブステップから得られた様々な第1の流れの組成は、有利には、サブステップの数を増加又は減少させることによって変化させることができるが、これらのサブステップの各々において先行するステップから得られた流れと混合される脱混合溶媒b)の相対量を変化させることによっても変化させることができる。そのような変化は、各サブステップにおいて異なる分配係数をもたらし、ある特定の化合物を、より疎水性の高い第1の流れ又はより疎水性の低い第2の流れのいずれかに優先的に至らせる。そのような変化の必要性は、次に、当該第1の流れ(分解装置供給物、内部再循環、燃料、潜在的に価値のある生成物(例えば、溶媒)又は廃棄)の各々についての所望の出口、ステップb)全体への供給物の組成、及び/又は間接的にステップa)に供給される液体炭化水素供給原料流の組成に依存し得る。
【0076】
更に、ステップb)におけるサブステップから得られた第2の流れの各々は、追加として塩を含んでもよい。2つ以上の炭素-炭素二重結合を有する任意の共役脂肪族化合物は、ヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択で芳香族炭化水素と共に、ステップb)のサブステップから得られた第1又は第2の流れに至り得る。一般に、本発明において、当該共役脂肪族化合物は、芳香族化合物と同様に挙動することができるため、これらは、任意選択の芳香族炭化水素と同じ1つ又は複数の流れに至り得る。
【0077】
ステップb)のサブステップの各々において、脱混合溶媒b)は、ステップa)から得られた第2の流れ又はステップb)の先行するサブステップから得られた第2の流れとは別に、かつ後者の流れのうちの1つに存在し得る任意の脱混合溶媒b)に加えて添加され、後者の流れのうちの1つと混合される。ステップb)のサブステップの各々において、ステップa)から得られた第1の流れ(当該第1の流れは、回収された脂肪族炭化水素及び抽出溶媒a)を含む)の少なくとも一部が、洗浄溶媒c)による液-液抽出に供される、以下に記載される任意選択の追加の抽出ステップから得られた、水などの洗浄溶媒c)及び抽出溶媒a)を含む第2の流れの少なくとも一部は、ステップb)において添加される必要がある当該脱混合溶媒b)を提供するために添加され得る。
【0078】
ステップb)のサブステップの各々における混合は、当業者に既知の任意の方式で実行され得る。例えば、ミキサーは、以下に記載されるような相分離装置の上流で使用され得る。更に、例えば、インライン(又は静的)混合は、そのような相分離装置の上流で実行されてもよい。なお更に、混合は、以下に記載されるようなカラム中で行われ得る。
【0079】
脱混合溶媒b)のそのような添加及びステップb)のサブステップの各々における混合を通して、より疎水性の高い第1の相と、抽出溶媒a)及び脱混合溶媒b)を含むより疎水性の低い第2の相とを含む、異なる相が形成され、これらの相は、各サブステップにおいて、それぞれ、当該第1の流れと第2の流れとに分離される。したがって、有利には、ステップa)から得られた第2の流れ又はステップb)における先行するサブステップから得られた第2の流れとは別に、ステップb)において添加される当該脱混合溶媒b)は、いわゆる「脱混合剤」(又は「貧溶媒」)として機能し、それによって、より疎水性の高い化合物を抽出溶媒a)から除去して回収及び再循環させる。
【0080】
ステップb)のサブステップの各々における相分離は、デカンタ、浮遊装置、コアレッサ及び遠心分離機、好適にはデカンタを含む、2つの相を分離することができる任意の装置によって実行され得る。ステップb)のサブステップの各々における相分離は、単一段階で、例えばデカンタ、浮遊装置、コアレッサ又は遠心分離機において行われることが好ましい。例えば、ステップb)においてデカンタを使用する場合、より疎水性の高い化合物を含む第1の上相と、抽出溶媒a)、脱混合溶媒b)及び任意選択でより疎水性の低い化合物(すなわち、当該第1の相中の化合物よりも疎水性が低い)を含む第2の下相とを、それぞれ、当該第1の流れと第2の流れとに分離することができる。
【0081】
更に、ステップb)のサブステップの各々は、複数の分離段階を含む別個のカラムにおいて行われてもよい。後者の場合、各サブステップは、ステップa)から得られた第2の流れの少なくとも一部、又はステップb)における先行するサブステップから得られた第2の流れの少なくとも一部を、それぞれ、カラム内で脱混合溶媒b)と混合し、得られた混合物を上記の第1の流れと第2の流れとに分離し、好適には、カラムからの頂部流(上記「第1の流れ」)及びカラムからの底部流(上記「第2の流れ」)を得ることを含む。好ましくは、当該脱混合溶媒b)及び他の抽出溶媒a)に富む流れは、カラムの底部でカラムに並流で供給される。
【0082】
上記カラム内の内部構造物は、抽出溶媒a)に富む流れと、脱混合溶媒b)との混合に寄与する。そのようなカラムの内部構造物は、当該技術分野で既知である。カラムの内部構造物は、ラシヒリング、ポールリング、レッシングリング、ビアレッキリング、ディクソンリングなどの充填物;篩プレート;又は、とりわけ、Perry’s Chemical Engineer’s Handbookに記載されているようなランダム構造充填物を含み得る。更に、カラムに撹拌手段が設けられてもよい。例えば、シャフトがカラムに沿って延びてもよく、カラムに固定されたロータ及びステータが設けられてもよい。
【0083】
なお更に、本発明において、複数のサブステップを含む全体としてのステップb)について、複数の分離段階を含む単一のカラムが使用されてもよい。そのような場合に使用することができるカラムは、ステップb)のサブステップの各々が別個のカラムで行われる場合について上記したカラムと同じであってもよい。そのような単一カラムを使用する場合、本プロセスのステップb)は、
b1)ステップa)から得られた第2の流れの少なくとも一部及び脱混合溶媒b)をカラムの第1のセクションに供給し、これらを混合し、脱混合溶媒b)が第1のセクションに供給される位置の下流の位置で第1のセクションから流れを取り出し、取り出された流れを、脂肪族炭化水素及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第1の流れと、抽出溶媒a)、脱混合溶媒b)、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第2の流れとに分離することと、
b2)ステップb1)から得られた第2の流れの少なくとも一部及び脱混合溶媒b)を、第1のセクションの下流に位置するカラムの第2のセクションに供給し、これらを混合し、脱混合溶媒b)が第2のセクションに供給される位置の下流の位置で第2のセクションから流れを取り出し、取り出された流れを、ヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択で芳香族炭化水素を含む第1の流れと、抽出溶媒a)及び脱混合溶媒b)を含む第2の流れとに分離することとを含み得る。
【0084】
ステップb)において単一のカラムが複数のサブステップのために使用される上記の場合において、ステップb2)から得られた第2の流れは、以下に更に記載されるように、カラムの第2のセクションの下流に位置する次のセクションに部分的若しくは完全に供給され得るか、又は抽出溶媒a)及び脱混合溶媒b)を含む第2の流れとして回収され得、少なくともその一部が、ステップc)に供給される。
【0085】
更に、ステップb)において単一のカラムが複数のサブステップのために使用される上記の場合において、そのようなカラムの第1のセクションは、カラムの頂部又は底部に位置付けられてもよい。更に、好ましくは、脱混合溶媒b)及びステップa)から得られた第2の流れは、カラムの第1のセクションに並流で供給される。ステップb)の各サブステップにおいて、相分離は、デカンタ、浮遊装置、コアレッサ及び遠心分離機、好適にはデカンタを含む、2つの相を分離することができる任意の装置によって実行され得る。したがって、相分離は、カラムの外側に位置付けられたそのような相分離装置内で起こる。更に、カラムは、第2のセクションの下流に位置付けられた1つ以上の更なるセクションを含むことができ、この場合、追加の脱混合溶媒b)もまた、先行するサブステップから得られた第2の流れに加えて、これらの追加のセクションの各々に別個に供給され、これらは、そのような追加のセクションで混合され、そのような追加のセクションからの流れは、脱混合溶媒b)がその追加のセクションに供給される位置の下流の位置で取り出され、取り出された流れは、脱混合溶媒b)及び抽出溶媒a)から分離される化合物を含む第1の流れと、抽出溶媒a)及び脱混合溶媒b)を含む第2の流れとに分離される。
【0086】
更に、抽出ステップa)における温度及び圧力の上記説明は、ステップb)全体における上記サブステップにも適用される。なお更に、ステップb)全体において、ステップa)から得られた第2の流れ中の抽出溶媒a)の量に基づく、脱混合溶媒b)、すなわち当該サブステップにおいて添加される全脱混合溶媒b)と抽出溶媒a)との重量比は、少なくとも0.005:1又は少なくとも0.01:1又は少なくとも0.5:1又は少なくとも1:1又は少なくとも2:1であってもよく、最大で10:1又は最大で7:1又は最大で5:1又は最大で4:1又は最大で2:1であってもよい。好適には、ステップb)全体において、ステップb)のサブステップの全てにおいて添加される脱混合溶媒b)の総量は、(i)脱混合溶媒b)の当該総量及び(ii)ステップa)から得られた第2の流れ中の抽出溶媒a)の量に基づいて、0.1~45重量%、より好適には1~40重量%、より好適には5~35重量%、より好適には10~30重量%であってもよい。
【0087】
したがって、本プロセスのステップb)全体において、追加の脂肪族炭化水素は、有利には、ヘテロ原子含有有機化合物及び任意の芳香族炭化水素から別個に回収されてもよく、後者の化合物は、有利には、再循環される抽出溶媒a)から除去され、したがって、後のステップにおいて、そのような除去された化合物から抽出溶媒a)を分離する必要がない。更に、有利には、任意の芳香族炭化水素及びステップb)で除去された2つ以上の炭素-炭素二重結合を有する共役脂肪族化合物は、パイガスとブレンドされ、燃料に加工されるか、又は芳香族化合物の生成に使用され得る。同様に、ステップb)で除去されたヘテロ原子含有有機化合物は、任意選択でヘテロ原子を除去するための水素化処理の後に、燃料に変換されてもよい。更に、ステップb)で除去された当該化合物は、溶媒として使用され得る様々な画分に更に分離され得る。
【0088】
ステップc)-抽出溶媒a)及び脱混合溶媒b)の分離
本プロセスのステップc)において、ステップb)の最後のサブステップから得られ、抽出溶媒a)及び脱混合溶媒b)を含む第2の流れの少なくとも一部は、脱混合溶媒b)を含む第1の流れと、抽出溶媒a)を含む第2の流れとに分離される。以下に記載される任意の洗浄溶媒c)が本発明において使用される場合、この洗浄溶媒c)は、脱混合溶媒b)と同一であっても異なっていてもよく、好ましくは同一であり、そのような洗浄溶媒c)は、ステップb)の最後のサブステップから得られた当該第2の流れに至り、続いてステップc)から得られた当該第1の流れに至り得る。
【0089】
したがって、ステップc)への供給流は、ステップb)の最後のサブステップから得られた第2の流れの少なくとも一部を含む。ステップc)において、脱混合溶媒b)及び抽出溶媒a)は、任意の既知の方式で、好ましくは蒸発によって、例えば蒸留によって、互いに分離され得る。後者の分離は、蒸留カラムで実行され得る。有利には、蒸留において、ステップc)への供給流中の任意のヘテロ原子含有有機化合物及び芳香族炭化水素の少なくとも一部は、脱混合溶媒b)、特に水と共沸的に除去される。
【0090】
したがって、ステップc)は、ステップb)の最後のサブステップから得られた第2の流れの少なくとも一部を、蒸留によって、脱混合溶媒b)を含む頂部流と、抽出溶媒a)を含む底部流とに分離することを含むことが好ましい。ステップc)への供給流がヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択で芳香族炭化水素を追加として含む場合、当該頂部流は、そのような化合物を追加として含む。
【0091】
更に、ステップc)への供給流が塩を追加として含む場合、ステップc)から得られた第2の流れは、そのような塩を追加として含む。ステップc)への供給流又はステップc)から得られた第2の流れが任意の固体塩を含有する場合、それらを、濾過を含む任意の方法によってそこから除去することができる。
【0092】
本発明において、ステップc)への供給流中の脱混合溶媒b)の量は、少なくとも10重量%又は少なくとも20重量%であってもよく、最大で70重量%又は最大で50重量%又は最大で40重量%であってもよい。ステップc)から得られた第2の流れは、脱混合溶媒b)を、例えば、最大で10重量%又は最大で5重量%又は最大で3重量%又は最大で1重量%の量で依然として含んでもよい。有利には、当該第2の流れ中の脱混合溶媒b)の量が比較的低い場合、例えば5重量%までである場合、そのような脱混合溶媒b)は、当該同じ流れからの抽出溶媒a)が本プロセスのステップa)に再循環される前に除去される必要はない。
【0093】
上記のように、本プロセスにおけるステップc)としての上記の蒸留ステップへの供給流が、抽出溶媒a)及び脱混合溶媒b)に加えて、ヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択で芳香族炭化水素を含む場合、蒸留ステップから得られた頂部流は、脱混合溶媒b)、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む。有利には、蒸留において、当該ヘテロ原子含有有機化合物及び芳香族炭化水素の少なくとも一部は、脱混合溶媒b)、特に水と共沸的に除去される。後者の場合、当該頂部流は、2つの相に分離することができ、一方の相は脱混合溶媒b)を含み、別の相はヘテロ原子含有有機化合物及び任意選択で芳香族炭化水素を含む。そのような相分離は、デカンタ、浮選装置、コアレッサ及び遠心分離機、好適にはデカンタを含む、2つの相を分離することができる任意の装置によって実行することができる。有利には、脱混合溶媒b)を含むそのような分離された相からの脱混合溶媒b)は、下記で更に説明されるように再循環されてもよく、一方、他の相は、プロセスからブリードされてもよく、それによって本プロセスにおけるヘテロ原子含有有機化合物及び芳香族炭化水素の任意の蓄積のリスクを低減する。
【0094】
再循環ステップ
本プロセスのステップd)において、ステップc)から得られた第2の流れからの抽出溶媒a)の少なくとも一部を、ステップa)に再循環させる。
【0095】
ステップc)から得られた第2の流れは、芳香族炭化水素及び/又はヘテロ原子含有有機化合物を追加として含んでもよい。ステップa)に再循環される抽出溶媒a)を含む流れが比較的多量のそのような化合物を含む場合、ステップa)へのそのような再循環流中のこれらの汚染物質のいかなる蓄積も防止するように、追加の脱混合溶媒b)をステップb)に添加してもよい。更に、これらの汚染物質は、抽出溶媒a)をステップa)に再循環させる前に、ステップa)に再循環される抽出溶媒a)を含む流れの一部をブリードすることによって除去されてもよく、そのようなブリード流は廃棄され得るか、又は抽出溶媒a)は、そのようなブリード流から、例えばその蒸留によって回収され得る。
【0096】
更に、本プロセスの任意選択のステップe)においてステップc)から得られた第1の流れからの脱混合溶媒b)の少なくとも一部は、ステップb)のサブステップのうちの1つ以上に再循環される。
【0097】
ステップe)におけるステップb)の1つ以上のサブステップへの後者の再循環は、ステップc)から得られた当該第1の流れが、液体炭化水素供給原料流に由来する比較的多量のヘテロ原子含有有機化合物及び/又は芳香族炭化水素を依然として含む場合に好適である。しかしながら、そのような流れがヘテロ原子含有有機化合物及び/若しくは芳香族炭化水素を含まないか、又は実質的に含まないか、あるいは比較的少量のヘテロ原子含有有機化合物及び/又は芳香族炭化水素を含む場合(これは、有利には、少なくとも2つのサブステップを含む分離ステップb)全体によって可能になる)、水などの洗浄溶媒c)が上記のようにステップa)に添加される場合、又はそのような洗浄溶媒c)が添加される下記の任意選択の追加の抽出ステップに添加される場合、そのような流れからの脱混合溶媒b)の少なくとも一部をステップa)に再循環させることが好ましい。
【0098】
ラフィネート流からの抽出溶媒a)の分離
ステップa)における抽出溶媒a)による液-液抽出から得られた回収された脂肪族炭化水素を含む流れ(ラフィネート流)が抽出溶媒a)を追加として含む場合、抽出溶媒a)は、ステップa)から得られた第1の流れであるその流れから分離され、任意選択でステップa)に再循環されることが好ましい。このようにして、回収された脂肪族炭化水素は、有利には、上記のラフィネート流中の任意の抽出溶媒a)から分離され、分離された抽出溶媒a)は、有利には、ステップa)に再循環され得る。
【0099】
抽出溶媒a)は、蒸留、抽出、吸収、及び膜分離を含む任意の方式で、ステップa)から得られた上記の第1の流れ(当該流れは、脂肪族炭化水素及び抽出溶媒a)を含む)から得られた上記の流れから分離され得る。
【0100】
具体的には、ステップa)から得られた第1の流れが脂肪族炭化水素及び抽出溶媒a)を含む上記の場合において、追加のステップにおいて、当該第1の流れの少なくとも一部を、洗浄溶媒c)と接触させ、洗浄溶媒c)による液-液抽出に供して、脂肪族炭化水素を含む第1の流れと、洗浄溶媒c)及び抽出溶媒a)を含む第2の流れとを得る。
【0101】
本発明において、上記の追加の抽出ステップで使用され得るか、又はステップa)に別個に添加され得るか、又はステップa)への流れにおいて抽出溶媒a)と一緒に添加され得る任意選択の洗浄溶媒c)は、脱混合溶媒b)と同一であっても異なっていてもよく、好ましくは同一である。脱混合溶媒b)に関する上記の選好及び実施形態は、任意選択の洗浄溶媒c)にも適用される。好ましくは、洗浄溶媒c)は、水を含み、より好ましくは水からなる。更に、好ましくは、脱混合溶媒b)及び洗浄溶媒c)の両方が水を含み、より好ましくは水からなる。
【0102】
上記の追加のステップにおいて、ステップa)から得られ、脂肪族炭化水素及び抽出溶媒a)を含む第1の流れは、第2のカラム(第2の抽出カラム)に供給されてもよい。更に、洗浄溶媒c)を含む第2の溶媒流は、ステップa)から得られた当該第1の流れが供給される位置よりも高い位置で第2のカラムに供給されてもよく、それによって向流液-液抽出を可能にし、脂肪族炭化水素を含む第2のカラムからの頂部流(上記「第1の流れ」)、並びに洗浄溶媒c)及び抽出溶媒a)を含む第2のカラムからの底部流(上記「第2の流れ」)をもたらす。
【0103】
したがって、有利には、上記の追加のステップにおいて添加される当該洗浄溶媒c)は、抽出溶媒a)を抽出する抽出溶媒として機能し、それによって、有利には、回収された脂肪族炭化水素中に抽出溶媒a)がなくなるか、又は実質的になくなることを可能にする。上記の追加のステップにおいて、抽出溶媒a)と洗浄溶媒c)との重量比は、少なくとも0.5:1又は少なくとも1:1又は少なくとも2:1又は少なくとも3:1であってもよく、最大で30:1又は最大で25:1又は最大で20:1又は最大で15:1又は最大で10:1又は最大で5:1又は最大で3:1又は最大で2:1であってもよい。更に、抽出ステップa)における温度及び圧力の上記の説明は、上記の追加の(抽出)ステップにも当てはまる。本プロセスが上記の追加ステップを含む場合、抽出ステップa)における第1の溶媒流は、抽出溶媒a)に加えて脱混合溶媒b)を含んでもよく、この場合、第1の抽出カラムからの底部流は、脱混合溶媒b)を追加として含む。
【0104】
洗浄溶媒c)が添加される上記の追加のステップにおいて、添加される洗浄溶媒c)を含む流れは、液体炭化水素供給原料流に由来するヘテロ原子含有有機化合物を含まないか、又は実質的に含まないことが好ましい。この選好は、上記のように、当該流れが比較的高い位置で第2の抽出カラムに供給され、これらのヘテロ原子含有有機化合物が、ラフィネート(頂部)流を再汚染する可能性がある場合に特に当てはまる。有利には、本発明において、ステップc)から得られ、脱混合溶媒b)及び任意選択で洗浄溶媒c)を含む第1の流れの少なくとも一部(これは、液体炭化水素供給原料流に由来するヘテロ原子含有有機化合物を含有しないか、又は実質的に含有しなくてもよい)は、特に脱混合溶媒b)が洗浄溶媒c)、特に水と同一である場合、当該追加のステップに供給(再循環)するためのそのような洗浄溶媒c)流として使用することができる。
【0105】
更に、上記の追加(抽出)ステップから得られた洗浄溶媒c)及び抽出溶媒a)を含む第2の流れの少なくとも一部を、ステップb)に供給して、特に脱混合溶媒b)が洗浄溶媒c)と同一である場合に、ステップb)において添加する必要がある脱混合溶媒b)の少なくとも一部を提供することができる。したがって、有利には、そのような洗浄溶媒c)は、当該追加のステップにおいて残留抽出溶媒a)を抽出する抽出溶媒として、及びステップb)においていわゆる「脱混合剤」(又は「貧溶媒」)として、すなわち、上で更に考察されたように、脱混合溶媒b)としての両方で機能することができる。
【0106】
水以外の洗浄溶媒が、ステップa)で使用される抽出溶媒a)を抽出するための抽出カラムに供給される場合、上記の追加のステップにおいて、又は上記のステップa)自体において、そのような他の溶媒に加えて、水が、他の溶媒が供給される位置よりも高い位置で抽出カラムに供給されることが好ましい場合がある。このようにして、有利には、より高い位置で供給される水は、水以外の任意の洗浄溶媒を抽出することができ、それによって、そのような他の洗浄溶媒が(最終)ラフィネート流に入るのを防止する。あるいは、後者のラフィネート流を、別個のステップにおいて水で洗浄してもよい。
【0107】
上流及び下流の統合
本発明において、液体炭化水素供給原料流は、プラスチック、好ましくは廃プラスチック、より好ましくは混合廃プラスチックの分解を含むプロセスにおいて形成される炭化水素生成物の少なくとも一部を含むことができ、プラスチックの少なくとも一部が、ヘテロ原子含有有機化合物を含む。
【0108】
したがって、本発明はまた、プラスチックから脂肪族炭化水素を回収するためのプロセスに関し、プラスチックの少なくとも一部が、ヘテロ原子含有有機化合物を含み、当該プロセスは、
(I)プラスチックを分解し、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む炭化水素生成物を回収するステップと、
(II)ステップ(I)で得られた炭化水素生成物の少なくとも一部を含む、液体炭化水素供給原料流を、液体炭化水素供給原料流から脂肪族炭化水素を回収するための上記のプロセスに供するステップとを含む。
【0109】
本脂肪族炭化水素回収プロセスに関してそのようなものとして上記した選好及び実施形態は、プラスチックから脂肪族炭化水素を回収するための本プロセスのステップ(II)にも適用される。上記ステップ(I)において、得られる炭化水素生成物は、液体又は固体若しくはワックスのいずれかであってもよい。後者の場合、ステップ(II)の脂肪族炭化水素回収プロセスに供する前に、固体又はワックスを最初に加熱して液体にする。
【0110】
上記のプロセスにおいて、ステップ(I)に供給されるプラスチックの少なくとも一部は、ヘテロ原子含有有機化合物を含み、このプラスチックは、好ましくは廃プラスチック、より好ましくは混合廃プラスチックである。当該ステップ(I)において、プラスチックの分解は、熱分解プロセス及び/又は接触分解プロセスを伴ってもよい。ステップ(I)における分解温度は、300~800℃、好適には400~800℃、より好適には400~700℃、より好適には500~600℃であってもよい。更に、任意の圧力が加えられてもよく、この圧力は、大気圧未満、大気圧、又は大気圧超であってもよい。ステップ(I)における熱処理は、プラスチックの溶融及びその分子のより小さい分子への分解を引き起こす。ステップ(I)における分解は、熱分解として又は液化として行うことができる。熱分解及び液化の両方において、連続液相が形成される。加えて、熱分解では、不連続な気相が形成され、これは液相を逃れ、連続した気相に分離する。液化においては、比較的高い圧力を加えることによって有意な気相は存在しない。
【0111】
更に、ステップ(I)において、その後の気相の凝縮及び/又は液相の冷却は、脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び任意選択で芳香族炭化水素を含む、液体又は固体若しくはワックスのいずれかであり得る炭化水素生成物を提供し、この少なくとも一部は、ステップ(II)において上記の脂肪族炭化水素回収プロセスに供される。
【0112】
上記のステップ(I)は、任意の既知の方式、例えば、上記の国際公開第2018/069794号及び国際公開第2017/168165号(これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているような方式で行うことができる。
【0113】
有利には、脂肪族炭化水素の回収のための上記のプロセスのうちの1つにおいて回収された脂肪族炭化水素は、広い沸点範囲内の様々な量の脂肪族炭化水素を含んでいてもよく、上記の国際公開第2018/069794号に開示されているような水素による処理(水素化処理又はハイドロプロセス)などの更なる前処理なしに蒸気分解装置に供給されてもよい。蒸気分解装置への供給物として使用されることに加えて、当該回収された脂肪族炭化水素はまた、有利には、水素化分解、異性化、水素化処理、熱接触分解、及び流動接触分解を含む他の精製プロセスに供給されてもよい。更に、蒸気分解装置への供給物として使用されることに加えて、当該回収された脂肪族炭化水素はまた、有利には、各々がディーゼル、船舶燃料、溶媒等の異なる用途を見出し得る異なる画分に分離されてもよい。
【0114】
したがって、本発明はまた、炭化水素供給物を蒸気分解するためのプロセスに関し、炭化水素供給物が、脂肪族炭化水素の回収のための上記のプロセスのうちの1つにおいて回収された脂肪族炭化水素を含む。更に、したがって、本発明はまた、炭化水素供給物を蒸気分解するためのプロセスであって、脂肪族炭化水素の回収のための上記のプロセスのうちの1つにおいて液体炭化水素供給原料流から脂肪族炭化水素を回収するステップと、炭化水素供給物が、前のステップで回収された脂肪族炭化水素を含む、炭化水素供給物を蒸気分解するステップとを含む、プロセスに関する。本明細書において、「前のステップで回収された脂肪族炭化水素を含む炭化水素原料を蒸気分解する」という当該句は、「回収された脂肪族炭化水素の少なくとも一部を含む炭化水素供給物を蒸気分解する」ことを意味し得る。蒸気分解プロセスへの炭化水素供給物はまた、脂肪族炭化水素の回収のための本プロセス以外の別の供給源からの炭化水素を含んでもよい。そのような他の供給源は、ナフサ、ハイドロワックス、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0115】
有利には、液体炭化水素供給原料流が芳香族炭化水素、特に多環式芳香族、ヘテロ原子含有有機化合物、2つ以上の炭素-炭素二重結合を有する共役脂肪族化合物、又はそれらの組み合わせを含む場合、これらは、回収された炭化水素を蒸気分解プロセスに供給する前に、上記の本脂肪族炭化水素回収プロセスによって既に除去されている。これは、当該除去された化合物、特に多環式芳香族が、蒸気分解装置の予熱、対流、及び放射セクション、並びに蒸気分解装置の下流の熱交換及び/又は分離機器において、例えば、蒸気分解装置からの流出物を急速に冷却するために使用される移送ライン交換器(transfer line exchanger、TLE)において、もはやファウリングを引き起こさないという点で特に有利である。炭化水素が凝縮すると、それらは、熱分解してコークス層になり、ファウリングを引き起こす場合がある。そのようなファウリングは、分解装置のランレングスを決定する主要な要因である。ファウリングの量を低減すると、メンテナンスをシャットダウンせずに実行時間が長くなり、交換器の熱伝達が改善される。
【0116】
蒸気分解は、任意の既知の方式で実行され得る。炭化水素供給物は、典型的には、予熱される。供給物は、熱交換器、炉、又は熱伝達及び/若しくは加熱デバイスの任意の他の組み合わせを使用して加熱することができる。供給物は、分解条件下の分解ゾーンで蒸気分解され、少なくともオレフィン(エチレンを含む)及び水素を生成する。分解ゾーンは、供給物を分解するのに好適な当技術分野で既知の任意の分解システムを備え得る。分解ゾーンは、1つ以上の炉を備え得、各々が特定の供給物又は供給物の画分専用である。
【0117】
分解は、高温、好ましくは650~1000℃の範囲、より好ましくは700~900℃、最も好ましくは750~850℃の範囲で実行される。蒸気は、通常、分解ゾーンに追加され、炭化水素分圧を低減させ、それによってオレフィンの収率を高めるための希釈剤として機能する。蒸気はまた、分解ゾーンでの炭素質材料又はコークスの形成及び堆積を低減する。分解は、酸素がない場合に発生する。分解条件での滞留時間は、非常に短く、典型的には、ミリ秒のオーダーである。
【0118】
分解装置から、芳香族化合物(蒸気分解プロセスで生成される)、オレフィン、水素、水、二酸化炭素、及び他の炭化水素化合物を含み得る分解装置流出物が得られる。得られる特定の生成物は、供給物の組成、炭化水素対蒸気比、並びに分解温度及び炉滞留時間に依存する。次いで、蒸気分解装置からの分解された生成物は、しばしばTLE(「移送ライン交換器」)と称される1つ以上の熱交換器を通過して、分解生成物の温度を急速に低減させる。TLEは、好ましくは、分解生成物を400~550℃の範囲の温度に冷却する。
【0119】

液体炭化水素供給原料流から脂肪族炭化水素を回収するための本プロセスは、図1及び2に更に示される。
【0120】
図1のプロセスにおいて、脂肪族炭化水素(2つ以上の炭素-炭素二重結合を有する共役脂肪族化合物(以下、「ジエン」と称される)を含む)、芳香族炭化水素及びヘテロ原子含有有機化合物を含む、液体炭化水素供給原料流1;本発明による抽出溶媒a)である有機溶媒(例えば、N-メチルピロリドン)を含む、第1の溶媒流2;及び本発明による任意選択の洗浄溶媒c)である水を含む、第2の溶媒流3が、抽出カラム4に供給される。カラム4において、液体炭化水素供給原料流1を、第1の溶媒流2(有機溶媒)と接触させ、それによって有機溶媒によるジエン、芳香族炭化水素、及びヘテロ原子含有有機化合物の液-液抽出により脂肪族炭化水素を回収する。更に、第2の溶媒流3中の水は、水による有機溶媒の液-液抽出によって、カラム4の上部から有機溶媒を除去する。回収された脂肪族炭化水素を含む流れ5は、上部のカラム4を出る。更に、有機溶媒、水、脂肪族炭化水素、ジエン、芳香族炭化水素、及びヘテロ原子含有有機化合物を含む流れ6は、カラム4の底部から出る。
【0121】
更に、図1のプロセスでは、流れ6及び追加の水を含む流れ14aを合わせ、合わせた流れを第1のデカンタ13aに供給する。当該水流14a並びに下方の水流14b及び14cは、水流14から分割された副流であり、当該副流中の水は、本発明による脱混合溶媒b)である。デカンタ13aにおいて、合わせた流れは、脂肪族炭化水素を含む流れ15aと、有機溶媒、水、脂肪族炭化水素、ジエン、芳香族炭化水素、及びヘテロ原子含有有機化合物を含む流れ16aとに分離される。次いで、流れ16a及び追加の水を含む流れ14bを合わせ、合わせた流れを第2のデカンタ13bに供給する。デカンタ13bにおいて、合わせた流れは、脂肪族炭化水素、ジエン、芳香族炭化水素、及びヘテロ原子含有有機化合物を含む流れ15bと、有機溶媒、水、ジエン、芳香族炭化水素、及びヘテロ原子含有有機化合物を含む流れ16bとに分離される。最後に、流れ16b及び追加の水を含む流れ14cを合わせ、合わせた流れを第3のデカンタ13cに供給する。デカンタ13cにおいて、合わせた流れは、ジエン、芳香族炭化水素、及びヘテロ原子含有有機化合物を含む流れ15cと、有機溶媒、水、並びに低減した量のジエン、芳香族炭化水素、及びヘテロ原子含有有機化合物を含む流れ16cとに分離される。
【0122】
なお更に、図1のプロセスにおいて、流れ16cは、蒸留カラム7に供給され、水、ジエン、芳香族炭化水素、及びヘテロ原子含有有機化合物を含む頂部流8と、有機溶媒を含む底部流9とに分離される。底部流9からの有機溶媒は、有機溶媒流2を介して再循環される。流れ8は、オーバーヘッドデカンタ17に供給され、ジエン、芳香族炭化水素、及びヘテロ原子含有有機化合物を含む流れ18と、水を含む流れ(これは、比較的少量のジエン、芳香族炭化水素、及びヘテロ原子含有有機化合物を追加として含んでいてもよい)とに分離され、その水流の一部(流れ19a)は、還流として蒸留カラム7に戻され、他の部分(流れ19b)は、水流14及び/又は水流3を介して再循環されてもよい。
【0123】
図2のプロセスにおいて、脂肪族炭化水素(2つ以上の炭素-炭素二重結合を有する共役脂肪族化合物を含む、以下「ジエン」と称される)、芳香族炭化水素、及びヘテロ原子含有有機化合物を含む、液体炭化水素供給原料流1、並びに有機溶媒(例えば、N-メチルピロリドン)を含む、第1の溶媒流2(これは、本発明による抽出溶媒a)である)が、第1の抽出カラム4aに供給される。カラム4aでは、液体炭化水素供給原料流1は、第1の溶媒流2(有機溶媒及び水)と接触し、それによって、有機溶媒によるジエン、芳香族炭化水素、及びヘテロ原子含有有機化合物の液-液抽出によって脂肪族炭化水素を回収し、結果として、回収された脂肪族炭化水素及び有機溶媒を含む頂部流5aと、有機溶媒、水、ジエン、芳香族炭化水素、及びヘテロ原子含有有機化合物を含む底部流6とが生じる。流れ5a、及び水を含む第2の溶媒流3(これは、本発明による任意選択の洗浄溶媒c)である)は、第2の抽出カラム4bに供給される。でラム4bでは、流れ5aは、第2の溶媒流3(水)と接触し、それによって、水による有機溶媒の液-液抽出によって有機溶媒を除去する。回収された脂肪族炭化水素を含む流れ5bは、上部のカラム4bを出る。更に、有機溶媒及び水を含む流れ14は、カラム4bの底部から出て、副流14a、14b及び14cに分割され、当該副流中の水は、本発明による脱混合溶媒b)である。流れ6及び14aを合わせ、合わせた流れを第1のデカンタ13aに供給する。デカンタ13a以降での処理に関して、図2のプロセスにおける下流の処理は、図1のプロセスにおける対応する処理の上記の説明を参照する。任意選択で(図2には示されていない)、追加の副流14dを流れ14から分割し、蒸留カラム7に直接供給することができる。
【0124】
本発明を、以下の実施例によって更に説明する。
【実施例
【0125】
実施例1
実施例1において、廃プラスチック熱分解油が使用され、これは、GCが水素炎イオン化検出器(Flame Ionization Detector、FID)を利用する二次元ガスクロマトグラフィー(GC×GC)法によって決定されるように、以下の組成を有していた:7個未満の炭素原子(<C7)を有する軽質成分(8.7重量%)、パラフィン(25重量%)、オレフィン(26.3重量%)、ナフテン(13.9重量%)、芳香族(12.2重量%)、多環式芳香族(1.9重量%)、ヘテロ原子含有有機化合物(12.1重量%)、塩化物含有量(約900ppmw)、窒素含有量(約300ppmw)、酸素含有量(約1200ppmw)。更に、廃プラスチック熱分解油は、777kg/mの密度を有していた。
【0126】
実験室条件下で、本発明による液体炭化水素供給原料である、250mlの廃プラスチック熱分解油を、本発明による抽出溶媒a)である、250mlの乾燥N-メチル-2-ピロリドン(NMP)と5分間混合した。当該NMPは、本明細書において溶媒とも称される。NMPは、1027kg/mの密度を有する。次いで、得られた混合物を放置して、(i)脂肪族炭化水素を含む上部油相(本明細書では「第1の油相」とも呼ばれる)と、(ii)NMP、並びに廃プラスチック熱分解油から脂肪族炭化水素、ヘテロ原子含有有機化合物、及び芳香族炭化水素を含む溶媒中に抽出された化合物を含む下部溶媒相(本明細書では抽出物又は「第1の溶媒相」とも称される)とに分離した。第1の油相は、第1の溶媒相よりも低い密度を有していた。第1の溶媒相の体積は、炭化水素供給原料の体積に基づいて114体積%であった。これは、化合物が廃プラスチック熱分解油から溶媒中に抽出されたことを意味する。
【0127】
次いで、第1の溶媒相を、デカンテーションによって第1の油相から分離した。更に、水(本発明による脱混合溶媒bである)を、第1の溶媒相の体積に基づいて7.4体積%の量で、分離された第1溶媒相に添加した。したがって、添加した水に対する第1の溶媒相の体積比は、13.5であった。5分間混合した後、混合物を放置して、第2の油相と、水及びNMPを含む第2の溶媒相とに分離させた。第2の油相の体積は、混合物の体積に基づいて約10体積%であった。デカンテーションによって相を分離した。
【0128】
次いで、追加の水を、第2の溶媒相の体積に基づいて65体積%の量で、分離された第2の溶媒相に添加した。したがって、添加した水に対する第2溶媒相の体積比は、1.5であった。5分間混合した後、混合物を放置して、第3の油相と、水及びNMPを含む第3の溶媒相とに分離させた。第3の油相の体積は、混合物の体積に基づいて約3.6体積%であった。デカンテーションによって相を分離した。
【0129】
いくつかの回収された油相の色の外観の変化は、これらの油相の組成の変化の定性的証拠とみなすことができる。脂肪族化合物に富む油(ヘテロ原子を含有しない)は、半透明の外観(水のような)を有し、無色である。対照的に、炭素原子間及び/又は炭素原子とヘテロ原子との間にいくつかの二重結合を有する多くの化合物は着色している。排除された油相の着色の暗さの強度は、そのような二重結合を含有する化合物の濃度にいくらか比例する。実施例1において、第1の油相は、色がはるかに暗い第3の油相よりも外観が透明であり、以下の実施例2及び3において更に確認されるように、組成の変化を示した。
【0130】
実施例2
実施例2では、実施例1で使用したものと同じ廃プラスチック熱分解油を、40℃及び大気圧で抽出カラム内で同じ乾燥有機溶媒(NMP)と接触させた。熱分解油は分散相(液滴)であり、12kg/hの流量で抽出カラムの底部に導入した。溶媒(NMP)は連続相であり、23.8kg/hの流量でカラムの頂部に導入した。溶媒に対する油の体積流量比は、1:1.5であった。抽出物相は、抽出カラムの底部で生成され、ラフィネート相は、頂部で生成された。
【0131】
抽出物は、NMP溶媒、並びに炭化水素供給物からのN、Cl及びO汚染物質を含有していた。ラフィネート中のこれらのN、Cl、及びO汚染物質の相対量は、以下の表に示すように、供給物中のそれらと比較して実質的に低減した。
【0132】
【表1】
【0133】
1380mlのその抽出物(第1溶媒相)を試料として採取した。抽出物は、連続相(相分離なし、第2の相なし)を含み、下記の図3における第1のデータ点によって表される。決められた量の脱塩水(脱塩した水)を添加し、その抽出物試料と約5分間混合した。次いで、混合物を2つの相に分離させ、その後、2つの相をデカンテーションによって分離した。排除された油相を、定量及び分析のために除去した。次いで、生成した抽出物相に追加の水を添加した。これらのステップを連続して行い、全部で9つの異なる排除された油相を生成した。最初の抽出物体積(1380mlであった)の百分率として各ステップで添加された脱塩水の連続量は、対応して、2、2、2、4、7、14、22、29、36体積%であった。各排除された油相の体積も記録した。
【0134】
図3は、最初の抽出物体積(1380mlであった)に基づく、溶媒相に添加された水の累積量をx軸上に示す。例えば、第1の水添加ステップにおいて、最初の抽出物体積の量に基づいて2体積%の量の水を添加した。更に、第2の水添加ステップにおいて、その最初の抽出物体積の量に基づいて2体積%の量の水も添加し、その最初の抽出物体積の量に基づいて4体積%の添加された水の累積量をもたらした。
【0135】
更に、図3は、最初の抽出物体積(1380mlであった)に基づく油相の累積量をy軸上に示す。図3に見られるように、第1の水添加ステップにおいて第1の溶媒相に約2体積%の水のみを添加することによって、NMP以外の比較的大量の炭化水素化合物が、その第1の溶媒相から有利に除去される(排除される)。更に、次の水添加ステップにおいて追加の水を添加することによって、ますます低い相対量のそのような他の化合物が除去された。
【0136】
図3に示されるように、全ての水添加ステップについて分離された油相の相対量が異なるだけでなく、有利には、これらの油相の各々の組成も異なっていた。これは図4及び図5に示されている。
【0137】
図4は、x軸上に、第1の溶媒相(「抽出物」)の体積に基づく油相の累積量を示し、y軸上に、当該第1の溶媒相中のそのような塩化物含有有機化合物の総体積に基づく塩化物含有有機化合物の累積量(燃焼イオンクロマトグラフィー、(Combustion Ion Chromatography、CICによって測定)を示す。図4は、最初の水添加ステップでは、比較的少ない塩化物含有有機化合物が、溶媒相から除去されるのに対し、後の水添加ステップでは、比較的多い塩化物含有有機化合物が、溶媒相から除去されることを示す。したがって、有利には、第1の水添加ステップから得られた油相は、比較的多量の脂肪族炭化水素を含有し(塩素などのヘテロ原子を含有しない)、それによって、有利には、水の段階的添加はないが、同じ合計(累積)量の水が単一の水添加ステップで添加される場合と比較して、そのような脂肪族炭化水素の全体的な回収率を増加させる。
【0138】
更に、図5は、水の連続添加から得られた分離した油相のガスクロマトグラフィー(Gas Chromatography、GC)-電界イオン化質量分析(Field Ionization Mass Spectrometry、FIMS)による分析の結果を示す。図5において、「油相デカンタ1」は、第1の水添加ステップで分離された第2の油相を意味する。「油相デカンタ3」は、第3の水添加ステップで分離された第4の油相を意味し、「油相デカンタ5」は、第5の水添加ステップで分離された第6の油相を意味する。図5では、二重結合当量(Double Bond Equivalent、DBE)が、油相からの化合物中の炭素数の関数としてプロットされている。図5における比較的大きなドットは、特定の炭素数及びDBEを有する化合物の相対量が、比較的大きいことを意味する。DBEは、有機化合物中の不飽和のレベルを表す。DBEが高いほど、不飽和炭素-炭素結合及び/又は環構造の数が多くなる。図5はまた、水の連続的(段階的)添加が、NMPに加えて増加する量の水を含む溶媒相によって排除された有機化合物を含有する油相の組成のシフトをもたらすことを示す。例えば、比較的高い炭素数を有するパラフィン系(不飽和)有機化合物は、主に、第1の水添加ステップにおいて油相に排除される(図5の「油相デカンタ1」を参照)。更なる水が添加されるにつれて、水及びNMPを含む得られた溶媒相は、比較的高い数の不飽和炭素-炭素結合及び/若しくは環構造を有する、並びに/又は比較的低い炭素数を有する比較的より多くの有機化合物を排除し始めた(図5の「油相デカンタ3及び5」を参照)。
【0139】
実施例3
実施例3において、実施例1及び実施例2の知見及びそれに伴う本発明の効果を以下のようにして確認した。
【0140】
Aspen Plus V11におけるプロセスシミュレーションを以下のように設定した。そのシミュレーションでは、廃プラスチック熱分解油の代表的な成分を含む流れが使用され(以下の表1、2、及び3の「廃プラスチック油供給原料」を参照)、これは本発明による液体炭化水素供給原料流である。Aspen Plus成分ライブラリーから選択された成分は、パラフィン、オレフィン及びナフテン、酸素含有芳香族化合物(「O-芳香族」)、塩素含有芳香族化合物(「Cl-芳香族」)、多環式芳香族化合物(O及びClなどのヘテロ原子を含有しない)、他の芳香族化合物(O及びClなどのヘテロ原子を含有しない)に分類される。供給物中のこれらの成分の相対量を表1に示す。選択される基本的な熱力学的方法は、液-液平衡用途のために一般に推奨される特性方法であるUNIF-LLである。
【0141】
供給流(油)を第1の抽出カラムに導入し、本発明による抽出溶媒a)である溶媒N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を、シミュレーションの目的で、それぞれ200kg/h及び100kg/hの対応する流量で、2:1の溶媒対油の質量比で添加する。油相(「ラフィネート」)及び第1の溶媒相(「抽出物」)は、1:3.3のラフィネート対抽出物の質量比で生成される。次いで、当該ラフィネートを第2の抽出カラムに導入し、本発明による任意選択の洗浄溶媒c)である水と、0.72:1の水対ラフィネートの質量比で接触させる。別の油相(最終「ラフィネート生成物」)、並びにNMP及び主に水を含む別の溶媒相(「抽出物」)が生成される。第2の抽出カラムからの当該他の溶媒相は、脱混合溶媒b)として、以下のデカンテーションステップの各々に添加される水の供給源として使用される。
【0142】
水は、50:1の第1の溶媒相対水の質量比[すなわち、2%の水]で第1の溶媒相に添加され、当該水は、本発明による脱混合溶媒b)である。混合及び(デカンテーションによる)相分離の後、第1の油相及び第2の溶媒相(NMP及び水を含む)が生成される。次いで、67:1の第2の溶媒相対水の質量比[すなわち、1.5%の水]で、追加の水を第2の溶媒相に添加する。混合及び(デカンテーションによる)相分離の後、第2の油相及び第3の溶媒相が生成される。次いで、4.6:1の第3の溶媒相対水の質量比[すなわち、18%の水]で、追加の水を第3の溶媒相に添加する。混合及び(デカンテーションによる)相分離の後、第3の油相及び第4の溶媒相が生成される。
【0143】
表1は、廃プラスチック油供給物の流量に基づく、第1の溶媒相、並びに第1、第2、及び第3の油相の各々の流量(質量部)を示す。第1の溶媒相の流量と、廃プラスチック油供給物の流量との比は2:1より大きいため、これは、化合物が廃プラスチック油供給物から溶媒中に抽出されることを意味する。表1はまた、廃プラスチック油供給物中のその成分の量に基づく、第1の溶媒相、並びに第1、第2、及び第3の油相の各々における様々な成分の相対量を示す(すなわち、w.o.f%=「供給物に対する重量」)。
【0144】
【表2】
【0145】
表1に見られるように、第1及び第2の油相は、有利には、比較的少量の有機塩化物(すなわち、第3の油相中の19.9重量%と比較して、6.3重量%のみのCl-芳香族の合計量)及びヘテロ原子を含有しない比較的少量の芳香族(すなわち、第3の油相中の14.5重量%と比較して、9.6重量%のみの他の芳香族の合計量、及び第3の油相中の42.1重量%と比較して、22.2重量%のみの多環式芳香族の合計量)のみを含有し、これは、これらの第1及び第2の油相を、例えば、プロセスの供給物に再循環して戻すのに好適にすることができる。あるいは、これらの第1及び第2の油相は、上記の最終ラフィネート生成物と混合されてもよく、これはヘテロ原子含有汚染物質のレベルが低いためであり、そのような混合のために許容可能なレベルまで更に低減され得る。しかしながら、好ましくは、これらの第1及び第2の油相は、当該油相中のNMPの存在を考慮して、第2の抽出カラムに導入する前に、NMPによる第1の抽出によって得られた上記のラフィネートと代わりに混合されてもよい(以下の表2を参照)。有利には、これらの混合の場合、第1及び第2の油相は、新しい供給物に対して油回収率の約11%の増加を構成する(すなわち、追加の、供給原料に基づいて合わせて10.8部の流れ)。
【0146】
更に、表2は、問題の供給物又は相の量(すなわち、w/w%)に基づく、廃プラスチック油供給物、第1の溶媒相、並びに第1、第2、及び第3の油相の各々における成分の相対量を示す。
【0147】
【表3】
【0148】
以下の表3において、Aspen Plus V11におけるプロセスシミュレーションにおいて選択された上記の成分が、更に特定される。
【0149】
【表4】
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】