(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】軌道の領域における振動伝達を特定するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
B61L 15/00 20060101AFI20231025BHJP
E01B 27/16 20060101ALI20231025BHJP
E01B 35/00 20060101ALI20231025BHJP
B61L 23/00 20060101ALI20231025BHJP
B61K 9/08 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
B61L15/00
E01B27/16
E01B35/00
B61L23/00
B61K9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523057
(86)(22)【出願日】2021-09-16
(85)【翻訳文提出日】2023-04-14
(86)【国際出願番号】 EP2021075408
(87)【国際公開番号】W WO2022078698
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514318345
【氏名又は名称】プラッサー ウント トイラー エクスポート フォン バーンバウマシーネン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Plasser & Theurer, Export von Bahnbaumaschinen, Gesellschaft m.b.H.
【住所又は居所原語表記】Johannesgasse 3, A-1010 Wien, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン アウアー
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト アントニー
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ コプフ
【テーマコード(参考)】
2D057
5H161
【Fターム(参考)】
2D057CB00
5H161AA01
5H161MM02
5H161MM12
5H161NN01
5H161NN11
(57)【要約】
本発明は、軌道(4)の領域における振動伝達を特定するための方法であって、作業プロセス中に軌道(4)を、軌道(4)上を走行する軌道建設機械(1)の作業アセンブリ(12,13)を用いて振動させ、軌道(4)を介して伝達される振動(19,28)が、作業アセンブリ(12,13)から離間したセンサ(20)を用いて測定され、センサ(20)の測定データが評価装置(25)において評価される、方法に関する。この場合、作業アセンブリ(12,13)に対するセンサ(20)の位置が評価装置(25)に設定され、評価装置(25)において、センサ(20)によって検出された作業アセンブリ(12,13)の振動作用と、作業アセンブリ(12,13)からセンサ(20)までの距離(r)との間の相関が特定される。本発明による本方法は、センサの場所において作業アセンブリの振動作用をリアルタイムで検出することができるという利点を有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道(4)の領域における振動伝達を特定するための方法であって、
作業プロセス中に前記軌道(4)を、該軌道(4)上を走行する軌道建設機械(1)の作業アセンブリ(12,13)を用いて振動させ、前記軌道(4)を介して伝達される振動(19,28)が、前記作業アセンブリ(12,13)から離間したセンサ(20)を用いて測定され、前記センサ(20)の測定データが評価装置(25)において評価される、方法において、
前記作業アセンブリ(12,13)に対する前記センサ(20)の位置が前記評価装置(25)に設定され、該評価装置(25)において、前記センサ(20)によって検出された前記作業アセンブリ(12,13)の振動作用と、前記作業アセンブリ(12,13)から前記センサ(20)までの距離(r)との間の相関が特定されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記作業アセンブリ(12,13)の前記振動作用を特定するために、前記センサ(20)を用いて加速度および/または振動速度(v
(r))が測定される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記センサ(20)の測定データと、好ましくは前記センサ(20)の位置データとが、無線データ接続(26)を介して前記評価装置(25)に伝送される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記作業アセンブリ(12,13)によって生成された振動の特徴的なパラメータが前記評価装置(25)に設定され、前記測定データが前記特徴的なパラメータと比較される、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記軌道(4)を、前記軌道建設機械(1)の複数の作業アセンブリ(12,13)を用いて、それぞれ互いに離間した箇所(41)において振動させ、前記測定データが、それぞれの前記作業アセンブリ(12,13)によって生成された前記振動のそれぞれの特徴的なパラメータに基づいて、対応する前記作業アセンブリ(12,13)に対応付けられる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記評価装置(25)を用いて、特定された前記相関から伝達関数および/または減衰関数が導出される、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記評価装置(25)を用いて、前記伝達関数および/または前記減衰関数によって継続的な振動予測が計算される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
複数のセンサ(20)の位置が前記評価装置(25)に設定され、該評価装置(25)においてそれぞれのセンサ(20)ごとに、検出された前記振動作用と、前記作業アセンブリ(12,13)から前記センサ(20)までの対応する距離(r)との間の相関が特定される、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記軌道建設機械(1)が、前記評価装置(25)の出力変数に応じて自動制御される、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記出力変数が閾値と比較され、とりわけ前記出力変数が前記閾値に接近している場合には、前記作業プロセスのプロセスパラメータが変更される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
軌道長手方向における振動伝播(19,28)が、前記軌道建設機械(1)に配置されたセンサ(20)を用いて検出される、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
軌道建設機械(1)と軌道(4)とから形成される相互作用システムの数値モデルが計算され、とりわけ前記数値モデルを用いて土質力学的なパラメータが計算される、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載の方法を実施するためのシステムであって、
軌道建設機械(1)であって、当該軌道建設機械(1)が走行する軌道(4)を振動させるための作業アセンブリ(12,13)を含む、軌道建設機械(1)と、前記軌道(4)を介して伝達された振動(19,28)を測定するための、前記作業アセンブリ(12,13)から離間したセンサ(20)と、を備える、システムにおいて、
前記軌道建設機械(1)は、前記作業アセンブリ(12,13)に対する前記センサ(20)の位置が設定されている評価装置(25)を含み、該評価装置(25)は、前記センサ(20)によって検出された前記作業アセンブリ(12,13)の振動作用と、前記作業アセンブリ(12,13)から前記センサ(20)までの距離(r)との間の相関を特定するように構成されていることを特徴とする、システム。
【請求項14】
前記センサ(20)は、位置検出システムと、位置データを伝送するための送信装置とに結合されており、前記軌道建設機械(1)は、前記位置データを受信するための受信装置を含む、請求項13記載のシステム。
【請求項15】
前記センサ(20)は前記軌道建設機械(1)に配置されており、とりわけ軌条台車(3)に配置された加速度センサとして構成されている、請求項13記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道の領域における振動伝達を特定するための方法であって、作業プロセス中に軌道を、軌道上を走行する軌道建設機械の作業アセンブリを用いて振動させ、軌道を介して伝達される振動が、作業アセンブリから離間したセンサを用いて測定され、センサの測定データが評価装置において評価される、方法に関する。本発明はさらに、方法を実施するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭で述べた形式の方法は、AT521420A1から公知である。同方法では、作業アセンブリを備えた、軌道上を走行する軌道建設機械が使用される。作業プロセス中、作業アセンブリを用いて軌道に振動が印加され、軌道に沿って延在するセンサを較正するために利用される。この場合、軌道の領域における振動伝達は、作業アセンブリの振動値と、軌道建設機械の位置データと、センサの測定データとから評価装置によって振動伝達の特徴が導出されることによって特定される。
【0003】
このようにして較正されたセンサにより、さらなる結果として、軌道区間の監視を実施することができる。具体的には、センサを用いて、監視される軌道区間における音源または振動源の位置特定が実施される。とりわけ、軌道区間を走行する鉄道車両の実際の位置に関心が持たれている。しかも、軌道区間に沿って発生する欠陥も、センサを用いて検出することができる。音波伝播の変化によって、例えば、レール頭部における波状摩耗の形成、軌道の波打ち、中空層、枕木の欠陥、およびこれに類するもののような軌道の不完全性を検出することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の基礎となる課題は、軌道建設機械によって実施される作業プロセスがより効率的にかつ支障なく進行するように、冒頭で述べた形式の方法を改善することである。本発明の課題はさらに、軌道建設機械を効率的に、かつ支障なく動作させるための改善されたシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、上記の課題は、独立請求項1および独立請求項13に記載の特徴によって解決される。従属請求項は、本発明の有利な実施形態を表す。
【0006】
作業アセンブリに対するセンサの位置が評価装置に設定され、評価装置において、センサによって検出された作業アセンブリの振動作用と、作業アセンブリからセンサまでの距離との間の相関が特定される。したがって、本発明によれば、センサの位置を使用して、作業アセンブリの位置依存性の振動作用が評価される。具体的には、検出された振動作用を、センサから作業アセンブリまでの距離と相関させる。
【0007】
これとは異なり、冒頭で述べたAT521420A1による公知の方法の場合には、センサを較正するために、センサの位置、またはセンサと作業アセンブリとの間の距離は考慮されないままである。センサ信号を作業アセンブリの位置と比較するために、作業アセンブリの位置が検出されて、センサ信号と一緒に評価されるだけである。
【0008】
本発明による方法は、センサの場所において作業アセンブリの振動作用をリアルタイムで検出することができるという利点を有している。この情報を利用して、軌道建設機械の作業プロセスを最適化すると同時に、軌道の周辺にある設備への損傷を回避することが可能である。本発明による方法によれば、軌道建設機械によって引き起こされる振動の伝播の特定と、軌道建設機械の周辺における保護に値する装置の、プロセスに随伴する観察とが可能となる。
【0009】
有利には、作業アセンブリの振動作用を特定するために、センサを用いて加速度および/または振動速度が測定される。とりわけ、位置固定されたセンサにより、3つの直交する空間方向における加速度または振動速度が測定される。この場合、検出されたセンサ値の局所的な部分分析を実施するために、センサがプロセッサに結合されていると有意義である。
【0010】
本方法の発展形態では、センサの測定データと、好ましくはセンサの位置データとが、無線データ接続を介して評価装置に伝送される。位置データの伝送は、操作者によって、またはデータメモリからの伝送によって、まだセンサの位置が評価装置に設定されていなかった場合に有意義である。
【0011】
例えば、センサは、センサの位置を特定するためにGNSS受信装置に結合されている。対応するセンサユニットは、センサと、GNSS受信装置と、場合によっては分析プロセッサとにエネルギを供給するための電力蓄積器を含む。このようなセンサユニットの利点は、フレキシブルな使用可能性である。保護に値する装置への取り付けは、軌道建設機械の振動作用を監視するために一時的にのみ実施される。
【0012】
本方法のさらなる改善形態では、作業アセンブリによって生成された振動の特徴的なパラメータが評価装置に設定され、測定データがこれらの特徴的なパラメータと比較される。例えば、振動駆動装置の動作パラメータが、生成された振動の特徴的なパラメータとして使用される(例えば、偏心体駆動装置のモータ回転数)。
【0013】
これに加えてまたはこれに代えて、振動パラメータを、直接的に作業アセンブリにおいて対応するセンサシステムを用いて検出することが有意義である。このようにして、作業アセンブリにおける振動の、プロセスに随伴する測定と、周囲における振動の同時測定とが実施される。放出(Emission:機械による動的な励振)と、曝露(Immission:センサを用いて検出される振動)との検出されたデータが、さらなる結果として、幾何学的に関係付けられる。
【0014】
この場合、軌道を、軌道建設機械の複数の作業アセンブリを用いて、それぞれ互いに離間した箇所において振動させ、測定データが、それぞれの作業アセンブリによって生成された振動のそれぞれの特徴的なパラメータに基づいて、対応する作業アセンブリに対応付けられると有利である。例えば、振動は、突き固めアセンブリおよび安定化アセンブリ(ダイナミック・トラック・スタビライザ、DGS)によって引き起こされる。他のアセンブリ(前頭部締め固め機、中間部締め固め機等)も、本発明の意味における振動源として利用可能である。この場合、所定の特徴的な振動励振に基づいて、軌道建設機械によって引き起こされた振動の曝露と、その他の源に由来する振動の曝露とを区別する評価アルゴリズムが、評価装置内に構成されている。
【0015】
本方法はさらに、評価装置を用いて、特定された相関から伝達関数および/または減衰関数が導出されることによって改善される。伝達関数または減衰機能は、局地的な状況を再現し、振動の伝播に関するリアルタイム予測を可能にする。
【0016】
したがって、評価装置を用いて、伝達関数および/または減衰関数によって、継続的な振動予測が計算されると有利である。このような予測は、センサを用いて監視される保護対象物にさらに接近している場合に、振動を低減するための措置が必要であるかどうかを判定するための基礎を形成する。該当する措置の有効性は、評価装置に伝送されたセンサの測定データに基づいて直ちに認識可能となる。
【0017】
本方法の発展形態では、複数のセンサの位置が評価装置に設定され、評価装置においてそれぞれのセンサごとに、検出された振動作用と、作業アセンブリからセンサまでの対応する距離との間の相関が特定される。このようにして、複数の位置固定された測定点が同時に監視される。
【0018】
作業プロセス全体の改善は、軌道建設機械が、評価装置の出力変数に応じて自動制御されることによって達成される。これにより、設定された振動限界の遵守が、操作者がこのタスクを負担することなしに保証される。
【0019】
この改善において有利には、出力変数が閾値と比較され、とりわけ出力変数が閾値に接近している場合には、作業プロセスのプロセスパラメータが変更される。例えば、1つまたは複数の測定箇所において検出された振動作用が設定された閾値に到達した場合には、振動の低減(例えば、作業アセンブリの振動振幅を小さくする制御)が行われる。
【0020】
本発明のさらなる実施形態では、軌道長手方向における振動伝播が、軌道建設機械に配置されたセンサを用いて検出される。振動伝播のこの軌道に関連した測定によって、システム剛性(軌きょう-地盤)を判定することが可能となる。
【0021】
軌道建設機械と軌道とから形成される相互作用システムの数値モデルが計算され、とりわけ数値モデルを用いて土質力学的なパラメータが計算されることにより、本方法が有利に発展する。このようにして、地盤の包括的な判定を実施することが可能となる。
【0022】
上述した方法を実施するための本発明によるシステムは、軌道建設機械を含み、この軌道建設機械は、当該軌道建設機械が走行する軌道を振動させるための作業アセンブリを含む。本システムはさらに、軌道を介して伝達された振動を測定するための、作業アセンブリから離間したセンサを含む。この場合、軌道建設機械は、作業アセンブリに対するセンサの位置が設定されている評価装置をさらに含み、評価装置は、センサによって検出された作業アセンブリの振動作用と、作業アセンブリからセンサまでの距離との間の相関を特定するように構成されている。この結果は、軌道建設機械の操作者にオンラインで提供されるので、整正値が超過されようとしていることに適時に反応し、このような超過を証明可能に阻止することができる。この場合、作業アセンブリに影響を与えることは、手動で実施されるか、またはプロセスパラメータの自動制御によって実施される。さらに、限界値の遵守をリアルタイムで文書化することができる。
【0023】
有利な発展形態では、センサは、位置検出システムと、位置データを伝送するための送信装置とに結合されており、軌道建設機械は、位置データを受信するための受信装置を含む。このようにして、センサおよび/または軌道建設機械の位置変更後に、作業アセンブリに関して評価装置に設定された位置データの自動更新が実施される。
【0024】
他の有利な発展形態では、センサは軌道建設機械に配置されており、とりわけ軌条台車に配置された加速度センサとして構成されている。これにより、軌道のシステム剛性を特定するために、軌道建設機械の長手方向における振動の伝播を検出することが可能となる。これらの結果により、軌道のバラスト道床を締め固める作業アセンブリ(突き固めアセンブリ、安定化アセンブリ等)の締め固め結果の均一性の判定を検査することができる。さらに、処理される軌道または地盤の支持挙動を特定することができる。
【0025】
以下では、本発明を、添付の図面を参照しながら例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】突き固めアセンブリと安定化アセンブリとを備えた軌道建設機械を示す図である。
【
図2】振動伝播を伴う軌道建設機械を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1に示されている軌道建設機械1は、組み合わせ型として、いわゆるダイナミック・トラック・スタビライザを備えた突き固め機械である。機械1は、軌条台車3上で軌道4上を走行可能な2つの連結された機械フレーム2を含む。軌道4は、レール5と、レール5上に取り付けられた枕木6とからなる軌きょう7を含み、軌きょう7は、軌道バラスト8からなる道床に支持されている。このバラスト道床の下には、基本的に路盤保護層(Planumsschutzschicht:PSS)9が設けられており、この路盤保護層(PSS)9は、場合によって再生材料からなる支持層としての中間層10と共に路床または地盤11の上に載置されている。
【0028】
作業アセンブリは、例えば突き固めアセンブリ12および安定化アセンブリ13である。軌道4に振動を印加するために、他の作業アセンブリ、例えば前頭部締め固め機または中間部締め固め機を利用することもできる。突き固めアセンブリ12は、軌きょう7の下の軌道バラスト8を突き固め、その間、軌きょう7は、扛上・整正アセンブリ14によって目標姿勢に保持される。具体的には、突き固めプロセスは、対を成して互いに向かい合って位置するように配置された突き固めピッケル15を用いて実施され、これらの突き固めピッケル15は、枕木6間の枕木間隔に入り込む。
【0029】
突き固めアセンブリ12はアセンブリフレームを含み、このアセンブリフレームにおいて、工具支持体が垂直方向の案内部に支承されている。工具支持体には、互いに向かい合って位置する旋回アームが支承されており、これらの旋回アームは、振動を印加可能であり、かつ互いに締め込み可能である。このために、それぞれの旋回アームの上側のレバーアームは、対応する締め込み駆動装置を介して振動駆動装置(加振駆動装置)に結合されている。例えば、液圧シリンダが、一方では、対応する旋回アームに連結されており、他方では、回転する偏心体軸に支承されている。これに代えて、締め込みおよび振動生成のための液圧シリンダを設けてもよい。それぞれの旋回アームの下側のレバーアームには、1つまたは2つの突き固めピッケル15が取り付けられている。
【0030】
突き固めピッケル15は、振動駆動装置によって動的に励振される(互いに向かい合って位置する突き固めピッケル15から形成されているトングの動的な開閉)。この動的な励振によって軌道バラスト8は、流動に類似した状態に移行する。互いに向かい合って位置する突き固めピッケル15の締め込みプロセス(トングを緩慢に閉じる)の重ね合わせにより、動的に可動化された軌道バラスト8は、それぞれの枕木6の下方に突き固められる。
【0031】
図2に示されているように、突き固め装置12は、複数の枕木6を同時に処理することができるようにするために、互いに向かい合って位置する突き固めピッケル15の複数の列を含むことができる。これらの列の各々は独自の振動駆動装置を有しており、動的な励振の周波数は、作業プロセスに適合するように継続的に変更される。その際、突き固めピッケルの個々の列は、近似的に同じ周波数で振動することが望ましいが、位相位置の正確な同期は必ずしも必要ではない。
【0032】
作業プロセス中、軌道建設機械1は、一定の緩慢な速度で作業方向16に走行する。この際、機械フレーム2に支承された、突き固めアセンブリ12を備えたいわゆるサテライト17が、周期的に主機械に対して前後移動する。このようにして、突き固めアセンブリ12は、突き固めプロセスの持続時間の間、それぞれの枕木6の上方に位置決めされたまま維持される。突き固めプロセスの終了後、サテライト17は、増加した速度で主機械に対して作業方向16に前進する。この追い上げ移動の後、サテライト17が制動されて、突き固めアセンブリ12が、下方に突き固められるべき次の枕木6の真上に位置決めされる。
【0033】
これに後続する突き固めプロセスの開始時には、互いに向かい合って位置する突き固めピッケル15が、高励振周波数で軌道バラスト8内へと降下させられる。この段階で、突き固めアセンブリ12の振動作用が周囲に対して作用する。続いて、突き固めピッケル対が、比較的低励振周波数で緩慢に閉じられ(締め込み運動)、動的に可動化された軌道バラスト8をそれぞれの枕木6の下方に搬送する。さらに、処理された枕木6の下に位置するバラスト8が締め固められる。最後に、突き固めアセンブリ12の工具支持体を上方に移動させることにより、突き固めピッケル対は、開く運動を伴って軌道バラスト8から再び引き抜かれる。具体的には、突き固めアセンブリ12においてアセンブリフレームに支承された工具支持体が、さらに上方に移動する。突き固めピッケル15と軌道バラスト8との間の接触が消失することにより、突き固めアセンブリ12の振動作用が終了する。
【0034】
必要に応じて、上記の締め込みプロセス全体を1つの個所において複数回繰り返すことができる。その後、サテライト17は、主機械がその間に進んだ距離を取り戻し、処理されるべき次の枕木6の上方に正確に位置決めされる。
【0035】
サテライト17または作業アセンブリ12のそれぞれの個々の位置の、振動作用に関連するデータは、センサ装置18を用いて測定されるか、またはプロセスに起因して既知である。これらのデータには、突き固めピッケル15が地面に接触する(降下する)時点、振動駆動装置の周波数、締め込み運動の開始および終了、突き固めピッケル15の上昇時の接触消失、および軌道4に対する突き固めアセンブリ12の目下の姿勢が含まれる。
【0036】
突き固めアセンブリ12の振動作用にとって特徴的であるのは、その断続的な推移19(突き固めアセンブリ12に起因する振動の伝播)である。周囲にあるセンサ20を用いて測定された振動21の測定推移は、軌道建設機械1の動作と、周囲の外部の振動源および内部の振動源とに起因する全ての振動を重ね合わせたものを含む。
図3には、外部の干渉源の振動22と、監視されている保護対象物24内に位置する内部の干渉源の振動23とが例示的に示されている。特徴的な断続的な推移19と、突き固めピッケル15が軌道バラスト8に接触している時間の正確な把握とにより、突き固めアセンブリ12の振動作用と、測定されたその他の振動とを区別することが可能となる。
【0037】
突き固めアセンブリ12の目下の位置と、センサ20の固定の位置とが既知であることから、放出源(作業アセンブリ12)と測定点(センサ20)との間の目下の距離rが既知となっている。具体的には、現在の距離rを特定するために、これらの位置が評価装置25に設定される。評価装置25にはさらに、センサ20によって特定された振動値が伝送される。このために、センサ20は、有利には無線データ接続26を介して評価装置25に接続されている。センサ20によって検出された作業アセンブリ12の振動作用と、作業アセンブリ12からセンサ20までの距離rとの間の相関を特定するコンピュータプログラムが、評価装置25内に構成されている。
【0038】
安定化アセンブリ13は、軌道建設機械1と共に連続的に軌道4に沿って作業方向16に移動する。このアセンブリ13は整正振動子を含み、この整正振動子は、無段階に調整可能な振幅により、軌道軸線27に対して法線方向の、水平方向(特別な場合には垂直方向も)の動的な励振をもたらす。安定化アセンブリ13は、液圧シリンダを介して機械フレーム2に支持されており、所定の力によって軌きょう7を押圧する。この際、安定化アセンブリ13は、フランジ付きローラ(拡開軸)およびクランプローラ(ローラクランプ)を用いて軌道4のレール5を把持している。これにより、動的な励振によって引き起こされた安定化アセンブリ13の振動が、軌道4に、ひいては周囲に伝達されることとなる。
【0039】
扛上・整正アセンブリ14および突き固めアセンブリ12を用いて事前に新しい姿勢へと移動させられた軌道4は、安定化アセンブリ13によって軌道バラスト8内へと揺り動かされる。この際、軌道バラスト8がさらに締め固められ、これによって新しい軌道姿勢が安定化される。このプロセスに付随して、軌道4の横変位抵抗の増加が生じる。締め固めプロセスのために必要とされる振動28は、地盤11に伝播する(安定化アセンブリ13によって引き起こされた振動の伝播)。周囲では、その結果として生じる振動21が、センサ20によって測定可能となる。
【0040】
複数の安定化アセンブリ13を相前後して使用することもできる。これらの複数の安定化アセンブリ13は、好ましくは機械的に連結されているので、必然的に正しい位相で互いに同期されている。センサ20(観察の場所)が、これらの同期された安定化アセンブリ13から相応に離間している場合には、これらの安定化アセンブリ13の振動作用を、1つの対応する大きさの仮想的な個別アセンブリの振動作用と区別することができない。したがって、さらなる結果として、ただ1つの安定化アセンブリ13の作用だけが処理されることとなる。ただし、この原理は、複数の同期された(場合によっては同期化されていない)安定化アセンブリ13に対して該当する。
【0041】
安定化アセンブリ13の振動の特徴は、高調波(正弦波)励振であることである。周波数および位相位置は、センサ装置18を用いて正確に特定可能であるか、またはプロセスに起因して既知である。安定化アセンブリ13の振動作用は、センサ20(測定点)を用いた振動21の分析の際に、測定箇所に対する他の影響と一義的に区別することができる。安定化アセンブリ13の目下の位置と、センサ20の固定の位置とから、振動源と測定点との間の目下の距離rを特定することができる。この距離rは、評価装置25によって安定化アセンブリ13の検出された振動作用と相関される。
【0042】
突き固めアセンブリ12および安定化アセンブリ13は、本方法では一次的な振動源として定義されている。これらの源12,13によって引き起こされる振動の上記の特徴により、軌道建設機械1の、測定点において作用する副次的な振動源(背景雑音)の残留部分と、外乱影響との分離が実施される。この分離のために、センサ20(測定点)への軌道建設機械1の接近、およびセンサ20(測定点)からの軌道建設機械1の離間に伴う残留振動の推移を調査するコンピュータプログラムが、評価装置25内に構成されている。
【0043】
とりわけ複数のセンサ20(多数の測定点)によってデータ層が増大するにつれて、軌道建設機械1の一次的な振動源12,13の特徴的なパターンと、副次的な振動源の特徴的なパターンとをますます明確に識別することが可能となる。これにより、軌道建設機械1に起因する振動を、外部の振動源(交通、他の機械等)の振動と一義的に区別することができる。これにより、本方法の持続時間が進行するにつれて、振動源同士を分離するために必要とされる計算能力が減少する。
【0044】
図4には、振動と、動的な励振から測定位置までの距離との間の相関が、理想的には両対数線図で示されている。具体的には、横軸に、振動源(作業アセンブリ12,13)とセンサ20との間の距離rがプロットされている。縦軸には、振動の波動場の大きさとして振動速度v
(r)がプロットされている。突き固めアセンブリ12の振動の測定値29は、小さな円で示されている。突き固めアセンブリ12による振動の振動伝播の関数30は、実線で示されている。この線は、測定値29への指数減衰関数の最適当てはめから得られ、両対数線図では1本の直線である。
【0045】
安定化アセンブリ13の振動の測定値31は、小さな正方形として示されている。この場合、振幅の設定が固定であることが想定されている。安定化アセンブリ13による振動の振動伝播の関数32は、太い点線として示されており、対応する最適当てはめから得られる。
【0046】
軌道建設機械1の、副次的な源に起因する振動(背景雑音)の測定値33は、小さな十字で示されている。副次的な振動の振動伝播の関数34は、細い点線の直線として示されており、これもまた、対応する最適当てはめから得られる。
【0047】
図4に示されている関係は、評価装置25内に実装されているコンピュータプログラムを用いて評価可能である。これにより、予期される振動に関する的確な予測が、現場で直ちにリアルタイムに作成される。これらの予測に基づいて、アルゴリズムを用いて、センサ20を用いて監視される保護対象物24にさらに接近している場合に、振動を低減するための措置が必要であるかどうかが判定される。例えば、アルゴリズムは、実際の測定値と、超過してはならない閾値とを比較する。
【0048】
振動に影響を与えるために、評価装置25は、機械制御装置35に結合されている。例えば、機械制御装置35の限界値超過が差し迫っている場合には、振動振幅の低減が設定される。このような措置の結果として、突き固めアセンブリ12および/または安定化アセンブリ13の振幅を小さくする制御が行われることとなる。この措置の有効性は、継続的に検出される測定値29,31,33に基づいて直ちに認識可能となる。
【0049】
事前に定義された整正値および限界値の遵守の文書化が、測定値の推移に基づいて行われ、この際、外乱影響による超過に目印を付けることができる。したがって、本方法は、測定された振動21を、励振源(突き固めアセンブリ12、安定化アセンブリ13、軌道建設機械1の副次的な振動源、および軌道建設機械1の範囲に含まれていない外部の励振源)に、証明可能かつ再現可能に対応付けることを可能にする。
【0050】
位置固定されたセンサ20により、3つの直交する空間方向における加速度または振動速度v(r)が測定される。場合によって既に局所的に部分分析された測定値29,31,33は、それぞれのセンサ20の位置と組み合わせられて、評価のために軌道建設機械1の評価装置25に無線で送信される。例えば、それぞれのセンサ20は、GNSS受信装置36と一緒に1つの共通のハウジング内に配置されている。評価装置25は、軌道建設機械1の既存のプロセッサユニットに組み込まれていてもよい。
【0051】
軌道建設機械1の突き固めアセンブリ12において、センサ装置18を用いてさらなるデータが検出される。具体的には、少なくとも1つの突き固めピッケル15の加速度、振動周波数の推移、および接触段階の時点(突き固めピッケル15と軌道バラスト8とが接触する持続時間の開始および終了)が検出される。これらのデータを検出するための方法および装置は、本出願人の刊行物であるAT520056A1に開示されている。さらに、GNSS受信モジュール36を用いて、かつ/または内部測定によって、突き固めアセンブリ12の現在の位置が記録される。
【0052】
安定化アセンブリ13の整正振動子では、通常、振動生成のために回転する不均衡質量が利用される。例えば、センサ装置18を用いて、この不均衡質量の位置(位相)と、軌きょう7に伝達される振動の加速度とが測定される。また、無段階に調整可能な振幅の目下の設定と、安定化アセンブリ13の目下の位置も記録される(GNSS受信器36および/または内部測定)。
【0053】
振動の判定基準として、ベクトル的に加算される振動速度のピーク値v
rを使用することができる。この値は、現行の規則および規格(例えば、OENORM S 9020、地上設備および地下設備に対する振動保護)から明らかである:
【数1】
ここで、v
x、v
y、およびv
zは、3つの直交する空間方向において測定された振動速度である。例えば、DIN 4150-2による評価された振動強度KB
F(t)のような他の判定変数を使用することもできる。
【0054】
指数伝播法則(減衰関数)として、以下の式:
v
(r)=v
(1)・r
D
を使用することができ、ここで、
v
(r)・・・予測の位置と励振源との間の距離rにおける振動速度(ベクトル的に加算された空間成分のピーク値);
v
(1)・・・1mの距離における理論上の振動速度(ただし、伝播法則は、遠方場において初めて当てはまる);
D・・・減衰指数(
図4の両対数線図における補償直線の傾き)
である。上述の式による単純な伝播法則に加えて、他の伝播法則またはスプライン関数(best fit)を使用することも可能である。
【0055】
本発明に従って使用されるセンサシステムおよび方法論を用いることにより、軌道建設機械1における測定と、計器が取り付けられた位置固定された点における測定とを、幾何学比率(距離)を考慮してリアルタイムで関係付けることが可能となり、ひいては、軌道建設機械1による許容できない振動を、確実かつ証明可能に阻止することが可能となる。
【0056】
図3を参照した方法では、軌道処理の前または最中に、保護物(居住空間、建築物、振動しやすい地下構造等)にセンサ20が取り付けられる。場合によりセンサ20が覆われていて、GNSSによる自動的な位置特定が不可能である場合には、センサ20の位置、または作業アセンブリ12,13までの距離が手動で入力される。
【0057】
本発明に含まれるさらなる方法では、軌道4のシステム剛性が、車両に関連して測定される。軌道建設機械1の長手方向における振動伝播の、このような車両に関連した測定を行うために、選択された測定軸37にセンサ20が備え付けられる。このセンサ20は、それぞれの作業アセンブリ12,13に対して距離rを置いたところで振動を測定する。この場合、測定軸37またはセンサ20と安定化アセンブリ13との間のそれぞれの距離r
1は、一定に維持される。サテライト17を備えた装置では、突き固めアセンブリ13に対する距離は可変であるが、常に既知である。
図5には、ただ1つの測定軸37に計器が取り付けられていることに基づいて例示的に測定原理が示されている。
【0058】
(水平方向および/または垂直方向に励振される)安定化アセンブリ13の既知の一定の周波数により、センサ20の測定信号からの対応する周波数成分を、他の振動から分離して分析することが可能となる。この際、信号の振幅が特定され、安定化アセンブリ13による動的な励振に対する位相位置が調査される。軌道建設機械1のプロセスパラメータ(走行速度、周波数、振幅、接触圧力等)が一定に保たれる場合には、場合によって生じうる振動の変化を、軌道4および地盤11に簡単に対応付けることができる。軌きょう7および地盤11が剛性であればあるほど、表面波の伝播速度がより速くなる。これにより、軌道4の支持挙動の均一性を、作業に組み込んで検査することが可能となる。
【0059】
これに加えてまたはこれに代えて、表面波の分散(様々な周波数の様々な伝播速度)と、可変の距離とを考慮して、突き固めアセンブリ12の振動も、剛性分析のために使用することができる。
【0060】
複数の測定軸37(センサ20を備えた軌条台車3の軸)により、振動の波動場と、伝播速度と、ひいては剛性挙動の均一性とを高信頼性に特定することが可能となる。
【0061】
測定原理について、
図6を参照しながら説明する。一定の速度で移動する軌道建設機械1の後方部分には、軌きょう7を一定の周波数で垂直方向に励振する安定化アセンブリ13が位置している。機械1は軌きょう7を走行し、この軌きょう7は所定の質量を有しており、かつそれぞれの動的な励振方向(例えば、垂直方向)において所定の曲げ剛性を有している。曲げ支持体の剛性が高いほど、波の伝播速度はより速くなり、波長λはより長くなる。波の分散により、高周波数を有する波は、曲げ支持体において低周波数の波よりも速い伝播速度を有する。
【0062】
軌きょう7は、バラスト道床8、軌道4の上部構造、下部構造、および地盤11の上で静止している。構造全体の剛性が高いほど、波の伝播速度はより速くなり、波長λはより長くなる。しかしながら、半空間理論によれば、曲げ支持体に対する逆向きの関係も成り立つ。波の分散により、高周波数を有する波は、等方性弾性の半空間において低周波数の波よりも遅い伝播速度を有する。
【0063】
以下のシステムコンポーネント、すなわち安定化アセンブリ13(所定の励振)、軌きょう7、積層構造(上部構造、下部構造)、地盤11、および軌条台車3の弾性の車輪セットを含む、動的な相互作用システムの現実の振動状態が、個々の点について測定される。軌道建設機械1の所定の位置には、センサ20が取り付けられている。例えば、弾性を有する車輪セットの軸が、測定軸37として形成されている。これに代えて、振動を検出するために無接触の光学式またはその他の測定システムを使用してもよい。有利には、評価装置25において、このために構成されたコンピュータプログラムを用いて、この相互作用システムの数値モデルが特定される。この数値モデルは、さらなる結果として、軌道建設機械1の周囲における作業アセンブリ12,13の振動作用を予測するために使用される。
【0064】
表面波は、理想的には、相互作用システムの剛性の挙動(振動形状38)および軟性の挙動(振動形状39)に関して示されている。この場合、波長λが、比較的剛性の挙動の場合には軟性の挙動の場合よりも長くなっていることが見て取れる。両方の場合において、位相位置は、励振に関連してプロットされている(0°、90°、180°、270°等)。
【0065】
個々の点についての測定により、描写された波形全体が直接的に見て取れるのではなく、測定箇所37における個々の位相位置40だけが把握されている。励振箇所41とそれぞれの測定箇所37との間にある360°の整数倍がどのくらいであるのかは、一定の周波数を有する過渡状態の場合には差し当たり不明である。しかしながら、始動プロセスの追跡によって、または所期の周波数変化によってこれを見つけ出すことができ、絶対的な波長λを特定することができる。
【0066】
配置されている測定軸37が多ければ多いほど、波長λの特定はより一義的かつより正確になる。相互作用システム全体の数値シミュレーションにより、測定結果の対応する解釈を実施することができる。
【0067】
相互作用システムの剛性挙動の変化の、簡単であるが極めて正確な判定は、相互作用システム全体の正確なパラメータを把握する必要なしに、個々の測定箇所37によるだけで可能である。挙動が軟化したために、位相位置40が変化した場合には、例えば、上側の振動形状38が下側の振動形状39に移行する。この変化は、前方の測定箇所37において、約140°から約250°への位相角度の増加によって認識可能であろう。
【0068】
このようにして、位相角度の増加をシステム剛性の減少に対する指標とし、その逆もまた然りとすることにより、剛性の変化の検出(相対的な測定)は、個々の測定箇所37において位相位置40を観察するだけで高信頼性に可能となる。この場合、ゼロ交差が継続的に考慮される。ゼロ交差は、励振箇所41と測定箇所37との間の距離r内における波長λの数の変化を記述している。
【0069】
機械パラメータが不変に維持される場合であって、かつ軌きょう7が一定の剛性特性を有することがレール締結装置の検査によって保証されている場合には、システム剛性全体の変化が、軌道の道床(上部構造、下部構造、および地盤)の変化に起因する可能性がある。
【0070】
レール締結装置の非接触での検査のために、安定化アセンブリ13を利用することができる。安定化アセンブリ13の拡開軸によって変更される拡開力が、レール5に印加される。それと同時に、適切なセンサシステムによって、励振箇所41における軌きょう7の実際の軌間幅が継続的に検出される。発生した軌間幅の変化から、レール締結装置の状態を推定することが可能である。例えば、レール締結装置が緩くなっていれば、拡開力が作用した際にレール頭部の振れの結果として、測定される軌間幅が増大することとなる。
【0071】
励振装置(安定化アセンブリ13)から軌道建設機械1のフレームを介して測定軸37への振動伝達を、動的な分離によって回避することが可能である。
【0072】
車両に関連した測定の上述した手法は、軌道建設機械1を用いた複数の判定手法のうちの1つである。さらなる方法が、本出願人のAT520056A1およびAT521481A1に開示されている。軌道4の様々な感度と、様々な測定領域とにより、手法にわたって包括的な、軌道状態の解釈からの利点が結果的に得られる。個々の手法によって検出される様々な不均一性は、概観においてより良好に解釈可能である。とりわけ、軌道4の個々の構造要素に対するより良好な対応付けを実施することができる。このようにして、本発明は、リアルタイムでの軌道状態の判定を全体として改善するために寄与する。
【国際調査報告】