(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】汎RAS mRNAがんワクチン
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20231025BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20231025BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20231025BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20231025BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231025BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231025BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20231025BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231025BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231025BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231025BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231025BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20231025BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20231025BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20231025BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20231025BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20231025BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20231025BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20231025BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20231025BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20231025BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20231025BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20231025BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20231025BHJP
A61K 39/00 20060101ALN20231025BHJP
A61K 47/65 20170101ALN20231025BHJP
【FI】
C12N15/12
C12N15/86 Z ZNA
C12N15/88 Z
C12N1/15
C12N1/21
C12N5/10
C12N1/19
A61P43/00 121
A61P35/00
A61K45/00
A61K48/00
A61K9/51
A61K35/761
A61K35/76
A61K47/46
A61K9/127
A61K47/42
A61K47/69
A61K47/24
A61K47/18
A61K47/22
A61K47/28
A61K47/34
A61K39/00 H
A61K47/65
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523078
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 US2021054859
(87)【国際公開番号】W WO2022081764
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522313994
【氏名又は名称】アールエヌエーイミューン、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RNAIMMUNE, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シェン, ドン
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン, デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】チェン, レンシャン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA01
4B065BA02
4B065BA05
4B065CA24
4B065CA45
4C076AA19
4C076AA65
4C076AA95
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC07
4C076CC27
4C076CC41
4C076DD49
4C076DD50
4C076DD59
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE23
4C076EE24
4C076EE41
4C076EE57
4C076EE59
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA24
4C084MA38
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB091
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA06
4C085BB01
4C085BB11
4C085CC03
4C085CC31
4C087AA03
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA24
4C087MA38
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZC75
(57)【要約】
ras遺伝子ファミリーにおける突然変異を有するがんの処置のための強力なmRNAワクチンのための組成物および方法が提供される。本組成物は、体細胞突然変異体の群の複数のペプチドのうちの少なくとも1つをコードするmRNA分子と、薬学的に許容される担体とを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれを含む、医薬組成物を含む。本明細書において開示される組成物の腫瘍内、静脈内、筋肉内、皮内、または皮下注射を含む、全身免疫応答の刺激および処置のための方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ras由来のペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含む単離されたリボ核酸(RNA)であって、前記コードされるras由来のペプチドが、以下の突然変異:
配列番号70の19番目のアミノ酸残基にアライメントするフェニルアラニン(F)、
配列番号70の59番目のアミノ酸残基にアライメントするスレオニン(T)、
配列番号70の60番目のアミノ酸残基にアライメントするアスパラギン酸(D)、
配列番号70の117番目のアミノ酸残基にアライメントするアスパラギン(N)、または
配列番号70の146番目のアミノ酸残基にアライメントするT
のうちのいずれか1つまたは複数を含み、
前記RNAが、ナノ粒子に封入されている、単離されたリボ核酸(RNA)。
【請求項2】
前記コードされるras由来のペプチドが、以下の突然変異:
配列番号70の12番目のアミノ酸残基にアライメントするD、
配列番号70の13番目のアミノ酸残基にアライメントするD;または
配列番号70の61番目のアミノ酸残基にアライメントするヒスチジン(H)
のうちのいずれか1つまたは複数をさらに含む、請求項1に記載の単離されたRNA。
【請求項3】
前記コードされるras由来のペプチドが、以下の突然変異:
配列番号70の12番目のアミノ酸残基にアライメントするD、
配列番号70の13番目のアミノ酸残基にアライメントするD;
配列番号70の19番目のアミノ酸残基にアライメントするF;
配列番号70の59番目のアミノ酸残基にアライメントするT;
配列番号70の60番目のアミノ酸残基にアライメントするD;
配列番号70の61番目のアミノ酸残基にアライメントするH;
配列番号70の117番目のアミノ酸残基にアライメントするN;または
配列番号70の146番目のアミノ酸残基にアライメントするT
を含む、請求項2に記載の単離されたRNA。
【請求項4】
前記ras由来のペプチドが、配列番号70に記載されるポリペプチドまたは以下の突然変異:
配列番号70の12番目のアミノ酸残基にアライメントするD、
配列番号70の13番目のアミノ酸残基にアライメントするD;
配列番号70の19番目のアミノ酸残基にアライメントするF;
配列番号70の59番目のアミノ酸残基にアライメントするT;
配列番号70の60番目のアミノ酸残基にアライメントするD;
配列番号70の61番目のアミノ酸残基にアライメントするH;
配列番号70の117番目のアミノ酸残基にアライメントするN;または
配列番号70の146番目のアミノ酸残基にアライメントするT
を保持するその同等物を含む、請求項3に記載のRNA。
【請求項5】
1つまたは複数のras由来のペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むリボ核酸(RNA)であって、前記1つまたは複数のras由来のペプチドのそれぞれが、23~29個のアミノ酸残基からなり、前記コードされるペプチドが、配列番号1~69に記載される群またはそれらのそれぞれの同等物から選択される、リボ核酸(RNA)。
【請求項6】
前記ras由来のペプチドが、配列番号1~31に記載される群またはそれらのそれぞれの同等物から選択される、請求項5に記載のRNA。
【請求項7】
前記ras由来のペプチドが、配列番号32~52に記載される群またはそれらのそれぞれの同等物から選択される、請求項5に記載のRNA。
【請求項8】
前記ras由来のペプチドが、配列番号53~69に記載される群またはそれらのそれぞれの同等物から選択される、請求項5に記載のRNA。
【請求項9】
前記ras由来のペプチドが、配列番号19~31、50~52、または69に記載される群から選択される、請求項5に記載のRNA。
【請求項10】
前記ORFが、配列番号70に記載されるポリペプチドまたは以下の突然変異:
配列番号70の12番目のアミノ酸残基にアライメントするD、
配列番号70の13番目のアミノ酸残基にアライメントするD;
配列番号70の19番目のアミノ酸残基にアライメントするF;
配列番号70の59番目のアミノ酸残基にアライメントするT;
配列番号70の60番目のアミノ酸残基にアライメントするD;
配列番号70の61番目のアミノ酸残基にアライメントするH;
配列番号70の117番目のアミノ酸残基にアライメントするN;または
配列番号70の146番目のアミノ酸残基にアライメントするT
を保持するその同等物をコードする、請求項9に記載のRNA。
【請求項11】
前記ORFが、
【化17】
に記載されるポリヌクレオチド、または配列番号88のヌクレオチド(nt)1~nt612、または同じras由来のペプチドをコードするその同等物を含む、請求項4または10に記載のRNA。
【請求項12】
前記ORFが、2つまたはそれよりも多くのras由来のペプチドおよび任意の2つの隣接するras由来のペプチド間のペプチドリンカーを含むポリペプチドをコードする、請求項5~9のいずれか一項に記載のRNA。
【請求項13】
前記コードされるras由来の1つまたは複数のペプチドが、配列番号70の12番目のアミノ酸残基にアライメントする野生型残基もしくは配列番号70の13番目のアミノ酸残基にアライメントする野生型残基、またはその両方を含む、請求項1、2、または5~9のいずれか一項に記載のRNA。
【請求項14】
前記ORFが、シグナルペプチドをさらにコードし、必要に応じて、単一のペプチドが、MFVFLVLLPLVSSQC(配列番号87)を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のRNA。
【請求項15】
3’-UTRおよび5’-UTRをさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のRNA。
【請求項16】
前記5’-UTRが、m7Gキャップ構造および開始コドンを含み、必要に応じて、前記5’-UTRが、AGGacaUUUgcUUcUgacacaacUgUgUUcacUagcaaccUcaaacagacaCCGCCACC(配列番号89)またはその同等物を含む、請求項15に記載のRNA。
【請求項17】
前記3’-UTRが、終止コドンおよびポリA尾部を含み、必要に応じて、前記3’-UTRが、
【化18】
またはその同等物を含む、請求項15または16に記載のRNA。
【請求項18】
前記RNAをコードするポリヌクレオチドを、in vitro転写(IVT)系において転写することによって調製される、請求項1~17のいずれか一項に記載のRNA。
【請求項19】
前記RNAをコードするプラスミドDNA(pDNA)ベクター、必要に応じて、pUC57プラスミドを転写することによって調製され、必要に応じて、前記プラスミドが、配列番号91またはその同等物を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のRNA。
【請求項20】
全長RNAのGC含有量が、全RNA含有量の約35%~約70%である、請求項1~19のいずれか一項に記載のRNA。
【請求項21】
前記RNAが、化学的に修飾されており、必要に応じて、前記化学的修飾が、N1-メチル-シュードウリジン残基またはシュードウリジン残基の組込みのうちの一方または両方を含み、さらに必要に応じて、前記RNAにおける前記ウリジン残基のうちの少なくとも約50%~約100%が、N1-メチルシュードウリジンまたはシュードウリジンである、請求項1~20のいずれか一項に記載のRNA。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載のRNAをコードするポリヌクレオチド、またはそれに相補的なポリヌクレオチド、またはその両方。
【請求項23】
前記ポリヌクレオチドが、デオキシリボ核酸(DNA)、RNA、DNAおよびRNAのハイブリッド、またはそれらのそれぞれのアナログの群から選択される、請求項22に記載のポリヌクレオチド。
【請求項24】
請求項22または23に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項25】
その転写を誘導するように前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結された調節配列をさらに含む、請求項24に記載のベクター。
【請求項26】
前記調節配列がプロモーターを含む、請求項25に記載のベクター。
【請求項27】
前記プロモーターが、バクテリオファージRNAポリメラーゼプロモーター、必要に応じて、T7プロモーター、またはSP6プロモーター、またはT3プロモーターを含む、請求項26に記載のベクター。
【請求項28】
検出可能なマーカー、精製マーカー、または選択マーカーから選択されるマーカーをさらに含む、請求項24~27のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項29】
前記ベクターが、非ウイルスベクター、必要に応じて、プラスミド、またはリポソーム、またはミセルである、請求項24~28のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項30】
前記プラスミドが、配列番号91またはその同等物を含むかまたはそれからなる、請求項29に記載のベクター。
【請求項31】
前記ベクターが、ウイルスベクター、必要に応じて、アデノウイルスベクター、またはアデノ随伴ウイルスベクター、またはレトロウイルスベクター、またはレンチウイルスベクター、または植物ウイルスベクターである、請求項24~28のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項32】
請求項1~21のいずれか一項に記載のRNA、請求項22もしくは23に記載のポリヌクレオチド、または請求項24~31のいずれか一項に記載のベクターのうちの1つまたは複数を含む細胞。
【請求項33】
原核生物細胞、必要に応じて、Escherichia coli細胞である、請求項32に記載の細胞。
【請求項34】
真核生物細胞、必要に応じて、哺乳動物細胞、昆虫細胞、または酵母細胞である、請求項32に記載の細胞。
【請求項35】
担体、必要に応じて、薬学的に許容される担体と、請求項1~21のいずれか一項に記載のRNA、請求項22もしくは23に記載のポリヌクレオチド、請求項24~31のいずれか一項に記載のベクター、または請求項32~34のいずれか一項に記載の細胞のうちの1つまたは複数とを含む組成物。
【請求項36】
RNAを産生する方法であって、請求項32~34のいずれか一項に記載の細胞を、前記RNAをコードするDNAを前記RNAに転写するのに好適な条件下において培養するステップを含む、方法。
【請求項37】
RNAを産生する方法であって、請求項22もしくは23に記載のポリヌクレオチド、または請求項24~31のいずれか一項に記載のベクターを、前記ポリヌクレオチドまたは前記ベクターを前記RNAに転写するのに好適な条件下において、RNAポリメラーゼ、アデノシン三リン酸(ATP)、シチジン三リン酸(CTP)、グアノシン-5’-三リン酸(GTP)、およびウリジン三リン酸(UTP)、または化学的に修飾されたUTPと接触させるステップを含む、方法。
【請求項38】
前記RNAを単離するステップをさらに含む、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
請求項36~38のいずれか一項に記載の方法によって産生されるRNA。
【請求項40】
薬学的に許容される担体において製剤化された、有効量の請求項1~21のいずれか一項に記載のRNAを含む免疫原性組成物。
【請求項41】
前記薬学的に許容される担体が、ポリマーナノ粒子もしくはリポソームナノ粒子、またはその両方を含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記ポリマーナノ粒子担体が、ヒスチジン-リシンコポリマー(HKP)を含む、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記HKPが、H3K(+H)4bもしくはH3k(+H)4b、またはその両方を含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
前記ポリマーナノ粒子担体が、脂質、必要に応じて、カチオン性脂質をさらに含む、請求項42または43に記載の組成物。
【請求項45】
前記カチオン性脂質が、イオン化可能である、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
前記カチオン性脂質が、Dlin-MC3-DMA(MC3)もしくはジオレオイルオキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)、またはその両方を含む、請求項44または45に記載の組成物。
【請求項47】
前記脂質が、ヘルパー脂質、コレステロール、またはPEG化脂質のうちの1つまたは複数をさらに含む、請求項44~46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項48】
前記脂質が、PLAまたはPLGAをさらに含む、請求項44~47のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項49】
前記HKPおよび前記mRNAが、混合時にナノ粒子へと自己アセンブルする、請求項42~48のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項50】
前記リポソームナノ粒子担体が、スペルミン-脂質コレステロール(SLiC)を含む、請求項41~49のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項51】
前記SLiCが、TM1~TM5からなる群から選択される、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
前記薬学的に許容される担体が、脂質ナノ粒子(LNP)である、請求項40に記載の組成物。
【請求項53】
前記LNPが、脂質、必要に応じて、カチオン性脂質を含み、必要に応じて、前記カチオン性脂質が、イオン化可能であり、必要に応じて、前記LNPが、9-ヘプタデカニル8-{(2-ヒドロキシエチル)[6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル]アミノ}オクタノエート(SM-102)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、ジリノレイル-メチル-4-ジメチルアミノブチレート(DLin-MC3-DMA)、ジ((Z)-ノナ-2-エン-1-イル)9-((4-(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)ヘプタデカンジオエート(L319)、またはこれらのそれぞれの同等物のうちの1つまたは複数を含む、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
前記LNPが、ヘルパー脂質、コレステロール、またはPEG化脂質のうちの1つまたは複数をさらに含む、請求項53に記載の組成物。
【請求項55】
前記ヘルパー脂質が、ジステロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、(2R)-3-(ヘキサデカノイルオキシ)-2-{[(9Z)-オクタデカ-9-エノイル]オキシ}プロピル2-(トリメチルアザニウミル)エチルホスフェート(POPC)、またはジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)のうちの1つまたは複数を含む、請求項47または54に記載の組成物。
【請求項56】
前記コレステロールが、植物性コレステロールもしくは動物性コレステロール、またはその両方を含む、請求項47、54、または55のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項57】
前記PEG化脂質が、PEG-c-DOMG(R-3-[(ω-メトキシ-ポリ(エチレングリコール)2000)カルバモイル)]-1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-アミン)、PEG-DSG(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロール、メトキシポリエチレングリコール)、PEG-DMG(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール)、必要に応じて、PEG2000-DMG((1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000)]、またはPEG-DPG(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロール、メトキシポリエチレングリコール)のうちの1つまたは複数を含む、請求項47または54~56のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項58】
前記LNPが、SM-102、DSPC、コレステロール、およびPEG2000-DMGを含む、請求項52~57のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項59】
前記SM-102、DSPC、コレステロール、およびPEG200-DMGの質量比が、約1:1:1:1であり、かつ/または前記SM-102、DSPC、コレステロール、およびPEG2000-DMGのモル比が、約50:10:38.5:1.5である、請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
請求項40~51または55~57のいずれか一項に記載の組成物を産生する方法であって、請求項1~21のいずれか一項に記載のRNAをHKPと接触させるステップを含み、それによって、前記RNAおよび前記HKPが、ナノ粒子へと自己アセンブルする、方法。
【請求項61】
前記接触させるステップにおけるHKPと前記RNAとの質量比が、約10:1~約1:10、必要に応じて、2.5:1である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記HKPおよびRNAを、カチオン性脂質と接触させるステップをさらに含み、必要に応じて、前記カチオン性脂質が、Dlin-MC3-DMA(MC3)もしくはDOTAP(ジオレオイルオキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン)、またはその両方を含む、請求項60または61に記載の方法。
【請求項63】
前記接触させるステップにおける前記カチオン性脂質と前記RNAとの質量比が、約10:1~約1:10、必要に応じて、1:1である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記接触させるステップにおける前記HKP、前記mRNA、および前記カチオン性脂質の質量比が、約4:1:1である、請求項62または63に記載の方法。
【請求項65】
請求項40または52~59のいずれか一項に記載の組成物を産生する方法であって、請求項1~21のいずれか一項に記載のRNAを脂質と接触させるステップを含み、それによって、前記RNAおよび前記脂質が、脂質ナノ粒子(LNP)へと自己アセンブルする、方法。
【請求項66】
前記LNPが、9-ヘプタデカニル8-{(2-ヒドロキシエチル)[6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル]アミノ}オクタノエート(SM-102)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、ジリノレイル-メチル-4-ジメチルアミノブチレート(DLin-MC3-DMA)、ジ((Z)-ノナ-2-エン-1-イル)9-((4-(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)ヘプタデカンジオエート(L319)、またはこれらのそれぞれの同等物のうちの1つまたは複数を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記LNPが、ヘルパー脂質、コレステロール、またはPEG化脂質のうちの1つまたは複数をさらに含み、必要に応じて、前記ヘルパー脂質が、ジステロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、(2R)-3-(ヘキサデカノイルオキシ)-2-{[(9Z)-オクタデカ-9-エノイル]オキシ}プロピル2-(トリメチルアザニウミル)エチルホスフェート(POPC)、またはジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)のうちの1つまたは複数を含み、必要に応じて、前記コレステロールが、植物性コレステロールもしくは動物性コレステロール、またはその両方を含み、必要に応じて、前記PEG化脂質が、PEG-c-DOMG(R-3-[(ω-メトキシ-ポリ(エチレングリコール)2000)カルバモイル)]-1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-アミン)、PEG-DSG(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロール、メトキシポリエチレングリコール)、PEG-DMG(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール)、必要に応じて、PEG2000-DMG((1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000)]、またはPEG-DPG(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロール、メトキシポリエチレングリコール)のうちの1つまたは複数を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記LNPが、SM-102、DSPC、コレステロール、およびPEG2000-DMGを含み、必要に応じて、前記SM-102、DSPC、コレステロール、およびPEG200-DMGの質量比が、約1:1:1:1であり、必要に応じて、前記SM-102、DSPC、コレステロール、およびPEG2000-DMGのモル比が、約50:10:38.5:1.5である、請求項65~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記接触させるステップが、必要に応じてスリットインターディジタルマイクロミキサーまたはスタッガードヘリンボーンマイクロミキサー(SHM)から選択される、マイクロ流体ミキサーにおいて行われる、請求項60~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
がんを有する対象を処置する方法であって、前記対象に、薬学的有効量の、請求項1~21および39のいずれか一項に記載のRNA、請求項22もしくは23に記載のポリヌクレオチド、請求項24~31のいずれか一項に記載のベクター、請求項32~34のいずれか一項に記載の細胞、または請求項35もしくは40~59のいずれか一項に記載の組成物のうちのいずれか1つまたは複数を投与するステップを含む、方法。
【請求項71】
前記投与が、腫瘍内、または静脈内、または筋肉内、または皮内、または皮下である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記対象が、哺乳動物、またはヒトである、請求項70または71に記載の方法。
【請求項73】
前記がんが、配列番号1~69の突然変異のうちのいずれか1つまたは複数を含む、請求項70~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記対象に、追加の抗がん療法を投与するステップをさらに含む、請求項70~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
請求項70~74のいずれか一項に記載の方法において使用するためのキットであって、使用のための説明書と、請求項1~21および39のいずれか一項に記載のRNA、請求項22もしくは23に記載のポリヌクレオチド、請求項24~31のいずれか一項に記載のベクター、請求項32~34のいずれか一項に記載の細胞、請求項35もしくは40~59のいずれか一項に記載の組成物、または抗がん療法のうちの1つまたは複数とを含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35 U.S.C. § 119(e)のもとに、2020年10月14日に出願された米国仮出願第63/091,711号の優先権を主張し、その内容は、参照によりその全体が本出願に組み込まれる。
【0002】
本開示の分野
本開示は、腫瘍抑制遺伝子、例えば、汎RASファミリーの遺伝子において突然変異を有するがん患者を処置するための治療用ワクチンに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
がんは、遺伝子材料の変化により、正常な細胞が、腫瘍組織の悪性成長として現れる調節不全状態に陥る、遺伝子障害のファミリーである。社会の高齢化に伴い、がんは、死亡率および医療費の両方の点で負担を増加させている。National Cancer Institute(NCI)のデータによると、2020年には、米国で、およそ180万人が、がんと診断され、606,520人が、がんにより死亡すると推定されている。すべての異なるがんタイプの中でも、肺がんがもっとも多くの死亡を伴い、135,720人がこの疾患により死亡すると見られている。これは、2番目に多いがん死亡原因である結腸直腸がんによる死亡者53,200人のおよそ3倍である。膵臓がんが、3番目に死亡が多いがんであり、47,050人の死亡者をもたらしている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、がんを有効に処置する必要性が存在している。本開示は、この必要性を満たし、同様に関連する利点を提供する。
【0005】
要旨
一態様では、突然変異型ヒトras遺伝子に由来するがんネオ抗原を発現する、メッセンジャーリボ核酸(mRNA)分子を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる、組成物またはワクチンが、本明細書において提供される。別の態様では、それらは、担体とともに製剤化され、例えば、それらは、薬学的に許容される担体とともに製剤化される。好適な担体としては、ヒスチジン-リシンコポリマー(HKP)、4-(ジメチルアミノ)-ブタン酸、(10Z,13Z)-1-(9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエン-1-イル-10,13-ノナデカジエン-1-イルエステル(DLIN-MC3-DMAもしくはMC3)、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、またはこれらの任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されず、これらは、一部の態様では、rasにおける突然変異を有するがん細胞に対する免疫応答を増幅させるためのアジュバントとしての機能を果たし得る。処置方法、プロセス開発、および特異的送達経路を含む、これらの医薬組成物を使用するための方法もまた提供される。
【0006】
一態様では、1つまたは複数のras由来のペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる、リボ核酸(RNA)が提供される。一部の実施形態では、1つまたは複数のras由来のペプチドのそれぞれは、23~29個のアミノ酸残基、例えば、25個のアミノ酸残基からなる。追加として、または代替的に、コードされるペプチドは、配列番号1~69に記載される群またはそれらのそれぞれの同等物から選択される。一部の実施形態では、1つまたは複数のras由来のペプチドは、配列番号1~18、32~49、または53~68のうちのいずれか1つまたは複数を含むことも、または代替的にはそれから本質的になることも、または代替的にはそれからなることもない。
【0007】
別の態様では、ras由来のペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる、単離されたリボ核酸(RNA)が提供される。一部の実施形態では、コードされるras由来のペプチドは、以下の突然変異:配列番号70の19番目のアミノ酸残基にアライメントするフェニルアラニン(F)(本明細書において、L19Fと称される)、配列番号70の59番目のアミノ酸残基にアライメントするスレオニン(T)(本明細書において、A59Tと称される)、配列番号70の60番目のアミノ酸残基にアライメントするアスパラギン酸(D)(本明細書において、G60Dと称される)、配列番号70の117番目のアミノ酸残基にアライメントするアスパラギン(N)(本明細書において、K117Nと称される)、または配列番号70の146番目のアミノ酸残基にアライメントするT(本明細書において、A146Tと称される)のうちの1つまたは複数(例えば、いずれか1つ、またはいずれか2つ、またはいずれか3つ、またはいずれか4つ、または5つすべて)を含む。一部の実施形態では、コードされるras由来のペプチドは、以下の突然変異:配列番号70の12番目のアミノ酸残基にアライメントするD(本明細書において、G12Dと称される)、配列番号70の13番目のアミノ酸残基にアライメントするD(本明細書において、G13Dと称される)、または配列番号70の61番目のアミノ酸残基にアライメントするヒスチジン(H)(本明細書において、Q61Hと称される)のうちのいずれか1つまたは複数(例えば、いずれか1つ、またはいずれか2つ、またはいずれか3つ)をさらに含む。一部の実施形態では、コードされるras由来のペプチドは、以下の突然変異:G12D、G13D、L19F、A59T、G60D、Q61H、K117N、およびA146Tを含む。一部の実施形態では、コードされるras由来のペプチドは、配列番号70に記載されるポリペプチドまたはその同等物を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなるが、ただし、同等物が、G12D、G13D、L19F、A59T、G60D、Q61H、K117N、およびA146Tの8つの突然変異を保持することを条件とする。一部の実施形態では、RNAは、配列番号88に記載されるポリヌクレオチドまたは配列番号88のヌクレオチド(nt)1~nt612を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。さらなる実施形態では、RNAは、薬学的に許容される担体において製剤化され、例えば、ナノ粒子において封入される。
【0008】
さらなる態様では、本明細書において開示されるRNAをコードするポリヌクレオチド(例えば、DNA)、またはそれに相補的なポリヌクレオチド、またはその両方が提供される。なおもさらなる態様では、本明細書において開示されるポリヌクレオチドを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる、ベクターが提供される。一部の実施形態では、ベクターは、その複製または転写を誘導するようにポリヌクレオチドに作動可能に連結された調節配列、例えば、プロモーターをさらに含む。一部の実施形態では、ベクターは、非ウイルスベクター、例えば、プラスミド、リポソーム、またはミセルである。さらなる実施形態では、ベクターは、pUC57、またはpSFV1、またはpcDNA3、またはpTK126である。なおもさらなる実施形態では、ベクターは、配列番号91に記載されるポリヌクレオチド、または同じRNAに転写されるその同等物を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。一部の実施形態では、ベクターは、ウイルスベクター、例えば、アデノウイルスベクター、またはアデノ随伴ウイルスベクター、またはレトロウイルスベクター、またはレンチウイルスベクター、または植物ウイルスベクターである。
【0009】
一態様では、本明細書において開示されるRNA、本明細書において開示されるポリヌクレオチド、または本明細書において開示されるベクターのうちの1つまたは複数を含む細胞が提供される。一態様では、細胞は、原核生物細胞である。別の態様では、細胞は、真核生物細胞である。
【0010】
さらなる態様では、担体(例えば、薬学的に許容される担体)と、本明細書において開示されるRNA、本明細書において開示されるポリヌクレオチド、本明細書において開示されるベクター、または本明細書において開示される細胞のうちの1つまたは複数とを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる、組成物が提供される。
【0011】
なおもさらなる態様では、本開示のRNAを産生する方法が提供される。一部の実施形態では、本方法は、本明細書において開示される細胞を、RNAを発現する(例えば、DNAをRNAに転写する)のに好適な条件下において培養するステップを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。一態様では、細胞は、本開示のRNAをコードするDNAを含む。一部の実施形態では、本方法は、本明細書において開示されるポリヌクレオチドまたは本明細書において開示されるベクターを、RNAを発現する(例えば、DNAをRNAに転写する)のに好適な条件下において、RNAポリメラーゼ、アデノシン三リン酸(ATP)、シチジン三リン酸(CTP)、グアノシン-5’-三リン酸(GTP)、およびウリジン三リン酸(UTP)または化学的に修飾されたUTPと接触させるステップを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。さらなる実施形態では、本方法は、RNAを単離するステップをさらに含む。本明細書において開示される方法によって産生されるRNAが、追加として提供される。
【0012】
追加として、担体、例えば、薬学的に許容される担体、例えば、ナノ粒子において製剤化された、有効量の、本明細書において開示されるRNAを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる、組成物(例えば、免疫原性組成物)が提供される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、ポリマーナノ粒子担体、例えば、ヒスチジン-リシンコポリマー(HKP)、例えば、H3K(+H)4bもしくはH3k(+H)4bまたはその両方を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなるものである。一部の実施形態では、ナノ粒子は、脂質ナノ粒子、例えば、9-ヘプタデカニル8-{(2-ヒドロキシエチル)[6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル]アミノ}オクタノエート(SM-102)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、ジリノレイル-メチル-4-ジメチルアミノブチレート(DLin-MC3-DMA)、ジ((Z)-ノナ-2-エン-1-イル)9-((4-(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)ヘプタデカンジオエート(L319)、またはこれらのそれぞれの同等物である。
【0013】
一態様では、本明細書において開示される組成物(例えば、免疫原性組成物)を産生する方法が提供される。本方法は、本明細書において開示されるRNAを、HKPもしくは脂質またはその両方と接触させるステップを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなり、それによって、RNA、ならびにHKPもしくは脂質またはHKPおよび脂質の両方が、ナノ粒子へと自己アセンブルする。
【0014】
別の態様では、がんを有するか、またはがんを有することが疑われるか、またはがんを有する危険性もしくは代替的には高い危険性にある対象を処置する方法が提供される。本方法は、対象に、例えば、薬学的有効量の、本明細書において開示されるRNA、本明細書において開示されるポリヌクレオチド、本明細書において開示されるベクター、本明細書において開示される細胞、または本明細書において開示される組成物(例えば、免疫原性組成物)のうちのいずれか1つまたは複数を投与するステップを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。一部の実施形態では、がんは、本明細書において開示されるRNAによって発現される1つまたは複数の突然変異(本明細書において、ネオ抗原とも称される)、例えば、ras突然変異を含む(例えば、発現する)。一部の実施形態では、がんは、本明細書において開示されるネオ抗原をコードする突然変異型ras遺伝子を含む。さらなる実施形態では、本方法は、対象に、追加の抗がん療法を投与するステップをさらに含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。
【0015】
なおも別の態様では、本明細書において開示される方法において使用するためのキットが提供される。キットは、使用のための説明書と、本明細書において開示されるRNA、本明細書において開示されるポリヌクレオチド、本明細書において開示されるベクター、本明細書において開示される細胞、本明細書において開示される組成物、本明細書において開示される薬学的に許容される担体、または抗がん療法のうちの1つまたは複数とを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、rasの主要なタンパク質ドメインを図示する。
【0017】
【
図2】
図2は、ウイルスベクター型ワクチン、DNAワクチン、およびRNAワクチンの利点および欠点を列挙する。
【0018】
【
図3】
図3は、in silico予測およびin vitroアッセイによるネオ抗原のスクリーニングを図示する。
【0019】
【
図4】
図4は、mRNAワクチンのミニ遺伝子構造を図示する。ミニ遺伝子によってコードされる例示的なアミノ酸配列QNAADSYSWVPEQAESRAMENQYSPは、本明細書において配列番号71として提供される。
【0020】
【
図5】
図5は、最適化されたmRNAワクチン発現構造の概略図を提供する。この構造は、線形in vitro転写(IVT)発現系またはプラスミドDNA送達ベクターにおいて含まれ得る、および/または転写され得る。
【0021】
【
図6】
図6は、mRNA産生に使用することができるプラスミドベクターを図示する。一般に使用されるプラスミドは、pSFV1、pcDNA3、およびpTK126である。
【0022】
【
図7】
図7は、ポリ脂質ナノ粒子(PLNP)および脂質ナノ粒子(LNP)構造を図示する。
【0023】
【
図8】
図8は、H3K(+H)4bが、mRNA送達に関して、H3K4bよりも有意に良好な担体であることを示す。ポリプレックスを形成するために、mRNA(1g)を、30分間、3つの異なる比のHK(4、8、12g)ポリマーと混合した。mRNAを、次いで、細胞に24時間添加した後、ルシフェラーゼ活性を測定した。H3K(+H)4b対H3K4b、それぞれ、P<0.0001およびP<0.001。
【0024】
【
図9】
図9は、H3K(+H)4bが、H3K4bよりも緊密にmRNAに結合することを示す。1%アガロースゲルにおける様々な比のmRNAおよびポリペプチド(重量:重量、ペプチド:mRNA)でのH3K(+H)4bおよびH3K4bの遅延度電気泳動アッセイ。レーン1およびレーン7:mRNA単独(1μg)。他のレーン:mRNAおよびポリペプチドの重量比。
【0025】
【
図10】
図10は、第2のモチーフに余剰ヒスチジンを有するHK担体が、mRNAトランスフェクションに関してH3K(+H)4bを他の4分岐HKペプチドと比較した場合に、mRNAトランスフェクションにおいて改善された性能を有することを示す。H3K(+H)4bはまた、第2のモチーフに追加のヒスチジンを有さないHKペプチドとも比較した。H3k(+H)4bは、もっとも有効なmRNAのペプチド担体であった(H3k(+H)4b対H3K(+4b)、*、P<0.05)。
【0026】
【
図11】
図11は、MDA-MB-231細胞へのDOTAPおよびHKペプチドの組合せのトランスフェクションを示す。DOTAPおよびHKペプチドの組合せは、細胞におけるmRNAの発現率を有意に増加させた。
【0027】
【
図12】
図12は、DOTAPおよびいくつかのHKペプチドを用いたmRNAトランスフェクションの比較を提供する。DOTAPとH3k(+H)4bとの組合せが、mRNAトランスフェクションに関してもっとも効率的である。
【0028】
【
図13】
図13は、スペルミン-脂質コンジュゲート(SLiC)種の例示的な構造を提供する。
【0029】
【
図14】
図14は、www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo/でアクセス可能なClustal Omegaを使用した配列番号70、101、103、および104に記載される配列間のアライメントを提供する。
【0030】
【
図15】
図15は、RASのin vitro発現を示す。ELISAを使用して、免疫付与したマウスにおいて生成されたRas抗体(Ab)を検出した。Hisタグ化Rasタンパク質を、ELISA抗原として使用した。RASがんワクチン候補の様々なmRNA製剤を使用して、マウスに免疫付与を行った。
【0031】
【
図16】
図16は、RASにおける8つの突然変異ホットスポットを図示する。
【0032】
【
図17】
図17は、ウエスタンブロットを使用して確認したRAS発現を提供する。β-アクチンの発現を測定し、これがローディング対照としての機能を果たした。
【0033】
【
図18】
図18は、HKP(H)で製剤化されたナノ粒子をトランスフェクトした細胞におけるin vitro RAS発現を示す。β-アクチンの発現を測定し、これがローディング対照としての機能を果たした。
【0034】
【
図19】
図19は、LNPで製剤化されたナノ粒子をトランスフェクトした細胞におけるin vitro RAS発現を示す。β-アクチンの発現を測定し、これがローディング対照としての機能を果たした。
【0035】
【
図20】
図20は、本明細書において開示される組成物を評価するin vivo動物モデルを図示する。簡単に述べると、マウスに、0日目に免疫付与を行い、追加免疫付与は、28日目に行った。血清を、28日目および42日目に採取した。血清中の抗RAS抗体を、次いで、評価した。マウスを殺処分した後、脾臓を摘出し、qRT-PCRを使用して評価した。
【0036】
【
図21】
図21は、血清中の抗RAS抗体を検出するELISAデータをプロットする。
【0037】
【
図22-1】
図22A~22Dは、Rasワクチンで免疫付与したマウスにおけるIgGアイソタイプ(
図22AはIgG2a、
図22BはIgG2b、
図22CはIgG1、および
図22DはIgG3)の評価の結果を示す。Rasワクチンで免疫付与したマウスにおける優勢なIgGアイソタイプは、IgG2bである。
【0038】
【0039】
【
図24-1】
図24A~24Cは、RASワクチンで免疫付与したマウスのNGS結果を提供する。脾臓由来のRNAを、6匹のマウスから単離し、NGS分析に送った。NGSは、マウス#1、#2、#3、および#5から得られたRNAを使用して行った。そのようなマウスの番号付けは、
図21~23における番号付けと相関する。ELISA結果に基づいて、#5のマウスを、相対陰性対照として使用した。したがって、
図24Aは、マウス#1から得られたNGS結果をマウス#5のものと比較して示し、
図24Bは、マウス#2から得られたNGS結果をマウス#5のものと比較して示し、
図24Cは、マウス#3から得られたNGS結果をマウス#5のものと比較して示す。
【0040】
【
図25-1】
図25A~25Cは、RASワクチンで免疫付与したマウスのNGSによって示される上位20個のKEGG経路を提供する。図の題名において、
図21~23に特定されるマウス#1は、「LNP-1」と示され、
図21~23に特定されるマウス#2は、「LNP_2」と示され、
図21~23に特定されるマウス#3は、「HKPH」と示され、
図21~23に特定されるマウス#5は、「HKP」と示される。したがって、
図25Aは、マウス#1から得られた試料を使用して特定された上位20個のKEGG経路を列挙し、
図25Bは、マウス#2から得られた試料を使用して特定された上位20個のKEGG経路を列挙し、
図25Cは、マウス#3から得られた試料を使用して特定された上位20個のKEGG経路を列挙する。
【0041】
【
図26-1】
図26A~26Bは、RASワクチンで免疫付与したマウスにおけるNGSによって判明した上方調節される遺伝子を提供する。図の凡例において、
図21~23に特定されるマウス#1は、「LNP-1」と示され、
図21~23に特定されるマウス#2は、「LNP_2」と示され、
図21~23に特定されるマウス#3は、「HKPH」と示され、
図21~23に特定されるマウス#5は、「HKP」と示される。
図26Aは、Th1およびTh2分化の経路を示す。6つの遺伝子は、
図26Aにおいて枠で記されており、それらの発現レベルは、FKPMカウントを使用して
図26Bにおいてさらにプロットされている。FPKM(シーケンシングされた数百万個の塩基対当たりの転写産物配列のキロ塩基当たりの断片の予測数の短縮形)は、遺伝子発現レベルを予測するもっとも一般的な方法である。
【0042】
【
図27-1】
図27A~27Bは、RASワクチンで免疫付与したマウスにおけるNGSによって判明した経路分析を提供する。図の凡例において、
図21~23に特定されるマウス#1は、「LNP-1」と示され、
図21~23に特定されるマウス#2は、「LNP_2」と示され、
図21~23に特定されるマウス#3は、「HKPH」と示され、
図21~23に特定されるマウス#5は、「HKP」と示される。
図27Aは、
図27Bに示される抗原プロセシングおよび提示経路に関与する遺伝子のFKPMカウントを示す。
【0043】
【
図28】
図28は、NGSを使用して評価したTh1およびTh2関連遺伝子のFKPMカウントとして示される遺伝子発現レベルをプロットする。図の凡例において、
図21~23に特定されるマウス#1は、「LNP-1」と示され、
図21~23に特定されるマウス#2は、「LNP_2」と示され、
図21~23に特定されるマウス#3は、「HKPH」と示され、
図21~23に特定されるマウス#5は、「HKP」と示される。
【0044】
【
図29】
図29は、NGSを使用して評価したCTLA-4およびLFA-1のFKPMカウントとして示される遺伝子発現レベルをプロットする。CTLA-4およびLFA-1は、活性化されたCD8+細胞の表現型マーカーである。図の凡例において、
図21~23に特定されるマウス#1は、「LNP-1」と示され、
図21~23に特定されるマウス#2は、「LNP_2」と示され、
図21~23に特定されるマウス#3は、「HKPH」と示され、
図21~23に特定されるマウス#5は、「HKP」と示される。
【0045】
【
図30】
図30A~30Bは、LNP-RASワクチンでの免疫付与が、in vivoでの腫瘍成長を低減させることを示す。
図30Aは、mm
3単位での腫瘍のサイズをプロットし、一方で
図30Bは、g単位で腫瘍の重量をプロットする。
【0046】
【
図31】
図31は、本明細書において開示される組成物を評価するさらなるin vivo動物モデルを図示する。簡単に述べると、マウスに、0日目に免疫付与を行い、追加免疫付与は、14日目に行った。血液を、21日目に採取した。そして、腫瘍細胞を、28日目に接種した。
【0047】
【
図32】
図32は、マウス血清中の抗RAS抗体を検出するELISA結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
詳細な説明
定義
理解されるように、本明細書に使用される節または小節の見出しは、構成上の目的のためのものにすぎず、記載される主題を制限および/または分離するものとみなされるものではない。
【0049】
本発明は、記載される特定の実施形態に制限されるものではなく、したがって、当然ながら、変動し得ることを、理解されたい。本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のものにすぎず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるため、用語は、制限することを意図するものではないこともまた、理解されたい。
【0050】
別途定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書において記載されるものと類似または同等の任意の方法および材料を、本開示の実施または試験において用いることができるが、好ましい方法、デバイス、および材料が、ここに記載されている。本明細書において言及されるすべての技術および特許刊行物は、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる。本明細書において、先行する開示により本開示がそのような開示に先立つ権利を有さないことを認めると解釈されるものは存在しない。
【0051】
本開示の実施には、別途示されない限り、組織培養、免疫学、分子生物学、微生物学、細胞生物学、および組換えDNAの従来的な技法が用いられることになり、これらは、当業者の技能の範囲内である。例えば、Sambrook and Russell eds. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition、一連のAusubel et al. eds. (2007) Current Protocols in Molecular Biology、一連のMethods in Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.)、MacPherson et al. (1991) PCR 1: A Practical Approach (IRL Press at Oxford University Press)、MacPherson et al. (1995) PCR 2: A Practical Approach、Harlow and Lane eds. (1999) Antibodies, A Laboratory Manual、Freshney (2005) Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Techique, 5th edition、Gait ed. (1984) Oligonucleotide Synthesis、米国特許第4,683,195号、Hames and Higgins eds. (1984) Nucleic Acid Hybridization、Anderson (1999) Nucleic Acid Hybridization、Hames and Higgins eds. (1984) Transcription and Translation、Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press (1986))、Perbal (1984) A Practical Guide to Molecular Cloning、Miller and Calos eds. (1987) Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (Cold Spring Harbor Laboratory)、Makrides ed. (2003) Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells、Mayer and Walker eds. (1987) Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology (Academic Press, London)、Herzenberg et al. eds (1996) Weir's Handbook of Experimental Immunology、Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual, 3rd edition (Cold Spring Harbor Laboratory Press (2002))、Sohail (ed.) (2004) Gene Silencing by RNA Interference: Technology and Application (CRC Press)、およびPlotkin et al., Plotkin; Human Vaccines, 7th edition (Elsevier)を参照されたい。
【0052】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈により別途明確に指示されない限り、複数形の参照物を含む。例えば、「1つの細胞(a cell)」という用語は、複数の細胞を含み、その混合物を含む。
【0053】
本明細書において使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、化合物、組成物、および方法が、記載される要素を含むが、他のものを除外しないことを意味することが意図される。「から本質的になる(consisting essentially of)」は、化合物、組成物、および方法を定義するために使用される場合、組合せにいくらかの本質的な重要性をもつ他の要素を除外することを意味するものとする。したがって、本明細書において定義される要素から本質的になる組成物は、例えば、単離および精製方法、ならびに薬学的に許容される担体、保存剤などからの微量の混入物を除外しない。「からなる(consisting of)」は、他の成分の微量よりも多い要素を除外することを意味するものとする。これらの転換語のそれぞれによって定義される実施形態は、本技術の範囲内にある。
【0054】
すべての数値表記、例えば、pH、温度、時間、濃度、および分子量は、範囲を含め、1、5、または10%の増分で(+)または(-)に変動する近似値である。常に明示されているわけではないが、すべての数値表記は、「約」という用語が前に付くことを理解されたい。常に明示されているわけではないが、本明細書に記載される試薬が単なる例であること、およびそのようなものの同等物が当該技術分野において公知であることもまた、理解されたい。
【0055】
「約」という用語は、測定可能な値、例えば、量または濃度などに言及して本明細書において使用される場合、指定された量の20%、10%、5%、1%、0.5%、またはさらには0.1%の変動を包含することを意味する。
【0056】
本明細書において使用される場合、本明細書で使用される比較用語、例えば、高い、低い、増加、減少、低減、またはこれらの任意の文法上の変化形は、基準からのある特定の変動を指し得る。一部の実施形態では、そのような変動は、基準よりも、約10%、もしくは約20%、もしくは約30%、もしくは約40%、もしくは約50%、もしくは約60%、もしくは約70%、もしくは約80%、もしくは約90%、もしくは約1倍、もしくは約2倍、もしくは約3倍、もしくは約4倍、もしくは約5倍、もしくは約6倍、もしくは約7倍、もしくは約8倍、もしくは約9倍、もしくは約10倍、もしくは約20倍、もしくは約30倍、もしくは約40倍、もしくは約50倍、もしくは約60倍、もしくは約70倍、もしくは約80倍、もしくは約90倍、もしくは約100倍、またはそれよりも高いことを指し得る。一部の実施形態では、そのような変動は、基準の約1%、または約2%、または約3%、または約4%、または約5%、または約6%、または約7%、または約8%、または約0%、または約10%、または約20%、または約30%、または約40%、または約50%、または約60%、または約70%、または約75%、または約80%、または約85%、または約90%、または約95%、または約96%、または約97%、または約98%、または約99%を指し得る。
【0057】
当業者には理解されるように、ありとあらゆる目的のために、本明細書において開示されるすべての範囲はまた、ありとあらゆる可能性のある部分範囲およびその部分範囲の組合せを包含する。さらに、当業者には理解されるように、範囲は、それぞれ個々のメンバーを含む。
【0058】
「必要に応じた」または「必要に応じて」とは、続いて記載される状況が、発生し得る場合も発生し得ない場合もあること、ならびにその説明には、状況が発生する事例および発生しない事例が含まれることを意味する。
【0059】
本明細書において使用される場合、「および/または」とは、関連する列挙された項目のうちの1つまたは複数のありとあらゆる可能性のある組合せ、ならびに代替形(「または」)で解釈される場合には組合せの欠如を指し、それを包含する。
【0060】
「実質的に」または「本質的に」とは、ほぼ全体的にまたは完全にを意味し、例えば、なんらかの所与の数の95%またはそれよりも上を意味する。一部の実施形態では、「実質的に」または「本質的に」とは、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または99.9%を意味する。
【0061】
「許容される」、「有効な」、または「十分な」という用語は、本明細書において開示される任意の構成成分、範囲、用量形態などの選択について説明して使用される場合、前記構成成分、範囲、用量形態などが、開示される目的に好適であることを意図する。
【0062】
一部の実施形態では、構成成分の名称における「第1」、「第2」、「第3」、「第4」、または同様の用語は、名称においてある特定の同一性を共有している1つを上回る構成成分を区別し、特定するために使用される。例えば、「第1のRNA」および「第2のRNA」は、2つのRNAを区別するために使用される。
【0063】
「タンパク質」、「ペプチド」、および「ポリペプチド」という用語は、2つまたはそれよりも多くのサブユニットのアミノ酸、アミノ酸アナログ、またはペプチド模倣体から構成される化合物を指して、互換可能に、かつそのもっとも広い意味で使用される。サブユニット(これは、残基とも称される)は、ペプチド結合によって連結され得る。別の実施形態では、サブユニットは、他の結合、例えば、エステル、エーテルなどによって連結されていてもよい。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含まなければならないが、タンパク質またはペプチドの配列を構成し得るアミノ酸の最大数に関しては制限がない。本明細書で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、天然および/または非天然もしくは合成のいずれかのアミノ酸を指し、グリシン、ならびにDおよびLの両方の光学異性体、アミノ酸アナログ、ならびにペプチド模倣体が含まれる。
【0064】
一部の実施形態では、タンパク質の断片は、免疫原性断片であり得る。本明細書において使用される場合、「免疫原性断片」という用語は、それが由来するタンパク質の免疫原性を少なくとも部分的に保持するようなポリペプチド断片を指す。一部の実施形態では、免疫原性断片は、少なくとも約3アミノ酸(aa)長、もしくは少なくとも約4aa長、もしくは少なくとも約5aa長、もしくは少なくとも約6aa長、もしくは少なくとも約7aa長、もしくは少なくとも約8aa長、もしくは少なくとも約9aa長、もしくは少なくとも約10aa長、もしくは少なくとも約15aa長、もしくは少なくとも約20aa長、もしくは少なくとも約25aa長、もしくは少なくとも約30aa長、もしくは少なくとも約35aa長、もしくは少なくとも約40aa長、もしくは少なくとも約50aa長、もしくは少なくとも約60aa長、もしくは少なくとも約70aa長、もしくは少なくとも約80aa長、もしくは少なくとも約90aa長、もしくは少なくとも約100aa長、もしくは少なくとも約120aa長、もしくは少なくとも約150aa長、もしくは少なくとも約200であるか、またはそれよりも長い。
【0065】
本明細書において使用される場合、参照配列における特定された位置に「対応する」かまたは「アライメントする」目的の配列におけるアミノ酸(aa)またはヌクレオチド(nt)残基の位置は、残基位置が、目的の配列と参照配列との間の配列アライメントにおいて特定される位置にアライメントすることを指す。そのような配列アライメントを行うための様々なプログラム、例えば、Clustal OmegaおよびBLASTが、利用可能である。一態様では、同等のポリヌクレオチド、タンパク質、および対応する配列は、BLAST(blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiにおいてアクセス可能、最終アクセス2021年8月1日)を使用して決定することができる。
【0066】
本明細書において使用される場合、アミノ酸突然変異は、本明細書において、整数によって分かれた2つの文字、例えば、L19Fとして言及される。最初の文字は、突然変異されるもともとのアミノ酸残基の一文字コードを提供し、一方で最後の文字は、突然変異を提供し、例えば、Δが欠失を示すか、または突然変異されたたアミノ酸残基の一文字コードを提供する。一部の実施形態では、整数は、必要に応じて、N末端からC末端へと数えた、突然変異がないアミノ酸配列における突然変異されるアミノ酸残基の番号付けである。一部の実施形態では、整数は、必要に応じて、N末端からC末端へと数えた、突然変異されたアミノ酸配列における突然変異されたアミノ酸残基の番号付けである。
【0067】
明示的な記述なしに、および別途意図されない限り、本開示が、ポリペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチドに関する場合、そのようなものの同等物または生物学的同等物は、本開示の範囲内であることが意図されると推定される。本明細書において使用される場合、「その生物学的同等物」という用語は、参照タンパク質、ポリペプチド、または核酸に言及する場合、「その同等物」と同義であることが意図され、相同性は最小限であるが、依然として所望される構造または機能性を維持するものを意図する。本明細書において別途記述されない限り、本明細書において言及される任意のポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはタンパク質はまた、その同等物を含むことが企図される。例えば、同等物は、少なくとも約70%の相同性もしくは同一性、または少なくとも80%の相同性もしくは同一性、または少なくとも約85%の相同性もしくは同一性、または代替的には少なくとも約90%の相同性もしくは同一性、または代替的には少なくとも約95%の相同性もしくは同一性、または代替的には少なくとも約96%の相同性もしくは同一性、または代替的には少なくとも約97%の相同性もしくは同一性、または代替的には少なくとも約98%の相同性もしくは同一性、または代替的には少なくとも約99%の相同性もしくは同一性(一態様では、Clustal Omegaアライメントプログラムを使用して決定される)を意図し、参照タンパク質、ポリペプチド、または核酸と実質的に同等の生物学的活性を呈する。あるいは、ポリヌクレオチドに言及する場合、その同等物は、ストリンジェントな条件下において、参照ポリヌクレオチドまたはその相補的配列にハイブリダイズするポリヌクレオチドである。
【0068】
参照ポリペプチドの同等物は、参照ポリペプチドに対して少なくとも80%、もしくは少なくとも85%、もしくは少なくとも90%、もしくは少なくとも95%、もしくは少なくとも約96%、もしくは少なくとも97%、もしくは少なくとも98%、もしくは少なくとも99%のアミノ酸同一性(一態様では、Clustal Omegaアライメントプログラムを使用して決定される)を有するポリペプチド、または必要に応じて約55℃~約68℃のインキュベーション温度、約1×SSC~約0.1×SSCの緩衝液濃度、約55%~約75%のホルムアミド濃度、および約1×SSC、0.1×SSC、もしくは脱イオン水の洗浄溶液を含む高ストリンジェンシー条件下において、参照ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの相補的配列にハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、を含むか、それから本質的になるか、または代替的にはそれからなる。
【0069】
一部の実施形態では、第1の配列(核酸配列またはアミノ酸)を、第2の配列と比較し、2つの配列間の同一性パーセンテージを計算することができる。さらなる実施形態では、第1の配列は、本明細書において、同等物と称され得、第2の配列は、本明細書において、参照配列と称され得る。なおもさらなる実施形態では、同一性パーセンテージは、第1の配列の全長配列に基づいて計算される。他の実施形態では、同一性パーセンテージは、第2の配列の全長配列に基づいて計算される。
【0070】
一部の実施形態では、参照ポリペプチドの同等物は、1つまたは複数のアミノ酸残基が保存的置換によって置き換えられた参照ポリペプチドを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。置換は、同じファミリーのアミノ酸内での置換であるという意味で、「保存的」であり得る。天然に存在するアミノ酸は、以下の4つのファミリーに分割することができ、保存的置換は、これらのファミリー内で生じる。
(1)塩基性側鎖を有するアミノ酸:リシン、アルギニン、ヒスチジン。
(2)酸性側鎖を有するアミノ酸:アスパラギン酸、グルタミン酸
(3)非荷電極性側鎖を有するアミノ酸:アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン。
(4)非極性側鎖を有するアミノ酸:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、システイン。
【0071】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」、および「オリゴヌクレオチド」という用語は、互換可能に使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドまたはそれらのアナログのいずれかを指す。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有し得、公知または不明の任意の機能を行い得る。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子断片(例えば、プローブ、プライマー、EST、もしくはSAGEタグ)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐鎖ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマー。ポリヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチド、例えば、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリヌクレオチドのアセンブリの前または後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断されてもよい。ポリヌクレオチドは、重合の後に、例えば、標識化成分とのコンジュゲーションによって、さらに修飾されてもよい。この用語はまた、二本鎖分子および一本鎖分子の両方を指す。別途示されるかまたは必要とされない限り、ポリヌクレオチドである本開示の任意の実施形態は、二本鎖形態、および二本鎖形態をなすことが公知であるかまたは予測される2つの相補的な一本鎖形態のそれぞれの両方を包含する。
【0072】
ポリヌクレオチドは、4つのヌクレオチド塩基:アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、およびポリヌクレオチドがRNAである場合にチミンの代わりにウラシル(U)の特定の配列から構成される。したがって、「ポリヌクレオチド配列」という用語は、ポリヌクレオチド分子のアルファベットでの表示である。このアルファベットでの表示は、中央処理装置を有するコンピュータのデータベースに入力することができ、機能ゲノム学および相同性検索などのバイオインフォマティクス用途に使用することができる。
【0073】
「RNA」という用語は、本明細書において使用される場合、その当該技術分野において一般に許容されている意味を指す。一般に、RNAという用語は、少なくとも1つのリボフラノシド部分を含むポリヌクレオチドを指す。この用語は、二本鎖RNA、一本鎖RNA、単離されたRNA、例えば、部分的に精製されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換えで産生されたRNA、ならびに天然に存在するRNAとは1つまたは複数のヌクレオチドの付加、欠失、置換、および/または変更が異なる変更されたRNAを含み得る。そのような変更は、例えば、RNAの1つまたは複数のヌクレオチドにおける、非ヌクレオチド材料の付加を含み得る。核酸分子におけるヌクレオチドは、非標準的ヌクレオチド、例えば、天然に存在しないヌクレオチドまたは化学的に合成されたヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドも含み得る。これらの変更されたRNAは、アナログまたは天然に存在するRNAのアナログと称され得る。一部の実施形態では、RNAは、メッセンジャーRNA(mRNA)である。
【0074】
「メッセンジャーRNA」(mRNA)は、(少なくとも1つの)ポリペプチド(天然に存在する、天然に存在しない、または修飾されたアミノ酸のポリマー)をコードする任意のポリヌクレオチドを指し、これは、in vitro、in vivo、in situ、またはex vivoにおいてコードされたポリペプチドを産生するように翻訳され得る。一部の実施形態では、本明細書において開示されるmRNAは、少なくとも1つのコーディング領域、5’非翻訳領域(UTR)、3’UTR、5’キャップ、およびポリ-A尾部を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。
【0075】
ワクチン接種は、疾患の予防および制御のためのもっとも成功している医療アプローチである。ワクチンの開発および使用の成功により、何千人もの命が救われ、多額の資金が節約されている。RNAワクチンの重要な利点は、RNAが、研究室において、容易に入手可能な材料を使用して、鶏卵または他の哺乳動物細胞の使用が必要な従来的なワクチン製造よりも低費用かつ高速で、DNA鋳型から産生することができることである。加えて、mRNAワクチンは、ワクチンの発見および開発を合理化し、新しく生じる感染性疾患に対する迅速な対応を促進する可能性を有し、例えば、Maruggi et al., Mol Ther. 2019; 27(4):757-772を参照されたい。
【0076】
前臨床および臨床試験では、mRNAワクチンが、動物モデルおよびヒトにおいて、安全かつ長く持続する免疫応答を提供することが示されている。感染性疾患に対するmRNAワクチンは、予防的処置または治療的処置として開発され得る。感染性病原体の抗原を発現するmRNAワクチンは、強力なT細胞免疫応答および体液性免疫応答を誘導することが示されている。例えば、Pardi et al., Nat Rev Drug Discov. 2018; 17:261-279を参照されたい。mRNAワクチンを生成するための産生手順は、全微生物ワクチン、弱毒化生ワクチン、およびサブユニットワクチンの産生と比較して、無細胞、単純、かつ高速である。この高速かつ単純な製造プロセスにより、mRNAは、新たに生じる感染性疾患と、有効なワクチンに対する切実な必要性との間の溝を埋めることができる可能性のある有望なバイオ製品となっている。
【0077】
「単離された」という用語は、核酸、例えば、DNAまたはRNAに関連して本明細書に使用される場合、それぞれ、巨大分子の天然の供給源に存在している他のDNAまたはRNAとは分離されている分子を指す。「単離された核酸」という用語は、断片として天然に存在せず、天然の状態で見出されないであろう、核酸断片を含むことを意味する。「単離された」という用語はまた、他の細胞タンパク質から単離されているポリペプチド、タンパク質、および/または宿主細胞を指して本明細書に使用され、精製されたポリペプチドおよび組換えポリペプチドの両方を包含することを意味する。他の実施形態では、「単離された」という用語は、細胞、組織、ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質が、天然の状態で通常関連している構成要素、細胞、およびその他のものから分離していることを意味する。例えば、単離された細胞は、類似ではない表現型または遺伝子型の組織または細胞から分離されている細胞である。当業者には明らかなように、天然に存在しないポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、それをその天然に存在する対応物と区別するための「単離」を必要としない。
【0078】
一部の実施形態では、「操作された」または「組換え」という用語は、天然に存在するタンパク質、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、株、野生型株、または参照種の親宿主株において通常見出されない少なくとも1つの改変を有することを指す。一部の実施形態では、「操作された」または「組換え」という用語は、ヒトの介入によって合成されていることを指す。本明細書において使用される場合、「組換えタンパク質」という用語は、組換えDNA技法によって産生されたポリペプチドを指し、一般に、ポリペプチドをコードするDNAが、好適な発現ベクターに挿入され、これを使用して、宿主細胞に形質転換を行って、異種タンパク質を産生する。
【0079】
本明細書において使用される場合、「相補的」配列とは、逆平行で互いにアライメントしたときに、互いに対合する複数の個々のヌクレオチド塩基を含む、2つのヌクレオチド配列を指す。ヌクレオチド塩基の対合は、水素結合を形成し、したがって、相補的配列によって形成される二本鎖構造を安定させる。配列が「相補的」と見なされるために、必ずしも、2つの配列内のすべてのヌクレオチド塩基が互いに対合するわけではない。配列は、例えば、2つの配列内のヌクレオチド塩基のうちの少なくとも30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%が互いに対合する場合、相補的と考えることができる。一部の実施形態では、相補的という用語は、2つの配列内のヌクレオチド塩基の100%が、互いに対合することを指す。加えて、配列は、2つの配列の合計長さが、互いに有意に異なる場合にも、依然として「相補的」と考えられる場合がある。例えば、15ヌクレオチドのプライマーは、プライマーを長いポリヌクレオチドの特定の領域と逆平行にアライメントしたときに、プライマーの複数の個々のヌクレオチド塩基が、数百個のヌクレオチドを含む長いポリヌクレオチドにおけるヌクレオチド塩基と対合する場合、その長いポリヌクレオチドに対して「相補的」であると考えられ得る。ヌクレオチド塩基の対合は、当該技術分野において公知であり、例えば、DNAの場合、プリンアデニン(A)は、ピリミジンチミン(T)と対合し、ピリミジンシトシン(C)は、常にプリングアニン(G)と対合し、一方でRNAの場合には、アデニン(A)は、ウラシル(U)と対合し、グアニン(G)は、シトシン(C)と対合する。さらに、対ではないが、2つの相補的配列において互いに逆平行にアライメントするヌクレオチド塩基は、本明細書において、ミスマッチと称される。
【0080】
「遺伝子」は、転写および翻訳された後に特定のポリペプチドまたはタンパク質をコードすることができる、少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含むポリヌクレオチドを指す。
【0081】
「発現する」という用語は、遺伝子産物、例えば、mRNA、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の産生を指す。本明細書において使用される場合、「発現」は、ポリヌクレオチドがmRNAに転写されるプロセス、または転写されたmRNAが、続いてペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質に翻訳されるプロセスを指す。ポリヌクレオチドが、ゲノムDNAに由来する場合は、発現には、真核生物細胞におけるmRNAのスプライシングが含まれ得る。
【0082】
「遺伝子産物」または代替的に「遺伝子発現産物」は、遺伝子が転写され翻訳されると生成される、アミノ酸(例えば、ペプチドまたはポリペプチド)を指す。一部の実施形態では、遺伝子産物は、遺伝子が転写されると生成される、mRNAまたは他のRNA、例えば、干渉RNAを指し得る。
【0083】
ポリヌクレオチドに適用される「コードする」という用語は、その天然の状態で、または当業者に周知の方法によって操作されたときに、転写されて、ポリペプチドまたはその断片のmRNAを産生し、必要に応じて、翻訳されて、ポリペプチドまたはその断片を産生し得る場合に、ポリペプチドを「コードする」と言われる、ポリヌクレオチドを指す。アンチセンス鎖は、そのような核酸の相補体であり、コードする配列は、そこから推測することができる。さらに、本明細書において使用される場合、アミノ酸配列のコーディング配列は、アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を指す。
【0084】
「化学的修飾」および「化学的に修飾された」という用語は、アデノシン(A)、グアノシン(G)、ウリジン(U)、チミジン(T)、またはシチジン(C)リボヌクレオシドまたはデオキシリボヌクレオシドに関する、それらの位置、パターン、パーセント、または集団のうちの少なくとも1つにおける修飾を指す。一部の実施形態では、この用語は、天然に存在する5’末端mRNAキャップ部分におけるリボヌクレオチド修飾を指す。さらなる実施形態では、化学的修飾は、シュードウリジン、N1-メチルシュードウリジン、N1-エチルシュードウリジン、2-チオウリジン、4’-チオウリジン、5-メチルシトシン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-シュードウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-シュードウリジン、4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン、4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、4-チオ-シュードウリジン、5-アザ-ウリジン、ジヒドロシュードウリジン、5-メチルウリジン、5-メトキシウリジン、または2’-O-メチルウリジンから選択される。一部の実施形態では、化学的に修飾されたヌクレオチドの組込みの程度は、ワクチン製剤に対する免疫応答の改善のために最適化されている。他の実施形態では、この用語は、天然に存在する5’末端mRNAキャップ部分におけるリボヌクレオチド修飾を除外する。
【0085】
ポリヌクレオチド(例えば、RNAポリヌクレオチド、例えば、mRNAポリヌクレオチド)は、一部の実施形態では、所望される機能または特性を達成するためにポリヌクレオチドの合成中または合成後に導入される非天然の修飾されたヌクレオチドを含む。修飾は、ヌクレオチド間連結、プリンもしくはピリミジン塩基、または糖に存在し得る。修飾は、鎖の末端または鎖内の任意の他の箇所において、化学合成またはポリメラーゼ酵素により導入され得る。ポリヌクレオチドの領域のうちのいずれかが、化学的に修飾され得る。
【0086】
一部の実施形態では、RNAの残基のうちの少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれよりも高いパーセンテージが、本明細書において開示される修飾のうちの1つまたは複数によって化学的に修飾される。一部の実施形態では、RNAのウリジン残基のうちの少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれよりも高いパーセンテージが、本明細書において開示される修飾のうちの1つまたは複数によって化学的に修飾される。
【0087】
一部の実施形態では、本明細書において開示されるRNAは、最適化されている。最適化は、一部の実施形態では、標的および宿主生物におけるコドン使用頻度を一致させて、適切なフォールディングを確実にするため;mRNA安定性を増加させるか、もしくは二次構造を低減させるように、GC含有量を偏らせるため;遺伝子構築もしくは発現を損傷し得るタンデムリピートコドンもしくは塩基回数を最小限に抑えるため;転写および翻訳制御領域をカスタマイズするため;タンパク質輸送配列を挿入もしくは除去するため;コードされるタンパク質に翻訳後修飾部位(例えば、グリコシル化部位)を除去/追加するため;タンパク質ドメインを追加、除去、もしくはシャッフルするため;制限部位を挿入もしくは欠失させるため;リボソーム結合部位およびmRNA分解部位を修飾するため;翻訳速度を調節して、タンパク質の様々なドメインが適切にフォールディングするようにするため;またはポリヌクレオチド内の問題となる二次構造を低減もしくは排除するために、使用され得る。
【0088】
「3’非翻訳領域」(3’ UTR)は、ポリペプチドをコードしない、終止コドン(すなわち、翻訳の終了をシグナル伝達するmRNA転写産物のコドン)のすぐ下流(すなわち、3’)にあるmRNAの領域を指す。一部の実施形態では、3’ UTRは、本明細書において使用される場合、以下のうちの1つまたは複数を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。
【化1】
【0089】
「5’非翻訳領域」(5’ UTR)は、ポリペプチドをコードしない、開始コドン(すなわち、リボソームによって翻訳されるmRNA転写産物の最初のコドン)のすぐ上流(すなわち、5’)にあるRNAの領域を指す。一部の実施形態では、5’ UTRは、本明細書において使用される場合、以下のうちの1つまたは両方を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。
【化2】
【0090】
一部の実施形態では、RNAは、ポリA尾部をさらに含む。「ポリA尾部」は、複数の連続したアデノシン一リン酸を含む3’ UTRから下流、例えば、すぐ下流(すなわち、3’)にあるmRNAの領域である。ポリA尾部は、10~300個のアデノシン一リン酸を含み得る。追加として、または代替的に、関連する生物学的状況(例えば、細胞、in vivo)において、ポリA尾部は、例えば、細胞質における酵素分解からmRNAを保護するように機能し、転写終止、mRNAの核外輸送、および翻訳を補助する。一部の実施形態では、ポリA尾部は、本明細書において使用される場合、以下のうちの1つまたは複数を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。
【化3】
【化4】
【0091】
in vitro転写(IVT)方法は、ほぼすべての配列のRNA分子の鋳型により誘導される合成を可能にする。IVT方法を使用して合成することができるRNA分子のサイズは、短いオリゴヌクレオチドから、数千塩基の長い核酸ポリマーまでの範囲に及ぶ。IVT方法は、大量のRNA転写産物(例えば、マイクログラムからミリグラムの量)の合成を可能にする(Beckert et al., Methods Mol Biol. 703:29-41(2011)、Rio et al. RNA: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2011, 205-220、およびCooper, Geoffery M. The Cell: A Molecular Approach. 4th ed. Washington D.C.: ASM Press, 2007, 262-299)。一般に、IVTは、目的の配列の上流にあるプロモーター配列を特徴とするDNA鋳型を利用する。プロモーター配列は、もっとも一般的にはバクテリオファージ起源のものであるが(例えば、T7、T3、またはSP6プロモーター配列)、多数の他のプロモーター配列が、de novoで設計されたものを含め、許容され得る。DNA鋳型の転写は、典型的には、特定のバクテリオファージプロモーター配列に対応するRNAポリメラーゼを使用することによってもっとも良好に達成される。例示的なRNAポリメラーゼとしては、とりわけ、T7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ、またはSP6 RNAポリメラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。IVTは、一般に、dsDNAで開始されるが、一本鎖で進行してもよい。
【0092】
本明細書において開示されるRNAは、任意の適切な合成方法を使用して作製することができることが、理解される。例えば、一部の実施形態では、RNAは、IVTを使用して、鋳型としての一本鎖ボトム鎖DNA、およびプロモーターとしての機能を果たす相補的オリゴヌクレオチドから作製される。一本鎖ボトム鎖DNAは、RNAのin vitro転写のDNA鋳型としての機能を果たし得、例えば、プラスミド、PCR産物、または化学合成から得ることができる。一部の実施形態では、一本鎖ボトム鎖DNAは、環状鋳型から線形化される。一本鎖ボトム鎖DNA鋳型は、一般に、IVTを促進するためのプロモーター配列、例えば、バクテリオファージプロモーター配列を含む。一本鎖ボトム鎖DNAおよびトップ鎖プロモーター相補的オリゴヌクレオチドを使用してRNAを作製する方法は、当該技術分野において公知である。例示的な方法としては、DNAボトム鎖鋳型をトップ鎖プロモーター相補的オリゴヌクレオチド(例えば、T7プロモーター相補的オリゴヌクレオチド、T3プロモーター相補的オリゴヌクレオチド、またはSP6プロモーター相補的オリゴヌクレオチド)とアニーリングすること、続いて、プロモーター配列に対応するRNAポリメラーゼ、例えば、T7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ、またはSP6 RNAポリメラーゼを使用したIVTが挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
IVT方法はまた、二本鎖DNA鋳型を使用して行うこともできる。例えば、一部の実施形態では、二本鎖DNA鋳型は、当該技術分野において利用可能な鎖伸長技法を使用して、相補的オリゴヌクレオチドを伸長して相補的DNA鎖を生成することによって作製される。一部の実施形態では、プロモーター配列および目的の1つまたは複数のエピトープをコードする配列を含む一本鎖ボトム鎖DNA鋳型は、トップ鎖プロモーター相補的オリゴヌクレオチドにアニーリングされ、トップ鎖を伸長させて二本鎖DNA鋳型を生成するようにPCR様プロセスに供される。代替的に、または追加として、ボトム鎖プロモーター配列に相補的かつ目的の1つまたは複数のエピトープをコードする配列に相補的な配列を含むトップ鎖DNAは、ボトム鎖プロモーターオリゴヌクレオチドにアニーリングされ、ボトム鎖を伸長させて二本鎖DNA鋳型を生成するようにPCR様プロセスに供される。一部の実施形態では、PCR様サイクルの数は、1~20回のサイクル、例えば、3~10回のサイクルの範囲に及ぶ。一部の実施形態では、二本鎖DNA鋳型は、化学的合成方法によって完全または部分的に合成される。二本鎖DNA鋳型は、本明細書に記載されるようにin vitro転写に供され得る。
【0094】
本明細書において「~の発現を誘導する」またはその任意の文法上の変化形としても使用される「転写制御下において」とは、当該技術分野において十分に理解されている用語であり、ポリヌクレオチド配列、通常はDNA配列の転写および必要に応じて翻訳が、転写の開始に寄与するかまたは転写を促進するエレメントに作動可能に連結されていることに依存することを示す。
【0095】
「作動可能に連結された」とは、ポリヌクレオチドが、細胞においてそれらが機能することを可能にする様式で配置されていることを意図する。
【0096】
「調節配列」、「発現制御エレメント」、または「プロモーター」という用語は、本明細書において使用される場合、転写または複製しようとする標的ポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、標的ポリヌクレオチドの発現または複製を促進する、ポリヌクレオチドを意図する。
【0097】
プロモーターは、発現制御エレメントまたは調節配列の例である。プロモーターは、調節される遺伝子転写の制御点を提供する、遺伝子または他のポリヌクレオチドの5’または上流に位置付けられ得る。一部の実施形態では、プロモーターは、本明細書において使用される場合、RNAポリメラーゼに対応する。さらなる実施形態では、プロモーターは、本明細書において使用される場合、T7プロモーター、またはSP6プロモーター、またはT3プロモーターを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。好適なプロモーターの非限定的な例は、国際公開第WO2001009377A1号に提供されている。
【0098】
「RNAポリメラーゼ」は、既存の鋳型ポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)に相補的なポリリボヌクレオチド配列を産生する酵素を指す。一部の実施形態では、RNAポリメラーゼは、バクテリオファージRNAポリメラーゼ、必要に応じて、T7 RNAポリメラーゼ、またはSP6 RNAポリメラーゼ、またはT3 RNAポリメラーゼである。好適なポリメラーゼの非限定的な例は、米国特許第US10526629B2号においてさらに詳述されている。
【0099】
一部の実施形態では、「ベクター」という用語は、非分裂細胞および/または緩徐分裂細胞に感染しそれに形質導入を行い、必要に応じて、標的細胞のゲノムに組み込まれる能力を保持する、組換えベクターを意図する。ベクターの非限定的な例としては、プラスミド、ナノ粒子、リポソーム、ウイルス、コスミド、ファージ、BAC、YACなどが挙げられる。一部の実施形態では、プラスミドベクターは、市販入手可能なベクターから調製され得る。他の実施形態では、ウイルスベクターは、当該技術分野において公知の技法に従って、バキュロウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、AAVなどから産生され得る。一実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。一実施形態では、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクターである。一実施形態では、ベクターは、プラスミドである。一実施形態では、ベクターは、ナノ粒子、必要に応じて、ポリマーナノ粒子または脂質ナノ粒子である。
【0100】
ポリヌクレオチドが作動可能に連結され得るプロモーターおよびクローニング部位の両方を含むベクターは、当該技術分野において周知である。そのようなベクターは、in vitroまたはin vivoでRNAを転写することができ、Stratagene(La Jolla、Calif.)およびPromega Biotech(Madison、Wis.)などの供給源から市販入手可能である。発現および/またはin vitro転写を最適化するために、クローンの5’および/または3’非翻訳部分を除去、付加、または変更して、余分で不適切な可能性のある選択的翻訳開始コドンまたは転写もしくは翻訳のいずれかのレベルで発現に干渉し得るかもしくはそれを低減させ得る他の配列を排除することが、必要であり得る。あるいは、コンセンサスリボソーム結合部位を、開始コドンのすぐ5’に挿入して、発現を増強させることができる。
【0101】
「プラスミド」は、染色体DNAとは独立して複製することができる、染色体DNAから分離した染色体外DNA分子である。多くの場合には、それは、環状であり、二本鎖である。プラスミドは、微生物集団内で水平方向の遺伝子移入の機序を提供し、典型的には、所与の環境状態下において選択的利点を提供する。プラスミドは、競合的環境ニッチにおいて、天然に存在する抗生物質に対する抵抗性を提供する遺伝子を有し得るか、または代替的には、産生されるタンパク質が、類似の状況下において、毒素としての作用を果たし得る。多数のプラスミドが、そのような用途で市販入手可能である。複製しようとする遺伝子は、細胞を特定の抗生物質に対して抵抗性にする遺伝子および複数のクローニング部位(MCS、またはポリリンカー)を含むプラスミドのコピーに挿入されるが、クローニング部位は、DNA断片のこの位置への容易な挿入を可能にするいくつかの一般的に使用される制限部位を含む短い領域である。プラスミドの別の主要な用途は、大量のタンパク質を作製することである。この場合には、研究者は、目的の遺伝子を有するプラスミドを含む細菌を成長させる。細菌がその抗生物質抵抗性を付与するタンパク質を産生するのと同様に、挿入された遺伝子から多量のタンパク質を産生するように誘導することも可能である。これは、遺伝子またはそれが後にコードするタンパク質を大量生産する安価かつ容易な手段である。
【0102】
本明細書において使用される場合、「ミセル」という用語は、親水性シェル(またはコロナ)ならびに疎水性および/またはイオン性内部から構成されるポリマーアセンブリを指す。加えて、ミセルという用語は、正味の正電荷を有する多ブロックコポリマーおよび好適な負に荷電したポリヌクレオチドからなる任意のポリイオン複合体アセンブリを指し得る。
【0103】
「ウイルスベクター」は、宿主細胞に、in vivo、ex vivo、またはin vitroのいずれかで送達しようとするポリヌクレオチドを含む、組換えで産生されたウイルスまたはウイルス粒子として定義される。当業者には公知のように、ウイルスには6つのクラスがある。DNAウイルスは、クラスIおよびIIを構成する。RNAウイルスおよびレトロウイルスが、残りのクラスをなす。クラスIIIのウイルスは、二本鎖RNAゲノムを有する。クラスIVのウイルスは、正の一本鎖RNAゲノムを有し、ゲノム自体がmRNAとしての作用を果たし、クラスVのウイルスは、mRNA合成のための鋳型として使用される負の一本鎖RNAゲノムを有する。クラスVIのウイルスは、正の一本鎖RNAゲノムを有するが、複製だけでなくmRNA合成においてもDNA中間体を有する。レトロウイルスは、RNAの形態で遺伝子情報を運搬するが、しかしながら、ウイルスが細胞に感染すると、RNAは感染した細胞のゲノムDNAに組み込まれるDNA形態へと逆転写される。組み込まれたDNA形態は、プロウイルスと称される。ウイルスベクターの例としては、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アルファウイルスベクターなどが挙げられる。アルファウイルスベクター、例えば、セムリキ森林ウイルスに基づくベクターおよびシンドビスウイルスに基づくベクターもまた、遺伝子療法および免疫療法における使用のために開発されている。Schlesinger and Dubensky (1999) Curr. Opin. Biotechnol. 5:434-439およびYing, et al. (1999) Nat. Med. 5(7):823-827を参照されたい。本明細書において使用される場合、感染多重度(MOI)は、感染中に細胞ごとに追加されるウイルス粒子の数を指す。
【0104】
「アデノウイルス」という用語は、「アデノウイルスベクター」という用語と同義であり、Adenoviridiae属のウイルスを指す。Adenoviridiaeという用語は、集合的に、mastadenovirus属の動物アデノウイルスを指し、ヒト、ウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ブタ、マウス、およびサルアデノウイルス亜属を含むがこれらに限定されない。具体的には、ヒトアデノウイルスは、亜属A~F、ならびにそれらの個々の血清型を含み、個々の血清型および亜属A~Fには、ヒトアデノウイルス1型、2型、3型、4型、4a型、5型、6型、7型、8型、9型、10型、11型(Ad11AおよびAd11P)、12型、13型、14型、15型、16型、17型、18型、19型、19a型、20型、21型、22型、23型、24型、25型、26型、27型、28型、29型、30型、31型、32型、33型、34型、34a型、35型、35p型、36型、37型、38型、39型、40型、41型、42型、43型、44型、45型、46型、47型、48型、および91型が含まれるが、これらに限定されない。ウシアデノウイルスという用語には、ウシアデノウイルス1型、2型、3型、4型、7型、および10型が含まれるが、これらに限定されない。イヌアデノウイルスという用語には、イヌ1型(株CLL、Glaxo、R1261、Utrect、Toronto 26-61)および2型が含まれるが、これらに限定されない。ウマアデノウイルスという用語には、ウマ1型および2型が含まれるが、これらに限定されない。ブタアデノウイルスという用語には、ブタ3型および4型が含まれるが、これらに限定されない。本発明の一実施形態では、アデノウイルスは、ヒトアデノウイルス血清型2または5に由来する。本発明の目的に関して、アデノウイルスベクターは、標的細胞において、複製コンピテントであってもよく、または複製欠損であってもよい。一部の実施形態では、アデノウイルスベクターは、条件的または選択的に複製するアデノウイルスであり、ウイルス複製に必要とされる遺伝子が、細胞および/または文脈に特異的なプロモーターに作動可能に連結されている。選択的に複製するかまたは条件的に複製するウイルスベクターの例は、当該技術分野において公知である(例えば、米国特許第7,691,370号を参照されたい)。
【0105】
レトロウイルス、例えば、ガンマレトロウイルスおよび/またはレンチウイルスは、(a)脂質および糖タンパク質を含むエンベロープ、(b)標的細胞に誘導されるRNA(通常、5’末端にキャップを含み、3’末端にLTRが隣接したポリA尾部を含む、二量体RNA)である、ベクターゲノム、(c)キャプシド、ならびに(d)タンパク質、例えば、プロテアーゼを含む。米国特許第6,924,123号は、ある特定のレトロウイルス配列が、標的細胞ゲノムへの組込みを促進することを開示している。この特許は、それぞれのレトロウイルスゲノムが、ビリオンタンパク質および酵素をコードするgag、pol、およびenvと称される遺伝子を含むことを教示している。これらの遺伝子は、両方の末端に、長い末端リピート(LTR)と称される領域が隣接している。LTRは、プロウイルス組込みおよび転写を担う。それらはまた、エンハンサー-プロモーター配列としての機能も果たす。換言すると、LTRは、ウイルス遺伝子の発現を制御することができる。レトロウイルスRNAのキャプシド形成は、ウイルスゲノムの5’末端に位置するプシー配列に起因して生じる。LTR自体は、U3、R、およびU5と称される3つのエレメントに分割することができる同一の配列である。U3は、RNAの3’末端に固有の配列に由来する。Rは、RNAの両方の末端においてリピートされる配列に由来し、U5は、RNAの5’末端に固有の配列に由来する。3つのエレメントのサイズは、異なるレトロウイルス間で相当に変動し得る。ウイルスゲノムに関して、ポリ(A)付加(終止)部位は、右手側のLTRのRとU5との間の境界部にある。U3は、プロウイルスの転写制御エレメントのほとんどを含み、これは、プロモーターならびに細胞および一部の場合にはウイルス転写活性化因子タンパク質に応答する複数のエンハンサー配列を含む。
【0106】
構造遺伝子gag、pol、およびenv自体に関して、gagは、ウイルスの内部構造タンパク質をコードする。gagタンパク質は、タンパク質分解によりプロセシングされて、成熟タンパク質MA(マトリックス)、CA(キャプシド)、およびNC(ヌクレオキャプシド)となる。pol遺伝子は、DNAポリメラーゼを含む逆転写酵素(RT)、ならびにゲノムの複製を媒介する関連するRNase Hおよびインテグラーゼ(IN)をコードする。
【0107】
ウイルスベクター粒子の産生に関して、ベクターRNAゲノムは、宿主細胞において、それをコードするDNA構築物から発現される。ベクターゲノムによってコードされない粒子の成分は、宿主細胞において発現される追加の核酸配列(通常、gag/polおよびenv遺伝子のいずれかまたは両方を含む、「パッケージング系」)によってトランスに提供される。ウイルスベクター粒子の産生に必要とされる配列のセットは、一過的トランスフェクションによって宿主細胞に導入されてもよく、またはそれらは、宿主細胞ゲノムに組み込まれてもよく、またはそれらは混合方法で提供されてもよい。含まれる技法は、当業者に公知である。
【0108】
「アデノ随伴ウイルス」または「AAV」という用語は、本明細書において使用される場合、この名称と関連する、dependoparvovirus属Parvoviridae科に属する、ウイルスのクラスのメンバーを指す。このウイルスのいくつかの血清型は、遺伝子送達に好適であることが知られており、すべての公知の血清型は、様々な組織タイプに由来する細胞に感染し得る。少なくとも11個の連続的に番号付けされたAAV血清型が、当該技術分野において公知である。本明細書に開示される方法において有用な非限定的な例示的な血清型としては、11個の血清型のうちのいずれか、例えば、AAV2、AAV8、AAV9、またはバリアントもしくは合成の血清型、例えば、AAV-DJおよびAAV PHP.Bが挙げられる。AAV粒子は、3つの主要なウイルスタンパク質、VP1、VP2、およびVP3を含むか、代替的にはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。一実施形態では、AAVは、血清型AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV PHP.B、またはAAV rh74のものを指す。これらのベクターは、市販入手可能であるか、または特許もしくは技術文献において記載されている。
【0109】
「植物ウイルス」は、本明細書において使用される場合、植物に対して病原性であるとして特定されているウイルスの群を指す。これらのウイルスは、植物宿主なしで複製する分子機序が欠如しているため、複製を植物宿主に依存する。したがって、植物ウイルスは、目的の遺伝子を非植物の動物対象に安全に送達するためのベクターとして使用することができる。植物ウイルスは、タバコモザイクウイルス、トウモロコシ退緑斑紋ウイルス;トウモロコシラヤドフィノウイルス;エンバク萎黄萎縮ウイルス;ハヤトウリモザイクティモウイルス;ブドウ小惑星モザイク関連ウイルス;ブドウ斑紋ウイルス;ブドウレッドグローブウイルス;ブドウルペストリス葉脈フェザリングウイルス;メロン壊疽斑点ウイルス;ホオズキ斑紋ティモウイルス;プルヌス壊疽輪紋;ナイジェリアタバコ潜在ウイルス;タバコマイルドグリーンモザイクウイルス;タバコ壊疽ウイルス;ナスモザイクウイルス;ケネディア黄斑モザイクウイルス;Lycopersicon esculentum TVMウイロイド;エンバク青色矮星ウイルス;オーブダペッパー(Obuda pepper)ウイルス;オリーブ潜在ウイルス1;パプリカ微斑ウイルス;PMMV;トマトモザイクウイルス;カブ葉脈透化ウイルス;カーネーション斑紋ウイルス;カモガヤ斑紋ウイルス;ハキダメギクモザイクウイルス;ジョンソングラス退緑斑葉モザイクウイルス;Odontoglossum輪紋ウイルス;オノニス黄斑ウイルス;パニクムモザイクウイルス;ポインセチアモザイクウイルス;ポトス潜在ウイルス;またはヘラオオバコモザイクウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
また、遺伝子送達ビヒクルとしては、DNA/リポソーム複合体、ミセル、および標的化ウイルスタンパク質-DNA複合体も挙げられる。標的化抗体またはその断片も含むリポソームは、本明細書に開示される方法において使用することができる。ポリヌクレオチドの細胞または細胞集団への送達に加えて、本明細書に記載されるタンパク質の細胞または細胞集団への直接的な導入は、タンパク質トランスフェクションの非限定的な技法によって行うことができ、あるいは、発現を増強することができ、かつ/または本明細書において開示されるタンパク質の活性を促進させることができる培養条件は、他の非限定的な技法である。
【0111】
「調節配列」、「発現制御エレメント」、または「プロモーター」という用語は、本明細書において使用される場合、転写および/または複製しようとする標的ポリヌクレオチドに作動可能に連結されており、標的ポリヌクレオチドの発現および/または複製を促進する、ポリヌクレオチドを意図する。プロモーターは、発現制御エレメントまたは調節配列の例である。プロモーターは、調節される遺伝子転写の制御点を提供する、遺伝子または他のポリヌクレオチドの5’または上流に位置付けられ得る。ポリメラーゼIIおよびIIIは、プロモーターの例である。
【0112】
ポリメラーゼIIまたは「pol II」プロモーターは、mRNA、ならびにほとんどのshRNAおよびマイクロRNAの前駆体を合成するためのDNAの転写を触媒する。pol IIプロモーターの例は、当該技術分野において公知であり、限定することなく、ホスホグリセリン酸キナーゼ(「PGK」)プロモーター、EF1-アルファ;CMV(最小サイトメガロウイルスプロモーター);ならびにレトロウイルスおよびレンチウイルスベクター由来のLTRが挙げられる。
【0113】
エンハンサーは、標的配列の発現を増加させる調節エレメントである。「プロモーター/エンハンサー」は、プロモーターおよびエンハンサーの両方の機能を提供することができる配列を含むポリヌクレオチドである。例えば、レトロウイルスの長い末端リピートは、プロモーターおよびエンハンサーの両方の機能を含む。エンハンサー/プロモーターは、「内因性」であってもよく、「外因性」であってもよく、または「異種」であってもよい。「内因性」エンハンサー/プロモーターは、ゲノムにおいて所与の遺伝子と天然に連結されているものである。「外因性」または「異種」エンハンサー/プロモーターは、遺伝子の転写が、連結されたエンハンサー/プロモーターによって誘導されるように、遺伝子操作(すなわち、分子生物学的技法)を用いて、その遺伝子に並置されているものである。
【0114】
「ハイブリダイゼーション」は、1つまたは複数のポリヌクレオチドが反応して、ヌクレオチド残基の塩基間の水素結合によって安定化された複合体を形成する反応を指す。水素結合は、ワトソンクリック塩基対合、フーグスティーン結合、または任意の他の配列特異的様式で生じ得る。複合体は、二重鎖構造を形成する2つの鎖、複数鎖の複合体を形成する3つもしくはそれよりも多くの鎖、単一の自己ハイブリダイズする鎖、またはこれらの任意の組合せを含み得る。ハイブリダイゼーション反応は、PCR反応の開始、またはリボザイムによるポリヌクレオチドの酵素切断など、さらに拡張的なプロセスにおけるステップを構成し得る。
【0115】
ハイブリダイゼーション反応は、異なる「ストリンジェンシー」条件下において行われ得る。一般に、低ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション反応は、10×SSCまたは同等のイオン強度/温度の溶液中で、約40℃において行われる。中等度ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションは、典型的に、6×SSCにおいて約50℃で行われ、高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション反応は、一般に、1×SSCにおいて約60℃で行われる。ハイブリダイゼーション反応はまた、「生理学的条件」下において行われてもよく、これは、当業者に周知である。生理学的条件の非限定的な例は、細胞において通常見出される温度、イオン強度、pH、およびMg2+濃度である。
【0116】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例としては、約25℃~約37℃のインキュベーション温度、約6×SSC~約10×SSCのハイブリダイゼーション緩衝液濃度、約0%~約25%のホルムアミド濃度、および約4×SSC~約8×SSCの洗浄溶液が挙げられる。中等度ハイブリダイゼーション条件の例としては、約40℃~約50℃のインキュベーション温度、約9×SSC~約2×SSCの緩衝液濃度、約30%~約50%のホルムアミド濃度、および約5×SSC~約2×SSCの洗浄溶液が挙げられる。高ストリンジェンシー条件の例としては、約55℃~約68℃のインキュベーション温度、約1×SSC~約0.1×SSCの緩衝液濃度、約55%~約75%のホルムアミド濃度、および約1×SSC、0.1×SSCまたは脱イオン水の洗浄溶液が挙げられる。一般に、ハイブリダイゼーションのインキュベーション時間は、5分間~24時間であり、1、2、またはそれよりも多くの洗浄ステップで、洗浄インキュベーション時間は、約1、2、または15分間である。SSCは、0.15M NaClおよび15mMクエン酸緩衝液である。他の緩衝液系を使用したSSCの同等物を利用することができることが、理解される。
【0117】
ハイブリダイゼーションが、2つの一本鎖ポリヌクレオチド間において逆平行構成で生じる場合、反応は、「アニーリング」と称され、これらのポリヌクレオチドは、「相補的」と記載される。二本鎖ポリヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションが、第1のポリヌクレオチドの鎖のうちの1つと第2のものとの間で生じる場合、もう一方のポリヌクレオチドに対して「相補的」または「相同」であり得る。「相補性」または「相同性」(1つのポリヌクレオチドが、もう一方と相補的である程度)は、一般に許容される塩基対合法則に従って、互いと水素結合を形成することが予測される対抗する鎖における塩基の割合に関して、定量可能である。
【0118】
「相同性」または「同一性」または「類似性」は、2つのペプチド間または2つの核酸分子間の配列類似性を指す。相同性は、比較の目的でアライメントされ得るそれぞれの配列における位置を比較することによって、決定することができる。比較される配列におけるある位置が、同じ塩基またはアミノ酸によって占有されている場合、これらの分子は、その位置において相同である。配列間の相同性の程度は、配列によって共有されている一致するかまたは相同である位置の数の関数である。「非関連」または「非相同」配列は、本開示の配列のうちの1つと、40%を下回る同一性、または代替的には25%を下回る同一性を共有する。一部の実施形態では、同一性は、2つのペプチドまたはポリヌクレオチド間において、それらの全長にわたって、または2つのうちの短い方の配列にわたって、または2つのうちの長い方の配列にわたって、計算される。
【0119】
もう一方の配列に対してある特定のパーセンテージ(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%)の「配列同一性」を有するポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド領域(またはポリペプチドもしくはポリペプチド領域)は、アライメントした場合に、そのパーセンテージの塩基(またはアミノ酸)が、2つの配列を比較して同じであることを意味する。このアライメントおよび相同性または配列同一性パーセントは、当該技術分野において公知のソフトウェアプログラム、例えば、Ausubel et al. eds. (2007) Current Protocols in Molecular Biologyに記載されているものを使用して、決定することができる。好ましくは、デフォルトのパラメーターが、アライメントに使用される。1つのアライメントプログラムは、BLASTであり、デフォルトのパラメーターを使用する。具体的には、プログラムは、BLASTNおよびBLASTPであり、以下のデフォルトのパラメーターを使用する:遺伝子コード=標準、フィルター=なし、鎖=両方、カットオフ=60、予測=10、マトリックス=BLOSUM62、説明=50個の配列、並べ替え=高スコア、データベース=非冗長、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+SwissProtein+SPupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、以下のインターネットアドレスにおいて見出すことができる:blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi、最終アクセス2021年8月1日。
【0120】
一部の実施形態では、本明細書において開示されるポリヌクレオチドは、RNAまたはそのアナログである。一部の実施形態では、本明細書において開示されるポリヌクレオチドは、DNAまたはそのアナログである。一部の実施形態では、本明細書において開示されるポリヌクレオチドは、DNAおよびRNAのハイブリッドまたはそのアナログである。
【0121】
一部の実施形態では、参照核酸、ポリヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチドの同等物は、参照物によってコードされるものと同じ配列をコードする。一部の実施形態では、参照核酸、ポリヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチドの同等物は、参照物、相補的参照物、逆参照物、または逆相補的参照物に、必要に応じて高ストリンジェンシーの条件下において、ハイブリダイズする。
【0122】
追加として、または代替的に、同等の核酸、ポリヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチドは、参照核酸、ポリヌクレオチド、もしくはオリゴヌクレオチドに対して、少なくとも70%の配列同一性、もしくは少なくとも75%の配列同一性、もしくは少なくとも80%の配列同一性、もしくは代替的には少なくとも85%の配列同一性、もしくは代替的には少なくとも90%の配列同一性、もしくは代替的には少なくとも92%の配列同一性、もしくは代替的には少なくとも95%の配列同一性、もしくは代替的には少なくとも97%の配列同一性、もしくは代替的には少なくとも98%の配列、もしくは代替的には少なくとも99%の配列同一性を有するものであるか、または代替的には、同等の核酸は、高ストリンジェンシー条件下において、参照ポリヌクレオチドもしくはその相補体にハイブリダイズする。一態様では、同等物は、同じタンパク質またはタンパク質の機能的同等物をコードするはずであり、これは、必要に応じて、本明細書に記載される1つまたは複数のアッセイを通じて特定することができる。追加として、または代替的に、ポリヌクレオチドの同等物は、参照または親ポリヌクレオチドと同じかまたは類似の機能のタンパク質またはポリペプチドをコードするであろう。
【0123】
「形質導入する」または「形質導入」という用語は、それによって外来ヌクレオチド配列が細胞へと導入される、プロセスを指す。一部の実施形態では、この形質導入は、ウイルスまたは非ウイルスベクターによって行われる。
【0124】
「検出可能な標識」、「標識」、「検出可能なマーカー」、または「マーカー」は、互換可能に使用され、これには、放射性同位体、蛍光色素、化学発光性化合物、染料、および酵素を含めたタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。検出可能な標識はまた、本明細書に記載されるポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、または組成物に結合することができる。
【0125】
本明細書において使用される場合、「標識」または検出可能な標識という用語は、検出しようとする組成物に直接的または間接的にコンジュゲートされる、直接的または間接的に検出可能な化合物または組成物、例えば、N末端ヒスチジンタグ(N-His)、磁気活性同位体、例えば、115Sn、117Sn、および119Sn、非放射性同位体、例えば、13Cおよび15N、「標識化」組成物を生成するようなポリヌクレオチドまたはタンパク質、例えば、抗体を意図する。この用語はまた、挿入された配列が発現されるとシグナルを提供する、ポリヌクレオチドにコンジュゲートされる配列、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)なども含む。標識は、それ自体が検出可能であってもよく(例えば、放射性同位体標識もしくは蛍光標識)、または酵素標識の場合には、検出可能な基質化合物もしくは組成物の化学的変更を触媒してもよい。標識は、小規模な検出に好適であってもよく、または高スループットなスクリーニングにより好適であってもよい。そのため、好適な標識としては、磁気活性同位体、非放射性同位体、放射性同位体、蛍光色素、化学発光化合物、染料、および酵素を含めたタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。標識は、単純に検出されてもよく、または定量されてもよい。単純に検出される応答は、一般に、その存在だけが確認される応答を含むが、一方で、定量される応答は、一般に、定量可能な(例えば、数値で報告可能な)値、例えば、強度、極性、または他の特性を有する応答を含む。発光または蛍光アッセイの場合、検出可能な応答は、結合に実際に関与するアッセイ成分と関連する発光体もしくはフルオロフォアを使用して直接的に、または別の(例えば、レポーターもしくはインジケーター)成分と関連する発光体もしくはフルオロフォアを使用して間接的に、生成され得る。シグナルを生じる発光性標識の例としては、生物発光および化学発光が挙げられるが、これらに限定されない。検出可能な発光応答は、一般に、発光シグナルの変化またはその発生を含む。アッセイ成分を発光標識するための好適な方法および発光体は、当該技術分野において公知であり、例えば、Haugland, Richard P. (1996) Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals (6th ed)に記載されている。発光性プローブの例としては、エクオリンおよびルシフェラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
本明細書において使用される場合、「イムノコンジュゲート」という用語は、第2の薬剤、例えば、細胞毒性剤、検出可能な薬剤、放射性薬剤、標的化剤、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、合成抗体、半合成抗体、または多重特異性抗体と会合したかまたはそれに連結された抗体または抗体誘導体を含む。
【0127】
好適な蛍光標識の例としては、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリスロシン、クマリン、メチル-クマリン、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、ルシファーイエロー、カスケードブルー(商標)、およびテキサスレッドが挙げられるが、これらに限定されない。他の好適な光学色素は、Haugland, Richard P. (1996) Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals (6th ed.)に記載されている。
【0128】
一部の実施形態では、蛍光標識は、細胞または組織に存在するかまたはその表面上に存在する細胞成分、例えば、細胞表面マーカーへの共有結合を促進するように、官能化される。好適な官能基としては、イソチオシアネート基、アミノ基、ハロアセチル基、マレイミド、スクシンイミジルエステル、およびハロゲン化スルホニルが挙げられるがこれらに限定されず、これらのすべては、蛍光標識を第2の分子に結合させるために使用することができる。蛍光標識の官能基の選択は、リンカー、薬剤、マーカー、または第2の標識化剤のいずれかへの結合の部位に依存するであろう。
【0129】
本明細書において使用される場合、精製標識またはマーカーは、標識がコンジュゲートされる分子または成分、例えば、エピトープタグ(Mycタグ、ヒトインフルエンザヘマグルチニン(HA)タグ、FLAGタグを含むがこれらに限定されない)、親和性タグ(グルタチオン-Sトランスフェラーゼ(GST)、ポリ-ヒスチジン(His)タグ、カルモジュリン結合タンパク質(CBP)、もしくはマルトース結合タンパク質(MBP)を含むがこれらに限定されない)、または蛍光タグを精製する際に使用され得る標識を指す。
【0130】
「選択マーカー」は、選択的培養レジメンにおいて成長する細胞の生存または成長に必要なタンパク質またはタンパク質をコードする遺伝子を指す。典型的な選択マーカーは、選択的薬剤、例えば、抗生物質、除草剤、または他の毒素に対する抵抗性を付与するタンパク質をコードする配列を含む。選択マーカーの例としては、抗生物質、例えば、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン、G 418、ネオマイシン、ブレオマイシン、ハイグロマイシン、メトトレキサート、ジカンバ、グルホシネート、またはグリホサートに対する抵抗性を付与するための遺伝子が挙げられる。
【0131】
「培養する」という用語は、様々な種類の培地上または培地中での細胞または生物のin vitroまたはex vivoでの拡大を指す。培養で成長する細胞の子孫は、親細胞と完全に同一(すなわち、形態学的、遺伝子的、または表現型的に)ではない場合があることを理解されたい。
【0132】
一部の実施形態では、本明細書において開示される細胞は、真核生物細胞または原核生物細胞である。一部の実施形態では、細胞は、ヒト細胞である。一部の実施形態では、細胞は、細胞株、例えば、ヒト胎児腎臓293細胞(HEK 293細胞もしくは293細胞)、293T細胞、またはa549細胞である。一部の実施形態では、細胞は、宿主細胞である。
【0133】
「宿主細胞」は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫または潜在的な子孫も指す。ある特定の改変が、突然変異または環境的影響のいずれかに起因して後続の世代において生じ得るため、そのような子孫は、実際には、親細胞と同一ではない場合があるが、本明細書において使用される場合、この用語の範囲内に依然として含まれる。宿主細胞は、原核生物細胞または真核生物細胞であり得る。一部の実施形態では、宿主細胞は、細胞株、例えば、ヒト胎児腎臓293細胞(HEK 293細胞もしくは293細胞)、293T細胞、またはa549細胞である。培養された細胞株は、例えば、American Type Culture Collectionから市販入手可能である。
【0134】
本明細書において使用される場合、「免疫細胞」は、例えば、骨髄において産生される造血幹細胞(HSC)に由来し得る白血球(white blood cell)(白血球(leukocyte)、例えば、顆粒球(好中球、好酸球、および好塩基球)、単球、およびリンパ球(T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、およびNKT細胞))、リンパ球(T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、およびNKT細胞)、ならびに骨髄由来細胞(好中球、好酸球、好塩基球、単球、マクロファージ、樹状細胞)を含む。一部の実施形態では、免疫細胞は、以下のうちの1つまたは複数に由来する:始原細胞、胚性幹細胞、胚性幹細胞由来細胞、胚性生殖細胞、胚性生殖細胞由来細胞、幹細胞、幹細胞由来細胞、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSc)、造血幹細胞(HSC)、または不死化細胞。一部の実施形態では、HSCは、対象の臍帯血、対象の末梢血、または対象の骨髄に由来する。一部の実施形態では、免疫細胞が直接的または間接的に得られる対象は、処置しようとするものと同じ対象である。一部の実施形態では、免疫細胞が直接的または間接的に得られる対象は、処置しようとする対象とは異なる。さらなる実施形態では、免疫細胞が直接的または間接的に得られる対象は、処置しようとする対象とは異なり、対象は、同じ種、例えば、ヒトに由来する。
【0135】
「真核生物細胞」は、モネラ界を除く生物界のすべてを含む。これらは、膜結合型核により容易に区別することができる。動物、植物、真菌、および原生生物は、細胞が、内部膜および細胞骨格によって複雑な構造に構成された、真核生物または生物である。もっとも特徴的な膜結合構造は、核である。別途具体的に示されない限り、「宿主」という用語は、例えば、酵母、高次植物、昆虫、および哺乳動物細胞を含む、真核生物宿主を含む。真核生物細胞または宿主の非限定的な例としては、サル、イヌ、ウシ、ブタ、マウス、ラット、鳥、爬虫類、およびヒトが挙げられる。
【0136】
通常、核または任意の他の膜結合オルガネラが欠如している「原核生物細胞」は、細菌および古細菌の2つのドメインに分割される。さらに、染色体DNAを有する代わりに、これらの細胞の遺伝子情報は、プラスミドと称される環状ループ内にある。細菌細胞は、非常に小さく、およそ動物ミトコンドリアサイズ(直径約1~2μmおよび長さ10μm)である。原核生物細胞は、3つの主要な形状を特徴とする:錐体形状、球形状、および螺旋状。真核生物のような精巧な複製プロセスを行う代わりに、細菌細胞は、二分裂で分裂する。例としては、桿菌(bacillus)、大腸菌(E. coli)、およびサルモネラ菌(Salmonella)が挙げられるが、これらに限定されない。培養された細胞株は、例えば、American Type Culture Collectionから市販入手可能である。
【0137】
「組成物」は、活性剤と、不活性(例えば、検出可能な薬剤もしくは標識)または活性な別の化合物または組成物、例えば、アジュバント、希釈剤、結合剤、安定剤、緩衝化剤、塩、親油性溶媒、保存剤、アジュバントなどとの組合せを意味し、担体、例えば、薬学的に許容される担体を含むことが意図される。一部の実施形態では、担体(例えば、薬学的に許容される担体)は、ナノ粒子、例えば、ポリマーナノ粒子担体(例えば、HKPナノ粒子)または脂質ナノ粒子(LNP)を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。
【0138】
担体はまた、薬学的賦形剤および添加剤、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、および炭水化物(例えば、単糖、二糖、三糖、四糖のオリゴ糖を含む糖、およびオリゴ糖;誘導体化された糖、例えば、アルジトール、アルドン酸、エステル化された糖など;ならびに多糖、または糖ポリマーを含む)を含み、これらは、単独または組合せで存在し得、単独または組合せで1~99.99重量%または体積%を構成し得る。例示的なタンパク質賦形剤は、血清アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、組換えヒトアルブミン(rHA)、ゼラチン、カゼインなどが挙げられる。緩衝化能力においても機能し得る代表的なアミノ酸成分としては、アラニン、アルギニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテームなどが挙げられる。炭水化物賦形剤もまた、本技術の範囲内であることが意図され、その例としては、単糖類、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボースなど;二糖類、例えば、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなど;多糖類、例えば、ラフィノース、メレチトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなど;ならびにアルジトール、例えば、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、およびミオイノシトールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
本明細書において開示される組成物は、医薬組成物であり得る。「医薬組成物」は、組成物をin vitro、in vivo、またはex vivoでの診断用または治療用での使用に好適にする、活性剤と不活性または活性な担体との組合せを含むことを意図する。
【0140】
「薬学的に許容される担体」とは、本明細書に開示される組成物において使用され得る任意の希釈剤、賦形剤、または担体を指す。一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、ナノ粒子、例えば、ポリマーナノ粒子担体(例えば、HKPナノ粒子)または脂質ナノ粒子(LNP)を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。追加として、または代替的に、薬学的に許容される担体は、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えば、ホスフェート、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂が挙げられる。好適な薬学的担体は、この分野における標準的な参考文献であるRemington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Companyに記載されている。それらは、経口用錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、シロップ剤などである、意図される投与形態に関連して、および従来的な医薬慣例に準じて、選択され得る。
【0141】
本明細書において使用される場合、「賦形剤」という用語は、長期安定化のため、固形製剤の増量のため、または最終剤形において活性成分に治療的増強を付与するため、例えば、薬物吸収を促進するか、粘度を低減させるか、または可溶性を増強するために含まれる、医薬の活性成分とともに製剤化される天然または合成の物質を指す。
【0142】
本開示に従って使用される組成物は、投与の容易さおよび投薬量の均一性のために、投薬単位形態でパッケージングされ得る。「単位用量」または「投薬量」という用語は、対象において使用するのに好適な物理的に別個の単位を指し、それぞれの単位は、その投与、すなわち、適切な経路およびレジメンと関連して所望される応答をもたらすように計算された所定の量の組成物を含む。投与しようとする量は、処置回数および単位用量の両方に応じて、所望される結果および/または保護に依存する。組成物の正確な量はまた、医師の判断に依存し、それぞれの個体に特有である。用量に影響を及ぼす因子としては、対象の身体状態および臨床状態、投与の経路、意図される処置目標(症状の緩和か治癒か)、ならびに具体的な組成物の効力、安定性、および毒性が挙げられる。製剤化した後、溶液は、投薬製剤と適合性のある様式および治療的または予防的に有効な量で、投与される。製剤は、様々な投薬形態、例えば、本明細書に記載される注射用溶液のタイプで、容易に投与される。
【0143】
本明細書において使用される組合せは、組成物の個々の活性成分が、組み合わせて使用するために別個に製剤化され、特定の投薬量ありまたはなしで別個にパッケージングされ得ることを意図する。組合せの活性成分は、同時または逐次に投与され得る。
【0144】
4分岐のヒスチジン-リシン(HK)ペプチドポリマーH2K4bは、高分子量DNAプラスミドの良好な担体であるが(Leng et al. Nucleic Acids Res 2005; 33:e40.)、比較的低い分子量のsiRNAの担体としては不良であることが示されている(Leng et al. J Gene Med 2005; 7:977-986.)。H2K4bの2つのヒスチジンリッチペプチドアナログ、すなわち、H3K4bおよびH3K(+H)4bは、siRNAの有効な担体であることが示されている(Leng et al. J Gene Med 2005; 7: 977-986. Chou et al. Biomaterials 2014; 35:846-855.)が、H3K(+H)4bが、わずかにより有効であると見られている(Leng et al. Mol Ther 2012; 20:2282-2290.)。さらに、siRNAのH3K4b担体は、in vitroおよびin vivoにおいて、H3K(+H)4b siRNAポリプレックスよりも有意に高い程度にサイトカインを誘導した(Leng et al. Mol Ther 2012; 20:2282-2290.)。好適なHKポリペプチドは、国際公開第WO/2001/047496号、同第WO/2003/090719号、および同第WO/2006/060182号に記載されており、これらのそれぞれの内容は、その全体が本明細書に組み込まれる。これらのポリペプチドは、リシン側鎖ε-アミノ基およびN末端が様々なHK配列に連結された、リシン骨格(3つのリシン残基)を有する。HKポリペプチド担体は、例えば、固相合成を含む、当該技術分野において周知である方法によって、合成することができる。
【0145】
そのようなヒスチジン-リシンペプチドポリマー(「HKポリマー」または「HKP」)は、驚くべきことに、mRNA担体として有効であったこと、およびそれらを単独、またはリポソームと組み合わせて使用して、mRNAの標的細胞への有効な送達を提供することができることが、見出されている。PEIおよび他の担体と同様に、当初の結果は、HKポリマーが、核酸を運搬および放出するそれらの能力が異なることを示唆していた。しかしながら、HKポリマーは、ペプチド合成装置で再生可能に作製することができるため、それらのアミノ酸配列を、容易に変動させ、それによって、RNAの結合および放出、ならびにHKポリマーおよびRNAを含むポリプレックスの安定性の微細な制御が可能となり得る(Chou et al. Biomaterials 2014; 35:846-855. Midoux et al. Bioconjug Chem 1999; 10:406-411. Henig et al. Journal of American Chemical Society 1999; 121:5123-5126.)。mRNA分子を、1つまたは複数のHKP担体と混合すると、成分は、ナノ粒子へと自己アセンブルする。
【0146】
本明細書において記載される場合、有益なことに、HKポリマーは、3つのリシンのアミノ酸コアに連結された4つの短いペプチド分岐を含む。ペプチド分岐は、構成が異なる、ヒスチジンおよびリシンアミノ酸からなる。これらのヒスチジン-リシンペプチドポリマー(HKポリマー)の一般構造は、式Iに示されており、式中、Rは、ペプチド分岐を表し、Kは、アミノ酸L-リシンである。
【化5】
【0147】
式Iにおいて、Kは、L-リシンであり、R1、R2、R3、およびR4のそれぞれは、独立して、ヒスチジン-リシンペプチドである。R1~4分岐は、本発明のHKポリマーにおいて、同じであっても異なってもよい。R分岐が「異なる」場合、その分岐のアミノ酸配列は、ポリマー内の他のR分岐のそれぞれとは異なる。式Iに示される本発明のHKポリマーにおいて使用される好適なR分岐としては、以下のR分岐RA~R-Jが挙げられるが、これらに限定されない。
RA=KHKHHKHHKHHKHHKHHKHK-(配列番号72)
RB=KHHHKHHHKHHHKHHHK-(配列番号73)
RC=KHHHKHHHKHHHHKHHHK-(配列番号74)
RD=kHHHkHHHkHHHHkHHHk-(配列番号75)
RE=HKHHHKHHHKHHHHKHHHK-(配列番号76)
RF=HHKHHHKHHHKHHHHKHHHK-(配列番号77)
RG=KHHHHKHHHHKHHHHKHHHHK-(配列番号78)
RH=KHHHKHHHKHHHKHHHHK-(配列番号79)
RI=KHHHKHHHHKHHHKHHHK-(配列番号80)
RJ=KHHHKHHHHKHHHKHHHHK-(配列番号81)
【0148】
mRNA組成物において使用され得る具体的なHKポリマーとしては、R1、R2、R3、およびR4のそれぞれが、同じであり、RA~RJ(表1)から選択される、HKポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。これらのHKポリマーは、それぞれ、H2K4b、H3K4b、H3K(+H)4b、H3k(+H)4b、H-H3K(+H)4b、HH-H3K(+H)4b、H4K4b、H3K(1+H)4b、H3K(3+H)4b、およびH3K(1,3+H)4bと称される。これらの10個の例のそれぞれにおいて、大文字の「K」は、L-リシンを表し、小文字の「k」は、D-リシンを表す。H3K4bと比較して余剰のヒスチジン残基は、分岐配列内で下線で示されている。HKポリマーの命名法は、以下の通りである。
1)H3K4bについては、分岐内の優勢なリピート配列は、-HHHK-(配列番号82)であり、したがって、「H3K」は、その名称の一部であり、「4b」は、分岐の数を指す;
2)H3K4bおよびアナログのそれぞれの分岐には4つの-HHHK-(配列番号82)モチーフが存在し、第1の-HHHK-モチーフ(配列番号82)(「1」)が、リシンコアにもっとも近い;
3)H3K(+H)4bは、1つの余剰ヒスチジンが、H3K4bの第2の-HHHK-モチーフ(配列番号82)(モチーフ2)に挿入されているH3K4bのアナログである;
4)H3K(1+H)4bおよびH3K(3+H)4bペプチドについては、それぞれ、第1(モチーフ1)および第3(モチーフ3)のモチーフに余剰ヒスチジンが存在する;
5)H3K(1,3+H)4bについては、分岐の第1および第3の両方のモチーフに2つの余剰ヒスチジンが存在する。
【0149】
【0150】
ゲル遅延度アッセイ、ヘパリン置換アッセイ、およびフローサイトメトリーを含む、当該技術分野において周知の方法を行って、HKポリマーに加えてリポソームを含む様々な製剤の、mRNAの送達の成功に関する性能を評価することができる。好適な方法は、例えば、Gujrati et al, Mol. Pharmaceutics 11:2734-2744 (2014)およびParnaste et al., Mol Ther Nucleic Acids. 7: 1-10 (2017)に記載されている。
【0151】
また、mRNAの細胞内への取り込みの検出は、SMARTFLARE(登録商標)技術(Millipore Sigma)を使用して達成することができる。これらのsmart flareは、細胞内のRNA配列を認識すると蛍光顕微鏡で分析することができる蛍光の増加をもたらす配列が結合した、ビーズである。
【0152】
他の方法としては、mRNAからのタンパク質発現を測定することを含み、例えば、ルシフェラーゼをコードするmRNAを使用して、トランスフェクションの効率を測定することができる。例えば、HKPおよびリポソーム製剤を使用してmRNAを送達する有効性を示しているHe et al (J Gene Med. 2021 Feb;23(2):e3295)を参照されたい。
【0153】
H3K(+H)4bおよびDOTAP(カチオン性脂質)の組合せは、驚くべきことに、mRNAをMDA-MB-231細胞へと運搬するその能力に関して相乗的であった(H3K(+H)4b/リポソーム対リポソーム、P<0.0001)。この組合せは、それぞれ、ポリマー単独およびカチオン性脂質担体よりも、mRNAの担体として、約3倍および8倍有効性が高かった。すべてのHKペプチドが、DOTAP脂質と相乗的な活性を示したわけではなかった。例えば、H3K4bおよびDOTAPの組合せは、ルシフェラーゼmRNAの担体として、DOTAPリポソームよりも有効性が低かった。DOTAP以外に、HKペプチドとともに使用され得る他のカチオン性脂質としては、Lipofectin(ThermoFisher)、Lipofectamine(ThermoFisher)、およびDOSPERが挙げられる。
【0154】
分岐内のL-リシンがD-リシンと置き換えられたH3k(+H)4bのD異性体は、もっとも有効なポリマー担体であった(H3k(+H)4b対H3K(+H)4b、P<0.05)。mRNAのD異性体/リポソーム担体は、それぞれ、H3k(+H)4b単独およびリポソーム担体よりも、ほぼ4倍および10倍有効性が高かった。D-H3k(+H)4b/脂質の組合せは、L-H3K(+H)4b/脂質の組合せよりもわずかにより有効であったが、この比較は、統計学的に有意差はなかった。
【0155】
H3K4bおよびH3K(+H)4bの両方を、in vitroにおいて核酸の担体として使用することができる。例えば、Leng et al. J Gene Med 2005; 7: 977-986およびChou et al., Cancer Gene Ther 2011; 18: 707-716を参照されたい。これらのこれまでの発見にもかかわらず、H3K(+H)4bは、他の類似のアナログと比較して、mRNAの担体として極めて良好であった(表2)。
【0156】
【0157】
特に、これは、様々な重量:重量(HK:mRNA)比において、H3K4bよりも高いmRNAトランスフェクション効率を有する。4:1の比では、ルシフェラーゼ発現は、MDA-MB-231細胞において、有意な細胞毒性を伴うことなく、H3K(+H)4bでH3K4bよりも10倍高かった。さらに、緩衝化能力は、H3K4bおよびH3K(+H)4bにおけるヒスチジンの(重量)パーセントが、それぞれ、68.9および70.6%であるため、それらのトランスフェクションの相違における本質的な因子であるとは考えられない。
【0158】
ゲル遅延度アッセイは、mRNAの電気泳動移動度が、HKポリマーによって遅延されたことを示す。遅延作用は、高いペプチド対mRNA重量比で増加した。しかしながら、mRNAは、2:1の比のH3K(+H)4bでは完全に遅延され、一方で、H3K4bによっては完全には遅延されなかった。これにより、H3K(+H)4bが、より安定なポリプレックスを形成することができることが示唆されたが、これは、mRNA送達の好適な担体となるその能力に有利であった。
【0159】
H3K(+H)4bペプチドがmRNAにより緊密に結合することのさらなる確認が、ヘパリン置換アッセイで実証された。様々な濃度のヘパリンを、mRNAおよびHKを用いて形成されたポリプレックスに添加すると、特に、低いヘパリン濃度において、mRNAが、H3K4bポリマーによって、H3K(+H)4bポリマーよりも容易に放出されたことを観察した。これらのデータにより、H3K(+H)4bが、mRNAに結合することができ、H3K4bよりも安定なポリプレックスを形成することができることを示唆する。
【0160】
mRNAをシアニン-5で標識することで、H3K4bおよびH3K(+H)4bポリプレックスのMDA-MB-231細胞への取り込みを、フローサイトメトリーを使用して比較した。様々な時点(1時間、2時間、および4時間)において、H3K(+H)4bポリプレックスは、H3K4bポリプレックスよりも効率的に、細胞内に移入された。これらの結果と同様に、蛍光顕微鏡は、H3K(+H)4bポリプレックスが、酸性エンドソーム小胞内に、H3K4bポリプレックスよりも有意に多く(H3K4b対H3K(+H)4b、P<0.001)局在化されたことを示した。興味深いことに、エンドサイトーシス小胞とオーバーラップしない不規則な形状のH3K4bポリプレックスは、細胞外であった可能性が高く、H3K(+H)4bポリプレックスでは観察されなかった。
【0161】
HKポリマーおよびカチオン性脂質(すなわち、DOTAP)の両方が、有意にかつ独立して、プラスミドのトランスフェクションを増加させることが知られている。例えば、Chen et al. Gene Ther 2000; 7: 1698-1705を参照されたい。結果として、これらの脂質が、HKポリマーと一緒になって、mRNAトランスフェクションを増強させるかどうかを、調査した。注目すべきことに、H3K(+H)4bおよびH3k(+H)4b担体は、DOTAPリポソームよりも、有意に良好なmRNAの担体であった。H3K(+H)4bおよびDOTAP脂質の組合せは、mRNAをMDA-MB-231細胞へと運搬する能力に関して、相乗的であった。この組合せは、mRNAの担体として、それぞれ、ポリマー単独およびリポソーム担体よりも約3倍および8倍有効性が高かった(H3K(+H)4b/脂質対リポソームまたはH3K(+H)4b)。注目すべきことに、すべてのHKペプチドが、DOTAP脂質で改善された活性を示したわけではなかった。H3K4bおよびDOTAP担体の組合せは、ルシフェラーゼmRNAの担体として、DOTAPリポソームよりも有効性が低かった。DOTAPおよびH3K(+H)4b担体の組合せは、mRNAを細胞内へと運搬するそれらの能力に関して、相乗的であることが見出された。例えば、He et al. J Gene Med. 2020 Nov 10:e3295を参照されたい。
【0162】
一部の実施形態では、担体、例えば、HKPナノ粒子は、カチオン性脂質、PEG修飾脂質、ステロール、および非カチオン性脂質をさらに含む。一部の実施形態では、カチオン性脂質は、イオン化可能カチオン性脂質であり、非カチオン性脂質は、中性脂質であり、ステロールは、コレステロールである。一部の実施形態では、カチオン性脂質は、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、ジリノレイル-メチル-4-ジメチルアミノブチレート(DLin-MC3-DMA、またはMC3)、およびジ((Z)-ノナ-2-エン-1-イル)9-((4-(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)ヘプタデカンジオエート(L319)から選択される。
【0163】
一部の実施形態では、担体は、ナノ粒子である。本明細書において使用される場合、「ナノ粒子」という用語は、1000ナノメートル(nm)を下回る直径を有する任意の粒子を指す。一部の実施形態では、ナノ粒子は、真核生物細胞によるそれらの取り込みを可能にするのに十分に小さな寸法を有する。典型的には、ナノ粒子は、200nmまたはそれを下回る、もっとも長い直線寸法(例えば、直径)を有する。一部の実施形態では、ナノ粒子は、100nmまたはそれを下回る直径を有する。例えば、50nmまたはそれを下回る、例えば、5nm~30nmの直径を有するより小さなナノ粒子が、一部の実施形態では使用される。
【0164】
一部の実施形態では、担体は、ポリマーナノ粒子である。「ポリマーナノ粒子」という用語は、ヒスチジン-リシン(HK)ポリペプチド(HKP)など、任意の有機ポリマーを含む、ポリマー化合物(例えば、反復的な連結された単位またはモノマーから構成される化合物)から構成されるナノ粒子を指す。
【0165】
本明細書において使用される場合、「リポソーム」とは、通常、水溶液によって包囲された、複合体を形成する1つまたは複数の脂質を指す。リポソームは、一般に、脂質、脂肪酸、脂質二重層タイプの構造体、単ラメラ小胞、および非晶質脂質小胞を含む、球形構造体である。一般に、リポソームは、捕捉された水性体積を含む、完全閉鎖型脂質二重膜である。リポソームは、単ラメラ小胞(単一の二重膜を有する)、オリゴラメラまたは多ラメラ(それぞれが水性層によって次のものから分離された複数の二重膜を特徴とするタマネギ様構造体)であり得る。
【0166】
一部の実施形態では、担体は、脂質ナノ粒子(LNP、本明細書においてリポソームナノ粒子とも称される)である。一部の実施形態では、LNPは、約50nm~約200nmの平均直径を有する。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子担体/製剤は、典型的には、脂質、特に、イオン化可能カチオン性脂質、例えば、本明細書において開示されるSM-102、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、ジリノレイル-メチル-4-ジメチルアミノブチレート(DLin-MC3-DMA)、またはジ((Z)-ノナ-2-エン-1-イル)9-((4-(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)ヘプタデカンジオエート(L319)を含むか、または代替的にはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。一部の実施形態では、LNP担体/製剤は、中性脂質、ステロール(例えば、コレステロール)、および粒子の凝集を低減させることができる分子、例えば、PEGまたはPEG修飾脂質(本明細書においてPEG化脂質とも称される)をさらに含む。追加の例示的な脂質ナノ粒子組成物およびそれを作製する方法は、例えば、Semple et al. (2010) Nat. Biotechnol. 28:172-176、Jayarama et al. (2012), Angew. Chem. Int. Ed., 51:8529-8533、およびMaier et al. (2013) Molecular Therapy 21:1570-1578に記載されており、これらのそれぞれの内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0167】
一実施形態では、「疾患」または「障害」という用語は、本明細書において使用される場合、がん、がんと診断されている状態、がんを有することが疑われる状態、またはがんを有する危険性にある状態を指す。
【0168】
本明細書において使用される場合、「がん」は、対象における異常な制御されない複製を示す細胞の存在によって特徴付けられる疾患状態であり、一部の態様では、この用語は、「腫瘍」という用語と互換可能に使用され得る。「がんもしくは腫瘍抗原」または「ネオ抗原」という用語は、がん細胞もしくは腫瘍細胞(例えば、細胞表面上)または組織に関連し、そこに発現されることが公知の抗原を指し、「がんまたは腫瘍を標的とする抗体」という用語は、そのような抗原を標的とする抗体を指す。一部の実施形態では、ネオ抗原は、非がん細胞にも組織にも発現されない。一部の実施形態では、ネオ抗原は、非がん細胞または組織において、がん細胞または組織と比較して有意に低いレベルで発現される。
【0169】
一部の実施形態では、がんは、循環器系、例えば、心臓(肉腫[血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫]、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、および脂肪腫)、縦隔および肋膜、ならびに他の胸腔内器官、血管腫瘍および腫瘍関連血管組織;呼吸器、例えば、鼻腔および中耳、副鼻腔、喉頭、気管、気管支、および肺、例えば、小細胞肺がん(SCLC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、気管支原性肺癌(扁平上皮細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌)、肺胞(細気管支)癌、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨性過誤腫(chondromatous hamartoma)、中皮腫;消化器系、例えば、食道(扁平上皮細胞癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌腫、リンパ腫、平滑筋肉腫)、胃(gastric)、膵臓(管状腺癌、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、カルチノイド腫瘍、ビポーマ)、小腸(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫);任意の部位において発生する消化管間質腫瘍および神経内分泌腫瘍;尿生殖路、例えば、腎臓(腺癌、ウイルムス腫瘍[腎芽細胞腫]、リンパ腫、白血病)、膀胱および/または尿道(扁平上皮細胞癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、精巣(セミノーマ、胚性癌、奇形癌、絨毛癌、肉腫、間質細胞癌、線維腫、線維腺腫、腺腫様腫瘍、脂肪腫);肝臓、例えば、ヘパトーマ(肝細胞癌)、胆管細胞癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫、膵内分泌腫瘍(例えば、褐色細胞腫、インスリノーマ、血管作用性腸ペプチド腫瘍、膵島細胞腫瘍、およびグルカゴノーマ);骨、例えば、骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫瘍脊索腫、オステオクロンフローマ(osteochronfroma)(骨軟骨性外骨症)、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、涙骨腫、および巨細胞腫瘍;神経系、例えば、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、頭蓋骨腫瘍(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳がん(星状細胞腫、髄芽細胞腫、神経膠腫、上衣腫、胚細胞腫[松果体腫]、多形神経膠芽腫、乏突起神経膠腫、シュワン細胞腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);生殖器系、例えば、婦人科、子宮(子宮内膜癌)、子宮頸(子宮頸癌、前腫瘍子宮頸異形成)、卵巣(卵巣癌[漿液性嚢胞腺腫、粘液性嚢胞腺腫、未分類の癌腫]、顆粒膜-卵胞膜細胞腫瘍、セルトリ-ライディッヒ細胞腫瘍、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、外陰部(扁平上皮細胞癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫)、胎盤、膣(明細胞癌、扁平上皮細胞癌、ブドウ状肉腫(胎児性横紋筋肉腫)、ファロピアン管(癌腫)、および女性生殖器と関連する他の部位;陰茎、前立腺、精巣、および男性生殖器と関連する他の部位;造血系、例えば、血液(骨髄球性白血病[急性および慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫[悪性リンパ腫];口腔、例えば、口唇、舌、歯肉、口腔底、口蓋、および口の他の部分、耳下腺、ならびに唾液腺の他の部分、扁桃、中咽頭、上咽頭、梨状洞、下咽頭、および口唇、口腔、および咽頭の他の部位;皮膚、例えば、悪性黒色腫、皮膚黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、カポジ肉腫、ホクロ異形成母斑、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、およびケロイド;副腎、神経芽細胞腫;ならびに結合組織および軟部組織を含む他の組織、後腹膜および腹膜、眼、眼球内黒色腫、および付属基、乳房、頭頸部、肛門領域、甲状腺、副甲状腺、副腎、および他の内分泌腺および関連構造、リンパ節の二次および未分類の悪性新生物、呼吸器および消化系の二次悪性新生物、ならびに他の部位の二次悪性新生物から選択される。一部の実施形態では、がんは、結腸がん、結腸直腸がん、または直腸がんである。一部の実施形態では、がんは、肺がんである。一部の実施形態では、がんは、膵臓がんである。一部の実施形態では、がんは、腺癌、腺癌、腺腫、白血病、リンパ腫、癌腫、黒色腫、血管肉腫、またはセミノーマである。
【0170】
一部の実施形態では、がんは、固形腫瘍である。他の実施形態では、がんは、固形腫瘍ではない。さらなる実施形態では、がんは、白血病がんである。一部の実施形態では、がんは、癌腫、肉腫、骨髄腫、白血病、またはリンパ腫に由来する。一部の実施形態では、がんは、結腸がん、結腸直腸がん、または直腸がんである。一部の実施形態では、がんは、肺がんである。一部の実施形態では、がんは、膵臓がんである。
【0171】
一部の実施形態では、がんは、原発性がんまたは転移がんである。一部の実施形態では、がんは、再発がんである。一部の実施形態では、がんは、寛解に達するが、再発し得る。一部の実施形態では、がんは、切除不能である。
【0172】
一部の実施形態では、がんは、肺腺癌、粘液性腺腫、膵臓の腺管癌、結腸直腸癌;直腸がん、濾胞性甲状腺がん、自己免疫性リンパ球増殖性症候群、ヌーナン症候群、若年性骨髄単球性白血病;膀胱がん、濾胞性甲状腺がん、および口腔扁平上皮細胞癌など、本明細書において開示されるras突然変異を発現する。突然変異は、がんの生検をシーケンシングすることによって、サザンブロッティング、ノーザンブロッティング、または突然変異に特異的に結合する抗体、例えば、ThermoFisherから入手可能なRas(G12D突然変異体)モノクローナル抗体(HL10)もしくはabcamから入手可能な抗Ras(突然変異型G12D)抗体(ab221163)と接触させることによって、検出することができる。
【0173】
本明細書において使用される場合、「動物」という用語は、例えば、哺乳動物および鳥類を含むカテゴリーの生きた多細胞脊椎動物生物を指す。「哺乳動物」という用語は、ヒトおよび非ヒト哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類(例えば、類人猿、テナガザル、チンパンジー、オランウータン、サル、マカクなど)、飼育動物(例えば、イヌおよびネコ)、家畜動物(例えば、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ)、ならびに実験動物(例えば、マウス、コウモリ、ラット、ウサギ、モルモット)を含む。
【0174】
「対象」、「宿主」、「個体」、および「患者」という用語は、動物、典型的には哺乳動物を指して、本明細書において互換可能に使用される。任意の好適な哺乳動物を、本明細書に記載される方法によって処置することができる。哺乳動物の非限定的な例としては、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、類人猿、テナガザル、チンパンジー、オランウータン、サル、マカクなど)、飼育動物(例えば、イヌおよびネコ)、家畜動物(例えば、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ)、ならびに実験動物(例えば、マウス、ラット、コウモリ、ウサギ、モルモット)が挙げられる。一部の実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。哺乳動物は、任意の年齢または任意の発達段階(例えば、成体、13歳~19歳(teen)、小児、幼児、または子宮内の哺乳動物)にあり得る。哺乳動物は、雄性であっても雌性であってもよい。一部の実施形態では、対象は、ヒトである。一部の実施形態では、対象は、疾患を有するか、または疾患を有すると診断されている。一部の実施形態では、対象は、疾患を有することが疑われる。一部の実施形態では、対象は、疾患を有する危険性にある。一部の実施形態では、対象は、完全にがん寛解(例えば、がんがない)状態にある。さらなる実施形態では、対象は、がんの再発生または再発を有する危険性にある。一部の実施形態では、対象は、部分的にがん寛解状態にある。一部の実施形態では、対象は、がん転移の危険性にある。
【0175】
本明細書において使用される場合、対象における疾患を「処置すること」またはその「処置」は、(1)疾患の素因があるか、もしくは疾患の症状をまだ呈していない対象において、症状もしくは疾患が発生するのを予防すること、(2)疾患を阻害するか、もしくはその発達を停止させること、または(3)疾患もしくは疾患の症状を緩和するか、もしくはその退縮を引き起こすことを指す。当該技術分野において理解されるように、「処置」は、臨床結果を含め、有益な結果または所望される結果を得るためのアプローチである。本技術の目的に関して、有益な結果または所望される結果としては、検出可能であるか検出不可能であるかにかかわらず、1つまたは複数の症状の軽減または緩和、状態(疾患を含む)の程度の減弱、状態(疾患を含む)の安定化(すなわち、悪化しない)状態、状態(疾患を含む)の減速または遅延、状態(疾患を含む)の進行、緩和または一時的緩和、状態、ならびに寛解(部分的または完全にかかわらない)のうちの1つまたは複数を挙げることができるが、これらに限定されない。疾患ががんである場合、以下の臨床エンドポイントは、処置の非限定的な例である:腫瘍量の低減、腫瘍成長の遅延、全生存期間の延長、腫瘍進行までの時間の延長、転移の阻害、または腫瘍の転移の低減。一態様では、処置は、予防を除外する。
【0176】
一部の実施形態では、「処置すること」、「処置」などの用語は、本明細書において使用される場合、疾患の原因、その進行、その重症度、またはその症状のうちの1つもしくは複数を低減、緩和、または排除するように疾患を緩和すること、あるいはそれ以外では対象における疾患を有益に変化させることを意味する。患者を「処置すること」またはその「処置」への参照は、予防を含むことが意図される。処置はまた、先制的な性質であってもよく、すなわち、これには、疾患の危険性に晒されるかまたはその危険性にある対象における疾患の予防が含まれ得る。疾患の予防は、例えば、病原体への感染の予防の場合など、疾患からの完全な保護を含み得るか、または疾患進行の予防が含まれ得る。例えば、疾患の予防は、任意のレベルにおいて疾患に関連する任意の作用の完全な喪失を意味しなくてもよいが、代わりに、臨床的に有意または検出可能なレベルまでの疾患の症状の予防を意味し得る。疾患の予防はまた、疾患の後期ステージへの疾患の進行の予防も意味し得る。
【0177】
疾患ががんである場合、以下の臨床エンドポイントは、処置の非限定的な例である:(1)対象もしくは対象の組織/器官もしくはがんの部位におけるがんの排除、(2)腫瘍量(例えば、がん細胞の数、がん病巣の数、病巣内のがん細胞の数、固形がんのサイズ、体液中の液性がんの濃度、および/もしくは体内のがんの量)の低減、(3)がん細胞の成長および/もしくは分裂、固形腫瘍もしくはがん部位のサイズの成長、がん進行、および/もしくは転移(例えば、新しい転移、全転移の数、転移のサイズ、ならびに転移細胞を含む様々な組織/器官を形成するまでの時間)を含むがこれらに限定されない、がんの成長および/もしくは発達の安定化もしくは減速もしくは遅延もしくは阻害、(4)がんの成長および/もしくは発達を有する危険性の低下、(5)がんに対する患者の免疫応答、例えば、より多数の腫瘍浸潤免疫細胞、より多数の活性化免疫細胞、もしくはより多数の免疫療法標的を発現するがん細胞、もしくはがん細胞におけるより高レベルの免疫療法標的の発現を誘導すること、(6)より高い生存確率および/もしくは生存期間の増加、例えば、全生存期間(OS、1年、2年、5年、10年、もしくは20年生存率として示され得る)の増加、無増悪生存期間(PFS)の増加、無疾患生存期間(DFS)の増加、腫瘍再発までの時間(TTR)の増加、および腫瘍進行までの時間(TTP)の増加。一部の実施形態では、処置後の対象は、腫瘍応答、腫瘍サイズの低減、腫瘍量の低減、全生存期間の増加、無進行生存期間の増加、転移の阻害、生活の質の改善、薬物関連毒性の最小化、および副作用の回避(例えば、処置により生じる有害事象の減少)から選択される1つまたは複数のエンドポイントを経験する。一部の実施形態では、生活の質の改善には、疲労、疼痛、吐き気/嘔吐、食欲不振、および便秘などであるがこれらに限定されない、がん特異的症状の解決または改善;心理的健康(例えば、易怒性、鬱、記憶喪失、緊張、および不安症の程度)の改善または維持;社会的健康の改善または維持(例えば、食事、着替え、もしくはトイレ使用時の補助の必要性の減少;通常のレジャー活動、趣味、もしくは社会活動を行う能力の改善もしくは維持;家族との関係の改善もしくは維持)が含まれる。一部の実施形態では、患者の会話を通じて定性的に、または当業者に公知の検証済みの生活の質ツールを使用して定性的に、またはこれらの組合せで測定される、患者の生活の質の改善。エンドポイントのさらなる非限定的な例としては、入院の低減、副作用を処置するための薬物使用の低減、処置休止期間の延長、および仕事または介護への早期復帰が挙げられる。一態様では、予防(prevention)または予防(prophylaxis)は、処置から除外される。
【0178】
「免疫応答」は、外来物質に対するリンパ球の抗原特異的応答を広範に指す。「免疫原」および「免疫原性」という用語は、免疫応答を誘起する能力を有する分子を指す。すべての免疫原は抗原であるが、しかしながら、すべての抗原が免疫原性というわけではない。本明細書において開示される免疫応答は、体液性(抗体活性を介する)、または細胞媒介性(T細胞活性化を介する)であり得る。応答は、in vivoまたはin vitroで発生し得る。当業者であれば、タンパク質、核酸、脂肪酸、脂質、リポ多糖、および多糖を含む、様々な巨大分子が、免疫原性となる可能性を有することを理解するであろう。当業者であれば、免疫応答を誘起することができる分子をコードする核酸が、必然的に免疫原をコードすることをさらに理解するであろう。当業者であれば、免疫原が、全長分子に限定されるものではなく、部分分子を含み得ることをさらに理解するであろう。
【0179】
本明細書において使用される場合、生物学的試料または試料は、対象から得られる。例示的な試料は、細胞試料、組織試料、生検、液体試料、例えば、前鼻スワブ、眼液(眼房水および硝子体液)、末梢血、血清、血漿、腹水、尿、脳脊髄液(CSF)、喀痰、唾液、骨髄、滑液、房水、羊水、耳垢、母乳、気管支肺胞洗浄液、精液、前立腺液、カウパー液または射精前液、女性の射精(female ejaculate)、汗、涙液、嚢胞液、胸水および腹腔液、心膜液、腹水、リンパ液、粥状液、乳糜、胆汁、間質液、月経、膿汁、皮脂、吐瀉物、腟分泌物/洗浄液、滑液、粘膜分泌物、便水、膵液、鼻腔からの洗浄液、気管支肺吸引液、胚盤胞液、または臍帯血を含むがこれらに限定されない、血液および生物学的起源の他の液体試料が挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、生物学的試料は、腫瘍生検である。
【0180】
一部の実施形態では、試料は、血液または血液製剤(例えば、血清、血漿など)、臍帯血、羊水、脳脊髄液、脊髄液、洗浄液(例えば、気管支肺胞、胃、腹腔、胆管、耳、関節鏡)、女性生殖器系洗浄液、尿、糞便、喀痰、唾液、鼻粘液、前立腺液、洗浄液、精液、リンパ液、胆汁、涙液、汗、母乳、乳房液など、またはこれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されない、対象由来の流体を含む。一部の実施形態では、液体生物学的試料は、血漿または血清試料である。「血液」という用語は、本明細書において使用される場合、対象に由来する血液試料または調製物を指す。この用語は、全血、血液製剤、または血液の任意の画分、例えば、従来的に定義される血清、血漿、バフィーコートなどを包含する。一部の実施形態では、「血液」という用語は、末梢血を指す。血漿は、抗凝血剤で処置した血液の遠心分離により得られる全血の画分を指す。血清は、血液試料を凝固させた後に残る流体の水様部分を指す。流体試料は、病院または診療所が一般的に準ずる標準的なプロトコールに従って採取されることが多い。血液については、適切な量の末梢血(例えば、3~40ミリリットル)が採取されることが多く、調製の前または後に標準的な手順に従って保管され得る。
【0181】
「アジュバント」という用語は、抗原に対する免疫応答を増強させる物質または混合物を指す。非限定的な例として、アジュバントは、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリド、ジメチルジオクタデシルアンモニウムホスフェート、またはジメチルジオクタデシルアンモニウムアセテート(DDA)、ならびにマイコバクテリウムの総脂質抽出物の非極性画分または前記非極性画分の一部を含み得る(例えば、米国特許第8,241,610号を参照されたい)。別の実施形態では、合成ナノ担体は、少なくとも1つのポリヌクレオチドおよびアジュバントを含み得る。非限定的な例として、アジュバントを含む合成ナノ担体は、国際公開第WO2011150240号および米国公開第US20110293700号に記載される方法によって製剤化され得、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0182】
「接触させる」という用語は、2つまたはそれよりも多くの間の直接的または間接的な結合または相互作用を意味する。直接的な相互作用の具体的な例は、結合である。間接的な相互作用の具体的な例は、1つの実体が、中間分子に対して作用し、これが、第2の参照される実体に対して作用することである。接触させることは、本明細書において使用される場合、溶液中、固相中、in vitro、ex vivo、細胞内、およびin vivoを含む。in vivoで接触させることは、投与することまたは投与に言及し得る。
【0183】
細胞またはベクターまたは他の薬剤およびそれを含む組成物の「投与」または「送達」は、1回の投薬において、処置の過程全体で連続的または間欠的に行われ得る。投与のもっとも有効な手段および投薬量を決定する方法は、当業者に公知であり、治療法に使用される組成物、治療法の目的、処置される標的細胞、および処置される対象で変動するであろう。単回または複数回の投与は、処置医師、または動物の場合には処置獣医師によって選択される用量レベルおよびパターンで、行われ得る。一部の実施形態では、投与することまたはその文法上の変化形はまた、ある特定の間隔での1回を上回る投薬を指す。一部の実施形態では、間隔は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、10日間、2週間、3週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、1年間であるか、またはそれよりも長い。一部の実施形態では、1回の投薬は、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、またはそれよりも多い回数、反復される。好適な投薬量の製剤および薬剤を投与する方法は、当該技術分野において公知である。投与経路もまた決定され得、もっとも有効な投与経路を決定する方法は、当業者に公知であり、処置に使用される組成物、処置の目的、処置されている対象の健康状態または疾患ステージ、および標的細胞または組織で変動し得る。投与経路の非限定的な例としては、経口投与、腹腔内、注入、鼻内投与、吸入、注射、および局所適用が挙げられる。一部の実施形態では、投与は、ある特定の期間、例えば、約30分間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約24時間、またはそれよりも長くにわたる注入(例えば、対象の末梢血への)である。
【0184】
投与という用語には、限定することなく、経口、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、脳室内(ICV)、髄腔内、脳槽内注射もしくは注入、皮下注射、またはインプラント)、吸入スプレーによる鼻内、腟内、直腸、舌下、尿道(例えば、尿道坐剤)、または局所投与経路(例えば、ゲル、軟膏、クリーム、エアロゾルなど)を含むものとし、それぞれの投与経路に適切な従来的な非毒性の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤、およびビヒクルを含む好適な投与単位製剤において、単独でまたは一緒に、製剤化され得る。本開示は、投与経路、製剤、または投薬スケジュールによって限定されない。
【0185】
一部の実施形態では、本明細書において開示されるRNA、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または組成物は、有効量で投与される。「有効量」は、有益な結果または所望される結果を実現するのに十分な量である。有効量は、1回または複数回の投与、適用、または投薬で投与され得る。そのような送達は、個々の投薬単位が使用される期間、治療剤のバイオアベイラビリティ、投与経路などを含む、いくつかの変数に依存する。しかしながら、任意の特定の対象に対する本明細書において開示される治療剤の具体的な用量レベルは、用いられる具体的な薬剤の活性、薬剤のバイオアベイラビリティ、投与経路、動物の年齢およびその体重、動物の全般的な健康状態、性別、食事、投与の時間、排出速度、薬物の組合せ、ならびに処置される具体的な障害の重症度および投与形態を含む様々な因子に依存することを理解されたい。一般に、in vivoにおいて有効であることが見出される濃度と釣り合う血清レベルを達成するのに有効である薬剤の量を投与することが望ましいであろう。これらの検討事項、ならびに有効な製剤化および投与手順は、当該技術分野において周知であり、標準的な教本に記載されている。
【0186】
一部の実施形態では、本明細書において開示されるRNA、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または組成物は、治療的または薬学的有効量で投与される。ある薬剤の「治療的有効量」または「薬学的有効量」とは、薬理学的応答を得るのに十分な量であるか、または代替的には、指定される障害もしくは疾患を有する患者に投与した場合に、意図される作用、例えば、患者における特定される障害もしくは疾患の1つまたは複数の症状の処置、軽減、緩和、一時的緩和、もしくは排除を有するのに十分である薬物もしくは薬剤の量である、薬剤の量を指す。作用は、かならずしも、1回の用量の投与によって生じるわけではなく、一連の用量の投与の後にのみ生じる場合がある。したがって、治療的または薬学的有効量は、1回または複数回の投与で投与され得る。
【0187】
一部の実施形態では、本明細書において開示される処置方法は、第1選択肢の処置、または第2選択肢の処置、または第3選択肢の処置として、使用され得る。「第1選択肢」または「第2選択肢」または「第3選択肢」という語句は、患者によって受容される処置の順序を指す。第1選択肢の治療レジメンは、最初に提供される処置であり、一方で第2または第3選択肢の治療法は、それぞれ、第1選択肢の治療法の後または第2選択肢の治療法の後に提供される。National Cancer Instituteは、第1選択肢の治療法を「疾患または状態の最初の処置」として定義している。がんを有する患者において、一次処置は、外科手術、化学療法、放射線療法、またはこれらの治療法の組合せであり得る。また、第1選択肢の治療法は、当業者には、「一次治療法および一次処置」を指す。National Cancer Instituteのウェブサイトwww.cancer.gov(最終アクセス2008年5月1日)を参照されたい。典型的には、患者は、第1選択肢の治療法に対して肯定的な臨床もしくは亜臨床応答を示さなかったか、または第1選択肢の治療法が中止されたため、患者は、後続の化学療法レジメンを受ける。
【0188】
「抗がん療法」は、本明細書において使用される場合、外科的切除、化学療法、低温療法、放射線療法、免疫療法、および標的化療法を含むが、これらに限定されない。細胞増殖を低減させる機能を果たす薬剤が、当該技術分野において公知であり、広く使用されている。がん細胞が分裂しているときにのみがん細胞を殺滅させる化学療法薬は、細胞周期特異的であると称される。これらの薬物は、トポイソメラーゼ阻害剤および抗代謝薬を含む、S期に作用する薬剤を含む。
【0189】
トポイソメラーゼ阻害剤は、トポイソメラーゼ酵素(トポイソメラーゼIおよびII)の作用を妨害する薬物である。化学処置のプロセス中に、トポイソメラーゼ酵素は、複製に必要なDNAの構造の操作を制御し、したがって、細胞周期特異的である。トポイソメラーゼI阻害剤の例としては、上記に列挙されているカンプトテカンアナログ、イリノテカンおよびトポテカンが挙げられる。トポイソメラーゼII阻害剤の例としては、アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、およびテニポシドが挙げられる。
【0190】
抗代謝薬は、通常、染色体複製に関与するプロセスを妨害することが多い、正常な代謝基質のアナログである。それらは、非常に特異的な細胞周期にある細胞を攻撃する。抗代謝薬としては、葉酸アンタゴニスト、例えば、メトトレキサート;ピリミジンアンタゴニスト、例えば、5-フルオロウラシル、フォクスウリジン(foxuridine)、シタラビン、カペシタビン、およびゲムシタビン;プリンアンタゴニスト、例えば、6-メルカプトプリンおよび6-チオグアニン;アデノシンデアミナーゼ阻害剤、例えば、クラドリビン、フルダラビン、ネララビン、およびペントスタチンなどが挙げられる。
【0191】
植物アルカロイドは、ある特定のタイプの植物に由来する。ビンカアルカロイドは、ツルニチニチソウ(Catharanthus rosea)から作製される。タキサンは、Pacific Yew木(taxus)の樹皮から作製される。ビンカアルカロイドおよびタキサンはまた、微小管阻害剤としても知られている。ポドフィロトキシンは、ポドフィルムという植物に由来する。カンプトテカンアナログは、アジア「ハッピーツリー」(Camptotheca acuminata)に由来する。ポドフィロトキシンおよびカンプトテカンアナログはまた、トポイソメラーゼ阻害剤とも分類される。植物アルカロイドは、一般に、細胞周期特異的である。
【0192】
これらの薬剤の例としては、ビンカアルカロイド、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびビノレルビン;タキサン、例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル、ポドフィロトキシン、例えば、エトポシドおよびテニポシド(tenisopide)、ならびにカンプトテカンアナログ、例えば、イリノテカンおよびトポテカンが挙げられる。
【0193】
一部の実施形態では、がんが免疫細胞がんである場合、抗がん療法は、造血幹細胞移植を含み得るか、またはそれから本質的になり得るか、またはそれからなり得る。
【0194】
一部の実施形態では、治療剤、例えば、本明細書において開示される細胞は、がんの処置において、別の抗がん療法または免疫細胞を枯渇させる治療法と組み合わされ得る。例えば、リンパ球枯渇化学療法が行われ、続いて、本明細書において開示される細胞の投与、例えば、週1回で4回の注入が、行われる。さらなる実施形態では、これらのステップは、部分的もしくは完全な作用が観察されるか、または臨床エンドポイントが達成されるまで、1回、2回、3回、またはそれよりも多い回数、反復され得る。
【0195】
低温療法には、温度を低下させることを含む治療法、例えば、温度低下療法が含まれるが、これらに限定されない。
【0196】
放射線療法は、放射線への曝露、例えば、当該技術分野において公知のように、イオン化放射線、UV照射が含まれるが、これらに限定されない。例示的な投薬量としては、少なくとも約2Gyから約10Gyを上回らない範囲のイオン化放射線量、少なくとも約5J/m2から約50J/m2、通常約10J/m2を上回らない範囲の紫外線照射線量が挙げられるが、これらに限定されない。
【0197】
一部の実施形態では、免疫療法は、免疫チェックポイントを調節する。さらなる実施形態では、免疫療法は、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、細胞毒性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)阻害剤、またはプログラム細胞死1(PD-1)阻害剤、またはプログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。なおもさらなる実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントタンパク質を認識しそれに結合する抗体またはその同等物、例えば、CTLA4を認識しそれに結合する抗体もしくはその同等物(例えば、Yervoy(イピリムマブ)、CP-675,206(トレメリムマブ)、AK104(カドニリマブ)、もしくはAGEN1884(ザリフレリマブ))、またはPD-1を認識しそれに結合する抗体もしくはその同等物(例えば、Keytruda(ペンブロリズマブ)、Opdivo(ニボルマブ)、Libtayo(セミプリマブ)、Tyvyt(シンチリマブ)、BGB-A317(チスレリズマブ)、JS001(トリパリマブ)、SHR1210(カムレリズマブ)、GB226(ゲプタノリマブ)、JS001(トリパリマブ)、AB122(ジムベレリマブ)、AK105(ペンプリマブ)、HLX10(セルプルリマブ)、BCD-100(プロルゴリマブ)、AGEN2034(バルスチリマブ)、MGA012(レチファンリマブ)、AK104(カドニリマブ)、HX008(プコテンリマブ)、PF-06801591(ササンリマブ)、JNJ-63723283(セトレリマブ)、MGD013(テボテリマブ)、CT-011(ピジリズマブ)、もしくはJemperli(ドスタルリマブ))、またはPD-L1を認識しそれに結合する抗体もしくはその同等物(例えば、Tecentriq(アテゾリズマブ)、Imfinzi(デュルバルマブ)、Bavencio(アベルマブ)、CS1001(スゲマリマブ)、もしくはKN035(エンバホリマブ))を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。
【0198】
本明細書において使用される場合、「標的化療法」とは、がんの成長、進行、再発、および拡大に関与する特定の分子(「分子標的」)を妨害することによって、がんの成長および拡大を遮断する薬物または他の物質、例えば、ネオ抗原を特異的に標的としそれに結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞もしくはNK細胞、または他の免疫細胞を使用するがん療法を指す。一部の実施形態では、この標的化療法によって標的とされるネオ抗原は、本明細書において開示されるRNAによってコードされるものと同じであり得る。他の実施形態では、この標的化療法によって標的とされるネオ抗原は、本明細書において開示されるRNAによってコードされるものとは異なる。
【0199】
本明細書において使用される場合、切断性リンカーとも称される、切断性ペプチドは、例えば、酵素によって切断することができるペプチドを意味する。そのような切断性ペプチドを含む1つの翻訳されたポリペプチドは、2つの最終産物を産生することができ、したがって、1つを上回るポリペプチドが1つのオープンリーディングフレームから発現されるのを可能にする。切断性ペプチドの1つの例は、自己切断性ペプチド、例えば、2A自己切断性ペプチドである。2A自己切断性ペプチドは、18~22aa長のペプチドのクラスであり、これは、細胞において組換えタンパク質の切断を誘導することができる。一部の実施形態では、2A自己切断性ペプチドは、P2A、T2A、E2A、F2A、およびBmCPV2Aから選択される。例えば、Wang Y, et al. Sci Rep. 2015;5:16273. Published 2015 Nov 5を参照されたい。
【0200】
本明細書において使用される場合、「T2A」および「2Aペプチド」という用語は、任意の2Aペプチドもしくはその断片、任意の2A様ペプチドもしくはその断片、またはコンセンサスポリペプチドモチーフD-V/I-E-X-N-P-G-P(Xは、一般に自己切断性であると考えられる任意のアミノ酸を指す(配列番号99))を含む比較的短いペプチド配列(起源ウイルスに応じて20個のアミノ酸の長さの単位で)において必須のアミノ酸を含む人工ペプチドを指して互換可能に使用される。
【0201】
一部の実施形態では、「リンカー」という用語は、1~10回、または代替的には約8回、または代替的には約6回、または代替的には約5回、または代替的には約4回、または代替的には約3回、または代替的には約2回反復され得る、合計で1~200個のアミノ酸残基、または約1~10個のアミノ酸残基、または代替的には8個のアミノ酸、または代替的には6個のアミノ酸、または代替的には5個のアミノ酸を含む、任意のアミノ酸配列を指す。例えば、リンカーは、3回反復されるペンタペプチドからなる最大で15個のアミノ酸残基を含み得る。一実施形態では、リンカー配列は、(G4S)nであり、式中、nは、1、または2、または3、または4、または5、または6、または7、または8、または9、または10、または11、または12、または13、または14、または15(配列番号100)である。
【0202】
本明細書において使用される場合、「由来する」という語句は、単離されていること、精製されていること、突然変異していること、もしくは操作されていること、またはこれらの任意の組合せを意味する。例えば、ras由来のペプチドは、ras遺伝子またはRASタンパク質、例えば、野生型のものから操作されたペプチドを指す。一部の実施形態では、ras由来のペプチドは、RAS突然変異体またはその断片である。
【0203】
一部の実施形態では、「シグナルペプチド」は、細胞内のタンパク質の、例えば、ある特定の細胞オルガネラ(例えば、小胞体)および/もしくは細胞表面への輸送および局在化ならびに/または細胞の外への分泌を誘導する、ペプチド配列を指す。一部の実施形態では、シグナルペプチドは、タンパク質のN末端にあり、それが切断されて、成熟タンパク質が産生され得る。一部の実施形態では、シグナルペプチドは、約15~約30個のアミノ酸の長さである。
【0204】
本明細書において使用される場合、オープンリーディングフレーム(ORF)は、ポリペプチドまたはその一部分をコードするヌクレオチドの配列を指す。一部の実施形態では、ORFは、RNAである。
【0205】
本明細書において使用される場合、突然変異は、挿入、置換、欠失、ミスセンス突然変異、またはこれらの組合せを指す。一部の実施形態では、「突然変異」および「突然変異体」という用語は、互換可能に使用される。一部の実施形態では、突然変異体は、突然変異したポリペプチドもしくはポリヌクレオチド、またはその断片を指す。
【0206】
本明細書において使用される場合、「ras」という用語は、タンパク質を、細胞成長および細胞死を制御する細胞シグナル伝達経路に関わらせる、遺伝子のファミリーを指す。ras遺伝子の突然変異型形態は、いくつかのタイプのがんにおいて見出すことができる。これらの変化は、がん細胞が、体内で成長および拡大することを引き起こし得る。ras遺伝子ファミリーのメンバーとしては、kras(本明細書において、k-rasとも称される)、hras(本明細書において、h-rasとも称される)、およびnras(本明細書において、n-rasとも称される)が挙げられる。一部の実施形態では、大文字ではない文字で示される遺伝子名称はまた、コードされるタンパク質を指す。他の実施形態では、大文字の名称、例えば、RAS、KRAS、NRASは、コードされるタンパク質を指す。
【0207】
本明細書において使用される場合、「kras」および「k-ras」という用語は、カーステンラット肉腫ウイルス原癌遺伝子またはそれによってコードされるタンパク質を指す。この遺伝子は、小型GTPaseスーパーファミリーのメンバーであるタンパク質をコードする。単一のアミノ酸置換は、活性化突然変異を担う。生じる形質転換タンパク質は、肺腺癌、粘液腺腫、膵臓の腺管癌腫、および結腸直腸癌を含む、様々な悪性腫瘍に関係する。このタンパク質または根底にある遺伝子の非限定的な例示的な配列は、Gene Cards識別子:GC12M025204(www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=KRASから取得、最終アクセス2021年10月9日)、HGNC:6407(www.genenames.org/data/gene-symbol-report/#!/hgnc_id/6407から取得、最終アクセス2021年10月9日)、NCBI Entrez Gene:3845(www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/3845から取得、最終アクセス2021年10月9日)、Ensembl:ENSG00000133703(useast.ensembl.org/Homo_sapiens/Gene/Summary?g=ENSG00000133703;r=12:25205246-25250936から取得、最終アクセス2021年10月9日)、OMIM(登録商標):190070(omim.org/entry/190070から取得、最終アクセス2021年10月9日)、またはUniProtKB/Swiss-Prot:P01116(www.uniprot.org/uniprot/P01116から取得、最終アクセス2021年10月9日)において見出すことができ、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0208】
一部の実施形態では、KRASタンパク質は、
【化6】
を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる、野生型KRASタンパク質(例えば、健康な対象またはがんを有さない対象のもの)である。
【0209】
本明細書において使用される場合、「nras」および「n-ras」という用語は、神経芽細胞腫RASウイルス原癌遺伝子ホモログ、またはそれによってコードされるタンパク質を指す。これは、ゴルジ体と細胞質膜との間で輸送する膜タンパク質をコードするN-ras原癌遺伝子である。この輸送は、ZDHHC9-GOLGA7複合体によるパルミトイル化および脱パルミトイル化を通じて調節される。固有のGTPase活性を有するコードされるタンパク質は、グアニンヌクレオチド交換因子によって活性化され、GTPase活性化タンパク質によって不活性化される。この遺伝子における突然変異は、体細胞性直腸がん、濾胞性甲状腺がん、自己免疫性リンパ球増殖性症候群、ヌーナン症候群、および若年性骨髄単球性白血病と関連付けられている。このタンパク質または根底にある遺伝子の非限定的な例示的な配列は、Gene Cards識別子:GC01M114704(www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=NRASから取得、最終アクセス2021年10月9日)、HGNC:7989(www.genenames.org/data/gene-symbol-report/#!/hgnc_id/7989から取得、最終アクセス2021年10月9日)、NCBI Entrez Gene:4893(www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/4893から取得、最終アクセス2021年10月9日)、Ensembl:ENSG00000213281(useast.ensembl.org/Homo_sapiens/Gene/Summary?g=ENSG00000133703;r=12:25205246-25250936から取得、最終アクセス2021年10月9日)、OMIM(登録商標):164790(omim.org/entry/164790から取得、最終アクセス2021年10月9日)、またはUniProtKB/Swiss-Prot:P01111(www.uniprot.org/uniprot/P01111から取得、最終アクセス2021年10月9日)において見出すことができ、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0210】
一部の実施形態では、NRASタンパク質は、
【化7】
を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる、野生型NRASタンパク質(例えば、健康な対象またはがんを有さない対象のもの)である。
【0211】
本明細書において使用される場合、「hras」および「h-ras」という用語は、ハービーラット肉腫ウイルス原癌遺伝子ホモログ、またはそれによってコードされるタンパク質を指す。これらの遺伝子によってコードされる産物は、シグナル伝達経路において機能する。これらのタンパク質は、GTPおよびGDPに結合し得、固有のGTPase活性を有する。このタンパク質は、脱パルミトイル化および再パルミトイル化の連続的なサイクルを受け、これにより、細胞質膜とゴルジ体との間のその急速な交換を調節する。この遺伝子における突然変異は、出生前段階における成長の増加、出生後段階における成長の欠損、腫瘍形成の素因、認知障害、皮膚および筋骨格の異常、特有の顔貌、ならびに心臓血管の異常を特徴とする疾患であるコステロ症候群を引き起こす。この遺伝子における欠損は、膀胱がん、濾胞性甲状腺がん、および口腔扁平上皮細胞癌を含む、様々ながんに関係している。このタンパク質または根底にある遺伝子の非限定的な例示的な配列は、Gene Cards識別子:GC11M001525(www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=HRASから取得、最終アクセス2021年10月9日)、HGNC:5173(www.genenames.org/data/gene-symbol-report/#!/hgnc_id/5173から取得、最終アクセス2021年10月9日)、NCBI Entrez Gene:3265(www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/3265から取得、最終アクセス2021年10月9日)、Ensembl:ENSG00000174775(useast.ensembl.org/Homo_sapiens/Gene/Summary?g=ENSG00000174775;r=11:532242-537321から取得、最終アクセス2021年10月9日)、OMIM(登録商標):190020(omim.org/entry/190020から取得、最終アクセス2021年10月9日)、またはUniProtKB/Swiss-Prot:P01112(www.uniprot.org/uniprot/P01112から取得、最終アクセス2021年10月9日)において見出すことができ、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0212】
一部の実施形態では、HRASタンパク質は、
【化8】
を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる、野生型HRASタンパク質(例えば、健康な対象またはがんを有さない対象のもの)である。
【0213】
突然変異によりがんが生じるすべての遺伝子の中でも、rasファミリーは、もっとも早くに特定されたものの1つであり、もっとも一般的なものの1つでもある。Ras遺伝子は、30年より前に発見された。それらは、GTPase活性を有し、細胞の成長および死亡を制御することを含む広範な正常な細胞機能を調節する細胞内シグナル伝達経路において本質的な役割を果たす、188個のアミノ酸残基を有するタンパク質のファミリーをコードする。しかしながら、カーステンラット肉腫ウイルス原癌遺伝子ホモログ(kras)、神経芽細胞腫RASウイルス原癌遺伝子ホモログ(nras)、およびハービーラット肉腫ウイルス原癌遺伝子ホモログ(hras)の3つのヒトras遺伝子の突然変異は、ヒトがんにおける作動力として示されている。これらの3つの遺伝子の中でも、kras単独で、ヒトがん症例のおよそ3分の1に関与していると考えられていた。実際に、ras遺伝子突然変異は、上位3つの死亡率の高いがんである肺がん、結腸直腸がん、および膵臓がんにおけるもっとも一般的な作動因子である突然変異のうちの1つである。
【0214】
rasの機能獲得型突然変異を標的とすることは、可能性のある有効ながん処置として古くから提案されている。しかしながら、相当な量の研究および開発の取り組みがこの分野において費やされたにもかかわらず、ras特異的阻害剤は、RASタンパク質の突然変異型の機能を遮断する小分子または生物製剤のいずれも、開発が成功していない。
【0215】
ras阻害剤の開発は、RASタンパク質の位置、機能、および構造に起因して、巨大な技術的困難に直面している。第1に、細胞内タンパク質として、RASは、多数の生物製剤および小分子ではアクセスできない。第2に、RASは、球状タンパク質であり、小分子阻害剤が有効に結合することができる大きな頸部または溝をその表面上に有さない。最後に、正常なrasは、本質的な細胞機能を維持することにおいて重要な役割を果たすハウスキーピング遺伝子である。正常なRASに対する望ましくない影響を伴わずに突然変異型RASタンパク質の活性のみを遮断することは、極めて困難である。しばしば、RAS突然変異体には単一のアミノ酸変化のみが存在する。そのような微小な規模での正常なRASと突然変異体RASとの間の配列の相違の標的化阻害は、rasに基づくがん薬物開発の目標であり続けている。
本開示を実施するための様式
【0216】
がん処置モダリティには、従来的に、外科手術、化学療法、および放射線療法が含まれる。より最近では、がんの分子病理学に関して詳細な知識が得られたことにより、標的化療法および免疫療法が開発された。いずれも、がん管理において有望な結果を示している。がん標的化療法は、配列情報を利用して、がん作動因子突然変異のタンパク質産物の活性を阻害する。ほとんどの体細胞突然変異は、単一の解剖学的部位またはがんタイプを越えて拡大するため、標的化療法は、それらの組織位置には関係なく、同じ根底にある突然変異を共有している異なる腫瘍に適用することができる。2017年以来、米国Food and Drug Administration(FDA)は、組織分布に関係なく、特定の遺伝子欠損について複数の処置を承認している。例としては、切除不能または転移性のマイクロサテライト高不安定性型(MSI-H)またはミスマッチ修復欠損型(dMMR)固形腫瘍を有する患者に関して承認されたペンブロリズマブ、およびNTRK(神経栄養因子チロシン受容体キナーゼ)遺伝子融合を有する患者に関するエントレクチニブが挙げられる。
【0217】
標的化療法と同様に、がん免疫療法もまた、1つを上回るタイプのがんに対する効力を有する。がん免疫療法は、患者の免疫系を利用して、腫瘍細胞と闘う。一部のがん免疫療法は、主として、免疫系の体液性成分、抗体に焦点を当てて、がん細胞によって発現されるタンパク質の機能を阻害することによってがん細胞を殺滅させる。他のがん免疫療法は、腫瘍細胞を直接的に破壊する能力を有する細胞障害性T細胞を通じてその機能を発揮する。ヒト免疫系は、その正常な機能の一部として、正常な細胞には出現しない突然変異型遺伝子産物を認識することによって異常な細胞を監視および殺滅させ、したがって、がんの成長を予防または抑制する。がん細胞によって産生されるタンパク質の突然変異型バージョンは、腫瘍関連抗原と称されることが多く、ネオ抗原としても知られている。免疫系をがんネオ抗原に曝露することによって、腫瘍細胞を標的としそれを殺滅させるヒト免疫系の能力を増強することが可能である。このモダリティは、がん処置ワクチンと称される。ヒト腫瘍細胞のライセートまたは精製された腫瘍ネオ抗原を使用して、がん患者から腫瘍特異的免疫応答を刺激することができる。免疫系の多数の異なる細胞成分を使用して、がんワクチンを製造することができる。FDAに承認された最初のがん処置ワクチンとして、腫瘍ネオ抗原、前立腺酸性ホスファターゼ、およびアジュバント、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子からなる融合タンパク質は、患者自身の樹状細胞にロードされた。樹状細胞は、細胞傷害性細胞によって認識されるようにネオ抗原を提示することを担う主要な抗原提示細胞(APC)としての機能を果たす。他の細胞もまた、APCとしての機能を果たし得る。
【0218】
がん処置ワクチンの高い期待にもかかわらず、免疫-エピトープの発見からワクチンの製造までは多数の技術的問題が存在する。RNAに基づくワクチンは、これらの問題に対する可能性のある解決策として提案され、前臨床および臨床研究において見込みを示している。mRNAワクチンの重要な利点は、mRNAが、研究室において、容易に入手可能な材料を使用して、鶏卵または他の哺乳動物細胞の使用が必要な従来的なワクチン製造よりも低費用かつ高速で、DNA鋳型から産生することができることである。加えて、mRNAワクチンは、ワクチンの発見および開発を合理化し、新しく生じる感染性疾患に対する迅速な対応を促進する可能性を有する(例えば、Maruggi et al., Mol Ther. 2019; 27(4):757-772を参照されたい)。
【0219】
過去20年間の間に、予防用および治療用ワクチンの開発のためのRNAに基づく技術には、広く関心がもたれている。この分野において、mRNAワクチンは、感染性疾患の予防、ならびにがんの予防および処置に関して、広く調査されている。前臨床および臨床試験では、mRNAワクチンが、動物モデルおよびヒトにおいて、安全かつ長く持続する免疫応答を提供することが示されている。感染性病原体の抗原を発現するmRNAワクチンは、強力なT細胞性および体液性免疫応答を誘導する(Pardi et al. Nat Rev Drug Discov. 2018; 17: 261-279)。以前に説明されているように、mRNAワクチンを生成するための産生手順は、全微生物ワクチン、弱毒化生ワクチン、およびサブユニットワクチンの産生と比較した場合、完全に無細胞、単純、かつ高速である。この高速かつ単純な製造プロセスにより、mRNAは、新たに生じる感染性疾患と、有効なワクチンに対する切実な必要性との間の溝を埋めることができる可能性のある有望なバイオ製品となっている。
【0220】
従来的なプラスミドおよびウイルスに基づくアプローチと比較して、このアプローチは、核膜を通過する必要を排除する(DNAとは異なる)ことからも利益が得られる患者ごとに個別化されたmRNAの設計を可能にし、したがって、ゲノム組込みの危険性がほとんどないかまたはまったくない。さらに、mRNAワクチンは、安全で、単純、かつ安価であり、最大限の柔軟性を有する。特に、ペプチドワクチンと比較すると、それらは、自己アジュバント特性を有し、MHCハプロタイプ制限がなく、核に進入することを必要としない(Schlake et al., RNA Biol. 2012; 9(11): 1319-1330]。mRNAは、ゲノムに組み込まれず、したがって、原癌性および突然変異発生を回避する(McNamara et al., J Immunol Res. 2015; 2015:794528]。これらのワクチンは、数日以内の早期代謝分解に起因して、一時的な情報担体である。最後に大事なことだが、mRNAの特性に影響を及ぼすことなく、任意のタンパク質を、治療用および予防用ワクチンの開発のためにコードすることができる。
【0221】
最近では、自己増幅型mRNAワクチンは、ヒトウイルス病原体(例えば、インフルエンザ)に対して安全かつ有効であることが証明されている。インフルエンザmRNAワクチンは、大きな見込みを有しており、卵を用いない(egg-free)プラットフォームであり、哺乳動物細胞において高い実現可能性を有する抗原の産生をもたらす。最近公開された結果により、卵順化H3N2ワクチン株のヘマグルチニン(HA)における突然変異によるグルコシル化部位の消失が、ワクチン接種したヒトおよびフェレットにおいて循環H3N2ウイルスの中和不良をもたらしたことが示された(Zost et al.,. Proc Natl Acad Sci USA. 2017; 114: 12578-12583)。対照的に、mRNAワクチン産生のプロセスは、卵を用いず、mRNAによりコードされるタンパク質は、ワクチン投与後の宿主細胞において、適切にフォールディングされ、グリコシル化されており、したがって、誤った抗原を産生する危険性が回避される。
【0222】
乳児および老人における強力な免疫応答の生成は、常に、インフルエンザワクチンの問題となっている。しかしながら、mRNAワクチンは、非常に若齢および非常に高齢のマウスにおいてさえも、A型インフルエンザウイルス感染症に対して、バランスのとれた長期持続性かつ保護的な免疫性を誘導することが示されているという点で、有益であり得る。mRNAまたはRNAレプリコンに基づくワクチンもまた、非ヒト霊長類を含む様々な動物モデルにおいて、免疫原性であることが示されている(Maruggi et al., Vaccine. 2017; 35(2):361-368)。
汎ras mRNAワクチンの標的選択
【0223】
ras遺伝子ががん分子病理学において果たす顕著な役割に起因して、多数の異なるタイプのがんにおいて、特定のras突然変異、突然変異型RASタンパク質の活性、およびそれに続く腫瘍細胞形質転換の間の関係性を調査するための多数の前臨床および臨床研究が行われている。がん細胞の体細胞突然変異を特徴付けるのに大規模なゲノムシーケンシング技術が利用可能となったときに、ras遺伝子体細胞突然変異の性質が、広くプロファイリングされた。現時点におけるヒトがんを誘導する遺伝子変化を特徴付けるためのもっとも大きくもっとも包括的な取り組みであるCancer Genome Atlas Project(TCGA)において、ras遺伝子の突然変異の状況は、30個を上回るがんタイプにおいて、10,000個を上回る腫瘍試料で文書化されている。エクソームまたは全ゲノムシーケンシング、ならびにRNAseq(転写およびmiRNAに関して)およびメチル化プロファイリング(エピジェネティック相関に関して)を含む異なるシーケンシング技術の組合せを使用して、様々な体細胞ras突然変異の頻度および組織タイプを記録した。突然変異配列頻度により、mRNAに基づくrasワクチンに関して可能性のあるネオ抗原エピトープを選択する基礎が構築された。具体的には、次世代シーケンシング技術を使用して、腫瘍および一致する正常な試料の両方の配列データを比較して、ネオ抗原を特定した。Ras突然変異、例えば、単一ヌクレオチド変異(SNV)および挿入/欠失を、統計学ソフトウェアを用いて特徴付けし、CD4およびCD8 T細胞応答を刺激する能力について検証した。このRAS候補ネオ抗原予測プロセスには、体細胞突然変異の特定、HLA型判定、ペプチドプロセシング、およびペプチド-MHC結合予測を含む、複数のステップが関与する。選択されたSNVを、HLA結合予測アルゴリズムを使用する選択に供して、強力なHLA結合親和性を有する候補ペプチド配列をスクリーニングして特定した。これらのペプチドは、ヒト体内で強力なエフェクターT細胞を誘起する見込みがもっとも高いと想定される。コンピュータ計算方法によって予測されたペプチド候補を、次いで、がん患者由来の末梢血単球(PBMC)を使用して強力なin vitro T細胞活性を誘導する能力を測定して、検証した。in vitro活性が証明されたネオ抗原ペプチド候補の配列を、mRNA発現構築物において使用した。全体的には、一般的なワークフローは、次世代シーケンシングリードアライメント、bamファイルプロセシング、体細胞コーリング、偽陽性フィルタリング、ネオ抗原予測、HLA型判定、HLA結合、およびネオ抗原優先順位付け、送達、ならびに検証を含め、
図3のチャートに例示されている。ネオ抗原の選択および検証の詳細が、さらに、
図3において解明されている。
汎ras mRNAワクチンおよびその発現ベクターの構築
【0224】
単一のmRNA分子を、本明細書に記載されるように選択されたポリペプチドを発現し、ヒト細胞へと送達されるように、操作することができる。発現される突然変異型rasペプチドは、プロセシングされ、APCの表面に提示され、細胞傷害性T細胞を、突然変異体rasタンパク質を発現する細胞、例えば、腫瘍細胞を標的として破壊するように誘起することができる。さらに、APCによって提示されるエピトープのサイズは、通常、20~27個のアミノ酸残基の長さであるため、単一のRNA発現構築物は、異なる配列の複数のras突然変異体ペプチドを発現する能力を有する。したがって、いくつかのras突然変異ペプチドを、1つを上回るタイプのras突然変異に対してエフェクターT細胞を誘起する能力を有する単一のRNA発現産物にパッケージングすることができる。したがって、汎ras RNAワクチンは、そのような様式で産生することができる。
【0225】
具体的には、一部の実施形態では、それぞれのrasネオ抗原(本明細書において、rasまたはras由来のペプチドの免疫原性断片とも称される)は、25個のアミノ酸残基を有し、突然変異型アミノ酸残基がrasネオ抗原の13番目の位置を占有している。異なる突然変異配列を有する複数のrasネオ抗原を、非免疫原性グリシン/セリンリンカー(開始リンカー、P01-P07についてはLQまたはGGSGGGGSGG、配列番号83;中央のリンカーGGSGGGGSGG、配列番号84;および末端リンカーGGSLGGGGSG、配列番号85)によって分離してタンデムに配置することができる。「タンデムミニ遺伝子」の構成で複数のrasネオ抗原をコードする合成DNA断片を、mRNA発現ベクターに挿入した。そのような汎rasワクチンを産生するペプチド配列の詳細は、本明細書において開示されている。
【0226】
本明細書において記載されるように、高頻度体細胞ras突然変異配列が特定され、それに基づいて、ras突然変異作動型がん細胞に対して臨床的に有意なエフェクターT細胞活性を誘導する可能性がもっとも高いポリペプチド配列を、決定した。薬学的に許容される担体において製剤化された、異なるras突然変異の1つまたは複数のペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる、メッセンジャーリボ核酸(mRNA)を含むか、またはそれから本質的になるか、またはさらにはそれからなる、免疫原性組成物を使用して、いくつかの汎krasワクチンが開発されている。一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、ポリマーナノ粒子もしくはリポソームナノ粒子またはその両方を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。組成物は、対象においてrasネオ抗原に対する特異的な免疫応答を誘導するのに有効な量で、そのような対象に投与することができる。
【0227】
したがって、一態様では、ras由来のペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる、単離されたリボ核酸(RNA)が提供される。一部の実施形態では、RNAは、担体、例えば、薬学的担体において製剤化される。さらなる実施形態では、RNAは、ナノ粒子に封入されている。一部の実施形態では、コードされるras由来のペプチドは、以下の突然変異のうちのいずれか1つまたは複数(例えば、いずれか1つ、またはいずれか2つ、またはいずれか3つ、またはいずれか4つ、または5つすべて)を含む:
配列番号70の19番目のアミノ酸残基にアライメントする突然変異型残基、例えば、フェニルアラニン(F)(本明細書において、L19Fと称される)、
配列番号70の59番目のアミノ酸残基にアライメントする突然変異型残基、例えば、スレオニン(T)、グリシン(G)、グルタミン酸(E)、もしくはセリン(S)(本明細書において、それぞれ、A59T、A59G、A59E、もしくはA59Sと称される)、
配列番号70の60番目のアミノ酸残基にアライメントする突然変異型残基、例えば、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、バリン(V)、もしくはアルギニン(R)(本明細書において、それぞれ、G60D、G60E、G60V、もしくはG60Rと称される)、
配列番号70の117番目のアミノ酸残基にアライメントする突然変異型残基、例えば、アスパラギン(N)もしくはR(本明細書において、それぞれ、K117NもしくはK117Rと称される)、または
配列番号70の146番目のアミノ酸残基にアライメントする突然変異型残基、例えば、T、V、もしくはプロリン(P)(本明細書において、それぞれ、A146T、A146V、もしくはA146Pと称される)。
【0228】
一部の実施形態では、コードされるras由来のペプチドは、以下の突然変異のうちのいずれか1つまたは複数(例えば、いずれか1つ、またはいずれか2つ、または3つすべて)をさらに含む:
配列番号70の12番目のアミノ酸残基にアライメントする突然変異型残基、例えば、D、アラニン(A)、システイン(C)、R、S、もしくはV(本明細書において、それぞれ、G12D、G12A、G12C、G12R、G12S、もしくはG12Vと称される)、
配列番号70の13番目のアミノ酸残基にアライメントする突然変異型残基、例えば、D、A、C、R、S、もしくはV(本明細書において、それぞれ、G13D、G13A、G13C、G13R、G13S、もしくはG13Vと称される)、または
配列番号70の61番目のアミノ酸残基にアライメントする突然変異型残基、例えば、ヒスチジン(H)、E、リシン(K)、ロイシン(L)、P、もしくはR(本明細書において、それぞれ、Q61H、Q61E、Q61K、Q61L、Q61P、もしくはQ61Rと称される)。
【0229】
一部の実施形態では、コードされるras由来のペプチドは、以下の突然変異を含む:配列番号70の12番目のアミノ酸残基にアライメントするD(G12D)、配列番号70の13番目のアミノ酸残基にアライメントするD(G13D);配列番号70の19番目のアミノ酸残基にアライメントするF(L19F);配列番号70の59番目のアミノ酸残基にアライメントするT(A59T);配列番号70の60番目のアミノ酸残基にアライメントするD(G60D);配列番号70の61番目のアミノ酸残基にアライメントするH(Q61H);配列番号70の117番目のアミノ酸残基にアライメントするN(K117N);または配列番号70の146番目のアミノ酸残基にアライメントするT(A146T)。
【0230】
一部の実施形態では、ras由来のペプチドは、配列番号70に記載されるポリペプチドまたはその同等物を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。一部の実施形態では、配列番号70に対する同等物は、以下の突然変異を保持する:配列番号70の12番目のアミノ酸残基にアライメントするD(G12D)、配列番号70の13番目のアミノ酸残基にアライメントするD(G13D);配列番号70の19番目のアミノ酸残基にアライメントするF(L19F);配列番号70の59番目のアミノ酸残基にアライメントするT(A59T);配列番号70の60番目のアミノ酸残基にアライメントするD(G60D);配列番号70の61番目のアミノ酸残基にアライメントするH(Q61H);配列番号70の117番目のアミノ酸残基にアライメントするN(K117N);および配列番号70の146番目のアミノ酸残基にアライメントするT(A146T)。
【0231】
一実施形態では、組成物は、8つの異なるkras高頻度突然変異ペプチドをコードする1つのmRNAを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。一部の実施形態では、ペプチドのそれぞれは、以下の突然変異を含む:配列番号70の19番目のアミノ酸残基にアライメントする突然変異型残基、例えば、フェニルアラニン(F)(本明細書において、L19Fと称される)、配列番号70の59番目のアミノ酸残基にアライメントする突然変異型残基、例えば、スレオニン(T)、グリシン(G)、グルタミン酸(E)、もしくはセリン(S)(本明細書において、それぞれ、A59T、A59G、A59E、もしくはA59Sと称される)、配列番号70の60番目のアミノ酸残基にアライメントする突然変異型残基、例えば、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、バリン(V)、もしくはアルギニン(R)(本明細書において、それぞれ、G60D、G60E、G60V、もしくはG60Rと称される)、配列番号70の117番目のアミノ酸残基にアライメントする突然変異型残基、例えば、アスパラギン(N)もしくはR(本明細書において、それぞれ、K117NもしくはK117Rと称される)、配列番号70の146番目のアミノ酸残基にアライメントする突然変異型残基、例えば、T、V、もしくはプロリン(P)(本明細書において、それぞれ、A146T、A146V、もしくはA146Pと称される)、配列番号70の12番目のアミノ酸残基にアライメントする突然変異型残基、例えば、D、アラニン(A)、システイン(C)、R、S、もしくはV(本明細書において、それぞれ、G12D、G12A、G12C、G12R、G12S、もしくはG12Vと称される)、配列番号70の13番目のアミノ酸残基にアライメントする突然変異型残基、例えば、D、A、C、R、S、もしくはV(本明細書において、それぞれ、G13D、G13A、G13C、G13R、G13S、もしくはG13Vと称される)、または配列番号70の61番目のアミノ酸残基にアライメントする突然変異型残基、例えば、ヒスチジン(H)、E、リシン(K)、ロイシン(L)、P、もしくはR(本明細書において、それぞれ、Q61H、Q61E、Q61K、Q61L、Q61P、もしくはQ61Rと称される)。一部の実施形態では、ペプチドのそれぞれは、以下の突然変異を含む:配列番号70の12番目のアミノ酸残基にアライメントするD(G12D)、配列番号70の13番目のアミノ酸残基にアライメントするD(G13D);配列番号70の19番目のアミノ酸残基にアライメントするF(L19F);配列番号70の59番目のアミノ酸残基にアライメントするT(A59T);配列番号70の60番目のアミノ酸残基にアライメントするD(G60D);配列番号70の61番目のアミノ酸残基にアライメントするH(Q61H);配列番号70の117番目のアミノ酸残基にアライメントするN(K117N);または配列番号70の146番目のアミノ酸残基にアライメントするT(A146T)。さらなる実施形態では、ペプチドは、互いに異なる、すなわち、異なる突然変異を含む。cDNAクローンに基づいて、BepiPred線形エピトープ予測アルゴリズムを使用して、標的として有望なエピトープであり得る8つの短いペプチド断片を選択した。選択した短いペプチドは、25個のアミノ酸残基の長さであり、突然変異型アミノ酸残基が、中央の位置(アミノ酸残基13)を占有している。これらの短いペプチド配列に基づいて、対応するmRNA配列を設計した。
【0232】
別の実施形態では、1つ、または2つ、または3つ、または4つ、または5つ、または6つ、または7つ、または8つのhras由来のペプチドをコードするmRNA配列が提供される。一部の実施形態では、mRNAは、4つの由来するペプチドをコードし、ペプチドは、以下の4つの突然変異を含む:
配列番号70の12番目のアミノ酸残基にアライメントする突然変異型残基、例えば、D、A、C、R、S、またはV(本明細書において、それぞれ、G12D、G12A、G12C、G12R、G12S、またはG12Vと称される)、
配列番号70の13番目のアミノ酸残基にアライメントする突然変異型残基、例えば、D、C、R、S、またはV(本明細書において、それぞれ、G13D、G13C、G13R、G13S、またはG13Vと称される)、
配列番号70の61番目のアミノ酸残基にアライメントする突然変異型残基、例えば、H、K、L、P、またはR(本明細書において、それぞれ、Q61H、Q61K、Q61L、Q61P、またはQ61Rと称される)、および
配列番号70の117番目のアミノ酸残基にアライメントする突然変異型残基、例えば、N(本明細書において、K117Nと称される)。
【0233】
別の実施形態では、1つ、または2つ、または3つ、または4つ、または5つ、または6つ、または7つ、または8つのnras由来のペプチドをコードするmRNA配列が提供される。一部の実施形態では、mRNAは、4つの由来するペプチドをコードし、ペプチドは、以下の4つの突然変異を含む:
配列番号70の12番目のアミノ酸残基にアライメントする突然変異型残基、例えば、D、A、C、R、S、またはV(本明細書において、それぞれ、G12D、G12A、G12C、G12R、G12S、またはG12Vと称される)、
配列番号70の13番目のアミノ酸残基にアライメントする突然変異型残基、例えば、D、A、C、R、S、またはV(本明細書において、それぞれ、G13D、G13A、G13C、G13R、G13S、またはG13Vと称される)、
配列番号70の13番目のアミノ酸残基にアライメントする突然変異型残基、例えば、D、C、R、S、またはV(本明細書において、それぞれ、G13D、G13C、G13R、G13S、またはG13Vと称される)、
配列番号70の60番目のアミノ酸残基にアライメントする突然変異型残基、例えば、E、V、またはR(本明細書において、それぞれ、G60E、G60V、またはG60Rと称される)、および
配列番号70の61番目のアミノ酸残基にアライメントする突然変異型残基、例えば、H、E、K、L、P、またはR(本明細書において、それぞれ、Q61H、Q61E、Q61K、Q61L、Q61P、またはQ61Rと称される)。
【0234】
本明細書の説明において、配列番号70は、ras突然変異を特定する際に参照配列として使用されている。しかしながら、当業者であれば、配列番号70に記載される配列を、別のrasポリペプチドとアライメントすることができ、他のrasポリペプチドを参照配列として使用して、本明細書において開示されるras突然変異を特定することができる。例えば、配列番号70、101、103、および104に記載される配列間でのアライメントを、www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo/でアクセス可能なClustal Omegaを使用してデフォルトの設定で行った。結果を、
図14に提供する。配列を、1番目のアミノ酸残基から175番目のものまで、互いにアライメントした。したがって、本明細書において開示される突然変異は、配列番号70を参照することによって、または代替的には、配列番号101、103、もしくは104のうちのいずれか1つによって、指定されるアミノ酸番号を変更することなく、特定することができる。
【0235】
別の実施形態では、8つのkras突然変異、4つのhras突然変異、および4つの異なるnras突然変異に対応する16個のペプチドをコードする、mRNA配列が提供される。
【0236】
従来的なmRNAに基づくワクチンの他に、自己増幅型mRNA(SAM)ワクチンが、開発されている。SAMワクチンは、宿主細胞の転写系を使用して、適応免疫を刺激する標的抗原を産生する。SAMワクチンは、同じネオ抗原セットをコードする。SAMワクチンは、高レベルで抗原を発現し得る。
【0237】
適切な改変および最適化、ならびに十分に定義された送達担体および投与経路により、汎ras mRNAワクチンは、マウスおよび非ヒト霊長類(NHP)の両方のモデルにおいて、改善された安定性、増加した翻訳効率、および増強された免疫原性を示す。
【0238】
一態様では、1つまたは複数のras由来のペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる、リボ核酸(RNA)が提供される。一部の実施形態では、1つまたは複数のras由来のペプチドのそれぞれは、23~29個のアミノ酸残基からなる。さらなる実施形態では、1つまたは複数のras由来のペプチドのそれぞれは、約25個のアミノ酸残基からなる。一部の実施形態では、コードされるペプチドは、配列番号1~69に記載される群またはそれらのそれぞれの同等物から選択される。一部の実施形態では、ras由来のペプチドは、kras由来のペプチド、例えば、配列番号1~31に記載されるもの、またはそれらのそれぞれの同等物から選択される。一部の実施形態では、ras由来のペプチドは、nras由来のペプチド、例えば、配列番号32~52に記載されるもの、またはそれらのそれぞれの同等物から選択される。一部の実施形態では、ras由来のペプチドは、hras由来のペプチド、例えば、配列番号53~69に記載されるもの、またはそれらのそれぞれの同等物から選択される。一部の実施形態では、ras由来のペプチドは、配列番号1~18、32~49、または53~68のうちのいずれか1つまたは複数を含まない。追加として、または代替的に、ras由来のペプチドは、配列番号19~31、50~52、または69に記載される群から選択される。一部の実施形態では、配列番号1~69のいずれか1つの同等物は、配列番号1~69のうちの1つの突然変異を保持する。
【0239】
rasネオ抗原のペプチド配列:
KRAS
配列番号1 G12C:mteyklvvvgacgvgksaltiqliq
配列番号2 G12A:mteyklvvvgaagvgksaltiqliq
配列番号3 G12D:mteyklvvvgadgvgksaltiqliq
配列番号4 G12R:mteyklvvvgargvgksaltiqliq
配列番号5 G12S:mteyklvvvgasgvgksaltiqliq
配列番号6 G12V:mteyklvvvgavgvgksaltiqliq
配列番号7 G13C:mteyklvvvgagcvgksaltiqliq
配列番号8 G13A:mteyklvvvgagavgksaltiqliq
配列番号9 G13D:mteyklvvvgagdvgksaltiqliq
配列番号10 G13R:mteyklvvvgagrvgksaltiqliq
配列番号11 G13S:mteyklvvvgagsvgksaltiqliq
配列番号12 G13V:mteyklvvvgagvvgksaltiqliq
配列番号13 Q61E:etclldildtageeeysamrdqymr
配列番号14 Q61H:etclldildtagheeysamrdqymr
配列番号15 Q61K:etclldildtagkeeysamrdqymr
配列番号16 Q61L:etclldildtagleeysamrdqymr
配列番号17 Q61P:etclldildtagpeeysamrdqymr
配列番号18 Q61R:etclldildtagreeysamrdqymr
配列番号19 A146T:qdlarsygipfietstktrqrvedafytlv
配列番号20 A146V:qdlarsygipfietsvktrqrvedafytlv
配列番号21 A146P:qdlarsygipfietspktrqrvedafytlv
配列番号22 G60D:getclldildtadqeeysamrdqym
配列番号23 G60V:getclldildtavqeeysamrdqym
配列番号24 G60R:getclldildtarqeeysamrdqym
配列番号25 K117N:dsedvpmvlvgnncdlpsrtvdtkq
配列番号26 K117R:dsedvpmvlvgnrcdlpsrtvdtkq
配列番号27 A59T:dgetclldildttgqeeysamrdqy
配列番号28 A59G:dgetclldildtggqeeysamrdqy
配列番号29 A59E:dgetclldildtegqeeysamrdqy
配列番号30 A59S:dgetclldildtsgqeeysamrdqy
配列番号31 L19F:vvvgaggvgksaftiqliqnhfvde
NRAS
配列番号32 Q61R:etclldildtagreeysamrdqymr
配列番号33 Q61K:etclldildtagkeeysamrdqymr
配列番号34 Q61L:etclldildtagleeysamrdqymr
配列番号35 Q61H:etclldildtagheeysamrdqymr
配列番号36 Q61P:etclldildtagpeeysamrdqymr
配列番号37 Q61E:etclldildtageeeysamrdqymr
配列番号38 G12D:mteyklvvvgadgvgksaltiqliq
配列番号39 G12A:mteyklvvvgaagvgksaltiqliq
配列番号40 G12C:mteyklvvvgacgvgksaltiqliq
配列番号41 G12R:mteyklvvvgargvgksaltiqliq
配列番号42 G12S:mteyklvvvgasgvgksaltiqliq
配列番号43 G12V:mteyklvvvgavgvgksaltiqliq
配列番号44 G13C:mteyklvvvgagcvgksaltiqliq
配列番号45 G13A:mteyklvvvgagavgksaltiqliq
配列番号46 G13D:mteyklvvvgagdvgksaltiqliq
配列番号47 G13R:mteyklvvvgagrvgksaltiqliq
配列番号48 G13S:mteyklvvvgagsvgksaltiqliq
配列番号49 G13V:mteyklvvvgagvvgksaltiqliq
配列番号50 G60E:getclldildtaeqeeysamrdqym
配列番号51 G60R:getclldildtarqeeysamrdqym
配列番号52 G60V:getclldildtavqeeysamrdqym
HRAS
配列番号53 Q61R:etclldildtagreeysamrdqymr
配列番号54 Q61H:etclldildtagheeysamrdqymr
配列番号55 Q61K:etclldildtagkeeysamrdqymr
配列番号56 Q61L:etclldildtagleeysamrdqymr
配列番号57 Q61P:etclldildtagpeeysamrdqymr
配列番号58 G13R:mteyklvvvgagrvgksaltiqliq
配列番号59 G13C:mteyklvvvgagcvgksaltiqliq
配列番号60 G13D:mteyklvvvgagdvgksaltiqliq
配列番号61 G13S:mteyklvvvgagsvgksaltiqliq
配列番号62 G13V:mteyklvvvgagvvgksaltiqliq
配列番号63 G12V:mteyklvvvgavgvgksaltiqliq
配列番号64 G12A:mteyklvvvgaagvgksaltiqliq
配列番号65 G12C:mteyklvvvgacgvgksaltiqliq
配列番号66 G12D:mteyklvvvgadgvgksaltiqliq
配列番号67 G12R:mteyklvvvgargvgksaltiqliq
配列番号68 G12S:mteyklvvvgasgvgksaltiqliq
配列番号69 K117N:dsddvpmvlvgnncdlaartvesrq
汎RAS
配列番号70 G12D、G13D、L19F、A59T、G60D、Q61H、K117N、A146T:
【化9】
【0240】
一部の実施形態では、ras由来のペプチドのそれぞれは、単一のORFによってコードされ得る。他の実施形態では、ras由来のペプチドは、1つを上回るORF、例えば、2つのORF、3つのORF、または4つのORF、またはそれよりも多くのORFによってコードされ得る。
【0241】
一部の実施形態では、ORFは、配列番号70に記載されるポリペプチド、またはその同等物をコードする。一部の実施形態では、配列番号70の同等物は、以下の突然変異を保持する:配列番号70の12番目のアミノ酸残基にアライメントするD(G12D)、配列番号70の13番目のアミノ酸残基にアライメントするD(G13D);配列番号70の19番目のアミノ酸残基にアライメントするF(L19F);配列番号70の59番目のアミノ酸残基にアライメントするT(A59T);配列番号70の60番目のアミノ酸残基にアライメントするD(G60D);配列番号70の61番目のアミノ酸残基にアライメントするH(Q61H);配列番号70の117番目のアミノ酸残基にアライメントするN(K117N);および配列番号70の146番目のアミノ酸残基にアライメントするT(A146T)。
【0242】
一部の実施形態では、ORFは、
【化10】
【化11】
に記載されるポリヌクレオチド、または配列番号88のヌクレオチド(nt)1~nt612、または同じras由来のペプチドをコードするそのそれぞれの同等物を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。
【0243】
一部の実施形態では、ORFは、2つまたはそれよりも多くの(例えば、2つ、または3つ、または4つ、または5つ、または6つ、または7つ、または8つ、または9つ、または10個、またはそれよりも多くの)ras由来のペプチド、ならびに必要に応じて、任意の2つの隣接するras由来のペプチドの間のペプチドリンカーを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなるポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、リンカーは、ランダムなアミノ酸の約1個のaa~約200個のaa(この範囲内の任意の整数または部分範囲を含む)を含むペプチドを含むか、またはそれから本質的になるか、またはさらにはそれからなる。一部の実施形態では、リンカーは、配列番号83~85のうちのいずれか1つに記載されるペプチドを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。追加として、または代替的に、リンカーは、切断性ペプチド、例えば、自己切断性ペプチドを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。
【0244】
一部の実施形態では、コードされる1つまたは複数のras由来のペプチドは、配列番号70の12番目のアミノ酸残基にアライメントする野生型残基(すなわち、非突然変異型残基、例えば、グリシン(G))もしくは配列番号70の13番目のアミノ酸残基にアライメントする野生型残基(すなわち、非突然変異型残基、例えば、G)、またはその両方を含む。
【0245】
一部の実施形態では、ORFは、さらに、シグナルペプチドをコードする。さらなる実施形態では、シグナルペプチドは、ras由来のペプチドのN末端に位置し、例えば、ras由来のペプチドのN末端に直接的または間接的にコンジュゲートされている。一部の実施形態では、単一のペプチドは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、またはアルブミン、またはインターロイキン-2(IL-2)の表面糖タンパク質のものであるか、またはそれに由来する。一部の実施形態では、シグナルペプチドは、MFVFLVLLPLVSSQC(配列番号87)を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。一部の実施形態では、シグナルペプチドは、MYRMQLLSCIALSLALVTNS(配列番号86)を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。
【0246】
一部の実施形態では、RNAは、3’-UTRおよび5’-UTRをさらに含む。一部の実施形態では、RNAは、RNAを安定させ、ORFによってコードされるペプチドの発現を増強させる、1つまたは複数の追加のエレメントをさらに含む。
【0247】
一部の実施形態では、5’-UTRは、m7Gキャップ構造および開始コドンを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれを含む。一部の実施形態では、5’-UTRは、
【化12】
またはその同等物を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれを含む。
【0248】
一部の実施形態では、3’-UTRは、終止コドンおよびポリA尾部を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれを含む。一部の実施形態では、3’-UTRは、
【化13】
またはその同等物を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。
【0249】
一部の実施形態では、RNAは、RNAをコードするポリヌクレオチドをin vitro転写(IVT)系において転写することによって調製される。一部の実施形態では、RNAは、RNAをコードするプラスミドDNA(pDNA)ベクターを転写することによって調製される。一部の実施形態では、ベクターは、pUC57、またはpSFV1、またはpcDNA3、またはpTK126である。一部の実施形態では、ベクターは、
【化14】
【化15】
【化16】
またはその同等物を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。一部の実施形態では、配列番号91の同等物は、依然として、ras由来のペプチドを発現する。
【0250】
一部の実施形態では、RNAは、メッセンジャーRNA(mRNA)である。
【0251】
一部の実施形態では、全長RNAのGC含有量は、総RNA含有量の約35%~約70%(この範囲内の任意のパーセンテージまたは任意の部分範囲を含む)、例えば、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、または約70%である。
【0252】
一部の実施形態では、RNAは、化学的に修飾されている。一部の実施形態では、化学的修飾は、N1-メチル-シュードウリジン残基またはシュードウリジン残基のうちの一方または両方の組込みを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。一部の実施形態では、RNAにおけるウリジン残基のうちの少なくとも約50%~約100%が、N1-メチルシュードウリジンまたはシュードウリジンである。一部の実施形態では、RNAの残基のうちの少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれよりも高いパーセンテージが、本明細書において開示される修飾のうちの1つまたは複数によって化学的に修飾されている。一部の実施形態では、RNAのウリジン残基のうちの少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれよりも高いパーセンテージが、本明細書において開示される修飾のうちの1つまたは複数によって化学的に修飾されている。一部の実施形態では、RNAのウリジン残基のうちの少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれよりも高いパーセンテージが、N1-メチルシュードウリジンまたはシュードウリジンである。
【0253】
一部の実施形態では、ウリジン残基のうちのすべてまたは一部が、in vitro転写の間にシュードウリジンによって置き換えられる。この修飾は、mRNAを細胞における酵素分解に対して安定なものにし、mRNAの翻訳効率の増強をもたらす。使用されるシュードウリジンは、N1-メチル-シュードウリジン、または当該技術分野において周知である他の修飾、例えば、N6m-エチルアデノシン(m6A)、イノシン、シュードウリジン、5-メチルシチジン(m5C)、5-ヒドロキシメチルシチジン(hm5C)、およびN1-メチルアデノシン(m1A)であり得る。修飾は、必要に応じて、mRNA全体にわたって行われる。当業者であれば、他の修飾されたRNA残基を使用して、タンパク質の3次元構造を安定させ、タンパク質翻訳を増加させることができることを認識するであろう。
【0254】
本明細書において開示されるRNAをコードするポリヌクレオチド、またはそれに相補的なポリヌクレオチド、またはその両方が、さらに提供される。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)、RNA、DNAおよびRNAのハイブリッド、またはそれらのそれぞれのアナログの群から選択される。さらなる実施形態では、アナログは、ペプチド核酸もしくはロックド核酸、またはその両方を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。
【0255】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、その転写を誘導する調節配列をさらに含む。一部の実施形態では、調節配列は、in vitro転写系において使用するのに好適である。さらなる実施形態では、調節配列は、プロモーターを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。なおもさらなる実施形態では、プロモーターは、バクテリオファージRNAポリメラーゼプロモーター、例えば、T7プロモーター、またはSP6プロモーター、またはT3プロモーターを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、検出可能なマーカー、精製マーカー、または選択マーカーから選択されるマーカーを含む。
【0256】
さらなる態様では、本明細書において開示されるポリヌクレオチドを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる、ベクターが提供される。
【0257】
一部の実施形態では、ベクターは、その転写を誘導するようにポリヌクレオチドに作動可能に連結された調節配列をさらに含む。一部の実施形態では、調節配列は、in vitro転写系において使用するのに好適である。さらなる実施形態では、調節配列は、プロモーターを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。なおもさらなる実施形態では、プロモーターは、バクテリオファージRNAポリメラーゼプロモーター、例えば、T7プロモーター、またはSP6プロモーター、またはT3プロモーターを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。一部の実施形態では、ベクターは、検出可能なマーカー、精製マーカー、または選択マーカーから選択されるマーカーをさらに含む。
【0258】
一部の実施形態では、ベクターは、その複製を誘導するようにポリヌクレオチドに作動可能に連結された調節配列をさらに含む。さらなる実施形態では、調節配列は、以下の:複製起点もしくはプライマーアニーリング部位、プロモーター、またはエンハンサーのうちの1つまたは複数を含むか、または代替的にはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。
【0259】
一部の実施形態では、ベクターは、非ウイルスベクターである。さらなる実施形態では、非ウイルスベクターは、プラスミド、またはリポソーム、またはミセルである。一部の実施形態では、ベクターは、pUC57、またはpSFV1、またはpcDNA3、またはpTK126、またはaddgeneもしくはStandard European Vector Architecture(SEVA)において入手可能な別のプラスミドである。一部の実施形態では、ベクターは、配列番号91またはその同等物を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。一部の実施形態では、配列番号91の同等物は、依然として、ras由来のペプチドを発現する。
【0260】
一部の実施形態において、ベクターは、ウイルスベクターである。さらなる実施形態では、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、またはアデノ随伴ウイルスベクター、またはレトロウイルスベクター、またはレンチウイルスベクター、または植物ウイルスベクターからなる群から選択される。
【0261】
なおもさらなる態様では、本明細書において開示されるRNA、本明細書において開示されるポリヌクレオチド、または本明細書において開示されるベクターのうちの1つまたは複数を含む細胞が提供される。一部の実施形態では、細胞は、RNA、ポリヌクレオチド、またはベクターのうちのいずれか1つまたは複数を複製し、それによって、RNA、ポリヌクレオチド、またはベクターのうちの1つまたは複数を産生するのに好適である。一部の実施形態では、細胞は、ポリヌクレオチドまたはベクターをRNAに転写し、それによって、RNAを産生するのに好適である。
【0262】
一部の実施形態では、細胞は、原核生物細胞である。さらなる実施形態では、原核生物細胞は、Escherichia coli細胞である。
【0263】
一部の実施形態では、細胞は、真核生物細胞である。さらなる実施形態では、真核生物細胞は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、または酵母細胞のうちのいずれか1つである。
【0264】
一部の実施形態では、本明細書において開示される細胞は、本明細書において開示されるRNAを産生する(例えば、転写または発現する)のに好適である。そのような産生は、in vivoであってもin vitroであってもよい。例えば、細胞は、RNAをin vitroで産生するために使用することができる。そのようなRNAは、次いで、必要に応じて好適な薬学的に許容される担体とともに、それを必要とする対象に投与される。代替的には、細胞は、細胞療法として使用することができ、必要に応じて好適な薬学的に許容される担体とともに、それを必要とする対象に直接的に投与される。さらなる実施形態では、細胞療法は、追加として、他の予防用または治療用薬剤を対象に送達することができる。一部の実施形態では、細胞療法として使用される細胞は、免疫細胞、例えば、T細胞、B細胞、NK細胞、NKT細胞、樹状細胞、骨髄系細胞、単球、またはマクロファージである。
【0265】
一態様では、担体と、本明細書において開示されるRNA、本明細書において開示されるポリヌクレオチド、本明細書において開示されるベクター、または本明細書において開示される細胞のうちの1つまたは複数とを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる、組成物が提供される。一部の実施形態では、担体は、薬学的に許容される担体である。一部の実施形態では、組成物は、追加の抗がん療法をさらに含む。追加として、または代替的に、組成物は、アジュバントをさらに含む。
【0266】
さらなる態様では、RNA、例えば、本明細書において開示されるものを産生する方法が提供される。一部の実施形態では、本方法は、本明細書において開示される細胞を、RNAを発現する(例えば、DNAをRNAに転写する)のに好適な条件下において培養するステップを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。一部の実施形態では、細胞は、本開示のRNAをコードするDNAを含む。一部の実施形態では、本方法は、本明細書において開示されるポリヌクレオチドまたは本明細書において開示されるベクターを、RNAを発現する(例えば、DNAをRNAに転写する)のに好適な条件下において、RNAポリメラーゼ、アデノシン三リン酸(ATP)、シチジン三リン酸(CTP)、グアノシン-5’-三リン酸(GTP)、およびウリジン三リン酸(UTP)または化学的に修飾されたUTPと接触させるステップを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。一部の実施形態では、本方法は、RNAを単離するステップをさらに含む。一部の実施形態では、本方法は、RNAを保管するステップをさらに含む。
【0267】
なおもさらなる態様では、本明細書において開示される方法によって産生されるRNA、または産生されたRNAを含むか、もしくはそれから本質的になるか、もしくはなおもさらにはそれからなる組成物が提供される。
mRNAワクチン発現効率を改善する
【0268】
哺乳動物細胞におけるmRNAワクチン発現効率を改善するために、mRNA安定性を、部分的化学的修飾によって増強させることができる。翻訳効率をさらに増加させるために、異常なRNAポリメラーゼ活性に由来する短い二本鎖RNAを除去する。mRNAワクチンの効力を改善するために、配列最適化を、修飾されたヌクレオシド、例えば、シュードウリジン(φ)、5-メチルシチジン(5mC)、Cap-1構造および最適化コドンの使用と一緒に使用し、これによって、翻訳効率を改善することができる。mRNAのin vitro転写中に、未成熟mRNAが、自然免疫活性化の刺激を通じて翻訳を阻害する混入物質として、産生され得る。FPLCおよびHPLC精製を使用して、これらの混入物質を除去することができる。
【0269】
本明細書において提示される組成物において、mRNAのin vitro転写の鋳型は、5つのシス活性化構造エレメント、すなわち、5’末端から3’末端の方向で、(i)最適化されたキャップ構造、(ii)最適化された5’非翻訳領域(UTR)、(iii)コドン最適化されたコーディング配列、(iv)最適化された3’UTR、および(v)アデニンヌクレオチドがリピートされるストレッチ(ポリA尾部)を含む(
図5)。これらのシス作用構造エレメントは、より良好なmRNA特性が得られるように、さらに最適化される。本明細書において提供される5’-UTRは、開始コドンおよびいくつかの他のエレメントを含むが、ポリペプチドをコードしない(すなわち、非コーディングである)。一部の実施形態では、本開示の5’-UTRは、7-メチルグアノシン(7mG)配列を有するキャップ構造を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。3’-UTRは、終止コドン(終止シグナルを表すmRNA転写産物のコドン)のすぐ下流(3’)にあり、ポリペプチドをコードしない(非コーディングである)。ポリA尾部は、3’-UTRの下流にあり、複数の連続的なアデノシン一リン酸を含む、mRNAの特別な領域である。
【0270】
典型的なmRNA産生カセットは、その5’-UTR領域におけるキャップ構造、続いて、対応するタンパク質またはペプチドをコードするインフレームmRNA配列を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。一部の実施形態では、ポリA尾部を有する3’-UTRが、効率的なmRNA産生に必要とされる。一部の実施形態では、発現カセットは、mRNA産生の効率のためだけでなく、後続のタンパク質またはペプチド産生のためにも使用される(
図5)。
【0271】
一部の実施形態では、mRNAは、バクテリオファージプロモーター、最適化されたUTR、およびコドン最適化された配列を含む線形DNA鋳型から、RNAポリメラーゼ(T7、T3、またはSP6)および異なるヌクレオシドの混合物を使用して、in vitro転写(IVT)によって産生される。他の実施形態では、線形DNA鋳型は、送達ベクターとしてプラスミドDNA(pDNA)にクローニングされ得る。プラスミドベクターは、mRNAワクチン産生に適合され得る。一般に使用されるプラスミドとしては、pSFV1、pcDNA3、およびpTK126(
図6)が挙げられる。1つの固有のmRNA発現系は、pEVLである(Grier et al. Mol Ther Nucleic Acids. 19;5:e306 (2016), "pEVL: A Linear Plasmid for Generating mRNA IVT Templates With Extended Encoded Poly(A) Sequences"を参照されたく、この開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0272】
一部の実施形態では、ワクチンは、rasネオ抗原もしくは他のネオ抗原のうちの1つもしくは複数をコードするオープンリーディングフレームを含むか、もしくはそれから本質的になるか、もしくはなおもさらにはそれからなる有効量のmRNAと、薬学的に許容される担体とを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。有効量は、対象において、ネオ抗原特異的、例えば、ras特異的な免疫応答を誘導するのに有効な量である。一実施形態では、担体は、ポリマーナノ粒子またはリポソームナノ粒子を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。一部の実施形態では、担体は、ヒスチジン-リシン-コポリマーまたはスペルミン-リポソームコンジュゲートである。一部の実施形態では、担体は、DOTAPもしくはMC3またはその両方をさらに含む。
【0273】
一部の実施形態では、ワクチンは、自己切断性2Aペプチド部位によって分離された複数のネオ抗原をコードするオープンリーディングフレーム、ネオ抗原を膜内に組み込むため、および/または異なるシグナル配列、例えば、アルブミンシグナル配列を使用して分泌させるためのシグナル配列を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる、有効量のmRNAを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。
mRNAワクチン送達系としてのヒスチジン-リシン(HK)ポリペプチド
【0274】
mRNAワクチンの合理的な設計およびそれらの作用機序の解明に関する過去数年間の著しい進化にもかかわらず、偏在性リボヌクレアーゼ(RNases)の存在、ならびに細胞内へのワクチンの進入およびそれに続くエンドソームからの排出を促進し、ワクチンをリンパ系器官または特定の細胞へと標的化することの必要性によって、それらの広範な適用は限定されている。例えば、Midoux and Pichon, Expert Rev Vaccines. 2015; 14(2): 221-34を参照されたい。化学的担体を用いたmRNA製剤は、より良好な免疫応答および用量低減のために、樹状細胞(DC)におけるさらなる特異性および内部移行を提供する。
【0275】
非ウイルス送達系は、ウイルス送達系よりも有利である。例えば、Brito et al. Adv Genet. 2015; 89: 179-233を参照されたい。1つの非限定的な例は、非ウイルス方法が、それらの安全性および費用対効果に関してウイルス送達系よりも好ましいことである。例えば、Juliano et al. Nucleic Acids Res. 2008; 36: 4158-4171を参照されたい。ワクチンの送達のための非ウイルス方法としては、ネイキッドmRNAワクチン、遺伝子銃、プロタミン縮重、アジュバントに基づくワクチン、および封入されたmRNAワクチンが挙げられる。陽方向RNAウイルス、アルファウイルスは、ウイルス送達系に使用され得る。アルファウイルスの糖タンパク質(E1およびE2)は、宿主におけるエンドソーム排出および細胞標的化のために使用され得る。ウイルスまたは非ウイルス媒介方法による直接的な送達に加えて、ex vivoトランスフェクトされたmRNAが、ネイキッドmRNAワクチン接種の代替法である。この方法では、mRNAは、投与の前に、単球、マクロファージ、T細胞、樹状細胞(DC)、および間葉幹細胞(MSC)にトランスフェクトされ、例えば、Sahin et al., Nat Rev Drug Discov. 2014; 13: 759-780を参照されたい。最適な発現のみを提供するネイキッドmRNAワクチン接種と比較して、強力な免疫応答が、ex vivoでトランスフェクトされたmRNAワクチン接種によって誘導され得る。
【0276】
本明細書に記載されるように、一連の分岐鎖ヒスチジン-リシン(HK)ポリペプチド(HKP)は、静電作用によってmRNAを封入するために適用され得る。本明細書において使用されるHKPは、ヒスチジンおよびリシン残基からなる線形および分岐鎖のペプチドの群であり、これらのペプチドは、ほとんどの場合、核酸と混合されると、球形ナノ粒子を形成する。そのようなポリペプチドは、2006年7月4日に発行された米国特許第7,070,807号B2および2007年1月16日に発行された米国特許第7,163,695号B2において開示されている。これらの特許のそれぞれの開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。他の担体と同様に、HKP担体は、様々な核酸を運搬するそれらの能力が異なる。例えば、4分岐のHKペプチド(H2K4b)は、プラスミドの良好な担体である(例えば、Chen, et al., Nucleic Acids Res. 2001; 29: 1334-1340およびZhang et al., Methods Mol Biol. 2004; 245: 33-52を参照されたい)が、siRNAの担体としては不良である。加えて、H3K4b、H3K(+H)4b、およびH3K8bは、siRNAの優れた担体である(例えば、Leng et al., J Gene Med. 2005;7: 977-986を参照されたい)が、H3K(+H)4bのみが、標的とされる細胞内にmRNAを運搬することにおいて有効性を示している。(
図8を参照されたい)さらに、H3K(+H)4bは、DOTAPリポソームよりも有効なmRNAの担体である。加えて、H3K(+H)4b、MC3、および/またはDOTAPの送達担体の組合せを、本明細書に記載されるように使用して、mRNA送達の有効性を増強することができる。本明細書に記載される結果は、H3k(+H)4b、MC3、および/またはDOTAPの組合せが、mRNAのもっとも有効な担体であったことを示した。この組合せは、mRNAを細胞内に運搬するその能力に関して、相乗的であった(
図8~12)。
製剤化および関連する方法
【0277】
したがって、一態様では、薬学的に許容される担体において製剤化された、例えば、有効量の、本明細書において開示されるRNAを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる、組成物(例えば、免疫原性組成物)が提供される。一部の実施形態では、組成物は、RNAおよび薬学的に許容される担体を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。
【0278】
一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、ナノ粒子を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。一部の実施形態では、ナノ粒子は、ポリマーナノ粒子もしくはリポソームナノ粒子、またはその両方である。一部の実施形態では、ナノ粒子は、脂質ナノ粒子(LNP)である。一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、ポリマーナノ粒子もしくはリポソームナノ粒子またはその両方を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。
【0279】
一部の実施形態では、ポリマーナノ粒子担体は、ヒスチジン-リシンコポリマー(HKP)を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。さらなる実施形態では、HKPは、H3K(+H)4bを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。なおもさらなる実施形態では、HKPは、H3k(+H)4bを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。一部の実施形態では、HKPは、配列番号72~81から選択される側鎖を含む。
【0280】
一部の実施形態では、組成物中のHKPおよびRNAの質量比は、約10:1~約1:10、例えば、それらの間の任意の範囲または比、例えば、約5:1~1:5、約5:1~1:1、約10:1、約9.5:1、約9:1、約8.5:1、約8:1、約7.5:1、約7:1、約6.5:1、約6:1、約5.5:1、約5:1、約4.5:1、約4:1、約3.5:1、約3:1、約2:5:1、約2:1、約1.5:1、約1:1、約1:1.5、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:3.5、約1:4、約1:4.5、約1:5、約1:5.5、約1:6、約1:6.5、約1:7、約1:7.5、約1:8、約1:8.5、約1:9、約1:9.5、または約1:10である。一実施形態では、組成物中のHKPおよびRNAの質量比は、約2.5:1である。別の実施形態では、組成物中のHKPおよびRNAの質量比は、約4:1である。
【0281】
一部の実施形態では、ポリマーナノ粒子担体は、脂質をさらに含む。さらなる実施形態では、脂質は、カチオン性脂質である。なおもさらなる実施形態では、カチオン性脂質は、イオン化可能である。
【0282】
一部の実施形態では、カチオン性脂質は、Dlin-MC3-DMA(MC3)もしくはジオレオイルオキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)、またはその両方を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。
【0283】
一部の実施形態では、脂質は、ヘルパー脂質、コレステロール、またはPEG化脂質のうちの1つまたは複数をさらに含む。一部の実施形態では、脂質は、PLAまたはPLGAをさらに含む。
【0284】
一部の実施形態では、HKPおよびmRNAは、混合時にナノ粒子へと自己アセンブルする。
【0285】
一部の実施形態では、リポソームナノ粒子担体は、スペルミン-脂質コレステロール(SLiC)を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。さらなる実施形態では、SLiCは、TM1~TM5からなる群から選択され、それらの構造は、
図13に図示されている。
【0286】
一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、脂質ナノ粒子(LNP)である。一部の実施形態では、脂質は、カチオン性脂質である。さらなる実施形態では、カチオン性脂質は、イオン化可能である。一部の実施形態では、LNPは、9-ヘプタデカニル8-{(2-ヒドロキシエチル)[6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル]アミノ}オクタノエート(SM-102)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、ジリノレイル-メチル-4-ジメチルアミノブチレート(DLin-MC3-DMA)、ジ((Z)-ノナ-2-エン-1-イル)9-((4-(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)ヘプタデカンジオエート(L319)、またはこれらのそれぞれの同等物のうちの1つまたは複数を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。一部の実施形態では、LNPは、ヘルパー脂質、コレステロール、またはPEG化脂質のうちの1つまたは複数をさらに含む。
【0287】
一部の実施形態では、組成物中のLNPおよびRNAの質量比は、約10:1~約1:10、例えば、それらの間の任意の範囲または比、例えば、約5:1~1:5、約5:1~1:1、約10:1、約9.5:1、約9:1、約8.5:1、約8:1、約7.5:1、約7:1、約6.5:1、約6:1、約5.5:1、約5:1、約4.5:1、約4:1、約3.5:1、約3:1、約2:5:1、約2:1、約1.5:1、約1:1、約1:1.5、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:3.5、約1:4、約1:4.5、約1:5、約1:5.5、約1:6、約1:6.5、約1:7、約1:7.5、約1:8、約1:8.5、約1:9、約1:9.5、または約1:10である。一実施形態では、組成物中のLNPおよびRNAの質量比は、約2.5:1である。別の実施形態では、組成物中のLNPおよびRNAの質量比は、約4:1である。
【0288】
一部の実施形態では、ヘルパー脂質は、ジステロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、(2R)-3-(ヘキサデカノイルオキシ)-2-{[(9Z)-オクタデカ-9-エノイル]オキシ}プロピル2-(トリメチルアザニウミル)エチルホスフェート(POPC)、またはジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)のうちの1つまたは複数を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。
【0289】
一部の実施形態では、コレステロールは、植物性コレステロールもしくは動物性コレステロールまたはその両方を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。
【0290】
一部の実施形態では、PEG化脂質は、PEG-c-DOMG(R-3-[(ω-メトキシ-ポリ(エチレングリコール)2000)カルバモイル)]-1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-アミン)、PEG-DSG(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロール、メトキシポリエチレングリコール)、PEG-DMG(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール)、必要に応じて、PEG2000-DMG((1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000)]、またはPEG-DPG(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロール、メトキシポリエチレングリコール)のうちの1つまたは複数を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。
【0291】
一部の実施形態では、カチオン性脂質およびヘルパー脂質の質量比は、約10:1~約1:10、例えば、それらの間の任意の範囲または比、例えば、約5:1~1:5、約5:1~1:1、約10:1、約9.5:1、約9:1、約8.5:1、約8:1、約7.5:1、約7:1、約6.5:1、約6:1、約5.5:1、約5:1、約4.5:1、約4:1、約3.5:1、約3:1、約2:5:1、約2:1、約1.5:1、約1:1、約1:1.5、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:3.5、約1:4、約1:4.5、約1:5、約1:5.5、約1:6、約1:6.5、約1:7、約1:7.5、約1:8、約1:8.5、約1:9、約1:9.5、または約1:10である。一実施形態では、カチオン性脂質およびヘルパー脂質の質量比は、約1:1である。
【0292】
一部の実施形態では、カチオン性脂質およびコレステロールの質量比は、約10:1~約1:10、例えば、それらの間の任意の範囲または比、例えば、約5:1~1:5、約5:1~1:1、約10:1、約9.5:1、約9:1、約8.5:1、約8:1、約7.5:1、約7:1、約6.5:1、約6:1、約5.5:1、約5:1、約4.5:1、約4:1、約3.5:1、約3:1、約2:5:1、約2:1、約1.5:1、約1:1、約1:1.5、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:3.5、約1:4、約1:4.5、約1:5、約1:5.5、約1:6、約1:6.5、約1:7、約1:7.5、約1:8、約1:8.5、約1:9、約1:9.5、または約1:10である。一実施形態では、カチオン性脂質およびコレステロールの質量比は、約1:1である。
【0293】
一部の実施形態では、カチオン性脂質およびPEG化脂質の質量比は、約10:1~約1:10、例えば、それらの間の任意の範囲または比、例えば、約5:1~1:5、約5:1~1:1、約10:1、約9.5:1、約9:1、約8.5:1、約8:1、約7.5:1、約7:1、約6.5:1、約6:1、約5.5:1、約5:1、約4.5:1、約4:1、約3.5:1、約3:1、約2:5:1、約2:1、約1.5:1、約1:1、約1:1.5、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:3.5、約1:4、約1:4.5、約1:5、約1:5.5、約1:6、約1:6.5、約1:7、約1:7.5、約1:8、約1:8.5、約1:9、約1:9.5、または約1:10である。一実施形態では、カチオン性脂質およびPEG化脂質の質量比は、約1:1である。
【0294】
カチオン性脂質、ヘルパー脂質、コレステロール、およびPEG化脂質の質量比は、本明細書において開示されるカチオン性脂質およびヘルパー脂質、カチオン性脂質およびコレステロール、ならびにカチオン性脂質およびPEG化脂質の比に基づいて、当業者によって計算され得る。
【0295】
一部の実施形態では、LNPは、SM-102、DSPC、コレステロール、およびPEG2000-DMGを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。一部の実施形態では、SM-102、DSPC、コレステロール、およびPEG200-DMGの質量比は、約1:1:1:1である。一部の実施形態では、SM-102、DSPC、コレステロール、およびPEG2000-DMGのモル比は、約50:10:38.5:1.5である。
【0296】
一部の実施形態では、本明細書に提供される質量比は、別のパラメーター、例えば、モル比、総重量に対する重量パーセンテージ、総体積に対する成分の重量、または総モル量に対するモルパーセンテージで置き換えられてもよい。成分およびその分子量が判明していれば、当業者であれば、質量比をモル比または他の同等なパラメーターに変換することは困難ではないであろう。
【0297】
さらなる態様では、本明細書において開示される組成物を産生する方法が提供される。本方法は、本明細書において開示されるRNAを、HKPと接触させるステップを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなり、それによって、RNAおよびHKPが、ナノ粒子へと自己アセンブルする。
【0298】
一部の実施形態では、接触させるステップにおけるHKPおよびRNAの質量比は、約10:1~約1:10、例えば、それらの間の任意の範囲または比、例えば、約5:1~1:5、約5:1~1:1、約10:1、約9.5:1、約9:1、約8.5:1、約8:1、約7.5:1、約7:1、約6.5:1、約6:1、約5.5:1、約5:1、約4.5:1、約4:1、約3.5:1、約3:1、約2:5:1、約2:1、約1.5:1、約1:1、約1:1.5、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:3.5、約1:4、約1:4.5、約1:5、約1:5.5、約1:6、約1:6.5、約1:7、約1:7.5、約1:8、約1:8.5、約1:9、約1:9.5、または約1:10である。一実施形態では、接触させるステップにおけるHKPおよびRNAの質量比は、約2.5:1である。別の実施形態では、接触させるステップにおけるHKPおよびRNAの質量比は、約4:1である。
【0299】
一部の実施形態では、本方法は、HKPおよびRNAをカチオン性脂質と接触させるステップをさらに含む。さらなる実施形態では、カチオン性脂質は、Dlin-MC3-DMA(MC3)もしくはDOTAP(ジオレオイルオキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン)、またはその両方を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。なおもさらなる実施形態では、接触させるステップにおけるカチオン性脂質およびRNAの質量比は、約10:1~約1:10、例えば、それらの間の任意の範囲または比、例えば、約5:1~1:5、約5:1~1:1、約10:1、約9.5:1、約9:1、約8.5:1、約8:1、約7.5:1、約7:1、約6.5:1、約6:1、約5.5:1、約5:1、約4.5:1、約4:1、約3.5:1、約3:1、約2:5:1、約2:1、約1.5:1、約1:1、約1:1.5、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:3.5、約1:4、約1:4.5、約1:5、約1:5.5、約1:6、約1:6.5、約1:7、約1:7.5、約1:8、約1:8.5、約1:9、約1:9.5、または約1:10である。一実施形態では、接触させるステップにおけるRNAおよびカチオン性脂質の質量比は、約1:1である。したがって、接触させるステップにおけるHKP、RNA、およびカチオン性脂質の質量比は、HKPおよびRNAの比、ならびにRNAおよびカチオン性脂質の比に基づいて計算することができる。例えば、RNAに対するHKPの比が、約4:1であり、カチオン性脂質に対するRNAの比が約1:1である場合、カチオン性脂質に対するRNAに対するHKPの比は、約4:1:1である。
【0300】
なおもさらなる態様では、本明細書において開示される組成物を産生する方法が提供される。本方法は、本明細書において開示されるRNAを、脂質と接触させるステップを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなり、それによって、RNAおよび脂質が、脂質ナノ粒子(LNP)へと自己アセンブルする。
【0301】
一部の実施形態では、LNPは、9-ヘプタデカニル8-{(2-ヒドロキシエチル)[6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル]アミノ}オクタノエート(SM-102)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、ジリノレイル-メチル-4-ジメチルアミノブチレート(DLin-MC3-DMA)、ジ((Z)-ノナ-2-エン-1-イル)9-((4-(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)ヘプタデカンジオエート(L319)、またはこれらのそれぞれの同等物のうちの1つまたは複数を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。
【0302】
一部の実施形態では、LNPは、ヘルパー脂質、コレステロール、またはPEG化脂質のうちの1つまたは複数をさらに含む。一部の実施形態では、ヘルパー脂質は、ジステロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、(2R)-3-(ヘキサデカノイルオキシ)-2-{[(9Z)-オクタデカ-9-エノイル]オキシ}プロピル2-(トリメチルアザニウミル)エチルホスフェート(POPC)、またはジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)のうちの1つまたは複数を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。一部の実施形態では、コレステロールは、植物性コレステロールもしくは動物性コレステロールまたはその両方を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。一部の実施形態では、PEG化脂質は、PEG-c-DOMG(R-3-[(ω-メトキシ-ポリ(エチレングリコール)2000)カルバモイル)]-1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-アミン)、PEG-DSG(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロール、メトキシポリエチレングリコール)、PEG-DMG(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール)、必要に応じて、PEG2000-DMG((1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000)]、またはPEG-DPG(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロール、メトキシポリエチレングリコール)のうちの1つまたは複数を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。
【0303】
一部の実施形態では、LNPは、SM-102、DSPC、コレステロール、およびPEG2000-DMGを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。一部の実施形態では、SM-102、DSPC、コレステロール、およびPEG200-DMGの質量比は、約1:1:1:1である。追加として、または代替的に、SM-102、DSPC、コレステロール、およびPEG2000-DMGのモル比は、約50:10:38.5:1.5である。
【0304】
一部の実施形態では、接触させるステップは、マイクロ流体ミキサーにおいて行われる。さらなる実施形態では、マイクロ流体ミキサーは、スリットインターディジタルマイクロミキサーまたはスタッガードヘリンボーンマイクロミキサー(SHM)である。
【0305】
本明細書において開示される方法によって産生される組成物もまた提供される。
処置の方法
【0306】
がんを有するか、またはがんを有する危険性にあるか、またはがんを有することが疑われる対象を処置する方法もまた提供される。一部の実施形態では、がんは、本明細書において開示されるras突然変異を含む。一部の実施形態では、ras突然変異は、ras遺伝子の突然変異である。一部の実施形態では、ras突然変異は、RASタンパク質の突然変異である。一部の実施形態では、がんは、本明細書において開示されるアミノ酸RAS突然変異をコードする突然変異型ras遺伝子を含む。さらなる実施形態では、がんは、配列番号1~69の突然変異のうちのいずれか1つまたは複数を含む。本方法が成功したときにそれを判定するための方法は、当該技術分野において公知であり、本明細書において簡単に説明されている。
【0307】
腫瘍またはがん細胞の成長を阻害する方法が、さらに提供される。本方法は、免疫細胞を、本明細書において開示されるRNA、本明細書において開示されるポリヌクレオチド、本明細書において開示されるベクター、本明細書において開示される細胞、または本明細書において開示される組成物のうちのいずれか1つまたは複数と接触させ、それによって、免疫細胞を活性化させるステップ、ならびに腫瘍またはがん細胞を、活性化された免疫細胞と接触させるステップを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。一部の実施形態では、がん細胞または腫瘍は、本明細書において開示されるras突然変異を含む。一部の実施形態では、ras突然変異は、ras遺伝子の突然変異である。一部の実施形態では、ras突然変異は、RASタンパク質の突然変異である。一部の実施形態では、がんは、本明細書において開示されるアミノ酸RAS突然変異をコードする突然変異型ras遺伝子を含む。さらなる実施形態では、がんは、配列番号1~69の突然変異のうちのいずれか1つまたは複数を含む。接触させるステップのうちのいずれかまたは両方は、in vitroまたはin vivoであり得る。
【0308】
追加として、または代替的に、個別化もしくは正確な方法のために、または代替的には新しい組合せ療法を試験するために、本明細書において開示されるスクリーニング方法または方法のスクリーニングステップが提供される。本方法は、本明細書において開示される突然変異を検出することを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。一部の実施形態では、ras遺伝子の突然変異は、シーケンシング、サザンブロット、またはノーザンブロットを使用して検出することができる。一部の実施形態では、rasタンパク質の突然変異は、フローサイトメトリーまたはウエスタンブロットを使用して検出することができる。本方法は、処置のための動物モデルを生成するため、または処置する獣医師によって決定されるように、動物を処置するために、動物において実施することができる。本方法が成功したときにそれを判定するための方法は、当該技術分野において公知であり、本明細書において簡単に説明されている。
【0309】
一部の実施形態では、がんは、腺癌、腺癌、腺腫、白血病、リンパ腫、癌腫、黒色腫、血管肉腫、膵臓がん、結腸がん、結腸直腸がん、直腸がん、またはセミノーマである。がんは、原発性または転移性であり得る。それを必要とする対象は、活動性のがんに罹患していてもよく、または寛解状態にあってもよく、または原発性もしくは二次性のがんを生じる危険性にあってもよい。
【0310】
追加として、または代替的に、例えば本明細書において開示されるras突然変異に対する免疫応答の誘導を、それを必要とする対象において行うための方法が提供される。一部の実施形態では、免疫応答は、以下のうちのいずれか1つまたは複数を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる:Th1免疫応答、CD8+T細胞の活性化、または炎症促進性サイトカイン、例えば、インターロイキン-2(IL-2)、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)、もしくは腫瘍壊死因子-ベータ(TNF-β)の産生。本方法が成功したときにそれを判定するための方法は、当該技術分野において公知であり、本明細書において簡単に説明されている。
【0311】
これらの方法は、対象に、例えば、有効量(例えば、薬学的有効量)の、本明細書において開示されるRNA、本明細書において開示されるポリヌクレオチド、本明細書において開示されるベクター、本明細書において開示される細胞、または本明細書において開示される組成物のうちのいずれか1つまたは複数を投与するステップを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。
【0312】
一部の実施形態では、RNAは、配列番号70をコードする。さらなる実施形態では、RNAは、配列番号70のN末端にコンジュゲートされた配列番号87に記載されるシグナルペプチドをさらにコードする。一部の実施形態では、RNAは、配列番号88または配列番号88の(nt)1~nt612を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。さらなる実施形態では、RNAは、5’UTR(例えば、配列番号89を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる)および3’UTR(例えば、配列番号90を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる)をさらに含む。一部の実施形態では、ベクターは、配列番号91を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。一部の実施形態では、組成物は、担体、例えば、本明細書において開示されるLNPまたはHKPナノ粒子において製剤化されたRNAを含む。
【0313】
一部の実施形態では、投与は、腫瘍内、または静脈内、または筋肉内、または皮内、または皮下である。
【0314】
一部の実施形態では、対象は、哺乳動物、またはヒトである。
【0315】
一部の実施形態では、本方法は、対象に、追加の抗がん療法を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、抗がん療法は、以下のうちのいずれか1つまたは複数の投与の前に、またはそれと同時に、またはその後に、投与される:本明細書において開示されるRNA、本明細書において開示されるポリヌクレオチド、本明細書において開示されるベクター、本明細書において開示される細胞、または本明細書において開示される組成物。
【0316】
一部の実施形態では、投与は、少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、またはそれよりも多い回数反復された。さらなる実施形態では、任意の2回の投与の間の間隔は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、10日間、2週間、3週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、1年間であり得るか、またはそれよりも長くてもよい。
【0317】
一部の実施形態では、本方法は、投与の前に、対象の生物学的試料、例えば、腫瘍生検または循環腫瘍DNAにおいて、本明細書において開示されるras突然変異を検出するステップをさらに含む。
【0318】
一部の実施形態では、ras突然変異は、ras遺伝子の突然変異である。一部の実施形態では、ras突然変異は、RASタンパク質の突然変異である。
【0319】
一部の実施形態では、本方法は、投与の後に、対象の生物学的試料、例えば、腫瘍生検または循環腫瘍DNAにおいて、本明細書において開示されるras突然変異をモニタリングするステップをさらに含む。
【0320】
一部の実施形態では、ras突然変異は、ras遺伝子の突然変異である。一部の実施形態では、ras突然変異は、RASタンパク質の突然変異である。
【0321】
一部の実施形態では、本方法は、投与の後に、対象の生物学的試料、例えば、血液試料において、本明細書において開示されるras突然変異を認識しそれに結合する抗体を検出するステップをさらに含む。
【0322】
本明細書において使用される場合、本明細書に開示されるRNA、またはポリヌクレオチド、またはベクター、または細胞、または組成物の有効用量は、投与しようとする対象において保護免疫応答を生じるのに必要とされる用量である。本文脈における保護免疫応答は、対象におけるがんを処置するものである。本明細書において開示されるRNA、またはポリヌクレオチド、またはベクター、または細胞、または組成物は、1回または複数回、投与され得る。ワクチンに対する免疫応答の最初の測定は、RNA、またはポリヌクレオチド、またはベクター、または細胞、または組成物を受容する対象における抗体の産生を測定することによって行われ得る。この様式で抗体産生を測定する方法はまた、当該技術分野において周知であり、がんを予防する、その発生を阻害する、またはそれを処置する(症状をある程度、好ましくは、症状のすべてを、軽減する)ために必要とされる用量である。薬学的有効用量は、疾患のタイプ、使用される組成物、投与経路、処置されている哺乳動物のタイプ、考慮されている具体的な哺乳動物の身体的特徴、併用医薬、および医学の当業者が認識するであろう他の因子に依存する。一般に、1日につき体重1kg当たり0.1mg~100mgの量の活性成分が、製剤化された組成物の効力に応じて投与される。
【0323】
一部の実施形態では、RNA組成物は、所望される治療または予防作用を得るために、1日につき対象の体重1kg当たり0.0001mg~100mg、0.001mg~0.05mg、0.005mg~0.05mg、0.001mg~0.005mg、0.05mg~0.5mg、0.01mg~50mg、0.1mg~40mg、0.5mg~30mg、0.01mg~10mg、0.1mg~10mg、または1mg~25mgを送達するのに十分な投薬量レベルで、1日、1週間、1ヶ月などに1回または複数回、投与され得る。一部の実施形態では、RNA組成物は、体重1kg当たり約10~約500μgの投薬量、またはその中の任意の投薬量もしくは部分範囲、例えば、体重1kg当たり約28.5~285μgで投与される。所望される投薬量は、1日に3回、1日に2回、1日に1回、1日おき、3日おき、1週間おき、2週間おき、3週間おき、4週間おき、2ヶ月おき、3ヶ月おき、6ヶ月おきなどで送達され得る。ある特定の実施形態では、所望される投薬量は、複数回投与(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、またはそれよりも多くの投与)を使用して送達され得る。複数回投与が用いられる場合、分割投薬レジメン、例えば、本明細書において記載されるものが、使用され得る。一部の実施形態では、RNA組成物は、0.0005mg/kg~0.01mg/kg、例えば、約0.0005mg/kg~約0.0075mg/kg、例えば、約0.0005mg/kg、約0.001mg/kg、約0.002mg/kg、約0.003mg/kg、約0.004mg/kgまたは約0.005mg/kgを送達するのに十分な投薬量レベルで投与され得る。一部の実施形態では、RNA組成物は、0.025mg/kg~0.250mg/kg、0.025mg/kg~0.500mg/kg、0.025mg/kg~0.750mg/kg、または0.025mg/kg~1.0mg/kgを送達するのに十分な投薬量レベルで、1回または2回(またはそれよりも多い回数)投与され得る。
【0324】
一部の実施形態では、RNA組成物は、0.0100mg、0.025mg、0.050mg、0.075mg、0.100mg、0.125mg、0.150mg、0.175mg、0.200mg、0.225mg、0.250mg、0.275mg、0.300mg、0.325mg、0.350mg、0.375mg、0.400mg、0.425mg、0.450mg、0.475mg、0.500mg、0.525mg、0.550mg、0.575mg、0.600mg、0.625mg、0.650mg、0.675mg、0.700mg、0.725mg、0.750mg、0.775mg、0.800mg、0.825mg、0.850mg、0.875mg、0.900mg、0.925mg、0.950mg、0.975mg、または1.0mgの総用量で、またはその総用量を送達するのに十分な投薬量レベルで、2回(例えば、0日目および7日目、0日目および14日目、0日目および21日目、0日目および28日目、0日目および60日目、0日目および90日目、0日目および120日目、0日目および150日目、0日目および180日目、0日目および3ヶ月後、0日目および6ヶ月後、0日目および9ヶ月後、0日目および12ヶ月後、0日目および18ヶ月後、0日目および2年後、0日目および5年後、または0日目および10年後に)投与され得る。より高いおよび低い投薬量および頻度の投与が、本開示に包含される。例えば、RNA組成物は、3回または4回投与されてもよい。
キット
【0325】
一態様では、本明細書において開示される方法において使用するためのキットが提供される。
【0326】
一部の実施形態では、キットは、使用のための説明書、ならびに本明細書において開示されるRNA、本明細書において開示されるポリヌクレオチド、本明細書において開示されるベクター、本明細書において開示される細胞、または本明細書において開示される組成物のうちの1つまたは複数を含むか、または代替的にはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。さらなる実施形態では、キットは、本明細書において開示される処置の方法において使用するのに好適である。一部の実施形態では、キットは、抗がん療法をさらに含む。
【0327】
一部の実施形態では、キットは、使用のための説明書、ならびに本明細書において開示されるRNA、本明細書において開示されるポリヌクレオチド、本明細書において開示されるベクター、本明細書において開示される細胞、または本明細書において開示される組成物のうちの1つまたは複数、HKP、または脂質、必要に応じてカチオン性脂質を含むか、または代替的にはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。さらなる実施形態では、キットは、本明細書において開示されるRNAまたは組成物を産生する方法において使用するのに好適である。
【0328】
一部の実施形態では、キットは、使用の説明書、本明細書において開示されるポリヌクレオチドまたはベクター、RNAポリメラーゼ、ATP、CTP、GTP、およびUTPもしくは化学的に修飾されたUTPを含むか、または代替的にはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。さらなる実施形態では、キットは、本明細書において開示されるRNAまたは組成物を産生するin vitro方法において使用するのに好適である。
【実施例】
【0329】
実験方法
以下の実施例は、本開示を実行する際の様々な事例において使用することができる手順の例示である。
(実施例1)
kras突然変異を標的とするmRNAの設計
【0330】
本明細書に記載されるように、ワクチンは、タンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)の全体または一部を含む合成mRNAを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。最適には、ORFには、「キャップ」、すなわち、5’-5’三リン酸を介して5’末端に結合した7-メチル-グアノシン残基、および3’末端におけるポリA尾部という2つのエレメントが隣接している。一部の実施形態では、mRNAワクチンは、追加の成分を含む線形RNA断片である。そのようなmRNAワクチンを構築した。単一のクロマトグラフィーステップを行って、mRNAをサイズに従って確実に分離し、短い転写産物および長い転写産物の両方を除去し、純粋な単一のmRNA産物を得た。
【0331】
他の実施形態では、mRNAワクチンは、プロモーター、ORF、必要に応じて、ポリAに転写されるポリ(d(A/T))配列、および定義された転写終止を確実にするためのベクターの線形化のための固有の制限部位(キャップは鋳型によってコードされない)を含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる、ベクターに基づく発現系である。そのようなベクターを構築した。操作を容易にするために、個々のrasネオ抗原に対応するDNA断片を、タンデムミニ遺伝子として特定のベクターにクローニングした(
図4)。このベクターから転写されたRNA分子は、in vitro発現系を通じてポリペプチドに翻訳され得(
図5)、mRNA汎rasワクチンとして機能し得る。
(実施例2)
細胞へのmRNAのトランスフェクションおよびin vitroでのmRNA発現の測定
【0332】
rasネオ抗原のエピトープを発現するmRNA構築物を、様々な市販入手可能なトランスフェクション試薬を使用して、in vitroでヒト細胞にトランスフェクトした。この研究に使用した細胞には、Huh7、Vero細胞、A549細胞、およびその他のものが含まれた。エレクトロポレーション(MaxCyte、Gaithersburg、MDからの技術を使用)もまた、送達の選択肢として試験した。様々な細胞への良好な取り込みを有するものを決定するため、およびそれに続く構築物の発現を評価するために、様々な送達プロセスを試験し比較した。それぞれの構築物によるタンパク質の産生を決定し、産物が細胞から分泌されるかどうかについても決定した。mRNAは、SmartFlareプローブ(Millipore)またはQ-RT-PCRを使用して生細胞において検出した。
(実施例3)
SmartFlare技術を使用した細胞へのmRNAの取り込みの検出
【0333】
SmartFlareプローブは、生細胞における特定のRNAの視覚化および定量化のための有望なツールとして最近出現してきた。これらのsmart flareは、細胞内のRNA配列を認識すると蛍光の増加をもたらす配列が結合した、ビーズである。SmartFlare(Merck)を、立体障害により1つの領域からのシグナルが低減された場合のために、構築物に沿って複数の領域に対して設計した。
【0334】
Vero細胞または他の細胞を、コラーゲンをコーティングした24ウェルのガラス底プレートおいて、1mlのRPMI-1640中、1ウェル当たり1×104個の細胞の濃度で、12時間培養した。50μlのPBS中に事前希釈したSmartFlareプローブ(3μl)(Cy3標識化mRNA、またはスクランブル対照検出プローブ、Milliporeから購入)を、それぞれのウェルに三連で添加した。細胞を、37℃および5% CO2で一晩(約16時間)インキュベートし、蛍光顕微鏡で分析し、ディジタル画像を、mRNAの発現に関して同様の露光量で取得した。
(実施例4)
培養培地におけるタンパク質発現の検出
【0335】
mRNA構築物によって発現されるタンパク質を、分析用C18カラム(250mm×2.1mm、Phenomenex)を使用してRP-HPLCによって特定し定量した。タンパク質検出には、二重波長検出器を使用した。0.1%TFA/アセトニトリルの勾配を、経時的に調節して、タンパク質ピークの分析的分離を可能にした。初回実験において、画分を収集し、質量分析法に供して、予測される配列の存在を決定した。分泌された産物および細胞内で製造された産物を、タンパク質シーケンシングを使用して比較した。試料の酵素分解を軽減するために、酵素阻害剤を、培地および複数ウェルからの濃縮培地において使用し、HPLCで産物を検出した。
(実施例5)
送達がもっとも良好なナノ粒子の決定
【0336】
ポリマーの配列および構造:University of Marylandのバイオポリマーの中心施設が、Rainin Voyager合成装置(PTI)でHKポリマーを合成した。線形で4分岐および8分岐のHKペプチドを、mRNAを運搬するそれらの能力に関して調査した。4分岐のHKペプチドにおいて、分岐は、3-リシンコアから生じる。
【0337】
in Vitro mRNAトランスフェクション:複数のHKペプチドを、ルシフェラーゼを発現するmRNA(Trilink Biotechnologies,Inc.、CleanCap Firefly Luciferase mRNA)をMDA-MB-231細胞へと運搬するそれらの能力に関して試験した。簡単に述べると、1×105個の細胞を、500μlのDMEMおよび10%血清を含有する24ウェルプレートに播種した。24時間後に、細胞が60~80%コンフルエントとなると、それぞれのウェルの培地を、Opti-MEMに交換した。HKポリプレックスを調製するために、HKペプチド(4~12mg)を、50mlのOpti-MEMに混合し、mRNA(1mg)を、混合物に短時間で添加し、室温で30分間維持した。このポリプレックスを、次いで、細胞に滴下添加した。4時間後に、Opti-MEM培地を除去し、1mlのDMEM/10%血清と置き換えた。24時間後に、細胞を溶解させ、ルシフェラーゼ活性を測定した。
【0338】
HKリポプレックスのトランスフェクションを、ほとんど例外なく上述のものと同様に行った。簡単に述べると、HKペプチドを、まず、様々な比でmRNAと混合し、Opti-MEM中で30分間インキュベートした。これに続いて、MC3またはDOTAPカチオン性リポソーム(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン、1または1.5g、Roche)を添加し、30分間インキュベートした。Opti-MEM混合物(100l)を、次いで、細胞に添加した。
【0339】
ゲル遅延度アッセイ:様々な量のHKペプチドを、1μgのmRNAと混合し、室温で30分間インキュベートした。具体的には、以下のHK/mRNA比(重量/重量)を水中で調製した:1/2;1/1;2/1、4/1、8/1。30分後に、HKポリプレックスを、ゲル(臭化エチジウムを含む1%アガロース)にロードし、電気泳動を、次いで、75Vの一定電圧で60分間、TBE緩衝液において行った。画像を、UVイメージング装置(ChemiDoc Touch、BIO-RAD、CA)によって取得した。例えば、
図9を参照されたい。
【0340】
ヘパリン置換アッセイ:HKおよびプラスミド(4:1重量/重量比)の複合体形成を、mQ水において蛍光アッセイによって評価した。複合体を、前述のように調製し、続いて、希釈したSGを添加した。検出のために、複合体(体積の1/5)、水(3/5)、およびSG(1/5)の作業希釈液を、5分間インキュベートし、蛍光を、蛍光光度計によって測定した(λex=300nm、λem=537nm)(SynergyMx、BioTek)。対照試料を、同じ量のネイキッドmRNA、水、およびSGを用いて調製した。ヘパリン置換のために、水の代わりに、異なる濃度のヘパリン塩(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)溶液を使用し、複合体を、37℃で30分間インキュベートした後、SG希釈液を添加した。複合体の形成はまた、ゲル電気泳動によっても確認した。
【0341】
フローサイトメトリー:簡単に述べると、1×105個のMDA-MB-231細胞を、500μlのDMEMおよび10%血清を含有する24ウェルプレートに播種した。H3K(+H)4bおよびH3K4bを含むHKポリペプチドのトランスフェクションを、シアニン5標識化mRNA(Trilink Biotechnologies,Inc.、CleanCap Cyanine 5 Fluc mRNA)を用いて上記と同様に行った。トランスフェクション後30分、1時間、2時間、および4時間の時点で、細胞を、消化させ、10%血清で中和した。トランスフェクションなしの対照試料もまた、収集した。1000rpmで1分間遠心分離した後、細胞を、250μlのPBSで再懸濁させた。分析のために、典型的な順方向および側方散乱ゲートを設定して、死細胞および凝集体を排除した。それぞれの試料における事象を、Beckman Coulter Cytoflex(Beckman Coulter、CA、USA)を使用して収集した。対照試料のパーセンテージを、0%として定義した。他の試料の値は、相対値であり、ポリ複合体取り込みパーセンテージとして記録した。
【0342】
結果は、H3K4bおよびH3K(+H)4bの両方が、in vitroにおいてmRNAの担体として有効であることを確認した。H3K(+H)4bは、その近似H3K4bアナログと比較して、著しく良好なmRNAの担体であることが示された(
図8)。遅延度アッセイは、様々なmRNAおよびポリペプチドの重量比で、ポリペプチドの作用を示した。結果は、遊離mRNAの電気泳動移動度が、HKポリペプチドによって遅延されたことを示した。1:2の比および1:4の比のH3K(+H)4bおよびH3K4bでは、mRNAは、完全にウェルにトラップされ、これは、H3K(+H)4bが、H3K4bよりも緊密にmRNAに結合することを示す(
図9)。分岐の第2の-HHHK(配列番号82)モチーフに余剰ヒスチジンを有するHKペプチドはすべて、mRNAの有効な担体であった(
図9)。これらのペプチドの中でも、H3k(+H)が、mRNAの最適な担体であることが決定された(H3k(+H)4b対H3K(+H)4b、P<0.05)。
(実施例6)
mRNA送達におけるMC3またはDOTAPとHK担体との相乗的な活性
【0343】
H3K(+H)4bおよびMC3/DOTAPリポソームの組合せは、mRNAをMDA-MB-231細胞へと運搬するその能力に関して、相乗的であった(H3K(+H)4b/リポソーム対リポソーム、P<0.0001)。この組合せは、それぞれ、ポリマー単独およびリポソーム担体よりも、mRNAの担体として、約3倍および8倍有効性が高かった。注目すべきことに、すべてのHKペプチドが、MC3/DOTAPリポソームと相乗的な活性を示したわけではなかった。H3K4bおよびMC3/DOTAP担体の組合せは、ルシフェラーゼmRNAの担体として、DOTAPリポソームよりも有効性が低かった。DOTAPおよびMC3以外に、HKペプチドとともに使用され得る他のカチオン性リポソームとしては、Lipofectin(Invitrogen)、Lipofectamine(Invitrogen)、およびDOSPERが挙げられる(
図11)。
【0344】
分岐鎖内のL-リシンがD-リシンと置き換えられたH3k(+H)4bのD異性体は、もっとも有効なポリマー担体であった(H3k(+H)4b対H3K(+H)4b、P<0.05)。mRNAのD異性体/リポソーム担体は、それぞれ、H3k(+H)4b単独およびリポソーム担体よりも、ほぼ4倍および10倍有効性が高かった。D-H3K(+H)k4b/リポソームの組合せは、L-H3K(+H)4b/リポソームの組合せよりもわずかにより有効であったが、この比較は、統計学的に差はなかった(
図12)。
(実施例7)
スペルミン-リポソームコンジュゲート/mRNAナノ粒子調製物
【0345】
スペルミン-リポソームコンジュゲート(SLiC)送達系(
図13)もまた、開発した。まず、新しく合成したSLiC分子を用いてリポソームを調製するために、薄層方法、溶媒注入などの通常の方法を試みたが、あまり成功しなかった。本明細書に記載されるように、エタノール中に溶解した脂質は、リポソームが非常に安定というわけではなく凝集する傾向にあるいわゆる準安定状態にある。次いで、未ロードまたは事前形成されたリポソームを、改変型Norbert Maurer方法を使用して調製した。安定なリポソーム溶液は、単純に、エタノールを12.5%(体積/体積)の最終濃度まで希釈することによって作製することができることが見出されている。エタノール中に溶解した脂質(カチオン性SLiC/コレステロール、50:50、モル%)を滅菌dd-H
2Oに添加することによって、リポソームを調製した。エタノール脂質溶液を、高速混合下で緩徐に添加した。
【0346】
エタノールの緩徐な添加および高速での混合は、小型でより均質なリポソームの形成を可能にするため、これにより、SLiCリポソーム作製の成功が証明された。リポソーム製剤化のプロセス中にmRNAをロードし、エタノールまたは他の溶媒を製造の最後に除去する従来的な方法とは異なり、これらのSLiCリポソームは、エタノールが依然として溶液中に残っている状態で製剤化され、そのため、リポソームは、依然として準安定な状態にあると考えられた。mRNA溶液がリポソーム溶液カチオン性基と混合/それをロードされると、脂質は、アニオン性mRNAと相互作用し、縮合してコアを形成する。SLiCリポソームの準安定な状態は、mRNAをより効果的に捕捉するためのリポソーム構造転換を補助または助長した。mRNAの捕捉に起因して、SLiCリポソームは、より小型かつ均質となった。
(実施例8)
mRNAのin vivo送達のためのナノ粒子の開発および特徴付け
【0347】
mRNAに基づくワクチンを開発することには、mRNAの細胞への送達が成功することが含まれる。ワクチン送達方法の例としては、5’および3’UTRを有し、ポリA尾部を含む、線形化プラスミドに基づく構築物を用いてin vitroで発現されたmRNAを、収集し、定量した。1つの例では、mRNA、HKP+Hポリマー、およびMC3の混合物を、1:2:4の重量比で調製した。別の例では、mRNA、HKP+Hポリマー、およびPLAの混合物を、1:2:4の重量比で調製した。なおも別の例では、脂質ナノ粒子を、モル比50:10:38.5:1.5のMC3、DSPC、CHOL、およびDSPE-PEG2000の混合物を使用して、調製した。LNPを、次いで、4:1の重量比でmRNAと混合した。すべての製剤は、動物への注射の前に、粒子サイズ、mRNA封入、および内毒素に関して試験した。単回用量の50~200μlの溶液を、マウスに注射した。送達方法としては、腫瘍内、静脈内、筋肉内、皮内、および皮下注射が挙げられる。特定の例では、rasネオ抗原のエピトープを発現するmRNA構築物を、異なるHKペプチドを用いて製剤化し、マウス(30μg/用量)に注射した。RAS抗体力価を、ELISAによって評価した(
図15)。
【0348】
配列番号70の汎RAS抗原は、すべての特定されたRASアミノ酸変更を含む。全長突然変異型ras mRNAを、送達用ナノ粒子を全長突然変異型ras mRNAに添加することによって、上述のようにリンカーまたはミニ遺伝子の構築を必要とすることなく、直接的にパッケージングすることができる。
(実施例9)
kras突然変異を標的とするmRNAの設計
【0349】
本明細書に記載されるように、ワクチンは、いくつかのタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)の全体または一部を含む合成mRNAを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。具体的には、SARS-cov2シグナル配列をさらに含むrasネオ抗原。
(実施例10)
がんワクチン:汎rasネオ抗原
【0350】
KRAS突然変異(EGFRタンパク質の下流)は、RAS-RAF-ERK経路の構成的活性化をもたらし、抗EGFR療法に対する抵抗性を引き起こすと仮定する。突然変異の大半は、3つの突然変異ホットスポットG12、G13、およびQ61のうちの1つにある(COSMIC v92)。突然変異はまた、他のコドンにも局在化され、例えば、19、117、および146は、表3またはcancer.sanger.ac.uk/cosmic/gene/analysis?ln=KRAS(最終アクセス2021年9月21日)に開示されるものなど、ホットスポット突然変異と同様の表現型を有することが示されている。一部の実施形態では、選択される突然変異は、突然変異スポットにおけるもっとも高い頻度を有するものを含むか、またはそれから本質的になるか、またはなおもさらにはそれからなる。
【0351】
表3. 選択されたアミノ酸におけるKRAS突然変異の頻度
【表3】
【0352】
図16に示されるように、615bpのras遺伝子は、すべての突然変異ホットスポットを網羅する8つの突然変異を含む204個のaaRASタンパク質をコードする。SARS-COV-2に由来するSPIKEタンパク質のシグナル配列を使用した。設計されたRNAは、TrillinkおよびCodexという2つの取引先から注文した。
【0353】
RAS発現は、ウエスタンブロット分析を使用して確認した。
図17に示されるように、より強力なRASバンドが、Trilinkにより供給されたRNAから検出され、一方で、Codex RNAは、機能的であるがはるかに低いレベルでの発現が示された。ローディング対照は、同様のタンパク質含有量を示した。また、バックグラウンドノイズシグナルは、非常に低かった。
【0354】
in vitro RAS発現を、LNPまたはHKP(H)製剤を使用してさらに評価した。代表的な結果を、
図18および
図19に示す。HKP(H)で製剤化したras mRNAまたはLNPで製剤化したras mRNAをトランスフェクトした後のRASタンパク質の有意な発現が、観察された。
(実施例11)
動物研究:マウスin vivo研究-処置アプローチ
【0355】
図20に示されるように、Balb/cマウスに、様々なナノ粒子、例えば、LNP(1:3)、HKP(H)/MC3(4:1:1)、またはHKP/DOTAP(4:1:1)を用いて製剤化したras mRNAワクチンで筋肉内(i.m.)で免疫付与を行った。それぞれの群について、2匹のマウスを試験した。血清を、28日目に1回目の追加免疫の前に採取し、および1回目の追加免疫の14日後(すなわち、42日目)に採取した。28日目および42日目に採取した血清にELISAを行って、誘導された抗RAS抗体の検出ならびに抗体IgGアイソタイプの特定を行った。マウスを殺処分し、脾臓を摘出し、次いで、Th1およびTh2関連遺伝子ならびに他の遺伝子の遺伝子発現を測定するために、RNAを、qRT-PCRのために抽出した。
【0356】
採取された血清において抗RAS抗体を検出する、得られたELISAの結果を、
図21に示す。これは、追加免疫の後に、抗RAS抗体が、マウス血清中に容易に検出されたことを示す。
【0357】
Th1サイトカインは、抗腫瘍細胞媒介性免疫応答の発生を促進する。したがって、理想的なKRASがんワクチンにとって、Th1応答は、極めて重要である。例えば、Lin, et al. (2017). International Journal of Head and Neck Science, Vol 1. No. 2, June 1, 2017, pages 105-113を参照されたい。ナイーブT細胞は、様々な因子による刺激の後に、Th1細胞またはTh2細胞となる。Th1免疫性において、細胞は、炎症促進性サイトカイン、例えば、インターロイキン-2(IL-2)、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)、腫瘍壊死因子-ベータ(TNF-β)を産生する。Th2免疫性において、細胞は、抗炎症性サイトカイン、例えば、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、およびIL-13を産生する。正常な状況において、Th1免疫性およびTh2免疫性は、均衡に達する。しかしながら、腫瘍細胞の存在により、この均衡が破壊される。これによって、適応免疫性の下方制御に起因して、Th2免疫性の増加およびTh1免疫性の減少が生じる。これは、最終的に、腫瘍進行をもたらす。しかしながら、Th1免疫性が優勢となった場合、この免疫性の刺激は、腫瘍退縮をもたらし得る。
【0358】
IgGアイソタイプにより、動物モデルにおいて免疫応答を開始することに関与するTヘルパー表現型を予測することができる:IgG2aおよびIgG2bは、Th1応答と相関性があり、gG1は、Th2応答と相関性があり、IgG3は、通常、応答の初期に出現する。したがって、マウスにおいて誘導される抗RAS抗体のIgGアイソタイプを、評価し、その結果を、
図22に示す。Rasワクチンで免疫付与したマウスにおける優勢なIgGアイソタイプは、IgG2bと示された。
【0359】
さらに、Th1およびTh2関連遺伝子の遺伝子発現を評価した。簡単に述べると、RNAを、脾臓から単離した。Th1関連遺伝子、例えば、Tbet(Tbx21)、IFN-γ、IL-2、およびTNF、ならびにTh2関連遺伝子、例えば、GATA3、IL-4、およびIL-10を、qRT-PCRおよびNGSを使用して評価した。RT-PCR結果を、
図23に示す。実際の陰性対照は使用しなかったが、マウス#5は、相対対照として提供された。
【0360】
得られたRNAはまた、次世代シーケンシング(NGS)を使用してトランスクリプトームプロファイリングについても評価した。簡単に述べると、脾臓由来のRNAを、6匹のマウスから単離し、NGSを使用して分析した。品質管理の後に、マウス#1、#2、#3、および#5から得られたRNAを使用して、NGSを行った。そのようなマウスの番号付けはまた、
図21~23においても使用されている。追加として、ELISA結果に基づいて、#5のマウスを、相対陰性対照として使用した。
【0361】
次いで、NGS分析結果を、本明細書において開示する。簡単に述べると、差次的に発現される遺伝子を、
図24にプロットし、一方で、Th1およびTh2細胞分化経路を含む上位20個のKEGG経路を、
図25において特定する。さらに、Th1およびTh2細胞分化経路に関与する6つの遺伝子、すなわち、Notch 1、Notch 3、Lat、Lck、Plcg1、およびZap70の発現レベルを、FKPMカウントとして、
図26Bにプロットした。qRT-PCRを使用して
図23において示されるように調査したTh1およびTh2関連遺伝子はまた、NGSを使用して分析し、結果を、
図28にプロットする。結果は、マウス#5と比較して、Th1の主転写因子Tbx21は、2匹のマウスにおいてわずかに増加し、一方で、Th2の主転写因子GATA3は、3匹のマウスにおいてわずかに減少したこと、Th1関連遺伝子IL-2およびTNFが増加したこと、ならびにTh2関連遺伝子IL4およびIL10は、
図23に示されるqRT-PCR結果と一致して、変化がなかったかもしくはわずかな増加が観察されたことを示す。これは、試験した製剤化されたmRNAが、抗がんTh1免疫応答を刺激することを示す。
【0362】
抗原プロセシングおよび提示経路に関与する、Rfx1、Rfx5、Gm89096、およびH2-Q7を含む4つの遺伝子の発現レベルを、追加として評価した。
【0363】
LFA-1およびCTLA-4など、CD8+T細胞活性化のいくつかのマーカーが、特定されている。例えば、Slifka MK and Whitton JL. J Immunol. 2000 Jan 1;164(1):208-16を参照されたく、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。したがって、活性化CD8+細胞のこれら2つの表現型マークもまた評価し、結果を、
図29に示す。発現の増加が観察され、CD8+細胞の活性化が、試験した製剤化されたmRNAによって改善されたことを示す。
【0364】
また、製剤化されたmRNAの抗腫瘍作用を、in vivoで試験した。簡単に述べると、Balb/cマウスに、0日目にマウス1匹当たり100μlの本明細書に記載されるように調製した製剤化されたmRNAで免疫付与を行い、10日目にマウス1匹当たり100μlでさらに免疫付与を行った。CT26細胞を、皮下注射によって後肢に接種させた。動物を、14日目に安楽死させた。
【0365】
腫瘍サイズを、毎日測定し、結果を、
図30Aにプロットする。マウスを殺処分した後、腫瘍塊を切除し、計量し、結果を、
図30Bにプロットする。製剤化されたmRNAで処置したマウスにおいて、より小さく軽量な腫瘍が観察され、そのような製剤化されたmRNAを、有望な抗がん薬として使用することができることが示される。
(実施例12)
予防的アプローチ
【0366】
製剤化されたmRNAが産生され、表4に示される用量滴定を用いてin vivoで試験した。RL003は、mRNAが、MC3を使用して製剤化されていることを示し、一方で、RL007は、mRNAがSM102を使用して製剤化されていることを示した。MC3製剤化は、陰性対照としての機能を果たし、SM102で製剤化されたras mRNAは、陽性対照と考える。
【0367】
表4. 動物コホートおよび主要な実験手順
【表4-1】
【表4-2】
【0368】
図31に示されるように、6~7週齢のマウスに、0日目および14日目に、本明細書において開示されるRASワクチンまたは対照で免疫付与を行った。それぞれの群において5匹のマウスを試験し、表4に示されるように合計5つの群を調査した。血液を、21日目に採取して、抗RAS抗体産生を測定した。28日目に、マウスに、2×10
5個のCT26細胞で筋肉内(i.m.)でチャレンジを行う。腫瘍成長をモニタリングし、生存曲線を生成する。T細胞に媒介される免疫応答を評価し、トランスクリプトーム分析を、本明細書に記載されるように、研究の終了時に行う。初回ワクチン注射後に血清中の抗RAS抗体を検出するELISAの結果を、
図32に示す。投薬量依存的作用が観察された。
同等物
【0369】
別途定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本技術が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。
【0370】
本明細書において例示的に説明されている本技術は、本明細書に具体的に開示されていない任意の1つまたは複数の要素、1つまたは複数の制限の不在下において、好適に実施され得る。したがって、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」などの用語は、拡張的かつ制限なしに読解されるものとする。追加として、本明細書において用いられている用語および表現は、制限ではなく説明の意味で使用されており、そのような用語および表現の使用において、示され説明される特性またはその一部分の任意の同等物を排除することを意図するものではなく、様々な改変形態が、特許請求される本技術の範囲内で可能であることが認識される。
【0371】
したがって、本明細書に提供される材料、方法、および例が、好ましい態様を示すものであり、例示的であり、本技術の範囲に対する制限であること意図するものではないことを、理解されたい。
【0372】
本発明は、ある特定の態様、実施形態、および必要に応じた特性によって具体的に開示されているが、そのような態様、実施形態、および必要に応じた特性の改変形態、改善形態、および変化形が、当業者によって到達可能であること、ならびにそのような改変形態、改善形態、および変化形が、本開示の範囲内であると考えられることを、理解されたい。
【0373】
本技術は、本明細書において広範かつ一般的に説明されている。一般的な開示内に含まれるより狭い種および亜属の分類のそれぞれもまた、本技術の部分を形成する。これは、本技術の一般的な説明を含むが、除外される材料が、本明細書において具体的に引用されているかどうかにかかわらず、任意の主題を属から除去するまたは除去しない否定的制限を条件とする。
【0374】
加えて、本技術の特性または態様が、マーカッシュ群に関して記載されている場合、当業者であれば、本技術が、それによってマーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたは亜群のメンバーに関して記載されることも認識するであろう。
【0375】
本明細書において言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、それぞれが参照により個別に組み込まれているのと同程度に、参照によりそれらの全体が明示的に組み込まれる。矛盾が生じた場合には、定義を含め、本明細書が優先される。
【0376】
他の態様は、以下の特許請求の範囲内に記載されている。
【配列表】
【国際調査報告】