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特表2023-546137多量の薬物/遺伝子装填用のポリマーコンジュゲートマイクロバブル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】多量の薬物/遺伝子装填用のポリマーコンジュゲートマイクロバブル
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/127 20060101AFI20231025BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20231025BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20231025BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20231025BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
A61K9/127
A61K9/00
A61K47/18
A61K47/36
A61K47/06
A61K47/24
A61K47/60
A61K38/02
A61K31/7088
A61K48/00
A61K47/68
A61K9/08
A61P43/00 105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523087
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(85)【翻訳文提出日】2023-06-08
(86)【国際出願番号】 US2021054820
(87)【国際公開番号】W WO2022081738
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】63/091,204
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】522440647
【氏名又は名称】ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ラックス,ジェイクス
(72)【発明者】
【氏名】コールサンディ,シーナ
(72)【発明者】
【氏名】デ グラシア ラックス,キャロライン
(72)【発明者】
【氏名】マットリー,ロバート,エフ.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA19
4C076AA95
4C076BB31
4C076CC26
4C076CC47
4C076DD35A
4C076DD49H
4C076DD63
4C076EE23
4C076EE30
4C076EE41
4C076FF34
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA03
4C084MA05
4C084MA17
4C084MA24
4C084MA63
4C084NA05
4C084NA11
4C084ZB21
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA24
4C086MA63
4C086NA05
4C086NA11
4C086ZB21
(57)【要約】
スペルミン装飾されたマイクロバブル及びそれを生成する方法、並びに薬物送達のためにスペルミン装飾されたマイクロバブルを使用するための方法が、記載される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の細胞にペイロードを送達するためのマイクロバブル組成物であって、複数のスペルミン装飾マイクロバブルを含み、界面活性剤シェルによりカプセル化されたガスのコアをそれぞれ含み、かつ複数のスペルミン分子が、各マイクロバブルの界面活性剤シェルの外面と会合される、マイクロバブル組成物。
【請求項2】
前記複数のスペルミン分子が、各マイクロバブルの外面に非共有結合される、請求項1に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項3】
前記複数のスペルミン分子が、各マイクロバブルの外面に共有結合される、請求項1に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項4】
前記複数のスペルミン分子が、各マイクロバブルの外面に直接結合される、請求項3に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項5】
前記複数のスペルミン分子が、連結ポリマーにより各マイクロバブルの外面に間接的に結合される、請求項3に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項6】
前記連結ポリマーが、1以上のスペルミン分子により各マイクロバブルの外面に共有結合で架橋される、請求項5に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項7】
前記連結ポリマーが、足場ポリマーであり、前記複数のスペルミン分子の複数のスペルミン分子が各足場ポリマーに共有結合される、請求項5に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項8】
前記足場ポリマーが、線状である、請求項7に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項9】
前記足場ポリマーが、分岐状である、請求項7に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項10】
前記足場ポリマーが、デキストランである、請求項8又は9に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項11】
前記デキストランが、少なくとも5kDaの平均分子量を含む、請求項10に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項12】
前記デキストランが、少なくとも10kDaの平均分子量を含む、請求項11に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項13】
前記デキストランが、約20kDa~50kDaの平均分子量を含む、請求項12に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項14】
前記デキストランが、約35kDa~45kDaの平均分子量を含み、任意に前記平均分子量が、約40kDaである、請求項13に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項15】
前記ガスのコアが、パーフルオロカーボンを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項16】
前記パーフルオロカーボンが、デカフルオロブタンである、請求項15に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項17】
前記界面活性剤シェルが、脂質を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項18】
前記脂質が、リン脂質である、請求項17に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項19】
前記リン脂質が、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)及び1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DSPE)脂質の一方又は両方を含む、請求項18に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項20】
前記界面活性剤シェルが、ペグ化された分子を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項21】
前記界面活性剤シェルが、前記界面活性剤シェルの外面に露出された複数の反応基を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項22】
前記反応基が、マレイミドである、請求項21に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項23】
前記反応基が、PEGリンカーにより界面活性剤分子に連結される、請求項21又は22に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項24】
前記連結ポリマーが、生分解性リンカーを介して前記マイクロバブルに結合され、任意に前記生分解性リンカーが、リソソーム内のpHで切断可能である、請求項5~23のいずれか一項に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項25】
各マイクロバブル上の複数のスペルミン分子が、複数のペイロード分子と会合される、請求項1~24のいずれか一項に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項26】
前記ペイロード分子が、タンパク質を含む、請求項25に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項27】
前記ペイロード分子が、核酸を含む、請求項25に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項28】
前記核酸が、DNAを含み、任意に前記DNAが、プラスミドである、請求項27に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項29】
前記マイクロバブルが、マイクロバブル当たり少なくとも約30,000個の核酸又は少なくとも約0.025μg/μmの核酸で装填される、請求項27又は28に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項30】
前記マイクロバブルが、前記界面活性剤シェルの外面上に標的化分子をさらに含み、前記標的化分子が1以上の細胞を結合するように構成される、請求項1~29のいずれか一項に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項31】
前記標的化分子が、抗体を含む、請求項30に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項32】
前記マイクロバブル組成物の平均マイクロバブルサイズが、約1μm~10μmである、請求項1~31のいずれか一項に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項33】
前記平均マイクロバブルサイズが、約1μm~約5μmである、請求項32に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項34】
前記平均マイクロバブルサイズが、約3μmである、請求項33に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項35】
前記複数のスペルミン分子が、ポリスペルミンを含む、請求項1~34のいずれか一項に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項36】
1以上のスペルミンが、生分解性リンカーにより別のスペルミンに又は連結ポリマーに連結され、任意に前記生分解性リンカーが、リソソーム内のpHで切断可能である、請求項1~35のいずれか一項に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項37】
前記生分解性リンカーが、シスタミンビスアクリルアミド又はビスアクリルアミドケタールを含む、請求項36に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項38】
少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、又は50%の前記マイクロバブルが、スペルミンを介して別のマイクロバブルに架橋される、請求項1~37のいずれか一項に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項39】
約5%、10%、15%、20%、25%、又は50%以下の前記マイクロバブルが、スペルミンを介して別のマイクロバブルに架橋される、請求項1~38のいずれか一項に記載のマイクロバブル組成物。
【請求項40】
1以上の細胞にペイロードを送達するためのマイクロバブル組成物を作製する方法であって、スペルミン分子を含む溶液をマイクロバブルの溶液と混合することを含み、前記マイクロバブルが、界面活性剤シェルによりカプセル化されたガスのコアを各々含む、方法。
【請求項41】
マイクロバブル組成物を作製する前記方法が、請求項1~39の一項に記載のマイクロバブル組成物を作製するための方法である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
スペルミン分子を含む溶液が、ポリマーにコンジュゲートされたスペルミンを含む、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項43】
前記ポリマーが、足場ポリマーであり、複数のスペルミン分子が前記足場ポリマーに共有結合される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記足場ポリマーが、線状である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記足場ポリマーが、分岐状である、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記足場ポリマーが、デキストランである、請求項43~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
スペルミン分子を含む前記溶液が、少なくとも5kDaの平均分子量を有するデキストランを使用して作製される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記平均分子量が、少なくとも10kDaである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記平均分子量が、約20kDa~50kDaである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記平均分子量が、約35kDa~45kDaである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
スペルミン分子を含む前記溶液が、ポリスペルミンを含み、任意にポリスペルミン内の複数のスペルミンが、生分解性リンカーにより連結される、請求項40~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記マイクロバブル溶液が、スペルミン分子による前記マイクロバブルの飽和を可能にするためにスペルミン分子を含む溶液中に徐々に添加される、請求項40~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記マイクロバブル溶液が、前記混合プロセスの間にスペルミン分子を含む溶液中に添加される、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記スペルミン分子を含む溶液が、前記スペルミン分子を介するマイクロバブルの架橋を促進するために前記マイクロバブル溶液中に徐々に添加される、請求項40~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
スペルミン分子を含む前記溶液が、複数の第1の反応基を含みかつ前記マイクロバブル溶液が、前記マイクロバブルの界面活性剤シェルの外面で露出される複数の第2の反応基を含み、前記第1及び第2の反応基が前記マイクロバブルに前記スペルミン分子を共有結合するように構成される、請求項40~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記第1の反応基が、チオールでありかつ前記第2の反応基が、マレイミドである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
スペルミン分子を含む前記溶液と前記マイクロバブル溶液の混合物が、少なくとも2:1の第1の反応基対第2の反応基のモル比を含む、請求項56又は57に記載の方法。
【請求項59】
第1の反応基対第2の反応基の前記モル比が、少なくとも5:1である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
第1の反応基対第2の反応基の前記モル比が、少なくとも10:1である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
第1の反応基対第2の反応基の前記モル比が、少なくとも20:1である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記マイクロバブル溶液が、約1:20の第2の反応基分子対界面活性剤分子のモル比を含む、請求項56~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記マイクロバブル溶液が、1×10~1×1010個のマイクロバブル/mLを含む、請求項40~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記マイクロバブル溶液が、およそ1.10×10個のマイクロバブル/mLを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
ペイロード分子を含む溶液中で混合することをさらに含む、請求項40~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記ペイロード溶液が、前記マイクロバブル溶液と混合する前にスペルミン分子を含む前記溶液と混合される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
スペルミン分子を含む前記溶液が、前記ペイロード溶液と混合する前に前記マイクロバブル溶液と混合される、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
マイクロバブルを含む前記溶液が、前記ペイロード分子による前記マイクロバブルの飽和を可能にするために前記ペイロード溶液中に徐々に添加される、請求項65~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
マイクロバブルを含む前記溶液が、混合しながら前記ペイロード溶液中に添加される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記ペイロード分子が、タンパク質を含む、請求項65~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記ペイロード分子が、核酸を含む、請求項65~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記核酸が、DNA含み、任意に前記DNAが、プラスミドである、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
マイクロバブルを含む前記溶液と前記ペイロード溶液の混合物が、少なくとも1×10-8μg/マイクロバブル、任意に少なくとも2×10-8μg/マイクロバブルのペイロード質量対マイクロバブル数の比を含み、かつ/又は前記混合物が、約1:1、1:2、1:5、又は1:10のスペルミンアミン:ペイロードリン酸(N:P)の比を含む、請求項71又は72に記載の方法。
【請求項74】
平均で少なくとも5,000;少なくとも10,000;少なくとも20,000;又は少なくとも30,000個のペイロード分子/マイクロバブルを有するマイクロバブル組成物を生成する、請求項71~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記マイクロバブル組成物が平均で、少なくとも30,000個のペイロード分子/マイクロバブルを有する、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
スペルミン-デキストラン装飾マイクロバブル組成物を生成し、かつ前記マイクロバブル組成物が平均で、マイクロバブル当たり少なくとも1.0×10-14gのスペルミン-デキストランを含む、請求項40~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
標的化分子を含む溶液と前記マイクロバブルを含む溶液を混合することをさらに含む、請求項40~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
標的化分子を含む前記溶液が、スペルミン分子を含む溶液と同じ溶液である、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
標的化分子を含む前記溶液が、ペイロード溶液と同じ溶液である、請求項77に記載の方法。
【請求項80】
標的化分子を含む前記溶液が、スペルミン分子を含む前記溶液の後に前記マイクロバブル溶液へ添加される、請求項77に記載の方法。
【請求項81】
標的化分子を含む前記溶液が、スペルミン分子を含む前記溶液の前に前記マイクロバブル溶液へ添加される、請求項77に記載の方法。
【請求項82】
前記標的化分子が、抗体である、請求項77~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
請求項40~82のいずれか一項により生成されるマイクロバブル組成物。
【請求項84】
ソノポレーションを使用して1以上の細胞にペイロードを送達する方法であって、複数のスペルミン装飾マイクロバブルに前記1以上の細胞を曝露することおよび次いで前記1以上の細胞をソノポレートするように構成された超音波刺激に前記1以上の細胞を曝露することを含む、方法。
【請求項85】
前記超音波が、約1~2W/cmで、任意に50%のデューティサイクルにより送達される、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記超音波が、約30~60秒間送達される、請求項84又は85に記載の方法。
【請求項87】
前記細胞が、超音波刺激を送達する前に少なくとも約10分間前記マイクロバブルに曝露される、請求項84~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記1以上の細胞をソノポレートするように構成された前記超音波刺激を送達する前に前記マイクロバブルを視覚化するために超音波を使用することをさらに含み、前記マイクロバブルを可視化するために使用される前記超音波の強度が、前記超音波刺激の強度よりも低い、請求項84~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
インビボ法であり、前記複数のマイクロバブルに前記1以上の細胞を曝露することが対象に前記複数のマイクロバブルを含む組成物を投与することを含む、請求項84~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
インビトロ法である、請求項84~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記複数のマイクロバブルが、少なくとも約5、10、15、20、25、又は30個のマイクロバブル/細胞の濃度で前記1以上の細胞とインキュベートされる、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記複数のマイクロバブルが、約15~約20個のマイクロバブル/細胞の濃度で前記1以上の細胞とインキュベートされる、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記複数のマイクロバブルが、前記1以上の細胞と混合される、請求項90~92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記複数のマイクロバブルが、請求項1~39又は83のいずれか一項に記載のマイクロバブル組成物により提供される、請求項84~94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
本明細書に開示される前記マイクロバブル組成物のいずれか、及び任意に前記マイクロバブル組成物と混合するためのペイロード分子の組成物を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2020年10月13日出願の米国仮出願第63/091,204号の優先権の利益を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
開示の分野
本開示は、マイクロバブルを介して薬物送達を行うためのマイクロバブル組成物、並びに特にソノポレーションと組み合わせて、マイクロバブル組成物を作製する及び使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
薬物送達はしばしば、薬物又は治療薬(例えば、遺伝子又は治療用タンパク質)を細胞に送達するための、および任意に細胞による治療薬の取り込み(例えば、細胞原形質膜を横切る移動)を誘導するための担体の使用を伴う。薬物送達担体はさらに、特定の細胞型を標的とするのに役立ち、かつインビボで全身送達される薬物について特定の組織に対する治療薬のバイオアベイラビリティを改善し得る。薬物送達は、高い薬物/担体装填効率、安定な装填、生分解からの治療薬の保護、特定の組織及び細胞型の標的化、並びに細胞による薬物の効率的取り込みの促進を達成する上で多くの課題に直面している。遺伝子治療は、特に、疾患に対する単一の治療治癒効果を提供する見込みがある。臨床遺伝子治療の大部分はウイルスベクターを利用し、これらは、潜在的な変異誘発、免疫原性、及び非特異的送達により制限される。マイクロバブルは、臨床的に使用される超音波造影剤であり、標的薬物送達のための有望なビヒクルと見なされてきた。しかし、カチオン性マイクロバブルを利用する薬物送達の報告は、DNAなどのペイロードへの非常に弱く不安定な結合しか示しておらず、かつ許容できない毒性の懸念も特定している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
薬物送達(例えば、遺伝子治療用途)用のマイクロバブル上に、核酸又は他の医薬送達物などの、大量のペイロードを効果的に装填するためのマイクロバブル組成物が、本明細書に開示される。薬物送達のためのマイクロバブル組成物を含むキット、マイクロバブル組成物の製造方法、及びマイクロバブル組成物の使用方法も本明細書に開示される。マイクロバブル組成物の外面は、ペイロードに効果的に結合するためのスペルミン分子で装飾され得る。多量のスペルミン分子が、マイクロバブルに1以上のスペルミン分子を連結できる、デキストランなどの連結ポリマーを介してマイクロバブルと会合され得る。ペイロードは、ソノポレーション技術を使用して、空間的かつ時間的に標的化された様式で細胞膜を横切って効果的に送達され得る。
【発明の効果】
【0005】
本開示の一態様では、1以上の細胞にペイロードを送達するためのマイクロバブル組成物は、複数のスペルミン装飾マイクロバブルを含む。マイクロバブルは各々、界面活性剤シェルによってカプセル化されたガスのコアを含み、複数のスペルミン分子は、各マイクロバブルの界面活性剤シェルの外面と会合される。
【0006】
複数のスペルミン分子は、各マイクロバブルの外面に非共有的に結合され得る。複数のスペルミン分子は、各マイクロバブルの外面に共有結合され得る。複数のスペルミン分子は、各マイクロバブルの外面に直接結合され得る。複数のスペルミン分子は、連結ポリマーによって各マイクロバブルの外面に間接的に結合され得る。連結ポリマーは、1以上のスペルミン分子によって各マイクロバブルの外面に共有結合的に架橋され得る。
【0007】
連結ポリマーは、各足場ポリマーに共有結合される多数のスペルミン分子の多重のスペルミン分子を有する足場ポリマーであり得る。足場ポリマーは、線状であり得る。足場ポリマーは、分岐状であり得る。足場ポリマーは、デキストランであり得る。デキストランは、少なくとも5kDa、少なくとも10kDa、約20kDa~50kDa、又は約35kDa~45kDaの平均分子量を有し得る。平均分子量は、約40kDaであり得る。
【0008】
ガスのコアは、パーフルオロカーボンを含み得る。パーフルオロカーボンは、デカフルオロブタンであり得る。界面活性剤シェルは、脂質を含み得る。脂質は、リン脂質であり得る。リン脂質は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)及び1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DSPE)脂質の一方又は両方を含み得る。界面活性剤シェルは、ペグ化された分子を含む。界面活性剤シェルは、界面活性剤シェルの外面で露出される複数の反応基を含み得る。反応基は、マレイミドであり得る。反応基は、PEGリンカーによって界面活性剤分子に連結され得る。連結ポリマーは、生分解性リンカーを介してマイクロバブルに結合され、生分解性リンカーは任意に、リソソーム内のpHで切断可能であり得る。
【0009】
各マイクロバブル上の複数のスペルミン分子は、複数のペイロード分子と会合され得る。ペイロード分子は、タンパク質を含み得る。ペイロード分子は、核酸を含み得る。核酸は、DNAを含み得、それは任意に、プラスミドであり得る。マイクロバブルは、マイクロバブル当たり少なくとも約30,000個の核酸、又は少なくとも約0.025μg/μmの核酸で装填され得る。
【0010】
マイクロバブルは、1以上の細胞を結合するように構成された界面活性剤シェルの外面上に標的化分子をさらに含み得る。標的化分子は、抗体であり得る。
【0011】
マイクロバブル組成物の平均マイクロバブルサイズは、約1μm~10μm、約1μm~約5μm、又は約3μmである。
【0012】
複数のスペルミン分子は、ポリスペルミンを含み得る。
【0013】
スペルミンで装飾されたマイクロバブルの1以上のスペルミンは、生分解性リンカーによって別のスペルミン又は連結ポリマーに連結され得る。生分解性ポリマーは、リソソーム内のpHで切断可能であり得る。生分解性リンカーは、シスタミンビスアクリルアミド又はビスアクリルアミドケタールを含み得る。
【0014】
組成物中のマイクロバブルの少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、又は50%は、スペルミンを介して別のマイクロバブルに架橋され得る。あるいは、組成物中のマイクロバブルの約5%、10%、15%、20%、25%、又は50%以下が、スペルミンを介して別のマイクロバブルに架橋され得る。
【0015】
本開示の別の態様では、1以上の細胞にペイロードを送達するためのマイクロバブル組成物を作製する方法は、スペルミン分子を含む溶液をマイクロバブルの溶液と混合することを含む。マイクロバブルは各々、界面活性剤シェルによってカプセル化されたガスのコアを含む。本方法は、上記のマイクロバブル組成物のいずれか1つを作製するための方法であり得る。
【0016】
スペルミン分子を含む溶液は、ポリマーにコンジュゲートされたスペルミンを含み得る。ポリマーは、足場ポリマーに共有結合される複数のスペルミン分子を有する足場ポリマーであり得る。足場ポリマーは、線状又は分岐状であり得る。足場ポリマーは、デキストランであり得る。スペルミン分子を含む溶液は、少なくとも5kDa、少なくとも10kDa、約20kDa~50kDa、又は約35kDa~45kDaの平均分子量を有するデキストランを用いて作製され得る。スペルミン分子を含む溶液は、ポリスペルミンを含み得る。ポリスペルミン内の複数のスペルミンは、生分解性リンカーによって連結され得る。
【0017】
マイクロバブル溶液は、任意に混合プロセス中に、スペルミン分子によるマイクロバブルの飽和を可能にするために、スペルミン分子を含む溶液に徐々に添加され得る。スペルミン分子を含む溶液は、スペルミン分子を介するマイクロバブルの架橋を促進するために、マイクロバブル溶液に徐々に添加され得る。
【0018】
スペルミン分子を含む溶液は、複数の第1の反応基を含み、マイクロバブル溶液は、マイクロバブルの界面活性剤シェルの外面で露出される複数の第2の反応基を含み得る。第1及び第2の反応基は、マイクロバブルにスペルミン分子を共有結合するように構成され得る。第1の反応基は、チオールであり、第2の反応基は、マレイミドであり得る。スペルミン分子を含む溶液とマイクロバブル溶液の混合物は、少なくとも2:1、少なくとも5:1、少なくとも10:1、又は少なくとも20:1の第1の反応基対第2の反応基のモル比を含み得る。マイクロバブル溶液は、約1:20の第2の反応基分子対界面活性剤分子のモル比を含み得る。マイクロバブル溶液は、1×10~1×1010のマイクロバブル/mLを含み得る。マイクロバブル溶液は、およそ1.10×10マイクロバブル/mLを含み得る。
【0019】
本方法は、ペイロード分子を含む溶液中での混合をさらに含み得る。ペイロード溶液は、マイクロバブル溶液と混合する前にスペルミン分子を含む溶液と混合され得る。スペルミン分子を含む溶液は、ペイロード溶液と混合する前にマイクロバブル溶液と混合され得る。マイクロバブルを含む溶液は、任意に混合しながら、ペイロード分子によるマイクロバブルの飽和を可能にするために、ペイロード溶液に徐々に添加され得る。ペイロード分子は、タンパク質を含み得る。ペイロード分子は、核酸を含む。核酸は、DNAを含み得、それは任意に、プラスミドであり得る。マイクロバブルを含む溶液とペイロード溶液の混合物は、少なくとも1×10-8μg/マイクロバブル、任意に少なくとも2×10-8μg/マイクロバブルのマイクロバブル数に対するペイロード質量の比を含み得、かつ/又は混合物は、約1:1、1:2、1:5、又は1:10のスペルミンアミン:ペイロードリン酸(N:P)比を含む。マイクロバブルを作製する方法は、平均して少なくとも5,000;少なくとも10,000;少なくとも20,000;又は少なくとも30,000ペイロード分子/マイクロバブルを有するマイクロバブル組成物を生成し得る。本方法は、マイクロバブル当たり少なくとも1.0×10-14gのスペルミン-デキストランを有するスペルミン-デキストラン装飾マイクロバブル組成物を生成し得る。
【0020】
本方法はさらに、標的化分子を含む溶液とマイクロバブルを含む溶液を混合することを含み得る。標的化分子を含む溶液は、スペルミン分子を含む溶液と同じ溶液であり得る。標的化分子を含む溶液は、ペイロード溶液と同じ溶液であり得る。標的化分子を含む溶液は、スペルミン分子を含む溶液の後で又はスペルミン分子を含む溶液の前にマイクロバブル溶液に添加され得る。標的化分子は、抗体であり得る。
【0021】
本開示の別の態様では、マイクロバブルを作製する前述の方法のいずれかによって生成されたマイクロバブル組成物が開示される。
【0022】
本開示の別の態様では、ソノポレーションを使用して1以上の細胞にペイロードを送達する方法は、複数のスペルミン装飾マイクロバブルに1以上の細胞を曝露すること、および次いで、1以上の細胞をソノポレートするように構成された超音波刺激に1以上の細胞を曝露することを含む。超音波は、約1~2W/cmで、任意に50%のデューティサイクルで送達され得る。超音波は、約30~60秒間送達され得る。細胞は、超音波刺激を送達する前に少なくとも約10分間マイクロバブルに曝露され得る。本方法は、1以上の細胞をソノポレートするように構成された超音波刺激を送達する前にマイクロバブルを視覚化するために超音波を使用することをさらに含み得る。マイクロバブルを可視化するために使用される超音波の強度は、超音波刺激の強度よりも低くてよい。
【0023】
本方法は、複数のマイクロバブルに1以上の細胞を曝露することが、対象に複数のマイクロバブルを含む組成物を投与することを含む、インビボ法であり得る。
【0024】
本方法は、インビトロ法でもよい。複数のマイクロバブルは、少なくとも約5、10、15、20、25、又は30個のマイクロバブル/細胞の濃度で1以上の細胞とインキュベートされ得る。複数のマイクロバブルは、約15~約20個のマイクロバブル/細胞の濃度で1以上の細胞とインキュベートされ得る。複数のマイクロバブルは、1以上の細胞と共に混合され得る。複数のマイクロバブルは、上記のマイクロバブル組成物のいずれによって提供され得る。
【0025】
本開示の別の態様では、上記のマイクロバブル組成物のいずれか、及び任意にマイクロバブル組成物と混合するためのペイロード分子の組成物を含有するキットである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、分子のアミノ基のpKaを含む、スペルミンの化学構造を示す。
図2図2は、ポリエチレンイミン(PEI)の化学構造を示す。
図3図3は、分岐状デキストランの化学構造を示す。
図4図4は、デキストランの化学酸化と、スペルミンと酸化デキストランからの化学合成スペルミン-デキストランを示す。
図5図5は、酸化デキストラン(40kDa)(上)とスペルミン-デキストラン(下)の合成から得られたNMRスペクトルを示す。
図6図6は、1:1(左上)、1:2(右上)、1:5(左下)及び1:10(右下)のN:P比でのスペルミン-デキストラン/pDNAポリプレックスの粒径測定値を示す。
図7図7は、装填されないスペルミン-デキストラン及びpDNA単独の対照に対する、1:1、1:2、1:5、及び1:10のN:P比で装填されたスペルミン-デキストラン/pDNAポリプレックスのアガロースゲル電気泳動実験を示す。
図8図8は、当技術分野で知られるDSTAPマイクロバブルと比較した、本開示に従って調製されたスペルミン-デキストランマイクロバブルについてマイクロバブル当たりのDNA分子数に関して測定されたpDNA装填能力を示す。
図9図9は、pDNAを装填したスペルミン-デキストラン-ROR1マイクロバブルとインキュベートされた対照JeKo細胞(上)及びソノポレートしたJeKo細胞(下)についてのフローサイトメトリーの結果を示す。
図10図10は、pDNAを装填したスペルミン-デキストラン-ROR1マイクロバブルでトランスフェクトされ、細胞当たりおよそ5マイクロバブル(左)及び細胞当たり15マイクロバブル(右)でJeKo細胞とインキュベートされ、かつ2W/cmで5秒間、2W/cmで30秒間、1W/cmで60秒間、又は2W/cmで60秒間ソノポレートされたJeKo細胞、又は全くソノポレートされないJeKo細胞(陰性対照)のアガロースゲル電気泳動実験を示す。
図11図11は、TFA-スペルミンの化学合成を示す。
図12図12は、BOC-スペルミンの化学合成を示す。
図13図13は、ポリジアミノエタン(ポリDAE)の化学合成を示す。
図14図14は、ポリスペルミンの化学合成を示す。
図15図15は、ビスアクリルアミドケタールの化学合成を示す。
図16図16は、フタルイミド-スペルミンの化学合成を示す。
図17図17は、ポリスペルミンCBAの化学合成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
マイクロバブル組成物
マイクロバブル
本明細書で使用される「マイクロバブル」は、ガスのコアを封入する界面活性剤シェルによって形成される気泡を指し得る。界面活性剤シェルは、ガスのコアと生理的環境などの外部水性環境の間の界面張力を低下させる1種類以上の分子を含み得る。シェルは、例えば、脂質(例えば、リン脂質)、タンパク質(例えば、アルブミン)、糖、及び/又はポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、気泡は、直径が約10μm以下であり得る。特に明記しない限り、本明細書で使用されるマイクロバブルは、例えば、約100nm~1μm、約200nm~1μm、又は約300nm~1μmの気泡などの1μm未満の気泡(すなわち、ナノバブル)を含み得る。いくつかの実施形態では、マイクロバブル組成物内の平均マイクロバブルサイズは、少なくとも約1、2、3、4、又は5μmである。いくつかの実施形態では、平均マイクロバブルサイズは、およそ1、2、3、4、又は5μmである。いくつかの実施形態では、平均マイクロバブルサイズは、およそ1~10、1~5、1~4、1~3、1~2、2~5、2~4、2~3、3~5、又は3~4μmである。
【0028】
ガスのコアは、1種以上のガスを含み得る。いくつかの実施形態では、ガスのコアは、1以上のパーフルオロカーボンを含む。1種以上のパーフルオロカーボンは、オクタフルオロプロパン(OFP)/パーフルオロプロパン(PFP)、デカフルオロブタン(DFB)/パーフルオロブタン(PFB)、ドデカフルオロペンタン(DDFP)/パーフルオロペンタン/ペルフレナペント、テトラデカフルオロヘキサン/パーフルオロヘキサン、又はヘキサデカフルオロヘプタン/パーフルオロヘプタン、オクタデカフルオロデカリン/パーフルオロデカリン、又はパーフルオロ(2-メチル-3-ペンタノン)(PFMP)を含み得る。いくつかの実施形態では、ガスのコアは、以下のフルオロカーボン:1,2-ビス(F-アルキル)エテン;1,2-ビス(F-ブチル)エテン、1-F-イソプロピル,2-F-ヘキシルエテン;1,2-ビス(F-ヘキシル)エテン;パーフルオロメチルデカリン;パーフルオロジメチルデカリン;パーフルオロメチルアダマンタン及びジメチルアダマンタン;パーフルオロメチル-、ジメチル-及びトリメチル-ビシクロ(3,3,1)ノナン及びそれらの同族体;パーフルオロパーヒドロフェナントレン;式:(CFCFO(CFCFOCF(CF、(CFCFO(CFCFOCF(CF、(CFCFO(CFCFF、(CFCFO(CFCFF、F[CF(CF)CFO]CHFCF、u=1、3、又は5の[CFCFCF(CF)u]Oのエーテル並びにアミンN(C、N(C、及びN(C11:パーフルオロ-N-メチルパーヒドロキノリン及びパーフルオロ-N-メチルパーヒドロイソキノリン;並びに、C13H、C17H、C16などのパーフルオロアルキル水素化物、及びハロゲン化誘導体C13Br、(パーフルブロン)、C13CBrCHBr、1-ブロモ4-パーフルオロイソプロピルシクロヘキサン、C16Br、及びu=2又は3のCFO(CFCFO)uCFCHOHの1以上を含み得る。いくつかの実施形態では、ガスのコアは、空気を含む。いくつかの実施形態では、ガスのコアは、六フッ化硫黄を含む。いくつかの実施形態では、ガスのコアは、窒素を含む。高分子量ガスは一般的に、低分子量ガスよりも安定なマイクロバブルを形成し得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、界面活性剤シェルは、親水性の外面と親油性又は疎水性の内面を形成するために、特定の条件下で自己整列するリン脂質などの脂質を含み得る。リン脂質は、マイクロバブル、ナノ液滴、ミセル、リポソームなどを形成するために当技術分野で使用される任意の標準的なリン脂質を含み得る。いくつかの実施形態では、リン脂質は、ホスファチジン酸(ホスファチデート)(PA)、ホスファチジルエタノールアミン(セファリン)(PE)、ホスファチジルコリン(レシチン)(PC)、ホスファチジルセリン(PS)、及びホスホイノシチド(例えば、ポスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルイノシトールリン酸(PIP)、ホスファチジルイノシトールビスリン酸(PIP2)及びホスファチジルイノシトール三リン酸(PIP3)などのジアシルグリセリド構造を含み得る。いくつかの実施形態では、リン脂質は、セラミドホスホリルコリン(スフィンゴミエリン)(SPH)、セラミドホスホリルエタノールアミン(スフィンゴミエリン)(Cer-PE)、及びセラミドホスホリル脂質などのホスホスフィンゴ脂質を含み得る。いくつかの実施形態では、リン脂質は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)又はその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、リン脂質は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DSPE)又はその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤分子は、ポリ(エチレングリコール)などのポリマー鎖に結合され得る(すなわち、界面活性剤シェル/マイクロバブルは、PEG化され得る)。例えば、界面活性剤分子は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](DSPE-PEG2k)を含み得る。マイクロバブルのPEG化は、マイクロバブルの抗凝集/コロイド安定性、抗免疫原性、親水性、生体適合性、及び/又は生体内循環時間/バイオアベイラビリティを改善し得る。マイクロバブルの外面のPEG化は、マイクロバブル表面を官能化するコンジュゲーションを行うための好ましい状態(例えば、立体的な)を提供し得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤シェルは、2種類の界面活性剤分子を含み得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤シェルは、3種類の界面活性剤分子を含み得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤シェルは、4種類以上の界面活性剤分子を含み得る。いくつかの実施形態では、およそ0~25%、0~20%、0~15%、0~10%、0~5%、5~10%、10~15%、15~20%、20~25%、0~10%、10~20%、0~15%、又は15~25%の界面活性剤分子が、PEG化される。例えば、界面活性剤分子のおよそ10%が、PEG化され得る。いくつかの実施形態では、およそ0~25%、0~20%、0~15%、0~10%、0~5%、5~10%、10~15%、15~20%、20~25%、0~10%、10~20%、0~15%、又は15~25%の界面活性剤分子が、界面活性剤シェルの外面で露出されるように構成された(例えば、スペルミン分子又は標的化分子に連結するための)官能基を含む。例えば、いくつかの実施形態では、界面活性剤分子のおよそ5%が、官能化される。いくつかの実施形態では、PEG化界面活性剤分子のおよそ半分が、官能基を含み得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、界面活性剤分子は、マイクロバブルシェルに追加の分子を共有結合するように構成された、コンジュゲーション反応において反応性である官能基を含有し得る。官能基は、バイオコンジュゲーションを行うために当技術分野で一般的に使用される任意の標準的な反応基から選択され得る。例えば、官能基は、アミン、イソチオシアネート、アシルアジド、NHSエステル、塩化スルホニル、アルデヒド、ケトン、グリオキサール、エポキシド、オキシラン、カーボネート、アリール化剤、イミドエステル、カルボジイミド、無水物、フルオロフェニルエステル、ヒドロキシメチルホスフィン誘導体、グアナジノ(guanadino)基、チオール、ハロアセチル又はハロゲン化アルキル誘導体、マレイミド、アジリジン、アクリロイル誘導体、ピリジルジスルフィド、TNBチオール、ジスルフィド還元剤、ビニルスルホン誘導体、ジアゾアルカン又はジアゾアセチル化合物、カルボニルジイミダゾール、ヒドロキシル、イソシアネート、アルデヒド、ケトン、ヒドラジン誘導体、シッフ塩基、ジアゾニウム誘導体、ベンゾフェノン、アントラキノン、ジアジリン誘導体、ソラレン化合物、ボロン酸誘導体、又は上記のいずれかと反応する官能基を含み得る。いくつかの実施形態では、官能基は、銅(I)触媒アジド-アルキン環化付加(CuAAC)、ひずみ促進アジド-アルキン環化付加(SPAAC)、ひずみ促進アルキン-ニトロン環化付加(SPANC)、ひずみアルケンとアジド[3+2]環化付加、ひずみアルケンとテトラジンの逆要請型(inverse-demand)ディールス-アルダー反応、ひずみアルケンとテトラゾールのフォトクリック反応などの、クリック反応に関与するものであり得る。いくつかの実施形態では、官能基は、非共有結合反応に関わるように構成され得る。例えば、官能基は、ストレプトアビジン又はビオチン、抗体若しくは抗原、又は受容体若しくはリガンドを含み得る。官能基は、界面活性剤シェルの外面に存在し得る。官能基は、界面活性剤分子に直接コンジュゲートされ得るか、又はPEGリンカーなどのリンカーによって分離され得る。例えば、界面活性剤シェルは、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-マレイミド(ポリエチレングリコール)-2000)を含み得る。
【0031】
本明細書に記載のマイクロバブル組成物のマイクロバブルは一般的に、当技術分野で公知の任意のプロセスに従って形成され得る。いくつかの実施形態では、マイクロバブルは、超音波処理によって生成される。いくつかの実施形態では、マイクロバブルは、振盪によって生成される。いくつかの実施形態では、マイクロバブルは、高圧乳化から生成される。いくつかの実施形態では、マイクロバブルは、液体のコアのナノ液滴の相転移を活性化することによって生成される。マイクロバブルは、例えば、Reissらの米国特許第6,113,919号(200 年9月5日発行)又はUngerの米国特許出願公開第2002/0150539号(2002年10月17日);Daytonらの米国特許出願公開第2013/0336891号(2013年12月19日公開);de Gracia Luxらの米国特許出願公開第2018/0272012号(2018年9月27日公開)に開示された方法のいずれかによって生成されてよく、これらの特許の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
スペルミン装飾
スペルミン(1,12-ジアミノ-4,9-ジアザドデカン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)ブタン-1,4-ジアミンとしても知られる)は、全ての真核細胞に見られる細胞代謝に関与するポリアミン、特に有機ジアルキルアミンである。スペルミン合成の前駆体は、アミノ酸のオルニチンである。それは、いくつかの細菌における必須成長因子である。それは、生理的pHでポリカチオンとして見出される。スペルミンは、核酸と会合しており、特にウイルスにおいて、らせん構造を安定化させると考えられる。スペルミン分子のアミノ基は、図1に示すように、およそ10.9、8.4、7.9、及び10.1のpKaを有する。スペルミンは一般的に、生理的pH(すなわちpH7.4)の水性環境で完全にプロトン化される。比較として、図2に描かれる分岐ポリエチレンイミン(PEI)は、7.9~9.6のpKa値を有すると報告されており、アミン基の少なくとも50%は一般的に、生理的pHでプロトン化されると予想される。
【0033】
本明細書で使用されるスペルミンは、図1に描かれるようなスペルミン分子、又はその誘導体若しくは類似体(例えば、サーモスペルミン)を指し、スペルミン及びスペルミジン(スペルミン合成の前駆体)から合成される分子を含み、全ては用語「スペルミン分子」に包含され得る。スペルミンから合成される分子は、ポリスペルミンを含んでよく、それらは、場合により中間架橋剤により、共に共有結合で連結される2以上のスペルミンを含み得る。本開示の実施形態では、スペルミンに実質的に類似しているか又はスペルミンから設計されたスペルミン様分子(例えば、ポリDAE)は、それが本明細書の他の箇所に記載されるのと実質的に同じ効果を達成するならば、スペルミン分子と置換されてよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、ポリスペルミンは、場合により中間架橋剤を使用して、スペルミンを一緒に重合することによって生成され得る。いくつかの実施形態では、複数のスペルミンは、図1に描かれた第一級アミンの一方又は両方が反応後に遊離のまま残されるように、図1に描かれた第二級アミンを介して共に連結されてよい。いくつかの実施形態では、これらの第一級アミンの1以上はその後、本明細書の他の箇所に記載されるように、スペルミン分子をマイクロバブルに又は連結ポリマーに連結するために使用され得る。いくつかの実施形態では、スペルミン分子の第一級アミンは、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、エチルトリフルオロアセテート、又はフタルイミドなどの保護基と反応され得る。保護基は、ポリスペルミン又はスペルミンを含むポリマーなどのより大きな分子を合成するときに、スペルミン分子の第一級アミンを保護するために使用され得る。保護基は、本明細書の他の箇所に記載されるように、第一級アミノ基がさらなる反応(例えば、連結ポリマー及び/又はマイクロバブルへのコンジュゲーション)に関わること又はペイロード分子に静電的に結合することを可能にするために、当技術分野で公知の標準剤を使用して除去され得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、ポリスペルミンは、2以上のスペルミン基の間で生分解性/切断性リンカーを使用して形成(例えば、重合)され得る。生分解性リンカーは、当技術分野で一般的に公知であり、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるAlferievらの米国特許第8,580,545号(2013年11月12日発行)に記載のリンカーを含む。生分解性リンカーは、特定の生理的環境(例えば、低pH)において、及び/又は生理的環境内で予測可能な時間後に切断される(例えば、加水分解される)ように構成され得る。例えば、スペルミン分子は、分解性シスタミンビスアクリルアミドによって連結されたスペルミンを含む、ポリスペルミンCBA(例えば、実施例23参照)を含み得、これは、7.4の生理的pH未満のpHで還元/切断される傾向がある。別の例として、スペルミン分子は、生分解性ビスアクリルアミドケタールによって連結されたスペルミンを含み得る(例えば、実施例21参照)。
【0036】
本明細書に記載のマイクロバブルは、スペルミン分子で装飾され得る。スペルミン装飾マイクロバブルの組成物は一般的に、複数のスペルミン分子が組成物内の各々又は実質的に各々のマイクロバブルの界面活性剤シェルの外面と会合されるマイクロバブルを含む。いくつかの実施形態では、各マイクロバブルは、およそ100,000、200,000、300,000、400,000、500,000、600,000、700,000、800,000、900,000、1,000,000、2,000,000、3,000,000、4,000,000、5,000,000、6,000,000、7,000,000、8,000,000、9,000,000、又は10,000,000のスペルミン分子で装飾され得る。いくつかの実施形態では、スペルミン分子は、マイクロバブル表面と非共有結合的に会合し得る。例えば、スペルミン分子は、スペルミン上の1以上のアミノ基の正電荷とマイクロバブル表面上の負電荷(例えば、リン脂質の頭部上の負に帯電したリン酸基)の間の静電相互作用などの、静電相互作用を介してマイクロバブル表面と会合し得る。いくつかの実施形態では、官能化されたスペルミン分子は、受容体-リガンド結合、抗体-抗原結合、ストレプトアビジン-ビオチン結合などの、非共有結合相互作用を介して、マイクロバブル表面上の官能基と非共有結合的に会合し得る。いくつかの実施形態では、スペルミン分子は、本明細書の他の箇所に記載されるものを含む、当技術分野で公知のコンジュゲーション化学を介してマイクロバブル表面に共有結合し得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、スペルミン分子中の1以上の第一級アミンを使用して、マイクロバブルの界面活性剤シェル中の界面活性剤分子に(反応性官能基を介して)、又はマイクロバブルにスペルミン分子を連結するように構成された連結ポリマーにスペルミン分子を共有結合させてよい。いくつかの実施形態では、第一級アミンを、マイクロバブル表面上に若しくは連結ポリマー上に提示されるイソチオシアネート、イソシアネート、アシルアジド、NHSエステル、塩化スルホニル、アルデヒド、ケトン、グリオキサール、エポキシド、オキシラン、カーボネート、アリール化剤、イミドエステル、カルボジイミド、無水物、フルオロフェニルエステル、ヒドロキシメチルホスフィン誘導体、又はグアニジノ基と共有結合させてよい。例えば、いくつかの実施形態では、第一級アミンを、ケトン、アルデヒド、又はグリオキサールとコンジュゲートさせてシッフ塩基を形成してよく、これは還元により(例えば、水素化ホウ素又は水素化シアノホウ素による)化学的に安定化され得る。例えば、スペルミン分子の1以上の第一級アミンを、本明細書の他の箇所に記載されるように、酸化デキストラン中のアルデヒド、又は他の酸化多糖類と反応させてよい。
【0038】
連結ポリマー
いくつかの実施形態では、スペルミン分子の少なくともいくつか又は全部は、連結ポリマーを介してマイクロバブルと会合される。いくつかの実施形態では、スペルミン分子は、連結ポリマーにコンジュゲートされ、次いで連結ポリマーは、マイクロバブルに連結され得る(例えば、共有結合され得る)。いくつかの実施形態では、マイクロバブルが、最初に連結ポリマーで装飾され(例えば、共有結合され)、次にスペルミン分子が、連結ポリマーにコンジュゲートされ得る。いくつかの実施形態では、連結ポリマーは、スペルミン分子、マイクロバブル組成物、及び連結ポリマーを含む溶液を一度に一緒に混合することなどにより、実質的に同時にスペルミン分子及びマイクロバブルに接合され得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、連結ポリマーは、少なくとも2つのスペルミン分子とコンジュゲートされてよく、スペルミン分子の少なくとも1つを使用して、マイクロバブルに連結ポリマーを連結してよい。例えば、スペルミン上の第一級アミンの一方は、連結ポリマーに共有結合で連結され、他方の第一級アミンは、マイクロバブルに連結され得る。2つの連結する第一級アミンは、同じ種類のコンジュゲーションを介して、又は異なる(例えば、双直交の)コンジュゲーションを介して、連結ポリマー及びマイクロバブルに結合され得る。スペルミン分子は、本明細書の他の箇所に記載のコンジュゲーション化学又は非共有結合相互作用のいずれかによってマイクロバブルの連結ポリマーのいずれかにコンジュゲートされ得る。いくつかの実施形態では、スペルミン分子上の遊離第一級アミンの一部は、マイクロバブル表面へのコンジュゲーションのためにチオール化され得る(例えば、2-イミノチオランを介して)。スペルミン分子上のチオールは、マイクロバブル表面で露出されるマレイミドなどのチオール反応基にコンジュゲートされてよい。いくつかの実施形態では、スペルミン分子内の5、6、7、8、9、10、15、20、25個、若しくは50個ごとの遊離第一級アミノ基のうちおよそ1個、及び/又はおよそ5%、10%、15%、20%、若しくは25%の遊離第一級アミノ基が、マイクロバブルへの結合のために官能化され得る。
【0040】
スペルミン分子を使用してマイクロバブルに連結ポリマーを連結する場合、それは、連結ポリマーにも連結される1以上の追加のスペルミンをマイクロバブルに間接的に連結するように設計される。いくつかの実施形態では、複数のスペルミン分子は、連結ポリマーを介してマイクロバブルに間接的に連結される。マイクロバブルに間接的に連結される複数のスペルミン分子への言及は、スペルミン分子のいくつかがマイクロバブルに直接結合される実施形態、例えば、1以上のスペルミン分子が、マイクロバブルに連結ポリマーを接合するための架橋剤として使用される実施形態を含むことを理解されたい。いくつかの実施形態では、デキストラン(例えば、40kDaデキストラン)などの各連結ポリマーは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、又は100個のスペルミンに連結される。いくつかの実施形態では、デキストラン(例えば、40kDaデキストラン)などの各連結ポリマーは、1~10、10~50、50~100、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~70、70~80、80~90、又は90~100個のスペルミンに連結される。いくつかの実施形態では、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、若しくは100個の連結されたスペルミン分子及び/又は少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又は100%の連結されたスペルミン分子は、「遊離の」スペルミンである。本明細書で使用される場合、遊離スペルミンは、本明細書の他の箇所に記載されるように、その第一級アミンの少なくとも1つが、任意の他の部分に共有結合的に反応せず、かつ負に帯電したペイロードと相互作用するために「遊離の」状態にあるスペルミンである。遊離スペルミンは、その他の第一級アミノ基により、又は例えば第二級アミンにより、マイクロバブルの連結ポリマーにコンジュゲートされ得る。各スペルミン上に少なくとも1つの遊離第一級アミノ基を含むポリスペルミンは、遊離スペルミンを含むと考えられる。マイクロバブルに連結ポリマーを架橋するスペルミン分子、又は2つの連結ポリマーを一緒に架橋するスペルミン分子は、遊離ではない。
【0041】
いくつかの実施形態では、1以上のスペルミンは、本明細書の他の箇所に記載のものなどの、生分解性リンカーを介して連結ポリマーに連結され得る。いくつかの実施形態では、1以上の連結ポリマーは、本明細書の他の箇所に記載のものなどの、生分解性リンカーを介してマイクロバブルに連結され得る。
【0042】
連結ポリマーは、複数の遊離スペルミン分子が各連結ポリマーと会合される足場ポリマーであり得る。足場ポリマーは、各マイクロバブルと会合される遊離スペルミンの数をマイクロバブルと連結ポリマーの間の連結(例えば、共有結合)の数よりも大きくさせることによりスペルミン装飾マイクロバブル組成物中のスペルミンの装填容量を増加させるために使用されてよい。いくつかの実施形態では、マイクロバブルへの共有結合ごとに少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、又は100個の遊離スペルミン分子が存在する。
【0043】
いくつかの実施形態では、連結ポリマーは、線状(非分岐状)ポリマーを含む。1以上のスペルミンが、各連結ポリマーにコンジュゲートされ得る。使用される連結ポリマー及びコンジュゲーション化学に応じて、スペルミン分子は、ポリマー鎖の末端に及び/又は鎖骨格内の反応基にコンジュゲートされ得る。いくつかの実施形態では、連結ポリマーは、1以上の分岐鎖が線状ポリマー鎖の骨格から延びる分岐ポリマーを含む。分岐は、線形であっても、又はそれ自体が分岐状であってもよい。いくつかの実施形態では、スペルミン分子は、線状ポリマー鎖骨格と会合される。いくつかの実施形態では、スペルミン分子は、1以上のポリマー分岐と会合される。いくつかの実施形態では、スペルミン分子は、分岐状の連結ポリマーの複数の分岐と会合される。本明細書に記載の方法のいくつかの実施において、分岐状の足場ポリマーの使用は、類似の分子量のスペルミン装飾線状ポリマーよりも小さい流体力学的半径を有するスペルミン装飾ポリマー分子をもたらし得る。分岐ポリマーは、類似の分子量の線状ポリマーに対してマイクロバブルのスペルミン運搬能力を増加させ得る。本明細書に記載の方法のいくつかの実施において、分岐状の足場ポリマーの使用は、類似の流体力学的半径のスペルミン装飾線状ポリマーよりも高いスペルミン/ペイロード密度を有するスペルミン装飾ポリマー分子をもたらし得る。スペルミンで装飾されたポリマーの流体力学的半径を減少させること、かつ/又は所与の半径のスペルミン装飾ポリマーのスペルミン/ペイロード密度を増加させることは、確立される一過性の細孔が限られた寸法を有するソノポレート細胞において、ペイロードの細胞取り込みを増加させ得る。
【0044】
連結ポリマーは、薬物送達ビヒクル(例えば、ポリプレックス又はナノ粒子)を形成するために当技術分野で使用される任意のポリマーであり得る。連結ポリマーは、多糖類(例えば、グルカン)などの生体ポリマー又は細胞外マトリックスポリマー若しくはその成分(例えば、ヒアルロン酸、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、ラミニン、又はヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラチン硫酸などのプロテオグリカン)であり得る。いくつかの実施形態では、連結ポリマーは、デキストランを含み得る。いくつかの実施形態では、連結ポリマーは、直鎖PEGを含み得る。いくつかの実施形態では、連結ポリマーは、分岐PEG(例えば、4アーム又は8アームの星型PEG)を含み得る。いくつかの実施形態では、連結ポリマーは、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、ポリカプロラクトン、ポリ無水物、ポリシアノアクリレート、ポリ(オルトエステル)、ポリホスファゼン又はそれらの共重合体の1以上を含み得る。連結ポリマーは、そのスペルミン装填能力について選択され得る。連結ポリマーは、その生体適合性(例えば、低毒性)について選択され得る。いくつかの実施形態では、マイクロバブル組成物は、複数種類の連結ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、連結ポリマーは、線状ポリマーと分岐状ポリマーの両方を含む。
【0045】
連結ポリマーは、デキストランであり得る。本明細書で使用されるデキストランは、かなりの数の(1→6)-結合-α-D-グルコピラノシル残基を含むD-グルカンを指す。デキストランの大部分は、基質としてスクロース上で増殖する細菌によって生成される。天然に存在するデキストランは、グルコースの縮合からの複雑な分岐グルカンである。デキストラン鎖は、様々な長さ(3~2000kDa)のものである。ポリマー主鎖は、図3に示すように、α-1,3結合からの分岐を有する、グルコースモノマー間のα-1,6グリコシド結合からなる。分岐は、わずか2若しくは3個のグルコース単位~50個超のグルコース単位の長さを有してよく、低分子量デキストランは、高分子量デキストランよりも少ない分岐および狭い分子量分布を示す。10,000グルコース単位より大きい分子量を有するデキストランは、それらが非常に分岐しているように振る舞う。天然デキストランは、900万~5億グルコース単位の範囲の分子量(MW)を有することが見出されている。分子量が増加するにつれて、デキストラン分子は、より大きな対称性を得る。2,000~10,000グルコース単位の分子量を有するデキストランは、拡張可能なコイルの特性を示す傾向がある。2,000未満のグルコース単位の分子量では、デキストランは、より棒状になる傾向がある。デキストランの線状形態(分岐を欠く)は、化学的に合成できる。マイクロバブルをデキストランで装飾することは、マイクロバブルの抗凝結/コロイド安定性、抗免疫原性、親水性、生体適合性、及び/又はインビボ循環時間/バイオアベイラビリティを改善し得る。デキストランは、特にPEIと比較して、インビボ用途に適する比較的無毒のポリマーである。
【0046】
いくつかの実施形態では、デキストランは、およそ5kDa、10kDa、15kDa、20kDa、25kDa、30kDa、35kDa、40kDa、45kDa、50kDa、60kDa、70kDa、80kDa、90kDa、100kDa、150kDa、200kDa、500kDa、1MDa、1.5MDa、又は2MDaの平均分子量(マイクロバブル組成物全体で)を含み得る。いくつかの実施形態では、デキストランは、少なくともおよそ5kDa、10kDa、15kDa、20kDa、25kDa、30kDa、35kDa、40kDa、45kDa、50kDa、60kDa、70kDa、80kDa、90kDa、100kDa、150kDa、200kDa、500kDa、1MDaの平均分子量を含み得る。いくつかの実施形態では、デキストランは、およそ50kDa、100kDa、150kDa、200kDa、500kDa、1MDa、1.5MDa、又は2MDa以下の平均分子量を含み得る。いくつかの実施形態では、デキストランは、およそ5~100kDa、10~80kDa、15~70kDa、20~65kDa、25~60kDa、30~55kDa、35~50kDa、40~45kDa、又は35~45kDa、35~40kDa、又は20~50kDaの平均分子量を含み得る。様々な実施形態では、連結ポリマーは、組成物から低分子量種を除去するために、1以上の分子量カットオフで透析され得る。ポリマーは、スペルミン分子への結合前、スペルミン分子への結合後、又はその両方の時点で透析され得る。
【0047】
スペルミンによるデキストランの装飾は、ポリマーの有効分子量をおよそ1~5%、5~10%、10~15%、15~20%、20~25%、10~20%、10~30%、20~30%、10~50%、又はそれを超えて増加させ得る。いくつかの実施形態では、デキストラン分子中およそ2、3、4、5、6、7、8、9、10、10~20、20~30、30~40、40~50、10~25、25~50、又は10~50個ごとに1個のグルコースモノマーが、スペルミンで装飾される。しかし、スペルミンコンジュゲーションから生じるアミノ分解は、ポリマーの分子量を1~5%、5~10%、10~15%、15~20%、20~25%、10~20%、10~30%、20~30%、10~50%、50~75%、50~60%、70%~80%、50~75%、又はそれを超えて低下させ得る。例えば、いくつかの実施形態では、40kDaのデキストランが、スペルミンとのコンジュゲーション後におよそ10kDaに低下され得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、マイクロバブル組成物中の各マイクロバブルは最終的に、マイクロバブル当たり、約1×10-15~1×10-13、1×10-15~1×10-14、又は1×10-14~1×10-13gのスペルミン装飾デキストランなどの連結ポリマーで装飾される。例えば、いくつかの実施形態では、各マイクロバブルは、少なくとも約1.0×10-14、1.1×10-14、1.2×10-14、1.3×10-14、1.4×10-14、1.5×10-14、1.6×10-14、1.7×10-14、1.8×10-14、1.9×10-14、2.0×10-14、3.0×10-14、4.0×10-14、5.0×10-14、6.0×10-14、7.0×10-14、8.0×10-14、又は9.0×10-14g/マイクロバブルで装飾される。いくつかの実施形態では、マイクロバブル組成物中の各マイクロバブルは最終的に、少なくとも約25,000、50,000、75,000、100,000、150,000、200,000、300,000、400,000、500,000、600,000、700,000、800,000、900,000、又は1,000,000個のスペルミン装飾デキストランスなどの連結ポリマーで装飾される。
【0049】
マイクロバブル標的化
マイクロバブルはさらに、特定の細胞型又は他の生物学的構造に結合する標的化分子で装飾され得る。いくつかの実施形態では、標的化分子は、タンパク質又は他の生体分子(例えば、細胞表面受容体に対するリガンド)であり得る。いくつかの実施形態では、標的化分子は、細胞外マトリックスポリマー(例えば、ヒアルロン酸、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、ラミニン、又はヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラチン硫酸などのプロテオグリカン)などの、生体ポリマー又はその成分であり得る。いくつかの実施形態では、標的化分子は、抗原結合特性を有する抗体に由来する/モデル化された抗体断片若しくはペプチドを含む、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体である。例えば、抗体は、Fab断片、F(ab’)2断片、Fab’断片、Fv断片、scFv、ジscFv、sdAb、組換えIgG、1以上の相補性決定領域(CDR)を含むペプチド、又は当技術分野で周知の抗原結合特性を有する任意の他の抗体断片若しくは生体分子であり得る。抗体は、標的細胞型の細胞表面上で発現される抗原(例えば、細胞表面受容体)に特異的であり得る。いくつかの実施形態では、マイクロバブルは、癌性細胞/腫瘍細胞を標的とするように構成され得る。いくつかの実施形態では、マイクロバブルは、免疫細胞(例えば、T細胞、B細胞、好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞など)を標的とするように構成され得る。標的化分子は、マイクロバブルの界面活性剤シェルの外面に共有結合され得る。
【0050】
標的化分子は、スペルミン分子と同じ様式でマイクロバブルの外面と会合され得る。例えば、標的化分子は、スペルミン分子と同じ様式で界面活性剤シェルの外面上の官能基に共有結合で連結され得る(例えば、マイクロバブルは、標的化分子に又は連結ポリマーに連結され得る)。標的化分子は、マイクロバブル上の、スペルミン分子と同じ官能基に(例えば、同じ反応基の対若しくは官能化されたスペルミン分子が行うように同じ反応基と反応する第3の反応基を使用して)連結され得るか、又は異なる官能基に連結され得る。いくつかの実施形態では、標的化分子及びスペルミン分子は、双直交反応を使用してマイクロバブルに連結されてよく、そこでは標的化分子とスペルミン分子の間、スペルミン分子と結合するように構成されたマイクロバブル表面上の官能基と標的化分子の間、又は標的化分子を結合するように構成されたマイクロバブル表面上の官能基とスペルミン分子の間に交差反応性はない。標的化分子は、標的化分子をマイクロバブル組成物とインキュベートする(例えば、標的化分子を含む溶液とマイクロバブル組成物を含む溶液を混合する)ことによって、マイクロバブルに結合され得る。標的化分子は、マイクロバブルにスペルミン分子を結合させる前、それと同時に、又はその後にマイクロバブルに結合され得る。いくつかの実施形態では、標的化分子及びスペルミン分子は、連結ポリマーがスペルミン分子及び標的化分子の両方をマイクロバブルに連結するように、同じ連結ポリマーに結合され得る。いくつかの実施形態では、マイクロバブル組成物中の各マイクロバブルは、少なくとも約5,000、10,000、15,000、20,000、25,000、50,000、75,000、100,000、200,000、300,000、400,000、500,000、600,000、700,000、800,000、900,000、又は1,000,000個の標的化分子で装飾される。
【0051】
マイクロバブルペイロード
本明細書に記載のマイクロバブルは、本明細書の他の箇所に記載のソノポレーションを介するなどの、薬物送達用のペイロードを結合するために使用され得る。様々な実施形態では、スペルミンで装飾されたマイクロバブルのスペルミン分子は、ペイロードに結合することによりペイロード用の薬物送達ビヒクル(例えば、トランスフェクション剤)として機能する。いくつかの実施形態では、ペイロードは、タンパク質治療薬などの、タンパク質を含む。タンパク質治療薬は、例えば、抗体ベースの薬物、抗凝固剤、血液因子、骨形成タンパク質、操作されたタンパク質足場、酵素、Fc融合タンパク質、成長因子、ホルモン、インターフェロン、インターロイキン、血栓溶解剤などを含み得る。いくつかの実施形態では、ペイロードは、核酸を含む。核酸は、例えば、プラスミド、siRNA、又はダイサー基質siRNA(DsiRNA)であり得る。いくつかの実施形態では、核酸は、例えば、遺伝子治療の一部として送達され得る、DNAであり得る。遺伝子治療は、体細胞又は生殖細胞のいずれかを標的としてよく、免疫不全症、血友病、サラセミア、及び嚢胞性線維症などの状態を治療するために使用できる。遺伝子治療は、エキソビボで、いくつかの用途では、造血幹細胞に対して実施され得る。送達され得る遺伝子の例としては、第IX因子、ヒト線維芽細胞増殖因子-4、ND4タンパク質、INFアルファ-2b、副腎白質ジストロフィータンパク質(ABCD1遺伝子)、N-スルホグルコサミンスルホヒドロラーゼ(SGSH)、コネキシン43、REP1、アリールスルファターゼA、5T4腫瘍胎児抗原、チミジンキナーゼ、AC6、シトシンデアミナーゼ、第VIII因子、肝細胞増殖因子(例えば、HGF728、HGF723)、SMNタンパク質、β-グロビンなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、核酸は、RNAであり得る。様々な実施形態では、核酸は、修飾され得る。例えば、核酸は、デオキシリボヌクレオチドとデオキシヌクレオチドの両方を含む分子を含む、天然に存在しないヌクレオチドを含み得る。
【0052】
ペイロードは、マイクロバブル表面上の正電荷(例えば、スペルミン分子の正に帯電した第一級及び/又は第二級アミノ基)と、核酸の糖リン酸骨格上の負に帯電したリン酸基などの、ペイロード分子上で露出された負電荷との間の静電的相互作用を介してマイクロバブルに結合し得る。本明細書に記載のマイクロバブル組成物は、ペイロード組成物内の負電荷の核酸リン酸基(P)の数に対するマイクロバブル組成物のマイクロバブルを装飾する正電荷アミン基(N)の数の比に応じて核酸で装填され得る。いくつかの実施形態では、マイクロバブル組成物は、約1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、1:15、1:16、1:17、1:18、1:19又は1:20のN:P比で装填され得る。いくつかの実施形態では、マイクロバブル組成物は、少なくとも約1:5、1:10、1:15、又は1:20のN:P比で装填され得る。いくつかの実施形態では、マイクロバブル組成物は、マイクロバブル当たりおよそ1×10-7~1×10-10、1×10-7~1×10-9、1×10-7~1×10-8、1×10-8~1×10-10、又は1×10-8~1×10-9μgのペイロード(例えば、pDNA)の濃度で調製され得る。マイクロバブル組成物は、例えば、少なくとも約1×10-8、2×10-8、3×10-8、4×10-8、5×10-8、6×10-8、7×10-8、8×10-8、9×10-8μg/マイクロバブルの濃度で調製され得る。
【0053】
マイクロバブル組成物が最終的に運ぶことができる核酸の量は、利用可能な正電荷の量(例えば、マイクロバブル表面上のアミノ基の表面密度)並びに核酸を安定に結合する正電荷ポリマーの能力に部分的に依存する。マイクロバブル組成物の結合安定性は一般的に、より高い装填能力で低下し得る。本開示のマイクロバブル組成物は一般的に、当技術分野で知られるマイクロバブル組成物よりも安定な装填を示し、より高い正電荷の数及び/又は密度を有するマイクロバブル組成物よりも高い装填能力を効果的に達成し得る。例えば、PEIは、ポリマー1mg当たりおよそ8.2モルの第一級アミン密度を提供する。図4に示すように他の全てのグルコース単位がスペルミンに結合されるスペルミン-デキストランは、ポリマー1mg当たりおよそ2.0モルの密度を提供する。さらに、本明細書に開示される結果は、本明細書に記載のスペルミン装飾マイクロバブルが、2グルコース単位ごとに1個よりもはるかに少ないデキストランがスペルミンに効果的にコンジュゲートされる場合でも、PEIコンジュゲートマイクロバブルよりも顕著に多くのDNAを装填できることを実証する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるマイクロバブル組成物は、マイクロバブル当たり少なくとも約5,000、10,000、15,000、20,000、25,000、30,000、又は35,000個の核酸分子の装填能力を示し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるマイクロバブル組成物は、マイクロバブル組成物の計算された表面積に対して少なくとも約0.010、0.015、0.020、0.025、0.030、0.035、0.040、0.045、0.050、又は0.100pg/μmの核酸の装填能力を示し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるマイクロバブル組成物は、10、25、50、75、100、125、150、275、200、250、又は500個のスペルミンごとに少なくとも約1個の核酸の装填能力を示し得る。
【0054】
マイクロバブル組成物を作製する方法
スペルミン装飾マイクロバブルを含むマイクロバブル組成物は一般的に、マイクロバブル、スペルミン分子、任意にデキストランなどの連結ポリマー、任意に核酸などのペイロード分子、及び任意に抗体などの標的化分子を含む前述の成分を含む溶液を組み合わせることによって調製され得る。各溶液は、本明細書の他の箇所に記載されるように調製され得る。異なる溶液は、本明細書の他の箇所に記載の方法に従って組み合わされ得る。本明細書に記載の簡単な調製は、ペイロードの層ごとの堆積により装填されたマイクロバブルを上回る利便性及び速さの利点を提供する。
【0055】
様々な実施形態では、2つの溶液を組み合わせる順序及び/又は溶液が組み合わされる速さは、得られる組成物に影響を与え得る。例えば、第1の成分を含む溶液は、第2の成分が第1の成分より過剰である条件下で第1の成分が第2の成分と反応することが望まれる場合、第2の成分を含む溶液にゆっくりと又は徐々に添加され得る。第2の成分にゆっくりと又は徐々に(例えば、滴下又は時間調整シリンジポンプ下で)第1の成分を添加することは、第1の成分の1分子が第2の成分の複数分子と反応できる状況において、第2の成分による第1の成分の飽和を促進し得る。ゆっくりと又は徐々には、実質的な飽和を促進する速さすなわち速度であると理解され、特定の反応の動態に依存し得る。得られる混合物の最終的なモル比もまた、飽和の程度に影響を与え得る。第1の溶液内の対応する反応基の数より実質的に過剰である第2の溶液内の反応基の数の最終モル比を有する混合物は、第2の成分による第1の成分の飽和を促進し得る。いくつかの実施形態では、第2の溶液内の反応基の数は、第2の成分による第1の成分の飽和を促進するために、第1の溶液内の反応基の数に対して少なくとも約2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、25:1、50:1、75:1又は100:1の最終モル比で存在し得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、デキストラン(例えば、酸化デキストラン)などの連結ポリマーを含む溶液は、各連結ポリマーがスペルミン分子により実質的に飽和されるように、スペルミン分子を含む溶液にゆっくりと又は徐々に添加される。スペルミン溶液にポリマー溶液をゆっくりと又は徐々に添加することは、スペルミンによるポリマー間の架橋量を最小限にする。いくつかの実施形態では、ポリマーはこの段階で実質的に架橋されない。例えば、ポリマーの1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、又は15%未満が、別のポリマーに架橋される。スペルミンの第一級アミンが連結ポリマーに共有結合される実施形態では、飽和を促進することかつポリマーの分子間のスペルミン架橋剤の数を減少させることは、後続の反応に関わるか又はペイロードと結合するために利用できる遊離スペルミン及び遊離第一級アミノ基の数を増加させる。いくつかの実施形態では、スペルミン装飾ポリマーの溶液は、後続の調製工程の前に未反応のスペルミンを除去するために透析され得る。
【0057】
他の実施形態では、スペルミン分子を含む溶液は、デキストランなどの連結ポリマーを含む溶液にゆっくりと又は徐々に添加される。ポリマー溶液にスペルミン分子を含む溶液をゆっくりと又は徐々に添加することは、ポリマー間の架橋の増加を促進し得る。例えば、ポリマー分子の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、又は50%未満のポリマー分子が、少なくとも1つの追加のポリマー分子に架橋され得る。架橋ポリマーは、スペルミン・ポリマー複合体の有効分子量を増加させ得る。架橋ポリマーは、マイクロバブル表面を装飾するポリマーにおける分岐の相対量を効果的に増加させ得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、スペルミン分子は、デキストランなどの連結ポリマーに連結された後のマイクロバブルとの会合(例えば、共有結合)のために官能化される。スペルミン装飾ポリマーは、マイクロバブル表面と反応するための官能基による第一級アミノ基の飽和を防止する、モル比などの条件下で官能化され得る。いくつかの実施形態では、スペルミン分子内の5、6、7、8、9、10、15、20、25、若しくは50個の遊離アミノ基ごとにおよそ1個、及び/又は遊離第一級アミノ基のおよそ約5%、10%、15%、20%、又は25%が、チオール基などにより、マイクロバブルへの結合のために官能化され得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、マイクロバブルを含む溶液は、各マイクロバブルがスペルミン分子/スペルミン装飾ポリマーで実質的に飽和されるように、スペルミン分子又はスペルミン装飾デキストランなどのスペルミン装飾ポリマーを含む溶液にゆっくりと又は徐々に添加される。スペルミン含有溶液にマイクロバブル溶液をゆっくりと又は徐々に添加することは、スペルミン又はスペルミン修飾ポリマーによるマイクロバブル間の架橋量を最小限にし得る。いくつかの実施形態では、マイクロバブルはこの段階で実質的に架橋されない。例えば、マイクロバブルの1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、又は15%未満が、別のマイクロバブルに架橋される。マイクロバブルの飽和を促進すること、およびマイクロバブル間の架橋の数を減らすことは、後続の反応に関わるか又はペイロードと結合するために利用できる遊離スペルミンと遊離第一級アミノ基の数を増加させ得る。いくつかの実施形態では、スペルミン装飾マイクロバブルの溶液は、後続の調製ステップの前に、未結合のスペルミン及び/又はポリマーを除去するために透析又は洗浄され得る。
【0060】
他の実施形態では、スペルミン分子又はスペルミン装飾ポリマーを含む溶液は、マイクロバブルを含む溶液にゆっくりと又は徐々に添加される。マイクロバブル溶液にスペルミンを含む溶液をゆっくりと又は徐々に添加することは、マイクロバブル間の架橋の増加を促進し得る。例えば、マイクロバブルの1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、又は50%未満のマイクロバブルが、少なくとも1つの追加のマイクロバブルに架橋され得る。いくつかの実施形態では、平均のマイクロバブルは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の追加のマイクロバブルに架橋され得る。マイクロバブルを架橋することは、1つのマイクロバブル又は共に架橋された複数のマイクロバブルを含み得る、個々の粒子の有効サイズ及び表面積を増加させ、粒子当たりのペイロード装填能力を増大させ得る。本明細書に記載の方法のいくつかの実施において、粒子当たりのペイロード装填能力を増加させることは、本明細書の他の箇所に記載される、いくつかのソノポレーション適用においてなどの、細胞へのペイロード送達の効率を増加させ得る。いくつかの実施形態では、マイクロバブル粒子の有効直径は、およそ1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、又は10μm超であり得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、スペルミン装飾マイクロバブルを含む溶液は、各スペルミン装飾マイクロバブルがペイロード分子で実質的に飽和されるように、核酸(例えば、プラスミドDNA又はpDNA)などのペイロードを含む溶液にゆっくりと又は徐々に添加される。ペイロード溶液にスペルミン装飾マイクロバブル溶液をゆっくりと又は徐々に添加することは、ペイロード分子によるマイクロバブル間の架橋量を最小限にする。いくつかの実施形態では、マイクロバブル又はスペルミン架橋若しくはポリマー架橋されたマイクロバブルを含む粒子は、この段階で実質的に架橋(又はさらに架橋)されない。例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、又は15%未満のマイクロバブルが、別のマイクロバブルに架橋される。ペイロードによるマイクロバブル又はマイクロバブル粒子の飽和を促進することは、本明細書の他の箇所に記載のいくつかのソノポレーション適用においてなどの、細胞へのペイロード送達の効率を増加し得る。
【0062】
他の実施形態では、ペイロード溶液は、スペルミン装飾マイクロバブルを含む溶液にゆっくりと又は徐々に添加される。スペルミン装飾マイクロバブル溶液にペイロード溶液をゆっくりと又は徐々に添加することは、マイクロバブル間の増加された架橋を促進し得る。例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、又は50%未満のマイクロバブルが、少なくとも1つの追加のマイクロバブルに架橋され得る。いくつかの実施形態では、平均のマイクロバブルは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の追加のマイクロバブルに架橋され得る。マイクロバブルを架橋することは、1つのマイクロバブル又は共に架橋された複数のマイクロバブルを含み得る、個々の粒子の有効サイズ及び表面積を増加させ、粒子当たりのペイロード装填能力を増大させ得る。本明細書に記載の方法のいくつかの実施において、粒子当たりのペイロード装填能力を増加させることは、本明細書の他の箇所に記載のいくつかのソノポレーション適用においてなどの、細胞へのペイロード送達の効率を増加し得る。いくつかの実施形態では、マイクロバブル粒子の有効直径は、およそ1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、又は10μm超であり得る。
【0063】
様々な実施形態では、スペルミン、ポリマー、スペルミン装飾ポリマー、マイクロバブル、スペルミン装飾マイクロバブル、及び/又はペイロードを含む溶液は、当技術分野で公知の標準的な手段により共に組み合わされ得る。いくつかの実施形態では、溶液は、例えば、シリンジポンプ又は滴定フラスコを使用して、本明細書の他の箇所に記載されるようにゆっくりと又は徐々に組み合わされ得る。溶液は、およそ5分、10分、15分、30分、45分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、18時間、又は24時間にわたり、又は反応を実質的に完了させるのに必要な期間にわたり組み合わされ得る。溶液は、回転、攪拌、振盪などを含む、当技術分野で公知の標準的な手段により、溶液の組み合わせ中及び/又は組み合わせ後に混合され得る。溶液は、組み合わせた後、およそ15分、30分、45分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、18時間、又は24時間にわたり混合され得る。いくつかの実施形態では、第1の成分は、乾燥形態にあり(例えば、凍結乾燥される)、第2の成分中に第1の成分を溶解することにより、溶液中で第2の成分と混合される。いくつかの実施形態では、乾燥成分は、溶液にゆっくりと又は徐々に添加される、成分であり得る。様々な工程において、遠心分離が、マイクロバブルを洗浄するか、又はそうでなければマイクロバブルを反応溶液中の他の成分から分離するために、使用され得る。マイクロバブルは、浮揚性の上清中に捕集され得る。
【0064】
薬物送達のためにマイクロバブル組成物を使用する方法
ソノポレーション
本開示の一態様では、ソノポレーション技術により本明細書に記載のマイクロバブルを使用して1以上の細胞にペイロードを送達するための方法が提供される。ソノポレーションは、膜を横切るかつ細胞内へのペイロードの送達を容易にするために細胞原形質膜の透過性を増大させるために、典型的には超音波周波数で、音を使用する。ソノポレーションは、血液脳関門又は血液腫瘍関門を越えてペイロードを送達するのに特に有益であり得る。インビボ適用の場合、超音波は非侵襲的な様式で対象の組織の奥深くまで浸透しかつ非標的組織への最小限の副作用で又は副作用なしに空間的及び時間的に標的化された送達を提供できるので、ソノポレーションは、薬物送達の有利な手段であり得る。マイクロバブルは、超音波媒介薬物送達において音響キャビテーションの核として機能でき、マイクロバブルの高い圧縮性のため超音波を効果的に散乱させる。ソノポレーションは、細胞原形質膜における一過性細孔の形成を介して細胞透過性の一時的な増加を誘導すると考えられる。理論に束縛されることなく、マイクロバブルを崩壊させることは、近くの細胞膜を透過できる局所的な衝撃波、ウォータージェット、及びせん断力をもたらし得る。ソノポレーションは、細胞サイトゾル中への、核酸などの治療薬の直接送達(すなわち、エンドソーム輸送経路の外側で)を可能にし得る。
【0065】
超音波の強度及びマイクロバブルシェルの組成は、ソノポレーションの有効性に影響を及ぼし得る。マイクロバブルシェルは、小さな圧力摂動に耐えるのに十分に剛性であるが、超音波に応答して振動するのに十分に弾性である必要がある。マイクロバブルサイズにおけるより低いポリ分散度が、より高い割合のマイクロバブル組成物が同じ振幅の超音波に敏感であるように、望ましい場合がある。理論に束縛されることなく、低強度の超音波に供されたマイクロバブルは、安定キャビテーションと呼ばれる共鳴直径(resonant diameter)の周りで安定に振動し得る。安定なキャビテーションは、局所的なせん断力と音響マイクロストリーミングを生成する。より高い圧力振幅では、マイクロバブルは、それらを慣性キャビテーションと呼ばれるイベントで爆発させる大きなサイズ変動を受ける傾向があり、崩壊はウォータージェッティング、衝撃波及び他の慣性現象を生じる。安定なマイクロバブルキャビテーションと一過性のマイクロバブルキャビテーションの両方が、細胞膜透過処理を誘導し得る。ソノポレーションは、エンドサイトーシスとは無関係の細胞内薬物送達への経路を提供すると考えられる。いくつかの実施形態では、マイクロバブルによるソノポレーションの超音波誘発は、約0.1MHz~約10MHz、約0.5MHz~約5MHz、又は約1MHz~約3MHzの周波数で実行され得る。いくつかの実施形態では、超音波誘発は、約100mW/cm~約1kW/cm、約100mW/cm~約1W/cm、約300mW/cm~約1W/cm、約500mW/cm~約1W/cm、約700mW/cm~約1W/cm、約1W/cm~約500W/cm、約1W/cm~約100W/cm、約1W/cm~約100W/cm、約1W/cm~約50W/cm、約1W/cm~約20W/cm、約1W/cm~約10W/cm、約1W/cm~約5W/cm、又は約1W/cm~約2W/cmの強度で実行され得る。いくつかの実施形態では、超音波誘発は、例えば、およそ720mW/cm(診断用超音波の場合)などの、規制機関(例えば、FDA)によって許可される最大強度で実行され得る。いくつかの実施形態では、超音波誘発は、約10%~100%、約20%~約90%、約30%~約80%、約40%~約70%、又は約50%~約60%のデューティサイクルで実行され得る。いくつかの実施形態では、デューティサイクルは約50%である。いくつかの実施形態では、超音波の機械的指数(MI)は、約0.05~約5、約0.1~約5、約0.5~約5、約1~約5、約2~約5、約3~約5、約4~約5であり得る。いくつかの実施形態では、超音波誘発は、例えば、およそ1.9(診断用超音波の場合)などの、規制機関(例えば、FDA)によって許可される最大機械的指数で実行され得る。いくつかの実施形態では、超音波誘発は、約10秒~3分、10秒~2分、10秒~1分、10秒~50秒、10秒~40秒、10秒~30秒、30秒~3分、30秒~2分、30秒~1分、30秒~50秒、30秒~40秒、1分~3分、又は1分~2分、2分~3分の間送達され得る。
【0066】
エンドサイトーシスによる薬物送達
いくつかの実施形態では、ペイロードの送達は、例えば、エンドサイトーシス(例えば、食作用、ピノサイトーシス、受容体媒介性エンドサイトーシス)により、ソノポレーションなしに生じる、かつ/又は誘導され得る。いくつかの実施形態では、標的化分子及び又はスペルミン装飾マイクロバブルを装飾する別の分子は、受容体媒介性エンドサイトーシスを誘導する受容体と相互作用し得る。様々な実施形態では、スペルミン装飾マイクロバブルは、そこでのpHが約4.5~5.0である、リソソームに組み込まれ得る。様々な実施形態では、リソソーム内のpHの低下は、本明細書の他の箇所に記載のシスタミンビスアクリルアミドリンカーなどの、pH感受性生分解性リンカーの切断(例えば、ジスルフィド結合の低下による)を促進し得る。スペルミン分子間、スペルミン分子と連結ポリマーの間、及び/又は連結ポリマーとマイクロバブルの間の生分解性リンカーの分解は、スペルミン会合ペイロードを効果的に解放し、より効果的な送達を可能にし得る。例えば、マイクロバブルからのペイロードの分離は、いくつかの実施形態では核局在化を促進し得る。スペルミン装飾マイクロバブル及びペイロードは、本明細書の他の箇所に記載されるように調製され、かつ/又は細胞と組み合わされ得る。
【0067】
インビトロ適用
いくつかの実施形態では、薬物送達(及び該当する場合ソノポレーション)は、インビトロで実行され得る。スペルミン装飾マイクロバブル組成物は、接着細胞と又は溶液中の細胞と組み合わされ得る。マイクロバブルが溶液中の細胞に添加されると、ソノポレーションが、溶液中の細胞に対して実行されるか、又は細胞がその後、ソノポレーションの前に接着(プレートに播種されてよい)されてよい。マイクロバブルは、細胞当たり約1:1~100:1、5:1~50:1、5:1~25:1、10:1~50:1、10:1~30:1、10:1~25:1、10:1~20:1、10:1~15:1、15:1~20:1、又は15:1~25:1のマイクロバブルの比率で細胞と組み合わされ得る。例えば、いくつかの実施形態では、マイクロバブルと細胞は、細胞当たりおよそ10:1、15:1、又は20:1のマイクロバブルの比率で組み合わされる。スペルミン装飾マイクロバブル組成物は、スペルミン装飾マイクロバブルを細胞(例えば、標的化分子が組み込まれる)と十分に混合させ、かつ場合によっては細胞を標的化させるために、一定期間、例えば、5分、10分、15分、20分、25分、30分、45分、1時間などの間インキュベートされ得る。いくつかの実施形態では、マイクロバブルは、特にマイクロバブルが溶液中で細胞と組み合わされる場合に、細胞と積極的に(例えば、回転により)混合され得る。マイクロバブルが接着細胞と組み合わされる実施形態では、細胞培養表面は、浮揚性マイクロバブルが接着細胞とより良好に相互作用することを可能にするために、組み合わせ期間の一部又は全体にわたって反転され得る。細胞/マイクロバブル組成物は、混合後に1回以上洗浄され得る。いくつかの実施形態では、スペルミン装飾マイクロバブルは、マイクロバブルを細胞と組み合わせる前に、ペイロード(例えば、pDNA)を予め装填される。いくつかの実施形態では、ペイロードは、マイクロバブルと実質的に同時に細胞と組み合わされる。例えば、ペイロードは、細胞との組み合わせの直前に、又は細胞と実質的に同時にマイクロバブル溶液中に組み合わされ得る。いくつかの実施形態では、ペイロードは、マイクロバブルが細胞と混合しかつ/又は細胞を標的化することを可能にするために、インキュベーション期間中に細胞と組み合わされ得る。いくつかの実施形態では、ペイロードは、マイクロバブルが細胞と混合しかつ/又は細胞を標的化することを可能にされた後に細胞と組み合わされ得る。例えば、ペイロードは、細胞とマイクロバブルの組み合わせに続く洗浄工程の後に細胞と組み合わされ得る。マイクロバブルがペイロードを予め装填されないいくつかの実施形態では、ペイロードは、ペイロードをスペルミン装飾マイクロバブル上のスペルミンと相互作用させるためにソノポレーションの前に、一定期間、例えば、5分、10分、15分、20分、25分、30分、45分、1時間などの間、細胞とインキュベートされ得る。細胞がマイクロバブル及びペイロードと十分に組み合わされた後に、ソノポレーションが、本明細書の他の箇所に記載されるように実行され得る。
【0068】
インビボ適用
いくつかの実施形態では、薬物送達(及び該当する場合ソノポレーション)は、対象においてインビボで実行され得る。対象は、ペイロードの送達から有益な効果を経験できる任意の生物を含み得る。対象の例としては、哺乳動物、例えば、ヒト、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラット、及びトランスジェニックの非ヒト動物が挙げられる。
【0069】
本明細書に記載のマイクロバブル及び/又はペイロード組成物(治療用組成物)は、典型的には全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、若しくは頭蓋内注入)又は局所適用による、個々の対象への投与によりインビボで送達できる。いくつかの実施形態では、治療用組成物は、ペイロードを予め装填されたマイクロバブル組成物を含み得る。いくつかの実施形態では、治療用組成物は、連続的に又は実質的に同時に投与される、別々のマイクロバブル組成物及びペイロード組成物を含み得る。連続して投与される場合、ペイロード組成物は、マイクロバブル組成物の投与の前又は後に対象に投与され得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、組成物は、個々の対象から外植された細胞(例えば、リンパ球、骨髄穿刺液、組織生検)又はユニバーサルドナー造血幹細胞などの細胞にエクスビボで送達されてよく、続いて、通常はペイロードを組み込んだ細胞の選択後に、対象中に細胞を再移植する。診断、研究のための、又は分子治療のためのエキソビボ細胞トランスフェクション(例えば、宿主生物内へのトランスフェクト細胞の再注入による)は、当業者に周知である。エクスビボトランスフェクションに適する様々な細胞型は、当業者に周知である。一実施形態では、幹細胞が、細胞トランスフェクション及び分子療法のためのエキソビボ手順において使用される。幹細胞は、公知の方法を使用して形質導入及び分化のために単離できる。
【0071】
治療用組成物は、インビボで細胞の形質導入用の生物に直接投与することもできる。投与は、注射、注入、局所適用及びエレクトロポレーションを含むが、これらに限定されない、分子を血液又は組織細胞に導入し最終的に接触させるために通常使用される経路のいずれかによる。このような治療用組成物を投与する適切な方法は、利用可能であり、当業者に周知であり、かつ特定の組成物を投与するために2以上の経路を使用できるが、特定の経路がしばしば、別の経路よりも即時かつより効果的な反応を提供できる。
【0072】
治療用組成物は、医薬組成物の形態で投与され得る。医薬組成物は、哺乳動物、例えばヒトへの投与に適する調製物を含む。本発明の化合物が医薬として哺乳動物、例えばヒトに投与される場合、それらは、それ自体で、又は医薬として許容される担体と組み合わせて、例えば0.1~99.5%(より好ましくは0.5~90%)の活性成分を含有する医薬組成物として与えられてよい。薬学的に許容される担体は、当技術分野で公知であり、本開示の化合物を哺乳動物に投与するのに適する、薬学的に許容される物質、組成物又はビヒクルを含む。担体は、対象薬剤を1つの器官若しくは身体の一部から別の器官若しくは身体の一部への運搬又は輸送に関与する液体又は固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒又はカプセル化材料を含む。各担体は、製剤の他の成分と適合性があり、かつ患者に害を及ぼさないという意味で「許容される」べきである。薬学的に許容される担体として機能できる物質のいくつかの例としては、ラクトース、グルコース及びスクロースなどの糖類;トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロースなどのセルロース、及びその誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバター及び坐剤ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油などの油類;プロピレングリコールなどのグリコール類;グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールなどのポリオール類;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル類;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張生理食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;並びに医薬品製剤に使用される他の毒性のない適合性物質、が挙げられる。ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳化剤及び滑沢剤、並びに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤及び芳香剤、防腐剤及び抗酸化剤も、組成物中に存在してよい。
【0073】
薬学的に許容される抗酸化剤の例としては、アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤;パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなどの油溶性抗酸化剤;並びにクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤などが挙げられる。
【0074】
薬学的に許容される担体は、投与される特定の組成物により、並びに組成物を投与するために使用される特定の方法により一部には決定される。したがって、利用可能な医薬組成物の多種多様な適切な製剤がある(例えば、レミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、第17版、1989参照)。
【0075】
いくつかの実施形態では、治療用組成物は、単独で又は他の適切な成分と組み合わせて、吸入により投与されるエアロゾル製剤にすることができる(すなわち、それらを「噴霧」できる)。エアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの、加圧された許容される噴射剤中に入れられてよい。
【0076】
静脈内、筋肉内、皮内、及び皮下の経路によるなどの、非経口投与に適する製剤は、水性及び非水性の等張性滅菌注射溶液を含み、これは、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び製剤を意図されたレシピエントの血液と等張にする溶質、並びに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、及び防腐剤を含んでよい水性及び非水性の無菌懸濁液を含み得る。開示される組成物は、例えば、静脈内注入によって、経口的に、局所的に、腹腔内に、膀胱内に又は髄腔内に投与できる。化合物の製剤は、アンプル及びバイアルなどの、単位用量又は複数回用量の密封容器で提供できる。注射液及び懸濁液は、前述の種類の滅菌粉末、顆粒、及び錠剤から調製できる。
【0077】
治療的用途の場合、対象に、又は対象に導入される細胞に投与される治療用組成物の用量は、本開示の文脈において、対象に有益な治療応答を経時的にもたらすのに十分である必要がある。加えて、特定の投薬計画は、実験環境において、例えば、機能ゲノミクス研究において、並びに細胞又は動物モデルにおいて表現型の変化を決定するために有用であり得る。用量は、使用される特定の組成物の有効性及びKd、標的細胞の核容積、及び対象の状態、並びに治療される対象の体重又は表面積によって決定される。用量の大きさはまた、特定の対象における特定の化合物又はオリゴヌクレオチド剤の投与に伴う任意の有害な副作用の存在、性質、及び程度によって決定される。投与される投与量は、対象ごとに異なる。「治療的に有効な用量」は、例えば、腫瘍のサイズ若しくは増殖速度、又は腫瘍の成長期間、腫瘍数、癌細胞数、癌細胞の生存率、増殖速度及び増殖期間などの症状又は表現型をモニタリングすることによって決定できる。疾患の治療又は予防において投与される治療用組成物の有効量を決定する際に、医師は、マイクロバブル及び/又はペイロードの循環血漿レベル、潜在的な毒性、疾患の進行、及び抗治療抗体の産生を評価する。投与は、単回投与又は分割投与によって達成できる。
【0078】
様々な実施形態では、本明細書に記載のマイクロバブル組成物及び/又は薬物送達方法は、陰性対照と比較して、核酸ペイロードのトランスフェクション効率(例えば、pDNAの発現)をおよそ5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、又はそれより多く増強し得る。
【0079】
マイクロバブル組成物を含むキット
本明細書の他の箇所に記載の1以上の組成物を調製するためのキットもまた、本明細書で開示される。キットは、本明細書に記載の方法などの用途における使用のための、別々の保存容器(例えば、バイアル、パウチなど)中の1以上の成分を提供し得る。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書の他の箇所に記載のスペルミン装飾マイクロバブル組成物を含む。ペイロードは、キットに含まれても含まれなくてもよい。いくつかの実施形態では、スペルミン装飾マイクロバブル組成物は、ペイロードを予め装填される。いくつかの実施形態では、マイクロバブル組成物は、スペルミンで装飾されないが、スペルミン分子は、マイクロバブル組成物と組み合わせることができる別の組成物(例えば、スペルミン装飾ポリマー組成物)中で提供される。いくつかの実施形態では、1以上の組成物は、溶液で提供される。溶液は、室温で液体形態であるように構成され得る。いくつかの実施形態では、溶液は、保存中に凍結されるように構成される。いくつかの実施形態では、溶液は、保存中に冷蔵されるように構成される。溶液は、当技術分野で一般的に知られるような安定化剤を含み得る。保存容器は、組成物を光から保護できる。いくつかの実施形態では、1以上の組成物は、乾燥又は固体形態で提供される。例えば、組成物を含む1以上の溶液は、凍結乾燥又は噴霧乾燥により乾燥形態にされてよい。いくつかの実施形態では、1以上の乾燥組成物を液体形態に再構成するための試薬(例えば、溶液)が、キットの一部として提供される。いくつかの実施形態では、マイクロバブル組成物は、水溶液並びにマイクロバブルのガスのコアを再構成するためのガスで再構成するのに適している。キットは、スペルミンをマイクロバブルと組み合わせること、又はスペルミン装飾マイクロバブルをペイロードと組み合わせることなどの、任意の組成物を組み合わせるのに必要な1以上の薬剤を含み得る。いくつかの実施形態では、キットは、ソノポレーションを実行するのに必要な1以上の試薬又はツールを含む。
【0080】
本明細書で使用される場合、以下の実施例を含み、マイクロバブル組成物中の「それぞれの」マイクロバブル、又はマイクロバブルと会合するか又は組成物内の「それぞれの」ポリマーに言及する場合、又は個々のマイクロバブル若しくはポリマーが特に特徴付けられる場合、その特徴付けは、マイクロバブル/ポリマー組成物が組成物全体にわたり実質的に均質であることを前提としたバルクマイクロバブル又はポリマー組成物の特性/測定値に基づくことを理解されたい。したがって、平均数(マイクロバブルの測定若しくは推定される総数及び/又はポリマー全部の数若しくは質量に基づく)は、幾分かの変動が個々のマイクロバブル及び/又はポリマー間で予想されることを理解して組成物中の「それぞれの」マイクロバブル又はポリマーを特徴付けるために使用されてよい。組成物中の実質的にそれぞれの/全てのマイクロバブル又はマイクロバブルと会合するそれぞれの/全てのポリマーは、例えば、組成物内の80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.99%、又は100%のマイクロバブル/ポリマー(質量又は数による)を指してよい。組成物中の実質的にそれぞれの/全てのマイクロバブル、又はマイクロバブルと会合するそれぞれの/全てのポリマーは、本明細書の他の箇所に記載のペイロード装填量のいずれかを達成するのに必要な量を指してよい。
【0081】
本明細書に開示される任意の分子量平均値は、明示的に別段の記載がない限り、数平均化又は重量平均化のいずれかがなされ得る。本明細書に開示される任意の平均サイズ(例えば、マイクロバブルサイズ)は、明示的に別段の記載がない限り、数平均化又は重量平均化のいずれかがなされ得る。
【0082】
本明細書に開示される全ての測定値又は値は、明示的に別段の記載がない限り、近似値であると想定されるべきである。「約」又は「およそ」であるとみなされる測定値又は値は、本開示の文脈で当業者によって評価され得る。例えば、別段の指示がない限り、本明細書に開示される測定値又は値は、本明細書に記載の主題から効果的に逸脱することなく、20%以下、好ましくは10%以下、及びより好ましくは5%以下の偏差を有し得る。
【0083】
実施例
実施例1:酸化デキストラン(O-Dex)の合成
O-Dexの合成は、図4に示す一連の反応の最初の化学反応により示される。過ヨウ素酸カリウム(1437mg、6.25ミリモル)を、milliQ水(20mL)中のデキストラン40k(1000mg、6.25ミリモルのグルコースモノマー)の溶液に添加した。反応液を、室温にて暗所で7時間、激しく撹拌し、次いで、水洗浄しながら4℃で10分間4000gにてAmiconスピンフィルター(MWCO=10kDa)を使用して2回スピンろ過した。得られた保持液を、再生セルロース半透膜(MWCO 3.5~5kDa)を使用して水に対し1日透析した後、2日間凍結乾燥して、淡黄色固体としてO-Dexを得た(80%収率)。図5の上部に示す、H NMR(400MHz,D20)6(ppm)=6.02-4.85(m,0.4H),4.71-4.25(m,0.5H),4.05-3.41(m,1H)。
【0084】
実施例2:スペルミンコンジュゲートデキストラン(Spe-Dex)の合成
O-DexからのSpe-Dexの合成は、図4に示される一連の反応の第2及び第3の化学反応により示される。O-Dex(790mg、4.94ミリモルのグルコースモノマー)を、milliQ水(38mL)に溶解し、シリンジポンプで5時間かけて、ホウ酸緩衝液(19mL、0.1M、pH=11)中のスペルミン(457mg、2.96ミリモル)溶液に加えた。得られた溶液を、室温で24時間穏やかに撹拌した後、氷浴下でNaBH(359mg、9.48ミリモル)を加え、室温で48時間撹拌した。NaBH(359mg、9.48ミリモル)の追加分を、次いで加え、同じ条件下で24時間攪拌を続けた。粗生成物を、2.5日間Spectra-Par Float-A-Lyzer(MWCO=3.5~5kDa)を使用して水に対し透析した後、2日間凍結乾燥して、白色のフワフワした固体としてSpe-Dexを得た。図5の下部に示す、H NMR(500MHz,DzO)6(ppm)=3.66(s,1H),2.74(d,J=49.5Hz,1.5H),1.86-1.39(m,lH)。NMRは、デキストランのほぼ全ての他のグルコース分子がスペルミンにコンジュゲートされることを示唆する。
【0085】
実施例3:Spe-Dexアミン定量
Spe-Dex上の第一級アミンの数を、スペルミンを標準物質としてTNBS(2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸)法を使用して定量化した。TNBSと第一級アミンの反応は、その強度がポリマー中の第一級アミンの濃度に正比例する発色団を生成する。スペルミン標準物質を作製するために、20μLの新たに調製したTNBS水溶液(15mg/mL)を、600μLの水に溶解した0.04~0.2μモルの範囲の様々な量のスペルミンを含むチューブに別々に加えた。200μLの重炭酸緩衝液(0.8M、pH=8.5)を、各チューブに加え、混合物を、1分間ボルテックスし、次いで37℃で2時間インキュベートした。その後、600μLの1MのHClを、各チューブに加えて反応を停止させ、混合物を、1分間ボルテックスし、次いで穏やかに超音波処理して全ての気泡を除去した。100μLの試料を、1回の実行当たり使用し、吸光度を、340nmで測定した。この手順を、様々な質量のSpe-Dexを使用して繰り返し、アミンの数を、標準曲線及び標識ポリマーの吸光度の式を使用して計算した。本方法は、Spe-Dex1ミリグラム当たり0.71μモルの第一級アミン数を報告した。40kDaのその開始分子量を維持するデキストラン分子については、得られた各スペルミン装飾デキストラン分子は理論的には、およそ33個のスペルミン、222個のグルコース単位を含み、46.71kDaの分子量を有し、デキストラン分子間の架橋がないと仮定すると、6~7個ごとにおよそ1個のグルコース分子がスペルミンにコンジュゲートされる。
【0086】
実施例4:ポリプレックスサイズの測定
Spe-Dex/DNAポリプレックスを、1μgのGFP pDNA(50μL,20μg/ml)を1:1、1:2、1:5、及び1:10のN:P比で等量のポリマー溶液とボルテックスした後、室温で30分間インキュベートすることによって調製した。5μLの各ポリプレックス溶液を次いで、MQ水(又は10mMのNaCl)で1mlに希釈し、平均サイズとゼータ電位を、ZetaView Particle Metrix NTAシステムを使用して測定した。Spe-Dex/DNAポリプレックス粒子サイズの測定値を、1:1(左上)、1:2(右上)、1:5(左下)、及び1:10(右下)のN:P比で生成したポリプレックスについて図6で示す。サイズの測定値は、全ての比率でDNAの複合体化を示した。各比率のサイズとゼータは、次の通りであった:1:1=123.8nm、30.53mV;1:2=191.5nm、27.51mV;1:5=119.1nm、-25.55mV;1:10=105.3nm、-34.18mV。
【0087】
実施例5:ゲル電気泳動アッセイ
0.8μg/mLのエチジウムブロマイド(EtBr)を含む1%w/vのアガロースゲルを、トリス-アセテート-EDTA緩衝液(TAE)で調製した。Spe-Dex/DNAポリプレックスを、実施例4の方法を使用して、1:1、1:2、1:5、及び1:10のN:P比で調製した。各ポリプレックス試料10μLを、5μLの6×TriTrack DNA装填緩衝液で希釈し、15μL全てを、ゲルにロードした。ゲルを、30分間70mVで泳動し、次いでさらに30分間100mVで泳動し、DNAバンドを、BioDoc-ltイメージングシステムを使用してUVイルミネーターで可視化した、その結果を図7に示す。ゲルアッセイは、定常バンドで示されるように、1:1及び1:2のN:P比でDNAの完全な複合体化を確認したが、1:5及び1:10の比では部分的な複合体化のみが確認され、これは、遊離DNAのバンドを示した。
【0088】
実施例6:Spe-Dexチオール化及びFITC標識
Spe-Dex(5mg、3.55モルのNH)を、PBS 1×、5mMのEDTA(0.5ml)で溶解した。これに、1mg/mlの2-イミノチオランHCL(4.88mg、35.45μモル)水溶液を、激しく攪拌しながら滴下した。得られた混合物を、1時間撹拌し、48時間透析し(MWCO=3.5kDa)、48時間凍結乾燥した。Spe-Dexポリマーの蛍光標識を、アミン反応性5/6-カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(NHS-フルオレセイン)を使用して行った。簡単に説明すると、Spe-Dexポリマー(5mg)を、1mlの1×ホウ酸緩衝液(50mM、pH=8.5)に溶解した。NHS-フルオレセイン(5mg、10.562μモル)を、DMF(0.5ml)に溶解し、激しく攪拌しながらSpe-Dex溶液に滴下した。反応物を、1時間撹拌し、48時間透析し(MWCO=3.5kDa)、48時間凍結乾燥した。
【0089】
実施例7:Spe-Dexチオールの定量
Spe-Dex上のチオールの数を、標準物質としてシステインを用いエルマン試薬(5,5'-ジチオビス-(2-ニトロ安息香酸))を使用して定量化した。エルマンとチオールとの反応は、発色団を生成し、その強度は、ポリマー中のチオールの濃度に正比例する。標準物質を作製するために、10~500μMの範囲の濃度のシステイン50μLを、0.1M Tris-HCl pH7.5中に溶解された950μLの0.1mMエルマンに加え、短時間ボルテックスした。試料を次いで、RTで2分間インキュベートした。100μLの試料を、1回の実行当たり使用し、吸光度を、412nmで測定した。この手順を、様々な質量のSpe-Dexを使用して繰り返し、チオールの数を、標準曲線の式及び標識ポリマーの吸光度を使用して計算した。本方法は、Spe-Dex 1mg当たり0.113μモルの第一級アミンの数を報告した。これは、6.28個ごとにおよそ1個の第一級アミンのチオール化に相当し、デキストラン分子間の架橋がないと仮定すると、デキストラン分子当たりおよそ27.89個の第一級アミンを遊離のまま残す。
【0090】
実施例8:マイクロバブル製剤
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](DSPE-PEG2k)、及び1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[マレイミド(ポリエチレングリコール)-2000](アンモニウム塩)(DSPE-PEG2k-Mal)をそれぞれ、90:5:5のモル比で250μLのクロロホルムに溶解し、20mLのシンチレーションバイアルに加えた。追加のクロロホルム(2mL)を加え、溶液を、ロータリーエバポレーターで乾燥させて、バイアルの周囲に脂質膜を作製した。この膜を、真空デシケーター中でさらに一晩乾燥させて、残留クロロホルムを除去した。得られた乾燥脂質膜を、10%プロピレングリコール及び10%グリセロールを含むPBS 1×緩衝液に再懸濁し、70℃に加温した。溶液を、透明になるまで同じ温度で超音波処理した。溶液のヘッドスペースを、デカフルオロブタンガスで満たし、チップを70%振幅で5秒間超音波処理した。マイクロバブル溶液を次いで、シリンジで吸引し、PBS洗浄(pH=6.5、1mMのEDTA)しながら、3分間300gで3回遠心分離した。マイクロバブルの平均サイズ及び数を、Beckman Coulter Multisizer4を使用して得た。測定を、各実行について10mlのアイソトンへと希釈した2μLのマイクロバブル溶液を用いて3連で行った。マレイミド官能化マイクロバブルの平均サイズは、2.981μm±0.01μmであり、2.22×10±1.18×10MB/mLのカウントを有した。
【0091】
実施例9:Spe-Dexによるマイクロバブルコンジュゲーション
Spe-Dexポリマーを、Spe-Dexポリマー上のチオール基にマイクロバブル表面のマレイミド末端基を共有結合させることにより、マイクロバブル上にコンジュゲートさせた。簡単に説明すると、マイクロバブルを最初に、シリンジ中で1.10×10MB/mLの濃度にPBS pH=6.5 w 1mM EDTAを使用して希釈した。これに、1:20のマレイミド:ポリマーモル比でSpe-Dexポリマー(10mg/mL、PBS pH=6.5、1mMのEDTA)を加えた。懸濁液を、室温で4時間、20回転/分の速さで転倒回転させた後、3分間300gにてPBS 1×で3回洗浄した。Spe-Dex装飾マイクロバブルの平均サイズは、3.119μmであり、3.42×10MB/mLのカウントを有した。蛍光顕微鏡を使用して、マイクロバブルシェルへのFl標識Spe-Dexポリマーのコンジュゲーションを確認した。
【0092】
実施例10:蛍光分光法によるマイクロバブルへのSpe-Dexコンジュゲーションの定量
マイクロバブルにコンジュゲートしたFl-Spe-Dexの量を定量化するために、標準曲線を、DMSO中で最初にFl-Spe-Dexの10mg/mL溶液を希釈すること(1:20希釈)、次いで5mMのNaOH中で希釈すること(1:20希釈)により作成した。段階希釈を行って、ウェル内で40~320ng/mLのFl-Spe-Dexを得た(N=3)。検量線の線形回帰は、y=1.83×10×-546.7の式を与え、0.9972のR値を有した。Fl-Spe-Dexマイクロバブル試料を、標準物質と同様にDMSO及び5mMのNaOH中である量のマイクロバブル懸濁液を希釈することにより調製した。Fl-Spe-Dex MB試料を次いで、20秒間超音波処理し、ボルテックスして、マイクロバブルが破壊されたこと、およびFl-Spe-Dexが溶液中に均一に分布されたことを確実にした。溶液を、488nmで励起し、蛍光強度を、520nmで読み取った。回帰曲線を使用して、マイクロバブル試料中のFl-Spe-Dexの濃度を、0.045mg/mLであると測定した。実施例3のスペルミン-デキストランの計算によると、およそ17万個のスペルミン装飾デキストラン分子が、各マイクロバブルに付着され、マイクロバブル当たりおよそ560万個のスペルミン(デキストラン間の架橋がないと仮定すると、470万個の遊離スペルミン)を含む。
【0093】
実施例11:Spe-Dex-MB DNAの装填
mCherry pDNA(0.403μg/μL)を、1mLのシリンジ中でPBS 1×でおよそ0.05μg/μLに希釈した。Spe-Dex-MBの溶液(20μL、2.4×10MB/mL、合計4.6×10MB)を、シリンジにゆっくりと加え、シリンジを、18回転/分で15分間回転させた後、室温で15分間直立して置いた。マイクロバブルを、100gで1分間遠心分離し、下澄液を、廃棄した。マイクロバブルは、サイズ変更され、4×10MB/mLの濃度を有し、合計1×10MBであった。MB/DNA試料を次いで、20秒間超音波処理し、ボルテックスして、マイクロバブルが破壊されたこと、およびDNAが溶液中に均一に分布されたことを確実にした。試料の吸光度を、二重でTake3マルチボリュームプレート及び2μLの試料を使用して260nmで読み取った。DNA濃度を、既知濃度のmCherry pDNAから調製した標準曲線を使用して計算した。本方法を使用して、マイクロバブル当たりのpDNA数を、31,788(N=4)であると決定し、これは、カチオン性脂質(DSTAP)マイクロバブルと比較してDNA装填における10倍の、統計的に有意な増加である(図8)。実施例10の計算によると、およそ1個のpDNA分子が、約148個のスペルミンごとに装填された。マイクロバブルの平均サイズを考慮して、およそ0.028pg/μmのDNA装填能力が達成され、これは、文献で報告されるように、PEIコンジュゲートマイクロバブルを使用して達成されたものよりおよそ5.6倍、かつカチオン性脂質で形成されたマイクロバブルで達成された装填より少なくとも4.6倍多い。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるSirsiらの「固形腫瘍への超音波誘導プラスミドDNA送達用のポリプレックス-マイクロバブルハイブリッド(Polyplex-Microbubble Hybrids for Ultrasound-Guided Plasmid DNA Delivery to Solid Tumors) J Control Release;2012 January 30; 157(2)を参照されたい。
【0094】
実施例12:CD44又はEpCAm標的化マイクロバブルの製剤化
標的化部分(CD44及び抗EpCAM抗体に対するヒアルロン酸など)もまた、Spe-Dex-MB上にコンジュゲートさせることができる。CD44を標的とするために、Spe-Dex-MBを最初に、1mMのEDTAを有するPBS pH6.5で希釈して、1.10×10MB/mLの濃度にした。チオール化ヒアルロン酸の10mg/mL溶液(MW=10,000g/モル、CreativePegWorks)を、1:5のマレイミド:ポリマー比(全てのマレイミドが遊離であったと仮定する)でマイクロバブル溶液に加えた。この溶液を、4時間回転させ、2分間250gにてPBS 1×で3回洗浄した。EpCAmを標的とするために、Spe-Dex-MBを、同じ手順であるが2:1のマレマイド:抗体比を用いてチオール化抗EpCAm(Biolegend)抗体(Ab)とコンジュゲートさせた。
【0095】
実施例13:Spe-Dex-HA/Ab-MB結合実験
円形平行板フローチャンバーキット(GlycoTech社)を使用して、HeLa細胞上で発現されるCD44へのSpe-Dex-HA-MBの良好な標的化を確認した。PBS溶液中の2%BSA(非特異的結合を防ぐために)を、それが飽和されるまでチャンバーを通して流し、次いで真空を適用し、35mmのディッシュで増殖するHeLa細胞を、チャンバーの上部に置いた。2.5mL中の5×10MB/mLを、シリンジポンプを使用して450μL/分の流速で5分間にわたって注入した。注入後に、細胞を、同じ流速を使用して1.3mLの2%BSAで洗浄し、真空をオフにし、細胞を除去した。結合を、顕微鏡により確認し、視野中のマイクロバブルの数を、ImageJを使用して計数し、非標的化Spe-Dex-MBと比較した。標的化は、視野中に4134個のマイクロバブルを示し、一方で非標的化は、視野中に815個のマイクロバブルを示した。
【0096】
EpCAMへの標的化を試験するために、Spe-Dex-Ab-MBを、懸濁液中のK562細胞と混合した。DNAと共にSpe-Dex-Ab-MBを、1.65×10個のK562細胞(50MB/細胞)に添加し、穏やかなピペッティングで混合し、1分間インキュベートした。MB/細胞の溶液を次いで、5分間300gで遠心分離して、標的化されないマイクロバブルを分離し、上清を、除去した。得られたペレットを、PBS中に再懸濁し、細胞へと標的化された何らかのマイクロバブルについて顕微鏡下で可視化した。この手順を、対照として非標的Spe-Dex-MBを使用して繰り返した。Spe-Dex-Ab-MBを有するペレットは、視野中に145MBを示し、一方でEpCAM抗体とコンジュゲートされないSpe-Dex-MBを有するペレットは、視野中にわずか22個のマイクロバブルを示した。
【0097】
実施例14:Spe-Dex-HA-MBを用いるHeLa細胞のソノポレーション
HeLa細胞を、1つは媒体の入口として機能しもう1つは空気の出口として機能する2つの穴を蓋に開けた35mmディッシュからなるカスタムメイドの装置で、ソノポレートした。トランスフェクションの24時間前に、HeLa細胞を、2mLの完全EMEM、10%FBS、1%P/S中の500,000個の細胞で、このディッシュに播種した。トランスフェクションの日に、2×10個のSpe-Dex-HA-MBを、9.64μgのeGFP pDNA(N:P 1:5)に加え、毎分20回転の速さで15分間回転させ、次いで室温で15分間インキュベートした。マイクロバブルを次いで、2分間250gでの遠心分離により1回洗浄し、下澄液を、除去し、結合の定量のために保持した。細胞の培地を次いで、吸引除去し、マイクロバブルを、最終濃度20MB/細胞で滴加した。ウェルを次いで、ひっくり返し、マイクロバブルが細胞を標的化できるように10分間インキュベートした。その後ウェルをひっくり返し、蓋を、漏れを防ぐためにパラフィルムで覆った。ウェルを、OptiMEMで満たし、次いで、逆さまに反転した。US結合ゲルを、ウェルの底にアプライし、細胞を、トランスデューサをウェル上で前後に動かしながら、60秒間1W/cm、50%DCでソノポレートした。ソノポレーションの4時間後に、OptiMEMを、吸引し、2mLの完全EMEMと交換した。トランスフェクションを、蛍光顕微鏡を使用してソノポレーションの3日後に確認し、フローサイトメトリーにより評価した。ソノポレートされた細胞は、対照細胞と比較してFITCシグナルの14%の増加を示す。
【0098】
実施例15:Spe-Dex-ROR1-MBを用いるJeKo-1細胞のソノポレーション
3×10個のSpe-Dex-ROR1-MBを、28.93μgのeGFP pDNA(N:P 1:10)に加え、毎分20回転の速さで15分間回転させ、次いで室温で15分間インキュベートした。2.5×10個のJeKo-1細胞を、スピンダウンし、1mLのRPMIに再懸濁し、500,000個の細胞を、12ウェルプレートの対照ウェルに加えた。マイクロバブルを、残りの細胞に加え、懸濁液を、15分間回転させて、細胞上のROR1(およそ15MB/細胞)へのマイクロバブルの標的化を可能にした。その後、懸濁液を、10mLに希釈し、2.5mLを、各ウェルに加えた。プレートを、35℃に設定したヒートバスの上に置き、ウェルを、30秒間又は60秒間、50%DCで1又は2W/cmのいずれかにてソノポレートした。ソノポレーションの2.5時間後に、細胞を、スピンダウンし、1mLの完全RPMIに再懸濁した。3日後に、細胞を、フローサイトメトリーのために収集した(図9)。生細胞についてのゲーティングは、陰性対照試料(下;2W/cm、50%DC、60秒)と比較して、ソノポレートされた細胞(上)について11%のGFPシグナルの最大の増加を示した。サイトメーターでFITCチャンネル対PEチャンネルをプロットすることは、自家蛍光と真のGFPシグナルの分離を可能にし、これは、トランスフェクションをさらに確認した。しかし、生細胞についてのゲーティングは、自家蛍光シグナルを除去しただけであった。トランスフェクションをさらに確認するために、DNAを、TRIzol法を使用して対照細胞とソノポレート細胞の両方から単離した。単離されたDNAを、PCR及びeGFPのフォワードプライマー及びリバースプライマーを使用して増幅した。増幅されたDNAをDNAラダーと共に1%アガロースゲルで泳動し、EtBrで染色し、BioDoc-ltイメージングシステムで可視化した(図10)。ゲルは、フローサイトメトリーがGFP陽性として全てのソノポレート試料を示したにも関わらず、いくらかのソノポレートされた試料についてであるが全てについてではない、GFPバンドを示す。これは、プラスミドが分解される間にGFPタンパク質がまだ細胞内に存在するためであり得る。
【0099】
実施例16:mCherryコードプラスミドを装填したSpe-Dex MBを用いたインビボでの選択的T細胞トランスフェクション
ラットにおけるインビボトランスフェクション:インビボ発現を、遺伝子を発現する細胞の割合及び遺伝子発現を最大化するように最適化する。インビボトランスフェクションは、マイクロバブル/細胞複合体の曝露時間を短縮する介在組織及び血流による超音波減衰からなる、インビトロで最適化されたトランスフェクション条件に依存し得る。T細胞は、T細胞の30%が存在する脾臓及び、大静脈又は心臓などの広い血液空間を超音波にさらすことによりトランスフェクトされる。まず、T細胞が安定である6匹のラットの脾臓を、ソノポレートする。最適なマイクロバブルの配合と、最適なマイクロバブル/細胞比を達成するための10個のT細胞/mL及び80mLの血液/kg体重と仮定する数を、静脈内注射する。実験を、マイクロバブル投与の10分後に最適なエキソビボ超音波曝露により開始し、インビボトランスフェクションを、72時間の時点で遺伝子を発現する循環T細胞の割合を測定することにより評価し、遺伝子発現を、上記のように定量化する。脾臓を、死後に分析する。脾臓を最初に、熱傷について評価する。半分を次いで、均質化し、半分を、固定する。ホモジネートを、T細胞を染色するためにFITC-aCD3を添加した後に蛍光顕微鏡法及びフローサイトメトリーによって評価する。H&E及びFITC-aCD3による免疫組織化学染色を行って、損傷を評価し、mCherryとFITCの共局在を探す。超音波SATAエネルギーを次いで、次の6匹のラットについて増加させ、インビボトランスフェクションを、前と同様に再評価する。組織を損傷することなくトランスフェクトT細胞の割合と遺伝子発現を最大化する曝露が次いで、血液を超音波にさらすときの曝露時間を最適化するために使用される。
【0100】
脾臓トランスフェクションに使用したのと同じマイクロバブル製剤及び数を、注入する。エキソビボで決定されかつ脾臓トランスフェクションに使用される最適な曝露時間を、開始点として使用し、次いで曝露時間を、超音波パワーを増加させるにつれて短縮して一定のSATAを維持する。なぜなら腎臓のレベルでの下大静脈と門脈は、それらが肝臓に入る前に超音波にさらされるからである。インビボトランスフェクションを、72時間の時点で遺伝子を発現する循環T細胞の割合を測定すること、および上記のように遺伝子発現を定量化することにより評価する。脾臓もまた、上記のように脾臓ホモジネート及び組織蛍光を評価することにより診断する。これらの実験を、それぞれの反復について6匹のラットで行い、その差異を上記のように統計的に分析した。
【0101】
これらの最適化されたインビボT細胞トランスフェクション実験から得られたデータは、脾臓又は血液ソノポレーションが優れたトランスフェクション方法であるかどうかを決定するために使用され得る。両方の方法は、別段の明示的な記載がない限り、本明細書の他の箇所に記載のインビボトランスフェクション実験に使用され得る。他の方法よりも15%未満のトランスフェクションをもたらす方法は、それほど効果的でないと見なされる場合がある。
【0102】
インビボでの遺伝子トランスフェクション半減期:インビボでの遺伝子トランスフェクション半減期を計算するために、30匹のラットを、上記で決定した最適な超音波曝露及びトランスフェクション法を使用してトランスフェクトする。6匹のラットを、ソノポレーション後1、2、4、7、及び14日目に屠殺し、トランスフェクトT細胞の割合を、上記の血液及び脾臓と同様に決定する。トランスフェクトされたT細胞の平均の割合及び遺伝子発現レベルを、経時的にプロットし、遺伝子発現半減期を、決定する。経時的な変化を、一元配置分散分析を使用して統計的に評価し、データポイントを対応のないスチューデントt検定を使用して比較する。遺伝子発現半減期は、トランスフェクトされたT細胞の割合がインビボトランスフェクション後に低い場合、エキソビボトランスフェクションのために決定された最適なパラメータを用いる4mLのラット血液のエキソビボトランスフェクション後に計算されてよい。2×10個のT細胞を、濃縮し、同腹仔でソノポレーションの直後に注入する。
【0103】
インビボトランスフェクトされたT細胞の割合の最大化:30匹のラットは、いくつかのトランスフェクションセッション(マイクロバブル注入及びソノポレーション)を受け、ここで各6匹のラットはT1/2/3、T1/2/2、T1/2、1.5xT1/2又は2xT1/2ごとに処置される。6匹の追加のラットは、対照として働く。ラットに、mCherryが装填されたマイクロバブル及び非特異的なIgG標識マイクロバブルを注入し、ラットを実験グループの最短時間でソノポレートした。最後の処置の翌日、200μLの血液を、トランスフェクトされたT細胞の割合について分析し、次いで2、4、7、及び14日目、並びにT1/2の3倍の時点で再び動物を屠殺し、血液と脾臓を上記のようにT細胞トランスフェクションについて分析する。トランスフェクトされたT細胞の平均数を、各処置群についてプロットして、トランスフェクトされたT細胞の血球数を決定し、時間と処置群が独立変数として機能する2元配置分散分析を使用して統計的有意性について分析する。細胞数は、処置間隔が短いほど最大になり、間隔がT1/2に等しいときにプラトーになり、間隔がT1/2を超えると減少すると予想される。
【0104】
インビトロでトランスフェクトされたラットT細胞における活性化及びCAR発現の検証:T細胞を、エキソビボトランスフェクションに最適な条件を使用して血液にトランスフェクトし、トランスフェクトされたT細胞を、単離し計数する。トランスフェクトされたT細胞を次いで、最適な培地を含有する各ウェルに添加された1×10CAR T細胞を使用して96ウェル培養プレートの底でコートされるFcタグ付きCD19タンパク質と相互作用させる。IL2及びIFN-ガンマサイトカイン放出を、30分、2、12、24及び48時間後の上清において酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって測定する。これらの時点で、CAR T細胞も収集し、フローサイトメトリーを実行して、CD69、CD62L、PD1、LAG3、及びTIM3発現をアッセイすることにより、T細胞の活性化、記憶及び枯渇に対するマーカーを定量化する。T細胞を、トランスフェクトされない血液から回収し、mCherryでトランスフェクトしたT細胞は、陰性対照として働く。他のタンパク質でコートしたウェルを、CAR標的特異性を実証するために使用する。実験を三重で行う。
【0105】
インビトロでのCARを発現するラットT細胞の生物学的細胞毒性の検証:正常ラット血液のEasySep(商標)ラットT細胞及びB細胞分離キット(STEMCELL Technologies)を使用して、1×10CAR T細胞を、培養し、同数のB細胞でエキソビボトランスフェクトして、CAR T細胞の生物学的細胞毒性を検証する。非トランスフェクトT細胞と培養されるB細胞は、陰性対照として働く。AF488-CD19抗体及びPI染色を用いるフローサイトメトリーを使用して、CAR T細胞との混合前及び混合後30分、2、12、24及び48時間の時点で生きているB細胞の数を評価する。B細胞溶解もまた、非放射性比色細胞毒性アッセイであるCytoTox96(登録商標)(Promega(商標))を使用して定量化する。簡単に説明すると、上清を、収集し、新しい96ウェルプレートに移し、CytoTox試薬を添加する。停止液を、反応終了時に加える。吸光度を、マイクロプレートリーダーを使用して490nmで測定する。B細胞の自然の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出を、CAR T細胞を含まないウェルから測定し、最大放出を、Triton X-100処理試料から測定する。細胞毒性パーセントを、100×[(実験でのLDH放出-自然LDH放出)/(最大LDH放出-自然放出]]として計算する。実験を三重で行う。
【0106】
インビボT細胞トランスフェクション及びCD19+細胞枯渇の検証:T細胞を、CD19 CARTプラスミドを装填したCD3標的化マイクロバブル(n=6)又は非標的化マイクロバブル(n=6)のいずれかで12匹のラットにインビボでトランスフェクトする。トランスフェクトされたT細胞の最大の割合を生じる実験条件に、おそらく複数回の処置に沿って、従う。200μLの血液を、12、24、48、及び72時間の時点で採取し、B細胞枯渇について分析する。AF488-aCD19を、血液試料に加え、B細胞を、フローサイトメトリー及びPI染色を使用して生存率について評価する。肝臓、脾臓、骨髄、リンパ節、及び肺を、収集する。試料を均質化し、残りをH&E及び蛍光標識抗CD19抗体を用いる免疫組織化学(IHC)で染色する。ホモジネートを、上記のようにトランスフェクトT細胞の数を定量化するために評価し、生きているB細胞を、AF488-aCD19、AF-647-aCD3及びSYTOX(商標)Orangeを用いてフローサイトメトリーによって評価する。
【0107】
インビトロでのCAR発現ALL T細胞及び非オフターゲットCARトランスフェクションの活性化、B細胞の細胞傷害性の検証:CAR T細胞の活性化及び生物活性を評価するために、急性リンパ芽球性白血病(ALL)患者由来のヒト血液を使用して、健康な患者とALL患者のT細胞を、エキソビボでトランスフェクトし、治療的効果を、ヒトB細胞ALL異種移植マウスモデルを用いて検証する。ALL患者由来の血液試料を使用して、T細胞を、最適化条件を用いてエキソビボでトランスフェクトし、トランスフェクトされたT細胞を、計数する。トランスフェクトされたT細胞を、ラット血液と同様にFcタグ付きCD19タンパク質と相互作用させ、IL2及びIFN-ガンマサイトカイン放出を、30分、2、12、24及び48時間後にELISAにより上清中で測定する。これらの時点で、CAR T細胞を、収集し、フローサイトメトリーを実行して、ラットの血液と同様にT細胞の活性化、記憶、及び枯渇に対するマーカーを定量化する。トランスフェクトされない血液から回収したT細胞及びmCherryでトランスフェクトしたT細胞は、陰性対照として働く。他のタンパク質でコートしたウェルを、CAR標的特異性を評価するために使用する。実験を三重で行う。
【0108】
インビトロでのCARを発現するヒトT細胞の生物学的細胞毒性の検証:浮揚性技術を使用して、T細胞とB細胞を、CD3又はCD19標的化マイクロバブルを使用して別々に分離する。T細胞を、エキソビボでトランスフェクトし、次いで72時間培養し及び増殖させる。T細胞を次いで、単離し、1×10個の生きているCAR T細胞を、1:1、5:1、10:1のB細胞対T細胞の比率でB細胞と混合して、生物学的細胞毒性を評価する。非トランスフェクトT細胞及びWBC(CD19-)と混合したトランスフェクトされたT細胞は、陰性対照として働く。上清中に放出されたIL2及びIFN-ガンマを、ELISAにより測定し、AF488-CD19抗体を用いるフローサイトメトリー及びPI染色を使用して、CAR T細胞と混合する前、混合後30分、2、12、24及び48時間の時点で生きているB細胞の数を計数する。B細胞溶解を、上記のようにCytoTox96(登録商標)(Promega(商標))を使用して定量化する。細胞毒性のパーセントを、測定し、計算する。実験を三重で行う。
【0109】
B-ALLのヒト異種移植モデル:5×10個のプレB-ALL NALM-6細胞の異種移植を、SCIDマウスにて行う。78匹の6~8週齢マウスを、生着を改善するために全身にわたり250cGyの亜致死線量で照射し、それを、抗ヒトPE-CD19及び抗ヒトPE-CD45で染色した後にフローサイトメトリーを使用して、RBC溶解後の末梢血、並びに肝臓、脾臓、及び骨髄有核細胞における浸潤ヒト白血病細胞の数を数えることにより、6週及び8週の時点でそれぞれ3匹のマウスにおいて評価する。追加の試料をまた、PEで標識した非特異的抗体で染色して、陽性染色のゲートを設定する。ALL血液から単離したT細胞を、エキソビボでトランスフェクトして、上記のようにCD19-CARを発現させ、72時間培養する。2×10個の生きているCAR T細胞を、単離し、ALL B細胞接種後6週(N=9)又は8週(N=9)の時点で18匹のSCIDマウスに静脈内注射する。ALL患者の血液から単離された2×10個の非トランスフェクトT細胞を、対照としてALL B細胞接種後6週(N=9)又は8週(N=9)の時点で18匹のSCIDマウスに静脈内注射する。各群からの3匹のマウスを、T細胞投与後24、48、及び72時間の時点で採血する。AF488-aCD19を、血液試料に加え、B細胞を、フローサイトメトリーとPI染色を使用して生存率について評価する。肝臓、脾臓、骨髄、リンパ節、及び肺を、収集し、IHCを行って、CD19+細胞の存在を検出する。処置されたマウス(N=18)対対照(N=18)の生存も、モニタする。
【0110】
実施例17:Spe-Dex-MBによるB細胞のソノポレーション
スペルミン-デキストランマイクロバブル(Spe-Dex-MB)を、本明細書の他の箇所に記載されるように、CD154をコードする遺伝子で装填し、マイコバブル表面に抗-ROR-1抗体を接着させることによりROR-1に標的化する。代理遺伝子としてルシフェラーゼを使用して、マイクロバブルの装填、用量及び超音波パラメータを、インビトロで細胞死を最小限にしながら遺伝子発現を最大化するように最適化する。T細胞の活性化、増殖及び悪性B細胞死滅を、インビトロで、次いでインビトロ実験で最適化された配合と超音波条件を採用するB細胞悪性腫瘍のマウスモデルを使用してインビボで、トランスフェクションの前および後に評価する。マイクロバブルを全身投与してから数分後に、それらは循環する悪性B細胞に接着するはずであり、それらは次いで、FDA承認の送信電力以下で臨床超音波システムを使用して送達される超音波場にMB/細胞複合体を曝露することによりトランスフェクトされる。CD154の生成が、すぐに始まるはずである。十分な細胞がトランスフェクトされると、それらはT細胞の活性化を誘導して、悪性B細胞の死滅を始める。
【0111】
実施例18:TFA2-スペルミンの合成
TFA-スペルミンの合成を、図11に示す。エチルトリフルオロアセテート(1.47mL、12.36ミリモル)及び水(0.089mL、4.94ミリモル)を、アセトニトリル(8mL)中のスペルミン(500mg、2.47ミリモル)溶液に加え、得られた混合物を、90℃で3時間還流した。その後、反応混合物を室温に冷却して白色沈殿物を形成し、冷DCM(2mL)を、徐々に加えて沈殿を完了させた。固体を、濾過し、冷DCMで洗浄し、真空乾燥させて、白色固体としてTFA-スペルミンを得た。H NMR(400MHz,DO)δ(ppm)=3.41(t,J=6.8Hz,4H),3.10-3.01(m,8H),2.00-1.90(m,4H),1.78-1.70(m,4H)。
【0112】
実施例19:BOC2-スペルミンの合成
BOC-スペルミンの合成を、図12に示す。スペルミン(70mg、0.346ミリモル)を、アルゴン雰囲気下でTHF(1.05mL)中に溶解し、氷浴を使用して冷却した。この溶液に、THF(2.11mL)中のBOC-ON(170mg,0.692ミリモル)を、滴下し、反応混合物を、氷浴中で2分間撹拌した後、室温で1時間撹拌した。反応を次いで、飽和炭酸ナトリウム(3.15mL)で停止させ、DCM(各6mL)で3回抽出した。有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させ、12gの15μmシリカカラム及び溶離液としてエタノール中28%のNHOHの5%を使用してPuriFlashで精製して、粘性液体としてBOC-スペルミンを得た。H NMR(500MHz,CDCl)δ(ppm)=5.3-5.2(br,1H),3.2-3.1(m,2H),2.65(t,J=6.4Hz,2H),2.6-2.5(m,2H),2.4-2.2(br,1H),1.64(t,J=6.4Hz,2H),1.5-1.4(m,2H),1.40(s,9H)。
【0113】
実施例20:ポリジアミノエタン(ポリDAE)の合成
ポリDAEの合成を、図13に示す。BOC-DAEとメチレンビスアクリルアミドを、概念実証として行った。BOC-DAE(100mg、0.624ミリモル)及びメチレンビスアクリルアミド(96mg、0.624ミリモル)を、丸底フラスコに加え、アルゴンをフラッシュし、脱気した9:1v/vのMeOH/HO溶媒混合物(0.62mL)中に溶解した。反応混合物を、4日間アルゴンバルーン下60℃、暗所で撹拌した。その後、反応物を、25mLの冷ジエチルエーテル中で沈殿させた。固体を、濾別し、乾燥させ、次いで97.5:2.5v/vのTFA/HO(1mL)に溶解し、45分間撹拌してBOC保護基を除去した。生成物を次いで、25mLの冷ジエチルエーテル中で再び沈殿させ、ろ過し、乾燥させて、粘性液体としてポリDAEを得た。H NMR(500MHz,DO)δ(ppm)=4.54(D,J=4.0Hz,2H),3.58-3.29(m,10H),2.72(dt,J=48.1,6.5Hz,4H)。
【0114】
実施例21:ポリスペルミンの合成
ポリスペルミンの合成を、図14に示す。BOC-スペルミン(200mg、0.497ミリモル)及びメチレンビスアクリルアミド(77mg、0.497ミリモル)を、丸底フラスコに加え、アルゴンをフラッシュし、脱気した9:1v/v MeOH/HO溶媒混合物(0.75mL)中に溶解した。反応混合物を、4日間アルゴン下、60℃の暗所で撹拌した。その後、反応物を、30mLの冷エーテルに沈殿させた。固体を、濾別し、乾燥させ、次いで1mLの95:5v/v TFA/HOに溶解し、30分間撹拌してBOC保護基を除去した。粗生成物を、30mLの冷エーテル中で沈殿させ、真空下で乾燥させた。生成物を、1日透析する(MWCO=1kDa)ことによりさらに精製した後、凍結乾燥させて、白色粉末としてポリスペルミンを得た(33mg)。H NMR(400MHz,DO)δ(ppm)=4.54(s,2H),3.00(p,J=9.6,8.7Hz,8H),2.83-2.60(m,8H),2.49(t,J=7.4Hz,4H),1.90(q,J=8.2,7.7Hz,4H),1.52(s,4H)。
【0115】
実施例22:ビスアクリルアミドケタールの合成
ビスアクリルアミドケタールの合成を、図15に示す。ビスフタルイミドケタールジアミン(1000mg、2.37ミリモル)を、還流冷却器を取り付けた丸底フラスコに加えた。6MのNaOH(6.41mL)を加え、反応混合物を、100℃で一晩還流してフタルイミド保護基を除去した。保護されないケタールジアミンを次いで、CHCl/iPrOHの1:1v/v混合物で抽出した(3回、13mL)。ケタールジアミン(384mg、2.37ミリモル)を次いで、氷浴中のRBフラスコに加え、6MのNaOH(11.5mL)で溶解した。トリエチルアミン(14.9mL、107ミリモル)及び塩化アクリロイル(2.87mL、35.5ミリモル)を、交互に少しずつ加えて、pHを8以上に維持した。得られた混合物を、15分間撹拌し、続いて冷10%KCO溶液(24mL)を加え、さらに10分間撹拌した。粗生成物を、酢酸エチルで抽出し(3回、12mL)、溶離液として最初に1:1の酢酸エチル/ヘキサン次いで100%酢酸エチルを使用してシリカカラムで精製した。最終生成物を次いで、酢酸エチル(105mg、21.4%)で結晶化した。
【0116】
実施例23:フタルイミド-スペルミンの合成
フタルイミド-スペルミンの合成を、図16に示す。スペルミン(400mg、1.98ミリモル)及びN-カルベトキシフタルイミド(867mg、3.95ミリモル)を、丸底フラスコに加え、DCM(7mL)中に溶解した。反応混合物を、3時間撹拌し、次いで蒸発乾固した。残留物を、溶離液として最初に10:1のDCM/MeOH、次いで2:1のDCM/MeOHを使用してシリカカラムで精製して、淡黄色固体としてフタルイミド-スペルミンを得た。薄層クロマトグラフィー(TLC)R=0.2(2:1v/vのDCM/MeOH)。H NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm)=7.85-7.63(m,8H),3.72(t,J=6.8Hz,4H),2.68-2.52(m,8H),1.85(p,J=7.0Hz,5H)。
【0117】
実施例24:ポリスペルミンシスタミンビスアクリルアミド(ポリスペルミンCBA)の合成
ポリスペルミンCBAの合成を、図17に示す。CBABOC-スペルミン(341.9mg、0.849ミリモル)及びシスタミンビスアクリルアミド(221.13mg、0.849ミリモル)を、RBフラスコに加え、アルゴンをフラッシュし、脱気した9:1v/vのMeOH/HO溶媒混合物(1.28mL)中に溶解した。反応混合物を、5日間アルゴンバルーン下、60℃にて暗所で撹拌した。この後、1mLの95:5v/vのTFA/HOを加え、得られた混合物を、45分間攪拌して、BOC保護基を除去した。粗生成物を、1日透析し(MWCO=1kDa)、続いて凍結乾燥させて、白色粉末としてポリスペルミンCBAを得た(66.7mg)。H NMR(400MHz,DO)δ(ppm)=3.52(t,J=6.5Hz,4H),3.26(t,J=7.2Hz,3H),3.12-2.96(m,11H),2.82(t,J=6.5Hz,4H),2.65(t,J=7.2Hz,4H),2.09-1.97(m,4H),1.76-1.63(m,4H)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】