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特表2023-546148インクジェットプリントヘッド用耐溶剤性エラストマー接着剤
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  • 特表-インクジェットプリントヘッド用耐溶剤性エラストマー接着剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】インクジェットプリントヘッド用耐溶剤性エラストマー接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/18 20060101AFI20231025BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231025BHJP
   C09J 153/02 20060101ALI20231025BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231025BHJP
   C09J 133/20 20060101ALI20231025BHJP
   C09J 153/00 20060101ALI20231025BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20231025BHJP
   C09J 11/00 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
C09J123/18
B41J2/01 307
C09J153/02
C09J11/06
C09J133/20
C09J153/00
C09J11/04
C09J11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523265
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(85)【翻訳文提出日】2023-04-17
(86)【国際出願番号】 EP2021078614
(87)【国際公開番号】W WO2022084183
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】20203024.3
(32)【優先日】2020-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】311007051
【氏名又は名称】シクパ ホルディング ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】SICPA HOLDING SA
【住所又は居所原語表記】Avenue de Florissant 41,CH-1008 Prilly, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】チャンピーニ, ダヴィデ
【テーマコード(参考)】
2C056
4J040
【Fターム(参考)】
2C056FA03
2C056HA07
2C056KC21
4J040DA131
4J040DF081
4J040DM001
4J040DM011
4J040GA07
4J040HA136
4J040HA236
4J040HA356
4J040HB02
4J040HB22
4J040HC01
4J040HC06
4J040HC25
4J040HD03
4J040HD32
4J040HD43
4J040JA05
4J040JB02
4J040KA11
4J040KA14
4J040KA30
4J040KA42
4J040LA05
4J040LA11
4J040MA10
4J040NA19
4J040PA30
4J040QA01
(57)【要約】
本発明は、溶剤系インクに対して良好な耐薬品性を有するエラストマー接着剤、及びエラストマー接着剤を調製する方法を提供する。エラストマー接着剤は、インクジェットプリントヘッドの内部でハイドローリック接着剤として用いられ、カートリッジ本体の容器のハイドローリック部品にチップを、インクジェットプリントヘッドの容器にプラグを、しっかりと接合することができる。したがって、本発明のエラストマー接着剤を用いたインクジェットプリントヘッドは、従来の溶剤系インク及びUV硬化性インクの両方に耐性を有し、多孔質表面及び非多孔質表面に印刷されうる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソプレングラフト無水マレイン酸及びポリブタジエン-スチレンを含む、少なくとも1種のモノマー中に少なくとも1つの非芳香族性不飽和を含む直鎖状不飽和炭化水素系ポリマー、
1種又は複数の硫黄ドナー分子、並びに
有機金属亜鉛触媒
を含む組成物から、インクジェットプリントヘッドの内部に部品を接合するためのエラストマー接着剤を調製する方法であって、
a)前記1種又は複数の硫黄ドナー分子を前記有機金属亜鉛触媒と反応させて活性架橋開始剤としての第1の硫化亜鉛錯体を形成するステップと、
b)前記1種又は複数の直鎖状不飽和炭化水素系ポリマーの加硫反応を前記第1の硫化亜鉛錯体で触媒して加硫ポリマー及びチオールを得るステップと、
c)ステップb)で得られた前記加硫ポリマーのポリマー鎖を、硬化プロセス、好ましくは熱硬化プロセスによる単位間のポリスルフィド架橋を介して架橋するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記組成物が、
15%~60%の前記直鎖状不飽和炭化水素系ポリマー、
3.3%~10.6%の前記1種又は複数の硫黄ドナー分子、及び
2.0%~7.0%の前記有機金属亜鉛触媒
を含み、パーセンテージが前記組成物の全重量に基づいて計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記直鎖状不飽和炭化水素系ポリマーが以下のうちの1種を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【化1】

(式中、m+nは113に等しく、m及びnはいずれも、ゼロに等しくない)
【化2】

(式中、(x+z)/(x+y+z)は20%に等しく、y/(x+y+z)は80%に等しい)
及び
【化3】

(式中、x/(x+y)は33%に等しく、y/(x+y)は67%に等しい)
【請求項4】
前記1種又は複数の硫黄ドナー分子が元素硫黄又は分散硫黄から選択され、好ましくは100メッシュ以下の平均粒度分布を有する可溶性結晶性硫黄である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記有機金属亜鉛触媒が、
【化4】

を含む群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記有機金属亜鉛触媒がエチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛(ZEPC)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)、亜鉛グアニジン、及び/又はイソプロピルキサントゲン酸亜鉛を含む群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が、
金属酸化物、好ましくは亜鉛酸化物、
C18~C30のカルボン酸、脂肪族アミン若しくは芳香族アミンから選択される、1種若しくは複数の有機リガンド、
前記組成物の硬化温度以上の沸点を有する、1種若しくは複数の炭化水素系の有機溶剤若しくは油、
1つ若しくは複数の不飽和を有するオルガノシラン分子からなるカップリング剤、及び/又は
前記組成物中に分散しうる、ガスバリア性及び溶剤バリア性と50ミクロン以下の平均粒度分布とを更に有する有機フィラー又は無機フィラー、好ましくは層状タルクフィラー
を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、
1.9%~6.2%の前記金属酸化物、
2.5%~8.5%の前記1種若しくは複数の有機リガンド、
14%~45%の前記1種若しくは複数の炭化水素系の有機溶剤若しくは油、
2.5%~9.0%の前記カップリング剤、及び/又は
1.5%~12%の前記有機フィラー若しくは無機フィラー
を含み、パーセンテージが前記組成物の全重量に基づいて計算される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記1種又は複数の有機リガンドが、
【化5】

を含む群から選択される、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記カップリング剤が、
【化6】

を含む群から選択される、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、d)前記金属酸化物、例えば酸化亜鉛をステップb)で得られたチオールと反応させて亜鉛錯体を形成するステップを更に含み、好ましくは、前記亜鉛錯体が、前記1種又は複数の有機リガンドと共に錯体形成され、次いで硫化されて第2の硫化亜鉛錯体が得られる、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、e)前記ポリスルフィド架橋を前記有機金属亜鉛触媒により脱硫するステップを更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、f)1つ又は複数の不飽和を有するカップリング剤を加硫してステップc)に関与させるステップを更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法により調製される、エラストマー接着剤。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法により調製されるエラストマー接着剤を含む、インクジェットプリントヘッド。
【請求項16】
インクジェットプリントヘッドの内部に部品を接合するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法により調製されるエラストマー接着剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
[0001]本発明は、サーマルインクジェットプリントヘッド技術の分野に関し、詳細には、エラストマー接着剤、エラストマー接着剤を調製する方法、及びエラストマー接着剤のインクジェットプリントヘッドへの使用に関する。
【0002】
[発明の背景]
[0002]例えば欧州特許第1896262号(本明細書中の図1を参照)に記載されているような従来技術における典型的なインクジェットプリントヘッドカートリッジは、フレキシブルプリント回路に接合されたプリントヘッドチップにより構成されたプリントヘッド噴出アセンブリからなる。プリントヘッドチップは、インクを種々の噴出部位へと向けるために電気的且つハイドローリックな部品を収納し、要求に応じてその部品にエネルギーを与えて印刷のためのインク液滴を製造する。ノズル板は、チップの最上の表面に適用されてインク噴出用ノズルを供給する。噴出アセンブリ全体が次いで、インク容器を含むカートリッジに接合され、蓋で閉じられる。カートリッジ本体において適切なインク溝が得られ、プリントヘッドの配置に応じて、チップに機械加工された溝を通じて、又はチップの端からのいずれかで、インクがプリントヘッドチップに至りマイクロ流体回路に到達できるようになる。多数のインクのプリントヘッドのカートリッジには、当然、多数のインク容器及び多数のプリントヘッドへのインクの通り道があり、それらは互いにハイドローリックに絶縁されており、インクが混合するのを防いでいる。カートリッジは異なる部品及び材料を集めて作製されるため、部品間の接合面は、良好な接合だけではなく、インクと接触する領域における完全で長く続くインクのシールを保証する必要がある。チップをカートリッジ本体と接合するために、適切な接着剤をカートリッジ本体の流路の周囲の平らな表面に計量分配して、チップの溝のより低い表面の周囲の良好なシールも保証することができる。このような方法では、インクはいずれの混合も漏出もなしに容器からチップへと流れることができる。
【0003】
[0003]更に、多数のインクのプリントヘッドのカートリッジ本体は、特別な製造プロセスを必要とする。例えば、並行ノズル配列の3つのインクのカートリッジでは、鋳造技術では単一の成形プロセスで一度に部品を得ることができない。欧州特許第1896262号の図2に示すように、カートリッジ本体は、壁に隔てられた3つのインク容器を有する。異なる色のノズル配列間の小さい横方向の距離のために、3つの別個のまっすぐなインクの通り道を製造して必要なハイドローリック特性及び適切な構造安定性を維持することはできない。可能な解決法は、例えば欧州特許第1896262号に記載されているようなより複雑な金型を用いることであり、2つの更なる並行なスライドインサートを用いてカートリッジ本体の内部の望ましい流体構造を製造する。一旦鋳造プロセスが終わると、2つのスライドインサートを抜き出すことで、カートリッジ本体の側面に2つの窓が開いたまま残る。これらの窓は、カートリッジに都合よく接合された適切なプラグで閉じられる必要がある。プラグを接合する可能な方法は、窓の境界の平らな埋め込み式の表面に沿って計量分配された接着剤材料を用いて、開口部のしっかりとしたシールを保証し、インクを容器から漏出させないことである。
【0004】
[0004]したがって、チップをカートリッジ本体に接合するため及びプラグを容器に接合するための、典型的なプリントヘッドカートリッジのための適切な接着剤が求められている。伝統的には、水系インクが装填されるプリントヘッドに用いられる接着剤は、単一成分エポキシ系接着剤、例えばEcobond E3200(Henkel)の一種である。この種の単一成分エポキシ系接着剤は、プリントヘッドのプラスチック容器へのシリコンチップの硬い接着性を保証する。しかしながら、溶剤系インクが用いられる場合、このような種の単一成分エポキシ系接着剤は、インクジェット用途のために広範に試験されたものの重大な不具合を示す。例えば、接着剤の接着性は溶剤の化学作用のために弱くなり、プリントヘッドは、溶解作用の下での接着剤の膨潤の結果として耐用期間に電気的な不具合が生じるであろう。別の重大な局面は、エポキシ系接着剤の低い柔軟性であり、そのためプリントヘッドの製造プロセスの間及び保管期間の間の熱応力が、脆いシリコンチップ部品を損傷しうる。
【0005】
[0005]したがって、当該分野では、一旦硬化した、溶剤環境における望ましい耐薬品性及び同時に高い柔軟性を保証する特別なエラストマー接着剤を開発する緊急の要求がある。ポリオレフィン、シリコン、カプトン、熱可塑性接着剤のような表面への良好な接着性、空気圧式又は渦巻式(cochlea)堆積システムによる計量分配性、適切なチキソトロピー、光学検出システムによる一旦計量分配された接着剤の良好な視認性、プリントヘッドの他の部品に適合する時間/温度硬化条件、最も好ましい単一成分システム、製造プロセスの間及び商品の耐用期間の間の装置の接合部品間の機械的応力を低減させるための低いヤング率、並びに/又は低減された空気透過性を含むエラストマー接着剤もまた求められている。
【0006】
[発明の概要]
[0006]上記の技術的課題を解決するため、本発明は、新規なエラストマー接着剤を提案する。エラストマー接着剤は、適切なチキソトロピー及び粘度を有し、その結果として空気圧式又は渦巻式システムによる良好な計量分配性を有する。新規接着剤は、接合される表面に一旦計量分配されると望ましい形状を示し、プリントヘッドの部品及び製造ラインに対応した硬化温度の間の望ましくない流れ効果を最小限に抑える。
【0007】
[0007]本発明の第1の態様として、
ポリイソプレングラフト無水マレイン酸及びポリブタジエン-スチレンを含む、少なくとも1種のモノマー中に少なくとも1つの非芳香族性不飽和を含む直鎖状不飽和炭化水素系ポリマー、
1種又は複数の硫黄ドナー分子、並びに
有機金属亜鉛触媒
を含む組成物から、インクジェットプリントヘッドの内部に部品を接合するためのエラストマー接着剤を調製する方法であって、
a)1種又は複数の硫黄ドナー分子を有機金属亜鉛触媒と反応させて活性架橋開始剤としての硫化亜鉛錯体を形成するステップと、
b)1種又は複数の直鎖状不飽和炭化水素系ポリマーの加硫反応を硫化亜鉛錯体で触媒して加硫ポリマー及びチオールを得るステップと、
c)ステップb)で得られた加硫ポリマーのポリマー鎖を、硬化プロセスによる単位間のポリスルフィド架橋を介して架橋するステップと
を含む、方法が提供される。
【0008】
[0008]本発明の第2の態様として、本発明の第1の態様に従う方法により調製されたエラストマー接着剤が提供される。
【0009】
[0009]本発明の第3の態様として、本発明の第1の態様に従う方法により調製されたエラストマー接着剤を含むインクジェットプリントヘッドが提供される。
【0010】
[0010]本発明の第4の態様として、インクジェットプリントヘッドの内部に部品を接合するための本発明の第1の態様に従う方法により調製されたエラストマー接着剤の使用が提供される。
【0011】
[0011]本発明のエラストマー接着剤は、以下の有利な技術的効果を有する。本発明のエラストマー接着剤は、耐溶剤性インクジェットプリントヘッドを作製できるようにし、インクジェットプリントヘッドの内部に部品をしっかりと接合すること、例えばチップ(例えばシリコンチップ)をカートリッジ本体の容器(例えばプラスチックポリオレフィン系容器)のハイドローリック部品に接合すること、及びプラグを容器に接合することができる。したがって、本発明のエラストマー接着剤を含むインクジェットプリントヘッドは、従来の溶剤系インク及びUV硬化性インクの両方に耐性を有し、多孔質表面及び非多孔質表面に印刷されうる。
【0012】
[0012]以下の図面を参照して、実施例により、限定的ではなく包括的でもない本発明の実施形態が記載される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】インクジェットプリントヘッドのハイドローリック接着剤の硬化のための熱送風機の模式図である。
【0014】
[実施形態の詳細な説明]
[0014]本発明の上記の及び他の特徴及び利点をより明確にするため、本発明は、以下の添付の図面と組み合わせて更に記載される。本発明の特定の実施形態が実例であり、限定的であることを意図されないことが理解される。
【0015】
[0015]本発明の第1の態様として、
ポリイソプレングラフト無水マレイン酸及びポリブタジエン-スチレンを含む、少なくとも1種のモノマー中に少なくとも1つの非芳香族性不飽和を含む直鎖状不飽和炭化水素系ポリマー、
1種又は複数の硫黄ドナー分子、並びに
有機金属亜鉛触媒
を含む組成物から、インクジェットプリントヘッドの内部に部品を接合するためのエラストマー接着剤を調製する方法であって、
a)1種又は複数の硫黄ドナー分子を有機金属亜鉛触媒と反応させて活性架橋開始剤としての硫化亜鉛錯体を形成するステップと、
b)1種又は複数の直鎖状不飽和炭化水素系ポリマーの加硫反応を硫化亜鉛錯体で触媒して加硫ポリマー及びチオールを得るステップと、
c)ステップb)で得られた加硫ポリマーのポリマー鎖を、硬化プロセスによる単位間のポリスルフィド架橋を介して架橋するステップと
を含む、方法が提供される。
【0016】
[0016]好ましい実施形態において、1種又は複数の直鎖状不飽和炭化水素系ポリマーは、少なくとも1種のモノマー中に1つ又は複数の共有結合された極性基を更に含む。
【0017】
[0017]好ましい実施形態において、有機金属亜鉛触媒は、カルバミン酸亜鉛、亜鉛グアニジン、及び/又はキサントゲン酸亜鉛である。カルバミン酸亜鉛は、例えば、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛(ZEPC)、及び/又はジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)であることができる。
【0018】
[0018]1つの実施形態において、組成物は、
15%~60%の1種又は複数の直鎖状不飽和炭化水素系ポリマー、
3.3%~10.6%の1種又は複数の硫黄ドナー分子、及び
2.0%~7.0%の有機金属亜鉛触媒
を含み、パーセンテージは上記組成物の全重量に基づいて計算される。
【0019】
[0019]好ましい実施形態において、組成物は、
20%~50%の1種又は複数の直鎖状不飽和炭化水素系ポリマー、
5.0%~8.5%の1種又は複数の硫黄ドナー分子、及び
3.0%~6.0%の有機金属亜鉛触媒
を含み、パーセンテージは組成物の全重量に基づいて計算される。
【0020】
[0020]より好ましい実施形態において、組成物は、
35%~40%の1種又は複数の直鎖状不飽和炭化水素系ポリマー、
6.5%~7.5%の1種又は複数の硫黄ドナー分子、及び
4.0%~5.0%の有機金属亜鉛触媒
を含み、パーセンテージは組成物の全重量に基づいて計算される。
【0021】
(直鎖状不飽和炭化水素系ポリマー)
[0021]上述のように、本発明の組成物は、少なくとも種のモノマー中に少なくとも1つの非芳香族性不飽和を含む、1種又は複数の直鎖状不飽和炭化水素系ポリマーを含む。不飽和は、直鎖状不飽和炭化水素系ポリマーの加硫反応の間の反応点(特に、アリル水素)である。加硫反応の間、アリル水素は、一旦硫化された亜鉛触媒に由来するポリ硫化鎖の硫黄原子(置換反応)により置換される。
【0022】
[0022]好ましい実施形態において、直鎖状不飽和炭化水素系ポリマーは、共有結合するために、少なくとも1種のモノマー中に1つ又は複数の共有結合された極性基、例えばアルコール、ケトン、エステル、アミド、カルボキシル、アミン、無水物を更に含む。ポリマー鎖に1つ又は複数の共有結合された極性基が存在することで、表面相互作用が増大し、その結果として接着性が促進される。
【0023】
[0023]より好ましい実施形態において、極性基は無水物である。無水物は、例えば、接合される表面に最終的に存在する水酸基又はアミノ基又はカルボン酸基に反応して求核置換反応を受ける官能基である。無水物によりポリマーと表面との間に生成された新たな結合は、強力な共有結合である。理論により縛られることを望むことなしに、無水物はまた、他の官能基とのより弱い相互作用、例えば双極子間相互作用又はファンデルワールス相互作用を生じさせることもできる。
【0024】
[0024]好ましい実施形態において、本発明の1種又は複数の直鎖状不飽和炭化水素系ポリマーはまた、接着剤の最終的な機械的特性及び耐薬品性を改善する芳香族部分を鎖の内部に含有する。
【0025】
[0025]例示の実施形態において、1種又は複数の直鎖状不飽和炭化水素系ポリマーは、以下のうちの1種を含む。
【化1】

(式中、m+nは113に等しく、m及びnはいずれも、ゼロに等しくない)
【化2】

(式中、(x+z)/(x+y+z)は20%に等しく、y/(x+y+z)は80%に等しい)、及び
【化3】

(式中、x/(x+y)は33%に等しく、y/(x+y)は67%に等しい)
【0026】
[0026]特定の実施形態において、直鎖状不飽和炭化水素系ポリマーは、ALDRICHから市販されているポリイソプレングラフト無水マレイン酸及び/又はポリブタジエン-スチレンを含む。
【0027】
(硫黄ドナー分子)
[0027]上述のように、本発明の組成物は、1種又は複数の硫黄ドナー分子を含む。1種又は複数の硫黄ドナー分子は、硫黄系加硫反応のために必須の成分である。1種又は複数の硫黄ドナー分子は、直鎖状不飽和炭化水素系ポリマー鎖の架橋反応を効率的に開始する活性硫化亜鉛錯体を生成する有機金属亜鉛触媒(以下に詳細に説明される)に反応する。
【0028】
[0028]1つの実施形態において、1種又は複数の硫黄ドナー分子は、元素硫黄又は分散硫黄から選択される。元素硫黄又は分散硫黄は、溶解性が完全でない場合に分散の均一性を増大させるために、適切なポリマー分散剤添加物(通常はポリマー又はワックス)を用いて分散されうる。
【0029】
[0029]好ましい実施形態において、1種又は複数の硫黄ドナー分子は、100メッシュ以下の平均粒度分布を有する可溶性結晶性硫黄である。この方法では、得られるエラストマー接着剤は、良好な均質性、及び空気圧式又は渦巻式計量分配システムによる良好な計量分配性を有するであろう。
【0030】
(有機金属亜鉛触媒)
[0030]本発明の組成物は、有機金属亜鉛触媒を含む。有機金属亜鉛触媒は、まず硫黄ドナー分子と反応して活性硫化亜鉛錯体を生成する活性化合物である。硫化亜鉛錯体は、加硫反応の間に直鎖状不飽和炭化水素系ポリマーのアリル水素の硫黄置換反応を触媒する。加硫反応の結果、硫化亜鉛錯体は、ZnS及びチオールのようないくつかの副生成物に分解され、一方でポリマー鎖は、対応する長いポリ硫化鎖を介して効率的に架橋される。
【0031】
[0031]1つの実施形態において、有機金属亜鉛触媒は、カルバミン酸亜鉛、亜鉛グアニジン、及び/又はキサントゲン酸亜鉛であることができる。好ましい実施形態において、有機金属亜鉛触媒は、カルバミン酸亜鉛及び/又はキサントゲン酸亜鉛であり、これらは一旦完全なエラストマー接着剤に導入されると、最終的なエラストマー接着剤のスコーチ時間、反応性及び硬化温度の観点でより高性能である。
【0032】
[0032]加硫反応に適切な有機金属亜鉛触媒の例は、
【化4】

を含む。
【0033】
[0033]特定の実施形態において、有機金属亜鉛触媒は、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛(ZEPC)若しくはジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)、例えばHenan Xuannuo Imp&Exp Co.,Ltd,から市販されているもの、又はイソプロピルキサントゲン酸亜鉛、例えばVanderbiltからPROPYL ZITHATE(登録商標)の名で市販されているものである。
【0034】
[0034]1つの実施形態において、本発明の組成物は、
金属酸化物、
1種若しくは複数の有機リガンド、
組成物の硬化温度以上の沸点を有する、1種若しくは複数の炭化水素系の有機溶剤若しくは油、
1つ若しくは複数の不飽和を有するオルガノシラン分子からなるカップリング剤、及び/又は
組成物中に分散しうる有機フィラー若しくは無機フィラー
を更に含む。
【0035】
[0035]特定の実施形態において、組成物は、
1.9%~6.2%の金属酸化物、
2.5%~8.5%の1種若しくは複数の有機リガンド、
14%~45%の1種若しくは複数の炭化水素系の有機溶剤若しくは油、
2.5%~9.0%のカップリング剤、及び/又は
1.5%~12%の有機フィラー若しくは無機フィラー
を含み、パーセンテージは組成物の全重量に基づいて計算される。
【0036】
[0036]好ましい実施形態において、組成物は、
3.0%~5.0%の金属酸化物、
4.0%~7.0%の1種若しくは複数の有機リガンド、
20%~35%の1種若しくは複数の炭化水素系の有機溶剤若しくは油、
4.0%~7.5%のカップリング剤、及び/又は
3.0%~10.0%の有機フィラー若しくは無機フィラー
を含み、パーセンテージは組成物の全重量に基づいて計算される。
【0037】
[0037]より好ましい実施形態において、組成物は、
4.0%~4.5%の金属酸化物、
5.0%~5.5%の1種若しくは複数の有機リガンド、
25%~30%の1種若しくは複数の炭化水素系の有機溶剤若しくは油、
5.5%~6.0%のカップリング剤、及び/又は
5.0%~8.0%の有機フィラー若しくは無機フィラー
を含み、パーセンテージは組成物の全重量に基づいて計算される。
【0038】
(金属酸化物)
[0038]上述のように、本発明の組成物は金属酸化物を更に含み、好ましくは、金属酸化物は酸化亜鉛(ZnO)である。金属酸化物は粒子の形態であることができる。この方法では、金属酸化物粒子、例えばZnO粒子は組成物中に分散され、加硫反応の間に第1の硫化亜鉛錯体から生成されたチオールに反応して亜鉛錯体を形成することができる。
【0039】
[0039]好ましい実施形態において、亜鉛錯体は、まず有機リガンドと共に錯体形成され、硫化され、次いでポリマーの加硫反応及び架橋反応に関与する。
【0040】
(有機リガンド)
[0040]上述のように、本発明の組成物は、1種又は複数の有機リガンドを更に含む。有機リガンドは、有機非極性組成物中での亜鉛含有材料(例えば有機金属亜鉛触媒、硫化亜鉛錯体及び酸化亜鉛)の溶解性及び分散性を増大させて、不適切な分散及び/又は可溶化による過度の加硫効果を防ぐことを目的とする。有機リガンドは、有機金属亜鉛触媒の亜鉛原子、又は亜鉛錯体、又はZnOと配位錯体を生成できる分子である。
【0041】
[0041]好ましい実施形態において、有機リガンドは、非極性分子部分を有するカルボン酸及び/又はアミンである。より好ましい実施形態において、有機リガンドは、C18~C30のカルボン酸、脂肪族アミン及び/又は芳香族アミンである。
【0042】
[0042]ポリマーの加硫反応に適切な1種又は複数の有機リガンドの例は、以下
【化5】

を含む。
【0043】
(有機溶剤又は油)
[0043]上述のように、本発明の組成物は、1種又は複数の炭化水素系の有機溶剤又は油を更に含む。有機溶剤又は油は、本組成物の他の成分を可溶化及び/又は分散させるために用いられ、炭化水素系の溶剤、例えばスチレン、ジイソプロピルベンゼン(DIPB)、メシチレン、キシレン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ヘプタン、オクタン、トルエン等である。更に、選択された有機溶剤又は油は、硬化プロセスの間の溶剤又は油の沸騰及び泡の生成を防ぐために、組成物又は即ち本エラストマー接着剤の硬化温度以上の沸点を有するであろう。例えば、130℃以下の硬化温度に適切な有機溶剤又は油は、メシチレン、キシレン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等を含み、80℃以下の硬化温度に適切な有機溶剤又は油は、ヘプタン、オクタン、トルエン及び全ての上述の炭化水素系溶剤を含む。
【0044】
(カップリング剤)
[0044]上述のように、本発明の組成物は、カップリング剤を更に含む。カップリング剤は接着促進剤でもあり、接着剤に可溶性の、接合される表面(シリコン及び/又はプラスチック)に最終的に存在する例えば水酸基、アミノ基及び/又はカルボン酸基への反応性官能基を有するオルガノシラン分子であることができる。そのような官能基により、カップリング剤、又は特にオルガノシラン分子は、接着剤の他の成分及び表面の両方と反応することができる。特定の実施形態において、反応性官能基とは、カップリング剤又はオルガノシラン分子に含まれる1つ又は複数の不飽和を指す。
【0045】
[0045]カップリング剤、又は特にオルガノシラン分子は、接着剤の残りの部分を加硫して接着剤の残りの部分と反応することができ、それにより組成物から調製されたエラストマー接着剤と接合されるシリコン表面及び/又はプラスチック表面との間の高い接合強度を保証する。
【0046】
[0046]本発明に従う硫黄系加硫反応に適切なオルガノシラン分子の例は、以下
【化6】

のうちの1種又は複数を含む。
【0047】
[0047]例えば、オルガノシラン分子は、MOMENTIVEから市販されているSilquest A171であることができる。
【0048】
(有機フィラー又は無機フィラー)
[0048]上述のように、本発明の組成物は、分散剤の有無にかかわらず組成物中に分散しうる有機フィラー又は無機フィラーを更に含む。有機フィラー又は無機フィラーは、接着剤に適切な粘度及びチキソトロピーを付与し、その結果として空気圧式及び渦巻式計量分配システムにより接合されるシリコン表面及び/又はプラスチック表面への良好な計量分配性を付与する。
【0049】
[0049]好ましい実施形態において、有機フィラー又は無機フィラーは、ガスバリア性及び溶剤バリア性と50ミクロン以下の平均粒度分布とを有する。
【0050】
[0050]接着剤の最も良好な性能は、最終的なエラストマー材料にポリマーマトリックス中での良好な分散性を保証し、良好な溶剤/ガスバリア性をも保証する層状タルクフィラーを用いることにより達成された。したがって、より好ましい実施形態において、有機フィラー又は無機フィラーは、層状タルクフィラー(例えば、IMERYSから市販されているTalc HAR)である。
【0051】
[0051]当業者に知られているように、上述した組成物におけるそれぞれの成分は、特有の特性を有し、接着剤に適切な反応性並びに望ましい最終的な物理的、化学的及び機械的特性を付与するのに寄与する。
【0052】
[0052]本発明のエラストマー接着剤を調製するための組成物は、迅速に架橋し、接合されるシリコン表面及び/又はプラスチック表面への高い接着性を達成することができる。
【0053】
[0053]本発明の第2の態様として、本発明の第1の態様に従う組成物から調製されたエラストマー接着剤が提供される。
【0054】
[0054]調製されたエラストマー接着剤は、単一成分の接着剤であり、そのため使用前に個々の成分を混合する必要がない。接着剤は、インクジェットプリントヘッドの部品を接合するため、例えばシリコンチップをプラスチックポリオレフィン系容器(ハイドローリック部品)に接合するため、及び/又はプラスチックプラグを容器に接合するために、インクジェットプリントヘッドの内部でハイドローリック接着剤として用いられる。接着剤はまた、インクがフレキシブル回路の下を流れて、次いで起こりうる化学的及び電気的な障害を引き起こすのを防ぐために、フレキシブル回路の端の一部をシールするために用いられうる。
【0055】
[0055]更に、エラストマー接着剤は、製造プロセスにより引き起こされた応力を吸収して、製造プロセスの間及び後に、最終的な商品を、チップの亀裂から保護することができる。耐用期間の間のプリントヘッドの最終的な加熱は、熱膨張係数の結果として接合材料(例えば、シリコン及びプラスチック容器)の異なる膨張を引き起こし、このミスマッチはチップの曲げ効果を引き起こし、その結果として脆いシリコンの破砕を引き起こしてプリントヘッドを使用不能にする。接着剤の弾性は、製造プロセスによりプリントヘッドに引き起こされた又は保管期間の間に生じる応力の吸着を保証する。
【0056】
[0056]エラストマー接着剤はまた、一旦加硫されると溶剤系インクに適合する。これらのインクは、アルコール、グリコール、グリコエーテル、エーテル、エステル、炭化水素、アミド、ラクトン、ケトンを含むことができる。接着剤は、ポリマーにプリントヘッドのシリコンチップの裏面への高い接着性を付与するように研究された添加物を含み、溶剤系インクに適合するために通常ポリオレフィン系である容器のプラスチックを接合することのできる添加物を含む。
【0057】
[0057]本発明の第3の態様として、本発明の第1の態様に従う組成物から本発明の第2の態様に従うエラストマー接着剤を調製する方法であって、
a)1種又は複数の硫黄ドナー分子を有機金属亜鉛触媒と反応させて活性架橋開始剤としての第1の硫化亜鉛錯体を形成するステップと、
b)1種又は複数の直鎖状不飽和炭化水素系ポリマーの加硫反応を第1の硫化亜鉛錯体で触媒して加硫ポリマー及びチオールを得るステップと、
c)ステップb)で得られた加硫ポリマーのポリマー鎖を、硬化プロセス、好ましくは熱硬化プロセスによる単位間のポリスルフィド架橋を介して架橋するステップと
を含む、方法が提供される。
【0058】
[0058]結果として、本エラストマー接着剤が得られる。
【0059】
[0059]1つの実施形態において、方法は、d)金属酸化物、例えば酸化亜鉛をステップb)で得られたチオールと反応させて亜鉛錯体を形成するステップを更に含む。
【0060】
[0060]更なる実施形態において、亜鉛錯体は、1種又は複数の有機リガンドと共に錯体形成され、次いで硫化されて第2の硫化亜鉛錯体が得られる。第2の硫化亜鉛錯体は、ポリマーの加硫反応に更に関与する。したがって、本発明の文脈において、接着剤における金属酸化物、例えば酸化亜鉛の添加は、副生成物である硫化物の使用を最大化することを目的とする。
【0061】
[0061]注目すべきは、本明細書において第1の硫化亜鉛錯体と第2の硫化亜鉛錯体とが構造の観点で同一であっても類似であってもよいことである。
【0062】
[0062]1つの実施形態において、方法は、e)ポリスルフィド架橋を有機金属亜鉛触媒により脱硫するステップを更に含む。ステップe)は、架橋ポリマーの長さを低減し、その結果としてヤング率を増大させるために行われる。
【0063】
[0063]1つの実施形態において、方法は、f)1つ又は複数の不飽和を有するカップリング剤を加硫してステップc)に関与させるステップを更に含む。
【0064】
[0064]好ましい実施形態において、ステップd)、e)及びf)は順序立てて行われない。
【0065】
[0065]好ましい実施形態において、ステップc)は、ステップb)の加硫ポリマーのポリマー鎖を、熱硬化プロセスによる単位間のポリスルフィド架橋を介して架橋する。
【0066】
[0066]本発明の第4の態様として、本発明の第2の態様に従う、又は本発明の第1の態様に従う組成物から調製された、又は本発明の第3の態様に従う方法により調製された、エラストマー接着剤を含むインクジェットプリントヘッドが提供される。
【0067】
[0067]本発明の第5の態様として、本発明の第2の態様に従う、又は本発明の第1の態様に従う組成物から調製された、又はインクジェットプリントヘッドの内部に部品を接合するための本発明の第3の態様に従う方法により調製された、エラストマー接着剤の使用が提供される。
【0068】
[0068]例えば、本発明のエラストマー接着剤は、インクジェットプリントヘッドの内部で、チップを容器に接合するため、及び/又はプラグを容器に接合するためのハイドローリック接着剤として用いられうる。本発明のエラストマー接着剤はまた、インクがフレキシブル回路の下を流れて、次いで起こりうる化学的及び電気的な障害を引き起こすのを防ぐために、フレキシブル回路の端の一部をシールするために用いられる。
【0069】
(接着剤の硬化)
[0069]上述のように、本発明のエラストマー接着剤は、熱硬化性である。したがって、本エラストマー接着剤を熱硬化するために、本出願においては硬化システムが利用される。インクジェットプリントヘッドの自動製造アセンブリラインにおいて典型的に用いられる硬化システムは、熱送風機及び/又はオーブンを備える。
【0070】
(熱送風機)
[0070]図1は、インクジェットプリントヘッドのシリコン噴出器群の加熱を介した接着剤の熱網状化を含む熱送風機システムを示す。
【0071】
[0071]図1に示すように、加熱はシリコンから接着剤へと迅速に伝達される。熱送風機システムにより、製造プロセスは接着剤の完全な硬化のために必要な比較的短い時間で(噴出器群のシリコン部品に適合した)より高い硬化温度へと達することができ、インクジェットプリントヘッドのいずれの他の熱を感知しうる部品も損傷することがない。熱送風機の時間及び温度は、プラスチック容器及びプリントヘッドの近くの部品を、熱伝達による熱損傷から保護するために調整することができる。
【0072】
(オーブン)
[0072]硬化システムとしてオーブンが用いられる場合、ある温度で一定時間、プリントヘッド全体を加熱オーブンに入れる。この場合、加熱は方向性のあるものではなく、その結果として全てのプリントヘッド部品が加熱される。
【0073】
[0073]プリントヘッドの少なくとも1つの部品にとって危険となりうる臨界温度より高い温度に達するのを防ぐことが重要である。オーブンにおいては、並行して1つを超えるプリントヘッドを同時に加熱することができ、そのため熱送風機で必要とされるよりも加熱時間が増大しうる。
【0074】
[0074]硬化条件及びその結果としての接着剤の反応性は、プリントヘッドの全ての他の部品を、熱的に誘導された損傷から保護する適用に対して適合されるであろう。例えば、それを上回るとプリントヘッドの少なくとも1つの部品が損傷され始める最大硬化温度が90℃である場合、一旦プリントヘッドの部品が接合されると、90℃未満の温度でオーブンにプリントヘッド全体を入れるのがより良好であり、そうでなければ、接合されるシリコン表面及び/又はプラスチック表面を、最終的なプリントヘッドを損傷することなくより高い温度(例えば約130℃まで)へと短時間(例えば<3分)局所的に加熱するために、製造ラインに熱送風機を入れることもまた選択肢である。
【0075】
[0075]硬化プロセスの後に達する網目の程度は高くなるであろう。硬化プロセスの間に消費されるエンタルピーはDSC装置により測定され、利用可能な全エンタルピーの50%より高くなるであろう。
【実施例
【0076】
[0076]本発明に従うエラストマー接着剤の特徴を以下の実施例で評価する。以下に記載の実施例は、本発明の実施形態を示すための単なる例示であり限定するものではないことが当業者により理解されるであろう。
【0077】
(実施例E1~E4及び比較例C5~C6)
[0077]表1は、本発明(E1~E4)及び比較例(C5~C6)の例示の接着剤組成(重量による)を示す。
【表1】
【0078】
(本発明のエラストマー接着剤の調製方法)
[0078]例として配合物E3を選び、本発明に従うエラストマー接着剤を以下の方法により製造した。
【0079】
[0079]以下の原料、20.6wt%のポリイソプレングラフト無水マレイン酸、17.5wt%のポリブタジエン-スチレン、29.65wt%のメシチレン及び5.78wt%のSilquest A171をまず容器に入れた。原料をミキサー(ARE-250THINKY、USA)で3サイクル後に5分停止する9サイクル(それぞれのサイクルについて10分)で混合した。得られた混合物を冷却した後、4.12wt%の酸化亜鉛、5.48wt%のステアリン酸、7.09wt%の硫黄(メッシュ150μm)及び5.16wt%のTalc HARを混合物に入れ、次いでミキサー(ARE-250 THINKY、USA)でそれぞれの単一のサイクル後に5分停止する3サイクル(それぞれのサイクル10分)で混合した。最後に、亜鉛触媒としての4.62wt%のZDBCを混合物に入れ、ミキサー(ARE-250 THINKY、USA)で10分混合した。
【0080】
[0080]本発明に従う他のエラストマー接着剤及びそれらの比較接着剤を同様の方法で調製した。
【0081】
[0081]製造した接着剤を、熱送風機硬化システムを用いることにより135℃の最大温度で3分以下の時間、及び/又は別の方法としてオーブンを用いることにより80℃の最大硬化温度で3時間以下の時間硬化させ、本発明のエラストマー接着剤について以下の要件を保証する。
耐応力性、
水系インク及び溶剤系インクの両方に対する高い耐薬品性、
高い架橋密度、
高い変換率(炭素-硫黄結合形成又はC-H結合消失の%)、
接合される表面(シリコン、又はポリオレフィン系プラスチック)への高い接着性、
良好な柔軟性、
良好な計量分配性及びスコーチ時間、並びに
低減した空気透過性。
【0082】
[0082]これらの有利な特性に関する詳細な説明を、材料の実験的試験及び/又は分析により以下に示す。
【0083】
(耐応力性)
[0083]本発明のエラストマー接着剤は、製造プロセスにより引き起こされた応力を吸収して、製造プロセスの間及び後に、最終的なプリントヘッドを、チップの亀裂から保護ことができる。耐用期間の間のプリントヘッドの最終的な加熱は、異なる熱膨張係数のために接合部品(例えば、シリコン及びプラスチック容器)の異なる膨張を引き起こす。このミスマッチはチップの曲げ効果を引き起こし、その結果として脆いシリコンの破砕を引き起こしてプリントヘッドを使用不能にする。しかしながら、本発明のエラストマー接着剤の弾性は、製造プロセスにより引き起こされた又は保管期間の間に生じるプリントヘッドへの応力の吸着を保証する。
【0084】
(溶剤系インクに対する耐薬品性)
[0084]一旦プリントヘッドの製造プロセスが終わると、インク(複数可)を容器(複数可)に装填する。プリントヘッドが三色のものである場合、3つのインク(典型的にはシアン、マゼンタ、イエロー)を3つの容器に装填する。通常、それぞれの容器はインクを含有する必要がある。
【0085】
[0085]インクで満たされたプリントヘッドを用意すると、プリントヘッドを包装材料に入れて45℃に設定されたオーブンにそれぞれの保管時間のステップについて1週間、3週間、5週間及び7週間入れ、試料をオーブンから取り出して室温で2時間冷却する。包装材料を開けてプリントヘッドをプリンターに配置し、紙シート上に予め規定した印刷パターンを実行し、印刷パターンを見ると、保管の間にハイドローリック接着剤のいくつかの不具合が生じたかどうかを確認することができる。技術的パターンにおいていくつかの汚染インク印刷が観察されれば、接着剤の耐薬品性を十分とは考えられない。
【0086】
[0086]本発明のエラストマー接着剤は、一旦加硫されるとインクジェットプリントヘッドに用いられる溶剤系インクに適合するように配合されている。これらの溶剤系インクは、通常、アルコール、グリコール、グリコエーテル、エーテル、エステル、炭化水素、アミド、ラクトン、ケトンを含む。本発明のエラストマー接着剤は、ポリマーにプリントヘッドのシリコンチップの裏面への高い接着性を付与することのできる成分を含み、溶剤系インクに適合するために通常ポリオレフィン系である容器のプラスチックを接合することのできる成分を含む。
【0087】
[0087]本発明では、本発明のエラストマー接着剤と一般的に用いられる溶剤系インクとの間の化学的適合性(又は即ち耐薬品性)を評価するために、溶剤系インクであるシアン、マゼンタ及びイエローを用いた。インク組成を表2に示す。
【表2】
【0088】
[0088]プリントヘッドの3つの容器をそれぞれ上記の溶剤系インクで満たして7週間45℃で保持し、1、3、5及び7週間後にプリントヘッドの接合部品(ハイドローリック、プラグ、回路基板上のビーズ)の最終的な不具合を観察することにより、化学的適合性を評価した。適切に硬化された本発明の接着剤は、いずれの表面からの脱離及び/又は関係のある膨潤も示さなかった。
【0089】
[0089]プリントヘッド及び特にハイドローリック接着剤の耐薬品性を、45℃での1、3、5及び7週間の保管後の印刷品質を観察することにより明確に評価した。典型的には、紙上の印刷パターンの普通ではない色が観察される場合に接着剤の不具合が明らかとなり、これはプリントヘッドのマクロハイドローリック領域へのインクの混合の結果である。別の起こりうる不良は、プリントヘッドのハイドローリックの閉まりの損失の結果としての印刷プロセスの間のノズルの欠如である。
【0090】
[0090]表3は、45℃での時間0並びに1、3、5及び7週間の保管後のE1~E4及びC5~C6の接着剤を用いたプリントヘッドの印刷品質を示す。
【表3】
【0091】
[0091]表3における上記の結果は、プリントヘッドの印刷品質がE1~E4については良好であり、一方で5週間及び7週間後のC5については否定的であったことを示す。したがって、本発明のエラストマー接着剤の耐薬品性は良好であり、それに対して比較例C5及びC6については耐薬品性が中程度である。
【0092】
(架橋密度)
[0092]本発明では、一旦硬化された本発明及び比較例のエラストマー接着剤の架橋密度を以下のこの手順で測定した。
【0093】
[0093]接着剤を、以下の3次元、10mm×20mm×20mmを有するアルミニウム金型の内部に鋳造することにより、ゴム試料を調製した。
【0094】
[0094]適切な望ましい硬化条件(熱送風機及び/又はオーブン)で試料を硬化させ、冷却並びに重量及び体積の測定後、試料を室温で既知体積のイソオクタン中に置いた。
【0095】
[0095]この有機溶剤(イソオクタン)はエラストマー接着剤のポリマーマトリックスへの親和性が非常に高く、その結果として膨潤を引き起こす。2分後、試料を次いで溶剤から取り出して最終的な重量及び体積について測定した。
【0096】
[0096]以下のFlory Rehnerの式を用いて、接着剤試料の架橋密度を次いで計算した。
【数1】
【0097】
[0097]フィラーを含む加硫ゴムについては、Vは以下の式から得られる。
【数2】
【0098】
[0098]表4は本発明及び比較例のエラストマー接着剤の架橋密度を示す。ほとんどの期待できる接着剤について計算された架橋密度は、10-3mol/cmのオーダーであった。比較例C5及びC6の両方については、試料を調製するのが困難であるため架橋密度は得られていない。
【表4】
【0099】
(変換率)
[0099]本発明の文脈において、接着剤の変換率とは、炭素-硫黄(C-S)結合形成又はC-H結合消失のパーセンテージを意味する。一旦硬化された接着剤の変換率をFTIR分光分析により測定した。
【0100】
[00100]加硫反応は、FTIRによりモニタリングするのが困難な一定数の反応ステップを含む。しかしながら、FTIR分光技術により、それぞれC-S結合及びC-H結合の出現又は消失を観察することのみにより満足のいく反応の検出を得ることが可能であることが観察された。
【0101】
[00101]1603cm-1の参照ピークにて正規化された1520cm-1のシグナルの増大をモニタリングすることで、表4に記載のように、本発明のエラストマー接着剤が少なくとも0.4の吸光度値の増大を有することが観察された。比較例C5及びC6については、吸光度値の増大はそれぞれ0.14及び0.30であり、本発明(E1~E4)の値より著しく低い。
【0102】
(接合される表面への接着性)
[00102]エラストマー接着剤の表面(シリコン及びポリオレフィン系プラスチックの両方)への接着性を、エラストマー接着剤が試験中であった少なくとも10個のプリントヘッドを調製することにより試験した。接着剤を、製造アセンブリラインに備えられた渦巻式又は空気圧式計量分配システムにより計量分配し、分析により同定した適切な選択条件で硬化した。
【0103】
[00103]接着剤の接着性を「ナイフ試験」により評価した。接着剤の計量分配及び正確な硬化時間の後、チップを観察して位置を保持しているかどうかを決定した。
【0104】
[00104]特に、「ナイフ試験」は以下の様式で行った。
プリントヘッドからフレキシブル回路(又はフラット)を除去し、
ナイフの先をチップの端に配置し、てこの作用で弱い力で押し付け、
力の押し付けによりチップの除去が生じた場合、評価試験はランク「KO」で否定的であり、裏面に接着剤を有するチップの完全な除去を観察することができ、
力の押し付けによりチップの破壊が生じた場合、又はチップを除去するのが困難な場合、評価試験は肯定的であり、ランク試験は「良好」又は「非常に良好」である。
【0105】
[00105]表4に記載のように、全ての本発明の実施例及び比較例は、「中程度」レベルから「非常に良好」な範囲の許容可能な接着性を示す。
【0106】
(柔軟性)
[00106]通常、ポリマー材料の柔軟性又は即ちガラス転移温度は、室温とより高い温度との間からなる温度範囲において設定された加熱速度で加熱傾斜を行うDSC技術により、間接的に測定される。材料が室温で弾性である場合は、検出温度範囲においていずれのガラス転移も示さないであろう。室温より下のガラス転移温度を有する接着剤は、本質的には、高分子構造の内部の体積の多い遊離体である。製造プロセスの間又は後の接合表面の熱膨張、振動等は、結果として材料により吸着される。
【0107】
[00107]しかしながら、本発明に従うエラストマー接着剤E1~E4のガラス転移温度は、摂氏ゼロ度よりかなり低いことから、(0℃未満の冷温ではより精度の低い)DSC装置により得られた精密な値は、高い装置誤差の問題がある。したがって、本出願では、エラストマー接着剤E1~E4並びにC5及びC6のガラス転移温度は、接着剤を-45℃の冷蔵庫に入れてナイフの先で接着剤に刻み目を入れることにより評価した。ガラス状態の接着剤はなく、全ての接着剤が最も低くて-40℃まで常に柔軟であることが観察された。以上のように、エラストマー接着剤E1~E4のガラス転移温度は全て-30℃以下である。
【0108】
(空気透過性)
[00108]プリントヘッドについて行われた印刷及び保管試験では、一旦適切に計量分配及び硬化された、プリントヘッドの部品を接合するのに用いたエラストマー接着剤の空気透過は明らかにされなかった。
【0109】
[00109]プリントヘッドのマイクロハイドローリックへの空気の存在は重大であり、装置の耐用期間の間にノズルの欠如を引き起こしうる。
【0110】
[00110]上述した種々の技術的特徴は任意に組み合わせることができる。種々の技術的特徴の全ての可能な組み合わせが記載されてはいないが、これらの技術的特徴の全ての組み合わせが、矛盾しない限りにおいて本明細書に記載された範囲内であるものと考えるべきである。
【0111】
[00111]実施形態と組み合わせて本発明が記載されるが、当業者は上記の記載及び図面が単なる例示であり限定するものではないこと、並びに本発明が開示された実施形態に限定されないことを理解するであろう。本発明の概念から逸脱することなく、種々の変更形態及び変形形態が可能である。
図1
【国際調査報告】