(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】CRISPR V型系のためのDNA含有ポリヌクレオチドおよびガイド、ならびにこれらを製造する方法および使用する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20231025BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20231025BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231025BHJP
C12N 9/22 20060101ALI20231025BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20231025BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231025BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20231025BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20231025BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20231025BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231025BHJP
C12N 15/55 20060101ALN20231025BHJP
C12N 5/078 20100101ALN20231025BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20231025BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20231025BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/09 110
C12N5/10
C12N9/22
C12N15/62 Z
A61P35/00
A61K47/68
A61K35/17
A61K35/545
A61K39/395 D
A61K39/395 N
C12N15/55
C12N5/078
C12N15/13
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523535
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(85)【翻訳文提出日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 US2021055394
(87)【国際公開番号】W WO2022086846
(87)【国際公開日】2022-04-28
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】515251115
【氏名又は名称】カリブー・バイオサイエンシーズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ダニエル・ドノヒュー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA25
4B065CA44
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C085AA13
4C085BB11
4C085EE01
4C087BB65
4C087NA14
4C087ZB26
(57)【要約】
本開示は、V型CRISPR系での使用のためのガイドであって、リボヌクレオチド塩基と、少なくとも1つのデオキシリボヌクレオチド塩基とを含むガイドを提供する。少なくとも1つのデオキシリボヌクレオチド塩基を含むCRISPR Cas12ガイド、およびV型CRISPR-Cas12タンパク質とそのようなガイドとの核タンパク質複合体も説明されている。同様に開示されているのは、デオキシリボヌクレオチド含有ポリヌクレオチドおよびガイドを製造する方法および使用する方法、ならびに核タンパク質複合体を製造する方法および使用する方法である。同様に開示されているのは、CAR発現細胞を製造するためにCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体を使用して細胞を操作する方法;および適応細胞療法でのそのようなCAR発現細胞の使用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CRISPRガイド分子であって、
標的核酸配列に結合可能なターゲティング領域と、
リボヌクレオチドの代わりに少なくとも1つのデオキシリボヌクレオチドを含むRNA配列UAAUUUCUACUCUUGUAGAUを含む活性化領域であって、Cas12タンパク質と核タンパク質複合体を形成可能である活性化領域と
を含むCRISPRガイド分子。
【請求項2】
活性化領域中の1、3、7、10、12、14、15、16、17、18、および19位のうちの1箇所またはそれ以上は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む、請求項1に記載のCRISPRガイド分子。
【請求項3】
活性化領域中の1、3、7、10、12、14、15、16、17、18、および19位のうちの10箇所以下は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む、請求項1に記載のCRISPRガイド分子。
【請求項4】
イノシン、デオキシイノシン、デオキシウラシル、キサントシン、C3スペーサー、5-メチルdC、5-ヒドロキシブチニル-2’-デオキシウリジン、5-ニトロインドール、5-メチル イソ-デオキシシトシン、イソ デオキシグアノシン、デオキシウリジン、イソ-デオキシシチジン、および脱塩基部位を含む塩基改変、ならびにホスホロチオエート改変を含む骨格改変からなる群から選択される1つまたはそれ以上の化学的改変を含む、請求項1に記載のCRISPRガイド分子。
【請求項5】
ターゲティング領域は、B2M遺伝子を標的としており、かつRNA配列AGUGGGGGUGAAUUCAGUGUを含み、場合により、配列中の塩基の少なくとも1つは、塩基類似体または脱塩基部位に置き換えられている、請求項1に記載のCRISPRガイド分子。
【請求項6】
ターゲティング領域中の1、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、および20位のうちの1箇所またはそれ以上は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む、請求項5に記載のCRISPRガイド分子。
【請求項7】
ターゲティング領域中の1、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、および20位のうちの5箇所以下は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む、請求項5に記載のCRISPRガイド分子。
【請求項8】
ターゲティング領域は、配列番号51~133から選択される配列にハイブリダイズし得る、請求項5に記載のCRISPRガイド分子。
【請求項9】
配列番号212~231、275~315、および331~350から選択される配列を含む、請求項5に記載のCRISPRガイド分子。
【請求項10】
配列番号416の配列を含む、請求項5に記載のCRISPRガイド分子。
【請求項11】
ターゲティング領域は、TRAC遺伝子を標的としており、かつRNA配列GAGUCUCUCAGCUGGUACACを含み、場合により、配列中の塩基の少なくとも1つは、塩基類似体または脱塩基部位に置き換えられている、請求項1に記載のCRISPRガイド分子。
【請求項12】
ターゲティング領域中の1、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、および20位のうちの1箇所またはそれ以上は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む、請求項11に記載のCRISPRガイド分子。
【請求項13】
ターゲティング領域中の1、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、および20位のうちの5箇所以下は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む、請求項11に記載のCRISPRガイド分子。
【請求項14】
ターゲティング領域は、配列番号15~20から選択される配列にハイブリダイズし得る、請求項11に記載のCRISPRガイド分子。
【請求項15】
配列番号233~252、317~329、491~492、および508から選択される配列を含む、請求項11に記載のCRISPRガイド分子。
【請求項16】
化学的改変をさらに含み、配列番号512~517から選択される配列を含む、請求項11に記載のCRISPRガイド分子。
【請求項17】
配列番号415の配列を含む、請求項11に記載のCRISPRガイド分子。
【請求項18】
ターゲティング領域は、CISH遺伝子を標的としており、かつ配列番号157~165から選択される配列にハイブリダイズし得る、請求項1に記載のCRISPRガイド分子。
【請求項19】
配列番号509および519~529から選択される配列を含む、請求項18に記載のCRISPRガイド分子。
【請求項20】
ターゲティング領域は、PDCD1遺伝子を標的としており、かつ配列番号135~155から選択される配列にハイブリダイズし得る、請求項1に記載のCRISPRガイド分子。
【請求項21】
ターゲティング領域は、CBLB遺伝子を標的としており、かつ配列番号167~189から選択される配列にハイブリダイズし得る、請求項1に記載のCRISPRガイド分子。
【請求項22】
配列番号510の配列を含む、請求項21に記載のCRISPRガイド分子。
【請求項23】
CRISPR核酸/タンパク質組成物であって、
請求項1に記載のCRISPRガイド分子と、
Cas12タンパク質と
を含むCRISPR核酸/タンパク質組成物。
【請求項24】
Cas12タンパク質は、C末端において、リンカー、および配列番号479~490からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核局在化シグナル(NLS)含有配列を含むCas12タンパク質である、請求項23に記載のCRISPR核酸/タンパク質組成物。
【請求項25】
請求項1に記載のCRISPR核酸/タンパク質組成物を含む細胞であって、リンパ球、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、T細胞受容体(TCR)細胞、TCR操作CAR-T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、CAR TIL、樹状細胞(DC)、CAR-DC、マクロファージ、CAR-マクロファージ(CAR-M)、ナチュラルキラー(NK)細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、iPSC細胞から分化した細胞、またはCAR-NK細胞である細胞。
【請求項26】
キメラ抗原受容体(CAR)発現細胞を製造する方法であって、
a)細胞中におけるTRAC配列を含む第1の標的核酸と、触媒的に活性なCas12タンパク質、ならびに第1の標的核酸配列に結合可能なターゲティング領域、およびCas12タンパク質と核タンパク質複合体を形成可能な活性化領域を有する第1のCRISPRガイド分子を含む核タンパク質複合体とを接触させることであって、前記CRISPRガイド分子は、活性化領域、ターゲティング領域、または両方中に、リボヌクレオチド塩基、および少なくとも1つのデオキシリボヌクレオチド塩基を含み、核タンパク質複合体は、第1の標的核酸配列を切断し得ること;
b)同一の細胞中におけるB2M配列を含む第2の標的核酸配列と、触媒的に活性なCas12タンパク質、ならびに第2の標的核酸配列に結合可能なターゲティング領域、およびCas12タンパク質と核タンパク質複合体を形成可能な活性化領域を有する第2のCRISPRガイド分子を含む核タンパク質複合体とを接触させることであって、前記CRISPRガイド分子は、活性化領域、ターゲティング領域、または両方中に、リボヌクレオチド塩基、および少なくとも1つのデオキシリボヌクレオチド塩基を含み、核タンパク質複合体は、第2の標的核酸配列を切断し得ること;
c)scFv、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、および活性化ドメインを含むCARをコードする第1のドナーポリヌクレオチドを準備することであって、CARは、第1の標的核酸配列中の切断部位に挿入され得ること;
d)B2M分泌シグナル、HLA-Gペプチドシグナル配列、第1のリンカー配列、B2M配列、第2のリンカー配列、およびHLA-E配列を含むB2M-HLA-E融合構築物をコードする第2のドナーポリヌクレオチドを準備することであって、B2M-HLA-E融合構築物は、第2の標的核酸配列中の切断部位に挿入され得ること;
e)第1の標的核酸配列を切断し、切断部位に第1のドナーポリヌクレオチドの少なくとも一部を挿入すること;および
f)第2の標的核酸配列を切断し、切断部位に第2のドナーポリヌクレオチドの少なくとも一部を挿入すること
を含む方法。
【請求項27】
第2のドナーポリヌクレオチドは、B2M-HLA-E融合構築物の5’末端においてP2A配列をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
第1のドナーポリヌクレオチドは、配列番号413を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
第2のドナーポリヌクレオチドは、配列番号414を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
CAR中のscFvは、CD37、CD38、CD47、CD73、CD4、CS1、PD-L1、NGFR、ENPP3、PSCA、CD79B、TACI、VEGFR2、B7-H3、B7-H6、B細胞成熟抗原(BCMA)、CD123、CD138、CD171/L1CAM、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD70、CD371、CEA、クローディン18.1、クローディン18.2、CSPG4、EFGRvIII、EpCAM、EphA2、上皮増殖因子受容体、ErbB、ErbB2(HER2)、FAP、FRα、GD2、GD3、グリピカン3、IL-11Rα、IL-13Rα2、IL13受容体アルファ、ルイスY/LeY、メソテリン、MUC1、MUC16、NKG2Dリガンド、PD1、PSMA、ROR-1、SLAMF7、TAG72、ULBPおよびMICA/Bタンパク質、VEGF2、ならびにWT1からなる群から選択される細胞標的に結合し得る、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
scFvは、BCMAに結合し得、かつ配列番号474のアミノ酸配列を含む第1の可変領域、配列番号475のアミノ酸配列を含む第2の可変領域、および配列番号476のアミノ酸配列を含む、第1の可変領域と第2の可変領域との間のリンカーを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
scFvは、配列番号477のアミノ酸配列を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
CARの膜貫通ドメインは、T細胞受容体α鎖、T細胞受容体β鎖、CD3ζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、ICOS、CD154、またはGITRに由来する、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
CARの共刺激ドメインは、CD28、4-1BB、GITR、ICOS-1、CD27、OX-40、またはDAP10に由来する、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
CARは、CD8、4-IBB共刺激ドメイン、およびCD3ζ活性化ドメインに由来する膜貫通ドメインを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項36】
CAR配列を含むベクターは、配列番号478の核酸配列を有するリーダー配列を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項37】
触媒的に活性なCas12タンパク質は、C末端において、リンカー、および配列番号479~490からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する核局在化シグナル(NLS)含有配列を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項38】
a.同一の細胞中における第3の標的核酸配列と、触媒的に活性なCas12タンパク質、ならびに第3の標的核酸配列に結合可能なターゲティング領域;およびCas12タンパク質と核タンパク質複合体を形成可能な活性化領域を有する第3のCRISPRガイド分子を含む核タンパク質複合体とを接触させることであって、前記CRISPRガイド分子は、活性化領域、ターゲティング領域、または両方中に、リボヌクレオチド塩基、および少なくとも1つのデオキシリボヌクレオチド塩基を含み、核タンパク質複合体は、第3の標的核酸配列を切断し得ること;
b.第3の標的核酸配列を切断し、切断部位で第3の標的核酸配列から1つまたはそれ以上のヌクレオチドを欠失させることであって、第3の標的核酸配列は、PDCD遺伝子、CISH遺伝子、およびCBLB遺伝子から選択されること
をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項39】
CAR発現細胞は、T細胞リンパ球から産生された同種CAR-T細胞または自己CAR-T細胞である、請求項26に記載の方法。
【請求項40】
リンパ球、CAR-T細胞、TCR細胞、TCR操作CAR-T細胞、TIL、CAR TIL、樹状細胞、CAR-DC、マクロファージ、CAR-M、iPSC細胞、iPSC細胞から分化した細胞、NK細胞、またはCAR-NK細胞から選択される、請求項26に記載の方法により製造されたCAR発現細胞。
【請求項41】
適応細胞療法の方法であって、それを必要とする対象に、請求項40に記載のCAR発現細胞を投与することを含む方法。
【請求項42】
適応細胞療法は、BCMA陽性がん細胞を死滅させることを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
BCMA陽性がん細胞は、多発性骨髄腫がん細胞を含む、請求項42に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、全て、参照によって本明細書に組み入れる、2021年8月5日に出願された米国仮出願第3/229,870号、2020年12月18日に出願された米国仮出願第63/127,648号、および2020年10月19日に出願された米国仮出願第63/093,459号に対する優先権を主張する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究または開発に関する声明
該当なし
【0003】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含み、その全体を参照によって本明細書に組み入れる。前記ASCIIコピー(2021年10月15日に作成)は、名称がCBI039.30_ST25.txtであり、サイズが165キロバイトである。
【0004】
本開示は、概して、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)系に関する。具体的には、本開示は、CRISPR-Cas12系での使用のためのCRISPRポリヌクレオチドおよびガイドであって、リボヌクレオチド塩基と、1つまたはそれ以上のデオキシリボヌクレオチド塩基とを含むように設計されているCRISPRポリヌクレオチドおよびガイドに関する。本開示は、さらに、設計されたCRISPR Cas12ガイドおよびCRISPR-Cas12タンパク質を含むCas12ガイド/核タンパク質複合体と、そのようなCas12ガイド/核タンパク質複合体を使用する改変細胞の製造とに関する。本開示は、さらに、CRISPRポリヌクレオチド、Cas12ガイド、およびCas12ガイド/核タンパク質複合体を含む組成物、ならびにこれらを製造する方法および使用する方法に関する。さらになお、本開示は、例えば、がんの処置のためのキメラ抗原受容体(CAR)発現細胞の生成における、本開示のCas12ガイド/核タンパク質複合体を使用して改変された細胞の製造および治療的使用に関する。
【背景技術】
【0005】
クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)およびCRISPR関連(Cas)タンパク質系は、多くの原核生物(細菌および古細菌)のゲノムで見出されている。これらの系は、原核生物において外来侵入者(例えば、ウイルス、バクテリオファージ)に対する適応免疫を提供する。このようにして、CRISPR系は一種の免疫系として機能し、原核生物を外来侵入者から防御するのに役立つ。例えば、非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7を参照されたい。
【0006】
CRISPR-Cas免疫系には、下記の3つの主な段階が存在している:(1)獲得、(2)発現、および(3)干渉。獲得は、侵入するウイルスおよびプラスミドのゲノムを切断すること、ならびにゲノムDNAのセグメント(プロトスペーサーと呼ばれる)を宿主生物のCRISPR遺伝子座に組み込むことを含む。宿主ゲノムに組み込まれるセグメントは、スペーサーとして既知であり、同一の(または十分に関連した)ウイルスまたはプラスミドによるその後の攻撃からの保護を媒介する。発現は、CRISPR遺伝子座の転写と、それぞれ単一のスペーサー配列を含む短い成熟CRISPR RNAを生成するためのその後の酵素プロセシングとを含む。干渉は、CRISPR RNAがCasタンパク質と会合してエフェクター複合体が形成された後に誘発されており、次いで、外来遺伝子要素中の相補的プロトスペーサーを標的にして核酸分解を誘発する。
【0007】
様々なCRISPR-Cas系は、それらの天然宿主中で、DNAターゲティング(クラス1 I型;クラス2 IIおよびV型)、RNAターゲティング(クラス2 VI型)、ならびにDNAおよびRNAが合わさったターゲティング(クラス1 III型)が可能である。例えば、非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10、および非特許文献11を参照されたい。
【0008】
V型系は、いくつかの異なるサブタイプ(例えば、V-A、V-B、V-C、V-D、V-E、V-F、V-G、V-H、V-I、V-J、V-K、およびV-Uを含む)に分類される。例えば、非特許文献7および非特許文献12を参照されたい。V-Aサブタイプは、Cas12aタンパク質(以前はCpf1として知られている)をコードする。Cas12aは、Cas9タンパク質のそれぞれのドメインと相同なRuvC様ヌクレアーゼドメインを有しているが、Cas9タンパク質中に存在するHNHヌクレアーゼドメインを欠いている。
【0009】
V型系は、下記が挙げられるいくつかの細菌で同定されている:パルクバクテリア・バクテリウム(Parcubacteria bacterium)GWC2011_GWC2_44_17(PbCpf1)、ラクノスピラセ・バクテリウム(Lachnospiraceae bacterium)MC2017(Lb3 Cpf1)、ブチリビブリオ・プロテオクラスティカス(Butyrivibrio proteoclasticus)(BpCpf1)、ペレグリニバクテリア・バクテリウム(Peregrinibacteria bacterium)GW2011_GWA_33_10(PeCpf1)、アイダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)BV3L6(AsCpf1)、ポルホロモナス・マカカエ(Porphyromonas macacae)(PmCpf1)、ラクノスピラセ・バクテリウムND2006(LbCpf1)、ポルホロモナス・クレビオリカニス(Porphyromonas crevioricanis)(PcCpf1)、プレボテラ・ディシエンス(Prevotella disiens)(PdCpf1)、モラクセラ・ボーボクリ(Moraxella bovoculi)237(MbCpf1)、スミセラ属種(Smithella sp.)SC_K08D17(SsCpf1)、レプトスピラ・イナダイ(Leptospira inadai)(LiCpf1)、ラクノスピラセ・バクテリウムMA2020(Lb2Cpf1)、フランシスセラ・ノビシダ(Franciscella novicida)U112(FnCpf1),カンジダタス・メタノプラスマ・テルミツム(Candidatus methanoplasma termitum)(CMtCpf1)、およびユーバクテリウム・エリゲンス(Eubacterium eligens)(EeCpf1)。
【0010】
CRISPR-Cas系は、特定の核酸配列を欠失させるか、挿入するか、変異させるか、または置換することによる部位特異的ゲノム編集の強力なツールを提供する。これらの変更は、遺伝子特異的であるかまたは場所特異的であり得る。ゲノム編集は、Casタンパク質およびそのコグネートポリヌクレオチド等の部位特異的ヌクレアーゼを使用して標的核酸を切断し得、それにより変更部位が生成される。ある特定の場合では、この切断により、標的DNA配列中に二本鎖切断(DSB)が導入される。DSBは、例えば、非相同末端結合(NHEJ)、マイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)、または相同性依存的修復(HDR)により修復される。HDRは、修復のためのテンプレートの存在に依存する。このゲノム編集の一部の例では、ドナーポリヌクレオチドまたはその一部を、切れ目に挿入し得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Barrangou他(Science、2007、315:1709~1712頁)
【非特許文献2】Makarova他(Nature Reviews Microbiology、20119:467~477頁)
【非特許文献3】Garneau他(Nature、2010、468:67~71頁)
【非特許文献4】Sapranauskas他(Nucleic Acids Research、2011、39:9275~9282頁)
【非特許文献5】Koonin他(Curr.Opin.Microbiol.、2017、37:67~78頁)
【非特許文献6】Shmakov他(Nat.Rev.Microbiol.、2017、15(3):169~182頁)
【非特許文献7】Makarova他(Nat.Rev.Microbiol.、2020、18:67~83頁)
【非特許文献8】Makarova他(Nat.Rev.Microbiol.、2015、13:722~736頁)
【非特許文献9】Shmakov他(Nat.Rev.Microbiol.、2017,15:169~182頁)
【非特許文献10】Abudayyeh他(Science、2016、353:1~17頁)
【非特許文献11】Makarova他(The CRISPR Journal、2018,1:325~336頁)
【非特許文献12】Pausch他(Science、2020、369(6501):333~337頁)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、V型CRISPR-Cas系での使用のための新規のポリヌクレオチドおよびガイドの発見に基づくものであり、このポリヌクレオチドおよびガイドは、リボヌクレオチド塩基と、1つまたはそれ以上のデオキシリボヌクレオチド塩基とを含む。本開示のガイドは、Cas12a等のV型CRISPR-Casタンパク質と複合体化した場合には、頑強なオンターゲット編集と、低いオフターゲットゲノム編集とが可能である。
【0013】
このゲノム編集プロセスは、治療用途で有用な遺伝子改変細胞の作成に特に有用である。例えば、このゲノム編集プロセスにより、免疫細胞(例えばT細胞)を、CARを発現するように遺伝的に改変し得る。そのようなCAR発現細胞は、例えば養子免疫治療で有用であり、この治療では、T細胞(CAR-T細胞)等のCAR発現免疫細胞を患者に注入して、CARにより認識される標的抗原(例えば、外来抗原、またはがん関連抗原)を発現する細胞を標的とし得る。
【0014】
本開示の非限定的な実施例は、下記の通りである。
【0015】
[1]CRISPRガイド分子であって、標的核酸配列に結合可能なターゲティング領域と、Cas12タンパク質と核タンパク質複合体を形成可能な活性化領域とを含み、リボヌクレオチド塩基と、少なくとも1つのデオキシリボヌクレオチド塩基とを含むCRISPRガイド分子。
【0016】
[2]活性化領域、ターゲティング領域、または両方中に、少なくとも1つのデオキシリボヌクレオチド塩基を含む、[1]に記載のCRISPRガイド分子。
【0017】
[3]イノシン、デオキシイノシン、デオキシウラシル、キサントシン、C3スペーサー、5-メチルdC、5-ヒドロキシブチル-2’-デオキシウリジン、5-ニトロインドール、5-メチル イソ-デオキシシトシン、イソ デオキシグアノシン、デオキシウリジン、およびイソ デオキシシチジンからなる群から選択される1つまたはそれ以上の塩基類似体をさらに含む、[1]に記載のCRISPRガイド分子。
【0018】
[4]1つまたはそれ以上の脱塩基部位をさらに含む、[1]に記載のCRISPRガイド分子。
【0019】
[5]RNA配列UAAUUUCUACUCUUGUAGAUGAGUCUCUCAGCUGGUACACを含むCRISPRガイド分子であって、配列中の塩基の少なくとも1つは、対応するデオキシリボヌクレオチド塩基に置き換えられており、場合により、配列中の塩基の少なくとも1つは、塩基類似体または脱塩機部位に置き換えられている、CRISPRガイド分子;およびRNA配列UAAUUUCUACUCUUGUAGAUAGUGGGGGUGAAUUCAGUGUを含むCRISPRガイド分子であって、配列中の塩基の少なくとも1つは、対応するデオキシリボヌクレオチド塩基に置き換えられており、場合により、配列中の塩基の少なくとも1つは、塩基類似体または脱塩機部位に置き換えられている、CRISPRガイド分子から選択される、[1]に記載のCRISPRガイド分子。
【0020】
[6]CRISPRガイド分子中のデオキシリボヌクレオチド塩基の量は、CRISPRガイド分子の全サイズの割合として、50%以下である、[5]に記載のCRISPRガイド分子。
【0021】
[7]CRISPRガイド分子中のデオキシリボヌクレオチド塩基の量は、ガイド分子の全サイズの割合として、25%以下である、[6]に記載のCRISPRガイド分子。
【0022】
[8]ターゲティング領域中のデオキシリボヌクレオチド塩基の量は、ターゲティング領域の全サイズの割合として、25%以下である、[5]に記載のCRISPRガイド分子。
【0023】
[9]ターゲティング領域中のデオキシリボヌクレオチド塩基の量は、ターゲティング領域の全サイズの割合として、5%以下である、[8]に記載のCRISPRガイド分子。
【0024】
[10]活性化領域中のデオキシリボヌクレオチド塩基の量は、活性化領域の全サイズの割合として、50%以下である、[5]に記載のCRISPRガイド分子。
【0025】
[11]活性化領域中のデオキシリボヌクレオチド塩基の量は、活性化領域の全サイズの割合として、25%以下である、[10]に記載のCRISPRガイド分子。
【0026】
[12]標的核酸配列に結合し、Cas12タンパク質と核タンパク質複合体を形成し得、RNAのみのCRISPRガイド分子と比較してオフターゲット活性が低い、[5]に記載のCRISPRガイド分子。
【0027】
[13]配列中の1、3、7、10、12、14、15、16、17、18、19、21、28、29、30、31、32、34、35、36、37、38、39、および40位のうちの1箇所またはそれ以上は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む、[5]に記載のCRISPRガイド分子。
【0028】
[14]配列中の1、3、7、10、12、14、15、16、17、18、19、21、28、29、30、31、32、34、35、36、37、38、39、および40位のうちの15箇所以下は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む、[13]に記載のCRISPRガイド分子。
【0029】
[15]配列中の1、3、7、10、12、14、15、16、17、18、19、21、28、29、30、31、32、34、35、36、37、38、39、および40位のうちの12箇所以下は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む、[14]に記載のCRISPRガイド分子。
【0030】
[16]RNA配列UAAUUUCUACUCUUGUAGAUを含む活性化領域であって、配列中の塩基の少なくとも1つは、対応するデオキシリボヌクレオチド塩基に置き換えられており、場合により、配列中の塩基の少なくとも1つは、塩基類似体または脱塩基部位に置き換えられている、活性化領域を含む、[2]に記載のCRISPRガイド分子。
【0031】
[17]配列中の1、3、7、10、12、14、15、16、17、18、および19位のうちの1箇所またはそれ以上は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む、[16]に記載のCRISPRガイド分子。
【0032】
[18]配列中の1、3、7、10、12、14、15、16、17、18、および19位のうちの10箇所以下は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む、[17]に記載のCRISPRガイド分子。
【0033】
[19]配列中の1、3、7、10、12、14、15、16、17、18、および19位のうちの8箇所以下は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む、[18]に記載のCRISPRガイド分子。
【0034】
[20]RNA配列GAGUCUCUCAGCUGGUACACを含むターゲティング領域であって、配列中の塩基の少なくとも1つは、対応するデオキシリボヌクレオチド塩基に置き換えられており、場合により、配列中の塩基の少なくとも1つは、塩基類似体または脱塩基部位に置き換えられている、ターゲティング領域を含む、[2]に記載のCRISPRガイド分子。
【0035】
[21]配列中の1、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、および20位のうちの1箇所またはそれ以上は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む、[20]に記載のCRISPRガイド分子。
【0036】
[22]配列中の1、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、および20位のうちの5箇所以下は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む、[21]に記載のCRISPRガイド分子。
【0037】
[23]配列中の1、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、および20位のうちの3箇所以下は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む、[22]に記載のCRISPRガイド分子。
【0038】
[24]RNA配列AGUGGGGGUGAAUUCAGUGUを含むターゲティング領域であって、配列中の塩基の少なくとも1つは、対応するデオキシリボヌクレオチド塩基に置き換えられており、場合により、配列中の塩基の少なくとも1つは、塩基類似体または脱塩基部位に置き換えられている、ターゲティング領域を含む、[2]に記載のCRISPRガイド分子。
【0039】
[25]配列中の1、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、および20位のうちの1箇所またはそれ以上は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む、[24]に記載のCRISPRガイド分子。
【0040】
[26]配列中の1、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、および20位のうちの5箇所以下は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む、[25]に記載のCRISPRガイド分子。
【0041】
[27]配列中の1、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、および20位のうちの3箇所以下は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む、[26]に記載のCRISPRガイド分子。
【0042】
[28]配列TAAUUUCUACUCUTGUAGAUGAGUCUCUCAGCUGGUACACを含み、配列中の2、4、5、6、8、9、11、13、16、17、18、20、22、23、24、25、26、27、28、29、30、32、33、34、35、36、37、38、および39位は、リボヌクレオチド塩基を含み、かつ配列中の1、3、7、10、12、14、15、19、21、31、および40位は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む、[5]に記載のCRISPRガイド分子。
【0043】
[29]配列TAAUUUCUACUCUTGUAGAUAGUGGGGGUGAAUUCAGUGTを含み、配列中の2、4、5、6、8、9、11、13、16、17、18、20、22、23、24、25、26、27、28、29、30、32、33、34、35、36、37、38、および39位は、リボヌクレオチド塩基を含み、かつ配列中の1、3、7、10、12、14、15、19、21、31、および40位は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む、[5]に記載のCRISPRガイド分子。
【0044】
[30]活性化領域は、20塩基長であり、20個のヌクレオチドの活性化領域配列中の1、3、7、10、12、14、15、16、17、18、および19位のうちの1箇所またはそれ以上は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む、[2]に記載のCRISPRガイド分子。
【0045】
[31]配列中の1、3、7、10、12、14、15、16、17、18、および19位のうちの10箇所以下は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む、[30]に記載のCRISPRガイド分子。
【0046】
[32]配列中の1、3、7、10、12、14、15、16、17、18、および19位のうちの8箇所以下は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む、[31]に記載のCRISPRガイド分子。
【0047】
[33]ターゲティング領域は、20塩基長であり、20個のヌクレオチドのターゲティング領域配列中の1、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、および20位のうちの1箇所またはそれ以上は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む、[2]に記載のCRISPRガイド分子。
【0048】
[34]配列中の1、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、および20位のうちの5箇所以下は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む、[33]に記載のCRISPRガイド分子。
【0049】
[35]配列中の1、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、および20位のうちの3箇所以下は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む、[34]に記載のCRISPRガイド分子。
【0050】
[36]CRISPR核酸/タンパク質組成物であって、[1]~[35]のいずれか1つに記載のCRISPRガイド分子と、Cas12タンパク質とを含むCRISPR核酸/タンパク質組成物。
【0051】
[37]CRISPRガイド分子は、Cas12タンパク質との複合体で存在している、[36]に記載のCRISPR核酸/タンパク質組成物。
【0052】
[38]Cas12タンパク質は、Cas12aタンパク質である、[36]に記載のCRISPR核酸/タンパク質組成物。
【0053】
[39]Cas12タンパク質は、C末端において、配列番号479~490からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する、リンカーおよびNLS含有配列を含む、[36]~[38]のいずれか1つに記載のCRISPR核酸/タンパク質組成物。
【0054】
[40]リンカーおよびNLS含有配列は、配列番号483、485、487、および489からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、[39]に記載のCRISPR核酸/タンパク質組成物。
【0055】
[41]細胞であって、[1]~[35]のいずれか1つに記載のCRISPRガイド分子を含む細胞。
【0056】
[42]Cas12タンパク質をさらに含む、[41]に記載の細胞。
【0057】
[43]Cas12タンパク質は、Cas12aタンパク質である、[42]に記載の細胞。
【0058】
[44]Cas12タンパク質は、C末端において、配列番号479~490からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する、リンカーおよびNLS含有配列を含む、[42]または[43]に記載の細胞。
【0059】
[45]リンカーおよびNLS含有配列は、配列番号483、485、487、および489からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、[44]に記載の細胞。
【0060】
[46]CRISPRガイド分子は、Cas12タンパク質との複合体で存在している、[42]~[45]のいずれか1つに記載の細胞。
【0061】
[47]原核細胞または真核細胞である、[41]~[46]のいずれか1つに記載の細胞。
【0062】
[48]単細胞真核生物、真核生物の細胞、原生動物細胞、植物由来の細胞、藻細胞、真菌細胞、動物細胞、無脊椎動物由来の細胞、脊椎動物由来の細胞、哺乳動物由来の細胞、幹細胞、および前駆細胞からなる群から選択される真核細胞である、[47]に記載の細胞。
【0063】
[49]リンパ球、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、T細胞受容体(TCR)細胞、TCR操作CAR-T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、CAR TIL、樹状細胞(DC)、CAR-DC、マクロファージ、CAR-マクロファージ(CAR-M)、ナチュラルキラー(NK)細胞、またはCAR-NK細胞である、[48]に記載の細胞。
【0064】
[50]CAR-T細胞である、[49]に記載の細胞。
【0065】
[51]ドナーポリヌクレオチドをさらに含む[41]~[50]のいずれか1つに記載の細胞。
【0066】
[52]標的核酸配列を切断する方法であって、第1の標的核酸配列と、触媒的に活性なCas12タンパク質、および第1のCRISPRガイド分子を含む核タンパク質複合体とを接触させることであって、第1のCRISPRガイド分子は、[1]~[35]のいずれか1つに記載のCRISPRガイド分子を含み、第1のCRISPRガイド分子のターゲティング領域は、第1の標的核酸配列にハイブリダイズし得、核タンパク質複合体は、第1の標的核酸配列を切断し得ることを含む方法。
【0067】
[53]ドナーポリヌクレオチドを準備することをさらに含む[52]に記載の方法。
【0068】
[54]標的核酸配列を切断して切断部位を得、標的核酸配列を改変することをさらに含む、[53]に記載の方法。
【0069】
[55]改変することは、切断部位でドナーポリヌクレオチドの少なくとも一部を挿入することを含む、[54]に記載の方法。
【0070】
[56]改変することは、切断部位で1つまたはそれ以上のヌクレオチドを欠失させることを含む、[54]に記載の方法。
【0071】
[57]標的細胞配列は、細胞中に存在している、[55]に記載の方法。
【0072】
[58]細胞は、真核細胞を含む、[57]に記載の方法。
【0073】
[59]ドナーポリヌクレオチドは、CAR発現ベクターを含む、[58]に記載の方法。
【0074】
[60]ウイルスベクターを使用して、細胞にCAR発現ベクターを導入することをさらに含む[59]に記載の方法。
【0075】
[61]前記導入することは、形質導入を含む、[60]に記載の方法。
【0076】
[62]得られた細胞は、リンパ球、CAR-T細胞、TCR細胞、TCR操作CAR-T細胞、TIL、CAR TIL、樹状細胞、CAR-DC、マクロファージ、CAR-M、NK細胞、またはCAR-NK細胞を含む、[57]~[61]のいずれか1つに記載の方法。
【0077】
[63]第1の標的核酸配列は、TRAC;TRBV;ベータ-2ミクログロブリン(B2M);PD1;PD-L1;CTLA-4;LAG-3;TIGIT;TIM3;HLA-E;HLA-A;HLA-B;HLA-C;HLA-DRA;ADAM17;BTLA;CD160;SIGLEC10;2B4;LAIR1;CD52;CD96;VSIR;VISTA;KIR2DL1;KIR2DL2;KIR2DL3;CEACAM1;CBLB;CISH;IL-1R8;AHR;アデノシン2A受容体;GMCSF;VISTA;CII2A;およびNKG2Aからなる群から選択されるタンパク質をコードする標的遺伝子内に存在している、[52]~[62]のいずれか1つに記載の方法。
【0078】
[64]CAR発現ベクターは、細胞外リガンド結合ドメインを含むCARをコードする、[59]~[61]のいずれか1つに記載の方法。
【0079】
[65]CAR発現ベクターは、ヒンジ領域、膜貫通領域、および1つまたはそれ以上の細胞内シグナル伝達領域をさらにコードする、[64]に記載の方法。
【0080】
[66]細胞外リガンド結合ドメインは、免疫グロブリン一本鎖可変断片(scFv)を含む、[64]または「65]に記載の方法。
【0081】
[67]scFvは、CD37、CD38、CD47、CD73、CD4、CS1、PD-L1、NGFR、ENPP3、PSCA、CD79B、TACI、VEGFR2、B7-H3、B7-H6、B-細胞成熟抗原(BCMA)、CD123、CD138、CD171/L1CAM、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD70、CD371、CEA、クローディン18.1、クローディン18.2、CSPG4、EFGRvIII、EpCAM、EphA2、上皮増殖因子受容体、ErbB、ErbB2(HER2)、FAP、FRα、GD2、GD3、グリピカン3、IL-11Rα、IL-13Rα2、IL13受容体アルファ、ルイスY/LeY、メソテリン、MUC1、MUC16、NKG2Dリガンド、PD1、PSMA、ROR-1、SLAMF7、TAG72、ULBPおよびMICA/Bタンパク質、VEGF2、ならびにWT1からなる群から選択される細胞標的に結合し得る、[66]に記載の方法。
【0082】
[68]scFvは、BCMA、CD19、CD20、CD22、CD47、CD371、ROR-1、EphA2、MUC16、グリピカン3、PSCA、およびクローディン18.2からなる群から選択される細胞標的に結合し得る、[67]に記載の方法。
【0083】
[69]scFvは、BCMAに結合し得る、[68]に記載の方法。
【0084】
[70]scFvは、CD371に結合し得る、[68]に記載の方法。
【0085】
[71]細胞中の第2の標的核酸配列と、触媒的に活性なCas12タンパク質および第2のCRISPRガイド分子を含む核タンパク質複合体とを接触させることであって、第2のCRISPRガイド分子は、第1のCRISPRガイド分子とは異なる標的核酸配列に結合し得る[1]~[35]のいずれか1つに記載のCRSIPRガイド分子を含み、第2のCRISPRガイド分子のターゲティング領域は、第2の標的核酸配列にハイブリダイズし得、核タンパク質複合体は、第2の標的核酸配列を切断し得ることをさらに含む、[57]~[62]および[64]~[70]のいずれか1つに記載の方法。
【0086】
[72]前記第1および第2の標的核酸配列は、それぞれ独立して、TRAC;TRBVタンパク質;ベータ-2ミクログロブリン(B2M);PD1;PD-L1;CTLA-4;LAG-3;TIGIT;TIM3;HLA-E;HLA-A;HLA-B;HLA-C;HLA-DRA;ADAM17;BTLA;CD160;SIGLEC10;2B4;LAIR1;CD52;CD96;VSIR;VISTA;KIR2DL1;KIR2DL2;KIR2DL3;CEACAM1;CBLB;CISH;IL-1R8;AHR;アデノシン2A受容体;GMCSF;VISTA;CII2A;およびNKG2Aからなる群から選択されるタンパク質をコードする標的遺伝子内に存在している、[71]に記載の方法。
【0087】
[73]ドナーポリヌクレオチドは、CAR発現ベクターを含み、CARは、細胞外リガンド結合ドメインを含み、細胞外リガンド結合ドメインは、scFvを含む、[71]または[72]に記載の方法。
【0088】
[74]scFvは、BCMAに結合し得る、[73]に記載の方法。
【0089】
[75]scFvは、CD371に結合し得る、[73]に記載の方法。
【0090】
[76]前記第1の標的核酸配列は、TRACタンパク質をコードする遺伝子内に存在しており、第2の標的核酸配列は、PD1タンパク質をコードする遺伝子内に存在している、[72]に記載の方法。
【0091】
[77]前記第1の標的核酸配列は、TRACタンパク質をコードする遺伝子内に存在しており、前記第2の標的核酸配列は、B2Mタンパク質をコードする遺伝子内に存在している、[72]に記載の方法。
【0092】
[78]細胞に、B2M-HLA-E融合構築物を含む第2のドナーポリヌクレオチドを提供することであって、B2M-HLA-E融合構築物を含む第2のドナーポリヌクレオチドの少なくとも一部は、第2の標的核酸配列の切断部位で挿入されており、B2M-HLA-E融合構築物は、N末端からC末端へと、B2M分泌シグナル、HLA-Gペプチドシグナル配列、第1のリンカー配列、B2M配列、第2のリンカー配列、およびHLA-E配列を含む融合タンパク質をコードすることをさらに含む[77]に記載の方法。
【0093】
[79]抗BCMA scFvは、配列番号474のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号475のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、[69]または[74]に記載の方法。
【0094】
[80]scFvは、VHとVLとの間にリンカーをさらに含む、[79]に記載の方法。
【0095】
[81]リンカーは、配列番号476のアミノ酸配列を含む、[80]に記載の方法。
【0096】
[82]前記scFvは、配列番号477のアミノ酸配列を含む、[81]に記載の方法。
【0097】
[83]CARは、VHおよびVLを含むscFv;膜貫通ドメイン;共刺激ドメイン;および活性化ドメインを含む、[64]または[73]に記載の方法。
【0098】
[84]膜貫通ドメインは、T細胞受容体α鎖、T細胞受容体β鎖、CD3ζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、ICOS、CD154、またはGITRに由来する膜貫通ドメインである、[83]に記載の方法。
【0099】
[85]膜貫通ドメインは、CD8に由来する膜貫通ドメインを含む、[84]に記載の方法。
【0100】
[86]共刺激ドメインは、CD28、4-1BB、GITR、ICOS-1、CD27、OX-40、またはDAP10に由来する共刺激ドメインである、[83]に記載の方法。
【0101】
[87]共刺激ドメインは、4-1BB共刺激ドメインを含む、[86]に記載の方法。
【0102】
[88]活性化ドメインは、CD3ζ活性化ドメインを含む、[83]に記載の方法。
【0103】
[89]膜貫通ドメインは、CD8に由来する膜貫通ドメインを含み、共刺激ドメインは、4-1BB共刺激ドメインを含み、活性化ドメインは、CD3ζ活性化ドメインを含む、[83]に記載の方法。
【0104】
[90]VHは、配列番号474のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号475のアミノ酸配列を含む、[83]に記載の方法。
【0105】
[91]前記CAR発現ベクター中のCARをコードするポリヌクレオチド配列は、5’末端においてリーダー配列を有する、[59]~[62]、[64]~[70]、[73]~[75]、および[78]~[90]のいずれか1つに記載の方法。
【0106】
[92]リーダー配列は、配列番号478の核酸配列を含む、[91]に記載の方法。
【0107】
[93]CAR発現ベクターは、プロモーターを含む、[91]に記載の方法。
【0108】
[94]プロモーターは、MNDプロモーターを含む、[93]に記載の方法。
【0109】
[95]Cas12タンパク質は、C末端において、配列番号479~490からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する、リンカーおよびNLS含有配列を含む、[52]~[94]のいずれか1つに記載の方法。
【0110】
[96]リンカーおよびNLS含有配列は、配列番号483、485、487、および489からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、[95]に記載の方法。
【0111】
[97][57]~[96]のいずれか1つに記載の方法により製造された細胞。
【0112】
[98][59]~[96]のいずれか1つに記載の方法により製造されたCAR-T細胞。
【0113】
[99]同種CAR-T細胞である、[98]に記載のCAR-T細胞。
【0114】
[100]自己CAR-T細胞である、[98]に記載のCAR-T細胞。
【0115】
[101]CAR-T細胞を製造する方法であって、細胞としてTリンパ球を使用して、[59]~[96]のいずれか1つに記載の方法を実施することを含む方法。
【0116】
[102]養子細胞療法の方法であって、それを必要とする対象に、[57]~[96]のいずれか1つに記載の方法により製造された細胞を投与することを含む方法。
【0117】
[103]養子細胞療法の方法であって、それを必要とする対象に、[59]~[96]のいずれか1つに記載の方法により製造されたCAR-T細胞を投与することを含む方法。
【0118】
[104]BCMA陽性がん細胞を死滅させる方法であって、BCMA陽性がん細胞と、[69]、[74]、および[90]のいずれか1つに記載の方法により製造されたCAR-T細胞とを接触させることを含む方法。
【0119】
[105]BCMA陽性がん細胞は、多発性骨髄腫がん細胞を含む、[104]に記載の方法。
【0120】
[106]多発性骨髄腫がん細胞は、ヒト細胞を含む、[105]に記載の方法。
【0121】
[107]接触させることは、腫瘍内である、[104]に記載の方法。
【0122】
[108]CAR発現細胞を製造する方法であって、細胞中の第1の標的核酸と、触媒的に活性なCas12タンパク質および第1のCRSIPRガイド分子を含む核タンパク質複合体とを接触させることであって、第1のCRISPRガイド分子は、[1]~[35]のいずれか1つに記載のCRISPRガイド分子を含み、第1のCRISPRガイド分子のターゲティング領域は、第1の標的核酸配列にハイブリダイズし得、核タンパク質複合体は、第1の標的核酸配列を切断し得ること;同一細胞中の第2の標的核酸配列と、触媒的に活性なCas12タンパク質および第2のCRISPRガイド分子を含む核タンパク質複合体とを接触させることであって、第2のCRISPRガイド分子は、第1のCRISPRガイド分子とは異なる標的核酸配列に結合し得る[1]~[35]のいずれか1つに記載のCRISPRガイド分子を含み、第2のCRISPRガイド分子のターゲティング領域は、第2の標的核酸配列にハイブリダイズし得、核タンパク質複合体は、第2の標的核酸配列を切断し得ること;および前記細胞に、CAR発現ベクターを含むドナーポリヌクレオチドを提供することであって、前記CAR発現ベクターを含むドナーポリヌクレオチドの少なくとも一部は、前記第1の標的核酸配列中の切断部位で挿入さ得、CARは、細胞外リガンド結合ドメインを含むことを含む方法。
【0123】
[109]CAR発現ベクターを含むドナーポリヌクレオチドを、ウイルスベクターを使用して細胞に導入する、[108]に記載の方法。
【0124】
[110]CAR発現ベクターは、ヒンジ領域、膜貫通領域、および1つまたはそれ以上の細胞内シグナル伝達領域をさらにコードする、[108]に記載の方法。
【0125】
[111]前記第1の標的核酸配列は、TRACタンパク質をコードする遺伝子内に存在しており、前記第2の標的核酸配列は、PD1タンパク質をコードする遺伝子内に存在している、[108]~[110]のいずれか1つに記載の方法。
【0126】
[112]前記第1の標的核酸配列は、TRACタンパク質をコードする遺伝子内に存在しており、前記第2の標的核酸配列は、B2Mタンパク質をコードする遺伝子内に存在している、[108]~[110]のいずれか1つに記載の方法。
【0127】
[113]細胞外リガンド結合ドメインは、免疫グロブリン一本鎖可変断片(scFv)を含む、[108]~[112]のいずれか1つに記載の方法。
【0128】
[114]scFvは、BCMAに結合し得る、[113]に記載の方法。
【0129】
[115]scFvは、CD371に結合し得る、[113]に記載の方法。
【0130】
[116]抗BCMA scFvは、配列番号474のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号475のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、[114]に記載の方法。
【0131】
[117]scFvは、VHとVLとの間にリンカーをさらに含む、[116]に記載の方法。
【0132】
[118]リンカーは、配列番号476のアミノ酸配列を含む、[117]に記載の方法。
【0133】
[119]前記scFvは、配列番号477のアミノ酸配列を含む、[114]に記載の方法。
【0134】
[120]前記細胞に、B2M-HLA-E融合構築物を含む第2のドナーポリヌクレオチドを提供することであって、B2M-HLA-E融合構築物を含む第2のドナーポリヌクレオチドの少なくとも一部は、第2の標的核酸配列の切断部位で挿入され得、B2M-HLA-E融合構築物は、N末端からC末端へと、B2M分泌シグナル、HLA-Gペプチドシグナル配列、第1のリンカー配列、B2M配列、第2のリンカー配列、およびHLA-E配列を含む融合タンパク質をコードすることをさらに含む[108]~[119]のいずれか1つに記載の方法。
【0135】
[121]CARは、VHおよびVLを含むscFv;膜貫通ドメイン;共刺激ドメイン;および活性化ドメインを含む、[108]~[120]のいずれか1つに記載の方法。
【0136】
[122]膜貫通ドメインは、T細胞受容体α鎖、T細胞受容体β鎖、CD3ζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、ICOS、CD154、またはGITRに由来する膜貫通ドメインを含む、[121]に記載の方法。
【0137】
[123]膜貫通ドメインは、CD8に由来する膜貫通ドメインを含む、[122]に記載の方法。
【0138】
[124]共刺激ドメインは、CD28、4-1BB、GITR、ICOS-1、CD27、OX-40、またはDAP10に由来する共刺激ドメインを含む、[121]に記載の方法。
【0139】
[125]共刺激ドメインは、4-1BB共刺激ドメインを含む、[124]に記載の方法。
【0140】
[126]活性化ドメインは、CD3ζ活性化ドメインを含む、[121]に記載の方法。
【0141】
[127]膜貫通ドメインは、CD8に由来する膜貫通ドメインを含み、共刺激ドメインは、4-1BB共刺激ドメインを含み、活性化ドメインは、CD3ζ活性化ドメインを含む、[121]に記載の方法。
【0142】
[128]CAR発現細胞は、CAR-T細胞である、[108]~[127]のいずれか1つに記載の方法。
【0143】
[129]CAR-T細胞は、同種CAR-T細胞である、[128]に記載の方法。
【0144】
[130]CAT-T細胞は、自己CAR-T細胞である、[128]に記載の方法。
【0145】
[131]第1のCRISPRガイド分子と複合体化したCas12タンパク質、および/または第2のCRISPRガイド分子と複合体化したCas12タンパク質は、C末端において、配列番号479~490からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する、リンカーおよびNLS含有配列を含む、[108]~[130]のいずれか1つに記載の方法。
【0146】
[132]第1のCRISPRガイド分子と複合体化したCas12タンパク質、および/または第2のCRISPRガイド分子と複合体化したCas12タンパク質は、配列番号483、485、487、および489からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、[131]に記載の方法。
【0147】
[133]第2のドナーポリヌクレオチドは、B2M-HLA-E融合構築物のN末端において、P2A配列をさらに含む、[78]に記載の方法。
【0148】
[134]第2のドナーポリヌクレオチドは、B2M-HLA-E融合構築物配列のN末端において、P2A配列をさらに含む、[120]に記載の方法。
【0149】
一部の実施形態では、本発明は、CRISPRガイド分子であって、標的核酸配列に結合可能なターゲティング領域と、リボヌクレオチドの代わりに少なくとも1つのデオキシリボヌクレオチドを含むRNA配列UAAUUUCUACUCUUGUAGAUを含む活性化領域とを含み、活性化領域は、Cas12タンパク質と核タンパク質複合体を形成し得る、CRISPRガイド分子である。一部の実施形態では、活性化領域中の1、3、7、10、12、14、15、16、17、18、および19位のうちの1箇所またはそれ以上(例えば10箇所以下)は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む。一部の実施形態では、この分子は、イノシン、デオキシイノシン、デオキシウラシル、キサントシン、C3スペーサー、5-メチルdC、5-ヒドロキシブチル-2’-デオキシウリジン、5-ニトロインドール、5-メチル イソ-デオキシシトシン、イソ デオキシグアノシン、デオキシウリジン、イソ-デオキシシチジン、および脱塩基部位を含む塩基改変、ならびにホスホロチオエート改変を含む骨格改変からなる群から選択される1つまたはそれ以上の化学的改変を含む。
【0150】
一部の実施形態では、CRISPRガイドのターゲティング領域は、B2M遺伝子を標的としており、かつRNA配列AGUGGGGGUGAAUUCAGUGUを含み、場合により、この配列中の塩基の少なくとも1つは、塩基類似体または脱塩基部位に置き換えられている。一部の実施形態では、ターゲティング領域中の1、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、および20位のうちの1箇所またはそれ以上(例えば5箇所以下)は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む。一部の実施形態では、ターゲティング領域は、配列番号51~133から選択される配列にハイブリダイズし得る。一部の実施形態では、CRISPRガイドは、配列番号212~231、275~315、および331~350から選択される配列を含む。一部の実施形態では、CRISPRガイドは、配列番号416の配列を含む。
【0151】
一部の実施形態では、CRISPRガイドのターゲティング領域は、TRAC遺伝子を標的としており、かつRNA配列GAGUCUCUCAGCUGGUACACを含み、場合により、この配列中の塩基の少なくとも1つは、塩基類似体または脱塩基部位に置き換えられている。一部の実施形態では、ターゲティング領域中の1、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、および20位のうちの1箇所またはそれ以上(例えば5箇所以下)は、デオキシリボヌクレオチド塩基を含む。一部の実施形態では、ターゲティング領域は、配列番号15~20から選択される配列にハイブリダイズし得る。一部の実施形態では、CRISPRガイドは、配列番号233~252、317~329、491~492、および508から選択される配列を含む。一部の実施形態では、CRISPRガイド分子は、化学的改変をさらに含み、かつ配列番号512~517から選択される配列を含む。一部の実施形態では、CRISPRガイド分子は、配列番号415の配列を含む。
【0152】
一部の実施形態では、ターゲティング領域は、CISH遺伝子を標的としており、かつ配列番号157~165から選択される配列にハイブリダイズし得る。一部の実施形態では、CRISPRガイドは、配列番号509および519~529から選択される配列を含む。
【0153】
一部の実施形態では、ターゲティング領域は、PDCD1遺伝子を標的としており、かつ配列番号135~155から選択される配列にハイブリダイズし得る。
【0154】
一部の実施形態では、ターゲティング領域は、CBLB遺伝子を標的としており、かつ配列番号167~189から選択される配列にハイブリダイズし得る。一部の実施形態では、CRISPRガイドは、配列番号510の配列を含む。
【0155】
一部の実施形態では、本発明は、上記で説明されているCRISPRガイド分子と、Cas12タンパク質とを含むCRISPR核酸/タンパク質組成物である。一部の実施形態では、Cas12タンパク質は、Cas12aタンパク質であって、C末端において、リンカー、および配列番号479~490からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核局在化シグナル(NLS)含有配列を含むCas12aタンパク質である。
【0156】
一部の実施形態では、本発明は、上記で説明されているCRISPR核酸/タンパク質組成物を含む細胞であって、リンパ球、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、T細胞受容体(TCR)細胞、TCR操作CAR-T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、CAR TIL、樹状細胞(DC)、CAR-DC、マクロファージ、CAR-マクロファージ(CAR-M)、ナチュラルキラー(NK)細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、iPSC細胞から分化した細胞、またはCAR-NK細胞である細胞である。
【0157】
一部の実施形態では、本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)発現細胞を製造する方法であって、細胞中におけるTRAC配列を含む第1の標的核酸と、触媒的に活性なCas12タンパク質、ならびに第1の標的核酸配列に結合可能なターゲティング領域;およびCas12タンパク質と核タンパク質複合体を形成可能な活性化領域を有する第1のCRISPRガイド分子を含む核タンパク質複合体とを接触させることであって、前記CRISPRガイド分子は、活性化領域、ターゲティング領域、または両方中に、リボヌクレオチド塩基、および少なくとも1つのデオキシリボヌクレオチド塩基を含み、核タンパク質複合体は、第1の標的核酸配列を切断し得ること;同一の細胞中におけるB2M配列を含む第2の標的核酸配列と、触媒的に活性なCas12タンパク質、ならびに第2の標的核酸配列に結合可能なターゲティング領域、およびCas12タンパク質と核タンパク質複合体を形成可能な活性化領域を有する第2のCRISPRガイド分子を含む核タンパク質複合体とを接触させることであって、前記CRISPRガイド分子は、活性化領域、ターゲティング領域、または両方中に、リボヌクレオチド塩基、および少なくとも1つのデオキシリボヌクレオチド塩基を含み、核タンパク質複合体は、第2の標的核酸配列を切断し得ること;scFv、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、および活性化ドメインを含むCARをコードする第1のドナーポリヌクレオチドを準備することであって、CARは、第1の標的核酸配列中の切断部位に挿入され得ること;B2M分泌シグナル、HLA-Gペプチドシグナル配列、第1のリンカー配列、B2M配列、第2のリンカー配列、およびHLA-E配列を含むB2M-HLA-E融合構築物をコードする第2のドナーポリヌクレオチドを準備することであって、B2M-HLA-E融合構築物は、第2の標的核酸配列中の切断部位に挿入され得ること;第1の標的核酸配列を切断し、切断部位に第1のドナーポリヌクレオチドの少なくとも一部を挿入すること;および第2の標的核酸配列を切断し、切断部位に第2のドナーポリヌクレオチドの少なくとも一部を挿入することを含む方法である。一部の実施形態では、第2のドナーポリヌクレオチドは、B2M-HLA-E融合構築物の5’末端においてP2A配列をさらに含む。一部の実施形態では、第1のドナーポリヌクレオチドは、配列番号413を含む。一部の実施形態では、第2のドナーポリヌクレオチドは、配列番号414を含む。
【0158】
一部の実施形態では、CAR中のscFvは、CD37、CD38、CD47、CD73、CD4、CS1、PD-L1、NGFR、ENPP3、PSCA、CD79B、TACI、VEGFR2、B7-H3、B7-H6、B-細胞成熟抗原(BCMA)、CD123、CD138、CD171/L1CAM、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD70、CD371、CEA、クローディン18.1、クローディン18.2、CSPG4、EFGRvIII、EpCAM、EphA2、上皮増殖因子受容体、ErbB、ErbB2(HER2)、FAP、FRα、GD2、GD3、グリピカン3、IL-11Rα、IL-13Rα2、IL13受容体アルファ、ルイスY/LeY、メソテリン、MUC1、MUC16、NKG2Dリガンド、PD1、PSMA、ROR-1、SLAMF7、TAG72、ULBPおよびMICA/Bタンパク質、VEGF2、ならびにWT1からなる群から選択される細胞標的に結合し得る。一部の実施形態では、scFvは、BCMAに結合し得、配列番号474のアミノ酸配列を含む第1の可変領域、配列番号475のアミノ酸配列を含む第2の可変領域、および配列番号476のアミノ酸配列を含む、第1の可変領域と第2の可変領域との間のリンカーを含む。一部の実施形態では、scFは、配列番号477のアミノ酸配列を含む。
【0159】
一部の実施形態では、CARの膜貫通ドメインは、T細胞受容体α鎖、T細胞受容体β鎖、CD3ζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、ICOS、CD154、またはGITRに由来する。一部の実施形態では、CARの共刺激ドメインは、CD28、4-1BB、GITR、ICOS-1、CD27、OX-40、またはDAP 10に由来する。一部の実施形態では、CARは、CD8、4-1BB共刺激ドメイン、およびCD3ζ活性化ドメインに由来する膜貫通ドメインを含む。一部の実施形態では、CAR配列を含むベクターは、配列番号478の核酸配列を有するリーダー配列を含む。
【0160】
一部の実施形態では、本方法で使用される触媒的に活性なCas12タンパク質は、C末端において、リンカー、および配列番号479~490からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核局在化シグナル(NLS)含有配列を含む。
【0161】
一部の実施形態では、本方法は、同一の細胞中における第3の標的核酸配列と、触媒的に活性なCas12タンパク質、ならびに第3の標的核酸配列に結合可能なターゲティング領域、およびCas12タンパク質と核タンパク質複合体を形成可能な活性化領域を有する第3のCRISPRガイド分子を含む核タンパク質複合体とを接触させることであって、前記CRISPRガイド分子は、活性化領域、ターゲティング領域、または両方中に、リボヌクレオチド塩基、および少なくとも1つのデオキシリボヌクレオチド塩基を含み、核タンパク質複合体は、第3の標的核酸配列を切断し得ること;第3の標的核酸配列を切断し、切断部位で第3の標的核酸配列から1つまたはそれ以上のヌクレオチドを欠失させることであって、第3の標的核酸配列は、PDCD遺伝子kCISH遺伝子、およびCBLB遺伝子から選択されることを含む。
【0162】
一部の実施形態では、CAR発現細胞は、T細胞リンパ球から産生された同種CAR-T細胞または自己CAR-T細胞である。
【0163】
一部の実施形態では、本発明は、上記で説明されている方法により製造されたCAR発現細胞であって、リンパ球、CAR-T細胞、TCR細胞、TCR操作CAR-T細胞、TIL、CAR TIL、樹状細胞、CAR-DC、マクロファージ、CAR-M、iPSC細胞、iPSC細胞から分化した細胞、NK細胞、またはCAR-NK細胞から選択される細胞である。
【0164】
一部の実施形態では、本発明は、適応細胞療法の方法であって、それを必要とする対象に、上記で説明されているCAR発現細胞を投与することを含む方法である。一部の実施形態では、この適応細胞療法は、BCMA陽性がん細胞(例えば、多発性骨髄腫がん細胞)を死滅させることを含む。
【0165】
参照による組入れ
本明細書で引用されている全ての特許、刊行物、および特許出願は、各個々の特許、刊行物、または特許出願が、全ての目的のために、その全体を参照によって組み入れるように具体的にかつ個々に示されていたかのように、参照によって本明細書に組み入れる。
【0166】
本開示の特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている。本開示の特徴および利点のよりよい理解は、本開示の原理が利用されている例示的な実施形態を説明する下記の詳細な説明と、添付の図面とを参照することにより得られるだろう。図は、比例的に描写されておらず、縮尺通りでもない。標識の位置は、おおよそのものである。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【
図2】Cas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体による標的ポリヌクレオチドの切断を示す図である。
【
図3】
図3A~
図3Iは、Cas12 chRDNAガイドでの使用のための様々な標準および非標準のヌクレオチドを示す図である。
【
図4】Cas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体による標的ポリヌクレオチドの切断を示す図である。
【
図5】Cas12a crRNAガイドを示す図である。
【
図6】活性化領域および標的結合配列中にDNA塩基を含むCas12a chRDNAガイドを示す図である。
【
図7】活性化領域および標的結合配列中にDNA塩基および化学的に改変された核酸を含むCas12a chRDNAガイドを示す図である。
【
図8】Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体の形成および標的ポリヌクレオチドの結合を示す図である。
【
図9】Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体による標的ポリヌクレオチドにおける挿入または欠失(インデル)の発生を示す図である。
【
図10】Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体による標的ポリヌクレオチドにおけるドナーポリヌクレオチド配列の挿入を示す図である。
【
図11】Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体による標的ポリヌクレオチドのニッキングを示す図である。
【
図12】2つのCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体による標的ポリヌクレオチドのタンデムニッキング、および標的ポリヌクレオチドにおけるドナーポリヌクレオチド配列の挿入を示す図である。
【
図13】標的結合配列中に個々のDNA塩基を有するCas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体の平均正規化編集率を示す図である。
【
図14】活性化領域中に個々のDNA塩基を有するCas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体の正規化編集率を示す図である。
【
図15】
図15Aおよび
図15Bは、Cas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体を使用して生成されたCAR-T細胞の表現型および細胞傷害プロファイルを示すグラフである。
【
図16】
図16Aおよび
図16Bは、ポリペプチドリンカーおよび核局在化配列(NLS)配置が異なるCas12aガイド/核タンパク質複合体の編集活性を示すグラフである。
【
図17】異なるポリペプチドリンカーおよび核局在化配列(NLS)配置で複数の遺伝子を同時に標的とした場合でのCas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体の編集活性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0168】
本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態を説明する目的のみのものであり、限定することは意図されていないことを理解しなければならない。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、別途文脈が明確に示さない限り、複数の指示対象を含む。そのため、例えば、「ポリヌクレオチド(a polynucleotide)」への言及は、1つまたはそれ以上のポリヌクレオチドを含み、「ベクター(a vector)」への言及は、1つまたはそれ以上のベクターを含む。
【0169】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者に一般に理解されているのと同じ意味を有する。本開示では、本明細書で説明されているものと同様のまたは等価の他の方法および材料が有用であり得るが、本明細書では、好ましい材料および方法を説明する。
【0170】
「SITE-Seq(登録商標)」および「SITE-Seq(登録商標)アッセイ」という用語は、単一ガイドRNA(sgRNA)でプログラムされたCas9を使用して生成されたゲノムDNA内の切断部位の配列を同定する生化学的方法を指す。このアッセイは、Cameron,P.,他、(2017).Mapping the genomic landscape of CRISPR-Cas9 cleavage.Nature Methods、14(6)、600~606頁。https://doi.org/10.1038/nmeth.4284)で完全に説明されている。
【0171】
本明細書の教示を考慮して、当業者は、例えば下記の標準的なテキストにより教示されるように、免疫学、生化学、化学、分子生物学、微生物学、細胞生物学、ゲノミクス、および組換えポリヌクレオチドの従来の技術を適用し得る:Abbas他(Cellular and Molecular Immunology、2017、第9版、Elsevier、ISBN 978-0323479783);Butterfield他(Cancer Immunotherapy Principles and Practice、2017、第1版、Demos Medical、ISBN 978-1620700976);Kenneth Murphy(Janeway’s Immunobiology、2016、第9版、Garland Science、ISBN 978-0815345053);Stevens他(ClinicalImmunology and Serology:A Laboratory Perspective、2016、第4版、Davis Company、ISBN 978-0803644663);E.A.Greenfield(Antibodies:A Laboratory Manual、2014、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ISBN 978-1-936113-81-1);R.I.Freshney(Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique and Specialized Applications、2016,第7版、Wiley-Blackwell、ISBN 978-1118873656);C.A.Pinkert(Transgenic Animal Technology、第3版:A Laboratory Handbook、2014、Elsevier、ISBN 978-0124104907);H.Hedrich(The Laboratory Mouse、2012、第2版、Academic Press、ISBN 978-0123820082);Behringer他(Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual、2013、第4版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ISBN 978-1936113019);McPherson他(PCR 2:A Practical Approach、1995、IRL Press、ISBN 978-0199634248);J.M.Walker(Methods in Molecular Biology(Series)、Humana Press、ISSN 1064-3745);Rio他(RNA:A Laboratory Manual、2010、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ISBN 978-0879698911);Methods in Enzymology(Series)、Academic Press;Green他(Molecular Cloning:A Laboratory Manual、2012、第4版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ISBN 978-1605500560);G.T.Hermanson(Bioconjugate Techniques、2013、第3版、Academic Press、ISBN 978-0123822390)。
【0172】
規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列(Clustered regularly interspaced short palindromic repeat)(CRISPR)および関連するCRISPR関連タンパク質(Casタンパク質)は、CRISPR-Casシステムを構成する。CRISPR-Casシステムの分類は、何度も繰り返されている。Makarova他(Nat.Rev.Microbiol.、2020、18:67~83頁)は、CRISPR-Casシステムの個々のタイプおよびサブタイプに特異的なシグネチャーcas遺伝子を考慮した分類体系を提案した。この分類はまた、複数の共有Casタンパク質間の配列類似性、最も保存されたCasタンパク質の系統発生、遺伝子組織、およびCRISPRアレイの構造も考慮していた。このアプローチは、CRISPR-Casシステムを下記の2つの異なるクラス:クラス1およびクラス2に分割する分類スキームを提供した。
【0173】
クラス2、V型システムでは、crRNAおよび標的の結合には、標的核酸切断と同様に、Cas12が関与する。例えば、Cas12aのRuvC様ヌクレアーゼドメインは、標的核酸の両方の鎖をスタガード配置で切断し、5’オーバーハングを生じるが、これは、Cas9切断により生成された平滑末端とは対照的である。この5’オーバーハングにより、相同組換え法によるDNAの挿入が容易になる場合がある。
【0174】
V型 crRNAならびに標的結合および切断に関連する他のタンパク質として、Cas12b(以前はC2c1)およびCas12c(以前はC2c3)が挙げられる。Cas12bタンパク質およびCas12cタンパク質は、CRISPR クラス2 II型 Cas9タンパク質およびCRISPR クラス2 V型 Cas12aタンパク質と同様の長さであり、約1,100個のアミノ酸~約1,500個のアミノ酸の範囲である。C2c1タンパク質およびC2c3タンパク質はまた、RuvC様ヌクレアーゼドメインも含み、Cas12aと類似する構造を有する。C2c1タンパク質は、標的結合および切断に関してcrRNAおよびtracrRNAを必要とするという点でCas9タンパク質と類似しているが、最適な切断温度は50℃である。C2c1タンパク質は、ATリッチPAMを標的としており、これは、Cas12aと同様に、標的配列の5’に存在している。例えば、Shmakov他(Molecular Cell、2015、60(3):385~397頁)を参照されたい。
【0175】
CRISPR V型サブタイプは、Cas12タンパク質を含み、幅広い配列およびサイズの多様性を示すが、Cas12サブタイプは、IS605様トランスポゾンによりコードされるTnpBヌクレアーゼからの共通の進化的起源を共有する。Cas12タンパク質の低い配列類似性、および複数の独立した組換え事象を通じた進化の可能性に起因して、それぞれのサブタイプへのCas12タンパク質の分類により、複数の命名規則がもたらされた。表1は、V型 Cas12タンパク質の分類および名称、ならびにそのおおよそのサイズ、ガイド要件、好ましい標的ポリヌクレオチド、および代表的な起源生物を表す。
【0176】
【0177】
Cas12相同体を、当業者に公知の配列類似性検索法を使用して同定し得る。典型的には、Cas12タンパク質は、コグネートCas12ガイドと相互作用して、標的核酸配列に結合可能なCas12ガイド/核タンパク質複合体を形成し得る。本開示の一部の実施形態では、Cas12タンパク質またはその相同体は、Cas12aタンパク質またはその相同体である。
【0178】
Cas12aタンパク質としては、パルクバクテリア・バクテリウムGWC2011_GWC2_44_17(PbCpf1)、ラクノスピラセ・バクテリウムMC2017(Lb3Cpf1)、ブチリビブリオ・プロテオクラスチクス(BpCpf1)、ペレグリニバクテリア・バクテリウムGW2011_GWA_33_10(PeCpf1)、アシダミノコッカス種(Acidaminococcus spp.)BV3L6(AsCpf1)、ポルフィロモナス・マカカエ(PmCpf1)、ラクノスピラセ・バクテリウムND2006(LbCpf1)、ポルフィロモナス・クレビオリカニス(PcCpf1)、プレボテラ・ディシエンス(PdCpf1)、モラクセラ・ボーボクリ237(MbCpf1)、スミセラ種(Smithella spp.)SC_K08D17(SsCpf1)、レプトスピラ・イナダイ(LiCpf1)、ラクノスピラセ・バクテリウムMA2020(Lb2Cpf1)、フランシセラ・ノビサイダU112(FnCpf1)、カンジダツス・メタノプラスマ・テルミツム(CMtCpf1)、およびユーバクテリウム・エリジェンス(EeCpf1)由来のCas12aが挙げられるが、これらに限定されない。
【0179】
V型システムでは、核酸標的配列の結合には、核酸標的配列の切断と同様に、典型的には、Cas12タンパク質およびcrRNAが関与する。V型のシステムでは、Cas12タンパク質のRuvC様ヌクレアーゼドメインが、核酸標的配列の両方の鎖を順次切断し(Swarts他(Mol.Cell、2017、66:221~233頁)を参照されたい)、5’オーバーハングを生じるが、これは、Cas9タンパク質切断により生成された平滑末端とは対照的である。
【0180】
V型システムのCas12タンパク質切断活性は、tracrRNAから独立し得(例えばV-A型);一部のV型システムは、内部二重鎖を形成するステム-ループ構造を有する単一のcrRNAのみを必要とする。Cas12タンパク質は、ステムループと、核酸標的配列にハイブリダイズする、ステムループに隣接する配列(特に、スペーサー配列の5’ヌクレオチド)とを認識することにより、配列特異的におよび構造特異的にcrRNAに結合する。このステム-ループ構造は、典型的には、15~22ヌクレオチド長の範囲である。このステム-ループ二重鎖を破壊する置換により、切断活性が消失するが、ステム-ループ二重鎖を破壊しない他の置換では、切断活性は消失しない。ある特定のV型システム(例えば、V-F1、V-G、V-C、V-E(CasX)、V-K、およびV-B型)は、crRNAとtracrRNAとの間でのハイブリダイゼーションを必要とする。Yan他(Science、2019、363(6422):88~91頁)を参照されたい。
【0181】
「ガイド」および「ガイドポリヌクレオチド」は、本明細書で使用される場合、Casタンパク質と核タンパク質複合体を形成する1つまたはそれ以上のポリヌクレオチドを指しており、この核タンパク質複合体は、ポリヌクレオチド中の核酸標的配列に(核酸標的配列を含まないポリヌクレオチドと比較して)優先的に結合する。そのようなガイドは、下記を含み得る:リボヌクレオチド塩基(例えばRNA)、デオキシリボヌクレオチド塩基(例えばDNA)、リボヌクレオチド塩基とデオキシリボヌクレオチド塩基との組合わせ(例えばRNA/DNA)、ヌクレオチド類似体、改変ヌクレオチド、および同類のもの、ならびに合成の、天然に存在する、および天然に存在しない改変骨格残基または連結を含み得る。多くのそのようなガイドが公知であり、例えば、限定されないが、単一ガイドRNA(例えば、小型のおよび切頭型の単一ガイドRNAを含む)、crNA、二重ガイドRNA、例えば、限定されないが、crRNA/tracrRNA分子、ならびに同類のものであり、これらの使用は、特定のCasタンパク質に依存する。例えば、「V型CRISPR-Cas12会合ガイド」とは、コグネートCas12タンパク質と特異的に会合して核タンパク質複合体を形成するガイドである。
【0182】
本明細書で使用される場合、「CRISPRポリヌクレオチド」とは、ガイド分子の一部を含むポリヌクレオチド配列のことである。一部の実施形態では、CRISPRポリヌクレオチドは、ターゲティング領域および/または活性化領域を含む。
【0183】
ガイド分子に関して、「スペーサー」、「スペーサー配列」、「スペーサーエレメント」、または「ターゲティング領域」は、本明細書で使用される場合、標的核酸配列に特異的にハイブリダイズし得るポリヌクレオチド配列を指す。ターゲティング領域は、相補的な塩基対(即ち、対の塩基)間の水素結合により、標的核酸配列と相互作用する。ターゲティング領域は、選択された核酸標的配列に結合する。一部の実施形態では、標的配列は、インビトロ、エクスビボ(例えば、CAR-T細胞の生成における等)、またはインビボ(例えば、組成物を対象に直接投与する場合)のいずれにおいても、細胞のゲノム内の配列である。ガイド分子は、任意の標的配列を標的とするように選択された任意の配列を含み得るか、またはこの任意の配列からなり得る。例示的な標的配列として、標的ゲノムに固有のものが挙げられる。従って、ターゲティング領域は、核酸標的結合配列である。ターゲティング領域は、Cas12タンパク質の部位特異的結合および核酸分解切断の位置を決定する。ターゲティング領域に関する機能的な長さの可変性は、当該技術分野で公知である。
【0184】
本明細書で使用される場合、「活性化領域」という用語は、Cas12aポリペプチド等のCas12ポリペプチドと会合可能かまたは結合可能なポリヌクレオチドの一部を指す。
【0185】
本明細書で使用される場合、「脱塩基」、「脱塩基部位」、「脱塩基ヌクレオチド」、「脱プリン/脱ピリミジン部位」、および「AP部位」という用語は、互換的に使用され、ヌクレオチド配列においてプリン塩基またはピリミジン塩基を欠く部位を指す。ある特定の実施形態では、脱塩基部位は、デオキシリボース部位を含む。他の実施形態では、脱塩基部位は、リボース部位を含む。なおさらなる実施形態では、脱塩基部位は、改変骨格(例えば、ホスホロチオエート骨格またはモルホリノ骨格)を含む。脱塩基部位は、窒素塩基を含まないことから、DNAヌクレオチドまたはRNAヌクレオチドの相補的な窒素塩基と水素塩基対結合を形成しない。
【0186】
本明細書で使用される場合、「塩基類似体」、「非標準塩基」、および[化学的改変塩基」という用語は、DNAまたはRNAに存在している標準的なプリン塩基またはピリミジン塩基に構造的に類似している化合物を指す。塩基類似体は、DNAまたはRNAに天然に存在しているプリン塩基またはピリミジン塩基と比較した場合に、改変糖および/または改変核酸塩基を含み得る。一部の実施形態では、塩基類似体は、イノシンまたはデオキシイノシン例えば2’-デオキシイノシンである。他の実施形態では、塩基類似体は、2’-デオキシリボヌクレオシド、2’-リボヌクレオシド、2’-デオキシリボヌクレオチド、または2’-リボヌクレオチドであり、ここで、核酸塩基は、改変塩基(例えば、キサンチン、ウリジン、オキサニン(オキサノシン)、7-メチルグアノシン、ジヒドロウリジン、5-メチルシチジン、C3スペーサー、5-メチル dC、5-ヒドロキシブチニル-2’-デオキシウリジン、5-ニトロインドール、5-メチル イソ-デオキシシトシン、イソ デオキシグアノシン、デオキシウリジン、イソ デオキシシチジン、他の0-1プリン類似体、N-6-ヒドロキシルアミノプリン、ネブラリン、7-デアザ ヒポキサンチン、他の7-デアザプリン、および2-メチルプリン)を含む。一部の実施形態では、塩基類似体は、7-デアザ-2’-デオキシイノシン、2’-アザ-2’-デオキシイノシン、PNA-イノシン、モルホリノ-イノシン、LNA-イノシン、ホスホラミダイト-イノシン、2’-O-メトキシエチル-イノシン、および2’-OMe-イノシンからなる群から選択される。「塩基類似体」という用語はまた、例えば、2’-デオキシリボヌクレオシド、2’-リボヌクレオシド、2’-デオキシリボヌクレオチド、または2’-リボヌクレオチドも含み、ここで、核酸塩基は、置換ヒポキサンチンである。例えば、置換ヒポキサンチンを、ハロゲン、例えば、フッ素または塩素で置換し得る。一部の実施形態では、塩基類似体は、フルオロイノシンまたはクロロイノシンであり得、例えば、2-クロロイノシン、6-クロロイノシン、8-クロロイノシン、2-フルオロイノシン、6-フルオロイノシン、または8-フルオロイノシンであり得る。他の実施形態では、塩基類似体は、デオキシウリジンである。他の実施形態では、塩基類似体は、核酸模倣物(例えば、人口核酸およびゼノ核酸(XNA))である。
【0187】
本明細書で使用される場合、「CRISPRハイブリッドRNA/DNAガイド」(chRDNA)という用語は、ターゲティング領域を含むポリヌクレオチドガイド分子を指しており、ポリヌクレオチドは、このポリヌクレオチドに設計されたDNAを有するRNAを含む。本明細書の実施形態では、Cas12aガイドのcrRNA成分は、chRDNAである。
【0188】
本明細書で使用される場合、「Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体」という用語は、Cas12タンパク質と複合体化して核タンパク質複合体を形成しているchRDNAガイド分子を指しており、この核タンパク質複合体は、chRDNAガイド分子中に存在している核酸標的結合配列に相補的な核酸標的配列に部位特異的に結合し得る。本明細書で使用される場合、「Cas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体」という用語は、Cas12aタンパク質と複合体化して核タンパク質複合体を形成しているchRDNAガイド分子を指しており、この核タンパク質複合体は、chRDNAガイド分子中に存在している核酸標的結合配列に相補的な核酸標的配列に部位特異的に結合し得る。
【0189】
本明細書で使用される場合、「ステムエレメント」または「ステム構造」は、二本鎖領域を形成する核酸の2本の鎖(「ステムエレメント」)を指す。「ステム-ループエレメント」または「ステム-ループ構造」は、ある鎖の3’末端配列が、典型的には一本鎖ヌクレオチドのヌクレオチド配列(「ステム-ループエレメントヌクレオチド配列」)により、第2の鎖の5’末端配列に共有結合しているステム構造を指す。一部の実施形態では、ループエレメントは、約3~約20ヌクレオチド長の、好ましくは約4~約10ヌクレオチド長のループエレメントヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、ループエレメントヌクレオチド配列は、ループエレメントヌクレオチド配列内にステムエレメントを生じさせるために水素結合形成を介して相互作用しない不対核酸塩基の一本鎖ヌクレオチド配列である。本明細書中では、ステム-ループ構造を指すために「ヘアピンエレメント」という用語も使用されている。そのような構造は、当該技術分野では周知である。塩基対形成は、正確であり得るが、当該技術分野で公知であるように、ステムエレメントは、正確な塩基対形成を必要としていない。そのため、ステムエレメントは、1つまたはそれ以上の塩基ミスマッチまたは不対塩基を含んでいてもよい。ステム-ループエレメントは、シュードノット構造をさらに含んでいてもよい。
【0190】
「リンカーエレメントヌクレオチド配列」、「リンカーヌクレオチド配列」、および「リンカーポリヌクレオチド」は、本明細書では互換的に使用され、第1の核酸配列に共有結合的に付着した1つまたはそれ以上のヌクレオチドの配列(5’-リンカーヌクレオチド配列-第1の核酸配列-3’)を指す。一部の実施形態では、リンカーヌクレオチド配列は、2つの別個の核酸配列を接続して、単一のポリヌクレオチドを形成する(例えば、5’-第1の核酸配列-リンカーヌクレオチド配列-第2の核酸配列-3’)。リンカー配列の他の例としては、5’-第1の核酸配列-リンカーヌクレオチド配列-3’、および5’-リンカーヌクレオチド配列-第1の核酸配列-リンカーヌクレオチド配列-3’が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、リンカーエレメンヌクレオチド配列は、リンカーエレメントヌクレオチド配列内の二次構造(例えば、ステム-ループ構造)を生じさせるように水素結合形成を介して互いに相互作用しない不対核酸塩基の一本鎖ヌクレオチド配列であり得る。一部の実施形態では、2つの一本鎖リンカーエレメントヌクレオチド配列は、2つのリンカーエレメントヌクレオチド配列間の水素結合を介して互いに相互作用し得る。一部の実施形態では、リンカーエレメントヌクレオチド配列は、約1~約50ヌクレオチド長の間であり得、好ましくは約1~約15ヌクレオチド長の間であり得る。
【0191】
本明細書で使用される場合、「コグネート」という用語は、典型的には、Cas12タンパク質(例えばCas12a)、および1種またはそれ以上のガイドのうちの1つに存在している核酸標的結合配列に相補的な核酸標的配列に部位特異的に結合可能な核タンパク質複合体を形成し得る1種またはそれ以上のV型CRISPR-CAs12関連ガイド(例えばCAs12 chRDNAガイド)を指す。
【0192】
「野生型」、「天然に存在している」、および「非改変」という用語は、本明細書では、典型的な(または最も一般的な)形態、外観、表現型、または天然に存在している株を意味するために使用されており;例えば、天然の供給源中に存在しており、かつこの供給源から単離される細胞、生物、ポリヌクレオチド、タンパク質、巨大分子複合体、遺伝子、RNA、DNA、またはゲノムの典型的な形態を意味するために使用される。野生型の形態、外観、表現型、または株は、意図された改変前の元の親として機能する。そのため、変異体形態、バリアント形態、操作形態、組換え形態、および改変形態は、野生型形態ではない。
【0193】
「単離された」は、ポリペプチドに言及する場合には、示された分子が、この分子が自然界で見出される生物全体から分離した、別個のものであることを意味するか、または同一タイプの他の生物学的巨大分子が実質的に存在していない状態で存在していることを意味する。ポリヌクレオチドに関する「単離された」という用語は、自然界で通常付随する配列の全てもしくは一部を欠いている核酸分子のことであるか;または自然界で存在している通りのものであるが異種配列が付随している配列のことであるか;または染色体に付随していない分子のことである。
【0194】
「精製された」という用語は、本明細書で使用される場合、好ましくは、同一分子の少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、および最も好ましくは少なくとも98重量%が存在していることを意味する。
【0195】
「操作された」、「遺伝的に操作された」、「遺伝的に改変された」、「組換えの」、「改変された」、「天然には存在しない」、および「非天然の」という用語は、生物または細胞のゲノムの意図的なヒト操作を示す。これらの用語は、本明細書で定義されるようなゲノム編集を含むゲノム改変の方法、ならびに遺伝子の発現または不活性化を変更する技術、酵素工学、指向性進化、知識ベースの設計、ランダム変異誘発方法、遺伝子シャッフリング、コドン最適化、および同類のものを包含する。遺伝子操作の方法は、当該技術分野で公知である。
【0196】
「共有結合」、「供給結合的に付着した」、「共有結合した」、「共有結合的に連結された」、「共有結合的に接続された」、および「分子結合」は、本明細書では互換的に使用されており、原子間での電子対の共有を伴う化学結合を指す。共有結合の例として、ホスホジエステル結合およびホスホロチオエート結合が挙げられるが、これらに限定されない。
【0197】
「非共有結合」、「非共有結合的に付着した」、「非共有結合した」、「非共有結合的に連結された」、「非共有結合的相互作用」、および「非共有結合的に接続された」は、本明細書で互換的に使用されており、電子対の共有を伴わないあらゆる比較的弱い化学結合を指す。複数の非共有結合は、多くの場合、巨大分子の高次構造を安定化させ、分子間の特異的相互作用を媒介する。非共有結合の例として、水素結合、イオン相互作用(例えばNa+Cl-)、ファンデルワールス相互作用、および疎水結合が挙げられるが、これらに限定されない。
【0198】
本明細書で使用される場合、「水素結合」、「水素-塩基対形成」、および「水素結合した」は、互換的に使用されており、「ワトソン・クリック水素結合塩基対」(W-C水素結合塩基対またはW-C水素結合);「フーグスティーン水素結合塩基対」(フーグスティーン水素結合);および「ウォブル水素結合塩基対」(ウォブル水素結合)が挙げられるがこれらに限定されない標準的な水素結合および非標準的な水素結合を指す。W-C水素結合(逆W-C水素結合を含む)は、プリン-ピリミジン塩基対結合を指しており、即ち、アデニン:チミン、グアニン:シトシン、およびウラシル:アデニンを指す。フーグスティーン水素結合(逆フーグスティーン水素結合を含む)は、核酸中での塩基対形成の変形を指しており、この変形では、2つの核酸塩基(各鎖上に1つ)が、主溝内において水素結合により互いに保持されている。この非W-C水素結合により、第3の鎖が二重鎖に巻き付いて三重鎖らせんを形成することが可能となり得る。ウォブル水素結合(逆ウォブル水素結合を含む)は、ワトソン・クリック塩基対規則に従わない、RNA分子中における2つのヌクレオチド間の対形成を指す。下記の4つの主要なウォブル塩基対が存在している:グアニン:ウラシル、イノシン(ヒポキサンチン):ウラシル、イノシン:アデニン、およびイノシン:シトシン。また、イノシン:チミンおよびイノシン:グアニン間にはウォブル塩基相互作用が起こることも知られている。イノシン塩基およびデオキシイノシン塩基は、標準的なDNA塩基およびRNA塩基と水素結合し得ることから、「ユニバーサル対形成塩基」と称される。例えば、Watkins他(Nucleic Acid Research、2005、33(19):6258~67頁)を参照されたい。標準的な水素結合および非標準的な水素結合の規則は、当業者に公知である。例えば、R.F.Gesteland(The RNA World、第3版(Cold Spring Harbor Monograph Series)、2005、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ISBN 978-0879697396);R.F.Gesteland(The RNA World、第2版(Cold Spring Harbor Monograph Series)、1999、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ISBN 978-0879695613);R.F.Gesteland(The RNA World、第1版(Cold Spring Harbor Monograph Series)、1993、Cold Spring Harbor Laboratory Press、978-0879694562)(例えば、Appendix 1:Structures of Base Pairs Involving at Least Two Hydrogen Bonds、I、Tinocoを参照されたい);W.Saenger(Principles of Nucleic Acid Structure、1988,Springer International Publishing AG、ISBN 978-0-387-90761-1);S.Neidle(Principles of Nucleic Acid Structure、2007、第1版、Academic Press、ISBN 978-01236950791)を参照されたい。
【0199】
「接続する(connect)」、「接続された」、および「接続する(connecting)」は、本明細書で互換的に使用されており、2つの巨大分子(例えば、ポリヌクレオチド、タンパク質、および同類のもの)間の共有結合または非共有結合を指す。
【0200】
本明細書で使用される場合、「核酸配列」、「ヌクレオチド配列」、および「オリゴヌクレオチド」という用語は、互換的であり、ヌクレオチドのポリマー形態を指す。本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、1つの5’末端および1つの3’末端を有し、1つまたはそれ以上の核酸配列を含み得るヌクレオチドのポリマー形態を指す。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド(DNA)、リボヌクレオチド(RNA)、これらの類似体、またはこれらの組合せであり得、任意の長さであり得る。ポリヌクレオチドは、任意の機能を実施し得、様々な二次構造および三次構造を有し得る。これらの用語は、天然のヌクレオチドの既知の類似体、ならびに塩基、糖、および/またはリン酸部分で改変されているヌクレオチドを包含する。特定のヌクレオチドの類似体は、塩基対形成特異性が同一である(例えば、AとTとの塩基対の類似性)。ポリヌクレオチドは、1つの改変ヌクレオチドまたは複数の改変ヌクレオチドを含み得る。改変ヌクレオチドの例として、フッ化ヌクレオチド、メチル化ヌクレオチド、化学的に改変された糖、およびヌクレオチド類似体が挙げられる。ヌクレオチド構造は、ポリマーが組み立てられる前または後に改変される。重合後、ポリヌクレオチドは、例えば、標識成分または標的結合成分とのコンジュゲーションにより、さらに改変される。ヌクレオチド配列は、非ヌクレオチド成分を組み込み得る。これらの用語はまた、合成の、天然に存在している、および/または天然には存在していない改変骨格残基または連結を含み、基準ポリヌクレオチド(例えばDNAまたはRNA)と同様の結合特性を有する核酸も包含する。そのような類似体の例としては、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラル-メチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド-核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA(商標))(ExiqonWoburnMA)ヌクレオシド、グリコール核酸、架橋核酸、およびモルホリノ構造が挙げられるが、これらに限定されない。
【0201】
ペプチド-核酸(PNA)は、ポリヌクレオチドのリン酸-糖骨格が柔軟な偽ペプチドポリマーに置き換えられている、核酸の合成相同体である。核酸塩基は、このポリマーに連結されている。PNAは、RNAおよびDNAの相補的配列に高い親和性および特異性でハイブリダイズする能力を有する。
【0202】
ホスホロチオエート核酸では、ホスホロチオエート(PS)結合により、ポリヌクレオチドのリン酸骨格中において、硫黄原子が非架橋酸素に置換されている。この改変により、ヌクレオチド間の連結は、ヌクレアーゼ分解に対して耐性を示すようになる。一部の実施形態では、ポリヌクレオチド配列の5’末端配列または3’末端配列の最後の3~5個のヌクレオチド間にホスホロチオエート結合が導入されており、エキソヌクレアーゼ分解が阻害されている。同様に、オリゴヌクレオチド全体を通したホスホロチオエート結合の配置は、エンドヌクレアーゼによる分解の低減に役立つ。
【0203】
トレオース核酸(TNA)は、人工的な遺伝子ポリマーである。TNAの骨格構造は、ホスホジエステル結合により連結された反復トレオース糖を含む。TNAポリマーは、ヌクレアーゼ分解に対する耐性を示す。TNAは、塩基対水素結合により二重鎖構造へと自己集合し得る。
【0204】
「リバースホスホロアミダイト」の使用により、ポリヌクレオチド中に連鎖反転を導入し得る(例えば、www.ucalgary.ca/dnalab/synthesis/-modifications/linkagesを参照されたい)。ポリヌクレオチドの末端における3’-3’連結は、2つの5’-OH末端を有するが3’-OH末端を欠くオリゴヌクレオチドを生じさせることにより、このポリヌクレオチドをエキソヌクレアーゼ分解に対して安定化させる。典型的には、そのようなポリヌクレオチドは、5’-OH位でホスホロアミダイト基を有しており、3’-OH位でジメトキシトリチル(DMT)保護基を有している。通常、DMT保護基は、5’-OH上に位置しており、ホスホロアミダイトは、3’-OH上に位置している。
【0205】
ポリヌクレオチド配列は、本明細書中では、別途示されない限り、従来の5’から3’への方向で示されている。
【0206】
本明細書で使用される場合、「配列同一性」は、一般には、様々な重み付けパラメーターを有するアルゴリズムを使用して第1のポリヌクレオチドまたはポリペプチドと第2のポリヌクレオチドまたはポリペプチドとをそれぞれ比較するヌクレオチド塩基またはアミノ酸の同一性パーセントを指す。2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチドの間の配列同一性を、様々な方法、ならびにGENBANK(www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank/)およびEMBL-EBI(www.ebi.ac.uk.)が挙げられるがこれらに限定されないサイトでワールドワイドウェブを介して利用可能なコンピュータプログラム(例えば、BLAST、CS-BLAST、FASTA、HMMER、L-ALIGN、および同類のもの)による配列アラインメントを使用して決定し得る。2つのポリヌクレオチド配列または2つのポリペプチド配列の間の配列同一性を、一般には、様々な方法またはコンピュータプログラムの標準的なデオフォルトパラメーターを使用して算出する。2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチドの間の高程度の配列同一性とは、典型的には、基準ポリペプチドの長さにわたる約90%同一性~100%同一性のことであり、例えば、約90%以上の同一性、好ましくは約95%以上の同一性、より好ましくは約98%以上の同一性のことである。2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチドの間の中程度の配列同一性とは、典型的には、基準ポリペプチドの長さにわたる約80%同一性~約85%同一性の間のことであり、例えば、約80%以上の同一性、好ましくは約85%以上の同一性のことである。2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチドの間の低程度の配列同一性は、典型的には、基準ポリペプチドの長さにわたる約50%同一性~75%同一性の間のことであり、例えば、約50%同一性、好ましくは約60%同一性、より好ましくは約75%同一性のことである。例えば、Cas12タンパク質(例えば、アミノ酸置換を含むCas12)は、その長さにわたり、基準Cas12タンパク質(例えば野生型Cas12)に対して、その長さにわたり、低程度の配列同一性、中程度の配列同一性、または高程度の配列同一性を有し得る。別の例として、ガイド分子は、基準Cas12タンパク質(例えば、その長さにわたり、Cas12と複合体を形成するポリヌクレオチド)と複合体化する基準野生型ガイド分子と比較して、その長さにわたり、低程度の配列同一性、中程度の配列同一性、または高程度の配列同一性を有し得る。
【0207】
本明細書で使用される場合、「ハイブリダイゼーション」、「ハイブリダイズする」、または「ハイブリダイズしている」とは、2つの相補的な一本鎖核酸(例えばDNAまたはRNA)分子を組み合わせて、水素塩基対形成を介して単一の二本鎖分子(例えば、DNA/DNA、DNA/RNA、RNA/RNA)を形成するプロセスのことである。ハイブリダイゼーションストリンジェンシーは、典型的には、ハイブリダイゼーション温度、およびハイブリダイゼーション緩衝液の塩濃度により決定されており、例えば、高温および低塩により、高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件が実現される。異なるハイブリダイゼーション条件のための塩濃度範囲および温度範囲の例は、下記の通りである:高ストリンジェンシー、約0.01M~約0.05Mの塩、ハイブリダイゼーション温度 Tmよりも5℃~10℃低い;中程度のストリンジェンシー、約0.16M~約0.33Mの塩、ハイブリダイゼーション温度 Tmよりも20℃~29℃低い;および低ストリンジェンシー、約0.33M~約0.82Mの塩、ハイブリダイゼーション温度 Tmよりも40℃~48℃低い。二重鎖核酸配列のTmは、当該技術分野で周知の標準的な方法により算出される。例えば、Maniatis他(Molecular Cloning:A Laboratory Manual、1982、Cold Spring Harbor Laboratory Press:New York);Casey他(Nucleic Acids Research、1977、4:1539~1552頁);Bodkin他(Journal of Virological Methods、1985、10(1):45~52頁);およびWallace他(Nucleic Acids Research、1981、9(4):879~894頁)を参照されたい。Tmを推定するためのアルゴリズム予測ツールも、広く利用可能である。ハイブリダイゼーションに関する高ストリンジェンシー条件は、典型的には、標的配列と相補的なポリヌクレオチドがこの標的配列と主にハイブリダイズし、かつ非標的配列とは実質的にハイブリダイズしない条件を指す。典型的には、ハイブリダイゼーション条件は、中程度のストリンジェンシーであり、好ましくは高ストリンジェンシーである。
【0208】
本明細書で使用される場合、「相補性」は、(例えば、標準的なワトソン・クリック塩基対形成を介して)別の核酸配列と水素結合を形成する核酸配列の能力を指す。相補性パーセントは、第2の核酸配列と水素結合を形成し得る核酸配列中の残基のパーセンテージを示す。2つの核酸配列が100%の相補性を有する場合には、これら2つの配列は完全に相補的であり、即ち、第1のポリヌクレオチドの全ての連続残基が、第2のポリヌクレオチド中の同数の連続残基と水素結合する。
【0209】
本明細書で使用される場合、リボヌクレオチド塩基に関する「対応するデオキシリボヌクレオチド塩基」という用語は、このリボヌクレオチド塩基と同一の塩基に、相補的な(ワトソン・クリック)塩基対形成を介して結合するデオキシリボヌクレオチド塩基(例えば、標準的なデオキシリボヌクレオチド塩基の改変バージョンまたはバリアントバージョンを含む)を指す。例えば、リボヌクレオチド塩基A、C、およびGの場合には、対応するデオキシリボヌクレオチド塩基は、それぞれ、A、C、およびGであり得る。リボヌクレオチド塩基Uの場合には、対応するデオキシリボヌクレオチド塩基は、例えばTであり得る。
【0210】
本明細書で使用される場合、「結合する」は、巨大分子間(例えば、タンパク質とポリヌクレオチドとの間、ポリヌクレオチドとポリヌクレオチドとの間、またはタンパク質とタンパク質との間、および同類のもの)での非共有結合的な相互作用を指す。そのような非共有結合的な相互作用はまた、「会合する」または「相互作用する」とも称される(例えば、第1の巨大分子が第2の巨大分子と相互作用する場合には、この第1の巨大分子は、第2の巨大分子に非共有結合的に結合する)。結合相互作用の一部は、配列特異的であり得る(「配列特異的な結合」、「配列特異的に結合する」、「部位特異的な結合」、および「部位特異的に結合する」という用語は、本明細書では互換的に使用される)。配列特異的な結合は、典型的には、タンパク質(例えばCas12)と複合体を形成して、このタンパク質を、核酸標的結合配列(例えばDNA標的結合配列)を含まない第2の核酸配列(例えば第2のDNA配列)と比較して、核酸標的配列(例えば標的DNA配列)を含む核酸配列(例えばDNA配列)に優先的に結合させ得る1種またはそれ以上のガイド分子を指す。結合相互作用の全ての成分が配列特異的である必要はない(例えば、タンパク質と、DNA骨格中のリン酸残基との接触)。結合相互作用を、解離定数(Kd)で特徴付け得る。「結合親和性」は、結合相互作用の強度を指す。増大した結合親和性は、より低いKDと相関する。
【0211】
本明細書で使用される場合、Cas12タンパク質は、Cas12ガイド/核タンパク質複合体が、ポリヌクレオチド内の核酸標的配列でこのポリヌクレオチドに結合するかまたはこのポリヌクレオチドを切断する場合には、このポリヌクレオチドを「標的とする」と言われる。
【0212】
「プロトスペーサー隣接モチーフ」または「PAM」は、本明細書で使用される場合、Cas12タンパク質結合認識配列を含む二本鎖核酸配列を指しており、Cas12タンパク質のアミノ酸は、この認識配列と直接相互作用する(例えば、Cas12aタンパク質は、PAM 5’-TTTN-3’またはPAM 5’-TTTV-3’と相互作用する)。PAM配列は、非標的鎖上に存在しており、標的相補配列の5’または3’であり得る(例えば、CRISPR-Cas12aシステムでは、PAM 5’-TTTN-3’配列またはPAM 5’-TTTV-3’配列は、非標的配列上に存在しており、標的相補配列の5’である)。PAMは、標的配列の巻き戻し、および標的配列と核酸標的結合配列との間の水素塩基対結合の前に、Cas12エフェクタータンパク質(例えばCas12aタンパク質)により認識される。
【0213】
「標的」、「標的配列」、「核酸標的配列」、「標的核酸配列」、および「オンターゲット配列」は、本明細書では、Cas12ポリヌクレオチドの核酸標的結合配列(例えばターゲティング領域)に対して完全にまたは部分的に相補的である核酸配列を指すために互換的に使用される。典型的には、核酸標的結合配列は、Cas12核タンパク質複合体の結合が導かれる核酸標的配列に対して100%相補的であるように選択されるが、核酸標的配列への結合を弱めるために、より低い相補性パーセントを使用し得る。
【0214】
核酸標的結合配列が、核酸標的結合配列に含まれている脱塩基部位を除いて標的配列に対して100%相補的である場合には、この標的核酸は、「オンターゲット」と称される。オンターゲット配列結合は、核酸標的結合配列(スペーサー)の非脱塩基部位部分に対する100%の相補性を有する核酸配列へのCas12ガイド/核タンパク質複合体の結合を指す。核酸標的結合配列(スペーサー)が、この核酸標的結合配列に含まれている脱塩基部位を除いて標的配列に対して100%未満の相補性を有する場合には、この標的配列は、「オフターゲット」と称される。オフターゲット配列結合は、核酸標的結合配列(スペーサー)の非脱塩基部位部分に対して100%未満の相補性を有する核酸配列へのCas12ガイド/核タンパク質複合体の結合を指す。核酸標的配列は、二本鎖DNA分子または一本鎖DNA分子であり得る。標的配列は、二本鎖DNA分子または一本鎖DNA分子であり得る。標的配列は、RNA:DNAハイブリッド分子であり得る。標的配列は、PAM配列の反対鎖上に存在し得る。
【0215】
本明細書で使用される場合、「二本鎖切断」(DSB)は、DNAの二本鎖セグメントの両方の鎖が切断されることを指す。ある場合には、そのような切断が起こると、一方の鎖は、ヌクレオチドが露出しておりかつ他方の鎖上のヌクオレチドに水素結合していない「粘着末端」を有すると言われる。他の場合では、両方の鎖が互いに完全に塩基対形成したままである「平滑末端」が生じ得る。
【0216】
「ドナーポリヌクレオチド」、「ドナーオリゴヌクレオチド」、「ドナーテンプレート」、「非ウイルスドナー」、および「非ウイルステンプレート」は、本明細書では互換的に使用されており、二本鎖ポリヌクレオチド(例えばDNA)、一本鎖ポリヌクレオチド(例えばDNAまたはRNA)、またはこれらの組合せであり得る。ドナーポリヌクレオチドは、挿入配列(例えば、DNA中のDSB)に隣接する相同アームを含み得る。各側部での相同アームは、長さが様々であり得る。ドナーポリヌクレオチドの設計および構築のためのパラメーターは、当該技術分野で周知である。例えば、Ran他(Nature Protocols、2013、8(11):2281~2308頁);Smithies他(Nature、1985、317:230~234頁);Thomas他(Cell、1986、44:419~428頁);Wu他(Nature Protocols、2008、3:1056~1076頁);Singer他(Cell、1982、31:25~33頁);Shen他(Genetics、1986、112:441~457頁);Watt他(PNAS、1985、82:4768~4772頁);Sugawara他(Journal of Molecular Cell Biology、1992、12(2):563~575頁);Rubnitz他(Journal of Molecular Cell Biology、1984、4(11):2253~2258頁);Ayares他(PNAS、1986、83(14):5199~5203頁);およびLiskay他(Genetics、1987、115(1):161~167頁)を参照されたい。一部の実施形態では、ドナーポリヌクレオチドは,キメラ抗原受容体(CAR)を含む。
【0217】
本明細書で使用される場合、「相同性指向修復」(HDR)は、例えばDNA中のDSBの修復中に、細胞中で行なわれるDNA修復を指す。HDRは、ヌクレオチド配列の相同性を必要としており、ドナーポリヌクレオチドを使用して、DSB(例えば、標的DNA配列内のDSB)が生じた配列を修復する。ドナーポリヌクレオチオドは、一般に、このドナーポリヌクレオチドが修復に好適なテンプレートとして機能し得るのに必要な、DSBに隣接する配列との配列相同性を有している。HDRにより、例えばドナーポリヌクレオチドから標的DNA配列へと、遺伝情報が伝達される。ドナーポリヌクレオチド配列が標的DNA配列と異なり、このドナーポリヌクレオチドの一部または全てがこの標的DNA配列に組み込まれている場合には、HDRにより、標的DNA配列が変更される(例えば、挿入、欠失、または変異)場合がある。一部の実施形態では、全ドナーポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチドの一部、またはドナーポリヌクレオチドのコピーは、標的DNA配列の部位で組み込まれている。例えば、ドナーポリヌクレオチドを、標的DNA配列中での切断の修復に使用し得、この修復により、DNA中での切断の部位または近傍で、ドナーポリヌクレオチドからの遺伝情報(例えばポリヌクレオチド配列)が伝達される。従って、新規の遺伝情報(例えばポリヌクレオチド配列)を、標的DNA配列で挿入し得るか、またはコピーし得る。
【0218】
本明細書で使用される場合、「相同性非依存性標的組込み」(HITI)は、例えばDNA中のDSBの修復中に、細胞中で行なわれるDNA修復を指す。HITIは、HDRとは異なり、ヌクレオチド配列の相同性を必要としておらず、ドナーポリヌクレオチドを使用して、DSB(例えば、標的DNA配列中のDSB)が生じた配列を修復する。HITIにより、例えばドナーポリヌクレオチドから標的DNA配列へと、遺伝情報が伝達される。ドナーポリヌクレオチド配列が標的DNA配列と異なり、このドナーポリヌクレオチドの一部または全てがこの標的DNA配列に組み込まれている場合には、HITIにより、標的DNA配列が変更される(例えば、挿入、欠失、または変異)場合がある。一部の実施形態では、全ドナーポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチドの一部、またはドナーポリヌクレオチドのコピーは、標的DNA配列の部位で組み込まれている。例えば、ドナーポリヌクレオチドを、標的DNA配列中での切断の修復に使用し得、この修復により、DNA中での切断の部位または近傍で、ドナーポリヌクレオチドからの遺伝情報(例えばポリヌクレオチド配列)が伝達される。従って、新規の遺伝情報(例えばポリヌクレオチド配列)を、標的DNA配列で挿入し得るか、またはコピーし得る。
【0219】
「ゲノム領域」とは、核酸標的配列部位のいずれかの側部で存在するか、または核酸標的配列部位の一部も含む、宿主細胞のゲノム中の染色体のセグメントである。ドナーポリヌクレオチドの相同アームは、対応するゲノム領域との相同組換えを受けるのに十分な相同性を有する。一部の実施形態では、ドナーポリヌクレオチドの相同アームは、核酸標的配列部位に直ぐ隣接するゲノム領域に対して顕著な配列相同性を共有しており;相同アームを、核酸標的配列部位から遠いゲノム領域に対して十分な相同性を有するように設計し得ることが認識される。
【0220】
本明細書で使用される場合、「非相同末端結合」(NHEJ)は、ドナーポリヌクレオチドを必要とすることのない、切断の一方の末端の切断の他方の末端への直接的なライゲーションによる、DNA中のDSBの修復を指す。NHEJは、修復テンプレートを使用することなくDNAを修復するための、細胞に利用可能なDNA修復経路である。ドナーポリヌクレオチドの非存在下でのNHEJにより、DSBの部位でヌクレオチドが無作為に挿入されるかまたは欠失することが多い。
【0221】
「マイクロ相同性媒介末端結合(Microhomology-mediated end joining)」(MMEJ)は、DNA中のDSBを修復するための経路である。MMEJは、DSBに隣接している欠失、および結合前に、切断部位の内側にあるマイクロ相同配列のアラインメントを伴う。MMEJは、遺伝的に定義されており、例えば、CtIP、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ1(PARP1)、DNAポリメラーゼシータ(Pol θ)、DNAリガーゼ1(Lig 1)、またはDNAリガーゼ3(Lig 3)の活性を必要とする。さらなる遺伝的成分は、当該技術分野で公知である。例えば、Sfeir他(Trends in Biochemical Sciences、2015、40:701~714頁)を参照されたい。
【0222】
本明細書で使用される場合、「DNA修復」は、それによって、細胞に含まれるDNA分子への損傷を細胞の機構が修復するあらゆるプロセスを包含する。修復される損傷として、一本鎖切断または二本鎖切断(DSB)が挙げられる。DSBを修復するために、下記の少なくとも3つの機構が存在している:HDR、NHEJ、およびMMEJ。「DNA修復」はまた、本明細書中では、例えばヌクレオチドを挿入するか、欠失させるか、または置換する(これらは全て、ゲノム編集の形態を表す)ことにより標的遺伝子座が改変されているヒト操作に由来するDNA修復を指すためにも使用される。
【0223】
本明細書で使用される場合、「組換え」は、2つのポリヌクレオチドの間での遺伝情報の交換のプロセスを指す。
【0224】
本明細書で使用される場合、「調節配列」、「調節エレメント」、および「制御エレメント」という用語は、互換的であり、発現されるポリヌクレオチド標的の上流(5’非コード配列)、このポリヌクレオチド標的内、またはこのポリヌクレオチド標的の下流(3’非コード配列)であるポリヌクレオチド配列を指す。調節配列は、例えば、転写のタイミング、転写の量もしくはレベル、RNAのプロセシングもしく安定性、および/または関連する構造ヌクレオチド配列の翻訳に影響を及ぼす。調節配列としては、アクチベーター結合配列、エンハンサー、イントロン、ポリアデニル化認識配列、プロモーター、転写開始部位、リプレッサー結合配列、ステム-ループ構造、翻訳開始配列、内部リボソーム侵入部位(IRES)、翻訳リーダー配列、転写終結配列(例えば、ポリアデニル化シグナルおよびポリU配列)、翻訳終結配列、プライマー結合部位、および同類のものが挙げられる。
【0225】
調節エレメントとしては、多くのタイプの宿主においてヌクレオチド配列の構成的な、誘導性の、または抑制可能な発現を導くもの、およびある特定の宿主細胞のみにおいてヌクレオチド配列の発現を導くもの(例えば、組織特異的調節配列)が挙げられる。一部の実施形態では、ベクターは、1つもしくはそれ以上のpol IIIプロモーター、1つもしくはそれ以上のpol IIプロモーター、1つもしくはそれ以上のpol Iプロモーター、またはこれらの組合せを含む。pol IIIプロモーターの例としてU6プロモーターおよびH1プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。pol IIプロモーターの例として、レトロウイルスのラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(場合により、RSVエンハンサーを有する)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(場合により、CMVエンハンサーを有する:例えばBoshart他(Cell、1985、41:521~530頁)を参照されたい)、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、β-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、およびEF1αプロモーターが挙げられるが、これに限定されない。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、所望される発現のレベル、および同類のもの等の因子に依存し得ることが、当業者に理解されるだろう。ベクターを宿主細胞に導入し、それにより、本明細書で説明されているような核酸配列によりコードされる融合タンパク質またはペプチドを含む、転写産物、タンパク質、またはペプチドが生成される。
【0226】
「遺伝子」は、本明細書で使用される場合、エクソンおよび関連する調節配列を含むポリヌクレオチド配列を指す。遺伝子は、イントロンおよび/または非翻訳領域(UTR)をさらに含み得る。
【0227】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」という用語は、互いに機能的に関係するように配置されたポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を指す。例えば、調節配列(例えば、プロモーターまたはエンハンサ-)は、この調節配列がポリヌクレオチドの転写を調節するかまたはこの転写の調節に寄与する場合には、遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドに「作動可能に連結され」ている。作動可能に連結された調節エレメントは、典型的には、コード配列と連続している。しかしながら、エンハンサーは、プロモーターから最大数キロ塩基以上離れている場合にも機能し得る。従って、一部の調節エレメントは、ポリヌクレオチド配列に作動可能に連結されるが、このポリヌクレオチド配列と連続していない場合がある。同様に、翻訳調節エレメントは、ポリヌクレオチドからのタンパク質発現の調節に寄与する。
【0228】
本明細書で使用される場合、「発現」は、DNAテンプレートからのポリヌクレオチドの転写を指しており、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)または他のRNA転写産物(例えば、非コード、例えば構造または足場RNA)が生じる。この用語は、転写されたmRNAが、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質へと翻訳されるプロセスをさらに指す。転写産物およびコードされたポリペプチドを、「遺伝子産物」とまとめて称し得る。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合には、発現は、真核細胞中でのmRNAのスプライシングを含み得る。
【0229】
「コード配列」、または選択されたポリペプチドを「コードする」配列とは、好適な調節配列の制御下に置かれた場合に、インビトロまたはインビボでポリペプチドに転写され(DANの場合)かつ翻訳される(mRNAの場合)核酸分子のことである。コード配列の境界は、5’末端の開始コドンおよび3’末端の翻訳終止コドンにより決定される。転写終結配列は、コード配列の3’に位置し得る。
【0230】
本明細書で使用される場合、「調節する」という用語は、機能の数、程度、または量の変化を指す。例えば、本明細書で開示されているCas12ガイド/核タンパク質複合体は、プロモーターでまたはプロモーターの近くで核酸標的配列に結合することにより、プロモーター配列の活性を調節し得る。結合後に生じる作用に応じて、Cas12ガイド/核タンパク質複合体は、プロモーター配列に作動可能に連結された遺伝子の転写を誘発し得るか、増強し得るか、抑制し得るか、または阻害し得る。そのため、遺伝子発現の「調節」は、遺伝子活性化および遺伝子抑制の両方を含む。
【0231】
調節を、標的遺伝子の発現により直接的にまたは間接的に影響を受ける任意の特徴を決定することによりアッセイし得る。そのような特徴として、例えば、RNAまたはタンパク質のレベル、タンパク質活性、生成物レベル、遺伝子の発現、またはレポーター遺伝子の活性レベルの変化が挙げられる。従って、遺伝子の「発現を調節する」、「発現を阻害する」、および「発現を活性化させる」という用語は、遺伝子の転写を変化させるか、活性化するか、または阻害するCas12ガイド/核タンパク質複合体の能力を指し得る。
【0232】
「ベクター」および「プラスミド」は、本明細書で使用される場合、細胞中に遺伝物質を導入するためのポリヌクレオチドビヒクルを指す。ベクターは、直鎖状であってもよいし、環状であってもよい。ベクターは、好適な宿主細胞中でベクターの複製を引き起こし得る複製配列(例えば複数起点)を含み得る。好適な宿主の形質転換時に、ベクターは、宿主ゲノムから独立して複製して機能し得るか、または宿主ゲノムに組み込まれる。ベクターの設計は、特に、意図される用途、およびこのベクター用の宿主細胞に依存しており、特定の用途および宿主細胞のためのベクターの設計は、当業者のレベル内である。ベクターの4つの主要なタイプは、プラスミド、ウイルスベクター、コスミド、および人口染色体である。典型的には、ベクターは、複数起点、マルチクロニーング部位、および/または選択マーカーを含む。発現ベクターは、典型的には、発現カセットを含む。「組換えウイルス」は、例えばウイルスゲノムまたはその一部への異種核酸構築物の付加または挿入により遺伝的に変更されているウイルスを意味する。
【0233】
本明細書で使用される場合、「発現カセット」は、組換え法を使用して生成されたかまたは合成手段により生成されており、かつ選択されたポリヌクレオチドに作動可能に連結されて宿主細胞中での選択されたポリヌクレオチドの発現を促進する調節配列を含むポリヌクレオチド構築物を指す。例えば、調節配列は、宿主細胞中での選択されたポリヌクレオチドの転写を促進し得るか、または宿主細胞中での選択されたポリヌクレオチドの転写および翻訳を促進し得る。発現カセットは、例えば、宿主細胞のゲノムに組み込まれるか、またはベクター中に存在していて発現ベクターを形成し得る。
【0234】
本明細書で使用される場合、「ターゲティングベクター」とは、標的遺伝子または核酸標的配列(例えばDSB)のエレメントに隣接する調整されたDNAアーム(ゲノムDNAに相同)を典型的に含む組換えDNA構築物である。ターゲティングベクターは、ドナーポリヌクレオチドを含む。標的遺伝子のエレメントを、欠失および/または挿入を含むいくつかの方法で改変し得る。不完全な標的遺伝子を、機能的標的遺伝子に置き換え得るか、または択一的に、機能遺伝子をノックアウトし得る。場合により、ターゲティングベクターのドナーポリヌクレオチドは、標的遺伝子に導入される選択可能マーカーを含む選択カセットを含む。標的遺伝子に隣接するかまたは標的遺伝子内のターゲティング領域を使用して、遺伝子発現の調節に影響を及ぼし得る。
【0235】
「遺伝子編集」または「ゲノム編集」は、本明細書で使用される場合、遺伝的改変(例えば、細胞ゲノム中の特定の部位でのヌクレオチド配列もしくは単一塩基の挿入、欠失、または置き換え)を引き起こす遺伝子操作の一種を意味する。この用語は、本明細書で定義される異種遺伝子発現、遺伝子またはプロモーターの挿入または欠失、核酸変異、および破壊的遺伝子改変を含むが、これらに限定されない。
【0236】
本明細書で使用される場合、「の間」という用語は、所与の範囲の端値を含む(例えば、約1~約50ヌクレオチド長の間は、1個のヌクレオチドおよび50個のヌクレオチドを含む)。
【0237】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、天然および合成の(非天然の)アミノ酸を指しており、アミノ酸類似体、改変アミノ酸、ペプチド模倣体、グリシン、およびDまたはL光学異性体が挙げられる。
【0238】
本明細書で使用される場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」という用語は、互換的であり、アミノ酸のポリマーを指す。ポリペプチドは、任意の長さであり得る。ポリペプチドは、分岐していてもよいし、直鎖状であってもよく、非アミノ酸により中断されていてもよく、かつ改変アミノ酸を含んでいてもよい。この用語はまた、例えば、アセチル化、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、リン酸化、ペグ化、ビオチン化、架橋、および/または(例えば、標識成分もしくはリガンドとの)コンジュゲーションを介して改変されているアミノ酸ポリマーも指す。ポリペプチド配列は、別途示されない限り、本明細書では、従来のN末端からC末端への向きで示されている。ポリペプチドおよびポリヌクレオチドを、分子生物学の分野での日常的な技術を使用して製造し得る。さらに、本質的に任意のポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、商業的供給源から入手可能である。
【0239】
「融合タンパク質」および「キメラタンパク質」という用語は、本明細書で使用される場合、天然には単一タンパク質中に一緒に存在していない2種以上のタンパク質、タンパク質ドメイン、またはタンパク質断片を連結することにより作製された単一タンパク質を指す。
【0240】
融合タンパク質はまた、エピトープタグ(例えば、ヒスチジンタグ、FLAG(登録商標)(Sigma Aldrich、St.Louis、MO)タグ、Mycタグ)、レポータータンパク質配列(例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質、青緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質)、および/または核酸配列結合ドメイン(例えば、DNA結合ドメインまたはRNA結合ドメイン)も含み得る。融合タンパク質は、少なくとも1つの核局在化配列(NLS)(例えば、シミアンウイルス40(SV40)NLSまたはヌクレオプラスミンNLS)を含み得る。融合タンパク質はまた、アクチベータードメイン(例えば、熱ショック転写因子、NFKBアクチベーター)、またはリプレッサードメイン(例えばKRABドメイン)も含み得る。Lupo他(Current Genomics、2013、14(4):268~278頁)により説明されているように、KRABドメインは、強力な転写抑制モジュールであり、ほとんどのC2H2ジンクフィンガータンパク質のアミノ末端列内に位置している。例えば、Margolin他(PNAS、1994、91:4509~4513頁);およびWitzgall他(PNAS、1994、91:4514~4518頁(1994))を参照されたい。KRABドメインは、典型的には、タンパク質-タンパク質相互作用を介して共リプレッサータンパク質および/または転写因子に結合して、KRABジンクフィンガータンパク質(KRAB-ZFP)が結合する遺伝子の転写抑制を引き起こす。例えば、Friedman他(Genes & Development、1996、10:2067~2678頁)を参照されたい。一部の実施形態では、リンカー核酸配列を使用して、2つ以上のタンパク質、タンパク質ドメイン、またはタンパク質断片を連結する。
【0241】
本明細書で使用される場合、「核局在化配列」(NLS)または「核局在化シグナル」という用語は、細胞の核へのタンパク質の細胞内局在化を優先的に増加させるタンパク質のポリペプチド配列を指す。NLS配列は、典型的には、タンパク質のアミノ末端(「N末端」)に位置しているか、カルボキシル末端(「C末端」)に位置しているか、または内部に位置しているアミノ酸の正荷電ストレッチ(またはこれらの組合せ、即ち、N末端における1つもしくはそれ以上のNLS、およびC末端における1つもしくはそれ以上のNLS)である。NLS配列は、タンパク質に直接的に共有結合により連結されているか、またはリンカーポリペプチドを介して連結されている。リンカー配列の長さを、タンパク質の構造的特性(例えば、末端の溶媒アクセス可能性、末端における他の重要な機能性ペプチド配列の存在等)に基づいて最適化して、コグネートインポーチンタンパク質の結合および輸送のためのNLS配列のアクセス可能性を確保し得る。加えて、最適なリンカー長を、経験的にスクリーニングし得る(例えば、実施例11を参照されたい)。NLS配列は、完全に合成されたものであり得るか、または内在性もしくは外来性のタンパク質配列に由来し得る。計算ツールを使用して、タンパク質中のNLS配列を予測し得る(例えば、moseslab.csb.utoronto.ca/NLStradamus/、またはnls-mapper.iab.keio.ac.jp/cgi-bin/NLS_Mapper_form.cgiを参照されたい)。NLS配列の例を、表2で表す。
【0242】
【0243】
「部分」は、本明細書で使用される場合、分子の一部を指す。部分は、官能基であり得るか、または(例えば共通の構造的特徴を共有する)複数の官能基を有する分子の一部を説明し得る。「部分」および「官能基」という用語は、典型的には互換的に使用されるが、「官能基」は、より具体的には、いくつかの共通の化学的挙動を含む分子の一部を指し得る。「部分」は構造的説明として使用されることが多い。一部の実施形態では、5’末端、3’末端、または5’末端および3’末端(例えば、第1のステムエレメントにおける非天然5’末端および/または非天然3’末端)は、1つまたはそれ以上の部分を含み得る。
【0244】
「改変タンパク質」、「変異タンパク質」、「タンパク質バリアント」、および「工学的タンパク質」という用語は、本明細書で使用される場合、典型的には、非天然配列を含むように改変されているタンパク質を指す(即ち、改変タンパク質は、非改変タンパク質と比較して固有の配列を有する)。
【0245】
「形質転換」は、本明細書で使用される場合、挿入に使用される方法に関係なく、宿主細胞への外来性ポリヌクレオチドの挿入を指す。例えば形質転換は、直接的取込み、トランスフェクション、感染、および同類のものによるものであり得る。外来性ポリヌクレオチドは、組み込まれていないベクター(例えばエピソーム)として維持されてもよいし、または宿主ゲノムに組み込まれてもよい。
【0246】
「宿主細胞」とは、外来性DNA配列により形質転換されているかまたは形質転換可能な細胞である。宿主細胞は、1つまたはそれ以上の細胞を有する任意の生物に由来し得る。宿主細胞の例としては、原核細胞、真核細胞、細菌細胞、古細菌細胞、単細胞真核生物の細胞、原生動物細胞、植物由来の細胞、藻類細胞、真菌細胞(例えば、酵母細胞、またはキノコ由来の細胞)、動物細胞、無脊椎動物由来の細胞、脊椎動物由来の細胞、例えば哺乳動物(例えば、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、げっ歯類、ラット、マウス、非ヒト霊長類、ヒト等)由来の細胞が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、宿主細胞は、幹細胞もしくは前駆細胞であり得るか、または免疫系の細胞(例えば、本明細書で説明されている免疫系の細胞のうちのいずれか)であり得る。宿主細胞は、ヒト細胞であり得る。例えば、宿主細胞は、リンパ球、または造血幹細胞等の幹細胞であり得る。リンパ球としては、細胞媒介性細胞傷害性適応免疫のためのT細胞(例えば、CD4+および/またはCD8+細胞傷害性T細胞);細胞媒介性細胞傷害性自然免疫で機能するナチュラルキラー(NK)細胞;および液性抗体駆動性適応免疫のためのB細胞が挙げられる。同様に含まれるのは、リンパ球系細胞を生じる造血幹細胞である。加えて、CAR-T細胞、T細胞受容体(TCR)細胞、例えば、TCR操作CAR-T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、CAR TIL、CAR-NK細胞、および同類のものを、本明細書の技術を使用して改変し得る。一部の実施形態では、ヒト細胞は、ヒトの体外にある。一部の実施形態では、生存生物の身体(例えばヒトの身体)の細胞は、エクスビボ(即ち、生体の外側)で操作されている。エクスビボは、多くの場合、処置または手術のために生体(例えばヒトの身体)から臓器、細胞、または組織を採取し、次いで生体に戻す医療手順を指す。インビボは、多くの場合、生体(例えばヒトの身体)内の臓器、細胞、または組織を処置または手術に供する医療手順を指す。
【0247】
「対象」、「個体」、または「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用されており、脊索動物門(phylum Chordata)のあらゆるメンバーを指しており、ヒトおよび他の霊長類、例えば非ヒト霊長類、例えば、アカゲザル、チンパンジー、および他のサル、ならびに類人猿種;農園動物、例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、およびウマ;家畜哺乳動物、例えば、イヌおよびネコ;実験動物、例えば、ウサギ、マウス、ラット、およびモルモット;鳥類、例えば、家畜、野生、および狩猟用の鳥類、例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、ならびに他の家禽鳥類、カモ、およびガチョウ;および同類のものが挙げられるが、これらに限定されない。この用語は、特定の年齢または性別を示すものではない。そのため、この用語は、成体の、若い、および生まれたばかりの個体を含み、雄および雌を含む。一部の実施形態では、宿主細胞は、対象に由来する(例えば、リンパ球、幹細胞、前駆細胞、または組織特異的細胞)。一部の実施形態では、対象は、非ヒト対象である。
【0248】
組成物または薬剤(例えば、本明細書で提供される遺伝子操作された養子細胞)の「有効量」または「治療有効量」という用語は、所望される応答をもたらすのに十分な量の組成物または薬剤を指す。好ましくは、有効量により、1種またはそれ以上の有害な副作用が予防されるか、回避されるか、または除去される。そのような応答は、問題となっている特定の疾患によって決まる。例えば、養子細胞療法を使用してがんが処置される患者では、所望される応答は、移植片対宿主疾患(GvHD)、宿主対移植片拒絶反応、サイトカイン放出症候群(CRS)、サイトカインストームの影響の処置または予防、および投与された遺伝的改変細胞の発がん性形質転換の低減のうちの1つまたはそれ以上を含み得るか、予防し得るか、回避し得るか、または除去し得る。必要とされる正確な処置量は、対象の種、年齢、および全身状態、処置される状態の重症度、ならびに使用される特定の改変リンパ球、投与様式、ならびに同類のものに応じて、対象毎に異なる。あらゆる個々の症例での適した「有効」量は、日常の実験を使用して当業者により決定される。
【0249】
特定の疾患(例えば、がんの症状またはGvHD)の「処置」または「処置すること」は、下記を含む:疾患を予防すること、例えば、疾患に罹りやすいが疾患の症状をまだ経験していないかもしくは示していない対象において、疾患の進展を予防するかもしくは疾患をより低い強度で発症させること;疾患を阻害すること、例えば、進行速度を低減させるか、進行を抑制するか、もしくは疾患状態を反転せること;ならびに/または疾患の症状を軽減すること、例えば、対象が経験する症状の数を減少させること。
【0250】
Cas12ガイド
本開示のCas12 chRDNAガイド分子は、Cas12aタンパク質等のコグネートCas12タンパク質と核タンパク質複合体を形成し得、この複合体は、ターゲティング領域(スペーサー配列)と相補的な標的配列を標的とし得る。
【0251】
図1Aは、ステム-ループ二重鎖(
図1A、102)を含む活性化領域(
図1A、101);および標的結合配列(
図1A、104)を含むスペーサー配列(
図1A、103)を含むアシダミノコッカス種BV3l6 Cas12aガイド分子の一例を示す。
図1Bは、ステム-ループ二重鎖(
図1B、106)を含む活性化領域(
図1B、105);ならびに標的結合配列(
図1B、108)および3’伸長(
図1B、109)を含むスペーサー配列(
図1B、107)を含む代替のCas12aガイド分子を示す。3’伸長(
図1B、109)を、リンカー配列を介してスペーサー配列(
図1B、107)に接続し得る。
図1Cは、ステム-ループ二重鎖(
図1C、111)、およびリンカーヌクレオチド(
図1C、114)、および5’伸長(
図1C、115)を含む活性化領域(
図1C、110);および標的結合配列(
図1C、113)を含むスペーサー配列(
図1C、112)を含む代替のCas12aガイド分子を示す。
【0252】
本開示のCas12 chRDNAガイド分子において、ターゲティング領域は、DNA、RNA、またはDNAおよびRNAの混合物を含み得る。一部の実施形態では、ターゲティング領域は、DNAおよびRNAの両方を含み得る。ある特定の実施形態では、ターゲティング領域はまた、他の塩基類似体、改変ヌクレオチド、脱塩基部位、および同類のもの、ならびに合成の、天然に存在する、および天然に存在しない改変骨格残基もしくは連結、またはこれらの組合せも含み得る。
【0253】
本開示のCas12 chRDNAガイド分子において、活性化領域は、DNA、RNA、またはDNAおよびRNAの混合物を含み得る。一部の実施形態では、活性化領域は、DNAおよびRNAの両方を含み得る。ある特定の実施形態では、活性化領域はまた、他の塩基類似体、改変ヌクレオチド、脱塩基部位、および同類のもの、ならびに合成の、天然に存在する、および天然に存在しない改変骨格残基もしくは連結、またはこれらの組合せも含み得る。ある特定の実施形態では、活性化領域は、ターゲティング領域に隣接している。ある特定の実施形態では、活性化領域は、ターゲティング領域の下流に存在している。ある特定の実施形態では、活性化領域は、ターゲティング領域の上流に存在している。
【0254】
一部の実施形態では、本開示のCas12 chRDNAガイド分子は、リボヌクレオチド塩基と、約2%以下、3%以下、4%以下、5%以下、6%以下、7%以下、8%以下、9%以下、10%以下、11%以下、12%以下、13%以下、14%以下、15%以下、16%以下、17%以下、18%以下、19%以下、20%以下、21%以下、22%以下、23%以下、24%以下、25%以下、26%以下、27%以下、28%以下、29%以下、30%以下、31%以下、32%以下、33%以下、34%以下、35%以下、36%以下、37%以下、38%以下、39%以下、40%以下、41%以下、42%以下、43%以下、44%以下、45%以下、46%以下、47%以下、48%以下、49%以下、50%以下、55%以下、60%以下、65%以下、70%以下、または75%以下のデオキシリボヌクレオチド塩基とを含む核酸配列、またはそのバリアントもしくは改変誘導体を含む。
【0255】
本開のCas12 chRDNAガイドは、例えば、脱塩基部位を含めて30~75塩基長である。一部の実施形態では、Cas12 chRDNAガイドは、脱塩基部位を含めて30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、または75塩基長である。一部の実施形態では、Cas12 chRDNAガイドは、脱塩基部位を含めて40塩基長である。
【0256】
本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチド配列(例えば、Cas12 chRDNAガイド、活性化領域、またはターゲティング領域)の「全長の割合として」は、例えば、脱塩基部位、ならびに改変塩基およびバリアント塩基を含むポリヌクレオチド配列の全長を指す。
【0257】
一部の実施形態では、活性化領域は、脱塩基部位を含めて10~25塩基長の間である。一部の実施形態では、活性化領域は、脱塩基部位を含めて10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25塩基長である。一部の実施形態では、活性化領域は、脱塩基部位を含めて20塩基長である。
【0258】
一部の実施形態では、ターゲティング領域は、脱塩基部位を含めて10~30塩基長の間である。一部の実施形態では、ターゲティング領域は、脱塩基部位を含めて10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30塩基長である。一部の実施形態では、ターゲティング領域は、脱塩基部位を含めて20塩基長である。
【0259】
本明細書の実施形態では、活性化領域および/またはターゲティング領域は、リボヌクレオチド塩基と、1つまたはそれ以上のデオキシリボヌクレオチド塩基とを含む。活性化領域および/またはターゲティング領域はまた、一部の実施形態では、塩基類似体、改変ヌクレオチド、脱塩基部位、またはこれらの組合せを含むさらなる改変も含み得る。一部の実施形態では、活性化領域および/またはターゲティング領域は、合成の、天然に存在する、または天然に存在しない改変骨格残基もしくは連結、またはこれらの組合せを含み得る。
【0260】
1つまたはそれ以上のデオキシリボヌクレオチド塩基は、ターゲティング領域中の任意の1箇所またはそれ以上の位置で存在し得る。例えば、脱塩基部位を含めて30塩基長のターゲティング領域の場合には、1つまたはそれ以上のデオキシリボヌクレオチド塩基は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30位のうちの1箇所またはそれ以上で存在し得る。より小さいターゲティング領域の場合には、それに応じて、これらの位置は減少する。例えば、脱塩基部位を含めて20塩基長のターゲティング領域の場合には、1つまたはそれ以上のデオキシリボヌクレオチド塩基は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20位のうちの1箇所またはそれ以上で存在し得る。
【0261】
1つまたはそれ以上のさらなる改変(例えば、塩基類似体、改変ヌクレオチド、脱塩基部位、改変骨格残基もしくは連結、またはこれらの組合せ)は、ターゲティング領域中の任意の1箇所またはそれ以上の位置で存在し得る。例えば、脱塩基部位を含めて30塩基長のターゲティング領域の場合には、1つまたはそれ以上のさらなる改変は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30位のうちの1箇所またはそれ以上で存在し得る。より小さいターゲティング領域の場合には、それに応じて、これらの位置は減少する。例えば、脱塩基部位を含めて20塩基長のターゲティング領域の場合には、1つまたはそれ以上のさらなる改変は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20位のうちの1箇所またはそれ以上で存在し得る。
【0262】
1つまたはそれ以上のデオキシリボヌクレオチド塩基は、活性化領域中の任意の1箇所またはそれ以上の位置で存在し得る。例えば、脱塩基部位を含めて25塩基長の活性化領域の場合には、1つまたはそれ以上のデオキシリボヌクレオチド塩基は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25位のうちの1箇所またはそれ以上で存在し得る。より小さい活性化領域の場合には、それに応じて、これらの位置は減少する。例えば、脱塩基部位を含めて20塩基長の活性化領域の場合には、1つまたはそれ以上のデオキシリボヌクレオチド塩基は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20位のうちの1箇所またはそれ以上で存在し得る。
【0263】
1つまたはそれ以上のさらなる改変(例えば、塩基類似体、改変ヌクレオチド、脱塩基部位、改変骨格残基もしくは連結、またはこれらの組合せ)は、活性化領域中の任意の1箇所またはそれ以上の位置で存在し得る。例えば、脱塩基部位を含めて25塩基長の活性化領域の場合には、1つまたはそれ以上のさらなる改変は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25位のうちの1箇所またはそれ以上で存在し得る。より小さい活性化領域の場合には、それに応じて、これらの位置は減少する。例えば、脱塩基部位を含めて20塩基長の活性化領域の場合には、1つまたはそれ以上のさらなる改変は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20位のうちの1箇所またはそれ以上で存在し得る。
【0264】
一部の実施形態では、デオキシリボヌクレオチド塩基の量は、脱塩基部位を含めたCas12 chRDNAガイドの全サイズの割合として、好ましくは75%以下である。一部の実施形態では、デオキシリボヌクレオチド塩基の量は、脱塩基部位を含めたCas12 chRDNAガイドの全サイズの割合として、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、24%以下、23%以下、22%以下、21%以下、20%以下、19%以下、18%以下、17%以下、16%以下、15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、または5%以下である。
【0265】
一部の実施形態では、さらなる改変(例えば、塩基類似体、改変ヌクレオチド、脱塩基部位、改変骨格残基もしくは連結、またはこれらの組合せ)の量は、脱塩基部位を含めたCas12 chRDNAガイドの全サイズの割合として、好ましくは75%以下である。一部の実施形態では、さらなる改変の量は、脱塩基部位を含めたCas12 chRDNAガイドの全サイズの割合として、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、24%以下、23%以下、22%以下、21%以下、20%以下、19%以下、18%以下、17%以下、16%以下、15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、または5%以下である。
【0266】
一部の実施形態では、デオキシリボヌクレオチド塩基の量は、脱塩基部位を含めたターゲティング領域の全サイズの割合として、好ましくは75%以下である。一部の実施形態では、デオキシリボヌクレオチド塩基の量は、脱塩基部位を含めたターゲティング領域の全サイズの割合として、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、24%以下、23%以下、22%以下、21%以下、20%以下、19%以下、18%以下、17%以下、16%以下、15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、または5%以下である。
【0267】
一部の実施形態では、さらなる改変(例えば、塩基類似体、改変ヌクレオチド、脱塩基部位、改変骨格残基もしくは連結、またはこれらの組合せ)の量は、脱塩基部位を含めたターゲティング領域の全サイズの割合として、好ましくは75%以下である。一部の実施形態では、さらなる改変の量は、脱塩基部位を含めたターゲティング領域の全サイズの割合として、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、24%以下、23%以下、22%以下、21%以下、20%以下、19%以下、18%以下、17%以下、16%以下、15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、または5%以下である。
【0268】
一部の実施形態では、デオキシリボヌクレオチド塩基の量は、脱塩基部位を含めた活性化領域の全サイズの割合として、好ましくは75%以下である。一部の実施形態では、デオキシリボヌクレオチド塩基の量は、脱塩基部位を含めた活性化領域の全サイズの割合として、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、24%以下、23%以下、22%以下、21%以下、20%以下、19%以下、18%以下、17%以下、16%以下、15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、または5%以下である。
【0269】
一部の実施形態では、さらなる改変(例えば、塩基類似体、改変ヌクレオチド、脱塩基部位、改変骨格残基もしくは連結、またはこれらの組合せ)の量は、脱塩基部位を含めた活性化領域の全サイズの割合として、好ましくは75%以下である。一部の実施形態では、さらなる改変の量は、脱塩基部位を含めた活性化領域の全サイズの割合として、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、24%以下、23%以下、22%以下、21%以下、20%以下、19%以下、18%以下、17%以下、16%以下、15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、または5%以下である。
【0270】
一部の実施形態では、活性化領域および/またはターゲティング領域中のデオキシリボヌクレオチド塩基の量は、例えば、デオキシリボヌクレオチド塩基を含まない対応する活性化領域および/またはターゲティング領域と比較して、統計的に有意な差異を提供するように調整されている。一部の実施形態では、この統計的に有意な差異は、オンターゲット編集またはオフターゲット編集での差異である。
【0271】
一部の実施形態では、活性化領域およびターゲティング領域はそれぞれ、1つまたはそれ以上のデオキシリボヌクレオチド塩基を含む。一部の実施形態では、活性化領域は、1つまたはそれ以上のデオキシリボヌクレオチド塩基を含み、ターゲティング領域は、デオキシリボヌクレオチド塩基を全く含まない(例えば、RNAおよび/または改変リボヌクレオチドのみを含む)。一部の実施形態では、ターゲティング領域は、1つまたはそれ以上のデオキシリボヌクレオチド塩基を含み、活性化領域は、デオキシリボヌクレオチド塩基を全く含まない(例えば、RNAおよび/または改変リボヌクレオチドのみを含む)。
【0272】
一部の実施形態では、活性化領域およびターゲティング領域はそれぞれ、1つまたはそれ以上のさらなる改変(例えば、塩基類似体、改変ヌクレオチド、脱塩基部位、改変骨格残基もしくは連結、またはこれらの組合せ)を含む。一部の実施形態では、活性化領域は、1つまたはそれ以上のさらなる改変(例えば、塩基類似体、改変ヌクレオチド、脱塩基部位、改変骨格残基もしくは連結、またはこれらの組合せ)を含み、ターゲティング領域は、さらなる改変を全く含まない(即ち、RNAまたはDNAのみを含む)。一部の実施形態では、ターゲティング領域は、1つまたはそれ以上のさらなる改変(例えば、塩基類似体、改変ヌクレオチド、脱塩基部位、改変骨格残基もしくは連結、またはこれらの組合せ)を含み、活性化領域は、さらなる改変を全く含まない(即ち、RNAまたはDNAのみを含む)。
【0273】
図2は、標的結合配列(
図2、205)を含むコグネートCas12a chRDNAガイド分子(
図2、204)に結合したCas12aタンパク質(
図2、206)を示す。Cas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体は、標的配列を含む標的ポリヌクレオチドをほどき、Cas12 chRDNAガイド分子の標的結合配列(
図2、205)は、標的配列(
図2、207)に、水素結合(
図2、ポリヌクレオチド間の縦線で示されている)を介して接続している。
図2では、標的ポリヌクレオチドは、標的配列(
図2、207)を含む標的鎖(
図2、201)と、PAM配列(
図2、203)を含む非標的鎖(
図2、202)とを含む。PAM配列(
図2、203)は、典型的には、非標的鎖(
図2、202)上の標的配列(
図2、207)の上流(即ち、5’方向)で生じる。Cas12a chRDNAガイド分子の標的結合配列(
図2、205)と、標的配列(
図2、207)との間の水素結合の形成により、標的鎖(
図2、201)と非標的鎖(
図2、202)とのスタガード切断(
図2、208)が生じる。
【0274】
図3A~
図3Iは、本開示のCas12 chRDNAガイド分子での使用のための様々な標準的および非標準的なヌクレオチドを示す。表3は、
図3A~
図3Iで使用される一連の標識を表す。
【0275】
【0276】
図4は、標的結合配列(
図4、405)を含むコグネートCas12a chRDNAガイド分子(
図4、404)に結合したCas12aタンパク質(
図4、406)であって、標的結合配列(
図4、405)は、非RNAヌクレオチド(
図4、409)を含み、例えば、
図3B~
図3Iで表される標準的なおよび非標準的なヌクレオチドを含む、Cas12aタンパク質を示す。Cas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体は、標的配列を含む標的ポリヌクレオチドをほどき、Cas12 chRDNAガイド分子の標的結合配列(
図4、405)は、標的配列(
図4、407)に、水素結合(
図4、ポリヌクレオチド間の縦線で示されている)を介して接続している。
図4では、標的ポリヌクレオチドは、標的配列(
図4、407)を含む標的鎖(
図4、401)と、PAM配列(
図4、403)を含む非標的鎖(
図4、402)とを含む。PAM配列(
図4、403)は、典型的には、非標的鎖(
図4、402)上の標的配列(
図4、407)の上流(即ち、5’方向)で生じる。chRDNAガイド分子の標的結合配列(
図4、405)と、標的配列(
図4、407)との間の水素結合の形成により、標的鎖(
図4、401)と非標的鎖(
図4、402)とのスタガード切断(
図4、408)が生じる。
【0277】
図5は、下記を含むアシダミノコッカス種(株BV3L6)Cas12a crRNAガイド分子の一例を示す:ステム-ループ二重鎖(
図5、502)を含む活性化領域(
図5、501);および標的結合配列(
図5、504)を含むスペーサー(
図5、503)。活性化領域(
図5、501)およびスペーサー(
図5、503)中の各ヌクレオチド位置は、このガイド分子の5’末端から標識されており、活性化領域および標的結合領域はそれぞれ、RNAを含む。
【0278】
図6は、下記を含むアシダミノコッカス種(株BV3L6)Cas12a chRDNAガイド分子の一例を示す:ステム-ループ二重鎖(
図6、602)を含む活性化領域(
図6、601);および標的結合配列(
図6、604)を含むスペーサー(
図6、603)。活性化領域(
図6、601)中、スペーサー(
図6、603)中の各ヌクレオチド位置は、このガイド分子の5’末端から標識されており、活性化領域は、RNA(白色の塗りつぶし)およびDNA(灰色の塗りつぶし)の混合物を含み、標的結合領域は、RNA(白色の塗りつぶし)およびDNA(灰色の塗りつぶし)の混合物を含む。
【0279】
図7は、下記を含むアシダミノコッカス種(株BV3L6)Cas12a chRDNAガイド分子の一例を示す:ステム-ループ二重鎖(
図7、702)を含む活性化領域(
図7、701);および標的結合配列(
図7、704)を含むスペーサー(
図7、703)。活性化領域(
図7、701)およびスペーサー(
図7、703)中の各ヌクレオチド位置は、このガイド分子の5’末端から標識されており、活性化領域は、RNA(白色の塗りつぶし)およびDNA(灰色の塗りつぶし)の混合物を含む。Cas12a chRDNAガイド分子は、他の非標準的なヌクレオチド例えば、化学的に改変された糖ヌクレオチド(
図7、705)、脱塩基リボヌクレオチド(
図7、706)、骨格が化学的に改変されているデオキシリボヌクレオチド(
図7、707)、骨格が化学的に改変されているリボヌクレオチド(
図7、708)、および脱塩基デオキシリボヌクレオチド(
図7、709)をさらに含む。
【0280】
図8は、Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体の形成であって、Cas12タンパク質(
図8、801)はCas12 chRDNAガイド分子(
図8、802)に結合して、Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体(
図8、803)が形成される、形成を示す。Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体(
図8、803)は、標的ポリヌクレオチド(
図8、804)に結合し、この標的ポリヌクレオチドは、Cas12 chRDNAガイド分子の標的結合配列に相補的な標的配列を含み、Cas12 chRDNAガイド分子の標的結合配列と標的配列(
図8,805)との間に水素結合が生じる。
【0281】
図9は、Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体による標的ポリヌクレオチドにおける挿入または欠失(インデル)の発生であって、Cas12 chRDNAガイド分子(
図9、902)と複合体化したCas12タンパク質(
図9、901)は、PAM(
図9、904)を含む標的ポリヌクレオチド(
図9、903)に結合しており、標的ポリヌクレオチドは、Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体により切断されている(
図9、905)、発生を示す。ターゲティングが起きた後、Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体は、標的ポリヌクレオチドから解離し(
図9、906)、標的ポリヌクレオチドは、PAM(
図9、904)に対して上流(即ち、5’方向)鎖(
図9、907)および下流(即ち、3’方向)鎖(
図9、908)を含む。細胞内DNA修復機構は、標的ポリペプチド中の切断部位周辺での配列の挿入または欠失(
図9、910)を通して、標的ポリヌクレオチドを修復する。上流鎖(
図9、911)および下流鎖(
図9、912)は再連結され、編集された標的ポリヌクレオチド(
図9、914)は、切断部位でインデル(
図9、913)を含み、編集された標的ポリヌクレオチドは、未編集の標的ポリヌクレオチドと比較して配列が異なる。一部の実施形態では、細胞内にて、Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体による標的ポリヌクレオチド中での挿入または欠失(インデル)の発生が起こる。
【0282】
図10は、標的ポリヌクレオチドへのドナーポリヌクレオチド配列の組込みであって、Cas12 chRDNAガイド分子(
図10、1002)と複合体化したCas12タンパク質(
図10、1001)は、PAM(
図10、1004)を含む標的ポリヌクレオチド(
図10,1003)に結合しており、標的ポリヌクレオチドは、Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体により切断されている(
図10、1005)、組込みを示す。ターゲティングが起きた後、Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体は、標的ポリヌクレオチドから解離し(
図10、1006)、標的ポリヌクレオチドは、PAM(
図10、1004)に対して上流(即ち、5’方向)鎖(
図10、1007)および下流(即ち、3’方向)鎖(
図10、1008)を含み、ドナーポリヌクレオチドが生じる(
図10、1009)。細胞内DNA修復機構は、このドナーポリヌクレオチド(
図10、1011)を使用して標的ポリヌクレオチド(
図10、1010)を修復する。得られた編集された標的ポリヌクレオチド(
図10、1010)は、標的部位でドナー配列(
図10、1011)を含む。一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチドへのドナーポリヌクレオチド配列の組込みは、細胞内で起こる。
【0283】
図11は、標的ポリヌクレオチドのニッキングであって、標的結合配列(
図11、1106)中にDNA塩基を含む、Cas12 chRDNAガイド分子(
図11、1102)と複合体化したCas12タンパク質(
図11、1101)は、PAM(
図11、1104)を含む標的ポリヌクレオチド(
図11、1103)に結合し、標的ポリヌクレオチドは、Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体により、この標的ポリヌクレオチドの一方の鎖中にのみ切り込みが入る(
図11、1105)、ニッキングを示す。
【0284】
図12は、標的ポリヌクレオチド中にスタガード型の二本鎖切断を発生させるための、2つのニッキングCas12 chRDNA/核タンパク質複合体の使用であって、第1のCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体は、標的ポリヌクレオチドの上流(即ち、5’方向)標的配列に結合して(
図12、1201)、標的ポリヌクレオチド中に第1の切り込みが入り(
図12、1202)、第2のCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体が、標的ポリヌクレオチドの下流(即ち、3’方向)標的配列に結合して(
図12、1203)、標的ポリヌクレオチド中に第2の切り込みが入る(
図12、1204)、使用を示す。タンデム型のニッキングが起きた後、切断後の標的ポリヌクレオチドは、5’オーバーハングを有する上流(即ち、5’方向)鎖(
図12、1205)および下流(即ち、3’方向)鎖(
図12、1206)を含む。ドナーポリヌクレオチドが生じ、細胞内DNA修復機構は、このドナーポリヌクレオチド(
図12、1208)を使用して、標的ポリヌクレオチド(
図12、1207)を修復する。得られた編集された標的ポリヌクレオチド(
図12、1209)は、タンデム型に切り込みが入った部位でドナー配列(
図12、1210)を含む。一部の実施形態では、標的ポリヌクレオチド中でのスタガード型のDSBを発生させるための2つのニッキングCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体の使用は、細胞内で起こる。
【0285】
図13は、DNA塩基に適している、アシダミノコッカス種(株BV3L6)Cas12a chRDNAガイド分子の標的結合配列中の位置を示す。y軸は、標的結合配列中の単一の位置での、DNAによる複数の標的の正規化された編集率(実施例5を参照されたい)を表している(エラーバーは、標準偏差を示す)。x軸は、標的結合配列中における各位置の位置(5’から3’へ)を示す。標的結合配列は、グラフの上側に示されており(
図13、1301)、DNA塩基利用の好ましい位置(即ち、70%超の平均正規化編集)が、灰色の塗りつぶしで示されている。Cas12a chRDNA活性化領域の位置も示されている(
図13、1302)。
【0286】
図14は、DNA塩基に適している、アシダミノコッカス種(株BV3L6)Cas12a chRDNAガイド分子の活性化領域中の位置を示す(実施例8を参照されたい)。y軸は、活性化領域中の単一の位置での、DNAによるガイド分子の正規化された編集率を表している。x軸は、活性化領域中における各位置の位置(5’から3’へ)を示す。活性化領域は、グラフの左側に示されており(
図14、1401)、DNA塩基利用の好ましい位置(即ち、70%超の平均正規化編集)が、灰色の塗りつぶしで示されている。Cas12a chRDNAガイド標的結合配列の位置も示されている(
図14、1402)。
【0287】
図15Aおよび
図15Bは、Cas12a/chRDA核タンパク質複合体を使用して操作されたCAR-T細胞のフローサイトメトリー分析を示す。
図15Aは、抗BCMA CAR(
図15A、1501)、TRACタンパク質(
図15A、1502)、およびB2Mタンパク質(
図15A、1503)を発現する細胞の割合を示す。x軸は、処理されていない細胞(
図15A、1504)、TRAC遺伝子およびB2M遺伝子の両方を標的とするCas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体でトランスフェクトされた細胞(
図15A、1505)、ならびにTRAC遺伝子およびB2M遺伝子の両方を標的とする両方Cas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体でトランスフェクトされており、かつ抗BCMA CAR遺伝子およびB2M-HLA-E融合遺伝子をそれぞれコードするDNAドナーを含む2種のウイルスで形質導入されている細胞(
図15A、1506)を示す。y軸は、フローサイトメトリーで測定された場合での様々な細胞表面マーカーに対する陽性細胞の割合を表す。
図15Bは、BCMA陽性標的細胞株に対する抗BCMA、B2M-HLA-E CAR-T細胞(灰色の円形)、およびコントロールTRAC KO T細胞(黒色の円形)に関するインビトロでの細胞傷害性アッセイの結果を示す。y軸は、標的細胞の死滅率を表しており、x軸は、使用されたE:T比を示す。各データ点は、各E:T比での3つの共培養ウェルの平均を表す。
【0288】
図16Aおよび
図16Bは、複数のリンカーおよび核局在化配列(NLS)配置を含むCas12a/chRDNA核タンパク質複合体の細胞編集活性を示す。
図16Aおよび
図16B中のグラフのy軸は、次世代配列決定により測定された場合での編集率を示した。
図16Aでは、x軸は、各リンカーNLS配置を示しており、各データ点は、測定の反復を表す。
図16Bでは、x軸は、
図16Aで示された上位4つのリンカー-NLS設計および「最適化されていない」リンカー-NLS配置(
図16B、1613)のCas12aおよびchRDNAガイド(20:60または80:240pmol)のpmol濃度を示す。各データ点は、固有のガイド標的配列を表しており、かつデータ点毎に3回反復した測定の平均値である。
図17は、単一のトランスフェクション反応で複数のCas12aガイドを共送達する場合での、GS-SV40(
図7、1708;配列番号479)および(G4S)2-NPL(
図7、1712;配列番号489)を有するCas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体の細胞編集活性を示す。
図17のy軸は、次世代配列決定により測定された場合での編集率を示した。
図17では、x軸は、TRAC遺伝子(
図17、1701;配列番号36)、B2M遺伝子(
図17、1702;配列番号62)、CISH遺伝子(
図17、1703;配列番号158)、またはCBLB遺伝子(
図17、1704;配列番号171)として標的遺伝子を示す。Cas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体を、トランスフェクション毎に単一のターゲティング複合体として使用したか(
図17、1705、および
図17、1709)、トランスフェクション毎に2つのターゲティング複合体として使用したか(
図17、1706、および
図17、1710)、またはトランスフェクション毎に4つのターゲティング複合体として使用した(
図17、1707、および
図17、1711)。各バーは、2~3回の反復の平均を表す。
【0289】
デオキシリボヌクレオチド塩基、および場合によりさらなる改変(例えば、塩基類似体、改変ヌクレオチド、脱塩基部位、改変骨格残基もしくは連結、またはこれらの組合わせ)を設計し得る特定のCas12 chRDNAガイド分子を設計する方法は、公知である。例えば、Briner他(Molecular Cell、2014,56:333~339頁)を参照されたい。そのために、最初に、標的となる遺伝子のゲノム配列を同定する。選択された遺伝子の正確な領域は、具体的な用途によって決まるだろう。例えば、例えばCRISPR活性化またはCRISPR阻害を使用して標的遺伝子を活性化するかまたは抑制するために、Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体は、目的の遺伝子の発現を駆動するプロモーターを標的とし得る。遺伝子ノックアウトの場合には、Cas12 chRDNAガイド分子を、5’の構成的に発現されたエクソンを標的とするように設計して、代替スプライシングに起因するmRNAからの標的領域の除去の機会を低減させ得る。N末端付近のエクソンを標的とし得、なぜならば、ここでのフレームシフト変異は、機能していないタンパク質生成物の産生の可能性を増加させるからである。あるいは、コグネートCas12 chRDNAガイド分子を、既知の必須タンパク質ドメインをコードするエクソンを標的とするように設計し得る。これに関して、挿入または欠失等の非フレームシフト変異は、タンパク質の機能に必須であるタンパク質ドメインで起こる場合には、タンパク質の機能を変更する可能性が高い。HDRを使用する遺伝子編集の場合には、標的配列は、所望の編集の場所に近くにあるべきである。この場合には、編集が望ましい場所を同定し、その近くの標的配列を選択する。
【0290】
一部の実施形態では、Cas12 chRDNAガイド分子を、Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体がCas12タンパク質の切断部位の外側に結合し得るように設計し得る。この場合では、標的核酸は、Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体と相互作用し得ず、標的核酸は切除される(例えば、Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体から遊離する)。一部の実施形態では、Cas12 chRDNAガイド分子を、Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体がCas12タンパク質の切断部位の内側に結合し得るように設計し得る。この場合では、標的核酸は、Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体と相互作用し得、標的核酸は結合し得る(例えば、Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体に結合し得る)。
【0291】
Cas12 chRDNAガイド分子を、Cas12 chRDAガイド/核タンパク質複合体が核酸サンプル内の複数の位置にハイブリダイズし得るように設計し得る。複数のCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体を、核酸サンプルに接触させ得る。複数のCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体は、同一配列にハイブリダイズするように設計されているCas12 chRDNAガイド分子を含み得る。複数のCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体は、異なる標的配列にハイブリダイズするように設計されているCas12 chRDNAガイド分子を含み得る。
【0292】
標的配列は、標的核酸内の異なる位置に存在し得る。これらの位置は、同一であるかまたは類似する標的核酸配列を含み得る。これらの位置は、異なる核酸配列を含み得る。これらの位置は、互いの距離に従って定義される。これらの位置は、10キロベース(Kb)未満離れているか、8Kb未満離れているか、6Kb未満離れているか、4Kb未満離れているか、2Kb未満離れているか、1Kb未満離れているか、900個未満のヌクレオチドで離れているか、800個未満のヌクレオチドで離れているか、700個未満のヌクレオチドで離れているか、600個未満のヌクレオチドで離れているか、500個未満のヌクレオチドで離れているか、400個未満のヌクレオチドで離れているか、300個未満のヌクレオチドで離れているか、200個未満のヌクレオチドで離れているか、または100個未満のヌクレオチドで離れている。
【0293】
Cas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体は、標的核酸を切断し得、その結果、下記の長さであり得る標的核酸を切除し得る:10キロベース(Kb)未満の長さ、8Kb未満の長さ、6Kb未満の長さ、4Kb未満の長さ、2Kb未満の長さ、1Kb未満の長さ、900個未満のヌクレオチドの長さ、800個未満のヌクレオチドの長さ、700個未満のヌクレオチドの長さ、600個未満のヌクレオチドの長さ、500個未満のヌクレオチドの長さ、400個未満のヌクレオチドの長さ、300個未満のヌクレオチドの長さ、200個未満のヌクレオチドの長さ、または100個未満のヌクレオチドの長さ。
【0294】
Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体は、10キロベース(Kb)未満の長さ、8Kb未満の長さ、6Kb未満の長さ、4Kb未満の長さ、2Kb未満の長さ、1Kb未満の長さ、900個未満のヌクレオチドの長さ、800個未満のヌクレオチドの長さ、700個未満のヌクレオチドの長さ、600個未満のヌクレオチドの長さ、500個未満のヌクレオチドの長さ、400個未満のヌクレオチドの長さ、300個未満のヌクレオチドの長さ、200個未満のヌクレオチドの長さ、または100個未満のヌクレオチドの長さであり得る断片化された標的核酸に結合し得る。
【0295】
本開示のCas12 chRDNAガイド分子を、溶液中でのもしくは固体支持体上での化学等の公知の方法によりインビトロで合成し得るか、または、場合によっては、組換えにより製造し得る。単一の製造技術もしくは合成技術、または製造技術および合成技術の組合せを用いることができ、これらの技術では、デオキシリボヌクレオチド塩基および/または改変を、配列の長さにわたり1箇所またはそれ以上の位置で導入し得る。
【0296】
一部の実施形態では、Cas12 chRDNAガイド分子、そのターゲティング領域、またはその活性化領域は、基準Cas12 chRDAガイド分子、基準ターゲティング領域、または基準活性化領域(それぞれリボヌクレオチド塩基で構成されている)と比較した場合に、ある特定の位置でデオキシリボヌクレオチド塩基(および/または改変デオキシリボヌクレオチド塩基)を含むように設計されている。
【0297】
一部の実施形態では、基準Cas12a chRDNAガイド分子は、下記のRNA配列:UAAUUUCUACUCUUGUAGAUGAGUCUCUCAGCUGGUACACを含む。本開示のCas12a chRDNAガイド分子(この基準RNA配列に基づいて設計されている)として、1、3、7、10、12、14、15、16、17、18、19、21、28、29、30、31、32、34、35、36、37、38、39、および40位のうちの1箇所またはそれ以上で1つまたはそれ以上のデオキシリボヌクレオチド塩基を有するCas12 chRDNAガイド分子が挙げられる。一部の実施形態では、これらの列挙された位置のうちの23箇所以下、22箇所以下、21箇所以下、20箇所以下、19箇所以下、18箇所以下、17箇所以下、16箇所以下、15箇所以下、14箇所以下、13箇所以下、12箇所以下、11箇所以下、10箇所以下、9箇所以下、8箇所以下、7箇所以下、6箇所以下、5箇所以下、4箇所以下、3箇所以下、2箇所以下、または1箇所は、デオキシリボヌクレオチド塩基である。一部の実施形態では、ターゲティング領域中の1つまたはそれ以上のデオキシリボヌクレオチド塩基の全ては、標的配列と標準的な塩基対を形成する。一部の実施形態では、ターゲティング領域中の1つまたはそれ以上のデオキシリボヌクレオチド塩基のうちの少なくとも1つは、標的配列と標準的な塩基対を形成しない。
【0298】
一部の実施形態では、基準Cas12a chRDNAガイド分子は、下記のRNA配列:UAAUUUCUACUCUUGUAGAUAGUGGGGGUGAAUUCAGUGUを含む。本開示のCas12 chRDNAガイド分子(この基準RNA配列に基づいて設計されている)として、1、3、7、10、12、14、15、16、17、18、19、21、28、29、30、31、32、34、35、36、37、38、39、および40位のうちの1箇所またはそれ以上で1つまたはそれ以上のデオキシリボヌクレオチド塩基を有するCas12a chRDNAガイド分子が挙げられる。一部の実施形態では、これらの列挙された位置のうちの23箇所以下、22箇所以下、21箇所以下、20箇所以下、19箇所以下、18箇所以下、17箇所以下、16箇所以下、15箇所以下、14箇所以下、13箇所以下、12箇所以下、11箇所以下、10箇所以下、9箇所以下、8箇所以下、7箇所以下、6箇所以下、5箇所以下、4箇所以下、3箇所以下、2箇所以下、または1箇所は、デオキシリボヌクレオチド塩基である。一部の実施形態では、ターゲティング領域中の1つまたはそれ以上のデオキシリボヌクレオチド塩基の全ては、標的配列と標準的な塩基対を形成する。一部の実施形態では、ターゲティング領域中の1つまたはそれ以上のデオキシリボヌクレオチド塩基のうちの少なくとも1つは、標的配列と標準的な塩基対を形成しない。
【0299】
一部の実施形態では、基準活性化領域は、下記のRNA配列:UAAUUUCUACUCUUGUAGAUを含む。本開示のデオキシリボヌクレオチド塩基含有活性化領域(この基準RNA配列に基づいて設計されている)として、1、3、7、10、12、14、15、16、17、18、および19位のうちの1箇所またはそれ以上で1つまたはそれ以上のデオキシリボヌクレオチド塩基を有する活性化領域が挙げられる。一部の実施形態では、これらの列挙された位置のうちの11箇所以下、10箇所以下、9箇所以下、8箇所以下、7箇所以下、6箇所以下、5箇所以下、4箇所以下、3箇所以下、2箇所以下、または1箇所は、デオキシリボヌクレオチド塩基である。
【0300】
一部の実施形態では、基準ターゲティング領域は、下記のRNA配列:GAGUCUCUCAGCUGGUACACを含む。本開示のデオキシリボヌクレオチド塩基含有ターゲティング領域(この基準RNA配列に基づいて設計されている)として、1、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、および20位のうちの1箇所またはそれ以上で1つまたはそれ以上のデオキシリボヌクレオチド塩基を有するターゲティング領域が挙げられる。一部の実施形態では、これらの列挙された位置のうちの12箇所以下、11箇所以下、10箇所以下、9箇所以下、8箇所以下、7箇所以下、6箇所以下、5箇所以下、4箇所以下、3箇所以下、2箇所以下、または1箇所は、デオキシリボヌクレオチド塩基である。
【0301】
一部の実施形態では、基準ターゲティング領域は、下記のRNA配列:AGUGGGGGUGAAUUCAGUGUを含む。本開示のデオキシリボヌクレオチド塩基含有ターゲティング領域(この基準RNA配列に基づいて設計されている)として、1、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、および20位のうちの1箇所またはそれ以上で1つまたはそれ以上のデオキシリボヌクレオチド塩基を有するターゲティング領域が挙げられる。一部の実施形態では、これらの列挙された位置のうちの12箇所以下、11箇所以下、10箇所以下、9箇所以下、8箇所以下、7箇所以下、6箇所以下、5箇所以下、4箇所以下、3箇所以下、2箇所以下、または1箇所は、デオキシリボヌクレオチド塩基である。
【0302】
一部の実施形態では、活性化領域は、配列TrAArUrUrUCrUrACrUCrUTGrUrArGArU(ここで、「r」は、リボヌクレオチド塩基に先行しており;塩基に先行する「r」の非存在は、デオキシリボヌクレオチド塩基を示す)を有する。
【0303】
一部の実施形態では、ターゲティング領域は、配列GrArGrUrCrUrCrUrCrAGrCrUrGrGrUrArCrAC(ここで、「r」は、リボヌクレオチド塩基に先行しており;塩基に先行する「r」の非存在は、デオキシリボヌクレオチド塩基を示す)を有する。
【0304】
一部の実施形態では、ターゲティング領域は、配列ArGrUrGrGrGrGrGrUrGArArUrUrCrArGrUrGT(ここで、「r」は、リボヌクレオチド塩基に先行しており;塩基に先行する「r」の非存在は、デオキシリボヌクレオチド塩基を示す)を有する。
【0305】
一部の実施形態では、Cas12a chRDNAガイドは、配列TrAArUrUrUCrUrACrUCrUTGrUrArGArUGrArGrUrCrUrCrUrCrAGrCrUrGrGrUrArCrAC(ここで、「r」は、リボヌクレオチド塩基に先行しており;塩基に先行する「r」の非存在は、デオキシリボヌクレオチド塩基を示す)を有する。
【0306】
一部の実施形態では、Cas12a chRDNAガイドは、配列TrAArUrUrUCrUrACrUCrUTGrUrArGArUArGrUrGrGrGrGrGrUrGArArUrUrCrArGrUrGT(ここで、「r」は、リボヌクレオチド塩基に先行しており;塩基に先行する「r」の非存在は、デオキシリボヌクレオチド塩基を示す)を有する。
【0307】
Cas12タンパク質
本開示のCas12タンパク質としては、V型CRISPR-Cas系由来のCas12野生型タンパク質、改変Cas12タンパク質、Cas12タンパク質のバリアント、Cas12オルソログ、およびこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、Cas12タンパク質は、野生型Cas12aタンパク質、改変Cas12aタンパク質、Cas12aタンパク質のバリアント、Cas12aオルソログ、またはこれらの組合せである。
【0308】
Cas12タンパク質を改変し得る。この改変は、アミノ酸に対する改変を含み得る。この改変はまた、一次アミノ酸配列、ならびに/また二次、三次、および/もしくは四次アミノ酸構造も変更し得る。一部の実施形態では、Cas12タンパク質の1つまたはそれ以上のアミノ酸配列を、このCas12タンパク質の構造または機能に顕著な影響を及ぼすことなく変化させ得る。変異の種類は、タンパク質の一部の領域(例えば重要ではない領域)で変更が生じる場合には、重要ではない場合がある。置き換えの位置に応じて、変異は、結果として得られたバリアントの生物学的特性に大きな影響を及ぼさない場合がある。例えば、ある特定のCas12バリアントの特性および機能は、野生型Cas12のものと同一タイプであり得る。
【0309】
一部の場合では、変異がCas12タンパク質の構造および/または機能に決定的な影響を及ぼし得るかどうかを、配列および/または構造アラインメントを使用して決定し得る。配列アラインメントにより、ポリペプチドの類似しているおよび/または類似していない領域(例えば、保存されている、保存されていない、疎水性、親水性等)を同定し得る。ある場合では、他の配列と類似している目的の配列中の領域が、改変に適している。他の場合では、他の配列と類似していない目的の配列中の領域が、改変に適している。例えば、配列アライメントを、データベース検索、ペアワイズアラインメント、多重配列アラインメント、ゲノム解析、モチーフ発見、ベンチマーキング、ならびに/またはプログラム、例えば、BLAST、CS-BLAST、HHPRED、psi-BLAST、LALIGN、PyMOL、およびSEQALNにより実施し得る。構造アラインメントを、Dali、PHYRE、Chimera、COOT、O、およびPyMOL等のプログラムにより実施し得る。アラインメントを、データベース検索、ペアワイズアラインメント、多重配列アラインメント、ゲノム解析、モチーフ発見、もしくはベンチマーキング、またはこれらの任意の組合せにより実施し得る。
【0310】
Cas12タンパク質は、典型的には、REC1、REC2、PAM相互作用(PI)、ヌクレアーゼ(Nuc)、Wedge(WED)、およびRuvCドメインに対応する6つのドメインからなる。例えば、Yamano他(Cell、2016、165(4):949~962頁)を参照されたい。WEDドメインおよびRuvCドメインは、他のドメインからの配列により中断されている三連配列構造を有し得る。例えば、アシダミノコッカス種Cas12a WEDドメイン配列は、REC1、REC2、およびPIドメイン配列により中断されている。加えて、Cas12タンパク質のある特定のサブタイプは、RuvCドメイン配列に隣接しているかまたはRuvCドメイン配列間に生じる架橋ヘリックスドメインを含む。
【0311】
Cas12タンパク質の領域を改変して、Cas12タンパク質の活性を調節し得る。例えば、PIドメイン(598~718)およびにWEDドメイン(526~597および719~883)の残基に対応するアシダミノコッカス種(株BV3L6)Cas12aタンパク質の領域を改変して、PAM特異性を変更し得る。例えば、Toth他(Nucleic Acid Research、2020、48(7):3722~3733頁)を参照されたい。REC1(24~319)およびREC2(320~526)ドメインの残基に対応するアシダミノコッカス種(株BV3L6)Cas12aタンパク質中の領域を改変して、ターゲットへの会合および切断の動態を変更し得る。REC1(226~304)およびREC2(368~435)ドメインの領域は、標的結合配列および標的配列のPAM遠位末端と直接的に相互作用しており、標的配列の切断の効率を改変するように操作される。Nucドメイン(1066~1261)およびRuvCドメイン(940~956、957~1065、および1261~1307)の領域を改変して、標的配列の標的鎖、非標的鎖、または標的鎖および非標的鎖の切断効率を変更し得る。これらの領域の操作は、変異の導入、他のCas12オルソログからの対応する領域との置き換え、欠失、挿入等を含み得る。
【0312】
改変Cas12タンパク質を、Cas12 chRDNAガイド分子と組み合わせて使用して、Cas12タンパク質の活性または特異性を変更し得る。一部の場合には、Cas12タンパク質を改変して、Cas12 chRDNAガイド分子と複合体化した場合に活性または特異性を増強させ得、このCas12改変は、REC1、REC2、RuvC、WED、および/またはNucのドメインで生じる。一部の場合には、Cas12タンパク質を改変して、Cas12 chRDNAガイド分子と複合体化した場合に活性または特異性を増強させ得、このCas12a改変は、226~304、368~435、940~956、978~1158、1159~1180、および1181~1298(アシダミノコッカス種Cas12a配列に基づく付番)の領域で生じる。
【0313】
そのような変異を、部位特異的変異誘発により生じさせ得る。変異として、置換、付加、欠失、またはこれらの任意の組合せが挙げられる。一部の場合には、変異により、変異するアミノ酸がアラニンへと変換される。他の場合には、変異により、変異するアミノ酸が別のアミノ酸(例えば、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、リシン、またはアルギニン)へと変換される。変異により、変異するアミノ酸が非天然アミノ酸(例えばセレノメチオニン)へと変換される。変異により、変異するアミノ酸がアミノ酸模倣物(例えばリン模倣物)へと変換される。変異は、保存的変異であり得る。例えば、変異により、変異するアミノ酸が、変異するアミノ酸のサイズ、形状、電荷、極性、高次構造、および/または回転異性体と類似するアミノ酸へと変換される(例えば、システイン/セリン変異、リシン/アスパラギン変異、ヒスチジン/フェニルアラニン変異)。
【0314】
一部の実施形態では、Cas12タンパク質は、nCas12タンパク質である。nCas12タンパク質は、ヌクレアーゼが欠損しているCas12タンパク質のバリアントであり、「ニッキングCas12」または「Cas12-ニッカーゼ」とも称される。そのような分子は、エンドヌクレアーゼ活性の一部を欠いており、従って、標的核酸の一方の鎖のみに切れ目を入れることができる。例えば、Jinek他(Science、2012、337:816~821頁)を参照されたい。このことは、例えば、RuvCヌクレアーゼドメインに変異を導入することにより達成される。そのような改変の非限定的な例として、F.ノビシダ(F.novicida)Cas12aタンパク質のRuvCヌクレアーゼドメインに対するD917A、E1006A、およびD1225Aが挙げられる。RuvCヌクレアーゼドメインの活性を低減させるための他の触媒残基の変異も当業者により実行されることが理解される。得られたnCas12タンパク質は、二本鎖DNAを切断し得ないが、ガイド分子と複合体化する能力、標的DNA配列に結合する能力、および標的DNAの一方の鎖のみに切れ目を入れる能力を保持する。ターゲティング特異性は、PAM配列へのCas12タンパク質の結合、およびゲノム遺伝子座へのガイド分子の相補的な塩基対形成により決定される。本開示の一部の実施形態では、nCas12タンパク質は、nCas12aタンパク質である。
【0315】
一部の実施形態では、Cas12タンパク質は、dCas12タンパク質である。dCas12タンパク質は、ヌクレーゼで不活性化されているCas12タンパク質のバリアントであり、「触媒的に不活性なCas12タンパク質」、「酵素的に不活性なCas12」、「触媒的に死滅したCas12」、または「死滅Cas12」とも称される。そのような分子は、エンドヌクレアーゼ活性を欠いており、従って、RNAガイド的に遺伝子を制御するために使用される。例えば、Jinek他(Science、2012、337:816~821頁)を参照されたい。当業者は、RuvCドメインの活性を除去するための触媒残基の変異を実行し得る。得られたdCas12タンパク質は、二本鎖DNAを切断し得ないが、ガイド分子と複合体化する能力、および標的DNA配列に結合する能力を保持する。ターゲティング特異性は、PAM配列へのCas12タンパク質の結合、およびゲノム遺伝子座へのガイド分子の相補的な塩基対形成により決定される。本開示の一部の実施形態では、dCas12タンパク質は、dCas12aタンパク質である。
【0316】
ある特定のCas12タンパク質サブタイプは、RuvC様ヌクレアーゼドメインの不活性化、またはRuvC様ヌクレアーゼドメインの一部もしくは全部の欠落に起因して、ヌクレアーゼ活性を欠いている。そのようなサブタイプの1つであるV-K型および関連タンパク質Cas12kは、代わりに、Tn7様転位性エレメントtnsB、tnsC、tniQに関連している。例えば、Strecker他(Science2019、364(6448):48~53頁)を参照されたい。Cas12kは、ガイド分子と複合体化する能力、および標的DNA配列に結合する能力を保持しており、関連するTn7様タンパク質は、RNAによりガイドされるDNA配列の転位を促進する。本開示の一部の実施形態では、Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体は、Cas12k chRDNAガイド/核タンパク質複合体である。
【0317】
他のアミノ酸変更として、グリコシル化形態のアミノ酸、他の分子との凝集性コンジュゲート、および無関係な化学実体(例えばペグ化分子)との共有結合的コンジュゲートが挙げられる。共有結合的バリアントを、アミノ酸鎖またはN末端残基もしくはC末端残基で見出される基と官能基とを連結することにより製造し得る。一部の場合では、変異した部位特異的ポリペプチドとして、対立遺伝子バリアントおよび種バリアントも挙げられる。
【0318】
ある特定の実施形態では、Cas12タンパク質は、Cas12タンパク質由来の第1のドメインと、Csy4タンパク質等の異なるタンパク質由来の第2のドメインとを含む融合タンパク質またはキメラタンパク質であり得る。Cas12タンパク質への融合改変により、改変Cas12タンパク質に追加の活性が付与される。そのような活性としては、核酸標的配列に関連するポリペプチド(例えばヒストン)を改変するヌクレアーゼ活性、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、DNA修復活性、DNA損傷活性、脱アミノ化活性、ジスムターゼ活性、アルキル化活性、脱プリン化活性、酸化活性、ピリミジン二量体形成活性、インテグラーゼ活性、トランスポサーゼ活性、リコビナーゼ活性、ポリメラーゼ活性、リガーゼ活性、ヘリカーゼ活性、フォトリアーゼ活性、グリコシラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、脱アセチラーゼ活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性、逆転写酵素活性、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、および/またはミリストイル化活性もしくは脱ミリストイル化活性が挙げられる。
【0319】
ある特定の実施形態では、Cas12タンパク質は、1つまたはそれ以上のNLS配列(例えば、Cas12タンパク質配列に付加されているおよび/またはその内に挿入されている)を含み得る。NLS配列は、例えば、N末端に位置し得るか、C末端に位置し得るか、Cas12タンパク質(例えばCas12aタンパク質)内部に位置し得るか、またはこれらの組合せを含み得る(例えば、N末端における1つまたはそれ以上のNLS、およびC末端における1つまたはそれ以上のNLS)。
【0320】
ある特定の実施形態では、Cas12aタンパク質を含むCas12タンパク質は、複数のNLS配列、例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つのNLS配列を含み得る。複数のNLS配列は、Cas12aタンパク質の単一の末端に存在し得る(例えば、NLS配列は、N末端またはC末端のみに存在している)か、または両方の末端に存在し得る(例えば、N末端における1つまたはそれ以上のNLS配列、およびC末端における1つまたはそれ以上のNLS配列)。NLS配列は、完全合成であり得るか、改変されているか、または内在性もしくは外来性のタンパク質配列に由来し得る。一部の実施形態では、Cas12aタンパク質を含むCas12タンパク質は、SV40大型T抗原、ヌクレオプラスミン、53BP1、VACM-1/CUL5、CXCR4、VP1、ING4、IER5、ERK5、UL79、EWS、Hrp1、cMyc(1)、cMyc(2)、マウスc-able IV、Matα2、およびMINIYOから選択されるNLS配列を含み得るか、またはこのNSL配列から改変されているかもしくはこのNSL配列に由来し得る。
【0321】
一部の実施形態では、Cas12aタンパク質を含むCas12タンパク質は、配列番号04、05、および493~507のうちのいずれかから選択されるNLS配列を含み得るか、またはこのNLS配列から改変されているかもしくはこのNLS配列由来し得る。改変されているかもしくは由来するNLS配列は、参照NLS配列(例えば、配列番号04、05、および493~507のうちのいずれかから選択されるNLS配列)に関して、例えば、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、または1個のアミノ酸置換;5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、もしくは1個のアミノ酸欠失、および/または5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、もしくは1個のアミノ酸付加を含み得る。
【0322】
一部の実施形態では、NLS配列は、例えば、配列番号04、05、および493~507のうちのいずれかから選択されるNLS配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
【0323】
NLS配列は、直接的にまたはリンカーポリペプチドを介して、(例えば、Cas12タンパク質に、別のNLS配列に、またはCas12タンパク質に付着した融合ペプチド配列に)共有結合的に付着し得る。リンカー配列の長さは、特定のCas12タンパク質の構造特性(例えば、末端の溶媒アクセス性、末端における他の重要な機能的ペプチド配列の存在等)に応じて最適化されて、コグネートインポーチンタンパク質の結合および輸送のためのNLS配列のアクセス性が確保される。加えて、本明細書の実施例11で説明されているように、望ましいリンカー長を経験的にスクリーニングすることも可能である。
【0324】
一部の実施形態では、NLS配列は、1つまたはそれ以上のアミノ酸を含むリンカー配列を介して、(例えば、Cas12タンパク質に、別のNLS配列に、またはCas12タンパク質に付着した融合ペプチド配列に)共有結合的に付着している。一部の実施形態では、リンカー配列は、少なくとも1つのグリシン、セリン、および/またはスレオニン残基を含む。一部の実施形態では、リンカー配列は、少なくとも1つのグリシン残基、および少なくとも1つのセリン残基を含む。一部の実施形態では、リンカー配列は、複数のグリシン残基、および少なくとも1つのセリン残基を含む。一部の実施形態では、リンカー配列は、GS配列からなるか、またはGS配列を含む。一部の実施形態では、リンカー配列は、GGGGS配列からなるか、またはGGGGS配列を含む。一部の実施形態では、リンカー配列は、GGGGSGGGGS配列からなるか、またはGGGGSGGGGS配列を含む。
【0325】
一部の実施形態では、Cas12aタンパク質は、C末端において、少なくとも1つのリンカー配列、および少なくとも1つのNLS配列を含む。一部の実施形態では、この少なくとも1つのNLS配列は、SV40大型T抗原、およびヌクレオプラスミン、またはそれらから改変されたかもしくはそれらに由来する配列から選択される。
【0326】
ある特定の実施形態では、Cas12aタンパク質は、C末端において、GGGGSGGGGSリンカー配列、およびヌクレオプラスミンNLS配列を含み、ヌクレオプラスミンNLS配列は、GGGGSGGGGSリンカー配列のC末端側に位置している。
【0327】
ある特定の実施形態では、Cas12aタンパク質は、C末端において、少なくとも1つのGSリンカー配列、SV40大型T抗原NLS配列、およびヌクレオプラスミンNLS配列を含み、ヌクレオプラスミンNLS配列は、SV40大型T抗原NLS配列のC末端側に位置している。その一部の実施形態では、第1のGSリンカー配列は、SV40大型T抗原NLS配列のN末端側に存在しており、第2のGSリンカー配列は、SV40大型T抗原NLS配列とヌクレオプラスミンNLS配列との間に存在している。
【0328】
ある特定の実施形態では、Cas12aタンパク質は、C末端において、GSリンカー配列、GGGGSGGGGSリンカー配列、SV40大型T抗原NLS配列、およびヌクレオプラスミンNLS配列を含み、ヌクレオプラスミンNLS配列は、SV40大型T抗原NLS配列のC末端側に位置している。その一部の実施形態では、GGGGSGGGGSリンカー配列は、SV40大型T抗原NLS配列のN末端側に存在しており、GSリンカー配列は、SV40大型T抗原NLS配列とヌクレオプラスミンNLS配列との間に存在している。
【0329】
ある特定の実施形態では、Cas12aタンパク質は、C末端において、GGGGSGGGGSリンカー配列、およびSV40大型T抗原NLS配列を含み、SV40大型T抗原NLS配列は、GGGGSGGGGSリンカー配列のC末端側に位置している。
【0330】
一部の実施形態では、Cas12aタンパク質は、C末端において、リンカーおよびNLS含有配列を含む。一部の実施形態では、このリンカーおよびNLS含有配列は、配列番号479~490から選択されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。一部の実施形態では、このリンカーおよびNLS含有配列は、配列番号479~490から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0331】
コグネートCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体をまた、当該技術分野で周知の方法を使用しても製造し得る。Cas12タンパク質成分を、組換えにより製造し、次いで、Cas12 chRDNAガイド分子およびCas12タンパク質を、当該技術分野で公知の方法を使用して合せて複合体化し得る。例えば、ガイド分子/Cas12タンパク質を含む核タンパク質複合体を構築する方法の非限定的な例を提供する実施例2を参照されたい。
【0332】
加えて、Cas12タンパク質を構成的に発現する細胞株を開発し得、かつCas12 chRDNAガイド成分でトランスフェクトし得、複合体を、アフィニティ、イオン交換、およびサイズ排除クロマトグラフィー等、これらに限定されない標準的な精製技術を使用して細胞から精製し得る。例えば、Jinek他(Science、2012、337:816~821頁)を参照されたい。
【0333】
公知の方法によれば、Cas12タンパク質を、Cas12タンパク質をコードする発現カセットを使用して製造し得る。発現カセットは、典型的には、この発現カセットが導入される宿主細胞中で機能する調節配列を含む。調節配列は、下記のうちの1つまたはそれ以上に関与する:転写の調節、転写後調節、および翻訳の調節。発現カセットは、発現ベクター中に存在し得、かつ細菌細胞、酵母細胞、植物細胞、および哺乳動物細胞を含む、多種多様な宿主細胞に導入される。
【0334】
Cas12タンパク質を、Cas12タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクター(例えば、発現ベクター)で製造し得る。Cas12タンパク質の製造に有用なベクターとして、プラスミド、ウイルス(ファージを含む)、および組込み可能な核酸断片(即ち、相同組換えにより宿主ゲノムに組込み可能な断片)が挙げられる。ベクターは、宿主ゲノムから独立して複製して機能するか、または場合によっては、ゲノム自体に組み込まれる。好適な複製ベクターは、意図された発現宿主細胞に適合する種に由来するレプリコンおよびコントロール配列を含む。一部の実施形態では、Cas12タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、誘導性プロモーター、抑制性プロモーター、または構成性プロモーターに作動可能に連結されている。発現ベクターは、タンパク質タグ(例えば、ポリHisタグ、ヘマグルチニンタグ、蛍光タンパク質タグ、生物発光タグ、核局在化タグ)をコードするポリヌクレオチドも含み得る。そのようなタンパク質タグのコード配列は、コード配列と融合するか、または発現カセット(例えばターゲティングベクター)に含まれる。
【0335】
発現ベクターの構築のための一般的な方法は、当該技術分野で公知である。ほとんどの宿主細胞用の発現ベクターが市販されている。昆虫細胞の形質転換および昆虫細胞中での遺伝子発現用の昆虫細胞ベクター、細菌の形質転換および細菌細胞中での遺伝子発現用の細菌プラスミド、細胞の形質転換ならびに酵母および他の真菌中での遺伝子発現用の酵母プラスミド、哺乳動物細胞の形質転換および哺乳動物細胞または哺乳動物中での遺伝子発現用の哺乳動物ベクター、細胞の形質転換および遺伝子発現用のウイルスベクター(レトロウイルス、レンチウイルス、およびアデノウイルスベクターを含む)等の適切なベクターの選択およびその構築を容易にするように設計されたいくつかの市販のソフトウェア製品、ならびにそのようなポリヌクレオチドのクローニングを容易に可能にするための方法が存在している。例えば、SnapGene(商標)(GSL Biotech LLC、ChicagoIll.;snapgene.com/resources/plasmid_files/your_time_is_valuable/)は、ベクター、個々のベクター配列、およびベクターマップの幅広いリスト、ならびに多くのベクターの商業的供給源を提供する。使用に適した多数の哺乳動物ベクターが市販されている(例えば、Life Technologie、,Grand Island、NY;NeoBiolab、Cambridge、MA;Promega、Madison、WI;ATUM、Menlo Park、CA;Addgene、Cambridge、MAから)。
【0336】
哺乳動物ウイルスに由来するベクターも、哺乳動物細胞中で本方法のCas12タンパク質成分を発現させるために使用し得る。これとして、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、パルボウイルス、ヘルペスウイルス、ポリオーマウイルス、サイトメガロウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、ワクシニア、およびシミアンウイルス40(SV40)等のウイルスに由来するベクターが挙げられる。例えば、Kaufman他(Mol.Biotech.、2000、16:151~160頁);およびCooray他(Methods Enzymol.、2012、507:29~57頁)を参照されたい。Cas12タンパク質コード配列に作動可能に連結された調節配列としては、アクチベーター結合配列、エンハンサー、イントロン、ポリアデニル化認識配列、プロモーター、リプレッサー結合配列、ステムループ構造、翻訳開始配列、翻訳リーダー配列、転写終結配列、翻訳終結配列、プライマー結合部位、および同類のものが挙げられる。一般的に使用されるプロモーターは、構成性哺乳動物プロモーターであるCMV、MND、EF1a、SV40、PGK1(マウスまたはヒト)、Ubc、CAG、CaMKIIa、およびベータ-Actであり、他は当該技術分野で公知である。例えば、Khan他(Advanced Pharmaceutical Bulletin、2013、3:257~263頁)を参照されたい。さらに、H1およびU6を含む、哺乳動物RNAポリメラーゼIIIプロモーターを使用し得る。
【0337】
遺伝子産物の発現には、HEK 293(ヒト胚性腎臓)およびCHO(チャイニーズハムスター卵巣)を含む、多くの哺乳動物細胞株が利用されている。この細胞株に、標準的な方法(例えば、リン酸カルシウムまたはポリエチレンイミン(EPI)、またはエレクトロポレーションを使用する)によりトランスフェクトし得る。他の典型的な哺乳動物細胞株としては、HeLa、U2OS、549、HT1080、CAD、P19、NIH 3T3、L929、N2a、ヒト胚腎293細胞、MCF-7、Y79、SO-Rb50、Hep G2、DUKX-X11、J558L、およびベビーハムスター腎(BHK)細胞が挙げられるが、これらに限定されない。そのような細胞は、Cas12タンパク質を製造するために使用される細胞の例である。
【0338】
ベクターを、原核生物に導入してそこで増殖させ得る。原核生物ベクターは、当該技術分野で周知である。典型的には、原核生物ベクターは、標的宿主細胞に適した複製起点(例えば、大腸菌(E.coli)由来のoriC、pBR322由来のpUC、サルモネラ(Salmonella)由来のpSC101)、15A起点(p15A由来)、および細菌人口染色体を含む。ベクターは、選択可能マーカー(例えば、アンピシリン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、およびカナマイシンに対する耐性をコードする遺伝子)を含み得る。Zeocin(商標)(Life Technologies、Grand Island、NY)を、細菌、真菌(酵母を含む)、植物、および哺乳動物細胞株での選択に使用し得る。従って、いくつかの生物での選択作作業のためのZeocin(商標)に対する1つの薬物耐性遺伝子のみを有するベクターを設計し得る。有用なプロモーターは、原核生物中でのタンパク質の発現で知られており、例えば、T5、T7、Rhamnose(誘導性)、Arabinose(誘導性)、およびPhoA(誘導性)である。さらに、T7プロモーターは、T7 RNAポリメラーゼもコードするベクターで広く使用されている。原核生物ベクターはまた、様々な強度のリボソーム結合部位、および分泌シグナル(例えば、mal、sec、tat、ompC、およびpelB)も含み得る。加えて、ベクターは、NATNAの発現用のRNAポリメラーゼプロモーターを含み得る。原核生物のRNAポリメラーゼの転写終結配列も周知である(例えば、S.ピオゲネス(S.pyogenes)からの転写終結配列)。
【0339】
原核生物中でのタンパク質の発現は、融合タンパク質または非融合タンパク質の発現を指示する構成性プロモーターまたは誘導性プロモーターを含むベクターにより、大腸菌中で頻繁に実行される。しかしながら、他の原核生物系を使用するタンパク質発現は、本開示の範囲内である。
【0340】
一部の実施形態では、ベクターは、酵母発現ベクターである。サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)での発現用のベクターの例としては、pYepSec1、pMFa、pJRY88、pYES2、およびpicZが挙げられるが、これらに限定されない。酵母細胞での遺伝子発現の方法は、当該技術分野で公知である。例えば、Christine GuthrieおよびGerald R.Fink(Methods in Enzymology、2004、194巻、Elsevier Academic Press、San Diego、CAでの「Guide to Yeast Genetics and Molecular and Cell Biology,Part A」)を参照されたい。典型的には、酵母でのタンパク質コード遺伝子の発現には、目的のコード領域に作動可能に連結されたプロモーター、および転写ターミネーターが必要である。様々な酵母プロモーターを使用して、酵母での遺伝子の発現用の発現カセットを構築し得る。
【0341】
Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体を使用する細胞のゲノム編集
本開示のCas12 chRDNAガイド分子、Cas12タンパク質、およびCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体の、インビトロ、エクスビボ、またはインビボでの細胞への送達を、当業者に公知のいくつかの方法により達成し得る。これらの成分を細胞に導入するための非限定的な方法として、ウイルスベクター送達、ソノポレーション、細胞圧迫、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクション、リポフェクション、パーティクルガン技術、マイクロプロジェクタイルボンバードメント、または化学物質(例えば細胞透過ペプチド)が挙げられる。
【0342】
一部の実施形態では、エレクトロポレーションを使用して、本開示のCas12 chRDNAガイド分子を細胞に送達し得る。エレクトロポレーションを使用して、本開示のCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体も送達し得る。これらの方法では、chRDNAガイド分子またはCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体を、エレクトロポレーション緩衝液中で標的細胞と混合して、懸濁液を形成する。次いで、この懸濁液に、最適な電圧で電気パルスを印加し、それにより、細胞膜のリン脂質二重層に孔が一時的に形成され、この孔を通って(核酸およびタンパク質のような)荷電分子を細胞中に運ぶことが可能になる。エレクトロポレーションを実施するための試薬および機器は、市販されている。
【0343】
実施例3は、Cas12ガイド/核タンパク質複合体による活性化T細胞のヌクレオフェクションを示す。実施例5は、Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体による活性化T細胞のヌクレオフェクションを示す。
【0344】
Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体を使用して、標的核酸を切断し得るか、またはそれに結合し得る。Cas12 chRDNAガイド分子を、Cas12タンパク質と共に細胞に導入し得、それにより、Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体が形成される。Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体は、PAMを含む、標的核酸にハイブリダイズし得る。一実施形態では、本開示は、ポリヌクレオチド(例えば二本鎖DNA(dsDNA))中の核酸標的配列に結合する方法であって、細胞への導入のために1種またはそれ以上のCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体を準備すること、およびCas12核タンパク質複合体を細胞中に送達し、それにより、Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体と標的ポリヌクレオチド配列との接触を促進することを含む方法を包含する。一実施形態では、第1のCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体は、ポリヌクレオチド中の第1の核酸標的配列と相補的な第1のターゲティング領域エレメントを有するCas12 chRDNAガイド分子を含み、第2のCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体は、ポリヌクレオチド中の第2の核酸標的配列と相補的な第2のターゲティング領域を有するCas12 chRDNAガイド分子を含む。Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体とポリヌクレオチドとの接触により、Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体は、ポリヌクレオチド中の核酸標的配列に結合する。一実施形態では、ポリヌクレオチド中において、第1のCas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体は、第1の核酸標的配列に結合し;第2のCas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体は、第2の核酸標的配列に結合する。
【0345】
核酸標的配列に結合するそのような方法を、インビトロ(例えば、生化学反応中または培養細胞中;一部の実施形態では、培養細胞は、培養液中に留まっておりヒトには導入されないヒト培養細胞である)で実行し得るか;インビボで(例えば、生体の細胞中、但し、一部の実施形態では、生物は、非ヒト生物であるという条件で)実行し得るか;またはエクスビボで(例えば、対象から取り出された細胞、但し、一部の実施形態では、対象は、非ヒト対象であるという条件で)実行し得る。
【0346】
本開示のCas12 chRDNAガイド分子、Cas12タンパク質、およびCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体の細胞への送達を、この成分を生物学的区画にパッケージすることにより達成し得る。この成分を含む生物学的区画を、インビボで(例えば、生体の細胞中、但し、一部の実施形態では、生物は、非ヒト生物であるという条件で)投与し得る。生物学的区画としては、ウイルス(レンチウイルス、アデノウイルス)、ナノスフェア、リポソーム、量子ドット、ナノ粒子、マイクロ粒子、ナノカプセル、小胞、ポリエチレングリコール粒子、ヒドロゲル、およびミセルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0347】
例えば、生物学的区画は、リポソームを含み得る。リポソームは、1つまたはそれ以上の脂質二重層を含む自己集合性構造であり得、これらの脂質二重層のそれぞれは、反対向きの両親媒性脂質分子を含む2つの単層を含み得る。両親媒性脂質は、1つもしくは2つまたはそれ以上の非極性(疎水性)アクリルまたはアルキル鎖に供給結合的に連結された極性(親水性)頭部基を含み得る。疎水性アシル鎖と周囲の水性媒体との間のエネルギー的に不利な接触により、両親媒性脂質分子は、極性頭部基が二重層の表面に向かって配向され、アシル鎖が二重層の内部に向かって配向されるように配置され、アシル鎖と水性環境との接触を効果的に遮断することができる。
【0348】
リポソームで使用される好ましい両親媒性化合物の例として、ホスホグリセリドおよびスフィンゴ脂質が挙げられ、これらの代表例としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、ホスファチジグリセロール、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジリノレオイルホスファチジルコリン、卵スフィンゴミエリン、またはこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0349】
生物学的区画は、ナノ粒子を含み得る。ナノ粒子は、約40ナノメートル~約1.5マイクロメートル、約50ナノメートル~約1.2マイクロメートル、約60ナノメートル~約1マイクロメートル、約70ナノメートル~約800ナノメートル、約80ナノメートル~約600ナノメートル、約90ナノメートル~約400ナノメートル、または約100ナノメートル~約200ナノメートルの直径を含み得る。一部の場合では、ナノ粒子のサイズが増加すると、放出速度が遅延されるかまたは延長され、ナノ粒子のサイズが減少すると、放出速度が増加する。
【0350】
ある特定の実施形態では、Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体を、生物学的区画にパッケージする。一部の場合では、Cas12をコードする核酸、および化学的に合成されたchRDNAガイドを、生物学的区画にパッケージする。一部の場合では、Cas12をコードするmRNA、および化学的に合成されたchRDNAガイドを、生物学的区画にパッケージする。
【0351】
核酸配列とポリペプチドとの間の相互作用を評価するためのおよび/または定量するための様々な方法が当該技術分野で公知であり、以下:免疫沈降(ChIP)アッセイ、DNA電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)、DNAプルダウンアッセイ、ならびにマイクロプレート捕捉および検出アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。これらの方法の多くを実施するために市販のキット、材料、および試薬が利用可能であり、例えば、下記の供給業者から入手し得る:Thermo Scientific(Wilmington、DE)、Signosis(Santa Clara、CA)、Bio-Rad(Hercules、CA)、およびPromega(Madison、WI)。ポリペプチドと核酸配列との間の相互作用を検出するための一般的なアプローチは、EMSAである(例えば、Hellman L.M.他、Nature Protocols 2(8):1849~1861頁(2007)を参照されたい)。
【0352】
別の実施形態では、本開示は、ポリヌクレオチド中の核酸標的配列を切断する(例えば、dsDNA中での一本鎖切断、またはdsDNA中での二本鎖切断)方法であって、細胞への導入のために1種またはそれ以上のCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体を準備すること、およびCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体を細胞中に送達し、それにより、Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体とポリヌクレオチドとの接触を促進することを含む方法を包含する。一実施形態では、ポリヌクレオチド中の第1の核酸標的配列と相補的な第1のターゲティング領域を有する第1のCas12 chRDNAガイド分子を含む第1のCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体;およびポリヌクレオチド中の第2の核酸標的配列と相補的な第2のターゲティング領域を有する第2のCas12 chRDNAガイド分子を含む第2のCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体を、細胞に導入する。この接触により、Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体によってポリヌクレオチド(例えばdsDNA)中の核酸標的配列が切断される。一実施形態では、第1のCas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体は、dsDNA中の第1の核酸標的配列に結合してこのdsDNAの第1の鎖を切断し;第2のCas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体は、dsDNA中の第2の核酸標的配列に結合してこのdsDNAの第2の鎖を切断する。一部の実施形態では、核酸標的配列は、DNAまたはゲノムDNAである。核酸標的配列に結合するそのような方法を、インビトロで、細胞中(例えば培養細胞中)で、エクスビボ(例えば、対象から取り出された幹細胞)で、およびインビボで実行する。
【0353】
標的核酸配列は、例えば、ポリヌクレオチド配列もしくはゲノム中の所望の位置、および/または欠失するかもしくは破壊されるポリヌクレオチド配列もしくはゲノム中の所望の遺伝子配列に基づいて適切に選択される。
【0354】
ポリヌクレオチド中の核酸標的配列を切断する追加の実施形態では、ドナーポリヌクレオチドも細胞に導入して、このドナーポリヌクレオチドの少なくとも一部の細胞のゲノムDNA中への組込みを促進し得る。典型的には、ドナーポリヌクレオチドは、部位特異的標的核酸切断に近接し、二本鎖切断の部位へのドナーポリヌクレオチドの挿入(例えば相同組換え)が増強される。一部の場合では、ドナーポリヌクレオチドは、二本鎖切断を生じるCas12タンパク質(例えばCas12a)に結合することにより、標的核酸中の二本鎖切断の部位に近接する。
【0355】
ドナーポリヌクレオチド配列は、例えば追求される所望の改変に基づいて、適切に選択される。例えば、ドナーポリヌクレオチドは、目的のタンパク質の全てまたは一部をコードし得る。一部の実施形態では、ドナーポリヌクレオチドは、CARをコードし得る。
【0356】
本開示は、さらに、ウイルスによる細胞へのドナーポリヌクレオチドの送達であって、このドナーポリヌクレオチドは、CARをコードする、送達を包含する。
【0357】
一部の実施形態では、ドナーポリヌクレオチドは、一本鎖であり得る。一部の実施形態では、ドナーポリヌクレオチドは、二本鎖であり得る。一部の実施形態では、ドナーDNAは、小環状であり得る。一部の実施形態では、ドナーポリヌクレオチドは、プラスミドであり得る。一部の実施形態では、プラスミドは、超らせんであり得る。一部の実施形態では、ドナーポリヌクレオチドは、メチル化されている。一部の実施形態では、ドナーポリヌクレオチドは、メチル化されていない。ドナーポリヌクレオチドは、改変を含み得る。改変として、本明細書で説明されているものが挙げられ、例えば、ビオチン化、化学的コンジュゲート、および合成ヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0358】
治療用組成物、適用、および方法
本開示のCas12 chRDNAガイド分子、およびCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体を、改変細胞(例えばCAR発現細胞)の製造で使用し得る。そのような改変細胞を、例えば、細胞療法(例えば、細胞の投与による疾患の処置または予防)の分野で使用し得、特に、養子細胞療法に使用し得る。そのように投与された細胞は、例えば、遺伝子改変養子細胞であり得る。遺伝子改変を、1つまたはそれ以上の送達技術を使用して、本明細書で開示されているCas12 chRDNAガイド分子およびCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体により養子細胞に導入し得る。本開示は、例えば、それらが投与されるレシピエントに関して自己であるかまたは同種である細胞の改変および投与を包含する。本明細書で使用される場合、「同種」という用語は、同一種の遺伝的に同一ではない、異なる個体を指す。例えば、同種細胞は、(この細胞が投与されるレシピエントに関して)同種の遺伝的に同一ではない、異なる個体に由来する細胞を指す。これに対して、「自己」という用語は、同一個体を指す。例えば、個体に投与される自己細胞は、その同じ個体に由来する細胞(改変もしくは非改変、またはその改変もしくは非改変子孫)を指す。
【0359】
「養子細胞」は、細胞療法処置での使用のために遺伝子改変される細胞を指す。養子細胞としては、幹細胞、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞、臍帯血幹細胞、リンパ球、ナチュラルキラー細胞、線維芽細胞、内皮細胞、上皮細胞、膵臓前駆細胞、および同類のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0360】
「幹細胞」は、自己再生能力(即ち、未分化状態を維持しつつ細胞分裂サイクルを多数繰り返す能力)を有する細胞を指す。幹細胞は、全能性、多能性、複能性、少能性、または単能性であり得る。幹細胞は、胚性幹細胞、胎児性幹細胞、羊水性幹細胞、成体幹細胞、または人工多能性幹細胞である。
【0361】
「人工多能性幹細胞」(iPSC)は、非多能性細胞(典型的には体細胞)から人工的に誘導される多能性幹細胞の一種を指す。一部の実施形態では、体細胞は、ヒト体細胞である。体細胞の例としては、真皮線維芽細胞、骨髄由来間葉細胞、心筋細胞、ケラチン生成細胞、肝細胞、胃細胞、神経幹細胞、肺細胞、腎細胞、脾細胞、および膵細胞が挙げられるが、これらに限定されない。体細胞のさらなる例として、免疫系の細胞が挙げられ、この免疫系の細胞としては、B細胞、樹状細胞、顆粒球、先天性リンパ系細胞、巨核球、単球/マクロファージ、骨髄由来サプレッサ細胞、NK細胞、T細胞、胸腺細胞、および造血幹細胞が挙げられるが、これらに限定されない。多能性幹細胞は、体細胞、NK細胞、NK様細胞、T細胞、T細胞様細胞、NK-T細胞、NK-T細胞様細胞、樹状細胞、樹状様細胞、マクロファージ、およびマクロファージ様細胞を含む、複数の細胞型に分化される。多能性幹細胞を、Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体により、分化の前または後に編集し得る。iPSCを、CARをコードする配列等の外来性遺伝子または配列のゲノムへの導入により、分化の前または後にさらに改変し得る。
【0362】
「造血幹細胞」は、リンパ球等の造血細胞に分化する能力を有する未分化細胞を指す。
【0363】
「リンパ球」は、脊椎動物の免疫系の一部である白血球(leukocyte)(白血球(white blood cell))を指す。「リンパ球」という用語に同様に包含されるのは、リンパ球細胞を生じる造血幹細胞である。リンパ球としては、細胞媒介性細胞傷害性適応免疫のT細胞、例えば、CD4+および/またはCD8+細胞傷害性T細胞;アルファ/ベータT細胞およびガンマ/デルタT細胞;制御性T細胞、例えばTreg細胞;細胞媒介性細胞傷害性自然免疫で機能するナチュラルキラー(NK)細胞;および液性抗体駆動性適応免疫のためのB細胞;NK/T細胞;サイトカイン誘導性キラー細胞(CIK細胞);および抗原提示細胞(APC)、例えば樹状細胞が挙げられる。リンパ球は、ヒト細胞等の哺乳動物細胞であり得る。
【0364】
「リンパ球」という用語に同様に包含されるのは、本明細書で使用される場合、標的細胞のタンパク質または(糖)脂質抗原を認識し得る1つまたはそれ以上の特定の天然に存在するかまたは操作されたT細胞受容体を発現するように遺伝的に操作されたT細胞受容体操作T細胞(TCR)である。これらの抗原の小さい断片(例えばペプチドまたは脂肪酸)は、標的細胞表面に移されて、主要組織適合複合体(MHC)の一部としてT細胞受容体に提示される。抗原負荷MHCへのT細胞受容体の結合により、リンパ球が活性化される。
【0365】
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)もまた、本明細書中で使用される場合には、「リンパ球」という用語に包含される。TILは、腫瘍内外の環境(「腫瘍微小環境」)に侵入した免疫細胞である。TILは、典型的には、腫瘍細胞および腫瘍微小環境から単離されて、腫瘍抗原に対する高い反応性に関してインビトロで選択される。TILは、インビボで存在する寛容化の影響を克服する条件下にてインビトロで増殖され、次いで、処置のために対象に導入される。
【0366】
「リンパ球」という用語はまた、遺伝子改変T細胞およびNK細胞(例えば、T細胞表面またはNK細胞表面でキメラ抗原受容体(CAR)を産生するように改変されたもの(CAR-T細胞およびCAR-NK細胞))も包含する。
【0367】
リンパ球を、対象(例えばヒト対象)から単離し得、例えば、例えばTILの場合等には血液もしくは固体腫瘍から単離し得るか、またはリンパ器官(例えば、胸腺、骨髄、リンパ節、および粘膜関連リンパ組織)から単離し得る。リンパ球を単離する技術は、当該技術分野で周知である。例えば、リンパ球を、末梢血単核細胞(PBMC)から単離し得、PBMCは、例えば、Ficoll、血液の層を分離する親水性多糖、および密度勾配遠心分離を使用して全血から分離される。通常、抗凝固剤または脱線維血液検体は、Ficoll溶液の上部で層状になり、遠心分離されて細胞の異なる層が形成される。底部層は、赤血球(red blood cell)(赤血球(erythrocytes))を含み、赤血球は、Ficoll培地により回収されるかまたは凝集され、底部まで完全に沈む。次の層は、顆粒球を主に含有し、顆粒球もまた、Ficoll-paque溶液を通過して下方に移動する。次の層は、リンパ球を含み、リンパ球は、典型的には、単球および血小板と一緒に、血漿とFicoll溶液との界面に存在している。リンパ球を単離するために、この層を回収し、塩溶液で洗浄して血小板、Ficoll、および血漿を除去し、次いで再度遠心分離する。
【0368】
リンパ球を単離するための他の技術として、抗体がコーティングされたプラスチック表面に目的の細胞を結合させることにより、細胞集団を溶液から単離する、バイオパニングが挙げられる。次いで、望まれていない細胞を、特異的抗体および補体による処理により除去する。加えて、蛍光活性化セルソーター(FACS)分析を使用して、リンパ球を検出および計数し得る。FACS分析は、光散乱および蛍光の差異に基づいて、標識された細胞を分離するフローサイトメーターを使用する。
【0369】
TILに関して、リンパ球を、腫瘍から単離し、例えば高用量IL-2中で増殖させ、自己腫瘍またはHLA一致腫瘍細胞株のいずれかに対するサイトカイン放出共培養アッセイを使用して選択する。急速な増殖のために、同種非MHC一致コントロールと比較して特異的反応性が増加した証拠がある培地を選択し得、次いで、対象に導入してがんを処置し得る。例えば、Rosenberg他(Clin.Cancer Res.、2011、17:4550~4557頁);Dudly他(Science、2002、298:850~854頁);Dudly他(J.Clin.Oncol.、2008、26:5233~5239頁);およびDudley他(J.Immunother.、2003、26:332~342頁)を参照されたい。
【0370】
単離すると、リンパ球を、特異性、頻度、および機能に関して特徴付け得る。頻繁に使用されるアッセイとして、T細胞応答の頻度を測定するELISPOTアッセイが挙げられる。
【0371】
単離後に、リンパ球を、増殖および特殊なエフェクターリンパ球への分化を促進するために、当該技術分野で周知の技術を使用して活性化し得る。活性化されたT細胞の表面マーカーとして、例えば、CD3、CD4、CD8、PD1、IL2R、および同類のものが挙げられる。活性化された細胞傷害性リンパ球は、標的細胞の表面上のコグネート受容体との結合後に、標的細胞を死滅させ得る。NK細胞の表面マーカーとして、例えば、CD16、CD56、および同類のものが挙げられる。
【0372】
単離、および場合により活性化の後、リンパ球を、養子T細胞免疫療法での使用のために、本開示のCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体を使用して改変し得る。養子免疫療法は、典型的には、患者の免疫細胞(自己細胞)を利用してがんを処置する。しかしながら、養子免疫療法を生じる本方法はまた、第三者のドナー細胞(同種細胞)の使用も可能であり、「既製」療法がもたらされる。
【0373】
そのため、一部の実施形態では、養子免疫療法で使用されるリンパ球は、対象から単離され、エクスビボで改変され、次いで同一の対象に再導入される。この技術は、「自己リンパ球療法」として公知である。
【0374】
あるいは、リンパ球を単離し得、エクスビボで改変し、別の対象に導入し得る。この技術は、「同種リンパ球療法」として公知である。
【0375】
ある特定の実施形態では、Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体を、同種細胞を含む治療用組成物の製造に使用する。好ましい実施形態では、同種細胞は、T細胞である。より好ましい実施形態では、このT細胞は、CARを発現する。さらにより好ましい実施形態では、このCARは、がんと関連する抗原を標的とする。
【0376】
一部の実施形態では、T細胞を、より安全で効率的な同種療法を可能にするように改変し得る。例えば、T細胞受容体α定数(TRAC)は、αβ TCRの一部を形成するタンパク質コード遺伝子である。従って、TRAC中での選択された変異、およびTRACの発現のノックアウトは、同種細胞療法中にGvHDを除去するのに役立ち得る。例えば、Poirot他(Cancer Res.、2015、75:3853~3864頁)を参照されたい。CRISPR-Cas9システムを使用してTRAC遺伝子座にCD19特異的CARを誘導することにより、腫瘍拒絶が起こり得ることが分かっている。例えば、Eyquem他(Nature、2017、543:113)を参照されたい。同様に、αβ TCRの発現を防止するために、T細胞受容体β定数(TRBC)も標的とされる。例えば、Ren他(Clin.Cancer Res.、2017、23:2255~2266頁)を参照されたい。
【0377】
プログラム細胞死タンパク質1(PD1、PDCD1、およびCD279としても既知である)は、免疫系の下方制御およびT細胞炎症活性を抑制することによる自己寛容の促進で重要な役割を果たす細胞表面受容体である。PDCD1は、そのコグネートリガンドである「プログラム死リガンド1」(PD-L1、CD274、およびB7相同体1(B7-H1)としても既知である)に結合する。PD1は、リンパ節中の抗原特異的T細胞のプログラム細胞死(アポトーシス)を促進し、同時に抗炎症抑性T細胞(制御性T細胞)のアポトーシスを低減させる二重機序により、自己免疫を防ぐ。これらの機序により、PD-1のPD1結合により免疫系が阻害され、そのため自己免疫障害が予防されるが、免疫系ががん細胞を死滅させることも妨げられる。従って、PD1の産生を変異させるかまたはノックアウトすることは、T細胞療法に有益であり得る。
【0378】
PD1は、「免疫チェックポイント」分子の一例である。免疫チェックポイント分子は、免疫反応を下方に調節するかまたは阻害するのに役立つ。免疫チェックポイント分子としては、PD1、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4、CD152としても既知である)、LAG3(CD223としても既知である)、Tim3(HAVCR2としても既知である)、BTLA(CD272としても既知である)、BY55(CD160としても既知である)、TIGIT(IVSTM3としても既知である)、LAIR1(CD305としても既知である)、SIGLEC10、2B4(CD244としても既知である)、PPP2CA、PPP2CB、PTPN6、PTPN22、CD96、CRTAM、SIGLEC7、SIGLEC9、TNFRSF10B、TNFRSF10A、CASP8、CASP10、CASP3、CASP6、CASP7、FADD、FAS、TGFBRII、TGFRBRI、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD10、SKI、SKIL、TGIF1、IL10RA、IL10RB、HMOX2、IL6R、IL6ST、EIF2AK4、CSK、PAG1、SIT1、FOXP3、PRDM1、BATF、GUCY1A2、GUCY1A3、GUCY1B2、およびGUCY1B3が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、本開示のCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体を使用して、1種またはそれ以上の免疫チェックポイント分子を不活性化させる。一部の実施形態では、1種またはそれ以上の免疫チェックポイント分子の不活性化は、上記で説明したように、1種またはそれ以上のTCR成分の不活性化と組み合わされる。
【0379】
ベータ-2ミクログロブリン(B2M)は、有核細胞上に存在するMHCクラスI分子の成分である。ベータ-2ミクログロブリンは、腫瘍細胞等の細胞から血液中に放出され、HLA I複合体の構築および発現に不可欠である。しかしながら、同種T細胞の表面上のHLAの発現により、宿主免疫系のT細胞による急速な拒絶が引き起こされる。そのため、ベータ-2ミクログロブリンの発現を撹乱することはまた、同種T細胞療法の効率の向上にも望ましい。加えて、同種T細胞上でのMHCクラスI分子の発現の欠如により、宿主免疫系によるクリアランスが引き起こされる。そのため、細胞の表面上でのHLA分子のサブセットのみ(好ましくはHLA-E)の提示が望ましい。
【0380】
さらなる遺伝子を、本明細書で開示されているCas12 chRDNAガイドの同様の標的にして、養子免疫細胞療法の有効性を増強し得る。好ましい遺伝子および染色体上の位置(hg38ゲノムアセンブリ)の非限定的な例を、表4に示す。
【0381】
【0382】
一部の実施形態では、本明細書で開示されているCas12 chRDNAガイドを使用して、細胞内で、TRACをコードする遺伝子を標的とする。一部の実施形態では、本明細書で開示されているCas12 chRDNAガイドを使用して、細胞内で、PD1をコードする遺伝子を標的とする。一部の実施形態では、本明細書で開示されているCas12 chRDNAガイドを使用して、細胞内で、B2Mをコードする遺伝子を標的とする。一部の実施形態では、本明細書で開示されているCas12 chRDNAガイドを使用して、細胞内で、TRACをコードする遺伝子およびB2Mをコードする遺伝子を標的とする。
【0383】
本開示のCas12 chRDNA/核タンパク質複合体を使用して改変された細胞を、例えば、がんの処置のための養子細胞療法で使用し得る。その一部の実施形態では、この改変細胞は、遺伝子改変リンパ球である。そのような遺伝子改変リンパ球(例えばCAR-T細胞)を使用して、対象の様々なタイプのがんを処置し得、前立腺がん;卵巣がん;子宮頸がん;結腸直腸がん;腸がん;睾丸がん;皮膚がん;肺がん;甲状腺がん;骨がん;乳がん;膀胱がん;子宮がん;膣がん;膵がん;肝がん;腎がん;脳がん;脊髄がん;口腔がん、耳下腺腫瘍;血液がん;リンパ腫、例えば、B細胞リンパ腫;および白血病等が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、そのような処置に、改変細胞の有効量を使用する。
【0384】
表5に、本開示のCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体を使用して製造された養子細胞(例えばCAR-T細胞)を使用して処置可能な代表的なB細胞白血病およびリンパ腫を列挙する。本明細書で開示されているCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体により改変されたリンパ球は、表5で列挙されている疾患の処置に限定されないことを理解されたい。
【0385】
【0386】
他の実施形態では、他の細胞増殖性障害を、本開示のCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体を使用して製造された養子細胞(例えばCAR-T細胞)を使用して処置し得、前がん状態;血液障害;および免疫障害、例えば自己免疫疾患、例えば、限定されないが、アジソン病、セリアック病、1型糖尿病、グレーブス病、橋本病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、強皮症、および全身性エリテマトーデスが挙げられる。
【0387】
本明細書で説明されている養子細胞療法処置を、同時にまたは異なる時間で、抗体療法、化学療法、サイトカイン療法、樹状細胞療法、遺伝子療法、ホルモン療法、レーザー光療法、および放射線療法からなる群から選択される1つまたはそれ以上の追加の治療と組み合わせ得る。
【0388】
対象への本開示の改変細胞の投与を、任意の便利な様式で(例えば、エアロゾル吸入、注射、経口摂取、輸血、移植(implantation)、または移植(transplantation)によって)実行し得る。本明細書で説明されている組成物を、皮下、皮内、腫瘍内、節内、髄内、筋肉内、静脈内注射もしくはリンパ内注射により、または腹腔内で、患者に投与し得る。
【0389】
一実施形態では、本開示の改変細胞組成物を、好ましくは、静脈内注射により投与する。この投与は、体重1kg当たり104~109個の細胞(好ましくは、105~106個の細胞/kg体重)の投与を含み得る。細胞を、1回またはそれ以上の用量で投与し得る。一部の実施形態では、改変細胞の有効量を、単回用量として投与する。他の実施形態では、細胞の有効量を、ある期間にわたり複数回用量として投与する。特定の疾患または状態に関する所与の細胞型の有効量の最適範囲の決定は、当業者の技能の範囲内である。
【0390】
キメラ抗原受容体(CAR)細胞
一部の実施形態では、養子細胞は、CAR発現細胞である。CARは、特定の抗原またはエピトープを認識して結合するように操作された受容体である。この受容体は、抗原結合機能およびT細胞活性化機能の両方を単一の受容体へと組み合わせていることから、キメラである。CARは、典型的には、抗原に結合可能な細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインを含む融合タンパク質である。細胞外リガンド結合ドメインは、1つまたはそれ以上のリンカーにより接続された2つ以上の可変領域の融合を含む一本鎖可変断片(scFv)を含み得る。CARは、ヒンジ領域をさらに含み得る。CARは、「キメラ受容体」、「Tボディ」、または「キメラ免疫受容体(CIR)」と呼ばれることもある。
【0391】
一部の実施形態では、CARは、TRUCK、ユニバーサルCAR、自己駆動CAR、武装化CAR(Armored CAR)、自己破壊CAR、条件付きCAR、マーキングされたCAR、TenCAR、二重CAR、またはsCARであり得る。
【0392】
TRUCK(ユニバーサルサイトカイン死滅のために再指向されたT細胞)は、キメラ抗原受容体(CAR)および抗腫瘍サイトカインを共発現する。サイトカイン発現は、構成的であるか、またはT細胞活性化によって誘発される。CAR特異性により標的化されると、炎症誘発性サイトカインの局所的産生により、腫瘍部位に内因性免疫細胞が動員され、かつ抗腫瘍応答が増強される。
【0393】
ユニバーサル同種CAR-T細胞は、もはや内因性T細胞受容体(TCR)および/または主要組織適合複合体(MHC)分子を発現しないように操作されており、それにより、移植片対宿主病(GVHD)または拒絶それぞれを予防する。
【0394】
自己駆動CARは、腫瘍リガンドに結合するCARおよびケモカイン受容体を共発現し、それにより腫瘍ホーミングが増強される。
【0395】
免疫抑制に対して耐性を示すように操作されたCAR-T細胞(武装化CAR)は、免疫チェックポイントスイッチ受容体により、もはや様々な免疫チェックポイント分子(例えば、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)、またはプログラム細胞死タンパク質1(PD1))を発現しないように遺伝子改変されるか、または免疫チェックポイントシグナル伝達を遮断するモノクローナル抗体と共に投与される。
【0396】
自己破壊CARは、CARをコードするためにエレクトロポレーションにより送達されるRNAを使用して設計される。あるいは、T細胞の誘導性アポトーシスは、遺伝子改変リンパ球におけるチミジンキナーゼへのガンシクロビル結合に基づいて達成されるか、または小分子二量体化剤(dimerizer)によるヒトカスパーゼ9の活性化のより最近説明された系に基づいて達成される。
【0397】
条件付きCAR-T細胞は、デフォルトでは、回路を完成させるための小分子の添加まで応答しないか、または「オフ」に切り換えられ、シグナル1およびシグナル2の両方の完全な形質導入を可能にし、それによりCAR-T細胞が活性化される。あるいは、T細胞は、標的抗原に指向される、後に投与される二次抗体に対する親和性を有するアダプター特異的受容体を発現するように操作される。
【0398】
マーキングされたCAR-T細胞は、CARと、既存のモノクローナル抗体剤が結合する腫瘍エピトープとを発現する。容認し得ない有害作用の設定では、モノクローナル抗体の投与により、CAR-T細胞が除去され、さらなるオフ腫瘍効果を伴うことなく症状が軽減される。
【0399】
タンデムCAR(TanCAR)T細胞は、異なる親和性を有しており、かつ1種またはそれ以上の細胞内共刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインに融合した2つの連結されたscFvを含む単一CARを発現する。TanCAR-T細胞の活性化は、標的細胞上に1種のみの抗原が存在していることが必要であるが、両方の抗原の存在により、相乗的な活性化が促進される。ある特定の実施形態では、TanCARのscFvは、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)、2つの重鎖可変領域(VH)の対、または2つの軽鎖可変領域(VL)の対を含む。別の実施形態では、TanCARの2つのscFvは、積層構成で生じ得る。さらに別の実施形態では、TanCARの2つのscFvは、連続して生じ得るか、またはループ構成で生じ得る。特定の実施形態では、タンデムCARのscFvの少なくとも1つは、抗CD20 scFvであり、別のscFvは、抗BCMA scFv、抗CD19 scFv、抗CD30 scFv、抗CD22 scFv、抗CD70 scFv、抗ROR1 scFv、または抗カッパ軽鎖 scFv等のがん細胞の特定の抗原を標的とするように選択される。
【0400】
二重CAR-T細胞は、リガンド結合標的が異なる下記の2種の別々のCARを発現し;一方のCARは、CD3ζドメインのみを含み、他方のCARは、共刺激ドメインのみを含む。二重CAR-T細胞の活性化には、腫瘍上の両方の標的の共発現が必要である。
【0401】
安全性CAR(sCAR)は、細胞内阻害ドメインと融合した細胞外scFvからなり、標準CARを共発現するsCAR-T細胞は、標準CAR標的を有するがsCAR標的を欠く標的細胞に遭遇する場合にのみ活性化されるようになる。
【0402】
CARの細胞外(抗原認識)ドメインは、好ましくは一本鎖抗体であり、より好ましくはscFvである。一実施形態では、抗原結合ドメインは、scFvを含む。しかしながら、所与の標的に高い親和性で結合する任意の好適な部分を、抗原認識領域として使用し得る。抗原に結合可能なCARの細胞外ドメインは、例えば、ある特定の抗原に結合し得る任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドであり得る。
【0403】
標的とされる所望の抗原に応じて、本開示のCARを、この所望の抗原標的に特異的である適切な抗原結合部分を含むように操作し得る。例えば、BCMAが、標的とされる所望の抗原である場合には、BCMAを標的とする抗体または抗体断片(例えばscFv)を、本開示のCARに組み込まれる抗原結合部分として使用し得る。
【0404】
好ましい細胞標的およびこれを標的とするCAR scFv/結合タンパク質を、表6に記載する。
【0405】
【0406】
ある特定の実施形態では、CARが結合する細胞標的は、より好ましくは、BCMA、CD19、CD20、CD22、CD47、CD79b、CD371、ROR-1、EphA2、MUC16、グリピカン3、PSCA、およびクローディン18.2から選択される。
【0407】
さらにより好ましい実施形態では、CARが結合する細胞標的は、BCMAである。
【0408】
さらにより好ましい実施形態では、CARが結合する細胞標的は、CD371である。
【0409】
CARの細胞内ドメインは、細胞中での生物学的プロセスの活性化または阻害を引き起こすためのシグナルを伝達するドメインとして機能することが既知であるオリゴペプチドまたはポリペプチドであり得る。この細胞内ドメインは、エフェクター機能シグナルを伝達する限りにおいて、T細胞受容体(TCR)および/または共受容体の細胞内シグナル伝達ドメインの全てまたは一部を含む活性化ドメインを含み得る。刺激的に作用するTCR複合体の一次活性化を調節する細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)として既知であるシグナル伝達モチーフを含み得る。細胞質シグナル伝達配列を含むITAMの例として、CD8、CD3ζ、CD3δ、CD3γ、CD3ε、CD32(FcγRIIa)、DAP10、DAP12、CD79a、CD79b、FcγRIγ、FcγRIIIγ、FcεRIβ(FCERIB)、およびFcεRIγ(FCERIG)に由来するものが挙げられる。
【0410】
好ましい実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインの活性化ドメインは、CD3ζに由来する。
【0411】
本開示のCARの細胞内シグナル伝達ドメインを、CD3ζシグナル伝達ドメイン等の活性化ドメインを、それ自体で含むか、または本開示のCARの文脈において有用な任意の他の所望の細胞質ドメインと組み合わせて含むように設計し得る。例えば、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激ドメインに加えて、CD3ζ鎖部分等の活性化ドメインを含み得る。この共刺激ドメインは、CARの、共刺激分子の細胞内ドメインを含む部分を指す。
【0412】
共刺激分子は、抗原受容体またはそのリガンド以外の、抗原に対するリンパ球の効率的な応答に必要な分子のことである。全てまたはその一部が本開示のCARの共刺激ドメインで使用されるそのような共刺激分子の例として、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、ICOS-1、GITR、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、およびB7-H3が挙げられる。
【0413】
好ましい実施形態では、CARは、少なくとも4-1BBに由来する共刺激ドメインを含む。
【0414】
膜貫通ドメインは、天然源または合成源のいずれかに由来し得る。供給源が天然である場合には、このドメインは、任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来し得る。例えば、膜貫通領域は、T細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖、またはゼータ鎖、CD28、CD3ζ、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8(例えば、CD8α、CD8β)、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、またはCD154、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CD11a、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD160、CD19、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rα、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、およびPAG/Cbpの膜貫通領域に由来し得る(即ち、その一部を少なくとも含み得る)。
【0415】
あるいは、膜貫通ドメインは、合成であり得、この場合、膜貫通ドメインは、ロイシンおよびバリン等の疎水性残基を主に含むことになる。一部の場合では、合成膜貫通ドメインの各末端には、フェニルアラニン、トリプトファン、およびバリンのトリプレットが見出される。2~10個のアミノ酸長等の短いオリゴペプチドリンカーまたはポリペプチドリンカーが、CARの膜貫通ドメインと内質ドメインと間の連結を形成し得る。
【0416】
好ましい実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8に由来する。
【0417】
一部の実施形態では、CARは、複数の膜貫通ドメインを有しており、これらは、同一の膜貫通ドメインの反復であり得るか、または異なる膜貫通ドメインであり得る。
【0418】
ヒンジ領域は、1つもしくはそれ以上のアミノ酸、CD8部分、またはIGg4領域、およびこれらの組み合せ等の可変長のポリペプチドヒンジを含み得る。
【0419】
好ましい実施形態では、ヒンジ領域は、CD8に由来する。
【0420】
CARを、TIL、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、またはTCRにも組み込み得、CAR-TIL、CAR-NK細胞、CAR-M、CAR-DC、およびTCR操作CAR-T細胞それぞれが得られる。CAR-T細胞、CAR-T細胞を製造する方法、およびその使用の説明に関して、例えば、Brudno他(Nature Rev.Clin.Oncol.、2018,15:31~46頁);Maude他(N.Engl.J.Med.、2014、371:1507~1517頁);およびSadelain他(Cancer Disc.、2013、3:388~398頁)を参照されたい。
【0421】
一部の実施形態では、CAR発現カセットが養子細胞に形質導入されており、このカセットは、Cas12タンパク質媒介性切断部位に組み込まれている。本明細書の実施例9では、CARカセットを含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターによる初代細胞の形質導入が示されている。
【0422】
一部の実施形態では、CAR発現カセットは、CAR発現を駆動するためのプロモーターを含む。一般的に使用されるプロモーターとしては、構成的哺乳動物プロモーターCMV、MND、EF1a、SV40、PGK1(マウスまたはヒト)、Ubc、CAG、CaMKIIa、およびベータ-Act、ならびに当該技術分野で公知の他のものが挙げられる。例えば、Khan他(Advanced Pharmaceutical Bulletin、2013、3:257~263頁)を参照されたい。あるいは、CAR発現カセットは、リボソームスキッピング配列(自己切断ペプチドとも呼ばれている)を含み得、内因性発現遺伝子のインフレームに導入される。一般的に使用されるリボソームスキッピング配列として、T2A、P2A、E2A、およびF2Aが挙げられる。リボソームスキッピング配列およびその使用の説明に関して、例えば、Chng他(MAbs、2015、7(2):403~412頁)を参照されたい。同様に、非CAR発現カセットは、同様のプロモーターまたはリボソームスキッピング配列を含み得る。
【0423】
ある特定の実施形態では、Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体を使用して、患者の単一対立遺伝子上に存在する病原性の常染色体「ドミナントネガティブ」変異により引き起こされる遺伝性障害を処置する。一部場合では、基礎となる遺伝子変異は、この対立遺伝子のうちの一方上の単一ヌクレオチド多型(SNP)であり得る。chRDNAガイド/核タンパク質複合体を、SNP対立遺伝子を標的とするが野生型対立遺伝性を標的としないように操作し得、それにより、SNP対立遺伝子のみが破壊される。例えば、SNPを含むオフターゲット配列での編集を低減させ得る野生型配列を標的とするためにCas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体を設計する方法の非限定的な例を提供する実施例7を参照されたい。
【0424】
一部の実施形態では、野生型対立遺伝子を改変することなく、Cas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体を使用して、SNP含有対立遺伝子を選択的に編集し得る(例えば、ノックアウトし得るか、または相同性指向修復により野生型に戻し得る)。一部の実施形態では、そのような編集により遺伝子が破壊される。他の実施形態では、そのような編集により、対立遺伝子を例えば相同性指向修復によって「野生型」状態に戻し得る。例えば、進行性視力喪失をもたらすいくつかの遺伝性疾患は、病原性の常染色体「ドミナントネガティブ」変異に起因する。ドミナントネガティブ疾患のSNP補正戦略の例としては、網膜色素変性症を引き起こすロドプシン遺伝子でのSNP変異のターゲティング(例えば、Li他(CRISPR J.、2018、1(1):55~64頁)を参照されたい);角膜ジストロフィーを引き起こす形質転換成長因子であるベータ誘導性(TGFBI)遺伝子でのSNP変異のターゲティング、(例えば、Christie他(Scientific Reports、2017、7(1):16174頁)を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0425】
本開示のCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体は、例えば、常染色体の病原性「ドミナントネガティブ」遺伝子変異の影響を受ける眼組織に送達される。その一部の実施形態では、chRDNAガイド/核タンパク質複合体は、根本的な病理を処置するために、野生型対立遺伝子を標的とすることなく、疾患対立遺伝子を選択的に破壊するように設計されている。そのような疾患として、黄斑ジストロフィー、桿体-錐体ジストロフィー、錐体-杆体ジストロフィー、または網脈絡膜症が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で開示されているCas12 chRDNAガイド/核タンパク質複合体は、進行性視力喪失を引き起こす遺伝性疾患の処置に限定されないことが理解される。
【0426】
実験
本開示の非限定的な実施形態を、下記の実施例で示す。使用される数(例えば、量、濃度、変化率、および同類のもの)に関する正確さを確保するために努力を行なっているが、一部の実験誤差および偏差を考慮すべきである。別途指示されない限り、温度は、摂氏であり、圧力は、大気圧または大気圧付近である。これらの実施例は、例示のみのために示されており、本発明者らが本開示の様々な実施形態とみなす範囲を限定することは意図されていないことを理解すべきである。各実施例で記載されている下記の工程の全てが必要なわけでなく、各実施例での工程の順序は提示されている通りでなければならないわけでもない。本明細書で使用される場合、別途記載されていない限り、ヌクレオチドに先行する「r」は、RNAを示し、全ての他のヌクレオチドは、DNAである(例えば、表15および表17を参照されたい)。ホスホロチオエート結合を、隣接塩基間に「*」で表す。
【実施例1】
【0427】
PBMCからの細胞傷害性T細胞(CD4+およびC8+)の製造、および初代細胞の培養
本実施例は、ドナー末梢血単核細胞(PBMC)からのCD4+細胞およびCD8+細胞の製造を示す。
【0428】
CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を、本質的には下記の通りにドナーPBMCから製造した。T細胞を、RoboSep-S(STEMCELL TechnologiesCambridge、MA)およびEasySep(商標)Human T cell Isolation Kit(STEMCELL Technologies、Cambridge、MA)を使用して、末梢血単核細胞(PBMC)から単離し、組換えヒト(rh)IL-2(100単位/mL)が補充されたImmunoCult-XF完全培地(ImmunoCult-XF T Cell Expansion Medium(STEMCELL Technologies、Cambridge、MA)、CTS Immune Cell SR(Gibco A2596102)、抗生物質-抗真菌剤(100X、Corning 30-004-Cl))中の抗CD3/CD28ビーズ(Dynabeads(商標);Gibco 11132D)の存在下で3日間、活性化した。3日後、ビーズを磁気分離により除去し、細胞を、IL-2(100単位/mL)が補充されたImmunoCult-XF完全培地中において1日にわたり増殖させた。
【実施例2】
【0429】
Cas12aガイド/核タンパク質複合体のクローニング、発現、産生、および構築
本実施例は、Cas12aガイド/核タンパク質複合体をクローニングし、発現させ、精製する方法、およびCas12aガイド成分を製造する方法を説明する。
【0430】
A.Cas12タンパク質のクローニング
アシダミノコッカス種(株BV3L6)触媒活性Cas12aタンパク質配列(配列番号1)を、大腸菌細胞中での発現にコドン最適化させた。C末端に、グリシン-セリンリンカーおよび1つの核局在化配列(NLS)(配列番号4)を付加した。Cas12a-NLSタンパク質(下記の実施例ではAsCas12aおよびCas12aタンパク質と称される)をコードするオリゴヌクレオチド配列を、合成のために商業製造業者に提供した。次いで、DNA配列を、標準的なクローニング方法を使用して、適切な細菌発現ベクターにクローニングした。
【0431】
B.Cas12aタンパク質の発現および精製
AsCas12aタンパク質を、発現ベクターを使用して大腸菌中で発現させ、本質的には例えばSwarts他(Molecular Cell、2017、66:221~233頁)で説明されているように、アフィニティクロマトグラフィー、イオン交換およびサイズ排除クロマトグラフィーを使用して精製した。
【0432】
C.Cas12aガイド成分の製造
Cas12aガイドを、ターゲティング領域を特定のCas12aガイド活性化領域に連結することにより製造した。ターテゲィング領域またはスペーサーは、好ましくは、20個のヌクレオチドの標的結合配列を含んだ。標的結合配列は、5’-TTTVまたは5’-TTTN PAMの下流(3’方向)で生じる標的配列に相補的であった。例示的なCas12aガイド活性化領域配列は、アシダミノコッカス種、L.バクテリウム(L.bacterium)、およびF.ノビシダCas12a種それぞれに関して配列番号6、配列番号8、および配列番号10である。
【0433】
Cas12aガイド配列(例えば、crRNAおよびchRDNA)を、合成のために商業製造業者に提供した。
【0434】
ガイドRNA成分(例えばcrRNA)を、二本鎖(ds)DNAテンプレート配列の5’末端にT7プロモーターを組み込むことにより、このdsDNAテンプレートからインビトロ転写により製造し得る(例えば、T7 Quick High Yield RNA Synthesis Kit;New England Biolabs、Ipswich、MA)。
【0435】
D.Cas12aガイド/核タンパク質複合体の構築
C末端核局在化配列(NLS)でタグ付けされたアシダミノコッカス種Cas12a(AsCas12a)を、大腸菌中で組換え発現させ、クロマトグラフィー法を使用して精製した。核タンパク質複合体を、別途述べない限り、Cas12aタンパク質 80pmol:ガイド 240pmolの濃度で形成した。Cas12aタンパク質との構築前に、ガイド成分のそれぞれ(例えば、crRNAまたはchRDNA)を、1μlの最終容量で所望の合計濃度(240pmol)まで調整し、95℃で2分間インキュベートし、サーモサイクラーから取り出し、室温まで平衡化させた。Cas12aタンパク質を、1.5μlの最終容量に、結合緩衝液(60mM TRIS-酢酸塩、150mM 酢酸カリウム、30mM 酢酸マグネシウム、pH7.9)で適切な濃度まで希釈し、ガイド成分 1μlと混合し、続いて10分間、37℃でインキュベートした。
【実施例3】
【0436】
Cas12aガイド/核タンパク質複合体によるPBMCからのT細胞(CD4+およびCD8+)のヌクレオフェクション
本実施例は、Cas12aガイド/核タンパク質複合体による活性化T細胞のヌクレオフェクションを説明する。
【0437】
実施例2のCas12aガイド/核タンパク質複合体を、Nucleofector(商標)96ウェル Shuttle System(Lonza、Allendale、NJ)を使用して、初代活性化T細胞(CD4+およびCD8+)(実施例1で説明したように製造した)にトランスフェクトした。Cas12aガイド/核タンパク質複合体を、96ウェルプレートの個々のウェルに、2.5μl最終容量で分注した。懸濁したT細胞を、200×gでの10分間遠心分離によりペレット化し、カルシウムおよびマグネシウムフリーリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、細胞ペレットを、カルシウムおよびマグネシウムフリーPBS 10mlに再懸濁させた。細胞を、Countess(登録商標)II Automated Cell Counter(Life Technologies;Grand Island、NY)を使用して計数した。
【0438】
2.2×107個の細胞を15mlコニカルチューブに移し、ペレット化した。PBSを吸引し、細胞を、1つのサンプル当たり2×105~1×106個の細胞/mlの密度まで、Nucleofector(商標)P4またはP3(Lonza、Allendale、NJ)溶液に再懸濁させた。次いで、細胞懸濁液20μlを、Cas12aガイド/核タンパク質複合体2.5μlを含有する各ウェルに添加し、各ウェルからの全容量を、96ウェル Nucleocuvette(商標)Plate(Lonza、Allendale、NJ)のウェルに移した。プレートを、Nucleofector(商標)96ウェル Shuttle(Lonza、Allendale、NJ)に乗せて、CA137 Nucleofector(商標)プログラム(Lonza、Allendale、NJ)を使用して細胞導入した。ヌクレオフェクション後、各ウェルに、IL-2(100単位/mL)が補充されたImmunoCult-XF完全培地77.5μlを添加し、トランスフェクトされた細胞懸濁液の全容量を、IL-2(100単位/mL)が補充された、予熱されたImmunoCult-XF完全培地 100μlを含有する96ウェル細胞培養プレートに移した。このプレートを、組織培養インキュベーターに移し、48時間、5%CO2中で37℃にて維持した後、下流分析を行なった。
【実施例4】
【0439】
Cas12aガイド/核タンパク質複合体によるヒト遺伝子のタイリング
本実施例は、ヒトT細胞中でヒトT細胞アルファ定常領域(TRAC)、ベータ-2-ミクログロブリン(B2)、プログラム細胞死1(PDCD1)、サイトカイン誘発性SH2含有タンパク質(CISH)、およびCblがん原遺伝子B(CBL-B)をコードする遺伝子を標的とするためのCas12aガイド/核タンパク質複合体の設計および使用を説明する。
【0440】
A.AsCas12a crRNAガイドの設計
ヒトTRAC、B2M、PDCD1、CISH、およびCBL-Bをコードする遺伝子のコード領域中における5’-TTTV PAMモチーフの下流(3’方向)の20個のヌクレオチド配列全てを、ターゲティングのために選択した(配列番号12~189)。標的選択基準には、ゲノム中の他の領域との相同性;G-C含有率;融解温度;およびスペーサー内のホモポリマーの存在が含まれていたが、これらに限定されなかった。
【0441】
同定された20個のヌクレオチドの配列を、AsCas12a活性化領域配列(配列番号6)の下流(3’方向)に付加した。
【0442】
配列を、合成のために商業製造業者に提供した。次いで、個々のCas12aガイド/核タンパク質複合体を、実施例2で説明したように製造し、実施例3で説明したように初代T細胞にトランスフェクトした。
【0443】
B.ゲノム編集効率の決定
(1)ディープシークエンシングのための標的dsDNA配列生成
gDNAを、Cas12aガイド/核タンパク質複合体、および1つのウェル当たりQuickExtract(商標)DNA抽出溶液(Epicentre、Madison、WI)50μLを使用したトランスフェクションの48時間後に、ヌクレオフェクトされた初代T細胞から単離し、続いて10分間37℃でインキュベートし、30分間65℃でインキュベートし、3分間95℃でインキュベートして反応を停止させた。単離gDNAを滅菌水50μLで希釈し、サンプルを-80℃で保存した。
【0444】
単離gDNAを使用し、1×濃度でQ5 Hot Start High-Fidelity 2X Master Mix(New England Biolabs、Ipswich、MA)を使用して1回目のPCRを実施し、Cas12a標的周辺の領域を増幅するように設計されたプライマーを、それぞれ0.5μMで使用し、gDNA 3.75μLを、10μLの最終容量で使用した。増幅を、1分間98℃での初期サイクル、98℃での10秒、および60℃での20秒、72℃での30秒の35サイクル;および2分間72℃での最終伸長により行なった。PCR反応物を、水で1:100に希釈した。
【0445】
バーコーディングPCR用のインデックスプライマーの固有のセットを使用して、各サンプルの多重配列決定を容易にした。バーコーディングPCRを、1×濃度のQ5 Hot Start High-Fidelity 2X Master Mix(New England Biolabs、Ipswich、MA)、それぞれ0.5μMのプライマー、および10μLの最終容量で1:100に希釈された1回目のPCR 1μLを含む反応混合物を使用して実施した。この反応混合物を、下記の通りに増幅した:1分間98℃;続いて98℃で10秒、60℃で20秒、および72℃での30秒の12サイクル;2分間の72℃での最終伸長反応。
【0446】
(2)SPRIselect精製
PCR反応物をプールし、配列決定用の増幅産物のSPRIselect(Beckman Coulter、Pasadena、CA)ビーズベースの精製用の単一の微量遠心管に移した。
【0447】
増幅産物に、0.9倍容量のSPRIselectビーズを添加し、混合し、10分間、室温でインキュベートした。微量遠心管を、溶液が清澄化されるまで磁気チューブスタンドに置いた。上清を除去して廃棄し、残留するビーズを1容量の85%エタノールで洗浄し、ビーズを、30秒間、室温でインキュベートした。インキュベーション後、エタノールを吸引し、ビーズを、10分間、室温で風乾させた。微量遠心管を磁気スタンドから取り外し、ビーズに0.25倍容量のQiagen EB緩衝液(Qiagen、Venlo、Netherlands)を添加し、激しく混合し、室温で2分間インキュベートした。微量遠心管を磁気に戻し、溶液が清澄化されるまでインキュベートし、精製された増幅産物を含む上清を、清潔な微量遠心管に分注した。精製された増幅産物を、Nanodrop(商標)2000 System(Thermo Scientific、Wilmington、DE)を使用して定量し、ライブラリー品質を、Fragment Analyzer(商標)System(Advanced Analytical Technologies、Ames、IA)およびDNF-910 dsDNA Reagent Kit(Advanced Analytical Technologies、Ames、IA)を使用して分析した。
【0448】
(3)ディープシークエンシングの設定
プールした増幅産物を、Nanodrop(商標)2000 System値および増幅産物の平均サイズから算出された4nM濃度に正規化した。ライブラリーを、2回の151サイクルのペアエンドランおよび2回の8サイクルインデックスリードを伴う300サイクルにわたり、MiSeq Sequencer(Illumina、San Diego、CA)およびMiSeq Reagent Kit v2(Illumina、San Diego、CA)で分析した。
【0449】
(4)ディープシークエンシングのデータ分析
配列決定データにおける結果の同一性を、バーコードPCRでの増幅産物に適応されたインデックスバーコード配列に基づいて決定した。MiSeqデータを処理するために、例えば下記のタスクを実行するコンピュータスクリプトを使用した:
a.Bowtie(bowtie-bio.sourceforge.net/index.shtml)ソフトウェアを使用して、リードをヒトゲノム(build GRCh38/38)にアラインした;
b.アラインされたリードを、予想される野生型ゲノム遺伝子座配列と比較し、野生型遺伝子座のいずれの部分にもアラインしていないリードを破棄した;
c.野生型配列に一致するリードを集計した;
d.インデル(塩基の挿入または欠失)を有するリードを、インデルタイプにより分類し、集計した;
ならびに
e.総インデルリードを、野生型リードおよびインデルリードの合計で除算して、変異リードの割合を求めた。
【0450】
Cas12aガイド/核タンパク質複合体により標的とされる領域でのインデル配列の同定により、Cas12aガイド/核タンパク質複合体の得られたゲノム編集効率を決定した。この細胞内編集実験の結果を、表7に示す。
【0451】
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【0452】
表7に示すデータから、Cas12a crRNA/核タンパク質複合体が、ヒト初代T細胞中の複数の遺伝子のオン編集を可能にすることが実証される。本明細書の他の箇所で説明されているもの等の他の遺伝子を、AsCas12aタンパク質または他のCas12aタンパク質(例えば、L.バクテリウムまたはF.ノビシダ)を使用して、同様に標的とし得る。
【実施例5】
【0453】
標的結合配列中にDNAを有するCas12a chRDNA分子の操作
下記の実施例は、標的結合配列中にDNA塩基を含むためのAsCas12a chRDNAガイド分子の操作を説明する。
【0454】
A.インシリコでのCas12a chRDNAガイド設計
AsCas12aガイドの20個のヌクレオチドの標的結合配列を、操作のために選択し、個々のDNA塩基を、標的結合配列中の各位置で利用した。AsCas12a chRDNAガイド分子の標的結合配列中におけるDNA塩基の位置を、表8に示す(DNA塩基を、「d」で示し、RNA塩基を、「R」で示しており、コントロールcrRNAも示す)。
【0455】
【0456】
ヒトB2Mをコードする遺伝子中の3つの標的配列(B2M-tgt12、B2M-tgt1、B2M-イントロン-tgt12)、ヒトTRACをコードする遺伝子中の標的配列(TRAC-tgt12)、およびヒトDNAメチルトランスフェラーゼ1(DNMT1)をコードする遺伝子中の標的配列(DNMT1-tgt1)を、編集のために選択した。各位置で単一のDNA塩基を含む標的結合配列を含む各標的のCas12a chRDNAガイド(表8を参照されたい)、およびCas12a chRNAコントロール配列を、合成のために商業製造業者に提供した。
【0457】
B.細胞のトランスフェクションおよび分析
スクリーニングのための個々のCas12aガイド/核タンパク質複合体を、本質的には実施例2で説明したように製造した。核タンパク質複合体を、実施例3で説明したように初代T細胞にトランスフェクトし、Cas12aガイド/核タンパク質複合体の得られたゲノム編集効率を、実施例4で説明したように決定した。この細胞内編集実験の結果を、表9に示す。
【0458】
【0459】
表9の編集結果から、スペーサー中にDNAを含むCas12a chRDNAガイド分子は、複数の標的にわたりcrRNAと同等の割合で編集し得ることが実証される(配列番号21と配列番号224;配列番号232と配列番号234、または配列番号274と配列番号293の比較)。各標的に関して、表9中のchRDNAガイド設計の編集率を、crRNAの編集率に正規化した。平均正規化編集率を
図13に示し、標的結合配列内の位置が、平均正規化編集の関数としてプロットされている。DNA塩基利用の好ましい位置(即ち、70%超の平均正規化編集)は、灰色の塗りつぶしで示されており、1、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、および20位を含む。本実施例で示されているデータ、ならびに表9および
図13のデータを使用して、Cas12aガイドの標的結合配列内のどの位置をDNAとして編集できるかを決定し得る。
【実施例6】
【0460】
標的結合配列中に複数のDNA塩基を有するCas12a chRDNAガイド分子
本実施例は、標的結合配列中に複数のDNA塩基を有するCas12a chRDNAガイド分子の設計および試験を説明する。
【0461】
A.Cas12a chRDNAガイドのインシリコでの設計
ヒトB2Mをコードする遺伝子中の3つの標的の20個のヌクレオチドの配列(B2M-tgt12、B2M-tgt1、B2M-イントロン-tgt12)、ヒトTRACをコードする遺伝子中の標的(TRAC-tgt12)、およびヒトDNAメチルトランスフェラーゼ1をコードする遺伝子中の標的(DNMT1-tgt1)を、編集のために選択した。各標的に関して、DNAの1~7個のヌクレオチドを、各AsCas12aガイドの標的結合配列に設計した。DNA塩基の位置の設計基準には、過去の単一位置スクリーニングデータ(表5を参照されたい)、DNAに寛容な位置の事前のコンセンサス(表13を参照されたい)、標的結合配列中の個々のDNA塩基間の距離、およびオフターゲット配列中におけるミスマッチの既知の位置が含まれていたが、これらに限定されなかった。Cas12a chRDNAガイド設計、およびcrRNAコントロール配列を、合成のために商業製造業者に提供した。
【0462】
B.細胞のトランスフェクションおよび分析
スクリーニングのための個々のCas12aガイド/核タンパク質複合体を、本質的には実施例2で説明したように製造した。Cas12aガイド/核タンパク質複合体を、実施例3で説明したように初代T細胞にトランスフェクトし、Cas12aガイド/核タンパク質複合体の得られたゲノム編集効率を、実施例4で説明したように決定した。この細胞内編集実験の結果、および各Cas12a chRDNAガイドの標的結合配列中におけるDNA塩基の位置を、表10に示す。
【0463】
【0464】
表10の編集結果から、標的結合配列中に複数のDNA塩基を含むCas12a chRDNAガイド分子が複数の標的にわたりcrRNAと同等の割合で編集し得ることが実証される(配列番号316と配列番号321;配列番号330と配列番号335、または配列番号345と配列番号347の比較)。
【実施例7】
【0465】
Cas12a chRDNAガイドによるオフターゲット編集の低減
本実施例は、SITE-Seq(登録商標)アッセイ(Cameron,P.他(2017).Mapping the genomic landscape of CRISPR-Cas9 cleavage.Nature Methods、14(6)、600~606頁。https://doi.org/10.1038/nmeth.4284)を使用したCas12aオフターゲットの同定と、Cas12a crRNAガイドと比較したCas12a chRDNAガイドのオフターゲット編集率の低減とを説明する。
【0466】
A.SITE-Seq(登録商標)アッセイ
ヒト初代T細胞を、実施例1で説明したように増殖させた。50mlコニカルチューブ中での細胞の増殖後、高分子量ゲノムDNA(gDNA)を、製造業者のプロトコールに従ってBlood and Cell Culture DNA Maxi Kit(Qiagen、Hilden、Germany)を使用して、ヒト初代T細胞から抽出した。
【0467】
ヒトRibosomal Protein L32(RPL32)(RPL32-tgt1)をコードする遺伝子およびDNMT1(DNMT1-tgt1)をコードする遺伝子中の20個のヌクレオチドの標的を、SITE-Seq(登録商標)アッセイ(Cameron,P.他(2017).Nature Methods、14(6)、600~606頁)を使用する評価のために選択した。各Cas12aガイド成分を、対応する核タンパク質濃度まで連続希釈し、2分間、95℃でインキュベートし、次いで5分かけて室温まで緩やかに戻した。RPL32標的(配列番号375)およびDNMT1標的(配列番号404)に対するCas12a核タンパク質複合体を、切断反応緩衝液(60mM TRIS-酢酸塩、150mM 酢酸カリウム、30mM 酢酸マグネシウム、pH7.9)中において、インキュベートしたCas12aガイドとCas12aタンパク質とを3:1の比で組み合わせることにより形成し、10分間、37℃でインキュベートした。ゲノムDNA(gDNA) 10μgの個々の切断は、50μLの総容量において、6種のCas12aガイド/核タンパク質複合体濃度(8nM、16nM、32nM、48nM、64nM、96nM、および128nM)で起きた。陰性コントロール反応物(0nM)を並行して組み立て、この反応物は、いかなる核タンパク質複合体も含まなかった。陰性コントロールを含む全ての切断反応を、全て96ウェルフォーマットプレートにおいて3連に組み立てた。切断反応物物を、4時間、37℃でインキュベートした。
【0468】
ライブラリーの製造および配列決定を、核タンパク質複合体切断後のdAテーリング工程を除いて、本質的にはCameron他(Nature Meth.、2017、14:600~606頁)により説明されているように行なった。スタガード(5’突出)末端を生じるCas12a核タンパク質複合体切断に起因して、さらなる酵素による末端修復工程が必要であった。添加する容量は同一のままであったが、元のdAテーリングキット成分を、New England BioLabsからのNEBNext(登録商標)Ultra(商標)End Repair/dA-Tailing ModulのEnd Prep Enzyme Mix(3μL)および10x End Repair Reaction Buffer(5μL)成分(NEB #E7442L)と交換した。サンプルを、30分間、20℃でインキュベートし、次いで30分間、65℃でインキュベートし、標準的な手順を再開した。NGS配列決定を、Illumina NextSeqプラットフォーム(Illumina、San Diego、CA)を使用して実施し、各サンプルに関して約300万個のリードを得た。オフターゲットモチーフが切断部位の1個のヌクレオチド内に位置しない、SITE-Seq(登録商標)アッセイ(Cameron,P.他(2017).Nature Methods、14(6)、600~606頁)により回収された任意の部位を、偽陽性と見なして廃棄した。SITE-Seq(登録商標)オフターゲットアッセイ実験から回収された標的部位の数を、表11に示す。
【0469】
【0470】
表11に示すデータから、SITE-Seq(登録商標)アッセイ(Cameron,P.他(2017).Mapping the genomic landscape of CRISPR-Cas9 cleavage.Nature Methods、14(6)、600~606頁)は、さらなる細胞内評価のためにCas12ガイドの生物学的オフターゲットを回収することが実証される。
【0471】
B.SITE-Seq(登録商標)オフターゲットアッセイにより回収された部位の細胞内検証
表11に示したSITE-Seq(登録商標)オフターゲット部位でのインデルの頻度を測定するために、最低(例えば、8nMおよび16nM)のCas12a核タンパク質複合体濃度に関してRPL32サンプルおよびDNMT1サンプルで回収された部位のサブセットに対して、標的型ディープシーケンシング分析を実施した。RPL32サンプルからの2つのオフターゲット部位(配列番号371および配列番号372)、およびDNMT1中の単一のオフターゲット(配列番号374)を、crRNAによる細胞内オフターゲット編集率の評価のために選択した。各オフターゲット部位に関してフォワード増幅産物プライマーおよびリバース増幅産物プライマーを設計し、商業製造業者から取り寄せた。
【0472】
ヒト初代T細胞を、実施例1で説明したように培養した。RPL32(配列番号375)およびDNMT1(配列番号404)Cas12a核タンパク質複合体を、本質的には実施例2で説明したように製造した。核タンパク質複合体を、実施例3で説明したように初代T細胞にトランスフェクトし、得られたCas12aガイド/核タンパク質複合体のゲノム編集効率を、実施例4で説明したように決定した。細胞の、トランスフェクトされていない入プールを、野生型基準として使用した。変異体リード(インデル%)を、切断部位の20塩基対(bp)内の任意の非基準バリアントコールとして定義した。配列決定適用範囲が低い(Cas12a核タンパク質複合体で処理されたサンプルの合計では1,000個未満のリード、または基準サンプルでは200個未満のリード)、または基準サンプルで2%超のバリアントコールの部位を廃棄した。Cas12a核タンパク質複合体で処理されたサンプルの合計では0.1%超の変異体リードが蓄積した場合には、部位を細胞オフターゲットとして集計した。回収されたSITE-Seq(登録商標)(Cameron,P.他(2017).Nature Methods、14(6)、600~606頁)オフターゲット部位の標的型ディープシーケンシングの結果を、表12に示し、ミスマッチヌクレオチドに下線を引いている。
【0473】
【0474】
表12に示すデータから、SITE-Seq(登録商標)アッセイにより、Cas12a crRNAガイドによりT細胞中で編集されるオフターゲットが回収されることが実証される。
【0475】
C.chRDNAガイドのインシリコでの設計
ヒトRPL32をコードする遺伝子(RPL32-tgt1)およびDNMT1をコードする遺伝子(DNMT1-tgt1)中の20個のヌクレオチドの標的を、編集のために選択した。各標的に関して、DNAの1~4個のヌクレオチドを、各AsCas12a chRDNAガイドの標的結合配列に設計した。DNA塩基の位置の設計基準には、過去の単一位置スクリーニングデータ(表5を参照されたい)、DNAに寛容な位置の事前のコンセンサス(表13を参照されたい)、標的結合配列中の個々のDNA塩基間の距離、およびオフターゲット配列中におけるミスマッチの既知の位置が含まれていたが、これらに限定されなかった。Cas12a chRDNAガイド、およびCas12a crRNAコントロール配列を、合成のために商業製造業者に提供した。
【0476】
D.細胞のトランスフェクションおよび分析
個々のCas12aガイド/核タンパク質複合体を、本質的には実施例2で説明したように製造した。この核タンパク質複合体を、実施例3で説明したように初代T細胞にトランスフェクトし、Cas12aガイド/核タンパク質複合体の得られたゲノム編集効率を、実施例4で説明したように決定した。RPL32標的(表13)およびDNMT1標的(表14)に関して、このオンターゲットおよびオフターゲット(表12を参照されたい)細胞編集実験の結果、ならびに各Cas12a chRDNAガイドの標的結合配列中におけるDNA塩基の位置を示す。加えて、脱塩基デオキシリボース部位を有するCas12a chRDNAガイド分子も試験しており、脱塩基部位の位置をdNで示す。
【0477】
【0478】
【0479】
表13および表14の編集結果から、たとえ単一ヌクレオチドミスマッチを有する部位であっても(例えば、表12、配列番号371および配列番号372を参照されたい)、Cas12a chRDNAガイド分子が、オフターゲット部位での編集を低減させ得ることが実証される。(配列番号375と配列番号391;配列番号375と配列番号394のオフターゲット編集の表13での結果の比較;配列番号404と配列番号408;または配列番号404と配列番号412のオフターゲット編集の表14での結果の比較)。
【実施例8】
【0480】
活性化領域中にDNA塩基を有するCas12a chRDNAガイド分子
本実施例は、活性化領域中にDNA塩基を有するAsCas12a chRDNAガイド分子の設計および試験を説明する。
【0481】
A.chRDNAガイドのインシリコでの設計
AsCas12aガイドの20個のヌクレオチドの活性化領域を、操作のために選択し、この活性化領域中の各位置で、個々のDNA塩基を利用した。AsCas12aガイドの活性化領域中におけるDAN塩基の位置を、表15に示す。
【0482】
【0483】
ヒトDNMT1をコードする遺伝子中の標的(配列番号361)を、編集のために選択した。DNMT標的結合配列を、各位置で単一のDNA塩基を含む活性化領域配列の下流(即ち、3’方向)に付加した(表15を参照されたい)。配列を、合成のために商業製造業者に提供した。
【0484】
B.細胞のトランスフェクションおよび分析
スクリーニングのための個々のCas12aガイド/核タンパク質複合体を、本質的には実施例2で説明したように製造した。核タンパク質複合体を、実施例3で説明したように初代T細胞にトランスフェクトし、Cas12aガイド/核タンパク質複合体の得られたゲノム編集効率を、実施例4で説明したように決定した。この細胞内編集実験の結果を、表16に示す。
【0485】
【0486】
表16の編集結果から、活性化領域中にDNAを有するCas12a chRDNAは、複数の標的にわたりcrRNAと同等の割合で編集し得ることが実証される(配列番号438と配列番号445;配列番号438と配列番号450、または配列番号438と配列番号457の比較)。表16のchRDNA設計の編集率を、crRNAの編集率に正規化した。平均正規化編集率を
図14に示し、活性化領域内の位置が、平均正規化編集の関数としてプロットされている。DNA塩基利用の好ましい位置(即ち、70%超の平均正規化編集)は、灰色の塗りつぶしで示されており、1、3、5、7、9、10、12、13、14、15、16、17、18、および19位を含む。
【0487】
D.活性化領域中に複数のDNA塩基を有するchRDNA
表10に示す結果に基づいて、個々のDNA位置を、複数のDNA塩基を含む活性化領域の設計に組み合わせた。AsCas12aガイドの活性化領域の設計およびDNA塩基の位置を、表17に示す。
【0488】
【0489】
表17に示す活性化領域の設計を、標的結合領域中にDNAヌクレオチドを有するように設計されたヒトTRACをコードする遺伝子中の20個のヌクレオチドの標的配列と組み合わせた(配列番号321)。TRAC標的結合配列を、表17に示す活性化領域配列の下流(即ち、3’方向)に付加し、chRDNA設計およびcrRNAコントロール配列を、合成のために商業製造業者に提供した。
【0490】
E.細胞のトランスフェクションおよび分析
スクリーニングのための個々のCas12aガイド/核タンパク質複合体を、本質的には実施例2で説明したように製造した。Cas12aガイド/核タンパク質複合体を、実施例3で説明したように初代T細胞にトランスフェクトし、Cas12aガイド/核タンパク質複合体の得られたゲノム編集効率を、実施例4で説明したように決定した。この細胞内編集実験の結果、ならびに各chRDNAの活性化領域および標的結合配列中におけるDNA塩基の位置を、表18に示す。
【0491】
【0492】
表18の編集結果から、活性化領域および標的結合配列の両方でDNAを有するCas12a chRDNAガイド分子は、crRNAと同等の割合で編集し得ることが実証される(配列番号466と配列番号467;配列番号466と配列番号468、または配列番号466と配列番号469の比較)。
【実施例9】
【0493】
AAVドナーカセットのクローニング、AAV製造、および初代細胞のAAV形質導入
本実施例は、DNAドナーカセットの設計およびAAVベクターへのクローニング、AAVの製造、初代細胞へのCas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体の送達、および初代細胞へのCAR発現カセットの部位特異的組込みのためのAAVによる初代細胞の形質導入を説明する。
【0494】
AAVを、哺乳動物細胞にDNAドナーポリヌクレオチドを送達するように設計し得る。AAV送達がゲノム切断事象と組み合わされ、AAV中のDNAドナーポリヌクレオチドが相同アームに隣接する場合には、例えばEyquem他(Nature、2017、543:113~117頁)で説明されているように、DNAドナーポリヌクレオチドを、HDRによりゲノム切断部位にシームレスに挿入し得る。
【0495】
A.AAVドナーカセットのインシリコでの設計、およびrAAV製造
CAR受容体の設計は、説明されている。例えば、Kochenderfer他(J.Immunotherapy、2009、32:689~702頁)を参照されたい。CAR構築物を、N末端分泌シグナル(CD8aシグナルペプチド)、BCMAに特異的なscFv部分、それに続くCD8ヒンジ領域および膜貫通部、4-1BBエフェクター領域、CD3ζエフェクター領域、ならびにC末端BGHポリアデニル化シグナル配列を含むように設計した。CARポリヌクレオチドの上流に、哺乳動物プロモーター配列を挿入した。部位特異的切断後に宿主細胞ゲノムにDNAドナーポリヌクレオチドを部位特異的に挿入するために、内在性TRAC遺伝子座で標的部位を選択した(配列番号23)。次いで、切断部位の5’および3’の500bp長の相同アームを同定した。DNAドナーポリヌクレオチドの末端に、5’相同アームおよび3’相同アームを付加し、DNAドナーポリヌクレオチドを、相同アームに対して逆方向に(即ち、3’から5’へ)配向させた。得られたDNAドナーポリヌクレオチドを、配列番号413に示す。
【0496】
B2MおよびHLAクラスI組織適合性抗原アルファ鎖E(HLA-E)の設計が説明されている。例えば、Gornalusse他(Nature Biotechnology、2017、35(8):765~772頁)を参照されたい。融合構築物を、N末端B2M分泌シグナル、それに続くHLA-G由来ペプチド配列、第1のリンカー配列、B2M配列、第2のリンカー配列、HLA-E配列、およびC末端BGHポリアデニル化シグナル配列で設計した。B2M-HLA-Eポリヌクレオチドの上流に、EF1α哺乳動物プロモーター配列を挿入した。部位特異的切断後に宿主細胞ゲノムにDNAドナーポリヌクレオチドを部位特異的に挿入するために、内在性B2M遺伝子座中の標的部位を選択した(配列番号62)。次いで、切断部位の5’および3’の500bp長の相同アームを同定した。DNAドナーポリヌクレオチドの末端に、5’相同アームおよび3’相同アームを付加し、DNAドナーポリヌクレオチドを、相同アームに対して逆方向に(即ち、3’から5’へ)配向させた。得られたDNAドナーポリヌクレオチドを、配列番号414に示す。
【0497】
DNAドナーポリヌクレオチドをコードするオリゴヌクレオチド配列を、好適な組換えAAV(rAAV)プラスミドへの合成のために商業製造業者に提供した。配列番号413を含むrAAVプラスミド、および配列番号414を含む別のrAAVプラスミドを、2つの別々のAAV6ウイルスへのパッケージングのために商業製造業者に提供した。
【0498】
B.rAAVによる初代T細胞の形質導入
初代活性化T細胞を、実施例1で説明したようにPBMCから得た。TRAC(配列番号415)およびB2M(配列番号416)をコードする遺伝子を標的とするCas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体を、実施例2で説明したように製造した。T細胞を、TRAC(配列番号425)を標的とするCas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体でトランスフェクトし、ヌクレオフェクション後1分~4時間の間で、細胞に、1×106のMOIで、CARドナー配列(配列番号413)がパッケージ化されたAAV6ウイルスを感染させた。加えて、T細胞を、B2M(配列番号416)を標的とするCas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体でトランスフェクトし、ヌクレオフェクション後1分~4時間の間で、細胞に、1×106のMOIで、B2M-HLA-Eドナー配列(配列番号414)がパッケージ化されたAAV6ウイルスを感染させた。T細胞を、形質導入後24時間、IL-2(100単位/mL)が補充されたImmunoCult-XF完全培地(STEMCELL Technologies、Cambridge、MA)で培養した。翌日、形質導入されたT細胞を、50mLコニカルチューブに移し、約7~10分間、300×gで遠心分離して細胞をペレット化した。上清を廃棄し、ペレットを緩やかに再懸濁させ、T細胞を、IL-2(100単位/mL)が補充されたImmunoCult-XF完全培地(STEMCELL Technologies、Cambridge、MA)の好適な容量にプールした。
【0499】
計数したT細胞を、IL-2(100単位/mL)が補充されたImmunoCult-XF完全培地(STEMCELL Technologies、Cambridge、MA)に1×106個の細胞/mLで再懸濁させ、必要な数だけT-175懸濁フラスコに蒔いた(1つのフラスコ当たりの最大容量は250mLである)。
【0500】
C.抗BCMA、B2M-HLA-E CAR-T細胞の発現
抗BCMA、B2M-HLA-E CAR-T細胞、およびコントロール(TRACノックアウト(KO)およびB2M KO)、ならびに野生型T細胞のインビトロでのキャラクタリゼーションを、形質導入の7日後に実施した。
【0501】
CAR-T細胞を、フィコエリトリン(PE)にコンジュゲートした組換えBCMAタンパク質を使用する抗BCMA CAR発現;Alexa Fluor(登録商標)647(ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)にコンジュゲートした抗TCR a/b特異的抗体を使用するTRACの発現、またはPEにコンジュゲートした抗B2M特異的抗体を使用するB2M発現のいずれかに関して、フローサイトメトリーにより評価した。フローサイトメトリー分析の結果を、
図15Aに示しており、未処理の細胞(野生型T細胞、
図15A、1504)、両方のCas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体のみでトランスフェクトされた細胞(TRAC KO/B2M KO;
図15A、1505)、および両方のCas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体でトランスフェクトされかつ両方のウイルスで形質導入された細胞(抗BCMA、B2M-HLA-E CAR-T;
図15A、1506)に関して、CAR陽性(
図15A、1501)、TRAC陽性(
図15A、1502)、およびB2M陽性(
図15A、1503)の割合を示す。y軸は、様々な細胞表面マーカーに関する、FACSにより測定した場合の陽性細胞の百分率を表す。結果を表19にも示す。
【0502】
【表19】
図15Aおよび表19に示す結果から、内在性TRACおよびB2M発現のCas12a chRDNAガイド媒介性KO、ならびに抗BCMA CARおよび外来性B2M-HLA-Eタンパク質のAAV6媒介性導入および発現が実証される。
【0503】
D.抗BCMA、B2M-HLA-E CAR T細胞のインビトロでの細胞傷害性
BCMA抗原を提示する多発性骨髄腫NCI-H929細胞株に対して、抗BCMA、B2M-HLA-E CAR T細胞の細胞傷害性をインビトロで評価した。TRAC KO T細胞を、CAR媒介性死滅のコントロールとして使用した。簡潔に説明すると、標的細胞(NCI-H929(T))を、CellTrace(商標)Violet(CTV;Thermo Fisher C34557)で標識して、エフェクター抗BCMA、B2M-HLA-E CAR-T(E)と区別し、細胞を、0:1、1:20、1:10、1:5、1:3、1:1、3:1、および10:1のE:T比で共培養した(3の共培養ウェル/E:T比)。細胞傷害性を、48時間の共培養後にヨウ化プロピジウム(PI)により測定したCTV細胞集団(標的細胞)および生細胞でゲーティングすることにより測定した。データを、フローサイトメトリー(Intellicyt iQue Screener Plus)で分析した。特異的溶解を、各ウェルに関して下記式を使用して算出した:特異的溶解=1-(試験サンプル中の生きている標的細胞の数/コントロールサンプル中の生きている標的細胞の数)。
【0504】
抗BCMA、B2M-HLA-E CAR-T細胞(灰色の円形)およびコントロールTRAC KO T細胞(黒色の円形)に関するインビトロ細胞傷害性アッセイの結果を、
図15Bに示す。y軸は、標的細胞死滅の百分率を表しており、x軸は、使用したE:T比を示す。
図15Bに示すデータを、表20にも示す。
【0505】
【0506】
図15Bおよび表20に示す結果から、Cas12a chRDNAガイド分子を使用して製造されたCAR-T細胞は標的細胞を抗原特異的に死滅させ得ることが実証される。
【0507】
本明細書で示されている方法を使用して、キメラ抗原受容体(CAR)を含むドナーポリヌクレオチドの部位特異的導入のためにCas12a chRDNAガイド分子を使用して他の細胞を製造し得る。非CARポリペプチド(即ち、B2M-HLA-E融合構築物)を発現するさらなるドナーポリヌクレオチドも同様に、本明細書のガイダンスを使用して導入し得る。
【実施例10】
【0508】
B2M-HLA-E融合体の内在性B2Mプロモーター駆動発現を有する抗BCMA CAR-Tの生成
本実施例は、初代細胞のゲノムへのCas12a chRDNA媒介性切断部位でのCARポリヌクレオチドおよびB2M-HLA-Eポリヌクレオチド発現カセットの部位特異的変更に関するAAVによる初代細胞の形質導入の設計を説明する。
【0509】
A.AAVドナーカセットのインシリコでの設計、およびrAAV製造
抗BCMA CARを、実施例9で説明したように設計した。
【0510】
P2A-B2M-HLA-E融合構築物のドナーカセットポリヌクレオチドを、N末端B2M分泌シグナルをコードするポリヌクレオチド、それに続くHLA-G由来ペプチド配列をコードするポリヌクレオチド、第1のリンカー配列をコードするポリヌクレオチド、B2M配列をコードするポリヌクレオチド、第2のリンカー配列をコードするポリヌクレオチド、HLA-E配列をコードするポリヌクレオチド、およびC末端BGHポリアデニル化シグナル配列をコードするポリヌクレオチドと共に設計した。B2M-HLA-Eの上流に、P2Aリボソームスキッピング配列をコードするポリヌクレオチドを挿入して、融合構築物の発現が内在性B2Mプロモーターの制御下にあるようにした。部位特異的切断後に宿主細胞ゲノム中にDNAドナーポリヌクレオチドを部位特異的に挿入するために、内在性B2M遺伝子座中の標的部位を選択した(配列番号62)。次いで、切断部位の5’および3’の500塩基対長の相同アームを同定した。5’相同アームおよび3’相同アームを、DNAドナーポリヌクレオチドの5’末端および3’末端に付加し、DNAドナーポリヌクレオチドを、相同アームに対して順方向に(即ち、5’から3’へ)配向させた。得られたDNAドナーポリヌクレオチドを、配列番号479で示す。
【0511】
DNAドナーポリヌクレオチドをコードするオリゴヌクレオチド配列を、好適な組換えAAV(rAAV)プラスミドへの合成のために商業製造業者に提供した。配列番号413を含むrAAVプラスミド、および配列番号479を含む別のrAAVプラスミドを、2つの別々のAAV6ウイルスへのパッケージングのために商業製造業者に提供した。
【0512】
B.rAAVによる初代T細胞の形質導入
初代活性化T細胞を、実施例1で説明したようにPBMCから得た。TRAC(配列番号415)およびB2M(配列番号416)をコードする遺伝子を標的とするCas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体を、実施例2で説明したように製造した。T細胞を、TRAC(配列番号425)を標的とするCas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体でトランスフェクトし、ヌクレオフェクション後1分~4時間の間で、細胞に、1×106のMOIで、CARドナー配列(配列番号413)がパッケージ化されたAAV6ウイルスを感染させた。加えて、T細胞を、B2M(配列番号416)を標的とするCas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体でトランスフェクトし、ヌクレオフェクション後1分~4時間の間で、細胞に、1×106のMOIで、P2A-B2M-HLA-Eドナー配列(配列番号479)がパッケージ化されたAAV6ウイルスを感染させた。T細胞を、形質導入後24時間、IL-2(100単位/mL)が補充されたImmunoCult-XF完全培地(STEMCELL Technologies、Cambridge、MA)で培養した。翌日、形質導入されたT細胞を、50mLコニカルチューブに移し、約7~10分間、300×gで遠心分離して細胞をペレット化した。上清を廃棄し、ペレットを緩やかに再懸濁させ、T細胞を、IL-2(100単位/mL)が補充されたImmunoCult-XF完全培地(STEMCELL Technologies、Cambridge、MA)の適量にプールした。
【0513】
計数したT細胞を、IL-2(100単位/mL)が補充されたImmunoCult-XF完全培地(STEMCELL Technologies、Cambridge、MA)に1×106個の細胞/mLで再懸濁させ、必要な数だけT-175懸濁フラスコに蒔いた(1つのフラスコ当たりの最大容量は250mLである)。
【0514】
C.CAR-T細胞上での抗BCMA CARおよびB2M-HLA-Eの発現
抗BCMA、P2A-B2M-HLA-E CAR-T細胞、およびコントロール(TRACノックアウト(KO)およびB2M KO)、ならびに野生型T細胞のインビトロでのキャラクタリゼーションを、形質導入の7日後に実施した。
【0515】
CAR-T細胞を、フィコエリトリン(PE)にコンジュゲートした組換えBCMAタンパク質を使用する抗BCMA CARの発現;Alexa Fluor(登録商標)647(ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)にコンジュゲートした抗TCR a/b特異的抗体を使用するTRACの発現、またはPEにコンジュゲートした抗B2M特異的抗体を使用するB2Mの発現のいずれかに関して、フローサイトメトリーにより評価した。フローサイトメトリー分析の結果を、表21に示しており、未処理の細胞(野生型T細胞)、両方のCas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体のみでトランスフェクトされた細胞(TRAC KO/B2M KO)、および両方のCas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体でトランスフェクトされかつ両方のウイルスで形質導入された細胞(抗BCMA、B2M-HLA-E CAR-T)に関して、CAR陽性、TRAC陽性、およびB2M陽性の割合を示す。
【0516】
【0517】
表21に示す結果から、内在性TRACおよびB2M発現のCas12a chRDNAガイド媒介性KO、ならびに抗BCMA CARドナーカセットのAAV6媒介性導入および内在性発現、および外来性B2M-HLA-Eドナーカセットの内在性B2Mプロモーター駆動発現が実証される。
【0518】
本明細書で示されている方法を使用して、他の標的のためのCas12 chRDNAガイド設計を同定し得る。他のCas12 chRDNAガイドの活性化領域および標的結合配列を、本明細書で説明されている方法と同様にスクリーニングし得る。
【実施例11】
【0519】
代替のリンカー-NLS構造を有するCas12aガイド/核タンパク質複合体
本実施例は、本出願の先の実施例で使用されたグリシン-セリンリンカーおよびサル空胞ウイルス40大型T抗原NLS(SV40;配列番号04)を有する「非最適化」設計と比較した、異なるリンカーおよび核局在化シグナル(MLS)構造を有するCa12aガイド/核タンパク質複合体の設計および比較を説明する。
【0520】
A.Cas12aリンカー-NLS配列のインシリコでの設計
アシダミノコッカス種(Acidaminococcus sp.)(株BV3L6)Cas12aタンパク質(配列番号01)を操作のために選択し、2つのNLS配列であるSV40(配列番号04)およびヌクレオプラスミン配列(NPL;配列番号05)を、グリシン-セリン(GS)またはグリシン-グリシン-グリシン-グリシン-セリン(G4S)アミノ酸リンカーの対のいずれかを使用するCas12aタンパク質への共有結合的付加のために選択した。可変リンカーと共に2つのNLSを含む設計も、試験のために作成した。リンカー-NLS配列の設計を、表22に示す。
【0521】
【0522】
表22に示すNLS配列を、アシダミノコッカス種(株BV3L6)Cas12aタンパク質(配列番号01)のC末端にクローニングし、組換えタンパク質を、実施例2で説明したように発現させた。
【0523】
B.Cas12aリンカー-NLS設計の細胞活性
表22に示すリンカー-NLS配列を含む精製された組換えCas12aタンパク質を、実施例2で説明したように、TRAC遺伝子を標的とするchRDNAガイド(配列番号467)と複合体化させ、実施例3で説明したように、初代T細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、各Cas12aガイド/核タンパク質複合体の得られたゲノム編集効率を、実施例4で説明したように決定した。この細胞編集実験の結果を、
図16Aおよび表23に示す。
【0524】
【0525】
本実施例の
図16Aおよび表23に示すデータから、代替のリンカーおよびNLS配列は、単一のGS-SV40 NLS構造を有する設計と比較して編集を増加させ得ることが示される。
【0526】
C.標的にわたる代替のCas12aリンカー-NLS配列の細胞活性
表23に示す上位4つのCas12aリンカー-NLS構造(配列番号489、配列番号485、配列番号487、および配列番号483)、および「非最適化」設計(配列番号479)を、crRNAおよびchRDNAの混合パネルを使用する比較のために選択した。chRDNA設計におけるDAN塩基の位置を含むターゲティング領域を、表24に示す。
【0527】
【0528】
表24に示すターゲティング領域を、活性化領域(配列番号459)の3’末端に付加し、合成のために商業製造業者に提供した。
【0529】
各ガイドと複合体化した個々のCas12aリンカー-NLS構造を、本質的には実施例2で説明したように製造したが、複合体を、各Cas12aリンカー-NLSおよびガイドの組合せに関してCas12a対ガイドの20:60および80:240pmolの2つの濃度で構築するという変更があった。Cas12aガイド/核タンパク質複合体を、実施例3で説明したように初代T細胞にトランスフェクトし、Cas12aガイド/核タンパク質複合体の得られるゲノム編集効率を、実施例4で説明したように決定した。
【0530】
表24に示す、ガイドと複合体化したCas12aリンカー-NLS構造の編集の結果を、
図16B、ならびに表25および26に示す。
【0531】
【0532】
【0533】
図16Bならびに表25および26に示すデータから、ヒト初代T細胞における複数の標的にわたる様々なNLS構造の改善された活性が実証される(即ち、
図16B、
図16B 1616または
図16B 1617の平均編集と比較した
図16B 1613の平均編集を参照されたい)。代替のNLS配列、リンカー、およびCasヌクレアーゼを、本明細書で説明されている方法と同様にスクリーニングし得る。
【実施例12】
【0534】
Cas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体による多重化
本実施例は、単一のトランスフェクション反応での複数のCas12a chRDNAの細胞への共送達(多重化)と、GS-SV40(配列番号479:「非最適化NLS」)および(G4S)2-NPL(配列番号489:「最適化NLS」)を有するCas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体の多重化編集率の比較とを説明する。
【0535】
A.Cas12a chRDNAリンカー-NLS配列のインシリコでの設計
アシダミノコッカス種(株BV3L6)Cas12aタンパク質(配列番号01)を、第1のC末端リンカー-NLS配列(配列番号479)または第2のC末端リンカー-NLS配列(配列番号489)のいずれかで操作し、Cas12a組換えタンパク質を、実施例2で説明したように発現させた。
【0536】
B.Cas12aリンカー-NLSの細胞多重化活性
リンカー-NLS配列 配列番号479またはリンカー-NLS配列 配列489のいずれかを含む精製された組換えCas12aタンパク質を、実施例2で説明したようにTRACターゲティングchRDNA(配列番号508)、B2MターゲティングchRDNA遺伝子(配列番号416)、CISHターゲティングchRDNA(配列番号509)、またはCBLBターゲティングchRDNA(配列番号510)のいずれかと複合体化させたが、この複合体を、Cas12a対ガイドの40:80pmolの比で構築するという変更があった。各Cas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体を、単一ターゲティング複合体として使用したか;1つのミックスに組み合わされたTRACおよびB2MターゲティングCas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体両方として使用したか;1つのミックスに組み合わされたCISHおよびCBLBターゲティングCas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体両方として使用したか;または1つのミックスに組み合わされたTRAC、B2M、CISH、およびCBLBターゲティングCas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体全てとして使用した。各Cas12a chRDNA/核タンパク質組成物を、実施例3で説明したように初代T細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、各Cas12a chRDNA/核タンパク質複合体の得られたゲノム編集効率を、実施例4で説明したように決定した。この細胞編集実験の結果を、
図17および表27に示す。
【0537】
【0538】
図17および表27に示すデータから、ヒト初代T細胞中での多重化に使用された場合のリンカー-NLS構築物の活性の改善が実証される。例えば、非最適化GS-SV40リンカー-NLS(配列番号479、
図17 1708)による一連の
図17、1707の平均編集、および最適化(G4)2-NPLリンカーNLS(配列番号489、
図17、1712)による一連の
図17、1711の平均編集を参照されたい。代替のNLS配列、リンカー、Cas12ヌクレアーゼ、および多重化の標的を、本明細書で説明されている方法と同様にスクリーニングし得る。
【実施例13】
【0539】
化学的改変を含むCas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体による編集
本実施例は、Cas12aガイドRNAの活性化領域およびターゲティング領域中にホスホロチオエート化学的改変を含むCas12a chRDNAの細胞編集活性を説明する。
【0540】
A.化学的改変を有するCas12a chRDNAのインシリコでの設計
TRAC標的-12配列(配列番号316)を、操作のために選択した。2つのホスホロチオエート結合を、Cas12aガイドの5’末端(即ち、活性化領域の5’末端ヌクレオチド)に設計し、2つのホスホロチオエート結合を、Cas12aガイドの3’末端(即ち、ターゲティング領域の3’末端ヌクレオチド)に設計した。次いで、末端を保護するホスホロチオエート改変に加えて活性化領域にDNA塩基を有する一連のCas12aガイドを設計した。化学的改変を有するCas12a chRDNAの配列を、表28に示す。この配列を、合成のために商業製造業者に提供した(列挙されたホスホロチオエート結合およびDNA塩基の位置は、
図5に示す番号に対応する)。
【0541】
【0542】
B.細胞のトランスフェクションおよび分析
個々のCas12aガイド/核タンパク質複合体を、本質的には実施例2で説明したように製造した。核タンパク質複合体を、実施例3で説明したように初代T細胞にトランスフェクトし、Cas12aガイド/核タンパク質複合体の得られたゲノム編集効率を、実施例4で説明したように決定した。この細胞内編集実験の結果を、表29に示す。
【0543】
【0544】
表29に示すデータから、ホスホロチオエート結合単独、またはホスホロチオエート結合およびDNA塩基のいずれかを含むCas12aガイドの編集活性が実証される。このガイドは、全RNAガイドと比較してヒト初代T細胞中で強固に編集し得る(即ち、配列番号512または配列番号515の平均編集と比較して配列番号511の表29の平均編集を参照されたい)。化学的改変の代替の組合せおよび位置を、本明細書で説明されている方法と同様にスクリーニングし得る。
【実施例14】
【0545】
Cas12a chRDNA/核タンパク質複合体によるヒト人工多能性幹細胞のトランスフェクション
本実施例は、Cas12a chRDNA/核タンパク質複合体によるヒト人工多能性幹細胞(iPSC)の細胞編集を説明する。
【0546】
A.chRDNAガイドのインシリコでの設計
ガイドの活性化領域中にDNA塩基を含むCISH遺伝子を標的とするAsCas12aガイド配列(配列番号509)を、さらなる操作およびターゲティング領域(配列番号518~配列番号529)へのさらなるDNA塩基の導入のために選択した。配列を、合成のために商業製造業者に提供した。
【0547】
B.細胞のトランスフェクションおよび分析
個々のCas12aガイド/核タンパク質複合体を、本質的には実施例2で説明したように製造した。核タンパク質複合体を、実施例3で説明したように初代T細胞にトランスフェクトした。
【0548】
iPSCを、下記の変更を行ないつつ、実施例3で説明した初代T細胞を取り扱う方法およびトランスフェクトする方法と同様に取り扱ってトランスフェクトした。iPSCを、トランスフェクション前に37℃で3時間、Rho関連コイルドコイル含有タンパク質キナーゼ阻害剤(「ROCKi」、MilliporeSigma、Burlington、MA)が10uMの最終濃度で補充されたmTeSR-plus培地(STEMCELL Technologies、Cambridge、MA)で培養した。mTeSR-plus/ROCKi培地を除去し、iPScを、PBS 10mLで洗浄し、続いて、アキュターゼ(STEMCELL Technologies、Cambridge、MA)3mLを添加し、細胞を、37℃で5~10分間インキュベートした。次いで、細胞にmTeSR-pulseおよびROCKi 7mLを添加し、細胞を混合して計数した。次いで、細胞を遠心分離し、培地を除去し、細胞をPBS 10mLで洗浄し、再度遠心分離してPBSを除去した。細胞を、Nucleofector(商標)P3(Lonza、Allendale、NJ)溶液に、2×105個の細胞/mLの密度まで再懸濁させ、Cas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体と混合し、パルスコードCA158を使用してトランスフェクトした。Cas12aガイド/核タンパク質複合体の得られたゲノム編集効率を、実施例4で説明したように決定し、表29に示す。
【0549】
【0550】
表29に示すデータから、Cas12a chRDNAガイド/核タンパク質複合体をヒトiPSCの操作に使用し得ることが実証される。他の細胞型を、本明細書で説明されている方法と同様に編集し得る。
【0551】
当業者に明らかなように、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、上記実施形態の改変および変形を行ない得る。そのような改変および変更は、本開示の範囲内である。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0003】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出されており、かつ全体を参照によって本明細書に組み入れる配列表を含む。前記ASCIIコピーは、2023年3月20日に作成されており、CBI039_30_SL.txtという名称であり、かつサイズが203,259バイトである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】