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特表2023-546168マッチドフィルタリングを用いたコヒーレントLIDARシステムにおけるミラーによるドップラー拡散を補償する技術
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  • 特表-マッチドフィルタリングを用いたコヒーレントLIDARシステムにおけるミラーによるドップラー拡散を補償する技術 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】マッチドフィルタリングを用いたコヒーレントLIDARシステムにおけるミラーによるドップラー拡散を補償する技術
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/493 20060101AFI20231025BHJP
   G01S 17/34 20200101ALI20231025BHJP
【FI】
G01S7/493
G01S17/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523591
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(85)【翻訳文提出日】2023-05-31
(86)【国際出願番号】 US2021055232
(87)【国際公開番号】W WO2022086817
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】63/093,599
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/354,324
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521095112
【氏名又は名称】エヴァ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【弁理士】
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ペリン ホセ
(72)【発明者】
【氏名】レズク ミナ
(72)【発明者】
【氏名】ビスワナサ クマール バルガブ
(72)【発明者】
【氏名】ムートリ ラジェンドラ ツシャール
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AA07
5J084AA10
5J084AC02
5J084BB04
5J084BB16
5J084BB28
5J084CA08
5J084CA33
5J084EA01
(57)【要約】
LiDARシステムにて第1の周波数波形を含む受信信号がサンプリングされ、その受信信号は周波数領域に変換される。第1の周波数波形と一致する一連の係数を有する第2の周波数波形を含むマッチドフィルタが選択される。一連の係数が一連の指標に従って更新される。受信信号がマッチドフィルタでフィルタリングされ、フィルタリングされた受信信号が生成される。フィルタリングされた受信信号から距離情報および速度情報が抽出される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光検出および測距(LIDAR)システムにおける方法であって、
LIDARシステムにて受信信号をサンプリングし、第1の周波数波形を含む受信信号を周波数領域に変換するステップと、
前記第1の周波数波形と一致する一連の係数を有する第2の周波数波形を含むマッチドフィルタを選択するステップと、
一連の指標に従って前記一連の係数を更新するステップと、
フィルタリングされた受信信号を生成するために前記受信信号をマッチドフィルタによってフィルタリングするステップと、
さらに、前記フィルタリングされた受信信号から距離情報および速度情報を抽出するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記マッチドフィルタを選択することは、第2の周波数波形として矩形波形、sinc波形、sinc2乗波形、またはガウス波形を選択することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一連の係数は、スキャニングミラーの角速度、スキャニングミラーの位置、光スキャナのジオメトリ、またはターゲットのうちの少なくとも1つに従って更新される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記一連の係数は、フィルタ帯域幅が、スキャニングミラーの角速度、スキャニングミラーのサイズ、またはビーム径のうちの少なくとも1つに比例するように更新される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の周波数波形は、前記受信信号のパワースペクトル密度関数の推定値に基づいて決定される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記一連の係数は、ミラーの角速度の変化またはスキャンパターンの変化を含むハードウェア構成またはシステム動作の変化に基づいて更新される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記距離情報および速度情報を抽出するために、前記フィルタリングされた受信信号をピーク選択処理に入力するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の周波数波形は、前記LIDARシステムの光学サブシステムのモデルまたはシミュレーションまたは測定に基づいて決定される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
光検出および測距(LIDAR)システムであって、
メモリと、
前記メモリによって動作可能に接続されており、以下を実行するプロセッサと、を備えたLIDARシステム。
当該LIDARシステムにて受信信号をサンプリングし、第1の周波数波形を含む受信信号を周波数領域に変換する;
前記第1の周波数波形と一致する一連の係数を有する第2の周波数波形を含むマッチドフィルタを選択する;
一連の指標に従って前記一連の係数を更新する;
フィルタリングされた受信信号を生成するために前記受信信号を前記マッチドフィルタによってフィルタリングする;
さらに、前記フィルタリングされた受信信号から距離情報および速度情報を抽出する。
【請求項10】
前記第2の周波数波形が、前記第2の周波数波形として矩形波形、sinc波形、sinc2乗波形、またはガウス波形を含む請求項9に記載のLIDARシステム。
【請求項11】
前記一連の係数は、スキャニングミラーの角速度、スキャニングミラーの位置、光スキャナのジオメトリ、またはターゲットのうちの少なくとも1つに従って更新される請求項9に記載のLIDARシステム。
【請求項12】
前記一連の係数は、フィルタ帯域幅が、スキャニングミラーの角速度、スキャニングミラーのサイズ、またはビーム径のうちの少なくとも1つに比例するように更新される請求項9に記載のLIDARシステム。
【請求項13】
前記第2の周波数波形は、前記受信信号のパワースペクトル密度関数の推定値に基づいて決定される請求項9に記載のLIDARシステム。
【請求項14】
前記一連の係数は、ミラーの角速度の変化またはスキャンパターンの変化を含むハードウェア構成またはシステム動作の変更に基づいて更新される請求項9に記載のLIDARシステム。
【請求項15】
前記メモリと動作可能に結合された前記プロセッサは、前記フィルタリングされた受信信号を、前記距離情報および速度情報を抽出するためのピーク選択処理に入力することをさらに含む請求項9に記載のLIDARシステム。
【請求項16】
前記第2の周波数波形は、当該LIDARシステムの光学サブシステムのモデルまたはシミュレーションまたは測定に基づいて決定される請求項9に記載のLIDARシステム。
【請求項17】
非一時的な機械可読媒体であって、その中に格納された命令を有し、この命令が光検出および測距(LIDAR)システムのプロセッサによって実行されると、前記プロセッサは以下のことを行う非一時的な機械可読媒体。
前記LIDARシステムにて受信信号をサンプリングし、第1の周波数波形を含む受信信号を周波数領域に変換する;
前記第1の周波数波形と一致する一連の係数を有する第2の周波数波形を含むマッチドフィルタを選択する;
一連の指標に従って前記一連の係数を更新する;
フィルタリングされた受信信号を生成するために前記受信信号を前記マッチドフィルタによってフィルタリングする;
さらに、前記フィルタリングされた受信信号から距離情報および速度情報を抽出する。
【請求項18】
前記第2の周波数波形が、前記第2の周波数波形として矩形波形、sinc波形、sinc2乗波形、またはガウス波形を含む請求項17に記載の非一時的な機械可読媒体。
【請求項19】
前記一連の係数は、スキャニングミラーの角速度、スキャニングミラーの位置、光スキャナのジオメトリ、またはターゲットのうちの少なくとも1つに従って更新される請求項17に記載の非一時的な機械可読媒体。
【請求項20】
前記一連の係数は、フィルタ帯域幅が、スキャニングミラーの角速度、スキャニングミラーのサイズ、またはビーム直径の少なくとも1つに比例するように更新される請求項17に記載の非一時的な機械可読媒体。
【請求項21】
前記第2の周波数波形は、前記受信信号のパワースペクトル密度関数の推定値に基づいて決定される請求項17に記載の非一時的な機械可読媒体。
【請求項22】
前記一連の係数は、ミラーの角速度の変化またはスキャンパターンの変化を含むハードウェア構成またはシステム動作の変更に基づいて更新される請求項17に記載の非一時的な機械可読媒体。
【請求項23】
前記メモリと動作可能に接続された前記プロセッサは、前記フィルタリングされた受信信号を、前記距離情報および速度情報を抽出するためのピーク選択処理に入力することをさらに含む請求項17記載の非一時的な機械可読媒体。
【請求項24】
前記第2の周波数波形は、前記LIDARシステムの光学サブシステムのモデルまたはシミュレーションまたは測定に基づいて決定される請求項17に記載の非一時的な機械可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国特許法第119条(e)に基づく2020年10月19日に出願された米国仮特許出願第63/093,599号、および2021年6月22日に出願された米国特許出願第17/354,324号の優先権を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、光検出および測距(LIDAR)システムに関し、例えば、コヒーレントLIDARシステムにおけるミラーによるドップラー拡散を補償する技術に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の周波数変調連続波(FMCW)LIDARシステムには、レーザの位相ノイズ、回路の位相ノイズ、レーザの駆動用電子部品が発するフリッカノイズ、温度/天候によるドリフト、チャープレートオフセットなどの位相障害がある。
スキャニング型FMCW LIDARシステムは、光ビームを操縦し、ターゲットまたはターゲット環境をスキャニングするために、ムービングスキャニングミラーを用いることがある。広い視野と高いフレームレートを達成するために、スキャニングミラーは、高い角速度を有する。高いミラー角速度は、いくつかの障害を引き起こすおそれがある。例えば、ミラーに起因するドップラーシフトは、受信信号の帯域幅を広げるおそれがある。受信信号強度が低下し、その結果、検出確率が低下するおそれがある。従って、測距、速度、反射率の測定誤差が増大するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、限定することなく、LIDARシステムにおいて受信信号を処理する方法に関する様々な例を説明する。
【0005】
いくつかの例において、本明細書で開示されるのは、例えば、ミラーによるドップラー拡散を補償するためにマッチドフィルタによって受信信号を処理する方法である。
受信信号は、予想される受信信号の形状または波形に基づいて、マッチドフィルタによってフィルタリングされる。例えば、周波数領域の受信信号(または「入力スペクトル」)は、予想される受信信号のパワースペクトル密度(PSD)を一致させることを目的とするマッチドフィルタによってフィルタリングされる。
フィルタ係数は、一定(例えば、理論的なシミュレーションやモデリングから得られる)であってもよいし、ミラーの角速度、ミラーの位置、スキャナ-のジオメトリ、ターゲット、シーンなどの主要な要因に応じて更新されてもよい。この方法では、SNRが最大になるポイントで検出が行われるため、より正確な周波数およびエネルギーの測定が可能になる。
【0006】
本明細書のいくつかの例では、LIDARシステムにおける方法が開示される。
LIDARシステムにて受信信号をサンプリングし、第1の周波数波形を含む受信信号を周波数領域に変換する。前記第1の周波数波形と一致する一連の係数を有する第2の周波数波形を含むマッチドフィルタを選択する;一連の指標に従って前記一連の係数を更新する;フィルタリングされた受信信号を生成するために前記受信信号を前記マッチドフィルタによってフィルタリングする;さらに、前記フィルタリングされた受信信号から距離情報および速度情報を抽出する。
【0007】
本明細書のいくつかの例では、LIDARシステムが開示される。
LIDARシステムは、メモリと、メモリと動作可能に接続された処理装置またはプロセッサを備えている。前記処理装置またはプロセッサは、当該LIDARシステムにて受信信号をサンプリングし、その第1の周波数波形を含む受信信号を周波数領域に変換する。前記処理装置またはプロセッサは、さらに、前記第1の周波数波形に一致する一連の係数を有する第2の周波数波形を含むマッチドフィルタを選択する。前記処理装置またはプロセッサは、さらに、一連の指標に従って一連の係数を更新し、前記マッチドフィルタによって前記受信信号をフィルタリングし、フィルタリングされた受信信号を生成する。前記処理装置またはプロセッサは、さらに、前記フィルタリングされた受信信号から距離情報および速度情報を抽出する。
【0008】
本明細書のいくつかの例では、非一時的な機械可読媒体が開示される。
前記非一時的な機械可読媒体は、その中に格納された命令を有し、この命令が光検出および測距(LIDAR)システムの処理装置またはプロセッサによって実行されると、前記処理装置またはプロセッサに、前記LIDARシステムにて受信信号をサンプリングし、第1の周波数波形を含む受信信号を周波数領域に変換することを行わせる。前記処理装置またはプロセッサは、さらに、前記第1の周波数波形と一致する一連の係数を有する第2の周波数波形を含むマッチドフィルタを選択する。前記処理装置またはプロセッサは、さらに、一連の指標に従って前記一連の係数を更新し、フィルタリングされた受信信号を生成するために前記受信信号を前記マッチドフィルタによってフィルタリングする。前記処理装置またはプロセッサは、さらに、前記フィルタリングされた受信信号から距離情報および速度情報を抽出する。
【0009】
本開示のこれらおよび他の態様は、以下に簡潔に説明される添付の図とともに、以下の詳細な説明を読むことによって明らかになる。本開示は、本開示に規定される特徴または要素が、本明細書に記載された特定の例示的な実装において明示的に組み合わされるか、または他の方法で説明されるかにかかわらず、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の特徴または要素の任意の組合せを含む。本開示は、その全体を総合的に読むことが意図されており、本開示のいかなる態様や例においても、分離可能な特徴や要素は、開示の文脈が明確に異なることを示していない限り、組み合わせることができると見なすべきである。
【0010】
したがって、要約は、いくつかの例を要約し、本開示の一部の態様を基本的に理解するためのものであり、本開示の範囲や趣旨を制限または狭めることなく提供されていることが理解されるであろう。他の例、態様、および利点は、記載された実施例の原理を説明する添付の図と合わせて考慮することで、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の種々の態様を明確にするために、後述の詳細な説明(実施形態)で参照される図面を示す。なお図中の同一の符号は同一の要素である。
【0012】
図1A】本開示の実施形態による例示的なLIDARシステムを例示するブロック図である。
【0013】
図1B】本開示の実施形態によるLIDARシステムのマッチドフィルタリングモジュールの一例を例示するブロック図である。
【0014】
図2】本開示の実施形態によるFMCW LIDAR波形の一例を示す時間-周波数図である。
【0015】
図3A】本開示の実施形態による、LIDARシステムにおいてスキャニングミラーが低速の場合の受信信号パワースペクトル密度(PSD)の一例を示す図である。
【0016】
図3B】本開示の実施形態による、LIDARシステムにおいてスキャニングミラーが高速の場合の受信信号パワースペクトル密度(PSD)の一例を示す図である。
【0017】
図4】本開示の実施形態によるLIDARシステムのマッチドフィルタの一例を説明する図である。
【0018】
図5】本開示の実施形態によるマッチドフィルタ波形の例を説明する図である。
【0019】
図6】本開示の実施形態によるLIDARシステムにおいて受信信号を処理するプロセスの一例を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の詳細な説明を参照して本開示の様々な実施形態および態様について説明し、添付の図面により様々な実施形態を説明する。以下の説明および図面は、本開示を例示するものであり、本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。本開示の様々な実施形態の完全な理解を提供するために、多数の具体的な内容が説明される。しかし、ある場合には、本開示の実施形態の簡潔な考察を提供するために、周知または慣用的な内容については記載しない。
【0021】
本明細書で説明するLIDARシステムは、輸送、製造、計測、医療、仮想現実、拡張現実、およびセキュリティシステムなどの任意のセンシング市場において実施することができるが、これらに限定されるものではない。
いくつかの実施形態によれば、上述したLIDARシステムは、自動運転支援システム、または自動運転車の空間認識を支援する周波数変調連続波(FMCW)デバイスのフロントエンドの一部として実装される。
【0022】
図1は、本開示の例示的な実施態様によるLIDARシステム100を示す。
LIDARシステム100は、多数の構成要素のいずれか1つまたは複数を含むが、図1に示すよりも少ない構成要素または追加の構成要素を含んでもよい。いくつかの実施形態によれば、LIDARシステム100に関して本明細書で説明した構成要素の1つ以上は、フォトニクスチップ上に実装することができる。光学回路101には、能動光学構成要素と受動光学構成要素との組み合わせが含まれている。いくつかの例では、能動光学構成要素は、異なる波長の光ビームを有し、1つ以上の光増幅器、1つ以上の光検出器などを含んでいる。
【0023】
自由空間光学系115には、光信号を送信し、能動光回路の適切な入力/出力ポートに光信号をルーティングして操作するための1つ以上の光導波路が含まれている。自由空間光学系115には、タップ、波長分割マルチプレクサ(WDM)、スプリッタ/コンバイナ、偏光ビームスプリッタ(PBS)、コリメータ、カプラなどの1つ以上の光学構成要素が含まれている。
一態様では、自由空間光学系115には、偏光状態を変換し、受信した偏光を、例えば、PBSを用いて光検出器に導くための構成要素が含まれている。自由空間光学系115は、異なる周波数を有する光ビームを異なる角度で偏向させるための回折素子をさらに含んでもよい。
【0024】
本実施形態のLIDARシステム100は、1つ以上のスキャニングミラーを有する光スキャナ102を備えている。これらのスキャニングミラーは、スキャニングパターンに従って環境をスキャンする光信号を誘導するために、回折素子の速軸に直交または実質的に直交する軸(例.低速軸)に沿って回転可能になっている。例えば、スキャニングミラーは、1つ以上のガルバノメータによって回転可能である。ターゲット環境内の対象物は、入射光を散乱させてリターン光ビームやターゲットリターン信号にすることがある。また、光スキャナ102は、リターン光ビームまたはターゲットリターン信号を収集し、これは光学回路101の光回路構成要素に戻される場合がある。例えば、リターン光ビームは、偏光ビームスプリッタによって光検出器に向けられる。なお、光スキャナ102には、ミラーやガルバノメータに加えて、1/4波長板、レンズ、反射防止コーティングされた光学窓などが含まれる場合がある。
【0025】
LIDARシステム100には、光学回路101および光スキャナ102を制御およびサポートするために、LIDAR制御装置110が設けられている。LIDAR制御装置110には、LIDARシステム100に必要な処理装置が含まれている。一態様では、処理装置は、マイクロプロセッサ、中央処理装置などの1つ以上の汎用処理装置である。より具体的には、複合命令セットコンピューティング(CISC)マイクロプロセッサ、縮小命令セットコンピューティング(RISC)マイクロプロセッサ、超長命令語(VLIW)マイクロプロセッサ、または他の命令セットを実装するプロセッサ、または命令セットの組み合わせを実装するプロセッサである。また、上記処理装置は、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:現場プログラム可能ゲートアレイ)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ネットワークプロセッサ等の特殊用途処理装置の1つ以上であってもよい。
【0026】
一態様では、LIDAR制御装置110には、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)などの信号処理ユニット112が設けられる。これにより、LIDAR制御装置110は、光学ドライバ103を制御するためのデジタル制御信号を出力する。そのデジタル制御信号は、信号変換ユニット106を介してアナログ信号に変換される。例えば、信号変換ユニット106には、デジタル/アナログ変換器が含まれる。光学ドライバ103は、光学回路101の能動光学構成要素に駆動信号を供給し、レーザや増幅器などの光源を駆動する。一態様では、複数の光源を駆動するために、複数の光学ドライバ103および信号変換ユニット106を設けてもよい。
【0027】
LIDAR制御装置110はまた、光スキャナ102に対してデジタル制御信号を出力するように構成されている。モーション制御装置105は、LIDAR制御装置110から受信した制御信号に基づいて、光スキャナ102のガルバノメータを制御することができる。具体的には、デジタル/アナログ変換器を用いて、LIDAR制御装置110からの座標ルーティング情報を、光スキャナ102のガルバノメータによって処理可能な信号に変換することができる。一態様では、モーション制御装置105は、光スキャナ102の構成要素の位置または動作に関する情報をLIDAR制御装置110に送り返すこともできる。具体的には、アナログ/デジタル変換器を用いて、ガルバノメータの位置に関する情報をLIDAR制御装置110が処理可能な信号に順次変換することができる。
【0028】
LIDAR制御装置110は、さらに、入力されたデジタル信号を解析するように構成されている。これに関連して、LIDARシステム100には、光学回路101によって受信された1つ以上のビームを測定するための光受信器104が設けられている。具体的には、光受信器104としての基準ビーム受信器は、能動光学構成要素からの基準ビームの振幅を測定し、アナログ/デジタル変換器により、同基準ビーム受信器からの信号を、LIDAR制御装置110によって処理可能な信号に変換する。
また、光受信器104としてのターゲット受信器は、ビート周波数変調光信号の形でターゲットの距離と速度に関する情報を搬送する光信号を計測する。この場合、光信号の反射ビームは、局部発振器からの信号と混合されてもよい。光受信器104には、ターゲット受信器からの信号をLIDAR制御装置110によって処理可能な信号に変換する高速アナログ/デジタル変換器を設けることができる。
一態様では、光受信器104からの信号は、LIDAR制御装置110に受信される前に、信号調整ユニット107による信号調整の対象となり得る。例えば、光受信器104からの信号は、リターン信号の増幅のために信号調整ユニット107のオペアンプに供給され、そのオペアンプによって増幅された信号がLIDAR制御装置110に供給されるようにしてもよい。
【0029】
一部のアプリケーションでは、LIDARシステム100には、環境の画像をキャプチャするように構成された1つ以上の撮像装置108、同システムの地理的位置を提供するように構成された全地球測位システム(GPS)109、または他のセンサ入力を追加的に設けることもできる。
また、LIDARシステム100には画像処理装置114を設けることができる。この場合、同画像処理装置114は、撮像装置108および全地球測位システム(GPS)109から画像および地理的位置を受信し、画像および位置またはそれに関連する情報を、LIDAR制御装置110またはLIDARシステム100に接続された他のシステムに送信するように構成することができる。
【0030】
いくつかの実施例による動作では、LIDARシステム100は、非縮退光学光源を用いて2次元で距離および速度を同時に測定するように構成される。この機能により、周囲環境の距離、速度、方位角および仰角について遠距離測定がリアルタイムで可能になる。
【0031】
いくつかの例では、スキャンプロセスは、光学ドライバ103およびLIDAR制御装置110から開始される。LIDAR制御装置110は、光学ドライバ103に1つ以上の光ビームをそれぞれ変調するように指示し、これらの変調信号は光学回路101の受動光学回路を通って自由空間光学系115のコリメータに送信される。同コリメータは、上記変調信号を光スキャナ102に誘導し、光スキャナ102はモーション制御装置105によって定義され予めプログラムされたパターンで環境をスキャンする。光学回路101には、光が光学回路101を出る際に光の偏光状態を変換する偏光波長板(PWP)を設けてもよい。一態様では、偏光波長板は、1/4波長板または半波長板であってもよい。偏光された光ビームの一部は、光学回路101に戻るように反射される場合もある。例えば、LIDARシステム100で使用されるレンズ系またはコリメート系は、自然な反射特性または反射コーティングを有する場合があり、これにより光ビームの一部が光学回路101に反射される。
【0032】
環境から反射された光信号は、光学回路101を通して受信器(光受信器104)に送られる。このとき、光の偏光状態は変換されているため、光学回路101に反射して戻ってきた偏光光の一部とともに偏光ビームスプリッタで反射される。その結果、反射された光信号は、光源と同じ光ファイバまたは導波路には戻らず、それぞれ別の光受信器に反射される。これらの信号は互いに干渉し、合成された信号を生成する。ターゲットから戻ってくる各ビーム信号は、時間シフトされた波形を生成し、これら2つの波形間の時間的位相差によって光受信器(光検出器)で計測されるビート周波数が生成される。そして、その合成された信号は光受信器104に反射させることができる。
【0033】
光受信器104で受信したアナログ信号は、ADC(アナログ/デジタル変換器)によりデジタル信号に変換される。次いで、同デジタル信号は、LIDAR制御装置110に送信される。同装置の信号処理ユニット112は、同デジタル信号を受信しそれらを処理する。一態様では、信号処理ユニット112は、モーション制御装置105およびガルバノメータ(図示されない)から位置データを受信し、画像処理装置114から画像データを受信する。これにより、信号処理ユニット112は、光スキャナ102が追加ポイントをスキャンする際に、環境内のポイントの距離と速度に関する情報を有する3Dポイントクラウドを生成することができる。信号処理ユニット112はまた、3Dポイントクラウドを画像データと重ね合わせて、周囲の対象物の速度および距離を判断する場合もある。このシステムはさらに衛星ベースのナビゲーション位置データを処理して正確な全地球的位置情報を提供する場合もある。
【0034】
図1Bは、本開示の実施形態によるLIDARシステムのマッチドフィルタリングモジュール130の一例を示すブロック図である。
図1Aおよび図1Bを参照すると、信号処理ユニット112は、マッチドフィルタリングモジュール130を含んでいる。マッチドフィルタリングモジュールは、信号処理ユニット112内に存在するように描かれているが、本開示の実施形態はそのように限定されないことに留意されたい。例えば、一実施形態では、マッチドフィルタリングモジュール130は、システム100(例えば、LIDAR制御システム110)内のコンピュータメモリ(例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリなど)に存在し得る。
スキャニングFMCW LIDARシステム100は、光ビームを操縦し、ターゲットまたはターゲット環境をスキャニングするために、ムービングスキャニングミラー(例えば、光スキャナ102に含まれる)を用いる。ターゲット環境内の物体は、入射光を散乱させてリターン光ビームまたはターゲットリターン信号にする。光スキャナ102は、リターン光ビームまたはターゲットリターン信号を集める。ターゲットリターン信号は、ローカルオシレータからの第2の信号と混合され、距離依存のビート周波数が生成される。光受信器(光検出器)で測定されるビート周波数は、2つの波形間の時間的な位相差によって生成される。
一実施形態では、ビート周波数は、例えばLIDARシステム100の信号調整ユニット107などの信号調整ユニット内のアナログ-デジタル変換器(ADC)によってデジタル化される。一実施形態では、デジタル化されたビート周波数信号は、LIDARシステム100の信号処理ユニット112によって受信され、その後、信号処理ユニット112においてデジタル処理される。マッチドフィルタリングモジュール130を含む信号処理ユニット112は、受信信号を処理して、ターゲットの距離情報および速度情報を抽出する。
【0035】
マッチドフィルタリングモジュール130は、サンプリングモジュール121、変換モジュール122、選択モジュール123、係数モジュール124、およびフィルタリングモジュール125を含むが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態では、マッチドフィルタリングモジュール130は、光受信器104または信号調整ユニット107から信号を受信する。サンプリングモジュール121は、LIDARシステムにおける受信信号をサンプリングするように構成されている。変換モジュール122は、受信信号を周波数領域に変換するように構成されており、ここで、受信信号は第1の周波数波形を有する。選択モジュール123は、マッチドフィルタを選択するように構成されており、マッチドフィルタは、第1の周波数波形に一致させるための一連の係数を有する第2の周波数波形を含んでいる。
第2の周波数波形は、受信信号の予想される第1の周波数波形を有する。例えば、受信信号は、ターゲットリターン信号およびローカルオシレータ信号の混合から生成されるビート周波数であり、第2の周波数波形は、受信信号のシミュレーション(モデル)または測定結果に基づいて決定される。係数モジュール124は、一連の指標に基づいて一連の係数を更新するように構成されている。フィルタリングモジュール125は、マッチドフィルタによって受信信号をフィルタリングし、フィルタリングされた受信信号を生成するように構成されている。信号処理ユニットは、フィルタリングされた受信信号からターゲットの距離情報および速度情報を抽出するように構成されている。
マッチドフィルタリングモジュール130は、他のモジュールを含んでもよい。モジュール121~125の一部または全部は、ソフトウェア、ハードウェア、またはそれらの組み合わせによって実装される。例えば、これらのモジュールは、メモリにロードされ、1つ以上のプロセッサによって実行される。モジュール121~125の一部は、一体型モジュールとして一緒に統合されてもよい。
【0036】
図2は、一実施形態において、LIDARシステム100のようなLIDARシステムがターゲット環境をスキャンするために使用可能なFMCWスキャニング信号201の時間-周波数図200である。この例において、fFM(t)と表示されたFMCWスキャニング信号201は、チャープ帯域幅Δfおよびチャープ周期Tを持つ鋸歯状波形(鋸歯「チャープ」)である。鋸歯の傾きは、k=(Δf/ T)である。
図2にはまた、一実施形態におけるターゲットリターン信号202が示される。
FM(t-Δt)で示されるターゲットリターン信号202は、FMCWスキャニング信号201の時間遅延バージョンであり、Δtは、FMCWスキャニング信号201によって照射されたターゲットとの間の往復時間である。この往復時間は Δt=2R/vで与えられる。ここで、Rはターゲットの距離、vは光ビームの速度である光速cである。
したがって、同ターゲットの距離Rは、R=c(Δt/2) として計算できる。
ターゲットリターン信号202がFMCWスキャニング信号と光学的に混合されると、距離依存の差周波数(「ビート周波数」)Δf(t)が生成される。
ビート周波数Δf(t)は、鋸歯の傾きkによって時間遅延Δtと線形の関係にある。つまり、ΔfR(t)=kΔtとなる。
ターゲットの距離RはΔtに比例するので、ターゲットの距離RはR=(c/2)(Δf(t)/k)として算出することができる。つまり、距離Rはビート周波数Δf(t)と線形の関係にある。
ビート周波数Δf(t)は、例えば、LIDARシステム100の光受信器104でアナログ信号として生成される。このビート周波数は、例えば、LIDARシステム100の信号調整ユニット107内のアナログ/デジタル変換器(ADC)によってデジタル化される。このようにしてデジタル化されたビート周波数信号は、LIDARシステム100内の信号処理ユニット(例えば、信号処理ユニット112)でデジタル処理される。
ただし、ターゲットがLIDARシステム100に対して相対速度を有する場合、ターゲットリターン信号202には一般に周波数オフセット(ドップラーシフト)が含まれることに注意する必要がある。ドップラーシフトは別途検出されてリターン信号の周波数を補正するために使用されるため、図2では簡略化と説明の容易化のためドップラーシフトは表示されていない。
また、ADCのサンプリング周波数は、エイリアシングを発生させずにシステムで処理可能な最高のビート周波数に決定されることに注意する必要がある。一般的に処理可能な最高周波数はサンプリング周波数の半分(すなわち「ナイキスト限界」)である。
例えば、限定はしないが、ADCのサンプリング周波数が1ギガヘルツである場合、エイリアシングなしで処理できる最高ビート周波数(ΔfRmax)は500メガヘルツである。この限界は、システムの最大ターゲット距離Rmax=(c/2)(ΔfRmax/k)で決まり、これは鋸歯の傾きkを変更することによって調整することができる。
一例では、ADCからのデータサンプルは連続的であってもよいが、後述する後続のデジタル処理は、LIDARシステム100の所定の周期性に関連付けることができる「時間セグメント」に分割することができる。例えば、限定はしないが、時間セグメントは、チャープ周期Tの数、または前述の光スキャナによる方位角方向の回転数に対応する。
【0037】
図3Aは、LIDARシステムにおいて、スキャニングミラーが低速の場合の受信信号パワースペクトル密度(PSD)の一例を示す図300aである。図3Bは、LIDARシステムにおいて、スキャニングミラーが高速の場合の受信信号パワースペクトル密度(PSD)の一例を示す図である。
スキャニングLIDARシステム(例えば、FMCW LIDAR)は、光ビームを操縦し、ターゲットまたはターゲット環境をスキャニングするために、ムービングスキャニングミラーを用いる。広い視野および高いフレームレートを達成するために、スキャニングミラーは、高い角速度を有する。ある状況では、高いミラー角速度がいくつかの障害を引き起こすおそれがある。例えば、ミラーに起因するドップラーシフトは、受信信号の帯域幅を広げるおそれがある。そのため、これらの状況では、受信信号強度が低下し、その結果、検出確率が低下し、距離、速度、反射率測定に関する誤差の増加を引き起こすおそれがある。
【0038】
図3Aおよび図3Bを参照すると、ムービングスキャニングミラー(例えば、図1のシステム100の一部として含まれるスキャニングミラー)は、出射光ビームおよび入射光ビームにドップラーシフトを誘発し、これがターゲットリターン信号となることがある。図3Aに描かれているように、スキャニングミラーが低いミラー速度(例えば、<5kdeg/s)で動いている場合、ミラーに起因するドップラーは信号品質にほとんど影響を与えない。ピーク値302aは、受信信号のPSD301aにおいて検出される。受信信号は、ランダム実現値305aを持つことがあるが、これは比較的小さい。受信信号は、適正な範囲の周波数測定誤差303aおよび適正な範囲のパワー測定誤差304aを有する。
【0039】
図3Bに描かれているように、スキャニングミラーが高いミラー速度(>5kdeg/s)で動いているとき、信号パワースペクトル密度(PSD)301bの著しい拡散が存在する。その結果、測定された信号のエネルギーは平均して低くなるおそれがある。そのため、結果的に検出確率が下がるおそれがある。周波数303bの測定誤差および/またはエネルギー304bの測定誤差は、信号のランダム性(例えば、ランダム実現値305b)に起因して高くなるおそれがある。
【0040】
図4は、本開示の実施形態によるLIDARシステムのマッチドフィルタの一例を説明する図400である。
本開示の実施形態は、ミラーによるドップラー拡散に対抗するための複数のアプローチを提供する。例えば、本開示の実施形態では、周波数領域の技術や時間領域の技術を採用することができる。周波数領域の技術における1つのアプローチとして、周波数領域でのマッチドフィルタリングがある。このアプローチでは、受信信号は周波数領域でマッチドフィルタによってフィルタリングされ、マッチドフィルタは周波数領域で予想される受信信号の形状または波形を含む。予想される受信信号の周波数波形は、理論的なモデルやシミュレーション、または所定の条件(例えば、ラボ環境やテスト環境で決定された条件、人工知能、...など)からの測定に基づいて決定される。
【0041】
図4を参照すると、周波数領域の受信信号401、たとえば入力スペクトルが、マッチドフィルタ402に入力される。
受信信号401は、例えばマッチドフィルタリングプロセスの開始時点において、未知の波形である可能性のある第1の周波数波形を含む場合がある。マッチドフィルタ402は、予想される受信信号の周波数波形である可能性のある第2の周波数波形を含むことができる。
いくつかの実施形態では、第2の周波数波形は、第1の周波数波形と一致または近似するための一連の係数を有する。いくつかの実施形態では、第2の周波数波形は、理論モデルや実験的な測定に基づいて決定された、第1の周波数波形の期待値や推定値、あるいは近似値である。いくつかの実施形態において、第2の周波数波形は、LIDARシステム、例えば、LIDARシステムの光学サブシステムのモデルまたはシミュレーションまたは測定に基づいて決定される。
【0042】
一実施形態では、第2の周波数波形は、受信信号のパワースペクトル密度(PSD)関数の推定値に基づく。例えば、マッチドフィルタ402は、予想される受信信号PSDを含む。マッチドフィルタ402は、予想される受信信号PSDと第1の周波数波形とを比較し、一致するかどうかを判定するように構成される。
【0043】
一実施形態では、マッチドフィルタ402のフィルタ係数403は一定である。
例えば、フィルタ係数403は、理論的なシミュレーションやモデリングから導き出すことができる。
【0044】
一実施形態では、フィルタ係数403は、一連の指標に従って更新される。
例えば、フィルタ係数403は、スキャニングミラーの角速度、スキャニングミラーの位置、光スキャナのジオメトリ、スキャニングミラーのサイズ、ビーム径、またはターゲットなどの主要な要因に応じて更新される。一連の指標は、スキャニングミラーの角速度、スキャニングミラーの位置、光スキャナのジオメトリ、スキャニングミラーのサイズ、ビーム径、またはターゲットなどを含む。例えば、フィルタ係数403は、受信信号によりよく一致するように適合または調整される。例えば、フィルタ係数403は、最初に理論シミュレーションまたはモデリングから決定され、その後、スキャニングミラーの角速度、スキャニングミラーの位置、光スキャナのジオメトリ、またはターゲットなどに基づいて動的に更新または適合される。例えば、スキャニングミラーの角速度が速くなった場合、フィルタ係数403はマッチドフィルタの帯域幅を広げるために更新される。
【0045】
一実施形態では、マッチドフィルタ係数403は、マッチドフィルタ帯域幅がスキャニングミラーの角速度、スキャニングミラーサイズ、および/またはビーム径に比例するように更新される。
【0046】
一実施形態では、一連の係数は、ハードウェア構成またはシステム動作の変更に基づいて更新される。
例えば、ミラー角速度の増加やスキャンパターンの変更に基づいて一連の係数を更新する。
【0047】
一実施形態では、フィルタ係数403は、連続的に更新されてもよく、例えば、1ミリ秒、1秒、15秒、30秒、またはその間の任意の値ごとに更新される。別の例として、スキャニングミラーの角速度、スキャニングミラーの位置、光スキャナのジオメトリ、またはターゲットなどに変化があることを検出した場合に、フィルタ係数403を更新する。
【0048】
いくつかの実施形態によれば、マッチドフィルタ402は、波形の畳み込みに基づいて構成される。例えば、ある状況において、マッチドフィルタ402は、受信信号(例えば、第1の周波数波形)と予想される受信信号(例えば、第2の周波数波形)とを比較して、それらの間の類似点を決定するように構成される。一例として、マッチドフィルタ402は、受信信号PSDと予想される受信信号PSDとの相互相関を計算するように構成される。例えば、最大相関値は、受信信号のピーク値を表す。
【0049】
仮に、フィルタリングに用いる第2の周波数波形(既知の波形)が、未知の波形である受信信号波形の複素共役である場合、マッチドフィルタ402によって信号対雑音比(SNR)および検出確率が最大化される。一実施形態では、フィルタリングされた受信信号をピーク選択処理に入力し、距離情報および速度情報を抽出する。受信信号からピーク値を検出するためにピーク値検索404が実行される。次に、ターゲットの距離情報および速度情報が、受信信号におけるピーク値に基づいて抽出される。検出405は、SNRが最大化されるポイントで発生するため、本方法は、より正確な周波数およびエネルギーの測定をもたらし、それによりターゲットの距離および速度の測定における精度を向上させることができる。
【0050】
図5は、本開示の実施形態によるマッチドフィルタ波形の例を説明するための図である。
異なるマッチドフィルタ波形(例えば、第2の周波数波形)は、理論的なシミュレーションまたはモデリングに基づいて選択されてもよいし、経験的に選択されてもよい。一例として、マッチドフィルタは、ガウス波形501を含むことがある。ここで、M(f)=exp(-0.5(f/B))となる。ここで、Bはフィルタ帯域幅を決定する。別の例として、マッチドフィルタはsinc波形502を含むことがある。ここで、M(f)=sinc(f/B)となる(ただし、|f|≦Bの場合)。それ以外の場合はM(f)=0となる。ここで、Bはフィルタ帯域幅を決定する。また別の例として、マッチドフィルタはsinc2乗波形503を含むことがある。ここで、M(f)=sinc(f/B)となる(ただし、|f|≦Bの場合)。それ以外の場合はM(f)=0となる。ここで、Bはフィルタ帯域幅を決定する。さらにもう1つの例として、マッチドフィルタは矩形波形504を含むことがある。ここで、M(f)=1となる(ただし、|f|≦Bの場合)。それ以外の場合はM(f)=0となる。ここで、Bはフィルタ帯域幅を決定する。
上記のマッチドフィルタの例は、フィルタ帯域幅を決めるパラメータBで定義することができる。一実施形態では、フィルタ帯域幅は、スキャニングミラーの角速度に正比例する。上記のマッチドフィルタの例は、あくまでも説明のためのものであり、他にも様々なマッチドフィルタの波形が存在する可能性がある。
【0051】
デジタル信号処理において実装するために、連続周波数の波形(例:501-504)をサンプリングすることで、離散周波数のフィルタ係数を取得することができる。
【0052】
図6は、本開示の実施形態によるLIDARシステムにおいて受信信号を処理するプロセス600の一例を示す流れ図である。
プロセス600は、ソフトウェア、ハードウェア、またはそれらの組み合わせを含む処理ロジックによって実行される。そのソフトウェアは、非一時的な機械可読記憶媒体(例えば、メモリデバイス上)に格納される場合がある。例えば、プロセス600は、図1A図1Bに示されるように、LIDARシステム100の信号処理ユニット112内のマッチドフィルタリングモジュール130によって実行される。このプロセスによって、より正確な周波数およびエネルギーの測定が達成され、それによってターゲットの距離および速度の測定における精度が向上する。
【0053】
ブロック601では、受信信号がLIDARシステムでサンプリングされ、受信信号が周波数領域に変換される。ここで、受信信号は第1の周波数波形を含んでいる。
【0054】
ブロック602では、マッチドフィルタが選択される。マッチドフィルタは、第1の周波数波形と一致する一連の係数を持つ第2の周波数波形を含んでいる。一実施形態では、第2の周波数波形は、LIDARシステムの光学サブシステムのモデルまたはシミュレーションまたは測定に基づいて決定される。一実施形態では、第2の周波数波形は、受信信号のPSDの推定値に基づいて決定される。
【0055】
一実施形態では、マッチドフィルタを選択することは、第2の周波数波形となる矩形波形、sinc波形、sinc2乗波形、またはガウス波形を選択することを含む。一実施形態では、マッチドフィルタは、sinc波形、sinc2乗波形、ガウス波形、または矩形波形の少なくとも1つで構成される。
【0056】
ブロック603では、一連の係数は、一連の指標に従って更新される。一実施形態において、マッチドフィルタの一連の係数は、スキャニングミラーの角速度、スキャニングミラーの位置、光スキャナのジオメトリ、またはターゲットの少なくとも1つに従って更新される。
【0057】
一実施形態では、フィルタ帯域幅がスキャニングミラーの角速度、スキャニングミラーのサイズ、またはビーム径に比例するように、一連の係数が更新される。一実施形態では、一連の係数は、ミラー角速度の変化またはスキャンパターンの変化を含むハードウェア構成またはシステム動作の変化に基づいて更新される。
【0058】
ブロック604では、フィルタリングされた受信信号を生成するために、マッチドフィルタによって受信信号をフィルタリングする。
【0059】
ブロック605では、フィルタリングされた受信信号から距離情報および速度情報が抽出される。一実施形態では、フィルタリングされた受信信号をピーク選択処理に入力し、距離情報および速度情報を抽出する。例えば、フィルタリングされた受信信号のピーク値を検出し、ターゲットの距離情報および速度情報を抽出する。
【0060】
前述した説明では、本発明の実施形態を理解しやすくするために、特定のシステム、構成要素、方法などの具体例を複数示しているが、当業者であればこれらの具体例の説明がなくても本発明を実施することができる。また、公知の構成要素や方法はその詳細が省略され、または、単純なブロック図の形式で示されることがあるが、これは本発明の理解を容易にするためである。したがって、開示された内容は単に例示であり、一事例は他の例示と異なる場合があっても、本発明の範囲内に含まれると考えられる。
【0061】
本明細書において「一実施形態」または「実施形態」という表現が使用される場合、それらの実施形態に関連して説明された特定の特徴、構造、または特性が少なくとも一つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本明細書のいくつかの箇所で「一実施形態において」または「実施形態において」という表現が現れている場合、必ずしも同じ実施形態を示すものではない。
【0062】
ここで説明されている方法の操作は特定の順序で示されているが、各方法の操作の順序は変更されることがあり、特定の操作を逆順で行ってもよいし、少なくとも一部の操作を他の操作と同時に行ってもよい。異なる操作の指示または補助的な操作は、断続的または交互に行うことができる。
【0063】
上記に記載されている発明の実施例についての説明は、要約に記載されている内容を含めて、詳細で網羅的であることを意図しているものではなく、開示された具体的形態に限定するものでもない。本発明の具体的な実施態様および実施例は、例示の目的で本明細書に記載されているが、当業者が認識する範囲で種々の同等な変更を行うことができる。ここで使用される「例」または「例示的」の語は、例、実例または説明として役立つことを意味するために使用されている。本明細書において「例」または「例示」と説明された態様または設計は、必ずしも他の態様または設計よりも好ましいまたは有利であると解釈されるべきではない。むしろ、「例」または「例示」という用語の使用は、概念を具体的な形で示すことを意図している。
本明細書において使用される「または」の用語は、排他的な「または」ではなく、包括的な「または」として解釈されることを意図している。つまり、特に指定されていない限り、あるいは文脈から明らかでない限り、「XはAまたはBを含む」という表現は、自然な包括的順列のいずれかを意味する。つまり、XがAを含む場合、XがBを含む場合、あるいはXがAおよびBの両方を含む場合、前述のいずれの場合にも、「XはAまたはBを含む」という条件を満たすことになる。
さらに、本明細書および添付された特許請求の範囲で使用される冠詞「a」および「an」は、特に指定されていない限り、文脈から単数形であることが明らかでない場合には「1つまたは複数」を意味するものと解釈される。
さらに、本明細書において「第1」、「第2」、「第3」、「第4」のような用語が使用される場合、これらの用語は異なる要素を区別するための識別子として使用されるもので、数字の指定に従って必ずしも順序を示すものではない。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
【国際調査報告】