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特表2023-546176ポリプロピレンホモポリマーおよびリサイクルプラスチック材料を含むポリオレフィン組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】ポリプロピレンホモポリマーおよびリサイクルプラスチック材料を含むポリオレフィン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/12 20060101AFI20231025BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20231025BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20231025BHJP
   B29B 17/00 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
C08L23/12
C08L23/10
C08K7/02
B29B17/00 ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523611
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(85)【翻訳文提出日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2021078781
(87)【国際公開番号】W WO2022084236
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】20202544.1
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510310277
【氏名又は名称】ボレアリス アーゲー
【氏名又は名称原語表記】BOREALIS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】カーレン、 スザンヌ マルガレーテ
(72)【発明者】
【氏名】ルグラ、 アンジェリカ メール デルフィーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン、 ハーマン
(72)【発明者】
【氏名】イェラベック、 ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】ストックライター、 ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】カストネル、 エルヴィン
【テーマコード(参考)】
4F401
4J002
【Fターム(参考)】
4F401AA09
4F401AA10
4F401BA13
4F401CA58
4F401CA79
4F401CB18
4F401FA03Z
4F401FA07Z
4J002BB03X
4J002BB12W
4J002BB12X
4J002DL006
4J002FA046
4J002FD010
4J002FD016
4J002FD050
4J002FD070
4J002FD180
4J002GA01
4J002GG00
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
4J002GQ01
(57)【要約】
本発明は、a)少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー;b)使用済み廃棄物および/または産業廃棄物に由来する廃プラスチック材料から回収された、ポリプロピレンとポリエチレンとを3:7~10:1の比率で含有するリサイクルプラスチック材料のブレンド(A);c)ガラス繊維;およびd)少なくとも1つのカップリング剤を含むポリオレフィン組成物であって、少なくとも2g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)、少なくとも4GPaの引張弾性率(ISO527-2)、および少なくとも6kJ/mの衝撃強度(ISO179-1、シャルピー 1eA +23℃)によって特徴付けられるポリオレフィン組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)30~60重量%(ポリマー組成物の総重量に基づく)の、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー;
b)15~40重量%(ポリマー組成物の総重量に基づく)の、ポリプロピレンとポリエチレンとを3:7~10:1の比率で含有する、リサイクプラスチック材料のブレンド(A)であって、8~14g/10分の範囲のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する使用済み廃棄物および/または産業廃棄物に由来する廃プラスチック材料から回収された、リサイクプラスチック材料のブレンド(A);
c)17~50重量%(ポリマー組成物の総重量に基づく)のガラス繊維;
d)0.5~2.5重量%(ポリマー組成物の総重量に基づく)の少なくとも1つのカップリング剤;および任意にさらなる添加剤
を含み、
ここで、全ての成分の合計が常に100重量%となるように添加される、ポリオレフィン組成物であって、
前記ポリオレフィン組成物は、以下によって特徴付けられるポリオレフィン組成物:
-少なくとも2g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定);
-23℃で少なくとも4GPaの引張弾性率(ISO527-2)、および
-少なくとも5kJ/mの衝撃強度(ISO179、シャルピー 1eA +23℃)。
【請求項2】
a)30~50重量%(ポリマー組成物の総重量に基づく)の、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー;
b)15~40重量%(ポリマー組成物の総重量に基づく)の、10~12g/10分の範囲のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有するポリプロピレンとポリエチレンとを含有するリサイクルプラスチック材料のブレンド(A);
c)20~50重量%(ポリマー組成物の総重量に基づく)のガラス繊維;
d)0.5~2.5重量%(ポリマー組成物の総重量に基づく)の少なくとも1つのカップリング剤;および任意にさらなる添加剤
を含み、
ここで、全ての成分の合計が常に100重量%となるように添加されることを特徴とする、請求項1に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項3】
前記ポリオレフィン組成物が、
a1)少なくとも1つの第1のポリプロピレンホモポリマー;
a2)少なくとも1つの第2のポリプロピレンホモポリマー;
を含み、
ここで、前記少なくとも1つの第1のポリプロピレンホモポリマー、および前記少なくとも1つの第2のポリプロピレンホモポリマーは、それらのメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg荷重、ISO1133に従って測定)が互いに異なる、
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項4】
前記ポリオレフィン組成物が、
a1)少なくとも1つの第1のポリプロピレンホモポリマー;
a2)少なくとも1つの第2のポリプロピレンホモポリマー;
a3)少なくとも1つの第3のポリプロピレンホモポリマー;
を含み、
ここで、前記少なくとも1つの第1のポリプロピレンホモポリマー、前記少なくとも1つの第2のポリプロピレンホモポリマー、および前記少なくとも1つの第3のポリプロピレンホモポリマーは、それらのメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg荷重、ISO1133に従って測定)が互いに異なる、
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項5】
前記ポリプロピレンホモポリマーが、
-5~15g/10分の範囲、好ましくは5~10g/10分、より好ましくは8g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー(PPH-1);
-10~30g/10分の範囲、好ましくは15~25g/10分、より好ましくは20g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー(PPH-2);
-60~100g/10分の範囲、好ましくは70~80g/10分、より好ましくは75g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー(PPH-3);
-100~150g/10分の範囲、好ましくは100~130g/10分、好ましくは125g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー(PPH-4);
-600~1000g/10分の範囲、好ましくは700~900g/10分、好ましくは800g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー(PPH-5);
-1.5g/10分以下、好ましくは0.15~0.5g/10分の範囲、より好ましくは0.3~0.45g/10分、さらにより好ましくは0.2g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー(PPH-6);
からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項6】
少なくとも1つの異相ポリプロピレンコポリマーを含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項7】
前記異相ポリプロピレンコポリマーが、
-15~25g/10分の範囲、好ましくは15~20g/10分、より好ましくは18g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つの異相ポリプロピレンコポリマー(PPHeco-1)であることを特徴とする、請求項6に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項8】
2~20g/10分の範囲、好ましくは3~17g/10分、より好ましくは5~15g/10分、さらにより好ましくは10~15g/10分のメルトフローレートMFR(ISO1133、2.16kg、230℃、ISO1133に従って測定)によって特徴付けられる、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項9】
少なくとも4.0GPa、好ましくは少なくとも4.5GPa、より好ましくは少なくとも5.5GPa、好ましくは少なくとも6GPa、より好ましくは少なくとも6.5GPa、さらにより好ましくは少なくとも6.8GPa、特に4~14GPaの範囲、より
特に4.5~12GPaの範囲の引張弾性率(ISO527-2)によって特徴付けられる、請求項1~8のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項10】
少なくとも5.0kJ/m、好ましくは少なくとも6.0kJ/m、より好ましくは少なくとも7kJ/m、さらにより好ましくは少なくとも7.5kJ/m、より好ましくは少なくとも8kJ/m、さらにより好ましくは少なくとも8.5kJ/m、特に5.0~12.0kJ/mの範囲、より特に5.5~10kJ/mの範囲の衝撃強度(ISO179-1、シャルピー 1eA +23℃)によって特徴付けられる、請求項1~9のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項11】
前記ガラス繊維が、2.0~10.0mm、好ましくは2.0~8.0mmの範囲、さらにより好ましくは2.0~6.0mmの範囲の長さ、および5~20μm、より好ましくは8~18μm、さらにより好ましくは8~15μmの直径を有することを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つのカップリング剤が、官能化ポリプロピレン、特に無水マレイン酸(MAH)で官能化されたポリプロピレンであることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項13】
構造製品、電化製品、自動車用物品、パイプ、フィルム、ジオメンブレン、屋根材用途、ポンドライナー、包装、キャップおよびクロージャーの製造における、ならびに多層ポリオレフィンシートまたはフィルムのコア層(単数もしくは複数)における、請求項1~12のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物の使用。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物を含む物品。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物を調製するための方法であって、
-前記少なくとも第1のポリプロピレンホモポリマーと、任意に前記少なくとも1つの第2のポリプロピレンホモポリマーと、さらに任意に前記少なくとも1つの第3のポリプロピレンホモポリマーと、さらに任意に前記少なくとも1つのポリプロピレン異相コポリマーと、前記リサイクル材料のブレンド(A)と、ガラス繊維と、前記少なくとも1つのカップリング剤と、の混合物を必要量提供する工程;
-前記混合物を押出機中で溶融する工程;および
-任意に、得られたポリオレフィン組成物をペレット化する工程
を含む、ポリオレフィン組成物を調製するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマーおよびリサイクルプラスチック材料を含むポリオレフィン組成物、ならびに該ポリオレフィン組成物を含む物品およびそのようなポリオレフィン組成物を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン、特にポリエチレンおよびポリプロピレンは、食品および他の商品、繊維、自動車部品、ならびに多種多様な製造物品のための包装を含む広範囲の用途において、大量に消費されることが増えている。ポリエチレン系材料は、これらの材料が包装に広く使用されているため、特に問題である。リサイクルされて流れに戻る廃棄物の量と比較して、大量の廃棄物が回収されることを考慮すると、プラスチック廃棄物の流れのインテリジェントな再利用やプラスチック廃棄物の機械的リサイクルには、大きな可能性が残されていることがわかる。
【0003】
一般に、市場に出回っているポリプロピレンのリサイクル量は、ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)の両方の混合物であり、これは、使用済み廃棄物(post-consumer waste)の流れに特に当てはまる。さらに、使用済み廃棄物源からの商業的リサイクル品は、従来、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリスチレンなどの非ポリオレフィン材料、または、木材、紙、ガラス、もしくはアルミニウムなどの非ポリマー物質により交差汚染されている。これらの交差汚染は、有益な最終用途が残らないように、リサイクル流の最終用途を劇的に制限する。特に、使用済み廃棄物流からのポリオレフィンリサイクル材料は、PEとPPとの混合物である。リサイクル品の品質が良ければ良いほど、入手しにくくなり、価格も高くなる。
【0004】
リサイクル品を求める顧客は、未使用品と同様の剛性-衝撃強度を要求する。これは、構造製品用の強化ガラス繊維化合物においても同様である。未使用品と比較したリサイクル品の品質の問題は、リサイクル品を強化することにより、ある程度克服することができ、そこでは、強化粒子が異なるドメイン(PPおよびPE)を物理的に結合する。
【0005】
バージンポリマー(すなわち、初めて使用されるポリマー)および再生混合プラスチックを含む組成物が研究されている。
【0006】
WO2014/167493A1は、ベースポリマー混合物MBとポリマー混合物MPRとを一緒に混合する工程(a)を含むポリオレフィン混合物の調製方法を記載しており、ここで、前記混合物MPRは、使用済みプラスチック材料のリサイクルから得られる。
【0007】
ガラス繊維(GF)で強化された再生混合プラスチックも研究されている。例えば、リサイクルされたPPまたはPP/PE混合物は、GFまたは他の充填剤とのハイブリッドGFにより強化されている。
【0008】
EP2845876B1は、2種以上の樹脂とガラス繊維とを含有する組成物であって、廃棄ポリエチレン(PE)と廃棄ポリプロピレン(PP)とを含む樹脂混合物と;長さ10mm以上の長尺ガラス繊維と;ゴム系樹脂とを含み、前記組成物は、前記樹脂混合物100重量部に対して、前記長尺ガラス繊維3~30重量部と、前記ゴム系樹脂10~50重量部と、LDPE10~35重量部とを含む組成物を記載している。
【0009】
EP3406662A1は、再生廃棄ガラス繊維および再生ポリマー化合物を用いて製造された、構造的に強化されたプラスチック複合製品およびその製造方法を記載している。強化複合物品は、廃棄物流から回収され充填剤として機能する再生繊維ガラスであって、前記強化複合物品の総重量の30~70%を占める再生繊維ガラスと、前記強化複合物品の総重量の1~2%の着色剤と、廃棄物流から回収された再生樹脂と、を含有し、黒色着色剤および化学結合剤によって、再生ガラス繊維を実質的に濡らしている。該再生樹脂は、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)またはエンジニアリンググレード樹脂のうちの少なくとも1つを含む。
【0010】
Bajracharyaら(「射出成形ガラス繊維強化混合プラスチック複合材料の特性に関する実験的および理論的研究」、Composites Part A: Applied Science and Manufacturing、2016年、84:393-405)、およびBajracharyaら(「ガラス繊維強化混合プラスチック複合材料の耐久性特性および特性予測」、Composites Part B: Engineering、2017年、116:16-29)は、使用済みおよび産業用プラスチック廃棄物から回収されたオーストラリアのRepeat Plastics(Replas) Ptyによるフレーク状のPE/PPリサイクル品を使用する。リサイクル品は、906MPaの引張弾性率を有していた。それらは、10、20、30%のGF(長さ:4.0mm、直径:13.7μm)で強化された。3068MPaの最大引張弾性率は、30%GFにより達成された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2014/167493号
【特許文献2】欧州特許第2845876号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第3406662号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、良好な引張弾性率および衝撃強度を同時に有する強化リサイクル品の例はある。しかし、バージンポリマーと同様の特性を有しながらも、最終的な解決策をCOフットプリントに関してより経済的に優しいものにするために、使用済みリサイクル品(PCR)をも含むポリオレフィン組成物を提供することが有利となるであろう。
【0013】
したがって、本発明の目的は、廃プラスチック材料から回収されたポリオレフィン材料を含む、改善された剛性-衝撃強度バランスを有するポリオレフィン組成物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、以下のポリオレフィン組成物の提供により解決された:
a)30~60重量%(ポリマー組成物の総重量に基づく)の、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー、
b)15~40重量%(ポリマー組成物の総重量に基づく)の、ポリプロピレンとポリエチレンとを3:7~10:1の比率で含有する、リサイクプラスチック材料のブレンド(A)であって、8~14g/10分の範囲のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する使用済み廃棄物および/または産業廃棄物に由来する廃プラスチック材料から回収された、リサイクプラスチック材料のブレンド(A);
c)17~50重量%(ポリマー組成物の総重量に基づく)のガラス繊維;
d)0.5~2.5重量%(ポリマー組成物の総重量に基づく)の少なくとも1つのカップリング剤;および任意にさらなる添加剤、
を含み、
ここで、全ての成分の合計が常に100重量%となるように添加される、ポリオレフィン組成物であって、
前記ポリオレフィン組成物は、
-少なくとも2g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定);
-少なくとも4GPaの引張弾性率(ISO527-2に従って測定、23℃);および
-少なくとも5kJ/mの衝撃強度(シャルピー 1eA +23℃)
を有する。
【発明の効果】
【0015】
本リサイクル品含有組成物は、高い衝撃強度と組み合わされた高い引張弾性率を特徴とする。異なる種類のポリマーおよびリサイクル品とガラス繊維強化材との組み合わせの性能は、容易に予測することができない。特に、様々な構成成分間の相互作用に起因する引張弾性率を予測することは困難である。加えて、リサイクルポリオレフィンは、典型的には極性ポリマー(例えば、PA、PET)またはPSもしくは充填剤などの他の非POにより汚染され、最終的な機械的性能の明らかな計算をより困難にする。
【0016】
以下でさらに詳細に論じるように、本ポリオレフィン組成物のメルトフローレートは広いスペクトルをカバーすることができ、顧客のニーズに応じて調整することができる。メルトフローレートは、金型内の流れにおける重要な指標である。メルトフローレートの変化は、転換インターフェイス(conversion interface)および最終用途性能に影響を及ぼす。異なるメルトフローレートを有するポリオレフィン組成物を提供することにより、顧客のニーズを満たすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本ポリオレフィン組成物はゴムを含有せず、本質的に過酸化物を含まず、好ましくは、ポリマー組成物の総重量に基づく過酸化物含有量が0.5重量%未満であることを理解されたい。
【0018】
本明細書および後の特許請求の範囲の目的において、「リサイクル(された)」という用語は、材料が、使用済み廃棄物および/または産業廃棄物から回収されることを示すために用いられる。すなわち、使用済み廃棄物とは、少なくとも第1の使用サイクル(またはライフサイクル)を完了した、すなわち、第1の目的を既に果たし、消費者の手を通った物を指し、一方、産業廃棄物とは、通常、消費者に届かない製造スクラップを指す。本発明の要旨において、「リサイクル(された)ポリマー」はまた、リサイクルポリマーの総重量に基づいて、17重量%まで、好ましくは3重量%まで、より好ましくは1重量%まで、さらにより好ましくは0.1重量%までの、前記第1の使用に由来する他の成分を含んでもよい。これらの成分の種類および量は、リサイクルポリマーの物理的特性に影響を及ぼす。以下に示す物理的特性は、リサイクルポリマーの主成分に関するものである。
【0019】
以下にさらに記載するように、前記第1の使用に由来する典型的な他の成分は、ポリスチレンおよびPA6のような熱可塑性ポリマー、タルク、チョーク、インク、木材、紙、リモネンおよび脂肪酸である。リサイクルポリマー中のポリスチレン(PS)およびポリアミド6(PA6)の含有量は、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)によって測定することができ、また、タルク、チョーク、木材および紙の含有量は、熱重量分析(TGA)によって測定することができる。
【0020】
「バージン(vergin)」という用語は、最初に使用される前の、リサイクルされていない新しく製造された材料および/または物を意味する。ポリマーの起源が明確に言及され
ていない場合、該ポリマーは「バージン」ポリマーである。
【0021】
以下にさらに記載されるように、2つ以上のポリプロピレンホモポリマーが、ポリオレフィン組成物中に使用され得る。本ポリオレフィン組成物に、少なくとも1つの異相ポリプロピレンコポリマーを添加することもできる。
【0022】
本ポリオレフィン組成物において使用される全てのバージンポリプロピレンポリマー(ホモポリマーおよび異相ポリマー)の総量は、本発明によれば、(ポリマー組成物の総重量に基づいて)30~60重量%、好ましくは30~50重量%、より好ましくは35~45重量%、さらにより好ましくは37~40重量%の範囲に合計される。
【0023】
本ポリオレフィン組成物において使用される、使用済み廃棄物および/または産業廃棄物に由来する廃プラスチック材料から回収された、ポリプロピレンとポリエチレンとを3:7~10:1の比率で含有するリサイクルプラスチック材料のブレンド(A)の量は、本発明によれば、(ポリマー組成物の総重量に基づいて)15~40重量%、好ましくは25~40重量%、より好ましくは30~40重量%の範囲である。
【0024】
本ポリオレフィン組成物において使用されるガラス繊維の量は、本発明によれば、(ポリマー組成物の総重量に基づいて)17~50重量%、好ましくは20~50重量%、より好ましくは20~40重量%、さらにより好ましくは20~30重量%の範囲である。
【0025】
本ポリオレフィン組成物において使用される少なくとも1つのカップリング剤の量は、本発明によれば、(ポリマー組成物の総重量に基づいて)0.5~2.5重量%、好ましくは1~2重量%の範囲である。
【0026】
さらなる添加剤が該ポリオレフィン組成物に含まれていてもよく、全ての成分の合計は、本明細書に記載の実施形態のそれぞれにおいて、常に100重量%になることが理解されるべきである。
【0027】
一実施形態によれば、本ポリオレフィン組成物は、
a)30~50重量%(ポリマー組成物の総重量に基づく)の、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー;
b)15~40重量%(ポリマー組成物の総重量に基づく)の、8~14g/10分の範囲、好ましくは10~12g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有するポリプロピレンとポリエチレンとを含有するリサイクルプラスチック材料のブレンド(A);
c)17~50重量%、好ましくは20~50重量%(ポリマー組成物の総重量に基づく)のガラス繊維;
d)0.5~2.5重量%(ポリマー組成物の総重量に基づく)の少なくとも1つのカップリング剤;および任意にさらなる添加剤
を含み、
ここで、全ての成分の合計が常に100重量%となるように添加される。
【0028】
さらなる一実施形態によれば、本ポリオレフィン組成物は、
a1)少なくとも1つの第1のポリプロピレンホモポリマー;
a2)少なくとも1つの第2のポリプロピレンホモポリマー;
ここで、前記少なくとも1つの第1のポリプロピレンホモポリマー、および前記少なくとも1つの第2のポリプロピレンホモポリマーは、それらのメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg荷重、ISO1133に従って測定)が互いに異なり、
b)使用済み廃棄物および/または産業廃棄物に由来する廃プラスチック材料から回収
された、ポリプロピレンとポリエチレンとを3:7~10:1の比率で含有するリサイクルプラスチック材料のブレンド(A);
c)ガラス繊維;および
d)少なくとも1つのカップリング剤
を含む。
【0029】
したがって、本ポリオレフィン組成物は、異なるメルトフローレートを有する2つのバージンポリプロピレンホモポリマーを含んでいてもよい。これにより、最終ポリオレフィン組成物のメルトフローレートの調整が可能となる。
【0030】
2つのバージンポリプロピレンホモポリマーを有するそのようなポリオレフィンは、
a1)20~40重量%の第1のポリプロピレンホモポリマー;
a2)10~20重量%の第2のポリプロピレンホモポリマー;
b)15~40重量%の、8~14g/10分の範囲、好ましくは10~12g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有するポリプロピレンとポリエチレンとを含有するリサイクルプラスチック材料のブレンド(A);
c)17~50重量%、好ましくは20~50重量%のガラス繊維;
d)0.5~2.5重量%の少なくとも1つのカップリング剤;および任意にさらなる添加剤
を含み、
ここで、全ての成分の合計が常に100重量%となるように添加される。
【0031】
さらなる一実施形態によれば、本ポリオレフィン組成物は、
a1)少なくとも1つの第1のポリプロピレンホモポリマー;
a2)少なくとも1つの第2のポリプロピレンホモポリマー;
a3)少なくとも1つの第3のポリプロピレンホモポリマー;
ここで、前記少なくとも1つの第1のポリプロピレンホモポリマー、前記少なくとも1つの第2のポリプロピレンホモポリマー、および前記少なくとも1つの第3のポリプロピレンホモポリマーは、それらのメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg荷重、ISO1133に従って測定)が互いに異なり、
b)使用済み廃棄物および/または産業廃棄物に由来する廃プラスチック材料から回収された、ポリプロピレンとポリエチレンとを3:7~10:1の比率で含有するリサイクルプラスチック材料のブレンド(A);
c)ガラス繊維;および
d)少なくとも1つのカップリング剤
を含む。
【0032】
したがって、本ポリオレフィン組成物は、異なるメルトフローレートを有する3つのバージンポリプロピレンホモポリマーを含んでいてもよい。これにより、最終ポリオレフィン組成物のメルトフローレートを、さらに正確に調整することができる。
【0033】
3つのバージンポリプロピレンホモポリマーを有するそのようなポリオレフィンは、以下の成分を含むことができ、好ましくは、それらからなる:
a1)15~30重量%の第1のポリプロピレンホモポリマー;
a2)10~20重量%の第2のポリプロピレンホモポリマー;
a3)5~10重量%の第3のポリプロピレンホモポリマー;
b)15~40重量%の、10~12g/10分の範囲のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有するポリプロピレンとポリエチレンとを含有するリサイクルプラスチック材料のブレンド(A);
c)17~50重量%、好ましくは20~50重量%のガラス繊維;
d)0.5~2.5重量%の少なくとも1つのカップリング剤;および任意にさらなる添加剤、
ここで、全ての成分の合計が常に100重量%となるように添加される。
【0034】
また、4つまたは5つのように、3つを超えるバージンポリプロピレンホモポリマーを本ポリオレフィン組成物に使用してもよいことを理解されたい。
【0035】
本ポリオレフィン組成物においてバージンポリマーとして使用されるポリプロピレンホモポリマーは、以下を含む群から選択される:
-5~15g/10分の範囲、好ましくは5~10g/10分、より好ましくは8g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー(PPH-1);
-10~30g/10分の範囲、好ましくは15~25g/10分、より好ましくは20g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー(PPH-2);
-60~100g/10分の範囲、好ましくは70~80g/10分、より好ましくは75g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー(PPH-3);
-100~150g/10分の範囲、好ましくは110~130g/10分、より好ましくは125g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー(PPH-4);
-600~1000g/10分の範囲、好ましくは700~900g/10分、好ましくは800g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー(PPH-5);
-1.5g/10分以下の範囲、好ましくは0.15~0.5g/10分の範囲、より好ましくは0.3~0.45g/10分、さらにより好ましくは0.2g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー(PPH-6)。
【0036】
[ポリプロピレンバージンポリマー]
本ポリオレフィン組成物において使用され得る種々のポリプロピレンホモポリマーの特性および特徴は、以下に記載される。
【0037】
[ポリプロピレンホモポリマー(PPH-1)]
少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー(PPH-1)は、5~15g/10分の範囲、好ましくは5~10g/10分、より好ましくは8g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有し、1300MPaよりも高い剛性を有する。
【0038】
ポリプロピレンホモポリマー(PPH-1)は、少なくとも150℃、好ましくは少なくとも158℃、好ましくは158~167℃の範囲、例えば162℃の溶融温度を有する。ポリプロピレンホモポリマー(PPH-1)は、ISO178に従って測定される曲げ弾性率が、少なくとも500MPa、好ましくは少なくとも1000MPa、好ましくは1200~2000MPaの範囲、例えば1400MPaであってもよい。
【0039】
ポリプロピレンホモポリマー(PPH-1)として好ましい材料は、とりわけ、商品名HD601CFとして、Borealis AG(オーストリア)から市販されている。代替的な好適な材料は、例えば、WO03/031174A2に記載されているような高結晶性ポリプロピレンホモポリマーである。
【0040】
[ポリプロピレンホモポリマー(PPH-2)]
少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー(PPH-2)は、10~30g/10分の範囲、好ましくは15~25g/10分、好ましくは20g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有し、1800MPaよりも高い剛性を有する。
【0041】
ポリプロピレンホモポリマー(PPH-2)は、プロピレンホモポリマー(PPH-2)の重量に基づいて、実質的に、すなわち99.7重量%超、さらにより好ましくは少なくとも99.8重量%のプロピレン単位からなる。好ましい実施形態では、プロピレン単位のみがプロピレンホモポリマー(PPH-2)において検出可能である。
【0042】
ポリプロピレンホモポリマー(PPH-2)は、低量の冷キシレン可溶(XCS)画分(xylene cold soluble fraction)を特徴とすることが理解される。ポリプロピレンホモポリマー(PPH-2)は、ポリプロピレンホモポリマー(PPH-2)の重量に基づいて、4.0重量%以下、好ましくは3.0重量%以下、より好ましくは2.5重量%以下、例えば0.1~4.0重量%の範囲、好ましくは0.1~3.0重量%の範囲、より好ましくは0.1~2.5重量%の範囲の量の冷キシレン可溶(XCS)画分を有し得る。
【0043】
ポリプロピレンホモポリマー(PPH-2)は、ISO75-2に従って測定される熱たわみ温度(HDT)が少なくとも90℃、好ましくは少なくとも100℃、より好ましくは少なくとも115℃、例えば90~160℃の範囲、好ましくは100~150℃の範囲、より好ましくは115~130℃であってもよい。
【0044】
ポリプロピレンホモポリマー(PPH-2)は、ISO179-1eA:2000に従って23℃で測定されるシャルピー衝撃強度が、少なくとも1.0kJ/m、好ましくは、少なくとも2.0kJ/m、例えば1.0~10kJ/mの範囲、好ましくは2.0~5.0kJ/mの範囲、例えば2.5kJ/mであり得る。ポリプロピレンホモポリマー(PPH-2)は、ISO178に従って測定される曲げ弾性率が、少なくとも500MPa、好ましくは少なくとも1500MPa、例えば500~3500MPaの範囲、好ましくは1500~2500MPaの範囲、例えば2000MPaであってもよい。
【0045】
ポリプロピレンホモポリマー(PPH-2)は、核剤を含んでいてもよく、該核剤は、好ましくはポリマー核剤、より好ましくはα-核剤、例えばポリマーα-核剤である。ポリプロピレンホモポリマー(PPH-2)のα-核剤の含有量は、好ましくは5.0重量%以下である。好ましい実施形態において、ポリプロピレンホモポリマー(PPH-2)は、3000ppm以下、より好ましくは1~2000ppmのα-核剤を含有する。
【0046】
ポリプロピレンホモポリマー(PPH-2)は、当該技術分野において公知であり、市販されている。好適な例は、Borealis AGのHF955MOである。
【0047】
[ポリプロピレンホモポリマー(PPH-3)]
少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー(PPH-3)は、60~100g/10分の範囲、好ましくは70~80g/10分の範囲、さらにより好ましくは75g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って
測定)を有し、1300MPaよりも高い剛性を有する。
【0048】
ポリプロピレンホモポリマー(PPH-3)は、ポリプロピレンホモポリマー(PPH-3)の重量に基づいて、実質的に、すなわち99.7重量%超、さらにより好ましくは少なくとも99.8重量%のプロピレン単位からなる。好ましい実施形態では、プロピレン単位のみが、ポリプロピレンホモポリマー(PPH-3)において検出可能である。
【0049】
ポリプロピレンホモポリマー(PPH-3)は、低量の冷キシレン可溶(XCS)画分を特徴とすることが理解される。ポリプロピレンホモポリマー(PPH-3)は、ポリプロピレンホモポリマー(PPH-3)の重量に基づいて、4.0重量%以下、好ましくは3.5重量%以下、例えば、0.1~4.0重量%の範囲、好ましくは0.1~3.5重量%の範囲の量の冷キシレン可溶(XCS)画分を有することができる。
【0050】
ポリプロピレンホモポリマー(PPH-3)は、少なくとも50℃、好ましくは少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも75℃、例えば、50~120℃の範囲、好ましくは60~100℃の範囲、より好ましくは75~90℃の、ISO75-2に従って測定される熱たわみ温度(HDT)を有することができる。
【0051】
ポリプロピレンホモポリマー(PPH-3)は、少なくとも0.5kJ/m、好ましくは少なくとも0.7kJ/m、例えば0.5~1.5kJ/mの範囲、好ましくは0.7~1.3kJ/mの範囲、例えば1.0kJ/mの、ISO179-1eAに従って23℃で測定されるシャルピーノッチ付き衝撃強度(NIS)を有し得る。ポリプロピレンホモポリマー(PPH-3)は、ISO178に従って測定される曲げ弾性率が、少なくとも500MPa、好ましくは少なくとも1000MPa、例えば500~2500MPaの範囲、好ましくは1000~2000MPaの範囲、例えば1500MPaであってもよい。
【0052】
ポリプロピレンホモポリマー(PPH-3)がα-核剤を含む場合、ポリプロピレンホモポリマー(PPH-3)は、ポリプロピレンホモポリマー(PPH-3)の重量に基づいて5.0重量%まで、好ましくは3000ppmまで、例えば1~2000ppmの範囲の量でα-核剤を含み得ることが理解される。しかしながら、好ましい実施形態において、ポリプロピレンホモポリマー(PPH-2)は、いかなる核剤も含まず、すなわち、ポリプロピレンホモポリマー(PPH-2)は核形成されない。
【0053】
ポリプロピレンホモポリマー(PPH-3)は、当該技術分野において公知であり、市販されている。適切な例は、Borealis AGのHJ120UBである。
【0054】
[ポリプロピレンホモポリマー(PPH-4)]
少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー(PPH-4)は、100~150g/10分の範囲、好ましくは110~130g/10分、より好ましくは125g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する。
【0055】
ポリプロピレンホモポリマー(PPH-4)は、ISO179-1eAに従って23℃で測定されるシャルピーノッチ付き衝撃強度(NIS)が、少なくとも0.5kJ/m、好ましくは少なくとも0.7kJ/m、例えば0.5~1.5kJ/mの範囲、好ましくは0.7~1.3kJ/mの範囲、例えば1.0kJ/mであってもよい。ポリプロピレンホモポリマー(PPH-3)は、ISO178に従って測定される曲げ弾性率が、少なくとも500MPa、好ましくは少なくとも1000MPa、例えば500~2500MPaの範囲、好ましくは1000~2000MPaの範囲、例えば1550M
Paであってもよい。
【0056】
ポリプロピレンホモポリマー(PPH-4)は、当該技術分野において公知であり、市販されている。適切な例は、Borealis AGのHK060AEである。
【0057】
[ポリプロピレンホモポリマー(PPH-5)]
少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー(PPH-5)は、600~1000g/10分の範囲、好ましくは700~900g/10分、好ましくは800g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する。
【0058】
ポリプロピレンホモポリマー(PPH-5)は、少なくとも140℃、好ましくは少なくとも150℃、好ましくは150~160℃の範囲、例えば158℃の溶融温度を有する。
【0059】
ポリプロピレンホモポリマー(PPH-5)は、当該技術分野において公知であり、市販されている。適切な例は、Borealis AGのHL708FBである。
【0060】
[ポリプロピレンホモポリマー(PPH-6)]
少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー(PPH-6)は、1.5g/10分以下、好ましくは0.15~0.5g/10分の範囲、より好ましくは0.3~0.45g/10分、さらにより好ましくは0.2g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有し、1300MPaよりも高い剛性を有する。
【0061】
一般に、高分子量直鎖ポリプロピレンホモポリマー(PPH-6)は、少なくとも750kg/molの重量平均分子量(Mw)を有する。好ましくは、高分子量直鎖ポリプロピレンホモポリマー(PPH-6)は、750~2000kg/molの範囲、より好ましくは800~1500kg/molの範囲の重量平均分子量(Mw)を有する。
【0062】
ポリプロピレンホモポリマー(PPH-6)は、ISO179-1eAに従って23℃で測定されるシャルピーノッチ付き衝撃強度(NIS)が、5~10kJ/mの範囲、好ましくは7kJ/mであり得る。ポリプロピレンホモポリマー(PPH-6)は、ISO527-2に従って測定される引張弾性率が、少なくとも1000MPa、好ましくは少なくとも1500MPa、より好ましくは1000~2000MPaの範囲、例えば1650MPaであってもよい。
【0063】
ポリプロピレンホモポリマー(PPH-6)は、当該技術分野において公知であり、市販されている。適切な例は、Borealis AGのBE50である。
【0064】
さらに別の好ましい実施形態において、本ポリオレフィン組成物は、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマーに加えて、少なくとも1つの異相ポリプロピレンコポリマーを含んでいてもよい。異相ポリプロピレンコポリマーは、ポリマー成分として、ポリプロピレンマトリックスおよびエラストマーコポリマーを含む。
【0065】
さらなる一実施形態において、本ポリオレフィン組成物は、
a1)少なくとも1つの第1のポリプロピレンホモポリマー;
a2)任意に少なくとも1つの第2のポリプロピレンホモポリマー;
ここで、前記少なくとも1つの第1のポリプロピレンホモポリマーおよび前記任意の少なくとも1つの第2のポリプロピレンホモポリマーは、それらのメルトフローレートMF
(230℃、2.16kg荷重、ISO1133に従って測定)が互いに異なり、
a4)少なくとも1つの異相ポリプロピレンコポリマー;
b)使用済み産業廃棄物および/または産業廃棄物に由来する廃プラスチック材料から回収された、ポリプロピレンとポリエチレンとを3:7~10:1の比率で含有するリサイクルプラスチック材料のブレンド(A);
c)ガラス繊維;および
d)少なくとも1つのカップリング剤
を含む。
【0066】
1つまたは2つのバージンポリプロピレンホモポリマーと、少なくとも1つの異相ポリプロピレンコポリマーと、を有するそのようなポリオレフィンは、以下の成分を含むことができ、好ましくはそれらからなる:
a1)15~30重量%の第1のポリプロピレンホモポリマー;
a2)任意に10~20重量%の第2のポリプロピレンホモポリマー;
a4)10~20重量%の異相ポリプロピレンホモポリマー;
b)15~40重量%の、10~12g/10分の範囲のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有するポリプロピレンとポリエチレンとを含有するリサイクルプラスチック材料のブレンド(A);
c)20~50重量%のガラス繊維;
d)0.5~2.5重量%の少なくとも1つのカップリング剤;および任意にさらなる添加剤、
ここで、全ての成分の合計が常に100重量%となるように添加される。
【0067】
このような異相ポリプロピレンコポリマーは、
-15~20g/10分の範囲、好ましくは18g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つの異相ポリプロピレンコポリマー(PPHeco-1)であってもよい。
【0068】
[異相ポリプロピレンコポリマー(PPHeco-1)]
少なくとも1つの異相ポリプロピレンコポリマー(PPHeco-1)は、15~25g/10分の範囲、好ましくは15~20g/10分、より好ましくは18g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する。
【0069】
異相ポリプロピレンコポリマー(PPHeco-1)は、ISO179-1eAに従って23℃で測定されるシャルピーノッチ付き衝撃強度(NIS)が、少なくとも20kJ/m、好ましくは少なくとも30kJ/m、例えば20~50kJ/mの範囲、好ましくは30~40kJ/mの範囲、例えば35kJ/mであってもよい。異相ポリプロピレンコポリマー(PPHeco-1)は、ISO178に従って測定される曲げ弾性率が、少なくとも300MPa、好ましくは少なくとも500MPa、例えば500~1500MPaの範囲、好ましくは500~1000MPaの範囲、例えば800MPaであってもよい。
【0070】
異相ポリプロピレンコポリマー(PPHeco-1)は、当該技術分野において公知であり、市販されている。適切な例は、Borealis AGのEF015AEである。
【0071】
前述したように、本ポリオレフィン組成物のメルトフローレートは様々であり得る。したがって、本ポリオレフィン組成物は、2~20g/10分の範囲、好ましくは3~17g/10分、より好ましくは5~15g/10分、さらにより好ましくは10~15g/10分の範囲のメルトフローレートMFR(ISO1133、2.16kg、230℃
、ISO1133に従って測定)を有することができる。
【0072】
一実施形態においては、本ポリオレフィン組成物は、少なくとも4.0GPa、好ましくは少なくとも4.5GPa、より好ましくは少なくとも5.5GPa、好ましくは少なくとも6GPa、より好ましくは少なくとも6.5GPa、さらにより好ましくは少なくとも6.8GPa、特に4~14GPaの範囲、より特に4.5~12GPaの範囲の引張弾性率(ISO527-2)を有する。
【0073】
さらなる実施形態において、本ポリオレフィン組成物は、少なくとも5.0kJ/m、好ましくは少なくとも6.0kJ/m、より好ましくは少なくとも7kJ/m、さらにより好ましくは少なくとも7.5kJ/m、より好ましくは少なくとも8kJ/m、さらにより好ましくは少なくとも8.5kJ/m、特に5.0~12.0kJ/mの範囲、より特に5.5~10kJ/mの範囲の衝撃強度(ISO179;シャルピー 1eA +23℃)を有する。
【0074】
以下に、本組成物のより具体的な実施形態を記載する。
【0075】
第1の実施形態においては、
a1)30~40重量%(ポリマー組成物の総重量に基づく)の、5~15g/10分の範囲、好ましくは5~10g/10分、より好ましくは8g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー(PPH-1);
b)30~40重量%(ポリマー組成物の総重量に基づく)の、8~14g/10分の範囲、好ましくは10~12g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有するポリプロピレンとポリエチレンとを含有するリサイクプラスチック材料のブレンド(A);
c)17~30重量%、好ましくは20~30重量%(ポリマー組成物の総重量に基づく)のガラス繊維;
d)1~2重量%(ポリマー組成物の総重量に基づく)の少なくとも1つのカップリング剤;および任意にさらなる添加剤
を含み、
ここで、全ての成分の合計が常に100重量%となるように添加される、ポリオレフィン組成物が提供される。
【0076】
このような第1のポリオレフィン組成物は、
-2~5g/10分の範囲、好ましくは3.5~5g/10分の範囲、より好ましくは4~4.5g/10分の範囲のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定);
-少なくとも6GPa、好ましくは少なくとも6.5GPa、好ましくは少なくとも6.7GPa、より好ましくは少なくとも6.8GPa、さらにより好ましくは少なくとも6.9GPaの引張弾性率(ISO527-2);および
-少なくとも8kJ/m、好ましくは少なくとも8.2kJ/m、好ましくは少なくとも8.4kJ/m、より好ましくは少なくとも8.5kJ/mの衝撃強度(シャルピー 1eA +23℃)、
を有し得る。
【0077】
第2の実施形態においては、
a1)30~50重量%の、6~12g/10分の範囲、好ましくは8g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つのプロピレンホモポリマー(PPH-1);
a2)15~20重量%の、1.5g/10分以下、好ましくは0.15~0.5g/10分の範囲、より好ましくは0.2g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つのプロピレンホモポリマー(PPH-6);
b)25~40重量%の、10~12g/10分の範囲のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有するポリプロピレンとポリエチレンとを含有するリサイクルプラスチック材料のブレンド(A);
c)17~30重量%、好ましくは20~30重量%のガラス繊維;
d)0.5~2.0重量%、特には1重量%の、少なくとも1つのカップリング剤;および任意にさらなる添加剤
を含み、
ここで、全ての成分の合計が常に100重量%となるように添加される、ポリオレフィン組成物が提供される。
【0078】
このような第2のポリオレフィン組成物は、
-2~3g/10分、好ましくは2~2.5g/10分の範囲のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定);
-少なくとも4.5GPa、好ましくは少なくとも4.7GPa、より好ましくは少なくとも4.8GPaの引張弾性率(ISO527-2);および
-少なくとも7kJ/m、好ましくは少なくとも7.5kJ/m、好ましくは少なくとも7.6kJ/m、より好ましくは少なくとも7.8kJ/m、さらにより好ましくは少なくとも7.9kJ/mの衝撃強度(シャルピー 1eA +23℃)、
を有し得る。
【0079】
第3の実施形態においては、
a1)20~40重量%の、10~30g/10分の範囲、好ましくは15~25g/10分、より好ましくは20g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー(PPH-2);
a2)8~20重量%の、600~1000g/10分の範囲、好ましくは700~900g/10分、好ましくは800g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー(PPH-5);
b)30~40重量%の、10~12g/10分の範囲のメルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有するポリプロピレンとポリエチレンとを含有するリサイクルプラスチック材料のブレンド(A);
c)17~30重量%、好ましくは20~30重量%のガラス繊維;
d)1~2.0重量%の少なくとも1つのカップリング剤;および任意にさらなる添加剤
を含み、
ここで、全ての成分の合計が常に100重量%となるように添加される、ポリオレフィン組成物が提供される。
【0080】
このような第3のポリオレフィン組成物は、
-15~20g/10分、好ましくは17~18g/10分の範囲のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定);
-少なくとも6.5GPa、好ましくは少なくとも4.7GPa、より好ましくは少なくとも4.8GPaの引張弾性率(ISO527-2);および
-少なくとも6.0kJ/m、好ましくは少なくとも6.2kJ/mの衝撃強度(シャルピー 1eA +23℃)、
を有し得る。
【0081】
第4の実施形態においては、
a1)10~20重量%の、10~30g/10分の範囲、好ましくは15~25g/10分、より好ましくは20g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー(PPH-2);
a2)20~40重量%の、100~150g/10分の範囲、好ましくは110~130g/10分、より好ましくは125g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー(PPH-4);
b)30~40重量%の、10~12g/10分の範囲のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有するポリプロピレンとポリエチレンとを含有するリサイクルプラスチック材料のブレンド(A);
c)17~30重量%、好ましくは20~30重量%のガラス繊維;
d)1~2.0重量%の少なくとも1つのカップリング剤;および任意にさらなる添加剤
を含み、
ここで、全ての成分の合計が常に100重量%となるように添加される、ポリオレフィン組成物が提供される。
【0082】
このような第4のポリオレフィン組成物は、
-10~15g/10分の範囲、好ましくは12~13g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定);
-少なくとも6.5GPa、好ましくは少なくとも4.7GPa、より好ましくは少なくとも4.8GPaの引張弾性率(ISO527-2);および
-少なくとも6.0kJ/m、好ましくは少なくとも6.3kJ/mの衝撃強度(シャルピー 1eA +23℃)、
を有し得る。
【0083】
第5の実施形態においては、
a1)10~20重量%の、10~30g/10分の範囲、好ましくは15~25g/10分、より好ましくは20g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー(PPH-2);
a2)15~30重量%の、60~100g/10分の範囲、好ましくは70~80g/10分、より好ましくは75g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー(PPH-3);
a3)4~10重量%の、1.5g/10分以下、好ましくは0.15~0.5g/10分の範囲、より好ましくは0.2g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つのプロピレンホモポリマー(PPH-6);
b)25~40重量%の、10~12g/10分の範囲のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有するポリプロピレンとポリエチレンとを含有するリサイクルプラスチック材料のブレンド(A);
c)17~20重量%、好ましくは20~30重量%のガラス繊維;
d)1~2重量%の少なくとも1つのカップリング剤;および任意にさらなる添加剤
を含み、
ここで、全ての成分の合計が常に100重量%となるように添加される、ポリオレフィ
ン組成物が提供される。
【0084】
このような第5のポリオレフィン組成物は、
-5~15g/10分の範囲、好ましくは6~10g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定);
-少なくとも4GPa、好ましくは少なくとも5GPa、より好ましくは少なくとも6GPa、さらにより好ましくは少なくとも6.5GPaの引張弾性率(ISO527-2);および
-少なくとも6.0kJ/m、好ましくは少なくとも7kJ/m、より好ましくは少なくとも7.5kJ/mの衝撃強度(シャルピー 1eA +23℃)、
を有し得る。
【0085】
第6の実施形態においては、
a1)20~30重量%の、100~150g/10分の範囲、好ましくは110~130g/10分、より好ましくは125g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー(PPH-4);
a4)10~20重量%の、15~20g/10分の範囲、好ましくは18g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つの異相ポリプロピレンコポリマー(PPHeco-1);
b)25~40重量%の、10~12g/10分の範囲のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有するポリプロピレンとポリエチレンとを含有するリサイクルプラスチック材料のブレンド(A);
c)17~30重量%、好ましくは20~30重量%のガラス繊維;
d)1~2重量%の少なくとも1つのカップリング剤;および任意にさらなる添加剤
を含み、
ここで、全ての成分の合計が常に100重量%となるように添加される、ポリオレフィン組成物が提供される。
【0086】
このような第6のポリオレフィン組成物は、
-10~15g/10分の範囲、好ましくは12~13g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定);
-少なくとも4GPa、好ましくは少なくとも4.4GPaの引張弾性率(ISO527-2);および
-少なくとも6.0kJ/m、好ましくは少なくとも7kJ/m、より好ましくは少なくとも7.5kJ/mの衝撃強度(シャルピー 1eA +23℃)、
を有し得る。
【0087】
第7の実施形態においては、
a1)10~20重量%の、10~30g/10分の範囲、好ましくは15~25g/10分、より好ましくは20g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー(PPH-2);
a2)10~20重量%の、100~150g/10分の範囲、好ましくは110~130g/10分、より好ましくは125g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー(PPH-4);
a4)8~12重量%の、15~20g/10分の範囲、好ましくは18g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、少なくとも1つの異相ポリプロピレンコポリマー(PPHeco-1)、
b)25~40重量%の、10~12g/10分の範囲のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有するポリプロピレンとポリエチレンとを含有するリサイクルプラスチック材料のブレンド(A);
c)17~30重量%、好ましくは20~30重量%のガラス繊維;
d)1~2重量%の少なくとも1つのカップリング剤;および任意にさらなる添加剤
を含み、
ここで、全ての成分の合計が常に100重量%となるように添加される、ポリオレフィン組成物が提供される。
【0088】
このような第7のポリオレフィン組成物は、
-5~15g/10分の範囲、好ましくは10~13g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133に従って測定);
-少なくとも4GPa、好ましくは少なくとも4.5GPaの引張弾性率(ISO527-2);および
-少なくとも6.0kJ/m、好ましくは少なくとも7kJ/m、より好ましくは少なくとも7.2kJ/mの衝撃強度(シャルピー 1eA +23℃)、
を有し得る。
【0089】
[リサイクル材料のブレンド(A)]
ブレンド(A)は、リサイクルされた廃棄物流から得られる。ブレンド(A)は、例えば、自動車産業からのような、リサイクルされた使用済み廃棄物または産業廃棄物のいずれか、あるいは、両方の組み合わせであり得る。ブレンド(A)は、リサイクルされた使用済み廃棄物および/または産業廃棄物からなることが特に好ましい。
【0090】
一態様では、ブレンド(A)は、ポリエチレンよりも著しく多くのポリプロピレンを含む、リサイクルプラスチック材料のポリプロピレン(PP)に富む(リッチ)材料であってもよい。ポリプロピレンを多く含むリサイクルされた廃棄物流は、例えば自動車産業から得ることができ、特に、バンパーなどのいくつかの自動車部品は、リサイクル流中のかなり純粋なポリプロピレン材料の供給源であるか、または選別を強化することによって得ることができる。PPリッチ材料は、選択的処理、脱気および濾過によって、ならびに/またはNIRまたはラマン選別およびVIS選別などの種類および色に応じた分離によって得ることができる。それは、例えば、ドイツのいくつかの地域で運営されている「グリーンドット」組織の下に組織された「イエローバッグ」リサイクルシステムのような、国内廃棄物流(すなわち、それは国内リサイクルの産物である)から得ることができる。
【0091】
好ましくは、ポリプロピレンリッチリサイクル材料は、当該技術分野で知られているプラスチックリサイクルプロセスの手段によって、リサイクルされた廃棄物から得られる。そのようなPPリッチリサイクル品は、例えば、Corepla(包装プラスチック廃棄物の収集、回収、リサイクルのためのイタリアコンソーシアム)、Resource Plastics Corp.(Brampton、ON)、Kruschitz GmbH、Plastics and Recycling(AT)、Vogt Plastik GmbH(DE)、Mtm Plastics GmbH(DE)などから、商業的に入手可能である。ポリプロピレンリッチリサイクル材料の網羅的な実施例は、Purpolen(登録商標)PP(Mtm Plastics GmbH)、Axpoly(登録商標)リサイクルポリプロピレンペレット(Axion Ltd)およびPolyPropylene Copolymer(BSP Compounds)を含む。本発明は、広範囲の、リサイクルされたポリプロピレン材料またはリサイクルされたポリプロピレンの含有量が高い材料もしくは組成物に適用可能であり得ると考えられる。ポリプロピレンリッチリサイクル材料は、顆粒の形態であってもよい。
【0092】
PPリッチブレンド(A)は、プロピレンに由来する単位の相対量が、組成物の総重量に対して、50重量%超、好ましくは53重量%超、より好ましくは60重量%超、より好ましくは70重量%超、より好ましくは75重量%超、より好ましくは80重量%超、さらにより好ましくは90重量%超、さらにより好ましくは95重量%超であってもよい。
【0093】
PPリッチブレンド中に存在するPPは、好ましくはアイソタクチックポリプロピレンであることを理解されたい。一実施形態では、PPリッチブレンド(A)は、好ましくはブレンド(A)の総重量に対して50重量%~80重量%のアイソタクチックポリプロピレンの含有量を有し得る。
【0094】
さらに、PPリッチブレンド(A)は、47重量%未満、より好ましくは40重量%未満、より好ましくは30重量%未満、より好ましくは20重量%未満、最も好ましくは10重量%未満のエチレンに由来する単位の相対量を有し得る。通常、エチレンに由来する単位の相対量は、組成物の総重量に対して5重量%を超える。存在するエチレンは、好ましくはポリエチレンおよびエチレン含有コポリマーに由来するエチレンであることを理解されたい。
【0095】
リサイクル材料のポリエチレンフラクション(fraction)は、リサイクル高密度ポリエチレン(rHDPE)、リサイクル中密度ポリエチレン(rMDPE)、リサイクル低密度ポリエチレン(rLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)およびそれらの混合物を含むことができる。特定の実施形態では、リサイクル材料が0.8g/cmを超える、好ましくは0.9g/cmを超える、最も好ましくは0.91g/cmを超える平均密度を有する高密度ポリエチレンである。
【0096】
ブレンド(A)はまた、0~5.0重量%、好ましくは0.5~4.0重量%、より好ましくは1.0~3.0重量%、最も好ましくは1.5~2.5重量%のポリスチレンの相対量を有し得る。
【0097】
本発明によれば、ブレンド(A)は、固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)を用いて決定されるリモネンの含有量が0.1ppm~100ppm、より好ましくは1ppm~50ppm、最も好ましくは2ppm~35ppmである。リモネンは、従来、リサイクルされたポリオレフィン材料中に見出され、化粧品、洗剤、シャンプーおよび類似の製品の分野における包装用途に由来する。したがって、ブレンド(A)は、ブレンド(A)がそのような種類の家庭廃棄物流に由来する材料を含有する場合、リモネンを含有する。
【0098】
脂肪酸含量は、ブレンド(A)のリサイクル起源のさらに別の指標である。しかしながら、場合によっては、リサイクルプロセスにおける特定の処理のために、脂肪酸含有量が検出限界未満であり得る。本発明によれば、ブレンド(A)は、固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)を用いて決定される脂肪酸の含有量が、好ましくは1ppm~200ppm、好ましくは1ppm~150ppm、より好ましくは2ppm~100ppm、最も好ましくは3ppm~80ppmである。
【0099】
好ましい態様において、ブレンド(A)は、(i)5重量%未満、好ましくは1.5重量%未満のポリスチレンを含有し;および/または(ii)3.5重量%未満、好ましくは1重量%未満のタルクを含有し;および/または(iii)1.0重量%未満、好ましくは0.5重量%未満のポリアミドを含有する。
【0100】
リサイクル由来のものであるため、ブレンド(A)はまた、有機充填剤、および/また
は無機充填剤、および/または添加剤を、ブレンド(A)の重量に対して10重量%まで、好ましくは3重量%の量で含有していてもよい。
【0101】
したがって、一実施形態の本ポリオレフィン組成物において、リサイクプラスチック材料のブレンド(A)は、
A-1)50~99重量%のポリプロピレン含量、
A-2)2~40重量%のポリエチレン含量、
A-3)0~5.0重量%のポリスチレンおよび/またはABSなどのコポリマー、
A-4)0~3.0重量%の安定剤、
A-5)0~4.0重量%のポリアミド-6、
A-6)0~3.0重量%のタルク、
A-7)0~3.0重量%のチョーク、
A-8)0~1.0重量%の紙、
A-9)0~1.0重量%の木材、
A-10)0~0.5重量%の金属、
A-11)固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)を用いて決定される、0.1ppm~100ppmのリモネン、および
A-12)固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)を用いて決定される、0~200ppmの総脂肪酸含量
を含み、ここで、全ての量は、ブレンド(A)の総重量に対して与えられる。
【0102】
上記のように、ブレンド(A)は、以下から選択される1つ以上のさらなる成分を含み得る:
ブレンド(A)の総重量に基づいて、
A-4)3.0重量%以下の安定剤、好ましくは2.0重量%以下の安定剤、
A-5)4.0重量%以下のポリアミド-6、好ましくは2.0重量%以下のポリアミド-6、
A-6)3.0重量%以下のタルク、好ましくは1.0重量%以下のタルク、
A-7)3.0重量%以下のチョーク、好ましくは1.0重量%以下のチョーク、
A-8)1.0重量%以下の紙、好ましくは0.5重量%以下の紙、
A-9)1.0重量%以下の木材、好ましくは0.5重量%以下の木材、および
A-10)0.5重量%以下の金属、好ましくは0.1重量%以下の金属。
【0103】
ブレンド(A)は、4~20g/10分、好ましくは5~15g/10分、より好ましくは6~12g/10分のメルトフローレート(ISO1133、2.16kg、230℃)を有し得る。
【0104】
[ガラス繊維・カップリング剤・添加剤]
上述のように、本発明に係るポリオレフィン組成物は、ガラス繊維、特に短ガラス繊維を含む。好ましくは、繊維強化複合体に使用されるガラス繊維は、2.0~10.0mmの範囲、好ましくは2.0~8.0mmの範囲、さらにより好ましくは2.0~6.0mmの範囲、さらにより好ましくは3.0~5.5mmの範囲、さらにより好ましくは3.5~5.0mmの範囲の平均繊維長を有する。
【0105】
さらに好ましくは、繊維強化複合体に使用される短ガラス繊維は、5~20μm、より好ましくは8~18μm、さらにより好ましくは8~15μm、さらにより好ましくは10~15μm、好ましくは11~14μm、好ましくは12~14μm、より好ましくは12.3~13.7μm、さらにより好ましくは12.5~13.5μmの平均直径を有する。
【0106】
好ましい一実施形態では、3.0~5.0mm(平均4.0mm)の繊維長、および12.3~13.7μm(平均13μm)の繊維直径を有するガラス繊維が使用される。別の好ましい実施形態では、3.5~5.5mm(平均4.5mm)の繊維長および12~14μm(平均13μm)の繊維直径を有するガラス繊維が使用される。
【0107】
また、上述のように、本発明に係るポリオレフィン組成物は、少なくとも1つのカップリング剤を含む。少なくとも1つのカップリング剤は、官能化ポリプロピレン、特に無水マレイン酸(MAH)で官能化されたポリプロピレンである。ポリオレフィン組成物中のカップリング剤の量は、1~2重量%、例えば1重量%または1.25重量%であってもよい。
【0108】
さらなる実施形態において、ポリオレフィン組成物は、さらなる添加剤を含んでもよい。組成物に使用するための添加剤の例は、顔料または染料(例えば、カーボンブラック)、安定剤(酸化防止剤)、抗酸剤および/または抗UV剤、帯電防止剤、核剤および利用剤(加工助剤など)である。好ましい添加剤は、カーボンブラック、少なくとも1つの酸化防止剤および/または少なくとも1つのUV安定剤である。
【0109】
一般に、これらの添加剤の量は、全組成物の重量に基づいて、0~5.0重量%の範囲、好ましくは0.01~3.0重量%の範囲、より好ましくは0.01~2.0重量%である。
【0110】
当該技術分野で一般的に使用される酸化防止剤の実施例は、立体障害フェノール(CAS番号6683-19-8のような、BASFによるIrganox 1010 FF(トレードマーク)としても販売されている)、リン系抗酸化剤(CAS番号31570-04-4のような、ClariantによるHostanox PAR 24 (FF)(トレードマーク)、またはBASFによるIrgafos 168(FF)(トレードマーク)としても販売されている)、硫黄系酸化防止剤(CAS番号693-36-7のような、BASFによるIrganox PS-802 FL(トレードマーク)として販売されている)、窒素系酸化防止剤(4,4’ビス(1,1’-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等)である。好ましい酸化防止剤は、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトおよび/またはオクタデシル3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートであり得る。
【0111】
抗酸剤もまた、当該技術分野において一般的に知られている。例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、酸化マグネシウムおよび酸化亜鉛、合成ヒドロタルサイト(例えば、SHT、CAS番号11097-59-9)、乳酸エステル(lactates)および乳酸塩(lactylates)、ならびにステアリン酸カルシウム(CAS番号1592-23-0)およびステアリン酸亜鉛(CAS番号557-05-1)である。
【0112】
一般的なブロッキング防止剤は、天然シリカ、例えば珪藻土(CAS番号60676-86-0(SuperfFloss(トレードマーク))、CAS番号60676-86-0(SuperFloss E(トレードマーク))またはCAS番号60676-86-0(Celite 499(トレードマーク));合成シリカ(CAS番号7631-86-9、CAS番号7631-86-9、CAS番号7631-86-9、CAS番号7631-86-9、CAS番号7631-86-9、CAS番号7631-86-9、CAS番号112926-00-8、CAS番号7631-86-9、またはCAS番号7631-86-9など);ケイ酸塩(例えば、ケイ酸アルミニウム(カオリン)(CAS番号1318-74-7)、ケイ酸アルミニウムナトリウム(CAS番号1344-00-9)、焼成カオリン(CAS番号92704-41-1)、ケイ酸アルミニウム(
CAS番号1327-36-2)、またはケイ酸カルシウム(CAS番号1344-95-2);合成ゼオライト(例えば、アルミノケイ酸ナトリウムカルシウム水和物(sodium
calcium aluminosilicate hydrate、CAS番号1344-01-0、CAS番号1344-01-0)、またはアルミノケイ酸ナトリウムカルシウム水和物(CAS番号1344-01-0)である。
【0113】
抗UV剤は、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-セバケート(CAS番号52829-07-9、Tinuvin 770);2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシ-ベンゾフェノン(CAS番号1843-05-6、Chimassorb 81)である。好ましいUV安定剤は、低分子量および/または高分子量UV安定剤、例えばn-ヘキサデシル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールおよび高級脂肪酸(主にステアリン酸)および/またはポリ((6-モルホリノ-s-トリアジン-2,4-ジイル)(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)イミノ)ヘキサメタ-イレン(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)イミノ))の混合物である。
【0114】
安息香酸ナトリウム(CAS番号532-32-1);1,3:2,4-ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトール(CAS番号135861-56-2、Millad 3988)のようなα-核剤。好適な帯電防止剤は、例えば、グリセロールエステル(CAS番号97593-29-8)またはエトキシル化アミン(CAS番号71786-60-2または61791-31-9)またはエトキシル化アミド(CAS番号204-393-1)である。通常、これらの添加剤は、ポリマーの個々の成分ごとに100~2.000ppmの量で添加される。
【0115】
本発明はまた、本明細書において定義されるポリオレフィン組成物を調製するための方法にも関することが理解される。本方法は、
-前記少なくとも第1のポリプロピレンホモポリマーと、任意に前記少なくとも1つの第2のポリプロピレンホモポリマーと、さらに任意に前記少なくとも1つの第3のポリプロピレンホモポリマーと、さらに任意に前記少なくとも1つのポリプロピレン異相コポリマーと、前記リサイクル材料のブレンド(A)と、ガラス繊維と、前記少なくとも1つのカップリング剤と、の混合物を必要量提供する工程;
-前記混合物を押出機中で溶融する工程;および
-任意に、得られたポリオレフィン組成物をペレット化する工程
を含む。
【0116】
本発明の目的のために、混合および溶融は、当該技術分野において公知の任意の好適な溶融および混合手段を用いて行うことができる。
【0117】
しかしながら、溶融および混合工程は、好ましくはミキサーおよび/またはブレンダー、高剪断または低剪断ミキサー、高速ブレンダー、または二軸押出機中で行われる。最も好ましくは、溶融および混合工程が、共回転二軸押出機などの二軸押出機中で行われる。このような二軸押出機は、当該技術分野において周知であり、当業者は、溶融条件および混合条件(例えば、溶融温度、スクリュー速度など)をプロセス装置に従って適合させるであろう。
【0118】
本発明に係るポリオレフィン組成物は、広範囲の用途、例えば、構造製品、電化製品、自動車用物品、パイプ、フィルム、ジオメンブレン、屋根材用途、ポンドライナー(pond
liner)、包装、キャップおよびクロージャーの製造において使用することができる。加えて、本発明に係る組成物の十分な引張特性のために、それらは、フィルム(400ミクロン以下の厚さを有する)として、または農業、屋根用のジオメンブレンなどの可撓性ホ
イル(400ミクロンを超える厚さを有する)のために、およびポンドライナーとして使用され得る。典型的には、本明細書に記載の組成物は、多層シート(例えば、3層ジオメンブレンシート)のコア層として使用され、ここで、外層は、様々な種類のポリオレフィン材料から作製される。
【実施例
【0119】
実験セクション
以下の実施例は、特許請求の範囲に記載される本発明の特定の態様および実施形態を実証するために含まれる。しかしながら、以下の説明は単に例示的なものであり、決して本発明を限定するものと解釈されるべきではないことを当業者は理解されたい。
【0120】
試験方法
以下の用語および決定方法の定義は、別段の定義がない限り、本発明の上記の一般的な説明、ならびに以下の実施例に適用される。
【0121】
a)リサイクルブレンド中のアイソタクチックポリプロピレン(iPP)、ポリスチレン(PS)、エチレン、PVCおよびポリアミド-6の含有量の決定
【0122】
サンプル調製
全ての校正サンプルおよび分析対象サンプルは、溶融プレスされたプレート上で同様の方法により調製された。約2~3gの分析対象化合物を190℃で溶融した。続いて、60~80バールの圧力を20秒間、液圧加熱プレス内で加えた。次に、化合物の形態を制御するために、同じ圧力下で冷間プレス中、サンプルを室温まで40秒で冷却する。プレートの厚さは、2.5cm×2.5cm、厚さ100~200μm(サンプルからのMFRに依存)の金属校正されたフレームプレートによって制御され、2つのプレートは、同じ瞬間に同じ条件で並行して製造された。各プレートの厚さは、任意のFTIR測定の前に測定され、全てのプレートは100~200μmの厚さであった。プレート表面を制御し、測定中のいかなる干渉も回避するために、全てのプレートを2枚の両面シリコーン剥離紙の間にプレスした。粉末サンプルまたは不均一化合物である場合、このプレスプロセスを3回繰り返して、プレスし、上記と同じ条件でサンプルを切断することにより、均質性を増加させた。
【0123】
分光計:
Bruker Vertex 70 FTIR分光計のような標準透過型FTIR分光計を、以下の設定で使用した:
・スペクトル領域:4000~400cm-1
・アパーチャ:6mm;
・スペクトル分解能:2cm-1
・バックグラウンドスキャン:16、スペクトルスキャン:16;
・インターフェログラムゼロフィリングファクター:32;
・Norton-Beerストロングアポダイゼーション(strong apodisation)。
【0124】
スペクトルを記録し、Bruker Opusソフトウェアを用いて分析した。
【0125】
校正サンプル:
FTIRは二次的な方法であることから、目的とする分析範囲、典型的には以下の範囲をカバーするために、いくつかの校正標準が複合化された:
・PAについては0.2重量%~2.5重量%;
・PSについては、0.1重量%~5重量%;
・PETについては、0.2重量%~2.5重量%;
・PVCについては、0.1重量%~4重量%。
【0126】
以下の市販材料を化合物に使用した:Borealis HC600TF(iPPとして)、Borealis FB3450(HDPEとして)、および標的ポリマー(PET用のRAMAPET N1S(Indorama Polymer)、Ultramid(登録商標)B36LN(BASF)(Polyamide 6用)、Styrolution PS 486N(Ineos)(高衝撃ポリスチレン(HIPS)用)、およびPVC Inovyn PVC263B(粉末形態)。
【0127】
全ての化合物は、分解を避けるために、265℃未満の温度および10分未満で、Haake混練機中、小スケールで製造した。Irgafos 168(3000ppm)などの追加の酸化防止剤を添加して、分解を最小限に抑えた。
【0128】
校正:
FTIRの校正原理は、全ての成分について同じであった:プレート厚で除した特定のFTIR帯の強度は、同じプレートについてHまたは13C溶液状態NMRによって決定された成分の量と相関していた。
【0129】
それぞれの特定のFTIR吸収帯は、校正標準および実際のサンプルの組成にかかわらず、成分濃度の量に応じて強度が増加すること、および残りのピークから分離されていることから選択された。
【0130】
この方法論は、Signoretらの出版物:「MIRにおけるプラスチックスペクトルの変化およびリサイクルに向けた同定への潜在的影響」、Resources, conservation and Recycling journal、2020年、161巻、article 104980に記載されている。
【0131】
各校正帯の波長は:
・PAについては、3300cm-1
・PSについては、1601cm-1
・PETについては、1410cm-1
・PVCについては、615cm-1
・iPPについては、1167cm-1である。
【0132】
各ポリマー成分iについて、線形校正(Beer-Lambertの法則の線形性に基づく)を構築した。このような校正に用いられる典型的な線形相関を以下に示す:
【0133】
【数1】
【0134】
ここで、xは、ポリマー成分iの分率(重量%)である。
はポリマー成分iに関連する特異的な帯の吸光度である(すなわち、吸光度ユニットにおける)。これらの特異的な帯は、PAについては3300cm-1、PSについては1601cm-1、PETについては1410cm-1、PVCについては615cm-1、iPPについては1167cm-1である。
dはサンプルプレートの厚さである。
およびBは、各検量線に対して決定される2つの相関係数である。
【0135】
C2リッチフラクションについて特定の孤立帯(isolated band)は見つからず、その結果、C2リッチフラクションは間接的に推定される:
【0136】
【数2】
【0137】
EVA、チョーク、およびタルクの含有量は、「半定量的に」推定される。したがって、これは、C2リッチ含有量を「半定量的」にする。
【0138】
各校正標準について、可能な限り、各成分の量は、Hまたは13Cのいずれかの溶液状態NMRにより決定される(ただし、PAは除く)。NMR測定は、FTIR検量線の構築に使用したものと全く同じFTIRプレートに対して行った。
【0139】
校正標準は、iPPおよびHDPEを混合して検量線を作成することによって調製した。校正標準のフィルムの厚さは300μmであった。サンプル中のiPP、PSおよびPA6の含有量の定量化のために、定量的IRスペクトルを、Bruker Vertex
70 FTIR分光計を用いて固体状態で記録した。スペクトルは、190℃および4~6mPaでの圧縮成形によって調製された、25×25mm、厚さ50~100μmの角フィルム上に記録した。標準透過FTIR分光法は、4000~400cm-1のスペクトル領域、6mmのアパーチャ、2cm-1のスペクトル分解能、16のバックグラウンドスキャン、16のスペクトルスキャン、32のインターフェログラムゼロフィリングファクター、およびNorton-Beerストロングアポダイゼーションを用いて行った。
【0140】
iPPについて、1167cm-1における帯の吸収を測定し、iPP含有量を検量線(吸収/厚さ(cm)対iPP含有量(重量%))に従って定量した。
【0141】
1601cm-1(PS)および3300cm-1(PA6)における帯の吸収を測定し、PSおよびPA6の含有量を、検量線に従って定量した(吸収/厚さ(cm)対PSおよびPA含有量(重量%))。エチレンの含有量は、100から、iPP、PSおよびPA6の含有量を差し引くことによって得た。分析は二重測定として行った。
【0142】
b)タルクおよびチョークの量は、熱重量分析(TGA)によって測定した;実験は、Perkin Elmer TGA 8000を用いて行った。約10~20mgの材料を白金パンに入れた。温度を、50℃で10分間平衡化し、その後、窒素下、20℃/分の加熱速度で950℃まで上昇させた。約550℃と700℃の間の重量減少(WCO)は、CaCOから発生するCOに帰属され、したがってチョーク含有量は次のように評価された:
チョーク含有量=100/44×WCO
【0143】
その後、20℃/分の冷却速度で300℃まで温度を下げた。その後、ガスを酸素に切り替え、再び900℃まで昇温した。この工程における重量減少は、カーボンブラック(Wcb)に割り当てられた。カーボンブラックおよびチョークの含有量が分かれば、チョークおよびカーボンブラックを除く灰分含有量は、以下のように計算された:
灰分含有量=(灰分残量)-56/44×WCO-Wcb
【0144】
ここで、灰分残量は、窒素下で行われた第1の工程において900℃で測定された重量%である。灰分含有量は、調査したリサイクル品のタルク含有量と同じであると推定され
る。
【0145】
c)紙、木材の量
製粉、浮遊、顕微鏡および熱重量分析(TGA)または浮遊技術を含む、従来の実験室方法によって紙および木材を決定した。
【0146】
d)金属の量は、蛍光x線(XRF)によって決定した。
【0147】
e)リモネンの量は、固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)によって決定した。特定のサンプルに関して、さらなる詳細を以下に示す。
【0148】
f)総脂肪酸の量は、固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)によって決定した。特定のサンプルに関して、さらなる詳細を以下に示す。
【0149】
g)メルトフローレートは、2.16kg(MFR)の荷重下、230℃または190℃で、示されるように測定された。メルトフローレートは、ISO1133に準拠した試験装置が、2.16kgの荷重下、230℃(または190℃)の温度で10分以内に押し出すポリマーの量(g)である。
【0150】
h)引張弾性率、引張強度、引張破壊ひずみ、引張強度における引張ひずみ(Tensile Strain at Tensile Strength)、引張破壊応力
測定は、試験片の96時間のコンディショニング時間(23℃、相対湿度50%)後に行った。
【0151】
引張弾性率は、EN ISO 1873-2に記載されている射出成形された試験片(ドッグボーン形状、4mm厚)を用いて、ISO527-2(クロスヘッド速度=1mm/分、23℃)に従って測定した。
【0152】
引張強度および引張破壊ひずみは、EN ISO 1873-2に記載されている射出成形された試験片(ドッグボーン形状、4mm厚)を用いて、ISO527-2(クロスヘッド速度=50mm/分、23℃)に従って測定した。
【0153】
引張強度における引張ひずみは、EN ISO 1873-2に記載されている射出成形された試験片(ドッグボーン形状、4mm厚)を用いて、ISO527-2に従って、試験片が破断するまで50mm/分の伸び率で測定した。
【0154】
引張破壊応力は、ISO527-2(クロスヘッド速度=50mm/分)に従って、4mmのサンプル厚さを有する打錠成形されたプラークから調製されたサンプルについて測定した。
【0155】
i)衝撃強度は、EN ISO 1873-2に従って調製された80×10×4mmの射出成形試験片について、ISO179-1/1eAに従って+23℃(ノッチ付き)で、またはISO179-1/1eU +23℃(ノッチなし)に従って、シャルピー衝撃強度として決定した。この標準によれば、サンプルは96時間後に試験される。
【0156】
以下の表1~4に、いくつかの例(比較例-CE;発明例-IE)をまとめる。20および30重量%のGFグレードについて、剛性は、25重量%のREC材料の添加後にのみ低下し、それ以降は、バージン標準と比較して、依然として許容可能なレベルであることを要約することができる。
【0157】
表1は、1つのプロピレンホモポリマー(PPH-1、MFR:8g/10分、T=112.3℃)、リサイクル材料のブレンド(A)、ガラス繊維(GF1.2)、カップリング剤およびさらなる添加剤を含むポリオレフィン組成物について示す。
【0158】
表2は、第1のポリプロピレンホモポリマー(PPH-1、MFR:8g/10分、T=112.3℃)、第2のポリプロピレンホモポリマー(PPH-6、MFR:0.2g/10分、T=118.9℃)、リサイクル材料のブレンド(A)、ガラス繊維(GF1.2)、カップリング剤およびさらなる添加剤を含むポリオレフィン組成物の特性について示す。
【0159】
表3は、第1のポリプロピレンホモポリマー(PPH-2、MFR:20g/10分、T=129.6℃)、第2のポリプロピレンホモポリマー(PPH-3、MFR:75g/10分、T=116.9℃)、第3のポリプロピレンホモポリマー(PPH-6、MFR:0.2g/10分、T=118.9℃)、リサイクル材料のブレンド(A)、ガラス繊維(GF1.2)、カップリング剤およびさらなる添加剤を含むポリオレフィン組成物の特性について示す。
【0160】
表4は、種々のポリプロピレンホモポリマー(8g/10分のMFRを有するPPH-1、20g/10分のMFRを有するPPH-2、75g/10分のMFRを有するPPH-3、125g/10分のMFRを有するPPH-4、800g/10分のMFR2を有するPPH-5、0.2g/10分のMFRを有するPPH-6)、異相ポリプロピレンコポリマー(18g/10分のMFRを有するPPHeco-1)、リサイクル材料のブレンド(A)、ガラス繊維(GF1.2)、カップリング剤およびさらなる添加剤を含むポリオレフィン組成物の特性について示す。
【0161】
ガラス繊維は、以下の供給元の1つから得ることができる:OC(Owens Corning)、PPG/NEG、Johns Manville、3B、Jushi、Taiwan Glass、Camelyaf、CPIC、Taishan、Glass fibers 1.2(平均長さ4mm、平均直径13μm)および4.1(平均長さ4.5mm、平均直径13μm)を使用してもよい。
【0162】
以下の添加剤を使用した:酸化防止剤:AO1(Irganox1010FF)、AO2(ARENOX DS)、AO3(IRGAFOS 168FF)、AO4;顔料:CB(Plasblak PE6121、Cabotから市販されている);カップリング剤:SCONA TPPP 8112 GA(AP1.5 接着促進剤:無水マレイン酸で高度に官能化されたポリプロピレン)。
【0163】
【表1】
【0164】
表1:それぞれガラス繊維GF1.2と混合された、1つのプロピレンホモポリマー(8g/10分のMFRを有するPPH-1)またはリサイクル材料のブレンド(A)(Dipolen)を含むポリオレフィン組成物(比較例CE1~2)と、1つのプロピレンホモポリマー(8g/10分のMFRを有するPPH-1)、リサイクル材料のブレンド(A)(Dipolen)およびガラス繊維GF1.2を含む本発明に係るポリオレフィン組成物(発明例IE1~2)との特性。
【0165】
表1から分かるように、本発明の実施例IEに係るホモポリマー-リサイクル品組成物のメルトフローレートは、バージンホモポリマー(CE-1)のメルトフローレートより
も高いが、リサイクル品(CE-2)のメルトフローレートよりも低い。一方、本発明の実施例に係るホモポリマー-リサイクル品組成物の引張弾性率は、バージンホモポリマー(CE-1)の引張弾性率よりも低いが、リサイクル品(CE-2)の引張弾性率よりも高い。
【0166】
したがって、本発明に係るホモポリマー-リサイクル品組成物の特性は、良好な加工を可能にするメルトフローレート、および安定な材料であることを示す引張弾性率によって特徴付けられる。
【0167】
さらに、本発明に係るホモポリマー-リサイクル品組成物の特性は、バージンホモポリマーとリサイクル品との間の範囲にある。したがって、本発明に係るホモポリマー-リサイクル品組成物は、バージンホモポリマーと同様の特性を有するが、ある割合のリサイクル品を含み、したがって、より良好なCOフットプリントを有する。
【0168】
【表2】
【0169】
表2:ガラス繊維GF1.2を含むかまたは含まない、第1のポリプロピレンホモポリマー(8g/10分のMFRを有するPPH-1)、または第2のポリプロピレンホモポリマー(0.2g/10分のMFRを有するPPH-6)、またはリサイクル材料のブレンド(A)を含むポリオレフィン組成物(比較例CE3~6)と、第1のポリプロピレンホモポリマー(8g/10分のMFRを有するPPH-1)、第2のポリプロピレンホモポリマー(0.2g/10分のMFRを有するPPH-6)、リサイクル材料のブレンド(A)、およびガラス繊維GF1.2を含む本発明に係るポリオレフィン組成物(本発明の実施例IE2~7)との特性。
【0170】
表2は、(表1の結果と同様に)本発明の実施例IE2~7に係るホモポリマー-リサイクル品組成物のメルトフローレートが、バージンホモポリマー(CE-3)のメルトフローレートよりも高いが、リサイクル品(CE-4)のメルトフローレートよりも低いことを示す。一方、本発明の実施例IE2~4に係るホモポリマー-リサイクル品組成物の引張弾性率は、バージンホモポリマー(CE-3)の引張弾性率よりも低いが、リサイクル品(CE-4)の引張弾性率よりも高い。この結果はまた、ガラス繊維の量の影響を示しており、より多くのガラス繊維を添加すると、引張弾性率がより高くなる(IE2~4およびIE5~7参照)。
【0171】
【表3】
【0172】
表3:ガラス繊維GF1.2を含むかまたは含まない、ポリプロピレンホモポリマー(8g/10分のMFRを有するPPH-1、20g/10分のMFRを有するPPH-2、75g/10分のMFRを有するPPH-3、0.2g/10分のMFRを有するPPH-6)、またはリサイクル材料のブレンド(A)(Dipolen)を含むポリオレフィン組成物(比較例CE7~10)と、第1のポリプロピレンホモポリマー(8g/10分のMFRを有するPPH-1)、第2のポリプロピレンホモポリマー(20g/10分のMFRを有するPPH-2)、第3のポリプロピレンホモポリマー(75g/10分のMFRを有するPPH-3)、第4のポリプロピレンホモポリマー(0.2g/10分のMFRを有するPPH-6)、リサイクル材料のブレンド(A)(Dipolen)およびガラス繊維GF1.2を含む本発明に係るポリオレフィン組成物(本発明の実施例IE8~11)との特性。
【0173】
表3は、(先の結果と同様に)本発明の実施例IE8~11に係るホモポリマー-リサイクル品組成物のメルトフローレートが、バージンホモポリマー(CE-1)のメルトフローレートよりも高いことを示す。本発明の実施例に係るホモポリマー-リサイクル品組成物の引張弾性率は、ガラス繊維の量による影響を再度示し、より多くのガラス繊維を添加すると、引張弾性率がより高くなる(IE8~11参照)。
【0174】
【表4】
【0175】
表4:2つのポリプロピレンポリマー(8g/10分のMFRを有するPPH-1、75g/10分のMFRを有するPPH-3、0.2g/10分のMFRを有するPPH-6、18g/10分のMFRを有するPPHeco-1)とガラス繊維GF1.2とを含むが、リサイクル材料のブレンド(A)(Dipolen)を含まないポリオレフィン組成物(比較例CE11~12)と、種々のポリプロピレンホモポリマー(8g/10分のMFRを有するPPH-1、20g/10分のMFRを有するPPH-2、75g/10分のMFRを有するPPH-3、125g/10分のMFRを有するPPH-4、800g/10分のMFRを有するPPH-5、0.2g/10分のMFR
を有するPPH-6)、および/または異相ポリプロピレンコポリマー(18g/10分のMFRを有するPPHeco-1)、リサイクル材料のブレンド(A)(Dipolen)およびガラス繊維GF1.2を含む本発明に係るポリオレフィン組成物(本発明の実施例IE12~15)との特性。
【0176】
表4の結果は、本発明の実施例IE12~15に係るホモポリマー-リサイクル品組成物のメルトフローレートおよび引張弾性率が、該組成物に添加されるバージンポリマーの種類によって調整され得ることを示す。
【国際調査報告】