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特表2023-546198Z相形成を遅らせたマルテンサイト鋼合金、粉末並びにブランク又は部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】Z相形成を遅らせたマルテンサイト鋼合金、粉末並びにブランク又は部品
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20231025BHJP
   C22C 38/54 20060101ALI20231025BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20231025BHJP
【FI】
C22C38/00 302Z
C22C38/54
B22F1/00 T
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524088
(86)(22)【出願日】2021-09-01
(85)【翻訳文提出日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2021074098
(87)【国際公開番号】W WO2022083928
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】102020213394.8
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521001582
【氏名又は名称】シーメンス エナジー グローバル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS ENERGY GLOBAL GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ネッデマイヤー,トルステン
(72)【発明者】
【氏名】ブブリッツ,アクセル
(72)【発明者】
【氏名】ケルン,トルステン-ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】コルク,カーステン
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA32
4K018AB00
4K018BA16
4K018CA07
4K018EA41
4K018FA08
4K018KA12
(57)【要約】
Z相を有するマルテンサイト鋼、粉末、及びブランク又は部品-(重量%で)炭素(C):0.16%~0.24%、ケイ素(Si):0.0%~0.08%、マンガン(Mn):0.04%~0.16%、クロム(Cr):10.6%~11.5%、モリブデン(Mo):0.5%~0.9%、タングステン(W):2.2%~2.6%、コバルト(Co):3.0%~3.6%、ニッケル(Ni):0.09%~0.19%、ホウ素(B):0.0035%~0.01%、窒素(N):0.001%~0.025%、チタン(Ti):0.01%~0.04%、銅(Cu):1.20%~2.30%、所望により、バナジウム(V):0.10%~0.30%、ニオブ(Nb):0.02%~0.08%、アルミニウム(Al):0.003%~0.06%、及び残部の鉄(Fe)を少なくとも含有してなり、特にこれらの元素からなる、合金。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(重量%で)少なくとも、
炭素(C):0.16%~0.24%、好適には0.19%~0.21%、
ケイ素(Si):0.0%~0.08%、好適には0.0%~0.06%、極めて好適には0.02%~0.06%、
マンガン(Mn):0.04%~0.16%、好適には0.07%~0.13%、
クロム(Cr):10.6%~11.5%、好適には11.2%~11.5%、極めて好適には11.2%、
モリブデン(Mo):0.5%~0.9%、好適には0.7%、
タングステン(W):2.2%~2.6%、好適には2.3%~2.5%、極めて好適には2.45%、
コバルト(Co):3.0%~3.6%、好適には3.25%~3.40%、
ニッケル(Ni):0.09%~0.19%、好適には0.13%~0.17%、
ホウ素(B):0.0035%~0.01%、好適には0.004%~0.006%、
窒素(N):0.001%~0.025%、好適には0.011%~0.015%、
チタン(Ti):0.015%~0.035%、好適には0.018%~0.028%、
銅(Cu):1.30%~2.00%、好適には1.65%~1.85%、
所望により
バナジウム(V):0.10%~0.30%、好適には0.15%~0.25%、
ニオブ(Nb):0.02%~0.08%、好適には0.04%~0.06%、
アルミニウム(Al):0.003%~0.06%、特に0.005%~0.04%、及び
残分の鉄(Fe)
を含有してなる合金であって、
特にこれらの元素からなる、
合金。
【請求項2】
請求項1に記載の合金を含有してなり、
所望により、結合剤又はセラミック粒子を含有してなり、
特にこの合金からなる、
粉末。
【請求項3】
請求項1に記載の合金を少なくとも含有してなるか又は請求項2に記載の粉末から製造されており、
特に請求項1に記載の合金からなり、
鋳造及び/又は鍛造及び/又は熱処理及び/又は加工されている、
ブランク又は部品。
【請求項4】
0.2重量%の炭素(C)を含有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の合金、粉末、ブランク又は部品。
【請求項5】
0.02重量%~0.06重量%のケイ素(Si)を含有する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の合金、粉末、ブランク又は部品。
【請求項6】
0.10重量%のマンガン(Mn)を含有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の合金、粉末、ブランク又は部品。
【請求項7】
10.6重量%~11.0重量%のクロム(Gr)、特に10.7重量%~10.8重量%のクロム(Cr)、を含有する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の合金、粉末、ブランク又は部品。
【請求項8】
11.0重量%~11.4重量%のクロム(Cr)、特に11.2重量%のクロム(Cr)、を含有する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の合金、粉末、ブランク又は部品。
【請求項9】
0.70重量%のモリブデン(Mo)を含有する、
請求項1~8のいずれか1項に記載の合金、粉末、ブランク又は部品。
【請求項10】
2.40重量%のタングステン(W)を含有する、
請求項1~9のいずれか1項に記載の合金、粉末、ブランク又は部品。
【請求項11】
3.3重量%のコバルト(Co)を含有する、
請求項1~10のいずれか1項に記載の合金、粉末、ブランク又は部品。
【請求項12】
0.15重量%のニッケル(Ni)を含有する、
請求項1~11のいずれか1項に記載の合金、粉末、ブランク又は部品。
【請求項13】
0.005重量%のホウ素(B)を含有する、
請求項1~12のいずれか1項に記載の合金、粉末、ブランク又は部品。
【請求項14】
不純物レベルまでの、
0.013重量%の窒素(N)を含有する、
請求項1~13のいずれか1項に記載の合金、粉末、ブランク又は部品。
【請求項15】
0.020重量%~0.026重量%のチタン(Ti)、特に0.020重量%のチタン(Ti)、を含有する、
請求項1~14のいずれか1項に記載の合金、粉末、ブランク又は部品。
【請求項16】
0.20重量%のバナジウム(V)を含有する、
請求項1~15のいずれか1項に記載の合金、粉末、ブランク又は部品。
【請求項17】
0.05重量%のニオブ(Nb)を含有する、
請求項1~16のいずれか1項に記載の合金、粉末、ブランク又は部品。
【請求項18】
1.75重量%の銅(Cu)を含有する、
請求項1~17のいずれか1項に記載の合金、粉末、ブランク又は部品。
【請求項19】
0.02重量%のアルミニウム(Al)を含有する、
請求項1~18のいずれか1項に記載の合金、粉末、ブランク又は部品。
【請求項20】
1.5~2のチタン(Ti)/窒素(N)比率を有する、
請求項1~19のいずれか1項に記載の合金、粉末、ブランク又は部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Z相形成を遅らせたマルテンサイト鋼、粉末並びにそれから成るブランク又は部品に関する。
【0002】
タービン、特にガスタービン、の鍛造ロータディスクは、これまで、適用条件に応じて様々な鍛造鋼から製造されてきた。例えば、NiCrMoV系の鋼はコンプレッサディスクに、CrMoWVNbN系の鋼はタービンディスクに、使用される。適用条件及び設計要件は、鍛造材料の選択に重要である。
【0003】
鍛造材料を選択する際には、設計要件を満たすために、強度と靭性とのバランスが常に必要になる。
【0004】
現在のところ、最高使用温度を有する材料は、CrMoWVNbN系の鋼及びCrMoCoVB系の鋼である。
【0005】
しかしながら、どちらの材料も、773Kを超えると使用限界に達する。
【0006】
それにも拘わらず、現在の研究では、鉄合金は900Kまで利用することができることが示唆されている。
【0007】
より高い使用温度のために、ニッケル材料が現在検討されている。
【0008】
残念なことに、ニッケル系の部品は、以下のような欠点を有するため、使用方法を慎重に検討する必要がある:
- 鋼製のディスクと比較してコストがより高い点、
- 新たな破壊力学的構想を開発する必要がある点、
- 製造時における加工時間がより長い点。
【0009】
従って、本発明の目的は、上述の問題を解決することであり、特に熱間強度を高めて、更に高い使用温度、つまり少なくとも20Kから30Kの上昇、を可能にすることである。
【0010】
この課題は、請求項1に記載の合金、請求項2に記載の粉末及び請求項3に記載のブランク又は部品によって解決される。
【0011】
従属請求項には、更なる利点を得るために必要に応じて互いに組み合わせることができる、更なる有利な手段が列挙されている。
【0012】
これまで、マルテンサイト鋼の合金組成は、部品の利用期間内のZ相形成によって制限されてきた。
【0013】
本発明による合金は、
(重量%で)少なくとも、
炭素(C):0.16%~0.24%、好適には0.19%~0.21%、
ケイ素(Si):0.0%~0.08%、好適には0.0%~0.06%、極めて好適には0.02%~0.06%、
マンガン(Mn):0.04%~0.16%、好適には0.07%~0.13%、
クロム(Cr):10.6%~11.5%、好適には11.2%~11.5%、極めて好適には11.2%、
モリブデン(Mo):0.5%~0.9%、好適には0.7%、
タングステン(W):2.2%~2.6%、好適には2.3%~2.5%、極めて好適には2.45%、
コバルト(Co):3.0%~3.6%、好適には3.25%~3.40%、
ニッケル(Ni):0.09%~0.19%、好適には0.13%~0.17%、
ホウ素(B):0.0035%~0.01%、好適には0.004%~0.006%、
窒素(N):0.001%~0.025%、好適には0.011%~0.015%、
チタン(Ti):0.015%~0.035%、好適には0.018%~0.028%、
銅(Cu):1.20%~2.30%、好適には1.65%~1.85%、
所望により
バナジウム(V):0.10%~0.30%、好適には0.15%~0.25%、
ニオブ(Nb):0.02%~0.08%、好適には0.04%~0.06%、
アルミニウム(Al):0.003%~0.06%、特に0.005%~0.04%、及び
残分の鉄(Fe)
を含有してなり、
特にこれらの元素からなる、
【0014】
鋼の製造において、ケイ素(Si)は、溶融物をより流動的にする有利な効果を有し、脱酸剤としても機能する。ケイ素(Si)の更なる有利な影響は、引張強度、降伏点及び耐スケーリング性を向上させることである。
【0015】
更に、クロム(Cr)及びコバルト(Co)の割合も重要な役割を果たす。これらは、耐酸化性を向上させ、耐熱性を上昇させる。
【0016】
1.5~2のチタン(Ti)/窒素(N)比率が有利であることが証明された。
【0017】
新たな構想によって、Z相の形成を200,000時間方向にシフトすることができる。
【0018】
有利な実施例は、(重量%で)以下のとおりである:
炭素(C):0.20%、
ケイ素(Si):<0.08%、
マンガン(Mn):0.10%、
クロム(Cr):11.2%、
モリブデン(Mo):0.7%、
タングステン(W):2.4%、
コバルト(Co):3.3%、
ニッケル(Ni):0.15%、
ホウ素(B):0.005%、
窒素(N):0.013%、
チタン(Ti):0.02%、
バナジウム(V):0.20%、
ニオブ(Nb):0.05%、
銅(Cu):1.75%、
アルミニウム(Al):0.02%、
残部の鉄(Fe)。
【0019】
ガスタービンにおける鍛造ディスクとしての適用のみならず、例えば、ガスタービンコンプレッサブレード、蒸気タービンブレード、又は蒸気タービン鍛造部品などの更なる適用が考えられる。
【0020】
利点は、以下のとおりである:
- 「高価なニッケル系材料」と比較して「安価な」鉄系合金の使用領域の拡大、
- ニッケル系材料と比較して、鉄系ロータ部品(10.6%~11.5%のクロム(Cr))のより速い加工性。
- 高度に合金化された鉄系合金の設計、生産及び製造の経験を大いに活用することができる点;これは、例えば、破壊力学などの全ての確率論的アプローチにおいてリスクを最小限に抑えるのに役立つ。
- 適用温度を上昇させることができ、従って、外部冷却を必要とすることなく機械の出力及び性能の向上
が可能になる点。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(重量%で)少なくとも、
炭素(C):0.16%~0.24%、
ケイ素(Si):0.0%~0.08%、
マンガン(Mn):0.04%~0.16%、
クロム(Cr):10.6%~11.5%、
モリブデン(Mo):0.5%~0.9%、
タングステン(W):2.2%~2.6%、
コバルト(Co):3.0%~3.6%、
ニッケル(Ni):0.09%~0.19%、
ホウ素(B):0.0035%~0.01%、
窒素(N):0.001%~0.025%、
チタン(Ti):0.015%~0.035%、
銅(Cu):1.30%~2.00%、

残分の鉄(Fe)
を含有してなる合金。
【請求項2】
更に、重量%で、
バナジウム(V):0.10%~0.30%、
ニオブ(Nb):0.02%~0.08%、
アルミニウム(Al):0.003%~0.06%、及び
を含有してなる請求項1に記載の合金。
【請求項3】
0.2重量%の炭素(C)を含有する、
請求項1又は2に記載の合金。
【請求項4】
0.02重量%~0.06重量%のケイ素(Si)を含有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の合金。
【請求項5】
0.10重量%のマンガン(Mn)を含有する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の合金。
【請求項6】
10.6重量%~11.0重量%のクロムを含有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の合金。
【請求項7】
11.0重量%超~11.4重量%のクロム(Cr)を含有する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の合金。
【請求項8】
0.70重量%のモリブデン(Mo)を含有する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の合金。
【請求項9】
2.40重量%のタングステン(W)を含有する、
請求項1~8のいずれか1項に記載の合金。
【請求項10】
3.3重量%のコバルト(Co)を含有する、
請求項1~9のいずれか1項に記載の合金。
【請求項11】
0.15重量%のニッケル(Ni)を含有する、
請求項1~10のいずれか1項に記載の合金。
【請求項12】
0.005重量%のホウ素(B)を含有する、
請求項1~11のいずれか1項に記載の合金。
【請求項13】
不純物レベルを超えない、0.013重量%の窒素(N)を含有する、
請求項1~12のいずれか1項に記載の合金。
【請求項14】
0.020重量%~0.026重量%のチタン(Ti)を含有する、
請求項1~13のいずれか1項に記載の合金。
【請求項15】
0.20重量%のバナジウム(V)を含有する、
請求項1~14のいずれか1項に記載の合金。
【請求項16】
0.05重量%のニオブ(Nb)を含有する、
請求項1~15のいずれか1項に記載の合金。
【請求項17】
1.75重量%の銅(Cu)を含有する、
請求項1~16のいずれか1項に記載の合金。
【請求項18】
0.02重量%のアルミニウム(Al)を含有する、
請求項1~17のいずれか1項に記載の合金。
【請求項19】
1.5~2のチタン(Ti)/窒素(N)比率を有する、
請求項1~18のいずれか1項に記載の合金。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載の合金を含有してなる
粉末。
【請求項21】
更に、結合剤又はセラミック粒子を含有してなる請求項20に記載の粉末。
【請求項22】
請求項1~19のいずれか1項に記載の合金を少なくとも含有してなるか若しくは請求項1~19のいずれか1項に記載の合金からな
造及び/又は鍛造及び/又は熱処理及び/又は加工されている、
ブランク。
【請求項23】
請求項1~19のいずれか1項に記載の合金を少なくとも含有してなるか若しくは請求項1~19のいずれか1項に記載の合金からなり、
造及び/又は鍛造及び/又は熱処理及び/又は加工されている
部品
【請求項24】
請求項20又は21に記載の粉末から製造されており、鋳造及び/又は鍛造及び/又は熱処理及び/又は加工されている、ブランク。
【請求項25】
請求項20又は21に記載の粉末から製造されており、鋳造及び/又は鍛造及び/又は熱処理及び/又は加工されている、部品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Z相形成を遅らせたマルテンサイト鋼、粉末並びにそれから成るブランク又は部品に関する。
【0002】
タービン、特にガスタービン、の鍛造ロータディスクは、これまで、適用条件に応じて様々な鍛造鋼から製造されてきた。例えば、NiCrMoV系の鋼はコンプレッサディスクに、CrMoWVNbN系の鋼はタービンディスクに、使用される。適用条件及び設計要件は、鍛造材料の選択に重要である。
【0003】
鍛造材料を選択する際には、設計要件を満たすために、強度と靭性とのバランスが常に必要になる。
【0004】
現在のところ、最高使用温度を有する材料は、CrMoWVNbN系の鋼及びCrMoCoVB系の鋼である。
【0005】
しかしながら、どちらの材料も、773Kを超えると使用限界に達する。
【0006】
それにも拘わらず、現在の研究では、鉄合金は900Kまで利用することができることが示唆されている。
【0007】
より高い使用温度のために、ニッケル材料が現在検討されている。
【0008】
残念なことに、ニッケル系の部品は、以下のような欠点を有するため、使用方法を慎重に検討する必要がある:
- 鋼製のディスクと比較してコストがより高い点、
- 新たな破壊力学的構想を開発する必要がある点、
- 製造時における加工時間がより長い点。
【0009】
従って、本発明の目的は、上述の問題を解決することであり、特に熱間強度を高めて、更に高い使用温度、つまり少なくとも20Kから30Kの上昇、を可能にすることである。
【0010】
この課題は、請求項1に記載の合金、請求項2に記載の粉末及び請求項3に記載のブランク又は部品によって解決される。
【0011】
従属請求項には、更なる利点を得るために必要に応じて互いに組み合わせることができる、更なる有利な手段が列挙されている。
【0012】
これまで、マルテンサイト鋼の合金組成は、部品の利用期間内のZ相形成によって制限されてきた。
【0013】
本発明による合金は、
(重量%で)少なくとも、
炭素(C):0.16%~0.24%、好適には0.19%~0.21%、極めて好適には0.2%、
ケイ素(Si):0.0%~0.08%、好適には0.0%~0.06%、極めて好適には0.02%~0.06%、
マンガン(Mn):0.04%~0.16%、好適には0.07%~0.13%、極めて好適には0.10%、
クロム(Cr):10.6%~11.5、好適には11.2%~11.5%、極めて好適には11.2%、
又は、クロム(Cr):10.6重量%~11.0重量%、特に10.7%~10.8%のクロム、
或いはクロム(Cr):11.0%~11.4%、特に11.2%、
モリブデン(Mo):0.5%~0.9%、好適には0.7%、
タングステン(W):2.2%~2.6%、好適には2.3%~2.5%、極めて好適には2.45%又は2.40%
コバルト(Co):3.0%~3.6%、好適には3.25%~3.40%、極めて好適には3.3%
ニッケル(Ni):0.09%~0.19%、好適には0.13%~0.17%、極めて好適には0.15%
ホウ素(B):0.0035%~0.01%、好適には0.004%~0.006%、極めて好適には0.005%
窒素(N):0.001%~0.025%、好適には0.011%~0.015%、極めて好適には0.013%
チタン(Ti):0.015%~0.035%、好適には0.018%~0.028%、更に好適には、0.020%~0.026%、特に0.020%、
銅(Cu):1.20%~2.30%、好適には1.30~2.00%、更に好適には1.65%~1.85%、特に1.75%、
所望により
バナジウム(V):0.10%~0.30%、好適には0.15%~0.25%、特に0.020%、
ニオブ(Nb):0.02%~0.08%、好適には0.04%~0.06%、特に0.05%、
アルミニウム(Al):0.003%~0.06%、好適には0.005%~0.04%、特に0.02%、及び
残分の鉄(Fe)
を含有してなり、
特にこれらの元素からなる、
【0014】
鋼の製造において、ケイ素(Si)は、溶融物をより流動的にする有利な効果を有し、脱酸剤としても機能する。ケイ素(Si)の更なる有利な影響は、引張強度、降伏点及び耐スケーリング性を向上させることである。
【0015】
更に、クロム(Cr)及びコバルト(Co)の割合も重要な役割を果たす。これらは、耐酸化性を向上させ、耐熱性を上昇させる。
【0016】
1.5~2のチタン(Ti)/窒素(N)比率が有利であることが証明された。
【0017】
新たな構想によって、Z相の形成を200,000時間方向にシフトすることができる。
本発明によれば、本発明の合金を含有してなる粉末が提供される。
本発明によれば、本発明の合金からなる粉末が提供される。
本発明の粉末は結合剤又はセラミック粒子を含有することができる。
本発明によれば、本発明の合金を少なくとも含有してなるか若しくは本発明の合金からなり、鋳造及び/又は鍛造及び/又は熱処理及び/又は加工されているブランク又は部品が提供される。
本発明によれば、本発明の粉末から製造されてなり、鋳造及び/又は鍛造及び/又は熱処理及び/又は加工されているブランク又は部品が提供される。
【0018】
有利な実施例は、(重量%で)以下のとおりである:
炭素(C):0.20%、
ケイ素(Si):<0.08%、
マンガン(Mn):0.10%、
クロム(Cr):11.2%、
モリブデン(Mo):0.7%、
タングステン(W):2.4%、
コバルト(Co):3.3%、
ニッケル(Ni):0.15%、
ホウ素(B):0.005%、
窒素(N):0.013%、
チタン(Ti):0.02%、
バナジウム(V):0.20%、
ニオブ(Nb):0.05%、
銅(Cu):1.75%、
アルミニウム(Al):0.02%、
残部の鉄(Fe)。
【0019】
ガスタービンにおける鍛造ディスクとしての適用のみならず、例えば、ガスタービンコンプレッサブレード、蒸気タービンブレード、又は蒸気タービン鍛造部品などの更なる適用が考えられる。
【0020】
利点は、以下のとおりである:
- 「高価なニッケル系材料」と比較して「安価な」鉄系合金の使用領域の拡大、
- ニッケル系材料と比較して、鉄系ロータ部品(10.6%~11.5%のクロム(Cr))のより速い加工性。
- 高度に合金化された鉄系合金の設計、生産及び製造の経験を大いに活用することができる点;これは、例えば、破壊力学などの全ての確率論的アプローチにおいてリスクを最小限に抑えるのに役立つ。
- 適用温度を上昇させることができ、従って、外部冷却を必要とすることなく機械の出力及び性能の向上
が可能になる点。
【国際調査報告】