(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】吸入器システム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/10 20180101AFI20231025BHJP
G16H 10/00 20180101ALI20231025BHJP
【FI】
G16H20/10
G16H10/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524287
(86)(22)【出願日】2021-10-20
(85)【翻訳文提出日】2023-06-08
(86)【国際出願番号】 EP2021079124
(87)【国際公開番号】W WO2022084408
(87)【国際公開日】2022-04-28
(32)【優先日】2020-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】512297125
【氏名又は名称】ノートン (ウォーターフォード) リミテッド
【住所又は居所原語表記】Unit 301 IDA, Industrial Park, Cork Road, Waterford, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナウモフ,ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】ニル,ヤロン
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
5L099AA25
(57)【要約】
本システムは、複数の吸入器であってそれぞれが薬剤を含むものと、プロセッサと、メモリと、トランスミッタと、少なくとも部分的にユーザデバイスに存在し得る複数の処理モジュールと、複数の異なるユーザおよび複数の異なる薬剤タイプに関連付けられた吸入器から吸入器データを受信して集約するよう構成されたデジタルヘルスプラットフォーム(DHP)とを含むことができる。DHPは、教師あり学習法または教師なし学習法を介して、訓練データを使用して機械学習アルゴリズムを訓練するように構成されていてもよく、訓練データは、複数の使用イベントのそれぞれに関連付けられた時刻および1つ以上の吸入パラメータを含む。また、DHPは、訓練された機械学習アルゴリズムを使用して、コンプライアンススコア、将来のコンプライアンススコアおよび/またはリスクスコアを生成し、ディスプレイデバイスにユーザのスコアを示す通知を生成させるように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの呼吸器系の健康を個人的に評価するためのシステムであって、
コンピュータで実行可能な命令を含んだメモリと、
複数の異なるユーザに関連付けられた複数の使用イベントを受信するステップであって、それぞれの使用イベントが、吸入器、薬剤タイプおよび前記複数の異なるユーザのうちの1人のユーザに関連付けられ、それぞれの使用イベントが、前記使用イベントに関連付けられた時刻、および前記使用イベントの1つ以上の吸入パラメータを含み、前記1つ以上の吸入パラメータが、前記使用イベントの最大吸入流量(PIF)または前記使用イベントの吸入量を含むことを特徴とするステップと、
教師なし学習法を介して、訓練データを使用して機械学習アルゴリズムを訓練するステップであって、前記訓練データが、前記複数の使用イベントのそれぞれに関連付けられた前記時刻および前記1つ以上の吸入パラメータを含むことを特徴とするステップと、
前記訓練された機械学習アルゴリズムを使用してユーザのコンプライアンススコアを決定するステップと、
ディスプレイデバイスに前記ユーザの前記コンプライアンススコアを示す通知を生成させるステップと
を実行するように動作する、前記メモリに接続されたプロセッサと
を備えたことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記1つ以上の吸入パラメータは、前記使用イベントの前記PIFおよび前記使用イベントの前記吸入量の両方を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記複数の使用イベントの少なくともサブセットは、維持薬タイプおよび前記維持薬タイプのための服用スケジュールに関連付けられた維持使用イベントであり、
前記訓練データは、前記複数のユーザのうち少なくとも1つの維持使用イベントに関連付けられたユーザのそれぞれについての、前記維持薬タイプのための前記服用スケジュールに対する前記ユーザのアドヒアランスを示すアドヒアランス率をさらに含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記アドヒアランスは、所定期間にわたる前記ユーザの維持使用イベント回数と、前記所定期間のための前記服用スケジュールが示す維持使用イベント回数との比較に基づいて決定される
ことを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記複数の使用イベントの少なくともサブセットは、救助薬タイプに関連付けられた救助使用イベントであり、
前記訓練データは、前記複数のユーザのうち少なくとも1つの救助使用イベントに関連付けられたユーザのそれぞれについての、ユーザの救助使用イベント頻度をさらに含む
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記ユーザの救助使用イベント頻度が、所定期間にわたる前記ユーザの救助使用イベント回数と、前記ユーザの救助使用イベントの基準回数との比較からなる
ことを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記ユーザの救助使用イベント頻度が、所定期間における前記ユーザの1日あたりの救助使用イベント平均回数からなる
ことを特徴とする請求項5または6に記載のシステム。
【請求項8】
前記ユーザの救助使用イベント頻度が、所定期間における前記ユーザの救助使用イベント絶対回数からなる
ことを特徴とする請求項5~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記複数の使用イベントの第1サブセットは、維持薬タイプおよび前記維持薬タイプのための服用スケジュールに関連付けられた維持使用イベントであり、前記複数の使用イベントの第2サブセットは、救助薬タイプに関連付けられた救助使用イベントであり、
前記訓練データは、前記複数のユーザのうち少なくとも1つの維持使用イベントに関連付けられたユーザのそれぞれについての、前記維持薬タイプのための前記服用スケジュールに対する前記ユーザのアドヒアランスを示すアドヒアランス率と、前記複数のユーザのうち少なくとも1つの救助使用イベントに関連付けられたユーザのそれぞれについての、ユーザの救助使用イベント頻度とをさらに含む
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記訓練データは、
直近の所定の多くの日における前記複数のユーザのうちの1人のユーザについての救助薬タイプの使用イベント回数、または、
前記直近の所定の多くの日にわたる前記複数のユーザのうちの1人のユーザについての維持薬タイプの使用イベント見逃し回数
のうちの1つ以上を含む
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記訓練データは、
前記ユーザの平均吸入最大流量と比較した、前記複数のユーザのうちの1人のユーザのこれまでの多くの使用イベントの吸入最大流量における変化率、または、
前記ユーザの平均吸入量と比較した、前記複数のユーザのうちの1人のユーザのこれまでの多くの使用イベントの吸入量における変化率
の任意の組み合わせを含む
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記複数の使用イベントのそれぞれに関連付けられた前記時刻は、前記使用イベントが昼間または夜間のいずれに発生したのかを示すものである
ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記プロセッサは、
前記使用イベントに関連付けられたそれぞれの時刻および地理的位置を使用して、前記複数の使用イベントのそれぞれの環境条件を決定するステップ
を実行するように動作し、
前記訓練データは、前記複数の使用イベントのそれぞれの前記環境条件をさらに含む
ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記環境条件は、温度、湿度、外気汚染物質、2.5ミクロン以下の粒状物質(PM2.5)、10ミクロン以下の粒状物質(PM10)、オゾン、二酸化窒素(NO
2)または二酸化硫黄(SO
2)の任意の組み合わせを含む
ことを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記教師なし学習法は、クラスタリング法を含む
ことを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記教師なし学習法は、k-meansまたはc-meansクラスタリング法を含む
ことを特徴とする請求項1~15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記ディスプレイデバイスは、前記ユーザまたは前記ユーザの医療提供者に関連付けられている
ことを特徴とする請求項1~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記コンプライアンススコアは、直近の所定の多くの日における使用イベント中に前記ユーザがどの程度コンプライアンスを遵守していたかを示す
ことを特徴とする請求項1~17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記コンプライアンススコアは、維持薬に関連付けられた服用スケジュールに関して前記ユーザがどの程度忠実であったのかをさらに示す
ことを特徴とする請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記プロセッサは、
前記訓練された機械学習アルゴリズムを使用して、前記ユーザのコンプライアンススコアを改善するために当該ユーザが改善すべき属性を決定するステップと、
前記ディスプレイデバイスに、前記ユーザの前記属性を示す属性通知を生成させるステップと
を実行するように動作する
ことを特徴とする請求項1~19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記属性は、異なる時刻に維持薬を服用すること、将来の使用イベントの前記PIFを増加させること、または将来の使用イベントの吸入量を増加させることのうちの1つ以上を含む
ことを特徴とする請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記プロセッサは、
前記訓練された機械学習アルゴリズムを使用して、複数の属性のそれぞれの有意係数を決定するステップと、
前記訓練された機械学習アルゴリズムを使用して、前記複数の属性のそれぞれの前記有意係数に基づいて、前記ユーザのコンプライアンススコアを改善するために当該ユーザが改善すべき前記属性を決定するステップと
を実行するように動作する
ことを特徴とする請求項20または21に記載のシステム。
【請求項23】
ユーザの呼吸器系の健康を個人的に評価するためのシステムであって、
コンピュータで実行可能な命令を含んだメモリと、
複数の異なるユーザに関連する複数の使用イベントを受信するステップであって、それぞれの使用イベントが、吸入器、薬剤タイプおよび前記複数の異なるユーザのうちの1人のユーザに関連付けられ、それぞれの使用イベントが、前記使用イベントに関連付けられた時刻、および前記使用イベントの1つ以上の吸入パラメータを含み、前記1つ以上の吸入パラメータが、前記使用イベントの最大吸入流量(PIF)または前記使用イベントの吸入量を含み、前記複数の使用イベントの少なくともサブセットは、救助薬タイプに関連付けられた救助使用イベントであることを特徴とするステップと、
訓練データを使用して機械学習アルゴリズムを訓練するステップであって、前記訓練データが、前記複数の使用イベントのそれぞれに関連付けられた前記時刻と、前記複数の使用イベントのそれぞれに関連付けられた前記1つ以上の吸入パラメータと、前記複数のユーザのうち少なくとも1つの救助使用イベントに関連付けられたユーザのそれぞれについての、ユーザの救助使用イベント頻度とを含むことを特徴とするステップと、
前記訓練された機械学習アルゴリズムを使用して、前記複数の異なるユーザのうちの1人のユーザの将来のコンプライアンススコアを決定するステップと、
ディスプレイデバイスに前記ユーザの前記将来のコンプライアンススコアを示す通知を生成させるステップと
を実行するように動作する、前記メモリに接続されたプロセッサと
を備えたことを特徴とするシステム。
【請求項24】
前記将来のコンプライアンススコアは、1つ以上の吸入器に関連付けられた、前記ユーザの予想される将来のコンプライアンスの評価を示す
ことを特徴とする請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記訓練された機械学習アルゴリズムは、前記ユーザに関連付けられたパターンと前記複数のユーザに関連付けられたパターンとの比較に基づいて、前記ユーザの前記将来のコンプライアンススコアを決定するためにパターン検出を実行するように訓練されている
ことを特徴とする請求項23または24に記載のシステム。
【請求項26】
前記ユーザに関連付けられた前記パターンは、これまでの多く日にわたる前記ユーザの訓練データを含み、
前記複数のユーザに関連付けられた前記パターンのそれぞれは、前記これまでの多くの日に等しい期間にわたる前記複数のユーザのそれぞれのユーザに関連付けられた訓練データを含む
ことを特徴とする請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記ユーザの救助使用イベント頻度が、所定期間にわたる前記ユーザの救助使用イベント回数と、前記ユーザの救助使用イベントの基準回数との比較からなる
ことを特徴とする請求項23~26のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項28】
前記ユーザの救助使用イベント頻度が、所定期間における前記ユーザの1日あたりの救助使用イベント平均回数からなる
ことを特徴とする請求項23~27のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項29】
前記ユーザの救助使用イベント頻度が、所定期間における前記ユーザの救助使用イベント絶対回数からなる
ことを特徴とする請求項23~28のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項30】
前記複数の使用イベントの少なくともサブセットは、維持薬タイプおよび前記維持薬タイプのための服用スケジュールに関連付けられた維持使用イベントであり、
前記訓練データは、前記複数のユーザのうち少なくとも1つの維持使用イベントに関連付けられたユーザのそれぞれについての、前記維持薬タイプのための前記服用スケジュールに対する前記ユーザのアドヒアランスを示すアドヒアランス率をさらに含む
ことを特徴とする請求項23~29のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項31】
前記アドヒアランス率は、所定期間にわたる前記ユーザの維持使用イベント回数と、前記所定期間のための前記服用スケジュールによって示される維持使用イベント回数との比較に基づいて決定される
ことを特徴とする請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記1つ以上の吸入パラメータは、前記複数の使用イベントのそれぞれの前記PIFおよび前記吸入量の両方を含む
ことを特徴とする請求項23~31のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項33】
前記訓練データは、
前記直近の所定の多くの日における前記複数のユーザのうちの1人のユーザについての救助薬タイプの使用イベント回数、または、
前記直近の所定の多くの日にわたる前記複数のユーザのうちの1人のユーザについての維持薬タイプの使用イベント見逃し回数
を含む
ことを特徴とする請求項23~32のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項34】
前記訓練データは、
前記ユーザの平均吸入最大流量と比較した、前記複数のユーザのうちの1人のユーザのこれまでの多くの使用イベントの吸入最大流量における変化率、または、
前記ユーザの平均吸入量と比較した、前記複数のユーザのうちの1人のユーザのこれまでの多くの使用イベントの吸入量における変化率
を含む
ことを特徴とする請求項23~33のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項35】
前記複数の使用イベントのそれぞれに関連付けられた前記時刻は、前記使用イベントが昼間または夜間のいずれに発生したのかを示すものである
ことを特徴とする請求項23~34のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項36】
前記プロセッサは、
前記複数の使用イベントのそれぞれの前記吸入パラメータの地理的位置を決定するステップと、
前記使用イベントに関連付けられた前記それぞれの時刻および地理的位置を使用して、前記複数の使用イベントのそれぞれの環境条件を決定するステップと
を実行するように動作し、
前記訓練データは、前記複数の使用イベントのそれぞれの前記環境条件をさらに含む
ことを特徴とする請求項23~35のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項37】
前記環境条件は、温度、湿度、外気汚染物質濃度、2.5ミクロン以下の粒状物質(PM2.5)の存在、10ミクロン以下の粒状物質(PM10)の存在、オゾン濃度、二酸化窒素(NO
2)濃度または二酸化硫黄(SO
2)濃度の任意の組み合わせを含む
ことを特徴とする請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記機械学習アルゴリズムは、教師あり学習法を介して訓練される
ことを特徴とする請求項23~37のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項39】
前記教師あり学習法は、勾配ブースト決定木を含む
ことを特徴とする請求項38に記載のシステム。
【請求項40】
前記教師あり学習法は、XGBoostアルゴリズムを含む
ことを特徴とする請求項38または39に記載のシステム。
【請求項41】
機械学習アルゴリズムは、教師なし学習法を介して訓練される
ことを特徴とする請求項23~37のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項42】
前記教師なし学習法は、k-meansまたはc-meansクラスタリング法を含む
ことを特徴とする請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
前記ディスプレイデバイスは、前記ユーザまたは前記ユーザの医療提供者に関連付けられている
ことを特徴とする請求項23~42のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項44】
前記プロセッサは、
前記訓練された機械学習アルゴリズムを使用して、前記ユーザの将来のコンプライアンススコアを改善するために当該ユーザが改善すべき属性を決定するステップと、
前記ディスプレイデバイスに、前記ユーザの前記属性を示す通知を生成させるステップと
を実行するように動作する
ことを特徴とする請求項23~43のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項45】
前記属性は、異なる時刻に維持薬を服用すること、将来の使用イベントの前記PIFを増加させること、または将来の使用イベントの吸入量を増加させることのうちの1つ以上を含む
ことを特徴とする請求項44に記載のシステム。
【請求項46】
前記プロセッサは、
前記訓練された機械学習アルゴリズムを使用して、複数の属性のそれぞれの有意係数を決定するステップと、
前記訓練された機械学習アルゴリズムを使用して、前記複数の属性のそれぞれの前記有意係数に基づいて、前記ユーザの将来のコンプライアンススコアを改善するために当該ユーザが改善すべき前記属性を決定するステップと
を実行するように動作する
ことを特徴とする請求項44または45に記載のシステム。
【請求項47】
ユーザの呼吸器系の健康を個人的に評価するためのシステムであって、
コンピュータで実行可能な命令を含んだメモリと、
複数の異なるユーザに関連付けられた複数の使用イベントを受信するステップであって、それぞれの使用イベントが、薬剤タイプおよび前記複数の異なるユーザのうちの1人のユーザに関連付けられ、それぞれの使用イベントが、前記使用イベントに関連付けられた時刻、および前記使用イベントの1つ以上の吸入パラメータを含み、前記1つ以上の吸入パラメータが、前記使用イベントの最大吸入流量(PIF)または前記使用イベントの吸入量を含み、前記複数の使用イベントの第1サブセットは、救助薬タイプに関連付けられた救助使用イベントであり、前記複数の使用イベントの第2サブセットは、維持薬タイプおよび前記維持薬タイプのための服用スケジュールに関連付けられた維持使用イベントであることを特徴とするステップと、
教師なし学習法を介して、訓練データを使用して機械学習アルゴリズムを訓練するステップであって、前記訓練データが、前記複数の使用イベントのそれぞれに関連付けられた前記時刻と、前記複数の使用イベントのそれぞれに関連付けられた前記1つ以上の吸入パラメータと、前記複数のユーザのうち少なくとも1つの救助使用イベントに関連付けられたユーザのそれぞれについての、ユーザの救助使用イベント頻度と、前記複数のユーザのうち少なくとも1つの維持使用イベントに関連付けられたユーザのそれぞれについての、前記維持薬タイプのための前記服用スケジュールに対する前記ユーザのアドヒアランスを示すアドヒアランス率とを含むことを特徴とするステップと、
前記訓練された機械学習アルゴリズムを使用して、複数の属性のそれぞれの有意係数を決定するステップであって、前記属性が、使用イベントの前記時刻、使用イベントの前記吸入パラメータ、前記ユーザの救助使用イベント頻度、および前記服用スケジュールに対する前記アドヒアランスを含むことを特徴とするステップと、
前記訓練された機械学習アルゴリズムを使用して、前記複数の属性のそれぞれの前記有意係数に基づいて、前記ユーザスコアのコンプライアンススコアを改善するために当該ユーザが改善すべき属性を決定するステップと、
ディスプレイデバイスに前記ユーザが改善すべき前記属性を示す通知を生成させるステップと
を実行するように動作する、前記メモリに接続されたプロセッサと
を備えたことを特徴とするシステム。
【請求項48】
前記プロセッサは、
前記訓練された機械学習アルゴリズムを使用して、前記ユーザの前記コンプライアンススコアを決定するステップと、
前記ディスプレイデバイスに、前記ユーザの前記コンプライアンススコアを示す通知を生成させるステップと
を実行するように動作する
ことを特徴とする請求項47に記載のシステム。
【請求項49】
前記通知は、前記ユーザが異なる時刻に前記維持薬を服用すべきであること、将来の使用イベントの前記PIFを増加させるべきであること、または将来の使用イベントの吸入量を増加させるべきであることを示す
ことを特徴とする請求項47または48に記載のシステム。
【請求項50】
前記プロセッサは、
前記訓練された機械学習アルゴリズムを使用して、複数の属性のそれぞれの有意係数を決定するステップと、
前記訓練された機械学習アルゴリズムを使用して、前記ユーザのコンプライアンスを改善するために当該ユーザが改善すべき前記属性を決定するステップと
を実行するように動作する
ことを特徴とする請求項47~49のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項51】
前記ユーザの救助使用イベント頻度が、所定期間にわたる前記ユーザの救助使用イベント回数と、前記ユーザの救助使用イベントの基準回数との比較からなる
ことを特徴とする請求項47~50のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項52】
前記ユーザの救助使用イベント頻度が、所定期間における前記ユーザの1日あたりの救助使用イベント平均回数からなる
ことを特徴とする請求項47~51のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項53】
前記ユーザの救助使用イベント頻度が、所定期間における前記ユーザの1日あたりの救助使用イベント絶対回数からなる
ことを特徴とする請求項47~52のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項54】
前記アドヒアランス率は、所定期間にわたる前記ユーザの維持使用イベント回数と、前記所定期間のための前記服用スケジュールによって示される維持使用イベント回数との比較に基づいて決定される
ことを特徴とする請求項47~53のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項55】
前記訓練データは、
前記直近の所定の多くの日における前記複数のユーザのうちの1人のユーザについての救助薬タイプの使用イベント回数、または、
前記直近の所定の多くの日にわたる前記複数のユーザのうちの1人のユーザについての維持薬タイプの使用イベント見逃し回数
の任意の組み合わせを含む
ことを特徴とする請求項47~54のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項56】
前記訓練データは、
前記ユーザの平均吸入最大流量と比較した、前記複数のユーザのうちの1人のユーザのこれまでの多くの使用イベントの吸入最大流量における変化率、または、
前記ユーザの平均吸入量と比較した、前記複数のユーザのうちの1人のユーザのこれまでの多くの使用イベントの吸入量における変化率
の任意の組み合わせを含む
ことを特徴とする請求項47~55のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項57】
前記複数の使用イベントのそれぞれに関連付けられた前記時刻は、前記使用イベントが昼間または夜間のいずれに発生したのかを示すものである
ことを特徴とする請求項47~56のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項58】
前記プロセッサは、
前記使用イベントに関連付けられた前記それぞれの時刻および地理的位置を使用して、前記複数の使用イベントのそれぞれの環境条件を決定するステップ
を実行するように動作し、
前記訓練データは、前記複数の使用イベントのそれぞれの前記環境条件をさらに含む
ことを特徴とする請求項47~57のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項59】
前記環境条件は、温度、湿度、外気汚染物質濃度、2.5ミクロン以下の粒状物質(PM2.5)の存在、10ミクロン以下の粒状物質(PM10)の存在、オゾン濃度、二酸化窒素(NO
2)濃度または二酸化硫黄(SO
2)濃度の任意の組み合わせを含む
ことを特徴とする請求項58に記載のシステム。
【請求項60】
前記ディスプレイデバイスは、前記ユーザまたは前記ユーザの医療提供者に関連付けられている
ことを特徴とする請求項47~59のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項61】
前記機械学習アルゴリズムは、教師あり学習法を介して訓練される
ことを特徴とする請求項47~60のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項62】
前記教師あり学習法は、勾配ブースト決定木を含む
ことを特徴とする請求項61に記載のシステム。
【請求項63】
前記教師あり学習法は、XGBoostアルゴリズムを含む
ことを特徴とする請求項61または62に記載のシステム。
【請求項64】
機械学習アルゴリズムは、教師なし学習法を介して訓練される
ことを特徴とする請求項47~60のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項65】
前記教師なし学習法は、k-meansまたはc-meansクラスタリング法を含む
ことを特徴とする請求項64に記載のシステム。
【請求項66】
ユーザの呼吸器系の健康を個人的に評価するためのシステムであって、
コンピュータで実行可能な命令を含んだメモリと、
複数の異なるユーザに関連付けられた複数の使用イベントを受信するステップであって、それぞれの使用イベントが、薬剤タイプおよび前記複数の異なるユーザのうちの1人のユーザに関連付けられ、それぞれの使用イベントが、前記使用イベントに関連付けられた時刻、および前記使用イベントの1つ以上の吸入パラメータを含むことを特徴とするステップと、
前記複数の使用イベントのそれぞれの前記吸入パラメータの地理的位置を決定するステップと、
教師なし学習法を介して、訓練データを使用して機械学習アルゴリズムを訓練するステップであって、前記訓練データが、前記複数の使用イベントのそれぞれに関連付けられた前記時刻、前記1つ以上の吸入パラメータおよび前記地理的位置を含むことを特徴とするステップと、
前記訓練された機械学習アルゴリズムを使用して、前記複数のユーザのうちの1人のユーザのスコアを決定するステップと、
ディスプレイデバイスに前記ユーザの前記スコアを示す通知を生成させるステップと
を実行するように動作する、前記メモリに接続されたプロセッサと
を備えたことを特徴とするシステム。
【請求項67】
前記プロセッサは、
前記地理的位置に基づいて前記複数の使用イベントのそれぞれの前記吸入パラメータの環境条件を決定するステップ
を実行するように動作し、
前記訓練データは、前記複数の使用イベントのそれぞれの前記吸入パラメータの前記環境条件をさらに含む
ことを特徴とする請求項66に記載のシステム。
【請求項68】
前記環境条件は、温度、湿度、外気汚染物質濃度、2.5ミクロン以下の粒状物質(PM2.5)の存在、10ミクロン以下の粒状物質(PM10)の存在、オゾン濃度、二酸化窒素(NO
2)濃度または二酸化硫黄(SO
2)濃度の任意の組み合わせを含む
ことを特徴とする請求項67に記載のシステム。
【請求項69】
前記1つ以上の吸入パラメータは、流量、最大吸気流量(PIF)、吸入量、吸入持続時間または最大吸入までの時間の1つ以上を含む
ことを特徴とする請求項66~68のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項70】
前記1つ以上の吸入パラメータは、最大吸気流量(PIF)および吸入量を含む
ことを特徴とする請求項66~69のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項71】
前記プロセッサは、
前記地理的位置に基づいて前記複数の使用イベントのそれぞれの前記吸入パラメータの注目点を決定するステップ
を実行するように動作し、
前記訓練データは、前記複数の使用イベントのそれぞれの前記吸入パラメータの前記注目点をさらに含む
ことを特徴とする請求項66~70のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項72】
前記吸入パラメータの前記注目点は、公園、燃料ステーション、工場、発電所または高速道路を含む
ことを特徴とする請求項71に記載のシステム。
【請求項73】
前記プロセッサは、
前記ユーザの現在の地理的位置を決定するステップ
を実行するように動作し、
前記現在の地理的位置は、前記ユーザの前記スコアを決定するために使用される
ことを特徴とする請求項66~72のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項74】
前記プロセッサは、
複数の自己評価回答を受信するステップであって、それぞれの自己評価回答が前記複数のユーザのうちの1人のユーザに関連付けられ、それぞれの自己評価回答が前記自己評価回答に関連付けられた時刻および地理的位置を含むことを特徴とするステップと、
前記自己評価回答に関連付けられた前記それぞれの時刻および地理的位置を使用して自己評価回答のそれぞれの環境条件を決定するステップと
を実行するように動作し、
前記訓練データは、前記複数の自己評価回答および自己評価回答のそれぞれの前記環境条件をさらに含む
ことを特徴とする請求項66~73のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項75】
前記スコアは、前記ユーザの呼吸状態の増悪の可能性を示す当該ユーザの個別リスクスコアを含む
ことを特徴とする請求項66~74のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項76】
前記呼吸状態は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)または嚢胞性線維症(CF)を含む
ことを特徴とする請求項75に記載のシステム。
【請求項77】
前記プロセッサは、
前記ユーザの前記機械学習アルゴリズムによって最も重く重み付けされた環境条件を示すものを含む通知を生成するステップ
を実行するように動作する
ことを特徴とする請求項66~76のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項78】
前記複数の前記使用イベントは、救助吸入器使用イベントである
ことを特徴とする請求項66~77のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項79】
前記教師なし学習法は、k-meansまたはc-meansクラスタリング法を含む
ことを特徴とする請求項66~78のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項80】
吸入器使用イベントに基づいて暖房換気空調(HVAC)システムを制御するシステムであって、
コンピュータで実行可能な命令を含んだメモリと、
複数の異なるユーザに関連付けられた複数の使用イベントを受信するステップであって、それぞれの使用イベントが、薬剤タイプおよび前記複数の異なるユーザのうちの1人のユーザに関連付けられ、それぞれの使用イベントが、前記使用イベントに関連付けられた時刻、および前記使用イベントの1つ以上の吸入パラメータを含むことを特徴とするステップと、
前記複数の使用イベントのそれぞれの前記吸入パラメータの地理的位置を決定するステップと、
前記複数の使用イベントのそれぞれに関連付けられた前記それぞれの時刻および地理的位置を使用して、前記複数の使用イベントのそれぞれに対する1つ以上の環境条件を決定するステップと、
教師なし学習法を介して、訓練データを使用して機械学習アルゴリズムを訓練するステップであって、前記訓練データが、前記複数の使用イベントのそれぞれに関連付けられた前記時刻、前記1つ以上の吸入パラメータ、前記地理的位置および前記環境条件を含むことを特徴とするステップと、
前記訓練された機械学習アルゴリズムを使用して、前記複数のユーザのうちの1人のユーザの個別スコアを決定するステップと、
前記ユーザの前記個別スコアに基づいて、前記ユーザに関連付けられたHVACシステムを制御するステップと
を実行するように動作する、前記メモリに接続されたプロセッサと
を備えたことを特徴とするシステム。
【請求項81】
前記プロセッサは、
ユーザデバイスから受信した位置データに基づいて前記ユーザの前記現在の地理的位置を決定するステップ
を実行するように動作する
ことを特徴とする請求項80に記載のシステム。
【請求項82】
前記ユーザに関連付けられた前記HVACシステムは、前記ユーザの前記個別スコアおよび前記ユーザの前記現在の地理的位置に基づいて制御される
ことを特徴とする請求項80または81に記載のシステム。
【請求項83】
前記プロセッサは、
前記ユーザの前記現在の地理的位置に基づいて、前記ユーザの自宅から当該ユーザまでの距離が所定距離内であることを決定するステップ
を実行するように動作し、
前記HVACシステムは、前記ユーザの自宅から当該ユーザまでの距離が前記所定距離内であることに基づいて、前記ユーザの自宅の湿度レベルを閾値未満まで調整するよう制御される
ことを特徴とする請求項80~82のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項84】
前記閾値は、前記ユーザの前記個別スコアに基づいている
ことを特徴とする請求項83に記載のシステム。
【請求項85】
前記閾値は、さらに前記時刻に基づいている
ことを特徴とする請求項84に記載のシステム。
【請求項86】
前記閾値が、湿度60%である
ことを特徴とする請求項83~85のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項87】
前記1つ以上の吸入パラメータは、流量、最大吸気流量(PIF)、吸入量、吸入持続時間または最大吸入までの時間の1つ以上を含む
ことを特徴とする請求項80~86のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項88】
前記1つ以上の吸入パラメータは、最大吸気流量(PIF)および吸入量を含む
ことを特徴とする請求項80~87のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項89】
前記個別スコアは、前記ユーザの呼吸状態の増悪の可能性を示す
ことを特徴とする請求項80~88のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項90】
前記呼吸状態は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)または嚢胞性線維症(CF)を含む
ことを特徴とする請求項89に記載のシステム。
【請求項91】
前記個別スコアは、直近の所定の多くの日における使用イベント中に前記ユーザがどの程度コンプライアンスを遵守していたかを示す
ことを特徴とする請求項80~90のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項92】
前記個別スコアは、1つ以上の吸入器に関連付けられた、前記ユーザの予想される将来のコンプライアンスの評価を示す
ことを特徴とする請求項80~91のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項93】
前記環境条件は、温度、湿度、外気汚染物質濃度、2.5ミクロン以下の粒状物質(PM2.5)の存在、10ミクロン以下の粒状物質(PM10)の存在、オゾン濃度、二酸化窒素(NO
2)濃度または二酸化硫黄(SO
2)濃度の任意の組み合わせを含む
ことを特徴とする請求項80~92のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項94】
前記地理的位置は、第1地理的位置であり、
前記プロセッサは、
前記第1地理的位置が前記HVACシステムに関連付けられた第2地理的位置に対応することを決定するステップと、
前記HVACシステムから環境条件を受信するステップと、
前記HVACシステムからの前記環境条件を前記複数の使用イベントのうちの第1使用イベントの1つ以上の吸入パラメータに関連付けるステップと
を実行するように動作し、
前記訓練データは、前記第1使用イベントおよび前記HVACシステムからの前記関連付けられた環境条件を含む
ことを特徴とする請求項80~93のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年10月21日に出願された米国特許出願第63/094,509号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
薬剤送達デバイスは、様々な投与経路を介した患者の体内への薬剤の送達を容易にする。典型的な投与経路には、経口、局所、舌下吸入、注射等がある。本デバイスは、種々の病気、疾患、病状を治療するための薬剤を送達するために使用されることがある。例えば、吸入器は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)および/または嚢胞性線維症(CF)を治療するために使用されることがある。薬剤送達デバイスは、治療の一部として適切な用量の薬剤を患者に送達するように設計されているが、特定の治療の有効性は、患者のアドヒアランスおよびコンプライアンスといった非生理学的な要因の影響を受けることがある。
【0003】
薬物療法において、アドヒアランスは、患者が処方された服用レジメンに対して忠実である程度を指すことがある。例えば、患者の処方箋が1日につき2用量の服用を求めており、患者が1日につき2用量の服用をしている場合、患者のアドヒアランスは100%であると考えることができる。患者が1日につき1用量しか服用していない場合、患者のアドヒアランスはたったの50%であるとみなすことができる。後者の場合、患者は主治医が処方した治療を受けていないかもしれず、このことは、治療効果に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0004】
コンプライアンスは、特定の薬剤送達デバイスを使用するときの患者の技術を指すことがある。患者が医師またはメーカーが推奨する方法でデバイスを使用している場合、そのデバイスは目的の用量の薬剤を送達する可能性が高く、患者はコンプライアンスに従っているとみなすことができる。しかしながら、薬剤の投与中にデバイスが適切に使用されていない場合、そのデバイスの適切な用量の薬剤を投与する機能は損なわれる可能性がある。したがって、患者はコンプライアンスに従っていないとみなすことができる。例えば、吸入デバイスまたは吸入器の場合、デバイスから患者の肺に1用量全部の薬剤を確実に送達するために、患者は最小限の吸気努力を達成する必要があるかもしれない。一部の患者(例えば、小児または高齢者)では、身体的制限(例えば、肺機能制限)のために、完全なコンプライアンスの要件を満たすことが困難な場合がある。したがって、アドヒアランスと同様に、完全なコンプライアンスを達成できないことは、処方された治療の有効性を低下させる可能性がある。
【0005】
完全なコンプライアンスを達成する患者の能力は、薬剤の特定の物理的特性によってさらに複雑になることがある。例えば、呼吸器薬の中には、微粒子で構成されているものや、匂いや味が全くしないものがある。このような場合、吸入器を使用している患者は、薬剤が吸入されていることをすぐに検出/感知できない、および/または吸入された薬剤の量が処方箋に沿っているかどうかを知ることができないため、コンプライアンスに違反した使用を修正することができないかもしれない。
【0006】
さらに、多くの呼吸器疾患(例えば、喘息およびCOPD)は、患者の症状を管理し、不可逆的な変化のリスクを減らすために、長期にわたる薬剤の投与を必要とする治療が生涯にわたって続く状態である。喘息およびCOPDのような疾患は、今のところ治療法がない。治療には2つの形態がある。1つ目は、気道の炎症を抑え、その結果、将来の症状を制御することを目的とした維持の側面をもつ治療である。維持治療は、通常、吸入コルチコステロイドの単独投与、または長時間作用型気管支拡張剤および/またはムスカリン拮抗剤との併用によって行われる。2つ目は、喘鳴、咳、胸部圧迫感、息切れといった急性症状を緩和するために、即効性のある気管支拡張剤を投与する救助(または、リリーバー)の側面をもつ治療である。
【0007】
したがって、呼吸器疾患の患者は、自分の症状を制御するために、複数の薬剤(例えば、複数の吸入薬)を処方されることがある。患者は、それぞれ異なる時間/場所で使用される複数の吸入器を代替的または追加的に使用することができ、それらはすべて同じ吸入薬を送達する。このような薬剤の投与を、信頼性が高く、かつ患者の立場に立った便利な方法で監視したいという要望が高まっている。また、このような監視は、それぞれの患者のアドヒアランスおよびコンプライアンスを評価したり、増悪のリスクが最も高いことを示すデータまたは患者の治療レジメンが変更されるべきであることを示すデータを見たりするための単純でまとまりのある方法を必要とする患者の医療提供者にとっても望ましい。
【0008】
システムは、処方された服用レジメンに対する患者のアドヒアランスを監視するように設計されていてもよい。例えば、システムは、患者による薬剤の投与を検出することによって患者のアドヒアランスを監視し、患者が処方された服用レジメンに従っていることを確認するように設計されていてもよい。薬剤の投与を検出するために、薬剤の投与に使用される薬剤送達デバイスに特定のコンポーネントが追加または含まれていてもよい。例えば、薬剤送達デバイスによる薬剤の投与を示す薬剤送達デバイスでのイベントまたは作動を検出するために、コンポーネントが追加されてもよい。また、薬剤送達デバイスに通信コンポーネントを追加し、薬剤送達デバイスによる薬剤の投与のそれぞれに関連付けられた特定の情報(例えば、投与時間、残用量数等)を、1つ以上の外部デバイスに送信し、当該外部デバイスに格納できるように、および/または、当該外部デバイスで分析できるようにしてもよい。多くの場合、これらのコンポーネントは、アドオン・コンポーネント(例えば、薬剤送達デバイスに取り付け可能な市販の処理および/または通信コンポーネント)である。
【0009】
しかしながら、これらのシステムは、薬剤送達デバイスの投与を検出および監視し、ひいては処方された服用レジメンに対する患者のアドヒアランス(例えば、患者が忠実な程度)を測定するために使用されることはあるが、患者のコンプライアンス(例えば、特定の薬剤送達デバイスを使用する際の患者の技術)を測定または監視することはできない。例えば、これらのシステムは、薬剤送達デバイスによる薬剤の投与を検出および監視することはできるが、投与イベントのそれぞれに関連付けられた吸入パラメータ(例えば、PIF、量等)を測定することはできない。つまり、これらのシステムは、処方された服用レジメンに対する患者のアドヒアランスを監視することはできるかもしれないが、吸入パラメータを測定することはできないため、患者のコンプライアンスについての洞察力を欠いている。吸入パラメータを測定することができないために、これらのシステムは、例えば、増悪の重症度および/または患者の一般的な肺の健康のような患者の呼吸器疾患の状態(例えば、患者が増悪イベントを経験する可能性)、および/または、現在のまたは変化する環境条件(例えば、暑さ、大気質、湿度等)に対する患者の感度を評価することもできない。
【0010】
処方された服用レジメンに対する患者のアドヒアランスを監視するように設計されたシステムは、患者のアドヒアランスに基づいて患者にフィードバックを提供してもよい。例えば、これらのシステムは、患者が処方された服用レジメンに従わなかった場合に、当該患者に通知/警告を提供してもよい。また、これらのシステムは、患者のアドヒアランスに基づいて、当該患者の呼吸器疾患の状態(例えば、患者が増悪イベントを経験する可能性)、および/または、現在のまたは変化する環境条件(例えば、暑さ、大気質、湿度等)に対する当該患者の感度の予測を試みてもよい。一方で、患者の呼吸器疾患の状態、および/または、現在のまたは変化する環境条件に対する感度は、患者のコンプライアンスに基づくことによりさらに好適に予測される(例えば、より高い精度で予測される)。結果的に、患者のアドヒアランスのみに基づいて患者の呼吸器疾患の状態、および/または、現在のまたは変化する環境条件に対する患者の感度の予測を試みるシステムは、不正確で、および/または信頼性を欠くことがある。これらの欠点は、呼吸器疾患の治療のために患者に対して複数の薬剤(例えば、救助薬および維持薬)が処方された場合に、さらに悪化することがある。例えば、それぞれの薬剤は、異なる時期に、異なる状況に応じて、および/または、異なる目的で投与されることがあるため、それぞれのタイプの薬剤に関する患者のコンプライアンスは、当該患者の呼吸器疾患の状態、および/または、現在のまたは変化する環境条件に対する当該患者の感度に影響を与えるかもしれない。
【発明の概要】
【0011】
本システムは、複数の吸入器を含み、それぞれの吸入器は、薬剤、プロセッサ、メモリおよびトランスミッタを備えている。それぞれの吸入器は、吸入イベント(例えば、圧力センサ、音響センサ、流量センサ等のセンサによって検出されるもの)、または、マウスピースカバーの開放、スイッチ(例えば、薬剤の用量を準備するのに用いられるもの)の作動などの操作、または、揺れ(例えば、加速度計を使用して検出されるもの)といった吸入器の特定の動きの検出のような、対象者によって引き起こされる吸入器の使用イベントを判定するように構成されている。吸入器は、使用イベントのそれぞれに時刻を割り当ててもよい。吸入器はまた、使用イベントおよび当該使用イベントの時刻を示すデータを、いくつかの例ではユーザデバイス上にあるモバイルアプリケーションである別のデバイスに送信するように構成されている。吸入器について述べてきたが、いくつかの例では、本システムは、吸入器に加えて、または吸入器の代わりに他の医療デバイスを含んでいてもよい。また、いくつかの例では、本システムは、処理モジュールおよび/または送信モジュール(例えば、プロセッサ、メモリおよびトランスミッタ)を備えた本明細書に記載の吸入器の代わりに、またはこれに加えて、「データ処理能力のない」な吸入器に取り付けるように構成された処理モジュールおよび/または送信モジュール(例えば、プロセッサ、メモリおよびトランスミッタ)を含むスマートアドオンデバイスを含んでいてもよい。
【0012】
本システムはまた、複数の異なるユーザおよび複数の異なる薬剤タイプ(例えば、1つ以上の救助薬タイプおよび/または1つ以上の維持薬タイプ)に関連付けられた吸入器に接続し、当該吸入器から吸入器データを受信して集約するように構成された処理モジュールを含んでいてもよい。いくつかの例では、救助薬タイプはアルブテロール(例えば、アルブテロール硫酸塩)であり、維持薬タイプはフルチカゾン(例えば、フルチカゾンプロピオン酸エステルまたはフルチカゾンフランカルボン酸エステル)、またはサルメテロール(例えば、サルメテロールキシナホ酸塩)とフルチカゾン(例えば、フルチカゾンプロピオン酸エステルまたはフルチカゾンフランカルボン酸エステル)の組み合わせである。この処理モジュールは、以下で詳細に説明するように、デジタルヘルスプラットフォーム(DHP)と呼ぶことができる。DHPは、トランシーバ、メモリおよびプロセッサを含んでいてもよいし、これらに関連付けられていてもよい。例えば、DHPは、1つ以上のサーバ上に存在していてもよい。
【0013】
DHPは、複数の異なるユーザに関連付けられている、複数の吸入器の使用イベントとそれぞれの使用イベントの時刻(例えば、使用イベントのタイムスタンプ)に関するデータを受信するように構成されている。それぞれの吸入器は、少なくとも1人のユーザと、救助薬タイプまたは維持薬タイプのいずれかと関連付けられている。いくつかの例では、本システムは、ユーザデバイス(例えば、スマートフォンまたはタブレット)上に存在するモバイルアプリケーションを含んでいてもよく、DHPは、ユーザデバイス(例えば、スマートフォンまたはタブレット)上に存在するモバイルアプリケーションを介して複数の吸入器の使用イベントおよびタイムスタンプを受信してもよい。本システムは、ユーザデバイス(例えば、スマートフォンまたはタブレット)上に存在するモバイルアプリケーションを含んでいてもよい。一方で、例えば、吸入器がDHPへの使用イベントおよびタイムスタンプの送信を可能にするセルラーチップセットを含む他の例では、DHPは、使用イベントおよびタイムスタンプを吸入器自体から直接的に受信してもよい。
【0014】
DHPは、複数の吸入器のそれぞれ(ひいては使用イベントのそれぞれ)に関連付けられた薬剤タイプおよびユーザを決定するように構成されている。いくつかの例では、これは、ユーザのデバイス上に存在するモバイルアプリケーションで実行され、使用データおよび関連付けられたタイムスタンプとともにDHPに送信される。他の例では、DHPは、それぞれの吸入器に関連付けられた薬剤タイプおよびユーザを決定する。
【0015】
本明細書では、実行されたときにユーザの1つ以上の個別スコア(例えば、コンプライアンススコア、将来のコンプライアンススコアおよび/またはリスクスコア)を決定するように構成されたシステム、方法およびコンピュータ可読媒体について説明する。コンプライアンススコアは、直近の所定の多くの日の使用イベント中にユーザがどの程度コンプライアンスを遵守していたかを示すことができる。例えば、いくつかの例では、コンプライアンススコアは、維持薬に関連付けられた服用スケジュールに関して、どの程度ユーザが忠実であったかをさらに示すことができる。将来のコンプライアンススコアは、1つ以上の吸入器に関連する、予想されるユーザの将来のコンプライアンスの評価を示すことができる。リスクスコアは、ユーザが呼吸状態の増悪(例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)または嚢胞性線維症(CF))に苦しめられるリスクを含むことができる。
【0016】
例えば、DHPは、複数の異なるユーザに関連付けられた複数の使用イベントを受信するように構成されていてもよい。それぞれの使用イベントは、吸入器、薬剤タイプおよび複数の異なるユーザのうちの1人のユーザに関連付けられていてもよい。それぞれの使用イベントは、当該使用イベントに関連付けられた時刻および当該使用イベントの1つ以上の吸入パラメータを含んでいてもよい。吸入パラメータは、流量、最大吸気流量(PIF)、吸入量、吸入持続時間または最大吸入までの時間の任意の組み合わせを含んでいてもよい。例えば、吸入パラメータは、使用イベントのPIFおよび/または使用イベントの吸入量を含んでいてもよい。DHPは、教師あり学習法または教師なし学習法により、訓練データを使用して機械学習アルゴリズムを訓練してもよい。訓練データは、複数の使用イベントのそれぞれに関連付けられた時刻および1つ以上の吸入パラメータを含んでいてもよい。DHPは、訓練された機械学習アルゴリズムを使用して、ユーザのコンプライアンススコア、将来のコンプライアンススコアおよび/またはリスクスコアを決定してもよい。DHPは、スコアを示すユーザ向けの通知をディスプレイデバイスに生成させるように構成されていてもよく、ディスプレイデバイスは、ユーザ(例えば、ユーザの携帯電話)および/またはユーザの医療提供者に関連付けられていてもよい。
【0017】
訓練データは、少なくとも1つの維持使用イベントに関連付けられた複数のユーザのうちのそれぞれのユーザについての、維持薬タイプの服用スケジュールに対するユーザのアドヒアランスを示すアドヒアランス率を含んでいてもよい。アドヒアランスは、所定期間にわたるユーザの維持使用イベント回数と、服用スケジュールが示す所定期間における維持使用イベント回数との比較に基づいて決定することができる。訓練データは、少なくとも1つの救助使用イベントに関連付けられた複数のユーザのうちのそれぞれのユーザについての、救助使用イベントのユーザ頻度を含んでいてもよい。救助使用イベントのユーザ頻度は、所定期間にわたるユーザの救助使用イベント回数と、ユーザの救助使用イベントの基準数との比較を含んでいてもよい。救助使用イベントのユーザ頻度は、所定期間におけるユーザの1日あたりの救助使用イベント平均回数を含んでいてもよい。救助使用イベントのユーザ頻度は、所定期間におけるユーザの救助使用イベント絶対回数を含んでいてもよい。
【0018】
訓練データは、少なくとも1つの維持使用イベントに関連付けられた複数のユーザのうちのそれぞれのユーザについての、維持薬タイプの服用スケジュールに対するユーザのアドヒアランスを示すアドヒアランス率、および/または、少なくとも1つの救助使用イベントに関連付けられた複数のユーザのうちのそれぞれのユーザについての、救助使用イベントのユーザ頻度を含んでいてもよい。訓練データは、複数のユーザのうちの1人のユーザについての、直近の所定の多くの日における救助薬タイプの使用イベント回数を含んでいてもよい。訓練データは、複数のユーザのうちの1人のユーザについての、直近の所定の多くの日における維持薬タイプの見逃し使用イベント回数を含んでいてもよい。訓練データは、ユーザの平均吸入最大流量と比較した、複数のユーザのうちの1人のユーザのこれまでの多くの使用イベントの吸入最大流量における変化率を含んでいてもよい。訓練データは、ユーザの平均吸入量と比較した、複数のユーザのうちの1人のユーザのこれまでの多くの使用イベントの吸入量における変化率を含んでいてもよい。
【0019】
DHPは、使用イベントに関連付けられたそれぞれの時刻および地理的位置を使用して、複数の使用イベントのそれぞれの環境条件を決定するように構成されていてもよく、例えば、訓練データは、複数の使用イベントのそれぞれの環境条件を含んでいてもよい。環境条件は、温度、湿度、外気汚染物質、2.5ミクロン以下の粒状物質(PM2.5)、10ミクロン以下の粒状物質(PM10)、オゾン、二酸化窒素(NO2)または二酸化硫黄(SO2)の任意の組み合わせを含むことができる。
【0020】
教師なし学習法は、クラスタリング法(例えば、k-meansまたはc-meansクラスタリング法)を含んでいてもよい。教師あり学習法は、勾配ブースト決定木および/またはXGBoostアルゴリズムを含んでいてもよい。
【0021】
いくつかの例では、DHPは、ユーザに関連付けられたパターンと複数のユーザに関連付けられたパターンとの比較に基づいて、当該ユーザのスコア(例えば、将来のコンプライアンススコア)を決定するためのパターン検出を実行するように機械学習アルゴリズムを訓練してもよい。ユーザに関連付けられたパターンは、これまでの多くの日にわたるユーザの訓練データを含んでいてもよく、複数のユーザに関連付けられたパターンのそれぞれは、上記これまでの多くの日に等しい期間にわたる複数のユーザのうちのそれぞれのユーザに関連付けられた訓練データを含んでいる。
【0022】
DHPは、ユーザの1つ以上のスコアを改善するために、当該ユーザが改善すべき属性(例えば、要因)を提案するように構成されていてもよい。例えば、DHPは、訓練された機械学習アルゴリズムを使用して、複数の属性のそれぞれの有意係数を決定するように構成されていてもよい。属性は、使用イベントの時刻、使用イベントの1つ以上の吸入パラメータ、救助使用イベントのユーザ頻度および/または服用スケジュールに対するアドヒアランスを含んでいてもよい。DHPは、訓練された機械学習アルゴリズムを使用して、複数の属性のそれぞれの有意係数に基づいて、ユーザのスコア(例えば、コンプライアンススコアおよび/または将来のコンプライアンススコア)を改善するために当該ユーザが改善すべき属性を決定してもよい。DHPは、ユーザが改善すべき属性を示す通知をディスプレイデバイスに生成させてもよい。通知は、ユーザが異なる時刻に維持薬を服用すべきであること、将来の使用イベントのPIFを増加させるべきであること、または将来の使用イベントの吸入量を増加させるべきであることを示していてもよい。
【0023】
DHPは、地理位置情報および/または1つ以上の環境要因を使用イベント(例えば、使用イベントの吸入パラメータ)に関連付けるように構成されていてもよい。DHPは、複数の使用イベントのそれぞれの吸入パラメータの地理的位置を決定し、教師ありまたは教師なし学習法により訓練データを使用して機械学習アルゴリズムを訓練し、訓練された機械学習アルゴリズムを使用して複数の異なるユーザのうちの1人のユーザのスコアを決定するように構成されていてもよい。スコアは、ユーザのコンプライアンススコア、将来のコンプライアンススコアおよび/またはリスクスコアを含んでいてもよい。訓練データは、時刻、1つ以上の吸入パラメータおよび複数の使用イベントのそれぞれに関連付けられた地理的位置を含んでいてもよい。また、いくつかの例では、ユーザのスコアを決定するために、当該ユーザの現在の地理的位置が使用されてもよい。
【0024】
いくつかの例では、DHPは、地理的位置に基づいて複数の使用イベントのそれぞれの吸入パラメータの環境条件を決定してもよく、訓練データは、複数の使用イベントのそれぞれの吸入パラメータの環境条件を含んでいてもよい。環境条件は、温度、湿度、外気汚染物質濃度、2.5ミクロン以下の粒状物質(PM2.5)の存在、10ミクロン以下の粒状物質(PM10)の存在、オゾン濃度、二酸化窒素(NO2)濃度および/または二酸化硫黄(SO2)濃度の任意の組み合わせを含むことができる。
【0025】
いくつかの例では、DHPは、地理的位置に基づいて複数の使用イベントのそれぞれの吸入パラメータの注目点を決定してもよく、訓練データには、複数の使用イベントのそれぞれの吸入パラメータの注目点を含んでいてもよい。吸入パラメータの注目点は、公園、燃料ステーション、工場、発電所または高速道路を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】吸入器使用中の時間に対する流量の一例を示すグラフである。
【
図3】例示的な吸入器、ユーザアプリケーションおよびデジタルヘルスプラットフォームを含むシステムの一例を示す図である。
【
図4A】複数の薬剤送達デバイスからデータを取り込み、そのデータを集約および分析することで、薬剤送達デバイスの使用、有効性および効率、および/または特定の疾患に苦しんでいる患者に処方された治療についての洞察を提供するシステムの一例を示す図である。
【
図4B】複数の薬剤送達デバイスからデータを取り込み、そのデータを集約および分析することで、薬剤送達デバイスの使用、有効性および効率、および/または特定の疾患に苦しんでいる患者に処方された治療についての洞察を提供するシステムの一例を示す図である。
【
図5A】吸入器データを充実させる手順の一例を示す図である。
【
図5B】外部情報源(例えば、外部気象情報源)からのデータを使用して吸入器データを充実化する充実化手順の一例を示す図である。
【
図5C】ユーザのコンプライアンススコアを決定する手順の一例を示す図である。
【
図5D】ユーザの将来のコンプライアンススコアを決定する手順の一例を示す図である。
【
図5E】ユーザによって改善されるべき属性を決定する手順の一例を示す図である。
【
図5F】ユーザのリスクスコアを決定する手順の一例を示す図である。
【
図5G】ユーザのスコアを決定する手順の一例を示す図である。
【
図7】
図6Aに示す吸入器の断面内部透視図である。
【
図8】
図6Aに示す例示的な吸入器の分解斜視図である。
【
図9】
図6Aに示す吸入器の上部キャップおよび電子モジュールの分解斜視図である。
【
図10】
図6Aに示す例示的な吸入器を通る気流量を圧力に対して示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明および特定の実施例は、装置、システムおよび方法の例示的な実施形態を示す一方で、説明のみを意図したものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではないことを理解されたい。本発明の装置、システムおよび方法のこれらおよびその他の特徴、側面および利点は、以下の説明、添付の請求項および添付の図面からよりよく理解されるであろう。図面は単なる概略図であり、縮尺どおりに描かれていないことを理解されたい。また、同一または類似の部分を示すために、図面中で同じ参照番号が使用されていることも理解されたい。
【0028】
本開示は、薬剤送達デバイス(例えば、吸入器)に関連付けられた使用条件およびパラメータを感知、追跡処理、および/または提示するデバイス、システムおよび方法について説明する。本デバイス、システムおよび方法は、ユーザの肺に薬剤を送達するための呼吸作動式吸入器(例えば、本明細書では吸入器とも呼ばれる)に関連して説明される。しかしながら、記載された解決策は、他の薬剤送達デバイス(例えば、注射器、定量吸入器、ネブライザー、経皮パッチまたは植込み型)にも同様に適用することもできる。
【0029】
喘息およびCOPDは、気道の慢性炎症性疾患である。どちらも、気流障害および気管支痙攣等の様々な症状が繰り返し起こることが特徴である。症状には、喘鳴、咳、胸の圧迫感および息切れが含まれる。
【0030】
この症状は、誘因を避けること、および薬剤(特に吸入薬)を使用することによって管理される。薬剤には、吸入コルチコステロイド(ICS)および気管支拡張剤がある。
【0031】
吸入コルチコステロイド(ICS)は、呼吸器疾患の長期制御に使用されるステロイドホルモン剤であり、気道の炎症を抑えることで機能する。例えば、ブデソニド、ベクロメタゾン(ジプロピオン酸塩)、フルチカゾン(プロピオン酸塩またはフロ酸塩)、モメタゾン(フロ酸塩)、シクレソニド、デキサメタゾン(ナトリウム)等がある。括弧内は、好ましい塩またはエステルの形態を示す。特にブデソニド、ベクロメタゾンおよびフルチカゾン、とりわけブデソニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、プロピオン酸フルチカゾンおよびフロ酸フルチカゾンについて言及すべきである。
【0032】
気管支拡張剤は、その種類によって気道の異なる受容体を標的とする。よく使われる2つは、β2-アゴニストおよび抗コリン剤である。
【0033】
β2-アドレナリンアゴニスト(または「β2-アゴニスト」)は、平滑筋を弛緩させるβ2-アドレナリン受容体に作用し、気管支を拡張させる。β2-アドレナリンアゴニスト(または「β2-アゴニスト」)は、作用時間によって分類される傾向がある。長時間作用型β2-アゴニスト(LABA)の例としては、ホルモテロール(フマル酸塩)、サルメテロール(キシナホ酸塩)、インダカテロール(マレイン酸塩)、バンブテロール(塩酸塩)、クレンブテロール(塩酸塩)、オロダテロール(塩酸塩)、カルモテロール(塩酸塩)、ツロブテロール(塩酸塩)、およびビランテロール(トリフェニルアセテート)がある。短時間作用型β2-アゴニスト(SABA)の例としては、アルブテロール(硫酸塩)、およびテルブタリン(硫酸塩)がある。特に、ホルモテロール、サルメテロール、インダカテロール、およびビランテロール、とりわけフマル酸ホルモテロール、キシナホ酸サルメテロール、マレイン酸インダカテロール、およびトリフェニル酢酸ビランテロールについて言及すべきである。
【0034】
通常、(しばしば「救助」薬または「リリーバー」薬と呼ばれる)短時間作用型の気管支拡張剤は、急性の気管支収縮を速やかに緩和し、長時間作用型の気管支拡張剤は、長期にわたる症状の制御や予防を助ける。ただし、即効性の長時間作用型気管支拡張剤の中には、例えばホルモテロール(フマル酸塩)のように救助薬として使用できるものもある。このように、救助薬は、急性の気管支収縮を緩和する。救助薬は、必要に応じて服用される(pro re nata)。救助薬は、例えばICS-ホルモテロール(フマル酸塩)、典型的には、ブデソニド-ホルモテロール(フマル酸塩)またはベクロメタゾン(ジプロピオン酸塩)-ホルモテロール(フマル酸塩)の組み合わせ製品の形態をとることもある。したがって、救助薬は、好ましくはSABAまたは速効性LABAであり、より好ましくはアルブテロール(硫酸塩)またはフォルモテロール(フマル酸塩)であり、最も好ましくはアルブテロール(硫酸塩)である。
【0035】
抗コリン剤(または抗ムスカリン剤)は、神経細胞内のアセチルコリン受容体を選択的にブロックすることにより、神経伝達物質のアセチルコリンをブロックする。局所使用において、抗コリン剤は主に気道に存在するM3ムスカリン受容体に作用して平滑筋を弛緩させ、気管支拡張作用をもたらす。長時間作用型ムスカリン拮抗剤(LAMA)の例としては、チオトロピウム(臭化物)、オキシトロピウム(臭化物)、アクリジニウム(臭化物)、ウメクリジニウム(臭化物)、イプラトロピウム(臭化物)、グリコピロニウム(臭化物)、オキシブチニン(塩酸塩または臭化水素酸塩)、トルテロジン(酒石酸塩)、トルスピウム(塩化物)、ソリフェナシン(コハク酸塩)、フェソテロジン(フマル酸塩)、ダリフェナシン(臭化水素酸塩)がある。特に、チオトロピウム、アクリジニウム、ウメクリジニウム、およびグリコピロニウム、とりわけチオトロピウム臭化物、アクリジニウム臭化物、ウメクリジニウム臭化物、およびグリコピロニウム臭化物について言及すべきである。
【0036】
吸入によって送達されるこれらの医薬品の調製・配合において、乾燥粉末吸入器(DPI)、加圧式定量吸入器(pMDI)、ネブライザーのような多くのアプローチがとられてきた。
【0037】
GINA(Global Initiative for Asthma)ガイドラインによると、喘息の治療には段階的なアプローチがとられる。軽度の喘息であるステップ1では、アルブテロール硫酸塩等のSABAを必要に応じて投与する。必要に応じて低用量ICS-ホルモテロールを投与したり、SABAを服用するたびに低用量ICSを投与したりすることもある。ステップ2では、通常の低用量ICSをSABAと並行して投与するか、必要に応じて低用量ICS-ホルモテロールを投与する。ステップ3では、LABAを追加する。ステップ4では、投与量を増やし、ステップ5では、抗コリン剤や低用量の経口コルチコステロイド剤等の追加治療を行う。このように、それぞれのステップは、呼吸器疾患の急性の重症度に応じてそれぞれ設定された治療レジメンとみなされる。
【0038】
COPDは、世界的な主要な死因の1つである。それは、慢性気管支炎、肺気腫、さらには小気道を含む異質な長期疾患である。COPD患者の病理学的変化は、主に気道、肺実質および肺血管系に局在する。表面上、これらの変化は、肺の健康的なガス吸収能力およびガス排出能力を低下させる。
【0039】
気管支炎は、気管支の炎症が長期間続くという特徴がある。一般的な症状としては、喘鳴、息切れ、咳および痰があり、これらはいずれも不快感が強く、患者の生活の質にとって有害である。また、肺気腫は長期にわたる気管支の炎症と関係しており、炎症反応によって肺組織が破壊され、気道が徐々に狭くなる。やがて、肺組織は、自然な弾力性を失い、肥大化する。そのため、ガス交換の効率が低下し、呼吸した空気が肺の中に滞留することが多くなる。その結果、局所的な低酸素状態が生じ、1回の吸入で患者の血流に送り込まれる酸素の量が減少する。そのため、患者は、息切れや呼吸困難を経験する。
【0040】
COPDの患者は、すべてとは言えないが、様々な症状を日常的に経験する。重症度は様々な要因によって特定されるが、最も一般的には疾患の進行と相関する。これらの症状は、その重症度とは無関係に、安定したCOPDの状態を示しており、この疾患は様々な薬剤の投与によって維持・管理される。治療法は様々だが、多くの場合、吸入気管支拡張剤、抗コリン剤、長時間作用型および短時間作用型のβ2-アゴニスト、コルチコステロイドが使用される。これらの薬剤は、単剤治療または併用治療として投与される。
【0041】
患者は、GOLDガイドライン(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease, Inc.)に定義されたカテゴリを使用して、COPDの重症度によって分類される。カテゴリはA~Dにラベル付けされ、推奨される第1選択の治療法はカテゴリによって異なる。患者群Aには、必要に応じた短時間作用型のムスカリン拮抗剤(SAMA)、または必要に応じた短時間作用型のβ2-アゴニスト(SABA)が推奨される。患者群Bには、長時間作用型のムスカリン拮抗薬(LAMA)、または長時間作用型のβ2-アゴニスト(LABA)が推奨される。患者群Cには、吸入コルチコステロイド(ICS)+LABA、またはLAMAが推奨される。患者群Dには、ICS+LABAおよび/またはLAMAが推奨される。
【0042】
喘息およびCOPD等の呼吸器疾患を患っている患者は、日々の体調の変化に加え、周期的な増悪に悩まされる。増悪とは、追加的な治療、すなわち維持治療を超えた治療を必要とする呼吸器症状の急激な悪化を意味する。例えば、臨床的喘息増悪(CAE)の診断は、米国胸部疾患学会/欧州呼吸器学会の声明(H.K.Reddelら、Am J Respir Crit Care Med誌、2009年、180巻(1)、59-99頁)に基づいてもよい。これには、「重度CAE」および「中等度CAE」の両方が含まれる。重症CAEは、少なくとも3日間の経口ステロイド(プレドニゾンまたは同等品)および入院を必要とする喘息の悪化を伴うCAEと定義することができる。中等度CAEは、少なくとも3日間の経口ステロイド(プレドニゾンまたは同等品)または入院が必要なCAEと定義することができる。
【0043】
喘息における中等度の増悪に対する追加的な治療は、SABAの反復投与、経口コルチコステロイドおよび/またはコントロールフロー酸素である(後者は入院が必要)。重度の増悪では、抗コリン剤(典型的には臭化イプラトロピウム)、霧状SABA、または硫酸マグネシウムの静脈内投与が追加される。
【0044】
COPDにおける中等度の増悪に対する追加的な治療は、SABA、経口コルチコステロイドおよび/または抗生物質の反復投与である。重度の増悪では、コントロールフロー酸素および/または呼吸補助が追加される(いずれも入院が必要)。本開示中の増悪には、中等度の増悪および重度の増悪の両方の意味が含まれる。
【0045】
図1に、一例に係る吸入器100のブロック図を示す。吸入器100は、使用イベントを検出する使用決定システム12を備える。例えば、使用イベントは、吸入器100の使用(例えば、吸入器100のマウスピースカバーを閉じた位置から開いた位置に移動させること)、吸入器内における1用量の薬剤のプライミング(例えば、吸入器100がMDIである場合は吸入器100を振ること)、ブリスターストリップを前進させるか1用量の薬剤を準備させる、吸入器のスイッチの作動または吸入器のキャップの捻り、および/またはユーザによる吸入器100を介した吸入(例えば、吸入イベント)の記録を含んでいてもよい。それぞれの使用イベントは、使用決定システム12によって決定される1つ以上の使用パラメータを含んでいてもよい。使用パラメータは、対象者による吸入器100における使用イベントを示す任意の数のパラメータを含んでいてもよい。例えば、使用パラメータは、吸入器100の振動時間、吸入中の吸入器100の向き、吸入中の吸入器の温度または湿度、および/または吸入イベント中に測定される吸入パラメータ(例えば、流量)を含んでいてもよい。使用パラメータは、例えば、所定の使用イベントの検出に応答して、使用決定システム12によって測定されてもよい。具体的には、本明細書でさらに説明するように、使用決定システム10は、吸入イベントの検出に応答して、1つ以上の吸入固有の使用パラメータを測定してもよい。使用決定システム12によって測定される吸入イベントの使用パラメータは、(例えば、当該デバイスは吸入器であるため)ここでは吸入パラメータとも呼ばれ、流量、最大吸気/吸入流量(PIF)、吸入量、最大吸入流量までの時間、および/または吸入持続時間のうちの1つ以上を含んでいてもよい。
【0046】
使用パラメータは、
図1において使用決定システム12を表すブロックと送信モジュール14を表すブロックとの間の矢印が表しているように、送信モジュール14によって受信される。送信モジュール14は、
図1において送信モジュール14のブロックから遠ざかる矢印が表しているように、使用パラメータの値に基づいてデータを暗号化し、暗号化データを送信する。送信モジュール14による暗号化データの送信は、例えば、前述したように無線であってもよい。
【0047】
送信モジュール14は、暗号化データのそれぞれを無線で送信するように構成されている。送信モジュール14には、任意の適切な無線伝送プロトコル(例えば、Wi-Fi、Wi-MAX、Bluetooth(登録商標)、Bluetooth(登録商標) Smart、ZigBee、近距離無線通信(NFC)、セルラー通信、テレビホワイトスペース(TVWS)通信、またはこれらの任意の組み合わせ)を実行するように構成されたトランシーバが含まれていてもよい。
【0048】
本明細書で説明する例ではトランシーバに言及することがあるが、トランシーバは、データの送信は行うが受信は行わないように構成されていてもよい(例えば、トランスミッタではあるがレシーバではない)。トランシーバは、通信プロトコルの論理および手順を実行するように構成された1つ以上の半導体チップ、集積回路、および/または同種のものを含んでいてもよい。トランシーバは、通信プロトコルを使用して信号を無線送信するために、無線周波数(RF)ハードウェア(例えば、増幅器、発振器、変調器回路、アンテナ、アンテナチューナー、および/または同種のもの)を含んでいてもよい。RFハードウェアは、通信プロトコルの論理および手順を実行するように構成された半導体チップ、集積回路、および/または同種のものにその全体または一部が実装されていてもよい。
【0049】
いくつかの例では、送信モジュール14は、Bluetooth(登録商標)を介してデータを送受信するように構成されている。Bluetooth(登録商標)は、送受信に関連する比較的低いエネルギーによりそれぞれの吸入器の電池寿命を維持することが可能であるという理由で使用されてもよい。さらに、それぞれの暗号化データを送信するために、インターネット接続を確立する必要はない。
【0050】
使用決定システム12は、処理モジュールのために本明細書で説明する機能を実行するように構成された適切なプロセッサおよびメモリを備えていてもよい。例えば、プロセッサは、使用決定システム12の機能を実行するためのコンピュータで実行可能な命令でプログラムされた汎用プロセッサであってもよい。プロセッサは、使用決定システム12の機能を実行するように構成されたマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラを使用して実装されていてもよい。プロセッサは、使用決定システム12の機能を実行するように構成された組み込みプロセッサまたはデジタルシグナルプロセッサを使用して実装されていてもよい。
【0051】
本明細書で説明するように、使用パラメータは、例えば、それぞれの吸入器の使用を示すものを含んでいてもよい。比較的簡単な実装では、少なくとも1つの値は、使用決定システム12によって使用イベントが検出されたかどうかを示していてもよく、それぞれの吸入器の使用(例えば、吸入)が決定された場合は「TRUE」を、それぞれの吸入器のそのような使用が決定されていない場合は「FALSE」を含んでいてもよい。
【0052】
使用決定システム12は、吸入器100の使用パラメータを決定するための1つ以上のコンポーネントまたはセンサを含んでいてもよい。例えば、使用パラメータは、吸入器100の使用回数のカウント値、吸入器100の気流の測定値、および/または吸入器100の薬剤の使用を示す他の測定値といった、使用決定システム(例えば、使用決定システム12のそれぞれのコンポーネントまたはセンサ)によって実行された1つ以上の測定の結果であってもよい。使用決定システム12は、吸入器100の使用を検出するように構成されたスイッチ、吸入器100の使用を検出するように構成された1つ以上のセンサ、吸入器100の使用時に押下されるように構成された1つ以上のボタン、および/または同種のものを1つ以上含んでいてもよい。
【0053】
例えば、使用決定システム12は、例えば、それぞれの吸入器の使用前、使用中、または使用後に作動するように構成された機械式スイッチを備えていてもよい。機械式スイッチは、(例えば、ホッパーから用量を計量すること、ブリスターパックを前進させ、および/または開封すること、薬剤を含む錠剤を破り開けることにより)薬剤の用量がプライミングされ、吸入の準備ができたことを示してもよい。非限定的な例では、吸入器100は、薬物リザーバ(
図1では見えない)と、リザーバから救助薬の用量を計量するように構成された用量計量アセンブリ(
図1では見えない)とを備えている。使用決定システム12は、用量計量アセンブリによる用量の測定結果を記録するように構成されていてもよく、これにより、それぞれの測定結果は、吸入器100を使用して対象者が行った吸入を示すものとなる。したがって、対象者による吸入がなされる前に用量計量アセンブリを介して用量が計量されるべきなので、吸入器100は、薬剤の吸入回数を監視するように構成されていてもよい。用量計量アセンブリの非限定的な例は、
図12-16を参照してより詳細に説明される。
【0054】
代替的または追加的に、使用決定システム12は、追加的または代替的なフィードバックに基づいて、様々な方法でそれぞれの吸入を記録してもよい。例えば、使用決定システム12は、適切なセンサ(
図1では見えない)からのフィードバックが対象者による吸入が発生したことを示している場合(例えば、圧力測定値または流量が吸入の成功に関連付けられた所定閾値を超えた場合)に、対象者による吸入を記録するように構成されていてもよい。
【0055】
それぞれの吸入を記録するために、使用決定システム12は、センサ(例えば、圧力センサ、音響センサ、流量センサ)を含んでいてもよい。このようなセンサは、上記機械式スイッチの代替となるものであってもよいし、上記機械式スイッチに追加されるものであってもよい。圧力センサまたは音響センサが使用決定システム12に含まれる場合、圧力センサは、
図2および
図12-16を参照してより詳細に説明するように、例えば、用量計量アセンブリにより計量された用量が対象者によって吸入されたことの確認、またはその程度の評価のために使用されてもよい。
【0056】
より一般的には、使用決定システム12は、対象者によって行われるそれぞれの薬剤の吸入時の気流に関するパラメータを検出するセンサを含んでいてもよい。言い換えると、使用パラメータは、薬剤の吸入時の気流に関するパラメータを含んでいてもよい。したがって、少なくとも1つの値は、例えば、検出された吸入パラメータに関連する数値を含んでいてもよい。
【0057】
いくつかの例では、使用決定システム12は、圧力センサから圧力測定値を受信し、圧力測定値に基づいて吸入パラメータ(例えば、流量)を求めてもよい。吸入パラメータ(例えば、吸入パラメータ)は、例えば、PIF、吸入量、最大吸入流量までの時間、吸入持続時間のうち少なくとも1つであってもよい。本明細書でさらに詳細に説明するように、使用決定システム12は、それぞれの使用イベントおよび/または吸入イベント(例えば、良吸入イベント、適正吸入イベント、低/無吸入イベント、呼気イベント、疑通気口遮断等)を分類するために吸入パラメータを使用してもよい。このような例では、少なくとも1つの値は、PIF、吸入量、最大吸入流量までの時間、および/または吸入持続時間の数値を含んでいる。さらに、いくつかの例では、使用決定システム12は、使用イベントに関連付けられた流量プロファイル(例えば、一連の連続的な圧力測定値)を決定し、格納してもよい。本明細書に記載されているように、これらの吸入パラメータ(例えば、ここでは吸入パラメータとも呼ばれる)は、ユーザのコンプライアンスを評価するために使用されてもよく、これにより、ユーザの呼吸器疾患の状態(例えば、患者が増悪イベントを経験する可能性)、および/または現在のまたは変化する環境条件(例えば、暑さ、大気質、湿度)に対する患者の感度についての有益な洞察が提供されるかもしれない。
【0058】
圧力センサは、関連付けられた圧力変化を測定することによって、対象者による吸入中の気流を監視することができるため、パラメータの測定に特に適しているかもしれない。圧力センサは、吸入中に対象者によって空気および薬剤が引き込まれる流路内に配置されていてもよいし、流路と流体連通するように配置されていてもよい。吸入器の流路と流体連通する圧力センサの一例は、
図12-16を参照して説明される。例えば、適切な流量センサを介する等の別の方法でパラメータを測定してもよい。
【0059】
吸入は、吸入が行われていないときと比較して、吸入器の気流チャネルにおける圧力を低下させるかもしれない。圧力変化が最大となる点が、最大吸入流量に相当するかもしれない。圧力センサは、吸入においてこの点を検出することができる。
【0060】
吸入量を決定するために、吸入に伴う圧力変化が代替的または追加的に使用されてもよい。これは、例えば、圧力センサによって測定された吸入中の圧力変化を使用して、最初に吸入の時間における流量を決定し、そこから総吸入量を導き出すことによって実現されてもよい。
【0061】
吸入に伴う圧力変化は、代替的または追加的に、吸入持続時間を決定するために使用されてもよい。吸入持続時間は、例えば、吸入の開始により生じる、圧力センサで測定された最初の圧力低下から、圧力が吸入が行われていないことに対応する圧力に戻るまでの時間として記録されてもよい。
【0062】
吸入パラメータは、代替的または追加的に、最大吸入流量までの時間を含んでいてもよい。この最大吸入流量までの時間は、例えば、吸入の開始により生じる、圧力センサで測定された最初の圧力低下から、圧力が最大流量に対応する最小値に到達するまでの時間として記録されてもよい。
【0063】
また、いくつかの例では、吸入パラメータは、経時的に取得された圧力センサからの複数の測定値(これには、最大吸入流量、吸入量、最大吸入流量までの時間、および/または吸入持続時間のうちの1つ以上が含まれる)を含む流量プロファイルであってもよい。例えば、使用決定システム12は、低電力状態(例えば、オフ状態またはスリープ状態)からオン状態への切り替えに応答して、圧力センサをオンにし、および/または圧力センサからの測定値の受信を始めてもよい。使用決定システム12は、受信した圧力測定値を使用して流量プロファイルを算出してもよい。使用決定システム12は、圧力センサから受信した測定値(例えば、流量プロファイル)を1つ以上の閾値と比較し、当該測定値がユーザによる吸入を示しているかどうかを判定してもよい。例えば、使用決定システム12は、圧力測定値がユーザによる最大吸入を示す所定値を超えるか所定範囲内にある場合、圧力測定値が吸入を示す傾きを示す場合、圧力測定値が所定時間範囲内にある吸入持続時間を示す場合、および/またはこれらと同種の場合に、当該測定値がユーザによる吸入を示していると判定してもよい。測定値がユーザによる吸入を示していると判定した後、使用決定システム12は、圧力センサから受信した複数の測定値を吸入イベントに関連する流量プロファイルとして格納してもよい。
【0064】
図2は、非限定的な例に係る吸入器100を使用しているときの、時間18に対する流量16のグラフを示している。この例では、使用決定システム12は、吸入器100のマウスピースカバーが開かれたときに作動するスイッチの形態をとる、機械的に操作されるスイッチを備えている。マウスピースカバーは、グラフ上の点20において開かれる。この例では、使用決定システム12は、圧力センサをさらに備えている。
【0065】
マウスピースカバーが開かれると、使用決定システム12は省エネスリープモードから復帰し、新たな吸入イベントが記録される。吸入イベントには、吸入器100がスリープモードから復帰してからどの程度の時間(例えば、数ミリ秒)が経過したのかに対応する開放時間も割り当てられる。点22は、キャップが閉まった、または点20から60秒が経過したことに対応している。点22において検出は停止する。マウスピースカバーが開かれたことをきっかけとする場合について説明したが、他の例では、使用決定システム12は、吸入器が使用のためにプライミングされていること(例えば、ブリスターストリップを前進させるスイッチの作動、薬剤のカプセルを破壊するキャップの捻り、吸入器が所定の時間振られたことの検出の任意の組み合わせ)に基づいて、電力状態を切り替え、新しい吸入イベントを記録してもよい。
【0066】
マウスピースカバーが開くと、使用決定システム12は、圧力センサの使用により検出された空気圧の変化を探す。圧力センサが絶対圧力センサである例では、使用決定システム12は、風圧値(または動的ゼロ値)を決定して圧力センサを大気圧に較正するために、連続した圧力測定値のローリング数を分析してもよく、その後に、吸入イベントの開始を示すかもしれない気圧の変化(例えば、吸入を示す閾値を超える傾き)を決定するために当該風圧値を使用してもよい。
【0067】
空気圧変化のはじまりは、吸入イベント時間24として記録される。空気圧変化が最も大きくなる点は、最大吸入流量26に相当している。使用決定システム12は、最大吸入流量26を100mL/分の単位の空気の流量(これは、空気圧変化から変換されたものである)として記録する。したがって、この例では、少なくとも1つの値は、100mL/分の単位の最大吸入流量の値を含んでいる。ユーザインタフェースを介して提供される対応する使用情報は、例えば、この最大吸入流量を同じ単位で表現してもよいし、L/分の単位で表現してもよい。
【0068】
最大吸入流量までの時間28は、最大吸入流量26に達するまでに要した時間をミリ秒単位で表したものに相当している。吸入持続時間30は、ミリ秒単位の吸入全体の持続時間に相当している。グラフ32の下側の面積は、吸入量(mL)に相当している。また、20から22までの測定値の集まり(または、これらの測定値のサブセット)は、使用決定システムによって使用または吸入イベントに関連付けられた流量プロファイルとして格納されてもよい。
【0069】
ユーザインタフェースを介して提供される使用情報は、吸入パラメータを数値として提供することに加えて、またはこれに代えて、1つ以上の吸入イベント(複数の場合はそれぞれの吸入イベント)の分類を提供してもよい。例えば、最大吸入流量が0~30L/分である場合、吸入イベントは、「低吸入」(30L/分以下)、または「無吸入」(マウスピースカバーが開いてから60秒以内に吸入が検出されない)に分類される。最大吸入流量が45L/分よりも大きく、かつ200L/分以下である場合、吸入イベントは、「良吸入」に分類される。最大吸入流量が30L/分よりも大きく、かつ45L/分以下である場合、吸入イベントは「適正」に分類される。最大吸入流量が毎分200L/分よりも大きい場合、吸入イベントは、「疑通気口遮断」に分類される。吸入イベントは、「呼気」に分類されることがある。例えば、負の圧力変化は吸入に相当し、他方、正の圧力変化は呼気に相当していてもよい。センサが流量センサである場合、吸入器100を使用した吸入で予想される方向とは反対の方向の圧力変化気流が検出されていることは、呼気を示しているかもしれない。吸入パラメータをそれぞれの吸入イベント(例えば、良吸入イベント、適正吸入イベント、低/無吸入イベント、呼気イベント、疑通気口遮断イベント)に分類することは、本明細書に記載するように、ユーザデバイスのエンドユーザまたは患者向け処理モジュールで実行された計算に基づいていてもよいし、その計算の結果であってもよい。
【0070】
非限定的な例では、吸入器100は、通常の吸入において、吸入開始から約0.5秒後に薬剤が投与されるように構成されている。0.5秒が経過した後(例えば、約1.5秒後)にのみ最大吸入流量に到達する対象者の吸入は、呼吸器疾患をコントロールできていない対象者であることを部分的に示しているかもしれない。最大吸入流量に到達するまでのこのような時間は、例えば、対象者が差し迫った増悪に直面していることを示しているかもしれない。
【0071】
より一般的には、使用決定システム12は、吸入/吸入器の使用の記録と吸入パラメータの検出とを行うそれぞれのセンサ(例えば、それぞれの圧力センサ)を採用してもよいし、吸入/吸入器の使用の記録と吸入パラメータの検出の両方の機能を果たすように構成された共通のセンサ(例えば、共通の圧力センサ)を採用してもよい。
【0072】
使用決定システム12は、任意の適切なセンサ(例えば、1つ以上の圧力センサ、温度センサ、湿度センサ、方位センサ、音響センサ、および/または光学センサ)を含んでいてもよい。圧力センサは、気圧センサ(例えば、大気圧センサ)、または差圧センサを含んでいてもよい。センサには、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)および/またはナノエレクトロメカニカルシステム(NEMS)技術を採用することができる。
【0073】
非限定的な例では、使用決定システム12は差圧センサを備えている。差圧センサは、例えば、対象者が吸入する通気路のある区間にわたる圧力差を測定するためのデュアルポート型のセンサを備えていてもよい。代替的に、シングルポートゲージ型のセンサを使用してもよい。後者は、通気路の吸入時および無流時の圧力差を測定することで作動する。測定値の差は、吸入に伴う圧力の低下に相当する。
【0074】
別の非限定的な例では、使用決定システム12は音響センサを備えている。この例では、音響センサは、対象者が吸入器100を通して吸入を行うときに発生するノイズを感知するように構成されている。音響センサは、例えば、マイクロホンを含んでいてもよい。吸入器100は、例えば、対象者がデバイスを通じて吸入を行うときに回転するように配置されたカプセルを備えていてもよく、カプセルの回転は、音響センサによって検出されるノイズを生じさせる。こうして、カプセルの回転は、使用および/または吸入パラメータのデータを導き出すために、適切に解釈可能なノイズ(例えば、ガラガラ音)を生じさせることができる。
【0075】
例えば、使用データおよび/または吸入中の気流に関するパラメータを決定するために、音響データを解釈するためにアルゴリズムを使用してもよい。例えば、P.Colthorpeらが「ブリーズハラーへの電子機器を追加:患者のニーズに応える」(呼吸に関する薬剤送達 2018、1、71~80ページ)に記載したアルゴリズムを使用してもよい。生じた音が検出されると、アルゴリズムは、生音響データを処理して、使用および/または吸入パラメータのデータを生成することができる。
【0076】
図3は、非限定な例に係るシステム10のブロック図を示している。本システム10は、例えば、代替的に「吸入器アセンブリ」と呼ばれてもよい。例えば、本システム10は、特定のユーザまたは患者に関連付けられていてもよい。
【0077】
図3に示すように、本システム10は、第1使用決定システム12Aと第1送信モジュール14Aとを含む第1吸入器100Aを備えている。本システム10は、第2使用決定システム12Bと第2送信モジュール14Bとを含む第2吸入器100Bをさらに備えている。第1吸入器100Aは、第1薬剤を送達し、第2吸入器100Bは、第2薬剤(前述したように、これは、いくつかの例において第1薬剤とは異なる)を送達する。
【0078】
いくつかの例(例えば、
図3に描かれたシステム10)では、本システム10は、第3使用決定システム12Cと第3送信モジュール14Cとを含む第3吸入器100Cをさらに備えていてもよい。第3吸入器100Cは、第1薬剤および第2薬剤とは異なる第3薬剤を送達する。他の例では、第3吸入器100Cはシステム10に含まれておらず、あるいは、第1吸入器100A、第2吸入器100Bおよび第3吸入器100Cに加えて第4、第5等の吸入器(図示されない)が含まれている。代替的または追加的に、本システム10は、前述したように、複数の第1吸入器100A、複数の第2吸入器100B等を含んでいる。
【0079】
本システム10は、処理モジュール34を備えており、これは、送信モジュール14A、14B、14Cに対応するブロックのそれぞれと処理モジュール34に対応するブロックとの間の矢印によって
図3に表されているように、送信モジュール14A、14B、14Cのそれぞれから送信されたそれぞれの暗号化データを受信するように構成されている。第1、第2および/または第3暗号化データは、前述したように、処理モジュール34に無線で送信されてもよい。したがって、処理モジュール34は、暗号化データを受信するための適切なレシーバまたはトランシーバを備えていてもよい。処理モジュール34のレシーバまたはトランシーバは、送信モジュール14A、14B、14Cと同じ通信プロトコルを実行するように構成されていてもよく、したがって、本明細書で説明する送信モジュール14A、14B、14Cと同様の通信ハードウェアおよびソフトウェアを含んでいてもよい(
図3では図示されない)。
【0080】
本明細書で説明する例ではトランシーバに言及することがあるが、トランシーバは、データの送信は行うが受信は行わないように構成されていてもよい(例えば、トランスミッタではあるがレシーバではない)。トランシーバは、通信プロトコルの論理および手順を実行するように構成された1つ以上の半導体チップ、集積回路、および/または同種のものを含んでいてもよい。トランシーバは、通信プロトコルを使用して信号を無線送信するために、無線周波数(RF)ハードウェア(例えば、増幅器、発振器、変調器回路、アンテナ、アンテナチューナー、および/または同種のもの)を含んでいてもよい。RFハードウェアは、通信プロトコルの論理および手順を実行するように構成された半導体チップ、集積回路、および/または同種のものにその全体または一部が実装されていてもよい。
【0081】
処理モジュール34は、処理モジュールの本明細書で説明する機能を実行するように構成された適切なプロセッサおよびメモリを備えていてもよい。例えば、プロセッサは、処理モジュールの機能を実行するためのコンピュータで実行可能な命令でプログラムされた汎用プロセッサであってもよい。プロセッサは、処理モジュールの機能を実行するように構成されたマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラを使用して実装されていてもよい。一例では、プロセッサは、送信モジュール14A、14B、14Cと通信すること、および本明細書に記載の処理モジュール34の機能を実行することが可能なスマートフォンまたは他のコンシューマ電子デバイスに実装されてもよい。例えば、処理モジュールは、本明細書に記載の処理モジュール34の機能をユーザデバイスのプロセッサに実行させるアプリケーション(例えば、モバイルアプリケーション)を含むユーザデバイス(例えば、スマートフォンまたはコンシューマ電子デバイス)に実装されてもよい。
【0082】
処理モジュール34は、前述したように、例えば、それぞれの識別子を使用することにより、第1暗号化データ、第2暗号化データおよび第3暗号化データを区別する。
【0083】
処理モジュール34は、区別された第1暗号化データに基づいて、第1薬剤に関する第1使用情報を決定する。第1使用情報は、前述したように、第1吸入器100Aの記録された使用、または第1吸入器100Aを使用して行われた吸入、および/または第1吸入器100Aを使用した吸入中の気流に関するパラメータを含んでいてもよい。そして、いくつかの例では、使用パラメータは、吸入パラメータ(例えば、吸入流量、最大吸入流量)であってもよく、例示的な使用イベントは、吸入イベント(例えば、ユーザによる吸入器の吸入)であってもよい。
【0084】
同様に、処理モジュール34は、区別された第2および第3暗号化データに基づいて、第2および第3薬剤のそれぞれに関する第2および第3使用情報を決定する。
【0085】
本システム10は、ユーザインタフェース38をさらに備えている。処理モジュール34は、ユーザインタフェース38を制御して第1、第2および/または第3使用情報を伝達するように構成されている。処理モジュール34を示すブロックからユーザインタフェース38を示すブロックに向かう矢印は、ユーザインタフェースにそれぞれの使用情報を伝達させる(例えば、表示させる)制御信号を示すことが意図されている。これに関して、ユーザインタフェース38は、それぞれの使用情報を表示することが可能な任意の適切なディスプレイ、スクリーン(例えば、タッチスクリーン)等を備えていてもよい。代替的または追加的に、それぞれの使用情報は、音声メッセージを介してユーザインタフェース38によって提供されてもよい。そのような例では、ユーザインタフェース38は、音声メッセージを出力する適切なラウドスピーカを備えている。それぞれの使用情報を伝達する様々な方法を使用することができる。
【0086】
このように、本システム10は、前述したように、それぞれの薬剤に特有の治療レジメンおよび/または投与プロトコルに従って投与されることがあるそれぞれの薬剤の使用を対象者に通知することが可能となっている。
【0087】
送信モジュール14A、14B、14Cはそれぞれ、処理モジュール34に(暗号化された)データを送信するものとして
図3に示されているが、これは、それぞれの吸入器100A、100B、100Cまたはそのコンポーネントモジュールが、処理モジュール34から送信されたデータを受信することを除外することを意図したものではない。
【0088】
非限定的な例では、それぞれの吸入器100A、100B、100Cの使用パラメータに時刻(例えば、タイムスタンプ)を割り当てる時計モジュール(図には示されていない)がそれぞれの吸入器100A、100B、100Cに含まれている。この例では、処理モジュール34は、それぞれの吸入器100A、100B、100Cの時計モジュールを同期させるように構成されている。このような同期は、例えば、それぞれの吸入器100A、100B、100Cの相対的な使用タイミングを決定することを可能にする基準点を提供し、これは、前述したように、臨床的関連を有していてもよい。割り当てられた時刻(例えば、タイムスタンプ)は、例えば、ユーザインタフェース38によって伝達される(例えば、表示される)それぞれの薬剤の使用情報に含まれていてもよい。
【0089】
図3には示されていないが、いくつかの例では、処理モジュール34は、さらなる時計モジュールを含んでいてもよい。それぞれの吸入器100A、100B、100Cの時計モジュールは、さらなる時計モジュールによって提供される時刻に従って同期されてもよい。さらなる時計モジュールは、例えば、処理モジュール34が位置しているタイムゾーンの時刻を受信してもよい。これにより、対象者とそのそれぞれの吸入器100A、100B、100Cとが位置している時刻に従ってそれぞれの吸入器100A、100B、100Cが同期され、前述したように、臨床的関連についてのさらなる情報が提供されるかもしれない。
【0090】
実施形態では、処理モジュール34は、ユーザデバイス40に含まれる第1処理モジュールに少なくとも一部が含まれている。ユーザデバイス40の第1処理モジュールでそれぞれの吸入器100A,100B,100Cからの使用情報を可能な限り処理することにより、それぞれの吸入器100A,100B,100Cの電池寿命を有利に節約することができる。ユーザデバイス40は、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ、またはスマートフォンから選択された少なくとも1つであってもよい。また、いくつかの例では、処理モジュール34は、ユーザデバイス40上に存在するモバイルアプリケーションを含んでいてもよく、例えば、このようなモバイルアプリケーションであってもよい。
【0091】
代替的または追加的に、ユーザインタフェース38は、ユーザデバイス40の第1ユーザインタフェースによって少なくとも部分的に規定されていてもよい。ユーザデバイス40の第1ユーザインタフェースは、例えば、スマートフォン40のタッチスクリーンを備えていてもよいし、それによって規定されていてもよい。
【0092】
他の非限定的な例では、処理モジュールは、ユーザデバイスに含まれていない。処理モジュール(または処理モジュール34の少なくとも一部)は、例えば、サーバ(例えば、DHPのようなリモートサーバ)に備えられていてもよい。
【0093】
本明細書において提供されるのは、複数の薬剤送達デバイス(例えば、吸入器100)から(例えば、薬剤送達デバイスと通信するモバイルデバイスを介して)データを取り込み、そのデータを集約および分析することで、薬剤送達デバイスの使用、有効性および効率、および/または特定の疾患に苦しんでいる患者に処方された治療についての洞察を提供するシステムである。
図3においてさらに詳細に説明するように、本システムは、複数の吸入器と、1つ以上のエンドユーザまたは患者向け処理モジュールと、中央処理モジュール(例えば、本明細書ではデジタルヘルスプラットフォーム(DHP)と呼ばれる)と、1つ以上の医療提供者向け処理モジュールとを備えている。エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、複数の吸入器のうちの少なくとも1つと通信し、および/または、当該複数の吸入器のうちの少なくとも1つからのデータ(例えば、当該複数の吸入器のうちの少なくとも1つにペアリングされたデータ)を受信し、そのデータ(または、例えばそのサブセット)を中央処理モジュールに転送してもよい。中央処理モジュールまたはDHPは、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールから受信したデータを受信し、集約し、分析してもよい。さらに、中央処理モジュールは、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールと医療提供者向け処理モジュールの両方に、集約データおよび関連する分析結果を(例えば、インタフェースを介して)提供してもよい。
【0094】
また、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されたときに、前述の方法のいずれかを実行するように適合されたコンピュータプログラムコードを含むコンピュータプログラムも提供される。実施形態において、本コンピュータプログラムは、モバイルデバイス(例えば、タブレットコンピュータまたはスマートフォン)のようなユーザデバイス40用のアプリの形態を有している。
【0095】
図4Aは、複数の薬剤送達デバイス(例えば、吸入器100)から(例えば、薬剤送達デバイスと通信するモバイルデバイスを介して)データを取り込み、そのデータを集約および分析することで、薬剤送達デバイスの使用、有効性および効率、および/または特定の疾患に苦しんでいる患者に処方された治療についての洞察を提供する例示的なシステム400の図である。
図4Aに示されるように、本システム400は、吸入器401a-d(例えば、吸入器100の一例であってもよい)、エンドユーザまたは患者向け処理モジュール(例えば、モバイルアプリケーションを備えたユーザデバイス)を備えたユーザデバイス402a、402b、パブリックおよび/またはプライベートネットワーク404(例えば、インターネット、クラウドネットワーク)、および医療提供者(例えば、病院、病院システム、健康システム、医療グループ、医師、クリニック、および/または製薬会社)に関連付けられた医療提供者向け処理モジュール(例えば、本明細書ではダッシュボードアプリケーションとも呼ばれる)を備えた(例えば、医療提供者向け処理モジュールを作動させる、または医療提供者向け処理モジュールと他の方法で対話する)コンピュータまたはサーバ408とを含んでいる。本システム400はまた、1つ以上のサーバ上に存在するデジタルヘルスプラットフォーム(DHP)406(例えば、中央処理モジュール)を含んでいてもよく、DHP406に関連して説明した機能を実行するように構成されたコンピュータソフトウェアを含んでいてもよい。
【0096】
図4Aに示されているように、本システム400は、吸入器401a-dを備えており、それぞれの吸入器は、ユーザ(例えば、患者)に薬剤を送達するように構成されていてもよい。所定のユーザに薬剤を送達するように構成された吸入器は、本明細書に記載されるように、少なくとも1つのユーザデバイスとともに破線の円によって示された吸入器アセンブリを形成していてもよい。例えば、
図4Aを参照すると、吸入器401a、401bおよびユーザデバイス402aは、第1ユーザに薬剤を送達するように構成された第1吸入器アセンブリを形成していてもよい。同様に、吸入器401c、401dおよびユーザデバイス402bは、第2ユーザに薬剤を送達するように構成された第2吸入器アセンブリを形成していてもよい。
図1-3に関して前述したように、吸入器401a-dのそれぞれは、それぞれの吸入器の使用に関する使用パラメータを決定するように構成された使用決定システムを備えている。吸入器401a-dのそれぞれは、決定された使用パラメータに基づいてデータを暗号化した後に暗号化データを送信するように構成された送信モジュールも備えている。吸入器401a-dのそれぞれによって送達される薬剤は、異なるものであってもよい。例えば、吸入器401aによって送達される薬剤は、吸入器401bによって送達される薬剤と異なっていてもよい。したがって、吸入器401a-dのそれぞれの決定された使用パラメータは、それぞれの吸入器によって送達される薬剤に基づいて変化することがある。
【0097】
非限定的な例では、吸入器401a、401cによって送達される薬剤は、必要に応じて対象者が使用する救助薬を含んでいてもよく、吸入器401b、401dによって送達される薬剤は、所定の服用スケジュールに従って対象者が使用する維持薬を含んでいてもよい。
【0098】
救助薬は、典型的には、ホルモテロール(フマル酸塩)のようなSABAまたは速効性LABAである。救助薬は、例えばICS-ホルモテロール(フマル酸塩)、典型的には、ブデソニド-ホルモテロール(フマル酸塩)またはベクロメタゾン(ジプロピオン酸塩)-ホルモテロール(フマル酸塩)の組み合わせ製品の形態をとっていてもよい。このようなアプローチは、「MART」(維持および救助治療)と呼ばれている。
【0099】
いくつかの非限定的な例では、吸入器アセンブリは、同じ薬剤を送達する複数の吸入器を含んでいてもよい。同じ薬剤を送達するこのような複数の吸入器は、例えば、薬剤が救助薬である場合に特に好都合な場合がある。このような例では、対象者は、必要に応じて救助薬を直ちに利用することができるように、様々な異なる場所(例えば、ナイトスタンドの上、ジムバッグの中、車の中等)に複数の吸入器を置いておくことができる。
【0100】
非限定的な例では、救助薬はアルブテロール(硫酸塩)であり、維持薬はフルチカゾン(プロピオン酸塩またはフロ酸塩)またはフルチカゾン(プロピオン酸塩またはフロ酸塩)と組み合わせたサルメテロール(キシナホ酸塩)である。
【0101】
より一般的には、救助薬および維持薬(または、本システムを構成する任意のさらなる吸入器に含まれる任意のさらなる薬剤)は、任意の適切な原薬を含んでいてもよい。したがって、任意の分類の薬剤が吸入器401a-401dに収容され、当該吸入器401a-401dによって送達されてもよい。すなわち、本システム400は、吸入器によって送達される特定の薬剤とは無関係に、使用情報の統合された取り扱いおよび伝達が可能となっている。
【0102】
本明細書に記載されているように、吸入器401a-dは、それぞれ使用決定システムを備えていてもよい。使用決定システムは、それぞれの吸入器401a-dの使用イベント(例えば、吸入イベント)を検出するように構成されている。使用イベントは、検出された吸入器100の使用(例えば、吸入器100のマウスピースカバーを閉じた位置から開いた位置に移動させること)、吸入器内における1用量の薬剤のプライミング(例えば、吸入器100がMDIである場合は吸入器100を振ること)、ブリスターストリップを前進させるか1用量の薬剤を準備させる、吸入器のスイッチの作動または吸入器のキャップの捻り、および/またはユーザによる吸入器100を介した吸入(例えば、吸入イベント)の記録を含んでいてもよい。それぞれの使用イベントは、使用決定システムによって決定される1つ以上の使用パラメータを含んでいてもよい。使用パラメータは、対象者による吸入器100における使用イベントを示す任意の数のパラメータを含んでいてもよい。例えば、使用パラメータは、吸入器100の振動時間、吸入中の吸入器100の向き、吸入中の吸入器の温度または湿度、および/または吸入イベント中に測定される吸入パラメータ(例えば、流量)を含んでいてもよい。いくつかの例では、使用パラメータは、吸入パラメータ(例えば、最大吸気/吸入流量(PIF)、吸入量、最大吸入流量までの時間、および/または吸入持続時間)であってもよい。
【0103】
使用決定システムは、それぞれの使用イベントに相対的なタイムスタンプを関連付けてもよい。使用決定システムは、吸入機401a-dのそれぞれの時計モジュールを使用して、相対的なタイムスタンプを決定してもよい。検出された使用イベントに関連してそれぞれの吸入器が取り込んだすべての情報は、本明細書では吸入器データとも呼ばれることがある。また、本明細書に記載されているように、吸入器データは、吸入器とペアリングされたユーザデバイスで動作しているエンドユーザまたは患者向け処理モジュールに送信されてもよい。
【0104】
吸入器401a-dのそれぞれは、決定された使用イベントに基づいてデータを暗号化した後、暗号化データを送信するように構成された送信モジュールを含んでいてもよい。例えば、それぞれの送信モジュールは、それぞれの吸入器のデータを暗号化することができる暗号化デバイスを含んでいてもよい。例えば、暗号化デバイスは、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、マイクロコントローラ、プロセッサ等のハードウェアを使用して実装されていてもよい。暗号化デバイスは、送信モジュールの他の部分(例えば、暗号化データを送信するために使用されるトランシーバ)に組み込まれていてもよい。様々なタイプのトランシーバの例について、以下に詳細に説明する。また、いくつかの例では、本システム400は、本明細書に記載の吸入器の代わりに、またはこれに加えて、「データ処理能力のない」な吸入器に取り付けるように構成された例えば処理モジュールおよび/または送信モジュール(例えば、プロセッサ、メモリおよびトランスミッタ)を含むスマートアドオンデバイスを含んでいてもよいことを理解すべきである。
【0105】
吸入器401a-dは、そのそれぞれの送信モジュールを介して、例えば、ユーザデバイスで動作しているエンドユーザまたは患者向け処理モジュールを介して、そのデータをペアリングされたユーザデバイス(例えば、吸入器アセンブリのユーザデバイス)に送信してもよい。ユーザデバイスは、例えば、ユーザデバイスで動作しているエンドユーザまたは患者向け処理モジュールを使用して、吸入器とペアリングされてもよい。例えば、ユーザデバイスは、吸入器の送信モジュールとユーザデバイスとが相互に通信(例えば、情報の送受信)を行うことができるように、ユーザデバイスに近接するそれぞれの吸入器とペアリングされてもよい(例えば、これも
図4Aの破線の円で表されている)。再び
図4Aを参照すると、例えば、吸入器401a、401bは、ユーザデバイス402aにペアリングされて第1吸入器アセンブリを形成し、ユーザデバイス402aで動作しているエンドユーザまたは患者向け処理モジュールを介してユーザデバイス402aにそれぞれのデータを送信してもよい。同様に、吸入器401c、401dは、ユーザデバイス402bにペアリングされて第2吸入器アセンブリを形成し、ユーザデバイス402bで動作しているエンドユーザまたは患者向け処理モジュールを介してユーザデバイス402bにそれぞれのデータを送信してもよい。所定のユーザデバイスにペアリングされた後、吸入器401a-dは、定期的に、またはそれぞれの使用決定システムによる使用イベント(例えば、吸入イベント、吸入器キャップの開放、薬剤のプライミング)の検出に応答してデータを送信してもよい。
【0106】
吸入機401a-dは、例えば、識別子(例えば、吸入器またはその包装に印刷されたバーコードまたはQRコード(登録商標))を使用してユーザデバイスとペアリングされてもよい。本明細書でさらに説明するように、吸入器の識別子は、吸入器に関連付けられた特定の情報(例えば、吸入器によって送達されるそれぞれの薬剤、および薬剤の用量強度)を示していてもよい。ひいては、吸入器に関連付けられた情報は、識別子によって示される吸入器内の薬剤の用量強度が既存の吸入器内の薬剤の用量強度と異なる場合に通知を発行するために、ユーザデバイスで動作しているエンドユーザまたは患者向け処理モジュール(例えば、DHP406のような、システム400の別の処理モジュール)によって使用されてもよい。このような通知は、例えば、吸入器の用量強度が既存の吸入器のそれと異なることを知らせる通知、および/または対象者に既存の吸入器の廃棄を要求する通知を含んでいてもよい。このようにして、システム400は、例えば、ユーザデバイスで動作しているエンドユーザまたは患者向け処理モジュール(例えば、DHP406のような、システム400の別の処理モジュール)を介して、対象者が処方変更に適応することを支援することができる。
【0107】
また、あるいは代替的に、吸入器に関連付けられた情報が使用され、例えば、維持薬の投与に関連する治療レジメンに従って吸入器を使用することを対象者に思い出させるために、ユーザの選択に従った通知をユーザデバイスのユーザインタフェースを制御するエンドユーザまたは患者向け処理モジュールを介して発行してもよい。
【0108】
図4に示されているように、システム400は、スマートフォン(例えば、iPhone(登録商標)スマートフォン、Android(登録商標)スマートフォン、またはBlackberry(登録商標)スマートフォン)、パーソナルコンピュータ、ラップトップ、無線対応メディアデバイス(例えば、MP3プレーヤー、ゲームデバイス、テレビ、メディアストリーミングデバイス(例えば、Amazon Fire TV、Nexus Player))、タブレット端末(例えば、iPad(登録商標)ハンドヘルドコンピューティングデバイス)、Wi-Fiまたは無線通信可能なテレビ、ハブデバイス、またはスマートスピーカ(例えば、Amazon Echo、Google Home)、または他の任意の適切なインターネットプロトコル対応デバイスであってもよいユーザデバイス402a、402bを備えている。
【0109】
ユーザデバイス402a、402b(例えば、エンドユーザまたは患者向け処理モジュール)は、本明細書で説明するように、送信モジュールを含んでいてもよく、Wi-Fi通信リンク、Wi-MAX通信リンク、Bluetooth(登録商標)またBluetoothスマート通信リンク、近距離無線通信(NFC)リンク、セルラー通信リンク、テレビホワイトスペース(TVWS)通信リンク、またはこれらの任意の組み合わせを介してRF信号を送受信するように構成されていてもよい。本明細書でさらに説明するように、ユーザデバイス402a、402bは、例えば、DHP(例えば、専用API)によって公開された通信インタフェースを使用して、DHP406に(例えば、パブリックおよび/またはプライベートネットワーク404を介して)データを転送してもよい。例えば、ユーザデバイス402a、402bは、1つ以上のペアリングされた吸入器に関する使用データをDHP406に送信してもよい。すなわち、ユーザデバイス402aは、吸入器401a,401bに関する使用データをDHP406に送信し、ユーザデバイス402bは、吸入器401c,401dに関する使用データをDHP406に送信してもよい。
【0110】
エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールについて本明細書で説明した機能を実行するように構成されたプロセッサ、メモリ、および/またはソフトウェアの任意の組み合わせを含んでいてもよい。例えば、プロセッサは、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールの機能を実行するためのコンピュータで実行可能な命令でプログラムされた汎用プロセッサであってもよい。プロセッサは、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールの機能を実行するように構成されたマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラを使用して実装されていてもよい。プロセッサは、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールの機能を実行するように構成された組み込みプロセッサまたはデジタルシグナルプロセッサを使用して実装されていてもよい。
【0111】
上で紹介したように、ユーザデバイス402a、402bはそれぞれ、吸入器401a-dに関連付けられた使用パラメータを決定および/または抽出するために、ペアリングされた吸入器から受信した吸入器データをそれぞれ処理および分析するエンドユーザまたは患者向け処理モジュールを含んでいてもよく、例えば、ユーザデバイス402aは、吸入器401a、401bに関するデータを処理および分析することができ、ユーザデバイス402bは、吸入器401c、401dに関する使用データを処理および分析することができる。エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、さらに、吸入器データを処理して、使用イベントに関連付けられた使用パラメータに基づいて、所定の使用イベントを特定の使用イベントのカテゴリに特定および/または分類してもよい。例えば、使用イベントのカテゴリには、無吸入イベント、低吸入イベント、良吸入イベント、過吸入イベント、呼気イベント、作動イベント、エラーイベント、使用不足イベント、使用過多イベント、吸入器のキャップ開放、または薬剤のプライミング(例えば、本明細書でさらに説明するような、ブリスターストリップの開封、カプセルの開封)等が含まれていてもよい。エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、所定の使用イベントに関連する吸入器のタイプを特定してもよい。例えば、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、救助吸入器から受信した使用イベントを救助使用イベントとして特定し、維持吸入器から受信した使用イベントを維持使用イベントとして特定してもよい。
【0112】
本明細書で説明するように、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、吸入イベントに関連付けられたそれぞれの吸入パラメータ(例えば、最大吸入気流パラメータ)に基づいて所定の使用イベントを分類してもよい。さらに、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、タイムスタンプおよび地理位置情報を使用して使用イベントを充実化または関連付けることができ、これは、本明細書でさらに説明するように、エンドユーザまたは患者に追加的な分析を提供するためにDHP406によって使用されてもよい。ユーザデバイス402a、402bは、ディスプレイデバイスと、ディスプレイデバイス上のグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を通じて所定の使用パラメータに関連する吸入器データおよび/または使用イベントに関連するデータを視覚的に提示または表示するソフトウェア(例えば、エンドユーザまたは患者向け処理モジュール)とを含んでいてもよい。ユーザデバイス402a、402bは、吸入器に当該吸入器の光源を明るくさせるメッセージを送信すること、および/または吸入器に当該吸入器のスピーカに可聴警報を発生させるメッセージを送信することにより、GUIおよび/または吸入器401a-dを介して警告または通知を提供してもよい。
【0113】
吸入器401a-dのそれぞれの使用決定システムは、使用イベントを検出し、検出された使用イベントに関連付けられた使用パラメータ(例えば、気流量、相対タイムスタンプ)を決定してもよい。次いで、吸入機401a-dの送信モジュールは、使用イベントの検出を、関連付けられた使用パラメータ(例えば、まとめて吸入器データと呼ばれる)とともに、それぞれのペアリングされたユーザデバイスで動作しているエンドユーザまたは患者向け処理モジュールに送信してもよい。
図4Aを参照すると、例えば、吸入器401aは、使用イベント(例えば、吸入)を検出し、使用イベントに関連付けられた使用パラメータ(例えば、使用イベントの相対タイムスタンプ、吸入流量値等の吸入パラメータ)を決定してもよい。次いで、吸入器401aは、自身の送信モジュールを使用して、使用イベントおよび関連付けられた吸入器データをユーザデバイス402a(例えば、吸入器401aとペアリングされたユーザデバイス)のエンドユーザまたは患者向け処理モジュールに送信してもよい。吸入器401b-dのいずれか1つが使用イベントを検出した場合に、同一の、または実質的に同様の処理が行われてもよい。
【0114】
それぞれの吸入器から吸入器データを受信した後、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、受信した吸入器データに対して特定の計算および/または変換を実行してもよい。例えば、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、検出された使用イベントの相対タイムスタンプを、(例えば、使用イベントが発生したローカル時刻に基づいて)ローカルタイムスタンプに変換してもよい。同様に、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、受信した気流量値(例えば、流量プロファイル)を1つ以上の吸入パラメータに変換してもよい。例えば、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、受信した気流量値を、最大吸入流量(PIF)値、吸入量、吸入持続時間、および/またはPIF値までの時間のうちの1つ以上に変換してもよい。気流量値および/またはそれぞれの変換値は、ユーザのコンプライアンスを評価するために使用されてもよく、これにより、ユーザの呼吸器疾患の状態(例えば、患者が増悪イベントを経験する可能性)、および/または現在のまたは変化する環境条件(例えば、暑さ、大気質、湿度)に対するユーザの感度についての有益な洞察が提供されるかもしれない。
【0115】
さらに、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、吸入器データをジオタグで充実化または関連付けてもよく、これにより、使用イベントが発生した位置(例えば、使用イベントが発生したときのユーザデバイスの位置、または使用イベントがユーザデバイスによって受信されたときのユーザデバイスの位置)を示すことができる。さらに、または代替的に、使用イベントのジオタグ付けは、それぞれの吸入器の使用決定システムで行われてもよい(しかしながら、そのようにすることは、例えば、地理的測位チップセットまたはその位置を三角測量する複雑な処理を吸入器に含ませることになるので、計算上および/または電力消費上の犠牲を払うことになるかもしれない)。
【0116】
ジオタグ付けによる充実化に加えて、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、吸入器データをユーザに関連する他のデータ(例えば、ユーザの疾患に関連する他のデータ)で充実化する、またはこれらを関連付けてもよい。例えば、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、吸入器データをユーザに関連付けられた健康またはフィットネスデータで充実化する、またはこれらを関連付けてもよい。ユーザに関連付けられた健康またはフィットネスデータは、例えば、ユーザデバイスで動作している1つ以上の第3者アプリケーション(例えば、Apple Healthアプリ)、または別のユーザデバイス(例えば、FitBit、Apple Watch)から取得されてもよい。例えば、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、吸入器データを、肥満度(BMI)、心拍数、体重、身長、歩数(例えば、歩数の日平均)、燃焼カロリー、睡眠時間等のうちの1つ以上で充実化する、またはこれらに関連付けてもよい。さらに、または代替的に、他の健康データによる吸入器データの充実化は、DHP406によって実行されてもよい。
【0117】
エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、例えば、所定の使用イベントに関連付けられた使用パラメータに基づいて、所定の使用イベントを使用イベントカテゴリにさらに分類してもよい。例えば、本明細書に記載されるように、吸入イベントのカテゴリには、無吸入イベント、低吸入イベント、良吸入イベント、過吸入イベント、呼気イベント、作動イベント、エラーイベント、使用不足イベント、使用過多イベント、吸入器のキャップ開放、または薬剤のプライミングイベント(例えば、本明細書でさらに説明するような、ブリスターストリップの開封、カプセルの開封)等が含まれていてもよい。
【0118】
特定の例では、本明細書で説明するように、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、ペアリングされた吸入器から受信する吸入器データ、およびその吸入器データに基づいて実行する任意の計算または分類の結果をDHP406に転送してもよい。例えば、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、DHP406によって公開された1つ以上のアプリケーションプログラミングインタフェースを介して、吸入器データをDHP406に転送してもよい。一方で、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、DHP406への情報の転送に先立って、その転送を行うことについてユーザに同意または承認を求めてもよい。
【0119】
再び
図4Aを参照すると、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、ユーザに対してフィードバックを促してもよい。例えば、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、患者または対象者が(例えば、特に対象者の呼吸器疾患の症状に関して)どのように感じているのかについての自己評価の提供をユーザに促してもよい。エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、この自己評価を定期的に(例えば、1日に1回、週に1回、月に1回の頻度で)要求してもよい。非限定的な例では、ユーザは、ある範囲の自己評価値から自己評価値を選択することによって、自身の自己評価を提供してもよい。例えば、ある範囲の自己評価値は、特定のアイコン(例えば、絵文字タイプのアイコン)で示されていてもよく、ユーザは、所定の日に患者または対象者がどのように感じているのかを示すいずれかのアイコンを選択してもよい。また、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、吸入器データの場合と同様に、患者または対象者が自己評価値を提供した場所を示すために、自己評価値をジオタグで充実化する、またはこれらに関連付けてもよい。エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、自己評価回答に時刻を関連付けてもよい。また、いくつかの例では、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、自己評価回答に関連付けられた時刻に基づいて、自己評価を1つ以上の使用イベントに関連付けてもよい。ここでも、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、この自己評価情報を格納するだけでなく、集約および/または分析のためにDHP406(例えば、ユーザが同意または許可した場合)に転送してもよい。エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、受信した自己評価値に基づいて、対象者またはユーザについての1つ以上のレポートを生成してもよい。
【0120】
エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、第1吸入器から受信した暗号化データと第2吸入器から受信した暗号化データとを区別してもよい。再び
図4Aを参照すると、例えば、ユーザデバイス402aは、吸入器401a、401bから受信した暗号化データを区別してもよく、ユーザデバイス402bは、吸入器401c、401dから受信した暗号化データを区別してもよい。例えば、ユーザデバイス402aで動作しているエンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、吸入器401aから受信した暗号化データに基づいて、吸入器401aが送達する薬剤に関する第1使用情報を決定し、吸入器401bから受信した暗号化データに基づいて、吸入器401bが送達する薬剤に関する第2使用情報を決定する。同様に、ユーザデバイス402bで動作しているエンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、吸入器401cから受信した暗号化データに基づいて、吸入器401cが送達する薬剤に関する第3使用情報を決定し、吸入器401dから受信した暗号化データに基づいて、吸入器401dが送達する薬剤に関する第4使用情報を決定する。その後、ユーザデバイス402a、402bで動作しているエンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、それぞれのユーザインタフェースを制御して、第1、第2、第3および第4使用情報をエンドユーザまたは患者に対して伝達または表示してもよい。さらに、ユーザデバイス402a、402bで動作しているエンドユーザまたは患者向け処理モジュールはそれぞれ、吸入器401a-d(例えば、またはそのサブセット)から受信した暗号化データをDHP406に転送してもよい。また、本明細書でさらに説明するように、DHP406は、吸入器401a-d/ユーザデバイス402a、402bで動作しているエンドユーザまたは患者向け処理モジュールから転送された暗号化データを集約し、分析を実行してもよい。
【0121】
ユーザデバイス402a、402bのエンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールについて本明細書に記載された機能を実行するためのハードウェアおよび/またはソフトウェアを使用して構成することができる汎用プロセッサ、特殊用途プロセッサ、DSP、マイクロコントローラ、集積回路等を含んでいてもよい。エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、電源および/または電池を含んでいてもよい。いくつかの例では、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、部分的または全体的に、ユーザデバイス402a、402b(例えば、スマートフォン、タブレットまたはパーソナルコンピュータ)、および/またはリモートサーバの任意の組み合わせに属していてもよい。
【0122】
このように吸入機401a-dとユーザデバイス402a,402bとの間で送信されるデータの暗号化は、それぞれの使用パラメータを送信することを可能にする。さらに、暗号化は、それぞれのデータの復号化が吸入器401a-dのそれぞれの送信モジュールから暗号化データを受信するように構成されたエンドユーザまたは患者向け処理モジュールによって実行されるため、例えば、そのような送信を安全に行うことを可能にする。エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、例えば、吸入器401a-dのそれぞれの送信モジュールとペアリングされていてもよく、その場合、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、ペアリングされた吸入器から受信した暗号化データを復号化するように構成(例えば、排他的に構成)されている。したがって、このような暗号化は、ペアリングされたユーザデバイスで動作しているエンドユーザまたは患者向け処理モジュールへのそれぞれの使用パラメータの安全な送信を可能にすることができ、この安全な送信は、吸入器の使用に関する医療データの送信という観点で好まれるかもしれない。
【0123】
吸入器401a-dのそれぞれの送信モジュールが暗号化データを送信するように構成されている一方で、いくつかの非限定的な例では、それぞれの送信モジュールは、例えば、暗号化データが送信されるエンドユーザまたは患者向け処理モジュールからデータを受信するようにさらに構成されていてもよい。このような例では、吸入器401a-dのそれぞれの送信モジュールは、トランシーバ、言い換えれば、送受信モジュールとみなすことができる。
【0124】
例えば、それぞれの吸入器の使用パラメータに時刻(例えば、タイムスタンプ)を割り当てる時計モジュールが、それぞれの吸入器401a-dに含まれていてもよい。時計モジュールは、プロセッサまたは他のタイプの集積回路を使用して実装されていてもよい。ユーザデバイス402a、402bで動作しているエンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、それぞれペアリングされた吸入器401a-dの時計モジュールを同期させるように構成されていてもよい。それぞれの時計モジュールは、例えば、ユーザデバイスのそれぞれの送信モジュールを介して、ペアリングされたユーザデバイスのエンドユーザまたは患者向け処理モジュールから送信される時刻データを受信してもよい。このような同期は、例えば、それぞれの吸入器の相対的な使用タイミングを決定することを可能にする基準点を提供し、これは、臨床的関連性を有していてもよい。例えば、治療レジメンに従った1回または複数回の吸入が予定されていた特定の期間に維持薬が吸入されなかったことは、治療レジメンが遵守されなかったその期間の終わり頃に救助薬の使用が増加すること、またはその期間の後に救助薬の使用が増加することに相関しているかもしれない。ユーザデバイス402a、402bで動作しているエンドユーザまたは患者向け処理モジュール、またはDHP406で実行することができるこのような診断分析は、それぞれの吸入器の時計モジュールがペアとなっているユーザデバイスと同期している場合に可能かもしれない。
【0125】
さらに、いくつかの例では、吸入器の時計モジュールは、内部カウンタとして動作するかもしれないことを理解すべきである。内部カウンタとして動作する場合、時計モジュールは、相対的なカウントを提供してもよい(例えば、これは、平均太陽時(例えば、地方平均時)を提供するのとは対照的である)。例えば、吸入器の使用決定システムは、例えば、使用決定システムが省エネスリープモードから最初に復帰したとき(例えば、マウスピースカバーが最初に開かれた後)に、内部カウンタ(例えば、0から無制限にカウントアップしていく)を開始させてもよい。その後、使用決定システムによって生成される日時のスタンプは、時計モジュールの内部カウンタに基づく相対時刻(またはカウント)であってもよい。使用決定システムは、250マイクロ秒(μs)毎にシステムクロックを定期的に更新してもよい。
【0126】
いくつかの例では、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、さらなる時計モジュールを含んでいてもよい。こうして、それぞれの吸入器の時計モジュールは、さらなる時計モジュールが提供する時刻に従って同期されてもよい。さらなる時計モジュールは、例えば、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールが位置しているタイムゾーンの時刻を受信してもよい。エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、例えば、そのタイムゾーンの時刻を吸入器401a-dのそれぞれの時計モジュールに送信し、これにより、対象者およびそのそれぞれの吸入器が位置している時刻に従って時計モジュールが同期されることを可能にしてもよい。それぞれの使用情報のタイムスタンプは、対象者の地理的位置における昼または夜の時刻に対応していてもよい。さらに、それぞれの使用情報には、使用イベントが発生した場所を示すジオタグが付与されていてもよい。このことは、例えば、夜間の救助薬の使用と呼吸器疾患の増悪の危険性との関連性を考慮すると、特に有益である。このように、本システムは、例えば、タイムゾーンを越えて移動した対象者の昼間、夜間、および/または救助吸入器の使用場所を監視することができる。代替的または追加的に、システム400が(例えば、DHP406で実行される分析に基づいて)発行する対象者に維持薬の投与を思い出させるリマインダは、対象者の場所における昼または夜の時刻を説明するかもしれない。
【0127】
エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、第1暗号化データと第2暗号化データとを区別するように構成されている。第1薬剤に関する第1使用情報は、区別された第1暗号化データに基づいて、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールによって決定される。同様に、第2薬剤に関する第2使用情報は、区別された第2暗号化データに基づいて、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールによって決定される。再び
図4Aを参照すると、ユーザデバイス402aは、吸入器401aから受信した暗号化データと吸入器401bから受信した暗号化データとを区別するように構成されていてもよい。同様に、ユーザデバイス402bは、吸入器401cから受信した暗号化データと吸入器401dから受信した暗号化データとを区別するように構成されていてもよい。
【0128】
一例において、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、第1薬剤に割り当てられた第1識別子を受信する(例えば、ユーザデバイス402aは、吸入器401aが送達する薬剤に割り当てられた第1識別子を吸入器401aから受信する)。このような例では、別の吸入器(例えば、吸入器401b)が送達する薬剤に第2識別子が割り当てられる。このような例では、第1識別子は、第2薬剤に関連付けられていないか、第2薬剤に割り当てられておらず、また、第2識別子は、第1薬剤に関連付けられていないか、第1薬剤に割り当てられていない。エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、ペアリングされた吸入器からそれぞれの識別子を受け取り、それぞれの識別子を使用して第1暗号化データと第2暗号化データとを区別する。
【0129】
特定の例では、それぞれの識別子は、さらなる情報(例えば、それぞれの吸入器が例えば吸入器に含まれる適切な用量計量アセンブリを介して送達するそれぞれの用量の用量強度)を示していてもよい。代替的または追加的に、それぞれの識別子は、(使用開始前の)それぞれの吸入器に収容されている、言い換えると、提供されたそれぞれの吸入器の薬剤リザーバ内にあるそれぞれの薬剤の総用量数を示していてもよい。
【0130】
その結果、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、例えば、それぞれの識別子から、それぞれの吸入器が提供することができる用量強度および/または総用量数を認識するように構成されていてもよい。また、それぞれの識別子が用量強度を示す場合、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、例えば、それぞれの使用情報(この場合は、それぞれの吸入器の使用)およびそれぞれの用量強度に基づいて、ラベル推奨投与量を超えたという通知を発行するようユーザインタフェースを制御するように構成されていてもよい。
【0131】
薬剤を投与する既存の吸入器を既に含んでいるシステムに同じ薬剤を投与するように構成されたさらなる吸入器を追加するいくつかの例では、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、既存の吸入器およびさらなる吸入器のそれぞれの識別子に基づいて、さらなる吸入器の用量強度が既存の吸入器のそれと同じなのか異なっているのかを決定するように構成されていてもよい。それぞれの用量強度が互いに異なってる場合、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、ユーザインタフェースを制御して少なくとも1つの通知を発行する。少なくとも1つの通知には、例えば、さらなる吸入器の用量強度が既存の吸入器のそれと異なることを対象者に知らせる通知、および/または対象者に既存の吸入器の廃棄を要求する通知が含まれていてもよい。このように、本システムは、対象者が処方変更に適応することを支援することができる。この例における薬剤は、救助薬であってもよいし、維持薬であってもよい。
【0132】
それぞれの識別子がそれぞれの吸入器に収容されている総用量数を示す場合、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、それぞれの使用情報(この場合は、それぞれの吸入器の使用)およびそれぞれの識別子が示すそれぞれの総用量数に基づいて、それぞれの吸入器を交換すべきであるという通知を発行するようにユーザインタフェースを制御するように構成されていてもよい。例えば、それぞれの識別子が示す総用量数から使用決定システムを使用して決定したそれぞれの吸入器の使用回数を差し引くと、それぞれの吸入器に残っている用量数を得ることができる。この通知は、それぞれの吸入器に残っている決定された用量数が所定の用量閾値に達するか、またはそれより少なくなったときに、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールによって行われてもよい。
【0133】
非限定的な例では、第1識別子は、第1吸入器とエンドユーザまたは患者向け処理モジュールとのペアリングに使用される第1キーに含まれている。エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、第1キーに含まれる第1識別子に基づいて、第1薬剤を送達する吸入器として第1吸入器を識別するように構成されている。同様に、第2識別子は、第2吸入器とエンドユーザまたは患者向け処理モジュールとをペアリングするための第2キーに含まれていてもよく、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、第2キーに含まれる第2識別子に基づいて、第2薬剤を送達する吸入器として第2吸入器を識別する。このようにして、第1暗号化データは第1薬剤に結び付けられ、第2暗号化データは第2薬剤に結び付けられる。
【0134】
より一般的には、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールが第1暗号化データと第2暗号化データとを区別することにより、第1薬剤の投与に関する第1暗号化データと第2薬剤の投与に関する第2暗号化データとが別々に処理される。第1および第2薬剤は互いに異なるものであり、例えば、それぞれ異なる治療レジメンおよび/または投与プロトコルに関連するかもしれないので、このような個別のデータ処理により、第1薬剤に関する第1使用情報が第2薬剤に関する第2使用情報と混同されないことを有利に保証することができる。それにもかかわらず、本システムは、第1および第2使用情報の統合された取り扱いおよび伝達が可能となっている。
【0135】
いくつかの例では、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、ユーザインタフェースを制御して、第1および第2使用情報を伝達する(例えば、表示する)ように構成されている。このようにして、対象者に第1および第2薬剤のそれぞれの使用が知らされる。第1または第2薬剤が例えば救助薬である場合は、本システムにより、対象者による自身の呼吸器疾患の状態の追跡が可能になるかもしれない。第1または第2薬剤が例えば維持薬である場合は、本システムにより、対象者による所定の治療レジメンに対する自身のアドヒアランスまたはコンプライアンスの追跡が可能になるかもしれない。いくつかの例では、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、ユーザインタフェースを制御して第1および第2使用情報を(例えば、単一のグラフィカルユーザインタフェース(GUI)に)同時に表示するようにように構成されている。
【0136】
さらに、いくつかの例では、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、例えばユーザデバイス上に存在するコンピュータプログラムを含んでいてもよい。コンピュータプログラムは、そのコンピュータプログラムがコンピュータ(例えば、ユーザデバイス)で実行されたときに、本明細書に記載の方法および技術を実行するように適合されたコンピュータプログラムコードを含んでいる。本明細書で説明するシステムについての実施形態は、方法およびコンピュータプログラムに適用することができる。また、方法およびコンピュータプログラムについての実施形態は、システムに適用することができる。
【0137】
本明細書で説明するように、ユーザデバイスで動作しているエンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、ペアリングされた吸入器から受信した暗号化データを区別するように構成されていてもよい。ペアリングされた吸入器から受信したデータを区別することにより、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、使用イベントに関連付けられた吸入器に基づいて使用イベントのそれぞれを別々に表示することを可能にするかもしれない。例えば、本明細書で説明するように、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、ペアリングされた吸入器のそれぞれに割り当てられた識別子に基づいて使用イベントを区別してもよい。
【0138】
非限定的な例では、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、1つ以上のペアリングされた吸入器(例えば、ペアリングされた吸入器のそれぞれ)から受信した暗号化データに基づいて、使用および/またはシステムエラーを決定する。使用および/またはシステムエラーは、使用イベントの一種であってもよい。このような使用エラーは、例えば、それぞれの吸入器の潜在的な誤用を示しているかもしれない。システムエラーは、それぞれの吸入器のコンポーネント(例えば、それぞれの吸入器の使用決定システムおよび/または送信モジュール)における故障を示しているかもしれない。システムエラーは、例えば、それぞれの吸入器のハードウェア故障を含んでいてもよい。ユーザインタフェースは、処理モジュールにより、決定された使用および/またはシステムエラーに基づいて警告および/または通知を提供する(例えば、異なる薬剤を潜在的に含んだ複数の異なる吸入器のそれぞれの決定された使用および/またはシステムエラーについての警告および/または通知を提供する)ように制御されていてもよい。使用エラーは、例えば、低吸入イベント、無吸入イベント、および/または過吸入イベントを含んでいてもよい。
【0139】
使用エラーは、代替的または追加的に、マウスピースカバーが所定期間(例えば、60秒)を超えて開いたままであること、上述の機械式スイッチの1回の作動に関して複数の吸入が記録されたこと(例えば、同じマウスピースカバー開閉セッション内で2回目の吸入が行われたこと)、および流路を呼気が通ったこと(これは、流路内で感知される正の圧力変化から決定される)のうちの1つ以上を含んでいてもよい。
【0140】
使用エラーが、マウスピースカバーが所定期間を超えて開いたままであることに関連する場合、吸入器の検出回路は、電池寿命を維持するためにその所定期間に限ってアクティブな状態を維持してもよい。このことは、その所定期間外に発生した使用決定システムによって検出/決定可能なものが、検出/記録されないことを意味するかもしれない。したがって、このエラーをユーザに通知することにより、マウスピースカバーが開けられたことにより始まる所定期間外では他の検出可能なイベントが検出されないことをユーザに知らせることができる。
【0141】
なお、前述の呼気に基づく使用エラーは、機械式スイッチの所定の作動に関して行われている吸入の後(例えば、同一のマウスピースカバー開閉セッション内)にそのような呼気が感知された場合には、記録されないかもしれない。
【0142】
システムエラーは、吸入器に含まれるメモリ(例えば、使用決定システムに含まれるメモリ)に吸入データを格納する際に発生する問題(「破損データエラー」)、吸入器の時計モジュールについてのエラー(「タイムスタンプエラー」)、および吸入に関する情報収集に関するエラー(「吸入パラメータエラー」)のうちの1つ以上を含んでいてもよい。
【0143】
特定の例では、本システムに含まれる複数の(例えば、すべての)吸入器からの使用および/またはシステムエラーは、中央処理モジュール(例えば、DHP406)によって収集される(例えば、集約される)。本明細書でさらに説明するように、DHP406は、収集した使用および/またはシステムエラーに基づいて警告および/または通知を提供するようにさらに構成されている。例えば、処理モジュールは、本システムに含まれる吸入器から収集した使用および/またはシステムエラー数が所定数に達したか、それを超えたことに基づいて、警告および/または通知を提供するようにユーザインタフェースを制御する。
【0144】
図4Aには吸入器401a-d、ユーザデバイス402a、402b、DHP406、およびコンピュータまたはサーバ408を含んだシステム400が図示されているが、本システム400は、追加的なデバイス、またはより少ないデバイスを含んでいてもよい。例えば、本システム400は、吸入器4001a-dのような複数の追加吸入器を含んでいてもよい。また、これらの吸入器のそれぞれは、対象者および/またはユーザプロファイルに関連付けられ、ユーザデバイス402a、402bのようなエンドユーザまたは患者向け処理モジュールを含んだそれぞれのユーザデバイス(これは、それぞれペアリングされた吸入器から吸入データを受信し、その後、転送するように構成されていてもよい)とペアリングされてもよい。同様に、本システム400は、多数の追加的なコンピュータまたはサーバ408を含んでいてもよく、これは、医療提供者向け処理モジュールを動作させるために使用されてもよい。すなわち、
図4Aに示された例は、非限定的な例であり、本システム400に含まることがあるデバイスのタイプ、および本システム400におけるそれぞれの役割/機能を説明することを意図したものにすぎない。
【0145】
図4Bは、
図4Aに図示されたシステム400とは表現が異なる、例示的なシステム400aを示している。
図4Bに示されるように、システム400aは、DHP406と、医療提供者に関連する医療提供者向け処理モジュール(例えば、本明細書ではダッシュボードアプリケーションとも呼ばれる)を備えた(例えば、処理モジュールを実行する、または処理モジュールと対話する)コンピュータまたはサーバ408とを含んでいる。また、システム400aは、ユーザデバイス402c、402dを含み、これらのそれぞれは、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールを含んでいてもよい。そして、図示していないが、ユーザデバイス402c、402dはそれぞれ、1つ以上の吸入器とペアリングされ、これらから吸入データを受信してもよい。また、本明細書で説明するように、ユーザデバイス402c、402dは、パブリックまたはプライベートネットワーク404を介して、この吸入器データをDHP406に転送してもよい。本明細書で説明するように、DHP406は、受信した吸入器データを集約し、分析を実行してもよい。例えば、DHP406は、吸入器データを1つ以上の外部情報源410からの情報(例えば、外部気象APIからの気象データ)で充実化および/または関連付けてもよい。
【0146】
図4Bは、DHP406のより詳細な情報を提供するために示されている。例えば、
図4Bに示されるように、DHPは、サブシステム406a、406bを含んでいてもよい。サブシステム406a、406bはそれぞれ、DHP406のために別々の機能を実行してもよい。例えば、サブシステム406a、406bのそれぞれは、本明細書で説明するような、DHP406が実行する処理を促進または実行するデータベースまたは解析エンジンを備えていてもよい。本明細書で説明するように、サブシステム406aは運用サブシステムであってもよく、サブシステム406bは分析サブシステムであってもよい。DHP406は、追加のコンポーネントまたはサブシステムを含んでいてもよい。
図4Bは、DHP406が実行するように構成されている機能のいくつかと、DHP406がその機能をどのように実行するのかを説明することを意図したものである。すなわち、DHP406は、特定のデータベースまたはサブシステムを使用して記述されてもよいが、他の様々な記憶および処理技術を使用してDHP406を構成することもできる。
【0147】
前述したように、DHP406は、複数の異なるユーザに関連付けられているかもしれない吸入器401a-dから(例えば、それぞれペアリングされたユーザデバイスを介して)データを受信し、集約するように構成されている。いくつかの例では、DHP406は、1つ以上のサーバ上に存在していてもよく、DHP406に関連して説明した機能を実行するように構成されたコンピュータソフトウェアを含んでいてもよい。例えば、DHP406は、医療提供者(例えば、病院、病院システム、健康システム、医療グループ、医師、クリニック、および/または製薬会社)に関連付けられたコンピュータまたはサーバ408によりアクセスされ得る医療提供者(HCP)向け処理モジュール(例えば、本明細書ではダッシュボードアプリケーションとも呼ばれる)にデータを提供してもよい。いくつかの例では、ダッシュボードアプリケーションは、例えば、DHPによって公開された1つ以上の通信インタフェースを介して、DHP406に作用する、またはDHP406と他の方法で通信することができるウェブアプリケーション(例えば、ウェブポータル)である。例えば、DHPはまた、ダッシュボードアプリケーションの使用を通じて(例えば、通信インタフェースを介して)、データ(例えば、吸入器データ)を臨床医および医師に提供するように構成されている。
【0148】
DHP406は、ユーザデバイス(例えば、患者向けモバイルアプリケーション)に存在するエンドユーザまたは患者向け処理モジュールから吸入器データを受信し、これを格納するように構成されており、医療提供者に関連するコンピュータまたはサーバに存在する医療提供者向け処理モジュールに(例えば、ダッシュボードアプリケーションを介して)データを提供するように構成されている。吸入器データは、本明細書に記載の吸入器に関連して説明したデータ(例えば、使用イベント、エラーイベント、吸入プロファイル、関連するタイムスタンプ、薬剤タイプ)のいずれかを含んでいてもよい。吸入器データは、例えば、(例えば、ユーザデバイスに存在する)処理モジュールおよび/またはDHPにおいて、吸入器および/またはユーザプロファイルに関連付けられてもよい。後で詳細に説明するように、DHPは、特定のユーザからの吸入器データを匿名化(例えば、非識別化、関連付け無効化)してもよく、DHPは、吸入器に関する匿名化データに対して分析を実行し、吸入器データに関連付けられている特定のユーザがDHP(または、例えば、DHPのユーザ)によって認識されないようにしてもよい。
【0149】
多くの例では、DHP406は、吸入器401a-dに直接的に接続されておらず、このため、DHP406は、受信した使用データの完全性を検証(吸入器で直接的に検証)することができない。また、いくつかの例では、DHP406は、吸入器と通信することができず、吸入器は、DHP406と直接的に通信することができない。このため、使用イベントを捕捉している吸入器との通信ラインなしでDHP406がデータ検証を実行する方法についての技術的なプログラムが作成される。つまり、DHP406は、使用イベントを補足している吸入器と直接的に通信しないため、使用イベントのデータ検証を実行することができない。
【0150】
DHP406は、エンドユーザまたは患者向け処理モジュール(例えば、ユーザデバイスに存在する処理モジュール)との間でのデータ(例えば、吸入器データ)の転送を有効に(場合によっては、開始)するように構成されていてもよい。例えば、DHP406は、DHP406が保持するデータにアクセス、またはこれを更新するために使用することができる通信インタフェース(例えば、Representational State Transfer(REST)アプリケーションプログラミングインタフェース(API))を公開してもよい。また、DHP406は、公開された通信インタフェースを使用して、医療提供者向け処理モジュール(例えば、サーバまたはコンピュータ408で動作している処理モジュール)との間でのデータ(例えば、吸入器データおよび/または匿名化吸入器データ)の転送を有効に(場合によっては、開始)するように構成されていてもよい。これに応答して、ユーザデバイスに存在する処理モジュールは、DHPが公開した通信インタフェースを介してデータにアクセスすることができる。いくつかの例では、ユーザデバイスの処理モジュールは、例えば、DHP406が公開した通信インタフェースを介して、定期的(例えば、15分毎)に吸入データ(または、例えば、新たな吸入データがないことを示すもの)をDHP406に送信するように構成されていてもよい。DHP406は、ユーザデバイスに存在するそれぞれの処理モジュールを介して、患者のデータにアクセスすることについて患者の同意を得てもよい。さらに、DHP406はまた、専用のモバイルおよびウェブアプリケーション(例えば、ユーザデバイス402a、402bのエンドユーザまたは患者向け処理モジュール)からの受信データを格納してもよい。ここでも、DHP406は、公開された通信インタフェースを介して、この情報、受信データ等にアクセスすることについて患者の同意を得てもよい。
【0151】
DHPは、ユーザデバイスがDHP406に吸入器データを送信することを可能にし、外部デバイス(例えば、ユーザデバイス402a-dおよび/またはコンピュータもしくはサーバ408)がDHP406からデータを受信することを可能にするために、1つ以上の通信インタフェースを公開してもよい。DHP406は、DHP406との通信を試みるそれぞれの処理モジュールに基づいて、異なった通信インタフェースを公開してもよい。例えば、DHP406は、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールのために使用されるように設計された第1通信インタフェースと、医療提供者向け処理モジュール(例えば、本明細書ではダッシュボードアプリケーションとも呼ばれる)のために使用されるように設計された第2通信インタフェースとを公開してもよい。
【0152】
DHP406はエンドユーザまたは患者向け処理モジュールのための通信インタフェース(例えば、エンドユーザまたは患者向け通信インタフェース)を公開してもよい。そして、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、それぞれペアリングされた吸入器から受信した吸入器データを送信または転送するように構成されているので、エンドユーザまたは患者向け通信インタフェースは、吸入器データだけでなく、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールが吸入器データに対して実行するあらゆる計算または分析を通信するために効果的に使用されるように設計されていてもよい。いくつかの例では、エンドユーザまたは患者向け通信インタフェースは、予め定義されたフォーマット(例えば、JSON)で情報を送受信するように設計されていてもよい。
【0153】
DHP406は、ロールベースのアクセスチェック(RBAC)を可能にするために、エンドユーザまたは患者向け通信インタフェースを公開してもよい。例えば、DHP406のエンドユーザまたは患者向け通信インタフェースは、例えば、要求を行うユーザ、またはエンドユーザまたは患者向け処理モジュールが要求されたアクションを実行するアクセス権を持っているかどうかを決定するために、RBACが受信要求を承認できるようにしてもよい。RBACを可能にするために、DHP406が公開したエンドユーザまたは患者向け通信インタフェースは、エンティティチェック、ロールチェック、データアクセスチェック、および/または同意チェックを含んでいてもよい。これらのRBACチェックのそれぞれを実行するために、それぞれのユーザデバイスのエンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、エンドユーザまたは患者向け通信インタフェースを介してDHP406にユーザの指示を送信してもよい。
【0154】
DHP406は、エンティティチェックを使用して、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールのそれぞれのユーザ(例えば、ユーザ、またはユーザの保護者)のユーザプロファイルがDHP406内(例えば、運用サブシステム406a内)に存在するかどうかを判定する。エンティティチェックを実行するために、ユーザデバイスのエンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、ユーザ(例えば、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールのユーザ)の指示を送信してもよい。DHP406は、ユーザの指示を受信し、運用サブシステム406a内に当該ユーザのユーザプロファイルが存在するかどうかを判断してもよい。ユーザプロファイルが存在しない場合、DHP406は、要求を拒否することができる。一方で、DHP406が公開したエンドユーザまたは患者向け通信インタフェースは、エンティティチェックの例外(例えば、運用サブシステム406aにユーザプロファイルを追加する機能)を含んでいてもよい。その結果、ユーザのユーザプロファイルが存在しない場合、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、エンドユーザまたは患者向け通信インタフェースを使用してそのユーザのユーザプロファイルを追加する要求をDHP406に送信することができる。
【0155】
DHP406は、ロールチェックを使用して、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールのユーザがDHP406にアクセスするための正しい特権を有するかどうかを判定してもよい。例えば、DHP406にアクセスするためには、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールのユーザは、運用サブシステム406a内のユーザであるか、ユーザの親または保護者でなければならない。
【0156】
エンドユーザまたは患者向け通信インタフェースはデータアクセスチェックを含んでいてもよく、これは、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールのユーザが、そのユーザによって要求/変更されるデータ対するにアクセス権を有しているかどうかを判定するために使用されてもよい。例えば、データアクセスチェックは、患者またはそれぞれの保護者が自分のデータにのみアクセス/変更することができるようにするために使用されてもよい。つまり、ユーザが保護者または患者である場合、データアクセスチェックは、保護者によるアクセス/変更が可能なのは保護者自身または扶養家族のデータのいずれかのみであることを検証してもよい。
【0157】
DHP406が公開するエンドユーザまたは患者向け通信インタフェースは同意チェックを含んでいてもよく、これは、自分のデータがDHP406内に格納または保持されることについて同意または許可をしたかどうかをユーザが判定するために使用されてもよい。ユーザが同意を与えていない場合、同意チェックは、DHP406によって拒否されてもよい。一方で、同意チェックには例外(例えば、同意を変更する機能)があってもよい。エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、そのようなユーザの選択に応答して、ユーザが与えた同意(例えば、自分の情報がDHP406内に格納または保持されるかもしれないことについての同意または承認)を変更するために、公開されたエンドユーザまたは患者向け通信インタフェースを介してDHP406に指示を送信してもよい。
【0158】
ユーザが関連するRBACのすべてをクリアした後、DHP406は、エンドユーザまたは患者向け通信インタフェースを介して認証トークンをエンドユーザまたは患者向け処理モジュールに送信してもよい。トークンは、特定の期間に限って有効であってもよく、その後、エンドユーザまたは患者向けモジュールは、DHP406が提供する関連するRBACの再クリアを要求されてもよい。一方で、トークンが有効である間、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、DHP406に対してなされる将来のすべての要求に受信したトークンを含めてもよい。
【0159】
DHP406が公開したエンドユーザまたは患者向け通信インタフェースは、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールがDHP406に使用イベント(例えば、吸入イベント)を追加することを可能にしてもよい。DHP406に使用イベントを追加するためには、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールのユーザのユーザプロファイル(または、例えば、ユーザの親または保護者のユーザプロファイル)が運用サブシステム406a内に格納されていなければならない。
【0160】
DHP406に使用イベントを追加するために、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、有効なトークンを含む使用イベント追加要求をDHP406に送信してもよい。また、使用イベント追加要求は、関連する医療デバイスの識別子(例えば、関連する吸入器のシリアル番号)、関連する医療デバイス用の処方の識別子(例えば、これは、ユーザのアドヒアランスまたはコンプライアンスのレベルを示すことができる)、使用に関連付けられた時刻(例えば、吸入イベントが発生した時刻)、
および/または本明細書に記載される使用パラメータに基づいて実行された様々な使用パラメータ分析または計算の結果を含んでいてもよい。エンドユーザまたは患者向け通信インタフェースを介した使用イベント追加要求の受信に応答して、DHP406は、運用サブシステム406aからユーザのユーザプロファイルを取得し、関連する医療デバイスの識別子および関連する医療デバイス用の処方の識別子がユーザプロファイル内の医療デバイス/処方に一致することを確認してもよい。さらに、DHP406は、使用イベントに関連付けられた時刻に基づいて使用イベントが古いかどうかを判定してもよい。例えば、使用イベントに関連付けられた時刻が、現在の時刻から予め定められた期間(例えば、59秒)よりも大きい場合、その使用イベントは古いとみなされてもよい。
【0161】
DHP406が公開するエンドユーザまたは患者向け通信インタフェースは、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールがDHP406からデータを取得できるようにするかもしれない。本明細書で説明するように、DHP406からデータを取得するためには、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールのユーザが、運用サブシステム406a内のユーザであるか、ユーザの親または保護者でなければならない。
【0162】
データ検索を実行するために、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、有効なトークンを含むデータ検索要求をDHP406に送信してもよい。データ検索要求および有効なトークンに応答して、DHP406は、(例えば、inhalerSynchTimeフィールドに基づいて、)DHP406からユーザがデータを検索した最後の時刻を決定してもよい。その後、DHP406は、エンドユーザまたは患者向け通信インタフェースを介して、DHP406からユーザがデータを取得した最後の時刻以降に受信したすべての関連データを返してもよい。例えば、DHP406は、ユーザプロファイル情報、医療デバイス情報、モバイルデバイス情報、処方情報、投薬命令、ユーザ環境設定、投薬管理(例えば、使用イベント、吸入イベント等)、アンケート回答(例えば、自己評価回答)、および/または同種のもののうちの1つ以上を返してもよい。
【0163】
DHP406が公開するエンドユーザまたは患者向け通信インタフェースは、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールが未成年であるユーザを独立させることを可能にしてもよい。未成年であるユーザを独立させるためには、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールのユーザ(例えば、DHP406aの管理者)に、個人を独立させる権限が与えられていなければならない。
【0164】
独立を実行するために、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、有効なトークン(例えば、ユーザがDHP406の管理者であることを示す有効なトークン)を含む独立要求を、(例えば、公開されたエンドユーザまたは患者向け通信インタフェースを介して)DHP406に送信してもよい。さらに、独立要求は、関連する医療デバイスの識別子(例えば、吸入器のシリアル番号)を含んでいてもよい。例えば、関連する医療デバイスの識別子は、(例えば、運用サブシステム406aから)未成年であるユーザのユーザプロファイルをルックアップまたは検索するために使用されてもよい。
【0165】
また、独立要求は、未成年のユーザプロファイルを関連付けるアドレス(例えば、電子メールアドレス)を含んでいてもよい。独立要求は、独立するユーザの生年月日をさらに含んでいてもよい。これにより、DHP406は、要求に含まれる生年月日が、検索されたユーザプロファイルの生年月日と一致することを検証することができる。さらに、DHP406は、ユーザが独立を許可されていることを検証することができる。独立が許可される年齢は、ユーザの管轄または所在地によって異なるかもしれない。すなわち、いくつかの場所では、独立するユーザは18歳でなければならないが、他の場所では、独立可能な年齢は16歳、19歳(例えば、アラバマ州、ネブラスカ州)、または21歳(例えば、ミシシッピ州)かもしれない。したがって、DHP406は、ユーザの管轄または場所を判定し、ユーザの生年月日がその管轄または場所における独立ルールに従っていることを確認してもよい。独立が許可される場合、DHP406は、独立要求を受け入れ、もはや未成年者であるとはみなされないことを示すようにそのユーザのユーザプロファイルを更新してもよい。
【0166】
ユーザデバイス402a、402bで動作しているエンドユーザまたは患者向け処理モジュールから吸入器データを受信すると説明してきたが、いくつかの例では、吸入器401a-dの送信モジュールがDHP406と直接的に通信可能なセルラーチップセットを含む場合のように、DHP406は、吸入器401a-d自体からデータを直接的に受信してもよい。
【0167】
図4Bを参照すると、サブシステム406aは、運用サブシステムであってよい。運用サブシステム406aは、ユーザデバイス(例えば、ユーザデバイス402a-d)で動作しているエンドユーザまたは患者向け処理モジュールをサポートするという役割を担っている。運用サブシステム406aは、医療提供者に関連付けられたコンピュータまたはサーバ(例えば、コンピュータまたはサーバ408)のHCP向け処理モジュールもサポートしてもよい。本明細書で説明するように、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールおよびHCP向け処理モジュールは、モバイルアプリケーション(例えば、ユーザデバイスまたはコンピュータ/サーバにインストールされたもの)、またはウェブアプリケーション(例えば、ブラウザを介してウェブページを訪れることによって動作する、または実行されるもの)の形態で実装されていてもよい。例えば、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、例えば、DHP406が公開する通信インタフェースを介して、ユーザがデータ(例えば、吸入器データ)を送受信し、および/または他の方法でDHP406と対話するために設計されていてもよい。HCP向け処理モジュール(例えば、ダッシュボードアプリケーションとも呼ばれる)は、医療提供者(例えば、医療従事者および/または医療専門家)をサポートするように構成されたウェブアプリケーションとして設計されていてもよく、患者または対象者が同意した「プログラム」に特有の患者データに医療提供者がアクセスすることを可能にしてもよい。エンドユーザまたは患者向け処理モジュールと同様に、HCP向け処理モジュールまたはダッシュボードアプリケーションは、DHP406が公開する通信インタフェースを使用して、データの送受信または他の方法でDHP406と対話してもよい。
【0168】
DHP406はまた、分析および操作されたデータ(例えば、天候エンリッチメント、コンプライアンススコア、将来のコンプライアンススコア、リスクスコア等)を、ユーザデバイス402a、402b、または医療提供者に関連付けられたHCP向け処理モジュールを含むコンピュータ408に戻すように構成されている。さらに、または代替的に、DHP406および/またはユーザデバイス402a、402bは、エンドユーザまたは患者の住居に設置された1つ以上のスマートデバイスの制御を実行してもよい。例えば、DHP406および/またはユーザデバイス402a、402bは、例えば、本明細書でより詳細に説明するように、エンドユーザまたは患者の住居に設置されたスマートサーモスタットまたはHVACシステムの制御を実行してもよい。
【0169】
運用サブシステム406aが保持する情報は、ユーザプロファイルによって整理されていてもよい。例えば、本明細書で説明するように、ユーザプロファイルは、それぞれのユーザ(例えば、対象者または患者)について作成されてもよい。特に、ユーザプロファイルは、吸入器のユーザを特定することができる(例えば、ユーザの名前、年齢等を示すことができる)。さらに、ユーザプロファイルは、ユーザに関連付けられた(例えば、ユーザに処方された)吸入器を含んでいてもよい。例えば、ユーザプロファイルは、ユーザに処方された吸入器のそれぞれ、吸入器のそれぞれによって送達される薬剤、吸入器のそれぞれに関連付けられた投薬方法、関連付けられたユーザデバイス(例えば、モバイルアプリケーション)、ユーザの個別コンプライアンススコア、ユーザの将来の個別コンプライアンススコア、ユーザの個別リスクスコア、ユーザの個人情報(例えば、生年月日、性別等)、ユーザのHCP情報等を示していてもよい。また、それぞれのユーザプロファイルは、それぞれのユーザの関連データ(例えば、使用データ、自己評価回答等)を含んでいてもよい。例えば、ユーザプロファイルは、すべての使用イベント(例えば、吸入)のリストだけでなく、所定の使用イベントに関連付けられたそれぞれの吸入器データ(例えば、吸入パラメータ、吸入イベントの分類、時刻、場所等)を含んでいてもよい。さらに、いくつかの例では、ユーザプロファイルは、充実化された使用イベント(これには、例えば、充実化された使用パラメータが含まれる)を使用して生成されてもよい。
【0170】
また、ユーザプロファイルは、DHP406が集めたユーザについての補足情報を含んでいてもよい。例えば、ユーザプロファイルは、ユーザの毎日の自己評価回答を含んでいてもよく、これは、ユーザデバイスで動作しているエンドユーザまたは患者向け処理モジュールを介して、ユーザによりDHP406に定期的に(例えば、1日に1回、週に1回、月に1回の頻度で)提供されてもよい。
【0171】
所定のユーザのユーザプロファイルに、他のユーザのユーザプロファイルを閲覧するためのアクセス権または同意が与えられていてもよい。例えば、未成年であるユーザの親のユーザプロファイルに、そのユーザのユーザプロファイルを閲覧するためのアクセス権が与えられていてもよい(例えば、患者の親に、子供のユーザプロファイルにアクセスする機能が提供されていてもよい)。
【0172】
DHP406は、ユーザデバイス402a-dのエンドユーザまたは患者向け処理モジュールから受信した吸入器データを特徴付け、またはさらなる計算を実行してもよい。本明細書で説明するように、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールは、それぞれペアリングされた吸入器から受信した吸入器データ(および、例えば、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールが実行した任意の追加的な計算または分析の結果)をDHP406に転送してもよい。吸入器データの受信に応答して、DHP406は、吸入器データに関連付けられたユーザを特定し、そのユーザのユーザプロファイルに吸入器データを格納してもよい。例えば、本明細書で説明するように、DHP406が保持するユーザプロファイルは、運用サブシステム406aに格納されていてもよい。さらに、いくつかの例では、DHP406は、使用イベントの受信した吸入パラメータ(例えば、吸入流量プロファイル)から追加的な吸入パラメータを計算してもよい。さらに、DHP406は、運用サブシステム406aに格納されたデータ(または、例えば、そのサブセット)に対して分析を実行してもよい。例えば、DHP406は、傾向を特定するために運用サブシステム406aに格納されたデータに対して分析を実行してもよく、これは、その後、イベント(例えば、ユーザによる増悪)の可能性を検出または予測するために使用されてもよい。例えば、DHP406は、サブシステム406bを使用して、運用サブシステム406aに格納されたデータに対して分析を実行してもよい。運用サブシステム406aは、吸入パラメータをサブシステム406bに送信することができる。サブシステム406bは、コンプライアンスおよび/またはリスク情報(例えば、個別コンプライアンススコア、将来の個別コンプライアンススコアおよび/または個別リスクスコア)を決定するために、吸入パラメータを分析してもよい。サブシステム406bは、決定されたコンプライアンスおよび/またはリスク情報を運用サブシステム406aに送信することができる。
【0173】
DHP406は、吸入器データの受信に応答してデータを分析および操作するように構成されている。例えば、本明細書でさらに説明するように、DHP406は、受信した吸入器データを1つ以上の外部情報源からの情報(例えば、外部気象情報源からの気象データ)で充実または関連付けてもよい。また、DHP406は、データを集約および分析して、エンドユーザまたは患者に関連する1つ以上のメトリクス(例えば、個別コンプライアンススコア、将来の個別コンプライアンススコア、および/または個別リスクスコア)を決定してもよい。例えば、DHP406は、コンプライアンススコアが閾値を下回ったとき、将来のコンプライアンススコアが閾値を下回ったとき、および/またはリスクスコアが閾値を超えたときに、ユーザに関連するユーザデバイスに警告を送信し、および/または当該デバイスに表示するための通知を送信してもよい。コンプライアンススコア、将来のコンプライアンススコア、および/またはリスクスコアについての閾値は、増悪イベント(例えば、喘息、COPD、または他の呼吸器増悪イベント)のリスクの増加を示す、予め定められた数値またはパーセントであってよい。警告は、救助吸入器を近くに置いておくことをユーザに指示するかもしれない。追加的または代替的に、警告/通知は、どのようにすればユーザが処方された治療に対するコンプライアンスを改善することができるかを示していてもよい。
【0174】
DHP406は、複数の吸入器から受信した吸入器データ(例えば、吸入流量情報等の吸入パラメータ)を充実化してもよい。ここでも、複数の吸入器のそれぞれは、メモリ、プロセッサ、圧力センサまたは音響センサ、および/または無線通信回路を含むそれぞれのユーザに関連付けられていてもよい。また、それぞれのユーザは、複数の吸入器(例えば、1つ以上の救助吸入器および/または1つ以上の維持吸入器)に関連付けられていてもよい。それぞれの吸入器の圧力または音響センサは、吸入器の使用(例えば、ユーザによる吸入器の吸入)を検出し、吸入パラメータ(例えば、流量、PIF、吸入量、吸入持続時間、または最大吸入までの時間)を感知または測定するように構成されていてもよい。吸入パラメータは、ユーザのコンプライアンスを評価するために使用されてもよく、これにより、ユーザの呼吸器疾患の状態(例えば、患者が増悪イベントを経験する可能性)、および/または、現在のまたは変化する環境条件(例えば、暑さ、大気質、湿度等)に対する患者の感度についての有益な洞察が提供されるかもしれない。さらに、プロセッサは、ユーザによる吸入器の使用のそれぞれに応答して、吸入パラメータを構成する使用イベントを生成するように構成されていてもよい。
【0175】
DHP406は、例えば、ユーザデバイス402a、402bのそれぞれから複数の使用イベントを受信してもよい。使用イベントのそれぞれは、関連付けられた時刻(例えば、使用イベントが発生した時刻)、使用イベントの1つ以上の吸入パラメータ(例えば、PIF、吸入量、吸入持続時間、または最大吸入までの時間)、および/または使用イベントの地理的位置を含んでいてもよい。DHP406は、使用イベントに関連付けられたそれぞれの時刻および地理的位置を使用して、1つ以上の環境条件を充実化、または複数の使用イベントのそれぞれの吸入パラメータに関連付けてもよい。例えば、DHP406は、複数の使用イベントのそれぞれの吸入パラメータのそれぞれに、使用イベントに関連付けられたそれぞれの地理的位置をタグ(例えば、ジオタグ)付けしてもよい。吸入パラメータのそれぞれに地理的位置をタグ付けすることで、より正確な使用イベントの比較および分析が可能になるかもしれない。例えば、吸入パラメータにジオタグを付けることで、より正確なパターン検出、特定のユーザの吸入パラメータ(例えば、ひいてはそのユーザの呼吸器疾患)に影響を与える環境条件(例えば、湿度、温度、花粉、汚染等)の特定が可能になるかもしれない。さらに、DHP406は、自己評価回答を充実化または環境条件に関連付けてもよい。環境条件は、温度、湿度、外気汚染物質濃度、2.5ミクロン以下の粒状物質(PM2.5)の存在、10ミクロン以下の粒状物質(PM10)の存在、オゾン濃度、二酸化窒素(NO2)濃度または二酸化硫黄(SO2)濃度の任意の組み合わせを含むことができる。環境条件と様々な使用イベントとの関連付けにおいて、DHP406は、例えば、現在のまたは変化する環境条件(例えば、例えば、熱、大気質、湿度等)に対するユーザの感度を予測するために、使用イベントと様々な環境条件との関係または相関関係を決定することができてもよい。このように、DHP406はユーザの個別リスクスコアを決定することができ、これは、ユーザが将来的に増悪イベントを経験する可能性を予測するために使用されてもよい。ユーザの個別リスクスコアは、本明細書で説明するように、パターン検出を使用して決定されてもよい。
【0176】
いくつかの例では、充実化手順は、使用イベントまたは自己評価回答に関連付けられたそれぞれの時刻および地理的位置における環境条件を取得するために、1つ以上の外部気象情報源に問い合わせることを含んでいてもよい。DHP406は、使用イベントおよび自己評価回答の充実化手順を一定期間待機してから、または一定時間遅延させて開始してもよい。この遅延時間は、問い合わせる環境条件のタイプによって異なっていてもよい。例えば、特定の環境条件(例えば、温度および/または湿度)を問い合わせる場合の時間遅延は、他の環境条件(例えば、花粉および/または大気質)を問い合わせる場合の時間遅延より短くてもよい。
【0177】
サブシステム406bは、分析サブシステムであってもよい。いくつかの例では、分析サブシステム406bは、運用サブシステム406aが保持する様々なユーザプロファイルからの匿名化データを含んでいてもよい。本明細書で説明するように、分析サブシステム406b内の匿名化データは、データ研究目的または他の分析クエリのために使用することができる。例えば、分析サブシステム406b内の匿名化データは、ユーザを特定するために使用され得る情報(例えば、名前、年齢等)が除去されていること、または他の方法で難読化されている(例えば、特定可能な情報がハッシュ化されている)ことを除いて、運用サブシステム406a内に保持されているデータ(または、例えば、そのサブセット)を含んでいてもよい。さらに、ユーザは、自分のユーザプロファイル内のそれぞれの情報が匿名化され、その後、分析サブシステム406b内に格納されることについて同意してもよいし、他の方法で承認を与えてもよい。例えば、DHP406は、データを分析サブシステムに提供する前に、吸入器データを匿名化(例えば、特定のユーザプロファイルとの関連付けを解除)してもよい。本明細書でさらに詳細に説明するように、DHP406は、匿名化された吸入器データを集約し、例えば、集約された匿名化データにおける特定のパターン(例えば、傾向)を特定するために、匿名化データに対して分析を実行してもよい。その後、DHP406は、匿名化された吸入器データおよび/または任意の特定されたパターン(例えば、傾向)を使用して、所定のユーザに関連付けられた吸入器データに対する分析を実行し、例えば、ユーザの個別コンプライアンススコア、将来の個別コンプライアンススコアおよび/または個別リスクスコアを決定してもよい。しかしながら、必ずしもそうではなく、他の例では、DHP406は、特定データを分析サブシステムに提供してもよい。
【0178】
DHP406は、追加コンポーネントまたはサブシステムを含んでいてもよく、
図4Bは、限定的な例であることを意図したものではない。むしろ、
図4Bは、DHP406が実行するように構成されている機能のいくつかと、どのようにしてDHP406がこの機能を実行するのかを説明することを意図したものである。すなわち、DHP406は、特定のデータベースまたはサブシステムを使用して説明されているが、様々な他の適切な技術を使用してDHP406を構成してもよい。
【0179】
分析サブシステム406bへのアクセスは、厳密な認証プロトコルによって管理されていてもよい。例えば、特定の分析者または臨床医のみが、分析サブシステム406bへのアクセスを許可されていてもよい。さらに、運用サブシステム406aは、分析サブシステム406bが保持する特定の情報へのアクセスを許可されていてもよい。分析サブシステム406bへのアクセスが許可された後、分析者または臨床医は、分析サブシステム406b内の匿名化データに基づいて様々なテストまたは手順を実行してもよい。例えば、分析者または臨床医は、分析サブシステム内の匿名化データを使用して、新しい治療、薬剤、分析手順等を開発してもよい。
【0180】
分析サブシステム406bは、機械学習および/または予測モデリング技術を採用してもよい。分析サブシステム406bは、1つ以上の機械学習アルゴリズムを含んでいてもよく、これには、例えば、インスタンスベースのアルゴリズム(例えば、k近傍(kNN)、学習ベクトル量子化(LVQ)、自己組織化マップ(SOM)、局所重み付け学習(LWL)、サポートベクターマシン(SVM))、回帰アルゴリズム(例えば、線形回帰アルゴリズム、ロジスティック回帰アルゴリズム)、決定木アルゴリズム、ベイジアンアルゴリズム(例えば、単純ベイズ分類器)、アンサンブルアルゴリズム(例えば、加重平均アルゴリズム)等があるが、これらには限定されない。
【0181】
分析サブシステム406bは、吸入器から受信した過去の匿名化データを使用してアルゴリズムを訓練してもよい。分析サブシステム406bは、教師なし学習法または教師あり学習法(例えば、勾配降下法または確率的勾配降下学習法が挙げられるが、これらには限定されない)により、訓練データを使用してアルゴリズムを訓練してもよい。教師なし学習法とは、訓練データにラベルを使用しない機械学習の一種である。教師なし学習法は、訓練データと当該訓練データに対応するラベルとの相関関係ではなく、訓練データ自体のパターンを特定および分類する人工ニューラルネットワークを学習するための学習法である。教師なし学習法の例には、クラスタリングおよび独立成分分析が含まれている。例えば、教師なし学習法は、k-meansまたはc-meansクラスタリング法を含んでいる。k-meansクラスタリング法は、訓練データを異なるクラスタにグループ化することができ、ここで、kは、予め定められた作成されるべきクラスタの数である。k-meansクラスタリング法は、訓練データのインスタンスのそれぞれが類似の特徴を有する1つの(例えば、1つのみの)グループに属するように、訓練データをk個のクラスタに分割する反復アルゴリズムである。c-meansクラスタリング法は、訓練データを異なるクラスタにグループ化することができ、ここで、訓練データのインスタンスのそれぞれには、それが1つ以上のクラスタに属する可能性および/または確率が割り当てられる。つまり、c-meansクラスタリング法における訓練データのインスタンスは、複数のクラスタに属していてもよく、複数のクラスタのそれぞれについての可能性が割り当てられている。
【0182】
教師あり学習法は、ラベル付き訓練データを使用して機械学習アルゴリズムを訓練する。訓練データを受信すると、教師あり学習法は、機械学習アルゴリズムが適切に重み付けされるまで、重みを調整することができる。教師あり学習法は、損失関数を使用して機械学習アルゴリズムの精度を測定することができる。教師あり学習法は、誤差が所定の閾値より小さくなるまで、重みの調整を続けてもよい。教師あり学習法は、勾配ブースト決定木を含んでいてもよい。勾配ブースト決定木は、弱い学習器を組み合わせて損失関数を最小化することができる。例えば、回帰木は、分割の実数値を出力して足し合わせるために使用することができる。弱い学習器は、例えば、最大レイヤー数、最大ノード数、最大分割数等について制約があるかもしれない。木は、機械学習アルゴリズムに1つずつ追加されてもよく、既存の木は、変更されないままであってもよい。勾配降下手順を使用することにより、木を追加するときの損失を最小化してもよい。例えば、(例えば、勾配に従って)損失を低減するために、追加の木を追加してもよい。この場合、追加の木をパラメータ化し、そのパラメータを変更することにより損失を低減させてもよい。教師あり学習法は、XGBoostアルゴリズムを含んでいてもよい。XGBoostアルゴリズムは、速度および/または性能のために設計された勾配ブースト決定木の実装を含んでいてもよい。XGBoostアルゴリズムは、欠落したデータ値を自動的に処理したり、ツリー構築の並列化および/または継続的な訓練をサポートしたりすることができる。
【0183】
訓練データは、ラベル付きデータおよびラベルなしデータの任意の組み合わせを含んでいてもよい。例えば、吸入器から受信した過去の匿名化データは、ラベル付きデータの一例であってもよい。すなわち、データは、吸入器またはモバイルデバイスから受信したデータ、または運用サブシステム406aによって計算されたデータの任意の組み合わせを含んでいてもよく、このようなデータとしては、例えば、吸入イベントの日、時刻および/または場所、吸入パラメータ、生体パラメータ、環境条件、毎日の自己評価(SA)回答等(例えば、表1を参照して説明される要素のいずれか)を挙げることができる。さらに、運用サブシステム406aは、例えば、吸入器からの受信データに基づいて、使用イベントの吸入パラメータ、地理的位置および/または環境条件を特定してもよい。さらに、運用サブシステム406aは、ユーザによる手動データ入力および/または医療提供者からのデータの受信に基づいて、ユーザが増悪イベントを経験したことを決定してもよい。
【0184】
分析サブシステム406b内の過去の匿名化データは、様々な機械学習システムおよび/または予測モデルに入力されてもよい。これに応じて、機械学習システムおよび/または予測モデルは、入力された匿名化データに基づいて、本明細書でより詳細に説明するように、ユーザの処方された治療に対するコンプライアンスを評価するため、および/または将来のイベントの可能性(例えば、喘息増悪、COPD増悪またはCF増悪等の呼吸器増悪イベントの可能性、または処方された治療に対する将来のコンプライアンスの可能性)を予測するために使用されてもよい。例えば、機械学習システムおよび/または予測モデルは、特定のユーザについて、増悪の可能性の増加および/またはコンプライアンスの不足につながる属性、環境および/または状況(例えば、吸入パラメータ、気象条件、最近の増悪回数、最近の救助薬および/または維持薬使用イベントの回数、第3者から受信した健康関連データ等)を検出するために使用されてもよい。
【0185】
DHP406は、少なくとも1つの使用イベントに関連付けられたそれぞれのユーザの個別コンプライアンススコア、将来の個別コンプライアンススコアおよび/または個別リスクスコアを決定してもよい。いくつかの例では、スコアは、運用サブシステム406aによって、または匿名化データ(例えば、所定のユーザの特定データと他のユーザに関連する匿名化データとの組み合わせ)を使用する分析サブシステム406bによって決定されてもよい。本明細書に記載されるように、コンプライアンススコアは、自分自身の1つ以上の吸入器の使用においてユーザがどの程度コンプライアンスを遵守していたかを示すことができ、将来のコンプライアンススコアは、自分自身の1つ以上の吸入器の使用においてユーザが今後どの程度コンプライアンスを遵守するのかについての予測を示すことができ、リスクスコアは、ユーザの呼吸器疾患の状態(例えば、患者が増悪イベントを経験する可能性)を示すことができる。個別コンプライアンススコア、将来の個別コンプライアンススコアおよび/または個別リスクスコアは、現在のまたは変化する環境条件(例えば、暑さ、大気質、湿度等)に対するユーザの感度を示していてもよい。DHP406は、ユーザの吸入パラメータへのアクセス権を有しているので、DHP406が決定したスコアは、ユーザの呼吸器疾患の状態(例えば、ユーザのコンプライアンス、将来のコンプライアンスおよび/または患者が増悪イベントを経験する可能性)、または現在のまたは変化する環境条件(例えば、暑さ、大気質、湿度等)に対する患者の感度についての有益な洞察を提供することができる。
【0186】
個別コンプライアンススコア、将来の個別コンプライアンススコアおよび/または個別リスクスコアは、それぞれのユーザプロファイルに関連付けられた吸入器の吸入データ(例えば、最大吸入流量、吸入量等の特定の吸入パラメータ)、DHP406および/またはエンドユーザ向けもしくは患者向け処理モジュールが実行した分析の結果(例えば、分析サブシステム406bが保持する集約された匿名化吸入器データに対して実行された分析の結果、および/または集約されたデータにおける任意の特定された傾向)、および/または、DHP406および/またはエンドユーザ向けもしくは患者向け処理モジュールが実行した任意の充実化についての情報に基づいていてもよい。例えば、DHP406は、分析サブシステム406bが保持する集約された匿名化吸入器データについての分析を実行して、集約されたデータにおける特定の傾向を特定してもよい。その後、DHP406は、特定された傾向のいずれかが所定のユーザの吸入器データと相関するか否かを判定(例えば、そのユーザに関連する吸入器データが他のユーザの匿名化吸入器データと同様であるか否かを判定)してもよい。DHP406はさらに、ユーザの呼吸器疾患の状態(例えば、患者が増悪イベントを経験する可能性)、および/または現在のまたは変化する環境条件(例えば、暑さ、大気質、湿度等)に対する患者の感度を評価するために、そのユーザの吸入データと他のユーザの匿名化吸入データとの間の任意の相関関係を使用してもよい。
【0187】
本明細書で説明するように、分析サブシステム406bは、例えば、特定のパターン/傾向を特定するために、集約された匿名化吸入器データに対して分析を実行してもよい。分析の結果および/または特定された傾向は、分析サブシステム406bと運用サブシステム406aとの間で共有されてもよい。
【0188】
個別リスクスコアは、ある範囲のリスクスコアから決定されてもよく、所定のユーザが特定の医療イベント(例えば、増悪イベント)を経験する可能性を示していてもよい。例えば、個別リスクスコアが高ければ高いほど、患者が増悪イベントを経験する可能性は高くなる。同様に、個別リスクスコアが低ければ低いほど、患者が増悪イベントを経験する可能性は低くなる。例えば、リスクスコアは、10段階評価または100段階評価であってもよく、数字が大きければ大きいほど増悪のリスクが高いことを示している。
【0189】
DHP406は、ユーザの個別コンプライアンススコア、将来の個別コンプライアンススコアおよび/または個別リスクスコアを決定する際に、様々な要因を考慮してもよい。さらに、所定の患者または対象者のリスクスコアを決定する際に考慮される要因は、運用サブシステム406aが保持するユーザのユーザプロファイル内に格納または他の方法で示されていてもよい。例えば、個別コンプライアンススコア、将来の個別コンプライアンススコアおよび/または個別リスクスコアを決定する際に考慮される要因には、ユーザの救助および維持使用イベントの使用イベントに関連付けられたそのユーザの吸入パラメータ;使用イベント(例えば、維持イベントおよび/または増悪イベント)の場所、時刻および対応する気象情報;直近の使用イベント(例えば、維持対救助)のタイプ;所定の期間(例えば、直近の1日から直近の1週間または1ヶ月の間の任意の期間)内にユーザが経験した増悪の頻度;ユーザに処方されたプログラムに対する患者のアドヒアランスまたはコンプライアンス(例えば、過去1週間または1ヶ月のような所定の期間内における、患者による救助および/または維持使用イベントの回数);ユーザの自己評価回答;ユーザの現在位置の環境要因;ユーザの位置おける現在時刻;および前述の要因間の相関関係が含まれていてもよい。
【0190】
個別コンプライアンススコア、将来の個別コンプライアンススコアおよび/または個別リスクスコアは、パターン検出を使用して決定されてもよい。DHP406は、教師ありまたは教師なしの機械学習アルゴリズムを使用して、ユーザに関連付けられた1つ以上のパターン(例えば、傾向)を特定してもよい。ユーザに関連付けられたパターンは、本明細書で説明される1つ以上の要因を使用して決定されてもよい。DHP406(例えば、機械学習アルゴリズム)は、複数のユーザに関連付けられた複数のパターンを特定してもよい。複数のユーザに関連付けられた複数のパターンは、本明細書で説明される要因を使用して決定されてもよい。DHP406は、ユーザに関連付けられた1つ以上のパターンを、複数のユーザに関連付けられたパターンと比較してもよい。DHP406は、ユーザに関連付けられたパターンと、複数のユーザに関連付けられた複数のパターンのうちの1つ以上との間の1つ以上の類似性を特定してもよい。DHP406は、ユーザのパターンに最も類似している使用イベント(例えば、これは吸入パラメータを含んでいる)のパターンを特定し、特定されたパターンに続く期間において特定されたパターンのユーザにどのような変化が起こったのか(例えば、よりコンプライアンスになった、増悪を経験した等)を決定してもよい。特定されたパターンの他のユーザにどのような変化が起こったのかに基づいて(例えば、その後の使用イベントに基づいて)、DHP406は、そのユーザについての個別コンプライアンススコア、将来の個別コンプライアンススコアおよび/または個別リスクスコアを決定してもよい。さらに、機械学習アルゴリズムは、1つ以上の要因のそれぞれにランキングを付けてもよい。このように、機械学習アルゴリズムは、パターン検出(および、例えば、コンプライアンススコア、将来のコンプライアンススコアまたはリスクスコアのいずれであるかはさておき、最終的にはスコア)に対する影響が大きい、または小さい要因を特定することができる。
【0191】
前述したように、個別コンプライアンススコア、将来の個別コンプライアンススコアおよび/または個別リスクスコアは、ユーザの現在位置に関連付けられた1つ以上の環境条件(例えば、ユーザデバイス402a、402bの位置)に基づいていてもよい。例えば、個別コンプライアンススコア、将来の個別コンプライアンススコアおよび/または個別リスクスコアは、ユーザの位置の現在の環境条件、およびユーザの複数の使用イベントの環境条件と吸入パラメータとの間の関係に基づいていてもよい。別の例では、個別コンプライアンススコア、将来の個別コンプライアンススコアおよび/または個別リスクスコアは、さらに、または代替的に、ユーザに関連付けられた多くの直近の吸入パラメータとユーザの吸入パラメータの過去の平均値との比較に基づいていてもよい。
【0192】
DHP406は、ユーザの個別コンプライアンススコア、将来の個別コンプライアンススコアおよび/または個別リスクスコアを決定する際に、そのユーザに関連する健康およびフィットネスデータを考慮してもよい。例えば、本明細書で説明するように、ユーザの吸入器データは、(例えば、エンドユーザまたは患者向け処理モジュールによって、)ユーザに関連付けられた特定の健康およびフィットネスデータで充実化されてもよい。ユーザの健康またはフィットネスデータには、肥満度(BMI)、心拍数、体重、身長、歩数(例えば、歩数の日平均)、消費カロリー等が含まれていてもよい。そして、ひいては、DHP406は、個別コンプライアンススコア、将来の個別コンプライアンススコアおよび/または個別リスクスコアを決定する際に、ユーザの健康およびフィットネスデータを考慮してもよい。
【0193】
さらに、ユーザの個別コンプライアンススコア、将来の個別コンプライアンススコアおよび/または個別リスクスコアは、分析サブシステム406bが保持し得る特定のグローバル要因(例えば、DHP406に自分のそれぞれのユーザプロファイルの匿名化セットに対する分析を実行する権限を与える複数のユーザから特定される要因)も考慮したものであってもよい。例えば、ユーザの個別リスクスコアは、気象条件が同一または実質的に同一な、同一または実質的に同一な場所にいる他の対象者または患者の増悪の頻度を考慮したものであってもよい。ユーザの個別コンプライアンススコア、将来の個別コンプライアンススコアおよび/または個別リスクスコアを決定する際に、ユーザの要因は、一般集団に関連する要因よりも重く重み付けされてもよい。
【0194】
本明細書でより詳細に説明するように、DHP406は、例えば、1つ以上の吸入パラメータおよび環境条件に基づいて、予測モデル(例えば、決定木モデル、勾配ブーストモデル、adaboostモード、重み付けモデル等)のような機械学習を使用して個別コンプライアンススコア、将来の個別コンプライアンススコアおよび/または個別リスクスコアを決定してもよい。予測モデルは、1つ以上の関係(例えば、複数の使用イベントの様々な環境条件と吸入パラメータとの間の関係)に基づいていてもよい。例えば、それぞれのユーザの個別スコアを決定するために使用される予測モデルは、1つ以上の関係(例えば、複数の使用イベントの様々な環境条件と吸入パラメータとの関係、ユーザの現在位置に関連付けられた1つ以上の環境条件の関係、他のユーザからの複数の使用イベントの環境条件と吸入パラメータとの関係)に基づいていてもよい。
【0195】
予測モデルの様々な関係の重みは、例えば、そのユーザの個別スコアを生成する際に、ユーザ間で異なっていてもよい。例えば、予測モデルは、環境条件とユーザに関連付けられたそれぞれの吸入パラメータとの関係に適用される重みを、環境条件と他のユーザの1人に関連付けられたそれぞれの吸入パラメータとの関係に適用される重みより高くしてもよい。
【0196】
さらに、DHP406が使用する予測モデルは、これらの要因に対するユーザの過去の感度に基づいて、予測モデルにおいて要因(例えば、吸入パラメータ、気象または環境条件、および/または使用傾向)に異なった重み付けをしてもよく、このような個別的な重み付けの結果として、ユーザの個別スコアが生成されてもよい。例えば、DHP406は、それぞれのユーザの過去の傾向を補償するために、予測モデルにおけるそれぞれの重みにオフセット重みを適用してもよい。特に、DHP406は、低下した吸入パラメータ(例えば、PIFおよび吸入量)と救助吸入器使用イベントの発生との間の傾向および相関関係を認識するように構成されている。本明細書で説明するように、これらの傾向は、ユーザの呼吸器疾患の状態(例えば、患者が増悪イベントを経験する可能性)および/または現在のまたは変化する環境条件(例えば、暑さ、大気質、湿度等)に対するユーザの感度に関する有益な洞察を提供するかもしれない。さらに、DHP406は、その特定のイベントの最中に取得された吸入パラメータに基づいて、救助吸入器使用イベントの重大性を決定するように構成されている。このように、DHP406は、ユーザの過去の吸入パラメータに基づいて、ユーザの個別スコアを生成するように構成されている。
【0197】
前述の要因に基づいて、DHP460は、特定のユーザが1つの環境要因(例えば、湿度)に対して平均よりも高い(または低い)感度を持っているため、そのユーザの将来の個別コンプライアンスおよび/またはリスクスコアは、高湿度な場所にいるときに増加するだろうと結論付けてもよい。例えば、DHP406は、特定のユーザに関し、湿度等の条件が閾値(例えば、70%)を超える環境にいるときに、(例えば、そのユーザおよび/またはグローバル集団についての、DHP406が収集したデータセットの平均と比較して、)1つの吸入パラメータ(例えば、吸入量)が減少する傾向にあることを決定してもよい。これに応じて、DHP406は、ユーザの将来の個別コンプライアンスおよび/またはリスクスコアを計算する際に、湿度に対するオフセット重みを含んでいてもよい。
【0198】
さらなる例において、DHP406は、他のユーザに関し、呼吸器増悪を経験する前に維持吸入器使用イベントにおいてPIF値が低下する傾向があることを認識するよう構成されていてもよい。したがって、DHP406は、ユーザの個別リスクスコアを生成する際に、「過去3日間と比較した今日の吸入最大流量の変化率」に適用される重みを増加させるために、オフセット重みを追加するよう構成されている。
【0199】
表1は、特定の要因、または属性、および関連付けられた重みの非限定的な例であり、これらは、スコア(例えば、ユーザの個別コンプライアンススコア、ユーザの将来の個別コンプライアンススコアおよび/またはユーザの個別リスクスコア)を決定する際に、DHP406によって利用されることがある。本明細書で述べるように、重みは、機械学習アルゴリズムの副産物であってもよく、例えば、特定のスコア(ユーザの個別コンプライアンススコア、ユーザの将来の個別コンプライアンススコア、および/はユーザの個別リスクスコア)を決定する際に特定の要因/属性の相対的有意性を示してもよい。
[表1]
【0200】
DHP406は、ユーザが増悪を経験する可能性が高いとの判定をしたとき、例えば、ユーザの個別リスクスコアが呼吸器増悪の可能性が高いことを示す閾値(例えば、7)を超えたときに、そのユーザに関連付けられたユーザデバイスに警告を送信してもよい。ユーザデバイスは、警告を生成してもよいし、ユーザの吸入器の1つ以上にメッセージを送信して、その吸入器にユーザに向けた警告を生成させてもよい。警告は、スピーカが生成する可聴ノイズ、光源が生成する照明光、ユーザデバイスが表示するGUI等のいずれか1つ以上であってもよい。警告は、救助吸入器を近くに置いておくことをユーザに指示してもよい。さらに、閾値は、例えば、機械学習アルゴリズムによる出力と比較される、ユーザが呼吸困難に陥ったり、近い将来(例えば、12時間のような次のX時間以内、または1日のような数日以内)に呼吸救助薬を使用する必要性を感じたりする可能性が高いことを意味する所定の値とすることができる。
【0201】
同様に、DHP406によって特定のユーザが特定の環境条件に対して特に敏感であるとの判定がなされたことに基づいて(例えば、特定の環境条件に関連付けられた使用イベントにおいて、そのユーザの吸入パラメータが減少したことに基づいて)、DHP406は、ユーザの現在位置に関連付けられた1つ以上の環境条件に基づいてユーザに警告を送信してもよい。前述したように、DHP406は、使用イベントに関連付けられた時刻および地理的位置を使用して、使用イベントの吸入パラメータに関連付けられた1つ以上の環境条件を決定してもよい。吸入パラメータと環境条件との相関関係(例えば、湿度70%以上で使用イベントが発生するとPIFが20%低下する)に基づいて、DHP406は、ユーザの現在位置に関連付けられた1つ以上の環境条件が閾値を上回っていると判定したときに、ユーザに関連付けられたユーザデバイスに警告を送信してもよい。閾値は、例えば、特定の環境条件に対するユーザの一般的な感度に基づく、ユーザ固有のもの(例えば、ユーザ毎に異なるもの)であってもよい。
【0202】
DHP406は、ユーザの個別コンプライアンススコアを生成してもよい。ユーザの個別コンプライアンススコアは、ユーザが薬剤を服用する際にどの程度コンプライアンスを遵守していたかを示すことができる。例えば、コンプライアンススコアは、ユーザが1つ以上の吸入器を介してどの程度うまく吸入したか、つまり、例えば、十分に深く(これは、例えば、PIFから知ることができる)、十分に長く(これは、例えば、吸入量から知ることができる)吸入することができたかを示していてもよい。さらに、いくつかの例では、コンプライアンススコアは、(例えば、ユーザが維持薬とともに1つ以上の吸入器を処方された状況において、)処方された服用スケジュールに対するユーザのアドヒアランスを示すものを含んでいてもよい。DHP406は、本明細書に記載の機械学習アルゴリズム(例えば、教師なしモデル)の1つ以上を使用して、コンプライアンススコアを生成してもよい。いくつかの例では、高いコンプライアンススコアは、吸入器の使用に対するユーザのコンプライアンスが高いことを示し、低いコンプライアンススコアは、吸入器の使用に対するユーザのコンプライアンスが低いことを示していてもよい。
【0203】
DHP460は、ユーザの将来のコンプライアンススコアを生成してもよい。ユーザの将来の個別コンプライアンススコアは、ユーザが薬剤を服用する際にどの程度コンプライアンスを遵守していたか、つまり、例えば、十分に深く(これは、例えば、PIFから知ることができる)、十分に長く(これは、例えば、吸入量から知ることができる)吸入したかを示すことができる。さらに、いくつかの例では、将来のコンプライアンススコアは、(例えば、ユーザが維持薬とともに1つ以上の吸入器を処方された状況において、)処方された服用スケジュールに関してユーザがどの程度忠実であるのかについての予測を含んでいてもよい。DHP406は、本明細書に記載の機械学習アルゴリズム(例えば、教師なしモデルまたは教師ありモデル)の1つ以上を使用して、将来のコンプライアンススコアを生成してもよい。いくつかの例では、高い将来のコンプライアンススコアは、将来的にユーザが吸入器の使用を遵守する可能性が高いことを示し、低いコンプライアンススコアは、将来的にユーザが吸入器の使用を遵守しないとの予測を示していてもよい。
【0204】
DHP406は、ユーザの将来のコンプライアンススコアを改善するための1つ以上の提案を生成してもよい。DHP406は、例えば、将来のコンプライアンススコアを改善するために、ユーザが改善すべき属性を決定してもよい。例えば、DHP406は、訓練された機械学習アルゴリズムを使用して、改善すべき属性を決定してもよい。属性には、異なる時刻に維持薬を服用すること、将来の使用イベントのPIFを増加させること、および/または将来の使用イベントの吸入量を増加させることが含まれていてもよい。DHP406は、属性のそれぞれの有意係数を決定してもよい。DHP406は、有意係数に基づいて、改善する属性を決定してもよい。有意係数は、機械学習アルゴリズムによるユーザの将来のコンプライアンススコアの決定におけるそれぞれの属性の重み、および、例えば、訓練データセット内のすべてのユーザについてのその属性の平均に基づいた個々のユーザの属性(例えば、機械学習モデルの訓練データセットを構成する他の使用イベントのPIFと比較した、ユーザの相対的なPIF)に基づいていてもよい。DHP406は、コンプライアンスを改善するために、最も有意性の高い属性を改善すべきことをユーザに提案してもよい。追加的または代替的に、DHP406は、(例えば、ディスプレイデバイスを介した)通知において、ユーザにランク付けされたリストを示してもよく、これにより、例えば、ユーザがどの属性の改善を試みるべきかをユーザおよび/またはユーザの医療提供者が決定できるようにしてもよい。
【0205】
DHP406および/またはユーザデバイス402a、402bは、DHP406および空間における現在の環境条件によって決定された個別コンプライアンススコア、将来の個別コンプライアンススコアおよび/または個別リスクスコアを使用して、患者が増悪を経験する可能性に影響を与えるかもしれない特定のスマートデバイスまたは家電製品(例えば、処理機能および通信機能を有するデバイスまたは家電製品)を制御または調整してもよい。例えば、DHP460および/またはユーザデバイス402a、402bは、現在地に設置された1つ以上のスマートデバイス(例えば、ユーザの自宅にあるスマート暖房換気空調(HVAC)システム)を制御するように構成されていてもよい。さらに、個別コンプライアンススコア、将来の個別コンプライアンススコアおよび/または個別リスクスコアに加えて、患者が増悪を経験する可能性に影響を与えるスマートデバイスまたは家電製品の制御および/または調整は、ユーザの居場所、および/またはその場所の過去、現在または将来の気象条件を考慮してもよい。
【0206】
スマートHVACユニットに関しては、例えば、DHP460および/またはユーザデバイス402a、402bは、例えば、
図5Eに示されているように、スマートHVACシステムの湿度および/または温度のレベルを制御または調整することができる。例えば、DHP406は、スマートHVACが存在する空間の現在の湿度および温度のレベルを取得することができる。その後、ユーザの個別スコア、ユーザの居場所、および/またはその場所における過去、現在または将来の気象条件に基づいて、DHP460および/またはユーザデバイス402a、402bは、患者が増悪イベントを経験する可能性を低下させるために、HVACシステムの設定湿度および/または設定温度を制御または調整することができる。例えば、80%を超える湿度レベルおよび/または75℃を超える温度レベルは、状況によっては、増悪イベントの可能性を高めるかもしれない。そして、例えば、患者の個別スコアが、高湿度および/または高温にさらされた場合に患者が増悪イベントを経験する可能性が高まることを既に示している場合、DHP460および/またはユーザデバイス402a、402bは、HVACシステムを制御して、内部の湿度レベルを80%未満に、および/または温度レベルを75℃未満に調整することができる。
【0207】
さらに、いくつかの実施例では、DHP460および/またはユーザデバイス402a、402bは、(例えば、ユーザデバイスの位置に基づいて)ユーザの居場所を決定し、ユーザがその場所に到達する前に実行されるようにHVACシステムの調整を連動させることができる。例えば、DHP460および/またはユーザデバイス402a、402bは、ユーザがその場所から所定の距離だけ離れた場所にいると判定された場合に、HVACシステムを制御して設定湿度および/または設定温度を調整することができる。
【0208】
本明細書で説明するように、DHP406は、1つ以上の外部情報源から受信した吸入器データを充実化または関連付けることができる。
図5Aは、吸入器データを充実化するための例示的な手順500を示している。例えば、手順500は、抽出、変換、読込(ETL)外部気象情報源を使用することができる。手順500は、DHP406によって実行されてもよい。手順500は、例えば、設定可能なアラームまたはスケジュールに従って定期的に実行されてもよい。例えば、手順500は、定期的に(例えば、15分毎に)実行されてもよい。さらに、または代替的に、手順500の実行頻度は、例えば、DHP406が受信した吸入器データの量に応じて変化してもよく、例えば、DHP406が受信した吸入器データの量が増加したときに実行されてもよい。
図5Aに示されているように、手順500は、501から始まる。
【0209】
502において、DHP406は、受信した吸入器データのインスタンスの生レコードを取得することができる。例えば、取得された生吸入器データは、受信した吸入器データにおける最後に処理された生レコードの後で、次に受信した吸入器データのインスタンスであってもよい。受信した吸入器データのインスタンスの生レコードは、本明細書で説明するように、ユーザデバイスからDHP406に送信された生情報または生データ(例えば、JavaScriptオブジェクト表記(JSON)形式のような特定の形式を有するもの)を含んでいてもよい。生吸入器データを取得した後、DHP406は、504において、イベントタイプを特定するために生吸入器データを解析することができる。例えば、特定されたイベントタイプは、自己評価(例えば、本明細書に記載されるように、ユーザデバイスのエンドユーザまたは患者向け処理モジュールを使用してユーザが提供する毎日の自己評価)、使用イベント(例えば、吸入器の吸入)、所定の使用イベント(例えば、低吸入、適正吸入、良吸入、呼気および通気口遮断イベント)に割り当てられた分類等のうちの1つを含んでいてもよい。さらに、または代替的に、特定されたイベントタイプは、ユーザデバイスで動作している1つ以上の第3者アプリケーション(例えば、Apple Healthアプリ)、または別のユーザデバイス(例えば、FitBit、Apple Watch)によって検出されたイベントタイプを含んでいてもよい。506において、DHPは、504において特定されたイベントタイプに基づいて、充実化手順(例えば、
図5Aおよび
図5Bに関してさらに詳細に説明される手順)を開始または実行するか否かを判定することができる。本明細書で説明するように、充実化手順は、吸入器データを特定の環境情報(例えば、時刻、地理的位置、気象条件、健康関連データ)で充実化、または関連付けるために使用することができる。例えば、イベントタイプが自己評価または使用イベントのいずれか1つであると特定された場合、DHP406は、508において、吸入器データに充実化手順のためのタグ(例えば、その吸入器データが充実化手順で充実化されるべきであることを示すもの)を付けることを決定することができる。DHP406は、例えば、充実化手順を開始する時刻を示すこともできる。例えば、DHP406は、吸入データに関連付けられた時刻(例えば、吸入または自己評価が発生した時刻)から少なくとも12時間が経過した後に、特定の充実化手順(例えば、気象観測による充実化)が実行され得ることを示すことができる。同様に、DHP406は、吸入器データに関連付けられた時刻(例えば、吸入または自己評価が発生した時刻)から少なくとも24時間が経過した後に、他のタイプの充実化手順(例えば、大気質による充実化および/または花粉による充実化)が実行され得ることを示すことができる。本明細書でさらに説明するように、充実化手順は、吸入器データを1つ以上の外部情報源からの関連情報で充実化または補足してもよい。
【0210】
一方、DHPが充実化手順のための吸入器データのタグ付けをしないと決定した場合、DHPは、510において生吸入器データをフラットにし、512においてフラットとなったデータを格納することができる。例えば、生吸入器データをフラットにして格納することで、吸入器データを単一の場所(例えば、単一のデータベースまたはテーブル)に格納することが可能になり、このことは、吸入器データを取得または他の方法で操作する際の効率または速度、および/または吸入器データに対して分析を実行する際の効率または速度を高めることができる。514において、DHPは、ETL手順500を実行するための追加的な生吸入器データがあるか否かを判定することができる。例えば、DHPによってETL手順500を実行するための追加的な吸入器データがもうないと判定された場合、手順500は、515において終了することになる。一方、DHPによってETL手順を実行するための追加的な吸入器データのインスタンスがあると判定された場合、手順500は、生吸入器データの次の後続インスタンスを取得することができる。
【0211】
図5Bは、外部情報源(例えば、外部気象情報源)からのデータで吸入器データを充実化する例示的な充実化手順550を示している。手順550は、定期的に(例えば、24時間毎に)に実行されてもよく、これにより、外部情報源から受信した情報を安定化することができる。
図5Bに示されるように、手順550は、551から始まる。552において、DHPは、充実化手順のためにタグ付けされた吸入器データを取得することができる。例えば、吸入器データは、吸入器データの特定されたイベントタイプに基づいて手順500(例えば、508)を実行する際に、充実化手順のためにタグ付けされてもよい。さらに、本明細書で説明するように、吸入器データは、充実化手順を実行する時刻を示すこともでき、552において取得された吸入器データは、充実化すべき頃合いの(例えば、発生した時刻から特定の最小量時間が経過した)吸入器データのみを含んでいてもよい。DHPは、(例えば、本明細書で説明するように、DHPが公開する通信インタフェースを使用してそれぞれのユーザデバイスがDHPに吸入器データを送信した後に、)運用サブシステム406aからこの情報を取得することができる。554において、DHPは、取得した使用イベントのそれぞれの場所および時刻を決定することができ、これはやはり、吸入器データに示されていてもよいし、他の方法で運用サブシステム406aに格納されていてもよい。
【0212】
556において、DHPは、それぞれの使用イベントの場所および時刻についての気象情報が、本明細書で説明するように、DHPが保持することができる気象キャッシュ内に格納されているかどうかを判定することができる。例えば、気象情報には、その時間および場所における気象条件に関連する特定の情報またはデータ(例えば、気象観測、花粉報告、大気質等)が含まれていてもよい。それぞれの使用イベントの場所および時刻についての気象情報が気象キャッシュ内に格納されている場合、DHPは、558において、その場所および/または時刻についてのキャッシュされた気象情報で吸入器データまたは使用イベントを充実化することができる。一方、それぞれの気象情報が気象キャッシュ内に格納されていない場合、DHPは、560において関連する気象情報を外部気象情報源に問い合わせることができる。気象情報についての問い合わせの後、DHPは、562において気象情報を気象キャッシュ内に格納し、564において問い合わされた気象情報で吸入器データまたは使用イベントを充実化することができる。手順550は、例えば、キャッシュされた気象情報、または問い合わされた気象情報で吸入器データを充実化した後、565において終了することになる。
【0213】
本明細書で説明するように、DHP406は、複数の異なるユーザに関連付けられているかもしれない吸入器401a-dから(例えば、それぞれペアリングされたユーザデバイスを介して)もたらされるデータを使用して機械学習アルゴリズムを訓練することができる。例えば、DHP406は、ユーザに関連付けられたそれぞれのユーザデバイス(例えば、
図4Aおよび
図4Bに示されたユーザデバイス402a-d)、および/またはそれぞれの吸入器(例えば、
図4Aおよび
図4Bに示された吸入器401a-d)からデータを受信することができる。DHP406は、機械学習アルゴリズムを使用して、ユーザのコンプライアンススコアを決定することができる。
図5Cは、ユーザのコンプライアンススコアを決定するための例示的な手順600を示している。手順600は、DHP406(例えば、分析サブシステム406aおよび/または運用サブシステム406b)によって実行することができる。手順600は、例えば、設定可能なアラームまたはスケジュールに従って定期的に実行されてもよい。例えば、手順600は、定期的に(例えば、15分毎に)実行されてもよい。追加的または代替的に、手順600の実行頻度は、例えば、DHP406が受信した吸入器データの量に応じて変化してもよく、例えば、DHP406が受信した吸入器データの量が増加したときに実行されてもよい。
図5Cに示されているように、手順600は、601から始まる。
【0214】
602において、DHP406は、異なるユーザに関連付けられた使用イベントを受信することができる。それぞれの使用イベントは、薬剤タイプと、異なるユーザのうちの1人のユーザとに関連付けられていてもよい。使用イベントには、維持薬タイプに関連付けられた維持使用イベント、および/または救助薬タイプに関連付けられた救助使用イベントが含まれていてもよい。維持使用イベントは、維持薬タイプについての服用スケジュールに関連付けられていてもよい。それぞれの使用イベントには、使用イベントに関連付けられた時刻(例えば、相対時刻または絶対時刻)と、使用イベントの1つ以上の吸入パラメータとが含まれていてもよい。例えば、DHP406は、受信した吸入器データの特定のインスタンスの生レコードを取得することができる。受信した吸入器データの特定のインスタンスの生レコードは、本明細書で説明するように、ユーザデバイスからDHP406に送信された生情報または生データ(例えば、JavaScriptオブジェクト表記(JSON)形式のような特定の形式を有するもの)を含んでいてもよい。生情報または生データは、時刻、吸入パラメータ等を含んでいてもよい。
【0215】
DHP406は、使用イベントの生情報または生データを匿名化することができる。例えば、DHP406は、使用イベントデータを分析するために、使用イベントに対して一方向ハッシュを実行(例えば、一方向ハッシュ関数を適用)してもよい。
【0216】
604において、DHP406は、使用イベントの時刻および吸入パラメータを特定することができる。生吸入器データを取得した後、DHP406は、504において、時刻および吸入パラメータを特定するために生吸入器データを解析することができる。吸入パラメータには、PIF、吸入量、最大吸入流量までの時間、吸入持続時間等のうちの1つ以上が含まれていてもよい。
【0217】
606において、DHP406は、機械学習アルゴリズムを訓練することができる。DHP406は、406において、訓練データを使用して機械学習アルゴリズムを訓練してもよい。訓練データには、複数の使用イベント(例えば、薬剤のタイプ、時刻、吸入パラメータ、地理的データ、環境要因および/または本明細書に記載された任意の属性/要因)が含まれていてもよく、それぞれの使用イベントは、1人以上の異なるユーザに関連付けられていてもよい。訓練データには、コンプライアンスデータ、アドヒアランスデータおよび/または自己評価回答データが含まれていてもよい。例えば、訓練データには、使用イベントに関連付けられた時刻、使用イベントに関連付けられた吸入パラメータ、アドヒアランス率、所定の多くの日における救助使用イベントの回数、その所定の多くの日における維持使用イベントの見逃し回数、救助使用イベントの頻度、PIFの変化率、または吸入量の変化率のうちの1つ以上が含まれていてもよい。アドヒアランス率は、例えば、維持薬タイプの服用スケジュールに対するユーザのアドヒアランスを示すことができる。例えば、アドヒアランス率は、所定期間におけるユーザの維持使用イベントの回数と、その所定期間のための服用スケジュールが示す維持使用イベントの回数との比較に基づいて決定することができる。所定期間は、所定の多くの日であってもよい。
【0218】
追加的または代替的に、訓練データには、自己評価(例えば、本明細書に記載されるように、例えば、ユーザデバイスのエンドユーザまたは患者向け処理モジュールを使用してユーザが提供する毎日の自己評価)、ユーザデバイスで動作している1つ以上の第3者アプリケーション(例えば、Apple Healthアプリ)、または別のユーザデバイス(例えば、FitBit、Apple Watch)を介して受信したデータが含まれていてもよい。機械学習アルゴリズムは、606において、連続的に(例えば、1時間に1回、1日に1回、週に1回の頻度で)訓練されてもよい。例えば、(例えば、初期トレーニング後に)受信した追加データが、機械学習アルゴリズムの訓練に使用されてもよい。
【0219】
機械学習アルゴリズムは、606において、教師なし学習法を使用して訓練されてもよい。教師なし学習法とは、訓練データにラベルを使用しない機械学習の一種である。教師なし学習法は、訓練データと当該訓練データに対応するラベルとの相関関係ではなく、訓練データ自体のパターンを特定および分類する人工ニューラルネットワークを学習するための学習法である。教師なし学習法の例には、クラスタリングおよび独立成分分析が含まれている。例えば、教師なし学習法は、k-meansまたはc-meansクラスタリング法を含んでいる。k-meansクラスタリング法は、訓練データを異なるクラスタにグループ化することができ、ここで、kは、予め定められた作成されるべきクラスタの数である。k-meansクラスタリング法は、訓練データのインスタンスのそれぞれが類似の特徴を有する1つの(例えば、1つのみの)グループに属するように、訓練データをk個のクラスタに分割する反復アルゴリズムである。c-meansクラスタリング法は、訓練データを異なるクラスタにグループ化することができ、ここで、訓練データのインスタンスのそれぞれには、それが1つ以上のクラスタに属する可能性および/または確率が割り当てられる。つまり、c-meansクラスタリング法における訓練データのインスタンスは、複数のクラスタに属していてもよく、複数のクラスタのそれぞれについての可能性が割り当てられている。教師なし学習法を参照して説明してきたが、いくつかの例では、DHP406は、教師あり学習法を使用して機械学習を訓練してもよい。
【0220】
608において、DHP406は、機械学習アルゴリズムを使用してユーザのコンプライアンススコアを決定することができる。コンプライアンススコアは、特定の薬剤送達デバイスを使用する際のユーザの技量(例えば、ユーザが十分に深く吸入したか(これは、例えば、PIFから知ることができる)、十分に長く吸入したか(これは、例えば、吸入量から知ることができる)、昼/夜の最適な時刻に吸入したか)に関する尺度であってもよい。例えば、コンプライアンススコアは、一定期間の使用イベント中にユーザがどの程度コンプライアンスを遵守していたかを示すことができる。一定期間には、所定の(例えば、直近の所定の)日数が含まれていてもよい。患者が医師またはメーカーが推奨する方法でデバイスを使用している場合、そのデバイスは目的の用量の薬剤を送達する可能性が高く、ユーザのコンプライアンススコアは高いレベルにあると判断され得る。一方、薬剤の投与中にデバイスが適切に使用されていない場合は、そのデバイスの適切な用量の薬剤を投与する機能は損なわれ、ユーザのコンプライアンススコアは低いレベルにあると判断され得る。コンプライアンススコアは、一定期間中にユーザに処方された治療の有効性を示す尺度であると言える。
【0221】
訓練データが匿名化されている場合、DHP406の運用サブシステム406aは、ユーザのデータ(例えば、匿名化されているもの)を分析サブシステム406bに提供してもよく、分析サブシステム460bは、匿名化データに基づいてコンプライアンススコアを決定し、そのスコアを運用サブシステム406aに返してもよい。その後、運用サブシステム406aは、コンプライアンススコアをユーザに関連付けることができる。
【0222】
610において、DHP406は、コンプライアンススコアを示す通知を生成することができる。通知は、例えば、医療従事者および/または医療専門家が処方された治療に対するユーザのコンプライアンスを分析することができるように、当該医療従事者および/または医療専門家に向けて表示されてもよい。一例では、DHP406は、医療提供者に関連付けられたコンピュータ408に、医療提供者のコンピュータ上にあるグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を介してコンプライアンススコアおよび/または吸入データを提示させる。追加的または代替的に、通知は、ディスプレイデバイス(例えば、
図4Aに示されたユーザデバイス402a、402b、および/または
図4Bに示されたユーザデバイス402c、402d)を介してユーザに表示されてもよい。吸入器を使用している患者は、薬剤が吸入されていることを即座に検出または感知することができない、および/または、吸入された薬剤の量が処方に従っているかどうかを知ることができないため、コンプライアンスに違反した使用を修正することができないかもしれない。このため、コンプライアンススコアを示す通知によれば、ユーザが処方された治療に従っている否かを当該ユーザにフィードバックすることができる。手順600は、例えば、コンプライアンススコアを示す通知を生成および/または送信した後、612において終了することになる。
【0223】
さらに、いくつかの例では、DHP406は、例えば、コンプライアンススコアを改善するために、ユーザが改善すべき属性を決定してもよい。例えば、DHP406は、訓練された機械学習アルゴリズムを使用して、改善すべき属性を決定してもよい。DHP406は、610において生成した通知に属性を含めてもよい。属性には、異なる時刻に維持薬を服用すること、将来の使用イベントのPIFを増加させること、および/または将来の使用イベントの吸入量を増加させることが含まれていてもよい。DHP406は、属性のそれぞれの有意係数を決定してもよい。DHP406は、有意係数に基づいて、改善する属性を決定してもよい。有意係数は、ユーザのコンプライアンス(例えば、コンプライアンススコア)におけるそれぞれの属性の重みを示していてもよい。DHP406は、コンプライアンスを改善するために、最も有意性(例えば、有意係数)の高い属性を改善すべきことをユーザに提案してもよい。
【0224】
本明細書で説明するように、DHP406は、機械学習アルゴリズムを使用してユーザの将来のコンプライアンススコアを決定してもよい。
図5Dは、ユーザの将来のコンプライアンススコアを決定するための例示的な手順650を示している。手順650は、DHP406(例えば、分析サブシステム406aおよび/または運用サブシステム406b)によって実行することができる。手順650は、例えば、設定可能なアラームまたはスケジュールに従って定期的に実行されてもよい。例えば、手順650は、定期的に(例えば、15分毎に)実行されてもよい。追加的または代替的に、手順650の実行頻度は、例えば、DHP406が受信した吸入器データの量に応じて変化してもよく、例えば、DHP406が受信した吸入器データの量が増加したときに実行されてもよい。
図5Dに示されているように、手順650は、651から始まる。
【0225】
652において、DHP406は、異なるユーザに関連付けられた使用イベントを受信することができる。DHP406は、それぞれのユーザデバイス(例えば、
図4Aおよび
図4Bに示されたユーザデバイス402a-d等)、および/または吸入器401a-401dから使用イベントを受信することができる。それぞれの使用イベントは、薬剤タイプ、吸入器、および異なるユーザのうちの1人のユーザに関連付けられていてもよい。使用イベントには、維持薬対応に関連付けられた維持使用イベント、および/または救助薬タイプに関連付けられた救助使用イベントが含まれていてもよい。維持使用イベントは、維持薬タイプについての服用スケジュールに関連付けられていてもよい。それぞれの使用イベントには、使用イベントに関連付けられた時刻と、使用イベントの1つ以上の吸入パラメータとが含まれていてもよい。例えば、DHP406は、受信した吸入器データの特定のインスタンスの生レコードを取得することができる。受信した吸入器データの特定のインスタンスの生レコードは、本明細書で説明するように、ユーザデバイスからDHP406に送信された生情報または生データ(例えば、JavaScriptオブジェクト表記(JSON)形式のような特定の形式を有するもの)を含んでいてもよい。生情報または生データは、時刻、吸入パラメータ等を含んでいてもよい。
【0226】
DHP406は、使用イベントの生情報または生データを匿名化することができる。例えば、DHP406は、使用イベントデータを分析するために、使用イベントに対して一方向ハッシュを実行(例えば、一方向ハッシュ関数を適用)してもよい。
【0227】
654において、DHP406は、使用イベントに関連付けられた時刻および吸入パラメータを特定することができる。生吸入器データを取得した後、DHP406は、654において、時刻および吸入パラメータを特定するために生吸入器データを解析することができる。吸入パラメータには、PIF、吸入量、最大吸入流量までの時間、吸入持続時間等のうちの1つ以上が含まれていてもよい。
【0228】
656において、DHP406は、機械学習アルゴリズムを訓練することができる。DHP406は、406において、訓練データを使用して機械学習アルゴリズムを訓練してもよい。訓練データには、複数の使用イベント(例えば、薬剤タイプ、時刻、吸入パラメータ、地理的データ、環境要因および/または本明細書に記載された任意の属性/要因)が含まれていてもよく、それぞれの使用イベントは、1人以上の異なるユーザに関連付けられていてもよい。訓練データには、コンプライアンスデータ、アドヒアランスデータおよび/または自己評価回答データが含まれていてもよい。例えば、訓練データには、使用イベントに関連付けられた時刻、使用イベントに関連付けられた吸入パラメータ、アドヒアランス率、所定の多くの日における救助使用イベントの回数、その所定の多くの日における維持使用イベントの見逃し回数、救助使用イベントの頻度、PIFの変化率、または吸入量の変化率のうちの1つ以上が含まれていてもよい。救助使用イベントの頻度は、所定期間におけるユーザの1日あたりの救助使用イベントの平均回数であってもよいし、所定期間におけるユーザの1日あたりの救助使用イベントの絶対回数であってもよい。所定期間は、所定の多くの日であってもよい。所定の多くの日は、直近の所定の多くの日であってもよいし、それ以前の所定の多くの日であってもよい。アドヒアランス率は、例えば、維持薬タイプの服用スケジュールに対するユーザのアドヒアランスを示すことができる。例えば、アドヒアランス率は、所定期間におけるユーザの維持使用イベントの回数と、その所定期間のための服用スケジュールが示す維持使用イベントの回数との比較に基づいて決定することができる。
【0229】
追加的または代替的に、訓練データには、自己評価(例えば、本明細書に記載されるように、例えば、ユーザデバイスのエンドユーザまたは患者向け処理モジュールを使用してユーザが提供する毎日の自己評価)、ユーザデバイスで動作している1つ以上の第3者アプリケーション(例えば、Apple Healthアプリ)、または別のユーザデバイス(例えば、FitBit、Apple Watch)を介して受信したデータが含まれていてもよい。機械学習アルゴリズムは、656において、連続的に(例えば、1時間に1回、1日に1回、週に1回の頻度で)訓練されてもよい。例えば、(例えば、初期トレーニング後に)受信した追加データが、機械学習アルゴリズムの訓練に使用されてもよい。
【0230】
機械学習アルゴリズムは、656において、教師なし学習法または教師あり学習法を使用して訓練されてもよい。教師なし学習法とは、訓練データにラベルを使用しない機械学習の一種である。教師なし学習法は、訓練データと当該訓練データに対応するラベルとの相関関係ではなく、訓練データ自体のパターンを特定および分類する人工ニューラルネットワークを学習するための学習法である。教師なし学習法の例には、クラスタリングおよび独立成分分析が含まれている。例えば、教師なし学習法は、k-meansまたはc-meansクラスタリング法を含んでいる。k-meansクラスタリング法は、訓練データを異なるクラスタにグループ化することができ、ここで、kは、予め定められた作成されるべきクラスタの数である。k-meansクラスタリング法は、訓練データのインスタンスのそれぞれが類似の特徴を有する1つの(例えば、1つのみの)グループに属するように、訓練データをk個のクラスタに分割する反復アルゴリズムである。c-meansクラスタリング法は、訓練データを異なるクラスタにグループ化することができ、ここで、訓練データのインスタンスのそれぞれには、それが1つ以上のクラスタに属する可能性および/または確率が割り当てられる。つまり、c-meansクラスタリング法における訓練データのインスタンスは、複数のクラスタに属していてもよく、複数のクラスタのそれぞれについての可能性が割り当てられている。
【0231】
教師あり学習法は、ラベル付き訓練データを使用して機械学習アルゴリズムを訓練する。訓練データを受信すると、教師あり学習法は、機械学習アルゴリズムが適切に重み付けされるまで重みを調整することができる。教師あり学習法は、損失関数を使用して機械学習アルゴリズムの精度を測定することができる。教師あり学習法は、誤差が所定の閾値より小さくなるまで、重みの調整を続けてもよい。教師あり学習法は、勾配ブースト決定木を含んでいてもよい。勾配ブースト決定木は、弱い学習器を組み合わせて損失関数を最小化することができる。例えば、回帰木は、分割の実数値を出力して足し合わせるために使用することができる。弱い学習器は、例えば、最大レイヤー数、最大ノード数、最大分割数等について制約があるかもしれない。木は、機械学習アルゴリズムに1つずつ追加されてもよく、既存の木は、変更されないままであってもよい。勾配降下手順を使用することにより、木を追加するときの損失を最小化してもよい。例えば、(例えば、勾配に従って)損失を低減するために、追加の木を追加してもよい。この場合、追加の木をパラメータ化し、そのパラメータを変更することにより損失を低減させてもよい。教師あり学習法は、XGBoostアルゴリズムを含んでいてもよい。XGBoostアルゴリズムは、速度および/または性能のために設計された勾配ブースト決定木の実装を含んでいてもよい。XGBoostアルゴリズムは、欠落したデータ値を自動的に処理したり、ツリー構築の並列化および/または継続的な訓練をサポートしたりすることができる。
【0232】
いくつかの例では、DHP406は、それぞれの使用イベントの吸入パラメータの地理的位置を決定してもよい。例えば、DHP406は、吸入器(例えば、
図4Aに示す吸入器401a-401d)、および/またはユーザデバイス(例えば、
図4Aおよび4Bに示すユーザデバイス402a-402d)に関連付けられた位置データを受信してもよい。DHP406は、吸入パラメータのそれぞれに、決定した地理的位置をタグ付けしてもよい。DHP406は、地理的位置に基づいて注目点を決定してもよい。注目点は、公園、燃料ステーション、工場、発電所、高速道路、ユーザの自宅、ユーザの職場、駅等を含んでいてもよい。注目点は、吸入パラメータに関連付けられていてもよい。注目点は、吸入パラメータの分類および/または機械学習アルゴリズムの訓練に使用されてもよい。ある例では、地理的位置は、緯度経度座標、ジオハッシュ、マップコード、または他のタイプのジオコーディングシステムを使用して特定されてもよい。注目点は、範囲を持った地理的位置(例えば、緯度経度座標、ジオハッシュ、マップコード等)からなる領域で構成されていてもよい。
【0233】
いくつかの例では、DHP406は、例えば、それぞれの使用イベントに関連付けられたそれぞれの時刻および地理的位置を使用して、それぞれの使用イベントの1つ以上の環境条件を決定してもよい。環境条件は、訓練データに含まれていてもよいし、機械学習アルゴリズムの訓練に使用されてもよい。環境条件には、温度、湿度、外気汚染物質濃度、2.5ミクロン以下の粒状物質(PM2.5)の存在、10ミクロン以下の粒状物質(PM10)の存在、オゾン濃度、二酸化窒素(NO2)濃度または二酸化硫黄(SO2)濃度の1つ以上が含まれていてもよい。
【0234】
658において、DHP406は、機械学習アルゴリズムを使用してユーザの将来のコンプライアンススコアを決定することができる。将来のコンプライアンススコアは、今後、ユーザがどの程度コンプライアンスを遵守するのかを示すことができる。例えば、将来のコンプライアンススコアは、ユーザが将来の使用イベントにおいてコンプライアンスに違反するリスクを示すことができる。ある例では、将来のコンプライアンススコアは、ユーザによる吸入デバイスの使用が当該吸入デバイスの仕様に従っている可能性を示すことができる。将来のコンプライアンススコアは、パターン検出を使用して決定されてもよい。例えば、機械学習アルゴリズムは、ユーザに関連付けられたパターンと複数のユーザに関連付けられた1つ以上のパターンとを比較してもよい。ユーザに関連付けられたパターンは、これまでの多くの日におけるユーザの訓練データを使用して決定されてもよく、複数のユーザに関連付けられた1つ以上のパターンは、複数のユーザの訓練データを含んでいてもよい。パターンには、1つ以上の維持使用イベント、1つ以上の維持使用イベントに関連付けられた吸入パラメータ、1つ以上の救助使用イベント、1つ以上の救助使用イベントに関連付けられた吸入パラメータ、および/または一定期間にわたる服用スケジュールに対するアドヒアランスが含まれていてもよい。一定期間には、所定の(例えば、直近の所定の)日数が含まれていてもよい。将来のコンプライアンススコアは、658において、ユーザが位置する地理的位置および/または注目点を使用して決定されてもよい。例えば、DHP406は、ユーザの地理的位置および/または注目点に関連付けられたパターンを特定し、それに応じて将来のコンプライアンススコアを調整することができる。
【0235】
訓練データが匿名化されている場合、DHP406の運用サブシステム406aは、ユーザのデータ(例えば、匿名化されているもの)を分析サブシステム406bに提供してもよく、分析サブシステム460bは、匿名化データに基づいて将来のコンプライアンススコアを決定し、その将来のコンプライアンススコアを運用サブシステム406aに返してもよい。その後、運用サブシステム406aは、将来のコンプライアンススコアをユーザに関連付けることができる。
【0236】
660において、DHP406は、将来のコンプライアンススコアを示す通知を生成することができる。通知は、例えば、医療従事者および/または医療専門家が将来の治療に対するユーザの予想されるコンプライアンスを分析することができるように、当該医療従事者および/または医療専門家に向けて表示されてもよい。一例では、DHP406は、医療提供者に関連付けられたコンピュータ408に、医療提供者のコンピュータ上にあるグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を介して将来のコンプライアンススコアおよび/または吸入データを提示させる。追加的または代替的に、通知は、ディスプレイデバイス(例えば、
図4Aに示されたユーザデバイス402a、402b、および/または
図4Bに示されたユーザデバイス402c、402d)を介してユーザに表示されてもよい。吸入器を使用している患者は、薬剤が吸入されていることを検出(例えば、即座に検出)または感知することができない、および/または吸入された薬剤の量が処方された治療に従っているかどうかを知ることができないため、コンプライアンスに違反した吸入器の使用を修正することができないかもしれない。このため、将来のコンプライアンススコアを示す通知によれば、ユーザが将来の治療(例えば、予定された治療、または予定されていない治療)に従いそうか否かを当該ユーザにフィードバックすることができる。
【0237】
いくつかの例では、DHP406は、例えば、将来のコンプライアンススコアを改善するために、ユーザが改善すべき属性を決定してもよい。例えば、DHP406は、訓練された機械学習アルゴリズムを使用して、改善すべき属性を決定してもよい。DHP406は、660において生成した通知に属性を含めてもよい。属性には、異なる時刻に維持薬を服用すること、将来の使用イベントのPIFを増加させること、および/または将来の使用イベントの吸入量を増加させることが含まれていてもよい。DHP406は、属性のそれぞれの有意係数を決定してもよい。DHP406は、有意係数に基づいて、改善する属性を決定してもよい。有意係数は、ユーザのコンプライアンス(例えば、コンプライアンススコア)におけるそれぞれの属性の重みを示していてもよい。DHP406は、コンプライアンスを改善するために、最も有意性(例えば、有意係数)の高い属性を改善すべきことをユーザに提案してもよい。手順650は、例えば、将来のコンプライアンススコアを示す通知を生成および/または送信した後、662において終了することになる。
【0238】
本明細書で説明するように、DHP406は、複数の異なるユーザに関連付けられているかもしれない吸入器401a-dから(例えば、それぞれペアリングされたユーザデバイスを介して)もたらされるデータを使用して機械学習アルゴリズムを訓練することができる。DHP406は、機械学習アルゴリズムを使用して、ユーザが改善すべき/改善可能な1つ以上の属性を決定することができる。
図5Eは、ユーザによって改善されるべき属性を決定するための例示的な手順700を示している。手順700は、DHP406(例えば、分析サブシステム406aおよび/または運用サブシステム406b)によって実行することができる。手順700は、例えば、設定可能なアラームまたはスケジュールに従って定期的に実行されてもよい。例えば、手順700は、定期的に(例えば、15分毎に)実行されてもよい。追加的または代替的に、手順700の実行頻度は、例えば、DHP406が受信した吸入器データの量に応じて変化してもよく、例えば、DHP406が受信した吸入器データの量が増加したときに実行されてもよい。
図5Dに示されているように、手順700は、701から始まる。
【0239】
702において、DHP406は、異なるユーザに関連付けられた使用イベントを受信することができる。それぞれの使用イベントは、薬剤タイプと、異なるユーザのうちの1人のユーザとに関連付けられていてもよい。使用イベントには、維持薬タイプに関連付けられた維持使用イベント、および救助薬タイプに関連付けられた救助使用イベントが含まれていてもよい。維持使用イベントは、維持薬タイプについての服用スケジュールに関連付けられていてもよい。それぞれの使用イベントには、使用イベントに関連付けられた時刻と、使用イベントの1つ以上の吸入パラメータとが含まれていてもよい。例えば、DHP406は、受信した吸入器データの特定のインスタンスの生レコードを取得することができる。受信した吸入器データの特定のインスタンスの生レコードは、本明細書で説明するように、ユーザデバイスからDHP406に送信された生情報または生データ(例えば、JavaScriptオブジェクト表記(JSON)形式のような特定の形式を有するもの)を含んでいてもよい。生情報または生データは、時刻、吸入パラメータ等を含んでいてもよい。
【0240】
DHP406は、使用イベントの生情報または生データを匿名化することができる。例えば、DHP406は、使用イベントデータを分析するために、使用イベントに対して一方向ハッシュを実行(例えば、一方向ハッシュ関数を適用)してもよい。
【0241】
704において、DHP406は、使用イベントに関連付けられた時刻および吸入パラメータを特定することができる。生吸入器データを取得した後、DHP406は、704において、時刻および吸入パラメータを特定するために生吸入器データを解析することができる。吸入パラメータには、PIF、吸入量、最大吸入流量までの時間、吸入持続時間等のうちの1つ以上が含まれていてもよい。
【0242】
706において、DHP406は、機械学習アルゴリズムを訓練することができる。DHP406は、406において、訓練データを使用して機械学習アルゴリズムを訓練してもよい。訓練データには、複数の使用イベント(例えば、薬剤タイプ、時刻、吸入パラメータ、地理的データ、環境要因および/または本明細書に記載された任意の属性/要因)が含まれていてもよく、それぞれの使用イベントは、1人以上の異なるユーザに関連付けられていてもよい。訓練データには、コンプライアンスデータ、アドヒアランスデータおよび/または自己評価回答データが含まれていてもよい。例えば、訓練データには、使用イベントに関連付けられた時刻、使用イベントに関連付けられた吸入パラメータ、アドヒアランス率、所定の多くの日における救助使用イベントの回数、その所定の多くの日における維持使用イベントの見逃し回数、救助使用イベントの頻度、PIFの変化率、または吸入量の変化率のうちの1つ以上が含まれていてもよい。アドヒアランス率は、例えば、維持薬タイプの服用スケジュールに対するユーザのアドヒアランスを示すことができる。例えば、アドヒアランス率は、所定期間におけるユーザの維持使用イベントの回数と、その所定期間のための服用スケジュールが示す維持使用イベントの回数との比較に基づいて決定することができる。所定期間は、所定の多くの日であってもよい。機械学習アルゴリズムは、706において、連続的に(例えば、1時間に1回、1日に1回、週に1回の頻度で)訓練されてもよい。例えば、(例えば、初期トレーニング後に)受信した追加データが、機械学習アルゴリズムの訓練に使用されてもよい。
【0243】
機械学習アルゴリズムは、706において、教師なし学習法を使用して訓練されてもよい。教師なし学習法とは、訓練データにラベルを使用しない機械学習の一種である。教師なし学習法は、訓練データと当該訓練データに対応するラベルとの相関関係ではなく、訓練データ自体のパターンを特定および分類する人工ニューラルネットワークを学習するための学習法である。教師なし学習法の例には、クラスタリングおよび独立成分分析が含まれている。例えば、教師なし学習法は、k-meansまたはc-meansクラスタリング法を含んでいる。k-meansクラスタリング法は、訓練データを異なるクラスタにグループ化することができ、ここで、kは、予め定められた作成されるべきクラスタの数である。k-meansクラスタリング法は、訓練データのインスタンスのそれぞれが類似の特徴を有する1つの(例えば、1つのみの)グループに属するように、訓練データをk個のクラスタに分割する反復アルゴリズムである。c-meansクラスタリング法は、訓練データを異なるクラスタにグループ化することができ、ここで、訓練データのインスタンスのそれぞれには、それが1つ以上のクラスタに属する可能性および/または確率が割り当てられる。つまり、c-meansクラスタリング法における訓練データのインスタンスは、複数のクラスタに属していてもよく、複数のクラスタのそれぞれについての可能性が割り当てられている。教師なし学習法を参照して説明してきたが、いくつかの例では、DHP406は、教師あり学習法を使用して機械学習アルゴリズムを訓練してもよい。
【0244】
708において、DHP406は、複数の属性のそれぞれの有意係数を決定することができる。複数の属性には、異なる時刻に維持薬を服用すること、将来の使用イベントのPIFを増加させること、および/または将来の使用イベントの吸入量を増加させることが含まれていてもよい。有意係数は、それぞれの属性の有意性を示すことができる。例えば、ある属性の有意係数は、その属性の相対的な重要性を示すことができる。
【0245】
710において、DHP406は、例えば、コンプライアンススコアおよび/または将来のコンプライアンススコアを改善するために、ユーザが改善すべき属性を決定することができる。例えば、DHP406は、訓練された機械学習アルゴリズムおよび/または決定した有意係数を使用して、改善すべき属性を決定してもよい。有意係数は、ユーザのコンプライアンス(例えば、コンプライアンススコア)におけるそれぞれの属性の相対的な重みを示していてもよい。DHP406は、コンプライアンスを改善するために、最も有意性(例えば、有意係数)の高い属性を改善すべきことをユーザに提案してもよい。
【0246】
712において、DHP406は、決定した属性を示す通知を生成することができる。通知は、例えば、医療従事者および/または医療専門家によるユーザへのフィードバックおよび/または処方された治療の変更が可能となるように、当該医療従事者および/または医療専門家に向けて表示されてもよい。一例では、DHP406は、医療提供者に関連するコンピュータ408に、医療提供者のコンピュータ上にあるグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を介して、コンプライアンススコア、将来のコンプライアンススコアおよび/または吸入データとともに属性を提示させる。追加的または代替的に、通知は、ディスプレイデバイス(例えば、
図4Aに示されたユーザデバイス402a、402b、および/または
図4Bに示されたユーザデバイス402c、402d)を介してユーザに表示されてもよい。ユーザに表示される属性を示す通知によれば、どのようにすれば処方された治療に対するコンプライアンスおよび/またはアドヒアランスを改善することができるのかをユーザにフィードバックすることができる。手順700は、例えば、属性を示す通知を生成および/または送信した後、713において終了することになる。
【0247】
本明細書で説明するように、DHP406は、機械学習アルゴリズムを使用してユーザのリスクスコアを決定してもよい。
図5Fは、ユーザのリスクスコアを決定するための例示的な手順750を示している。手順750は、DHP406(例えば、分析サブシステム406aおよび/または運用サブシステム406b)によって実行することができる。手順750は、例えば、設定可能なアラームまたはスケジュールに従って定期的に実行されてもよい。例えば、手順750は、定期的に(例えば、15分毎に)実行されてもよい。追加的または代替的に、手順750の実行頻度は、例えば、DHP406が受信した吸入器データの量に応じて変化してもよく、例えば、DHP406が受信した吸入器データの量が増加したときに実行されてもよい。
図5Fに示されているように、手順750は、751から始まる。
【0248】
752において、DHP406は、異なるユーザに関連付けられた使用イベントを受信することができる。DHP406は、ユーザデバイス(例えば、
図4Aおよび
図4Bに示されたユーザデバイス402a-dなど)、および/または吸入器401a-dから使用イベントを受信することができる。それぞれの使用イベントは、薬剤タイプおよび異なるユーザのうちの1人のユーザに関連付けられていてもよい。使用イベントには、維持薬タイプに関連付けられた維持使用イベント、および救助薬タイプに関連付けられた救助使用イベントが含まれていてもよい。維持使用イベントは、維持薬タイプについての服用スケジュールに関連付けられていてもよい。それぞれの使用イベントには、使用イベントに関連付けられた時刻と、使用イベントの1つ以上の吸入パラメータとが含まれていてもよい。例えば、DHP406は、受信した吸入器データの特定のインスタンスの生レコードを取得することができる。受信した吸入器データの特定のインスタンスの生レコードは、本明細書で説明するように、ユーザデバイスからDHP406に送信された生情報または生データ(例えば、JavaScriptオブジェクト表記(JSON)形式のような特定の形式を有するもの)を含んでいてもよい。生情報または生データは、時刻、吸入パラメータ等を含んでいてもよい。
【0249】
754において、DHP406は、使用イベントに関連付けられた時刻および吸入パラメータを特定することができる。生吸入器データを取得した後、DHP406は、754において、時刻および吸入パラメータを特定するために生吸入器データを解析することができる。吸入パラメータには、PIF、吸入量、最大吸入流量までの時間、吸入持続時間等のうちの1つ以上が含まれていてもよい。
【0250】
756において、DHP406は、吸入パラメータの地理的位置を決定してもよい。例えば、DHP406は、吸入器(例えば、
図4Aに示す吸入器401a-401d)、および/またはユーザデバイス(例えば、
図4Aおよび4Bに示すユーザデバイス402a-402d)に関連付けられた位置データを受信してもよい。DHP406は、吸入パラメータのそれぞれに、決定した地理的位置をタグ付けしてもよい。DHP406は、地理的位置に基づいて注目点を決定してもよい。注目点は、公園、燃料ステーション、工場、発電所、高速道路、ユーザの自宅、ユーザの職場、駅等を含んでいてもよい。注目点は、吸入パラメータに関連付けられてもよい。注目点は、吸入パラメータの分類および/または機械学習アルゴリズムの訓練に使用されてもよい。ある例では、地理的位置は、緯度経度座標、ジオハッシュ、マップコード、または他のタイプのジオコーディングシステムを使用して特定されてもよい。注目点は、範囲を持った地理的位置(例えば、緯度経度座標、ジオハッシュ、マップコード等)からなる領域で構成されていてもよい。
【0251】
DHP406は、例えば、それぞれの使用イベントに関連付けられたそれぞれの時刻および地理的位置を使用して、それぞれの使用イベントの1つ以上の環境条件を決定してもよい。環境条件には、温度、湿度、外気汚染物質濃度、2.5ミクロン以下の粒状物質(PM2.5)の存在、10ミクロン以下の粒状物質(PM10)の存在、オゾン濃度、二酸化窒素(NO2)濃度または二酸化硫黄(SO2)濃度の1つ以上が含まれていてもよい。
【0252】
758において、DHP406は、機械学習アルゴリズムを訓練することができる。DHP406は、406において、訓練データを使用して機械学習アルゴリズムを訓練してもよい。訓練データには、コンプライアンスデータ、アドヒアランスデータおよび/または自己評価回答データが含まれていてもよい。例えば、訓練データには、使用イベントに関連付けられた時刻、使用イベントに関連付けられた吸入パラメータ、地理的位置、アドヒアランス率、所定の多くの日における救助使用イベントの回数、その所定の多くの日における維持使用イベントの見逃し回数、救助使用イベントの頻度、PIFの変化率、または吸入量の変化率のうちの1つ以上が含まれていてもよい。救助使用イベントの頻度は、所定期間におけるユーザの1日あたりの救助使用イベントの平均回数であってもよいし、所定期間におけるユーザの1日あたりの救助使用イベントの絶対回数であってもよい。所定期間は、所定の多くの日であってもよい。所定の多くの日は、直近の所定の多くの日であってもよいし、それ以前の所定の多くの日であってもよい。アドヒアランス率は、例えば、維持薬タイプの服用スケジュールに対するユーザのアドヒアランスを示すことができる。例えば、アドヒアランス率は、所定期間におけるユーザの維持使用イベントの回数と、その所定期間のための服用スケジュールが示す維持使用イベントの回数との比較に基づいて決定することができる。機械学習アルゴリズムは、656において、連続的に(例えば、1時間に1回、1日に1回、週に1回の頻度で)訓練されてもよい。例えば、(例えば、初期トレーニング後に)受信した追加データが、機械学習アルゴリズムの訓練に使用されてもよい。
【0253】
機械学習アルゴリズムは、656において、教師なし学習法を使用して訓練されてもよい。教師なし学習法とは、訓練データにラベルを使用しない機械学習の一種である。教師なし学習法は、訓練データと当該訓練データに対応するラベルとの相関関係ではなく、訓練データ自体のパターンを特定および分類する人工ニューラルネットワークを学習するための学習法である。教師なし学習法の例には、クラスタリングおよび独立成分分析が含まれている。例えば、教師なし学習法は、k-meansまたはc-meansクラスタリング法を含んでいる。k-meansクラスタリング法は、訓練データを異なるクラスタにグループ化することができ、ここで、kは、予め定められた作成されるべきクラスタの数である。k-meansクラスタリング法は、訓練データのインスタンスのそれぞれが類似の特徴を有する1つの(例えば、1つのみの)グループに属するように、訓練データをk個のクラスタに分割する反復アルゴリズムである。c-meansクラスタリング法は、訓練データを異なるクラスタにグループ化することができ、ここで、訓練データのインスタンスのそれぞれには、それが1つ以上のクラスタに属する可能性および/または確率が割り当てられる。つまり、c-meansクラスタリング法における訓練データのインスタンスは、複数のクラスタに属していてもよく、複数のクラスタのそれぞれについての可能性が割り当てられている。
【0254】
760において、DHP406は、機械学習アルゴリズムを使用してユーザのリスクスコアを決定することができる。リスクスコアは、ユーザの呼吸状態の増悪の可能性を示すことができる。呼吸状態には、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、および/または嚢胞性線維症(CF)が含まれていてもよい。例えば、リスクスコアは、ユーザが所定期間内に救助使用イベントを実行する可能性を示すことができる。所定期間には、所定の(例えば、直近の所定の)日数が含まれていてもよい。リスクスコアは、パターン検出を使用して決定することができる。例えば、機械学習アルゴリズムは、ユーザに関連付けられたパターンを、複数のユーザに関連付けられた1つ以上のパターンと比較することができる。ユーザに関連付けられたパターンは、これまでの多くの日におけるユーザの訓練データを使用して決定されてもよく、複数のユーザに関連付けられた1つ以上のパターンは、複数のユーザの訓練データを含んでいてもよい。パターンには、1つ以上の維持使用イベント、1つ以上の維持使用イベントに関連付けられた吸入パラメータ、1つ以上の救助使用イベント、1つ以上の救助使用イベントに関連付けられた吸入パラメータ、および/または所定の一定期間にわたる服用スケジュールに対するアドヒアランスが含まれていてもよい。リスクスコアは、地理的位置および/または環境条件に基づいて決定することができる。例えば、環境条件が変化した場合、リスクスコアはそれに応じて更新されてもよい。
【0255】
762において、DHP406は、リスクスコアを示す通知を生成することができる。通知は、例えば、医療従事者および/または医療専門家によるユーザの増悪可能性の分析が可能となるように、当該医療従事者および/または医療専門家に向けて表示されてもよい。一例では、DHP406は、医療提供者に関連付けられたコンピュータ408に、医療提供者のコンピュータ上にあるグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を介してリスクスコアおよび/または吸入データを提示させる。追加的または代替的に、通知は、ディスプレイデバイス(例えば、
図4Aに示されたユーザデバイス402a、402b、および/または
図4Bに示されたユーザデバイス402c、402d)を介してユーザに表示されてもよい。リスクスコアを示す通知によれば、ユーザが所定期間内に増悪を経験する可能性が高いか否か、および/または救助使用イベントを必要とするか否かについてのフィードバックをユーザに提供することができる。例えば、リスクスコアを示す通知は、リスクスコアを所定の閾値よりも増加させる1つ以上の環境条件の変化に基づいて、医療専門家および/またはユーザに向けて表示されてもよい。
【0256】
さらに、いくつかの例では、本明細書で説明するように、DHP406は、ユーザのスコア(例えば、コンプライアンススコア、将来のコンプライアンススコアおよび/またはリスクスコア)に基づいて、ユーザに関連付けられたHVACシステムを制御してもよい。
図5Gは、ユーザのスコアを決定するための例示的な手順800を示している。手順800は、DHP406(例えば、分析サブシステム406aおよび/または運用サブシステム406b)によって実行することができる。手順800は、例えば、設定可能なアラームまたはスケジュールに従って定期的に実行されてもよい。例えば、手順800は、定期的に(例えば、15分毎に)実行されてもよい。追加的または代替的に、手順800の実行頻度は、例えば、DHP406が受信した吸入器データの量に応じて変化してもよく、例えば、DHP406が受信した吸入器データの量が増加したときに実行されてもよい。
図5Gに示されているように、手順800は、801から始まる。
【0257】
802において、DHP406は、異なるユーザに関連付けられた使用イベントを受信することができる。それぞれの使用イベントは、薬剤タイプおよび異なるユーザのうちの1人のユーザに関連付けられていてもよい。使用イベントには、維持薬タイプに関連付けられた維持使用イベント、および/または救助薬タイプに関連付けられた救助使用イベントが含まれていてもよい。それぞれの使用イベントには、使用イベントに関連付けられた時刻と、使用イベントについての1つ以上の吸入パラメータとが含まれていてもよい。例えば、DHP406は、受信した吸入器データの特定のインスタンスの生レコードを取得することができる。受信した吸入器データの特定のインスタンスの生レコードは、本明細書で説明するように、ユーザデバイスからDHP406に送信された生情報または生データ(例えば、JavaScriptオブジェクト表記(JSON)形式のような特定の形式を有するもの)を含んでいてもよい。生情報または生データは、時刻、吸入パラメータ等を含んでいてもよい。
【0258】
804において、DHP406は、使用イベントに関連付けられた時刻および吸入パラメータを特定することができる。生吸入器データを取得した後、DHP406は、804において、時刻および吸入パラメータを特定するために生吸入器データを解析することができる。吸入パラメータには、PIF、吸入量、最大吸入流量までの時間、吸入持続時間等のうちの1つ以上が含まれていてもよい。
【0259】
806において、DHP406は、吸入パラメータの地理的位置を決定してもよい。例えば、DHP406は、吸入器(例えば、
図4Aに示す吸入器401a-401d)、および/またはユーザデバイス(例えば、
図4Aおよび4Bに示すユーザデバイス402a-402d)に関連付けられた位置データを受信してもよい。DHP406は、吸入パラメータのそれぞれに、決定した地理的位置をタグ付けしてもよい。DHP406は、地理的位置に基づいて注目点を決定してもよい。注目点は、公園、燃料ステーション、工場、発電所、高速道路、ユーザの自宅、ユーザの職場、駅等を含んでいてもよい。注目点は、吸入パラメータに関連付けられてもよい。注目点は、吸入パラメータの分類および/または機械学習アルゴリズムの訓練に使用されてもよい。ある例では、地理的位置は、緯度経度座標、ジオハッシュ、マップコード、または他のタイプのジオコーディングシステムを使用して特定されてもよい。注目点は、範囲を持った地理的位置(例えば、緯度経度座標、ジオハッシュ、マップコード等)からなる領域で構成されていてもよい。
【0260】
808において、DHP406は、地理的位置に関連付けられた1つ以上の環境条件を決定することができる。例えば、808において、それぞれの使用イベントに関連付けられたそれぞれの時刻および地理的位置を使用して、それぞれの使用イベントの環境条件が決定されてもよい。環境条件には、温度、湿度、外気汚染物質濃度、2.5ミクロン以下の粒状物質(PM2.5)の存在、10ミクロン以下の粒状物質(PM10)の存在、オゾン濃度、二酸化窒素(NO2)濃度または二酸化硫黄(SO2)濃度の1つ以上が含まれていてもよい。
【0261】
810において、DHP406は、機械学習アルゴリズムを訓練することができる。DHP406は、810において、訓練データを使用して機械学習アルゴリズムを訓練してもよい。訓練データには、コンプライアンスデータ、アドヒアランスデータおよび/または自己評価回答データが含まれていてもよい。例えば、訓練データには、使用イベントに関連付けられた時刻、使用イベントに関連付けられた吸入パラメータ、地理的位置、環境条件、アドヒアランス率、所定の多くの日における救助使用イベントの回数、所定の多くの日における維持使用イベントの見逃し回数、救助使用イベントの頻度、PIFの変化率、または吸入量の変化率のうちの1つ以上が含まれていてもよい。救助使用イベントの頻度は、所定期間におけるユーザの1日あたりの救助使用イベントの平均回数であってもよいし、所定期間におけるユーザの1日あたりの救助使用イベントの絶対回数であってもよい。所定期間は、所定の多くの日であってもよい。所定の多くの日は、直近の所定の多くの日であってもよいし、それ以前の所定の多くの日であってもよい。アドヒアランス率は、例えば、維持薬タイプの服用スケジュールに対するユーザのアドヒアランスを示すことができる。例えば、アドヒアランス率は、所定期間におけるユーザの維持使用イベントの回数と、所定期間のための服用スケジュールが示す維持使用イベントの回数との比較に基づいて決定することができる。機械学習アルゴリズムは、810において、連続的に(例えば、1時間に1回、1日に1回、週に1回の頻度で)訓練されてもよい。例えば、(例えば、初期トレーニング後に)受信した追加データが、機械学習アルゴリズムの訓練に使用されてもよい。
【0262】
機械学習アルゴリズムは、810において、教師なし学習法を使用して訓練されてもよい。教師なし学習法とは、訓練データにラベルを使用しない機械学習の一種である。教師なし学習法は、訓練データと当該訓練データに対応するラベルとの相関関係ではなく、訓練データ自体のパターンを特定および分類する人工ニューラルネットワークを学習するための学習法である。教師なし学習法の例には、クラスタリングおよび独立成分分析が含まれている。例えば、教師なし学習法は、k-meansまたはc-meansクラスタリング法を含んでいる。k-meansクラスタリング法は、訓練データを異なるクラスタにグループ化することができ、ここで、kは、予め定められた作成されるべきクラスタの数である。k-meansクラスタリング法は、訓練データのインスタンスのそれぞれが類似の特徴を有する1つの(例えば、1つのみの)グループに属するように、訓練データをk個のクラスタに分割する反復アルゴリズムである。c-meansクラスタリング法は、訓練データを異なるクラスタにグループ化することができ、ここで、訓練データのインスタンスのそれぞれには、それが1つ以上のクラスタに属する可能性および/または確率が割り当てられる。つまり、c-meansクラスタリング法における訓練データのインスタンスは、複数のクラスタに属していてもよく、複数のクラスタのそれぞれについての可能性が割り当てられている。
【0263】
812において、DHP406は、機械学習アルゴリズムを使用して、本明細書に記載される手順(例えば、個別コンプライアンススコアを決定する手順600、将来の個別コンプライアンススコアを決定する手順650、および/または個別リスクスコアを決定する手順750)のうちの1つ以上を使用してユーザのスコアを決定することができる。
【0264】
814において、DHP406は、ユーザのスコアに基づいてユーザに関連付けられたHVACシステムを制御することができる。DHP406は、814において、HVACシステムを制御して、ユーザの自宅、ユーザの職場等の湿度レベル、温度等を調整することができる。例えば、DHP406は、ユーザの自宅内の湿度レベルをユーザのスコアに関連付けられた湿度閾値未満に調整するように構成されていてもよい。追加的または代替的に、DHP406は、ユーザの自宅内の温度をユーザのスコアに関連付けられた温度閾値よりも高くまたは低く調整するように構成されていてもよい。ユーザが注目点に近づいたことをトリガとして、HVACシステムを調整してもよい。例えば、DHP406は、注目点からユーザまでの距離が所定距離内か否かを判定するように構成されていてもよい。DHP406は、注目点からユーザまでの距離が所定距離内であると判定した場合に、ユーザのスコアに基づいて1つ以上のパラメータを調整するようにHVACを制御してもよい。
【0265】
前述したように、DHP406は、医療提供者(例えば、病院、病院システム、健康システム、医療グループ、医師、クリニック、および/または製薬会社)に関連付けられたHCP向け処理モジュール(例えば、本明細書ではダッシュボードアプリケーションとも呼ばれる)を備えた(例えば、HCP向け処理モジュールを作動させる、またはHCP向け処理モジュールと他の方法で対話する)コンピュータまたはサーバ408と通信することができる。
【0266】
DHP406は、医療提供者に関連付けられたコンピュータ408に、開業医および医療専門家への吸入器データ、コンプライアンススコア、将来のコンプライアンススコアおよび/またはリスクスコアの提供を行わせて、患者が同意したプログラムに固有の吸入器データを閲覧できるようにしてもよい。一例では、DHP406は、医療提供者に関連するコンピュータ408に、医療提供者のコンピュータ上にあるグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を介して吸入データ、コンプライアンススコア、将来のコンプライアンススコアおよび/またはリスクスコアを提示させる。それぞれのGUIは、例えば、(前述したように)特定のプログラムに特化したものであってもよく、ユーザ(例えば、患者)の名前、ユーザの生年月日、およびプログラムの一部で特定の薬剤タイプ毎に列で分割された吸入器データの任意の組み合わせを提供してもよい。GUIは、それぞれのユーザの特定の情報を提供してもよく、例えば、特定の薬剤タイプを提供するユーザの吸入器401のすべてについて、薬剤タイプ別に情報を集約してもよい。例えば、GUIは、特定の薬剤タイプを含むすべての吸入器401について、一定期間(例えば、1週間または40日間)中に発生した使用イベント(例えば、良吸入イベント、適正吸入イベント、低/無吸入イベント、呼気イベント、および疑通気口遮断のような吸入イベント)の総数、良吸入イベントに分類される吸入イベントの割合、およびユーザに関連付けられた特定の薬剤タイプの吸入器401の最も古い同期時刻、または最も新しい最後の同期時刻を示す全接続期間を提供してもよい。
【0267】
HCPは、患者の医療デバイスの使用に関連付けられたデータを分析するための時間とリソースが限られている。そして、さらに、様々な使用特性(例えば、医療デバイスの使用不足、使用過多および各種の不適切な使用)は、医療デバイスのタイプおよび/または医療デバイスが提供する薬剤タイプに基づいて、医師にとって関連性または重要性の程度が異なるかもしれない。例えば、薬剤タイプによっては、使用過多を示すものは使用不足を示すものよりも重要であり、その逆の場合もある。例えば、救助薬吸入器の使用過多は、ユーザが多くの増悪を経験しており、呼吸状態のコントロールが不十分となっていることを示唆している。そして、維持吸入器の使用不足は、ユーザが処方された服用スケジュールを守っていないことを示し、これは、ユーザが服用レジメンを適切に理解していないこと、過剰に処方されたユーザがその特定の服用濃度またはレジメンを必要とせず意図的に減らしていること、および/またはユーザが自分の呼吸状態を真剣に考えていないことを示唆している。
【0268】
さらに、いくつかの例では、DHP406は、プログラムに含まれる特定の薬剤に基づいて、GUI上のユーザのリストに優先順位をつけるように構成されている。例えば、前述したように、DHP406は、救助薬タイプおよび維持薬タイプがプログラムに含まれる場合に、GUI上のユーザのリストに優先順位をつけて、救助薬タイプを含む吸入器401の使用イベント回数(例えば、1週間のような特定の時間範囲における回数)が最も多いユーザが先頭に表示されるように構成されていてもよい。このような例では、DHP406は、救助薬タイプがプログラムに含まれていない場合に、維持薬タイプを含む吸入器401の使用イベント回数(例えば、1ヶ月のような特定の時間範囲における回数)が最も少ないユーザが先頭に表示されるように、GUI上のユーザのリストに優先順位をつけるようにも構成されている。
【0269】
さらに、いくつかの例では、DHP406は、コンプライアンススコア、将来のコンプライアンススコアおよび/またはリスクスコアに基づいて、GUI上のユーザのリストに優先順位をつけるように構成されていてもよい。例えば、前述したように、DHP406は、GUI上のユーザのリストに優先順位をつけて、最も低いコンプライアンススコア、最も低い将来のコンプライアンススコアおよび/または最も高いリスクスコアを有するユーザが先頭に表示されるように構成されていてもよい。
【0270】
DHP406は、医療提供者に関連付けられた(例えば、医療提供者によって操作される)コンピュータまたはサーバ408(例えば、医療提供者に運用するコンピュータまたはサーバ408)に、開業医および医療専門家への吸入器データの提供を行わせて、例えば、コンピュータまたはサーバ408における医療提供者向け処理モジュールを介して、患者が同意したプログラムに固有の吸入器データを閲覧できるようにしてもよい。一例では、DHP406は、医療提供者に関連付けられたコンピュータまたはサーバ408に、医療提供者のコンピュータに関連付けられたディスプレイデバイス上に表示されるGUIを介して吸入データを提供させる。
【0271】
DHP406は、任意の数のプログラムを定義することができ、それは、いくつかの例では、医療提供者によって設定および変更されることがある。吸入器データを医療提供者に提供する場合、DHP406は、その医療提供者に関連付けられた特定のプログラムに特有のGUIを提供してもよい(例えば、GUIを表示するように構成されていてもよい)。プログラムは、薬剤のタイプ(例えば、救助薬および/または維持薬の任意の組み合わせ)、特定の患者ひいてはその患者に対応する吸入器、プログラムの他のユーザ(例えば、特定の医師、診療グループおよび/または管理者)、医療提供者に提示されるデータのタイプ(例えば、チャート、イベントテーブル、使用サマリー)のような一連の基準を定義する。医療提供者は、DHP406を使用して任意の数のプログラムを設定および確立することができる。さらに、特定の患者およびその吸入器は、任意の数の固有のプログラムに関連付けられていてもよい。いくつかの例では、プログラムは、DHP406によって格納および保持され、医療提供者に関連付けられたコンピュータは、アプリケーション(例えば、ダッシュボードまたはウェブアプリケーション)を使用してDHP406からそれぞれのプログラムに関連するデータにアクセスするように構成されている。このような例では、DHP406は、プログラムが一旦確立されると、そのプログラムに関連付けられた吸入器データを受信し、必要な範囲で吸入器データを分析および操作し、プログラムデータを(例えば、ダッシュボードを介して)医療提供者に提供するように構成されている。プログラムデータには、以下で詳細に説明するように、特定のプログラムの構成に特有の吸入器データ、コンプライアンススコア、将来のコンプライアンススコア、リスクスコア、および/または、例えば、吸入器データから導き出される追加データが含まれていてもよい。例えば、DHP406は、医療提供者にプログラムデータを提示する医療提供者に関連付けられたコンピュータ上で、本明細書で説明するようなGUIを有効化してもよい。
【0272】
DHP406は、プログラムが定義する特定の薬剤、患者、ユーザ(例えば、医療提供者)、および/または治療デバイスまたは治療分野に基づいて、データを様々な方法で操作し、および/または様々な通知/警告を生成するように構成されている。一例として、DHP406は、救助薬タイプと1つ以上の維持薬タイプがプログラムに含まれる場合には第1タイプの警告を生成するが、救助薬タイプがプログラムに含まれない場合には第2タイプの警告を生成するように構成されていてもよい。例えば、DHP406は、救助薬タイプと1つ以上の維持薬タイプがプログラムに含まれる場合には救助薬タイプを含む吸入器の使用イベント回数(例えば、1週間のような特定の時間範囲における回数)が最も多いユーザが優先されたリストを示す第1警告を生成し、救助薬タイプがプログラムに含まれない場合には維持薬タイプを含む吸入器の使用イベント回数(例えば、1ヶ月のような特定の時間範囲における回数)が最も少ないユーザが優先されたリストを示す第2警告を生成するように構成されていてもよい。いくつかの例では、警告は、例えば、医療提供者の施設に設置されたディスプレイデバイスを介して提供される。
【0273】
例えば、DHP406は、プログラムが定義する特定の薬剤タイプ、患者、ユーザ(例えば、医療提供者)および/または治療デバイスもしくは治療分野に基づいて、データ(例えば、患者リスト)に様々な方法で優先順位をつけるように構成されていてもよい。いくつかの例では、DHP406は、救助吸入器の高い使用量を示すデータを、救助吸入器の低い使用量を示すデータ、および維持吸入器の高いまたは低い使用量を示すデータよりも優先するように構成されている。例えば、プログラムに当該プログラムに関連付けられたユーザのグループの救助薬と1つ以上の維持薬とが含まれる場合、DHP406は、救助薬を含む吸入器の使用イベント回数が最も多いユーザを、救助薬を含む吸入器の使用イベント回数が少ないユーザ、および維持薬を含む吸入器の使用イベント回数が最も多いまたは少ないユーザよりも優先するように構成されていてもよい。一方、救助吸入器がプログラムの一部ではない場合、DHP406は、特定の維持薬を含む吸入器の使用イベント回数が最も少ないユーザを、特定の維持薬を含む吸入器の使用イベント回数が最も多いユーザよりも優先するように構成されている。さらに、いくつかの実施例では、DHP406は、一定期間内に閾値を超える回数(例えば、過去1週間のうちに5回)の救助吸入器の使用イベントがあるユーザがプログラム内に少なくとも1人いる場合にのみ、救助薬を含む吸入器の使用イベントが最も多いユーザを優先してもよく、それ以外では、特定の維持薬を含む吸入器の使用イベント回数が最も少ないユーザを優先してもよい。
【0274】
DHP406は、それぞれのユーザに関連付けられたそれぞれの薬剤タイプについての全接続期間を決定するように構成されていてもよい。例えば、DHP406は、すべてが1人のユーザに関連付けられ、すべてが同一の薬剤を含む吸入器のグループを決定するように構成されていてもよいDHP406は、それらの吸入器のすべてについての最後の同期時刻を決定するように構成されていてもよい。次に、DHP406は、最も古いまたは最も新しい最後の同期時刻をグループから決定し、この時刻を、その特定のユーザの特定の薬剤タイプについての全接続期間として設定するように構成されていてもよい。DHP406は、全接続期間、薬剤タイプおよびユーザを示す警告を生成するように構成されていてもよい。いくつかの例では、警告は、例えば、医療提供者の施設に設置されたディスプレイデバイスを介して提供される。
【0275】
例えば、非限定的な例では、DHP406は、特定の薬剤タイプについての全接続期間に基づいてユーザに優先順位をつけるように構成されている。例えば、DHP406は、特定の維持薬がプログラムの一部である場合、その特定の維持薬タイプの吸入器について最も古い全接続期間を有するユーザを優先する警告(例えば、GUI)を生成してもよく、それ以外では、別の方法(例えば、救助薬を含む吸入器の使用イベント回数が最も多いユーザに基づいた方法、または(良吸入が0%であるすべてのユーザを除外しながら)特定の薬剤タイプで可能な良吸入の割合が最も小さいユーザに基づいた方法)でユーザに優先順位をつけてもよい。このように、DHP406は、プログラムに含まれる特定の薬剤タイプに基づいて、様々な方法でデータ(例えば、患者リスト)に優先順位をつけるように構成されていてもよい。
【0276】
前述したように、DHP406は、複数の異なるユーザに関連付けられた吸入器から吸入器データを受信し、集約するように構成されている。一方で、特に、DHP406が吸入器データを受信する前に吸入器がユーザデバイスと最初の通信を行うように構成された状況では、DHP406は、プログラムの一部であるそれぞれの吸入器の使用イベントの完全な履歴を有していないことがある。例えば、使用イベントの記録はしているものの関連付けられたユーザデバイスに接続されていないため、ユーザデバイスまたはDHP406に使用イベントを転送していない吸入器が存在するかもしれない。しかし、DHP406は、実際には2つの異なる吸入器のうちの一方は使用イベントを記録しているが、その使用イベントをDHP406に転送しておらず、他方の吸入器は実際には使用されていない場合に、それらの吸入器についてゼロ使用イベントを計算することがある。つまり、DHP406には、特定の期間(例えば、過去の1週間または1ヶ月間)の服用イベントがゼロである多くの吸入器のデータが含まれているかもしれない。しかしながら、これらの吸入器のいくつかは、そのユーザによって実際に使用されていないかもしれず、他の吸入器が使用されている(または、使用されていない)こともあるが、DHP406は、使用データの信頼性を把握できていないことがある。このことは、DHP406が提示するデータを歪め、あるプログラムに関連するデータを検討する医療提供者を混乱させるかもしれない。例えば、使用イベント回数が最も少ないこと基づいて吸入器(または、吸入器に関連するユーザ)をリストにすると、使用イベントがなかった吸入器と、1回以上の使用イベントがあったがそのイベントに関連するデータをまだDHP406が受信していない吸入器とを混同することになり、吸入器の歪んだリストが作成されることとなる。したがって、使用イベント回数の降順でソートすると、服用レジメンに従っていないユーザを正確に示すことができない吸入器のリストとなってしまう。
【0277】
このように、DHP406は、使用イベント回数が本当にゼロである吸入器に関連付けられたユーザと、特定の期間内に関連付けられたユーザデバイスに(または、直接的にDHP406に)接続されなかったためにDHP406からは使用イベント回数がゼロであるように見える吸入器に関連付けられたユーザとを決定し、これらを区別するように構成されていてもよい。例えば、DHP406は、複数の吸入器のそれぞれについて最終の同期時刻を決定するように構成されていてもよい。最終同期時刻は、接続の一部として使用イベントが転送されたかどうかにかかわらず、吸入器がモバイルアプリケーションを含むユーザデバイスに接続された(または、代替的に、例えばDHP406に直接的に接続された)最終の時刻を示している。さらに、いくつかの吸入器は、複数の異なるユーザデバイス(例えば、ユーザのスマートフォンまたはタブレット)に接続されるように構成されることを理解すべきであり、そのため、最終同期時刻は、吸入器がモバイルアプリケーションを含む任意のユーザデバイスに最後に接続されたことを示している。
【0278】
DHP406は、使用イベントに関連付けられたタイムスタンプを使用して、最終同期時刻を計算してもよい。例えば、吸入器がユーザデバイスに存在する処理モジュールに接続されると、処理モジュールは、吸入器がモバイルアプリケーションに接続された最終時刻を示す時刻、または吸入器から取得した最新の使用イベントの時刻を示してもよい。これに応答して、吸入器は、その時刻より後の使用イベントのみを送信することができる。処理モジュールは、これらの使用イベントと、吸入器および処理モジュールの間の接続時刻を示すものとをDHP406に後で送信してもよい。例えば、ユーザデバイスの処理モジュールは、定期的(例えば、15分毎)に吸入データ(または、新しい吸入データが存在しないことを示すもの)をDHP406に送信するように構成されていてもよい。このように、DHP406は、接続の一部として使用イベントが転送されたかどうかにかかわらず、例えば、吸入器がモバイルアプリケーションを含むユーザデバイスに接続された(または、代替的に、例えばDHP406に直接的に接続された)最終の時刻を示すそれぞれの吸入器の最終同期時刻を決定することができる。
【0279】
DHP406は、投与量がゼロであり、かつ時間枠内に接続が確認された吸入器に関連付けられたユーザを示す警告を生成するように構成されていてもよい。いくつかの例では、DHP406は、ディスプレイデバイス(例えば、医療提供者に関連するディスプレイデバイス)に、ユーザのリストを含む警告(例えば、GUI)を表示させてもよく、このリストは、使用イベント回数がゼロであり、かつ時間枠内に吸入器およびユーザデバイスに存在するアプリケーションの間の接続が確認された吸入器を保有するユーザを、使用イベント回数がゼロであり、かつ時間枠内に吸入器およびユーザデバイス上に存在するアプリケーションの間の接続が確認されていない吸入器を保有するユーザよりも優先させたものとなっている。いくつかの例では、すべての吸入器は維持薬タイプを含んでいる。例えば、プログラムは、維持薬タイプを含んだ吸入器に限定されていてもよい。さらに、いくつかの例では、時間枠は、直近の1ヶ月間、または直近の30日間であってもよい。
【0280】
前述したように、あるユーザは、同じ薬剤を含む複数の吸入器を保有しているかもしれない。例えば、ユーザは、救助薬を含む複数の吸入器を保有しているかもしれない(そして、これを、例えば異なる場所で保管しているかもしれない)。さらに、ユーザは、(例えば、詰め替えの間の移行期に、)特定の維持薬を含む複数の吸入器を保有しているかもしれない。このように、吸入器は、数日間、数週間または数ヶ月間にわたってユーザデバイスに接続されなかった可能性があるため、DHP406は、例えば、患者が同じ薬剤を含む複数の吸入器を所持している場合に、それぞれの患者のデータがどの程度完全かつ信頼できるものであるかを把握できないかもしれない。また、前述したように、DHP406は、複数の吸入器のそれぞれの最終同期時刻を決定するように構成されている。さらに、DHP406は、ユーザが同じ薬剤(例えば、救助薬)を含む複数の割り当てられた吸入器を保有しているか否か判定し、次いで、ユーザに関連付けられた特定の薬剤タイプの吸入器の最も古いまたは最も新しい最終同期時刻を判定するように構成されていてもよい。これは、ユーザに関連付けられた特定の薬剤タイプのすべての吸入器の最も古いまたは最も新しい最終同期時刻を示すもので、全接続期間と呼ばれることがある。例えば、ユーザが救助薬を含む2つの吸入器(例えば、吸入器1および吸入器2)に関連付けられており、吸入器1の最終同期時刻は2日前であるが、吸入器2の最終同期時刻は10日前である場合、ユーザは、当該ユーザの救助薬吸入器の10日前の全接続期間に関連付けられることになる。
【0281】
DHP406は、複数のユーザのリストと、それぞれのユーザに関連付けられたそれぞれの薬剤タイプについての全接続期間とを示す警告(例えば、GUI)を生成するように構成されていてもよい。前述したように、全接続期間は、例えば、接続中に使用イベントが転送されたか否かにかかわらず、ユーザに関連付けられた特定の薬剤タイプの吸入器のすべてが、ユーザに関連付けられたユーザデバイスに存在するアプリケーションおよび吸入器の間の接続が確認された最終時刻を示すことができる。いくつかの例では、全接続期間は、数時間、数日間、数週間または数ヶ月間を示している。
【0282】
システムは、日々変動する可能性がある様々な異なるタイムゾーンに位置するデバイスおよびユーザを含んでいてもよい。このため、システムが取り込んだデータは、様々なタイムゾーンに関連付けられることがある。しかしながら、吸入器は当該吸入器のタイムゾーンを把握することができない場合(このような場合には、例えば、吸入器が短距離パーソナルエリアネットワーク通信機能のみを含む場合がある)があり、また、医療提供者は、それぞれのユーザの使用イベントのタイムゾーンを把握することができない場合がある。それにもかかわらず、DHP406は、データが様々な異なるタイムゾーン、薬剤タイプおよび使用イベントに関連付けられている場合に、医療提供者に警告またはフィードバックを提供するためのまとまった方法を決定しようとしてきた。
【0283】
前述したように、いくつかの例では、吸入器の使用決定システムは、例えば、使用決定システムが省エネスリープモードから最初に復帰したとき(例えば、マウスピースカバーが最初に開かれた後)に、内部カウンタ(例えば、0から無制限にカウントアップしていく)を開始させてもよい。その後、使用決定システムが生成する日時のスタンプは、時計モジュールの内部カウンタに基づく相対時刻(またはカウント)であってもよい。そして、吸入器がユーザデバイスに存在する処理モジュールに接続されると、処理モジュールは、吸入器がモバイルアプリケーションに接続された最終時刻を示す時刻、または吸入器から取得した最新の使用イベントの時刻を示してもよい。これに応答して、吸入器は、その時刻より後の使用イベントのみを送信することができる。処理モジュールは、吸入器から1つ以上の使用イベントおよび関連付けられたタイムスタンプ(例えば、内部カウンタからの相対的なカウント)を受信してもよい。処理モジュールは、タイムスタンプの地方平均時およびタイムゾーンを決定し、地方平均時およびタイムゾーンを使用イベントに関連付けてもよい。タイムゾーンは、使用イベントを受信した時刻における処理モジュールのタイムゾーンであってもよいし、使用イベントに関連付けられた時刻における処理モジュールのタイムゾーンであってもよい。その後、処理モジュールは、使用イベント、関連付けられた地方平均時およびタイムゾーンをDHP406に送信してもよい。DHP406は、使用イベント、地方平均時およびタイムゾーンをユーザに関連付けることができる。
【0284】
次に、医療専門家によってアクセスされたとき、DHP406は、ユーザに関連付けられた最も新しい使用イベントのタイムゾーンに基づいて、医療専門家が選択したプログラムのユーザ、吸入器および/または薬剤に特有の通知/警告を生成してもよい。例えば、DHP406は、薬剤タイプおよび直近の使用イベントに基づいて、時間枠(例えば、時間窓)を決定してもよい。そして、DHP406は、時間窓内にあるユーザのすべての使用イベントを示す警告(例えば、GUI)を生成してもよい。DHP406は、直近の使用イベントのタイムゾーンに基づいて、その使用イベントのタイムゾーンにさらにN日(例えば、救助薬の場合はN=6、維持薬の場合はN=29または30)を加えたものに基づいて時間窓を決定してもよい。例えば、薬剤タイプが救助薬タイプであり、ユーザの直近の使用イベントが2020年6月30日の午前8時30分(GMT+9)に発生した場合、時間窓には、2020年6月30日とそれ以前の6日間が含まれることとなる。一方、薬剤タイプが救助薬タイプであり、ユーザの直近の使用イベントが2020年6月29日の19時30分(GMT-5)に発生した場合、時間窓には、2020年6月29日とそれ以前の6日間が含まれることとなる。したがって、使用イベントが同じ時刻に発生したにもかかわらず、それぞれの警告についての時間窓は、そのユーザの最新の使用イベントのローカルタイムゾーンに基づいて(例えば、医療提供者のタイムゾーンとは無関係に)、異なるように選択される。
【0285】
さらに、医療専門家によってアクセスされたとき、DHP406は、医療専門家のタイムゾーンを決定してもよく、また、DHP406は、(例えば、ユーザに関連付けられた直近の使用イベントのタイムゾーンに基づいた通知/警告に加えて、またはその代わりに、)医療専門家のタイムゾーンに基づいて、医療専門家が選択したプログラムのユーザ、吸入器および/または薬剤に特有の通知/警告を生成してもよい。例えば、DHP406は、複数の使用イベント、それぞれの使用イベントに関連付けられたユーザ、および使用イベントの関連付けられた地方平均時を示す通知/警告を生成してもよい。そして、DHP406は、医療専門家のタイムゾーンとは異なるタイムゾーンに関連付けられた使用イベントについてのみ、使用イベントのタイムゾーンを示す通知/警告を生成してもよい。いくつかの例では、DHP406は、薬剤タイプおよびユーザの直近の使用イベントに基づいて時間枠(例えば、時間窓)を決定してもよく、その後、それぞれの使用イベントのタイムゾーンが医療提供者に関連付けられたタイムゾーンとは異なる場合にのみそれぞれの使用イベントのタイムゾーンを含めつつそのユーザの時間窓内にある当該ユーザのすべての使用イベントを示す警告(例えば、GUI)を生成してもよい。
【0286】
さらに、主に吸入器データに関して説明してきたが、本明細書に記載のシステムは、治療デバイスまたは治療分野の任意の組み合わせからのデータを集約してもよいことを理解すべきである。このような例では、DHP406は、特定の治療デバイスまたは治療分野(例えば、本明細書に記載されたデバイスまたは分野)を定義するプログラムを構成してもよい。すなわち、DHP406は、複数の疾患タイプ、医療デバイスおよび/または薬剤についてのデータを保持および分析するように構成されている。
【0287】
図6A、6Bおよび
図7-9は、
図4Aおよび4Bに示されたシステム400に含まれ得る吸入器100、100A-Cおよび401a-dの非限定的で例示的な配置を示している。
図6Aは、非限定的な一例による、ここからは「吸入器」と呼ばれる吸入器配置100の正面斜視図である。吸入器100は、例えば、呼吸作動型の吸入器であってもよい。吸入器100は、上部キャップ102、メイン筐体104、マウスピース106、マウスピースカバー108、電子モジュール120および通気口126を含んでいてもよい。マウスピースカバー108は、開閉してマウスピース106および通気口126を露出させることができるように、メイン筐体104にヒンジで固定されていてもよい。ヒンジ式の接続が図示されているが、マウスピースカバー106は、他のタイプの接続によって吸入器100に接続されていてもよい。また、電子モジュール120は、メイン筐体104の上部にある上部キャップ102内に収容されるように図示されているが、電子モジュール120は、吸入器100のメイン筐体104に一体化および/または収容されていてもよい。
【0288】
電子モジュール120は、例えば、前述の使用決定システム12および送信モジュール14を含んでいてもよい。例えば、電子モジュール120は、使用決定システム12および/または送信モジュール14の機能を実行するように構成されたプロセッサ、メモリを含んでいてもよい。電子モジュール120は、本明細書に記載されるように、吸入器使用情報を特定するように構成された1つ以上のスイッチ、1つ以上のセンサ、1つ以上のスライダ、および/または他の器具もしくは測定機器を含んでいてもよい。電子モジュール120は、送信モジュール14の送信機能を実行するように構成されたトランシーバおよび/または他の通信チップまたは回路を含んでいてもよい。
【0289】
図6Aに示す非限定的な例では、吸入器100にはバーコード42が印刷されている。この例では、バーコード42は、上部キャップ102の最上面に印刷されたクイックリファレンスコード(QRコード)である。使用決定システム12および/または送信モジュール14は、例えば、電子モジュール(
図6Aでは見えない)の構成要素として、少なくとも一部が上部キャップ102内に配置されていてもよい。吸入器100の電子モジュールについては、
図8~10を参照してより詳細に説明する。
【0290】
QRコードは、
図6Aに示す吸入器100の上部キャップ102を真上から見た図である
図6Bにおいて、よりはっきりと見ることができる。QRコード42は、ユーザデバイス40が適切な光学リーダ(例えば、QRコードを読み取るためのカメラ等)を備えた例において、吸入器100のそれぞれを処理モジュール34とペアリングするための容易な方法を提供することができる。
【0291】
このようなバーコード42(例えば、QRコード)は、前述したように、吸入器100の薬剤のそれぞれに割り当てられた識別子を含んでいてもよい。表2は、様々な吸入器100のQRコード42に含まれる識別子の非限定的な例を示している。
[表2]
【0292】
表2に示すように、識別子はさらに用量強度および使用前吸入器の総用量数を示している。処理モジュール34は、使用情報と組み合わせて前者を使用して、前述したように、ラベル推奨投与量を超えた場合に通知を発行するようにユーザインタフェース38を制御してもよい。代替的または追加的に、処理モジュール34は、使用前吸入器の総用量数および使用情報を使用して、前述したように、それぞれの吸入器100に残っている用量数を決定してもよい。
【0293】
吸入器のバーコード42(例えば、QRコード)は、例えば、権限のないユーザがそれぞれの吸入器100にアクセスするのを防止するためのセキュリティキー(例えば、英数字が並んだもの)をさらに含んでいてもよい。処理モジュール34は、一旦処理モジュール34にセキュリティキーを提供されると、暗号化データのそれぞれを復号することができるが、セキュリティキーが提供されるまでは暗号化データのそれぞれを復号することができないかもしれない。より一般的には、セキュリティキーは、それぞれの識別子に含まれていてもよい。
【0294】
非限定的な例では、システムは、当該システムに含まれる吸入器の1つ以上(例えば、それぞれ)を単一のユーザアカウントに制限するように構成されている。
【0295】
このような例では、パスキー(例えば、QRコードで提供されるもの)によってそれぞれの吸入器とシステムの処理モジュールとの間の同期が可能となってもよい。パスキーおよびそれぞれの吸入器からの使用パラメータデータ(例えば、吸入データおよび/または使用データ)は、公開されていてもよい。この公開吸入データは、単一のユーザアカウントと同期するまで、特定の対象者に関連付けられていなくてもよい。
【0296】
システムは、それぞれの吸入器に関連付けられるユーザアカウントを単一のユーザアカウントに制限するように構成されているので、例えば、吸入器を紛失した、あるいは吸入器が盗難された状況において、それぞれの吸入器が別のユーザアカウントに同期されることを防ぐことができる。これにより、第3者が自分のものではない使用パラメータデータを取得することを防ぐことができる。
【0297】
非限定的な他の例では、処理モジュール34は、例えば、ユーザインタフェース(例えば、タッチスクリーン)を介したそれぞれの識別子を含む英数字キーのマニュアル入力によって、それぞれの吸入器100とペアリングされてもよい。
【0298】
図7は、例示的な吸入器100の断面内部透視図である。吸入器100は、メイン筐体104の内部に薬剤リザーバ110および用量計量アセンブリを含んでいてもよい。例えば、吸入器100は、薬剤リザーバ110(例えば、ホッパー)、ベローズ112、ベローズスプリング114、ヨーク(図示されない)、投薬カップ116、投薬チャンバ117、解砕器121および流路119を含むことができる。ベローズ112、ベローズスプリング114、ヨーク、投薬カップ116、投薬チャンバ117および解砕器121を組み合わせたものとして図示されているが、用量計量アセンブリは、説明した構成要素のサブセットを含んでいてもよく、および/または、吸入器100は、異なる用量計量アセンブリ(例えば、吸入器のタイプ、薬剤のタイプ等に基づく)を含んでいてもよい。例えば、いくつかの例では、薬剤はブリスターストリップに含まれていてもよく、1つ以上のホイール、レバー、および/またはアクチュエータを含むことがある用量計量アセンブリは、ブリスターストリップを前進させ、薬剤の用量を含んだ新しいブリスターを開き、その薬剤の用量を投薬チャンバおよび/またはユーザによる吸入のためのマウスピースにおいて使用可能とするように構成されている。
【0299】
マウスピースカバー108が閉位置から開位置に動かされると、吸入器100の用量計量アセンブリは、薬剤の用量を準備してもよい。
図7の図示された例では、マウスピースカバー108が閉位置から開位置に動かされることによって、ベローズ112が圧縮され、薬剤リザーバ110から投薬カップ116に薬剤の用量が送達される。その後、対象者は、薬剤の用量を受け取るために、マウスピース106を通して吸入することができる。
【0300】
対象者の吸入により発生する気流は、投薬カップ116内の薬剤の凝集体を破壊することによる薬剤の用量のエアロゾル化を解砕器121に行わせるかもしれない。解砕器121は、流路119を通る気流が特定の速度に達するか当該速度を超える場合、あるいは特定の範囲内にある場合に薬剤をエアロゾル化するように構成されていてもよい。エアロゾル化されると、薬剤の用量は、投薬カップ116から投薬チャンバ117内へと移動し、流路119を通り、マウスピース106から対象者へと到達する。流路119を通る気流が特定の速度に達しないか当該速度を超えない場合、あるいは特定の範囲内にない場合、薬剤は、投薬カップ116内に留まることがある。投薬カップ116内の薬剤が解砕器121によってエアロゾル化されなかった場合は、その後にマウスピースカバー108が開かれても、薬剤リザーバ110から次の薬剤の用量が送達されないかもしれない。すなわち、薬剤の単一用量は、その用量が解砕器121によってエアロゾル化されるまで投薬カップ内に留まるかもしれない。薬剤の用量が送達されると、投薬確認が投薬確認情報として吸入器100におけるメモリに格納されてもよい。
【0301】
対象者がマウスピース106を通して吸入すると、空気が通気口に入り、対象者への薬剤の送達のための空気の流れが形成される。流路119は、投薬チャンバ117からマウスピース106の端部まで延びており、投薬チャンバ117とマウスピース106の内部部分を含んでいてもよい。投薬カップ116は、投薬チャンバ117内に存在していてもよいし、投薬チャンバ117に隣接して存在していてもよい。さらに、吸入器100は、薬剤リザーバ110内の薬剤の総用量数に初期設定され、マウスピースカバー108が閉位置から開位置に動かされるたびに1ずつ減少するように構成された用量カウンタ111を含んでいてもよい。
【0302】
上部キャップ102は、メイン筐体104に取り付けることができる。例えば、上部キャップ102は、メイン筐体104の凹部とかみ合う1つ以上のクリップを使用してメイン筐体104に取り付けられてもよい。上部キャップ102は、例えば、接続されたときにメイン筐体104の一部と重なり、例えば、上部キャップ102とメイン筐体104の間に実質的に気密シールが存在するようになっていてもよい。
【0303】
図8は、電子モジュール120を露出させるために上部キャップ102が取り外された、例示的な吸入器100の分解斜視図である。
図8に示すように、メイン筐体104の上面は、1つ以上(例えば、2つ)のオリフィス146を含んでいてもよい。オリフィス146の1つは、スライダ140を受け入れるように構成されていてもよい。例えば、上部キャップ102がメイン筐体104に取り付けられているとき、スライダ140は、いずれかのオリフィス146を通ってメイン筐体104の上面から突出していてもよい。
【0304】
図9は、例示的な吸入器100の上部キャップ102および電子モジュール120の分解斜視図である。
図9に示すように、スライダ140は、アーム142、ストッパ144および遠位端145を形成することができる。遠位端145は、スライダ140の底部であってもよい。スライダ140の遠位端145は、(例えば、マウスピースカバー108が閉位置または部分的に開かられた位置にあるときに、)メイン筐体104内に存在するヨークに接するように構成されていてもよい。遠位端145は、ヨークが任意の径方向にあるときにヨークの上面に接するように構成されていてもよい。例えば、ヨークの上面は、複数の開口部(図示せず)を含んでいてもよく、スライダ140の遠位端145は、例えば、開口部の1つがスライダ140と一直線になっているかどうかにかかわらず、ヨークの上面に接するように構成されていてもよい。
【0305】
上部キャップ102は、スライダスプリング146およびスライダ140を受け入れるように構成されたスライダガイド148を含んでいてもよい。スライダスプリング146は、スライダガイド148内に存在していてもよい。スライダスプリング146は、上部キャップ102の内面に係合してもよく、また、スライダ140の上部(例えば、近接端)に係合(例えば、接触)してもよい。スライダ140がスライダガイド148内に設置されると、スライダスプリング146は、スライダ140の頂部と上部キャップ102の内面との間で部分的に圧縮されてもよい。例えば、スライダスプリング146は、マウスピースカバー108が閉じられたときに、スライダ140の遠位端145がヨークに接触したままになるように構成されていてもよい。スライダ145の遠位端はまた、マウスピースカバー108が開閉されている間、ヨークに接触したままであってもよい。スライダ140のストッパ144は、例えば、マウスピースカバー108の開閉またはその逆を通してスライダ140がスライダガイド148内に保持されるように、スライダガイド148のストッパに係合してもよい。ストッパ144およびスライダガイド148は、スライダ140の垂直方向(例えば、軸方向)の移動を制限するように構成されていてもよい。この制限は、ヨークの垂直方向の移動における制限よりも小さくてもよい。したがって、マウスピースカバー108が完全に開いた位置まで動かされると、ヨークはマウスピース106に向かって垂直方向に移動し続けるが、ストッパ144は、スライダ140の遠位端145がもはやヨークに接触しなくなるようにスライダ140の垂直移動を停止させてもよい。
【0306】
より一般的には、ヨークは、マウスピースカバー108に機械的に接続され、マウスピースカバー108が閉位置から開けられにつれてベローズスプリング114を圧縮するように動き、その後、マウスピースカバーが完全に開位置に達すると、圧縮したベローズスプリング114を解放し、それによってベローズ112が投薬リザーバ110から投薬カップ116に用量を送達させるように構成されていてもよい。ヨークは、マウスピースカバー108が閉位置にあるときに、スライダ140に接触していてもよい。スライダ140は、マウスピースカバー108が閉位置から開けられるにつれてヨークによって移動させられ、マウスピースカバー108が全開位置に達したときにヨークから離れるように配置されていてもよい。マウスピースカバー108を開くと薬剤の用量の計量が行われるため、この配置は、前述の用量計量アセンブリの非限定的な例とみなすことができる。
【0307】
用量計量中のスライダ140の動きは、スライダ140をスイッチ130に係合させ、これを作動させることができる。スイッチ130は、用量計量を記録するために電子モジュール120をトリガすることができる。したがって、スライダ140およびスイッチ130は、電子モジュール120とともに、前述の使用特定システム12に含まれるものとみなすことができる。この例において、スライダ140は、それによって使用特定システム12が用量計量アセンブリによる用量の計量を記録するように構成される手段とみなされ、それによる各計量は対象者が吸入器100を使用して行った吸入の指標である。
【0308】
スライダ140によるスイッチ130の作動は、例えば、電子モジュール120を第1電力状態から第2電力状態に移行させ、電子モジュール120にマウスピース106からの対象者による吸入を感知させてもよい。
【0309】
電子モジュール120は、プリント回路基板(PCB)アセンブリ122、スイッチ130、電源(例えば、電池126)および/または電池ホルダ124を含んでいてもよい。PCBアセンブリ122は、表面実装された構成要素(例えば、センサシステム128、無線通信回路129、スイッチ130、または1つ以上の発光ダイオード(LED)等の1つ以上のインジケータ(図示せず))を含んでいてもよい。電子モジュール120は、コントローラ(例えば、プロセッサ)および/またはメモリを含んでいてもよい。コントローラおよび/またはメモリは、PCB122の物理的に分かれた構成要素であってもよい。代替的に、コントローラおよびメモリは、PCB122に実装された別のチップセットの一部であってもよく、例えば、無線通信回路129は、電子モジュール120のコントローラおよび/またはメモリを含んでいてもよい。電子モジュール120のコントローラは、マイクロコントローラ、プログラマブルロジック機器(PLD)、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または任意の適切な処理機器や制御回路を含んでいてもよい。
【0310】
コントローラは、メモリから情報を読み出したり、メモリにデータを格納したりすることができる。メモリは、任意のタイプの適切なメモリ(例えば、取り外し不能メモリおよび/または取り外し可能メモリ)を含んでいてもよい。取り外し不能なメモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、ハードディスクまたは他のタイプのメモリ格納機器を含んでいてもよい。取り外し可能メモリは、SIMカード、メモリスティック、SDメモリカード等を含んでいてもよい。メモリは、コントローラに内蔵されていてもよい。コントローラは、電子モジュール120内に物理的に配置されていないメモリ(例えば、サーバまたはスマートフォン)からデータを読み出したり、そのメモリにデータを格納したりすることもできる。
【0311】
センサシステム128は、1つ以上のセンサを含んでいてもよい。センサシステム128は、例えば、前述の使用決定システム12に含まれていてもよい。センサシステム128は、例えば、異なるタイプの1つ以上のセンサ(例えば、1つ以上の圧力センサ、温度センサ、湿度センサ、方位センサ、音響センサおよび/または光学センサ。ただし、これらには限定されない)を含んでいてもよい。1つ以上の圧力センサは、気圧センサ(例えば、大気圧センサ)、差圧センサ、絶対圧センサおよび/または同種のセンサを含んでいてもよい。センサには、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)および/またはナノエレクトロメカニカルシステム(NEMS)技術を採用することができる。センサシステム128は、電子モジュール120のコントローラに瞬時の計測値(例えば、圧力計測値)および/または一定時間にわたって集計された計測値(例えば、圧力計測値)を提供するように構成されていてもよい。
図8および
図9に示されるように、センサシステム128は、吸入器100の流路119の外側に存在しているが、流路119に空気圧的に結合されていてもよい。
【0312】
電子モジュール120のコントローラは、センサシステム128から測定値に対応する信号を受信してもよい。コントローラは、センサシステム128から受信した信号を使用して、1つ以上の気流メトリックスを計算または決定してもよい。気流メトリックスは、吸入器100の流路119を通る気流のプロファイルを示すものであってもよい。例えば、センサシステム128が0.3キロパスカル(kPa)の圧力変化を記録した場合、電子モジュール120は、その変化が流路119を通る約45リットル/分(Lpm)の気流量に対応すると特定してもよい。
【0313】
図10は、圧力に対する気流量のグラフ900である。
図10に示す気流量およびプロファイルは単なる例であり、特定された気流量は、吸入器100およびその構成要素のサイズ、形状および設計に依存してもよい。
【0314】
処理モジュール34は、例えば、吸入器100がどのように使用されているか、および/またはその使用により薬剤の全用量が送達される可能性があるかどうかについての評価の一部として、センサシステム128から受信した信号および/または特定された気流メトリックスを1つ以上の閾値または範囲と比較することによって、リアルタイムで個人向けデータ(例えば、使用イベント)を生成してもよい。例えば、特定された気流メトリックスが特定の閾値未満の気流量を伴う吸入に対応する場合、処理モジュール34は、吸入器100のマウスピース106からの吸入が行われなかった、または不十分な吸入が行われたとの判定をしてもよい。特定された気流メトリックスが特定の閾値を超える気流量を伴う吸入に対応する場合、電子モジュール120は、マウスピース106からの過剰な吸入が行われたとの判定をしてもよい。特定された気流メトリックスが、特定の範囲内の気流量を伴う吸入に対応する場合、電子モジュール120は、吸入が「良好」である、すなわち薬剤の全用量が送達される可能性が高いとの判定をしてもよい。
【0315】
圧力測定値および/または計算された気流メトリックスは、吸入器100からの吸入の質または強さを示すことができる。例えば、特定の閾値または値の範囲と比較した場合、測定値および/またはメトリックスは、吸入を特定のタイプのイベント(例えば、良吸入イベント、低吸入イベント、無吸入イベントまたは過剰吸入イベント)として分類するために使用されてもよい。吸入の分類は、対象者の個人向けデータとして格納された使用パラメータであってもよい。
【0316】
無吸入イベントは、特定の閾値を下回る圧力測定値および/または気流メトリックス(例えば、30Lpm以下の気流量)と関連付けられてもよい。対象者がマウスピースカバー108を開けた後、測定サイクル中にマウスピース106から吸入を行わなかった場合に、無吸入イベントが発生してもよい。無吸入イベントは、対象者の吸入努力が、流路119を介した薬剤の適切な送達にとって不十分である場合、例えば、吸入努力により、解砕器121を作動させて投薬カップ116内の薬剤をエアロゾル化するのに十分な気流が生成されなかった場合に発生してもよい。
【0317】
低吸入イベントは、特定の範囲内にある圧力測定値および/または気流メトリックス(例えば、30Lpmよりも大きく、かつ45Lpm以下の気流量)と関連付けられてもよい。対象者がマウスピースカバー108を開けた後にマウスピース106から吸入し、対象者の吸入努力によって薬剤の用量の少なくとも一部が流路119を介して送達される場合に、低吸入イベントが発生してもよい。すなわち、吸入は、投薬カップ116から薬剤の少なくとも一部がエアロゾル化されるように、解砕器121を作動させるのに十分であってもよい。
【0318】
良吸入イベントは、低吸入イベントを上回る圧力測定値および/または気流メトリックス(例えば、45Lpmよりも大きく、かつ200Lpm以下の気流量)と関連付けられてもよい。良吸入イベントは、対象者がマウスピースカバー108を開けた後、マウスピース106から吸入を行い、対象者の吸入努力が、流路119を介した薬剤の適切な送達にとって十分である場合、例えば、吸入努力により、解砕器121を作動させて投薬カップ116内の薬剤の全用量をエアロゾル化するのに十分な気流が生成された場合に発生してもよい。
【0319】
過剰吸入イベントは、良吸入イベントを上回る圧力測定値および/または気流メトリックス(例えば、200Lpmを超える気流量)と関連付けられてもよい。過剰吸入イベントは、対象者の吸入努力が吸入器100の通常の動作パラメータを超えた場合に発生してもよい。過剰吸気イベントは、対象者の吸入努力が正常範囲内であっても、使用中に機器100が適切に位置決め、または保持されていない場合にも発生することがある。例えば、対象者がマウスピース106から吸入を行っている間に、(例えば、親指またはそれ以外の指によって)通気口が遮蔽されたり塞がれたりすると、計算された気流量は200Lpmを超えることがある。
【0320】
特定のイベントを分類するために、任意の適切な閾値または範囲が使用されてもよい。イベントの一部または全部が使用されてもよい。例えば、無吸入イベントは、45Lpm以下の気流量に関連付けられてもよく、良吸入イベントは、45Lpmよりも大きく、かつ200Lpm以下の気流量に関連付けられてもよい。そのため、場合によっては、低吸入が全く使用されないこともある。
【0321】
圧力測定値および/または計算された気流メトリックスは、吸入器100の流路119を通る流れの向きを示すこともできる。例えば、圧力測定値が圧力の負の変化を反映している場合、その測定値は、流路109を介してマウスピース106から空気が流出していることを示しているかもしれない。圧力測定値が圧力の正の変化を反映している場合、その測定値は、流路109を介してマウスピース106に空気が流れ込んでいることを示しているかもしれない。したがって、圧力測定値および/または気流メトリックスは、対象者がマウスピース106に向かって息を吐き出しているかどうかを判定するために使用されてもよく、これは、対象者が機器100を適切に使用していないことを知らせてくれる。
【0322】
吸入器100は、肺機能メトリックスの測定を可能にするために、肺活量計またはこれと同様に作動する装置を含んでいてもよい。例えば、吸入器100は、対象者の肺活量に関するメトリックスを得るために測定を行ってもよい。肺活量計またはこれと同様に作動する装置は、対象者が吸い込んだ、および/または吐き出した空気の量を測定することができる。肺活量計またはこれと同様に作動する装置は、吸い込まれた、および/または吐き出された空気の量の変化を検出するために、圧力変換器、超音波、または水位計を使用してもよい。
【0323】
吸入器100の使用から収集された、またはそれに基づいて計算された個人向けデータ(例えば、圧力メトリックス、気流メトリックス、肺機能メトリックス、用量確認情報等)は、(例えば、部分的または全体的に)外部機器を介して、計算および/または評価されてもよい。より具体的には、電子モジュール120内の無線通信回路129は、トランスミッタおよび/またはレシーバ(例えば、トランシーバ)、および追加の回路を含んでいてもよい。無線通信回路129は、吸入器100の送信モジュール14を含む、または定義することができる。
【0324】
例えば、無線通信回路129は、Bluetoothチップセット(例えば、Bluetooth Low Energyチップセット)、ZigBeeチップセット、Threadチップセット等を含んでいてもよい。このように、電子モジュール120は、個人向けデータ(例えば、圧力測定値、気流メトリックス、肺機能メトリックス、用量確認情報、および/または吸入器100の使用に関連するその他の状況)を外部の処理モジュール34(例えば、スマートフォン40に含まれる処理モジュール34)に無線で提供してもよい。個人向けデータは、使用時間および吸入器100がどのように使用されたかを示す吸入器100からのリアルタイムデータ、並びに対象者に関する個人向けデータ(例えば、対象者の肺機能および/または医療処置に関連するリアルタイムデータ)に基づく増悪リスク予測を可能にするために、外部機器にリアルタイムで提供されてもよい。外部機器は、受信した情報を処理し、グラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)を介して対象者に遵守フィードバックを提供するソフトウェアを含んでいてもよい。グラフィカル・ユーザ・インタフェースは、システム10に含まれるユーザインタフェース38に含まれていてもよいし、これを形成してもよい。
【0325】
気流メトリックスには、吸入器100からリアルタイムで収集された個人向けデータ(例えば、吸い込み/吐き出しの平均流量、吸い込み/吐き出しのピーク流量(例えば、受け取った最大吸入流量)、吸い込み/吐き出しの量、吸い込み/吐き出しのピークまでの時間、および/または吸い込み/吐き出しの持続時間のうちの1つ以上)が含まれていてもよい。また、気流メトリックスは、流路119を通る流れの向きを示してもよい。すなわち、負の圧力変化はマウスピース106からの吸い込みに相当し、正の圧力変化はマウスピース106への吐き出しに相当してもよい。電子モジュール120は、気流メトリックスを計算する際に、環境条件が生じさせるあらゆる歪みを排除または最小化するように構成されていてもよい。例えば、電子モジュール120は、気流メトリックスを計算する前または後に、大気圧の変化を考慮するためにゼロに再設定されてもよい。1つ以上の圧力測定値および/または気流メトリックスは、タイムスタンプが押され、電子モジュール120のメモリに格納されてもよい。
【0326】
気流メトリックスに加えて、吸入器100または別の計算機器は、付加的な個人向けデータを生成するために気流メトリックスを使用してもよい。例えば、吸入器100の電子モジュール120のコントローラは、気流メトリックスを、医療従事者に理解される対象者の肺機能および/または肺の健康状態を示す他のメトリックス(例えば、ピーク吸気流量メトリックス、ピーク呼気流量メトリックスおよび/または1秒間努力呼気肺活量(FEV1)等)に変換してもよい。吸入器の電子モジュール120は、回帰モデル等の数学モデルを使用して、対象者の肺機能および/または肺の健康状態についての測定値を決定してもよい。数学モデルは、吸入の総量とFEV1との間の相関を明らかにすることがある。数学モデルは、ピーク吸気流量とFEV1との相関を明らかにすることがある。数学モデルは、吸入の総量とピーク呼気流量との間の相関を明らかにすることがある。数学モデルは、ピーク吸気流量とピーク呼気流量との相関を明らかにすることがある。
【0327】
電池126は、PCB122の構成要素に電力を供給してもよい。電池126は、例えば、電子モジュール120に電力を供給するための任意の適切な電源(例えば、コイン電池)であってもよい。電池126は、充電式であってもよいし、非充電式であってもよい。電池126は、電池ホルダ124に収容されてもよい。電池ホルダ124は、電池126とPCB122との連続的な接触が維持されるように、および/または電池126とPCB122の構成要素とが電気的に接続されるように、PCB122に取り付けられてもよい。電池126は、電池126の寿命に影響を与える可能性のある特定の電池容量値を有していてもよい。以下でさらに説明するように、電池126からPCB122の1つ以上の構成要素への電力の分配は、吸入器100および/またはそこに収容された薬剤の耐用年数にわたって電池126が電子モジュール120に電力を供給することが保証されるように管理されてもよい。
【0328】
接続された状態で、通信回路およびメモリに電力が供給されてもよく、電子モジュール120が外部機器(例えば、スマートフォン)に「ペアリング」されてもよい。コントローラは、メモリからデータを取得し、そのデータを無線で外部機器に送信してもよい。コントローラは、現在メモリに格納されているデータの一部を取得して送信してもよい。例えば、コントローラは、どの部分が外部機器に既に送信されたのかを判別し、これまでに送信されていない部分を送信してもよい。代替的に、外部機器は、特定データ(例えば、特定の時間の後、または外部機器への最後の送信の後に、電子モジュール120によって収集されたデータ)をコントローラに要求してもよい。コントローラは、特定データがあればそれをメモリから取得し、その特定データを外部機器に送信してもよい。
【0329】
電子モジュール120のメモリに格納されたデータ(例えば、スイッチ130によって生成された信号、センサシステム128によって取得された圧力測定値および/またはPCB122のコントローラによって計算された気流メトリックス)は、吸入器100に関する使用パラメータを特定するためにデータを処理および分析することができる外部機器に送信されてもよい。さらに、モバイル機器上のモバイルアプリケーションは、電子モジュール120から受信したデータに基づいて、ユーザに対するフィードバックを発生させてもよい。例えば、モバイルアプリケーションは、日報、週報または月報の作成、エラーイベントまたはエラー通知の確認の提供、対象者への指導的なフィードバックの提供等を行ってもよい。
【0330】
図面、明細書および添付の請求項の研究から、請求項に記載された発明を実施する当業者によって、開示された実施形態に対する他の変形例が理解され、もたらされるであろう。ある手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。
【国際調査報告】