(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】硫化亜鉛を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
C01G 9/08 20060101AFI20231025BHJP
【FI】
C01G9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524320
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(85)【翻訳文提出日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 EP2021077015
(87)【国際公開番号】W WO2022083997
(87)【国際公開日】2022-04-28
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518432551
【氏名又は名称】ヴェナートア・ジャーマニー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ローエ・マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ヒミーレフスキ・クリストフ
(57)【要約】
本発明は、硫酸バリウム製造のカップル生成物として硫化亜鉛を製造する方法に関する。特に、本発明は、硫酸バリウム製造から切り離された硫化亜鉛製造に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ:
a)硫酸バリウム、好ましくはバライトと、アルカリ金属硫酸塩、好ましくは硫酸ナトリウムとの混合物を用意するステップ;
b)ステップa)で得られた混合物を、非酸化性雰囲気下、700℃~1250℃の温度範囲で、1種または複数の還元剤の存在下において処理するステップ;
c)ステップb)から得られる生成物を水で処理し、得られた溶液をろ過することによってろ液を得るステップ;
d)ステップc)のろ液に、好ましくはバリウムイオンに対して少なくとも化学量論量の、アルカリ金属硫酸塩の水溶液を、添加するステップ;
e)ステップd)の生成物をろ過し、それによってステップd)で形成されたBaSO
4析出物をろ液から分離するステップ;
f)ステップe)のろ液を、好ましくはスルフィドイオンに対して少なくとも化学量論量の、Zn
2+化合物の、特にZnSO
4の水溶液で、処理するステップ;
g)ステップf)の生成物をろ過し、それによってステップf)で形成されたZnS析出物をろ液から分離するステップ、
を含む、硫化亜鉛を製造するための方法。
【請求項2】
還元剤が、石炭、コークス、石油石炭(petroleum coal)およびLNG、水素およびそれらの混合物から選択される炭素還元剤からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法のステップa)における混合物中のバライトとアルカリ金属硫酸塩とのモル比が、2:1~50:1、好ましくは3:1~20:1、より好ましくは3:1~10:1、最も好ましくは6:1の範囲である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップa)で得られた混合物のスルフェート化合物と還元剤とのモル比が、1:4~1:10、好ましくは1:4~1:8の範囲である、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
ステップb)における処理が、800~1250℃の範囲、好ましくは850~1100℃の範囲の温度で行われる、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
ステップa)における反応を、60~180分、好ましくは75~150分、特に好ましくは90~120分の時間内において進行させる、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫酸バリウム製造のカップル生成物として硫化亜鉛を製造する方法に関する。特に、本発明は、硫酸バリウム製造から切り離された硫化亜鉛製造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、硫酸バリウムおよび硫化亜鉛を製造する方法が知られている。例えば、CN101205077A(特許文献1)には、第1のステップにおいてバライトと石炭の混合物をか焼することによって得られる50%超の硫化バリウムを含む黒灰原料をベースとして、硫酸バリウムと硫化亜鉛とを製造する方法であって、反応混合物を浸出させて、清澄化された硫化バリウム溶液を得;2)上記硫化バリウム溶液をミラビライト(Na2SO4)と反応させて、硫酸バリウム生成物を、加圧ろ過分離、それに続く乾燥および粉砕の後にもたらし;3)硫酸亜鉛溶液を準備し;4)当該硫酸亜鉛溶液を、ステップ2)から得られた硫化ナトリウム溶液と反応させ、引き続き加圧ろ過によってZnS析出物を分離し;5)ステップ4)から得られるNa2SO4溶液母液をボイラー内で濃縮する方法において、高温流を系に戻して、硫化バリウムを浸出するための水を加熱する一方で、濃縮されたNa2SO4溶液をBaSとの反応に使用する方法が開示されている。
【0003】
CN103288123A(特許文献2)は、微細な硫化亜鉛の製造のための閉ループ法であって、ZnO固形粉末をH2SO4溶液と混合して不純物を含むZnSO4溶液を得、不純物を含む当該ZnSO4溶液を精製して純粋なZnSO4溶液を得る方法に関する。純粋なZnSO4の前記溶液を、Na2Sの溶液と反応させ、それによって得られる硫化亜鉛をろ過によって分離し、乾燥し、か焼し、高度に粉砕して、微細なZnS生成物をもたらす。
【0004】
CN104326499A(特許文献3)には、BaSO4の製造プロセスの間に形成される硫化亜鉛製造のための硫化ナトリウム溶液の濃度を増加させる方法であって、60アルカリ(少なくとも60%の硫化ナトリウム含有量を有するNa2Sフレーク)の製造の蒸発コストを減少させるように、硫化ナトリウム溶液の濃度を、黒灰におけるNa2Sの3回の抽出を通して増加させる方法が開示されている。
【0005】
CN106976900A(特許文献4)には、粉末コーティングのための硫酸バリウムの製造方法が開示されている。当該方法は、バライトをか焼することによって得られた硫化バリウムと、カルシウムおよびマグネシウムを含まない硫酸ナトリウムの溶液との反応を利用する。
【0006】
硫化亜鉛の前記製造方法は、BaSとNa2SO4との反応に由来する硫化ナトリウムを使用するか、または市販のNa2Sを直接使用する。市販のNa2Sを使用する場合には、Na2Sの溶液をZnSO4の溶液と反応させる。しかしながら、市販のNa2Sを直接使用することは、費用が高く、Na2Sの毒性を考慮して予防措置を講じなければならないため、経済的観点から魅力的ではない。例えば、Na2Sフレークは、セベソIII指令2012/18/EUに該当し、制限されたキャパシティーと特別な安全要件を有する。さらに、固体Na2Sは、粉塵の形成、および特別の隔てられ、覆われた溶解ステーションのため、取り扱いが容易ではない。
【0007】
他の選択肢はNa2Sの溶液を購入することである。Na2Sの水溶液の理想的な濃度は12%であり、さもなければそれは、Na2S溶液の濃度が増加するかまたは温度が低下すると結晶化する。また、安全分類も変更される。従って、材料に関するコストが、供給者からの材料の購入により、ならびに追加的なロジスティックのニーズおよび製造プラントを再構成するための潜在的なコストにより増加し、従ってこのオプションは、経済的観点から費用効果的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】CN101205077A
【特許文献2】CN103288123A
【特許文献3】CN104326499A
【特許文献4】CN106976900A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、Na2Sの使用に関して改善され、先行技術における上述の欠点を克服する条件下でZnSを製造することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の根底にある課題は、本発明による方法の提供によって解決される。
【0011】
従って、本発明は、以下のステップを含む、硫化亜鉛の製造方法に関する:
a)硫酸バリウム、好ましくはバライトと、アルカリ金属硫酸塩、好ましくは硫酸ナトリウムとの混合物を用意するステップ;
b)ステップa)で得られた混合物を、反応器において、非酸化性雰囲気下、700℃~1250℃の温度範囲で、1種または複数の還元剤の存在下において処理するステップ;
c)ステップb)から得られる生成物を水で処理し、得られた溶液をろ過することによってろ液を得るステップ;
d)ステップc)のろ液にアルカリ金属硫酸塩の水溶液を、好ましくはバリウムイオンに対してスルフェートイオンの少なくとも化学量論量で、添加するステップ;
e)ステップd)の生成物をろ過し、それによってステップd)で形成されたBaSO4析出物をろ液から分離するステップ;
f)ステップe)のろ液を、好ましくはスルフィドイオンに対して少なくとも化学量論量の、Zn2+化合物の、特にZnSO4の水溶液で処理するステップ;
g)ステップf)の生成物をろ過し、それによってステップf)で形成されたZnS析出物をろ液から分離するステップ。
【0012】
本発明の方法は、使用される化合物としての硫酸ナトリウムおよび硫酸亜鉛について、以下の式で示すことができる:
【0013】
【化1】
前記式から分かるように、ステップd)および(3)において添加されるSO
4
2-の、ならびにステップf)および(4)において添加されるZn
2+の化学量論量が、それぞれBaSO
4およびZnSの完全な析出を達成するために好ましい。
【0014】
反応を促進するために、出発物質は、粒状形態、好ましくは500μm未満の粒径を有する粒状形態で使用される。
【0015】
ZnSの従来技術の製造方法と比較して、本発明の方法は、本発明の方法により、BaSとNa2SO4/アルカリ金属硫酸塩との反応を通してBaSO4を製造するプロセスで生成した中間生成物Na2S/アルカリ金属硫化物が一方ではZnSに完全に転化され、Na2S/アルカリ金属硫化物の量は、BaSとNa2SO4との反応によって生成した量に限定されず、しかしまた、ステップa)のバライトへのある量のアルカリ金属硫酸塩の添加、それに続く、本発明方法のステップb)に従う好ましくは炭素還元剤の存在下でのか焼/還元処理により、増加させることができる、という点で有利である。従って、中間生成物Na2Sの量、および従ってZnSの量は、BaSO4の製造とは独立させることができる。
【0016】
本発明がなされる前は、ZnSの製造は多くの場合に、BaSO4の製造と連結される。ZnSを製造すると、等モル量のBaSO4が製造される。実際には、製造されるBaSO4とZnSとの重量比はBaSO4 2.8:1であり、すなわち、1トンのZnSを製造するためには2.8トンのBaSO4が同時に製造される。
【0017】
本発明による方法の一実施態様では、還元剤は、石炭、コークス、石油石炭(petroleum coal)および液化天然ガス(LNG:liquid natural gas)、水素およびそれらの混合物から選択される炭素還元剤(carbonaceous reducing agents)からなる群から選択される。非気体還元剤の場合、反応をより速く開始するために、ステップb)における反応器中の反応の開始時に触媒量の酸素を有することが有用であり得る。ステップb)における反応混合物に機械的エネルギーを適用して、より緊密な反応混合物を有することも選択肢であり得る。
【0018】
本発明の方法のさらなる実施態様では、当該方法のステップa)における混合物中のバライトとアルカリ金属硫酸塩とのモル比は、2:1~50:1、好ましくは3:1~20:1、より好ましくは3:1~10:1、最も好ましくは6:1の範囲である。
【0019】
BaSO4:Na2SO4/アルカリ金属硫酸塩の上記で定義された範囲内において、生成物ZnS:BaSO4の比は、一方では実際的なニーズの観点から調節することができ、BaSO4のか焼/還元のための製造装置を、装置を著しく再構成することなく、ステップb)に従ってBaSO4とNa2SO4/アルカリ金属硫酸塩との混合物のか焼/還元を実施するために使用することができ、従って、利用可能な条件を使用してZnSを製造する費用効果的な方法が提供される。
【0020】
本発明による方法のさらなる実施態様によれば、ステップa)で得られる混合物のスルフェート化合物と還元剤とのモル比は、1:35~1:10、好ましくは1:4~1:8の範囲である。炭素還元剤の量は、ステップb)においてスルフェートイオンをスルフィドイオンに十分に還元することを確実にする過剰量で使用される。
【0021】
好ましくは、本発明による方法のステップb)における処理は、800~1250℃の範囲、好ましくは850~900℃の範囲の温度で実施される。
【0022】
選択された温度範囲は、BaSO4およびアルカリ金属硫酸塩の両方を良好な収率で硫化物に還元することを確実にする。1250℃という高い温度は、BaSO4の還元に有利であり得るが、前記高温はNa2Sの収率を著しく低下させる。
【0023】
さらに、本発明による方法のステップa)における反応は、60~180分、好ましくは75~150分、特に好ましくは90~120分の時間内において進行させてもよい。
【0024】
本発明では、BaSとNa2S/アルカリ金属硫化物との同時生成により、還元すべき天然バライトとナトリウム/アルカリ金属硫酸塩との比を調節することによる、硫酸バリウムと硫化亜鉛とのモル比の調節が可能となる。
【0025】
さらに、本発明による還元方法は、BaSを製造するために利用可能な製造ラインを使用して、現存の製造ラインをNa2Sの製造に特別に適合させる必要なしに、実施することができる、という点で有利である。
【0026】
硫化バリウムは、炉における、1種または複数の還元剤、好ましくは石炭、コークス、石油石炭、液化天然ガス(LNG)および水素またはそれらの混合物からなる群から選択される1種または複数の炭素還元剤の存在下での、天然バライトのか焼により製造することができる。温度は約1100℃であり、BaSの収率は約90%である。か焼後、BaS溶融物を水で直接溶解してBaS溶液を生成し、BaSO4製造用白プラント(white plant)での使用のために、これを清澄化し、洗浄し、ろ過する。
【0027】
ナトリウム/アルカリ金属硫化物は、H2SとNaOH/アルカリ金属水酸化物との反応によって製造することができ、またはNa2SO4/アルカリ金属硫酸塩を1種または複数の還元剤、好ましくは炭素還元剤、すなわちLNGもしくは水素で還元することによって製造することができる。還元経路によってNa2S/アルカリ金属硫化物を製造するためには、新規の炉を使用しなければならず、高濃度のNa2Sを現場で取り扱わなければならない。これは、高い投資コストと厳格な安全規制につながる。
【0028】
従って、本発明は、天然バライトとNa2SO4/アルカリ金属硫酸塩の混合物を還元するために既存の装置を使用し、引き続き、水で浸出させて、BaSとNa2S/アルカリ金属硫化物の両方を含む溶液を生成することによって、BaSおよびNa2S/アルカリ金属硫化物の両方を製造することをベースとしている。天然のバライトとナトリウム/アルカリ金属硫酸塩との比は、実際のニーズに従って変えることができる。ZnSの需要がより高い場合、天然のバライトに添加されるNa2SO4/アルカリ金属硫酸塩の量を、ZnS製造のためにより多くのNa2S/アルカリ金属硫化物を形成するために増加させる。これに対応して、天然のバライトと還元剤との混合物にNa2SO4を添加することによって、BaSの割合は得られる黒灰生成物において自動的に減少し、これはBaSO4の需要がより低い場合に有利である。BaSO4に対する等モル量のNa2Sが、以下の反応式(1)に従って生成されることは明らかである(具体的な実施態様については、表1を参照されたい)。
【0029】
【化2】
本発明がなされる前は、上記反応式(1)及び(2)に従う連結された反応プロセスにおいてZnSとBaSO
4が製造され、BaSO
4とZnSは1:1のモル比で、しかしながら、約2.8:1の重量比で製造される。本発明によれば、先のBaSO
4:ZnSの重量比は実際のニーズに従って減少させることができ、ZnSの製造は、本発明で定義される方法では、BaSO
4の製造から切り離される。
【0030】
バライトへの10重量%のNa2SO4の添加(Na2SO4:BaSO4のモル比1:6に相当)により、90%のBaSの収率が得られ、これは、従来技術の方法に匹敵し、および90~95%のNa2Sの収率が得られることが見出された。
【0031】
アルカリ硫酸塩とバライトとのモル比はまた、1:10~10:1の範囲になるように変えることができ、ステップb)における処理温度は、700~1250℃の範囲、好ましくは800~1000℃の範囲、特に好ましくは850℃~900℃の範囲であることが示される。
【0032】
原則として、還元プロセスは、異なる起源、例えば石炭、コークス、石油石炭、液化天然ガス、すなわちLNG、水素またはそれらの混合物からの炭素を使用することによって実施できる。
【0033】
最終生成物としてのBaSO4およびZnSの質は、従来の連結された方法によって製造されたBaSO4およびZnS生成物に匹敵する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、本発明による方法のフローチャートを示す。
【0035】
図1に示すように、バライトと硫酸ナトリウムを同時にか焼し、炭素還元剤、例えば石油石炭の存在下において、高温で還元する。オーブン内の還元温度は、概して700~1250℃の範囲、好ましくは800~1000℃の範囲、特に好ましくは850℃~900℃の範囲にある。か焼および還元ステップにおける混合物の滞留時間は、60~180分、好ましくは75~150分、特に好ましくは90~120分の時間内において進行させることができる。
【0036】
図1に示すように、mモルのバライトとnモルのNa
2SO
4を、還元剤01としての石油石炭の存在下において、高温でか焼し、還元する。石油石炭で還元した後、反応混合物を水中で直接希釈して、mモルのBaSおよびnモルのNa
2Sを含む水溶液を得ることができる。前記水溶液を、次いで、硫酸ナトリウムの溶液で処理して、理論的にはmモルのBaSO
4析出物、および(m+n)モルのNa
2Sを含む溶液を形成することができ、ここでmモルのNa
2Sはバライトに由来し、nモルのNa
2SはNa
2SO
4に由来する。
【0037】
BaSO4およびNa2SO4両方からの(m+n)モルのNa2Sの組み合わされた水溶液を、白プラントでの第1のろ過ステップにおいて硫酸バリウム析出物から分離する。得られたNa2S溶液を、ZnSの製造に使用することができる。
【0038】
還元炉に供給される供給材料の比を変えることによって、BaSとNa2Sとのモル比を変えることができ、従って、最終生成物BaSO4:ZnSのモル比を正確に調節することができる。表1は、種々のか焼/還元温度、か焼/還元の滞留時間、および硫酸バリウムと炭素のモル比、硫酸ナトリウムと炭素のモル比を用いた種々の試験を示す。
【0039】
【表1】
炭素還元剤は、炭素として計算して、過剰量で使用される。例えば、例01~13の5:1というBaSO
4:Cの重量比は、1:4のBaSO
4:Cのモル比に対応する。BaSO
4のBaSへの完全な還元のためのBaSO
4:Cの化学量論比1:2を考慮すると、Cの量は一様に、段階的な酸化に照らして少なくとも4倍大きい。
【0040】
Na2SO4の還元に関して、例01~06のNa2SO4:Cの重量比2:1は、約1:6のモル比に相当し、すなわち、炭素の量は、必要な量の3倍である。例07~13について、Na2SO4:Cのモル比は約1:4である。従って、全ての例における炭素の量は、必要とされる量の少なくとも2倍の量で使用される。
【0041】
BaSO4の還元に関して、89.8%のBaSの最高収率は例2に関して示されるように、120分間の1100℃のか焼/還元温度で得られる。か焼/還元時間を1100℃で90分に減少させると、BaSの収率は例13に示すように79.4%に減少する。60分のか焼/還元の場合、BaSの収率は1100℃で73.8%にまで減少する。従って、例01、02および13の結果は、より長いか焼/還元時間がBaSの高収率に有利に働くことを示す。
【0042】
例7~8および10~13について、か焼/還元時間は90分であり、温度範囲は850~1100℃の範囲であり、86%の最高収率は、例13に関する900℃の温度で得られる。
【0043】
Na2SO4のか焼/還元に関して、例12のためのか焼/還元温度1100℃において、Na2Sの収率は64%に過ぎず、これは850~1000℃の温度範囲でのものより著しく低く、このことは、850~1000℃の温度範囲がNa2Sの良好な収率のために好ましいことを示している。例04~06では、か焼/還元時間が120分に保たれ、Na2Sの最高収率93.5%が900℃で得られている。か焼/還元時間を120分から90分に短縮すると、Na2Sの収率の低下をもたらすが、例7および9のための900~950℃の温度範囲ではなおも最高収率が得られている。
【0044】
BaSO4とNa2SO4両方のか焼/還元のための最適な温度範囲は850~900℃の範囲であることが示される。
【0045】
本発明を実施するためには、BaSO4を還元するために使用される混合物中にNa2SO4を混合するためのわずかな投資のみが必要である。製造ラインの他の部分には、大きな変更や投資はない。Na2S溶液の外部供給のコストは、本発明によってNa2Sを製造するよりもはるかに高いことが見積もられる。
【0046】
さらに、Na2Sの単離は、本発明の方法のためには必要ではない。従って、本発明の方法は、溶液および固体形態両方における有害Na2Sを取り扱う可能性を最小限度にする。加えて、本発明の方法は、BaSを製造するために利用可能な製造機器をわずかな変更によって調節して、BaSおよびNa2Sの製造に適合させることができるという利点を有し、このことは、本発明の方法を経済的観点から特に魅力的なものとする。
【国際調査報告】