(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】マルチパスセルを備えた光増幅器装置
(51)【国際特許分類】
H01S 3/081 20060101AFI20231025BHJP
H01S 3/08 20230101ALI20231025BHJP
G02B 5/10 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
H01S3/081
H01S3/08
G02B5/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547742
(86)(22)【出願日】2021-10-12
(85)【翻訳文提出日】2023-04-17
(86)【国際出願番号】 EP2021000122
(87)【国際公開番号】W WO2022078620
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】102020006380.2
(32)【優先日】2020-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102020006522.8
(32)【優先日】2020-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021003704.9
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523143888
【氏名又は名称】ケミング ドゥー
【氏名又は名称原語表記】Keming Du
【住所又は居所原語表記】Auf der Maar 6, 52072 Aachen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ケミング ドゥー
【テーマコード(参考)】
2H042
5F172
【Fターム(参考)】
2H042DD09
5F172AD05
5F172AF02
5F172AF05
5F172AF06
5F172AF07
5F172AL07
5F172NN07
5F172NQ12
5F172NQ24
5F172NQ32
5F172NQ62
5F172NQ64
5F172NS03
5F172NS18
5F172NS30
(57)【要約】
本発明は、マルチパスセルと少なくとも1つの増幅媒体とを含む、出力およびエネルギを増加させるための増幅器装置であって、マルチパスセルは、凹型に湾曲したミラーを有し、増幅媒体は、ポンプビームが増幅媒体を複数回通過するように、かつ増幅媒体によって吸収されるように、マルチパスセルの内部に配置されており、増幅されるべきレーザビームは、増幅媒体を通過する、増幅器装置に関する。ミラーは、ホワイトマルチパスセルが形成されるように構成および配置されており、ポンプビームおよび増幅されるべきレーザビームは、ミラーおよび増幅媒体が配置されている位置において大きな断面積を有する。また、高反射性のミラーと部分透過性のミラーとが設けられており、これら2つのミラーが、マルチパスセルと協働して、レーザ発振器の形態の1つのレーザ共振器を形成するような、装置も企図されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチパスセルと少なくとも1つの増幅媒体とを含む、出力およびエネルギを増加させるための増幅器装置であって、
前記マルチパスセルは、凹型に湾曲したミラー(736,737,738)を有し、
前記増幅媒体(171~175)は、ポンプビーム(301,73)が前記増幅媒体(171~175)を複数回通過するように、かつ前記増幅媒体(171~175)によって吸収されるように、前記マルチパスセルの内部に配置されており、
増幅されるべきレーザビームは、前記増幅媒体(171~175)を通過する、
増幅器装置において、
前記ミラー(736,737,738)は、ホワイトマルチパスセルが形成されるように構成および配置されており、
前記ポンプビーム(301,73)および前記増幅されるべきレーザビームは、ミラー、増幅媒体、および他の光学コンポーネントが配置されている位置において大きな断面積を有する
ことを特徴とする、増幅器装置。
【請求項2】
前記マルチパスセルの前記凹型のミラー(736,737,738)は、少なくとも1つのミラーと少なくとも1つのレンズとの組み合わせによって形成されている、
請求項1記載の装置。
【請求項3】
反射器(21)が設けられており、
前記反射器(21)により、1回目の通過時に吸収されなかった前記ポンプビーム(309,19)が反射し戻されて、2回目に逆方向に前記マルチパスセルを通過する、
請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記増幅媒体は、薄いディスク(963)であり、
前記ディスク(963)の第1の面(977)は、凸型であり、前記増幅されるべきレーザビームおよび前記ポンプビームに対して高透過性であり、
前記ディスク(963)の前記第2の面(978)は、前記増幅されるべきレーザビームおよび前記ポンプビームに対して高反射性にコーティングされており、
前記ディスク(963)の焦点長さは、前記凹型のミラー(736,737,738)の曲率半径に等しい、
請求項1または2記載の装置。
【請求項5】
前記増幅媒体は、薄いディスク(966)であり、
前記ディスク(966)の第1の面(974)は、凹型であり、前記増幅されるべきレーザビームおよび前記ポンプビーム(301)に対して高透過性にコーティングされており、
前記ディスク(966)の前記第2の面(976)は、凸型であり、前記増幅されるべきレーザビームおよび前記ポンプビームに対して高反射性にコーティングされており、
前記面(974,976)の曲率は、前記ディスク(966)の前記面(974,976)の曲率半径が、前記凹型のミラー(736,737,738)の前記曲率半径にほぼ等しくなるように選択されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記増幅媒体は、薄いディスク(961;962)であり、
前記ディスク(961,962)の第1の平坦な面(953,971)は、前記増幅されるべきビームおよび前記ポンプビーム(301)に対して高透過性にコーティングされており、
前記ディスク(961,962)の第2の面(954,972)は、前記増幅されるべきレーザビームおよび前記ポンプビーム(301)に対して高反射性にコーティングされており、
前記ディスク(961)のすぐ上流で、正レンズ(983,987)が使用され、
前記レンズ(983,987)は、前記増幅されるべきレーザビームおよび前記ポンプビーム(301)に対して高透過性にコーティングされており、
前記レンズ(983,987)および前記ディスク(962,961)が、前記ポンプビーム(301)および前記増幅されるべきレーザビームを、1つの凹型のミラー(737;738)のように一緒に反射させるように、前記レンズ(983,987)の焦点長さが選択されており、かつそのように前記レンズ(983,987)が前記ディスク(962,961)に対して配置されており、
前記ディスク(962,961)は、ヒートシンク(931,932)に取り付けられており、かつ熱的に接触させられている、
請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
2つの前記ディスク(961,962)が、1つのヒートシンク(93)に取り付けられており、かつ熱的に接触させられている、
請求項6記載の装置。
【請求項8】
それぞれの前記レンズ(983,987)は、変位ユニット(831)に取り付けられている、
請求項5から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記レンズ(983,987)は、レンズ対(986,987)によって形成されており、
前記レンズのうちの少なくとも1つのレンズは、変位ユニットに取り付けられており、
前記レンズを変位させることによって、前記マルチパスセル内の熱レンズが補償されるように前記レンズ対の有効焦点長さが調整される、
請求項6または7記載の装置。
【請求項10】
少なくとも1つの光学素子(989)が設けられており、
前記少なくとも1つの光学素子(989)は、媒体(989)と、加熱ビーム源、または前記媒体(989)に熱的に接触させられている少なくとも1つの加熱素子(990)とからなり、
前記加熱ビーム源または前記加熱素子(990)は、前記ポンプビームおよび前記増幅されるべきレーザビームの波長とは異なる波長を有する加熱ビームを放出し、
前記媒体(989)は、前記加熱ビームを吸収し、前記ポンプビームおよび前記増幅されるべきビームに対して高透過性であり、
前記加熱ビームの分布は、事前設定に従って調整されている、
請求項1から9までのいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
増幅されるべきレーザビーム(1)が、増幅のために前記マルチパスポンプ装置に入射し、
前記入射は、前記ホワイトマルチパスセルの内部に、前記増幅されるべきレーザビームの4N個のパスが形成されるように実施され、なお、Nは整数である、
請求項1から10までのいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
前記増幅されるべきレーザビーム(1)が前記マルチパスポンプ装置に入射する前に、成形光学系(261)が配置されており、
前記成形光学系(261)は、前記増幅されるべきレーザビーム(1)を非点収差ビーム(11)に変換する、
請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記非点収差ビーム(11)は、1つの平面においてほぼコリメートされており、前記平面に対して垂直な平面において収束しており、中心平面(611)にビームウエストを有し、
前記中心平面(611)は、前記ミラー(736)の焦点平面と一致する、
請求項12記載の装置。
【請求項14】
前記成形光学系(261)は、少なくとも1つのシリンドリカルレンズまたはミラーを含む、
請求項12記載の装置。
【請求項15】
前記マルチパスセルに少なくとも1つの絞りおよび/または絞りアレイが挿入されており、
前記絞りおよび/または前記絞りアレイは、ビーム通過箇所において開口部を有し、
前記開口部の幾何形状は、それぞれの前記ビーム通過箇所のビーム横断面に適合されている、
請求項1から14までのいずれか1項記載の装置。
【請求項16】
少なくとも1つの絞りアレイが、前記中心平面/前記焦点平面(611)に、または前記中心平面/前記焦点平面(611)の近傍に位置決めされている、
請求項15記載の装置。
【請求項17】
それぞれの前記開口部の寸法は、対応するガウスビームのビーム横断面の1.2倍~2倍に相当する、
請求項15または16記載の装置。
【請求項18】
前記ポンプビームは、ビーム源(78)から放出され、光学系(76)によって成形され、ダイクロイックミラー(61)を介して前記マルチパスポンプ装置に入射し、
前記ミラー(61)は、前記増幅されるべきレーザビーム(1,11)に対して高透過性であり、
前記増幅されるべきレーザビーム(1,11)は、前記ミラー(61)によって前記マルチパスポンプ装置に入射する、
請求項1から17までのいずれか1項記載の装置。
【請求項19】
前記ダイクロイックミラー(61)は、前記増幅されるべきビーム(1,11)を、前記ポンプビーム(73)と同軸に重畳させる、
請求項18記載の装置。
【請求項20】
反射器(21)が設けられており、
前記反射器(21)は、凹型のミラーであり、前記マルチパスセルを1回目に通過した時に吸収されなかった前記ポンプビーム(73)を反射して戻し、相応に2回目の通過時に逆方向に前記マルチパスセルを通過させる、
請求項18または19記載の装置。
【請求項21】
前記反射器(21)は、増幅されたビーム(11)に対して高反射性であり、
前記増幅されたビームは、前記反射器(21)によって反射し戻され、逆方向に前記マルチパスセルを通過し、ビーム(99)になるように改めて増幅される、
請求項20記載の装置。
【請求項22】
前記入力レーザビーム(1)と前記増幅されたレーザビーム(99)とを分離するために、λ/4遅延板(23)および偏光子(22)が使用されている、
請求項21記載の装置。
【請求項23】
p偏光されたレーザビームまたはs偏光されたレーザビーム(1)が、ファラデーアイソレータ(26)を通過するように導かれ、
前記ファラデーアイソレータ(26)は、レーザビームの通過後にp偏光を維持するか、または通過後にs偏光されたレーザビームになり、
前記偏光されたレーザビーム(1)は、続いて、前記偏光子(22)および前記λ/4遅延板(23)を通過し、その後、円偏光されており、
前記増幅されたレーザビーム(99)は、前記ミラー(21)によって前記マルチパスセルへと反射し戻され、さらに増幅され、続いて、前記λ/4遅延板(23)を通過して、s偏光され、
前記s偏光された増幅されたレーザビームは、前記偏光子(22)によって反射させられてレーザビーム(99)になり、
ミラー(24)が使用され、前記ミラー(24)によって、前記s偏光されたビーム(99)が前記マルチパスセルへと反射し戻され、さらに増幅される、
請求項21または22記載の装置。
【請求項24】
前記ミラー(736,737)のうちの少なくとも1つのミラーは、パルス圧縮型GDDミラーまたはGTIミラーである、
請求項1から23までのいずれか1項記載の装置。
【請求項25】
前記増幅媒体として、色素からなる液体セル、例えばCO2を備えた気体セル、ドープされたガラスのような固体、Ndイオン、Ybイオン、Tmイオン、Hoイオン、またはTiイオンがドープされた結晶、もしくは半導体が使用される、
請求項1から24までのいずれか1項記載の装置。
【請求項26】
前記増幅媒体として半導体が使用され、電流によって電気的に増幅が生成される、
請求項25記載の装置。
【請求項27】
前記増幅媒体は、気体状であり、電気的な放電によって増幅のための反転が生成される、
請求項25記載の装置。
【請求項28】
大きなモード断面積を有するさらなるマルチパスポンプ装置およびマルチパス増幅器装置を形成するために、前記ホワイトマルチパスセルの下流に少なくとも1つのさらなるホワイトマルチパスセルが接続される、
請求項1から27までのいずれか1項記載の装置。
【請求項29】
高反射性のミラー(81)と部分透過性のミラー(83)とが設けられており、
2つの前記ミラー(81,83)は、レーザ発振器が形成されるように、前記マルチパスセルと協働して1つのレーザ共振器を形成する、
請求項1から28までのいずれか1項記載のレーザ装置および増幅器装置。
【請求項30】
前記ミラー(81,83)のうちの少なくとも1つは、シリンドリカルミラーである、
請求項29記載の装置。
【請求項31】
前記ミラー(81,83)は、前記マルチパスセルの内部に非点収差レーザビームが形成されるように選択されており、
前記非点収差レーザビームは、レンズ、ミラー、とりわけ増幅媒体のような光学コンポーネントが配置されている箇所においてできるだけ大きな断面積を有する、
請求項29または30記載の装置。
【請求項32】
前記レーザ発振器に、レーザパルスを生成する光学スイッチ(84)が配置されている、
請求項29から31までのいずれか1項記載の装置。
【請求項33】
前記レーザ発振器に、少なくとも1つの周波数変換ユニット(86)が配置されている、
請求項29から32までのいずれか1項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
短パルスレーザおよび超短パルスレーザを用いた材料加工は、精密かつ柔軟な製造方法としてますます重要となっている。高い生産性は、高い平均出力を必要とする。平均出力は、パルス繰り返し率とパルスエネルギとの積である。用途および設備技術に応じて、レーザビームが中程度のパルス繰り返し率において高いパルスエネルギを有している場合にのみ、高い平均出力を実現することができる。
【0002】
Yb:YAGのような増幅媒体の場合、とりわけYb:YAGがディスクの形態で形成されている場合には、吸収断面積は非常に小さい。ポンプビームの効率的な吸収を保証するために、ポンプビームが増幅媒体を複数回通過して伝播することが必要である。
【0003】
さらに、短パルス持続時間または超短パルス持続時間と組み合わせられた高いパルスエネルギは、高いパルスピーク出力密度または高いパルスエネルギ密度をもたらす。高いパルスピーク出力密度および高いパルスエネルギ密度は、例えば、以下の不利な作用、すなわち、
・コーティングの損傷および光学系の破壊、
・レーザビームの時間的特性および空間的特性のさらなる変化または劣化と、光学系の損傷とを引き起こす、自己位相変調、カーレンズ、自己集束のような非線形作用、
・誘導ラマン散乱、誘導ブリルアン散乱
をもたらす可能性がある。
【0004】
本発明の課題は、ポンプビームを増幅媒体に効率的に入射させることが可能であり、かつ光学コンポーネントを損傷することなく、とりわけパルスレーザビームの出力およびエネルギを増加させることが可能であって、かつ効率的にポンピングされ、かつ大きなモード断面積を有するような、増幅器のための光学的なマルチパスポンプ装置と、マルチパス増幅器装置とを提供することである。
【0005】
上記の課題は、請求項1記載の特徴によって解決される。好ましい実施形態は、従属請求項から明らかとなる。
【0006】
上記の課題はさらに、請求項29記載のレーザ装置および増幅器装置によっても解決される。このレーザ装置および増幅器装置は、高反射性のミラーと部分透過性のミラーとが設けられており、これら2つのミラーが、マルチパスセルと協働して1つのレーザ共振器を形成し、これによってレーザ発振器が形成されることを特徴としている。このようなレーザ装置および増幅器装置の好ましい実施形態は、請求項30~33に記載されている。
【0007】
本発明による出力およびエネルギを増加させるための増幅器装置は、マルチパスセルと少なくとも1つの増幅媒体とを含む。マルチパスセルは、凹型に湾曲したミラーを有し、増幅媒体は、マルチパスセルの内部に配置されている。ポンプビームは、増幅媒体を複数回通過し、かつ増幅媒体によって吸収され、増幅されるべきレーザビームは、増幅媒体を通過する。ミラーは、ホワイトマルチパスセルが形成されるように構成および配置されており、ポンプビームおよび増幅されるべきレーザビームは、ミラーおよび増幅媒体が配置されている位置において大きな断面積を有する。
【0008】
したがって、ポンプビームが増幅媒体を複数回通過することとなり、これにより、効果的に高いパルスエネルギが達成され、したがって、上記の作用が回避されるか、または少なくとも大幅に低減される。
【0009】
本発明の本質的な着想は、増幅媒体の、とりわけ薄いディスクの形態のYb:YAGのような低吸収性の増幅媒体の効率的なポンピングを目的として、ポンプビームが増幅媒体を複数回通過するようにするための、かつポンプビームを増幅媒体によって効率的に吸収するための、簡単でコンパクトなマルチパスセルが使用されることに見て取れる。マルチパスセルは、ミラーと、場合によってはレンズも使用することによって形成され、このミラーと、場合によってはレンズとは、好ましくはポンプビームが、レンズ、ミラー、増幅媒体、および他の光学コンポーネントが配置されている位置において大きな断面積を有するように寸法設計および構成される。これにより、レンズ、ミラー、および増幅媒体のような光学コンポーネントの位置におけるポンプ出力密度およびパルスエネルギ密度を、破壊閾値未満に、または望ましくない非線形作用の発生閾値未満に抑えることができる。
【0010】
マルチパスセルは、ホワイトマルチパスセルである。
【0011】
マルチパスセルの凹型のミラーは、少なくとも1つのミラーと少なくとも1つのレンズとの組み合わせによって形成可能である。この組み合わせは、有効焦点長さを設定可能にすべき場合に有利である。
【0012】
1つの実施形態では、反射器が設けられており、反射器により、マルチパスセルを1回目に通過した時に吸収されなかったポンプビームが反射し戻されて、2回目に逆方向にマルチパスセルを通過する。反射器として、好ましくは凹型のミラーが使用される。
【0013】
特に有利なのは、薄いディスクの形態の増幅媒体であり、薄いディスクとは、その直径がディスクの厚さの約10倍以上に相当するようなディスクを意味する。ディスクの第1の面は、凸型であり、増幅されるべきレーザビームおよびポンプビームに対して高透過性であり(例えば、相応にコーティングされており)、ディスクの第2の面は、増幅されるべきレーザビームおよびポンプビームに対して高反射性にコーティングされており(ほぼ100%の反射率を有する)、ディスクの焦点長さは、凹型のミラーの曲率半径に等しい。
【0014】
これに代わる手段では、増幅媒体として薄いディスクが使用され、ディスクの第1の面は、凹型であり、増幅されるべきレーザビームおよびポンプビームに対して、例えばコーティングによって高透過性であり、ディスクの第2の面は、凸型であり、増幅されるべきレーザビームおよびポンプビームに対して、例えばコーティングによって高反射性である。この場合、面の曲率は、ディスクの面の曲率半径が、凹型のミラーの曲率半径にほぼ等しくなるように選択されている。
【0015】
また、増幅媒体が、薄いディスクであり、ディスクの第1の平坦な面が、増幅されるべきビームおよびポンプビームに対して高透過性にコーティングされており、ディスクの第2の面が、増幅されるべきレーザビームおよびポンプビームに対して高反射性にコーティングされており、ディスクのすぐ上流で、正レンズが使用され、レンズが、増幅されるべきレーザビームおよびポンプビームに対して高透過性にコーティングされているようにすることも企図されている。レンズおよびディスクが、ポンプビームおよび増幅されるべきレーザビームを、1つの凹型のミラーのように一緒に反射させるように、レンズの焦点長さが選択されており、かつそのようにレンズがディスクに対して配置されている。ディスク内で発生した損失熱を排出するために、ディスクは、ヒートシンクに取り付けられており、かつ熱的に接触させられている。
【0016】
複数のディスクが1つの共通のヒートシンクに取り付けられる場合には、コンパクトな構造が達成される。さらに、2つのディスクが1つの大きなディスクに纏められ、この1つの大きなディスクも、1つのヒートシンクに取り付けられており、かつ熱的に接触させられていると有利である。
【0017】
それぞれのレンズを、変位ユニットに取り付けることができ、これにより、この変位ユニットによって、レンズからディスクまでの距離と、ひいてはアセンブリの有効焦点長さとを、マルチパスセル内の熱レンズが補償され得るように変化させることができる。
【0018】
レンズの有効焦点長さを調整することができるようにするために、個々のレンズの代わりにレンズ対を使用することができる。簡単な実施形態は、それぞれ凹型のレンズと凸型のレンズとからレンズを形成する実施形態であり、この場合、2つのレンズ間の距離を変化させることにより、マルチパスセル内の熱レンズ、すなわちマルチパスセルの内部でのコンポーネントの熱レンズ効果を補償することが可能である。
【0019】
少なくとも1つの光学素子を設けることができ、少なくとも1つの光学素子は、媒体と、加熱ビーム源、および/または媒体に熱的に接触させられている少なくとも1つの加熱素子とからなる。加熱ビーム源または加熱素子は、ポンプビームおよび増幅されるべきレーザビームの波長とは異なる波長を有する加熱ビームを放出するように選択される。媒体は、加熱ビームを吸収し、ポンプビームおよび増幅されるべきビームに対して高透過性である。マルチパスセル内のレンズ効果および位相歪みのような光学作用を補償するために、加熱ビームの吸収によって媒体内の温度分布と、相応に屈折率分布とが所期のように生成されるように、加熱ビームの分布が、事前設定に従って調整される。
【0020】
好ましくは、増幅されるべきレーザビームは、ホワイトマルチパスセルの内部に、増幅されるべきレーザビームの4N個のパスが形成されるように、増幅のためにマルチパスポンプ装置に入射し、なお、Nは整数である。さらなる有利な実施形態では、増幅されるべきレーザビームがマルチパスポンプ増幅器に入射する前に、成形光学系が配置されており、成形光学系は、増幅されるべきレーザビームを非点収差ビームに変換する。成形光学系(261)は、変換されたレーザビームが、1つの平面においてほぼコリメートされるように、かつこの平面に対して垂直な平面において収束するように、かつ中心平面にビームウエストを有するように構成されている。理想的には、中心平面は、ミラーの焦点平面と一致する。
【0021】
そのような成形光学系は、シリンドリカルレンズによって形成可能である。
【0022】
ビーム品質を向上させるために、マルチパスセルに少なくとも1つの絞りおよび/または絞りアレイが挿入され、絞りおよび/または絞りアレイは、ビーム通過箇所において開口部を有し、開口部の幾何形状は、それぞれのビーム通過箇所のビーム横断面に適合されている。
【0023】
好ましくは、このような絞りアレイは、中心平面/焦点平面内に、または中心平面/焦点平面の近傍に位置決めされている。これにより、最良のビーム品質が得られ、効率損失が低くなる。それぞれの開口部の寸法は、対応するガウスビームのビーム横断面の1.2倍~2倍に相当するべきである。
【0024】
ポンプビームが、ビーム源から放出され、光学系によって成形され、ダイクロイックミラーを介してマルチパスポンプ装置に入射するような、装置も企図されている。この場合、ミラーは、増幅されるべきレーザビームに対して高透過性であり、増幅されるべきレーザビームは、ミラーによってマルチパスポンプ装置に入射する。増幅されるべきビームと、ポンプビームとの最適な整合を達成するために、ダイクロイックミラーは、増幅されるべきビームを、ポンプビームと同軸に重畳させる。これにより、ポンプビームと増幅されるべきレーザビームとの最大の重畳が、簡単に保証される。
【0025】
さらに、反射器を設けることができ、反射器は、凹型のミラーであり、マルチパスセルを1回目に通過した時に吸収されなかったポンプビームを反射して戻し、相応に2回目の通過時に逆方向にマルチパスセルを通過させる。
【0026】
反射器またはミラーは、増幅されたビームに対して高反射性である。増幅されたビームは、ミラーによって反射し戻され、逆方向にマルチパスセルを通過し、改めて増幅される。
【0027】
入力レーザビームと増幅されたレーザビームとを分離するために、λ/4遅延板および偏光子が使用される。
【0028】
また、p偏光されたレーザビームまたはs偏光されたレーザビームが、ファラデーアイソレータを通過するように導かれ、ファラデーアイソレータが、レーザビームの通過後にp偏光を維持するか、または通過後にs偏光されたレーザビームになるようにすることも企図されている。偏光されたレーザビームは、続いて、偏光子およびλ/4遅延板を通過し、その後、円偏光されている。増幅されたレーザビームは、ミラーによってマルチパスセルへと反射し戻され、さらに増幅される。増幅されたレーザビームは、続いて、λ/4遅延板を通過して、s偏光される。s偏光された増幅されたレーザビームは、偏光子によってミラーによって反射させられ、ミラーによって反射させられたs偏光されたビームがマルチパスセルを通過し、さらに増幅される。マルチパスセルのミラーのうちの少なくとも1つのミラーは、fsパルス圧縮型GDD(群遅延分散)ミラーまたはGTI(ジル・トルノア干渉計)ミラーである。
【0029】
増幅媒体として、色素からなる液体セル、例えばCO2を備えた気体セル、ドープされたガラスのような固体、Ndイオン、Ybイオン、Tmイオン、Hoイオン、またはTiイオンがドープされた結晶、もしくは半導体が使用される。増幅媒体として半導体を使用することもでき、電流によって電気的に増幅を生成することもできる。特別な用途例では、増幅媒体を気体状とすることができ、電気的な放電によって増幅のための反転が生成される。
【0030】
大きなモード断面積を有するさらなるマルチパスポンプ装置およびマルチパス増幅器装置を形成するために、ホワイトマルチパスセルの下流に少なくとも1つのさらなるホワイトマルチパスセルを接続することができる。
【0031】
特に好ましいレーザ装置および増幅器装置では、高反射性のミラーと部分透過性のミラーとが設けられており、2つのミラーは、レーザ発振器が形成されるように、上記のマルチパスセルのうちの1つと協働して1つのレーザ共振器を形成する。ミラーのうちの少なくとも1つは、好ましくはシリンドリカルミラーである。ミラーは、マルチパスセルの内部に非点収差レーザビームが形成されるように選択され、非点収差レーザビームは、レンズ、ミラー、とりわけ増幅媒体のような光学コンポーネントが配置されている箇所においてできるだけ大きな断面積を有する。パルスビームを生成するために、レーザ発振器に、レーザパルスを生成する光学スイッチが配置される。
【0032】
例えばレーザビームの周波数を2倍にするために、レーザ発振器に、少なくとも1つの周波数変換ユニットを配置することもできる。
【0033】
本発明のさらなる詳細および特徴は、図面に基づく以下の実施例の説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】ホワイトマルチパスセルを備えたマルチパスポンプ装置を示す図である。
【
図2】さらなるミラーを備えた、
図1に対応する装置を示す図である。
【
図3a】矩形の横断面を備えた、薄いディスクの形態の増幅媒体の平面図および側面図である。
【
図3b】平坦で薄い円形のディスクの形態の増幅媒体の平面図および側面図である。
【
図4a】冷却のためにヒートシンクに取り付けられた、
図3aに対応するディスクを示す図である。
【
図4b】正レンズと、ヒートシンクに取り付けられた平坦なディスクとからなるアセンブリを示す図である。
【
図5a】凸型に湾曲した入射面と、平坦な反射面とを備えたディスクを示す図である。
【
図5b】平坦な反射面に追加的にヒートシンクが取り付けられた、
図5aのディスクを示す図である。
【
図6a】メニスカスレンズの形態で成形されたディスクのさらなる実施形態を示す図である。
【
図6b】凸型に湾曲した面を介してヒートシンクに接続された、
図6aのディスクを示す図である。
【
図7】
図1に示されている装置に基づく構造を有する、さらなるマルチパスポンプ装置を示す図である。
【
図8】さらなるマルチパスポンプ装置を示す図である。
【
図9】
図8に対して変更が加えられた実施形態を示す図である。
【
図9a】凹型のレンズと凸型のレンズとからなり、凸型のレンズが変位ユニットに取り付けられているレンズ対の装置の概略図である。
【
図10】
図9に示されている実施形態に基づく実施形態を示す図であり、ここでは、増幅されるべきビームは、マルチパス装置にポンプビームと同軸には入射していない。
【
図13】レーザパルスを生成するための光学スイッチを備えたレーザ発振器を示す図である。
【
図14】周波数変換ユニットを備えた、
図13に対応するレーザ発振器を示す図である。
【
図15a】さらなるマルチパスセルを示す図であり、ここでは、増幅されるべきレーザビームを所定の非点収差ビームに変換するための光学系が使用される。
【
図15b】
図15に対応するそれぞれ異なる平面におけるビーム横断面を示す図である。
【
図15c】
図15に対応するそれぞれ異なる平面におけるビーム横断面を示す図である。
【
図15d】
図15に対応するそれぞれ異なる平面におけるビーム横断面を示す図である。
【
図17】本発明による例示的な増幅器装置を示す図である。
【
図18】
図2に示されているような反射器ミラーを使用する、
図17に対応するさらなる増幅器装置を示す図である。
【
図19】
図18の装置を使用し、かつ入力ビームと増幅されたビームとを分離するための追加的なコンポーネントを備えた、さらなる増幅器装置を示す図である。
【
図20】追加的なファラデーアイソレータを備えた、
図18に対応するさらなる増幅器装置を示す図である。
【
図21a】レンズグループの実施形態を示す図である。
【
図21b】レンズグループの実施形態を示す図である。
【
図22】加熱素子を備えた光学素子を示す図である。
【
図22a】加熱素子を備えた光学素子を示す図である。
【
図22b】温度分布が変化する際の屈折率の依存性を示す図である。
【
図22c】温度分布が変化する際の屈折率の依存性を示す図である。
【
図23a】2つのカスケード接続されたホワイトマルチパスセルを備えたマルチパスセルの平面図である。
【
図23b】2つのカスケード接続されたホワイトマルチパスセルを備えたマルチパスセルの側面図である。
【
図24】単純非点収差ビームの一例の概略図である。
【0035】
個々の図面において、複数の構成要素にそれぞれ同一の参照符号が付されている場合、または複数の構成要素がそれぞれ同等の機能を果たしている場合には、明示的に言及することなく1つの図面に対する説明を他の図面に転用することが可能である。
【0036】
図1は、ホワイトマルチパスセルを備えたマルチパスポンプ装置の1つの実施例を概略的に示し、ここでは、参照符号301によってポンプビームが示されており、参照符号171~175によって5つの増幅媒体が示されている。説明を簡略化するために、直角xyz座標系が使用される。z軸は、ビーム伝播方向に対して平行に延在する。マルチパスは、xz平面内に位置しており、yz平面は、xz平面に対して垂直に位置している。ホワイトマルチパスセルは、3つの球面状の凹型のミラー736,737,および738を含む。図示の実施例では、3つのミラー736,737,および738は、同一の曲率半径を有する。ミラー737および738は、同じz位置で上下に配置されている。ミラー736は、ミラー737および738に対して、距離がミラー736,737,738の曲率半径に等しくなるように配置されている。相応にして、ミラー736,737,および738は、1つの共焦点装置を形成している。ポンプビーム301は、マルチパスセルに入射し、ミラー736,737,および738における反射によってビームパス321,322,323,324,325,326,327,328が形成される。ビーム301と、ミラー736,737,および738とを適切に調節することにより、マルチパスセル内に4×N個のビームパスが生成され、なお、Nは整数である。ビームを増幅するために、マルチパスセルの内部に1つまたは複数の増幅媒体を配置することができる。図示の例では、合計で5つの増幅媒体171,172,173,174,および175が使用される。増幅媒体171~175は、それぞれのミラー736,737,738のすぐ上流に配置される。なぜなら、ポンプビームは、そこで最大の断面積を有しているからである。
【0037】
熱光学的な理由から、増幅媒体がディスク形に形成されていると有利である。ディスク形の増幅媒体は、例えばNdイオンまたはYbイオンがドープされた結晶であってよい。Ybイオンがドープされた結晶は、小さな吸収断面積を有する。ポンプビームの効率的な吸収のために、ポンプビームが増幅媒体のディスクをできるだけ多回数通過することを実現することが有利である。
図2が示すように、例えばさらなるミラー21を使用することによって、このことを達成することができる。このミラー21は、ポンプビーム301に対して高反射性にコーティングされる。好ましくは、ミラー21は、ミラー736と同一の曲率半径を有する。ミラー21は、ポンプビーム301のうちの吸収されなかったビーム309が反射し戻されて、2回目に逆方向にマルチパスセルを通過するように方向決めされ、これにより、ポンプビーム301の吸収率が高められる。
【0038】
増幅媒体を、薄いディスクによって形成すると有利である。
図3aは、矩形の横断面と、長辺a、短辺b、および厚さdとを有する平坦で薄いディスク962を示す。このような薄いディスク962の場合には、厚さdに対する短辺bの比を10よりも大きくすべきである。
【0039】
図3bは、これに代わる形態として直径Dおよび厚さdを有する平坦な円形のディスク961を示す。そのような薄いディスクについても、D/d>10が成り立つ。増幅媒体が固体である場合には、ポンピングを光学的に実施することができる。ポンピングのためにダイオードレーザを使用すると有利である。なぜなら、これにより、高いビーム品質によって最大効率を達成することができるからである。さらに、ディスク形の増幅媒体の場合には、ポンプビームを垂直方向または小さな角度でディスクに入射させることが有利である。なぜなら、これにより、熱レンズが最も小さくなるからである。この場合、ディスク962または961の入射面953および971は、増幅されるべきビームおよびポンプビームに対して高透過性にコーティングされ、ディスク962または961の出射面954および972は、平坦なミラー面として機能するように高反射性にコーティングされる。
【0040】
図4aに示されているように、ディスク961は、効果的な冷却のためにヒートシンク931に取り付けられ、ヒートシンク931に熱的に接続される。これにより、ディスク内で発生した損失熱がヒートシンクを介して排出され、これによってディスクが冷却される。この場合、熱伝導は、増幅されるべきビームに対して一次元で平行に実施され、これにより、増幅媒体から熱レンズが発生しなくなり、ビームの伝播は、ミラーおよびレンズのような使用されている受動光学系によってのみ決定されることとなる。
【0041】
平坦な反射面を有するこのような平坦なディスクを、凹型のミラーが必要とされるマルチパスセル内の増幅媒体として利用するために、ディスクの上流に正レンズを配置することができる。
【0042】
図4bには、正レンズ983と、ヒートシンク931に取り付けられた平坦なディスク961とからなるアセンブリが示されている。
【0043】
光学コンポーネントの個数を減らすために、ディスク963を、
図5aに示されているように凸型に湾曲した入射面977と、平坦な出射面978とを有するように形成することができる。この場合、凸型に湾曲した入射面977は、ホワイトマルチパスセルの対応するミラーの曲率半径に相当する焦点距離を有するレンズのように機能する。凸型に湾曲した面977は、ポンプビームおよび増幅されるべきビームに対して高透過性にコーティングされ、平坦な面978は、高反射性にコーティングされる。
【0044】
図5bは、ディスク963の平坦な面978が、どのようにして冷却のためのヒートシンク921に接続されているかを示す。
【0045】
図6aは、凹型に湾曲した入射面974と、凸型に湾曲した出射面976とを備えた、メニスカスレンズのように成形されたディスク966のさらなる実施形態を示す。ディスク966は非常に薄いので、両方の面974,976の曲率半径を同じに選択することができる。この場合、凸型に湾曲した面976の曲率半径は、ホワイトマルチパスセルのミラーの曲率半径に相当する。凹型に湾曲した面974は、ポンプビームおよび増幅されるべきビームに対して高透過性にコーティングされ、凸型に湾曲した面976は、高反射性にコーティングされる。
【0046】
ディスクを冷却するために、
図6bに示されているような凹型に湾曲した接触面を有するヒートシンク933が使用される。理想的には、この面は、ディスク966の凸型に湾曲した面976と同じ曲率半径を有し、ディスク966の凸型に湾曲した面976を介してヒートシンク933に接続されており、これによって冷却される。
【0047】
図7は、マルチパスポンプ装置の一例を示し、このマルチパスポンプ装置の基本的な構造は、
図1に示されている装置に基づいている。このマルチパスポンプ装置は、レンズ983と、ディスク形の増幅媒体961と、ヒートシンク931とを備えたアセンブリを含み、このアセンブリは、ホワイトマルチパスセル内で使用される。このアセンブリは、
図1の増幅媒体171およびミラー737の機能を果たす。それぞれの反射において、ビームは、レンズ983およびディスク961を2回通過する。ディスク961が熱レンズ効果を有していないことが前提とされる。この場合、レンズ983の焦点長さは、マルチパスセルの対応するミラー、例えばミラー737(
図1参照)の曲率半径に等しくなるように選択される。
【0048】
図8は、本発明によるマルチパスポンプ装置のさらなる例を示す。このマルチパスポンプ装置の基本的な構造は、
図1および
図7に示されているマルチパスポンプ装置に基づいている。
図7の実施形態とは異なり、レンズ987と、ディスク形の増幅媒体962と、ヒートシンク932とを備えたさらなるアセンブリが追加され、このアセンブリは、ホワイトマルチパスセル内で使用される。このアセンブリは、
図1の増幅媒体172とミラー738との組み合わせの代わりに使用される。それぞれの反射によって、ビームは、レンズおよびディスクを2回通過する。ディスクが熱レンズ効果を有していないことが前提とされ、レンズ987の焦点長さは、マルチパスセルの対応するミラー738の曲率半径に等しくなるように選択される。
【0049】
図9は、2つのディスク961および962が1つのより大きなディスク96に纏められていることを示す。ディスク961は、それぞれヒートシンク931に接続されている(
図8参照)か、または単一のディスク96に纏められてヒートシンク93に接続されている(
図9参照)。
【0050】
図9および
図9aの双方向矢印831および832によって示唆されているように、それぞれのレンズ983,987を変位ユニットに配置することができ、この変位ユニットにより、レンズ983,987からディスク961,962までの距離を変化させることができ、これにより、マルチパスセル内の熱レンズが補償されるように、アセンブリの有効焦点長さを変化させることができる。
図9aにおいて、簡単な実施形態では負レンズまたは正レンズからなるレンズ対を、正レンズ983として使用することができることがさらに示唆されている。
【0051】
図10は、本発明による増幅器装置のさらなる実施形態を示す。増幅されるべきビーム1は、例えば
図9に示されているマルチパスポンプ装置に入射する。この際、増幅されるべきビーム1は、ホワイトマルチパスセルを4回通過して、増幅されるように入射する。ビーム1の入射角度および入射位置を変化させることにより、ホワイトマルチパスセルの内部にビーム1の4N個のパスを実現することができ、なお、Nは整数であり、これにより、非常に高い増幅率が達成される。ディスク96が熱レンズ効果を有する場合には、ディスク96の有効焦点長さが、対応するミラーの曲率半径に等しくなるように選択される。
【0052】
実際には、ディスクは、出力に依存したレンズ効果を有する。さらに、ダイクロイックミラー61(例えば、
図17)のようなマルチパスセル内の他の光学コンポーネントが、高出力負荷に基づいて熱光学効果を引き起こす可能性もある。この場合、熱レンズ効果は、出力に依存して変化する可能性がある。これにより、出力/エネルギのような動作パラメータが大幅に制限されてしまう。この問題を解決するために、例えば、
図9,
図9aの双方向矢印831によって示唆されているようにレンズ983および987を変位ユニットに取り付けることができる。レンズからディスクまでの距離を変化させることにより、レンズとディスクとからなるアセンブリの有効焦点長さを変化させることができ、これにより、熱レンズが補償される。
【0053】
単一のレンズの代わりに、熱レンズを補償するためのレンズグループを使用することも可能であり、このレンズグループの焦点長さを変化させることができる。この場合、複数のレンズのうちの少なくとも1つのレンズが、変位ユニットに取り付けられる。変位により、レンズグループの有効焦点長さを事前設定に従って変化させることができる。
【0054】
図21aおよび
図21bに示されているように、レンズグループ988の最も簡単な実施形態は、凹型のレンズ986と凸型のレンズ987とからなる。2つのレンズ986および987は、焦点距離の絶対値が同等である。レンズ対の有効焦点長さは、マルチパスセルの内部のコンポーネントの熱レンズ効果が補償されるように、2つのレンズ986と987との間の距離を調整することによって変更可能である。
【0055】
マルチパスセルの内部の熱レンズと位相面の歪みとを補償するために、例えば焦点長さのような光学特性が所期のように変化させられる光学素子を使用することも可能である。
【0056】
光学素子の一例は、ポンプビームおよび増幅されるべきレーザビームに対して透過性である媒体989(
図22a参照)が使用されることにある。
図22bは、媒体内の屈折率に、例えば温度分布T(y)によって所期のように影響を与えることができることを示す。ポンプビームの波長および増幅されるべきビームの波長とは異なっている所定の波長を有するビームを吸収する媒体の場合には、例えば、温度分布は、媒体内の所定のビーム場によって生成され得る。したがって、ビーム場を調整することにより、熱レンズと、熱的かつ/または熱機械的に引き起こされた位相面の歪みとのようなマルチパスセル内の熱光学効果を補償するために、媒体内に所期の屈折率分布n(y)を生成することができる。このことは、
図22cによってもグラフで示されている。
【0057】
さらに、媒体の周囲に少なくとも1つの熱的素子990を配置することができる(
図22参照)。熱的素子990は、例えば加熱素子または冷却素子であってよい。熱的素子990により、媒体内の温度分布が所期のように生成され、ひいてはポンプビームおよび増幅されるべきビームの位相に所期のように影響が及ぼされる。
【0058】
図11は、
図10に示されている増幅器装置に基づく発振器装置を示し、この発振器装置では、高反射性のミラー81および部分透過性のミラー83が使用される。2つのミラー81および83は、マルチパスセルと協働してレーザ共振器を形成し、かつマルチパスセル内に位置する増幅媒体と協働して、レーザビーム89を生成するレーザ発振器を形成する。ミラー81および83として、平坦なミラーまたは湾曲したミラーを使用することができる。2つのミラー81および83のうちの少なくとも1つのミラーがシリンドリカルミラーであると、有利である。
【0059】
図12は、モード整合のために球面レンズまたはシリンドリカルレンズ82が使用される実施形態を示す。ミラーおよび/またはレンズを選択する目的は、マルチパスセルの内部に非点収差レーザビームを形成することである。非点収差ビームが、レンズ、ミラー、とりわけ増幅媒体のような光学コンポーネントが設けられている箇所においてできるだけ大きなモード断面積を有することが、さらに有利である。
【0060】
図13は、レーザパルスを生成するための光学スイッチ84を含むレーザ発振器を示す。光学スイッチの例は、音響光学スイッチまたは電気光学スイッチである。
【0061】
図14は、周波数変換ユニット86が設けられたレーザ発振器を示す。周波数変換ユニット86の例は、とりわけ周波数2逓倍器、和周波数発生器、光パラメトリック発生器等である。
【0062】
増幅されるべきビーム1は、無収差ビームまたは非点収差ビームであってよい。マルチパスセルの内部の最大強度を最小化するために、増幅されるべきビーム1を、所定の特性を有する非点収差ビームへと成形し、その後、マルチパスセルに入射させることが有利である。
【0063】
とりわけシリンドリカルレンズ、シリンドリカルミラー、またはプリズムのようなシリンドリカル光学系を使用することにより、無収差ビームを単純非点収差ビームへと変形することができる。
図24は、単純非点収差ビームの一例を示す。単純非点収差ビームは、z方向に伝播する。xz平面において、ビームは、Z0xに位置するウエストdσx0を有する。yz平面において、ビームウエストは、dσy0であり、位置Z0yに位置している。単純非点収差ビームの場合、光学系および焦点における出力密度が著しく低減されるように、光学系を位置決めすることができる。
【0064】
出力およびパルスエネルギをさらにスケーリングするために、増幅されるべきビームを、マルチパスセルに入射する前に非点収差ビームに変換することが有利である。
【0065】
図15aは、このような実施形態を示す。マルチパスセルは、球面状の凹型のミラー736と2つのアセンブリとからなり、一方のアセンブリは、レンズ983と、ディスク96と、ヒートシンク93とからなり、他方のアセンブリは、レンズ987と、ディスク96と、ヒートシンク93とからなる。2つのアセンブリは、それぞれミラー736のような曲率半径を有する凹型のミラーのように機能する。ミラー736および2つのアセンブリは、距離がミラーの曲率半径に等しくなるように互いに配置されている。このようにして、ホワイトマルチパスセルが形成される。一点鎖線は、マルチパスセルの中心平面611を表現している。この特別なケースでは、この中心平面は、同時にホワイトマルチパスセルの焦点平面でもある。増幅されるべきビーム1の入射のために、光学系261が使用される。光学系261は、増幅されるべきビーム1を非点収差ビーム11に変換し、この非点収差ビーム11がマルチパスセルに入射する。図示の例では、マルチパスセルの内部に4つのビームパス121,122,123,および124が形成される。基本的に、ビーム1は、任意の横断面、例えば楕円形の横断面を有することができる。図示を簡略化するために、ビーム1が円形の横断面を有することが前提とされる。成形光学系261は、成形されたビーム11がyz平面においてほぼコリメートされるように、かつxz平面において入力ビームのビームウエストが中心平面611に位置するように構成および配置される。ビーム121は、増幅媒体96を通過し、その際に増幅される。ビームは、ディスク96によって反射させられた後、かつレンズ983を2回通過した後、xz面においてコリメートされ、その一方でyz面では集束され、これにより、反射させられたビーム122は、非点収差ビームとなり、この非点収差ビームは、xz面ではほぼ平行であり、yz面では中心平面611内にビームウエストを有し、その横断面は、伝搬中に円形から楕円形に変化し、そして再び円形に変化する。この際、ビームは、2回目に増幅媒体を通過し、さらに増幅される。
【0066】
無収差ビーム1の場合には、ミラーの焦点長さに等しい焦点長さを有していて、かつ焦点平面611内に焦点を有するシリンドリカルレンズを、光学系261のために使用することが有利である。ビーム122は、ミラー736によってビーム123へと反射させられる。この際、ビームは、xz平面において集束され、yz平面においてコリメートされる。ビーム123は、xz平面において焦点平面内または中心平面611内に焦点を有し、したがって、中心平面611において楕円形のビーム横断面を有する。ビーム123の楕円形の横断面は、ビーム122の横断面に対して直角である。ビーム123は、ディスク96によって反射させられ、レンズ987を2回通過して、ビーム124が形成される。この際、ビームは、xz平面においてコリメートされ、yz平面において集束される。このようにして、ビームは、往復反射させられ、増幅媒体を複数回通過する。ビーム横断面は、楕円形から円形に変化し、そして円形から再び楕円形に変化する。
図15bには、ミラー736におけるビーム横断面が示されている。
図15cには、中心平面611におけるビーム横断面が示されている。
図15dには、ディスク96におけるビーム横断面が示されている。ミラーおよびディスクにおけるビームが、大きくてほぼ円形の横断面を有することが分かる。
【0067】
fsレーザの場合には、少なくともミラー736がGDDミラー(群遅延分散ミラー)またはGTIミラー(ジル・トルノア干渉計ミラー)であることが有利である。ミラーの分散は、媒体および空気によって引き起こされる分散が補償されるように、かつそれぞれの通過後のビームスペクトルの増分的な拡大に基づいてパルス長さが短縮されるように選択される。
【0068】
ビーム品質を向上させるために、マルチパスセル内に1つまたは複数の絞りおよび/または絞りアレイを使用することができる。絞りアレイが、焦点平面611内に、または焦点平面611の近傍に位置決めされると有利である。絞りアレイは、開口部を有し、この開口部の幾何形状は、それぞれのビーム通過箇所のビーム横断面に適合されている。
【0069】
【0070】
図16aは、ミラー736の平面内に位置決めされる絞りアレイの一例を示す。この絞り22は、3つのビーム通過部201,203,205を有し、したがって、3つの開口部221,223,225を有する。一般的に、開口部の寸法は、対応するガウスビームのビーム横断面の1.2倍~2倍であるべきである。
図16bおよび
図16cは、絞りアレイの開口部が、焦点平面611に対して、またはディスク96において位置決めされていることを例示的に示す。
【0071】
図17は、本発明によるさらなる増幅器装置を示す。ポンピングのために、ビーム源78が使用される。ビーム源78から放出されたビーム77は、ディスクにおけるポンプビームが、増幅されるべきビームと同等または同一の寸法を有するように、光学系76によってポンプビーム73へと成形される。ミラー61は、ダイクロイックミラーである。増幅されるべきビーム11は、ダイクロイックミラーによってポンプビーム73と同軸に重畳される。ミラー736と、ディスク96の出射面とは、増幅されるべきレーザビーム11に対しても、ポンプビーム73に対しても高反射性となるようにコーティングされる。さらに、レンズ983および987と、ディスク96の入射面とは、増幅されるべきレーザビーム11に対しても、ポンプビーム73に対しても高透過性にコーティングされる。この実施形態では、ポンプビーム73は、増幅されるべきレーザビーム11と同軸に延在している。これにより、ポンプビームと、増幅されるべきレーザビームとが最大限に重畳されることが簡単に保証されており、したがって、増幅器の最大限の利用が保証されている。
【0072】
マルチパスセルを備えた上記の増幅器装置に基づいて、
図14のミラー81および83のような共振器ミラーを追加することによってレーザ発振器を形成することもできる。
【0073】
ディスク形の増幅媒体は、例えばNdイオンまたはYbイオンがドープされた結晶であってよい。Ybイオンがドープされた結晶は、小さな吸収断面積および小さな誘導放出断面積を有する。ポンプビームの効率的な吸収および高い増幅率を達成するために、ディスクを通過する回数ができるだけ多くなっている増幅器装置を実現することが有利である。
【0074】
図18は、さらなるミラー21を使用する対応する実施形態を示す。ミラー21は、ポンプビーム73およびレーザビーム11に対して高反射性にコーティングされている。好ましくは、ミラー21は、ミラー736と同じ曲率半径を有する。ミラー21は、ポンプビーム73および増幅されたビームのうちの吸収されなかったビームが反射し戻されて、2回目に逆方向にマルチパスセルを通過するように方向決めされる。これにより、ポンプビームの吸収率とレーザビームの増幅率とが高められる。
【0075】
入力ビーム1が直線偏光を有することを前提とすると、
図19に示されているように、入力ビーム1と増幅されたビーム99とを分離するためにλ/4遅延板23および偏光子22が使用される。入力ビーム1は、p偏光を有し、偏光子22を通過する。λ/4遅延板23の下流において、増幅されるべきビーム11は、円偏光を有する。マルチパスセルを2回通過した後、増幅されたビーム99がλ/4遅延板を通過する。その後、増幅されたビーム99は、入力ビーム1の偏光に対して垂直である直線s偏光を有する。これにより、増幅されたビーム99は、偏光子によって反射させられ、これによって入力ビームから分離される。
【0076】
増幅されたビーム99と入力ビーム1とを分離するために、ファラデーアイソレータを使用することもできる。
【0077】
パスの数または通過の回数をさらに増加させ、その結果として増幅率をさらに増加させるために、ファラデーアイソレータを使用することができる。
図20は、対応する実施例を示す。p偏光されたビーム1は、ファラデーアイソレータ26を通過し、その際、偏光の変化を被らない。次いで、ビーム1は、偏光子22およびλ/4遅延板23をさらに通過し、円偏光される。ビームは、光学系261によって成形され、マルチパスセルに入射し、そこで増幅される。マルチパスセルの下流において、増幅されたビームは、ミラー21によってマルチパスセルへと反射し戻され、さらに増幅される。増幅されたビームは、λ/4遅延板23を通過し、直線偏光されて、s偏光される。増幅されたビームは、偏光子によって反射させられてビーム99になる。ミラー24が使用され、このミラー24によって、s偏光されたビーム99が反射し戻され、λ/4遅延板23を通過させられ、光学系261によってマルチパスセルに入射することとなる。マルチパスセルをさらに2回通過した後、ビームは、さらに増幅される。この例では、増幅されたビームは、λ/4遅延板23の下流において直線p偏光を有する。増幅されたビームは、偏光子22を通過し、図面では左側からファラデーアイソレータ26に進入する。これにより、ビーム99は、s偏光され、入力ビーム1から分離される。
【0078】
増幅媒体は、例えば、色素からなる液体セル、例えばCO2を備えた気体セル、ドープされたガラスのような固体、例えばNdイオン、Ybイオン、Tmイオン、Hoイオン、またはTiイオンがドープされた結晶、もしくは半導体等であってよい。
【0079】
レーザ発振器装置では、増幅媒体は、電流によって電気的に励起される半導体であってよい。
【0080】
さらに、増幅媒体が気体状である場合には、増幅のための反転を電気的な放電によって生成することができる。
【0081】
図23aおよび
図23bは、本発明によるさらなる実施例を示す。
図23aは、マルチパスセルの平面図を示し、
図23bは、マルチパスセルの側面図を示す。このマルチパスセルは、2つのカスケード接続されたホワイトマルチパスセルからなる。第1のホワイトマルチパスセルは、同じ曲率半径を有する3つの凹型のミラー781,782,および783からなる。第2のホワイトマルチパスセルは、同じ曲率半径を有する3つの凹型のミラー785,786,および787からなる。ミラー784は、第1のホワイトマルチパスセルからの吸収されなかったポンプビームを第2のホワイトマルチパスセルに入射させるために設けられている。好ましくは、ミラー784は、他の凹型のミラーと同じ曲率を有する。破線は、凹型のミラーの焦点平面を表現している。
【0082】
有利には、ミラー782,784,および786を1つのミラーアレイ77に纏めることができ、ミラー781,783,785,および787を1つのミラーアレイ78に纏めることができる。
【国際調査報告】