(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】熱交換器の管板の管のジョイントを溶接するための球状溶接システム
(51)【国際特許分類】
B23K 37/02 20060101AFI20231025BHJP
B23K 9/167 20060101ALI20231025BHJP
B23K 9/028 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
B23K37/02 301A
B23K9/167 A
B23K9/028 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547939
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(85)【翻訳文提出日】2023-05-31
(86)【国際出願番号】 IT2021050328
(87)【国際公開番号】W WO2022085035
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】102020000024541
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523145376
【氏名又は名称】マウス イタリア エスピーエー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】パラディン,フラヴィオ
【テーマコード(参考)】
4E001
4E081
【Fターム(参考)】
4E001AA03
4E001BB07
4E001DD02
4E001DD03
4E001DD06
4E081AA15
4E081CA11
4E081EA03
4E081EA33
4E081EA47
(57)【要約】
熱交換器の管板(3)の管(2)のジョイントを溶接するための球状溶接システム(1)は、プログラム制御式発電機(4)と、球状溶接ヘッド(5)と、TIG溶接用の不活性ガスの第1の供給ライン(6)と、を含み、前記球状溶接ヘッド(5)は、溶接トーチ(7)と、管板(3)に接触する前記トーチ(7)用の停止システム(8)と、前記管(2)のうちの1つで前記球状溶接ヘッド(5)を固定するための拡張可能センタリングツール(9)と、前記センタリングツール(9)用のアクチュエータ(10)と、前記アクチュエータ(10)を動作させるための加圧ガス用の第2の供給ライン(11)と、を含み、前記球状溶接システム(1)では、加圧ガス用の前記第2の供給ライン(11)は、前記第1の供給ライン(6)から一点で分岐し、同じ不活性ガスを搬送する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器の管板(3)の管(2)のジョイントを溶接するための球状溶接システム(1)であって、
-プログラム制御式発電機(4)と、
-球状溶接ヘッド(5)と、
-TIG溶接用の不活性ガスの第1の供給ライン(6)と、を含み、
前記球状溶接ヘッド(5)は、
-溶接トーチ(7)と、
-管板(3)に接触する前記トーチ(7)用の停止システム(8)と、
-前記管(2)のうちの1つに前記球状溶接ヘッド(5)を固定するための拡張可能センタリングツール(9)と、
-前記センタリングツール(9)用のアクチュエータ(10)と、
-前記アクチュエータ(10)を動作させるための加圧ガス用の第2の供給ライン(11)と、を含み、
前記球状溶接システム(1)では、加圧ガス用の前記第2の供給ライン(11)は前記第1の供給ライン(6)から1点で分岐し、同じ不活性ガスを搬送することを特徴とする、球状溶接システム(1)。
【請求項2】
前記第2の供給ライン(11)は、前記分岐点に設けられた増圧デバイス(12)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の球状溶接システム(1)。
【請求項3】
前記第1の供給ライン(6)は、減圧デバイス(13)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の球状溶接システム(1)。
【請求項4】
前記第2の供給ライン(11)は、前記拡張可能センタリングツール(9)を動作させるために前記アクチュエータ(10)のガスの通路を管理する空気弁(14)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の球状溶接システム(1)。
【請求項5】
前記空気弁(14)は三方弁タイプであり、前記アクチュエータ(10)からのガス放出と、前記拡張可能センタリングツール(9)の前記管(2)からの着脱とを可能にすることを特徴とする、請求項4に記載の球状溶接システム(1)。
【請求項6】
前記拡張可能センタリングツール(9)は、
-ボール(16)が設けられた半径方向誘導カートリッジ(15)と、
-弾性軸ロッキンググリッパ(17)と、
-前記誘導カートリッジ(15)及び前記弾性グリッパ(17)が回転可能に連動する、前記アクチュエータ(10)と連動するけん引ロッド(18)と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の球状溶接システム(1)。
【請求項7】
スラストベアリング(19)は、前記誘導カートリッジ(15)と前記弾性グリッパ(17)との間に介在することを特徴とする、請求項6に記載の球状溶接システム(1)。
【請求項8】
前記拡張可能センタリングツール(9)は、
-前記けん引ロッド(18)と一体になっているスラストヘッド(20)と、
-らせん状放出ばね(22)の弾性作用に対抗して、前記スラストヘッド(20)の効果によって、前記弾性グリッパ(17)で作用するように適応するエキスパンダーコーン(21)と、
-前記スラストヘッド(20)と前記エキスパンダーコーン(21)との間に介在するスラストベアリング(23)と、
を含むことを特徴とする、請求項6に記載の球状溶接システム(1)。
【請求項9】
前記アクチュエータ(10)はピストン(24)及び偏心制御レバー(25)を含み、前記偏心制御レバー(25)の第1の端(25’)は前記ピストン(24)と連動し、前記偏心制御レバー(25)の第2の端(25’’)は前記センタリングツール(9)の前記けん引ロッド(18)と連動することを特徴とする、請求項6に記載の球状溶接システム(1)。
【請求項10】
前記アクチュエータ(10)は、前記偏心制御レバー(25)の前記第2の端(25’’)と前記けん引ロッド(18)との間に配置された可逆的拘束手段を含むことを特徴とする、請求項9に記載の球状溶接システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は機械工業の分野に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、熱交換器の管板の管のジョイントを溶接するための球状溶接システムに関する。
【0003】
球状溶接を使用するかなり重要な分野として、最大耐腐食性が要求されるとき、炭素鋼からステンレス鋼、ニッケル合金、そしてチタンまで多岐にわたる可能性がある材料の管束を溶接する必要がある、有孔管板がある熱交換器の分野が挙げられる。
【0004】
球状溶接プロセスでは、溶接トーチは、管の周りを機械的に360°回転し、その後も連続プロセスで回転する。
【0005】
ほとんどの場合、管板球状溶接は、必要である場合、充填材ワイヤを使用して、または使用しないで、非消耗タングステン溶接棒を使用するTIG(タングステン不活性ガス)技術を用いて実行される。
【背景技術】
【0006】
多数の要因が溶接の結果に影響を与える可能性がある。その要因として、アーク長、電流脈動の周波数及び振幅、供給速度、遮蔽ガス、原料物質のタイプ、充填材、ジョイント加工、熱伝導率等が挙げられる。
【0007】
手動溶接で高水準の品質及び安全性を実現するが非常に困難である。特に、これは、垂直下向き、頭上、垂直上向き等の溶接位置が原因となり、重力と、また、これらの位置で作業者にもたらされる運動の難易度とにより、はっきりと欠陥溶接をもたらす可能性がある。溶融池に対する制御を完全にすることを望む場合、重力効果と、トーチのいずれかの位置での表面張力との間で完全な平衡を必要とする。機械設備を使用して、これらは、作業者が常にサイクルの進捗を監視及び制御する必要がある事実にもかかわらず、溶接プロセスを適切に及び自動的に管理する。理想的な状況では、溶接を開始する前に、全てのパラメータを十分にプログラムするべきである。自動溶接では、溶接プロセスは、作業者の介入が必要なく、完全に独立してプログラム式で行われる。
【0008】
自動化されたTIG球状管溶接システムの主要構成要素は、プログラミング制御、球状溶接ヘッド、冷却システム、溶接を保護するための不活性ガス供給ラインを伴い、必要な場合、充填材ワイヤフィーダーも伴う発電機である。
【0009】
通常使用されるガスはアルゴンであり、または、制限された割合で、アルゴンにヘリウムまたは水素が付加された混合物である。
【0010】
溶接ヘッドは、実質的に、溶接棒ホルダートーチ、管板に接触する前記トーチのための停止システム、前記管のうちの1つで前記溶接トーチをロックするための拡張可能センタリングツール、前記センタリングツールをアクティブにするアクチュエータ、前記アクチュエータを動作させるための第2の加圧空気供給ラインを含む。
【0011】
溶接トーチ、拡張可能センタリングツール、圧縮空気供給ラインを伴うアクチュエータは、回転ジョイントに搭載される。
【0012】
既知のタイプのセンタリングツールは、2つの弾性ロッキンググリッパが相互に反対に搭載される軸棒を含み、そのグリッパは、加工される管の内側で半径方向に拡張することによって、停止システムと協働して、管板に接触して溶接ヘッドをロックする。
【0013】
センタリングツールのロッドによって引き込まれたエキスパンダーコーンを挿入した結果として、各グリッパは変形する。
【0014】
前記センタリングツールを制御するためのアクチュエータは、前記ロッドに作用し、ロッドを引っ張り、ひいては、弾性グリッパへのエキスパンダーコーンの挿入をもたらし、そのアクチュエータは、圧縮空気回路によって供給された単一の空気圧作動ピストンを含む。
【0015】
そのような球状溶接システムには、いくつかの制限及び欠点がある。
【0016】
主な欠点として、センタリングツールアクチュエータを制御するために圧縮空気を使用することが挙げられる。
【0017】
前記センタリングツールを動作させるために、使用される圧縮空気は6~7barの最小圧力を有する必要がある。そのような圧力で圧縮空気を溶接ヘッドの回転ジョイントの内側に運ぶことは、ジョイント自体のガスケットのあらゆる漏れ(最小の漏れでも)リスクを含む。常に、約0.5barほど著しく低い圧力で放出される溶接の保護専用の不活性ガスを汚染する。圧縮空気は、トーチの作業環境を汚染し、溶接で不要な吹付け及び孔を生じさせる可能性がある。
【0018】
さらに、圧縮空気供給ラインは、溶接ヘッドに大きい設置面積を有し、溶接システムの外部にある回路と接続し、その回路から外すことが必要であるため、運搬上の制約が生じる。
【0019】
また、溶接ヘッドを管板にロックするのに必要な既知のセンタリングツールも欠点がある。
【0020】
2つの弾性グリッパは単一のアクチュエータによってアクティブになるが、不都合に、それらの弾性グリッパは同時に拡張できない。2つのグリッパの開放は同時に発生しない。2つのグリッパのうちの一方は、対応するエキスパンダーコーンと協働して、他方のグリッパよりも先に拡張し、管のツールセンタリングは保証されなくなる。
【0021】
さらに、作業が終了した時点で円錐をグリッパから放出する手段がなく、センタリングツールを抜出する必要がある。センタリングツールの正常な抜き出し運動は、常に、少しのけん引力でロッドに作用することを含み、これにより、再度グリッパを拡張するリスクが生じる。
【0022】
単一のアクチュエータを用いて2つのグリッパに作用するため、達成される拡張は制限される。その結果、異なる直径の異なるセンタリングツールは、管の全ての可能な寸法を対象に含める必要があり、システムの全コストに関する経済的不都合が結果として生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の目的は、効率的で全体的に自動化されメンテナンスが容易である、精密溶接を保証する熱交換器の管板の管のジョイントを溶接するための球状溶接システムを定義することによって、これらの制限を克服することである。
【0024】
また、本発明の目的は自立式の溶接ヘッドを提供することである。溶接ヘッドは、作業者による手動介入がなくても、トーチの安定性及びセンタリングを保証し、また、センタリングツールを抜出及び再挿入することによって、溶接済の管から、溶接される予定の新しい管まで容易に移動できる。
【課題を解決するための手段】
【0025】
そのような目的は、熱交換器の管板の管のジョイントを溶接するための球状溶接システムによって実現され、
-プログラム制御式発電機と、
-球状溶接ヘッドと、
-TIG溶接用の不活性ガスの第1の供給ラインと、を含み、
前記球状溶接ヘッドは、
-溶接トーチと、
-管板に接触する前記トーチ用の停止システムと、
-前記管のうちの1つで前記球状溶接ヘッドを固定するための拡張可能センタリングツールと、
-前記センタリングツール用のアクチュエータと、
-前記アクチュエータを動作させるための加圧ガス用の第2の供給ラインと、を含み、
前記球状溶接システムでは、加圧ガス用の前記第2の供給ラインは前記第1の供給ラインから1点で分岐し、同じ不活性ガスを搬送することを特徴とする。
【0026】
本発明の第1の態様に従って、前記第2の供給ラインは、前記分岐点に設けられた増圧デバイスを含む。
【0027】
さらに、前記第1の供給ラインは減圧デバイスを含む。
【0028】
本発明の好ましい変形では、前記第2の供給ラインは、前記拡張可能センタリングツールを作動させるために前記アクチュエータのガスの通路を管理する空気弁を含む。
【0029】
有利に、前記空気弁は三方弁タイプであり、前記アクチュエータからのガス放出と、前記拡張可能センタリングツールの管からの着脱とを可能にする。
【0030】
本発明の好ましい実施形態によると、前記拡張可能センタリングツールは、
-ボールが設けられた半径方向誘導カートリッジと、
-弾性軸ロッキンググリッパと、
-前記誘導カートリッジ及び前記弾性グリッパが回転可能に連動する、前記アクチュエータと連動するけん引ロッドと、
を含む。
【0031】
有利に、スラストベアリングは、前記誘導カートリッジと前記弾性グリッパとの間に介在する。
【0032】
具体的には、前記センタリングツールは、
-前記けん引ロッドと一体になっているスラストヘッドと、
-らせん状放出ばねの弾性作用に対抗して、前記スラストヘッドの効果によって、前記弾性グリッパで作用するように適応するエキスパンダーコーンと、
-前記スラストヘッドと前記エキスパンダーコーンとの間に介在するスラストベアリングと、
を含む。
【0033】
本発明のさらなる態様によると、前記アクチュエータはピストン及び偏心制御レバーを含み、前記偏心制御レバーの第1の端は前記ピストンと連動し、前記偏心制御レバーの第2の端は前記センタリングツールの前記けん引ロッドと連動する。
【0034】
好ましくは、前記アクチュエータは、前記偏心制御レバーの前記第2の端と前記けん引ロッドとの間に配置された可逆的拘束手段を含む。
【発明の効果】
【0035】
本発明は、下記に記載されるいくつかの利点をもたらす。
【0036】
本発明の主な利点として、溶接を保護するために、またセンタリングツールを起動させるためにも、既に使用されている同じ不活性ガスを使用することで生じる。
【0037】
アクチュエータに対するガス供給ラインは、溶接トーチに対する不活性ガス供給ラインの分岐がある。有利に、したがって、システムの寸法全体は小さくなり、他の外部圧縮空気圧ラインに接続する必要性がなくなる。
【0038】
圧縮空気の除去により、溶接における吹付け及び予想外の穿孔のリスクが減る。この理由として、アクチュエータから、また溶接棒に近接してガス漏れがある場合でも、これらの漏れは、加圧下で空気がなくなるだろうが、不活性ガス自体により、常に溶接が安定するためである。
【0039】
したがって、結果として生じる溶接はより精密になり、欠陥及びバリがなくなる。また、溶接ダレのリスクはかなり減り、センタリングツールを抜出することを困難にし得る管穴のヒケが不要になる。
【0040】
第2のガス供給ラインに設置された増圧デバイスにより、アクチュエータが最適な作動圧力(最大7~8bar)に到達することが可能になる。逆の場合も同様に、溶接トーチに対する第1のガス供給ラインに設置されたデマルチプライヤデバイスは、ガス圧を最大0.5barまで減らすこと、すなわち、浪費及び消費しないで完全溶接を成功するための推奨値まで減らすことを可能にする。
【0041】
本発明に従ったセンタリングツールは、2つの前面で作用する。ばねで留められたボールを伴う誘導カートリッジは半径方向に作用し、軸において管に対するツールの位置決めを確実にする一方、拡張部を伴う弾性グリッパはツールを縦方向にブロックし、溶接される管の管板に対する球状溶接ヘッドの固定を可能にする。
【0042】
さらに、作業者は溶接中に球状ヘッドを支持することが要求されなくなる。球状ヘッドは、センタリングツールにより管板に固定されたままである。
【0043】
したがって、本発明に従ったセンタリングツールは、溶接ステップ中に球状ヘッドに対するセンタリング及び安定性を保証し、同時に、溶接後、管からツール自体を容易及び正確に抜出することを確実にする。
【0044】
実際に、エキスパンダーコーンのらせん状放出ばねは、弾性グリッパが停止構成に戻ることを容易にし、管からセンタリングツールを抜出することを容易にし、グリッパ自体がエキスパンダーコーンによって部分的に係合したままになるリスクがなくなる。
【0045】
先行技術とは異なり、アクチュエータが単一の弾性グリッパで作用する必要があり、アクチュエータによってかけられた同じ力及びけん引ストロークにより、グリッパの拡張部はより大きくなる。広範囲に含まれる直径がある管に対して単一のセンタリングツールを使用することが可能になることに加えて、グリッパのより大きい拡張部に到達することが可能であるため、センタリングツールの縮径を維持することが可能であり、したがって、管口の部分閉塞による溶接の軽度のオーバーフローの場合でさえ、管からのセンタリングツールの抜き出しが容易になる。
【0046】
アクチュエータレバーとセンタリングツールのけん引ロッドとの間の可逆的拘束手段により、溶接ヘッドのメンテナンス作業が容易になるが、さらにより有利に、溶接のオーバーフローにより管口の部分閉塞が再度生じる場合、センタリングツールの抜き出しが容易になる。実際に、球状溶接ヘッド及び全ての付属物、含まれるアクチュエータを、管板から解放及び除去するために、そのような可逆的拘束手段で作用するのに十分であり、管の内側にセンタリングツールだけが残り、また、作業者がツールを動作させる及び除去するために必要な空間も残る。
【0047】
本発明の利点は、図を参照して、示唆的及び非限定な例によって、好ましい実施形態の以下の説明からより明らかに現れるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本発明による、熱交換器の管板の管のジョイントを溶接するための球状溶接システムの主要構成要素の不等角投影図を示す。
【
図3】動作中の
図1の溶接システムの構成要素の部分的断面側面図を示す。
【
図4】停止ステップにおける、本発明に従ったシステムの構成要素の横断面図を示す。
【
図5】停止ステップにおける、本発明に従ったシステムの構成要素の縦断面図を示す。
【
図6】作業ステップにおける、本発明に従ったシステムの構成要素の横断面図を示す。
【
図7】作業ステップにおける、本発明に従ったシステムの構成要素の縦断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
特に
図1及び
図2を参照して、熱交換器の管板3の管2のジョイントを溶接するためにTIG技術を用いた球状溶接システム1が示される。
【0050】
前記球状溶接システム1は、本質的に、
-プログラム制御式発電機4と、
-球状溶接ヘッド5と、
-TIG溶接用の不活性ガスの第1の供給ライン6と、
を含む。
【0051】
前記第1の供給ライン6は通常シリンダーのすぐ近くで分岐し、第1の供給ライン6の内側のガス圧は概して2.4~4barである。
【0052】
図3の細部にはっきり見える前記球状溶接ヘッド5は、
-溶接トーチ7と、
-管板3に接触する前記トーチ7用の先端停止システム8と、
-前記管2のうちの1つで前記球状溶接トーチ7を溶接するための拡張可能センタリングツール9と、
を含む。
【0053】
前記センタリングツール9は、作業者が寄与することなくても、管板3に対する球状溶接ヘッド5の安定した固定を可能にする。球状溶接ヘッド5だけ、抜出中及び位置決め動作中に、より安全にするために、ケーブルに吊るすことができる。
【0054】
次に、前記球状溶接ヘッド5は、前記センタリングツール9用のアクチュエータ10を含む。前記アクチュエータ10は、単一の空気圧作動ピストン14を含み、前記球状溶接ヘッド5は、前記アクチュエータ10を動作させるために、加圧ガスを供給するための第2のライン11を含む。
【0055】
有利に、溶接用の保護ガスとして使用される不活性ガスは、前記アクチュエータ10を動作させるために使用された同じガスであり、そのガスの供給ラインまたは前記第2のライン11は、トーチ7の溶接棒に近接して不活性ガスを搬送する第1の主要供給ライン6のすぐ近くで分岐する。
【0056】
アルゴンを前記第1のライン6から前記第2の供給ライン11に供給するために取得される点は、分岐点と呼ばれる。
【0057】
前記分岐点で、前記第2の供給ライン11は、第1のライン6のガス圧を5~8barの値にするのに必要な増圧デバイス12を含む。
【0058】
前記第2の供給ライン11は、前記拡張可能センタリングツール9を作動させるために前記アクチュエータ10のガスの通路を管理する空気弁14を含む。前記空気弁14は手動スイッチ26を含み、手動スイッチ26が入ると、作業者は直接、管2の内側でセンタリングツール9の拡張をアクティブまたは非アクティブにする決定を下す。
【0059】
前記空気弁14は、アクチュエータ10の応答時間を最小にし、加圧下でガスの消費を制限するために、前記球状溶接ヘッド5に近接する前記第2の供給ライン11に沿って設置される。
【0060】
前記空気弁14は三方弁タイプであり、また、弾性グリッパ17がアクティブでなく、センタリングツール9が管2から外れているとき、前記アクチュエータ10に存在する残留ガスを大気に放出することも可能にする。
【0061】
前記第1の供給ライン6に沿って、他方では、減圧デバイス13は、アルゴンガスの圧力を、2.4~4barの値から約0.5barの値まで減らすのに、または、溶接を保護するためにガスが作用する必要がある最適な圧力値に減らすのに適切に配置される。
【0062】
特に
図4~
図7を参照して、前記拡張可能センタリングツール9は、
-ばねで事前に留められたボール16が設けられた誘導カートリッジ15と、
-拡張することによって作用する弾性軸ロッキンググリッパ17と、
-前記誘導カートリッジ15及び前記弾性グリッパ17の両方が回転可能に連動する、端18’のうちの1つで前記アクチュエータ10と連動されたけん引ロッド18と、
を含む。
【0063】
前記誘導カートリッジ15は複数の浮き球16を含み、浮き球16は、半径方向に自由に移動し、その突起が誘導カートリッジ15の外径に対して変化し、ひいては、センタリングツール9の直径が変化する。前記ボール16の運動は、前記誘導カートリッジ15の内側でらせん状ばね27と協働して発生する。
【0064】
前記弾性グリッパ17は、前記けん引ロッド18が挿入される、軸方向に穴があるシリンダー28を含む。前記シリンダー28には、可撓性柔軟アーム30を形成する縦切断部29が設けられている。前記柔軟アーム30の自由端が成形され、その自由端は内部斜面31及び外部ジョー32を含む。弾性グリッパ17が拡張するとき、自由端は管2の内面と協働する。
【0065】
前記けん引ロッド18は、ナット33及びロックナット34によって行われるアクチュエータ10への拘束のために、端18’の反対にある第2の端18’’にスラストヘッド20を含む。
【0066】
スラストベアリング19は、独立して前記けん引ロッド18の周りで各々回転するように、前記誘導カートリッジ15と前記弾性グリッパ17との間に介在する。使用中、実際に、センタリングツール9が溶接される管2の内側でアクティブであるとき、前記ボール誘導カートリッジ15は、前記けん引ロッド18とともに自由に回転する(ボール16の回転とのあらゆる摩擦を補償する場合を除く)一方、前記弾性グリッパ17は拡張位置にあり、外部ジョー32が管2の内面に接触してブロックされる(代わりに、けん引ロッド18は弾性グリッパ17のシリンダー28の内側で自由に回転する)。
【0067】
前記センタリングツール9は、前記弾性グリッパ17用のエキスパンダーコーン21を含む。
【0068】
前記エキスパンダーコーン21は、らせん状放出ばね22の弾性作用に対抗して、前記スラストヘッド20の効果によって、弾性グリッパ17で作用するように適応し、らせん状放出ばね22は、シリンダー28の内側で、前記弾性グリッパ17とともに設けられ、前記引っ張りロッド18の周りで巻かれる。
【0069】
図7のセクションを参照すると、グリッパ17の柔軟アーム30の内側に前記エキスパンダーコーン21が徐々に挿入されることは、斜面31とエキスパンダーコーン21の円錐との協働によって有利になり、グリッパ自体の拡張と、管2の内面に固定する外部ジョー32の拡大とをもたらす。
【0070】
スラストヘッド20及びけん引ロッド18が、拡張位置で固定及びロックされたままであるエキスパンダーコーン21によって係合される弾性グリッパ17に対して、溶接中、管2とともに軸方向に自由に回転するため、スラストベアリング23が前記ヘッドスラストベアリング20と前記エキスパンダーコーン21との間に介在することで、起こり得る摩擦がなくなる。
【0071】
アクチュエータ10をセンタリングツール9のけん引ロッド18に結合する方法は特に利点をもたらす。
【0072】
前記アクチュエータ10はピストン24及び偏心制御レバー25を含み、前記偏心制御レバー25の第1の端25’は前記ピストン24と連動し、前記偏心制御レバー25の第2の端25’’前記センタリングツール9の前記けん引ロッド18と連動する。
【0073】
前記偏心制御レバー25の前記第2の端25’’はU字形であり、けん引ロッド18の端18’に係合し、停止面35による抜出に対抗して保持される。
【0074】
有利に、前記アクチュエータ10は、前記偏心制御レバー25の前記第2の端25’’と前記けん引ロッド18の前記端18’との間に配置された可逆的拘束手段を含む。示される変形では、前記可逆的拘束手段は、前記けん引ロッド18にねじ込まれたナット36によって表される。前記ナット36は、偏心制御レバー25の第2の端25’’の抽出に対抗する停止面35を形成する。
【0075】
アクチュエータ10から、ひいては球状溶接ヘッド5のメインブロックからセンタリングツール9を容易に解放する実現性は、例えば、拡張しないとき、管2の出口直径をセンタリングツール9の最小直径よりも小さい値に制限する等、溶接の過度のオーバーフローの状態が発生するときに特に利点をもたらす。
【0076】
この状態が発生するとき、本発明の目的に関する解決策により、溶接トーチ7が管板3から離れている時点で、単純ツールで、けん引ロッド18の後部ナット36のねじを外すことによって、センタリングツール9をアクチュエータ10から外すことを可能にする。球状溶接ヘッド5の全体が管板3から除去されると、センタリングツール9だけが管2の内側にあるままであり、センタリングツール9は、管の反対端で押し出すことができる、または溶接のオーバーフローを切削加工の直後に抜出できる。両方の場合、センタリングツール9は損傷を受けることなく、後で使用するために球状溶接ヘッド5で再組立ができる。
【国際調査報告】