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特表2023-546292拡散光による積層造形技術を用いたアイウェア用レンズ作製法
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  • 特表-拡散光による積層造形技術を用いたアイウェア用レンズ作製法 図1A
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  • 特表-拡散光による積層造形技術を用いたアイウェア用レンズ作製法 図6
  • 特表-拡散光による積層造形技術を用いたアイウェア用レンズ作製法 図7A
  • 特表-拡散光による積層造形技術を用いたアイウェア用レンズ作製法 図7B
  • 特表-拡散光による積層造形技術を用いたアイウェア用レンズ作製法 図8
  • 特表-拡散光による積層造形技術を用いたアイウェア用レンズ作製法 図9
  • 特表-拡散光による積層造形技術を用いたアイウェア用レンズ作製法 図10
  • 特表-拡散光による積層造形技術を用いたアイウェア用レンズ作製法 図11
  • 特表-拡散光による積層造形技術を用いたアイウェア用レンズ作製法 図12
  • 特表-拡散光による積層造形技術を用いたアイウェア用レンズ作製法 図13
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】拡散光による積層造形技術を用いたアイウェア用レンズ作製法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/02 20060101AFI20231025BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20231025BHJP
   G02C 13/00 20060101ALI20231025BHJP
   B29C 64/129 20170101ALI20231025BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20231025BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20231025BHJP
   B29C 64/286 20170101ALI20231025BHJP
   B29C 64/35 20170101ALI20231025BHJP
   B29C 64/379 20170101ALI20231025BHJP
   B33Y 40/10 20200101ALI20231025BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20231025BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20231025BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20231025BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20231025BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20231025BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20231025BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20231025BHJP
   B29C 64/371 20170101ALI20231025BHJP
【FI】
C08F2/02
C08F2/44 B
G02C13/00
B29C64/129
B29C64/264
B33Y10/00
B29C64/286
B29C64/35
B29C64/379
B33Y40/10
B33Y40/20
B33Y80/00
B29C64/386
B29C64/393
B33Y50/00
B33Y50/02
B33Y30/00
B29C64/371
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548536
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(85)【翻訳文提出日】2023-04-14
(86)【国際出願番号】 US2021055273
(87)【国際公開番号】W WO2022082040
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】17/072,456
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523142308
【氏名又は名称】インディゼン オプティカル テクノロジーズ エス.エル
【氏名又は名称原語表記】INDIZEN OPTICAL TECHNOLOGIES S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パスカル,エドゥアルド
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス,ホセ アロンソ
(72)【発明者】
【氏名】カンガ,イグナシオ
(72)【発明者】
【氏名】キローガ メラド,フアン アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】バスケス,ダニエル クレスポ
【テーマコード(参考)】
2H006
4F213
4J011
【Fターム(参考)】
2H006DA01
4F213AA44
4F213AB04
4F213AH74
4F213AJ03
4F213AJ06
4F213AJ09
4F213AM28
4F213AP05
4F213AQ01
4F213AR06
4F213AR12
4F213WA25
4F213WA54
4F213WA62
4F213WA73
4F213WA87
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4F213WF41
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4F213WL43
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4F213WL85
4F213WL87
4F213WL95
4J011DA05
4J011DB08
4J011DB18
4J011FA01
4J011FB01
4J011PA33
4J011PB24
4J011QA03
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4J011QA23
4J011QA37
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4J011QB19
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4J011SA12
4J011SA13
4J011SA16
4J011SA20
4J011SA22
4J011SA61
4J011SA84
4J011SA87
4J011WA07
4J011WA10
(57)【要約】
レンズ作製のためのシステムおよび方法が開示されている。該方法は、光源から拡散器を通して、樹脂と基材を保持する容器に光の透過を開始させるステップを含む。光の透過は、樹脂内の各点が拡散器の少なくとも10%によって照らされる照射パターンに従って行われる。これにより、レンズが形成される。この照度を実現するために、拡散器の少なくとも15%が光源からの光を受ける。さらに、拡散器の直径は、基材の直径よりも大きいかそれに等しい。該システム方法を実行するシステムは、重合装置を含み、樹脂調整・貯留装置と、計測ユニットと、樹脂排出装置と、任意選択で2次硬化装置と、を含むことができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ作製のためのシステムであって、
樹脂を保持および維持するための樹脂調整・貯留装置と、
前記樹脂調整・貯留装置に結合された重合装置と、
を備え、
前記重合装置は、光源からの光を拡散器に透過させ、前記拡散器を通して前記樹脂と基材とを含む前記重合装置内のチャンバに透過させて、形成されたレンズを作製し、この光の透過は、前記樹脂における各点が前記拡散器の少なくとも10%からの光によって照らされるような照射パターンに従っている、
システム。
【請求項2】
前記拡散器の少なくとも15%が前記光源からの光を受ける、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記拡散器の直径は、前記基材の直径よりも大きいかそれに等しい、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記形成されたレンズから残存樹脂を除去するための回転機を含む排出装置をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
ヒーターおよび光放出器からなる群から選択される少なくとも1つを含む2次硬化装置をさらに備える、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記2次硬化装置は、内部チャンバをさら備え、前記内部チャンバ内に真空を生じさせるように構成されている、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記樹脂調整・貯留装置は、前記樹脂を撹拌および/または混合するための混合装置を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記樹脂調整・貯留装置は、前記樹脂調整・貯留装置に含まれるチャンバ内のガス雰囲気を制御するためのコントローラおよびベント要素を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記樹脂調整・貯留装置は、ヒーターおよび脱酸素機構のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記樹脂調整・貯留装置は、温度、酸素濃度、および/または窒素濃度を含む物理的および化学的パラメータを測定するためのセンサを少なくとも1つ含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記樹脂調整・貯留装置は、レンズ形成および/またはレンズ品質を阻害する可能性のある前記樹脂内の粒子を取り除くためのフィルタ装置を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記重合装置は、前記ベント要素と共に、前記チャンバ内に真空を生じさせ、前記チャンバ内の所望のガス雰囲気を維持するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記重合装置に結合された計測装置をさらに備え、前記計測装置は、レンズ形成中の光および/または熱のリアルタイム測定を行う少なくとも1つのカメラおよび/または熱センサを含み、前記測定は、重合プロセス中の光入力パターンを修正または改善するために、前記重合装置内のコントローラによって使用される、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
眼鏡用レンズを作製するための方法であって、
レンズ処方箋および着用者情報を含む入力情報を受け取るステップと、
前記入力情報に基づいて作製指示を計算するステップであって、前記作製指示は、照射パターンおよび樹脂組成を含む、ステップと、
光源から拡散器を介して、樹脂と基材とを含む容器への光の透過を開始するステップであって、前記光の透過は、前記照射パターンに従って実施され、前記樹脂の各点が前記拡散器の少なくとも10%によって照らされる、ステップと、
形成されたレンズが作製指示を満たしたときに、前記光の透過を停止させるステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記拡散器の少なくとも15%が前記光源からの光を受ける、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記拡散器の直径は、前記基材の直径よりも大きいかそれに等しい、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記樹脂の容器を排出させるステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
残存樹脂を取り除くために、前記形成されたレンズを回転させるステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記形成されたレンズに熱および/または光を加えて、前記形成されたレンズの効果を完了させるステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記形成されたレンズを前記基材から取り除くステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記樹脂組成は、重合禁止剤、光重合開始剤、およびモノマーまたはオリゴマーの量、部分、または濃度の指定を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記モノマーは、アクリレート、エポキシ、メタクリレート、イソシアネート、ポリチオール、チオアクリレート、およびチオメタクリレートからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記重合禁止剤は、酸素およびヒドロキノンからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記光重合開始剤は、ベンゾフェノン、BAPO(ビスアシルホスフィンオキシド)、アセトフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(CIBAによるIrgacure2959(c))、アルファアミノケトン、HAP(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン)、およびTPO(ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)、アリールジアゾニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、フェロセニウム塩、およびジアリールヨードニウム塩からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記拡散器は、オパールガラス、白色ガラス、または光拡散性添加剤を含むアクリレートシートである、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記基材は、CR-39(登録商標)、ポリカーボネート、ポリウレタンベースのプラスチック、およびガラスからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記基材には、電子回路または画像形成システムが埋め込まれる、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記基材は、偏光性またはフォトクロミック性である、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記基材は、その凸状表面に反射防止コーティングまたはハードコーティング処理が施される、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記形成されたレンズを回転させてハードコーティングを施すステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科用レンズの作製に関し、より詳細には、積層造形技術を用いた眼科用レンズの作製に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の眼鏡レンズの作製技術は、「フリーフォーム」と呼ばれる切り出し・研磨技術に基づいている。このプロセスには、遮断器、発生器、および研磨器などの複数の機械を必要とする。これらの機械は高価でかさばり、メンテナンスには多大な専門知識が必要である。また、この技術では多くの廃棄物が発生し、多数の消耗品も必要であるが、その中には有害なものもある。また、この技術では、半製品のレンズの在庫を多くもつ必要がある。すなわち、フリーフォーム用製造施設を立ち上げるには、多額の経済的投資と多くの労働力、および大きな施設が必要である。このため、レンズ製造は大企業の領域にあり続けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
3Dプリントの登場により、3Dプリント技術を用いたレンズ作製の取り組みが始まっている。しかしながら、現在のレンズ作製用3Dプリントシステムは、サイズが大きく、非常に高価である。さらに、1枚のレンズを作製するのに15分かかるなど、非常に時間がかかる。また、SLA(ステレオリソグラフィー)のバリエーションに基づくアプローチは安価ではあるが、やはりかさばり、時間がかかる。
【0004】
レンズ作製に使われる3Dプリント技術のひとつに、「レジン(樹脂)ジェット」と呼ばれるものがある。これは、平らな表面の上に層を1つずつ重ねて作製することに基づいている。これらの層は、UV硬化性の小さな液滴で構成され、作製された表面を滑らかにすることで、十分な光学的品質をもつ表面を得ることができる。しかしながら、レジンジェット技術には大きな欠点がある。その1つが、製造時間である。レジンジェットによるレンズ1枚のプリント時間は、およそ1時間だと言われている。層を1つずつ積み重ねていくため、時間がかかる。さらに、レジンジェット技術を実現するための機械は大きく、設置面積が大きくなる。また、「フリーフォーム」の減法製造技術に必要なセット遮断装置、発生装置、および研磨装置よりも高価である。
【0005】
レジンジェット技術の別の欠点として、平らな表面を有するレンズしか作製できないことが挙げられる。眼鏡用レンズは通常湾曲しているか凹凸形状を有するので、これは問題である。そこで、解決策の1つとして、平らな表面を有する2つのレンズを重ね合わせて1つの凹凸形状レンズを作製することが挙げられる。ただし、これには2回のプリントが必要であり、時間がかかる。また、得られたレンズが著しく厚くなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
レンズの作製を眼科医の医局および中小企業でもレンズの作製を可能にするには、単純、迅速且つ安価な、設置面積の小さいレンズ作製システムが必要である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】指向性光ビームを示す図である。
図1B】無指向性光ビームを示す図である。
図2】樹脂内の光伝播を示す図である。
図3】樹脂内のパターン光の伝播を示す図である。
図4】指向性光で作製したレンズの写真である。
図5】光拡散器による指向性光への影響を示す図である。
図6】レンズ作製用のモノマー重合のためのシステムの模式図である。
図7A】重合装置の第1の態様の模式図である。
図7B】重合装置の第2の態様の模式図である。
図8】入射した放射照度パターンを示す画像である。
図9】フリンジパターンの偏向を示す画像である。
図10】例示的な計測装置の模式図である。
図11】例示的な樹脂排出装置の模式図である。
図12】例示的な2次硬化装置の模式図である。
図13】本明細書に記載のシステムおよび方法を用いてレンズを形成するためにとられる動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に記載の方法およびシステムは、着用者の処方および使用要件に基づいた作製指示に従って、積層造形技術および拡散器を通過した光を使用して眼鏡用レンズを作製するためのシステムである。作製指示には、照射パターンの仕様も含まれる。本明細書に記載のシステムおよび方法によれば、光は光源から拡散器を介して、樹脂および基材を保持する容器に透過される。光の透過は、照射パターンに従って行われる。照射パターンには、樹脂の各点が拡散器の少なくとも10%によって照らされることを指定する指示が含まれる。一部の実施形態において、この照度を達成するために、拡散器の少なくとも15%が光源から光を受ける。さらに、一部の実施形態において、拡散器の直径は、基材の直径よりも大きいかそれに等しい。該システムおよび方法に関する追加の詳細は後述する。
【0009】
本明細書に記載の方法およびシステムは、現在の「フリーフォーム」技術よりも単純な眼鏡用レンズ作製のためのシステムである。本明細書に記載のシステムは、軽量であり、可動部分が限られており、「フリーフォーム」作製と比較して廃棄物が少なく、消耗品の使用も非常に少なくなっている。この結果、眼鏡店を含む中小企業が眼鏡用レンズ作製の事業に参入することができるようになる、より安価なシステムを実現することができる。
【0010】
本明細書に記載のシステムおよび方法をより良く理解するためには、指向性光ビームおよび無指向性光ビームの理解が有用である。図1Aおよび図1Bは、指向性光ビームと無指向性光ビームとの間の比較結果を示している。指向性光ビームとは、ビーム内の任意の点における放射輝度が、単一方向の周りの狭い立体角内で無視できない値を有する光のビームのことである。指向性光ビームの例として、平行ビーム、または点光源からの球状ビームが挙げられる。無指向性(または拡散)光ビームは、ビーム内の任意の点における放射輝度が、有限の範囲の方向について無視できない値を有する光のビームのことである。本明細書に記載のシステムおよび方法によれば、無指向性ビームは、光が光拡散器を通過することによって生じる。
【0011】
ここで図1Aを参照すると、指向性光ビーム(100A)が示されている。指向性光ビーム(100A)内の任意の点(101A)に対して、放射輝度は、単一方向(102A)に沿って無視できない値である。近い方向(103A)において、放射輝度は、ゼロまたは低い値となり、その他の方向ではゼロとなる。ここで図1Bを参照すると、指向性光ビーム(100B)が光拡散器(104)を通過する場合、指向性光ビームは、無指向性または拡散性(105)のものとなる。これは、拡散光ビーム(101B)内の任意の点に対する方向(102B)、(103B)の多数のセットで無視できない放射輝度を有することを特徴とする。本明細書に記載のシステムおよび方法は、眼鏡用レンズを作製するために樹脂中の重合反応を生じさせるために光を導く拡散器を含む。
【0012】
[光硬化性樹脂の重合]
光重合とは、光を用いて重合反応を開始させる重合の一種である。これには、フリーラジカルとイオンの2つのルートがある。本発明のほとんどの例は、フリーラジカル重合に基づいているが、イオン重合も使用することができる。この反応は、液体モノマー内に混合された開始剤と呼ばれる感光性成分によって誘発される。典型的には、光の波長は、紫外線範囲(例えば、UV-Aまたは化学線UVなど)にある。ただし、一部の開始剤は、可視光または他の波長で活性化する。一部の実施形態において、開始剤は、360nm~390nmの範囲の吸収帯を有する。
【0013】
本明細書で使用される「樹脂(レジン)」という用語は、モノマーベース、開始剤、および一部の実施形態では重合禁止剤を含む混合物を指す。すなわち、重合禁止剤は任意選択のものである。樹脂は、液体状態であり、安定剤や光吸収剤などの他の成分を含んでもよい。例示的な樹脂ベースとして、アクリレート、エポキシ、メタクリレート、イソシアネート、ポリチオール、チオアクリレート、およびチオメタクリレートが挙げられる。例示的なアクリレート樹脂として、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、および1,10-デカンジオールジアクリレートなどが挙げられる。開始剤は、フリーラジカル系であってもよく、カチオン系であってもよい。フリーラジカル重合を用いる場合、例示的な開始剤として、ベンゾフェノン、BAPO(ビスアシルホスフィンオキシド)、アセトフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(CIBAによるIrgacure2959(c))、アルファアミノケトン、HAP(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン)およびTPO(ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)などが挙げられる。カチオン性光重合開始剤を用いる場合、例示的な開始剤として、アリールジアゾニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、フェロセニウム塩、およびジアリールヨードニウム塩などが挙げられる。例示的な重合禁止剤として、ヒドロキノンが挙げられる。
【0014】
開始剤分子が紫外光子を吸収すると、分子はフリーラジカルに分離され、モノマーと反応する。この反応の結果、フリーラジカルに結合したモノマーが得られる。これはその後さらに多くのモノマー分子と反応し、分子量が増大したポリマーが生成される。この反応は、フリーラジカルの鎖末端が中和されることで終了する。これは、典型的には、終結または重合禁止剤への連鎖移動によって生じてもよい。
【0015】
重合中に生じる反応は、解離、開始、伝播、終結、および重合禁止剤への連鎖移動である。これらは、次式によって示される。
【0016】
【数1】
【0017】
ここで、[A]は開始剤の濃度、[R・]はフリーラジカルの濃度、[M]はモノマーの濃度、[M・]はi個のモノマーからなる活性(フリーラジカルが付着している)ポリマー、[M]はi個のモノマーからなる安定したポリマー、[Z]は存在する可能性のある特定の重合禁止剤、[MZ]は重合禁止剤と反応したポリマーの濃度を表す。パラメータk、k、k、k、およびkは、各反応に関する運動定数を表す。Iabsは、開始剤が吸収したUV放射のエネルギー量を表す。
【0018】
これらの反応は、一般に定常状態を仮定して実現され、光重合開始剤の解離により生じたフリーラジカルは、重合終結反応(再結合と阻害の両方)により消費される。モノマー濃度の変化率は、次式によって求められる。
【0019】
【数2】
【0020】
この式において、重合禁止剤の濃度[Z]は、時間に依存してもよい。変数φは、開始剤の量子効率を表す。また、k、kt、およびkは、アレニウスの関係を通じて温度に依存する。例えば、kは、次式で求められる。
【0021】
【数3】
【0022】
ここで、kpoは定数、Eは伝播反応に関わるエネルギー、Rはガス定数を表す。ポリマー伝播反応は発熱性であるため、運動定数は時間と共に変化することが予想される。
【0023】
微分方程式(2)を解くには数値積分アルゴリズムが必要であるが、特定の近似のもとでは、解析解が本明細書に記載の方法を示す。本明細書に記載の方法を適用する場合、式(2)の数値解を使用することができ、必要な精度に応じて、近似的な解析解を使用することもできる。重合禁止剤がなく、温度が一定である場合、経時的なモノマー濃度は、次式によって求められる。
【0024】
【数4】
【0025】
ここで、Mは初期モノマー濃度である。モノマーと同時に作製されたポリマーは、重合中に消費される。変換度cは、ポリマーに変換されたモノマーの割合であり、次式によって求められる。
【0026】
【数5】
【0027】
変換率が高くなると、媒体の粘度が高くなる。変換が臨界変換ccrと呼ばれる点に達すると、粘度が指数関数的に高くなり、大きいポリマー分子の低い移動度および/またはポリマー鎖間の高い架橋密度により、混合物が固化する。
【0028】
光硬化性樹脂に指向性光を照射した場合、樹脂中の深さzを伝播した後に開始剤によって吸収される単位長さあたりの放射照度は、ランベルト・ベールの法則から、次式によって求められる。
【0029】
【数6】
【0030】
ここで、αは開始剤のモル吸収係数、zは材料内部の深さ、γは開始剤を含まない樹脂の吸収係数、Iは入力強度を表す。そのため、吸収は、材料の初期で最大となり、内部で指数関数的に減衰する。
【0031】
容器内の樹脂に指向性光を照射すると、重合速度は、材料の界面に近いほど速く、材料の内部では指数関数的に減衰する。図2に示すように、所与の時間において材料の特定の部分が臨界変換に達する。この地点よりも下の材料はすべて固体となり、それよりも上の材料は液体となる。この領域を「重合フロント」と呼び、参照符号240によって示されている。ここで図2を参照すると、樹脂230を保持する容器210内の透明基材220を通過する光200の伝播が示されている。破線250は、同じ放射照度をもつ表面を表す。
【0032】
光への曝露中に、重合フロントは、樹脂230内を対数速度で伝播する。曝露が停止すると、曝露時間に依存した厚さの層が生じる。硬化した材料の厚さは、次式によって求められる。
【0033】
【数7】
【0034】
この式(7)は、すべてのパラメータが時間に対して一定である場合にのみ指向性光で適用され得る。
【0035】
図3に示すように、投射した光がパターン化されると、重合フロントの形状が放射輝度パターンに従う。図3は、容器310内の樹脂330を通る光300の伝播を示している。ここで、光は指向性をもつが、重合フロント340の形状だけでなく、同じ放射照度350をもつ表面の形状を修正する横方向の分布を示している。
【0036】
曝露時間と入力されたUV放射照度パターンとの組み合わせが正しく調整されると、重合フロントの形状は、式(7)に従って制御することができ、式(2)の数値積分によってより精密に制御することができる。この技術を使用することで、様々な立体物を作製することができる。しかしながら、後述するように、得られた立体物は、典型的には自己収束のため、透明性や光学的品質が不足する。そのため、指向性光を利用するこの技術だけでは、眼鏡用レンズを作製することができない。
【0037】
本明細書で使用される「眼鏡用レンズ」は、着用者の目から少し距離をおいて着用される任意のタイプのアイウェアを指す。眼鏡用レンズとして、球状レンズ、非球状レンズ、累進付加レンズ、遠近両用レンズ、三焦点レンズ、レンチキュラーレンズ、スラブオフレンズなどが挙げられる。形成された典型的な眼鏡用レンズは、40mm~80mmの直径、および2mm~8mmの厚さを有してもよい。また、本明細書に記載のシステムおよび方法は、より大きなレンズおよびより小さなレンズ、ならびにより薄いレンズおよびより厚いレンズを作製するために使用されてもよい。
【0038】
本明細書に記載のシステムおよび方法は、固定表面またはフリーフォーム表面を有することができる眼鏡用レンズを作製するために使用される。固定表面レンズの場合、レンズは、基材に付着する樹脂から作製される。図2および図3に示すように、基材220および320の固定表面は平坦であるが、基材は任意の形状を有することができる。眼鏡用レンズに最も便利な基材形状は球面である。しかしながら、非球面、トーラス状、非トーラス状、多焦点など、より複雑な基材表面を使用することも可能である。一部の実施形態において、電子回路または画像形成システムを基材内に埋め込むことができる。他の実施形態において、基材は、大きな縁厚を有するレンズの作製を可能にするように構成されるか増強される。そのような一実施形態において、基材は、保持できる樹脂の量を増やすために、縁に向けて、非球面化、またはレンチキュラーレンズ化され得る。別のそのような一実施形態において、保持できる樹脂の量を増やすために、円筒形の壁が基材の縁に取り付けられる。基材は、ポリカーボネート、アリルジグリコールカーボネート、ポリウレタンベースのプラスチック、ガラス、または同様の材料から作製され得、オハイオ州クリーブランド市のPPG Industries Ohio社によるCR-39(登録商標)またはTRIVEX(登録商標)であってもよい。
【0039】
本明細書に記載の実施形態において、固定表面は、目から最も遠い表面を表す。他の実施形態において、固定表面が目に最も近い表面を表すように、順序を逆転させることができる。フリーフォーム表面は、重合フロントの位置によって決定される表面である。以下の実施形態において、フリーフォーム表面は、目に最も近い表面である。
【0040】
[自己収束]
上述したように、適切な放射照度の分布をもつ指向性光ビームを使用することで樹脂の重合フロントが制御されるため、フリーフォーム表面の形状が所望の眼鏡用レンズを提供することができる。しかしながら、指向性光ビームは、いわゆる自己収束効果のために、重合体に強い欠陥を生じさせやすい。このポリマーの屈折率は、通常、液体樹脂の屈折率よりもわずかに大きい。液体樹脂に入射する放射照度の局所的な値に微小なずれが生じると(そのずれは、指向性光では避けられないノイズとしてプロファイル上に存在することもあれば、樹脂を保持する透明表面の塵埃や欠陥によることもあり、投射器の画素構造から生じることもある)、屈折率の局所的な変化が生じ、放射照度を局所的に集光する。これが正のフィードバックループとなり、放射光の伝播方向に沿った針のような形状の特徴的な欠陥が生じる。その結果、生成されたポリマーは透明性を失い、フリーフォーム表面が荒くなる。これにより、得られる物体には光学的品質が全くないか、低くなる。これは、指向性光で作製したレンズの画像を含む図4に示されている。ここで、410Aが上面図、410Bが斜視図である。これを克服するために、本明細書に記載の方法およびシステムは、指向性光の代わりに拡散光を使用する。
【0041】
[光拡散器]
光拡散器を投射器と樹脂の間に配置すると、各放射画素からの光は投射器からの最初の方向に従わないように複数の角度に散乱する(上記図1Aおよび図1Bの説明を参照)。本明細書に記載の方法を実現するために、ランベルトの余弦則に可能な限り近似する特性をもつ拡散板を用意することが望ましい。後述するように、拡散器の特性は、双方向透過分布関数(BTDF)を用いて、拡散器が理想的なランベルトにどれだけ近いかを測定するために評価される。理想的な拡散器では、放射輝度はランベルトの余弦則に従う。BTDFを用いた測定は、拡散器の特性を評価するために行われる。拡散器は、ガラス、および光拡散性添加剤で製造されたポリマーを含む光拡散材から形成される。より具体的には、拡散器は、オパールガラス、白色ガラス、および炭酸カルシウム添加剤を含むアクリレートシートなどから形成されてもよい。一実施形態において、例示的な光拡散器として、3.3wt%のCaCO添加剤から形成された厚さ2mmのアクリレートシートが挙げられる。
【0042】
ここで図5を参照すると、光拡散器501が光502に与える影響を示す模式図が示されている。光源500は、放射エネルギー(すなわち、光)502を拡散器501に向けて送る。光源500は、例えば、紫外線デジタル光処理(UV DLP)投射器または走査型UVレーザであってもよい。例えば、投射器500は、385nmにピークを有する放射線(すなわち、UV光)を放出してもよい。光源によって放出された光502は、高い指向性を有する。拡散器501は、全方向に光を散乱させるので、拡散器上の任意の点Qは全方向に光を放出することになる。散乱した光の放射輝度は、拡散器の双方向透過分布関数に依存する。したがって、拡散器の後方の任意の点Pに到達する光束は、拡散器上の複数の点503からの寄与を有する。
【0043】
本明細書に記載のシステムおよび方法によれば、拡散器は、樹脂の容器、バットまたはチャンバの内部、好ましくはその底部に配置される。拡散器が樹脂で満たされた容器の底部に位置する場合、樹脂内の各点は、拡散器上の複数の点から、また複数の方向から光を受ける。一実施形態において、樹脂内の各点は、拡散器の面積の少なくとも10%から光を受ける。このように、拡散器から樹脂に透過する光は指向性がなく、上述した自己焦点の問題が解消される。これを達成するため、すなわち、樹脂のあらゆる点が拡散器の少なくとも10%の複数の光源位置から光を受けるように、拡散器の大部分が照らされる。具体的には、一部の実施形態において、拡散器の面積の少なくとも15%が光源によって照らされる。このようにしないと、自己収束が残ってしまうか、完全に取り除けなくなる。拡散器の少なくとも15%の照射という方法を使用して、拡散器からの光の少なくとも10%で樹脂の各点を照らすと、滑らかで透明、且つ低ヘイズを有するフリーフォーム表面を有する重合レンズが得られる。得られたレンズは、光学的品質が良好である。この技術の利点は、投射器、または投射器と樹脂容器との間の媒体の埃や汚れなどの欠陥に強いということである。
【0044】
[重合フロントの形状の制御]
所望の眼鏡用レンズを作製するために、重合フロントの形状を制御する必要がある。樹脂の容器内での重合を精密にモデル化するためには、以下の各項目を考慮する必要がある。
・ 拡散器から基材、レンズへの放射照度の伝播
・ ポリマー、開始剤、重合禁止剤の濃度の経時的変化
・ 熱の拡散と温度の経時的変化
・ モノマー、開始剤、および重合禁止剤の拡散
・ 光拡散器の双方向透過分布関数(BTDF)
拡散光を使用する場合、式(7)はもはや適用されない。また、式(3)は、反応速度、開始剤、重合禁止剤の濃度などのパラメータが経時的に変化する場合には適用できない。そのため、拡散光を使用する場合、反応(1)の丁寧なモデル化が必要である。
【0045】
フリーフォームのレンズ表面の所望の形状は、z(x,y)として示される場合がある。式(1)に対応する微分方程式を、入力された所与の放射照度パターンIに対して数値的に求めて、重合フロントz(x,y,I)が得られる。制御点(x,y)の固定セットに対して、次のようなメリット関数が計算される。
【0046】
【数8】
【0047】
メリット関数は,入力された放射照度パターン(略して「入力パターン」)を定義するパラメータに関して最小化される。光源がDLPの場合、拡散器に入射する放射照度パターンは画素単位で定義され、マトリックスInmで表される。ここで、指数nおよびmは、デジタル画像の行と列にわたっている。また、ターゲット(フリーフォーム表面)と重合フロントとの曲率の差の総和など、他のメリット関数を用いてもよい。
【0048】
モノマー重合のプロセスの間、容器内の樹脂および重合フロントの成長を測定するために使用される1つまたは複数のセンサまたはセンサシステムから得られる情報で、入力パターンInmを変更することができる。このリアルタイムのクローズループ・プロセスにより、重合フロントを厳密に制御し、その形状に影響を与える可能性のある不安定性を回避または相殺することができる。重合プロセスで使用されるセンサおよびセンサシステムには、視覚検査システム(VIS)カメラ、赤外線(IR)カメラ、超音波トポグラフィシステム、トモグラフィシステム、モアレトポグラフィシステム、干渉トポグラフィシステム、温度センサ、およびその他の同様のデバイスおよびシステムのうちの1つまたは複数が含まれる。これらの技術は、図7Aおよび図7Bに関して後述する重合装置、および図10に関して後述する計測システムで使用される。
【0049】
[システムおよびそれを構成する装置の説明]
本明細書に記載のレンズ作製システムは、以下の構成要素を含むが、これらに限定されるものではない:
・ 樹脂調整・貯留装置、
・ 重合装置、
・ 計測装置、
・ 樹脂排出装置、および
・ 2次硬化装置。
【0050】
[樹脂調整・貯留装置]
重合フロントの作製と変化は、上述したように、複数のパラメータに依存する。そのため、樹脂の配合は厳密に管理されている。樹脂には、重合禁止剤と光重合開始剤の組み合わせが含まれる。重合禁止剤および光重合開始剤は、特定の温度で保管および使用する必要がある。
【0051】
鎖状光重合反応の重合禁止剤の1つに酸素がある。酸素は、周囲の空気から樹脂内に拡散し、樹脂内に濃度勾配を生じさせる場合がある。この勾配により、樹脂が不均一になり、重合フロントの形状が乱れる可能性がある。そのため、酸素を含む樹脂内のあらゆる重合禁止剤の濃度は、既知の適切な一定レベルに保たれる必要がある。入力パターンを投射する前に、樹脂の成分が均質であることが必要である。
【0052】
適切な酸素濃度をもつ均質な樹脂を実現するために、考えられる選択肢の一部は以下の通りである。
・ 樹脂は、酸素を含まない雰囲気(例えば窒素)の容器に保管する。
・ 樹脂と相性の良い脱酸素剤を使用する。
・ 樹脂を酸素で飽和させる。
・ 酸素を一定割合含むガス(例えば空気)で樹脂を飽和させ、飽和以下の酸素濃度を一定に保つ。
・ 樹脂を脱ガスする。
【0053】
液体樹脂を保持し、その化学組成を適切且つ一定に保つために、樹脂調整・貯留装置が用いられる。樹脂調整・貯留装置600の一実施形態を図6に示す。液体樹脂601は、密閉タンク602内に保持される。センサ、アクチュエーター、およびタンク内外を走るパイプのセットとそれに対応するバルブおよびポンプは、電子機器およびソフトウェアを含むコントローラ613によって制御される。混合機構603がタンク602内に設けられ、樹脂の成分を活性させ、撹拌し、および/または混合する。これにより、樹脂の成分は完全に混合され、均一に分布した状態に保たれる。導管607を介して、酸素、清浄な乾燥した空気、または任意の好ましい混合ガスを樹脂に送り込むか泡立てて、溶解度を高め、混合を助けることができる。また、好ましいガスをタンク602内に導入して、導管608を介してチャンバ内の雰囲気中の各ガスの分圧を制御することができる。タンク内の雰囲気成分の組成の変化を許容し、内圧を制御するために、ベント機構が設けられる。ベント機構は、パイプ、バルブ、ポンプを含む構成要素を含んでもよい。図6に示す実施形態において、ベントは、コントローラ613と接続され且つコントローラ613によって制御されるパイプ606Aおよび606C、ならびにバルブ606Bで実現され得る。センサ604は、タンク602に含まれる。一実施形態において、典型的なセンサアレイにより、温度、酸素濃度、窒素濃度などの物理的および化学的パラメータを測定することができる。パイプ608および/または606Aのいずれかまたは両方を使用して、樹脂を脱ガスするためにタンク内に真空を作り出すことができる。樹脂を脱ガスするために、脱酸素機構(図示せず)が任意選択でタンク内に含まれてもよい。樹脂601の温度を制御するために、タンク602内にヒーター605が含まれてもよい。パイプ609は、樹脂を取り出し、後述する図7Aおよび図7Bに示すような重合装置にそれを供給するために使用される。
【0054】
ポンプ/バルブ機構とフィルタとからなるフィルタシステム610がタンク602に接続される。これは、レンズの作製を妨げ且つレンズの形成を阻害および/またはレンズ品質を低下させるような粒子を除去する。一実施形態において、0.5ミクロン超のサイズを有する粒子がフィルタシステム610によって除去される。また、フィルタシステム610は、自発的な重合によって、またはプリントプロセス中に形成されたゲル型ポリマーを除去してもよい。フィルタシステム610は、樹脂および重合プロセスの特定の特性に応じて、持続的に動作してもよいし、所定の時間間隔で動作してもよい。フィルタシステムは、コントローラ613に結合され、コントローラ613によって制御されてもよい。
【0055】
樹脂回収システム612が樹脂調整・貯留装置600に含まれてもよい。以前の重合プロセスからの液体樹脂の残骸がタンク612に注がれてもよく、フィルタ611を介して濾過され、調整・貯留装置に組み込まれてもよい。残渣をタンク612に導入する前に、または樹脂がタンク上に配置される際に、樹脂の残渣において(例えば、周知の分光学的技術により)開始剤および重合禁止剤の濃度を測定することができる。樹脂を調整/貯蔵タンク602に導入する前に、適切な量の重合禁止剤、開始剤および/またはモノマー/オリゴマーを添加することによって、樹脂の成分の濃度を調整してもよい。
【0056】
[重合装置]
ここで図7Aおよび図7Bを参照すると、重合装置の2つの例示的な実施形態が示されている。重合装置は、チャンバ700A/700Bから構成される。ここには、UV光が底部ガラス板705、光拡散器704A/704B、および基材701を通過して樹脂702を照射するように、樹脂702が置かれる。レンズの形成は、重合装置内で行われる。チャンバ700A/700Bは、UV源708を除く重合を実現するために必要な構成要素を保持および封入する。上部711および底部705は、ガラス板または他の適切な透明材料である。チャンバ700A/700B内では、基材701がベッド、テーブル、溝付き領域または他の支持構造(図示せず)に置かれ、および/またはクリップ、タブまたはその他の締結デバイス(図示せず)によってチャンバ700A/700Bの壁またはその壁への延長部に固定されてもよい。基材701の凹部には樹脂702が注がれる。光源708から硬化放射線(すなわち、UV光)709が放出される。光源708は、走査型レーザであってもよく、DLPであってもよい。硬化放射線は、底部透明板705を通過し、光拡散器704A/704Bによって拡散される。拡散された光は、その後、基材701を伝播し、樹脂702に入り、レンズ703が形成される。
【0057】
図7Aおよび図7Bに示す重合装置の両実施形態において、チャンバ700A/700B内のガス雰囲気および圧力は、入出力パイプ706および707を含むベント要素を介して制御される。これらのパイプは、窒素、酸素、空気、これらのガスの混合物および/または他のガスを、チャンバ700A/700B内に導く。また、これらのパイプは、樹脂702を脱ガスするために、チャンバ内に真空を作り出すためにも使用されてもよい。ベント要素は、バルブおよびポンプと、ガスの入出力のためのパイプ706および707を含む。ベント要素のバルブおよびポンプならびに光源は、コントローラ710によって制御される。ガスの適切な選択は、樹脂の配合によって異なる。例えば、単官能モノマーと二官能モノマーの混合率が50%で、開始剤が0.5%、重合禁止剤が1%のアクリル樹脂を使用することができる。本実施例において、重合禁止剤があるので、酸素は調整・貯留装置600から除去され、重合チャンバ700A/700Bに窒素を通気することによっても除去される。重合は、重合レンズ703内に気泡が生じるのを避けるために、低圧の窒素雰囲気で実施されてもよい。
【0058】
動作時に、硬化放射線がガラス板705を通して樹脂702に入ると、レンズ703となる重合部分から液体樹脂702を分離する重合フロントが発生する。重合が進むと、重合フロントは基材表面から離れ、成長するレンズは厚くなる。
【0059】
形成されたレンズ703を作製するために使用される光源708によって放出される放射照度パターンは、式(1)(上記参照)および拡散器704のBTDFを用いて計算される。これは、樹脂内の硬化光子の体積密度を提供する。形成されたレンズ703の厚さがターゲット値に達すると、最適化アルゴリズム(8)(上記参照)に従って、重合フロントがターゲット表面の形状になり、レンズが完成し、光源708はオフにされる。
【0060】
図7Aに示す実施形態において、拡散器704Aは平坦であり、底部705の上方で隣接して配置される。図7Bに示す実施形態において、拡散器704Bは湾曲しており、基材701の凸面側の曲率と同様の曲率を有する。さらに、図7Bに示す実施形態において、拡散器704Bは、基材701の下方で隣接して配置される。一実施形態において、湾曲した拡散器704Bは、炭酸カルシウム、ガラス、チタンなどの光分散添加物を有する透明樹脂から構成されてもよい。一部の実施形態において、光分散添加物は、1ミクロン~3ミクロンのサイズの粒子を有する。拡散器704A/704Bの直径は、基材701の直径よりも大きいかそれに等しいことが好ましい。すなわち、拡散器704A/704Bの直径は、基材701の直径より小さくないことが好ましい。
【0061】
これらの実施形態の変形例において、図7Aに示す実施形態における基材701と拡散器704Aとの間の空間、または図7Bに示す実施形態における拡散器701と底部板705との間の空間に、異なる表面間の指数整合を確保してこれらの表面における反射を除去または低減するための物質、好ましくは液体を充填することができる。この指数整合液は、透明であり、基材および拡散器の屈折率に近いかまたはそれに一致する屈折率を有するという特性を有する。一実施形態において、基材がCR-39(登録商標)で、アクリレートが拡散器である場合、指数整合液であるグリセリン(屈折率1.47)が使用されてもよい。
【0062】
一部の実施形態において、上部窓ガラス711が取り除かれる。
【0063】
ここで図8を参照すると、図7Aに示す重合装置を介して適用される可能性のある入力光パターン800の一例が示されている。このパターンは、60秒、または他の適切な時間、投射されて、曲率が変化する重合フロントを生成し、累進付加レンズとしてのレンズ703を作製することができる。ここで図9を参照すると、図8に示す入力パターンで図7Aに示す重合装置を用いて本明細書に記載の方法を適用した結果得られたレンズ900が示されている。
【0064】
[計測装置]
図7Aおよび図7Bに示す重合装置に追加モジュールを取り付けて、リアルタイム測定を行い、重合プロセス中に光入力パターンを修正または改善するためのフィードバックを提供することができる。ここで図10を参照すると、計測装置1000の一実施形態が示されている。計測装置1000には、図7Aに示す重合装置が含まれる。本実施形態において、図7Aに示す重合装置は、上部ガラス711を用いずに使用される。計測装置1000は、樹脂702内の熱放射1006を感知して樹脂702の温度分布をリアルタイムで監視するように、温度カメラ1005を含む。重合は発熱反応であるため、空間的に依存する光入力パターンは、より高い光子密度を提供するところにより高い重合速度をもたらす。したがって、光入力パターン、重合フロントの経時的な形状、および樹脂内の温度分布は、相関がある。樹脂内の温度分布の予期せぬ変動は、同様に、樹脂の均質性の欠如、ゲル型沈殿物の存在、または他の不純物と相関することになる。温度カメラ1005を使用するために、重合チャンバの上部ガラス板は、熱放射1006に対して不透明であるため、取り外される。
【0065】
一部の実施形態において、計測装置1000が含む追加の2次システムは、重合プロセス中に変化する重合フロントの形状を監視するために使用される。この2次システムは、超音波でトポグラフィを評価する。
【0066】
図10に示す計測装置1000を再び参照すると、カメラ1004を用いた光学系が示されている。カメラ1004は、樹脂を重合できない低波長の光を用いて、レンズの形成および/または重合フロントを評価する。例えば、カメラ1004は、波長635nmの赤色光、または波長780nmの近赤外線を使用してもよい。カメラ1004は、樹脂の重合を妨げない他の波長を有する光を使用してもよい。計測装置の一実施形態において、構造化光の投射器が、構造化された低波長光を上方から樹脂702に照射するフリンジパターンを投射し、カメラ1004が、重合フロントからの反射光を撮像する。重合フロントは、液体樹脂とポリマーとの屈折率の変化により反射する。
【0067】
計測装置1000は、追加的または代替的に、構造化低波長光ビーム1003を下方から送るための光源1002を含んでもよい。これは、カメラ1004で検出されるレンズ703を介した測定用光ビーム1003の透過によって実現されてもよい。本実施形態において、測定用光ビーム1003と硬化光709は、ビームスプリッタ1001、例えば硬化光の投射量に影響を与えないダイクロイックビームスプリッタで混合される。
【0068】
計測装置1000の他の実施形態は、IRカメラ、超音波センサなどのその他のまたは追加のセンサを含んでもよい。
【0069】
[樹脂排出装置]
重合装置によりレンズが形成された後、残った樹脂を排出して再利用してもよい。より具体的には、重合装置によりターゲット形状が完成し、ターゲット厚さを有するレンズが形成された後、投射器がオフされて、入力パターンの投射が停止される。次いで、レンズを含む基材と残存する非重合樹脂を重合装置から取り出す。これは、手動または自動化されたシステムで行うことができる。レンズの完成後、樹脂の不要な重合を避けるために、重合装置から残りの液体樹脂を取り除くなどしてそれを排出する。
【0070】
ここで図11を参照すると、例示的な樹脂排出装置1100が示されている。形成されたレンズ1114および残存液体樹脂1112を有する基材1116は、ベース1110に置かれ、しっかりと取り付けられ、回転機1101に載せられる。ベース1110、基材1116、レンズ1114、および残存樹脂1112は、回転機1101によって回転される。遠心力により、残存液体樹脂はレンズ1114と基材1116から離れ、円錐形の棚1102で形成された受け皿に移動する。回転機1101の速度、および温度に大きく依存する樹脂1112の粘度は、レンズ上に残存する樹脂の量を決定する。カバー1103は、樹脂排出装置1100から樹脂が飛び出すのを阻止する。円錐形の棚1102の上部の回転機で収集された樹脂は、図6に関して上述したように、排出パイプ1120で回収され、リサイクルおよび再利用される。リサイクルと再利用のための残存樹脂の回収は、自動で行うことも可能である。ここで、樹脂は、図11に示す樹脂排出装置1100から図6に示すシステムへ排出パイプ1120から送り込まれる。
【0071】
残存樹脂量が多い場合は、回転前に基材を傾けて余分な樹脂を捨てることができる。ゲル化した樹脂の量が多い樹脂配合の場合は、残った樹脂を捨て、適切な溶剤を使って基材とレンズのペアから非硬化樹脂を除去することができる。
【0072】
別の実施形態において、樹脂がパイプ1120を通って排出された後、レンズ表面の上の残留液体樹脂の薄い層の事前硬化が、カバー1103の下側に含まれる拡散UV光源1104を介して達成することができる。本実施形態によれば、この層が事前硬化されると、カバー1103に統合され得るアプリケータ1105を介して、少量の液体ハードコートラッカーをレンズ上に注ぐことができる。ラッカーは、回転機1101の追加の回転サイクルによって回転して落とすことができ、樹脂排水装置1100に含まれ得るヒーター(図示せず)によってさらに光硬化または熱硬化させることができる均一な層を残す。
【0073】
[2次硬化装置]
特定のレンズに対する樹脂の配合と特性、および関連するプロセスパラメータに応じて、2次硬化動作が実行されてもよい。ここで図12を参照すると、2次硬化装置1200の一実施形態が示されている。2次硬化装置1200は、図11の回転式樹脂排出装置1100において残留液体樹脂が排出された後に使用されてもよい。一部の実施形態において、樹脂排出装置1100は、UV源および/または熱源を内蔵していないため、樹脂排出装置1100を用いた動作を実施した後に形成されたレンズの上の残留液体樹脂の膜は、別の装置を用いて硬化させる必要がある。特に、樹脂排出装置1100は、無酸素雰囲気を提供するようなベントシステムを欠いている場合がある。この場合、レンズの上に残された薄い層は、数ミクロンの厚さであり、大気から酸素が連続的に拡散されるため、硬化させることができない。この場合、2次硬化装置という追加の装置が必要になる場合がある。
【0074】
図12を参照すると、2次硬化装置1200は、基材1217およびレンズ1215が、UV放射に対して透明な密閉蓋1201を伴って入れられるチャンバ1212を含む。入出力パイプ1202Aおよび1203Aは、チャンバ1212内の適切な雰囲気(すなわち、ガス状混合物)の維持および制御を可能にするために、制御バルブ1202Bおよび1203Bと共にチャンバ1212の壁を通して含まれる。樹脂によっては、レンズ1215上での気泡形成を避けるために、高圧で中性窒素雰囲気を使用してもよい。樹脂が適切に脱ガスされていれば、低圧の窒素または真空を使用して、樹脂から酸素を追い出すことができる。チャンバ1212内の雰囲気およびレンズ1215が酸素から解放された後、硬化放射線1205の源1204(例えば、UV光源)を活性化して、レンズ1215上の残りの層を硬化する。任意選択で、ヒーター1216が、チャンバ1212の底部に含まれ、一体化されてもよい。ヒーター1216は、ポリマーマトリックス内の非反応モノマーの移動度を改善し、変換度c(上記式5参照)を増加させるために使用されてもよい。
【0075】
からレンズ1215上の液体樹脂の薄層に到達する放射照度1205を均一化するために、蓋1201に拡散器1206を組み込んでもよい。
【0076】
[出力製品:レンズ]
本明細書に記載のシステムおよび方法の出力製品は、レンズ、すなわち基材/形成されたレンズ複合体である。場合によっては、形成されたレンズは基材から切り離され、形成されたレンズは最終的なレンズとなる。他の場合では、形成されたレンズは基材から分離されず、2つの構成要素が一緒になってアイウェア用レンズを形成するようになる。この場合、アイウェア用レンズは基材から受け継いだ光学特性をもつ可能性がある。例えば、十分な量の硬化放射線が基材を通過して形成レンズを重合させることができる限り、基材は偏光、着色、フォトクロミックにすることができる。また、基材は、その凸面上に反射防止コーティングまたはハードコーティングを組み込むことができる。さらに、基材は、電力を供給することができる。基材と形成されたレンズを組み合わせることで、重合樹脂の光学特性に限定されない眼鏡用レンズの作製が可能となり、大きな利点がある。
【0077】
別の実施形態において、形成されたレンズは、基材から切り離される。その結果、重合樹脂のみで構成された形成されたレンズが得られる。この実施形態の利点は、基材を再利用できることである。
【0078】
[方法]
ここで図13を参照すると、上述した装置および方法を用いて眼鏡用レンズを作製するために使用される方法1300が示されている。ブロック1301を参照すると、入力ジョブが受信される。入力ジョブは、フリーフォーム表面の幾何学形状、予想または好ましい厚さ、固定表面の幾何学形状、予想または好ましい屈折率、レンズ直径または輪郭形状、ユーザパラメータ、ユーザライフスタイルのパラメータなど、レンズの製造に必要な情報を含む。入力ジョブは、列挙された情報の一部または全部を含んでもよい。入力ジョブで使用されるように、ユーザパラメータは、鼻孔距離、フレームパントスコーピック、ラップ角度、フレーム頂点距離などのフレーム特性、視野、読書距離、作業距離、年齢、健康、およびその他のパラメータを含む。入力ジョブで使用されるように、ユーザライフスタイルは、屋外、屋内、水泳やランニングなどの特定のスポーツを含むスポーツ、運転、読書、デスクワーク、および/または例えばシェフ、教師、弁護士、バス運転手などのキャリアを含む、ユーザの主要活動または活動の指定であってもよい。
【0079】
入力ジョブを受信すると、レンズ作製指示が決定される。レンズ作製指示(または要件)は、UV光および樹脂組成物に対する入力パターンを含む。照射パターンまたは入力パターンは、所定の曝露時間に対する重合フロントがフリーフォームのレンズ表面の所望の形状に一致するように(ブロック1302に示すように)計算される。この入力パターンの計算は、拡散器からの複数の点によって照射される樹脂内のあらゆる点に対する最適化プロセスからなる。
【0080】
具体的には、入力ジョブで指定されたレンズ面を起点に計算を開始する。時間「t」後の重合フロントが、以下の評価を含めて対物面に一致するように、光の入力パターンが計算される。
(a)拡散器は、光源からの指向性光を受け、拡散器の各点は、そのBTDF関数に従って各方向に放出する。
(b)樹脂の各点は、拡散器内の複数の光源位置から光を受ける。
(c)樹脂が受けた光は、式1で表される光化学反応を開始させる。
(d)光化学反応により、樹脂の各点で式5に従って変換度が変化する。
(e)樹脂内で変換度cが臨界変換値に等しくなる点として重合フロントが定義される。
【0081】
また、計算(1302)中に、作製指示が照射パターンと樹脂組成を含むように、樹脂組成が決定される。樹脂組成は、樹脂の組成を定義する。また、計算(1302)は、必要な直径を有する形成されたレンズを作製するために必要とされる液体樹脂の量を決定する。樹脂の組成は、入力ジョブの情報に応じて、特定の量の光重合開始剤と重合禁止剤(任意選択)を含む。例えば、より厚いレンズは、光重合開始剤の量を少なくするか、重合禁止剤の量を多くすることで得られる光吸収を少なくする必要がある場合がある。そのため、作製指示には、照射パターンと樹脂組成の両方を決定することが含まれる。次いで、図6に関して上述した手順に従い(ブロック1303に示すように)、樹脂を調整および保存する。樹脂の組成は、光重合開始剤および/または重合禁止剤の濃度を変更することにより、作製指示の要件を満たすように調整することができる。
【0082】
次いで、(ブロック1305に示すように)重合が行われる。重合は、重合チャンバに新しい清浄な基材を置くことから始まり、次いで、(ブロック1304に従って)重合チャンバに樹脂を注ぐ。作製指示の照射パターンに従って、入力ジョブで指定されたレンズ表面を実現するために、樹脂内に正しい光子密度分布を提供する入力パターンで拡散器を放射することで、重合が継続する。重合中(1305)に、計測装置からの情報は、(ブロック1309に示すように)入力パターンを調整および/または修正するために使用されてもよい。
【0083】
重合チャンバ内で形成レンズが作製されると、(ブロック1306に示すように)重合チャンバから樹脂が排出され、ゲル層で覆われた基材と形成レンズからなる物体が得られる。
【0084】
(ブロック1307に示すように)2次硬化中に、ゲル層は重合される。形成されたレンズは、その後、基材から分離されてもよい。その結果、(ブロック1308に示すように)アイウェア用レンズが得られる。一部の実施形態において、形成されたレンズが基材から分離されない場合、出力製品は、基材と形成されたレンズの複合体である。
【0085】
取り外した後、着用されるフレームにレンズを設置する前に、形成されたレンズを切り出してもよい。反射防止コーティングまたはハードコーティングを施すなど、形成されたレンズに他の処置を施してもよい。
【0086】
[おわりに]
本明細書において、示された実施形態および実施例は、例示として考慮されるべきであり、開示されたか特許請求の範囲に記載の装置および手順に対する限定を行うものではない。本明細書に記載の実施例の多くは、方法行為、装置、構成要素、またはシステム要素の特定の組み合わせを含むが、これらは、同じ目的を達成するために他の方法で組み合わされてもよいことに留意されたい。方法、プロセス、およびフローチャートに関して、追加の行為およびより少ない行為が行われてもよく、図示および説明されたような行動は、本明細書に記載の方法を達成するために組み合わされてもよく、さらに改良されてもよい。一実施形態について説明した行動、構成要素、装置、要素、および特徴は、他の実施形態における同様の役割から除外されることを意図していない。
【0087】
本明細書で使用される「複数」は、2つ以上を意味する。本明細書で使用される要素の「セット」は、そのような要素を1つまたは複数を含んでもよい。本明細書または特許請求の範囲で使用される「備える」、「含む」、「もつ」、「有する」、「含む」、および「関する」などの用語は、オープンエンドであり、すなわち、「含む」を意味するがそれに限定されないことに留意されたい。「からなる」および「から本質的になる」という表現のみが、特許請求の範囲に対してクローズエンドまたはセミクローズエンドである。特許請求の範囲における「第1」、「第2」および「第3」などの用語は、特許請求の範囲に記載の要素を修飾するために使用され、それ自体が優先順位、先行順位、または方法における時間的順序を意味するものではなく、単に。特定の名称の構成要素と同じ名称を有する構成要素を区別するために付けられたラベルとして使用される。本明細書で使用される「および/または」は、列挙された要素が代替案であるが、それらの組み合わせを含んでもよいことを意味する。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】