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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】肺治療組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/17 20060101AFI20231025BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20231025BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 11/08 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20231025BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20231025BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 38/03 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20231025BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20231025BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20231025BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20231025BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20231025BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
A61K38/17
A61K45/00
A61K45/06
A61K47/64
A61P11/00
A61P11/06
A61P31/14
A61P3/00
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61P33/00
A61P29/00
A61P37/08
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P39/06
A61P11/08
A61K48/00
A61K31/7088
A61P43/00 111
A61K39/395 P
A61K35/76
A61K47/24
A61K9/10
A61K9/72
A61K47/12
A61K47/04
A61K47/22
A61K47/18
A61K49/00
A61K38/43
A61K38/22
A61K38/03
A61K35/17
A61K35/28
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/36
A61K9/19
A61K9/14
A61K9/107
A61K38/16
C12N15/12 ZNA
C07K14/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548541
(86)(22)【出願日】2021-10-17
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 US2021055333
(87)【国際公開番号】W WO2022082082
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】63/092,625
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523143693
【氏名又は名称】バイオスーペリア テクノロジー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ゴールディン,エフド
(72)【発明者】
【氏名】レーマン,シャーウッド ラス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076AA22
4C076AA30
4C076AA93
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB25
4C076BB26
4C076BB27
4C076CC03
4C076CC04
4C076CC12
4C076CC15
4C076CC21
4C076CC27
4C076DD22Z
4C076DD38
4C076DD41Z
4C076DD42Z
4C076DD43Z
4C076DD50Z
4C076DD51Z
4C076DD60Z
4C076DD63
4C076DD67
4C076EE30
4C076EE38
4C076EE59
4C076FF63
4C076GG05
4C076GG06
4C076GG08
4C076GG09
4C084AA02
4C084AA13
4C084AA19
4C084AA23
4C084BA01
4C084BA03
4C084BA08
4C084BA20
4C084BA44
4C084CA18
4C084DB01
4C084DC01
4C084DC50
4C084MA22
4C084MA23
4C084MA43
4C084MA44
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA66
4C084NA03
4C084NA05
4C084ZA59
4C084ZA61
4C084ZB11
4C084ZB13
4C084ZB21
4C084ZB26
4C084ZB32
4C084ZB33
4C084ZB35
4C084ZC21
4C084ZC43
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC23
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4C085GG10
4C085HH01
4C085JJ03
4C085LL09
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA43
4C086MA44
4C086MA56
4C086MA59
4C086MA66
4C086NA03
4C086NA05
4C086ZA59
4C086ZA61
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZB32
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC21
4C086ZC43
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB44
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA02
4C087MA22
4C087MA23
4C087MA43
4C087MA44
4C087MA56
4C087MA59
4C087MA66
4C087NA03
4C087NA05
4C087ZA59
4C087ZA61
4C087ZB11
4C087ZB13
4C087ZB21
4C087ZB26
4C087ZB32
4C087ZB33
4C087ZB35
4C087ZC21
4C087ZC43
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA18
4H045BA72
4H045CA40
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
【課題】高温曝露に対する耐性があり、懸濁状態で維持され、動物病原体汚染物質の可能性がない、及び一致した免疫耐性組成物を含まない、肺サーファクタント組成物のアンメットニーズが依然としてある。
【解決手段】未熟児、小児及び成人における呼吸器疾患の治療のための肺サーファクタント治療組成物中の熱安定性タンパク質-リン脂質濃縮物が記載されている。濃縮物は、肺及び他の組織への向上した運搬及び分散性を有して、局所送達に適しており、その結果、治療の有効性及び効率が高まり得る。
【選択図】図9A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.合成SP-B、そのSP-B類似体、SP-B断片及びSP-Bミミックのうちの少なくとも1つ、
b.少なくとも1種類のリン脂質、
c.任意選択的に、少なくとも1種類の緩衝剤、
d.任意選択的に、少なくとも1種類の賦形剤、
e.任意選択的に、少なくとも1種類の生理活性剤、及び
f.任意選択的に、肺サーファクタント組成物を非晶質粉末へと乾燥させること、
を含む、肺サーファクタント組成物。
【請求項2】
前記肺サーファクタントが、SP-C(配列番号5,SP-C類似体(配列番号6、7、8及び14))、そのSP-C断片及びSP-Cミミック、並びにそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、アミノ酸配列も含む、請求項1に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項3】
肺サーファクタント複合体が、第1生理活性剤の少なくとも1つと、任意選択的に、第2生理活性剤の1つと組み合わせられる、請求項1に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項4】
前記第1生理活性剤が、局所接着キナーゼ(FAK)及びFAK生物学的活性を有する化合物、FAK、アンギオテンシン-1、アンギオテンシン-1アゴニスト、アンギオテンシン-2、アンギオテンシン-2アンタゴニストをコードする遺伝子で構成される核酸ベクター、p38マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼ阻害剤、及びMASP-2に対する抗体からなる群から選択される、請求項3に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項5】
前記第2生理活性剤が、抗炎症剤、抗アレルギー剤、抗菌薬、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗寄生虫剤、抗粘膜治療薬、抗癌治療薬、β2アゴニスト、酸化防止剤、及び抗線維化剤2からなる群から選択される、請求項3に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項6】
SP-Cが、前記第1及び/又は前記第2生理活性剤(1種又は複数種)のうちの少なくとも1つに直接結合される、請求項3に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種類のリン脂質が、天然及び合成ホスホグリセロ脂質、スフィンゴ脂質及びジガラクトシルグリセロ脂質からなる群から選択される、請求項1に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項8】
前記前記少なくとも1種類のリン脂質が、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(DPPG)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、ホスファチジルコリン(PC)、リゾホスファチジルコリン(LPC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)、ホスファチジルグリセロール(PG)、リゾホスファチジルグリセロール(LPG)、ホスファチジルイノシトール(PI)、リゾホスファチジルイノシトール(LPI)、ホスファチジルセリン(PS)、リゾホスファチジルセリン(LPS)、コレステロール(Chol1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(POPE)、1-パルミトイル-2-オレオイルsn-グリセロホスホコリン(POPS)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、パルミトレイン酸、オレイン酸、リシノール、バクセン酸、リノール酸、-リノレン酸、-リノレン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エルカ酸、スフィンゴミエリン(SM)、スフィンゴシン、セラミド、セレブロシド、ガングリオシド、アミンを有するSM、第4級アミンを有するSM、ホスホコリンを組み込むSM、ホスホエタノールアミンを含むSM、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ベヘノイルホスファチジル-コリン、アラキドノイルホスファチジルコリン(ADPC)、[(+)-トリメチル(3-ホスホノプロピル)アンモニウム,モノ(2-ヘキサデク-9-エニルオキシ-3-ヘキサデクイルオキシプロピル)エステル](DEPN-8)、ジエーテルホスホノ-ホスファチジルグリセロール(PG-1)、並びにそれらの組み合わせ及び変形形態からなる群から選択される、請求項1に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つのリン脂質が、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン、オレイン酸、リシノール、バクセン酸、リノール酸、-リノレン酸、-リノレン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エルカ酸、母乳、魚油、及び藻油、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項10】
前記緩衝剤が、塩及びその共役酸で構成され、前記共役酸が、酢酸、リン酸、クエン酸、ホウ酸、ヒスチジン、乳酸、トロメタミン、グルコン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、及びα-ケトグルタル酸からなる群から選択される、請求項1に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項11】
前記生理活性剤が、抗炎症治療薬、抗感染薬、生物製剤、気管支拡張薬、抗ヒスタミン薬、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、ロイコトリエンアンタゴニスト、PLA2阻害剤、PAFアンタゴニスト、鎮痛薬、ロイコトリエン阻害剤又はアンタゴニスト、鬱血除去剤及び鎮咳去痰薬物質、抗コリン作用薬、-遮断薬、アドレナリン作用薬、-アドレナリン受容体アゴニスト、麻酔薬、抗結核薬、心血管作動薬、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1種又は複数種の抗炎症剤を含む、請求項5に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項12】
前記生理活性剤が、造影剤、酵素、タンパク質ホルモン、ペプチド、ステロイド、遺伝物質、核酸ベクター、アンチセンス剤、核酸アプタマー、間葉幹細胞、CAR-T細胞、生物製剤及びそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数を含む、請求項1に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項13】
前記抗炎症剤が、N末端にてSP-Cに融合される、請求項11に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項14】
前記抗炎症剤が、C末端にてSP-Cに融合される、請求項11に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項15】
前記賦形剤が、ポリオール(1種又は複数種)、糖(1種又は複数種)及びアミノ酸(1種又は複数種)のうちの1つ又は複数からなる群から選択される、請求項1に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項16】
前記ポリオールが、エリスリトール、イヌリン、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ミオイノシトール、ソルビトール、キシリトール及びそれらの水和物のうちの1つ又は複数からなる群から選択される、請求項15に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項17】
前記糖が、デキストラン、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ヒドロキシエチルデンプン、イヌリン、マルトース、ラフィノース、メレチトース、スタキオース、ショ糖、トレハロース、デンプン、及びそれらの水和物のうちの1つ又は複数からなる群から選択される、請求項15に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項18】
前記アミノ酸が、フェニルアラニン、シスチン、グリシン、アルギニン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、及びロイシン、プロリン、メチオニン、トレオニン、トリプトファン、バリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン、チロシン、セリン、アラニン、トリロイシン、オルニチン及びそれらの塩のうちの1つ又は複数からなる群から選択される、請求項15に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項19】
噴霧乾燥、超臨界流体凍結、気泡乾燥、及び凍結乾燥のうちの少なくとも1つによって、前記肺サーファクタントを非晶質粉末へと乾燥させる、請求項1に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項20】
前記乾燥肺サーファクタント組成物が、少なくとも20℃、30℃、40℃から180℃、及び50℃から:130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、及び180℃のガラス転移温度(Tg)を有する懸濁液又はエマルジョンを含み得る、請求項1に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項21】
前記乾燥肺サーファクタント組成物が、少なくとも20℃、30℃、又は40℃から100℃のガラス転移温度(Tg)を有する懸濁液又はエマルジョンを含み得る、請求項1に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項22】
前記乾燥肺サーファクタントの非晶質粉末が、少なくとも50℃から180℃、50℃から95℃、85℃から140℃、125℃から170℃、155℃から180℃、及び135℃から180℃のガラス転移温度(Tg)を有する、請求項1に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項23】
前記非晶質粉末が、少なくとも40℃から180℃、及び40℃から100℃、90℃から150℃、及び120℃から180℃の温度で安定性を維持する、請求項20~22のいずれか一項に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項24】
前記SP-Bが、
a.FPIPLPYCWLCRALIKRIQAMIPKGALAVAVAQVCRVVPLVAGGICQCLAERYSVILLDTLLGRMLPQLVCRLVLRCSM(配列番号1)、又は配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
b.FPIPLPYCWLCRALIKRIQANleIPKGALAVAVAQVCRVVPLVAGG-ICQSLAERYSVILLDTLLGRNleLPQLVCRLVLRCSNle(配列番号2)、又は配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
c.FPIPLPYCWLCRTLIKRIQAVIPKGALAVAVSQVCHVVPLVAGGICQSLAERYSVILLDTLLGRVLPQLVCGLVLRCSS(配列番号3)、又は配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
d.CWLCRALIKRIQAMIPKGGRMLPQLVCRLVLRCS(配列番号4)、及び配列番号4と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
e.CWLCRALIKRIQALIPKGGRLLPQLVCRLVLRCS(配列番号12)、及び配列番号12と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、を含むアミノ酸配列、並びにそれらの前記SP-Bアミノ酸配列のホモログ、断片及びミミックから選択される、請求項1に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項25】
前記SP-Bミミックが、表1に記載のアミノ酸置換から選択される1つ又は複数のアミノ酸置換を含む、請求項24に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項26】
前記肺サーファクタントタンパク質が、1つ又は複数の配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、及び配列番号12から選択されるSP-Bの断片である、請求項24に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項27】
前記SP-Cが、
a.FGIPCCPVHLKRLLIVVVVVVLIVVVIVGALLMGL(配列番号5)及び配列番号5と少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列、
b.IPSSPVHLKRLKLLLLLLLLILLLILGALLMGL(配列番号6)及び配列番号6と少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列、
c.IPSSPVHLKRLKLLLLLLLLILLLILGALLLGL(配列番号7)及び配列番号7と少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列、
d.LRIPCCPVNLKRLLVVVVVVVLVVVVIVGALLMGL(配列番号8)及び配列番号8と少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列、並びに
e.LLIPCCPVNIKRLLIVVVVVVLVVVVIVGALLMGL(配列番号13)及び配列番号13と少なくとも90%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、アミノ酸配列、並びにそれらの前記SP-Cアミノ酸配列の類似体、断片及びミミックから選択される、請求項2に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項28】
前記抗炎症剤が、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、フルニソリド、ブデソニド、トリペダン、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、シクレソニド、コルチゾン、フルチカゾン、トリアムシノロン、アドレナリン、フェノテロール、フォルモテロール、イソプレナリン、メタプロテレノール、モメタゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、及びトリアムシノロンのうちの1つ又は複数、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項5に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項29】
前記抗炎症剤が、イブプロフェン、アセトアミノフェン、ジクロフェナク、セレコキシブ、ブチキソコルト、ジフルニサル、インドメタシン、エトドラク、ケトプロフェン、ケトロラク、ナブメトン、オキサプロジン、ピロキシカム、サルサレート、スリンダク、アスピリン、及びトルメチンのうちの1つ又は複数、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される治療薬である、請求項5に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項30】
前記抗炎症剤が、アルブテロール(別名サルブタモール)、ビトルテロール、フェノテロール、イソプロテレノール、レボサルブタモール、オルシプレナリン、ピルブテロール、プロカテロール、リトドリン、サルブタモール、テルブタリン、アルフォルモテロール、バンブテロール、クレンブテロール、フォルモテロール、サルメテロール、アベジテロール、カルモテロール、インダカテロール、オロダテロール、ビランテロール、イソクスプリン、マブテロール、及びジルパテロールのうちの1つ又は複数、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される-アドレナリン受容体アゴニスト(気管支拡張薬)である、請求項5に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項31】
前記抗感染治療薬が、抗生物質、抗菌薬、抗真菌薬、抗ウイルス剤、抗原虫薬、及びペプチドのうちの1つ又は複数、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項5に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項32】
前記ペプチド抗感染治療薬が、CATH-1、CATH-2、LL-37及びCRAMPのうちの1つ又は複数、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項28に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項33】
a.少なくとも1つの合成肺サーファクタントタンパク質、並びにその類似体、断片及びミミック、
b.少なくとも1つのリン脂質、
c.任意選択的に、水及び緩衝剤のうちの少なくとも1つ、
d.任意選択的に、少なくとも1つの賦形剤、
e.任意選択的に、少なくとも1つの生理活性剤、
を合わせること;
f.混合して、エマルジョン又は懸濁液のうちの少なくとも1つを形成することであって、前記少なくとも1つの生理活性剤が、混合前又は後に添加されること;
g.任意選択的に、前記肺サーファクタント組成物を非晶質粉末へと乾燥させること;
を含む、請求項1に記載の肺サーファクタント組成物を製造する方法。
【請求項34】
前記の得られた非晶質粉末が投与のために再構成され得る、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記非晶質粉末がより高い濃度にて、且つより小さな送達体積で投与のために再構成され、治療のより高い有効性及び効率が達成され得る、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記より高い濃度の非晶質粉末が、1.25ml/kg未満の体積にて送達される、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記非晶質粉末が、水、蒸留水、逆浸透(RO)水、等張性生理食塩水、緩衝液、希釈有機溶媒及びそれらの組み合わせから選択される滅菌液体中で再構成される、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
呼吸器疾患に罹患している、治療を必要とする患者を治療する方法であって、請求項1~32のいずれか一項に記載の組成物を、それを必要とする患者に、40.0mg/kgを超え、500.0mg/kgまでの用量で投与することを含む、方法。
【請求項39】
前記治療を必要とする患者が、未熟児、乳児、小児、及び成人を含む哺乳動物である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記呼吸器疾患が、肺サーファクタントの欠乏及び/又は機能障害の結果である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記哺乳動物が、乳児/新生児の呼吸窮迫症候群(IRDS/NRDS)、成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)、気管支肺異形成症(BPD)、肺損傷、晩期発症型敗血症を引き起こすウイルス及び細菌性感染から選択される群から選択される呼吸器疾患に罹患している、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記乳児及び成人型呼吸窮迫症候群が、急性肺障害(ALI)、人工呼吸器誘発性肺損傷(VILI)、及び全身性炎症反応症候群(SIRS)を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ARDSが、ショック、細菌、ウイルス及び院内肺炎、並びに毒性ガス、蒸気、煙及び粒子の吸入を含む1つ又は複数の原因から起こる、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記呼吸器疾患が、喘息、嚢胞性線維症(CF)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、COVID-19、及びリソソーム蓄積症を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記肺損傷が、機械的換気、気管支肺異形成症、晩期発症型敗血症、並びに酸素の投与、吸引、毒性ガス、蒸気、煙及び粒子の吸入、並びに挿管からなる群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記投与が、吸気、咽頭吸引、気管内(intratracheal)点滴注入、気管内(endotracheal)点滴注入、噴霧療法及び肺送達デバイスによって行われる、請求項38に記載の方法。
【請求項47】
前記組成物が、薬剤として許容される担体を含む水性懸濁液の状態で投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項48】
前記組成物が、薬剤として許容される担体を含む希釈有機懸濁液の状態で投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項49】
前記生理活性剤が、N末端にてSP-Cに融合された抗感染剤である、請求項2に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項50】
前記生理活性剤が、C末端にてSP-Cに融合された抗感染剤である、請求項2に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項51】
前記肺サーファクタントタンパク質が、1つ又は複数の配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、及び配列番号13から選択される、SP-Cの断片及び配列同一性90~99%を有するSP-C断片類似体、及びそのミミックである、請求項27に記載の肺サーファクタント組成物。
【請求項52】
前記投与が、静脈内、腹腔内、筋肉内、又は皮下注入投与である、請求項38に記載の方法。
【請求項53】
前記投与が、中耳内、蝸牛内、鼻腔内及び全身系中耳内(systemic intratympanic)、肺治療組成物である、請求項38に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[01] 本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2020年10月16日出願の米国仮特許出願第63/092,625号の優先権を主張する。
【0002】
分野
[02] 本発明の教示は、肺サーファクタント組成物、呼吸器疾患、肺の損傷及び感染症の治療において組成物を使用する方法、肺サーファクタント治療組成物(LSC)を製造する方法、並びに、LSC治療薬の経済的治療及び効率的輸送の両方のためのキットに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
[03] 呼吸器疾患は、未熟児と成人の両方に発症する。NICUで一般にみられる、未熟児において、乳児は、当初は肺硝子膜症として知られた、新生児呼吸窮迫症候群(NRDS)としても知られる乳児呼吸窮迫症候群(IRDS)と診断される。約35週妊娠期間(GA)まで独立的呼吸を補助する十分なレベルの肺サーファクタントを、肺が構造的に生成することができないが故の肺の発達の未熟さの結果である。酸素補給を有する未熟児の治療から生じる損傷、人工呼吸器誘発性肺損傷(VILI)によって、NRDSが生じ得て、炎症が引き起こされ、その結果、気管支肺異形成症(BPD)及び細菌性感染が起こり、晩期発症型敗血症が引き起こされる。1990年代には、動物由来肺サーファクタント生成物の使用及びあまり積極的ではない酸素補給によって、BPDの根本原因が、人工呼吸器関連肺傷害から、酸素に対する曝露からの未熟な肺組織の炎症へとシフトした。
【0004】
[04] 成人においては、成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)は、肺組織の炎症及びその後の肺組織の劣化が原因で最もよく起こる。これらの組織は透過性となり、肺における血漿の増加が促進される。血漿は、肺サーファクタントの生物学的作用を阻害する。COPD及び気腫など、その他の疾患は、慢性炎症が原因である可能性がある。成人型呼吸窮迫症候群は、ショック、細菌、ウイルス及び院内肺炎、及び毒性ガス、蒸気、煙及び粒子の吸入、並びに機械的換気、酸素の投与、吸引、及び挿管を含む、肺組織への物理的障害からの、急性肺損傷(ALI)、人工呼吸器誘発性肺損傷(VILI)、及び全身性炎症反応症候群(SIRS)の結果であり得る。
【0005】
[05] 肺サーファクタントは、血液細胞の循環によって肺から酸素が運ばれ、呼気に二酸化炭素が返される、肺の最も深い陥凹内の肺胞嚢内部の気体/液体界面にて肺の吸気及び呼気を促進する、タンパク質とリン脂質との混合物である。親水性領域と疎水性領域の両方が、サーファクタントのタンパク質及び脂質内に見出される。ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、肺サーファクタントの主要なリン脂質成分は、水性ベースの肺胞液中の親水性ヘッド基と、空気に向いている疎水性テールを位置付けることによって表面張力が低減され、肺胞の空気-水界面にて酸素を吸着することによってガス交換が行われる。
【0006】
[06] 空気呼吸する哺乳動物において同定された4種のサーファクタントタンパク質、サーファクタントタンパク質A(SP-A、SFTPA1、SFTP1)が存在し、サーファクタントタンパク質D(SP-D、SFTPD、SFTP4)は水溶性であり、及びコラーゲン様ドメインを有する。SP-AとSP-Dのどちらも、先天免疫システムのコレクチンの一部である。
【0007】
[07] サーファクタントタンパク質B(SP-B、SFTP3、SFTB3)は、肺の膨張及び収縮に必要な肺サーファクタントである。それは脂質に関連し、肺胞膜組織内、及び外への脂質分子の輸送を補助する。サーファクタントタンパク質Cは、肺サーファクタントにも見出され、SP-Bによって調節される、内在性膜タンパク質である。
【0008】
[08] 上述の呼吸器疾患に罹患している早期産児における哺乳類肺サーファクタント欠乏を置換する現在の治療薬は、ミンチされたウシ及びブタの肺並びに子ウシの肺洗浄から誘導される。合成肺サーファクタント、CHF5633は、SP-B及びSP-C類似体を含有し、代替の肺サーファクタント治療薬を提供し得る。しかしながら、動物由来の肺サーファクタントは、組成が変わりやすいこと、動物病原体による汚染のリスク、乏しい熱安定性、及び投与時に治療薬を十分な再懸濁をし損なう誤操作にわたる、いくつかの懸念を有する。
【0009】
[09] したがって、高温曝露に対する耐性があり、懸濁状態で維持され、動物病原体汚染物質の可能性がない、及び一致した免疫耐性組成物を含まない、肺サーファクタント組成物のアンメットニーズが依然としてある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
[010] したがって、本出願人は、開示された本発明及び請求項に記載の本発明の種々の実施形態において、局所送達に適した呼吸器疾患の治療用の熱安定性肺サーファクタントタンパク質-脂質組成物濃縮物を開発し、それは、これらのアンメットニーズに取り組む、肺への治療薬の分散及び運搬を助けるために使用され得る。
【0011】
参照による組み込み
[011] 本文書におけるすべて出版物、参考文献、特許、及び特許出願は、あたかも個々の出版物、参考文献、特許、又は特許出願がそれぞれ、具体的及び個々に参照により組み込まれることが示されるがごとく、同程度に参照により本明細書に組み込まれる。本文書と、参照によりそのように組み込まれるそれらの文書と間で相反する使用の事例においては、組み込まれた参考における使用は、この文書の使用の補足とみなすべきである;相容れない不一致については、本文書における使用がコントロールする。
【0012】
[012] ここで、様々な実施形態が参照され、その実施例は、添付の図面に図示される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図面の簡単な説明
図1】[013]親SP-Bの配列を示す。
図2】[014]合成モノマー-SP-Bの配列を示す。
図3】[015]モノマー-SP-Bの構造の配列を示す。
図4】[016]樹脂からの切断及び保護基の除去の前の、保護された合成モノマーSP-Bペプチドを示す。
図5】[017]断片2425ペプチドの切断反応を例示する。
図6】[018]図5に示すSP-B断片2425材料のHPLCプロファイルを示す。
図7】[019]断片212223の合成スキームを例示する。
図8】[020]図7に例示される精製断片212223のHPLC-UV-MS分析を示す。
図9】[021]ペプチド212223-2425を合成するための合成スキームを例示する。
図9A】[022]5つの断片のアセンブルを示す。
図9B】[022]断片を連結する化学反応、及びその結果得られるジスルフィド結合を例示する。
図10】[023]Cys保護SP-B断片2122232425-3のHPLCプロファイルである。
図11】[024]モノマーSP-B断片2122232425の3HPLCプロファイルである。
図12】[025]リン脂質の存在下でのモノマーSP-Bペプチドの動的表面張力を図で例示する。
図12A】[026]最小表面張力を例示する。
図12B】[026]代替方法として液滴が拘束され膨張された場合の最大表面張力を例示する。
図13】[027]本明細書に記載され、及び請求項に記載の様々な実施形態に開示される肺サーファクタントタンパク質のSP-B及びSP-Cアミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
種々の実施形態の詳細な説明
[028] 本発明の組成物及び方法を説明する前に、開示の発明は、記載される特定の組成物、方法、キット及び実験条件に限定されず、したがって、組成物、方法、キット及び条件は変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を単に説明する目的のためであり、制限することを意図するものではないことも理解されたい。
【0015】
[029] 本明細書においての開示は、固有の態様を繰り返すための種々の実施形態であり、開示された本発明は、向上した貯蔵、輸送、及び肺サーファクタント産生の欠乏及び/又は肺サーファクタント産生の機能不全を有する哺乳動物の経済的な治療を提供する。
【0016】
[030] 定義
[031] 別段の指定がない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で使用される、記載の用語は以下の意味を有する。以下の定義は、明細書及び特許請求の範囲の明確並びに一貫した理解を提供するように含まれる。修正形態及び変形形態が、本発明の開示内容の精神及び範囲内に包含されると理解されるように、本明細書に記載の方法及び材料と同様な又は同等な、いずれかの方法及び材料が、開示の本発明の実施又は試験に使用され得る。
【0017】
[032] 「一実施形態」、「実施形態」、「別の実施形態」等の本明細書における言及は、記載の実施形態が、特定の態様、特徴、構造、部位、又は特性を含み得ることを示すが、すべての実施形態が必ずしも、特定の態様、特徴、構造、部位、又は特性を含み得ない。さらに、かかるフレーズは、同じ実施形態を必ずしも言及しない。さらに、特定の態様、特徴、構造、部位、又は特性が実施形態と関連して記載されている場合、明確に述べられているかどうかに関わらず、他の実施形態と関連して、かかる態様、特徴、構造、部位、又は特性を実施する、又は結び付けることは、当業者の知識内にあると提示される。
【0018】
[033] 特許請求の範囲は、任意選択の要素を排除するように立案され得ることがさらに述べられる。したがって、この記載は、本明細書に記載のいずれかの要素、及び/又はクレーム要素の記載、又は「ネガティブな」制限の使用と関連して、「単に」、「のみ」、「以外」等の排他的な専門用語の使用に対して先行する基礎としての役割を果たすことが意図される。
【0019】
[034] 「及び/又は」という用語は、この用語がそれに付随する、項目(item)のいずれか1つ、項目のいずれかの組み合わせ、又は項目のすべてを意味する。その使用の文脈で読まれる場合に、「1つ又は複数の」及び「少なくとも1つの」というフレーズは、特に当業者によって容易に理解される。例えば、そのフレーズは、1,2,3、4、5、6、10,100、又は記載の下限値よりも約10、100、又は1000倍高い上限値を意味し得る。
【0020】
[035] 当業者によって理解されるように、特に書面の説明を提供する点からいずれか及びすべての目的のために、本明細書に記載のすべての範囲は、いずれかの、及びすべての可能性のある部分的範囲、並びにその部分的範囲の組み合わせ、並びにその範囲を構成する個々の値、特に整数値も包含する。記載の範囲(例えば、重量パーセンテージ又は炭素基)は、あたかも各数値及び部分的範囲が明示されているがごとく、その範囲内のそれぞれの特定の値、整数、少数、又は同一性を包含する。非制限的な例として、本明細書に記述される各範囲は、下三分の一、中三分の一、上三分の一に、並びにそれより大きな範囲内の入れ子状態の範囲等に容易に分けることができる。当業者によっても容易に理解されるように、「~まで」、「少なくとも」、「~を超える」、「~未満」、「~以上」等のすべての文言は記載の数を包含し、かかる用語は、続いて部分的範囲に分解することができる範囲を意味する。
【0021】
[036] 例えば、「約1%から約5%」又は「約0.1%から5%」の範囲は、約1%から約5%を含むだけでなく、個々の値(例えば、1%、2%、3%、及び4%)及び指定の範囲内の部分的範囲(例えば、0.1%から0.5%、1.1%から2.2%、3.3%から4.4%)を含むと解釈すべきである。本明細書で使用される「約」という用語は、値又は範囲のある程度の変動、例えば、ある範囲の指定の値又は指定の限界値の10%以内、5%以内、又は1%以内を可能にし得る。一部の実施形態において、例えば、「約50」パーセントとは、45から55パーセントの変動を有する。さらに別の実施例において、「約10.0重量%」は9.5重量%及び10.5重量%であり得る。
【0022】
[037] 当業者は、マーカッシュ群などにおいて一般的な手法でメンバーが互いにグループ化される場合に、本発明が、全体として記載の群全体のみではなく、群のそれぞれのメンバーを個々に、及び主要な群の可能性のあるすべての部分群も包含することも容易に認識されよう。さらに、すべての目的のために、本発明が、主要な群だけでなく、群のメンバーの1つ又は複数が存在しない主要群もまた包含する。本発明はさらに、記載の群のメンバーのいずれか1つ又は複数の明示的な除外を構想する。さらに、開示のカテゴリー又は実施形態のいずれかに条件が適用され得て、それによって、記載の要素、種、又は実施形態のいずれか1つ又は複数が、例えば明示的なネガティブな制限において使用するために、かかるカテゴリー又は実施形態から除外され得る。
【0023】
[038] 整数の範囲については、「約」という用語は、その範囲の各終端の記載の整数よりも大きい、及び/又は小さい1つ若しくは2つの整数を含み得る。本明細書において別段の指定がない限り、「約」という用語は、個々の成分、要素、組成、又は実施形態の機能性の点から等しい記載の範囲に近接する値、例えば、比、mg/kg、重量パーセンテージを含むことが意図される。約という用語は、このパラグラフで上述される記載の範囲の終点も修飾し得る。
【0024】
[039] この文章において、「1つ」、「1種」又は「その」は、別段に文脈に明確に示されていない限り、1つ又は複数を含ませるために使用される。したがって、例えば、「成分」の言及は、複数のかかる成分を含み、そのため、成分Xは複数の成分Zを含む。「又は」という用語は、別段の指定がない限り非排他的な「又は」を意味するために使用される。さらに、本明細書において用いられ、特に定義されていない言い回し又は専門用語は、単に説明の目的のためであり、制限するものではないことを理解されたい。セクションの表題のいずれかの使用は、文書の解釈を助けることが意図され、制限するものとして解釈すべきではない;セクションの表題に関連する情報は、その特定のセクション内又は外に存在し得る。
【0025】
[040] 本明細書に記載の方法又はプロセスにおいて、一時的又は操作配列が明確に記載されている場合を除いては、本発明の原理から逸脱することなく、いずれかの順序で工程が行われ得る。
【0026】
[041] さらに、指定の工程は、明確な特許請求の範囲の文言で、別々にそれらが行われると説明していない限り同時に行われ得る。例えば、Aを行う請求項に記載の工程及びBを行う請求項に記載の工程は、単一操作内で同時に行われ得て、その結果としてのプロセスは、請求項に記載のプロセスの文字通りの範囲内にある。
【0027】
[042] 本明細書で使用される、「実質的に」という用語は、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、又は少なくとも約99.999%若しくはそれ以上の場合のように、大部分、又はほとんどを意味する。
【0028】
[043] 本明細書で使用される、「非晶質粉末」という用語は、当業者に公知のように、湿潤材料、例えば液体、溶液、懸濁液、エマルジョン、リポソーム等を、噴霧乾燥、超臨界流体凍結、気泡乾燥、及び凍結乾燥を含むがこれらに限定されない、少なくとも1つの乾燥方法に供することによる、乾燥した、微粒子材料への変換を意味し得る。非晶質粉末は、いずれかの非結晶性固体マトリックスであり得る。固体マトリックスは、粉末、ケーク内の錠剤粉末、錠剤であり得て、及びカプセル内部に分散され得る。
【0029】
[044] 本明細書において使用される、「結合された」という用語は、例えば、別のタンパク質と連結された1つのタンパク質、別の分子及び/又はタンパク質、ペプチド、アミノ酸配列と連結され、例えば脂質二層を横切って共に移動する1つの分子を意味し得る。連結された分子、タンパク質等は、リンキングアミノ酸配列、分子、タンパク質等と互いに連結する共有結合、疎水性結合又は親水性相互作用を含むがこれらに限定されない相互化学結合を有し得る。
【0030】
[045] 明細書において使用される、「生理活性剤」という用語は、生物学的機能、活性又は特性を付与し得る、天然又は合成部位、物質、化学物質、治療薬等を意味し得る。例としては、抗炎症薬、チンキ剤、抽出物、抗感染薬、気管支拡張薬、抗ヒスタミン薬、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、ロイコトリエンアンタゴニスト、PLA2阻害剤、PAFアンタゴニスト及び喘息の予防薬、抗アレルギー薬、気管支拡張薬、肺サーファクタント、鎮痛薬、抗生物質、抗菌剤、抗真菌薬、抗ウイルス剤、抗原虫薬、ロイコトリエン阻害剤又はアンタゴニスト、抗ヒスタミン薬、鬱血除去剤及び鎮咳去痰薬物質、抗コリン作用薬、β-遮断薬、アドレナリン作動薬、β-アドレナリン受容体アゴニスト、麻酔薬、抗結核薬、造影剤、心血管作動薬、酵素、ステロイド、遺伝物質、核酸ベクター、アンチセンス剤、タンパク質、ペプチド及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
[046] 本明細書で使用される、「複合体」という用語は、例えば、別のタンパク質と結合され、及び例えば脂質二重層を横切って共に移動する1つのタンパク質を意味し得る。結合された分子、タンパク質等は、その分子、タンパク質等と互いに連結する共有結合、疎水性結合又は親水性相互作用を含むがこれらに限定されない相互化学結合を欠く。
【0032】
[047] 本明細書で使用される、「欠乏」という用語は、例えば、肺サーファクタント、肺サーファクタントタンパク質、脂質、リン脂質の不十分な産生を意味し得る。サーファクタントの欠乏は、呼吸窮迫症候群(RDS)、拘束性呼吸器疾患並びに肺発達が未熟な未熟児と関連し得る。
【0033】
[048] 本明細書で使用される、「エマルジョン」という用語は、通常、不混和性であり、一方がもう一方に分散される2種類以上の液体の混合物、多相、二相溶液を意味し得る。
【0034】
[049] 「融合された」及び「融合」という用語は区別なく使用され、本明細書において使用される場合には、非限定的な例において共有結合による、SP-CのN末端又はC末端のいずれかへの、抗炎症剤、抗感染剤を含むがこれらに限定されない生理活性剤の結合を意味し得る。
【0035】
[050] 「相同性パーセント」、「相同性%」、「同一性パーセント」又は「同一性%」というフレーズは、2つ以上のアミノ酸又は核酸配列の比較で見出される配列類似性のパーセンテージを意味する。同一性パーセントは、例えば、MEGALIGNプログラム(LASERGENEソフトウェアパッケージ、DNASTAR)を使用して、電子的に決定することができる。MEGALIGNプログラムは、異なる方法、例えばクラスタル法(Higgins,D.G.and P.M.Sharp(1988)Gene 73:237-244.)に従って2つ以上の配列間のアライメントを作成し得る。すべてのペア間の距離を調べることによって、クラスタルアルゴリズム群がクラスターへと配列決定する。クラスターは、ペアワイズアライメントされ、次いでグループでアライメントされる。2つのアミノ酸配列間、例えば、配列A及び配列Bの類似性パーセンテージは、配列A及び配列B間の残基一致の合計を、配列Aの長さ-配列Aにおけるギャップ残基数-配列Bにおけるギャップ残基数で割り、100倍することによって算出される。2つのアミノ酸配列間の低い相同性又は相同性のないギャップは、類似性パーセンテージの決定に含まれない。核酸配列間の同一性パーセントもまた、クラスタル法によって、又はJotunHeinMethod(例えば、Hein,J.(1990)Methods Enzymol.183:626-645参照)などの当技術分野で公知の他の方法によって計算することができる。配列間の同一性は、当技術分野で公知の他の方法によって、例えばハイブリダイゼーション条件を変えることによっても決定することができる。
【0036】
[051] 請求項に記載の肺サーファクタント組成物で使用される開示の核酸及びアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、及び99%の配列同一性を有する核酸及びアミノ酸配列もまた、本明細書において構想される。
【0037】
[052] 本明細書で使用される、「脂質」という用語は、当業者に公知のように、天然及び合成飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、脂肪酸糖、ワックス、ステロール、リン脂質、ホスホグリセロ脂質、スフィンゴ脂質及びジガラクトシルグリセロ脂質を意味し得る。
【0038】
[053] 本明細書で使用される、「リポソーム」という用語は、水中油型又は油中水型エマルジョンを意味し得る。脂肪酸とタンパク質の互いの複合体形成が、リポソームとも呼ばれ得る。
【0039】
[054] 「乳児」、「新生児の乳児」、「新生児」及び「新産児」という用語は、区別なく使用され、本明細書において使用される場合、出生後の最初の28日間の乳児を意味し得る。この用語は、未熟児、正期産児及び過熟児にも適用され得る。
【0040】
[055] 本明細書で使用される、「肺サーファクタント」という用語は、肺コンプライアンスを促進する、タンパク質と脂質の生体適合性混合物を意味し得る。そのタンパク質は、天然、組換え、ホモログ、類似体、ミミック、修飾及び合成タンパク質であり得る。脂質は、天然、ホモログ、類似体、ミミック、修飾及び合成脂質であり得る。
【0041】
[056] 本明細書で使用される、「肺サーファクタント複合体」という用語は、懸濁液及びエマルジョンのうち少なくとも1つを形成し得る、少なくとも1種類の肺サーファクタントタンパク質と、少なくとも1種類の脂質との混合物を意味し得る。
【0042】
[057] 本明細書で使用される、「サーファクタント組成物」「(LSC)」という用語は、賦形剤、水、緩衝液、及び生理活性剤のうちの少なくとも1つを任意選択的に含有し得る肺サーファクタント複合体を意味し得る。生理活性剤は、肺サーファクタント複合体の混合物に含まれ、懸濁液及びエマルジョンの少なくとも1つを形成し得て、或いは、その代わりとして、複合体の懸濁液又はエマルジョンに添加され得る。開示された本発明及び請求項に記載の本発明の様々な実施形態において、生理活性剤は、肺サーファクタントタンパク質と融合し、結合し、又は複合体を形成し得る。
【0043】
[058] 本明細書で使用される、「懸濁液」という用語は、水溶液、希釈有機溶液及び緩衝液などの液体に分散された、非晶質粉末を含むがこれに限定されない固体を意味し得る。懸濁液は、1種又は複数種の肺サーファクタントタンパク質と、1種又は複数種の脂質との、結果として生じる混合物も意味し得る。
【0044】
[059] 本明細書で使用される、「ガラス転移温度(T)」という用語は、温度上昇にさらされた場合に、乾燥した、硬い、「ガラス状」材料から、粘性又はゴム弾性状態への、非晶質粒子、規則的配列を欠いた(規則構造を有する結晶固体の逆の)材料内の転移を意味し得る。言い換えると、Tは、非晶質材料がより粘性の状態へと転移する温度を示す。かかる転移は、非晶質分子の構造における破壊を伴い得、したがって、分子の安定性及び拡散性(spreadability)が失われた結果、非晶質分子が、医薬品治療、治療的処置又は内科療法である場合に、有効性及び効率が低減し得る。ゴム状態において、分解までの時間は、固体内の反応性種の輸送のために、より速くなり得るだろう。
【0045】
[060] 本明細書で使用される、「未熟」という用語は、出生時で通常40週の妊娠期間に対して37週の妊娠期間に達する前に産まれたヒト乳児を意味し得る。
【0046】
[061] その実施例が添付の図面で説明される、様々な実施形態がここで参照される。
【0047】
[062] その実施例が添付の図面で説明される、開示の本発明の特定の特許請求の範囲がここでより詳細に参照される。本発明は、列挙される特許請求の範囲と組み合わせて説明されるが、これらの特許請求の範囲を制限することを意図しないことを理解されよう。これに対して、開示の本発明は、特許請求の範囲によって定義される開示の本発明の範囲内に含まれ得る、すべての代替形態、修正形態及び均等物を包含することが意図される。
【0048】
[063] 開示された本発明及び請求項に記載の本発明は、調製された懸濁液又はエマルジョンとして調製され、輸送され、投与され得る肺サーファクタント組成物(LSC)を提供する。LSCはさらに、当業者に公知の上記の乾燥法によって輸送前に非晶質粉末に加工され得る。得られる粉末は、LSCを安定に維持するのに十分であり得るが、以前に実証されていない。さらに、高ガラス転移温度(T)の非晶質粉末状固体を形成する、薬学的に許容される賦形剤の存在下にてサーファクタント混合物の乾燥によって、RDS及び他の呼吸器疾患に有用な治療が提供され得る。さらに、非晶質粉末を濃縮懸濁液へと再構成することができることによって、出願人の開示前に達成されていなかった、より高い濃度のLSCを送達すると同時に、より少ない体積で投与することが可能となる。例えばBiotech. Advances 36(2018)1185-1193,p,1186を参照のこと。噴霧療法と組み合わせた、開示のLSCの使用は、投与の新規な方法であろうことも注目される。さらに、非ステロイド若しくはステロイド系抗炎症薬、抗感染薬などの他の薬理学的活性剤の送達のためのビヒクルとしてのLSCの使用は、出願人のLSCの新規な使用であり得る。したがって、本明細書に開示される様々な新規なLSC実施形態は、出願人のLSC治療薬濃度が増加され得ることから、より高い効力を有する。
【0049】
[064] 開示された本発明及び請求項に記載の本発明の種々の実施形態において、呼吸器疾患の治療のための開示のLSC内の熱安定性のンパク質-脂質濃縮物が開示されている。熱安定性タンパク質-脂質濃縮物は、気管内(intratracheal)点滴注入、気管内(endotracheal)点滴注入、噴霧療法及び肺送達デバイスを含むがこれらに限定されないLSC治療薬の局所送達を提供し得る。さらに、熱安定性タンパク質-脂質濃縮物は、向上した有効な投与及び治療の有効性のために、肺胞嚢内側内の気体/液体界面にて肺の内部陥凹への、LSC及び生理活性治療薬の拡散及び輸送を促進し得る。
【0050】
[065] 本発明の教示は、溶液、エマルジョン中の個々のリポソーム、脂質-タンパク質複合体、並びに天然、組換え、相同性/類似性、断片、修飾若しくはミミック肺サーファクタントタンパク質(向上した構造を有する)及び/又はFAKタンパク質及び/又は場合によりドメイン(例えば、HIVトランス活性化因子輸送ドメイン,TAT)と融合されたV12Rac1タンパク質としての懸濁液を有する、開示のLSCであって、少なくとも1つのサーファクタントタンパク質、リン脂質及びそれらの組み合わせ、任意選択的に少なくとも1つの緩衝剤、任意選択的に少なくとも1つの賦形剤、及び任意選択的に少なくとも1つの生理活性剤と組み合わせて、細胞内への輸送を可能にするLSCを用いて実行され得る。
【0051】
[066] 代替方法として、肺上皮細胞に対する向性(tropism)を有する核酸ベクター内に含有されるこれらのタンパク質をコードする、相当する遺伝子は、肺への送達のためのLSCと混合され得る。肺サーファクタントタンパク質は、文字で示されるサーファクタントタンパク質(SP)として哺乳動物において同定される。SP-A、SP-B、SP-C及びSP-Dが哺乳類肺サーファクタントである。
【0052】
[067] SP-B
[068] SP-Bは、長さ79アミノ酸の肺サーファクタントの一成分であり、3つの鎖内ジスルフィド結合及び1つの鎖間ジスルフィドを含有し、ホモ二量体を形成する。この疎水性タンパク質は、肺胞膜と結合し、一部のコンフォメーションにおいて、膜内へ部分的に浸透すると思われる。リン脂質二重層と関連して、SP-Bは、肺胞膜内及び膜外へのリン脂質の輸送を助ける。ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)などの膜リン脂質と組み合わせて、動的表面張力によって検出されるサーファクタント液滴の圧縮及び膨張中に表面張力が低減されるのと同じように、肺胞表面での表面張力が、各呼吸サイクル中の圧縮及び膨張中に低減される。SP-Bはまた、脂質二重層ピースを切断し、ペーストすることによって、気体/液体界面の表面より下の脂質を構築して、管状ミエリンの3D構造を形成し得て、SP-Bは、II型肺細胞内部に見出される層状体に脂質を配列し得る。肺胞の内側をライニングする液体に分泌される層状体が、肺サーファクタントの産生に必要な管状ミエリンとなる。
【0053】
[069] 開示された本発明及び請求項に記載の発明の種々の実施形態の1つにおいて、SP-Bは、選択アミノ酸の指定の残基位置での置換によって修飾され得る。アミノ酸は、アミノ酸配列に沿って5’N末端から3’C末端へと番号付けされ、左末端の5’末端から右末端の3’末端へと読まれる。成熟SP-Bの最初の7つのアミノ酸は、SP-Bの膜挿入を促進する。SP-B、類似体及び断片の配列を図1に示す。
【0054】
[070] 完全長SP-Bタンパク質又はその断片(1つ又は複数)のいずれかである、開示のLSCの種々の実施形態に含まれ得る、多くのSP-B類似体、ホモログ及び断片が存在する。表1は、10個のアミノ酸残基及びSP-B溶解性を変化させ、SP-B pIを増加し、並びにメチオニン、トリプトファン、アスパラギン酸及びグルタミンでのSP-B分解の潜在性を取り除く、可能性のある置換を示す。
【0055】
【表1】
【0056】
[072] 表1に開示されるSP-B内のアミノ酸置換によって、図1に例証される多数のSP-B類似体が得られる。
【0057】
[073] SP-C
[074] SP-Cは、長さわずか35個のアミノ酸であり、SP-Bの機能を補助し、脂質構造内で見出される。成熟SP-Cは、SP-Cの翻訳後修飾において働くSP-Bなしで形成することができない。SP-Cのアミノ酸配列は、しばしばペプチド配列の3’末端で変化し得るが、Johansson,Jan.“Structure and properties of surfactant protein C”Biochim.Biophys.Acta(1998)1408:161-172で論述される、インバリアントとして通常みなされている。SP-C類似体の非制限的な例を図1に示す。
【0058】
[075] 開示された本発明及び請求項に記載の本発明の様々な実施形態において、SP-CはN及び/又はC末端のいずれかにて、抗炎症性ペプチド治療薬、抗感染性ペプチド治療薬の連結/融合で修飾され得、或いはARDSにおける内皮組織の修復を含むがこれに限定されない他の薬理学的作用を及ぼし得る。これらのSP-C修飾のいずれか一つは、炎症性病態組織修復、微生物及びウイルス感染の抑制及び先天免疫応答の動員に対する治療有効性を阻害し、及び/又は相殺する/付与するように機能し得る。
【0059】
[076] TAT-FAKp
[077] 単独のTAT-FAKpタンパク質、又は開示された本発明及び請求項に記載の本発明の様々な実施形態におけるエマルジョン、懸濁液又は脂質-タンパク質複合体中の個々のリポソーム内のSP-B及び/又はSP-Cと組み合わせたTAT-FAKpタンパク質は、急性肺障害(ALI)及びARDSの速効性の薬物特異的(pharmacospecific)療法を提供する方法が提案され得る。TAT-FAKpタンパク質は、局所接着キナーゼ(FAKp)の精製、リン酸化型、又はペプチド若しくはタンパク質が、TATと略記される輸送タンパク質での細胞内送達が意図される、別の分子と組み合わさる。受入番号:L05186;VERSION L05186.1は、ヒトFAKpmRNAの完全なコード領域(CDS)及びコードされたアミノ酸配列を有する。請求項に記載の本発明での使用に適した例示的なTATタンパク質は、Chariot(著作権)、ペネトラチン、TAT断片、シグナル配列ベースのペプチド、及びトランスポータンを含むがこれらに限定されず、図2に示される。
【0060】
[078] FAKpは、TAT、細胞透過性ペプチド(CPP)として投与され得る。NTA(ニトリロ三酢酸)に共有結合で融合されたTATは、銅カチオンを通じてFAKpと複合体を形成し、TAT→Cu2+←ヒスチジンタグ付き-FAKp複合体が形成される。TAT-FAKpタンパク質複合体において使用される組換えFAKpを作成するためのcDNAは、チロシン397にてリン酸化される完全長ヒトFAKをコードするヒスチジンタグ付きcDNAであるだろう。FAKpのタンパク質又はペプチド、或いはその生物活性断片、又はバリアントが、TATタンパク質に非共有結合的に結合し得る。ヒスチジンタグを有するFAKp、TATタンパク質は、Cu、Ni、Zn、及びCoから選択される金属カチオンへとキレート化され得る。金属イオンは、可逆的結合としてFAKp上のヒスチジンタグに非共有結合的に結合され得て、TAT-FAKp複合体が形成される。
【0061】
[079] 肺内皮内のTAT-FAKpの存在は、急性肺障害(ALI)から守る、バリア増強性タンパク質間相互作用を誘導し得る(米国特許第8、420,080号参照)。タンパク質間相互作用は、FAK、パキシリン、ビンキュリン及びα-アクチニン-1間の相互作用であり得て、タンパク質複合体(FPVA複合体)が形成される。FPVA複合体は、接着結合にてF-アクチンを増強し、その結果、カドヘリンのクラスター化及びバリア増強が起こる。TAT-FAKpを含有する内皮細胞のローディングは、培養されたヒト肺微小血管、肺動脈内皮細胞において、並びに肺内皮単層において見られるマウスの肺において生体外(in vitro)でトロンビン又はオキシダント誘発透過性亢進、並びにマウスにおけるALI誘発肺透過性亢進を阻止すると仮定される。個々の脂質-タンパク質複合体が、懸濁液、エマルジョン又は再構成された非晶質粉末中のLSCで凝集しないように、肺サーファクタント複合体は、ガラス転移(Tg)温度を向上させるために、緩衝剤及び賦形剤も含有し得る。
【0062】
[080] CHF5633
[081] CHF5633は、SP-B及びSP-C類似体を有する合成再構成サーファクタントタンパク質であり、IRDSの治療のための動物由来の治療製剤の有用な代替物と考えられる。それは、DPPC及びPOPG脂質、ナトリウム塩、並びに活性成分としての合成SP-C類似体(IPSSPVHLKRLKLLLLLLLLILLLILGALLLGL,配列番号7)及び合成SP-B類似体(CWLCRALIKRIQALIPKGGRLLPQLVCRLVLRCS,配列番号4)で構成される。CHF5633において、システインの対が単にシステインアミノ酸ではなく、それぞれが、チオールエステルを形成し得る脂肪酸側鎖(ペプチド主鎖の一部としての長鎖脂肪酸)を有するため、Cys-3及びCys-4残基は、上記のSP-C類似体においてSer-3、Ser-4によって置換されることが注目される。脂肪酸はそれぞれ、-OH基を失い、硫黄と組み合わさって、チオールエステルを形成する。代替方法として、脂肪酸の-ROH基での置換によって、チオールエステルは不安定であるため、チオールエーテル又はエーテルのいずれかが形成され得る。出願人は、SP-Cの安定な類似体を形成する、チオールエーテル又はエーテルの形成を示唆する文献を認識していない。更なる詳細は、Seehase,M.et al.“New Surfactant with SP-B and C Analogs Gives Survival Benefit after Inactivation in Preterm Lambs”(2012)PLOS One 7(10):e47631.doi:10.1371/journal.pone.0047631 及びSweet,DG,Turner MA,Stranak Z.et al.Arch Dis Child Fetal Neonatal Ed.(2017);102:F497-F503.(2017)“A first-in-human clinical study of a new SP-B and SP-C enriched synthetic surfactant(CHF5633)in preterm babies with respiratory distress syndrome”に記載されている。
【0063】
[082] 2つの形態、ミニCHF5633(MB):
CWLCRALIKR IQAMIPKGGR MLPQLVCRLV LRCS(配列番号4)
及びMBのN末端に共有結合されたSP-B残基1~7を有する、41個のアミノ酸ペプチド,スーパーミニCHF5633(S-MB):
FPIPLPYCWL CRALIKRIQA MIDATKRMLP QLVCRLVLRC S(配列番号9)(Notter RH,et al.“Activity and biophysical inhibition resistance of a noel synthetic lung surfactant containing Super-Mini B DATK peptide.”Peer J.4:31528(doi.org/10.7717/peerj.1528))がある。
【0064】
[083] 中でも、LSCのタンパク質-脂質複合体は、本明細書において総称して「脂質」と呼ばれる、脂肪酸、脂質及びリン脂質のうちの少なくとも1つ、場合によって、それらの組み合わせを有し得る。脂肪酸は、当技術分野で周知であり、考えられる脂肪酸としては、当業者には公知のように、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、オレイン酸、リシノール、バクセン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、母乳、及び藻油を含むがこれらに限定されない飽和脂肪酸が挙げられるがこれに限定されない。疎水性が高い長鎖脂肪酸は、可溶性が低いことが知られており、炭素間二重結合を有する脂肪酸は、溶解性を増加し、融解温度を低減し得て、不飽和脂肪酸は室温(約25℃)にて固体として存在する。
【0065】
[084] 脂質としては、当業者に公知のように、天然及び合成ホスホグリセロ脂質、スフィンゴ脂質及びジガラクトシルグリセロ脂質を含み得るがこれらに限定されない。さらに、開示された本発明及び請求項に記載の本発明の様々な実施形態において、脂質は、ホスファチジルコリン(PC)、リゾホスファチジルコリン(LPC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)、ホスファチジルグリセロール(PG)、リゾホスファチジルグリセロール(LPG)、ホスファチジルイノシトール(PI)、リゾホスファチジルイノシトール(LPI)、ホスファチジルセリン(PS)、リゾホスファチジルセリン(LPS)、コレステロール(Chol)、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(DPPG)、ジオレオイルホスファチジルコリン、(DOPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(POPE)、1-パルミトイル-2-オレオイルsn-グリセロホスホコリン(POPS)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、パルミトレイン酸、オレイン酸、リシノール、バクセン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エルカ酸、スフィンゴミエリン(SM)、スフィンゴシン、セラミド、セレブロシド、ガングリオシド、アミンを有するSM、第4級アミンを有するSM、ホスホコリンを組み込むSM、ホスホエタノールアミンを含むSM、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ベヘノイルホスファチジル-コリン、アラキドノイルホスファチジルコリン(ADPC)、[(+)-トリメチル(3-ホスホノプロピル)アンモニウム、モノ(2-ヘキサデク-9-エニルオキシ-3-ヘキサデクイルオキシプロピル)エステル](DEPN-8)、ジエーテルホスホノ-ホスファチジルグリセロール(PG-1)のうちの1種又は複数種、並びにそれらの組み合わせ及び修飾型であり得る。
【0066】
[085] DEPN-8は、ホスホリパーゼ耐性ホスホコリン誘導体であり、PG-1は、ホスホリパーゼ耐性C16:0、C16:1ジエーテルホスホノ-ホスファチジルグリセロールであり、そのホスファチジル基は、グリセロールのC1炭素に結合されている(米国特許第9,815,869号に開示されている)。
【0067】
[086] 開示された本発明及び請求項に記載の本発明の様々な実施形態において、組成物はさらに、酢酸、リン酸、クエン酸、ホウ酸、ヒスチジン、乳酸、トロメタミン、グルコン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、及びα-ケトグルタル酸を含む群から選択される、ナトリウム、カリウム、カルシウム及び/又はリチウム緩衝剤を含むがこれらに限定されない緩衝剤を含み得る。そのナトリウム、カリウム、カルシウム及び/又はリチウム緩衝剤は、共役塩基を有するナトリウム、カリウム、カルシウム及び/又はリチウム塩、或いはその塩の共役酸を有し得る。選択される緩衝剤は、開示の組成物の噴霧乾燥用途において適していることは当業者には知られているだろう。
【0068】
[087] あまり希釈されていないLSC非晶質粉末は、NRDSにより適切であり得て、より濃縮されたLSCは、ARDSの治療においてより有利であり得る。代替方法として、非晶質粉末は、治療の有効性及び効率を高めるために、より小さな送達体積で、より高い濃度で投与するために再構成され得る。そのより高い濃度は、1.25ml/kg未満、及び約5.0ml/kgまでの送達体積を有し得る。その体積は、約1.0、1.05、1.1、1.15、1.2、1.24、1.25、1.5、1.75、2.0、2.25、2.5、2.75、3.0、3.25、3.5、3.75、4.0、4.25、4.5、4.75、5.05.25及び5.50ml/kgであり得る。成人ARDS患者に関しては、用量は40.0~500.0mg/kgまでであり得る。用量は、約25.0、30.0、35.0、40.0、45.0、50.0、55.0、60.0、65.0、70.0、75.0、80.0、85.0、90.0、95.0100.0.105.0、110.0、115.0及び120.0、130.0、140.0、150.0、160.0、170.0、180.0、190.0、200.0、220.0、240.0、260.0、280.0、300.0、325.0、350.0、375.0、400.0、425.0、450.0、475.0、及び500.0mg/kgであり得る。
【0069】
[088] さらに、ポリオールタンパク質、糖のうちの1つ又は複数からなる群から選択される賦形剤も存在し得る。ポリオールは、エリスリトール、イヌリン、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ミオイノシトール、ソルビトール、キシリトール及びその水和物のうちの1つ又は複数からなる群から選択され得る。糖としては、デキストラン、フルクトース、ガラクトース、グルコース、イヌリン、マルトース、マンニトール、ラフィノース、メレチトース、ソルビトール、スタキオース、ショ糖、トレハロース、デンプン及びその水和物を含むがこれらに限定されない、天然及び合成糖を含み得るがこれらに限定されない。アミノ酸としては、フェニルアラニン、シスチン、グリシン、アルギニン、ヒスチジン、リジン、及びロイシンなどのアミノ酸ポリマーを有するタンパク質を含み得るがこれらに限定されない。アミノ酸賦形剤は、L-フェニルアラニン、L-シスチン、グリシン、L-アルギニン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-リジン、及びL-ロイシン、L-プロリン、L-メチオニン、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-バリン、L-グルタミン酸、L-アスパラギン酸、L-アスパラギン、L-グルタミン、L-チロシン、L-セリン、L-アラニン、トリロイシン、並びにその塩のうちの1つ又は複数からなる群から選択され得る。
【0070】
[089] 開示された本発明及び請求項に記載の本発明の様々な実施形態において、肺サーファクタントを乾燥させて、非晶質粉末を形成することができる。エマルジョン及び懸濁液のうちの少なくとも1つに非晶質粉末を再構成することによって、単位体積当たりのLSCの投与濃度を有意に高めることができる。投与するバイアルの数のみを増加することによる、全体的な用量を増加する以前の試みでは、IRDSの治療に見られるような、体重kg当たりの有効性又は効率は得られなかった。したがって、60mg/kgを超え、200から500mg/kg、から600mg/kgまでの濃縮用量で送達可能な肺サーファクタントのより高い濃度(mg/ml)を提供することは、ARDSの治療結果を改善する可能性を有し得る(Kim and Won,(2018)Biotech. Adv.36:1185-1193参照)。
【0071】
[090] 開示のLSCを製造するための種々の実施形態における緩衝剤を含む、又は含まない適切な賦形剤の選択は、エマルジョン又は懸濁液の形成を促進し得て、次に粉末へと乾燥させた結果、非晶質粉末が形成される。肺サーファクタントは、当業者に公知の、噴霧乾燥、超臨界流体凍結、気泡乾燥、及び凍結乾燥のうちの少なくとも1つの乾燥方法によって非晶質粉末へと乾燥され得る。サーファクタントタンパク質及び脂質の指定濃度を知れば、再構成液、緩衝剤、希釈有機溶媒及びそれらの組み合わせがどの程度使用され得るかによって、再構成肺サーファクタントの濃度を当業者は容易に決定することができる。
【0072】
[091] 開示された本発明及び請求項に記載の本発明の様々な実施形態において、安定性、非晶質粉末としてのLSCの形成によって、冷却する必要なく、LSCを非晶質粉末として輸送及び保管することが可能となり得る。結晶質粉末は、脂質-タンパク質複合体から分離する結晶性固体相を形成するため、非晶質粉末を形成する賦形剤が好ましい。非晶質粉末は、個々のリポソーム又はタンパク質-脂質複合体へと、より容易に分離することができる。高温でさえ、リポソーム又は脂質-タンパク質複合体の剛性(rigidity)及び分離を維持するため、特に高いガラス転移温度(Tg>50℃又はそれ以上)の非晶質粉末を形成する賦形剤が選択され得る。
【0073】
[092] その結果得られた非晶質粉末状LSCは、少なくとも50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、150℃、160℃、170℃から180℃のガラス転移温度(Tg)を有し得る。Tgは、約50~180℃、70~150℃、50~130℃、60~130℃、70~140℃、60~160℃、55~170℃、50~150℃、及び50~140℃であり得る。
【0074】
[093] 得られた非晶質粉末状LSCは、少なくとも40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、150℃、160℃、170℃から180℃の温度にて、劣化、分解がない、並びに有効性及び/又は効力の低下がない安定した状態を保つ事ができるが、これらに限定されない。非晶質粉末は、約40~180℃、45~170℃、50~160℃、45~150℃、40~140℃、40~135℃、40~130℃、50~180℃、70~150℃、50~150℃、60~140℃、70~140℃、60~160℃、55~150℃、50~150℃、45~150℃、45~145℃、45~140℃、50~140℃、及び40~150℃で安定であり得る。
【0075】
[094] 開示された本発明及び請求項に記載の本発明の様々な実施形態における、非晶質粉末からの肺サーファクタントの再構成に適した滅菌液としては、水、蒸留水、逆浸透(RO)水、等張性生理食塩水、緩衝液、希釈有機溶媒及びそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない。請求項に記載の組成物の種々の実施形態において、水性希釈有機溶媒は、少なくとも:1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5^、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、9.5%及び10.0%までの濃度であり得る。ジメチルスルホキシド(DMSO)及びジメチルホルムアミド(DMF)などの有機溶媒は、非晶質粉末で再構成される場合に、5%未満の濃度で使用され得て、エタノールは、10%までの濃度で使用され得る。
【0076】
[095] 成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)、IRDS、BPD、肺損傷を含むがこれらに限定されない呼吸器疾患は、治療有効性及び効率に不利であり得る、付随する感染を有し得る。開示された本発明及び請求項に記載の本発明の様々な実施形態において、LSC組成物は、少なくとも1種類の生理活性剤を含み得る。生理活性剤は、抗炎症治療薬、抗感染薬、生物製剤、気管支拡張薬、抗ヒスタミン薬、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、ロイコトリエンアンタゴニスト、PLA2阻害剤、PAFアンタゴニスト、鎮痛薬、ロイコトリエン阻害剤又はアンタゴニスト、鬱血除去剤及び鎮咳去痰薬物質、抗コリン作用薬、β-遮断薬、β-アドレナリン受容体アゴニスト、麻酔薬、抗結核薬、心血管作動薬、及びそれらの組み合わせ(米国特許第9,050,267号に開示されている)を含むがこれらに限定されない、1種又は複数種の抗炎症剤及び/又は抗感染剤であり得る。
【0077】
[096] 開示された本発明及び請求項に記載の本発明の様々な実施形態において、生理活性剤としては、造影剤、酵素、ステロイド、遺伝物質、核酸ベクター、アンチセンス剤、核酸アプタマー、間葉幹細胞、CAR-T細胞、生物製剤、タンパク質、ペプチド及びそれらの組み合わせ(米国特許第9,050,267号に開示されている)を含むがこれらに限定されない。
【0078】
[097] 開示された本発明及び請求項に記載の本発明の様々な実施形態において、生理活性剤としては、オメガ-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)、例えばエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、フルニソリド、ブデソニド、トリペダン(tripedane)、コルチゾン、フルチカゾン(例えば、プロピオン酸エステル)、モメタゾン(例えば、フランカルボン酸エステル)、デキサメタゾン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、及びトリアムシノロン(例えば、アセトニド)、アドレナリン(エフェドリン)、フェノテロール、フォルモテロール、イソプレナリン、メタプロテレノール、モメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、及びトリアムシノロンを含むがこれらに限定されない抗炎症剤を含み得るがこれに限定されない。抗炎症剤としては、アスピリン、ナプロキセン、アセトアミノフェン、ジクロフェナク、セレコキシブ、イブプロフェン、ブデソニド、ブチキソコルトチキソコルトールブチレート)、ジフルニサル、インドメタシン、エトドラク、ケトプロフェン、ケトロラク、ナブメトン、オキサプロジン、ピロキシカム、サルサレート、スリンダク、及びトルメチンのうちの1種又は複数種を含むがこれらに限定されない、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)も挙げられ得る。
【0079】
[098] 開示された本発明及び請求項に記載の本発明の様々な実施形態において、抗炎症剤は、アルブテロール(別名サルブタモール)、ビトルテロール、フェノテロール、イソプロテレノール、レボサルブタモール、オルシプレナリン、ピルブテロール、プロカテロール、リトドリン、サルブタモール、テルブタリン、アルフォルモテロール、バンブテロール、クレンブテロール、フォルモテロール、サルメテロール、アベジテロール、カルモテロール、インダカテロール、オロダテロール、ビランテロール、イソクスプリン、マブテロール、及びジルパテロールのうちの1種又は複数種を含むがこれらに限定されない、β-アドレナリン受容体アゴニスト(気管支拡張薬)である。
【0080】
[099] 開示された本発明及び請求項に記載の本発明の様々な実施形態における抗感染治療薬、例えば抗生物質、抗菌薬、抗真菌薬、抗ウイルス剤、抗原虫薬、及びペプチドなどは、LSC中に含まれ得る。
【0081】
[0100] 抗感染生理活性剤としての抗菌ペプチド(AMP)は、細菌、ウイルス、真菌及び単細胞原生動物に対する活性を有することが知られており、感染に対して宿主を保護する先天免疫の成分であり得て、及び病原体排除において活性である。AMPの概説は、Mahlaupuu,Margit et al.,(2016)Front.Cell.Infect.Microbiol.27 Dec.2016 (doi.org/10.3389/fcimb.2016.00194)に記載されている。
【0082】
[0101] 炎症性成分を有する疾患に対する小分子治療薬として使用されるペプチドは、CATH-1、CATH-2、LL-37及びCRAMPのうちの1つ又は複数を含み得るがこれらに限定されない。治療的ペプチドの概説は、La Manna,Sara et al.“Peptides as Therapeutic Agents for Inflammatory-Related Diseases” Int.J.Mol.Sci.(2018)19(9)2714;doi.org/10.3390/ijms19092714に記載されている。
【0083】
[0102] 製造方法
[0103] 開示された本発明及び請求項に記載の本発明の様々な実施形態において、請求項に記載のLSCは、少なくとも1つの肺サーファクタントタンパク質、並びにそのホモログ、類似体、断片及びミミックを有するタンパク質-脂質複合体を形成することによって製造することができる。SPは、SP-A、SP-B、SP-C、及びSP-D、SP-B+SP-C、及びSP-C+TAT-FAKpの組み合わせ、SP-Cに結合されたFAKpであり得る。任意選択的に、組成物中に、少なくとも1つの緩衝剤及び/又は少なくとも1つの賦形剤及び少なくとも1つの生理活性剤も存在し得る。
【0084】
[0104] SPと脂質の比は調節され得て、脂質の選択は、肺胞内のLSCの拡散を容易にするために変化させることができる。天然LSCは、脂質約90%、タンパク質10%である。しかしながら、肺胞の脂質二重層内への脂質の浸透を促進するための、脂質の選択及びタンパク質配列の最適化は、肺胞の空気-水界面で酸素を吸着することによって、ガス交換の発生を促進し、並びに抗炎症剤及び/又は抗感染剤の添加で、SPの分解を防止し得る。
【0085】
[0105] LSCにおける脂質パーセントとタンパク質パーセントの比は、8.0:0.10、8.0:0.25、8.0:05.0、8.0:0.75、8.0:1.0、8.0:1.25、8.0:1.50、8.0:1.75、9.0:0.10、9.0:0.25、9.0:05.0、9.0:0.75、9.0:1.0、9.0:1.25、9.0:1.50、9.0:1.75、10.0:0.10、10.0:0.25、10.0:05.0、10.0:0.75、10.0:1.0、10.0:1.25、10.0:1.50、10.0:1.75、11.0:0.10、11.0:0.25、11.0:05.0、11.0:0.75、11.0:1.0、11.0:1.25、11.0:1.50、11.0:1.75、12.0:0.10、12.0:0.25、12.0:05.0、12.0:0.75、12.0:1.0、12.0:1.25、12.0:1.50、12.0:1.75、13.0:0.10であり得る。
【0086】
[0106] 上記の別の脂質(1種又は複数種)と組み合わせたDPPCは、カバレッジ(coverage)の均一性、並びに肺胞の深い陥凹内に浸透するLSCの能力を向上させる。開示のLSCの、使用前に再懸濁され得る非晶質粉末への乾燥によって、表面張力を変化させる能力を失くすことなく、脂質二重層と他の脂質構造の間に脂質(1種又は複数種)を移動させる、肺及び肺胞表面に拡散するLSCの能力が回復され得る。
【0087】
[0107] 肺サーファクタント複合体成分は混合され、エマルジョン及び/又は懸濁液が形成される。上記の少なくとも1つの生理活性剤は、エマルジョン及び/又は懸濁液の形成前又は後に添加され得る。生理活性剤の添加によって、LSC中の総固形分が増加し、生理活性剤の濃度は、投与濃度(mg/kg)並びに投与体積(ml/kg)を考慮してLSCが投与される哺乳動物の年齢、体重及び健康全般と共に考慮され得る。
【0088】
[0108] 緩衝剤及び/又は賦形剤の選択によっても、LSC中の総固形分が増加し得て、上述の非晶質粉末へとLSCを乾燥した場合に、それぞれの濃度もまた、考慮に入れられるだろう。
【0089】
[0109] 非晶質粉末の再構成によって、呼吸器疾患の治療を必要とする哺乳動物の年齢、体重、及び健康全般に基づきLSCの投与濃度を調節することが可能となり得る。再構成での使用に適した液体及び溶液は上述される。哺乳動物は、未熟児、乳児、小児、及び成人のいずれか1つであり得る。
【0090】
[0110] 呼吸器疾患の治療
[0111] 呼吸器疾患は広く、空気呼吸する動物におけるガス交換に障害のある状態を意味する。ほとんどの場合、呼吸器系臓器、例えば肺、気管支、咽頭、喉頭、及び横隔膜において根本的な病態が存在する。気道の状態は、気管、気管支、細気管支、肺胞、胸膜、胸膜腔、並びに呼吸-空気及び二酸化炭素それぞれの吸気及び呼気に関与する神経及び筋肉を含み得る。肺胞は、呼吸器表面を構成し、そこで肺胞の空気-水界面での酸素の吸着によってガス交換が行われる。それらは、肺胞の内部表面上の液体/気体界面で、吸気された酸素を身体全体に行き渡らせる循環血液と、酸素の交換をし、肺胞内の水/空気界面で、呼気のために肺へと戻す二酸化炭素の交換をする。呼吸器疾患は、気道内の閉塞の結果であり、閉塞性肺疾患であり得る。拘束性肺疾患は、IRDSで見られる不完全な肺膨張及び肺の硬直から生じる。これは、治療を必要とする患者による肺サーファクタント産生の欠乏及び/又は機能障害を伴い得る、或いはそれらから生じ得る。
【0091】
[0112] 肺サーファクタント欠乏を伴う呼吸器疾患としては、乳児/新生児の呼吸窮迫症候群(IRDS/NRDS)、成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)、気管支肺異形成症(BPD)、肺損傷、及び晩期発症型敗血症を引き起こす感染症を含むがこれらに限定されない。乳児及び成人型呼吸窮迫症候群の両方が、限定されないが、急性肺障害(ALI)、人工呼吸器誘発性肺損傷(VILI)、及び全身性炎症反応症候群(SIRS)などから生じ得る。さらに、ARDSは、ショック、細菌、ウイルス及び院内肺炎、並びに毒性ガス、蒸気、煙及び粒子の吸入を含むがこれらに限定されない1つ又は複数の原因から起こり得る。請求項に記載の本発明の種々の実施形態が呼吸器疾患の治療において有用であり得る、他の呼吸器疾患としては、喘息、嚢胞性線維症(CF)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及びリソソーム蓄積症を含むがこれらに限定されない。SARS COVID-19の合併症もまた、併用治療の治療用組成物中で使用される、又は治療薬を単独で、若しくは併用して送達するための、開示の組成物から利益を得ることができる。
【0092】
[0113] 肺損傷は、気管支生検(bronco-biopsy)、機械的換気、気管支肺異形成症、晩期発症型敗血症、酸素の投与、吸引、毒性ガス、蒸気、煙及び粒子の吸入並びに挿管の結果として起こり得る。
【0093】
[0114] 感染は、細菌感染、ウイルス感染、原虫感染、及び院内感染源の結果であり得ることが注目される。肺損傷はまた、膵炎、輸血関連急性肺障害(TRALI)、種々の薬剤の薬物過量摂取、溺水(淡水又は塩水の吸入)、出血性ショック若しくは再潅流障害、煤煙吸入、並びに胃内容物の肺への誤嚥、不十分な衛生、感染創傷、並びに化学的蒸気、粒子、ばい煙及び煙の不注意及び/偶発的吸入が原因で起こり得る。呼吸器感染及び疾患の詳細な説明は、Dasaraju and Liu,Infections of the Respiratory System.In:Medical Microbiology.4th ed.S.Baron et al.,Co-Editor,1996,U.Texas Med.Branch,Galveston,TX.ISBN 0963117211 and in Matthay,M.A.et al.,“Acute respiratory distress syndrome,Nat.Rev.Disease Primers 5,Article No.18(2019)https://doi.org/10.1038/s41572-019-0069-0に記載されており、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる。
【0094】
[0115] 記述される原因因子のいずれかから生じる微小血管系の損傷は、血液循環における白血球及び赤血球、血小板、凝固因子、及び他の成分の漏出を引き起こす。したがって、いずれかの臓器の微小血管系は、これらの組織を構成する内皮細胞の完全性が緩んだ場合に、悪影響を受けることになる。これは、局所接着キナーゼ(FAK)、アンジオポエチン-1,低分子量GTPアーゼ、細胞内修飾物質、カテニン、プラコグロビン及びVE-タンパク質チロシンホスファターゼなどの化合物による、これらの細胞表面でのVE-カドヘリンのアップレギュレーションを引き起こす化合物によって打ち消すことができる。急性呼吸窮迫症候群に加えて、結果として生じる病的状態としては、微小血管冠疾患(脳卒中及び心筋梗塞)、急性及び人工呼吸器誘発性肺損傷、敗血症、膵炎、大脳小血管疾患、子癇前症、肺動脈性高血圧(PAH)、糖尿病における内皮機能不全、糖尿病性心筋症、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、喘息、新生物、糖尿病性網膜症又は加齢性黄斑変性症、及び全身性硬化症が挙げられ、微小血管疾患に関連する共通の病因的漏出を有し得る。
【0095】
[0116] さらに、全身性毛細血管漏出症候群は、低血圧性ショック及び全身浮腫と共に、動脈性低血圧、血液濃縮及び低アルブミンレベルを特徴とする。これらの患者では、炎症誘発性及び内皮メディエーターが有意に増加し、迅速な処置が必要とされる。
【0096】
[0117] 開示された本発明及び請求項に記載の本発明の様々な実施形態におけるLSCの投与は、吸入、喉頭吸引、気管内(intratracheal)点滴注入、気管内(endotracheal)点滴注入、噴霧療法及び肺送達デバイスによって行われ得る。用いられる投与経路に応じて、LSCは、水性エマルジョン、水性懸濁液、非晶質粉末(AP)、薬剤として許容される担体を有する水性懸濁液に再構成されたAP、及び薬剤として許容される担体を含む希釈有機懸濁液に再構成されたAPの形態を取り得る。少なくとも1つの生理活性剤は、溶解状態を取り得るか、又はLSCのリポソーム、エマルジョンの一部として、及び同時投与のためにLSC内のSPに対する融合タンパク質として存在し得る。代替方法としては、生理活性剤は、開示された本発明及び請求項に記載の本発明の様々な実施形態において逐次、別々に投与され得る。
【0097】
[0118] 適切な肺送達デバイスとしては、ネブライザー、吸気器、シリンジでLSCを一滴ずつ添加することによる、又はINSURE技術:Intubate、SURfactant、Extubateを用いた噴射による、乳児の肺における直接挿管を含むがこれらに限定されない。
【0098】
[0119] 開示のLSCの形式及び送達は、呼吸器疾患の治療の経済的な解決策を提供し得る。開示のLCSは、i)投与するための高度な専門知識を必要とせず、ii)冷蔵の必要がない凍結乾燥状態で容易に保管することができ、及びiii)世界中の経済的に不利な国々において現在実現が難しい治療を提供し得る、手頃な治療薬であり得る。
【0099】
[0120] キット
[0121] 別の態様において、肺サーファクタント欠乏症に罹患している、又は肺サーファクタント成分の欠損を有する哺乳動物を治療するキットが開示されている。開示された本発明及び請求項に記載の本発明の様々な実施形態において、キットは、懸濁液又はエマルジョン中のLSCの1つ又は複数のバイアル、非晶質粉末状のLSCの1つ又は複数のバイアルを有し得る。そのキットはまた、滅菌再構成液体、1種又は複数種の生理活性剤のバイアル、気管内及び/又は気管支内カテーテル、シリンジ、滅菌ワイプ、滅菌希釈液及び/又は再構成液体を生成するための滅菌フィルター、及び滅菌バイアルの少なくとも1つを有し得る。
【0100】
[0122] 本明細書に記載の組成物のいずれも、キットに含まれ得る。このキットを使用して、限定するものではないが、IRDS、ARDS、BPD等に罹患している哺乳動物を治療するための治療薬及び送達材料を提供することによって、本発明を実施することができる。非制限的な実施例において、適切な容器内のキットは、液体状態のLSC、非晶質粉末状のLSC、LSCを投与するための送達メカニズムのうちの1つ又は複数を意味し、備える。そのキットはさらに、1つ又は複数の無菌の:賦形剤、緩衝剤、生理活性剤、気管内及び/又は気管支内カテーテル、シリンジ、例えば、LSC液体及び/又は再構成液体、及び/又は生理活性剤を抜き取るための針、滅菌ワイプ、滅菌希釈液若しくは再構成液体を生成するためのフィルターを含み得る。任意選択的に、そのキットはさらに、滅菌バイアル及び使用説明書を含み得る。
【0101】
[0123] そのキットの容器は一般に、少なくとも1つの滅菌バイアル、ボトル、シリンジ又は成分がその中に入れられ得る、好ましくは、適切にはアリコートに分けられ得る、他の容器を含み得る。キットに複数種の成分がある場合には、キットは一般に、更なる成分が別々にその中に入れられ得る、第2,第3,又は他の更なる滅菌容器も含有し得る。しかしながら、成分の様々な組み合わせが容器に含まれ得る。
【0102】
[0124] キットの成分が1種又は複数種の液体溶液で提供される場合、液体溶液は、水溶液、適切な滅菌水性液、LSC懸濁液、LSCエマルジョンであり得る。しかしながら、キットの成分は、乾燥非晶質粉末として提供され得る。試薬及び/又は成分が乾燥非晶質粉末として提供される場合、その粉末形態は、適切な滅菌希釈有機溶媒、滅菌水性液を添加することによって再構成され得る。その粉末は、適切な滅菌水溶液の添加によっても再構成され得る。
【0103】
[0125] キットは、キットの構成要素を用いるための説明書、並びにキットに含まれない、他のいずれかの試薬の使用の説明書を含み得る。説明書は、実施され得る変形形態を含み得る。
【0104】
[0126] 略語:
A=L-アラニン
C=L-システイン
D=L-アスパラギン酸/L-アスパラギン酸塩
E=L-グルタミン酸/L-グルタミン酸塩
F=L-フェニルアラニン
G=グリシン
H=L-ヒスチジン
I=L-イソロイシン
L=L-ロイシン
M=L-メチオニン
N=L-アスパラギン
Nle=L-ノルロイシン
P=L-プロリン
Q=L-グルタミン
R=L-アルギニン
S=L-セリン
T=L-トレオニン
Y=L-チロシン
V=L-バリン
W=L-トリプトファン

Acm=アセトアミドメチル、
ACN=アセトニトリル
Boc=t-ブチルオキシカルボニル
DCM-ジクロロメタン
DIPEA=ジイソプロピルエチルアミン
DMF=N,N’-ジメチルホルムアミド
DPPC=ジパルミトイルホスファチジルコリン
EDT=1,2-エタンジチオール
Fmoc=フルオレニルメトキシカルボニル
Gn.HCl=塩酸グアニジン
HATU=ヘキサフルオロホスフェートアザベンゾトリアゾールテトラメチルウロニウム
HBTU=(2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
LCMS=質量分析によりモニターされる液体クロマトグラフィー
MeOH=メタノール
MPAA=4-メルカプトフェニル酢酸
Pbf=2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル-
PG=ホスホグリセロール
POPC=1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン
TCEP=トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン
TFA=トリフルオロ酢酸
Trt=トリイル
【実施例
【0105】
実施例
[0127] 開示のLSCは、一例としてより詳細に説明することができる。しかしながら、本発明は、これらの実施例に限定されない。
【0106】
[0128] 実施例1 断片2425:[46-79,C48S,M71Nle,M79Nle]-SP-Bのペプチド合成
[0129] モノマーSP-Bペプチドの合成は、SP-Bの親配列に基づく(配列番号1,図1)。モノマー-SP-B[M21Nle,C48S,M65Nle,M79Nle]の合成配列を図2(配列番号2)に示す。図3は、モノマーSP-Bの構造を表す。実線は、そのペプチド内に形成されるジスルフィド結合を示す。
【0107】
[0130] SP-B断片2425:CQSLAERYSVILLDTLLGRNleLPQLVCRLVLRCSNle(配列番号11)の合成のためのペプチド樹脂の製造。
【0108】
[0131] 塩化2-クロロトリチル樹脂(カタログ番号12996;ChemImpex, Wood Dale, IL, 60191)20.0g,6.0mmol)を、ガラス反応容器に添加した。樹脂をDCM(2×400mL)で洗浄し、DCM400mL中で10分間膨潤し、排液した。Fmoc-Nle-OH(3.4g,9.6mmol)をこの反応容器内に計量し、DCM(400mL)に溶解し、上記の反応容器に添加した。次いで、DIPEA(6ml,36mmol)を一滴ずつ添加した。その後、混合物を室温で2時間振とうした。次いで、混合物を排液し、DCM/MeOH/DIPEA(400mL,v/v/v=85:10:5)を添加し、30分間振とうした。DCM/MeOH/DIPEA添加工程を繰り返した。
【0109】
[0132] 排液後、樹脂をDMF(6×400mL)で洗浄した。次いで、樹脂をMeOH(2×400mL)及びジエチルエーテル(2×400mL)で洗浄した。その後、樹脂を真空下にて2時間乾燥させた。Fmocローディング試験:ペプチド樹脂:23.2g,6mmol,ローディング:0.223mmol/g。
【0110】
[0133] Fmoc-Nleローディングされた塩化2-クロロトリチル樹脂(9.0g,2.0mmol)の一部をDMF(200mL)で洗浄し、次いで完全に排液した。樹脂を、20%ピペリジン/DMF(200mL)で2回、15分間処理して、Fmocを除去した。次いで、樹脂をDMF(6×200mL)で洗浄した。
【0111】
[0135] SP-B断片2425ペプチド鎖のアセンブリ
Fmocアミノ酸(GL Biochem Ltd. Minhang District, Shanghai, Chinaから入手)をそれぞれ、DMF(200mL)中で個々に調製した:Fmoc-アミノ酸、Fmoc-Ser(tBu)-OH(2.3g,6.0mmol)、Fmoc-Cys(Acm)-OH(2.48g,6.0mmol)、Fmoc-Arg(Pbf)-OH(3.89g,6.0mmol)、Fmoc-Leu-OH(2.12g,6.0mmol)、Fmoc-Val-OH(2.04g,6.0mmol)、Fmoc-Leu-OH(2.12g,6.0mmol)、Fmoc-Arg(Pbf)-OH(3.89g,6.0mmol)、Fmoc-Cys(Trt)-OH(3.51g,6.0mmol)、Fmoc-Val-OH(2.04g,6.0mmol)、Fmoc-Leu-OH(2.12g,6.0mmol)、Fmoc-Gln(Trt)-OH(3.66g,6.0mmol)、Fmoc-Pro-OH(2.02g,6.0mmol)、Fmoc-Leu-OH(2.12g,6.0mmol)、Fmoc-Nle-OH(2.12g,6.0mmol)、Fmoc-Arg(Pbf)-OH(3.89g,6.0mmol)、Fmoc-Gly-OH(1.78g,6.0mmol)、Fmoc-Leu-OH(2.12g,6.0mmol)、Fmoc-Leu-OH(2.12g,6.0mmol)、Fmoc-Thr(tBu)-OH(2.39g,6.0mmol)、Fmoc-Asp(OtBu)-OH(2.47g,6.0mmol)、Fmoc-Leu-OH(2.12g,6.0mmol)、Fmoc-Leu-OH(2.12g,6.0mmol)、Fmoc-Ile-OH(2.12g,6.0mmol)、Fmoc-Val-OH(2.04g,6.0mmol)、Fmoc-Ser(tBu)-OH(2.3g,6.0mmol)、Fmoc-Tyr(tBu)-OH(2.76g,6.0mmol)、Fmoc-Arg(Pbf)-OH(3.89g,6.0mmol)、Fmoc-Glu(OtBu)-OH(3.66g,6.0mmol)、Fmoc-Ala-OH(1.87g,6.0mmol)、Fmoc-Leu-OH(2.12g,6.0mmol)、Fmoc-Ser(tBu)-OH(2.3g,6.0mmol)、Fmoc-Gln(Trt)-OH(3.66g,6.0mmol)、Fmoc-Cys(Trt)-OH(3.51g,6.0mmol)。
【0112】
[0136] 試薬a:HBTU(2.27g,6.0mmol);試薬b:DIPEA(2mL,12.0mmol)。
【0113】
[0137] 各Fmoc-アミノ酸(a)を試薬a、試薬b及び樹脂と逐次合わせた。この混合物を最低1.5時間混合及び振とうした。反応容器を排液し、樹脂をDMF(6×200mL)で洗浄した。
【0114】
[0138] ニンヒドリン試験を用いて、カップリング効率を決定した:
i.ニンヒドリン溶液がネガティブ(無色)である場合、次のFmocアミノ酸を上述のように添加した。
ii.ニンヒドリン溶液がポジティブ(青色)である場合、同じFmoc-アミノ酸を上述のように再カップリングした。必要であれば、カップリング時間を増やした。
【0115】
[0139] 最後のFmoc-アミノ酸の添加後に、樹脂をDMF(6×200mL)、MeOH(2×200mL)及びジエチルエーテル(2×200mL)で洗浄し、ペプチジル樹脂を乾燥させた(22.5g,2.0mmol)。図4は、樹脂から切断され、保護基を除去する前の、保護された合成モノマーSP-Bペプチド(配列番号2)を示す。
【0116】
[0140] 樹脂からのペプチドの切断及び側鎖保護基の除去
[0141] ペプチドを樹脂から切断し、ペプチジル樹脂(22.5g,2mmol)混合物をフラスコに添加し、冷たい切断溶液(TFA/EDT/チオアニソール/HO=90%/5%/3%/2%,v/v/v/v)250mLを添加することによって、側鎖保護基を除去し、次いで混合物を室温にて2時間反応させた。次いで、樹脂を濾過し、TFA(それぞれ約10mLで洗浄)で2回洗浄した。濾液を合わせ、10倍体積の冷たいジエチルエーテルをフラスコに添加した。沈殿したペプチドを遠心し、冷たいジエチルエーテルで3回洗浄した。ペプチドを減圧下にて乾燥させ、粗製ペプチド(5.9g)を得た。断片2425ペプチド鎖の切断反応を図5に図示する。
【0117】
[0142] 断片2425の精製
[0143] 分取HPLC(移動相:A:水中の0.05%TFA、B:ACN中の0.05%TFA)によって、粗製ペプチド(5.9g)を精製した。HPLCカラム(カラム:Welch Topsil C18,21.2×250mm,5μm,150A;Welch Materials, Inc., West Haven, CT.;カタログ番号00410-01016)に、50%ACN水溶液300mL中の粗製2425ペプチド5.9gをカラムにローディングした。移動相は:A:水中の0.05%TFA;及びB:ACN中の0.05%TFAであった。カラムは、3分間5%Bに続いて、20分以内に20~80%B、0.5分以内に80~95%B、5.5分間95%Bの勾配を有した。流速:25mL/分。
【0118】
[0144] SP-B断片2425物質のHPLCプロファイルを図6に示す。質量分析によって、その構造を検証した。TFA塩としての白色固形物400mgが得られる(全収率:6.7%)。X軸は、試料注入後の時間(分)を示す。紫外線分光光度法(214nm)によって、流出液をモニターした。シングル四重極質量分析計を使用して、断片2425の質量を検証した。
[0145] LC-MS(ESI)m/z:1310.3[M+3H]/3,983.3[M+4H]/4,786.7[M+5H]/5
[0146] HPLC:RT:13.78,純度92.65%(214nm)
【0119】
[0147] 実施例2 断片212223[1-45,8,11,46-Cys(Acm),C末端-MeDbz]-SP-Bのペプチド合成
[0148] 断片212223の合成スキームを図7に図示し、内含する:
【0120】
[0149] SP-B断片212223合成のためのペプチド樹脂の製造
[0150] FPIPLPYC(Acm)WLC(Acm)RALIKRIQANleIPKGALAVAVAQVC(Acm)-RVVPLVAGGI-CO-MeDbz-NH(配列番号2)
【0121】
[0151] 樹脂(MeDbz Novasyn(登録商標)TGR樹脂,カタログ番号855157,Millipore Sigma, Taufkirchen, EschenstrafBe 5, Germany;10.0g,2.0mmol)をDMF(200mL)で洗浄し、完全に排液した。20%ピペリジン/DMF(200mL)で2回、15分間処理することによって、樹脂を脱保護した。脱保護された樹脂をDMF(6×200mL)で洗浄した。DIPEA(1mL,3mmol)を添加するよりも、DMF(200ml)中の樹脂にFmoc-MeDbz-OH(1.16g,3mmol)及びHBTU(1.14g,3mmol)を添加することによって、樹脂をFmoc-MeDbz-OHで修飾し、1.5時間振とうした。反応容器を排液氏、樹脂をDMF(6×200mL)で洗浄した。
【0122】
[0152] 修飾が完了したかどうかを決定するために、上述のようにニンヒドリンを用いた:
i.ネガティブ(無色)である場合には、合成を続けた。
ii.ポジティブ(青色)である場合には、FMOC-MeDbz-OHを再カップリングした。必要であれば、カップリング時間を増加する。
【0123】
[0153] 20%ピペリジン/DMF200mLで15分間2回処理することによって、Fmocは樹脂から除去された。樹脂をDMF(6×200mL)で洗浄した。
【0124】
[0154] 修飾樹脂に対するFmoc-Nle-OHのカップリング。Fmoc-Nle-OH(4.24g,12mmol)及びHATU(4.55g,12mmol)をDMF(200mL)中の樹脂に添加し、DIPEA(4mL,12mmol)を添加し、混合物を1.5時間振とうした。反応容器を排液し、樹脂をDMF(6×200mL)で洗浄した。修飾樹脂に対するFmoc-Nle-OHのこのカップリングを繰り返した。
【0125】
[0155] 20%ピペリジン/DMF200mLで15分間、2回処理することによって、Fmocを除去した。樹脂をDMF(6×200mL)で洗浄した。
【0126】
[0156] SP-B断片212223ペプチド鎖のアセンブリ
[0157] カップリング工程-DMF200mLの溶液中の以下のFmoc-アミノ酸:Fmoc-アミノ酸:Fmoc-Gly-Gly-OH(2.12g,6mmol)、Fmoc-Ala-OH(1.86g,6mmol)、Fmoc-Val-OH(2.02g,6mmol)、Fmoc-Leu-OH(2.12g,6mmol)、Fmoc-Pro-OH(2.02g,6mmol)、Fmoc-Val-OH(2.02g,6mmol)、Fmoc-Val-OH(2.02g,6mmol)、Fmoc-Arg(Pbf)-OH(3.88g,6mmol)、Fmoc-Cys(Acm)-OH(2.48g,6mmol)、Fmoc-Val-OH(2.02g,6mmol)、Fmoc-Gln(Trt)-OH(3.66g,6mmol)、Fmoc-Ala-OH(1.86g,6mmol)、Fmoc-Val-OH(2.02g,6mmol)、Fmoc-Ala-OH(1.86g,6mmol)、Fmoc-Val-OH(2.02g,6mmol)、Fmoc-Ala-OH(1.86g,6mmol)、Fmoc-Leu-OH(2.12g,6mmol)、Fmoc-Ala-OH(1.86g,6mmol)、Fmoc-Gly-OH(1.78g,6mmol)、Fmoc-Lys(Boc)-OH(2.82g,6mmol)、Fmoc-Pro-OH(2.02g,6mmol)、Fmoc-Ile-OH(2.12g,6mmol)、Fmoc-Nle-OH(2.12g,6mmol)、Fmoc-Ala-OH(1.86g,6mmol)、Fmoc-Gln(Trt)-OH(3.66g,6mmol)、Fmoc-Ile-OH(2.12g,6mmol)、Fmoc-Arg(Pbf)-OH(3.88g,6mmol)、Fmoc-Lys(Boc)-OH(2.82g,6mmol)、Fmoc-Ile-OH(2.12g,6mmol)、Fmoc-Leu-OH(2.12g,6mmol)、Fmoc-Ala-OH(1.86g,6mmol)、Fmoc-Arg(Pbf)-OH(3.88g,6mmol)、Fmoc-Cys(Acm)-OH(2.48g,6mmol)、Fmoc-Leu-OH(2.12g,6mmol)、Fmoc-Trp(Boc)-OH(3.14g,6mmol)、Fmoc-Cys(Acm)-OH(2.48g,6mmol)、Fmoc-Tyr(tBu)-OH(2.74g,6mmol)、Fmoc-Pro-OH(2.02g,6mmol)、Fmoc-Leu-OH(2.12g,6mmol)、Fmoc-Pro-OH(2.02g,6mmol)、Fmoc-Ile-OH(2.12g,6mmol)、Fmoc-Pro-OH(2.02g,6mmol)、Fmoc-Phe-OH(1.6g,6mmol)のそれぞれを調製する。
【0127】
[0158] 試薬a:HBTU(2.27g,6.0mmol);試薬b:DIPEA(2mL,12.0mmol)
【0128】
[0159] 各Fmoc-アミノ酸を試薬a、及び試薬b及び樹脂と逐次、合わせた。各混合物を最低でも1.5時間混合及び振とうした。反応容器を排液し、樹脂をDMF(6×200mL)で洗浄した。
【0129】
[0160] ニンヒドリン試験を用いて、カップリング効率を決定した:
i.ニンヒドリン溶液がネガティブ(無色)である場合には、次のFmocアミノ酸を上述のように添加した。
ii.ニンヒドリン溶液がポジティブ(青色)に変化した場合には、上述のように同じFmoc-アミノ酸を再カップリングした。必要であれば、カップリング時間を増加した。
【0130】
[0161] DCM(200mL)で溶解されたp-ニトロフェニルクロロホルメート(2.4g,12mmol)を樹脂に添加し、約1時間振とうした。反応容器を排液し、樹脂をDMF(3×200mL)で洗浄した。この工程は、添加されるべき、それぞれの連続したアミノ酸に対して繰り返された。
【0131】
[0162] 212223ペプチド断片-樹脂の回収
[0163] DMF(150mL)中のDIPEA(20mL)の溶液を樹脂に添加し、反応混合物を30分間振とうした。反応容器を排液し、樹脂をDMF(3×200mL)で洗浄した。樹脂をMeOH(2×200mL)及びジエチルエーテル(2×200mL)で洗浄し、次いで乾燥させて、212223ペプチド断片-樹脂(20.0g,2.0mmol)を回収した。
【0132】
[0164] 樹脂からの212223ペプチドの切断及び保護基の除去
[0165] 212223ペプチド-樹脂(20.0g,2mmol)を冷たい切断溶液(TFA/トリス/HO=95%/2.5%/2.5%,v/v/v;250mL)と混合し、穏やかに振盪しながら、冷たい状態(2℃から8℃)で反応を進行させた。21223ペプチド-樹脂を濾過し、TFAで2回洗浄した。濾液を合わせ、10倍体積の冷たいジエチルエーテルを添加した。沈殿したペプチドを遠心し、冷たいジエチルエーテルで3回洗浄した。減圧下にてペプチドを乾燥させて、粗製212223ペプチド(7.5g)を得た。
【0133】
[0166] SP-B断片212223の分取HPLC精製
[0167] 分取HPLC(移動相:A:水中の0.05%TFA,B:ACN中の0.05%TFA)によって、粗製ペプチドを精製した。TFA塩として白色固形物540mgを以下のように得た:
カラム:Welch Topsil C18,21.2×250mm,5μm,150A
ローディング:50%ACN/水400mL中の粗製ペプチド7.5g
移動相:A:水中の0.05%TFA;B:ACN中の0.05%TFA
勾配:3分間5%B、20分以内に40~50%B、0.5分以内に50~95%B、5.5分間95%B。流速:25mL/分。
【0134】
[0168] 精製断片212223のHPLC-UV-MS分析を図8に図示する。X軸は、試料注入後の時間(分)を示す。紫外線分光光度法(214nm)によって、流出液をモニターした。シングル四重極質量分析計を使用して、断片212223の質量を検証した。
[0169] LC-MS(ESI)m/z:1298.0[M+4H]/4,1037.9[M+5H]/5,865.4[M+6H]/6
[0170] HPLC:RT:13.91,純度91.23%(214nm)。
【0135】
[0171] 実施例3:ネイティブケミカルライゲーション(NCL)法を使用することによる、ペプチド2122232425-3のペプチド合成
[0172] 合成スキームを図9A及び9Bに示す。完全長モノマーSP-B類似体を構築するために用いられる方法は:a)ネイティブケミカルライゲーションを用いて、2つのペプチド、212223及び2425を合わせて、完全長SP-Bモノマーを形成することを必要とする。ペプチド断片212223(配列番号11)は、3つの領域:21-残基1-10、22-残基11-34、及び23-残基35-45からなる。ペプチド断片2425は、図3に図示するように、2つの領域:24-残基46-70、及び25-残基71-79からなる。このペプチドは、3つのシステイン残基がアセトアミドメチル(Acm)によって保護されていることを表す、標識された2122232425-3である。
【0136】
[0173] 合成には、6M Gn-HCl緩衝剤の溶液(40mL)、MPAA(168mg,1mmol)及びTCEP(314mg,1.1mmol)が使用され、断片-212223(102.0mg,0.02mmol)、断片-2425(100mg,0.026mmol)が添加された。すべての成分が溶解され、1M NaOH水溶液を添加することによって、溶液のpHがpH6.8に調整された。混合物を室温で一晩振とうし、反応をLCMSによってモニターした。
【0137】
[0174] Cys保護SP-Bペプチド2122232425-3の分取HPLC精製
[0175] 以下のように、分取HPLC(移動相:A:水中の0.05%TFA,B:ACN中の0.05%TFA)によって反応混合物を精製し、TFA塩として白色固形物34mg(全収率:18.8%)を得た:
カラム:Xbridge Prep C18(SKU:186003895;Waters Corporation, Milford, MA 01757),19×250mm,10μm,130A
ローディング:Gn-HCl 40mL中の粗製ペプチド200mg
移動相:A:水中の0.05%TFA;B:ACN中の0.05%TFA
勾配:3分間38%B、2.5分以内に38~53%B、20分以内に53~63%B、0.5分以内に63~95%B、5.5分間95%B。流速:25mL/分。
【0138】
[0176] Cys保護SP-B断片2122232425-3のHPLCプロファイルを図10に図示する。X軸は、試料注入後の時間(分)を示す。紫外線分光光度法(214nm)によって、流出液をモニターした。エレクトロスプレー・シングル四重極質量分析計を使用して、断片2122232425-3の質量を検証した。
[0177] LC-MS(ESI)m/z:744.8[M+12H]/12,812.2[M+11H]/11,893.7[M+10H]/10,992.5[M+9H]/9,1116.2[M+8H]/8,1275.7[M+7H]/7
[0178] HPLC:RT:17.71,純度91.15%(214nm)。
【0139】
[0179] 実施例4:システイン側鎖保護の除去及びモノマーSP-Bペプチドへの酸化
[0180] 合成スキームでは、フラスコ内のHO/ACN混合物バッファー(20mL)に2122232425-3(20.0mg,1mmol)を添加し、pHを酢酸でpH4.0~5.0に調整した。MeOH(0.05M)中のI0.2mLを溶液に添加し、35分間攪拌した。反応をLCMSによってモニターした。アスコルビン酸を添加することによって、反応をクエンチした。
【0140】
[0181] モノマー[Nle-21,Ser-48,Nle-71,Nle-79]-SP-Bの分取精製
[0182] 分取HPLC(移動相:A:水中の0.05%TFA,B:ACN中の0.05%TFA)によって反応混合物を精製した。以下のように、TFA塩としての白色固形物2.0mgを純度87.88%で、及び1.3mgを純度78%で得た(全収率:10.0%):
カラム:Xbridge Prep C18,19×250mm,10μm,130A
ローディング:10%ACN水溶液20mL中の粗製ペプチド20.0mg
移動相:A:水中の0.05%TFA;B:ACN中の0.05%TFA
勾配:3分間5%B、20分以内に5~95%B、6分間95%B。流速:25mL/分。紫外線吸光度(214nm)及びエレクトロスプレーを用いたシングル四重極質量分析計によってモニターした。
【0141】
[0183] モノマーSP-B断片2122232425のHPLCプロファイルを図11に図示する。X軸は、試料注入後の時間(分)を示す。紫外線分光光度法(214nm)によって、流出液をモニターした。エレクトロスプレー・シングル四重極質量分析計を使用して、断片2122232425-3の質量を検証した。
[0184] LC-MS(ESI)m/z:960.5[M+9H]/9+,1080.3[M+8H]/8+,1234.7[M+7H]/7+,1439.8[M+6H]/6+.
[0185] HPLC:RT:14.26,純度87.88%(214nm).
【0142】
[0186] 実施例5:SP-Bリン脂質の混合物の表面活性
[0187] DPPC:POPC:PG(40:30:30)を含有するクロロホルム:メタノール:ギ酸溶液(9:9:0.5)に、合成モノマーSP-Bペプチドを溶解した。混合後、蒸発によって溶媒を除去し、120mM NaCl(pH7.0)、1.5mMCaClを含有する10mM MOPSバッファー中でフィルムを再構成した。この混合物を50℃に10分間加熱し、30秒間ボルテックスした。液滴(10μL/分析)は、リン脂質0.8mg/mL及び2mg/mLの濃度のSP-Bを含有した。拘束液滴サーファクトメーター(constrained sessile drop surfactometer)(CDS)を用いて、動的表面張力が測定された。これらの液滴を圧縮及び膨張の20サイクルにかけた。圧縮は、最初の液滴サイズの約40%であった。各試料を4~5回分析した。
【0143】
[0188] 図12A及び12Bは、拘束液滴サーファクトメーターで決定されたリン脂質の存在下でのモノマーSP-Bペプチドの動的表面張力を例示する。液滴(10uL)を交互に拘束及び膨張させた。X軸は、各連続圧縮-膨張サイクルと一致する。
【0144】
[0189] 実施例6 SP-Cと複合体形成された、又はSP-Cに結合されたTAT-FAKpの試験:
[0190] 目的:内皮単層及びマウスの肺におけるTAT-FAKpによって誘発されたバリア保護タンパク質間相互作用の評価。図2に見られるTATペプチドのいずれか一つが、米国仮特許出願第63/092,625号に提供される手順において試験することができる。
【0145】
[0191] 変異TAT-FAKp+SP-C+変異TAT-FAKpタンパク質及びコントロールとして非変異TAT-FAKpを有するSP-Cに結合された変異FAKpが、ヒト肺微小血管、肺動脈内皮細胞において、及びマウス肺において培養され得る。これらの変異の存在下にて、タンパク質間相互作用及びカドヘリン安定性は、光退色後の蛍光回復の研究によって反映されるように、及び濾過係数(Kf)、マウスにおける肺水分により反映される内皮透過性のアッセイ、ポイント透過性アッセイ、培養ECにおける、経内皮電気抵抗(TER)、白血球の移行によって、及び培養ECにおいて決定されるだろう。保護作用は、盲検化マウス生存研究を用いて決定することができる。
【0146】
[0192] 予測結果:コントロールTAT-FAKp、変異TAT-FAKp、変異TAT-FAKp+SP-C+変異TAT-FAKpを内皮にローディングすることによって、肺内皮単層におけるトロンビン又はオキシダント誘発透過性亢進、及びマウスにおけるALI誘発肺透過性亢進が阻止されると予測される。ALI後のマウスの生存期間は、未処置のマウスに比べて、変異TAT-FAKp、TAT-FAKp、変異TAT-FAKp+SP-C+変異TAT-FAKp処置マウスにおいてかなり延長される。初めて、ポジティブな治療効果のTAT-FAKpが、SP-Cと組み合わせた活性化FAKによって誘発される重要なタンパク質間相互作用の点から理解されるだろう。
【0147】
[0193] 実施例7 SP-Cに融合された抗感染ペプチドLL-37の試験:
[0194] 目的:気管支粘膜上皮肺細胞においてSP+C-LL-37によって誘発される抗菌性保護の評価。
【0148】
[0195] コントロールとしてのSP-Cペプチドを有するSP-C+LL37融合タンパク質が、感染したヒト肺気管支粘膜内皮細胞において、及びマウス肺において培養され得る。SP-C+LL37の存在下にて、タンパク質間相互作用及びカテリシジン活性が、光退色後の蛍光回復の研究によって反映されるように、及び濾過係数(Kf)、マウスにおける肺水分により反映される内皮透過性のアッセイ、ポイント透過性アッセイ、経内皮電気抵抗(TER)、白血球の移行によって、及び培養ECにおいて決定されるだろう。保護作用は、盲検化マウス生存研究を用いて決定することができる。
【0149】
[0196] 予測結果:例えば気管内挿管による、コントロールSP-C、及びSP-C+LL37融合タンパク質での、感染した肺気管支粘膜内皮の治療によって、微生物感染部位での単球、樹状細胞、T細胞の存在によって見られる、マウスにおける先天免疫システムが活性化されると予測される。さらに、感染組織の病理学的検査は、SP-C+LL37ペプチドが活性である、細胞膜の崩壊(損傷及び穿刺)を示す。肺の感染後のマウスの生存期間は、未処置マウスに比べて、SP-C+LL37ペプチド処置マウスにおいてかなり延長される。更なるアッセイは、Kosciuczuk, E.M. et al.,“Cathelicidins: family of antimicrobial peptides.A review”(2012)Mol.Biol.Rep.39(12):10957-10970.[doi: 10.1007/s11033-012-1997-x]で見つけることができる。
【0150】
[0197] 実施例8 LSCにおいてSP-Bに融合された抗感染ペプチドインターフェロン-γ(IFNγ)の試験:
[0198] 目的:気管支粘膜上皮肺細胞におけるSP+B+IFNγによって誘発される抗ウイルス性保護タンパク質間相互作用の評価
【0151】
[0199] DPPG:POGO:SP-B、IFNγ、又はSP-B-IFNγ85.0:5.0:10.0を有するSP-B+IFNγタンパク質。肺の未成熟及びサーファクタント欠乏を有することが分かっている、妊娠期間124日目に出産される子ヒツジを用いる。子ヒツジは、LSC治療のために3つのグループ:SP-B LSC、IFNγ+SP-B LSC及びIFNγ LSCに分けられ、出生して15分で治療される。各グループにおける子ヒツジ5匹に関して、SP-B及びIFNγ+SP-Bの投与量は、200mg/kg(2.5ml/kg体重)であり、IFNγについては、100mg/kg(2.0ml/kg)である。グループ間では、同様な体重(2.8±0.1kg)及び臍帯血pH(7.40±0.03)であった。
【0152】
[0200] 予測結果:心拍数、血圧、ヘマトクリット、ナトリウム、カルシウム及びカリウムのモニタリングは、30分毎の血液試料採取から記録される。これらのデータポイントは、SP-B及びIFNγグループにおいて通常よりも低いが、SP-B基のN末端に融合されたIFNγで予測される正常な値に近いと考えられる。換気の包含は、感染性及び/又は炎症性の病理学的プロセスを誘導することが知られており、ガス交換のために肺胞表面での表面張力を低減するため、サーファクタント表面フィルムを維持し、及び機能させるために必要とされる、SP-Bが存在しない場合に、IFNγの存在は、SP-B及びSP-B-IFNγグループのそれぞれにおいて、かかる病状を軽減することが期待されるだろう。炎症細胞、単球及び好中球の総数の検査は、肺の伸展を最小限に抑える穏やかな換気プロトコルに従うために低いと予想される。
【0153】
[0201] さらに、死後の肺の肉眼的及び病理学的検査から、SP-B LSC、IFNγ+SP-B LSCが活性である、正常な肺膨張が示されるだろう。肺感染後の子ヒツジの生存期間は、SP-Bが存在しないためにサーファクタント拡散を欠くことから、IFNγ LSCグループと比較して、SP-B LSC処置グループとIFNγ+SP-B LSC処置グループの両方でかなり延長されるだろう。更なるデータ、及び行われ得る病理学的観察は、Sato and Ikegami,(2012)“SP-B and SP-C Containing New Synthetic Surfactant for Treatment of Extremely Immature Lamb Lung”PLOS|One doi.org/10.1371/journal.pone.0039392に記載されている。
【0154】
[0202] 特定の実施形態と組み合わせて、本発明の原理が記述されているが、これらの説明は単に一例として記述されており、本発明の範囲を制限することを意図しないことを理解されたい。本明細書に開示されていることは、例証及び説明の目的で提供されている。開示されていることを網羅する、又は開示されていることを記載の正確な形態に限定することを意図するものではない。当業者には、多くの修正形態及び変形形態は明らかであるだろう。開示されていることは、記載の技術の開示の実施形態の原理及び実用化を最も良く説明するために選択され、記載されており、それによって当業者は、企図される特定の用途に適した様々な実施形態及び様々な修正形態を理解することが可能となる。開示されていることの範囲は、以下の特許請求の範囲及びその等価物によって定義されることが意図される。
図1
図2
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図9A
図9B
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図12A
図12B
図13-1】
図13-2】
【配列表】
2023546297000001.app
【国際調査報告】