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特表2023-546299ハイブリッドアルファウイルス-SARS-COV-2粒子ならびにその作製方法および使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】ハイブリッドアルファウイルス-SARS-COV-2粒子ならびにその作製方法および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20231025BHJP
   C12Q 1/6897 20180101ALI20231025BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20231025BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231025BHJP
   A61K 39/215 20060101ALI20231025BHJP
   C12N 15/50 20060101ALN20231025BHJP
【FI】
C12N7/01
C12Q1/6897 Z
A61P31/14
A61P37/04
A61K39/215
C12N15/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548544
(86)(22)【出願日】2021-10-19
(85)【翻訳文提出日】2023-06-19
(86)【国際出願番号】 US2021055666
(87)【国際公開番号】W WO2022087006
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】63/094,029
(32)【優先日】2020-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/118,787
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/183,189
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523148274
【氏名又は名称】ジョージ メイソン リサーチ ファウンデイション インク.
【氏名又は名称原語表記】George Mason Research Foundation, Inc.
【住所又は居所原語表記】MSN 5G5, 4400 University Drive, Fairfax, VA 22030, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ヘトリック
(72)【発明者】
【氏名】ユンタオ ウー
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C085
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ22
4B063QQ79
4B063QR58
4B063QS28
4B063QS38
4B063QX02
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA01
4B065CA45
4B065CA46
4C085AA03
4C085BA71
4C085EE01
(57)【要約】
COVID-19のパンデミックを制御するためには、ワクチンおよび抗ウイルス薬のタイムリーな開発が重要である。ワクチン誘導性中和抗体を定量化するための現在の方法には、シュードウイルス、例えばSARS-CoV-2スパイクタンパク質(S)シュードタイプ化レンチウイルスの使用が含まれる。しかしながら、これらのシュードウイルスには、SARS-CoV-2にとって外来の構造タンパク質が含まれており、感染してレポーター遺伝子を発現するのに数日が必要となる。ここで、本願は、中和抗体およびウイルスバリアントを迅速かつ正確に定量化するための新しいハイブリッドアルファウイルス-SARS-CoV-2(Ha-CoV-2)粒子を作製および使用するための組成物および方法論を開示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)アルファウイルスに由来するRNAゲノムと、
b)少なくとも1種のSARS-CoV-2構造タンパク質と
を含むハイブリッド粒子であって、
前記構造タンパク質は、スパイクタンパク質(S)、膜タンパク質(M)、エンベロープタンパク質(E)およびヌクレオカプシドタンパク質(N)である、ハイブリッド粒子。
【請求項2】
前記粒子が、非複製型の粒子である、請求項1記載のハイブリッド粒子。
【請求項3】
前記アルファウイルスに由来する前記RNAゲノムが、レポーター遺伝子または目的遺伝子を含む、請求項1記載のハイブリッド粒子。
【請求項4】
前記RNAゲノムが、
a)5’非翻訳領域と、
b)非構造タンパク質(nsp)1~4をコードするオープンリーディングフレームと、
c)レポーター遺伝子または目的遺伝子と、
d)3’非翻訳領域と、
e)ポリ(A)テールと
を含む、請求項1記載のハイブリッド粒子。
【請求項5】
SARS-CoV-2パッケージングシグナルをさらに含み、前記SARS-CoV-2パッケージングシグナルが、前記レポーター遺伝子の下流にある、請求項4記載のハイブリッド粒子。
【請求項6】
前記ハイブリッド粒子が、SARS-CoV-2ウイルス様粒子(VLP)である、請求項1記載のハイブリッド粒子。
【請求項7】
前記レポーター遺伝子が、GFP遺伝子またはルシフェラーゼ遺伝子を含む、請求項3記載のハイブリッド粒子。
【請求項8】
前記ハイブリッド粒子が、ACE2を発現する細胞を標的とする、請求項1記載のハイブリッド粒子。
【請求項9】
2種のSARS-CoV-2構造タンパク質を含み、前記構造タンパク質が、SおよびEを含む、請求項1記載のハイブリッド粒子。
【請求項10】
4種のSARS-CoV-2構造タンパク質を含み、前記構造タンパク質が、S、E、MおよびNを含む、請求項1記載のハイブリッド粒子。
【請求項11】
前記ハイブリッド粒子が、IC50値とSARS-CoV-2とで直接的な相関関係を有する、請求項10記載のハイブリッド粒子。
【請求項12】
(a)少なくとも1種のSARS-CoV-2構造タンパク質をコードする第1のベクターと、アルファウイルスに由来するRNAゲノムを含む第2のベクターとをコトランスフェクションすることであって、前記アルファウイルスRNAゲノムは、(i)5’末端のDNAプロモーターと、(ii)第1の非翻訳領域と、(iii)アルファウイルスからの非構造タンパク質をコードするオープンリーディングフレームと、(iv)レポーター遺伝子と、(v)SARS-CoV-2パッケージングシグナル配列と、(vi)ウイルスサブゲノムRNAプロモーターと、(vii)目的遺伝子と、(viii)第2の非翻訳領域と、(ix)ポリAテールとを含む、コトランスフェクションすることと、
(b)ハイブリッド粒子を生成することであって、前記ハイブリッド粒子は、アルファウイルスRNAゲノムと、少なくとも1種のSARS-CoV-2構造タンパク質とを含む、生成することと
を含む、方法。
【請求項13】
前記ハイブリッド粒子を標的細胞に感染させることであって、前記標的細胞は、ACE2を発現する、感染させることをさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記レポーター遺伝子の発現が、感染の検出および定量化を容易にするシグナルを生成することができる、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記シグナルが、前記ハイブリッド粒子による感染後、約2時間~約72時間後に読み取られる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
1つ以上のSARS-CoV-2バリアントに対する対象の抗体応答を検出するための方法であって、
a)前記対象からの血清試料を請求項10記載のハイブリッド粒子とインキュベートすることと、
b)インキュベートした前記ハイブリッド粒子を、ACE2を含む細胞に導入することと、
c)前記細胞内でのレポーター遺伝子の発現を検出することであって、レポーター遺伝子の発現は、前記対象が、前記細胞のウイルス感染を阻止する中和抗体を持たないことを示し、レポーター遺伝子の無発現は、前記対象が、前記細胞のウイルス感染を阻止する抗体を持つことを示す、検出することと
を含む、方法。
【請求項17】
請求項1記載のハイブリッド粒子を含む組成物。
【請求項18】
前記組成物が、免疫応答を開始することができるワクチンまたは粒子である、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
請求項10記載のハイブリッド粒子を含む組成物。
【請求項20】
前記組成物が、免疫応答を開始することができるワクチンまたは粒子である、請求項19記載の、ハイブリッド粒子を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年10月20日に出願された米国仮出願第63/094,029号、2020年11月27日に出願された米国仮出願第63/118,787号、および2021年5月3日に出願された米国仮出願第63/183,189号の優先的利益を主張し、各出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
導入部
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、急速に蔓延している新型のベータコロナウイルスで、現在進行中のコロナウイルス疾患2019(COVID-19)の世界的規模のパンデミックを引き起こしている(文献17-21)。SARS-CoV-2は、2021年4月現在、世界で1億4,000万人を超える感染者および300万人を超える死者を発生させている。パンデミックと闘うためには、抗ウイルス薬および中和抗体が有効である。特に、ワクチンまたはウイルスによって誘導される中和抗体は、感染の制御および予防に重要な役割を果たす可能性がある。現在、FDAが承認した薬物は、入院期間を短縮できるレムデシビル1つだけである(文献1)。最近、幾つかのワクチンが、第III相臨床試験で有意な結果を示し(文献2-6)、緊急使用のために承認されており、1つのワクチンは2021年8月の時点でFDAの完全承認を取得している。とはいえ、ワクチンの有効性については、進化するウイルスバリアントに対する中和抗体の誘導を継続的に監視する必要がある。
【0003】
現在の抗ウイルス薬のスクリーニングおよび中和抗体の定量化は、SARS-CoV-2シュードウイルスの使用に依存している(文献7-14)。生きたウイルスを使用するには、バイオセーフティレベル(BSL)3の施設および実践が必要であり、一般的な研究室での大規模な試験および解析には限界がある。SARS-CoV-2Sタンパク質でシュードタイプ化されたレンチウイルスと水疱性口内炎ウイルス(VSV)とのいずれも、細胞ベースの中和アッセイおよび抗ウイルス薬のスクリーニングに使用されている8-11。SARS-CoV-2には、スパイクタンパク質(S)、膜タンパク質(M)、エンベロープタンパク質(E)およびヌクレオカプシドタンパク質(N)の4種の構造タンパク質が含まれている(文献22、23)。Sは、ウイルスの付着および標的細胞への侵入を担う主要なウイルスタンパク質であり(文献24、26)、ひいてはシュードタイプのウイルスによく使用される。とはいえ、VSVベースのシュードウイルス粒子とレンチウイルスベースのシュードウイルス粒子とのいずれにもSタンパク質のみが含まれており、主要なウイルスの構造成分はSARS-CoV-2とは異なっているため、受容体結合および抗体中和に対する応答におけるビリオンの性質に影響を及ぼす可能性がある(文献15)。加えて、VSVベースのシュードウイルスの重要な問題は、残留VSVウイルスの存在であり、これにより、高い割合で偽陽性の結果が生じる可能性がある(文献27)。さらに、中和アッセイにレンチシュードタイプウイルスを使用するには時間がかかり、感染してレポーターシグナルを生成するのに2~3日を要する(文献7-11)。
【0004】
概要
一態様では、a)アルファウイルスに由来するRNAゲノムと、b)少なくとも1種のSARS-CoV-2構造タンパク質とを含むハイブリッド粒子であって、前記構造タンパク質は、スパイクタンパク質(S)、膜タンパク質(M)、エンベロープタンパク質(E)およびヌクレオカプシドタンパク質(N)を含む、ハイブリッド粒子が存在する。
【0005】
一実施形態では、ハイブリッド粒子は、非複製型の粒子である。
【0006】
別の実施形態では、アルファウイルスに由来するRNAゲノムは、レポーター遺伝子または目的遺伝子を含む。更なる実施形態では、レポーター遺伝子は、GFP遺伝子またはルシフェラーゼ遺伝子を含む。
【0007】
別の実施形態では、RNAゲノムは、a)5’非翻訳領域と、b)非構造タンパク質(nsp)1~4をコードするオープンリーディングフレームと、c)レポーター遺伝子または目的遺伝子と、d)3’非翻訳領域と、e)ポリ(A)テールとを含む。更なる実施形態では、RNAゲノムは、SARS-CoV-2パッケージングシグナルを含み、SARS-CoV-2パッケージングシグナルは、レポーター遺伝子の下流にある。
【0008】
別の実施形態では、ハイブリッド粒子は、SARS-CoV-2ウイルス様粒子(VLP)である。
【0009】
別の実施形態では、ハイブリッド粒子は、ACE2を発現する細胞を標的とする。
【0010】
別の実施形態では、ハイブリッド粒子は、2種のSARS-CoV-2構造タンパク質を含み、前記構造タンパク質は、SおよびEを含む。
【0011】
別の実施形態では、ハイブリッド粒子は、4種のSARS-CoV-2構造タンパク質を含み、前記構造タンパク質は、S、E、MおよびNを含む。更なる実施形態では、ハイブリッド粒子は、IC50値とSARS-CoV-2とで直接的な相関関係を有する。
【0012】
別の態様では、(a)少なくとも1種のSARS-CoV-2構造タンパク質をコードする第1のベクターと、アルファウイルスに由来するRNAゲノムを含む第2のベクターとをコトランスフェクションすることであって、アルファウイルスRNAゲノムは、(i)5’末端のDNAプロモーターと、(ii)第1の非翻訳領域と、(iii)アルファウイルスからの非構造タンパク質をコードするオープンリーディングフレームと、(iv)レポーター遺伝子と、(v)SARS-CoV-2パッケージングシグナル配列と、(vi)ウイルスサブゲノムRNAプロモーターと、(vii)目的遺伝子と、(viii)第2の非翻訳領域と、(ix)ポリAテールとを含む、コトランスフェクションすることと、(b)ハイブリッド粒子を生成することであって、ハイブリッド粒子は、アルファウイルスRNAゲノムと、少なくとも1種のSARS-CoV-2構造タンパク質とを含む、生成することとを含む、方法が存在する。
【0013】
一実施形態では、本方法は、ハイブリッド粒子を標的細胞に感染させることであって、前記標的細胞はACE2を発現する、感染させることをさらに含む。
【0014】
別の実施形態では、レポーター遺伝子の発現は、感染の検出および定量化を容易にするシグナルを生成することができる。更なる実施形態では、シグナルは、ハイブリッド粒子による感染後、約2時間~約72時間後に読み取られる。
【0015】
別の態様では、1つ以上のSARS-CoV-2バリアントに対する対象の抗体応答を検出するための方法であって、a)前記対象からの血清試料をハイブリッド粒子とインキュベートすることと、b)インキュベートしたハイブリッド粒子を、ACE2を含む細胞に導入することと、c)前記細胞内でのレポーター遺伝子の発現を検出することであって、レポーター遺伝子の発現は、対象が、細胞のウイルス感染を阻止する中和抗体を持たないことを示し、レポーター遺伝子の無発現は、対象が、細胞のウイルス感染を阻止する抗体を持つことを示す、検出することとを含む、方法が存在する。
【0016】
一実施形態では、本方法は、1つ以上のSARS-CoV-2バリアントに対する中和抗体を有しない対象に、抗体、ワクチン、または処置を投与することをさらに含む。
【0017】
別の実施形態では、組成物は、少なくとも1種のSARS-CoV-2構造タンパク質を有するハイブリッド粒子を含み、前記構造タンパク質は、スパイクタンパク質(S)、膜タンパク質(M)、エンベロープタンパク質(E)およびヌクレオカプシドタンパク質(N)である。更なる実施形態では、本組成物は、免疫応答を開始することができるワクチンまたは粒子である。
【0018】
別の実施形態では、組成物は、4種のSARS-CoV-2構造タンパク質を含むハイブリッド粒子を含み、前記構造タンパク質は、S、E、MおよびNを含む。更なる実施形態では、組成物は、免疫応答を開始させることができるワクチンまたは粒子である。
【0019】
別の実施形態では、組成物は、ハイブリッド粒子を含み、前記組成物は、免疫応答を開始させることができるワクチンまたは粒子である。
【0020】
別の態様では、ハイブリッドベクターは、(i)5’末端のDNAプロモーターと、(ii)5’末端の第1の非翻訳領域と、(iii)アルファウイルスからの非構造タンパク質をコードするオープンリーディングフレームと、(iv)SARS-CoV-2パッケージングシグナル配列と、(v)ウイルスサブゲノムRNAプロモーターと、(vi)目的遺伝子と、(vii)3’末端の第2の非翻訳領域と、(viii)3’末端のポリAテールとを含む。幾つかの実施形態では、ハイブリッドベクターは、レポーター遺伝子をさらに含む。幾つかの実施形態では、非構造タンパク質は、RNAポリメラーゼと関連因子とを含む。幾つかの実施形態では、アルファウイルスは、セムリキ森林ウイルスを含む。幾つかの実施形態では、ハイブリッドベクターは、細胞内で導入遺伝子を発現するように構成される。幾つかの実施形態では、ハイブリッドベクターは、抗ウイルス薬、抗体および/または抗ウイルスタンパク質のスクリーニングを容易にするように構成される。
【0021】
幾つかの実施形態では、方法は、(a)SARS-CoV-2の構造成分をコードする第1のベクターと、プラス鎖RNAウイルスからのレプリコンベクターまたはアルファウイルスレプリコンベクターまたはハイブリッドベクターを含む第2のベクターとをコトランスフェクションすることを含む。ハイブリッドベクターは、(i)5’末端のDNAプロモーターと、(ii)第1の非翻訳領域と、(iii)アルファウイルスからの非構造タンパク質をコードするオープンリーディングフレームと、(iv)SARS-CoV-2パッケージングシグナル配列と、(v)ウイルスサブゲノムRNAプロモーターと、(vi)目的遺伝子と、(vii)第2の非翻訳領域と、(viii)ポリAテールとを含む。本方法はまた、ハイブリッドアルファウイルス-SARS-CoV-2(HAVS)粒子を生成し、HAVS粒子は、アルファウイルスRNAゲノムとSARS-CoV-2からの構造成分とを含む。幾つかの実施形態では、構造成分は、スパイクタンパク質(S)、膜タンパク質(M)、ヌクレオカプシドタンパク質(N)およびエンベロープタンパク質(E)から選択される少なくとも1つを含む。幾つかの実施形態では、アルファウイルスレプリコンベクターおよびハイブリッドベクターおよびプラス鎖RNAからのレプリコンベクターは、レポーター遺伝子をさらに含む。幾つかの実施形態では、非構造タンパク質は、RNAポリメラーゼと関連因子とを含む。幾つかの実施形態では、HAVS粒子は、標的細胞に感染させるように構成され、標的細胞は、ACE2を発現する。幾つかの実施形態では、レポーター遺伝子の発現は、感染の検出および定量化を容易にするシグナルを生成するように構成される。
【0022】
幾つかの実施形態では、シグナルは、HAVS粒子による感染の2~72時間後に読み取られる。幾つかの実施形態では、本方法は、SARS-CoV-2ウイルス侵入阻害剤および/またはSARS-CoV-2の中和抗体および/または抗ウイルス薬に対するスクリーニングおよび/または抗ウイルスタンパク質に対するスクリーニングを試験するように構成される。幾つかの実施形態では、ウイルス侵入阻害剤は、アルビドールを含む。
【0023】
幾つかの実施形態では、アルファウイルスRNAゲノムとSARS-CoV-2からの構造成分とを含むハイブリッドアルファウイルス-SARS-CoV-2(HAVS)粒子を含む生成物が存在する。幾つかの実施形態では、HAVS粒子は、SARS-CoV-2の構造成分をコードする第1のベクターと、プラス鎖RNAウイルスからのレプリコンベクターまたはアルファウイルスレプリコンベクターまたはハイブリッドベクターを含む第2のベクターとのコトランスフェクションによって形成され、ハイブリッドベクターは、:(i)5’末端のDNAプロモーターと、(ii)5’末端の第1の非翻訳領域と、(iii)アルファウイルスからの非構造タンパク質をコードするオープンリーディングフレームと、(iv)SARS-CoV-2パッケージングシグナル配列と、(v)ウイルスサブゲノムRNAプロモーターと、(vi)目的遺伝子と、(vii)3’末端の第2の非翻訳領域と、(viii)3’末端のポリAテールとを含み、HAVS粒子は、SARS-CoV-2ウイルス侵入阻害剤および/またはSARS-CoV-2の中和抗体を識別するように構成される。幾つかの実施形態では、ハイブリッドベクターおよびアルファウイルスレプリコンベクターおよびプラス鎖RNAからのレプリコンベクターは、レポーター遺伝子をさらに含む。幾つかの実施形態では、レポーター遺伝子は、HAVS粒子によって引き起こされる感染の検出および定量化を容易にするシグナルを生成するように構成される。幾つかの実施形態では、構造成分は、スパイクタンパク質(S)、膜タンパク質(M)、ヌクレオカプシドタンパク質(N)およびエンベロープタンパク質(E)から選択される少なくとも1つを含む。
【0024】
当該SARS-CoV-2のVLPパッケージレプリコンは、ウイルス様粒子およびナノ粒子ベースの技術分野における大幅な進歩である。これらのハイブリッドVLPは、新薬およびワクチン開発のために、SARS-CoV-2の感染をモデル化する上で特に有用である。これは、コロナウイルスの感染経路をモデル化する上で大きな進歩であり、他のウイルスファミリーにも容易に適用できる可能性がある。これはまた、輸送されたレプリコンが自然免疫応答を刺激し、目的遺伝子が標的抗原を産生することができるため、免疫療法およびワクチン開発における進歩でもある。
【0025】
ハイブリッドアルファウイルスレプリコンVLPは、新規な創薬および抗体中和アッセイに最適なモデルである。この粒子は安価に製造することができ、ウイルス侵入阻害剤の迅速な評価に使用することができる。VLPは、創薬に取り組んでいる研究室に直接販売することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A】Ha-CoV-2ベクターの設計を示す図である。
図1B】HA-CoV-2粒子をウェスタンブロットで解析した図である。
図1C】HA-CoV-2粒子をウェスタンブロットで解析した図である。
図1D】HA-CoV-2粒子をウェスタンブロットで解析した図である。
図1E】HA-CoV-2粒子をウェスタンブロットで解析した図である。
図2A】SARS-CoV-2Sタンパク質およびHa-CoV-2による標的細胞のACE2依存性感染を示す図である。
図2B】Ha-CoV-2(Luc)による標的細胞のACE2依存性感染を示す図である。
図2C】Ha-CoV-2(Luc)による標的細胞のSARS-CoV-2Sタンパク質依存性感染を示す図である。
図2D】ルシフェラーゼ発現を定量化した図を示す。
図3】Ha-CoV-2(Luc)感染におけるレポーター遺伝子発現の迅速な経時変化を示す図である。
図4A】SARS-CoV-2Sシュードタイプ化レンチウイルスとHa-CoV-2粒子との比較を示す図である。
図4B】SARS-CoV-2Sシュードタイプ化レンチウイルスとHa-CoV-2粒子との比較を示す図である。
図4C】SARS-CoV-2Sシュードタイプ化レンチウイルスとHa-CoV-2粒子との比較を示す図である。
図4D】感染経時変化におけるシュードレンチウイルスとHa-CoV-2との比較を示す図である。
図5A】Ha-CoV-2粒子による中和抗体の定量化を示す図である。
図5B】抗血清1Fの定量化を示す図である。
図5C】Ha-CoV-2(Luc)およびSARS-CoV-2で定量化された血清中和活性の相関関係を示す図である。
図5D】Ha-CoV-2(Luc)およびSARS-CoV-2で定量化された血清中和活性の相関関係を示す図である。
図5E】アルビドールの抗SARS-CoV-2活性の迅速定量化を示す図である。
図5F】アルビドールのMTT細胞毒性アッセイを示す図である。
図6A】Ha-CoV-2(Luc)粒子を集合させ、ビリオンへのSおよびNの取り込みについて解析した図を示す。
図6B】Ha-CoV-2(Luc)粒子を集合させ、ビリオンへのSおよびNの取り込みについて解析した図を示す。
図6C】Ha-CoV-2(Luc)(G614)またはHa-CoV-2(D614)を用いて標的細胞を感染させ、5時間後にLuc発現を定量化した図である。
図6D】Ha-CoV-2(Luc)バリアントの相対的な感染力を示す図である。
図6E】Ha-CoV-2(Luc)およびそのバリアントに対する抗血清の定量化を示す図である。
図6F】Ha-CoV-2(Luc)およびそのバリアントに対する抗血清の定量化を示す図である。
図7】第1世代および第2世代レプリコンを示す図である。
【0027】
図1:Ha-Cov-2粒子の設計および集合。(A)Ha-CoV-2ベクターの設計を示す図である。ベクターには、Ha-CoV-2粒子にパッケージされる全長ウイルスRNAゲノムを転写するRSVプロモーターが含まれている。5’非翻訳領域に続いて、セムリキ森林ウイルス(SFV)からの非構造タンパク質(nsp)1~4をコードするオープンリーディングフレーム、LucおよびGFPレポーター発現用のウイルスサブゲノムプロモーター、3’非翻訳領域および肝炎デルタウイルスリボザイム(RZ)によって自己切断されるポリ(A)テールが示されている。SARS-CoV-2のパッケージングシグナルは、3’非翻訳領域の前に挿入されている。ウイルス粒子を集合させるために、HEK293T細胞に、Ha-CoV-2とSARS-CoV-2の4種の構造タンパク質(S、M、EおよびN)を発現するベクターとをコトランスフェクションさせた。上清中のHA-CoV2粒子を48時間で採取し、精製、溶解し、次いでSARS-CoV-2Sタンパク質に対する抗体を用いてウェスタンブロットで解析した(B)。対照は、Ha-CoV-2ベクター単独でトランスフェクションした細胞からの上清である。(CおよびD)FALGタグ付きMおよびNを用いて粒子も集合させた。粒子は、FLAGに対する抗体を用いたウェスタンブロットで解析した。(E)抗S抗体を結合させた磁気ビーズで上清中の粒子も捕捉し、次いで粒子中のFLAGタグ付きMタンパク質について再度FLAGに対する抗体を用いてウェスタンブロットで解析した。
【0028】
図2:SARS-CoV-2Sタンパク質およびHa-CoV-2による標的細胞のACE2依存性感染。(A)HEK293T(ACE2/TMPRSS2)細胞にHa-CoV-2(GFP)粒子を感染させた。感染後48時間でGFPの発現が観察された。(B)Ha-CoV-2(Luc)による標的細胞のACE2依存性感染。HEK293T(ACE2/TMPRSS2)およびHEK293T細胞にHa-CoV-2(Luc)粒子を感染させた。ルシフェラーゼ発現を、感染してから24時間後に定量化した。(C)Ha-CoV-2(Luc)による標的細胞のSARS-CoV-2Sタンパク質依存性感染。SまたはM+E+Nの存在下または非存在下で粒子を集合させた。ルシフェラーゼ発現を、感染してから4時間後に定量化した。(D)Ha-CoV(Luc)の最適な感染力のためのM、EおよびNの要件。Sと、M、EおよびNの個々のタンパク質の組み合わせとの存在下で粒子を集合させ、ルシフェラーゼ発現を定量化した。(B)~(D)のアッセイを3連で行った。
【0029】
図3:Ha-CoV-2(Luc)感染におけるレポーター遺伝子発現の迅速な経時変化。Ha-CoV-2(Luc)粒子によるHEK293T(ACE2/TMPRSS2)細胞の感染後のルシフェラーゼ発現の6時間の経時変化。細胞にHa-CoV-2(Luc)を2時間感染させ、洗浄し、新鮮な培地で培養し、次いで溶解して異なる時点でのLuc発現を解析した。細胞へのウイルスの添加を時間「0」と定義した。感染アッセイは3連で行った。
【0030】
図4:SARS-CoV-2Sシュードタイプ化レンチウイルスとHa-CoV-2粒子との比較。(A~C)HEK293T(ACE2/TMPRSS2)およびCalu-3細胞に、等量のウイルス粒子、レンチ-CoV-2(Luc)またはHa-CoV-2(Luc)を感染させた。感染してから72時間後にルシフェラーゼアッセイによって相対的な感染を定量化した。初代サル腎臓細胞も比較のためにHa-CoV-2で感染させた。(D)感染経時変化におけるシュードレンチウイルスとHa-CoV-2との比較。HEK293T(ACE2/TMPRSS2)に、等量のウイルス粒子、レンチ-CoV-2(Luc)またはHa-CoV-2(Luc)を感染させた。相対的なLucレポーター発現を、感染してから2時間~24時間後にルシフェラーゼアッセイによって定量化した。すべての感染アッセイを3連で行った。
【0031】
図5:中和抗体の迅速なスクリーニングおよび定量化のためのHa-CoV-2粒子の検証。(A)Ha-CoV-2粒子による中和抗体の定量化。抗血清1FによるHa-CoV-2(Luc)の濃度依存的阻害と1F阻害曲線とが示されている。1Fを連続希釈し、Ha-CoV-2(Luc)粒子と37℃で1時間インキュベートした。Ha-CoV-2(Luc)-抗体複合体を用いてHEK293T(ACE2/TMPRSS2)細胞を感染させた。中和活性は、細胞にウイルスを添加してから5時間後にルシフェラーゼアッセイによって定量化した。対照血清は、健康で、感染していないドナーからのものであった。IC50は、血清濃度に対する感染の相対的割合を用いて算出した。(B)比較のため、SARS-CoV-2Sタンパク質シュードタイプ化レンチウイルス、レンチ-CoV-2(Luc)を用いて、抗血清1Fも同様に定量化した。中和活性は、感染してから72時間後にルシフェラーゼアッセイによって定量化した。(CおよびD)Ha-CoV-2(Luc)およびSARS-CoV-2で定量化された血清中和活性の相関関係。19人のドナーからの回復期血漿を、感染性SARS-CoV-2およびプラークアッセイ、またはHa-CoV-2(Luc)を用いて定量化した。中和活性をプロットし、IC50値を算出した。IC50における相関関係をプロットした。(EおよびF)アルビドールの抗SARS-CoV-2活性の迅速定量化。HEK293T(ACE2/TMPRSS2)細胞をアルビドールで1時間前処理した。アルビドールの存在下でHa-CoV-2(Luc)を細胞に感染させた。ウイルス侵入阻害は、5時間後にルシフェラーゼアッセイによって定量化した。アルビドールのMTT細胞毒性アッセイも細胞に対して行った(F)。
【0032】
図6:Ha-CoV-2バリアントの相対的な感染力の定量化および中和抗体に対するそれらの応答。(AおよびB)G614突然変異Sまたは親D614Sを有するHa-CoV-2(Luc)粒子を集合させ、ビリオンへのSおよびNの取り込みについて解析した。(C)Ha-CoV-2(Luc)(G614)またはHa-CoV-2(D614)を用いて標的細胞を感染させ、5時間後にLuc発現を定量化した。感染には同レベルのウイルス粒子を使用した。感染アッセイを3連で行った。(D)SARS-CoV-2バリアントからの9種のSタンパク質変異体のパネルを用いてHa-CoV-2(Luc)粒子を集合させ、次いで標的細胞への感染に使用した。相対的な感染力を定量化し、個々のHa-CoV-2(Luc)バリアントのゲノムRNAコピーで正規化した。WTは、元のSARS-CoV-2株に由来するHa-CoV-2を指す。感染アッセイを3連で行った。(EおよびF)Ha-CoV-2(Luc)およびそのバリアントに対する抗血清の定量化。感染した血液ドナーからの回復期血漿を、1用量ワクチン接種の前後に、Ha-CoV-2(Luc)感染の阻害について定量化した。中和活性は、感染してから12時間後にルシフェラーゼアッセイによって定量化した。IC50は、血清濃度(E)に対する感染の相対的割合を用いて算出した。ワクチン接種後の抗血清も同様に、Ha-CoV-2(Luc)バリアントの阻害について定量化した(F)。
【0033】
図7:第1世代および第2世代レプリコン。(A)複数の目的遺伝子を有する第1世代のSFVレプリコン。セムリキ森林ウイルス(SFV)に由来する単一サイクルアルファウイルスレプリコンの第1世代を示す。(B)VLPのパフォーマンスを高めるためにSARS-CoV2のパッケージングシグナルを有する第2世代。生成された第2世代のSFVレプリコンには、VLPを強化し、空粒子の量を減らすためにSARS-CoV-2パッケージングシグナルが含まれる。
【0034】
詳細な説明
COVID-19のパンデミックを制御するためには、ワクチンおよび抗ウイルス薬のタイムリーな開発が重要である1-6。ワクチン誘導性中和抗体を定量化するための現在の方法には、シュードウイルス、例えばSARS-CoV-2スパイクタンパク質(S)シュードタイプ化レンチウイルスの使用が含まれる7-14。しかしながら、これらのシュードウイルスには、SARS-CoV-2にとって外来の構造タンパク質が含まれており、感染してレポーター遺伝子を発現するのに数日が必要となる15
【0035】
以下に説明するように、本願は、中和抗体および抗ウイルス薬を迅速に定量化するための新しいハイブリッドアルファウイルス-SARS-CoV-2粒子(Ha-CoV-2)を作製および使用するための方法論を開示している。Ha-CoV-2は、SARS-CoV-2からの1つ以上の本物のウイルス構造タンパク質(S、M、NおよびE)を含む非複製型のSARS-CoV-2ウイルス様粒子である。Ha-CoV-2にはまた、アルファウイルスベースのベクターに由来するゲノムが含まれており16,28、ウイルス侵入後数時間以内に迅速かつ強固にレポーター遺伝子を発現することができる28。さらに、以下に詳述するように、Ha-CoV-2は、中和抗体、ウイルスバリアントおよび抗ウイルス薬の迅速な定量化のための堅牢なプラットフォームとして使用することができる。
【0036】
本発明者らは、中和抗体およびウイルスバリアントを迅速かつ正確に定量化するための新しいハイブリッドアルファウイルス-SARS-CoV-2(Ha-CoV-2)粒子を提供する。Ha-CoV-2は、1つ以上のSARS-CoV-2構造タンパク質(S、M、NおよびE)と、高速発現アルファウイルスベクターに由来するRNAゲノムとを含む非複製型のSARS-CoV-2ウイルス様粒子である16。Ha-CoV-2は、レポーター遺伝子、例えばGFPまたはルシフェラーゼをコードする遺伝子を3~6時間以内に標的細胞で迅速かつ強固に発現することができる。さらに、Ha-CoV-2は、中和抗体、ウイルスバリアントおよび抗ウイルス薬の迅速な定量化のためのプラットフォームを提供する。加えて、概念実証として、本発明者らは、10種のHa-CoV-2バリアント分離株のパネル(D614G、P.1、B.1.1.207、B.1.351、B.1.1.7、B.1.429、B.1.258、B.1.494、B.1.2、B.1.1298)の相対的な感染力を集めて比較し、これらのバリアントが概して2~10倍高い感染性を持つことを実証した。さらに、感染しワクチン接種を受けた個体からの抗血清を定量化することによって、モデルナmRNA-1273の1回ワクチン接種で抗血清力価が約6倍と大幅に増加した。また、ワクチン接種後の血清は、試験した9種のバリアントすべてに対してさまざまな中和活性を示した。
【0037】
これらの結果は、Ha-CoV-2が、SARS-CoV-2およびそのバリアントに対する中和抗体の迅速な定量化のための堅牢なプラットフォームとして使用できることを実証した。
【0038】
本組成物および方法論は、一般に、当該技術分野で周知の従来の方法に従って、別段の指示がない限り、本明細書を通じて引用および議論されるさまざまな一般的およびより具体的な文献に記載されているように行われる。本明細書の実施形態、および本明細書に記載される他の関連分野に関連して使用される名称、手順および技術は、当該技術分野において周知であり、よく使用されるものである。
【0039】
本明細書で使用される「SARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)」という用語は、COVID-19パンデミックの原因となる呼吸器疾患であるコロナウイルス疾患2019(COVID-19)を引き起こすコロナウイルスの株を指す。SARS-CoV-2は、ヒトに感染するプラス鎖一本鎖RNAウイルスである。
【0040】
本明細書で使用される「アルファウイルス」は、トガウイルス科の30種を超えるウイルスの属を指し、節足動物、特に蚊によって伝播される、脂質エンベロープ型のプラス鎖RNAウイルスであり、これには、マヤロウイルス、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス、チクングニアおよびウマ脳炎の原因物質が含まれる。本願は、本ハイブリッドSARS-CoV-2ベクターの骨格としてアルファウイルスレプリコンを開示しているが、3種の門(キトリノウイルス門(Kitrinoviricota,)、レナルウイルス門(Lenarviricota)、ピスウイルス門(Pisuviricota))の一本鎖プラス鎖RNAウイルスからのレプリコンを使用することができる。
【0041】
本明細書で使用される「ワクチン」は、投与すると活性免疫を生じ、それらのウイルスもしくは細菌または関連するウイルスもしくは細菌に対する保護を提供する、ウイルスまたは細菌に由来する抗原の懸濁液を指す。
【0042】
本明細書で使用される「ウイルス様粒子(VLP)」は、ウイルスによく似ているが、ウイルス遺伝物質を含まないため非感染性である分子を指す。VLPは、天然に存在するものであっても、ウイルス構造タンパク質を個別に発現することにより合成したものであってもよく、次いで自己集合してウイルス様構造になることができる。異なるウイルスの構造カプシドタンパク質を組み合わせて、組み換えVLPを作り出すことができる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「ハイブリッド粒子」は、野生型ウイルスによく似ている少なくとも1つの構造タンパク質(S、M、NおよびE)を有するハイブリッドアルファウイルス-SARS-CoV-2ウイルスベクター(Ha-CoV-2)を指す。本願を通じて使用されるように、ハイブリッド粒子は、ハイブリッドアルファウイルス-SARS-CoV-2ベクター(HAVS)またはHa-CoV-2と互換的に使用され、3つの用語は同義であり、同じハイブリッド粒子を意味する。一実施形態では、本Ha-CoV-2は、SARS-CoV-2の1種の構造タンパク質(S、M、EおよびN)のみを含み得る。他の実施形態では、本Ha-CoV-2は、SARS-CoV-2の2種以上の構造タンパク質(S、M、EおよびN)を含み得る。さらに他の実施形態では、本Ha-CoV-2は、SARS-CoV-2の3種以上の構造タンパク質(S、M、EおよびN)を含み得る。ハイブリッド粒子はまた、数時間以内にレポーター遺伝子を迅速に発現することができるアルファウイルスに由来するレポーター(GFPまたはLuc)レプリコンを含み得る。幾つかの実施形態では、ハイブリッド粒子は、感染した標的細胞内で高レベルの導入遺伝子を発現することができ、それによって、感染力を追跡するための新規なプラットフォームを提供し、抗ウイルス薬および中和抗体の迅速なスクリーニングを容易にし、さらにはワクチンなどの新しい組成物を提供する。
【0044】
「SARS-CoV-2構造タンパク質」は、成熟して集合したウイルス粒子の構成要素であるウイルスタンパク質を指す。それらには、ヌクレオカプシドのコアタンパク質(gagタンパク質)、ウイルス粒子内にパッケージされた酵素(polタンパク質)および膜成分(envタンパク質)などが含まれ得る。これに関連して、SARS-CoV-2は4種類の構造タンパク質、スパイクタンパク質(S)、膜タンパク質(M)、エンベロープ(E)タンパク質およびヌクレオカプシド(N)を有している。
【0045】
本明細書で使用される「レンチウイルス」という用語は、ヒトおよび他の哺乳類種において、長い潜伏期間を特徴とする慢性および致命的な疾患を引き起こすレトロウイルスの属として定義される。最もよく知られているレンチウイルスは、エイズを引き起こすヒト免疫不全ウイルス(HIV)である。レンチウイルスはまた、類人猿、ウシ、ヤギ、ウマ、ネコ、ヒツジにも宿主としてある。最近では、サル、キツネザル、マレーヒヨケザル(真のキツネザルでも霊長類でもない)、ウサギおよびフェレットでもレンチウイルスが見つけられている。レンチウイルスおよびその宿主は世界中に分布している。レンチウイルスは、相当量のウイルスcDNAを宿主細胞のDNAに組み込むことができ、非分裂細胞に効率よく感染することができるため、遺伝子導入の最も効率的な方法の1つである。
【0046】
本明細書で使用される「ACE2受容体」は、アンジオテンシン変換酵素2を指し、大きめのタンパク質であるアンジオテンシノーゲンを切断して小さなタンパク質を生成し、次いで細胞内で機能を制御し続ける酵素である。ACE2は、肺、心臓、血管、腎臓、肝臓および消化管を含む、多くの細胞型および組織に存在する。これは、特定の組織の内側を覆い、保護バリアを作り出す上皮細胞に存在する。SARS-CoV-2ウイルスは、表面のスパイク状タンパク質を使用して、細胞に侵入して感染する前に鍵穴に差し込まれる鍵のようにACE2に結合する。したがって、ACE2は細胞の出入口として、COVID-19を引き起こすウイルスの受容体として機能する。
【0047】
本明細書で使用される「TMPRSS2」は、膜貫通型プロテアーゼ、セリン2を指し、ヒトではTMPRSS2遺伝子によってコードされる酵素である。幾つかのコロナウイルス、例えば、2003年のSARSコロナウイルスとSARS-CoV-2とのいずれも、TMPRSS2によって活性化され、ひいてはTMPRSS2阻害剤によって阻害されることができる。「SARS-CoV-2」は、侵入にSARS-CoV受容体ACE2を用い、Sタンパク質のプライミングにセリンプロテアーゼTMPRSS2を用いる。
【0048】
A.ハイブリッドアルファウイルス-SARS-CoV-2ウイルス粒子
本発明者らは、中和抗体および抗ウイルス薬のスクリーニング評価のための迅速な細胞ベースのSARS-CoV-2感染システムを確立するために、標的細胞でレポーター遺伝子を迅速に発現するためのアルファウイルスベースのRNAゲノムを封入した新しいハイブリッドアルファウイルス-SARS-CoV-2ウイルス粒子(図1A)を開発した。
【0049】
SARS-CoV-2の創薬およびワクチン開発には、シュードウイルスおよびウイルス様粒子(VLP)が広く使用されている。シュードウイルス、例えばレンチウイルスおよび水疱性口内炎ウイルスに由来するものなどは、SARS-CoV-2の侵入プロセスを模倣することができる。しかしながら、構造的にはSARA-CoV-2とは大きく異なり、SARS-CoV-2のM、EおよびNによって提供される構造要素が欠如している。VLPは、SARS-CoV-2粒子によく似ているが、VLPには、標的細胞内でのレポーター発現のためのゲノムは含まれていない(文献35)。
【0050】
以下、本発明者らは、構造的にはVLPであるが、標的細胞に侵入してレポーター遺伝子を発現するシュードウイルスの能力を有する新規なハイブリッドシステム、Ha-CoV-2粒子の開発および検証について説明する。Ha-CoV-2のゲノムはアルファウイルスに由来しており、ウイルス侵入後数時間以内にレポーター発現を迅速かつ強固に定量化することが可能である。以下に説明するように、Ha-CoV-2は、中和抗体、ウイルスバリアントおよび抗ウイルス薬の迅速なスクリーニングおよび定量化に使用できることが実証された。
【0051】
一実施形態では、ゲノムRNAは、5’非翻訳領域と、セムリキ森林ウイルス(SFV)に由来する非構造タンパク質(nsp)1~4(nsp1~4)をコードするオープンリーディングフレームとからなり(文献16、29)、nspl-4を含めることで、細胞におけるRNAゲノムの自己増幅が可能となる。RNAゲノムには、レポーター遺伝子(例えばルシフェラーゼ)の発現のためのウイルスサブゲノムRNAプロモーターも含まれている。ゲノムの3’末端には、SFVの3’非翻訳領域とRNAの安定化に用いられるポリ(A)テールとが含まれている。加えて、SARS-CoV-2構造タンパク質NによるRNAパッケージングを促進するために、レポーター遺伝子の下流に推定SARS-CoV-2パッケージングシグナルが挿入された。
【0052】
ウイルス粒子を集合させるために、DNAベクターであるHa-CoV-2を使用してゲノムRNAを発現した。Ha-CoV-2ベクターは、SARS-CoV-2の構造タンパク質(S、M、EおよびN)を発現するベクターとHEK293T細胞内でコトランスフェクションした(図1A)。コトランスフェクションから48時間後にウイルス粒子を採取し、ビリオンの感染力と標的細胞内でのレポーター遺伝子の発現能力とを試験した。
【0053】
まず、Ha-CoV-2粒子におけるSARS-CoV-2構造タンパク質の存在を確認するために、SARS-CoV-2のSタンパク質に対する抗体を用いて、精製粒子のウェスタンブロットを行ったところ、Ha-CoV-2粒子にSの存在が検出された(図1B)。
【0054】
SARS-CoV-2の他の構造タンパク質の存在をさらに調べるために、FLAGタグ付きMおよびNタンパク質を用いてHa-CoV-2粒子を集合させ、抗FLAG抗体を用いてウェスタンブロットを行った。Ha-CoV-2粒子において、MとNとのいずれの存在も検出された(図1Cおよび1D)。
【0055】
さらに、これらの構造タンパク質が同じビリオン粒子に存在するかどうかを調べるために、抗S抗体が結合した磁気ビーズを用いてHa-CoV-2粒子をプルダウンした。磁気的に分離された粒子をさらに抗FLAG抗体を用いたウェスタンブロットでプローブし、FLAGタグ付きMタンパク質の存在について調べた。図1Eに示すように、抗S抗体プルダウン粒子にはMの存在が検出され、SARS-CoV-2構造タンパク質とHa-CoV-2ベクターとのコトランスフェクションによりSARS-CoV-2ウイルス様粒子(VLP)の産生につながることが確認された。
【0056】
B.Ha-CoV-2(GFP)レポーターウイルス
Ha-CoV-2粒子が標的細胞に感染してレポーター遺伝子を発現する能力をさらに実証するために、Ha-CoV-2(GFP)レポーターウイルスを集合させ、ACE2とTMPRSS2とのいずれも過剰発現するHEK293T(ACE/TEMPRSS2)細胞の感染に使用した。
【0057】
感染後の細胞内でGFPの発現が確認され(図2A)、このことから、アルファウイルスベースのRNAゲノムは、出芽中のSARS-CoV-2VLPによってパッケージングされ、標的細胞内でGFPレポーター遺伝子を発現できることが実証された。
【0058】
Ha-CoV-2による標的細胞の感染がSとACE2受容体との相互作用に依存しているかどうかを調べるために18,30、Ha-CoV-2(Luc)レポーターウイルスを集合させ、HEK293T(ACE/TEMPRSS2)細胞および親HEK293T細胞に同時に感染させるのに使用した。図2Bに示すように、Ha-CoV-2(Luc)はHEK293T(ACE/TEMPRSS2)細胞内で高レベルのLucを発現したが、HEK293Tでは最小レベルのLucを発現し、Ha-CoV-2感染にACE2が必要であることが実証された。
【0059】
S-ACE2相互作用の要件をさらに確認するために、Sタンパク質を用いずに粒子を生成した。図2Cに示すように、Sの非存在下では、Luc発現は非常に低下し、Ha-CoV-2感染にSが必要であることが実証された。他の構造タンパク質であるM、NおよびEについても、Ha-CoV-2感染にM、NおよびEが必要であるかを試験した。これらのタンパク質は必須ではないことが判明したが、M、NおよびEを除去すると、Ha-CoV-2の感染が減少した(図2C)。Ha-CoV-2感染におけるM、NおよびEの寄与を調べたところ、一般に、これらの構造タンパク質が2つまたは3つ集合した粒子は、タンパク質を1つだけ含む粒子よりも高いレベルの感染を引き起こすように思われた。しかしながら、Ha-CoV-2の完全な感染力には、SとEとが存在すれば十分であるように思われる(図2D)。
【0060】
アルファウイルスベースのRNAゲノムをHa-CoV-2に使用する大きな利点は、アルファウイルスの極めて高速かつ高レベルな遺伝子発現にある。サブゲノムRNAプロモーターからの遺伝子発現は、感染してから数時間以内に起こり、ウイルスのプラスRNAのレベルは単一細胞内で200,000コピーにも達し得る(文献16、28)。Ha-CoV-2(Luc)感染の経時変化に従って、Lucレポーター発現は、細胞への粒子の添加から6時間以内に急速に増加することが確認された(図3)。この迅速なレポーターの発現動態により、Ha-CoV-2を用いて中和抗体および抗ウイルス薬の迅速なスクリーニングおよび定量化が可能になる。
【0061】
C.Ha-CoV-2とシュードレンチウイルスとの比較
レンチベースのSARS-CoV-2シュードタイプウイルスは、抗ウイルス薬のスクリーニングおよび中和抗体のアッセイによく使用されている(文献10、14)。ACE2過剰発現細胞とネイティブレベルのACE2を発現する細胞との両方の感染について、Ha-CoV-2とシュードレンチウイルスとの比較を行った。シュードレンチウイルスとHa-CoV-2粒子とを、同様の細胞培養条件で集合させ、等量の粒子を感染に使用した。シュードレンチウイルスとHa-CoV-2とのいずれも、ACE2過剰発現HEK293T(ACE2/TMPRESS2)細胞に感染することができる(図4A)。しかしながら、ネイティブレベルのACE2を発現するヒト肺癌細胞であるCalu-3の感染はシュードレンチウイルスでは最小であったが(文献31)、一方で、Ha-CoV-2粒子はCalu-3細胞の感染に対してはるかに高いシグナルを生じた(図4B)。Ha-CoV-2による初代ヒトACE2-ヌルサル腎臓細胞の感染は、非感染細胞バックグラウンドを超えるシグナルを生成しなかった(図4C)。これらの結果は、Ha-CoV-2が低ACE2発現細胞の感染に対してより感受性が高い可能性があることを実証している。
【0062】
さらに、Ha-CoV-2の感染経時変化を追跡し、シュードレンチウイルスの感染変化と比較した。図4Dに示すように、Ha-CoV-2感染では、Lucレポーター発現が早ければ2~4時間で検出可能になり、一方で、シュードレンチウイルス感染では、24時間後に初めてLucレポーター発現が検出可能になった。加えて、Ha-CoV-2感染でのレポーター発現はより強固で、24時間までに、シュードレンチウイルス感染から生成されたものより約150倍高いレベルに達した。
【0063】
Ha-CoV-2とシュードレンチウイルスとの直接比較は、抗体中和アッセイでも行われた。どちらのシステムも中和抗体の定量化に有効であるが、2つのシステムの感度は異なっている。シュードレンチウイルスにはSARS-CoV-2のSタンパク質のみが含まれるが、幾つかの実施形態では、Ha-CoV-2にはSARS-CoV-2の4種の構造タンパク質すべて(S、M、EおよびN)を含み、他のウイルスからの構造タンパク質(例えば、レンチウイルスのgagおよびpol)は有しない。もちろん、他の実施形態では、本Ha-CoV-2は、SARS-CoV-2の1種の構造タンパク質(S、M、EおよびN)のみを含んでいてもよいことが理解される。他の実施形態では、本Ha-CoV-2は、SARS-CoV-2の2種以上の構造タンパク質(S、M、EおよびN)を含んでいてもよい。さらに他の実施形態では、本Ha-CoV-2は、SARS-CoV-2の3種以上の構造タンパク質(S、M、EおよびN)を含んでいてもよい。例えば、決して限定するものではないが、一実施形態では、本Ha-CoV-2は、Sを含んでいてもよい。別の実施形態では、本Ha-CoV-2は、SおよびEを含んでいてもよい。他の実施形態では、本Ha-CoV-2は、S、EおよびMタンパク質を含んでいてもよいか、またはS、EおよびNタンパク質を含んでいてもよい。他の実施形態では、本Ha-CoV-2は、S、E、MおよびNを含んでいてもよい。
【0064】
Sはウイルス侵入の主要な要件であるが、SARS-CoV-2の他の構造タンパク質の存在も、ビリオン感染力およびビリオン粒子ならびに細胞膜および抗体との相互作用に影響を与える可能性がある。本システムでは、ビリオン粒子上のMおよびEの欠如は、ウイルス感染に影響を与えると思われる(図2D)。
【0065】
ウイルス構造タンパク質に加えて、ビリオン粒子は、ビリオンの出芽と放出中に複数の細胞性タンパク質も取り込む。PSGL-1などのこれらの細胞因子の多くは、ビリオン感染力(文献15、36-38)および細胞膜への抗体結合(文献39)に影響を与える可能性がある。SARS-CoV-2の出芽は、主にER-ゴルジ体中間コンパートメントの膜で起こり(文献40)、一方で、レンチシュードウイルスは細胞膜から出芽する(文献41)。この違いにより、レンチシュードウイルスとSARS-CoV-2とには、異なる細胞内タンパク質のセットが組み込まれ得る可能性がある。この点から、Ha-CoV-2粒子がSARS-CoV-2によく似ていることは、SARS-CoV-2感染および病原におけるビリオンの宿主タンパク質の影響を研究するためのユニークなツールを提供することができる(文献15)。
【0066】
D.中和抗体の迅速なスクリーニングおよび定量化のためのHa-CoV-2
中和抗体の迅速なスクリーニングおよび定量化のためのHa-CoV-2を検証するために、抗SARS-CoV-2抗血清(1F)を試験し、これを連続希釈してHa-CoV-2(Luc)とプリインキュベートした。抗体-ウイルス複合体を用いて細胞を5時間感染させ、Luc発現を行った。図5Aに示すように、Ha-CoV-2(Luc)の1F濃度依存的な阻害が観察され、IC50は1:433希釈で調べた(図5A)。SARS-CoV-2シュードレンチウイルスが中和アッセイで広く使用されていることから4,8,14、1Fとシュードレンチウイルスであるレンチ-SARS-CoV-2(Luc)とを用いて同様のアッセイを行った15。感染した細胞を、感染してから72時間後に解析した。シュードレンチウイルスについても同様の1F濃度依存性阻害を観察し、IC50は1:186希釈であることが判明した(図5B)。これらの結果から、Ha-CoV-2は中和抗体の定量化においてシュードレンチウイルスと同等の効果があるが、その速度がはるかに速い(5~12時間対48~72時間)ことが実証された。
【0067】
上記の1Fの結果に基づき、Ha-CoV-2ベースの中和アッセイの追加検証を、19人のドナーの回復期血漿を用いて行った。各血清の阻害曲線およびIC50は、図5Cに提示されている。比較のために、感染性SARS-CoV-2を用いて独立した定量化を行って、これらの抗血清を検証した。Ha-CoV-2とSARS-CoV-2とから得られたIC50値には、直接的な相関関係(r=0.87)が観察された(図5D)。これらの結果から、Ha-CoV-2が中和抗体の迅速な定量化に使用できることが実証された。
【0068】
シュードウイルスは、SARS-CoV-2侵入阻害剤のハイスループットスクリーニングにもよく用いられている(文献7、10)。そのため、広域スペクトルのウイルス侵入阻害剤であるアルビドール(ウミフェノビル)(文献32)を、Ha-CoV-2(Luc)感染を阻止するその能力のために使用した。図5Eに示すように、Ha-CoV-2(Luc)の用量依存性阻害が5時間で観察され、IC50は16pMと決定された。これらの結果から、Ha-CoV-2はSARS-CoV-2侵入阻害剤の迅速なスクリーニングに使用できることが示された。
【0069】
E.Ha-CoV-2によるウイルスバリアントの相対的な感染力の迅速な評価
SARS-CoV-2が循環し進化し続ける中、英国におけるB.1.1.7系統の最近の出現で記録されているように、ウイルスバリアントはCOVID-19パンデミックの制御にとって特に難しい課題となっている(文献42)。ウイルス突然変異は、ウイルスの伝播および適応の増加につながる可能性があり、ひいてはウイルスの感染力の変化および中和抗体への応答に変化について、新興バリアントの迅速な同定および特性評価が急務となっている。本Ha-CoV-2システムは、ウイルスバリアントを迅速に定量化し、中和抗体およびワクチンの有効性に影響を与える可能性のある強固なプラットフォームを提供することができる。
【0070】
本Ha-CoV-2システムを、ウイルスバリアントの相対的な感染力を迅速に評価するために試験した。D614Gスパイク突然変異は、COVID-19パンデミックの初期に出現し、最近、より大きな感染力を付与することが報告され、そのためD614G変異体の循環が世界的に優勢になった(文献33、34)。Ha-CoV-2システムでウイルス感染力の増加を再現および定量化できるかどうかを調べるために、G614変異体Sタンパク質(G614)または親Sタンパク質(D614)を用いてHa-CoV-2粒子を集合させた。D614G突然変異はビリオン放出またはSタンパク質のビリオン取り込みレベルを増加させないことが判明した(図6Aおよび6B)。しかしながら、G614スパイクを持つHa-CoV-2粒子は、D614スパイクを持つ粒子よりも感染力がほぼ3倍高いことが判明した(図6C)。
【0071】
ブラジルバリアント(P.1)、南アフリカバリアント(B.1.351)、英国バリアント(B.1.1.7)、カリフォルニアバリアント(B.1.429)、その他幾つかの新興バリアント(B.1.2、B.1.494、B.1.1.207、B.1.258、およびB.1.1.298)を含む、循環しているSARS-CoV-2バリアント(GISAIDグローバルリファレンスデータベースから選択、表1)に由来する9種のHa-CoV-2(Luc)分離株を寄せ集めた。Ha-CoV-2(Luc)および関連するSタンパク質バリアントを用いて標的細胞を感染させ、相対的な感染力を定量化した。
【表1】
*SARS-CoV-2の系統識別およびバリアントの命名はGISAID(https://www.gisaid.org)から得た;スパイクタンパク質における突然変異および各分離株の配列アクセッション番号が一覧にされている。
【0072】
図6Dに示すように、ゲノムRNAコピーで正規化すると、これらのバリアントは、一般に、元の親Ha-CoV-2(Luc)よりも感染力が2~10倍高い。これらの結果は、Ha-CoV-2がウイルスバリアントの迅速なモニタリングおよび定量化のための便利なツールを提供できることを実証した。概念実証として、ウイルスバリアントを中和する抗血清の能力を定量化した。感染したドナーから回復期血漿を取得し、次いでモデルナmRNA-1273を1回ワクチン接種した。この1回ワクチン接種により、抗血清力価が約6倍と大幅に増加した(図6E)。さらに、Ha-CoV-2(Luc)バリアントを試験すると、ワクチン接種後の血清は、試験したすべてのバリアントに対して中和活性を有することが判明した(図6F)。とはいえ、中和活性はバリアント間で大きく異なり、抗血清はB.1.494に対する中和活性が最も高く(IC50、1:6872)、B.1.1.429バリアントに対する活性が最も低い(IC50、1:1106)。
【0073】
これらの結果は、Ha-CoV-2がSARS-CoV-2バリアントの迅速な定量化に使用でき、中和抗体およびワクチン効果に影響を与える可能性があることを実証している。
【0074】
F.Ha-CoV-2の方法論
本Ha-CoV-2粒子は、(1)COVID侵入に対する薬物スクリーニング;(2)アルファウイルスレプリカーゼ侵入に対する薬物スクリーニング;(3)抗体の測定用;および(4)免疫応答の刺激を必要とする対象における免疫応答の刺激を含むが、これらに限定されない、さまざまな用途に使用することができる。
【0075】
例えば、本Ha-CoV-2粒子を使用して、対象のための個別化された医療処置を決定し提供するための手段として、SARS-CoV-2バリアントのパネルに対する対象の抗体を測定することができる。例えば、所定の対象者は、ブラジルバリアント(P.1)、南アフリカバリアント(B.1.351)および英国バリアント(B.1.1.7)などの一部のSARS-CoV-2バリアントに対する抗体を有している可能性はあっても、対象は、例えば、カリフォルニアバリアント(B.1.429)および幾つかの他の新興バリアント(B.1.2、B.1.494、B.1.1.207、B.1.258およびB.1.1.298)に対する抗体は有していない可能性がある。
【0076】
別の例では、対象は、英国バリアント(B.1.1.7)が優勢なバリアントであるイギリスなどの特定の国に旅行する前に抗体を検査することを望むかもしれない。もちろん、場所および優勢なバリアントは時間とともに変化する可能性があるので、当業者であれば、特定の場所または地理において、関連する時間に優勢なバリアントを検査することを知っているだろう。このようにして、本Ha-CoV-2粒子を使用して、旅行前に対象のための個別化された医療処置を決定し提供するための手段として、所定の地理で知られているSARS-CoV-2バリアントに対する対象の抗体を測定することができる。この点から、また、対象が特定のバリアントに対する中和抗体を有していない場合、対象は、特定の場所、国、または地理に旅行する前に、抗体、ワクチンまたは処置を受けることができる。
【0077】
別の実施形態では、本Ha-CoV-2粒子は、ウイルス侵入を阻害する薬物および他の小分子のスクリーニングに使用することができる。例えば、化合物がウイルス侵入を阻止するかどうかは、
a)ウイルス侵入阻害剤、中和抗体、または抗ウイルスタンパク質もしくは薬物からなる群から選択される化合物を取得することと、
b)化合物を本ハイブリッド粒子とインキュベートすることと、
c)インキュベートしたハイブリッド粒子を、ACE2を含む細胞に導入することと、
d)前記細胞内でレポーター遺伝子発現を検出することであって、レポーター遺伝子の発現は細胞の感染を示す、検出することと
によって決定することができる。
【0078】
以下の実施例は、例示であり、本開示を限定するものではない。実際、本明細書に示され、説明されたものに加えて、さまざまな改変が、前述の説明から当業者に明らかになり、本開示の範囲内に入るであろう。
【0079】
実施例1:ウイルスおよびウイルス粒子の集合
SARS-CoV-2の研究では、一般的な臨床・研究室での感染性ウイルスの使用を制限する高レベルの封じ込めが必要である。SARS-CoV-2の創薬およびワクチン開発には、シュードウイルスおよびウイルス様粒子(VLP)が広く使用されている。シュードウイルス、例えばレンチウイルスおよび水疱性口内炎ウイルスに由来するものなどは、SARS-CoV-2の侵入プロセスを模倣することができる。しかしながら、構造的にはSARA-CoV-2とは大きく異なり、SARS-CoV-2のM、EおよびNによって提供される構造要素が欠如している。VLPは、SARS-CoV-2粒子によく似ているが、VLPには、標的細胞内でのレポーター発現のためのゲノムは含まれていない(文献35)。
【0080】
以下、本発明者らは、構造的にはVLPであるが、標的細胞に侵入してレポーター遺伝子を発現するシュードウイルスの能力を有する新規なハイブリッドシステム、Ha-CoV-2粒子の開発および検証について説明する。Ha-CoV-2のゲノムは、セムリキ森林ウイルス(SFV)、チクングニアウイルス(CHIKV)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)などのアルファウイルスに由来しており、ウイルス侵入後数時間でレポーター発現を迅速かつ強固に定量化することが可能である。以下に説明するように、Ha-CoV-2は、SARS-CoV-2およびアルファウイルスに対する中和抗体、ウイルスバリアントおよび抗ウイルス薬の迅速なスクリーニングおよび定量化、ならびに免疫応答の刺激に使用できることが実証された。
【0081】
SARS-CoV-2S、S(D614G)、M、EまたはN発現ベクターは、Sinobiological社から購入した。Ha-CoV-2(Luc)およびHa-CoV-2(GFP)ベクター、ならびにSタンパク質バリアントは、GISAIDグローバルデータベース(第1表)で識別された分離株から選択し、Twist Bioscience社によって合成した。Ha-CoV-2粒子は、10cmディッシュに入れたHEK293T細胞を、各2.5μgのSARS-CoV-2構造タンパク質発現ベクター(S、N、E、M)と10μgのHa-CoV-2(Luc)またはHa-CoV-2(GFP)とコトランスフェクションすることによって集合させた。コトランスフェクションから48時間後に粒子を採取し、0.45μmのフィルターで濾過し、次いで勾配遠心分離によって濃縮した。
【0082】
レンチシュードウイルスは、以前に記載されたように15、HEK293T細胞をSARS-CoV-2S発現ベクター(0.5μg)、pCMVΔR8.2(7.5μg)およびpLTR-Tat-IRES-Luc(10μg)とコトランスフェクションすることによって集合させた。
【0083】
実施例2:構造タンパク質のHa-CoV-2ビリオン取り込みの検出
SARS-CoV-2 M-FLAGおよびN-FLAGベクターは、Zhang et al. A systemic and molecular study of subcellular localization of SARS-CoV-2 proteins. Signal Transduct Target Ther5, 269, doi:10.1038/s41392-020-00372-8 (2020)に開示されているように使用した(文献43)。HEK293T細胞を、10μgのHa-CoV-2(Luc)、2.5μgのSARS-CoV-2S発現ベクターおよび各2.5μgのMフラグ、NフラグおよびEフラグのベクターとコトランスフェクションした。粒子を採取し、0.45μmのフィルターで濾過し、次いで勾配遠心分離によって精製した。ビリオンライセートをSDS-PAGEで解析し、スパイクタンパク質S2モノクローナル抗体(1A9)(Invitrogen社)(1:1000希釈)またはDYKDDDDKタグモノクローナル抗体(FG4R)(Invitrogen社)(1:1000希釈)を用いてウェスタンブロットを行った。次いで、膜を抗マウスIgG、HRP結合抗体(Cell signaling社)(1:2000希釈)とともに室温で60分間インキュベートした。化学発光シグナルは、West PicoまたはWest Femto化学発光試薬(Thermo Fisher Scientific社)を使用して検出した。画像はCCDカメラ(FluorChem 9900イメージングシステム)(Alpha Innotech社)を用いて取り込んだ。粒子はまた、解析のために磁気ビーズで取り込んだ。簡単に言うと、磁性Dynabeads Pan Mouse IgG(Invitrogen社)(2xl0個のビーズ/50μl)に、スパイクタンパク質S2モノクローナル抗体(1A9)(Invitrogen社)(2μl抗体)を室温で30分間コンジュゲートした。コンジュゲーション後、ビリオンを抗S2-ビーズと4℃で30分間インキュベートし、磁石で引き下げた。冷PBSで5回洗浄した後、ビリオンをLDSライセートバッファー(Invitrogen社)で溶解した。ライセートをSDS-PAGEで解析し、DYKDDDDKタグモノクローナル抗体(FG4R)(Invitrogen社)(1:1000希釈)を用いてウェスタンブロットを行い、FLAGタグ付きSARS-CoV-2Mタンパク質を検出した。
【0084】
実施例3:ウイルス感染力アッセイ
Ha-CoV-2粒子を用いて、HEK293T(ACE2/TMPRSS2)細胞(Virongy LLC社(バージニア州マナッサス在)からの寄贈)、Calu-3細胞(ATCC)、HEK293T細胞(ATCC)およびXuefeng Liu博士によって提供された初代サル腎臓細胞に感染させた。簡単に言うと、細胞を12ウェルプレートに播種した(1ウェル当たり2×l0細胞)。細胞を37℃で1~2時間感染させ、洗浄し、新鮮な培地で3~48時間培養し、次いでルシフェラーゼアッセイ溶解バッファー(Promega社)で溶解し、GloMax Discoverマイクロプレートリーダー(Promega社)を用いてルシフェラーゼ活性を調べた。レンチシュードタイプウイルス粒子を用いて、HEK293T(ACE2/TMPRSS2)細胞およびCalu-3細胞(ATCC)に感染させた。細胞を2時間感染させ、3日間培養した後、ルシフェラーゼアッセイバッファー(Promega社)で溶解し、GloMax Discoverマイクロプレートリーダー(Promega社)を用いたルシフェラーゼアッセイを行った。
【0085】
実施例4:中和抗体アッセイ
Ha-CoV-2粒子をCOVID19患者の血清で連続希釈したものと1時間プレインキュベートした後、HEK293T(ACE2/TMPRSS2)細胞に2時間添加した。次いで、細胞を洗浄し、新鮮な培地でさらに3~24時間培養した。細胞を、ルシフェラーゼアッセイ溶解バッファー(Promega社)で溶解し、GloMax Discoverマイクロプレートリーダー(Promega社)を用いたルシフェラーゼアッセイを行った。野生型SARS-CoV-2ウイルスを用いた中和アッセイでは、抗血清を連続希釈し(1:10希釈から始まる12点の2倍希釈系列)、100pfuのSARS-CoV-2と37℃で1時間プレインキュベートした。インキュベーション後、ウイルス力価を定量化するためにウイルスプラークアッセイを実施した。簡単に言うと、12ウェルプレート(1ウェル当たり2×l0細胞)のVero細胞(ATCC)を、37℃で1時間、ウイルスに感染させた。感染後、0.6%アガロースと、10%ウシ胎児血清(FBS)(Gibco社)を補充したフェノールレッド(Quality Biological社)なしの2X EMEMとからなる1:1オーバーレイを、各ウェルに添加した。プレートを37℃で48時間インキュベートした。細胞を10%ホルムアルデヒドで室温にて1時間固定し、次いでアガロースオーバーレイを除去した。細胞はクリスタルバイオレット(20%エタノール溶液中の1%CV(w/v))で染色した。SARS-CoV-2のウイルス力価は、プラークの数を数えることによって決定した。
【0086】
実施例5:抗ウイルス薬アッセイ
アルビドール-塩酸塩(Sigma社)をジメチルスルホキシド(Sigma社)に再懸濁した。HEK293T(ACE2/TMPRSS2)細胞を、連続希釈されたアルビドールで1時間前処理した。Ha-CoV-2粒子を細胞に添加し、それに続けて、薬物濃度を維持するためにアルビドールを添加した。細胞をアルビドールの存在下で2時間感染させ、洗浄し、次いで新鮮な培地で計5時間培養した。細胞を、ルシフェラーゼアッセイ溶解バッファー(Promega社)で溶解し、GloMax Discoverマイクロプレートリーダー(Promega社)を用いたルシフェラーゼアッセイを行った。
【0087】
実施例6.中和抗体の迅速な検出および定量化のためのハイブリッド粒子
患者血清サンプルを、遠心分離によりドナー血液から採取した。HAVS(Luc)粒子(Ha-CoV-2とも呼ばれる)を抗血清(1:60希釈)とともに37℃で1時間インキュベートし、次いでHEK293T(ACE2+TMPRSS2)細胞を5時間感染させるために用いた。中和活性はルシフェラーゼアッセイで測定した。感染していない健康なドナーの血清を対照として用いた。抗血清1Fの用量依存性阻害は、HAVS(Luc)粒子を用いて定量化した。阻害治癒は、血清を連続希釈(一連の1:2希釈)し、HAVS(Luc)粒子と37℃で1時間インキュベーションすることで生成した。HAVS(Luc)-抗体複合体を用いて、HEK293T(ACE2+TMPRSS2)細胞を5時間感染させた。中和活性はルシフェラーゼアッセイで測定した。IC50は、感染の相対的な割合と血清濃度の相対的な対数とを用いて算出した。比較のために、抗血清1Fの用量依存性阻害を、SARS-CoV-2Sシュードタイプ化レンチウイルス(LTR-Tat-Luc)を用いて定量化した。阻害治癒は、血清を連続希釈(1:2希釈の連続)し、LTR-Tat-Lucシュードウイルスと37℃で1時間インキュベートすることで生成した。シュードウイルス-抗体複合体を用いて、HEK293T(ACE2+TMPRSS2)細胞を72時間感染させた。中和活性はルシフェラーゼアッセイで測定した。IC50は、感染の相対的な割合と血清濃度の相対的な対数とを用いて算出した(図5A~Dに示されるように)。
【0088】
実施例7:第1世代および第2世代のSFVレプリコン
図7に示すように、セムリキ森林ウイルス(SFV)からの第1世代の単サイクルアルファウイルスレプリコンは、ウイルスRNAを、5’非翻訳領域と、非構造タンパク質(nsp)1~4と、ウイルスサブゲノムプロモーターによって駆動される導入遺伝子とともに生成する真核生物プロモーターをコードするプラスミドから生成される。ウイルスレプリカーゼによる効率的なRNA複製を確実にするため、プラスミドから直接ポリAテールがコードされ、肝炎デルタウイルスリボザイムによって切断される。レプリコンに2つ目のサブゲノムプロモーターを追加することで、複数の導入遺伝子の生成が可能となる。SFVレプリコンとSARS-CoV-2構造成分とのコトランスフェクションにより、ハイブリッドVLPが生成されることになる。SFVレプリコンは、出芽中のSARS-CoV-2VLPを乗っ取ることができる豊富なレプリコンRNAを産生する。
【0089】
第2世代のSFVレプリコンは、VLPを強化し、空粒子の量を減らすために、SARS-CoV-2のパッケージングシグナルを含むように生成される。これにより、感染シグナルが大幅に強化され、感染アッセイに必要なインキュベーション時間がさらに短縮されるはずである。完全なゲノムレプリコンを確実にパッケージングするために、SARS-CoV-2パッケージングシグナルはコドン最適化されたNSP4タンパク質(部分的にco-NSP4)の直後に挿入されている。コドン最適化により、元のサブゲノムプロモーターは破壊され、次いでパッケージングシグナルの下流で置き換えられる。SARS-CoV-2のパッケージングシグナルは、Ha-CoV-2ゲノムの5’末端、内部、または3’末端のいずれかに挿入することもできる。
【0090】
実施例8:大規模な生産
現在のパンデミックの需要を満たすためには、この技術を大規模生産に移行する必要がある。これまでの研究で、VLPを産生する安定した細胞株は、ウイルス構造タンパク質の過剰生産による細胞毒性の影響により一般的に生産が困難になり得ることが示されている。この課題を克服するために、機能するレプリコンが存在する場合にのみVLPの構造成分を産生する細胞株を産生することができる。これまでの研究で、アルファウイルスのレプリコン依存性ゲノムを用いて、安定した細胞株から効率的にVLPを産生できることが実証されている。これらの欠陥レプリコンは、パッケージングを行わず、別の機能的レプリコンが存在する場合にのみ、サブゲノムプロモーターから遺伝子を産生する。
【0091】
図2に示すように、本願では、この細胞株により、これらのハイブリッドVLPを大量に生産し、商業および臨床用途でより多く使用することができるようになる。
【0092】
ハイブリッドVLPの機能を実証するために、許容される細胞株であるHEK293T-ACE2を感染させ、蛍光顕微鏡を用いて緑色蛍光タンパク質の産生をモニタリングした。ハイブリッドVLPは、標的細胞内で目的遺伝子を産生することができた。以下は、レプリコンを有するハイブリッドVLPによってHEK293T-ACE2細胞を感染させたことを示す顕微鏡画像である。ハイブリッドVLPによる2回目の感染は、許容されるHEK293T-ACE2+TMPRSS2細胞株で行った。レプリコンはルシフェラーゼ遺伝子をコードし、ルシフェラーゼ活性は感染してから3日目に測定した。ハイブリッドVLPは、SARS-CoV-2の侵入をモデル化するための改良された方法であり、抗ウイルスおよびワクチン探索のための新しいプラットフォームである。
【0093】
ハイブリッドVLPの機能を実証するために、許容される細胞株であるHEK293T-ACE2を感染させ、蛍光顕微鏡を用いて緑色蛍光タンパク質の産生をモニタリングした。ハイブリッドVLPは、標的細胞内で目的遺伝子を産生することができた。図2は、レプリコンを有するハイブリッドVLPによってHEK293T-ACE2細胞を感染させたことを示す顕微鏡画像である。
【0094】
ハイブリッドVLPによる2回目の感染は、許容されるHEK293T-ACE2+TMPRSS2細胞株で行った。レプリコンはルシフェラーゼ遺伝子をコードし、ルシフェラーゼ活性は図2B-Cに示すように、感染してから3日目に測定した。ハイブリッドVLPは、SARS-CoV-2の侵入をモデル化するための改良された方法であり、抗ウイルスおよびワクチン探索のための新しいプラットフォームである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7
【国際調査報告】