(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(54)【発明の名称】細胞治療のための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20231025BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231025BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20231025BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20231025BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231025BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20231025BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231025BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20231025BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20231025BHJP
C07K 14/74 20060101ALI20231025BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20231025BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
A61K48/00
A61K35/545
A61K35/12
A61P35/00
A61P37/06
A61P43/00 105
A61K38/17
A61K31/7088
C07K14/74 ZNA
C07K19/00
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548545
(86)(22)【出願日】2021-10-19
(85)【翻訳文提出日】2023-06-19
(86)【国際出願番号】 US2021055682
(87)【国際公開番号】W WO2022087019
(87)【国際公開日】2022-04-28
(32)【優先日】2020-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523148023
【氏名又は名称】リプレイ ホールディングス,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォルドマン,ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】バックル,アシュレイ
(72)【発明者】
【氏名】ウールフソン,エイドリアン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA44
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4C084ZB081
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4C086AA01
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4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA30
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4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA20
4H045EA50
(57)【要約】
本明細書において、1つまたは複数のヒト白血球抗原を含む合成複合体(synHLA)が提供され、ここで上記複合体は免疫応答を誘発することを阻害される。また、上記複合体をコードする核酸分子、上記複合体または上記核酸分子を含む免疫不全幹細胞、ならびに、上記複合体、上記核酸分子、または上記免疫不全幹細胞を対象に投与する工程を含む疾患または障害を処置する方法が提供される。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数のヒト白血球抗原(HLA)を含む複合体であって、ここで前記1つまたは複数のHLAは、前記複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識される(interrogated)ときにT細胞応答を誘発することを阻害される、複合体。
【請求項2】
前記複合体は、N末端からC末端の順序で、ペプチドを含むセグメント、およびヒトHLAクラス1重鎖配列を含むセグメントを含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記ペプチドは、前記ペプチドが1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発しない、請求項2に記載の複合体。
【請求項4】
前記ペプチドは、前記1つまたは複数のT細胞を活性化することができない、請求項2または3に記載の複合体。
【請求項5】
前記ペプチドは、前記1つまたは複数のT細胞の受容体に結合することができ、ここで前記結合は前記1つまたは複数のT細胞を活性化するには不十分である、請求項2から4のいずれか1つに記載の複合体。
【請求項6】
前記ペプチドは、前記ヒトHLAクラス1重鎖配列の1つまたは複数のHLA結合溝ドメイン残基に結合する、請求項2から5のいずれか1つに記載の複合体。
【請求項7】
前記ペプチドは、前記ヒトHLAクラス1重鎖配列の立体構造を調節する、請求項2から6のいずれか1つに記載の複合体。
【請求項8】
前記立体構造は、前記1つまたは複数のT細胞が前記ヒトHLAクラス1重鎖配列に結合するのを妨げる、請求項7に記載の複合体。
【請求項9】
前記ペプチドは、8、9、10、11、12、13、または14以上のアミノ酸を含む、請求項2から8のいずれか1つに記載の複合体。
【請求項10】
前記ヒトHLAクラス1重鎖配列は、1つまたは複数のクラス1HLAを含む、請求項2から9のいずれか1つに記載の複合体。
【請求項11】
前記ヒトHLAクラス1重鎖配列は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、またはその任意の組み合わせを含む、請求項2から10のいずれか1つに記載の複合体。
【請求項12】
前記ヒトHLAクラス1重鎖配列は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、またはその任意の組み合わせの複数のバージョンを含む、請求項11に記載の複合体。
【請求項13】
前記ヒトHLAクラス1重鎖配列は前記HLA-Aを含み、ここで前記HLA-Aは前記HLA-Bと前記HLA-Cとの間に変位される、請求項2から12のいずれか1つに記載の複合体。
【請求項14】
前記複合体が、前記ペプチドと前記ヒトHLAクラス1重鎖配列との間に1つまたは複数のリンカーをさらに含む、請求項2から13のいずれか1つに記載の複合体。
【請求項15】
前記1つまたは複数のリンカーは、タンパク質分解性の切断に抵抗するように構成される、請求項14に記載の複合体。
【請求項16】
前記1つまたは複数のリンカーは、前記ヒトHLAクラス1重鎖配列上の1つまたは複数のキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)結合部位を遮断しないように構成された立体構造を含む、請求項14または15に記載の複合体。
【請求項17】
前記ペプチドはジスルフィド結合によって前記複合体に結合される、請求項2から16のいずれか1つに記載の複合体。
【請求項18】
前記複合体は1つまたは複数の免疫チェックポイントアゴニストをさらに含む、請求項2から17のいずれか1つに記載の複合体。
【請求項19】
前記1つまたは複数の免疫のチェックポイントアゴニストは、CD47、PD-L1、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、IDO、KIR、LAG3、NOX2、PD-1、TIM-3、VISTA、SIGLEC7、またはその組み合わせを含む、請求項18に記載の複合体。
【請求項20】
前記ヒトHLAクラス1重鎖配列は、HLA-Eまたはその断片、HLA-Fまたはその断片、HLA-Gまたはその断片、あるいはその任意の組み合わせを含む、請求項2から19のいずれか1つに記載の複合体。
【請求項21】
前記HLA-Eまたは前記その断片、前記HLA-Fまたは前記その断片、前記HLA-Gまたは前記その断片、あるいはその任意の組み合わせの少なくとも1つは、前記複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害される、請求項20に記載の複合体。
【請求項22】
前記複合体は調節ペプチドをさらに含む、請求項1から21のいずれか1つに記載の複合体。
【請求項23】
前記調節ペプチドはアポトーシス誘導ペプチドである、請求項22に記載の複合体。
【請求項24】
前記複合体は、前記複合体の検出を可能とするように構成されたエピトープをさらに含む、請求項1から23のいずれか1つに記載の複合体。
【請求項25】
前記エピトープは、3,5-ジニトロサリチル酸を含む、請求項24に記載の複合体。
【請求項26】
前記複合体はヒトβ2-ミクログロブリン配列を含む、請求項1から24のいずれか1つに記載の複合体。
【請求項27】
前記1つまたは複数のリンカーの1つのリンカーは、前記ペプチドと前記ヒトβ2-ミクログロブリン配列との間に、前記ヒトβ2-ミクログロブリン配列と前記ヒトHLAクラス1重鎖配列との間に、またはその両方の間に、変位される、請求項14から25のいずれか1つに記載の複合体。
【請求項28】
前記1つまたは複数のリンカーの1つのリンカーは、配列番号48~54のいずれか1つの配列と少なくとも約70%、80%、90%、または99%同一である配列を含む、請求項14から27のいずれか1つに記載の複合体。
【請求項29】
前記複合体は、N末端からC末端の順で、
a.前記ペプチド、
b.前記1つまたは複数のリンカーの第1のリンカー、
c.前記ヒトβ2-ミクログロブリン配列、
d.前記1つまたは複数のリンカーの第2のリンカー、および、
e.前記ヒトHLAクラス1重鎖配列を含む、請求項14から28のいずれか1つに記載の複合体。
【請求項30】
1つまたは複数のヒト白血球抗原(HLA)を含む複合体であって、ここで前記1つまたは複数のHLAは、前記複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害され、および、ここで前記複合体は、
a.第1のリンカー、および
b.ヒトHLAクラス1重鎖配列を含むセグメント、を含み、ここで前記第1のリンカーは、前記ヒトHLAクラス1重鎖配列上の1つまたは複数のキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)結合部位を遮断しないように構成された立体構造を含む、複合体。
【請求項31】
ペプチドをさらに含み、ここで前記ペプチドは、前記1つまたは複数のT細胞を活性化することができないように構成または選択される、請求項30に記載の複合体。
【請求項32】
前記構成は、タンパク質分解性の切断に抵抗するようにさらに構成される、請求項30または31に記載の複合体。
【請求項33】
前記複合体は、前記ヒトβ2-ミクログロブリン、および前記ヒトβ2-ミクログロブリン配列と前記ヒトHLAクラス1重鎖配列との間の付加的なリンカーをさらに含む、請求項30から32のいずれか1つに記載の複合体。
【請求項34】
前記付加的なリンカーは、タンパク質分解性の切断に抵抗するように構成された立体構造を含む、請求項33に記載の複合体。
【請求項35】
前記付加的なリンカーは、前記ヒトHLAクラス1重鎖配列上の1つまたは複数のキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)結合部位を遮断しないようにさらに構成される、請求項33に記載の複合体。
【請求項36】
前記第1のリンカーは、配列番号48~54のいずれか1つと少なくとも約70%、80%、90%、または99%同一である配列を含むか、または前記付加的なリンカーは、配列番号48~54のいずれか1つと少なくとも約70%、80%、90%、または99%同一である配列を含む、請求項30から35のいずれか1つに記載の複合体。
【請求項37】
前記1つまたは複数のヒト白血球抗原(HLA)は、1つまたは複数の変異を含み、ここで前記1つまたは複数の変異は、前記複合体が1つまたは複数のCD8細胞によって認識されるときに前記1つまたは複数のHLAがT細胞応答を誘発することを阻害する、請求項1から36のいずれか1つに記載の複合体。
【請求項38】
前記1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基115、122、128、194、197、198、212、214、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、243、245、248、262、またはその任意の組み合わせの1つまたは複数の変異を含む、請求項37に記載の複合体。
【請求項39】
前記複合体は、補体系による免疫応答を阻害する1つまたは複数のタンパク質またはその断片をさらに含む、請求項1から38のいずれか1つに記載の複合体。
【請求項40】
前記1つまたは複数のタンパク質またはその断片は、CD48、CD59、またはその組み合わせから選択される、請求項39に記載の複合体。
【請求項41】
前記ペプチドは、L、M、S、I、F、T、V、およびYから選択される第2のアミノ酸残基を含む、請求項2から40のいずれか1つに記載の複合体。
【請求項42】
前記第2のアミノ酸残基は、T、V、およびYから選択される、請求項41に記載の複合体。
【請求項43】
前記ペプチドは、V、I、F、W、Y、L、R、およびKから選択される最後のアミノ酸残基を含む、請求項41または42に記載の複合体。
【請求項44】
前記最後のアミノ酸残基は、Y、L、R、およびKから選択される、請求項43に記載の複合体。
【請求項45】
前記ペプチドは、E、P、L、Q、A、R、H、S、T、V、M、D、およびKから選択される第2のアミノ酸残基を含む、請求項2から40のいずれか1つに記載の複合体。
【請求項46】
前記第2のアミノ酸残基は、E、P、L、Q、A、R、およびHから選択される、請求項45に記載の複合体。
【請求項47】
前記ペプチドは、V、L、F、A、I、Y、M、W、P、およびRから選択される最後のアミノ酸残基を含む、請求項45または46に記載の複合体。
【請求項48】
前記最後のアミノ酸残基は、V、L、およびFから選択される、請求項47に記載の複合体。
【請求項49】
前記ペプチドは、A、Y、S、T、V、I、L、F、Q、R、N、およびWから選択される第2のアミノ酸残基を含む、請求項2から40のいずれか1つに記載の複合体。
【請求項50】
前記第2のアミノ酸残基は、AおよびYから選択される、請求項49に記載の複合体。
【請求項51】
前記ペプチドは、L、V、M、F、Y、およびIから選択される最後のアミノ酸残基を含む、請求項49または50に記載の複合体。
【請求項52】
前記最後のアミノ酸残基はLである、請求項51に記載の複合体。
【請求項53】
請求項1から52のいずれか1つに記載の複合体をコードする核酸分子。
【請求項54】
前記核酸分子は、内因性のHLA遺伝子座において欠失を含む、請求項53に記載の核酸分子。
【請求項55】
前記欠失は、内因性のHLA-A、HLA-B、またはHLA-C遺伝子座、またはその任意の組み合わせにおける欠失を含む、請求項54に記載の核酸分子。
【請求項56】
前記欠失は、内因性のHLA遺伝子座の完全な欠失である、請求項54または55に記載の核酸分子。
【請求項57】
前記核酸分子は、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列をさらに含む、請求項53から56のいずれか1つに記載の核酸分子。
【請求項58】
ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする前記配列は、HLA-A配列、HLA-B配列、HLA-C配列、またはその任意の組み合わせを含む、請求項57に記載の核酸分子。
【請求項59】
ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする前記配列は、HLA-A配列、HLA-B配列、HLA-C配列、またはその任意の組み合わせの複数のアレルを含む、請求項57または58に記載の核酸分子。
【請求項60】
ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする前記配列は、HLA-A配列を含み、ここで前記HLA-A配列は、前記HLA-B配列と前記HLA-C配列との間に変位される、請求項58または59に記載の核酸分子。
【請求項61】
ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする前記配列は、1700塩基対(bp)未満を含む、請求項57から59のいずれか1つに記載の核酸分子。
【請求項62】
ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする前記配列は、500bp未満を含む、請求項57から61のいずれか1つに記載の核酸分子。
【請求項63】
ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする前記配列は、250bp未満を含む、請求項57から62のいずれか1つに記載の核酸分子。
【請求項64】
ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする前記配列は、150bp未満を含む、請求項57から63のいずれか1つに記載の核酸分子。
【請求項65】
前記HLA-A配列、HLA-B配列、HLA-C配列、またはその組み合わせは、1つまたは複数のフランキング配列を含む、請求項58から64のいずれか1つに記載の核酸分子。
【請求項66】
前記1つまたは複数のフランキング配列は、内因性のHLA配列を含む、請求項65に記載の核酸分子。
【請求項67】
前記1つまたは複数のフランキング配列は、1つまたは複数のプロモーターに特異的である、請求項65または66に記載の核酸分子。
【請求項68】
前記プロモーターは、HLA-Aプロモーター、HLA-Bプロモーター、HLA-Cプロモーター、またはその組み合わせを含む、請求項67に記載の核酸分子。
【請求項69】
ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする前記配列は、前記HLA-A配列、HLA-B配列、HLA-C配列、またはその組み合わせの、少なくとも一部を含まない、請求項57から68のいずれか1つに記載の核酸分子。
【請求項70】
前記核酸分子はヒトβ2-ミクログロブリンペプチドをコードする配列をさらに含む、請求項53から69のいずれか1つに記載の核酸分子。
【請求項71】
前記核酸分子は、ペプチドをコードする配列をさらに含む、請求項53から70のいずれか1つに記載の核酸分子。
【請求項72】
前記ペプチドは、前記ペプチドが1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発しない、請求項71に記載の核酸分子。
【請求項73】
前記ペプチドは、前記1つまたは複数のT細胞を活性化することができない、請求項71または72に記載の核酸分子。
【請求項74】
前記ペプチドは、前記1つまたは複数のT細胞の受容体に結合することができ、ここで前記結合は1つまたは複数のT細胞を活性化するには不十分である、請求項71から73のいずれか1つに記載の核酸分子。
【請求項75】
前記ペプチドは、前記ヒトHLAクラス1重鎖配列の1つまたは複数のHLA結合溝ドメイン残基に結合する、請求項71から74のいずれか1つに記載の核酸分子。
【請求項76】
前記第1のペプチドは、前記ヒトHLAクラス1重鎖配列の立体構造を調節する、請求項71から73のいずれか1つに記載の核酸分子。
【請求項77】
前記立体構造は、前記1つまたは複数のT細胞が前記ヒトHLAクラス1重鎖配列を結合するのを妨げる、請求項76に記載の核酸分子。
【請求項78】
前記ペプチドは、8、9、10、11、12、13、または14以上のアミノ酸を含む、請求項71から77のいずれか1つに記載の核酸分子。
【請求項79】
前記核酸分子は、前記ペプチドをコードする前記配列と前記ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする前記配列との間における1つまたは複数のリンカーをコードする1つまたは複数の配列をさらに含む、請求項53から78のいずれか1つに記載の核酸分子。
【請求項80】
前記1つまたは複数のリンカーは、タンパク質分解性の切断に抵抗するように構成される、請求項79に記載の核酸分子。
【請求項81】
前記1つまたは複数のリンカーは、前記ヒトHLAクラス1重鎖配列上の1つまたは複数のキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)結合部位を遮断しないように構成された立体構造を含む、請求項79または80に記載の核酸分子。
【請求項82】
1つまたは複数のリンカーをコードする前記1つまたは複数の配列の1つの配列は、前記ペプチドをコードする前記配列と前記ヒトβ2-ミクログロブリンペプチドをコードする前記配列との間に、前記ヒトβ2-ミクログロブリンペプチドをコードする前記配列と前記ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする前半部分配列との間に、あるいはその両方の間に、変位される、請求項79から81のいずれか1つに記載の核酸分子。
【請求項83】
前記1つまたは複数のリンカーの1つのリンカーは、配列番号48~54のいずれか1つの配列と少なくとも約70%、80%、90%、または99%同一である配列を含む、請求項79から82のいずれか1つに記載の核酸分子。
【請求項84】
前記核酸分子は、1つまたは複数の免疫チェックポイントアゴニストをコードする配列をさらに含む、請求項53から83のいずれか1つに記載の核酸分子。
【請求項85】
前記1つまたは複数の免疫のチェックポイントアゴニストは、CD47、PD-L1、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、IDO、KIR、LAG3、NOX2、PD-1、TIM-3、VISTA、SIGLEC7、またはその組み合わせを含む、請求項84に記載の核酸分子。
【請求項86】
前記核酸分子は、前記1つまたは複数の免疫チェックポイントアゴニスト受容体に対応する1つまたは複数のノックアウトされたタンパク質をコードする配列をさらに含む、請求項85に記載の核酸分子。
【請求項87】
前記ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする前記配列は、HLA-E配列またはその断片、HLA-F配列またはその断片、HLA-G配列またはその断片、あるいはその任意の組み合わせを含む、請求項57から86のいずれか1つに記載の核酸分子。
【請求項88】
前記HLA-E配列または前記その断片、前記HLA-F配列または前記その断片、前記HLA-G配列または前記その断片、あるいはその任意の組み合わせの少なくとも1つは、前記ヒトHLAクラス1重鎖配列が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害される、請求項87に記載の核酸分子。
【請求項89】
前記核酸分子は、クラス1I・主要組織適合複合体・トランスアクティベーター(CIITA)に対応する1つまたは複数のノックアウトされたタンパク質をコードする配列をさらに含む、請求項87または88に記載の核酸分子。
【請求項90】
前記核酸分子は、調節ペプチドをコードする配列をさらに含む、請求項53から89のいずれか1つに記載の核酸分子。
【請求項91】
前記調節ペプチドはアポトーシス誘導ペプチドである、請求項90に記載の核酸分子。
【請求項92】
前記核酸分子は、前記複合体の検出を可能とするように構成されたエピトープをコードする配列をさらに含む、請求項53から91のいずれか1つに記載の核酸分子。
【請求項93】
前記エピトープは、3,5-ジニトロサリチル酸を含む、請求項92に記載の核酸分子。
【請求項94】
前記核酸分子は、1つまたは複数のノックアウトされたタンパク質をコードする配列をさらに含む、請求項53から93のいずれか1つに記載の核酸分子。
【請求項95】
前記1つまたは複数のノックアウトされたタンパク質は、血液型A抗原および血液型B抗原から選択される、請求項94に記載の核酸分子。
【請求項96】
前記核酸分子は、
a.前記ペプチドをコードする前記配列、
b.1つまたは複数のリンカーをコードする前記1つまたは複数の配列の第1のリンカーをコードする第1の配列、
c.前記ヒトβ2-ミクログロブリンペプチドをコードする前記配列、d.1つまたは複数のリンカーをコードする前記1つまたは複数の配列の第2のリンカーをコードする第2の配列、および、
e.前記ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする前記配列を含む、請求項53から95のいずれか1つに記載の核酸分子。
【請求項97】
1つまたは複数のクラス1ヒト白血球抗原(HLA)タンパク質を含む複合体をコードする配列を含む核酸分子であって、ここで前記1つまたは複数のクラス1HLAタンパク質は、前記複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害され、ここで前記核酸分子は、
a.ペプチドをコードする配列であって、ここで前記ペプチドは前記1つまたは複数のT細胞を活性化することができない、配列、
b.第1のリンカーをコードする第1の配列、および
c.1つまたは複数のクラス1HLAタンパク質をコードする配列を含み、ここで前記第1のリンカーは、前記ヒトHLAクラス1重鎖配列上の1つまたは複数のキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)結合部位を遮断しないように構成された立体構造を含み、ここで前記立体構造は、タンパク質分解性の切断に抵抗するようにさらに構成される、核酸分子。
【請求項98】
前記核酸分子は、前記リンカーをコードする前記配列と前記ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする前記配列との間にヒトβ2-ミクログロブリンペプチドをコードする配列をさらに含む、請求項97に記載の核酸分子。
【請求項99】
前記核酸分子は、前記ヒトβ2-ミクログロブリンペプチドをコードする前記配列と前記ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする前記配列との間に、付加的なリンカーをコードする付加的な配列をさらに含み、ここで前記付加的なリンカーは、タンパク質分解性の切断に抵抗するように構成された立体構造を含む、請求項98に記載の核酸分子。
【請求項100】
前記付加的なリンカーは、前記ヒトHLAクラス1重鎖配列上の1つまたは複数のキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)結合部位を遮断しないようにさらに構成される、請求項99に記載の核酸分子。
【請求項101】
前記第1のリンカーは、配列番号48~54のいずれか1つと少なくとも約70%、80%、90%、または99%同一である配列を含むか、または前記付加的なリンカーは、配列番号48~54のいずれか1つと少なくとも約70%、80%、90%、または99%同一である配列を含む、請求項97から100のいずれか1つに記載の核酸分子。
【請求項102】
ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする前記配列は、1つまたは複数の変異を含み、ここで前記1つまたは複数の変異は前記ヒトHLAクラス1重鎖配列が1つまたは複数のCD8細胞によって認識されるときに前記ヒトHLAクラス1重鎖配列がT細胞応答を誘発することを阻害する、請求項57から101のいずれか1つに記載の核酸分子。
【請求項103】
前記1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基115、122、128、194、197、198、212、214、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、243、245、248、262、またはその任意の組み合わせの1つまたは複数の変異を含む、請求項102に記載の核酸分子。
【請求項104】
前記核酸分子は、補体系による免疫応答を阻害する1つまたは複数のタンパク質またはその断片をコードする配列をさらに含む、請求項53から103のいずれか1つに記載の核酸分子。
【請求項105】
前記1つまたは複数のタンパク質またはその断片は、CD48、CD59、またはその組み合わせから選択される、請求項104に記載の核酸分子。
【請求項106】
請求項53から105のいずれか1つに記載の核酸分子を生成する方法であって、HLA遺伝子座における前記欠失を含む配列、前記ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列、またはそれらの任意の組み合わせを受け入れるように構成された領域をコードする配列を変位させる工程を含む、方法。
【請求項107】
免疫不全細胞を生成する方法であって、請求項1から52のいずれか1つに記載の前記複合体または請求項53から105のいずれか1つに記載の前記核酸分子を細胞に投与する工程を含む、方法。
【請求項108】
請求項53から105の前記核酸分子が前記細胞のゲノムに送達される、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
前記細胞が、請求項1から52のいずれか1つに記載の前記複合体と共にインキュベートされる、請求項107に記載の方法。
【請求項110】
前記細胞は、幹細胞である、請求項107から109のいずれか1つに記載の方法。
【請求項111】
前記幹細胞は誘導多能性幹細胞(iPSC)である、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
処置を必要としている対象の疾患または障害を処置する方法であって、請求項53から105のいずれか1つに記載の前記核酸分子または請求項107から111のいずれか1つに記載の前記免疫不全細胞の治療有効量を前記対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項113】
前記疾患は自己免疫疾患である、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記疾患は癌である、請求項112に記載の方法。
【請求項115】
前記疾患は変性疾患である、請求項112に記載の方法。
【請求項116】
ヒト白血球抗原(HLA)を阻害する方法であって、該方法は、前記HLAをT細胞受容体結合残基または断片を含まないペプチドに接触させる工程を含む、方法。
【請求項117】
前記ペプチドは、前記HLAの1つまたは複数のHLA結合溝ドメイン残基に結合する、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
前記ペプチドは前記HLAの立体構造を調節する、請求項116または117に記載の方法。
【請求項119】
前記立体構造は、T細胞が前記HLAを結合するのを妨げる、請求項116から118のいずれか1つに記載の方法。
【請求項120】
前記ペプチドは、8、9、10、11、12、13、または14以上のアミノ酸を含む、請求項116から119のいずれか1つに記載の方法。
【請求項121】
前記HLAは合成である、請求項116から120のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<相互参照>
本出願は、2020年10月20日に出願された英国特許出願第2016659.1、および2021年2月5日に出願された英国特許出願第2101665.4号号の利益を主張し、これら両方の出願は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
細胞療法は従来の難病との闘いにおいて大きな期待が持たれている。自己由来の細胞の使用は一般に最適であるが、このアプローチはコストが高すぎて重荷になり得る。同種異系の多分化能性幹細胞(PSC)はより大きなスケーラビリティと原価の削減を提供するが、それらの実用性は、ヒトゲノムにおいて最も遺伝的に多型の領域であるヒト白血球抗原(HLA)クラス1アレルが一致する必要性によって制限される。HLAクラス1ハプロタイプにおける不整合は、「自己対非自己」の免疫応答に結びつき、移植治療細胞に対する身体の拒絶をもたらす恐れがある。HLA複合体を遺伝子操作してT細胞を活性化する免疫応答を引き起こすことから遮断されるようにする最近の努力の全般的な実用性は、これらの複合体がキラー細胞の免疫グロブリン様受容体(KIR)に上手く係合することに失敗し、「自己喪失」免疫応答をもたらすことによって、制限されてきた。従って、T細胞およびKIR媒介免疫応答の両方を回避する、操作された多能性幹細胞の開発について満たされていないニーズが残る。
【発明の概要】
【0003】
本明細書では、ある態様において、1つまたは複数のヒト白血球抗原(HLA)を含む複合体が提供され、ここで1つまたは複数のHLAは、複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識される(interrogated)ときにT細胞応答を誘発することを阻害される。
【0004】
いくつかの実施形態では、複合体は、N末端からC末端の順序で、ペプチドを含むセグメント、およびヒトHLAクラス1重鎖配列を含むセグメントを含む。いくつかの実施形態では、上記ペプチドは、1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発しない。いくつかの実施形態では、上記ペプチドは、1つまたは複数のT細胞を活性化することができない。いくつかの実施形態では、上記ペプチドは、1つまたは複数のT細胞の受容体に結合することができ、および上記結合には1つまたは複数のT細胞を活性化には不十分である。いくつかの実施形態では、上記ペプチドは、ヒトHLAクラス1重鎖配列の1つまたは複数のHLA結合溝ドメイン残基に結合する。いくつかの実施形態では、上記ペプチドは、ヒトHLAクラス1重鎖配列の立体構造を調節する。いくつかの実施形態では、上記立体構造は、1つまたは複数のT細胞がヒトHLAクラス1重鎖配列に結合するのを妨げる。いくつかの実施形態では、上記ペプチドは、8、9、10、11、12、13、または14以上のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、上記ヒトHLAクラス1重鎖配列は、1つまたは複数のクラス1HLAを含む。
【0005】
ヒトHLAクラス1重鎖配列は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、またはその任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、またはその任意の組み合わせの複数のバージョンを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列はHLA-Aを含み、ここでHLA-AはHLA-BとHLA-Cとの間に変位される。いくつかの実施形態では、複合体は、ペプチドとヒトHLAクラス1重鎖配列との間に1つまたは複数のリンカーをさらに含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリンカーは、タンパク質分解性の切断に抵抗するように構成される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリンカーは、ヒトHLAクラス1重鎖配列上の1つまたは複数のキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)結合部位を遮断しないように構成された立体構造を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドはジスルフィド結合によって複合体に結合される。いくつかの実施形態では、複合体は1つまたは複数の免疫チェックポイントアゴニストをさらに含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫のチェックポイントアゴニストは、CD47、PD-L1、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、IDO、KIR、LAG3、NOX2、PD-1、TIM-3、VISTA、SIGLEC7、またはその組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列は、HLA-Eまたはその断片、HLA-Fまたはその断片、HLA-Gまたはその断片、あるいはその任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、HLA-Eまたはその断片、HLA-Fまたはその断片、HLA-Gまたはその断片、あるいはその任意の組み合わせの少なくとも1つは、複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害される。いくつかの実施形態では、複合体は調節ペプチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、調節ペプチドはアポトーシス誘導ペプチドである。いくつかの実施形態では、複合体は、複合体の検出を可能とするように構成されたエピトープをさらに含む。いくつかの実施形態では、エピトープは、3,5-ジニトロサリチル酸を含む。いくつかの実施形態では、複合体はヒトβ2-ミクログロブリン配列を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリンカーの1つのリンカーは、ペプチドとヒトβ2-ミクログロブリン配列との間に、ヒトβ2-ミクログロブリン配列とヒトHLAクラス1重鎖配列との間に、またはその両方の間に、変位される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリンカーの1つのリンカーは、配列番号48~54のいずれか1つの配列と少なくとも約70%、80%、90%、または99%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、複合体は、C末端からN末端の順で、
a.ペプチド、
b.1つまたは複数のリンカーの第1のリンカー、
c.ヒトβ2-ミクログロブリン配列、
d.1つまたは複数のリンカーの第2のリンカー、および
e.ヒトHLAクラス1重鎖配列
を含む。
【0006】
本明細書では、別の態様において、1つまたは複数のヒト白血球抗原(HLA)を含む複合体が提供され、ここで1つまたは複数のHLAは、複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害され、および、ここで複合体は、
a.第1のリンカー、および
b.ヒトHLAクラス1重鎖配列を含むセグメント、を含み、
ここで第1のリンカーは、ヒトHLAクラス1重鎖配列上の1つまたは複数のキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)結合部位を遮断しないように構成された立体構造を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、複合体は、ペプチドを含み、
ここで上記ペプチドは、1つまたは複数のT細胞を活性化する性質がないように構成または選択される。いくつかの実施形態では、構成は、タンパク質分解性の切断に抵抗するようにさらに構成される。いくつかの実施形態では、複合体は、ヒトβ2-ミクログロブリン、およびヒトβ2-ミクログロブリン配列とヒトHLAクラス1重鎖配列との間の付加的なリンカーをさらに含む。いくつかの実施形態では、上記付加的なリンカーは、タンパク質分解性の切断に抵抗するように構成された立体構造を含む。いくつかの実施形態では、上記付加的なリンカーは、ヒトHLAクラス1重鎖配列上の1つまたは複数のキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)結合部位を遮断しないように構成される。いくつかの実施形態では、上記第1のリンカーは、配列番号48~54のいずれか1つの配列と少なくとも約70%、80%、90%、または99%同一である配列を含むか、または上記付加的なリンカーは、配列番号48~54のいずれか1つの配列と少なくとも約70%、80%、90%、または99%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のヒト白血球抗原(HLA)は、1つまたは複数の変異を含み、ここで1つまたは複数の変異は、上記複合体が1つまたは複数のCD8細胞によって認識されるときに1つまたは複数のHLAがT細胞応答を誘発することを阻害する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基115、122、128、194、197、198、212、214、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、243、245、248、262、またはその任意の組み合わせの1つまたは複数の変異を含む。いくつかの実施形態では、複合体は、補体系による免疫応答を阻害する1つまたは複数のタンパク質またはその断片をさらに含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のタンパク質またはその断片は、CD48、CD59、またはその組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、ペプチドは、L、M、S、I、F、T、V、およびYから選択される第2のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸残基は、T、V、およびYから選択される。いくつかの実施形態では、ペプチドは、V、I、F、W、Y、L、R、およびKから選択される最後のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、最後のアミノ酸残基は、Y、L、R、およびKから選択される。いくつかの実施形態では、ペプチドは、E、P、L、Q、A、R、H、S、T、V、M、D、およびKから選択される第2のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸残基は、E、P、L、Q、A、R、およびHから選択される。いくつかの実施形態では、ペプチドは、V、L、F、A、I、Y、M、W、P、およびRから選択される最後のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、最後のアミノ酸残基は、V、L、およびFから選択される。いくつかの実施形態では、ペプチドは、A、Y、S、T、V、I、L、F、Q、R、N、およびWから選択される第2のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸残基は、AおよびYから選択される。いくつかの実施形態では、ペプチドは、L、V、M、F、Y、およびIから選択される最後のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、最後のアミノ酸残基はLである。
【0008】
本明細書では、別の態様において、本明細書に記載されるとおりの複合体をコードする核酸分子が提供される。
【0009】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、内因性のHLA遺伝子座において欠失を含む。いくつかの実施形態では、欠失は、内因性のHLA-A、HLA-B、またはHLA-C遺伝子座、またはその任意の組み合わせにおいて欠失を含む。いくつかの実施形態では、欠失は、内因性のHLA遺伝子座の完全な欠失である。いくつかの実施形態では、核酸分子は、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-A配列、HLA-B配列、HLA-C配列、またはその任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-A配列、HLA-B配列、HLA-C配列、またはその任意の組み合わせの複数のアレルを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-A配列を含み、ここでHLA-A配列は、HLA-B配列とHLA-C配列との間に変位される。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、1700塩基対(bp)未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、500bp未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、250bp未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、150bp未満を含む。いくつかの実施形態では、HLA-A配列、HLA-B配列、HLA-C配列、またはその組み合わせは、1つまたは複数のフランキング配列を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のフランキング配列は、内因性のHLA配列を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のフランキング配列は、1つまたは複数のプロモーターに特異的である。いくつかの実施形態では、プロモーターは、HLA-Aプロモーター、HLA-Bプロモーター、HLA-Cプロモーター、またはその組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-A配列、HLA-B配列、HLA-C配列、またはその組み合わせの、少なくとも一部を含まない。いくつかの実施形態では、核酸分子は、ヒトβ2-ミクログロブリンペプチドをコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、ペプチドをコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、上記ペプチドは、1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発しない。いくつかの実施形態では、上記ペプチドは、1つまたは複数のT細胞を活性化することができない。いくつかの実施形態では、ペプチドは、1つまたは複数のT細胞の受容体に結合することができ、ここで上記結合は1つまたは複数のT細胞を活性化するには不十分である。いくつかの実施形態では、上記ペプチドは、ヒトHLAクラス1重鎖配列の1つまたは複数のHLA結合溝ドメイン残基に結合する。いくつかの実施形態では、第1のペプチドは、ヒトHLAクラス1重鎖配列の立体構造を調節する。いくつかの実施形態では、上記立体構造は、1つまたは複数のT細胞がヒトHLAクラス1重鎖配列を結合するのを妨げる。いくつかの実施形態では、上記ペプチドは、8、9、10、11、12、13、または14以上のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、ペプチドをコードする配列とヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列との間における1つまたは複数のリンカーをコードする1つまたは複数の配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリンカーは、タンパク質分解性の切断に抵抗するように構成される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリンカーは、ヒトHLAクラス1重鎖配列上の1つまたは複数のキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)結合部位を遮断しないように構成された立体構造を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリンカーをコードする1つまたは複数の配列の1つの配列は、ペプチドをコードする配列とヒトβ2-ミクログロブリンペプチドをコードする配列との間に、ヒトβ2-ミクログロブリンペプチドをコードする配列とヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列との間に、あるいは両方の間に、変位される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリンカーの1つのリンカーは、配列番号48~54のいずれか1つの配列と少なくとも約70%、80% 90%、または99%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、1つまたは複数の免疫チェックポイントアゴニストをコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫のチェックポイントアゴニストは、CD47、PD-L1、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、IDO、KIR、LAG3、NOX2、PD-1、TIM-3、VISTA、SIGLEC7、またはその組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、1つまたは複数の免疫チェックポイントアゴニスト受容体に対応する1つまたは複数のノックアウトされたタンパク質をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-E配列またはその断片、HLA-F配列またはその断片、HLA-G配列またはその断片、あるいはその任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、HLA-E配列またはその断片、HLA-F配列またはその断片、HLA-Gまたはその断片、あるいはその任意の組み合わせの少なくとも1つは、ヒトHLAクラス1重鎖配列が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害される。いくつかの実施形態では、核酸分子は、クラス1I・主要組織適合複合体・トランスアクティベーター(CIITA)に対応する1つまたは複数のノックアウトされたタンパク質をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、調節ペプチドをコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、調節ペプチドはアポトーシス誘導ペプチドである。いくつかの実施形態では、核酸分子は、複合体の検出を可能とするように構成されたエピトープをコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、エピトープは、3,5-ジニトロサリチル酸を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、1つまたは複数のノックアウトされたタンパク質をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のノックアウトされたタンパク質は、血液型A抗原および血液型B抗原から選択される。いくつかの実施形態では、核酸分子は、
a.ペプチドをコードする配列、
b.1つまたは複数のリンカーをコードする1つまたは複数の配列の第1のリンカーをコードする第1の配列、
c.ヒトβ2-ミクログロブリンペプチドをコードする配列、
d.1つまたは複数のリンカーをコードする1つまたは複数の配列の第2のリンカーをコードする第2の配列、および
e.ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列を含む。
【0010】
本明細書では、別の態様において、1つまたは複数のクラス1ヒト白血球抗原(HLA)タンパク質を含む複合体をコードする配列を含む核酸分子が提供され、ここで1つまたは複数のクラス1HLAタンパク質は、複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害され、ここで核酸分子は、
a.ペプチドをコードする配列であって、上記ペプチドは、1つまたは複数のT細胞を活性化することができない、配列、
b.第1のリンカーをコードする第1の配列、および
c.1つまたは複数のクラス1HLAタンパク質をコードする配列、を含み、
ここで第1のリンカーは、ヒトHLAクラス1重鎖配列上の1つまたは複数のキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)結合部位を遮断しないように構成された立体構造を含み、ここで上記立体構造は、タンパク質分解性の切断に抵抗するようにさらに構成される。いくつかの実施形態では、核酸分子は、リンカーをコードする配列とヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列との間にヒトβ2-ミクログロブリンペプチドをコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、ヒトβ2-ミクログロブリンペプチドをコードする配列とヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列との間に、付加的なリンカーをコードする付加的な配列をさらに含み、ここで上記付加的なリンカーは、タンパク質分解性の切断に抵抗するように構成された立体構造を含む。いくつかの実施形態では、上記付加的なリンカーは、ヒトHLAクラス1重鎖配列上の1つまたは複数のキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)結合部位を遮断しないように構成される。いくつかの実施形態では、上記第1のリンカーは、配列番号48~54のいずれか1つの配列と少なくとも約70%、80%、90%、または99%同一である配列を含むか、または上記付加的なリンカーは、配列番号48~54のいずれか1つの配列と少なくとも約70%、80%、90%、または99%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、1つまたは複数の変異を含み、ここで1つまたは複数の変異はヒトHLAクラス1重鎖配列が1つまたは複数のCD8細胞によって認識されるときにヒトHLAクラス1重鎖配列がT細胞応答を誘発することを阻害する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基115、122、128、194、197、198、212、214、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、243、245、248、262、またはその任意の組み合わせの1つまたは複数の変異を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、補体系による免疫応答を阻害する1つまたは複数のタンパク質またはその断片をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のタンパク質またはその断片は、CD48、CD59、またはその組み合わせから選択される。
【0011】
本明細書では、別の態様において、本明細書に記載されるとおりの核酸分子を生成する方法が提供され、該方法は、HLA遺伝子座における欠失を含む配列、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列、またはその任意の組み合わせを受け入れるように構成された領域をコードする配列を変位させる工程を含む。
【0012】
本明細書では、別の態様において、本明細書に記載されるとおりの複合体または核酸を細胞に投与する工程を含む、免疫不全細胞(immune incompetent cell)を生成する方法である。
【0013】
いくつかの実施形態では、核酸は細胞のゲノムに送達される。いくつかの実施形態では、細胞は複合体と共にインキュベートされる。いくつかの実施形態では、細胞は幹細胞である。いくつかの実施形態では、幹細胞は誘導多能性幹細胞(iPSC)である。
【0014】
本明細書では、別の態様において、必要とする対象における疾患または障害を処置する方法が提供され、該方法は、本明細書に記載のとおりの核酸分子または本明細書に記載のとおりの免疫不全細胞の治療有効量を対象に本明細書に記載のとおり投与する工程を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、疾患は自己免疫疾患である。いくつかの実施形態では、疾患は癌である。いくつかの実施形態では、疾患は変性疾患である。
【0016】
本明細書では、別の態様において、ヒト白血球抗原(HLA)を阻害する方法が提供され、該方法は、HLAをT細胞受容体結合残基または断片を含まないペプチドに接触させる工程を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、上記ペプチドは、HLAの1つまたは複数のHLA結合溝ドメイン残基に結合する。いくつかの実施形態では、上記ペプチドは、HLAの立体構造を調節する。いくつかの実施形態では、上記立体構造は、T細胞がHLAを結合するのを妨げる。いくつかの実施形態では、上記ペプチドは、8、9、10、11、12、13、または14以上のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、HLAは合成である。
【0018】
<参照による引用>
本明細書およびその添付物で言及される全ての刊行物、特許、および特許出願は、あたかも個々の出版物、特許、または特許出願が参照によって組み込まれるよう具体的かつ個別に示されるかのように、同じ程度まで参照により本明細書に組み込まれる。刊行物および特許または特許出願が参照により組み込まれる範囲で明細に包含される開示が矛盾する場合、本明細書は、あらゆるそのような矛盾する材料に対して取って代わるおよび/または先行するように意図される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の新規な特徴を、具体的に添付の特許請求の範囲とともに説明する。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が用いられる例示的実施形態を説明する以下の詳細な説明と、以下の添付図面(本明細書では「図」とも呼ぶ)とを参照することによって得られるであろう。
【
図1】本明細書において提供される合成ヒト白血球抗原(synHLA)複合体のドメイン図を示す。
【
図2】本明細書において提供される合成ヒト白血球抗原(synHLA)複合体の構成アーキテクチャーの三次元図を示す。
【
図3】T細胞受容体に係合してT細胞活性化を引き起こしている、HLAに結合された免疫原ペプチドを示す。
【
図4】T細胞受容体に係合してT細胞活性化の失敗を引き起こしている、本明細書で提供される合成ヒト白血球抗原(synHLA)複合体を示す。
【
図5】KIR相互作用の遮断と「自己喪失」免疫シグナルを引き起こしている、キラー細胞の免疫グロブリン様受容体(KIR)と複合した一本鎖三量体(SCT)を示す。
【
図6】KIR相互作用に成功し且つ「自己喪失」の免疫シグナルがない、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)と複合した、本明細書で提供される合成ヒト白血球抗原(synHLA)複合体を示す。
【
図7】キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)と複合した一本鎖三量体(SCT)と、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)と複合した本明細書で提供される合成ヒト白血球抗原(synHLA)複合体とのオーバーレイを示す。
【
図8】CD8に係合している、本明細書で提供される合成ヒト白血球抗原(synHLA)複合体を示す。
【
図9】本明細書で提供される免疫の不能細胞を示す。
【
図10】細菌中で組換え的に発現された、本明細書に記載のsynHLA複合体のSDS-PAGEゲルを示す。
【
図11】細菌中で組換えに発現された、本明細書に記載のsynHLA複合体のSDS-PAGEを示す。
【
図12A】SYNC4-1とSYNC4-1+KIR2DL2の生の熱融解曲線を示す。
【
図12B】SYNC4-1とSYNC4-1+KIR2DL2の熱融解曲線の一次微分を示す。
【
図13A】SYNC4-1、SYNC4-1+KIR2DL2、およびKIR2DL2の生の熱融解曲線を示す。
【
図13B】SYNC4-1、SYNC4-1+KIR2DL2、およびKIR2DL2の熱融解曲線の一次微分を示す。
【
図14A】SYNC1-1、SYNC1-1+KIR2DL2、およびKIR2DL2の生の熱融解曲線を示す。
【
図14B】SYNC1-1、SYNC1-1+KIR2DL2、およびKIR2DL2の熱融解曲線の一次微分を示す。
【
図15】細菌中で発現するように設計された、本明細書で提供される合成ヒト白血球抗原(synHLA)複合体のドメイン図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<定義>
「少なくとも」、「より大きい」、または「以上」という用語が、2つ以上の数値の系列における最初の数値の前にある場合は常に、「少なくとも」、「より大きい」、または「以上」という用語は、その数値の系列における各数値に適用される。例えば、1、2、または3以上は、1以上、2以上、または3以上と等価である。
【0021】
「以下(no more than)」、「未満」、または「以下(less than or equal to)」という用語が、2つ以上の数値の系列における最初の数値の前にある場合は常に、「以下(no more than)」、「未満」、または「以下(less than or equal to)」という用語は、その数値の系列における各数値に適用される。例えば、3、2、または1以下は、3以下、2以下、または1以下と等価である。
【0022】
本明細書で使用されるように、「T細胞」はT細胞受容体を含む細胞である。
【0023】
本明細書で使用されるように、「ペプチド」は2~50のアミノ酸残基の鎖である。
【0024】
「薬学的に許容可能な担体」は、医薬製剤における、対象に無毒な、有効成分以外の成分を指す。薬学的に許容される担体には、緩衝剤、賦形剤、安定剤、または保存料が含まれるが、これらに限定されず、例えば、当該技術分野で公知のもの、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed.(1980)に記載されているものを含む。
【0025】
本明細書で使用する場合、「処置」または「処置すること」は、臨床結果を含むか、好ましくは臨床結果である、有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチである。例えば、有益なまたは所望の臨床結果には、疾患に起因する症状の減少、疾患に苦しむ人々の生活の質の向上、疾患の処置に必要な他の薬物の用量の減少、疾患の進行の遅延、および/または個体の生存期間の延長の1つまたは複数が含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
本明細書で使用する、複合体、核酸分子、免疫不全細胞、またはそれらの医薬組成物の「有効量」または「有効量」は、有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な量である。予防的な使用の場合、有益なまたは所望の結果は、疾患の生化学的、組織学的および/または行動学的症状、その合併症、疾患の発症中に呈する中間病理学的表現型を含めて、疾患のリスクを排除または低減すること、重症度を軽減すること、あるいは発症を遅延させることなどの結果を含む。治療的使用の場合、有益なまたは所望の結果は、疾患に起因する1つまたは複数の症状を減少させること、疾患に苦しむ人々の生活の質を向上させること、疾患の処置に必要な他の薬物の投与量を減少させること、標的化などによって他の薬物の効果を増強させること、疾患の進行を遅延させること、および/または生存期間を延長させることなどの臨床結果を含む。癌または腫瘍の場合、有効量の薬物は、癌細胞の数を減少させること、腫瘍サイズを減少させること、末梢器官への癌細の胞侵入を阻害すること(即ち、ある程度まで遅くする、または止めること)、腫瘍転移を阻害すること(即ち、ある程度まで遅くする、または止めること)、腫瘍増殖をある程度まで阻害すること、および/または障害に関連した1以上の症状をある程度まで和らげることに効果を有する場合がある。有効量は、1つまたは複数回の投与で投与され得る。この発明の用途について、複合体、核酸分子、免疫不全細胞、またはその医薬組成物の有効量は、予防または治療の処置を直接または間接的に遂行するのに十分な量である。臨床の文脈で理解されるように、複合体、核酸分子、免疫不全細胞、またはその医薬組成物の有効量は、別の複合体、核酸分子、免疫不全細胞、またはその医薬組成物と組み合わせて達成されてもよく、達成されなくてもよい。従って、「有効量」は、1つまたは複数の治療剤を投与するコンテキストにおいて考えられてもよく、および単一の薬剤は、1つまたは複数の他の薬剤と協働して、所望の結果が達成され得るか達成される場合に、有効量で与えられたと考えられてもよい。
【0027】
本明細書で定義されるように、タンパク質-阻害剤相互作用に関する用語「阻害」、「阻害」、「阻害」などは、阻害剤の非存在下でのタンパク質の活性または機能と比較して、タンパク質の活性または機能に負の影響を与える(例えば、減少させる)ことを意味する。阻害は、疾患または疾患の症状の軽減を指す場合がある。阻害は、特定のタンパク質または核酸標的の活性の減少を指す場合がある。タンパク質は、デオキシシチジンキナーゼであってもよい。従って、阻害には、少なくとも部分的に、部分的または完全に刺激を遮断すること、活性化を減少、防止または遅延させること、あるいはシグナル伝達または酵素活性またはタンパク質の量を不活性化、脱感作、または下方制御することが含まれる。
【0028】
用語「モジュレータ」は、標的分子のレベル、標的分子の機能、または分子の標的の物理的状態を増大させる、または減少させる組成物を指す。
【0029】
用語「調節する」は、その単純な通常の意味に従って使用され、1以上の特性を変化させる、または変更する作用を指す。「調節」は、1以上の特性を変化させる、または変更するプロセスを指す。例えば、標的タンパク質のモジュレータは、標的分子の特性または機能、或いは標的分子の量を増大または低減することによって変化させる。疾病のモジュレータは、標的とされる疾病の症状、原因、または特性を弱める。
【0030】
「薬学的に許容可能な賦形剤」および「薬学的に許容可能な担体」は、対象への活性剤の投与および対象による吸収を補助するとともに、患者に対し著しく有害な毒物学的効果を引き起こすことなく本発明の組成物に含まれ得る、物質を指す。薬学的に許容可能な賦形剤の限定されない例は、水、NaCl、生理食塩液、乳酸リンゲル液、標準のスクロース、標準のグルコース、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、コーティング、甘味料、着香料、食塩水(リンガー溶液など)、アルコール、油、ゼラチン、ラクトース、アミロース、またはデンプンなどの炭水化物、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidine)、および着色料などを含む。そのような調製物は滅菌され、所望される場合には、本発明の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞と有害に反応しない、潤滑剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼす塩、緩衝剤、着色料、および/または芳香剤などの助剤と混合され得る。当業者は、他の医薬賦形剤が本発明に有用であることを認識する。
【0031】
本明細書で使用されるように、用語「投与すること」は、対象への、経口投与、坐剤としての投与、局所的な接触、静脈内、腸管外、腹腔内、筋肉内、損傷内、脊髄腔内、鼻腔内または皮下の投与、或いは除放性の装置、例えば、ミニ浸透圧ポンプ、の移植を意味する。投与は、非経口および口腔粘膜を含む任意の経路(例えば、バッカル、舌下腺、口蓋、歯肉、鼻、膣、直腸、または経皮)による。非経口投与は、例えば、静脈内、筋肉内、小動脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内、および頭蓋内を含む。他の送達方法は、限定されないが、リポソーム製剤、静脈注射、経皮パッチなどの使用を含む。
【0032】
「患者」、「対象」、「必要とする患者」、および「必要とする対象」は、交換可能に使用され、且つ本明細書で提供されるような医薬組成物の投与により処置され得る疾患または疾病を患うか、或いはそれらにかかりやすい生体を指す。限定されない例は、ヒト、他の哺乳動物、ウシ、ラット、マウス、イヌ、サル、ヤギ、ヒツジ、カウ、シカ、および他の非哺乳動物を含む。いくつかの実施形態において、患者はヒトである。「癌患者」は、癌を患っているか、または癌が成長する傾向がある患者である。
【0033】
明白に別段の指示がない限り、本明細書に使用される用語「個体」は、ウシ、ウマ、ネコ科、ウサギ、イヌ科、げっ歯類、または霊長類(例えば、ヒト)を含む哺乳動物を指すが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、個体はヒトである。いくつかの実施形態では、個体は、チンパンジー属および他の類人猿などのヒト以外の霊長類、ならびにサル類である。いくつかの実施形態では、個体は、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、またはブタなどの家畜、ウサギ、イヌ、およびネコなどの愛玩動物、ラット、マウス、およびモルモットなどの、げっ歯類を含む実験動物などを含む。いくつかの実施形態では、本発明は、人間医学と獣医学の両方のコンテキストにおいて用途を見出す。
【0034】
「疾患」または「疾病」は、本明細書に提供される複合体、核酸分子、免疫不全細胞、または方法による処置が可能な患者または被験体の存在状態、または健康状態を指す。いくつかの実施形態では、本明細書に使用される「疾患」は癌を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、「免疫チェックポイントアゴニスト」は、1つまたは複数の免疫のチェックポイントタンパク質の活性化をもたらす薬剤を指す。例えば、1つまたは複数の免疫のチェックポイントアゴニストは、CD47、PD-L1、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、IDO、KIR、LAG3、NOX2、PD-1、TIM-3、VISTA、およびSIGLEC7を含む。
【0036】
本明細書で使用される場合、「突然変異」は、核酸分子の配列における変質を指す。突然変異は、限定されないが、挿入、欠失、および置換を含む。
【0037】
本明細書に使用される場合、アミノ酸のための略語は従来的であり、以下のとおりでよい:アラニン(A、Ala)、アルギニン(R、アルギニン)、アスパラギン(N、Asn)、アスパラギン酸(D、Asp)、システイン(C、システイン)、グルタミン酸(E、Glu)、グルタミン(Q、Gln)、グリシン(G、Gly)、ヒスチジン(H、His)、イソロイシン(I、Ile)、ロイシン(L、Leu)、リジン(K、Lys)、メチオニン(M、Met)、フェニルアラニン(F、Phe)、プロリン(P、Pro)、セリン(S、Ser)、トレオニン(T、Thr)、トリプトファン(W、Trp)、チロシン(Y、ティール)、バリン(V、ヴァル)、シトルリンを含む他のアミノ酸(Cit)、ホモシステイン(Hey)、ヒドロキシプロリン(Hyp)、オルニチン(Orn)、およびチロキシン(Thx)。生理学的なpHでは電荷を持たないアミノ酸の例は、限定されないが、アラニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンを含む。
【0038】
本明細書に使用されるように、ペプチドの「アンカー残基」は、ペプチドを所与のHLAアレルの溝へと結合する役割を果たす、保存アミノ酸残基である。
【0039】
本明細書および添付の請求項において使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上、明確に別段されない限り、複数への言及を含む。
【0040】
本明細書に記載された本発明の態様および変形は、「からなる」および/または「から本質的になる」態様および変形を含むことが理解される。
【0041】
合成ヒト白血球抗体(synHLA)複合体 本明細書では、一態様において、1つまたは複数のヒト白血球抗原(HLA)を含む複合体が提供され、ここで1つまたは複数のHLAは、複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害される。
【0042】
いくつかの実施形態では、複合体は、N末端からC末端の順序で、ペプチドを含むセグメント、およびヒトHLAクラス1重鎖配列を含むセグメントを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、上記ヒトHLAクラス1重鎖配列は、1つまたは複数のクラス1HLAを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、またはその任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLA-Aクラス1重鎖配列は、HLA-Aを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列は、HLA-Bを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列は、HLA-Cを含む。いくつかの実施形態では、人HLAクラス1重鎖配列は、HLA-AとHLA-Bを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLA-Aクラス1重鎖配列は、HLA-AとHLA-Cを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列は、HLA-BとHLA-Cを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLA-Aクラス1重鎖配列は、HLA-A、HLA-B、およびHLA-Cを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、またはその任意の組み合わせの複数のバージョンを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLA-Aクラス1重鎖配列は、HLA-Aの複数のバージョンを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLA-Aクラス1重鎖配列は、HLA-Bの複数のバージョンを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLA-Aクラス1重鎖配列は、HLA-Cの複数のバージョンを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLA-Aクラス1重鎖配列は、HLA-AとHLA-Bの複数のバージョンを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLA-Aクラス1重鎖配列は、HLA-AとHLA-Cの複数のバージョンを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLA-Aクラス1重鎖配列は、HLA-BとHLA-Cの複数のバージョンを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列は、HLA-A、HLA-B、およびHLA-Cの複数のバージョンを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列はHLA-Aを含み、ここでHLA-AはHLA-BとHLA-Cとの間に変位される。
【0044】
いくつかの実施形態では、複合体は1つまたは複数の免疫チェックポイントアゴニストをさらに含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫のチェックポイントアゴニストは、CD47、PD-L1、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、IDO、KIR、LAG3、NOX2、PD-1、TIM-3、VISTA、SIGLEC7、またはその組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、複合体はCD47を含む。いくつかの実施形態では、複合体は、PD-L1を含む。いくつかの実施形態では、複合体はA2ARを含む。いくつかの実施形態では、複合体はB7-H3を含む。いくつかの実施形態では、複合体はB7-H4を含む。いくつかの実施形態では、複合体はBTLAを含む。いくつかの実施形態では、複合体は、CTLA-4を含む。いくつかの実施形態では、複合体はIDOを含む。いくつかの実施形態では、複合体はKIRを含む。いくつかの実施形態では、複合体はLAG3を含む。いくつかの実施形態では、複合体はNOX2を含む。いくつかの実施形態では、複合体はPD-1を含む。いくつかの実施形態では、複合体はTIM-3を含む。いくつかの実施形態では、複合体はVISTAを含む。いくつかの実施形態では、複合体はSIGLEC7を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列は、HLA-Eまたはその断片、HLA-Fまたはその断片、HLA-Gまたはその断片、あるいはその任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列は、HLA-Eまたはその断片を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列は、HLA-Fまたはその断片を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列は、HLA-Gまたはその断片を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列は、HLA-Eまたはその断片、およびHLA-Fまたはその断片を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列は、HLA-Eまたはその断片、およびHLA-Gまたはその断片を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列は、HLA-Fまたはその断片、およびHLA-Gまたはその断片を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列は、HLA-Eまたはその断片、HLA-Fまたはその断片、およびHLA-Gまたはその断片を含む。いくつかの実施形態では、HLA-Eまたはその断片、HLA-Fまたはその断片、HLA-Gまたはその断片、あるいはその任意の組み合わせの少なくとも1つは、複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害される。いくつかの実施形態では、HLA-Eまたはその断片は、複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害される。いくつかの実施形態では、HLA-Fまたはその断片は、複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害される。いくつかの実施形態では、HLA-Gまたはその断片は、複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害される。いくつかの実施形態では、HLA-Eまたはその断片あるいはHLA-Fまたはその断片は、複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害される。いくつかの実施形態では、HLA-Eまたはその断片あるいはHLA-Gまたはその断片は、複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害される。いくつかの実施形態では、HLA-Fまたはその断片あるいはHLA-Gまたはその断片は、複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害される。いくつかの実施形態では、HLA-Eまたはその断片、HLA-Fまたはその断片、あるいはHLA-Gまたはその断片は、複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害される。
【0046】
いくつかの実施形態では、複合体は、複合体の検出を可能とするように構成されたエピトープをさらに含む。いくつかの実施形態では、エピトープは、3,5-ジニトロサリチル酸を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、複合体はヒトβ2-ミクログロブリン配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトβ2-ミクログロブリン配列は、野生型ヒトβ2-ミクログロブリン配列である。
【0048】
いくつかの実施形態では、複合体は、N末端からC末端の順で、
a.上記ペプチド、
b.1つまたは複数のリンカーの第1のリンカー、
c.ヒトβ2-ミクログロブリン配列、
d.1つまたは複数のリンカーの第2のリンカー、および
e.ヒトHLAクラス1重鎖配列を含む。
【0049】
本明細書では、別の態様において、1つまたは複数のヒト白血球抗原(HLA)を含む複合体が提供され、ここで1つまたは複数のHLAは、複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害され、および、ここで複合体は、N末端からC末端の順で、
a.ペプチドであって、1つまたは複数のT細胞を活性化することができない、上記ペプチド、
b.第1のリンカー、およびc.ヒトHLAクラス1重鎖配列を含むセグメント、を含み、
ここで第1のリンカーは、ヒトHLAクラス1重鎖配列上の1つまたは複数のキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)結合部位を遮断しないように構成された立体構造を含み、ここで上記立体構造は、タンパク質分解性の切断に抵抗するようにさらに構成される。
【0050】
いくつかの実施形態では、複合体は、以下の表Aに挙げられる配列に対し、少なくとも約70%、約80%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%、または約100%同一の配列を含む。
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
ペプチド
本明細書では、一態様において、HLA活性を弱化するかまたは阻害するように構成されたペプチドが提供される。
【0066】
いくつかの実施形態では、上記ペプチドは、1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発しない。いくつかの実施形態では、上記ペプチドは、1つまたは複数のT細胞を活性化することができない。いくつかの実施形態では、上記ペプチドは、1つまたは複数のT細胞の受容体に結合することができ、ここで上記結合は1つまたは複数のT細胞を活性化するには不十分である。
【0067】
いくつかの実施形態では、ペプチドは共有結合でHLAに結合するように構成される。いくつかの実施形態では、ペプチドは、HLAクラス1Iのβ鎖のN末端またはHLAクラス1のβ-2M鎖のN末端に結合するように構成される。いくつかの実施形態では、ペプチドは、MHC結合溝に対して特異的であるように構成されるが、T細胞レセプタ(TCR)による認識のために必要とされる正しいTCR対面( TCR-facing)/溶媒露出アミノ酸を含まない。HLAのMHC結合溝における特定の「アンカー残基」の存在は、結合したペプチドを固定するように作用する。
【0068】
いくつかの実施形態では、ペプチド中の残基は、TCRが、当該ペプチドに結合されたMHC(pMHC)を認識しないように、および/またはTCRが、当該ペプチドに結合されたMHC(pMHC)に結合しないように、ペプチドを構成するために、改変され得る。TCRはMHC中の残基と相互作用するが、ペプチド由来の1-3TCR対面/溶媒露出残基も、TCR相互作用に直接寄与する。いくつかの実施形態では、ペプチドのTCR対面残基はTCR相互作用に拮抗するように構成される。
【0069】
いくつかの実施形態では、上記ペプチドは、ヒトHLAクラス1重鎖配列の1つまたは複数のHLA結合溝ドメイン残基に結合する。いくつかの実施形態では、上記ペプチドは、ヒトHLAクラス1重鎖配列の立体構造を調節する。いくつかの実施形態では、上記立体構造は、1つまたは複数のT細胞がヒトHLAクラス1重鎖配列に結合するのを妨げる。
【0070】
いくつかの実施形態では、結合されるペプチドの配列は、pMHCの元来の柔軟性に作用する場合がある。いくつかの実施形態では、pMHCの配座の柔軟性はTCR相互作用を容易にする。いくつかの実施形態では、HLAに結合するように構成されたペプチドは、pMHCの配座の変異性を増加させ、およびTCRの係合を妨げるようにさらに構成される。
【0071】
いくつかの実施形態では、ペプチドは、約8アミノ酸長から約15アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドは、約8アミノ酸長から約9アミノ酸長、約8アミノ酸長から約10アミノ酸長、約8アミノ酸長から約11アミノ酸長、約8アミノ酸長から約12アミノ酸長、約8アミノ酸長から約13アミノ酸長、約8アミノ酸長から約14アミノ酸長、約8アミノ酸長から約15アミノ酸長、約9アミノ酸長から約10アミノ酸長、約9アミノ酸長から約11アミノ酸長、約9アミノ酸長から約12アミノ酸長、約9アミノ酸長から約13アミノ酸長、約9アミノ酸長から約14アミノ酸長、約9アミノ酸長から約15アミノ酸長、約10アミノ酸長から約11アミノ酸長、約10アミノ酸長から約12アミノ酸長、約10アミノ酸長から約13アミノ酸長、約10アミノ酸長から約14アミノ酸長、約10アミノ酸長から約15アミノ酸長、約11アミノ酸長から約12アミノ酸長、約11アミノ酸長から約13アミノ酸長、約11アミノ酸長から約14アミノ酸長、約11アミノ酸長から約15アミノ酸長、約12アミノ酸長から約13アミノ酸長、約12アミノ酸長から約14アミノ酸長、約12アミノ酸長から約15アミノ酸長、約13アミノ酸長から約14アミノ酸長、約13アミノ酸長から約15アミノ酸長、または約14アミノ酸長から約15アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドは、約8アミノ酸長、約9アミノ酸長、約10アミノ酸長、約11アミノ酸長、約12アミノ酸長、約13アミノ酸長、約14アミノ酸長、または約15アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドは、少なくとも、約8アミノ酸長、約9アミノ酸長、約10アミノ酸長、約11アミノ酸長、約12アミノ酸長、約13アミノ酸長、または約14アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドは、最大、約9アミノ酸長、約10アミノ酸長、約11アミノ酸長、約12アミノ酸長、約13アミノ酸長、約14アミノ酸長、または約15アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、ペプチドは14よりも多くのアミノ酸を含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、HLAのMHC結合溝に結合させるために非常に長いペプチドを使用することは、HLA活性を阻害する。MHC-Iは、典型的には8~10アミノ酸長のペプチドを結合させるが、非正準の、より長いペプチド(例えば、13アミノ酸)を結合させることもできる。そのような長いペプチドの末端は、ペプチド結合部位の中心に「膨らみ」を形成して、アンカー残基においてMHC結合溝へ結合する。そのようなpMHC-TCR複合体において、TCRは、MHCと(MHC重鎖がTCRとのインターフェースを支配するような複合体では、典型的に、正準で短いペプチドと)相対的に僅かな接触しか生じず、代わりに、TCRとの相互作用は、ペプチドによって直接支配される。膨らんだペプチドはまた、TCR係合にとっての立体的な困難さを表わす。そのようなシステムにおいてペプチド-TCR相互作用が支配的であると、膨らみにおけるペプチド配列を選択することにより、TCR結合を妨げることが可能である。いくつかの実施形態では、ペプチドは、TCRとの分子接触に必要なHLAのアミノ酸を遮断および/または沈静化するように構成され、および/またはペプチドは、TCR結合および/または活性のために十分なアミノ酸残基を含まない。いくつかの実施形態では、ペプチドは、HLAをTCR結合および/または活性不全にするために、この領域におけるHLAの立体構造の異質性を増加させるように構成される。いくつかの実施形態では、ペプチドは上記の働きの任意の組み合わせを行うように構成される。
【0073】
いくつかの実施形態では、ペプチドはジスルフィド結合によって複合体に結合される。
【0074】
いくつかの実施形態では、複合体は調節ペプチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、調節ペプチドはアポトーシス誘導ペプチドである。いくつかの実施形態では、アポトーシス誘導ペプチドは、複合体のために「キルスイッチ」として働く。
【0075】
いくつかの実施形態では、ペプチドは、以下の表Bに挙げられる配列に少なくとも約70%、約80%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%、または約100%同一の配列を含む。
【0076】
【0077】
リンカー
いくつかの実施形態では、複合体は、ペプチドとヒトHLAクラス1重鎖配列との間に1つまたは複数のリンカーを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリンカーは、タンパク質分解性の切断に抵抗するように構成される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリンカーは、ヒトHLAクラス1重鎖配列上の1つまたは複数のキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)結合部位を遮断しないように構成された立体構造を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリンカーは構造上安定している。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリンカーは剛性である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリンカーは限られた柔軟性を有する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリンカーの構造安定性、剛性、および限られた柔軟性は、タンパク質分解に対する耐性を増加させる。
【0078】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリンカーの1つのリンカーは、ペプチドとヒトβ2-ミクログロブリン配列との間に、ヒトβ2-ミクログロブリン配列とヒトHLAクラス1重鎖配列との間に、またはその両方の間に、変位される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリンカーのうちのリンカーは、ペプチドとヒトβ2-ミクログロブリン配列との間に変位される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリンカーのうちのリンカーは、ヒトβ2-ミクログロブリン配列とヒトHLAクラス1重鎖配列との間に変位される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリンカーのうちの第1のリンカーは、ペプチドとヒトβ2-ミクログロブリン配列との間に変位され、1つまたは複数のリンカーの第2のリンカーは、ヒトβ2-ミクログロブリン配列とヒトHLAクラス1重鎖配列との間に変位される。いくつかの実施形態では、第2のリンカーは、タンパク質分解切断に抵抗するように構成された立体構造を含む。いくつかの実施形態では、第2のリンカーは、ヒトHLAクラス1重鎖配列上の1つ以上のキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)結合部位を遮断しないようにさらに構成される。いくつかの実施形態では、第2のリンカーの立体構造は、ヒトHLAクラス1重鎖配列へのKIR結合を可能にし、「自己喪失」免疫応答を妨げる。いくつかの実施形態では、第2のリンカーの立体構造は、1つまたは複数のナチュラルキラー細胞による攻撃を妨げる。
【0079】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリンカーのうちのリンカーは、以下の表Cに挙げられる配列に少なくとも約70%、約80%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%、または約100%同一の配列をリンカー含む。
【0080】
【0081】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のヒト白血球抗原(HLA)は、1つまたは複数の変異を含み、ここで1つまたは複数の変異は、上記複合体が1つまたは複数のCD8細胞によって認識されるときに1つまたは複数のHLAがT細胞応答を誘発することを阻害する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基115、122、128、194、197、198、212、214、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、243、245、248、262、またはその任意の組み合わせの1つまたは複数の変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基115の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基122の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基128の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基194の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基197の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基198の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基212の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基214の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基222の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基223の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基224の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基225の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基226の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基227の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基228の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基229の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基230の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基231の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基232の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基233の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基243の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基245の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基248の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基262の突然変異を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、複合体は、補体系による免疫応答を阻害する1つまたは複数のタンパク質またはその断片をさらに含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のタンパク質またはその断片は、CD48、CD59、またはその組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のタンパク質またはその断片は、CD48である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のタンパク質またはその断片は、CD59である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のタンパク質またはその断片は、CD48およびCD59である。
【0083】
いくつかの実施形態では、ペプチドは、L、M、S、I、F、T、V、およびYから選択される第2のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸残基は、T、V、およびYから選択される。いくつかの実施形態では、ペプチドは、V、I、F、W、Y、L、R、およびKから選択される最後のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、最後のアミノ酸残基は、Y、L、R、およびKから選択される。
【0084】
いくつかの実施形態では、ペプチドは、E、P、L、Q、A、R、H、S、T、V、M、D、およびKから選択される第2のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸残基は、E、P、L、Q、A、R、およびHから選択される。いくつかの実施形態では、ペプチドは、V、L、F、A、I、Y、M、W、P、およびRから選択される最後のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、最後のアミノ酸残基は、V、L、およびFから選択される。
【0085】
いくつかの実施形態では、ペプチドは、A、Y、S、T、V、I、L、F、Q、R、N、およびWから選択される第2のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸残基は、AおよびYから選択される。いくつかの実施形態では、ペプチドは、L、V、M、F、Y、およびIから選択される最後のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、最後のアミノ酸残基はLである。
【0086】
核酸分子本明細書では、別の態様において、本明細書で提供される複合体をコードする核酸分子が提供される。
【0087】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、内因性のHLA遺伝子座における欠失を含む。いくつかの実施形態では、欠失は、内因性のHLA-A、HLA-B、またはHLA-C遺伝子座、またはその任意の組み合わせにおける欠失を含む。いくつかの実施形態では、欠失は、内因性のHLA-A遺伝子座における欠失を含む。いくつかの実施形態では、欠失は、内因性のHLA-B遺伝子座における欠失を含む。いくつかの実施形態では、欠失は、内因性のHLA-C遺伝子座における欠失を含む。いくつかの実施形態では、欠失は、内因性のHLA-A遺伝子座およびHLA-B遺伝子座における欠失を含む。いくつかの実施形態では、欠失は、内因性のHLA-A遺伝子座およびHLA-C遺伝子座における欠失を含む。いくつかの実施形態では、欠失は、内因性のHLA-B遺伝子座およびHLA-C遺伝子座における欠失を含む。いくつかの実施形態では、欠失は、内因性のHLA-A遺伝子座、HLA-B遺伝子座、およびHLA-C遺伝子座における欠失を含む。いくつかの実施形態では、欠失は、内因性のHLA遺伝子座の完全な欠失である。
【0088】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-A配列、HLA-B配列、HLA-C配列、またはその任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-A配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-B配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-C配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-A配列およびHLA-B配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-A配列およびHLA-C配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-B配列およびHLA-C配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-A配列、HLA-B配列、およびHLA-C配列を含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-A配列、HLA-B配列、HLA-C配列、またはその任意の組み合わせの複アレルを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-A配列の複アレルを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-B配列の複アレルを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-C配列の複アレルを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-A配列の複アレルおよびHLA-B配列の複アレルを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-A配列の複アレルおよびHLA-C配列の複アレルを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-B配列の複アレルおよびHLA-C配列の複アレルを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-A配列の複アレル、HLA-B配列の複アレル、およびHLA-C配列の複アレルを含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、HLA-A配列のアレルは、HLA-A*02:01、HLA-A*01:01、HLA-A*03:01、HLA-A*11:01、HLA-A*24:02、HLA-A*29:02、HLA-A*26:01、HLA-A*32:01、HLA-A*23:01、HLA-A*68:02、HLA-A*30:01、HLA-A*30:02、HLA-A*34:02、HLA-A*31:01、HLA-A*33:03、HLA-A*02:07、HLA-A*02:06、およびHLA-A*02:03から選択される。
【0091】
いくつかの実施形態では、HLA-B配列のアレルは、HLA-B*44:02、HLA-B*07:02、HLA-B*08:01、HLA-B*40:01、HLA-B*35:01、HLA-B*51:01、HLA-B*15:01、HLA-B*53:01、HLA-B*15:03、HLA-B*58:01、HLA-B*45:01、HLA-B*42:01、HLA-B*44:03、HLA-B*18:01、HLA-B*52:01、HLA-B*14:02、HLA-B*46:01、HLA-B*38:02、およびHLA-B*15:02から選択される。
【0092】
いくつかの実施形態では、HLA-C配列のアレルは、HLA-C*07:01、HLA-C*07:02、HLA-C*04:01、HLA-C*05:01、HLA-C*03:04、HLA-C*06:02、HLA-C*03:03、HLA-C*12:03、HLA-C*08:02、HLA-C*02:02、HLA-C*16:01、HLA-C*17:01、HLA-C*01:02、HLA-C*02:01、HLA-C*08:01、HLA-C*03:02、およびHLA-C*14:02から選択される。
【0093】
いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-A配列を含み、ここでHLA-A配列は、HLA-B配列とHLA-C配列との間に変位される。
【0094】
いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、1700塩基対(bp)未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、1600塩基対(bp)未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、1500塩基対(bp)未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、1400塩基対(bp)未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、1300塩基対(bp)未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、1200塩基対(bp)未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、1100塩基対(bp)未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、1000塩基対(bp)未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、900塩基対(bp)未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、800塩基対(bp)未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、700塩基対(bp)未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、600塩基対(bp)未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、500bp未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、450bp未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、400bp未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、350bp未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、300bp未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、250bp未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、200bp未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、150bp未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、100bp未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、50bp未満を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、HLA-A配列、HLA-B配列、HLA-C配列、またはその組み合わせは、1つまたは複数のフランキング配列を含む。いくつかの実施形態では、HLA-A配列は、1つまたは複数のフランキング配列を含む。いくつかの実施形態において、HLA-B配列は、1つまたは複数のフランキング配列を含む。いくつかの実施形態では、HLA-C配列は、1つまたは複数のフランキング配列を含む。いくつかの実施形態では、HLA-A配列およびHLA-B配列は、1つまたは複数のフランキング配列を。いくつかの実施形態では、HLA-A配列およびHLA-C配列は、1つまたは複数のフランキング配列を。いくつかの実施形態では、HLA-B配列およびHLA-C配列は、1つまたは複数のフランキング配列を。いくつかの実施形態では、HLA-A配列、HLA-B配列、およびHLA-C配列は、1つまたは複数のフランキング配列を。
【0096】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のフランキング配列は、内因性のHLA配列を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のフランキング配列は、1つまたは複数のプロモーターに特異的である。いくつかの実施形態では、プロモーターは、HLA-Aプロモーター、HLA-Bプロモーター、HLA-Cプロモーター、またはその組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、HLA-A配列は内因性のHLA-Aプロモーターを含む。いくつかの実施形態では、HLA-B配列は内因性のHLA-Bプロモーターを含む。いくつかの実施形態では、HLA-C配列は内因性のHLA-Cプロモーターを含む。いくつかの実施形態では、HLA-A配列は内因性のHLA-Aプロモーターを含み、およびHLA-B配列は内因性のHLA-Bプロモーターを含む。いくつかの実施形態では、HLA-A配列は内因性のHLA-Aプロモーターを含み、およびHLA-C配列は内因性のHLA-Cプロモーターを含む。いくつかの実施形態では、HLA-B配列は内因性のHLA-Aプロモーターを含み、およびHLA-B配列は内因性のHLA-Cプロモーターを含む。いくつかの実施形態では、HLA-A配列は内因性のHLA-Aプロモーターを含み、HLA-B配列は内因性のHLA-Bプロモーターを含み、およびHLA-C配列は内因性のHLA-Cプロモーターを含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-A配列、HLA-B配列、HLA-C配列、またはその組み合わせの、少なくとも一部を含まない。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-A配列の少なくとも一部を含まない。いくつかの実施形態では、ヒトHLBクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-B配列の少なくとも一部を含まない。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-C配列の少なくとも一部を含まない。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-A配列またはHLA-B配列の少なくとも一部を含まない。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-A配列またはHLA-C配列の少なくとも一部を含まない。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-B配列またはHLA-B配列の少なくとも一部を含まない。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-A配列、HLA-B配列、またはHLAC配列の少なくとも一部を含まない。
【0098】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、ヒトβ2-ミクログロブリンペプチドをコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、内在性のヒトβ2-ミクログロブリンペプチドをコードする配列をさらに含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、ペプチドをコードする配列をさらに含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、ペプチドをコードする配列とヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列との間における1つまたは複数のリンカーをコードする1つまたは複数の配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリンカーをコードする1つまたは複数の配列の1つの配列は、ペプチドをコードする配列とヒトβ2-ミクログロブリンペプチドをコードする配列との間に、ヒトβ2-ミクログロブリンペプチドをコードする配列とヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列との間に、あるいはその両方の間に、変位される。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のリンカーをコードする1つまたは複数の配列は、ペプチドをコードする配列とヒトβ2ミクログロブリンペプチドをコードする配列との間に変位される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリンカーをコードする1つまたは複数の配列は、ヒトβ2-ミクログロブリンペプチドをコードする配列とヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列との間に変位される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリンカーをコードする1つまたは複数の配列の第1の配列は、ペプチドをコードする配列とヒトβ2-ミクログロブリンペプチドをコードする配列との間に変位され、および1つまたは複数のリンカーをコードする1つまたは複数の配列の第2の配列は、ヒトβ2-ミクログロブリンペプチドをコードする配列とヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列との間に変位される。
【0101】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、1つまたは複数の免疫チェックポイントアゴニストをコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はCD47をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はPD-L1をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はA2ARをコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はB7-H3をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はB7-H4をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はBTLAをコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はCTLA-4をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はIDOをコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はKIRをコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はLAG3をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はNOX2をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はPD-1をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はTIM-3をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はVISTAをコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はSIGLEC7をコードする配列をさらに含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、1つまたは複数の免疫チェックポイントアゴニスト受容体に対応する1つまたは複数のノックアウトされたタンパク質をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はノックアウトされたCD47受容体をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はノックアウトされたPD-L1受容体をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はノックアウトされたA2AR受容体をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はノックアウトされたB7-H3受容体をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はノックアウトされたB7-H4受容体をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はノックアウトされたBTLA受容体をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はノックアウトされたCTLA-4受容体をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はノックアウトされたIDO受容体をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はノックアウトされたKIR受容体をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はノックアウトされたLAG3受容体をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はノックアウトされたNOX2受容体をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はノックアウトされたPD-1受容体をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はノックアウトされたTIM-3受容体をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はノックアウトされたVISTA受容体をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子はノックアウトされたSIGLEC7受容体をコードする配列をさらに含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-E配列またはその断片、HLA-F配列またはその断片、HLA-G配列またはその断片、あるいはその任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-E配列またはその断片を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-F配列またはその断片を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-G配列またはその断片を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-E配列またはその断片、およびHLA-F配列またはその断片を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-E配列またはその断片、およびHLA-G配列またはその断片を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-F配列またはその断片、およびHLA-G配列またはその断片を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-E配列またはその断片、HLA-F配列または断片、およびHLA-G配列またはその断片を含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、HLA-E配列またはその断片、HLA-F配列またはその断片、HLA-G配列またはその断片、あるいはその任意の組み合わせの少なくとも1つは、複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害される。いくつかの実施形態では、HLA-E配列またはその断片は、複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害される。いくつかの実施形態では、HLA-F配列またはその断片は、複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害される。いくつかの実施形態では、HLA-G配列またはその断片は、複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害される。いくつかの実施形態では、HLA-E配列またはその断片、あるいはHLA-F配列またはその断片は、複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害される。いくつかの実施形態では、HLA-E配列またはその断片、あるいはHLA-G配列またはその断片は、複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害される。いくつかの実施形態では、HLA-F配列またはその断片配列、あるいはHLA-Gまたはその断片は、複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害される。いくつかの実施形態では、HLA-E配列またはその断片配列、HLA-Fまたはその断片、あるいはHLA-Gまたはその断片は、複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害される。
【0105】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、クラス1I・主要組織適合複合体・トランスアクティベーター(CIITA)に対応する1つまたは複数のノックアウトされたタンパク質をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、クラス全員II・主要組織適合複合体・トランスアクティベーター(CIITA)遺伝子座全体がノックアウトされる。
【0106】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、調節ペプチドをコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、アポトーシス誘導ペプチドをコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、アポトーシス誘導ペプチドをコードする配列をさらに含んで、「キルスイッチ」として働く。
【0107】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、複合体の検出を可能とするように構成されたエピトープをコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、3,5-ジニトロサリチル酸を含むエピトープをコードする配列をさらに含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、1つまたは複数のノックアウトされたタンパク質をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のノックアウトされたタンパク質は、血液型A抗原および血液型B抗原から選択される。いくつかの実施形態では、核酸分子は、ノックアウトされた血液型A抗原をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、ノックアウトされた血液型Bをコードする配列をさらに含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、
a.ペプチドをコードする配列、
b.1つまたは複数のリンカーをコードする1つまたは複数の配列の第1のリンカーをコードする第1の配列、
c.ヒトβ2-ミクログロブリンペプチドをコードする配列、
d.1つまたは複数のリンカーをコードする1つまたは複数の配列の第2のリンカーをコードする第2の配列、および、
e.ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列
を含む。
【0110】
本明細書では、別の態様において、1つまたは複数のクラス1ヒト白血球抗原(HLA)タンパク質を含む複合体をコードする配列を含む核酸分子が提供され、ここで1つまたは複数のクラス1HLAタンパク質は、複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害され、ここで核酸分子は、
a.ペプチドをコードする配列であって、ここで上記ペプチドは、1つまたは複数のT細胞を活性化することができない、配列、
b.第1のリンカーをコードする第1の配列、および
c.1つまたは複数のクラス1HLAタンパク質をコードする配列を含み、
ここで第1のリンカーは、ヒトHLAクラス1重鎖配列上の1つまたは複数のキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)結合部位を遮断しないように構成された立体構造を含み、ここで上記立体構造は、タンパク質分解性の切断に抵抗するようにさらに構成される。
【0111】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、リンカーをコードする配列とヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列との間にヒトβ2-ミクログロブリンペプチドをコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、リンカーをコードする配列とヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列との間に内在性ヒトβ2-ミクログロブリンペプチドをコードする配列をさらに含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、1つまたは複数の変異を含み、ここで1つまたは複数の変異は、ヒトHLAクラス1重鎖配列が1つまたは複数のCD8細胞によって認識されるときに、上記ヒトHLAクラス1重鎖配列がT細胞応答を誘発することを阻害する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基115、122、128、194、197、198、212、214、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、243、245、248、262、またはその任意の組み合わせの1つまたは複数の変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基115の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基122の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基128の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基194の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基197の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基198の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基212の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基214の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基222の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基223の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基224の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基225の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基226の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基227の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基228の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基229の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基230の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基231の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基232の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基233の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基243の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基245の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基248の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の変異は、アミノ酸残基262の突然変異を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、補体系による免疫応答を阻害する1つまたは複数のタンパク質またはその断片をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のタンパク質またはその断片は、CD48、CD59、またはその組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のタンパク質またはその断片は、CD48である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のタンパク質またはその断片は、CD59である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のタンパク質またはその断片は、CD48およびCD59である。
【0114】
本明細書では、別の態様において、本明細書で提供される核酸分子を生成する方法が提供され、該方法は、HLA遺伝子座における欠失を含む配列、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列、またはその任意の組み合わせを受け入れるように構成された領域をコードする配列を変位させる工程を含む。いくつかの実施形態において、方法は、HLA遺伝子座における欠失を含む配列を受け入れるように構成された領域をコードする配列を変位させる工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列を受け入れるように構成された領域をコードする配列を変位させる工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、HLA遺伝子座に欠失を含む配列とヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列とを受け入れるように構成された領域をコードする配列を変位させる工程を含む。
【0115】
免疫不全細胞
本明細書では、別の態様において、本明細書で提供される複合体または本明細書で提供される核酸分子を細胞に投与する工程を含む、免疫不能細胞を生成する方法が提供される。
【0116】
いくつかの実施形態では、核酸分子は細胞のゲノムに送達される。いくつかの実施形態では、細胞は複合体と共にインキュベートされる。
【0117】
いくつかの実施形態では、細胞は幹細胞である。いくつかの実施形態では、幹細胞は誘導多能性幹細胞(iPSC)である。
【0118】
いくつかの実施形態では、免疫不能細胞は細胞治療における使用に適している。いくつかの実施形態では、免疫不能細胞は、免疫応答を引き起こさずに被験体に投与するために適している。
【0119】
遺伝子治療/書き込み(Writing)の他の方法ベクターと核酸様々な核酸がノックアウトの目的のために、または他の目的で遺伝子の発現を達成するために、細胞へと導入され得る。核酸構築物は、標的核酸配列を含むトランスジェニック細胞を産生するために使用することができる。本明細書に使用されるように、用語「核酸」または「核酸分子」は、DNA、RNA、および核酸アナログ、ならびに二本鎖または一本鎖(すなわち、センスまたはアンチセンス一本鎖)である核酸を含む。核酸アナログは、例えば、核酸の安定性、ハイブリダイゼーション、または溶解度を改良するために、塩基部分、糖部分、またはリン酸バックボーンにおいて修飾され得る。塩基部分における修飾は、デオキシチミジンに対するデオキシウリジン、および5-メチル-2’-デオキシシチジンとデオキシシチジンに対する5-臭素-2’―デオキシチジンを含む。糖部分の修飾は、2’-O-メチルまたは2’-O-アリル糖を形成するための、リボース糖の2’ヒドロキシルの修飾を含む。デオキシリボースリン酸バックボーン(deoxyribose phosphate backbone)はモルホリノ核酸を産生するために修飾することができ、ここで各塩基部分は、6員、モルホリノ環、またはペプチド核酸に連結され、ここでデオキシリン酸バックボーン(deoxyphosphate backbone)は、擬似ペプチド・バックボーンによって置換され、および4塩基は保持される。Summerton and Weller (1997) Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 7(3):187、および Hyrup et al. (1996) Bioorgan. Med. Chem. 4:5を参照されたい。加えて、デオキシリン酸バックボーンは、例えば、ホスホロチオエート(phosphorothioate)またはホスホロジチオエート(phosphorodithioate )バックボーン、ホスホロアミダイト(phosphoroamidite)、あるいはアルキルホスホトリエステル(alkyl phosphotriester)バックボーンと置換することができる。
【0120】
標的核酸配列は、プロモーターなどの調節領域に操作可能に連結することができる。調節領域は、どんな種由来でもよい。本明細書で使用されるとき、操作可能に連結されるとは、標的核酸の転写を可能にするか容易にするように核酸配列に対して調節領域を位置決めすることを指す。
【0121】
どんな型のプロモーターでも、標的核酸配列へ操作可能に連結することができる。プロモーターの例は、制限することなく、組織特異的プロモーター、構成的プロモーター、および、特定の刺激に反応するかまたは反応しないプロモーターを含む。適切な組織特異的プロモーターは、β細胞における核酸転写の選択的な発現をもたらす場合があり、例えば、ヒトインスリン・プロモーターを含む。他の組織特異的プロモーターが、例えば、肝細胞または心臓組織における選択的な発現をもたらす場合があり、それぞれ、アルブミンまたはαミオシン重鎖プロモーターを含む。他の実施形態では、重大な組織特異性または一時的な特異性のない核酸分子の発現を容易にするプロモーターは使用することができる(すなわち構成的のプロモーター)。例えば、ニワトリβ-アクチン遺伝子プロモーター、ユビキチンプロモーター、miniCAGsプロモーター、グリセリンアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)プロモーター、または3-ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)プロモーターなどの、β-アクチン・プロモーターが使用されてよく、並びに、単純疱疹ウイルス・チミジンキナーゼ(HSV-TK)プロモーター、SV40プロモーター、またはサイトメガロウィルス(CMV)プロモーターなどのウイルスプロモーターも使用されてよい。いくつかの実施形態では、ニワトリβ-アクチン遺伝子プロモーターとCMVエンハンサーの融合体は、プロモーターとして使用される。例えば、Xu et al. (2001) Hum. Gene Ther. 12:563、および Kiwaki et al. (1996) Hum. Gene Ther. 7:821を参照されたい。
【0122】
誘導可能なプロモーターの一例は、テトラサイクリン(tet)-onプロモーター・システムであり、核酸の転写を調節するために使用することができる。このシステムでは、変異型Tet抑制因子(TetR)が単純疱疹ウイルスVP16トランス-アクティベータプロテインの活性化ドメインに融合されて、テトラサイクリンに制御される転写活性化因子(tTA)を作製し、それはtetまたはドキシサイクリン(dox)によって調節される。抗生物質の非存在下で、転写は最小限であり、一方、tetまたはdoxの存在下では、転写が誘導される。代替の誘導可能なシステムは、エクジソンまたはラパマイシンのシステムを含む。エクジソンは、昆虫脱皮ホルモンであり、その生成がエクジソン受容体のヘテロダイマーとウルトラスピラクル(ultraspiracle)遺伝子(USP)の生成物とによって制御される。発現は、エクジソンまたはmuristerone Aなどのエクジソンのアナログを用いた処理によって誘導される。誘導可能なシステムを誘発するために対象に投与される薬剤は、誘導剤と呼ばれる。
【0123】
核酸構築物で有用であり得る付加的な調節領域は、限定されないが、ポリアデニル化配列、翻訳調節配列(例えば、内部リボソーム侵入セグメント、IRES)、エンハンサー、誘導可能エレメント、またはイントロンを含む。このような調節領域は、必要ない場合もあるが、転写、mRNAの安定性、翻訳効率などに影響を与えることによって発現量を増加させる場合がある。このような調節領域は、細胞における核酸の最適な発現を得るために、所望に応じて核酸構築物に含めることができる。しかしながら、十分な発現は、このような付加的要素なしで達成されることもある。
【0124】
シグナルペプチドまたは選択マーカーをコードする核酸構築物が使用されてもよい。シグナルペプチドは、コードされるポリペプチドが特定の細胞位置(例えば、細胞表面)に向けられるように、使用することができる。選択マーカーの非限定的な例は、ピューロマイシン、ガンシクロビル、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、アミノグリコシド・ホスホトランスフェラーゼ(neo、G418、APH)、ジヒドロ葉還元酵素(DHFR)、ヒグロマイシンB-ホスホトランスフェラーゼ(phosphtransferase)、チミジンキナーゼ(TK)、およびキサンチン-グアニン-ホスホリボシルトランスフェラーゼ(XGPRT)を含む。そのようなマーカーは培養株における安定した形質転換体を選択するのに有用である。他の選択マーカーは、緑色蛍光タンパク質または黄色蛍光タンパク質などの、蛍光ポリペプチドを含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、選択マーカーをコードする配列は、例えば、CreまたはFlpなどのレコンビナーゼのための認識配列によってフランキングされる場合がある。例えば、選択マーカーは、loxP認識部位(Creレコンビナーゼによって認識される34-bp認識部位)またはFRT認識部位によってフランキングされ、その結果、構築物から選択マーカーを削除することができる場合がある。Orban, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (1992) 89:6861, for a review of Cre/lox technology, and Brand and Dymecki, Dev. Cell (2004) 6:7を参照されたい。選択マーカー遺伝子によって中断されたCre-またはFlp-活性化可能な導入遺伝子を含有するトランスポゾンは、導入遺伝子の条件的発現を伴うトランスジェニック細胞を得るために使用することができる。
【0126】
いくつかの実施形態では、標的核酸はポリペプチドをコードする。ポリペプチドをコードする核酸配列は、後に続くコードされたポリペプチドの操作を容易にするように(例えば、定位または検出を容易にするように)設計された「タグ」をコードするタグ配列を含み得る。タグ配列は、ポリペプチドのカルボキシルまたはアミノ末端のいずれかにコードされるタグが置かれるように、ポリペプチドをコードする核酸配列に挿入され得る。コードされるタグの非限定的な例は、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)およびFLAG(商標)タグ(コダック、ニューヘブン、コネチカット州)を含む。
【0127】
他の実施形態では、標的核酸配列は、標的核酸の発現が低下するように、標的核酸に対するRNA干渉を誘導する。例えば、標的核酸配列は、嚢胞性線維症膜貫通伝導調節(CFTR)ポリペプチドをコードする核酸に対してRNA干渉を誘導することができる。例えば、CFTR DNAに相同な二本鎖の低分子干渉RNA(siRNA)またはショートヘアピンRNA(shRNA)を用いて、そのDNAの発現を減らすことができる。Constructs for siRNA can be produced as described, for example, in Fire et al. (1998) Nature 391:806; Romano and Masino (1992) Mol. Microbiol. 6:3343; Cogoni et al. (1996) EMBO J. 15:3153、Cogoni and Masino (1999) Nature 399:166、Misquitta and Paterson (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:1451、および、Kennerdell and Carthew (1998) Cell 95:1017. Constructs for shRNA can be produced as described by McIntyre and Fanning (2006) BMC Biotechnology 6:1。一般に、shRNAは、相補的領域を含む一本鎖RNA分子として転写され、アニーリングして短いヘアピンを形成することができる。
【0128】
核酸構築物は、例えば、卵母細胞または卵、始原細胞、成人または胚性幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、始原生殖細胞などの生殖細胞、PK-15細胞などの腎臓細胞、膵島細胞、β細胞、肝細胞、真皮線維芽細胞などの線維芽細胞など、あらゆる型の胚の細胞、胎児の細胞、または成人の細胞の中に、様々な手法を用いて導入することができる。技術の非限定的な例としては、トランスポゾンシステム、細胞に感染可能な組換えウイルス、またはリポソーム、あるいはエレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リン酸カルシウム沈殿などの、核酸を細胞に送達可能な他の非ウイルス法を使用することが挙げられる。
【0129】
トランスポゾンシステムでは、核酸構築物の転写単位、すなわち、標的核酸配列に操作可能に連結された調節領域は、トランスポゾンの逆向き反復配列によってフランキングされる。例えば、Sleeping Beauty (米国特許第6,613,752号および米国公開公報第2005/0003542号を参照)、Frog Prince (Miskey et al. (2003) Nucleic Acids Res. 31:6873)、Tol2 (Kawakami (2007) Genome Biology 8(Suppl.1):S7、Minos (Pavlopoulos et al. (2007) Genome Biology 8(Suppl.1):S2)、Hsmar1 (Miskey et al. (2007)) Mol Cell Biol. 27:4589)、および、Passportを含むいくつかのトランスポゾンシステムが、細胞の中に核酸を導入するために開発されている。Sleeping BeautyおよびPassportトランスポゾンは特に有用である。トランスポサーゼはタンパク質として送達され、標的核酸として同じ核酸構築物上でコードされる場合があり、別個の核酸構築物上に導入されるか、またはmRNA(例えば、インビトロで転写され、キャップされたmRNA)として提供される場合がある。
【0130】
また、標的核酸の発現を維持し、宿主遺伝子の不要な転写を抑制するために、核酸構築物にインスレーターエレメントを含めることができる。例えば、米国公開公報第2004/0203158号を参照されたい。典型的には、インスレーターエレメントは、転写単位の両側に隣接し、トランスポゾンの逆方向反復の内部にある。インスレーターエレメントの非限定的な例としては、マトリックス付着領域(MAR)型インスレーターエレメントおよび境界型インスレーターエレメントが挙げられる。例えば、米国特許第6,395,549号、第5,731,178号、第6,100,448号、および第5,610,053号、並びに米国公開公報第2004/0203158号を参照されたい。
【0131】
核酸は、ベクターの中に統合され得る。ベクターは、標的DNAの中に担体から移動するように設計された、あらゆる特定のDNAセグメントを含む、幅の広い用語である。ベクターは、発現ベクター、またはベクターシステムと呼ばれることがあり、ゲノムあるいはエピソーム、プラスミド、またはウイルス/ファージDNAセグメントなどの、他の標的DNA配列へのDNA挿入をもたらすのに必要なコンポーネントのセットである。対象への遺伝子送達に使用されるウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス、インテグレートファージウイルス)、および非ウイルスベクター(例えば、トランスポゾン)などのベクターシステムは、2つの基本要素、1)DNA(またはcDNAへと逆転写されたRNA)からなるベクターと、2)ベクターとDNA標的配列との両方を認識し、ベクターを標的DNA配列に挿入するトランスポザーゼ、リコンビナーゼ、その他のインテグラーゼ酵素を有する。ベクターは、1つ以上の発現制御配列を含む1つ以上の発現カセットを含むことが最も多く、ここで発現制御配列は、それぞれ別のDNA配列またはmRNAの転写および/または翻訳を制御および調節するDNA配列である。
【0132】
様々な型のベクターが知られている。例えば、プラスミド、および例えば、レトロウイルス・ベクターなどのウイルスベクターが知られている。哺乳類発現プラスミドは、通常、複製起点、適切なプロモーターおよび任意のエンハンサー、さらに必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナーおよびアクセプター部位、転写終結配列、および5’隣接非転写配列を有する。ベクターの例として、プラスミド(別の型のベクターのキャリアであってもよい)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス(例えば、HIV-1、SIVまたはFIV)、レトロウイルス(例えば、ASV、ALV、またはMoMLV)、およびトランスポゾン(例えば、Sleeping Beauty、P-elements、Tol-2、Frog Prince、piggyBac)が挙げられる。
【0133】
本明細書では、他の態様において、1つまたは複数のヒト白血球抗原(HLA)をコードする核酸分子を細胞に送達する追加の方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は、ウイルスベクターを介した、1つまたは複数のHLAをコードする核酸分子の送達を含む。いくつかの実施形態では、方法は、非ウイルスベクターを介した、1つまたは複数のHLAをコードする核酸分子の送達を含む。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスに由来する。
【0134】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、内因性HLA遺伝子座における欠失を含む。いくつかの実施形態では、欠失は、内因性HLA-A、HLA-B、またはHLA-C遺伝子座における欠失、またはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの実施形態では、欠失は、内因性HLA遺伝子座の完全な欠失である。
【0135】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-A配列、HLA-B配列、HLA-C配列、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-A配列、HLA-B配列、HLA-C配列、またはそれらの任意の組み合わせの複数のアレルを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-A配列を含み、ここで、HLA-A配列は、HLA-B配列とHLA-C配列との間に変位される。
【0136】
いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、1700塩基対(bp)未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、500bp未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、250bp未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、150bp未満を含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、HLA-A配列、HLA-B配列、HLA-C配列、またはその組み合わせは、1つまたは複数のフランキング配列を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のフランキング配列は、内因性のHLA配列を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のフランキング配列は、1つまたは複数のプロモーターに特異的である。いくつかの実施形態では、プロモーターは、HLA-Aプロモーター、HLA-Bプロモーター、HLA-Cプロモーター、またはその組み合わせを含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-A配列、HLA-B配列、HLA-C配列、またはその組み合わせの、少なくとも一部を含まない。
【0139】
いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする核酸分子は、HLA-E配列またはその断片、HLA-F配列またはその断片、HLA-G配列またはその断片、あるいはその任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、HLA-E配列またはその断片、HLA-F配列またはその断片、HLA-G配列またはその断片、あるいはその任意の組み合わせの少なくとも1つは、複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害される。
【0140】
いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする核酸分子は、1つまたは複数の変異を含み、ここで1つまたは複数の変異を含む変異されたヒトHLAクラス1重鎖配列を含む細胞は、細胞が1つまたは複数のCD8細胞によって認識される時、免疫応答を誘発しない。いくつかの実施形態では、変異されたヒトHLAクラス1重鎖配列は、アミノ酸残基115、122、128、194、197、198、212、214、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、243、245、248、262、またはその任意の組み合わせの1つまたは複数における1つまたは複数の変異を含むHLAをコードする。
【0141】
鋳型および非鋳型修復ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)およびクラスター化された規則的に間隔を置かれた短い回文反復/CRISPR関連エンドヌクレアーゼcas9(CRISPR/Cas9)などの標的化エンドヌクレアーゼ技術は、非相同末端結合(NHEJ)などにより、種のゲノムに挿入や欠失(インデル)を導入し、遺伝子の機能を破壊するために利用され得る。しかし、NHEJによって導入されたインデルは、大きさや配列が様々であるため、機能破壊されたクローンのスクリーニングは困難であり、正確な改変を行うことができない。TALENやCRISPR/Cas9を介した相同指向性修復(HDR)は、真核細胞において、定義されたヌクレオチド変化の導入を支援する。
【0142】
対象は、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼまたは知られている様々なベクターを含む他の遺伝子工学ツールを使用して修飾される場合がある。そのようなツールによってなされる遺伝子修飾は、遺伝子の不活性化を含む場合がある。遺伝子の不活性化という用語は、機能遺伝子生成物の形成を妨げることを指す。遺伝子産物は、その正常な(野生型)機能を満たす場合にのみ機能的である。対象の遺伝子組換えに関する材料および方法については、米国特許出願第13/404,662号(2012年2月24日出願)、同第13/467,588号(2012年5月9日出願)、同第12/622,886 号(2009年11月10日出願)に詳述されており、これらはあらゆる目的のために参照により本書に組み込まれ、矛盾する場合には、本明細が優先する。トランス作用性という用語は、異なる分子由来の標的遺伝子に(すなわち、分子間で)作用するプロセスを指す。トランス作用因子は、通常、遺伝子を含むDNA配列である。この遺伝子は、標的遺伝子の制御に用いられるタンパク質(またはマイクロRNA、その他の拡散性分子)をコードする。トランス作用遺伝子は標的遺伝子と同じ染色体上にある場合もあるが、活性はその遺伝子がコードする中間体タンパク質またはRNAを経由している。ドミナントネガティブを用いた遺伝子の不活性化には、一般にトランス作用因子が関与している。シス調節(cis-regulatory)またはシス作用性(cis-acting)という用語は、タンパク質またはRNAをコードすることなく作用することを意味し、遺伝子の不活性化の文脈では、一般に、遺伝子のコード部分、または機能性遺伝子の発現に必要なプロモーターおよび/またはオペレーターの不活性化を意味する。
【0143】
核酸構築物を非ヒトおよびヒトに導入して核酸構築物がゲノムに組み込まれた創始系統を作製するために、当該技術分野で知られる様々な技術を使用することができる。このような技術としては、限定されないが、前核マイクロインジェクション(米国特許第4,873,191号)、レトロウイルスを介した生殖細胞への遺伝子導入(Van der Putten et al. (1985)Proc.Natl.Acad. Sci. USA 82, 6148-1652)、gene targeting into embryonic stem cells (Thompson et al. (1989) Cell 56, 313-321), electroporation of embryos (Lo (1983) Mol. Cell. Biol. 3, 1803-1814), sperm-mediated gene transfer (Lavitrano et al. (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99, 14230-14235; Lavitrano et al. (2006) Reprod. Fert. Develop. 18, 19-23)、および体細胞、例えば卵丘細胞または乳腺細胞、または成体、胎児、または胚性幹細胞のインビトロでの形質転換、次いで核移植(Wilmut et al. (1997) Nature 385, 810-813; and Wakayama et al. (1998) Nature 394, 369-374)が挙げられる。前核マイクロインジェクション、精子媒介遺伝子導入、体細胞核移植は特に有用な技術であり、細胞質注入、原始生殖細胞移植(Brinster)、胚盤胞キメラ製造など、胚の中で生殖細胞を増殖させる方法もある。
【0144】
TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPRヌクレアーゼ(例えば、CRISPR/Cas9)およびリコンビナーゼ融合タンパク質は、鋳型(template)の有無にかかわらず使用することができる。鋳型とは、DNAの二本鎖切断(DSB)を修復するためのガイド(鋳型)として、細胞の修復機構が使用するために細胞に加えられる外来性のDNAのことです。このプロセスは一般に相同組換え修復(HDR)と呼ばれる。鋳型がないプロセスでは、DSBを生じさせて細胞機構が修復を行うが、完璧ではないことが多く、挿入や欠失(indel)が生じる。非相同末端接合(NHEJ)と呼ばれる細胞内経路は、通常、DSBの非鋳型修復を仲介する。NHEJという用語は、NHEJが関与したかどうか、あるいは代替の細胞経路に関係なく、このような非テンプレ修復をすべて指すものとして一般的に使用される。
【0145】
標的化ヌクレアーゼシステム転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)やジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)などのゲノム編集ツールは、多くの生物でバイオテクノロジー、遺伝子治療、機能的ゲノム研究の分野に影響を与えてきた。より最近では、RNAガイドエンドヌクレアーゼ(RGEN)が、相補的なRNA分子によって標的部位に誘導される。Cas9/CRISPRシステムはRGENである。tracrRNAは別のそのようなツールである。これらは標的化ヌクレアーゼシステムの例であり、これらのシステムは、ヌクレアーゼを標的部位に局在させるDNA結合メンバーを持っています。その後、部位はヌクレアーゼによって切断される。TALENおよびZFNは、DNA結合メンバーに融合したヌクレアーゼを有する。Cas9/CRISPRは、標的DNA上で互いを見つけるコグネイトである。DNA結合メンバーは、染色体DNA中にコグネイト配列を有する。DNA結合メンバーは、典型的には、意図したコグネイト配列に関して、意図した部位でまたはその近くで核酸分解作用を得るように、設計されている。ある実施形態では、すべてのそのようなシステムが制限なく適用可能であり、これには、ヌクレアーゼの再切断を最小限に抑える実施形態、意図した残基で正確にSNPを作る実施形態、意図した残基で正確にインデルを作る実施形態、DNA結合部位に導入されるアレルを配置する実施形態が含まれる。
【0146】
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、ジンクフィンガーDNA結合ドメインとDNA切断ドメインを融合させた人工制限酵素である。ジンクフィンガードメインは、目的のDNA配列をターゲットとするように設計することができ、これによりジンクフィンガーヌクレアーゼは複雑なゲノム内のユニークな配列を標的とすることができる。内在性のDNA修復機構を利用することで、これらの試薬は高等生物のゲノムを改変するために使用され得る。ZFNは、遺伝子を不活性化する方法にも使用され得る。
【0147】
ジンクフィンガーDNA結合ドメインは約30個のアミノ酸を持ち、安定した構造に折り畳まれている。各フィンガーは主にDNA基質内の三重鎖に結合する。重要な位置にあるアミノ酸残基は、DNA部位との配列特異的な相互作用の大部分に寄与する。これらのアミノ酸は、必要な構造を維持するために、他のすべてのアミノ酸を維持したまま変更することができる。長いDNA配列への結合は、いくつかのドメインをタンデムに連結することで達成される。非特異的FokI切断ドメイン(N)、転写活性化ドメイン(A)、転写抑制ドメイン(R)、メチラーゼ(M)などの他の官能基は、ZFPに融合して、それぞれジンクフィンガー転写活性化因子(ZFA)、ジンクフィンガー転写抑制因子(ZFR)、ジンクフィンガーメチラーゼ(ZFM)といったZNFを形成することが出来る。
【0148】
転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)TALENという用語は、本明細書で使用される場合、広義であり、例えば、Beurdeley, M. et al. Compact designer TALENs for efficient genome engineering. Nat. Commun. 4:1762 doi: 10.1038/ncomms2782 (2013)におけるように、別のTALENからの支援なしに二本鎖DNAを切断することができる単量体TALENを含む。TALENという用語はまた、協働して同じ部位でDNAを切断するように操作されたTALENの対の一方または両方のメンバーを指すために使用される。協働するTALENは、左TALENおよび右TALENと称される場合があり、DNAまたはTALEN対の利き手を指す。
【0149】
いくつかの実施形態では、単量体TALENが使用され得る。TALENは、典型的に、2つのTALエフェクタードメインがそれぞれFokI制限酵素の触媒ドメインに融合し、得られた各TALENのDNA認識部位がスペーサー配列によって分離され、各TALEN単量体が認識部位に結合するとFokIが二量化してスペーサー内で二本鎖切断を起こすように、スペーサーを伴う二分割認識部位にわたる二量体として機能する。しかし、単量体TALENも、単一のTALエフェクターが、機能するために二量体化を必要としないヌクレアーゼに融合されるように構築され得る。このようなヌクレアーゼの1つは、例えば、2つの単量体が1つのポリペプチドとして発現するFokIの一本鎖変異体である。他の天然に存在する、あるいは人工的に作られた単量体ヌクレアーゼもこの役割を果たすことができる。単量体のTALENのために使用されたDNA認識ドメインは、自然発生のTALエフェクター由来であり得る。あるいは、DNA認識ドメインは特定のDNA標的を認識するように操作され得る。操作された一本鎖TALENは、1つの操作されたDNA認識ドメインのみを必要とするため、構築および配置がより容易であり得る。二量体DNA配列特異的ヌクレアーゼは、2つの異なるDNA結合ドメイン(例えば、1つのTALエフェクター結合ドメインおよび別の型の分子由来の1つの結合ドメイン)を使用して生成することができる。TALENはスペーサーを伴う二分割認識部位にわたる二量体として機能し得る。このヌクレアーゼ・アーキテクチャーはまた、例えば1つのTALEN単量体と1つのジンクフィンガーヌクレアーゼ単量体から生成される標的特異的ヌクレアーゼのために使用することができる。そのような場合、TALENとジンクフィンガーヌクレアーゼ単量体のためのDNA認識部位は、適切な長さのスペーサーによって分離され得る。2つの単量体の結合は、FokIがスペーサー配列内の二本鎖切断を二量化させて形成することを可能にし得る。類似ドメイン、myb反復、またはロイシンジッパーなどの、ジンクフィンガー以外のDNA結合ドメインも、FokIに融合し、TALEN単量体とのパートナーとして働いて、機能的ヌクレアーゼを生成することができる。
【0150】
いくつかの実施形態では、TALエフェクターを使用して、他のタンパク質ドメイン(例えば、非ヌクレアーゼタンパク質ドメイン)を特定のヌクレオチド配列に対して標的化することができる。例えば、TALエフェクターは、限定されないが、DNA20相互作用酵素(例えば、メチラーゼ、トポイソメラーゼ、インテグラーゼ、トランスポザーゼ、リガーゼ)、転写活性化因子または抑制因子、またはヒストンなどの他のタンパク質と相互作用するか他のタンパク質を修飾するタンパク質由来のタンパク質ドメインに連結され得る。このようなTALエフェクター融合体の用途としては、例えば、エピジェネティックな調節因子の作成または修飾、DNAの部位特異的な挿入、欠失、修復、遺伝子発現の制御、クロマチン構造の修正などが挙げられる。
【0151】
ターゲット配列のスペーサーは、TALENの特異性と活性を調節するために選択または変更され得る。スペーサー長の柔軟性は、高い特異性を持つ特定の配列を標的とするためにスペーサー長を選択できることを示す。さらに、異なるスペーサー長に対して活性の変動が観察され、所望のレベルのTALEN活性を達成するためにスペーサー長を選択することが示されている。
【0152】
代替的な実施形態は、代替のmRNAのポリメラーゼ、およびT7またはSP6などのコグネイト結合部位を使用する。他の実施形態は、UTR配列のいくつかの改変のうちのいずれかの使用に関係し、これらは、mRNAの翻訳に役立つ場合がある。いくつかの例は、3’UTRにおける細胞質ポリアデニル化エレメント結合部位の追加、またはXenopusβ-globin UTRとヒト、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ゼブラフィッシュ由来のUTR配列、B-globinを含む遺伝子由来のUTR配列との交換である。遺伝子由来のUTRは、胚発生または細胞における発現の調節のために選択され得る。有用であり得るUTRのいくつかの例は、β-アクチン、DEAH(配列番号527)、TPT1、ZF42、SKP1、TKT、TP3、DDX5、EIF3A、DDX39、GAPDH、CDK1、Hsp90ab1、Ybx1 fEif4b Rps27a Stra13、Myc、Paf1とFoxo1、またはCHUKを含む。そのようなベクターまたはmRNAの改良型は、開発の望ましい段階にある遺伝子欠失に関する研究にとって、異所性のTALENの特別または一時的な発現を誘導するために使用され得る。
【0153】
いくつかの実施形態では、単量体TALENが使用され得る。TALENは、典型的に、2つのTALエフェクタードメインがそれぞれFokI制限酵素の触媒ドメインに融合し、得られた各TALENのDNA認識部位がスペーサー配列によって分離され、各TALEN単量体が認識部位に結合するとFokIが二量化してスペーサー内で二本鎖切断を起こすように、スペーサーを伴う二分割認識部位にわたる二量体として機能する。しかし、単量体TALENも、単一のTALエフェクターが、機能するために二量体化を必要としないヌクレアーゼに融合されるように構築され得る。このようなヌクレアーゼの1つは、例えば、2つの単量体が1つのポリペプチドとして発現するFokIの一本鎖変異体である。他の天然に存在する、あるいは人工的に作られた単量体ヌクレアーゼもこの役割を果たすことができる。単量体のTALENのために使用されたDNA認識ドメインは、自然発生のTALエフェクター由来であり得る。あるいは、DNA認識ドメインは特定のDNA標的を認識するように操作され得る。操作された一本鎖TALENは、1つの操作されたDNA認識ドメインのみを必要とするため、構築および配置がより容易であり得る。二量体DNA配列特異的ヌクレアーゼは、2つの異なるDNA結合ドメイン(例えば、1つのTALエフェクター結合ドメインおよび別の型の分子由来の1つの結合ドメイン)を使用して生成することができる。TALENはスペーサーを伴う二分割認識部位にわたる二量体として機能し得る。このヌクレアーゼ・アーキテクチャーはまた、例えば1つのTALEN単量体と1つのジンクフィンガーヌクレアーゼ単量体から生成される標的特異的ヌクレアーゼのために使用することができる。そのような場合、TALENとジンクフィンガーヌクレアーゼ単量体のためのDNA認識部位は、適切な長さのスペーサーによって分離され得る。2つの単量体の結合は、FokIがスペーサー配列内の二本鎖切断を二量化させて形成することを可能にし得る。類似ドメイン、myb反復、またはロイシンジッパーなどの、ジンクフィンガー以外のDNA結合ドメインも、FokIに融合し、TALEN単量体とのパートナーとして働いて、機能的ヌクレアーゼを生成することができる。
【0154】
ヌクレアーゼという用語は、エキソヌクレアーゼとエンドヌクレアーゼを含む。エンドヌクレアーゼという用語は、DNAまたはRNA内の、好ましくはDNA分子内の核酸の間の結合の加水分解(切断)を触媒することができる任意の野生型または変異体の酵素を指す。エンドヌクレアーゼの非限定的な例は、FokI、HhaI、HindIII、NotI、BbvCl、EcoRI、BglII、およびAhwIなどのII型制限酵素を含む。エンドヌクレアーゼは、さらに、典型的には長さが約12~45塩基対(bp)の、より好ましくは14~45bpのポリヌクレオチド認識部位を有するとき、レアカットエンドヌクレアーゼ(rare-cutting endonuclease)を含む。レアカットエンドヌクレアーゼは、定義された遺伝子座でのDNA2本鎖切断(DSB)を引き起こす。レアカットエンドヌクレアーゼは、例えば、ホーミングエンドヌクレアーゼ、操作されたジンクフィンガードメインとFokIなどの制限酵素の触媒ドメインとの融合から生じるキメラジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、または化学エンドヌクレアーゼであり得る。ケミカルエンドヌクレアーゼでは、化学的またはペプチド性の切断剤が、核酸のポリマーまたは特定の標的配列を認識する別のDNAに結合され、それにより、切断活性が特定の配列に標的化される。化学的エンドヌクレアーゼはまた、特定のDNA配列に結合することが知られている、オルトフェナントロリンのコンジュゲートのような合成ヌクレアーゼ、DNA切断分子、三重鎖形成オリゴヌクレオチド(TFO)などが含まれる。このような化学的エンドヌクレアーゼは、本発明による用語「エンドヌクレアーゼ」に含まれる。このようなエンドヌクレアーゼの例として、I-See I、I-Chu L I-Cre I、I-Csm I、PI-See L PI-Tti L PI-Mtu I、I-Ceu I、IL 1-See III、HO、PI-Civ I、PI-Ctr L PI-Aae I、PI-Bsu I、PI-Dha I、PI-Dra L PI-May L PI-Meh I、PI-Mfu L PI-Mfl I、PI-Mga L PI-Mgo I, PI-Min L PI-Mka L PI-Mle I, PI-Mma I, PI-30 Msh L PI-Msm I, PI-Mth I, PI-Mtu I, PI-Mxe I, PI-Npu I, PI-Pfu L PI-Rma I, PI-Spb I, PI-Sp L PI-Fae L PI-Mja I, PI-Pho L PI-Tag L PI-Thy I, PI-Tko I, PI-Tsp I, I-Msolが挙げられる。
【0155】
TALENまたは他のツールによって行われる遺伝子改変は、例えば、挿入、欠失、外因性核酸断片の挿入、および置換からなるリストから選択され得る。「挿入」という用語は、染色体への文字通りの挿入、または修復のための鋳型としての外因性配列の使用のいずれかを意味するために広義に使用される。一般に、標的DNA部位が特定され、その部位に特異的に結合するTALENペアが作成される。TALENは、例えば、タンパク質、mRNAとして、あるいはTALENをコードするベクターによって、細胞または胚に送達される。TALENは、DNAを切断して後に修理される二本鎖切断を生じさせ、しばしばインデルの生成をもたらし、あるいは、染色体の中に挿入されるか修飾される配列と共に切断の修復のための鋳型として役立つかのどちらかである随伴の外因性核酸に包含される配列または多型を組み込む。この鋳型駆動型修復は、染色体を変化させるための有用なプロセスであり、細胞の染色体を効果的に変化させることができる。
【0156】
外因性核酸という用語は、細胞または胚に添加される核酸を意味し、その核酸が細胞内に自然に存在する核酸配列と同じか異なるかに関係なく、核酸を意味する。場合によっては、外因性核酸は、細胞内に天然に存在するあらゆる核酸配列と配列が異なる。核酸断片という用語は広義であり、染色体、発現カセット、遺伝子、DNA、RNA、mRNA、またはその一部を含む。
【0157】
細胞の遺伝子組換えは、レポーターの挿入を含むこともできる。レポーターは、例えば、蛍光マーカー、例えば、緑色蛍光タンパク質および黄色蛍光タンパク質であってもよい。レポーターは、選択マーカー、例えば、ピューロマイシン、ガンシクロビル、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(ネオ、G418、APH)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、ハイグロマイシンB-リン酸化トランスフェラーゼ、チミジンキナーゼ(TK)またはキサンティン-ガニンホスホリボシル転移酵素(XGPRT)であり得る。レポーター、選択マーカー、および/または1つまたは複数のTALENのためのベクターは、プラスミドであってもよい。
【0158】
TALENは、複数のDNA部位に向けられることがある。部位は幾千か数千の塩基対で隔てられている場合がある。DNAは、細胞機構によって再接合され、それにより、部位間の全領域の欠失を引き起こすことができる。実施形態は、例えば、1~5メガベースの間の距離、または染色体の50%から80%の間の距離、または約100から約100万塩基対の間の距離によって分離された部位を含み、当業者は、明示された範囲内のすべての範囲および値が企図されること、例えば、約1,000から約10,000塩基対、または約500から約500,000塩基対が企図されることを直ちに理解するであろう。あるいは、外因性DNAの挿入のために、または部位間におけるDNAの鋳型駆動修復のために、外因性DNAが細胞や胚に追加されてもよい。複数の部位での修飾は、遺伝的に修飾された細胞、胚、偶蹄類、および家畜を作るために使用することができる。性成熟遺伝子またはそのシス作用因子を含め、1つまたは複数の遺伝子を完全または少なくとも部分的に欠失させるために選択することができる。
【0159】
リコンビナーゼ本発明の実施形態は、TALENを、またはTALENをDNA組換えに関連するリコンビナーゼまたは他のDNA結合タンパク質と共に、投与することを含む。リコンビナーゼは、核酸断片とフィラメントを形成し、実質的に、細胞DNAを検索して当該配列と実質的に相同なDNA配列を見つける。TALEN-リコンビナーゼの実施形態は、HDRの鋳型として機能する核酸配列とリコンビナーゼを結合させることを含む。HDR鋳型配列は、TALEN/TALENペアによる切断の対象となる部位と実質的な相同性を有する。本明細書に記載されるように、HDR鋳型は、アレルの配置、インデルの作成、外因性DNAの挿入、または他の変更を伴うことにより、ネイティブDNAへの変化を提供する。TALENは、タンパク質、mRNAとして、またはベクターの使用により、本明細書に記載の方法によって、細胞または胚に配置される。リコンビナーゼは、HDR鋳型と結合してフィラメントを形成し、細胞内に配置される。リコンビナーゼおよび/またはリコンビナーゼと結合するHDR鋳型は、タンパク質、mRNA、またはリコンビナーゼをコードするベクターとして、細胞または胚に配置することができる。リコンビナーゼという用語は、細胞内で、比較的長い2本のDNA鎖の間に比較的短いDNAを結合させることを酵素的に触媒する遺伝子組換え酵素を指す。リコンビナーゼには、Creリコンビナーゼ、Hinリコンビナーゼ、RecA、RAD51、Cre、およびFLPが含まれる。Creリコンビナーゼは、P1バクテリオファージ由来のI型トポイソメラーゼで、loxP部位間のDNAの部位特異的な組換えを触媒する。Hinリコンビナーゼは、サルモネラ菌に存在する198アミノ酸からなる21kDのタンパク質である。HinはセリンリコンビナーゼファミリーのDNAインベルターゼに属し、活性部位のセリンに依存してDNAの切断と組換えを開始する。RAD51はヒト遺伝子である。本遺伝子がコードするタンパク質は、DNAの二重鎖切断の修復を支援するRAD51タンパク質ファミリーのメンバーである。RAD51ファミリーのメンバーは、細菌のRecAおよび酵母のRad51遺伝子に相同である。Creリコンビナーゼは、loxP部位にフランキングされる特定の配列を削除する実験に使用される酵素である。FLPは、パン酵母Saccharomyces cerevisiaeの2μプラスミドに由来するFlippase組換え酵素(FLPまたはFlp)を指す。
【0160】
本明細書では、「RecA」または「RecAタンパク質」とは、本質的にすべてまたは大部分の同じ機能を有するRecA様組換えタンパク質のファミリーを指し、特に、(i)オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを、DNAポリメラーゼによる伸長のために、その相同な標的上に適切に配置する能力、(ii)DNA合成のために二重鎖核酸をトポロジー的に調製する能力、および(iii)RecA/オリゴヌクレオチドまたはRecA/ポリヌクレオチド複合体が、相補的な配列を見つけて効率的に結合する能力、といった機能を有する。最も特徴づけられたRecAタンパク質は大腸菌由来であり、タンパク質の原生の対立形質に加えて、多くのRecA様タンパク質突然変異体、例えば、RecA803が、同定されている。さらに、例えば、イスート、ショウジョウバエ、ヒトを含む哺乳動物、および植物を含む、多くの生物が、RecA様鎖転移タンパク質を有する。このようなタンパク質としては、例えば、Recl、Rec2、Rad51、Rad51B、Rad51C、Rad51D、Rad51E、XRCC2、およびDMC1が挙げられる。組換えタンパク質の一実施形態は、大腸菌のRecAタンパク質である。代替的に、RecAタンパク質は、大腸菌の変異RecA-803タンパク質、別の細菌源由来のRecAタンパク質、または別の生物由来の相同組換えタンパク質であり得る。
【0161】
RecAは、相同組換えによる二本鎖切断の修復時に鎖交換を触媒するリコンビナーゼ活性で知られている(McGrew and Knight, 2003)Radding, et al, 1981; Seitz et al, 1998)。RecAはまた、LexAやXリプレッサータンパク質などのタンパク質分解を触媒し、DNA依存性ATPase活性を持つことが示されている。電離放射線やその他の障害によって二本鎖切断が起こると、エキソヌクレアーゼがDNA末端を5’から3’に逆咀嚼し、それによりDNAの一本鎖が露出する(Cox,1999; McGrew and Knight, 2003)。一本鎖DNAは、一本鎖結合タンパク質(SSB)によって安定化される。SSBの結合後、RecAは一本鎖(ss)DNAに結合し、らせん状の核タンパク質フィラメント(フィラメントまたはプレシナプティックフィラメントと呼ばれる)を形成する。DNA修復時には、RecAの相同性検索機能により、フィラメントを相同DNAに誘導し、相同な塩基対や鎖の交換を触媒する。このことは、DNAヘテロ二本鎖の形成をもたらす。ストランド侵入後、DNAポリメラーゼが相同DNA鋳型をもとにssDNAを伸長してDNA切断を修復し、クロスオーバー構造あるいはホリデイジャンクションが形成される。また、RecAは、クロスオーバー構造の移動に関与する運動機能を示す(Campbell and Davis, 1999)。
【0162】
レコンビナーゼ活性は多くの異なる機能を含む。例えば、リコンビナーゼ活性を有するポリペプチド配列は、一本鎖DNAに非配列特異的に結合して核タンパク質のフィラメントを形成し得る。このようなリコンビナーゼ結合核タンパク質フィラメントは、二本鎖DNA分子と非配列特異的に相互作用することができ、フィラメント中の配列と相同な二本鎖分子中の配列を探索し、そしてそのような配列が見つかったとき、二本鎖分子の一方の鎖を外して、フィラメント中の配列と二本鎖分子の一方の鎖の相補的な配列との塩基対合を可能にする。そのような工程は、集合的に「シナプシス」と表わされる。
【0163】
このように、リコンビナーゼの活性として、一本鎖DNAの結合、シナプス、相同性検索、一本鎖DNAによる二重鎖侵入、ヘテロ二重鎖形成、ATP加水分解、タンパク質分解などが挙げられるが、これらに限定されない。原型的なリコンビナーゼは、大腸菌のRecAタンパク質である。例えば、米国特許第4,888,274号に記載されている。原核生物のRecA様タンパク質はまた、サルモネラ、桿菌、およびプロテウス種に記載されている。サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)由来の耐熱性RecAタンパク質は、米国特許第5,510,473号に記載されている。RecAのバクテリオファージT4ホモログであるUvsXタンパク質が記載されている。リコンビナーゼ活性が変化したRecA変異体は、例えば、米国特許第6,774,213号、同第7,176,007号、および同第7,294,494号に記載されている。植物のRecAホモログは、例えば、米国特許第5,674,992号、同第6,388,169号、および同第6,809,183号に記載されている。リコンビナーゼ活性を有するRecA断片は、例えば、米国特許第5,731,411号明細書に記載されています。第5,731,411号に記載されている。例えば、RecA803のような強化されたリコンビナーゼ活性を有する変異RecAタンパク質が記載されている。例えば、Madiraju et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:6592-6596を参照されたい。
【0164】
真核生物のRecAのホモログでリコンビナーゼ活性も持つのは、酵母Saccharomyces cerevisiae (サッカロミケス・セレビシエ/サッカロマイセス・セレビシエ) で初めて同定されたRad51タンパク質である。Bishop et al., (1992) Cell 69:439-56; Shinohara et al, (1992) Cell: 457-70; Aboussekhra, et al., (1992) Mol. Cell. Biol. 72, 3224-3234 とBasile et al., (1992) Mol. Cell. Biol. 12, 3235-3246を参照されたい。植物のRad51の配列は、米国特許第6,541,684号、同第6,720,478号、同第6,905,857号、および同第7,034,117号に記載されている。RecAに相同の別の酵母蛋白質はDmclタンパク質である。大腸菌およびS.セレビシエ以外の生物におけるRecA/Rad51ホモログが記載されている。Morita et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6577-6580、Shinohara et al. (1993) Nature Genet. 4:239-243、Heyer (1994) Experientia 50:223-233、Maeshima et al. (1995) Gene 160:195-200、米国特許第6,541,684号、および第6,905,857号。
【0165】
レコンビナーゼ活性があるタンパク質のさらなる説明は、例えば、Fugisawa et al. (1985) Nucl. Acids Res. 13:7473; Hsieh et al. (1986) Cell 44:885、Hsieh et al. (1989) J. Biol. Chem. 264:5089、Fishel et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:3683、Cassuto et al. (1987) Mol. Gen. Genet. 208:10、Ganea et al. (1987) Mol. Cell Biol. 7:3124、Moore et al. (1990) J. Biol. Chem.:11108、Keene et al. (1984) Nucl. Acids Res. 12:3057、Kimiec (1984) Cold Spring Harbor Symp. 48:675、Kimeic (1986) Cell 44:545、Kolodner et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:5560、Sugino et al. (1985) Proc. Natl. Acad, Sci. USA 85: 3683、Halbrook et al. (1989) J. Biol. Chem. 264:21403、Eisen et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:7481、McCarthy et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5854、および Lowenhaupt et al. (1989) J. Biol. Chem. 264:20568において見られ、それらは参照により本明細書に組み込まれる。Brendel et al. (1997) J. Mol. Evol. 44:528も参照されたい。
【0166】
レコンビナーゼ活性を有するタンパク質の例として、recA, recA803, uvsX, and other recA mutants and recA-like recombinases (Roca (1990) Crit. Rev. Biochem. Molec. Biol. 25:415), (Kolodner et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84:5560、Tishkoff et al. (1991) Molec. Cell. Biol. 11:2593), RuvC (Dunderdale et al. (1991) Nature 354:506), DST2, KEM1 and XRN1 (Dykstra et al. (1991) Molec. Cell. Biol. 11:2583), STPa/DST1 (Clark et al. (1991) Molec. Cell. Biol. 11:2576), HPP-1 (Moore et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 88:9067), other eukaryotic recombinases (Bishop et al. (1992) Cell 69:439、およびShinohara et al. (1992) Cell 69:457)が挙げられ、参照により本明細書に組み込まれる。
【0167】
レコンビナーゼ活性を有する、インビトロ進化したタンパク質は、米国特許第6,686,515号に記載されている。レコンビナーゼに関するさらなる刊行物として、例えば、米国特許第7,732,585号、同第7,361,641号、同第7,144,734号が挙げられる。リコンビナーゼの概説については、Cox(2001)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:8173-8180を参照のこと。
【0168】
核タンパク質フィラメント、または「フィラメント」が形成され得る。フィラメントという用語は、レコンビナーゼを備えた構造を形成するコンテキスト中で、これらの当業者に知られる用語である。核タンパク質フィラメントは、そのように形成されて、例えば、別の核酸に接触させたり、細胞の中に導入したりすることができる。核タンパク質フィラメントを形成するための方法であって、フィラメントがリコンビナーゼ活性を有するポリペプチド配列および核酸を含む、方法は、当該技術分野において周知である。例えば、Cui et al. (2003) Marine Biotechnol. 5:174-184および米国特許第4,888,274号、同第5,763,240号、同第第5,948,653号、および同第7,199,281号を参照されたく、これらの開示は、核タンパク質フィラメントを形成するためにリコンビナーゼを核酸に結合する例示的技術を開示する目的で参照により組み込まれる。
【0169】
一般に、リコンビナーゼ活性を有する分子を、直鎖状一本鎖核酸と接触させる。線状の一本鎖核酸は、プローブであってもよい。このような一本鎖核酸の調製方法は、公知である。反応混合物は、典型的には、マグネシウムイオンを含む。任意選択で、反応混合物は緩衝化され、また、任意選択で、ATP、dATPまたは非加水分解性ATPアナログ、例えば、γ-thio-ATP(ATP-γ-S)またはγ-thio-GTP(GTP-γ-S)などを含む。反応混合物はまた、任意選択でATP生成系を含むことができる。二本鎖DNA分子は、フィラメント形成前または形成中に(例えば、熱またはアルカリにより)変性させることができる。リコンビナーゼと核酸のモル比を最適化することは当業者にとって可能である。例えば、一連の異なる濃度のリコンビナーゼを一定量の核酸に添加し、アガロースまたはアクリルアミドゲルでの移動度によってフィラメント形成を評価することができる。結合したタンパク質はポリヌクレオチドの電気泳動移動度を低下させるため、フィラメント形成は核酸の移動度の低下によって証明される。最大遅延の程度、または遅延した移動度で移動する核酸の最大量のいずれかを用いて、最適なリコンビナーゼ:核酸の比率を示すことができる。タンパク質とDNAの結合は、ポリヌクレオチドがニトロセルロースに結合する能力を測定することによっても定量化することができる。
【0170】
本明細書では、他の態様において、1つまたは複数のヒト白血球抗原(HLA)をコードする核酸分子を細胞に送達する追加の方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)を介して1つまたは複数のHLAをコードする核酸分子を送達する工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を介して1つまたは複数のHLAをコードする核酸分子を送達する工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、クラスター化された規則的に間隔を置かれた短い回文反復/CRISPR関連エンドヌクレアーゼcas9(CRISPR/Cas9)を介して1つまたは複数のHLAをコードする核酸分子を送達することを含んでいる。
【0171】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、内因性HLA遺伝子座における欠失を含む。いくつかの実施形態では、欠失は、内因性HLA-A、HLA-B、またはHLA-C遺伝子座における欠失、またはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの実施形態では、欠失は、内因性のHLA遺伝子座の完全な欠失である。
【0172】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-A配列、HLA-B配列、HLA-C配列、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-A配列、HLA-B配列、HLA-C配列、またはそれらの任意の組み合わせの複数のアレルを含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-A配列を含み、ここで、HLA-A配列は、HLA-B配列とHLA-C配列との間に変位される。
【0173】
いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、1700塩基対(bp)未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、500bp未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、250bp未満を含む。いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、150bp未満を含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、HLA-A配列、HLA-B配列、HLA-C配列、またはその組み合わせは、1つまたは複数のフランキング配列を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のフランキング配列は、内因性のHLA配列を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のフランキング配列は、1つまたは複数のプロモーターに特異的である。いくつかの実施形態では、プロモーターは、HLA-Aプロモーター、HLA-Bプロモーター、HLA-Cプロモーター、またはその組み合わせを含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする配列は、HLA-A配列、HLA-B配列、HLA-C配列、またはその組み合わせの、少なくとも一部を含まない。
【0176】
いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする核酸分子は、HLA-E配列またはその断片、HLA-F配列またはその断片、HLA-G配列またはその断片、あるいはその任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、HLA-E配列またはその断片、HLA-F配列またはその断片、HLA-G配列またはその断片、あるいはその任意の組み合わせの少なくとも1つは、複合体が1つまたは複数のT細胞によって認識されるときにT細胞応答を誘発することを阻害される。
【0177】
いくつかの実施形態では、ヒトHLAクラス1重鎖配列をコードする核酸分子は、1つまたは複数の変異を含み、ここで1つまたは複数の変異を含む変異されたヒトHLAクラス1重鎖配列を含む細胞は、細胞が1つまたは複数のCD8細胞によって認識される時、免疫応答を誘発しない。いくつかの実施形態では、変異されたヒトHLAクラス1重鎖配列は、アミノ酸残基115、122、128、194、197、198、212、214、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、243、245、248、262、またはその任意の組み合わせの1つまたは複数における1つまたは複数の変異を含むHLAをコードする。
【0178】
処置の方法
【0179】
本明細書では、別の態様において、必要とする対象における疾病または障害を処置する方法が提供され、該方法は、本明細書に提供される核酸分子または本明細書に提供される免疫不全細胞の治療有効量を投与する工程を含む。
【0180】
いくつかの実施形態では、疾患は自己免疫疾患である。いくつかの実施形態では、疾患は1型糖尿病である。いくつかの実施形態では、疾患は関節リウマチである。いくつかの実施形態では、疾患は乾癬である。いくつかの実施形態では、疾患は乾癬性関節炎である。いくつかの実施形態では、疾患は多発性硬化症である。いくつかの実施形態では、疾患は、全身性エリトマトーデスである。いくつかの実施形態では、疾患は炎症性腸疾患。いくつかの実施形態では、疾患はアディソン病である。いくつかの実施形態では、疾患はグレーヴズ病である。いくつかの実施形態では、疾患はシェーグレン症候群である。いくつかの実施形態では、疾患は橋本甲状腺炎である。いくつかの実施形態では、疾患は重症筋無力症である。いくつかの実施形態では、疾患は自己免疫血管炎である。いくつかの実施形態では、疾患は悪性貧血である。いくつかの実施形態では、疾患はセリアック病である。いくつかの実施形態では、疾患は血管炎である。
【0181】
いくつかの実施形態では、疾患は癌である。いくつかの実施形態では、疾患は肺癌である。いくつかの実施形態では、疾患は乳がんである。いくつかの実施形態では、疾患は大腸癌である。いくつかの実施形態では、疾患は前立腺癌である。いくつかの実施形態では、疾患は皮膚癌である。いくつかの実施形態では、疾患は胃癌である。いくつかの実施形態では、疾患は白血病である。いくつかの実施形態では、疾患はリンパ腫である。いくつかの実施形態では、疾患は膀胱癌である。いくつかの実施形態では、疾患は腎臓癌である。いくつかの実施形態では、疾患は子宮内膜癌である。いくつかの実施形態では、疾患は膵臓癌である。いくつかの実施形態では、疾患は甲状腺癌である。いくつかの実施形態では、疾患は肝臓癌である。いくつかの実施形態では、疾患は卵巣癌である。いくつかの実施形態では、疾患は子宮頚癌である。
【0182】
いくつかの実施形態では、疾患は変性疾患である。いくつかの実施形態では、疾患はアルツハイマー病である。いくつかの実施形態では、疾患は筋萎縮側索硬化症である。いくつかの実施形態では、疾患はフリードライヒ運動失調である。いくつかの実施形態では、疾患はハンチントン病である。いくつかの実施形態では、疾患はレビー小体病である。いくつかの実施形態では、疾患はパーキンソン病である。いくつかの実施形態では、疾患は脊髄筋萎縮症である。いくつかの実施形態では、疾患は多発性硬化症である。いくつかの実施形態では、疾患は筋ジストロフィーである。いくつかの実施形態では、肺外疾患は嚢胞性線維症である。いくつかの実施形態では、疾患はクロイツフェルト・ヤーコブ病である。いくつかの実施形態では、疾患はテイ‐サックス病である。
【0183】
いくつかの実施形態では、本明細書において提供される免疫不全細胞の投与は、免疫応答を誘発せずに、疾患または障害を処置する。
【0184】
本明細書において提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞がヒトの対象に投与されるとき、投与量は、通常、医師によって、個別の対象の年齢、体重、および応答、ならびに対象の症状の重症度によって、一般的に変化する投薬量で、決定されることになる。
【0185】
採用される実際の投与量は、対象の必要性および治療される状態の重篤度によって変化し得る。特定の状況に対する適切な投与量の決定は、当業者の技術の範囲内である。一般に、治療は、本明細書で提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞の最適用量未満の、より少ない用量で開始される。その後、状況下で最適な効果に到達するまで、投与量を少量ずつ増加させる。
【0186】
本明細書で提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞、および該当する場合は他の化学療法剤および/または放射線療法の投与の量および頻度は、対象の年齢、状態およびサイズ、ならびに治療される疾患の重症度などの要因を考慮して、主治医(医師)の判断に従って調節される。
【0187】
化学療法剤および/または放射線療法は、当技術分野でよく知られている治療プロトコルに従って投与することができる。化学療法剤および/または放射線療法の投与は、治療される疾患およびその疾患に対する化学療法剤および/または放射線療法の既知の効果に応じて変化させることができることは、当業者にとって明らかであろう。また、熟練の臨床医の知識に従って、投与された治療薬(すなわち、抗悪性腫瘍剤または放射線)の対象への観察された効果、および投与された治療薬に対する疾患の観察された応答を考慮して、治療プロトコル(例えば、投与量および投与時間)を変化させることができる。
【0188】
また、一般に、本明細書で提供される1つ以上の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞は、化学療法剤と同じ医薬組成物で投与する必要はなく、異なる物理的および化学的特性のために、異なる経路で投与することができる。投与様式、可能な場合、同じ医薬組成物内の投与の適否の決定は、熟練の臨床医の知識の範囲内にある。最初の投与は、当該技術分野で知られている確立されたプロトコルに従って行うことができ、その後、観察された効果に基づいて、投与量、投与様式および投与時間を、熟練の臨床医によって変更することができる。
【0189】
本明細書で提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞(および、適切な場合、化学療法剤および/または放射線)の特定の選択は、主治医の診断、および対象の状態および適切な処置プロトコルに係る彼らの判断に依存することになる。
【0190】
本明細書で提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞(および、適切な場合、化学療法剤および/または放射線)は、増殖性疾患の性質、対象の状態、および本明細書で提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞と併せて(すなわち単一の処置プロトコル内で)投与される化学療法剤および/または放射線の実際の選択に依存して、同時に(例えば、同時に、本質的に同時に、または同じ処置プロトコル内で)または連続して投与される場合がある。
【0191】
組み合わせ適用および使用において、本明細書で提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞、および化学療法剤および/または放射線は、同時にまたは本質的に同時に投与する必要はなく、本明細書で提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞、並びに化学療法剤および/または放射線の投与の最初の順序は重要ではない場合がある。従って、本明細書で提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞を最初に投与し、その後、化学療法剤および/または放射線を投与することができ、または、化学療法剤および/または放射線が最初に投与され、その後、本明細書で提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞が投与され得る。この交互投与は、単一の処置プロトコルの間に繰り返すことができる。処置プロトコル中の各治療剤の投与順序、および投与の繰り返し回数の決定は、処置される疾患および対象の状態を評価した後、当業者の知識の範囲内で十分に可能である。例えば、化学療法剤および/または放射線を最初に投与し、その後、本明細書で提供する1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞を投与し、有利と判断される場合には、また化学療法剤および/または放射線を投与するというように、処置プロトコルが完了するまで治療を継続してもよい。
【0192】
従って、経験および知識に従って、主治医は、処置の進行に伴い、個々の対象の必要性に応じて、処置のための本明細書に提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞の投与の各プロトコルを変更することがきる。
【0193】
使用の方法
本明細書では、別の態様において、ヒト白血球抗原(HLA)を阻害する方法が提供され、該方法は、HLAをT細胞受容体結合残基または断片を含まないペプチドに接触させる工程を含む。
【0194】
いくつかの実施形態では、上記ペプチドは、HLAの1つまたは複数のHLA結合溝ドメイン残基に結合する。いくつかの実施形態では、上記ペプチドは、HLAの立体構造を調節する。いくつかの実施形態では、上記立体構造は、T細胞がHLAを結合するのを妨げる。
【0195】
いくつかの実施形態では、HLAは合成である。
【0196】
治療効果
担当の臨床医は、処置が投与される投与量で有効であるかどうかを判断する際に、対象の一般的な健康状態に加え、疾患関連の症状の軽減、腫瘍成長の抑制、腫瘍の実際の収縮、または転移の抑制などの、より明確な徴候を考慮する。腫瘍のサイズは、例えば、CATまたはMRIスキャンといった放射線学的調査などの標準的手法で測定することができ、および連続の測定は腫瘍の成長が遅らされたかどうか、さらに逆転されたかどうかを判断するために使用することができる。疼痛などの疾患関連の症状の軽減、および全体的な疾病の改善も、処置の有効性を判断するのに役立てるために使用することができる。
【0197】
いくつかの実施形態では、治療効果は、癌などの増殖性障害を処置する効果に基づき測定される。一般に、増殖性障害(例えば、良性または悪性にかかわらず、癌)の治療に関して、本発明の方法および組成物の治療効果は、方法および組成物が、腫瘍細胞増殖の阻害、腫瘍血管形成の阻害、腫瘍細胞の根絶、腫瘍の成長速度の低下、および/または少なくとも一つの腫瘍のサイズの低下を促進する程度によって測定することができる。治療効果の判定において考慮すべきいくつかのパラメーターについて、ここで説明する。特定の状況に対するパラメーターの適切な組み合わせは、臨床医によって確立され得る。癌の処置(例えば、腫瘍サイズの縮小または癌細胞の根絶)における本発明方法の進行状況は、腫瘍サイズおよび癌の進行状況を追跡するために臨床で現在使用されている方法など、任意の適切な方法を使用して確認され得る。本発明方法および組成物による癌の処置を評価するために使用される主要な効果パラメーターは、好ましくは、腫瘍のサイズの減少である。腫瘍の大きさは、寸法の測定、または腫瘍体積の正確な推定を可能にするWake Forest Universityで開発されたFreeFlightソフトウェアなどの利用可能なコンピュータソフトウェアを用いた腫瘍体積の推定など、任意の適切な技術を使用して把握することができる。腫瘍の大きさは、例えば、CT、超音波、SPECT、スパイラルCT、MRI、写真などを用いた腫瘍の可視化により決定することができる。治療期間の終了後に腫瘍が外科的に切除される実施形態では、腫瘍組織の存在および腫瘍の大きさは、切除される組織の肉眼的分析、および/または切除された組織の病理学的分析によって決定することができる。
【0198】
いくつかの望ましい実施形態において、腫瘍の成長は、本発明の方法と組成物の結果、安定化される(つまり、1つまたは複数の腫瘍はサイズにおいて1%、5%、10%、15%、または20%を超えて増加しない、および/または転移しない)。いくつかの実施形態では、腫瘍は少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12週間、またはそれ以上の間、安定化される。いくつかの実施形態では、腫瘍は少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12か月、またはそれ以上の間、安定化される。いくつかの実施形態では、腫瘍は少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10年間、またはそれ以上の間、安定化される。好適に、本発明の方法は、腫瘍のサイズを少なくとも約5%(例えば、少なくとも約10%、15%、20%、または25%)抑制する。より好ましくは、腫瘍サイズは、少なくとも約30%(例えば、少なくとも約35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%)抑制される。さらにより好ましくは、腫瘍サイズは、少なくとも約70%(例えば、少なくとも約75%、80%、85%、90%、または95%)抑制される。最も好ましくは、腫瘍は完全に排除されるか、または検出レベル未満に抑制される。いくつかの実施形態では、対象は、処置後少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12週間、またはそれ以上の間、腫瘍のない状態(例えば緩解)が続く。いくつかの実施形態では、対象は、処置後少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12か月間、またはそれ以上の間、腫瘍のない状態が続く。いくつかの実施形態では、対象は、処置後少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10年間、またはそれ以上の間、腫瘍のない状態が続く。
【0199】
いくつかの実施形態では、腫瘍サイズの縮小における本発明の方法の有効性は、治療期間の完了後に外科的に切除された腫瘍の壊死(すなわち死滅)組織のパーセンテージを測定することによって決定され得る。いくつかのさらなる実施形態では、切除された組織の壊死パーセンテージが約20%超(例えば、少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%)、より好ましくは約90%以上(例えば、約90%、95%、または100%)の場合、処置は治療上有効である。最も好ましくは、切除された組織の壊死パーセンテージは100%であり、すなわち、腫瘍組織は存在しないか、検知できない。
【0200】
本発明の方法の有効性は、相当数の二次的なパラメーターによって決定され得る。二次的なパラメーターの例としては、限定されないが、新たな腫瘍の検出、腫瘍抗原またはマーカー(例えば、CEA、PSA、またはCA-125)の検出、生検、外科的ダウンステージ(すなわち、腫瘍の外科的ステージが切除不能から切除可能へ転換)、PETスキャン、生存、無病生存、疾患の進行までの時間、臨床的利益応答評価などの生活の質評価などが挙げられ、これらはすべて、ヒトにおける癌の全体的な進行(または退縮)を指し示すことができる。生検は、組織内の癌性細胞の根絶を検出するのに特に有用である。放射免疫検出(RAID)は、腫瘍によって産生されるおよび/または腫瘍に関連するマーカー(抗原)(「腫瘍マーカー」または「腫瘍関連抗原」)の血清レベルを用いて腫瘍を位置特定し、およびステージ決めするために用いられ、治療前の診断の前提、治療後の再発の診断指標、治療効果の治療後の指標として有用であり得る。治療効果の指標として評価できる腫瘍マーカーまたは腫瘍関連抗原の例として、限定されないが、癌胎児性抗原(CEA)、前立腺特異抗原(PSA)、CA-125、CA19-9、ガングリオシド分子(例えば、GM2、GD2、およびGD3)、MART-1、熱ショックタンパク質(例えば、gp96)、シアリルTn(STn)、チロシナーゼ、MUC-1、HER-2/neu、c-erb-B2、KSA、PSMA、p53、RAS、EGF-R、VEGF、MAGE、およびgp100が挙げられる。他の腫瘍関連抗原が当該技術分野で知られている。内視鏡検査法の検出システムと組み合わせたRAID技術も、効率的に小さな腫瘍を周囲の組織から判別することができる(例えば、米国特許第4,932,412号を参照)。
【0201】
付加的な望ましい実施形態では、本発明の方法に従うヒト患者における癌の処置は、以下の結果の1つまたは複数によって証拠づけられる:(a)腫瘍の完全な消失(すなわち、完全寛解)、(b)治療前の腫瘍のサイズと比較して、治療期間の完了後の少なくとも4週間、腫瘍のサイズの約25%から50%の減少、(c)治療期間前の腫瘍のサイズと比較して、治療期間の完了後少なくとも4週間、腫瘍のサイズの少なくとも約50%の減少、および(d)治療期間終了後約4~12週目における特定の腫瘍関連抗原レベルが、治療期間前の腫瘍関連抗原レベルと比較して少なくとも2%減少(例えば、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%減少)。腫瘍関連抗原レベルが少なくとも2%低下することが好ましいが、腫瘍関連抗原レベルのいかなる低下も、本発明の方法による患者の癌の処置を証拠づける。例えば、切除不能な局所進行膵臓癌に関しては、治療期間終了後4~12週目のCA19-9腫瘍関連抗原レベルが、治療期間前のCA19-9レベルと比較して少なくとも10%減少することにより、治療が証拠づけられ得る。同様に、局所進行直腸癌に関しては、治療期間終了後4~12週目のCEA腫瘍関連抗原レベルが、治療期間前のCEAレベルと比較して少なくとも10%減少することにより、治療が証拠づけられ得る。
【0202】
Clinical Benefit Response Criteriaなどの生活の質評価に関しては、本発明による処置の治療効果は、痛みの強度、鎮痛剤の消費量、および/またはカルノフスキー・パフォーマンス・スコア(Karnofsky Performance Scale)スコアの観点から証拠づけられ得る。ヒト患者における癌の処置は、代替的に、または付加的に、(a)患者によって報告された痛みの強さが、治療完了後の12週間における任意の連続する4週間などで、治療前に患者によって報告された痛みの強さと比較して、少なくとも50%減少(例えば、少なくとも60%、70%、80%、90%、または100%減少)すること、(b)患者によって報告された鎮痛剤消費量が、治療終了後の12週間における任意の連続する4週間などで、治療前に患者によって報告された鎮痛剤消費量と比較して、少なくとも50%減少(例えば、少なくとも60%、70%、80%、90%、または100%減少)すること、および/または、(c)患者が報告したカルノフスキー・パフォーマンス・スコアが、治療期間終了後の12週間における任意の連続する4週間の期間などで、治療期間前に患者が報告したカルノフスキー・パフォーマンス・スコアと比較して、少なくとも20ポイント増加(例えば、少なくとも30ポイント、50ポイント、70ポイント、または90ポイント増加)すること、によって、証拠づけられる。
【0203】
ヒト患者における増殖性の障害(例えば、癌、良性か悪性のとちらでも)の処置は、先の結果の1つまたは複数(任意の組み合わせの)によって望ましいように証拠づけられるが、参照された試験および/あるいは他の試験の代替的または付加的な結果が処置の有効性を証拠づける場合がある。
【0204】
いくつかの実施形態において、腫瘍サイズは、好ましくは対象において有意な有害事象を伴わずに、本発明の方法の結果として減少する。有害事象はNational Cancer Institute (NCI)のCancer Therapy Evaluation Program(CTEP)によって分類または「等級化」され、グレード0が最小限の有害な副作用を表わし、およびグレード4が最も厳しい有害事象を表わす。望ましくは、本発明の方法は、最小限の有害事象、例えば、CTEP/NCIによって等級化されるところ、グレード0、グレード1、またはグレード2の有害事象に関する。しかし、本明細書で議論されるように、腫瘍サイズの縮小は、好ましいが、腫瘍細胞の根絶にもかかわらず腫瘍の実際のサイズが縮小しない場合があるため、必須ではない。癌細胞の根絶は、治療効果を認識するのに十分である。同様に、腫瘍の大きさの減少は、治療効果を認識するのに十分である。
【0205】
ヒトにおける様々な癌の検出、監視および評価は、Cancer Facts and Figures 2001, American Cancer Society, New York, N.Y.、および国際特許出願WO01/24684に更に記載されている。従って、臨床医は、癌の治療における本発明方法の様々な実施形態の有効性を決定するために、標準的な試験を使用することができる。しかしながら、腫瘍の大きさや広がりに加えて、臨床医は、治療の有効性を評価する際に、患者の生活の質や生存を考慮することもできる。
【0206】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供されるような1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞の投与は、改善された治療効果をもたらす。改善された効果は、本明細書に記載されたものを含むがこれらに限定されない当該技術分野で既知の任意の方法を使用して測定されてもよい。いくつかの実施形態において、改善された治療効果は、適切な尺度(例えば、腫瘍サイズの減少、腫瘍サイズ安定期間、転移事象がない期間、無病生存期間)を用いて、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、95%、100%、110%、120%、150%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、1000%、またはそれ以上の改善である。改善された有効性はまた、適切な尺度(例えば、腫瘍サイズの減少、腫瘍サイズ安定期間、転移事象がない期間、無病生存期間)を用いて、少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、1000倍、10000倍またはそれ以上など、倍化された改善として表わすことができる。
【0207】
医薬組成物および製剤
本開示は、本明細書において提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞を含有する医薬組成物を含む組成物を提供する。
【0208】
いくつかの実施形態では、本明細書において提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞は、医薬組成物に製剤化される。具体的な実施形態では、医薬組成物は、賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容可能な担体を用いる従来の様式で処方され、これらの賦形剤および補助剤により、本明細書で提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞を薬学的に使用され得る調製物へと処理するのが容易となる。適切な製剤は、選択される投与の経路に依存する。薬学的に許容可能なあらゆる技術、担体、および、賦形剤は、本明細書に記載の医薬組成物を処方するのに適したものとして使用される。Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed (Easton, Pa.: Mack Publishing Company, 1995)、Hoover, John E., Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania 1975、Liberman, H.A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, N.Y., 1980、およびPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Seventh Ed. (Lippincott Williams & Wilkins1999)。
【0209】
本明細書では、本明細書で提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞、並びに薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤、または担体(いずれも複数可)を含む医薬組成物が提供される。ある実施形態では、本明細書で提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞が医薬組成物として投与され、該医薬組成物において、本明細書で提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞は、併用療法として他の有効成分と共に調合される。具体的な実施形態では、医薬組成物は、本明細書で提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞を含む。
【0210】
医薬組成物は、本明細書で使用されるところ、1即ち、本明細書にされるシクロへキセノン化合物と、担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、および/または賦形剤などの他の化学成分との混合物を指す。ある実施形態では、医薬組成物は、本明細書で提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞の生物体への投与を容易にする。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される処置方法または使用の実施において、本明細書で提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞の治療有効量が、処置すべき疾患または疾病を有する哺乳動物に医薬組成物のかたちで投与される。具体的な実施形態において、哺乳類はヒトである。特定の実施形態では、治療上有効な量は、疾患の重症度、被験者の年齢および相対的健康状態、および他の要因に応じて変化する。本明細書で提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞は、単独で、または混合物の成分として1つまたは複数の治療薬と組み合わせて使用される。
【0211】
一実施形態では、本明細書で提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞は、水溶液中に製剤化される。具体的な実施形態において、水溶液は、ほんの例示であるが、ハンク液、リンゲル液、または生理的食塩水緩衝液などの生理学的に適合する緩衝剤から選択される。他の実施形態では、本明細書で提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞は、経粘膜投与用に製剤化される。具体的な実施形態において、経粘膜製剤は、浸透すべきバリアにとって適切な浸透剤を含む。さらに他の実施形態では、本明細書で提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞は、他の非経口注射、水溶液または非水溶液を含む適切な製剤のために、製剤化される。具体的な実施形態において、そのような溶液は、生理学的に適合する緩衝剤および/または賦形剤を含む。
【0212】
さらに他の実施形態では、本明細書で提供される1つ以上の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞は、ボーラス注射または連続注入に適した製剤を含む、非経口注射用に処方される。具体的な実施形態において、注射用の製剤は、単位投与形態(例えば、アンプル中)またはマルチ投与容器に入って提供される。注射用製剤には、任意で、保存料が添加される。さらに他の実施形態では、本明細書で提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞の医薬組成物は、油性または水性ビヒクル中の無菌懸濁液、溶液、または乳化物として、非経口注射に適した形態で製剤化される。非経口注射製剤は、任意に、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤のような処方剤を含む。具体的な実施形態において、非経口投与のための医薬製剤は、水溶性の形態で、本明細書で提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞の水性溶液を含む。追加の実施形態では、本明細書に提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞の懸濁液は、適切な油性注入懸濁液として調製される。本明細書に記載の医薬組成物において使用するための適切な親油性溶媒またはビヒクルとしては、ほんの例示であるが、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが挙げられる。ある特定の実施形態では、水性注射用懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの、懸濁液の粘度を増加させる物質を含む。任意選択で、懸濁液は、高濃度溶液の調製を可能にするために、本明細書に提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞の溶解度を増加させる適切な安定剤または薬剤を含む。代替的に、他の実施形態では、活性成分は、使用前に適切なビヒクル、例えば、滅菌パイロジェンフリー水で構成するための粉末状である。
【0213】
ある実施形態において、医薬組成物は、本明細書で提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞の薬学的に使用可能な調製物への処理を容易にする賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容可能な担体を用いて、任意の従来の方法で製剤化される。適切な製剤は、選択された投与経路に依存する。任意の薬学的に許容可能な技術、担体、および賦形剤が、任意に好適に使用される。本明細書で提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞を含む医薬組成物は、従来の方法で、例えば、ほんの例示であるが、従来の混合、溶解、造粒、ドラジェ化、水簸、乳化、カプセル化、封入、または圧縮工程により、製造される。
【0214】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞を含む医薬組成物は、例示的に、薬剤が溶液中、懸濁液中、またはその両方で存在する液体の形をとる。典型的には、組成物が溶液または懸濁液として投与される場合、薬剤の第1の部分は溶液中に存在し、薬剤の第2の部分は液体マトリックス中に懸濁した状態で、粒子状で存在する。いくつかの実施形態において、液体組成物は、ゲル製剤を含む。他の実施形態では、液体組成物は水性である。
【0215】
ある実施形態では、有用な水性懸濁液は懸濁化剤として1つ以上のポリマーをさらに含む。有用なポリマーは、セルロース酸ポリマー(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース)などの水溶性ポリマーと、架橋したカルボキシル含有ポリマーなどの不水溶性のポリマーを含む。本明細書に記載される特定の医薬組成物は、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボマー(アクリル酸ポリマー)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリアクリルアミド、ポリカルボフィル、アクリル酸/アクリル酸ブチルコポリマー、アルギン酸ナトリウムおよびデキストランから選択される、粘膜付着性ポリマーを含む。
【0216】
有用な医薬組成物はまた、任意選択で、本明細書で提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞の溶解性を補助するために可溶化剤を含む。「可溶化剤」という用語は、一般的に、薬剤のミセル溶液または真性溶液をもたらす薬剤を含む。特定の許容可能な非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80は可溶化剤として役立ち、眼科用として許容可能なグリコール、ポリグリコール、例えばポリエチレングリコール400、およびグリコールエーテルも役立つ。
【0217】
さらに、有用な医薬組成物は、1つ以上のpH調整剤または緩衝化剤を随意に含み、酢酸、ホウ酸、クエン酸、乳酸、リン酸、および塩酸などの酸、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、およびトリスヒドロキシメチルアミノメタンなどの塩基、ならびに、クエン酸塩/デキストロース、重炭酸ナトリウム、および塩化アンモニウムなどの緩衝剤、を含む1つ以上のpH調節剤または緩衝剤を任意選択で含む。このような酸、塩基、および緩衝剤は、組成物のpHを許容可能な範囲で維持することに必要とされる量で含まれる。
【0218】
さらに、有用な組成物はまた、任意選択で、組成物の重量モル浸透圧濃度を許容可能な範囲にするのに必要とされる量で1つ以上の塩を含む。こうした塩は、ナトリウム、カリウム、またはアンモニウムのカチオン、ならびに塩化物、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、チオ硫酸塩、または重亜硫酸塩のアニオンを含み、適切な塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、および、硫酸アンモニウムを含む。
【0219】
他の有用な医薬組成物は、微生物の活性を阻害する1以上の保存剤を随意に含む。適切な保存剤は、メルフェン(merfen)とチオメルサールのような水銀を含有する物質;安定した2酸化塩素;ならびに、塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、および塩化セチルピリジウムのような第四アンモニウム化合物を含む。
【0220】
さらなる他の有用な医薬組成物は、物理的安定性を増幅するため、または他の目的のために、1以上の界面活性剤を含む。適切な非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリドおよび植物油、例えばポリオキシエチレン(60)水素化ヒマシ油;および、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとアルキルフェニルエーテル、例えば、オクトキシノール10、オクトキシノール40などが挙げられる。
【0221】
さらなる他の有用な医薬組成物は、必要な場合に、化学安定性を増幅させる1若しくはそれ以上の抗酸化剤を含み得る。適切な抗酸化剤は、ほんの一例ではあるが、アスコルビン酸および二亜硫酸ナトリウムを含む。
【0222】
ある実施形態では、水性懸濁組成物は、単回用量用の再密閉できない容器に包装される。代替的に、複数回投与の再密閉可能な容器が使用され、その場合、典型的に、組成物に防腐剤が含まれる。
【0223】
代替的な実施形態では、医薬化合物のための他の送達系を利用する。リポソームおよびエマルジョンは、本明細書に有用な送達ビヒクルまたは担体の例である。付加的な実施形態では、本明細書で提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、または免疫不全細胞は、治療薬剤を含む固形疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの、徐放システムを用いて送達される。ここで様々な徐放資材が有用である。治療試薬の化学的性質および生物学的安定性に依存して、タンパク質の安定化のための追加の方策が利用される。
【0224】
ある実施形態では、本明細書中に記載される製剤は、1以上の抗酸化剤、金属キレート剤、チオール含有化合物、および/または他の一般的な安定剤を含む。そのような安定化剤の例としては、限定されないが、以下が挙げられる:(a)約0.5%から約2%w/vのグリセロール、(b)約0.1%から約1%w/vのメチオニン、(c)約0.1%から約2%w/vのモノチオグリセロール、(d)約1mMから約10mMのEDTA、(e)約0.01%から約2%w/vのアスコルビン酸、(f)0.003%から約0.02%w/vのポリソルベート80、(g)0.001%から約0.05%w/vのポリソルベート20、(h)アルギニン、(i)ヘパリン、(j)硫酸デキストラン、(k)シクロデキストリン、(l)ペントサンポリサルフェートおよび他のヘパリノイド、(m)マグネシウムおよび亜鉛などの2価カチオン、または(n)これらの組み合わせ。
【0225】
投与経路
適切な投与経路は、限定されないが、経口、静脈内、直腸、エアロゾル、非経口、眼、肺、経粘膜、経皮的、膣、耳、鼻、および局所の投与を含む。更に、ほんの一例ではあるが、非経口送達は、くも膜下腔内、直接脳室内、腹腔内、リンパ内、および、鼻腔内の注入だけでなく、筋肉内、皮下、静脈内、髄内の注入も含む。
【0226】
ある実施形態において、本明細書に記載される免疫不全細胞を含む組成物は、しばしばデポ製剤または徐放性製剤として、例えば、器官への直接的な組成物の注射を介して、全身よりもむしろ局所に投与される。具体的な実施形態において、長期間作用型製剤は、移植(例えば、皮下または筋肉内に)または筋肉内注射により投与される。さらに、他の実施形態では、組成物は、標的とされた薬物送達システムにおいて、例えば、臓器特異的な抗体で覆われたリポソームにおいて送達される。このような実施形態では、リポソームは、臓器を標的とし、臓器によって選択的に取り込まれる。さらに他の実施形態では、本明細書で提供される免疫不全細胞を含む組成物は、急速放出製剤の形態、延長放出製剤の形態、または、中期的放出製剤の形態で提供される。
【0227】
キットおよび製品
本明細書に記載の治療用途で使用するために、キットおよび製品も本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、そのようなキットは、バイアル、チューブなどの1つ以上の容器を受けるように区画されている、担体、パッケージ、または容器を含み、その容器の各々は、本明細書に記載される方法で使用される個別の要素の1つを含む。適切な容器は、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、および試験管を含む。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成される。
【0228】
本明細書で提供される製造品は、パッケージ材料を含む。医薬品の包装に使用するための包装材料は、例えば、米国特許第5,323,907号、同第5,052,558号、および同第5,033,252号に見られるものを含む。医薬包装材料の例としては、ブリスターパック、瓶、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、注射器、瓶、および選択された製剤および意図された様式による投与や処置に適切な任意の包装材料が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、容器(複数可)は、本明細書に記載の1つまたは複数の核酸分子あるいは免疫不全細胞を、任意選択で組成物中に、含む。容器は任意選択で、無菌のアクセスポートを有する(例えば、容器は、皮下注射針によって貫通可能な栓を有する静脈注射用溶液バッグまたはバイアルである)。このようなキットは、組成物とともに、同定の記載またはラベル、あるいは本明細書で記載されるその使用に関する取扱説明書を任意選択で含む。
【0229】
例えば、キットは、典型的に、1つ以上の追加の容器を含み、その各々は、本明細書に記載される組成物の使用のための商用およびユーザーの観点から望ましい、様々な材料(任意選択で高濃度の試薬、および/またはデバイスなど)の1つ以上を有している。こうした材料の非限定的な例としては、限定されないが、緩衝剤、賦形剤、フィルタ、針、シリンジ、担体、包装、容器、バイアルおよび/または、内容物を列挙したチューブラベルおよび/または使用説明書、および使用説明書を備えた添付書類を含む。一揃いの説明書も典型的に含まれる。ラベルは、任意選択で、容器上にあるか、容器に関連付けられる。例えば、ラベルは、ラベルを形成する文字、数字または他の記号が、容器自体に付けられるか、成型されるか、またはエッチングされるときに容器上にあり、ラベルは、容器をさらに保持するレセプタクルまたは担体内に存在するときに容器に関連付けられる(例えば添付文書として)。さらに、ラベルは、内容物が具体的な治療用途に使用されることを示すために使用される。加えて、ラベルは、本明細書に記載される方法などにおける、内容物の使用のための指示を示す。ある実施形態では、医薬組成物は、どれが本明細書で提供される1つまたは複数の複合体、核酸分子、免疫不全細胞、またはそれらの医薬組成物を含む1以上の単位剤形を含むパックまたはディスペンサー装置中で提示される。パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属ホイルまたはプラスチックホイルを包含し得る。あるいは、パックまたはディスペンサー装置は、投与のための説明書が付随されている。あるいは、パックまたはディスペンサー装置は、医薬品の製造、使用、または販売を規制する政府機関によって規定された形態で容器に関連付けられる通知が伴い、その通知は、ヒトまたは動物用の投与のための薬物の形態の政府機関による承認を反映している。実施形態において、このような通知書は、例えば、処方薬または承認された生成物の挿入に関して、米国食品医薬品局により承認されたラベルである。いくつかの実施形態では、適合する医薬担体中に製剤化された免疫不全細胞を含む組成物は、示された疾病の処置のために、調製され、適切な容器に配され、そしてラベル付けされる。
【実施例】
【0230】
実施例1:ペプチドのアンカーアミノ酸の同定
ほとんどのHLAクラス1アレルは、優先的に9~12量体のペプチドを結合し、そして大多数のアレルは、ペプチドを第2および最後の位置においてアンカー残基に適合させ、このときこれらの残基がペプチド結合溝に埋め込まれる。
【0231】
9量体のペプチドの解析を、HLA-A、HLA-B、およびHLA-Cのすべてのアレルについて、ペプチド結合選択性を決定するために行なった。アミノ酸多様性は、第2の位置(例えば、P2)と最後の位置(例えば、9量体ではP9)におけるアンカー残基について決定された。より長いペプチドも、このアンカー位置に結合し、その余分な長さはペプチド結合溝の中央でダマになるか、または外側にはみ出すことで収まる。
【0232】
調査したHLA-Aアレルは、HLA-A*01:01、HLA-A*02:01、HLA-A*02:02、HLA-A*02:03、HLA-A*02:04、HLA-A*02:05、HLA-A*02:06、HLA-A*02:07、HLA-A*02:11、HLA-A*03:01、HLA-A*11:01、HLA-A*11:02、HLA-A*23:01、HLA-A*24:02、HLA-A*24:07、HLA-A*25:01、HLA-A*26:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*30:02、HLA-A*31:01、HLA-A*32:01、HLA-A*33:01、HLA-A*33:03、HLA-A*34:01、HLA-A*34:02、HLA-A*36:01、HLA-A*66:01、HLA-A*68:01、HLA-A*68:02、およびHLA-A*74:01を含む。
【0233】
それぞれの調査されたHLA-Aアレルの保存されたアンカー残基は、表1に要約される。
【0234】
【0235】
調査されたHLA-Aアレルの間で見られた第2のアミノ酸アンカー残基の度数は、表2に要約される。
【0236】
【0237】
調査されたHLA-Aアレルの間で見られた最後のアミノ酸アンカー残基の度数は、表3に要約される。
【0238】
【0239】
調査されたHLA-Bアレルは、HLA-B*07:02,HLA-B*07:04、HLA-B*08:01、HLA-B*13:01、HLA-B*13:02、HLA-B*14:02、HLA-B*15:01、HLA-B*15:02、HLA-B*15:03、HLA-B*15:10、HLA-B*15:17、HLA-B*18:01、HLA-B*27:05、HLA-B*35:01、HLA-B*35:03、HLA-B*35:07、HLA-B*37:01、HLA-B*38:01、HLA-B*38:02、HLA-B*40:01、HLA-B*40:02、HLA-B*40:06、HLA-B*42:01、HLA-B*44:02、HLA-B*44:03、HLA-B*45:01、HLA-B*46:01、HLA-B*49:01、HLA-B*50:01、HLA-B*51:01、HLA-B*52:01、HLA-B*53:01、HLA-B*54:01、HLA-B*55:01、HLA-B*55:02、HLA-B*56:01、HLA-B*57:01、HLA-B*57:03、HLA-B*58:01、およびHLA-B*58:02を含む。
【0240】
それぞれの調査されたHLA-Bアレルの保存されたアンカー残基は、表4に要約される。
【0241】
【0242】
調査されたHLA-Bアレルの間で見られた第2のアミノ酸アンカー残基の度数は、表5に要約される。
【0243】
【0244】
調査されたHLA-Bアレルの間で見られた最後のアミノ酸アンカー残基の度数は、表6に要約される。
【0245】
【0246】
調査されたHLA-Cアレルは、HLA-C*01:02、HLA-C*02:02、HLA-C*03:02、HLA-C*03:03、HLA-C*03:04、HLA-C*04:01、HLA-C*04:03、HLA-C*05:01、HLA-C*06:02、HLA-C*07:01、HLA-C*07:02、HLA-C*07:04、HLA-C*08:01、HLA-C*08:02、HLA-C*12:02、HLA-C*12:03、HLA-C*14:02、HLA-C*14:03、HLA-C*15:02、HLA-C*16:01、およびHLA-C*17:01を含む。
【0247】
それぞれの調査されたHLA-Cアレルの保存されたアンカー残基は、表7に要約される。
【0248】
【0249】
調査されたHLA-Cアレルの間で見られた第2のアミノ酸アンカー残基の度数は、表8に要約される。
【0250】
【0251】
調査されたHLA-Cアレルの間で見られた最後のアミノ酸アンカー残基の度数は、表9に要約される。
【0252】
【0253】
実施例2:核酸分子の調製
【0254】
合成HLA配列を含む核酸分子は、当該技術分野において公知の方法に従って調製される。例えば、核酸分子は、ヌクレオシドホスホロアミダイトを使用する固相オリゴヌクレオチド合成によって調製される。あるいは、核酸分子の部分(複数)がヌクレオシドホスホロアミダイトを使用する固相オリゴヌクレオチド合成によって調製され、そして上記部分は、当該技術分野で公知の方法によって完全な核酸分子へとアセンブルされる。例えば、上記部分は、エンドヌクレアーゼ媒介アセンブリ、部位特異的組換え、またはロングオーバーラップに基づくアセンブリを使用してアセンブルされる。
【0255】
実施例3:複合体の調製
合成HLA配列を含む核酸分子を含む組換プラスミドを、組換プラスミドの調製のための公知の手順に従って調製する。例えば、プラスミドを制限酵素で切断し、および合成HLA配列を含む核酸分子をDNAリガーゼの使用を介してプラスミドの中に導入する。
【0256】
続いて、組換プラスミドを細胞集団に形質転換させる。首尾よく形質転換された細胞を、選択抗生物質の使用など、当該技術分野で公知の方法に従って選択する。選択された細胞を培養し、複合体を産生するように誘導する。続いて、細胞を溶解し、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、無担体電気泳動、免疫親和性クロマトグラフィー、免疫沈降または高速液体クロマトグラフィーなどの当該技術分野で既知のタンパク質精製技術に従って複合体を精製する。
【0257】
代替的に、複合体は当該技術分野で公知の方法による固層ペプチド合成によって調製される。
【0258】
実施例4:免疫不全細胞の調製
免疫不全幹細胞などの免疫不全細胞は、当該技術分野で公知の方法によって実施例2の核酸分子を細胞のゲノムの中に導入することにより調製される。例えば、核酸分子は、ウイルスベクターを介して細胞に送達される。あるいは、核酸分子は、ネイキッドDNAインジェクション、エレクトロポレーション、遺伝子銃、ソノポレーション、マグネトフェクション(magnetofection)、リポプレックス、デンドリマー、無機ナノ粒子、CRISPR、mRNA、またはsiRNAの使用などの非ウイルスの方法を介して細胞に送達される。
【0259】
あるいは、免疫不全幹細胞などの免疫不全細胞は、実施例3の複合体と細胞をインキュベートすることにより調製される。
【0260】
実施例5:免疫細胞増殖アッセイ
免疫細胞、例えばT細胞を培養し、実施例4の免疫不全細胞および3H-チミジンなどの放射性標識ヌクレオチドと共にインキュベートする。インキュベーション後、免疫細胞を遠心分離して洗浄し、放射能を測定して、実施例4の免疫不全細胞で処理しない細胞の対照群と比較する。
【0261】
実施例6:疾患または障害の処置
実施例4の免疫不全細胞は、疾患または障害を抱える患者に投与される。患者の状態は、疾患または障害に応じて、ケアの治療基準に従ってモニターされる。
【0262】
実施例7:B2Mnull EBVおよびK562細胞へのsynHLA構築物のトランスジェニック・クローニング
【0263】
β2M-/-EBV-形質転換されたB細胞株の生成
【0264】
2つのEBV株(9031とJK)においてβ2Mを変異させるために、CRISPR/Cas9が使用される。EBV細胞をCas9複合体でトランスフェクトし、HLAクラスI低/陰性EBV細胞を選別する。細胞を増殖させ、表面HLAクラスIの非存在を確認する。
【0265】
NK細胞株の生成、ならびにK562および/またはβ2M-/-EBV-形質転換B細胞株のNK細胞媒介死滅に対する感受性試験
【0266】
NK細胞(CD3-、CD56+)を選別し、IL-2、-15、およびIL-21の存在下において培養する。PBMC由来のNK細胞を選別し、サイトカイン(IL-2およびIL-15)中で増殖させる。NK細胞株の純度をCD3、CD4、CD8、CD56で染色することによって確認してもよい。K562および/またはWTおよびβ2M/HLAクラスI-/-EBV細胞の死滅を比較する。
【0267】
K562および/またはEBV-形質転換B細胞株におけるsynHLAタンパク質(複数可)の発現
【0268】
本明細書に記載のsynHLA構築物をコードするsynHLA遺伝子を、レンチウイルスベクター(pRRLSIN)またはEBVエピソームベクター(pCE)のいずれかにクローニングする。哺乳動物細胞での発現にコドン最適化されたsynHLAをコードする遺伝子ブロックを構築する。この遺伝子は、例えばInfusionクローニングを使用してpRRLSINまたはpCEにクローニングされ得る。上記構築物は、配列が正しく且つプラスミドが調製されたことを確認するためにシーケンシングされてもよい。K562細胞をトランスフェクトするために使用されるレンチウイルスを作るために、pRRLSINが使用され得る。pCEをEBV細胞にエレクトロポレーションし、トランスフェクトされた細胞を抗生物質選択により選択する。遺伝子導入されたK562をsynHLA構築物について染色して、FACSソーティングにより選択する。トランスフェクトされたEBV細胞(WTおよびβ2M/HLAクラスI-/-)を抗体の存在下で選択し、synHLA構築物(複数可)の発現を、モノクローナル抗体を用いたフローサイトメトリーにより評価する。上記のように生成されたNK細胞株による認識と殺傷について、synHLA構築物を発現するK562またはEBV細胞を試験する。
【0269】
synHLAを発現するEBV細胞またはK562細胞が抗原特異的CD8+T細胞クローンを活性化することができるかどうかの決定。
【0270】
HLAクラスIを有するか有さない、およびsynHLAを有するか有さない、いずれかのEBVで形質転換されたB細胞株、あるいは適切なHLAクラスI構築物を遺伝子導入されたK562を使用して、以下の試験を行なった。インフルエンザMP58-66エピトープに特異的な、上記の、CD8+T細胞クローンの応答、同種のペプチドと共にパルス。同種異系初代CFSE標識CD8+T細胞の増殖、磁気ビーズまたはフローサイトメトリーによる精製、上記のK562および/またはEBV形質転換B細胞株に対する応答、Mannering, S. I. et al. A sensitive method for detecting proliferation of rare autoantigen-specific human T cells.J Immunol Methods, 2003, 283, 173-183に記載の方法を使用。遺伝子導入された細胞のT細胞殺傷もインターフェロンガンマ分泌を測定することにより評価されることになる。
【0271】
実施例8:HLA複合体の組換え細菌発現
本明細書に記載されるような合成のHLA複合体(synHLA)(例えば、表10に挙げられたもの)を含むHLA複合体は、細菌中で遺伝子組換え的に発現される。簡単に述べると、細菌細胞は、本明細書に記載のsynHLA構築物の配列をコードする核酸でトランスフェクションされる。タンパク質は、細菌から単離および精製され得る。タンパク質が封入体として存在する場合、タンパク質はリフォールディングされ得る(例えば、カオトロピック剤で変性させ、希薄な水性環境に移すことによって)。リフォールディングステップの後、リフォールディングされたタンパク質は、精製され得る(例えば、固定化金属親和性クロマトグラフィーによって)。単離されたタンパク質(例えば、1μg)は、還元剤(例えば、ジチオスレイトール、DTT)の存在下または非存在下でSDS-PAGEに供され、可視化(例えば、クマシーブルー染色を用いる)されてもよい。
【0272】
【0273】
【0274】
【0275】
【0276】
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【0279】
【0280】
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【0283】
【0284】
【0285】
【0286】
実施例9:細菌における合成HLA構築物の発現
本明細書に記載の合成HLAタンパク質(SYNC4-1、配列番号18、SYNA1-1,配列番号14、SYNC5-1,配列番号19、SYNC6-1,配列番号20、SCTC1-1,配列番号4)は、実施例8に記載のとおり、発現、単離、リフォールディング、精製、および分析された。簡潔に述べると、合成HLAタンパク質をコードするDNAを発現ベクターに挿入し、そして抗生物質選択下で細菌に導入した。タンパク質構築物の形式は、
図1に記載されているとおりであったが、N末端シグナルペプチドはなく、精製のために付加的なC末端ヘキサ-Hisタグを有していた。適切な配列を保有する細胞を対数期中期(mid-log phase)まで増殖させ、イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)を用いて発現を誘導した。遠心分離により細胞を採取し、高圧ホモジナイザーを用いて溶解し、遠心分離により可溶性画分と不溶性画分を分取した。合成HLAタンパク質を含む不溶性封入体を洗浄し、変性緩衝剤に再懸濁した。合成HLAタンパク質は、リフォールド緩衝剤で希釈し、4℃で最大72時間インキュベートすることにより、封入体調製物からリフォールドした。得られたタンパク質は、IMAC、サイズ排除、イオン交換の組み合わせで精製した。
【0287】
各構築物のSDS-PAGE解析の結果は
図10および
図11に示される。SDS-PAGEによる分離に続くクーマシーブルー染色は、SYNA1-1が非還元条件下で単一バンドとして移動することを示すが、これはジスルフィド結合形成の均質性を示唆する(
図10)。SYNA1-1はHLA-A02スキャフォールドを包含する。HLA-C07足場を含有する合成HLAタンパク質SCTC1-1、SYNC4-1、SYNC5-1およびSYNC6-1は、非還元条件下で複数の種として移動する(
図10および11)。これは、ジスルフィド結合タンパク質の複数の種が存在することを示唆する。これは、HLA-C07ドメインに存在する余分な不対システインの結果であり得る。
【0288】
実施例10:ジスルフィド結合形成の可能性の調節
実施例9に記載のHLA-C07ドメインに存在するシステインを別のアミノ酸に変異させ、ジスルフィド形成の可能性または誤対合を潜在的に低減または除去し、それにより、タンパク質発現を改善する。他の突然変異は、本明細書に記載の技術によって測定される発現および/またはリフォールディングを改善するために、導入され得る。
【0289】
実施例11:熱安定性アッセイ
バイオラッドCFX96(商標)Real-Time System RT PCRにおいて毎分1.0℃で10~100℃の熱勾配を適用することによって、タンパク質のアンフォールディングをモニターするための熱安定性アッセイを実施した。タンパク質のアンフォールディングは、タンパク質がアンフォールディングするにつれてタンパク質の疎水性領域に結合する蛍光色素SYPRO(商標)オレンジからのシグナルの増加をモニターすることによって測定された。タンパク質を5μMでアッセイし、下記のように個々におよび組み合わせて測定した。タンパク質の融点Tm(溶融転移の中間点の温度)の決定は、バイオラッドCFXマネージャソフトウェアを使用して行った。タンパク質融解曲線の一次導関数(ネガティブモード)は、Tmに対応する最大値を決定し、1段階タンパク質アンフォールディング事象は単一の最大値を有し、一方、2段階アンフォールディング事象は2つの最大値を有し、以下同様である。
【0290】
SYNC4-1の融解曲線は、42.6℃および57.2℃のT
mに対応する顕著な2段階アンフォールディング事象(
図12A)を示したが、SYNC4-1とKIR2DL2の組み合わせは、54.8℃および57.4℃のT
mに対応する第1の最大値の右への大きなシフトをもたらした。SYNC4-1単独の顕著な二重最大値は、凝縮された二重ピークとなった(
図12B)。右へのT
mのシフトは、KIR2DL2がタンパク質-タンパク質相互作用を介してSYNC4-1を安定化させたことを示唆する。
【0291】
KIR2DL2融解曲線および一次導関数(
図13)と比較して、2つの最大値はさらに、それぞれT
m58.8℃および57.6℃に対応する、左側に微かな肩を有する単一の最大値に凝縮された。これもまた、SYNC4-1とKIR2DL2との間にタンパク質-タンパク質相互作用が存在することを強く示唆する。
【0292】
SYNC1-1とは対照的に、インフルエンザペプチドGILGFVFTLおよびKIR結合を妨害し得る比較的長いリンカー配列を有するSYNA1-1は、KIR2DL2と組み合わせた場合に右へのシフトをもたらさず(
図14)、KIR2DL2がSYNA1-1の熱安定性を増加させなかったことを示した(SYNA1-1 T
m=48℃、SYNA1-1+KIR2DL2 T
m=48.2℃)。代わりに、KIR2DL2の熱安定性は、SYNA1-1と組み合わせた場合(
図14)、それぞれ58℃および48℃のT
mで低下した。このデータは、SYNA1-1をKIR2DL2と組み合わせる場合、熱安定性の増加がないことを示唆し、2つのタンパク質間の相互作用がほとんどまたは全くないことを示唆する。
【0293】
実施例12:可溶性合成HLAタンパク質の免疫受容体との相互作用
可溶性合成HLAタンパク質の免疫系を回避する能力を調べるために、免疫受容体とそれらの相互作用を調べる。ナチュラルキラー細胞上のキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、ならびにT細胞上のT細胞受容体およびCD8共受容体などの組換え免疫受容体を試験する。表面プラズモン共鳴、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、熱融解アッセイ、および循環二色性などの標準的なタンパク質-タンパク質相互作用技術を使用して、この相互作用を調査する。対照と比較した場合、特異的変異を有する可溶性合成HLAタンパク質は、組換え免疫受容体への結合障害を示す。
【0294】
可溶性合成HLAタンパク質と細胞表面での免疫受容体との相互作用を調べるために、競合細胞アッセイが使用される。これらのアッセイでは、可溶性合成HLAタンパク質を、野生型クラスI HLA分子を発現する哺乳動物細胞と共にインキュベートする。次いで、免疫細胞の存在下で生存する野生型細胞の能力(例えば、T細胞および/またはNK細胞)を測定する。対照と比較して、特異的変異を有する可溶性HLAタンパク質は、免疫細胞上の受容体との反応性が低く、野生型哺乳動物細胞の死滅の増加をもたらす。
【0295】
実施例13:別個の転写単位からの可溶性合成HLAタンパク質の産生
合成HLAタンパク質をコードするDNAをベクターに挿入し、次いで抗生物質選択下で細菌に導入する。構築物形式は
図15に記載したとおりであり、ペプチドおよびβ-2ミクログロブリンドメインはリンカーによって連結された単一タンパク質として発現され、HLA重鎖ドメインは別個のタンパク質として産生される。これは、同じセル内または別個のセル内にあってもよい。適切な構築物を有する細胞を対数増殖期中期まで増殖させ、発現をイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘導する。細胞を遠心分離によって回収し、細胞粉砕機を使用して溶解し、遠心分離して可溶性画分および不溶性画分を単離する。合成HLAタンパク質の適切なドメインを含有する不溶性封入体を洗浄し、変性緩衝剤に再懸濁する。ペプチドおよびβ-2ミクログロブリンタンパク質は、リフォールディング工程の間にHLA重鎖ドメインと組み合わされる。得られたリフォールディングタンパク質を、IMAC、サイズ排除および/またはイオン交換の組み合わせによって精製する。あるいは、リフォールディングされたタンパク質は、同様の精製技術を用いて可溶性画分から直接精製される。
【0296】
本発明の好ましい実施形態が本明細書において示され、かつ記載されているが、こうした実施形態はほんの一例として提供されているに過ぎないということが当業者にとって明白である。本発明が明細書内で提供される特定の例によって制限されることは意図していない。本発明は前述の明細書に関して記載されているが、本明細書中の実施形態の記載および例示は、限定的な意味で解釈されることを目的としていない。多くの変更、変化、および置換が、本発明から逸脱することなく、当業者の心に思い浮かぶであろう。さらに、本発明のすべての態様は、様々な条件および変数に依存する、本明細書で説明された特定の描写、構成、または相対的な比率に限定されないことが理解されよう。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代案は本発明の実施に利用可能であることを理解されたい。それゆえ、本発明は、任意のそのような代替物、修正物、変形物、または同等物にも及ぶものと企図される。以下の請求項は本発明の範囲を定義するものであり、この請求項とその均等物の範囲内の方法、および構造体がそれによって包含されるものであるということが意図されている。
【国際調査報告】