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特表2023-546318蒸気生成システム用カートリッジへの充填方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(54)【発明の名称】蒸気生成システム用カートリッジへの充填方法
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/42 20200101AFI20231026BHJP
   A24F 40/10 20200101ALI20231026BHJP
【FI】
A24F40/42
A24F40/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516092
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(85)【翻訳文提出日】2023-03-10
(86)【国際出願番号】 EP2021078644
(87)【国際公開番号】W WO2022084187
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】20203482.3
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516004949
【氏名又は名称】ジェイティー インターナショナル エスエイ
【住所又は居所原語表記】8,rue Kazem Radjavi,1202 Geneva,SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100202854
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 卓行
(72)【発明者】
【氏名】ハイマ,ヘルマン
【テーマコード(参考)】
4B162
【Fターム(参考)】
4B162AA05
4B162AA22
4B162AB14
4B162AB23
4B162AC17
4B162AC46
(57)【要約】
蒸気生成システム(1)用のカートリッジ(12)が、蒸気生成液体を貯蔵するためのリザーバ(32)を含む。カートリッジ(12)への充填方法は、(i)第1の開口部(52)を介してリザーバ(32)に蒸気生成液体を導入すること(S1)と、(ii)ステップ(i)の間に第2の開口部(54)を介してリザーバ(32)から空気を排出すること(S2)と、(iii)第1及び開口部(52、54)を封止して、第1及び第2の開口部(52、54)を通したリザーバ(32)からの蒸気生成液体の漏出を防止するために、対応する第1及び第2の開口部(52、54)に第1及び第2の弁(60、62)を配置すること(S3)とを含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気生成システム(1)用カートリッジ(12)の充填方法であって、前記カートリッジ(12)は、蒸気生成液体を貯蔵するためのリザーバ(32)を含み、前記方法は、
(i)第1の開口部(52)を介して前記リザーバ(32)に蒸気生成液体を導入することと、
(ii)ステップ(i)の間に第2の開口部(54)を介して前記リザーバ(32)から空気を排出することと、
(iii)前記第1及び第2の開口部(52、54)を封止して、前記第1及び第2の開口部(52、54)を通した前記リザーバ(32)からの蒸気生成液体の漏出を防止するために、前記対応する第1及び第2の開口部(52、54)に第1及び第2の弁(60、62)を配置することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記カートリッジ(12)が気化チャンバ(48)をさらに含み、ステップ(iii)が、前記第1及び第2の開口部(52、54)を封止して前記リザーバ(32)からの蒸気生成液体の前記漏出を防止するとともに、空気が第1及び第2の一方向弁(60、62)を通って前記気化チャンバ(48)に流れることを可能にするために、前記第1及び第2の開口部(52、54)に前記第1及び第2の一方向弁(60、62)を配置することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カートリッジ(12)が、前記気化チャンバ(48)と連通する第1及び第2の吸気口(56、58)をさらに含み、ステップ(iii)が、前記第1及び第2の吸気口(56、58)を通る前記気化チャンバ(48)への空気流を許容するために、前記第1及び第2の吸気口(56、58)に前記第1及び第2の一方向弁(60、62)を配置することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1及び第2の一方向弁(60、62)のそれぞれが、第1の封止部(60a、62a)及び第2の封止部(60b、62b)を含み、ステップ(iii)が、前記第1及び第2の開口部(52、54)を封止するために、前記対応する第1及び第2の開口部(52、54)に各第1及び第2の一方向弁(60、62)の前記第1の封止部(60a、62a)を配置することと、前記第1及び第2の吸気口(56、58)を通る前記気化チャンバ(48)への一方向空気流を可能にするために、前記対応する第1及び第2の吸気口(56、58)に各第1及び第2の一方向弁(60、62)の前記第2の封止部(60b、62b)を配置することと、を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の封止部(60b、62b)が、前記気化チャンバ(48)に向かう空気流方向において前記第1の封止部(60a、62a)の上流に配置される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記カートリッジ(12)が近位端(24)及び遠位端(26)を含み、前記第1及び第2の開口部(52、54)が前記遠位端(26)に配置され、ステップ(i)及び(ii)が、前記遠位端(26)が前記近位端(24)より上に配置されるように前記カートリッジ(12)が方向づけられた状態で行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(i)が、充填針又は充填管を介して前記リザーバ(32)に前記蒸気生成液体を導入することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
蒸気生成システム(1)用のカートリッジ(12)であって、前記カートリッジは、
蒸気生成液体を貯蔵するように構成されたリザーバ(32)と、
前記リザーバ(32)に蒸気生成液体を導入するように構成された第1の開口部(52)と、
前記第1の開口部(52)を介した前記リザーバ(32)への蒸気生成液体の前記導入の間に前記リザーバ(32)から空気を排出するように構成された第2の開口部(54)と、
を含み、
前記カートリッジ(12)は、気化チャンバ(48)と、前記第1及び第2の開口部(52、54)を通した前記リザーバ(32)からの液体の漏出を防止するとともに、空気が第1及び第2の一方向弁(60、62)を通って前記気化チャンバ(48)に流れることを可能にするために、前記第1及び第2の開口部(52、54)に配置された前記第1及び第2の一方向弁(60、62)とをさらに含む、
カートリッジ(12)。
【請求項9】
前記カートリッジ(12)が、前記気化チャンバ(48)と連通する第1及び第2の吸気口(56、58)をさらに含み、前記第1及び第2の一方向弁(60、62)が、前記第1及び第2の吸気口(56、58)を通る前記気化チャンバ(48)への空気流を許容するように、前記第1及び第2の吸気口(56、58)に配置される、請求項8に記載のカートリッジ。
【請求項10】
前記第1及び第2の一方向弁(60、62)のそれぞれが、第1の封止部(60a、62a)及び第2の封止部(60b、62b)を含み、各第1及び第2の一方向弁(60、62)の前記第1の封止部(60a、62a)は、前記第1及び第2の開口部(52、54)を封止するために、前記対応する第1及び第2の開口部(52、54)に配置され、各第1及び第2の一方向弁(60、62)の前記第2の封止部(60b、62b)は、前記第1及び第2の吸気口(56、58)を通る前記気化チャンバ(48)への一方向空気流を可能にするために、前記対応する第1及び第2の吸気口(56、58)に配置される、請求項9に記載のカートリッジ。
【請求項11】
前記第2の封止部(60b、62b)が、前記気化チャンバ(48)に向かう空気流方向において前記第1の封止部(60a、62a)の上流に配置される、請求項10に記載のカートリッジ。
【請求項12】
前記カートリッジ(12)が近位端(24)及び遠位端(26)を含み、前記第1及び第2の開口部(52、54)が前記遠位端(26)に配置される、請求項8~11のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項13】
蒸気生成システム(1)であって、
少なくとも1つの加熱要素(18)を有するベース部分(10)と、
前記ベース部分(10)に熱的に接続される、請求項8~12のいずれか一項に記載のカートリッジ(12)と、
を含む蒸気生成システム(1)。
【請求項14】
前記カートリッジ(12)が熱伝達ユニット(42)を含み、前記加熱要素(18)が前記熱伝達ユニット(42)によって前記気化チャンバ(48)から分離される、請求項13に記載の蒸気生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、蒸気生成液体を加熱して蒸気を生成し、それが冷却及び凝縮して、システムのユーザが吸入するエアロゾルを形成するように構成された蒸気生成システム用のカートリッジに関する。本開示の実施形態は、特に、蒸気生成システム用のカートリッジに蒸気生成液体を充填する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気生成システム(又はより一般的には、電子タバコ又はe-タバコ)という用語は、従来の紙巻きタバコでの喫煙の感覚又は体験を模倣することを目的とした携帯型電子デバイスを指す。電子タバコは、冷却及び凝縮して、その後ユーザが吸入するエアロゾルを形成する蒸気を生成する蒸気生成液を加熱することにより機能する。したがって、e-タバコの使用は「ベイピング」と称される場合がある。蒸気生成液体は通常、ニコチン、プロピレングリコール、グリセリン及び香味料を含む。
【0003】
典型的なe-タバコ気化ユニット、すなわち、蒸気生成液体を気化させるためのシステム又はサブシステムは、綿芯及び加熱要素を利用して、カプセル又はタンク内に貯蔵された液体から蒸気を発生させる。ユーザがe-タバコを操作するとき、芯に染み込んだ液体が加熱要素によって加熱され、蒸気を発生させ、それが冷却及び凝縮して、その後吸入され得るエアロゾルを形成する。e-タバコの使い易さを促進するため、カートリッジがしばしば使用される。これらのカートリッジは、多くの場合、「カートマイザ」として構成され、これは、液体貯蔵器(リザーバ)と、液体移送要素(例えば芯)と、ヒータとから形成された、統合された構成要素を意味する。電気コネクタもまた、加熱要素と電源との間の電気接続を確立するように設けられていてよい。このようなカートリッジは使い捨てであってよく、すなわちリザーバ内の液体の供給が尽きた後に再利用できるように意図していない。特に使い捨てカートリッジの場合だけでなく、再充填可能なカートリッジの場合も、カートリッジ部品の数及び複雑さを減らすことにより無駄を減らして製造工程をより簡単且つ安価にすることが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の第1の態様によれば、蒸気生成システム用カートリッジへの充填方法が提供され、カートリッジは蒸気発生液体を貯蔵するためのリザーバを含み、本方法は、
(i)第1の開口部を介してリザーバに蒸気生成液体を導入することと、
(ii)ステップ(i)の間に第2の開口部を介してリザーバから空気を排出することと、
(iii)第1及び第2の開口部を封止して、第1及び第2の開口部を通したリザーバからの蒸気生成液体の漏出を防止するために、対応する第1及び第2の開口部に第1及び第2の弁を配置することと、
を含む。
【0005】
カートリッジは、蒸気生成液体を加熱して、蒸気生成液体の少なくとも1つの成分を揮発させることによって蒸気を生成し、それが冷却及び凝縮して、蒸気生成システムのユーザが吸入するエアロゾルを形成するように構成された蒸気生成システムとともに使用することを意図している。本開示は、特に、携帯型(ハンドヘルド)蒸気生成システムに適用可能であり、このことは、ユーザが助けを受けずに片手でシステムを保持及び支持することができることを意味する。
【0006】
蒸気生成液体としては、グリセリン又はプロピレングリコールなどの多価アルコール及びその混合物が挙げられ得る。蒸気生成液体は、ニコチンを含有し得、したがって、ニコチン含有液体に指定され得る。蒸気生成液体は、香味料などの1つ又は複数の添加物を含有し得る。
【0007】
一般的に、蒸気は、その臨界温度よりも低い温度で気相である物質であり、これは温度を低下させることなく圧力を増加させることによって蒸気を液体に凝縮させ得ることを意味する。一方、エアロゾルは、空気又は別の気体中の微細な固体粒子又は液滴の浮遊物である。しかしながら、本明細書では、「エアロゾル」及び「蒸気」という用語は、特にユーザによる吸入のために生成される吸入可能媒体の形態に関して、互換的に使用され得ることに留意されたい。
【0008】
第1の開口部を介してリザーバに蒸気生成液体を導入し、同時に第2の開口部を介してリザーバから空気を排出することによって、リザーバを過度の圧力にさらすことなく、リザーバの充填を容易に達成することができる。その後、対応する第1及び第2の開口部に第1及び第2の弁を配置する単純なステップによって、第1及び第2の開口部の封止が容易に達成される。
【0009】
カートリッジは、気化チャンバをさらに含み得る。ステップ(iii)は、第1及び第2の開口部を封止してリザーバからの蒸気生成液体の漏出を防止するとともに、空気が第1及び第2の一方向弁を通って気化チャンバに流れることを可能にするために、第1及び第2の開口部に第1及び第2の一方向弁を配置することを含み得る。第1及び第2の一方向弁は、二重の機能、すなわちリザーバからの蒸気生成液体の漏出を防止する機能と、空気が気化チャンバに流れることを可能にする機能とを有し、したがって、カートリッジの構造と製造/組み立ての両方が単純化される。
【0010】
カートリッジは、気化チャンバと連通する第1及び第2の吸気口をさらに含み得る。ステップ(iii)は、第1及び第2の吸気口を通る気化チャンバへの空気流を許容するように、第1及び第2の吸気口に第1及び第2の一方向弁を配置することを含み得る。気化チャンバへの確実な空気流が、対応する第1及び第2の一方向弁によって、第1及び第2の吸気口を通して保証される。
【0011】
第1及び第2の一方向弁のそれぞれは、第1の封止部及び第2の封止部を含み得る。ステップ(iii)は、第1及び第2の開口部を封止するために、対応する第1及び第2の開口部に各第1及び第2の一方向弁の第1の封止部を配置することと、第1及び第2の吸気口を通る気化チャンバへの一方向空気流を可能にするために、対応する第1及び第2の吸気口に各第1及び第2の一方向弁の第2の封止部を配置することとを含み得る。第1及び第2の封止部は、各一方向弁に上述の二重の機能を提供する。特に、第1の封止部は、第1及び第2の開口部を封止することによってリザーバからの蒸気生成液体の漏出を防止し、一方、第2の封止部は、空気が第1及び第2の吸気口を通って気化チャンバに流れることを可能にする。これにより、カートリッジの構造及び製造/組み立ては、さらに単純化される。
【0012】
第2の封止部は、気化チャンバに向かう空気流方向において第1の封止部の上流に配置され得る。第1の封止部は、リザーバからの蒸気生成液体の漏出を防止するが、第1及び第2の吸気口を通る気化チャンバへの空気流を妨げない。
【0013】
カートリッジは、近位端及び遠位端を含み得る。第1及び第2の開口部は、遠位端に配置され得る。ステップ(i)及び(ii)は、遠位端が近位端より上に配置されるようにカートリッジが方向づけられた状態で行われる。第1及び第2の開口部を最上位置に配置することによって、第1の開口部を介したリザーバへの蒸気生成液体の充填と、第2の開口部を介したリザーバからの空気の排出とを、リザーバからの蒸気生成液体の不必要な漏洩なしに確実に行うことができる。
【0014】
ステップ(i)は、充填針又は充填管を介してリザーバに蒸気生成液体を導入することを含み得る。これにより、リザーバへの蒸気生成液体の充填が容易になり得る。
【0015】
本開示の第2の態様によれば、蒸気生成システム用のカートリッジが提供され、カートリッジは、
蒸気生成液体を貯蔵するように構成されたリザーバと、
リザーバに蒸気生成液体を導入するように構成された第1の開口部と、
第1の開口部を介したリザーバへの蒸気生成液体の導入の間にリザーバから空気を排出するように構成された第2の開口部と、
を含み、
カートリッジは、気化チャンバと、第1及び第2の開口部を通したリザーバからの蒸気生成液体の漏出を防止するとともに、空気が第1及び第2の一方向弁を通って気化チャンバに流れることを可能にするために、第1及び第2の開口部に配置された第1及び第2の一方向弁とをさらに含む。
【0016】
第1の開口部により、蒸気生成液体をリザーバに導入することが可能になる一方で、第2の開口部により、空気をリザーバから同時に排出することが可能になる。これにより、リザーバを過度の圧力にさらすことなく、リザーバを簡単に充填することが可能になる。リザーバからの蒸気生成液体の漏出を防止し、同時に空気が気化チャンバに流れることを可能にすることによって、第1及び第2の一方向弁は、二重の機能を有し、したがって、カートリッジの構造を単純化し、その製造可能性及び組み立ての容易性を改善する。
【0017】
カートリッジは、気化チャンバと連通する第1及び第2の吸気口をさらに含み得る。第1及び第2の一方向弁は、第1及び第2の吸気口を通る気化チャンバへの空気流を許容するように、第1及び第2の吸気口に配置され得る。気化チャンバへの確実な空気流が、対応する第1及び第2の一方向弁によって、第1及び第2の吸気口を通して保証される。
【0018】
第1及び第2の一方向弁のそれぞれは、第1の封止部及び第2の封止部を含み得る。各第1及び第2の一方向弁の第1の封止部は、第1及び第2の開口部を封止するために、対応する第1及び第2の開口部に配置され得る。各第1及び第2の一方向弁の第2の封止部は、第1及び第2の吸気口を通る気化チャンバへの一方向空気流を可能にするために、対応する第1及び第2の吸気口に配置され得る。第1及び第2の封止部は、各一方向弁に上述の二重の機能を提供する。特に、第1の封止部は、第1及び第2の開口部を封止することによってリザーバからの蒸気生成液体の漏出を防止し、一方、第2の封止部は、空気が第1及び第2の吸気口を通って気化チャンバに流れることを可能にする。これにより、カートリッジの構造は単純化される。
【0019】
第2の封止部は、気化チャンバに向かう空気流方向において第1の封止部の上流に配置され得る。第1の封止部は、リザーバからの蒸気生成液体の漏出を防止するが、第1及び第2の吸気口を通る気化チャンバへの空気流を妨げない。
【0020】
カートリッジは、近位端を含み得、遠位端を含み得、第1及び第2の開口部は、遠位端に配置され得る。上記のように、特に遠位端が近位端より上に配置されるようにカートリッジが方向づけられているとき、第1の開口部を介したリザーバへの蒸気生成液体の充填と、第2の開口部を介したリザーバからの空気の排出とが、これにより容易になる。
【0021】
カートリッジは、例えば液体出口を介して、リザーバからの蒸気生成液体を吸収するために、気化チャンバ内に少なくとも部分的に配設された収着部材をさらに含み得る。カートリッジは、収着部材と接触して収着部材を加熱し、吸収された蒸気生成液体を気化させることができる熱伝達ユニットをさらに含み得る。これは、リザーバからの蒸気生成液体が収着部材によって連続的に吸収される、連続的なプロセスである。本プロセス中に生成された蒸気は、蒸気生成システムのユーザが吸入できるように、カートリッジ内の蒸気出口チャネルを介して気化チャンバから移送される。
【0022】
カートリッジは、少なくとも1つの加熱要素を有するベース部分に熱的に接続するように構成され得る。熱伝達ユニットは、カートリッジがベース部分に熱的に接続されるとき、加熱要素から収着部材に熱を伝達して、収着部材によって吸収された蒸気生成液体を気化させるように構成され得る。
【0023】
本開示の第3の態様によれば、蒸気生成システムであって、
少なくとも1つの加熱要素を有するベース部分と、
ベース部分に熱的に接続される、第2の態様によるカートリッジと、
を含む蒸気生成システムが提供される。
【0024】
ベース部分は、加熱要素に接続された電源ユニット、例えばバッテリを含み得る。動作時、蒸気生成システムを作動させると、電源ユニットは、ベース部分の加熱要素を電気的に加熱し、その後、加熱要素は、その熱を伝導によってカートリッジの熱伝達ユニットに提供する。熱伝達ユニットは、今度はその熱を収着部材に提供し、収着部材に吸収された蒸気生成液体の気化をもたらす。加熱要素は、熱伝達ユニットによって気化チャンバから分離され得る。
【0025】
収着部材は、別の材料の収着及び/又は吸収を行うことができる任意の材料又は材料の組み合わせで作製することができ、例えば以下の材料:繊維、ガラス、アルミニウム、綿、セラミック、セルロース、ガラス繊維ウィック、ステンレス鋼メッシュ、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ(シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)及びBAREX(登録商標)などのうちの1つ又は複数で作製することができる。
【0026】
熱伝達ユニットは、熱伝導性材料、例えばアルミニウム、銅等などの金属を含み得る。
【0027】
加熱要素は、電気抵抗材料を含み得る。加熱要素は、セラミック材料、例えばタングステン及びその合金を含み得る。セラミック材料の使用は、加熱要素を堅くするのに便利に役立つ。加熱要素は、少なくとも部分的に、ガラスなどの保護材料に封入され得るか又はガラスなどの保護材料でコーティングされ得る。
【0028】
加熱要素は、温度と抵抗率との間の定義された関係を有する金属を使用して形成され得る。このような実施形態では、金属は、2層の適切な絶縁材料間のトラックとして形成され得る。このようにして形成された加熱要素は、ヒータ及び温度センサの両方として使用され得る。
【0029】
加熱要素は、加熱要素に埋め込まれた又は取り付けられた温度センサを含み得る。
【0030】
電源ユニット、例えばバッテリは、直流電圧源であり得る。例えば、電源ユニットは、ニッケル水素バッテリ、ニッケルカドミウムバッテリ又はリチウムベースのバッテリ、例えばリチウムコバルトバッテリ、リン酸鉄リチウムバッテリ、リチウムイオンバッテリ又はリチウムポリマーバッテリであり得る。
【0031】
ベース部分は、バッテリを含む蒸気生成システムの電気部品と関連付けられたプロセッサをさらに含み得る。
【0032】
カートリッジは、リザーバ及び気化チャンバを少なくとも部分的に含むカートリッジハウジングと、カートリッジハウジングに沿って延び、且つ気化チャンバと流体連通する蒸気出口チャネルとをさらに含み得る。カートリッジハウジングは、蒸気出口チャネルを介して気化チャンバと流体連通するマウスピース端部として構成される近位端と、熱伝達ユニットと関連付けられた遠位端とを有し得る。マウスピース端部は、気化された液体(すなわち、蒸気又はエアロゾル)をユーザに提供するように構成され得る。熱伝達ユニットは、遠位端に配置され得る。熱伝達ユニットは、蒸気出口チャネルに実質的に垂直であり得る。
【0033】
リザーバは、気化チャンバとマウスピース端部との間に延びる蒸気出口チャネルに並置され得る。リザーバは、蒸気出口チャネルの周りに配設され得る。
【0034】
カートリッジハウジングは、以下の材料:アルミニウム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、カプトン(登録商標)などのポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂及びビニル樹脂のうちの1つ又は複数で作製され得る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】ベース部分及びカートリッジを含む蒸気生成システムの概略図である。
図2】本開示によるカートリッジの一例の斜視図である。
図3】第1及び第2の開口部を封止する前の、図2に示すカートリッジの断面図である。
図4】第1及び第2の開口部を封止した後の、図2図4に示すカートリッジの断面図である。
図5】本開示によるカートリッジに蒸気生成液体を充填するための方法の一例を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
ここで、本開示の実施形態について、単なる例として、添付の図面を参照しながら説明する。
【0037】
最初に図1を参照すると、システム1のユーザによる吸入のための蒸気(又はエアロゾル)を生成するために蒸気生成液体を気化させるための蒸気生成システム1が図式的に示されている。蒸気生成システム1は、ベース部分10と、ベース部分10に熱的に接続されるカートリッジ12とを含む。したがって、ベース部分10は、蒸気生成システム1の本体部であり、好ましくは再利用可能である。
【0038】
ベース部分12は、ハウジング14を含み、ハウジング14は、ハウジング14の第1の端部14aに位置する抵抗加熱要素18に接続されるバッテリ16の形態の電源ユニットを収容する。ハウジング14の第1の端部14aは、カートリッジ12の対応するインタフェースと適合するように構成されるインタフェース15を有する。インタフェース15は、例えば、管状カートリッジ台座の形状であってもよく、カートリッジ12をカートリッジ台座に取り外し可能に接続するためのコネクタを含むことができる。バッテリ16は、加熱要素18の動作に必要な電力を加熱要素18に提供するように構成され、加熱要素18が必要とされる温度まで加熱されることを可能にする。バッテリ16は、プロセッサ20にも接続され、プロセッサ20の動作に必要とされる電力供給を可能にする。プロセッサ20は、加熱要素18に接続され、その動作を制御する。
【0039】
さらに図2図4を参照すると、カートリッジ12は、近位端24と遠位端26とを有するカートリッジハウジング22を含む。近位端24は、ユーザの口内に直接導入されるように構成されたマウスピース端を構成することができ、したがって、口端24として指定することもできる。いくつかの実施形態では、マウスピースは、近位端24に嵌め込まれ得る。しかしながら、蒸気生成システム1を、ベース部分10に取り外し可能に接続可能な別個のマウスピース部とともに構成することも可能であり、それにより、カートリッジ12は、蒸気生成システム1の内部に封入される。
【0040】
カートリッジ12は、ベース部28及び液体貯蔵部30を含む。液体貯蔵部30は、蒸気生成液体がその中に入るように構成されたリザーバ32と、蒸気出口チャネル34とを含む。蒸気生成液体は、プロピレングリコール及び/又はグリセロールなどのエアロゾル形成物質を含んでもよく、ニコチン及び酸などの他の物質を含有し得る。蒸気生成液体は、例えばタバコ、メントール又はフルーツ味などの香味料も含み得る。リザーバ32は、概ね近位端24と遠位端26との間に延び得るが、遠位端26から間隔を空けている。リザーバ32は、蒸気出口チャネル34を包囲し、且つ蒸気出口チャネル34と同一の広がりを有し得る。
【0041】
図4から最もよく分かるように、カートリッジ12のベース部28は、カートリッジ12の遠位端26を封止的に閉鎖するように構成され得る。ベース部28は、第1及び第2のプラグ部材36a、36bを含むプラグアセンブリ36と、中央に配置された穴40を有する円板形状の収着部材38と、熱伝達ユニット42とを含み、これらはすべて、カートリッジハウジング22の遠位端26、より詳細にはリザーバ32と遠位端26との間に形成される空間に配置される。プラグアセンブリ36、より具体的には第1のプラグ部材36aは、カートリッジハウジング22の遠位端26を閉じ、それによって蒸気生成液体をリザーバ32内に保つ。
【0042】
第1のプラグ部材36aは、リザーバ32の内周面と接触する周面46を備えている。第1のプラグ部材36aは、周面46がリザーバ32の内周面と接触したときに封止効果を提供する弾性を有する材料で形成され得る。例えば、第1のプラグ部材32aは、ゴム又はシリコーンを含み得る。代わりに、第1のプラグ部材36aは、第1のプラグ部材36aとリザーバ32とを例えば超音波溶接によって互いに接合することを可能にする熱可塑性材料を含み得る。第1のプラグ部材36aは、図3及び図4に示すように、蒸気出口チャネル34の遠位端34aに封止的に接続するように構成された接続部分44を含む。
【0043】
カートリッジ12は、第1のプラグ部材36aと熱伝達ユニット42との間に画定された気化チャンバ48を含む。収着部材38は、気化チャンバ48内に配置される。第1のプラグ部材36aは、リザーバ32から液体出口50に隣接する気化チャンバ48内に配置された収着部材38への蒸気生成液体の制御された流れを提供する、複数の周方向に間隔を空けた液体出口50を含む。
【0044】
収着部材38は、液体出口50と熱伝達ユニット42との間において気化チャンバ48内に配置される。収着部材38は、一方では、リザーバ32からの蒸気生成液体の一部を吸収するように構成され、他方では、熱伝達ユニット42によって加熱されることにより、収着部材38中に吸収された蒸気生成液体を、気化チャンバ48内で気化させるように構成される。
【0045】
ベース部分10とカートリッジ12とが図1に示されるように互いに組み立てられるとき、ベース部分10の加熱要素18は、カートリッジ12がベース部分10に熱的に接続されるように、カートリッジ12の熱伝達ユニット42に接触する。動作時、加熱要素18は、バッテリ16からの電力によって抵抗加熱され、その熱を、伝導を介して熱伝達ユニット42に提供する。熱伝達ユニット42からの熱は、その後、主に伝導によって収着部材38に伝達される。したがって、収着部材38は、熱伝達ユニット42によって間接的に加熱され、ベース部分10の加熱要素18によって直接加熱されない。収着部材38と熱伝達ユニット42との間の接続部が、気化が起こる温度(通常200℃~250℃の間)に到達するように、十分な熱を伝達するために、ベース部分12内の加熱要素18は、理想的には約500℃の温度に達する必要がある。収着部材38の加熱の結果として、リザーバ32から収着部材38に吸収された蒸気生成液体は、気化チャンバ48で気化し、ユーザがカートリッジ12の近位(口)端24を吸引するとき、蒸気は、蒸気出口チャネル34を介して気化チャンバ48から漏出する。蒸気は、蒸気出口チャネル34を通って流れるとき冷却及び凝縮して、近位(口)端24を介してユーザが吸入できるエアロゾルを形成する。
【0046】
カートリッジ12は、リザーバ32に蒸気生成液体を充填することを可能にする、リザーバ32と連通する第1及び第2の開口部52、54を含む。具体的には、第1の開口部52は、蒸気生成液体をリザーバ32に導入することを可能にし、一方、第2の開口部54は、第1の開口部52を介してリザーバ32に蒸気生成液体が充填されている間に、空気をリザーバ32から排出することを可能にする。したがって、充填中にリザーバ32内部の過度の圧力が回避され、リザーバ32に蒸気生成液体を容易に充填することができる。図示例では、第1及び第2の開口部52、54は、カートリッジハウジング22の遠位端26にあり、第1のプラグ部材36aに形成される。
【0047】
カートリッジ12はまた、上述のように、蒸気生成システム1の使用中にユーザがカートリッジ12の近位(口)端24を吸引するときに、空気が気化チャンバ48に流れることを可能にするために第1及び第2の吸気口56、58も含む。図示例では、第1及び第2の吸気口56、58は、第2のプラグ部材36bに形成され、図4に示すように、第1及び第2のプラグ部材36a、36bの間に形成される経路に沿って空気が気化チャンバ48に流れることを可能にする。
【0048】
カートリッジ12は、第1及び第2の一方向弁60、62を含み、これらの両方が、第1の封止部60a、62a及び第2の封止部60b、62bを含む。図4に示すように第1及び第2の一方向弁60、62がカートリッジに嵌め込まれるとき、第1の封止部60a、62aは、対応する第1及び第2の開口部52、54に配置され、第2の封止部60b、62bは、第1及び第2の吸気口56、58に配置される。第1の封止部60a、62aは、上述の方式でリザーバ32に蒸気生成液体が充填された後に、第1及び第2の開口部52、54を介したリザーバ32からの蒸気生成液体の漏出を防止する液密封止を提供する。第1及び第2の一方向弁60、62は、通常、第1の封止部60a、62aが対応する第1及び第2の開口部52、54に配置されたときに封止効果を提供する弾性を有する材料で形成される。例えば、第1及び第2の一方向弁60、62は、ゴム又はシリコーンを含み得る。
【0049】
ダックビル弁又は同様の逆流防止弁を含み得る第2の封止部60b、62bは、空気が第1及び第2の吸気口56、58を通って気化チャンバ48に流れることを可能にするが、空気が反対方向に流れることを可能にしない。図4に示すように、各第1及び第2の一方向弁60、62の第2の封止部60b、62bは、気化チャンバ48に向かう空気流方向において第1の封止部60a、62aの上流に配置される。したがって、空気は、第1の封止部60a、62aによって妨げられることなく、第2の封止部60b、62b並びに第1及び第2の吸気口56、58を通って気化チャンバ48に流れることができる。したがって、第1の封止部60a、62aの幾何学的形状は、液密封止を提供するために最適化することができ、これによりリザーバ32からの蒸気生成液体の漏洩を防止することができる。
【0050】
図6に例示するように、カートリッジ12への例示的な充填方法は、
S1 - 第1の開口部52を介してリザーバ32に蒸気生成液体を導入するステップと、
S2 - ステップS1の間に第2の開口部54を介してリザーバ32から空気を排出するステップと、
S3 - 第1及び開口部52、54を封止して、第1及び第2の開口部52、54を通したリザーバ32からの蒸気生成液体の漏出を防止するために、対応する第1及び第2の開口部52、54に第1及び第2の弁60、62(例えば、上述のような一方向弁)を配置するステップと、
を含む。
【0051】
ステップS1は、カートリッジ12が図3に示すように方向づけられた状態で、すなわち、遠位端26が近位端24より上に配置された状態で行われる。充填針又は充填管を使用して、第1の開口部52を介したリザーバ32への蒸気生成液体の導入を容易にし、それによって流出のリスクを最小限にすることができる。その後、第1及び第2の一方向弁60、62は、遠位端26が近位端24より上に配置された状態で、第1及び第2の開口部52、54に配置される(ステップS3)。第1及び第2の一方向弁60、62の弾性及び可撓性の性質のために、それらは、第1及び第2の開口部52、54に押し込むことができ、液密封止を形成することが可能になる。カートリッジ12に蒸気生成液体が充填され、第1及び第2の一方向弁60、62が第1及び第2の開口部52に配置された後、カートリッジ12は、使用の準備が整い、上述の方式でベース部分10に接続することができる。この時点で、カートリッジ12は、リザーバ32からの蒸気生成液体の漏洩が起こることなく、任意の向きで(例えば図4に示すように)保持することができる。
【0052】
これまでの段落では例示的な実施形態について説明してきたが、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、これらの実施形態に対してさまざまな修正を加えることができることを理解されたい。したがって、特許請求の広さ及び範囲は、上述した例示的な実施形態に限定されるべきではない。
【0053】
本明細書において別段の指示がない限り、又は文脈に明らかに矛盾しない限り、すべての可能な変形形態における上述した特徴の任意の組み合わせは、本開示によって包含される。
【0054】
文脈上、明らかに他の意味に解すべき場合を除き、本明細書及び特許請求の範囲の全体を通して、「含む」、「含んでいる」などの語は、排他的意味又は網羅的意味とは反対に、包括的に、すなわち「含むが、限定されない」という意味で解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】