(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(54)【発明の名称】MTJベースのアナログ・メモリ・デバイス
(51)【国際特許分類】
H10B 61/00 20230101AFI20231026BHJP
H10N 50/10 20230101ALI20231026BHJP
【FI】
H10B61/00
H10N50/10 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518397
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(85)【翻訳文提出日】2023-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2021078493
(87)【国際公開番号】W WO2022089953
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【氏名又は名称】太佐 種一
(74)【代理人】
【識別番号】100120710
【氏名又は名称】片岡 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ハウッサメッディン、ディミトリ
(72)【発明者】
【氏名】フロウギアー、ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、カングオ
(72)【発明者】
【氏名】シエ、ルイロン
【テーマコード(参考)】
4M119
5F092
【Fターム(参考)】
4M119AA01
4M119AA20
4M119BB01
4M119CC10
4M119DD32
4M119EE03
4M119FF05
4M119FF14
4M119JJ03
4M119JJ04
4M119JJ13
4M119KK14
5F092AA20
5F092AB08
5F092AC12
5F092AD26
5F092BB23
5F092BB35
5F092BB36
5F092BB43
5F092BC03
5F092CA02
5F092CA03
5F092CA08
5F092CA09
5F092EA06
(57)【要約】
磁気トンネル接合(MTJ)ピラーの磁気自由層(すなわちストレージ層)が、MTJピラーの下に配設されている導電書込み線に密に近接している磁区デバイスが提供される。磁区デバイスは、導電書込み線の下に互いに離れて配置された底部電極の対と、MTJピラー上に配置されている頂部電極と、を更に含む。磁区デバイスはアナログ・メモリにおいて使用することができ、これには人工知能(AI)用途のためのマルチ・ビット記憶アナログ・メモリが含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電書込み線上に配置されている磁気トンネル接合(MTJ)ピラーを備える、磁区デバイス。
【請求項2】
前記MTJピラーは、底部から頂部へと磁気自由層、トンネル・バリア層、および磁気参照層を備える、頂部ピン止めMTJピラーである、請求項1に記載の磁区デバイス。
【請求項3】
前記MTJピラーの前記磁気自由層は前記導電書込み線との直接接合部を形成している、請求項2に記載の磁区デバイス。
【請求項4】
前記MTJピラーの前記磁気自由層は前記導電書込み線から1つまたは複数の材料層の厚さだけ離隔されている、請求項2に記載の磁区デバイス。
【請求項5】
前記1つまたは複数の材料層は、電流閉じ込め層、導電ビア構造体、または電流閉じ込め層と導電ビア構造体を組み合わせたものを備える、請求項4に記載の磁区デバイス。
【請求項6】
前記MTJピラーは、底部から頂部へと磁気参照層、トンネル・バリア層、および磁気自由層を備える、底部ピン止めMTJピラーである、請求項1に記載の磁区デバイス。
【請求項7】
前記MTJピラーの前記磁気自由層は、少なくとも前記磁気参照層と前記トンネル・バリア層とを組み合わせた厚さだけ前記導電書込み線から離隔されている、請求項6に記載の磁区デバイス。
【請求項8】
前記組み合わされた厚さは1つまたは複数の材料層の厚さを更に含む、請求項7に記載の磁区デバイス。
【請求項9】
前記1つまたは複数の材料層は、電流閉じ込め層、導電ビア構造体、または電流閉じ込め層と導電ビア構造体を組み合わせたものを備える、請求項8に記載の磁区デバイス。
【請求項10】
前記導電書込み線の下に配置されこれと接触している離隔された底部電極の対を更に備える、請求項1ないし9のいずれかに記載の磁区デバイス。
【請求項11】
前記離隔された底部電極の対の各底部電極は第1の導電性構造体の表面上に配置されている、請求項10に記載の磁区デバイス。
【請求項12】
各第1の導電性構造体はアクセス・デバイスに接続されている、請求項11に記載の磁区デバイス。
【請求項13】
前記MTJピラー上に配置されている頂部電極を更に備える、請求項10に記載の磁区デバイス。
【請求項14】
前記頂部電極は、前記MTJピラーおよび前記導電性書込みの各々の最も外側の側壁と垂直方向に整列されている最も外側の側壁を有する、請求項13に記載の磁区デバイス。
【請求項15】
頂部電極の最頂面上に、ならびに前記頂部電極、前記MTJピラー、および前記導電性書込みの各々の最も外側の側壁に沿って配置されている、誘電体ライナを更に備える、請求項13に記載の磁区デバイス。
【請求項16】
前記頂部電極の最頂面の一部に接触している導電性構造体を更に備える、請求項13に記載の磁区デバイス。
【請求項17】
磁気自由層を備えかつ導電書込み線上に配置されている磁気トンネル接合(MTJ)ピラーであって、前記磁気自由層は前記導電書込み線に密に近接して配置されている、磁気トンネル接合(MTJ)ピラーと、
前記導電書込み線の下に配置されこれと接触している離隔された底部電極の対と、
前記MTJピラー上に配置されている頂部電極と、
を備える、磁区デバイス。
【請求項18】
磁区デバイスのプログラミングの方法であって、
導電書込み線上に配置される磁気トンネル接合(MTJ)ピラーを備える磁区デバイスを提供することと、
前記導電書込み線に電流を流すことであり、前記導電書込み線における前記電流は前記MTJピラーの磁気自由層内に磁区核を形成する磁場を生成する、前記電流を流すことと、を含む、方法。
【請求項19】
前記MTJピラーはトンネル・バリア層と磁気参照層とを更に備え、前記トンネル・バリア層は前記磁気自由層と前記磁気参照層との間に配置されており、前記導電書込み線は前記磁気自由層から1nm~100nmの距離だけ離隔されている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
磁区デバイスの抵抗状態を読み取る方法であって、
導電書込み線上に配置されている磁気トンネル接合(MTJ)ピラーを備える磁区デバイスを提供することであり、前記導電書込み線の下には離隔された底部電極の対が配置されており、前記MTJピラー上には頂部電極が配置されている、前記提供することと、
前記底部電極のうちの少なくとも一方および前記頂部電極に読取り電圧を印加することと、
前記読取り電圧によってもたらされるデバイス抵抗を測定することと、を含む、方法。
【請求項21】
前記デバイス抵抗は前記MTJピラーの磁気参照層の磁化に沿って/逆らって整列された磁区の面積に比例する、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は磁気メモリに関し、より詳細には、導電書込み線上に配置されている磁気トンネル接合(MTJ)ピラーを含む磁区デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
フラッシュ・メモリの代替となる次世代の不揮発性磁気メモリとして、抵抗可変素子を使用することによってデータが記憶される抵抗変化メモリ、例えば磁気抵抗ランダム・アクセス・メモリ(MRAM)、抵抗ランダム・アクセス・メモリ(ReRAM)、および相変化ランダム・アクセス・メモリ(PCRAM)などが注目されている。
【0003】
磁壁駆動型(または磁壁移動型)は比較的新しく開発されたMRAMのタイプの1つである。磁壁駆動型MRAMは、磁壁駆動層(すなわち磁気自由層)の面内方向に電流を流れさせ、スピン偏極電子のスピン・トランスファー効果によって磁壁を移動させ、書込み電流の方向に従って強磁性膜の磁化方向を反転させ、およびデータを書き込む。
【0004】
アナログ・メモリにおいて使用可能な改善されたMRAMデバイスが現在求められている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態では、磁気トンネル接合(MTJ)ピラーの磁気自由層(すなわちストレージ層)がMTJピラーの下に配設されている導電書込み線に密に近接している磁区デバイスが提供される。磁区デバイスは、導電書込み線の下に互いに離れて配置された底部電極の対と、MTJピラー上に配置されている頂部電極と、を更に含む。磁区デバイスはアナログ・メモリにおいて使用することができ、これには人工知能(AI)用途のためのマルチ・ビット記憶アナログ・メモリが含まれる。
【0006】
本願の一態様は、導電書込み線上に配置されている磁気トンネル接合(MTJ)ピラーを含む磁区デバイスに関する。
【0007】
いくつかの実施形態では、磁区デバイスのMTJピラーは、底部から頂部へと磁気自由層、トンネル・バリア層、および磁気参照層を含む、頂部ピン止めMTJピラーである。頂部ピン止めMTJピラーが使用されるそのような実施形態では、頂部ピン止めMTJピラーの磁気自由層は導電書込み線との直接接合面を形成し得る。また、頂部ピン止めMTJピラーが使用されるそのような実施形態では、頂部ピン止めMTJピラーの磁気自由層は導電書込み線から1つまたは複数の材料層の厚さだけ離隔され得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の材料層は、電流閉じ込め層、導電ビア構造体、または電流閉じ込め層と導電ビア構造体を組み合わせたものを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、磁区デバイスのMTJピラーは、底部から頂部へと磁気参照層、トンネル・バリア層、および磁気自由層を備える、底部ピン止めMTJピラーである。底部ピン止めMTJピラーが使用されるそのような実施形態では、底部ピン止めMTJピラーの磁気自由層は、少なくとも磁気参照層とトンネル・バリア層とを組み合わせた厚さだけ、導電書込み線から離隔されている。いくつかの場合には、組み合わされた厚さは、1つまたは複数の材料層の厚さを更に含み得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の材料層は、電流閉じ込め層、導電ビア構造体、または電流閉じ込め層と導電ビア構造体を組み合わせたものを含む。
【0009】
磁区デバイスは、導電書込み線の下に配置されこれと接触している離隔された底部電極の対を更に含み得る。離隔された底部電極の対の各底部電極は、第1の導電性構造体の表面上に配置されている。各第1の導電性構造体は、電界効果トランジスタなどのアクセス・デバイスに接続されている。
【0010】
磁区デバイスは、MTJピラー上に配置されている頂部電極を更に含み得る。いくつかの実施形態では、頂部電極は、MTJピラーおよび導電性書込み層の各々の最も外側の側壁と垂直方向に整列されている、最も外側の側壁を有する。誘電体ライナは、頂部電極の最頂面上に、ならびに頂部電極、MTJピラー、および導電性書込み層の各々の最も外側の側壁に沿って、配置され得る。頂部電極の最頂面の一部に接触する導電性構造体が存在し得る。
【0011】
本願の別の態様では、上で開示したこの進歩性を備えた磁区デバイスのプログラミング(すなわち書込み動作)の方法が提供される。一実施形態では、方法は、導電書込み線上に配置されている磁気トンネル接合(MTJ)ピラーを含む磁区デバイスを提供することと、その後導電書込み線に電流を流すことと、を含み、導電書込み線における電流はMTJピラーの磁気自由層内に磁区核を形成する磁場を生成する。
【0012】
プログラミングのいくつかの実施形態では、MTJピラーは磁気自由層に加えて、トンネル・バリア層と、磁気参照層と、磁気自由層から1nm~100nmの距離だけ離隔されている導電書込み線と、を更に含む。いくつかの実施形態では、電流によって生成される磁場はI/dの大きさを有し、ここでIは導電書込み線における電流の強度であり、dは導電書込み線が磁気自由層から離隔される距離である。
【0013】
本願の別の態様では、上で開示したこの進歩性を備えた磁区デバイスの抵抗状態を読み取る方法が提供される。一実施形態では、方法は、導電書込み線上に配置されている磁気トンネル接合(MTJ)ピラーを備える磁区デバイスを提供することを含み、導電書込み線の下には離隔された底部電極の対が配置されており、MTJピラー上には頂部電極が配置されている。次に、底部電極の少なくとも一方および頂部電極に読取り電圧が印加され、その後読取り電圧によってもたらされるデバイス抵抗が測定される。本願では、デバイス抵抗は、MTJピラーの磁気参照層の磁化に沿って/逆らって整列された磁区の面積に比例する。いくつかの実施形態では、底部電極の対と頂部電極との間に電圧を印加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】先行技術の磁壁ベースのデバイスの断面図である。
【
図2A】本願の様々な実施形態に係る磁区デバイスの断面図である。
【
図2B】本願の様々な実施形態に係る磁区デバイスの断面図である。
【
図2C】本願の様々な実施形態に係る磁区デバイスの断面図である。
【
図2D】本願の様々な実施形態に係る磁区デバイスの断面図である。
【
図3A】デバイス書込み動作中の
図2Aの磁区デバイスを示す図である。
【
図3B】デバイス読取り動作中の
図2Aの磁区デバイスを示す図である。
【
図4】
図2Aに図示されている磁区デバイスに関する書込み動作を説明する、デバイス抵抗対流れる書込み電流のグラフである。
【
図5】本願の実施形態に係る、4つの磁区デバイスを含む構造体の様々な断面を示す上面図であり、それら磁区デバイスのうちの2つにはデバイスAおよびデバイスBと標示されている。
【
図6A】本願の実施形態に係る磁区デバイスの形成において使用され得る、
図5に示すX-Xに沿った初期構造体の断面図であり、初期構造体は、第1の層間誘電体(ILD)材料に埋め込まれた複数の第1の導電性構造体を含む、バック・エンド(BEOL:back-end-of-the-line)の構造体である。
【
図6B】
図6Aに示す、ただし
図5に示すY
1-Y
1に沿った、初期構造体の断面図である。
【
図6C】
図6Aに示す、ただし
図5に示すY
2-Y
2に沿った、初期構造体の断面図である。
【
図7A】より低い相互接続レベル上に複数の開口部を含む第2のILD材料を形成した後の、
図6Aに示す(および
図5に示すX-Xに沿った)初期構造体の断面図であり、各開口部は、下にある第1のILD材料に存在する第1の導電性構造体のうちの1つの表面を物理的に露出させている。
【
図7B】
図7Aに示す、ただし
図5に示すY
1-Y
1に沿った、構造体の断面図である。
【
図7C】
図7Aに示す、ただし
図5に示すY
2-Y
2に沿った、構造体の断面図である。
【
図8A】第2のILD材料に存在する複数の開口部の各々の中に底部電極を形成した後の、
図7Aに示す(および
図5に示すX-Xに沿った)構造体の断面図である。
【
図8B】
図8Aに示す、ただし
図5に示すY
1-Y
1に沿った、構造体の断面図である。
【
図8C】
図8Aに示す、ただし
図5に示すY
2-Y
2に沿った、構造体の断面図である。
【
図9A】第2のILD材料の上方にMTJを含む材料のスタックを形成した後の、
図8Aに示す(および
図5に示すX-Xに沿った)構造体の断面図である。
【
図9B】
図9Aに示す、ただし
図5に示すY
1-Y
1に沿った、構造体の断面図である。
【
図9C】
図9Aに示す、ただし
図5に示すY
2-Y
2に沿った、構造体の断面図である。
【
図10A】MTJを含む構造体を提供すべくMTJを含む材料のスタックをパターニングした後の、
図9Aに示す(および
図5に示すX-Xに沿った)構造体の断面図である。
【
図11A】MTJを含む構造体上に誘電体ライナを形成した後の、
図10Aに示す(および
図5に示すX-Xに沿った)構造体の断面図である。
【
図12A】MTJを含む構造体の各々の側方周囲および上方の第3のILD材料を形成した後の、
図11Aに示す(および
図5に示すX-Xに沿った)構造体の断面図である。
【
図13A】第3のILD材料に第2の導電性構造体を形成した後の、
図12Aに示す(および
図5に示すX-Xに沿った)構造体の断面図であり、各第2の導電性構造体は下にあるMTJを含む構造体の表面に直接接触している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで本願について以下の考察および本願に付属する図面を参照してより詳細に記載する。本願の図面は単に例示の目的で提供されており、したがってそれらの図面は正確な縮尺では描かれていないことに留意されたい。類似の対応する要素は類似の参照符号で言及されることにも留意されたい。
【0016】
以下の説明では、本願の様々な実施形態の理解をもたらすために、特定の構造、構成要素、材料、寸法、処理のステップおよび技術などの、多数の具体的な詳細が明記される。しかしながら、当業者には、これらの具体的な詳細がなくても本願の様々な実施形態を実施できることが諒解されるであろう。その他の事例では、本願を曖昧にするのを避けるために、よく知られている構造または処理ステップは詳細には記載していない。
【0017】
ある要素、例えば層、領域、または基板が別の要素「上に(on)」またはその「上に(over)」存在すると言及される場合、そのある要素はその別の要素上にじかに存在し得るか、または介在する要素が存在してもよいことが理解されよう。対照的に、ある要素が別の要素「上にじかに(directly on)」またはその「上にじかに(directly over)」存在すると言及される場合、介在する要素は存在しない。また、ある要素が別の要素の「下に(beneath)」または「下方に(under)」存在すると言及される場合、そのある要素はその別の要素の下もしくは下方にじかに存在し得るか、または介在する要素が存在してもよいことも理解されよう。対照的に、ある要素が別の要素の「下にじかに(directly beneath)」またはその「下方にじかに(directly under)」存在すると言及される場合、介在する要素は存在しない。
【0018】
最初に
図1を参照すると、先行技術の磁壁ベースのデバイスが図示されている。
図1に図示されている先行技術の磁壁ベースのデバイスは、底部電極10の対を含む。各底部電極10はアクセス・デバイスに、例えば電界効果トランジスタ(FET)、すなわちFET1およびFET2に、接続されている。底部電極10の上方には、(ストレージ層の役割を果たす)磁気自由層14が配置されている。磁気自由層14の上には、トンネル・バリア層16と、磁気参照層18と、頂部電極20とが存在する。
図1に図示されている先行技術の磁壁ベースのデバイスでは、スピン・トルクによって誘起された磁壁の動きによって書込みが行われ、トンネル磁気抵抗(TMR)測定によって読取りが行われる。
【0019】
ここで
図2Aを参照すると、本願の実施形態に係る磁区デバイスが図示されている。
図2に図示されている磁区デバイスはまた、底部電極58の対も含む。各底部電極58はアクセス・デバイスに、例えば電界効果トランジスタ(FET)、すなわちFET1およびFET2に、接続されている。
図2Aに図示されているこの進歩性を備えた磁区デバイスでは、底部電極58の対の上方に、導電書込み線62と、電流閉じ込め層64と、磁気自由層66と、トンネル・バリア層68と、磁気参照層70と、頂部電極72と、を含む、MTJを含む構造体が配置されている。本願では、磁気自由層66、トンネル・バリア層68、および磁気参照層70によって、MTJピラー(すなわちメモリ素子)が提供される。いくつかの実施形態では、電流閉じ込め層64は存在せず、MTJピラーは導電書込み線62との直接接合面を形成し得る。電流閉じ込め層64は、存在する場合、導電書込み線62よりも高い抵抗率を有し、書込み電流が主として導電書込み線62を流れることを可能にする。
【0020】
本願では、MTJピラー(66/68/70)の磁気自由層66は、導電書込み線62に密に近接している。「密に近接して」とは、MTJピラー(66/68/70)の磁気自由層66が導電書込み線62と直接物理的に接触しているか、または、MTJピラー(66/68/70)の磁気自由層66が導電書込み線62から1nm~100nmの距離だけ分離されているか、のいずれかであることを意味する。言い方を変えれば、用語「密に近接して」は、MTJピラーの磁気自由層66が導電書込み線62から100nm以下の距離に配置されていることを表す。図示されている実施形態では、MTJピラー(66/68/70)の磁気自由層66は、電流閉じ込め層64の厚さによって表される距離だけ、導電書込み線62から分離されている。他の実施形態では、MTJピラーが磁気自由層66が磁気参照層70およびトンネル・バリア層68の両方の上方に配置される構成を有するとき、MTJピラー(66/68/70)の磁気自由層66は、電流閉じ込め層64と磁気参照層70とトンネル・バリア層68とを組み合わせた厚さによって表される距離だけ、導電書込み線62から分離される。存在する場合、電流閉じ込め層64はその抵抗-面積の積がトンネル・バリア層68の場合よりも顕著に小さく(10分の1)、したがって、電流閉じ込め層64によって導入される直列抵抗は、MTJを含むデバイスの磁気抵抗を大きく低減することがない。
【0021】
ここで
図2B~
図2Dを参照すると、本願の他の実施形態に係る他の磁区デバイスが図示されている。特に、
図2Bには、電流閉じ込め層64が導電ビア構造体VSに置き換わっている点を除いては
図2Aに示されているデバイスと類似の磁区デバイスが図示されている(導電ビア構造体VSは、第1の導電性構造体52について本明細書で以下に述べる導電性材料のうちの1つを含み得る)。アクセス・デバイス、すなわちFET1およびFET2は、明確にするために
図2Bには示されていない。
図2Bでは、磁気自由層66は導電書込み線62から導電ビア構造体VSの厚さだけ離隔されている。
【0022】
図2Cには、導電ビア構造体VSが電流閉じ込め層64と共に使用され、その結果磁気自由層66が電流閉じ込め層64と導電ビア構造体VSとを組み合わせた厚さだけ導電書込み線62から離隔されている点を除いては、
図2Aに示されているデバイスと類似の、磁区デバイスが図示されている。アクセス・デバイス、すなわちFET1およびFET2は、明確にするために
図2Cには示されていない。
【0023】
図2Dには、導電ビア構造体VSがパターニングされた電流閉じ込め層64と共に使用され、その結果磁気自由層66がパターニングされた電流閉じ込め層64と導電ビア構造体VSとを組み合わせた厚さだけ導電書込み線62から離隔されている点を除いては、
図2Aに示されているデバイスと類似の、磁区デバイスが図示されている。アクセス・デバイス、すなわちFET1およびFET2は、明確にするために
図2Dには示されていない。
【0024】
図2A~
図2Dに示す図示されている実施形態のいずれにおいても、磁気参照層70がトンネル・バリア層68の下に配置され、磁気自由層66がトンネル・バリア層68の上方に配置されるように、磁気自由層66と磁気参照層70の場所を入れ換えることのできることが強調される。
【0025】
ここで
図3Aを参照すると、デバイス書込み(すなわちプログラミング)動作中の
図2Aの磁区デバイスが示されている。デバイス書込み動作は導電書込み線62に電流を流すことを含む(
図3Aの矢印はこの電流の方向を示す)。この電流は、磁気自由層66(すなわちストレージ層)内に磁区核を形成する磁場(
図3Aにおいて円で示す)を生成する。磁気参照層70は、中に磁区が形成されるのを防止するような高い保磁力を有する。磁場の強度および方向によって各磁区配向の相対面積が決定される。この例において生成される磁場の大きさは約I/dであり得、ここでIは導電書込み線62における電流の強度であり、dは磁気自由層66(すなわちストレージ層)からの距離である。
図4は、上記した書込み動作に関するデバイス抵抗対流れる書込み電流を示すグラフである。大きい正/負電流では、磁気自由層66(すなわちストレージ層)の磁化は磁気参照層70と反平行/平行に完全に飽和し、デバイスの抵抗レベルの最大値/最小値を定める。デバイスは、異なる磁化方向を有する複数の磁区が共存する飽和していない領域で動作することになる。デバイスは、大まかに面積の50%が磁気参照層の磁化に沿って整列された磁化成分を有することになり、面積の50%が磁気参照層の磁化に逆らって整列された磁化成分を有することになる状態で、初期化され得る。そのような初期化プロセスは消磁プロセスとも呼ばれ、振幅が減少する正および負の磁界を交互に印加することによって実行され得る。この初期状態は、
図4において流れる電流がゼロの場合で表されており、高抵抗状態と低抵抗状態との間の中間の抵抗を有する。正/負電流を更に流すことによって、磁気参照層の磁化方向に逆らって/沿って整列された磁区を有する面積が大きくなり、デバイスの抵抗が次第に大きく/小さくなる。
【0026】
ここで
図3Bを参照すると、デバイス読取り動作中の
図2Aの磁区デバイスが示されている。デバイス読取り動作は、底部電極58と頂部電極72との間に読取り電圧を印加することと、次いで印加された読取り電圧によってもたらされるデバイス抵抗を測定することと、を含む。測定することは、センス増幅器読取り回路を使用して、デバイスを流れる電流を感知することによって行われ得る。デバイス抵抗は、磁気参照層70の磁化に沿って/逆らって整列された磁区の面積に比例する。
【0027】
本願の磁区デバイスを含む構造体を形成する方法について、
図6A~
図13Cを参照して以下で詳細に記載する。ただしこれらの図面を最もよく理解するために、最初に
図5を参照する。
図5は本願の実施形態に係る、4つの磁区デバイスを含む構造体の様々な断面を示す上面図であり、それら磁区デバイスのうちの2つにはデバイスAおよびデバイスBと標示されている。X-XはデバイスAおよびデバイスBの両方を含む軸線に沿った断面であり、Y
1-Y
1は、デバイスBおよびデバイスC(
図5には示されていないが、Y
1-Y
1断面には示されている、例えば
図6B、
図7B等を参照されたい)を通る、X-Xに対して垂直な断面であり、Y
2-Y
2は、2つの隣り合ったデバイスBと2つの隣り合ったデバイスCとの間の、X-Xに対して垂直な断面である。
【0028】
ここで
図6A~
図6Cを参照すると、本願の実施形態に係る磁区デバイスの形成において使用され得る初期構造体(50/52)の様々な断面図が示されている。採用され得る初期構造体は、第1の層間誘電体(ILD)材料50に埋め込まれた複数の第1の導電性構造体52を含む、バック・エンド(BEOL)の構造体(52/50)である。各第1の導電性構造体52は典型的には、第1のILD材料50の最頂面と同一表面上にある最頂面を有する。
【0029】
図6A~
図6Cに図示されているBEOLの構造体は、例えば1つまたは複数のトランジスタなどの1つまたは複数のアクセス・デバイスを含むフロント・エンド(FEOL:front-end-of-the-line)・レベル(明確には示されていない)の上方に配置されることに留意されたい。
図6A~
図6Cには、FEOL中に存在し得るトランジスタの一例として、デバイスAのFET1およびFET2とデバイスBのFET1およびFET2とが示されている。いくつかの実施形態では、
図6A~
図6Cに図示されているBEOL構造体は、ミドル(MOL:middle-of-the-line)・レベルである。他の実施形態では、
図6A~
図6Cに図示されているBEOL構造体は、多層化BEOL相互接続構造体の相互接続レベルである。
【0030】
第1のILD材料50は、例えば二酸化ケイ素、シルセスキオキサン、Si、C、O、およびHの原子を含むCドープ酸化物(すなわち有機ケイ酸塩)、熱硬化性ポリアリーレン・エーテル、またはこれらの多層を含む、任意の誘電体材料で構成され得る。用語「ポリアリーレン」は本願において、結合、縮合環、または例えば酸素、硫黄、スルホン、スルホキシド、カルボニルなどの不活性連結基によって互いに連結されたアリール部位または不活性置換アリール部位を表すために使用される。
【0031】
第1のILD材料50は、4.0以下である誘電率を有し得る(特に断らない限り、本明細書で述べられる全ての誘電率は真空に対して測定される)。一実施形態では、第1のILD材料50は2.8以下の誘電率を有する(すなわち、超低k(ULK)誘電体材料が使用される)。これらのULK誘電体材料は一般に、誘電率が4.0よりも大きい誘電体材料と比較して、寄生クロス・トークがより低い。第1のILD材料50として採用され得るULK誘電体材料の例としては、限定するものではないが、OMCTS(オクタメチルシクロテトラシロキサン)およびSiNCHが挙げられる。
【0032】
第1のILD材料50は、例えば化学気相成長法(CVD)、プラズマ促進化学蒸気成長法(PECVD)、またはスピン・オン・コーティングなどの堆積プロセスによって形成され得る。誘電体材料層10は50nm~250nmの厚さを有し得る。本願では、50nmよりも小さいおよび250nmよりも大きい他の厚さも採用され得る。
【0033】
第1のILD材料50に存在する各第1の導電性構造体52は、導電性金属または導電性金属合金で構成される。本願において使用され得る導電性金属の例としては、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、またはタングステン(W)が挙げられ、一方で導電性金属合金の例はCu-Al合金である。導電性金属または導電性金属合金層は、例えばCVD、PECVD、スパッタリング、化学溶液成長法、またはめっきなどの堆積プロセスを利用して形成され得る。一実施形態では、導電性金属または導電性金属合金層を形成する際に、ボトム・アップめっきプロセスが採用される。
【0034】
いくつかの実施形態では、第1の導電性構造体52の各々の側壁および底壁に沿って拡散バリア・ライナが形成される。いくつかの実施形態では、拡散バリア・ライナは存在しない。拡散バリア・ライナは、拡散バリア材料(すなわち、銅などの導電性材料がその中に拡散するのを防止するためのバリアの役割を果たす材料)で構成される。拡散バリア・ライナの提供において使用され得る拡散バリア材料の例としては、限定するものではないが、Ta、TaN、Ti、TiN、Ru、RuN、RuTa、RuTaN、W、またはWNが挙げられる。いくつかの実施形態では、拡散バリア材料は拡散バリア材料の材料スタックを含み得る。一例では、拡散バリア材料はTa/TaNのスタックで構成され得る。拡散バリア材料層は、例えばCVD、PECVD、原子層成長法(ALD)、物理気相成長法(PVD)、スパッタリング、化学溶液成長法、またはめっきを含む、堆積プロセスによって形成され得る。
【0035】
第1のILD材料50、第1の導電性構造体52、および存在する場合は拡散バリア・ライナを含む構造体は、例えばダマシン・プロセスを含む、当業者によく知られている従来のプロセスを利用して形成され得る。ダマシン・プロセスは、リソグラフィ・パターニングによって第1のILD材料50に開口部を形成することと、存在する場合は、開口部内におよび第1のILD材料50上に拡散バリア材料を形成することと、各開口部に上で定めたような導電性材料を充填することと、を含む。開口部の外側で第1のILD材料50上に存在する何らかの材料(拡散バリア材料および導電性材料を含む)を除去するために、例えば化学機械研磨(CMP)などの平面化プロセスが使用され得る。
【0036】
ここで
図7A~
図7Cを参照すると、より低い相互接続レベル(50/52)上に複数の開口部56を含む第2のILD材料54を形成した後の、
図6A~
図6Cに示す初期構造体の様々な断面図が示されており、各開口部56は、下にある第1のILD材料50に存在する第1の導電性構造体52のうちの1つの表面を物理的に露出させている。
【0037】
第2のILD材料54は、第1のILD材料50に関して上述した誘電体材料のうちの1つを含み得る。本願のいくつかの実施形態では、第2のILD材料54は、第1のILD材料50を提供する誘電体材料と同じ組成の誘電体材料で構成される。更に他の実施形態では、第2のILD材料54は、第1のILD材料50を提供する誘電体材料とは組成の異なる誘電体材料で構成される。第2のILD材料54は、第1のILD材料50の形成における上述した堆積プロセスのうちの1つを利用して形成され得る。
【0038】
第2のILD材料に形成される開口部56の各々は、リソグラフィおよびエッチングによって形成され得る。第2のILD材料54に形成されている各開口部56が有する限界寸法(CD)は、典型的には下にある第1の導電性構造体52のCDよりも小さい。
【0039】
いくつかの実施形態(図示せず)では、第2のILD材料54の形成前に、より低い相互接続レベル(50/52)上に誘電体キャップ層を形成することができる。採用される場合、誘電体キャップ層は、第1のILD材料50または第2のILD材料54あるいはその両方を提供する誘電体材料と必ずしも常にではないが通常は組成の異なる、誘電体材料で構成される。誘電体キャップ層として使用され得る誘電体材料の例示的な例としては、限定するものではないが、SiN、SiC、Si3N4、SiO2、AlOx、炭素ドープ酸化物、窒素および水素ドープされた炭化ケイ素SiC(N,H)、またはこれらの多層が挙げられる。誘電体キャップ層は、例えばCVD、PECVD、化学溶液成長、蒸着、またはALDなどの堆積プロセスを利用して形成され得る。誘電体キャップ層は5nm~50nmの厚さを有し得るが、本願では誘電体キャップ層の他の厚さが可能でありかつ使用され得る。存在する場合、誘電体キャップ層は、第2のILD材料54に開口部を形成するのに使用されるものと同じまたは異なるエッチを利用して「開かれる(opened)」。
【0040】
ここで
図8A~
図8Cを参照すると、第2のILD材料54に存在する複数の開口部56の各々の中に底部電極58を形成した後の、
図7A~
図7Cに示す初期構造体の様々な断面図が示されている。第2のILD材料54に形成されている各底部電極58が有する限界寸法(CD)は、典型的には下にある第1の導電性構造体52のCDよりも小さい。各底部電極58は、第2のILD材料54の最頂面と同一表面上にある最頂面を有する。
【0041】
各底部電極58は、下にある第1の導電性構造体52のうちの1つの表面上に存在し、例えばTa、TaN、Ti、TiN、Ru、RuN、RuTa、RuTaN、Co、CoWP、CoN、W、WN、またはこれらの任意の組合せなどの、導電性材料で構成され得る。各底部電極58は、例えばスパッタリング、ALD、CVD、PECVD、またはPVDなどの堆積プロセスによって形成され得る。各底部電極58を提供する導電性材料の堆積に続いて、(例えば化学機械研磨などの)平面化プロセスを行うことができる。
【0042】
ここで
図9A~
図9Cを参照すると、第2のILD材料54の上方にMTJを含む材料のスタック60を形成した後の、
図8A~
図8Cに示す初期構造体の様々な断面図が示されている。いくつかの実施形態では、
図9A~
図9Cに図示されているように、MTJを含む材料のスタック60は、低抵抗金属層62Lと、電流閉じ込め材料の層64Lと、磁気自由材料の層66Lと、トンネル・バリア材料の層68Lと、磁気参照層材料の層70Lと、金属ハード・マスク層72Lと、を含む、頂部ピン止め型のMTJを含む材料のスタックである。デバイスの導電書込み線62を提供するために、低抵抗金属層62Lが使用されることになり、金属ハード・マスク層72Lはデバイスの頂部電極72として機能することに留意されたい。
【0043】
例えば、磁気参照層70Lが磁気自由層66Lの下に配置されている底部ピン止めされたMTJを含む材料のスタック(図示せず)などの、他のMTJを含む材料のスタック構成が可能である。いくつかの実施形態(図示せず)では、磁気自由材料の層66Lは、非磁性スペーサによって分離されている磁気自由材料の第1の層と磁気自由材料の第2の層とを含む。
【0044】
材料スタック60の様々な材料層は、例えばめっき、スパッタリング、プラズマ増強原子層堆積(PEALD)、PECVD、またはPVDなどの、1つまたは複数の堆積プロセスを利用することによって形成され得る。
【0045】
低抵抗金属層62Lは、1E-5オーム・cm以下である抵抗率を有する任意の金属を含み得る。低抵抗金属層62Lとして使用され得る金属の例としては、限定するものではないが、タングステン(W)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、プラチナ(Pt)、銀(Ag)、および金(Au)が挙げられる。上述したように、低抵抗金属層62Lは、本願のデバイスにおける導電書込み線62を提供することになる。低抵抗金属層62Lは典型的には20nm~80nmの厚さを有するが、低抵抗金属層62Lの厚さとして低抵抗金属層62Lの他の厚さが可能でありかつ使用され得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、電流閉じ込め材料の層64Lは、例えばTi、TiN、Ta、またはTaN、あるいはこれらの組合せなどの、拡散バリア材料で構成され得る。電流閉じ込め材料の層64Lが拡散バリア材料である実施形態では、電流閉じ込め材料の層64Lは典型的には1nm~100nmの厚さを有する。他の実施形態では、電流閉じ込め材料の層64Lは、例えばMgO、AlO、TiO、またはTaO、あるいはこれらの組合せなどの、金属酸化物で構成され得る。電流閉じ込め材料の層64Lが金属酸化物で構成されている実施形態では、電流閉じ込め層64Lは2nm未満の厚さを有し得る。更に他の実施形態では、電流閉じ込め材料の層64Lを材料スタック60から省略してもよい。
【0047】
磁気自由材料の層66Lは、磁気参照材料の層70Lの磁化配向に対する配向を変更可能な磁化を有する磁性材料(または磁性材料のスタック)で構成され得る。磁気自由材料の層66L用の例示的な磁性材料としては、コバルト、鉄、コバルト-鉄の合金、ニッケル、ニッケル-鉄の合金、およびコバルト-鉄-ホウ素の合金の、合金または多層あるいはその両方が挙げられる。
【0048】
存在する場合、非磁性金属スペーサ層は、そこを通して磁気情報を伝達可能であり、また平衡状態において磁気自由材料の第1および第2の層が常に平行になるように磁気自由材料の2つの層が磁気的に1つに結合することも可能にする、非磁性の金属または金属合金で構成される。非磁性金属スペーサ層は、磁気自由材料の第1の層と第2の層との間のスピン・トルク・スイッチングを可能にする。存在する場合、磁気自由材料の第2の層は、磁気自由材料の層66Lに関して上述した磁性材料のうちの1つを含み得る。一実施形態では、磁気自由材料の第2の層は、磁気自由材料の層66Lと同じ磁性材料で構成される。別の実施形態では、磁気自由材料の第2の層は、磁気自由材料の層66Lとは組成の異なる磁性材料で構成される。
【0049】
トンネル・バリア材料の層68Lは絶縁体材料で構成されており、適切なトンネル抵抗が提供されるような厚さで形成されている。トンネル・バリア材料の層68L用の例示的な材料としては、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、および酸化チタン、または半導体もしくは低バンドギャップ絶縁体などの、電気トンネル・コンダクタンスのより高い材料が挙げられる。
【0050】
磁気参照材料の層70Lは固定された磁化を有する。磁気参照材料の層70Lは、金属、または1種もしくは複数種の金属を含む金属合金(またはそれらのスタック)で構成され得る。代替の実施形態では、磁気参照材料の層70Lを形成するための例示的な金属としては、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、ホウ素、プラチナ、イリジウム、またはマンガンが挙げられる。例示的な金属合金は上で例示した金属を含み得る。一実施形態では、これらの材料および領域の組合せも採用され得る。
【0051】
金属ハード・マスク層72Lは、底部電極58に関して上述した導電性材料のうちの1つで構成され得る。一実施形態では、金属ハード・マスク層72Lを提供する導電性材料は底部電極58とは組成が異なる。別の実施形態では、金属ハード・マスク層72Lを提供する導電性材料は底部電極58と組成が同じである。
【0052】
ここで
図10A~
図10Cを参照すると、MTJを含む構造体61を提供するべくMTJを含む材料のスタック60をパターニングした後の、
図9A~
図9Cに示す初期構造体の様々な断面図が示されている。MTJを含む構造体61の数は、本願の
図10A~
図10Cに示されるような2つに限定されず、いくつかの実施形態では、単一のMTJを含む構造体61が形成され得、一方他の実施形態では、2つ以上のMTJを含む構造体61が形成され得る。MTJを含む材料のスタック60のパターニングはフォトリソグラフィおよびエッチングを含む。エッチングはイオン・ビーム・エッチング(IBE)を含み得る。MTJを含む構造体61は典型的には円筒形の形状である。ただし本願では、MTJを含む構造体61の形状として他の非対称な形状が可能でありかつ利用され得る。各MTJを含む構造体61は下にある底部電極58の対を含む。
【0053】
各MTJを含む構造体61は、MTJを含む材料のスタック60の残留している、すなわちエッチングされていない部分を含む。図示されている本願の実施形態では、各MTJを含む構造体61は、低抵抗金属層62L(以降「導電書込み線62」)、電流閉じ込め材料の層64L(以降「電流閉じ込め層64」)、磁気自由材料の層66L(以降「磁気自由層66」)、トンネル・バリア材料の層68L(以降「トンネル・バリア層68」)、磁気参照材料の層70L(以降「磁気参照層70」)、および金属ハード・マスク層72L(以降「頂部電極72」)の、残留している部分を含む。各MTJを含む構造体61は、磁気自由層66、トンネル・バリア層68、および磁気参照層70で構成されているMTJピラーと、頂部電極72と、を含む。MTJピラーの磁気自由層66は、導電書込み線62に(上で定義したように)密に近接しており、図示されている実施形態では、MTJピラーの磁気自由層66は、電流閉じ込め層64の厚さだけ導電書込み線62から分離されている。
【0054】
本願では例えば、MTJピラーの磁気自由層66が導電書込み線62との直接接合面を形成する磁区デバイス、または、MTJピラーの磁気自由層66が1つもしくは複数の材料層の厚さもしくは組み合わされた厚さだけ導電書込み線62から分離されている磁区デバイスを含む、磁区デバイスが企図されている。1つまたは複数の材料層は、底部ピン止めMTJスタックのトンネル・バリア層および磁気参照層の両方、電流閉じ込め層、導電ビア構造体、またはこれらの任意の組合せを含み得る。
【0055】
MTJを含む構造体61の各素子は、MTJを含む構造体61中のその他の素子の最も外側の側壁と典型的には垂直方向に整列されている、最も外側の側壁を有する。各MTJを含む構造体61は、各底部電極58のCDよりも大きいCDを有する。
【0056】
本願のいくつかの実施形態では、MTJを含む材料のスタック60のエッチング中に、第2のILD材料54の一部もエッチングすることができる。そのような実施形態では、各MTJを含む構造体61の下に配置されている第2のILD材料54は、底部電極58の最頂面と同一表面上にある最頂面を有し、エッチングされた第2のILD材料54は、垂直方向にオフセットされ各MTJを含む構造体61の下に配置されている第2のILD材料54の最頂面の下に配置されている、窪んだ表面を有する。どの底部電極58のどの部分も、このエッチに物理的に曝露されることはない。
【0057】
ここで
図11A~
図11Cを参照すると、MTJを含む構造体61上に誘電体ライナ74を形成した後の、
図10A~
図10Cに示す初期構造体の様々な断面図が示されている。示されているように、誘電体ライナ74は、MTJ構造体61の側壁および最頂面上に配置されている。誘電体ライナ74はまた、第2のILD材料54の物理的に露出した表面上へと延びている。
【0058】
誘電体ライナ74は誘電体材料で構成されており、これはいくつかの実施形態では、各MTJ構造体61に(空気または水分あるいはその両方に対する)パッシベーションをもたらし得る。一例では、誘電体ライナ74は窒化ケイ素で構成される。別の例では、誘電体ライナ74は、ケイ素、炭素、および水素の原子を含む誘電体材料で構成される。いくつかの実施形態では、炭素および水素の原子に加えて、誘電体ライナ74を提供する誘電体材料は、窒素および酸素の少なくとも一方の原子を含み得る。他の実施形態では、ケイ素、窒素、炭素、および水素の原子に加えて、誘電体ライナ74を提供する誘電体材料は、ホウ素の原子を含み得る。一例では、誘電体ライナ74は、ケイ素、炭素、水素、窒素、および酸素の原子を含むnBLOK誘電体材料で構成され得る。代替の例では、誘電体ライナ74は、ケイ素、ホウ素、炭素、水素、および窒素の原子を含むSiBCN誘電体材料で構成され得る。
【0059】
誘電体ライナ74は、例えばPECVD、PVD、またはPEALDなどの堆積プロセスを利用して形成され得る。誘電体ライナ74は10nm~200nmの厚さを有し得る。誘電体ライナ74の厚さとして他の厚さが可能でありかつ採用され得る。いくつかの実施形態では、誘電体ライナ74はコンフォーマルな厚さを有する。用語「コンフォーマル」は、材料層の水平表面に沿った垂直方向の厚さが、垂直表面に沿った横方向の厚さと実質的に同じ(すなわち±5%以内)であることを表す。
【0060】
ここで
図12A~
図12Cを参照すると、MTJを含む構造体61の各々の側方周囲および上方の第3のILD材料76を形成した後の、
図11A~
図11Cに示す初期構造体の様々な断面図が示されている。
【0061】
第3のILD材料76は、第1のILD材料50に関して上述した誘電体材料のうちの1つを含み得る。本願のいくつかの実施形態では、第3のILD材料76は、第1のILD材料50または第2のILD材料54あるいはその両方を提供する誘電体材料と同じ組成の誘電体材料で構成される。更に他の実施形態では、第3のILD材料76は、第1のILD材料50または第2のILD材料54あるいはその両方を提供する誘電体材料とは組成の異なる誘電体材料で構成される。第3のILD材料76は、第1のILD材料50の形成における上述した堆積プロセスのうちの1つを利用して形成され得る。
【0062】
ここで
図13A~
図13Cを参照すると、第3のILD材料76に第2の導電性構造体78を形成した後の
図12A~
図12Cに示す初期構造体の様々な断面図が示されており、各第2の導電性構造体78は、下にあるMTJを含む構造体61の表面に直接接触している。
【0063】
第2の導電性構造体78は、最初に第3のILD材料76および誘電体ライナ74に開口部(明確には示されていない)を形成することによって形成され得る。開口部はリソグラフィおよびエッチングによって形成され得る。第3の誘電体材料76に開口部を形成した後で、任意選択的な平面化プロセスに続いて導電性金属または導電性金属合金を堆積させることによって、第2の導電性構造体78が形成される。
【0064】
各第2の導電性構造体78を提供する導電性金属または導電性金属合金は、第1の導電性構造体52に関して上述した導電性金属または導電性金属合金のうちの1つを含み得る。いくつかの実施形態では、第2の導電性構造体78は、第1の導電性構造体52と同じ組成の導電性材料で構成される。他の実施形態では、第2の導電性構造体78は、第1の導電性構造体52とは組成の異なる導電性材料で構成される。各第2の導電性構造体78を提供する導電性金属または導電性金属合金層は、各第1の導電性構造体52を提供する導電性金属または導電性金属合金層の形成に関して上述した堆積処理のうちの1つを利用して形成され得る。各第2の導電性構造体78は、第3のILD材料76の最頂面と同一表面上にある最頂面を有する。
【0065】
いくつかの実施形態では、拡散バリア・ライナは、第2の導電性構造体78の各々の側壁および底壁に沿って形成されている。いくつかの実施形態では、拡散バリア・ライナは存在しない。拡散バリア・ライナは、上で定めたような拡散バリア材料(すなわち、銅などの導電性材料がその中に拡散するのを防止するためのバリアの役割を果たす材料)で構成される。拡散バリア材料層は、例えばCVD、PECVD、原子層成長法(ALD)、物理気相成長法(PVD)、スパッタリング、化学溶液成長法、またはめっきを含む、堆積プロセスによって形成され得る。存在する場合、拡散バリア・ライナは、第2の導電性構造体78の最頂面および第3のILD材料76の最頂面と同一表面上にある最頂面を有する。
【0066】
図6A~
図13Cには、
図2Bに示されているデバイスを提供する際に使用され得る方法が説明されていることに留意されたい。
図6A~
図13Cに図示されている方法は、
図2B、
図2C、および
図2Dに示されているその他のタイプのデバイスを形成するための、当技術分野でよく知られている処理技術を使用して修正され得る。
【0067】
本願についてその好ましい実施形態を参照して詳細に示し記載してきたが、本願の範囲から逸脱することなく、形態および詳細の上記のおよび他の変更を行ってもよいことが、当業者には理解されよう。したがって、本願が記載され図示されている厳密な形態および詳細に限定されず、付属の特許請求の範囲内にあることが、更に意図されている。
【国際調査報告】