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特表2023-546353固体ポリマーマトリックス電解質(PME)並びに其れ等の方法及び使用
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  • 特表-固体ポリマーマトリックス電解質(PME)並びに其れ等の方法及び使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(54)【発明の名称】固体ポリマーマトリックス電解質(PME)並びに其れ等の方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/446 20210101AFI20231026BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20231026BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20231026BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20231026BHJP
   H01M 50/411 20210101ALI20231026BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20231026BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20231026BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20231026BHJP
【FI】
H01M50/446
H01M50/414
H01M50/434
H01M50/403 Z
H01M50/411
H01M50/443 M
H01M50/489
H01M4/139
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521093
(86)(22)【出願日】2021-10-06
(85)【翻訳文提出日】2023-05-29
(86)【国際出願番号】 US2021053712
(87)【国際公開番号】W WO2022076520
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】17/064,448
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
3.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】521055552
【氏名又は名称】ブライトボルト,インク.
【氏名又は名称原語表記】BRIGHTVOLT,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】アナニ,アナバ
(72)【発明者】
【氏名】ディラショー,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ウタイサー,チャナナテ
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ,ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】ウ,ハン
(72)【発明者】
【氏名】ウ,フイカン
(72)【発明者】
【氏名】イン,ウェンビン
【テーマコード(参考)】
5H021
5H050
【Fターム(参考)】
5H021CC03
5H021EE01
5H021EE02
5H021EE21
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH06
5H050AA15
5H050BA17
5H050DA09
5H050EA01
5H050EA22
5H050EA23
5H050FA17
5H050GA22
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA14
(57)【要約】
本開示は、固体状態ポリマーマトリックス電解質(PME)を調製する方法、及び電池技術に於けるPMEの形成用のPME前駆体溶液を調製する方法を提供する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックス電解質(PME)前駆体溶液を調製する方法であって、
(a)少なくとも1種のポリマー及び溶剤を含む第1の溶液を調製する事と、
(b)リチウム塩及び溶剤を含む第2の溶液を調製する事と、
(c)前記第1の溶液と前記第2の溶液とを混合して前記PME前駆体溶液を形成する事と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記PME前駆体溶液を基材上にドライキャストしてPME膜を形成する事を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(c)に於いてリチウム塩及び1種以上の添加剤を溶剤中に含む第3の溶液を調製し、前記第3の溶液と前記第1の溶液及び前記第2の溶液とを混合する事を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の溶液は、1種以上の添加剤、1種以上の可塑剤、又は其の両方を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1種以上の添加剤は、無機粒子、難燃剤、界面活性剤、被膜形成剤、解離剤、及び相分離溶液から成る群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記PME前駆体溶液中の前記ポリマーの質量比は、約1%、約5%、約25%、約33%、約50%、約60%、約70%、又は約80%であり得る、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記PME前駆体溶液は、約20%~約90%の質量分率で溶剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記PME前駆体溶液は、約1%~約50%の質量分率で前記リチウム塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記PME前駆体溶液は、約1%~約60%の質量分率で前記可塑剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記PME前駆体溶液に対する前記リチウム塩の質量比は、約1%~約65%である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記PME前駆体溶液に対する前記可塑剤の質量比は、約1%~約65%である、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記方法を、不活性ガス条件下、無水条件下、又は其の両方で実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ポリマーマトリックス電解質(PME)膜を作製する方法であって、
(a)少なくとも1種のポリマー、少なくとも1種のリチウム塩、及び少なくとも1種の添加剤を溶剤中に含む前駆体溶液を調製する事と、
(b)前記前駆体溶液を基材上にドライキャストして前記PME膜を形成する事と、
を含み、此処で、前記PME膜は、細孔を全く又は実質的に有しない、方法。
【請求項14】
前記前駆体溶液は、
(a)少なくとも1種のポリマー及び溶剤を含む第1の溶液を調製し、
(b)リチウム塩及び溶剤を含む第2の溶液を調製し、
(c)前記第1の溶液と前記第2の溶液とを混合して前記前駆体溶液を形成する事に因って形成される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程(c)に於いてリチウム塩及び1種以上の添加剤を溶剤中に含む第3の溶液を調製し、前記第3の溶液と前記第1の溶液及び前記第2の溶液とを混合する事を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記基材は、電極又は誘電体被膜であり、前記前駆体溶液を、前記電極の表面上にドライキャストする、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記膜を前記基材から取り外して、自立型膜を形成する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
約10パスカル(Pa)~約1010パスカル(Pa)の機械的強度を有するポリマーマトリックス電解質(PME)膜であって、細孔を全く又は実質的に有しない、PME膜。
【請求項19】
前記PME膜は、約5μm~約100μmの厚さを有する、請求項18に記載のPME膜。
【請求項20】
前記PME膜は、約100℃の温度迄安定である、請求項18に記載のPME膜。
【請求項21】
前記PME膜は、20℃で約3.33×10Paの貯蔵弾性率及び2.82×10Paの損失弾性率を有する、請求項18に記載のPME膜。
【請求項22】
前記PME膜は、100℃で9.58×10Paの貯蔵弾性率及び1.38×10Paの損失弾性率を有する、請求項18に記載のPME膜。
【請求項23】
前記PME膜は、約-20℃~約90℃の温度範囲に亘ってイオン伝導性である、請求項18に記載のPME膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年10月6日に出願された「固体ポリマーマトリックス電解質(PME)並びに其れ等の方法及び使用(SOLID POLYMER MATRIX ELECTROLYTES (PME) AND METHODS AND USES THEREOF)」と題する米国特許出願番号17/064,448に対する優先権を主張するものであり、此の出願は参照に因り其の全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は概して、リチウム電池技術に関し、特に再充電式リチウム電池用の改善された固体電解質及び其れを用いて作られた電池に関する。
【背景技術】
【0003】
其れ等の高いエネルギー密度及びサイクル性能の為、リチウムイオン電池は、家電製品、電気式輸送手段、及びクリーンエネルギー貯蔵システムを含む幅広い用途に於いて最も一般的に使用される電源となっている。リチウムイオン電池は、正極と負極との間に配置されたセパレーターから構成される集合体全体に亘って広がる液体電解質を含んでいる。慣例的には、セパレーターは、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)から構成されている。然しながら、セパレーターが、例えば変形又は外部からの衝撃に因って損傷すると、電池が短絡し得る事に因り、過熱、発火、及び爆発等の危険な状況につながる可能性がある。此れ等の安全性の問題の結果として、一般大衆に因るリチウムイオン電池の使用は制限されている。
【0004】
従って、より安全でより信頼性の高い電池の作製に使用される高度なポリマー電解質の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の技術における課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの態様に於いて、本開示は、ポリマーマトリックス電解質(PME)前駆体溶液を調製する方法であって、(a)少なくとも1種のポリマー及び溶剤を含む第1の溶液を調製する事と、(b)リチウム塩及び溶剤を含む第2の溶液を調製する事と、(c)第1の溶液と第2の溶液とを混合してPME前駆体溶液を形成する事とを含む、方法を提供する。幾つかの実施形態に於いて、上記方法は、PME前駆体溶液を基材上にドライキャストしてPME膜を形成する事を更に含む。
【0007】
他の態様に於いて、本開示は、PME膜を作製する方法であって、(a)少なくとも1種のポリマー、少なくとも1種のリチウム塩、及び少なくとも1種の添加剤を溶剤中に含む前駆体溶液を調製する事と、(b)前駆体溶液を基材上にドライキャストしてPME膜を形成する事とを含み、此処で、PME膜は、細孔を全く又は実質的に有しない、方法を提供する。幾つかの実施形態に於いて、前駆体溶液を、(a)少なくとも1種のポリマー及び溶剤を含む第1の溶液を調製し、(b)リチウム塩及び溶剤を含む第2の溶液を調製し、(c)第1の溶液と第2の溶液とを混合して前駆体溶液を形成する事に因って形成する。
【0008】
幾つかの実施形態に於いて、基材は、電極又は誘電体被膜であり、前駆体溶液は、電極の表面上にドライキャストされる。幾つかの実施形態に於いて、上記方法は、基材から膜を取り外して自立型膜を形成する事を更に含む。幾つかの実施形態に於いて、上記方法は、不活性ガス条件下、無水条件下、又は其の両方で実施される。
【0009】
幾つかの実施形態に於いて、上記方法は、工程(c)に於いてリチウム塩及び1種以上の添加剤を溶剤中に含む第3の溶液を調製し、第3の溶液と第1の溶液及び第2の溶液とを混合する事を更に含む。幾つかの実施形態に於いて、第2の溶液は、1種以上の添加剤、1種以上の可塑剤、又は其の両方を更に含む。幾つかの実施形態に於いて、1種以上の添加剤は、無機粒子、難燃剤、界面活性剤、被膜形成剤、解離剤、及び相分離溶液から成る群から選択される。
【0010】
幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液中のポリマーの質量比は、約1%、約5%、約25%、約33%、約50%、約60%、約70%、又は約80%であり得る。幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液は、約20%~約90%の質量分率で溶剤を含む。更に別の実施形態に於いて、PME前駆体溶液は、約1%~約50%の質量分率でリチウム塩を含む。別の実施形態に於いて、PME前駆体溶液は、約1%~約60%の質量分率で可塑剤を含む。一実施形態に於いて、PME前駆体溶液に対するリチウム塩の質量比は、約1%~約65%である。幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液に対する可塑剤の質量比は、約1%~約65%である。
【0011】
更に別の態様に於いて、本開示は、約10パスカル(Pa)~約1010パスカル(Pa)の機械的強度を有するPME膜であって、細孔を全く又は実質的に有しない、PME膜を提供する。
【0012】
幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、約5μm~約100μmの厚さを有する。幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、約100℃の温度迄安定である。更に別の実施形態に於いて、PME膜は、約-20℃~約90℃の温度範囲に亘ってイオン伝導性である。
【0013】
幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、20℃で約3.33×10Paの貯蔵弾性率及び2.82×10Paの損失弾性率を有する。更に別の実施形態に於いて、PME膜は、100℃で9.58×10Paの貯蔵弾性率及び1.38×10Paの損失弾性率を有する。
【0014】
当業者は、以下に説明する図面が例示のみを目的としている事を理解するであろう。図面は、本教示の範囲を決して限定する事を意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】対応する基本成分を有する従来のPMEを示す代表的な図解である。
図2A】乃至
図2C】PMEの基材とは反対側の上面(図2A)、PMEの基材に面した下面(図2B)の代表的なSEM画像、及びマイラー誘電体基材から取り外した(例えば、剥離した)後のPMEの写真画像(図2C)である。
図3】リチウムイオン及びリチウム金属電気化学セルに就いての本開示に依るPME被膜の代表的なサイクリックボルタモグラムである。
図4】本開示の一実施形態に依るPME膜のイオン伝導率(上のトレース)と、市販の液体電解質のイオン伝導率(下のトレース)とを比較する代表的なグラフである。
図5】本開示の一実施形態に依るリチウムイオン伝導性PME膜の代表的な熱重量分析スキャンである。
図6】本開示の一実施形態に依るPME膜の動的機械分析(DMA)温度スキャンを示す代表的なグラフである。
図7】電極の表面上にPMEオーバーコートを適用する前のコーティング及び/又はカレンダー加工されたPME電極を示す代表的な図解である。
図8】電極の表面上にPMEオーバーコートを適用してPMEの薄層を形成した後のコーティング及び/又はカレンダー加工されたPME電極を示す代表的な図解である。
図9】本開示の一実施形態に依る機能的なPMEを製造する為のプロセスフロー図を示す代表的な図解である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
此の詳細な説明を読めば、当業者には、様々な代替的な実施形態及び代替的な用途に於いて本発明をどの様に実施するかが明らかに成るであろう。然しながら、本発明の様々な実施形態が全て本明細書に記載される訳では無い。本明細書に提示される実施形態は、限定としてではなく例としてのみ提示される事が理解されるであろう。従って、様々な代替的な実施形態の此の詳細な説明が、以下に示される本発明の範囲又は広さを限定するものと解釈されるべきでは無い。
【0017】
リチウムイオン電池に於いて使用される慣例的な液体電解質の代替として、ポリマー電解質を備えた電池は、電池の容易な製造を尚も維持しながら、電池の安全性及び信頼性の向上をもたらす事が出来ると考えられる。
【0018】
本明細書に於いては、リチウムイオン電池用の膜として使用される、ポリマーマトリックス電解質(PME)から構成されるポリマー電解質材料が提供される。PME膜は、低い気孔率及び屈曲度を有し、高い機械的強度を有する。本明細書に開示されるPME前駆体溶液をキャストして乾燥させる事に因って、PME膜を、自立型被膜又は電極の表面上の被膜として形成させる。PME前駆体溶液は、ポリマー、塩、及び溶剤の混合物であり、此れは、セルの性能を向上させ、可燃性を低下させる為に、可塑剤及び他の添加剤を更に含み得る。
【0019】
本明細書に記載される方法は、高いイオン伝導率、高い機械的強度、及び広い電気化学的安定性ウィンドウを有するポリマー電解質PME膜を提供する。PME膜の此れ等の特性は、リチウムイオン電池の性能及び安全性の両方に重要である。本開示のPME膜は又、現在のリチウムイオン電池生産プロセスと適合性であり、より低い製造コストで生産する事が出来る次世代セルの開発の手助けと成り得る。
【0020】
定義
本明細書に於いて使用される場合に、数値を修飾するのに使用される場合の「約」という用語は、其の数値の10%以内(即ち±10%)の値を意味する。
【0021】
材料又は溶液の特徴に関して本明細書に於いて使用される「全くない」又は「実質的にない」という用語は、其の特徴(例えば、細孔)が、材料又は溶液の総質量又は総容量の約0.0001%未満、約0.001%未満、約0.01%未満、約0.1%未満、約1%未満、約5%未満、又は約10%未満の量で存在する事を意味する。
【0022】
本明細書に於いて使用される場合に、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上特に明記されていない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「膜(a membrane)」は、複数の膜を含む。
【0023】
本明細書に於いて使用される場合に、「膜」という用語は、「被膜」及び「セパレーター」と区別なく使用される。
【0024】
方法
本開示の態様は、固体状態ポリマーマトリックス電解質(PME)を調製する方法、及びPMEの形成用のPME前駆体溶液を調製する方法を提供する。
【0025】
幾つかの実施形態に於いて、上記方法は、(a)少なくとも1種のポリマーを溶剤中に含む第1の溶液を調製する事と、(b)少なくとも1種のリチウム塩、少なくとも1種の可塑剤、及び溶剤を含む第2の溶液を調製する事と、(c)第1の溶液と第2の溶液とを混合してPME前駆体溶液を形成する事とを含む。
【0026】
幾つかの実施形態に於いて、上記方法は、工程(c)に於いて少なくとも1種のリチウム塩及び1種以上の添加剤を溶剤中に含む第3の溶液を調製し、第3の溶液と第1の溶液及び第2の溶液とを混合する事を更に含む。幾つかの実施形態に於いて、第3の溶液は、第1の溶液、第2の溶液、及び/又は得られる前駆体溶液の様々な成分の溶解度を高めるのに役立ち得る。例えば、幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液及び/又は第2の溶液の成分は完全に可溶性ではないが、第3の溶液を加えると、其れ等の成分は完全に溶解する。幾つかの実施形態に於いて、第3の溶液は、PME前駆体溶液の伝導率、機械的強度、不燃性、及び他の特性を強化し得る1種以上の添加剤の導入を可能にする。
【0027】
幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液は、少なくとも1種のポリマーを含む。ポリマーはPMEの主鎖を形成し、PMEの他の成分が含められるマトリックスとして機能する。ポリマーは又、PMEに機械的強度を与える。幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液は、少なくとも1種、2種、3種、4種、5種、又は其れ以上のポリマーを含む。
【0028】
幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液の総質量に対する第1の溶液中の少なくとも1種のポリマーの質量比は、約1%~約60%である。幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液の総質量に対する第1の溶液中のポリマーの質量比は、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、又は約60%である。
【0029】
幾つかの実施形態に於いて、PME溶液の総質量に対するPME前駆体溶液中の少なくとも1種のポリマーの質量比は、約1%~約80%である。幾つかの実施形態に於いて、PME溶液の総質量に対するPME前駆体溶液中のポリマーの質量比は、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約64%、約70%、約75%、又は約80%である。
【0030】
幾つかの実施形態に於いて、少なくとも1種のポリマーは、ポリ塩化ビニル(PVC)、GPI-15ポリイミド、ポリイミド、塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、及び熱可塑性アクリル樹脂 ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、ポリ(アクリロニトリル)(PAN)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(塩化ビニル)(PVC)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVdF)、ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)(PVdF-HFP)、ポリイミド(PI)、ポリウレタン(PET)、ポリアクリルアミド(PAA)、ポリ(酢酸ビニル)(PVA)、ポリビニルピロリジノン(PVP)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)、ポリエステル、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む群から選択される。
【0031】
幾つかの実施形態に於いて、少なくとも1種のポリマーは、エーテル系ポリマーである。エーテル系ポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレンオキシド、架橋ポリエチレンオキシド、ポリメタクリル酸エステル系ポリマー、及びアクリレート系ポリマーが挙げられる。
【0032】
幾つかの実施形態に於いて、少なくとも1種のポリマーは、フルオロカーボンポリマーである。フルオロカーボンポリマーの非限定的な例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)が挙げられる。
【0033】
幾つかの実施形態に於いて、少なくとも1種のポリマーは、ポリアクリロニトリルである。ポリアクリロニトリルポリマーの非限定的な例としては、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、イタコン酸、水素化メチルアクリレート、水素化エチルアクリレート、アクリルアミド、塩化ビニル、フッ化ビニリデン、及び塩化ビニリデンが挙げられる。幾つかの実施形態に於いて、ポリマーは、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリ(p-フェニレンオキシド)(PPO)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリピロール、ポリアニリン、及びポリスルホンから選択される。
【0034】
幾つかの実施形態に於いて、ポリマーは、列挙されたポリマーのモノマーを含むコポリマー及び此れ等のポリマーのコポリマーの混合物である。例えば、コポリマーは、p-ヒドロキシ安息香酸を含み、ポリ(ビニルアセタール)、ポリ(アクリロニトリル)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリエステル(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の適切な液晶ポリマーのベースポリマーであり得る。
【0035】
幾つかの実施形態に於いて、ポリマーは、溶液混合物中の塩の解離を促進し、及び/又は主鎖ポリマーの結晶性を歪めるのを助ける他の物質を含み得る。ポリマー主鎖の結晶性の歪みは、非晶質の特徴を高める事が出来、此れは延いてはPMEの伝導率の改善を助ける。他の物質の非限定的な例としては、アクリレート、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリ(ビス(メトキシエトキシエトキシド))ホスファゼン(MEEP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、及びポリメチルアクリロニトリル(PMAN)が挙げられる。
【0036】
幾つかの実施形態に於いて、ポリマーは、塩基性の化学的部分を有する。幾つかの実施形態に於いて、塩基性の化学的部分は、アミノ官能基である。幾つかの実施形態に於いて、ポリマーは、ポリビニル系列の化合物及びポリアセチレン系列のポリマー化合物を含み得る。幾つかの実施形態に於いて、ポリマーは、ポリイミドポリマーを含む。
【0037】
幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液、第2の溶液、及び/又は第3の溶液は、溶剤を含む。溶剤は、第1の溶液、第2の溶液、及び第3の溶液の様々な成分を溶解する事が出来る凡ゆる溶質である。溶剤は、イオンがPME内でエネルギーを貯蔵及び放出する事が出来る媒体としても機能する。溶剤は更にPMEの溶媒和状態に影響を与える。例えば、溶剤が溶液の様々な成分をより溶媒和し易い程、PMEの固体状態の性質が高く成る(即ち、PME中の自由流動性溶剤が少なく成る)。
【0038】
幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液、第2の溶液、及び/又は第3の溶液の総質量に対する第1の溶液、第2の溶液、及び/又は第3の溶液中の溶剤の質量比は、約20%~約90%である。幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液及び/又は第2の溶液の総質量に対する第1の溶液及び/又は第2の溶液中の溶剤の質量比は、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、又は約90%である。
【0039】
幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液の総質量に対するPME前駆体溶液中の溶剤の質量比は、約0%~約90%である。幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液の総質量に対するPME前駆体溶液中の溶剤の質量比は、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、又は約90%である。幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液の総質量に対するPME前駆体溶液中の溶剤の質量比は、約20%~約90%、約0%~約20%、約20%~約40%、約40%~約60%、約70%~約90%である。
【0040】
幾つかの実施形態に於いて、溶剤は、有機溶剤である。有機溶剤の非限定的な例としては、アセトン、N-メチルピロリドン(NMP)、無水エタノール、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、リン酸トリメチル(TMP)、リン酸トリエチル(TEP)、γ-ブチロラクトン(GBL)、及び酢酸エチルが挙げられる。幾つかの実施形態に於いて、溶剤は、線状構造又は環状構造を有する炭酸の有機エステル、即ち、例えばジアルキルカーボネート及びアルケンカーボネートを含む。ジアルキルカーボネート溶剤及びアルケンカーボネート溶剤の非限定的な例としては、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、及びエチルメチルカーボネート(EMC)が挙げられる。
【0041】
幾つかの実施形態に於いて、第2の溶液及び/又は第3の溶液は、少なくとも1種のリチウム塩を含む。リチウム塩は、PMEに電気化学的活性種を与える。溶剤中に溶解されると、塩は対応するカチオン及びアニオンへと解離し(例えば、塩LiPFの場合に、カチオンはLiに対応し、アニオンはPF に対応する)、次に此れ等は、電極(エネルギーを貯蔵及び放出する反応が行われる場所)間を輸送される。リチウム塩の非限定的な例としては、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSi)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiODFB)、及び炭酸リチウム(LiCO)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、ヨウ化リチウム(LiI)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF)、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)、リチウムヘキサフルオロアルセネート(LiAsF)、酢酸リチウム(LiCHCO)、リチウムトリフレート(LiCFSO)、リチウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド(Li(CFSON)、リチウムトリフルオロアセテートLi(CFCO)、リチウムテトラフェニルボレートLi(B(C)、リチウムチオシアネート(LiSCN)、及び硝酸リチウム(LiNO)が挙げられる。
【0042】
幾つかの実施形態に於いて、第2の溶液及び/又は第3の溶液の総質量に対する第2の溶液及び/又は第3の溶液中のリチウム塩の質量比は、約1%~約50%である。幾つかの実施形態に於いて、第2の溶液及び/又は第3の溶液の総質量に対する第2の溶液及び/又は第3の溶液中のリチウム塩の質量比は、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、又は約50%である。幾つかの実施形態に於いて、第2の溶液の総質量に対する第2の溶液中のリチウム塩の質量比は、約1%~約50%である。幾つかの実施形態に於いて、第3の溶液の総質量に対する第3の溶液中のリチウム塩の質量比は、約1%~約50%である。
【0043】
幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液の総質量に対するPME前駆体溶液中のリチウム塩の質量比は、約1%~約99%である。幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液の総質量に対するPME前駆体溶液中のリチウム塩の質量比は、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約95%、又は約99%である。幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液の総質量に対するPME前駆体溶液中のリチウム塩の質量比は、約1%~約35%、約2%~約65%、約5%~約85%、又は約6%~約96%である。
【0044】
幾つかの実施形態に於いて、第2の溶液は、可塑剤を含む。幾つかの実施形態に於いて、第3の溶液は、可塑剤を更に含む。可塑剤は、材料の可塑性を低下させ、及び/又は粘度を低下させる働きをする。可塑剤の添加は、ポリマー材料の可撓性を高めるのに役立つ。可塑剤の非限定的な例としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ジエチルカルバマジン(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(EMP)、及び酢酸エチル(EA)、テトラメチルシラン(TMS)、TEP、TMP、チアミンピロリン酸(TPP)、及びチオシアネート(SCN)が挙げられる。
【0045】
幾つかの実施形態に於いて、第2の溶液の総質量に対する第2の溶液中の可塑剤の質量比は、約1%~約50%である。幾つかの実施形態に於いて、第2の溶液の総質量に対する第2の溶液中の可塑剤の質量比は、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、又は約50%である。
【0046】
幾つかの実施形態に於いて、第3の溶液の総質量に対する第3の溶液中の可塑剤の質量比は、約1%~約60%である。幾つかの実施形態に於いて、第2の溶液の総質量に対する第2の溶液中の可塑剤の質量比は、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、又は約60%である。
【0047】
幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液の総質量に対するPME前駆体溶液中の可塑剤の質量比は、約1%~約65%である。幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液の総質量に対するPME前駆体溶液中の可塑剤の質量比は、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、又は約65%である。幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液の総質量に対するPME前駆体溶液中の可塑剤の質量比は、約0.001%~約39%、又は約2%~約45%である。
【0048】
幾つかの実施形態に於いて、第3の溶液は、1種以上の添加剤を含む。添加剤は、PME前駆体溶液の伝導率、機械的強度、不燃性、及び他の特性を向上させ得る。添加剤の非限定的な例としては、無機粒子、難燃剤、界面活性剤、被膜形成剤、解離剤、及び相分離溶液が挙げられる。
【0049】
幾つかの実施形態に於いて、第3の溶液の総質量に対する第3の溶液中の1種以上の添加剤の質量比は、約0%~約60%である。幾つかの実施形態に於いて、第3の溶液の総質量に対する第3の溶液中の1種以上の添加剤の質量比は、約0%、0.0001%、約0.001%、約0.01%、約0.1%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、又は約60%である。
【0050】
幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体の総質量に対するPME前駆体中の1種以上の添加剤の質量比は、約0%~約60%である。幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体の総質量に対するPME前駆体中の1種以上の添加剤の質量比は、約0%、0.0001%、約0.001%、約0.01%、約0.1%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、又は約60%である。
【0051】
幾つかの実施形態に於いて、1種以上の添加剤は、無機粒子である。幾つかの実施形態に於いて、無機粒子は、ナノ粒子である。無機粒子は、主鎖ポリマーの結晶性を歪める事に因ってPMEの物理的特徴を改善する働きをし、此れが延いてはPMEの伝導率の改善を助ける。此の粒子は更に、PMEの機械的強度の向上及び可燃性の低下を助ける場合がある。無機粒子の非限定的な例としては、ナノシリカ(SiO)、二酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)、メタアルミン酸リチウム(LiAlO)、ゼオライト、窒化リチウム(LiN)、及びチタン酸バリウム(BaTiO)が挙げられる。
【0052】
幾つかの実施形態に於いて、第3の溶液の総質量に対する第3の溶液中の無機粒子の質量比は、約0%~約60%である。幾つかの実施形態に於いて、第3の溶液の総質量に対する第3の溶液中の無機粒子の質量比は、約0%、0.0001%、約0.001%、約0.01%、約0.1%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、又は約60%である。
【0053】
幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体の総質量に対するPME前駆体中の無機粒子の質量比は、約0%~約60%である。幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体の総質量に対するPME前駆体中の無機粒子の質量比は、約0%、0.0001%、約0.001%、約0.01%、約0.1%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、又は約60%である。
【0054】
幾つかの実施形態に於いて、1種以上の添加剤は、難燃剤である。難燃剤は、着火及び/又は発火の更なる進展を防止及び/又は抑制し得る。難燃剤の非限定的な例としては、TMP、TEP、TPP及びリン酸トリブチル(TBP)、モノフルオロメチルエチレンカーボネート、及びジフルオロメチルカーボネートが挙げられる。幾つかの実施形態に於いて、難燃剤の量及び種類は、電池設計の要件に応じて前駆体溶液に添加される。
【0055】
幾つかの実施形態に於いて、第3の溶液の総質量に対する第3の溶液中の難燃剤の質量比は、約0%~約60%である。幾つかの実施形態に於いて、第3の溶液の総質量に対する第3の溶液中の難燃剤の質量比は、約0%、0.0001%、約0.001%、約0.01%、約0.1%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、又は約60%である。
【0056】
幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液の総質量に対するPME前駆体溶液中の難燃剤の質量比は、約0%~約30%である。幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液の総質量に対するPME前駆体溶液中の難燃剤の質量比は、約0%、0.0001%、約0.001%、約0.01%、約0.1%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、又は約30%である。幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液の総質量に対するPME前駆体溶液中の難燃剤は、0.001%~19.8%又は2%~30%である。
【0057】
幾つかの実施形態に於いて、1種以上の添加剤は、界面活性剤である。界面活性剤は、PMEの表面張力を下げる働きをする。界面活性剤は、電極上でのPMEの被膜形成を促進する働きもする。界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、及び/又は非イオン性界面活性剤であり得る。幾つかの実施形態に於いて、アニオン性界面活性剤としては、スルフェート、スルホネート、ホスフェート、及び/又はカルボキシレート等の官能基を有するものが挙げられる。アニオン性界面活性剤の非限定的な例としては、ドクサート(スルホコハク酸ジオクチルナトリウム)、ペルフルオロオクタンスルホネート(PFOS)、ペルフルオロブタンスルホネート、アルキルアリールエーテルホスフェート、及びアルキルエーテルホスフェートが挙げられる。幾つかの実施形態に於いて、カチオン性界面活性剤は、10未満のpHで正に荷電する事に成り得る第一級アミン、第二級アミン、又は第三級アミンである。カチオン性界面活性剤の非限定的な例としては、臭化セトリモニウム(CTAB)、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ベンザルコニウム(BAC)、塩化ベンゼトニウム(BZT)、塩化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、及び臭化ジオクタデシルジメチルアンモニウム(DODAB)が挙げられる。幾つかの実施形態に於いて、両性イオン性界面活性剤は、カチオン中心及びアニオン中心の両方を有する。両性イオン性界面活性剤の非限定的な例としては、リン脂質のホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、及びベタインが挙げられる。幾つかの実施形態に於いて、界面活性剤は、共有結合した含酸素親水性基を有し、此れ等が疎水性親構造に結合されている非イオン性界面活性剤である。非イオン性界面活性剤の非限定的な例としては、エトキシレート、脂肪アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート(例えば、ノノキシノール及びTriton X-100)、脂肪酸エトキシレート、エトキシル化アミン及び/又は脂肪酸アミド、ポリヒドロキシ化合物の脂肪酸エステル、グリセロールの脂肪酸エステル(例えば、グリセロールモノステアレート及びグリセロールモノラウレート)、ソルビトールの脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、tween類:tween 20、tween 40、tween 60、及びtween 80)の末端封鎖されたエトキシレート(例えば、ポロキサマー類)、スクロースの脂肪酸エステル、及びアルキルポリグルコシド(例えば、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、及びオクチルグルコシド)が挙げられる。
【0058】
幾つかの実施形態に於いて、第3の溶液の総質量に対する第3の溶液中の界面活性剤の質量比は、約0%~約60%である。幾つかの実施形態に於いて、第3の溶液の総質量に対する第3の溶液中の界面活性剤の質量比は、約0%、0.0001%、約0.001%、約0.01%、約0.1%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、又は約60%である。
【0059】
幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液の総質量に対するPME前駆体溶液中の界面活性剤の質量比は、約0%~約60%である。幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液の総質量に対するPME前駆体溶液中の界面活性剤の質量比は、約0%、0.0001%、約0.001%、約0.01%、約0.1%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、又は約60%である。
【0060】
幾つかの実施形態に於いて、1種以上の添加剤は、被膜形成剤である。被膜形成剤は、粘着性のある連続した被膜を形成するのに役立ち得るポリマー材料である。被膜形成剤は、材料の表面を最適な接着特性及び可撓性特性を有する様に最適化する事も出来る。被膜形成剤の非限定的な例としては、ポリビニルピロリドン(PVP)、アクリレート、アクリルアミド、メタクリレート、及び様々なコポリマーが挙げられる。
【0061】
幾つかの実施形態に於いて、第3の溶液の総質量に対する第3の溶液中の被膜形成剤の質量比は、約0%~約60%である。幾つかの実施形態に於いて、第3の溶液の総質量に対する第3の溶液中の被膜形成剤の質量比は、約0%、0.0001%、約0.001%、約0.01%、約0.1%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、又は約60%である。
【0062】
幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液の総質量に対するPME前駆体溶液中の被膜形成剤の質量比は、約0%~約60%である。幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液の総質量に対するPME前駆体溶液中の被膜形成剤の質量比は、約0%、0.0001%、約0.001%、約0.01%、約0.1%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、又は約60%である。
【0063】
幾つかの実施形態に於いて、1種以上の添加剤は、解離剤である。解離剤は、溶液中の金属イオン(例えば、Li金属塩)の解離を促進するのに役立つ。解離剤は、上記の可塑剤及び/又は溶剤の何れか1つであり得る。
【0064】
幾つかの実施形態に於いて、第3の溶液の総質量に対する第3の溶液中の固定化剤及び/又は解離剤の質量比は、約0%~約60%である。幾つかの実施形態に於いて、第3の溶液の総質量に対する第3の溶液中の固定化剤及び/又は解離剤の質量比は、約0%、0.0001%、約0.001%、約0.01%、約0.1%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、又は約60%である。
【0065】
幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液の総質量に対するPME前駆体溶液中の固定化剤及び/又は解離剤の質量比は、約0%~約60%である。幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液の総質量に対するPME前駆体溶液中の固定化剤及び/又は解離剤の質量比は、約0%、0.0001%、約0.001%、約0.01%、約0.1%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、又は約60%である。
【0066】
幾つかの実施形態に於いて、第3の溶液の総質量に対する第3の溶液中の相分離溶液の質量比は、約0%~約60%である。幾つかの実施形態に於いて、第3の溶液の総質量に対する第3の溶液中の相分離溶液の質量比は、約0%、0.0001%、約0.001%、約0.01%、約0.1%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、又は約60%である。
【0067】
幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液の総質量に対するPME前駆体溶液中の相分離溶液の質量比は、約0%~約60%である。幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液の総質量に対するPME前駆体溶液中の相分離溶液の質量比は、約0%、0.0001%、約0.001%、約0.01%、約0.1%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、又は約60%である。
【0068】
幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液のポリマー対塩の比率は、約10:90から約90:10の間である。ポリマー対塩の比率を微調整して、得られるPMEの全体的な機械的強度を高めると共に、PME内のイオン移動度を高める。PMEの機械的強度を、存在するポリマーの量を増加及び/又は減少させる事に因って調整する事が出来、イオン移動度は、PME前駆体溶液中に存在する塩の量を増加及び/又は減少させる事に因って調整される。幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液のポリマー対塩の比率は、約10:90、約20:80、約30:70、約40:60、約50:50、約60:40、約70:30、約80:20、約90:10である。幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液のポリマー対塩の比率は、60:40である。幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液のポリマー対塩の比率は、70:30である。幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液のポリマー対塩の比率は、80:20である。
【0069】
幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液、第2の溶液、及び/又は第3の溶液を、約0.5時間~約100時間撹拌する。幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液、第2の溶液、及び/又は第3の溶液を、約0.5時間、約1時間、約5時間、約10時間、約15時間、約20時間、約25時間、約30時間、約35時間、約40時間、約45時間、約50時間、約55時間、約60時間、約65時間、約70時間、約75時間、約80時間、約85時間、約90時間、約95時間、又は約100時間撹拌する。幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液を、約0.5時間~約100時間撹拌する。幾つかの実施形態に於いて、第2の溶液を、約0.5時間~約100時間撹拌する。幾つかの実施形態に於いて、第3の溶液を、約0.5時間~約100時間撹拌する。
【0070】
幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液、第2の溶液、及び/又は第3の溶液を、約100rpm~約5000rpmの速度で撹拌する。幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液、第2の溶液、及び/又は第3の溶液を、約100rpm、500rpm、1000rpm、2000rpm、3000rpm、4000rpm、又は5000rpmの速度で撹拌する。幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液を、約100rpm~約5000rpmの速度で撹拌する。幾つかの実施形態に於いて、第2の溶液を、約100rpm~約5000rpmの速度で撹拌する。幾つかの実施形態に於いて、第3の溶液を、約100rpm~約5000rpmの速度で撹拌する。
【0071】
幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液、第2の溶液、及び/又は第3の溶液を、約10℃から約100℃の間の温度で撹拌する。幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液、第2の溶液、及び/又は第3の溶液を、約10℃、約15℃、約20℃、約25℃、約30℃、約35℃、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、約95℃、又は約100℃の温度で撹拌する。幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液を、約10℃から約50℃の間の温度で撹拌する。幾つかの実施形態に於いて、第2の溶液を、約10℃から約50℃の間の温度で撹拌する。幾つかの実施形態に於いて、第3の溶液を、約10℃から約50℃の間の温度で撹拌する。
【0072】
幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液を、ポリマーが溶剤中に溶解されて均質な溶液を形成する迄撹拌する。幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液を、約10℃から約100℃の間の温度で、約100rpm~約5000rpmの速度にて、約0.5時間~約100時間撹拌する。幾つかの実施形態に於いて、ポリマーは、第3の溶液が添加される迄溶解しない。
【0073】
幾つかの実施形態に於いて、第2の溶液を、リチウム塩及び可塑剤が溶剤中に溶解されて均質な溶液を形成する迄撹拌する。幾つかの実施形態に於いて、第2の溶液を、約10℃から約100℃の間の温度で、約100rpm~約5000rpmの速度にて、約0.5時間~約100時間撹拌する。幾つかの実施形態に於いて、リチウム塩(lithium slat)及び可塑剤は、第3の溶液が添加される迄溶解しない。
【0074】
幾つかの実施形態に於いて、第3の溶液を、リチウム塩及び1種以上の添加剤が溶剤中に溶解されて均質な溶液を形成する迄撹拌する。幾つかの実施形態に於いて、第2の溶液を、約10℃から約100℃の間の温度で、約100rpm~約5000rpmの速度にて、約0.5時間~約100時間撹拌する。
【0075】
幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液、第2の溶液、及び/又は第3の溶液を共に、約0.5時間~約100時間撹拌して、PME前駆体を形成する。幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液、第2の溶液、及び/又は第3の溶液を共に、約0.5時間、約1時間、約5時間、約10時間、約15時間、約20時間、約25時間、約30時間、約35時間、約40時間、約45時間、約50時間、約55時間、約60時間、約65時間、約70時間、約75時間、約80時間、約85時間、約90時間、約95時間、又は約100時間撹拌して、PME前駆体を形成する。幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液を、約0.5時間~約100時間撹拌する。幾つかの実施形態に於いて、第2の溶液を、約0.5時間~約100時間撹拌する。幾つかの実施形態に於いて、第3の溶液を、約0.5時間~約100時間撹拌する。
【0076】
幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液、第2の溶液、及び/又は第3の溶液を共に、約100rpm~約5000rpmの速度で撹拌して、PME前駆体を形成する。幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液、第2の溶液、及び/又は第3の溶液を共に、約100rpm、500rpm、1000rpm、2000rpm、3000rpm、4000rpm、又は5000rpmの速度で撹拌して、PME前駆体を形成する。
【0077】
幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液、第2の溶液、及び/又は第3の溶液を共に、約10℃から約100℃の間の温度で撹拌して、PME前駆体溶液を形成する。幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液、第2の溶液、及び/又は第3の溶液を、約10℃、約15℃、約20℃、約25℃、約30℃、約35℃、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、約95℃、又は約100℃の温度で撹拌して、PME前駆体溶液を形成する。
【0078】
幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液、第2の溶液、及び/又は第3の溶液を共に、各成分が溶剤中に溶解されて均質な溶液を形成する迄撹拌する。均質な溶液は、溶液を被膜上にキャストした時に均質なPME被膜の形成を可能にする。例えば、溶液が均質でないと、未溶解の溶質が被膜に於いて境界として作用し、イオン移動度が制限される可能性がある。幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液、第2の溶液、及び/又は第3の溶液を共に、約10℃から約100℃の間の温度で、約100rpm~約5000rpmの速度にて、約0.5時間~約100時間撹拌して、PME前駆体溶液を形成する。
【0079】
幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液、第2の溶液、及び第3の溶液を同時に合わせる。幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液及び第2の溶液を合わせて撹拌した後に、第3の溶液を第2の溶液及び第1の溶液と合わせる。幾つかの実施形態に於いて、第1の溶液及び第3の溶液を合わせて撹拌した後に、第2の溶液を第3の溶液及び第1の溶液と合わせる。幾つかの実施形態に於いて、第2の溶液及び第3の溶液を合わせて撹拌した後に、第1の溶液を第3の溶液及び第1の溶液と合わせる。
【0080】
幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液はスラリーであり、此処で、PME前駆体溶液中の成分の1種以上が溶剤中に懸濁されている。
【0081】
幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液を調製する方法は、第1の溶液の総質量に対して、約1%~約60%の質量分率で存在するポリマーと、約20%~約90%の質量分率で存在する溶剤とを含む第1の溶液を調製する事を含む。幾つかの実施形態に於いて、上記方法は、ポリマーが第1の溶液全体に均質に分散される迄、第1の溶液を約100rpm~約5000rpmの速度及び約10℃~約50℃の温度で、約0.5時間~約100時間撹拌する事を更に含む。
【0082】
幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液を調製する方法は、第2の溶液の総質量の、約1%~約50%の質量分率で存在するリチウム塩と、約1%~約60%の質量分率で存在する可塑剤と、約1%~約50%の質量分率で存在する1種以上の添加剤とを含む第2の溶液を調製する事を含む。幾つかの実施形態に於いて、上記方法は、リチウム塩、可塑剤、及び1種以上の添加剤が第2の溶液全体に均質に分散される迄、第2の溶液を約100rpm~約5000rpmの速度及び約10℃~約50℃の温度で、約0.5時間~約100時間撹拌する事を更に含む。
【0083】
幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液を調製する方法は、第3の溶液の総質量の、約1%~約50%の質量分率で存在するリチウム塩と、約1%~約60%の質量分率で存在する可塑剤と、約1%~約50%の質量分率で存在する1種以上の添加剤とを含む第3の溶液を調製する事を含む。幾つかの実施形態に於いて、上記方法は、リチウム塩、可塑剤、及び1種以上の添加剤が第2の溶液全体に均質に分散される迄、第3の溶液を約100rpm~約5000rpmの速度及び約10℃~約50℃の温度で、約0.5時間~約100時間撹拌する事を更に含む。
【0084】
幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液を調製する方法は、各成分がPME前駆体溶液全体に均質に分散される迄、第1の溶液、第2の溶液、及び第3の溶液を約100rpm~約5000rpmの速度及び約10℃~約50℃の温度で、約0.5時間~約100時間撹拌する事を含む。幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液は、PME前駆体溶液の総質量の、約1%~約60%の質量分率のポリマー、約1%~約50%の質量分率のリチウム塩、約20%~約90%の質量分率の有機溶剤、約1%~約60%の質量分率の可塑剤、約0%~約40%の質量分率の無機粒子、約0%~約20%の質量分率の難燃剤、約0%~約20%の質量分率の被膜形成剤(film formed)、約0%~約50%の量の界面活性剤、約0%~約40%の質量分率の解離剤、及び/又は約0%~約50%の質量分率の相分離剤を含む。
【0085】
幾つかの実施形態に於いて、上記方法は、PME前駆体溶液からPME膜を形成する事を更に含む。幾つかの実施形態に於いて、上記方法は、(a)PME前駆体溶液を調製する事と、(b)前駆体溶液を基材上にドライキャストしてPME膜を形成する事とを含む。
【0086】
幾つかの実施形態に於いて、PME溶液の被膜をキャストする事に因ってPME膜を形成する事が出来る。PME被膜を、スピンキャスティング等の標準的な薄膜技術を使用する事で、又はドクターブレードを使用して溶液をドローダウン塗布する事で、約5μm~約100μmの厚さの範囲の被膜にキャストする事が出来る。コーティング技術の非限定的な例としては、蒸着、浸漬コーティング、スピンコーティング、スクリーンコーティング、及び刷毛に因るコーティングが挙げられる。
【0087】
幾つかの実施形態に於いて、得られたPME被膜を基材から取り外して(例えば、剥離して)自立型PME被膜を形成する事を可能にする特性を有する基材上に、PME前駆体溶液をキャストする。自立型PME被膜を、例えば、電池セルに於けるセパレーターとして使用する事が出来る。幾つかの実施形態に於いて、基材は、PMEを基材から取り外す(例えば、剥離する)事が出来る様に非多孔質である。適切な基材の非限定的な例としては、マイラー、テフロン(PTFE)、シリコーン被覆ポリエチレン(PE)、及びポリプロピレン(PP)が挙げられる。
【0088】
幾つかの実施形態に於いて、PME被膜を基材から取り外す(例えば、剥離する)事を可能にしない特性を有する緻密であるが多孔質の電極である基材上に、PME前駆体溶液をキャストする。基材の多孔性に因り、PME前駆体溶液は基材に浸透して、基材の表面との導通性を形成する。緻密であるが多孔質の電極の非限定的な例としては、黒鉛、シリコーン-黒鉛、及びSiOから成る群から選択されるリチウムイオン電池に於いて使用されるアノード、及び/又はリン酸鉄リチウム(LFP)、リチウムニッケルコバルトマグネシウム酸化物(NMC)、リチウムニッケルマグネシウムスピネル(LNMO)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、及びリチウムコバルト酸化物(LCO)を含む群から選択されるリチウムイオン電池に於いて使用されるカソードが挙げられる。
【0089】
幾つかの実施形態に於いて、基材は、電極又は誘電体被膜であり、PME前駆体溶液を、電気化学セルに於いて使用される電極又は誘電体被膜の表面上にドライキャストする。
【0090】
幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液を、約10℃、約15℃、約20℃、約25℃、約30℃、約35℃、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、又は約65℃で基材上にドライキャストする。
【0091】
幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液は、基材の表面を均質に覆う。幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液は、基材の表面を覆うスラリーである。
【0092】
幾つかの実施形態に於いて、PME膜を、当業者に知られる凡ゆる方法を使用して乾燥させる。非限定的な乾燥方法としては、PME膜の炉内での乾燥及び/又は減圧下(例えば、真空下)での乾燥が挙げられる。PME膜を乾燥させるのに適した炉の非限定的な例としては、真空炉、対流炉、層流炉、及び流動床炉が挙げられる。幾つかの実施形態に於いて、上記方法は、PME膜を約40℃~約80℃の温度の炉内に入れる事を含む。幾つかの実施形態に於いて、上記方法は、PME膜を約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、又は約80℃迄の温度の炉内に入れる事を含む。
【0093】
幾つかの実施形態に於いて、上記方法は、PME膜を炉内に約5分間~約120分間入れる事を含む。幾つかの実施形態に於いて、上記方法は、PME膜を炉内に約5分間、約10分間、約15分間、約20分間、約25分間、約30分間、約35分間、約40分間、約45分間、約50分間、約55分間、約60分間、約65分間、約70分間、約75分間、約80分間、約85分間、約90分間、約95分間、約100分間、約110分間、約115分間、又は約120分間入れる事を含む。
【0094】
幾つかの実施形態に於いて、上記方法は、PME膜を約40℃~約80℃の温度の炉内に約5分間~約120分間入れる事を含む。幾つかの実施形態に於いて、PME膜を、約50℃~約80℃の炉内で約20分間~約60分間乾燥させる。幾つかの実施形態に於いて、PME膜を、約80℃の炉内で約30分間~60分間乾燥させる。幾つかの実施形態に於いて、PME膜を、約40℃~80℃の炉内で約30分間~60分間乾燥させる。
【0095】
幾つかの実施形態に於いて、上記方法は、PME膜を回分プロセスに因って基材の表面上に作製する事を含む。回分プロセスとは、PME前駆体を連続的では無く個別の量で送達してPME膜を作製するプロセスを指す。回分プロセスは、大表面積を有する基材上でのPME膜の生産を可能にし得る。
【0096】
幾つかの実施形態に於いて、PME膜を作製する回分プロセスは、PME前駆体溶液を基材の表面上にキャストして乾燥させる事を含む。幾つかの実施形態に於いて、基材をスリップテーブル(slip table)上に配置した後に、PME前駆体溶液を基材の表面上にキャストして乾燥させる。此処で、スリップテーブルは、処理工程の間に基材を所定の位置に保持する。幾つかの実施形態に於いて、ドライキャスト工程をドクターブレードを用いて行う。ドクターブレードは、広い表面積に薄膜を生成するのに使用される装置である。ドクターブレード操作プロセスに於いて、PME基材をドクターブレードの向こうの基材上に配置する。ブレードと基材との間に一定の相対運動が生ずると、PME基材は基材上に広がり、PME前駆体溶液の層を形成する。幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液をドクターブレードの溶液チャンバに注入し、被膜上に一定速度でキャストする。幾つかの実施形態に於いて、基材はマイラーである。
【0097】
幾つかの実施形態に於いて、上記方法は、PME膜を作製する事を含み、此れには、(a)スリップテーブル上に基材を準備する事と、(b)PME前駆体溶液をドクターブレードの溶液チャンバに注入する事と、(c)PME前駆体溶液を基材上に一定速度でキャストする事と、(d)コーティングされた基材を約80℃の炉内に約5分間~約120分間入れる事とが含まれる。幾つかの実施形態に於いて、上記方法は、基材からPME被膜を取り外して自立型被膜を形成する事を更に含む。幾つかの実施形態に於いて、基材はマイラーである。
【0098】
幾つかの実施形態に於いて、上記方法は、自立型PME膜を作製する事を含み、此れには、(a)PME前駆体溶液を調製する工程と、(b)PME前駆体溶液を基材上にドライキャストしてPME膜を形成する工程とが含まれる。幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液は、PME前駆体溶液の総質量に対して、約1%~約60%の質量比のポリマーと、約20%~約90%の質量比の有機溶剤と、約1%~約60%の質量比のリチウム塩と、約0.5%~約60%の質量比の可塑剤と、約0.5%~約60%の質量比の1種以上の添加剤とを含む。
【0099】
幾つかの実施形態に於いて、上記方法は、電気化学セルに於いて使用される電極の表面上にPME膜を作製する事を含み、此れには、(a)PME前駆体溶液を調製する事と、(b)PME前駆体溶液を電極の表面上にドライキャストする事とが含まれる。幾つかの実施形態に於いて、PME前駆体溶液は、PME前駆体溶液の総質量に対して、約1%~約60%の質量比のポリマーと、約20%~約90%の質量比の有機溶剤と、約1%~約60%の質量比のリチウム塩と、約0.5%~約60%の質量比の可塑剤と、約0.5%~約60%の質量比の1種以上の添加剤とを含む。
【0100】
幾つかの実施形態に於いては、上記方法は、PME被膜を架橋させる事を更に含む。PME被膜の架橋は、被膜のPME特性を向上させる。非限定的な架橋方法としては、光開始剤及び架橋剤を用いたUV硬化、熱的架橋(例えば、所望の温度での化学反応)、及び交差重合(例えば、化学反応)が挙げられる。幾つかの実施形態に於いて、上記方法は、PME被膜を乾燥させた後に、PME被膜を溶媒和状態で架橋させる事を含む。PME被膜の溶媒和状態とは、乾燥後に溶剤の一部がポリマー及び/又は塩と反応し、3種の成分(例えば、溶剤、ポリマー、及び塩)から構成される固体材料を形成したPME被膜を指す。得られた被膜が此れ等の3種の成分を固体形態で含む場合に、此れは溶媒和状態に在ると言及される。
【0101】
幾つかの実施形態に於いて、上記方法を不活性雰囲気下で実施する。PME及び/又はPME前駆体溶液を不活性条件下で調製すると、大気中に見られる有害な反応性化学物質(例えば、O及び水分)との不所望な反応性が妨げられる。
【0102】
幾つかの実施形態に於いて、上記方法を無水条件下で実施する。リチウム金属塩は吸湿性がある為、水との不所望な反応を避ける為に、上記方法を水分のない条件下で実施する。幾つかの実施形態に於いて、上記方法を、無水条件であるが不活性雰囲気ではない条件下で実施する。例えば、幾つかの実施形態に於いて、上記方法を、酸素の存在下であるが水の不存在下で実施する。
【0103】
ポリマーマトリックス電解質膜
本開示の態様は、固体状態ポリマーマトリックス電解質(PME)膜を提供する。
【0104】
幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、細孔を全く又は実質的に有しない。PME膜に於ける細孔の数を最小限に抑えると、電池内のリチウムイオンが核形成を開始し、デンドライト様粒子を形成する時に形成するデンドライト(例えば、針状突起物)の成長が妨げられる。デンドライトは、PME膜の構造を突き破り、電池の短絡、故障、又は更には発火を引き起こす可能性がある。幾つかの実施形態に於いて、PMEは、膜の一端から他端迄延びる細孔を全く又は実質的に有しない。幾つかの実施形態に於いて、PME膜には多孔質流路は存在しない。
【0105】
幾つかの実施形態に於いて、細孔サイズは均一であり、細孔はPME膜全体に一様に分布している。一様に分布した均一な細孔は、PME膜全体に一様な電流密度の流れを可能にし、それに因り電池の寿命を延ばす事が出来る。
【0106】
幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、緻密な構造を有する。PME膜の密度の増加は、電池の短絡、故障、又は更には発火の原因と成り得る有害なリチウムデンドライトの成長を防ぐ働きをする場合もある。幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、約1g/cc~約5g/ccの密度を有する。幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、約1.4g/cc~約1.8g/cc、約1g/cc~約2g/cc、約1g/cc~約4g/cc、約2g/cc~約3g/cc、約3g/cc~約5g/cc、又は約1g/cc~約3g/ccの密度を有する。
【0107】
幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、約5μm~約100μmの厚さを有する。被膜の厚さは、電極間の短絡を防ぎ、デンドライトがPME被膜を貫通するのを防ぐ。被膜の所望の厚さは、被膜の機械的強度に依存し得る。例えば、被膜が強い程、必要とされる被膜は薄く成り、逆に被膜が弱い程、必要とされる被膜は厚く成る。幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、約5μm、約10μm、約15μm、約20μm、約25μm、約30μm、約35μm、約40μm、約45μm、約50μm、約55μm、約60μm、約65μm、約70μm、約75μm、約80μm、約85μm、約90μm、約95μm、又は約100μmの厚さを有する。
【0108】
幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、約100℃の温度迄安定である。100℃という高温での安定性は、PME膜を高温電池用途に確実に使用する事を可能にする。高温電池用途の非限定的な例としては、産業用途並びに石油産業及びガス産業に関連する用途が挙げられる。幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、約25℃、約30℃、約35℃、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、又は約100℃の温度で安定である。幾つかの実施形態に於いて、PME膜から構成される電池は、約100℃迄の温度で動作する事が出来る。
【0109】
幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、高い機械的強度を有する。PME膜の機械的強度をPME膜の貯蔵弾性率(E’)及び損失弾性率(E’’)に因って評価する事が出来る。貯蔵弾性率は、PME膜の弾性構造に於いて貯蔵されたエネルギーの尺度である一方で、損失弾性率は、PME膜に於いて散逸されたエネルギーの量の尺度である。貯蔵弾性率が損失弾性率よりも高い場合に、其の材料は、弾性があり、高い機械的強度を有すると見なされる。幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、約1×1010Pa、約1×10Pa、約1×10Pa、1×10Pa、又は約1×10Paの貯蔵弾性率を有する。幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、20℃で3.33×10パスカル(Pa)の貯蔵弾性率及び2.82×10Paの損失弾性率を有する。幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、約1×1010Pa、約1×10Pa、約1×10Pa、1×10Pa、又は約1×10Paの損失弾性率を有する。別の実施形態に於いて、PME膜は、100℃で9.58×10Paの貯蔵弾性率及び1.38×10Paの損失弾性率を有する。
【0110】
幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、低電圧で安定である。低電圧での安定性に因り、PME膜は、限定されるものではないが、リチウムセル、電池、電気化学コンデンサ、及び燃料電池を含む用途に適したものと成る。幾つかの実施形態に於いて、PMEは、Li/Li参照電極に対して、約-0.5ボルト(V)から約2Vの間の低電圧で安定である。幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、Li/Li参照電極に対して、約-0.5V、約-0.4V、約-0.3V、約-0.2V、約-0.1V、約0V、約0.1V、約0.2V、約0.3V、約0.4V、約0.5V、約0.6V、約0.7V、約0.8V、約0.9V、約1V、約1.1V、約1.2V、約1.3V、約1.4V、約1.5V、約1.6V、約1.7V、約1.8V、約1.9V、又は約2.0Vで安定である。幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、Li/Li参照電極に対して、約0Vで安定である。幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、Li/Li参照電極に対して、約-0.5Vで安定である。
【0111】
幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、高電圧で安定である。高電圧での安定性に因り、PME膜は、限定されるものではないが、リチウムセル、電池、電気化学コンデンサ、及び燃料電池を含む用途に適したものと成る。幾つかの実施形態に於いて、PMEは、Li/Li参照電極に対して、約3ボルト(V)から約6Vの間の低電圧で安定である。幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、Li/Li参照電極に対して、約3V、約3.1V、約3.2V、約3.3V、約3.4V、約3.5V、約3.6V、約3.7V、約3.8V、約3.9V、約4V、約4.1V、約4.2V、約4.3V、約4.4V、約4.5V、約4.6V、約4.7V、約4.8V、約4.9V、約5V、約5.1V、約5.2V、約5.3V、約5.6V、約5.7V、約5.8V、約5.9V、又は約6Vで安定である。幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、Li/Li参照電極に対して、約3.4Vで安定である。
【0112】
幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、低電圧及び高電圧で安定である。低電圧及び高電圧の両方での安定性は、限定されるものではないが、リチウムセル、電池、電気化学コンデンサ、及び燃料電池を含む用途に有用である。幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、Li/Li参照電極に対して、約-0.5V~約6Vで安定である。幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、Li/Li参照電極に対して、約-0.5V~約4V、約0V~約5V、約0V~約4V、約0V~約3V、約1V~約6V、約2V~約6V、約3V~約6V、約4V~約6V、又は約5V~約6Vで安定である。
【0113】
幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、広い温度範囲に亘ってイオン伝導性である。幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、約-20℃から約100℃の間でイオン伝導性である。幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、約-20℃、約-15℃、約-10℃、約-5℃、約0℃、約5℃、約10℃、約15℃、約20℃、約25℃、約30℃、約35℃、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、約95℃、又は約100℃でイオン伝導性である。
【0114】
幾つかの実施形態に於いて、PME膜は、自立型被膜である。自立型被膜は、被膜特性の顕著な特性評価の手段をもたらし、セル組み立ての間にセパレーターとして使用する事も出来る。
【0115】
他の実施形態に於いて、PME膜を、電気化学セルに於いて使用される電極上に適用する。幾つかの実施形態に於いて、PMEを電気化学セルに於いて使用する事が出来、これはセパレーター及び電解質として機能し得る。セパレーターは、電池内に於けるアノード及びカソードの物理的な分離を可能にする事から、短絡を防ぎつつ電解質内のイオンが2つの電極間を流れる事が可能と成る。
【0116】
幾つかの実施形態に於いて、PME膜を、電気化学セルに於けるバインダー成分として使用する事が出来る。電気化学セルに於けるバインダー成分は、電池の電極内に活物質を保持して、電極と接点との間の強力な接続を維持する役割を担う。
【0117】
幾つかの実施形態に於いて、PME膜を、蓄電セルに於いて使用する事が出来る。幾つかの実施形態に於いて、PME膜を、一次電池(非充電式電池)に於いて使用する事が出来る。幾つかの実施形態に於いて、PME膜を、二次電池(再充電式電池)に於いて使用する事が出来る。幾つかの実施形態に於いて、PME膜を、電気化学コンデンサ、例えば、限定されるものではないが、リチウム電池、Ni/M-H電池、炭素二重層コンデンサ及び蓄積コンデンサに於いて使用する事が出来る。
【0118】
幾つかの実施形態に於いて、PMEを、金属/空気電池を含む変換型燃料電池に於いて使用する事が出来る。
【0119】
上述の明細書は本発明の原理を教示し、説明を目的として例を示しているが、当業者は、上記の開示を読めば、本発明の本旨から逸脱する事なく形態及び詳細に様々な変更を加える事が出来る事を理解するであろう。
【0120】
実施例1:PMEを調製する方法
以下の実施例は、エネルギー貯蔵装置としてリチウムイオン電池に於いて使用する事が出来るPME膜を作製する方法に関する。
【0121】
本研究は、従来のポリマー電解質をPMEと置き換えて、改善された性能及び安全性の機能を有するリチウムイオン電池を作製する可能性を裏付けている。リチウム電池に於いて使用される従来のポリマー材料と比較して、PMEは、より高いイオン伝導性、機械的強度、及びより広い電気化学的安定性ウィンドウを有し、現在のリチウムイオン電池の生産プロセスと適合性がある。従って、本研究は、PME及びPME前駆体溶液を使用する事で、より安全な次世代セルをより低い製造コストで生産し得る事を示唆している。
【0122】
PME前駆体溶液を調製する方法
PMEの形成に向けた最初の工程は、PME前駆体溶液の調製を含む。前駆体溶液を、2つの溶液(混合物A及び混合物B)と、任意の第3の溶液(混合物C)とに因って形成する。
【0123】
混合物Aは、ポリマー又はポリマービーズと、凡ゆる有機溶剤であり得る溶剤とを含む。混合物Bは、リチウム塩、任意の可塑剤、及び/又は他の添加剤を含む。最後に、任意の混合物Cは、リチウム塩と、必要に応じて1種以上の追加の添加剤、例えば難燃剤とを更に含む。図1は、各基本成分(例えば、ポリマー、イオン伝導性塩、及び溶剤/可塑剤)に関するPME組成を示す図解である。
【0124】
此の例示的な実施形態に於いて、混合物Aは、以下、質量分率で20%のPVDF及び質量分率で80%のDMAcを含み、混合物Bは、質量分率で33%のLiTFSI及び質量分率で67%の溶剤DMAcを含む。最後に、混合物Cは、以下、質量分率で7%のLiBOB及び質量分率で93%のDMAcを含む。表1は、混合物A、混合物B、及び混合物Cの例示的な実施形態に就いての成分を列挙する。
【0125】
【表1】
【0126】
次いで、液体混合物A、液体混合物B、及び液体混合物Cの其々を別々に混合して、各成分がDMAc溶剤に完全に溶解している均質な溶液を形成する。次いで、此れ等の溶液を合わせ、25℃の温度で500rpmの回転速度にて24時間撹拌して、PME前駆体溶液を形成する。此の例示的な実施形態に就いての最終的な前駆体組成物は、60:40のポリマー対全塩の重量比を有する。
【0127】
PME被膜の特性評価
次の工程は、PME前駆体溶液を誘電体基材上にキャストした後に、基材からPME被膜を取り外す(例えば、剥離する)事に因りPME被膜を形成して、得られた被膜の特性を特性評価する事を含む。
【0128】
回分プロセスに於いて、誘電体基材を最初に所望のサイズに切断し、清浄化した後に、PME前駆体溶液を基材上に均質にコーティングする。コーティングプロセスを、室温で乾燥した室内条件下にて行い、コーティングされた基材を80℃で30分間加熱する。PME被膜は、10μmから150μmの間の得られた厚さを有した。PME膜を基材から剥離して、更に特性評価した。
【0129】
物理的外観:PME被膜のSEM画像及び写真を撮影して、得られたPME被膜の物理的外観を評価した(図2A図2C)。PME被膜は、殆ど又は全く屈曲度を有さずに緻密であり、セル内の負極と正極との間の短絡を防ぐ電気化学セルに於けるセパレーターに必要とされる特性と一致していた。PME被膜の誘電体基材に面した側は、反対側よりも緻密である様に見える(図2A(基材と反対側)、図2B(基材の直上)、及び図2C(PME被膜の画像))。此の違いは、被膜の下から上への乾燥勾配に因るものと考えられる。
【0130】
電気化学的安定性:PME被膜の電気化学的安定性をサイクリックボルタンメトリーに因って測定した(図3)。サイクリックボルタンメトリー用のセル構成は、以下の通りであった:SS/PME/Li及び1mV/sのスキャン速度。安定性分析の結果は、PMEが、低電位アノード材料で使用される低電圧(Li/Liに対して0V近く)及び高電位カソード材料で使用される高電圧(Li/Liに対して最大4.3V)の両方で安定である事を示している。
【0131】
イオン伝導率:PME被膜のイオン伝導率を、10mVのAC摂動及び100kHz~1HzのEISスキャンで、-20℃から+80℃迄の広い温度範囲に亘って測定した(図4)。データは、PME被膜に就いての伝導率が、慣例的なリチウムイオン電池に於いて使用される液体電解質と同程度の範囲内である事を示している。
【0132】
熱安定性:高温(例えば、100℃)でのPME被膜の安定性を熱重量分析(TGA)に因って測定した(図5)。TGAスキャンは、100℃の温度迄の1%未満の重量損失を表す事から、PME被膜が此の温度で安定であり、従って少なくとも100℃迄の温度で其の構造的完全性を失う事なく動作するセルに於いて使用する事が出来る事を示している。
【0133】
機械的強度:単一周波数/歪みに因る動的機械分析(DMA)温度スキャンを使用して、PME被膜のヤング率を取得した(図6)。此れ等の結果は、膜が、電気化学貯蔵装置に於けるセパレーターに必要とされるものと一致するGPaを下回る範囲内の弾性率を呈する事を示している。表2は、得られたPME被膜の20℃及び100℃での機械的特性を更に列挙する。
【0134】
【表2】
【0135】
PME前駆体溶液を電極表面上にキャストする方法
PME前駆体溶液を、リチウムイオン電池セルに於いて使用される電極上にキャストした。
【0136】
最初の工程として、集電体上にスラリーをキャストして電極を作る。スラリーは通常、貯蔵装置に於いて電気活性種のシンク又はソースの何れかとして機能する活物質と、電極内の電子の移動を促進する導電性添加剤と、結合ポリマーで作られたバインダーと、溶剤と、塩とから成り、此の場合にPME前駆体溶液である(図7)。
【0137】
次に、PMEの薄層オーバーコートを電極の表面に適用する。電極を最初に切断し、高温で乾燥させ、其の後、PME前駆体溶液を電極の表面上に均質にコーティングする。コーティング操作を、室温で乾燥した室内条件下にて行い、コーティングされた電極を80℃で30分間加熱する。得られたPME被膜は、10μmから150μmの間の範囲の厚さを有する(図8)。
【0138】
結論
PME被膜を作製する全体的なプロセスは、プロセス900と表示されて図9に示されている。図9に示される様に、簡単で費用効率の高い4段階のプロセスを介して、PME被膜を形成する事が出来る。最初の工程として、工程901に示される様に、ポリマー、塩、及び溶剤/可塑剤を含む3つの混合物を調製する。次いで、工程902に示される様に、其れ等の混合物を合わせて均質なPME前駆体溶液を形成する。次に、工程903に於いてPME前駆体を基材上にキャストして溶媒和されたPME被膜を形成する。此のプロセスは、PME被膜を完全な溶媒和形態で架橋させてPMEの特性を向上させる事が出来る任意の工程904を更に含む。
【0139】
全体として、本研究は、電気化学的に安定で、機械的に堅牢なPMEの合成及び特性評価を提供し、これは伝導率が高く、セル化学に対して遜色が無い。特に、電気化学セルがカソード、アノード、液体電解質、及びセパレーターを含む限り、セルを本開示のPMEを使用して構築する事が出来る。此の点に関して、非水系一次セル、水系一次セル、リチウム一次セル及びリチウム再充電式セル、リチウムイオン再充電式セル、金属水素化物セル、電気化学コンデンサ、燃料電池等の様なセルを含む殆どのエネルギー貯蔵装置及びエネルギー変換装置を全て本開示のPMEを用いて構築する事が出来る。最後に、PMEは性能の向上に就いて最適化されるだけで無く、より安全でより信頼性の高い電池の開発に使用する事も出来る。

図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】