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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(54)【発明の名称】基板の制御された局所加熱
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20231026BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
H05K3/34 507M
H01L21/60 311R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521099
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(85)【翻訳文提出日】2023-05-24
(86)【国際出願番号】 NL2021050604
(87)【国際公開番号】W WO2022075843
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】20200373.7
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522394225
【氏名又は名称】ネザーランズ オーガニサイト フォー トゥーホパスト ナチュルヴェンテンスハッペリク オーダーズック ティエヌオー
【氏名又は名称原語表記】NEDERLANDSE ORGANISATIE VOOR TOEGEPAST-NATUURWETENSCHAPPELIJK ONDERZOEK TNO
【住所又は居所原語表記】Anna van Buerenplein 1, 2595 DA ’s-Gravenhage, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリックス、ロブ ヤコブ
【テーマコード(参考)】
5E319
5F044
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319BB05
5E319CC47
5E319GG03
5F044MM03
5F044NN18
5F044PP19
(57)【要約】
本開示は、感熱材(43)が供給された基板(40)の対象表面(41)に制御された局所加熱を行い、感熱材の状態を変化させる装置を提供する。装置は、基板(40)を対象表面の反対側の被搬送表面(42)で搬送するためのキャリア表面(36)を有するキャリア(3)を備える。キャリアは、横方向に配置される複数の加熱ゾーン(30、30a、30b、・・・、30n)を有し、これらは、排出チャネル(37)と連通するスリットにより互いに断熱され、加熱ゾーンはそれぞれ、対応する抵抗加熱要素(32、32a、32b、・・・、32n)を含み、かつ、ヒートシンク(2)に熱的に接続される。装置はさらに、横方向に配置される複数の加熱ゾーンのうちの少なくとも1つに含まれる抵抗加熱要素のうちの少なくとも1つへの電気エネルギーの選択的供給を制御するための制御部を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(40)の対象表面(41)に制御された局所加熱を行うための装置であって、前記装置は、
前記基板(40)を前記対象表面(41)の反対側の被搬送表面(42)で搬送するためのキャリア表面(36)を有するキャリア(3)であって、互いに断熱されて横方向に配置される複数の加熱ゾーン(30、30a、30b、・・・、30n)であって、それぞれ対応する抵抗加熱要素(32、32a、32b、・・・、32n)を備えてヒートシンク(2)に熱的に接続された加熱ゾーン(30、30a、30b、・・・、30n)を有するキャリア(3)と、
横方向に配置される複数の前記加熱ゾーン(30、30a、30b、・・・、30n)のうちの少なくとも1つに含まれる前記抵抗加熱要素(32、32a、32b、・・・、32n)のうちの少なくとも1つへの電気エネルギーの選択的供給を制御するための制御部(60)と、を備え、
横方向に配置される複数の前記加熱ゾーン(30、30a、30b、・・・、30n)は、互いに隣接する前記加熱ゾーン(30、30a、30b、・・・、30n)間の各境界の少なくとも一部分に沿って延在するスリット(33)を前記キャリア(3)が画定することによって互いに断熱され、
前記スリット(33)は、排出チャネル(37)と連通することを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記キャリア(3)の前記キャリア表面(36)には、粘着層(47)が設けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記キャリア(3)の前記キャリア表面(36)には、付着防止層(44)が設けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記キャリア(3)の前記加熱ゾーン(30、30a、30b、・・・、30n)はそれぞれ、前記ヒートシンク(2)の対応する突起(23、23a、23b、・・・、23n)により支持される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記抵抗加熱要素(32、32a、32b、・・・、32n)は、それぞれ、電力供給源に接続され、前記制御部(60)により制御される対応するスイッチング素子により切り替えられる、請求項1から4までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記スイッチング素子は、前記ヒートシンク(2)に収容される、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の装置と、
観測された処理温度を示す感知信号(S51)を出力する感知部(51)と、
前記制御部(60)と協働し、前記感知信号(S51)により示される前記観測された処理温度と、ターゲット信号(SdT)により示される処理温度の所望の値との間のずれを最小限に抑えるように前記制御部(60)に制御信号(S60)を出力させるフィードバック部(61)と、を含む、製造設備。
【請求項8】
前記感知部(51)は、前記基板(40)の前記対象表面(41)における温度分布を測定するように配備された温度カメラを備える、請求項7に記載の製造設備。
【請求項9】
前記感知部(51)は、前記抵抗加熱要素(32、32a、32b、・・・、32n)それぞれの温度を示す感知信号を出力するため、前記抵抗加熱要素(32、32a、32b、・・・、32n)毎に温度センサを備える、請求項7又は8に記載の製造設備。
【請求項10】
前記制御部(60)は、パルス幅変調(PWM)方式で電気エネルギーを供給するための制御信号(S60)を出力するように構成される、請求項7、8又は9に記載の製造設備。
【請求項11】
前記制御部(60)は、インタリーブパルス幅変調(IPWM)方式で電気エネルギーを供給するための制御信号(S60)を出力するように構成される、請求項10に記載の製造設備。
【請求項12】
前記基板(40)を前記キャリア表面(36)上で搬送する基板搬送装置(91、92)をさらに備える、請求項7から11までのいずれか1項に記載の製造設備。
【請求項13】
基板(40)の対象表面(41)に制御された局所加熱を行うための製造方法であって、前記製造方法は、
キャリア(3)に、互いに断熱されて横方向に配置される複数の加熱ゾーン(30、30a、30b、・・・、30n)であって、それぞれ対応する抵抗加熱要素(32、32a、32b、・・・、32n)を備えてヒートシンク(2)に熱的に接続された加熱ゾーン(30、30a、30b、・・・、30n)を設けることと、
前記キャリア(3)に、前記基板(40)を前記対象表面(41)の反対側の被搬送表面(42)で搬送する前記キャリア(3)のキャリア表面(36)を設けることと、
横方向に配置される複数の前記加熱ゾーン(30、30a、30b、・・・、30n)のうちの少なくとも1つに含まれる前記抵抗加熱要素(32、32a、32b、・・・、32n)のうちの少なくとも1つに選択的に電気エネルギーを供給することと、を含み、
横方向に配置される複数の前記加熱ゾーン(30、30a、30b、・・・、30n)は、互いに隣接する前記加熱ゾーン(30、30a、30b、・・・、30n)間の各境界の少なくとも一部分に沿って延在するスリット(33)を前記キャリア(3)が画定することによって互いに断熱され、
前記スリット(33)は、排出チャネル(37)と連通することを特徴とする、製造方法。
【請求項14】
前記基板(40)に感熱材(43)を供給することと、前記感熱材(43)の状態を変化させるために前記製造方法を適用することと、を含む、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記電気エネルギーを供給することは、パルス幅変調(PWM)方式で行われ、任意選択で、インタリーブパルス幅変調(IPWM)方式で行われる、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
プログラム可能なプロセッサにより実行されると、請求項1から6までのいずれか1項に記載の装置又は請求項7から12までのいずれか1項に記載の製造設備に、請求項14又は15のいずれか1項に記載の製造方法のステップのうちいずれかを実行させるコンピュータプログラムを備えるコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、基板上の物質に制御された局所加熱を行うための装置に関する。
本出願はさらに、基板上の物質に制御された局所加熱を行う方法に関する。
本出願はまた、プログラム可能な装置に前記方法を実行させるコンピュータプログラムを備える記録担体に関する。
本出願はさらには、前記装置を含む製造設備に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、フレキシブル電子機器は、高価なポリイミド基板とエッチングされた銅箔回路で作られている。そのような基板はリフローはんだ付け温度に耐えることができるため、SAC305などの工業的に標準となっている無鉛はんだペーストを使用して、電子部品を実装することができる。
【0003】
例えば、米国特許第6,278,078号は、レーザはんだ付け方法について記載する。はんだ付けする金属部品の加熱にはレーザが用いられ、レーザの波長は、金属部品の吸光性に基づいて選択される。レーザがビームスポットを形成するはんだ付け位置は、レーザビームの焦点から所定の距離だけ離れて配置され、その結果、ビームスポットは焦点がずれ、その領域にわたって均一な強度を有する。本書で提案される基板の材料の例として、Kevlar(登録商標)、ポリイミド及びシアン酸エステルが挙げられる。
【0004】
コスト削減のためには、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのより安価な基板を使用することが望ましい。しかしながら、通常、そのようなより安価な基板のガラス転移温度は、ポリイミド基板のガラス転移温度よりも実質的に低い。したがって、上述の熱処理をより安価な基板を用いて行うことを可能にする解決策が必要とされている。
【0005】
国際公開第2014/164910号は、プラズマ処理チャンバ用のマルチゾーン加熱冷却チャックアセンブリを開示していることに留意されたい。静電チャックアセンブリは、対象物を支持するための上面を有する誘電体層を含む。誘電体層の下方に配置された冷却チャネルベースは、前記上面の下方に配置された複数の流体管を含む。チャックアセンブリはさらに、空間的にチャックアセンブリにわたって配置された複数の抵抗加熱ロッドを含む。実施形態では、169本の加熱ロッド及び3つの伝熱流体流制御装置が、プラズマエッチング処理の実施中に独立して制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,278,078号明細書
【特許文献2】国際公開第2014/164910号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、目的とするのは、対象表面に感熱材が設けられた基板上の物質に制御された局所加熱を行うための改良された装置を提供することである。
さらに目的とするのは、対象表面に感熱材が設けられた基板上の物質に制御された局所加熱を行う改良された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示によれば、本書で提示される改善された装置は、前記基板を前記対象表面の反対側の被搬送表面で搬送するためのキャリア表面を有するキャリアであって、互いに断熱されて横方向に配置される複数の加熱ゾーンを有するキャリアを備える。前記加熱ゾーンは、それぞれ対応する抵抗加熱要素を備えてヒートシンクに熱的に接続される。
【0009】
改善された装置はさらに、横方向に配置される複数の前記加熱ゾーンのうちの少なくとも1つに含まれる前記抵抗加熱要素のうちの少なくとも1つへの電気エネルギーの選択的供給を制御するための制御部を備える。
【0010】
横方向に配置される複数の前記加熱ゾーンは、互いに隣接する前記加熱ゾーン間の各境界の一部分に沿って延在するスリットを前記キャリアが画定することによって互いに断熱され、前記スリットは、排出チャネルと連通する。互いに隣接する加熱ゾーン間の各境界におけるスリット内に広がる真空により、非常に効率的な断熱が得られる。代替の実施形態では、スリットは、キャリアの加熱ゾーンの境界の全長にわたって延在する。この場合、加熱ゾーンは、ヒートシンクの対応する突起によってそれぞれ個別に支持される。
【0011】
さらに、キャリア表面に設けられた真空により、基板の対象表面にかかる大気圧が基板をキャリアにしっかりと押し付け、粘着層がない場合でも、キャリアと基板との間の良好な熱接触に寄与する。
【0012】
動作中、制御部は、基板の対象表面上のスポットの位置に対応する横方向の位置にある加熱ゾーンの抵抗加熱要素に選択的に通電する。それにより、抵抗加熱要素は熱流を生じさせ、この熱流の一部がキャリア表面を介して基板を通過し、基板の対象表面まで流れる。その結果、感熱材が加熱され、感熱材の状態が変化する。横方向に配置された加熱ゾーンが互いに断熱されていること、及び、それらがヒートシンクに熱的に接続されていることにより、隣接する加熱ゾーンが加熱されることが軽減され、その結果、基板の変形が回避される。
【0013】
一実施形態では、前記基板の前記被搬送表面及び/又は前記キャリアの前記キャリア表面には、粘着層が設けられる。PDMS層などの粘着層は、供給された熱により基板が局所的に変形したとしても、基板の被搬送表面とキャリアのキャリア表面とを良好な接触状態に維持するのに有用である。それにより、粘着層は、対象表面への良好な伝熱を促進する。好ましくは、粘着層は、基板の被搬送表面に設けられる。これにより、キャリア表面の保守が容易になる。
【0014】
任意選択で、本実施形態において、前記基板の前記被搬送表面及び/又は前記キャリアの前記キャリア表面には、付着防止層が設けられる。これは、基板が局所的に溶融する程度にまで基板を局所的に加熱することが望ましい場合があるという考察に基づく。付着防止層により、基板がそのような場所で一時的に溶融しているにもかかわらず、キャリアから基板を容易に取り外すことができる。付着防止層のための材料は、アルミニウムなどの金属、又は、酸化ケイ素、窒化ケイ素若しくは酸化アルミニウムなどのセラミック材料から選択することができる。
【0015】
改良された装置の一実施形態では、前記キャリアの前記加熱ゾーンはそれぞれ、前記ヒートシンクの対応する突起により支持される。突起は、加熱ゾーンにおける横方向の温度分布の制御に寄与することができる。例えば、実施に際して、加熱ゾーンの中心部の温度が加熱ゾーンの周縁部の温度に比べて比較的高温になる傾向にあると思われる場合に、四角錐の形状の突起を設けて、その(切頭された)頂部を加熱ゾーンの中心部においてキャリアに接触させることができる。本発明者は、互いに隣接する加熱ゾーン間の熱の流れは、ヒートシンクを通過する経路を介して発生し得ることに気がついた。突起は、冷却された真空チャックにおいて横方向の熱流束を低減するのに大きく寄与すると同時に、縦方向においても、制御された高いヒートシンク効果を有する。これを達成するために、各加熱ゾーンには、ヒートシンクに接続された高熱伝導性物質のピラー構造が設けられ、ヒートシンクは、好ましくは、制御された冷却源(例えば、水冷却)を備える。ピラー状の構造は、突起の高さがヒートシンクを通過する経路の長さに影響するため、隣接する加熱ゾーン間の断熱性を改善する。突起が高いほど、距離は長くなり、熱コントラストが高くなる。横方向の断熱は、加熱装置プレート(ピクセル)と真空チャックの両方に必要である。
【0016】
本開示はさらに、上述の改良された装置に加えて、感知部及びフィードバック部を含む製造設備を提供する。感知部は、観測された処理温度を示す感知信号を出力するものである。フィードバック部は、前記制御部と協働し、前記感知信号により示される前記観測された処理温度と、ターゲット信号により示される処理温度の所望の値との間のずれを最小限に抑えるように前記制御部に制御信号を出力させる。フィードバック部及び感知部を備えた製造設備は、様々な材料特性に容易に適応可能である。制御される処理温度は、例えば、対象表面における温度である。達成すべき所望の値は、例えば、処理対象である感熱材の種類に依存し得る。一実施形態では、感熱材ははんだであり、所望の値は、はんだの溶融温度である。他の実施形態では、感熱材は、ポリマーの熱硬化性懸濁液又は熱硬化性前駆体であり、所望の値は、硬化性懸濁液又は熱硬化性前駆体の硬化温度である。他の実施形態として、製造設備を様々な基板厚に使用したい場合がある。本製造設備では、熱流は、処理温度が適切に、ほぼ所望の値となるようなレベルに自動的に調整される。
【0017】
本製造設備の一実施形態では、前記感知部は、前記基板の前記対象表面における温度分布を測定するように配備された温度カメラを備える。使用される基板の厚さにかかわらず、温度カメラが出力する感知信号により、フィードバック部は、感熱材が適切に加熱され、かつ、測定される処理温度が基板により決定される上限値を超えないように、任意の特定の位置で処理温度を制御することが可能となる。
【0018】
一実施形態では、加えて又は代替として、感知部は、前記抵抗加熱要素それぞれの温度を示す感知信号を出力するため、前記抵抗加熱要素毎に温度センサを備える。抵抗加熱要素付近での温度の変化は、基板の対象表面での温度の変化につながることから、制御部は基板の過熱を回避するために、熱流をより迅速に制御できる。これらの措置の組合せでは、対象表面の温度を制御する一次フィードバックループが設けられてもよく、許容最大値を超える温度を検出した場合に加熱を中断する二次フィードバックループが設けられてもよい。
【0019】
本感知部の一実施形態では、抵抗加熱要素の抵抗は抵抗加熱要素の温度を示すという点で、抵抗加熱要素を温度センサとして機能させてもよい。代替として、熱電対などの別個の要素を温度検知のために設けてもよい。
【0020】
本製造設備の一実施形態において、制御部は、パルス幅変調方式で電気エネルギーを供給するための制御信号を出力するように構成される。パルス幅変調により、処理温度を非常に正確に制御可能となる。本製造設備のいくつかの例において、制御部は、インタリーブパルス幅変調方式で電気エネルギーを供給するための制御信号を出力するように構成される。この手法では、加熱サイクルが繰り返され、各加熱サイクルにおいて、互いに異なる加熱ゾーンが、各加熱サイクルの互いに異なるフェーズで加熱される。これは、互いに異なる加熱ゾーンの抵抗加熱要素は、互いに異なる長さ、したがって、互いに異なる抵抗値を有するエネルギー供給リード線を備える場合があるという所見に基づく。このことは、結果として、同時に電力供給された互いに異なる抵抗加熱要素が、それぞれの供給リード線の長さに応じて、互いに異なる電流密度を有することになる。さらに、抵抗加熱要素の抵抗値は、温度依存であってもよく、これもまた、熱流束の分布に影響を及ぼす。制御信号をインタリーブパルス幅変調方式で出力することにより、ある1つの加熱ゾーンの1つ又は複数の抵抗加熱要素のみを通電させることができる。また、ある1つの加熱ゾーンが通電されていないフェーズ中に、他の1つの又は複数の加熱ゾーンに電気エネルギーを供給することができるため、より時間効率の良い動作が達成される。
【0021】
一実施形態では、前記製造設備はさらに、前記基板を前記キャリア表面上で搬送する基板搬送装置を備える。この実施形態では、処理は、連続工程で行われる。さらには、基板が処理ステップの完了後にキャリア表面から搬送されていくことにより、より一層効率的な冷却が達成される。
【0022】
本開示はさらに、感熱材が供給された基板の対象表面に制御された局所加熱を行い、前記感熱材の状態を変化させる、改良された製造方法を提供する。改良された製造方法は、以下のステップ:
キャリアに、互いに断熱されて横方向に配置される複数の加熱ゾーンであって、それぞれ対応する抵抗加熱要素を備えてヒートシンクに熱的に接続された加熱ゾーンを設けることと;
前記キャリアに、前記基板を前記対象表面の反対側の被搬送表面で搬送する前記キャリアのキャリア表面を設けることと;
横方向に配置される複数の前記加熱ゾーンのうちの少なくとも1つに含まれる前記抵抗加熱要素のうちの少なくとも1つに選択的に電気エネルギーを供給することと、を含み、
横方向に配置される複数の前記加熱ゾーンは、互いに隣接する前記加熱ゾーン間の各境界の少なくとも一部分に沿って延在するスリットを前記キャリアが画定することによって互いに断熱され、
前記スリットは、排出チャネルと連通する。
【0023】
一実施形態では、電気エネルギーは、パルス幅変調(PWM)方式で供給され、任意選択で、インタリーブパルス幅変調(IPWM)方式で供給される。
本開示はさらに、プログラム可能なプロセッサにより実行されると、前記プログラム可能なプロセッサに、前記改良された製造方法のステップのいずれかを実行させるコンピュータプログラムを提供する。
【0024】
これら及び他の態様を、以下の図面を参照して、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】感熱材が供給された基板の対象表面に制御された局所加熱を行い、感熱材の状態を変化させる製造装置の一実施形態の概略図である。
図2】製造装置の態様をより詳細に示す図である。
図3】製造装置の一実施形態の一部分である加熱ゾーン付近をより詳細に示す図である。
図4】製造装置の代替の実施形態をより詳細に示す図である。
図5】製造装置の一態様の上面図である。
図6】製造装置の一実施形態の一部分である加熱ゾーン付近をより詳細に示す図である。
図7A】インタリーブパルス幅変調(IPWM)を用いた、製造装置の一実施形態の動作を概略的に示す図であり、一例である基板40の表面を示す。
図7B】インタリーブパルス幅変調(IPWM)を用いた、製造装置の一実施形態の動作を概略的に示す図であり、基板の様々なゾーンに電気エネルギーが時間の関数としてどのように供給されるかを示す。
図8】製造装置の実施形態に加えて、基板搬送装置を備える製造設備の一例を示す図である。
図9】代替の実験設定を示す図である。
図10A図9の代替実験設定で処理されたサンプル基板の一段階を示す図である。
図10B図9の代替実験設定で処理されたサンプル基板の一段階を示す図である。
図10C図9の代替実験設定で処理されたサンプル基板の一段階を示す図である。
図10D図9の代替実験設定で処理されたサンプル基板の一段階を示す図である。
図11A】各数値について、キャリアの厚さ毎に行ったシミュレーションで得られた結果を示す図である。
図11B】各数値について、キャリアの厚さ毎に行ったシミュレーションで得られた結果を示す図である。
図11C】各数値について、キャリアの厚さ毎に行ったシミュレーションで得られた結果を示す図である。
図11D】パルス幅を変調した加熱でのシミュレーションの場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
各図面において、同様の参照符号は、別段の記載がない限り、同様の要素を示す。
【0027】
図1は、感熱材が供給された基板40の対象表面41に制御された局所加熱を行い、感熱材の状態を変化させる製造装置1を示す概略図である。図2により詳細に示されるように、製造装置1は、基板40を対象表面41の反対側の被搬送表面42で搬送するためのキャリア表面36を有するキャリア3を備える。キャリア3は、互いに断熱された、横方向に配置される複数の加熱ゾーン30、30a、30b、・・・、30nを有する。加熱ゾーン30、30a、30b、・・・、30nはそれぞれ、適切な抵抗加熱要素32、32a、32b、・・・、32nを備え、ヒートシンク2に熱的に接続される。図1に示すように、横方向に配置される複数の加熱ゾーン30、30a、30b、・・・、30nのうちの少なくとも1つに含まれる抵抗加熱要素32、32a、32b、・・・、32nのうちの少なくとも1つへの電気エネルギーの選択的供給を制御するために制御部60が設けられる。図示の実施形態では、電気エネルギーは電力供給源70により供給され、制御部60は、それぞれのスイッチング素子に制御信号を出力して、抵抗加熱要素32、32a、32b、・・・、32nを電力供給源70に選択的に接続する。
【0028】
図1の例では、製造装置1は、感知部51とフィードバック部61とをさらに備える製造設備の一部である。動作中、感知部51は、観測された処理温度を示す感知信号S51を出力する。フィードバック部61は、制御部60と協働し、感知信号S51により示される観測された処理温度と、ターゲット信号SdTにより示される処理温度の所望の値とのずれを最小限に抑えるように制御部60に制御信号S60を出力させる。この例では、感知部51は、基板40の対象表面41における温度分布を測定するように配備された温度カメラを備える。加えて、映像信号S50を出力する高解像度カメラ50が設けられる。
【0029】
制御部60は、基板40上の様々な物体の位置を正確に特定するために、映像信号S50を使用してもよい。加えて又は代替として、感知部51は、各抵抗加熱要素32、32a、32b、・・・、32n毎に温度センサを備えて、それぞれの温度を示す感知信号を出力してもよい。図示の例では、対象表面41には導電性回路45が設けられ、電子部品46、例えば、トランジスタ及び集積回路のような能動電子部品や、抵抗器、コンデンサ及びインダクタンスのような受動電子部品が、はんだペースト43により導電性回路45に電気的に接続される。はんだペースト43の代わりに、導電性粒子を含む熱硬化性インクを塗布してもよい。加えて又は代替として、対象表面41における感熱材は、例えば、電子部品を接着する又は電子部品を断熱する役割を果たす熱硬化性ポリマーであってもよい。
【0030】
図2に示す例では、横方向に配置される複数の加熱ゾーン30、30a、30b、・・・、30nは、キャリア3が、互いに隣接する加熱ゾーン間、例えば30と30aとの間の境界の一部分に延在するスリット33を画定するため、互いに断熱される。スリット33は、排出チャネル37と連通する。動作中、排出チャネル37は、ヒートシンク2内のさらなるスリット24及び真空チャネル25を介して真空ポンプに接続される。そのため、環境圧力により、基板40はキャリア3のキャリア表面36にしっかりと押圧される。その結果、キャリア3のキャリア表面36と基板40の被搬送表面42との間の熱接触が非常に良好となる。同じ措置により、隣り合う加熱ゾーン30、30a、30b、・・・、30n間の断熱性が向上する。代替の実施形態では、スリット33は、キャリア3の加熱ゾーン30、30a、30b、・・・、30n間の各境界の全長にわたって延在するように設けられることに留意されたい。これは、隣接する加熱ゾーン30、30a、30b、・・・、30n間の断熱性をさらに改善する。その場合、キャリア3は非一体型であり、加熱ゾーン30、30a、30b、・・・、30nは、ヒートシンク2のそれぞれ対応する突起23、23a、23b、・・・、23nにより支持される。これに関連して、基板40の被搬送表面42には、付着防止層44が設けられることに留意されたい。付着防止層44を設けることにより、熱処理が完了すると、熱処理中に基板40が局所的に溶融したとしても、基板40をキャリア3から容易に取り外すことができる。加えて又は代替として、キャリア3のキャリア表面36に、付着防止層44が設けられてもよい。図示の実施形態では、抵抗加熱要素32、32a、32b、・・・、32nは、電気絶縁層38に埋め込まれており、電気絶縁層38は、追加的に付着防止層として機能してもよい。
【0031】
図2の実施形態では、キャリア3の加熱ゾーン30、30a、30b、・・・、30nは、ヒートシンク2の対応する突起23、23a、23b、・・・、23nにより支持される。図3を参照してより詳細に説明するように、このようにして、互いに隣接する加熱ゾーン30、30a間の断熱がさらに改善される。
【0032】
図3は、製造装置の一部分である加熱ゾーン30付近をより詳細に示す図である。例えば、ある特定の時間間隔について、制御部60が、電気エネルギーを供給すべき抵抗加熱要素として、抵抗加熱要素32を選択した状態である。そのため、抵抗加熱要素32の中で熱が発生し、それが熱流Φq,topとなって、基板40を通過し、溶融して機械的にかつ電気的に電子部品46の端子を導電性回路45に接続させるはんだペースト43に向かって流れる。Φq,sideとして示される第2の横方向への熱流が生じる。この第2の熱流は、加熱ゾーン30、30a間が断熱されているため、大きく低減される。この場合、排出用のスリット33が断熱に寄与している。第3の熱流Φq,bottomが、加熱ゾーン30から突起23を介してヒートシンク2に至る方向に発生する。この方向に流れる熱流Φq,bottomの一部は次いで、ヒートシンク2内を横方向に流れる熱流Φq,chuckとなる。突起23、23a、23b、・・・、23nにより形成される熱伝導経路により、電気エネルギーの供給が中断された後、加熱ゾーン30、30a、30b、・・・、30nは急速に冷却可能となり、相互に隣接する加熱ゾーン30、30a、30b、・・・、30nに向かう熱の伝導を低減する。
【0033】
図2に示す実施形態では、より詳細には図3に示すように、突起23、23a、23b、・・・、23nは角錐台として形成される。図4に示す代替の実施形態では、突起23、23a、23b、・・・、23nは、逆角錐台として形成され、逆角錐台は、その端部で加熱ゾーン30、30a、30b、・・・、30nを支持する。
【0034】
図5は、対応する抵抗加熱要素32、32a、32b、・・・、32nをそれぞれ備えた加熱ゾーン30、30a、30b、・・・、30nを有する製造装置の一実施形態におけるキャリア3の上面図である。抵抗加熱要素32、32a、32b、・・・、32nは、それぞれのスイッチング素子、例えば81nにより制御される。図示の実施形態では、抵抗加熱要素32、32a、32b、・・・、32nは、第1端部で第1電力線321、321aに接続され、これは、次いで、第1バスバー71を介して電力供給源70の陽極に電気的に接続される。抵抗加熱要素32、32a、32b、・・・、32nは、第2端部で、それぞれの対応するスイッチング素子81nなどを介して第2電力線322、322aに接続され、これは、次いで、第2バスバー72を介して電力供給源70の陰極に電気的に接続される。第1電力線321、321aは、互いに並行して延在する。各スイッチング素子81nは、第1制御線323、323a及び第2制御線324、324aからなるそれぞれの対により制御される。スイッチング素子、例えば81nは、その第1制御線、この例では323a、及び、その第2制御線、この例では324aの両方が制御部60からイネーブル信号を受信すると導通状態をとるように構成される。
【0035】
図6は、さらに詳細に、加熱ゾーン30aの他の例を示しており、加熱ゾーン30aの抵抗加熱要素32aは、第1電力線321及びスイッチング素子81を介して第2電力線322aに接続されている。図示の例では、スイッチング素子81は、シリコンキャリア8のヒートシンク2側、すなわち、シリコンキャリア8がヒートシンク2の突起23aにより支持される側に配置される。抵抗加熱要素32aは、キャリア3の平面内に延在する陽極321に一端で接続され、他端で、キャリア3内のビア8V1を通過してスイッチング素子81の第1主端子、ここではFETのソース81Sまで延在する導体に接続される。スイッチング素子81の第2主端子、ここではFETのドレイン81Dは、第2電力線322aに接続される。スイッチング素子81は、キャリア3の平面内で第1電力線321と並行する方向に延在し、第2の貫通孔、ビア8V2を通過する電気接続によりスイッチング素子81の制御電極、ここではFETのゲート81Gに接続される第1制御線323により制御される。この例では、スイッチング素子81は、第1制御線323からの制御信号により導通状態となる。いくつかの実施形態では、スイッチング素子81毎に適切な第1制御線323が設けられてもよい。代替として、同じ行又は列に配備された複数のスイッチング素子81が1つの共通の第1制御線323を共有してもよく、その行又は列に存在するある特定の加熱ゾーン30の抵抗加熱要素32は、当該抵抗加熱要素32が接続される陽極321にさらに接続することによって起動されてもよい。
【0036】
図7A及び図7Bは、基板40の対象表面41の、互いに別個の基板ゾーンZ1、Z2、Z3において、はんだ材料をインタリーブパルス幅変調(IPWM)を用いてどのように加熱するかを模式的に示す図である。ここで、図7Aは、一例である基板40の対象表面41を示し、図7Bは、電気エネルギーが様々な基板ゾーンZ1、Z2、Z3に時間の関数としてどのように供給されるかを示している。
【0037】
図7Aに示すように、基板40は、キャリア3のキャリア表面36に配置される。基板40は、その対象表面41に複数の導電性トラックを含む。基板ゾーンZ1、Z2、Z3のそれぞれにおいて、電子部品461、462、463が、はんだ接合を用いてトラック45に接続すべき電子部品である。キャリア3は、複数の加熱ゾーン30a、30b、・・・、30nを備え、これらの複数の加熱ゾーン30a、30b、・・・、30nはそれぞれ、対応する抵抗加熱要素32a、32b、・・・、32n(図示せず)により加熱することができる。抵抗加熱要素32a、32b、・・・、32nにはそれぞれ、一対の第1バスバー71に接続された行方向の第1電力線321及び第2バスバー72に接続された列方向の第2電力線322から電気エネルギーの供給を受けることができる。動作中、第1バスバー71及び第2バスバー72は、電力供給源70に接続される。抵抗加熱要素32a、32b、・・・、32nは、対応する一対の第1制御線323及び第2制御線324により制御される適切なスイッチング素子81n(図示せず)により選択的に通電される。
【0038】
図7Bに示すように、3つの基板ゾーンZ1、Z2、Z3は、複数のサイクル(この例では、C1、C2、C3、C4、C5の5つのサイクル)で加熱される。各サイクルの第1フェーズ1では、第1の基板ゾーンZ1が加熱され、第2のフェーズ2では、第2の基板ゾーンZ2が加熱され、第3のフェーズ3では、第3の基板ゾーンZ3が加熱される。
【0039】
したがって、各フェーズにおいては、一度に基板ゾーンZ1、Z2、Z3のうちの1つのみが加熱されるため、ある抵抗加熱装置の動作のために利用可能な電圧が他の抵抗加熱装置による電気負荷の影響を受けない。なお、1つの基板ゾーンZ1などが、複数の加熱ゾーン30a、30b、・・・、30nなどを含む場合もある。その場合、1つの基板ゾーンZ1などが有する複数の加熱ゾーン30a、30b、・・・、30nなどのうちの1つ若しくは複数又は全てが、その基板ゾーンZ1などが加熱されるフェーズ中に作動されてもよい。その場合においても、その基板ゾーンZ1などにおける抵抗加熱装置の動作が他の基板ゾーンにおける抵抗加熱装置の動作に影響を及ぼすことは回避される。
【0040】
この例では、各加熱ゾーン30a、30b、・・・、30nで加熱されるはんだ43の量は、互いに異なる。それに応じて、第3のフェーズの持続時間は第1のフェーズの持続時間よりも長く、第2のフェーズの持続時間は第1のフェーズの持続時間よりも長い。それにより、3つの基板ゾーンZ1、Z2、Z3の局所温度の上昇を実質的に同じにすることができる。局所的には、熱流を中断させて過熱を回避し、全体的には、熱の供給が連続的に行われる効率的な動作を達成することができる。図7Bの網掛け部は、各フェーズにおいて、エネルギーが基板ゾーンZ1、Z2、Z3のうち特定の1つに供給されることを示す。太い点線は、基板ゾーンZ1、Z2、Z3で実際に起こる温度変化を表し、細い点線は、この変化の傾向線を示す。
【0041】
図8には、製造設備の一例が示されており、この製造設備は、図1を用いて説明した製造装置又はこれを改変した製造装置に加えて、基板40をキャリア3のキャリア表面36上で搬送するための基板搬送装置91、92を備える。この例では、基板搬送装置91、92は、未加工の基板、つまり、この場合では導電線を有する基板40を保持する巻き出しローラ91と、処理された基板40を回収する機能を果たす巻き取りローラ92との組合せとして表されている。実際には、様々な支持ロール及び他のガイド要素が存在してもよい。図示の例では、堆積装置93が、ある量の感熱材、ここでは、はんだ43を堆積させ、配置装置94が、対象表面41に電子部品46、46a、46bを配置する。次いで行われる、局所的に制御される加熱のステップで、はんだ付けの対象である電子部品46、46a、46bを含む対象表面41の加熱ゾーン30、30a、30b、・・・、30nに、局所制御の方法で熱が供給される。図示の例では、電子部品46aの置かれた加熱ゾーンが局所的に加熱されることによって、電子部品46aがはんだ付けされる。ロールツーロール方式の加工において基板40が移動し続けることはさらに、基板40のより良好な温度管理に寄与する。これは、図8内のグラフに、電子部品の温度及び電子部品の周囲における基板40の温度の変化が概略的に示されている。電子部品、例えば46aの端子は、はんだ43(例えばSAC305)の溶融温度を超えるが基板40(例えばPET)の溶融温度を超えない温度に一時的に加熱される。しかしながら、電子部品付近の周囲の基板40は、比較的低温のままである。
【0042】
図9は、代替の実験設定を示す。図9において、図2に対応する部位には、対応する参照符号が付されている。図2の実施形態とは異なり、粘着層47(この例では、デュポン社製PE773の厚さ5マイクロメートルの層)が、キャリア3と基板40との間の熱接触を強固にするために使用される。この場合のキャリア3は、厚さ700マイクロメートルのガラス層(ここではEAGLE XGタイプ)である。キャリア3は、厚さ0.125マイクロメートルのモリブデンからなる適切な抵抗加熱要素32a、32bをそれぞれ有する2つの加熱ゾーン30a、30bを備える。抵抗加熱要素32a、32bは、厚さ0.5マイクロメートルの窒化ケイ素層に埋め込まれている。実験が行われたサンプルの各段階の様子を図10A~10Dに示す。サンプルは、125マイクロメートルのPET層(Melinex ST504)から形成された基板40を含む。サンプル上の導体45は、厚さ15マイクロメートルの材料タイプHeraeus LTC3501Aで形成される。使用されるはんだペースト43の種類は、SAC305 T4である。
【0043】
抵抗加熱要素32a、32bの電気抵抗は共に、約400オームであり、この実験設定では、30ボルトに設定された1つの定電圧源を用いて並列駆動した。200オームとリード抵抗が高いため、加熱装置の効率は約66%である。各抵抗加熱要素のサイズは、200×400μm、つまり0.08mmである。これにより、約19W/mmという非常に高い局所熱流束が得られる。真空チャネル25を含む最適化された加熱装置の設計及びスタックにより、発生した熱以上の熱が周辺に逃げることはないため、約0.5~2W/mmのより低い熱流束で十分であろう。しかしながら、互いに隣接する加熱ゾーン30a、30bの間に空隙39を設けることによって、断熱の改良はすでに達成されているとも言える。
【0044】
図10Aは、サンプルの最初の状態を示す上面図である。この実験設定では、はんだ付け時間は、約3秒とした。この処理ステップの完了直後のサンプルの様子を図10B図10C及び図10Dに示す。ここで、図10Bは、処理されたサンプルの上面図であり、図10Cは、背面図であり、図10Dは、キャリア3から取り外した後の上面図である。図10B及び図10Dから明らかなように、はんだ43ははんだ処理のステップで適切に溶融され、電子部品46を電気的に接合した。しかしながら、はんだ付け中に、粘着層47からガスが発生し始め、その結果、基板40とキャリア3との間に空隙が生じ、図10Cに示すように、本実験において基板40は溶融した。工業用途では、制御部60は、熱流を適切に制御して、はんだ43を溶融させるのに十分な温度であるが基板40を溶融させる温度よりも低い温度に処理温度を制御する。ホットプレートを用いてさらに実験を行った結果、PETを溶融させることなく、SAC305を約230℃~240℃ではんだ付けできることがわかった。基板40は非常に柔らかくなり、著しく変形したものの、ガラス製のキャリア3から容易に取り外すことができた。しかし、ホットプレートを260℃に設定すると、PETは溶融し、ガラスに付着した。
【0045】
図11A図11B及び図11Cは、ヒートシンク2と、抵抗加熱装置32を備え、ターゲット境界面に電子部品46を載せた基板40を搬送するキャリア3とを用いてスタックをモデル作成したCOMSOLタイプのシミュレーションを示す。このモデルにおける各特性は、以下の通りである。
【0046】
-キャリア3は、可変厚みを有するガラスプレートである。
-基板40は、厚さ100マイクロメートルのPET層である。
-基板40上の電子部品46は、厚さ500マイクロメートルのAI層である。
-抵抗加熱装置32は、3秒間0.5W/mmの熱流を発生させ、したがって、全発熱量は、1.5J/cmである。
-ヒートシンク2の性能は、3kW/mKである。
【0047】
キャリア3の可変厚みの各設定(200、300、700マイクロメートル)について、以下の温度を本書では時間の関数として計算する。
【0048】
-ヒートシンク2とキャリア3との間のヒートシンク境界面における温度;
-キャリア3と基板40との間の加熱装置境界面における温度;
-基板40と電子部品46との間のはんだ境界面における温度。
【0049】
各設定について測定された曲線を、図11A図11B及び図11Cに示す。
【0050】
ガラス層3が200マイクロメートルの厚さでモデル化された図11Aの例では、抵抗加熱要素32が発生させる熱流の比較的大部分がヒートシンク2を介して消失することが分かる。これにより、はんだ境界面の温度は、はんだ43の溶融温度T43に近づきはするが、これは、はんだ43のリフローを完全に達成するには不十分である。
【0051】
ガラス層3の厚さが700マイクロメートルである図11Cの例では、はんだ境界面の温度は、はんだ43の溶融温度T43を容易に超過するが、しかしながら、加熱装置境界面の温度もまた、基板40の溶融温度T40を大きく超過してしまう。実際の応用では、これは、基板40が壊れて使用不可能になることを意味する。
【0052】
図11Bの例では、ガラス層3は、300マイクロメートルの厚さでモデル化されている。この場合、適切な均衡が達成され、はんだ境界面の温度は、はんだ43のリフローが完全に達成されるのに十分な時間にわたって、はんだ43の溶融温度T43を超過し、しかしながら、加熱装置境界面の温度は、基板40の溶融温度T40を超えはするが短い時間の間に過ぎず、基板40は実質的に変形することはなく、電子部品46を安全にはんだ付けできることが分かる。
【0053】
以上のことから、当業者であれば、簡単な実験又はシミュレーションを数回行えば、キャリア3の適切な寸法を事例ごとに決定することができることが明らかである。
【0054】
図11Dは、図11Bを参照して説明したシミュレーションの変形例を示す。この変形例においても、キャリア3は、300マイクロメートルの厚さでモデル化されている。しかし、図11Bの場合とは異なり、このシミュレーションでは、電気エネルギーは、パルス幅変調方式で抵抗加熱要素32に供給される。実際には、これは、加熱装置境界面における温度が基板40の溶融温度T40を超過する傾向があるときに抵抗加熱装置32への電力供給を中断するフィードバック部、例えば、図2に示すフィードバック部61により達成されてもよい。この場合、はんだ境界面における温度をはんだ43の溶融温度T43より高く維持しつつ、加熱装置境界面の温度を基板40の溶融温度T40より低く保つことができる。代替として、基板40の特性が既知である場合、溶融温度T40を超過することがないように、電力供給を制御するフィードフォワード制御部が使用されてもよい。図7A図7Bを参照して説明したように、温度抑制のために抵抗加熱要素32への電力供給が中断されている時間の間、電力を他の加熱要素に供給して、当該製造装置のリソースを効率的に使用してもよい。
【0055】
本書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。本書で使用される単数形「a」、「an」及び「the」は、そうではないと文脈から明らかでない限り、複数形も含むことが意図される。さらに、本書で使用される用語「備える」及び/又は「含む」は、記載された特徴、整数、工程、動作、要素及び/又は構成要素が存在することを示すが、1つ又は複数のその他の特徴、整数、工程、動作、要素、構成要素及び/又はそれらの集合体の存在又は追加を排除しないことが理解されよう。さらに、その逆であると明示しない限り、「又は」は、包括的な意味での「又は」であり、排他的な意味での「又は」を意味するものではない。たとえば、条件A又はBは、Aが真であり(つまり、存在する)かつBが偽である(つまり、存在しない)、Aが偽であり(つまり、存在しない)かつBが真である(つまり、存在する)、並びに、AとBの両方が真である(つまり、存在する)のいずれか1つにより充足される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
図11D
【国際調査報告】