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特表2023-546358CSFフローを制御し、頭蓋内圧を管理するためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(54)【発明の名称】CSFフローを制御し、頭蓋内圧を管理するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
A61M5/168 500
A61M5/168 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521128
(86)(22)【出願日】2021-10-06
(85)【翻訳文提出日】2023-06-05
(86)【国際出願番号】 US2021053829
(87)【国際公開番号】W WO2022076598
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】63/088,401
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ブルートゥース
(71)【出願人】
【識別番号】521034041
【氏名又は名称】エンクリアー セラピーズ, インク.
【氏名又は名称原語表記】EnClear Therapies, Inc.
【住所又は居所原語表記】65 Parker Street, #3A, Newburyport, MA 01950, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジェンナ リッカルディ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム エックス. シオペス ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】マーシー グリックスマン
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー デパスクア
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン ケイリッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ラジャン パテル
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066FF01
4C066QQ25
4C066QQ35
4C066QQ58
4C066QQ72
4C066QQ82
4C066QQ92
(57)【要約】
患者に使用するCSF管理方法および/または装置が、少なくとも1つのポンプおよびカテーテルを有するCSF回路を形成する。CSF回路は、患者の身体内のCSFのフローを制御するように構成される。次いで、方法は、ポンプおよびカテーテルを使用して、患者のCSFをCSF回路に所与の流量で流し、CSF回路にCSFを流すときに、圧力センサを使用して、患者の頭蓋脊椎区画内の頭蓋内圧を監視する。安全のために、方法は、頭蓋脊椎区画内の監視された頭蓋内圧に応じて、CSF回路内のCSFの所与の流量を制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に使用するためのCSF管理方法であって、前記患者の身体がCSFを有し、前記患者がまた頭蓋脊椎区画を有し、前記方法が、
少なくとも1つのポンプおよびカテーテルを有するCSF回路を形成することであって、前記患者の身体内のCSFのフローを制御するように構成されるCSF回路を形成することと、
前記ポンプおよび前記カテーテルを使用して、前記患者のCSFを前記CSF回路に所与の流量で流すことと、
前記CSF回路にCSFを流すときに、圧力センサを使用して、前記患者の前記頭蓋脊椎区画内の頭蓋内圧を監視することと、
前記頭蓋脊椎区画内の監視された前記頭蓋内圧に応じて、前記CSF回路内のCSFの前記所与の流量を制御することと
を含む、方法。
【請求項2】
高閾値圧力値を設定することをさらに含み、
さらに、制御することが、前記頭蓋内圧が前記高閾値圧力値以上であると検出された場合、前記CSFの前記所与の流量を低減させることを含む、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
低閾値圧力値を設定することをさらに含み、
さらに、制御することが、前記頭蓋内圧が前記低閾値圧力値以下であると検出された場合、前記CSFの前記所与の流量を増加させることを含む、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記頭蓋内圧が高閾値圧力値以上である場合、または前記頭蓋内圧が低閾値圧力値以下である場合、アラートを生成することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
高閾値圧力値と低閾値圧力値との間に10および20mmHgの差を有する圧力閾値範囲を受信することをさらに含み、前記所与のレートを制御することが、前記頭蓋内圧が前記圧力閾値範囲内にある場合、前記所与の流量を所定の値に維持することを含み、制御することが、前記頭蓋内圧が前記圧力閾値範囲外にあると検出された場合、前記所与の流量を異なる値に修正することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記頭蓋内圧に関連する情報を示す指標を表示するためのディスプレイによって使用するための出力情報を生成することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記CSF回路が閉じた流体回路であり、さらに、前記CSF回路が前記患者内への流体ポートを備え、前記カテーテルが前記ポートに取り外し可能に結合される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記所与の流量を制御することが、前記所与の流量を増加または減少させるためにポンプ出力を増加または減少させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記CSF回路が、側脳室、腰椎髄腔、第3脳室、第4脳室、および大槽のうちの1つ以上を含む、患者の解剖学的組織内の1つ以上のCSF収容区画にアクセスする、請求項1記載の方法。
【請求項10】
CSFを流すことが、前記頭蓋内圧が高閾値圧力値と低閾値圧力値との間にある場合、前記所与の流量を実質的に一定のレートに維持することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記CSF回路が、カートリッジに取り外し可能に結合するように構成された取り外し可能な結合のためのポートを備え、前記カートリッジが、CSFを物質と混合して混合されたCSF/物質を生成するように構成され、前記カートリッジが、前記混合されたCSF/物質を前記カートリッジから前記カテーテル内に移動させる出力を有する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記CSF回路がロードセルを備え、監視することが、前記頭蓋内圧に関連する情報を含む圧力信号を前記ロードセルから受信することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
患者に使用するためのCSF管理システムであって、前記患者の身体がCSFを有し、前記患者が前記患者のCSFへのポートを有し、前記患者がまた頭蓋脊椎区画を有し、前記システムが、
カテーテル、弁を有し、少なくとも1つのポンプと連携するように構成されたCSF回路であって、前記患者のCSFのフローを制御するように構成され、前記患者のポートに取り外し可能に結合可能であるCSF回路と、
前記カテーテルに動作可能に結合可能である圧力センサであって、前記CSF回路にCSFを流すときに、前記患者の前記頭蓋脊椎区画内の頭蓋内圧を監視するように構成された圧力センサと、
前記CSF回路に前記CSFを所与の流量で流すために前記ポンプを制御するように構成されたコントローラであって、前記CSF回路内の前記CSFの前記所与の流量を、前記頭蓋脊椎区画内の監視された前記頭蓋内圧に応じて制御するように構成されたコントローラと
を備える、システム。
【請求項14】
前記コントローラが、前記頭蓋内圧が高閾値圧力値以上であると検出された場合、前記CSFの前記所与の流量を低減させるように構成される、請求項13記載のシステム。
【請求項15】
前記コントローラが、前記頭蓋内圧が低閾値圧力値以下であると検出された場合、前記CSFの前記所与の流量を増加させるように構成される、請求項13記載のシステム。
【請求項16】
前記コントローラに動作可能に結合されたアラームをさらに備え、前記アラームが、前記頭蓋内圧が高閾値圧力値以上である場合、または前記頭蓋内圧が低閾値圧力値以下である場合、アラートを生成するように構成される、請求項13記載のシステム。
【請求項17】
前記コントローラに動作可能に結合されたディスプレイをさらに備え、前記ディスプレイが、前記頭蓋内圧に関連する情報を示す出力指標を生成するように構成される、請求項13記載のシステム。
【請求項18】
前記患者が流体ポートを有し、前記カテーテルが、前記ポートに取り外し可能に結合するための取り外し可能なカップリングを有する、請求項13記載のシステム。
【請求項19】
前記コントローラが、前記頭蓋内圧が高閾値圧力値と低閾値圧力値との間にある場合、前記所与の流量を実質的に一定のレートに維持するように構成される、請求項13記載のシステム。
【請求項20】
前記CSF回路が、カートリッジと、前記カートリッジに取り外し可能に結合するためのポートとを備え、前記カートリッジが、CSFを物質と混合して混合されたCSF/物質を生成するように構成され、前記カートリッジが、前記混合されたCSF/物質を前記カートリッジから前記カテーテル内に移動させる出力を有する、請求項13記載のシステム。
【請求項21】
前記CSF回路がロードセルを備え、前記コントローラが、前記ロードセルに動作可能に結合されて、前記頭蓋内圧に関連する情報を含む圧力信号を前記ロードセルから受信する、請求項13記載のシステム。
【請求項22】
前記CSF回路が前記ポンプを備える、請求項13記載のシステム。
【請求項23】
患者に使用するためのコンピュータシステム上で使用するためのコンピュータプログラム製品であって、前記患者の身体がCSFを有し、前記患者がまた頭蓋脊椎区画を有し、少なくとも1つのポンプおよびカテーテルを有するCSF回路に結合され、前記CSF回路が、前記患者の身体内のCSFのフローを制御するように構成され、前記コンピュータプログラム製品が、コンピュータ可読プログラムコードを有する有形かつ非一過性のコンピュータ使用可能媒体を備え、前記コンピュータ可読プログラムコードが、
前記患者のCSFを前記CSF回路に所与の流量で流すために前記ポンプを管理するためのプログラムコードと、
前記CSF回路にCSFを流すときに、圧力センサを使用して、前記患者の前記頭蓋脊椎区画内の頭蓋内圧を監視するためのプログラムコードと、
前記頭蓋脊椎区画内の監視された前記頭蓋内圧に応じて、前記CSF回路内の前記CSFの前記所与の流量を制御するためのプログラムコードと
を備える、コンピュータプログラム製品。
【請求項24】
高閾値圧力値を設定するためのプログラムコードをさらに備え、
さらに、制御するための前記プログラムコードが、前記頭蓋内圧が前記高閾値圧力値以上であると検出された場合、前記CSFの前記所与の流量を低減させるためのプログラムコードを備える、請求項23記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項25】
低閾値圧力値を設定するためのプログラムコードをさらに備え、
さらに、制御するための前記プログラムコードが、前記頭蓋内圧が前記低閾値圧力値以下であると検出された場合、前記CSFの前記所与の流量を増加させるためのプログラムコードを備える、請求項23記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項26】
前記頭蓋内圧が高閾値圧力値以上である場合、または前記頭蓋内圧が低閾値圧力値以下である場合、アラートを生成するためのプログラムコードをさらに備える、請求項23記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項27】
高閾値圧力値と低閾値圧力値との間に10~20mmHgの差を有する圧力閾値範囲を受信するためのプログラムコードをさらに備え、前記所与のレートを制御するための前記プログラムコードが、前記頭蓋内圧が前記圧力閾値範囲内にある場合、前記所与の流量を所定の値に維持するためのプログラムコードを備え、制御するための前記プログラムコードが、前記頭蓋内圧が前記圧力閾値範囲外にあると検知された場合、前記所与の流量を異なる値に修正するためのプログラムコードをさらに備える、請求項23記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項28】
前記頭蓋内圧に関連する情報を示す出力指標を生成するためのプログラムコードをさらに備える、請求項23記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項29】
前記ポンプを管理するための前記プログラムコードが、前記頭蓋内圧が高閾値圧力値と低閾値圧力値との間にある場合、前記所与の流量を実質的に一定のレートに維持するためのプログラムコードを備える、請求項23記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項30】
監視するための前記プログラムコードが、前記頭蓋内圧に関連する情報を含む圧力信号を圧力センサから受信するためのプログラムコードを備える、請求項23記載のコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本特許出願は、「SYSTEMS,DEVICES,AND METHODS OF FLUID MANAGEMENT AND DRUG DELIVERY」と題され、Gianna N. Riccardi、William X Siopes、Marcie Glicksman、Anthony DePasqua、およびKevin Kalishを発明者とする、2020年10月6日に出願した米国仮特許出願第63/088,401号の優先権を主張し、その開示は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
関連出願
本特許出願は、2021年9月29日に出願した、同一出願人および重複する一部の発明者による以下の特許出願に関連する。これらの3つの特許出願は全て、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0003】
- 米国出願第17/489,620号、
- 米国出願第17/489,625号、および
- 米国出願第17/489,633号。
【0004】
政府権利
なし
分野
例示的な実施形態は、概して、医療デバイスおよび方法に関し、より詳細には、例示的な実施形態は、脳脊髄液(「CSF」)などのくも膜下液および/または神経変性障害を治療するために使用され得る薬剤送達を管理するためのデバイスおよび方法に関する。
【0005】
背景
脳脊髄液を介した髄腔内薬剤送達には、多くの安全上の問題がある。特に、頭蓋内圧を過度に増加させたり、過度に減少させたりすると、患者に重大なリスクをもたらす可能性がある。
【0006】
様々な実施形態の概要
本発明の一実施形態によれば、患者に使用するCSF管理方法および/または装置が、少なくとも1つのポンプおよびカテーテルを有するCSF回路を形成する。CSF回路は、患者の身体内のCSFのフローを制御するように構成される。次いで、方法は、ポンプおよびカテーテルを使用して、患者のCSFをCSF回路に所与の流量で流し、CSF回路にCSFを流すときに、圧力センサを使用して、患者の頭蓋脊椎区画内の頭蓋内圧を監視する。安全のために、方法は、頭蓋脊椎区画内の監視された頭蓋内圧に応じて、CSF回路内のCSFの所与の流量を制御する。
【0007】
方法は、高閾値圧力値および/または低閾値を設定してもよい。高閾値を設定する場合、方法/装置は、頭蓋内圧が高閾値圧力値以上であると検出された場合、CSFの所与の流量を低減させてもよい。対応する方法で、低閾値を設定する場合、方法/装置は、頭蓋内圧が低閾値圧力値以下であると検出された場合、CSFの所与の流量を増加させてもよい。介護者にアラートするために、方法/装置は、頭蓋内圧が高閾値圧力値以上である場合、または頭蓋内圧が低閾値圧力値以下である場合、アラートを生成してもよい。介護者に知らせ続けるために、方法/装置は、頭蓋内圧に関連する情報を示す指標を表示するためのディスプレイによって使用するための出力情報を生成してもよい。
【0008】
方法/装置は、圧力閾値範囲(例えば、5~25mmHgまたは10~20mmHg)を受信してもよい。その圧力閾値範囲は、その高閾値圧力値と低閾値圧力値との間に10~20mmHgの差を有してもよい。その場合、方法/装置は、頭蓋内圧が圧力閾値範囲内にある場合、所与の流量を所定の値に維持することによって所与のレートを制御してもよい。しかし、方法/装置は、頭蓋内圧が圧力閾値範囲外にあると検出された場合、所与の流量を異なる値に修正してもよい。
【0009】
CSF回路は、好ましくは、閉じた流体回路である。例えば、CSF回路は、患者内への流体ポートを含んでもよい。その場合、カテーテルは、ポートに取り外し可能に結合されてもよい。他の位置の中でも、CSF回路は、側脳室、腰椎髄腔、第3脳室、第4脳室、および大槽のうちの1つ以上を含む、患者の解剖学的組織内の1つ以上のCSF含有区画にアクセスしてもよい。
【0010】
いくつかの実施形態は、頭蓋内圧が高閾値圧力値と低閾値圧力値との間にある場合、所与の流量を実質的に一定のレートに維持してCSFを流してもよい。そのうえ、CSFを治療するために、CSF回路は、カートリッジに取り外し可能に結合するように構成された取り外し可能な結合のためのポートを有してもよく、カートリッジは、CSFを物質(例えば、薬剤、治療薬など)と混合して混合されたCSF/物質を生成するように構成される。カートリッジは、混合されたCSF/物質をカートリッジからカテーテル内に移動させるための出力を有する。
【0011】
多くの異なる実装態様では、CSF回路内で様々な圧力センサを使用してもよい。例えば、CSF回路は、ロードセルを使用してもよい。したがって、方法/装置は、ロードセルから圧力信号を受信することによって監視を行ってもよい。とりわけ、圧力信号は、頭蓋内圧に関連する情報を有してもよい。
【0012】
別の実施形態によれば、CSF管理システムが、カテーテルおよび弁を含むCSF回路を有する。CSF回路は、少なくとも1つのポンプと連携するように構成され、患者のCSFのフローを制御し、患者のポートに取り外し可能に結合可能である。システムはまた、カテーテルに動作可能に結合可能である圧力センサを有する。圧力センサは、CSF回路にCSFを流すときに、患者の頭蓋脊椎区画内の頭蓋内圧を監視するように構成される。コントローラが、CSF回路にCSFを所定の流量で流すためにポンプを制御するように構成される。コントローラは、CSF回路内のCSFの所与の流量を、頭蓋脊椎区画内の監視された頭蓋内圧に応じて制御するようにも構成される。
【0013】
本発明の例示的な実施形態は、コンピュータ可読プログラムコードを有するコンピュータ使用可能媒体を有するコンピュータプログラム製品として実施される。コンピュータ可読コードは、従来のプロセスに従ってコンピュータシステムによって読み取られ、利用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
当業者は、直後に要約される図面を参照して述べる以下の「例示的な実施形態の説明」から、本発明の様々な実施形態の利点をより完全に理解するはずである。
図1A】本発明の例示的な実施形態と共に使用され得る脳脊髄液回路を模式的に示す図である。
図1B】例示的な実施形態によって構成された外部カテーテルを模式的に示す図である。
図1C】例示的な実施形態による高位の手術フロープロセスを示す図である。
図2】本開示のいくつかの実施形態によるカートリッジを模式的に示す図である。
図3A】例示的な実施形態による直列に接続された複数のカートリッジを模式的に示す図である。
図3B】例示的な実施形態による並列に接続された複数のカートリッジを模式的に示す図である。
図4】例示的な実施形態による、CSFフローシステム内の再装填可能なカートリッジを模式的に示す図である。
図5】例示的な実施形態による、EEPROMを備える、かつ/またはブルートゥースアンテナを備えたPCBを備える再装填可能なカートリッジを模式的に示す図である。
図6A】例示的な実施形態による、閉位置にある図4の再装填可能なカートリッジの弁を模式的に示す図である。
図6B】例示的な実施形態による、開位置にある図4の再装填可能なカートリッジの弁を模式的に示す図である。
図7】例示的な実施形態によって腰椎から脳室にフローを導くことを模式的に示す図である。
図8】例示的な実施形態によって脳室から腰椎にフローを導くことを模式的に示す図である。
図9】例示的な実施形態によって、脈動性のパターンで腰椎から脳室にフローを導くことを模式的に示す図である。
図10A】例示的な実施形態による、相反する2つの方向のフロー(図10B 脳の右脳室と左脳室との間)を可能にする双方向ポンプ回路を模式的に示す図である。
図10B】例示的な実施形態による、相反する2つの方向のフロー(図10B 脳の右脳室と左脳室との間)を可能にする双方向ポンプ回路を模式的に示す図である。
図11】例示的な実施形態による別のシステムインターフェイスを模式的に示す図である。
図12】例示的な実施形態による、CSF循環チューブに結合されたセンサ要素およびロードセルインターフェイスを模式的に示す図である。
図13A】例示的な実施形態による、高圧閾値に関して閉ループフロー制御を維持するための同制御に関与するプロセスの概要を提示する図である。
図13B】例示的な実施形態による、低圧閾値に関して閉ループフロー制御を維持するための同制御に関与するプロセスの概要を提示する図である。
【0015】
例示的な実施形態の説明
例示的な実施形態は、哺乳類の身体内の脳脊髄液(「CSF」)のフローを管理して、未調節のまたは極端な頭蓋内圧に関連するリスクを最小限に抑える。そのために、CSF管理システムが、そのような圧力が所定の圧力範囲を超える場合、そのCSF回路を通るCSFフローを直接的または間接的に制御する。したがって、システムは、1つ以上のポンプ、弁、および/またはカテーテル/チューブなどのCSF回路内の様々な機能的な構成要素を制御して、測定されたまたはその他の方法で決定された頭蓋内圧に応じてCSF流量を制御するフローコントローラを含む。
【0016】
CSF回路はまた、任意で、様々なシステム構成要素を分解することなくシステムの残りの部分に対して迅速に接続および取り外しできる再装填可能なカートリッジを含んでもよい。カートリッジは、CSF回路内のカテーテル/チューブを通るフローを調節できる1つ以上の弁と、過剰な空気を放出し、システムに入るのを防ぐための空気抜きとを含むことができる。システムは、頭蓋内の問題の警告を生成するためにアラートを送信するように構成することができる。そのうえ、システムは、関連する圧力を能動的に監視し、CSFフローを好ましいレートに維持し、かつ閉塞または著しいフローの低減を防ぐために、流量を自動的に調整するフローコントローラを有することができる。
【0017】
例示的な実施形態の詳細については、後述する。本開示は、本明細書に開示されるシステム、デバイス、および方法の構造、機能、製造、および使用の原理の全体的な理解をもたらすために、特定の例示的な実施形態を説明することに留意されたい。これらの実施形態の1つ以上の例が、添付図面に示されている。当業者であれば、本明細書で具体的に説明され、添付図面に示されたシステム、組成物、および方法は、非限定的な例示的な実施形態であり、本開示の範囲は、特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解するであろう。例示的な一実施形態に関連して示され、または説明される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わされてもよい。そのような修正および変形は、本開示の範囲内に含まれることが意図されている。
【0018】
多くの神経変性疾患は、哺乳類被験体のくも膜下腔(SAS)内の脳脊髄液(CSF)または他の流体(例えば、間質液)に含まれる生体分子(例えば、毒性タンパク質)の蓄積と結び付けられている。問題は、これらの(例えば、毒性の)生体分子が分泌された後に、身体の他の細胞にCSFによって輸送されることがあり、このプロセスは、数年間にわたって起こる場合がある。例えば、ジペプチドリピートタンパク質(DPR)および/またはTDP-43は、ほんの一部を挙げると、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルー・ゲーリッグ病)、アルツハイマー病(AD)、前頭側頭型認知症(FTD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、進行性核上麻痺(PSP)などの病理における神経細胞死と関係があるとされている。そのため、有害なDPRの除去に主眼を置いた研究が行われてきた。DPRおよび/またはTDP-43を除去する技術としては、CSF腔からCSFをシャントすること、CSFを(例えば、人工液で)希釈すること、CSF中に薬剤を施すこと、CSFを調整すること、および/またはCSFフローを操作することがあった。
【0019】
この問題を扱うための最近の画期的な技術には、CSFを改善することと、特定の(毒性)タンパク質を除去または分解することによって神経障害を治療することとが含まれる。
【0020】
様々な実施形態で使用するような改善には、特に区別されない限り(例えば、もっぱらCSFと呼ばれる)、哺乳類被験体のくも膜下腔(SAS)内の流体(例えば、脳脊髄液(CSF)、間質液(ISF)、血液など)を改善するためのシステムおよび方法が含まれる。代表的なシステムは、哺乳類被験体の身体内に完全にまたは部分的に埋め込まれてもよい(後述)。身体内では、システムおよび/またはその構成要素は、SAS内に完全にまたは部分的に埋め込まれ、ポート16(例えば、内部のシステム構成要素への選択的なアクセスを提供する医療用弁)を介して外部に露出されてもよい。これらのシステムは、完全に生体内で起こり得るプロセス、または体外で起きるいくつかのステップを実行する。例示的な実施形態は、後述するCSF回路を用いて改善する。
【0021】
改善としては、例示の目的で、特定の実体(標的分子、タンパク質、凝集粒子、ウイルス、細菌、細胞、対、酵素、抗体、物質、および/またはそれらの任意の組合せ)をより受容し易くする、かつ/または不活性化するために、流体の物理的パラメータを変更すること、ならびに消化、除去、固定化、低減、および/または改変が挙げられる。例えば、いくつかの実施形態および用途では、改善とは、血液、間質液、もしくはそこに含まれるグリフ(glymph)、もしくは他の流体のうちの1つ以上から毒性タンパク質を除去すること、またはそれらを調整すること、ならびに様々な身体機能に影響を及ぼす疾患または状態の治療に対して、この除去が及ぼす影響(すなわち、患者の臨床状態の改善)を指す場合がある。そのうえ、改善は、以下のうちのいずれか1つによって実施されてもよい。消化、酵素消化、ろ過、サイズろ過、接線流ろ過、向流カスケード限外ろ過、遠心分離、分離、磁気分離(ナノ粒子などを用いるものを含む)、電気物理的分離(酵素、抗体、ナノボディ、分子認識ポリマー、リガンド-受容体複合体、ならびに他の電荷および/または生体親和性相互作用のうちの1つ以上によって実施される)、光子法(蛍光活性化セルソータ(FACS)、紫外線(UV)滅菌、および/または光ピンセットを含む)、光-音響相互作用、化学治療、熱法およびそれらの組合せ。有利なことに、本発明の様々な実施形態または実装態様は、毒性のレベルを低減し、低減した後に、低減したレベルを長期にわたって維持することを容易にすることができる。
【0022】
標的生体分子の濃度によって反映されるような改善の程度は、様々な手段によって検出されてもよい。これらには、光学技術(例えば、ラマン、コヒーレントストークス、および反ストークスラマン分光法、表面増強ラマン分光法、ダイヤモンド窒素空孔磁気測定法、蛍光相関分光法、動的光散乱など)、およびカーボンナノチューブなどのナノ構造の使用、酵素免疫測定法、表面プラズモン共鳴、液体クロマトグラフィ、質量分析、環状近接結紮測定法などが含まれる。
【0023】
改善には、治療システム(例えば、紫外線、赤外線)の使用、およびその特性が改善に適している物質の使用が含まれてもよい。CSFの改善または改善されたCSF(これらの用語は、本明細書で互換的に使用する場合がある)は、1つ以上の標的化合物が部分的、ほとんど、または完全に除去された、治療されたCSFを指す。本明細書で使用する除去という用語は、取り去ることのように、空間的に分離することだけでなく、分子を隔離、固定化、または変形することにより(例えば、形状変化、変性、消化、異性化、または翻訳後修飾により)、毒性を低くして、毒性をなくして、または毒性とは無縁にして、効果的に除去することも指す場合があることが理解されよう。
【0024】
「改善剤」という用語は概して、酵素、抗体または抗体フラグメント、核酸、受容体、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗DNA/RNA、タンパク質/アミノ酸、糖質、酵素、異性化酵素、高-低生物特異的結合親和性化合物、アプタマー、エクソソーム、紫外線、温度変化、電場、分子認識ポリマー、生細胞など、流体を改善できる物質またはプロセスを指す。改善に関する追加の詳細は、組み込まれた関連出願、および2020年4月10日に出願されたPCT出願第PCT/US20/27683号によって教示され、その開示は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。同様に、さらなる治療の詳細は、2019年7月22日に出願されたPCT出願第PCT/US19/042880号によって教示され、その開示は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0025】
身体内の(例えば、脳室を通る)CSFフローを制御するために、例示的な実施形態は、閉ループ内の流体フローを管理するCSF回路/チャネル(参照番号「10」で識別される)を形成する。図1Aは、例えば、そのようなCSF回路10の一実施形態を示す。この例では、生体内/身体の内部に配置された内部カテーテル12(「チューブ」などとも総称される)同士が、くも膜下腔を介して流体結合する。そのために、第1の内部カテーテル12が、脳の所定の領域(例えば、脳室)を第1のポート16に流体結合し、ポート自体は、外部構成要素によってアクセスできるように構成され配置される。対応する方法で、第2のカテーテルが、腰椎領域またはくも膜下腔の下腹部を、第1のポート16と同様に配置され、かつ外部の構成要素によってアクセスできるように構成された第2のポート16に結合する。
【0026】
第1および第2のポート16は、弁付きルアーロックまたは取り外し可能な針など、そのような目的に従来から使用しているものでもよい。したがって、第1および第2の内部カテーテル12は、第1のポート16から脳室へ、脊椎/くも膜下腔を下って腰椎へ、そして第2のポート16へと延びる流体チャネルを形成すると考えられてもよい。これらの内部構成要素は、「内部CSF回路構成要素」と呼ばれることがあり、典型的には、病院環境において熟練した専門家によって外科的に埋め込まれる。
【0027】
CSF回路10はまた、外部構成要素(「外部CSF回路構成要素」と呼ばれる)を有する。そのために、外部CSF回路構成要素は、少なくとも2つの流体導管14を含む。具体的には、外部CSF回路構成要素は、脳室にアクセスするために第1のポート16に結合する第1の外部流体導管14を含む。第1の外部導管14の他方の端部は、管理システム19に結合され、管理システムは、1つ以上のCSFポンプ(全てのポンプが、図では参照番号「18」として総称して識別される)、1つ以上のユーザインターフェイス/ディスプレイ20、1つ以上の薬剤ポンプ18、および制御システム/コントローラ22を含む。流体外部流体導管14は、カテーテルとして実装されてもよく、したがって、この用語は、用語「導管」と交換可能に使用され、同じ参照番号14で識別されてもよい。
【0028】
例示的に、この管理システム19は、従来の支持構造(例えば、図1Aの病院ポール24)によって支持される。CSF回路10を閉じるために、第2の外部カテーテル14が、その同じCSF管理システム19から延び、第2のポート16と管理システム19とに結合する。したがって、この管理システム19および外部カテーテル14は、CSFおよび治療物質を循環させるための閉じたCSF回路10の外部部分を形成する。
【0029】
CSF回路10は、第1および第2のポート16と第1および第2の外部カテーテル14のそれぞれの取り外し可能な接続部との間に1つ以上の構成要素を有してもよいことに留意されたい。例えば、第1のポート16は、第1の外部カテーテル14に結合するアダプタを有してもよく、またはフローセンサを備えた別のカテーテルが、そのような外部カテーテル14とポート16との間に結合してもよい。よって、これはやはり、間接的な流体接続部とはいえ、取り外し可能な接続部と考えられてもよい。第1の外部カテーテル14の他方の端部との対応する装置、および第2の外部カテーテル14の対応する端部との対応する装置が存在してもよい。したがって、接続部は、直接的な接続部であってもよいし、間接的な接続部であってもよい。
【0030】
第1の外部カテーテル12および第2の外部カテーテル14は、好ましくは、それぞれのポート16と同様に、管理システム19との取り外し可能な接続部/カップリングを有するように構成される。取り外し可能なカップリングの例としては、スクリューオンフィット、干渉フィット、スナップフィット、または当技術分野で知られている他の既知の取り外し可能なカップリングを挙げることができる。したがって、取り外し可能なカップリングまたは取り外し可能な接続部が、そのような接続または切断のためにポート16を強制的に破壊、切断、または他の方法で恒久的に破壊することを必ずしも必要としない。しかし、いくつかの実施形態は、破壊または他の方法による第1および/または第2のポート16からの切断を可能にしてもよいが、第1および/または第2のポート16は、(例えば、取り外した外部カテーテル14の寿命の終わりに)別の外部カテーテル14を受けるために無傷のままであるべきである。
【0031】
図1Bは、第1および/または第2の外部導管/カテーテル14のさらなる詳細を模式的に示す。この図は、システムの他の部分と共に機能する外部カテーテル14の例を示している。図示のように、この例では、システムは、カテーテル14上の逆止弁28およびTポートを介してカテーテル14に流体結合する、治療物質(例えば、薬剤)の用量を送達するように構成された任意の薬剤リザーバ17(例えば、単回使用シリンジ)を受ける。加えて、カテーテル14はまた、機械式ポンプ18に結合され、好ましくは、サンプルポート23に向けてまたはサンプルポート23から離れるようにフローを転流するための転流器25を備えたサンプルポート23を含む。サンプルポート23は、好ましくは、サンプルを追跡するためのサンプルポートフローセンサ23Aを有する。
【0032】
いくつかの実施形態は、取り外し可能に結合可能な複数の端部(または取り外し可能に結合可能な1つだけの端部)を備えた流体フローボアを形成する本体を有する単純なカテーテルとして実施されてもよい。しかし、例示的な実施形態は、これらの外部カテーテル14の一方または両方を「スマート」カテーテルにするためにインテリジェンスを追加し、よりインテリジェントなフローシステムを効果的に作り出す。例えば、外部カテーテル14の一方または両方のいずれかは、デバイスを収集、管理、制御するように、かつセキュリティ、患者監視、カテーテル使用、またはCSF回路10の流体力学を能動的に制御するための管理システム19との通信を目的とした情報を記憶するように構成された、プロセッサ、ASIC、メモリ、(後述する)EEPROM、FPGA、RFID、NFCまたは他のロジック(参照番号「27」として総称して識別される)を有することができる。とりわけ、管理システム19は、薬剤リザーバ17の出力部で逆止弁28を介してCSF回路10に添加された治療物質注入フロー(後述する)に応じてCSF流体フローを制御するためにEEPROM27と連携するように構成されてもよい。
【0033】
図1Bに示すように、外部カテーテル14の一実施形態は、様々な機能を実現するために実装され得る電気的消去可能なプログラマブル読み取り専用メモリ、EEPROM27(または他のロジック/電子装置)を有する。とりわけ、EEPROM27は、CSF回路10およびその機能が、患者、治療タイプ、特定の疾患、および/または治療物質に対してカスタマイズ/個別化されることを確実にすることができる。例えば、EEPROM27に記憶された情報の読み取りに応じて、制御システム22は、治療物質に応じて流体フローを制御するように構成されてもよい。
【0034】
重要なことに、使い捨てデバイスとして、EEPROM27または外部カテーテル14の他のロジックは、アラートを与えるように、かつ/または外部カテーテル14が寿命の終わりに達したことを示す、もしくは寿命がどれだけ残っているかを示す何らかの指標(例えば、メッセージ、視覚表示、音声表示など)を生成する、もしくは生成させるように構成することができる。例えば、カテーテル14の外部表面は、EEPROM27および/または他のロジック27が、外部カテーテル14が全寿命の使用に達したと決定したときに赤くなるタグを有してもよい。例えば、外部カテーテル14は、CSF流体導管14の使用を追跡して、公称寿命を超えて使用されないことを確実にするのを助けるように構成された、何らかのロジックまたはEEPROM27として実装される使用メータを有すると考えられてもよい。そのうえ、ロジックまたはEEPROM27は、制御システム22に登録して、改ざんまたは寿命を超えた使用を減らすために使用タイマを始動させることができる。
【0035】
いくつかの実施形態は、ポンプ18および/または制御システム22と通信するように構成された、無線インターフェイス(例えば、ブルートゥースアンテナ)またはハードウェア接続部を備えた印刷可能な回路基板(PCB)を有する。外部カテーテル14は、一定期間後にタイムアウトし、データを取り込み、制御システム22または他のカテーテル外もしくはカテーテル内の装置と通信し合ってシステム仕様およびパラメータを共有するように構成することができる。インテリジェントフローカテーテル14は、CSF回路10および付随するプロセスの安全性および有効性を確保するために、ノックオフ品または(後述する)カートリッジ26の設計を防止できるように、独自の接続部を備えて設計することができる。
【0036】
管理ロジックに加えて、外部カテーテル14はまた、1つ以上のフローセンサのセットおよび/または1つ以上の圧力センサのセットを有してもよい。これらのフローセンサは両方とも、参照番号29で総称して示されており、図1Bにおけるそれらの位置の上流または下流に配置されてもよい。例えば、図1Bに総称して示す左側のセンサ29は、フローセンサ、圧力センサ、またはフローセンサと圧力センサとの両方であってもよい。同じことが、図1Bに総称して示す右側のセンサ29についても言える。それらは、好ましくは、図示のように、身体上のポート16と残りの構成要素との間に配置される。
【0037】
もちろん、フローセンサ29は、カテーテル本体のボアを通るフローを検出するように構成されてもよい一方、圧力センサ29は、本体のボア内の圧力を検出するように構成されてもよい。他の機能の中で、フローセンサ29は、導管ボアを通る流体の流量および/または導管ボアを通る総フロー体積を監視してもよい。
【0038】
カテーテル14は、好ましくは、異なる位置でそれぞれ異なる硬度値を有するように構成される。具体的には、例示的な実施形態は、図示および上述のように、機械式ポンプ18を使用してもよい。ポンプ18は、そのインターフェイス18Aでカテーテル14と接触するカテーテル14の部分に沿って、周期的に圧縮力をかけてもよい。この場合におけるポンプ18の出口は、隣の圧縮されたカテーテル部分の出力を受けている、カテーテル14の部分(例えば、圧縮されたカテーテル部分に隣接する部分)であってもよい。効率的に動作するために、例示的な実施形態は、その位置で特別に構成された硬度(例えば、25~35ショアA)を有するようにカテーテル14を形成する。直径も、フローにとって重要であり、したがって、当業者は、性能およびデュロメータ/硬度に応じて適切な直径を決定すべきである。好ましくは、ポンプ18に接触するカテーテル部分は、カテーテル14の残りの部分よりも柔らかいが、両者は同じ硬度を有してもよい。したがって、カテーテルは、好ましくは、その長さに沿って可変の硬度を有し、可変の直径を有してさえもよい。
【0039】
代替的な実施形態は、開ループCSF流体回路10を提供してもよい。例えば、CSF流体回路10は、流体が添加され、その後に除去される開放槽(図示せず)を有してもよい。しかし、本発明者らは、閉ループの実施形態が、開ループCSF流体回路10よりも良い結果をもたらすと見込んでいる。
【0040】
例示的な実施形態は、1つ以上のキットとして医療施設および/または病院に配布される。例えば、より包括的な1つのキットが、内部カテーテル12および外部カテーテル14を含んでもよい。別の例示的なキットが、内部カテーテル12およびポート16(例えば、病院用の)のみを含んでもよい一方、第2のキットが、外部カテーテル14および/または単回使用シリンジを有してもよい。他の例示的なキットが、外部カテーテル14と、管理システム19および/またはCSF治療カートリッジ1800などの他の構成要素とを含んでもよい。このキットの一部でもあり得るCSF回路10および外部構成要素の様々な実施形態については、以下を参照されたい。
【0041】
したがって、結合されると、これらのポンプ18、弁(後述し、全ての弁が、参照番号28で総称して識別される)、内部および外部カテーテル14、ならびに他の構成要素は、規定および制御された方法で身体内の所望の位置にCSFを導く流体導管/チャネルを形成すると考えられてもよい。特定の位置およびCSF収容区画について述べるが、当業者は、他の区画(例えば、側脳室、腰椎髄腔、第3脳室、第4脳室、および/または大槽)を管理できることを認識すべきであることに留意されたい。脳室および腰椎髄腔にアクセスするよりもむしろ、キットを用いて両方の側脳室にアクセスすることが可能である。両方の内部カテーテル12が埋め込まれた状態で、CSFが、2つの側脳室の間で循環させられてもよく、または薬剤が、両方の脳室に同時に送達されてもよい。
【0042】
図1Cは、本発明の例示的な実施形態による、図1AのCSF回路10を組み込み得る高位の手術フロープロセスを示す。このプロセスは、手術フローを完成させるために通常使用するであろう、より長いプロセスから実質的に簡略化されていることに留意されたい。したがって、このプロセスは、当業者がおそらく使用するであろう多くの追加のステップを有してもよい。加えて、ステップのいくつかは、図示の順序とは異なる順序で、または同時に実施されてもよい。したがって、当業者は、プロセスを適宜修正することができる。そのうえ、上述し、また後述するように、前述の物質、デバイス、および構造の多くは、使用され得る多種多様な異なる物質および構造のうちの1つにすぎない。当業者は、用途および他の制約に応じて、適切な物質および構造を選択することができる。したがって、特定の物質、デバイス、および構造に関する記述は、全ての実施形態を限定することを意図していない。
【0043】
プロセスは、ステップ100において、内部カテーテル12を患者の内部に設置することによって始まる。そのために、ステップ100は、標準的なカテーテルおよび技術を使用して脳室および髄腔にアクセスし、したがって、CSFへのアクセスを提供する。次に、ステップ102は、アクセスカテーテル12を腹膜カテーテル12に接続し、腹膜カテーテルは、下腹部へと皮下的にトンネル状に通される。次に、トンネル状に通されたカテーテル12は、ステップ104において、腹部に埋め込まれたポート16に接続される。
【0044】
この時点で、プロセスは、体外循環セット(すなわち、外部カテーテル14、またはいくつかの実施形態では「スマートカテーテル」)を設置する。そのために、ステップ106は、体外循環セット14を始動させ、皮下アクセスポート16に接続してもよい。好ましくは、このステップは、Enclear Therapies, Inc.(Newburyport, MA)が提供するものなどの体外循環セット、および/または上述した外部カテーテル14を使用する。プロセスは、ステップ110へと続き、このステップは、注入ラインまたは他の外部カテーテル14を管理システム19に接続し、次に、目標流量および時間を設定する。この時点でセットアップが完了し、治療が始められる(ステップ112)。
【0045】
次に、プロセスにより、脳室から内在性CSFが除去される。このCSFは、次に、消化領域(例えば、特定の消化物質を有するカートリッジ1800)を通過させられてもよく、ここで、CSF中の特定の標的タンパク質が消化される。例えば、カートリッジ1800は、圧縮充填された複数の(例えば、多孔質のクロマトグラフィ樹脂)ビーズで満たされたカートリッジ1800の内側プレナム空間1830を有してもよい。成分がカートリッジ1800に入ったり、カートリッジ1800から漏れたりするのを防ぐために、カートリッジ1800の第1の端部にフィルタ膜が配置されてもよく、カートリッジ26の第2の端部に第2のフィルタ膜が配置されてもよい。いくつかの用途では、改善剤が、ビーズに塗られてもよい。
【0046】
いくつかの用途では、カートリッジ1800は、プロテアーゼが三次元樹脂マトリックスに共有結合された(すなわち、固定化された)クロマトグラフィ樹脂(例えば、アガロース、エポキシメタクリレート、アミノ樹脂など)で圧縮充填されてもよい。選択されるプロテアーゼは、タンパク質分解により標的毒性生体分子を分解および/または除去するように構成されてもよい。樹脂は、一般に75~300マイクロメートルの範囲の粒径と、特定のグレードによっては一般に300~1800Åの範囲の孔径とを有する多孔質構造であってもよい。したがって、高レベルでは、カートリッジ1800は、CSFから毒性タンパク質の存在を除去し、かつ/または実質的に軽減させる改善剤を有する。
【0047】
この実施形態および同様の実施形態は、これを消化酵素の流入部とみなしてもよい。薬剤へのアクセスを提供する任意の位置が、薬剤の流入部と考えられてもよい。ステップ116において、治療されたCSFは、消化領域から出て、CSF回路10を介して腰椎髄腔に戻される。プロセスはステップ118において終了し、このステップは、治療が完了するとポンプ18を停止させる。次に、管理システム19は切り離されてもよく、ポート16は洗浄されてもよい。
【0048】
例示的な実施形態におけるカートリッジの詳細
図2は、上述したカートリッジ1800の一実施形態を示す。いくつかの実施形態では、カートリッジ1800は、Repligen Corporation(Waltham, Massachusetts)によって製造されたOPUS(登録商標)MiniChrom(11.3mm×5mL,REP-001)などの市販のクロマトグラフィカラム1805を含むことができる。カートリッジ1800は、第1のキャップ1810を(例えば、摩擦嵌め、ねじ止め、スナップオンなどによって)取り外し可能に取り付けることができる第1の端部と、第2のキャップ1815を(例えば、摩擦嵌め、ねじ止め、スナップオンなどによって)取り外し可能に取り付けることができる第2の端部とを有してもよい。キャップ1810,1815はそれぞれ、カートリッジ1800への流体連通、またカートリッジを通る流体連通をもたらすために、第1の(例えば、上流)導管1820または第2の(例えば、下流)導管1825が挿通され得る開口を含んでもよい。いくつかの実施形態では、カートリッジ1800の内側プレナム空間1830は、圧縮充填された複数の(例えば、多孔質のクロマトグラフィ樹脂)ビーズ1835で満たされてもよい。成分がカートリッジ1800に入ったり、カートリッジ1800から漏れたりするのを防ぐために、カートリッジ1800の第1の端部に第1のフィルタ膜1838が配置されてもよく、カートリッジ1800の第2の端部に第2のフィルタ膜1840が配置されてもよい。いくつかの用途では、改善剤は、ビーズ1835に塗られている。
【0049】
いくつかの用途では、カートリッジ1800は、プロテアーゼが三次元樹脂マトリックスに共有結合された(すなわち、固定化された)クロマトグラフィ樹脂(例えば、アガロース、エポキシメタクリレート、アミノ樹脂など)で圧縮充填されてもよい。選択されるプロテアーゼは、タンパク質分解により標的毒性生体分子を分解および/または除去することができる。樹脂は、一般に75~300マイクロメートルの範囲の粒径と、特定のグレードによっては一般に300~1800Åの範囲の孔径とを有する多孔質構造である。
【0050】
カートリッジ1800の適切な機能および無菌性を維持するためには、カートリッジの製造プロセスを慎重に管理する必要がある。例えば、標的タンパク質を消化するためのカートリッジ1800の活性またはプロテアーゼの活性部位の利用可能性、および樹脂マトリックス内の微生物増殖の抑制が重要である。いくつかの実装態様では、粒径は約1~50マイクロメートルであってもよいし、孔径は約8~12ナノメートルであってもよい。いくつかの用途では、狭い孔径分布が望ましい場合がある一方、他の用途では、広い孔径分布が望ましい場合がある。また他の用途では、多峰性の孔径分布が望ましい場合がある。
【0051】
カートリッジ活性の場合、保存のためにカラムを緩衝液で満たすのが一般的である。緩衝液は、自己触媒作用を抑制し、かつ樹脂マトリックスの利用可能な表面積上の活性部位が低減するのを防ぐことを目的とする。成功裏に実施された緩衝液の一例は、pH2の、20mM CaCl2を伴う10mM HClであり、4℃で保存されるが、いくつかの実施形態では、温度は2~8℃の範囲であってもよいことが理解されるであろう。いくつかの変形では、緩衝液は、以下を含んでもよい。PBS 1Xを固定化緩衝液として使用してもよく、エタノールアミン1M、pH7.5をブロック緩衝液として使用してもよく、PBS 1X/0.05% ProClin 300を保存緩衝液として使用してもよく、HBSSを消化緩衝液として使用してもよい。
【0052】
微生物の増殖を抑制する場合、微生物の導入を避けるために、(例えば、ISO14644-1 クリーンルーム規格に準拠する)クリーンな環境または滅菌環境のいずれかで同様の構成要素を組み立てた後、ガンマ線照射、X線、紫外線、電子ビーム、酸化エチレン、蒸気、またはそれらの組合せなどの実証されたアプローチを利用する滅菌処理を行うことが一般的である。
【0053】
微生物の増殖を抑制するために、かつ/または酵素の自己分解の抑制に影響を与えるために制御され得る別の変数が、溶液のpHレベルである。pHが2の溶液が成功裏に実施されるかもしれないが、pHが約3~約7.5pHの範囲の溶液が可能である。
【0054】
微生物の増殖を抑制するために制御できるまた別の変数が、温度である。クロマトグラフィカラムは、有効であることが実証されており、かつ広く受け入れられている、2~8℃の範囲の温度で一般に保存される。保存は、カートリッジ1800の使用準備が整うまで、この温度範囲内に保たれてもよい。
【0055】
カートリッジ1800の製造は、ほぼ周囲温度のクリーンルーム(例えば、ISOクラス8)環境で行われてもよい。例示的な実施形態では、この製造プロセスは、クロマトグラフィカラム1805に(固定化された酵素を有する)樹脂を充填し、二層フィルムポリプロピレンパッケージに包装することを含む。次いで、包装されたカートリッジ1800は、ガンマ滅菌であってもよい滅菌処理のために準備されてもよい。ガンマ滅菌は、例示的な滅菌技術として特定されており、これは主に液体緩衝液の存在によって主導される。酸化エチレンや蒸気などの技術は、必要なレベルの無菌性を実現するために十分に液体を浸透させ、かつ透過させることができない可能性がある。理想的には、カートリッジ1800は、製造されるとすぐに冷蔵され、滅菌への輸送中および滅菌からの輸送中に冷蔵状態に保たれるべきである。カートリッジ1800は、滅菌処理を完了させた後、(例えば、冷蔵後に)契約製造業者や在庫保持エリアなどの最終目的地に輸送され、そこで2~8℃で保存することができる。
【0056】
使用時には、カートリッジ1800は、その温度制御された環境から回収され、ポイントオブケア(POC)でステージングされてもよい。POCでは、カートリッジ1800は、その無菌包装から取り出され、緩衝液、および未結合酵素などの潜在的に不要な残留成分を洗い流すためのフラッシングプロトコルに供されてもよい。フラッシングまたは洗浄により、治療されたCSFが被験体に戻されるときに、残留/剥離したトリプシンまたは他の改善剤が身体に入るリスクが軽減される。
【0057】
フラッシングプロトコルは、様々な体積のフラッシング溶液を使用する複数のフラッシング手順を必要とする場合がある。有利には、フラッシングプロトコルは、カートリッジ1800から溶出し得る潜在的な残留改善剤または酵素(例えば、トリプシン)がフラッシングされることを確実にしてもよい。例えば、いくつかの実装態様では、カートリッジ1800は、約1カラム容量(すなわち、1.0CV)の溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS))でフラッシングされてもよい。PBSは、微量の残留酵素を排除することが示されている。確実性を増すために、より大きな容量の溶液を使用してもよい。例えば、カートリッジ1800は、5mLのカラム1805に対して5~6CV(または25~30Ml)でフラッシングされてもよい。いくつかの変形では、多孔性のクロマトグラフィ樹脂を通るより一貫したフローのために、カートリッジ1800の温度は、周囲温度よりも上昇されてもよい。例示的なフラッシングプロトコルは、6CV(または30mL)のPBSでのフラッシングに続いて、6CVまたは30mLのハンクス平衡塩溶液(HBSS)の第2のフラッシングを含んでもよい。
【0058】
一実装態様では、上述のように、改善剤は、CSF中に存在する生体分子を酵素消化によって改変または分解し、いくつかの変形では、酵素消化に使用する酵素は、プロテアーゼであってもよい。当業者は、タンパク質消化の特性を調整するために、様々なプロテアーゼと樹脂の組合せを本実施形態に使用してもよいことを認識するであろう。プロテアーゼのいくつかの非限定的な例としては、(適用にカートリッジ1800を使用するか否かにかかわらず)トリプシン;エラスターゼ;カテプシン;クロストリパイン;カルパイン-2を含むカルパイン;カスパーゼ-1、カスパーゼ-3、カスパーゼ-6、カスパーゼ-7、およびカスパーゼ-8を含むカスパーゼ;M24相同体;ヒト気道トリプシン様ペプチダーゼ;プロテイナーゼK;サーモリシン;Asp-Nエンドペプチダーゼ;キモトリプシン;LysC;LysN;グルタミルエンドペプチダーゼ;ブドウ球菌ペプチダーゼ;arg-Cプロテイナーゼ;プロリンエンドペプチダーゼ;トロンビン;カテプシンE、G、S、B、K、L1;組織型A;ヘパリナーゼ;グランザイムAを含むグランザイム;メプリンα;ペプシン;エンドチアペプシン;カリクレイン6;カリクレイン5;およびそれらの組合せを挙げることができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、CSFを治療するために複数のカートリッジ1800を使用することができる。複数のカートリッジ1800は、標的CSFを複数のカートリッジ1800に露出させるために、CSF流体経路と連通して配置することができる。図示のように、複数のカートリッジ1800は、図3Aに示すように直列に、または図3Bに示すように並列に配置することができる。直列に配列されたカートリッジ1800は、標的分子の漸進的な消化を実現することができる一方、並列に配列されたものは、さらに後述するように、治療薬の送達と組み合わせて標的分子を消化することができる。
【0060】
複数のカートリッジ1800はそれぞれ、異なるプロテアーゼを有することができ、各カートリッジ1800は、1つ以上の特定の標的毒性生体分子を分解および/または除去するように標的化される。例えば、第1のカートリッジ1800が、TDP-43を消化するために調整された酵素を有することができる一方、第2のカートリッジ1800が、DPRを消化する調整された酵素を有することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、複数のカートリッジ1800は、特定のタンパク質の漸進的な消化のために使用することができ、各カートリッジ1800は、漸進的な量のタンパク質を消化する。すなわち、直列に配列された場合、CSFは、第1のカートリッジ1800で消化を受け、タンパク質がさらに壊れるようにさらなる消化が行われる第2のおよび/または後続のカートリッジ1800に流れることができる。この漸進的な消化により、CSFから毒性生体分子をより完全に除去して、CSFから毒性生体分子を完全に除去、または実質的に完全に除去することを確実にすることができる。例示的な実施形態では2つのカートリッジ1800を示しているが、当業者は、いくつかの実施形態では3つ以上のカートリッジ1800を使用できることを認識するであろう。これらのカートリッジ1800は、直列に、並列に、またはそれらの組合せで、例えば、直列の2つのカートリッジ1800が1つ以上の追加のカートリッジ1800と並列になるように、配列することができる。
【0062】
上述したように、並列に配列されたカートリッジ1800は、治療薬の送達と組み合わせて標的分子を消化することができる。例えば、いくつかの実施形態では、第1のカートリッジ1800は、毒性生体分子を治療する、かつ/または毒性生体分子をCSFから除去することができる一方、第2のカートリッジ1800は、治療薬を有することができる。治療薬は、カートリッジ1800を通過する流体が治療薬に露出され得るように、カートリッジ1800内のビーズおよび/または樹脂に塗ることができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、第2のカートリッジ1800は、そこから治療薬を溶出させるように構成されてもよい。例えば、浄化されたCSFが第1のカートリッジ1800から出るときに、第2のカートリッジ1800は、第2のカートリッジ1800から溶出して、第1のカートリッジ1800から出るCSFと混合し、CSFに治療効果をもたらすことができる。
【0064】
カートリッジ1800をCSF流体経路に結合するために、1つ以上の医療用ルアーロックコネクタまたはスピンカラーを様々な実施形態によって使用することができる。例えば、標準的なクロマトグラフィカラムをカートリッジ1800として使用する場合、これらの医療用ルアーコネクタは、図3Bに示すように、カートリッジ1800の1つ以上を経路に取り付けるために流体経路に沿って配置することができる。しかし、カートリッジ1800を交換する必要がある場合、このことは、ルアー継手を解くことを要することになり、かつ患者のCSFをラインからこぼしたり、空気がラインに入ったり、無菌性を損なったりなどしないような注意を要することになるので、臨床医にとって面倒な問題となることがある。代替的に、チューブセット全体の交換を要することになり、これは望ましくない。
【0065】
図4は、再装填可能なカートリッジ1800の例示的な実施形態を示す。再装填可能なカートリッジ1800は、カートリッジ1800の浄化および/または交換を可能にするために、CSF循環チューブとトグル式に接続したり、接続解除したりすることができる。図示のように、再装填可能なカートリッジ1800は、1つ以上のばね負荷式接続弁を含むことができる。ばね負荷式接続弁は、CSFが流れることを可能にするCSF循環チューブへの1つ以上の開口を有する受け台32にスナップ嵌めするか、または他の方法で受け入れられることができる。再装填可能なカートリッジ1800は、CSF中の気泡の形成を防ぐために、1つ以上の空気抜き34を含むことができる。カートリッジ1800が標的分子の消化にもはや十分に活性的でなくなるか、または詰まると、接続弁を受け台32から切り離すことができ、再装填可能なカートリッジ1800を切り離すことができる。CSFがシステム19から漏れないことを確実にするために、カートリッジ1800の交換中に循環チューブを通るCSFのフローを停止および/または中断できることが理解されよう。システム19は、ユーザとシステム構成要素との間の手動による相互作用が最小限に抑えられるので、無菌性を維持することができる。そのうえ、弁を使用してフローを停止させることにより、システム構成要素へのCSFの漏れが確実にほとんどなくなる。
【0066】
外部カテーテル14と同様の方法で、再装填可能なカートリッジ1800は、インテリジェントフローシステムを作り出すために追加された追加機能を有することができる。例えば、カートリッジ1800は、外部カテーテル14について上述したのと同じ機能を有することができる。それは、セキュリティ、患者監視、またはCSF回路10の流体力学を制御するように構成される制御システム22(「フローコントローラ22」とも呼ばれる)との通信を目的とした情報を収集し、保存する機能を有してもよい。
【0067】
図5は、システムが患者のために調整されることを確実にするために、またはカートリッジ1800が寿命の終わりに達したとのアラートを与えるために実装され得る電気的消去可能なプログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM)を有するカートリッジ1800の実施形態を示す。いくつかの実施形態では、近くのコントローラと通信可能であるブルートゥースアンテナ36を備えた印刷可能な回路基板(PCB)を使用することができる。システム19は、一定期間後にタイムアウトし、データを取り込み、フローコントローラ22と通信し合ってシステム仕様およびパラメータを共有するように構成することができる。インテリジェントフローシステムは、システム19および付随するプロセスの安全性および有効性を確保するために、ノックオフ品または他のカートリッジ1800の設計を防止できるように、独自の接続部を備えて設計することができる。
【0068】
実際、上述し、また後述する様々な実施形態のフローコントローラ22は、1つ以上の他の機能的な構成要素にわたって、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアの組合せを使用するなど、様々な従来の方法で実装できることに留意されたい。例えば、(後述する)CSF流量を調整するためのロジックは、ファームウェアを実行する複数のマイクロプロセッサを使用して実装されてもよい。別の例として、その前述のロジックは、1つ以上の特定用途向け集積回路(すなわち、「ASIC」)および関連ソフトウェア、またはASIC、個々の電子構成要素(例えば、トランジスタ)、およびマイクロプロセッサの組合せを使用して実装されてもよい。実際、いくつかの実施形態では、フローコントローラ22の特定のロジックが、必ずしも同じハウジングまたはシャーシ内にはない、複数の異なるマシンにわたって分散することができる。
【0069】
図6A図6Bは、カートリッジ1800の弁と、図4および図5に関して上述したCSF循環チューブとの間の例示的な関連付けの実施形態を示す。図示のように、弁28は、ばね38(すなわち、ばね負荷式)、プランジャ、および/またはポペット弁を介して取り外し可能に接続することができる。システムは、システムの残りの部分との迅速な接続のために構成することができる。図示のように、図6Aは、閉位置にある弁28を示し、図6Bは、受け台32によって作動されたときに開位置にある弁28を示す。開位置では、再装填可能なカートリッジ1800が受け台32内に配置されると、CSFはカートリッジ1800を流れることができる。カートリッジ1800が切り離されると、弁28は、プランジャがシステムの壁に接して弁28を閉じ、フローを防ぐように元の位置に戻ることができ、したがってCSFの漏れを最小限に抑える、かつ/または排除することができる。
【0070】
監視用ハードウェアシステム
システムを通るCSFのフローを調節するために、発明者らが開発した様々な方法がある。図7図11は、いくつかの例示的な実装態様を示す。図7に示す実施形態では、CSF回路10は、チューブ/カテーテル14上に4つのピンチ弁28を有し、相反するフロー方向での流体揺動を可能にする。腰椎から脳室に流す(図7)ために、ピンチ弁1,2が開かれる一方、ピンチ弁3,4が閉じられる。逆に、フロー方向を脳室から腰椎に切り替える(図8)ために、ピンチ弁1および2が閉じられる一方、ピンチ弁3および4が開かれる。このようにピンチ弁28を制御することで、フロー方向の揺動が可能になる。ピンチ弁28の開閉が切り替わる頻度は、ポンプ18の流量と同様に、(例えば、フローコントローラ22を介してなど)ユーザによって設定されてもよい。代替的な実施形態は、そのようなパラメータをシステムに予めプログラムしてもよい。
【0071】
実際、同じピンチ弁の構成(図9)を使用して、脈動性のフローパターンを作り出してもよい。例えば、腰椎から脳室に流すときに、ピンチ弁3および4が閉じられたままである一方、ユーザによって設定された頻度でピンチ弁1および2が脈動される(すなわち、開閉が周期的に切り替えられる)。
【0072】
ピンチ弁28を開閉させる頻度を設定できることで、様々な脈動効果を実施することができる。例えば、ピンチ弁28の開閉を急速に切り替えるのではなく、流体ライン内で設定圧力を形成するのに十分な時間、弁28を閉じたままにすることができる。ピンチ弁28を開いた直後に、圧力形成の結果として、薬剤のボーラスを放出することができる。
【0073】
フロー方向の揺動および脈動性のフローパターンは、ピンチ弁28を使用する代わりに双方向ポンプ18を使用して作り出すこともできる(例えば、図10Aおよび図10B)。ポンプ18は、ユーザによって設定された頻度でフロー方向を切り替えるようにプログラムすることができる。一方向に流している間に、ポンプ18は、同じくユーザによって設定された頻度で開始および停止することによって脈動するようにプログラムすることができる。当業者は、双方向のフローを提供するために他の技術を使用してもよい。
【0074】
様々な実施形態は、頻度、流量、および他のパラメータを、解剖学的組織および(例えば、CSF回路10内での)治療に使用するデバイスの要件および構造に応じて設定してもよい。例示した実施形態では、実際のまたは計算された頭蓋内圧により、CSF流量が駆動される。他の要件としては、CSF回路10内のカテーテル14の直径、薬剤の物理的特性、局所化領域における薬剤の相互作用、局所化領域の特性、ならびに治療に関連する他の要件およびパラメータを挙げることができる。当業者は、必要な特性に応じて適切なパラメータを選択してもよい。
【0075】
図11は、例示的な実施形態による別のシステムインターフェイスを模式的に示す図である。具体的には、ピンチ弁28、双方向ポンプ18、または他の手段のいずれによって送達パラメータを制御するかにかかわらず、送達プロファイルは、図11に示すインターフェイスなどのインターフェイス、および/またはシステムにロードされた送達プロファイルを用いて、手動で制御することができる。他のインターフェイスと同様に、このインターフェイスは、固定された制御パネル、表示装置上のグラフィカルユーザインターフェイス、または両方の組合せであってもよい。
【0076】
上述し、また後述するように、前述の物質、デバイス、および構造の多くは、使用され得る多種多様な異なる物質および構造のうちの1つにすぎない。当業者は、用途および他の制約に応じて、適切な物質および構造を選択することができる。したがって、特定の物質、デバイス、および構造に関する記述は、全ての実施形態を限定することを意図していない。さらなる詳細については、参照によって組み込まれた上記の特許出願に提示されている。
【0077】
いくつかの実施形態では、管理システム19/CSF回路10は、患者の頭蓋内圧(ICP)を監視する。具体的には、当業者に知られているように、頭蓋脊椎区画内の頭蓋内圧が高くなりすぎたり、低くなりすぎたりした場合、患者が重傷化したり、死亡したりさえすることがある。したがって、患者のCSFにアクセスするとき、特に自然なCSFフローが増強されている場合、患者に不快感や傷害を与えないために、ICPは、好ましくは、特定の高閾値圧力値(例えば、予め設定された値もしくはその場で計算された値)を超えないこと、または特定の低閾値圧力値(例えば、高閾値と同様に、予め設定された値もしくはその場で計算された値)を下回らないことを確実にするように監視される。ICPは患者によって大きく異なることがあるが、一般的に5~15mmHgの範囲に収まる。実際には、当業者が認めるように、ICPは、呼吸循環系の変化によって影響を受けるので、動的であり、揺動的な性質を有し、この5~15mmHgの典型的な範囲から逸脱することがある。例えば、圧力スパイクが発生した場合、急性水頭症を引き起こすリスクがある。そのうえ、圧力が急激に低下した場合、脊髄性頭痛を引き起こしたり、場合によっては、CSFが漏れて脳を浮遊状態に保てない場合、重傷化や死亡を引き起こしたりする(例えば、脳幹の損傷)リスクがある。
【0078】
そのような潜在的な問題に対処するために、システム19/回路10は、好ましくは、使い捨てチューブ/カテーテル14上の互換性のある構成要素に接続することによってICPを測定できる少なくとも1つの圧力センサ(この特定の圧力センサ、例えば、ロードセルは参照番号「42」によって識別される)を備える監視用ハードウェアを有する。この互換性のある構成要素は、CSF流体と直接接触し、監視用ハードウェアに取り付けられた圧力センサ42(例えば、前述のロードセル42)と通信できる、センサ要素40を含んでもよい。例えば、チューブ/カテーテル14上のセンサ要素40は、図12に示すように、側脳室の流体経路と直接連通してもよい。図12は、CSF流体と直接接触するようにチューブ/カテーテル14に取り付けるように構成されたセンサ要素40およびロードセルインターフェイス42の実施形態を示す。センサ要素40は、ロードセル42に取り外し可能に結合する(例えば、スナップフィット)ための下方に延びる部分を備えたハウジング44を有することができる。とりわけ、センサ要素40は、圧力刺激に応答して撓む可撓性ダイヤフラム(例えば、シリコーンダイヤフラム)を含むことができる。CSF流体がCSFチューブ/カテーテル14を流れるときに、CSFは、センサに外向きの力を及ぼして圧力信号/読み取り値を提供する(すなわち、ライン内の圧力を表すデータを生成する)。
【0079】
監視用ハードウェアは、組み込みソフトウェアおよびグラフィカルユーザインターフェイス(「GUI」)を有するプロセッサ、メモリなどを備えたハウジング46を含んでもよい。代替的に、いくつかの実施形態では、GUIは、タッチスクリーンであってもよい。取得された圧力データは、収集され、データベースに保存され、臨床医が観察できるモニタ上に表示することができる。ディスプレイは、様々なサンプリング頻度で、平均読み取り値、最小読み取り値、最大読み取り値などの「リアルタイム」データを示してもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、システムは、ICPの状態に関するアラートを与えるように構成された1つ以上のアラームを有することができる。アラームは、出力を経時的に測定することにより、CSFフローの揺動的な性質を考慮することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ICPが5分間にわたって20mmHgを上回った場合、第1のアラームが作動されてもよい。このアラームが作動すると、患者の姿勢をチェックして、センサの位置が患者の心室とほぼ同じ高さにあることを確認するように臨床医に指示する、メッセージが表示されてもよい。いくつかの実施形態では、ICPが5分間にわたって25mmHgを上回った場合、第2のアラームが作動されてもよい。このアラームが作動すると、フローが停止される。フローを停止させる1つの方法は、上述したように、チューブ/カテーテル14の外径部とインターフェイスするための少なくとも1つのピンチ弁28を組み込むことであってもよい。アラームが作動すると、ピンチ弁28が作動され、フローが停止される。
【0081】
さらに、ICPが5分間にわたって0mmHgを下回った場合、第3のアラームを作動させることができる。このアラームが作動すると、上述したように、チューブ/カテーテル14の外径部とインターフェイスするための少なくとも1つのピンチ弁28によってフローが停止される。アラームが作動すると、ピンチ弁28が作動され、フローが停止される。当業者であれば、アラームの1つ以上は、聴覚的、視覚的、例えば、赤色、緑色、または黄色などの色の表示、文字的などであってもよいことを認識するであろう。
【0082】
フローコントローラ
前述のように、システムは、好ましくは、システムを通るCSFのフローをICPに応じて調節するために、上述のフローコントローラ22を含む。CSFの吸引および/または循環において遭遇する共通の問題は、閉塞、または所望の流量を実現するのに必要な圧力により、フローが阻害もしくは制限されるようなフローの著しい低減のうちの1つであることがあり、これは、フロー制御されるシステムにおいて重要である。これらの閉塞は、アクセスされた流体区画(例えば、側脳室)からのCSFの枯渇から、解剖学的組織の崩壊による閉塞(例えば、硬膜が引き込まれてフロー孔を覆う)、カテーテル14の内径部における組織(例えば、脳実質)の詰まりなど、無数の原因の結果として発生することがある。
【0083】
アクセスされた区画から流体が枯渇する事例では、このフローの制限の潜在的な原因は、全身のCSF流量がポンプ18によって駆動されており、この流量が、5~25mL/時間または0.08~0.42mL/時間の範囲であることが一般に報告されている、ヒトの自然なCSF生成レートを超えるレートに設定され得ることかもしれない。このシナリオでは、この区画からのCSFの流出は、脈絡叢からの新たに生成されるCSFの流入量を超える場合がある。さらに、CSFが第1の位置から除去され、第2の位置に戻されている場合、第2の位置に戻されているCSFが、開存性を維持するために、第1の位置の区画に戻って流体を供給するための十分な時間を有していない場合がある。
【0084】
図13Aは、例示的な実施形態による、高圧閾値に関して閉ループフロー制御を維持するための同制御に関与するプロセスの概要を提示する。図13Bは、例示的な実施形態による、低圧閾値に関して閉ループフロー制御を維持するための同制御に関与するプロセスの概要を提示する。同時に、これらのプロセスは、管理フローを圧力範囲内に維持する。これらのプロセスは、閉ループフロー制御に通常使用するであろう、より長いプロセスから実質的に簡略化されていることに留意されたい。したがって、これらのプロセスは、当業者がおそらく使用するであろう多くの追加のステップを有してもよい。加えて、ステップのいくつかは、図示の順序とは異なる順序で、または同時に実施されてもよい。したがって、当業者は、プロセスを適宜修正することができる。そのうえ、上述し、また後述するように、前述の物質、デバイス、および構造の多くは、使用され得る多種多様な異なる物質および構造のうちの1つにすぎない。当業者は、用途および他の制約に応じて、適切な物質および構造を選択することができる。したがって、特定の物質、デバイス、および構造に関する記述は、全ての実施形態を限定することを意図していない。
【0085】
図示のように、図13Aのプロセスは、CSF流量がフローコントローラ22によって設定されるステップ1300で始まる。CSFは、ヒトの典型的なCSF生成レート(または治療される哺乳類のCSF生成レート)に基づく流量、または当業者によって認識される別のメトリックに従った流量に設定することができる。例えば、流量は、所定のICP範囲内にあれば実質的に一定であってもよい。よって、ICPが2つの閾値の間で変動する間、CSF流量は実質的に一定のままであってもよい。代替的に、流量は、所定のICP範囲内で、何らかの下位のプロセスまたは理由(例えば、薬剤送達)によって変化することがあり、すなわち、CSF流量は、所定のICP範囲内で、ICPに関連しない変数に基づく場合に変化することがある。例えば、CSF流量は、第1の時間に第1のレート、第2の時間に第2のレート、第3の時間に第3のレートを有することができる。それらのレートは、予め規定する(例えば、メモリに保存する)、かつ/または循環プロセス中に生成される動的な情報(例えば、いずれかの方向へのICPのスパイク)によって指示することができる。
【0086】
したがって、ステップ1302は、ICPの測定値を取得する。CSF流量と同様の方法で、ICPは、連続的または周期的に測定することができる。測定されたICPが高閾値圧力値を下回れば(例えば、所定の値または動的に計算された値、ステップ1304)、流量は一定のままであってもよい。逆に、流量が高閾値圧力値以上であれば(ステップ1306)、流量を修正することができ、この場合、ある所定の量だけ流量を低減させることができる。好ましくは、特定の高圧閾値または低圧閾値を満たすことに加えて、様々な実施形態では、所望の領域外にあるこれらの圧力読み取り値を特定の時間(例えば、上述したように、5分間または何らかの他の時間枠)にわたって持続することが要求される。このことは、短期的な圧力低下またはスパイクの影響を最小限に抑えるはずである。
【0087】
低閾値圧力値について、同様のプロセスが、好ましくは、図13Bによってリアルタイムで実施される。具体的には、対応する方法で、流量を設定し(ステップ1310)、圧力を監視した後(ステップ1312)、圧力センサ42は、ステップ1314でICPを測定する。測定されたICPが低閾値圧力値を上回れば(例えば、所定の値または動的に計算された値、ステップ1316)、流量は一定のままであってもよい。逆に、流量が低閾値圧力値以下であれば(ステップ1318)、流量を修正することができ、この場合、ある所定の量だけ流量を増加させることができる。
【0088】
当業者であれば、適切な高閾値圧力値および低閾値圧力値を選択することができる。例えば、範囲は、0~30mmHg、5~25mmHg、または10~25mmHgに及ぶことができる。他の範囲でも、所与の用途には十分である。高閾値と低閾値との間の範囲の大きさは、例えば、5~20mmHgの間または10~20mmHgの間とすることができる。他の実施形態は、システムによって生成された情報に基づいて動的なICP範囲および/または動的なCSF流量を計算するために、人工知能/機械学習アルゴリズムまたは他のロジックを使用してもよい。
【0089】
代替的な実施形態は、ICPを直接的に測定しない。実際、上述した実施形態は、一部では直接的な測定であると考えられない場合がある。代わりに、この読み取り値は、頭蓋脊椎区画の所望の領域の下流であってもよく、したがって、ICPを計算するかまたは他の方法で決定するのに十分な情報を提供してもよい。したがって、いくつかの実施形態では、直接的な読み取り値が必要とされない。
【0090】
圧力センサ42は、好ましくはリアルタイムで、ICP読み取り値をコントローラ22と直接通信する。この通信は、無線(例えば、ブルートゥース)または直接的な有線接続など、様々な手段によってもよい。したがって、コントローラ22は、閾値のためにメモリにアクセスし、かつ/または変動し得るレンジデータと実データとを動的に比較する。コントローラは、CSF流量の変更の必要性を検出すると、流量に対して行う所定の変更のセットを有するメモリにアクセスしてもよく、または計算された軌跡もしくは他のロジックに基づいて流量を動的に変更してもよい。別の例として、いくつかの実施形態では、閾値および/または応答するCSF流量を決定するために、ルックアップテーブルを使用してもよい。ICPの関数であることに加えて、CSF流量は、血圧、患者の体温、患者の体重、予め知られている患者の状態(例えば、心臓状態)など、上述していない他の変数の関数でもあってもよい。
【0091】
したがって、フローコントローラ22は、CSFフローを維持し、安全なICPを確保し、かつ閉塞またはフローの著しい低減の可能性を防止または軽減することを目的として、ライン内の圧力を能動的に監視して、ポンプ18によって流量を自動的に調整する。例えば、フローコントローラ22が特定の流量に最初に設定され、測定された圧力が高圧閾値を超える場合、フローコントローラ22は、圧力が設定点未満に低下するまで、ポンプ18および/または弁28によって、流量を自動的に低減させることができる。前述のように、インライン圧力は、実際の頭蓋内圧、または間接的ではあるが相関する読み取り値であってもよい。これにより、閉塞を引き起こすことなくCSFフローを最適化することができる。CSF流量は、ポンプ出力において一定の圧力を有する場合があるが、CSF回路10のそれぞれ異なる部分において変化する場合があることも留意されたい。いずれにせよ、CSF流量の増加は通常、(すなわち、インラインポンプ18であろうと、CSF回路10内のCSFに接触しない、図1Bに示すような機械式ポンプ18であろうと)少なくともポンプ18の出口におけるものを意味する。
【0092】
したがって、様々な実施形態は、健康的な限界を超えるICPの潜在的に破壊的な影響を軽減する。これにより、毒性タンパク質を低減させるため、かつ/または解剖学的組織の特定の部分に薬剤を送達するためなど、CSF回路10の追加の使用が可能になるはずである。
【0093】
本発明の様々な実施形態は、任意の従来のコンピュータプログラミング言語において少なくとも部分的に実装されてもよい。例えば、いくつかの実施形態は、手続き型プログラミング言語(例えば、「C」)、またはオブジェクト指向プログラミング言語(例えば、「C++」)で実装されてもよい。本発明の他の実施形態は、予め構成されたスタンドアローンのハードウェア要素、および/もしくは予めプログラムされたハードウェア要素(例えば、特定用途向け集積回路、FPGA、およびデジタル信号プロセッサ)、または他の関連構成要素として実装されてもよい。
【0094】
代替的な実施形態では、開示された装置および方法(例えば、上述の様々なフローチャートを参照)は、コンピュータシステムと共に使用するためのコンピュータプログラム製品として実装されてもよい。そのような実装態様は、コンピュータ可読媒体(例えば、ディスケット、CD-ROM、ROM、または固定ディスク)などの有形かつ非一過性の媒体のいずれかに固定された一連のコンピュータ命令を含んでもよい。一連のコンピュータ命令は、システムに関して本明細書で先に説明した機能の全てまたは一部を具現化することができる。
【0095】
当業者は、そのようなコンピュータ命令が、多くのコンピュータアーキテクチャまたはオペレーティングシステムと共に使用するために、多くのプログラミング言語で記述され得ることを理解するべきである。さらに、そのような命令は、半導体、磁気、光学、または他のメモリ装置などの任意のメモリ装置に記憶されてもよく、光学、赤外線、マイクロ波、または他の伝送技術などの任意の通信技術を使用して伝送されてもよい。
【0096】
他の方法の中でも、そのようなコンピュータプログラム製品が、付随する印刷もしくは電子文書(例えば、シュリンク包装されたソフトウェア)を伴う取り外し可能な媒体として配布されてもよく、コンピュータシステムに(例えば、システムROMもしくは固定ディスクに)予めロードされてもよく、またはネットワーク(例えば、インターネットもしくはWorld Wide Web)を介してサーバまたは電子掲示板から配布されてもよい。実際、いくつかの実施形態は、(「SAAS」(software-as-a-service))モデルまたはクラウドコンピューティングモデルで実装されてもよい。もちろん、本発明のいくつかの実施形態は、ソフトウェア(例えば、コンピュータプログラム製品)とハードウェアとの両方の組合せとして実装されてもよい。本発明のまた他の実施形態は、完全にハードウェアとして、または完全にソフトウェアとして実装される。
【0097】
上述した本発明の実施形態は、単なる例示であることを意図しており、多数の変形および修正が当業者には明らかであろう。そのような変形および修正は、添付の請求項のいずれかによって定義されるような本発明の範囲内にあることを意図している。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13A
図13B
【手続補正書】
【提出日】2023-07-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に使用するためのCSF管理方法であって、前記患者の身体がCSFを有し、前記患者がまた頭蓋脊椎区画を有し、前記方法が、
少なくとも1つのポンプおよびカテーテルを有するCSF回路を形成することであって、前記患者の身体内のCSFのフローを制御するように構成されるCSF回路を形成することと、
前記ポンプおよび前記カテーテルを使用して、前記患者のCSFを前記CSF回路に所与の流量で流すことと、
前記CSF回路にCSFを流すときに、少なくとも、前記CSFと直接接触する、圧力センサを使用して、前記患者の前記頭蓋脊椎区画内の頭蓋内圧または髄腔内圧のうちの少なくとも一方を監視することと、
前記頭蓋脊椎区画内の監視された前記頭蓋内圧に応じて、前記CSF回路内のCSFの前記所与の流量を制御することと
を含む、方法。
【請求項2】
高閾値圧力値を設定することをさらに含み、
さらに、制御することが、前記頭蓋内圧が前記高閾値圧力値以上であると検出された場合、前記CSFの前記所与の流量を低減させることを含む、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
低閾値圧力値を設定することをさらに含み、
さらに、制御することが、前記頭蓋内圧が前記低閾値圧力値以下であると検出された場合、前記CSFの前記所与の流量を増加させることを含む、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記頭蓋内圧が高閾値圧力値以上である場合、または前記頭蓋内圧が低閾値圧力値以下である場合、アラートを生成することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
高閾値圧力値と低閾値圧力値との間に10および20mmHgの差を有する圧力閾値範囲を受信することをさらに含み、前記所与の流量を制御することが、前記頭蓋内圧が前記圧力閾値範囲内にある場合、前記所与の流量を所定の値に維持することを含み、制御することが、前記頭蓋内圧が前記圧力閾値範囲外にあると検出された場合、前記所与の流量を異なる値に修正することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記頭蓋内圧に関連する情報を示す指標を表示するためのディスプレイによって使用するための出力情報を生成することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記CSF回路が閉じた流体回路であり、さらに、前記CSF回路が前記患者内への流体ポートを備え、前記カテーテルが前記ポートに取り外し可能に結合される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記所与の流量を制御することが、前記所与の流量を増加または減少させるためにポンプ出力を増加または減少させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記CSF回路が、側脳室、腰椎髄腔、第3脳室、第4脳室、および大槽のうちの1つ以上を含む、患者の解剖学的組織内の1つ以上のCSF収容区画にアクセスする、請求項1記載の方法。
【請求項10】
CSFを流すことが、前記頭蓋内圧が高閾値圧力値と低閾値圧力値との間にある場合、前記所与の流量を実質的に一定のレートに維持することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記CSF回路が、カートリッジに取り外し可能に結合するように構成された取り外し可能な結合のためのポートを備え、前記カートリッジが、CSFを物質と混合して混合されたCSF/物質を生成するように構成され、前記カートリッジが、前記混合されたCSF/物質を前記カートリッジから前記カテーテル内に移動させる出力を有する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記CSF回路がロードセルを備え、監視することが、前記頭蓋内圧に関連する情報を含む圧力信号を前記ロードセルから受信することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
患者に使用するためのCSF管理システムであって、前記患者の身体がCSFを有し、前記患者が前記患者のCSFへのポートを有し、前記患者がまた頭蓋脊椎区画を有し、前記システムが、
カテーテル、弁を有し、少なくとも1つのポンプと連携するように構成されたCSF回路であって、前記患者のCSFのフローを制御するように構成され、前記患者のポートに取り外し可能に結合可能であるCSF回路と、
前記カテーテルに動作可能に結合可能である圧力センサであって、前記CSF回路にCSFを流すときに、前記患者の前記頭蓋脊椎区画内の頭蓋内圧を監視するように構成された圧力センサと、
前記CSF回路に前記CSFを所与の流量で流すために前記ポンプを制御するように構成されたコントローラであって、前記CSF回路内の前記CSFの前記所与の流量を、前記頭蓋脊椎区画内の監視された前記頭蓋内圧に応じて制御するように構成されたコントローラと
を備える、システム。
【請求項14】
前記コントローラが、前記頭蓋内圧が高閾値圧力値以上であると検出された場合、前記CSFの前記所与の流量を低減させるように構成される、請求項13記載のシステム。
【請求項15】
前記コントローラが、前記頭蓋内圧が低閾値圧力値以下であると検出された場合、前記CSFの前記所与の流量を増加させるように構成される、請求項13記載のシステム。
【請求項16】
前記コントローラに動作可能に結合されたアラームをさらに備え、前記アラームが、前記頭蓋内圧が高閾値圧力値以上である場合、または前記頭蓋内圧が低閾値圧力値以下である場合、アラートを生成するように構成される、請求項13記載のシステム。
【請求項17】
前記コントローラに動作可能に結合されたディスプレイをさらに備え、前記ディスプレイが、前記頭蓋内圧に関連する情報を示す出力指標を生成するように構成される、請求項13記載のシステム。
【請求項18】
前記患者が流体ポートを有し、前記カテーテルが、前記ポートに取り外し可能に結合するための取り外し可能なカップリングを有する、請求項13記載のシステム。
【請求項19】
前記コントローラが、前記頭蓋内圧が高閾値圧力値と低閾値圧力値との間にある場合、前記所与の流量を実質的に一定のレートに維持するように構成される、請求項13記載のシステム。
【請求項20】
前記CSF回路が、カートリッジと、前記カートリッジに取り外し可能に結合するためのポートとを備え、前記カートリッジが、CSFを物質と混合して混合されたCSF/物質を生成するように構成され、前記カートリッジが、前記混合されたCSF/物質を前記カートリッジから前記カテーテル内に移動させる出力を有する、請求項13記載のシステム。
【請求項21】
前記CSF回路がロードセルを備え、前記コントローラが、前記ロードセルに動作可能に結合されて、前記頭蓋内圧に関連する情報を含む圧力信号を前記ロードセルから受信する、請求項13記載のシステム。
【請求項22】
前記CSF回路が前記ポンプを備える、請求項13記載のシステム。
【請求項23】
患者に使用するためのコンピュータシステム上で使用するためのコンピュータプログラムであって、前記患者の身体がCSFを有し、前記患者がまた頭蓋脊椎区画を有し、少なくとも1つのポンプおよびカテーテルを有するCSF回路に結合され、前記CSF回路が、前記患者の身体内のCSFのフローを制御するように構成され、前記コンピュータプログラムが、コンピュータ可読プログラムコードを有する有形かつ非一過性のコンピュータ使用可能媒体を備え、前記コンピュータ可読プログラムコードが、
前記患者のCSFを前記CSF回路に所与の流量で流すために前記ポンプを管理するためのプログラムコードと、
前記CSF回路にCSFを流すときに、圧力センサを使用して、前記患者の前記頭蓋脊椎区画内の頭蓋内圧を監視するためのプログラムコードと、
前記頭蓋脊椎区画内の監視された前記頭蓋内圧に応じて、前記CSF回路内の前記CSFの前記所与の流量を制御するためのプログラムコードと
を備える、コンピュータプログラム。
【請求項24】
高閾値圧力値を設定するためのプログラムコードをさらに備え、
さらに、制御するための前記プログラムコードが、前記頭蓋内圧が前記高閾値圧力値以上であると検出された場合、前記CSFの前記所与の流量を低減させるためのプログラムコードを備える、請求項23記載のコンピュータプログラム。
【請求項25】
低閾値圧力値を設定するためのプログラムコードをさらに備え、
さらに、制御するための前記プログラムコードが、前記頭蓋内圧が前記低閾値圧力値以下であると検出された場合、前記CSFの前記所与の流量を増加させるためのプログラムコードを備える、請求項23記載のコンピュータプログラム。
【請求項26】
前記頭蓋内圧が高閾値圧力値以上である場合、または前記頭蓋内圧が低閾値圧力値以下である場合、アラートを生成するためのプログラムコードをさらに備える、請求項23記載のコンピュータプログラム。
【請求項27】
高閾値圧力値と低閾値圧力値との間に10~20mmHgの差を有する圧力閾値範囲を受信するためのプログラムコードをさらに備え、前記所与の流量を制御するための前記プログラムコードが、前記頭蓋内圧が前記圧力閾値範囲内にある場合、前記所与の流量を所定の値に維持するためのプログラムコードを備え、制御するための前記プログラムコードが、前記頭蓋内圧が前記圧力閾値範囲外にあると検知された場合、前記所与の流量を異なる値に修正するためのプログラムコードをさらに備える、請求項23記載のコンピュータプログラム。
【請求項28】
前記頭蓋内圧に関連する情報を示す出力指標を生成するためのプログラムコードをさらに備える、請求項23記載のコンピュータプログラム。
【請求項29】
前記ポンプを管理するための前記プログラムコードが、前記頭蓋内圧が高閾値圧力値と低閾値圧力値との間にある場合、前記所与の流量を実質的に一定のレートに維持するためのプログラムコードを備える、請求項23記載のコンピュータプログラム。
【請求項30】
監視するための前記プログラムコードが、前記頭蓋内圧に関連する情報を含む圧力信号を圧力センサから受信するためのプログラムコードを備える、請求項23記載のコンピュータプログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13A
図13B
【国際調査報告】