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特表2023-546365二量体型ホスファゼン誘導ブレンステッド酸の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(54)【発明の名称】二量体型ホスファゼン誘導ブレンステッド酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/6571 20060101AFI20231026BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
C07F9/6571
B01J31/02 102Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521370
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(85)【翻訳文提出日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 EP2021076645
(87)【国際公開番号】W WO2022073803
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】20200632.6
(32)【優先日】2020-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21162986.0
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591091515
【氏名又は名称】シュトゥディエンゲゼルシャフト・コーレ・ゲマインニュッツィゲ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【住所又は居所原語表記】Kaiser-Wilhelm-Platz 1, D-45470 Muelheim an der Ruhr, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】リスト・ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】シュヴェンガース・ゼバスティアン・アルミン
(72)【発明者】
【氏名】デ・チャンドラ・カンタ
(72)【発明者】
【氏名】リー・イーハン
【テーマコード(参考)】
4G169
4H050
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169BA21A
4G169BA21B
4G169BD01A
4G169BD01B
4G169BD02A
4G169BD02B
4G169BD03B
4G169BD04A
4G169BD04B
4G169BD06A
4G169BD06B
4G169BD07A
4G169BD07B
4G169BD12A
4G169BD12B
4G169BD13A
4G169BD14A
4G169BD15A
4G169BE18A
4G169BE33A
4G169BE33B
4G169BE34A
4G169BE38B
4G169BE45A
4G169BE46B
4G169CB25
4G169CB57
4G169CB79
4G169DA02
4H050AA01
4H050AA02
4H050AA03
4H050AB40
4H050WA13
(57)【要約】
本発明は、キラルなイミドホスホリル化合物、それらの塩、金属錯体及びそれらの誘導体の新規合成法を開示するものである。前記のキラルなイミドジホスホリル化合物は、ブレンステッド酸/ブレンステッド塩基またはルイス酸/ルイス塩基媒介変換のための触媒として使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互変異性及びイオン性形態を含む式(I):
【化1】
[式(I)中、
- Xは、各P上で同一かまたは異なり、そしてO、S、Se、CR またはNRを表し、
- Z~Zは、互いに独立して、同一かまたは異なり、そしてそれぞれO、S、SeまたはNRを表し、
- 各nは、互いに独立して、同一かまたは異なり、そして0または好ましくは1を表し、
- Wは、水素、ハロゲン;Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Se、Te、La、Sm、Eu、Yb、Uから選択される金属;もしくはカチオン性有機基、置換されたボラン-BRIIIIIまたは置換されたケイ素-SiRIIIIIから選択され、R、RII及びRIIIは、同一かまたは異なってよく、そしてそれぞれ水素、ハロゲン、任意に-O-で結合されたC~C20直鎖状、分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素(これらは任意に、一つ以上の不飽和結合もしくは一つ以上のヘテロ原子を鎖中に含む)、C~C18ヘテロ芳香族炭化水素、C~C18芳香族炭化水素またはアレーン部が部分的に水素化されたそれらの形態を表し、ここで、各々の炭化水素は、任意に、C~C20直鎖状、分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素から選択される一つ以上の基、または一つ以上のヘテロ置換基によって置換されており、Wは、好ましくは、水素及び置換されたケイ素-SiRIIIIIから選択され、ここで、R、RII及びRIIIは、先に定義した通りであり、
- R、R、R及びRは、互いに独立して、同一かまたは異なり、それぞれ、脂肪族炭化水素基、ヘテロ脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヘテロ芳香族炭化水素基を、n=0の場合には、F、Cl、Br、I、CN、OTf、OMs、OTs、または脱離基特性を持つ他の擬ハロゲニドを表し、
ここで、R、R、R、及びRがそれぞれ脂肪族炭化水素基、ヘテロ脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヘテロ芳香族炭化水素基を表す場合には、Rは、R、RまたはRのいずれか一つと結合を形成していてもよく、そしてR、RまたはRの他の二つは互いに結合を形成していてもよく、あるいはR、R、R、R、X及びXのいずれも互いに結合を形成していてもよく;
- Rは、互いに独立して、脂肪族炭化水素基、ヘテロ脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヘテロ芳香族炭化水素基、またはRを表し;
但し、R、R、R、RまたはRの少なくとも一つは、先に定義した炭化水素基を表し、各炭化水素基は、任意に、一つ以上のヘテロ置換基、脂肪族炭化水素基、ヘテロ脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはヘテロ芳香族炭化水素基で更に置換されており、
- Rは、電子求引性または電子供与性基であり、各位置において同一かまたは異なり、そして次のi.、ii.及びiii.から選択され;
i. -アルキル、-CO-アルキル、-(CO)-O-アルキル、スルフィニルアルキル、スルホニルアルキル、スルホニルイミノアルキル、スルホニルビスイミノアルキル、ホスフィニルジアルキル、ホスホニルアルキル、アルキルホスホラン、N,N’-アルキルイミダゾリジン-2-イミニル、ここでアルキルは、C~C20直鎖状、分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素であり、これらは、任意に、ハロゲン、好ましくはF及び/またはCl、シアノ、ニトロ、イミノ=NH、置換されたイミノ=NR、アミノ-NHもしくは置換されたアミノ-NHR、-NR から選択される少なくとも一つの置換基を有し、ここでRは、互いに独立して、脂肪族炭化水素基、ヘテロ脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはヘテロ芳香族炭化水素基を表す;
ii. -アリール、-CO-アリール、-(CO)-O-アリール、スルフィニルアリール、スルホニルアリール、スルホニルイミノアリール、スルホニルイミノスルホニルアリール、スルホニルビスイミノアリール、ホスフィニルジアリール、ホスフィニルアルキルアリール、ホスホニルアリール、アリールホスホラン、アリールアルキルホスホラン、N,N’-アリールイミダゾリジン-2-イミニル、N-アリール-N’-アルキルイミダゾリジン-2-イミニル、ここでアリールは、C~C18芳香族炭化水素であり、これは、任意に、ハロゲン、好ましくはF及び/またはCl、C~C脂肪族炭化水素(これは、任意に、ハロゲン、好ましくはF及び/またはClから選択される少なくとも一つの置換基を有する)、シアノ、ニトロ、イミノ=NH、置換されたイミノ=NR、アミノ-NHもしくは置換されたアミノ-NHR、-NR から選択される少なくとも一つの置換基を有し、Rは、互いに独立して、脂肪族炭化水素基、ヘテロ脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはヘテロ芳香族炭化水素基を表す;
iii. -ヘテロアリール、-CO-ヘテロアリール、-(CO)-O-ヘテロアリール、スルフィニルヘテロアリール、スルホニルヘテロアリール、-(P=O)-ジ-ヘテロアリール、ホスフィニルジヘテロアリール、ホスフィニルアリールヘテロアリール、ホスフィニルヘテロアリールアルキル、ホスホニルヘテロアリール、ヘテロアリールホスホラン、ヘテロアリールアリールホスホラン、ヘテロアリールアリールアルキルホスホラン、N,N’-ヘテロアリールイミダゾリジン-2-イミニル、N-ヘテロアリール-N’-アルキルイミダゾリジン-2-イミニル、N-ヘテロアリール-N’-アリールイミダゾリジン-2-イミニル、ここで、ヘテロアリールは、C~C18ヘテロ芳香族炭化水素であり、これは、任意に、ハロゲン、好ましくはF及び/またはCl、C~C脂肪族炭化水素(これは、任意に、ハロゲン、好ましくはF及び/またはClから選択される少なくとも一つの置換基を有する)、シアノ、ニトロ、イミノ=NH、置換されたイミノ=NR、アミノ-NHもしくは置換されたアミノ-NHR、NR から選択される少なくとも一つの置換基を有し、Rは、互いに独立して、脂肪族炭化水素基、ヘテロ脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはヘテロ芳香族炭化水素基を表す;
ここで、少なくとも一つのC=O、S=OまたはP=O部分を有するi.)、ii.)及びiii.)の群については、=Oは、イミノ基=N-R’によって置き換えられていてよく、及び/または少なくとも一つのC-OR、S-ORまたはP-OR部分を有するi.)、ii.)及びiii.)の群については、-ORは、アミノ基-NR’R’’で置き換えられていてよく、ここでR’及びR’’は、互いに独立して、脂肪族炭化水素基、ヘテロ脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはヘテロ芳香族炭化水素基を表す]
のキラルなイミドジホスホリル化合物を製造する方法であって、
前記方法は、少なくとも一つの反応ステップにおいて、次式(II):
【化2】
[式(II)中、
- 各Qは、互いに独立して、同一かまたは異なり、そしてF、Cl、Br、I、CN、OTf、OMs、OTs、または脱離基特性を持つ他の擬ハロゲニドを表し、そして
- Aは、ハロゲニドまたは弱配位性アニオンを表す]
で表されるビスホスファゼン化合物を、一つ乃至六つの任意にキラルな化合物上に存在する一つ乃至六つの求核性基と反応させるステップを含み、ここで、
- 互いに同一かまたは異なることができる一つまたは二つの求核性基式Xが、式(III)X(ここで、Xは、O、S、Se、CR またはNRのいずれかの意味を有し;R及びWは、先に定義した意味を有する)の一つ乃至二つの任意にキラルな二価化合物上に存在し、
互いに同一かまたは異なることができる四つまでの求核性基Zが、式(IV)R W(ここで、Rは、先に定義した意味を有し、Zは、各々の化合物において同一かまたは異なり、Z~Zのいずれかの意味を有し、そしてW及びnは先に定義した意味を有する)の一つ乃至四つの任意にキラルな一価化合物上に存在し、
この際、
式(III)Xの一つ乃至二つの任意にキラルな二価化合物上に存在し、ここでXは、CR またはNRのいずれかの意味を有し、ここでRは先に定義した意味を有する、少なくとも一つの求核性基X、あるいは
式(IV)R Wの一つ乃至四つの任意にキラルな一価化合物上に存在し、ここでRは先に定義した意味を有し、Z、W及びnは先に定義した意味を有する、少なくとも一つの、好ましくは少なくとも二つの求核性基Z
を、式(II)の化合物と反応させ、
但し、式(I)中、R~Rのうちの少なくとも一つはキラルであり、またはR~Rのうちの少なくとも二つはキラルな基を形成し、または少なくとも一つのPもしくは少なくとも一つのSはキラルである、前記方法。
【請求項2】
請求項1に記載の、式(I)のキラルなイミドジホスホリル化合物を製造する方法であって、第一の反応ステップにおいて、請求項1に定義したXの意味、好ましくはOまたはNRのXの意味を有しかつ式(III)Xの一つの任意にキラルな化合物上に存在する、一つの求核性基X、あるいは請求項1に定義したXの意味、好ましくはOまたはNRのXの意味を有しかつ式(III)Xの一つまたは二つの任意にキラルな化合物上に存在する、二つの求核性基Xを、それぞれ、式(II)のビスホスファゼン化合物と反応させ、そして第二のステップにおいて、第一の反応ステップで得られた反応生成物を、任意に、
- 残存するQ基を除去するためのクエンチャ、または
- 互いに同一かもしくは異なることができそして式(IV)R W(ここで、Rは請求項1に定義した意味を有し、Zは同一かまたは異なりそしてZ~Zのいずれかの意味、好ましくはOまたはNRの意味を有し、Wは、請求項1に定義される意味を有し、そしてnは0または好ましくは1である)の一つ乃至四つの任意にキラルな化合物上に存在する、四つまでの求核性基Z
と反応させ、この際、後者の場合は、第二のステップで得られた反応生成物は、任意に、残存するQ基を除去するためのクエンチャと反応させ、
~Z、及びQは請求項1で定義した意味を有する、前記方法。
【請求項3】
請求項1に記載の、式(I)のキラルなイミドジホスホリル化合物を製造する方法であって、第一の反応ステップにおいて、互いに同一かまたは異なることができかつ式(IV)R W(ここで、Rは請求項1に定義される意味を有し、Zは同一かまたは異なりそしてZ~Zのいずれかの意味、好ましくはOまたはNRの意味を有し、Wは請求項1で定義される意味を有し、そしてnは0または好ましくは1である)の一つ乃至四つの任意にキラルな化合物上に存在する、一つ乃至四つの求核性基Zを、一般式(II)のビスホスファゼン化合物と反応させ、そして任意に第二のステップにおいて、請求項1に定義したXの意味を有しかつ式(III)Xの一つの任意にキラルな化合物上に存在する一つの求核性基X、あるいは請求項1に定義されるXの意味、好ましくはOまたはNRのXの意味を有しかつ式(III)Xの一つまたは二つの任意にキラルな化合物上に存在する二つの求核性基Xを、それぞれ、第一の反応ステップの反応生成物と反応させ、そして第二のステップにおいて、式(III)Xの一つの任意にキラルな化合物上に存在する一つの求核性基Xを、第一のステップで得られた反応生成物と反応させる場合には、第二のステップで得られた反応生成物を、任意に、残存するQ基を除去するためのクエンチャと反応させ、ここでZ~Z及びQは請求項1に定義される意味を有する、前記方法。
【請求項4】
請求項1に記載の、式(I)のキラルなイミドジホスホリル化合物を製造する方法であって、第一の反応ステップにおいて、互いに同一かまたは異なることができかつ式(IV)R W(ここで、Rは請求項1に定義した意味を有し、Zは同一かまたは異なりそしてZ~Zのいずれかの意味、好ましくはOまたはNRの意味を有し、Wは請求項1に定義される意味を有し、そしてnは0または好ましくは1である)の二つ乃至四つの任意にキラルな化合物上に存在する、四つの求核性基Zを、式(II)のビスホスファゼン化合物と反応させ、そして第二の反応ステップにおいて、第一のステップで得られた反応生成物を、任意に、残存するQ基を除去するためのクエンチャと反応させ、Z~Z及びQは請求項1に定義される意味を有する、前記方法。
【請求項5】
請求項1に記載の、式(I)のキラルなイミドジホスホリル化合物を製造する方法であって、式(III)X(ここで、Wは、CR またはNRである、請求項1に定義される意味を有する)の化合物上の二つの求核性基X、及び式(IV)R W(ここで、Rは請求項1に定義される意味を有し、Zは同一かまたは異なりそしてZ~Zのいずれかの意味、好ましくはOまたはNRの意味を有し、Wは請求項1に定義される意味を有し、そしてnは0または好ましくは1である)の化合物上の四つの求核性基Zが、一つの任意にキラルな化合物上に存在し、そして式(II)のビスホスファゼン化合物と段階的に反応させ、Z~Z及びQは請求項1に定義される意味を有する、前記方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一つに記載の、式(I)のキラルなイミドジホスホリル化合物を製造する方法であって、互いに同一かまたは異なることができかつ式(IV)R W(ここで、Rは請求項1に定義される意味を有し、Zは同一かまたは異なりそしてZ~Zのいずれかの意味、好ましくはOまたはNRの意味を有し、Wは請求項1に定義される意味を有し、nは0または好ましくは1である)の二つの任意にキラルな化合物上に存在する、四つの求核性基Zを、式(II)のビスホスファゼン化合物と反応させ、
【化3】
[式(II)中、
- 各Qは、互いに独立して、同一かまたは異なり、そしてF、Cl、Br、I、CN、OTf、OMs、OTs、または脱離基特性を持つ他の擬ハロゲニドを表し、そして
- Aは、ハロゲニドまたは弱配位性アニオンを表す]
ここで、同一かまたは異なることができる、式(IV)R Wの前記の二つの任意にキラルな化合物は、それぞれ、式(V)の構造単位によって表され、
【化4】
、Z、Z、Z、R、R、R、及びRは請求項1に定義される意味を有する、前記方法。
【請求項7】
請求項6に記載の、式(I)のキラルなイミドジホスホリル化合物を製造する方法であって、式(V)の前記構造単位が同一かまたは異なり、そしてBINOL、VANOL、VAPOL、TADDOL、SPINOLによって表され、またはZ1,3-R1,3-R2,4-Z2,4として、1,1’ビナフチル、8H-1,1-ビナフチル、ビフェニル、3,3’-(ジフェニル)-2,2’-ビナフチル、ビフェニル、2,2’-ジフェニル-3,3’-ビフェナントレニル、1,1’-ビアントラセニル、1,1’-ビフェナントリルまたはアレーン部が部分的に水素化されたそれらの形態、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラニル、C~C18アルキル鎖、スピロビインダニル、テトラヒドロスピロビナフタレニル、パラシクロファニル、メタロセニルを含み、ここでWはHであり、及び
前記の各々の化合物が、任意に、一つ以上の置換基によって置換されており、該置換基は、各々の位置において同一かまたは異なってよくそしてそれぞれ水素、ヘテロ置換基、(任意に一つ以上の不飽和結合を有する)C~C20脂肪族炭化水素、C~C18芳香族炭化水素、またはC~C18ヘテロ芳香族炭化水素から選択され、これらの炭化水素は、一つ以上のヘテロ置換基によって置換されてよい、前記方法。
【請求項8】
請求項1~4、6または7のいずれか一つに記載の、式(I)のキラルなイミドジホスホリル化合物の製造方法であって、同一かまたは異なることができる式(III)Xの前記一つまたは二つの任意にキラルな化合物が、R-NHによって表され、ここでRは請求項1に定義された意味を有する、前記方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の、式(I)のキラルなイミドジホスホリル化合物の製造方法であって、式(V)の前記構造単位が同一かまたは異なり、そして式(VI)によって、アレーン部が部分的に水素化されたそれらの形態によって、または式(VII)によって表され、
【化5】
前記式(VI)及び(VII)において、置換基Rは、各々の位置において同一かまたは異なることができそしてそれぞれ、水素、ヘテロ置換基、(任意に、一つ以上の不飽和結合を有する)C~C20脂肪族炭化水素、C~C18芳香族炭化水素、またはC~C18ヘテロ芳香族炭化水素から選択され、これらの炭化水素は一つ以上のヘテロ置換基によって置換されていてよく、及び置換基Rのうちの二つは、互いに脂肪族または芳香族環系を形成してよく、Z及びWは請求項1に定義される通りである、前記方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一つに記載の方法によって得られる、互変異性及びイオン性形態を含む式(I)のキラルなイミドジホスホリル化合物:
【化6】
式(I)中、同一かまたは異なっていてよいX、Z~Z、R、R、R、R、及びW及びnは請求項1で定義した意味を有する。
【請求項11】
請求項10に記載の、互変異性及びイオン性形態を含む式(I)のキラルなイミドジホスホリル化合物:
【化7】
式(I)中、
- Xは、各々のP上で同一かまたは異なり、そしてNRを表し、ここで、Rは、互いに独立して、脂肪族炭化水素基、ヘテロ脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヘテロ芳香族炭化水素基、またはRを表し、Rは、電子供与性置換基を表し、ここで、少なくとも一つのC=O、S=OまたはP=O部分を有するi.)、ii.)及びiii.)の群については、=Oは、イミノ基=N-R’によって置き換えられており、及び/または少なくとも一つのC-OR、S-ORまたはP-OR部分を有するi.)、ii.)及びiii.)の群については、-ORは、アミノ基-NR’R’’で置き換えられており、ここでR’及びR’’は、互いに独立して、脂肪族炭化水素基、ヘテロ脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヘテロ芳香族炭化水素基、またはRを表し、ここで、Rは、次のi.、ii.及びiii.から選択され:
i. -アルキル、-CO-アルキル、-(CO)-O-アルキル、スルフィニルアルキル、スルホニルアルキル、スルホニルイミノアルキル、スルホニルビスイミノアルキル、ホスフィニルジアルキル、ホスホニルアルキル、アルキルホスホラン、N,N’-アルキルイミダゾリジン-2-イミニル;ここでアルキルは、C~C20直鎖状、分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素であり、これらは、任意に、イミノ=NH、置換されたイミノ=NR、アミノ-NH、または置換されたアミノ-NHR、-NR から選択される少なくとも一つの置換基を有し、ここでRは、互いに独立して、脂肪族炭化水素基、ヘテロ脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはヘテロ芳香族炭化水素基を表す;
ii. -アリール、-CO-アリール、-(CO)-O-アリール、スルフィニルアリール、スルホニルアリール、スルホニルイミノアリール、スルホニルイミノスルホニルアリール、スルホニルビスイミノアリール、ホスフィニルジアリール、ホスフィニルアルキルアリール、ホスホニルアリール、アリールホスホラン、アリールアルキルホスホラン、N,N’-アリールイミダゾリジン-2-イミニル、N-アリール-N’-アルキルイミダゾリジン-2-イミニル;ここでアリールは、C~C18芳香族炭化水素であり、これは、任意に、C~C脂肪族炭化水素から選択される少なくとも一つの置換基を有し、前記C~C脂肪族炭化水素は、任意に、イミノ=NH、置換されたイミノ=NR、アミノ-NH、または置換されたアミノ-NHR、-NR から選択される少なくとも一つの置換基を有し、Rは、互いに独立して、脂肪族炭化水素基、ヘテロ脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはヘテロ芳香族炭化水素基を表す;
iii. -ヘテロアリール、-CO-ヘテロアリール、-(CO)-O-ヘテロアリール、スルフィニルヘテロアリール、スルホニルヘテロアリール、-(P=O)-ジ-ヘテロアリール、ホスフィニルジヘテロアリール、ホスフィニルアリールヘテロアリール、ホスフィニルヘテロアリールアルキル、ホスホニルヘテロアリール、ヘテロアリールホスホラン、ヘテロアリールアリールホスホラン、ヘテロアリールアリールアルキルホスホラン、N,N’-ヘテロアリールイミダゾリジン-2-イミニル、N-ヘテロアリール-N’-アルキルイミダゾリジン-2-イミニル、N-ヘテロアリール-N’-アリールイミダゾリジン-2-イミニル、ここで、ヘテロアリールは、C~C18ヘテロ芳香族炭化水素であり、これは、任意に、C~C脂肪族炭化水素から選択される少なくとも一つの置換基を有し、前記C~C脂肪族炭化水素は、任意に、イミノ=NH、置換されたイミノ=NR、アミノ-NH、または置換されたアミノ-NHR,NR から選択される少なくとも一つの置換基を有し、Rは、互いに独立して、脂肪族炭化水素基、ヘテロ脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはヘテロ芳香族炭化水素基を表す;
同一かまたは異なることできるZ~Z、R、R、R、R、並びにW及びnは請求項1に定義した意味を有する。
【請求項12】
式(II):
【化8】
[式中、各々のQは、互いに独立して、同一かまたは異なり、そして請求項1に定義した意味を有し、
は、ハロゲニドまたは弱配位性アニオンを表す]
のビスホスファゼン化合物の、
好ましくは触媒として有用な、任意にキラルなイミドジホスホリル化合物の製造のための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キラルなイミドホスホリル化合物、それらの塩、金属錯体及びそれらの誘導体の新規合成法を開示するものである。前記キラルイミドジホスホリル化合物は、ブレンステッド酸/ブレンステッド塩基またはルイス酸/ルイス塩基媒介変換のための触媒として使用することができる。
【背景技術】
【0002】
不斉対アニオン誘導触媒(ACDC)(Angew.Chem.Int.Ed.2013,52,518-533(非特許文献1))は、不斉触媒反応の分野における強力なツールとして誕生した。最初に、BINOL誘導リン酸(Angew.Chem.Int.Ed.2004,43,1566-1568(非特許文献2))が、キラルな対イオンから指向されて、荷電中間体を有する化学的変換において不斉を誘発することが発見された。しかし、BINOL上の3,3’-置換基は、活性センターから放射状に離れており、そのため、高い立体選択性をもって広範な単純で偏倚のない基質の反応を触媒するための好適なキラル微小環境を形成する可能性を狭くする。それ故、(酵素様キラル環境を持つ)C2-対称性イミドジスホリン酸(imidodisphoric acid)モチーフをベースとする高度に閉じ込められたブレンステッド酸が、Listグループによって発表され、そしてACDCの関連で首尾良く利用された(Nature 2012,483,315-319(非特許文献3)。ルイス塩基酸素原子を、=NSOCF(=NTf)基などの電子求引性置換基で置き換えたことにより、高酸性のBINOL誘導C対称性イミドジホスホロイミデート(IDPi)(Angew.Chem.Int.Ed.2016,55,13200-13203(非特許文献4))及びイミノ-イミドジスホスホロイミデート(iIDP)(J.Am.Chem.Soc.2016,138,10822-10825(非特許文献5))の発見に繋がった。これらは、多くの、すなわちこれまでは不可能であった、優れた立体誘導を為す不斉化学変換での用途を見出した(Angew.Chem,Int.Ed.2019,58,12761-12777(非特許文献6))。
【0003】
従来の特許技術では、幾つかのイミドジホスホリル化合物が、幾つかの反応、特にケトン、アルデヒド、アルケン、イミン、エノールエーテル、エーテル、アルキン及びアセタールの活性化のためのキラルなブレンステッド酸触媒またはキラルなルイス酸触媒として考えられてきた。
【0004】
比較的小さくかつ構成的に偏倚のない基質の高立体選択的な触媒変換を可能にする、新規のC2対称性イミドジホスフェート(IDP)誘導ブレンステッド酸が、WO2013/104604A1(特許文献1)に開示された。
【0005】
【化1】
反応性(酸性度)に関する既存の障壁に打ち勝つために、IDPホスファゼンコアのルイス塩基酸素原子は、スルホニルアミド置換基などのより電子求引性の置換基で置き換えられ、これは、新しい触媒モチーフを可能にした(すなわちiIDP及びIDPi)。IDPi及びiIDP触媒反応に関する特許出願が出願されている(WO2017/037141A1(特許文献2))。
【0006】
【化2】
モジュラー式構造的閉じ込めと組み合わせた高いかつ調節可能な酸性度は、不斉ブレンステッド酸触媒反応における前例のない変換への道を開いた。更に、高まった酸性度は、シリリウムベースルイス酸触媒反応のための触媒前駆体としてのIDPisの利用を可能とし、これは、不斉有機分子触媒反応における相補的活性化モードを表す。先駆的な寄与及び新規の画期的反応、例えば最初の有機触媒オレフィン活性化、アセトアルデヒド代用物の選択的モノ-アルドール化、または広く利用可能なプリンス開化反応は、最近実現された。更に、C-C結合形成反応に挑戦するための、サブppmレベルまでの触媒使用量を用いた有機分子触媒反応における注目に値する発展が最近達成された。記載された例は、iIDP及びIDPi触媒反応の非常に大きなポテンシャルを例示している。これらは、短時間だけで達成されており、従前は、IDPの低減した酸性度の故に達成困難なままであった。
【0007】
イミドジホスフェート及びイミドジホスホロイミデートの合成のための方法は、WO2013104604A1(特許文献1)及びWO2017037141A1(特許文献2)に開示されており、そしてこれらの方法は、以下の反応スキームによってIDPiについて例示でき、この反応スキームでは、式(A)及び式(B)からなる二種以上のモノマー化学種を、次の式:NH、HMDSまたはこれらの塩を有することができるアンモニアまたはアンモニア代用品(NWY)と反応させて、両モノマー化学種を接続させる。
【0008】
【化3】
しかし、両モノマー性化学種が立体要求の高い置換基を有する場合には、この二量化プロトコルは、困難であり、そして所望の生成物の中乃至低収率でしか与えないことが判明した。
【0009】
また、X及びRNがそれぞれ異なるイミドジホスホロイミデートの合成は、多段階方法に依るものであり、このような方法では、両モノマー性化学種を、カップリング法の前に合成する必要がある。
【0010】
しかし、上記の触媒を得るための一般的な方策は、アンモニア代用物の存在下での二つのモノマー性BINOL誘導ホスホリルユニットを利用するシュタウディンガーアプローチまたは二量化プロトコルに依るものであった。この二量化プロトコルは、幾つかの高立体要求性BINOL(例えば、幾つかのオルト,オルト-置換3,3’-アリール置換基の場合)の存在下では、あまり有望ではないこともあり、それ故、好適なキラル微少環境を形成するための選択肢を少なくするかもしれない。更に、このプロトコルは、長められた反応時間、添加剤を必要とする場合もあり、得られる収量は、置換BINOLの選択に強く依存した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO2013/104604A1
【特許文献2】WO2017/037141A1
【特許文献3】US3357805A
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Angew.Chem.Int.Ed.2013,52,518-533
【非特許文献2】Angew.Chem.Int.Ed.2004,43,1566-1568
【非特許文献3】Nature 2012,483,315-319
【非特許文献4】Angew.Chem.Int.Ed.2016,55,13200-13203
【非特許文献5】J.Am.Chem.Soc.2016,138,10822-10825
【非特許文献6】Angew.Chem,Int.Ed.2019,58,12761-12777
【非特許文献7】Yagupolskii et. al.,J.Chem.Soc.Perkin Trans.2,2002,1950-1955
【非特許文献8】Inorg Chem.2002,41,1690
【非特許文献9】Inorganic Chemistry,2004,43,2765
【特許文献10】Anorg.Allg.Chem.1977,433,229
【特許文献11】J.Am.Chem.Soc.2012,134,10765
【発明の概要】
【発明を解決しようとする課題】
【0013】
これらの制限を解消するため及び前記二量化プロトコルの利用を避けるために、本発明者らは、過塩素化ビスホスファゾニウム塩から出発して目的のイミドジホスホリル生成物を製造するための新規の方法を開発して、二量体型ホスファゼン誘導ブレンステッド酸の効率が高くかつ容易な合成法を開発し並びにキラルで高度に閉じ込められたホスファゼン誘導ブレンステッド塩基の合成法を切り開いた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
それ故、本発明は、不斉ブレンステッド酸/ルイス酸触媒反応に及び/または不斉ブレンステッド塩基/ルイス酸塩基触媒反応に利用することができる、キラルまたは非キラルなイミドジホスフェート、イミノ-イミドジホスフェート及びイミドジホスホロイミデートを合成するために、上記WO2013104604A1(特許文献1)及びWO2017037141A1(特許文献2)に一部開示された既知及び未知のキラルイミドジホスホリル化合物の新規の改良された合成法を提供する。
【0015】
より詳しくは、本発明者らは、脱離基を含む目的の二量体型ホスファゼン構造を既に含みかつ以下の式(II)を含む構成単位から出発することを検討した。
【0016】
【化4】
式(II)の前記構成単位の合成は、US3357805A(特許文献3)に開示されており、そして無機系ポリマーの合成のための幅広い用途を見出している。しかし、キラル触媒の合成のための式(II)の前記構成単位の使用は報告されていない。
【0017】
イミドジホスホリル化合物の合成のためのプラットホーム分子としての前記一般式(II)の前記構成単位の使用は、次の利点を供する:
a)P-N-Pコアが既に予め組み込まれており、そのため、不効率な二量体化プロセスが避けられ、それ故、立体反発の制限が解消される。
b)中間物が、電子求引性または電子供与性基から選択される適当な求核剤により容易に官能化可能である。
c)上記の全てのイミドジホスホリル化合物を、同じ中間物から得ることができる。
d)スケーラブルでありそして目的のイミドジホスホリル生成物を短い反応時間で高収率に与える単一のフラスコ作業、及び単一の生成物単離ステップしか要求されない。
【0018】
それ故、本発明は、幅広い範囲のキラルなイミドジホスホリル化合物、例えばキラルなイミドジホスフェート(IDP)、イミノ-イミドジホスフェート(iIDP)及びイミドジホスホロイミデート(IDPi)並びにそれらの誘導体または前駆体のより効率の高い合成法を提供するものである。更に、新しい部類のキラルなブレンステッド塩基を、この新規プロトコルに従い得ることができ、これは、本発明の一部でありそして以下のスキームによって一般化できる。
【0019】
より詳しくは、本発明は、互変異性及びイオン性形態を含む式(I)のキラルなイミドジホスホリル化合物の製造方法に関する。
【0020】
【化5】
式(I)中、
- Xは、各P上で同一かまたは異なり、そしてO、S、Se、CR またはNR、好ましくはOまたはNRを表し、
- Z~Zは、互いに独立して、同一かまたは異なり、そしてそれぞれO、S、SeまたはNR、好ましくはOまたはNRを表し、
- 各nは、互いに独立して、同一かまたは異なり、そして0または好ましくは1を表し、
- Wは、水素、ハロゲン;Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Se、Te、La、Sm、Eu、Yb、Uから選択される金属;カチオン性有機基、置換されたボラン-BRIIIIIまたは置換されたケイ素-SiRIIIIIから選択され、R、RII及びRIIIは、同一かまたは異なってよく、そしてそれぞれ水素、ハロゲン、任意に-O-で結合されたC~C20直鎖、分岐鎖もしくは環状脂肪族炭化水素(これらは任意に、一つ以上の不飽和結合もしくは一つ以上のヘテロ原子を鎖中に含む)、C~C18ヘテロ芳香族炭化水素、C~C18芳香族炭化水素またはアレーン部が部分的に水素化されたそれらの形態を表し、ここで、各々の炭化水素は、任意に、C~C20直鎖、分岐鎖もしくは環状脂肪族炭化水素から選択される一つ以上の基、または一つ以上のヘテロ置換基によって置換されており、Wは、好ましくは、水素及び置換されたケイ素-SiRIIIIIから選択され、ここで、R、RII及びRIIIは、先に定義した通りであり、
- R、R、R及びRは、互いに独立して、同一かまたは異なってよく、それぞれ、脂肪族炭化水素基、ヘテロ脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヘテロ芳香族炭化水素基を、n=0の場合には、F、Cl、Br、I、CN、OTf、OMs、OTs、または脱離基特性を持つ他の擬ハロゲニドを表し、
ここで、R、R、R、及びRがそれぞれ脂肪族炭化水素基、ヘテロ脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヘテロ芳香族炭化水素基を表す場合には、Rは、R、RまたはRのいずれか一つと結合を形成していてもよく、そしてR、RまたはRの他の二つは互いに結合を形成していてもよく、あるいはR、R、R、R、X及びXのいずれも互いに結合を形成していてもよく;
- Rは、互いに独立して、脂肪族炭化水素基、ヘテロ脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヘテロ芳香族炭化水素基、またはRを表し;
但し、R、R、R、RまたはRの少なくとも一つは、先に定義した炭化水素基を表し、各炭化水素基は、任意に、一つ以上のヘテロ置換基、脂肪族炭化水素基、ヘテロ脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはヘテロ芳香族炭化水素基で更に置換されており、
は、電子求引性または電子供与性基であり、各位置において同一かまたは異なり、そして次のi.、ii.及びiii.から選択され、
i. -アルキル、-CO-アルキル、-(CO)-O-アルキル、スルフィニルアルキル、スルホニルアルキル、スルホニルイミノアルキル、スルホニルビスイミノアルキル、ホスフィニルジアルキル、ホスホニルアルキル、アルキルホスホラン、N,N’-アルキルイミダゾリジン-2-イミニル、ここでアルキルは、C~C20直鎖状、分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素であり、これらは、任意に、ハロゲン、好ましくはF及び/またはCl、シアノ、ニトロ、イミノ=NH、置換されたイミノ=NR、アミノ-NH、または置換されたアミノ-NHR、-NR から選択される少なくとも一つの置換基を有し、ここでRは、互いに独立して、脂肪族炭化水素基、ヘテロ脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはヘテロ芳香族炭化水素基を表す;
ii. -アリール、-CO-アリール、-(CO)-O-アリール、スルフィニルアリール、スルホニルアリール、スルホニルイミノアリール、スルホニルイミノスルホニルアリール、スルホニルビスイミノアリール、ホスフィニルジアリール、ホスフィニルアルキルアリール、ホスホニルアリール、アリールホスホラン、アリールアルキルホスホラン、N,N’-アリールイミダゾリジン-2-イミニル、N-アリール-N’-アルキルイミダゾリジン-2-イミニル、ここでアリールは、C~C18芳香族炭化水素であり、これは、任意に、ハロゲン、好ましくはF及び/またはCl、C~C脂肪族炭化水素(これは、任意に、ハロゲン、好ましくはF及び/またはClから選択される少なくとも一つの置換基を有する)、シアノ、ニトロ、イミノ=NH、置換されたイミノ=NR、アミノ-NH、または置換されたアミノ-NHR、-NR から選択される少なくとも一つの置換基を有し、Rは、互いに独立して、脂肪族炭化水素基、ヘテロ脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはヘテロ芳香族炭化水素基を表す;
iii. -ヘテロアリール、-CO-ヘテロアリール、-(CO)-O-ヘテロアリール、スルフィニルヘテロアリール、スルホニルヘテロアリール、-(P=O)-ジ-ヘテロアリール、ホスフィニルジヘテロアリール、ホスフィニルアリールヘテロアリール、ホスフィニルヘテロアリールアルキル、ホスホニルヘテロアリール、ヘテロアリールホスホラン、ヘテロアリールアリールホスホラン、ヘテロアリールアリールアルキルホスホラン、N,N’-ヘテロアリールイミダゾリジン-2-イミニル、N-ヘテロアリール-N’-アルキルイミダゾリジン-2-イミニル、N-ヘテロアリール-N’-アリールイミダゾリジン-2-イミニル、ここで、ヘテロアリールは、C~C18ヘテロ芳香族炭化水素であり、これは、任意に、ハロゲン、好ましくはF及び/またはCl、C~C脂肪族炭化水素(これは、任意に、ハロゲン、好ましくはF及び/またはClから選択される少なくとも一つの置換基を有する)、シアノ、ニトロ、イミノ=NH、置換されたイミノ=NR、アミノ-NH、または置換されたアミノ-NHR、NR から選択される少なくとも一つの置換基を有し、Rは、互いに独立して、脂肪族炭化水素基、ヘテロ脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはヘテロ芳香族炭化水素基を表す;
ここで、少なくとも一つのC=O、S=OまたはP=O部分を有するi.)、ii.)及びiii.)の群については、=Oは、イミノ基=N-R’によって置き換えられていてよく、及び/または少なくとも一つのC-OR、S-ORまたはP-OR部分を有するi.)、ii.)及びiii.)の群については、-ORは、アミノ基-NR’R’’で置き換えられていてよく、ここでR’及びR’’は、互いに独立して、脂肪族炭化水素基、ヘテロ脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはヘテロ芳香族炭化水素基を表す;
前記方法は、少なくとも一つの反応ステップにおいて、次式(II)
【0021】
【化6】
[式(II)中、
- 各Qは、互いに独立して、同一かまたは異なり、そしてF、Cl、Br、I、CN、OTf、OMs、OTs、または脱離基特性を持つ他の擬ハロゲニドを表し、そして
- Aは、ハロゲニドまたは弱配位性アニオンを表す]
で表されるビスホスファゼンを、一つから六つの任意にキラルな化合物上に存在する一つから六つの求核性基と反応させるステップを含み、ここで
- 互いに同一かまたは異なることができる一つまたは二つの求核性基Xが、式(III)Xの一つ乃至二つの任意にキラルな二価化合物上に存在し、ここで、Xは、O、S、Se、CR またはNRのいずれかの意味を有し;Rは、先に定義した意味、好ましくはOまたはNRの意味を有し、そしてWは、先に定義した意味、好ましくはHの意味を有し、
- 互いに同一かまたは異なることができる四つまでの求核性基Zが、式(IV)R Wの一つ乃至四つの任意にキラルな一価化合物上に存在し、ここで、Rは、先に定義した意味を有し、Zは、各々の化合物において同一かまたは異なり、Z~Zのいずれかの意味を有し、そしてW及びnは先に定義した意味を有し;
この際、式(III)Xの一つ乃至二つの任意にキラルな二価化合物上に存在し、ここでXは、CR またはNRのいずれかの意味を有し、Rは先に定義した意味を有する、少なくとも一つの求核性基X、あるいは
式(IV)R Wの一つ乃至四つの任意にキラルな化合物上に存在し、ここでR、Z、W及びnは先に定義した意味を有する、少なくとも一つの、好ましくは少なくとも二つの求核性基Z
を、式(II)の化合物と反応させ、
但し、式(I)中、R~Rのうちの少なくとも一つはキラルであり、またはR~Rのうちの少なくとも二つはキラルな基を形成し、または少なくとも一つのPもしくは少なくとも一つのSはキラルである。
【0022】
本発明の方法について先に定義した通り、式(II)のビスホスファゼン化合物上の少なくとも一つのQ置換基は、前記の少なくとも一つの反応ステップにおいて、式(III)Xの二価化合物上にまたは式(IV)R Wの一価化合物上に存在する求核性基と反応させて、P上のQ置換基の第一の置換をもたらす。反応パートナーに依存して、X=P基またはR-Z-P基のいずれかがビスホスファゼン構造上に形成される。望ましい場合には、更なるQ置換基は、全てのQ置換基の完全な置換までのモル比に依存して、前記二価化合物上にまたは前記一価化合物上に存在する求核性基によって置き換えることができる。
【0023】
この反応は臨界的ではなく、そして温和な条件下に、例えば周囲温度及び大気圧下に、通常の極性及び非極性の有機溶媒、例えばピリジン、トルエン、DMF、THF、DCM、CHCl中で、好ましくはトルエンまたはピリジン中で、望ましい場合には不活性雰囲気下に及び望ましい場合には反応パートナーの存在下に、ワンポット合成法またはマルチステップ合成法として行って、目的の化合物とすることができる。
【0024】
本発明において、脂肪族炭化水素基は、一般的に、C~C50炭化水素基、好ましくはC~C20炭化水素基またはC~C炭化水素基を表し、これらは直鎖状、分岐鎖状または環状であることができ、ヘテロ脂肪族炭化水素基は、一般的に、鎖中に酸素もしくは窒素を有するC~C20炭素原子基を表し、芳香族炭化水素基は、1個乃至6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基を任意に含む、C~C22炭素原子芳香族系を表し、そしてヘテロ芳香族炭化水素基は、1個乃至6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水基置換基を任意に含むヘテロ芳香族系中に酸素及び/または窒素を好ましくは有する、C~C18炭素原子ヘテロ芳香族系を表す。前記炭化水素のそれぞれは、一つ以上のヘテロ置換基で置換されていてもよい。
【0025】
式(III)XWの任意にキラルな二価化合物における求核性二価基Xとしては、O、S、Se、CR またはNR(式中、Rは先に定義した意味を有する)のいずれかが、先に定義した意味を有する二つのWに結合し、そして求核的攻撃の際に、化合物(II)上の一つのQを置き換えることができ、そして次のステップにおいてX=P二重結合を形成することができる。望ましい場合は、反応条件に依存して、式(III)XWの第二の任意にキラルな二価化合物の第二の求核性攻撃は、化合物(II)の他のP上の一つのQの置き換えを招き、そして第二のステップにおいて、第二のX=P二重結合を形成する。
【0026】
一つまたは二つの求核性二価基Xは、好ましくは、式(III)Xの二つのまたは一つの任意にキラルな二価化合物上に存在し、ここでXは、CR またはNRのいずれかの意味を有し、R及びWは先に定義した意味を有する。式(III)Xの一つの任意にキラルな二価化合物上に存在する二つの求核性二価基Xの場合には、X基は、互いに結合を形成している。好ましくは、式(III)Xの任意にキラルな二価化合物は、R-NHまたはR-NHまたはこれらの対応する塩によって表される。
【0027】
式(IV)RW(式中、Rは先に定義した意味を有する)の任意にキラルな一価化合物における求核性一価基Zとしては、O、S、SeまたはNRのいずれかが、先に定義した意味を有する一つのWに結合し、そして求核性攻撃において、化合物(II)上の一つのQを置き換え、そしてZ-P結合を形成することができる。望ましい場合には、反応条件に依存して、第二、第三及び第四の求核性攻撃は、化合物(II)の他のP上でも一つのQのステップ・バイ・ステップの置き換えを招き、そして次のステップ(複数可)での更なるZ-P結合(複数可)の形成を招く。
【0028】
求核性一価基(複数可)Zは、好ましくは、式(IV)R Wの一つの任意にキラルな一価化合物上に二つの基として存在し、この際、Rは先に定義した意味を有し、Zは、各々の化合物上で同一かまたは異なりそしてZ~Zのいずれかの意味を有し;及びw及びnは先に定義した意味を有する。
【0029】
式(II)の化合物のいずれのQの求核性置換反応も、それぞれの反応パートナー(複数可)の添加の後にステップ・バイ・ステップで、またはワンポット合成で同時に、行うことができる。
【0030】
好ましくは、同一かまたは異なることができる、式(IV)の前記の一つの任意にキラルな化合物は、式(V)の構造単位によって表される。
【0031】
【化7】
式(V)の構造単位において、R~R、Z~Z及びWは、先に定義した意味を有する。
【0032】
式(V)の構造単位の好ましい態様の一つでは、R~Rは先に定義した意味を有し、Z~Zは、互いに独立して、OまたはNによって表され、Wは水素である。
【0033】
より好ましくは、式(V)の前記構造単位は同一かまたは異なり、そしてBINOL、VANOL、VAPOL、TADDOL、SPINOLによって表され、またはR1,3~R2,4に対応して、1,1’ビナフチル、8H-1,1-ビナフチル、ビフェニル、3,3’-(ジフェニル)-2,2’-ビナフチル、ビフェニル、2,2’-ジフェニル-3,3’-ビフェナントレニル、1,1’-ビアントラセニル、1,1’-ビフェナントリルまたはこれのアレーン部が部分的に水素化された形態、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラニル、C~C18アルキル鎖、スピロビインダニル、テトラヒドロスピロビナフタレニル、パラシクロファニル、メタロセニルを含み、ここでZ~Zは、互いに独立して、OまたはNによって表され、Wは水素である。
【0034】
先に記載したように、過ハロゲン化ホスファゼンは、式(II)によって表され、ここで、Qは、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、または擬ハロゲン能を有する脱離基(OTf、OMs、OTs、CN、-OCN、-NCO、-SCN、-NCS)を表す。対応する対アニオンAは、ハロゲニドまたは弱配位性アニオン、例えばF、Cl、Br、I、BF 、BCl 、BBr 、B(CN) 、SbF 、SbCl 、PF 、PCl 、PBr であることができ、但し、反応に不利に影響を与えなければ限定されない。
【0035】
本発明によれば、擬ハロゲン能を有する脱離基とは、ハロゲンの多原子類似物であることを意味し、本当のハロゲンのケミストリーに類似するそのケミストリーが、幾つかの部類の化合物においてハロゲンの代用となることを可能にするものである。
【0036】
本発明は、求核性基の数に及び求核性基と過ハロゲン化ホスファゼンとの反応ステップの順序に依存して、本発明による方法の幾つかの態様をカバーする。それ故、例示的な目的で、本発明の以下の態様を記載する。
【0037】
本発明による方法の一つの態様では、先に定義した式(I)のキラルなイミドジホスホリル化合物が製造され、この際、第一の反応ステップにおいて、式(III)Xの一つの任意にキラルな化合物上に存在する一つの求核性基X、または式(III)Xの一つもしくは二つの任意にキラルな化合物上に存在する二つの求核性基Xを、それぞれ、式(II)のビスホスファゼン化合物と反応させ、そして第二のステップにおいて、第一の反応ステップで得られた反応生成物を、任意に、
- 残存するQ基を除去するためのクエンチャ、または好ましくは
- 互いに同一かもしくは異なることができそして式(IV)R W(Rは先に定義した意味を有し、Zは各々化合物上で同一かまたは異なりそしてZ~Zのいずれかの意味を有する)の一つ乃至四つの任意にキラルな化合物上に存在する四つまでの求核性基(これは、第一のステップの反応生成物と反応させ、その際、この第二のステップで得られた反応生成物は、任意に、残存するQ基を除去するためにクエンチャと反応させる)、
と反応させ、
ここで、X、W、R、R、R、R、R及びnは請求項1に定義される意味を有する。
【0038】
求核性基Xの数を考慮すると、式(III)Xの一つの任意にキラルな化合物上に存在する一つの求核性基X、または式(III)Xの一つのまたは二つの任意にキラルな化合物上に存在する二つの求核性基Xを、式(II)のビスホスファゼン化合物と反応させ、そして一つまたは二つのP=X基を次のように形成する:
【0039】
【化8】
次のステップ(複数可)において、一つ乃至四つのQを、それぞれ、クエンチャ、例えば水、ジメチルホルムアミド(DMF)、水反応類似物、例えばシロキサン、ヒドロキシド塩、アルカリ金属酸化物、金属酸化物と反応させるか、あるいは好ましくは、互いに同一かまたは異なりかつ式(IV)R Wの四つまでの任意にキラルな化合物上に存在する一つ乃至四つの求核性基Z、好ましくは式(IV)R Wの一つもしくは二つの任意にキラルな化合物上の二つの求核性基Zによる求核的攻撃において反応させ、任意にその後に、求核的攻撃における残存Qを水などのクエンチャと反応させて、iIDP化合物を得ることによって、更に置き換えてもよい。
【0040】
その代わりに、互いに同一かまたは異なることができ及び式(IV)R Wの一つ乃至四つ、好ましくは二つ乃至四つの任意にキラルな化合物上に存在する、一つ乃至四つの求核性基Zを、式(II)のビスホスファゼン化合物と反応させて、第一のステップにおいて次の化合物とし:
【0041】
【化9】
そして更なるステップにおいて次の化合物とし:
【0042】
【化10】
最後に、次の最終の化合物とする:
【0043】
【化11】
前記の反応経路では、どちらのP原子上のR基も、好ましくは、例えばビフェニルまたはビナフチル様構造として橋掛される。前記の最終化合物
【0044】
【化12】
は、水などのクエンチャと更に反応させてIDP化合物を得ることができるか、またはその代わりに、一つまたは二つの求核性基X(一つの求核性基Xが、式(III)Xの一つの任意にキラルな化合物上に存在するか、または二つの求核性基Xが、式(III)Xの一つのもしくは二つの任意にキラルな化合物上に存在する)と反応させて、iIDP化合物またはIDPIを得ることができる。
【0045】
式(I)のキラルなイミドジホスホリル化合物を製造するための本発明の方法の好ましい態様の一つでは、互いに同一かまたは異なることができかつ式(IV)R W(但し、Rは先に定義した意味を有し、nは0または1である)の二つ乃至四つの任意にキラルな化合物上に存在する四つの求核性基Zは、第一の反応ステップにおいて、式(II)のビスホスファゼン化合物と反応させ、そして第二の反応ステップにおいて、第一のステップで得られた反応生成物を、任意に、残存するQ基を除去するためにクエンチャと反応させ、ここで、X、Z、W、R、R、R、R、R、R及びnは先に定義した意味を有する。
【0046】
本発明による方法の他の態様の一つでは、CR もしくはNRである二つの求核性基X、及び互いに同一かまたは異なることができかつ式(IV)R Wの二つ乃至四つの任意にキラルな化合物上に存在してよく、一つの任意にキラルな化合物上に存在する四つの求核性基Z(但し、Rは先に定義した意味を有し、そしてnは0または1である)を、式(II)のビスホスファゼン化合物と段階的に反応させ、この際、X、Z、W、R、R、R、R、R、R及びnは先に定義した意味を有する。この特定の態様では、式(II)のビスホスファゼン化合物と反応できる六つの求核性基が、例えば四つの第二級アミン基及び二つの第一級アミン基を有する脂肪族炭化水素鎖におけるように、脂肪族炭化水素鎖または芳香族炭化水素鎖またはこれらの組み合わせなどの単一の化合物上に存在し、ここで、全てのアミン基は、鎖中で適切に間隔が開けられており、式(II)のビスホスファゼン化合物のハロゲンとの各々の置換反応を可能にする。
【0047】
互いに同一かまたは異なることができそして式(IV)R W(式中、Rは先に定義した意味を有し、nは0または1である)の二つの任意にキラルな化合物上に存在する四つの求核性基Zを、式(II)のビスホスファゼン化合物と反応させる本発明による方法の更に別の態様の一つでは、
【0048】
【化13】
[式(II)中、
- 各Qは、互いに独立して、同一かまたは異なり、そしてF、Cl、Br、I、CN、OTf、OMs、OTs、または脱離基特性を持つ他の擬ハロゲニドを表し、そして
- Aは、ハロゲニドまたは弱配位性アニオンを表す]
同一かまたは異なってよい、式(IV)R Wの前記の任意にキラルな化合物は、式(V)の構造単位で表される:
【0049】
【化14】
式中、互いに同一かまたは異なることができるZ、Z、Z、Z、Z、W、並びにR、R、R、R、R、R及びnは、先に定義した意味を有する。式(V)の前記構造単位では、炭化水素部分R1,2及びR3,4は、互いに橋掛け/結合されて、炭化水素環を形成する。式(V)の前記構造単位では、Zは同一かまたは異なっていてよく、そして好ましくはOまたはNRである。
【0050】
式(V)の前記構造単位は、同一かまたは異なり、そして好ましくは、BINOL、VANOL、VAPOL、TADDOL、SPINOLによって表され、または1,1’ビナフチル、8H-1,1-ビナフチル、ビフェニル、3,3’-(ジフェニル)-2,2’-ビナフチル、ビフェニル、2,2’-ジフェニル-3,3’-ビフェナントレニル、1,1’-ビアントラセニル、1,1’-ビフェナントリルまたはこれのアレーン部が部分的に水素化された形態、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラニル、C~C18アルキル鎖、スピロビインダニル、テトラヒドロスピロビナフタレニル、パラシクロファニル、メタロセニルを含み、これらは、Z1~Z4のいずれかとしてOまたはNRによって置換されており、そして
前記の各々の化合物は、任意に、一つ以上の置換基によって置換されており、該置換基は、各々の位置において同一かまたは異なってよくそしてそれぞれ水素、ヘテロ置換基、(任意に一つ以上の不飽和結合を有する)C~C20脂肪族炭化水素、C~C18芳香族炭化水素、またはC~C18ヘテロ芳香族炭化水素から選択され、これらの炭化水素は、一つ以上のヘテロ置換基によって置換されてよい。
【0051】
本発明による方法の更に別の態様の一つでは、式(V)の前記構造単位は同一かまたは異なっており、そして式(VI)、アレーン部が部分的に水素化されたそれらの形態、例えば8H-Binol、または式(VII)によって表される:
【0052】
【化15】
前記式(VI)及び(VII)中、置換基Rは、各々の位置において同一かまたは異なっていてよく、そしてそれぞれ、水素、ヘテロ置換基、任意に一つ以上の不飽和結合を有するC~C20脂肪族炭化水素、C~C18芳香族炭化水素またはC~C18ヘテロ芳香族炭化水素から選択され、これらの炭化水素は、一つ以上のヘテロ置換基で置換されていてよく、置換基Rのうちの二つは、互いに脂肪族または芳香族環系を形成してよく、そしてZ及びWは請求項1に定義された通りである。
【0053】
それ故、本発明の方法の一つの態様は、先に定義した式(I)のキラルなイミドジホスホリル化合物を製造する方法であって、式(VI)によって表される化合物、アレーン部が部分的に水素化されたそれらの形態、または式(VII)によって表される化合物:
【0054】
【化16】
[式(VI)及び(VII)中、置換基Rは、各々の位置において同一かまたは異なってよく、そしてそれぞれ、水素、ヘテロ置換基、任意に一つ以上の不飽和結合を有するC~C20脂肪族炭化水素、C~C18芳香族炭化水素、またはC~C18ヘテロ芳香族炭化水素から選択され、これらの炭化水素は、一つ以上のヘテロ置換基によって置換されていてもよく、そして置換基Rのうちの二つは、互いに脂肪族もしくは芳香族環系を形成していてもよく、そしてZは、互いに独立して同一かまたは異なりそしてそれぞれOまたはNRを表し、ここでRは、互いに独立して、脂肪族炭化水素基、ヘテロ脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはヘテロ芳香族炭化水素基、または先に定義したRを表し、各々のWは、互いに独立して、水素、ハロゲン、またはLi、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Se、Te、La、Sm、Eu、Yb、Uから選択される金属、またはカチオン性有機基、請求項1で定義した置換されたボラン-BRIIIIIまたは置換されたケイ素-SiRIIIIIを表し、好ましくはWは水素である]
を、任意に化学理論的にモル過剰で、任意に少なくとも二倍の化学理論的モル過剰で、式(II)のビスホスファゼン化合物と反応させ:
【0055】
【化17】
[式(II)中、
- 各Qは、互いに独立して、同一かまたは異なり、そしてF、Cl、Br、I、CN、OTf、OMs、OTs、または脱離基特性を持つ他の擬ハロゲニドを表し、好ましくはClなどのハロゲンを表し、そして
- Aは、ハロゲニドまたは弱配位性アニオンを表す]
得られた反応生成物を、更に、a)水と、またはb)式RNHを有する化合物と反応させ、ここで、Rは、R~Rのいずれかの意味を有し、R、R、R及びRは、それぞれ、脂肪族炭化水素基、ヘテロ脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはヘテロ芳香族炭化水素基、または先に定義したRを表し、好ましくはRの意味、または図4に表した化合物のいずれかの意味を表し、そして後者の場合b)の場合には、水とまたは他の化合物RNHと反応させ、ここで、Rは、最初の反応ステップについて先に定義した意味を有する。それ故、本発明の方法は、IDP、iIDPもしくはIDPIまたは(一部のQ基のみが置き換えられている)中間構造を、簡便な方法で製造するために使用できる。
【0056】
また、ステップの順番を逆にすることもでき、先ず、式(II)のビスホスファゼン化合物を、RNHの一種もしくは二種の化合物と反応させ、次いで、式(VI)によって表される化合物、アレーン部が部分的に水素化されたそれらの形態、または式(VII)によって表される化合物と反応させることができる。
【0057】
それ故、本発明の方法は、以下の式のいずれかに表される化合物:
【0058】
【化18】
または、少なくとも一つの芳香族核が水素化されているアレーン部が部分的に水素化された形態を効率的にもたらすことができ、この場合、前記式中において、置換基Rは、各々の位置において同一かまたは異なっていてよく、そしてそれぞれ水素、ヘテロ置換基、任意に一つ以上の不飽和結合を有するC~C20脂肪族炭化水素、C~C18芳香族炭化水素またはC~C18ヘテロ芳香族炭化水素から選択され、これらの炭化水素は一つ以上のヘテロ置換基によって置換されていてよく、そして置換基Rのうちの二つは、互いに脂肪族または芳香族環系を形成してもよく;Z~Zは、互いに独立して、同一かまたは異なっており、そしてそれぞれOまたはNRを表し;Xは、各P上で同一かまたは異なり、そしてOまたはNRを表し、Rは先に定義した意味を有し、そしてWは先に定義した意味を有する。
【0059】
先に詳述したように、本発明の方法は、従来技術では製造が困難である及び/または多大な労力を使ってしか製造できなかった幅広い範囲の化合物の製造を可能にする。
【0060】
先のスキームにおいて、定義は次の通りである:
、R、R及びRは、以下に更に定義し、そして一般的に、互いに独立して同一かまたは異なり、そしてそれぞれ先にも定義した脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族またはヘテロ芳香族炭化水素基であり、これらは、任意に、それぞれ一つ以上のヘテロ置換基、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族またはヘテロ芳香族炭化水素基で置換されており、ここでRは、R、RまたはRのいずれか一つと環系を形成していてもよく、そしてR、RまたはRの他の二つは、互いに環系を形成していてもよい。
【0061】
~Zは、互いに独立して、同一かまたは異なり、そしてO、S、SeまたはNR、好ましくはOまたはNRを表す。
【0062】
Wは、イミドジホスホリル部分と結合を形成することができる置換基であり、そして更に以下に定義される。
【0063】
は、電子求引性または電子供与性基であり、各位置において同一かまたは異なり、そして次のi.、ii.及びiii.から選択される:
i. -アルキル、-CO-アルキル、-(CO)-O-アルキル、スルフィニルアルキル、スルホニルアルキル、スルホニルイミノアルキル、スルホニルビスイミノアルキル、ホスフィニルジアルキル、ホスホニルアルキル、アルキルホスホラン、N,N’-アルキルイミダゾリジン-2-イミニル、ここでアルキルは、C~C20直鎖状、分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素であり、これらは、任意に、ハロゲン、好ましくはF及び/またはCl、シアノ、ニトロ、イミノ=NH、置換されたイミノ=NR、アミノ-NH、または置換されたアミノ-NHR、-NR から選択される少なくとも一つの置換基を有し、ここでRは、互いに独立して、脂肪族炭化水素基、ヘテロ脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはヘテロ芳香族炭化水素基を表す;
ii. -アリール、-CO-アリール、-(CO)-O-アリール、スルフィニルアリール、スルホニルアリール、スルホニルイミノアリール、スルホニルイミノスルホニルアリール、スルホニルビスイミノアリール、ホスフィニルジアリール、ホスフィニルアルキルアリール、ホスホニルアリール、アリールホスホラン、アリールアルキルホスホラン、N,N’-アリールイミダゾリジン-2-イミニル、N-アリール-N’-アルキルイミダゾリジン-2-イミニル、ここでアリールは、C~C18芳香族炭化水素であり、これは、任意に、ハロゲン、好ましくはF及び/またはCl、C~C脂肪族炭化水素(これは、任意に、ハロゲン、好ましくはF及び/またはClから選択される少なくとも一つの置換基を有する)、シアノ、ニトロ、イミノ=NH、置換されたイミノ=NR、アミノ-NH、または置換されたアミノ-NHR、-NR から選択される少なくとも一つの置換基を有し、Rは、互いに独立して、脂肪族炭化水素基、ヘテロ脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはヘテロ芳香族炭化水素基を表す;
iii. -ヘテロアリール、-CO-ヘテロアリール、-(CO)-O-ヘテロアリール、スルフィニルヘテロアリール、スルホニルヘテロアリール、-(P=O)-ジ-ヘテロアリール、ホスフィニルジヘテロアリール、ホスフィニルアリールヘテロアリール、ホスフィニルヘテロアリールアルキル、ホスホニルヘテロアリール、ヘテロアリールホスホラン、ヘテロアリールアリールホスホラン、ヘテロアリールアリールアルキルホスホラン、N,N’-ヘテロアリールイミダゾリジン-2-イミニル、N-ヘテロアリール-N’-アルキルイミダゾリジン-2-イミニル、N-ヘテロアリール-N’-アリールイミダゾリジン-2-イミニル、ここで、ヘテロアリールは、C~C18ヘテロ芳香族炭化水素であり、これは、任意に、ハロゲン、好ましくはF及び/またはCl、C~C脂肪族炭化水素(これは、任意に、ハロゲン、好ましくはF及び/またはClから選択される少なくとも一つの置換基を有する)、シアノ、ニトロ、イミノ=NH、置換されたイミノ=NR、アミノ-NH、または置換されたアミノ-NHR、NR から選択される少なくとも一つの置換基を有し、Rは、互いに独立して、脂肪族炭化水素基、ヘテロ脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはヘテロ芳香族炭化水素基を表す;
ここで、少なくとも一つのC=O、S=OまたはP=O部分を有するi.)、ii.)及びiii.)の群については、=Oは、イミノ基=N-R’によって置き換えられていてよく、及び/または少なくとも一つのC-O、S-O-またはP-O-部分を有するi.)、ii.)及びiii.)の群については、-O-部分は、アミノ基-NR’R’’で置き換えられていてよく、ここでR’及びR’’は、互いに独立して、脂肪族炭化水素基、ヘテロ脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはヘテロ芳香族炭化水素基を表す。
【0064】
それ故、=Oまたは-O-として酸素原子を含むR基は、更に修飾することができ、この場合、一つのまたは全ての酸素原子が、以下に定義するR’及びR’’によって表し得る他の電子吸引性基によって置き換えられて‘‘いる。
【0065】
【化19】
二つの酸素原子が、上記の例から選択される電子吸引性基によって置き換えられている場合では、これらの電子吸引性基は、互いに同一かまたは異なることができる。Rの更なる例は図4に示す。
【0066】
電子吸引性基による酸素原子の置き換えは、Yagupolskii et. al.(J.Chem.Soc.Perkin Trans.2,2002,1950-1955(非特許文献7))によって開示されている。しかし、本発明者らは、先に及び実施例において以下に詳述する本発明による方法で使用されるこれらのより高級の同族体(R’及びR’’)の合成のより適用性が高くかつ安全な代替的な方法を見出した。
【0067】
しかし、他方で、本発明者らは、先に及び実施例において以下に詳述されるように、系中に電子供与性基、特に、-O-アルキル、-O-アリール、-O-ヘテロアリール、アミノ基(アミノ基は、任意に、先に定義したRによって更に置換されている)、イミノ基(イミノ基は、任意に、先に定義したRによって更に置換されている)などの電子供与性置換基を有する脂肪族または芳香族炭化水素基を導入する方法も見出した。
【0068】
本出願の範囲において、「イミドジホスホリル化合物」という表現は、ホスホロアミドイミデート部分の酸素原子の一つ以上が、S、Se、先に定義したNRで置き換えられているそれの誘導体も含むと解される。但し、このような誘導体が、キラルであり及び好ましくは高光学純度(エナンチオピュア)である場合に限られる。
【0069】
定義
以下において、上記の式(I)並びにここで使用する他の式はいずれも互変異性形態も含むと解される。これに関連して、互変異性形態並びに分極結合Wδ+-Nδ-は、上記の定義に含まれると解される。
【0070】
本出願の範囲において、「イミドジホスホリル化合物」という表現は、イミドジホスホリル部分の酸素原子の一つ以上が、S、Se、先に定義したNRで置き換えられているかまたはRがイミドジホスホリル部分に直接結合しているそれの誘導体も含むと解される。但し、このような誘導体が、非キラルまたはキラルであり及び好ましくは高光学純度(エナンチオピュア)である場合に限られる。
【0071】
上記の式(I)及び以下の誘導式において、本発明によるキラルなイミドジホスホリル化合物の互変異性形態、並びにアニオン性形態を始めとしたそれの荷電した形態は、いずれも、前記式の表現に含まれるものと理解される。イミドジホスホリル化合物が、たとえR~RまたはR基の全てがアキラルな基である場合であっても、固有のキラリティを有し得るものとも理解される。それ故、Pが四つの異なる置換基によって置換されている場合にも、本発明による化合物にはキラリティが存在し得る。
【0072】
上記式(I)において、R~Rのいずれも、それぞれかつ互いに独立して、任意に一つ以上の不飽和結合を有するC~C20直鎖状、分岐鎖状もしくは環状炭化水素、例えばC~C20アルキル、C~C20アルケニルもしくはC~C20アルキニルから、C~CヘテロシクロアルキルからまたはC~C20芳香族炭化水素及びアレーン部が部分的に水素化されたそれらの形態、例えばアリール、アリール-(C~C)アルキル、ヘテロアリール-(C~C)アルキルから選択され、脂肪族もしくは芳香族炭化水素はそれぞれ、任意に、C~C20直鎖状、分岐鎖状もしくは環状炭化水素から、C~C20芳香族炭化水素及びアレーン部が部分的に水素化されたそれらの形態から、またはヘテロ置換基から選択される一つ以上の基によって置換されている。
【0073】
及びRは、P、Z及びZと一緒に環系を形成していてもよく、そして独立して、R及びRもまた、P、Z及びZと一緒に環系を形成していてもよい。R~Rは、いずれもキラルであってよいかまたは少なくとも一つのキラリティセンターを有してよいか、あるいはR及びR及び/またはR及びRは、それぞれ、キラル基を形成してもよい。
【0074】
上記の式(I)において、Rは、R、RまたはRのいずれか一つと環系を形成してもよく、そしてR、RまたはRの他の二つは、互いに環系を形成してよい。それ故、一つの環系が一つのホスホリル単位上に形成されていてよいか、あるいはアミドセンター部分のいずれかの側で一つのホスホリル単位を他のホスホリル単位に結合してもよい。
【0075】
上記式(I)において、Wは、分極されていてよいイオンまたは共有結合であることができる結合をイミドジホスホリル部分と形成することができる置換基であり、それ故、Wは、水素、ハロゲン;Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Se、Te、La、Sm、Eu、Yb、Uなどの金属;もしくはカチオン性有機基、置換されたボラン-BRIIIIIまたは置換されたケイ素-SiRIIIIIから選択され、R、RII及びRIIIは、同一かまたは異なってよく、そしてそれぞれ水素、ハロゲン、任意に-O-で結合されたC~C20直鎖状、分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素(これは任意に、一つ以上の不飽和結合もしくは一つ以上のヘテロ原子を鎖中に含む)、C~C18ヘテロ芳香族炭化水素、C~C18芳香族炭化水素またはアレーン部が部分的に水素化されたそれらの形態を表し、ここで、各々の炭化水素は、任意に、C~C20直鎖、分岐鎖もしくは環状脂肪族炭化水素から選択される一つ以上の基、または一つ以上のヘテロ置換基によって置換されており、Wは、好ましくは、水素及び置換されたケイ素-SiRIIIIIから選択され、ここで、R、RII及びRIIIは、先に定義した通りであり、そして水素または先に示した置換されたケイ素基であるWが有利に使用される。
【0076】
スキーム3において、可能なカチオン性基を例示する:
スキーム3:可能なカチオン性有機基M の例
【0077】
【化20】
「アレーン部が部分的に水素化されたそれらの形態」という表現は、芳香族構造が、例えばナフタレンのように一つ超の芳香族環を含む場合には、少なくとも一つの芳香族環、残りの一つの芳香族環が部分的にまたは完全に水素化されている場合もあると理解される。
【0078】
アニオン形態は、イオン対を形成するためのカチオンによって完全としてもよい。
【0079】
上記式(I)の態様の一つでは、Z~Zは、独立して、O、S、SeまたはNR、好ましくはOまたはNRを表し、そしてX、R~R、R、R並びにWは先に定義した通りである。このような式(I)及び(II)では、その構造は、それぞれ(R、R、Z、Z及び-PX-)または(R、R、Z、Z及び-PNR-)の5員乃至10員の環構造を含む場合もあり、ここでR~R、Z~Z、n、R、R、X及びWは先に定義した通りである。
【0080】
以下の定義は、R、R、R及びR~Rについて次のように等しく当てはまる。
【0081】
本発明に従い定義されるヘテロ置換基は、OH、F、Cl、Br、I、CN、NO、I-R 、NO、NCO、-NCS、-SCN、SOH、モノハロゲンメチル基、ジハロゲノメチル基、トリハロゲノメチル基、CF(CF3)、SF、N原子を介して結合した脂肪族、芳香族もしくはヘテロ芳香族系の第一級、第二級もしくは第三級アミンもしくはアンモニウム;-O-アルキル(アルコキシ)、-O-アリール、-O-ヘテロアリール、-O-SiR 、-S-S-R、-S-R、-S(O)-R、-S(O)-R、-COOH、-CO-R、-BR 、-PR 、-OPR ;CもしくはN原子を介して結合したアミド;ホルミル基、-C(O)-R、-COOM(Mは、Li、Na、K、Cs、Agなどの金属である)から選択することができる。Rは、互いに独立して、同一かもしくは異なってよく、そしてそれぞれ、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族もしくはヘテロ芳香族基であってよく、これらは各々、任意に、一つ以上のヘテロ置換基、脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族またはヘテロ芳香族基で更に置換されている;及び/または任意に-O-原子によって橋掛されており、ハロゲニドを表す。
【0082】
アルキル、アルケニル及びアルキニルを包含する脂肪族炭化水素は、直鎖状、分岐状及び環状炭化水素を含み得る。
【0083】
ヘテロ脂肪族とは、一つ以上の炭素原子がヘテロ原子で置換された直鎖状、分岐状及び環状炭化水素を含み得る、アルキル、アルケニル及びアルキニルを包含する炭化水素である。
【0084】
より詳しくは、C~C20アルキルは直鎖状または分枝状であることができ、そして炭素原子数が1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20である。アルキルは、C~Cアルキル、特にメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチルまたはtert-ブチル、同様にペンチル、1-、2-もしくは3-メチルプロピル、1,1-、1,2-もしくは2,2-ジメチルプロプル、1-エチルプロピル、ヘキシル、1-、2-、3-もしくは4-メチルペンチル、1,1-、1,2-、1,3-、2,2-、2,3-もしくは3,3-ジメチルブチル、1-もしくは2-エチルブチル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル、1,1,2-もしくは1,2,2-トリメチルプロピルであってよい。置換されたアルキル基は、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル及び1,1,1-トリフルオロエチルである。
【0085】
環状アルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルであってよい。
【0086】
アルケニルはC~C20アルケニルであってよい。アルキニルはC~C20アルキニルであってよい。
【0087】
前記の不飽和アルケニル-またはアルキニル基は、本発明の化合物を、不動化触媒に利用できるポリマーなどのキャリアに結合するために使用することができる。
【0088】
ハロゲンは、F、Cl、BrまたはIである。
【0089】
アルコキシは、好ましくはC~C10アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert-ブトキシ、ブトキシ、ペントキシなど及びこれらの異性体である。
【0090】
N、O及びSの中から選択される一つ以上のヘテロ原子を有するC~Cヘテロシクロアルキルは、好ましくは、2,3-ジヒドロ-2-、-3-、-4-もしくは-5-フリル、2,5-ジヒドロ-2-、-3-、-4-もしくは-5-フリル、テトラヒドロ-2-もしくは-3-フリル、1,3-ジオキソラン-4-イル、テトラヒドロ-2-もしくは-3-チエニル、2,3-ジヒドロ-1-、-2-、-3-、-4-もしくは-5-ピロリル、2,5-ジヒドロ-1-、-2-、-3-、-4-もしくは-5-ピロリル、1-、2-もしくは3-ピロリジニル、テトラヒドロ-1-、-2-もしくは-4-イミダゾリル、2,3-ジヒドロ-1-、-2-、-3-、-4-もしくは-5-ピラゾリル、テトラヒドロ-1-、-3-もしくは-4-ピラゾリル、1,4-ジヒドロ-1-、-2-、-3-もしくは-4-ピリジル、1,2,3,4-テトラヒドロ-1-、-2-、-3-、-4-、-5-もしくは-6-ピリジル、1-、2-、3-もしくは4-ピペリジニル、2-、3-もしくは4-モルホリニル、テトラヒドロ-2-、-3-もしくは-4-ピラニル、1,4-ジオキサニル、1,3-ジオキサン-2-、-4-もしくは-5-イル、ヘキサヒドロ-1-、-3-もしくは-4-ピリダジニル、ヘキサヒドロ-1-、-2-、-4-もしくは-5-ピリミジニル、1-、2-もしくは3-ピペラジニル、1,2,3,4-テトラヒドロ-1-、-2-、-3-、-4-、-5-、-6-、-7-もしくは-8-キノリル、1,2,3,4-テトラヒドロ-1-、-2-、-3-、-4-、-5-、-6-、-7-もしくは-8-イソキノリル、2-、3-、5-、6-、7-もしくは8-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ-1,4-オキサジニルである。
【0091】
任意に置換されたとは、置換されていないか、あるいは炭化水素上で各々の水素につき一置換された、二置換された、三置換された、四置換された、五置換されたまたは更に多く置換された、例えば過置換されたことを意味する。
【0092】
アリールとは、C~C22芳香族炭化水素であってよく、そしてフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリルまたはビフェニルであってよい。
【0093】
アリールアルキルはベンジルであってよい。
【0094】
ヘテロアリールは、C~C18ヘテロ芳香族炭化水素であってよく、そしてN、O及びSの中から選択される一つ以上のヘテロ原子を有してよく、そして好ましくは、2-もしくは3-フリル、2-もしくは3-チエニル、1-、2-もしくは3-ピロリル、1-、2-、4-もしくは5-イミダゾリル、1-、3-、4-もしくは5-ピラゾリル、2-、4-もしくは5-オキサゾリル、3-、4-もしくは5-イソキサゾリル、2-、4-もしくは5-チアゾリル、3-、4-もしくは5-イソチアゾリル、2-、3-もしくは4-ピリジル、2-、4-、5-もしくは6-ピリミジニル、同様に好ましくは1,2,3-トリアゾール-1-、-4-もしくは-5-イル、1,2,4-トリアゾール-1-、-3-もしくは-5-イル、1-もしくは5-テトラゾリル、1,2,3-オキサジアゾール-4-もしくは-5-イル、1,2,4-オキサジアゾール-3-もしくは-5-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-もしくは-5-イル、1,2,4-チアジアゾール-3-もしくは-5-イル、1,2,3-チアジアゾール-4-もしくは-5-イル、3-もしくは4-ピリダジニル、ピラジニル、1-、2-、3-、4-、5-、6-もしくは7-インドリル、4-もしくは5-イソインドリル、1-、2-、4-もしくは5-ベンズイミダゾリル、1-、3-、4-、5-、6-もしくは7-ベンゾピラゾリル、2-、4-、5-、6-もしくは7-ベンズオキサゾリル、3-、4-、5-、6-もしくは7-ベンズイソキサゾリル、2-、4-、5-、6-もしくは7-ベンゾチアゾリル、2-、4-、5-、6-もしくは7-ベンズイソチアゾリル、4-、5-、6-もしくは7-ベンズ-2,1,3-オキサジアゾリル、2-、3-、4-、5-、6-、7-もしくは8-キノリル、1-、3-、4-、5-、6-、7-もしくは8-イソキノリル、3-、4-、5-、6-、7-もしくは8-シンノリニル、2-、4-、5-、6-、7-もしくは8-キナゾリニル、5-もしくは6-キノキサリニル、2-、3-、5-、6-、7-もしくは8-2H-ベンゾ-1,4-オキサジニル、同様に好ましくは1,3-ベンゾジオキソール-5-イル、1,4-ベンゾジオキサン-6-イル、2,1,3-ベンゾチアジアゾール-4-もしくは5-イルまたは2,1,3-ベンゾオキサジアゾール-5-イルである。
【0095】
式(VI)または(VII)について示される本発明の方法の好ましい態様の一つでは、-O-P-結合または-NR-P結合付近のRの少なくとも一つは水素ではなく、そしてメチル、エチル、イソプロピル、シクロヘキシル、シクロペンチル、フェニル、2,4,6-トリイソプロピルフェニル、2,4,6-トリエチルフェニル、2,6,-ジメチルフェニル、2,6-ジエチルフェニル、2-イソプロピルフェニル、5-メチル-2-イソプロピルフェニル、メシチル、9-フェナントリル、9-アントラセニル、フェロセニル、N-(パーフルオロフェニル)アセトアミド、N-(4-クロロフェニル)アセトアミド、N-(ナフタレン-1-イル)アセトアミド、N-ベンジヒドリルアセトアミド、N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)アセトアミド、6,8-ジメチルピレン-2-イル、2-ピレニル、1-アントラセニル、コレニュレン、ポルフィリン、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、3,5-(トリフルオロメチル)フェニル、3-(ペンタフルオロスルファニル)フェニル、4-(ペンタフルオロスルファニル)フェニル、3,5-ジ(ペンタフルオロスルファニル)フェニル、フルオレニル、tert-ブチル、トリスメチルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル、メチルジフェニルシリル、トリスメシチルシリル、トリスフェニルシリル、3-ニトロフェニル、4-ニトロフェニル及び2,6-メチル-4-ブチルフェニル、トリフルオロメチル、非分岐状(線状)及び分岐状(C~C12)-パーフルオロアルキル、3,4,5-トリフルオロフェニル、1,3-ビス(パーフルオロプロパン-2-イル)フェニル、1,3-ビス(パーフルオロブチル)フェニル、及び/またはペンタフルオロフェニル並びにフルオライド、クロライド、ブロマイド、アイオダイド、COOH、B(OH)、B(アルキル)、B(O-アルキル)、B(ピナコール)、BFX(XはLi、NaまたはK)、OTfから選択される。他の基は好ましくは水素である。
【0096】
置換されたアミノまたは置換されたイミノは、C~C20脂肪族炭化水素、C~C18芳香族炭化水素またはC~C18ヘテロ芳香族炭化水素から選択される一つまたは二つの炭化水素基によって置換されているアミノ基またはイミノ基を意味し、これらの炭化水素の全ては、任意に、一つ以上のヘテロ置換基、好ましくはハロゲン、アミノ、C1~C6アルコキシによって置換されていてよい。
【0097】
本発明による方法に従い製造される化合物は、それ自体は当業者には周知のプロセスステップにおいて、有機塩、金属塩または金属錯体に転化することができる。
【0098】
本発明を、添付の図面及び実施例により更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0099】
図1図1は、本発明による合成経路及びイミドジホスホリル誘導ブレンステッド酸の特性を一般的に示す。
図2A図2Aは、本発明による反応スキームをより詳細に示す。
図2B図2Bは、本発明による反応スキームをより詳細に示す。
図2C図2Cは、本発明による反応スキームをより詳細に示す。
図3A図3Aは、本発明による合成の結果と従前の方策の結果とを比較する。
図3B図3Bは、本発明による合成の結果と従前の方策の結果とを比較する。
図4図4は、本発明による方法において特に有用な式(VI)及び(VII)の化合物の一部を示す。
図5A図5Aは、本発明による方法において特に有用な基Rの一部を示す。
図5B図5Bは、本発明による方法において特に有用な基Rの一部を示す。
図5C図5Cは、本発明による方法において特に有用な基Rの一部を示す。
【実施例
【0100】
例1:(トリメチルシリル)ホスホロイミドイルトリクロライドの合成
【0101】
【化21】
滴下漏斗を備えた500mL容積の火力乾燥した二首丸底フラスコに、ジエチルエーテル(200mL)、ヘキサメチルジシラザン(12.5mL、60mmol)を仕込み、0℃に冷却し(氷浴)、その後、n-ブチルリチウム(24mL(ヘキサン混合物中2.5M)、60mmol)を0℃で5分内に加えた。この溶液を0℃で更に30分間攪拌し、次いで室温まで放温して、無色の懸濁液を形成した。この懸濁液を再び0℃に冷却し(氷浴)、その後、三塩化リン(5.2mL、60mmol)を2分内に滴下した。三塩化リンを全て添加した後、冷却浴を取り外し、そして乳白色の反応混合物を室温まで放温し、そして室温で更に30分間攪拌した。この乳白色の懸濁液を0℃に冷却し(氷浴)、その後、塩化スルフリル(6mL、60mmol)を滴下した。この無色の懸濁液を再び室温まで加温しそして室温で更に60分間攪拌し、その後、予め乾燥したセライトのパッド(シュレンクフリット、セライトの高さ3cm)に通して不活性条件下に濾過して、無色の濾液を得、これを、不活性条件下に0℃で注意深く濃縮した(130mbarから30mbar)。次いで、生じた高粘性の油状物を、静的真空(static vacuum)(5mbar、25~40℃)下にバルブ・ツー・バルブ蒸留によって精製して、目的の生成物を濃縮した-78℃。(トリメチルシリル)ホスホロイミドリルトリクロライドを、無色の粘性油として単離した(12g、89%)。
【0102】
手順は、参考文献としてのInorg Chem.2002,41,1690(非特許文献8)に基づく。
【0103】
例2A:ヘキサクロロビスホスファゾニウムヘキサクロロホスフェート(HCCP)の合成
【0104】
【化22】
火力乾燥した100mL容積のシュレンク管に、五塩化リン(16.6g、79.8mmol)を仕込み、その後、ジクロロメタン(25mL)中の(トリメチルシリル)ホスホロイミドイルトリクロライドの溶液を0℃で加えて無色の懸濁液を形成し、これを室温で2.5時間攪拌した。追加のジクロロメタン(20mL)を加えて、その後に、不活性条件下に濾過した。無色の析出物を、ジクロロメタンで二回(それぞれ40mL)洗浄し、そして高真空下(1*10-3mbar)で5時間乾燥して、無色の粉末として目的の生成物を得た(15.4g、72%)。
【0105】
手順は、参考文献としてのInorganic Chemistry,2004,43,2765(非特許文献9)に基づく。
【0106】
例2B:ヘキサクロロビスホスファゾニウムヘキサクロロホスフェート(HCPP)の代替的ワンステップ合成
【0107】
【化23】
還流冷却器及び硫酸を充填したガスバブラーを備えた250mL容積の二首丸底フラスコを、アルゴン下に火力乾燥した。このフラスコに、PCl(53.0g、254mmol、1当量)、NHCl(4.31g、80.6mmol、0.95当量)を仕込み、そしてニトロベンゼン(80ml)中に懸濁した。この懸濁液を、5.5時間で130℃に加熱した。最初の3時間では、一定のガスの発生が観察されたが、このガスの発生はその後にゆっくりと止み、そして固形物の殆どが反応の進行の間に溶解した(注:昇華したPClは、ガラス装置を注意深く震盪することによって反応混合物中に再溶解した)。高温の反応混合物を不活性雰囲気下(濾紙を備えたPE管を通したアルゴン過圧)に濾過して100mL容積のシュレンク管に入れた。室温まで冷却すると、濾液から無色の析出物が形成した。この懸濁液を、室温で一晩放置し、そして不活性反応条件下(濾紙を備えたPE管を通したアルゴン過圧)に濾過した。ベージュ色の固形物を、濾液が無色のままであるまで無水ヘキサン混合物で十分に洗浄し、そして追加的にDCM(100mL)で洗浄して、無色に固形物として目的の生成物をもたらした(62%、28.3g、53.2mmol)。
【0108】
手順は、参考文献としてのAnorg.Allg.Chem.1977,433,229(非特許文献10)に基づく。
【0109】
例3:ヘキサクロロビスホスファゾニウムクロライドの合成
【0110】
【化24】
火力乾燥した25mL容積のシュレンクフラスコに、ヘキサクロロビスホスファゾニウムヘキサクロロホスフェート(2.29g、4.30mmol)を仕込み、そしてDCM(30mL)中に懸濁した。4-ジメチルアミノピリジン(552mg、4.52mmol、1.05当量)を一度に加え、その結果、黄色帯びた溶液を形成し、そして5分間攪拌するうちにそれから無色の析出物が形成した。生じた無色の溶液を室温で更に1時間攪拌し、その後、氷浴中で冷却した。攪拌を停止し、そして懸濁液を不活性条件下に濾過し、そして無色の析出物を追加的なDCM(2×20mL)で洗浄し、そして高真空下に乾燥して、無色の固形物として目的の生成物を供した(73%、1.02g、3.14mmol)。
【0111】
手順は、参考文献としてのInorganic Chemistry,2004,43,2765(非特許文献9)に基づく。
【0112】
例4:ヘキサクロロビスホスファゾニウムヘキサクロロアンチモネートの合成
【0113】
【化25】
火力乾燥した100mL容積のシュレンクフラスコに、ヘキサクロロビスホスファゾニウムヘキサクロロホスフェート(1.99g、3.74mmol)を仕込み、DCM(40mL)中に懸濁し、そしてアセトン/ドライアイス浴中で冷却した。二つ目の火力乾燥した25mL容積のシュレンクフラスコに、SbCl(1.18g、3.94mmol、1.05当量)を仕込み、DCM(10mL)で希釈し、そして生じた溶液を、アルゴン過圧(1.2bar)を用いて、ポリエチレンチューブを介して前記一つ目の予冷却したシュレンクに滴下して移した。SbClを全て添加したら、形成した懸濁液を-78℃で1時間攪拌し、そして室温で更に3時間攪拌した。懸濁液を不活性条件下に濾過し、そして無色の析出物を追加的なDCM(10mL)で洗浄し、その後、高真空中で乾燥して、無色の固形物として目的の生成物を供した(69%、1.61g、2.59mmol)。
【0114】
例5:ヘキサクロロビスホスファゾニウムテトラクロロボレートの合成
【0115】
【化26】
火力乾燥した25mL容積のシュレンクフラスコに、ヘキサクロロビスホスファゾニウムヘキサクロロホスフェート(537mg、1.01mmol)を仕込み、DCM(10mL)中に懸濁した。三塩化ホウ素(ヘプタン中1M、1.2mL、1.19当量)を加えた。全て添加した後、生じた溶液を室温で更に30分間攪拌し、その後、溶液を濃縮して全体積を約5mLとして、懸濁液を形成した。追加的なn-ヘキサン(15mL)を加え、そして懸濁液を不活性条件下に濾過した。無色の析出物を追加的なn-ヘキサン(2×10mL)で洗浄し、そして無色の固形物を高真空下に乾燥して、無色の固形物として目的の生成物を供した(64%収率、285mg、646μmol)。
【0116】
例6:(S,S)-4-クロロ-N-(4-クロロ-2,6-ジフェニル-4l5-ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-4-イリデン)-2,6-ジフェニル-4l5-ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-4-イミニウムクロライドの合成
【0117】
【化27】
火力乾燥した5mL容積のシュレンク管に、ヘキサクロロビスホスファゾニウムヘキサクロロホスフェート(2,310mg、0.58mmol)及び(S)-3,3’-ジフェニル-[1,1’-ビナフタレン]-2,2’-ジオール(510mg、1.64mmol)を仕込み、その後、無水ピリジン(10mL)を加えた。若干黄色帯びた反応混合物を、室温で更に20分間攪拌し、その後、高真空下(1*10-3mbar)下に全ての揮発性化合物を除去してベージュ色の析出物を得、これを酢酸エチル(20mL)中に再懸濁した。橙色の相を、不活性条件下に濾過して除去し、そして生じた無色の析出物を高真空下(1*10-3mbar)下に乾燥して、目的の生成物を得た(528mg、87%)。
【0118】
例7:段階的なクロライド置換
【0119】
【化28】
10mL容積の火力乾燥したシュレンク管に、ヘキサクロロビスホスファゾニウムクロライド(155mg、479μmol、1当量)及びN,N’-(アミノ(フェニル))-l6-スルファンジイリデン)ビス(1,1,1-トリフルオロメタン-スルホンアミド)(402mg、959μmol、2当量)を仕込んだ。DCM(1mL)を加え、そして生じた懸濁液をガスの発生が止むまで1時間攪拌すると(100rpm)、この懸濁液は、若干橙色の溶液に変わった。アリコート部を31P-NMRで分析したところ、モノ付加物の特徴的な信号を示した(31P NMR(203MHz,CDCl)δ9.36(d,J=31.5Hz),-5.78(d,J=31.5Hz)。追加的なDCM(2mL)を加え、その後、ENt(133μl、0.96mmol、2当量)を滴下した。反応を室温で1時間攪拌し、そして31P-NMRで分析したところ、目的の二重付加物の形成を示した(31P NMR(203MHz,CDCl)δ-10.39 (s))。全ての揮発物を真空下に除去した。トルエン(4mL)及び(S)-フェニル-BINOL(210mg、480μmol、1当量)を加え、その後、NEt(300μl、2.16mmol、4.5当量)を加えた。反応を90℃で16時間攪拌し、31P-NMR((203MHz,CDCl)δ-8.52(d,J=60.2Hz),-13.90(d,J=60.2Hz))及び質量分析によって分析したところ、約84%の31P-NMR純度を有する粗製生成物として記載の化合物の形成を示した。
【0120】
例8:3,3-ビス(9-アントラセニル)IDPの合成
【0121】
【化29】
火力乾燥した5mL容積のシュレンク管に、ヘキサクロロビスホスファゾニウムヘキサクロロホスフェート(41mg、77μmol)、(S)-3,3’-ジ(アントラセン-9-イル)-[1,1’-ビナフタレン]-2,2’-ジオール(98.4mg、154μmol)を仕込み、その後、ピリジン(1mL)を加えた。懸濁液を室温で15分間攪拌し、その後、蒸留水(250μl、13.8mmol)をパスツールピペットで加え、そして50℃で更に17時間攪拌した。室温まで冷却した後、反応混合物を飽和NaHCO溶液に注ぎ入れそしてジクロロメタンで抽出した。一緒にした有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空下に濃縮し、そしてフラッシュカラムクロマトグラフィ(ジクロロメタン)で精製して無色の固形物を与え、これを水性6M HClで酸性化した。固形物を少量のジクロロメタン中に溶解し、そしてヘキサン混合物で析出した。有機相をデカントした後、目的の生成物が、無色の粉末として得られた(90mg、85%)。
【0122】
例9:(S,S)-4-(((2r)-4-オキシド-2,6-ビス(2,4,6-トリペンチルフェニル)ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-4-イル)アミノ)-2,6-ビス(2,4,6-トリペンチルフェニル)ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン4-オキシドの合成
【0123】
【化30】
火力乾燥した10mL容積のシュレンク管に、ヘキサクロロビスホスファゾニウムヘキサクロロホスフェート(156mg、293μmol)、及びピリジン(5mL)中の(S)-3,3’-ビス(2,4,6-トリペンチルフェニル)-[1,1’-ビナフタレン]-2,2’-ジオールを仕込んだ。若干黄色帯びた懸濁液を室温で24時間攪拌し、その後、蒸留水(1mL)を加えた。この溶液を、室温で更に24時間攪拌し、その後、水性HCl(6M、20mL)及びジクロロメタン(20mL)を加えた。水性相を、ジクロロメタンで三回抽出した(それぞれ20mL)。一緒にした有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥しそして濃縮乾固して無色の油状物をもたらし、これを更に、フラッシュカラムクロマトグラフィ(勾配をつけて、ヘキサン混合物、次いでジクロロメタン/ヘキサン混合物(1:4))で精製して、無色の油状物として目的の生成物を得た。この油状物を少量のジクロロメタン中に溶解し、そして水性HCl(6M)で洗浄して、無色の固形物として目的の生成物を得た(381mg、71%)。
【0124】
例10:(S,S)-4-(((2r)-4-オキシド-2,6-ビス(2,4,6-トリヘキシルフェニル)ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-4-イル)アミノ)-2,6-ビス(2,4,6-トリヘキシルフェニル)ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン4-オキシドの合成
【0125】
【化31】
10mL容積の火力乾燥しかつアルゴン充填したシュレンク管に、ヘキサクロロビスホスファゾニウムヘキサクロロホスフェート(46mg、86.4μmol)を仕込み、そして(S)-(o,o,p-トリ(n-ヘキシル)フェニル)BINOLの溶液(163mg、0.17mmol、2当量、1.5mLのピリジン中)中に溶解した。反応を室温で19時間攪拌し、その後、水(300μl、16.6mmol、192当量)を加え、そして31P-NMR分析が目的生成物へのクリーンな加水分解を示すまで80℃で更に5時間攪拌した。室温まで冷却した後、反応混合物を30mLのHCl(aq)中に注ぎ入れ、そしてDCM(3×30mL)で抽出した。一緒にした有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮乾固し、そしてFCC(Biotage,勾配:ヘキサン混合物からヘキサン混合物/DCM(1:1)まで)によって精製して、目的の生成物を塩として溶離した。この塩を、DCM(3mL)及びHCl(aq)(6M,3mL)中に溶解することによって酸性化を行った。有機相を単離し、濃縮乾固し、その後、高真空下に一晩、乾燥して、無色の粘性油状物として目的の生成物を供した(78%、172mg)。
【0126】
例11:(S,S)-4-(((2r)-4-オキシド-2,6-ビス(2,4,6-トリヘプチルフェニル)ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-4-イル)アミノ)-2,6-ビス(2,4,6-トリヘプチルフェニル)ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン4-オキシドの合成
【0127】
【化32】
10mL容積の火力乾燥しかつアルゴン充填したシュレンク管に、ヘキサクロロビスホスファゾニウムヘキサクロロホスフェート(117mg、220μmol)を仕込み、そして(S)-(o,o,p-トリ(n-ヘプチル)フェニル)BINOLの溶液(490mg、0.48mmol、2.1当量、4mLのピリジン中)中に溶解した。反応を室温で19時間攪拌し、その後、水(800μl、44.4mmol、202当量)を加え、そして31P-NMR分析が目的生成物へのクリーンな加水分解を示すまで80℃で更に5時間攪拌した。室温まで冷却した後、反応混合物を30mLのHCl(aq)中に注ぎ入れ、そしてDCM(3×30mL)で抽出した。一緒にした有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮乾固し、そしてFCC(Biotage,勾配:ヘキサン混合物からヘキサン混合物/DCM(3:2)まで)によって精製して、目的の生成物を塩として溶離した。この塩を、DCM(5mL)及びHCl(aq)(6M,5mL)中に溶解することによって酸性化を行った。有機相を単離し、濃縮乾固し、その後、高真空下に一晩、乾燥して、無色の粘性油状物として目的の生成物を供した(82%、389mg)。
【0128】
例12:(S,S)-4-(((2r)-4-オキシド-2,6-ビス(2,4,6-トリ-(2-プロピル)フェニル)ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-4-イル)アミノ)-2,6-ビス(2,4,6-トリ(2-プロピル)フェニル)ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン4-オキシドの合成
【0129】
【化33】
25mL容積の火力乾燥しかつアルゴン充填したシュレンク管に、ヘキサクロロビスホスファゾニウムヘキサクロロホスフェート(472mg、887μmol)及び(S)-(o,o,p-トリ(2-プロピル)フェニル)BINOL(1.23g、1.78mmol、2.0当量)を仕込み、その後、ピリジン(9mL)を加えた。反応を室温で12分間攪拌し、その後、水(320μl、17.7mmol、20当量)を加え、そして80℃で更に16時間攪拌した。室温まで冷却した後、反応混合物を20mLのHCl(aq)中に注ぎ入れ、そしてDCM(3×30mL)で抽出した。一緒にした有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮乾固し、そしてFCC(Biotage,勾配:ヘキサン混合物からヘキサン混合物/DCM(3:2)まで)によって精製して、目的の生成物を塩として溶離した。この塩をDCM(10mL)及びHCl(aq)(6M,10mL)中に溶解することによって酸性化を行った。有機相を単離し、濃縮乾固し、その後、高真空下に一晩、乾燥して、無色の固形物として目的の生成物を供した(35%、462mg)。
【0130】
例13:1,1,1-トリフルオロ-N-((2r)-4-(((2s)-4-オキシド-2,6-ビス(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-4-イル)イミノ)-2,6-ビス(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)-4l5-ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-4-イル)メタンスルホンアミドの合成
【0131】
【化34】
火力乾燥した10mL容積のヤング-シュレンク管に、ヘキサクロロビスホスファゾニウムヘキサクロロホスフェート(99.0mg、186μmol)、(S)-3,3’-ジ(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)-[1,1’-ビナフタレン]-2,2’-ジオール(268mg、388μmol、2.09当量)を仕込み、その後、トルエン(2mL)を添加し、次いで、NEt(109μL、781μmol、4.2当量)を滴下して無色の懸濁液を形成し、これを室温で更に1.5時間攪拌した。TfNH(243mg、1.63mmol、8.76当量)を一度に加え、その後、追加的なNEt(415μL、2.98mmol、16.0当量)を加え、そしてこの懸濁液を80℃で更に25時間攪拌した。4-DMAP(20.5mg、0.167μmol、0.90当量)を加え、そしてこの反応混合物を110℃で17時間攪拌した。水(2mL)及びDCM(2mL)を加え、そしてこのエマルションを室温で更に16時間攪拌し、その後、有機相を単離し、そしてこれを、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮乾固し、そして生じた粗製生成物を、FCC(ヘキサン混合物/EtOAc 9:1)によって精製して、目的の生成物を塩として溶離した。この塩をDCM(10mL)中に溶解し、そして室温で30分間、HCl(6M、10mL)で酸性化した。有機相を単離し、濃縮乾固し、そして高真空中で一晩乾燥して、酸性形態で所望の生成物をもたらした(64%、194mg、186μmol)。
【0132】
例14:(S,S)-1,1,1-トリフルオロ-N-(4-((4-オキシド-2,6-ジフェニルジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-4-イル)イミノ)-2,6-ジフェニル-4l5-ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-4-イル)メタンスルホンアミドの合成
【0133】
【化35】
火力乾燥したシュレンクに、ヘキサクロロビスホスファゾニウムヘキサクロロホスフェート(62.8mg、118μmol)、(S)-3,3’-ジフェニル-[1,1’-ビナフタレン]-2,2’-ジオール(104mg、237μmol)を仕込み、その後、ピリジン(1mL)を添加した。黄色の反応混合物を室温で更に3時間攪拌し、その後、固形のトリフルオロメタンスルホンアミド(90mg、604μmol)を加え、そして生じた懸濁液を室温で72時間攪拌した。蒸留水(100μl、5.55mmol)を加え、そしてその黄色の懸濁液を室温で更に4時間攪拌し、その後、水性HCl(10%)でクエンチし、そして水性相をジクロロメタンで抽出した。一緒にした有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥して、濃縮乾固した。その粗製生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィ(ヘキサン混合物/酢酸エチル/ジクロロメタン(4:2:4))によって精製して無色の固形物を供し、これを、Dowex 50WX80(酸性型)のパッド上で濾過して、無色の固形物として目的の生成物をもたらし(65mg、49%)、これをジクロロメタン/ペンタンから再析出し、その後、高真空中で乾燥した。
【0134】
例15:(S,S)-1,1,1-トリフルオロ-N-(4-((4-オキシド-2,6-ビス(4-(ペンタフルオロ-l6-スルファニル)フェニル)ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-4-イル)アミノ)-2,6-ビス(4-(ペンタフルオロ-l6-スルファニル)フェニル)-4l5-ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-4-イリデン)メタン-スルホンアミドの合成
【0135】
【化36】
火力乾燥したシュレンクに、ヘキサクロロビスホスファゾニウムヘキサクロロホスフェート(56.8mg、107μmol)、(S)-3,3’-ビス(4-(ペンタフルオロ-l6-スルファニル)フェニル)-[1,1’-ビナフタレン]-2,2’-ジオール(147mg、213μmol)を仕込み、その後、ピリジン(1mL)を添加した。黄色の反応混合物を室温で更に3時間攪拌し、その後、固形のトリフルオロメタンスルホンアミド(90mg、604μmol)を加え、そして生じた懸濁液を室温で17時間攪拌した。蒸留水(100μl、5.55mmol)を加え、そしてその黄色の懸濁液を室温で更に4時間攪拌し、その後、水性HCl(10%)でクエンチし、そして水性相をジクロロメタンで抽出した。一緒にした有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥して、濃縮乾固した。その粗製生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィ(ヘキサン混合物/酢酸エチル(5:1から3:1まで)によって精製して無色の固形物を供し、これを、Dowex 50WX80(酸性型)のパッド上で濾過して、無色の固形物として目的の生成物をもたらし(123mg、71%)、これをジクロロメタン/n-ペンタンから再析出し、その後、高真空中で乾燥した。
【0136】
例16:N-(4-((4-オキシド-2,6-ビス(4-(トリフルオロメチル)フェニル)ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-4-イル)アミノ)-2,6-ビス(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-4l5-ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサ-ホスフェピン-4-イリデン)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホンアミドの合成
【0137】
【化37】
高真空下に火力乾燥かつアルゴン充填したシュレンクフラスコに、
HCPP(67.3mg、0.126mmol、1.0当量)、(S)-3,3’-ビス(4-トリフルオロメチルフェニル)-BINOL(161mg、0.253mmol、2.0当量)を仕込み、その後、ピリジン(1mL)を加えて透明な黄色の溶液を形成し、これを、BINOLが完全に消費されて(1h)、懸濁液が形成されるまで攪拌した。3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホンアミド(94.2mg、0.632mmol、4.9当量)を加え、そしてこの反応混合物を、室温で更に1時間攪拌した。水(0.15mL、10重量%)を加え、そして反応を、室温で更に16時間攪拌し、その後、過剰のHCl(10重量%)を加えて反応をクエンチした。水性相をCHClで抽出し、そして一緒にした有機層を塩水で洗浄し、NaSO上で乾燥し、そして濃縮乾固した。得られた固形物を、カラムクロマトグラフィ(ペンタン:EtO、4:1から2:1に勾配)によって精製して、目的の生成物を塩として供し、これを更に、DOWEX 50WX-8のパッド上での濾過によってDCM溶液として酸性化して、酸性型の目的の生成物を得た(65%、51.3mg、94.0μmol)。
【0138】
例17:ナトリウム(S-フェニル-N-((トリフルオロメチル)スルホニル)スルフィンイミドイル)-((トリフルオロメチル)スルホニル)アミドの合成
【0139】
【化38】
100mLの滴下漏斗を備えた500mL容積の火力乾燥した二首フラスコに、カリウム-tert-ブトキシド(23.0g、205mmol)、テトラヒドロフラン(250mL)を仕込み、そして0℃に冷却した(氷浴)。ヨウ素(46.1g、182mmol)を、生じる暗褐色の懸濁液を激しく攪拌しながら、20分内で少しずつ加えた。全て添加した後、生じた暗褐色の懸濁液を0℃で更に1時間攪拌した。アセトニトリル(50mL)中のトリフルオロメタンスルホンアミド(10.8g、72.6mmol)及びチオフェノール(4.00g、36.3mmol)の溶液を前記滴下漏斗に仕込んだ。この滴下漏斗の溶液を、0℃で激しく攪拌しながら、前記暗褐色の懸濁液に20分内で滴下した。全て添加した後、生じた暗褐色の懸濁液を室温で更に17時間攪拌し、その後、この暗褐色の懸濁液が僅かに黄色の懸濁液に変わるまで、チオ硫酸ナトリウムの飽和水溶液を加えた。この懸濁液を、1Lの分液漏斗に移した。前記の500mL容積の二首丸底フラスコをジエチルエーテル(150mL)ですすぎ、そして前記滴下漏斗に加えた。有機相を硫酸ナトリウムで(二度、それぞれ200mL)、塩水(200mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、そして濃縮乾固した。フラッシュカラムクロマトグラフィ(勾配、純粋なジクロロメタン、次いでジクロロメタン/アセトン(3:2))の後、目的の生成物を無色の固形物として単離した(8.54g、55%)。
【0140】
例18:N,N’-(アミノ(フェニル)-l6-スルファンジイリデン)ビス(1,1,1-トリフルオロメタン-スルホンアミド)の合成
【0141】
【化39】
20mL容積のマイクロ波容器に、ナトリウム(S-フェニル-N-((トリフルオロメチル)スルホニル)スルフィンイミドイル)-((トリフルオロメチル)スルホニル)アミド(2.00g、4.69mmol)、Selectfluor(4.26g、12.0mmol)及びアセトニトリル(10mL)を仕込んだ。この懸濁液を、マイクロ波(Biotage(登録商標)Initiator+)反応器中で60分間加熱し(100℃、1bar過圧)、次いでアルゴンアダプターを備えた火力乾燥した100mL容積の丸底フラスコに移した。全ての揮発性化合物を高真空下(1*10-3mbar)で除去して、黄色の析出物をもたらした。この析出物をジクロロメタン(20mL)中に懸濁し、そしてアルゴン過圧を用いて、PE管を介してセライト充填シュレンクフリット(3cm高さ)中に移した。その濾液を、100mL容積の火力乾燥したシュレンク管中に集めた。析出物を、ジクロロメタンで二度洗浄し(それぞれ20mL)、そして先に記載のように濾過した。目的のスルホニルフルオライドPhS(NTf)Fを含む一緒にしたジクロロメタン溶液を、無水アンモニアガスで15分間処理し、その結果、無色の懸濁液が形成した。この懸濁液を、250mL容積の丸底フラスコに移し、そして濃縮乾固した。ジエチルエーテル(50mL)及び水性HCl(6M、50mL)を加え、そしてそのエマルションを250mL容積の分液漏斗に移した。有機相を、水性HCl(それぞれ、6M、50mL)で更に二度、そして塩水で洗浄し、そして濃縮乾固した。生じた無色の析出物をトルエン中で再結晶化して、無色で結晶性の固形物として目的の生成物をもたらした(1.20g、61%)。
【0142】
例19:(S,S)-N,N’-(((4-((4-オキシド-2,6-ジフェニルジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-4-イル)アミノ)-2,6-ジフェニル-4l5-ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-4-イリデン)アミノ)(フェニル)-l6-スルファンジイリデン)ビス(1,1,1-トリフルオロメタンスルホンアミド)の合成
【0143】
【化40】
5mL容積の火力乾燥したシュレンク管に、ヘキサクロロビスホスファゾニウムヘキサクロロホスフェート(146mg、274μmol)、(S)-3,3’-ビス(フェニル)-[1,1’-ビナフタレン]-2,2’-ジオール(239mg、546μmol)を仕込み、その後、ピリジン(3mL)を添加した。僅かに黄色の懸濁液を室温で3時間攪拌し、その後、N,N’-(アミノ(フェニル)-l6-スルファンジイリデン)ビス(1,1,1-トリフルオロメタンスルホンアミド)(345mg、823μmol)を加え、そして室温で4日間攪拌した。蒸留水(300μlmL、16.6mmol)を加えると、ベージュ色の懸濁液となり、これを室温で更に16時間攪拌した。この懸濁液を、水性6M HCl(30mL)とジクロロメタン(30mL)との混合物中に注ぎ入れ、そして分液漏斗に移した。その水性相を、ジクロロメタンで更に二回抽出し(それぞれ30mL)、そして組み合わせた有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、そして濃縮乾固した。粗製生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィ(酢酸エチル/ヘキサン混合物(1:2))によって更に精製して、無色の結晶性固形物をもたらし、これを、Dowex 50WX80(酸性型、高さ8cm)に通して濾過し、無色の固形物として目的の生成物を供した(100mg、26%)。
【0144】
例20:(S,S)-N,N’-(((4-((2,6-ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-4-オキシドジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-4-イル)アミノ)-2,6-ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-4l5-ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-4-イリデン)アミノ)(フェニル)-l6-スルファンジイリデン)ビス(1,1,1-トリフルオロメタンスルホンアミド)の合成
【0145】
【化41】
25mL容積の火力乾燥したシュレンク管に、ヘキサクロロビスホスファゾニウムヘキサクロロホスフェート(155mg、291μmol)、(S)-3,3’-ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-[1,1’-ビナフタレン]-2,2’-ジオールを仕込み、その後、ピリジン(5mL)を添加した。その若干黄色の懸濁液を室温で90分間攪拌し、その後、N,N’-(アミノ(フェニル)-l6-スルファンジイリデン)ビス(1,1,1-トリフルオロメタンスルホンアミド)(420mg、1mmol)を添加し、そして60℃で72時間攪拌した。室温まで冷却した後、蒸留水(1mL、27mmol)を加えるとベージュ色の懸濁液となり、これを室温で更に24時間攪拌した。この懸濁液を、水性6M HCl(30mL)とジクロロメタン(30mL)との混合物中に注ぎ入れ、そして分液漏斗に移した。その水性相を、ジクロロメタンで更に二回抽出し(それぞれ30mL)、そして組み合わせた有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、そして濃縮乾固した。粗製生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィ(酢酸エチル/ヘキサン混合物(1:4))によって精製して、無色の結晶性固形物を与え、これを、Dowex 50WX80(酸性型、高さ8cm)に通して濾過し、無色の固形物として目的の生成物を供した(92mg、16%)。
【0146】
例21:N-((2s)-4-(((E)-2-((Z)-ブタ-2-エン-1-イリデン)-4,8-ジメシチル-6-((トリフルオロメチル)スルホンアミド)-1,2-ジヒドロ-6l5-ベンゾ[d]ナフタ[1,2-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イリデン)アミノ)-2,6-ジメシチル-4l5-ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-4-イリデン)-1,1,1-トリフルオロメタンスルホンアミドの合成
【0147】
【化42】
10mL容積の火力乾燥したシュレンク管に、ヘキサクロロビスホスファゾニウムヘキサクロロホスフェート(129mg、0.24mmol、1当量)、(S)-メシチル-Binol(271mg、0.52mmol、2.1当量)を仕込み、そしてトルエン(5mL)中に懸濁した。トリエチルアミン(0.15mL、1.09mmol、4.5当量)を、激しく攪拌しながら、ハミルトンシリンジにより滴下して、若干橙色の懸濁液を形成し、それは、室温で5分内に色が薄れた。生じた無色の懸濁液を室温で更に60分間攪拌し、その後、TfNH(289mg、1.94mmol、8当量)を添加し、追加のトリエチルアミン(0.54mL、3.88mmol、16当量)を加え、そしてその懸濁液を80℃で更に26時間攪拌した。その橙色の懸濁液を室温に冷却し、その後、4-ジメチルアミノピリジン(26.6mg、0.22mmol、0.9当量)を加え、そして100℃で更に6日間攪拌した。次いで、その反応混合物をNMRで分析したところ(少アリコート部を、不活性条件下にNMR管に移し、全ての揮発物を高真空下に除去し、その後、DCM-d2を加えた)、目的の生成物へのおおよそ60%の転化率を示した。この反応混合物を次いで約1mLの水性HCl(6M)でクエンチし、その後、ジクロロメタン(約10mL)で希釈した。この混合物を、25mL容積の分液漏斗に移し、そしてHCl(6M、10mL)で洗浄し、その後、飽和NaHCO3(aq)(それぞれ10mLで二回)で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮乾固し、その後、FCC(Biotage、勾配:n-ヘキサン/EtOAc(100/0)から(60/40)まで)によって中間物を溶離した。それは、一つだけのクロライドが置換されており(36%、114mg)、目的の生成物は塩として得た(m=126mg、ナトリウム塩として収率44%)。46mgのこの塩を少量のジクロロメタン中に溶解し、そしてDowex 40Wx8を充填したカラムに通し、酸性型で目的の生成物を得た(42mg、93%)。
【0148】
例22:6,6’-アザンジイルビス(7-メチル-7H-ジベンゾ[d,f][1,3,2]オキサザホスフェピン6-オキシド
【0149】
【化43】
10mL容積の火力乾燥したシュレンク管に、ヘキサクロロビスホスファゾニウムヘキサクロロホスフェート(327mg、0.62mmol、1当量)、2’-(メチルアミノ)-[1,1’-ビフェニル]-2-オール(245mg、1.25mmol、2当量)を仕込み、そして予め冷却した(0℃)ピリジン(3.50mL)中に溶解した。その黄色の反応混合物を0℃(氷浴)で2.5時間攪拌し、その後、水(0.22mL、12.3mmol、20当量)を加えた。次いで、この反応を室温で一晩攪拌し、その後、6N HCl(約5mL)を加え、そして水性相をジクロロメタン(3×20mL)で抽出した。一緒にした有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮乾固し、その後、フラッシュカラムクロマトグラフィ(DCM/EtOAc(4/1))して塩の形で目的の生成物を溶離し、これを次いで、6N HCl(aq)/DCM(10mL 1/1v/v%)で酸性化した。目的の生成物(153mg、49%)をジアステレオマーの混合物として単離し、これを、分取用HPLC(Daicel Chiralpak QN-AX、150mm、21mm、MeOH/HOAc、NHAc=98:2:0.5(v/v/w)、20mL/分)によって分画して、対応するエナンチオ濃縮生成物をもたらした。
【0150】
例23:(S)-6-(((R)-6-オキシド-7-トシル-7H-ジベンゾ[d,f][1,3,2]オキサザホスフェピン-6-イル)アミノ)-7-トシル-7H-ジベンゾ[d,f][1,3,2]オキサザホスフェピン6-オキシドの合成
【0151】
【化44】
10mL容積の火力乾燥したシュレンク管に、ヘキサクロロビスホスファゾニウムヘキサクロロホスフェート(35.4mg、72.0μmol、1当量)、2’-(N-トシル)-[1,1’-ビフェニル]-2-オール(54.5mg、152μmol、2.1当量)を仕込み、そしてTHF中に溶解した。NaH(分散液、60%、8.69mg、217μmol、3当量)を加え、そして反応を室温で1.5時間攪拌した。水性NaOH(1M、700μl)を加え、そして反応を室温で更に45分間攪拌した。EtOAc(5mL)を加え、そしてその有機相を水性HCl(10%、2×5mL)で洗浄し、そして真空下に乾燥して、粗製生成物をもたらした(52.1mg)。この粗製生成物の一部を分取用TLC(EtOAc/DCM 1:4)によって精製して、表題の生成物を塩としてもたらした。これは、分析用HPLC測定(150mm、Chiralpak QN-AX、4.6mm、MeOH/HOAc/NHOAc=98.2:0.5(v/v/w))に基づく固有のキラリティを含む。
【0152】
例24:(S,S)-3,5-ジベンジル-4-(ベンジルアミノ)-N-(3,5-ジベンジル-4-(ベンジルアミノ)-4,5-ジヒドロ-3H-4λ-ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジアザホスフェピン-4-イリデン)-4,5-ジヒドロ-3H-4λ-ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジアザホスフェピン-4-イミニウムクロライドの合成
【0153】
【化45】
火力乾燥したシュレンクに、ヘキサクロロビスホスファゾニウムクロライド(32.4mg、0.1mmol)、(S)-N2,N2’-ジベンジル-(1,1’-ビナフタレン)-2,2’-ジアミン(97.6mg、0.21mmol)を仕込み、その後、ピリジン(1mL)を添加した。その褐色の反応混合物を、100℃で更に12時間攪拌し、その後、蒸留したベンジルアミン(107.2mg、1mmol)を添加した。生じた懸濁液を110℃で更に24時間攪拌し、その後、飽和塩化アンモニウム溶液によってクエンチした。この混合物をEtOAcで抽出し、一緒にした有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、そして濃縮乾固した。その粗製生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィ(ジクロロメタン/メタノール)(100:1から50:1まで)によって精製して、黄色の固形物として目的の生成物をもたらした(25%、31.2mg)。
【0154】
例25:(S,S)-4-(ブチルアミノ)-N-(4-(ブチルアミノ)-3,5-ジフェニル-4,5-ジヒドロ-3H-4l5-ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジアザホスフェピン-4-イリデン)-3,5-ジフェニル-4,5-ジヒドロ-3H-4l5-ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジアザホスフェピン-4-イミニウムクロライドの合成
【0155】
【化46】
10mL容積の火力乾燥したシュレンクに、ヘキサクロロビスホスファゾニウムクロライド(162mg、0.5mmol、1当量)、(S)-N2,N2’-ジフェニル-(1,1’-ビナフタレン)-2,2’-ジアミン(436.2mg、1mmol、2当量)を仕込み、その後、ピリジン(1mL)を添加した。その褐色の反応混合物を、120℃で更に24時間攪拌し、その後、蒸留したn-ブチルアミン(365mg、5mmol、5当量)を添加した。生じた懸濁液を110℃で更に24時間攪拌し、その後、飽和塩化アンモニウム溶液によってクエンチした。この混合物をEtOAc(3×20mL)で抽出し、一緒にした有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、そして濃縮乾固した。その粗製生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィ(ジクロロメタン/メタノール)(100:1から50:1まで)によって精製して、黄色の固形物として目的の生成物をもたらした(45%、252mg)。
【0156】
例26:(S,S)-3,5-ジ([1,1’:3’,1’’-テルフェニル]-5’-イル)-4-(ブチルアミノ)-N-(3,5-ジ([1,1’:3’,1’’-テルフェニル]-5’-イル)-4-(ブチルアミノ)-4,5-ジヒドロ-3H-4l5-ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジナフトホスフェピン-4-イリデン)-4,5-ジヒドロ-3H-4l5-ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジアザホスフェピン-4-イミニウムクロライドの合成
【0157】
【化47】
10mL容積の火力乾燥したシュレンクに、ヘキサクロロビスホスファゾニウムクロライド(81mg、0.25mmol、1当量)、(S)-N2,N2’-ジ([1,1’:3’,1’’-テルフェニル]-5’-イル)-[1,1’-ビナフタレン]-2,2’-ジアミン(370mg、0.5mmol、2当量)を仕込み、その後、ピリジン(0.5mL)を添加した。その褐色の反応混合物を、120℃で更に24時間攪拌し、その後、蒸留したn-ブチルアミン(365mg、5mmol、10当量)を添加した。生じた懸濁液を110℃で更に24時間攪拌し、その後、飽和塩化アンモニウム溶液によってクエンチした。この混合物をEtOAc(3×20mL)で抽出し、一緒にした有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、そして濃縮乾固した。その粗製生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィ(ジクロロメタン/メタノール)(100:1から50:1まで)によって精製して、黄色の固形物として目的の生成物をもたらした(54%、233mg)。
【0158】
例27:N,N’-((2s,2’s)-アザネジイルビス(2,6-ビス(2,4,6-トリエチルフェニル)-4l5-ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-4-イル-4-イリデン))ビス(1,1,1-トリフルオロメタンスルホンアミド)
【0159】
【化48】
10mL容積の火力乾燥したシュレンク管に、ヘキサクロロビスホスファゾニウムヘキサクロロホスフェート(45mg、0.085mmol、1.0当量)及び(S)-3,3’-(o,o,p-トリ(n-エチル)フェニル)BINOL(110mg、0.18mmol、2.2当量)を仕込み、そしてトルエン(1mL)中に溶解した。この溶液に、NEt(53μl、0.38mmol、4.5当量)を激しく攪拌しならが滴下した。生じた黄色の懸濁液を室温で60分間攪拌し、その後、HNTf(100mg、0.68mmol、8当量)及びNEt(195μl、137mg、1.35mmol、16.0当量)を添加した。この混合物を15時間攪拌しながら80℃に加熱し、次いで、4-DMAP(9.3mg、0.076mmol、0.9当量)を室温で添加した。反応を120℃で120時間攪拌した。その粗製混合物を、ワークアップせずに、FCC(Biotage、勾配:ヘキサン混合物からヘキサン混合物/EtOAc(5:1))によって精製して、目的の生成物を塩として溶離した。この塩をEtO(3mL)中に溶解しそしてこの溶液を、DOWEX(登録商標)50WX8の5cmパッドに通して流すことによって酸性化を行った。有機相を濃縮乾固して、無色の固形物として目的の生成物を供した(36%、48mg)。
【0160】
例28:N,N’,N’’,N’’’-(((アザネジイルビス(2,6-ジフェニル-4l5-ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサ-ホスフェピン-4-イル-4-イリデン))ビス(アザニルイリデン))ビス(フェニル-l6-スルファニルジイリデン))テトラキス(1,1,1-トリフルオロメタンスルホンアミド)
【0161】
【化49】
25mL容積の火力乾燥したシュレンク管に、ヘキサクロロビスホスファゾニウムクロライド(132mg、407μmol、1当量)及び例18からのN,N’-(アミノ(フェニル)-l6-スルファンジイリデン)ビス(1,1,1-トリフルオロメタン-スルホンアミド)(343mg、818μmol、2当量)を仕込み、そしてトルエン(4mL)中に懸濁した。この懸濁液を、ガスの発生が止むまで15分間攪拌した。水素化ナトリウム(鉱油中の分散液、60%、218mg、5.45mmol、13当量)を添加し、そしてこの反応混合物を60℃で3時間攪拌した。(S)-3,3’-(フェニル)BINOL(401mg、914μmol、2.2当量)を添加し、そしてこの反応混合物を100℃で23時間攪拌した。次いで、この反応混合物を飽和NaHCO中に注意深く注ぎ入れ、そして水性層をDCMで抽出した。一緒にした有機相を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮乾固し、その後、FCC(Biotage,勾配:DCMからDCM/MeOH(3:2)まで)によって精製して、目的の生成物を塩として溶離した。次いで、この塩を少量のDCM中に溶解し、そしてDOWEX(登録商標)50WX8の5cmパッドに通して流すことによって酸性化した。有機相を濃縮乾固して、酸性型の目的の生成物を供した(60%、437mg)。
【0162】
例29:N,N’-(アザネジイルビス(2,6-ビス(4-tert-ブチル)フェニル)-4l5-ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-4-イル-4-イリデン))ビス(1,1,1-トリフルオロメタンスルホンアミド)
【0163】
【化50】
10mL容積の火力乾燥したシュレンク管に、ヘキサクロロビスホスファゾニウムクロライド(42mg、130μmol、1当量)、TfNH(38.6mg、259μmol、2当量)を仕込み、そしてトルエン(1mL)中に懸濁した。この懸濁液を室温で1時間攪拌し、その後、水素化ナトリウム(鉱油中の分散液、60%、82.9mg、2.07mmol、16当量)を添加し、100℃で6時間攪拌し、その後、(S)-3,3’-(4-tert-ブチルフェニル)BINOL(173mg、314μmol、2.4当量)を添加し、更に、100℃で34時間攪拌した。次いで、この反応混合物を、飽和NaHCO中に注ぎ入れ、そして水性層をDCMで抽出した。一緒にした有機相を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮乾固し、その後、FCC(Biotage,勾配:DCMからDCM/EtOAc(9:1)まで)によって精製して、目的の生成物を塩として溶離し、これを、少量のDCM中に溶解しそしてDOWEX(登録商標)50WX8の5cmパッドに通して流して酸性化した。有機相を濃縮乾固して、酸性型の目的の生成物を供した(56%、107mg)。
【0164】
例30:(S,S)-N-(4-((2,6-ビス(2-シクロヘキシル-5-メチルフェニル)-4-オキシドジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-4-イル)アミノ)-2,6-ビス(2-シクロヘキシル-5-メチルフェニル)-4l5-ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-4-イリデン)-1,1,1-トリフルオロメタンスルホンアミドの合成
【0165】
【化51】
25mL容積の火力乾燥したシュレンク管に、HCPP(265mg、498μmol、1当量)、3,3’-ビス(2-シクロヘキシル-5-メチルフェニル)-[1,1’-ビナフタレン]-2,2’-ジオール(628mg、996μmol、2当量)を仕込み、その後、ピリジン(10mL)を添加して、黄色帯びた溶液を形成した。反応を室温で50分間攪拌し、その後、TfNH(371mg、2.49mmol(5当量))を添加し、そして室温で1時間撹拌した。水(1ml、55.5mmol、112当量)を加え、そして生じた懸濁液を室温で6時間攪拌した。この反応混合物を、氷冷したHCl(aq)(6M、100ml)中に注ぎ入れ、分液漏斗に移し、そして水性相をDCM(3×40ml)で抽出した。一緒にした有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮乾固し、そして粗製生成物をFCC(DCM/EtOAc 4:1)によって精製して、目的の生成物を塩として溶離した。この塩を、少量のDCM(約4ml)中に溶解し、ペンタンで覆い、そして冷凍機(-20℃)中で三日間放置して、無色の結晶を形成した。有機相をデカントし、そして前記の無色の結晶を20mlのDCM中に溶解し、その後、HCl(6M、20ml)を添加し、そして室温で30分間攪拌した。DCM相を単離し、濃縮乾固し、そして更に高真空中で一晩乾燥して、無色の固形物として酸性形態で目的の生成物をもたらした(67%、503mg、498μmol)。NMR分析は二つのセットの信号を示し、これは、回転異性体の存在を示す(比率9:1)。
【0166】
例31:1,1,1-トリフルオロ-N-((2s)-4-((4-オキシド-2,6-ビス(2,4,6-トリペンチルフェニル)ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-4-イル)イミノ)-2,6-ビス(2,4,6-トリペンチルフェニル)-4l5-ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-4-イル)メタンスルホンアミドの合成
【0167】
【化52】
アルゴンアダプターを備えた10ml容積の丸底フラスコに、(S)-3,3’-ビス(2,4,6-トリ-n-ペンチルフェニル)-BINOL(256mg、298μmol、2当量)、HCPP(82mg、154μmol、1当量)を仕込み、その後、トルエン及びNet3(249μl、1.79mmol、12当量)を添加して、黄色帯びた懸濁液を形成し、これを室温で3時間攪拌した。TfNH2(177mg、1.19mmol、8当量)を加え、そして反応を室温で23時間攪拌し、その後、HO(268μl、14.9mmol、100当量)、ピリジン(1ml、溶解性を高めかつ加水分解を促進するため)を添加し、そして70℃で3時間攪拌した。この反応混合物を、水性HCl(6M)中に注ぎ入れ、そしてDCMで抽出した。一緒にした有機DCM相を濃縮乾固し、そしてFCC(Biotage、勾配:ヘキサン混合物/DCM 100:0から0:100まで);60:40で生成物の溶離)によって精製して、目的の生成物を塩として供し、これをDCM(3ml)中に溶解しそしてHCl(6M、3ml)中に乳化して酸性化した。このエマルションを30分間攪拌し、有機相を単離し、濃縮乾固し、そして高真空下に一晩乾燥して、目的の生成物を酸性型でもたらした(79%、231mg、149μmol)。
【0168】
例32:(S,S)-N,N’-(アザネジイルビス(2,6-ビス(2’-(tert-ブチル)スピロ[シクロペンタン-1,9’-フルオレン]-7’-イル)-4l5-ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-4-イル-4-イリデン))ビス(1,1,1-トリフルオロメタンスルホンアミド)の合成
【0169】
【化53】
10ml容積の火力乾燥かつアルゴン充填したシュレンク管に、HCPP(30mg、56μmol、1.0当量)及び(S)-3,3’-ビス(2’-(tert-ブチル)スピロ[シクロペンタン-1,9’-フルオレン]-7’-イル)-BINOL(64mg、116μmol、2.05当量)を仕込み、そして0.8mlのトルエン中に溶解した。この溶液に、NEt(35μl、254μmol、4.5当量)を激しく攪拌しならが滴下した。生じた黄色の懸濁液を室温で60分間攪拌し、その後、HNTf(327mg、2.19mmol、8当量)を添加した。この混合物を、攪拌しながら36時間加熱した。その粗製混合物を、ワークアップせずに、FCC(勾配:ヘキサン混合物/EtOAc 1:0から9:1まで)によって精製して、目的の生成物を塩として溶離した。この塩をEtO(3mL)中に溶解しそしてこの溶液を、DOWEX(登録商標)50WX2の5cmパッドに通して流すことによって酸性化を行った。有機相を濃縮乾固して、無色の固形物として目的の生成物を供した(70%、392mg)。
【0170】
例33:N,N’,N’’,N’’’-(((アザネジイルビス(2,6-ジフェニル-4l5-ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-4-イル-4-イリデン))ビス(アザニリデン))ビス(フェニル-l6-スルファニルジイリデン))テトラキス(1,1,1-トリフルオロメタンスルホンアミド)の合成
【0171】
【化54】
25mL容積の火力乾燥かつアルゴン充填したシュレンク管に、ヘキサクロロビスホスファゾニウムクロライド(132mg、407μmol、1当量)及び例18からのN,N’-(アミノ(フェニル))-l6-スルファンジイリデン)ビス(1,1,1-トリフルオロメタン-スルホンアミド)(343mg、818μmol、2当量)を仕込み、そしてトルエン(4ml)中に懸濁した。この懸濁液を、ガスの発生が止むまで15分間攪拌した。水素化ナトリウム(鉱油中の分散液、60%、218mg、5.45mmol、13当量)を添加し、そしてこの反応混合物を60℃で3時間攪拌した。(S)-3,3’-(フェニル)BINOL(401mg、914μmol、2.2当量)を添加し、そしてこの反応混合物を100℃で23時間攪拌した。次いで、この反応混合物を飽和NaHCO3中に注意深く注ぎ入れ、そして水性層をDCMで抽出した。一緒にした有機相を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮乾固し、その後、FCC(Biotage,勾配:DCMからDCM/MeOH(3:2)まで)によって精製して、目的の生成物を塩として溶離した。次いで、この塩を少量のDCM中に溶解し、そしてDOWEX(登録商標)50WX8の5cmパッドに通して流すことによって酸性化した。有機相を濃縮乾固して、酸性型の目的の生成物を供した(60%、437mg)。
【0172】
例34:N,N’,N’’,N’’’-(((アザネジイルビス(2,6-ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-4l5-ジナフト[2,1-d:1’,2’-f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-4-イル-4-イリデン))ビス(アザニリデン))ビス(フェニル-l6-スルファニルジイリデン))テトラキス(1,1,1-トリフルオロメタンスルホンアミド)の合成
【0173】
【化55】
10ml容積のシュレンク管に、HCPC(73.0mg、0.23mmol)、フェニルビス(トリフルオロメチルスルホニルイミノ)スルホンアミド(191mg、0.46mmol、2当量)を仕込み、そして2mlのトルエン中に懸濁した。反応を、ガスの発生が止むまで、室温で30分間攪拌した(150rpm)。水素化ナトリウム(鉱油中の分散液、60%;116mg、2.90mmol、13当量)を加え、そして生じた懸濁液を、2時間、予め加熱した金属ブロック中で110℃まで攪拌した。(S,S)-3,3’-(m,m-ビストリフルオロメチルフェニル)BINOLを一度に加え、そして封止したこのシュレンクフラスコを110℃で44時間攪拌した。この反応混合物を室温に冷却し、DCMで希釈し、そして飽和NaHCO3(aq)中に注ぎ入れた。水性相をDCM(4×20mL)で抽出し、一緒にした有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、そして濃縮乾固した。フラッシュカラム精製(Biotage 勾配:DCM/MeOH、4/1まで)は、目的の生成物を塩として生じ、この生成物を少量のDCM中に溶解し、そして予め活性化したDowex 40WX8に通して、目的の生成物を酸性型でもたらした(81%、426mg、0.18mmol)。
【0174】
結論
まとめると、本発明者らは、ヘキサクロロビスホスファゾニウム塩を構成単位として利用して、広い範囲の二量体型ホスファゼン誘導触媒の高速で高効率の単一フラスコ合成を可能にする、新しい方法を開発した。独特な構造的な閉じ込めを有する新規のIDP、iIDP及びIDPiを、簡単でかつ操作がシンプルな合成法で得ることができ、そして不斉触媒反応に使用することができる。
【0175】
独特な構造的に閉じ込められた空隙を有する新規でかつ未開拓の二量体型ホスファゼン触媒が新規に得られるために、本発明者らは、小さな基質、特に不斉触媒反応において立体選択的に制御し難いままだった基質に注目し始めた。二つの構造的に非常に類似した基を含む基質であるプロピルメチルスルフィドは、これまでは、優れたエナンチオ選択性をもっては触媒酸化されていない。
【0176】
驚くべきことに、新しい極めて閉じ込められた構造のIDPの新規の入手法の結果、95:5のエナンチオマー比でのこの特定の難しい基質の不斉スルホキシド化(J.Am.Chem.Soc.2012,134,10765(非特許文献11))について、例9からのIDPの迅速な同定となった。プロピルメチルスルホキシドの優れたエナンチオ選択性は、従前は得られなかった、高度に閉じ込められた新規の触媒を設計し、それにより不斉触媒反応におけるとてつもない困難を解消することに対する、この新規の触媒合成法の重要性と影響を示している。これらの新規触媒の利用性は、現在、我々の実験室で検証中である。
【0177】
本発明者らは、イミドジホスホリル化合物の合成に向けてのヘキサクロロビスホスファゾニウム塩及びそれの誘導体の構成単位としての利用が、ブレンステッド酸及びブレンステッド塩基並びにルイス酸及びルイス塩基触媒反応の分野における用途を見出すであろう、新規で構造的に異なった触媒モチーフの合成に向けての将来の用途を見出すであろうことを予期する。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
【国際調査報告】